○淺香
委員 税の執行に関する調査小
委員会の調査の経過並びにその結果について御報告申し上げます。
まず、小
委員会の設置の目的から申し上げます。戦後の混乱時においては、納税道義が極度に低下した結果、必然的に課税、徴収面においても強力に執行がなされたが、現在では経済も安定し、その間数次の
減税措置により、
租税の
負担も相当
軽減されるとともに、納税道義も漸次高揚されて来たのであります。しかし、現在の課税執行面の状況を見るとき、戦後の混乱時における執行そのものがなお存続しており、これがため行き過ぎと見られる点が多くあり、より民主的にして納税者の納得する税務への改善は、必ずしも十分とはいえない実情にあります。
以上の観点から、昭和三十二年十一月七日の大蔵
委員会において、税の執行に関する調査小
委員会の設置を決定し、主として税の執行面が真に民主的に行われるために、実情を調査するとともに、改善方式をこの際十分検討することとしたのであります。
次に、調査の経過について申し上げますと、小
委員会の調査の方向は、税の執行面全般にわたる諸問題について行うこととしておりましたが、特に当面の問題となっておりますものを重点として取り上げることとし、まず査察
制度と協議団等の苦情処理の
制度及び当面執行面に起りつつある諸問題を調査検討することといたしたのであります。
小
委員会は、設置以来数回開会し、参考人などの
意見を聴取し、またその間
委員会においては東京、名古屋、大阪各国税局に
委員を派遣して、実情を調査して参ったのであります。
以上のように調査、審議を続けて参りました結果、次のように、検討すべき点について一応の
意見がまとまりました。
一、査察
制度について、
査察
制度は、当初昭和二十三年七月五日
大蔵省主税局に設置され、後に昭和二十四年六月一日
国税庁に現在の調査査察部として設置されたのであります。設置されたときの査察
制度の性格は、収税計画を促進強化するための一翼として、社会的に非難さるべき悪質脱税者を告発して、その刑事責任を追及することであります。従って、本
制度は、戦後の納税道義の低下していた時代には、第三者通報
制度とともに、効果はあったのでありますが、社会情勢が安定してきた今日、本
制度を創設当時の機構、性格をそのまま存続させることは妥当でないという
意見が圧倒的であり、うちには、現段階では廃止すべしとの強い
意見もありました。なお、実情調査の結果、次の問題点があげられました。
(一)、最近の査察の
対象が、結果的に中小企業、特に同族会社に対して行われる
傾向が多いこと。
(二)、科学的裏づけ調査よりも、検察的権力の強制調査を重点とする結果、査察の効果よりも、善良な納税者及び第三者に対して必要以上に圧迫するおそれが多分に現われ、査察に対する社会感情は不信に傾いている。
(三)、査察事件の内容が外部に漏れて、査察ブローカーの介在する疑いが多分にあること。
(四)、中小企業の特殊性と商慣習を無視されていること。
二、協議団
制度について、
本
制度はシャウプ勧告に基き、侵害された納税者の権利、
利益の救済機関として、昭和二十五年七月団令をもって創設されて現在に至ったのであります。その間処理されてきた審査諸事案は約六万五千件であります。この
制度に対する一般納税者のおもな批判は、次のようなものであります。
(一)、協議団は、救済機関というが、国税局長の下部機構であるから、主管部(直
税部、徴収部等)から強い反論があるときは、勢いそれに押されて、当初の判断と異なる審査決定が行われる場合が多いこと。
(二)、協議団に持ち込んでも、審理が相当長期にわたり、その間納税者は不安定の状態に置かれ、利子税等の累積に悩まされていること。
(三)、協議官の人事は、税務職員の姥捨山的な観があるので、沈滞していること。
以上の観点からも、本
制度については、苦情相談所とともに、早急に再検討を行い、いまだ不当に取り扱われている数多い納税者救済のために、強化拡充することについては
意見が一致しております。
以上の
理由から、査察
制度、協議団
関係の
制度に対する再検討については、早急に
結論を出すべきであるが、この際政府に対して反省の機会を与え、政府においても、実情に即した執行面の改善方法の研究を行い、可及的すみやかに成案を得て、小
委員会に報告せしめるよう手配されんことを希望いたします。
なお小
委員会においても、納税者の納得する最終
結論を出すために、さらに実情調査を行い、不合理な点を発見することが、現段階においては最も妥当であるとの
意見が一致いたしました。
その間においても、政府はその他の点で改善さるべき点があれば、逐次これを断行するとともに、協議団
制度については、PRを徹底せしめるよう努力すべきであると
考えます。
三、その他
その他の問題につきましても、次のような議論が行われました。
(一) 現在の課税の実体を見るとき、効率標準の濫用により、申告納税
制度を
国税庁みずから否定する結果となるおそれがあるから、この効率標準率を廃止せよ、または公表すべきであるとの強い
意見があります。いずれにせよ、当面この運用については、再検討をすべしとの強い
意見に一致しました。
(二)
国税庁外郭団体の実情については、一般から疑惑を招く点が多々ありますので、今後は公正、明朗な
協力関係を樹立するよう早急に改善すべきであるとともに、特に人事については、慎重を期せられるよう指導すべきであると
考えます。
以上が調査の経過並びに結果でありますが、言うまでもなく、本小
委員会は、所期の目的達成のために、今後なお継続的に税の執行上生じております諸問題について調査を進め、税務行政の民主化と合理化の実をあげたいと存じます。
以上簡単ながら中間報告といたします。
この際一言つけ加えておきたいと存じます。それは、去る二月十二日の小
委員会で取り上げました
国税庁職員の労働問題であります。ここでは、詳細は省略いたしますが、税務の執行が能率的に行われますために、労使が中央においてとくと話し合うことが必緊のことであると
考えますので、
国税庁においては特にこの点配慮せられることを、小
委員会の
意見として希望しておきます。