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1958-03-12 第28回国会 衆議院 大蔵委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年三月十二日(水曜日)     午前十時五十五分開議  出席委員    委員長 足鹿 覺君    理事 淺香 忠雄君 理事 大平 正芳君    理事 黒金 泰美君 理事 高見 三郎君    理事 藤枝 泉介君 理事 平岡忠次郎君    理事 横山 利秋君       奧村又十郎君    加藤 高藏君       川野 芳滿君    吉川 久衛君       杉浦 武雄君    竹内 俊吉君       内藤 友明君    山本 勝市君       有馬 輝武君    石野 久男君       石村 英雄君    春日 一幸君       久保田鶴松君    田万 廣文君  出席国務大臣         農 林 大 臣 赤城 宗徳君         通商産業大臣  前尾繁三郎君    出席政府委員         大蔵政務次官  坊  秀男君         大蔵事務官         (主計局長)  石原 周夫君         大蔵事務官         (主計局法規課         長)      小熊 孝次君         大蔵事務官         (主計局給与課         長)      岸本  晋君         大蔵事務官         (理財局長)  正示啓次郎君         大蔵事務官         (為替局長)  酒井 俊彦君         食糧庁長官   小倉 武一君  委員外出席者         大蔵事務官         (銀行局特別金         融課長)    磯江 重泰君         通商産業事務官         (通商局次長) 伊藤 繁樹君         専  門  員 椎木 文也君     ————————————— 三月十二日  委員安藤覺君辞任につき、その補欠として足立  篤郎君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  食糧管理特別会計法の一郡を改正する法律案(  内閣提出第一五号)  食糧管理特別会計における資金の設置及びこれ  に充てるための一般会計からする繰入金に関す  る法律案内閣提出第一六号)  外国為替資金特別会計法の一部を改正する法律  案(内閣提出第三一号)  旧令による共済組合等からの年金受給者のため  の特別措置法等規定による年金の額の改定に  関する法律案内閣提出第一〇七号)      ————◇—————
  2. 足鹿覺

    足鹿委員長 これより会議を開きます。  旧令による共済組合等からの年金受給者のための特別措置法等規定による年金の額の改定に関する法律案を議題として審査を進めます。質疑の通告があります。これを許します。横山利秋君。
  3. 横山利秋

    横山委員 旧令による共済組合等からの年金受給者のための特別措置法等規定による年金の額の改定に関する法律案、この法律恩給法等の一部を改正する法律案に準拠するものでありますが、これに関連をいたしまして、二、三共済組合の諸問題についてお伺いをいたしたいと思います。  かねがね理事会で、公務員共済年金についてすみやかに政府がその内部の意見の不統一統一をして、そしてすみやかに本国会公務員共済年金制度に関する法律案を提案をするように要望いたしましたところ、明日ないしは明後日に閣議で決定をされるやに聞き及んでおります。これはぜひそうして、一日も早く国会に提案してもらいたいのでありますが、それが中心になっておりますために、自余のこれに関連する重大な問題が何だか影をひそめておるような気がするわけであります。そこで、政府にはっきりいたしてもらいたいのは、近く提案されるであろう公務員退職年金制度密接不可分関係にある国家公務員退職手当はどういうふうにしようとなさるのか、これが一つです。二番目には、同じく密接不可分国家公務員災害補償法についてはいかようになさるつもりなのか、年金制度改正論理を貫いていきますと、どうしても国家公務員等退職手当改正しなければならぬ、また国家公務員災害補償法身分による違いというものを改正をしなければならぬ、この二つをさておいて年金制度改正しても、論理の一貫しないことは言うまでもないことであります。従いまして、第一番に年金制度改正をなさるについて、以上申しました二つ法律をどういうふうにするつもりであるか、お伺いしたいと思います。
  4. 坊秀男

    坊政府委員 御質問公務員年金制度等につきましては、すべてを総合的に考えまして、今これを提出するつもりで、鋭意研究中でございますが、全般的にまだ少し練らなければならないという点でございますので、おそらくきわめて近いうちにこれがまとまるであろうと考えておりますが、その節は、何分よろしく御審議をお願いしたいと思います。
  5. 横山利秋

    横山委員 どうも答弁がはっきりいたしませんが、私が申し上げた国家公務員災害補償法国家公務員等退職手当法律は、年金制度法律に対応して改正をなさるのか、なさらないのかということをお伺いしておるのです。
  6. 岸本晋

    岸本政府委員 ただいまの御質問の、退職手当法災害補償法改正をどうするかというお話でございますが、実は年金制度自体につきまして、どういう方針内容でもってやるか、まだ最終的に政府部内の調整がついておらないわけでございます。その結論のいかんによりましては、あるいは退職手当災害補償法まで波及するか、波及しないか、これは年金内容のきまり方によるわけでございますけれども、今のところ、ただいま政務次官が申し上げましたように、総体的に、総合的に研究中である、かように申し上げたいと思います。
  7. 横山利秋

    横山委員 余人ならいざ知らず、あなたと私の質疑応答で、そんなことでごまかせるものじゃない。今の内閣における意見の不統一というものは、主としてぎりぎり一ぱいでは、所管をどこにするかというところに重点が置かれておるのであって、恩給現行共済組合法とを一緒にして、身分制度をそこでなくしていくという基本方針には、もはや変りはないものと私は思っている。大蔵省が提案しているのもそういうところにある。しかりとするならば、先ほど申しました二つ法律を直さざるを得ないのではないか。それを直さないとしたならば、年金制度を改革しようというあなたの方の意見というものは、まるきり意味がないことではないか。従って、年金法案改正に伴う当然の問題として、災害補償法退職手当法というものについては改正しなければならぬのではないか、率直に一つお答えを願います。
  8. 岸本晋

    岸本政府委員 ただいまの年金問題が政府部内でもめておる、それは単なる所管の問題であるという仰せでございますが、所管の問題ということは、またひいては年金制度に対するものの考え方も若干違ってくるという面もあるわけでございます。これは、新聞紙上などで恩給局案が発表されております。従来のような給与的な、恩給的な内容のものをお考えになっておられるわけです。そうした面との調査、そうしたものをとった場合に、果して退職手当が上げられるか、災害補償まで直せるか、これはまた別の問題になるわけであります。これはやはり所管だけでなく、年金制度考え方をどこに持っていくかということの最終結論が出ませんことには、退職手当災害補償までのことは、ただいまここでは申し上げかねるわけでございます。
  9. 横山利秋

    横山委員 私は、大蔵省原案説明を受けて、承知しているわけです。しからばお伺いしますが、大蔵省原案の中におけるものの考え方は、この二つ法律改正をすることになるのではないか、当然のことではないか、この点はいかがです。
  10. 岸本晋

    岸本政府委員 大蔵省原案と申しましても、あれは一応各省でああいう年金制度の問題を御検討ただ資料として配付していただいたものでございまして、これをそのままやればどうなるかという、資料前提としての話を申し上げますれば、おっしゃいましたように、折半負担年金方式原案では考えております。そうなりますと、当然退職手当にも手をつけざるを得ないということは確実でございます。
  11. 横山利秋

    横山委員 災害補償の方は。
  12. 岸本晋

    岸本政府委員 災害補償につきましては、原案考えております年金制度では、災害補償の一時金部分は、国家公務員災害補償で出しますが、年金部分は、民間の厚生年金保険船員保険と同じような考え方で、折半負担年金制度に織り込んでやるという考え方をとっておるわけでございます。従って、一時金を現在支給することにいたしておりますが、災害補償法には手をつけないで済むという考えでございます。
  13. 横山利秋

    横山委員 あとの災害補償の分については、少し私は意見を異にしておりますが、退職手当を、大蔵省原案方向政府が提案なさるとするならば、これは当然改正をしなければならぬという点については了承をいたしました。  そこで、さらに突っ込んでお伺いしますが、今の改正しなければならぬというものの考え方は、どういうことなんでありましょうか、今の退職手当というものは、国家公務員及び三公社等をすべて含んだ暫定措置要綱であり、暫定措置であります。今回その中から、国家公務員関係だけが年金制度改正されるとするならば、そういうことになるのでありますが、そうすると、三公社退職手当はどうなるのかということが次の質問であります。  私は、本委員会でかつて討論をされた記録を読んだわけでありますが、三公社退職手当というものは、賃金の決定機関公社及び労働組合にあって、団体交渉対象事項となっておるのであるから、これははずしたらどうだ、そうして法律からはずして、団体交渉対象事項にさるべきが、公労法建前からいって当然ではないかということが——過ぐる三年かそこら前、本委員会で討議された記録を見たわけでありますが、この問題は、退職手当改正される思想の中ではどういうことになりますか、これをお伺いしたい。
  14. 岸本晋

    岸本政府委員 三公社退職手当制度をどう持っていくか、この点につきましては、今度出て参ります公務員退職年金法レベルと申しますか、内容がどうなるかということとも関連があるわけでございます。国家公務員の場合に、年金法折半負担年金にすれば退職手当を出さざるを得ないということは、実体的に申し上げますと、年金折半負担年金方式になるということを原案では考えております。そうなりますと、国庫負担がある程度余裕が出て参る、その分は退職手当に向け得るわけであります。そうした面が一つあるわけです。全体としての公務員退職年金給与災害補償、そういうものを一切含めての国庫負担が相当高いということは、国庫も認められたところでございます。現行制度以上に国庫負担をふやすという方向での給与制度全般改正は、おそらく考えられないことだと思います。ただそうした一つのめども考えながら、年金制度改正折半負担でいきますと、これはやはり退職手当というものに響いていかざるを得ないわけでございます。ただ公社の場合に、その考え方をそのまますなおに押し及ぼせるかどうかという問題になりますと、やはり年金レベルの問題も関連がございます。公社年金レベル公務員より高い、公務員の方が低いものが出てきたという結果になりますと、公社の方は、年金の方でそれだけ余分な使用者負担をいたしておるわけでございます。それを退職手当までさらに公務員並みに持っていけるかどうかは、これはもう少し私ども検討を要する点ではないかと思っておるわけでございます。これは、年金法案最終がどういう形でおきまるかということを見ました上で、また御返事を申し上げたいと思います。
  15. 横山利秋

    横山委員 ごもっともな点がありますが、私が聞きました最後の点は、本来三公社退職手当というものは、公労法建前からいって、労働条件の問題であるから、国家公務員と一律に法律で縛っていくことが妥当であるかどうかという根本問題があるわけです。それから第二番目に、一緒に縛っておくとして、もう今度の公務員退職手当改正するに際して、三公社だけ現状のままに残しておくということが、そろばんはかりに総合的に合うといたしましても、現実的な納得が一体得られるものであろうかどうかという点に、私は深い疑念を抱くわけであります。従いまして、かりに退職手当法律改正する際に、根本的に三公社をこの法律のワクからはずして、これを国家公務員の純然たる退職手当法律として改正をすることが筋が通ることではないか、こういうふうに私は言っておる、重ねて御答弁をお願いいたします。
  16. 岸本晋

    岸本政府委員 公社退職手当は、これは当事者間の問題であるというお考えも、根本にはおありになろうかと思いますが、ただそれを、この際、将来国家公務員退職手当法からはずして、当事者間の自由な意思でもって話し合いできめさそうということまで踏み切られるかどうか、これは労働問題という点を離れまして、やはり一つの別な面から問題がございます。と申しますのは、現在公社予算制度は、とかくの批評はございましても、一応国会にかけまして、国会の御批判を受けてやっておるわけでございます。退職手当予算なども、結局その中に含まれて参るわけであります。ところがこうした退職手当とか年金という種類の予算額を将来見るということになると、どれだけが妥当であるかということは、なかなかきめがたいわけでございます。これはやはり制度の面から、この程度の退職金ならという一つの基準が出て参りませんと、将来長い間にわたっての負担の生ずる問題でございますから、そういう意味で、当事者間の問題のようでありますが、やはり法的な規制はそうした面では必要ではないかと、かように考えておるわけであります。
  17. 横山利秋

    横山委員 これは、最も大蔵省的な、官僚的な考え方だと私は思うのです。そういう理論を振り回しなさるなら、給与にしたって同じことであります。給与退職金とがどう違うか、退職金とは一体何ぞやということにも相なるわけであります。かりに法律からはずして、三公社退職金青空にいたしましたところで、これは今日の政治情勢からいって、給与問題と同じく、完全な労使双方青空ではありません、調停機関にもかかるであろうし、仲裁機関にもかかるであろうし、国会の問題にもなるであろうし、あるいはあなたの方が年間の予算をきめなさるときの予算単価の問題にもなるであろう。そういうふうに考えれば、給与退職手当というものを、片一方法律で縛らなければ相ならぬ、片一方労使団体交渉によらなければ相ならぬという区別は、どこに一体見つかりますか。私はあなたの答弁が、大蔵省としての官僚的な立場からの、何でもとにかく制約したいという以外の何ものでもないと思うのですが、その点、いかがですか。
  18. 岸本晋

    岸本政府委員 お話仮定公務員年金制度前提に進んでおりますが、ただ少くとも退職手当がかり一つ出て参りますれば、その際またあらためていろいろとこちらの考え方を申し上げさせていただきたいと思いますが、まだ現在のところはそういう状態でありますので、これ以上は議論は差し控えさせていただきたいと思います。
  19. 横山利秋

    横山委員 そこで、あなたが第二番におっしゃった公務員災害補償法については、今改正せぬでもいいではないかというような意味答弁がありました。しかし、これも年金制度改正するとしたならば、当然筋を通さなければならぬのであります。なぜならば、現在の共済組合適用者災害を受けた者は業務災害のものが適用されるのですね、恩給法適用者考は、恩給増加恩給で適用される。ここにも身分の相違というものは歴然たるものがある。ですから、恩給共済年金統一するその思想に立てば、国家公務委員災害補償法についても、その筋を通すのが当然ではないか。これも一歩譲って、大蔵省原案思想立場に立てばということに譲って、御答弁を楽にしてあげますけれども、とにかく共済年金統一するならば、当然先ほどの退職手当も、今質問をいたしました公務員災害補償法も、その線に沿って改正をしなければならぬ、これは当然の筋道だと思うのですが、先ほどの答弁があいまいでありましたから、重ねて答弁を、要求します。
  20. 岸本晋

    岸本政府委員 先けどちょっと申し足りなかったかと存じますが、今度大蔵省考えております共済年金制度というものの原案は、現在の共済組合年金と、それから恩給法による恩給、この二つを一本の退職年金に統合する、その経営主体は、共済組合で持つということでございます。両者を統合いたします場合に、従来たとえば雇用人になかった増加恩給公務扶助料、また官吏になかった私傷病廃疾年金、そういうものは、共通的に今度の新しい退職年金ですべてのものに及ぼせるように考えておるわけであります。そういたしますと、新しい退職年金の中で、この災害補償関係年金がカバーされるわけであります。特に現在国家公務員災害補償法改正する必要は生じて参らない、かように考えておるわけであります。
  21. 横山利秋

    横山委員 私はどうもよくわからぬけれども、そういたしますと、新法になれば、今日まで国家公務員災害補償法でカバーしておったものが新法によってカバーされる、こういう意味ですか。
  22. 岸本晋

    岸本政府委員 現在の国家公務員災害補償法は、実は一時金の補償だけでございまして、これは官吏雇用人共通制度になっております。これは官吏であろうと雇用人であろうと、みんなもらいます。それ以上の年金は何でもらうかといいますと、官吏だけが増加恩給公務扶助料をもらうという建前になっております。ただ雇用人共済組合には、その制度がないということであります。今度その恩給法共済法を一本にいたしますから、従来官吏にあった増加恩給式のものは、全部雇用人にも及ぶということでございます。
  23. 横山利秋

    横山委員 そうしますと、公務災害による廃疾年金制度、それから廃疾遺族年金制度はどこでどういうふうに含められていくのですか。
  24. 岸本晋

    岸本政府委員 これも、かりに出たならばという仮定の話で話が進んで参るわけでありますが、ただ今までのものは、結局増加恩給とか公務扶助料に相当するような災害年金は、すべて退職年金の形の中に統合されていく、共済組合保険形式で支給する、こういう形になるわけであります。
  25. 横山利秋

    横山委員 次に質問をいたします。数年来われわれ大蔵委員のところへ、旧陸軍共済組合女子年金請願という題目で、旧陸軍で二十年以上働いたおばあさん方がみんな陳情に回ってきておるわけであります。事情を聞けば、まことに気の毒だとみんなが考えています。何とかこれは方法はないものかということで、与党でも野党でもそれぞれ勉強をし、そうしてあなたの方の御意見をも聞いて、できることならばこの人々を何とかしてやりたいというふうに考えて参ったわけです。私の認識に誤まりがあるならば、一つあなたの方から説明をしてもらいたいと思うのですが、この人々は、終戦前軍の工場に勤めておった、ところがそこの工場に勤めておるうちに、女子組合員なるがゆえに、戦後の恩給法等改正関連をして年金がもらえないという点が、その焦点であります。あなたの方へもずいぶん何回も行っておると思います。公けの大蔵委員会議論がされるのは、初めてでありますが、数年来あの年寄りのおばさんが、国会へ何回も来て陳情を重ねております点は、見るに忍びないのであります。今日までのあなたの方の事情研究された経過、それからどうしてもこれは何とかならないものかという点にも触れて、一つ委員会を通じて、おばさん方に回答をしてやってもらいたい、こう考えるわけであります。
  26. 岸本晋

    岸本政府委員 旧陸軍工廠女子組合員の問題でありますが、これは、昔の取扱いはこういうことになって、おったわけであります。昔は、陸軍共済組合女子組合もございました。しかし、これは年金制度は適用しないで、何年勤めようが一時金でやある、その一時金をもらってやめるという前提掛金も納めて、終戦まで参ったわけであります。従って、終戦当時も、男なら年金をもらえるのが、二十年くらい勤めておる方でも一時金で清算がついておる。これを、今度終戦後いろいろな旧令の年金が復活した際に、男と同じように、二十年勤めたから自分たち年金がほしいというのが、一つの御要求の趣旨であると思います。ただこれを、そのまま年金を差し上げましょうかということになりますと、これまた大へんいろいろな問題があるわけであります。昔の制度では、女子組合員年金受給資格がなかった、戦後に新しく受給資格を差し上げるということになりますと、昔にさかのぼっていろいろな制度を変えるという問題になります。そうしますと、波及するところは非常にたくさんあるのであります。手っとり早い例で、女子組合員に限って申しますと、女子組合員が十五、六年勤めて業務災害で死んだという場合、昔は、男であるならば殉職年金が出るわけでありますが、女であるために出ていない、そういう方の遺族年金も出したらいいじゃないかという問題にも発展します。それと同じ非現業陸軍共済の中でも、非現業部門ならば、男でさえ年金規定がなかった、二十年勤めようが、二十五年勤めようが、そういう規定がなかった、従って年金は今でももらっていないという方があるわけであります。そういう点まで問題としては波及して参るわけであります。そのほかいわゆる雇用人でありますから、非現業男子雇用人も、昔は年金制度がなかった、小使さん、守衛として二十年以上勤めても、年金がなくて終っておるわけであります。そういう面までやはり何か考えなければいかぬのじゃないかということになりまして、実は問題の発展するところが際限ないわけであります。現在の戦後のこうした恩給にいたしましても、旧令、共済にいたしましても、すべて終戦当時の法令の規定でもって年金受給権があったというところに一応線を置いて、いろいろ措置を講じておるわけであります。それ以上戻すということになりますと、ただいま申しましたような問題がありまして、なかなか収拾のつかない問題ではないかと思います。
  27. 横山利秋

    横山委員 あなたのおっしゃる点は、わからないわけではありませんが、少しお伺いしますのは当時の法律はどういう法律であったか、私もまだ十分研究が行き届いておりませんので、恐縮ですけれども、女子組合員なるがゆえに短期給付ないしは一時金だけ、こういう規定であったが、女子の中でも、年金をもらっているものはなかったか。それから最後に、例がないとおっしゃるけれども、そういう年金受給資格者でなかった人で、つまり既得権のなかった人で、戦後このフェーバーをもらうというような人はなかったか、それをお伺いします。
  28. 岸本晋

    岸本政府委員 戦後女子組合員だけに年金がいかなかったかという問題は、法律は、旧陸軍共済組合令という勅令でございます。この中で、女子組合員年金掛金はしない、つまり長期給付年金制度は適用しないということがはっきり明示されております。それから戦後に、何か年金関係の特別のフェーバーを受けた、昔そういうルートがないのに新しくもらったものがあるかという問題でございますが、これは御承知のように、遺家族援護法による軍属、あるいは義勇隊、ああいう方面に及んでおります。しかし、これはすべて戦病死、公務死に準ずる戦時災害という点が一つ条件になっております。そういうことで、旧陸軍女子組合員とはまた趣きが違うのでございます。
  29. 横山利秋

    横山委員 最後にお伺いしますけれども、数年にわたってこの人々は、大した数ではございませんが、陳情を続けてきておるわけです。続けておる過程で、おばさん方が言うていますことは、大蔵省へ行っても恩給局へ行っても、非常に気の毒がって、一つできる限りの検討をしてあげましょうとか、あるいは当然だというような意味のことも恩給局で言われて、こういうことで将来に非常な期待を持っているわけであります。本来共済組合の問題は、非常に複雑多岐でありますから、率直にいって、国会議員もその詳細をきわめておる人はそうあるものではありません。従って、それらも関連して、おばさん方は、政府及び国会が、近い将来でないにしても、何とか改正をしてもらえるのではないかという期待をもって、老齢の人々がからだに、むちうって、陳情をずっと続けてきておるわけであります。私が本委員会で、この間の経緯をあなたの口を通じて明らかにしたゆえんのものは、政治というものは、うそを言うてはならぬし、できもしないことをできるようなことを、役所もまた国会議員も言うてはならぬ、努力の限界というものはそこにあるのではないか、それがほんとうの御親切ではないかということを、私は今度痛感いたしました。私自身も詳細をきわめておりませんから、これが実際に不可能であるかという点については、まだ十分な結論を得ていませんけれども、これほど深い期待をもってやっておりますのについて、政府としても、それはまあこういう問題ですから、千波万波にわたる影響があるものということもわかるのでありますが、もう一回、真剣にこれらの問題について検討をなさるお気持はないものであるかどうか、これを重ねてお伺いをいたします。
  30. 坊秀男

    坊政府委員 横山委員の御指摘の件につきましては、私も大蔵委員をやっておるときに、おばさん方からいろいろ陳情を受けて、その事実はよく存じております。ところで、今おっしゃいました、役所の方では非常に甘いことを言っておるというようなお話でございますが、先ほどから課長がいろいろ申し上げました通り、現段階において大蔵省考えておりますことは、旧令によって受給権を得たというようなものについて考えておりまして、その他のものに波及するということにつきましては、非常に慎重なる態度をとっておるわけでございますが、御指摘の件は、私どももよく事情を承わって、まことにおばさん方はお気の毒だというふうにも考えておる次第でございまして、今後慎重に検討をして参りたいというふうに考えております。
  31. 横山利秋

    横山委員 政務次官から御親切な御答弁をいただいたのですが、またその慎重な検討をするという言葉に、おばさん方に長期にわたって希望あるいは運動を続けさせて、そうしてその結果がどうなるかということを、私としては心配するわけです。従いまして、重ねてもう一度省内で十分に短期間のうちに検討して下さいまして、少くとも本月中に政府から最終的な理解ある回答がされるように、私は要望したいと思うのですが、いかがでありましょうか。
  32. 坊秀男

    坊政府委員 どうも先ほども申し上げました通り、政府として考慮しなければならない点は、いろいろほかへ波及するということも考えなければなりませんので、今月中にはっきりした返事をしろということにつきましては、ちょっとどうもここで確答をいたしかねますけれども、私申し上げました通り、検討はして参りたいと思っております。
  33. 横山利秋

    横山委員 これは坊さん、そうおっしゃいますけれども、問題はもう明らかなことなんです。明らかなことでありますから、あとどういうふうにするかということが判断の問題として残っておるわけです。私は重ねて申しますけれども、おばさん方の今日までの運動なり努力なり、あの人々によっては、国会へ来る電車賃についてもなかなか負担の多いことだろうと私は思います。そういう意味で、今あなたの御答弁で、慎重に重ねて検討してやろうとおっしゃったことの結論が、どうあるかはわかりません、私としては、十分に考えてほしいという希望を付しておきますが、これがまた長期にわたって、無用の費用をおばさん方に使わせるということは、いかがかと思う。従って短期間のうちに、政府としての最終的な結論を出してもらった方が、いろんな意味において親切であろう、できるならば、おばさん方の希望がある程度満たされるようにしてやってもらいたい、こういうふうにお願いするわけです。その意味をくんで、重ねて御答弁をお願いいたします。
  34. 坊秀男

    坊政府委員 御趣旨は非常によくわかりますから、よく検討をいたしたいと思います。     〔〔政務次官、誠意がないぞ〕 と呼ぶ者あり〕
  35. 横山利秋

    横山委員 政務次官に誠意がないというヤジが飛んでおりますが、重ねて申しません。この点を十分に御配慮願って、しかるべき適当な機会に、御質問を本委員会において私はいたすことにいたします。  次に、公共企業体職員等共済組合法について御質問をいたしますが、去年の通常国会において、参議院においてこの一部改正法案が審議未了となりました。あの審議未了になりましたことによって、政府は、本国会にどうなさるおつもりであるか、この国会には、公共企業体職員等共済組合法の一部改正法案はお出しにならないものであるかどうか、何とも話は聞いておりませんが、審議未了になった結果について、本国会においてとるべき政府の態度をお聞かせ願います。
  36. 岸本晋

    岸本政府委員 昨年の公共企業体共済組合法の一部改正法案、これの内容は、実は同時に提出いたしました国家公務員共済組合法の一部改正法案と全く趣旨において同じものであります。両者はともに流産になったわけですが、私どもとしては、国家公務員共済組合法の昨年の共済組合法の一部改正法案と同じ趣旨の法案は、これはどうしても出さざるを得ないと思います。並行いたしまして、公企体の一部改正法案もやはり出さざるを得ない、その点は私ども考えております。ただ先ほど御質問のございました退職年金法案全体の取扱いがまだきまっておりませんので、そちらがきまりますれば、そちらに織り込んで公務員の方は処理いたしたい。そうすれば、公企体の方もそのときに一緒に出す、こういうことになっております。実際問題としては、この国会にぜひ提出せざるを得ない問題であろう、かように考えております。
  37. 横山利秋

    横山委員 この国会国家公務員共済組合法は新しい年金制度の法案で、それから公企体の共済組合法は一部改正で提案せざるを得ないとおっしゃっているのですが、理事会でも問題になっているのですが、解散もちらほら話が出ておる際に、のんべんだらりと、もう三月も半ばになんなんとするときに出さざるを得ないなんて言うておって、一体ほんとうにこの国会を通す気持があるのであるかどうか。これは、坊さんにお伺いしたいのですけれども、国家公務員年金制度の法案でもそうですけれども、あしたかあさって閣議へ出す。来週におそらく本委員会に出てくると思うのですが、この国会年金制度と、先ほど話が出た公共企業体職員等共済組合法、これらの共済組合関係の法案を衆参両院でほんとうに通す気持があるのかどうか、政府の決意を一ぺん聞かしてもらいたい、その都合でまた……。
  38. 坊秀男

    坊政府委員 実は、この件に関しましては、主務大臣が郵政大臣、運輸大臣、大蔵大臣というふうなことになっておりますので、関係各大臣でよく相談をいたしまして、至急処理をいたしたい、かように考えております。
  39. 横山利秋

    横山委員 いや、この国会で通すのか通さぬのか…。
  40. 坊秀男

    坊政府委員 ぜひ提出いたしまして、御協力をお願いしたいと思っております。
  41. 横山利秋

    横山委員 その公企体職員等共済組合法に関連をしまして、与党の皆さんに聞いておっていただきたいのですが、この前の本委員会で社会党から修正提案が出て、理事会でいろいろもんだ結果、ここにいらっしゃる黒金先生がまん中へ割って入りまして、それじゃ臨時恩給等調査会もあることであるから、まあ一つそれにまかしてもらいたい。それが結論が出なかったならば、わが党はもちろん大蔵委員会として責任をもってその修正をやるから、一つこれはそういう決議にしてくれというわけで、私は決議案を起草いたしましたら、あそこを直せ、ここを直せというわけで、泣きの涙で直して、まあしょうがあるまいということで、満場一致決議案が通過して参議院へ行ったわけであります。ところが、臨時恩給等調査会は、根本的な議論をいたしましたために、直接この問題に触れて討議することなく終ったわけです。そういたしますと、本委員会としては、先般の通常国会において議決をいたしました決議案を実行するという段階にあるわけですが、この決議案は、衆議院の院議となったわけでありますから、政府も十分尊重すべきこと言うまでもありません。従いまして、決議案の内容となりました、明確に言いますと、組合員期間二十年未満の者に支給する年金の支給資格年限のうちに、外地鉄道等も勤続期間として認めること、この問題を、衆議院の院議を政府としては尊重なさって、公共企業体職員等共済組合法の一部改正の中に当然織り込まるべき筋合いと思うのですが、これはいかがですか。
  42. 岸本晋

    岸本政府委員 外地鉄道の職員の期間通算問題に関しましては、臨時恩給等調査会の答申の趣旨もございますし、また公務員退職年金の取扱いもございます。いろいろ波及いたしますので、なお総合的に検討した結果、結論を得たいと思います。
  43. 横山利秋

    横山委員 そういうことを聞いておるのではない。私が今長々と申し上げたことは、衆議院の院議となっている。院議を尊重する気があるのかないのかということを聞いておる。
  44. 岸本晋

    岸本政府委員 院議のあったことは、たしか私ども存じておりますが、ただ別途法律に基きました臨時恩給等調査会が設置されまして、年金問題全般を検討するということで、検討を行い、その結果の答申が一部には出ておるわけであります。やはり法律に基く調査会の答申ということも頭に入れざるを得ない、かように考えております。
  45. 横山利秋

    横山委員 それは、岸本さんではだめですね。やはり坊さんでなくてはいかぬ。坊さんは、そのときに院議に加わった一人であります。あなたは、そのときに衆議院の大蔵委員の席にすわって、委員長から、異議ありませんか、異議なしと大きな声で答えられた一人であります。この決議は、当然近く出て参ります公共企業体職員等共済組合法の一部改正の中に含まれるべき問題ではないかと考えますが、政務次官の誠意ある御答弁をお願いをいたします。
  46. 坊秀男

    坊政府委員 おっしゃられるまでもなく、私もその院議に個人的には参加したものであり、かつ議員の一員としては、院議を尊重するということは申すまでもないことでございます。だから、その院議の線に沿いまして、なお詳細に各方面から検討いたしまして、これの実現を期して努力をしていきたい、こういうふうに考えております。
  47. 横山利秋

    横山委員 まことにありがとうございました。やはり政務次官となると、誠意のある答弁があるのであります。  その次にお伺いをいたしますのは、旧共済組合法で認められておりました既得権が、この新公共企業体職員等共済組合法によって剥脱をされている問題が、二、三あるわけであります。たとえば共済組合が雇用しております職員、通常部費職員と言っておるわけですが、旧法においては運営規則で規定され、その期間が認められておりましたが、新法においては認められておりません。これは、旧法による既得権尊重の精神が生かされていないわけです。これが第一です。第二番目には、少し飛びますけれども、法律が施行された際に乙種組合員であった者が、甲種組合員期間中に応召期間がある場合、その応召期間を甲種組合員期間に通算をしないことになっているわけです。このことは、甲種組合員期間中に応召をしておったその応召期間は、軍人恩給の権利が生ずるから、それは別の問題としてはずしてしまっている。そのために、この人は非常に不利を招いておる。七年以上応召しておれば、恩給が別な角度でもらえるのですが、七年以下ですと、軍人恩給権が生じないので、掛金をしただけ損だ、こういう結果が生ずるわけであります。頭脳明晰な岸本さん、このあれでわかると思うのでありますが、掛金ただ払いして、しかも旧法ではこの期間が認められておって、しかもこれを通算することによって、他に余波を生じないのでありますから、この際、当然七年未満の場合は、この期間を恩給期間と見なさず、七年以上は、この期間について、恩給共済いずれか一方の選択をすることを認める等、掛金をした人の権利を何らか尊重すべきではないか、こう考えられるわけであります。まずその二点について御見解を承わります。
  48. 岸本晋

    岸本政府委員 公企体共済法の今御指摘になりました二点につきましては、実は内部で、主務大臣のところでまだ検討中でございます。その結論を伺った上で、あらためて私どもとしての見解もそのとき相談いたしたい、かように考えております。これは何分にも、あとで申されたところは恩給法とも関連する問題でございますので、早急にこの場で私の結論を申し上げかねるのでございます。
  49. 横山利秋

    横山委員 あなた、そうおっしゃるけれども、共済組合の専門家として、一つお答えを願わなければなりません。私がこう言いますのは、既得権を侵害しないということは、あらゆる法律改正の際における基本原則となっているものであります。従いまして、少くとも旧法において認められておった既得権は、回復してやるべきである、こういう点については、岸本さんも専門家として異存のないところだと思いますが、いかがですか。
  50. 岸本晋

    岸本政府委員 既得権尊重は確かに必要でございますが、新しい制度を作ります場合に、やはりいろいろと相互の関連から、完全には既得権は—既得権と申しましても、これはどういうことかという言葉の定義もあるわけであります。すでに年金証書をもらっているのは既得権でありますが、おそらく横川先生のおっしゃっているのは、その前の期待権と思いますが、そうした点の尊重はどうするか、これは、いろいろの総体のバランスから考えて参らなければならぬのでありまして、たまたま私の方も、現在国家公務員退職年金法案を検討中でございます。今この分だけ切り離して結論を申し上げることは、差し控えさせていただきたいと思います。
  51. 横山利秋

    横山委員 期待権とおっしゃるが、しかし期待権ということの中に、現に掛金を払っておる人がある。掛金を払わずに期待させられたというものと、掛金を払って、それがただ払いになっておるというものとは、非常に問題の立て方が違うのであります。たとえば、もう一つ遺族の範囲の問題があります。遺族の範囲については、本法におきましては、旧法で認めておりました遺族の範囲が縮小されましたために、遺族に重大な影響を及ぼしておる。だから、旧共済組合法で幾十年認められておった権利を新法の制定によって剥奪するということは、いかがかと思われる。従って、夫、父母、祖父母について五十五才以上の制限をつけないこと、遺族一時金を受ける遺族を、組合員の死亡当時主としてその収入によって生計を維持していない子、父母、孫及び祖父母についても、これは当時旧法において認めておったことであるから、これを追加して改正の際に織り込むべきだという点については、私はもっともな点があると思うわけであります。今岸本さんが、御趣旨はわかるけれども、改正法の中へ織り込むことを今ここで言うわけにはいかないとおっしゃるのだが、今言いました数点については、一つは本委員会が議決したことである、それから他の条項においては、旧法において既得権として認めておったことである、従いまして、この際公共企業体職員等共済組合法が近く本委員会に提案をされるわけでありますから、あなたの方で、すでにこの内容について審議が行われていると私は思っているわけであります。だとすれば、これらの諸問題について、改正法案を作成するに際して、十分な考慮を払うべきだと思うわけですが、その点はいかがですか。
  52. 岸本晋

    岸本政府委員 最後の御指摘の点は、国家公務員の場合もやはり共通な問題でございますから、なお十分検討いたしたいと思っております。
  53. 横山利秋

    横山委員 そういう簡単なおざなりの答弁では、困るわけであります。私は、これらの諸問題については、政府が御提案なさらなければ、これはいろいろの関係もありますから、本委員会へ議員提案として出さなければならぬと考えております。そういうめんどうなことが生じないように、政務次官に、もう一ぺん恐縮ではあるけれども、本委員会における議事が円滑に進みますように、先ほどからいろいろあげました問題、まだあと多少あるわけでありますが、これらの問題について、主務大臣及び関係の組合員の意見を聞いてもらって、十分な配慮をしてもらいたいと思うのでありますが、どんなものでありましょうか。
  54. 坊秀男

    坊政府委員 御意見のように、既得権ないしは期待権といったようなものは、尊重しなければならないというふうに考えております。そこで、今度の改正法というものにこれをどう扱うかということにつきましては、諸般の角度から考えまして、できるだけこれを尊重して検討していくということで、本日は御了承願いたいと思います。
  55. 横山利秋

    横山委員 それでは、旧令等による共済組合法等の私の質問をこれで終ることにいたしますが、これらの問題は、一にかかって今回政府から提案される予定の国家公務員共済年金制度法律案関連をいたします諸問題であります。公務員退職年金制度がかくも政治的に発展をいたしましたために、問題の中心が所管の問題として発展して、自余の組合員諸君が考えておりますさまざまな不満なり、希望なりが十分に尊重されることなく、大筋の問題として提案されるような気がして相なりません。従いまして、あと若干の日にちで政府として判断をされ、本委員会に提案をされると思うのでありますけれども、こいねがわくは、これらの問題を至急検討して下さって、善処されんことを要望して私の質問を終りたいと思います。
  56. 石野久男

    ○石野委員 共済年金制度関連いたしまして、私は一点だけお尋ねしたいと思います。住宅金融公庫とか、国民金融公庫、中小企業金融公庫、農林漁業金融公庫の四公庫の問題についての退職制度の問題であります。この問題は、ちょうどただいま横山委員から公社の従業員に対するいろいろな質問がありましたと同様に、共済年金制度が確立されるときに、これらの従業員についての退職金制度の問題をどういうふうに考がえるかということを、はっきりとお聞かせ願っておきたいと思います。現在これらの四公庫は、大体同じような格である三公社五現業と比較しましても、給与の面においても、退職金の問題におきましても、非常に軽視されているような感じがあるわけであります。先般給与の引き上げのときにも、この四公庫の問題については、何か置き去りにされまして、あとから追っかけてペース・アップの問題を考えてもらった経緯もありました。この際退職金の引き上げの問題について、四公庫を三公社五現業と大体同格の扱いにするような考えがありませんかどうか、この点を政府にお尋ねいたします。
  57. 岸本晋

    岸本政府委員 ただいまの御質問の退職の給与制度の問題でありますが、これは、退職手当の問題に限っての御質問であろうと存じます。公庫の退職手当は、従来大体国家公務員退職手当、それから一方には市中金融機関のあり方、そういうようなことを頭に入れまして、御満足していただける線で進めて参ったわけでございます。今後かりに公務員退職年金法案が通り、あるいは退職手当法が変って参るということになりますと、やはり状況の変化でございますから、これに伴って制度内容を再検討するということは、必要だろうと思います。
  58. 石野久男

    ○石野委員 いずれ再検討するという意思がはっきりすれば、これはまたその方面で解決はできるものと思いますが、現状は、この四公庫の従業員に対しては、非常に退職金の問題について不備な点が多いと思います。今給与課長がいわれたように、公務員とか、あるいは他の銀行の従業員諸君と勘案しながら考えているとはいいますけれども、実質的には、今この四公庫については、退職金制度というものはまだ整備されていないというのが実情だと思うのです。国民金融公庫には一応ある、それに準ずるような形で、これらの四公庫はそれぞれ退職金問題の取扱いを受けておるのが現状であって、完全なものになっていないと思います。この際特に三公社、五現業あたりとの関連性にもかんがみまして、またそれから一般の公務員、それから銀行関係の従業員とも関連いたしまして考えなければならぬことは、これらの他の企業体におきましては、ベースの問題にしても、また退職金の問題にしても、それぞれ経済の動き等に関連してずいぶんアップしております。ところがこの四公庫については、そういう経済の事情に随伴するような形でのアップがなされていないのが実情だと思うのです。いずれ共済年金制度改正に伴って、また考えなくちゃならぬ状態が出てくるだろうという課長の御答弁でありますが、現状の四公庫従業員に対する退職金制度は、非常に不備だと思うので、これらについて、現在課長はどういうような考え方をお持ちになっておられるか、一つお聞かせ願いたいと思います。
  59. 岸本晋

    岸本政府委員 今御指摘のございましたように、正式に大蔵大臣が認可しました退職手当規定を持っておりますのは、国民金融公庫だけでございます、あとはございません。そうした点も、正式に早いところきめる必要があるのではないかと思います。内容的に申しますと、どういう点が不備であるか、これは、一々具体的にまだ実は承わっておらないのでございます。ただ何となくレベルが低いから上げてほしい、金額が少いから上げてくれ、こういう御要求があるわけでございます。これも、公務員との均衡ということも頭に入れて、今までやって参っておるのでございます。直ちにその支給率の基準自体をどういうふうに変えていくかということは、公務員をこのままにしておいて、これだけを変えていくということはなかなかむずかしい問題じゃないか。ただ、そのほかの技術的ないろいろな支給の基準、たとえば勝手にやめたらどれくらいだとか、死亡の場合にはどれくらいの額増しにするとか、そうした技術的な配分の問題については確かに再検討する部分もあるように私どもも考えております。不備と申せばその辺のところでございます。
  60. 石野久男

    ○石野委員 課長は、今何となく金が少いから上げてくれというようなことをいっているのだと言われる。これは、非常に思いやりのない見方だと思うのです。退職金の問題を考える場合には、どの場所におきましてもそうであるように、その人たちがふだん職場で働いているときの労働条件なり、それに対する給与条件というようなものを考えてみればいけないと思うのです。またそういうものを含みつつ退職金制度なり、また年金制度というものが考えられていくと思うのですが、特にこの四公庫の場合は、いつもいわれることですけれども、身分保障の点では、非常に不備なものがあるわけです。特に共済制度の問題とか、恩給制度の問題等については、ほとんど考慮されていない。ところがこれらの公庫は、御承知のように、その成立の経緯等にかんがみまして、やはりこれらの問題を考えなくちゃならぬ人々も、この中にまた含まれておる者がおるわけです。従って、私が今お尋ねする退職金問題については、やはりそういう問題をも考慮しつつ考えてやらなくちゃいけないのであって、ただ金額が何となく少いからということだけではないわけです。もちろん退職金の問題について、あなたが先ほど言われたように、公務員との関連性もあるし、それから同じような業務形態である地方銀行等との関連性もあるということなんです。何となく金が少いということについてもしなにがあるとするならば、明確にその数字をここで呈示してみますと、これは何となく少いどころじゃない、はるかに少いのですよ、そういうような問題を含めて、金額の問題も考えてやらなければならぬと思う。しかし、私が今言いたいことは、金額が少いということだけではなく、その人たちが日常働いている職場についての身分保障ということも、ほとんど考慮されていないことも考え合せて、その上で金額の問題も考えてやらなくちゃいけないじゃないかと思う。そういう点について、給与課長さんなり、あるいは特別金融課長はどういうふうに考えているか、聞かせていただきたい。
  61. 岸本晋

    岸本政府委員 何となくというようなことを申し上げて、まことに失礼な言葉を申し上げたわけでございますが、と申しますのは、現在の国民金融公庫の退職金規定を作りますときには、給与の絶対的なレベルはどれくらいにあるかという問題、あるいは厚生年金その他の年金制度とどういう関係にあるか、あるいは勤務条件がどのくらい違うか、そうした点も考慮に入れまして、現在の退職手当制度を作ったのでございます。それからただこれを直せという御希望がありますが、どういう角度からどう直すという明確な意思表示はないわけでございます。その意味で何となくと申し上げたわけであります。私どもはそうした面が——先ほど申し上げました給与とか年金とか、あるいは身分関係、そういう面の状況が変って参りますれば、当然再検討すべきものと考えているわけであります。今度公務員退職手当制度が変って参りますと、これは大きな重要な状況の変化である、こういうふうに考えております。
  62. 磯江重泰

    ○磯江説明員 四公庫の職員の退職金につきましては、ただいま石野委員から御指摘のように、不備な点があるということは事実でございます。それから現在の退職金内容が、ほかに比べて低いのではないかというような声も私どもも聞いておりますし、公庫の方からも、そのような御要望は年来聞いているわけであります。ただこの問題につきましては、国家公務員退職金の方とのバランスの問題がございます。これは、主計局の方でごらんになっているわけであります。それから一般の金融機関の退職金というような問題も考えなければならぬ。私どもの立場といたしましては、そういった面をいろいろ考えますと、公庫の現在の退職金は、改訂を考慮する余地があるのではなかろうかと考えている次第でございます。こういった点につきましては、主計局の方にも、公庫の実情につきまして、私どもの方から十分申しまして、よく検討していただきたいと思っている次第でございます。
  63. 石野久男

    ○石野委員 今の御答弁で、大体この四公庫の従業員に対する退職金問題に対するあなた方のお考えはよくわかりました。これは、一応早急に考えてもらいたいと思います。先ほど給与課長から話がありましたが、何となくという言葉を言ったのは上げてほしいということの、どういう点でどういうことがということが明確に示されてないからだということを言われた。私どもがここで、これは蛇足ではありましょうけれども、一番四公庫の問題と対照される公務員との退職金問題の計算比較をしてみますと、これは参考までにちょっと申し上げておきますが、たとえば二十五年を区切ったところでも、公務員退職手当の割合を見てみますと、公務員には、とにかく退職金恩給がついているわけですから、この恩給退職金、特に恩給のうち、掛金を差し引いたところで、二十五年のところを見ますると、公務員関係は大体五七・九の割合でこれを得ているわけです。それに対して国民金融公庫の現状は、二二・五だ、これが実情です。これは、まだ数字はたくさんありますけれども、一応大体の比較はわかると思います。一般の市中銀行の比較は、二十五年のところをとってみますと、まず銀行筋で一番はっきりしますのは日銀でございますが、日銀は、二十四年のところで四○・五になっておって、二十五年は三四・二になっている。しかしこの三四・二というのは、そのあとに十年間の年金が加わるわけです。ですから、ここで率が下っているわけです。それで興銀の場合を見ると、三六・三、これには増額規定が別にあります。それから勧銀を見ますると一三二です。それから長銀を見ますると二八・三三です。三菱銀行を見ると九二です。こういうような比率になっておることから見ましても、それが非常に忘れられた形になっていることがわかると思うのです。私は、きょうはここであまり多くを言いません。皆さんの方でこういう問題をこの機会に積極的に取り上げて、検討を加えていただきたいということを申し上げたいと思います。われわれもまたわれわれの立場から、この問題はあとで与党の諸君とも相談しながら、積極的にこれを考えさせてもらいたい、こう思いますから、私はこれで質問を終りますが、ただ政府の方から、私の今の質問に対する御意見を承わっておけばけっこうです。
  64. 坊秀男

    坊政府委員 御指摘のように、四公庫について、退職金あるいは身分上の保障というようなところに整備せねばならない点があるということは、ただいま承わり、かつそういうふうに考えておるわけでございます。こういったようなことの是正は、将来大いに考えていかなければならぬと考えております。
  65. 足鹿覺

    足鹿委員長 午前の会議はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。     午後零時三分休憩      ————◇—————     午後一時三十八分開議
  66. 足鹿覺

    足鹿委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  外国為替資金特別会計法の一部を改正する法律案を議題として、質疑を続行いたします。石野久男君。
  67. 石野久男

    ○石野委員 私は、この機会に通産大臣にお尋ねいたしますが、外国為替資金特別会計法の一部を改正する法律案によりますと、日本がインドネシア共和国に対して有しておる一億七千六百九十一万三千九百五十八ドルというものを、一応棒引きにするということになるそうでありますが、通産大臣は、ふだん国際収支の改善、輸出問題については非常に熱意を込めて衝に当っておられると思います。このインドネシアに対する債権の棒引きということを、大臣は自分の所管行政の上から見まして、どういうふうにお考えになっておられるかということと、またこの棒引きをなぜしなければならないというふうになったかということについてのお考え一つ聞かしていただきたい。
  68. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 実は、私焦げつき債権の棒引きについての法律的な見解をあまり明確には存じません。もちろん賠償なんかの問題が動機にもなり、経済協力というような面もあり、いろいろニュアンスがあると思います。その一連の関係があることはもちろんでありますが、法律的な性質は、あるいは債権の棒引き、こういうことであるかと思います。
  69. 石野久男

    ○石野委員 法律的な見解は債権の棒引きということになっておるということは、大体わかるのだが、それをあなたの所管立場から見て、どういうふうにお考えになるかということを聞いておるのです。特にこれは、今後国際収支を改善するためにも、また日本の貿易政策を遂行する上からいきましても、いろいろと問題を残すと思いますが、こういう問題について、所管大臣としての御意見を承わりたい。
  70. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 先ほど申し上げましたように、賠償の一環として経済協力というような面もあり、あるいは債権の棒引きというような面もある。これは広い意味でありましたら、一連の賠償ということでありましょうが、そういうふうな経済協力というようなものに一つ関連したものだと思います。ただ貿易政策の面からいいますと、債権の棒引きということは、必ずしも好ましいことではないと思います。ただインドネシアの最近の状況を考えましても、結局経済協力で金を貸すということにしましても、賠償を払いましたとしましても、焦げつき債権の回収ということは非常に困難なことであります。また大きな意味からいいますと、そのかわり今後におきまして極力正常貿易を拡大していくということで考えていきますなら、一応整理をしてしまうという考え方も、必ずしも悪い影響があるのじゃなしに、そのかわり今後におきまして、正常貿易で互いに焦げつきのないようにというような手段をとって参りますなら、私は万やむを得ないところでありますし、大きな支障もないのじゃないか、かように考えております。
  71. 石野久男

    ○石野委員 広い意味では賠償だろうというふうな見方をしながら、この債権を放棄することは、今後正常な貿易を広げるためによろしかろう、こういう考えだというただいまの御意見ですが、この債権は、大臣のお考えでは、もう取り立てができないというような事情に置かれておったのでしょうか、その間の事情はどういうふうになっておったのでしょうか。
  72. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 最近の状況で申しますなら、なかなか向うから輸入するものも大きく期待はできないのであります。さりとて全然輸出もせずに、輸入だけをやって取り立てるということは、かなり困難な状況だと思います。もちろんその当時におきましては、そういうことは考えていかなったと思います。最近の状況におきましては、これだけのものを余分に輸入するということは、非常に困難であったことは間違いないと思います。
  73. 石野久男

    ○石野委員 私の聞いているのは、この債権の取り立てをすることが非常に困難だということだけではなくして、将来にわたっても、棒引きをしなければならないように債権の取り立ては不可能であると見られるような条件があったかということを聞いておるのです。
  74. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 絶対に不可能というわけではないかもわかりません。しかし、先ほど来申しておりますが、非常に困難な状況にあったと思います。
  75. 石野久男

    ○石野委員 不可能ではないけれども、困難である。困難であるということの意味は、オープン・アカウントの方式による両国の間の貿易関係は、一応向う側からは断わられたわけですから、そういう関係ではできなかったかと思うのです。しかし、債権を債権として国が持っている以上は、取り立て得られるものでしょうから、困難であっても、それを取り立てなければならないという責務は国にもあるはずだし、特にあなた方が、貿易関係で国の富をふやそうということを考える場合に、いたずらに困難だからといってすぐ棒引きをするということになると、これは大へんなことになると思うのですが、岸内閣考え方としては、困難になったなら棒引きしてやろう、こういうような考え方でこの棒引きをなさったのですか。
  76. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 これは、先ほどから申しておりますように、ただ困難だから取り立てをやめた、こういうわけではありません。広い意味におきまして、インドネシアとの今後の経済協力、あるいは法律的には賠償じゃありませんけれども、広い意味で両国の国交の回復というような意味合いからいたしますと、これもやむを得ないというふうな考え方をいたしております。
  77. 石野久男

    ○石野委員 それでは、取り立ては不可能ではないけれども、また法律的には賠償ではないけれども、広い意味において賠償だという意味においてやむを得ないものだ、こういうふうに考えたから、それでこの棒引きをしたとおっしゃるわけですか。
  78. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 大体そういうようなことであります。
  79. 石野久男

    ○石野委員 それならよくわかるんです。とにかく法律的には賠償にはしてないけれども、実際には賠償なんだ、ただ取扱いの上ではそうできなかったからというのは、これはこちらの関係だけであって、インドネシアとの関係では、広い意味の賠償ということになれば、これは考え方は全然違ってきます。だから、われわれはそういう点で問題が非常にあるわけでありますが、そういう意味で、これは大蔵大臣などの答弁とあなたの答弁とは食い違っている、これは政府にとっても非常に大事なことだと思うのです。私どもは、今回のこの棒引きの問題について一番大事だと思うことは、一億七千六百九十万ドルというものはわが国の債権でありますから、若干の困難はありましても、長年期にわたってとれるものはとるべきだという考え方をわれわれは持っているわけです。しかし、それにもかかわらず、政府が今回のインドネシアとの平和条約を締結するに当って、これを賠償とは別なものとして棒引きをしておるというところに、非常に大きな疑義を持っているわけです。今、通産大臣が言うように、広い意味で賠償だというような考え方でこれを支払われたということになれば、これは、政府としては非常に大きな食い違いがあるわけですから、私はこの際委員長にお願いしたいが、総理大臣にここに来てもらって、この問題に対する見解の統一された答弁をいただきたい、こう思う。
  80. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 私は先ほど来言っておりますように、賠償を動機とした一連の行為には違いないと思います。しかし、はっきり申し上げておるように、法律的に賠償の問題ではなしに、経済協力その他の、多少それぞれニュアンスは違うと思いますが、みな一連の行為ではあるわけです。賠償とはっきり申し上げたわけではないので、大蔵大臣と別に意見は食い違っていないと私は思います。
  81. 石野久男

    ○石野委員 これは、また私はあとで総理大臣などの出席を求めて、意見を聞きたいと思いますが、ここで、賠償に関する一連の行為という建前でこの問題を見るということになると、大蔵委員会ただいま提案されております外国為替特別会計法の一部を改正する法律案検討する上に、また問題が出てくると思います。これは、またあとでもう一度検討を加えたいと思う。  なおお尋ねいたしますが、債権の棒引きというものを賠償行為の一環として考える場合ならば、これは非常にわかりはいいのでございますけれども、しかし、これを外国為替資金特別会計法の一部を改正する法律案というような形で、外為特別会計法の損失に対する処置のような扱い方をするようになりますと、これは非常に問題が違ってくるわけです。私は、この機会になお通産大臣にお聞きしておきたいのですが、インドネシアの方は、この焦げつき債権というものに対しては、私たちの知っている範囲では、支払いをしないというような意思表示はしてなかったと思うのでございますが、そう理解しておってよろしいのでございますか。
  82. 伊藤繁樹

    ○伊藤説明員 昨日お答え申し上げましたように、一九五四年六月末日ないし七月一日におきまして、それまでに到来いたしました債務につきまして、向うとしては支払いを拒絶して参ったのでございます。その後の経緯につきましては、通産省よりむしろ外務省の方で御答弁ただいた方がいいと思います。
  83. 石野久男

    ○石野委員 ただいまの支払いを拒絶してきたというときには、どういうような先方の意見で拒絶してこられたのですか。
  84. 伊藤繁樹

    ○伊藤説明員 これは、外務省から交渉いたしておりますので、そちらの方が適当かと存じますが、一応われわれの聞いております範囲では、インドネシア側が外貨の事情が相当不足してきたというようなことを理由にして拒絶してきたように伺っております。
  85. 石野久男

    ○石野委員 外務省がいなければ、大蔵でもどちらでもいいですが、答弁がいただけたら……。その後どういうふうな事情になっておりますか。
  86. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 昨日外務大臣、大蔵大臣からお答えを申し上げました通りに、交渉の経過においては、いろいろございましたが、最終的には、岸総理がおいでになりまして、スカルノ大統領と交渉になりまして、先ほど来通産大臣がお答えになりました通りに、将来の日本とインドネシアとの関係をよくする、いろいろな意味でよくするという意味から申しまして賠償を払う、同時にこの焦げつき債権を棒引きするということが、両者の間において見解が一致いたしまして、さようにとりきめたというふうに昨日来お答え申し上げた次第でございます。
  87. 石野久男

    ○石野委員 賠償支払いと同時にこの焦げつき債権を棒引きするという条件になっておった——私の今聞いたのは、実は先般、外貨事情が先方で悪くなったから、支払いはできないと断わってきた、その後のものについてやはり断わってきたかどうかということを聞いたわけです。その点もう一度……。
  88. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 昨日外務省の参事官からもお答えを申し上げたのですが、その点に若干言及が足りなかったかとも思いますが、もとより今回の交渉の経過におきまして、インドネシア側は、この焦げつき債権を、非常に長期にわたりまして、一種の借款に切りかえるような考え方があったこともございます。そういう段階があったこともございます。しかも、そのときは、むしろ賠償を先に支払うほかに、なお日本政府からの経済協力的な負担というふうなことをも考えておったように伺っております。もとより交渉の直接の衝に当られたのは、外務当局でございますので、われわれは間接的でございますが、そういうことも伺っております。そういう経過があったことは事実でございますが、それらの経過を経まして、最終的には、先ほどお答えを申し上げました通りの両者の見解の一至を見まして、ここに妥結を見た、かように承知をいたしておる次第でございます。
  89. 石野久男

    ○石野委員 問題の核心がやはり外務省関係のものが多いので、外務関係の方がいないとはっきりわからない点があるのです。これは委員長、あとで外務関係、大臣をこの席へ呼んでいただきたいと思います。  なお通産大臣にお伺いしますが、もしこの債権を残しておきますると、実質的には、ただいまもお話があったように、別段向うでは、債権を払わないということは、終局的には言わなかったわけです、払います。特に昨年の七月ころには、ジュァンダ首相からの書簡などを見ますと、それは別個に払いましょうということを言ってきているとわれわれは承知しているわけです。そういう事情の中で棒引きしたわけでありますが、もしこの債権を残しておいたとすれば、どういう障害が起きたんでしょうか。特に通産大臣の所管する国際貿易の上では、両国の貿易の上ではどういう障害が起きたのでしょうか。
  90. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 こういう焦げつきみたいなものができますと、それがいろいろとその方の交渉がやかましくなって、また無理な取り立てもやらなければならぬ、こういうことになりますと、両者の国交は常に円滑を欠く、こういうことになると思います。従って、そういうことなしに、今後の相互の貿易を拡大していくという方がかえっていいということは、他の国においても言えるのではないかと思います。焦げつきますと、どうもそれが支障になって、その後の貿易の状況はむしろ縮小していくというような状態が見られるのであります。そういう意味からいきますと、こういうものを残しておきますことは、率直に申し上げて、今後の両国の貿易には決していい結果をもたらさない、かように考えております。
  91. 石野久男

    ○石野委員 こういう債権を残しておけば、将来の貿易が非常に支障を来たすだろう。そういうものがあるよりもない方がいい、このことはよくわかるんです。ただこの際、通産大臣は貿易政策を実施せられるに当って、常に国民経済の立場から貿易の問題を考えることだろうと思います。従って、貿易が一面で非常にスムーズにいく反面では、その貿易によって利益を受けようとする国民経済、特に国民の側に損害があったのでは何の意味もなさぬことになる。従って、われわれは、今回の債権の棒引きに当って、これが国民経済の上にどういうように影響するかということを考えなければならぬ。私は、この機会にお尋ねいたしますが、この債権を放棄することによって、この債権の原因になったいわゆる輸出業者の諸君にはどれだけ損害が出ておるのでしょうか。
  92. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 御承知のように、これはオープン・アカウントをやっておったわけでありまして、それが正常な姿で、初年度等におきましては、問題なしに向うも債務を履行してきた。その後の一年間におきまして、向うから非常に輸入が行われるというので、こっちも輸出しておったわけでありますが、精算をして、さてその帳じりを処理してもらいたいといったときになって、処理できなかった。従って、これは国内の商社だけの問題ではなしに、総体的に考えるべき問題だと思います。もちろん当時輸出をしました商社につきましては、これは、輸出するときに、御承知のように金ももらうわけでありますから、国内におきましては、もちろん輸出業者、あるいは生産業者は何ら損害をこうむっておらぬ、これは事実であります。
  93. 石野久男

    ○石野委員 債権の棒引きをすることによって、輸出業者は何らの損害をこうむっていないということは、その通りだと思います。それでは、この債権の棒引きによって、その損害はだれが背負うことになっておりますか。
  94. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 これは、結局国民全体の損失、こういうことになると思います。
  95. 石野久男

    ○石野委員 債権の棒引きが重大な意味を持つということは、そういう点にあると思うのです。これは、政府がインドネシアとの間の交渉をするその段階において、法規的な形では賠償じゃないけれども、賠償の一連の関連においてこういうことをきめた。それは、結局国民の負担になるのだという点に非常に大きな問題があるとわれわれは見ているわけです。そこで私たちは、この債権棒引きという問題の取扱いというのは、当然商売のケースから離れた政治的な立場で取り扱われたもの、こういうふう見られるものだというように考えます。それは、通産大臣もそのようにお考えになっておりますか。
  96. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 これは、政治的な問題でありましょう。しかし、お話しのように、今後のインドネシアとの貿易を円滑にして、そうして将来の市場として育て上げていきますことは、またひいては国民全体に利益をもたらせる、こういうふうにも考えておるわけであります。
  97. 石野久男

    ○石野委員 この債権棒引きの問題でわれわれが問題にしなければならないことは、政府がインドネシアとの交渉の過程で、これは完全な賠償の一行為であるにもかかわらず、賠償行為と切り離した形で処理しようとするところに、非常にこそくな、しかも国民の目をそらす一つの問題点がある、こういうように見ているわけです。きょうは通産大臣は、今度の問題については、賠償行為の一環としてなされたものであるということをはっきり言っておりますから、そういう点で、なお岸総理などにお尋ねしなければならぬものがあると思います。私はこの際政府は、国民の場というものをよく見つめて、こういう債権棒引きの実態というものがどういうものであるかということを、はっきり知らす必要があると思う。今ここに提示されておる外国為替資金特別会計法の一部を改区正する法律案というものを見てみますと、これは、この会計法の一部において損失が発生したということだけで始末をしようとして、あたかも商売をやって、その商売の上で損が出たから結末をつけるのだというような印象を与えるという詐術が、ここに行われている、トリックがあるわけです。われわれは、こういう問題は、国民に対して非常に不信を招くものだ、こういうように考えます。政府は非常にふまじめです。こういう点は、やはり今回の問題について、通産大臣などが特に通産行政の上で、貿易関係の面で国民経済に用益を一そう大きくしようとする立場から考えますならば、国民に対するこういう立場も、もう少し真剣に考えるべきだというように思うわけです。私は、これはどうしてもやはりはっきりした立場政府は取り扱うべきだと思います。今通産大臣にそういうことを言ってもいたし方ありませんから、もっと通産大臣は、この点はっきり総理大臣とか、あるいは外務大臣と折衝をして、これは不明瞭な形で処置させないようにすべきだ、こういうように思います。  私がこの際もう一つお聞きしておきたいことは、この棒引きをされた焦げつき債権の発生される経緯を見ますると、昭和二十七年に貿易支払い取りきめが行われて、特に六千万ドルの処理の問題は、皆さんの間でいろいろ話合いがあった。これが四回払いか五回払いでなされるはずのものであったところ、たった第一回目の処置がなされただけで、あとはそのままになってしまった。しかも二十九年には、旧債の未払い分について、インドネシアの方からは、先ほどお話があったように不払いの意思が明確に表示されておる。そういうような前例があり経験があったにもかかわらず、なぜ通産当局は、このオープン・アカウント勘定を依然として昨年まで維持してこられたのですか。これは、大臣からその間の経緯を詳しくお聞かせ願いたい。
  98. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 実は、当時の事情につきましては、これは私どもよく承知しないのであります。ただオープン・アカウントの勘定は、御承知のように、お互いに外貨を持ち合せぬ国々の間におきましては、その帳じりの決済だけ外貨を使う、こういうことは、貿易の円滑化をはかるためには必要な場合が多いのであります。ことに最近は、日本は多少外貨がたまって参りましたが、まだ外貨のない時分におきましては、そういう姿で貿易をやらざるを得なかった。御承知のように、一時は十六カ国もそういうようなオープン・アカウントの勘定でやっておったわけであります。最近そういうものをだんだん整理して参りまして、現在六カ国ぐらい残っておると思います。しかし、今残っておりますのを見ましても、日本が必ずしも出超でなしに、入超の国もあるわけです。従って、そのときそのときの、まだその国の実情を見きわめてやりましたら、オープン・アカウントを使うということは、これは先ほど来申し上げております通り、貿易の円滑にはむしろ益するところが多い、こういうふうに考えるのであります。そういうような意味合いからしますと、このインドネシアのオープン・アカウントの問題にしましても、当時としてそういう方式に従ってやってきたのは、両国の貿易の円滑化をはかるという意味があったと思います。
  99. 石野久男

    ○石野委員 大臣にお尋ねしますが、両国の貿易の円滑化をはかるということの意味は、私どもの考えでは、結局双方とも利益し合わなくちゃいけないことが、終局の目的なんだろうと思うのです。ところが、先ほども申しましたように、六千万ドルの処理の問題についての話し合いも不履行のままにあり、しかも二十九年になりますと、向うからは、もう外貨がないから支払いできませんという不払いの意思表示をはっきりしてきておる。そういうような明確な意思表示をしてきておるときに、なおかつ両国の円滑な貿易の振興という問題を、依然としてオープン・アカウントの形でやるというような考え方を持たれたということについては、われわれは非常に不審がある。日本の通産行政というものは、そういうふうに底抜けのお人よしなんですか、通産大臣は、そういうような考え方をそのまま是認されますか、あなたのおっしゃる貿易の円滑化というものは、どういうことを意味しておるか、ちょっとわからないのだが、もう一度、そういうような点についての所見を聞かしてもらいたい。
  100. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 結果から見ますと、えらいお人よしになったわけでありますが、当時としましては、そういう懸念はないのだというふうに考えておったと思います。おそらく最初は、向うでも実行して参ってきております。それは、多少払いを延期するようなこともあったかもしれない。まあそういうふうな見方をしておったとも思います。まあ私、当事者に聞いたわけではありませんが、おそらくそのときには、こういうような結果になるとは考えなかった、他の国の、円滑にいっておるオープン・アカウントと同様に考えておられたのだろうと思います。私当時のことは、また当時の方々の心境については、よく聞いておりませんので、お答え申し上げかねますが、そういうふうに予想しておるわけであります。
  101. 石野久男

    ○石野委員 通産大臣は、その当時の当事者でなかったということはよくわかるけれども、しかしこの当時も、やはり依然として自由民主党の政府であったわけです。そういう関係で——まあその当時は、まだ自民党はできていなかったのだけれども、大体政府の主体をなしておったのはあなた方の政党だったわけです。そのときそのときの事情については、あとの責任者が責任をとらないというようなことでは、国の政治は非常に不安定になってくる、これはよくないことです。私は、当時のことについて、もっとやはり責任のある政府の所見を聞きたかったのです。しかし、ただその当時のことはともかくといたしまして、昨年は、六月になりますと、向うの方で、六月の末にはもうオープン・アカウントの廃止の一方的通告があったはずですね。そうでしょう。
  102. 伊藤繁樹

    ○伊藤説明員 さようでございます。     〔委員長退席、黒金委員長代理着席〕
  103. 石野久男

    ○石野委員 そのオープン・アカウントの廃止があった後において、なお今度は問題があるわけです。その後、オープン・アカウント廃止後今日に至るまでの間に、このオープン・アカウント方式での貿易がなお行われた。そして七月以降十二月までの間に約千九百万ドル、二千万ドル近い輸出超過がやはり出てしまっておる。こういうことは、通産行政上どういうふうにあなた方は見ておられるのですか。しかも、すでに昨年の四月三十日には、あなた方の内閣では閣議を開いて、この対日請求権関係閣僚懇談会というものを開いて、その席上には、あなたは出ていなかったが、あなたの前任者の水田さんが出ておった。そこで大体焦げつき債権の一億七千万ドルの棒引きの決意をなさっておるということも、われわれは当時新聞で承知しておるわけです。そういう棒引きを承知していながら、しかも向うからオープン・アカウント勘定の廃止の一方的な通告を受けて、なおかつ貿易に輪をかけるような輸出超過をさせるというようなあり方というものは、もってのほかだと私は思うのです。そういう問題について、通産当局はどういうふうにお考えになっておられたのですか。
  104. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 私は輸出超過と考えておりません。それは、ある時期を画しまして、そうして計算をいたしまして、輸出入の調整をやってきたわけであります。それで、その六月末ですでにライセンスのおりておりますもの——輸出入のバランスを考えますと、御承知のように、輸出と輸入と見合ってやっておるものですから。それにつきましては、中小企業者の方々がすでにライセンスをとっておられるのです。従って、先ほど千九百万ドルのようにおっしゃったのですが、たしか九百万ドル、第一回が四百六十万ドル、それからそのあともたしか——第二回目のは比例で各商品ごとに切りまして、そうして輸出を認めたわけです。その総額におきましては、輸出調整をやりましてから輸出入のバランスをとった、こういうことになっております。
  105. 石野久男

    ○石野委員 あなたは、私が輸出超過だと言ったら、輸出超過じゃない、あれは輸出入調整をしたのだ、オープン・アカウント勘定の中におけるところのすでにライセンスをとっておる者に対して、特に輸入した者が輸出権を持っておるという立場から、そういうことを言われたのだと思います。私も、そう事務手続の問題はわからないわけじゃない、よくわかる。ただし、あなたも御承知のように、この問題は、結局輸出業者の損失にはびた一文だってなっていはしない。しかも、その損失は、全部国民が負担するということになっておる。あなたは、その当時、これが棒引きになったならば、国民の負担になるということはおわかりにならなかったのですか。
  106. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 大体焦げついております一億七千万ドルは別にいたしますと、バランスはとれておるわけで、別にそれが焦げつきを増したというふうには考えていなかったのであります。
  107. 石野久男

    ○石野委員 それは、あなた方が輸出入調整の問題からくる輸出権という問題だけでいうのであって、われわれは、純経済的な立場から考えて、当時向うから輸入したもの、それからこちらから輸出したものとの差額が、三十二年六月現在においては、一億五千七百八十七万五千ドル、これだけのものがあったはずです。その後輸出入の差額、特に輸出超過があって一億七千六百九十一万四千ドルになったわけです。これは、純経済的にいえば、この間の差額は千九百万ドルあるじゃないですか。その時点において切れば、この差額は一億五千七百八十七万ドルでおさまったわけです。ここで、あなた方が事務官僚的な立場でものを言うのじゃなくて、特に私は通産大臣にお聞きしたいことは、なるべくならば、これを国民の負担にならないように処置されるようなことでなければいかぬという観点から聞くのです。あなた方は、ただ事務的な立場だけでものを処理して、国民にはどんな負担がかかってもいいのだ、業者の方々には約束をしたのだから、それは果してやらなくちゃいけない。しかし、それは結局やはり納税者に対しては、大きな負担になるということはわかっていながら、そういうようなやり方をするということに対して、われわれは文句を言うわけです。あなた方の立場からするならば、業者に対しては、どこまでも一つサービスいたしましょう、しかし国民に対しては、税金は幾らでも出させて、棒引き負担はさせましょう。こういう、実に国民に対してはつれない立場をとっているわけです。そういう点で、あなた方の処置の仕方というものにわれわれは問題を持つ。それは、あなた方が事務的な立場説明すれば、これらの人々は輸出権を持っているのだから、バランスはちゃんととれているのだ。それなら私は聞きましょう、あなた方がこういうように輸出入の調整をするような段階になった昭和二十九年度以降におけるところの業者と、それから二十九年当時の貿易業者とは、その内容が非常に違っているのでしょうか、そんなことはないはずです。ほとんどみんな依然として同じ業者が、その間の貿易取引をやっているはずです。焦げつきをずっと出してきた商社というものは、変っていないのですよ。
  108. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 変っていないかもわかりません。しかし、これは業者だけを保護するという意味でも何でもないのであります。これは、やはり国民経済全体の考え方をしましても、少くとも輸出に対して信頼を持ち、輸出努力をしなければならぬという気持を起させますためには、やはり筋を通していかなければならぬ。国民経済全体の問題として、輸出は何も輸出業者のための輸出ではないので、われわれ国民経済全般の問題として取り上げているわけであります。従って、単なる業者保護というだけの考えでやっているわけでは絶対にありません。
  109. 石野久男

    ○石野委員 あなたがそういうふうにおっしゃるならば、もう少し基本的にお尋ねしますが、国民経済全般の立場に立ってあなたがバランスを考えるということは、この国の富をふやすというためにバランスを考えていることだろうと思う。国の富を減少するというような形であなたが貿易の指導をされるということが、国民経済全般の立場に立つ行政だというふうにお考えになっているのですか、大臣はそういうように考えているのですか。
  110. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 輸出を振興し、輸出意欲を起させ、また輸出に対してできるだけ意欲を阻害しないようにということにつきましては、これはやはり国民経済全体の問題だと思います。ことに輸出につきましては、何も一業者に許したわけでも何でもないのであります。最初の四百六十万ドルは、ことに雑貨品と陶磁器につきましては、これは、広い範囲の中小企業著の輸出なんであります。その点は、当時はずいぶん社会党の方々も、輸出さすべきだ、こういうふうなお話もあったわけでありまして、決して単なる業者保護というだけの考えでやっているわけではないのであります。
  111. 石野久男

    ○石野委員 私の聞いておることは、別に業者を保護するとかなんとかということよりも、その前に完全に焦げつきになっており、しかもそれが取れないだろう、しかもあなた方の閣僚懇談会では、これはもう棒引きにせなければならぬということがはっきりわかっているところへ輸出をするということが、これがほんとうの輸出増進のための施策というふうにとれるのかどうか。これから先も、そういうようなことをあなたはやるつもりなんですか。もう回収ができない、代金の取り立てができないということがはっきりわかっておるようなところでも、そこは買いますからといって、幾らでも売らすというようなやり方をしておったら、幾ら資本金をつぎ込んだって。ぶっ倒れてしまう。そういうことは、経営をやるもののイロハだろうと私は思うのです。インドネシアの場合は、再三にわたって不払いの声明をしていると、あなた方は言っているじゃないですか。しかもオープン・アカウント方式そのものについても、一方的に向うから破棄してきている。そういう中で、取り立てのできないようなところへ輸出をさせるということについては疑問がある。われわれは、むしろそういうときならば、あなた方がほんとうにそういう商社なりあるいは輸出増進の意欲を増させようと思うならば、やり方はほかに幾らでもあったと思う。どっちみち焦げついてしまって取れないものだったら、政府が買い上げて、それを貧民救済に充てた方がよほど国のためになるのですよ。なぜそういうことができなかったのですか。
  112. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 これは、そのときそのときの状況を考えなければなりません。過去に非常な焦げつき債権ができた、しかしその後におきまして、輸出入の調整をやってきておる、そしてそれがうまくいっておるということになれば、それに対する始末も考えていかなければなりません。また何もオープン・アカウントをよしたからといって、その後の貿易が全然なくなるわけじゃないのです。その貿易についても正常化して、結局長い目で見てどういうことが一番合理的であり、——まあそれは、できれば焦げつきを少くするということも心がくべき問題だと思います。しかし、何も貿易は昨年の六月で終りではないのでありまして、その後も貿易は行われておる。そういう状況を考えます場合には、私はある期間において輸出入のバランスをとる—一ことに輸出権の問題等があるわけであります、そういう問題についても処理をしていくということが、一番その際の取るべき策だと、かように考えたわけでございます。
  113. 石野久男

    ○石野委員 私は、くどいようですが、いま一度尋ねます。この輸出入のバランスをとらなければならぬということについては、輸出業者と輸入業者との間の問題もありましょうし、いま一つは、インドネシアと日本との関係もあるはずです。国内におけるところの輸出業者、輸入業者のバランスをとるという問題の取扱い方と、それからインドネシアと日本との間におけるところのバランスの取扱い方とは、おのずから違わなければいけない。私は、まずインドネシアの側に対しては、むしろこの貸し越し残がたくさん残っておるのだから、そのときには、その貸し越し帳じりでちゃんとバランスをとればいいのだと思う。あなたの今言われるのは、インドネシアに対するバランスをとることを真剣に考えたのか、これはどうでもいいんだ、ただ国内におけるところの輸出業者と輸入業者との間における輸出権の問題にからむバランスをとるということだけをやっておるのか、どちらなんですか。
  114. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 それは、総合的に考えていかなければならぬ問題でして、焦げつきを増すようなことになってはいかぬ、従って、焦げつきは増しておらぬのです。増さぬ限度におきまして、今度はこちらのバランスも考えていく。従って、いろいろと国内も国外もまるくおさまっていくようにということを考えながら処理していっているわけで、別にどっちをどうというわけのものではないと思います。
  115. 石野久男

    ○石野委員 大臣は、ちゃんと自分たちの管轄しているところの数字を見ておやりになる必要があると思うのです。昨年の六月の現在においては、輸入超過なんです。しかし翌月の七月になりますと、ずっと十二月までは輸出超過になっているのです。私は、これはドルの計算にしておりませんので、円の計算にしておりますが、若干の数字の違いがあるかもしれません。特にフリー・ダラーの額を含めた数字になっておりまして、清算勘定だけの額になっていないので、あとではっきりあなた方に調査してもらいましょうが、六月のときの帳じりを見ますと、その月だけでは、大体五億円くらいの輸入超過だったはずですね。それから七月になりますと、二十八億八千七百五十三万円の輸出超過になっている、それから八月は十三億、九月が十億、十月が十二億、十一月が七億、十二月が七億、大体これで六十八億くらいの輸出超過になっているはずです。だから、あなたが言われるように、調整をとって焦げつきがふえてないんだというようなことはありはしない。焦げつきは完全にふえていますよ。
  116. 伊藤繁樹

    ○伊藤説明員 数字的にわたりますので、私から説明をさしていただきますが、大臣が、ただいま焦げつきがふえておらないとおっしゃいましたのは、いわゆる輸出調整措置をとりましたその年の末日を現在といたしまして、その範囲内では、債権は増大しなかったという意味でございます。お話しのように、五五年、五六年はともに入超でございますが、それと経過期間の出超と合せますと、大体とんとんで推移してきたのでございます。
  117. 石野久男

    ○石野委員 きわめて事務的な官僚的な答弁だと私は思うのですよ。私の今聞いているのは、今日本の国の富を一億七千万ドルから減らすという段階に来ているわけだ。債権を、棒引きするという非常に重要な時期に来ている。われわれは、この重要な時期に来ておって、事務的な問題もくそもないですよ。こうなりますと、向うは一方的に約束を違えて債務を支払いしません、こういうふうに言ってきているし、しかもオープン・アカウント方式の取引の仕方についても、もうやめましょうということを一方的に言ってきているときに、こちらは、向うとの輸出調整というようなことにこだわって、その時点でとめれば、それだけ損は軽く済んでいる、それを、わざわざ年が越えるまで引き延ばして追加認可をするというようなことをしなくてもいいわけなんです。こういうところが、あなた方国の政治に対する責任観がないのですよ。これが全部国民の負担になるということを、あなた方忘れている。ただ預かったものを操作さえすれば、それでおれの仕事はいいんだ、みんなから突っつかれるから、輸出業者の方から突つかれるから何とかしてやらなければいかぬということだけを考えている。私は、輸出業者については、輸出業者についていろいろなやり方があったと思う。製品ができたが、どうしても売れないというならば、何もインドネシアに持っていかなくったって、日本の国民にただで渡してやったって、日本の国民生活に役立つのですよ。一億七千万ドルという金に相当する品物を、全部あす倒産するというようなところへ上げなくったって、就職の職場を失なっている失業者にこれを配分しただけでも、どれだけ国民経済の内容を充実させるかということは、ちっとも考えておりゃせぬ。むしろあなた方は、いろいろな事務的な形式にとらわれていずに、昨年の六月の時点でびしゃっと切れば、約六十八億円というものが軽く済んだものを、約六十八億円、約二千万ドルというものをよけいに棒引き債権の内容にしてしまっている、これは実に無責任きわまるものだと僕は思う。しかも私は、この問題の中には、あなた方の非常に一貫した輸出入業者に対する方針というものが明確に打ち出されてないから、こういうことになるんだと私は思う。特に国民経済的視野に立ってこの問題を考えたときに、終局の問題は、日本の国が損をしないことだと僕は思うのだ。輸出意欲をどうするとかこうするとかいったところで、幾ら輸出意欲がふえたところで、終局的には、日本の国の損になるような輸出だったら何の役にも立たないのです。そういう点については、大臣はどう考えられますか。
  118. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 もっと大きな視野に立って考えますと、必ずしも私は損をしているというふうに考えないのであります。ことに輸出調整をとりましてから、輸出権なりいろいろな問題があります。それに対しての処理もやっていかなければ、今申しますように、輸出に対する意欲を阻害する、ことにもうすでに非常にお骨を折ってライセンスを取っておられる陶磁器、あるいは雑貨品等の小さな業者の方々の意欲を阻害するということであってはならぬと私は思うのです。それはやはり長い目で見ますと、そのときは、あるいはおっしゃるように数字的にはそうなるかもわかりません。しかし、今後の問題を考えます場合に、私は単にそれだけで処理すべきでない、こういう観点に立って、大蔵省とも相談をいたしましてやったわけであります。
  119. 石野久男

    ○石野委員 大臣は、ごく少数の輸出業者の輸出意欲をそらさないために、それを育成するためにということを非常に強調されますけれども、この問題は、ごく少数の一部分の輸出業者の問題ということよりも、全国民的な問題なんですよ。しかも輸出業者や、それに関連する産業部門というものは、なるほど用意はしておる、しかし部門はあるんですよ、何もインドネシアと日本との間の貿易をとめちゃったわけでも何でもないんですね。インドネシアと日本との間には、オープン・アカウント勘定におけるところの貿易はとまったけれども、あとはフリー・ダラーによるところの貿易は幾らでもやっていいわけでしょう。それもとまったわけではないんですよ。問題は、そういうオープン・アカウント方式によってすでに得ておる輸出権に対するところの、業者の方々が失望するといけないからということ——失望するということは、向うへ品物をやらなければならぬということでも何でもない。政府がそれだけのものをもし責任を持つというなら、それを全部買い上げてしまえば、輸出業者は、決してそれで失望も何もしないですよ。業者にとって大切なことは、金にかわるかかわらないかという問題だけなんです。品物はどこへいこうとかまいはしない。しかも債権が焦げついて棒引きせねばならぬというところに、輸出業者が喜んでやろうという気持はありっこない。問題は、それに対して投資した金が回収できないから問題になるだけなんだ。同じように、業者に対しては、輸出手形に対してちゃんとそれだけの金を渡しておるんだったら、品物を何も向うへ送らなくてとめておいたっていいじゃないですか。そういう点に対するあなた方のはっきりした見通しがない。そして結局においては、国の富を損にしている、そういうことになると私は思うのですよ。政府考え方というのは、私は今度のインドネシアの貿易債権の処理に当って、二つの点で非常に政治的な意味を持っておると思うのです。それで、私は全般的に見て、今度の貿易債権の棒引きという問題が賠償という問題で処理されているなら、こういう問題を提起しません。しかし、今まで大蔵大臣などが主張しておるのは、賠償じゃないのだ、こう言っている。これは、外為会計の損失の処理だと、こう言っている。賠償なら、われわれはその賠償の中から出てくる将来の両国間の友好関係の問題や何かをはっきりつかみ取ることができるし、また国民も、そのつもりでこれを受け取ることができるんですよ。そうでなく、賠償では全然ないので、ただ貿易関係から出た損失の処理だということになると、これは全然問題が違ってきます。そういう点で、すでにあなたは、賠償の一部分だということになっていると御説明になったから、一応私はある程度の了解はしております。けれども、特にこういう問題は、私は今後のやはり貿易業者にとって大事だと思うのでお尋ねいたしたいのですが、あなた方は、もうすでにこの問題は、取り立てのきかない、だめだということがわかっていながら、業者や業界に押されて、何かこう圧力を受けて、そして国の負担でそういうような貿易業務の実施をしてしまったわけですよ。こういうようなことは、これは将来ともあってはならないことだと私は思うのですが、今の大臣の答弁を聞いておると、今からでもそれは何べんでもやってもいいようなことのように受け取られる。たとえば、場所を変えて、韓国との関係を見る、韓国との関係では、すでにもう焦げつきがあるのです。こういうものであっても、やはりインドネシアと同じような建前で今後考えていくか、それからまた、今のインドネシアと同じような形で韓国の焦げつき債権の問題も処理する考えでおられるのかどうか、そういう点について、一つあなたの明確な御答弁をいただきたい。
  120. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 何回も繰り返して申し上げることでありますが、いずれにしましても、別にわれわれとして焦げつきをふやそうというわけではない。全体の経済がうまくいき、また輸出意欲を阻害させない——これは単なる輸出業者の問題ではありません。私自身も、別に輸出業者に頼まれたから、あるいは陳情があったからやったわけでも何でもないのであります。やはり輸出意欲を阻害してはいかぬという判断のもとに、バランス調整期後におきましてバランスをとって、そして輸出権の問題を処理するということについては、私はその場合として最もとるべき策だ、かように考えたわけであります。韓国の問題その他につきましては、これは全く別個の問題であります。これにつきましては、そのときそのときに対して最も適当な処置をとるべきである、かように考えており、それとこれとを一緒にする考えは毛頭ありません。
  121. 石野久男

    ○石野委員 それではもう一つ。輸出意欲を阻害しないためにということで、こういう今までの取扱いについてはちっとも反省のなにがないようでございますが、私はその点でお聞きしますが、インドネシアと同じような形で、たとえば他の諸国、アルゼンチンとか、あるいはエジプトだとか、いろいろなところがありますが、なお現にオープン・アカウントによる関係を持っておる国が数カ国あります。そういうところで、もしもインドネシアと同じように焦げつきの問題が出て、しかも向うからは、不払いの意思表示があり、そしてオープン・アカウントの廃止という一方的声明をするというような、同じような事態が出た場合でも、なおあなた方は、日本の業者に輸出権を持たせておった場合には、その輸出権だけはどうしても実行させて輸出するというそういう考え方を、今後そういう場合があっても、それと同じようにやりますか。
  122. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 そういうふうにやろうとも思っておりませんし、第一焦げつきを出そうというような考えは全然持っておりません。極力焦げつきは出さないように、そのときそのときに万全の策を講じていきたいと思います。現在オープン・アカウントをやっております国々にそういう心配があるなら、これはもう当然オープン・アカウントを取り消すべきなので、幸いにしてあとに残っております国々は、私はそう焦げつくというふうには考えなくてもいいんじゃないか、しかし極力出超になっております分につきましては回収をはかる、これはもう当然なすべき義務だというふうに考えております。
  123. 石野久男

    ○石野委員 大臣は、自分で自分の言葉を否定するようなことを言っておられる。インドネシアの場合は、輸出意欲を阻害しないためにそうしてやったのだと言うし、今後は、そういうものがあれば、オープン・アカウントのなにを廃止すべきである、こう言っておる。語るに落ちるものがある。ただ自分たちに損なことだけを何とか言いのがれしようという非常にずるい考え方があると思う。政府のとっておる処置の中にそういうものがある。私はもうこれ以上のことは言いません。これは、国民自身がよくわかると思う。政府は、とにかく非常にずるい立場をとっている。要するに今度のインドネシアの棒引きの問題は、賠償ということで考えるならともかくも、賠償ではないということでいろいろ考える場合には、非常に問題を残すという点だけをはっきり私はここで申し上げておく。  なおこの際私はお聞きしておきたいのですが、オープン・アカウント勘定は、現実にやはりいろいろな問題を起しております。特にこのインドネシアの問題であるとか、アルゼンチンにおけるところの焦げつきの問題があって、非常に問題が残っており、われわれも今後の貿易政策上から言いますと、こういうオープン・アカウントの方式というのは、これは中止しなければいけない、こういうように考えておる。通産大臣にお尋ねいたしますが、あなた方は、最近貿易増進のため、特に輸出増進のために、そういうこともよくわかるけれども、オープン・アカウント方式をこれから東南アジア諸国に対する貿易施策の立場上とっていきたいというような意思を持っておられるように聞いております。そういう点について、大臣は、輸出増進のために、特に本年度は三十一億五千万ドルの達成をするために、清算勘定の方式は依然として残そうという意思があるように聞いておりまするけれども、そういうようなお考えですか。
  124. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 清算勘定につきましては、これは整理できるものなら整理していきたいと思っております。しかし、整理した方が得かどうかというその国その国の実際の状態を見なければなりません。現に二カ国ぐらいは出超になっておるわけです。またお互いに外貨がないという場合に、そうしてその国の輸出入の状況を考えましたら、外貨を節約して貿易ができるという場合には、必ずしも私は整理をしなければならぬというふうにも考えておりません。それは、具体的の国々について検討し、これは決して望ましいことではありませんから、もちろん整理できるものは整理していきたいと思っております。
  125. 石野久男

    ○石野委員 今の御答弁によりますと、通産省としては、清算勘定はケース・バイ・ケースで、その国々の事情によって一がいにやめるということをしないで残そう、こういう考え方だと理解できるようです。  それで、私はこの際輸出の問題について、政府の出しておる年間の本年度の輸出は、大体三十一億五千万ドルの輸出をしようとしているわけですが、この輸出達成のめどについて、今政府は、それが達成できるというような見通しを持っておられるかどうか、この機会に一つ聞かして下さい。
  126. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 三十一億五千万ドルの目標につきましては、これはいろいろ見方があると思います。少くとも三十一億五千万ドルの輸出をやらなければならぬ、そうしませんと、御承知のように経済の成長率も伸びない、雇用の問題もあります。従って、三十一億五千万ドルは何としても達成しなければならぬ。そんなら不可能な数字かと申しますと、私は、決して不可能な数字ではないと思っております。御承知のように、従来から見ましても、毎年三億ドルないし四億ドルふえてきた。またパーセンテージから見ますと、三三%も出したことはありますが、昨年と一昨年と比べましても、一六%の伸びがあります。従って、三十一億五千万ドルという数字は、三億五千万ドル足らずの輸出の増加でありまするし、パーセンテージにしますと一一%、経済の五カ年計画を考えましても、平均一〇・五%くらいを出していかなければならぬ、こういう目標であります。そういう面から言いますと、これは、何としてもやらなければならぬ数字だと思うのです。これは、一喜一憂をすべきではないんで、各商品、各仕向地に向って少くとも一割ないし一割五分は絶対にふやす、それについてはどういう隘路があるかということを考え、それを打開していかなければならぬ。もちろん最近において、アメリカの景気が悪いとか、いろいろそういう面もあります。しかし、まだ戦前の水準には日本の貿易はいっておりません。戦前の水準でいきますと、輸出の比率は四%ぐらいでありましたのが、まだ三%もいっていないのであります。そういう面から考えますと、何としても三十一億五千万ドルの輸出を達成しなければならぬという強い決心は持っているわけであります。
  127. 石野久男

    ○石野委員 三十一億五千万ドルの輸出の見通しは大体立っているのだ、こういう話ですが、世界経済の動向から見ると、アメリカの景気は必ずしもよくないと見られ、また最初に予想されたよりも、景気の回復の時期がずれるということも予想されている。従って、やはり自由主義諸国におけるところの経済の動きというものは、非常に低調な状態になっていくものと思われます。そうなると、われわれはこの仕向地の問題が非常に重要になってくると思う。この際大臣は、この三十一億五千万ドルの輸出をするに当って、そういうようなアメリカの経済の実情をにらみ合せながら、東南アジアにおけるところの貿易の問題はどういうふうな見通しを持っているか。特に中国大陸との今度の日中第四次貿易協定ができたことを契機として、日中貿易の問題については、どういうふうな見通しを持っておられるか。なおもう一つ、すぐそばにある韓国、それから北朝鮮の人民民主主義共和国との貿易の問題をどういうふうに考えておられるか。こういう点について所見を聞かしていただきたい。
  128. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 来年度におきまして、われわれは、共産圏の貿易については、相当期待をいたしております。ただ御承知のように、輸入するものについて困っているわけですが、すでに鉄鋼なんかの協定を見ましても、あれだけでも大へんなことだと思っております。しかし、三千五百万ポンドができるかどうかは別としまして、それに近い数字まではいけるというふうに考えておるわけであります。その他の国々につきましても、豪州なんか、やはり相当輸出をしなければならぬというふうに考えているわけであります。またフィリピン、インド等につきましても、極力推進しなければならぬ、こういうふうに考えているのであります。ただ北朝鮮につきましては、御承知のように、まだ南朝鮮の問題がもやもやしているああいうような状況にありますので、今直ちにこれが貿易を開始すると同時に、どんどんこれを推進していくという段階にはないと思っております。
  129. 石野久男

    ○石野委員 今朝鮮の問題について、北朝鮮の問題は、日韓会談の問題もあるので、いろいろと政府としてはむずかしい問題があろうと思いますけれども、日本の今日の実情からいいますと、どこでもいいから輸出ができる、貿易の増大がはかれるところは食い入っていくべきではないかというふうに私は考えますが、そういう点は、通産行政上からお考えになっていないのでしょうか。政治的にいろいろな問題があるところは、いかなるいい貿易があっても目をつむって手を触れない、こういう考え方なんですか、そういう点、ざっくばらんなところを聞かしていただきたい。
  130. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 通産行政からいきますと、これはどこでもいきたいということなんですが、ただ、それ以上にいろいろ制約があるかどうかという問題で、われわれとしましては、極力いけるところには拡大していく、こういうふうに考えております。
  131. 石野久男

    ○石野委員 私は、これで質問を終らしていただきますが、先ほど輸出増強のために、特にオープン・アカウントの方式による輸出入の問題を、通産省としてはむげに、なにしないで、そういう方式は今後も考えていきたいということを言われましたことについては、いろいろ問題があると思うのです。大体どこの国でも、どういう場合でも、清算勘定をやるというところは、向うはみな外貨を持っていないところですから、それだけに問題点を持っておると思います。私たちは、貿易を増大する上において、特に焦げつき債権というものが相当多額になるということは、心配を重ねるものだ、こう思うのです。ことに貿易量のもう一割から二割にも及ぶというような焦げつき債権を持つということは、結果的に見れば、貿易全体の意義を喪失させてしまうものだ、こういうように考えるので、清算勘定の問題は、その点を十分考慮しなければいけないんじゃないかと、私ども思っております。政府の中で、大蔵当局は、案外この問題については違った考え方を持っておることも、すでに再三にわたって、私たちはこの委員会で聞いておるわけです。これは、また他日、われわれ政府に対して尋ねなければならないことであるけれども、政府としては、この問題については、真剣に意思統一をしてもらわなければいかぬじゃないか。  それからもう一つ大事なことは、輸出は幾らやってもいいけれども、それが代金回収ができないということになることは、一番不手ぎわなことなんです。こういう点について、通産大臣が、ただ貿易量を多くすればいいんだというだけで、その点についての責任を全然感じないのは、自分のセクトだけにとらわれるということでは、一国の大臣としての資格を疑わざるを得ないと思う。そういう点について、もう少し視野を大きいところから見て、そうしてそういう不始末を起さないように処理してもらうことが、非常に大事だろうと思います。私は、この問題に対する質問は、他日、総理大臣の本委員会への出席を求めてまたすることにいたします。きょうは、これで私の質問は終ります。
  132. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 ただいまお話のことは、決してわれわれも、焦げつきを望んでおったり、焦げついてもかまわないから輸出したらいいという考えは毛頭持っておりません。ただオープン勘定につきましては、向うから輸入するものは相当ある、そうして現にその点について心配がないんだという場合におきましては——エジプトのごときにつきましては、最近ああいう問題が起っておりますが、実はこれは、昨年スエズ運河の関係でこちらの輸入がうんとできなかったわけです。それで出超の形になっておりますが、最近輸入をやりますので、これはそんな心配はない。そういうふうにして、焦げつく心配がない、しかも両者が外貨を節約してうまく行くんだという見通しをつけなければ、もちろんやるつもりはないのであります。その点は、十分御了承願いたいと思います。
  133. 黒金泰美

    ○黒金委員長代理 石村君。
  134. 石村英雄

    ○石村委員 通産大臣に、時間がないようですが、二、三お尋ねします。ただいまの石野君との応答を聞いていますと、結局通産省というものは、獲物を追う者が山を見ぬというような話で、輸出さえできれば、あとはどうでもいい——どうでもいいと考えているわけじゃないが、あまりその方は考えない。輸出さえできればいいという態度でやっていらっしゃるようで、まことに日本の貿易を通産省にまかせてはおけないというような感じがせざるを得ないわけでございます。アルゼンチンなんかの例で見ましても、これも、あそこの市場を開拓する、鉄鋼を輸出するというので、羊毛を一四・六六とか高いもので買って、鉄鋼を出して、結局焦げつきが出ておじゃんになったというようなことで、全くお話になりませんが、一つお尋ねしますのは、このごろ貿易商が実にでたらめなことをしておるという問題であります。昨年の六月に、これは東京の新聞に出ましたが、あの大商社である江商が、フィリピンに輸出をする場合に、表面は安い価格で輸出して、そうして向うから円を取り寄せて決済したという事件が、検察庁の方で検挙されたわけですが、聞くところによると、貿易商というものは、官庁に対して不届きなことをして、始末書か何か出す。これはガリ版で切ってあって、その始末書をよけい出した社員ほど優秀な社員として昇進する、こういうことになっておるそうですが、この江商なんかというような大貿易商社が、こんなむちゃなことをやっておる。これに対して、通産省は一体どういう制裁を知えていらっしゃるか。これは、逆な場合もあるわけですが、江商のこの例は、幾らですか、安く輸出して——フィリピンは、正当な価格では向うが輸入を許可しない。そこで、向うの輸入業者と江商とが結託して、表面上安い価格にして輸出して、そうしてこっそりその差金を、ドルでとらず、円で日本で受け取ったという事件。おそらくこれは、裁判所で適当な処罰を受けておると思うのですが、一方通産省は、こういうふらちな——しかもそんじょそこらのインチキな貿易商社がやったというのではない、江商ともあろう大貿易業者がこんなことをしておる。それに対して、どういう措置を監督官庁としての通産省はおとりになったか、明らかにしていただきたいと思います。
  135. 伊藤繁樹

    ○伊藤説明員 御指摘の事実は、私伺っておりませんが、もし事実といたしますならば、これは為替管理法違反でございますから、当然刑事的の問題になります。なお、為替管理法の五十三条におきましても、もし違法の事実があります場合には、これに対して、一定期間輸出の停止を命ずるというような措置も講ずることができるようになっておりますので、具体的の事実を十分調べてから、善処いたしたいと思います。
  136. 石村英雄

    ○石村委員 もう農林大臣がお見えになったのでやめますが、こういう大事なことを、まだ全然気がついていない。為替管理法で処罰を受けるということは、わかり切ったことであります。しかし、こういうふらちな貿易商社に対する行政的な処置が重要であろうと思う。ガリ版で刷った始末書を出しさえすれば、それでいい。その直接の責任者の社員が叱られる。会社はもうけがふところに入るから、喜んでガリ版でどんどん刷って、始末書を出させる。こういうやり方を通産省がそのままで済ましておいては、大へんだと思う。そのことを御存じないということですから、仕方もありませんが、一つ調べて、どういう措置をおとりになられたか、今後またそういう場合には、どんな処置をおとりになるか、明らかにしていただきたいと思います。私はこれで……。     〔黒金委員長代理退席、淺香委員長代理着席〕     —————————————
  137. 淺香忠雄

    ○淺香委員長代理 次に、食糧管理特別会計法の一部を改正する法律案、及び食糧管理特別会計における資金の設置及びこれに充てるための一般会計からする繰入金に関する法律案の両案を議題として質疑を続行いたします。足鹿覺君。
  138. 足鹿覺

    足鹿委員 農林大臣に若干の質問を申し上げたいのでありますが、実は、私がお尋ねを申し上げようと思うことは、大蔵大臣の御同席を願いまして、それぞれお尋ねを申し上げ、そして納得がいきますならば、納得を得たい、また不審な点があるならば、さらにいろいろと審議を重ねたいというので、先日の当委員会の御決定に基きまして、両大臣の御出席の機会を待っておったのでありますが、昨日は本会議終了後もやろうということで、われわれはこの議場に来まして待っておったのであります。大蔵大臣も御出席になっております。にもかかわらず農林大臣は、何らの御連絡もなしに、さっさとお帰りになる。そのために、はからざる審議の支障が次々と起きてきております。昨日は神田委員は、郷里へ所用があって、どうしても本会議後には帰らなければならぬというのを、質問通告したのであるから、大臣も御出席になるし、なかなか両大臣を並べて聞くということは機会がないから、とにかく待てというので、私は神田君を引きとどめまして、御出席を待っておったという経過もあるのであります。にもかかわらず、当初から、本委員会についても、政府は定刻にも参りませんし、また次々とこういう出席上の手違いのあることを、私は非常に遺憾に思います。いたずらに審議に時間を要するというようなことは、私の考えておるところではありませんが、勢いそういうふうに当局がおやりになりますならば、やむを得ませんから、われわれといたしましても、両大臣の二人そろった御出席を待って確認を得ませんならば、この案件については審議を進めることがでない場合もあるのではないかと思うのであります。そういう点について、午前中から御出席になるはずでありましたのが、今でなければ御出席になれないといういきさつもありますし、今後大蔵大臣と二人で、当委員会に御出席になるめどがありますかどうか、その点をまず農林大臣にお伺いをいたしました上で、私の質疑については入っていきたいと思います。
  139. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 きのうは、私も本会議終了後大蔵委員会があるということで、実は待っておったのであります。ほかに用がありませんでしたから、政府委員室において、こちらに連絡をしたのでありますが、私の方の連絡の不行き届きでありましたろう、私待っておったのでありますが、大蔵委員会がないようなふうに私どもへ言ってきたものですから、きのうは出席しなかったのであります。実は私待っておった。きょうは、ちょっとほかの用件がありまして、十二時少し前までかかりまして、出ようと思っておったときに、こっちが散会した、こういうことで、出られなかったのはまことに申しわけないと思います。将来、といっても先々のことでありませんが、大蔵大臣といつでも私の方で時間を打ち合せ、委員長と打ち合せができますならば、二人出ることは、決して私の方で拒否するわけでもありませんし、いつでも時間の打ち合せができますならば、出席するつもりでおります。
  140. 足鹿覺

    足鹿委員 それでは、本日は、まずとりあえず農林大臣にお尋ねを申し上げたいと思います。きょうは、大体神田君がおやりになるはずでありましたが、昨日来の事情で、何かやむを得ない所用のために出席できませんので、とりあえず私からお尋ねを申し上げておきたいと思います。食管特別会計の二法案の問題についてお尋ねを申し上げる前に、三十三年度の食管会計編成の問題について、一、二お尋ねを申し上げてみたいと思います。それは、この二法案と三十三年度の食管会計の編成は、表裏一体をなすものでありまして、むしろ二法案の中身は、この予算編成上の問題にあるから、特にこの点についてお尋ねしてみたいのであります。事務当局からは、しばしば御答弁をいただいておりますが、当委員会としては、農林大臣の御答弁は初めてでありますので、若干重複するかはしれませんが、懇切に明快に御答弁を願いたいと思います。  三十三年の米の生産者価格の点につきましては、一万二百円となっております。昨年産米の生産者手取り米価は、一万三百二十二円五十銭でありますから、実際においては、百二十二円五十銭の下落ということになるのであります。一方農業パリティの指数の傾向を見ますると、下落ということはない、むしろ上昇の傾向をたどっておることは、あなた方の米価の算定基準においても、大体肯定しておられるように思うものであります。にもかかわらず、この生産者手取り米価が石当り百円以上も大幅に下回るような予算の編成をされました農林大臣のお考えの基礎はどこにあるのでありますか、まずその点をお伺い申し上げます。
  141. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 予算米価を一万二百円にいたしまして、三十二年産米の実際の手取り価格一万三百二十二円より百余円減っております。これは、予算米価につきましては、パリティ方式によって算定いたしますが、そのパリティ指数も上昇しておることは、御承知の通りであります。そういう関係から、パリティ計算をいたしたのでありますが、その基礎を昭和三十一年度の米価に置いたのであります。三十一年度の手取り米価が、最近においては一番適当な基準である、こういうふうに見まして、三十一年度の手取り米価にパリティ指数をかけまして、それから算出いたしたものが一万二百円、こういう予算米価になっておるわけであります。三十二年度の手取り米価をきめるときには、二十九、三十、三十一年度というふうに、三カ年にわたったのでありますが、先ほど申し上げましたように、この予算米価の基礎は、三十一年産の手取り米価を基準としてパリティ計算をいたしたのであります。その結果、昨年の予算米価の一万円よりは二百円上っておりますが、三十二年産米の実際の米価一万三百二十二円よりは百円ほど減っております。これは、申し込み加算金を米価の算定に入れないで計算をいたしましたので、ちょうどその程度の差が出てきておる、こういうことに相なっておるわけであります。
  142. 足鹿覺

    足鹿委員 例年のことでありますから、あえてこの予算米価をもって、これがくぎつけのものだと断定して私は御質問申し上げておるのではありません。むしろこれは、あくまでも予算米価であって、決定米価というものとは違うのである、こういう御答弁を農林大臣から伺えば、大体私の質問の要旨になると思う。昨年の例をとってみましても、九千三百七十六円プラス等級間格差八十九円を付し、これに包装代百八十円をつけまして、一万三十一円を予算米価として計上しておる。そして、米価審議会等の結果をいろいろと勘案をされまして、決定米価を出しておるのでありますが、本年も大体のやり方は、そういうやり方によって、予算米価に対して米価審議会の答申、あるいはその他算定基準となるべきパリティの変化、その他いろいろな情勢によっては、予算米価に拘泥せずして米価を決定する御意思がありますかどうか、この点の御所信を承わっておきたいと思います。
  143. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 一万二百円の予算米価は、先ほど申し上げましたように、パリティ指数によってきめましたと同時に、等級間の格差及び包装代を加えて、一万百九十二円ということになりましたので一万二百円、こういうふうに、予算米価においても、等級間格差及び包装代は含めたわけであります。しかし申し込み加算金はこれに入れなかったということで、百円ほど減っておるのであります。しかしながら、今のお話のように、予算の米価を決定するころは、大てい十一月ごろであります。そういうことでありまするから、実際に米の買い入れ前に米価を決定しなければ、適正な米価ということには非常にほど遠いものがあり得るのであります。そういうことでありますから、米価審議会の答申等によりまして、それを尊重して適正な米価を決定していきたい。でありますので、今のお話のように、予算米価に拘泥するものではないのであります。しかし予算といたしましては、一定の基準に従って予算米価を算出しなければなりませんから、先ほど申し上げましたような基準によりまして予算米価を決定しておる、こういう事情であります。
  144. 足鹿覺

    足鹿委員 予算米価にとらわれないということであります。ぜひそうありたいと思いますが、その農林大臣のお考えは、大蔵省とよくお打ち合せになり、大蔵省もその考え方を確認をしておると解してよろしいのでありますか。
  145. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 大蔵省とは、その点におきまして話し合いをしているということではありませんけれども、年々予算米価と実際の買い入れ米価とは違ってきております。しかも、米価審議会の決定を尊重するということになっておりますので、大蔵当局といたしましても、この点においては、何ら意見の相違や異議がないと私どもは見ております。
  146. 足鹿覺

    足鹿委員 この点は重要でありますので、大蔵省側から御答弁を願いたいと思います。なおそれで十分でない場合は、後日大蔵大臣にこの点を確認をいたしたいと思いますので、一応留保しておきます。  要するにこの問題が、今審議しております二法案に対するわれわれの態度をきめていく基本になるから、私はこの点を重視してお尋ねするのでありまして、従来と変らないような取扱いでありまするならば、あえてこれ以上申し上げる必要はないと思いますが、坊大蔵政務次官一つ伺っておきたいのでありますが、どうでありますか。今農林大臣は、米価はあくまでも予算米価であって、これにとらわれるものではない、米価審議会その他米価決定の基本的条件が変化した場合には、これに適応すべきものである、こういう御答弁でありまして、私もその通りだと思うのですが、その農林大臣のお考え方は、大蔵大臣にも御異存はない。いわゆる政府としての態度と、これは受け取って差しつかえないかという点であります。
  147. 坊秀男

    坊政府委員 先刻来農林大臣からお答え申し上げた通り、従前通りやってきたことを、大蔵省としてこれを変えるというような考えはございませんで、予算米価に縛られてしまうというようなことは、考えておりません。
  148. 足鹿覺

    足鹿委員 御答弁によって、一応私も満足しましたが、さらにこれは、大蔵大臣に確認をいたしたいと思います。  進んでお尋ねをいたしたいのでありますが、今度この両法案が提出されておりますが、一般会計からの繰入金に関する法律案において、百五十億円を限り食管特別会計へ繰り入れるということが、第二条に規定されておりますが、なぜ百五十億と限定されたのでありますか、農林大臣に伺いたいのであります。
  149. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 食糧管理特別会計の健全化をはかるということにつきましては、米価審議会等におきましても、問題になっておったのであります。でありますので、御承知の通り、食糧管理特別会計に部門を六つ設けまして、部門別に損益を明らかにするということが一つであります。それからまた食糧管理特別会計におきましては、全体から見て、赤字が出てくるのが例になっております。その赤字は、食糧管理特別会計の運営におきまして、食糧証券の発行によってつないでおるのでありますが、そういう大体損失の見込みがあるものまで食糧証券で泳いでいるということは、これは経理の健全をはかるゆえんでない、そういう意味から、三十二年度の補正予算におきまして、今お話しの百五十億円を限りまして、一般会計から食糧管理特別会計に調整資金として繰り入れることにいたしたのは、ただいま御指摘の通りであります。そこで、その百五十億円というものの基準はどうか、これは、運転資金としての目的を持っているのでありますが、これをどういう見合いにおいて積算の基礎を置くかということになるならば、やはり食管の赤字を券で泳いでいくことが適当でないという意味でありますので、損失の見込みを相当見て、この百五十億円というものを決定いたしたのであります。すなわち三十二年度におきまして食管特別会計の赤字となると予想されている金額は九十六億円であります。それから三十三年度におきまして予想される赤字は、四十三億円になっておるのであります。でありますので、百三十九億、約百四十億円でありますが、それの見合いが移動する場合もありますので、百五十億というふうに積算の基礎を置きまして、百五十億円の調整資金を設けた、こういうことに相なっておるわけであります。
  150. 足鹿覺

    足鹿委員 お話しのように、三十三年度において百五十億円を限って食管特別会計に繰り入れられますが、そのうち九十六億は、もう過ぎ去った三十二年度の分である。そういたしますと、残りの五十四億円が三十三年産の米に対する運転資金に実際上なるわけであります。私の計算によりますと、昨年通りの配給日数、すなわち十四日分を確保されようといたしますならば、三千百万石の集荷を必要とすると私は思っておりますが、いかがでありましようか。
  151. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 昨年三十二年度におきましては、二千七百万石の集荷の予定でありましたが、三千万石をこしております。本年度におきましては、集荷の目標を二千九百万石に置いておるわけであります。そういう関係でありますので、去年より予算におきまして二百万石よけいに集荷する目標を立てておるのでありますが、実際におきまして、今の配給を維持することになりまするならば、集荷をふやすことになるかもしれませんが、今の需給の計算におきましては、二千九百万石ということで需給の計算をいたしておるわけでございます。
  152. 足鹿覺

    足鹿委員 先日も食糧庁長官に私は申し上げたのでありますが、予備費がありますから、集荷数量が増加すれば、それを取りくずすことも可能でありましょうし、別に二千九百万石に限定されるという趣旨のものではないと思いますが、いかがでありますか。
  153. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 もちろんその通りであります。
  154. 足鹿覺

    足鹿委員 そういたしますと、大体前年度が十四日間の配給日数でありますが、今の食管会計予算の面から見ますと、二千九百万石でいきますと、大体十二日分しか見てないように思われます。前年通り十四日分を確保するといたしますならば、集荷目標が三千百万石を必要とすると思うのであります。そういたしますと、配給数量を前年通りそのまま踏製すると、すでにもう運転資金に五十億近い不足が出てくる、こういうことになると思うのであります。一方生産者米価は、法律に基いて、米価審議会の意見を聞いてお定めになる、そういたしますと、これが変動する場合も、先ほどおっしゃるようにあり得る、こういうことになりますと、すでにもう百五十億と名目はありますが、九十六億は前年度分であり、残る五十四億でも、今申したようないろいろなファクターによって、もうすでに大きな不足が出てくることになりますならば、これは、当然法律の一部改正の八条の三その他適当な条項において、調整資金に不足が生じた場合は、制度上これを補てんする道を明らかにしておかれることが、私は妥当ではないかと思うのです。農産物会計においては、十億円程度のものを一般会計から繰り入れると明確に規定しておられますが、この食糧の勘定におきましては、そのことが明確でない、従って大蔵当局には、この百五十億を一応そのワクにして、それ以上はふくらませては困るというような、そういった考え方が背景をなしているのではないかと私どもは懸念いたすわけです。それが事実でないということでありますならば、どういう条項に基いて、制度上何らの不安がないということを、この際明確にしていただきたいと思いますが、その点をお願いいたします。
  155. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 初めから赤字が相当出るという予想をもって計算をいたしておるわけではないのであります。やはり国内米管理勘定においてどれくらいの赤字が出るか、国内麦においてはどれくらいの赤字が出るか、輸入食糧の外国米についてはどれくらいの黒字が出るか、外国麦についてどれくらいの黒字が出るか、こういうような計算上から四十三億という額も出ておるのであります。でありますので、この額が、輸入食糧の値段が違うことによって変動もありましょう。あるいはまた船賃等によっても変動がありましょう。でありますので、いろいろな面から、必ずしも赤字がふえるというふうに見て予算を立てておるわけではないのであります。しかしながら、調整資金を置きました目的は、赤字が出ましたときには、決算確定をもってその赤字を取りくずしていく、益が出ましたときには、それを増していく、こういうことで調整資金が置かれているのであります。今お話のように、しからばこの額を超過した場合にはどうするか、こういう問題であります。その場合においては、さらに一般会計からその分を調整資金として増額繰り入れる場合もあり得ると思います。あるいはまた、そういう赤字が出ました場合に、特別の法律をもってその赤字を補てんする、こういう単独法によって補てんすることも、前からも例もありましたし、そういうこともあり得ると思うのであります。食糧管理会計を経理してきまして、調整資金の必要が予算の額をこえるという場合におきましては、今申し上げましたように、増額する場合もありますし、あるいは単独法によってこれを処理していくという方法もあり得るわけであります。またそういうような運営にいたすことも、初めからただ赤字を出していくということでなくて、食糧管理の経理におきましては、十分周到な考え方によって赤字を少くしていく、こういうふうに考えておるわけでありますけれども、出た場合につきましては、先ほど申し上げましたような方法があり得るのであります。
  156. 足鹿覺

    足鹿委員 坊さんにお尋ねしますが、今農林大臣がおっしゃったような一般会計からの繰り入れを、増額を必要とした場合は補正予算だけでやるつもりでありますか。
  157. 坊秀男

    坊政府委員 お答え申し上げます。ただいま足鹿委員の御質問の趣旨は、百五十億繰り入れながら、なおかつそれが不足した場合どうするか、こういうようなお尋ねだろうと思います。農林大臣から詳しくお答え申し上げておりますが、大蔵省におきましても、そのときの財政事情を勘案いたしまして、あるいは単独法を出す、あるいは別途の方法でもって繰り入れる、また補正予算といったようなこともむろん考えられることであると思います。
  158. 足鹿覺

    足鹿委員 そんなあいまいな答弁では困るのです。補正予算だけで事足りるのか、補正予算の上にさらに単独法が必要となるのか、はっきりとその場合どう措置するかということを聞いておるのです。
  159. 坊秀男

    坊政府委員 そのときの財政事情に応じまして、その生じたときの諸般の情勢を考えまして、あるいは単独法でいくということもありましょうし、またその他の方法をとるということもあると思います。
  160. 足鹿覺

    足鹿委員 今われわれが審議をしております食糧管理特別会計における資金の設置及びこれに充てるための一般会計からする繰入金に関する法律の第二条その他必要な条項を、その際には借りればいいのか、今おっしゃったように、別な単独法というお言葉がありますが、この法律とは別に何か単独法を必要とするのか、もう少しその点を明らかにしていただきたいのです。
  161. 坊秀男

    坊政府委員 ただいま御審議を願っておりますこの法律資金の充実をはかっていくか、また単独法でやっていくかというような方法を考えております。
  162. 足鹿覺

    足鹿委員 そのときの財政事情によって云々とおっしゃいますが、国の財政を危うくするようなそう大きな赤字が出るわけでもありませんし、すでに一応予想されておるのです。その多寡はここで断定はできませんが、今私が指摘したような二、三の事例をとってみても、これがあくまでも予算米価であるという前提に立って考えたときには、すでに不足が生ずるめどがついている。その場合に、別の単独法を必要とするという立場に立っておるのか、ただいま審議しておるこの法律の第二条その他を修正すれば足りるのかという、それの断定がつかぬというのはどういう事情ですか。そのときの財政事情とにらみ合して、この法律とはまた別個な措置を必要とするのでありますか。
  163. 坊秀男

    坊政府委員 そのときの事情によってきめるわけでございますが、赤字の多寡といったようなものも、相当考慮の対象になるであろうと思います。
  164. 足鹿覺

    足鹿委員 たとえばこの法律の第二条に「百五十億円を限り」、というふうに規定しておりますから、これをかりに五十億不足すれば、二百億を限りと、こう訂正すれば、一応これで補正予算とのにらみ合せでいいのではないかという感じをわれわれは持つのですが、そういうことを私は聞いておるのです。そのときの財政事情ということでありますならば、これは、国をひっくり返すような大きな財源を必要とする場合ならば、そういう場合もあり得るのでしょうけれども、そう数百億を要するという場合はちょっと考えられないのです。
  165. 坊秀男

    坊政府委員 この百五十億ときめましたのは、これは補正予算ではありますが、とにかく財政上の必要最小限度であるということで組んでおりますから、そこで足鹿委員の言われるような場合には、先ほどから申し上げましたような方法でもってこの資金を充実していく、こういう考えであります。
  166. 足鹿覺

    足鹿委員 この点を明確にしていただけば、あとはそう大した質問は私はないのです。あなたから明快な答えができなければ、これはもう一ぺん農林大臣と大蔵大臣にこの点をはっきりさせなければいけないと思うのです。私どもが持っておる疑問というのは、百五十億のワクに縛られはしないか、もし縛られた場合は、実際において生産者にしわが寄ってくるか、あるいは消費者にそのしわが寄ってくるか、赤城農林大臣は、昨年むずかしい米価値上げを断行された実績をお持ちになっておりますし、現在消費者米価の算定作業も命じておやりになっておりますし、何か一まつの不安を各方面とも持っておる。消費者は消費者なりに、生産者は生産者として疑念を抱いておるのです。ですから、もしそういう場合があったならば、この法律をどういうように修正してこうするのだ、こういう確信に満ちた御答弁があれば、この私の持っておる疑問は氷解いたしますし、またこの委員会の応答によって、一般も納得するでしょう。ですから、そうした場合における制度上の問題を明らかにし、また補正財源との関連はどうしていくかというような一応の大臣としての腹を明らかにしていただけば、大体私は、私の質問の目的は達するのじゃないかと思うのです。これを何か詰まったような、ひっかかったような御答弁をなさいますと、これでは満足できぬということになろうかと思いますので、もし御答弁があるならば、もう少し確信を持った御答弁を願いたいと思うのです。
  167. 小倉武一

    ○小倉政府委員 これは、いずれにしても大臣から御答弁願いますが、法律の解釈上の問題がございますので、それをちょっと前段でお聞き取り願います意味で、私申し上げます。資金で足りない場合の措置として、予算上の措置と立法上の措置と両方考えられるわけでございますが、今度は、二つ法律がございますから、こんがらかるといけませんけれども、特別会計法の改正の方の法律を中心にして申し上げますと、この法律の中に、調整資金を置くということがございます。これは、金額が限定をしてないわけでございます。一方の法の方は、百五十億と限定がございますが、こっちの方は限定しておりませんから、資金の取りくずしでもって損を填補するという場合には、立法措置は要らないわけでございます。補正でなく、一般の当初予算内で資金を増額すれば、あとは行政措置といいますか、実際上の措置として資金を取りくずすということで、損が填補できるわけでございます。それからそういう措置でなくて、特別なような場合に、決算上の損を填補する、こういう格好で予算を組み、措置をするという場合は、予算上の措置と同時に特別の立法が要る、こういう法制的なことになろうと存じます。
  168. 足鹿覺

    足鹿委員 私どもが非公式にいろいろ聞いたり、また研究した結果によりますと、特別会計に対する補正をまず組む。それからそれに必要な立法上の措置というものは、補正が組まれるならば、自動的になるのではないかという見方もあるわけなんです。これは、大蔵省の専門的な立場からお考えになって、一般会計から食管会計に資金として金を繰り入れるときには——今度こういう新しい制度になるわけですから、念のために聞いておきたいのですが、金の繰り入れの必要を生じた場合には、そのつど立法措置が必要になるのかならぬのか、その点、大蔵省のお考えはどうですか。
  169. 石原周夫

    ○石原政府委員 今後におきまして、これは農林省も大蔵省も同様でございまするが、食管会計の経理をできるだけ健全化をいたしまして、赤字を生ずることがないようにいたしたいという基本的な考え方につきましては、両方とも今後協力をして、そういう方向に持っていきたい。ただ足鹿委員のお尋ねのように、そういうような努力をいたしましてもなお赤字が生ずるというような場合におきましては、これは、方法としては二つの方法が考えられるのでございまして、一つは、単独法をもちまして補てんをいたすのが一つの方法である。あるいは今回資金を作りました考え方を引き継ぎまして、さらにそれを見込まれるときにおきまして、資金の増額をいたす。それで増額いたしました資金をもちまして、経理上といたしましての損失の填補をいたす、こういう方法もあります。それは、そのときどきの財政の状況によりまして具体的に判断をされることでございますから、今日どういう方法によるのかということを申し上げかねるかと思いますが、事柄の趣旨といたしましては、今のように考えております。
  170. 足鹿覺

    足鹿委員 要するに金が足らないときは、借入金をもってするか、あるいは食糧証券の発行のワクを広げて一時をまかなうとか、いろいろな方法があるでしょう。しかし、究極においては、出たものは出たものとしてそれを埋めなければならないと思うのです。あなた方はないという前提に立っておられますが、私は、もうすでに食糧会計においては、相当の赤字が出るのではないか、そういういろいろな事例を、今も農林大臣なり坊政務次官には提示してお尋ねをしておるわけなんですが、そういう仮定の上では答えられないというような御答弁では、非常に私は満足ができません。もうすでにだれが見ても明らかになっておるのです。しかし、そこにはいろいろな事情と制約があって、このたびはまず百五十億で一応は終ったが、必要があれば、これこれの措置によってこういうふうにして埋めていくのである、従って消費者の米価についても生産者米価についても、影響は与えないのだ、こういう確たる信念と御所信を明らかにされるならば、私は、それで一応この質問は目的を達するのです。今聞いてみても、そのときの財政事情とか、そういう何か前提がある、何か納得のいかないお言葉がありますので、くどいようですが、伺うわけなんです。私が聞いておるのは、今度六つの勘定ができた。農産物会計の場合は、一般会計から十億円をすでに入れて、また法律そのものにおいても、一般会計からこれを繰り入れるのだと明確にしておる。その理由としては、これは政策上の問題であって、農産物の価格を支持し、それを安定化していくための措置であるから、もうはっきり一般会計から入れるのだ、こういうことになっておる。ところが食糧会計の場合は、非常に膨大な赤字が出ることがはっきりしておりながら、一応これを調整勘定に入れて、そうしてこの調整勘定に一般会計から一応入れるという規定をちょっと入れておるだけであって、はっきりとした農産物会計に見るがごとき明確な規定がないから、私はこれを追及しておるわけなんです。その場合は、法律的にもまた予算上にも、どういう措置を講ぜられるのか、こういうことを聞いておるわけなのです。ですから、私の見解をもってするならば、一部改正法律の方の第八条の三に、もっと明確に、損失処理を一般会計から繰り入れなければならないとか、あるいはもっと強い表現でもってここへ規定されるならば、これは補正予算さえ組まれれば、自動的に、単独法も要らないし、この繰り入れに関する法律そのものの修正も要らなくて済むし、疑惑を持たれずして問題は片づくのではないか、こういうことを言っておるのです。
  171. 石原周夫

    ○石原政府委員 先ほどもお答えを申し上げましたように、食糧管理の処理につきましては、今後努力をいたしまして、収支が適合するようにいたしたいということにつきましては、これは、農林省も大蔵省一緒考えているわけであります。特にお尋ねの点の農産物価格安定、この方は、先ほど来御答弁があったと思うのでありまするが、一つは、今足鹿委員の仰せられまするように、政策目的と申しまするか、価格支持、価格安定という別の法規に基きまする建前でございまするし、事柄の性質上、相当の期間にわたりまして保管をいたすということが生ずるかと思います。これは、相当供給量の多いときに買って、そうしてしばらく持っておりまするから、従いまして、これはその事柄の性質上、相当に量によりそのときによるわけでございますけれども、ある程度の赤字を覚悟せざるを得ないというものかと思います。従いまして、それをある程度予測をいたしまして、一般会計から繰り入れをいたしておるという建前に立っておるわけです。これは、従来からも全然建前の違うものでありまするから、その点は、一つはっきりそういうような経理区分をいたして参るということをいたしたわけであります。一般の食糧管理につきましては、これは食糧管理調査会の答申もございまするし、農林省も大蔵省もいろいろ研究をいたしまして、今後できるだけそういう赤字を生ずるような事態のないように努力をいたしたいということを考えております。ただ当面いたしまするところにおきましては、従来から御説明申し上げておりまするように、三十三年度まである程度の赤字が生ずるので、そこら辺を頭に置きまして、運転資金の繰り入れをいたすという措置を今回とったわけであります。従いまして、それから後にどうするかということにつきましては、今後の努力によりまして、そういう事態のないようにできるだけ努力をいたしたい。事柄の筋道も違っておりまするので、この方は運転資金の繰り入れというさばきをいたしております。
  172. 足鹿覺

    足鹿委員 主計局長はあとからおいでになっておるので、私の前半の質問をお聞きになっておらないから、話が食い違っておるのです。そういうことは、私は今までお尋ねをして、もう済んだ問題なのです。私もそれはよくわかるのです。  では農林大臣に伺いますが、消費者米価の値上げもやらない、生産者米価の点についても、先刻も言明がありましたように、これは予算米価であって、必ずしもこれにとらわれるものでないということでありますが、もう一ぺん伺いますが、消費者米価は、現在の作業のいかんにかかわらず値上げをしないかどうか、配給日数は、昨年通り十四日を確保するのかしないのか明らかにしていただきたいのです。
  173. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 消費者米価の算定方式等につきまして、委員会を設けて検討をいたしておりますが、これは、昨年の六月の米価審議会の附帯決議にもありますので、理論的にどういうふうに消費者米価をきめた方が適当なのかという検討をいたしておるのであります。しからば、これによって上るか下るかはわかりませんが、それによって、実際問題として消費者米価を本年改訂するということは考えておりません。それから配給日数の問題でありますが、昭和三十三米穀年度におきましては、今まで通り十四日を続けていきたいと思っております。三十四米穀年度におきましても、十四日という配給日数を続けていきたいと思っておりますけれども、作柄等によって、少しは異同することがあるかと思います。三十三米穀年度においては、十四日という配給を続けていきます、基本配給と希望配給で。
  174. 足鹿覺

    足鹿委員 大蔵政務次官は、今の農林大臣の御答弁に御同意になりますか。
  175. 坊秀男

    坊政府委員 農林大臣のお答えに別に意見はありません。
  176. 足鹿覺

    足鹿委員 別に意見というよりも、賛成だというわけですね。
  177. 坊秀男

    坊政府委員 同意でございます。
  178. 足鹿覺

    足鹿委員 そうしますと、石原さん、今お聞きのような考え方政府は持っておられる。あなたはお見えにならなかったけれども、農林大臣は、この予算米価の点については、予約加算金が削ってあるということもお認めになりましたし、米価審議会の答申によっては、これは法律の定めるところですから、この予算米価にとらわれるものでないということをおっしゃっておる。そうしますと、私が先ほどから言っておりますように、くどいようですが、事実上においては、この百五十億のうち九十六億は、すでに過ぎ去った三十二年度のしりぬぐいであるから、あとに残ったのがわずかに五十億余りにすぎない。損失が多くなってくることは明瞭なんです。そういたしますと、今あなたが運営よろしきを得てということを言われるが、運営よろしきを得ても、結果的には、去年の配給日数をやられるとするならば、勢い集荷数量も、現在の二千九百万石ですでに足らないのです。ですから、勢い一般会計からの繰入金を予想しても、別に行き過ぎだとは思いません。でありますから、もっとはっきり、運営よろしきを得て赤字を出すようなことはいたしたくないなどということではなしに、出たら、そのときにははっきりこうするのだ、だから御安心願いたい、こういうことがどうしてはっきり言明ができないのでしょうか。だから、いろいろな疑惑をこの問題に持つのです。今までのどんぶり勘定の一本勘定の場合は、どこで損が出るのか、それがどういう理由によって出るのかということについて非常に明らかにならぬ。そこで、六つの勘定を明らかにしたはいいが、それは、損益の実体を、あるいはその原因を捕捉することには必要なことであるが、その出たものにどう措置するかということが、この法案では少し欠けておるんじゃないかと思うんです。その点を補っていかれるならば、私どもは、この食管会計は一歩前進だと思うんです。別に根本的なものに異論を唱えておるわけではないのですから、その点を明らかにされるならばよろしいのであって、何もちゅうちょされることはないと思うんですが、どうでしょう。
  179. 石原周夫

    ○石原政府委員 足鹿委員がおっしゃいまするように、それから従来御答弁申し上げたと思いまするが、この百五十億円の運転資金を作りましたることと、生産者価格ないし消費者価格の決定の問題とは別問題でありまするから、生産者価格ないし消費者価格の点につきましては、農林大臣からお話がございましたようなことで今後やって参る。何分にも食糧管理会計は、八千億円に上る会計でございまするし、数量の点につきましても、どの程度の数量を買い入れることに相なりまするか、相当大きな幅で動きますし、生産者価格の点につきましても、先ほど来お話がございますように、これは未定のファクターでございます。それから輸入食糧につきましても、どういうような海外の値段に相なりまするか、あるいは数量に相なりまするか、従来の実績に見ましても明らかでありまするように、相当大きな幅で動く。従いまして、じゃ今日三十三年度の赤字はどうなるんだ、あるいは収支はどうなるかという点につきましては、非常に予測を立てがたいのでございます。しかしながら、それはそれといたしまして、現在できます推測としまして、今予算害に附則としてつけておりますような収支の見込みをつけておるわけであります。その収支の見込みに従いまして、それを頭に置きながら、私ども三十二年度の問題と合せまして、百五十億という金額をもちまして運転資金の繰り入れをしておるわけでありますから、当然そういうような金額でまかないがつくんではないだろうかという考えをしておるわけであります。ただお尋ねの点につきましては、それじゃそれとして、実際はもし推定が違ったらどうなるんだというお尋ねでございますが、その点につきましては、何分にも非常に大きな数字の動きが予想されるものでありますから、今日どういうような方法でその処置をいたすということは、先刻申し上げましたように、まだ申し上げかねる段階にあるということであります。
  180. 足鹿覺

    足鹿委員 それでは、新しい問題で一つ農林大臣に伺いますが、麦価については、どういうふうにお考えになっておりますか。今われわれの調べたところによりますと、三十三年の麦価の算定については、対小麦価比は織り込んでないように見受けるのでありますが、小麦価比はどのようにお取り扱いになるおつもりでありますか。
  181. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 対比価といいますか、対米小麦比は計算の中に入れておりません。なおこまかいことは、食糧庁長官からお答えいたさせます。
  182. 足鹿覺

    足鹿委員 こまかいことは要りません。そういたしますと、米価審議会その他において、小麦その他麦類が逆さやになって、食管会計の赤字を作る大きなファクターになっておるということは、私どもも知っておるのです。、だからといって、小麦作がペイしておるかどうかということについては、別問題です。政府の食管会計が逆さやになるとかならぬとかいうことは、農民の知ったことじゃないでしょう。それを、従来続けてきたところの対小麦価比を今年の予算麦価には入れておらないということは、もうすでに麦価格を切り下げておる。米の場合でも同様です。もしそうした場合に、米価審議会なりその他の意見によって、これを修正せざるを得なくなる場合があるかもしれぬ。そうなれば、今主計局長がいろいろとそうでないゆえんを言われましたが、さらにどこからか金を持ってこなければ、この増大する赤字の埋め方がつかぬことになる。そうでしょう。そういたしますと、どのような角度から見ても欠損が少くなるという見通しはない。どちらかというと、欠損がふえていく。あなた方が今考えておられるような低米価、低麦価政策を強行していこうとされるなら別ですよ。少くとも従来とられたような政策を、法律の定めるところの機関の答申その他を尊重されて行われようとするならば、当然欠損が増大するのですよ。そうした場合に、どうされるかということを聞いておく必要が私はあると思うのです。これは、他の委員会においてもっと詳しい議論があろうかと思いますが、少くともこの会計は当委員会にかけられている以上は、この点を明にしなければ私どもは納得はいきません。そういう事情を知りながら、なお赤字は出ないつもりである、出ないように運転をするんだ、こう言われることは——われわれは、そういうことでありまするならば、本案に対しての考え方を変えなければならぬ。もっと弾力性のある、もっと実情に即した、あなた方がとらわれない考え方に立っておられるということをわれわれは前提に持って、先ほどから述べておったような点が明確になるならば、本案に別に異議はないと言っておるのであります。この点は非常に重要でありますが、いかがでしょう、農林大臣。
  183. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 損益がどういうふうに出るかということは、米価審議会の答申によって、損が多くなる場合もありましょうし、また輸入小麦等の利益によって、黒字になる場合もあるだろうと思います。そういう点において変動はあると思うのですが、そこで、百五十億の調整資金で、これをくずしていく。くずしていっても足らぬという場合にはどういう方法をとるかということが、お尋ねのことだろうと思うのであります。それが、先ほどから再々御答弁申し上げておりますように、食糧管理特別会計法の一部を改正する法律案の第六条の五にありますように、「一般会計ヨリノ受入金ハ予算ノ定ムル所二依り調整資金二充ツル為一般会計ヨリ之ヲ繰入ルルモノトス」こういうふうになっておりますから、一般会計から、調整資金が不足を告げるという場合には、あらかじめ資金を増額することも一つの方法でありまするし、あるいはまた赤字が非常に多いというようなことで、調整資金として繰り入れるのが適当でないという場合には、その赤字欠損を補てんするために単独法を出して、その赤字を処理していく、こういう二つの方法があるわけであります。そのいずれをとるかということは、そのときの事情によりまするし、また財政事情にもよりまして、どっちの方法をとるか、ともかくもそういう赤字というものを解決していくということにつきまして、二つの方法が考えられておるのであります。(「明快」と呼ぶ者あり)
  184. 足鹿覺

    足鹿委員 あまり明快でないですよ。大蔵大臣もどうせおいでを願って、さらにお尋ねしたいと思いますから、あとの質問は一応留保しておきますが、要するにこの二法案の目的はどこにあるのですか。食管会計の健全化の結果が、農民にしわが寄るような食管会計の健全化などに農林省が賛成されるということは、おかしいと思うのです。今まで聞いたところでは、農民にプラスするということは考えられない。はっきりしない、何か印象としては、健全化のしわが生産者や、まかり間違えば消費者にもはねかかってきまじきというふうにとれるのです。そういう食管会計の健全化をだれが望んでおるのですか。百五十億の金を、赤字が確定して欠損が確定した後にこれを繰り入れる、繰り入れなければならないという従来の政府の主張を翻して、事前にまずほうり込んで、そうして証券の発行もなるべく少くしようし、一時借入金もなるべく少くして、金利コストその他で合理化をしていこうという意図には、私は賛成している、けっこうなことだろうと思う。しかし、そういった一面から、去年よりも麦価は下げ、米価も、予約奨励金その他、当然去年まで出しておったものを切り下げた食管会計の予算の背景に、その上にこの二法案を出されている。この二法案それ自体としては、別に大きな問題点というものは、私が先刻指摘した以外にはない。この二法案のよって米たるその背景、昭和三十三年度の食管特別会計の予算を編成されるいろいろな基礎の算定に関連をして、私どもはそこが納得がいかないことになってくるのです。その点が明確になり、本案が食管会計を健全にすると同時に、生産者にも消費者にも何ら不安危惧を与えない、こういう意図が明らかにされるならば、別にこの問題をとやかく言うわけではありません。ただし、今までの農林大臣の御答弁なり大蔵当局の御答弁によっては、現実に麦価を切り下げ、米価は切り下げているんです。これをもしかりに妥当でないという公正な機関の決定が出てきて、それをもしあなた方が尊重される場合には、不足金が増大することは、もう明らかなんです。それは、そのときになってみなければわからぬというのでは、この健全化は結局農民やその他消費者にしわを寄せていく健全化であって、そういう副産物をねらいとした健全化であるといっても、ちょっと言い過ぎでないのじゃないかと思われるのです。ですから、そういう点については、もう少し大蔵省と基本的な考え方を一致させられて、そうして大蔵大臣と一緒に御出席願いました上で、もう少し私はこの問題をお尋ねを申し上げてみたいと思います。きょうは、この程度で私の質問を一応保留しておきます。
  185. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 今回提出しておりまするこの二法案は、新たに食糧管理会計についての制度を改めるという意味で提案をいたしておることは、御承知の通りであります。でありますので、今お話しのように、食糧証券で泳ぐとか、一時借入金で泳ぐというようなことでなく、損失見合いの調整金を設けていく、あるいは食糧管理の分を別にしていく、こういう新しい目的のためにこの法案を提案しているのでありまして、これが直ちに農民の生産意欲を阻害するようなことであるとか、あるいはまた消費者米価の改訂をすることによって不安を与えるというような意味を、この法律が持っているとは私は考えておりません。ただ御指摘のように、食糧管理会計の中におきまして、生産者米価とか、あるいは買い入れの麦価等につきまして、その算定の基準が、実際に買い入れているよりも低いじゃないかというようなことにつきましての問題は、この法律はまた関連はありますが、別に考えられる問題ではないかと思うのであります。そこで、その会計につきましては、これは足鹿委員もこの方面に明るいので、御承知の通りでありまして、いつでも予算米価、予算麦価というものは、必ずしも実際に買い入れているところの価格と同じものを予算米価に上げているということでないのであります。というのは、米の価格にいたしましても、米の買い入れ時期と予算を編成する時期とにおきましては、パリティ指数等も違っておりますから、予算編成時期におけるパリティ指数で予算米価は作っていく、実際に買い入れる場合には、米価審議会その他そのときの事情によりまして、適当な価格を決定するということでありますから、予算米価そのものが低米価だとか低麦価でもって農民を苦しめる意味というものを、別にことしの予算において出しているということはないと思うのであります。ことに米の価格等におきましても、予算米価は、昨年におきましては一万円でありましたが、一万二百円というふうにふえておるのであります。でありますから、この予算の意図するところが、低米価政策をとろう、あるいは低麦価でもって農民の生産意欲を阻害するというような意図は持っておりません。また農民や生産者が、そういうふうな考えをあるいは持つということでありますならば、これは予算米価であり、予算米価にいたしますならば、昨年よりは上っておるし、麦価にいたしましても、パリティ計算からいって、去年の計算方法と違って予算麦価を算定しているわけじゃない、こういうことに御了解願いたいと思います。
  186. 足鹿覺

    足鹿委員 先ほど申しましたように、明日でも大蔵大臣が御出席になった際まで、私の最終質問を留保しておきますが、要するに農林大臣は、今そういうことをおっしゃいますが、時期別価格差の問題にしてみても、繰り入れておるそうでありますね。この時期別格差というものは、これは米価でありますか、加算金でありますか。いろいろ専門的なことをお聞きするということになりますと、とても時間がかかりますが、それでは予約加算金も、これは米価でありますか、加算金でありますか。われわれの理解するところでは、長い間の米価審議会その他の経緯から見て、基本米価が、政府資料その他の不足によって、適正なものができない、そのときの政治情勢やいろいろな情勢を加味して、いろいろな加算金を設けて、一つの米価構成をやっておるのです。それをあなた方は、ことしは予約奨励金をはずしておるのではないですか。それによって低米価でないということは、どういう点で言われるのですか。そういうことは言われるものではありません。時期別価格差にしてみても、これは明らかに米価なんです。と同時に、加算金でもありましょう。予約奨励金にしてみても、現在の予約集荷制度そのものを廃止しない限りは、それは一つの米価そのものですよ。こういう議論は成り立っております。従来もしばしば繰り返しておりますが、それを米価審議会の答申も待たずして、一方的に予算の編成の上において取りはずしておいて、そうして低米価でないというお言葉は、私は聞えないと思います。そういうことではなしに、もっと真剣にお考え願いたいと私は思います。でありますから、この法案自体の直接の問題もあります。第八条の三の問題にしてみましても、問題はありますが、それとの関連の上において問題が今後につながるから、私はこれを重視しておるのでありまして、そういう点については、くどく申し上げなくても、よく御存じのことだと思いますので、もう一ぺん御再考願って、この次には、もう少し適当な御答弁を期待しております。私は、きょうはこれで打ち切っておきます。
  187. 淺香忠雄

    ○淺香委員長代理 本日はこの程度にとどめ、次会は明十三日午前十時三十分より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。     午後四時二十四分散会