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平岡委員 外為
資金特別会計の一
部改正案に関連しまして、
外務大臣にお尋ねいたします。先ほど
石村君から質問のあった事項でございますが、別な角度からお伺いしたいと思うのです。
わが国
経済が
貿易に依存する度合いの高いことは、論を待たないところであります。
貿易の成否は、わが国
経済の興廃を決するものでございます。
政府によって示されている統計の羅列は、昭和三十一年度、同じく三十二年度のわが
日本輸出
貿易の仲張を誇示しております。しかしながらこれが実態は、名目上の統計
数字とは雲泥の相違であり、
焦げつき債権が
政府保有外貨のうちで三十数%にも達する現状は
日本の
経済的破局をはらむものと断ぜざるを得ないのであります。すなわち昭和三十三年一月末の外貨保有は約九億六千万ドルでありますのに、
焦げつき債権が三億ドルをこしておるのであります。これを指摘しないわけには参りません。
焦げつきは、邦貨で換算いたしまして一千億円を上回っておるのであります。しかもこの傾向は、決して減少していかないということころに問題がございます。御
承知のように、わが国は、
貿易制度において為替集中政策をとっておりますので特定メーカーあるいはシッパーによるところの外貨建て輸出は、その等価である円をもちまして、船積みと同時に銀行を通じて
政府からの支払いを受けまして、いささかもリスクを負いません。かわって外貨
債権は
政府に帰属しますが、その不渡りの危険も同時に
政府に移る仕組みになっております。この支払い円貨の調達は、
国民の税金の集積である
一般会計からの
資金をもってまかなわれているのでありますから、一度
焦げつきができれば、これは輸出者にまでは遡及求償せられるものではなく、しょせん
国民がしりぬぐいをさせられるのであります。制度上は、外国為替
資金特別会計というクッションを介在させておりまするけれども、
一般会計の金でしりぬぐいをさせられるのには相違ございません。
政府は、その保有する外貨の瑕瑾なきを前提といたしまして、他方においては、その一部を日銀に売りまして、日銀から円札を発行させることもできるのであります。そういたしますると、
政府保有の外貨
債権の非常に多くの部分が
焦げつきであって、無価値にひとしいものとしたならば、被害者は一般
国民となることは自明の理であります。すなわち
国民は、仮空外貨の基礎の上に過当に散布された円札のもたらす貨幣価値の下落によるインフレの加害を受けるか、あるいは外為特別会計
資金の取りくずしにあって、血税をもって跡始末をさせられるか、このいずれかでございます。この
インドネシアの
債権棒引きの背景がかようなものである点に、まず御留意を願いたい。
従いまして、この
インドネシアに対するところの
債権の取り立ては、
政府当局は真剣に取り組んで、これを回収しなければならぬ義務があるのです。そうでない限りは、一部の輸出業者、あるいはメーカーに対して
国民がその不始末をしりぬぐいをする、ほかの表現で言うならば、補助金を特定のメーカーあるいはシッパ一にくれる結果と同じことになるのです。ですから、あなた方は、この取り立てに対しましては細心の注意を払い、断固として相手方と
折衝しなければならぬはずのものであります。ところが、
石村君から指摘されるように、あなたの
答弁は、
国民を納得させるには至っておらないのです。私どもは、むしろ
賠償であると言っていただいた方が納得するのです。ところが、
賠償ではない、これは
債権の
棒引きだ、こういうことです。ただ
一つの理由が、新しく開かるべきところの
インドネシアとの修交のための引出物だ、こういうことでは
国民は納得しません。
私は、少しく外国の例をとりたいのであります。現在、イギリスと西独の間に、いわゆるNATOの軍事同盟の条約上の義務でございましょうか、イギリスからドイツに派遣されておりまするところの防衛隊に対するドイツ側の負担金の問題で、大きな問題を起しております。ドイツ側は、このイギリス軍の派遣に対して、もはや駐屯費を払う必要はないということで突っぱっております。そこで、しかしイギリスの外貨事情とか、そういう点が非常に悪いのだから、別な
意味においては、ドイツはこれに対しまして協力するということで、ドイツがイギリスから購入すべき武器の前渡金として、一億二千万ドルか何がしかをイギリスに払うからということでかんばっております。ところが、これはドイツの思いつきではないのです。私どもは、昨年大蔵
委員会から欧米に派遣されまして、その折ドイツの予算書を見ましたところ、やはり武器購入のための引当金として、予算上にもとっくにそれは組んである。ですから、今回の対英
交渉が決して思いつきでないということ、非常に慎重にそういうことも予見して処置したことであることがはっきりわかるのです。この
一つの事例に徴しましては、
日本の外交はなまぬるいと思うのです。
なお、もう
一つの例を、ついでですから申し上げますが、おそらく一九五三年でしょう、当時復興のおくれておったドイツに対しまして、おそらくこれはマーシャル・プランの一環をなすものと思うのですが、イギリスがおそらくヨーロッパを差配する
立場にあったであろうところからのことだろうと思うのですが、ドイツに対しまして、十億ドル十カ年無償で金を貸しました。ところが、三年もたたずに、逆にイギリスの外貨が不足に陥り、ドイツは国際収支の上におきまして非常な黒字を持つに至りました。そこで、貸していた十億ドルを十カ年たたずに戻してくれという
要求がイギリス側から行われ、ドイツも、黒字を相当持っておるから、これを返そうということになりました。そのときに、連邦銀行総裁のウイルヘルム・フォッケがこの
折衝に当りまして、どういうことを
交渉したかといいますと、十億ドル十カ年無償で借りるという約束であったにもかかわらず、今直ちにこれを返してやってもよろしい、ただしまだ三カ年きり時間が
経過してないので、七カ年先に返すということになる、そうすると、受け取ったイギリスがその七カ年間これを運用しますならば、相当の利子所得を得る、ですから、ドイツは今返してあげるけれども、この利子の分を引き去って返すということで突っぱって、さすがにイギリスは怒りまして、この点はそのときは落着を見ませんでした。そこで、その
交渉のときは、おととしですが、おととし五億ドルだけ何とはつかず先払いして、あと五億ドルは、この結着を見るまで払わない、こういうことで現在まで
経過しております。ですから、一国の
経済外交
交渉に当って、各国の
外務大臣とか、あるいはその衝にある人たちは、真剣に取り組んでおるのです。そのときに、何も
日本におきまして——大して
日本は金持ちの国ではありません。なけなしの外貨を、
政府の不手ぎわのために
焦げつきにさして、それをあっさり
棒引きにするというようなことは、とうてい常識では考えられぬのです。これは、あなたの方の大野副総裁が、いつぞや胸をたたいて非合理的にものを
解決しているようですが、こういうことは
一つも合理性のないことであって、
外務大臣としましては、ほんとうに
国民の
立場を考え、血税がこうした無
意味に浪費されるというような
事態に対しましては、これは真剣に取り組んでもらわなければならぬと思うのです。こうした
意味におきまして、
石村君に対するあなたの回答に私は不満でございます。ですから、
賠償なら
賠償として率直にそうおっしゃっていただきたい。しかして、
賠償ということをうたい得ない
政府の苦境があるならば、秘密
会議でも何でもいいですよ、そういうことを漏らしてほしいのです。私どもはビルマから——これはレビュー・クローズが条約に挿入されておりますので、ビルマあたりからもゆれ返しがあってはいかぬというような配慮が、あるいはあったかもしらぬと思うのです。しかしその反面において、これは
棒引き債権だという新しい
解決の
方法をいたしますと、ビルマに対する
一つの防衛にはなるかもしらぬけれども、逆に韓国から、これを
棒引きにしろと言ってくる
一つの可能性もあるわけなのです。ですから、いろいろ外務当局としては考慮なすったことであろうと思うけれども、少くともあなたの公式的な
答弁では、私どもを納得さしておりません。
国民も、この点には納得するわけには参らぬと思うのです。重ねて恐縮ですが、もう一回あなたの
棒引きに関しての御
説明をお願いしたいのです。