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1958-02-26 第28回国会 衆議院 大蔵委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年二月二十六日(水曜日)     午前十時四十三分開議  出席委員    委員長代理理事 横山 利秋君    理事 淺香 忠雄君 理事 黒金 泰美君    理事 高見 三郎君 理事 藤枝 泉介君       足立 篤郎君    有馬 英治君       井出一太郎君    遠藤 三郎君       奧村又十郎君    加藤 高藏君       川野 芳滿君    吉川 久衛君       杉浦 武雄君    高瀬  傳君       竹内 俊吉君    内藤 友明君       前田房之助君    森   清君       山本 勝市君    久保田鶴松君  出席政府委員         大蔵政務次官  坊  秀男君         大蔵事務官         (主税局長)  原  純夫君         大蔵事務官         (理財局長)  正示啓次郎君         大蔵事務官         (銀行局長)  石田  正君  委員外出席者         大蔵事務官         (大臣官房財務         調査官)    大月  高君         大蔵事務官         (国税庁間税部         長)      泉 美之松君         農林事務官         (食糧庁総務部         長)      武田 誠三君         専  門  員 椎木 文也君     ――――――――――――― 二月二十五日  法人税軽減に関する陳情書  (第四一○号)  在外資産補償等に関する陳情書  (第四一三号)  製塩業に対する生産制限反対に関する陳情書  (第四三四号)  同(第四九三号)  国民金融公庫資金増額等に関する陳情書  (第四七七号) を本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  日本開発銀行法の一部を改正する法律案内閣  提出第三号)  所得税法等の一部を改正する法律案内閣提出  第八号)  法人税法の一部を改正する法律案内閣提出第  九号)  酒税法の一部を改正する法律案内閣提出第一  ○号)  租税特別措置法の一部を改正する法律案内閣  提出第五八号)      ――――◇―――――
  2. 横山利秋

    横山委員長代理 これより会議を開きます。  委員長所用のため不在でありますので、指名により、私が委員長の職務を行います。  日本開発銀行法の一部を改正する法律案所得税法等の一部を改正する法律案法人税法の一部を改正する法律案酒税法の一部を改正する法律案及び租税特別措置法の一部を改正する法律案の五法律案を一括して議題とし、審査を進めます。質疑の通告があります。これを許します。川野芳滿君。
  3. 川野芳滿

    川野委員 久方ぶりに発言機会を得たのでありますが、与党の立場でもございますから、ごく簡単に質問をいたしてみたいと存じます。  わが国の税制は、戦後シャウプ勧告の線に沿って税制が作られたのでありますが、そのシャウプ勧告の骨子というものは、できるだけ間接税を軽減して、そうして直接税によるべし、これがシャウプ勧告の眼目であったと私は考えます。ところが、その後漸次間接税のウエートを上げまして、そうして直接税を軽減して参りました。特にその尤たるものは酒税でございますが、酒は、一般物価に比較いたしまして非常に高いのであります。その酒が高いという大きな原因は、酒税が高い、こういうことにあるわけであります。そこで、この高い酒税引き下げてもらいたい、こういう要望は、業者もとよりでありますが、国民大衆の間からもほうはいとしてその声が起りまして、消費者の中から酒税引下期成同盟会まで生まれまして、そうしてこの要望の達成に努力をして参ったのであります。ところが、今回幸いにしてわずかではございますが、酒税引き下げの法案の提案を見ましたことは、まことに喜ばしき次第であります。しかし、その酒税引き下げの率がわずか一割ぐらいでございまして、従いまして、幾多の問題の起りましたことは、まことに残念といわねばなりません。すなわち先般当委員会におきまして、井上委員は、ビール税金引き下げを絶叫されました。私といたしましても、当然であると存じます。しかしながら、今酒税のアンバランスを見てみますと、ビールは、現在におきましては、値下げして販売されているところは全然ございません。さらに取引済度も、酒に比較して非常に短かいのであります。さらに密造がない等の点等から考えますと、従来酒の税金ビール税金を比較いたしますと、ビール税金の方が割がよいと考えなければなりません。すなわち、ただいま申したような条件であるにもかかわりませず、年々歳々ビールの売れ行きの多くなっておりますこと等から判断いたしますと、そういわざるを得ないのであります。そこで、今回の酒税引き下げというものが、まことにスズメの涙ほどのわずかの税率引き下げでございましたために、ビール税金減税という点に触れなかったのでございます。もし三割減税ということになりますと、ビールを二割減税する、あるいは酒税の二割引き下げということになりますと、一割でもビール税金減税する、こういうことになりますれば、まことに円満な減税が行われたと私は考えるのでありますが、残念ながら減税の額というものは、先ほど申し上げましたように一割程度であったということが、業界におきましても、あるいはまた当委員会におきましても、こういう問題を起すということになったのでございます。こういう点から考えますと、今回の減税は、まことにけっこうではございまするが、スズメの涙ほどの減税であったということは、まことに遺憾千万であるといわねばなりません。ところが先日井上委員質問に対しまして、一萬田大蔵大臣は、こういう問題については、今後税制調査会答申を待ってさらに考慮するというような発言が実は当委員会においてございました。そこで、私はこの点についてお尋ねをいたすのであります。この税制調査会酒税等の問題を諮問されることと私は存ずるのでございまするが、その諮問は、昭和三十三年度においてなされるのであるか、すなわち本年末ころまでに答申を求められる見込みであるかどうか、この点をまず伺っておきたいと存じます。
  4. 原純夫

    ○原(純)政府委員 調査会に対する諮問は、すでに行なっております。二十六国会で、この委員室間接税全般についての再検討をしてほしいという決議をされましたのを受けまして、昨年の六月に、税制特別調査会というのを作ったのでございますが、九月に、これに対して、間接税体系全般についての改正についてどう考えるかということを諮問いたしております。諮問範囲が、間接税体系全般にわたる広い範囲でございますが、その中で、酒税は御案内の通り間接税の第一人者として非常に重要な地位を占めますので、根本的な検討に際しましては、特に大きな項目になると考えております。その検討の角度としては、他の物品税、あるいは砂糖消費税、あるいはたばこの益金というようなものと並べて、ほかの税との比較において議論があると同時に、酒税の内部において、ただいまいろいろお話のありました各酒類間の税率をどうするかというような点についても十分検討していただきたいということで、すでに諮問をいたしております。そして、二、三回申し上げましたが、抽象的にどれをどうするかというような議論では、なかなか間接税体系を抜本的に立て直すことはできない。全体を理論的に、かつ実証的に検討を進めて参りたい。そのためには、いろいろ客観的な資料もとにして、酒なりたばこなり、そういうような物資にどれだけ税をかけるのがバランスとして適当であるか、担税力から見てよろしいと思うかというような事柄を、具体的に統計資料に基いて調べようというようなことで、われわれも政府部内で鋭意そういうデータを作る努力をいたしております。三十三年度においては、若干の予算も計上してもらって、これを引き続きやるということであって、この研究をずっと進めていって、秋の終りか、十二月ころには答申を得るようにしたい、こういうふうに思っております。
  5. 川野芳滿

    川野委員 間接税等の問題につきましては、税制調査会において今日でも検討させておると、こういう御答弁がございましたが、あまり研究調査に時間をかけておりますと、今回のような値下げ問題が実は起って参ります。と申しますことは、承わりますると、今度の酒税引き下げの問題については、大蔵省としましては、あまり気乗りしなかった。ところが、某閣僚によりまして突然酒の値下げ問題が起りまして、大蔵省はやむなくこれに屈して今回の値下げ案を提案するに至った、こういうようなうわさも私は聞くのであります。これは、大蔵省にとりましてもあまり好ましきことでもございませんし、酒等税金が、実は六百倍にも達している点から見ますると、非常に高いということは万人の認める点でございますから、ぜひ一つさらに税制調査会答申を促進させていただいて、そして来たるべきときにはさらに大幅な減税を実行されんことを希望する次第であります。  次に、久しからずして酒の販売価格決定されると存じますが、もし今日販売価格等決定を見ておりますならば、御発表を願いたいのでありますが、おそらく決定はないと考えますから、どういう方針販売価格等をおきめになるのであるか、この点を一つ質問してみたいと思います。
  6. 原純夫

    ○原(純)政府委員 お願いしております酒税法改正案も、多分三月一ぱいで成立さしていただけるだろうと思っておるわけであります。そうなりますれば、四月の一日から酒税が下る。下る際には、これに応じまして販売価格を変えるというようなことになろうと思います。まだ一月余りございますので、その間に、販売価格決定についての各般の条件を十分検討いたしまして決定をいたしたいと考えております。その際、いろいろお話の出ておりますように、税を引き下げるのであるから、その全部をなるべく消費者利益を与えるようにというような声が一方に強くございます。他方製造業者なり販売業者——販売業者の中でも卸、小売というような向きが、それぞれ自分のコストを十分見てほしいというような要望もございます。これらについて十分な検討を加えて、妥当な結論を、ただいま申しました時期にきめたいという考えでおります。
  7. 川野芳滿

    川野委員 清酒並びにしょうちゅう業者から値上げ申請がなされておることは、御承知通りであります。しょうちゅうにつきましては、昨年の末にすでに値上げ申請がなされておりますので、これに対して、値上げ数字は別問題として、大体において値上げが妥当であるかどうかくらいの御検討は済んでおると存じますので、しょうちゅうの値上げ申請は妥当であるかどうか、さらに、先般清酒においても、値上げ申請があったのでございますが、これに対しましても、数字は別問題として、値上げの点が妥当であるかどうか、この点を伺っておきたいと存じます。
  8. 原純夫

    ○原(純)政府委員 ただいまの御質問に対する答弁を、具体的にどうというふうな形て御答弁いたしますと、まだ一月余りあるマル公決定について、非常に早過ぎるというような意味から、いろいろな問題を起しますので、抽象的なお答えになることをお許しいただきたいと思います。  お話のしょうちゅうについての原価高騰要素というのは、主としてイモ値上り、その他原料費値上りを中心とするものであろうと思います。私どもも、イモその他の原料費値上りによって、原価が相当上っておるということは、その通りだと思います。従いまして、四月に価格改定をいたします場合に、製造者販売価格、これは税が下るのだから、それだけすぽっと下げろというままではいけない。やはり他面で上る他の原価要素、今申しました原料費というものの値上りを調整してきめなければならないというふうに思っております。清酒につきましては、事柄がより幅が狭い、そしてなおどういう形で処理するかというような点につきましては、十分検討いたしたいと思っております。もちろん清酒用アルコールにいたしましても、あるいは米の値段というようなものにいたしましても、若干の値上りがあるということはもうはっきりしておりますので、これらをどういう形で調整するかというようなことを、ただいまいろいろ研究中でございます。それだけの要素としては、そこは値上り要素があることははっきりありますが、それをどう処理するかということは、なおただいま申しましたように、一月あまり検討の時間をお与えいただきたいと思っております。
  9. 川野芳滿

    川野委員 私に届きました陳情書によりますと、清酒は、大体原料高が十六円程度、こういうことになっておりまして、従いまして、一升につき十六円程度値上げを認めてもらいたい、こういう陳情を私受け取りました。さらにしょうちゅうは、これは、数字を書いた陳情書ではなかったのでありますが、承わりますと、十五円程度値上げを認めてもらいたい、こういう要望のようであります。しかし、私は、ここでその数字の点については触れたくないのでありますが、かくのごとき数字が出る以上は、相当根拠のある数字とも私は考えますから、かくのごとく多額の数字が出る以上は、この問題は当然取り上げていただかなければならない問題ではなかろうか、かように考えております。ところが先般井上委員から、今回の四月一日の減税時における原料値上げによる同時値上げは認めないという意味の御質問があったようであります。しかし、昨年の末に、しょうちゅう等におきましては値上げ申請があったわけでございます。当局は、早くそういう点を調査して、そうしてこの問題についての検討を終えられ、値上げが適当である、こういう考えならば、早く値上げをお認めになっておるならば、先ほど申しました井上委員発言等の問題も、私は起らなかったと考えまするが、この点についての御答弁を願いたいと存じます。
  10. 原純夫

    ○原(純)政府委員 おっしゃる通り公定価格をとっている場合に、原価がはっきり上るという際は、そのつどこれを改定するということを一応考えるべきだと思います。ただ、何分にも昨年からことしにかけましては、日本の経済において、国際収支の改善ということのためにあらゆる努力をしぼって物価を安定させる、できればむしろ物価引き下げていく、そうして貿易の条件をよくして経済を立て直そうということで、国全体ががんばってやっている時期であります。従いまして、昨年の暮れにその問題が起りました際も、事情はある。しかしながら、そういう全般的な見地から、私鉄の運賃にしましても、その他のものにしましても、政府の手で行う価格引き上げということは極力避けようというような大方針がございまして、そのため、業界に対しては大へん気の毒なわけでありますが、しばらくがまんをしてほしいということを申したわけであります。ちょうど一方で減税の問題が起り、四月に価格改定が行われるという時期がありますので、その際は、そういう原価値上り要素も加味して調整をはかるというようなことになって参ったわけでございます。
  11. 川野芳滿

    川野委員 三十一年の六月に物価改定がございまして、すなわちその節におきまして、原料が下ったという理由で、新式しょうちゅう二十五度について、一升当り十三円の値下げを実行された、さらに清酒においては、一円の値下げを実行された、すなわち原料が下がったということになりますと、直ちに大蔵省マージン値下げを断行された、こういう点から考えますと、原料が上ったということになりますならば、値上げを認めることが当然であると私は考える。そこで、今業界におきましては、四月一日に、数字は別問題といたしましても、果して減税と同時に諸物価高騰理由による値上げを認められるかどうかという点について、非常な危惧の念を持っておりますのが今日の実情であります。そこで、数字の問題は、これは後日検討の上でけっこうでございまするが、諸物価高騰の因によるある程度生産費等値上げは認める、こういうことぐらいは御発表になることが、業界安定のためにも必要であると私は考えますので、この点について、一つ見解を述べていただきたいと存じます。
  12. 原純夫

    ○原(純)政府委員 ただいまの点は私どもははっきり割り切って考えております。おっしゃる通り減税値段は下る、しかし、公定価格を構成する原価要素値上りがあるというものについては、それはそれとして引き上げ考える。減税の減と引き上げの増とがどういう差引計算になるかということは計算の上でございますが、両様の面が今度の改定の際にあるということは、はっきりそういうように考えております。
  13. 川野芳滿

    川野委員 政府は、先般アルコール値下げを御発表になりました。すなわちアルコール値上げ発表原因は、その原料であるカンショの値上げによりまして、やむなく値上げ発表せねばならないという点から値上げ発表になったものと考える、政府の御製造になっておりまするアルコール値段は、いち早く値上げ発表され、民間の作っておりまするしょうちゅう等におきましての値上では手控えになっておるということは、非常に不公平であると私は考えるのであります。そこで、どうか一つ、いろいろの議論もございまするが、原料値上りというものがわずかの値上りでございますならば、これは問題はございませんが、大幅の原料値上りという点については、ただいま申しましたように、政府製造アルコール値上げを見るに至った、この点から考えましても、はっきりいたしておる点でございますから、来たるべき公定価格をきめられる際におきましては、減税の分が一升について幾ら幾ら、さらに原料値上げ分による値上げ幾ら幾ら、従って、今回の公安価格かくかくの額にきまった、こういう点をはっきりしていただくならば、四月一日における原料値上げに対する市価の値上げというものは国民が認めるもの、かように私は考える次第でございます。いろいろ議論をする人もございますが、政府におきましては、この点をはっきり腹をきめて、値上げを認めるべきものであると私は考えるのであります。  さらに、今回の公定価格改定に当りまして、卸、小売販売マージン引き下げ問題が起っているようであります。卸業界並びに小売業界の騒いでおるところから見ますると、おそらくこういう問題が、大蔵省並び国税庁において議題となって検討されておるのじゃなかろうか、かように考えるのでございまするが、この点についての御見解を承わってみたいと存じます。
  14. 原純夫

    ○原(純)政府委員 酒税が下って卸屋さん、小売屋さんが仕入れてくるお酒の値段が、その分だけ、あるいはただいまお話の出た他の要素を調整してとにかく下る、商品値段が下って参りますれば、それに対する卸、小売利益、こういうものももとのままのワクをそのまま置いておかなければならないということではないと思います。やはり商品が安くなれば、卸、小売マージンの絶対額は減るのが当然だろうと思います。ただ一方で、酒の卸、小売については、価格統制もとに置いて、自然な条件の場合に比べて押えられているという意味から、これを下げないでほしいという要望のあるのは承知いたしておりますが、その要望だけでも参りかねる。この辺は、冒頭に申し上げましたように、諸般条件を十分勘案して、四月までの間に検討してきめて参りたいというふうに考えております。
  15. 川野芳滿

    川野委員 昔から酒とたばこ、こう申しておりますが、たばこマージンは八厘であるが、酒は清酒が一割、一級酒が一割四厘、二級酒が一割一分三厘、合成酒が一割二分九厘となっておるようであります。しかし、たばこはほとんど現金販売であります。さらに、専売公社小売店の店頭に持ってきて売らせておる、こういうのが現在の実情であります。ところが、酒は御承知のように、現在におきましてはほとんど掛売りである、さらに自宅まで配達をいたしておりますし、さらに相当な宣伝費を使っておる。こういう点から考えますと、たばこの八厘に対して酒の一割程度というものは、これはマージンが少な過ぎるとも考えられるわけであります。そこで業界におきましては、ぜひ一五%にマージン値上げをしてもらいたい、こういう陳情をいたしておる現状下におきまして、なるほど一割程度の税の引き下げのために、酒の価格というものがある程度下ることは、これは事実でございまするが、しかしこういう機会に、ただいま申し上げましたように、マージンを上げてもらいたい、ことにたばことの比におきまして、そう酒がまさっておるとも考えられないこのマージン引き下げるということは、いろいろな業界にも波紋を起すのでございますから、この卸、小売マージンは、さらに現在のままにとどめておきたいと私は考えるのでございまするが、この点について、もう一度御答弁を願いたいと存じます。
  16. 原純夫

    ○原(純)政府委員 先ほど申しましたように、根本的な私どもの態度は、公定価格決定の際に打も出したいと思うのでありますが、ただいまお話しの小売マージン引き下げないということにつきましては、やはり一方で、消費者利益というものも考えなければなりません。また酒の小売屋さんのマージンの適正の度合いを保つということも考えなければなりません。それらの観点から、戦前に比較し、あるいは他の物資小売マージンと比較し、あるいは酒の小売業利益の状況というようなものもいろいろ考えてきめて参らなければならない。結論としては、私は、必ずしもただいま仰せの通り小売マージン減税になっても動かさないということを、ここでお約束するわけにはちょっと参らない。ただいま申しましたような点を含めて、いろいろ検討の上きめて参りたい。十分御意見を本日は承わっておかしていただきたいと思います。
  17. 川野芳滿

    川野委員 私、この点については、これ以上質問をいたしませんが、しかし先ほど来申しますように、たばこマージンと比較いたしまして、決して酒のマージンが高いとは考えられません。ことに今回の減税は、酒類業界八団体が一致して要望し、そうして数年来運動を続けて参った問題であります。これも、先ほど申しましたように、スズメの涙ほどの減税のために、ビール業界が脱落いたしまして、そうしてビール業界の非常な憤激を買い、さらにこの減税を期して、卸マージン小売マージンが少くなるということになりますと、卸業界並びに小売業界にまた非常な憤激をもたらすことであろうと私は考えます。こういうことになりますと、わずかな減税業界の混乱を引き起すということにもなりますから、どうか一つマージン並びに小売マージンに対しては手を触れないように、私はこの際希望を申し上げておく次第であります。  さらに、今回の販売価格等の設定に業を煮やすと申しますか、手をやかれたと申しますか、こういう点から、マル公撤廃の問題が非常に差し迫ったような感が私はいたすのであります。マル公撤廃の問題に対する所見を承わってみたいと存じます。
  18. 原純夫

    ○原(純)政府委員 マル公の撤廃問題でありますが、これは、戦争中、御承知のような経緯で一般マル公と一緒にできたのでありますが、戦後だんだん経済が正常に復して、そうして諸般統制が解けて参っております中にあって、酒のマル公というのが、雑酒を除いてはまだ残っておるような状態であります。これについて、世間で、なぜマル公をなお存置しておくのかという声が相当聞かれます。私どもも、これは、こういう基本条件推移に伴って、いずれは撤廃しなければならないということを年来考えておりました。マル公は、本来戦争経済、あるいはその他非常に経済の仕組みが自由にまかしておいてはきちんと動いていかないというようなときのものでありますので、原料も自由になり、あるいは製造したものの販売もだんだん自由になってくれば、当然廃止して、価格面に現われる競争を通して、生産者利益消費者利益を調整するという価格の機能を営ませるということでなければならないと私どもは思います。従いまして、これは、やはりそういう条件推移に応じて、だんだん撤廃の方向に持っていくということであろうと思います。あまりいつまでも持っておりますと、今度のようにおしかりを受けて、大へん恐縮なんでありますが、マル公をはずしておれば、自然の条件価格に反映される。そして、その価格を通して一生懸命いい酒を安く売ろうという努力もでき、消費者も選んで買うというようなことになるわけでありますから、やはりこれは撤廃の方向に向うという態度でなければならないと思います。ただ半面、これが実際上非常に重い酒税を確保する上に、市場の規制のために非常に役に立っておるという意味で、私どもこれにも相当のいい面があるということを考えております。ただ酒税を円滑に集めればよろしいという身勝手なことだけではなくて、重い酒税を背負って業界がいろいろ経済行為をしておられる際に、マル公制度が相当な力になっているということもありますので、業界の将来の安定のためには十分慎重に配慮しながら、この間の推移を見詰めていかなければならないというふうな考えで、この問題には対処しておるつもりですが、今後もそのつもりでやって参りたいと思います。
  19. 川野芳滿

    川野委員 酒は、御承知のように、六割あるいは酒によっては七割が税金であります。ほとんど税金であるといっても過言でございません。こういうもののマル公を撤廃して、野放しにするということになりますと、非常な危険が伴うものと私は考えます。そこで、マル公を撤廃した後におきましては、おそらく協定価格をきめさせてこれに対処しよう、こういうお考えであろうと存じまするが、これはどうでございましょうか。
  20. 原純夫

    ○原(純)政府委員 マル公を撤廃いたします場合も、どの酒類からやるかというような問題がありますが、たとえばいろいろいわれておりますしょうちゅう合成酒というようなものですと、もうすでに需給の状況は、供給が不足だというような状態でない、相当供給が豊富になって、競争が激しい状態になっております。従いまして、マル公を撤廃した場合に、さらに競争の激化ということを通して、一歩つまずくと非常なくずれが来るというようなことが心配でありますので、そういう際には、法律で許されておりまする協定価格業界自体できめようという声も出てくるだろうと思いますし、また次第によっては、政府側も何らか態度を表明するということもあり得るだろうと考えております。
  21. 川野芳滿

    川野委員 私は、かりにマル公が撤廃されるという事態が起ったならば、当然協定価格をもってある程度の協定をさせることを、当局は指導をしなければならない、かように考えております。ところが現在の酒団法は、加入脱退が自由であります。従って、この組合協定に協力しないという考えの人は、脱退すればよいわけですから、協定価格である程度値段の協定をさせることを考えましても、現在の酒類団体法におきましては、おそらく加入脱退が自由であるという点から考えて、円満にいくものとは考えられません。そういう点から考えまして、現在の酒団法の強化、すなわち先般中小企業団体法ができましたが、これは、場合によっては強制加入を命ずることができることになっているわけでございますので、この酒団法においても、改正いたしまして、大蔵大臣が認むる場合は、強制加入をさせるくらいの強い法律にする必要があるのではなかろうかと考えますが、いかがでございましょうか。
  22. 原純夫

    ○原(純)政府委員 酒税の確保をはかり、また酒の業界の安定をはかるという見地から申しますと、お話の御趣旨はまことに望ましいという気もいたすわけでございますけれども、やほりこの問題は、日本の経済界で、そういう協定的、カルテル的な行為をどういうふうに規律して参るかという、経済全般の運営についての非常に大きな心棒をどう立てていくかということと関連する問題でありますので、加入の強制をするということについては、相当慎重でなくてはいけないと思います。中小企業団体法の実施の推移等も今後見なければなりませんし、酒類業の方は、またそれとしていろいろ特別な性格を持っているわけでありますから、それらも十分かみ合せて慎重に考えていかなければならない。私ども、現在としては、国が強制までやらなければどうにもならないというまでの気持は、率直に言って持っておりません。おかげさまで酒の流通秩序、生産秩序もかなりきもんとできておって、現在の酒団法による組合に対するアウトサイダーというのは——私実は、現在アウトサイダーというのがあるのを知らないくらいで、問題にもならないような状態であります。だんだん条件が苛烈になってくると、そういう問題が出るかもしれませんが、ただいま小のところ、まだそこまよで考える気持になっておりませんし、将来の問題として十分研究させていただきたいと思います。
  23. 川野芳滿

    川野委員 局長は、非常に甘い考えを持っておられるようでありますが、現在におきましても、清酒原料米希望配給制度実現期成同盟会というものが実は業界の一部にはできておりまして、昭和十一酒造年度のの実績を変更しよう。これは、漸次変更するという含みでございますが、こういう考えもとに、実はアローアンス問題が起っておりまして、運動を起しているような実情であります。さらに復活期成同盟会におきましても、米の配給問題について、いろいろと問題を起しておるのが現在の実情であります。こういう点から考えますと、今後業界というものは、今までのような泰平の夢をむさぼっておって、円満なる運営ができるかどうか疑問であると存じます。そういう点から考えますと、千八百億というまことに莫大なる税金徴収の責任をになっております団体でもございます。一つ強い団結を示すための法の改正ぐらいは、当然当局として考えておかなければならない問題ではなかろうか、かように考えますので、この点について、もう一度見解をただしてみたいと存じます。
  24. 原純夫

    ○原(純)政府委員 酒の行政をどう持っていくかということにつきましては、やはり統制と自由との間を非常に賢明にかみ分けてと申しますか、調整をはかつていくということが、現在における酒類についての行政の一番大事な点だと私ども考えております。統制ということがありますと、ある意味では非常にやりいいということがございますが、あまりに統制が強くなり過ぎますと、そこで業界が改善すべきものを改善しない、努力すべきものを努力しないというようなことも出て参ります。やはり自由による競争の利益というものを通して消費者利益も確保する、同時に、業界自体の合理化、改善というようなことも実現していくという着意を一方で強く持たなければならないというふうに考えるわけであります。その両者を聡明に組み合せてやっていくということが、非常に大事なことだと思っておりますので、お話のお気持も私ども十分わかるお気持でありますが、反面、そういう自由な競争についての面も十分考えていかなければならぬというようなとで、大へんヒョウタンナマズのようなお答えで恐縮でございますが、十分御意見も承わって御参考にしながら、今後慎重に措置をして参りたいというふうにお答えいたしたいと思います。
  25. 川野芳滿

    川野委員 酒の税金が他の物品税のごとく、二、三割かかっておるのでございますならば、あえて私は、ただいま申しましたような質問をしないのであります。しかし六割あるいは七割、ほとんど酒は税金であると言っても過言でないほど税の重い酒についてのことでもございますから、私は、この公定価格を廃止するに当りましては、慎重な態度で臨まなければ非常な大問題が起ると考えますから、この点は、どうか一つさらに御検討をお願いしておきたいと存じます。  なお衆参両院におきます大蔵委員会の決議は、当然当局は尊重していただくものと考えますが、これについての考えを尋ねてみたいと思います。
  26. 原純夫

    ○原(純)政府委員 委員会の御決議は、もちろんできる限り尊重してやって参るというのは当然でございますが、ただいまのお話は、先般二十六国会で御決議になりましたものをお考えでおっしゃっているのだろうと思い、そういうふうに申し上げます。
  27. 川野芳滿

    川野委員 二十六国会におきまして、参議院において附帯決議がなされました。これを私朗読いたしますが、「政府は、本法の施行に当り、次の事項について必要な措置を講ずべきである。一、酒類業界安定に資するため原料及び生産方針、免許等については、当該組合の意見を徴すること。一、酒類の種類等の表示方法を、消費者が容易且つ明確に識別しうるよう改善強化すること。一、密造取締の成果の完璧を期するため、適当の施策を講ずること。」これであります。この第三番目の密造取締りの問題でございますが、「密造取締の成果の完璧を期するため、適当の施策を講ずること。」こういう点等から考えますと、ある程度の予算が伴いますことは、当然であります。しかるに、この密造取締り費の予算は、昭和三十二年度に比較いたしまして、三十三年度予算は八百六十六万三千円の大削減をされておるようであります。これは、まことに遺憾千万でございまして、この附帯決議の線にももとると考えますが、この点についていかがでございますか。
  28. 原純夫

    ○原(純)政府委員 ただいまの御決議は、私も記憶いたしております。これは、委員会における論議を経まして、私どももそういう線を常々考えておるところでありますが、三点とも、御決議の趣旨を十分尊重してやって参るというふうにお答えも申しておる次第でございます。なおその中で、密造の取締りについてさらにお触れになったわけでありますが、密造の取締りについては長年酒税の制度を実効的ならしめるために、非常に重要な問題として努力をいたして参っております。特に戦後社会経済の乱れに伴って、非常に密造が多くなっているのを、非常な努力をあげて押えるということをしてきております。これについては、政府だけでなく、業界も、あるいは一般にもいろいろ御協力を願っておるわけで、密造取締りの経費も年々相当額を計上いたしております。三十二年度の一億五千百万に比べまして、三十三年度は一億四千二百万ということで、若干減少いたしておりますが、年来の努力で、だんだん密造の取締りということも進んで参り、一方今回は待望の減税がある程度できるというようなこともありますので、国費多端の折、ほかの財政需要も多いという折でありますので、これで私ども全力を尽して密造防止を推進して参りたいというふうに考えておるわけでございます。
  29. 川野芳滿

    川野委員 予算の削減は、非常に遺憾な問題でございますが、時間の関係もございますから、これに対しての質問は後日に譲りたいと存じます。  なお三十二年度におきます密造取締り費の各国税局ごとの予算金額、さらに各国税局の税務署ごとの予算金額、これを一つ資料として御提出を願いたいと存じます。  なお昭和三十二年度の酒の生産方針問題につきましては、実は業界におきましても非常に大きな問題がございます。すなわち中国、四国、九州地方は減石論、近畿、東京、北海道地方は増石論、これで実は意見を戦わせまして、そうして各ブロックごとにもいろいろと意見を戦わせました結果、大体三十一酒造年度の程度、こういうことに議論がまとまりまして、酒造組合中央会におきましては、原料米総石数百三十二万二千石、清酒販売見込み石数を三百三十六万石と決定をしたのであります。ところがこれに対しまして、国税庁は、圧力と申しますか、いろいろな手段を講ぜられまして、結論的に申しますと、原料米総石数百三十四万一千石、清酒販売見込み石数三百四十二万石と決定をさせました。私は、さきに附帯決議をいたしました第一項の酒造業安定に資するため原料及び生産方針は当組合の意見を徴すること、こういう附帯決議を尊重されるということになりますならば、組合が決定いたしました数字大蔵省といたしましてもうのみになることが、この附帯決議を尊重されるゆえんである、かように考えますが、しかし、ただいま申しましたように、いろいろと工作されまして、そうして原料石数を増すように仕向けられました態度に対しましては、私はまことに遺憾千万であります。私は、今年の問題はもう決定を見た問題でございますから、かれこれ申し上げたくはないのであります。しかし、附帯決議を尊重するという点から申しますならば、政府といたしましても、今後御注意を願いたいと存ずる次第でございまするが、この点について、見解を承わってみたいと存じます。
  30. 泉美之松

    ○泉説明員 お話しのように、生産方針決定につきましては、十分に業界の意見を反映するように努めておるのでございますが、何らか工作を加えたというふうにお話がございましたのは、心外に存じております。ただ、先ほどお話しがございましたように、三十二酒造年度の生産方針につきましては、業界まれに見るほど意見が分れたのでございまして、増産論、現状維持論、減産論というふうに、その間かなり大きな意見の開きがあった次第でございます。それで、業界の方におかれまして、一応三百三十七万石の生産ということをおきめになったのでありますが、これは、現状維持の数字よりは少し多いのでありまして、三百三十万石の前年度に比べまして三百三十七万石と、七万石は増産するという方向にきまったように承知いたしております。その際問題になりましたのは、生産方針決定に当っては、三百三十七万石の酒を作るには百三十二石でいい、しかし、米はできるだけたくさんもらって、アルコールの使用量をできるだけ減らしたい、それが一点でございます。それからもう一点は三十三会計年度でずっと酒が売れていきまして、三十四年の二月に、三十四会計年度へ持ち越すときの古酒の持ち越しをできるだけ少くする、二十万石あるいはそれ以下にするということがもう一つの要点であったわけでございます。それで、私どもといたしましては、この二つの重要な御意見をできるだけ尊重するという趣旨のもとに、生産計画をきめたのでございます。ただ業界数字をおきめになりましたのは十月初めでありまして、その後の消費の状況が反映されておりませんので、その後の消費の状況を反映してきめた数字が三百四十二万石ということで、業界のおきめになりました数字に比べまして、約五万石ふえております。これはもっぱらその後の状況が変ってきたということに基くのであります。私どもは、ただ単にこれを勝手にきめたわけではございませんで、業界の方にお諮りいたしまして、数字の基礎がこういうふうに変ってくるとこういうふうになるということを、よく御説明申し上げまして、理事会におきまして、満場一致で御賛成を得たのでございます。業界に別段圧力を加えたものであるとは考えておらない次第であります。
  31. 川野芳滿

    川野委員 この問題についての私の意見も、まだあるわけでありますが、どうか来年度は、さらに組合の意見を、徴せられて、そうして、組合が決定いたしました生産方針大蔵省は同意される、こういう方向にしていただきたいと存じます。  最後に、米の問題を少しく御質問申し上げてみたいと存じますが、酒造米の昭和三十二年度の価格は、すでに決定を見ましたかどうか、その点を尋ねてみたいと思います。
  32. 武田誠三

    ○武田説明員 昨年産米の酒米の価格につきましては、石当り一万二千八百八十円ということにいたしております。
  33. 川野芳滿

    川野委員 三十二年度の原料米ですか。
  34. 武田誠三

    ○武田説明員 昨年とれました米の、ことし作っておられる酒の原料になる米であります。
  35. 川野芳滿

    川野委員 酒造米の原価が配給米に比しまして非常に高い、まことに遺憾千万に存ずるのであります。酒は、私が申し上げるまでもなく、千八百億という莫大な歳入をもたらすところのものでございます。従いまして、酒造米の問題については、農林省としてもできるだけ酒造に協力するような態勢に置かれ、さらに——般配給米と値段を異にするということは、まことに遺憾千万でございます。配給米と酒造米との値段の差が現在あるわけでございますが、これは、どういう理由でそういうことになるのでございますか、この点をお尋ねしてみたいと思います。
  36. 武田誠三

    ○武田説明員 私どもの方でお米の売却をいたしておりますが、御承知のように、一般の家庭に配給をいたしております米、それからお酒、あるいはみそ、菓子その他の原料用のお米と、大ざっぱに分けますと二つになるわけでございます。一般消費者に対して配給をいたしておりますお米につきましては、これは家計の安定その他経済の安定ということを主眼にいたして、現在政府で相当額のコストの負担をして価格をきめておるわけでございます。一方で、そのほかの原料用米につきましては、そういったものと別の考え方から、一般の消費規制を従来から続けて参っております関係等もございますが、主として消費者に対します配給米を確保していくということがおもなねらいでございますので、それ以外の原料米につきましては、その当時の米の価格というものを想定いたしまして——それをどういうふうに想定するかという方法については、いろいろあると思うのでありますが、現在では、お米を集荷いたしますときにかかります最高の集荷経費、最高の買い入れ価格というものをベースに置きまして算定をいたしておる、こういうことでございます。
  37. 川野芳滿

    川野委員 私の質問は、千八百億という莫大な税金をとる酒に対して、特に一般の配給米よりも高い値段に酒造米をきめられまする、その理由を聞いておるわけでございます。簡単でけっこうでございますから、もう一度御答弁を願いたいと思います。
  38. 武田誠三

    ○武田説明員 私の方としては、酒米だけの価格でなく、そういった酒その他の原料用に売り渡します米の値段をすべて同じようにきめておるわけでございます。酒でありますから特にどうこうということでなくて、原料米ということできめておるわけでございます。
  39. 川野芳滿

    川野委員 酒以外の原料用米というものは、数量がわずかであろうと私は存じております。そこで、そういう原料米を高くするというのは、言葉をかえて申しますならば、酒米を高くする、こう言っても私は過言でないと存じます。ほかの数量はわずかでございます。そこで私は、質問を申し上げておるわけでございます。千八百億という莫大な税をとるこの酒米を高く売られるというのは、私が考えますのには、食管会計の赤字補てんのために、私は高く値段をつけて売られておるのじゃなかろうか、かように考えておりますが、いかがでございますか。
  40. 武田誠三

    ○武田説明員 特に食管会計の赤字を、酒米その他の原料米を上げることによりまして埋めるということの考え方に出ておるわけではございません。むしろ米の現在の価格というものが、自然に放置いたしますと、御承知のように非常に高くなるわけでありますが、そういったものとの関係も考えていかざるを得ないというふうに私は考えております。もちろん現在の集荷の平均的なコストよりも、酒米の価格の方がやや高めでありますから、そういった意味で、食管会計としては、酒米の売り値によりましての一部の赤字補てんということは、結果的に出て参っておりますが、赤字を補てんするということだけの目的で価格をきめておるのではありません。
  41. 川野芳滿

    川野委員 そういたしますと、酒米をことさらに値段を高くするということは、私は不合理のように感じます。あなたの意見はどうですか。
  42. 武田誠三

    ○武田説明員 これは、一般消費者価格と同一でよいというふうには、私どもちょっと考えておりませんので、これは、やはり消費者に対します配給米の価格を、食管法の規定に基きまして、消費者の家計の安定ということを目的にきめております。それ以外の原料米につきましては、われわれの方で算定をいたしてみまして、妥当と思われるコスト価格その他を勘案いたしてきめておる、こういうことでございます。
  43. 川野芳滿

    川野委員 酒が、先ほど来申しますように、千八百億という莫大なる歳入を負担しておらないものでございますならば、これは、あなたの御説明通り、ある程度高く売られましてもやむを得ないと存じます。しかし、そういう貴重なものを作るものでもございますから、ことさらに上げるならば、それだけの理由がなければならない。すなわち、酒米は普通の配給米よりもりっぱな米でなければならない。りっぱな米でなければりっぱな酒ができないから、従いまして、りっぱな米を配給するためにも、ある程度値段を奮発していただかなければならない、こういうような理由等があるならば、私は納得いたします。しかし、現在の実情を調べてみますと、値段は高いのでございますが、その配給される米に対しましては、そう大した御便宜も実は与えられておらないようでございます。すなわち、従来この酒米というものは、りっぱな米でなければりっぱな酒ができませんから、従いまして、酒造家というものは、契約栽培とか、あるいは農村に出張って激励をいたしまして、りっぱな米を作って、そうしてそのりっぱな米でりっぱな酒を作っておったというのが、過去の統制にならない前の実情でございました。しかし、統制になりました今日におきましても、米の原料がりっぱな原料であるかどうかということは、酒の品質に非常に関係があるわけでございますから、従いまして、値段が高いのでございますならば、りっぱな米を、優先的に一つ業者の便宜をはかって配給をしてやる、こういうことにならなければならないと私は考えておるわけです。しかるに、今日の実情を見ますと、日本で一番有名な酒の産地は灘でございますが、従来この灘地方の酒米は、あの付近の酒米、あるいは岡山県地方の酒米をもってこれに充てておった。しかるに今日においては、東北地方の米を灘まで割り当てておる。非常に品質が悪い、さらに広島及び山口の業者におきましても、北陸や山陰地方の軟質米を使わせております。こういうことから考えますと、値段は高いわ、米は悪い米を配給しておるわ、ことさらに悪いとは申しませんが、普通の米を配給しておるわ、これでは高い値段で売っておって、そうして悪い米を配給しておると非難されても私はやむを得ないと存じます。そこで、一般配給米と同じ値段でお売りになりますならば、これは、そういう業界の便宜をはからずして、勝手な米を御配給になってもけっこうでございますが、ことさらに高い値段で米を配給する、こういうことになる以上は、業界の声を聞いて、できるだけ業界の希望に沿うような米の配給をされることが当然であると私は考えますが、これについて御答弁を願いたいと存じます。
  44. 武田誠三

    ○武田説明員 酒造米の質の問題でございますが、従来の自由販売時代に、契約栽培というのがございましたのは、お話しの通りでございます。現在、酒米の元米になるお米であると存じますが、酒米につきましては、おおむね従来の契約栽培に似たような形で、それぞれ酒米に好適の品種につきまして、酒米として生産をし、かつそれを買い入れて酒屋さんの方にお売りをしているものが、全体の中で、昨年産米でいいますと五十万石ぐらいのものがございます。そのほかの一般用のものでございますが、これは、できるだけ上位等級のものを充当するように配給をいたしておりますが、ただ場所的な関係、あるいはそれに向けます米につきましては、御承知のように、米の全体の需給の操作を私の方でやっておりますが、一方でいろいろ運賃、保管料その他コストが非常にかかるわけでございますが、従来から配給米その他の運送処理につきましては、交錯運送というものを極力避けております。そこで、不足の県に対しまして酒米その他の原料米を売ります場合には余っております県からお米をとっていただくということを原則にして、従来からお願いしておるわけであります。そういうようなことの関係から、お話しのような東北、北陸等のお米を一部酒屋さんにもとっていただくというような結果に相なっておるわけであります。
  45. 川野芳滿

    川野委員 余っておるところからとらせておる、こういう御答弁でございますが、そういたしますならば、何も酒造米だからといって、高く売る必要はなかろうと思います。一般のお米よりも高く売られます以上は、りっぱな生産地の米を酒米に配給いたしますと、一般の食糧米がなくなる、こういうことがありましても、そういうところには、他の方面から米を持ってきて配給するのが、至当でないか。もちろんそういたしますことについては、運賃等が要りますことは当然であります。しかし、そういうところには運賃等が要りまする関係から、酒造米を高く売られるものと考える、酒造米を高く売られまする以上は、りっぱな米を配給する、りっぱな米を配給するために、その地方に食糧米の配給米が不足する場合は、他から持っていく、こういうことにせなければ、酒造米を高く売るところの理由が立たない、かように考えます。酒は、米一石から約七万円の税金をあげておるところの財政物資であります。一石七万円という莫大な税金を取っておる酒の製造に対しましては高い値段で売られまする以上は、もう少し親心を持って、そして高い値段で売るその業者に対し、価値と申しますか、りっぱな米を配給する、こういう操作ぐらいはしていただきたいと存じます。
  46. 武田誠三

    ○武田説明員 酒米の原料の売り渡しでありますが、これは、御承知のように、年々酒米に対します原料がふえて参っておるわけであります。私どもの方としては、集荷の数量、その年の一般配給の計画、その他の関係から、その数量の御相談を国税庁の方にもお願いいたしておるのでありますが、その場合に、ふえます数量につきまして、私の方としては最初から計画その他も立つわけではございませんので、一応前年の実績その他で、それぞれの県におきます需給のバランスをはじいておるわけであります。そこで、そういうことに基きまして、今回お話しのごとく一部東北、北陸等からとっていただかなければならぬ、こういうことが起って参るわけであります。お話の趣旨につきましては、今後とも操作の上におきまして、できるだけ国税庁の方ともお話し合いを進めたいと思いますけれども、なかなか全体の需給を操作して参ります上で、御希望に沿いかねる点も多々出て参ると思いますが、お話の点につきましては、よく検討いたしたいと存じます。
  47. 川野芳滿

    川野委員 従来そういう事態が起っておりますならば、私は、ここで質問はしないのであります。従来は、そういう東北地方の米が灘地方にいった実績は全然ないわけでございます。それを、今年初めてそういうことをされますから、問題が起るわけであります。繰り返して申しますが、米一石から七万円も取るというまことに貴重な財政物資でもございますから、その点を深く考えていただきたい。業界の便宜と申しますと、言葉は悪いのでありますが、りっばな酒を作ればそれだけ実は税金が取れるわけでございます。どうか、一つそういう意味で、配給に万全の御配慮が願いたい。  まだいろいろ質問があるわけでございますが、他の委員から質問があるそうでありますから、私の質問は、本日はこれで終ります。
  48. 横山利秋

    横山委員長代理 淺呑忠雄君。
  49. 淺香忠雄

    ○淺香委員 主税局長に、物品税のことでお伺いいたします。御承知通り、今度酒税引き下げられました。つきましては、物品税の問題で、この委員会が数年来あらゆる角度から検討して参ったことも、主税局長は御承知のはずなんであります。そこで、この物品税に対して、担当の局長としてどうお考えになっておられるのか、その基本的なお考えをまず承わりたいと思います。
  50. 原純夫

    ○原(純)政府委員 物品税について、基本的にどう考えておるかというお尋ねでございまして、非常に範囲の広い大きな問題でございます。これにつきましては、教科書的な税の地位とかなんとかいうようなことでなくて、おそらく税率の調整なり、あるいは課税最低限の問題なり、あるいは課税品目の範囲の問題なりというようなことをお気持に置いてのお尋ねだと思いますが、そうでありますならば、この問題は、ただいま根本的に再検討をいたしておるという段階でございまして、それの結果を持って私ども考えをまとめ、またお答えを申し上げたいというふうに申し上げることに相なると思います。二十六国会で、本委員会で附帯決議をつけられましてから、私どもさっそく問題に取り組んだわけでございますけれども、何分、これは淺香委員も御案内の通り物品税自体の内部におきましても、相品品目間のバランス、あるいはそれは税率だけではなくて、課税最低限についても、現状がそのままよろしいかどうかということになりますと、いろいろ議論のある問題が多いのでございます。それで、それを抽象的な議論だけで解決しようとなりますと、これは、もう何と申しますか、おもちゃ箱をひっくり返したようなことになるということは、従来の実際の例に見てもそうでありますので、今度せっかく抜本的にやれというお話でもあるし、私どもも、もうそろそろ直接税一本やりの減税ということではいけない時期だというふうに考えましたので、ここで、事柄をじっくり検討いたしたいと思ったわけでございます。それで、昨年春、さっそく内閣統計局その他に頼みまして、統計調査その他の統計資料から、物品税の課税物品、あるいはそれに類似した物品についての担税力の裏打ちと申しますか、所得との関係と申しますか、そういうようなものを調べ出して、さらに税制特別委員会においても、その問題を取り上げてもらい、かつ同委員会においては小委員会を設け、さらに各大学の一流の先生方にお願いして、専門委員会というようなものまで作り、三十三年度は、若干の予算もいただいて、この問題の処理の基本となるデータを統計的に集めようということにいたしておるわけであります。そういう際でありますので、それらを十分検討いたしました上で、物品税についての根本的な考え方をまとめて申し上げたいと思うのでございます。
  51. 淺香忠雄

    ○淺香委員 今の答弁のようなことは、従来からあなたの口より何回も聞いておる。今のお話では、根本的な検討をしておると言われるが、どうも私どもには、そうは考えられぬ。今のあなたの答弁では、それじゃどういうことから根本的な検討をしているのかということについては、税制特別委員会も設けられた、また、これについては専門委員会も設けられた。検討はしておるであろうけれども、しかし、われわれが聞き知る範囲においては、ほんとうにこれをやり遂げるという決意があるかのように見当らぬ。その点ですが、もう少し具体的に、一つの例を何かあげて、こういう点で根本的な検討をやっておるのだという事実があれば、お示し願いたいと思う。
  52. 原純夫

    ○原(純)政府委員 実績につきましては、すでに昨年の秋、当委員会に最初のサンプル調査の結果を表にしたものを差し上げてございます。それは、どういうものかと申しますと、所得の階層別に、一カ月に幾ら消費をするかというのが家計調査から出て参ります。その消費の中で、たとえば一万五千円の額しか消費しないという世帯と、だんだん二万、三万、四万、あるいは七万、八万というふうになっていっても、たとえば卑近な例で、お米の消費だったらば、都会においてはそう変らない、やはりお米は必需品でありますから、大部分の家庭の世帯員数に応じて消費する。ところが、だんだんいわゆる奢侈度と申しますか、それが高くなるに従って、所得が多い階層でよけい消費するというようなものが出て参ります。物品税に上っております写真機、あるいは蓄音器、テレビというような式のものは、おおむねそういうような類型に属するものでありますが、それらが一体所得の大きさと、それらの支出の増加の工合が、計数的にどういうふうな関係に立つかということを、学者の間では、それは所得に対する支出の弾力性という言葉でいっておりますが、そういうような計数をまとめたのを、すでに昨年の秋お出ししております。が、今続けてやっておりますのは、昨年の秋出しましたのは、三十一年の家計調査に基いたものであります。それを、さらに三十二年の家計調査の分析をする、さらにまた税率を上げ下げいたした場合に、転嫁力があるかないかというようなことを見るためには、そのものの値段が上ったときに消費は減ったかどうか、減り方がどうかというようなことを、既応の数字をずっと集めて数値を出しますと、そういう面での参考になるというようなことになります。それから、同様なことを、都市家計だけでなくて、農村についてどうか、都市のことばかり考えていると、農村における実情を見失うということで、農家の経済調査も、個票を切り直して集計をしてもらって、その結果が、都市における場合とどうかというようなことも確かめをいたしております。それからまた、テレビとか電気冷蔵庫というようなものは、そう毎月消費するものではありませんから、計数がいわば非常に断続的になる。従って、そういうものは、毎月の家計調査だけで見るのでは穏当を期しがたい。むしろ家計調査を階層別に、一体どの階層の世帯になるとそういうものを持っておるか、持っていないかというのを調べていきますと、そういうものについての所得層との関係がより的確に出る、つまり手持ち台数を調べていくというような調査をいたそうということにいたしております。いろいろ今までやってきたもののなにがございますし、今後の計画もございますから、これは、別途御要求がありますれば、喜んで提出して御検討を願いたいというふうに思っております。
  53. 淺香忠雄

    ○淺香委員 お答えは、なるべく簡にして明にしていただきたいと思います。そこで、当大蔵委員会におきましては、ここ数年間、与野党を通じて、この物品税全般に関してはかなり研究を進めて参り、そうして、将来この物品税は不均等の是正をしなければならぬことはいうまでもないが、しかし、向う先は、税率引き下げ、あるいは免税点の引き上げ等々行なって、物品税全体は減税に向い、ひいてはこれは廃止すべきではないかという方向に進んでいると私は思うのですが、あなたは、この委員会の空気をいつも察知しておられて、これに対してどういうお考えを持っておられますか。
  54. 原純夫

    ○原(純)政府委員 その点につきましてはただいまお話しになりましたような空気については、根本的に問題があると考えております。やはり国の税制を調和のとれたものとして持っていくという場合に、直接税に対して間接税をどのくらいウェートを持たせるかという問題の次に、間接税ほどういう性格のものでやって参るかという問題があります。一番極端なやり方は、いわゆる売上税的なもので、貧富に関係なく、とにかく百円買えば一円なら一円納めるというような荒っぽい税もございますけれども、同時に物品税等のような、消費を通じて担税力がかなり段階をなしている工合がとらえられている面においては、その担税力に合うような課税の仕方をするということも、税制として非常に重要なファクターだろうと思います。直接税における所得の把握の度合いは、非常に正確になり、かつ直接税のウエートが大きくなりますれば、間接税の方は、割合に気軽に考えるということができるかもしれませんけれども、何さま間接税は、なお総税収の半分を占め、かつ直接税においても、なかなか担税力にひたっと応じた課税がむずかしい、執行がむずかしいというような事態においては、単純に間接税体系を荒っぽいものにしていくことはどうか、担税力のある消費と少い消費というものは、やはり相当入念に見きわめて税制を調整していかなければならないのじゃないかというような考え方もある。私どもは、やはりそれをまだ捨てていい段階ではないというふうに考えております。従いまして、物品税につきまして、これを将来全廃する方向でいくということは、いささか結論が早過ぎるのではないかというふうな気持でおります。本日は何も申し上げないつもりでおりましたが、ちょっと申し上げるようなことになってまことになにでございますが、なおそれらを含めまして、大きな点について今後十分いろいろ御討議をいただき、また私どもも、機会がありますれば申し上げるようにしたいと思います。
  55. 淺香忠雄

    ○淺香委員 御承知通り、三十三年度予算の編成に当って、その予算書は今国会に提出し、予算委員会検討されておりますが、酒税引き下げは、ここで断行されるようなことになりつつある。ところが、物品税をすみやかに検討をしなければならぬ事態が目の前に幾つかある、たとえてみれば、酒税引き下げられておるというのに、一方ラムネとかマッチとかいうものに触れておらぬ。ところが、税を下げることは、国民何人も喜ぶでしょう。また酒の税を下げることに対しても、反対すべき筋合いのものではないと思う。ところが酒の税金が下るのに、一方労働者や子供が飲むようなラムネの減税は、これに掲げておらない、あるいは日常絶対なくてはならぬマッチ等にも触れていない。その他幾つかの問題が今あることは、あなた御承知だろうと思う。そこで、われわれ委員会としての態度も、直ちに考えていかなければならぬ段階に入っておりますが、あなたは、この事態をどうお考えになりますか。
  56. 原純夫

    ○原(純)政府委員 おっしゃるような問題がいろいろあることは、よく承知いたしております。そして、それらについて何らか結論をすみやかに得なければならぬということも、そういうつもりでおるのであります。しかしながら、先ほど来申しておりますように、この問題の結論を得るのに、おっしゃったマッチなり、ラムネなりだけを取り上げて結論を出すというわけには参らないという考えでございます。ラムネにいたしましても、他の清涼飲料との関係、あるいはさらに他の課税物品との関係、あるいはマッチあたりについても、税制全般における地位というものを外国と比べますと、だいぶ日本は、現在でもけたが違うように軽いということがある。この辺は、いろいろな考え方があり得るところなんです。突き詰めていきますと、酒やたばこからあれだけ重い税を取るのはどういうわけかという問題等ともからんでくることなんです。また、それが非常にゆうちょうにいつまでもずるずるしているということであったら、私ども、こうやって立って申し上げるのに耐え得ないわけですけれども、先ほど来申しておりますように、せっかく抜本的な検討をして、結論を出そうということにいたしているのであります。三十四年度の際には、何らか結論が出るというつもりでやっておりますので、一年でできないということはまことに残念でありますけれども、やはりこれだけの問題でありますから、もうしばらく時間をかしていただきたいというふうにお願いしたいと思います。
  57. 淺香忠雄

    ○淺香委員 重ねてお尋ねしますが、酒の税が下るということについては、当然ラムネなどの税率引き下げなければならぬとのお考えでありますか、その点、もう一点……。
  58. 原純夫

    ○原(純)政府委員 直接税だけ軽減して間接税は置いておけ、あるいはむしろ増徴しろという考え方から、だんだん間接税も税負担を考えなければならぬという事態になったことは、確かでございます。今年酒を取り上げたということから、お話のような声が出る、これはまあきわめてごもっともだと思います。ただ、酒を下げればラムネも下げるのだというかたい格好で今御答弁申すことはお許しいただいて、そういう声が出るのはまことにごもっともだとは思いますが、そういう意味では、ラムネだけではなくて、マッチのお話も出るし、あるいはしょうゆの話も出るという工合で、いわば物品税は一波万波ということになる。何も万波がいかぬということを申しているのではないのです。万波をまっ正面に受けて、ただいま検討中でございますということを申しているのでして、おっしゃった点は、お話としてはごもっともなお話だと思います。
  59. 淺香忠雄

    ○淺香委員 あなたの言い分を聞いておりますと、ラムネに手をつけたらマッチにも手をつけなければならぬ、マッチに手をつけると、またほかの灰皿にいかなければならぬというように、各方面に及ぼす影響がきわめて大きい、だから、幾種類かの問題のみ抽象的に答えられぬというようなお話なんです。ところが、先ほども申すように、この委員会の何年来の研究の経過等から考えて、さっきあなたが答弁されたような委員会もあって、根本的な検討をしていられるであろうけれども、きわめて不熱心だったということを私は言いたい。それと同時に、そういう関連をするものがあるならば、酒の税率引き下げの話のあったところで、こういう事態が関連してあるから、次の国会まで待ってもらいたいということならば、あなたの話は通る。ところが、酒の方はあなた方もどうも反対であったという今おっしゃった趣旨、そのときに、あなたの信念をあくまで貫くように述べられたかどうか、その間の真相をもう一ぺん聞いておきたい。
  60. 原純夫

    ○原(純)政府委員 その点は、酒の減税決定いたします際にも、いろいろ経緯がございました。私ども率直に申して、そういう抜本的な検討をいたしておる際であるから、酒についても、一年待ったらどうかというふうに考えた段階もございます。しかし、先ほど申しましたように、だんだん間接税についてもやりたいという気持が、酒と自転車と荷車というところに集約されて政治的な結論が出たわけでありますが、その際にも、おっしゃる通り、これが一波万波になっては困ると申しますか、慎重な検討を経た上で改正するという態度は、常に堅持してきたつもりであります。酒を決定いたします際にも、それについていろいろないきさつがございます。内部のことでございますから申し上げませんが、これで今回はやっていこう、これならいけるではないかという結論だけは、政府内部として考えたつもりであります。はたから見られて、いろいろ御意見が出るだろうとは思いますけれども、十分注意はいたしたつもりであります。
  61. 淺香忠雄

    ○淺香委員 私の申し上げたように考えたり、意見を言うた段階もあった、しかしながら踏み切った、こういうことである。踏み切ったなら踏み切ったで、先ほどから私が述べておるような関連する問題もあるのだから、それはいずれ近いうちにとか、あるいは次の段階とかいうような、万波というものがないことはない。だから、この際酒を踏み切ったならば、踏み切ったところの決意がなければならぬ。でなければ、この問題をたてにとってあなたを追及していかなければならぬ立場にあるのですが、当面しているこの問題に対して、あなた自身、担当者としてどう解決していくか、もう一ぺん御決心を承わりたい。
  62. 原純夫

    ○原(純)政府委員 すべては根本的な再検討のあとにしたいというのに対して、この際、政治的にとにかく一、二の手は打ちたいという角度から、酒と自転車と荷車が取り上げられたわけであります。従いまして、全体の大勢としては、十分慎重に検討の上、間接税体系的に再整備するということは、あくまで変っておらないわけであります。酒は、その意味では例外的にこの際行う。ただ、全体としてそれが大きな方向を誤まるものではなかろうというだけの勘をつけておるというふうに御了解願いたい。従って、私どもとしては、全体の大勢として、やはり十分慎重な検討を経て、その上で結論を出したいということに変りはございません。
  63. 淺香忠雄

    ○淺香委員 先ほどからの私の質問に対するあなたのお考えを、私が勝手ながら要約しますと、決してないがしろにしている問題ではないのだ、早急に結論をつけるべく検討を重ねていきたい、こういうふうに私は伺うのです。そこで、今国会中にこれらの問題を取り上げて解決される御意思があるのかどうか、これももう一ぺん伺いたいと思います。
  64. 原純夫

    ○原(純)政府委員 その点につきましては、昨年の秋から冬にかけて、たびたび委員会で御質問になりました際にも、私ははっきりと、全面的な検討の上で結論を出したい、全面的な検討は、とても昨年一ぱいでは終らない、三十三年度に予算も要求して、その裏づけを得て、十分な調査をして結論を出し、三十四年度にやりたいということを申し上げております。この態度に現在なお変りはございません。
  65. 横山利秋

    横山委員長代理 午前の会議はこの程度にとどめ、午後一時半まで休憩いたします。     午後零時三十分休憩      ————◇—————     午後一時四十八分開議
  66. 藤枝泉介

    ○藤枝委員長代理 休憩前に引き続き、会議を開きます。  委員長不在でありますので、私が委員長の職務を行います。  日本開発銀行法の一部を改正する法律案所得税法等の一部を改正する法律案法人税法の一部を改正する法律案酒税法の一部を改正する法律案及び租税特別措置法の一部を改正する法律案の五法律案を一括して議題とし、質疑を続けます。奧村又十郎君。
  67. 奧村又十郎

    ○奧村委員 政府委員がまだそろっておりませんので、私は、午前中に引き続いて、泉国税庁間税部長に、酒の問題についてごく簡単にお尋ねいたしたいと思います。  私のお尋ねいたしたいのは、密造対策の一環として、原料米と酒との交換の制度を新たに作らないかということについてお尋ねをしたいのであります。密造は、いまだに非常にしょうけつをきおめておりまして、特に農家におけるどぶろく醸造のくせは、相変らず直っていない。国税庁発表によると、年間約百二十万石のどぶろくの密造があるということを、国税庁みずからいっておられる。この絶滅をはかるために、こういう案が一つあるのであります。米と酒との交換の案というのは、毎年大蔵委員会陳情されて、実は今回で十七回目の陳情であります。今までは、私どもあまり取り上げなかったのですが、今度は、諸般の情勢も、この請願を取り上げて実現させる情勢に近づいたと思いますから、特に政府のお考えをお聞きしたいと思うのであります。その構想といたしましては、農家の保有米一斗を提供した者に対して、二級酒一斗を渡す、農家と酒造業者との間は、米一斗と酒一斗との交換にとどまる。しかし、これに酒税というものがある、その酒税は、一斗について百五十七円五十銭、これは、供米に対する報奨として特別価格で出しております課税の金額です。この百五十七円五十銭の税金は納める。こういうことにいたしますならば、これは非常にいいのじゃないか。その農家保有米を出すのも、いわゆる予約米を供出したあとの米を一定量だけ農家が出して、それに対して同じます数の清酒を渡す。この出された米は、清酒業者原料米として使用することにいたすについても、これは、食管法に基いて酒の原料米を受け取った、こういうふうにみなせばいい、かように思います。こういうことにいたしますならば、結局米の供出がふえるということと、密造がやまる、つまり農家にとっては一升百五十七円五十銭の税金さえ納めればいいのですから、非常に安い酒が農家の手に入る、だから密造もなくなる、それから供出の奨励にもなる、一石二鳥、三鳥の案と思います。これについて、これをぜひ実行しなければならぬと私は思うのですが、国税庁は、これをどうお考えになられますか。
  68. 泉美之松

    ○泉説明員 お話しのように、米酒交換という制度の案につきましては、戦後間もなくから今日まで、いろいろ説があったわけでございます。ただ、従来の案におきましては、単に米幾らを持って参った場合に酒幾らをやるというだけでありまして、その酒に対する酒税をどうするかということについての提案がなかったような次第でございます。従って、私どもといたしましては、なるほどそういう案によれば、農家のいわゆる農村密造と申します密造が減ることは確かでありましょうが、やはり酒税確保という立場から、そういう案にはにわかに賛成しがたいという態度をもって今日にまで至っておるのであります。なお、その点につきましては、食管法の建前との関係もあり、また同時に、農村におきまする酒類販売業者の取扱い量が減るといったような点、いろいろ考慮すべき点があった関係もあるわけであります。ところが、先ほど奥村委員からお話がありましたように、今回提案されておりまする案は、酒税の点につきまして、特別配給酒の税率までは米を作る農家に負担させるという案であります。これは、御承知のように、現在田植え用とか、あるいは稲刈り用という特別の配給酒の制度を作っておりますので、それと税率を同じうするという点からいたしますと、一つの新しい進歩した案であろうかと考えるのでございます。ただ、この案につきましても、先ほど申し上げましたように、食管法との関係がございますので、なお農林省などとも、いろいろ検討しなければならぬかと考えておる次第でございます。今度の新しい案につきましては、われわれまだ十分検討いたしておりませんが、今後十分検討を加えたい、かように考えている次第でございます。
  69. 奧村又十郎

    ○奧村委員 これは、政府としても新しい段階に即応して、一つ検討してみようという御答弁でありますので、まことにありがたいと存じます。しかし、この検討に際して、食管法の規定とこの問題とどういうことになるか、こういうことを御心配になっておられるようでありますが、しかし、うわさに聞き及びますと、最近に酒米一万石だげ追加割当してもいいということを食糧庁の方できめて、国税庁との間にも、そういう話し合いが出ておったということを承わっておのが、これはどの程度の話までいったのですか、ちょっとお尋ねします。
  70. 泉美之松

    ○泉説明員 この問題は、実はそれほどはっきりした話ではないのでございますが、今年度の酒造方針につきましては、午前中の委員会でも申し上げましたように、一応三百四十二万石の生産方針をきめたわけでございますが、その後酒税減税が実現されるというような見通しになりましてから、一部の方が、そういうふうな場合には、現在の生産方針では酒類が不足するではないかというような御意見もございまして、もっと米をもらって、酒をたくさん作るべきじゃないかというようなお話があったのであります。ただ私どもといたしましては、生産方針決定いたしておりますので、これをいたずらに変更することは適当でないというふうに考えておったのでありますが、食糧庁の方におきまして、内地米は困難であるけれども、もし準内地米であるならば、一万石以内、千トン程度ならば何とかすることができないこともないではないという程度お話があった次第でございます。しかし繰り返して申しますように、三百四十二万石の生産方針決定いたしておりますので、本酒造年度にそういう追加割当、追加醸造という措置をとることは適当でないと考えられますので、現在、本酒造年度におきましてそういう措置をとる考えは毛頭持っておらない次第でございます。
  71. 奧村又十郎

    ○奧村委員 現在の清酒の生産については、御承知通り、食管法によるところの規制だけである。農林省の方で、米を増配するということになれば、生産石数が変ってくるということになる。そこで、今お話しのように、今度の米と酒との交換においても、食管法でこれが許されるかどうかという問題になると思うのです。ところが、御承知のように東北地方で、特に米のとれ秋になると、やみ米の相場が一升七十円から八十円、配給の値段よりもずっと安くなる。それは、一面裏返して言えば、予約供出がうまくいっていないわけです。しかも、その東北地方では、どぶろく密造がひどいのですから、米と酒と交換してやるということになれば、米が酒屋さんの手に入ることは確実だと思います。酒屋さんの手に入った米は、食管法に基いて供出されたものとしての取扱いを受ければいいわけです。しかし、御承知通り食管法は、すでに取扱い業者の指定ということができておる。だから、酒屋さんを米の集荷の業者とみなして、それで、酒と交換して受け入れた米は、一たん酒屋さんが集荷業者として受け取ったそれを、いわゆる酒造の原料米として農林省から割当を受けた、こういうふうにすれば、食管法上支障がないじゃないか、しかも供出がふえるじゃないか、そういう意味で、一石三鳥になる。今すぐそれを答弁してもらいたいとは言いませんが、そういうふうに考えると、必ずしも農林省は、これについては反対はしないと思う。だから、間税部長の方で、これを一つ積極的に農林省と話をつけて、この秋にはぜひ実現するという意気込みでやってもらいたいがどうですか。
  72. 泉美之松

    ○泉説明員 お話しのように、食管法の建前からいきますと、取扱い業者がきまっておりますので、酒造業者をその取扱い業者にすればいいじゃないかというふうなお話もあろうかと思います。しかし、そういった制度を設けることが、米の予約制度に及ぼす影響も考えなければならないだろうと思います。それからこの制度自体が、農家の保有米ということになっておるわけでありますが、その保有米の証明、その他技術的な問題もいろいろあることでございます。また、食糧庁が果してどういう見解を持つかということ、これは、もちろん今後お話ししてみなければわからないわけでございますが、やはり食糧庁としては、予約制度について、いろいろ問題を生ずる点を危惧するのではないかというふうに心配いたしております。いずれにいたしましても、今度の案は新しい案でありますから、私どももっと掘り下げて検討を加えて、食糧庁ともいろいろお打ち合せいたしたいと考えますが、現在のところ、まだこの秋に実現するということをお約束申し上げるわけには参りませんので、この点、御了承をいただきたいと思います。
  73. 奧村又十郎

    ○奧村委員 これ以上御答弁を要いたしませんが、しかし、すでに農林省の方から一万石の米の追加割当を受けようとしたことの裏には、お聞きのように、復活業者の問題、それから地方によって、酒屋さんによってこれ以上増石をしたくないところと、あるいは増石しようというところといろいろ意見が分れて、要するに前年度の実績に対して機械的に一律に生産石数を割り当てるという行き方に、すでに非難がかなり出ておる。だから、今それを改めるについて、一つの着想として、この密造酒の絶滅のために、酒と米との交換がこの際適当な着想でないか、こういう意味でお尋ねしたわけです。これ以上の質問はお願いいたしませんが、十分一つ研究になっていただくように、また当委員会も、長いことこの陳情を受けておりますから、委員会としても十分研究して、秋までには実現するようにわれわれも力を入れてみたいと思いますから、そのつもりでお願いいたします。  それでは、政府委員の方々おそろいでありますから、提案されておる租税特別措置法改正案に関してお尋ねをいたします。私の質問は、分量が非常に多いので、おそらくきょう一日で終らぬと思いますし、いずれ大蔵大臣にも、お尋ねしたい事項も多いのであります。しかし、なるべく時間を節約する意味において、また政府委員の方の御答弁の用意をしていただく意味において、私のお尋ねしたい要点を、全部一たん数え上げて申し上げておきたいと思います。特に貯蓄減税に関連してお尋ねしたいことについて、税制調査会答申に関連しての質問、まだ政令案の内容が出されておらぬので、政令案全部出していただきたい。実は、私はこの貯蓄減税には、現在もなお反対であります。しかし、与党である以上は、これからの質問によって、政府の意のあるところを十分聞かしていただいて、私も心から賛成できるような答弁をしていただきたい。そこで、私の今なお賛成しかねる点は、三つあるのです。  一つは、税法上非常な不公平を生ずるのではないかということ、これに関連して、西ドイツでやっておるというが、西ドイツは、一体具体的にどういうことをやっておるのか。これは、資料によって出していただきたい。  第二点として、これは、実質は補助金を出すことになりますね。補助金を出すのならば、何も所得税の減税という形じゃなしに、もう少し別の形で、国民全般に恩恵を受けるような方法ができなかったのか、それを中心にしてお尋ねをいたします。  それから三番目のお尋ねとしては、これは、金融制度上も非常な変革を来たすものであると私は思う。そこで、この法律の適用を受ける金融機関の範囲、またはこの制度を適用実施するについて、金融三法との関係などについてお尋ねをいたしたい。  それから、その次には貯蓄減税、これほどの犠牲を払うてなさるが、果してどの程度の効果が確実に上るものか。それから、これは銀行局長に特に聞いておきたいが、税法上非常な特例措置をとるが、それほどのことをしなければならぬ金融上の特殊の事情が一体あるのかどうか。大体こういうことを中心にしてこれからお尋ねを申し上げたい、かように存ずるのであります。  なおそのほかに事業税、所得税などがありますが、これは、また別の機会にお尋ねをいたしたいと思います。きょうは銀行局長もおられるし、理財局長もおられますから、なるべく全般にわたってお尋ねして、こまかい点は、またあとの機会質問したいと思います。  大ざっぱに一通り今のお尋ねの点について触れていきたいが、税制調査会の関係であります。原安三郎さんを会長に置いて、昭和三十一年度に作った臨時税制調査会と、今度貯蓄減税答申案を出した税制特別調査会、この関係はどうなるのでありますか。臨時税制調査会というものは、まだ消滅しておらぬはずです。現に昭和三十一年の十二月に中間答申したのですが、臨時税制調査会答申を、政府は十分これをまだ実施していない、特に間接税はあと回しになっている。そこで、まず三十一年十二月の臨時税制調査会答申と、今度の税制特別調査会答申との関係、また両調査会の関係、これを一つお尋ねをいたします。
  74. 原純夫

    ○原(純)政府委員 原安三郎さんの会長をやられました、一昨々年から一昨年にかけての税制調査会は、その結果、一昨年の十二月末に膨大な答申書を出されました。それに基いて二十六国会で、その大部分について取り入れまして大税制改正を行なったわけであります。その調査会は、昨年六月にこれを廃止いたしまして、新たに税制特別調査会というのを設けました。前の調査会内閣に置いてございましたが、新しい特別調査会は、大蔵省に置いてございます。いずれも閣議決定でそうきめております。そういうふうにいたしまして、新しい特別調査会には当面の問題として、とりあえず相続税の根本的改正を御検討願う。それから、さらに秋から間接税の根本的再検討、並びに当面のその他の諸問題について意見を求めるということにいたしております。その結果、十二月に答申が一応出ておりますが、間接税体系の整備につきましては、なお今後の検討に待つということになっております。つまり、そういうふうなわけで、前の原さんの会長であった税制調査会は、大税制改正で一応区切りをつけて、あれは解消しており、新たに当面の問題について、税制特別調査会大蔵省に設けて、いろいろな事項を諮問をしておるという関係に相なっております。
  75. 奧村又十郎

    ○奧村委員 臨時説制調査会と特別調査会との関係をお尋ねしたのは、臨時税制調査会では、日本の税制を基本的に改正するについては、将来どのようにしていったらよいか、非常に税制全般にわたって適切な答申が出ておる。これに基いて昭和三十二年の税制改正が行われた。これは釈迦に説法ですが、税制改正というものは、一つの一貫した方針がなければ、去年はこうだ、ことしはこうだ、来年はまたどうなるかわからぬでは、国民も迷うし、それでは一貫したものはできぬ。ところが、臨時税制調査会答申と、今度の税制特別調査会答申と非常に食い違いがある。性格も違うでしょう。しかし、税制特別調査会では、さしあたって当面の税制改正をどうするかということでありますから、それで、中途半端な答申でもよいと言われるかもしれないが、これも釈迦に説法ですが、説制というものは全体が調和していかなければならぬので、たといさしあたりの改正であっても、基本的に一貫した税制改正の方向というものがなければ、さしあたりの改正もできないはずです。ところで、基本的な改正答申昭和三十一年十二月に出ておる。それと、この特別調査会答申とが食い違う。しかも調査会の委員は、同じ人が多いです。荒井誠一郎さんとか、今度会長になられた井藤半彌さん、これはみな前からの方なんです。こういう方が、一年や二年でそんなに信念がお変りになるはずはない。そこで、具体的に変っておるところを申し上げますが、これは、今の貯蓄減税について申し上げますが、利子所得を免税にするということは、これは異例中の異例である。租税特別措置の手段の中でも、一刻も早くこういう特別措置はやめなければならぬ。やめるについては、期限のきまったのからやめるのだ。そこで、利子所得の免税については、昭和三十一年ですか、三十二年ですかの期限がついておる。期限がきたらこれはやめるのだ、こういうふうに臨時税制調査会答申しておる。ところが、今度は税制特別調査会はどうですか、利子所得の免税をやめるどころの騒ぎではなく、逆に他の税額までも減税しよう。これは、えらい答申が食い違うのですが、これでいいのですか。
  76. 原純夫

    ○原(純)政府委員 お話しの通り、前の方の臨時税制調査会では、利子所得に対する特例二十一年三月までとあったのを、一応そこで切るという議論もあったわけですが、一応源泉一割分離課税というものをもう二年続けて、三十四年三月まで分けていこうということに答申されたのであります。それが、昨年の春諸般の状況を勘案して、税制改正案としては、通常のものはその通りにいたしますが、一年以上の長期の貯蓄については、利子所得は全部非課税にするということを、二年間しようということになったわけであります。そのとき、諸般の特別措置の中で残したものもあり、増強したものもありということから比べて、やはり利子所得に対する措置は、その前のやり方を圧縮したわけでありますから、それと比べて、今回の貯蓄控除制度の創設というのは、おっしゃる通り、方向的にはかなりな食い違いがあるというふうに思います。しかし、特別措置というのは、やはりそのときそのときの経済情勢から、あるいはその他の情勢から、税で特別な措置をすることがいかにも必要であるという事態が起りますと、その事態にこたえてやるということは、やはりあり得るわけであります。今後ほかの部面でも、そういうことはあり得ると思います。必要が薄くなったもの、なくなったものは、どんどん整理をすべきだと思いますが、やはりそのときそのときの必要で、税制として考えなければならぬことはやるということにいかざるを得ない。昨年の緊急総合対策以来の国をあげての国際収支のバランスの回復という空気の中で税制考えます場合に、やはり貯蓄奨励の面で何かやりたいということが出るのは、きわめて自然な成り行きだと思います。そういうようなわけで、かなりこの措置は異例な措置でありますけれども、あえてこの際これを採用して、貯蓄の増強を期そう、そして一に国際収支の状況を改善し、日本の経済を立ち直らせるということを心がけてやって参りたいという気持で、こういうふうな新しい措置をお願いするということにいたしたわけでございます。
  77. 奧村又十郎

    ○奧村委員 それじゃ重ねてお尋ねしますが、この利子所得に対する一年以上のものに対しては免税にする、これは、昭和三十四年度限りでやめるということになるのですね。昭和三十四年になると、この制度はやめて、常態に復するつもりですか、昭和三十四年度以降も、この利子所得免税の制度を続けていかれるつもりですか、それをお尋ねします。
  78. 原純夫

    ○原(純)政府委員 三十四年度には、その他にもいろいろ特別措置で期限の参るものもございます。それから、先般来総理並びに大蔵大臣も税制の根本的な検討が必要だというようなお話がございます。従いまして、私どもやはり相当各界の意見を伺い、広い判断のもとに、整理すべきものは整理する、残すべきものは残す、また必要なものは新設するというような全般的な検討を行うべき時期だと思っておりますので、これを来年の三月でやめるつもりかどうかという点については、なおそういう検討を経た上で意見を申し上げさしていただきたい、こう思います。
  79. 奧村又十郎

    ○奥村委員 それじゃ答弁は逃げられませんぞ。それは、今度の法律の中に、昭和三十四年の十二月三十一日までは貯蓄減税の制度をいたします、利子所得の免税だけじゃなしに、二年据置、二年の預貯金をした場合には、一方の所得税を税額で六千円引きましょうというのでしょう。そうすると、その適用を受ける預貯金というものは、たとえば昭和三十四年の年末に預貯金した、そうすると、その効果というものは三十六年一ぱいまであるわけです。そうすると、もしかりに、今の利子所得の免税の規定は昭和三十四年で切れてしまうとすると、今度は、利子所得に税金はかける、所得税は一方で減税する、そんな矛盾した話がありますか。一方で所得税を減税するぐらいなら、一方利子所得の免税は、従来通りやっていくということにこれはならざるを得ない。その点は、はっきりなさらぬと、国民は、それこそ理解ができませんから、これは、今の答弁では不満足です。もう一度明確におっしゃっていただきたい。
  80. 原純夫

    ○原(純)政府委員 ただいまのお話は、この新しい貯蓄控除は三十四年一ぱいやる、しかも、それは長期の、今までの一年以上というのをさらにこえて、平均二年以上という長期のものだから、三十六年までいく、そうすると、利子所得の方もとても三十四年三月では切れまいというお話でございますが、利子所得の方も、そういうあとを引くという意味では、一年以上という中に、貸付信託あたりは二年と五年というものもあります。そういうわけで、先般きめましたときに、三十四年の三月までに支払われる利子だけについて免税するのだというのではなしに、三十四年の三月までに貯蓄をして下さい、そして、その間に貯蓄をされたものについては、自後は最長三年でしたか、三年は尾を引いて、その三年の利子については、なお免税を続けますということにいたしておりますので、まあ尾が重なるというか、尾の関係におきましては、言ってみればちょうど同じくらいになるかという感じもします。しかし、何もそれを精密にはかってなにしたのではなくて、所得税は、御案内の通り年税でありますから、ことに今度のような、年間のなにから幾らを最高限として控除するというような制度では、どうしても最終を暦年の終りにとらなければならぬということで、三十四年の末にした。三十四年三月の利子所得についての期限と九カ月の差はありますけれども、その差が、何といいますか、ヴァイタルなもので、そのゆえに、利子所得の非課税なり、あるいは軽減措置なりを必ず延ばさなければならぬということには必ずしもならない、すべて一括して再検討して考えてよろしいだろうというふうに考えております。
  81. 奧村又十郎

    ○奧村委員 どうも、そこはそうはいきませんぞ。それは、ちゃんと昭和三十四年の三月三十一日までに利子を受け取る場合と租税特別措置法に書いてある。大体、これは期間は一年、だから利子を、つまりこの法律の条文を見れば先利と申しますか、期限がこずとも利子だけ先に受け渡しをすれば、つまり昭和三十四年四月までに受け渡しをすればいいという意味でしょう。それにしたって、期限は一年でしょう。そうすれば、昭和三十五年の三月までです。ところが、この貯蓄減税の方は昭和三十六年までです。あなたは貸付信託と言われるけれども、普通の預貯金が多いのですから、そこで、その点を一つ明確にしていかなければならぬが、基本的にお尋ねします。それじゃ、つまり一方で利子所得に所得税がかかり、一方において、今度は所得税を税額で減税する。一方で利子所得に税金をかける、その利子所得がある理由をもって、今度は所得税を減税する、そんな矛盾したことはないはずだから、あなたの御答弁によれば、貯蓄減税を受けるような恩恵を受けるものには、利子所得はかからぬ、これが原則になる、こういう意味ですか。
  82. 原純夫

    ○原(純)政府委員 まず特別措置法の規定する長期預金等の利子所得の非課税につきましては、たとえば措置法の第四条第一項第二号には、三十四年三月三十一日までに締結された契約に基く預金で、預入期間が一年以上であるものということになっておりますから、三十四年三月三十一日に締結した一年定期のものは、三十五年の三月の末に満了になるわけですが、それは、そのときまで利子所得は非課税になります。長いもの、公社債あるいは貸付信託においては、三年までというのが政令に書いてありますので、来年三月でぷっつり切れるということにはなりません。  それから第二のお尋ねの、利子所得について特例を設けた以外に貯蓄控除をやる、その間の論理的な関係はどうかというような角度でのお尋ねでありますが、これは、政策でありますから、重複してやるといういき方もできますし、いずれか一方やるといういき方もできますし、まあいろいろやりようはあると思います。気分として、片方を続けるのにというような声は出るかもしれませんが、現に今回のいわばお手本になったといいますか、契機になった西ドイツにおけるやり方は、西ドイツは、私の承知しておりますところでは、利子所得に対する非課税というのは、特別なものについてはありますが、日本のように、一般的な制度としてはありませんで、所得控除の方が一般的な制度としてあるということで、ただいまわれわれが議論している、あるいは奥村委員の議論しておられる角度とは、かなり違った角度で西ドイツではやっている。これは、やはり政策的な判断、どういう方法を政策的にとるかというようなことからも、結論はいろいろになり得るのじゃなかろうか。従いまして、検討の結果、この利子所得の特例の方はやめる、貯蓄控除は残すというようなことがあるかもしれませんし、また逆の場合があるかもしれない、いろいろな場合があり得ると思います。これらについては、なお十分各界の御意見も伺い、検討を重ねていきたいというふうに考えております。
  83. 奧村又十郎

    ○奧村委員 私のお尋ねする理由は、この貯蓄減税などをおやりになれば、いわゆる利子所得の免税というような租税特別措置の異例な制度をもとに戻すという機会は当分延びる。それが私は非常に悲しいから、それをお尋ねするので、今のお尋ねしたことについて、どうもしつこいようですが、私はこういう性分ですから、はっきりさせていただきたい。租税特別措置法の利子所得の免税の規定というのは、措置法の第四条でしょう。その四条の一項にははっきりと、昭和三十四年三月三十一日までに支払われるべき利子所得に対して免税する。だから、条文通りに見れば、昭和三十四年三月三十一日までに、たとえば三年の定期を約束して三年分の利子を昭和三十四年三月三十一日までに受け取ってしまうというのなら、これは適用になるかもしれない、その意味でしょう。まさか、契約は三年になっておっても、利子の支払いが昭和三十四年四月一日以後に延びれば、この法律の適用は受けぬでしょう。
  84. 原純夫

    ○原(純)政府委員 四条をごらんになっていただきたいと思います。次に掲げる公社債、預金云々について、いついつからその発行、預入または信託の日から起算して三年を経過した日までに支払われるべき利子所得については所得税を課さない、こう書いてあります。
  85. 奧村又十郎

    ○奧村委員 ところがカッコ書きで「(その日が昭和三十四年三月三十一日前である場合には、同日まで)」と書いてある。
  86. 原純夫

    ○原(純)政府委員 それは、ちょっと待って下さい。その預入の日から三年を経過した日が、昭和三十四年三月三十一日前である場合には、三十四年三月三十一日といっているわけですから、これは、たとえば三十一年の一月に貸付信託に入った、そして三年を経過した日が三十四年の一月で切れるわけです。その場合には、三十四年三月三十一日までであるということをいったのであります。これは、つまり社債について、古い従前の特例による利子所得についての特例の適用を受けるというものについては、この規定のままでいきますと、たとえば三十年でもよろしゅうございます。三十年に社債を買うた、それは非課税の恩典をずっと受けてきているわけです。今度の条文はこのままでいきますと、三十年の八月なら八月に買うたという人は、三十三年の八月でこの三年の期間は切れてしまうわけです、三年を経過した日までということになって。それも一つのやり方だけれども、三十四年の三月三十一日までは、いわば貯蓄増強期間として特例を認めようというわけですから、それまでの間の分は、三年以上でもそれはすっぱり非課税にしようというているわけです。カッコの中は、そういう意味で、古くからの分の経過的なものですから、一応それはごらんにならないで、カッコの外をごらんいただくと、たとえば三十四年の三月三十日に定期に入ったものは、そのときから三年を経過した日まで、定期は一年しかありませんから一年でありますが、貸付信託に来年の三月入られれば、三十七年の三月までの分については非課税になるというふうにいたしてあるわけでございます。これは、来年三月までにとにかく貯蓄をして下さい、貯蓄の行動をしてくれという意味で、こういうふうな制度にいたしたわけでございます。
  87. 奧村又十郎

    ○奧村委員 それでは、私は法律を読み違えておりました。どうも相済みません。そういたしますと、今の御答弁に従いますと、昭和三十五年の三月三十一日までに利子の支払いをした場合は、これは免税になる、こうなるわけですな。
  88. 原純夫

    ○原(純)政府委員 いろいろになります。預金でありますと、一年が最長ですから、一年定期という型で考えますと、三十四年の三月末までに預入をしたら、預入をしたときから三年といっておりますが、三年の必要はない、一年間まるまる非課税になる。従いまして、三十四年の三月の末に定期に入られれば、三十五年三月の末までとなりますけれども、たとえば、ことしの八月に定期に入るという場合は、来年の八月で定期が満期になりますから、来年の八月までということになります。つまり三十四年の三月までの期間にそういう契約をする、契約をして下さい、契約をしたら、そのしたときから三年間まではなにしましょう。ところが、定期は一年ですから、一年で済んでしまう。ですから、たとえば本日定期に入るという方は、来年の二月二十六日ですか、五日ですか、それで一ぱいになる。すべてそういう契約期間でやって参るという考え方ですから、ものによりましては、たとえば公社債を来年の三月に買われる、あるいは貸付信託に三月に入られるという方は、そのあと三年間認められる。従って、三十七年の三月までの利払い分については、非課税になるというふうに相なっております。
  89. 奧村又十郎

    ○奧村委員 これは、実は法律を読み違えていたが、重大な規定ですが、金融機関は、こういうことをもっと宣伝して、昭和三十五年の四月までは……。あれは、何も一年定期に限ったことではない。二年でも三年でも契約を延ばして適用を受けるのですから、それをもっと宣伝すれば、一方貯蓄減税までせずとも、相当効果が上ると思いますが、しかし、国会議員の私らが法律をこう読み違えるのだから、大衆が法律を読み違えるのは無理はないと思います。これは、私ちょっとミスをいたしました。  そういたしますと、臨時税制調査会が、利子所得の免税の異例な措置は改めよといって答申しておるが、そんなことは、政府ではあまり眼中にないというふうに思われても仕方がない。税制調査会一つ私が異論があるのは、調査会のメンバーを見ると、大体学者だとか納税者の代表が多いが、もう少し零細な大衆の代表と申しますか、そういう気持を反映するような方もお出しになっていただかぬと、調査会の権威にかかわると思いますが、これは、私は意見として申し上げておきます。  それにちょっと関連して、銀行局長にお尋ねしますが、利子所得に対して、特に長期の預貯金に対しては全然税金をかけない、こういうことは、御承知通り世界中あまり例がない。日本でも例がない。戦前昭和九年から十年ごろでは、勤労所得よりも利子所得は、いわゆる不労所得として税金が重かった。また昭和十五年ごろには、分類課税と総合課税と両方かかっておった、こういうことであります。銀行局長、金融機関を監督する側として、預貯金の問題は全然免税にする、そこまでせなければならぬものですか。臨時税制調査会では利子所得の免税は異例の措置だから、免税規定は早く改めて、常軌に復帰しなければいかぬ、こういう答申をしておるのですが銀行局長、どう考えますか。
  90. 石田正

    ○石田政府委員 一般的に申しまして、貯蓄が非常に大切であるということは、これは奥村委員も御存じでありますから、あらためて申すまでもないと思います。ただ、過去の問題と将来の問題であると思うのでありますが、やはり日本は戦争をいたしまして、そうして敗戦の経過をたどって、非常に資本の蓄積のないところからスタートした。これは、私は戦前その他と比較する場合に、非常に違った事情があったのだろうと思います。そういう意味におきまして、貯蓄をできるだけふやすべきだ、そういう観点からいって、税の公平な理論、所得に対してどういうふうに公平にやるかという考え方は、もちろん頭になければならぬけれども、貯蓄が非常に大切であるのだ、そういうことから、いろいろな段階においていろいろな減免措置がとられてきたのだ、こういうふうに考えるわけであります。  それから第二の点といたしまして、戦後十年もたちまして、そして経済もだんだんと正常化しつつあるわけでありますが、さて貯蓄というものは、今までの調子でよろしいのかどうか。日本自体としてもいいのかどうか。ほかの国と比べてもどうであるかということにおきまして、まだまだ日本は貯蓄の額が少いということが考えられ、もっとこれをふやすべきではないか。その意味から行きまして、税制上やはり特段の措置を講じていただく方が適切なんではないか、こういうふうな考え方をわれわれは持っておるわけでございます。税の面から見ました場合において、非常に異例であるということはわれわれも認めますけれども、今申しましたような事情というものをしんしゃくして、税制上いろいろ御配慮願えればありがたい、かように思っておる次第であります。
  91. 奧村又十郎

    ○奧村委員 もう一つ具体的におっしゃっていただきたいのは、世界的に見ても異例であり、日本の過去の歴史から振り返ってみても異例である。それほどの異例なことをしなければならぬほど、日本だけに、また現在だけに特別に貯蓄にこういう異例な措置をとらなければならぬほどの必要性が具体的にあるのか。
  92. 石田正

    ○石田政府委員 これは、貯蓄の問題につきましては、資金がそれだけ貯蓄される面と、資金の需要の面と両方あわせて考えなければならないのだと思います。早い話が、資金の需要が非常に少いときは、貯蓄も少くてよろしい、こういうことになるのだろうと思います。しかしながら、相当な貯蓄がありましても、資金の需要が相当多いというときには、貯蓄はなおかつふやさなければならない、こういう関係に相なってくるのだろうと私は思います。  それから、具体的な事情においてどうだというお話でございますが、具体的な例といたしましては昨年来金融機関が、先ごろ申しましたいわゆるオーバー・ローンというものが解消した段階で、今度はオーバー・ローンに逆戻りしてふえてしまった、こういうのが現実の事態になっております。この事態というものは、資金の需要が多過ぎた方が悪いので貯蓄の方はいいのだ、こういう見方も成り立つと思います。それからまた、資金の需要が多過ぎたけれども、貯蓄もまだまだ不十分なのだ、もう少しふやさなければいかぬのだ、こういう見方も私は成り立つだろうと思うのであります。現下の情勢におきましては、私は、貯蓄も輸出ということも、日本経済を動かす上において非常な眼目になっておると思います。輸出は、御承知のように、危機がそれを契機として起ってきたということで、そこが一番クローズ・アップされておりますから、そこが一つの焦点になって論ぜられておるわけだと思います。他面貯蓄の方の問題は、これは輸出にも関係があることであるし、それからまた、輸出に直結しないで、国内経済全般の動かし方の問題にも関係がある問題だと私は考えております。貯蓄というものがほんとうにうまく行われ、その貯蓄の範囲内において需要というものが満たされていく、こういう形をとることが最も望ましいのであって、その意味において、国内の大切なところは充足されるということが、また他面におきましては、輸出の方が出ていくという契機にもなる根本は、そこにあるのだというふうに考えておる次第でございます。
  93. 奧村又十郎

    ○奧村委員 輸出の重要なことや、貯蓄の重要なことは、何も日本だけでなしに、世界各国それは同じであるし、また日本が、現在だけが貯蓄が重要であるとか、輸出が現在だけ特に重要というわけはない。輸出の増強の必要なことは、これは、今も昔もこれから先も変らぬと思う。そこで、こういう異例な措置をとらなければならぬ特別の事情はどこにあるのか、こういうことを聞き出したいのですが、これは、どうもなかなかむずかしいので、もう少しほかのことをお尋ねしてから、もう一ぺんもとへ戻っていきたいと思います。  主税局長にお尋ねをいたします。臨時税制調査会答申によりましても、また大蔵大臣のこの間の財政演説によりましても、日本の税は重いのだ、税は重いから、これを軽くしなければならぬということを共通して言っておられる、けれども、われわれ専門の委員会としては、そう簡単に受けられぬので、何を根拠にして税が重いと言われるのか、これを明らかにしておいていただきたいと思うのであります。一般に税負担が重いか軽いかということについて一番わかりやすいめどは、御承知通り国民所得と国税、地方税の税負担との割合を比較するのが、一番はっきりしておるわけです。そこで、昨年の国民所得と国税、地方税の税負担の率は、大蔵省資料によって、御承知のように一九・一%、ことしはどの程度になっておりますか、一九%前後じゃないかと思っております。そういたしますと、これは、大体日本においては、大東亜戦争の直前まで税の負担がもとへ戻った、こう思うのです。そこで、外国の例を比較してみると、これは、すべて大蔵省資料によっておるが、アメリカでは二六・六%、イギリスでは三○%、フラスで二三%、ドイツで二八%、イタリアでは、国税だけで比較して一九・三%、そうすると、この数字の面で見ると、日本は、世界のこれらの国々と比較しても一番軽いし、また大東亜戦争以前に戻っておる。しかも時代が変って、社会保障その他財政需要が非常にふえてきて、私は、この程度の負担は現在の日本の状況としてやむを得ない、また社会保障を進めていくについては、ある程度の負担の増はやむを得ない、世界の趨勢であると思う。そこで大蔵大臣なり大蔵省は、税が単に重いと言われるが、その重いと言われる根拠を、一つはっきりさせていただきたいと思います。
  94. 原純夫

    ○原(純)政府委員 非常にむずかしい問題であります。私どもが重いと申しておりますのは、やはりみんながそう思っておるだろうということであります。今日本で、だいぶ戦後、特に二十四、五年ごろから何回かにわたって減税、それから税制の調整をいたしてきておりますから、当時に比べますと、だいぶ感触は変ってきておると思いますけれども、やはりなお税は重いという感じがあるのではなかろうかと思います。その中身をたぐって参りますと、やはり租税総額が国民所得に対しまして、戦前ばかりを基準にするのもいけませんが、戦前は、たしか通常のとき一二、三%だったと思いますが、それが現在は、ただいまお話のような数字で、三十二年度、三十三年度は二○%というような数字になっております。比率にして五割程度ふえておる。しかし、これも外国と比べれば、そのパーセンテージはむしろ外国の一流国よりは低いことは、おっしゃる通りであります。ただ、そこではよくいわれることでありますが、一人当りの国民所得がまるっきり違う。たしかアメリカに比べると、日本は一人当りが十分の一だったと思います。それからドイツその他に比べても、三、四分の一だというようなことになっておりますので、国民所得に対する税負担の比率は、やはりそういうものと並べて見なければいけない。それじゃ、並べて見れば、どういうふうな調整をしてみたらいいのか、そこまでいきますと、なかなか数学的にはむずかしい問題であります。翻って実態的に一番問題とされてきました所得税、法人税、この辺の負担の関係を見ますと、所得税は、昨年の改正で相当軽減され、合理化されたと思いますが、まだ課税最低限が低いというような話があり、あるいはその他でも、所得税制の各般の部門で、いろいろ御要望があるというようなことがあります。法人の負担に至りましては、国税、地方税を通じて、総合的な負担を見ますと、所得の五割が税に取られるというような状況になっております。これは、世界の一流国も含めました各国に、いずれもひけをとらない最高レベルにいっておるというわけであります。そういう意味で、これがとてもにない切れないということまでは言い切れないかもしれませんが、やはり重い税のために、よくいわれます社用消費、交際費の乱費、あるいはその他法人経理の乱に流れるというようなことがいわれて、これはごく氷山の一角で、やはり企業の経理が税によって相当曲げられるばかりでなく、やはり経済活動自体が円滑に伸び伸びといかないというようなことがあるのじゃないかというふうに感じます。そういうようなわけで、やはり直接税面でなお問題が残っておる。同時に、間接税の方でも、先ほど来いろいろ話が出ておりますように、酒税も高い、あるいは物品税でも問題がある。この辺については、単純に重い重いというだけで措置するのもいかがか、なおその底にあるいろいろな論理について、掘り起す必要のある面が多々あると思いますけれども、やはり問題は山積しているのじゃないかというような感じがいたします。大へん雑駁な答えで恐縮でありますが、それらの観点から、やはり租税負担が、決してこれで軽減の必要はないのだということにはならないのではないかというふうに考えております。
  95. 奧村又十郎

    ○奧村委員 日本の国の税務当局の責任をとられる主税局長の今の御答弁では、私はいささか不十分に思います。私のお尋ねしたのは、税が重いという根拠です。少くともこの専門の大蔵委員会においてその御答弁では、どうも納得はできません。また大蔵大臣も、簡単に税は重いというようなことを本会議で言われたが、大蔵大臣も、今の御答弁のようなことで、簡単にものを言われたとすると、これも一国の財政を担当する大蔵大臣のお言葉としてはおかしい。また臨時税制調査会なり税制特別調査会答申にも、単に税が重いというが、重いという根拠は一体どこからはじき出しているかということは、どこを読んでも書いてない。それじゃ議論になりません。と申しますのは、それは、なるほどアメリカなりドイツあたりの国民一人当りの所得のことも考えにやなりません。しかし、日本における戦後の処理、いわゆる賠償の負担だとか、あるいは戦争犠牲者の恩給その他の負担とか、現実になさなければならぬ社会保障の充実とか、これは、世界各国とも社会福祉国家を目して進む以上は、いわゆる税というものは富の再分配なんだというので、税負担の重いのは覚悟して社会福祉の充実に進んでおるのです。また今日、そういうふうな新しいお考えを置いて下さらなければ、自民党としても社会福祉国家を建設すると言っておるのに、その自民党の方針にもそぐわぬことになると思う。こういうことをやっていくとすれば、それは、どうしたってある程度税負担の重いのはやむを得ぬ。だから、税負担が重いか軽いかというのは、一体何を根拠にするのかというのです。今の御答弁では、ただばく然と重いように感ずる、あるいは法人税が重いとか言われるけれども、それじゃ所得税の累進においてどうか、非常に日本の累進は、アメリカやイギリスと比べれば、所得税の累進度は軽くなった。特にまた利子所得、あるいは配当所得、あるいは資産所得の譲渡所得、こういうものに対する課税、あるいは物品税の課税の率、これはアメリカやイギリスと比べれば、一々単純に比較はできぬが、ずいぶん軽い。だから、一つ一つ言えば、それは議論はいろいろ出てくるので、何もわからぬ人にはそういうことで答弁はつくかもしれぬけれども、少くとも今数字に現われた根拠としては、やり国民所得に対する負担率が一番はっきりすると私は思う。それが、このようにはっきりと日本は軽い。それを、税負担が重いと言われるならば、一体どこに根拠があるか。これは、はっきりしていただきませんと、あまり大蔵大臣も主税当局も、日本の税は重い重いということのその言葉は、納税者にとってみると、何かいかにも負担せずともいいものを無理やりに税金をかけられておるような感じがして、今事業税の撤廃運動がだんだんひどくなってきた。あまり政府が重い重いと言われますと、これもみんな軽減しなければならぬ。そんなことをやって、それで社会福祉なり、あるいは賠償なりの解決できますか。やはり主税当局も、歳出の面、国家財政全体から考えて、税の負担が重いか軽いかということをもっと科学的に、納得できる根拠を持っていただかなければ、これは納得できぬと思う。少くとも専門の大蔵委員会として、これは話にならぬと思う。どうですか、これは議論倒れになってもいかぬが、これ以上答弁がありますか。
  96. 原純夫

    ○原(純)政府委員 歳出との関連における御質問でありますが、税の重さというのは、おっしゃる通り、歳出との関連において判断さるべきものだという面が確かにあると思います。ただ、私が申しましたのは、なおやはり実態的な感覚として重い。今若干の計数を申し上げましたが、さらに詳しく申し上げるならば、相当時間をかけてお話をしなければならぬと思います。一時間以上時間をいただいて申し上げることにしないと、なかなか十分には申し上げられないと思います。実態的な税自体の重さをどう感ずるかということは、人によっていろいろあると思いますけれども、私どもとしては、税収入を歳出にそのまま充てていくか、あるいは国民の負担の軽減を考えるかということになれば、やはり両方をバランスにかけて毎年々々やって参らなければならぬだろうと思います。今回でも、そういう問題は現にあったわけですし、今後も永久に、税の問題というのは、歳出の要求とそれの価値と、それから税負担の犠牲の程度というものを公平に判断してやっていくという問題になると思います。政府としましても、五カ年計画におきましても、国民所得がだんだんふえるに従って税収は相当大きくなる、それをそのまま使っていくべきか、あるいは一部を減税に充てるべきかということについては、やはり一部は減税に充てるべきだという考えでやっておるわけであります。そのバランスの判断は、そのときそのときのいろんな事情で、なお念を入れてやらなければならぬと思いますけれども、そういうふうな方向を考えるということは、基本的に税がまだ重い、やはり歳出増の要求があるにしても、それと減税の要求は常に調和を保たせていく必要がある、減税を全然無視してはいけないというふうに考えているわけであります。なお、税の負担が重いか、どこが適当かということは、それ自体なかなかむずかしい問題でありますけれども、時間の余裕がありますときに、重ねて詳しく申し上げたいと思います。
  97. 山本勝市

    ○山本(勝)委員 ただいまの奥村君の質問は、ほかの点では敬服しておるが、遺憾ながら間違っておる。つまり、所得に対する税の比率で苦痛の程度をはかろうとしておりますが、しかし問題は、税金を納めたことによって、どれだけの欲望を断念しなければならなぬかということが問題なんです。すべて犠牲というのは、あることをなすために、よって断念するところの欲望がすなわち犠牲なんです。だから、税を納めたことによって、いろいろほしいものを買わずにしんぼうしなければならぬ、その苦痛ですね。これがどっちが大きいかという問題ですが、御承知通り、食糧品に対する需要というものは、金持ちの需要も貧乏人の需要も非常に接近しておるのです。これは、御承知のエンゲルの法則です。それから住宅については、相当開きがありますが、これも、しかしシュワーべの法則というものがあって、エンゲルの法則を住宅に適用したのがシュワーべの法則で、とにかくこういう生活必需品については、金持ちも貧乏人も、所得の大きい者も少い者もそう開きはない。そうしますと、金持ちの場合は、税を払って残りが非常に大きい、率は同じであっても、総額は大きい。そうしてエンゲルの法則ないしシュワーべの法則によって、生活必需品に払う金は両方とも同じだ。そうすると、金持ちが税を納めることによって断念する欲望というものはあまり重要でない、苦痛でない。だから、断念すればそれで済むのです。ところが、貧乏な、所得の少い場合には、それがだんだん生活必需品に切り込んでくるというか、接近してくるために、苦痛が大きくなる。だから、所得の大きい者と少い者と同じ比率で税を納めた場合には、所得の少い者の苦痛が大きいというのは、苦痛の伴う重要なる欲望を断念せざるを得ないというところからくるのであって、私はそういうふうに理解しておる。
  98. 奧村又十郎

    ○奧村委員 主税局長にかわって、山本君が答弁してくれたのですが、(笑声)これは、山本さんの御意見は私はよくわかりますが、しかし、山本さんの御意見を突き詰めていけば、要するにエンゲル係数を勘案して、課税最低限をなるべく引き上げて、犠牲の少い豊かな人に高率の税をかける、つまり豊かな者は高率の税負担を受けられるし、貧乏な者は軽い税金でも負担は重いのだ、その意味で、日本の国民一人当りの国民所得は少いのであるから、日本は税の負担を軽くしなければいかぬ。(山本(勝)委員「外国でも重い」と呼ぶ)それはよくわかります。しかしそれなら、その理屈から行きますならば、少くとも高額所得者の累進率というものは、なぜ重くなっておらぬのか、これは、アメリカやイギリスと比べても、日本の高額所得者の累進率は軽い、富裕税はやめてしまった。あるいは山本さんの御意見でいくならば、利子所得や株式所得のようないわゆる不労所得、これは一番課税の力が強いが、免税にしておる。だから、山本さんの理論だけではこれは動かぬものであって、また一方に戦争の犠牲者がずいぶん多くて、今回もまた三百億も歳出を四年間でふやさなければならぬ。というのは、やはりこれも戦争犠牲の負担であるから、苦しくとも国民全体で税の形で受けていかなければならぬ。     〔山本(勝)委員「それは別問題です、僕の言うのは」と呼ぶ〕
  99. 藤枝泉介

    ○藤枝委員長代理 御静粛に願います。
  100. 奧村又十郎

    ○奥村委員 これは、かけ合い漫才みたいになりますから、本論に入っていきたいと思います。  それでは、一つ主税局長銀行局長にお尋ねいたしますが、実質上は、所得税を減税するということは、いわば補助金を出すようなものですね。つまり一定の預貯金をした、あるいは一定の株を買った場合には、他の所得にかかるべき所得税の税額を、一年に一人当り六千円減税する、納税させるべき税金減税するのだから、実質上は補助金を出したことと同じことだと思うのです。それならば、なぜこれをいっそ思い切って補助金として出して、国民全体が、だれが預貯金しても恩恵を受けるようにこの法律を作れなかったか、それを主税局長銀行局長両方にお尋ねいたします。
  101. 原純夫

    ○原(純)政府委員 お話の趣旨は、むしろ利子補給といいますか、銀行に補助金を出して利子を上げさせたらどうだということだと思います。そういうのも、考え方としては考えられると思いますが、利子補給というのは、別な意味でいろいろ弊害も考えられる、なかなか問題の多い制度であります。まあ貯蓄が必要だという際に税の方で考えるとすれば、これは、税のかからない人についてはどうにもならない。これから申すことは、どうして利子補給しないかというなににはならぬと思いますが、要するに税の方ではやはり税を納める人について特定の利益を与えて、貯蓄をがんばっていただくといこと以外にない。実際に、今度のように相当長期の貯蓄をするということになりますと、大衆層の相当部分は、これでカバーできるだろうと思いますが、しかし、それにしても、この税を納めない人には恩典が行かないという点はまあそこまでは、税の方としては手が伸びない、それをカバーして利子補給までやるとなると、問題が大き過ぎると申しますか、なお慎重に検討せんならぬ点が多くて、そこまでは踏み切りがつかないというふうなことで、こういう結論になったようなわけでございます。
  102. 石田正

    ○石田政府委員 大体主税局長からお話がありましたが、実態的にいえば、税を負けるのと、それから補助金を出すのとは、預金者の手取りからいえば同じではないかということで、なぜそれでは補助金の方でやらぬかという今の御質問でございましたが、私税のことはしろうとで、よくわからぬ点が多いのでございますが、先ほど来お話がありました三十万円までの利子を、貯蓄組合の方については非課税にするとか、あるいは一年以上の長期の預金については利子を免税するとかいうような免税措置を従来もやっておった。それが足を出したというと語弊があるかもしれませんが、補助金という形でやるよりも、従来税の方でやられた方が多かったということで、そちらの方にいっているのだと思います。補助金でやるということになりますと、また補助金として適当かどうかという新しい問題になるかと思います。なお銀行局の関係から申しますと、これは、いろいろなところに問題があるのでございますが、大体貯蓄が非常に少い、従って貯蓄をふやさなければならぬわけでありますが、その場合には金利の問題があって、その金利の問題でいろいろとまた考えなければならぬ点があるのであります。現在の一年以上六分というのは、相当高い金利だろうと思うのでございます。これは、貯蓄がふえるに従って、だんだんと減らしていくということが望ましいのではないかというふうに思っておるわけでありまして、補助金によりまして、補助金の分だけ上寄せして、七分とか七分五厘というふうな金利を新しく作るということが妥当であるかどうかということにつきましては、われわれの方としては、なるべくこれから金利を下げるという方向で貯蓄をふやして参りたい、大勢といたしましてこういうふうに思っております観点もございますし、それと、また貯蓄者に対して免税をやって、実質的な手取りを多くするという問題とのかね合いでございますが、短期の問題、長期の問題を考え合せました場合に、大体そんなふうな感じを持つ次第でございます。
  103. 奧村又十郎

    ○奧村委員 主税局長にお尋ねしますが、この貯蓄減税の恩恵を受ける納税者は、大体大づかみどのくらいありますか。
  104. 原純夫

    ○原(純)政府委員 これは、昨日か本日か資料でお手元に差し上げたと思いますが、所得税納税者の半分の方々がこの貯蓄控除の制度を利用されるだろうという前提で、いろいろはじいてございます。非常に達観的な見込みでございますが、その数字は、資料にありますように、約五百五十万人というふうな人数を見ております。
  105. 奧村又十郎

    ○奧村委員 そこで、九千万の国民のうち五百五十万人だけが恩恵を受ける。貯蓄をするのは何も五百五十万人だけじゃない。それは、だれもかれも貯蓄をしてもらいたい。しかし、所得税を納める人でなければこの恩恵を受けられぬ、その不公平な処置が問題であります。私は、憲法まで持ち出すのもおとなげないと思うが、憲法十四条でも、すべて国民の中に不公平な取扱いはしないという条文があるのです。ところが、一方でいかに貯蓄しても所得税を納める人は恩恵を受けるが、納めない人は恩恵を受けないということは、やはり同じ国民の中に非常な不公平な取扱いをするということになる。だから、精神からいくと、これは憲法の第十四条の大きな違反になるように思うのですが、どうでしょう。(山本(勝)委員「それは違う」と呼ぶ)
  106. 原純夫

    ○原(純)政府委員 憲法は、そういうことまでいうておるのではないと思います。端的な例が、おっしゃるようにしますと、所得税でいろいろ老年者控除とか、不具者控除とか、寡婦控除というのがありますが、所得税を納めない人は、そういう控除の利益はないわけで、ああいうものを認めるのは憲法違反かというようなことにもなってくるようなことになりはしませんでしょうか、そこまで憲法は要求しておらない。やはり税で貯蓄を奨励する、そういう政策をとる以上、所得税を納めている人でなければその利益は受けられない。これは、仕方がないのじゃないか、そこまで憲法は御要求になっていないというふうに思っております。
  107. 奧村又十郎

    ○奧村委員 今そこで、またそれは違うという話でありますから、あらかじめ私は言うておきたいと思うのですがね。つまり大体法律は、男でも女でもあらゆる人に、こうすればこうしてあげると、その法律の恩恵を受ける平等な機会を与えねばならぬと私は思う。だから老人の控除は、どんな老人でも、どんな方でも、所得税を納めておる限り、六十になったら恩恵を上げましょう。それはそういうことになる。しかしこの場合は、貯蓄ということと所得税の減税ということと、これは何か関連性があるのですか。貯蓄というものは、どなたにも必要なんでしょう。ところが、そのための恩恵を受けるのは、所得税を納めるごく一部の人である。これでは、あらゆる国民にこの恩恵を受ける機会を平等に与えておるとはいえぬと私は思うのですが、どうですか。
  108. 原純夫

    ○原(純)政府委員 貯蓄をすれば所得税は軽減しますということを法律で申すわけでありますから、これは、だれでも平等にそうなんであります。ただ、所得税を納めていない人は。その利益を受けようがない、これは仕方がないことだと思います。人員にしましても、ごく一部だというふうに言われると、非常にいかがかと思いますが、日本の人口は九千万ありますけれども、世帯にしますと千六百万ちょっとのところであります。所得税の納税者が、そのうち千万こすわけです。もちろん一世帯で二人以上の納税者を持っておる世帯もありますから、必ずしもその全部の世帯にわたる、あるいは大部分——非常な大部分とまでは言えませんが、まあやはり一応大部分の世帯に所得税は行き渡っておるというふうに言うていいのじゃないか。その中で、こういう長期の貯蓄ができるところとできないところと半々に見たというわけですから、数は半分になりますけれども、やはり影響する範囲としては、相当広いのじゃないか。そうして、やはりいろいろ家計調査あたりで調べてみますと、所得の低い階層は、貯蓄がどうしても低いということになります。一昨年から昨年にかけて申し上げましたように、やはり所得がだんだん上に行くと、貯蓄が始まる、その始まるところと所得税の課税最低限というようなところをわれわれいつも注意して見ておりますけれども、まだ今の課税最低限では、やっと貯蓄が始まって、しばらくしたところからこの所得税がかかるというようなことになっておるわけで、そういうようなことで考えますと、こういう超長期の貯蓄の対象としては、大体この範囲で、まあ実質的にはほとんどカバーしておるのじゃないだろうかというような感じも持っております。
  109. 奧村又十郎

    ○奧村委員 それじゃどうですか、所得税の納税者の数と事業税の納税者の数、これは、事業税の納税者の方は、所得税の納税者よりも零細な納税者が多いと思うのですがね。人数からいうとそれに近いと思う。そこで、事業税の減税なり事業税の撤廃運動がかなり起っておる。一定の預貯金をしたら所得税を減税するといったら、それなら事業税も減税してくぬか、こういう議論が出てくる。そうすると、所得税を納めておる人は減税してあげるが、事業税を納めておる人は減税の恩恵はありませんという場合に、事業税なら減税できませんという、国民を納得させる理由はありますか。
  110. 原純夫

    ○原(純)政府委員 ただいまのお話は、所得税で貯蓄の控除の制度を設けるならば、同様な控除を事業税でも与えたらどうだというお話でございますね。その点は、いろいろ政策的にやりようはいろいろあると思います。まず事業税は、実は人数としては、所得税の納税人員よりはるかに少うございます。これは、御案内の通り、事業をしておる人たちでありますから、たしか二百万にならない。一応の数字では百五、六十万という数字が出ておりますが、これは、所得税の千万に比べますれば、はるかに少いわけであります。ですから、お話の趣旨を地方税において実現するならば、むしろ事業税でなくて、住民税の所得割の方で正確にこれを反映して軽減すればということになると思いますが、実は今般のは、住民税の方には影響を及ぼさないというような建前にいたしております。ここは政策的に、もちろんやりようによっては影響を及ぼすというやり方もあると思いますけれども、いろいろ政府部内でも相談いたし、また調査会にもいろいろお諮りいたしましたが、しいて地方税にまで影響を及ぼすことはなかろうということにいたしました。これは、一つには、技術的に税額控除という制度をとりましたから、第一方式ならすぐに乗っかるけれども、第二方式、第三方式だとなかなか乗っからないというようなこともある。それと、何と申しましても、一人々々の軽減額が割合にわずかな額でございますから、それのまた所得割部分だけ影響さすというまでのことがあるかどうか、いろいろ考えまして、影響を及ぼさないでいこうということにいたしておる次第でございます。
  111. 奧村又十郎

    ○奧村委員 私は、あなたの答弁なり大蔵大臣の御答弁によっては、どうしても事業税にも適用させなければいかぬ、それができなければ、住民税に適用させなければいかぬ、こういうように考えるので、突っ込んでお尋ねするのです。今の御答弁は、役所のお立場としてはそれでいいかもしれぬ。しかし納税者の立場になると、国税も地方税も、税という立場からは結局同じだと思う。というのは、今度預入する金融機関でも、大蔵省の管轄する金融機関もあれば、地方長官の管轄する金融機関もある。どこの金融機関へ預けても恩恵を受けるのでしょう。そうすれば、国税を納める者も地方税を納める者も同じ恩恵を受けるべきだ。事業税と国税とどこが違うか。かりに事業税の収入が少ければ、国税の平衡交付金で埋め合せするのだから、税の負担ということになれば、性格は同じだ。ところが、所得税を納めておる人は恩恵を受けるが、事業税を納めておる人は恩恵を受けられないというのでは私らは、納税者を納得させることはできません。それでなくても事業税は不公平なんだ。事業税は二重課税になって不公平なんだという声が、今やほうはいと国内に動いておる。そこへ持ってきて、所得税だけは減税の恩恵を受けるのだ、これでは、私ども納税者を納得させることができぬ。所得税は、貯蓄した場合減税の恩恵を受けるが、事業税は受けられない、住民税は受けられないという役所の事務的な答弁ではなしに、納税者に対して、こういう性格で所得税だけなんだ、ほかの税は恩恵を受けられないのだという、納税者の納得のできるような答弁を聞かせていただきたい。
  112. 原純夫

    ○原(純)政府委員 いかなる利益も政策も、国でとれば地方も必ずやる、それに従うということには、必ずしもならぬと思います。気持としては、貯蓄は大事なことなんだから、地方税もやったらどうだという気持にもちろんなるべきだと思うのですが、本件の場合には、貯蓄額の三%税額控除するということになっておりますから、事業税は、ただいま申し上げましたように範囲がちょっと違いますから別にして、所得割でいきますと、それの二割六分とか二割八分とかいうことになるわけですから、三%の二割何分といいますと、○・七八%というような数字になるわけです。これが非常にこまかいということと、この制度は、貯蓄が途中で解約されたような場合にはこの減税額を源泉徴収で取り戻すというような制度があるわけです。そういう場合に、三%すぽっと取り戻す上に、今申したような○・七八%というものを乗っけて取り戻す、それは、国の場合は一本で国に払い込めばいいわけですが、地方の場合は、地方の団体に一々仕訳をして送るというようなことになって、非常に煩にたえない。あまり解約のことは予想したくはありませんが、やはり非常に多くの貯蓄の口数でありますから、解約もある程度の数はあるだろうというようなことも考える。お気持の点は、十分わかるのでございますけれども、いろいろ考えた結果、やはりこれは国税だけで行こうじゃないかということになった次第でございます。  なお事業税につきましては、お話の趣旨は、事業税は納めるが、所得税は納めないという人が若干もちろんあると思いますけれども、その人たちについてのことであろうと思いますが、これは、やはり所得税を納めないのですから、ごく小さいところを地方団体があさるという場合に出てくる現象で、数は比較的少いだろうと思います。その辺に、お気持の点が特に強く出るかと思いますけれども、これは、所得税でやる制度で、事業税まではちょっと行きかねるということで、そういうところは、よくいわれております軽減税率とか、あるいは控除というような面で、いろいろ今後問題として考えるならば考えるというようなことではなかろうかというふうに感ずるわけでございます。大体そんなような気持で処置をいたしております。
  113. 奧村又十郎

    ○奧村委員 どうも、私は今の御答弁では納得はできません。できれば、大蔵税務当局の御方針に私どももなるべく相沿うて、たとえば、今度は事業税の減税など、これから先国会でまたもめることと思いますが、なるべく大蔵省の主税当局の方針に協力をしていきたいと思うが、今のようなお考え方や態度でやっていかれると、どうも私どもは、はなはだ心もとないと思います。  それでは、一体どうでしょう、今までこういう場合に、実質補助金のようなことですが、他の所得税を税額で控除するという、こういう破格な恩恵を与えたというような例が、日本の法律上何かありますか。団体に対する補助金なんかはある。しかし、個人に対するこういう破格な恩恵というものはどうも寡聞にして聞いたことがない。何か例がありますか。
  114. 原純夫

    ○原(純)政府委員 言ってみますれば、生命保険料控除という制度がありますが、これは、貯蓄ということよりも、やはり庶民的な、生活の老後を養い、安定を期するというような意味が強いのでありますが、これは、税額控除ではありませんで、所得控除になっておりますが、そういう制度がある。所得税の諸控除の中に、そのほかにも、雑損の控除であるとか、あるいは医療費の控除であるとかいう制度があります。そう並べますと、えらいこれを正式な制度として、押しつけがましく言うような格好になりますが、そういう意味ではないのですけれども、所得税で、所得からいろいろな項目の家計から出る金を控除するというのはあるということを申し上げておるわけであります。  なお貯蓄控除そのものの中で、例をいえば、外国では西ドイツの例あり、日本では例の減税国債の例があり、戦争末期に、実効は上らなかったのですが、それに類した制度が一度あったことがございます。そういうようなのが、外国並びに日本における例でございます。
  115. 奧村又十郎

    ○奧村委員 西ドイッの減税は、これは、また具体的に資料をいただいて検討したいと思うので、ただ一がいに、西ドイツでこうやったからといって、そうはいかぬと思います。西ドイツの税の事情は、根本から違うと思いますが、きょうはちょっと時間がありませんので、別の機会にお尋ねいたします。税以外でも、こんな破格な恩恵をするということは、どうも私には心当りがないのです。そこで、税法の面から言うならば、たとえば住宅を新築したという場合、住宅を新築したその経費を所得控除する。これは、現にある程度特例はありますが、その所得控除じゃなしに、別の所得の税額を控除する。だから、これはどこから考えたって、破格のことです。それで、私はせっかくこういう破格なことをやるなら、いっそ思い切って、住宅を建てた場合は、住宅の所得控除のほかに税額も控除する、こういうことも続いて起ってきやしないかと思うのですが、どうですか。貯蓄ということがそれほど国家的に必要で、減税の恩恵を与えなくてはならぬのなら、それに似たようなことが今後起ると、やはりこのようにやらなければならぬ。さしずめ住宅の新築などには、私はそのくらいにすべきものである、貯蓄が必要なら同じことだと思う。そう思いませんか。
  116. 原純夫

    ○原(純)政府委員 お尋ねの中で、所得控除でなくて税額控除をするのは、所得控除なら、その貯蓄なら貯蓄の出費を——出費といいますか、金を出す、それをそのまま控除するのだが、税額控除は、何かほかの関係のないものから控除する、非常に優遇度の厚いものだというふうな感じがうかがえるのですが、それは、ちょっと私ども考えとは違うのでございます。というのは、貯蓄控除にしましても、所得控除でいくやり方があるわけであります。西ドイツの制度は、現にそれであり、わが国の減税国債も、所得控除だったわけです。全額ではありませんが、何%かの所得控除であったわけです。所得控除ですと、奥村委員は、重々御承知のことでありますが、高額所得者の所得から十万円控除すると、一番高い限界税率のところで、その利益が及ぶ。低額所得者は、減税額がはるかに少いという不公平が起るから、税額で控除をするということにいたしておるのでありまして、むしろ所得控除よりも、そういう意味では用心をしたという制度であって、決してこれが所得控除よりも非常に度はずれに優遇の度が強いというものではないというふうに考えます。なお、その他新築家屋の建築費を所得控除するとか、あるいはまた同様なことが起りゃせんかというお話でございます。これは、全然あり得ぬ問題だとは思いません。外国あたりでも、若干そういうような例があると思いまするし、また日本でも、現在新築家屋について、特別償却を認めておりますが、これは、やはり出した建築費を早く償却させるということは、早い償却をする年分については、通常よりも余分に所得を控除するわけですから、実質的には、一種の所得控除になるわけです。ただ、私がそういう制度がいいとかなんとか言うておるのじゃなくて、そういうことは考えられないことじゃない。ただ、すぽっと税額控除にいくのはかなり異例なことであるというのは、おっしゃる通りで、こういう制度をとるについては、十分政策的な点とあわせて慎重に考えなければならぬとは思いますが、税額控除が必ずしも所得控除より飛び切り恩典が多いというのでないこと、それから新築家屋については、特別償却でそういうような奨励措置をやっているということを、かいつまんでお答えいたします。
  117. 奧村又十郎

    ○奧村委員 それでは、銀行局長主税局長に、金融関係に関連することをお尋ねいたします。銀行、信用金庫、相互銀行、こういった金融機関は、公共的な性格がある、法律的な建前からいえば、いわば私企業です、私企業で、預金者と相対の取引をやっておる、ただ、公共的な性格上、大蔵省が監督しておる、こういうことですね。ところが今度は、この貯蓄減税の制度をいたしますと、いわば個人対銀行とか、そういう相対の私の取引に対して府が補助金を出す、これは、だいぶ事情が変ってくると思う、そう思いませんか。大体今まで、こんなことはやったことはないでしょう。相対の取引において、甲が乙の銀行ヘ一定の貯金をしたならば、税金を幾ら負けてあげる、いわば補助金相当のものをあげるというのですから、これは金融制度上ずいぶん変ったことになる、そう思いませんか。
  118. 石田正

    ○石田政府委員 政府がこういうふうな減税措置をやる、その減税措置につきましては、いわゆる所得控除と税額控除と二つの問題があって、今まで御議論があったわけであります。しかし私は、実質論から申しますと、従来も預金について税制上特別なことをやってきたという工合に、議論があるだろうと思いますが、これは、他の点から申しまと、私企業である金融機関がお客をとるについて、お客の方がその利益を受ける、そういうことはあったわけです。なぜ政府がそういうことをするかといえば、金融機関に対して補助金をやるとかなんとかいうことではなくして、結局預金をする人、貯蓄をする人に対して、その行為はけっこうな趣旨であるから何らかの優遇措置を講じよう、こういう問題でありまして、それが、今度は税額控除になりましたので、一そう奥村先生の方から見られると異例なことが目立つのだと思いますけれども、しかし、そういう考え方、やり方はあっていいのではないだろうかというふうに思っております。
  119. 奧村又十郎

    ○奧村委員 従来は、特例として利子所得の免税はあったけれども、今度はそうじゃない。他の所得に課税されるべき税額を減税しようというのだから、これは、全く補助金的なものです。それは、従来とは相当制度が変ってきておる。これば多少水かけ論になるので、なるべく具体的なことをお尋ねしていった方がいいと思います。私の言わんとするところは、こういうことをやるについては、この適用を受ける金融機関に対しては、政府がよほど責任を持って監督してもらいませんと、こういう特例措置までして預けさしたが、その金融機関がつぶれたということになったのじゃ、政府は何をやっておるのかわからぬし、国民もたまったものじゃない、こういうことになる。そういう意味で、政府の金融機関に対する監督の責任というものは、今までより数段重くなるだろう、こういうのです。それには間違いないだろうと思いますが、どうですか。
  120. 石田正

    ○石田政府委員 金融機関が一般に預金を受ける場合に、今お話がございましたような工合の悪いことが起っては困るのでありまして、これは、銀行局といたしましては、所管の金融機関につきましてできるだけの監督をやっておる、またやっておりましたし、今後も続けるべきだと思っております。なお、こういう措置が講ぜられますのにつきまして責任が加重せられるであろうということは、私はお話通りだろうと思います。これは、金融機関につきましても、国家が税法上非常に異例な措置を講じてまでこういうふうになるのであるから、受け入れ機関であるところの金融機関は、さらに一そうこういう点を心得て、これが経営に当っていかなければならぬということも、みずから考えなければならぬと思いまするし、われわれもまたその意味におきまして、さらに一そう監督を厳重にしていかなければならぬ、かように考えております。
  121. 山本勝市

    ○山本(勝)委員 関連して。新しい一つの試みでありますから、奥村君が非常に熱心にその影響するところを探求されていることは、私は当然だと思うのです。いかにいいものだといいましても、新しい企てというものは、思わざるところに影響を持ってくるのが、世の中の常であります。西ドイツで今度の戦争後に、貯蓄奨励というような意味で、そういう制度を一時とったことは事実でありますけれども、それでもやはり反対も起りまして、たしか今はやめておると思います。今の経済大臣のエルハルトなどは、金をたくさん持っておる者から税をたくさんもらって、そうして、非常に困っておる者へいろいろ施設をするというようなことは、これは昔からやっておることで、弊害のないことですけれども、しかし、あまりに税を政策の具に供することはいかぬということを、強く主張しておるのであります。それは、税が国民に対して影響するところがきわめて大きいために、ある意味においてはきわめて有効であります。有効であるために、ややもすれば、税を政策の具に使おうとしておる。これは一つの弊害であって、その結果は、大蔵省のいやがる租税特別措置法というものが次から次に出てくる。これは、みな政策の具に使われてくるのでありますが、そういう意味で、私は、この問題を奥村君が熱心に研究されるということは、まことに珍しい、ありがたいことだと実は思うのであります。ことに、二カ年の定期預金を非常に優遇して、ここに新しく作り出す税法上非常な特別待遇をしてやるということは全く影響するところが非常に大きいわけです。貯蓄がふえるということは、目的としてねらった効果ですから、ふえればふえるほどいいと考えられるかもしれません。しかし、国民が他の物を買おうとして用意しておった金を、二カ年間たな上げするということになりますとたちまち国民のふところを当てにして設備をし、品物の用意をしておった人たちは、それだけ購買力が減ってしまいます。また、そこがねらいなんでありましょう。しかし、よそへその購買力の流れが変って参りますと——これは必ず変ってくるでしょう。銀行の方へ流れ出し、銀行からまたよそへ流れていく流れというものは、これまでの流れとは違ったものになってくる。そうして、消費者のふところを当てにして商売、事業をやっておった人が、それだけの購買力が自分のところから減ってくるということになりますと、そこで、またそれらの人は、予定しておった購買欲をそれだけ断念しなければなりません。その人が断念したために、またその購買力を当てにして事業をしておった人の購買欲を目当にして事業をしておった人は、これまたそれだけの収入が減ってきますから、自分の生活欲のみならず、事業上の購買欲を断念せざるを得ない。次から次へとその波動は及んでいくのでありますから、新しい一つの均衡がとれるまでに相当の期間、購買力の流れの変動を通じての社会の動揺ということは覚悟しなければならぬと思うのです。これは研究会みたいなもので、お互いに与党同士でやるのですから、責め立てるというのではなしに、新しい試みであるだけに、もしそういうことが出てきたときには注意してもらわなければならぬ。奥村君のお話に、もし預けた銀行がつぶれた場合は大へんなことになるから、これは特に監督を厳重にしろというお言葉がありましたが、私は、それに対しても不安を持つんです。そういうことをしたために、どこかでつぶれて、今度は新しい銀行の取締りの規則が出てきた、こういうふうにして統制がさらに一歩前進するということになれば、そのまた結果が出て参ります。その結果をずんずん追いかけて参りますと、統制統制を生んで拡大していく。自己拡大の法則というものが、そういうところからくる。だから、もしそういう弊害が起りましたとき、もとに返って、人為的にあまりに無理な手段をもって急速に貯蓄をふやそうとしたところに無理があるというようなことも一応反省してみて、結果を追いかけていかぬように、そこに立ちどまって反省をする必要があると思う。大体二カ年でありましたか、定期預金を銀行に積みますと、そのまま置けば、必ず銀行は、その二カ年の間取付のない、安心できる預金を土台にしておそらく十倍とかあるいは八倍とか、どれくらいの率になりますか知りませんけれども、定期のその預金を土台にした小切手、信用通貨の拡大が行われると思うのであります。ニカ年の取付のない、安心な預金がありながら、その金がそのままとどまるわけはありません。それは、必ず十倍くらいの信用の拡大が行われる。そうして、そこに出てきたところの小切手が、ある甲の銀行の小切手が乙の銀行にまた預金となって入ります。そうすると、その場合は、現金と同じ作用でありますから、ちょうど現金の預金に対して数倍の信用通貨が生まれてくるのと同じ道理で、小切手そのものが裏書きで転々と流通して、そこにそのまま返ってくるものでないのですから、一定の期間を置きますから、現金預金に対して信用通貨の拡大が行われるように、信用通貨を土台にした信用通貨の拡大が次の銀行で行われてくる、次々に行われてくるということで、銀行局長に私から申し上げるまでもありませんけれども一つ一つの銀行ではわずかに五倍とか十倍であるといいましても、その銀行、また次の銀行、またその次の銀行と、こういうのを合計しますと、さらに大きな預金通貨の拡大になるというふうに思うのであります。関連質問ですから、簡単にしりを結びますけれども、信用拡大という方面から、せっかく預金をしたために、一面においては従来の、それを目当てにした事業に購買力減退の影響を与えると同時に、今度は、新しい銀行の貸し出しをそのまま置きまして、その点から出てくるところの流れの方面では、今度は預金通貨の拡大が起り、信用膨張を来たして、そういう生産資材方面で購買力がさらに大きくなって、そして、その方面の物価引き上げてくるということも考えられないではない。ですから、この制度をとったために、従来なかった新しい預金が何千億増加すると見込まれておるか知りませんけれども、その額は、必ず十倍あるいはそれ以上の信用膨張となることを考えますと、その影響が資材面の騰貴を起さないように考える必要があると思うのです。ですから、預金が多いということは、原理としては非常に大切なことであって、乱費を防いでなるべく貯蓄を奨励する。貯蓄がふえる、資本が増加するということが、すなわち労働生産性も上るゆえんです。日本のように、人間ばかり多くて資本の少いということが、金利が高くて労賃が低いという根本原因でありますから、それは、資本をふやすということは大切ですけれども、あまりに急激な変化を求めますと、その影響はかえってマイナスの影響を引き起すことになる。こういう意味で、奥村さんと少し影響するところの観点は違いますけれども、運用上十分御考慮願いたいと思います。
  122. 石田正

    ○石田政府委員 だんだんとお話がありまして、傾聴いたしておりました次第でございます。預金者の保護と申しますか、金融機関が預金者の金を預かっておるのだという観念が、私は率直に言って、戦後とかく薄らぎ過ぎていると思います。これは、経営者といたしましてはもっともっと反省して、預金者の保護に努めていかなければならぬものだと思っております。さりながら、そういう状況について、現状からいたしまして、現にいろいろと法案をお願いいたしておりますが、しかし、われわれの試みとして、今山本委員からお話がありましたような工合に、まずこういう制度をやって、そうして、そこで工合の悪いことが起ってきたら、またそれに対してとるべき措置を講ずるということで、今統制から統制を生むというようなことは、私はよくないことだと思いますし、運用につきましても、私は、行政指導でなるだけそういうことが起らぬようにやる、それから、また行政指導のみならず、金融機関自体の反省によって、そういう事態を改善していくということがどうしても根本である、こういうふうに思っております。  それから第二の、貯蓄がふえるに従いまして、そこにいろいろな所得関係の変化が起り、また経済界にもいろいろな違った動きが起るであろうということは、お話通りだと思います。ただ、これがどういうふうになるかということは、なかなか事前に計数上はじけない、こういう問題だろうと思うのであります。私たちの考え方からいいますると、やはり貯蓄というものが、アメリカなどに比べればもちろんのことでございますが、ドイツその他に比べましても、やはり一人当りの貯蓄というのは相当低いというのが現状だと思います。それからまたいろいろな、御承知のように長期計画を遂行するとかなんとかいいましても、結局それだけ貯蓄ができるかということが根本でございますので、やはり基本的には、貯蓄をふやすという考え方を続けていくべきだというふうに思っております。  それから長期性の貯蓄と短期性の貯蓄と両方あるわけでございますが、これは、貯蓄自体といたしまして、金融機関がそれをどう運用するかという問題を一応切り離して考えますれば、なるべく長期的な預金がふえるということが望ましいのではないか、こういうふうに思っております。しかし、それでは長期性の預金がふえた場合に、その長期性の預金に対しましては、いわゆる信用通貨の造出ということが、ただの預金よりよけい行われるのではないか、これは、私は理論的にはその通りだと思います。それからまた日本におきましても、いろいろと研究されております。けれども、遺憾ながら日本の実情から申しますると、長期性預金についてどれだけの信用創造力があるか、また短期性のものについてはどのくらいか、あるいはあわせてどのくらいであるかという数字が実際につかめておりません。これは、統計その他が悪いという面があるかと思いまするけれども、どうも日本の金融機関の今までやっておるところの業務のやり方それ自体に根本的な問題が一つあるのではないだろうか。要するに率直に申しますると、中央銀行に依存しないで、自分だけで金融を処理していくという建前でありますると、山本委員のおっしゃいましたようなところに動いていくのだろうと思うのです。日本の現状はどうかといいますると、これは、金融機関と申しましても、都市銀行と地方銀行とまるきり違っております。また銀行と相互銀行、信用金庫、みんな違っておりますが、特に平常時には大きく働きまするところの都市銀行でありますが、これについては、どうも日本銀行に依存し過ぎるという形がございます。ですから、預金に対するところの支払い準備の観点から申しましても、実際の貸し出しの工合から申しましても、現在では、まだ日本銀行にたより過ぎているという形がある。そこのところで、計数が諸外国のごとくはっきり出てこないという実情にあるのではないかというふうに思っております。それから、御承知通りに、現在の段階におきましては、銀行は日本銀行から五千億をこえるような借金をすでにしておるわけであります。従いまして、貯蓄がふえました場合に、それを全部返済に充てずしてさらにほかへ回してしまうかという問題については、貯蓄のたまり工合にもよりまするけれども、貯蓄がふえるという面、それから需要がどうなるかという面もございまするけれども、貯蓄がふえれば、だんだん日本銀行の借金をその分から返していく。輸出から返す分もあります。そういうふうな工合にして、正常化をはかるということが当面の問題ではなかろうか。今度お願いいたしておりまするところの問題につきましても、そういう機会に、相当返るのではないだろうかという感じがいたしております。だいぶくどくどと申し上げましたが、先生のお話の点は、ごもっともな点もあります。そのつかみ方という点についてはむずかしいけれどもお話のような点についてはよく気をつけまして、金融行政の上において配意していかなければならないと思っております。
  123. 山本勝市

    ○山本(勝)委員 日本銀行に銀行が依存しておるという関係で、そういう場合には、日本銀行の借金をどの程度まで返させるかというようなことで調節はとりやすいと思いますが、先ほどおっしゃった通り、日本の今の統計を見ましても、日本銀行のバンク・ノートの残というものと、銀行その他における定期預金の残というものと並べて書いたりしておるのです。私は定期預金の残というものと日本銀行の残というものとは、全く性質の違うものだろうと思う。日本銀行の通貨発行の残というものは、残と書いておる分だけが世の中に出て動いておる数字です。私もそう理解しているのです。日本銀行の通貨発行額が返ってこない残、世の中に出ておるのが要するに残になっておる。ところが銀行の方の定期の残というのは、そうではなしに、世の中に出て動いておるものの残りであります。一方は外におるのが残、一方は家に残って留守番しておるのが残というようなことになっておるのじゃないか、そうすると、意味はまるで違う。そこで、日本銀行の外へ出て動いておるいわゆる残、外に動いているバンク・ノートというものと、それから今後統計の上でも、チェックの実際に動いておる数量というものの比較の統計なども一つとってほしい。そうして、日本銀行から銀行券が出た場合には、それが一体何倍のチェック、預金通貨となって作用をするかというようなことを、今後の金融政策の上で資料を整える必要があると思います。日本でチェックの使い方が少いといいましても、これは、傾向としてだんだんとふえていく。それで、ますますそこに預金通貨の作用というものが大きい作用を持ってきますと、経済界の波動というものの及ぶところは非常に大きくなって参ります。なかなかコントロールがむずかしくなる。そこに、アメリカあたりで銀行がよくつぶれるといいますが、日本の場合は、割合にそういう点が少いから、銀行つぶれというのはほとんどありませんけれども……。
  124. 藤枝泉介

    ○藤枝委員長代理 山本君、一つ簡単に願います。
  125. 山本勝市

    ○山本(勝)委員 それは、そういう点も考えて、一つその預金通貨の作用、今後の傾向、そして、銀行が取りつけられたら、もうどこの銀行も全部つぶれるというのが銀行の本質なのですから、つまり預金の何倍かを動かすことによって存在を保つということは、銀行それ自身の一つの本質ですから、必ず預金通貨の働きというものを観点に置いていただく必要があると思う。そこで、下手な百姓が、木を大きくしたいために毎日上に引っ張ったという話がありますが、あまりに資本が少いということで、貯金をふやそうというので、百姓が毎日木を上へ引っ張るようなことにならぬように一つ考慮をお願いして、私はそれで終ります。  私は、質問もこれで関連の中にある程度申し上げたのですから、きょうはそれで終って、また個人的にいろいろお尋ねしたい点はお尋ねします。
  126. 奧村又十郎

    ○奧村委員 委員長が御都合の悪いのを勤めていただいたのですが、あともう半時間、四時半ごろまで、その間、私はおもにこの貯蓄減税に関連しての金融機関の取締りを主としてお尋ねいたしたいと思います。  先ほど山本委員のお尋ねの中にもありましたように、政府は、この金融機関に対する取締り監督の責任が、この貯蓄減税によりまして重くなる、私は、それに非常に無理がかかるので、その二、三を一つ明らかにしていただきたいと思うのであります。というのは金融機関が——ずいぶんこれは政令の内容を書いてございますが、銀行、相互銀行、信用金庫、そのうち銀行、相互銀行、信用金庫に対しては、政府はただいま継続審議で、預金保障基金法案という法律と、それからもう一つこれに相表裏いたしますところの金融機関保全に関する法律、政府は、こういう法律を通さなければ、安心してこれら金融機関の監督ができないというのでしょう。それなら、今度の貯蓄減税をやる以上は、これは当然通さなければならぬということからして、一体相互銀行や信用金庫の内容は、失礼だが、そう安心していけるのかということも考えていかなければならぬ。それから労働金庫、信用協同組合、農協、ずっと書いてあるが、一体どの役所が監督していくのか。もしこれがつぶれて、預金者は金がとれぬということになると、今度政府の責任ということになってくるんだから、その責任関係を明確にしていきたいのであります。  そこで、まずお尋ねいたしたいのは、預金保障基金法案と、金融機関保全に関する法律案ですね。これが継続審議になっております。そこで、前国会でこれが提案された理由は、御承知通りこの法律は、かなり政府の権限を強化して、あるいはある程度金融機関の行動を束縛する非常立法といってもいいもので、本来自由であるべき私企業にずいぶん束縛を加えるのではないか、こう思う。しかし、これを通さなければ安心して政府が責任を持った監督ができない、こういうのでしょう。  そこで、この法案を提案した昨年と、現在ただいまと、この信用金庫や相互銀行の現実の状態は変っておるかどうか。つまり、やはりこの法律を通過させなければ、政府としては責任が持てない、こういう状態であるかどうかということを一つお尋ねいたします。
  127. 石田正

    ○石田政府委員 預金の保障基金に関するところの法案と、それから金融機関の保全に関しまするところの法案が、今継続審議になっておるわけでございますが、これらの法案に対しましては、われわれは、やはりそういうものがあった方が、金融行政をやって参ります上にベターであるというふうに思っておるわけでございます。これを提案いたしました当時の状況と、今の状況とはどうかということでございますが、これは、全部の金融機関がどうとかこうとかいう問題じゃありませんが、そういう工合の悪いことが起きました場合に、やはり法的に措置することができる、それからまた相互銀行、信用金庫につきましては、お互い同士零細預金の保護に心がけていくことは、当然しなければならぬことであるというふうに思いまするので、その意味におきまして、根本的に事情は変更しておらないというふうに考えておるのであります。
  128. 奧村又十郎

    ○奧村委員 私は、貯蓄減税というような画期的な法律を通す以上は、当然この継続審議の金融機関の経営保全及び預金保障制度の法律、これは不可分のものとして、政府は国会を通過させるように努力すべきである、かように思うわけであります。その理由はいろいろ申し上げたいが、その申し上げるについては、やはり現実今の信用金庫や相互銀行の中には、いまだにどうも不安なものがあるという点を明らかにしなければいかぬと思う。たとえば東都信用金庫、これはすでに一、二回不祥事件を起して、現在ほかの金庫の管理下に置かれておるはずです。その管理下に置かれて、ほかの金庫から何億もの助け舟を出してもらっておりながら、その東都信用金庫の出納係長とかは浮き貸しをしておったとかということは、どうですか、銀行局長御存じですか。そういう管理されて、いわば禁治産になっておるものがまた悪いことをしておるという状態なんです。それを一つ見ても、あるいは第一相互銀行のその後の結末を見ても、いろいろ明らかになると思うのです。これも、この審議の際に明らかにしておいていただきたいが、東都信用金庫は、私の申し上げることは間違いないはずですが、どうです。そういうことを考えると、やはりこの法律はぜひ必要だということになると思いますが、どうでしょう。
  129. 石田正

    ○石田政府委員 お話がありましたように、私は、そういう法案は依然必要であると思いますので、継続審議をお願いしておる次第でございます。  それから、今度の減税に関する法案との関係でございますが、それは、貯蓄が必要であるから、国家といたしまして恩典を与える、こういうことでございますが、それじゃ、そういうことをやる以上、あとで何か起った場合に、政府が責任を負って支払いをするということについて財政的な措置を講ずるかどうかということは、私は必ずしも結びつかない問題だと思うのです。  それから、この法案によりまして、これは誤解は全然ないだろうと思いますけれども、そういう形の貯蓄だけをしていくようにということが、貯蓄運動の中心ではないと私は思うのです。貯蓄というものは、全般的にこれをしなければいけないので、率直なことを申しますれば、減税があれば貯蓄をする、減税がないならもう貯蓄はしない、こういう問題ではないので、やはり日本経済全体のためには貯蓄というものは大切ですから、進めていかなければなりません。それからまた政府も、貯蓄がふえていくような工合にいろいろと施策していかなければならぬというような性質のものだと思うのです。それでは、その貯蓄をするところの金融機関が、かりに工合の悪いものが間々出てくるというような場合に、それがあるから、もう貯蓄はしない、奨励するわけにはいかぬのだ、こういうふうに言うわけにもいかないというのが実情ではないか、かように考えております。
  130. 奧村又十郎

    ○奧村委員 あなたが理屈を言われるなら、私も一つ理屈を言わなければいかぬ。その前にちょっと、東都信用金庫が先般来新聞に出ておりますが、あれはたしか一度不祥事件を起して、ほかの信用金庫の管理下にあって、ほかの信用金庫の資金が導入されておるはずですが、それは事実かどうか、また今新聞に出ておる事件は事実かどうか、ちょっとお尋ねしておきたい。
  131. 大月高

    ○大月説明員 私ども直接詳細は存じませんが、東都信用金庫が管理を受けておることは事実だと思います。それから、最近何らかの不祥事件があったということについては、私まだ承知いたしておりません。これは、もっぱら財務局が所管いたしまして処理しておる問題ではないかと思っております。
  132. 奧村又十郎

    ○奧村委員 しかし、一たん不祥事件を起して管理されておるのでしょう。注意すべき金融機関が、また機関の中で事故を起して司直の調べを受けておるのだから、監督官庁である銀行局が知らぬというはずはないと思うのですがね。これは少し詳しい資料をすぐ委員会に出していただきたい。  それから、きのうの読売新聞を見ると、相互銀行のあり方について、政府の監督指導を強化しなきゃならぬという意味のことが書いてある。この裏面には、やはりそういった監督指導の必要を痛感するような事実があるはずだと思うのです。この読売の記事については、政府は関知しておりませんか。
  133. 大月高

    ○大月説明員 昨日、私も読売新聞をましたが、あの点に関しましては、大蔵省は全然関知しておりません。
  134. 奧村又十郎

    ○奧村委員 そこで、銀行局長に、さっきあなたはどうも余分に言われたから、私も少し申し上げますが、あなたの言われたのは、貯蓄減税の恩恵をすることと、金融機関がつぶれることとは別なんだ、そう神経質に思っても、政府としてはそれじゃ困るというような意味のことを、弁解にいろいろ言われたが、それなら私は申し上げる。貯蓄というのは、何も政府が今ここに指定した特定の金融機関に、しかも非常に縛り切った、半年間積み立てて二カ年据え置き、あるいは株式でいえば、二年間は振替はできぬ、そういうことだけが貯蓄ではないはずです。私に言わせれば、特に中小企業を育成するには、一番の貯蓄は、自分の事業に投資することが一番の貯蓄でしょう。あるいはサラリーマンでいえば、自分の住宅を建てるのが一番の貯蓄でしょう。ところが政府の指定した金融機関に、特に政府が縛り切ったこの条件で預けなさい、そうしたら政府の貴重な金を減税してあげよう。こういうことをなさる以上は、その政府の指導に応じて貯蓄をした、政府の指図によって指定した金融機関に預けた、その金融機関がつぶれたといえば、これは政府の政治上の責任はのがれられぬでしょう。その意味において、こういう画期的な法律を出した以上は、監督指導の責任は、今までよりはずっと強化されるのではないか、こういうのです。どうです。
  135. 石田正

    ○石田政府委員 金融機関のあり方につきまして、私は金融機関自身が反省してやっていただくということが根本だと思うのです。経営をしているところの当事者の方が経営上うまくない。それを監督しているものが、全部の金融機関についてうまくやっていくように、経営者が悪くても、大蔵省が監督しているからよくなるというのが実態ではないと私は思います。大蔵省ももちろん気をつけますけれども、それだけでは私はよくならないだろうと思う。私たちがお願いしているのは、各金融機関の方々に対しまして、自分のやっている事業の本質というものをよく考えて、そして御反省を願いたい、こういうことは、私は特に最近強く申し上げているわけです。  それから読売新聞の記事は私は存じませんけれどもお話に関連があることかと思いますが、まだ遺憾ながら、ときどき相互銀行その他につきまして、いろいろな不祥事件が新聞なんかに出てくるわけであります。これにつきましては、今前段に申し上げましたような趣旨から、相互銀行の人が毎月集まっておりますけれども、そこへ行って、われわれとしましては、そういう問題が起ってくるのは何か欠陥があるだろう、そういう欠陥の是正について、具体的な問題ををもっと突き詰めてやってほしい、こういうふうに特にお願いしているわけです。それで、御審議願っておりますところの法案は、そういう意味におきまして、ますます経営者自身の反省と、それからまた良識によるところの行動を期待いたしますけれども、また他面、そういう法的措置を講じておくことも適切ではないか、こういうふうな意味で、その観点からお願い申し上げている、こう申し上げた次第であります。
  136. 奧村又十郎

    ○奧村委員 あなたの答弁は、一番きわどいところで逃げていると私は思う。金融機関の経営者自体の自覚と良識をもって、金融機関みずから健全に経営してもらうのが健全なんだ。それは、なるほどその通りです。しかし、それで政府が逃げられるなら銀行法も要らぬじゃないか。銀行法という法律は、私企業であるべき金融機関を、預金者保護の立場から、公共的な立場から政府が監督する。その監督の権限というものは、非常に強大な権限を持っている。場合によっては、払い戻し停止という権限までも持つ。今度は、この金融三法によって、まだまだ強力な権限を政府が持つということは、それだけ預金者にかわって政府が金融機関を監督指導する権限と責任を持つということです。そこへもってきて、また今度これらの政府の指定した金融機関に預けた場合は、政府のとうとい金を減税してあげようというのでしょう。そうすれば、なおその責任が重くなるじゃないか。だから銀行局長も、ずいぶん責任は重くなります、それは痛感いたします、政府も万全の処置をいたしますと、そう言わなければ答弁にならない。
  137. 石田正

    ○石田政府委員 この問題の御質問の冒頭におきまして、われわれは責任の重かつ大なることを自覚しているということは申し上げたわけであります。しからば、責任は重かつ大でありますけれども、ほんとうに金融機関がよくなっていくことはどういうことか。大蔵省としては、できるだけの監督も指導もいたしますけれども、しかし何といいましても、経営自身に当る方がしっかりやっていただかなければいかない。大蔵省の監督を受けているから、われわれは安閑としてやっておるのだというような気持が、いささかでもあると工合が悪いと思いますので、最近は、特に経営者自身の反省といいますか、あるいは自分自身で、できるだけ大蔵省にたよらずして、あるいは監督を受けないでやっていくように、大いに奮起していただきたい、こういうことを実際問題としてやっていることを申し上げた次第であります。
  138. 奧村又十郎

    ○奧村委員 それじゃどうですか。近ごろの銀行のオーバー・ローン、総預金額に対して貸し出しの方が幾分かでも多い。これは世界的に見て、おそらく日本は特別ひどいと思うのですが、こんなことは普通のことと思いますか、これには銀行に責任がないと思いますか、こんな状態で監督が十分できると思いますか。
  139. 石田正

    ○石田政府委員 昨年以来オーバーローンが非常に激化して参りました。そうして日本銀行の貸し出しがふえ、それから都市銀行の借りえ入れがふえるという形になっております。これは、決していいことではない、これは非常に工合が悪いことであります。銀行としては、責任を感じてもらわなければ困るし、われわれも責任を感じておるのでります。ただ問題は、それをどうして解消するか、これ以上ふやすことをいかにチェックして、いかにこれを解消するかということを、具体的に考えなければならぬのだと思います。しかし、これもまた私は率直に申し上げますけれども、五千三百億というような貸し出しが現にあるわけであります。それからまた国庫の引き揚げ等の関係もありますから、二月、三月はふえこそすれ、減らないという状況だと思います。しかし、そういうことで経済が動いておるわけでございます。そうなりますと、それを解消するのにつきましては、経済全体に支障を与えないようにこれをどうしてうまく揚げていくか、こういう問題になるだろうと思うのでございます。決してそういうふうになりましたことは、いいとは思いませんし、それからわれわれとしても、責任があることでありますので、できるだけ早く解消に努力いたしたいと思っております。
  140. 奧村又十郎

    ○奧村委員 これにもだいぶ問題がありますが、時間もありませんから、大ざっぱに行きたいと思います。  この政令で指定する金融機関、信用協同組合、農業協同組合、それから漁業協同組合、水産加工業協同組合、これは、一体それぞれどの役所が監督するのですか、もし万が一のことがあったら、これはどうなりますか。第一私ども実際承知しておるのは、農業協同組合でも、漁業協同組合でも、現に再建整備法を施行しているのです。赤字でもうにっちもさっちもいかぬ。それこそ破産したようなのを、再建整備法によって政府が補給金を出して、何とかやらしておるのがずいぶんたくさんある。そういうものもこの中に含まれるのですか、私が特に神経質にお尋ねするのは、これは、昭和三十四年からあと二年間据え置きでしょう。そう長期に預けさしておいて、そうしてつぶれるということは、ずいぶん全国的にはたくさんできると思う。信用金庫や、相互銀行でも、そういうことは現にあるではないか、それは、一体どの役所がどう監督するのですか、それをまず一点お聞きしておきます。
  141. 石田正

    ○石田政府委員 これは、法制的に申しますと、農林省と大蔵省との共管になっております。直接的な問題といたしましては、単位組合は都道府県知事が監督するというふうな形に現在なっております。
  142. 奧村又十郎

    ○奧村委員 農協や漁業組合は共管で、大蔵省はそこまで手は伸びないと言われるかもしれぬが、それでは、まず銀行局長の一番関係の深いことですが、信用協同組合について、あなたは監督は今しておらぬはずですね、これは府県庁の許可ですから。これが東京都内でも八十幾つある。この中には、ずいぶんやみ金融そっくりなひどいのもあるのですが、こういうものに預けたものも、税法上恩恵を受けるのを大担にやってのけて、今後不祥事件が起ったらどうなるのですか、この監督を今まで通り府県庁にまかせておきますか、どうしますか。
  143. 石田正

    ○石田政府委員 今度の貯蓄減税の問題につきましては、銀行局といたしましては、貯蓄が大切であるということが第一点、それから第二点といたしまして、銀行局が監督している機関の貯蓄については、減税の恩典があるけれども、その他のものについては減税の恩典がないようにしてくれというような考え方は、とれないというふうに思っているわけでございます。それから、また直接投資につきましても、貯蓄の趣旨にかなうものは、やはり範囲を広げて、減税の恩典があってしかるべきではないかというような工合に思っているわけでございます。今の減税の恩典が、どういう形の預金に対して及ぶべきであるかということに対して、あまり限定をいたしますことはどうかというような考え方から、今のような結果に相なっている次第でございます。
  144. 奧村又十郎

    ○奧村委員 私は、監督上の政府の責任をお尋ねしたのでありますが、その点について、あなたは明確な御答弁をしておられません。主税局長答弁できますか。信用協同組合の監督の責任、これを一つお尋ねします。
  145. 原純夫

    ○原(純)政府委員 所管のほかでございますから、御遠慮した方がよろしいのだと思います。ただ問題全般について、今の信用協同組合に限らず、一般について申しますれば、御心配いただくお気持はよくわかりますし、私どもも、こういう制度をやって、これが運用される信用関係がうまくいかないようなことがありましては、これはまことにまずいということから、これはもう所管の銀行局ないし各省、あるいは地方庁、それぞれ十分御尽力いただけるものというふうに考えております。ただ、実際に信用度が違う、それに応じてどこかで線を切って、この利益を与える機関を区切るかどうかということにつきましては、どうもそれはいたしにくい、かえってそれをいたすことが、何か金融機関の中に非常に大きなグレードをつけるというばかりか、いわばその対象にならないものの信用がそこでがたっといくというようなことにもなりかねないのではないか。やはり一般に金融機関として世の中で機能を営んでいるというものは入れて参り、一方でおっしゃるような気持を十分体して、指導監督はやっていただく、金融機関も十分自戒自粛、がんばっていただくということ以外にはないのではないかという気持でやっているわけでございます。
  146. 奧村又十郎

    ○奧村委員 まったくお二人とも言いわけばかりで、積極的な責任のある答弁ができない。はっきり御答弁をいただかぬと、私は大蔵大臣に質問しなければならぬ、またあの大蔵大臣のコンニャク答弁を聞かなければならぬ。何とかできませんか。それなら、一つ主税局長にお尋ねしますが、こういう金融機関が、一たんはいわゆる貯蓄についての証明書を発行しますね。ところが途中から預金を引き出した、貯蓄の減税の恩恵に該当しないという場合には、これらの金融機関がかわって税を取り立てるということになっているわけですが、そういう場合には、当然これは税務署は調べなければいかぬですね。その常時調べる権限は、税務署にあるのですか、あるとして、どの規定によってあるのですか、それをちょっと伺いたい。
  147. 原純夫

    ○原(純)政府委員 今度改正をお願いいたしております法案の中に、ただいまおっしゃいました解約払い戻しの際の源泉徴収については、所得税法の源泉徴収に関します条文をただ準用するということにいたしております。従いまして、一般の源泉徴収と同様に扱われる。そういう関係で、税法の質問検査権に関する規定も動いて参ることになるようになっております。
  148. 奧村又十郎

    ○奧村委員 それは、どの条文ですか。
  149. 原純夫

    ○原(純)政府委員 所得税法で質問検査権を規定しておりますのは、第六十三条であります。それを引いてくる条文は四十一条の五というので、貯蓄控除額相当額の徴収というのが出ております。そうしてその第二項に、この徴収して納付すべき所得税は、所得税法第五章の規定により徴収して納付すべき所得税とみなすということにいたしております。それで、これは源泉徴収所得税であるということから、質問検査権が働いてくるということになるわけでございます。
  150. 奧村又十郎

    ○奧村委員 そうしますと、常時の検査権は主税局にある、つまり大蔵省にあるということになるんですか。今までは、たとえば農協だとか漁業協同組合というのは、農林省との共管ということですが、税法上の立場から、大蔵省に常時の検査監督権があるというわけですか。
  151. 原純夫

    ○原(純)政府委員 ただいま四十一条の五の二項がら回っていくように申したのは、ちょっといけなかったので、訂正さしていただきます。所得税法六十三条の質問検査権自体が、所得税の納税義務者に金銭もしくは物品の給付をなす義務があったと認められる者に対しては、質問検査ができるとなっておりますので、それで、まっすぐにいけるというふうにお読みいただきたいと思います。  それから金融機関の監査といいますか、これは税の方は、税の源泉徴収が確実にできているかどうかという面で税務官署がいたす。金融機関の金融機関としての機能を監督するという方はそれぞれその所管でおやりになるということで、両者別々のものでございます。
  152. 奧村又十郎

    ○奧村委員 今度、これによって漁業協同組合や農協などを金融機関として扱うていく。そこで、私は新たな角度で、政府の検査監督の責任が加わるから、相当検討せねばいかぬと思うのですが、どうも時間がありませんし、それじゃあと証券取引法の証券業者の取り扱う指定の株式銘柄ですが、これはきまっておりますか。
  153. 原純夫

    ○原(純)政府委員 これの対象となります株式投資の株式の銘柄を政府が指定するということは、いたさないつもりでおります。ただ、その株式を売るということは、毎月一定額を積み立てさして、それがたまるに従って買うわけですから、つまりそれに対する販売は、いわばまさに割賦販売ということになるわけであります。証券取引法では、割賦販売につきましては、持続的な関係を前提とした証券の販売であるということから、特に慎重を期しまして、割賦販売業者は、割賦販売に関するいろいろな要件を具して承認を申請するということの条文がはっきり出ております。その承認を申請される際に、自分の方は、こういう用意をしてやるというようなことがついてくるかと思います。そういう経路で、この銘柄が、おのずから指定と申しますか、自主的にきまってくるというようなことはあり得ると思いますが、政府は指定はいたさない、その経路でどうきまるかということにつきましては、まだ最終的な結論は出ておらないように私は承知しております。
  154. 奧村又十郎

    ○奧村委員 まだこのほかに、これほどの犠牲を払って、果して貯蓄の効果がどのくらい上るかとか、それから金融機関の実情とか、こまかい細目についての質問はたくさんありますが、委員長の御都合もありますし、私は、本日は質問をこれで打ち切りたいと思います。
  155. 藤枝泉介

    ○藤枝委員長代理 次会は明二十七日午前十時三十分より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。     午後四時三十六分散会