○山本(勝)委員 関連して。新しい
一つの試みでありますから、奥村君が非常に熱心にその影響するところを探求されていることは、私は当然だと思うのです。いかにいいものだといいましても、新しい企てというものは、思わざるところに影響を持ってくるのが、世の中の常であります。西ドイツで今度の
戦争後に、貯蓄奨励というような
意味で、そういう制度を一時とったことは事実でありますけれ
ども、それでもやはり反対も起りまして、たしか今はやめておると思います。今の
経済大臣のエルハルトなどは、金をたくさん持っておる者から税をたくさんもらって、そうして、非常に困っておる者へいろいろ施設をするというようなことは、これは昔からやっておることで、弊害のないことですけれ
ども、しかし、あまりに税を政策の具に供することはいかぬということを、強く主張しておるのであります。それは、税が
国民に対して影響するところがきわめて大きいために、ある
意味においてはきわめて有効であります。有効であるために、ややもすれば、税を政策の具に使おうとしておる。これは
一つの弊害であって、その結果は、
大蔵省のいやがる
租税特別措置法というものが次から次に出てくる。これは、みな政策の具に使われてくるのでありますが、そういう
意味で、私は、この問題を奥村君が熱心に
研究されるということは、まことに珍しい、ありがたいことだと実は思うのであります。ことに、二カ年の定期預金を非常に優遇して、ここに新しく作り出す税法上非常な特別待遇をしてやるということは全く影響するところが非常に大きいわけです。貯蓄がふえるということは、目的としてねらった効果ですから、ふえればふえるほどいいと
考えられるかもしれません。しかし、
国民が他の物を買おうとして用意しておった金を、二カ年間たな上げするということになりますとたちまち
国民のふところを当てにして設備をし、品物の用意をしておった人たちは、それだけ購買力が減ってしまいます。また、そこがねらいなんでありましょう。しかし、よそへその購買力の流れが変って参りますと——これは必ず変ってくるでしょう。銀行の方へ流れ出し、銀行からまたよそへ流れていく流れというものは、これまでの流れとは違ったものになってくる。そうして、
消費者のふところを当てにして商売、事業をやっておった人が、それだけの購買力が自分のところから減ってくるということになりますと、そこで、またそれらの人は、予定しておった購買欲をそれだけ断念しなければなりません。その人が断念したために、またその購買力を当てにして事業をしておった人の購買欲を目当にして事業をしておった人は、これまたそれだけの収入が減ってきますから、自分の生活欲のみならず、事業上の購買欲を断念せざるを得ない。次から次へとその波動は及んでいくのでありますから、新しい
一つの均衡がとれるまでに相当の期間、購買力の流れの変動を通じての社会の動揺ということは覚悟しなければならぬと思うのです。これは
研究会みたいなもので、お互いに与党同士でやるのですから、責め立てるというのではなしに、新しい試みであるだけに、もしそういうことが出てきたときには注意してもらわなければならぬ。奥村君の
お話に、もし預けた銀行がつぶれた場合は大へんなことになるから、これは特に監督を厳重にしろというお言葉がありましたが、私は、それに対しても不安を持つんです。そういうことをしたために、どこかでつぶれて、今度は新しい銀行の取締りの規則が出てきた、こういうふうにして
統制がさらに一歩前進するということになれば、そのまた結果が出て参ります。その結果をずんずん追いかけて参りますと、
統制が
統制を生んで拡大していく。自己拡大の法則というものが、そういうところからくる。だから、もしそういう弊害が起りましたとき、
もとに返って、人為的にあまりに無理な手段をもって急速に貯蓄をふやそうとしたところに無理があるというようなことも一応反省してみて、結果を追いかけていかぬように、そこに立ちどまって反省をする必要があると思う。大体二カ年でありましたか、定期預金を銀行に積みますと、そのまま置けば、必ず銀行は、その二カ年の間取付のない、安心できる預金を土台にしておそらく十倍とかあるいは八倍とか、どれくらいの率になりますか知りませんけれ
ども、定期のその預金を土台にした小切手、信用通貨の拡大が行われると思うのであります。ニカ年の取付のない、安心な預金がありながら、その金がそのままとどまるわけはありません。それは、必ず十倍くらいの信用の拡大が行われる。そうして、そこに出てきたところの小切手が、ある甲の銀行の小切手が乙の銀行にまた預金となって入ります。そうすると、その場合は、現金と同じ作用でありますから、ちょうど現金の預金に対して数倍の信用通貨が生まれてくるのと同じ道理で、小切手そのものが裏書きで転々と流通して、そこにそのまま返ってくるものでないのですから、一定の期間を置きますから、現金預金に対して信用通貨の拡大が行われるように、信用通貨を土台にした信用通貨の拡大が次の銀行で行われてくる、次々に行われてくるということで、
銀行局長に私から申し上げるまでもありませんけれ
ども、
一つ一つの銀行ではわずかに五倍とか十倍であるといいましても、その銀行、また次の銀行、またその次の銀行と、こういうのを合計しますと、さらに大きな預金通貨の拡大になるというふうに思うのであります。関連
質問ですから、簡単にしりを結びますけれ
ども、信用拡大という方面から、せっ
かく預金をしたために、一面においては従来の、それを目当てにした事業に購買力減退の影響を与えると同時に、今度は、新しい銀行の貸し出しをそのまま置きまして、その点から出てくるところの流れの方面では、今度は預金通貨の拡大が起り、信用膨張を来たして、そういう生産資材方面で購買力がさらに大きくなって、そして、その方面の
物価を
引き上げてくるということも
考えられないではない。ですから、この制度をとったために、従来なかった新しい預金が何千億増加すると見込まれておるか知りませんけれ
ども、その額は、必ず十倍あるいはそれ以上の信用膨張となることを
考えますと、その影響が資材面の騰貴を起さないように
考える必要があると思うのです。ですから、預金が多いということは、原理としては非常に大切なことであって、乱費を防いでなるべく貯蓄を奨励する。貯蓄がふえる、資本が増加するということが、すなわち労働生産性も上るゆえんです。日本のように、人間ばかり多くて資本の少いということが、金利が高くて労賃が低いという根本
原因でありますから、それは、資本をふやすということは大切ですけれ
ども、あまりに急激な変化を求めますと、その影響はかえってマイナスの影響を引き起すことになる。こういう
意味で、奥村さんと少し影響するところの観点は違いますけれ
ども、運用上十分御考慮願いたいと思います。