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1958-02-14 第28回国会 衆議院 大蔵委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年二月十四日(金曜日)     午前十一時三十分開議  出席委員    委員長 足鹿  覺君    理事 大平 正芳君 理事 高見 三郎君    理事 藤枝 泉介君 理事 平岡忠次郎君    理事 横錢 重吉君       足立 篤郎君    有馬 英治君       井出一太郎君    奧村又十郎君       川野 芳滿君    吉川 久衛君       杉浦 武雄君    高瀬  傳君       竹内 俊吉君    内藤 友明君       古川 丈吉君    前田房之助君       山本 勝市君    有馬 輝武君       井上 良二君    石野 久男君       石村 英雄君    春日 一幸君       神田 大作君    久保田鶴松君       竹谷源太郎君    横山 利秋君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 一萬田尚登君  出席政府委員         大蔵政務次官  坊  秀男君         大蔵事務官         (大臣官房日本         専売公社監理         官)      村上孝太郎君         大蔵事務官         (主計局長)  石原 周夫君         大蔵事務官         (主税局長)  原  純夫君         大蔵事務官         (理財局長)  正示啓次郎君         大蔵事務官         (銀行局長)  石田  正君         大蔵事務官         (為替局長)  酒井 俊彦君         国税庁長官   北島 武雄君  委員外出席者         大蔵事務官         (大臣官房財務         調査官)    大月  高君         大蔵事務官         (大臣官房財務         調査官)    稲益  繁君         大蔵事務官         (大臣官房財務         調査官)    谷村  裕君         大蔵事務官         (主計局法規課         長)      小熊 孝次君         大蔵事務官         (主計局税制第         一課長)    塩崎  潤君         大蔵事務官         (主税局税制第         二課長)    吉国 二郎君         大蔵事務官         (国税庁税部         長)      金子 一平君         日本専売公社副         総裁      石田 吉男君         専  門  員 椎木 文也君     ————————————— 二月十四日  委員成田知巳君及び横路節雄君辞任につき、そ  の補欠として有馬輝武君及び河野密君が議長の  指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  税制に関する件  金融に関する件  外国為替に関する件      ————◇—————
  2. 足鹿覺

    足鹿委員長 これより会議を開きます。  税制に関する件、金融に関する件及び外国為替に関する件について調査を進めます。質疑の通告があります。これを許します。石村英雄君。
  3. 石村英雄

    石村委員 私は質問でなしに、資料の要求をちょっとしておきたいと思うのですが、三十一年から三十三年までの国民総支出に対する財政規模関係、これは財政金融統計月報の七十三号に三十二年までは出ているのですが、もう三十一年の決算もできておりますから、三十一年度は決算額により、三十二年、三十三年は予算額財政規模を出していただきたいと思います。もちろ三十二年度については、補正予算による分、財政投融資の繰り延べ、あるいは復活された最後の数字で出していただきたい。それからいま一つは、郵便貯金の三十二年度の現在の実績と、三十二年度中の増加見込み、これだけを出していただきたいと思います。
  4. 足鹿覺

    足鹿委員長 いいですか、資料は出ますね。  横山利秋君。
  5. 横山利秋

    横山委員 きのうに引き続きまして、質問をいたしますが、あとの方もいらっしゃいますので、問題を限定いたしまして、大蔵大臣質問をいたしたいと思います。  一萬田さんの今回の構想の中で、最も一萬田さんらしいといわれ、かつあなたの構想がそのままとにかくなまで出て参っておりますのは、たな上げ資金の問題と、それから貯蓄控除制度の問題であります。あなたの最初構想から変遷はいたしましたものの、それがともかくも一応貫かれて参った、こういうふうに考えるわけであります。たな上げ資金のことにつきましては、別途また質問をすることにいたしまして、私は、この減税貯蓄制度が持っております意義、その内容、その効果等につきまして、端的に質問を続けたいと思うわけであります。  まず最初に承わりたいのは、この減税貯蓄制度を実施するほんとうの気持は、一体どういうものであるか、真にこれによって貯蓄増大をしようとするのか、これは単に呼び水として考えておるのか、貯蓄をするために必要な方法は何と何と何を考えておるのか、これが唯一無二のものであるか等、これを構想された大臣の率直な所見をまず承わりたいのです。
  6. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 むろんこのおもな目的は、貯蓄増強にあるのであります。貯蓄増強については、またこれを可能ならしむるいろいろな施策が必要であることは、申すまでもありません。その直接的な一つと、こういうように考えておるのであります。特に私がこれを考えましたのは、今回はなるべく横すべりなんかないように、新しい所得が生じた場合に、その所得一部分貯蓄に回るようにと、そういうふうな仕組みにするのには一体どうすればいいのか。こういうところに基本を置いて、法案の下づもりをいたしております。従いまして、できるだけ大衆所得のうち、大衆といっても、比較的勤労所得というようなところになるべく中心を置くようにして、そしてやっていただこう。こういうふうな特別措置が、税として必ずしも適当なものであるとも私は考えておりません。おりませんが、しかし今日貯蓄増強が非常に必要であるということと、それから大衆方々に特に貯蓄を願う、そういうふうなことから、こういうふうな特別措置考えたわけであります。
  7. 横山利秋

    横山委員 私が聞いておりますのは、もう少し高いところから聞いておるのであります。閣議で本年度予算基本構想最初に決定いたしましたときは、九月の十八日でございました。そのときに、消費を含む内需の抑制をして、そして輸出をとにかく増強するというのが、基本的な構想であったように私は承知しておるのであります。それから、きのうあなたに質問したのでありますけれども、経済行き過ぎという点をあなたは強く指摘をせられておる。経済行き過ぎとは、一体根本的にどういうことが原因であったか。少くとも本委員会で今日まで明らかになりましたことは、これは投資景気の問題ではなかったか。この消費行き過ぎというものがほんとうにあったのであろうが、かつてあなたは、千億減税をしたことがインフレを刺激するようなことはなかった、これは貯蓄の方に相当回ったというふうに言い、原さんは、それを裏づけられたわけです。今この貯蓄控除制度を実施をしなければならない積極的な理由というものは、今の政府の持っております輸出増大ということと少しずれがあるのではないか、こう考えるわけでありますが、いかがなものでありますか。
  8. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 この投資行き過ぎということは結局貯蓄以上に投資が行われたということにあるのでありまして、従いまして、今後日本経済を拡大していく上においてやはり一番大切になるのは、貯蓄増大、その範囲に見合うように経済の拡大が行われる、こういうことが大切であります。それと、特にこの際必要なことは、国際収支改善、これが日本経済一つの根幹にもなっておるのであります。このためには、国内需要というものが喚起されることは、少くとも今日の状態ではおもしろくないのであります。国内消費物資に対する国内需要を押えて、そうして輸出の方に振り向ける、こういうふうな態勢を作る。それには、どうしても購売力の発動を抑制して、貯蓄をしていただかなくてはならぬ、こういうことになるのであります。
  9. 横山利秋

    横山委員 貯蓄増強する方法やいかんという議論でいきますならば、ほかに方法がまだあろうと、私は先ほど申し上げたわけであります。ともあれ、本来的な貯蓄増強の直接的な手段というものは、預金利子を引き上げたらどうか。いろいろな問題はありましょうけれども、それが本来的なことではなかろうか、こういうふうに考えるわけであります。預金利子を引き上げることなくして、銀行に対し金融機関に対して、さらにこれに奉仕する結果になるのではないか。本来この種の問題につきましては、答申でもいっておりますように、税制上の貯蓄奨励措置としては、第一に、利子所得については、昭和三十四年三月までの契約にかかる一年以上の長期性預金等利子非課税とし、第二に、同じく三十四年三月までの支払いにかかるその他の預金等利子を一〇%の軽減税率による源泉分離課税とし、第三に、また郵便貯金国民貯蓄組合預金等利子については、非課税規定を設けているほか、第四に、配当所得については、三十四年三月まで、源泉徴収税率を一〇%に軽減し、第五に、生命保険については、保険料最高二万二千五百円までは所得金額から控除する等の措置を講じている。貯蓄控除制度構想は、このような現行制度の上にさらに税制上の特例を設けようとするものであるというふうにいっておるわけであります。これほどまでにしなければならない積極的な理由は一体何であるか、これを私は聞いておるのであります。
  10. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 一口に申し上げますと、先ほどから申しますように、今日貯蓄増強が特に必要である、緊要であるというところにあるのであります。同時に私の考えでは、先ほど申しますように、大衆の新しい所得が生じた場合に、所得一部分をなるべく貯蓄に回していただく。これは、一面においてやはり勤労大衆というようなことも私頭に置いておるわけでありまして、そういうふうな大衆方々貯蓄をされて、そうしてそれが産業資金に回ることによって国のためになる。と同時に、それによってそういう方々税法上の恩典を受けるということになれば、ある意味において、やはり低額所得者といいますか、大衆に対する租税負担が若干は軽くなる、私はこういうふうな考えを持っておったわけでございます。
  11. 横山利秋

    横山委員 あなたの言っていらっしゃるのはよくわからないのですが、先ほどからいろいろと、そこはかとなく言っていらっしゃることを聞けば、それは大衆に対する恩恵であるということ、それからその人々所得がふえるということ、ふえただけの中から貯蓄をしてもらいたいというように理解をされました。しからば、一体その大衆というものはどういうものであるか、どの階層をねらっておるのか、具体的に何万円くらいの階層人々をねらっておるのか、それを一つ聞かして下さい。
  12. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 その階層につきましては、別に私は制限しておるわけではありませんが、新しい所得が生じた場合に、源泉的になるべくこれを貯蓄に回していただこう、こういうふうな考え方であるのでありまして、この行き方では、なるべく組合を作って貯蓄をしていこう、こういうふうになっておるのでありまして、私は端的に言えば、勤労者あたり給与のうちから一部分貯蓄に回していただければ、非常にいいんじゃないか、そういうふうなことを一つのねらいにしておるわけであります。
  13. 横山利秋

    横山委員 この税制改正の要綱を見ますと、年間貯蓄額の三%相当額最高六千円をその年分所得税額から控除すると出ています。そうなりますと、最高六千円といいますと、二十万円です。年間最高二十万円を貯蓄できるという人は、一体どういう人であるか。一体勤労者は、自分所得の何%くらいを今貯金をしておるのか、逆算して考えて下さい。かりに五分だといたしますと、どのくらいですか。四百万円くらいです。年間所得四百万円の人が五分で二十万円、二十万円を貯蓄して六千円の税額控除を受ける、こういうことになる。しからば、そういう年間四百万円くらいの人は勤労大衆ではありませんから、勤労大衆は一体どのくらいの人がどういう貯金をしておるか。私の手元にいろいろな資料があるのですが、自分資料ではいけませんから、経済審議庁資料を使いましょう。経済審議庁が発表いたしました消費需要予測調査、昨年の募れのものであります。これによりますと、過去一年間所得のふえたものは、調査の結果四三%、変らないのが三九%、減ったのが一四%であります。その一四%というのは、三十万円以下の人が圧倒的で、ふえたという四三%は、何と六十万円以上の人であります。ではふえた所得をどれだけ貯蓄に向けたか、七〇%以上を向けた人はわずかの四・五%で、しかも六十万円以上の世帯が多いのであります。それから貯蓄に向けられなかったという人は三三%あります。その三三%の半数が三十万円未満世帯者であり、今後一年にふえる所得のどれだけを貯蓄に回すかという調査に対しましては、七〇%以上貯蓄に回したいというのがわずかに五・八、三〇%から七〇%を貯蓄に回したいという人は二一%、三〇%以下貯蓄に回したいという人が三五・八%、しないという人が一七・五%、特に三十万円未満世帯者二二・二%は、全く貯蓄意思がない。貯蓄意思がないということはどういうことかというと、それを生活内容改善に向けたいという意向が圧倒的であるわけであります。政府消費需要予測調査をもってするならば、三十万円未満の人は、今後所得がかりにふえたにしても、貯蓄をするわけにいかないという立場にあるわけです。あなたが最も望んでおりますのは、六十万円以上四百万円以下の人がこの恩恵が受けられるということになるわけであります。いかがでありましょうか。私の調査ではありません、経済審議庁調査が、如実にこの傾向を示しておるわけであります。大臣は、一体どこのところの人々所得を吸い上げようとしておるのか、これをもって勤労大衆のための減税貯蓄と断言し得られますか。
  14. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私が申しましたのは、むろん勤労大衆の方が最高額貯蓄して下さるというふうにも考えておりませんけれども、こういう制度を置くことによって、勤労大衆は、物価も下る状況にもありますので、国の今日の情勢から見て、やはりそれ相応に貯蓄をしていただくことが期待できるだろう。別に私は、その金額をどうこうというのではありません。できるだけそういうふうな情勢に導いていきたい、こういうように私は考えておるわけであります。
  15. 横山利秋

    横山委員 あなたの考えておられるのは、そうありたいということなんです。しかし政府調査をもってすれば、そうはならないというのです。結局、あなたはそうありたいけれども、結果としては、中額所得者から高額所得者のための減税になるということを、あなたは私に反駁し切れないではありませんか。これで勤労大衆の名前を使うということは、おこがましいと言わなければならない。もちろ勤労大衆でも貯金をしておりますよ。しておりますけれども、その貯金をしておる人たちの中で、税金を払えない人もおる。少し矛盾するような議論でありますけれども、それが少からずあるわけであります。無理に貯金をした。あなたはその効果減税で与えてやるという。ところが税金を払っておらない人があるのであります。これをどうしますか。言うならば、税金を払っておる人、払ってない人、両方とも貯金をしても、税金を払っておる人は恩恵を受けられるけれども、払っていない人は恩恵が受けられない。二重に上の方に得になるわけであります。もしもあなたがほんとうにあなたのべースで貯蓄増強したいというならば、税金を払っておろうが払っておるまいが、貯蓄をすればフェーバーを与える、つまり補助金をやる、端的にいえばそういう方式です。なぜそういう方をやりませんか。結局あなたのいうのは、いつも上の方のお金持ちに、少くともお金を持っておる人にこのフェーバーが及ぶ。お金を持っておらない人、貯蓄ができない人、貯蓄があっても税金を払っておらない人は、どんなに貯蓄しても何にもならないのであります。この点はどうしますか。あなたがもしも貯蓄増強する、貯蓄をした人は何とかするというならば、すべての人に恩恵を与えるべきであると思うが、いかがでありましょうか。
  16. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 この制度では、税金を納めていないものに何らの恩典がないじゃないかというお話でありますが、その限りにおいては、ごもっともであります。ただ私は、今日所得税は重いという感じを持っております。事実重いと私も思います。従いまして重い税を——税自体が、非常に所得税でも別に重いのではないのだ、所得税はたいへんいいレベルにあるのだというときなら、その税を納める人と納めない人との関係を言われるのもいいのですが、所得税を納めることは非常に重いのですから、この重い所得税を負担しておる人が、こういうところにおいて税法上ある程度の恩典があっても、税を納めない人に対して非常に公平を失するというように言うのは、私としては少し納得しかねるところでありまして、これは、税を納めぬ人にがまんをしていただかなければならない、かように考えております。
  17. 横山利秋

    横山委員 何たる議論でありますか、税を納める人と税を納めぬ人との不均衡はしようがないというお話であります。少くともきのうあなたが高い、不公平だ、複雑だ、こういうふうにおっしゃったから、私はあなたの真意がそこにあると思った。この消費需要予測調査でみますと、少くとも三十万円以下の人は、まだ生活内容改善をしたいと言っているのに、今の税制というものは、その生活内容のところに食い込んでおるのであります。税というものは、生活費を侵さないというのが原則であります。それなるがゆえに、多少無理があっても、今日まで与野党とも課税最低限の向上に努力をして参った。もしもあなたが前半で言うように、所得税が重いという観点に立つならば、こういう不公平なことに五十億、六十億の金をつぎ込まずに、課税最低限を引き上げるべきではありませんか。一番下の方から税金を安くしていって、払っている人と払っていない人の均衡をはかることが大事ではありませんか。あなたの意見は全く矛盾撞着して、何のことだかわかりません。もう一ぺん言って下さい。
  18. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私は、別に矛盾しているようには思わないのであります。言いかえれば、所得税が重いのですから、そういう所得税の重い人が貯蓄をした場合に、所得税において若干の減税があったということによって、税を納めぬ人がそれはいかにも不公平ではないか、おれの方は税を納めぬから、かりに貯蓄をしても何も得になることはない、こう言うのは少し私無理じゃないかということを申し上げておるのであります。それじゃ、所得税において基礎控除を引き上げたらいいじゃないか、これも、所得税自体改正としてはむろん考えられる点であろう、それは、私別に異論を言うのではありません。しかし今回は、やはり世間に向って、購買力を抑制して貯蓄をぜひして下さいという一つの大きな政策を掲げて、その目標でやるのでありますから、所得税自体改正と違います。基礎控除でするのでは十分でない、適当でない。かりに適当であるとしても、こちらの方がとるべき方法である、かように私は考えております。
  19. 横山利秋

    横山委員 大臣、もう少し確信と自信を持ってものを言ってもらいたい。あなたのおっしゃっていることは、所得税が重い、重い人が貯蓄をしたなら、これは何とかしてやりたい、こうおっしゃる。そこにズレがある。所得税が重いというのは、何も金持ちの人が重いわけじゃありませんよ。私ども去年反対いたしましたが、年間所得五十万円以上の人は、去年の千億減税フェーバーをもう満喫しておるわけであります。五十万円以下の人は、それに引き比べて、この減税効果が乏しい上に、お米が上り運賃が上ったわけであります。税というものが生活費に食い込まないという原則が確立されるためには、一番最初になさるべきことは、だれに減税効果を及ぼすべきであるか、これは、明らかに低額所得者のためになさなければならない。私は、先ほど政府資料をもって申したのでありますが、貯蓄が実際にできる人、この恩恵を受けられる人というのは、決して勤労大衆ではないのです。決して勤労大衆ではない、勤労大衆であるという証拠があったら出して下さい。
  20. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 あるいは用語が誤解を招いたかと思いますが、私の言いたいことは、今度の預金は、横すべりというようなものでなくして、なるべく実質的にふやしていきたい。それには、新しい所得のときに、源泉でこれをとらえるという方法が一番適当である。そういうふうなことを考えると、勤労大衆といいますか、給与を受ける階層が一番私はそれに適応する階層である、そういうところに特にしていただこう、かように考えておるわけでありまして、またそういうふうなところは、先ほどお話しのように所得税も重いから、そういうところが貯蓄して下されば現実的で、特典を与えることも考えられることではないか、こういうふうに考えるわけであります。
  21. 横山利秋

    横山委員 あなたのおっしゃっていることは、さっぱりわかりません。ただあなたが、私の質問していないことに勝手に答えられておる。つまり振りかえにならないようにしたいということを、私が聞きもしないのに盛んに言っているから、それじゃその振りかえ問題で一つ議論をしてみましょう。先ほど私が言いました、これは断じて勤労大衆に対する減税にはならぬのだという点について、あなたから何らの確信ある答弁がありません。これは少し保留しておきます。では、あなたの言われる振りかえにならないという証拠はどこにあります。答申自体もこう言っています。「この際重ねて強調したいことは、このような制度意味をもつのは、それがあくまでも国民大衆の間における貯蓄運動を発展させるための一つ応急手段としてであるということである。このような意味で、この制度がいわば呼び水となって早急に組織的、かつ、安定性のある貯蓄体制が樹立されることが期待される一方、この制度自体税制としてきわめて異例措置であり、現在の特殊な経済情勢のもとにおいてのみ許されるべきものであって、長期にわたって存続させるべきものではないことを認識する必要がある。」私はこの答申を読んで、何たる答申かという気がするのであります。少し話がはずれますけれども、今日までの政府審議会あるいは諮問委員会から出た答申で、かかる申しわけで一ぱいになっておる答申は私は見たことがありません。大臣、お読みになったと思うのでありますけれども、まさにこの答申は、この減税貯蓄制度について、ほんとうは悪いのだ、ほんとうはやりたくないのだけれども、異例措置だし、呼び水として看板だけならばしようがないから、こういう点も気をつけなければいかぬ、こういう点も何とかやってもらわなければならぬ、こういう措置は暫定的な措置として、早くやめて下さいよ、こう言っておるのであります。なぜ一体こんなことまで言わなければならぬかということです。大臣先ほどから言っておられ、一番心配されておるのが、結局これは貯蓄にならぬのではないかということであります。振りかえにすぎない。先ほど言いましたように、三十万円以下の人は議論にならない、大体六十万円以上だとする。そうすると、六十万円以上の人は何らかの形で貯蓄している、その貯蓄を横にならすだけじゃないか。百歩も千歩も譲って、せいぜい短期の貯蓄長期になるだけじゃないか。それを振りかえにならないという確信証拠はどこにありますか、それをお答え下さい。
  22. 原純夫

    ○原(純)政府委員 この制度を技術的にどういうふうに工夫してお話し振りかえを防いだらいいかということでございますので、私からお答え申し上げます。  非常にむずかしい問題でありまして、どこまで実績が上るか、なかなか強い自信は持てない問題でありますけれども、まず第一に、この控除を受けられる貯蓄の種類を、年末近くになって一度にぼこっと二十万円あるいは十万円預けますと、長く置くのはけっこうだから、二年でも三年でも置きましょうというような種類の貯蓄であると、非常に振りかえのにおいが濃くなります。それでは困るというので、毎月一定額を積み立てていただく。そういう種類の貯蓄、しかも一定額積み立てて、二月、三月やったからそれでおしまいですというのでは困る、やはり相当期間続けてやっていただくということ、こういう条件を中心にいたしました。その相当期間といいますのは、法律では六カ月以上ということにいたしております。従いまして、職場においては、職場でできる限り貯蓄組合を作って、あるいは職場の方も、貯蓄組合を通さないでも各自でもできるようになっておりますが、なるべくそういう組合の線にのっけていくというようなことが、行政的な面での裏打ちの気持になっております。営業者の方は、貯蓄組合ができる場合、できない場合、いろいろあると思いますので、できる場合はなおけっこうだと思いますが、できない場合は、個人で六カ月以上毎月一定額積んでいただくということにいたしております。この辺が振りかえを防ぐということの工夫でございまして、その結果どれだけこの振りかえが行われるか、あるいは振りかえをどれだけ防げるかということは非常にむずかしい問題でありますが、そこにおいては、私どもこう考えております。勤労者にしましても、営業者にしましても、現在すでに毎年々々できる所得の中から貯蓄が行われているわけであります。そういうものがこの種の貯金振りかわって参るというのは、これも振りかえだといえば振りかえですけれども、私はやはりそういう毎年の所得の中からこの制度に乗っかって貯蓄されていく貯蓄は、それまで振りかえと見ないでいいのではなかろうか。もちろ振りかえという見方もありましょうけれども、マイナスばかりだという意味振りかえではない。やはり毎年の貯蓄が、せいぜい従来は一年定期でというものが一番長い、特殊な債券その他ありますけれども、そうでなく、預金その他でも、平均二年以上の貯蓄期間のものに固定されていく、しかも望むらくは、なるべく貯蓄組合というものを作って貯蓄が奨励され増強され、組織が系統的にできて参る——系統的にというのは語弊がありますが、組織的にできて参るというようなことになりますれば、非常に筋金が通るという意味で、この辺は、形式論とてては振りかえといえるかもしれぬけれども、相当振りかえ以外のいい要素がありはせぬかというふうに考えておるわけであります。大体お尋ねの点について私どもが考えておることは、ただいま申したようなことであります。
  23. 横山利秋

    横山委員 今の原さんの御答弁を聞きましても結局ひいき目に見ても、短期の貯蓄長期になるだけであります。さて、それじゃ貯蓄をする人はどういう人たちだ、結局、これもお金持ち貯蓄が動くだけだ、こういう結論しか出てこないのであります。しかも、それを何とかカバーするためには、あらゆる工夫をしなければいかぬ。工夫をすると、また工夫の中から矛盾が矛盾を生んで、税制はまさに複雑の度を加えるばかりであります。私は、大臣にお伺いしたいのですけれども、ほんとうにあなたが大衆貯金をさせるようにするというならば、今日まだ貯金ができない人に貯金ができるようにすることが必要ではないか。先ほどもお答えがなかったのだけれども、金融機関には相当の特例措置が講じられておるのであります。そこへまたこういう複雑なものをするよりも、一体お前の方ももう少し預金利子を上げて、そうして預貯金を吸収しろ、自前でもっと努力をしろとなぜあなたは言えないのか、それをお伺いします。
  24. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 貯蓄増強に預貯金の金利を上げる、もちろんこれも方法でありまして、従来預貯金の金利も上げたのであります。しかし、これは同時に貸出金利をまた上げる傾向をとりまして、これは同時に物のコストを高める要素にもなります。今日日本の金利は、御承知のように相当高いのであります。これ以上高める要素を加えることは、私たちは避けたい、かように考えております。
  25. 横山利秋

    横山委員 預貯金利子を引き上げるわけにはいかぬ。なぜならば、貸出金利をまた変動させるからである。だから、国家としては金融機関、あるいはお金持ちの諸君にさらに増大した利益を与えるのである、フェーバーを与えるのである、こうおっしゃるのであります。私は、意見を全く異にいたします。しかし、それでは、かりにあなたのベースに立って見てみましょう。かくも至れり尽せりのことをして、そうして金融機関お金を集めて、せっかく努力して集めた金を一体何に使うか。あなたはそれに対する規制の措置をとりますか。昨年金融引き締めの際、当委員会で池田さんに、三百五十億の中小企業融資を行なってもらいました。ところが、今飜ってその結果を経済審議庁の統計から見てみますと、何と驚くなかれ、中小企業に対する昨年の五月から八月までの金融というものは、新聞に出て、すでに大臣もごらんになっていると思いますけれども、結局中小企業には引き締めが着実に行われて、大企業には貸し出し増加になっておるのであります。そういう苦い経験を顧みるときに、このような異例措置をやって、銀行、金融機関、あるいはその他のところに金を集めて、さあ集めた金はお前らが適当に使えという去年の二の舞いをさせるつもりですか。これだけの政策減税をして集めた金を、どういうふうに規制をし、どういうふうに国家産業のために有効なところに使おうとなさるのか、その確信と計画を承わっておきたいと思います。
  26. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 今後資金の流れを適正化するという方法といたしまして、私端的にいえば、かりに法律なら法律を作って、こういうふうにやりたいということを、法律なくしてやるにはどういうふうな機構と操作が必要であるかという見地に立って考えておるのでありますが、資金の流れを適正にするのには、産業計画というものもやはり一面にないと、単に金融だけについて適正な運営をはかれといっても、めどが乏しいのであります。それで、政府としては、今回長期経済計画を立てますとともに、事業界に対しましては、基幹産業については、少くとも年度における事業計画というものを確立してもらって、そうして、当年度においてどういうふうな事業を、こういうふうなテンポでやるのだというようなもの、これは全部の産業に及ほすことはむろん困難でありますが、しかし基幹産業だけで私はいいと思う。そうして、この資金は日本経済を維持拡大していく上において必要な資金、いわゆる重点的な資金である、これをまず確保するという方途を講ずる、むろん中小企業の金融という点についても、そういうふうな見地から確保をいたしまして、そうして、これを今金融界の中にあります資金融調査会、この調査会におきましてこの線を守っていく。他方大蔵大臣の諮問機関でありまする資金審議会におきまして、これらの点をさらに検討を加える。これには小委員会くらいを置きまして、常時この金融機関と連携をとりまして、予定してある計画通りに資金が流れておるかどうかということを調査をする。その結果について、大蔵大臣は行政的指導をしていく。こういう形におきまして、まず重点産業の資金を確保していく、また今日必要とする中小企業の資金というものを確保するようにしたい、こういうことによって、私は大体所期の目的を達成するだろうと考えておるわけであります。
  27. 横山利秋

    横山委員 きわめて重要な意見の御発表をなさいました。かつて本会議におきまして、あなたは、わが党の勝間田代議士の質問に答えまして、社会党の主張することでもいいことはいいと思うから、あなたの言われた資金調整委員会構想、そういうものについて私は検討をしたい、こう言われたはずであります。今重ねて、日本長期経済計画を樹立し、基幹産業に対しましては、事業計画の確立をさせて資金需要を出させ、それを民間の市中銀行で作っております資金調整委員会ですか、それにやらせる。ひいては、さらに政府における資金審議会において小委員会でも継続的に開いて、これを調整をしたいということであります。このことは今日の、少くとも今までの資金調整の段階では、言うべくして行われ得なかったことであります。ここに一萬田さんが、本会議と本委員会において重ねてこう言われた以上は、私はこれが具体的なコースを当然たどらなければならぬと思うのでありますから、ただの構想でなくして、どういうふうなやり方でなさるのか。つまり私の聞きたいのは、単に一萬田さんのブレーンとしてやっているのではなくして、きちんとした機構、きちんとした任務、きちんとした各方面の構成をもって、新しい角度からこれを出発させるべきではないか。しかも今あなたのおっしゃったことは、明らかにこれは資金を計画的に、ある意味では統制的にこれを実施することになるのであります。今日までの一萬田さんの進んでこられた道、あるいは岸内閣の進んでこられた道とは相当の発展性を持つものでありまするけれども、そのように理解してよろしいものであるかどうか、もう少し具体的にお伺いをしたいと思います。
  28. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これは、私は何も私の考えとかいうのではなく、具体的なそういうふうな委員会を設け、そして制度的にやっていく、こういうふうに考えておるのでありまして、これは別に統制ではないのでありまして、ある程度こういうような場合におきまして、特に経済に計画性を与える、それに沿うて資金が運営されるということは、これは当然なことでありまして、これは当然やらなくてはならぬ。そういう計画性を自主的に遂行させる、こういうことに相なるわけであります。従来の考え方と別に変ったわけでもありません。
  29. 横山利秋

    横山委員 この問題はきわめて重要でありますから、もう少し聞きたいのでありますけれども、しかし本論に入ります。  次の質問は、これが当初の構想からいうならば、定期性の預貯金に限られておったようであります。ところがそれではいかぬというので各方面からいろいろと議論が出て、そうして株に対しても、この減税貯蓄制度の適用をすることになったものであります。この点につきまして、答申もまた「株式については、値上り、値下りが激しいのに、本制度によるときは、一定期間譲渡を制限することとなるのは適当かどうか、また、発行会社の事業内容等に関係なく控除の対象とすることは適当かどうか等の問題について議論があった。しかし、直接投資と間接投資を同等に待遇すべきであるとの見地から、価格変動の少いものに限る等一定の条件をつけて株式をもこのうちに含めることが適当である。」私はこの答申を見て、実に一体どういうことになるのかと思って心配をいたしておりました。果せるかなきのうの産経を見ますと、現在標準株は二百二十五くらいですか、もっとあるかしらぬが、そのくらいの中で、わずかに三十三銘柄を指定して、東京証券業協会があなたの方へこれを意見具申をするというのであります。しかもその選定の基準になりますのは、資本金三十億円以上の上場会社株、第二番目に、最近の三期以上にわたって年一割以上の配当を継続しているもの、第三に、昨年一年間の売買出来高が上場株数の一五%以上のもの、第四に、昨年七月以降の半年間に株価の変動が二五%以内のもの、第五に、商業、サービス業及び金融保険業を除く業種、第六に、過去一年間に株価が額面を割ったものを除く、この六項目にわたっておるのであります。この六項目のものが、果してあなたの方でこの通りになるかどうか、それはわかりません。わかりませんが、少くともこの答申と東京証券業協会の方向とがある程度一致するのでありますから、結局こういうことになるのではないかということが推定をされるのであります。もしそうだといたしますならば、これは証券業界に対して混乱を招く以外の何ものでもないと私は思う。この銘柄に指定されました銘柄だけがこれによって信用を得、これによって株価が上る。指定されなかった銘柄は、これによってやはり信用が乏しくなるという結果をもたらすということは、微妙な証券業界においては、当然のことではありませんか。しかも健全化、これから順調にいこうとする、そういうところは、今のところはずされるわけです。一体こういうようなやり方を減税貯蓄という名で出すのはいいけれども、これによって株式市場を混乱に導くというおそれなしというわけにいかないのであります。この点について、大臣の責任ある御答弁をお伺いします。
  30. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 株式の何ですが、これもやはり長期資金の調達の最も重要な方法でありまして、特に最近は、株式の大衆化をはかっております。いろいろな形で大衆の方が株式を所有するようになったという見地から、これを取り上げておるのでありますが、なおどういう銘柄を限定するか、これは、おそらく各方面の方々のこの制度による投資でありますから、その安全を期するという意味で、特に危険性の少い銘柄を選ぶことが適当であるという配慮に基くと考えております。なおその間の事情につきましては、理財局長から説明をいたさせます。
  31. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 ただいま減税貯金の対象といたしまして株式を入れたことにつきまして、税制特別調査会の答申に御言及になりまして、なお昨日一部の新聞に報道がございましたので、これに対しての御質問でございますので、お答えを申し上げます。ただいま大蔵大臣からもお述べになりました通り、直接投資、ことに株式を国民大衆の直接投資対象といたしますことは、いわゆるこれを証券民主化といっておりまして、これは戦後におきまする非常に大きな問題として、国会におきましても非常に力をお入れになっていたことは、ご承知の通りであります。私どもといたしましては、今回の減税貯金の対象といたしまして、ぜひともこういう株式の直接購入、これをお入れいただくようにというふうな考え方を持ちましたのも、その線に沿っておることは申し上げるまでもありません。税制特別調査会におきましても、そういう趣旨で御答申になったのでございますが、今お述べになったように、ただこれを適用する場合、やはり株式というものの特殊性によりまして、この運用については、十分慎重を期さなければならぬということがはっきりと述べられておるわけであります。この点につきまして、今日減税預金制度が法律として国会で御審議をいただいております間に、われわれとしては、現実にこれが施行になりましたときに備えまして、業界並びに役所その他関係方面におきまして種々検討を加え、今お述べになりましたような心配のないようにということで、いろいろ案を練っておるわけであります。その案を練っておりますうちの一部が報道されましたものですから、今のようにいろいろ御議論が出るわけでございます。私どもの基本的な考えといたしましては、大蔵大臣お話しの通りに、安定をした、しかも減税の対象として、減税を受けてまで買うにふさわしいような株式、こういうことは抽象的に申し得ると思いますが、さてしからば具体的にどの銘柄にするかという問題になりますと、これは影響するところきわめて重要でございまするから、これらの面につきましては、なお慎重に研究をしたい。今日別にこれを決定をしたこともございませんので、なお引き続き検討中でございます。こういうことが実情でございます。
  32. 横山利秋

    横山委員 そういうことでは、私は承服できません。あなたの言うように安定した、減税を受けるに適当な株であるかどうかの判断というものは、これは株を買う人がさまざまな判断をするものであります。もし東京証券業界の言うところの三十三銘柄ないしはあなたがこれからもっとふやすべきだ、あるいは減らすべきだといって、幾らか知らぬけれども、二百数十株の中で、これは安定しておる、これは効果があるということは、何をもって一体あなたの方は基準になさるつもりであるか。今慎重に検討中だと言っても、どうあっても、これは適用をされる株式と適用をされない株式とが生じ、そうしてこの減税措置によって適用を受けた株式については、値上りが出るであろう、そこへ目が集中するであろう。適用を受けない、一番どん底の株はともかくとして、ボーダー・ラインちょっと以下にある株が非常な影響を受けることは、火を見るよりも明らかなことであります。私が言おうとすることは、この減税貯蓄という、そのこと自身に私は異論があるわけでありますが、減税貯蓄を実行する上において、一萬田さんの思いもかけない問題が、次から次へと副作用として出てきておる。これがその一つでありますが、こういう副作用を生じてまで、平年度六十億というお金減税に投じなければならぬ積極的な理由が、一体どこにあろうかと思うのであります。今の正示さんのお話では納得しませんから、あとでさらに整理をいたしますけれども、今私が話を進めましたが、四十億、五十億を減税に投ずると、こうおっしゃる。一体その数字はどこから出てきた数字でありますか。私は、あなたの方から出て参りました租税及び印紙収入の説明書を読んでおるわけでありますけれども、突如としてこの中に、源泉所得については四十億四千九百万円、そうして申告所得については十七億三千四百万円が減税されるはずだというのが、数字の中へ出てくるのであります。何を基準としてこれが一体出てくるのか。一体今後この制度によって、どのくらいこれの適用される貯蓄が増加され、その計算からいうと、どうしてこういう数字が出てくるのか、これを私は一つ簡単に、具体的にお伺いをいたしたいのであります。
  33. 原純夫

    ○原(純)政府委員 こういうふうに見込んだわけであります。所得階層別に、一体人々がどういう貯蓄を持っておるか、そうして毎年その貯蓄にどの程度の増加分があるかというようなデータが確実にありますれば、非常にいい見込みができるわけでありますが、遺憾ながら、非常にその基礎資料が乏しいわけであります。御案内の通り、株式等についてはほとんどわからない。わずかに預貯金につきましては、全国の預貯金の個人分はどのくらいであろうという推定がついております。それからもう一つ、預貯金につきましてはCPSで、いわゆる貯蓄性向、毎年毎月の貯蓄がどれくらいあるかということはわかっております。従いまして、われわれには個人の持っておる預貯金の総額と、それからその預貯金が毎月毎年伸びる度合いが所得階層別にどうだ、この二つがわかってるわけであります。私どもそのわかってるものをもとにして、ずっと計数をはじいて参ったわけであります。まず第一に、預貯金の毎年伸びます総額が、所得階層別にどういうような分布になってるかということを調べる。毎年伸びる預貯金の総額が、毎年の末あるいは毎年度末というものがわかるわけでありますから、その総額がわかるわけであります。これは階級別にどういうような分布になるか、これは全国の世帯を階級別に並べる、所得税の失格者の階級については、こまかい階級はわからぬわけでありますが、数は大体わかる。それらの階級については、CPSで推定される貯蓄性向というものを当てがって、出てきました総体の貯蓄額が年間貯蓄額の増加額に合うというようなところを求めるということは、これはできるわけであります。それで、われわれ毎年の貯蓄増加が所得階層別にどういう分布になるかということを推定いたしました。その次には、その貯蓄額の中で、どれだけがこの種の貯蓄に乗っかっていくだろうかということを調べる。そうしてお話のありました失格者の分は、影響ないからはずさざるを得ないということになるわけであります。それをやります途中で、貯蓄総残高につきましても、今はいたし方ありませんから、毎年の伸びの割合と同様な分布になっておると一応仮定して、そうしてそれらの中の定期の割合を見たりしまして、結局見込みましたのは、所得税の納税人員のうちで減税貯蓄の利用人員は何%か、これは先ほど来申しております通り、政府の行政的な努力、また民間のこれに応じての協力にかかるわけでありますが、五割の人たちがこれを利用するというふうに考えました。そうして、その人たちがどの程度この種の貯蓄をするかということを判定するにつきましては、従来の貯蓄総額のうち定期の貯蓄、しかもそのうち一年定期のものというようなものは大体わかっております。そういう言い方をすると、振りかえじゃないかと言われる。それは振りかえばかりじゃないんだと申し上げた。毎年の貯蓄総額のうち、従来一年定期にしておったというものがやはり一つの基準になろう。そのうち相当部分がこの貯蓄振りかわるということを見込んで、そうしてずっと積んで計算しておるわけです。もちろんそれだけじゃありません。それ以外に、純増といいますか、そういうものもある。純増を別に見るか、あるいは従来一年定期で貯蓄されたもののうち、このくらいといううちには純増も入ってるというふうに見られないわけでもありません。そういうふうに積んで参りまして、三十三年分は九ヵ月でありますから、一応三十一億をフルに一年と見ますと、約二千四百億円の貯蓄考えられる。これは、話が今預貯金で話して参りましたが、預貯金のほか、株式その他も入れて、預貯金が約二千億、株式等が約四百億くらい、これはごく一応の見込みでありますけれども、そういうふうな見込をいたしたわけであります。それと、初年度は九ヵ月でありますから、四分の三になる。まあしかし初めであるから、大いに努力して、これを八割程度に高めようという意欲を示して、八割ということで、約二千億くらいの貯蓄がこれでできるということで、年収額としては初年度五十億円、平年度五十三億円——収入歩合がかかりますので、ぴたっと三%という数字にはなりませんが、概してそういうような方法で積算いたしておるわけであります。
  34. 横山利秋

    横山委員 お話を承わりましたけれども、いうなれば原さんの御説明は、これが四十億なりあるいは、五十億になるのだという確信のある基盤に立っておらないので、大体の今日までの傾向、それから今後行われるべき貯蓄推進運動、貯蓄増強の政策、それにまてばということに尽きると私は思うのであります。そういうことだといたしますと、ここに言うところの減税のこの予算というものは、三十億と書いてあろうが、五十億と書いてあろうが、これはそのままだという気がするのです。どうしてこれが四十億であるか、四十億が絶対正しいものであるかどうかということについては、確信のある御答弁ではありません。そうなりますと、一体世間に麗々しく二百億の減税などと言ったところで、これは全く根拠のない数字になると私は思ってくるわけであります。一つ原さんの今おっしゃったこの数字の算出根拠というものを、本委員会に提出をしてもらいたい。時間もありませんから、私はただいままでの大臣の御答弁にことごとく不満足でありますが、私が以下申します点を、一つ確信のある文書として答弁資料を出していただきたい。一つは、先ほどあげました株式市場に対して、これが不公平である、影響が大きくなるという私の所論に対しまして、確たる御答弁がございません。この株式市場に対して不公平でなく、影響もないということを一つ証明する文書を出していただきたい。それから第二番目は、今言いましたように、私はこの四十億なり五十億という数字が、全く根拠のない数字であると断じていますが、その算出をされた根拠の数字を出していただきたい。第三番に、私は政府資料をもって、大衆に対する恩恵は何らない、こういう主張を言っております。これに対して大臣は、また確たる御答弁がございません。従いまして、少くとも勤労大衆と称する者は、圧倒的数字は五十万円以下だ。去年の一千億減税のときの例をもって、私は逆に利用するのでありますが、五十万円以下、三十万円以下、この二段階に分けて、この減税効果というものが実際的にあると御主張なさるなら、その根拠を示してもらいたい。それから第四番目に、先ほど大臣は、やや具体的にお話をなさいましたが、私は、このような答申の今日までのフェーバーに、重ねてこういうお金減税をして、そうして金融機関に対する奉仕をする。かりにそれを譲ったにしても、しからばそういうことで税金を一般から集めて、そこだけに集中的にやって集まった貯蓄というものが、どういうふうに使われるのか、政府はその流れに対して責任を持てるのか。明らかにこれは零細な一般の働く農民、労働者、中小企業からのとうとい汗の税金でありますから、その税金の中からこういうお金を使って、集まった貯蓄は、政府ほんとうにこれを産業の発展に、中小企業の育成に、あるいはそのほか一般的な方向にきちんと使わなければなりません。私は、言葉はもういいのでありますけれども、昨年の金融引き締めの結果からいって、大いに不安に思うわけです。従いまして、貯蓄をさせた金をどういうふうに使うかという点について、政府考えを文書で出していただきたい。  それから最後に、時間がございませんから、その文書のときに御質問をいたしますから、予定をしておいていただきたいのでありますけれども、この控除の対象になる貯蓄の種類は「預貯金(勤務先預け金を除く)」と書いてあるのであります。勤務先に預けたお金は、預貯金であっても、この減税効果を及ぼさないということは、一体どういうことなのであろうか。多くの勤労者は、勤務先にお金を預けておる。私が推定いたしますのに、勤務先に預けると、勤務先がこのお金自分の会社の勝手に使うという点があるいはあるかもしれませんが、それは会社の問題で、勤労者の問題ではない。貯蓄をしようとする熱意のある人がここでまたふたをさせられるという不公平というものを、どういうふうにお考えになるか。その点についても、あわせてその際御答弁を求めるつもりであります。そのほかいろいろなことがございますが、要すれば、最後に大臣に私のお伺いいたしたいのは、なぜ一体これだけのたくさんの減税をするか。五十億、六十億というお金を使うならば、なぜ一体生活費に食い込んでおる税をまず低額所得者から減税するという基本線をあなたは貫かないのであろうか。昨日あなたにお伺いして、重い、不公平、それから複雑だという三点を基本的にあなたは了承なさいました。今度のあなたの施策の中で中心的なものであるたな上げ資金と、もう一つのこの減税貯蓄制度、両方とも税の面に関係するのであります。これは、税というものは個人の家計と違いまして、これだけ要るからこれだけ税金をよこせというのは、出るをはかって入るを制するというのが税の原則でありますが、たな上げ資金は、いつ要るかわからぬ、何に使うかわからぬけれども税金をくれということでありまして、今日までの税の原則に全く反しておるのであります。今度のこの減税貯蓄の方は、どうかといいますと、きのうあなたが言ったばかりの、重いということ、不公平ということ、複雑だということ、その言明に全くこれも背反しておるのであります。私は、今日貯蓄をしなければならぬというあなたのお考えに反対するものではありませんが、貯蓄をしようにもし得られない勤労大衆に生活のゆとりを持たせるということが、今日としては大事なことではないか。国の基本政策については、また意見があろうと思いますから申し上げません。またあとで適当なときに申し上げますけれども、そういうことこそ大事ではないか。そうして勤労大衆減税して、その中から貯蓄をさせるという基本線がどうして貫けないか。五十億も六十億もあるならば、まずもってそれをすることが一番必要なことではないか。私はこの主張をどうしても通さなければならぬ。またあなたに、一体どうして、それが行えないのかきわめて疑問であります。その点につきまして、率直な大臣のお答えをいただいて、私の質問を終ることにいたします。
  35. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私は、本筋といたしまして、御意見に何も議論はありません。本筋としてはそうあるべきだと思っております。ただ、今日日本ではいかにも貯蓄増強が大切であります。その結果、異例措置ではありますが、特にこういうような措置において貯蓄増強したいということに帰するのであります。
  36. 足鹿覺

    足鹿委員長 午前の会議はこの程度にとどめ、午後一時三十分まで休憩いたします。     午後零時四十分休憩      ————◇—————     午後二時三分開議
  37. 足鹿覺

    足鹿委員長 休憩前に引き続き、会議を開きます。  質疑を続行いたします、石野久男君。
  38. 石野久男

    ○石野委員 私は、政府の財政金融政策の大前提になっている当面の経済情勢、並びに明年度予算編成の経過、編成の基本態度について、大蔵大臣からまず最初に聞きたいと思います。  大蔵大臣は、第二十七臨時国会でわが党の石村委員に対して、予算委員会でこのように言っております。「日本経済が神武以来の不景気であるかのようなことを前提にして立論をされているが、それ自体が非常な間違いだ。神武以来の不景気どころではない、むしろこのままいけばインフレになりはせぬかということをおそれる状況です。それが日本経済の本体なのです。」それからまた、「日本経済全体というものはむしろ伸びよう伸びようとしている。現に生産を落そうとしても、生産意欲がなかなか落ちない。言いかえれば輸入を減らしたいのですが、輸入意欲が多くて、輸入信用状は特に多い。こういう点の認識は誤まらぬようにして一つ、その上で数字をもっていろいろと御質疑になるなら、私はいかようでもお答えします。」こういうふうに言っております。この見解はもちろんその後変ったと思いますけれども、大蔵大臣は、今でもそういうふうに、お考えになっておりますか。
  39. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 変ったことはありません。
  40. 石野久男

    ○石野委員 経済情勢は非常に変っておる。蔵相は変っていないというけれども、その後非常に世間の状態というものは変っている。蔵相は、どこを見てそういう変っていないという考え方を申し述べられるか、その変っていないという根拠はどういう点にあるか、一つお聞かせ願いたい。
  41. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 変っておるという言葉のこれは内容になると思いますが、私の見解では、日本経済が三十一年度において特に異常な伸びを呈して、それが三十二年度にやはり引き続いてきたのでありますが、それが結局端的には輸入の激増ということに現われまして、いわゆる国際収支が悪化した、これは、要するにそのときにおける貯蓄の範囲内において投資が行われない、過去の蓄積である外貨のファイナンスによって経済が伸びていった、こういうふうな格好です。従って異常な伸びがあり得たのでありますが、これには、むろん外貨保有高から限界が来る。従って、これをこのまま伸ばすわけにはいかない。ここで輸入を抑制し、輸出を盛んにする政策をとる。それには、この輸入の増加の原因であった投資を押えていく必要がある。その施策を緊急対策という形においてとって参ったのであります。要するに今日の経済の実態は、日本経済が伸び過ぎるので、それ以上伸びないように、ある一定の伸びのところで安定をさせて、物資の需給をさせる。異常な伸びによって生じた不均衡を一種の安定したところに持ち来たす。その日本経済の伸びがとまっておるというところにおいて、いろいろといわゆる不況といったり、非常に経済のあり方が違っておるというのですが、私はそういうふうに経済が違っていないので、伸び過ぎをしたところを押える、今はそういう過程にある、かように考えておるわけであります。その考えは従来と変りません。
  42. 石野久男

    ○石野委員 経済の状況は、その後別段そう大きく伸びておるというふうにはわれわれは思われない。むしろ最近の傾向を見ると、経済は非常に停滞から萎縮の形へきておるというふうに思われます。むしろ全体の状況から見ますと、その傾向は、非常に下降形態にあると見るのが一般だと思うのであります。これを生産の面からいっても、あるいは在庫の面からいっても、また輸入の面からいいましても、別段にあなたのおっしゃるように、輸入はそんなに伸びていない。その輸入が伸びていないというのは、あなたの引き締め政策だとか何とかいうけれども、そうではないと思う。そういう生産とか、あるいは輸入の指数とか、あるいは在庫の指数等から見て、あなたがそういうふうに思われる根拠はどこにあるのか、いま一度御答弁をもらいたい。
  43. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私が申し上げるのは、三十二年の五月の総合的緊急施策を実施したそのときにまずとりましたのが、設備等の拡大計画について一五%を繰り延べる、こういうような形をとった。しかしその残っておる八五%が非常に小さいものかというと、決して小さいものではないのであって、三十一年度における総生産の伸びを見ても、二三・四%上っておる、あるいはまた国民所得にしても一四%上っておる。こういうように非常に拡大のあとですから、相当これをカットしても、日本経済の実態は決して小さいものではない。さらにまたこのことを立証し得ることは、三十三年度の経済の伸びが、一応形式において二・三%、実質において三%の伸びといっておりますが、この伸びというものは、やはり長期計画において、年率において六・五%伸ばすという政府の計画、この六・五%との相違はない。六・五%伸びる場合における基準のベースというものはずっと低いのでありまして、三十二年度において実際の日本経済の伸びておる実態に対して三%、それは基準に対して六・五%に違いないのでありまして、いずれもおそらく十兆二千億程度の総生産になると思いますが、そういうように、日本経済が決して小さいものでないということ、従ってまた貿易関係を見ても、従来と大きな異動はない。これは輸入において減ったのですが、これは、国内需要が相当減ったということにもなります。あるいはまた在庫を吐き出しておる点もありますが、私は、経済が決して小さい状況にはないということを一応申し上げることができると思います。
  44. 石野久男

    ○石野委員 日本経済の異常な拡大のあとであるからということ、そしてその後全体としては、依然として伸びが続いておる、こう大蔵大臣は言いますけれども、その経済の伸びのめどになるたとえば生産の問題、それから今一番大きな問題になるのは在庫の問題です。在庫の問題がどういうふうになっているか。在庫指数の問題を一つとってみましても、あなたもすでに御承知のように、昨年の政府の統計から見ましても、昨年の七、八月ころを契機として、在庫の量が非常にふえてきておる。ことに当時政府の方で喧伝しておりました輸入原材料というものが相当あるけれども、みんな設備へいくだろう、だから輸入がぐんぐん伸びてくるだろう、そういう見方をあなた方はしておられた。それが、先ほど石村委員に対する答弁になり、あなた方の予算編成の基本構想になったり、編成方針になったと思います。しかし、その後見ましても、在庫はぐんぐんふえていくばかりです。そればかりではなしに、重要なことは、機械受注なんか見ましても、生産の面は確かに伸びております。若干は伸びておりますけれども、実際ネットになるオーダー、ニュー・オーダーというものはどういう形になっておるかというと、あなたも御承知の通り、だんだん低下していっている。萎縮しようとしている状態について、大蔵大臣はどういうふうに考えますか。
  45. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 今の仰せは、要するに今の調整段階においての経済の実態を見れば、いわゆる伸びはないのであります。調整されようとしておるのでありますから、需給関係におきましても、むしろ生産は過剰で、たとえば製品においても、在庫はふえるという傾向をとると思います。今は調整過程にある。その期間をとれば、今の御意見のような状況は私はあると思います。
  46. 石野久男

    ○石野委員 昨年来、政府は輸入が伸びるということの一番大きな根拠として、輸入原材料が相当程度設備投資に向くというような考え方を持っておられた。この考え方は今も変っておりませんか。
  47. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 過去における、言いかえれば三十二年の春あたりまでの輸入の非常な増大は、機械等の設備的なものの輸入も私は多かったと思います。同時にまた原料的な輸入も多い。双方とも相当に輸入によっておる、かように考えております。
  48. 石野久男

    ○石野委員 輸入によっておるということよりも、従来持っておった輸入原材料がどんどん設備投資に向いていくという考え方を、あなた方は持っておったはずなんです。しかし、それは指数を見てもちっとも減らない。ますます原材料の輸入はぐんぐんふえてきておる。ここで簡単にいえば、昨年の六月にあなた方の政府が出しておるところの指数から見ると、昭和二十五年度を一〇〇とする指数で、五月には四四三、それが十月には四五一にぐっと伸びておる。これは今も続いておると思う。こういう状態を一つ見ても、あなたの考えたような方向、設備投資の方には向いていないわけです。むしろ過剰状態が非常に濃厚にあったわけです。そういう状態を認めないと、施策というものは出てこないのじゃないか。きのうあなたはわが党の横山氏に対しては、大体四月ころからはきめのこまかい地ならしをやる、四、五、六というふうにそれが続いて、七月ころからは外国景気、世界経済との見合いで立ち上っていくんだという見通しをされているけれども、世界経済に対するあなたの考えは、今どういうような状態ですか、これをここで説明してみて下さい。
  49. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私は、世界の経済の動向について、決して日本輸出について有利な条件が多い、そういう楽観的な考え方は持っておりません。今後貿易競争が特に激甚をきわめると言っては言過ぎかもしれませんが、激甚の度を増すであろうと思います。しかし、世界の経済、特に自由国家の経済を大きく動かしておるアメリカの経済並びにアメリカの対外的な経済施策が、やはりアメリカの新会計年度を契機として——これについてはいろいろと考えなければならぬ点もありますが、責任あるアメリカの大統領の意見並びにその施策というものに徴すれば、私は、やはり非常に悪くなるだろうという考えよりも、むろん程度の差はありますが、どちらかといえば、幾分はいい方に向くというふうに考え得るのじゃなかろうかと思います。また世界の政治情勢から見ても、自由主義国家の経済が非常に困難に逢着するというような事態は、やはり正常な世界政策からいっても許されない状況にあるだろう。いろいろ総合しまして、七月以後は若干はよくなるだろう。むろん私は、今政策を実施する立場におりますから、大体そういうような方向でやろうという方向を示すのですけれども、事実においては、世間で言うように若干のズレがあるかもしれぬ、延びるだろうということはあり得るだろうと思う。しかし、私どもは、その延びるということは考えていないので、日本経済の安定をなるべく早く招来させて、そして世界の情勢に早く対応できるようにしたいというような考え方を推し進めていく。そういう意味において、従来の考えを今さら変える必要はない。大体三月くらいで調整を終って、そして四、五、六でもう少しきめのこまかな地ならしをしていく、そして七月くらいからは、世界の情勢に即していけるように日本経済を持っていきたいというのが、私の考えであります。
  50. 石野久男

    ○石野委員 施策というものと見通しとは違うんだ、それは確かに考え方ですから、私はそれには反対しません。ただ日本経済と世界経済との関係では、何といっても世界経済が非常に大きく影響することは、間違いないわけです。今の話では、はっきりわからないんだが、大蔵大臣は、世界経済は大体五、六月になると立て直しができて、それと日本経済がタイアップできるような情勢がある、こういうような見方をしておるのか、その点、もう少しはっきり言っていただきたい。
  51. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私は、やはり世界経済考える場合に、基本になるのはアメリカと西ドイツ等の経済政策が大きな影響を与えるだろうと考える。こういうふうな経済的に非常に強力な国が、単に自国の経済ということを中心に施策をするということになれば、これは、今後の世界の経済のみならず、世界のすべての政治を含めて、世界のあり方が非常に混乱を来たすであろうと私は思うのです。そういうふうな見地に立って、従来いろいろな国際会議等に出席したときの感覚からすれば、アメリカも西ドイツもそういう点に十分着目して、そしてできるだけ自分たちの輸入をふやしていこう、ふやし過ぎて、国内的な政治情勢から困難のようなことがあれば、さらに財政投資もしよう、こういうことを公けの席上でも責任者たちが堂々と述べておりました。これは、私はある程度信用していいと思う。のみならず、アメリカのその後の施策等を見ても、そういう方向に政策を進めておる。かように感ぜられるから私は申すのでありまして、むろんそれだからといって、安易にただ西ドイツやアメリカの施策にたよっておって、そして世界がよくなるだろう、そんならうまくいくだろうなんということでは、とても日本経済はいかないのであります。そういうことを頭に入れておるが、日本としては、そういうふうなチャンスがきた場合に十分これを利用し得るように、日本経済を健全に整えていくという努力をあくまでしていきたい。そして、アメリカや西ドイツの政策はともかくとして、世界の経済の実態はなかなか困難な状況にあって、ドイツやその他の個々の貿易競争は激しい、こういうふうに考えなければならぬだろうと思っております。
  52. 石野久男

    ○石野委員 世界経済情勢は、やはりきびしいものがあって、そう簡単に立ち直れる情勢ではないというように結論的に見られます。私もその通りだと思います。そういう状態の中で、日本経済が簡単に一人歩きできるものではないことも、もうあなたのよく知っている通りであります。われわれの見るところでは、昨年来国際収支改善が出てきたのは、輸出増大したというのじゃなくて、輸入が非常に減ってきたわけです。その結果として、国際収支改善が行われた。それゆえに、私たちとしては、ものの考え方の基底になる日本経済をどういうように分析し、どういうふうに見るかということがきわめて大事だと私は思うのです。われわれの見方では、昨年からこちらへの国際収支改善というのは、大体あなた方の引き締め政策も確かに影響はしております。しかし、それ以上に大事なことは、日本経済が相当各方面にわたって広がり過ぎて、過剰条件が非常に充実しておったということだと私たちは見るわけです。たとえば、生産が非常に伸び過ぎて、在庫がものすごくたまってきておる。原材料は、入れたことは入れたけれども、なかなかこなせないくらい、多くなって、これもたまってきた。材料はたまっている、製品はたまっている、売れ行きはなかなかうまくいかない、そこに今度は新しい受注は出てこない、これじゃどうしたって過剰条件が三方からも四方からも重なってきているということを認めざるを得ない事情にあると思うのです。そういうような事情で、国際収支の上に、結果的には非常にいいような状態が出た。しかし、これは決して拡大均衡でも何でもない、むしろやはり縮小均衡になってきている、こういう事情だと私は判断するけれども、そういう事情については、大蔵大臣、どういうふうに思っておりますか。
  53. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 それは、私はその通りだと思います。そのよってくるところは、私はやはりオーバー・インベストによりまして、生産設備が非常に拡大されているところにあると思う。その結果から、物の需要もふえ、同時に生産もふえ、そのファイナンスは、過去の蓄積である外貨をもってやっていった。ところが外貨が限界にきたからというので、今このような経済の状況を招来しておる、こう見るべきだと私は思っております。
  54. 石野久男

    ○石野委員 私の見解と、大体同じだということでありますが、去年あなたは、わが党の石村氏に言っているように、伸びよう伸びようというのではなくて、日本経済全体が、むしろぐんぐん萎縮してきておるという事情をお認めになっている。だから、これは考え方が違ってくる、あなたの言うことは全然違うんじゃありませんか。
  55. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私が意見が一致しておると申し上げるのは、現在過剰生産が起っておるじゃないか、その点については、私は意見が同じなので、なぜ現在過剰生産になったかといえば、病気の根源であるオーバー・インベストからきているということを、私は申しておるわけであります。
  56. 石野久男

    ○石野委員 大体日本経済には、過剰条件が非常に充実しておるということは意見が同じだ。そういう状態だけれども、とにかくやはり過剰投資があったからだということだけで、依然としてそれでは引き締め政策をやらなければならないかどうかという問題が、ここで出てくる。その点について、一つ見解を伺いたい。
  57. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 生産は過剰と申しましても、これは、日本経済が非常にでこぼこで、それなら一切日本経済が過剰かというと、決してそうじゃない。たとえば、一番根幹である電力をとっても、過剰どころではない、これはむしろ不足しておる。それからコミュニケーション、交通関係はどうかというと、これも過剰ではない、これは、今後設備を非常に拡大していかなければいけない。エネルギーにおいても、やはり同様なことが私は言えると思う。すべて日本経済が過剰であるとは言えない、過剰である部分もある。特に繊維なんかについては、これは、ほとんどが過剰であると言ってもいいと思う。これは、オーバー・インベストが特に激しい、しかも持続的にやられた関係からそうなっている。従って今後におきましては、やはりこの過剰でない、むしろ基幹産業等で、経済が伸びようとすると必ず隘路になるところを今度は育成強化して、この生産力を増すように持っていく、同時に過剰であるところは押えていく、こういうふうな施策が必要であると考えております。
  58. 石野久男

    ○石野委員 日本経済の中におけるところの過剰条件はでこぼこである。だから、基幹的なものに対しての施策は、重点的にやらなければいかぬという考え方ですが、その点については、あとで触れることにしまして、今の問題からくる国際収支の問題について、政府は来年度の輸入を、三十二億四千万ドルに微増するというふうにこの大綱では書かれておる、またそういうふうに見ておられるようです。この見方は、過大ではないかと思うけれども、それについては、どういうふうにお考えになりますか。
  59. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これは、過大かどうかという問題ですが、私は、過大とかいう考え方よりも、これが達成し得る額かどうかというふうに考えるのが、むしろ適当ではないか。そういう意味においては、私は、これは達成し得ると考えておるのですが、しかも、これを達成するためには、先ほどから申すように、内外の情勢から相当な努力と適切な施策が要る、かように考えております。
  60. 石野久男

    ○石野委員 あなたの方針は、なるべく輸入を抑えるという考え方ではないのですか、なるべくそれを高く高く持っていくという考え方なんですか。
  61. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私は、今輸出の問題を取り上げて言ったのであります。
  62. 石野久男

    ○石野委員 輸出か輸入か、数字をよく見て話をしていただきたい。僕の聞いているのは輸入を聞いているのだ。
  63. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 輸入につきましては、大体三十二億ドルというようなところを押えておりまして、この三十二億ドルで三十一億五千万ドルの輸出ができるのに十分かどうかという問題になると思います。私の考えでは、三十二年度においては、三十三億ドル若干の輸入と二十八億ドル若干の輸出をした、その関係から見れば、輸入が少いように思えますが、三十二年度は、御承知のように急に鉄鋼を非常に輸入して、これが過剰になっておるとか、あるいはまた機械等の輸入が非常に多い、いわゆる設備関係の輸入が多かった。こういうのは、三十三年度には必要ない、そうして国内的な物に対する需要がよほど減退をしておる、これは貯蓄増強とも関連いたします。そうしてみると、三十二億ドルの輸入で十分三十一億五千万ドルの輸出を達成することが可能である、かように考えております。
  64. 石野久男

    ○石野委員 政府は過去三回にわたって、国際収支の見積りについて訂正をしております。去年は八月に、大体四億七千五百万ドルの赤字が出るという見通しをした、十二月には、それが二億四千万ドル、現在では大体一億三千万ドルの赤字だ、こういうように見ておるようです。しかし、これは将来まただいぶ違ってくるように見られるけれども、なぜこういうふうに何回も何回も見積りがえをしなくちゃならなかったか、それについての大体の事情を一つ説明していただきたい。
  65. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これは、主としてやはり輸入が減って参ったのでありますが、従来原料等の輸入が相当多かった、こういうふうなことから、政府の引き締め政策に呼応して、業界においても輸入を漸次減してきたというふうなこと、同時にまた、国際収支を一そうすみやかに改善したいという政府側の意欲も手伝って、輸入が案外予定以上に減るような情勢を馴致した、かように私は考えておる次第であります。
  66. 石野久男

    ○石野委員 大蔵大臣が言うように、この見通し違いというのは、全部輸入の問題なんだ。大臣政府の方で見ておったところの輸入というものが非常に過大であったから、こういうように訂正をしなくちゃならなかったわけです。現状でも、たとえば現在の在庫高はこういうふうにある、生産在庫も製品在庫も非常に多くなっておる、新しい注文がないというようなときに、あなた方が計画しているような三十二億の輸入が果してできるだろうかどうだろうか、これは非常に疑問だと思うのだ。私は、政府のその見通し作業というものは全くでたらめなのじゃないか。おそらくあなた方が国際収支の危機を非常に強調するという意味は、ほかにまた別の意図があるのだろう。あなた方が言うように、非常に輸入がふえるから、それを押えなければならぬというだけの意味での国際収支の危機の宣伝ではないように思われる、私は、ほかにもっと意識的に、あなた方は国際収支の危機を説くゆえんがあるのじゃないか、こういうふうにさえ思うくらいです。大体三十二億四千万ドルに微増するということについてのものの考え方というものは、今ではほとんど無理なのじゃないだろうか。もっとほっといても、あなた方が引き締めなくても、実際に輸入はできないような事情にあるのじゃないか、こう思うのだが、政府はどうですか。
  67. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これは、やはり輸出と関連しなければならぬと思います。輸出が三十一億五千万ドルを達成するとなれば、やはり私は三十二億程度の輸入は必要とする、こういうように考えておるのでありまして、輸出が非常に伸びないというような事態が生ずれば、むろんこれは輸入も減る、こういうような状況になるだろうと考えております。
  68. 石野久男

    ○石野委員 今輸出が伸びなければということなのですが、それでは、輸出の伸びという問題について、あなたの見通しと、大体これからの何をちょっとここで聞かせてもらいたい。
  69. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 大体これは、今後の国際情勢並びに国内経済の調整、態勢の立て直しいかんにもよりますが、自分たちの考えでは、今日とっておる施策を遂行していきますれば、大体今輸出は信用状において二億一、二千万ドルというふうに私は一応考えておりますが、これは、やや今のところ減った状況でありますが、しかし実際の為替による輸出は、まあ二億五千万ドル程度は十分期待ができる。二億五千万ドルといたしますれば、年間にして約三十億ドルになります。あと一億五千万ドルということになりますが、これは、今後の施策その他努力によりまして達成をしなければならぬ、かような目標に一応私はいたしております。
  70. 石野久男

    ○石野委員 輸出の見通し作業は、これからもなかなか見方の違うところがあるので、ここではちょっと簡単にはできないのだが、そのような、たとえば信用状によるとか為替によるところの輸出増というものを、相当確信をもって今お話しがありますが、それは、大体交易国として、主として伸びの出てくる国は、どういうところの国を予定しておりますか、どういう地域を予定しておるのですか。
  71. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 それは、今日どういうふうに貿易が行われておるか、地域的に今事務当局から一応説明させます。
  72. 稲益繁

    稲益説明員 詳細な相手国別の輸出の見通しは、まだ十分検討できておりませんが、概略で申し上げますると、ヨーロッパ地域で大体一割五分程度増加、北米で一割程度の増加、その他中共、豪州、そういう方面で輸出の増加を見込んでおります。
  73. 石野久男

    ○石野委員 ここで、私は別にそういう問題についての論議を深めていくことは遠慮したいと思うのですが、今の状況のもとで、欧州とか、あるいは北米あたりのこういう増加の見通しというやつは、非常に安易なのじゃなかろうか。特に北米における、アメリカにおけるところの輸出の問題について、いろいろアメリカ国内で、日本の品物に対する禁輸対策というものが、あちらでもこちらでも出てきておる。こういう問題に対しては、政府はそれじゃどういうふうにして打開していこうとしているのか。まあわれわれの見通しでは、ああいうふうな状態が出てくると、今までの貿易額を維持すれば非常によろしいので、それ以上に伸ばすということは非常に困難なように思われる。ことにアメリカ経済の実態を見るというと、そんなに簡単に伸びると思われない。おそらくだんだん低下傾向があって、それが持ち直しをするのは、今年年末くらいだろうといわれているような時期に、こういう計画をされるについては、どうもちょっと的がはずれているのではないかと思うのだが、大蔵大臣、それはどういうふうに考えますか。
  74. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私の承知しておる限り、ごく率直に申し上げますが、私が最近においてアメリカの首脳者との会談をいたしましたときにも、日本が質易に依存しておるということはよくわかっておる、よく承知しておる、それで、対日的な政策においても、その点は十分考慮をする、そういうふうな基本線があります。と同時に、アメリカ当局としては、しばしば自国の輸入をふやして、そうして国際経済を萎縮させないようにするということも声明をしておるのです。そこで問題は、こういうふうな見地から、それなのに日米の貿易関係は、日本が多く買っておるじゃないか、それだのに、若干の輸出があるのに、なぜこれに制限を加える必要があるのか、どうも納得いかぬじゃないかという考え方につきまして、これは、おそらく日本人だれもが持っておる感じだと思うのでありますが、これにつきましては、いや、それはよくわかるのだ、そういうことがないように、あらゆる努力をアメリカ政府としては傾倒しておるのだ、それで、一つお互いにこれをうまく打開する道を考えようじゃないかというのが、私は今日の現状であると思うのでありまして、まあこういう点については、外務大臣、あるいは通産大臣から答弁をするのが適当と思うのでありますが、私の知っておる限りでは、まあそういうこと。そこで、私は、やはりこれは日米相互において、どういうふうな範囲の人々が話し合いをすればいいのか、これは考えなくてはなりませんけれども、日米双方で関係者のやはり合同委員会みたいなものを作って、よく話し合っていけば、それほどアメリカ国内の業者を刺激せずして、なおかつ日本輸出、アメリカから見れば日本からの輸入を増大する道は発見することができるだろう。まあかように考えて、そういう方向で今後進むべきだというのが、私の一応の考えであります。
  75. 石野久男

    ○石野委員 輸出の増加するいま一つの何として、中共を含む他の地域ということを言われておりましたが、大体中共地区を含むところの貿易の伸びについては、どういうような見方をしておりますか。
  76. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これは、政治と経済とが非常に関連を持つ国でありますから、簡単には割り切れないのでありますけれども、私は、日本としては、中共とは貿易に関する限りは大いに増大をはかるがいいと思います。何もそう遠慮することもない、少くともヨーロッパ諸国が中共とやっておる程度は、日本としては当然やるべきだという考えを持っております。従って、中共との貿易も、今後伸びるだろうということを期待いたします。
  77. 石野久男

    ○石野委員 ついでに、中共との貿易の伸びについて、大体どの程度の見通しを持っておりますか。
  78. 稲益繁

    稲益説明員 大体今年度が六千万ドル程度の貿易量でありますが、来年度においては、第四次の日中協定ができますれば、一億ドル程度期待できるのではないかと考えております。
  79. 石野久男

    ○石野委員 輸出の伸びという問題については、相当努力しなければならないということはよくわかるし、また今アメリカとの関係においては、合同委員会なども作って、向うに起きておる日本品禁輸の態勢に対してもこたえようという政府の腹もわかりました。しかし、これは容易なことじゃなかろうと私は思う。この際、私は、あなた方の考えておりまする国際収支の問題を中心に置いて、いわゆる日本経済に対する見方について、特に大蔵大臣の見方は非常に甘いのではないかという意見がけさあたりの新聞にも出ております。これは、別に新聞がそう書いているからどうというのではないので、われわれ自身が見る見方においても、現在の日本経済というものは、やはり非常に強い萎縮形態になってきている。むしろ相当程度それに対しててこ入れをしなければ、それ自体が、やはりどんどん自動的に下降状態が続いていくのではないかという見方をするわけです。私はそういう立場から、ことしは特に予算の問題について考えなければいけないだろうと思います。従って、あなた方がこの予算を組むに当って作られたこの予算の基本方針、基本構想並びにまた予算編成方針というものと、今度出た予算との間には非常に大きな食い違いがあるし、あっちこっちになっている。全く百八十度の違いが出てきていると思う。この予算の編成方針を見ると、基本的な態度というのは「投資及び消費を通じて厳に内需を抑制し、輸出の伸長を期することを主眼とし、」こういうふうに書いて「財政が景気に対して刺激的要因となることを避けつつ、」というふうにいわれております。そうして、そういう面であらゆる面について予算の制約をしていこうということを考えておるのだということがはっきりうたわれておる。その中に、特に予算の中で出てくる財政投融資の問題については、「財政資金の配分に当っては、民間資金の運用を適正化するとともに、電力その他産業基盤の整備、中小企業及び農林漁業金融等を中心とし、資金の効率的使用を徹底する。」こういうふうにいわれております。この財政投融資の問題は、あなた方の基本構想によると、三十二年度の実行額をオーバーしないようにということが考え方の基準だったはずです。それからまた基本構想の中では、実質的増加は厳に抑制して云々ということを言われておるわけです。ところが今度の財政投融資全体を見ますと、実際において、昨年度の実行額をはるかにオーバーしておる。この点については、大蔵大臣は、この基本構想なり基本方針のあり方と非常に違うということについて、どういうような釈明をなさいますか。
  80. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 この予算につきましては、当時立てました柱、言いかえれば出を一千億以内にとどめる、それに四百三十六億をたな上げする、それから相当額減税をする。これは、私一応達成をしておると考えておるのでありますが、今御指摘の財政投融資の問題は、とかくの論議があるのでありますが、しかし、今回の財政投融資は三千九百九十五億になっております。基本構想では、おおよそ三十二年度の実行額、こういうふうにうたってあるのであります。ところが三十二年度の実行額というものは、非常に計画を私は欠いておると思います。それと申しますのも、三十二年度の財政投融資は、当初四千億をこえておったのでありますが、しかし、国際収支改善のために緊急施策をとりまして、その際に財政投融資で一五%の繰り延べをいたしました。問題は、その一五%の繰り延べをした後の実行額と、こうなっておるのでありますが、それなら、一五%を繰り延べたあとの資金が、繰り延べなかった事業量に対して適正な金額なりやいなやということが一つの問題になるのであります。当時は、何としても投資を押えなくてはならぬ、言いかえれば、きわめてきびしい引き締め政策を実行する必要があった閣係から、かりにそのときに資金が足らないということがはっきりしておっても、資金を追加して出すことを控えなければならぬ情勢にあったのであります。従いまして、その後の情勢から見まして、すでに生産の調整も十分なり、いわゆる操短ということも行われるようになった、物の需給がやや均衡を回復するに至った。こういうような状況になると、どうしても足りなかった資金はこの際に追加して出しても、それはむしろ経済の動きと資金とがマッチする、別に弊害はない、そういうような意味において、その後において、三十二年度において若干資金の追加をいたして、またいたす予定もいたしております。そういうことを考えました場合に、三十二年度に実際出る金は、おそらく三千九百億以上になると思います。こういうふうにして見ますと、それは若干の増減はありますが、これは金融の問題でありますから、きちっとその金額が合わなければならぬということもないのであります。おおよそ実行額とうたっているのもその意味でありまして、こういった意味から見ると、私は、この点もそう大きな食い違いはいたしておらぬというように考えておる次第であります。
  81. 石野久男

    ○石野委員 今、昨年度の財政投融資が適正でなかった、その当時必要だったものを繰り延べしたのだ、それで今度は別に無理はないのだ、こうおっしゃられた。ところが、ことしの財政投融資は、今大臣が言ったように、大体三千九百九十何億というものになってくる。今度はさらに繰延額で補正で持ってくるだろうと思われる。あるいは一部解除になって、約三百八十億というものを予想しますと、これはもうものすごく大きな量になってくると思います。ですから、われわれの考えておるところの財政投融資というものは、そういう繰延額の一部解除というようなものを考えると、はるかにもっと大きなものになってくる。それが一つあることと、もう一つは、今一番大事なことは、大蔵大臣は予算を編成するに当って、基本構想なり、あるいは方針の中で、なるべくその財政が景気に対して刺激的要因にならないようにということを言われておるのです。その場合、この財政投融資というものは、果して景気の刺激的要因にならないのかどうか、この点について、一つ大蔵大臣の見解を聞いておきたいと思います。
  82. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 むろん財政投融資が景気に対して刺激的な要因になることは、これは申すまでもありません。むしろ、これは直接的な影響だと私は思います。従いまして、財政投融資は、なるべく適正な基準に持っていかなければならぬ、こういうふうな考え方でやっておるわけであります。
  83. 石野久男

    ○石野委員 大蔵大臣は、財政投融資は景気的刺激の要因になると言った。予算の中では、なるべく景気に対する刺激的要因にならないというような方針で組んだもの、それが刺激的要因になっていくということになると、方針と予算の実際とは全然食い違ってくると思うのです。だから、あなた方の言っておるところのいわゆる引き締めという問題と、予算が実際に出してきておるところのむしろ景気支持という政策とは食い違っておる。ことしの予算を組むに当って、その根本的な考え方というものは、果して引き締めにあったのか、それとも景気支持のために予算を組んだのか、その点について、一つ明確に見解を述べていただきたい。
  84. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 大体、私は三十二年度におきまして——ほんとうを言いますと、これは若干議論の対象にはなると思います。言いかえれば、財政投融資財政投融資で見るべしという議論と、投融資というものは官と民と、いわゆる財政投融資と民間の投融資とを一括して考えなくちゃならぬという意見、これは、おそらく三十二年度の予算のときにも、そういう論争があったかとも私は今記憶するのでありますが、私は、この財政投融資については、財政面から、いわゆる政府面からするものと民間からと、これを同じ一つにしてものを考えなくちゃならぬという立場から、これは見解の相違はあるのであります。財政は財政で民間のことは別だ、こういう議論もあるのでありますが、私は、それはそうはとらないのでありまして、これは、経済に対する関係では一括して考えなくてはならぬという説に同ずるものであります。そうして考えてみました場合に、三十二年度は極力——私はほんとうを言いますと、そういう見地に立てば、民間において資金が枯渇して、そうして財政において非常に引き揚げがある場合には、金融政策としてはこれに調整を加えまして、引き揚げの部分を民間に出して、そうして民間の資金の枯渇を緩和して、そうしてなるべく日本銀行からの借り入れをしなくて済むようにするのが、金融のやり方として当然だと私は思う。ところがこの金融引き締めをする必要がある、特に投資意欲が非常に強いときにこれを押えるという見地からいたしまして、私はそういうふうな常道をとらずに、資金の要る部分は、一つ民間の金融界でおまかないなさい、足りないところは日本銀行から借りなさい、財政は引き揚げのままにしておきますよ、こういうふうな行き方をしまして、いかに投資が盛んである、いかに日本銀行の貸し出しがふえるというような、そういう現実の形において企業に警戒を与えて、なるほど金の使い方が大きいな、日本銀行の貸し出しが大きいなというような形で、一つこの投資意欲というものを押えよう、こういうふうな方針をとります。従いまして、日本銀行の貸し出しは、御承知のように非常に巨額に上って、一時は七千億、発行高と貸出高がほとんど似通ったというようなところまで行ったのであります。しかし、もうそういうふうな投資意欲が衰えてきた今日におきましては、そういう行き方は不適当だ、それはむしろ邪道だ、言いかえれば、従来ずっと引き揚げ勘定になった財政資金は、むしろ今度は民間に還元をして、そうして民間は、それだけなるべく日本銀行の貸し出しを返還する、こういうふうにして、オーバー・ローンを解消するような形をとるのが、今後の金融の正常化に必要である。そういう見地に立ちまして、今度は財政面の負担を多くしました。たとえば造船にしても、あるいはまた鉄鋼にしても、これは民間の資金との抱き合せになるのでありまするが、そういう部分の比率をずっと引き上げまして、財政資金の負担分を多くしていく、あるいはまたこの財政資金をある一部分民間に還元をしまして、そうして、その部分は、従来もすでに日本銀行の金を使って設備なんかしておるのですから、その金の部分は、一つひもつきで日本銀行に返しなさい、こういうような格好をして、財政資金を民間に出す方法もとっております。そういう意味においても、財政資金は今回若干ふくれておるのでありまするが、それには、私は合理的な根拠がある、いわゆる経済を刺激するという見地においては、刺激は与えていないといってもいい、かように考えております。
  85. 石野久男

    ○石野委員 今のお話によると、とにかく予算は、財政的な支出を通じて景気を刺激するような要因にならないようなものである、この実態は、あなた方が昨年の九月に予定されました予算編成の基本構想、これとは全く違うわけだ、あの当時は、三十二年度の予算に比べて歳出の実質的増加は極力押えるということ、それから、余剰金はあっても、できるだけこれは景気調整の財源に引き充てるのだということ、そして財政投融資の規模は、三十二年度の実行額の範囲内にとどめる、こう言っておった。あなたは、先ほど実行額というのは適正ではなかった、こう言うけれども、あなた方の基本構想は、その実行額の範囲内にとどめる、こう言っておった。だから、それとは全然違うわけなので、この予算は、当時の基本構想の線では編成されていないということを今おっしゃった、こういうふうに私は理解しますが、それならよろしいのです。そういうふうに理解していいですね。
  86. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 その点については、若干補足しておく必要があると思います。実行額と申しますのは、先ほどから申しましたように、私の考えでは、やはりあとで三十二年度中において戻す必要がある、それを当然含むべきだというように考えております。これは、三十二年度において三千九百億をこえるのでありまして、大よそ三十三年度における財政投融資の額と私は見合う、かように考えておるのであります。むろん、ごくこまかく何億違うとか違わぬという点もありますが、これは、大よそ見合うということに方針を立てております。
  87. 石野久男

    ○石野委員 何とおっしゃられましても、今度の予算は、実際にあなた方が最初考えられた基本構想とか、あるいは編成方針とは全然違うのです。その点は、あなた方はもう少したんたんと、はっきりここで言うべきですよ。ところが今までは、実際問題をいうと、予算は景気支持のために動いておる。それはなぜそういうことになったか。現在の日本経済というものは、非常に底をついておるのです。何とか手を加えなければならぬのであって、あなたがかつてわれわれの同僚に言ったように、日本経済は伸びよう伸びようとして、押えても押えても押え切れないような輸入の増加がくるというようなこととは違うのですよ。これはたった三ヵ月。こういうような景気の見通しは、あなた方は全然なかった。でたらめなんです。一月の二十日に、あなたが予算編成をするときに、あの未明にきまった予算というものは、全くその当時の構想とは違うということを、あなたは明確にここで国民に言うべきですよ。そうして、そういう立場から国民に協力を求めなければいかぬと思うのです。そういうことについては、もう少し大臣は、自分に対する信念的な動きをすべきだとぼくは思うのです。あなたはもうわかっておるように、イギリスのソニークロフト蔵相は、財政の立て方一つの問題だけでやめておるのですよ。そうして、その責任をとっておる。いいか悪いかは別として、あなたにそういう責任のとり方というものは全然ないのです。あなたは、どういう信念をもってこの基本構想基本編成方針というものと、今のこの予算との間に関連性があるというふうに説明されますか。もっと責任のある、ほんとう国民に対して責任のある返事をするだけの、自信のある態度をとるべきですよ。私は、とにかくこの予算は、実際に基本構想や編成方針とは違うということを、ここで明確にあなたに申し上げておきます。と同時に、この予算というものは、実際問題をいうと、あの編成当時に圧力団体が加わってきたのです。もうあなたも御承知のように、この予算の中で見られる内容は、どういうものになっておるか、たとえばあなたが盛んに説いておるところの財政投融資の問題を通じてみても、果してあなた方がいうように、中小企業に対してどれだけの施策ができておるか。今度の予算は、ほとんどの大企業に対して、大資本に対して、なるべくお金を出してあげましょう、中小企業に対しては、出してやれない。たとえば今度の予算の中でできておるところの中小企業に対する財政投融資の出し方は、どんなになっておるか。昨年度は、当初予算のときには四百四十二億で、これは、中小企業を対象に出しておるところの財政投融資です。その後二百二十億追加しております。六百六十二億。ところが、今度の予算ではどうか、予算全体はふくれて、しかも財政投融資も去年よりふえておる。今度は五百四十五億、去年より減っておる。これで、あなた方は中小企業に対する財政投融資、あるいは施策ができていると言えるか。それに引きかえて、一般産業投資は、ものすごく重点産業だというようなことで出しておる。こういうこと一つ見てもわかるように、あなた方の考え方というものは、やはり大資本に対しては金を出す、そして消費は極力押えるんだ、たまたま消費面に出しておるのは何だというと、旧軍人に対する恩給だ。こういうことに対するあなたの考え方というものは、全くなっておりはせぬ、こう言ってもいい。あなたは、それに対してどういうような考え方をしますか。
  88. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 この三十三年度の予算編成の基本方針と実際の編成された予算案とが何の関連もない、こういうお話ですが、これは、いろいろとこれに対する批判もありましょう、それは、私十分承知いたします。私としましては、この予算につきましては、当時具体的にそれを示す方法として、事実上一千億以内で歳出をとめる、それから三十二年度から来る剰余金、この繰り入れの額のうち四百三十六億はたな上げする、それから二百六十億程度は減税する、これは、私はあの通り如実にやっておると思います。これは、もう基本構想のときにおいて、そのこと自体はもううたってある。これは、予算についてこういうふうにやる。なぜこういうふうにしたかといえば、当時歳入では、まだ四百三十六億もたな上げするような資金もあります。いろいろと歳入があるから、歳入があれば歳出を立ててもいいじゃないかというような議論が起るかもしれないが、それでは、経済に対して刺激があまりに大きいから、これはこういう程度にする。むろんあの予算で一千億以内に歳出をとめるということは、議論の仕方によっては、やはり経済に刺激を与え過ぎるとも言い得る。これは、しかし国政をとる上においてどうしてもやむを得ない歳出として、最小限にとどめたというふうに御了解を願わなければならぬ。それから財政投融資にいたしましても、今非常に御議論がありますが、これは、私が今申したように、経済に刺激を与えるか与えないかということが一番大事なことなので、経済に刺激を与えないようにして、しかも金額も大体三十二年度の実行額のところにあるということ。そして刺激を与えないという点については、どうしてもこれは民間の投融資と相関的に考えらるべきだ。こういう点について、やはり財政投融資につきましても、経済の実態に応じて、弾力的にこれを考えていくということはうたってあるのでありまして、こういうふうな点は、やはり経済が生きものでありますから、大よその基本方針を立てて、実際に即してあやまちなきを期することは、私は当然のことだと思います。
  89. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 ただいま御質問の中に、中小企業関係にどのような措置をしたかという御質問がございましたから、まずその点について、数字をあげてお答え申し上げます。昭和三十三年度の財政投融資計画におきましては、国民金融公庫、中小企業金融公庫、商工中央金庫、この関係が大体の中小企業金融関係だと存じますが、三十二年度は、むしろこれらの機関につきましては、他の項目において繰り延べをいたしましたが、追加をいたしたことはお述べの通りであります。そこで三十二年度の貸付ワクと三十三年度の貸付ワクを比較いたしまして、三機関について申し上げますれば、国民金融公庫におきましては、三十二年度七百七十億を八百四十五億に拡大をいたしております。中小企業金融公庫におきましては、五百四十八億を五百七十億に拡大をいたしております。商工中央金庫におきましては、二千二百億を二千五百三十億に拡大をいたす予定になっております。なおつけ加えて申し上げますが、国民金融公庫と中小企業の金融公庫につきましては、予算総則におきまして、貸出限度の五割以内については、弾力条項を新しく設けていただきまして、その範囲内においては、大蔵大臣が景気その他を判断して貸し出しを強化されるということもうたっております。その他中小企業全般の問題につきましては、たとえば中小企業の保険等につきまして新しい施策を盛っておりますことは、石野委員御承知の通りであります。なおこの際、三十二年度の実行額と三十三年度の規模とにつきまして、若干数字だけを申し上げておきますが、三十二年度の当初計画四千九十一億、これに前年度からの繰り越し百四十九億、これをまず申し上げなければならぬのであります。それから大蔵大臣がたびたびお述べになりましたように、実質的に事業量はふやさないけれども、金融がつかないために、たとえば例をあげて申し上げますれば、国鉄におきましては百億の繰り延べをいたしたのであります。一五%の繰り延べの中に百億の繰り延べをいたしまして、建設費におきましては二十億、改良費におきましては八十億を繰り延べたのであります。この建設費の繰り延べのために、紀勢線、能登線等三十線が繰り延べられました。改良費の八十億の繰り延べのため、車両購入の減が三十台というふうに繰り延べられました。これらの繰り延べたものは、そのまま繰り延べるのでございます。しかしながら、その後の資金措置といたしまして、先ほど申し上げたように二百七、八十億はどうしても資金措置をしなければならぬ。さっきの百四十九億とこの二百八十億くらいのものが三十二年度の実行上ふくれてくる。このことを大蔵大臣が申されておるわけでありまして、それを勘案いたしますと大体三千九百五十数億になり、これと三千九百九十五億が見合っておる、こういう意味でございますから、数字をあげて補足いたしました。
  90. 石野久男

    ○石野委員 今、正示局長からいろいろこまかい説明がありましたが、それはまたあとで何いたしましょう。いずれにしても、財政投融資面におけるところの実際の何は、中小企業に対しては、去年の額よりも現実にはここでは減っている。あと、それはいろいろ措置はやるとしても、それは情勢の変化によってというだけなんだから……。それは、またこまかい問題はあとで当然論争しなければならぬ場合がありますが、ここで時間をとっては私の時間がなくなってしまいますから、この辺でおいておきます。  いずれにしても、今大蔵大臣が言われたように、予算の編成方針、構想というものは、決して今度の予算には貫かれていないのです。しかし、これはあまり長いことやっていると、実際時間をとりますから、私はこれでおきます。具体的なことは先ほど述べた通りです。ただ予算を実行するに当って、一つの問題がある。大蔵大臣が予算を編成するに当って、当然やはり予算の基礎になる雇用の問題とか、物価の問題があるわけです。この問題について一、二聞いておきたい。  まず物価の問題ですが、物価問題については、大体のことしは卸売物価で年度間一・四%の低落と見、それから消費物価は、大体三十二年度の末ごろの状態で置こうというふうに考えている、こういうふうに言われているのだけれども、大体そういう見通しは可能だと思っておりますか。
  91. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 大体さように考えております。
  92. 石野久男

    ○石野委員 私は、最近の日本の特に物価の状態を見ると、あなた方が非常に宣伝している引き締めが行われた後も、そう大して消費者物価は下っていないんですね。これはどういうことでしょう。
  93. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 おそらく、それは現在あります。また御指摘になっております商品在庫、これが現実に市場に出ていくという段階において、私はなお物価の低落を見るであろうと考えております。
  94. 石野久男

    ○石野委員 そういう状態は、やはりしばらくまだ続くのではないのですか。
  95. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 ある程度の期間、私はまだ続くと考えております。
  96. 石野久男

    ○石野委員 そうなりますと、予算の基礎にしておる物価というものは、なかなかあなた方の考えているようにいかないのじゃないですか。
  97. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 それは、どういう意味合いでありましょうか。
  98. 石野久男

    ○石野委員 今私の尋ねた点に対して、消費物価なんかはやはり依然として高くなっておる、それは在庫なんかの圧力があるから、そうだが、しばらくは続くだろう、こういうようにおっしゃられた。ところがあなた方の予算大綱やなんかには、大体本年度内には物価はぐんぐん下っていく、こういう見方をしているはずです。
  99. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 卸において一・五ですか、それから消費価格において大体今横ばい——〇・一五でございましたか、こういうような低落であります。これは、年度内を通じての平均の低落と申しましょうか。
  100. 石野久男

    ○石野委員 ことしの物価の低落の問題が、もし年間を通じて出てくるのだということになりますと、これは、先ほどからあなたがおっしゃっておったように、地ならし工作から、七月ごろからまた景気がよくなってくるのだという問題と、物価が下っていくという問題との関連性を、どういうように御説明なさいますか。
  101. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私は、大体まだしばらく物価の低落を見るだろう、そういうように考えております。そして、大体先ほど申したような景気の情勢に応じて安定を見ていく、そして他方、生産力が相当大きくありますから、それから先はそう物価の騰貴を見ずして推移をするだろう、大体大まかな考え方はさように考えております。ただ、特に私が断わっておきたいことは、何だか七月以降において景気が非常にいいかのように言うことは、これは、私非常にいいというような意味合いで言うのじゃありません。七月以降においては、諸外国の経済政策等からして、国際的に考えた場合に、ややいい条件が現われてくるのではなかろうか、こういうふうな程度に考えております。これは、今後の推移に待たないと何とも申し上げられない、こういうことであります。
  102. 石野久男

    ○石野委員 物価がずっと下落していく状況は、大体いつからそういう状況が出てくると見ておるのですか。
  103. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私は、現在、引き締め政策以来ずっと物価が低落していく。なお少くとも三月、四月くらいまではやはり低落の傾向をとるだろう、かように考えております。
  104. 石野久男

    ○石野委員 私の言っているのは、消費者物価では、物価指数なんか見ましてもわかるように、全都市の物価指数は、これまでずっと上っているわけですね。だから引き締め以来ずっと下っているんじゃないのです。上っているんですよ。だから、そういう問題と、大綱が示しておる問題との関連性を聞いておるわけなんだから、そこのところをうまく説明して下さい。
  105. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 今数字的に説明させます。
  106. 谷村裕

    ○谷村説明員 石野委員のおっしゃいました消費者物価指数、総理府調べで申しますと、総合物価指数で、去年の三十二年一月の一〇二%、これは、昭和三十二年一月から十二月までの数字でございます。一〇二・二という数字がほぼずっと横ばいで、五月あたりに参りまして一〇三・八、七、八月のころで一〇四・七、一〇五・四と上っておりますのが、九月から下降に転じまして、一〇四・九、十月に一〇四・六、十一月に一〇三・一というふうに、景気の、いわば政策の引き締めの進むに従いまして、十一月ごろまでに若干下降いたしております。こういう数字が出ております。総合で申し上げました。
  107. 石野久男

    ○石野委員 総合物価の問題は、もちろんそういう形で出ておる。今私が聞きたいのは、消費者物価が上昇状態を持っておるわけですね。われわれにとって、もちろん総合物価の問題も大事です。同時に、この予算が一般の国民大衆にどういうふうに影響するかという問題も考えなければならぬ。そういう点から、消費者物価の下降状態というものをどういうふうに考えておるかを僕は聞いておる。
  108. 谷村裕

    ○谷村説明員 今申し上げましたのは、総理府調べの全都市の消費者物価指数の総合指数であります。
  109. 石野久男

    ○石野委員 総理府調べの消費者物価指数の全都市のものを見ると——今あなたがおっしゃったのは、三十二年一年を一〇〇に置いたのですね、そういうめんどうくさいことをしないで、ここで簡単に出ておるところの数字を見ると、こういう形になっているんですよ。昨年の一月に一二一・三であったものが、十月には一二四・七になっているんだ。決して下っておりはしない。あまりごまかすような数字のトリックを使わないようにして、この数字でやって下さい。
  110. 谷村裕

    ○谷村説明員 今石野委員のおっしゃいましたのは、全都市のCPI、昭和二十六年平均一〇〇といたしましたその数字でございます。それで見て参りますと、昭和三十二年の一月、一二一・三がずっと上って参りまして、十月ごろに一二四・七となっております。さようなことをおっしゃいまして、それから十一月に一二三・〇——またちょっと下向いておるのでございます。これはなかなかむずかしいところでございます。
  111. 石野久男

    ○石野委員 ちょっとむずかしいところ、そのむずかしいところを——この状態は、やはりことしも相当続くんじゃないか。ことに大臣が言われるように、景気がずっと下向いておるという情勢を肯定するなら、私はこれが下降していくというふうに見ます。しかし、あなたがおっしゃるように、もう四月、五月には地ならしができて、七月ごろから景気が上向いていくということになったら、これは、とてもこれ以下に下りやしないですよ。そういう理屈が成り立ちますが、どうですか。
  112. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私から特に申し上げておるのは、今言う全都市の消費者物価、これは、やはり投資が盛んで、日本経済が拡大していくという関係から、やはり所得関係がよかった。こういうものの使い方の消費は、おくれてこれが現われてくる。消費ほんとうに減少していくのは、後になってくる。今景気のいいところの状況で消費が行われておる、こういうふうに見られるんじゃないかと思います。これは、百貨店あたりの売り上げというようなものの推移からも考えられるのであります。そこで、私どもは、今後貯蓄を非常に増強しまして、そうして、こういうふうな一般の消費を抑制してほしい。今度、特別に貯蓄増強について法律案を出しまして税法上の特別措置をするのは、そういう含みであります。そうして、物を輸出の方に安定した価格で持っていく、国内消費をなるたけ減らして、輸出の方に持っていきたいとう、こういうふうなドライブを強くやる結果、私は、今後引き続いて消費者物価が上るとは考えておりません。これは、やはり大よそ横ばい程度で推移をするというのが大ていの見当じゃなかろうかというのが、私の考えであります。
  113. 石野久男

    ○石野委員 私はあまりこの問題だけで時間を使うことをやめますが、いずれにしても、あなたのおっしゃるように、景気の状態が七月ごろから上向いていくということになりますと、今あなたがおっしゃるように、投資作用もまた出てくるわけです。投資作用が出てくれば、消費もそれに伴ってくるわけです。だから、あなたの理屈には非常に矛盾を含んでいるわけです。消費者物価を下げていくと片方では言い、しかも一・四%低落させるんだ、それから、消費者物価については、年末と同じくらいに置いておくんだと言っておられるその事態はどういうものか、生産も萎縮し、いろいろな在庫指数も非常に延びている、受注も非常に少いという状態なんです。こういう状態が案外に続いていくというなら、あなたの言う七月から景気が出てくるという理論は出てこないじゃないですか。どういうわけです。
  114. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 七月ごろから景気が出るということを私は言うのじゃないので、主として七月以降の見通しは、日本輸出がどういうふうになるだろうかという場合に、世界各国、特にアメリカの経済上の政策から見て、若干明るい条件がそこにくるだろう、こういうことを言うておるのでありまして、従ってその条件が実現し、日本経済がそれによく乗るような態勢が整っておれば、そこで日本経済もややよくなる、こういうふうに考えるだけで、何も私は、七月以降に日本の景気がよくなるからというふうな、そんな旗は振っておりません。私は、やはりここは慎重にいかなければならない、そういう点も頭に入れつつ今後考えていこう、七月から景気がよくなるというふうな、私はそんな宣言はいたしません。
  115. 石野久男

    ○石野委員 雇用の問題について聞きたい。この雇用の問題については、予算委員会でもだいぶ論議がありました。しかし、ここで一つだけ、予算委員会の論議のときにもまだ十分きわめられなかったことで、大蔵大臣が来年度の、予算編成をするに当って雇用問題を考えている上から、大体雇用の伸びは三・四だけ伸びるという、そういう見方をしているわけです。そこで、引き締めが行われて後、経済はデフレの方向へ自動進行していると私はとにかく見るんだ。これは、大蔵大臣がそう見ないと言うんだけれども、私は、とにかくデフレの自動進行が行われておる、こういうふうに見ておる。そこで、相当そこからは犠牲者も出ておるし、いろいろな点で、ずいぶんその犠牲の面が多くなっているわけだが、この雇用者指数が三・四%だけふえるということについて一つだけ聞いておきたいことは、この雇用の問題と投資の問題との関係です。大体この投資が行われたときに、雇用はどういう状態で伸びていくというような見方をなさっておるか、その点については、一つ大臣考え方を聞かしていただきたい。
  116. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 この投資と雇用の関係、これは、一応実績に徴しまして説明をさせます。
  117. 谷村裕

    ○谷村説明員 石野委員の御質問、私、実はただいま資料をちょうど持ち合せませんで、まことに申しわけございませんが、一般的に申しまして、ごく簡単に言えることでありますが、経済が拡大していきます際に、雇用の伸びは、若干おくれては参りますけれども、増大して参ります。経済の伸びが大きくなって参ります、その中心になりますものは、やはり投資であると思います。従いまして、投資が盛んになっていくことから引き起されていく経済全体としてのいわば上昇カーブ、これがやはり雇用をだんだん大きくして参ります。これはきまったことでございます。数字につきまして、経済の伸びの指数と、それから投資の伸びの指数、それから雇用の伸びの指数、これは私一ぺん内部で作ったことがございますけれども、今ちょっと手元に持ち合せませんので、お答えいたしかねます。
  118. 石野久男

    ○石野委員 今谷村さんが話されたこと、その通りでしょう。それで、大臣にちょっと聞いておきたいのだが、投資活動が非常に伸びたときに雇用が伸びることは、だれでもわかっておるんだ。わかっておるんだが、ただその投資の伸びと雇用の伸びとがどういう関係にあるかということが、今非常に問題だろうと思います。ことに最近のように、産業設備がオートメーション化してきた時期におきますと、設備投資の問題と雇用の問題とは、従来の考え方と非常に違ってきているじゃないかと私は見るわけです。そういう問題について、ここであまり多くは申しませんが、大体あなたの考え方を聞かしてもらいたい。それと同時に、それについて、一定単位の投資に対する雇用の量がどういう状態になっておるかというようなものの資料がもしあれば、ちょっとここで示してもらいたい。
  119. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 今後の経済の行動のあり方、言いかえれば、経済が伸びてもオートメーションという形でいくということになりますれば、その限りにおいていえば、私は雇用には必ずしもいいとは思いません。経済が伸びると雇用がよくなるというふうにも考えませんが、しかしオートメーションである事業が盛んになれば、それに関連して、他の面において雇用面がふえてくるということも、私は考慮しなくてはならぬじゃないかと思うのであります。それらの点は、非常に複雑な相関関係があると考えております。
  120. 石野久男

    ○石野委員 大臣、勉強が足りないようだから、あまりここじゃなにしません。私の聞きたいことは、とにかく投資と雇用との関係は、従来の考え方はむしろ逆になってきておる、投資量はぐんぐんふえればふえるほど、雇用の量が相対的には少くなるというような実情が、今の投資内容だというふうに思っているわけですよ。そういうことを、今資料がなければ、あとで一つ資料を要求しますから、調査があったら出して下さい。  私この機会になおお尋ねしますが、三十三年度の対民間財政収支の問題でございますが、この問題について、どういうような予想を立てておられるか。
  121. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 詳しい数字のことは理財局長から説明させますが、大体今度私が考えるところでは、一番おもなものは、一億五千万ドルの国際取支の黒字からくる、これは当然散超になります。それからインパクト・ローンあたりでいきます借款があります。これも当然散超になって参ります。これは、しかし当然日本銀行の貸し出しが減らなくてはならない、日本銀行としては、これに該当する金額は当然回収をはからなければならない。そうすると、これが一番大きな散超原因であると私は考えております。これが、おそらく両方で九百億近いものになるのではないかと思っております。そのほかにおいては、一般会計からきます分は、交付税に出た部分と、それから国債償還で対民間に償還せられたもの、これが散超になると思います。これは、今後の税収入の状況いかんによりますが、税収が非常にまたいいというようなことでもかりに起りますれば、これは、そこでまた相殺されるということになろうかと思います。総じて千二百億くらいのものは、一応三十三年度において、国庫収支から見れば対民間関係で散超になるだろう、かように考えております。
  122. 石野久男

    ○石野委員 今のその千二百億くらいの散超の中には、今ちょっと触れておりました税の問題があるけれども、税のうちでも、自然増収というものを一応計算に入れておるのですか、どうですか。
  123. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 詳しいことは答弁させますが、この自然増収というものは、三十三年度におけるそれは、私は考えていないと思います。
  124. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 大臣が大体のことをお述べになりましたのですが、一応千二百億の散超要因を大きく分けまして、為替の関係、これは大臣が今おあげになりました通り、国際収支の黒字を見込みます関係上、その他の要因を入れまして七百三十八億、これが国際収支関係から起ってくる散超要因でございます。これに対しまして一般会計、特別会計、いわば通常の財政のファンクションと申しますか、そういうものから起って参ります散超要因といたしましては、一般会計におきまして、御承知のように交付税の三十一年度の剰余金がふえましたのが、これが所得税、法人税、酒税という三税の収入増がございますと、地方にそれだけ交付税を渡さなければなりません。この関係が百二十九億、それから公債の償還をいたします関係が二百十八億、合せまして、三百四十七億でございます。これが一般会計の関係でございます。次に特別会計等におきましては、御承知のように一番大きな揚げ超要因になっておりましたのは食管会計でございますが、この関係は、一応三十三年度といたしましては、若干の揚げ超になっております。これに反しまして、財政投融資で見込みました産業投資特別会計、それから資金運用部、この関係から百十五億ほどの散超が出て参ります。そういたしまして、一般会計と特別会計を通じますと四百六十二億、先ほどの為替の関係の七百三十八億を合せまして千二百億が来年度の散超要因として見込まれておるわけでございますが、この点に関連をいたしまして、ただいま石野委員から御指摘のように、来年度税の自然増収がある、あるいは食管会計等がどういうふうに現実に動くかというふうな点は、一応われわれといたしましては、今日提出をいたしておりますところの予算がそのまま実行せられるものという前提で見込んでおるわけであります。従って、たとえば三十二年度と比較いたしますと、三十二年度は、御承知のように国際収支はとんとんという見方を立てておりまして、一般会計、特別会計の散超だけが散超要因になっておりましたので、三十二年度におきましても、昨年の今ごろの国会におきましては、三百五十億くらいの散超になるということを御説明を申したのでありますが、これが今お話しのように、税の自然増収がございましたり、食管で受配率が非常に高まったりいたしました関係から、それから一番大きな原因は外為でございますが、今日二千数百億の揚げ超に転じておる、これは御承知の通りであります。
  125. 石野久男

    ○石野委員 今の説明にもありましたように、この自然増収というものがもし見込まれていないとすれば、この千二百億の散超という問題もだいぶまた形が変ってくるわけですね。大体例年のなにから見ますと、また三十三年度においても、少くとも五、六百億ないし七百億近い自然増収というものが出てくるのではないか、こういうふうに見られるけれども、それはどうでしょう。
  126. 原純夫

    ○原(純)政府委員 三十三年度の税収の見込み、その中でいわゆる自然増収というものをどう見ておるかというお尋ねでございますが、三十三年度におきましては、三十二年度の当初予算に比べて千五十億円の増収があるということをまず判断して、その数字をもとにして減税が幾らというのを差し引きまして、そして三十三年度の税収予算を見ております。千五十億といいますのは、実は三十二年度の実行上出てくるであろう増収額が、おそらくやはり千億くらい見込まれますから、三十二年度の実績ベース、これから比べますと、ほほ横ばいという見方をいたしております。これは、通常の経済の伸びの場合でありますれば、いささか異例であるということになると思います。つまり国民所得が五%、六%ふえる、物価も生産もなだらかに上って参るというような場合には、その国民所得の増に応じて税収はふえるということになるわけであります。先ほど来いろいろ石野委員からは、その方針が実行上にかかっておるというお話が出ておりますが、政府としては、この三十三年度の経済は締めぎみにやって参るということで、その結果国民所得の伸びも二・二%になる、鉱工業生産は四・四%ふえますけれども、物価は、むしろ年度平均と比較いたしますれば、若干下りぎみであるというような見込みを立てております。税の方で、物価が下り、景気が鎮静して参りますと、法人税、申告所得税というようなところへ相当大きく影響が出ます。それは端的に、この景気のいいときには商売のもうけが非常に多い。景気が沈んでくると、ぐっとそれが減って参る。三十二年度は、後半に至りましてかなり締って参りましたけれども、前半はいわゆる神武景気が非常にはなやかだった時代を受けて、その時代のところが税収になっておるということがございますので、三十二年度に比べますと、そういういわばブームの余波で出ました大きな収入がなくなるという意味でも、マイナスが相当大きくなってきます。マイナスの立つ分とプラスの立つ分とほぼとんとんということで、今申した千五十億という見込みを、これから減税による減収を差し引きまして、ネットとして七百九十億でございますか、これを三十二年度予算に対する増収額というふうに見て計算しているわけでございます。
  127. 石野久男

    ○石野委員 そうすると、今三十二年度の分をいろいろ聞いたのですが、三十三年度におけるところの自然増収というものに対しての見方というものは、どうなんですか。
  128. 原純夫

    ○原(純)政府委員 ただいま申し上げましたのは、三十二年度は神武景気の余波が非常に大きく出たというような意味で、当初予算の見込み額九千四百六十九億に対しまして、おそらく千億くらいの増収はあるだろうというふうに考えます。三十三年度は、酒とか物品とかいうものはある程度ふえるわけです。源泉もふえるわけですが、法人と申告で減るだろう。ふえる分と減る分とがそれぞれ相殺されて、三十三年度の税収見積りは三十二年度の実績くらいのところであろうというふうに見ておるわけです。正確には、三十二年度当初予算に比べて千五十億増、三十二年度の実績が当初予算に比べて千億増ですから、この千億増と三十三年度は千五十億ですから、ほぼ横ばいだということになる。それは今申しましたように、ふえる税とそれから減る税とがある。それは、大体相殺し合うというようなことになっておるということで、いわゆる自然増収は、そういう形ではっきり出ておるというわけでございます。
  129. 石野久男

    ○石野委員 いずれにしても、ここ数年来の予算上におけるこの実績との関係からいって、自然増というものは非常に大きなものがあります。この自然増収の大きいということについては、これは、それぞれやはりなぜそうなったかという問題が一つあるわけです。大体数年来自然増収は相当多く伸びておる。この問題について、大蔵大臣はどういうふうに考えておりますか。これでいいと思っておるのですか、税の取り方の建前からして。
  130. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私は、この自然増収という形で、継続的に累年こういう形でいくということは、好ましくない。これは、こういうふうになれば、予算上むろん国の歳出需要というものも考えなくてはなりませんが、適正な歳出需要を満たした以上は、やはりこれは減税振り向けるべきだという考え基本的には持っております。従いまして、非常に巨額の自然増収が累年出るということは好ましくない、かように考えております。
  131. 石野久男

    ○石野委員 自然増収というのは、言葉では自然増収ということになっておるけれども、実際にはやはり不自然なもので、自然ではないわけですね。不自然な収税のあり方です。大体国家の予算というのは、できるだけ税を軽くしていこうというのが、政府の建前であろうと思う。大蔵大臣がなるべく税金を多く取ろうという考え方ならば、それは、自然増収がどんどんふえることはあたりまえなんだけれども、なるべく軽くしようというときに、自然増収が多く出てくるということは、非常に不自然なことです。その不自然な状態が累年続くということについての理由一つ聞かしてもらいたい。おそらくあなたの方では、それは経済の規模が大きくなって、経済活動が伸びるからであろうと言うけれども、それだけじゃないのだ。一応その説明をしてもらいたい。
  132. 原純夫

    ○原(純)政府委員 自然増収が出ますのは、やはり見込みに比較して経済の伸びがよかったということになると思います。特にその伸びます場合に、インフレ的な、ブーム的な伸び方をします場合には、非常に大きく所得がふえて参ります。税収がふえて参ります。これはただいまちょっと申しましたが、法人税、申告所得税、こういう税におきましては、物価がだんだん上るというような現象を伴った景気の上昇、拡大という場合には、商売は非常にもうかるわけであります。値上りによる利益が出る。どんどん売れ行きの量もふえる。一方原価構成要素の相当大きな部分であります労賃というものは、そうそれにくっついて上らないということで、いわゆる利潤インフレ的な様相を呈するというのは、毎度出ることであります。ただいままで自然増収が出ましたものの最も顕著なものは、やはり何といいましても、ときどきそういうように経済がインフレ的な様相に動かされて沸いてくるということが、残念なことでありますけれども、四、五年に一回というよりも、二、三年に一回はある。ありますと、その時期にそういうことを予想するといいますか、そういうふうになるという計画の予算は組むべきものじゃない。経済は平穏に隠かに発展していくという予算を組むわけでありますから、どうしても自然増収が出る。そういうものが、一年度のごく少部分であるということでありますれば、結論はそう違いが大きくならずに済むわけでありますが、こういうものは、何といっても少くとも一年間くらいの影響力は持つ、場合によってさらに長い影響力を持つ。そういうときになりますと、そのブームの影響のうせないうちに次の年度の予算を組むという場合に、やはり政府としては、それを何とか締めていくというようなことを考えて組んで参ります。そうしますと、その締めるという締め方がなかなかうまくいかぬとかいったとかいうようなことで、次の年度の誤差も出てくる。大体大きな原因はそういうような点であると思います。その他各税別に特殊な事情で税収に増減がある。たとえば……(石野君「簡単に」と呼ぶ)では省略いたしますが、昨年の鉄の輸入というのは、そういうところに上置きした影響、同じ方向の影響でありますが、そういう問題が出てくるというようなことであって、ある程度の見込み違いはお許しいただくにしましても、主としては、やはり景気の大きな変動による何であって、そういう意味でごかんべん願わなければいかぬのじゃないかと思います。
  133. 石野久男

    ○石野委員 経済の伸びがあるから自然増収が来るんだというようなことでは、ちょっと理解はできないのです。たとえば、自然増収というのはどこだってみな出てくるのです。だけど、世界でも最も経済の伸びが急激と思われる西ドイツなんかの自然増収というものは、こんな日本のようなものじゃない。それは大蔵大臣がすでにわかっておるように、シェーファー蔵相は去年の議会で、わが国の税収については、その自然増収についての差、見込み違いというものは非常に少いということを誇っておる。ところが、日本の自然増収の例を、この二十七年ごろからずっと見てくると、ドイツと比較すると、それは非常な開きです。二十七年度におけところの自然増収は二・九%、二十八年度は三・一、二十九年度二・三、三十年度で〇・九、三十一年度が八・二、昨年度はおそらくやはり八・二ないし一〇%くらいの自然増収になっておると思う。これを西ドイツなどに見てみると、西ドイツの場合は、二十七年度はマイナス〇・七、二十八年度がマイナス一・四、二十九年度が〇・三、それから三十年度で五・五、こういう数字が出ております。  これについて、大蔵大臣に私は一つ聞いておきたいのですが、こういう税収見積りの違いが出てくるというのは、やはり何といっても税収見積りに不正確な点があるんじゃないかという点が一つ。それから第二番目には、もしその不正確さというものがないというならば、やはり大蔵省の能力の不足だということになってこようかと思います。あるいはまたそうでないとするなら、ことさらに意識的に過小見積りをするんじゃないか、こういうようなことにもなってくる。こういうような問題から考えると、自然増収というものは、われわれの税制考える上において非常に大事な問題です。大蔵大臣は、こういう点についてどういうふうに考えるか。また今後自然増収をなくしようとするには、どういうふうにしたらいいと考えるか。
  134. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 この見積りは、大蔵省としては、できるだけ正確を期しておるのに相違ないのでありますが、私は、これは、やはり一つ考えてみなければならぬと思っております。これは、私の一家言みたいになるのですが、私はこんなふうにも考えておるのです。これは終戦後におきまして、大体あの当時から、インフレ防止ということが一番重要な政策であったのでありますから、自然、財政は税ですべてまかなう、こういう基本線がまず確立された。ところが、この税でまかなうという場合において、当時は敗戦後だから、国費は、やはり相当要ったのであります。むろん当時占領下のいろいろな理由もありますが、要った。ところが経済活動、経済規模というものは大きくなかった。そこで、自然その国費をまかなうために税でいくという見地と、経済規模が大きくなかったということから、税率がやはり相当高かったのじゃないかというように私は思うのです。そうしてくると、その税率は、その後できるだけ低下するように財政当局もしたのでありまするが、しかし何さまほんとうに要る国費も多い。なかなかそう税率を下げるわけにもいかない。そういうふうなところへもってきて、急に経済が膨張した。世界に類例のないような膨張をした。税率はそのまま残っておる。こういうような意味から——むろん、そういうことは十分査定で考えればいいじゃないかということをいえばそうですが、そういうところに、思わぬ税収がふえてきたようなこともあるのじゃなかろうか。そういうような見地からすれば、むろん国費をまかなう財源は確保しなくてはいけませんが、正常な必要とする国費をまかない得て、そうして自然増収があるとすれば、減税をするのがよろしいというのは、そういうところからも私は考えておるわけであります。そういうところも、一応考慮に入れていいのじゃないかと、私は率直に思っております。
  135. 原純夫

    ○原(純)政府委員 ただいま西独の数字を引用されましたので、私の持っております日本の数字を、ちょっと簡単に申し上げます。二十七年度、二十八年度あたりは、やはり朝鮮ブームのあとを受けまして、当初予算に対する増収割合が一一%、九・七%というふうに来ております。それから二十九年度、三十年度という時期は、御案内の緊縮予算で、経済はずっと締めていった年でありますが、この時期には、二十九年度において当初予算に対して三・四%、三十年度は二・七%というような自然増収になっております。その後三十一年度に例の神武景気が沸いて、この年は実に一四・六%、三十二年度は、先ほど申しました千億で見ますと、約一割ということになっております。こういう異常な時期には、こういうことは仕方がないのではないか。普通の時期には二とか三とかいうようなことで、これは戦前を見ましても、昭和九—十一年度というような時代におきましては、九年度から申しまして、八・五、六・七、九・五%というような当初予算に対する自然増収割合になっております。まあぴったりということはなかなかむずかしい。やはり税収は、どちらかといえば若干大事を踏むというようなことはあります。しかし三%なり五%、この程度のものが出るというのは、これはやむを得ぬのじゃないかというような事情も御了解いただきたいと思うのであります。
  136. 石野久男

    ○石野委員 ある程度はやむを得ないのじゃないかというのは、これは主税局長の言葉である。けれども、大臣として、それでよろしいのですか。
  137. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これは、議論をすれば、やはり程度のことになりまして、非常な不自然な自然増収がある、しかも継続的にある、そして国費をまかなうに十分である、そういうような場合には、私はやはり減税をすべきだと思っておるのですが、そのほかに、もっといい名案があるでしょうか。
  138. 石野久男

    ○石野委員 名案があるのかどうかということよりも、これは、きわめてまじめに考えなければいかぬ問題なんです。自然増収がどういうところから出ているかという問題を第一に考えなければいかぬ。この国では、特に経済の伸びが激しいからなかなかつかみにくいのだという言い分は許されないと思うのです。西ドイツは、日本よりももっと経済の伸びは強いのだが、それでさえも、そういうような誤差は少いのですよ。日本の方は、世界にも類例のないような経済の伸びだといいながら、世界でも類例のないような、いわゆる国際収支の赤字で、外貨保有が底をついていくという形になっているが、何も改めたことがないじゃないですか。もっとこの点は真剣に考えなければいかぬ。私は、やはり税率が高いということだと思うのだ。それと同時に、あなた方の見積りが非常に間違っておるのですよ。こういう問題は、みな大蔵大臣の責任ですよ。政府の責任なんだ。そういう問題を真剣に考えないで、ただある程度の違いは仕方がない、それなら、その自然増収はどういうところから出てきておるのか。ほとんどみな国民の、特に所得税などが多いのじゃないですか。所得税の方は、戦後において、戦時中に非常に過重になったものがそのままの形になっているのですよ。こういうような状態について、あなた方は、昨年なるほどある程度の所得税に対する減税をした。しかし、それじゃその減税がどの程度まで国民に何しているか。ごらんのように、物価は上ってきたし、国民消費生活にはちっともそんなにいい影響が出てないじゃないですか。ことに、戦争前と大体同じだと今局長が言った。けれども、その戦争前の状態、あるいはまた戦争時の所得税と今の所得税とは、どういうふうに違うか、大体あなたはおわかりでしょう。この所得税の中におけるところの階層別の負担率というものは、どういうような状態に変ってきているのかということも、大体わかるのじゃないか、自然増収の問題について、まじめな考え方が大蔵大臣から出されなくちゃいけないと思う。これは真剣に考えるべきです。
  139. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 先ほどから御答弁申し上げましたように、真剣に考えておるのでございます。そして、終戦以来の税率が高いだろうということも、私は大体御意見とそう違わないと思います。そうして、自然増収の見積りにおいて相違ができるのは、やはり経済的な見通しといいますか、経済に計画性が乏しいという点も、一つ理由ではなかろうかと考えております。経済の伸びについても、あとから考えて非常に伸びたとか、そういうふうなつかまえ方だから、やはり税収についても、あとになるということになるのじゃなかろうか。こういう点は、政府として責任をもって反省をして、今後そういうことは改善をしていかなくては相ならぬと思っております。そして自然増収というものは、そんなに自然増収ということではなくて、やはりこれは、見積り違いというふうな範囲内において許されるというところでいいだろう、私はかように考えておるわけであります。
  140. 石野久男

    ○石野委員 大臣は、今非常に税率が高い、これはその通りなんです。それで、その高さの中で、特に戦前あるいは戦時中を比較して、自然増収を一番多く満たしておるところの所得税の問題なんかについて、あなたの方から出しているこの日本の財政この中ではっきりと戦前と戦後の比較を出しております。この中の納税者の所得税階層別の区分を見て、税負担の何がどういうふうに変ってきたかということも、大体おわかりのはずだと思う。大蔵大臣は、この中では、特に低額所得者の方へ非常に税がかかってきておるということをお認めだろうと思うのですが、こういう問題をどのように是正する考えでおられるのか、高額所得者低額所得者の差が強く出てきているのを変えるために、どういうふうな手を打とうとされておるのか、一つ考えを聞かしていただきたい。
  141. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 低額所得者の税をまず減ずるという考え方は、むろん持っておりますが、どういうふうにやるかは、慎重に具体的に検討を加えた上でないと、今どういうふうにするか申し上げかねるのであります。特に給与所得者の税が高過ぎて、これがいろいろな意味において社会的な弊害を生じていることも、御承知の通りであります。言いかえれば、税がこういうものに高いのは、今日の情勢ではやむを得ないのでありますが、高いために、給与体系の確立が非常に困難になっていることも、私率直に認めます。従って、この給与体系が確立せぬために、公私の別について明確を欠くことがある。たとえば、ちょっとしたことがすべて国や会社の負担においてやるというふうに、これはやはり給与体系が整わぬからで税が重いという点も考えて、今後十分改善を加えていきたいと思っております。
  142. 石野久男

    ○石野委員 私の聞いていることについては、まだ十分な答えが得られないので、二つだけ聞きます。戦前と戦後を比較すると、所得税の面では、低額所得者の方が重くなっている事実を、大体お認めになるだろうと思いますが、この点についての意見を、はっきり聞かしておいていただきたい。もう一つは、その差のついているものを、戦前のような状態に戻すだけの意思があるかどうか。その点についての大蔵大臣の意見を聞かしておいていただきたい。
  143. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 どういうふうに低額所得者が重くなっているか、今主税局長から答弁させますが、戦前に戻すとかいうことについて、あれこれ言うだけの資料を持っておりませんけれども、財政の許す限り、他の税負担と総合的に勘案して、できるだけ減税をしていく方針をとりたいと考えております。
  144. 原純夫

    ○原(純)政府委員 補足して申し上げます。戦前の基準年度の昭和九—十一年度と比べますと、お話しのように、非常に税負担が全体に重くなっており、特にその中で、所得税が重くなっていることは、非常に顕著なところであります。大衆的な層の負担が重いということは、まさにその通りになっております。戦前は、所得階層の開きが相当大きかった。金のある人、所得の多い人、その多い所得は、相当部分がいわゆる資産所得が多かったわけであります。課税の対象になる所得の中に、資産所得が相当大きな割合を占めておりましたが、戦争によってこの資産が、国の資産も個人の資産も法人の資産も、非常に荒廃し失われた。しかも戦後の経営は、いろいろな面で非常に国家資金を必要とするという意味で、非常に重いという状況になって、広く負担するというようなことになっております。それだけでなく、財政の基盤として、所得課税をどの範囲に課税するかということになると、戦前のように、わずか百万人程度の層の所得課税ということではなかなかやっていけないように、世の中が変ってきているという面もあると思います。財政支出の内容にいたしましても、非常に広い範囲での経費が要ることになっているわけでありますが、そんなような意味で変ってきている。しかし、お話しのように、だんだん資産所得もふえてくる、社会的にもだんだん富の分化というか、所得の分化が進んでくる時代でありますから、そういう点は十分気をつけて、低い人の所得に関する負担は、漸次軽減していくというような気持でやっているわけであります。
  145. 石野久男

    ○石野委員 低額所得者に対する税を軽くする方向について、真剣に考えるという答弁がありました。これは、実際にやってもらわなければならぬ。ところが事実上、今度の予算の中では、所得税については全然手を触れてない、これはどういうわけですか。
  146. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 今度の税は、やはり大衆の課税負担を軽減するという趣旨でやったが、所得税については、昨年いわゆる千億減税ということを大規模にやりました。その当時、税制調査会の答申で、この所得税の軽減に対応して、こういう税をやはり引き下げるべきだというのが上っております。その他は、大衆の税負担をなるべく下げるという意味減税したわけで、今回は財源もあまり多くありませんので、そういうふうになっているわけです。
  147. 石野久男

    ○石野委員 あまり先とあととのつじつまの合わないことを言わないで下さい。財源が多くないと言うが、財源がたくさんあるから経済基盤強化基金とか、別な財源をやはり持っているわけなんですが、そういうようなことは、全然考え方が違うじゃないですか。税の特別措置というものは、われわれは今までやめるべきだということで、やめようじゃないかという考え方を言い、またあなた方もそうしようということで、昨年度の何では、大体その方向が出ておった。ところが今度の予算では、財源がないどころじゃない、そういう特別措置の方向がどんどん出てきたじゃないか。これは一体どういうわけなんです。
  148. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 御承知のように、いろいろと経済基盤強化の意味で基金を設定いたしましたり、あるいは資金を作りましたが、これは、三十一年度の剰余金の繰り越し千百億の中から法定の支出の分を引いた残りですから、これは、私の考えでは、やはり三十年、三十一年の日本経済が異常に伸びた、世界に類のない伸び方をした、そのときの特別な増収と私は考えて、こういう増収が累年あるということは考えられない。従って、これを経済的な歳出に立てる、あるいは特に財源を失うといった方向に使うべきでないという見地で、これは、そういう意味においてたな上げをして、これだけとして一時的なものにして使用すべきだという考え方に基いております。
  149. 石野久男

    ○石野委員 あまりおざなりの答弁はしないようにしてほしいです。その税の特別措置法というものを、われわれはなるべくなくしようと言ったら、今度は、経済基盤拡大のための方向として、それを打ち出してきているのだ、こうは言われるけれども、しかしながら、そこにははっきりとあなた方の考え方があるわけです。所得税の問題でも何でもそうであるように、今度の予算というものは、大企業、大資本に対してはどんどんお金を使って下さいという予算なんです。けれども、大衆にはなるべく使いなさるな、引き締めなさい、こういう予算です。これははっきりしておるわけです。幾らあなたが詭弁を使ったところで、そういう結果が出ているのですよ。こんなことでは、国民に対して、大衆のための予算だとか、あるいはまた経済基盤拡大のためだとか言っても、そんなことは、われわれとても納得することができないのですよ。ことに貯蓄強化のための皆さんの減税預金というようなものの構想なんかを見ても、きょうの午前中に同僚の横山委員からも指摘されたように、たとえば、いろいろな面であなた方が工作しておるけれども、それは、高額所得者だけには非常に役立つようなものです。しかし低額所得者には、ちっともそれは役立たない。そこで、一つだけ私は聞いておきたいのだが、いわゆる企業内において貯蓄をしております。きょう横山委員からも、あとで書類の答弁を求めておる問題なんだが、ある企業内で勤労者の諸君が貯金をしておる、これの預金に対する皆さんの優遇措置というものは、全然行われないわけなんです。これはおそらくあなた方は、一企業がそういうふうにして預金をとるということは、公共的に使わないからという意味で、あれには恩恵を与えなかったのだろうと私は想像する。それならば、今後ああいうふうな貯金のさせ方というものに対して、大蔵当局は何か手を打つつもりがあるのか、あれはあのままほうりっぱなしにしておくつもりなのか、その点について、大蔵大臣の明確な考え方を一つ聞かしていただきたい。
  150. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 今回の預貯金に対する税法上の特別措置についてですが、企業内で勤労者が預金するということについては、あらためて検討を加えてみたいと考えております。
  151. 石野久男

    ○石野委員 あらためて検討を加えてみたいという意味は、どういうことなんですか。
  152. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 一応これを問題として取り上げまして、こういうことが不適当であるとすれば、むろんこれはやめさせてよろしいと私は思っております。あるいはまたやめさせるにしても、これがどういう影響を与えるのか、それらの点についてとくと研究してみたい、今私はかように考えております。
  153. 石野久男

    ○石野委員 それでは、それをやめさせるための法的措置とかなんとかいうことを何か考えてみたいということなんですね。
  154. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 一応すっかり研究してみたいと思います。その上で、またどういうふうにするかをさらにあらためて考えてみたい。
  155. 石野久男

    ○石野委員 私は、今の大臣の答弁は、企業内の預金についての問題を言っておったと思うのだけれども、減税預金について何かやめさせるという意味なのですが、どうですか、はっきりして下さい。
  156. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 企業内で勤労者が預金をするという形態が適当か不適当かという点について検討を加える。
  157. 石野久男

    ○石野委員 時間がありませんので、私は先へ問題を進めますが、いずれにしても、今度の予算というものが、あなた方の基本構想やあるいは編成方針とはだいぶ違っているという点と、それから特に大資本、大企業に対しては非常な優遇策をとって、そうして圧力団体には負け切っているという点、こういうことが明確になったと私は思うのです。  そこで、昨日平岡委員からも質問があった問題でなお若干私はお聞きしたいが、インドネシアの賠償についての問題で、ちょっとお聞きしておきます。大臣にお尋ねしますけれども、あのインドネシアの焦げつき債権というものは、私は外貨債権だというように思っているけれども、そういうふうに考え考え方は間違っているでしょうか、どうでしょうか。
  158. 稲益繁

    稲益説明員 正確に申し上げますると、特別決済勘定の残高でございます。
  159. 石野久男

    ○石野委員 きのう平岡委員から尋ねておったインドネシアの賠償に関係して、焦げつき債権を棒引きしたわけだが、あの一億七千万ドル何がしの焦げつき債権というものは、国のいわゆる外貨債権と理解していいのじゃないかというふうに私は思うのだが、大蔵大臣は、どういうふうに考えるかと聞いているのです。大蔵大臣から聞きたい。
  160. 稲益繁

    稲益説明員 外貨債権でございます。
  161. 石野久男

    ○石野委員 大臣、そうですね。
  162. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 そうです。
  163. 石野久男

    ○石野委員 外貨債権だというふうに見る以上、この債権は、やはり本質的に国民のものなんですね。国民のものであるというこの債権を棒引きするということは、どういうような法的根拠があるのですか。
  164. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これは、国の債権で、今度法律を新たに制定いたしまして棒引きするわけであります。
  165. 石野久男

    ○石野委員 国の債権を棒引きするということになれば、何かやはり理由がなければならない。昨日の答弁だと、これは両国の将来にわたる友好関係を増進するためにというようなお話であったのですが、しかし友好関係を増進するために、何もこの焦げつき債権を——これは外務省だけとか、あるいは大蔵省だけが持っているものじゃないわけだ。国民のものをやめさせるということになれば、これは賠償というものと観念が同じになるのではないですか。大蔵大臣はどういうふうに考えますか。
  166. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 賠償ではありません。むろんインドネシアに対するこの債権は、向うの払う、払わないの意志は別としまして、請求は幾らでも当然し得ると思います。いつまででもやろうと思えばできます。問題は、そういうふうな行き方をしていくことが日本の国の全体のためにいいのか。ちょうどインドネシアとは、賠償のこともある、国交の回復もする必要がある、これらを全部総合的に考えて、インドネシアと日本との国交を新たに打ち立てていく上において、この債権は棒引きにした方が、これはやむを得ないだろう、それの方がかえって日本とインドネシアとのいろいろのことを全体として考える場合にいい、こういう見地に立って、従ってそういう議定書が今度出まして、これを国会の御審議にかけて、国会の御承認を得ればそういうふうにいたそう、こういうことであります。
  167. 石野久男

    ○石野委員 そうしましたならば、たとえばあなたは賠償ではないのだ、国会の承認さえ得ればいいのだ、国会の承認を得るということは、国民の承諾を得るということであるから、それはそれでいいでしょう。だがあなた方の考え方は、この問題は賠償とは関係ないので、ただ両国の親善関係をなにするためによろしいのだ、こういうことで取り上げる。それでは、今一番日韓会談で問題になっている韓国との間にも、やはり焦げつき債権があります。これも両国の親善関係をこれから進めていこうという場合に、いいのだと思ったら、やはりこの焦げつき債権を棒引きにするという考え方をお持ちになっているのですか。
  168. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 今、私はそういう考えを持っておりませんが、問題は、いろいろな問題があるのを総合的に考えての上のことなんであります。これは、また韓国との場合において、そういうことは考えておりませんが、いろいろなことをまた考えなくてはならぬじゃないかと私は思っております。
  169. 足鹿覺

    足鹿委員長 石野君に申し上げますが、約束の時間がだいぶ過ぎておりますから、簡潔に願います。
  170. 石野久男

    ○石野委員 今の答弁は、また考えなくちゃならなくなるかもしれない、こうおっしゃったのですね。
  171. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 韓国との関係で、棒引きにして考えるという意味ではありません。ただ韓国と日本との国交の関係考える場合にも、ただその点だけについて、かれこれ言うだけでは足らぬのじゃなかろうかと私は言うておるだけであります。棒引きについては、今何も考えていないということは、繰り返して申し上げておきます。
  172. 石野久男

    ○石野委員 外貨債権は国の資産ですから、これはそう簡単に、両国の親善関係にいいのだからとか、よくなるからというだけの問題の解決じゃいけないと思うのです。これは、外貨債権の根本になった輸出関係考えますと、これを輸出した人々は、もう明確に自分の代価だけを取っているわけなんです。それを国が背負っておるわけです。国が背負ったということは、国民が背負ったわけです。商売をやった人々はもうけておるけれども、国民は棒引きで、税金でやはりこれの処理に応じなくちゃならないのだ。こういう問題が一つ出てきているわけです。この問題については、商売をやった人たちはもうけているということと、これを負担しているのが国民だという問題とを考えましたときに、あなたは国民に対して、その点はよろしいというふうに考えますか。
  173. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 そうでありますから、むろんこういうことは軽々にできません。慎重の上にも慎重に、従ってこれは議定書という形におきまして、国会の慎重な御審議を仰ぐわけです。決して大蔵大臣が一存でこれをやるわけでも何でもありません。
  174. 石野久男

    ○石野委員 これは明らかに、政府が、一部の商社筋のやった者に対してはちっとも影響のない問題を、国民全体に肩がわりさせようという問題なんですよ、結論を言えば。こういう考え方は、国民に対してはきわめて不忠実な考え方です。もしこれが戦争行為によるところの賠償だというならば、賠償だとはっきりうたった方がよろしい。賠償とうたわないで、何かわけのわからぬところでそうした親善関係を増進させるのだ。片方で商社にだけはいいことにしておいて、国民にそういう負担をかけさせる、そういう不誠意なやり方というものはいけないですよ。この問題については、やはり大蔵大臣は国の財政を握っているという立場で、外務省がどう言おうと総理がどう言おうと、もう少し真剣な態度をとるべきだと考える。あなたは、これを軽々に見のがすつもりでおりますか。それであなたは国の台所、いわゆる財政のお守番としての役割が勤まるのですか。あなたの所見を聞かしてもらいたい。
  175. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私は、決して軽々に見のがしておるわけではなく、私も私の判断として、さようにすることがよいのだという私の判断に立っておるわけであります。
  176. 石野久男

    ○石野委員 論争になりますから、私はあまりなにしませんが、ともかくこういう問題は、非常に不誠意なやり方です。そこで、こういうような焦げつき債権がたくさん出てきておるのは、大体オープン・アカウント式のやり方をしておるところに出ておるのです。今オープン・アカウント式の方式でやっておるところの国は、どういう国々があるのですか。また将来、それに対する考え方はどういうふうにお持ちになっておりますか。
  177. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私、さきにも御答弁申し上げましたように、オープン・アカウント、いわゆる清算勘定は、特別なものを除いては、なるべくすみやかに廃止する、こういう方針をとっております。なお、今どの国とそういう協定がありますか、報告させます。
  178. 稲益繁

    稲益説明員 現在オープン・アカウントが残っておる国名を申し上げます。ブラジル、中国、エジプト、ギリシャ、韓国、トルコの六ヵ国でございます。
  179. 石野久男

    ○石野委員 大蔵大臣は、先ほど、この問題は国会にかけて承認を得たいのだという話でした。あとでまた、外国資金特別会計法の一部を改正する法律案が出ておりますので、そこでもちろん論議される問題だと思いますが、私は、インドネシアにおけるところの焦げつき債権の棒引きを外為会計だけで処理するというやり方はいけない、こういうように思います。もちろん法律ができればそれで処理されるでしょうが、そこで、これは現実に焦げついてどうにもならないのだとするならば、国の資産だがら、一応どうしても一般会計に戻して、そこで処理するというやり方をすべきだ、こういうように考えるけれども、大蔵大臣は、それについてどういうお考えですか。
  180. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私は、それには及ばないと考えております。
  181. 石野久男

    ○石野委員 これは、あなたもすでに御承知のように、インヴェントリーファイナンスで、二十五、二十六、二十七の三年間、一般会計の歳出から資金がどんどんと入っておるわけですよ。この金が入った特別会計と——外為会計というものは資金会計ですね。そこでは、損益とかなんとかいうものは出るようなところじゃない。そこで処理するということは、どういうことなのですか。それでいいのですか。
  182. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これは、一応外為会計の資産になっておりますから、これが焦げついて棒引きすれば、この資産を減額して落すということは、一向差しつかえないと考えております。
  183. 石野久男

    ○石野委員 その資産を減らすという減資の形で処理する、減資の形で処理したら、一般会計に戻してくるのが一応本筋でしょう。
  184. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私は、それには及ばないとさっきから申しております。なお詳しいことは、主計局長から申し上げます。
  185. 石原周夫

    ○石原政府委員 インドネシアに対する債権は、御承知のように、外為会計の資産の中の一部であります。従って、これを消去いたしまして、相対する項目において、資金の上で減資いたします。そういたしますと、そこで外為会計としての整理ができるわけであります。今法律でお願いしておりますのは、そういう意味であります。
  186. 石野久男

    ○石野委員 これは、あとでまた法案が出るのですから、そのときに論議しますけれども、いずれにしても、実質的な賠償なのです。その実質的に賠償で処理する問題を、やみからやみへ処理してしまう。外為会計の減資なのだということでやってしまう。こんなばかなことはない。これは相当考えてほしい。私は、この問題と関連して、インドネシアのこの賠償協定が一つあったということから、ビルマの方から、あのビルマの協定の中で出ておる再検討条項の問題が、今持ち出されてきているというふうに聞いておるのですけれども、それはどうですか。
  187. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 今お話しのようなことを、新聞報道でわれわれは見たのでありますが、いまだ外務省におきまして、正式にさようなことを受け付けたことは聞いておりません。
  188. 石野久男

    ○石野委員 それは、もう非常に楽観した考え方だと僕は思うのだ。現実には、そういう問題が出てきておるのだ。それと同時に、フィリピンにおいてまた一つの動きがあるわけだ。これは、先般の対印借款問題を契機にして、フィリピンから賠償引き当てで、輸出入銀行に対する借款約五千万ドル、これの要請をしてきているというふうに聞いているのですが、それはほんとうですか。
  189. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 ただいま私言葉が足らなかったのですが、なおさような事実はございましても、再検討条項に該当するものとはわれわれは考えておりません。  なおただいまの御質問にお答え申し上げます。輸出入銀行との関係におきまして、フィリピンから非公式に、いわゆるマリキナ・ダムの関係でさような話があるやに聞いておりますが、これまたいまだ正式のものではございませんで、われわれといたしましては、あくまでもフィリピンに対する賠償の実施は、国会において御議決を願いました協定の精神に沿いまして誠実に履行していく方針でございます。
  190. 石野久男

    ○石野委員 今の話、中途で十分聞きとれなかったのだが、とにかくフィリピンの方から五千万ドルのインドと同じような円借款の問題を要求しているわけですね。
  191. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 石野委員の御理解が、私は少し事実と違っておると思いますので、ちょっとつけ加えますが、御承知のように、マリキナ・ダムというダムの建設が、フィリピンにおきましては非常な強い要請になっておりまして、われわれとしては、これをあくまでも賠償の範囲においてやることでありますれば、非常にけっこうなことである。フィリピンの国民方々が最も熱望されることでございますから、さようなプロジェクトに賠償がお役に立てば非常にけっこうである、こういう判断をしておるのでありますが、これに対しまして、一部に若干賠償の金額よりも輸出入銀行においてファイナンスをしていただいて、そうして今のプロジェクトの施行を繰り上げてやりたい、かようなお考えがあるやに聞いております。これは非公式であります。そうしますと、ある意味において、それは賠償を繰り上げて実施することになるのでありまして、インドの特別円とは若干問題が違いますので、ただいまお答え申し上げましたように、対比賠償の精神を誠実に履行するごとくやりたい、かような方針をもちまして、ただいま外務当局等とも話をいたしておるところでございます。
  192. 石野久男

    ○石野委員 岸総理大臣はこの前フィリピンに行かれたときに、そういう問題については、やはり賠償のなにとしてそういうことを考えようということについて、大体フィリピン側と意見の一致を見てきているというふうにわれわれは聞いているのだが、それは御承知ですか。
  193. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 岸総理大臣がフィリピンにおいでのときに、共同声明が出ておりますことは、御承知の通りでございますが、この中には、はっきりと賠償の実施の範囲ということがうたわれておりますので、私がお答えを申し上げました趣旨に沿っておる、かように存じております。
  194. 石野久男

    ○石野委員 いろいろとお聞きしたいことはたくさんあるのですが、いずれにしても、インドネシアに対する問題点は、あとでまだ問題が残ると思う。私はこの機会に、現在まで賠償に対してどの程度のものがなにしておるのか、それの数字を一つ出してもらいたい。それと同時に、国民一人当り賠償かどのくらいになろうとしておるのか、こういう問題についても、はっきりと今まで政府国民に知らしたことはない。この機会に、一つそういうことを明確に示してもらいたい。これは、今答えられれば答えてもらいたいし、資料でなにするなら、資料で出してもらってもいいのです。
  195. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 賠償の決定を見ておりますのは、御承知のようにフィリピン、ビルマ、それから今回インドネシアをお願いしております。数字をあげて申し上げればいいのでございますが、時間も非常にあれでございますから、追って資料で正確にお出しをいたすことにいたします。
  196. 石野久男

    ○石野委員 私は、この賠償関係について、特にインドネシアの問題を通じて痛切に感じることは、われわれは一億七千万ドルにわたるところの焦げつき債権を棒引きしたということは、賠償の一事項だということに考えておるし、そのことは、国民に対して負担がかけられておるのだ、賠償の問題は、常に国民の負担がふえていくのだということを頭に入れておいてほしい。それを、簡単に、あなた方が帳簿づらだけ整理したらいいということでは、まずいと思うのですよ。これは、どうしてもそういう考え方をしてもらいたいということと、いま一つ考えてもらいたいことは、たとえば、焦げつき債権を棒引きしたということで、輸出商社はちっとも損をしておらぬのです。だから、こういう点に賠償景気というものが出てくるわけです。この賠償景気というものをねらっておる日本の産業陣営があるわけだ。そういう問題については、今後どういうふうにしてあなた方は考えていくか、大蔵大臣は、それに対してどういうふうに考えるかということは、この際明確にしておいてもらいたい。そうしなければ、片方では賠償でもうけるわ、国民はそれによって負担がどんどん重なっていくという、こんなばかげたことはないですよ。政府は、この点に対する考え方を明確に、国民に知らしておくべきだ。大蔵大臣の所見をはっきりこの際しておいてもらいたい。
  197. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 このインドネシアに対します債権の棒引きですが、これは、私は先ほどからしばしば申し上げるように、賠償とは関係がないのでありますが、しかしそれだからといって、国民に負担をかけないというのじゃありません。これは、やはり国民の負担と私は考えております。が、しかし問題は、従って国民にこれだけ負担をかけるとすれば、この棒引きによって今後日本とインドネシアとの国交が回復をして、それによって生ずる利益で、日本国民がやはりこの棒引き以上に得るところがなくては、私はこれは相ならぬ。従って、この棒引きによって生ずる国民の負担を今後の日イの関係においてカバーをしていくということに、あらゆる努力を払う必要があるということを私は申し上げておきたいと思うのです。  それから賠償によってある一部の者が利得をする、こういうことについては、政府としては厳重に注意を払わなくてはなりません。そういうことのないようにしたいと考えております。
  198. 石野久男

    ○石野委員 私は、いろいろと質問がありますが、最後に一つだけお聞きしておきたい。国際収支改善と、特に先ほど輸出の増加という問題についての構想を聞きました。その中で、中国を含むところのアジア地域におけるところの輸出の増加を相当計算に入れておられる。この地域との貿易を拡大するに当って、どうしても為替の問題が出てくると思うのです。それで、ドルを非常に持っていない、あるいはポンドにしても非常に少いというようなこの地域におけるところの貿易関係を、オープン・アカウントでそのままやっていくということも、またいろいろな問題が出てくるだろうということになれば、当然ここでは円為替の問題が出てくるだろうと思う。この地域におけるところの円為替の問題を、何か考えるお考えがありますかどうか、大蔵大臣の所見を一つ聞いておきたい。
  199. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これは、私は漸次考えていきたい。今日世界銀行に対します円出資の分を全額解除いたしまして、それで、世界銀行を通じて東南アジア諸国に貸付をいたしておるのも、この一つの現われでございまして、漸次日本の力というものとも照応させて考えていきたいと思います。
  200. 石野久男

    ○石野委員 私は、これで質問を終ります。最後に一つだけ資料をお願いしたいのです。これは、輸出入銀行が発足して以来の年度別融資並びに回収の実績、その産業別、規模別及び個々の対象企業に対する名前、こういうものを一つ資料として出していただきたい。これで私の質問を終ります。
  201. 足鹿覺

    足鹿委員長 神田大作君。
  202. 神田大作

    ○神田(大)委員 私は、いろいろと時間の関係もあるでしょうから、三十分程度、簡単に率直に質問いたしますから、大臣の方からも、率直、簡明にお答え願いたいと思います。なおあとの機会に、またいろいろ問題についてはゆっくりとお尋ねしたいと存じております。  まず第一に、大臣は今度の予算編成に際して、いわゆる閣議決定をしたところの基本方針を非常にはずれたインフレ予算、膨張予算というような予算を組んだのでありますけれども、このことに対しまして、あなたはどういうふうな責任を感じられておるか、それをお伺いいたします。
  203. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私がこの予算を編成いたしますについて、予算基本構想と非常に違った予算を組んでおるということを言われるのですが、私はさように考えておりません。基本構想にうたっておる大体の柱の通りに、千億以内で歳出はとどめて、四百三十六億はたな上げをいたす、それから大体基本構想考えておる程度の減税もいたしておるわけであります。ただ財政投融資について、基本構想に、大よそ三十二年度の実行額のところでとめるというふうにうたってあるところについて、とかくの批判があるのでありますが、これもしさいに検討を加えれば、おそらく三十三年三月末において、三十二年度中に実行した額と私はそう違うものでもないし、そして今日まで日本経済から見た場合においては、特に民間資金が不当に圧迫を受けておるといいますか、いわゆるしわが寄り過ぎておる。これを従来蓄積されておる財政資金で地ならしをする意味において、財政の負担分を多くするということは、これは金融的な扱いとして当然の措置でもあるし、そういうようなことから考えても、特に大きく財政投融資基本構想から違反しておるとも考えておりません。
  204. 神田大作

    ○神田(大)委員 あなたは、そういうふうな説明をしますが、実際には、とにかく予算面においては一千七百億三十二年度予算よりもふえておる。これは、いわゆる石橋内閣が一千億施策ということをいって、これがいわゆる日本経済に破綻を来たした大きな原因をなしております。そのとき一千億でもってそういう問題が起きた。今度は一千七百億円ふえている、あるいは財政投融資等につきましても、四千九百九十五億円というような膨大な財政投融資であるし、大臣はいろいろと申すであろうけれども、これは、実際実施の面に当っていろいろの弊害が起きてくるのではなかろうかと思う。こういうときに、私は大臣は責任を負わされることは明らかだと思う。私は、これ以上この問題は言いません。  税の問題等につきましても、私は、取り過ぎた税金国民に返すべきだと思う。ところが今度の税別の改正でもって、酒の税金と法人税というようなものを下げ、もっと下げなければならぬところの勤労者の所得税とか、あるいは事業税、あるいは物品税というようなものに対しましては、手をつけようとしておらない。特に酒税については、ビール税を下げないで、酒の税だけを下げるということは、先ほど井上委員からも指摘されたが、非常な不公平だというそしりを免かれないと思う。このビール税の減税をしなかったという点について、いま一度あなたの見解をただしたいと思います。
  205. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 取り過ぎておる税は納税者に返すべきだ。取り過ぎておれば、これは返さなければならぬと私も思う。問題は、取り過ぎておるかどうかという問題であります。歳入が、たとえば三十三年度において相当多いではないか、たな上げもある程度しておるではないか、こういう場合においては、これは果して余っておるのかどうかということも、一つ考えなくてはならぬ。国家の財政需要は非常に多いが、むろん財政需要が多いからといって、需要に一々応ずるわけにもいきません。しかしやはり人口も多い。この大きな人口を養って、そしてやはり国としては一歩々々向上もしていかなければならぬ。そうすれば、どうしても国費が要るということはやむを得ないのでありますから、従って、そういうものは十分やはり私はまかなうことは必要である。そういうことをまかなって、なおかつ経済的に歳入が余るとすれば、私はこれは減税をして、タックスペーヤーに返すべきだと思っておるのですが、今のところ、経常的に特に減税し得る財源というものが十分にあるとは私は考えておりません。これは、今後十分検討を加えなければなりません。  それから酒の税でございますが、これは、今回特に低額所得者あるいは大衆、特に低額所得者の生活必需品と考えまして、この税負担は従来から重いのですから、これを少しでも下げまして、税負担を軽くしてあげたい。こういうふうなことであります。
  206. 神田大作

    ○神田(大)委員 それでは、ビール税は重いとは思わないのですか。
  207. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 酒税は、全体として重いと承わっております。が、しかし、今回は特に低額所得者ということをはっきりしたいと思いまして、ビールもむろんだれも飲むと思いますが、しかしまたこれは、金を持っている人も飲むということになりまして、そういうようなことは、酒税全体として今後考えるときに考える。今回は、特に低額所得者が飲むものに限定しよう、こう考えたのであります。
  208. 神田大作

    ○神田(大)委員 だれも飲むとか飲まぬとか、そういうことは別として、ビールというものは、国民が酒に増して嗜好してきているのですね。そういう点からいって、私は大衆向きの嗜好品であると思う。こういうものを、税金が高いということを十分承知しておりながら、しかも高いというのも、普通に高いのでなしに、私はべらぼうに高いと思う。このべらぼうに高い税金を承知しておりながら、それをことさらに今度減税しない。しかもまた、この問題については、あなたたちはもう予算の最終のときまでこれを下げる原案を作っていた、われわれのところへ配られた予算の説明にも、ビールの税金を下げるという説明が入っておった。それを予算の決定のぎりぎりのときにくつがえされたということは、何かやはりそこに、われわれの聞くところによると、自民党の圧力によってこれをくつがえされた、こういうように聞いておるのですが、あなたは最初から、これは実際高い税金だから下げなくてはならぬ、大衆向きのものであるということを十分承知しておって、与党の圧力によって、今これは勤労者に向かないとか、あるいは下級酒ではないというようなあとからりくつをつけても、これは国民は納得できない。与党の圧力によって、私は下げようと思ったのでありますけれども、これはやむを得ず減税から抜かしましたと言うことが、率直な答えになると思いますが、その点はどうですか。
  209. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これは、別に与党の圧力というようなものではありません。しかし、当初は、やはりビールも入れようかというふうに考えたことは事実です。しかし先ほど申しましたように、今回は低額所得者というところに線を引こう、こういうように方針をいたしましたので、ビールはこの次ということに考えたわけであります。
  210. 神田大作

    ○神田(大)委員 時間の関係もありますから、私は、この点についてはあとでよく御質問申し上げます。  それでは聞きたいのですが、低額所得者のための減税をやるというならば、現に税額において国家財政の大きな部分を占めておるところのたばこの問題です。たばこは、非常に高い税金国民は吸っております。しかも、これこそ勤労者が非常に愛好しておる。このたばこの収益に対して、あなたはこれを減らす考えがあるかどうか。こういう下級酒の税金を下げるなら、たばこの収益に対しましても考える必要があると思いますが、このたばこの税金に対して、あなたはどう考えるか、お尋ねします。
  211. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 たばこについては、今これを下げることは考えておりません。
  212. 神田大作

    ○神田(大)委員 そうすると、あなたの言うように、勤労者、低額所得者に対する課税の軽減をはかるというようなことは、私は一方的なことと考えざるを得ません。特に専売益金の出てくる根拠を私は少し申し上げますと、これは、会計検査院でも指摘している通り、一千百六十億からの専売益金が出ております。しかしながら、去年よりは少くなっているとは言いますけれども、実質的には、たばこ消費税が二%上っておりますから、五十六億円ふえているわけです。こういうふうに専売益金をふやしておるということは、安いたばこを売らないで、高級たばこを売りつけて、そして収益をふやしておる。ところが、さっき酒の税金を下げるということで言ったように、勤労者の人たち、低所得者の人たちのためにわれわれは政治をやっておるのだということだが、専売益金の面においては、バットやみのりというような安いたばこを吸う人を圧迫して、そのかわりにピースやそのほかの高級たばこを吸わして専売益金を上げておるということになると、あなたの言うことは、非常に矛盾しておると思うのですが、どう考えますか。
  213. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私の言うのは、何もかも一ぺんにはなかなかできませんので、今回は酒について考えたということであります。なお、たばこについて特に高いものを売って、そして吸っていただいて収益をふやしておるということは、考えておりません。なおそれらについては、専売局関係もおりますから、実情をとくと御説明させたいと思います。
  214. 村上孝太郎

    ○村上(孝)政府委員 たばこのこまかい銘柄の問題でございますので、私からお答えいたします。ただいま大臣のお答えになりましたように、大衆たばこを特に制限して自主的に益金をふやそうということはやっておりません。ただ、御存じのように、最近原料葉タバコの中で、七等、八等というような下級の葉タバコが、技術が進歩したといいまするか、非常に生産不足でございまして、そういう意味から、バットにつきましては、ある程度御所望のいくところまで出していないということはございまするけれども、これは、益金を高くするために故意にそうしているわけではございませんので、原料葉タバコの需給事情からそうなっておる、こういうふうに御了解願います。
  215. 神田大作

    ○神田(大)委員 それでは、原料タバコの在庫の数量とか、あるいはそういうたばこを作る種類、そういうものを今度資料として出してもらいたい。またわれわれの調査するところによると、あなたたちは、材料によるのであるということを言っておりますけれども、実際においてはそうじゃなしに、収益を上げるのだということを言明されたのをわれわれは知っております。そういうことをこまかくお尋ねすると、時間がかかりますから、この問題は、あとでまた御質問申し上げますが、ただ一言だけ、ことしの三十三年度政府関係機関予算の中において、日本専売公社の事業計画の中にも、ピースは九十六億三千万本ですか、去年は六十九億三千万本というようになっておるにもかかわらず、ピースは非常にふやしておる。ところがバットになりますと、百六億七千万本です。ところが去年は百六十一億七千万本で、非常に減らしておる。刻みにいたしましても、同じように、事業計画においてみのりやききようというものは一割方減らしておる。そういうふうに、下級たばこの製造を事業計画においてもすでに減らしておるというのは、収益の面において、バットやみのりを売っていたのでは上らぬ、それよりもピースや富士や、そういうものを売るということは、意識的にはっきりと予算書の中に出ていると思うのです。こういう問題について、私はこまかい点でありますから、あとでお尋ねしますけれども、こういうようなやり方に対しまして、専売公社は、今いろいろと世論の的になっておる。いわば耕作農民に対しましては、価額の面、鑑定の面、耕作反別等も、今度は七千町歩から減らしております。七千町歩というと、大体茨城県が今全国で一番耕作反別がふえているのですが、あの茨城県の耕作反別と同じくらいの反別を減らしているわけです。そうして二年間だか三年間のストックがあるからといって、専売公社の無計画によってできましたところの不手ぎわを耕作農民に押しつけて減反をしておる。それから価額の面においては、耕作農家といたしまして、私の調査によりますと、一日平均百六十円か百七十円の日当しかもらえないような、タバコ耕作者に対しましては、収納代金の面において圧迫を加えておる。今度は、専売公社の職員に対しましては、いわゆる仲裁裁定を実施しないで、給与の面において押えつけておる、そうして専売益金だけを上げようとするような専売公社の現在の非民主的な独占企業としてのこういうやり方に対しまして、世論は非常な非難を浴びせていると思う。この点については、大臣もお聞きになっているだろうと思いますので、こういう問題をどうお考えになりますか、お尋ねいたします。
  216. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 今仰せのような点は、私ないと思いますので、一応専売公社当局から説明させます。
  217. 村上孝太郎

    ○村上(孝)政府委員 最初に、バットは去年の予算では百六十億本になっておるのでありますが、今度の予算では百五億本になっておる。これは明らかに販売規制ではないかというお話でありますが、実は、昭和三十二年度の予算では百六十億本のバットの売上計画を立てたのでありますが、実際には、先ほど申しましたいろいろな事情がございまして、実績は百億をちょっと切るくらいでございます。ただ来年度は、少しでも大衆たばこを多く出そうというわけで、百五億本というように、ことしよりは約五%の増加を計画いたしておるわけであります。ピースが売れるというのは、これは、われわれの方でいかにピースを吸わせようと思っても思うようにはいかないわけでございますけれども、昨年の減税効果と申しますか、そういう国民所得というものが相当に潤ったといいますか、そういう関係でピースが非常に強い売れ行きを示している。そこで、予算で見ましたよりは十本当りの製造たばこの単価なども上っておるわけでございまして、それに、需要に応ずるために、来年度のピースの売上高をふやしたようなわけでございます。益金を上げるために、耕作農民を搾取しておるじゃないかというお話でございますけれども、御存じのように、タバコ耕作というものは、現在でも非常に耕作農家の希望の強い歓迎作物でございまして、われわれはその価格につきましても、これはほかの政府の農作物価格と同じように適正に決定したいということで、従来農業パリティを基本として、それにいろいろな調整係数を乗じまして、これで耕作農民の方々にも満足をしていただいておるわけでございますが、そういう意味におきまして、大きな益金が上っております。これは確かに財政専売でございますから、財政の収入を上げるということが第一の目的でございますけれども、そのために特に耕作農家を圧迫し、大衆にたばこも吸わせずに益金を上げておるのだというふうなことは、われわれは、この専売事業の運営に当りましても考えておりません。その点は、御了解を願いたいと思うのであります。
  218. 神田大作

    ○神田(大)委員 大臣は、どうもよくわからぬといって答弁しないようですが、国家の財政のうち一千百六十億円もこの専売益金でもって入っておる重要な機関である専売事業に対して、もっと勉強してもらいたいと思う。あなたにお尋ねしますが、公共企業審議会でもって、今専売公社を民営にしようというような、そういう意見も出ておりますが、こういう問題に対しましては、あなたはどうお考えになっておりますか。
  219. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これは慎重に考えなくてはならぬことでありまして、今直ちに民営に移すということは考えておりません。
  220. 神田大作

    ○神田(大)委員 そうすると、今のままでやって、民営ということは全然今のところ考えていないと解していいのですか。
  221. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 今のところ、民営に移すという決意はしておりません。
  222. 神田大作

    ○神田(大)委員 今答弁がありましたが、いわゆる収納代金に対しましては、適正な価格で買っておるのだ。それからたばこの販売は、これも何ももうかるたばこを押しつけているわけではない、こういうあなたの答弁です。またこの給与関係についても、私の知るところでは常務員、いわゆる末端において指導をやっておりまする公社の職員がおります。こういう常勤指導員といいますか、こういうものの給与を私はこの間調べましたところが、これの平均給与が一万一千円、これは一千百六十億からの益金を上げておる専売公社として、こういう末端に働くそういう常勤者に対して平均給与ベース一万一千円くらいで働かしておるというようなことは、これは、やはり専売公社に働く職員に対して非常な圧力を加えておるのではなかろうか、あるいはそういう点はこまかいことになりますから、どうして収納代金が安いか、あるいは高級たばこを売りつけるか、あるいは給与者に対するところの賃金というものが抑圧されておるかというような問題は、あとの機会に申し上げます。私は、ただこれだけを指摘しておきますが、そういうふうにして、この専売益金というものがあげられておる。これは今のうち民意を十分聞いて、そうして改善すべきところを改善しないというと、いわゆる民営にした方がいいじゃないか、あんな独占企業にまかしておく必要はないじゃないか、これは農民のためにもならぬ、消費者のためにもならぬ、あるいは労働者のためにもならぬといって、この民営論というものが出てくるのではなかろうかと思うのです。この点について、公社の皆さんが慎重に考慮をして、ぜひ改善をしてもらわなくちゃならぬ。この点に対する細目については、後刻御質問申し上げたいと思います。  次に、私は食管会計についてお尋ね申し上げますが、今度の補正予算で食管の赤字会計を埋めるというようなことを、われわれは聞いております。この点、食管の赤字はどういうふうにいたしますか。
  223. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 三十一年度の食管の赤字百六十億でございますが、これは、三十二年度の補正で、食管会計に一般会計から繰り入れることにいたしました。
  224. 神田大作

    ○神田(大)委員 三十一年度の赤字と三十二年度の赤字とあると思いますが、どちらです。今ちょっと聞き漏らしました。
  225. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 三十一年度であります。なお申し上げますれば、この予算補正で、食管会計に百五十億運転資金を作ることになっております。
  226. 神田大作

    ○神田(大)委員 百五十億円の運転資金といいますが、これは、三十二年度の赤字を見越して入れておくわけですか。
  227. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これは、御承知のように、さきに米の消費者価格を引き上げますときに、非常に御意見がありまして、従来食管の赤字が出ておるような場合に、食糧証券で泳いでおる、こういう行き方は、食管会計の財政の健全を非常に阻害するのじゃないか、すみやかに改むべし、こういう意見が非常に強うございましたので、それで、今回食管会計に資金勘定、調整勘定を設けまして、これに百五十億を入れることにいたしました。そういう赤字が出たような場合その他をくるめまして、食管会計の資金繰りを円滑にいたしたい、かように考えております。
  228. 神田大作

    ○神田(大)委員 これは幾ら赤字が出るか、幾ら使うかわからないものを、百五十億円というようなつかみ金にしてこういうところへ入れるというのは、財政法においては、私は違反であろうと思うのだが、いかがでございますか。
  229. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 全然つかみというわけでもありませんので、今申しましたように、赤字が出たような場合に、これを食糧証券で泳いでいるのははなはだ不健全じゃないかという御意見もありましたので、三十二年度に、大よそ九十六億程度と思いますが、赤字になるような勘定になっております。そういうことも考慮いたしまして、なおかつ、三十三年度にどういうふうになりますか、これはわかりませんが、三十三年度についても大方考えまして、この辺まで入れておけば運転資金の上に支障を来たさないだろう、こういう考えであります。
  230. 神田大作

    ○神田(大)委員 この点は、年度内の予算というものは、年度内に使用するものに対して使うのが、私は財政法の第何条かに出ておると思う。そういうことからいたしますると、私は、幾らか決算のつかない赤字を埋めるということは、あるいはそういう年度内に使うか使わないかわからぬはっきりしない金額補正予算として組むということは、ちょっと財政法に触れるのじゃないか、こう思います。この点は、時間もありませんから、次の機会に詳しく御質問申し上げます。  次に、米価の問題ですが、この予算書には、米価は去年の実行予算では一万三百五十円ということになっておりますけれども、ことしの予算書には一万二百円となっておりますが、どうして去年の実行予算よりも少く組まれたか、お尋ねします。
  231. 石原周夫

    ○石原政府委員 計数の問題でございますので、私からお答え申し上げます。一万二百円という計算をいたしましたのは、荒筋を申し上げますると、三十一年度の七月から六月までのパリティ、それに最近のパリティをはじきまして、それに対しまして等級間の格差、それに包装代を入れまして一万二百九十円なので、それを一万二百円というふうに計算をいたしておるわけであります。この計算の方式は、昨三十二年度予算の米価算定のときも、同じような方式を用いまして、従来通りの算定の方式をもってはじいたのであります。
  232. 神田大作

    ○神田(大)委員 そうすると、この予算には、予約奨励金、あるいはそのほかの奨励的な意味を含んでおるところの時期別格差金とか、歩どまり格差金とか、そういうものが組んであるかどうか、お尋ねします。
  233. 石原周夫

    ○石原政府委員 時期別格差につきましては、先ほど申し上げました三十一年度の基本の価格の中に入っておりまするから、従いまして、パリティの割合において含まれております。それ以外の奨励金の類は、今申し上げましたましたような算出でございますので、含まれておりません。
  234. 神田大作

    ○神田(大)委員 三十一年度産にはこれが含んでおって、今度の予算にこれを含んでおらないということは、米価の決定に対しまして、去年の方式とことしの方式とを違わせる意図を持っているのかどうか、お尋ねします。
  235. 石原周夫

    ○石原政府委員 先ほども申し上げましたように、毎年度予算米価をはじきますには、本年度に計算をいたしましたような米価をもってやっているようなわけでありまして、これをもって毎年予算米価をはじいております。それに対しまして、毎年々々実際の米価は、またそのときのパリティも違っておりまするから、そのときどきの事情ではじいております。予算米価としては、毎年度同じようなやり方でやっておるというふうに御承知願いたいと思います。
  236. 神田大作

    ○神田(大)委員 大臣にお尋ねしますが、大臣は、ことしの米価も去年の米価と同じ方式によってやっていくという方針に変りないかどうか。
  237. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これからどうするか、とくと米価をきめる場合に考えていきたいと思います。
  238. 神田大作

    ○神田(大)委員 どうもはっきりしない答弁ですが、去年とことしと米価のきめ方を変えるか変えないか、尋ねておるのです。
  239. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 計算方式は、従来通りやっていきたいと思います。ただ歩どまりがとうとか、またこまかいいろいろな点があります。そういう点は、今後実際の場合に考えていきたいと思います。
  240. 神田大作

    ○神田(大)委員 実際の場合に考えていくというと、米価審議会等においてこういう問題がきめられ、これが答申された場合に、この答申に基いて米価の決定をするかどうか、その点をお尋ねします。
  241. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 米価審議会答申等がありますれば、もちろん御意見を尊重して、今申しましたような方針できめていきたいと思います。
  242. 神田大作

    ○神田(大)委員 米価審議会答申を尊重してきめていきたい、こういう御意見でございますね。重ねて御答弁願います。
  243. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 従来の例にもよりまして、米価審議会答申は尊重いたしますが、またその他いろいろな条件もあります。それらの条件も考慮に入れてきめていきたい、かように考えております。
  244. 神田大作

    ○神田(大)委員 この米価問題についても、あとの方のいろいろな事情というのが、私にはどうもわからない。現在農家の経済は毎年々々非常に逼迫しておる。また鉱工業生産と農業生産と比較いたしましても、非常に較差ができておる。こいううときに、農家経済を守っていく一番の基本であるところの米価は、上昇さえすれ、下らせるべきではないと思う。また日本の食糧事情からいいましても、いろいろな奨励金、あるいは陸稻の価格を下げよということも一部の人から言われておりますけれども、こういう問題等についても、下げるべきではなしに、食糧増産をさせる一方、農家経済を守るという観点に立って、この価格政策は政府においてはっきり守っていくということを言明されれば、農民の意欲も高まるだろうと思うのでございますが、あなたのように、何か諸般の事情によって、下げるのか上げるのかどうもはっきりしないような答弁だと、私は非常に不満足だと思うのでございます。どうかこういう点について、今の農家経済、あるいは日本の食糧事情からいたしまして、去年より下げるようなことはしないというような言明をするべきだと思うのでございますけれども、あなたはどうお考えになりますか。
  245. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 むろんお話しのように、米価は農家に重大な影響を与えます。それで、今後の経済の大きな問題としては、一方において大企業の系列と他方において農業部門、中小企業の部門、この間の較差を漸次是正していくことが取り上げらるべき重要な政策であろうと考えております。こういうふうな見地からも考え、同時にまた農業の生産性を高めることも、大いに米価問題と関連して考えていくべきことではなかろうかと思っております。それらの諸般の情勢考えまして、米価は常に適正なものを考えていきたい、そういう心がまえでおります。
  246. 神田大作

    ○神田(大)委員 それじゃ、私の質問を一応この程度にいたしまして、あと米価問題、あるいはビールの税金を下げなかった問題、あるいはまたたばこの益金の問題、そのほかの問題等については、保留をいたしまして、この程度で終りたいと思います。
  247. 足鹿覺

    足鹿委員長 春日一幸君。
  248. 春日一幸

    ○春日委員 この際、私は本委員会の権威を保つために、与党委員の不出席、それから政府委員並びに説明補助員が勝手に開会中に離脱すること、こういう事柄について、特に委員長の注意を喚起いたしたいと思うのであります。これは、こういうような事態が予測されるということは、かつて第二十八国会が開会される劈頭において、わが党が解散要求決議案を提出いたしました当時においても、その意味をも含めて強く指摘されておった事柄であります。私はごらんの通り、昨日、本日のこの委員会は、所管事項について特に大臣の出席を求めて、そうして重要なる事柄に触れて代表質問を行う、こういうことで、本日のこの委員会は特別重大な意義を持っておったと思うのであります。しかるところ、ごらんの通り、与党委員は高見君、前田さん、これらのほかほとんど御出席に相なってはおりません。これは、みずから審議権を放棄するものであって、国会の権威を冒涜するものです。もしそれ選挙が四月に近いということで、これらの諸君が地元に帰って選挙運動に没頭しておるとすれば、これは、道義的に最も非難されなければならない事柄であろうと思います。私たちは、この税制金融、管財、外国為替、その他本委員会に付託されておる重要な法律案を、今後この第二十八国会の全会期にまたがってこんな事態で審議を行うということであるならば、われわれは、その心がまえでその審議にかからなければならない。こういうようなことのないように、第二十八国会の冒頭においてわが党の書記長、国会対策委員長から、相手方のそれぞれ国会対策委員長、幹事長に対して厳重に申し入れが行われて、かつそういうことのないように相手方からも確約を取りつけておる事柄であります。しかるに、その事態はごらんの通り、開会の劈頭においてはわずかに定足数をそろえるのであるけれども、瞬時たちまちにして彼らは離散して、かくのごとき状態になる。私は、こういうような状態であるならば、われわれももはや理事会の申し合せに従う必要はない。ときによっては、審議に応ずるわけには参らぬし、場合によっては、付託されておる議案を否決したり議決したりする場合もあり得ると思う。そうした意味合いにおいて、明日委員長は、その責任において与党に対して、あるいは委員長自体が直接その交渉を行うことが不適当であるならば、委員長からわが党の国会対策委員長、書記長を通じて、相手方のその責任者に対して、かかる事態が今後断じてないように私は厳重に申し入れを行なっていただきたいと思います。  なお私は、大蔵大臣に申し上げるけれども、われわれが終始熱心にこの審議に参画はしておるのだが、しかしまだ質問者は予定されております。私は、まだ発言の機会を得ないままこの時刻に至っておる。われわれがこれからやろうと思ったところで、見たところ、説明員も局長でもみなほとんど姿を見せておらぬ。こういうようなばかなことはないと思う。少くとも大臣がおる限りは、局長、課長、説明補助員はみなここにそろって、そうしてその議員の発言に耳を傾けて、問題のあり個所をつぶさに研究しなければならぬと思う。一体大臣は、こういうような総括質問の場において、自分の補助説明員がかくのごとくにほとんどいない、わずかに数名の諸君がここに残存をしているというにとどまっておる、こういうような事態で、これで適当であると考えるかどうか。今後大臣は、こういうような総括質問、その他大臣に対する直接の質問を行う場合において、政府委員の取りそろえ方についていかなる見解を持っているか、この際大臣から御答弁を願っておく。
  249. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私といたしましては、皆様方各委員の御質問に対して、できるだけ答弁を努めているつもりをいたしております。なお至らぬところは、今後一層注意をいたしますが、ただ何さま広範囲にわたっておりますので、数字等につきましては、政府委員の特に任命もしておるのでありますから、政府委員に説明をさして、できるだけ御満足を得たい、かように考えているわけでございまして、あしからず御了承得たいと思います。
  250. 春日一幸

    ○春日委員 私がただ申し上げることは、あなたは、金融のことはややおわかりであるけれども、税制、管財、その他の問題については、まああまりおわかりにならぬ。従って、質問者に答えるに、そのつど政府委員、説明補助員のそれぞれの資料を見て御答弁になる。これはやむを得ないことだと思う。だから、われわれは質問をする限りにおいては、政策的な問題は大臣から、その他数字的な確実な詳細な資料については、それぞれ局長、課長、その他から説明を受けておる。ところが、本日ごらんの通りおりゃせぬ。補助員がおりゃせぬ。従って、あなたに御質問いたしたところで、抽象的なことについては御答弁が得られるかもしれないけれども、われわれが審議をするに必要な資料を得ることができない。こういうようなわけだからですよ、この与党の諸君の態度もけしからぬことであるけれども、大蔵省自体のその態度もまことになっておらぬ。今後こういうような事態のないように、大臣は十分戒飭すると同時に、委員長は、一つこういう事態が再び繰り返されないように、それぞれの機関を通じて厳重なる抗議、注意を喚起されんことを強く要望いたしまして、私の要望を終ります。
  251. 足鹿覺

    足鹿委員長 春日君にお答えを申し上げますが、ただいまのお言葉の点につきましては、委員長も同感の点がきわめて強いのであります。つきましては、十分御趣旨の点を善処いたしまして、ただいまの御意見が何らかの形において現われますように、努力をいたすことを申し上げておきます。  ほかに質疑の通告もありますが、あらためて大臣の出席を求めて継続することとし、本日はこの程度にとどめ、次会は来たる十八日午前十時三十分より開会することといたしまして、散会いたします。     午後五時十七分散会