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1958-02-13 第28回国会 衆議院 大蔵委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年二月十三日(木曜日)     午前十時四十七分開議  出席委員    委員長 足鹿 覺君     理事 淺香 忠雄君 理事 大平 正芳君    理事 黒金 泰美君 理事 高見 三郎君    理事 藤枝 泉介君 理事 平岡忠次郎君    理事 横錢 重吉君       足立 篤郎君    有馬 英治君       井出一太郎君    奧村又十郎君       加藤 高藏君    川野 芳滿君       杉浦 武雄君    高瀬  傳君       竹内 俊吉君    内藤 友明君       古川 丈吉君    前田房之助君       森   清君    山手 滿男君       有馬 輝武君    井上 良二君       石野 久男君    石村 英雄君       春日 一幸君    神田 大作君       久保田鶴松君    田万 廣文君       横路 節雄君    横山 利秋君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 一萬田尚登君  出席政府委員         大蔵政務次官  坊  秀男君         大蔵事務官         (主計局次長) 佐藤 一郎君         大蔵事務官         (主税局長)  原  純夫君         大蔵事務官         (理財局長)  正示啓次郎君         大蔵事務官         (為替局長)  酒井 俊彦君         国税庁長官   北島 武雄君  委員外出席者         大蔵事務官         (大臣官房財務         調査官)    大月  高君         専  門  員 椎木 文也君     ————————————— 二月十三日  委員戸塚九一郎君及び有馬輝武辞任につき、  その補欠として山手滿男君及び成田知巳君が議  長の指名委員に選任された。 同日  委員山手滿男辞任につき、その補欠として戸  塚九一郎君が議長の指名委員に選任された。     ————————————— 二月十二日  関税定率法の一部を改正する法律の一部を改正  する法律案内閣提出第四三号)  経済基盤強化のための資金及び特別の法人の基  金に関する法律案内閣提出第四五号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和三十二年産米穀についての所得税臨時特  例に関する法律案内閣提出第五号)  関税定率法の一部を改正する法律の一部を改正  する法律案内閣提出第四三号)  経済基盤強化のための資金及び特別の法人の基  金に関する法律案内閣提出第四五号)  税制に関する件  金融に関する件  外国為替に関する件      ————◇—————
  2. 足鹿覺

    足鹿委員長 これより会議を開きます。  本日は、まず昨十二日付ですでに付託と相なりました関税定率法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案及び経済基盤強化のための資金及び特別の法人基金に関する法律案の両案について、政府より提案理由説明を聴取することといたします。大蔵大臣萬田尚登君。     —————————————
  3. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 ただいま議題となりました関税定率法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案、及び経済基盤強化のための資金及び特別の法人基金に関する法律案につきまして、提案理由を御説明申し上げます。  まず関税定率法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案について申し上げます。この法律案は、最近の経済事情等に顧み、昭和二十九年に制定されました関税定率法の一部を改正する法律の附則を改正し、本年三月三十一日で期限が到来する関税暫定的減免制度について、その期間をさらに一年間延長しようとするものであります。  以下、改正の内容を簡単に御説明申し上げます。  まず、重要機械類につきましては、わが国で必要としている機械のうち国産困難のものも相当あり、企業近代化合理化関税政策の上からもなお助長する必要なしとしませんので、免税措置をさらに一年間継続することとしております。  学童給食用乾燥脱脂ミルク原子力研究用物品法律別表甲号の小麦、A重油、四エチル鉛航空機等物品並びに別表乙号の原油、B・C重油カーボンブラック等物品につきましても、なおしばらく従来通り減免税を継続することが必要であると考えられますので、さらに一年間その減免期間を延長することといたしております。  次に、経済基盤強化のための資金及び特別の法人基金に関する法律案について申し上げます。  昭和三十一年度の一般会計の決算上の新規剰余金は、一千一億円の多額に上り、これから国債償還等法定財源に充当される額を控除いたしました残額は四百三十六億三千万円になるのであります。他面、昭和三十三年度におけるわが国経済運営基本的態度といたしましては、輸出の伸長に対してあらゆる努力を集中することが要請され、このため、昭和三十三年度において、財政が国内経済に過度の刺激を与えないよう堅実な基調を堅持することがぜひ必要であると考えられます。従いまして、以上の剰余金昭和三十三年度において一般歳出財源に充てることなく、しかも、今後におけるわが国経済基盤強化に資することを目的として、この剰余金に相当する額のうち二百二十一億三千万円をもって一般会計に所属する資金として経済基盤強化資金を設け、将来におけるわが国経済基盤強化に必要な経費財源の一部を確保することといたしますとともに、二百十五億円を農林漁業金融公庫外法人に対して、それぞれその特別の基金に充てるため出資をすることとし、これらの資金及び基金の適正な管理、運用をはかることとするため、ここにこの法律案を提出した次第であります。  次に、この法律案概要について申し上げます。  まず第一に、経済基盤強化資金について申し上げますと、先に申し上げました通り将来におけるわが国経済基盤強化のために必要な経費の一部に充てるために、政府は、昭和三十三年度一般会計から二百二十一億三千万円を支出し、一般会計に所属する資金として経済基盤強化資金を設けることといたしております。この資金は、将来における道路の整備、港湾の整備科学技術振興異常災害の復旧または産業投資特別会計への繰り入れに要する経費財源に充てる場合に限り、予算の定めるところに従って使用できることといたしております。  なお、この資金は、使用されるまでは資金運用部に預託することとし、預託によって生じました利子資金に編入することといたしております。  第二に、ききに申し上げました五法人基金について申し上げます。  政府は、昭和三十三年度一般会計から、農林漁業金融公庫に対し六十五億円、中小企業信用保険公庫に対し同じく六十五億円、日本輸出入銀行に対し五十億円、日本貿易振興会に対し二十億円、日本労働協会に対し十五億円を、それぞれ出資することといたしております。この出資を受けた金額は、農林漁業金融公庫におきましては、国の補助対象とならない農地の改良及び造成にかかる事業に対する貸付についての利子軽減に充てる財源を得させるための非補助小団地等土地改良事業助成基金に充てさせることとし、中小企業信用保険公庫におきましては、同公庫保険事業損益計算損失を生じた場合においてその損失を埋めるための保険準備基金に充てさせることとし、日本輸出入銀行におきましては、東南アジア開発協力のための国際的機構に対する出資及び当該機構が設置されるまでの間において、将来当該機構出資に振りかえることができる性質の国際的協力による投資財源に充てるための東南アジア開発協力基金に充てさせることとし、また、日本貿易振興会及び日本労働協会におきましては、それぞれその事業運営に必要な経費をまかなう財源を得るための基金に充てさせることといたしております。  これら五つ基金に属する現金は、日本輸出入銀行東南アジア開発協力のための出資及び投資運用する場合の金額を除くほか、これを資金運用部に預託して管理しなければならないこととし、また、これらの五つ基金は、農林漁業金融公庫が、その運用益から基金に組み入れた額を限度として貸付利子軽減のために使用する場合と、中小企業信用保険公庫保険事業損失補てんに充てる場合のほかは、これを取りくずすことができないことといたしますとともに、その他各基金の適正な経理を行うため必要な規定を設けることといたしております。  以上が、この二法律案提案理由及びその概要であります。何とぞ御審議の上すみやかに御賛成下さいますようお願い申し上げる次第であります。
  4. 足鹿覺

    足鹿委員長 これにて提案理由説明は終了いたしました。本案に対する質疑次会に譲ることといたします。     —————————————
  5. 足鹿覺

    足鹿委員長 次に、昭和三十二年度産米穀についての所得税臨時特例に関する法律案議題として審査を進めます。  御質疑はありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶものあり〕
  6. 足鹿覺

    足鹿委員長 御質疑がないようですから、これにて質疑は終了することといたします。なお討論の申し出もありませんので、直ちに採決に入ることといたします。  それでは採決いたします。本案原案通り可決するに御異議はありませんか。
  7. 足鹿覺

    足鹿委員長 異議なしと認めます。よって本案原案通り可決いたしました。  なおこの際のお諮りいたします。ただいま議決いたしました法律案委員会報告書の作成並びに提出等の手続については、委員長に御一任願っておきたいと存じますが、御異議ありませんか。
  8. 足鹿覺

    足鹿委員長 御異議なしと認めます。よってさように決しました。     —————————————
  9. 足鹿覺

    足鹿委員長 次に、税制に関する件、金融に関する件及び外国為替に関する件について調査を進めます。質疑の通告があります。これを許します。井上良二君。
  10. 井上良二

    井上委員 ただいま議題となりました各案の中で、特に今度租税徴収改正をいたしましたので、この問題について特に歳入委員会といわれるこの大蔵委員会で、この際政府租税収入についての根本的な問題を伺いたいのでありますが、質問者がたくさん控えておりますから、いずれこの問題は私日をあらためまして、予算委員会で正式に歳入問題の重点である租税収入について、大蔵大臣並びに政府の所見を聞きたいのですが、今日お伺いをいたしたいのは、この中で主として政府の最近とっております租税徴収の根本的な考え方です。政府は、租税徴収の基本的な考え方をどういう方向に持っていこうとするか、すなわち直接税を中心考えていこうとするのか、それとも間接税中心考えていこうとするのか、大体戦争前は、わが国租税徴収は、国民所得も少かった関係もありまして、直接税に重税がかけられないというような事態から、間接税が非常に大きく比重を占めておった。戦争前は、直接税が三五%、間接税が五七%を占めております。ところが最近戦後になりまして、直接税は五〇%を上回っておる、間接税は五〇%をはるかに下回っておる、こういう状態にあるのでありますが、わが国経済現状及び国民所得の実態、さらに経済成長率等を勘案いたしまして、いずれを一体重点政府考えておられるか、それをまず伺っておきたいと思います。
  11. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 まず直接税と間接税との比重関係でありますが、これにつきましては、私はそのときにおける国の税が事実どうなっておるかということを考える必要があると思います。その際において、直接税が特に重いとなれば、まず直接税を下げていく。こういうふうな、むろん税を下げることについては、他面歳出面をできるだけ節約をすべきことは当然でありますが、しかし直接税が重いとなれば、間接税はしばらくそのままにしても、まず直接税を下げる、こういうふうに考えていかなくてはなりませんが、ある比例の点以上になってくると、必ずしも簡単に直接税がどう、間接税がどうとも言えない場合もあろうと思いまして、これは、税全体について各般の点から十分な検討を加えなくてはならぬと考える。ただ私といたしましては、今の日本現状では、なお直接税がやはり重いのではないか、こういう考えを持っておりますので、なお若干私は間接税の方に比重を移して、直接税を軽くするという方向に持っていきたい、かょうに考えております。
  12. 井上良二

    井上委員 そこで問題は、間接税に当然比重がこれから重荷されていくということが想定されて参ります。間接税のうちで一番大きな税金は、酒税であります。たばこ、それから酒、ガソリン、物品税、こういう形になっておると思います。そこで問題は二つに分れます。一つは、直接税の徴収における場合の不公正をできるだけなくするという問題と、それから一つは、間接税の取り方にあろうと思いますが、間接税のうちで一番大きな比重を占めております酒税の問題について伺いたい。  政府は、本年税制改正におきまして、酒税が相当過重である。他の物品税その他に比べてこれが非常に重いというところから、業界内部からも非常にやかましくこれが減税を主張され、また一般消費者大衆からもこれの軽減を強調されておりますが、この酒税を今度政府が取り上げるに当りまして、最初大蔵省では、事務当局原案として新聞に発表されたところによると、大衆が最も愛好します大衆酒一つ下げる、こういうことであった。その大衆嗜好飲料種類のうちの一つでありますビール最初は入っておった。ところが最終決定においてビールがはずされた、これはどういうわけでビールをはずしたのですか。ビールをはずした理由と根拠を述べて下さい。政府みずから与党との折衝の場合は、原案を提出しておられる。与党折衝の過程において、ビール減税が取り消しになった、そして二級酒、合成酒、しょうちゅう雑酒というようなものが一部減税になって、ビール大衆酒にあらずということから取りやめになったのですか、どういうわけで取りやめになりましたか。与党の圧力ですか、与党側の方の強い希望によってやめたのですか。そこらの点を明確にしていただきたい。
  13. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 御承知のように、今回の酒税減税につきましては、きわめて大衆または低所得者嗜好必需品というものを対象考えて参ったのでありますが、ビールということになりますと、その辺が非常にいろいろと問題がありまして、大衆といううちに考えられる点もありますし、またしかしこれは大衆というか、いわゆる低所得者というものに限らないというような議論もありました。そういう関係から、今回は特に低所得者に対する分ということをはっきりさせる意味におきまして、ビールはこれを取りやめた次第であります。
  14. 井上良二

    井上委員 もう一歩はっきりしないのですが、ビール大衆的でないというのですか、大蔵省では、ビールは低所得者は飲まぬというのですか。そこをはっきりして下さい。
  15. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 そう申したのではありませんで、むろんビールは、今日非常に広範囲において嗜好されておる。しかし今回は、名前は悪いかもしれないが、はっきり下級酒に限って一つしょうという意味におきまして、ビールを除いたのであります。
  16. 井上良二

    井上委員 そうすると、上級酒下級酒と、今度新しくそういう分け方に、大蔵省では税をかける関係名前をつけかえたのですか、どうですか。
  17. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 決してそういうわけじゃありませんので、低所得者と特にはっきりしておるものに限ろう。一般の裕福な人もお飲みになる酒については、しばらく後日に譲ろうということになったのであります。
  18. 井上良二

    井上委員 大事な問題ですから、明確に一つお答えを願いたいのですが、最近政府が出しております統計によりますと、酒税徴収のうちで、清酒は四八%、ビールが三〇%、しょうちゅう一〇%、合成酒が七%、雑酒五%、こういう比率になっておる。そこで清酒税金徴収されます比率は、年々下っておる。あなたの方で下級酒と指定されます二級酒を含んだ清酒でありますが、年々下っている。反対にビールは年々上昇しておる。そうして造石石数も年々ふえている。そうしますと、ビール政府考えでは上級酒の部類にことしから入るのでありますが、それを飲む人がどんどんふえておるということを一方において物語っておりますし、政府下級酒と言われておる合成酒、しょうちゅう雑酒、こういうものは年々減っていくのです。これはどういうことでこういうことになっていますか、それを一ぺん御説明願いたい。
  19. 原純夫

    ○原(純)政府委員 だいぶ税の方でも技術的にむずかしい面に入って参りましたので、私先ほど来の大臣の御説明を補足しながら、ただいまの点にお答えをさせていただきたいと思います。酒の各種類の中での税率バランスの問題は、非常にむずかしい問題でございます。広げていいますれば、酒の中だけでなくて、酒税物品税、あるいは砂糖その他との関係、また物品税の中では、中でいろいろ問題があることも御存じの通りでございます。昨年二十六国会のこの委員会で御決議をいただきました御趣旨に基いて、私どもそういう各税目間のバランス、また各税の中で酒相互バランス、あるいは物品相互バランスというようなものを今せっかく勉強中でございます。たびたび申し上げますように、相当広範な統計、資料を集め、かつ縦から横からながめて結論を出そうという作業をいたしておるわけであります。従いまして、今回御提案申し上げております中で、このビールについて減税からはずしたということは、そういうきめのこまかい研究のベースに立ってのことでは実はないのでございます。その辺は、なお新しい年における統計調査の結果を待ってでないと結論が出ない。実はそのときまで持つかという問題もあったわけでありますが、間接税も相当に重いという声もあり、この際大衆的な下級酒というものを選んで減税しようということになりましたわけで、ビール上級酒というわけではなくて、言ってみますれば、ビールはいなかでも飲むけれども、やはりぜいたくな待合、キャバレー、そういうようなところでの消費のウェートがほかの酒よりも多いじゃないかというようなことがあって、線の切り方は、多分にバツとした切り方であると思いますが、そういうわけでありますので、将来にわたってビールの格づけをそういうふうにしたということではございません。従いまして、ただいま井上委員御指摘の既往における伸びの工合が、ビールが各酒類の中でトップに立っておるというよなうことをどういうふうにこなして参るかというような点は、確かに問題でありまして、今後ただいま申しました総合的な研究の際に、重大な要目として考えて参りたいと思いますが、今回は、とにかくある程度軽減する、そうしてそれは下級酒軽減する。下級酒の判定というのは、いわば直観的な、と申しては悪いかもしれませんが、線は甘いかもしれないが、ただいま申しましたような感じでやっておるような次第でございます。
  20. 井上良二

    井上委員 そういう理由によっては納得できないのですが、問題は、政府の方では、酒類全般については、非常に税金が重いとお考えでございましょう、そう考えていないのですか、それで作業というんでしょう。そうすれば、ビールは一石について二万円税金を取っておる。一本について百二十五円の小売価格で七円二十銭取っておる。全体の比率から言いますと、ビールは非常に重いんです。おそらく酒類の中で一番重いんでしょう。その一番重いやつを残してしまった。聞くところによると、ビールは、主として都市の生活者が多く愛飲する、農村はあまり飲まぬ。ところが、自民党は農村の方に基盤を持っているから、農村の票を集めるのには、税金を下げるよりも自転車に乗りかえた方が早い、こういうことで、ビール税金を、急にせっかく原案ができておったけれども乗りかえた。こういうことをいわれているのだが、酒類全体の税金が非常に重いという大衆及び業者間の強い要望に押されて、また一部世間の非難もありますので、大衆的な下級酒だけをこの際下げよう、こういうことで一歩踏み切った。われわれも、長い間この大衆的な間接税引き下げには、毎国会税金引き下げ法律案を出して、政府与党協力を願ってきた。こういう建前で、この際わずかでありますけれども、一部酒税値下げが実現したことは、非常にけっこうなことでありますが、その場合、さらにビールが取り残されたということについては、何としてもわれわれ国民説明がつかぬ。この法案を審議する私どもといたしましては、国民を納得させなければならぬ。何でビールを残されたんですかと言われた場合に答弁に困る。一番重い税金で、一番多くの人が愛飲しておるビール減税からはずしたということは、われわれ国民から負託されて税制を審議しておる一員としては、説明がつきません。それから、あなたの方では、酒類全体の税金が重いから減税をしたのでしょう、そうじゃないですか、そこを大蔵大臣、明確にお答え願いたい。
  21. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 先ほどから申しますように、今回の酒税減税は、はっきり低所得者嗜好すると思われる酒に限って一応減税する。税の体系というようなところからいろいろと考えると、そこに若干の問題は残りますが、これは次に来たる間接税等の整理といいますか、改善の場合に考えよう、かように考えております。
  22. 井上良二

    井上委員 ちょっと、そこで私大蔵大臣に確かめておきたいのですが、私が冒頭に、将来のわが国徴税方向を伺ったときに大臣は、やはり直接税はできるだけ減税していく、もちろんその国の国民生活や、あるいは経済成長率や、また予算規模等関係もありまして、一がいに明確にそういう方向とはっきり言い切れないにしても、将来の徴税傾向といたしましては、間接税方向へ漸次持っていくことの方が妥当であるという一つ方向を打ち出されている。そうなりますと、間接税で一番問題なく取られやすいのが酒税たばこであります。これは、いずれの国でもそうであります。その酒税税率が非常に高いというところから、一般勤労大衆が多く愛飲いたします大衆的な下級酒値下げをするということになってきた。そうすると、間接税引き下げであります。そうすると大蔵大臣、私が冒頭に聞いた将来の徴税方向と、現に政府がとりつつある税制改正とは相矛盾する。しかも、せっかく減税をおやりになっておるのに、国民からどうも納得することのできない片ちんばな、不公平な減税が、この間接税の一番大きな酒税減税の上に現われてきた。私は、今度提案されております約二百六十億の減税のうちで、特に今度法人税減税をいたしておりますが、法人税減税に対しましては、法人全体については、租税特別措置といういろいろな形で減税がされておりまして、しかも今度またいろんな特別措置が講ぜられておる、特別措置というようなものは、本筋からやめるべきであるというのが税制調査会一般の意見であります。その特別措置をやめずに、また本年さらに特別措置の新しい減税の方式を積み重ねてきておる、ますます不公平を一そう拡大しておるという行き方が、一方においては行われておる。また間接税において、この酒税において、そういう不公平が露骨に現われてきておる。しかも、酒税のうちで一番重い税金であるビールが除かれておる。それは、単にビール下級酒でないという、そういう非常に答弁としてはしにくい、国民をして納得さすことのできない、ビール下級酒じゃない、ビールを飲むのは下級階級じゃない、こういうことになるのじゃないですか。そんなことは国民は承知しませんよ。最近清酒全体の売り上げが非常に悪くなってきておる。そうして漸次若い人らがビールからウイスキーへ通嗜好が移行しつつあるというのは、一体何を物語っているのです。一つ浩油品質が悪い、品質に伴う価格でない、非常に高い、飲んだあとからだがよくない、そういうことからきております。ですから、最近の傾向は、どうしても若い人人が漸次ビールから雑酒の方へ移行しつつある。そういう意味合いから考えまして、この際油類全正体について相当思い切った対策を講じないと、将来の税制の上にも非常に大きな私は問題を起してくるのではないかと思う。単に下級酒でないということでビールの重税を見のがすということは、税務当局としては妥当でない措置とお思いになりませんか。これは、何としてもそんなことて国民は納得できませんよ。もう一度御答弁願います。
  23. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 この酒税全体についてどうするかということは、税制調査会にもかけまして答申が出た上で、十分整備について考えるということであります。そういう場合に、むろんビールの税についても検討を加えるのでありますが、今回は、先ほどから申しますように、特に低額所得者、こういう方々のお飲みになる、名前は悪いかもしれませんが、下級酒についてのみ限って、これははっきりした形において税の軽減をしよう、こういうことであるのでありまして、ビールにつきましては、先ほど申しますように、むろん低額所得者嗜好しますが、しかしいろいろな方面に、お説のように、もう各階層にわたってこれは嗜好されるというような関係もありますので、除外をいたしたわけであります。なお直接税と間接税との比重関係については、十分検討を加えなくてはならぬが、間接税の方に今後若干比重を移すのが適当であろうという私の考えに対して、どうも矛盾しはせぬかということでありますが、これは、税全体との関係において、直接税と間接税がどういうふうな形にあるべきかということでありまして、その間接税のうちにおいて、あるものは特に社会生活の上から見て税を減ずるのがよかろうということとは、私は必ずしも矛盾しないだろう、かように考えて、特に今回は、税の減収もそれほど大きいものではなく、直接税、間接税比重について特に云々するほどのことでもない、かように考える次第であります。
  24. 井上良二

    井上委員 この問題について、さらに一点大臣に確かめておきたいのですが、大臣は、ビール税金が重いとお考えになりますか。今回はやむなく減税はできなかったが、将来これはやはり減税しなければならぬ、他の間接税との関係から比べても、また酒類内部から見ても非常に重税である、だから、やはり一応減税しなければいかぬというふうにお考えになりませんか。重くないとお考えになりますか。それから、同時に酒類全体に対する課税は重くないと思いますか、重いと思いますか。それをはっきりお答え願いたい。
  25. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 酒税は、私の考えでは、やはり重いと思っております。これにつきましては、今間接税全体について、特に税制調査会に御審議を願うことにいたしておりますので、それらの答申を持ちまして考えていきたい、かように考えております。
  26. 井上良二

    井上委員 それからいま一つ方向をちょっと変えまして、政府の方にお考えを願いたいのでありますが、これは、酒を製造することも許可、認可になっており、それから米が統制されており、さらに酒税徴収するということから、全体が公定価格によってこれが動かされておる。そういう関係から、将来この酒の製造及び税金徴収重点を、政府は、酒税の中ではどれに置こうとしておるか、清酒中心にして考えておるのか、ビール雑酒中心考えておるのか、どれを一体中心政府考えられておるかということであります。私自身としましては、将来やはり清酒中心税金徴収する考え方は、漸次改めていくべきである。清酒は、日本においては、古来日本独特の醸造によりまして、世界に類のないりっぱな酒を作っておりますけれども、しかし、これは国民の主食であります関係から、この原料米は非常に貴重なものであります。ところが反対に、この米の約半額の価格であります麦は、これはビールとなり、雑酒となって、やはりアルコール飲料に供せられておるのでありまして、しかもそのビール及びアルコール飲料が漸次国民嗜好に合って、需要がどんどん高まりつつあるという現状にあります。だから、酒造米の確保という問題が主食と競合する。また反対にビール雑酒等の原料である大麦は、これは日本の農家経済の上からも、大麦の生産をどんどん拡大することが農家経済を安定し、向上さす上からも必要だ、こういう意味であります。さらにまた価格も約半額で入る、こういうような状態でありますから、私ども清酒は、やはり日本本来の醸造による世界に類のない製造でございますから、これは、これである一定限度確保いたしまして、将来の方向としては、やはり食料政策、農業政策及び国民嗜好、健康等を勘案して、重点は漸次方向を転換すべきであろうと考えるが、大蔵大臣はどうお考えになりますか。
  27. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 この清酒ビールとの今後の造石の関係でありますが、これは、やはり実際に即して、各般の情勢を勘案していかないと、また無用の混乱も生じますので、その辺は慎重にやっていきたいと思いますが、考え方といたしましては、私は、井上さんのお考えは、やはり正しい方向に向いておるのじゃなかろうかと思います。
  28. 井上良二

    井上委員 さすがに、大蔵大臣だけあって……。一応私は、やはり日本の全体の方向はそうあるべきだと考えます。  そこで、今度はさらに掘り下げまして、酒類の公定価格問題について伺いたい。御存じの通り、今度政府は、全体でもって五十六億ですか、酒類価格引き下げるということでございますが、このうちで、これが、そのまま小売価格の方から税金減税だけが差し引かれまして、小売価格が全部値下げになりますか。四月一日からそういう計算になっておりますか、これを明確にされたい。
  29. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私の考えでは、税を引き下げただけ、できるだけ価格を下げたい、かように考えております。
  30. 井上良二

    井上委員 私がこれを持にここできょう聞いておかなければならぬと考えましたのは、伝わるところによりますと、なるほど清酒二級は、税金引き下げられたもの全部がそのまま小売価格となって現われる。ところが合成清酒、それからしょうちゅう等は、税金引き下げ額がそのまま小売価格引き下げとなって現われない。税金が下った分の一部分が、製造原価の方で赤字が出ておるから、その穴埋めに一部充当して、小売価格はそのまま引き下げられない、こういうことが伝わっている。そうしますと、それは値下げを看板にして、製造業界における赤字を転嫁する一つの巧妙なやり方であって、大衆こそえらい迷惑な話なんだ。それこそ、これは自民党としても、国民から指弾を受けることになりますから、その辺は明確に、この際値下げをした分は、全部小売価格を下げますと厳格に言明をして下さい。そうしなければ、これは問題です。
  31. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 消費税の引き下げでありますから、それが当然この消費価格引き下げられるというのは、これはもう原則的に考えて、私も当然なことと考えております。しかし一方、また酒について、原料がかりにふえなかったという場合において、酒の価格をどうきめるかということは、やはりコストを考えざるを得ませんが、価格決定については、そういうコストということも考慮に入れてきめたい、かように考えております。
  32. 井上良二

    井上委員 いやそれですと、この際さらに伺います。そうすると、先般私どもが請求して配られました酒類小売価格の構成のうちで、製造価格、それから卸、小売等の各段階の価格が資料として提出されておりますが、この製造原価といわれます、たとえば清酒二級百九十七円二十銭、これが製造原価といわれておりますが、この製造原価のコストはどうなっておりますか。それを一つお示し願いたい。
  33. 原純夫

    ○原(純)政府委員 製造原価は、原料費、燃料費、それから加工のための労務費、それに一般管理費というようなものを一切ひっくるめて計算いたしているものでございます。コストの中身というお話でございますが、これにつきましては、従来はじいておるコストの中身は一応あるわけでありますが、ただいまお願いいたしております法案が実は三月中に成立いたすとして、四月一日には公定価格改正を行わなければならない。その際に、ただいま大臣から申されましたような意味で、やはりコストも問題になるというようなことで、価格問題は非常にデリケートな段階にあるわけであります。そういうような意味で前々から井上委員からいろいろお話がありましたのを決して渋るというような意味でなしに、この問題については、時期的に非常に慎重にいたしたいというような気持で申し上げておるわけでございますので、お話の趣旨を十分承わり、現在は井上先生のおっしゃるような向きだけからでなく、たとえば業界自体にいたしましても、製販、販売の卸、小売というようなところが、非常にこの問題を中心にして目まぐるしく動いておる時期でございます。私どもとしては、非常にこの時期のふるまいを慎重にせなければならぬというような時期でございますので、お話は十分伺わしていただくということでいけないものでございましょうか、いかがでございましょう。
  34. 井上良二

    井上委員 今局長からも御答弁を伺いましたように、当然この法案が成立いたしますと、四月一日から公定価格の改定をやらなければならぬという必然の運命に迫られておる。そのときに、われわれこの法案を審議した者といたしましては、酒の税金はこれだけ負かる、だから酒の小売価格はこれだけ安くなりますよということを国民に報告する。ところが公定価格を改定した結果は、税金が負かっただけ小売価格が安くなっていない。それが途中でどこかに消えてしもうた。しかも、それが卸、小売のマージンが非常に少ないから、卸、小売のマージンをカバ一するために多少どうこうしたというなら別だけれども、それが製造原価の方で消えてしもうた、こういうことになってしまうと、これは全くわれわれはごまかされた価格改定、値下げということになってしまう。そこで、どうしてもこの際、政府が公定価格をきめて小売販売をやらしております以上は、公定価格を形成します具体的な各段階のコストをここへお出しを願いたい。それができなければ、その説明を願いたい。たとえば清酒の場合は、一蔵二、三百石を作る蔵、千石作る蔵、千石以上作る蔵、これらの段階におけるコストは一体どのくらいについておるか。そうして、それはどういう工合に労務賃なり、あるいはその他の諸掛りを見ておるか、私どもそこの点がはなはだよくわからぬ。といいますのは、原料米は公定で政府から払い下げを受けて、各醸造家が引き取っておる。それを引き取って、今度それを酒にいたします場合には、私ども聞きますところによると、各段階においてみんな価格が違う。二、三百石作っておる蔵と、五百石作っておる蔵と、千石作っておる蔵とにおいて製造原価が違うのです。違わないのですか、違っておるのですか。その点を明らかにしていただきたい。
  35. 原純夫

    ○原(純)政府委員 これは、経営の規模あるいは立地条件その他によってコストが違ってくるのは、もう当然なことでございます。概していいまして、経営規模の小さいものよりも、大きいものの方がコストが安くなるというようなことが考えられるわけでございます。私どもも、いろいろ公定価格をきめます場合の基礎的な資料として、そういうものをある程度調べておりますが、酒類によって、その関係が顕著に出るものと、それからいわゆる中小企業の中小企業としてのよさといいますか、特長を発揮して、コストを安く作るというような原理の働くものと、いろいろあるようであります。私どもただいま手元で見ております表は、昭和三十年酒造年度の実績について調査したものでありますが、それによると、やはり清酒は、若干規模の影響もあるけれども、どうも規模だけでは割り切れないという感じが強うございます。一番はっきりしていますのは原料アルコール、これはもう規模の小さいものほど高い、大きいものほど安いというようなことになります。しょうちゅう合成酒がその中間というようなところで、合成酒はむしろ清酒に近くて、いろいろ特殊な事情で、必ずしも規模の何によって段がついてないというような結果が出ております。これは、もちろん調べの角度も問題になるのでありますが、確かにおっしゃるような原則は働く。しかし、清酒のような場合は、御案内の通り、四千場以上の場数で、いろいろ特殊な条件で経営しておるというようなことがありますから、なかなか簡単には参らないというふうなことでございます。
  36. 井上良二

    井上委員 そうしたら四千軒あります醸造家を、たとえば原価百六十円のクラスが何軒と、それから百八十円クラスが何軒、二百円クラスが何軒、こういうふうに分けまして、それで製造原価をはじき出しておるのですか。もし公定価格をきめようとしますならば、なるほどそういういろいろ生産規模の大小によって生産コストが異なることは当然であります。ちょうど米が平坦たんぼで作られます場合と、非常に段々たんぼの山間僻地で作られます場合との生産コストは違う。また農家のいろいろな経営の実態によって、大家畜、小家畜、それぞれ違うのであります。そういう場合でも、政府は一定の価格で等級をつけて、これを全部全国同一価格で買い上げている。あなたの方はそうじゃないのでしょう。あなたの方は、同一価格でこれを買い上げていないのでしょう。甲の店は百六十円で買う、乙の醸造家は百九十円で買う、こういうことになっておりやせんでしょうか。統一価格で買っておるのですか、どうですか。
  37. 原純夫

    ○原(純)政府委員 統一価格でございます。
  38. 井上良二

    井上委員 そうなりますと、統一価格清酒二級百九十七円二十銭、これで買うているのですか、これで全国どこえ行っても売らしているわけですね。そうなりますと、蔵が非常に大きくて、百六十円でかりに作れるという場合は、この醸造元は非常にもうかりますね。反対に二百円以上につきました場合には、その醸造家は非常に損ですね。それはやむを得ないと見ていますか、どうです。
  39. 原純夫

    ○原(純)政府委員 その通りであります。これは、井上委員もお米の場合などでよく御存じの通り、お米あたりにしても、非常に生産費の違う何があるわけです。それをやはり一本価格でやっている。その場合よくいわれますのは、生産費の一番安いものから累積して勘定して、何割のところまでがその値段で合うようにするかというようなことを考えて、たしかお米の場合は、八割か九割までが合うような値段にして、合わない部分はごく少いというようなことにしておられると思いましたが、酒の場合も、生産費に段階がつく。全部の酒屋について調査しておるわけではありませんので、先ほどのはサンプルでありますから、完全な姿はつかみ切っておりませんが、大体このくらいな分布であろうという中で、一番能率のいいというところできめたのでは、ほかのは全部つぶれてしまう。どの程度のところをねらったかといいますと、大体一番条件のいいところから数えていって、七割くらいの部分は収支が合うというようなところをねらってやっておるようなわけでございます。あとの三割ぐらいのところは条件が悪い、特別何か努力しなければならぬというようなことになるわけでございますが、これは、こういうような物の価格のきめ方の場合、やはりそういうやり方以外にちょっとないではなかろうか、個別価格で売らせるということはむずかしいのじゃなかろうかというふうに考えておるわけでございます。
  40. 井上良二

    井上委員 この公定価格をきめなければならぬ理由は、一体どこにありますか。他のあらゆる物資が価格統制が撤廃されている。しかるに酒は依然として公定価格を、国税局の税金を納めさすという建前だけで、許可認可と、公定価格を押えているのです。わきに何の理由もないのです。どういうわけで公定価格をきめなければならないか。税金をとるだけなら、庫出課税だけでいいことであって、末端の小売価格まで公定価格で縛る必要はないじゃないか、何んで縛らなければならぬ。もし縛らなければならぬというのならば、他の庫出課税をやっております物品税その他も、これを公定価格で押えなければならぬことになるけれども、その方は放任してある。その方は過当競争のままにほったらかしておいて、酒だけは公定価格でなければいかぬ。許可認可でなければいかぬというて、小売までちゃんと押えてしもうている。しかも、それが通産省でなしに、大蔵省の主税局でやっているのだから、何ということであるか、話が違うがな。よそのなわ張りまでやっている。どういうわけで公定価格小売価格でやらなければならぬかというのがわからぬ。それから公定価格が一体守られておりますか。違反した場合どうなるか。
  41. 原純夫

    ○原(純)政府委員 非常に答弁の苦しい御質問で率直に言えば、もう世の中がこうなったんだから、酒の公定価格もはずしたらどうだという御意見が世の中にはずっと通りがいいと思います。ただなぜとっているかといいますれば、やはり一番何なのは、お米の酒の場合は、まだ米がはっきり統制下にあります。これを使って作る。作ったものをなるべく安く消費者にいくようにするというような意味で、公定価格制度がどうしてもそこでははずしきらぬのではないか。また酒に限らず、全般に酒税税率構成といいますか、こういうようなものが、戦争、戦後を通じまして、たばこと並んで最大の財政物資として非常に大きく国家財政に貢献してきたわけであります。その貢献させますために、今の税率構成のようなものは、たとえば特級と一級と二級の酒は——私はお酒は飲めますけれども、これは特級だ、一級だというような何がよくわからぬ。私はあまりうまくない方ですけれども、酒の中であれだけの税率の差をつけて高い税をとるというようなことは、やはり今申した財政物資として酒を非常に高度に使っておるということの端的な表現なのでありますが、そういう面においては、公定価格はいわば非常に大きなささえになっているということがあるのでございます。級別をつけて公定価格をきめる、そうしてそれに税はこれこれ、こうということにきちんとしませんと、公定価格をはずした場合には、おそらく級別課税というようなものはできなくなるということになると思います。それは級別課税の問題だけでなくて、重い税を負担しながら動いていくという際に、これは打ちあけ話でございますが、実際問題として、公定価格が最高価格という意味を若干はずれて、一種の基準価格みたいな作用を営んでいるということも事実でございます。そういうような意味で、これは理屈でそれでよろしいと言える筋合いのものではございませんけれども一般に酒の公定価格考えます場合には、これによって事実上大きな税収が確保される作用が出ておる。従って、お話しのような角度でのマル公がなぜあるか、もうなくしたらいいというような御意見だろうと思いますが、そういう御意見が常識的には正しいと思いますけれども、相当用心しながらやらなければいけない。同時に主原料が統制されているというようなものは、やはりその間はどうしても必要なんじゃないかというような気持でやっておる次第でございます。
  42. 井上良二

    井上委員 それで、今主税局長答弁によると、公定価格はやむを得ない、まだ当分公定価格は続けるつもりだ、こういう自信のある答弁のようであります。そうなりますと、ここで明確に伺いますが、ここに小売と卸の益金ははじき出してあるが、製造業者の益金をはじき出してないが、製造業者は利益がないでやっておるのですか、それはどういうことなんですか。
  43. 原純夫

    ○原(純)政府委員 製造原価の中に利益項目として利益を入れることはいたしておりません。ただいま申しました、バルクを七割にとっている、その辺のところで努力する。各項目については、やはり同じような問題があるわけです。一本の価格でなくて、原料費、燃料費、あるいは運賃、労賃、各項目について何があるわけです。そういうような意味で、各原価項目について企業の努力の余地というようなものがある。それを働かしてもらってこの利潤はかせいでいく。もちろん非常に条件のいいところは、そういうものが比較的少くてもよけい利潤が出るということにはなりますが、特に利潤を別に掲げるということはいたしておりません。これは、たしか米なんかの場合も同様ではなかろうかというふうに考えております。
  44. 春日一幸

    ○春日委員 ちょっと確かめておきたい。今原さんは、酒の価格は最高価格をきめたものではなくて、標準価格をきめたものだ、こう言われたのですが、そうなんですか、間違いありませんか。
  45. 原純夫

    ○原(純)政府委員 私の申し上げ方がどうもまずかったと思いますが、最高価格であります。最高価格だから、これより高く売ってはいけない、安く売るのはよろしい。事実若干程度製造者、卸は安く売っていることは御存じの通りです。場合によって、小売の方へぼつぼつ出るというようなことがまれに聞かれます。従いまして、これは最高価格であります。標準と言いましたのは、そういうものであるのが、事実上マル公というものがやはり一つの基準みたいなものになって、これを小売価格においてなかなか下げて売れないといいますか、実際上下げた取引が少いというようなことで、一種の基準みたいなものに事実上なっている。だんだん酒の供給も豊富になりますから、どんどん競争して値が下っていく。これは、消費者にはけっこうなことですけれども、だんだんそれで業界がくずれていくと、お金が足りない、税も納まらないというようなことになる。そういうことに対しては、そういう基準がありますと、割合安全に税も入ってくるということを申し上げたので、これは、決して法律的な意味で基準だというのじゃないのです。事実上これが、この値段をペッグする作用を営んでいるということを申し上げたのであります。  なお先ほど井上委員から、私が非常に公債廃止に渋っているというようなまとめ方をしておられましたが、私どもは決してそうでないので、やはりしょうちゅう合成酒あたりの価格についての最近の経緯あたりを考え、また事情から考えて、清酒についてはずすというまでの踏み切りはつきませんけれども、しょうちゅう合成酒というようなものについては、そうもう渋らぬでいくべき時期にきているんじゃなかろうかという感じを相当強く持っているということを、つけ加えておきます。
  46. 井上良二

    井上委員 私がいろいろこまかく聞きましたゆえんは、今回政府が、酒税全体の税金は高い、だからこの際さしあたり勤労大衆の最も愛好する大衆的な下級酒をまず値下げしたい。そこで値下げを受ける大衆は、政府の処置まことにけっこうということで、手をあげて四月一日を待っておったところが、値下げされた分は全部こちらにころげこんでこずに、途中で消えてしまう。そうすると、それは、税金が高いから大衆に安い酒を飲ましてやろう、こういう政府の親心が途中で消えてしまったら、大衆の税高の不平不満の声に籍口して、少数の営利会社が上前をはねることになってしまうじゃないか、それはいかぬ。それを大蔵大臣、はっきりこの際、そんなことはさせぬ。資本主義経営の営利目的でやっている会社ですから、これは原料イモ、あるいは原料米その他が値上りになり、工賃が高くなる、諸雑費が上っていくなら、これとは切り離して、別個の機会に値上げをすればいい。これとはっきり区分してもらいたいと思う。この点は、ここで明確にしてもらわないとちょっと困ります。それを大蔵大臣、あなたからはっきり御答弁願いたい。そうしなければ、トビに油あげをさらわれてしまうことになる。
  47. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 先ほど答弁申し上げましたように、酒の消費税の減税でありますから、消費価格を下げる、これはあくまでも私としても貫いていきたいと思います。しかし他面、税は税として引きますが、価格の形成は、やはりそういうコストということも考えていかなくちゃならぬ、かように私は考えております。なお御意見の点は、十分検討を加えてみたいと思います。
  48. 井上良二

    井上委員 そこは大蔵大臣、ざっくばらんに一つはっきりしてもらいたい。今私どもがずっと質問をして参りまして、大蔵大臣みずからもあるいはまた主税局長も、最も大衆の愛好する下級酒の税が重いから下げてやろうということで減税案を出したわけでございますね。それが、四月一日になって小売価格の改定をされた場合、税額の引き下げ分が小売価格引き下げになっていないということになったのでは、われわれは大衆をごまかしたことになってしまう。あなた方の意見をそのまま聞いてこの案は通した、成立した、今度は価格改定において途中で変更されておったわ、そのときに国会は間に合わぬわ、そういうばかなことを私の方はやっていられませんよ。だから、これはあなたが率直に言明された通り大衆の負担を軽減して、少しでも生活を楽にさせてやりたいということなんです。そんなわずかなことをねらわぬで、やるならやるで、別個にはっきり理由をつけて値上げを大衆に求めればいいのであって、税をその方面に横食いするということは、この際絶対いけません。もし政府があえてそういうふまじめな態度をおとりになるなら、遺憾ながらこの大蔵委員会としては、簡単にそう審議もできませんし、またしましたら、これは一応政府に対して、委員会としても注意を喚起しなければならぬということになる。もう一度大蔵大臣の明確な御答弁をいただきたい。
  49. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 御意見の点もよくわかるのでありますが、しかし四月から減税がありますから、当然値段は下るわけであります。それははっきりしておるのに、今値上げをするというのも、これは必ずしも適当でない、こういうふうに考えております。
  50. 井上良二

    井上委員 どうも私そこの点が明らかにならぬのですが、私が聞きましたのは、価格改定は相当長く捨て置かれてきておる。その間、たとえばしょうちゅうの場合におきましても、原料イモは相当安いときもあった、安いときで相当もうけたときは黙っておる。最近原料イモが上ってきて、相当原料高で製品安という実情がきておりますから、これは価格改定をしなければならぬ事態にきておる。しかしもうけたときは黙っておる。損をし出すと、今度は税金を負けるものでも、この際それに籍口してということはあまりにもいけません。それからはなはだ遺憾ですけれども、われわれは、この際一応四月一日は税金値下げに伴う改定だけを発表されて、それからまたしばらくたって、価格値下げに伴っての改定を新しくするという二段がまえに考えてやっていただきたいということを重ねて私は強く要望しておきます。  そもそも私どもがこの問題についてことさらにやかましく食い下っておりますのは、公定価格をきめております土台のコストというものが、全然一般に知らされていない。公定価格をきめながら、コストの内容が明らかにされていない、そんなばかなことはないですよ。ですから、四月一日に価格改定をいたす以上は、当然その価格を形成します各段階のコストも具体的に示してもらいたい。示してもらいませんと、この価格形成が一体妥当であるかどうかということの結論が出ないのであります。これは、明らかにわれわれ審議を進める上において重要な資料になりますから、ぜひ一つそれは出していただきたい。  それから卸段階における利益と小売段階における利益というものが非常に少い。一体これでいいのかどうかという問題、この内容も一つもう少し調べて、どういうわけで一割に足らぬ状態でこういう水もの、割れものの利益が保障されておるかという点、この小売益金、それから卸益金、この内容を明確にしてもらいたいという点です。  それからいま一つ大事な問題は、酒税の重要な要素になって参ります酒類の醸造の土台であります酒米というものが、戦争前に強引に企業統制をされ、合同されて、それによって一つの実績主義が戦後ずっととられてきておる。この実績主議による配給制度というものが、非常に業界を不公正な方向に進ましておるということに私は気づいておる。配給をいたしますためには、実績が一つの大きな要素になることは事実でありますけれども、実績を中心にいたします結果は、能率の悪い、また大衆の好まない悪い酒が作られておりましても、実績中心の場合は、コスト高や不良酒が作られてもどうすることもできないという結果が現われてくる。だからこの割当というものは、やはり実績中心ではなしに、優良酒あるいはコスト安、能率高、大衆の最も愛好するいい酒というものを作るいい工場を中心に、やはり配給を年年改訂していく方向をとるべきである、こう私は考えるが、そういう点を全然考慮されていないこの点はどうですか。
  51. 北島武雄

    ○北島政府委員 酒造米の割当が、原則として実績主義に基いておることは御指摘の通りであります。実績主義によりますと、どうしても御指摘のように画一的になりがちでございまして、具体的の個々の事情に応ずることがなかなかむずかしいわけでございます。従来は、酒造界の平均のために、ただいまのような方策がとられておりますが、もちろん御指摘のようないろいろな個々の具体的な苦しい問題につきましては、従来においても国税庁で多少の調整は、酒造組合中央会等とよく御連絡した上にいたしておりますけれども、大きな改訂はいたしておりません。この傾向につきましては、あるいは今後なお検討を要するものがあるのではないか、私自身は考えておりますが、これはまだ相当今後の調査を要する面がございますので、慎重に一つ検討をいたしたいと思います。
  52. 井上良二

    井上委員 なお私は、今度減税になりました税法案について、いろいろ質問をいたしたいのですが、私が一番ねらいとしているのは、この酒税の改定に伴って、それがそのまま小売価格において改定されずに、一部が途中の関係業者の赤字補填に使われるという懸念がなおかつ去りません。これは大蔵委員会といたしましては、別名歳入委員会といわれるだけに、また大蔵委員会にかけられております重要な目的は、できるだけ公正妥当な課税を国民に要望いたし、またそのためには、できるだけ負担を軽減していくという方向をとるのが、大蔵委員会の重要な任務であります。そういう意味から、せっかく長い間大衆減税を主張しておりました酒税が一歩ここで減税されて、その減税大衆のふところに入るのじゃなしに、途中で消えてしまうという行き方は断じて見のがすことはできません。この問題は、本日私どもいろいろ角度を変えて質問いたしましたけれども大蔵大臣答弁を聞いても、明確にはっきり区別するとは申しません。そうなりますと、これは委員会の権威の上から考えましても、このまま大蔵大臣答弁を見のがすわけには参りません。そこで、私どもこの問題をかような形において過ごすわけには参りませんから、委員長において、ぜひこの善後処置を大蔵委員会理事会で明確に一つおつけを願いたい。その上で、これから後のこの問題に対する質疑を続けていただきたいということを、私はこの際申し上げておきたい。
  53. 春日一幸

    ○春日委員 この酒税法は、減税されると、これが必然的に公定価格の改定に波及して参るというようなことは当然のことでありまして、これをめぐって、製造業者が、その公定価格を上げてくれという要望に政府がこたえんとする気配があります。大臣答弁をもっていたしましても、その二ュアンスが非常に濃いのであります。従いまして、われわれは、この問題は検討を必要とすると考えられますので、次の資料を一つ御提出を願いたいと思います。すなわち清酒、二級酒、雑酒合成酒の製造業者の収益、財産状態が把握できるところの資料、決算書、予算書、資産表等のもの、これを各製造規模に応じて、代表的なもの数点を御提出願いたいと思います。それから特にわれわれが常識的に考えられますのは、すでに長い間この酒の値段が変更されてはおりません。ところで、これの善後策をとられました当時から考えますと、あるものは高くなったものもありましょうが、主たる材料でありますイモの値段は、現在では、当時に比して相当安くなっており、一面やや高くなったといえども、その当時から比較いたしますれば、そういう採算難を訴えねばならぬほどの状況だとは考えられません。従いまして、原材料の動き、公定の指数、これも一つ資料として御提出を願いたい。それからもう一つは、ただいま原さんからの御答弁の中に、この酒の製造、卸、小売の各段階における小売価格は、最高販売価格であって、従って勉強して割引することは許されておるというのでありますが、われわれが仄聞しておる範囲では、製造業者においても、あるものについては相当割引をして販売しておる事柄もあろうと思います。従いまして、これらの各当該製造業者について、最高販売価格を割引して販売をしておる、それは実質的に割引をしておるか、リベートか、あるいは広告、招待等によってそういう類似行為が行われているところがあるかないか、こういうような事柄についても、それぞれ大中小の製造規模に応じて、そうしてその事実のありなしを一つ調査を願っておきたいと思います。こういうような資料をわれわれがあまねく集録いたしまして、そうしてこの機会に、あるいは将来においても、そういうような必要があるかどうかを慎重に検討したいと思いますので、以上申しました三つの資料を、最もすみやかに本委員会に御提出あらんことを委員長において御善処方お願いをいたします。
  54. 井上良二

    井上委員 私さいぜん申し上げました通り、どうも大蔵大臣答弁を聞いておりますと、四月の一日の小売価格の改定に伴いまして、減税分はそのまま値下げになるという改定ではないように聞えるのです。そこをそうごまかされると困るのですが、それははっきり話し合いができませんか。
  55. 原純夫

    ○原(純)政府委員 ずっと井上委員お話しの気持は、私ども非常に正しいお気持だと思うのです。お話しのお気持は、大へんまっすぐな、その通りども考えなければならぬ気持だと思うのです。率直に申しまして、私ども酒の行政の方もかかり合っているものですから、やはり業界の利益ばかりを考えるようなことになってはいけない、消費者の利益を十分考えなければいかぬということをはっきり考えております。そこで、四月にどうというお話でございますが、お気持の通りにやれということになると、もう今すぐにも値上げをしろ、そうして四月にはまるまる下げるということになるわけです。もっと言えば、去年の十月ごろにはほんとうは値上げしなければいけなかったのです。マル公という制度があって、私企業はこれ以上売っちゃいかぬというかんぬきをかってやらしていた。ところが、イモはどんどん上ってきて、三十五円だ、三十七円だというようになった。そのときに、やはりこの物価を上げますと、政府日本の決定的物価を上げたというようなことになるので、押えに押えてきておるわけでございます。押えに押えてきたのだが、ここで減税がきまったらさあ上げろということをやるのは、私はどうかなと思うのでございますが、いかがでございましょうか。従いまして、四月には、十分お気持をくんで、いやしくもそういうことで御非難を受けることのないような取扱いをしたいと思いますが、それで一つ御了承をいただきたいと思います。
  56. 井上良二

    井上委員 これは、大蔵大臣一つ静かに考えていただきたいのですが、私どもは、やはり今日資本主義的な生産を各メーカーがやっているのですから、その赤字を無理に、公定価格をきめてやらしている以上は、忍んでおれというわけにはいかぬのです。だからその面はその面で、原料高や労働工賃の値上げやら諸物価の上りによって生産コストが高くなったから上げてくれというのは、これは聞いてあげたらいいのです。それは、大衆の了解を得る処置はとったらいいと思うのです。しかし、この減税とそれとごっちゃにしてもらっては困るということだ、分けてくれといっておる。そのくらいわけのわかった話をしているのに、あなたの方でこんがらかしているのだ。だから、二段階にして下さい。それならおやり下さってもいいのです。上げてもいいのです。だから別にやるならやるでいい。別にやりなさい。そうしてもらわなければ、ごまかしもはなはだしいですよ。それでは、最初に私が質問したことに対する趣旨ともまた変ってきますから、私は断じておりるわけにはいかぬのです。だから、その点はどうですか、二段階に分けられませんか、分けなさい。
  57. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私どもは、できるだけ消費者に安いお酒を差し上げることが適当と思うのです。そういう意味で、特に現政府価格政策の上からしまして、あらゆる物価を上げないようにという方針をとっておる。それでがまんをお願いしてきておるのです。一方で価格を上げて、四月にまた下げるということは、私はやる考えは持っておりません。しかし、お説のように、コストが高くなったじゃないか、たとえば澱粉が非常に上ったのであるから、それを使用する酒類が同時に上るという価格関係は明らかにいたします。ここでこういうふうに上る、しかし税でこういうふうに下るから、こういうふうに値下げせよ——私は、これから四月の間に、酒の値段を上げることはないと思う。
  58. 井上良二

    井上委員 それは、しかしいけません。そういうのはごまかしもはなはだしいです。それなら今主税局長のおっしゃいますように、少くとも昨年の暮れなら暮れに、十月以降に原料が値上げになったことは明らかでありますから、そのときに少くとも値上げをやるべきであって、それをやらずにそのままほうっておいた。何でやらないかといえば、一番困っております合成清酒にしても、あるいはしょうちゅう類にいたしましても、全体的に需要が低下しているのです。現在の価格においても需要が上昇していないのです。売れ行きがどんどん伸びれば、それは値上げを少々やりましても一向かまいませんけれども、全体的に需要が低下しているのですから、そうなりますと、この際値上げをしたのでは一そう売れ行きが下りはせぬのか、こういうことで、現に回転しようにもできないのです。それを減税という形で打ち出してきて、その中でごまかして、そうして実際は値上げをしたんじゃないか。こっちは、どだい腹が減っているところにうまいこと食わしてくれるのだと思っているところが、口の先まで来たときに横取りされているということなんだ。それはいけません。それは大蔵大臣大衆をごまかすもはなはだしいことになりますぜ。あなたに対する不信が一そう高まってきますぜ。そこは明確にしてもらわなければならぬから、もう一度事務当局ともよく打ち合せを願って、明確に区分できるかできぬか、午後の委員会再会までに、一つ御相談の上御答弁を願いたい。留保しておきます。
  59. 足鹿覺

    足鹿委員長 午前の会議はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。     午後零時二十四分休憩      ————◇—————     午後一時二十九分開議
  60. 足鹿覺

    足鹿委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  税制に関する件、金融に関する件及び外国為替に関する件について質疑を続けます。井上良二君。
  61. 井上良二

    井上委員 午前中の会議におきまして、私、政府に対し、例の酒税減税に伴って、四月一日から実施せんとする酒類小売価格の改定に当りましては、酒税減税分はそのまま引き下げられますように、政府に格段の処置を要望する質問をいろいろ重ねて参りましたが、政府の方もいろいろの事情もあってなかなか明確な答弁ができません関係から、休憩中にできるだけ政府みずからわれわれの要望するところを御検討願って、われわれの要望する線に事態が解決できますよう政府側として新しく御検討願いたい、午後再開劈頭に私からもう一度この点に対して明確に政府の所信を伺いたいからということで、一応保留しておいたのでありますが、その後政府側は、この問題に対してどういう御検討を加えられましたか、さらにお伺いをいたしたいと思います。
  62. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 価格の点につきましては、先ほど申しましたように、コストの点もむろん考えなければなりませんが、御趣旨の点は十分生かして処置いたしたいと存じます。
  63. 井上良二

    井上委員 なお、私はさいぜんから申しております通り価格改定に伴います製造原価、それから卸、小売等の各益金の内容等について、全然具体的なコスト資料が出ておりません。そのコスト資料が出ませんと、この最終的結論を見出す価格改定の案が十分きまりかねるのでありますから、それらの案はいずれ政府側からも検討されて出されると思いますので、それが出ました場合、さらにまたこの問題は検討いたしたいし、また政府側におきましても、大体与党の方におきましてもこの問題については相当関心を持っておりますし、社会党は、もちろんそのまま減税分が小売価格引き下げられますよう強く主張をいたしておりますから、最終的にはさらに政府側で一歩前進されて、明確に減税分がそのまま引き下げられるような処置を要望いたしまして、私ひとまずこの段階で私の質問は一応保留いたしまして、次の質疑者に譲りたいと思います。
  64. 足鹿覺

  65. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 外国為替資金特別会計法の一部を改正する法律案に関連いたしまして、私は大蔵大臣に質問いたさんとするものであります。  あなたは一月三十日の衆議院本会議で、対インドネシア賠償関係費に関する手落ちにつきまして、政府が提出した外国為替資金特別会計予算関係書類のうち、三十二、三年度の予定貸借対照表において誤まったことは遺憾で、正誤することにしたから御了承いただきたいと述べて、遺憾の意を表されました。単にあなたが遺憾の意を表し、正誤表を出して処理するというだけで許され得ぬ問題と存じますので、この委員会を通じまして、政府の態度を明らかにしてほしいと存じます。私ども社会党は、あなたの陳謝と正誤表の提出は、問題の落着ではなしに、論議の出発点と、かように考えております。  そこで、まずお伺いいたしたいのは、およそ国の賠償金は、一般会計予算の歳出に載せまして、すべて国会の承認を経ることを要すると思うのですが、どうでありますか。
  66. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 賠償が国会の承認を経ることはもちろんであります。
  67. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 それは、歳出のどの項目に載せてございますか。
  68. 酒井俊彦

    ○酒井政府委員 歳出に関しましては、大蔵省所管の賠償等特殊債務処理特別会計の予算がございまして、これに賠償等特殊債務処理に必要な経費というものがございます。それから一般会計の方におきましては、賠償等特別債務処理費という、この特別会計に対する操入金が歳出に計上されておるわけであります。
  69. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 そうしますと、インドネシアに対する賠償は幾ら計上されておりますか。賠償等特殊債務処理特別会計に、一般会計から受け入れた分が、二百六十一億九千三百万円あると思います。そのうちに入っておると思うのですが、インドネシアに対する三十三年度の賠償額としましては、幾ら計上してありますか。
  70. 酒井俊彦

    ○酒井政府委員 これは、別途御審議を願っております日本国とインドネシア共和国との間に賠償協定の第一条に規定がございますが、第一年度といたしまして七十二億円、すなわち二千万ドルというのが計上されております。
  71. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 あなたのお答えは七十二億円ということです。それは二千万ドル相当額であり、対インドネシア賠償額と称せられる二億二千三百万ドルの十二ヵ年分割払いの初年度分といっていいですね。そういうことですね。
  72. 酒井俊彦

    ○酒井政府委員 さようでございます。
  73. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 ほかに一億七千七百万ドル相当額、約六百三十億円は、一般会計の歳出に計上しないのですか、計上しないで済むとお考えですか。
  74. 酒井俊彦

    ○酒井政府委員 今仰せのありました一億七千六百九十一万四千ドルというのは、おそらくいわゆるインドネシア・オープン債権の焦げつき分のことをおっしゃっておるのではないかと思います。これは、賠償とは違いますので、それだけの債権を放棄するということになりまして、これは、別途それに関する協定について御承認を得るように、今国会提案されております。それが通りますと、資産の側のインドネシアに対する請求権が落ちまして、従いまして、別途それを持っておりました資金の側の貸方勘定と申しますか、これが落ちるわけでございます。これを落しますについて、この委員会に御提案申し上げました外国為替特別会計法の改正法律案というものを御審議願うわけでございます。
  75. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 簡単にお答え下さっていいのです。そのものずばりで答えて下さい、時間節約のために。  ただいまあなたからの御答弁では、これは賠償ではないのだ、債権放棄にすぎないのだ、こういうお答えですが、大臣はどうお考えですか。ただ債権を放棄する理由は私はないと思うのです。内実において賠償ではないのですか。
  76. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これは、賠償ではありませんが、賠償に関連をいたしまして別途日本とインドネシアとで協定をいたしまして、そうして議定書の形において国会の御承認を得ることになると思います。
  77. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 たとえば対外的な放送ないし対外的とりつくろいの形式は別としまして、内容的に賠償であるものであるのでしたら、国内法である財政法、予算決算会計令等の制約に従わなければならぬと私は思うのです。そういうことですから、これはやはり賠償事項として、一般会計歳出に、七十二億のほかに加えて計上すべきが至当と思うが、どういうようにお考えですか。
  78. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これは、賠償ではないのでありまして、賠償は別途賠償として御審議を願うわけであります。これは、賠償に全然関連がないとは言いませんが、むしろ日イ両国の債権の今日の状態からして、これを放棄するのが適当だ、その見地からいたしておるわけでありまして、別途外務省から、この経緯については、議定書の形において御審議を願うことになるかと思います。
  79. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 大蔵大臣、簡単でいいのですよ。ずばりで答えてくれません か。これはあなた、法律論の立場でもけっこうなんです。これは賠償であるか、それとも賠償でなしに、単なる債権の放棄であるか、どちらなんですか。
  80. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 債権の放棄であります。
  81. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 藤山外務大臣も、二月六日の外務委員会での答弁で、一億七千七百万ドルは債権放棄であって、賠償ではないと確言された。あなたも同様に、さような格言をここにいたしたわけであります。  それではお伺いしますけれども、賠償でなしに、しかもインドネシアに対する貿易焦げつき債権の請求書を放棄しなければならなかった理由は何なんですか。
  82. 酒井俊彦

    ○酒井政府委員 インドネシアとの間に、今日まで御承知のように平和条約がございませんでした。それで、賠償と同時に今後に日イ経済協力、その他日イの外交上の協力関係を強固に打ち立てますために、従来の立場を離れまして債権を放棄したわけであります。
  83. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 これは、藤山外相も同じようなことを言っておるのですよ、。インドネシアとの新しい関係に入るのだから、こういうことで答えておられます。しかし単なるこのような理由で、六百三十億円、すなわちおぎゃあと生まれた赤ん坊も入れまして、日本の九千万国民の一人頭七百円という巨額が放棄されるということはあり得ないと思う。インドネシアに対するオープン・アカウントの残高としての日本国の債権は、戦後の貿易上の債権であります。従いまして、それ自体として棒引きのいかなる理由もないのです。大臣はそう思いませんか。
  84. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これは、インドネシアが支払い能力がないという見地に立ちまして、取れない、いわゆる焦げつきということになっておりますので、この際日イ両国との国交も新しく出発するこの機会において、法律をもって御承認を仰いだ上で、これが棒引きというか、切り捨てをいたそう、かように考えております。
  85. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 先ほど大臣は、割り切ったお答えをしましたが、やはり依然として、内容においては賠償的な性格を持つのだ、こういうことのように私はとりました。事実その通りだと思うのです。もし棒引きの真の理由がありとするならば、これは、インドネシアと新しい関係に入る引出物というふうなあいまいなことは許されません。そういうあいまいなことは、国民は納得しないのです。やはり棒引きの真の理由があるとするならば、それは、たまたま対インドネシア戦争賠償の引当金として棒引きさせられるということでありまして、日本政府にとっては、少くとも賠償金そのものとして観念せられるべきものと思うのです。従いまして、一般会計の歳出に、棒引額一億七千七百万ドル相当の約六百三十余億円をあわせ計上すべきものと考えますが、どうなんですか、くどいようですが。
  86. 酒井俊彦

    ○酒井政府委員 私どもは、先ほど大臣が御言明になりましたように、これは賠償とは性質を異にするものである。これから新しく日イ両国間の協力関係を開いていくためには、従来ガンになっておりました、こういう焦げつきの債権の処理を同時にするという意味で放棄をいたしたのでありまして、これは、賠償とはその性質を異にするというふうに考えております。
  87. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 大臣もそうお考えですか。
  88. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 先ほどから申し上げた通り、これは賠償ではありません。
  89. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 再びお伺いいたします。棒引き債権の六百三千余億円は、賠償と無縁どころか、賠償金そのものではないでしょうか、大臣はそう思いませんか。藤山さんにしましても、あなたにしましても、賠償とは違うのだ、賠償とは関係がないのだとおっしゃいますが、そうではなしに、賠償金そのものではないのですか。
  90. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 賠償ではむろんありません。が、しかし日イの全体の国交の関係からは、賠償を取りきめて、早く払おう、あるいはこういう金額を払おうということも、やはり日イ国交という見地に立ってものを考えていく、そういう広いカテゴリーのうちにおいては、日イ国交を早く開いて、新しい出発点としようという点においては、むろん関係があると思います。
  91. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 インドネシアとの国交回復、通商進展等のための国策に基く債権の棒引きという議論は、私は子供だましの議論だと思うのです。小澤佐重喜さんが大失言をやりましたが、この方も顔負けをするような大詭弁であると私は思うのです。四億ドルのうちの一億二千三百余万ドルが賠償金であって、一億七千七百余万ドルがインドネシアと修好のための権利放棄であるという議論は成り立ちません。大臣、どうお考えですか。
  92. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 先ほどから申し上げますように、日イ国交の関係において、これは取れない債権ということになっております。ここで日イ関係から見て、私は、棒引きをして新しく出発したらよろしい、こういう見地であります。
  93. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 新しい門出のためにということでお答えのようですが、私は、それなら少し声を小さくしましお伺いしたいのです。かようなややこしい二本建の処置は、対外的影響を顧慮してのことなのですか、たとえばビルマあたりから増額請求が出たらうるさいとでも言おうとなさろうとするのですか。
  94. 酒井俊彦

    ○酒井政府委員 別段そういうことではございません。先ほどから申し上げておりますように、全然別ものでございますが、将来の日イ両国国交のために放棄をしたということであります。
  95. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 あの交渉の過程、ジュアンダ・小林交渉ですか、その過程では、インドネシア側は、はっきり四億ドルの賠償ということで要求してきているはずであります。それでいいんじゃないですか。
  96. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 賠償の関係は、私の方でやっておりますから、御説明申し上げます。御承知の通りに、インドネシアとの間の折衝は長きにわたっておるのでございますが、今回の賠償の処理につきましては、昨年の十一月末に岸総理大臣がインドネシアを訪問されましたのであります。その際に原則的了解が成立をいたしまして、今回予算及び追って賠償に関する条約、その他の関係の案件を出しまして、国会の議決を経るわけでございます。この原則的了解の上に、賠償は先ほど平岡委員が仰せられましたように、二億二千三百八万ドル、経済協力四億ドル、こういうことで最終的な合意が成立をいたし、先般、御承知のように藤山外務大臣が参りまして、調印をいたしました。これとあわせまして、先ほど来御質問の貿易債権の処理が、たまたま同時に解決したということでございまして、この点は、大蔵大臣及び為替局長が申し上げました通りに、その性質を異にいたしておりまするのみならず、国会におきまして御審議を願いまする案件等も、全然別のことになっております点は、御了承を願いたいと存じます。
  97. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 国会での審議の案件としても別になっている、こうおっしゃいます。そうじゃなしに、逆に条件を別にしたんじゃないですか。
  98. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 さようではございません。
  99. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 ではお伺いしますけれども、もしビルマが、日本は賠償と債権放棄の二本建をとりつくろっているけれども、四億ドルが賠償額だとして抗議してきたときに、あくまで一億七千七百万ドルは賠償ではない、債権の放棄だとの強弁で押し通せるとお思いですか。
  100. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 仮定の御質問でございまするが、どこまでも賠償と申しまするものは、平和条約の条章の趣旨によりまして、戦争に関連をいたしましたる損害のコンペンセーションでございます。これはあらためて申し上げるまでもなく、平和条約の条章の趣旨に照らしまして明確な点でございまするので、これをもちまして、賠償をどの程度やるかという議論は、全体をそれによって完結いたしたわけであります。  貿易債権の問題は、為替局長から申し上げました通りの、また平岡委員も非常にお詳しい経緯をたどりました問題でありまして、これは全然別の問題である、かように思います。
  101. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 大臣はどうでありますか。ビルマから押してきた場合に、この抗弁で対抗できますかどうか。
  102. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これは、今もお話がありましたように、私はそういうことはないだろう。仮定ですから、今ここでいろいろとそれについて言うことは、私はむしろ大蔵大臣としては、差し控えるべきだと思います。
  103. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 いずれにいたしましても、もしビルマが押してきた場合に、債権の放棄だということでは抗弁できないと私は思うのです。それはさておきまして、そういう事情からしまするならば、結局は対ビルマ関係等では、実利のないことなんです。こういう二本建のヌエ的なあなた方の処理は、何ら実利もないのです。対外的考慮だとする理由は、あなた方もそうはおっしゃっておりませんが、これは根拠が薄いと思うのです。従いまして、私にはなお質問したい事柄が出てくるのです。債権のほんとうの棒引き、日本が対インドネシアの問題でそういう立場をとりますと、今度は影響が別なところから出てきそうなんです。具体的に申しますと、今回の政府のヌエ的処理の影響として、まずおそるべきことは、これが悪例となりまして、対韓国のオープン・アカウント処理の四千八百万ドルの焦げつき債権が、またまた棒引きされることになりはしないか、こういうことであります。大蔵大臣は、このヌエ的処理のこの方面への波及こそ戒心せられるべきではないのでしょうか、どういうお考えですか。
  104. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私は、これは他に波及することはないと考えております。やはり根本的には、オープン勘定というこの取引の方式がこういう弊をもたらすのでありまして、大蔵省としては、オープン勘定の廃止ということを今考えておるわけであります。
  105. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 では、ついでですからお伺いしておきますが、対韓国債権の棒引きは今後一切しないと約束できますか。
  106. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 さようなことは考えておりません。
  107. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 約束できるという意味ですね。何回も申し上げましたが、いずれにしましても、インドネシアに対するオープン・アカウント残高としての日本国の債権は、戦後の貿易上の債権であって、それ自体として棒引きのいかなる理由もないのです。しかも政府の処理方式は、対外的にも害こそあるかもしれないが、益がない処置であると思います。かくなれば、まことに残念ではございますが、政府の魂胆は、国民を欺瞞せんとするむしろ内政的な政治配慮だと結論せざるを得ません。(「どうしてだ」と呼ぶ者あり)理由を申し上げましょう。今回政府が対インドネシア債権放棄議定書、それと外為資金特別会計一部改正案、またこれに伴います予定貸借対照表の正誤表を出してきまして、問題を外為特別会計に限定して処理しようとすることは、もっぱら内政上の配慮からであると思うのであります。政府の非違を貫かんとする意図の現われにほかならないのではないかと存じます。政府は、一般会計歳出へ盛るべき六百三十億円の賠償引当金を承知の上で計上せず、外為会計の減資処置でごまかそうとしている。私どもはかように考えざるを得ません。かかる処理、すなわち外為の減資処理が、外為会計の機能を阻害し、かつは国民に何らの不利益をもたらすことなしに行われ得ると釈明できますかどうか、御答弁いただきます。要するに外為会計の機能を阻害することがないか。かつは国民に何の不利益をもたらすようなことがないと釈明できるか。
  108. 酒井俊彦

    ○酒井政府委員 ただいまのお話でございますが、私どもは、あくまで賠償とは別のものであるという建前で、この焦げつき債権を、今回両国のために平和条約ができますときに引き落そうという議定書を作ったわけであります。ところで外為会計といたしましては、そういう特別な議定書によりまして資産側が落ちますので、それに見合いの負債を落すということは当然でございますが、実は外為会計の歳出歳入は、簡単に申しますと、外国為替の売買とか、あるいは外為証券の利子とか、そういうような支出、収入が歳入歳出になっております。そういう勘定の残高につきましは、別段歳入歳出に組むということをいたしておりません。つまり資金会計でございまして、累計主義でなくて、その資金が運転しているわけでございます。ところが今度の棒引きによりまして、資金の方がそれに相当するだけ落ちますけれども、これは、従前からすでに焦げついておって動かない分でありますから、両落ち——資産、負債両方の側から落しても、別段に外為会計には支障がないということでございます。
  109. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 後段の御説明を願います。国民に何の不利益ももたらすことはないか。
  110. 酒井俊彦

    ○酒井政府委員 外為会計は御存じのように、外貨の売買を大体の目的にしてやっております。このインドネシアにつきましては、すでに民間には資金が払われておりまして、政府間の債権という格好でできておるものでございます。これをすでに一般会計からちょうだいいたしております資金の一部で消していくということでございますから、別段悪影響はないと思います。
  111. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 国民に何の不利益ももたらさないかどうかということです。
  112. 酒井俊彦

    ○酒井政府委員 私は不利益を及ばさないと思っております。
  113. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 あなたの答えは、これは過去の税金のかすなんだから、今さら何も問題は起らぬのだ、こういうことですね。シッパーに対しましては、日本が為替集中制度をとっている限り、シッピンクと同時に、オープン・アカウントの勘定からイクイバレントに円が輸出者に払われる、そうでしょう。そうしまして対価(外貨)を将来の輸入力として政府が確保し、輸入業者に必要に応じてこれを売る場合に、シッパーを通じて散布されていた円資金、インフレ的な形において流通しているものが、また政府の手元に返ってくるから、実害を及ぼさない。そうでなしに、ここに焦げつき債権になる、あるいはモラトリアムになるということは、シッパーの損害ではなしに、国民自身の損害となることは明瞭なんです。だから、これは過去のインべントリー・ファイナンス、過去の税金の蓄積である一般会計からの支出なんだから、これはかまわないのだという議論は成り立たぬと思うのです。あなたは何にも害を国民に及ばさぬとお答えのようですけれども、あなたから聞いてもしょうがない。大蔵大臣、どうお考えですか。
  114. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 むろん外為会計に焦げつきの債権が生じるに至ったことは、これは遺憾なことだと思っております。
  115. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 ついでですから、大臣から前段の私の質問に答えていただきたいんです。と申しますのは、三十三年度におきましては、日本の輸出を伸張させようということから、政府もいろいろ検討した結果、三十一億五千万ドルの輸出目標を設定いたしております。昨年度より多いわけです。そうしますと、外為集中制度をとっている限り、輸出に見合うところの円の手当が必要なんです。そのときに、二千二百七十四億円の外為資金を減資するということは、この外為の経理に支障を来たさないかどうかということを、大蔵大臣からどうぞ答えて下さい。
  116. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 今度の資産減資によりまして、外為会計の経理に支障を来たすことはございません。
  117. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 理由を言ってくれませんか。
  118. 酒井俊彦

    ○酒井政府委員 先ほど申し上げましたように、外為といたしましては、一つ資金を持って、これを回転しながら外貨の売買をやっていくわけであります。そこで、一方において、いわゆる焦げつき債権が債権として載っております。見合いの資金が、負債として載っております。この両者を切り捨てるのでありますから、今回転しておりますほかの資金については、別段の関係がない。私が申しますのは、今後について、そういう点では特別の不利は来たさないということでございましたので、言葉が足りませんでしたことをおわびいたします。
  119. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 あなたの立場をお察しして申し上げるのですが、これは、こういうことじゃないですか。焦げつき債権を外為会計の資産から落しても、結局外為証券を発行して日銀に引き受けさせる、こういう日銀からの借金ができるから金繰りには困らない、こういうことじゃないですか。
  120. 酒井俊彦

    ○酒井政府委員 それは全然違いまして、外為会計の金繰りというのは、外貨資金の売買に伴って必要な借入金は、外為証券を借りるとか、あるいは国庫余裕金を借りてるということになりますが、今の焦げつき債権と見合いのとれております貸方側の資金につきましては、これは同時に債権が落ちるのでありますから、別段借入金をふやすというような必要はなくて、今のままで十分運用できるわけであります。
  121. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 あなたの方から発行いたしました予定貸借対照表は二つございます。三十三年三月三十一日現在と、予想される三十四年三月三十一日現在のものがある。これの貸方を見ますと、資金勘定、借入金の勘定、あるいは積立金、純益の勘定がございます。このうちの三十四年度分を見ますと、借入金、これは外為証券として日銀から借りるものと、国庫余裕金を借りる場合がありましょうが、この予算が千四百五十八億、こういうふうに計上されておるのです。ところが一年前の三十三年三月三十一日の方の借入金は、九百十八億円きり計上されていない。ということは、その差額だけは借入金がふえるということになりますよ。なるからこそ、あなた方はそのように予定書を出しておるんじゃありませんか。
  122. 酒井俊彦

    ○酒井政府委員 それは、三十四年度末の方がふえますが、来年度におきます国際収支の見通しにおいて、一億五千万ドルの黒字ということが今予定されております。従って国際収支における黒字ということは、外為で外貨を買うということでありますから、それに必要な資金だけは手当をしなければいけない、こういう意味で計上したものであります。
  123. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 三十三年度の年間を通じての借り入れのアベレージは、あなたの方の予算書に計上されてる限り千五百億円、こういうことになってるはずです。そうですね。
  124. 酒井俊彦

    ○酒井政府委員 大体借入金が千四百億のうち、国庫余裕金が一応二百億計上されております。
  125. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 大蔵大臣の方は、確かに焦げつき債権を棒引きする、その経理処理として二千二百七十四億円から六百三十億円を減資するということは、これはやはり国民に損害を与えるということを、率直に申されております。あなたはそれに対しまして、きわめてあいまいでございました。これは御訂正なさいますか。
  126. 酒井俊彦

    ○酒井政府委員 先ほどおわびをいたしたつもりでございましたが、足りませんでしたので申し上げます。過去においてそういう焦げつきがたまったということについては、遺憾な事態でございますが、将来にわたっては、先ほどから御説明申し上げますように、別 段新たな負担が加わるものではないという点で、さっき申し上げたわけであります。
  127. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 外為会計の責任の衝にあるあなたでも、錯覚を起されて、こういう処理では一つ国民に害を与えないのであるという。政府が二本立の処理をいたしましても、一つ国民には迷惑をかけない、そういう印象を国民一般に与えているわけです。もっとも、それがねらいかもしれぬです、皮肉を言えば。私は、焦げつき債権棒引きによる賠償が、国民に何ら新しい負担を課されないかのごとき印象を与えることが奇怪千万と思うのです。焦げつき債権は、インドネシア、韓国、アルゼンチン、この分を合せまして二億七千万ドルに達しておることは、あなたも御承知の通りであります。このためにこそ、昨年の外貨危機に対しまして、IMFから一億二千五百万ドルを借金し、それだけよけいな金利を負担しております。なお日銀からよけいな借金をして、この方面からの金利負担を増しているのでありますから、棒引きはこうした負担を恒久化することだ、毎年毎年金利負担を国民にかけるということなのです。私の計算ですから、少し違うかもしれないけれども、現にただいま申した通り政府は三十三年度の予算で、年間を通じて平均千六百億円の日銀等からの借り入れによる金利八十億円を計上しておる。ですから、六百三十億減資さえしなければ、それだけ金利が助かるわけなのです。日歩多分一銭五厘と思いましたので、それで計算しますと、三十億くらいがこれなかりせば助かるわけです。三十億は毎年毎年国民に恒常的に賦課されてくるわけなのです。だから、こういう点を見のがされて、一つ国民に迷惑をかけぬ、こういうあなた方の答弁は、全然なっておりません。とうかい戦術で、そういうことは何でもないんだという、こういう措置こそ、私は詰問すべきだと思って、ここで質問しておるわけです。一般に外為特別会計とか食糧管理特別会計への一般会計から資金ないしはインベントリ—・ファイナンスが、いつも政府の非政の穴埋めのために機密費的に費消されまして、とりくずし的運命にあっていることは遺憾千万なのです。かような措置が、国民の大切な税金の集計であるべき一般会計予算書の実体を隠しております。こういうことは、われわれは大いに糾弾しなければならぬことだと思っておる。きょうの質問も、政府は自戒してほしい、こういうことを申し上げるための質問なのであります。こういう点に対しまして、大蔵大臣はどうお考えですか。
  128. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 先ほど申しましたように、貿易の上から、今日外為会計でもって為替の収支をしております。焦げつぎができれば、自然この外為会計において焦げつきができる。こういうような焦げつきを過去において生ずるに至ったことについては、私非常に遺憾だと思っております。ただ問題は、それならこの処理につきまして、あくまでこれを相手方に主張して、そのためにいつまでも国交の回復もできず、すべての賠償その他の懸案も解決しない、それが国に、あるいは日本国民に有利であるのか、あるいはまた、この際そういうものをすべて総合的に一挙に解決するのが日本のために有利であるのか、そこに観点があると私は思う。私どもは、そこですべてを解決するのが日本のためになるという見地でやったわけでございます。
  129. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 大臣お答え、よくわかります。しかしこういうことは、何回も繰り返されていることなのです。ですから、この処理に対しまして、あなた方が徹底的に自戒していただかないと、この愚をまた繰り返す、こういう懸念があると思うのです。ですから、この点はよく検討されまして、国民の負担に及ぶということ、国民の負担に重大な影響があるということを認識していただきたい、かように切に念願いたします。  要するに、今回の対インドネシア賠償をめぐっての政府のヌエ的措置は、国民に対して負うべき政府予算上の責務を、内政的配慮から故意に回避せんとするものであると私は思っております。すなわち予算編成の過程におきまして、党略予算要求にあなたが屈して、拡大規模一千億円のワク内におさまりきらざるインフレ予算を計数上隠蔽するため、予定ワクにおさまったかのごとく見せかけ、外為会計関係の減資ということで国民の目をくらまさんとしておる、こういうことであると私ども考えておるのです。こういうことはないのですか。
  130. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 さようなことは絶対にありません。これは債権処理の普通の方式に従ったわけであります。
  131. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 そのくらい無神経であると、何かわれわれが今論じておることがどれだけ戒心されるかということで、心を寒くするわけであります。そのものずばりで申しますと、正誤さるべきものは、基本的には外為特別会計ではなくして、一般会計の歳出でなければならないわけであります。すなわち一般会計歳出に賠償費としてなお約六百三十億円を加えまして、インドネシアの賠償に充てる。同時に、対インドネシア債権はこれをこの際返済してもらうという意味で、六百三十億円は送金をしないで、外為特別会計の借方の従来の焦げつき分に振りかえまして、外為特別会計の実質を名目通りに回復するということ、このことが必要なのであります。これが正しい処理の仕方であると私ども考えております。こうなれば、従ってもはや資金の減資を取り行う必要はない。三十一億五千万ドルの日本の輸出を現実に行なっても、それに必要な円資金の手当は、借金をせぬでも済むということ、一挙両得と言おうか、一挙三得であります。しかし、そのためには、あなた方が当然こうむるべき一つの責任、批判、このことは甘んじて受けなければならぬはずのものであります。ということは、一兆三千百二十一億円という一般会計予算をあなた方が出しました。しかし、これは私の論法をもって言いますならば、文字通りこの際一切ふいにしていただき、あらためまして六百三十億円を加えまして、一兆三千七百五十余億円といたしまして、この大膨張予算国民の前にさらし、その賛否を問うこと。議会にもこれを問い、国民にもこれを問うこと、このことが必要なのであります。こういうことを抜きにして、ヌエ的な措置でやることは、対外的にも初めから成り立たない。これは全く政府の対内的な一つのゼスチュア、予算編成における一つの謀略的な措置なんです。こういうことを自戒してもらわなければならぬと思うのです。こういう話は議論になりますが、あなたが内心肯定しておっても、今さらはいさようでございますかというお立場にならないと思いますので、この程度にいたしまして、次は、アルゼンチンの焦げつき債権の問題に入りたいと思うのです。先ほどから外務大臣を呼んでもらっておるのですけれども、きょうはどうしても都合がつかぬ。こういうことでは、私はこれから議論を展開するわけには参りませんので、この問題を含めまして、広範にわたるべき貿易諸問題につきましての質問はこの次に譲りたいと思います。結局、あなたから今の問題に対しまして御釈明とか御回答をいただければけっこうですが、もし御回答いただけますならば、承わっておきます。
  132. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 私の先ほどの答えに補足させていただきたいと思いますが、賠償ではないということが平和条約の条章の趣旨によっても明らかなものであるということを私は申し上げたのでございますが、御承知のように、平和条約の十四条に賠償ということを書いておりまして、日本国は、戦争中に生じさせた損害及び苦痛に対して、連合国に賠償を支払うことができる、こういうことになっております。これは御承知の通りでございます。しかもこの賠償の支払い方法につきましても、同条に規定がありまして、「日本国によって損害を与えられた連合国が希望するときは、生産、沈船引揚げその他の作業における日本人の役務を当該連合国の利用に供することによって、」云々というふうな規定がございます。これは平岡委員よく御承知の通りでございまして、これらの条章の趣旨から見ましても、今回の焦げつき債権は全然別個のものであるということを、私はこの条章を引用して申し上げたのであります。この点を補足して申し上げておきます。
  133. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 債権の放棄と申しますが、この債権は、戦後の両国間の貿易の残高なんです。だから、それ自体として、何で棒引きしなければならぬ理由があるのですか、御明確にお答え願います。
  134. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 私の平岡委員に申し上げました趣旨は、平和条約の条章によりまして、賠償というものが規定されております。この条章の趣旨によって賠償を約したということでございまして、焦げつき債権とは全然別個の問題であるということを申し上げたのでございます。
  135. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 何も関係のないあなたの敷衍説明で、かえって迷惑いたします。この辺でやめてよろしいと思います。私の方は別段あなたから聞くつもりはありません。これで、一応将来に質問の権利を保留いたしまして、私の質問を終りますが、ちょっと資料の要求をいたします。  日本国とアルゼンチン国のオープン・アカウント設定から債権処理協定に至るまでの事態の変遷を、年月別に示していただきたい。たとえば一、両国間の債権、債務残高の起伏の状況。二番目、オープン・アカウント停止の理由。三番目、いわゆる暫定協定の内容。四番目、欧州対ア債権国とア国間の協定内容、パリ会議の英・独・仏・伊・オランダとアルゼンチン間の協定内容、それから、特に協定の対象となった各国別の債権残高、これをガバメントのものとコマーシャルのものに区分して示していただきたい。五番目、三十一年三月三十一日協定勘定締め切り時におけるものと、もう一つは三十一年九月九日、日本時間で十日ですが、この暫定協定時における日本の対ア債権の残高、やはりガバメントとコマーシャルとの二つに区別してお知らせ願いたい、以上であります。
  136. 酒井俊彦

    ○酒井政府委員 ただいま御要求のありました資料は、できるだけ作りますが、たとえばパリ・クラブの問題でございますが、多少正確を欠くものがあるかもしれませんので、そういう点は資料を作りました上で……。
  137. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 それは明確にしてもらいたい。私も正確な資料を持っておりますが、間違ったらいかぬから突き合わしたいのです。
  138. 酒井俊彦

    ○酒井政府委員 これは外務省を通じましていろいろ御調査を願うこともありますので、御趣旨に沿ってできるものを提出いたします。
  139. 足鹿覺

    足鹿委員長 横山利秋君。
  140. 横山利秋

    ○横山委員 私は、例によって税制中心にして、大臣に十分にお答えを願いたいと思います。そのために、前段として、大臣のものの考え方を少しお伺いしておきたいと思います。と申しますのは、去年の財政演説と今年の財政演説というものが非常に違うわけです。もちろん去年は池田さんのときであります。けれども去年の財政の根本をなすものの考え方と、今年の考え方の違いというものを明らかにしなければなりません。これを明らかにしてこそ、国民の納得と理解が得られると思うわけであります。たとえば、池田さんは、その財政演説でこういうことを言っている。「このような産業活動及び国民生活の面における不均衡を是正しながら、全体として経済力を強化拡大し、社会保障の充実をはかっていくことが、今後における施策の眼目である」こう言って、しかもその結語として「ここに提案いたしました予算は、あくまでも健全性を貫いた予算であります。私は、この予算を中軸とする財政経済諸施策が、健全な基調のもとに経済の均衡ある発展を積極的に推進し希望に満ちた明るいわが国の将来を約束するものであることを確信するものであります。」今われわれがこの言葉を聞きまして、まことに聞くも涙の物語のような気がするのであります。(笑声)これを受けて、今度一萬田さんはこう言っております。「最近の経済情勢について見まするに、引き締め政策の浸透に伴い、国内需要は漸次鎮静し、物価、生産、輸入等、各分野における経済の調整は次第に進んで参りました。このようにして、わが国経済の行き過ぎが是正されるに従い、国際収支も相当の改善を示しております。しかし、私はこの国際収支の改善を一そう確実かつ持続的なものとすることが必要であると考えております。言葉をかえて申せば、貿易の規模を拡大し、一日は失われた外貨を再び増加させるような態勢のもとに、わが国経済を着実に発展させることが大切であるのであります。」こうして結語として「政府は、ここに提案いたしました予算を中軸として、財政経済諸施策を着実に進めて参ることによりまして、国際収支の改善を持続し、わが国経済の均衡ある発展を招来いたしたいと存じます。」まさにこの二つの経済政策は、雪と墨、月とスッポンといいますか、そのくらいの違いを持っているわけであります。しかもあなたは冒頭に「わが国経済の行き過ぎ」ということを明確に指摘をされているわけであります。一体この二つの違いはどこに原因があったのであるか、それをまず承わりたいと思います。
  141. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私は、今お示しになりました二つの見解といいますか、これが基本的に違ったものであるとは考えておりません。むろん経済、特に国際経済にも依存しておる日本経済というものは起伏があることは、これは人間個人をとっても、やはり健康のときもあり、それから病気にかかるときもあるのであります。経済もやはり有機的な作用をいたしておりますから、そういう意味におきまして、基調は同じなんですけれども、ずっと伸び過ぎるときがある。その過ぎたときには、これを押えるという行き方をして、そして全体としてまた伸びていく。これは何も変った考えではない、このことをはっきり申し上げておきます。
  142. 横山利秋

    ○横山委員 大臣、それは詭弁もはなはだしいと言わなければなりません。なぜならば、財政演説というものは、過去を物語り、同時に将来を約束するものであります。従って池田さんの演説も、かつまたあなたの演説も、今後の展望を明確に言ってのけておる。たとえば池田さんを見てみましょう。池田さんの演説を見れば、このように、安定した経済基調の上に経済の拡大発展が実現しつつあることは、戦後の復興期には見られなかった現象であって、日本経済の実力が一段と大きくなったことを示すものであると言い、翻って世界経済を論じて、最近におきます中近東及び東欧の紛争以後も、世界景気の原動力であるアメリカにおきましては、好景気が持続するものと見られており、また、西欧諸国におきましても、経済上の困難を克服しつつ景気の維持に努めておりますことを考えれば、多少の波動はあるにしても、世界の景況は、今後もなお高水準を続けるものと見て差しつかえないと存じます、とこう言っておる。あなたはあなたで、今後の展望について——まああなたの言われたことですから、今ここで言う必要もありませんので、省略いたしますが、要すれば、わが国の輸出環境は一段ときびしくなることを予期しなければならない云々と、今後の景気の展望を述べておるのです。私は、冒頭からあなたがそういうような、何といいますか、ひやかしたようなことをおっしゃるならば、私もきょうの論陣については覚悟があります。もしもこの財政演説というものを率直に認め、どこにあなたの言うところの経済の行き過ぎがあったか、あなた自身が経済の行き過ぎがあると本会議で言ってておられるのであるから、私はその経済の行き過ぎとは何だ、その経済の行き過ぎの原因は何であるか、それを明確にしなければ、国民の納得が得られないではないか。先のことはわかりませんというならば——あなたが言ったのはそういうことじゃありませんか。そういうことであるならば、あなたの言っているこれも全く空文に帰するのであります。もう少しはっきりと、誠意ある答弁を要求します。
  143. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 何も私、むちゃなことを言うておるわけでも何でもありません。それは、日本経済のその後の推移をごらん下されば、私はきわめて実証的におわかりになると思います。むろん昨年の五月から景気が行き過ぎる、内外の情勢から見て、特に日本において行き過ぎる、これが自由経済をとっておれば、こういう景気現象というのはやはり起りやすい。これは、社会主義の経済とか計画経済とはよほど違いますけれども、景気が伸び過ぎるということは、自由経済には多くあり過ぎる。その景気の基調は変らないんだけれども、伸び過ぎてきた。それで、五月から、伸び過ぎるからといってとったのが、新しい内閣の経済が伸び過ぎるのを抑える政策、その政策も、世間は当時非常にいろいろと言っておりましたけれども、それほど大きな強い行き方もせずして、しかも多くの波乱も——もちろんある程度国民経済に対していろいろと御苦労をかけましたことも、否定しません。しませんが、しかし大きな見地からすれば、それほど大きな混乱破綻もなくして推移をしてきている。おそらくこういう調整作用も、私の見地では、三月くらいまでには大体終るだろう。そうして四、五、六というようなところで、いわゆる横ばい的な、もう少しきめのこまかい地ならしができて、そうして七月あたりから、世界経済と相呼応して、日本の景気も若干よくなっていくだろう。それほど大きな起伏なくして日本経済が推移をしておる。そうして貿易で見ても、何もそれほど縮少はしておりません。池田大蔵大臣のときに考えておった二十八億ドルの輸出というものは、やはりそれ以上遂行しておる。今後の見通しも、三十一億五千万ドルで、これもだんだんと積み重なっていきおる。その間においていろいろな起伏があるから、この起伏を押えて、なだらかにしていこうという政策を今とりおる。こういうのが私の考えであります。予算の規模を見ましても、池田さんの時は一千二十五億の予算増加、今度の予算は一千億——いろいろな考え方もあり、またいろいろ批判も受けますが、予算にしては、ほんとうの歳出は一千億ふえておる。だから、財政的に見ても、そんなに大きな変化は与えていないと思います。
  144. 横山利秋

    ○横山委員 三月まではこの起伏が続き、三月からしばらくの間に地ならしをして、七月ごろからよくなる、こういうあなたの展望のように承わりました。昨年、池田さんのときのこの財政演説は、まさに繁栄を謳歌して、そうしてあだかも、今あなたが確信ありげに前途の展望を物語ったと同じように、池田さんがその一年間について、財政演説及びその後の質疑応答において明らかにした確信であり、その確信は、わずか二ヵ月、三ヵ月のうちにくずれた。あなたは、それをもってありがちのことだとおっしゃる。ありがちのことであるならば、あなたのおっしゃることも、またあてにならないことになるわけであります。従って、私が今申したいのは、あなたは経済の行き過ぎであるとおっしゃった、また本会議国民の前に明確にされたのでありますから、何がゆえに昨年の予算編成のときに、この経済の行き過ぎというものが明らかにし得なかったのか。あなたの経験をもってして、何がゆえに昨年はこの行き過ぎというものの展望が予見できなかったのか。その原因は何であろうか、それを明確に承われば、今後の国民の心構え、それから、あなたが渋い予算と言われているこの予算に対する理解もできるではないか。そのために、いうところの経済の行き過ぎの原因はどういうものであったか。私は何も池田さんを誹謗するわけではありません。池田さんの時代の問題を論議するわけではありません。今後のために、あなたの抱懐せられる所見を明確にするために、なぜ今度の予算が必要であるかということを明らかにするために開いておるのであります。もう一度その点を明確にしていただきたい。
  145. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 今の横山さんの御質問は、日本経済の行き過ぎ、これをどうして早く予見して、こういうことのないようにしなかったのか、こういうところにあると思うのでありますが、これは、私の考えによりますれば、経済を動かしております諸機能——あるいは機関というてもいいのでありますが、そういう諸機能の自動調節的な動きというものが、調和と機動性を欠いておったところに私は一番根幹があるだろう。同時に、内外の経済の動きに対して、悪いなら悪い方向を早くキャッチする、つかむという機能が欠けておった。それで、こういうふうな轍を再び踏まないように、今回は特に企画庁に予算を差し上げまして、内外の景気情勢というものをすみやかに把握する、そういう局も一つ作っていただいて、そうして、ここにできるだけの諸統計整備もしていただく。むろんこういうふうなことばかりにたよっておってもいけないかとも思います。よほど注意を要しますが、今こういうふうに内外の経済は動きつつある。従ってこれに対して、経済を動かしておるいろいろの機関や機能は、これに対応するような処置をすみやかに調和的にとれ、こういうふうな行き方をすることによって、経済の行き過ぎというものはよほど是正されていく、私はかように考えまして、そういうふうな施策を今進めておるわけであります。幸いにしまして、今後における経済の状態並びに金融の情勢も、そういう自動調節作用並びにこれらに参与する経営者自体の反省によりまして、十分行き過ぎを犯さないようにすることが可能であるという確信を今持っております。
  146. 横山利秋

    ○横山委員 今の質疑応答で、あなたは二つのことを明らかにされました。一つは、どういうつもりでおっしゃったかもしれませんけれども、こういう景気の波動というものは、資本主義、自由主義にはある程度つきものであって、社会主義のようなところならいざ知らずということが第一点であります。つまり景気というものを、経済の仕組みの中で解決をしなければだめではないか、こういうふうに結論づけられると私は存ずるのであります。このことは、わが党がかねてから主張しておることでありまして、かりに今日社会主義の世の中へすぐにいかないとしても、少くとも経済の計画性ということ、ないしは貿易の相手を計画性あるひずみのないところにこれを求めるということ、ということは、大臣も今の言葉の中にうなずかれる点が多いと思うのであります。  第二番目の点は、あなたのおっしゃるところは、この経済の展望についての調和と機動性の問題であります。今大臣は、それをたな上げ資金の方で結びつけようとしていらっしゃると思うのでありますけれども、少くとも昨年の池田財政の場合にでも、あなたの言うところの調和と機動性の予測が明確であるならば、かかることはあるまいにということは痛感をされるわけであります。今あなたは、この調和と機動性を一つの方針として持っておられるようでありますけれども、たな上げ資金——これはあとで論じまするけれども、たな上げ資金一つがそれであるとは私は考えません。あなたの言うところの将来の調和と機動性について、どういう点を今後検討をなさろうとするのか、どういう点を準備をなさろうとするのか、その点をさらに明らかにしていただきたいと思います。
  147. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 この点は、私はかように考えております。一つ金融面であります。金融面におきまして、今後、私どもの想定によれば、三十三年度は一億五千万ドルの黒字になる。言いかえれば貿易が出超を続ける。むろん徐々ではありまするが、それを意図しておる。そうしますと、貿易の出超から金融がゆるむということも当然想定をされます。従いまして、こういうふうな機会に、適当なときに、私は預金支払い準備制度というようなものも導入をする。それから、そういうふうな情勢の推移に応じて、日本の金利体系というものも、中央銀行から市中銀行を通じて一応の整備をなし得るだろうと考えております。従いまして、日本銀行の公定歩合の上下というものも、客観的な経済の情勢に応じて、きわめて適切に機動的に行い得るだろう。これが従来ファンクションしておりません。さらに、むろん公開市場政策も今後とるように、これは金利体系が秩序を保てれば、市場で十分消化し得る短期証券も発行が可能でありますから、そういう点も私は考えまして、金融市場を中央銀行において十分コントロールしよう、こういうような態勢を作り出そうと考えております。  もう一つは、これはある意味において、社会党の方々の御意見によるところが多いかもしれません。私はどこの党であろうと、いいことはいい、間違いないのですから、そういうふうにしたいと思っております。それは、やはり経済に具体的に計画性を与える。従来、この経済の行き過ぎにしましても、たとえば企業事業計画というものが必ずしも明確でないのです。それぞれの企業はそれぞれの計画を持っておる。一方資金面では、必ずしもこれにマッチしない。こういうこともありますので、企業について計画性を与えて、年度を通じてどういうふうな事業計画を持っておるか明らかにしまして、そうして基幹産業に対する資金の需要というものをまず測定して、これを確保するように、これに応ずるように資金が動いていく、それには、資金の調整委員会資金審議会を活躍させる。大蔵大臣としては、これに引き続いて十分な行政指導を与えていく、こういうふうな考え方をいたしております。
  148. 横山利秋

    ○横山委員 大臣のきわめて示唆に富む、重要な御意見を伺いました。その中で一、二お伺いをしておきたいのは、最近公定歩合の早期引き下げということが新聞の社説なり論壇に出ております。ここに出ておりますことは、「いろいろな批判があるだろう。世界的に不況が深まればこそかえって利下げの必要がある。現に各国中央銀行はそれぞれ公定歩合引下げの方向を示しているのではないか」「いちばん問題になるのは公定歩合引下げが内需を刺激するかどうかの点であろう。現状からいえば、ここまで沈静化した内需が利下げがあったからといっていまさら起るまいとみたいところではある」、こういう意見がちらほらいたしたのであります。これは、先ほどちょっと触れられたのでありますが、経済の計画性の中で、こういう考え方が今あなたの頭の中にはあったのであるかどうかということを、第一に伺いたいのであります。  第二番目に、やはり今経済の計画性という建前で、わが党の主張に寄られたのかどうか知りませんけれども、その意味で、最近新聞で言っていらっしゃることに、財政調査会を新たに設置したいという構想があります。一昨々日でありましたか、予算委員会において、岸総理大臣またこの問題に触れられて、この調子ではいかぬ、従って、この際一つ税の面なり財政の面なり、総合的に長期的な計画を立てなければいかぬ。これは、予算編成のときの偉大なる経験によって言われたのだろうと思いますけれども、この二点について、大臣の持っていらっしゃる考え方を承わっておきたいと思います。
  149. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 この公定歩合の点ですが、これは、先ほど私は原則的な議論をしたのでありますが、今は、日本経済は、何も不況に陥っておるとは考えておりません。これは、やはり行き過ぎを是正する過程にあると思っておるのでありますから、この過程において、公定歩合を引き下げるというようなことは考えておりません。これは、もう少しそういう過程が進んで、経済が安定をいたしまして、そうして輸出の見通しがはっきりしてき、これならというようなときで、同時に輸出面から日本金融市場がゆるんでくる。しかもそれが持続性を持つというような、そういう場合においては、そのときの金利体系の整備をまずすることが大事である。たとえばオーバー・ボローイングとかオーバー・ロン、こんなものは、むろん先に解消しなければいかぬ。そういうものを解消して、幾分整備ができた暁において考えてもいい。そういうことは望ましいことである、私はこう思うのであります。  それからもう一つ調査会の点でありますが、これは、何も今度の予算編成等についてという、そういう小さい考えからではありません。これは、私はこういう仕事に終戦以来長い間携わっておるのですが、どうもこの十幾年というものは、何だか継ぎはぎ継ぎはぎでものをやってきた、どうもそういう感じが強い。そこで、国力も相当になりましたから、この辺で根本にさかのぼってものを考えて解決していくというようなことを考えたらどうだ。こういうふうな見地から、私は適切な調査会を作ることはいいだろうと思っておりますが、なおこれについては、慎重に検討を加えた上のことにいたしたいと思います。
  150. 横山利秋

    ○横山委員 継ぎはぎを続けてきたから、この際根本的に財政のあり方について検討をしたい、これはごもっともであります。これまた、私どもが前から主張しておるところであります。ただあなたのおっしゃる根本というのは、一体どういうことなのか、少し承わっておかなければなりません。  確かに今日の予算は、ことしの予算よりも長期にわたって支出を要する予算であります。たとえば恩給なんかそうであります。もうすでに来年の予算を制約しておるわけであります。一方において収入の方はどうか。これは、あなたがことしたな上げ資金というものをもって、そして来年の余裕を考えておられるかどうか知りませんけれども、将来の予測はできません、歳入が予測できないのに、歳出ばかりがどんどん、ことしよりも来年、来年よりも再来年と膨脹して、将来の予算を拘束しておるのであります。一体大蔵大臣として、このようなことをなぜむげに許しておるのかということであります。今あなたが将来にわたって根本的に一つ考え直してみるといったところで、その将来を束縛されてしまって、かりに来年多少の自然増収があったところで、もうそれは使途が予約されておる。こういう状況の中で、一体あなたはどういう根本的なことを考えようとなさるのか、その今後の検討は歳入及び歳出にわたるのか、あるいは国家財政、地方財政両面にまでわたるのか、それらをいま少し明らかにしてもらいたいと思います。
  151. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 それらの内容につきましては、今後十分検討を加えるのでありますが、根本というような点をちょっとわかりやすく一つの例で申し上げますれば、これは、私前から実は主張もしておったのでありますが、たとえば社会保障ということは、どの内閣にしても、またどの党にしても、当然最も重点的な政策であることは言うまでもありません。こういうものについては、やはりほんとうに統一ある基本的なものを持つべきじゃないか、そしてその一環として、国家のいろいろな給付関係考えていく、こういうふうにやるべきじゃないかという意味合いにおきまして、やはり政策の根本から一つこの際考えるのがいいんじゃないか、こういう意味であります。
  152. 横山利秋

    ○横山委員 率直に言って、大臣のおっしゃることはよくわからないのです。抽象的に、この際根本的に考えなければならぬという点については、あなたも私も異議のあるところはないと思うのであります。ただ私が心配をいたしますのは、確かに根本的に考えなければならぬけれども、今のあなた方の立場としては、もう白紙に地図を描くわけにはいかぬのではないか。白紙に地図を描き得ないのに、今ここに財政調査会なるものを設置して、何か白紙に地図を描いて、国民に幻想を抱かしめるようなこと、あるいは党内に摩擦を生ずるようなこと、こういう結果に結局はなりはしまいか。この際財政調査会を設置するならば、ものの順序として、あるいは多少前途に支障があっても、この方針でいくという点を明確にしなければ、絵にかいたぼたもちで、また国民に幻想を抱かせるだけに終ってしまうのではないか、これが言いたいのであります。従いまして、私は趣旨としては賛成をいたします。どういうことをお考えになるか知りませんけれども経済の仕組みにわたって、財政の根本にわたって、この際、戦後十数年たったのであるから、いろいろな行きがかりや将来の拘束を捨てて考えることについては、大いに賛成をするけれども、一体どこまで大臣が腹を持っていらっしゃるのか、どこまでそれをやり遂げようとしていらっしゃるのか、大いに疑問とせざるを得ない。この点について、私の杞憂であるか、それともほんとうに確信を持って当ろうとなさっておるのか、それを一つ伺いたいと思います。
  153. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 こういう点になりますと、これは政府として、基本方針をきめなくてはなりません。また政府全体の協力なくしては、これはなかなかやれるものじゃありません。従いまして、今後政府においてとくとこれに検討を加えまして、そういう調査会を作るのがいいか悪いか、また作るとすればどういう内容のものにするかということをきめていきたいと考えております。
  154. 横山利秋

    ○横山委員 私がそういうふうに問い詰めれば、何かうしろへ下ってしまわれて、確信のないような御答弁になるのは、きわめて遺憾であります。しかし、これは長く論じようといたしません。  そこで、今二、三の点に触れて御質問をしたわけでありますけれども、これからいわゆるそういう背景のもとに、私は税の問題について質問をいたしたいのでありますが、今私どもの手元に政府から提案いたされました諸税法案が出ております。一応税制改正のことを抜きにいたしまして、白紙で——これはことし、来年と、将来にことしよりもたくさんかかっていくという問題ではありませんから、税は割合すなおに議論ができるから、一ぺん一つ大臣に、税についてのものの考え方質疑をいたしたいと思うのであります。私はよくこの委員会で、あなたにいやみを申しました。そのいやみというのは、一萬田さんという人は、税については政策的な減税ばかりおやりになって、公平な減税をなさったことがない、こういうことを私は絶えず主張しておるのであります。今日の税制改正も、あとで触れますけれども、そういう点は、もう全くそればかりだと私は思っておるのです。これからは、一つ大臣、どういうようにお考えになるのかという点です。と言っても抽象的でありますから、二、三、私の意見を含めて聞いて参りたいと思うのであります。  私は、原則的に、今日の日本の税というものは、戦前に比べて非常に高いということが、国民の第一の問題であると思う。第二番目の問題は、非常に不公平だということ。第三は、税のことはわからない。何か税務署が来ていろいろ言うから、いやらしいから、まあごまかすことを考えるけれども、実際問題としては、大刀打ちができぬほど税制は複雑であって、わからない。だから、何か納得ができないような気がするという、三つの点に、国民の税に対する考え方が帰一していると思うのであります。今日あなたが、二回、三回おやりになりました税制は、第二番目の不公平ということにさらに輪をかける。一方では、もちろん政策的な立場、理論というものがありましょうとも、不公平、従ってますますわからなくなる、税制は複雑になる、こういうことになって参ると思うのであります。大臣は今後、これはもう率直な御意見でけっこうでありますが、税についてどういうふうにお考えになっていられるか、今後どういうふうにしようとしていられるのか。新聞の記事によれば、歳入についても、個々の税目でなく、税制の根本について検討の必要があり、これらを含めて、財政全体について調査会を持って検討したいということを言うておられるのでありますけれども、どういうふうにこれから税というものについて検討をなさっていこうとするのか、その検討の根幹となる大臣考え方はどういうものなのか、それを承わっておきたいと思います。
  155. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 国の歳出需要ということをしばらくおきまして、税のことを基本の点について考えますれば、今御指摘のように、やはり日本の税は重いと思います。ですから、これは事情が許せば、やはり減税をすることは賛成であります。  それから公平ということを言われましたが、これは、おそらく政策的ないろいろな特別措置の点が問題になると思うのでありますが、できるだけ早くこういうものは廃止をするという方向にいくことは、私はいいと思います。  それから税が非常に複雑である、なかなか理解がむずかしい。これもその通り。これも、私はやはりやらなくてはならぬことと思っております。  そういうふうなことを入れつつ、今度は、たとえば直接税と間接税との関係はどうなっていくか。あるいは間接税においては、内部の間においてどういうふうに均衡を保っていくか。こういうふうな点を一切あげて税制調査会に諮って、専門家の意見を十分聞きまして善処いたしたい、かように考えております。
  156. 横山利秋

    ○横山委員 率直に申しますが、一つ大臣、気を悪くせぬで聞いてもらいたい。大臣は、税制について今日まで、御経験があまりおありにならない。従って本委員会で質問をいたしましても、税の問題になりますと、率直に申し上げれば、大臣は非常に臆病な答弁しかなさらないのであります。けれども、私はこう思うのです。確かに税の専門家がたくさんおるけれども、結局納税者というものはみんなしろうとなんです。しろうとの素朴な感情というものが、税制の中へ生かされていかなければならぬのであります。ですから、大臣税制の種々雑多なことについて御経験や御知識がおありにならなくても、大臣の胸奥にある常識というものをもっと勇敢にお出しになることを私は希望をいたします。今日まで大臣は、自分の御経験が、日銀とか、あるいは金融の専門家であるがために、ともすれば税をその方向に御利用なさり、税自体としてお考えにならない、そういう欠陥があると思うのであります。私が今申しました、高い、不公平、複雑という三点は、まさに素朴な国民の声であって、大臣も今それについて御了承をなさったし、今後その方向にやりたいとおっしゃるけれども、遺憾ながら今日まで大臣がおとりになった税制というものは、それに全く背反をしておる、私はそう思うのであります。  そこで、きょうあなたがその三点について了承なさったのでありますから、今後の問題について少し質問を進めて参りますが、今後の問題として、まず第一に財政調査会なるあなたの構想と、従来あります臨時税制調査会との関連の問題であります。私どもは、かねてから税というような根本的な問題を、何ら法制化せずに、適当な人間を、大蔵省かあるいは内閣の諮問機関か知りませんけれども、集めてケース・バイ・ケースで諮問をしておるということを私は指摘しなければならぬ。これは、考え直してもらわなければいかぬ。去年の千億減税も、まさに国民の重大関心事を、国会の意見も何ら反映しない、法制化もしていないものにやらせる。そうして、続いて根本的にやるのかと思ったら、それと同じようなものにやらして、あなたの方から諮問があったものだけやるというようなことを、いつまで続けるのでありますか。もしも税制調査会を今後とも続けようとするならば、なぜ法制化をして、こういう構想で今後検討したいということを、われわれの前に提案しないか。もしもそれはやめるならば、あなたの構想の財政調査会で税金を検討するならば、それまたよろしい。この際公正な規正の機関とし、さらに各方面の人材を網羅して、あなたがいうところの根本的な税制改正に一歩踏み出すというならば、その方向にすべきではないか、こう考えるが、いかがでありすまか。
  157. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 大へんありがたく思います。そういう委員会を作るのに、私もやはり法律がいいのじゃないかと思います。御趣旨の点十分考えまして、十分検討を加えましてしたいと思います。
  158. 横山利秋

    ○横山委員 まだ私の質問は中途でありますが、明日質問を継続することにいたしまして、一応終ります。
  159. 足鹿覺

    足鹿委員長 本日はこの程度にとどめ、次会は明十四日午前十時三十分より開会することといたし、これにて散会いたします。     午後三時五分散会      ————◇—————