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松平委員 ただいま議題になりました昭和三十二年二月二十八日、
衆法第六号をもって、
水谷長三郎君外二十三名によって提案されました
商業調整法案について、御説明申し上げたいと存じます。
わが党の
考え方は、この
商業調整法案のほかに、昨年可決されました
中小企業団体の組織に関する
法律、
中小企業組織
法案、それから
中小企業の産業分野の確保に関する
法律案と同時に出しておりますが、これらの三つの
法案を、
一つは共同修正で通っておるわけでありますが、これらの関連
法案というものが、やはり三位
一体的に運営されて、初めて現在の
中小企業の置かれておる悩み、そういうものを解決することができる、こういう立場に立っておるのであります。
今日におきましても、
中小企業の実態は申すまでもなく、これはほとんど慢性的な不況に落ち込んでおります。すなわち、過度の競争とか、あるいは原料高の製品安、金融難、税金難、または
設備の不備とか
技術の後進性のほかに、いわゆる大資本の圧迫というような、数知れない重圧がありまして、これらの影響がことごとく
中小企業へしわ寄せされてきておる。そうして、その根本
原因というものは、やはり国の施策が非常に大きな影響を
中小企業へ寄せておる、これが根本
原因であると私は
考えておるのであります。
そこで、御
承知のように、昨年提案いたしましたものの中で、
中小企業の組織に関する
法律は、去る第二十七臨時国会において、両党の共同修正によりまして、
中小企業団体の組織に関する
法律として成立をしたことは皆さんも御
承知の通りであります。そこで他の二つの
法律を同時に成立せしめなければ、
中小企業の安定を確保するというわけに参らない、かような立場に立っておりますので、
商業調整法案ときわめて重要な関連のある
中小企業の産業分野の確保に関する
法律案自体も御説明を申し上げなければ、画龍点睛を欠く、かように
考えておるのであります。
そこで、順序といたしまして、やはり今国会で継続
審議中であるところの、
中小企業の産業分野の確保に関する
法律案を、簡単に御説明申し上げます。
この
法律の目的とするところは、
中小企業に適正な産業の分野を与えていく。この産業の分野に対しては、大企業がこれに進出していくことを規制しなければならない。つまり、
中小企業の果すべき役割に対して、大企業がどんどん進出してくる、これを禁止していかなければならないという
考え方に立っておるのであります。
そうして、その基準は、
生産方式が、特に
中小企業に適正であるというように思われる業種、そうして、従来の
生産実績が、中くらいの規模以下の業種に対しては、原則的に
中小企業がそういう分野に進出していくべきであって、大企業がそこへ入り込んでくるということは、
法律によって規制しなければならぬ、これが骨子であります。しかしながら、現在においては、統計も非常に不備である。それから複雑な諸要素を
検討する必要がありますので、当面は、
中小企業安定法に指定する業種、それから機械工業振興臨時
措置法によって指定されておる業種、または当然
中小企業的な中くらいの規模でいいというような要件を備えていると
考えられる業種、すなわち、たとえば手工業であるとか、あるいは地方的な特産であるとか、あるいは環境衛生に特に
関係のあるというようなものが、
中小企業としては適正な業種である、こういうふうに指定したい。そしてそれを大企業が圧迫するということを押えたい、こういうのであります。
しかし、この業種は、将来、経済の発展とともに、ますますこれを広げていかなければならぬが、とりあえずは、先ほど説明申しましたような業種というものを、特に保護を加えるべき対象の業種として指定をしたい、かように
考えておるのであります。
こうして指定された業種に対しては、先ほど申したように、大企業が新しくその業種の事業を開始するとか、あるいは
設備を拡張するとかいうことを禁止しておるのであります。また資本的に、人的に支配している
中小企業たる子
会社や、あるいは代理店等を通じて活動しようとする脱法行為もこれを許さない、こういうことを内容といたしております。
それから、指定業種については、現に行なっている大企業の事業活動が、
中小企業の存立に重大な悪影響を与えるという場合には、主務大臣はこれに対して制限の命令を出すことができるようにしてあります。しかしながら、
中小企業の保護を重視するあまりに、わが国の経済の近代的な発展を阻害したり、あるいは一般消費者大衆の利益を無視するというような結果になってはいけませんので、主務大臣は、
中小企業者や大企業者、労働者、
学識経験者、国
会議員等によって、いわゆるこれらの国民各階層からの代表によって組織される
審議会に諮って、そうして実施の公正を期するように
審議会を設けることになっておるのであります。
そこで、今の問題の商業調整法でありますけれども、全文十三カ条の
法律案でありますが、この
法律案の目的は、卸売業と小売業及び小売業相互の事業分野というものを調整しなければならない。この調整によって適正な流通秩序を維持して、そうして一般小売業者を保護しようというのが、この
法律案の目的であります。
しからば、この事業分野を調整するその基準、発生した場合はどうするかと申しますと、主務大臣が、その業種と地域とを指定することになっておるのであります。すなわち、これこれの業種あるいはこれこれの地域においては、先ほど申したように卸売業と小売業、あるいは小売業相互の事業分野というものを制限調整することを、主務大臣が行い得ることとしております。こうして指定された地域と業種についは、製造業者及び卸売業者に対し、その小売部門の新規開業あるいは拡張というものを禁じております。また同時に、資本的に、あるいは人的に支配する代理店等を通じて行うところのいわゆる脱法行為、これを禁じておることは、先ほど産業の分野を確保する
法律案について御説明申したところと、同様であります。次に、公設市場あるいは私設市場の乱立が、最近特にひどくなってきておりますが、これらの市場の
設備の拡張私設というようなものは、当該行政庁の許可事項としなければならぬ。そうして一般小売業者との間に過当な競争を行なって、小売業者を圧迫するというようなことにならないように留意をしなければならない。と同時に、最近は、御
承知のように、公設市場もしくは私設市場同士の乱立が非常に多くありまして、市場間の過当競争ということが、非常に問題になってきておるのであります。しかし、これらも、今申しました市場の規制によりまして、市場間の過当競争をも、あわせて解決していきたいと
考えておるのであります。
次に、消費生活協同組合法等特別の
法律に基いて小売業を営んでおる組合と、一般小売業者との間に紛争が生じた、こういう場合には、その調整のために、行政庁は、中央または地方に商業調整
審議会を設けることになっておりますが、この商業調整
審議会によって、その意見を聞いて、必要な勧告を行なって、それらの紛争を解決していく、こういう
規定になっておるのであります。
最近特に著しい百貨店の進出に対しては、百貨店法があるわけでありますが、しかし、この百貨店法の不備に乗じて、いろいろな脱法的なことが行われて、それによって、小売商を圧迫しておるわけでありまして、これについては、別途、本
商業調整法案とは別な
考え方で、これを規制して参らなければならぬというふうに
考え、百貨店法の一部
改正案が、すでにこの国会に提案されておって、現在継続
審議中であることを、あわせてここで申し上げたいと存じます。
この
法律が一般消費者に及ぼす影響は、きわめて大きいのでありますので、その運営の公正を期するためには、どうしても中央地方に、小売業者あるいは製造業者、卸売業者、消費者、労働者、
学識経験者というような各界の人の代表を選びまして、これによって商業調整
審議会というものを設けて、そうして主務大臣または都道府県知事の諮問
機関とする旨をあわせて
規定をいたしております。
かようにいたしまして、この商業の分野の調整をはかり、あわせて、先ほど申しましたように、大きな産業、大企業と
中小企業との分野をあわせてこれを確保していく。こういうことと両々相待って、私たちは、現在悩んでおられるところの
中小企業者の向上と発展に資していきたい、かような
考え方でこの
法律案の目的並びに内容ができておるのであります。
以上、簡単に提案の理由並びに内容の概要を御説明申し上げました。何とぞ皆さん方の慎重な御
審議によって、すみやかに可決されんことをお願いいたします。