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1958-03-26 第28回国会 衆議院 商工委員会 第22号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年三月二十六日(水曜日)     午前十時三十二分開議  出席委員    委員長 小平 久雄君    理事 阿左美廣治君 理事 内田 常雄君    理事 笹本 一雄君 理事 長谷川四郎君    理事 加藤 清二君 理事 松平 忠久君       有馬 英治君    大倉 三郎君       菅  太郎君    神田  博君       齋藤 憲三君    櫻内 義雄君       福田 篤泰君    南  好雄君       佐竹 新市君    田中 武夫君       田中 利勝君    永井勝次郎君       帆足  計君    水谷長三郎君  出席国務大臣         通商産業大臣  前尾繁三郎君  出席政府委員         総理府事務官         (公正取引委員          会事務局長)  坂根 哲夫君         通商産業政務次         官       小笠 公韶君         通商産業事務官         (繊維局長)  小室 恒夫君         中小企業庁長官 川上 為治君         通商産業事務官         (中小企業庁振         興部長)    今井 善衞君  委員外出席者         大蔵事務官         (主計官)   相沢 英之君         大蔵事務官         (主税局調査課         長)      細見  卓君         大蔵事務官         (銀行局特別金         融課長)    磯江 重泰君         通商産業事務官         (重工業局次         長)      佐橋  滋君         通商産業事務官         (中小企業庁振         興部金融課長) 安達 次郎君         労働事務官         (労政局労政課         長)      坂本 一衛君         労働事務官         (職業安定局失         業保険課長)  阿部 泰治君         労働事務官         (職業安定局雇         用安定課長)  竹内 外之君         専  門  員 越田 清七君     ————————————— 三月二十六日  委員大倉三郎君、永井勝次郎君及び福田昌子君  辞任につき、その補欠として山口喜久一郎君、  柳田秀一君及び多賀谷真稔君が議長の指名で委  員に選任された。     ————————————— 三月二十五日  小売商業特別措置法制定反対に関する請願(原  茂君紹介)(第二二二三号)  同(岡田春夫紹介)(第二二六七号)  小売商振興ため法律制定に関する請願外一  件(椎熊三郎紹介)(第二二六八号)  同(植木庚子郎君紹介)(第二二四〇号)  同(北村徳太郎紹介)(第二二四一号)  同(田中正巳紹介)(第二三五五号)  同(前田正男紹介)(第二三五六号)  小売商業特別措置法制定促進に関する請願(牧  野良三君紹介)(第二二四二号)  同(椎名隆紹介)(第二二四三号)  同(今井耕紹介)(第二三五一号)  同(高橋等紹介)(第二三五二号)  同(野田卯一紹介)(第二三五三号)  同(林讓治紹介)(第二三五四号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  小委員会設置に関する件  小委員及び小委員長選任に関する件  繊維産業不況対策に関する件      ————◇—————
  2. 小平久雄

    小平委員長 これより会議を開きます。  お諮りいたします。この際、理事の協議により、繊維産業不況対策に関する件について、調査を進めたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 小平久雄

    小平委員長 御異議なしと認めます。よって、繊維産業不況対策について調査を進めます。  質疑に入ります。質疑の通告がありますので順次これを許します。長谷川四郎君。
  4. 長谷川四郎

    長谷川(四)委員 大臣は、五、六分だけれども来るように話してあるのだが、特に委員長の方から言ってもらいたい。従って、きょうは、繊維の問題は、そう軽々に処理できるべき問題ではないので、大臣の確固たる信念の上に立って、推進していかなければならない大きな問題だと思います。従って、今も予算委員長と約束をしてきましたが、必ず十一時には出席をさせる、こういうことですから、委員長の方から、特に督促をしていただきたいと思います。  それでは、局長さんから逐次承わって参ります。  申し上げるまでもなく、昨年の春以来の繊維業界不況というものは、実に目を向けられないほどの実情であって、政府もこれに対応しまして、恒久策を講ぜられているが、現実の面においてどうするか。恒久的な対策としては、逐次その目的を達せられるであろうけれども現実の面をどうするかということが、一番私ども申し上げたいことでありまして、一年先に飯をくれるから、当分この一年間は水を飲んでいろといっても、水だけで生命を保つわけにはいかないと思う。業界としても、そう御無理を言っているのではないのであって、麦のおかゆでもいいから、命をつなぐだけのことはしてもらいたい、こういうのが、業界言葉でございまして、政府実情、また経済全般の面というものを考慮に入れた言葉であろうと、こう考えるのであります。こういう点について、果して現在の通産省として、それだけのものを実情をキャッチしているかどうかというところに、私は疑いを持たなければならない。こう思うのでございまして、現在の内地取引、これらにつきましても、手形というものが非常に長期になってしまって、また返品値引が、特にこのごろは著しく増大をしてきて、その不公平な取引というものを、このまま放置することが許されるかどうか。こういう点について、実態というものを政府調査をしてあるかどうか、こういう点を、まず一点伺ってみたいと思うのであります。
  5. 小室恒夫

    小室政府委員 繊維全般不況、その中で、特に内地物取引条件が非常に悪化しておる。そういうことについての実情を承知しておるかというお尋ねでございますが、御指摘内地向け織物、特に絹、人絹織物等については、従来から手形長期化する傾向があり、あるいは問屋と機屋さんの間で、不当返品とか値引の要求とかいうようなことが、かなり多かったわけでございますが、特に最近繊維不況が深刻化するに至りまして、その度合いが非常に加重しておるということは、関係組合でもって調査しております手形の日数の調査等においても、その一端がうかがわれるのでありまして、たとえば、三十年の五、六月のころでありますと、百日以上の手形というものは、操作されているものの中で二割程度であったものが、最近では四割、五割、あるいはそれを上回るような調査結果が出ているということで、この調査は、完全にあらゆる取引を網羅しているとは申せませんが、一般傾向を察知するに足るものであると考えるのでございまして、この面について、不当な不公正な取引ということを、できるだけ是正するように、関係方面とも連絡して、実情をさらに調査し、対策を講じたいと考えている次第であります。
  6. 長谷川四郎

    長谷川(四)委員 取引改善委員会調査によりますと、三十三年の一月、二百八十八社のうちに、百日以上のものが百五十八、従ってパーセンテージでいうならば五五ないし、二月、三月に入って六〇から七〇%が長期にわたっている。こういうふうに調べられていると思うのでありまして、こういうふうな点等につきまして、そのままに放置しておくということは、通産省としても、繊維局としても、つまり通商産業大臣としての責任の上に立って、実に容易ならない問題だ、こういうふうに私は考えるのであります。また、かく絹糸の暴落に伴いまして織物業界が深刻なる不況に見舞われているということは、申し上げるまでもなく、これらに対して、この不況というものが、逐次いろいろな面に変ってきている。先行き不安ということのために、取引はほとんど停止の状態になって、生産者は、まさに投げ売りだとか乱売だとか、その段階に私は入ってきていると思うのでございまして、政府として流通部門の公正なる取引、この秩序の確立ということ、市場対策について、すみやかに適当なる措置を講ずべきではないか、こういうふうに考えるのでございますが、その点につきましては、いかがでございましょうか。
  7. 小室恒夫

    小室政府委員 ただいまも申し上げましたように、従来からも、取引条件の悪い例は、相当ございましたけれども、最近特に顕著に悪化している状況でありますので、関係の団体にも十分警告を発しますが、こういうような問題については、公正取引委員会中小企業庁というところとも、十分連絡をとって、善処したいと考えている次第であります。
  8. 長谷川四郎

    長谷川(四)委員 どの程度かといいますと、大体御承知のように借入金、たとえば中小企業が借り入れをする金利が、大体一割強でありまして、従って、長期百日から百五十日、三百日近い手形をもらって、その手形の割引、これが大体二銭七厘でございます。そうなって参りますと、実に金利だけでも、つまり、二割以上のものが金利に食われていっている、こういうこと。さらに、業を営んでいく上において、いろいろな、たとえば計理士等を使っている。こういう面につきましても、非常に計理士の料金というものが、このごろは高まってきている。あわせまして、衣食住という方にはほとんど回らないというのが、実情ではないだろうか。どの御商売を見ましても、今二割以上の利益のある御商売は、なかなか私は見受けることができないと思う。こういうわけであるので、まず手形というものについて、どういう考え方を持っておるか。私は、大蔵省のお方に聞いてみたいのだが、現在の手形の振り出しが、無制限に二百日だとか二百何十日だとか、百何十日から始まってそうなってきているのだが、そういうものは、放置しておいていいのか悪いのか。これは手形法にはどういうことになっているか、その点を承わつてみたいと思います。
  9. 小平久雄

    小平委員長 さっきから再三催促しているのですが、大蔵省はまだ来ていないのですよ。
  10. 長谷川四郎

    長谷川(四)委員 それでは、大蔵省はあとにします。  繊維局長さんに、もう一つ伺いたいのですが、内地織物の深刻な不況を打開するために、思い切った生産制限に、局長さんの方でもずいぶん御努力をなさっておるのですが、どうしても、いま一段と思い切った生産制限を当然とらなければならないと思う。そうなってくると、中小企業に対する裏づけというものがなければ、思い切った生産制限は行えないのじゃないか、実行が困難であろうと思うのでございまして、政府はどういうふうに積極的な手を打つか。打つのには、どういうふうな資金繰りをやったらば妥当か。すぐ行う、行わないは別としても、局長の御意見は、どう手を打ったらばその生産制限が完全に行われていくか。こういう点を伺って、御意見によって、さらに大蔵大臣等とも直接交渉してみたいと思うのですが、その点について、一つ局長の御意見を伺ってみたいと思います。
  11. 小室恒夫

    小室政府委員 他の繊維についても、通じて言えることでありますが、需給が不均衡でありますから、何といっても需給調節措置操短とか休機とかいうことを、実情に即して思い切って実施することが肝心でありますが、休機をいたし、あるいは一部休業をいたす場合、労務者に対する手当をやる、あるいはその他、その間において支払わなければならない最小限度の経費というものを、金融的に見てやる必要が起って参ります。あるいは操業の水準の高かった時代に買い入れたものの決済資金というものを、操短のときにおいては、直ちに予定通り支払えないような事情も出てきますから、そういう部分に対して、必要最小限度金融を見て参らなければならぬ。これは大企業であろうと、中小企業であろうと同じことであります。そういう考え方で、従来も、操短実行を確保するために、金融をつけるように、私どももできるだけ努力して参ったわけでありますが、お話の内地向けの絹、人絹織物につきましては、先般、北陸地方におきまして、輸出用の絹、人絹織物に対して、ある程度考えましたと同じような線で、今の需給調節実施ため金融というものを、考えていかなければならぬと思いますが、何といっても、その前提としては、休機なり操短なりを実行して、実際の効果を上げるような励行をされることが非常に肝要であろう。その点についての態勢が固まって参ることが、先決条件であろうとは考えられるわけでございます。
  12. 長谷川四郎

    長谷川(四)委員 中小企業庁長官にお伺いします。お聞きの通りでありまして、先般来北陸三県に、中小企業金融公庫、また商工中金代理貸しで四億をしております。従って、三割休機調整資金として、六カ月据え置きで三カ年月賦、こういうことになっておるのですが、現在の関東全般にわたる、この地区よりもはるかに零細な業者というものを、今まのあたり救うのは、その方法ただ一つあるのみだ、こう考えるのですが、これらを救うのは、やはりあなたの手によって、あなたの力によってこれを救ってもらわなければならないのであります。であるから、あなたにその用意とか、それに対する考え方というものがございますならば、明らかに示していただきたい。
  13. 川上為治

    川上政府委員 私どもの方としましては、前々からこの問題につきましては、非常に関心を持っておりまして、繊維局の方と、十分打ち合せをいたしまして、何とか善処いたしたいというふうに考えておりまして、現に商工中金等を使いまして、現地の事情をいろいろ調査いたしております。その調査によりまして、大体どれくらい金が要るかという点を厳密につかみまして、私どもとしましては、それに対しまして、商工中金の金なり、あるいは中小企業金融公庫の金なり、そうした方面から極力援助申し上げたいというふうに考えております。
  14. 長谷川四郎

    長谷川(四)委員 そういたしますと、方法でありますが、大体北陸三県に行なったようなその方法ならば、それだけの用意が可能である、こういう意味にとってよろしゅうございましょうか。
  15. 川上為治

    川上政府委員 これは北陸地方につきましてその措置をとりましたので、大体これと同じような行き方になるかと思うのですが、そういうことでありますれば、私どもとしましても、同じような措置をとっても差しつかえないのじゃないか。また、金額はどの程度になるかわかりませんが、先ほども申し上げましたように、私どもとしましては、極力御援助したいというふうに考えております。
  16. 長谷川四郎

    長谷川(四)委員 繊維局長さんにお伺いいたします。調整法に基きまして織機買い上げでありますが、業者負担、またこのたび政府倍額、一万円のものを二万円政府が思い切って金を出してやって、そうして業者に一万円出しなさい、こういうことに政府に道を開いてはいただいたものの、今日になってみますと、この一万円の負担を、業者負担することが不可能な状態になってきている。冒頭に申し上げた通り、もうすでに水も飲めない状態になっている。こういうようなときなので、この一万円の業者負担というものを、どういうふうな方法か、とっていく方法はないか。先ほども申し上げた通り、くどいようですが、金利というものが、つまり手形のサイトが長くなったために、これに対して二銭七厘という金利を払い、借入金をすれば一割以上の利息を払い、こういうことですでに組合費が納まらなくなってきているような実情でございまして、たとえば、昨年と比較して参りますと、大体組合に納まる金というものは、三分の一というような哀れな状態になってきております。でありますから、この一万円業者負担というようなものを、何らかの方法政府が支弁してやることは、できるかできないか。できる、できないは別として、これだけのものを、ぜひ何とかしてやりたいというのが、私たちの考え方でございますが、局長さんのお考えはいかがでございましょうか。
  17. 小室恒夫

    小室政府委員 ただいま御指摘のような絹、人絹織物業界不況にかんがみまして、補助金の額を、異例なことでありますが倍額に増額いたしまして、しかも買い上げを絹、人絹織機に集中いたしたようなわけでございます。つまり、一万円の負担金というものは、実は本年度昭和三十二年度につきましては、すでに組合連合会でもって、徴収を取りきめた会費の範囲内でもって、この年度についてはまかなえるようなことにはなっておりますけれども、ただ、御指摘のように、組合において会費をきちん、きちんと徴収していくということが、最近の不況にかんがみて、かなり困難な情勢でもありますので、これは連合会でもって、各組合別銀行等から金を借りた場合に、その利子を負担するとか、全体として、連合会としてこの負担金組合単位徴収と申しますか、調達が可能になるように、特別の考慮も払ってもらっておるわけであります。私は、本年度に関する限り、そういうような措置と相待って、必要な負担金の額は、予定通り調達できるものというふうに考えておるわけであります。
  18. 長谷川四郎

    長谷川(四)委員 業者も、決してこれを納めたくないというのではないのであって、しかし、現実の面としては、何ともすることができない。であるから、これは、たとえば将来——将来といっても、そう長いことはないと思うが、その業界が、不況幾分でも打開できたときに、逐次この分として返還をしていく、そういうような親心あるやり方を、この際やっていただきたい、こういうふうに考えて申し上げたのでありますが、ぜひともその点につきましては、一般の御考慮を、切に私はお願い申し上げたい、こう考えております。  もう一つ輸出の面でございますけれども、今日、輸出なくして、九千万国民の生活の安定はない、こういう上に立って、輸出振興が叫ばれておるのでございますけれども、その輸出に対して、今日この不況と相待って、いろいろな面が現われてきている。それがために、輸出が不振になってきている、こう考えられる。まず原糸というものの問題でありますが、原糸というものの価格を、政府が一応のてこ入れをしました。そうして、てこ入れをして、価格は安定をしているやに見えますけれども、今日は、いまだ下回っている。のみならず、下回るであろう、下回るであろうというので、取引というものがここに行われていない。海外との取引というものが沈滞をしている。こういうことになってきていると思うのであります。こういう面に対しまして、輸出というものに対して見合う、つまり長期見通しの上に立って、安定価格というものを、私は決定をすべきではないか、こういうふうに考えるのであります。今日、原料高制品安、またそれがため過当競争というようなことが行われて、輸出を非常に大きく私は阻害をしていると、こう思うのでありますから、どうしてもこれには、輸出に見合う長期見通しの上に立った、つまりメーカー生産コスト——私はメーカー、つまり人絹会社そのものに、損をして出せというのではないのであって、要するに、その生産価格にマッチした、輸出なくして国民が生きられないのであるから、幾分かを認めた、その上に立った糸価というものをきめていただきたい、こう思うのですが、その点についての局長のお考えは、いかがでございましょう。
  19. 小室恒夫

    小室政府委員 御指摘の点は、まことにごもっともでございまして、私どもも、原糸価格は、製品の長期にわたる輸出を確保するベースできめるべきである、というふうに考えております。あるいは、現在の人絹糸の値段が、高過ぎるというような御批判があるかとも思いますが、これは、もちろん現状においては、コスト以下で人絹会社としては出しておるのでありますけれども、ただ、今の相場というものは、非常な滞貨とか、非常な不況ということを前提にしての相場でありまして、私どもは、四月ないし六月の三ヵ月の間に、繊維全般の市況の基調を変えて参りたい、そういう意味で、操短も強化し、その他の措置も併用しておるわけであります。この現状の非常に不安人気の横溢している時期における織物相場、あるいはそういうことを前提にして糸の相場考えるということは、今の御指摘の、長期に見た適正価格ということからいえば、多少違うのではなかろうか。そういう意味では、多少御不満はあるかもしれないけれども、現在の人絹糸価格の線が、高過ぎるというふうに私ども考えておらない。輸出用原糸価格が、高過ぎるとは考えておらない、ということを申し上げます。
  20. 長谷川四郎

    長谷川(四)委員 私は、こういうどさくさのときに、そういうものを立てろ、こういう意味ではないのでありまして、こういうふうなどさくさになった原因というものも、その点から現われてきていはしないか。従って、この際であるから、もっと安定した価格、たとえば、今私が申し上げた通りであって、つまり人絹会社生産コストというものの厳密な調査の上に立って、当分——株式会社とは何ぞや、これは当然利益を配当し、利潤を目的とするということは明らかなことである。であるから、私は損をさせろというのではない。お互いに国家、国民ために、公器として営業を営む上においては、お互いがこの際輸出というものに大きく開眼をして行う。であるから、糸価というものを、ここで会社に損をしない程度で、それで輸出が増大できるような、長期なものを確立すべきである、こういうふうに私は申し上げているのであります。従って、人絹糸輸出量は、大体糸としての輸出量は年間一千六百万ポンドから二千万ポンドといわれている。これを織物にするために使用する糸というものは、八千万ポンドから九千万ポンドである。こういうものでありますから、織物にして出す方が、巨額な外貨の獲得に貢献しているということは、争われないところだと思うのであります。でありますから、私は原糸輸出には、人絹会社そのものについて、相当恩典が与えられていはしないか。たとえば、原糸国内価格よりもはるかに安い価格輸出をしていく、さらにパルプというもののリンク制をとっている、優先外貨を与えている、こういうようなことにもなっている。従って、その優先外貨の中には、つまり、国内価格で買い受けて生産をしたその分までが、優先外貨としてその六社の中に割り当てられてある。こういうようなところにも矛盾というものがありはしないか、こう私は考えるのでありまして、こういう矛盾というものを、中小企業にしわ寄せをするのでなくして、お互い業者で分け合ってこれを打開していきたい。こういうふうに考えて申し上げているのですが、その点はいかがでございましょう。
  21. 小室恒夫

    小室政府委員 優先外貨あるいはパルプリンク制、これは一般輸出をやります際に、輸出商社、あるいはその名義において輸出をやった者が、その恩典を受けるという形になっておりまして、ただその最終に帰属するところが、実際問題として人絹会社利益になるか、あるいは機屋さんの利益になるか、商社のふところに入るか、その辺になりますと、現実取引関係といいますか、あるいは力関係と申しますか、そういうようなことに相なりますので、どうしても中小企業の方か、そういう面でもしわを寄せられやすいということは、現実として認めなければならぬとは思いますけれども、その制度自体が、そういうことをねらっているというか、初めから会社に大きな利益を与えるような制度とは、考えておりません。
  22. 長谷川四郎

    長谷川(四)委員 一般の零細といわず、中小商工業者が、日本の人絹会社をつぶしたいなんという考え方は、毛頭持っているのではないのであって、お互い、この際ともに立てるような方途を開拓をしていきたい、こういうのが私の意のあるところでございまして、要するに、申し上げた通りで、国内原糸を使って出血輸出をして、今の税金だって、六二%にも相当する所得税というものを取られておって、その上事業税をかけられている。今日、税外といおうか、いろいろな寄付金というような面が、非常に税よりももっと幅広く行われて強要されている。こういう面も、あわせて考えてやらなければならないと思うのであって、これのために四苦八苦している。であるから、つい投げ売りもしなければならぬ、バイヤーとの取引に無理を言われても、それを実行していかなければならないという苦しさがある。そこに余裕というものを少しも持つことができない状態にあると思うのであります。  だから、たとえば、こういうようなことは考えられるかどうか。前項のことが、たとえば不可能だというならば、輸出金融の何パーセントというようなものを、無利息の融資のワクを作って、それで無利息で貸し付けてやる。そうして産地の強化というか、これを確立をする制度というようなものを作ったらどうか。こういうふうにも考えるのだが、その点はいかがでございましょう。
  23. 小室恒夫

    小室政府委員 中小企業金融を実施する際にも、輸出関係には優先的に実施するとか、あるいは税制の面の輸出所得控除というようなものは、これはもちろん機屋さんの方にも及ぶわけであります。制度として、輸出をした者に別ワクの無利子の金融をやるということは、今日の一般情勢から見て、きわめて困難であろうかと思いますが、これは繊維だけの問題でありませんし、私からお答えするのが適当かどうか存じませんが、私は、かなり困難だろうと思っております。
  24. 小平久雄

    小平委員長 長谷川君、大蔵省の磯江特別金融課長が来ました。
  25. 長谷川四郎

    長谷川(四)委員 それでは、もう一つ局長さんに伺ってみますが、輸出織物に対する報奨制度というものができてはおると思うのですが、どのように今作られているのか、どのようにこれを指導しておられるかということを承わってみたい。従って、今日輸出振興といっても、その報奨制度そのものに、大なる欠陥があると私は信じます。この点について伺ってみたい。  さらに海外市場の調査という点について、ただジェトロを強化したからそれでいいのだ、あるいは商社が出ているからそれでいいのだということに欠陥がありはしないか。すなわち、生産地のみずから行なっているその業界の人たちを、海外市場調査に派遣をして、そして、みずから身をもってそれを研究し、それと対応でき得るように製品化していく。私は、これが輸出の一番早道であろうと考えるのですが、その点はどうか。さらに、それに対して、民間の調査というようなことを、政府としてやらせるお考えを持っているか、持っておらないかを承わってみたいと思うのであります。
  26. 小室恒夫

    小室政府委員 輸出に対する報奨制というお話でありますが、一般的な制度としての原料リンク制、それから優先外貨あるいは輸出所得控除というようなものを除いて、特別の報奨制というものを実施しておるわけではありませんけれども、ただ綿とか羊毛とかのリンク制によって受けられる恩典が、人絹とか絹についてはあまり感じられない。そういうような原料関係の差からくるやむを得ない差というものは、確かに存するとは思いますが、その他に報奨制を行なっているわけではございません。  それから、市場調査でありますが、確かに従来絹、人絹織物、特に人絹織物の市場調査等については、不十分な点があるかと思います。これは業界でも、最近の不況に際して、特に反省しておる点でありまして、そういう点からいたしまして、機屋さんも含めた市場調査というようなことは、現実にもある程度実施している向きもあるようでありますが、今後ともそういうことは積極的に考えていくべきものではないか。これはジェトロに限らず、一般的にできるだけ推進して参りたい、こう考えるわけであります。
  27. 長谷川四郎

    長谷川(四)委員 税の減免につきまして、大企業と、中小すなわち零細企業というものが、その減免措置に潤っているかどうか。また減免措置を行なっていることになっているが、果してそれが実行されているかということでございます。実は小さい業者には、その減免措置が行われていない。それはどこに欠陥があるか。つまり、生産をする小さい買い継ぎがある。またその上の問屋があり、その上の商社がある、こういう段階を経ていきます。でありますから、結局一番苦しんでいる零細なる、当然減免の処置を受けなければならないものが、それを受けることができない実情にある。こういう点は、せっかくの政府の親心が浸透していない。そこで、これらをもっと簡単に行なって、そうしてすみやかにその目的が達せられるような措置を、大蔵省とともに考えてもらわなければならないと思うのです。そういう点を局長さん、知っているのか、知っていないのか、伺ってみたい。
  28. 小室恒夫

    小室政府委員 ただいまお尋ねの点、まことにごもっともでありまして、制度上当然恩典を受けられるものが、手続その他の関係が煩瑣なため、あるいは資料を集めることがなかなか困難であるために、当然受けらるべき恩典が受けられないということでは、実質的に非常に不公平でありますから、これを是正させるために、輸出検査の検査済みの証明書を副証として利用する、その他簡素なやり方で、中小企業の方が当該恩典が受けられるように、できるだけ話し合いを現実に進めておるわけであります。
  29. 長谷川四郎

    長谷川(四)委員 これは、私は特に、質問とかなんとかでなく、お願いしたい。せっかくの政府の親心でもって作ってやったものが、行われていないということは、実に残念です。これは私は、局長につつしんで実現できるようにお願いしたい。あなたの御努力によって行えるよう、お願いをしておきたいと思います。  大蔵省にお伺いをいたします。お聞きの通り手形というものが、今日非常に長期にわたってきておる。従って、先ほども申し上げたのだが、二百八十八社のうち正月で大体五五%、すでに今日は百日以上のものが七〇%をこえていはしないか、こういうふうに考えております。こういうふうな無制限な期日を出して、手形法には何らの措置を講ずることができないのかどうか。その点、手形法について、一つ承わってみたい。
  30. 磯江重泰

    ○磯江説明員 ただいまの御質問は、手形法に関することのようでございまして、実は私は銀行局の特別金融課長でございますが、手形の問題は、おそらく法務省の問題じゃなかろうかと思いますので、私からちょっと答弁いたしかねますので、御了承願いたいと思います。
  31. 長谷川四郎

    長谷川(四)委員 あなたに答えられないとおっしゃるなら、それでは、もう一つあなたに伺ってみたい。手形が非常に乱雑になり、今日手形などというものは、すでに紙きれ一枚の価値さえもなくなってきた。もっと手形というものを完全なものにしていくのには、私は手形保険法というようなものでも作らせ、それによって保険をかけるようにしたらどうか、こういうふうに考えるのだが、これもあなたの担当と違いますか。
  32. 磯江重泰

    ○磯江説明員 ただいま御質問の点も、私の所管外のことでございますが、御趣旨の点については、大蔵省部内といたしましても研究するよう、私からも申し伝えるようにいたします。
  33. 長谷川四郎

    長谷川(四)委員 これは、あなたによく考えてもらいたいのです。私はどうしても手形保険法というようなものを作らなければいけないと思う。今日あらゆる面に、いろいろ優遇する措置が講ぜられておるのに、ただ一つ手形だけが昔のままに野放しで、勝手気ままなことをやっておる。手形は当然紙幣にかわるべきものであると、私は考える。こういうものが野放しであったということは、私は遺憾に思う。この点は、大蔵省としても、よく考慮に入れてもらいたいと思います。  大臣が忙しいようですから、大臣に御質問申し上げます。  明二十七日、党三役、日銀総裁を交えて、経済閣僚の懇談会を開くそうであります。従って、各省首脳会議において、それぞれの立場から意見をまとめられて、提案をされるのであろうと思うのでございますが、通産省として提案する数々の中において、最も重要視せなければならない繊維の問題がある。この繊維の問題は、いかなることに考えているか、これをどういうふうに強く主張するお考えであるか。ただ操短、在庫の調整のみでなく、こういう問題は、政府としても、恒久策というものを考えられておるのでありますが、目先の問題をどうしなければならないか、こういうものを、御提案になられるお考えであろうと思うが、そういう点について、御説明をお願いしたいと思うのであります。今日、この問題だけは、一刻も猶予することのできない問題であり、幸い経済懇談会が明日あるこの機会に、大臣のお考え方を、一つお述べ願いたい、こう思うのであります。
  34. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 繊維不況の問題につきましては、すでに昨年末以来、皆さんのあらゆる御要望について、極力その対策をとって参ったのでありますが、遺憾ながら、繰り返すことになりますが、生産調整も思ったより進行いたしません。何と申しましても、生産調整が、今第一だと思います。しかし、その他の点につきまして、御要望のありました過剰織機の処理の問題につきましては、一応手を打って参ったのであります。また、これは人絹に限られておりますが、いわゆる一手買い取り機関というようなものも、われわれも勧奨いたしまして作ったのであります。ただ問題は、金融の問題だと思います。インドネシアの賠償の問題につきましては、まだ賠償が成立いたしておりません、なお、それにつきましては、今後いろいろ努力しますことにつきましては、すでに申し上げておるわけであります。金融につきましては、私は生産調整が強力に行われておるものにつきましては、十分そのめんどうを見てもらいたいということを、極力言っておりますが、最近の情勢からいいますと、非常に皆さん真剣に生産調整をやっておられますので、この際として、金融の問題につきましては、十分配慮してもらうということを強力に主張し、推進するつもりでおります。
  35. 長谷川四郎

    長谷川(四)委員 生産調整が思ったより進まない理由というものは、大臣の御指摘通りでありまして、いかに業界金融という面に苦しんでいるか、その通りであります。ただいま企業庁の長官にもお話を申し上げましたところが、企業庁の長官は、非常にわれわれの期待するような御意見でございますので、どうか大臣も、長官の御意見を十分くみ入れて御処置を願いたいということをお願い申し上げます。  もう一つ大臣に伺いたいのは、昭和十八年の企業整備の問題であって、昭和十八年の企業整備に、織機買い上げをやりました。私は、全国の統計でなく、私の住んでおる桐生市だけの問題のものを申し上げますが、これによって御想像が願いたいと思うのであります。桐生市で、織機買い上げ口数が六百五十四、織機の台数が一万三千百二十五台、内訳が、広幅が一万八百四十二台、小幅が二千二百八十三台、物件代金四千六十七万円、これで営業権が四百七十三万二千円、こういうような数字の上に立って買い上げて、企業整備を行いました。ところが一口五万円以上のものは、特殊預金ということで預けられて、今日に至ってもそれが返ってこない。強制的に政府が取り上げておいて、今日においてそれを生産者に一銭も返しておらない、こういう実情にあります。今日のこの苦しみの中にあえいでいる業者に、一日も早くこれを返してもらいたい、こういう要望であります。もちろん補償という点につきましては、今日、全国あらゆる面で、戦時中の補償を行なっておるのに、ただこの業界一つのみに与えておらないということは、私は許されないと思う。でございますから、すみやかにこの問題を解決してもらいたい。従って、私は先ほど局長に申し上げた通り、たとえば、今日織機を調整する金を、一台一万円ずつ業界負担をすることになっているが、これすらも今日行うことができない。この点の解決をつけてもらうことができるならば、これらの一万円の織機負担は、当然私は払えるであろうと考える。大臣は、この点についてどうお考えであるか、意見を伺いたいのであります。
  36. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 戦時中に処理されましたものに対するは補償が、五万円で打ち切りになったという問題につきましては、これはほかにもいろいろそういうものがありまして、お話にもありましたように、直ちにこれだけを取り上げるというわけには参らぬと思います。ただ問題は、先般の過剰織機の処理にあたりまして、その過剰織機負担率におきましても、われわれとしましても、最近の事情考えまして、極力負担率は引き上げて、補助でありまするから限界がありますので、御満足はいっておらぬと思いますが、最高率に持っていったというわれわれの微意のところは、くんでいただきたいと思っております。しかし、何と申しましても、負担される方につきまして、それだけの余裕がないということになりましたら、これにつきましては、極力金融なりその他の面で、あるいは場合によりましては、また話し合いで支払い方法その他について、自主的にもお考え願うとともに、われわれとしましても、金融その他の問題について考えていくということにいたしたいと思っております。
  37. 長谷川四郎

    長谷川(四)委員 これは、ダイヤモンドもしかりであろうし、また農地の問題等もしかりであろうし、取り残されたものは、この一点にあると私は考えるのでありまして、大臣としても、今日即答せいということは、困難だと思うが、十分これらは御研究の上に立って、御処理願わなければならぬと思うのでありまして、どうかこの点は、お忘れなく一つ御検討を願いたいと思うのです。しかし、今さしあたっての問題としては、業界がいかに苦境にあるかということでありますので、この苦境を打開するについて、これらは、ともに並行してお考えをしていただきたいと思うのであります。  質問はまだたくさん残っておりますが、あと御質問の方がたくさんありますから、私は一応これでやめておきますが、どうか一つ今の問題は、ただ単に時効になっているというだけで済まされない問題だと考えておりますから、どうか申し上げた通り、十分御考慮下さいますようにお願い申し上げまして、私の質問を終らせていただきます。
  38. 小平久雄

  39. 阿左美廣治

    ○阿左美委員 ここに、絹、人絹織物業者から陳情書か参っておりますが、こおれは今までの陳情書とは事変っておりまして、単なる織物業者としての陳情書ばかりではないようです。やはり織物産地の市長とか議長とか商工会議所の会頭とかいうような、広範囲にわたっておりますところの陳情書であります。その陳情書を、一応、私、朗読いたします。    内地向絹人絹織物不況対策に関する陳情書   昨年春以来の繊維業界不況に対応して絹人絹織物業界においては生産設備の制限  の実施と並行して、過剰織機を廃棄処分し、更に生産数量の制限を一段と強化する等  各種の安定施策を逐次実施して不況打開に努力して来ましたが、遂に所期の成果を挙  げ得ず、本年に入り業界の情勢は各種原糸相場の暴落等その悪化に拍車をかけ、先行  不安人気の抬頭により需要は著しく減退するのみならず、逆に手形長期化し不当返  品ならびに値引の増大、約定ものの破棄等による不健全なる取引はいよいよ産地を窮  地に追近み、このまま放置すれば投売乱売の悪循環となり中小零細企業である各生産  地は将に最悪の事態に直面するに至りました。   もとより今次の不況は世界的景気の下降による輸出の不振、国際収支の悪化、金融  引締政策の実施等に起因するものでありまして、政府の抜本的施策にまたない限り、  その回復は至難でありますが、目前にせまる業界の深刻なる窮状を救済するため左記  応急対策を即時実施し、適正なる生産体制と取引の改善措置を講じ以てこの混乱期と  不需要期を乗り起え来る秋冬物の需要期に対処致したい所存でありますのでこれが対  策資金(調整資金)につき格段の御高配賜わりたく茲に陳情致します。     記   一、生産制限を一段と強化するため四割休機を断行すること。   二、四割休機を円滑に実施するため調整資金の確保を図ること。    調整資金の所要量は別表のとおりとする。  こういう陳情書でありますが、これはほとんど全国的に関係を持つところの陳情書でありまして、織物産地の業者以外の方でも、その市とか、その町とかいうものの経済にも影響するというような立場から、市長とか議長とか商工会議所会頭というような方がこれに加わりまして、陳情して参ったことと私は思うのであります。こういうような点から考えてみまして、今回の不況というものは、いまだかつてないところの不況でございまして、実に深刻なものと考えるのでございます。このままこれを放置するならば、ゆゆしき問題を引き起すのではないか、こういうふうに考えられますので、これは単なる繊維のみの不況対策ということ以外に、市とか町とかいうものの経済にも関係する。倒産者が続出するというようなことから、関係者が非常に心配して、ここにこの陳情書をもって政府にお願いをするということになったと思うのです。過日も、私、聞くところによりますと、こういうような陳情書を作り、またこういう協議をするに当りましても、これは織物業者が中心となってこういう陳情書を作ったわけではございませんで、桐生の市長が、市長の名において関東各地に、また全国各地にこれを呼びかけたというようなことから考えてみまして、いかにこの繊維関係というものが、その不況の度合いが考えられるか。こういうようなことから考えてみますと、どうしてもこのまま捨ておくわけにいかない、何とか対策をとらなくちゃいけないということでありますが、どうもなかなかこの対策がむずかしいのでありまして、先ほども、いろいろ同僚委員からの質問に対しまして、政府からお答えがありました通り政府といたしましても、決してこれを放任するというお気持ではないということが、よくわれわれにもわかるのでございますが、さりながら、具体的にこれをどうするかということになりますと、これはきわめてむずかしい問題だと思うのでありますが、業界では、こういうことを、この陳情書にもその数字があげてありますが、具体的に申し上げますと、今まで三割操短というようなことは、いろいろ業界でも申し合せて参っておったのでありますが、実際にその操短を実施しておるのは、現在までは二割くらいじゃないかと思われます。しかし、各産地の人たちの意見を聞いてみますと、中には、操短というようななまやさしいことではなく、全休をしてもらいたい、こういうような意見が、業者間には相当あるのであります。しかし、全休ということは、かなり問題でございまして、どういう処置をとって全休をするかということは、ただ全休ということを決議したとか、申し合せたとかいうことでは、でき得ないのであります。そういうような点を慎重に考えました結果、四割の操短をしよう、こういうことを申し合せたわけであります。ところが、その二割は、完全に現在やって参っておるのですから、四割といたしますと、あと二割ということになりますので、この二割を操短するのには、どういうことにしたならば完全にでき得るかということを、業者間において非常に慎重に協議をしたのでございます。そこで、具体的操短の数字が出ておりますが、大体において、現在、全国で内地物の登録織機というものが十五万六千九百六十四台でございます。これの四割を休機するということになりますと、六万二千七百八十八台というものを休機する、こういうことに一応いたしたわけであります。そこで、休機するに対しまして、どういう資金が必要かということになりますと、これは一台に対して一カ月に大体五千万円の休機資金が必要である、三カ月、七十五日間休機すると、一台に対して一万五千円の資金を必要とする。これも大体において、一台に対して一日二百円というふうに換算してあるようであります。そういたしますと、これが九億四千百八十二万円という資金が要る。これは四割でありますから、二割は今まで自己の資金において操短をして参ったのですから、あと二割を追加するのでございますから、その半額の四億七千九十一万円というものを休機資金として必要とする、一応こういう計算をいたしたわけであります。それと、手形決済資金ですか、これがまた、動力織機は十五万六千九百六十四台、それの四割の六万二千七百八十八台というものに対しまして、大体一台に対する決済資金は二万三千円を必要とする、こういう計算になっております。そういたしますと、これが十四億四千四百十二万四千円という数字になります。それの半額七億二千二百六万二千円というものを必要とする、こういう一応の計算をいたしております。そうしますと、休機資金と手形決済資金を合計いたしまして、十一億九千二百九十七万円という資金を必要とする。この資金が何とかなりますれば、四、五、六と、ここ三月間、一カ月七十五日の操業日数において、全織機台数のうち四割を休機する。そういうことになれば、これは現在が生産過剰からくる不況考えられるのですから、購買力がそう急に減って——必要のないものを作るというわけではないのです。これは国民の生活上、最も必要とする衣食住のうちの衣類関係でございますから、全然これは必要がない、そういう購買力がないということはないはずです。時期とか、相当の需給のバランスが合ってくれば、これは売れるとか売れないとかいうことは絶対にないと思う。四割を操短するならば、その期間内に必ず滞貨も常道に復してくるという見通しから、ぜひ四割を三カ月操短をしたい。そうなれば、必ず先の見通しは正常化するという関係から、全国の業者関係団体との協議の結果、これができたように聞いております。  そういたしますと、その十一億何がしの資金を、どういうふうにして御心配いただくかということになるわけでありますが、これは先ほど中小企業庁長官の御答弁をお聞きしておりますと、北陸方面にもそういう例がある、そういう方法においてやりたいと思うということでありましたので、政府におかれましても、こういう事態をこのまま放任しておくお気持は確かにないと思うのでありますが、この内地物の現在の休機資金に対しましても、北陸三県のような方法においてお考えをいただき、またそういう御処置をとっていただくことかできますかどうか、これは一つ大臣にお伺いをしておきたいと思います。
  40. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 内地向けの絹、人絹織物不況につきましては、私も十分承知いたしております。しいて言いますと、大体織物につきましても、輸出は決して減っておるというわけではありませんで、大体横ばいでありますので、生産過剰ということがやはり根本にありますことは、他の場合におきましても、同様のケースだと思います。その点につきまして、休機をやられる、また従来実績の上っておりません面においても、強力にやっていただくということにつきましては、われわれとして、けっこうだと思っております。つきましては、それに要します資金その他に関しましては、われわれも極力具体的の場合に相談に応じまして、そして実効の上るようにやっていきたい。すでに北陸等におきましてとりました処置も、もちろん他の場合におきまして、とり得ない問題ではありません。ことに中小企業者の方々におきましては、いわゆる銀行のベースに乗らぬというような問題もありますので、極力政府関係金融機関を動員いたしまして善処いたしたい、かように考えております。
  41. 阿左美廣治

    ○阿左美委員 いかかですか、善処するというような程度でなく、事柄は非常に急迫しておりますので、即刻そういうような御処置をとっていただきませんと、これは結局、あとの祭りになるだけです。こういうふうに考えますので、業界においても、今まで中小企業がとって参りました事柄に対しては、相当反省をし、お互いに事態を認識して、今度の四割操短に対しては厳重に守る、そうなればあらゆる問題が解決するのだということを、非常に反省をしております。ことに私は、政府がいよいよそういう処置をとるということを確定していただきますれば、実際にはそう金は出していただかなくも、解決するのではないかと思う。どうも今の取引を見ますと、前途を非常に不安に考えまして、必要以上に警戒をしておるような時期ではないかというふうに考えられるのでありますから、即時政府において、そういう処置をとるということを言明していただきますれば、もうあすからそれでだいぶ取引が正常化するというような気がまえになるのではないかというふうに考えられるのです。生産の過剰というものも、買わなかったり扱わなかったりいたしますれば、ずいぶん余ったように見えますけれども、また相当購買力を出してきますれば、余る品物も足らなくなるということも考えられるのでありまして、現在の取引状態を見ますと、ほとんど売り買いがとまっておるというようなことから、即時そういう処置をとるということにいたしますれば、直ちに解決するのではないか。あるいは、ここに十一億何がしというような資金が必要だということになりましても、その資金を全部使わなくも、相当不況対策にはなるのではないかというふうに考えますので、いろいろの面から考えてみまして、これは一つ善処というようなことでなく、どうでしょう、はっきりやるのだということを、おっしゃっていただくわけにいかないでしょうか。
  42. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 善処するということは、決して消極的な考え方ではないのであります。ただ、ここに言われます数字そのままを、よろしいというわけにはいきません。また北陸の問題を考えましても、いろいろ具体的には協議すべき点もありますので、そういう意味で善処と申し上げておるので、極力やるということで、その点は非常に積極的な意味でありますから、一つ御了承願います。
  43. 阿左美廣治

    ○阿左美委員 現在の取引を見ていますと、こういうような取引ですよ。問屋というものは、需要期にある一定の数量を取り入れて、需要期にそれを出すというのが問屋の使命であるのですが、今の問屋は、ほとんど注文以外には少しも取引をしない。問屋というものは、二匹送れ、三匹送れというような取引なのです。これは実に、問屋も何もあったものじゃないです。だから、過剰になっているというふうには考えていないのです。精神的に少し気持を変えれば、これは相当効果があると思う。だから、そういうような点から考えてみますと、どうしてもこれは政治的な解決ですね。数字にこだわらないでやるのだということになれば、あすからでも好調になってくると思うのですが、大臣一つどうでしょう、きょうのこの委員会において、なるべくその資金は出すのであるから、四割の調整は確実にやれ、こういうことを一つおっしゃっていただきたいのですが、重ねて一つ……。
  44. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 ただいま申し上げましたように、数字そのものという意味ではないので、そういう意味におきましては、やるという意味でありますから、その点は、十分御要望にこたえて、積極的にやるつもりでおります。
  45. 阿左美廣治

    ○阿左美委員 それでは、数字にはえらくごだわらないでやることに御決定をいただいたというふうに承知して、よろしゅうございましょうか。
  46. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 さようでございます。
  47. 阿左美廣治

    ○阿左美委員 どうもありがとうございました。
  48. 小平久雄

    小平委員長 田中武夫君。
  49. 田中武夫

    田中(武)委員 大臣は予算委員会の方に行かねばならぬので、お急ぎのようですから、大臣に一言だけ先に聞いておきまして、あとは関係政府委員にお伺いをいたします。  先ほど来、各委員から、繊維業界、ことに絹、人絹不況、こういうことについて、業者の苦しい状況がいろいろと訴えられ、これに対する対策の問題で、質疑を続けられたわけですが、そこで、私かお伺いしたいことは、そういう対策に当って、操短その他が行われるのは、やむを得ないことだと思う。だがしかし、そういう場合に、この絹、人絹不況で、業者、経営者が苦しんでおると同様、そこに働く労働者が、それ以上苦しんでおるということを、よく見ていただきまして、そういった、たとえば操短を勧告せられる場合に、労働者の生活というようなことを、どの程度大臣はお考えになっておられるか。あるいはまた、そのような勧告をする場合、労働者の問題については、何か附帯的なものをつけてお出しになる御用意があるのか、その点をお伺いします。
  50. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 操短によりまして、労働者の方々が整理とかいろいろな問題が起って、非常にお困りになりますが、その点につきましては、従来から一貫して、不当に整理するというようなことは行われないように、極力労働者に影響を及ぼさぬようにということにつきましては、やはり配慮をして参ったのでありますし、今後におきましても、それはやらなければならぬことでありますが、その点は、今後におきましても十分注意をして、また業者の方々にも注意をしていただくように、強力に指導いたしたい、かように考えております。
  51. 田中武夫

    田中(武)委員 そういうような場合に、労働者に犠牲を負わさないように、そういうことも配慮していきたいし、また今後ともそうしたい、これは当然のことです。ただ、現実において、そういった不況が労働者に大きな問題を与え、現にそういうことを中心として、争議を続けられておるところもある。そういうような状況になった場合に、大臣はどのような手を打たれますか。
  52. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 実際に申しますと、繊維関係におきまして、休機について、いろいろ従来からも、そういう場合がありましたので、割合に摩擦なしにいっているように承知いたしております。しかし、大ぜいの方を雇っておられるところにおきましては、いろいろな、そういうことで新しく問題が起る場合も、なきにしもあらずでありますし、従来も起った例もあると思います。それにつきましては、われわれとしまして、先ほど来申しておりますように、極力その内容を調査し、それに強力な指導を与えて、ただいま申し上げましたように、従業員にあまりしわ寄せのいかぬようにという考慮をいたしていきたい、かように考えております。
  53. 田中武夫

    田中(武)委員 従来あまり摩擦なしに行われておるということは、けっこうなことであり、事実そうであるとするならば、けっこうなことであります。だが、中小企業といいますか、比較的小さなところにおきましては、労働者の組織のないところも多いということから、そういった犠牲の面、あるいはトラブルの面が表面化しない。ただ労働者に押しつけておるというようなことで、大臣がおわかりにならないことが、あるのじゃないかとも考えられるのですが、どうでしょうか。
  54. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 ただいままで、私はそういうふうには考えておりませんが、ただ、大会社になりますと、いろいろそういう問題の起った例もありますし、現に起っておるものもあります。それらにつきましては、その実情に応じて考えていきたい。繰り返して申しておりますように、極力そういう摩擦のないようにということは、考えておるのであります。また、私の所管でなしに、労働省の所管の場合もあります。これは労働大臣にも十分お願いして、そういう摩擦の起らぬようにいたしたい、かように考えます。
  55. 田中武夫

    田中(武)委員 現に深刻な摩擦が起っておるとすれば、どうされますか。
  56. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 現に起っておりますものにつきましては、あとで繊維局長からお答えすると思いますが、極力それについての実情に合ったように、私の方からも強力に推進いたしたいと思います。     〔加藤(清)委員「それでは答弁にならぬ」と呼ぶ〕
  57. 田中武夫

    田中(武)委員 加藤理事が、それでは答弁にならぬということでありますが、私もそう思うのです。それでは、具体的に申し上げます。今、興国人絹の争議を御承知でしょう。三人に一人の首切りが、現在出ておるわけです。四千五百人の全従業員に対して、千四百十三という、三人に一人の人員整理が出まして、もう一カ月も前から紛争を続けておる、こういう実情を御存じでしょうか。先ほど来、大臣は、そういうようなことによって労働者に犠牲がいかないように留意する。またそういった面においてトラブルが起ったり、あるいは摩擦が起ったときには、適当な措置を講じたい。こう御答弁になっておりますが、いかがでしょうか、興国人絹の争議について、御承知であるかどうか。御承知ならば、繊維の担当所管大臣として、いかなる処置を考えられておるか、お伺いいたします。
  58. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 詳細につきましては、繊維局長からお答えいたしますが、できるだけ早期に解決するように、努力いたしたいと思っております。
  59. 田中武夫

    田中(武)委員 あなたは、労働大臣じゃないですから、労働問題については、あとでまた労働省にお伺いしますが、早急に解決するように努力したいと、口では言いますが、具体的には、どんなことを考えておられますか。
  60. 小室恒夫

    小室政府委員 興国人絹パルプの争議という具体的な事例でありますが、争議をしておるということについては、大臣も十分御承知でございますけれども繊維不況の中で、最も困難な状況にありますのは、スフとそれから人絹パルプ。この二つの部門をあわせ持っておって、それ以外に高収益を生む部門がないという、非常に深刻な経営の事例であります。この会社が、短期に再建をはかっていこうという立場で、合理化計画を編成いたしまして、それに伴って労務者等の対策を講ずるということで、先般来、労使間に話し合いが持たれておるわけであります。実際問題としては、部分的にストというようなことになっております。また模様によっては、全面的なストということも考えられるような情勢にきておるわけであります。これは、労務者に不当なしわ寄せをやらぬようにということは、私どもが繰短を勧告いたします際にも、常に勧告操短の一条項として入れておるのであります。しかし、これは経営として成り立たなければならぬ。経営として成り立たないと、不当なしわ寄せも何もない、全部がつぶれてしまうことになるのでありますから、この間のバランスをどう見ていくかということが、非常にむずかしい問題だろうと思います。労務者に不当にしわ寄せをさせないという見地から、行政指導をやれということは、大臣から、しょっちゅう言われておるところであります。こういう問題につきましては、具体的にどういうふうにやっていったら切り抜けていかれるか、なかなかむずかしい問題であります。
  61. 田中武夫

    田中(武)委員 不当にしわ寄せにならないように勧告をしておる、こういうことですが、それは、個々の会社の内容については、一々大臣なり政府委員に聞くのは無理だと思う。だが、ちょっと常識的に考えて、三分の一も首を切ろうという、これは不当であるかどうかということも、問題だと思うのです。そこで、現実に問題が起れば、善処していきたい、解決に努力したい、こう大臣がおっしゃったから、現実に起っておるこの問題について、大臣はどのような方法で解決の努力をしようと考えておるか。これは、大臣にお伺いしておるわけです。
  62. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 実は、私は、総体として、合理化の線において興国人絹の整理の問題は承知いたしておりますが、具体的に何人を切るということは、実はまだ報告を受けておりません。それが不当に必要以上に切るということであれば、もちろん考えなければなりません。またその整理されました人の待遇いかんが、これまた不当であれば、その待遇についても考えていかなければなりません。さらにまた、転職なりそういうような必要があれば、そのあっせんも考えていかなければなりません。具体的の問題につきまして、今後極力努力して参りたい、かように考えておるわけであります。
  63. 田中武夫

    田中(武)委員 どうも具体的な答弁じゃないのですが、大臣は予算委員会関係があるそうですから、あとは政府委員にお伺いすることにして、最後に一言だけお伺いしておきますが、ともかく、業界が不振である、だから操短をやる。また不振であるから、もう一つ操短を強化する。そういうことであれば、結局ジリ貧の道をたどっていくということになると思う。それよりか、むしろ、なぜ積極的にそういった不況打開の道を考えていかないのか。国内需要の、いわゆる購買力がふえるような方法考える必要があるだろうし、あるいは海外輸出の問題も考える必要があろうと思います。そういった対策にも、積極面と消極面がある。先ほど来論じられておることは、消極面の強化、これだけだと思うのです。そうすれば、やがてしわ寄せは業者に、そうしてそのもとに働く労働者に来るのは当然のことです。それよりか積極面の打開、そこに政治があり、行政指導があると思う。積極的な局面の打開、不況打開について、通産省は一体どういうような手を現在まで打ってきたのか。たとえば、具体的に貿易振興等の問題につき、あるいは国内の購買力増強等の問題につき、どのような精極的な手をお打ちになったか、それをお伺いします。
  64. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 しばしば繰り返して申し上げておりますように、輸出繊維につきましては、別に減っておるというわけではない。結局、過剰生産というところに原因があるのであります。もちろん積極的に、われわれお願いしておりますような方策によって、輸出振興もいたしておるわけであります。また反面におきまして、今後インドネシアの賠償というような問題につきましても、考えていきたいというふうに考えておるわけであります。また内需の面につきましても、経済が縮小するということも、これは適度に考えませんと、その間の調整をとっていくということは当然やるべきことだ、そういう意味におきまして、この際私は、基幹産業等を促進していくという意味合いにおいて、財政資金も、御承知のように、三十二年度の繰り延べ相当額ではありますが、それを投入して、そうして経済が動いていくように、また今後におきましても、そういうような面から経済の動きをやっていくように考えておるのであります。ただ、その間におきまして、輸出は減っておるわけではないのでありますが、非常な滞貨ができるというところに、すでに過剰生産という問題がありますので、またこれに対して過剰生産をなくする意味合いにおきまして、いろいろやっていただかなければならぬと思う。その点につきましても、昨年の九月来、いろいろお願いもし、またやってきていただいておるのであります。いろいろ、たとえばインドネシアの政情不安とか、あるいは暖冬異変とかいうような予期せざる問題も起きて参りまして、その生産調整が、三月末くらいで終るつもりでありましたのが、ずれておりますことは、はなはだ遺憾であります。それに対しましても、われわれとしまして、十分対処していっておるわけであります。そういうような面で、決して何も消極的に考えておるばかりではないのです。積極的にやっておりますことも、事実であります。その点は、御了承願いたいと思います。
  65. 田中武夫

    田中(武)委員 今、大臣は、輸出は決して減っていない、また消極的な面ばかりでなく、積極的な面についてもいろいろやっておるから、御了承願いたい、こういうことですが、輸出も減っていない、こういうことで、なぜそんなに急激な大きな不況が来たのか、こういうことも言えると思うのです。それから、たとえば、これは人絹繊維、化繊じゃないですが、綿製品の問題になれば、アメリカ等が現実に輸入を制限し、あるいはこれを禁止しようとしておることも事実です。それに対して、どういうような打開の道を講じたかということも、お伺いしたいと思うし、また、同じ繊維でも、いわゆる輸入繊維、綿花あるいは羊毛を輸入して、それを加工して、輸出し、あるいは国内需要に充てるという種の輸入繊維と化学繊維とは、また違った面があろうと思います。そういう個々の対策を、もう一度お伺いしたいと思うのです。輸出が減っていないとおっしゃっておりますが、それでは、一体どんなところからこんな大きな——暖冬異変だとか、そんなことぐらいで、僕はこんなに大きな問題が起ることはないと思う。こういう大きな不況になった一番の原因は、どこにあるのですか。
  66. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 それは結局、三十二年度までに非常な設備の増設をやられたというところに、大きな原因があると思います。さらにまた、生産調整に入りましてからも、われわれの言っておる程度まで、なかなか業者の方々も踏み切れない。またおやりになっても、それが励行されておらぬ。最近業者の方々も、監視員をふやして、いろいろおやり願っておるわけでありますが、結局、問題は、過剰生産というところにあるのであります。アメリカの輸入制限の問題につきましても、綿製品等において、一昨年規制いたしましたが、さらに本年、別にその規制のワクが減らされるわけではございませんで、むしろその内容の改善ということを言っております。それがため、どうこうというわけではないのであります。さらにまた、世界的な不況という面で、先行きに輸出がどんどん伸びていくということに、かなり不安を持っておられる面もあるのでありますが、この点は、私は生産調整をしっかりやっていただいて、その後に一割なり二割なり堅実な足取りでふやしていくことは、決して不可能なことではないと考えておるのであります。その点は、ただいまお話しのように、根本原因をはっきり認識して、それを調整していただくとともに、さらに積極的に、隘路をどういうふうに打開し、一割なり二割なり堅実な足取りでふやしていくかということを、官民ともに協力して努力すべきだと思いますし、われわれとしましても、最善の努力を払いたいと考えておるわけであります。
  67. 田中武夫

    田中(武)委員 大臣は予算委員会に行かれますので、あと繊維局長に質問を続けます。  大臣の話ですと、結局は、絶対的に設備が多いからこうなるのだ、こういうことであったと思うのです。さればこそ二十四回でしたが、二十六回でしたかの国会で、繊維設備の合理化法も通ったのです。そういうことで、いろいろ手を打っておられたと思うのです。また設備を新設するにしても、すべて許可でやっておると思う。それが絶対的に多かったということならば、過去において許可に誤まりがあった、こういうことも言えると思うのです。それから繊維工業設備臨時措置法かできまして以来、どういった法律によって運営をし、なぜほんとうの法律の目的が達せられなかったか、その点についてお伺いしたい。
  68. 小室恒夫

    小室政府委員 神武景気といわれた好況の下において、繊維産業生産設備が急テンポに増強されまして、そのために、現実生産も、昨年の初めごろから非常にふえて参りましたことが、生産過剰の原因、需給のアンバランスの原因であるということを、大臣から申し上げたわけでありますが、その中で設備増強のテンポの一番はなはだしかったものが化繊でありまして、スフ綿については、三十年末と昨年の、十月ごろと比較いたしますと、六割設備能力がふえております。また人絹糸は四割くらいふえております。この二つの部門は、繊維工業設備等臨時措置法の適用外でありまして、あれは紡績及び染織加工設備の規制であります。ところで、紡績部門においても、若干設備の増強が行われております。たとえば、綿紡については、ふやしたくなかったのですが、一割くらいふえております。そういうことがどうして起ったかと申しますと、あの当時、法律の施行期日を延ばすという議論もあり、いろいろな状況があったのですが、一昨年十月一日法律を施行いたしましたが、そのときすでにできておった設備であります。いわゆるかけ込みとかなんとかいうことがありますけれども、その後においては、今の綿糸あるいは毛糸の紡績設備は一錘もふやしておりません。合成繊維については、合成繊維の増産に応じて、若干新設を認めております。今の紡績設備については、その後増設されたものは、微々たるものであります。問題の過剰生産の一番はなはだしい化繊について、これは法律の適用外の問題でありますが、私ども、行政的には、そう急にふやすと、非常に過剰生産になるので、設備の増設をやることをおやめになったらどうか、あるいはテンポをゆるめたらどうかという勧告をしたことがありますけれども、今の法律の規制とは無関係であります。
  69. 田中武夫

    田中(武)委員 化繊は、繊維工業設備等臨時措置法の適用外であったから、法律による規制はできぬ。行政指導はしたが、現実にかけ込み新設とい問うか、そういうことでできたのだ。だから、もう今ではしようがないという答弁ですが、そのとき、なぜもっと強力に押えることができなかったのですか。
  70. 小室恒夫

    小室政府委員 スフ綿等については、三回会合を持って、社長さんも集まって懇談いたしたわけでありますか、その当時は、やはり好況であって、その部門が利益を生んでおりますと、会社としては、設備を増強したいというふうに考えるので、それを押えるのが、なかなか困難でありました。
  71. 田中武夫

    田中(武)委員 神武景気というものの正体が何であったか、よくわかりませんが、政府もそんなことで、経済の見通しを誤まられたのが、去年の初めごろなんです。そういうことで、ともかくどんどんふやした。これは、もうけようと思ってふやされたと思うのです。ところが、その経済の観測の誤まりから、急激にこういった状況になった、こういうことだと思うのです。業者というか経営者は、ともかくもうけようと思ってどんどんふやして、人を入れて作らした。ところが、不況になったから、操短だ、あるいは設備を減らすのだ、そういうことで、そのしわ寄せを労働者に持ってくる一つの大きな現われが、先ほど申し上げた興国人絹パルプだと思うのです。そうして、わずかな退職金でも出して首を切っていこう、こういうのです。自分たちが好況だと見たときには、どんどん設備をふやして働かせ、不況になれば、直ちにわずかの退職金で人を減らしていく。そういうのは、ちょうど南極に残された樺太犬のようなもので、わずかなほしニシンをもらって、食ったならばあとはのびていくというのが、現在起きている興国人絹の争議の実態ではないかと思う。そういう自分たちの利潤追求の意欲から、どんどん設備をやっていく。その結果が、逆転してくれば、直ちにしわ寄せをする。こういうようなことについて、一体繊維局長は、いわゆる繊維部門を管理しておるところの主管局長として、あるいはまた、労働省の労政課長が見えておりますが、そういうようなことから起ってくる労働問題に対して、どういうような見解をもって、今後どういうふうに善処していこうと考えておられるか。そういうような点について、お伺いしたいと思います。
  72. 小室恒夫

    小室政府委員 先ほど来申しておりますように、労働者に不当なしわ寄せをやるということは、極力避けなければなりませんが、しかし、同時に、経営が成り立つように、また短期に再建されるというか、成り立つベースに戻るということは、非常に大事なことであります。その間、会社は、無配にもしておるようでありますし、いろいろ部課長などの整理もやっておるようであります。そのバランスにおいて、どうしてもやむを得ないものであるという見解で、むろん整理を通告し、あるいは配置転換というようなことを考えておるのだろうと思います。これは、一がいに労働者にしわ寄せをしておるというふうにも、言い切れないというふうに思うのであります。さらに、実情はよく調べてやりますが、樺太犬とは、ちょっと違うように思います。
  73. 坂本一衛

    ○坂本説明員 労働者に不当にしわ寄せがいくというようなことは、私どもといたしましても、決して望ましいこととは考えておりません。これは、経営上の問題が中心でございますので、そのつど通産省の方ともいろいろ御相談をし、あるいはまた、解決についてお話し合いをいたしておる状況でございます。
  74. 田中武夫

    田中(武)委員 今、繊維局長は、部課長も整理の対象にしておるというが、部課長などは六十名ですか、というものも対象になっているようだから、別にこれは不当とは考えられない。労政課長もそういう見解を持っておられるが、この問題がこう深刻になっておるのに対して、繊維局長あるいは労政課長は、何らか解決について努力せられたことがあるのか。あるいは、今おっしゃったように、これはやむを得ないものである、こういうことで、手放ししておられるのか、お伺いいたします。
  75. 小室恒夫

    小室政府委員 この問題は、たまたま争議になりましたが、大体化繊会社で、円満に話し合いのついた例も、相当数あるわけであります。しかしながら、これらについても、整理された方々を、できるだけ早い機会に再雇用されることを待っておるのでありまして、私どもの重点的に考えるべきことは、いかにして化繊を中心にする不況を、最短期間に回復させるかということにあると思います。一—三月にそういうきっかけを作りたいと思っておったのでありますが、先ほど大臣もおっしゃいましたように、インドネシアの問題であるとか、あるいは暖冬の問題とか、いろいろなことが重なって、あるいは操短が十分励行されていないという事情も加わって、この一—三月できめ手をつかむことができなかったのであります。四—六月について、必ずそういう端緒を作って市況を好転させる、そうなれば、今の化繊に一時整理された人たちも、復職することができると思います。それが全体の解決策であるというように考えます。個々の企業については、個々の企業それぞれの特殊性もございます。これは企業の自主性、むろん不当に労働者にしわ寄せすることはいけませんけれども、再建合理化への道というものは、企業の自主的な判断というものを、できるだけ尊重していくような立場でございます。
  76. 田中武夫

    田中(武)委員 今の局長御の答弁、なるほどこの内閣のもとに勤めておる局長なら、やむを得ぬ答弁だと思う。ともかく一番の重点として考えることは、いかに最短距離で企業を再建せしむるかということを重点に考えておる。従って、企業中心にものを考えておる。その考え方は、資本家中心の考え方だ。企業すなわち資本家が立ち直るならば、労働者にいかなる犠牲が及ぼうともやむを得ないのだ、こういうことに割り切っておる御答弁に考えますが、いかがでしょう。こういう御答弁に対し、労政課長は、労働行政の立場からどのふうに考えておりますか。
  77. 小室恒夫

    小室政府委員 私は、化繊を中心にする繊維市況が回復すれば、一時整理された方々も復職されて、普通の生活に戻られるということは、非常にけっこうなことと思うのでありまして、労働者の立場も十分考えたつもりで、御答弁申し上げております。ちょっと補足させていただきます。
  78. 坂本一衛

    ○坂本説明員 労働者に不当にしわ寄せがいくということにつきましては、私どもといたしましても、決して望ましいとは考えておりません。
  79. 田中武夫

    田中(武)委員 それでは、この興国人絹パルプの争議の問題で、労政課として、何らか解決についての積極的な努力をされたことがあるのですか。
  80. 坂本一衛

    ○坂本説明員 興国人絹の争議につきましては、私どもも省を通じ、あるいは県を通じ、あるいは労使双方から、いろいろ事情をお聞きいたしておりますが、私どもの方の政策といたしまして、原則といたしまして、個別の争議には直接介入をいたさないという建前でやっておりますので、直接ということはございませんけれども、しかし、問題が経営上の問題でもありますので、通産御当局ともいろいろ御相談の上、考えて参りたいと存じます。
  81. 田中武夫

    田中(武)委員 この解雇の原因は、不況だというのですが、その裏には、銀行というか、融資しておる金融機関が動いておる、こういうふうにわれわれは見ておるのです。興国人絹は、よその会社のことで、私は当らないかもしれません。聞いただけですが、現在九十三億円ですか、借入金がある。そのうち三十五億円が勧銀、第一銀行、三菱銀行、こういうところから大部分借りられておる。そういったところから、こういう銀行が、人員整理を条件として融資する。融資に当って、人員整理を条件としておる、こういうことがあるように聞いております。また、こういう事実は、いろいろ今までもあります。現に、私の出身の会社においても、あったわけですが、こういった銀行が融資するに当って、経営の面まで強要するというか、口ばしを入れていく、こういうことについては、いかがでしょうか。
  82. 小室恒夫

    小室政府委員 興国人絹パルプは、企業の責任者であるところの経営者の判断で、こういう再建計画、合理化計画を立てて、これを実施するということであったと思うのであります。むろん銀行その他とも、経営者として相談もし、助言も受けておるとは思いますが、今のお話のようなことは、私自身は別に聞いておりません。
  83. 田中武夫

    田中(武)委員 公正取引委員会の事務局長に伺いますが、近江絹糸の問題のときに、あれは最も表面に出ておったのですが、いわゆる融資銀行が、経営を乗っ取ったというか、経営に関係をしていった。こういうことが、不公正な取引であるということで、去年ですか審決が出た。大なり小なり、同じような状況が各業界に起っておる。今、私が問題にいたしております興国人絹パルプにおいても、その実態は、やはり融資銀行が融資に当って、人員整理を条件としておるということなんです。そういうことは大体事実のようです。そういうような行き方に対して、公正取引委員会の立場から、前に近江絹糸の例もございますが、どのようにお考えでしょう。
  84. 坂根哲夫

    ○坂根政府委員 ただいまの問題は、近江絹糸の場合には、私どもがいろいろ審査の過程で、金融機関が、その金融機関の地位を利用して、自己の取引上の優越している地位を利用して、正常な商行為に反して、相手方に不当に不利益取引をしたという証拠のもとにやったのでありますが、ただいまのお話は、私どもとしては、それが銀行の債権保全の範囲であるか、あるいは企業の自主性を十分尊重しながらやったものであるかという点において、まだ懸念もあろうと思いますので、直ちにこれが近江絹糸の場合と同じようなケースであるということは、私はお答えできないのじゃないかと思います。
  85. 田中武夫

    田中(武)委員 もちろん、近江絹糸のように、露骨に表面には出てきていない。しかし、私の言っているように、今日ほとんどの企業が、金を借りておる。従って、金融機関が優位な立場に立っておる。そういうところから、いろいろ経営に対して干渉してくるということは、大なり小なり事実の問題です。しかも、人事権というか、経営権は、企業として産業資本家の持つ権限である。これには、われわれも疑問は持っていますが、一応それが常識とするならば、そういった人員整理の問題等に対して、いろいろ銀行がものを言っていくというようなことは、やはり有利な立場を利用して経営に干渉している、こういうことになると思うのです。事実こういうような問題が起きておるのに対して、近江絹糸の場合は申請があったと思うが、申請がなくとも、そういうような問題について、公正取引委員会調査をし、そういった面について勧告というか、あるいはある程度の忠告をするというような用意があるか、あるいは法的にそういうことはできないのか、いかがでしょう。
  86. 坂根哲夫

    ○坂根政府委員 そういう問題は、一般的に、たとえば先ほどお話にありましたように、この独占禁止法の不公正取引方法に該当するというようなケースがびまんしておるとすれば、これは私どもの方としては、一つ一般的な問題として取り上げる用意もあろうかと思います。しかし、事は個々のケース、ケースの問題であり、かつ、金融機関が金を貸すという債権保全の見地と、それから企業の自主性を阻害しないという点の判断は、なかなかむずかしいものですから、これを今すぐ一般的に取り上げて、警告するというようなことは避けたい、こう考えております。
  87. 田中武夫

    田中(武)委員 一般的にはそうですが、現実にこういう三人に一人という首切りが起って、長きにわたって紛争が続けられておる。しかもその裏には、金融機関の手が動いておるということは、ほぼ確実である。こういう具体的な例を示しておるのですが、進んで調査をするという積極的な気持をお持ちでしょうか、いかがでしょうか。
  88. 坂根哲夫

    ○坂根政府委員 私ども委員会が、今、田中先生のおっしゃった問題を、果してすぐ問題として調査する能力と申しますか、意思があるかどうかということにつきましては、私の方の委員会と、とくと相談いたさなければならぬと思うのでありますが、しかし、今申し上げましたように、金融機関の金を貸す債権保全の見地、あるいは企業の自主性をどの程度まで阻害しておるかということのきめ手は、なかなかむずかしい問題でありますから、その点は御了承願いたいと思います。
  89. 田中武夫

    田中(武)委員 一般的にそういった面が確かにあることだけはお認めになると思います。それが法に抵触する範囲であるかどうかは別として、こういうことによって、各企業内における労使の摩擦がずいぶんあるということも事実です。現に私自身も、三十六日間ストライキを打ってきた経験があって、結局は、銀行と交渉しなければ解決がつかなかった、こういう事実もあるわけです。従って、こういうような面について、公正取引委員会は、積極的な調査をしていただくよう要望いたします。それは事務局長として、ここで公正取引委員会を無視して、引き受けることはできないと思うが、事務局長としては、大いにそういうことを委員会へ言っていただいて、一つ積極的な方法考えていただきたいと思います。  なお、この問題に関連してですが、労政局としては、なるほど自主性ということから、そういうことに対して、積極的に介入しないということは、一般的には望ましいと思う。だがしかし、特殊な例として、こういう争議が起っているということに対しては、十分調査をし、いわゆる先ほど言っておるように、自分たちがもうけるときにはどんどんやり、都合が悪くなればぱっと首を切る。樺太犬の例を上げたが、それと同じようには考えていないと思うが、そういう点についても、十分調査を進められ、積極的な解決の方法をとってもらいたい。たとえば近江絹糸のときに、石田労働大臣は、あっせんに乗り出すとかなんとか言っておった。それは効果があったとは思われないけれども、そういった方向に進んでもらいたいと思います。  それから、失業問題その他についても、お伺いしようと思って、各関係課長に来てもらっておりますが、もう時間がないそうですから、これでやめます。そこで繊維局長なり、大臣がおらぬから次官等に要望を申し上げて、御答弁があるならお伺いしたいのですが、先ほど言っておったように、不況だからともかく縮小するのだ、操短するのだ、また不況になったから操短するのだということであるなら、ジリ貧の道しかたどらないと思う。もっと積極的な不況打開の対策を進めてもらいたい。同時に、そういう操短に当っては、なるべくしわ寄せが労働者にいかないように、いろいろ行政的な措置をとっていると言っておることが、具体的になれば、ただ一片の通牒なり、一片の通達なりでは片づかない問題です。もっと積極的な、もっと具体的な、そういった問題についてのしわ寄せが、労働者にいかないような措置をとってもらわなければならぬと思うが、そういう点を要望いたしておきます。
  90. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 今の質問で、大体不況の状況はるる述べられておりますけれども、答弁者側の方で、十分わかっていないようでございますので、私は具体的に繊維不況対策を、当面の問題と将来の問題に分けて、系統的に調査をし、よくわかるように材料を持ってきておりますけれども、時間の関係上簡単に、当面の問題だけにしぼって申し上げますので、答弁もそのつもりでお答え願いたい。  第一に、すでにこういうことは、今国会の当初において、私は大臣に、不況対策を抜本的に立てるべきであると聞いたら、善処すると言われた。いや善処じゃない、ツルの一声だ。今ここで、不況対策を抜本的にやるとおっしゃったら、先ほどの阿左美さんの質問にあったごとく、買い控え、買い控えで不況に拍車をかけておるのが、とまる。売れ行きがよくなる。だから、ツルの一声を言うべきだと言ったのに、善処すると言うておいて、いまだ善処されていない。一体大臣は、いつ善処するのか。その大臣が善処するための具体策を、政府側はいつ作るのか。もう繊維業界は、倒産手前と言いたいのですが、倒産がばたばた現われていることは、よく御存じの通りです。従って、カンフル注射を打たなければならぬ。カンフル注射を打つのに、半年も一年も考慮してからに打たれては、効果は全然ゼロです。一体、いつやられるのか。ただ抽象論を言うているだけでは始まらぬから、具体策をちょっとここで申し上げてみましょう。政府の方が、全休をする、と言ってごらんなさいよ。それもいかなかったら、三品市場をまず一週間くらいとめる、こう言ってごらんなさい。これは政府としては、税金もかからなければ、金も要りませんよ。もしもほんとうに善処する気がまえがあったならば、在庫品を全部買い上げてあげます、買い上げ機関を一度に作ります、しかも値段は三品市場以上の値で買います、こういうことをやってごらんなさいよ。一ぺんにこの不況は打開できます。しかも、政府見通しのごとく輸出が伸びる、こういうことであれば、やったって、政府は当然損しないはずです。それもいかぬというならば、せめて税制措置をはっきりさせるとか、融資措置を具体的にこれこれにするのだ、これこれの業界にこれだけの融資をするのだ、こういうことをでかでかと一ぺん新聞に書いてごらんなさい。それだけで、先ほどの阿左美さんのいうところの買い控えは、必ず解消できます。先行き不安で、どんどん安くなると思えばこそ、買い控え、買い控えと、こう来ているのだ。大臣は、善処すると言われました。それでは、具体的にどういう善処の方法考えておられますか。簡単に項目だけでけっこうでございますから、政務次官から、かわってお答え願いたい。
  91. 小笠公韶

    ○小笠政府委員 この対策措置といたしましては、お述べになりましたような問題もあろうかと思いますが、すでに申し上げましたように、需給の改善をはかる、こういう趣旨から、操短制度の励行をはかっていくことをいたしておることは、御承知の通りであります。  第二といたしまして、融資の問題でありますが、先ほど大臣も、中小企業庁長官も、答弁いたしましたように、これに対しましては、筋のある金は出す、こういう方向で進んで参りたいと考えておるのであります。  税制上の問題につきましては、もちろん輸出所得の控除制というような問題につきましては、なお十分に制度の適用が均分化されていないといううらみがございますが、そういう点につきましては、今後順次直して参りたい、こういうふうに考えております。加藤委員のおあげになりましたような、いわゆる全休あるいは三品取引所の停止、こういう問題は、とるところでない、私は実はこう考えております。
  92. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 そういうなまぬるい湯に入ったような対策を続けていらっしゃるものだから、坂道をころがって落ちていく石と一緒で、いつまでも下落を続けていくということになるのです。しかし、この問題は、よく研究して、ほんとうに政府が善処する気があるならば、一致協力して抜本的な対策をこの際講じないと、輸出はアメリカに伸びると言うけれども、アメリカの景気はもうパニックの前夜なのです。従って、あちらの方向には伸びていかない。これ以上伸びない。だから、日本政府として、抜本的な対策を講じられなければならぬ。またその他わが党の案もたくさんございますが、時間の関係上、当面の問題に移りたいと存じます。  三割操短、封緘、所得の減収ということは、やがて直接の国税のみならず、地方税、住民税に、大きな影響を及ぼしております。これはやがてその地区の行政を非常に困難ならしめております。なぜかならば、繊維は、御承知の通り集約的に産業が発達し、そのおかげの町、そのおかげの市が構成されているからでございます。そこで、この不況からくるしわ寄せを、繊維以外のその市ないしは町の在住者に負担をかけるということになりますと、繊維工場、繊維機場の周辺の農民とか勤労者は、非常な悪影響を受けるのでございます。特に、先ほど労政局長は、影響を及ぼさないとおっしゃったのだから、この際私は、はっきりと具体策を承わります。その繊維機場に勤めている人が構成している町です。その工場の収益が減ることは、市にとっては、やがてその税収入が減ることになるのです。しかし、そのしわ寄せは、そこに勤めている人の住民税を値上げすることになる。よろしゅうございますか、これが具体的に今現われているのです。それで、今、町がてんやわんややっているところがある。うそだとおぼしめすならば、知多半島を調べてごらんなさい。一宮を調べてごらんなさい。調べたことがないでしょう。ないから、勤労者にしわ寄せはいたしませんなんて、のほほんと言っている。それでこの場の答弁を切り抜ければよろしいなんということは、とんでもない間違いだ。勤労者の収入は減る、住民税はふえる、こういうことになる。それで今、町中てんやわんやです。このままいったら、学校を三割操短しなければならぬ、それから警察も三割操短しなければならぬということをやらざるを得なくなってくる。これをどうしますか。これに対して自治庁の税務局長及び財政局長に答弁をわずらわしたい。
  93. 小平久雄

    小平委員長 加藤君、地方自治庁の御要求の各局長は、他の委員会関係で、まだ出席ができないそうです。
  94. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 こういう重大な問題をお尋ねしておるときに、しかも私は、今度の国会の当初から、これを依頼しておったはずだが、この席に出て答弁ができぬというなら、この問題について、だれか答弁していただけますか。
  95. 小平久雄

    小平委員長 担当の局長が来ておりませんから、あらためてやって下さい。
  96. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 それはいつですか、あすの朝ですか。
  97. 小平久雄

    小平委員長 それは向うに、あすにも来るように要求します。
  98. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 これこそ緊急問題でして、今、御承知の通り、地方財政の予算案が、ちょうど国会と同じように、各地区において審議が行われている最中です。住民税の割当をどうするかということは、きょうの陳情は絹、人絹だけでございますが、毛の機場地区においても、綿の機場地区においても、あるいは紡績地区においても、全部行われておることです。これは国家的な重大問題だ。それを、いまだに対策ができていないということであるとするならば、先ほど来、この不況対策はございます、と大臣は言うておったけれども、これはできていない証拠なんだ。どうしてくれますか。  それでは、まず答えられる労政局長、あなたは、勤労者には絶対迷惑をかけぬとおっしゃいましたが、かかっておる。これをどうしてくれますか。
  99. 坂本一衛

    ○坂本説明員 労政局長とおっしゃいましたが、私、労政課長でございまして、局長らしい答弁はできませんが、私、申し上げましたのは、絶対にございません、というふうに申し上げたわけではございませんで、見解をお求めになられましたので、不当にしわ寄せをすることは望ましくないということを申し上げたわけであります。
  100. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 望ましくないということだけで、具体策がなくては、どうにもなりません。不当にしわ寄せをしないというりっぱな精神はおありでしょうが、不当にしわ寄せが今来ている。機場に勤める勤労者だけじゃありません。あなただから、勤労者のことを言うのですよ。あとで、経営者の方のことはこっちに聞きますけれども、機場に勤めておるおかげで、紡績に勤めておるおかげで収入は減ですよ。おわかりでしょう、三割操短です。しかし、地方税は増ですよ。これは不当にしわ寄せでしょう、そう思いませんか。具体的事実がそうでしょう。だから、不当にしわ寄せがあったときには、そのようにしないとおっしゃるならば、これを自治庁なり大蔵省なりと折衝されて、そんなことは初めから施行し得る範囲内に入っておる行政措置なんです。それをやられていないとか、答えができないというのでは、さきの言葉が間違いであったということになってくる。ただおざなりに答えたというだけに終るわけです。そういうことが具体的にあるのだが、これをどうします。もう一度……。
  101. 坂本一衛

    ○坂本説明員 おっしゃる事実は、私よく存じませんけれども不況のあおりを受けての人員整理というような問題が生じました場合には、これはやはり、一方経営上の問題もございますので、その方の問題との調節もはからなければならぬと考えます。従いまして、通産省御当局とも、いろいろ御相談していきたいというふうに考えます。
  102. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 政務次官にお尋ねいたしますが、本件に関して、ただいま労働省の方には労働者のことを聞きましたが経営者も同じことです。同じように不況で減収、しかしながら、地方の自治団体で行なっておるあまたあまたの行政をストップするわけにはいかぬ。機場の繰短はできるけれども、地方の行政をストップするわけにはいかない。そこで依然として地方自治団体の収入源というものは減らすことができない。しかし、現実に減ってくる。そういう場合に、次官としては、どこへしわ寄せをなさろうとお考えでございますか。現在では、その周辺に住まっているところの農民、他の業者、あるいは勤労者にかかっている。一例を申し上げますと、某地区においては——名前を言ってもいいのですけれども、勤労者だけが住民税の六九%を負担している。それが今度の三割繰短のおかげで、どういうことになったかというと、またぞろ追い打ちをかけられて、総体の八八%を勤労者だけで持たなければならぬ、こういう具体的事実が現われてきておる。そこで、お尋ねしたいことは、とかく目に見える台風が吹いてきたときには、これに対する対策というものは、農林一家がこぞってこの対策をするのです。ところが、今や繊維畑に対してはどえらい旋風が吹いて、大あらしが来て、おかげでその被害というものは甚大なものです。にもかかわらず、これに対して特別の措置がはかられていない。せめて特別交付税の恩典に浴させるだけの雅量といいますか、親切がありませんか。通産省としては、自治庁ないしは大蔵省に向って、特別交付税をふやすだけの親切がありますか、ありませんか。特に本年度は百分の二十六から百分の二十七・五にふやすという修正案が、すでにかかっているはずでございます。さすれば、大あらしの来たこの糸へんの業界に対して、当然のことながら、やったって、ばちは当らぬと思いますが、どうですか。
  103. 小笠公韶

    ○小笠政府委員 繊維工業を中心に形成しておる市町村等におきまして、こういう不況時に、その財政収入に大きな減収が来るということは、当然に考えられることであります。この点は、三年ほど前に、皆さんも御承知の、いわゆる石炭不況時代にも、この問題は繰り返されておるのであります。こういう際に、いわゆる必要な財政計画に対する収入を、全部その土地のものに持っていくということは、私はできないと思うのであります。今、お話しのように、どうしても税は、いかなる税につきましても、法定になっておりまして、法定の許容範囲内しか弾力性がないことは、皆さん御承知の通りであります。なおかつ、そういうふうな形においても足りない場合におきましては、今、加藤委員のおあげになりましたような特別交付税制度の活用という問題が、当然考えられなければいかぬと思うのであります。具体的に、各地方自治団体の財政需要と、これに伴ういわゆる財政収入との大きなアンバランスが出てくるというようなところは、はっきりつかみまして、いわゆる特別交付税か、特別の調整措置を自治庁にお願いをする。私の方といたしまして、自治庁にその点をお願いすることは、当然いたします。これはあくまでも自治庁に特別の御援助を願わなければならぬ、こういうふうに考えております。
  104. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 次官の言たるや、まことによろしい。ぜひそのようにしていただきたい。この問題は、緊急を要します。半年も考えてからでは、すでに地方自治団体の財政収入、支出が決定してしまいますから、その前に、このことをぜひ地方自治団体に通告ができるよう、それこそ可及的すみやかに善処されたい。そのため委員長、もう国会の当初から要望しておるところの、このお二方ないしは、自治庁の長官ならなおけっこうでございますが、本件が自治庁において行われるやいなやを、私は至急ただしたいのでございますから、あすの委員会の筆頭に、ぜひここに招致していただきたい。これを委員長にお願いします。よろしゅうございますか。
  105. 小平久雄

    小平委員長 加藤君が、国会の当初から要求しておるというのは、それを私は承知しておりません。本日初めて承知したのです。あす招致するように努力します。
  106. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 私は、先般繊維不況について、税制、融資、設備等について、詳細に承わりますが、その対策についていかがでございますか。いつも私の質問は時間がないのですが、その折に大臣は、可及的すみやかに善処をいたします、こうおっしゃった、その税制の一つでございます。  そこで、通産省としては、特別交付税を、相手によって変るでございましょうが、一体最高どの程度要望されるお考えでございますか。あるいは、まだそれは計算してないとおっしゃるかもしれませんが、地方々々によって、ときに一割、ところによって二割あるいは三割、また機場の占めるパーセンテージが、その町その村によって違うでございましょうけれども、特別交付税を最高どの程度要望される用意がございますか。
  107. 小笠公韶

    ○小笠政府委員 繊維を中心とした地方公共団体の財政収入が減ったこういう場合には、財政支出の面においても、変動があるものと考えなければなりません。従いまして、具体的な各地方公共団体ごとに、必要なる財政計画、財政支出、これに見合う財政収入を考え、足らぬところを調整措置に持っていくということにいたさなければならぬのでありまして、最高何割、最低幾らというふうな、画一的な問題ではないと私は思う。特に税関係でありますので、それは具体的な各地方団体の実態に即して考えていくべきものだ、私はこういうふうに考えております。
  108. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 私は、今実態を知っておりますけれども、時間の関係上申し上げません。知っておるところと、知らぬところもありますけれども。  そこで、次官にお尋ねしたいのは、それではケース・バイ・ケースでいく、こういうことでございますか。もしケース・バイ・ケースということになりますと、地方自治団体の長が、通産省に何がしかのデータをつけて陳情した場合にこれを行う、こういうことでございますか。それとも、十三号台風がありましたときのように、政府の方みずから、もうすでに不況実情はわかっているのだから、これこれの条件を備えたものにはこれだけの交付税、これこれの不況条件を備えたものにはこれだけ、そういうあらかじめの基本の具体策というものを立てて臨まれるつもりでございますか。あるいは立てておるというのなら、今それを示してもらいたい。
  109. 小笠公韶

    ○小笠政府委員 財政の収支の調整を、いわゆる交付税にたよるということになるのでありまして、そういうときは、御承知の通りに、どういう形でいくかは、主力は自治庁において決定するところでございます。従って、私ども産業の関係者が、こういう標準でこうする、こう言うことは無理だ。あくまでも自治庁の、いわゆる地方財政の持っていき方の原則に従って、これをきめていくということにならなければならぬのじゃないか。そこで、われわれは産業の立場から見て、そういう地方公共団体の財政の運行が困難だという場合に、特別の御援助を自治庁に頼む、こういう立場にあると私は考えております。
  110. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 それは、農村の上にあらしがきたときのあの政府の手当と、このたびのこの大あらしと比較いたしますと、まるで天地雲泥の差があります。そこで、もうここで押し問答を繰り返しても、今ここで結論を得ることは困難でありましょうから、一つ胸に手を当てて、ほんとうに機場を愛し、紡績を愛し、糸へん産業の指導育成強化を念願されますならば、この際ぜひほんとうにあたたかみのある、農林省が農村に対して、あらしのときに行なったと同じような措置を講じられますように要望いたしておきます。  次に、今度は、あなたたちの手元でわかっている借金が一つあります。それを返してもらえるか、もらえないかについてお尋ねいたします。先ほど長谷川委員が、五万円頭打ちであともらえなかった、こういうお話でございましたが、幸いここに当時の綿麻業課長の佐橋さんがいらっしゃいます。そこで、佐橋さん、よく御存じでございましょうが、織統の解消、それから繊維税の改正等によりまして、繊維業界政府に納め過ぎました税金が、当時の金額にして二十二億余あるはずでございます。それを再三業界から、もう返してもらいたい、もう返してもらいたいと言うておりますが、いまだかつて返していただいたためしを私は聞きません。ほんのちょっぴりにおわせられたことが、たしか昭和二十八年ごろにあっただけで、いまだかつて返してもらっておりません。これに対して、こういう不況時期に、施しといいましょうか、返すといいましょうか、そういう意思がありますか、ありませんか。
  111. 小室恒夫

    小室政府委員 その問題は、ずいぶん長い間、関係団体と政府との間で、折衝が続けられたのでありますが、一両年前に、円満に話し合いがつきまして、解決済みであります。
  112. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 その解決は、いわば百円のカタに編みがさ一がいという解決の仕方でありまして、繊維局長、よく御存じの通り、実は政府の方が取り込みになっておるわけです。だから、その金を返せとは言わないが、過去において、たとえば、織機を没収されたときの手当と、今のような税金の納め過ぎに対する手当については、好況のときには、政府の方に貸し越しがたくさんあるわけである。それを今、二十二億とか二十億とは言いませんが、そういう借りが、政府の方には繊維業界に対してあるわけですから、この際それを吐き出す用意があるかないかということを、お尋ねしておきます。
  113. 小笠公韶

    ○小笠政府委員 その問題につきましては、先ほど通産大臣から御答弁申し上げた通りであります。非常にむずかしい問題でありまして、簡単に措置できるものではないというふうに考えております。
  114. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 簡単に答弁のできない問題ばかり続くようでありますので、これも一つとくと御検討の上、早急に解決が願いたいのでございます。  もう時間が迫って参りましたので、あと一点にとどめますが、繊維とともに発達し、繊維とともにその苦楽をともにして参りました業界があります。それは繊維機械業界であります。ここも繊維不況の波は、糸へんの工場と同じように押し寄せております。そこで、これに対する対策は、先年、内地販売がなるべく可能になるようにというので、耐用年数を短かくしよう、あるいは機場がスクラップ・ダウンをするときには、補助金をつけて新しい機械が購入できるようにしよう、こういうことが、あの繊維設備制限の折の附帯決議についているはずであります。一体これはどうなっておりますか。もう一つ、あのときの話し合いで、すでに鈴木重工業局長は、委員会で言明しておられたことですが、機械工業振興法の中に、この繊維機械を挿入する。しかも、繊維の審議会の専門部門に機械業界業者及び労組を入れ、そこで意見をよく聴取する、こういうことになっておったはずでございますが、一体その後どうなっておりますか。と同時に、内地の販売がスムーズにいくような手当と同時に、輸出振興をはからなければならぬというので、それも附帯決議についていたはずであります。ところが、聞くところによりますと、インドの貿易協定が結ばれました。繊維機械は、この際のクレジット、為替損失補償の仲間に入っていないということです。そのために、この業界業者も労働者の方も、こぞって、ぜひそうしてもらいたいと陳情に出ております。大蔵省の方は、これに対して、ケース・バイ・ケースでいきましょうというところまで譲歩してきておりますが、通産省、特に重工業局としては、何ゆえにこのクレジット、延べ払いの中にこれを入れられないのか。あるいはまた為替損失補償の対象とされないのか。そういうことをしなくとも、輸出が十分できるとお考えでございますか。あるいは繊維機械業界というものは、安全地帯であるとお考えでございますか。特に、インドとの貿易協定が今進行中でございます。少くともインドには六十万錘、織機にして一万八千台程度のオファーをいたしておるはずであります。それがなかなかスムーズにいかないというのは、今の二点がネックになっているはずでございます。これに対して、一体どのようにお考えであり、どのような対策を立てられようとしていらっしゃるのか、具体的にお答え願いたいのであります。
  115. 佐橋滋

    ○佐橋説明員 繊維機械の問題でありますが、先ほどのお話で、一番大きな輸出市場は東南アで、中でもインド、パキスタン、台湾及び韓国等が繊維機械の重要な輸出先であります。台湾は、最近状況の変化で、ちょっと輸出が停頓しておりますが、これは時期の問題かとも思いますので、この方は、話がつけば、年間六、七億の輸出は可能かと考えております。インドにつきましては、先ほど来石田団長のミッションが参りまして、一応の話がつきまして、これも下期から相当程度行くのではないかと考えております。為替損失補償法との関係につきましては、一応業界大蔵省とわれわれの方との話し合いの結果は、インドのSTC、貿易公団の補償を、インド政府がさらに再補償するという形でやっていこうということで、現在インドの方で詳細の手続を検討中でありますので、この方は必ずしも為替損失補償法に乗っけなくとも行けるのではないか。もちろん、為替損失補償法の裏打ちができれば、より有利であることは間違いありませんが、あまりリスクは考えられないのではないかというふうに考えております。
  116. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 大蔵省の方は、この問題についてケース・バイ・ケースで、為替損失補償法の適用、それから延べ払いの適用はいたしますと答えている。大蔵省でさえもそう考えているのだから、通産省としては一体どう考えるかとお尋ねしたときに、大蔵省よりも程度の低いことを考えておられるということでは、通産省のお答えとは、ちと受け取りがたいのでありますが、もう一ぺん御考慮の上、お答えが願いたいのであります。
  117. 佐橋滋

    ○佐橋説明員 為替損失補償は、御承知のように前国会で二百五十億の増額になっておりますが、この運用につきましては、いろいろと大蔵省と折衝をいたしております。今、加藤委員の言われたように、私の方が大蔵省よりも軽いというようなことは、もう全然あり得ないのでありまして、現在為替損失補償法につきましては、どういう機種に適用し、どういう仕向先に適用するかという点について、われわれの方と大蔵省との間に話し合いがついておりません。繊維機械について、加藤委員はだれからお聞きになったかわかりませんが、この為替損失補償法を、全機種についてケース・バイ・ケースにやられておりましては、私の方としては、運用上非常に支障を来たすので、できれば包括的にこの制度が運用されるようにということで、大蔵省とせっかく折衝中であります。加藤委員にあとで、どこからお聞きになったか、承わりたいと思います。
  118. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 それでは、明日ここへ大蔵省為替局長をぜひ呼んでいただきたいのでございます。そこで、今の重工業局次長さんのおっしゃった、大蔵省よりも通産省の方が点が甘いということを、はっきり見せていただきたいのでございます。なぜかならば、ほかのときと違いまして、繊維不況は、やがてその関連の機械産業にも大きな不況をもたらし、その結果は、三千人の工員を擁する会社で七百五十人の首切りを出しているのでございます。この首切りが、簡単にできることならばよろしゅうございますが、御承知の通り繊維機械は、ますます高度のものにならなければならぬ。しかし、それはほとんどが鋳物部門である。この鋳物は、少くとも十年間の熟練を要する。それがなければ、ネップを少くして八〇番手以上の糸をひかせる機械は、とうていできないのでございます。そういう会社であるにもかかわらず、養成工から入れた熟練工さえも切っていかなければならぬのが、現状でございます。それは、すでに重工業局次長さん、よう御存じのはずでございますから、将来のことをおもんぱかって、やがて好況になり、あるいは合成繊維の機械が今必要であるという時期に、熟練工をも切っていかなければならぬというようなことは、国家の大きな損失でございますので、これは総合的によく勘案の上、それこそほんとうに甘い点といわずに、妥当な点でけっこうでございますから、一つおつけいただきますように、私の質問は明日の第一番に保留いたしまして、本日はこれで終ります。     —————————————
  119. 小平久雄

    小平委員長 この際、小委員会設置の件についてお諮りいたします。  目下審査中の中小企業信用保険公庫法案及び中小企業信用保険公庫法の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律案の両案は、ともに重要議案であり、かつ、その内容は、法律に規定のあるもののほか、重要事項につきましても、政令に譲る部分もかなりありますので、この際、精密に審査をなす必要があります。また、政府案におきまして、保険種別、保険料率等の規定につき、種々議論のあるところでありますので、この際、これらの点について慎重に審査をなさしめるため、小委員十三名よりなる中小企業信用保険公庫法案外一件審査小委員会を設置することにいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  120. 小平久雄

    小平委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたします。  なお、小委員及び小委員長の選任につきましては、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
  121. 小平久雄

    小平委員長 御異議なしと認めます。  それでは       阿左美廣治君    有馬 英治君       内田 常雄君    川野 芳滿君       櫻内 義雄君    笹本 一雄君       長谷川四郎君    南  好雄君       加藤 清二君    多賀谷真稔君       田中 武夫君    田中 利勝君       松平 忠久君 を小委員に、内田常雄君を小委員長に、それぞれ指名いたします。  本日はこの程度にとどめ、次会は明二十七日午前十時より開会することとし、これにて散会いたします。     午後一時七分散会