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深瀬参考人 お許しを得まして、私から
意見を述べさせていただきます。
私は、
全国信用保証協会の
常務理事深瀬晃でございます。
田中が伺うはずでございましたが、病気でございますので、私からかわりまして述べさせていただきます。昨年度十億円に引き続きまして、本年度二十億円の
国家資金を、われわれ
信用保証協会にお貸し付け願う
措置が進んでおるように、拝承いたしておりますが、この点につきましては、
皆様方のかねがねの非常なお手厚い御
配慮を、この機会に御礼を申し上げ、今後ともよろしく
お願いいたします。
保険制度につきまして、第一の問題でございますが、
包括保険の
全面的実施は、
保証協会といたしまして非常に困る、こういう点を申し上げたいと存じます。この問題につきましては、昨年八月以来、大蔵省に
金融制度調査会が設けられまして、その席上で、この問題が研究されたのでございますが、その
調査会の
答申につきましては、すでに御
承知と思いますので、詳しくは申しませんが、その際に、
包括保険の問題につきまして、
保証協会側から申し上げましたのは、建前としては、
包括保険は悪くないのでありますが、現在直ちに全面的に実施いたしますのは、
信用保証協会の
経理内容、
経営方針その他が、極端に申しますと、五十二通りあるような
実情でありまして、元来、
保険を五十二の
協会の中で相互にやるという
考え方そのものに、非常に無理があるのでございます。御
承知のように、
保険は、非常に多数の相手方の間で
保険をすることによって、成立するものでありまして、わずかに五十二の
対象の中で、互いに
保険をし合うという
考え方は、非常に無理なのでございます。もしその無理が許されるならば、これは非常に
保険料率が安くて、ほとんどゼロに近い
保険料でありまして、しかも、
填補率が一〇〇%に近い
填補率であれば、この無理も行われるのでありますが、現在の
保険制度のもとに考えられております
保険料率、
填補率では、現在直ちに全面的に
包括保険を実施するのは、
保証協会の
経理に非常に混乱が起きるので、困る、こういう点を申し上げたいのでございます。
なお、つけ加えて申し上げますと、
火災保険とか
生命保険のように、科学的な
保険料というものができておりません。
保険協会ができまして、近々十年そこそこでございますから、
料率その他につきまして、科学的なデータがございませんで、腰だめの
保険料でございますから、この点が、
保証協会の
経理にとりまして、非常に重大な
影響を来たすのでございます。
さよういたしまして、この
保険制度の
答申におきましては、
中小企業信用保険につきまして、
包括保険は将来実施する
方針である、こういうふうに、はっきりきまりまして、それで直ちに全面的に実施される、こういうことになっておるのでございます。それから、それに附帯いたしまして、小
委員会意見というのがございますが、それにも、さらにこの点に付言いたしまして、
経過措置といたしまして、一定の
金額までの
保証に関しては、直ちに
包括保険を実施するが、
当該金額をこえるものについては、
経過措置を設けて、逐次これを実施するということになっておりまして、この二つの文書から、
包括保険を全面的に実施しないということは、そのときに御
出席の
大蔵当局とも、十分にお話し合いかついた問題であると、われわれは考えておったのでございますが、
政府の今回の案におきましては、全面的に
包括保険を実施するということになりまして、われわれのかねての
お願いが、全然無視されておるという点が、
保証協会側として、
納得のいかない第一点でございます。
それから第二点は、
保険料の問題でございます。五十万円以下につきまして、
包括保険が実施されておりますが、われわれ
保証協会は、大小さまざまありまして、一律に五十万円で網を打ちまして、全部が
保険にかかるということになりますと、約三分の二ぐらいの
保証協会は、
小口の五十万円以下の
保証が多いから、ほとんど全部
包括になってしまうのであります。そういうことからいたしまして、
保証協会としては、かねがね二十万円ぐらいまでのところに
段階を設けまして、一応二十万円、それから十万円というふうな
段階をつけまして、
協会の
実情に応じまして、選択的に
包括保険をやらしてもらいたい。たとえば、Aの
協会は、非常に
小口の
保証が多くて、
協会そのものも少さいから、十万円ぐらいの
包括保険を当面実施する。Bの
協会につきましては、三十万円ぐらいのところをやるというふうなことを、
お願いいたしておったのでございますが、
政府の今回の案は、五十万円以下は全部
包括保険ということになりまして、ほとんど
保証の全部が
包括になる
協会が、たくさん出てくるのでございます。
それから、さよういたしますと、今まで五十万円以下につきましては、
政府の案では、二十万円以下につきまして
包括保険という
制度がございまして、これが
填補率が九〇%でありましたが、その
包括保険を
利用しているのは、現在五十二の
協会のうちで十三
協会ございます。そういうふうにいたしまして、
包括保険が案外
利用率が少い。というのは、元来、
保証協会が
保証する場合には、
事前に
中小企業者の
信用状態を調査いたしまして、
保証いたしておりますが、全部を
保険に付する必要はないわけでございます。非常に危険があると認めまして、しかも、これは、
中小企業者のために
保険をつけなければならぬというものこそ、
保険をつける必要があるのでありまして、端的に申し上げますと、
保証協会で
保証いたしまして、それが貸し倒れになりまして、
代位弁済をいたします
そのものだけが
保険にかかれば、いいわけでありますが、それが、大体
保証いたしましたものの一・七%前後が、今、
代位弁済されておるのであります。そういうふうに、わずかに一・七%くらいの
対象を相手にすればいいのを、全部
保険にかけなければならぬことになりますから、非常に
保証協会といたしましては、
保険料の
持ち出しが多くなるのであります。これが、
協会によりまして、今、
保険制度を非常によく
利用している、ほとんど一〇〇%に近い
保険を
利用している
協会でありましたら、今度の切りかえによりまして、
料率が若干下っておりますから、
影響はないのでございますが、大部分の
協会は、
保険の
利用が非常に少いのでありますから、今申しましたような
保険料の
持ち出しが、非常に多くなるのでございます。しかも、御
承知のように、
填補率が七〇%というふうに非常に下っておりますから、
零細企業の
金融をやるという
趣旨から、もう少したがをゆるめて
保証したらどうかという
せつかくの御意思が、どうも通らないことになるのではないかというふうに考えられるのでございます。
それから、五十万円以下二十万円超のものにつきましては、
料率が、
政府の案では九厘になっておりまして、
填補率が七〇%でございますが、これも、今申しましたように、
保険の必要がないものまで
保険にかけなければならぬのでございますから、もう少し
料率を安くならないかという点が、
お願いでございます。
続いて、われわれの端的な希望を申し上げますと、
填補率は、前の
包括保険とか
小口保険にいたしました八、九〇%の
填補率で、
料率は、先ほど申しましたような小さい
協会の
経理状態から考えまして、二十万円以下については、大体六厘以下ぐらいに
お願いできないかということを考えております。それから五十万円以下につきましては、七厘以下ぐらいの
料率を
お願いできないものだろうか、というふうに考えておりますか、今申しました六厘、七厘くらいの
料率をもちましても、どうも
保険料の
持ち出しが多くて、この
制度を
利用できないのではないかというようなことのある
協会が、また相当出てくるはずでございます。
五十万円超の
普通保証保険でございますが、これも、今の
制度が、
保険料が二分でございまして、
填補率が七〇%でございますが、これが今度の
政府案におきましては、二分五厘に引き上げられまして、
填補率が六〇%に
引き下げられております。
保険制度ができて以来、皆さんが御
承知のように、
填補率は次第々々に改善されておりますし、
保険料も毎年下げられておるのが、今回、この
普通保証保険のみが、突如として
制度を
改悪されておるという点は、何をいたしましても、ふに落ちないのでありまして、
中小企業対策を前進するときに、非常に後退しておるということは、
保証協会といたしまして、何としても
納得ができないのでございます。
保証協会といたしまして、五十万円以上につきましては、先ほど申し上げましたように、
保証をする場合に
事前審査をいたしておりますが、
金額が五十万円以上になりますと、さらに慎重に
事前審査をするのでございますから、あるいは
政府で御
心配になっておりますように、今後
保証が伸びれば、もっと
事故がふえるのじゃないかという点につきましては、私は、そういう御
心配は要らないというふうに申し上げたいと思うのでございます。
保証協会といたしましては、基金は、国からお借りした
資金なり、
地方公共団体からの
資金でありまして、ひとしく税金でございますから、その
資本金の保全には、
十分努力をするつもりでございまして、
事前審査制を慎重にやりますから、決して
事故が増すことはないというふうに考えております。それでありますから、今申し上げましたように、
保険料率を著しく引き上げまして、
填補率を
引き下げるという
改悪は、どうも筋か通らないのじゃないかというふうに考えておるのでございます。
それから
保証料の
引き下げということは、現在
中小企業界の世論でございまして、
保証協会といたしましても、
保証料の
引き下げをしなければいかぬと思っておるのでございますが、
中小企業からいただきました
保証料の中から、
保険料を支払うのでございまして、
保険料は、だれにも転嫁ができないものでございますから、
保険料が非常に高くなりますと、
保証料がそれだけ食われる勘定になりまして、
中小企業界の
要望であります
保証料引き下げということは、事実上できなくなるのであります。
保証料と
保険料と関連して考えますと、何としても
保険料は安く
お願いしなければならぬのでありまして、われわれといたしましてはいろいろの
要望がありますが、少くとも五十万円以上につきましては、
普通保証保険の
料率、
填補率は、現在に据え置き願いたい。それ以上下げる
要望もありますが、少くとも
改悪はいかぬので、据え置きに正願いたいという点が、強い
お願いでございます。
このように、
保証協会側からいろいろの御
要望を申し上げますと、それでは
公庫の
独立採算がとれないのじゃないかというふうな御疑念が出るかと思いますが、われわれの方の見解といたしましては、
政府案で
公庫の
計算をいたしております場合に、
回収率という問題がありまして、
代位弁済をいたしました中から、数年にわたりまして
回収をいたしまして、それを
保証協会に一部をいただくことにいたしまして、一部は
保険金をいただきました
政府にお返しをしておるわけでございますが、
公庫ができましても、
保険金をいただいたかわりに、この
回収金を
公庫に差し上げるわけでございます。
政府案によりますと、
回収率を大体四三%くらいに見ておられるそうでございます。これは
保証協会ができましてから
昭和三十一年末までの、平均の
回収率だそうでございますが、
保証協会から申し上げますと、
保証協会ができまして数年の間は、
事務機構も十分に整いませんで、従いまして、
回収の能率も非常に上らなかったときがあるのでございまして、
保証協会がみなスタートできましたのが、大体
昭和二十三、四年のころでありますが、いよいよ
機構が充実いたしまして、機能も軌道に乗りました
昭和二十九年以降の二十九年、三十年、三十一年くらいの最近の実績を見ますと、これが五十数パーセントまで
回収ができておるのでございます。大体半分以上
回収ができておるということになるのでございますが、これを手固く押えまして五〇%といたしますと、われわれの方の
保険料の
引き下げ、
填補率の引き上げをいたしましても、
公庫の
経理には何ら
影響はなく
経理されるのでございまして、むしろわれわれの
計算によりますと、
政府案よりは、数千万円
公庫の
経理に好
影響があるということになりまして、われわれの
要望をいれていただきましても、
公庫の
運営に何ら差しつかえないという結論になるのでございます。
以上が、
保険料につきましての
お願いでございますが、その次に、
保証協会といたしましての
お願いを申し上げます。この
公庫が作られる一つの
理由は、
保険事務の徹底的な
簡素化ということでございますが、この徹底的な
簡素化ということが行われまして、
保険利用率が高まっていくにつれましての
人件費の
増加を、
保証協会側に極力少くて済むように
お願いしたい。今のままでいきますと、この
保険を
利用する範囲が多くなるにつれて、二、三割
人件費をふやさなければならぬというふうな事態にもなりかねないのでございまして、この際に、
保険手続その他の徹底的な
簡素化を願いまして、何とかして
人件費、
物件費の
増加を来さないように、御
配慮願いたいということでございます。 最後に、
保証協会の
自主性の問題でございますが、これは、
政府側からは非常に強い御支援を得ておりますから、
心配はないのでございますが、往々、この
公庫ができますと、
全国五十二の
保証協会を、この
公庫の
支店にしようというふうな御
意見も、世間で伺えるのでございます。われわれといたしまして、これはどんなにいたしましても、
保証協会の
自主性というものは、尊重していただかなければならないと考えておるのでございます。かりに、この
公庫の
支店長が
地方に赴任するといたしまして、
地方の
実情にも十分通暁しない方が、せいぜい二年くらいおりまして、そこで
保証協会を
運営すると仮定いたしますれば、自分のおる間は、できるだけ手固い
経営をいたしまして、もう危険のあるような
保証はしない、こういう保身一方のことになりがちでございますから、
保証協会を健全に
運営いたしますには、やはりその
土地におります
方々が、この
土地の
実情に詳しい、ほんとうに
愛情のある
保証をすることが、
実情に即すると思うのでございます。かたわら、
地方公共団体か、過去十数年間この
保証協会を育ててきている熱情、
愛情、そういう
方面から見まして、物心両
方面とも
地方の
公共団体と密接につながって
運営する方が、
実情に即した
保証協会の健全な発展をはかるゆえんであると存じまして、この
保証協会の
自主性の確立につきましては、今後とも御
配慮を
お願いしたいと思います。
はなはだお聞き取りにくかったかと思いますが、以上で私のお話を終ります。