○加藤(清)委員 ここの
答弁をうまく切り抜けるということでなしに、
大臣としては、ほんとうに真剣に
考えておいてもらいたいのです。と申しますのは、ただいま御承知の
通り、銘柄にすればナイロン、ビニロン、アミロン、アセテート、きょうこのごろはテトロン、テリレン、テビロン、このように化学繊維の銘柄もふえ、数量も徐々にふえる傾向がございます。このことはやがて、今日スフ人絹が過剰生産だといわれ、操短しなければならない
状況に追い込まれている、その轍を再び踏むのではないか。なぜかならば、各企業家としては、よそが転換した場合に、わが社も同じように新しきものにつかなければ、自分の会社の経営上困りますから、各社が競争してそれに向っておる。ところが、その総体を一歩高いところでながめて、これにブレーキをかけたり、あるいは交通整理をしたりという
役割は、当然のことながら
政府の任務なんです。それを
政府が怠っておれば、必然的にそうなるのは目に見えている。操短々々というと、あなたはどうお
考えか知りませんが、操短ということは、企業家にとっては、決して自分の会社の設備の操短ではございません。自分のところは次々とふやしたいのです。操短したいのは、相手方の会社の設備を操短したいだけのことなんです。決して自分のところを操短しょうとか、自分のところを制限しようなどとは
考えておらぬのですよ。そういうやさきに、合成繊維だけはよろしいというわけで、こっちの門をあけっぱなしにしておいたならば、ここへどんどんと殺到するのは当然のことです。そこで、この交通整理なり、ブレーキがかからないというならば、
一つ私は次にお尋ねしたい。
大臣、あなたは、数量はこの
程度、とおっしゃいました。それは、
アメリカ向けの場合は、そう言わなければいけないでございましょうが、少くとも私、ないしは社会党の審議会で調査したところによれば、決してこの
程度のものではございません。なぜかならば、
インドネシアの賠償が解決をすれば、ここに金額にして二億ドル
程度の輸出増が見込まれます。その約七割と言いたいが、まあ六割五分
程度と
遠慮しておきましょう。これは繊維でございます。なぜかならば、すでにそういう実績は、
日本は
インドネシアに対して持っていた。ただし、あの焦げつき債権のおかげで、
通産省みずからの手によってストップ令をかけられたわけです。その結果、
インドネシアとしては、はるか遠い、しかも高い品物をイギリスから買い入れ、何とかして
日本のものがほしい、ほしいという声が、今やあちらの住民に充満している。これを解決すれば、当然のことながら輸出できる。先ほど
松平さんが、賠償の中に入れる気はあるかないか、賠償にこれを入れれば、それが見本となって、やがて次の商品の買付の原因になる。一挙両得だからこれをやったらどうか、こう言われているのは、その点ですよ。次に、先ほど中国の話が佐竹さんから出ておりましたが、中国の糸へんの需要というものは六億です。しかも、あすこの生産数量というものは、伝えるところによれば、もう自給自足が立って、よそへまで売り出しているということを言われますが、あにはからんやでございます。そういうことを言う人は、糸へんの質を見きわめない、しろうとの人の帰朝報告なんです。中国では、なるほど
東南アジア、
インドあたりまで糸は売りに出しております。しかし、その糸の質は何かというたら、綿でいえば三十番手以下ばかりでございます。しかもネップの非常に多い製糸でございます。従って、あなたのおっしゃるように、
程度の高いものを作れば、中国へもどんどん売れていきます。
程度は低くても、現在の質だけでも、なお人絹糸は一回の買付が千五百万ポンドと、こう聞いている。それをよう売り付けないのが
日本の
状態なんです。なぜ売り付けないか、それは
日本の政策が悪いからです。向うは買いたい、買いたいと言っておる。雑品公司の孫立基あたりは、ぜひこちらからほしいと言うておる、すでにオファーもたくさんきている。それをようやり得ないだけの話です。指紋の問題だとか、人数の問題だとか、国旗がどうでしたとかこうでしたとか、まるで小学校の生徒みたいなことを言うておる。そこで、これを解決すれば、中国へ伸びるのは、まず第一番に人絹糸、次に伸びるのは、毛織物の中の、特に梳毛がきっかけになりますが、続いて北部地帯に紡毛製品が、
日本の現在の設備をフルに動かしても、なお足りないほど出ます。現に梳毛が先般出たのです。あまり急激に出たものですから、クレームをつけられなければならぬような品物と一緒くたに持っていった。これほど出るのです。だから、輸出の数量をそんなに
遠慮して、この
程度などとおっしゃらずにもっともっとその輸出振興策をお
考えいただきさえすれば、何も
アメリカ市場とは言いません。もちろん、それも大事な市場でございますけれども、
東南アジアと中国と、その
東南アジアと中国にまたがる華僑、これに対する対策が完全に行われさえすれば、糸へんは決して斜陽産業ではない。私はかように確信し、業界もまた、さように確信すればこそ、片や操短して、片や増設をしていくという
状況でございます。実態をよく把握していただきまして、糸へんの産業を一そう振興していただくよう、
大臣の
決意を促す次第でございます。