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1958-02-19 第28回国会 衆議院 商工委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年二月十九日(水曜日)     午前十時三十一分開議  出席委員    委員長 小平 久雄君    理事 阿左美廣治君 理事 内田 常雄君    理事 笹本 一雄君 理事 島村 一郎君    理事 長谷川四郎君 理事 加藤 清二君    理事 松平 忠久君       有馬 英治君    大倉 三郎君       川野 芳滿君    菅  太郎君       神田  博君    齋藤 憲三君       櫻内 義雄君    中村庸一郎君       南  好雄君    横井 太郎君       佐々木良作君    田中 武夫君       田中 利勝君    多賀谷真稔君       永井勝次郎君    帆足  計君       水谷長三郎君  出席国務大臣         通商産業大臣  前尾繁三郎君  出席政府委員         通商産業政務次         官       小笠 公韶君         通商産業事務官         (大臣官房長) 齋藤 正年君         通商産業事務官         (通商局長)  松尾泰一郎君         通商産業事務官         (企業局長)  松尾 金藏君         通商産業事務官         (重工業局長) 岩武 照彦君         通商産業事務官         (軽工業局長) 森  誓夫君         通商産業事務官         (繊維局長)  小室 恒夫君         通商産業事務官         (鉱山局長)  福井 政男君         通商産業事務官         (石炭局長)  村田  恒君         通商産業事務官         (公益事業局         長)      小出 榮一君         中小企業庁長官 川上 為治君  委員外出席者         参  考  人         (伊藤忠商事株         式会社常務取締         役)      横山 金吾君         参  考  人         (日本鉄鋼連盟         専務理事)   葦沢 大義君         参  考  人         (日本硫安輸出         株式会社専務取         締役)     大仲斎太郎君         参  考  人         (日本機械工業         連合会専務理         事)      橘  弘作君         参  考  人         (尾州紡績株式         会社専務取締         役)      青井 昭佳君         専  門  員 越田 清七君     ————————————— 二月十九日  委員永井勝次郎辞任につき、その補欠として  三宅正一君が議長指名委員に選任された。 同日  委員三宅正一辞任につき、その補欠として永  井勝次郎君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  産業経済基本施策に関する件  日中貿易促進のための国内産業の態勢に関する  問題について参考人より意見聴取      ————◇—————
  2. 小平久雄

    小平委員長 これより会議を開きます。  前会に引き続き、産業経済基本施策及び私的独占の禁止及び公正取引等に関する質疑を続行いたします。田中利勝君。
  3. 田中利勝

    田中(利)委員 私は、中小企業に関する予算、さらに電気銅に関する物資需給の問題、こういう問題について質問通告をいたしておったのでありますが、昨日佐々木委員から質疑のあった電気問題の再編成、さらに料金の問題に対して、通告した問題に先だって、通産大臣にお伺いしたいと思うのであります。  本日の新聞を見ますと、河野長官は、物価の抑制の見地から、東北北陸電力の四月からの電気料金値上げは見送るべきである、こういう意見の発表があったのでありますが、通産大臣は、すでに認可済みの事項だから、今さら変更はできないという意見であると伝えられております。また東北北陸電力社長は、予定通り四月一日から引き上げるつもりだと発言しております。これはいずれも本日の日本経済新聞の朝刊に報道されておるのであります。通産大臣に聞きたいが、東北北陸電気料金引き上げは、既定方針通り四月一日より実施されるのかどうか、この点をお伺いしたいのであります。
  4. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 河野長官が、東北北陸電気料金の、ことしは暫定的措置をとっておりますが、来年の予定のすでに許可済みのところまで料金を上げることは、希望として上げたくない、こういうお話、これはごもっともだと思います。しかし、この料金の今までのきまりましたいきさつから申しますと、非常に政治的解決ということでありまして、私の前任者であります水田氏が、政治的な責任をもってきめられたというようないきさつもあります。また、その後、すべてこれは既定の事実というので、いろいろな計画が組まれておるばかりでなしに、また世銀の借款その他につきましても、そういう既定の事実によって申し込みがなされておるわけであります。従ってこれは非常に困難だと思うのです。また、最近のいろいろ状況を見ますと、本年は豊水に恵まれましたが、来年度考えますと、今が豊水でありますと、逆に五月六月は渇水になる。そうすると、やはり相当な赤字が出るのではないか。従って、赤字を補てんする何らかの方法考えませんと、電力会社赤字を出すということになりますと、これはそう簡単なわけではありません。非常に困難である。もちろん、引き上げがやらずに済むのでありましたら、これは望ましいことであります。そこらで、両方考えは、対立というのじゃなしに、立場が違いますから、非常に違った一応の意見は持っておりますが、これは調整もされ、またわれわれも現在再検討いたしておるのであります。ただいま検討中であるということを申し上げる以外にないと思います。直ちに引き上げをやめるということを言明するわけにもいきませんし、さりとて、私は、何とかできれば現在のままに置きたいということは、私自身考えておるところであります。
  5. 田中利勝

    田中(利)委員 料金の問題は、大きな問題でありますが、特に政府の注意を喚起しておきたいことは、政府の説明では、明年度卸売物価水準は、年度間を通じて、おおむね現在程度水準で推移するという方針と承わっておりますが、通産大臣のいう四月よりの電力料金値上げ、これが今後の状況によって引き上げられるということになれば、いわゆる物価の中に織り込み済みとして、これが既成事実として通るのか、さらに物価上昇という新事実をこれから認めていくのか、こういう問題についての見解も、あわせて御説明願いたい。
  6. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 実は、率直に申し上げますと、これは全国的な、どの会社にも共通の問題でありますと、非常に処理がしやすいのでありますが、ただ東北北陸に限っての問題なものでありますから、その会社特殊事情といいますか、そういうことに結びついている問題でありますので、その点がむしろ逆に解決が苦しい問題になっているのであります。もとより、われわれは物価引き上げるようなことをやってはならぬ。しかし、その影響力等も、われわれももう少し検討さしていただきたいのですが、そういうような事情にあることだけ御了承願いたいと思います。
  7. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 検討中ということですけれども、今、田中君が言いましたように、きょうの新聞をごらんになっていると思いますが、昨日の閣議では、河野長官の方からは、了解を得たと思っていると、こう言っておられますし、それから通産省の方は、了解を与えたわけではないと言っておられますし、これはほんとうはどういうことですか。
  8. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 これはお互い検討するということになっておるのでありまして、その検討という意味が、あるいは両方多少食い違いがあるかもわかりません。しかし、これはそう簡単に結論が、きのう一回の委員会の話でつくわけのものでないのですから、これはわれわれといたしましても、計算なり、いろいろ時日を要することであります。また特殊な措置をとるにしましても、ただいま申し上げましたように、二会社だけについての問題ですから、そんなに簡単に結論が出る問題ではないのであります。
  9. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 ただいま通産大臣お話によりますと、前の水田大臣政治的云々もあるし、という話でありました。しかし、水田さんの言っておられます話の前提には、すぐにでも根本的に料金制度を改革する、その作業を行うことを前提として、例のもう一つの問題である三割頭打ちの問題も、一年保留という話になっていると思います。ところが、御承知のように、水田さんの代には、料金制度を根本的に改革すべき委員会なり、あるいはその作業なりは開始されずに、昨年の暮れになって、やっと御承知のような料金制度調査会というものが発足する段階になった。そして、その結論は、水田さんの約束では昨年中というのが、御承知のようにあなたの代になりますると、今年中ということになっておるわけであります。従いまして水田さんが昨年のちょうど今ごろ発言された内容は、ほんとうはそのまま一年ずれておることになっておると思います。こういう状況になっておりますから、昨年の約束は、簡単に約束ということだけでは、私は律し得られないのではないか、こういうふうに思います。それからその次に、一体通産省としては、この東北北陸料金問題については、ほんとうに何らの措置もせずに、当然に四月一日からは四%の値上りをして、予定通り一八%ということになるという前提で対処しておられたのではないですか。三割頭打ちの方は別に考えなければならないけれども、東北北陸の方は、ほうっておけば当然四%値上りしてくるから、別に措置をせぬでもいい。検討中ということでありますけれども、そうでなくて、通産省方針は、大体そういう方針でおった。ところが、一般状況並びにその他の関連で、経済企画庁長官がああいう発言をされたので、もう一ぺん相談し直さなければならなくなったということではないかと思いますが、ほんとうにイロハから相談し直されるつもりか、し直されるのなら、何を中心として相談をし直されるのか。つまり、し直すということになりますならば、手続論からいえば、何も新しい措置をせずに、四月一日から当然四%上ることになる。そうでなくて、実質的に検討を加えるということになれば、昨年一八%の値上げを了承したということ自体に、問題があるわけでありますから、従って、当時一八%を了承しながら四%を一応留保しておいたというのは、あのときの経済事情なり一般の客観的な事情が、一度に一八%上げることを許さなかったという前提に立つわけであります。ところが、御承知のように、ほんとうに根本的に検討するというならば、昨年のあのときの状態と現在の状態とを比べますならば、電気を使う方の立場産業界並びに一般民生におきましては、値上げをされることは、昨年よりもむしろ現在の方が、もっと窮屈な状態になっておる。しかるに、一方電気会社の方は、今のような通産大臣お話もありますけれども、一時的にもしろ、とにかく暖冬異変によって相当な経営改善が目されることは事実であります。従いまして、ほんとうに根本的に検討されるということでありますならば、企画庁長官の言うことの方が筋が通ってくる。手続論だけでいくならば、検討もへったくれもないということになる。でありますから、何を検討されるのか、どういう立場検討されるのか、お伺いいたしたい。
  10. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 水田大臣のときのお考えでいきましたら、これは当然上るという前提のように私は聞いております。また、これは手続論から考えましても、当然上るべきものだ。まあ検討するという問題は、水田大臣のときには、おそらく東北北陸という問題ではなしに、全般的に——もちろん東北北陸も含みましょうが、今度三%上るということを前提にして、その上に立っての検討のように聞いております。ただ私としましては、料金制度調査会なり、あるいはその他の検討につきましても、これは全般的な問題として検討しておるわけであります。ただ三%上げる問題は、最近において、いろいろ物価値上げというようなことは好ましくないという意味において、私どもも、できればそうしたいという気持を持っております。従って、そういう特別な措置ができるかどうかということについて、検討を始めておるわけであります。
  11. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 どうも答弁にならないのですが、三%値上げの方は三十三年の四月一日までには結論を出す、従って、ことし一年はともかくもということで、三割頭打ちの問題が一年延期になったことは御承知通りであります。その間検討がされていなかった、従ってそのまま今まで延びてきた、今後も延びていくということになるのか。あるいは、されなかったけれども、ここで新しい措置考えようというのか、どっちか。つまり、三割頭打ちの問題は、水田さんの場合には、昨年一年の間に結論を出すという約束をされたけれども、まだ出されていない。出されていないという結果に基いて、三割頭打ちの問題をどうされるのか、これが質問一つです。  それから東北北陸の問題は、昨年一応結論を出されまして、一八%値上げという決定をされた。しかしながら、一般の客観的な事情が許さないから、そのうちの四%を留保された。その留保された事情が客観的に解除されておるならば、もとに戻す措置も可能でしょうけれども、これを本気に考えるということであるならば、その客観的な状態が変化しておるか、していないかということを、考えなければならないではないか。ただ手続だけで言われるならば、考える余地はないのじゃないかといえるわけであります。その両方について、もう少し検討された結果をお答え願いたいと思います。
  12. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 水田大臣が一八%にし、本年だけ暫定措置として一四%でありますが、きめられましたいきさつは、来年度からは一八%でいくのだということで許可されておるように、私は聞いております。と申しますのは、会社からいいますと、それでも非常に不満なんで、それを一八%まで押えるということでいっておるのでありますから、これは当然一八%以上に上るという、すべて前提をとっておられるのであります。従って、その問題は、むしろそれによって一応解消した、こういうふうに私は考えておるのであります。しかし、最近の情勢考えて、別途この問題を検討すべく、できれば、そういう方法が見つかれば、引き上げずにこれは済ましたいというのが、だれしも考えることであります。そういう意味で、検討をもう一度やってみよう、こういうことであります。
  13. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 この問題は、今のところ、どうも押し問答になりそうでありますし、私は了解いたしません。しかし、これ以上追及いたしましても、どうということもなさそうでありますから、別の機会に質問を留保しておきたいと思います。  続いて、昨日の続きを一、二伺いたいと思いますが、よろしゅうございますか。
  14. 小平久雄

    小平委員長 なるべく簡単に願います。
  15. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 簡単にといったって、きのう留保したのです。
  16. 小平久雄

    小平委員長 きょうは、理事さんの方から田中君という通告を受けて、私はそのつもりで進行しておるのです。
  17. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 田中君の方の質問相談をしながらやりますから、お許しを願いたいと思います。昨日留保してあった問題について、的確にお答え願えさえすれば、簡単に済みます。  第一は、燃料問題についてでありますけれども、電力料金可動性の大きな原因が、炭価中心とする電力用燃料にありますことは、通産大臣よく御承知のことだと思います。そうして、この炭価問題が、自由市場で非常に浮動性を持っておることも、御承知だと思います。しかるに電力料金の方は、むしろ低物価政策等々の一般的な要請から、非常に強く公共性で押えられておることも、御承知だと思います。この問の調整は、通産大臣の非常に大きな任務だと私は思いますが、まず昨年度実績を見ましても、この間の調節をし得る現在の制度における唯一と目されるものは、いわゆる標準炭価の設定問題ではなかろうかと思うわけであります。昨年の実績によりますと、私は、昨年の今ごろこの問題を提起し、それから六月ごろにも再三提起して、標準炭価をきめるのならば、標準炭価制度を生かすならば、ここで市場価格をリードするような意味をもってきめなさいということを、強く要望したのでありますけれども、御承知のように、実際に決定されたのは、昨年の暮れ十二月になってからであります。そしてそれがトン当り四千二、三百円でありまして、市場価格とは、確かに一割程度安かったかもしれないのでありますが、事実上三十二年度石炭取引は、全部済んでしまった後でありまして、従って、これは一般取引値段影響をほとんど及ぼしていない、こういう状態できめられたと思います。そういうわけでありますが、ことしは、一体いかなる方針で、いつごろを目途として標準炭価をきめられるのか、あるいは標準炭価制度自身意味を捨てられるのか、いずれをとられるのか、方針を承わりたいと思います。
  18. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 標準炭価制度につきましては、私もかなり疑問があると思います。と申しますのは、遺憾ながら昨年は十二月になり、一昨年も十一月、その前の年は三月になって、実際にその年の炭価標準というようなものと、ほとんど無意味というと語弊がありますが、そういうことになったということについては、標準炭価制度そのものの根本的な何か欠陥があるのじゃないかというような気持も、実はしておるのでございます。しかし、とにかく、行政的に考えますならば、もっと早くやらなければならぬ。現行法のままにおきましても、当然これは早くやらなければならぬと思います。と申しまして、いろいろ実績なり何なり調査をいたしますと、かなりの期間がたってしまう。実は来年度調査をぼつぼつ始めておるのでございますが、来年は、できるだけ早くやりたいというふうに考えておりますし、取引の場合にも役立つものを早くこしらえたい、かように考えておるわけであります。
  19. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 できるだけ早くやりたいという御答弁だったと思いますが、私の質問は、できるだけ早くやられることと、いかなる方針によって内容をきめられるかという二つの質問でありましたので、お答え願いたい。御承知のように、この標準炭価制度というのは、合理化法に基きまして、原則としては年々炭価を下げていきたい、そして安定炭価を作りたいという政策に基いておられるわけでありますが、そういう方針で臨まれるというふうに了解してよろしゅうございますか。
  20. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 大体はそうでありますが、実は、情勢が変りますと、あるいは炭価維持のような場合が起る可能性があると思います。来年あたりは、そんな事態になるかもわかりません。そこで、ただいまのお話のような御趣旨は、私もそういうふうに了解いたしております。ただ、現実問題としては、そういう場合も起り得るということを申し上げておきます。
  21. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 それでは、現実に今起っております標準炭価問題とは別個に、現在起っておる現実取引市場における炭価問題につきまして、かたき討ちみたいな格好で、石炭取引市場は、昨年は、御承知のように、需要家の方は非常に圧迫された形で、今度は、さかさまに需要家の方はストックを持っておるし、山元の生産は割に上りつつあるという、両方にらみ合いの形で推移しておる状態でございますけれども、これに対する通産大臣方針を聞かせていただきたいと思います。
  22. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 これは極力両者が話し合って、自主的にきめていただくのが原則であります。しかし、お互いの話の成り行きによりましては、われわれも、あっせんするなり何なりのことをやらなければならぬと思います。現実問題として、ちょうどあなたがおっしゃっている通りのことが起っていることは、私は十分承知いたしております。
  23. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 これは、問題が今まっ最中でありますので、お答えにくいことだと思いますが、私は、強く要望しておきたいと思います。それは標準炭価制度維持されるならば、標準炭価ほんとう意味を発揮されるような時期に、内容をもって設定されなければならない。そうでなければ、さかさま向きで、自由市場なら自由市場にしなければ、経済原則もとがくつがえってくるようなことになりますから、根本的な態度を早くきめて打ち出さなければならない。でなければ、責任回避政策だけになってしまうことは、大きな誤謬があると思いますから、十分御検討を加えていただきたいと思います。  それから、もう一つ昨日留保いたしておきました問題の中に、昨日問題を出しておきました電気銅建値の引き下げ問題と関連をいたしまして、この問題が、実際には経済問題から部分的には社会問題に発展しつつある状態は御承知だと思います。これにつきましての対策並びに銅鉱石海外依存度に対する根本的な政策を、お聞かせを願いたいと思います。
  24. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 銅鉱石につきましては、国内だけではまかなえないことは、事実です。しかし、国内にあるものは、あくまで活用すべきだというふうに考えておるのでありますが、遺憾ながら、昨年から本年にかけまして、海外相場も非常に下り、またかなりストックを持っておるというような状態で、価格維持の問題につきましては、非常に、苦慮をいたしておるのであります。ただ遺憾ながら実際問題としては、どうも建値を下げざるを得ない。そこで、ただいまお話しのように、中小鉱山が非常に困っておる。従って、それに対する対策を、われわれも考えなければなりません。そこでどういう対策考えられるかということになりますと、いろいろ方法はあるようでありますが、われわれとして援助できるような対策は、ぜひともやりたい。それについては、鉱山側の方のいろいろな考えをお聞かせ願いたいというので、ただいまいろいろな案を出してもらって、そうして極力できる方法につきましてはとっていきたいというようなことで進めておるのであります。
  25. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 どうも明確を欠くわけでありますが、この二回に及ぶ建値の引き下げ問題で、今一番苦境に追いやられておりますのが、中小非鉄鉱山であると思います。この中小非鉄鉱山対策といたしまして、一つの案みたいな形で、たとえば、まだたくさんの輸入鉱石を入れるわけでありますから、大手輸入鉱石とのプールで、中小鉱山からの鉱石の買い値段を、前の二十八年当時の値段維持するような形でやらしたらどうかという話が出たように聞いております。これはいろいろな具体的な措置で困難な処点があろうと思いますが、御検討されておるかどうか、伺いたい。
  26. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 そういう案も出ておりますので、それも含めて検討しております。
  27. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 それならば、私は重ねて申し上げておきますが、今、一番大きな問題が出ておりますのは、中小鉱山であります。従って、中小鉱山がこのままいけばつぶれてしまう危険性があるから、それを維持、保護する立場でありますならば、今言いましたような措置も含めて、早急に措置を講ぜられなければ、間に合わなくなってくる危険性があることを指摘いたしまして、御検討をお願いいたしたいと思います。  それから、さらにもう少し根本にさかのぼりますと、中小でなくて大手鉱山でも、大体似たようなコストで国内銅鉱石は掘られておることは御承知通りでありまして、問題は、海外鉱石への依存度合いいかんということになってくる。今これを早急に解決を迫りましても困難かと思いますが、これはいずれ方針を決定されなければならない段階に来ると思います。海外鉱石は、ますます安くなってきますし、日本鉱石はますます高くなってきますと、国内資源を保護するという立場をとられるならば、何らかの保護対策がなければ、これはやっていけなくなるだろうと思います。同時にまた、海外鉱石も、大手自身が、現実に海外の鉱山に投資を行なって、そして直接に海外鉱石を自分の鉱山業の手中におさめてやるという方法が、むしろだんだんと盛んになってきつつあるように思います。従いまして、一般海外鉱石にたよるやり方のほかに、今の国内鉱山がそのような進出をしつつあるということは、またそのまま国内鉱山に対して、強い影響を与えるわけでありますので、これらにつきましても、何らかの基本的な方針を打ち出さなければ、非常に戸惑ってくるのではなかろうかと私は思いますから、御検討をいただきたいと思います。  それから第三番目には、現在の滞貨の最大の原因は、御承知のように、国内の生産過剰ではなかったはずです。国内の生産過剰ではなくて、消費者あるいはそれに類する部門の銅スクラップのいわば昨年の上半期における思惑輸入、これが、現実に輸入したわ、今度は、あまり消費がいかなくなったわ、ということで、現実には、生産過剰ということよりも、現物過剰の状態が、ずっと暮れまで大きくなってきて、そしてそれが日本現実鉱山に直接の圧迫を与えてくるようになった。こういう流通過程をごらんになりましても、この鉱山には、根本的な問題を含んでいるわけでございますので、あわせて私は、近い将来におきまして、検討の結果を施策として実施されますように強く要望いたしておきたいと思います。
  28. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 ただいまのお話しの一、二点は、もっともな御意見で、私自身もそういうふうに考えておるのであります。ただ、海外の銅鉱石につきましての今までのいきさつがあるものですから、直ちにやるというわけにもいきません。しかし、根本方針はきめなければなりません。  また、第三点の国内の需要の問題にしましても、ただいまお話しのように、輸入の銅くずの問題が主たる原因であるということも、確かにそうであります。昨年は異常な事態でありまして、銅に限らないわけでありますが、銅が最も大きな影響を受けたということであります。それらについての対策につきましては、やはり十分御趣旨のような方針で早く対策をきめたい、かように考えております。
  29. 松平忠久

    ○松平委員 今の日本鉱山行政について、ちょっと関連してお伺いしたいのですが、私は、日本鉱山行政というのは、どうも一貫した政策を持っておらないのじゃないか、こういうふうに見ておるわけであります。それは、たとえばゲルマニウムの問題にいたしましても、チタンの問題にいたしましても、一時保護政策というものをとった。しかし、その後それを打ち切っておって、そうして山にゲルマニウムのごときは鉱石が山積しておってつぶれてしまった、こういうことになっておる。チタンにいたしましても、この間齋藤委員でしたか、質疑応答があったのですが、私どもの知っている限りにおいては、やはり同様な運命をたどりつつある、こういうわけであります。すなわち、ある場合におきましては、希小物質であるこれらのものを開発していく上において、相当の保護政策を加えておったが、その後これを打ち切ってしまって、野放しにしており、せっかく始めたものが、そのままだめになってしまう。また硫黄の問題にいたしましても同様なことが起りまして、前々回の国会でありましたか、やはりこの問題について、この委員会で問題になった。そういうことを考えますと、どうも今の通産行政の中で、鉱業、鉱山に対する一貫性というものを欠くのじゃないか、こういうふうに私は見ておるのですが、今の大臣は、鉱業政策というものはどういうお考えを持ってやっているか。根本的な思想というか、それをこの際お伺いしたいと思うのです。
  30. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 従来の事情なり、いきさつにつきましては、私あまり詳しく承知いたしませんので、あとで政府委員から答弁をしてもらいたいと思いますが、これはもう常識的に考えまして、国内でまかなえるものは、ある程度の保護といっても、これは少々の保護ではどうにもならぬものでありまして、長続きいたしませんから、要するに、そこの見きわめの問題であると思います。また最近は、技術の進歩なり、新鉱石といいますか、そういうものが非常に目まぐるしく変転いたします。従って、たとえばチタンにいたしましても、アメリカの需要が非常に多いというようなこと、また今度急に需要がなくなるというようなことが、大きく影響されていますので、臨機の処置をとっていかなければならぬと思いますが、一貫して、やはり国内資源でまかない得るもの、また新鉱石については十分保護していくべきだと思っております。
  31. 松平忠久

    ○松平委員 私は、今の政府に、どうも鉱業に関する一つの一貫した正しい政策というものがないというふうに見ているのであります。このことは、逆の言葉で言いますと、そのときどきの政治勢力というか、あるいは経済界における政治家とのつながりを持っている人の運動なり圧力によって、鉱業行政というものが左右されていっておる、こういうふうに私たちは見ているわけであります。従って、ある政治勢力が出てきまして、たとえばゲルマニウムにいたしましても、これに対して莫大な補助金をつけることに成功する。そういたしますと、そのバックにある政治家は、盛んにそれをあおり立てる。私の知っている限りにおいても、死んだ緒方さんのごときもその一人でありますけれども、かなりゲルマニウムについては本腰を入れて、そうして開鉱式なんというときには、緒方氏みずから花輪をやったり、電報を打ったりするというようなことをやっているわけであります。そういったときに、政治勢力というものに動かされて、この希少物質、希少金属というものが、日本においては今日たどたどしいような姿、ある場合には非常にはなやかで、ある場合には細っていくという結果になっておると思うそうであってはならぬわけであって、今の政府自体として、一つの鉱業政策というものを持っておらなければならぬ。持っておらぬから、時の勢力に動かされる、私はこういうふうに見ているわけであります。どうも今の大臣答弁にしましても、まことにたよりがないので、今、私がここで質問すると、結局大臣は局長の言うことを聞いて答弁しなくちゃならぬ。これでは政府政策とは言えぬと思う。私は、もっとしっかりした方針を持たなくちゃならぬと思います。  そこで、一点だけ承わりたいのですが、そういうことをするには、まず第一に、相当な基礎調査というものに対して、どういう態度をとって臨んでおるか。それから、どの程度の予算を計上し、今の地質調査所のあり方というものはどういう立場にあるのか。まことに私はたよりがないと思うのですが、その点について、まず基礎調査についてどういう考えを持っておるか、聞きたい。
  32. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 時の政治勢力にいろいろ動かされるというようなことは、私、今まで聞いてもおりませんし、またそういうことはあってはならぬことだと思います。もとより、これは純科学的な問題であります。ただ、先ほど申し上げましたのは、技術的に考えましても、非常にいろいろ変転してくる、きのうの重要物質が、最近ではまた変ってぐるというようなことはやむを得ないのでありまして、ただ、私、従来のことを承知いたしませんので、政府委員に聞いたのでありますが、むしろこれは政府委員自身答弁してもらった方がいいと思います。
  33. 福井政男

    ○福井(政)政府委員 ただいまお話しの基礎調査の点でございますが、地下資源の一般的な基礎調査につきましては、御承知のように、地質調査所が担当いたしております。ただ、地質調査所の担当いたしておりますのは、鉱床、地質を中心にいたしまして、どういうふうな状況にあるかという、あくまでも基礎的な調査でございまして、それ以後の段階になりますと、各企業の調査にまかしておるというのが現状でございます。ただ、企業が調査いたします場合に、鉱物の種類によりましては、探査補助金でございますとか、あるいは試掘補助金でございますとか、そういった段階で、鉱量の調査にある程度の補助金を出しておるというのが現状でございます。
  34. 松平忠久

    ○松平委員 その今のあなたの答弁、今のところはそんなものだと思うのです。そこで、今、日本の地質図なんというものを見てみると、これほど世界に劣っている地質図を持っておる国はないと思います。日本の地質図なんというものは、当てにならぬ。私は、地質図だけでも、日本においてもっと正確なものを作るべきだという考え方を前から持っておるのだけれども、今のような貧弱な地質調査所の形態では、とてもこれは望めるものじゃない。そこで業者にまかせる。なるほど、業者は、掘ってしまえば、これはなくなるものだから、何とかして掘っただけのものはどこかで見つけたいというのが、今日の鉱業の経営者の最も大きな目標になっておる。掘ればなくなる、そこでなくなっただけのものをどこかで見つける、これが現在の鉱業経営者の最も大きな力を入れるところなんですよ。ところが、これにまかしておいても、なかなかうまくいかない。金がない。そこで若干の補助金にたよっておるという状況なんだけれども、なかなかそれもうまくいかない。さっき佐々木委員から、外国の鉱石問題がありましたけれども、私はそれらの関連性においてやるべきであると思います。この問題は、重工業あるいは化学工業一重点主義というであるのならば、政府はもっと根本的に考えなければならぬ。大臣自体、この点については、なかなか不勉強のように思うのだが、この点は、一つ内閣として取り上げて考えていくべき問題だというふうに思います。また、中小企業者の炭鉱者は、山ばかり歩いている連中が多いのであって、まことに政治力がないのだ。そこで、これを取り上げて、むしろ国家が大きな観点でもって、一つの一貫した政策をとっていくことを、強く要望したいと思います。  これで私は関連質問を終ります。
  35. 田中利勝

    田中(利)委員 私は、先ほど申し上げておきました中小企業に関する予算、いわゆる補助金並びに財政投融資の問題について、お尋ねしたいと思います。政府は、中小企業の振興を、重要施策の一つとして掲げてきておりますが、明年度の予算の中に、特に中小企業対策費と銘を打たれておるものを見ましても、その経費の合計額は、わずかに三十一億四千五百万円で、これは一般会計の歳出総額一兆三千百二十一億円に比べまするならば、わずかに〇・二四%にしかならないのであります。全く重点施策という名に値しな  い少額なものであると思うのでありますが、しかもこの三十一億円の中から中小企業信用保険公庫に対する出資二十億円を除けば、その対策費は十一億四千五百万円、三十二年度に比べましてわずかに二億九千七百万円の増にしかすぎないという格好に相なっておるのであります。私はこの内容を、予算書を通じて伺いたいのであります。  まず第一点は、中小企業総合基本調査費というものが千三百九十三万円増額になっております。しかし一方では、同じ総合基本調査委託費がゼロになっておる。前年度は三千百五十八万円、これが今年度は全額削減されておる。こういう結果から見まするならば、中小企業対策として最もその土台となるべき中小企業の実態の把握というものの政府の努力が、財政面から見て後退しているのではないか。しかも、一方補助金のようなものが増額されておりましても、その効果というものは、われわれは従前のようにうまくいくとは考えられない、こういう一つの疑問を持っておりますが、大臣に伺いたいのは、中小企業の総合調査についていかなる計画といかなる構想を持っておられるのか。もっとも予算書に掲げられた数字というものは、大蔵省の査定によって大きななたをふるわれて、その結果だと思いますが、通産省本来の調査計画というものとこれに要する予算額というものについて、一つ御所見を伺いたいと思います。
  36. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 中小企業対策といたしましてはしばしば申し上げておりますように、一つは組織化の問題、一つは金融対策の問題、一つは体質の改善の問題、一つは税制の問題、こういうふうに考えております。ただ補助金の額からいいますと、これはたびたび申し上げておりますが、商工業者というのは、お互いが競争相手になっておるわけでありますから、片一方のある特定の人間なり特定の組合に補助金を出すということは、自由競争の原理に反してくるわけであります。その点は、農業と違っておると思います。従って、補助金と申しましても、府県を通じて、その指導的な補助金というか、そういうことになって参るのであります。しかし、金融という面で考えていきますと、今までは、ほとんど金融で考えられていったわけであります。金融対策につきましては、御承知のように、従来政府機関を通じて政府資金を流す、これは一番手っとり早い方法なのであります。従って本年の運用額ということから考えますと、来年度は、本年から見ますと、それぞれふえておるのであります。本年は、御承知のように、途中で中小企業金融公庫には百億、あるいは国民金融公庫には七十億追加をいたしたのでありますが、そういう事態がないのでありますが、それらの運用額を含めましたものよりも、来年度においては運用額をふやすということはいたしております。しかし、根本的には、やはり借りる方の中小企業者に信用力をつけていくということでなければならぬ。そうしませんと——結局、一般の市中金融機関から金を借りられるということが根本でありまして、その根本にメスを入れるという意味で、新たに御承知のような百七億の信用保険公庫というものを作って、中小企業者側の信用力を高めることにした。これは根本的な解決方法である、かように考えておるのであります。  また、本年度の特色としましては、いわゆる体質改善で、設備の近代化に本腰を入れますとともに、技術の向上という面に初めて予算をとりまして、これも府県の研究所を通ずるわけであります。そして新しい技術の向上に力を入れるというような面に努力をしてきたわけであります。ただいまお話しのように、中小企業につきましては、全く基礎調査が今までなかったわけで、それが昨年度から始められて、昨年度はみんなに委託してカードを作った。そのカードを、今度は集計するなり、いろいろこっち側で利用するということになりまして、従って、今年度は委託費の方は要らなくなりまして、そしてその成果を利用するところまで持っていく費用に変ってきたわけであります。そういう事情を御了承願いたいと思います。
  37. 田中利勝

    田中(利)委員 なお補助金の問題についてお伺いしますが、中小企業相談所補助金は、三十二年度は六千百九十一万円、本年度も同額計上されております。明年度は団体組織法の実施に伴って、全国の商工組合あるいはそういうものの組織化が促進され、さらに各種の商工組合設立が行われる年で、個々の中小企業者の各地における相談所の利用率というものは、勢い増大してくると思うのであります。しかも、先ほど申し上げました通りに、相談所の補助金というものが前年度と同じだ、こういうことになると、利用率の向上という面から見て、結局において、相談所の機能の評価を、政府みずから切り下げたのではないか、こういうふうにも一面考えられるのであります。それも大蔵省の査定で予算が削られたので、やむを得ないというのか。さらに、相談所の利用の実績と、三十三年度予算で、なぜ増額されなかったのか、その理由を御説明願いたい。
  38. 川上為治

    ○川上政府委員 事務的な問題でございますから、私から御説明申し上げます。相談所の助成金につきましては、今おっしゃいましたように、三十三年度におきましては三十二年度と全く同額であります。私どもの方としましては、この相談所は、今度団体組織法が施行されると、商工組合が設立されることになるのですが、その商工組合の設立について、相談所の方とは、それほど実は関係はないというふうに考えております。相談所というのは、主として零細企業関係の金融でありますとか、あるいは企業経営についてのいろいろな相談でありますとか、そういう問題について相談にあずかるわけでありまして、商工組合の指導というものは、相談所の方では、実はやっていただかないことになっておりますので、そういう点からいいまして、別に相談所の金を増額するというふうには考えていなかったわけでございます。しかし、ほかにいろいろな問題もありますので、なるべく相談所の費用も、もっと三十二年度より増したいという気持で、いろいろ相談もしたのです。結果としましては、同額になったのですけれども、いろいろ相談している間に、どうも県の相談所に対する援助が足りないのではないか、国も従来通り出すが、今後はもっと県の方で援助してもらうように努力しようじゃないかという話しになりまして、三十三年以降におきましては、もっと県の方から出してもらって、相談所を充実していこうという話し合いに、実はなっておるわけでございます。  なお、先ほど大臣からお話がありましたが、基本調査の問題で数字がちょっと違うと思うのです。昨年度よりも、三十三年度は、ある程度少くなっている。しかし、これは基本調査の三カ年計画というのがありまして、実はその計画に沿うてやっておるわけであります。私の方から言いますと、初年度三千九百万円程度出ておるものが、三十三年度は三千百九十万円程度出ることになっており、大体この計画通り行けるではないかと考えて、計画通りやっておるつもりでありますので、別に非常な減額になっておるというふうには考えていないわけでございます。
  39. 田中利勝

    田中(利)委員 なお、補助金の最大のものとして掲げられているのは、設備の近代化の補助金ですが、これが七億円で、三十二年度に比べて二億円増額されております。しかし、最初通産省の予算要求は、三十億円であったはずだと思います。通産省は、これによって補助率の引き上げ、あるいは補助対象の拡張をねらってきたと思うので、三十億円の使途と内容について伺いたいと思います。
  40. 川上為治

    ○川上政府委員 その前に、先ほど申し上げるのをちょっと忘れましたが、商工組合の設立の指導とか運営の指導につきましては、来年度、大体一千万円程度計上いたしております。これで必ずしも十分であるとは思っておりませんけれども、まあ何とか私の方としてはやっていけるではないかというふうに考えております。  それから、今、設備近代化の問題についてお話がありましたが、七億というのは、協同組合に対するものが一億、一般の個人企業に対して直接県の特別会計から出しますものが六億ということになっておりまして、昨年度、すなわち三十二年度に比較しますと二億程度の増額になっておるわけであります。六億ということにいたしますと、これにちようど見合った金額が県の方からつきます。そうしますと十二億、さらに、実はこの設備近代化の金は、県の特別会計の方から出しますと、完成しましてから一定の期限内に返ってくる金であります。その回収金というのが、来年度約三億四千万円程度ございます。そうしますと、三十三年度におきましては十五億四千万円程度助成金として出されることになるわけでありまして、それは全体の三分の一でありますから、大体四十五億の設備の近代化ができることになります。ところで、この四十五億という金は、最初通産省は三十億で出して、わずか六億程度になったのだから、十分でないではないかというお言葉でありますが、十分でないことは、私どもも十分承知いたしております。というのは、これは大体五年計画で設備の近代化をやろうという考えで進めていたのです、そのために、補助率も、現在の三分の一というものを、半分程度にしようじゃないかというような考え方で、三十億の予算を要求したわけなんですが、いろいろな事情がありまして、結局補助率は現行のまま、それから対象につきましては若干少くしたというような関係から、六億ということになったのです。これは、五カ年計画というものを、その通り果して遂行できるかどうかという点については、今後のいろいろな方法にかかっていると思うのですけれども、これはいろいろな議論がありまして、助成金以外に、何か財政投融資を考えたらいいじゃないかという意見もありまして、一応来年度においては六億という金を国から新しく出すけれども、それ以外に財政投融資で何か措置する方法はないかというような意見もありますので、私どもとしましては、助成金としては一応これだけ出しておいて、来年度においては、たとえば中小企業金融公庫とかそうした方面へ、これに見合うような財政投融資をある程度出して、そしてこの設備の近代化というものをもっと強力に推し進めていったらどうかというふうに、実は考えておるわけでございます。そうして、私ども最初立てました五カ年計画というものを、なるべくその期限内に、果してできるかどうかは別として、なるべく期限内に近いところで済ましていこうという気持を持っておるわけでございますので、その点、一つ御了承願いたいと思います。
  41. 田中利勝

    田中(利)委員 それから、今、川上長官の説明、詳細承わりましたが、なお、設備の近代化の補助の、どういう点に重点を置くか、あるいはまた積極的に小組合の補助方針というものがあるかどうか、こういう点をお尋ねします。
  42. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 実は、その点、この前の委員会に御説明申し上げましたので、私も一言御答弁申し上げたいと思います。従来は、繊維関係が中心になっておりました。しかし、御承知のように、繊維関係も、設備は非常に過剰になって、一方に処理をしておるというような関係にある。今後は、やはり機械工業、プラント輸出というような方面にいかなければ、日本の輸出が伸びません。従って、今後は機械工業の方面に重点を移して考えていきたいというので、せっかく検討しております。
  43. 田中利勝

    田中(利)委員 中小企業政策として、最も必要な一つの柱となっておる政策である財政投融資の面についてお伺いいたしますが、三十三年度は、国民金融公庫に二百三十五億円融資、それから中小企業金融公庫に二百七十五億円融資、商工中金の金融債引き受け三十億円、合許五百四十億円となっておりますが、三十二年度の当初計画より百五億円多くなっております。追加融資を加えて実行計画より約十五億円少い。これに自己資金を加えても三機関の資金合計額というものは千四百四十五億円となっております。三十二年度当初計画はそれより三百十億円多く実行計画よりも九十億円多くなっております。これは外見上から見ましたならば、政府中小企業について、三十二年度よりも熱意を示しておるように見えるのでありますが、中小企業金融全体としては、私は楽観ができないのではないかと思うのであります。まず伺いたい点は、明年度における中小企業に対する資金供給全体の見通しはどういうことであるか、通産省は鉱工業物資需給計画を発表しております。これによりますと、鉱工業生産の上昇率は四・三%で、しかも明年度の上期はデフレ調整段階で上昇率は非常ににぶい、下期になってはっきりと上昇してくるということになっております。つまり、上期はいまだにデフレの調整期で、金融引き締めが継続されている時期と思いますが、大臣はどのような見解をお持ちであるか伺いたいと思います。
  44. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 現在においては、昨年来引き続いて生産過剰という事態が各商品に起っておるわけであります。そうして今生産の調整を盛んにやっておるのであります。四月までにその調整を終りたいと考えておりますが、来年度の上期としては、多少の上向きになっても、横ばい程度考えていくのが普通でないか、そうして下期から上昇していくとわれわれ考えておるのであります。金融の問題については、必ずしも調整段階だから金が要らぬとは考えておりません。それについては、資金の需要は、必ずしも減るものではないと思いますが、ただいまお話しの三つの公庫については、去年にはああいう特殊な状態が起りましたので、あの追加投資というようなことは、ただいまのところ来年度は起らぬし、また今からそれを予想して金をつけておくわけには参りません。そういう意味で、今度は新規投資の百分の五十以内で、大蔵大臣限りで処理ができる、こういう弾力条項をつけております。そういう事態には対処し得るというふうにいたしておりまして、それで運用額総体からいうと、これは計算の方法に、大蔵省の数字でいくと二十二億とか七十五億とかいろいろ言っておりますが、回収額は、当初の見込みは非常にきつく見積るものでありますから、大ていの年、回収増が出ております。昨年というか、本年度の場合にも回収増が起っておる。そういうふうに考えていくと、本年度よりも、来年は運用額としては相当な増加が見込まれると考えております。ただ商工中金につきましては、私もあの三十億というのでは間に合わぬと思います。ただ、これは予算ではありませんので、預金部で引き受けましたら、いつでも引き受けられるのでありまして、ただ全般として景気を刺激しないという建前になっておりますので、表面はそうでありますが、私は実際の運用としては、もう少し預金都引き受けを、事実問題としてふやしていくべきものだ、かように考えておるのであります。
  45. 田中利勝

    田中(利)委員 それでは、中小企業の予算関係の問題は、この程度にいたしておきまして、物資の需給計画、これに引き続いて電気の方の問題を、御質問いたしたいと思います。  明年度物資需給計画を見ますと、鉱工業生産の上昇率は四・五%と想定されておりますが、明年度年間を通じて、いかなる上昇カーブを描くか、こういう点をお伺いしたいと思うのです。なお、先ほどの大臣答弁の中にありましたように、上期と下期の上昇が、年間平均して四・五%になる、こういう点の見解を詳細に御説明願いた  いと思います。
  46. 福井政男

    ○福井(政)政府委員 電気銅の需給関係につきまして、簡単に御説明申し上げます。御承知のように、電気銅につきましては需要の伸びが、目下のところ非常に悪うございまして、二月から大幅な生産制限をいたしまして、需給の調整一つの策といたしておるわけでございます。年度当初の生産計画と比較いたしてみますと、約三割五分程度の減産になっております。これは私ども、先ほど来いろいろお話のございましたように、中小鉱山等に対する関係も、非常に大きい影響がございますので、できるだけ早くこの需給の関係が回復いたしますことを念願いたしております。また、そういうために、できるだけ早く、この生産制限というものがなくなることを期待いたしておりますが、現在のところの需給計画といたしましては、三十三年度の生産計画は、今申し上げたような大手で、二月から月約八千トン生産をいたしておりますが、そのほかのものが約五百トンばかりございますので、約八千五百トンほどになります。これを二月から約六カ月間ほど継続いたして参りたい。ただ、その間に、情勢によりましては、また生産の関係を調整いたしたいと存じております。そういうことで参りまして、下期には若干回復する、こういう見通しで、年間の数字といたしましては、概略申し上げまして十四万五千トンほどの生産を見込んでおります。ただ三十二年度末からの繰り越しが二万数千トンになりますので、供給数量といたしましては、十七万三千トン程度になる見込みであります。一方、需要の方といたしましては、消費を約十五万八千トンほど見込んでおります。消費の方につきましても、電線でございますとか、伸銅でございますとか、こういった点につきましては、できるだけ大口の、電電公社でありますとか、あるいは電力会社でございますとか、こういったところに、買い付けの手控え、こういうようなことは極力避けまして、買い上げの方に御協力願うように、いろいろお話を進めております。  なお、輸出の方につきましても、国際価格と国内価格の開きが相当ございますので、むずかしい問題がございますが、輸出特価を設けまして、国内建値よりも二万円程度の差額をもちまして、輸出向けの電気銅は供給するようにいたしております。そういうことで、輸出の方も五千トン程度見込んでおりまして、需要の総計としましては、十六万三千トンほど見込んでおるようなわけであります。
  47. 田中利勝

    田中(利)委員 鉱山局長からの抽象的な説明を承わったのですが、納得のいかない点もありますから、具体的に承わります。何と申しましても、政府のデフレ政策の犠牲となった最も典型的な産業といえば、非鉄金属産業であると思います。これは私の調べた数字でありますが、なおよく聞いていただきたいと思います。わが国の電気銅の生産は、月間生産一万三千トンがフル生産でありますが、昨年十月以来この一万三千トンが一万一千トンに下ってきた。さらに本年二月よりは本格的に生産制限を実施して、八千五百トンというふうに生産が低下してきた。さらに電気銅の製品の販売高は、十月に九千二百トン台から十二月には八千二百トンに下ってきた。一月にはさらに七千四百トンに下る見込みであるといわれております。それからこの製品の在庫は、十月一万三千トンから一月には二万トンにふえてきている。さらに銅の原料が、十月三万二千トン台から、十二月には四万一千トンにふえてきている。こういう数字は、私の調査でございますが、あらためて、昨年の秋以来の生産、販売、在庫について、一応政府の説明を承わりたいのであります。さらに電気産業の現状について、先ほど松平委員からも中小鉱山の問題が取り上げられましたが、そういう現状を、もっと具体的に説明願いたいと思うのであります。
  48. 福井政男

    ○福井(政)政府委員 電気銅の販売の実績につきましては、ただいまお話がございましたような数字は、ただいまこまかくはあれしておりませんが、大体その傾向をたどっておりまして、お話しのように、一月末の電気銅ストックは、大手の六社について見ましても、二万トンをこえております。従いまして、これが相当大きい負担になっていることは申し上げるまでもございません。  中小鉱山の問題につきましては、先ほど大臣からお話がございましたように、中小鉱山の占める生産の割合と申しますのは、一〇数%でございます。しかし企業数から見ますと、六、七〇%にも及んでいるようなわけでありまして、しかも、銅鉱業が、わが国のマイニングの中では、何と申しても大宗でございまして、非常に大きいウェートを持っているわけであります。従いまして、銅鉱業に関する政策につきましては、私どもも常に最も力を注いでいるものの一つでございます。また地下資源の関係から申し上げまして、現在非常に規模の小さい山でございましても、だんだんその調査をいたしまして、開発するにつれまして、地下資源の性質上これが大鉱山になって参る、こういうような性格も持っているわけでございまして、そういった例も、過去には幾多あるわけでございまして、中小鉱山の保護育成の政策が、非常に大きい鉱業政策の問題であるわけであります。ただ製錬会社に売鉱いたすわけでございまして、中小鉱山としては立場上非常に弱い立場にございますし、また鉱山の性質といたしまして、好況の恩恵というものは、一番最後に受けるわけでございますが、不況の影響というものはまっ先に受けるわけでありまして、特にその関係は中小鉱山に最も激しく押し寄せてくるというようなことになっておりますので、私ども最近の情勢につきましては、各般の手を打って、何とかこの急場をしのぐような方策を講じているわけであります。  具体的な問題といたしましては、何と申しても金融の問題が非常に大きい問題でございますが、これは一つは製錬側に対しましてファイナンスをやりまして、これから買鉱の方の条件をできるだけよくしてやるというような点を実施いたしております。先般二十九万から二十八万に建値を下げました場合は、数カ月の暫定期間を置きまして、買鉱につきましては、二十九万の建値国内鉱石の買い上げを実施いたしたわけであります。今回建値が下りまして、さらに中小鉱山も地方に追いやられておるわけでありますが、先般行われましたそういった買鉱について、二重価格を設けるような必要はないものだろうかということを目下研究いたしております。そのほか中小鉱山自身に対するファイナンスの問題といたしまして、さらに中小公庫から合理化資金を出していただく、あるいはまた中小企業対策の一環といたしまして鉱業診断を実施いたしますとか、あるいは技術指導をいたしますとか、こういった点につきまして、政策を強力に推し進めるようにいたしたいということで、中小企業庁と連絡をとって、目下いろいろ準備をいたしておるわけであります。
  49. 田中利勝

    田中(利)委員 電気銅建値の問題ですが、これは一月現在トン当り二十八万円、それから市内相場はトン当り二十二万円程度であります。これは言うまでもなくアメリカやイギリスの価額よりトン当り二万円から六万円も上回っておる。このままの国内価格では輸出振興はとうてい望めない。政府電気銅の輸出の見通しについて、どういう見解を持っておるか、この点承わりたい。
  50. 福井政男

    ○福井(政)政府委員 お話しのように、国内価格と国際価格との開きは相当ございます。現在二月から建値は二十六万にいたしておりまして、輸出特価につきましては二十四万ということでやっております。ただ、電気銅につきましては、御承知のように、アメリカの大手三社の建値とそれからロンドンの写真相場というものが、大きい支配力を持っておるわけでございますが、アメリカの建値はポンド当り二十五セントでございます。従いまして、トンに直しますと約二十万ということになるわけでございますが、ロンドンの相場は写真相場で約十六万程度だと思います。そういうことで、非常に大きい開きがございますので、私ども需要を伸ばしますためには、先ほど申し上げましたように、国内もとよりでございますが、これは輸出振興の見地から申しましても、特にそうでございますので、輸出の方に何とかはけ口を見出すようにいたしたいということで、特価を設けてやっておりますが、さらにその特価だけではどうしても追いつかないだろうということで、目下もう一つ方法として今研究いたしておりますのは、従来の保税工場へ保税銅を入れまして、それを加工して輸出するというような製品輸出がございます。これは月に五百トン前後そういった輸出が行われておりますが、こういうものについて、特別に保税銅並みの価格で出すことはできないものだろうかというような点も研究いたしておりますが、まだ結論には至っておりません。
  51. 田中利勝

    田中(利)委員 政府電気銅の生産の見通しを年間十四万三千八百トンとこの資料によりますと見込んでおりますが、昨年の十四万二千六百トンより少々上回って見込んでおるのであります。しかも、この資料によりますと、上期に七万一千トン、これに対しまして下期七万二千六百トンとなってきておりまして、下期に生産水準が上昇すると見込んでおりますが、この電気銅の下期における生産水準が上昇するという理由は、どういう点にありますか、お伺いします。
  52. 福井政男

    ○福井(政)政府委員 下期の方で、上期よりも需要が伸びるというふうな見込みを立てておりますのは、内部のいろいろな経済活動の上昇の見方につれてこういう想定をいたしておるわけであります。もちろん、これは一つの想定でございますので、具体的な関係によりまして、今後十分また検討していかなければならぬ、かように考えております。
  53. 田中利勝

    田中(利)委員 電気銅の内需がふえるような政策をとらなければならないと思うのでありますが、今日の段階では、何らの行政的指導が行われていない。しかも、電気銅の業界におきましては、非常に内需に対する悲観論が高まっておって、ダンピング輸出もしなければならないのではないかという声さえ上っているのでありますが、行政指導として、ダンピングの輸出防止に対する考え方があるかどうか、その点、並びにその方策を承わりたい。
  54. 福井政男

    ○福井(政)政府委員 御承知のように、電気銅は、好況、不況という関係が、過去の経験で見ますと、しょっちゅう波を打っております。ダンピングということは、電気銅は、本来わが国では輸入物資でございまして、通商政策の面から申しましても、また電気銅の需給関係から申しましても、やるという考え方は私どもでは持っておりません。
  55. 田中利勝

    田中(利)委員 それから、最後に一点伺いますが、明年度政府予算では、電気事業、国鉄、電電、郵政事業についての三十三年度の財政投融資計画は、この面では、財政面からは需要はあまり減退しないと私は思うのですが、この点について、政府の見解を承わりたいと思います。
  56. 福井政男

    ○福井(政)政府委員 目下電電公社でありますとか、あるいは電気事業会社と、需給関係をいろいろ打ち合せております。
  57. 田中利勝

    田中(利)委員 もう最後ですが、政府は、民間の需要を促進する助成政策に対して、もっと熱意を持って、しっかりやってもらいたいということを希望いたしまして、私の質問を終ります。
  58. 小平久雄

  59. 阿左美廣治

    ○阿左美委員 私は、中小企業金融に関する問題に対しまして、若干御質問を申し上げたいと思うのであります。  何と申しましても、現在の中小企業が資金難に悩んでおることは、一般が認めておるところでございまして、中小企業というものは、もともと自己資金というものがないのに、いろいろの事業をしておる関係から、わずかの経済事情の変化によりましても、直ちにその影響を受けるのが、中小企業でございまして、政府におきましても、これらの問題に対しましては、いろいろ施策を講じていただいておることは私どもも認めております。中小企業金融の内容は、どういうことをやっておるかということを、まずもって認識していただきませんと、その施策を講じますのにも、いろいろの考え違いが起きてくるのではないか、こう思うのであります。大体において、中小企業というものは自己資金がない。たとえば、手形融資によって全部事業をしておるということになりますと、非常に矛盾が生れてくるのであります。たとえば、自己の生産品が売れなくなったり、相場が下ったりいたしますと、生産を増大しなければならない結果になるのであります。こういうようなことは一般経済原則に反するものでございまして、もうからないものや売れないものを作るはずはないということは一般の常識でありますが、現在の中小企業というものは、資金の関係上、そういかないのであります。結局自己が発行した手形を解決する上におきましては、やはりその生産品の売り上げにおいてこれを支払っておるのでございますから、その価格が下ったり売れ行きが悪くなりますと、生産を増大しなければならない。こういう悪循環のもとに現在継続しておるのが、中小企業であります。そういうことを考えていただきませんと、すべての、生産を調節するとか、価格を協定するとかいうようなことに、非常な支障が起きるのでございまして、そういう関係から、一にも二にも、これは金融関係からすべての問題が起ってくるのでございます。そういうことを考えますと、どういたしましても、中小企業に対するところの金融は、ある程度の社会政策を持たなかったならば、解決しない問題じゃないか。現在の中小企業が発行しているところの手形の処理が円滑にいかない限りは、生産調節も、価格の協定も、でき得ないというのが現状なのでございます。そういうような点から考えてみますと、何と申しましても、これは中小企業に対する金融ということを考えなければいけない。そこで、中小企業に対するところの金融は、大体におきまして商工中金とか中小企業金融公庫とか国民金融公庫とか、こういうような機関から融資を受けておるのでございますが、こういうような方面に対するところの政府の投融資というものは、先ほど同僚委員からもいろいろの御質問があったようでございますが、確かに貧弱じゃないか。こういうことをいわざるを得ないと思うのでございまして、これはいろいろ御心配はいただいておるのでございますけれども、中小企業というものは団結ができない、政治力がない、圧力を持たないというような関係から、予算編成におきましても、どうも中小企業にしわが寄ってくるというようなことは、これはやむを得ないような現在の状態であると思うのでございます。しかし、現在のように、中小企業がどん底に行き詰まりますれば、もはや、これは結集いたしまして、あらゆる方面に協力いたしまして、政治力を持ってすべての問題を解決しなければならない時期になっておるのではないか、こういうふうに考えるのであります。中小企業も、この辺で目ざめなかったならば、中小企業というものは立っていかないことになるのじゃないか、こういうふうに考えますので、中小企業そのものも、大いに反省をしなければならない時期じゃないか、こういうふうに考えるのでございます。大体において商工中金の政府投融資を見ましても、その他の何を見ましても、どうも前年よりも大した増額は認めておらぬ、すべてにおいて、どうも遺憾ながら中小企業の金融というものは満足をし得られないのではないか、こういうふうに考えます。私がお伺いいたしたいのは、絹、人絹織機の過剰織機の買い上げの問題でございますけれども、これは政府補助によりまして、大体において一台を三万円で買い上げるということになっております。政府補助が一台に対して二万円、業界で一万円を負担するということになっておりますが、これは現在の経済事情から考えまして、業界の一万円の負担というものは重いのじゃないかと考えます。しかし、これは自主的に調整をするのでございますから、ある程度の負担は当然だと思いますが、かりにこの負担を五千円くらいに軽減をしてもらうことができないか。また何らかの処置によりまして、業界負担の半分だけは政府補助を増していただくようなことは予算措置においてできないものかどうか、こういうことをお伺いいたします。
  60. 小室恒夫

    ○小室政府委員 御質問の御趣旨、まことにごもっともでございます。私どもも繊維局から予算を要求する際の当初案としては、三万円の内訳としては六千円ぐらいが業界負担金、二万四千円、四倍に相当する額を国庫補助金でやりたいという念願を持っておったのであります。各種の補助金の全体の横にらみ、その他の事情で、ただいまのような案に確定いたしたわけでございます。実は今年度は予備金あるいは流用の資金等を加えまして、一億円で買い上げを行うわけでありまして、大体五千台の買い上げを行うことについて業界の負担金が五千万円ということでございます。これは、実はこの一月に、業界としては、すでにそれだけ負担するという決意のもとに、内部の取りきめなども行なっておるのでありまして、むろん、最近人絹の市況が一段と悪化しておりますので、御指摘のような困難があるということは、十分承知しておりますけれども、私どもの考えとしては三十二年度はともかく二万円対一万円ということで発足いたしたい、さらにこの買い上げの推移を見、またその後の市況も見まして三十三年度の運用に際しては、さらに工夫を加え検討いたしたい、こういう考えでございます。
  61. 阿左美廣治

    ○阿左美委員 何と申しましても生産過剰ということが、すべての物価影響することでございまして、現在の中小企業の悩みは、生産過剰から来ておるのでございまして、それは設備からして制限をしていくということが、最も必要なわけでございます。それがために、業界とも協力いたしまして、政府にその処置をとっていただいておるわけですが、私は、ここでなおお伺いいたしたいことは、すべての生産を制限するということを考えてみますと、この合成繊維の関係が、現在では野放しになっておるわけであります。合成繊維の織物、いわゆる化繊の織物というものは、青天井でございまして、これに対しては何らの調整を加えることができ得ない現在になっておりますが、この問題も、これなりに置いたのでは、やはり、絹、人絹の織物といたしましても、また綿、スフの織物といたしましても、化繊維の織物、織機というものが調整範囲に入っておらぬことを見ますと、これはやはり総合的な調整ができ得ないのじゃないか。業界にもこういう悩みがあるのでございますが、この合成繊維に対して、今後どういうような処置をとっていただけますか。このまま放任しておくことになりますと、いろいろな支障が起きるのでありますが、いかなるお考えを持っていられますか、お伺いいたします。
  62. 小室恒夫

    ○小室政府委員 合成繊維につきましては、今後合成繊維の綿の増産がだんだん行われるという事情もありまして、あまり早くから合成繊維の紡績なり織布なりの段階をしばることは、いかがであろうかというような考え方を持っておったのであります。しかしながら、御質問のような弊害と申しますか、絹、人絹あるいはその他が操短をやって参ります際に、合成繊維だけが野放しになっているような感じがあるという事実もありますので、昨年の暮れから、綿スフの織物組合、絹、人絹の織物組合、毛織物の織物組合に入っておる組合、またそのアウトサイダーに対しまして、合成織機の届出制を課しておるわけであります。従いまして、合成繊維織物専業のもの以外の織機の所在は、一応明確になっておりますので、これについては監察を加えて、もしこれが合成繊維織物をやっておらない、綿スフの織物、あるいは絹、人絹の織物をやっておって操短破ぶりをしておるのは、監察によって取り締りたいと考えております。また一方、合成繊維織物だけをやっている工場は、大体合成繊維の綿のメーカーの系列関係に立っておって、相当規模の設備を持っておる専業会社もございますけれども、これはこれで、またはっきり把握できますので、ただいま御指摘のような弊害は、最小限度にとどめ得るのではないか、こう考えております。しかし、ただいまの届出制の運用状況を見まして、さらに、どうしても合成繊維織物の織機について、他と同様の規制を加えなければならぬということがあれば、さような措置を講じなければならぬというふうに、将来の問題としては、内心考えておるわけでございます。
  63. 阿左美廣治

    ○阿左美委員 私は、合成繊維の奨励のため、こういう措置を講ぜられたことと思いますが、当時と現在では、事情が非常に変ってきたと思いますので、合成繊維も、すべて一般の繊維同様に扱うのがよろしいのではないか、こういうふうに考えております。繊維は、総合政策を講じていただくのがいいのではないかと考えております。中小企業安定法のもとに、いろいろの繊維を総合統制をいたしまして、計画を立てていただくということが、繊維業界に対して今後最も必要なことではないか、この分は野放し、この分はこう扱うということではなく、綿も毛も絹も化繊維も、同一なる方法においてこれを規制していくことが必要ではないか。現在のようなばらばらでは、やはり効果は上らないと考えます。毛織物あたりも、終戦後、いまだかつて見ない不況に陥っているので、やはり毛も綿も絹も、総合的に考えていただくのがいいのではないかと思います。わが国の毛織物は、生産も増大し、また品質も向上して、相当輸出もしておったのでありますが、最近輸出が振わず、製品が過剰というようなことから、綿スフ、絹人絹同様、調整組合に対して二十九条命令を出していただきたいというような要求があるのでございます。われわれ業界から考えてみまして、中小機業は、ある程度の規制を行わなかったら、自己の力だけでは生きる道がないので、毛織物界には二十九条命令を即時出していただく必要があると思いますが、やはりこれは出す時期がございまして、夏物、冬物が始まるような時期になると、また状態が変って参るのであります。現在のところで踏み切っていただきませんと、増産計画を立てざるを得ないとか、あるいは先ほど申し上げました通り、手形操作のために、売れない品物を生産しなければならないというような事情もあるので、今月のうちに二十九条命令を発動していただきますと、業界を助けることになると思うのであります。幸い業界も、一致協力してそういうことを要望しておりますし、その命令を出す時期を誤まれば効果がないと考えますので、一日も早く発動していただきたいのですが、その時期をお聞かせ願いたいと思います。
  64. 小室恒夫

    ○小室政府委員 御趣旨、よく了解いたしました。そういう立場から、目下関係業界の意見調整しておりまして、二月の末までというふうにはっきり申し上げるわけにはいきませんが、多分それに近い時分に発動できるという目安を持っております。
  65. 阿左美廣治

    ○阿左美委員 ぜひとも一日も早く発動されることをお願いいたす次第でございます。  最後に、大臣にちょっとお伺いいたしたいと思います。日中貿易は、いろいろの意見がありますけれども、ある範囲内において認めなければならないような時期になっておるのではないか、こういうように考えます。日中貿易が公に認められることになった場合、最も心配するのは、生糸の問題です。戦前シナ玉が、日本の紡績用として相当輸入されたことは、御承知通りであります。最近、中国におきましても、品種の改良とかいろいろの改良をして、相当増産をしておるというふうに聞いておりますが、もし、そういうようなことになりますと、わが国の生糸に、今後相当影響があるのではないかと思います。私は、通産省と農林省とに、生糸の所管がまたがっておることは、今後の輸出貿易の上におきまして、製糸家の立場からしましても、非常に研究を要する問題ではないかと考えます。農民が繭を作るということは、農林省の関係でありますが、生糸については、一貫して通産省の所管に属するのがいいではないか。また、そういう措置を講じなかったならば、今後一貫した生糸の輸出政策は立たないのではないか。これは通産省の所管であるというふうに改めてもらうのがいいのではないか。これはもと農商務省の置きものじゃないか、こういうふうに考えます。今日の時代におきましては、昔のままそのままを継続することなくして、時代に即応するように、通産省関係において生糸は扱ってもらうのがいいと思いますが、それに対しまして、大臣の所見をお伺いいたしたい。
  66. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 御承知のように、繭の関係なり生糸の関係は、蚕糸局というので、古い伝統を持っておる。と申しましても、時代は確かに変っております。結局、縦割りがいいか、横割りがいいか、こういうような問題に帰着することであります。これは時代の推移に応じて、機構の考え方もまた変えていかなければならぬことは事実であります。それまでは、あくまで緊密な連絡をとってやっていかなければならぬ。また、ほかの物資につきましても、農産物の輸出等につきましては、両方一体となってやっておるわけであります。生糸の輸出につきましても、製糸の関係につきましても、さらに一段と緊密な連絡をとって参りたい、かように考えておりますが、機構の問題は、今すぐというわけには参りますまい。しかし、時代は変ってきておるということだけは、われわれも認識しております。時代に応じて、機構を変えていかなければならぬときがくると思います。
  67. 阿左美廣治

    ○阿左美委員 この問題は、そう簡単にいく問題ではないと思いますが、ぜひともこの問題はお考えをいただいて、一日も早く通産省関係ですべて所管するように、御尽力のほどをお願いいたします。  以上をもちまして終ります。
  68. 小平久雄

    小平委員長 この際午後一時まで休憩いたします。     午後零時二十二分休憩      ————◇—————     午後一時二十八分開議
  69. 小平久雄

    小平委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  これより日中貿易促進のための国内産業の態勢に関し、御出席の参考人各位より御意見を伺うことにいたします。  御出席の参考人は、伊藤忠商事株式会社常務取締役横山金吾君、日本鉄鋼連盟専務理事葦沢大義君、日本硫安輸出株式会社専務取締大仲斎太郎君、日本機械工業連合会専務理事橘弘作君、以上四名の方々であります。  参考人の方々には、御多用中のところ、本委員会に御出席下さいまして、厚く御礼を申し上げます。  御承知通り、昨年来停滞いたしておりました日中貿易交渉も、近く再開される運びとなり、第四次貿易協定も、かなり近い将来において調印されるものと期待されております。しかしながら、一面におきましては、今後の通商協定交渉の推移とも相待って、どの程度の貿易量の増大が可能であるかという点につきましては、関係各界の見方は、必ずしも一様ではないと存じます。また、今後、業界における為替決済の問題、品目の問題、採算の問題あるいは貿易調整の問題等、政治的、経済的には、解決すべき幾多の問題もあろうかと存じますが、この機会におきまして、関係業界の方々から、原材料の輸入及び製品輸出等に関し、その見通しあるいは計画について、御説明を承わるとともに、貿易伸張のための具体策をお持ちであれば、あわせてこの機会にお漏らしを願いまして、今後の本委員会調査の参考に資したいと考えている次第であります。  御意見開陳の時間は、一人おおむね十五分程度とし、その順序は勝手ながら委員長におまかせ願いたいと存じます。なお、御意見の御発表の後、委員の側から種々質疑もあろうかと存じますので、お含みの上お願いをいたします。  それでは、まず横山参考人よりお願いいたします。
  70. 横山金吾

    ○横山参考人 伊藤忠の横山であります。日中貿易促進に関します国内産業の態勢につきまして、意見を申し述べよということでありますが、まず最初に、中断中の第四次貿易協定交渉再開のためのわが代表団の渡航を目前に控え、また協定調印の成功が大いに期待されるこの時期に、この委員会を開かれましたことは、まことに時宜を得たものと、深く敬意を表する次第であります。  御承知のように、最近の日中貿易の様相は、大きく変化しつつりあります。中国の第二次五カ年計画が今年より開始されますに当りまして、日本が諸外国に立ちおくれないよう適切な措置がとられることは、われわれ業者としまして大きな念願でありましたが、第四次協定問題については、二十二日出発をされます代表団により、その調印が期待されるということを伺っており、まことに同慶にたえないところであります。また、これに呼応するように、数日前に、日本の基幹産業である鉄鋼業界の代表の方々が訪中いたされました。これは、政府も基幹産業も、日中貿易に対して大きく前進したという証拠としまして、われわれの歓迎するところであります。また、昨年後半以来、中国よりは食品代表団、農業視察団、肥料代表団、化学工業視察団等が、続々と日本へ参られまして、特に化学工業の視察団は、その訪日成果を第二次五カ年計画に織り込む予定といわれております。日本よりの技術輸出、プラント輸出等、大きな期待が持たれておる現状であります。このような現象は、日中貿易が今後飛躍的に変りつつあるということでありまして、これらの変化に応じまして、時宜にかなった適切な対策を特にこの際お願いいたしたいと存じます。  次に、この日中貿易の増大に応ずる国内産業の態勢でありますが、御承知のように、現在日中貿易は、バーター貿易でありますので、輸出を増進するためには、中国よりの輸入量をふやさなければならない。そこで、輸入市場の転換という問題が当然起って参ります。もちろん、これは双務的なものでありまして、日本側が中国よりの輸入に切りかえ得るものは、極力それを推進する反面、中国側も、価格その他で日本が買いやすいようにしてくれ、また日本のほしいものを供給する態勢の確立に努力してもらわなければならないと存じます。  輸入市場の転換という問題を、主要品目で見ますならば、米、大豆、塩、鉄鋼原料、これは石炭、鉄鉱石等でありますが、これがすぐ考えられます。このうち、塩は、すでに日本の輸入量の約半分近いものが、現在中国より輸入されており、これくらいが限度かと考えられますが、米、大豆、雑穀、石炭、鉄鉱石については、まだ大幅に中国よりの輸入増大が十分期待できるものと考えております。貿易商社といたしまして、この面に努力をいたしたいのでありますが、それには政府の外貨割当の面に対する配慮、業者側の受け入れ態勢に対する助力が大いに望まれるところであります。  次に輸出について申しますれば、以上のような市場転換による輸入量の増大が実現されるならば、ココムの緩和、またチンコムの撤廃によって、鉄鋼機械類を初めといたしまして、中国側の需要にマッチした輸出品目の増大は、火を見るよりも明らかであります。しかも、第四次貿易協定の締結により、消費物資の輸出にも、相当期待されるものがあると考えております。そこで、正常の形において輸出を伸ばすためには、もちろん輸入についても同様のことが言えますが、どうしても過当競争を防止する必要があると考えます。これは現在の貿易界全体の問題でありますが、特に中国は、御承知通り国営貿易でありますので、日中貿易につきましては、商社というよりも、むしろメーカーまたは業者の協調が必要であって、従って、輸出入に関する業者間の自主的な取引秩序の確立ということが、今後の日中貿易の発展、日本商社の信用維持という面より見ましても、十分に検討されねばならないと存じます。  以上、ごく大ざっぱに、また抽象的ですが、私見を申し述べました。いずれにいたしましても、地理的にも、日中貿易は発展させねばならない必然性を持っておりまして、五億また七億といわれます人口の大市場を等閑視して、今後の貿易を考えることはできないと思います。その中国が、数次の五カ年計画による生活程度の向上と相待って、ますます日本の輸出市場といたしましても、大きなウエートを占めてくるという予想がされますので、これに対応する中国よりの輸入量の増大という問題は、真剣に取り上げられねばならぬ時期に来ていると思います。いずれ後刻御質問等がありますれば、私の存じている範囲内において、お答えしたいと存じております。はなはだ失礼いたしました。
  71. 小平久雄

    小平委員長 ありがとうございました。  次に、葦沢参考人よりお願いいたします。
  72. 葦沢大義

    葦沢参考人 ただいま横山さんからお話しになりました一般的なお話に鉄鋼におきましても、その一般的な基盤の上で考えられているわけでございますが、特に、去る十二日、鉄鋼輸出組合の理事長、八幡製鉄の稲山常務を団長といたしまして一行十二名が向うに出かけたことにつきまして、私、直接の担当ではございませんが、業界からの団が出ましたという意味におきまして、そのいきさつを具体的に御説明申し上げたいと考えます。  従来、中国との鉄鋼関係における貿易関係は、全部商社によって行われて参ってきていることは、御承知通りでありますが、中国の側においても、漸次商社のみを通じての話でなくて、メーカーとじかに話をして、安定した相互の貿易を考えたいという意向が、向う側にあったようでございます。そこで、こちら側で、むしろ向うからだれか来てもらって話をしようということも、一部に計画されたのでありますが、向うの事情としまして、五カ年計画の遂行上、いろいろ出るべき人も支障があるというような話がありまして、向うからは見えない。そのかわり、向うから、向うの鉱産公司と五金公司の両公司から招請がございましたにつきまして、急遽今回の鉄鋼使節団を編成いたしまして出発をいたしたわけであります。  そこで、参ります問題の内容は、向うでいろいろ交渉をしてみないことには、はっきりしたことはわかりませんが、こちら側といたしましても、輸出振興の重要性は申すまでもなく、また鉄鋼が、輸出産業としての、従来大きな責任とウェートを持っておる意味からいきまして、中共に対する鉄鋼の輸出ということにつきましても、深い関心を持っておりましたわけでありますので、こちらから向うが所要する普通鋼鋼材の輸出というものについて、具体的に考えられるわけでございます。まず十五万トンないし二十万トン程度の輸出を、向うに、できたら、したらどうか。ただ、向う側の情勢を、私ども詳しいことを存じませんのでありますが、御承知のように、昔の満州の昭和製鋼所のあとにあります製鉄所を向てうが動かしておりまして、約五百万トンくらいの鉄鋼を向うが作っております。五カ年計画の遂行上、いろいろ工業建設等のために、向うの鉄鋼需要も相当ふえておりまして、充足率は八割八分くらい、従って、五十万トンくらいは不足をしておるというような話も聞いておるわけでございますが、これは工業建設のためから見た鉄鋼需要で、一般の民生の向上等によりまする鉄鋼の需要というものは、別にさらに多くあるんじゃないかというような見方から、そういった必要な鉄鋼の輸入について、向うも相当な関心があるんじゃないかということも考えられるわけであります。ただいま横山さんからお話のありましたように、ココム、チンコムの緩和に伴いまして、そういった面における展開の可能性というものも、十分に考えられるわけであります。  ただ、しかしながら、向う側にいたしましても、必要な金の問題があろうと思うわけであります。そこで、こちらから輸出します普通鋼材の代金のかわりに、原料としまして鉄鉱石あるいは石炭というようなものを輸入することになりますれば、話は割合とスムーズにいくのじゃないかということは考えられるわけでありますが、これも時期の問題があろうかというふうに私ども考えております。と申しますのは、現在、原料としまして石炭、鉄鉱石は、中国からはほとんど微量しか入れておりません。その他の手当によりまして、従来操業をいたしておりまして、のみならず、最近のこういう鉄鋼不況のもとにおきましては、むしろ原料の手持ちが相当多くて、今直ちに大量のものを中国から買うというわけには参らぬと思うのでありまするが、しかしながら、日本の鉄鋼生産のテンポの上から考えますと、経済企画庁において企画されました五カ年計画を見ましても、鉄鉱石において、五年後には、現在八百万トンくらいの鉄鉱石を輸入しておりますが、千六百万トンくらいの鉄鉱石が必要だというような計画にもなっておりますので、長期に見ましたならば、向うとの鉄鉱石の問題、あるいは石炭の輸入問題の話が、ある程度話し合いがされるべき機会があるというふうに思われるわけであります。御承知のように、戦前は、中国の開ラン炭、中興炭あるい博クロ章炭というような製鉄用の石炭を入れております。また鉄鉱石にいたしましても、非常に品質のいい海南島の鉄鉱石を、戦前日本の製鉄業が大量に使った経験があるのでありますが、そういった意味からも、向うの原料には、なじみがあるわけでありまして、結局そのテンポの工合というものは、向う側と交渉をされる内容いかんということになるんじゃないかと思うわけであります。従って、問題は、今年すぐ当面輸出します鋼材の見返りとして、何を向うから輸入するかというようなことが問題になろうと思うわけです。大豆というような向うからの見返り物資、これはわれわれの関係外の物資でありますが、そういったものの話し合いがどうなるか、政府の方もいろいろお考えをいただくべき問題だろうというような考え方をいたしておるわけでございます。  それから、いま一つは、相互に安定した貿易の正常な取引ができるという段になりますと、従来とかく商社における過当競争からくる貿易の安定した正常化というものが、阻害されておったというような問題は、これは日本側においても、あるいは中国側においても、完全に一致した問題ではないかもしれませんが、そこにおのずからまた共通した問題もあろうかというように考えるわけでありまして、この問題につきましても、向うであるいは話が出て、いろいろな交渉が行われる機会があるというようなふうに考えておるわけでございます。一行が向うに出発いたしますにつきましては、通産省にお打ち合せをいたしまして、通産省のお打ち合せに基いて、向うに出発をいたしたわけでありますが、一行のうち、団長の稲山常務、鋼管の清水常務と外一名は、今度訪印鉄鋼使節団が日本から出発をいたしますが、これは富士製鉄の永野社長が団長として、昨年末以来インドの鉄鉱石の開発につきまして参っておりました調査団の報告に基いて行かれるわけでありまして、それが下旬に出発いたしますので、それに合流して行かれるために、この三省の方方は下旬に中国を離れるわけでありますが、その余の者は残って、向うで話をいろいろしてこられるわけであります。私どもは、交渉の成果に期待をいたしておる次第でございまして、この交渉の発展による中国と日本との鉄鋼並びにその原料を通じての結びつきの今後の進展に、注目をいたしておる次第でございます。  以上、鉄鋼関係の状態につきまして、一応の御説明を終らせていただきます。
  73. 小平久雄

    小平委員長 ありがとうございました。  次に、大仲参考人よりお願いいたします。
  74. 大仲斎太郎

    ○大仲参考人 私は、硫安輸出会社の大仲であります。硫安の輸出の件につきまして、商工委員会委員の皆々様よりは、平素格別の御配慮をいただき、この機会に厚く御礼申し上げます。本日は、小平委員長より、日中貿易促進のための化学肥料界の意見を、参考人として申し上げるよう御指名を受けて参上いたした次第であります。  日中貿易に関しましては、化学肥料界も、他の業界と同様に、促進をはからなければならないのは、今さら申し上げるに及ばないのでありまして、昨年の昭和三十一年秋に、日本側より化学肥料関係の六団体が中国に代表団を出しまして、中国進出口公司と交渉をいたしました結果、尿素五万キロトン、過燐酸石灰十七万キロトン、塩安三千五百キロトン、溶成燐肥千キロトンの契約を結んだのであります。硫安につきましては、価格の点で折り合いがつかず、遺憾ながら契約するに至りませんでしたが、その後、昨年四月に硫安三万一千五百キロトン成約し、輸出も無事済みました。これが日中間に大量の契約を結ぶ発端となったのでありまして、きわめて有意義であったのであります。  次いで昨年は、日本側より先方を招待いたしまして、関係各方面の御助力をいただいた結果、昨年十二月の初めに、先方から中国進出口公司の鮑良才副経理以下六名の代表が参り、日本側も代表を出しまして、種々折衝を重ねました結果、押し迫りまして十二月三十一日の真夜中に至って、ようやく硫安四十万キロトン、尿素三万五千キロトン、過燐酸石灰二万キロトン、塩安三万五千キロトン、溶成燐肥三百キロトン、石炭窒素二百五十キロトンの大量の契約に調印することができたのであります。  翻って、昨年の暮れにおける日本の肥料界の情勢を見ますと、硫安を初め各肥料とも輸出不振でありまして、積極的に何とか輸出の打開をはからなければならない情勢でありました際でもあり、また、日中貿易の今後の発展のためにも、この大量の調印はまことに慶賀すべきことであったのであります。  御承知のことではありますが、中国は、人口の数の上から見ても、また耕地面積の関係から見ましても、今後の窒素肥料の需要は二千万キロトンに達するといわれ、無限に伸びるといっても過言ではないのであります。一方その生産は、昭和二十七年には十九万四千キロトンでありましたが、その後、第一次五カ年計画で、約七十八万キロトンの目標を達成し、さらに第二次五カ年計画では、三百万キロトンあるいは七百万キロトンを目標としているといわれているのでありますが、かりに、これが計画通りに達成されたといたしましても、今後なお膨大な数量を外国より輸入いたさねばならぬのであります。  一方、世界の窒素肥料の需給の状態は、英国の権威ある筋の発表によりますと、一九五八—五九年度におきまして、供給不足の地域も加味いたしまして、全世界で六十九万キロトン、硫安に換算して三百四十五万キロトンの超過となりますが、特に欧州では百十四万キロトン、硫安に換算して五百七十万キロトンという驚くべき超過となる推定となるのでありますので、欧州各国は、一様に中国に対してマーケットを求め、莫大な超過分のはけ口といたさんと、あらゆる努力を払っている次第であります。  日本におきましても、来年度は、硫安で百万キロトン、尿素その他のア系で七十万キロトンに近い輸出をいたさねばならぬ状態であり、明後三十四年度はさらに増加して、生産の半数以上は輸出に向けねばならぬ状態であり、肥料は安全なる輸出商品の性格を帯びて参ったのであります。従って、今後は、欧米と激烈な競争をいたさねばならぬのでありますが、日本の強みは、何としても中国を初め台湾、韓国等、きわめて近い距離のところに、大きな消費市場を控えている点であります。台湾に対しては、昭和二十八年以来毎年供給契約を結んでおりますが、消費数量は、ほぼ限界点に達しており、韓国も、今後は著しい増加を期待し得ないのみならず、国際入札による買付でありますので、必ずしも安定した市場とは言い得ないのであります。  以上の観点から見ますと、中国は、日本の化学肥料にとって、最も有望なる安定した市場であると言い得るのであります。従いまして、化学肥料界といたしましては、日中貿易の円滑な促進に対して、非常な関心を払っているのでありますが、この機会に、化学肥料に関連したお願いの二、三を、申し述べさせていただきたいと存じます。  その第一は、いわゆるトーマス残の処理についてであります。申し上げるまでもなく、日中貿易は、日本の輸入先行を原則といたしておるのでありますが、肥料に関しては、日本が先に輸出する、すなわち輸出先行でありまして、その肥料の輸出代金に見合う金額だけの商品を、LC到着後九カ月間に、あとから日本が中国より輸入するという約束になっているのでありまして、その金額、これはトーマス残と私どもは称しているのでありますが、従来の残している残高約二百八十八万ポンドと、さらにこのたびの大量の契約分を合計いたしますと約千三百万ポンドとなるのであります。今後、日中貿易を促進するためには、まずこの千三百万ポンドに近い商品を、中国より輸入せねばならぬのでありますが、私どもは肥料の輸出業者であり、肥料以外の商品を輸入するわけにはいかないのでありまして、このために、各商社でも、輸入に種々努力をいたしておるのでありますが、たとえば、米であるとか、塩であるとか、中国より大量に輸入する商品は、中国以外からもまた輸入し得るのでありますが、政府当局におかれましては、中国よりの輸入の割当について、その金額、方法、時期等において、優先的に考慮していただき、私どもの輸出した金額に見合う輸入の約束を履行できるよう、促進していただきたいのであります。  次に、ただいま申し上げましたトーマス残の処理にも関係するのでありますが、日中貿易におきましては、相互バーターの原則に基きまして、輸出あるいは輸入する商品を甲、乙、丙、の三つのワクに分類いたしまして、そのワク内にてバーターをする、いわゆる類別バーターの原則をとっておりますことは、皆様御承知通りでありますが、現在、肥料は乙類でありまして、一方輸入品として乙類の中にあるのは米、塩のほかには、あまり大量に輸入し得るものは比較的少いのであります。今後、中国向け肥料の輸出を促進するためには、ぜひともこの分類の範囲を調整して、肥料を甲類に入れていただくか、大豆を乙類に入れていただきたいのであります。もちろん第四次協定案では、甲、乙の二分類となり、乙類の範囲が拡大されたのでありますが、大豆が、なお肥料とは別ワクの甲類でありますので、今後もなお調整を重ねていただくか、できることならば、総合バーダーとしていただくことが必要と存じます。  お願いの第三の点は、必ずしも日中貿易のみの問題ではないのでありますが、中国は、現在ポンド貨によって代金を決済することになっているのでありますが、御承知通り、先般政府がポンド為替自由化の措置をとりまして以来、ポンドの先行きはきわめて不安なのであります。しかも、中国より今後なお一千万ポンドに近い支払いを受けるのでありますが、ポンド為替が、かりに一%の下落がありましても、その影響はきわめて大きいのであります。このポンド為替下落による損失を補う制度としては、現在為替損失補償法がありますが、これはプラントの場合に限り、肥料については、適用されていないのであります。従いまして、私たちといたしましては、為替銀行との間に為替予約の契約を結ぶ以外に、方法が残されていないのでありますが、この方法も六カ月の先までの契約しかできないので、その先についてはリスクを踏まねばならぬのであります。もちろん、これは、単に中国のみに限ったことではなく、インドなどのポンド地域向けの場合にも同様でありますが、中国については、前に申し上げましたように、金額が非常に大きいので、特にこの必要を痛感いたす次第であります。  実は、私は、硫安の輸出のみの業務に携わっておるのでありますが、ただいまお願いいたしました三点は、いずれも化学肥料の各業界とも、希望いたしておるところでありまして、先日、小平委員長より御指名の御連絡をいただきましたので、さっそく過燐酸石灰その他各肥料の関係者よりも、念のため内々に意見を聞きましたところが、私がただいまお願いいたしました三点は、いずれも同意見であるように了解いたしましたので、この点もお含みおきの上、何分の御助力をお願いいたす次第であります。  なお、この機会に申し上げたいことは、今年度の輸出価格は、非常に低い価格で契約せざるを得なかった次第でありますが、今後の国際価格も、おそらく同様ではないかと思われます。欧州でも、日本の競争相手である西ドイツ、ベルギー、オランダ、イタリア等各国とも、国内価格は六十ドルに近いにもかかわらず、韓国等の入札を見ましても、三十八ドルに近い価格で応札している実情であります。国内と輸出の価格差は著しいのでありますが、アメリカの副産でも、工場渡し価格は、おそらくばらで三十五ドル前後と思います。包装及び船積みまでの運賃諸掛りを加算いたしますと五十五ドルくらいとなっているはずでありますが、これも四十一ドルないし高くても四十八ドルで輸出している次第でありまして、これらは、みな政策値段で、輸出に関し特別の措置が講ぜられているのじゃないかと存じます。日本での国内の公定価格は、現在約五十七ドルについております。今後、欧米と国際マーケットにおいて競争いたしますためには、十ドル前後の赤字を覚悟せねばならぬので、この対策のため、業界でも全力をあげてただいま検討中であります。いずれ成案を得ますれば、各方面の御助力を得なければならぬと存じますので、その節は何分よろしくお願いいたします。  本日は、日中貿易の促進に関して、化学肥料界の意見を申し上げる機会を与えて下さいましたことを厚く御礼申し上げまして、私の陳述を終ります。
  75. 小平久雄

    小平委員長 ありがとうございました。  次に、橘参考人よりお願いいたします。橘弘作君。
  76. 橘弘作

    ○橘参考人 冒頭に、世界で機械の輸出というものは、どのくらいの年額になるかということを申し上げたいと存じます。  近い統計では、最近のものは、まだ国連でまとまっておりませんが、しかし、一九五五年、昭和三十年の世界の機械の総輸出高は、金額におきまして百四十四億ドルでございます。その昭和三十年に、日本が船等を含めまして輸出いたしました額は、二億七千万ドルであります。でありますから、世界の総機械の輸出の一・八%というのが日本の三十年における実績でございます。その三十年におきまして、主要各国二、三をあげまして、その国の全輸出と機械の輸出の比を見てみますと、イギリスは、全輸出商品の三八%が機械であります。金額は三十億ドルの輸出をやっております。それからアメリカは膨大なものでありますから、御参考になるかどうかは存じませんが、その年に全輸出商品の三八%、金額にいたしまして五十五億ドルが機械の輸出でございます。西独は自国の全輸出商品の四三%が機械でありまして、その額は二十六億ドルに当っておるのでございます。この年におきまして、日本は、先ほど申しましたように全輸出商品の一四%が機械でありまして、その額は一億七千万ドルというようなのが、日本実績でございます。  将来、重化学工業が、日本の産業構造におきまして、また輸出対象品におきまして、非常に多く国から期待されております。機械だけで申し上げますと、新しい五カ年計画では、三十七年の目標年度におきまして、総輸出に対しまして機械を約二十四%に伸ばす、その額は十一億六千万ドル、こういうふうになっております。なかなか日本の三十七年の目標年度における十一億六千万ドルの機械輸出の遂行というものは、業界はもちろんでありますが、国におきましても、非常な大馬力をかけなければ、このような数字でさえ達成がむずかしいのでございます。三十七年度におきまする世界の総機械の輸出量を、私どもは三十年から年率五分の伸び方と勘定いたしますと、三十七年に世界全体で機械の輸出が二百三億ドルになるのでございます。ただいま申し上げました五カ年計画による十一億六千万ドルは、それの六%弱に当るというような状況でございます。  かように機械の世界的の需要はおびただしいものでございますが、機械の需要先を申し上げますと、もう先刻御承知と存じますが、やはり工業の未開発国及び低開発国が、機械需要の一番の目ぼしいところでございます。地域的に申しますれば、中近東を含めての東南アジア及び中南米というところを、日本の今後最も大事な市場として、私たちは注目しておる次第でございます。  そこで、先ほど来お話がございましたが、世界貿易におきまして、どのような条件がそろわなければいかぬか。もちろん、技術的に優秀なものでなければならない、また価格においても、世界価格に近いもの、あるいは生産性を非常に上げまして、それよりも安いもの、及び納期の点においても早くなければいかぬ。それからさらに、支払い条件が、購買国の要求に合致しなければならぬのであります。いずれにしましても、やはり地域的に近いところを、最も私どもは注目しなければならぬということは、申すまでもない条件でございます。そこで、中国は、こういうような意味から申しましても、私は、中国が、工業の未開発国かあるいは低開発国か、その実情のはっきりした点はつかめませんが、いずれにしても、膨大な機械の潜在市場であるということは、望めるのでございます。機械と申しましても、長期の建設を伴うような資本財、つまり発電所計画あるいは埠頭の計画、あるいはその他の化学工場の設置とかいうものから、単体の機械、据えつけさえすれば、すぐ資本財になって子を生むというもの、並びに人間の生活上必要な耐久消費財的な機械、この三つに分れるのでございます。これらいずれの種類の機械でも、中国ということを考えるときには、膨大な潜在需要があるということは申し上げるまでもありません。  そこで、中国に対して、これまでどのように機械が出ておるかという問題でございます。これは統計から見てもわかりますように、まことに現在までは微々たるものでございまして、昭和三十年には、日本の中国に対する輸出全商品の五・八%が機械でありまして、金額にいたしまして百六十四万ドルであります。それから三十一年には一九・七%でありますして、その金額は千三百二十五万ドル、三十二年には一五・一%でありますして、その金額は九百十二万ドルというように、上ったり下ったりを繰り返しておるのでございます。これら三十年から三十二年までに出ました機械の種類は、どんなものかということを吟味してみますと、繊維機械、それからベアリング、運輸機械、電気機械等が、大体これらの輸出を形成しておるものでございます。  今後、中国に機械の輸出を伸ばすには、どういうことをわれわれは希望するという点でございますが、国交回復しておりません中国を相手といたすのでございますから、私どもが希望いたしますのは、実質的な通商協定が結ばれることが、何と申しましても必要であります。これが国交回復後の通商協定と同様な効果を持つようになりませんと、長期に安定した取引が、機械の場合には非常に困難な点が出て参りまして、実際は取引不可能というような状況になります。第二には、ココムの制限の緩和または解除を必要といたしますが、この二点が解決されれば、中国貿易は相当に伸びると考えておるのでございます。  それから、ただ機械の場合に、中国における特許の問題がどうかという点がすぐ出て参ります。この特許の問題が、双方の国においてよほどよく協定ができませんと、輸出がなかなかむずかしい場合が起きてきます。それから、私ども中国に対する貿易態勢は、先方は一本の政府貿易でありますが、当方は、当面といたしましては、やはり輸出入取引法による輸出組合を活用していくべきでないかというふうに考えております。それから機械の優秀なるプラントあるいはその他のものにおきましても、日本の機械工業は、いまだ欧州あるいは米国との技術提携が相当結ばれておるのでございまして、この点についても、先ほどのような条件がそろったら、すぐ機械が出るかという点におきまして、考慮を要する問題でございます。今後、各種の貿易の障害が排除されまして、わが国の代表的のメーカーが積極的に中国貿易に乗り出せるような状態になりますれば、発電機、船舶、鉄道車両、鉱山機械、工作機械、通信機械あるいは灌漑排水機械等の輸出が、相当期待されるものと、私どもは考えておる次第でございます。  そこで、最後に、ただいままで申し上げましたものの中から、一、二簡潔に結論を出して、また希望もありますので、申し上げますと、現在まで中国の機械の買い付け方が、まことに私どはふに落ちません。それはスポット買いが非常に多いのであります。一例をあげますと、農機具は、昭和三十一年におきまして七億円の注文があり、輸出をいたしました。三十二年には全然ございません、ゼロでございます。そうしてまた、三十三年の昨年の暮れから三億円ほどの農機具を発注されまして、そしてそれが非常に短かい納期を要求されるというような状況でございます。かくのごとく、機械はそんなにストックを持っておるものではありません、また製造にもそれぞれ口数が非常にかかるのでございます。このようなスポット買い的のものがとられまして、非常に困っておるという状況でございます。それから、大きなものを出すにしても、延べ払い輸出が不可能であるということは、非常に輸出の上において制限が大きくなります。第三番目は、そうであるが、機械をできるだけ早く隣国である中国に各種のものを出さないと、他の国が盛んに出しますと、仕様書が大体他国の機械の仕様書になりまして、将来日本がすべての障害が排除されて出て参りますのに、先に入った国の仕様書ということになると、これまた非常に大きな阻害の原因を作ります。  第三は、中国における機械工業の現状ということを、よほど注目しないとならぬと思う。ただいまの、あちらに渡りまして情報をまとめて提供してくれる人々の話では、中国は大体のものはできるが、日本の機械から見ると、精度が落ちている。その通りと思うのです。同時に、できることはできるが、量が少い。しかしながら、これは将来、工業化計画が非常に大きく推進されます国におきましては、インドにおける現状のように、外貨の不足はどこでもつきものであります。しかしながら、工業化は、外貨を借金してもなし遂げないと、またさらに幾年か後の国策というものから、外貨をセーブするという計画ができ上りませんので、この点につきまてしは——われわれは、中国が自動車を作っていることも知っております。繊維機械を作っておることも知っております。その他小さなものは、工作機械にしても、やはり同様に作っておることも存じております。中国の自国生産の機械工業というものは、いかなる計画において将来発展していくかという点が、非常に注目される問題だと思っております。  なお、御質問がございますれば、あとはさらにお答えを申し上げたいと思います。
  77. 小平久雄

    小平委員長 ありがとうございました。  以上で参考人各位の御意見の開陳は終りました。  これより質疑に入ります。この際質疑をなさる委員各位に申し上げます。質疑通告が多数あり、本会議との関係もありますので、一人おおむね十分程度に願います。なお、参考人各位にも、なるべく簡明に御答弁を願います。  長谷川四郎君。
  78. 長谷川四郎

    ○長谷川(四)委員 先に横山さんに、私の聞き違いかどうか、一点を承わっておきたいと思います。すなわち、中共との貿易につきまして、バーター制をとっておられる。従って、政府が外貨というものにもう少し特別の御配慮を願うことができるのならば、というお言葉があったと思うのでございますが、この特別の御配慮というような点について、あとで一言御答弁を願いたいと思います。  次は、葦沢さんにお伺いをいたします。話が長くなりますから、個条書きでお聞きいたしますからお答えを願いたいと思うのであります。  第一点は、鉄鋼業の第二次合理化計画の進行状況と、その問題点を説明していただきたい。  次は、本年度の鉄鋼製品の需給関係、特に海外輸出市場の問題について、国別の輸出計画をお聞きしたい。また、特にどこの市場に重点を置いて今後お進みになる考えであるか、これについてお答えを願いたいと思います。
  79. 横山金吾

    ○横山参考人 ただいま御質問の点、外貨の特別の考慮と申しましたのは、私どもの考えとしましては、ココムの緩和以来、輸出については、さほど心配はない。要するに、買うだけのものは何かが出る、そう考えております。買うにつきましては、御承知通り、現在外貨が、一部AAがありますけれども、統制下にありまして、これは、いえば輸入物資の市場転換というものになると思いますが、ドル並びにポンド地域、そういうものにつきまして、先ほど総括的に申しましたように、不利なものを買うということは毛頭考えておりませんけれども、少くとも同じ値段、同じものであれば——もちろんこれは品質に応じた値段でありますが、中国から優先的にものを入れたらどうかという点について、特別の考慮をしてもらいたいという面を考えたものであります。
  80. 葦沢大義

    葦沢参考人 第二次合理化計画の状況については、すでに着手をいたしまして、三十五年、六年ぐらいの完成目標で、工事が進んでおるわけでございますが、ちょうど昨年五月以来、金融引き締めの政府政策がとられまして、鉄鋼業といたしましても、工事の繰り延べに対する協力と申しますか、資金の圧縮について、協力の要請が特に政府の方からございました。一割二分の資金圧縮というようなお話でございまして、これに十分協力をいたすという方針できたのでありますが、実際上は、銀行の方の金融、資金繰り等から、さらに圧縮の度は強うございまして、工事によっては三割、四割というように繰り延べになっておるような状況でございます。これが今年度の所要資金につきましても、特に財政投融資の面から見ますと、開銀の融資につきまして、先生方各位にもいろいろ御高配をいただいておるのでございますが、なかなか思うようにはいかぬようでございまして、現状のもとでは、相当の繰延べになるのではないかというように考えておる次第でございます。  それから、第二の、鉄鋼の需要見通し並びに特に輸出市場の問題でございますが、三十三年度の鉄鋼需要ないし輸出見込みというものは、まだ正式に政府においても決定をされず、またわれわれの業界といたしましても、正式な成案というようなものを持っておりませんわけでございますが、大体重工業局において——重工業局長もおいでになりますが、一つの試案を今検討されております。それによりますと、鉄鋼内需の関係は八百八十三万トン、それから輸出関係では七十七万トンくらい、これが九百六十万トンという普通鋼材の需給関係ということで、一応考えられておるわけでございます。三十二年度の全体の鋼塊の生産が千二百五十万トンくらいになろうと思っておったのでありますが、三十万トンくらいになろうかと思います。これが九百六十万トンの計画になりますと、千三百五十七万トンくらいになるわけでございます。若干の内需の増加、輸出の方は、昨年の一割二分くらいの増加というような要請的な試案が一つありますので、目下これを検討しておるというような段階でございます。ただ、この輸出市場につきましては、相手の状況があるわけでありますからこちらで、予定をいたしましても、なかなかそう参らぬわけでありまして、御承知のように、一昨年はアルゼンチン、昨年はインドというようなところが、主要市場になったわけでありますが、今年もインド方面が相当有望な市場ではあろうかと思いますが、まだ具体的にどこに集中的だというような段階までに、成案を得ておらない状況であります。
  81. 長谷川四郎

    ○長谷川(四)委員 葦沢さんに続いてお伺いいたします。そういたしますと、本年度の中国市場に対しまして、どのくらいの輸出を期待しておられるかということ、またその中国向け輸出鋼材の種類と数量を聞かせてもらえれば、まことにけっこうだと思うのです。またその場合に、ココムの禁輸制度との関係は、どういうようになっておるか、この点をお聞かせを願いたいと思うのであります。
  82. 葦沢大義

    葦沢参考人 中国に対します鉄鋼の輸出につきましては、こういうような輸出の要請が非常に強い、しかも、なかなかむずかしい時期でありますので、中国にも普通鋼材等を初めといたしまして、いろいろな鉄鋼がなるべく多く輸出できれば仕合せだというように考えておるわけでございます。先ほど申し上げましたように、目下使節団が参りまして、向うで交渉をいたすわけでありますが、大体目安としては十五万トン——まあ三十万トンくらいの話が成立するかどうかわかりませんが、二十万トン前後というのが、一つの目安になるのじゃないかというように考えるわけであります。ココムの方の制限も、漸次緩和されまして、御承知のように、ただいま薄板等を中心といたしました品種は、差しつかえがないようでございまして、薄板、亜鉛鉄板、ブリキ、珪素鋼板というような種類のものが、さしあたっての品種の内容ではあるまいかというように考えておる次第でございます。
  83. 長谷川四郎

    ○長谷川(四)委員 もう一つ伺いますが、製鉄原料の確保のための計画、特に鉄鉱石と粘結炭、強粘結炭の輸入計画というものがあると思うのですが、それに対してのお答えを願いたいと思います。この場合、中国産の鉄鉱石、開演炭その他の強粘結炭を、どのくらい輸入し得ると考えておられるか。もう一つは、中国産の製鉄原料とそれ以外の国の製鉄原料と比較して、品質及び価格の関係がどういうふうになっておるか。果してこの方が有利であるかどうかという点であります。  もう一つは、業界として、中国との間に鋼材の輸出、原材料の輸入について、長期計画がおありだと思うのですが、そういう点について御発表願えれば、まことに幸いだと思います。なお、中国と長期の契約をする御意思を持って進んでおられるかどうかということを、葦沢さんにお伺いいたします。  もう一つ、橘さんにお伺いいたしますが、機械の輸出が非常に低いというお話でございました。その低い理由というものもあげられたようであります。しかし、その低い理由はどこにあるか。つまり、日本の技術がそこまでいっていないのかどうなのか。もう一つは、価格というものがそこにあるのかどうか、こういうことと、もう一つ隘路になっているであろうと思われるのは、契約した納期というものに対しての隘路があるのかどうか、こういう点を一つお聞かせ願いたいのです。私たちの考え方というものは、日本の技術は、世界でも最も優秀な技術屋が日本におるのだという考え方を持っております。従って、もしこれらに隘路があるとすれば、われわれは、今後政治を行う上において、いかなる方途をとらなければならないかということを、お聞かせ願いたいと思うのでございまう、
  84. 葦沢大義

    葦沢参考人 原料の石炭、鉄鉱石の輸入関係でございますが、石炭につきましては、目下アメリカから粘結炭を大量に入れております。鉄鉱石につきましては、マレーが一番多うございますが、フィリピンとか、東南アジア方面から入れておるわけでございます。中国との関係においては、開ラン炭が従来四十万トンくらい入っております。鉄鉱石も、従来海南島で、すでに掘られておりましたものを四、五十万トン入れたというような状況でございますが、今後、こういう中国の原料をどの程度入れるか、またそのテンポは、どういうようなテンポであろうかということは、今度参りました使節団が、向うといろいろ話をします結果に基かないと、今ここでどうこうというふうには、申し上げにくい状況でございます。  石炭の品質は、先生もよく御存じだろうと思いますが、開ラン炭は、戦前大量に使ったわけでございますが、灰分が非常に多いわけでございます。これも向うで選鉱設備をしまして、二四、五%のアッシュがあると思いますが、これを一六%に品位を高めるというような計画も、向う側にあるようでございます。それも大量に日本が安定して買い付けるというような話し合いができないと、向う側もそういう設備をしにくいのじゃないかというようなふうに思われます。  それから鉄鉱石は、海南島の田独あるいは石碌の非常にいい品質のものがあることは、御承知通りでございますが、これも戦後、機械化した生産段階には入っていないわけでありまして、おそらく一部は日本以外のところにも行ったようでありますが、大部分は日本側が使わなければ、大量には掘れないというような状況じゃないかと思います。今後の交渉の推移と、またこういう中国の原料を直ちに入れるということは、今、むしろ生産縮小というような段階にありますのみならず、従来の契約の状況もありますので、直ちに大量のものをここで入れるということは、できない状況にあるわけでございます。運賃は、むろん安くなるわけでございますが、これは価額交渉になりますと、運賃が安い割には必ずしも、そのまま下げるかどうかということは、向うとの交渉になるわけでございまして、使節団が向うへ行って、そういう話が具体的にどの程度出ますか。そういう経過を見ました上でないと、はっきりしたことは申し上げにくいという状況にあるわけでございます。
  85. 橘弘作

    ○橘参考人 機械の設計技術は、各国の水準にきておりますが、ただ生産技術は、もう少し国内において検討する必要があるということで、ただいま通産省の方では、生産技術研究所を非常に積極的に動かそうということになっております。国際競争の上において、そうこれが技術の面に困難はないと現状は見られます。  それから価格も、最近は国際競争におきまして、日本が、一位になるということもあり、二位になるということもあり、この面も三、四年前から見ると、非常に著しい改善が行われている。  納期は、日本は短かい方でございまして、そう差しつかえはありません。ただ、何が隘路になっているか。大きなものを出しますとき等の隘路は、何といっても、やはり日本が輸出手続等に非常に時間がかかる。それから窓口が、私ども通産省というものに一本化して、一カ所ですべて物を運んでくれということを、常々強く要望しておりますが、これらの点は、今度の貿易管理その他の簡素化及び大きく通産省に仕事を移そうという面が動いておりますので、ぜひただいま研究されているような案を、一日も早く実行をしていただきたいと思っております。  それから最後に、延べ払いの取引条件ですが、延べ払いの点と先方との取引通貨の面におきまして、相当隘路がございます。これらも通産、大蔵等におきまして、ただいませっかく改善について検討されております。私ども要望を申し上げておりますような点にこれが落ちつくことになれば、当座としてはこの隘路が打開され、相当輸出の伸張になるというふうに考えております。
  86. 長谷川四郎

    ○長谷川(四)委員 あと一点、葦沢さんに伺います。日本に過当競争というものが非常に多くて困るということと、もう一つ、中国側にもあるというようにお聞きしたのですが、お間違いはなかったかどうかということ。  もう一つ通商局長がおいでになっているから、あなたに質問するのではございません。お聞きの通りでありまして、輸出の手続というものが遅滞するために、日本の貿易に大きな影響があるということは、よくわかったと思う。こういうことがあって、それが責任として政治の上に現われてくるということは、まことにもってけしからぬと考える。この点について、何か考慮しておるというようなことであるから、これは早期に解決つけてもらわなければならない問題であろうと思う。私たちは、政治をあずかる上に、これらは大きな問題でなければならぬと、こう考える。従って、延べ払いの点等につきましても、同時にお考え願いたいということを、一言あなたに申し上げておきます。  では、質問に対して御答弁をお願いいたします。
  87. 葦沢大義

    葦沢参考人 過当競争の問題は、むろん日本側にあるわけでありまして、向う側は、一本でやっておりますから、向う側にはそういう問題はないわけでありますが、向う側から日本の過当競争を見た場合に、それが好ましい状態でないという見方も、向う側にあり得るんじゃないかという点で、共通点があれば、話し合いがそこで行えるのではないかというふうに申し上げたつもりであります。
  88. 小平久雄

  89. 永井勝次郎

    ○永井委員 簡単でよろしいですが、四方に答弁願いたいと思います。  日中貿易は正常貿易ではない、変則貿易であります。従って、貿易の面においては、単に貿易をやればそれでいいのだというだけではなしに、民間外交的な役割も、その中で考えていかなければならないだろうと思うのです。また、両国の間における政治的な背景というものに深い理解を持って、貿易を通して互恵平等なり親善友好なりというものを深めていく、そのことが、次の貿易の拡大促進に役立っていく、こういうことに拡大されていかなければならぬと思うのであります。ところが、日本見本市で見るように、広州では、全くそういう政治的な関係に無感覚ないろいろな動きがあって、それが非常に障害になっているという場面もあります。そういう日中貿易の背景となるそれらの問題について、よほど理解を持って臨みませんと、個々の折衝の場合において、障害になる場面があると思うのです。こういう点について、皆さんはどういうふうにお考えになっているか、この点を一点伺いたい。  それから、市場転換といいますが、言葉ではやさしいが実際はなかなか困難な問題ではないかと思うのです。アメリカの方の顔色を見たり、あるいは国内におけるいろいろな顔色を見たり、こういうことで動いておりますと、向うとの折衝に、いろいろな刺激を与える結果になるのではないか、こういうふうに考えますが、この市場転換について、どのような心構えで、また決意で、今後臨まれる見通しに立っておるか。この二点について、四方に、簡単でいいですから御答弁を願いたいと思います。
  90. 小平久雄

    小平委員長 四方全部ですか。
  91. 永井勝次郎

    ○永井委員 商社部門を通して横山さん、その内容を通して橘さん、お二方にお願いいたします。それから市場転換の問題については、葦沢さんにお願いいたします。
  92. 横山金吾

    ○横山参考人 お説の通り、現在の日中貿易は、どこまでも変則的でありまして、いわゆる正常に国交が結ばれた国との貿易とは違うわけであります。しかし、われわれ商社としましては、そういう点につきまして、政府当局その他関係の方が指導的な立場にあられまして、国際情勢、国際関係、中国以外の国との関係というのは、そちらの方面で十分調節され、われわれを指導していただく。もちろん、われわれは、その指導によって、民間としまして貿易の促進に尽力したいと考えております。今度代表として行かれます方方においても、十分その点は御承知の上で、まあ、われわれではわかりませんけれども、政府当局との間の相当の了解もとに、今度の協定をお進めになるものと、私は了解しております。  市場転換につきましても、先ほど申し上げました通り、非常に困難な点があると考えております。しかし、われわれとしましては、日中貿易を促進するためには、同じ条件であれば、他の民主国家と申しますか自由国家と申しますか、そういうものと同等の条件のもとに、日中貿易というものがもし推進されましたならば、より大きな成果が上り得ると考えております。それ以上のことにつきましては、われわれは業者でありますので、私にそういう点をどうかとおっしゃっても、非常に残念でありますけれども、ちょっと私にはお返事ができかねます。
  93. 永井勝次郎

    ○永井委員 日中貿易については、国内的に見れば、日本政府が貿易のブレーキになる場合が、相当に今までもあったし、今後もあり得ると思うのです。そういう場合、日本政府のワク内でいったら、政治的にだけ動いて、経済的な分野が開かれていかない。経済を積み上げていって、両国の外交をもっと緊密に開いていくという役割を貿易は持っておる。だから、そういう面において、ただ政府のワク内で、ブレーキがかかったら、はいと言って引っ込むだけではだめじゃないか、そういうときの考え方を聞いておるのであります。
  94. 横山金吾

    ○横山参考人 もちろん、われわれといたしましては、政府に対しまして、われわれ業者の考え方、推進方につきましては、十分意見を述べ、増進するように努力しているつもりであります。この点、御了解願いたいと思います。
  95. 橘弘作

    ○橘参考人 見本市の問題でございますが、第一回は、品質の問題で問題が起きました。第二回目は、カタログ等の点について問題が起きているように、実際の情報はまだ来ませんが、新聞等によってそう伺っております。品質の点は、国家検査機関もいよいよ確立いたしまして、これはそこの所管すべき機種をますますふやすことによって、信用は回復されると思います。  それから、カタログの問題で、今度問題を起しておるようでありますが、これは国内で、中央機関と申しますか、そういうところで、入念に外交的な言葉その他も検討したら、ああいうようなことはなくなるだろうと思います。今後、また気をつけなければいかぬと思っております。  第三の、私どもが大手を振って中国貿易ができるようにするには、商売が先か、政治が先かというふうにも伺いましたが、いずれにしても、日本の今日の工業の規模においては、大企業会社の動きは、ただ単に商業上だけでなしに、影響力の大きいものを国として持っておると思います。これらが安心した気持で働けるような形に国内態勢がなることが、私ども第一要件でないかと考えております。
  96. 葦沢大義

    葦沢参考人 市場転換というお言葉が、先ほど横山さんからおありになった、ただいま先生からもおありになったわけですが、鉄鋼業から見ますと、中国の鉄鉱石、石炭という問題は、市場転換という言葉には該当しないのではないかと思うわけであります。と申しますのは、ただいま輸入しておる石炭四百万トン、鉄鉱石八百万トンが、五年後には大体倍になるのだという意味において、新しく必要とするものがあるわけでございまして、そういう新しく必要とするものの分野において、中国の原料も考えられるとい意味が多いわけであります。特に鉄鋼原料は、重いものを相当な距離運ぶわけでありますから、しかも、いろいろ基本的な工事の基礎をして掘り出してくるものでありますから、長期に安定した供給があるということが根本でございます。従って、お互いの信用ということが大事なわけでございますから、従来、たとえばマレー半島から取っておった鉄鉱石を一挙にやめて中国から取るという、信義を踏みはずしたような取引は、鉄鋼の原料においては、特に厳禁されておると考えておるわけでありまして、市場転換というお言葉通り意味では、中国の製鉄原料は考えなくていいのではないかというふうな考え方をいたしておるわけでございます。
  97. 田中武夫

    田中(武)委員 次に御質問しようと思っておったのですが、今、永井委員の御質問が、私がお伺いしようと思う点と同じような点でありましたので、関連して御質問いたします。私は大仲参考人にお尋ねいたしたいのですが、大仲さんは、先ほど、今後日本の業界は、欧米の肥料界と大きな競争をしなくちゃならない。しかし、幸いこちらは近距離にあるので、台湾、韓国あるいは中国等に将来大きな希望を持っておる、こういうような御意見があったと思います。そこで、先ほどの永井委員と同じような考え方が浮んでくるのですが、肥料の問題を一つ取り上げましても、あなた方が台湾と前に契約をしておられる。ところが今度中国とやるというような場合に、実は本日の四参考人の御意見を聞いておりましても、中国との貿易に大きな期待をかけておられることは、皆さんの御意見で十分わかるのです。ところが、政府は、中国と台湾との関係、あるいはそのあとにあるアメリカとの関係等を考慮してか、比較的積極的でないわけです。そこで、皆さん方が中国と積極的にやられた場合、台湾との関係等につきまして、そういった心配は出てこないかどうか、その点だけをお伺いいたします。  それから、もう一つ、ついででございますが、硫安の輸出の価格が、内需と比べて、いわゆる出血輸出といいますか、よく常識に言われておるのは、内地の農民には高い肥料を売っておって、台湾その他には安く売っておる、こういうことが言われておるのですが、中国その他との貿易における輸出の価格の点なんかは、どのようになっておりますか、お伺いいたします。
  98. 永井勝次郎

    ○永井委員 私、肥料の問題は、次にやろうと思っておったのですが、それに関連して、一緒に大仲さんにお伺いいたします。実は三十二肥料年度で四十万トン中共と契約ができたといいますが、この四十万トンは、三十二肥料年度では、輸出能力がないので、出せないわけです。それは御承知通りであります。そうすると、これを三十三年度に繰り越すわけですが、三十三年度では、さらに硫安百万トンあるいは尿素七十万トン、ですか六十万トン、こういうふうに大量に出る、こういうわけであります。ことし五十数万トンを出血輸出するということにいたしますと、輸出会社で三十数億の赤字がここに蓄積されるわけです。来年も同様な形で輸出いたしますと、まあ好転する見込みはないのですからそういう形が出ると思うのです。そういたしますと、来年度においては、少くも六十億以上の赤字が輸出会社に蓄積される。三十二、三十三両年度合計いたしますと、百億に近い赤字が蓄積される。この赤字の決済の始末はどうしているかというと、貸したが取れないということで、単に貸しにして決済をする。百億の赤字をメーカーが持ち込んで、そうしてゆうゆうと輸出をどんどんやっていく、こういうのは、先の見通しをどういうふうにお立てになっておるのか。先ほどの参考人お話では、この赤字は何とかしてくれというような言葉裏があったと思うのですが、何とかするということは、まだ未確定なんですが、何とかしてくれというどこかの予約でもあって、この百億の赤字をどんどんやっていくというお考えなのか。それからそういうような、数量的に価格的に、国内への圧迫がないかどうか。数量と価格の面からちょうど田中君との関連で、大仲さんから答弁をいただきます。
  99. 大仲斎太郎

    ○大仲参考人 中共と契約するについて、他に関係がありはしないか。たとえば、台湾とどうであるかというようなお話がありましたのですが、そういうことは絶対ありません。むろん台湾とは、年度契約を始めてから、五カ年にもなります。ですから、これをどこかに、たとえば政治的に反目している中共に、かりに売ったとしたら、変な気持になるのではないかと言いますけれども、これは理論的にいって、日本側がこしらえたものを全部台湾で買ってくれるということであって、なおかつそれを売らずに中国へ売るというような場合には、あるいは感情問題が起るかと思いますが、われわれは中共にも台湾にも、欲する数量を全部契約しておるのでございますから、そういう点はないと思います。また価格の点においては、これは大事な取引をやっていただいておる台湾であり、今後にも大へんな期待をかけており、御厄介をかけなければならない中共でありますから、これとこれとの間に差を設けるということは絶対ありません。われわれは、この前、先に台湾に売ったのであります。あとから中国との契約をしたのでありますが、はっきり台湾にこうやっているのだから、ぜひそれで買ってもらいたいということは、打ち明けてやっております。しかし、それをなかなか買ってくれないというような形にもなりますので、買ってくれなければ、やはりそれだけのものは台湾にも引いてやらなければなるまいと思います。バナナや何かのたたき売りとは違うのでありますから、これは私としては同じ値段で、そんなわずかな差別はつけません。できることならば、これは同じ時期においてやれば、非常にスムーズにいけると思います。あまり日にちがたつと、相場の関係もありましょう。その点は、あとから世界的の相場が上って高く契約できれば、これはいいですけれども、それが逆にいった場合には、やはり何とかして、どっちがあとで結ばれても、そのような工合にしてやらなければならないと思いますが、そういう点は少しもないと思います。  それから、永井先生からお話しの問題は、四十万トンやったが、そのワクはないのではないかというお話、これは審議会でも御説明申し上げたと存じますが、これは歴年の十二月までの間でございますから、本肥料年度のワクを全部使ったわけではないので、来肥料年度にもわたることでございますから、数量の上において圧迫することはありません。これは何べんも口をすっぱくして言っていることであり、また永井先生も御承知通り国内優先であって、国内を圧迫するようなことは絶対にありません。われわれは、その見通しをつけてやっておるのであります。そういうことはありません。  それから、赤字を転嫁するのではないか、こういう問題ですが、これは御承知通りに、その赤字の累積は、各メーカーは、あなたのおっしゃる通りに不良貸付みたいな売掛金として残っておる。私のところは買掛金として残って、やはり赤字として蓄積しておるのであります。問題は、来年もまたそのようにいくのではないかということでありますが、そこはさっきも申し上げたように、これは何とかしなければならない。理論的にいって、次から次へと大きな莫大な赤字をやっていける道理がないのですから、そこの限界点があろうと思います。しかし、商売というものは、そう悲観ばかりしたものではないのではありませんか。世界的にどう向いてくるということもありましょう。だから、その点は、安易な考えは持っていないけれども、しかし、国際競争が非常に激烈であるから、ことしは、もうこれはきまった値段であるから、累計して二十七、八億から三十億近い赤字を背負わなければならないけれども、これをどうするということは、今われわれは考えておりません。しかし、こういうものを金融に切迫せられて、いつまでも持っておるということは、なかなか再生産に非常に悪影響を及ぼすので、何とかこの金融がつかないものかということについて、考慮というか、どうしたらよいかということを考えております。もしもこれに長期的の、金利の安いものでも貸していただければ、何とかして年賦償還の長いのでもやっていかなければならない。それから、そのうちに商売として利益があれば、消していきたいと思います。それから先の問題ですが、これは今のような状態であったら、メーカーとしてとてもやっていけない、どうしたらいいかということになれば、やっぱりこれはもう一ぺん五カ年計画というものでも立てて、原料ガスの転換だとかいろいろなことも、あらゆる方面から検討して、やれるかやれないかということは検討しなければなるまいと存じます。それについても商機を逸するというか、商売にはチャンスがあるのであります。今度なども、このぐらいに安く売らなければならない。台湾にも安く売る、中共にも安く売ったのですが、それは、一つには、欧米からの朝鮮に対する非常に安い入札があって、それが土台になっていったのでありますが、何といっても金融に圧迫を受けて、暮に至って四十万トンから五十万トンの在庫を抱えて売り先はないということになれば、何とかしてこれは売らなければならないということで、非常に追い詰められて値段を安く売らなければならないようになったのであります。これは輸出先も、また国内でも、すべてその需要時期が同じで、秋から暮れにかけては需要がないために、どうしても買ってくれない。買ってくれないと、在庫の圧迫を受ける。それから売るときには、一月ごろから四、五月までに一ぺんに売れてしまうというように、施肥の状態が世界的に同じようで、非常にアンバランスになるのであります。これなども、何とかして金融でその辺を持ちこたえることができれば、こうまでもわれわれは追い詰められずにいったんじゃないかということも考えられる。その辺も一つ、これからどうしたら金融がつくかということも考えなければならないと思います。あくまでも赤字国内に転嫁しないというので、それじゃどう考えると今永井先生におっしゃられても、私も、これならいいじゃないかというような妙案はありません。従って、一生懸命になって、今各会社が、特別にこの対策を講じている最中でございます。今はそれだけのことで御了承を願いたいと存じます。
  100. 田中武夫

    田中(武)委員 大仲さんから、ただいま台湾と中国との価格の問題についてはお伺いしたのですが、国内の価格との関係を、もう少し明確に教えていただきたいと思います。  それから、きょうはまだ大臣が見えておりませんが、通商局長が見えておるので、ちょっとお伺いというか、希望しておきたいのです。今、大仲さんが、台湾には何ら関係がないと明確に言われたことを、お聞きになったと思います。だのに政府は、中国貿易になると、台湾とかあるいはアメリカとか、その他の自由諸国の関係等を考慮してか、いつもよろめいておるというのが実情であります。今日いかにこれら参考人の方々が、中国貿易について、将来大きな期待を持たれたとしても、まず第四次協定の締結が大事であります。ところが、これは指紋の問題等については、法の改正とかいろいろの話し合い等もあったようですが、代表団の中国訪問を前にして、まだ民間代表団の資格の問題がはっきりしないというような状態であるわけです。こういうようなことについて、もし通商局長の御感想があれば、承わりたいと思います。
  101. 大仲斎太郎

    ○大仲参考人 内地との価格の差の問題でありますが、御承知通り内地のマル公というものは、ドルに直して五十六ドル九十三セント八、これが私がメーカーから買う値段であります。これは買うときには、通産省並びに農林省に、この値段でこれだけ買いたいから御承諾を得たいという願書を出して、その許可に基いて買い付ける、これが私のところの原価であります。これに私のところの費用を加えて売るのでありますが、先ほど申し上げた通り、各国の競争が激しくて、ことし台湾に売ったのはでFOBで四十七ドル八十セントであります。そうすると、その差の大体九ドルくらいのものは赤字でございます。中国に対しても、五十ドル二十四セントというCSFで売ったのですから、大体において同じ値段であります。その差がいわゆる赤字になって、私のところの帳面に残っていくわけであります。
  102. 田中武夫

    田中(武)委員 結局、内地よりも安く売っておるでしょう。
  103. 大仲斎太郎

    ○大仲参考人 そうです。八、九ドルないし十ドルは安く売らなければならない、こういうことです。
  104. 松尾泰一郎

    松尾(泰)政府委員 ただいま、通産省はよろめいておるのではないかという御指摘でございますが、日中通商協定に包含されております事項は、御存じのように非常に広範でありまして、通産省だけの事柄でもないわけであります。外務省、法務省等にも関しております。従って、他省に関する問題につきましては、われわれは関心を持っておりますが、率直に申し上げまして、責任を持ってどうこうということは言えないわけでありますが、輸出入に関する限りは、先ほど御指摘がありました台湾等の配慮からよろめいておるというようなことは、全然ございまん。もし、ありましたら、御指摘願いたいと思います。
  105. 小平久雄

  106. 阿左美廣治

    ○阿左美委員 私は、簡単に一、二お伺いをいたします。  この日中貿易は、バーダー取引であって、正常の取引ではないということは、御承知通りであります。そこで、輸出を拡大せんとするならば、これは輸入を考えざるを得ないと思うのであります。そういうことから考えてみますと、こちらから輸出するものは相当たくさんある、中国において必要なものは、相当あると思いますが、わが国で必要なもので買いたいものが、どのくらいあるかということが、問題になるのではないか、こういうふうに考えます。そこで、私は、最近の中国において、生糸の生産の数量がどの程度になっておるか。聞くところによりますと、中国におきましても、非常に品種を改良して、戦前よりも非常に品もよろしい、数量も相当に増大しておる、こういうようなことを聞いております。ことに柞蚕糸は、中国の特有の繊維でございます。そういうような関係から、やはり経済は高いところから低いところへ流れるのは自然であります。品がよくて値段が安くて相当の数量があるということになりますと、今後中共からの貿易の上において、そういうようなものを国内に輸入するようなことになるのではないか、こういうふうに考えられるのであります。そういうことになりますと、現在わが国の生糸というものは、糸価安定法によりまして安定をしておりますが、これとても、現状のままでいつまでもいけるかどうかといことは、よほど考えざるを得ないと思うのでございます。そこで、この中共産の生糸とか、また枠蚕糸とかいうようなものが、わが国で輸入をせざるを得ないというようなことになりましたら、わが国の生糸界にどういうような影響があるかというようなことを、考えざるを得ないのでございます。戦前におきましては、相当そういうような実績があるのでございまして、紡績の原料あたりは、おもに中共産の繭を輸入しておった。そういう取引はあったのでございます。今後この貿易再開において、そういうようなことが行われた場合に、日本の現在の生糸界に、また繊維界に、どういうような影響があるかないかというようなことを、考えざるを得ないのでございますが、そういう点に対して、伊藤忠さんに、一つお伺いをいたしたい。伊藤忠さんは、戦前におきましても、そういう方面に対しては、相当の御経験もあることと思うのでありまして、その数量とか、現在の中共の状況について、御調査いいだきました範囲内において、おわかりになりますれば、それをお伺いいたしたいと思います。
  107. 横山金吾

    ○横山参考人 どうも専門的にわたりますと、私の所管外ですから、果して私の申し上げることが的確かどうかにつきましては、はなはだ申しわけないのでありますけれども、大体において、私どもも国内生糸を扱っております。特に、アメリカものの輸出をやっておりますが、最近欧州市場においては、非常に中共糸が出回っておる。しかも、品質においては、従前のものに比べて、非常に向上しておる。ために、日本からの欧州向けの輸出が、非常な競争相手になって、特に向うは国営貿易でありますので、価格の点においては非常な弾力性があるという点について、欧州市場においては、日本の生糸輸出は非常な脅威を感じている。しかし、まだアメリカ市場には、そんなに出てないようであります。  それから、数字につきましては、一九五六年には、生糸が六千三百九十一トン、それから柞蚕糸が千三百四十八トンという数字が出ております。それで、その後五七年、昨年は、大体一〇%見当の増産をやっているだろうという話であります。私どもとしましては、先ほど申しましたように、輸出をするためには中共生糸を買わなければいかぬという点がありましても、おそらく中共の生糸が日本市場へ輸入されるということはないだろう。これはなじみもありますし、戦後扱っておりませんし、ただ柞蚕糸につきましては、やはり多少入ってくるんじゃないか。しかし、御承知通り、内地市場は、その後合成繊維とか、ナイロンとか、そういうものが非常に発達しておりまして、そういう面に対する需要が減っておるわけでございます。そういう点について、私、個人の見解としまして、もちろん専門家でありませんけれども、そう大きな数字が入ってくることは期待できないと考えております。あまり大きな懸念は要らないのじゃないか。御承知通り、内地の繊維界は不況でありますし、各般の繊維全部相談しておりますし、しかも、合成繊維関係は、まだまだ増産の態勢にありますので、漸次嗜好の転換と申しますか、そういう点から申しましても、そういう方面に需要が移っていくのじゃないか、私はそう考えております。
  108. 阿左美廣治

    ○阿左美委員 そうありたいことと、私も考えております。そう先のことを心配する必要はない、こういうふうには一応考えますけれども、経済というものは、やはりなかなかむずかしい問題でありまして、事実、品がよくて値が安ければ、これは中共の生糸でも、国内でも買い入れなくてはならないというようなことも、場合によればあると思うのです。そういうようなことが、現在のわが国の製糸家に、また繊維産業に、いろいろな今後影響があることを考えておるわけでありまして、しかし、これも政府一つの施策にも待たなければなりません。なるべくそういうような直接の影響のないように、今後あらゆる方面において、これは研究をせざるを得ないと思うのであります。しかし、現在のわが国の生糸というものが多少ストックをしておるというようなことも、やはり欧州市場において、中国の生糸と競争しておるというようなことも、多少影響しておるのじゃないか、こういうふうにも考えられますので、こういうような問題は、単なる業者のみの考え方では解決いたさないのでありまして、これはもちろん政府のいろいろの今後の施策に待たなければならぬと思うのでありますが、とにかくこのシナ糸というものは、以前において相当わが国で使用しておったのですから、そういうような実績があるだけに、お使いいただきましたところのお店も、これはたくさんあるのでありますから、自然にもと実績をたよって、とかく行われやすいことだと思うのであります。そういうような点に対しましては、いろいろ今後の政府の施策を待つ以外にはないと思うのでありますが、現状におきましても、わが国の生糸というものに対しては、相当今後考えざるを得ない。やはり何と申しましても、化繊維に非常に圧迫を受けておるということは、これは事実でございます。しかしながら、生糸というものが国産だけによる関係上、非常に農村の経済にも関係いたしますので、これは放任するわけにはいかぬと思うのです。今後ともいろいろ皆さんの御協力をいただかなければならぬと思うのでございまして、まあ、これは心配しても、現在といたしましてはどうにもならぬじゃないか、ある程度自然にまかせる以外に方法はない、こういうふうにも考えておりますが、どうかこういう方面に対しましても、皆様の御協力を一つお願いいたしまして、私の質問を終ることにいたします。
  109. 小平久雄

    小平委員長 加藤清二君。
  110. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 時間もなんでございますから、私は簡単に、かいつまんでお尋ねしますので、答える方も一つ簡単に要点をお述べいただきたいと存じます。  その前に、私が思いますことは、きょう参考人、特に業界の代表の皆さんの御意見を聞いておりまして、うたた今昔の感にたえないのです。と申しますのは、かつては、中共貿易のことを言いますと、何やら共産党じゃないか、何やら民族が変っているのじゃないかというように言われたものでございます。しかしながら、きょうここへ残っておられまする議員の長谷川さんや帆足さんや私どもは、そのころからこのことを言い続けてきたものです。そこで、中国貿易がなかなか思うようにいかない問題点の第一点は、一体何であるかといえば、私は、それは政党でもなければ、政府でもなければ、あるいは相手国でもなくして、商社そのものにあると思うのです。第一、そのころから、本気になってこの仕事をやろうとしておった人が何人あるでしょうか。しかし、今日この言葉を聞き、きょうの御説明を聞いて、ああ変ったなあ、よくもまあ変ったものぞと思うて、私は、先ほど来、感慨無量でございました。しかし、その変り方は、まことによい変り方でございまして、私どもの志向していたところが間違いでなかったという証左を、まるで証明していただいたような気がいたしまして、非常にうれしいのでございます。しかしながら、なおかつ、中国貿易を発展させるには、その人為的障害が非常に多い。  そこで、参考人の各位にお尋ねしたいことは、まず第一点に、中国貿易を商社なり、メーカーの方々がおやりになりまして、果して相手国が思想の強要をしたためしがあるかないか。あるいは強要しなかったけれども、行っている間に共産主義によろめいてしまった店員なり、工員なりがあるかないか。  第二に、障害になる点は、過去においては、アメリカ貿易に支障があるか、いなかという問題があった。中国の貿易をいたしますると、アメリカ貿易ができなくなるとか、その他ドル地域の貿易ができなくなるとかいう憂いが、相当多くびまんしておった。そのゆえに、このことに手をつける商社がおっかなびっくりであった。こういう点が、果してあったかなかったか。答弁のいかんによっては、この点をさらに質問いたします。  次に、日本政府側の、今後貿易を伸ばすに当って、ここのところをこう直してもらいたい、ここをこうやったならばいいじゃないかという点がありましたならば一つ。たとえばチンコム、ココムもさることながら、クレジットとか、為替損失補償であるとか、先ほどお話がありました以外に、もしありましたら……。  次に、銀行に向ってLCを組みます折に、どうも中国という名前が付きますと、これが支障を来たすということを聞いておりましたが、今日は昔の夢と終ったかどうか、果してあるかないか。もしあったとするならば、ここへ大蔵省の関係者を呼んで、その原因を追及してみたいと思う次第でございます。  次に、商社それ自体が反省する必要ありやいなや。たとえば、商社が多過ぎるとか、新中国を理解しないために、見本市に台湾の国旗を立ててみたり、パンフレットにそういうものをくっつけてみたり、おのれの見つけたマツタケ山は人に知らせたくないというので、中国向けの万年筆をケニア向けだとか、モンバサ向けだとか言うて、見つけた山を人に渡さないために、いろいろあの手この手を使う。これは政府が悪いわけでもなければ、議員が悪いわけでもなければ、だれが悪いわけでもない商社それ自体が、自分一人でもうけようという欲の皮の間違いから始まっておる。こういう点について、一体将来直す余地ありやいなや。  次に、一番大事なことは、とかく商社の方に聞きますと、相手国のことはおっしゃりにくいだろうと思いますけれども、われわれが向うに渡り、今後とも協定を結ぶに当りましては、必ずしも中国側が百点満点などとは考えておりません。中国側にも、悪い点があれば、大いに直してもらわなければならぬ。特に中国の方では、貿易実務等に、しろうとの人が当っている向きがあります。新しく生れた国では、やむを得ないことでございますが、そういう問題で、日本側から考えて、中国側に、もう少しここをこう直してもらえたならば、うまくいきそうだがという点が、多々あると思います。この際、ここは日本国でございます。日本の国会でございます。なおかつ聞く方は、中国の貿易を一そう伸展させようということを、もう過去十年以来念願してきているものでございます。従いまして、ここでは御遠慮なく御発表願いたいと存ずるわけでございます。
  111. 大仲斎太郎

    ○大仲参考人 私の方は簡単ですから、先にやらせていただきます。先生、何だか非常に変ったというようなお話ですが、あるいは言い方によっては変ったかわかりませんが、今まで売れなかったときは、われわれの輸出力がないとき売れなかった。そのときあなた方から、何だか中共だから売らないとかいう邪推を、あるいはいただいたかもしれませんが、そんなことはない。われわれは、二十九年から台湾にもやっておるが、同時に中共に対しても、二十九年から五、六万トン、七万トン、十万トンというものをやってきておるのであって、決してわれわれは、硫安に対してそういうような差別はしておりません。従って、第一の、共産国になったからというて、われわれは全然そんなことは考えておりません。政治のことは全然考えておりませんで、われわれは一本立ちでやるのだから、共産化しっこないし、今でもそういうことについては、関心を持っておりません。  それから、米国との関係ですが、われわれは肥料を売るのであって、何もアメリカにどうしてもらおうということはないのです。むしろアメリカにやってもらいたいことは、朝鮮に対する運賃のトラストを解いてもらいたいくらいのことであります。  それから、第三番目には、日本政府に対する要望ですが、これも別に、ダイレクトに電信も打ち手紙も書きしているし、また向うへ行って話もしているし、こっちにも来てもらっているから、日本に対しての要望というものはありませんが、先ほど言ったように、スムーズにいくためには、ここに帆足先生もいらっしゃるが、やはり何というても輸入が必要です。その輸入をはっきりさせて、われわれの義務を遂行できるようにしてもらわなければならぬ。大豆というような、あんないいものはドルにかえられるから、それは欧州にやって、日本には乙種としてはやらないのだ、日本にはトウモロコシか何か持っていったらどうか、こういう態度はよくないと私は思います。こういうことは、私は中共に要望してもいいじゃないか。  それからLCの関係は、今でもそうですが、LCには決して差別はありません。来たLCはどんどんキャッシュに変っております。  それから、商社が反省しなければならない点があるか。商社というのは、メーカーが指定しているのをわれわれが使っているのでありますが、商社それ自身は、これはまたいろいろな関係で、中共専門の商社がやっているから、中共以外のことは考えない。何とかして中共の貿易をよくやりたい、たくさんやりたいということだけです。しかし、これに過当競争がつくのでありますが、硫安に限っては、私がかなめを握っている以上は、過当競争はさせません。今度などでも、商社は一つも入れていない。ダイレクトに、これだけ売ったんだから、お前たちはこれだけ扱ってくれと言って、私の方からお願いをしているのであるから、商社それ自身が競争するということはできないのみならず、成約に至るまで、一言半句も文句を入れさせておりません。その点御安心下さい。  あと中国に対する要望というものは、この前、こうしようじゃないか、ああしようじゃないかということは聞いていただいたから、今特に要望というものはない。ただ、今後要望したいのは、中国が年度契約を続いてやってくれるのか。やってくれないならば、一九五九年度は何トン要るのか、それを早く願いたい。よそへ売ってしまって、あとがなくなってから言うても、無理じゃないか。それには、五月にはそれをやろうじゃないか。五月にやれば、あなたのところは何トン要るということは、われわれもレザーブできるが、しかし、われわれはいつまでも待っていられない、売っていかなければならない。売っていって、あとで、ないじゃないかということでは困るということは、私は要求しました。ほかに何もお答えすることはありません。
  112. 横山金吾

    ○横山参考人 だいぶ商社に手痛い言葉をいただきました。最初の問題でございますけれども、もちろん、商社といえども日本国民であり、日本の国策の線に従ってやっておりますけれども、やはり商社の性格上、利潤の追求とか、あるいはこうした場合に、先ほどのお言葉の通り、アメリカから憎まれはしないかというような点で、中には今日まで逡巡遅疑して、中国貿易に対して積極的でなかった会社、あるいはダミー会社を使っている会社もあるが、私の方は、ちょうど三十年から伊藤忠商事という名前でやっております。  次に、第二問になりますけれども、今日まで、私の方は向うの方へ係が相当行っておりますけれども、まだ一度も思想的の強要を受けたとか、あるいは向うへ行った者が、共産思想にかぶれたというような、そういう点は全然ありません。私どもの方に関しては、全然ありません。  それから、アメリカ貿易に支障があったかなかったか。これは今のお話通りでありまして、全然ありません。これは硫安なんかは、商社としては一つもありません。この点については、これはむしろアメリカのために私は弁明したいと思うくらいであります。  それから日本政府側に対する今後の要望、これは先ほどから何度も言われたことでありまして、私は一言にして申し上げれば、もし許されるなれば——もちろん許していただきたいのですけれども、いわゆる自由国家に対すると同じ程度の輸出入条件と申しますか、そういうものを認めていただければ、輸出の面は飛躍的にやりよくなる。ただし、先ほど何度も申しました通り、輸出するには、買わなければいけない。そういう点についての金額的の限度というものは、急には大きなものは考えられない。これは漸次発展していくだろうと思います。それには、先ほど葦沢さんもおっしゃったように、鉄鋼原料とか、そういうものが、今後一番大きな相手になるのではないかと考えております。  それから銀行のクレジット、これはお話しの通り、全然ありません。私ども中国の方と取引をしておりますけれども、中国とLCを開いたために、差別待遇や注意を受けたというようなことは、一度もありません。  それから前の見本市と今度の見本市において、いろいろ問題を起しているのは、商社、問屋についても、反省をすべき点があるのじゃないか。これはお説の通りであります。しかし、私考えまするには、いわゆる中国専門商社とか——われわれこんなことを言うと、口はばったいことになりますけれども、相当中国貿易をやっているところにはそういう過失はないと思います。むしろ、この見本市を機会に中国貿易に出たい、いわゆる中国貿易の実態と申しますか、そういうものを知らぬ、見本市を一つの手がかりにして、悪い言葉でいえば利用といいますか、言い過ぎでございますけれども、それを機会に中国貿易に手をつけたいというところが、むしろそういう過失を犯すのじゃないか、そう考えております。もちろん、これはそれを指導していた方にも多少の責任はあると考えます。しかし、見本市当局者は、やはり今後慎重に行動しなければいけない。これについては、前の即売問題、今度のカタログ問題なんかについても、相当業界において取り上げて、今後の対策とかそういうものを具体的に検討しておりますから、それは今後の業者の自粛と申しますか、自省と申しますか、自覚に待つほかはないと考えております。それには、国内の中国貿易に対する協調と申しますか、取引秩序という面からも、考えなければいけない問題だと考えております。  それから、中国に対する注文ということでありますが、戦前は、私は中国におったのでありますけれども、戦後は一度も行っておりませんから、わかりませんけれども、行った者の話に聞けば、やはり向うは、公団貿易と申しますか、日本では昔の形でいえば、いわゆる商売人のない——こっちから行きます者は商売人になりますので、はだが合わないと申しますか、いわゆる取引技術とか、そういう面について、わからないという点がありますので、多少ちぐはぐと申しますか、やりにくい点は相当あると思います。しかし、相互がよく理解し合って、教えてやるとか、あるいは向うの人を招き、こっちも行く。要するに、今度の四次協定の結果、どうなるか知りませんけれども、今後相互に往復を重ねまして、そういう機会を多く作ってよく理解し合うということ、向うも貿易を希望しておりますし、われわれもそう希望しておるのですから、この点については相反する点はないので、お互いが話し合っていけば、漸次これは解決していけると思います。
  113. 帆足計

    ○帆足委員 関連して。ただいま加藤君からの質問関連しまして、また加藤君からも質問があるそうですから、私は一、二の問題を申し上げ、一、二の問題を残しましてあとで質問します。  今度の第四次協定ができますと、残った問題は、結局、きわめて具体的に、長期計画と市場転換という問題になると思います。ここまで問題が具体化してきましたのは、御同慶の至りですが、先ほど加藤君の指摘しましたように、日本の実業界のこの問題に対する見通しは、必ずしも私は聡明ではなかったと思うのです。しかし、業界としては、実際の仕事を引き受けておるのですから、先走るわけにもいかないでしょうけれども、だからといって、風にそよぐアシでは困ると思うのです。やはり一定の見識と見通しを、今後は持っていただきたいということを痛感して、私も多少感慨新たなものを本日感じて、貿易問題よりも、皆さんにお目にかかると、人生を思わざるを得ないという状況でございます。  そこで、さっそくお尋ねいたしますが、今度長期計画ということになりますと、これは、一つは横山さんにお尋ねし、通商局長もおいでになっておりますから、お尋ねしたいのですが、先方では、輸入する商品は、豊作、凶作の問題もありますけれども、大豆、米、それから石炭、鉄鉱石、塩、クリンカー、ホタル石、粘土等は、長期計画に繰り入れて相談してもいい。輸出品については、各種の肥料、人絹、スフ、鋼材、機械類等を、長期計画の中に入れて話し合いたいと言っておりますから、協定が済みましたら、私は今までのようなアトランダムな使節ではなくて、これらの十品目ばかりについて、よく理解し、長期の見通しと資料を持っておる経済使節団を中国から招待いたしまして、第二次五カ年計画とにらみ合せて、均衡のとれた総合的な懇談会でも東京で持ったらどうであろうかと思っております。まずこのことについて、横山さんと通商局長にお尋ねしたい。  第二には、今後の貿易の特色は、各種機械の輸出のみならず、開発への協力並びにプラント輸出の問題が引き続いて起ってきて、これは大へん望ましいことだと思います。従いまして、このためには、延べ払い——クレジットと言うと大ぎょうでありますが、そういう意味でなくて、延べ払いということが必要になって参りますので、輸出入銀行を、中国貿易に対しても活用するようにしてもらいたい。これについて、業界はどういう希望を持っておられるか、また通商局長は、大体そういう方向に進む御意図があるかどうか。同じ問題は、為替の損失補償問題にも連関するわけでございますから、この問題については、業界はどのように御不自由であるか、また通商局長はどうお考えであるか。  それからもう一つは、大仲さんから、硫安に関する限りは、大へんよく歩調を合せて進んでおる。商社にはその統一した方針を授けてやっておるというお話を伺いまして、それはけっこうなことだと思いますけれども、鉄鋼連盟の方にもお尋ねしたいし、また横山さんの御意見も伺いたいのですが、過当競争ということはよくないと思うのです。しかし、他面において、ある特定の商社がメーカーさんと相通じて、これを独占しようとすることは、これも私は公正の原理からいって、まずいと思う。  窓口一本化の問題につきましては、窓口の調整をする必要があるということは、衆目の一致しているところですが、ソ連との交渉のときに、非常に重大な問題がありまして、そのために、二週間ぐらい会談が停滞したことは御承知通りでありますが、中国側の意見日本側の意見が、それぞれどのようなものであるかということは、しばしば商工委員会で論議の的になりまして、衆目の批判を浴びておる問題でございますから、鋼材の輸出にいたしましても、鉄鉱石、石炭の輸入にいたしましても、これはメーカー及び行政官庁と調整をはかって、公正な統一ある態度で臨むことが必要でありますけれども、その商社をどうするかということについては、中国の市場に理解があり、中国側からも理解され、日本のメーカーさんからも理解され、あるいは実績がある等、各種のことを勘案して、おのずから公正にきめるべきであって、ことさらに一社独占のような形にして中国側の怒りをかって、そのためにまた論議を紛糾させるというような従来のやり方は、私は公正でないと思うのです。こういうことは、私も長い間経済界におりましたが、業界の良識によって、おのずから秩序がそこに生まれるものでございますから、これまで商工委員会で論難されたようなむだを繰り返さないように、中国と従来の交渉の速記録などを、あらかじめよく目を通されておくことが、業界の皆様として必要ではあるまいか。その他のことはあとで御質問いたしますので、今の四点につきまして、業者の方並びに通商局長からお答えを願いたい。
  114. 横山金吾

    ○横山参考人 第一問の、長期計画でございますけれども、これは、もちろん業界といたしましては、安定な貿易をするいわゆる長期計画のもとにおいても、ごく望ましいことと思います。しかし、実際問題として考えますれば、もちろん、物によりますけれども、価格が非常に動いておる。これには、何か基準を持たせまして、スライデングさせるという方法もありますけれども、そういう方法解決できれば、ある商品については、長期契約というものは好ましいと考えます。これに、一番問題のありますのは、向うから輸入しますものは、塩なんかはいいのでございますけれども、大豆とか米とかいうものは、いわゆる豊凶の問題がありますので、そういう点につきましての見通しについて、相当の制約面が出るんじゃないかと考えております。しかし、鉄鋼原料とか、それに対する見返り輸出の鉄鋼というものに関しましては、先ほど葦沢参考人お話のように、一部分でございますし、しかも、原料を輸入して製品を出すのでございますので、この点は、ある程度可能だと考えております、それにつきましては、お説の通り、向うから使節を呼ぶなり、あるいはこちらから出るなり、もちろんこちらから今度おいでになりました鉄鋼使節団も、おそらくそんな話が出ているのではないかと私は考えますけれども、もちろんこれに対しては、当局の理解ある御支援が必要だと私は考えております。こっちから行く、向うから来ることに対しては私は大賛成でございます。  それから第二の、プラントとか、開発資材の輸出につきましては、長期金融が必要である。それについては、輸出入銀行の利用ができるようにしたいとか、あるいは輸出損失補償の適用を受けたい。これは、私が先ほど申しました自由国家の輸出に対する優遇策と申しますか、それと同じような程度のことが与えられれば、われわれとしては非常に幸いである。それによって、中国貿易は、輸出面において非常に促進される。これは、もちろん問題がないと思います。先ほど橘さんからも、そういうようなお話が出ていると考えております。  それから窓口一本化の問題でございます。これは先ほど申しました取引秩序が必要である、いわゆる過当競争を防ぐ、日本の商社の外地における信用維持という面から見ましても、ぜひ取引秩序が必要であると考えております。これも、もちろん商品によって、それぞれ行き方が違いまして、今の肥料とか、そういうようなものは、現在でも、輸出の面につきましては、一本化されております。ただ、その指定商社をどうするかという問題でございます。輸入の面におきましても、たとえば鉄鉱石を入れるとか、石炭を入れるにつきましては、日本需要家がどこを使うか、必ずしもこれは中国側の指定する商社とこちらの需要家が指定する商社とは、一致していない場合があると私は考えております。現にそういうような問題が起っております。しかし、これは国内措置として、十分調整できるのじゃないか。問題は、その業者がお互いに自主的によく協調し合う、話し合うという点で、私は解決つくと考えております。現に私なんかのところでも、ある種の商品につきましては、内地のメーカーからは指定を受けておりませんけれども、向うからの指定商社に対して、私のところは国内取引としてそこへ売っております。そういうような点でも、これは解決できる問題であって、必ずしも向うの指定する商社が直結いたしまして、日本需要家の指定する、あるいは輸出メーカーの指定する商社にならなければならないということは、私はそこまで考えなくともよいと考えております。これは話し合いの上で、もちろんこれは商売で、みなリストを持っているものでありますから、実情に応じ、業界業界に応じて解決すべき問題だと考えますが、やはり根本は業者の協調態勢、これは、少くとも大宗的な商品については協議会とか、懇話会とか、懇談会とかいうような形において、運営されることが望ましくないかと考えております。これは今度通産省でお考えになっております貿易商社の規制法案の中にも、十分その精神は織り込まれておると考えております。
  115. 松尾泰一郎

    松尾(泰)政府委員 まず第一点、長期契約の問題でございますが、私としましては、民間側で輸出あるいは輸入について、長期契約をやられるということについては、何ら異議はございません。しかしながら、長期契約をすることになりますと、先ほど葦沢さんなり大仲さんからもお話がありましたように、やはり業界が一本になって向うと交渉なさるということが必要になってくるのではないか。それはひいては、先ほど御指摘のありました過当競争の防止というか、窓口一本化といいますか、そういうことにも関係してくるわけでありまして、そういうような観点から、もちろん商品にもよりますが、業界でそういう協調態勢のもとに長期の契約をやられることについては、われわれは、どっちかというと、望ましいと思っているくらいであります。しかしながら、輸入物資につきましては、すぐそれを政府において保証しろ、今の日中貿易協定におきましても、そういうふうな条項があったかと思うのでありますが、保証ということになりますと、御存じのように今の外貨予算は六カ月ごとに編成しておるというような関係から、形式的に非常にむずかしい問題であるわけです。しかしながら大体半年なり年間にどの程度の輸入があるか、あるいは輸入しなければならぬかということは、業界でもよくわかっておるはずであります。ですから、そういう数字を勘案して、業界が自主的にやっておられるということでありますならば、われわれは外貨予算の編成の場合、あるいは輸入許可の現実的な処理に当って、できるだけそれを尊重し、それができるように援助することにはやぶさかでないわけでございますが、すぐ長期契約によりまして、特に輸入の長期契約につきまして、政府にこれをギャランティせよと言われますと、実はできるような建前になっておらぬことを御了解願いたいと思うのであります。  それから機械類等の輸出の場合の延べ払いの問題、延べ払いということになりますと、どうしても輸出入銀行が関与をしなければならぬ問題が関連して起るわけでありますが、これにつきましては、対中共ということではなしに、現在のこういう機械類等の国際的な競争場裏にあって、日本の現在の許可基準というものが若干シヴィアではないか、これを若干緩和をしたいという方向で、今、大蔵当局との話し合いをしておるような状況でありまして、これは特に中共をどうこうというわけではない、全般的な問題でございます。その全般的な問題のうちにおきまして、われわれとしては、中共も含めて大蔵当局と話し合いをしておるような次第でありますが、何分御存じの通りのような国交の状態になっておる、従って債権確保をする法的な手段が実はないというふうな、いろいろなむずかしい問題があるわけであります。従いまして、現在のやり方としましては、第三国の有力な銀行が、支払いを保証してくれるというふうな条件でありまするならば、何も中共だからといって、実はむずかしいというほどのことはないのじゃないかというふうに考えているような状況であります。ここら辺につきましては、なお深く研究をいたさなければならぬかと思いますが、為替損失補償の問題につきましても、延べ払いの条件をどうするかという点とあわせて関連する問題であります。延べ払いをどうするか、その場合に輸出入銀行がどういうタッチをするか。その場合は、どうせポンドの取引でありますので、為替損失補償でカバーするかどうか、これは名目は違うのでありますが、同じ性質のものでありますので、われわれは一括して考えているような次第でございます。  それから、過当競争の問題につきましても、これは先生方御存じのように、昨年の本国会におきまして、輸出入取引法の改正のときに、対中共貿易というか、対共産圏貿易につきましても、取引秩序の問題については、慎重にやれというような附帯決議をつけられておりますので、われわれは非常に慎重にやっておるわけであります。ただ、率直に申しまして、やはり過当競争がないかというと、向うは一本であり、こちらは不特定多数であるという関係で、当然過当競争の問題は、ないとはいえぬと私は思うのであります。ただ、抽象的に窓口の一元化といいましても、実際問題として、業界の利害関係も非常にむずかしい。そこで、先ほども肥料あるいは鉄鋼等で御説明いたしましたように、業界が一丸になって、向うといろいろな取引をされるようになりますならば、おのずから過当競争の問題は解決していくわけであります。先ほど横山さんからもお話がありましたが、われわれとしては、ここで形式的な窓口一元化というよりは、物資別にその実情に沿うた処置をするのが、一番賢明ではないかというふうに考えている次第でございますが、なお当委員会の附帯決議の次第もありまして、慎重を期していきたいと思っております。
  116. 帆足計

    ○帆足委員 今の横山さんの御答弁の趣旨なら、私はわかると思う。局長も附帯決議の趣旨を重んじていただきたい。  それから、ただいまの長期契約のことは、今の国際情勢の変動の激しいときに、仮契約ということは困難だと思うのです。従って、仮契約というよりは、長期契約について話し合って、そして実情に応じた程度の見通しの約束をしておくということに方程式をきめておくことになるのであろうと思います。この前、新聞で見ますと、民間協定にかわって、今後は貿易省と商工省ならある程度まで抽象的な話し合いの協定はできるということが出ておりましたが、これは外務省とは、話し合いで通商局長として何か案がおありですか。
  117. 松尾泰一郎

    松尾(泰)政府委員 長期契約の問題につきましては、まだ外務省と話し合いをいたしておりませんし、役所がこれを表面に立ってやるという考え方も、今いたしておりません。先ほど来申しておりますように、やはり業界が自主的にやっていただく問題じゃないか、こう考えております。
  118. 長谷川四郎

    ○長谷川(四)委員 関連して。  先ほどの話で、通商局長一つ聞いてみたいと思うのだけれども、乙類物資のトーマス残を処理するために、外貨予算の面でどのような対策を持っているかということが一つ。もう一つは、北京に開く通産省の代表部に対して三十二年度、三十三年度合せて六百万円ずつの補助金を出しているのだが、これをどのように使っておられるかということ。それからもう一つ、三十三年度の中共貿易の見通し、第四次貿易協定の調印が、たとえば片道三千五百万ポンドの達成ができるかどうか。またその第四次協定の内容政府は完全に支持するお考えがあるかどうか。これだけを、協定に関連して、局長についでに御意見を聞いておきたいと思います。
  119. 松尾泰一郎

    松尾(泰)政府委員 ただいま御指摘のように、現在までのところトーマス残、それから逆トーマス残も若干あるわけであります。これにつきましては、やはりわれわれとしては、今後の商売を円滑に続けるという以上は、何とかしなければいかぬわけであります。今のところ、トーマス残をどう処理するかという問題よりは、われわれとしましては、三十三年度における輸出の目標を達成いたしますために、いかなる輸入をいたすべきか。またその輸入の仕方を、これは、先ほど来、市場転換というような言葉で、いろいろ御議論がありましたが、率直に言いまして、非常にむずかしい問題であります。大豆にしましても、米にしましても、従来より以上に買いませんと、この目標達成はできないわけであります。そこで、われわれといたしましては、各物資別に実情を当りまして、できるだけその輸入の額をふやすように、今、一部措置し、また研究をいたしておるのであります。ところが、率直に申しまして、今、数字をどの程度にするかということは、一応案は私ども持っておりますが、しかし、こういう公開の席上でそれを申し上げることは、やはり商売は売りと買いの問題でありまして、これだけ売る、これだけ買うということをはっきり申し上げることに、非常にまずいことでありますし、それは控えさしていただきますが、政府といたしましては、この事情について、業界にもできるだけ御協力を願いまして、従来の輸入量以上にふやしたいというふうに考えております。その方式につきましても、いろいろの考え方はできるわけでありますが、やはり商売の実態を、あまりむちゃに行政措置によって曲げるわけにもいきませんので、要は、中共側にも、価格の点、品質の点でいろいろ勉強願う、日本側の業界におきましても、しんぼうできるものはしんぼうしていただき、できるだけ中共から輸入をふやすということで、努力を願いますならば、かなりのところまで目標は達成できるという確信を持っておるのであります。これは物資別に御議論申し上げることは、若干差しつかえがございますので、控えさしていただきます。  それから、協定に関する問題でございますが、三団体におかれていろいろやられました協定でありますので、私は個人的に見まするならば、ここはこうしてもらった方がよかったとか、これはちょっとどうかと思うというふうなところもございますが、これは協定の再交渉を前にしまして意見を申し上げることは、遠慮さしていただいた方がいいじゃないかと思っております。全般的に申しまして、早く協定が締結されますことをお願いをしているような次第であります。
  120. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 時間もございませんし、まだ質問が同僚議員に残っているようですから、大急ぎでやります。  要は、中共貿易をこいねがう声は、全国に充満しているのですが、それを実際動かすものといえば、やはりここへお集まりの業界のエキスパートの方かと、きょうおそくまで熱心に聞いている議員たちで、大ていのことができると思う。そこで、今度は葦沢さんに、政府答弁でなしに、あなたは業界の代表におなりになったのだから、業界の代表者として、うそ隠しのない答弁一つお願いしたいと思うのです。今後の中共貿易は、どうしたら伸びるか。こういうことになりますと、二つにしぼれると思う。一つは、先ほど来言われております市場転換の問題であり、一つは、長期のトレードプランをはっきり打ち立てる、こういうことにしぼれると思うのです。そこで、葦沢さんの方が一番やりやすい立場にいらっしゃる。なぜかならば、私の方は市場転換ではございません、私の方は市場はプラス・アルフアで、新しく市場開拓をするのです。こういう話ですが、そうなると、市場転換から来るところのじゃまものというか、うしろ髪を引かれるということがないわけですから、あなたのところが一番やりやすい。そこで、あなたのところは、長期計画をどうお立てになるか、こういう問題についてお尋ねいたします。いわば、日本側は売りたいと言う、彼は買いたいと言う、それがなかなかうまくできない。その一つの原因がスポット買いである。先ほど、どなたかおっしゃったのは、ごもっともである。メーカー側にとってみれば、コンスタントに買ってくれてこそ、初めて計画も立つわけだ。ところが、スポット、スポットだから、先ほど肥料の方もおっしゃったように、ストックしておかなければならぬ。費用もかかれば、倉庫料もかかる。そういうことになると、ついついそんなめんどうくさいことはやめておきましょうということになる。そこで、あなたの方で、もし長期計画が立っているとするならば、その計画の内訳をお漏らし願いたいのでございます。ただいまのように数量を聞こうなどとは考えておりませんが、ただ長期に——その長期が半年であるか一年であるか、それはまた別として、ほんとうに長期に計画が立てられるかどうか、それが一点。  次に、窓口一本化の問題でございますが、伝え聞くところによりますと、鉄鋼業界では、原料や鋼材の思惑買いや投げ売り等をやられては困るので、対中国の取扱い商社を一本にしぼる、こういう声が聞えております。いろいろな対外関係から、業界みずから前面に出ることを避けて、しぼった後において、特定の商社を窓口として一本化しよう、こういう計画があると聞いておりますが、これに対して、中国側では、窓口一本化はけっこうだが、直接の原料の需要者、直接の鋼材の供給者である鉄鋼業界みずからが窓口とならなければ、なったと同じ効果の保証をしてもらいたい、こういうように言うておるようでございます。そこで、これに対して、私の伝え聞くところが、うそであるのか、社会党の政務調査会における調査が間違っているのか、ないしは、もし違っているなら、違っているでもけっこうですが、ほんとうであるとするならば、一体その計画がどのくらいで、その窓口がいつごろできるのか、具体策をお漏らし願いたい。需給の関係を直接相談し合って、年間協定さえ行えれば、中国側の主張も、よしんばのんだとしても、日本に害はあるまいし、それでもって鋼材が多く売れれば、かえって日本にとっては利益ではないか、こう思われるわけでございます。あくまで、日本の業界の利益擁護の立場に立ってお尋ねしておるのでございますから、一つ、そのおつもりで、業界を代表してどうぞ。
  121. 葦沢大義

    葦沢参考人 お役所をやめまして、業界代表というようなことになったのでありますが、どうも勉強しておりますが、まだ気分は抜け切れないで、十五年間のしみがやはりついているのでありますが、御答弁は、ほんとうに飾りなく率直に申し上げます。  中共だけの長期計画ということは、これはなかなかむずかしい問題でありまして、やはり基本になるのは、鉄鋼需給の長期計画というものが確定をし、それが世界経済の波動によってあまり変更を食わないような組織が立たないと、ほんとうの長期計画というものはできないと思うわけです。従いまして、政府がお示しになっております企画庁の五カ年計画を、現在、業界でも、一つの目標といたしておるわけでございます。その目標のもとに、先ほど来申し上げましたように、現在手配いたしております。原料計画では不足でございますので、中国の原料も、その不足を埋めるという意味において考えられるわけでありますが、しからば、具体的にどういうふうに長期計画するかということは、これは今交渉に行っております使節団が、向うでいろいろ話しましたものをベースにいたしまして、今後考えるという段階でございまして、業界として、明確に、長期計画としてかくかくのものというような想定というものは、今のところ持っておりません。  それから、商社の一本化という点についての御指摘がございましたが、いろいろうわさもあるようであります。私も、事実商売にはタッチをいたしておらないのでありますが、これは、先ほど来お話がありましたように、やはりおのずから公正と良識を基礎にしました両者の話し合いということで、適正な規模という考え方は、おそらく使節団の一行も、頭に置いていることだと思いますし、また業界としても、そういう基本的なベースに基いて考えているだろうと思うわけでありまして、商社一本化というような非常に強い摩擦刺激のある問題を、そう簡単に割り切っているのではないというふうに私は考えております。
  122. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 伝え聞くところによりますと、石炭の輸入は啓明一社でなければいかぬとか、それでは工合が悪いからということから、また一つ一つできた。できたけれども子会社であった。何か自分の見つけたマツタケ山は、あくまで自分のところで確保しなければ工合が悪いというような考え方が、もし行われたとするならば、世界貿易市場において、常に日本が不利をこうむっているところの、わが社でなければならぬというあの考え方、ドイツあたりと比較しまして先ほどドイツの機械の輸出状況が御説明にあったのですけれども、あれなどは、わが社の機械でなくても、他の社の機械でも注文を受けたら、ちゃんと世話をするだけの雅量を持って、商社なりあるいは在外公館の商務官などが、そのような態度に出ている。それに反して、日本の貿易があまり伸びない一つの原因としては、わが社でなければならぬという問題と、値段がしょっちゅう変ってくるという問題があるのです。そういうことを、あなたは官僚であったから、よく御存じのはずです。そこで、私はわざとそこを聞いているのです。あなたのように、今までの欠陥をよく御承知になって、業界に入って、専務理事としてリーダー・シップをとっていらっしゃるのだから、今度は、鉄鋼というものはうまくいくと承知しておったのです。にもかかわらず、聞くところによると、どうもそれが期待にはずれそうなので、まことに遺憾なことだ、何とかならぬかとお尋ねしているのだから、そのつもりでどうぞお願いいたします。
  123. 葦沢大義

    葦沢参考人 まことに御説かたじけなく拝聴するわけでございますが、商社問題に対する実際の仕事をやっておりません関係上、私の聞き及んでいる範囲と、また業界の気持をお伝えしているわけでございまして、御指摘のような点から出てきます弊害につきましては、むろんそういういたずらな弊害摩擦というものは、当事者は考えていないということを再度申し上げまして、御了承を得たいと存じます。
  124. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 最後にお尋ねしますが、もう一つ、輸出のネックになっているものは、検査機構だと思います。そこで、先ほど阿左美委員からも御質問がございましたように、今日、繊維業界は、非常に不況でございます。この不況を打開する一つの方送としては、輸出振興ということがございますが、繊維の輸出の振興に当りまして、特に中国は非常によい市場だと思われるわけでございます。ところが、この市場へ輸出されますものが、どういうもののあやまちか、書けない万年筆が出てみたり、穴のあいた雨がっぱが出たり、あるいは新品でありながら虫の食った毛織物が出てきたり、こういうことで、中国のみならず、他の国の貿易にも悪影響を及ぼしていると思うわけでございます。そこで、本委員会において、この間違いをはっきり、それこそスポット的なものであった、決してコンスタントなものではないということを明らかにすることは、やがて、中国のみならず、他の国への輸出にも、大きな好影響を及ぼすことだと思いますればこそ、特に、これは輸出をされました直接の関係者及び検査機構を握っていらっしゃる通商局長にお尋ねしたいと思うわけでございます。特にこのたびの中国の毛織物の輸出のクレームは、相当大きいように聞いている。そのクレームの結果は、三十一年度の輸出は総体二十四億程度も伸びていたのに、三十二年度においては、ほとんど毛織物が伸びていないと聞いているわけです。そこで、そういうことが事実どういうことであったのか、この際はっきりして——責任の所在を問うておるのではございません。そういうことはほんの偶発的なものであったのか、そういうことが継続的に行われることであるのかという点を、明瞭にしていただきたいと思うわけでございます。特に、聞くところによりますと、へその虫の出場所は、巻きしんの中から出てきたという話です。特にこの木と木の間から出てきたというから大へんなんです。木の皮と木のはだの間から出てきて虫が食ったというのです。そうなりますとこれは製造工程におけるあやまちでもない、巻きしんだけが悪い、こういうことなんです。こんなことで大きなクレームをつけられるということは、どえらい損害です。こう思うわけでございますが、真相を明らかにすると同時に、この際、それが及ぼしておる悪影響を払拭したい、こう思えばこそ、お尋ねするわけでございます。
  125. 横山金吾

    ○横山参考人 私、その担当商社でございますけれども、そういう専門的な御質問が出るということも予期しませんで、研究しなかったのです。うわさは聞いておりました。幸いここに尾州毛織の青井専務がおられまして、この方が毛織物のクレームについての解決委員の団長として向うへ渡られまして、その問題のみならず、中国の繊維全般の問題について、非常に広範囲な研究をして帰って、ちょうどここにおいでになりますので、もしお許し願えましたら、青井さんから御説明願ったらどうかと思います。
  126. 小平久雄

    小平委員長 ただいまお聞きの通り事情ですから、この際青井昭佳君を参考人として、同君より説明を聴取したいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  127. 小平久雄

    小平委員長 それでは御説明願います。
  128. 青井昭佳

    ○青井参考人 それでは、御指名によりまして、御質問の一九五六年、五七年におきます日本から中国向けに出しました毛織物のクレームの原因、結果ということにつきまして、私が羊毛生産団体と消費者団体を代表いたしまして、団長として昨年二回現地へ参りまして折衝いたして参りました結果から、解決いたしました結論を、御報告申し上げたいと思います。  原因は、まず第一番に、先ほどもどなたかのお話がございましたように、日中間の商品に対する相互理解の不足ということが第一番ではなかったか、かように考えておるわけであります。このクレームの対象項目は、専門的に申しますと、洋服の生地の縮み工合が縮み過ぎる、あるいは根付が軽過ぎる、あるいは打ち込み本数が足らない、あるいは強力が足らない、この四項目が、今度のクレームの対象でございまして、一番クレームのうちの対象の多かった項目は、いわゆる生地の縮み工合が非常に縮む、こういう問題があったわけでございます。その他は、数字上の問題でございますので、足らないものは足らない、これで解決は、足らない方は負け、こういうことでございます。ただ、問題になりましたのは、収縮率の問題、いわゆる縮みの問題で、これは日本と中国の検査基準の相違から来ておるものだと、かように考えております。従いまして、日本の指定検査機関の者も連れて参りまして、現地で技術交流あるいは技術討議いたしましたが、はっきりいたしましたことは、相互にいわゆる試験検査の標準が違う、こういうことが結論として契約を保証いたしましたものの数字と違うということで、若干最終的には話し合いまして、結論をつけたわけでございます。従いまして、試験検査の標準の相違ということにつきましては、私、帰って参りまして、御関係の筋にも御申達を申し上げておきましたが、いわゆる羊毛製品の世界的技術水準から見まして、ある程度日本の検査標準その他が、中国の現在やっております標準と相違いたしておる。中国が、最近の新しい世界の技術を取り入れました標準のものを作っておるところに、若干の相違がある、こういうことが認められたわけでございます。大体御答えの要点は、以上であります。
  129. 松尾泰一郎

    松尾(泰)政府委員 今、青井さんから御説明の通りでございまして、要するにクレームの起りました最大の原因は、日本と中国側におきます検査標準の相違、すなわち収縮率の検査方法の相違から参っておるものであります。従いまして、われわれ役所といたしましては、現在の検査基準が、世界的な観点から見て、古くさいということでありますれば、これは一刻も早く決定をし直さなければならぬかと思うのでありますが、率直に申しまして、クレームの起った原因は、業界がおやりになりました契約の不備というか、契約中に検査方法を明記されておれば、こういう問題は起らなかったのじゃないかと思うわけであります。われわれも、今後この検査の標準については、なお研究いたしますが、今後の中共向けの輸出につきましては、業界におかれましても、契約の中に、そういう紛議の起らぬように、はっきり検査方法を明記を願いたい、こういうことを特に要望申し上げておきます。
  130. 帆足計

    ○帆足委員 きょうの委員会におきまして、私ども、いろいろ業界から有益な御意見を拝聴いたしまして、結局第四次貿易協定ができました暁には、これは長期計画——長期契約というよりも、むしろ長期計画について、十分な相互理解を深めることが必要であるという御意見を承わりまして、またそのために、総合的に非常によく洗練された適切な経済使節の適時交換が必要である、これについては、政府当局も異議ないということを承わり、かつ不当競争、過当競争はよくないけれども、同時に、一社だけが強引に、加藤君の言うマツタケ刈りの独占というようなことはよろしくない、これは業界の自然の公正なる秩序にゆだねるべきである、それを尊重すべきであるというようなことも承わり、さらに政府当局におきましては、業界の要望をいれて、為替の損失補償とか、あるいは輸出入銀行の活用等について、真剣な研究と熱意を持たれておるということを承わりましたが、私は、これらのことは、しごくごもっともであって、政府としても、さらに積極的態度をとって、本日のこのせっかくの機会において表明された合理的な意見に対して、この意見を尊重して、その実施に努められることを要望する次第であります。  最後にお尋ねいたしたいことの一、二は、繊維の輸出につきまして、中国の綿花が、だんだん増産されて参りますから、その綿花の一部を日本に買いまして、日本から人造繊維を中国に輸出して相互に混紡する、お互いの原料を適時適切にまぜるというようなことも、もう研究の余地があるのじゃないかと思いまして、私も中国の李新農君にこの話をいたしましたら、これは特に研究の必要があるということで、幾つもこういう構想を相互に研究すれば、貿易はもっと円滑に好転するであろうということを伺いました。従いまして、この点について、どなたか専門の方に一、二伺いたいのであります。  それと同時に、機械の代表の方に伺いたいのですが、チンコムは解除されましたがココムは残っております。その残っておりますココムのリストを見ますと、私ども、しろうとにはよくわからないのですが、特にこういうものは、人工衛星の時代にはばかばかしいではないかというような五、六の例を、この席上でお聞かせいただければ仕合せです。あるいは、まだ十分な例がございませんければ、機械業界としても、今まではチンコム撤廃一本できたのですが、もうココムを緩和し解除すべきときが来ておるように思います。これは、人工衛星を見るなら、だれしもが痛感することであろうと思いますので、さらに適当なときに、業界でお作りになった資料もいただきたいと思います。これにつきまして、一つ答弁を……。
  131. 横山金吾

    ○横山参考人 ただいまお話しの、第一問の繊維の関係でございますが、御承知通り、中国の綿花は、最近非常に増産されております。しかも、戦前の日本の指導によって、品種は全部改善されまして、大体米綿匹敵、中には中国綿花一本で六十番手まで紡げる綿花が出ております。しかし、中国自体の綿花の需給は、国内の紡績業の発展に伴いまして、まだ不足のようであります。相当量を輸入しております。そういった面におきまして、今後綿花が増産されましても、日本への輸出余力というものは、ないようには一応考えられますけれども、今御説の通り、中国において、いわゆるスフを入れ、あるいは今後、日本で発展します合成繊維のフアイバーを入れるとか、そうして混紡する。しかも、日本と違いまして、中国においては、われわれの経験からいえば、スフというものは、むしろ綿花以上に民衆にアッピールしておるものであります。そういう点におかれまして、もし両者間で話し合いで、綿花とスフとのバーター、綿花を輸入して、そのかわりにスフを出して、向うは混紡し、もしくはスフ一本の糸を引いて向うの需給を充足するという点は、十分考えられると私は考えております。そういう点について、私ども、機会があれば、そういう方面を推進したい。もちろん、それにつきましては、スフ混紡に適する紡機とか、あるいはスフ専門、合成繊維専門の紡機とか、そういうものにつきまして技術指導が伴いますれば、必ずしも遠い将来でなくとも、近い将来に、ある程度のいわゆるスフとのバーターで、綿花は日本が入れるということについては、私は可能性があると考えておる次第であります。
  132. 橘弘作

    ○橘参考人 御質問に対して、沿うようなことになりますかどうか存じませんが、ちょうど今、三十二年度の重機械並びに軽機械輸出会議の業界の要望が、輸出目標に対してついております。簡単でございますから、それを朗読したいと思います。  造船部門につきましては、わが国の造船業に対する中国並びにソ連の新船建造要請は切なるものがあるが、これらの国に対する船舶輸出は大幅の制限があり、また通商協定の未締結その他の事情によって輸出の実現には大きな不便がある。今後の造船業にとっては、右地域への輸出もまたきわめて重要なものとなっているので、これら制約を解除または大幅緩和し諸協定を締結することを望む。こうなっております。  鉄道車両につきましては、全面的な輸出制限解除を希望する。  産業機械と電気通信機械におきましては、ココムの緩和を要望する。  自動車におきましては、禁輸品目の解除と通商活動制限の緩和を希望する。  光学機械におきましては、金属顕微鏡の禁輸解除をしてほしい。  最後に、自転車は、総合バーダー方式の採用をしてもらいたい。  これは中国等に対する貿易の三十三年度の機械の総量を、第一次案では三千四百万ドルほどでありましたが、自転車その他は、スポット買いで非常にひどい目にあったので大修正をいたしました。修正後は千八百二十二万ドルというときの業界の機種別の要望でございます。
  133. 小平久雄

    小平委員長 ほかに質疑もないようでありますから、本日はこの程度にとどめます。  参考人各位には、長時間にわたり、種々御意見をお述べいただき、本委員会調査に多大の参考になりましたことを、厚く御礼申し上げます。  次会は明二十日午前十時より開会することとし、これにて散会いたします。     午後四時二十九分散会