○大仲
参考人 私は、硫安輸出
会社の大仲であります。硫安の輸出の件につきまして、商工
委員会委員の皆々様よりは、平素格別の御配慮をいただき、この機会に厚く御礼申し上げます。本日は、
小平委員長より、
日中貿易促進のための化学肥料界の
意見を、
参考人として申し上げるよう御
指名を受けて参上いたした次第であります。
日中貿易に関しましては、化学肥料界も、他の業界と同様に、促進をはからなければならないのは、今さら申し上げるに及ばないのでありまして、昨年の昭和三十一年秋に、
日本側より化学肥料関係の六団体が中国に代表団を出しまして、中国進出口公司と交渉をいたしました結果、尿素五万キロトン、過燐酸石灰十七万キロトン、塩安三千五百キロトン、溶成燐肥千キロトンの契約を結んだのであります。硫安につきましては、価格の点で折り合いがつかず、遺憾ながら契約するに至りませんでしたが、その後、昨年四月に硫安三万一千五百キロトン成約し、輸出も無事済みました。これが日中間に大量の契約を結ぶ発端となったのでありまして、きわめて有意義であったのであります。
次いで昨年は、
日本側より先方を招待いたしまして、関係各方面の御助力をいただいた結果、昨年十二月の初めに、先方から中国進出口公司の鮑良才副経理以下六名の代表が参り、
日本側も代表を出しまして、種々折衝を重ねました結果、押し迫りまして十二月三十一日の真夜中に至って、ようやく硫安四十万キロトン、尿素三万五千キロトン、過燐酸石灰二万キロトン、塩安三万五千キロトン、溶成燐肥三百キロトン、石炭窒素二百五十キロトンの大量の契約に調印することができたのであります。
翻って、昨年の暮れにおける
日本の肥料界の
情勢を見ますと、硫安を初め各肥料とも輸出不振でありまして、積極的に何とか輸出の打開をはからなければならない
情勢でありました際でもあり、また、日中貿易の今後の発展のためにも、この大量の調印はまことに慶賀すべきことであったのであります。
御
承知のことではありますが、中国は、人口の数の上から見ても、また耕地面積の関係から見ましても、今後の窒素肥料の需要は二千万キロトンに達するといわれ、無限に伸びるといっても過言ではないのであります。一方その生産は、昭和二十七年には十九万四千キロトンでありましたが、その後、第一次五カ年計画で、約七十八万キロトンの目標を達成し、さらに第二次五カ年計画では、三百万キロトンあるいは七百万キロトンを目標としているといわれているのでありますが、かりに、これが計画
通りに達成されたといたしましても、今後なお膨大な数量を外国より輸入いたさねばならぬのであります。
一方、世界の窒素肥料の需給の
状態は、英国の権威ある筋の発表によりますと、一九五八—五九
年度におきまして、供給不足の地域も加味いたしまして、全世界で六十九万キロトン、硫安に換算して三百四十五万キロトンの超過となりますが、特に欧州では百十四万キロトン、硫安に換算して五百七十万キロトンという驚くべき超過となる推定となるのでありますので、欧州各国は、一様に中国に対してマーケットを求め、莫大な超過分のはけ口といたさんと、あらゆる努力を払っている次第であります。
日本におきましても、来
年度は、硫安で百万キロトン、尿素その他のア系で七十万キロトンに近い輸出をいたさねばならぬ
状態であり、明後三十四
年度はさらに増加して、生産の半数以上は輸出に向けねばならぬ
状態であり、肥料は安全なる輸出商品の性格を帯びて参ったのであります。従って、今後は、欧米と激烈な競争をいたさねばならぬのでありますが、
日本の強みは、何としても中国を初め台湾、韓国等、きわめて近い距離のところに、大きな消費市場を控えている点であります。台湾に対しては、昭和二十八年以来毎年供給契約を結んでおりますが、消費数量は、ほぼ限界点に達しており、韓国も、今後は著しい増加を期待し得ないのみならず、国際入札による買付でありますので、必ずしも安定した市場とは言い得ないのであります。
以上の観点から見ますと、中国は、
日本の化学肥料にとって、最も有望なる安定した市場であると言い得るのであります。従いまして、化学肥料界といたしましては、日中貿易の円滑な促進に対して、非常な関心を払っているのでありますが、この機会に、化学肥料に
関連したお願いの二、三を、申し述べさせていただきたいと存じます。
その第一は、いわゆるトーマス残の処理についてであります。申し上げるまでもなく、日中貿易は、
日本の輸入先行を
原則といたしておるのでありますが、肥料に関しては、
日本が先に輸出する、すなわち輸出先行でありまして、その肥料の輸出代金に見合う金額だけの商品を、LC到着後九カ月間に、あとから
日本が中国より輸入するという
約束になっているのでありまして、その金額、これはトーマス残と私どもは称しているのでありますが、従来の残している残高約二百八十八万ポンドと、さらにこのたびの大量の契約分を合計いたしますと約千三百万ポンドとなるのであります。今後、日中貿易を促進するためには、まずこの千三百万ポンドに近い商品を、中国より輸入せねばならぬのでありますが、私どもは肥料の輸出業者であり、肥料以外の商品を輸入するわけにはいかないのでありまして、このために、各商社でも、輸入に種々努力をいたしておるのでありますが、たとえば、米であるとか、塩であるとか、中国より大量に輸入する商品は、中国以外からもまた輸入し得るのでありますが、
政府当局におかれましては、中国よりの輸入の割当について、その金額、
方法、時期等において、優先的に考慮していただき、私どもの輸出した金額に見合う輸入の
約束を履行できるよう、促進していただきたいのであります。
次に、ただいま申し上げましたトーマス残の処理にも関係するのでありますが、日中貿易におきましては、相互バーターの
原則に基きまして、輸出あるいは輸入する商品を甲、乙、丙、の三つのワクに分類いたしまして、そのワク内にてバーターをする、いわゆる類別バーターの
原則をとっておりますことは、皆様御
承知の
通りでありますが、現在、肥料は乙類でありまして、一方輸入品として乙類の中にあるのは米、塩のほかには、あまり大量に輸入し得るものは比較的少いのであります。今後、中国向け肥料の輸出を促進するためには、ぜひともこの分類の範囲を
調整して、肥料を甲類に入れていただくか、大豆を乙類に入れていただきたいのであります。もちろん第四次協定案では、甲、乙の二分類となり、乙類の範囲が拡大されたのでありますが、大豆が、なお肥料とは別ワクの甲類でありますので、今後もなお
調整を重ねていただくか、できることならば、総合バーダーとしていただくことが必要と存じます。
お願いの第三の点は、必ずしも日中貿易のみの問題ではないのでありますが、中国は、現在ポンド貨によって代金を決済することになっているのでありますが、御
承知の
通り、先般
政府がポンド為替自由化の
措置をとりまして以来、ポンドの先行きはきわめて不安なのであります。しかも、中国より今後なお一千万ポンドに近い支払いを受けるのでありますが、ポンド為替が、かりに一%の下落がありましても、その
影響はきわめて大きいのであります。このポンド為替下落による損失を補う
制度としては、現在為替損失補償法がありますが、これはプラントの場合に限り、肥料については、適用されていないのであります。従いまして、私たちといたしましては、為替銀行との間に為替予約の契約を結ぶ以外に、
方法が残されていないのでありますが、この
方法も六カ月の先までの契約しかできないので、その先についてはリスクを踏まねばならぬのであります。もちろん、これは、単に中国のみに限ったことではなく、インドなどのポンド地域向けの場合にも同様でありますが、中国については、前に申し上げましたように、金額が非常に大きいので、特にこの必要を痛感いたす次第であります。
実は、私は、硫安の輸出のみの業務に携わっておるのでありますが、ただいまお願いいたしました三点は、いずれも化学肥料の各業界とも、希望いたしておるところでありまして、先日、
小平委員長より御
指名の御連絡をいただきましたので、さっそく過燐酸石灰その他各肥料の関係者よりも、念のため内々に
意見を聞きましたところが、私がただいまお願いいたしました三点は、いずれも同
意見であるように
了解いたしましたので、この点もお含みおきの上、何分の御助力をお願いいたす次第であります。
なお、この機会に申し上げたいことは、今
年度の輸出価格は、非常に低い価格で契約せざるを得なかった次第でありますが、今後の国際価格も、おそらく同様ではないかと思われます。欧州でも、
日本の競争相手である西ドイツ、ベルギー、オランダ、イタリア等各国とも、
国内価格は六十ドルに近いにもかかわらず、韓国等の入札を見ましても、三十八ドルに近い価格で応札している実情であります。
国内と輸出の価格差は著しいのでありますが、アメリカの副産でも、工場渡し価格は、おそらくばらで三十五ドル前後と思います。包装及び船積みまでの運賃諸掛りを加算いたしますと五十五ドルくらいとなっているはずでありますが、これも四十一ドルないし高くても四十八ドルで輸出している次第でありまして、これらは、みな
政策値段で、輸出に関し特別の
措置が講ぜられているのじゃないかと存じます。
日本での
国内の公定価格は、現在約五十七ドルについております。今後、欧米と国際マーケットにおいて競争いたしますためには、十ドル前後の
赤字を覚悟せねばならぬので、この
対策のため、業界でも全力をあげてただいま
検討中であります。いずれ成案を得ますれば、各方面の御助力を得なければならぬと存じますので、その節は何分よろしくお願いいたします。
本日は、日中貿易の促進に関して、化学肥料界の
意見を申し上げる機会を与えて下さいましたことを厚く御礼申し上げまして、私の陳述を終ります。