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1958-02-12 第28回国会 衆議院 商工委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年二月十二日(水曜日)     午前十時四十二分開議  出席委員    委員長 小平 久雄君    理事 阿左美廣治君 理事 笹本 一雄君    理事 島村 一郎君 理事 長谷川四郎君    理事 加藤 清二君 理事 松平 忠久君       有馬 英治君    大倉 三郎君       川野 芳滿君    菅  太郎君       櫻内 義雄君    佐々木秀世君       田中 彰治君    中垣 國男君       横井 太郎君    佐竹 新市君       田中 武夫君    田中 利勝君       中崎  敏君    帆足  計君       水谷長三郎君    八木  昇君  出席国務大臣         通商産業大臣  前尾繁三郎君  出席政府委員         公正取引委員会         委員長     横田 正俊君         総理府事務官         (公正取引委員         会事務局長)  坂根 哲夫君         総理府事務官         (自治庁税務局         長)      奧野 誠亮君         経済企画政務次         官       鹿野 彦吉君         総理府事務官         (経済企画庁総         合計画局長)  大來佐武郎君         厚生事務官         (社会局長)  安田  巖君         通商産業政務次         官       小笠 公韶君         通商産業事務官         (大臣官房長) 齋藤 正年君         通商産業事務官         (企業局長)  松尾 金藏君         通商産業事務官         (繊維局長)  小室 恒夫君         中小企業庁長官 川上 為治君  委員外出席者         厚生事務官         (社会局生活課         長)      加藤 威二君         専  門  員 越田 清七君     ————————————— 二月十一日  金属洋食器に対する米国の輸入制限等に関する  請願野田卯一紹介)(第七九四号)  小売市場規制法制定に関する請願横井太郎君  紹介)(第八一九号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  通商産業基本施策に関する件  日本経済総合的基本施策に関する件  私的独占禁止及び公正取引に関する件      ————◇—————
  2. 小平久雄

    小平委員長 これより会議を開きます。  前会に引き続き、通商産業基本施策並びに私的独占禁止及び公正取引等に関し質疑を続行いたします。  田中武夫君。
  3. 田中武夫

    田中(武)委員 昨日に引き続きまして、質問を継続いたしたいと思います。  きのう独占禁止法審議会に、消費者団体、あるいは中小企業者団体、あるいはそれらの代表農民団体代表等は入っていないじゃないか、こういうようにお尋ねしたところ、大臣村瀬商工中金理事長中小企業代表である、楠見農林中金理事長農民団体代表だ、こういった御答弁をされたのですが、全くもって噴飯ものであり、詭弁もはなはだしいと思います。  そこで、お尋ねいたしたいのですが、独禁法の第一条には、この法律目的が明示せられてあります。長いからあとの方だけ続みます。ずっと書いてきまして、「以て、一般消費者利益確保するとともに、国民経済の民主的で健全な発達を促進することを目的とする。」こう独禁法目的がはっきりと明示せられておるのであります。まず独禁法目的としているところは消費者利益確保でございます。この消費者利益確保目的とする独禁法審議会に、何がゆえに消費者団体代表をお入れにならなかったのか、もう一度重ねてお伺いいたします。
  4. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 昨日申しましたように、独禁法というのは、非常にむずかしい法律であります。それらについての法律的な知識をお持ちの方でないと、なかなかわかりにくいというような点もあります。それで、大学の先生にしましても、第三者というべきかもわかりませんが、消費者立場に立って十分考えていただける人たちというふうに考えておるのであります。この法律目的も、十分御承知のことだと思います。また、もちろん中小企業代表者あるいは消費者代表者、それらの方々意見も、審議過程においていろいろ聞かれたわけであります。その意見も反映しての結論が出ておるものと私考えております。
  5. 田中武夫

    田中(武)委員 大臣は、今この審議会審議過程において、消費者とかあるいは中小企業その他の人の意見を反映せられてそれに沿った結論が出て  いる、こういうように言われたのでございます。そこで、まずお伺いしたいと思うのですが、委員選任基準は、どういうところに置いて選任せられたのか。また、先ほどのように、それらの人々の意見が反映せられているということであるなら、独禁法審議会審議経過並びにその内容公開せられる用意があるか。それをお伺いいたしまして、なお、これは政府委員でもけっこうですが、審議会経過及びその審議内容を御説明願いたいと思います。
  6. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 この審議会委員立場といいますか、どういう基準によったかと申しますと、稲葉氏は国民経済研究所理事長というような意味であります。それから今里氏は経済同友会の方であります。植村甲午郎氏は、経団連の立場であります。岡松成太郎氏は日本商工会議所専務理事でありまして、中小企業につきましては、専門的といいますか、特にそういうような仕事もやっておられます。太田垣氏は関西の経済連合会会長でございます。小島氏は、日本鉄鋼連盟会長であります。楠見さんは農林中金、渋沢さんは国際電信関係しておられますが、非常に幅の広い視野に立った人であります。杉さんは大阪商工会議所の会頭であります。それから、御承知のように鈴木さんは東京大学の先生であります。高宮さんは一橋大学先生であります。土屋さんな朝日新聞の論説委員をやっておられます。中山伊知郎さんも一橋大学先生であります。原安三郎さんは、日本化学工業協会会長村瀬さんは、昨日も申したように商工中金理事長でありますが、中小企業に非常に関係の深い方であります。  審議内容過程につきましては政府委員から補足して説明いたさせます。
  7. 松尾金藏

    松尾(金)政府委員 独禁法審議会の発足いたしましたのは、昨年の十月でございますが、実は独禁法の問題につきましては、その以前におきましても、この独禁法の元締めでございます公正取引委員会においても、前々からこの独禁法の施行の経過等にかんがみて、独禁法改正の問題について研究をしていただいておったわけであります。また通産省におきましても、その以前二年近くの間、この問題につきまして、いろいろ問題点あるいは問題点内容等についても検討をして、公取と公式あるいは非公式にそのための研究討議の会合の機会を何回も積み重ねてきたのであります。そういう従来の検討の成果を、今度の独禁法審議会にもその材料を提供いたしまして、審議会審議をしていただいたのでありますが、独禁法審議会は、御承知のように、昨年中におきまして七回ほど開催されました。そこで、独占禁止法制度の問題、あるいは海外の独占禁止法の構成、あるいは従来公取独禁法運用して参りました実情、あるいは独禁法関係で、カルテルその他実際上経済的な問題について、どういう点が問題になるのかという点も、公取あるいは関係省からよく御説明をいたしまして、審議会審議をしていただいたのであります。そのようにして、昨年七回ほど審議会が開かれ、本年に入りまして実質論議に入って二回、さらに、その後起草段階に入りました。起草段階では御承知のように、稻葉委員村瀬委員とそれから鈴木委員起草の中心になられまして、ここでも何回か公式、非公式に論議をして、答申起草をまとめられたのであります。その結果、先般今月初めに最後の審議会を開いて、答申段階にきたのでありますが、その経過の途中におきましても、御承知のように関係方面公聴会式参考人意見を、これは御承知と思いますが、中小企業代表といたしましては、全国中小企業等協同組合中央会専務理事の稲川氏、それから消費者代表といたしましては全国消費者団体連合会長の中林さん、その他それぞれの産業部門等からも数人の参考人意見を聴取し、さらにそれ以外に、全体として各方面関係団体、これは産業界商業界貿易界金融界中小企業界消費者団体農林業団体その他各方面団体約六十九団体につきまして、それぞれ詳細な意見の提出を求めました。その意見等審議会で披露をし、十分検討して得た結果が、先ほど申し上げました今月初めの答申にまとめられたのであります。大体の審議経過はそのようであります。
  8. 田中武夫

    田中(武)委員 先ほど大臣は十五名の委員について、だれそれは何々である、こういったようないわゆるその人の職業ないしその人の所属団体等をあげられた。聞いておりますと、やはり経済同友会とかあるいは商工会議所へもちろん商工会議所には中小企業関係の人も会員ではありましょうが、大阪とか東京とかいう大都会の商工会議所の実際の指導をとっている人がどういう人であるかということは、言うを待たないのであります。こう見て参りました場合、やはり経済団体が多いと思うわけであります。そこで、私がお伺いしておるのは、だれがどういうところに所属しておる、こういうことではなく、委員を十五名選ばれるに当っての選任基準、これをどういうようにお考えになっておるのか、お伺いいたしておるのでありますから、従って、これを一つ言っていただきたいと思います。
  9. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 ただいま申し上げましたことでおわかりだと思いますが、経済団体それから商工会議所あるいは農業団体、また学者なり新聞関係方々、そういうところの代表と思われ、またこの問題に理解の深い人というようなことが、選任基準になっておるわけでありまして、ただいま申し上げたようなことで、大体おわかり願えるだろうと思います。
  10. 田中武夫

    田中(武)委員 どうも私にはわからないのです。しかしこのことをいつまで言っておっても仕方がないと思いますので、やめたいと思いますけれども岸内閣は、ことに保守党内閣は、何かやろうとすれば、調査会だとか審議会、こういうものを作って、委員選任するのに、むしろ政府の思うような意見に賛成するような人ばかりを選んで委員にしておる。そうしておいて答申をさせて、これは何々審議会あるいは調査会答申でございます、しかも、その答申内容全部を網羅することなく、政府の都合のいいところだけを取り上げて、答申でございます、こう言うことによって法律改正したいということが、従来の例でございます。いうならば、にせの民主主義と申しますか、偽の民主主義的な方向によって、こういう改正をやることの一つの根拠とする、いわば、政府はそれらの審議会あるいは調査会の隠れみのに隠れて法を改正するというようなことが、今まで多かった。大臣が、今回の委員のメンバーをどのように言われようとも、村瀬さんが中小企業代表であり、楠見さんが耕作農民代表であるとは考えられません。しかし、これをこれ以上申しても、結局水かけ論になると思いますが、私は大臣がいかに答弁せられても、これらの代表は入っていない、こういうようにはっきりと言い切ることができると思います。  それから、松尾局長ですが、公開する用意があるか、私はこうお伺いいたしましたのですが、議事録とか、そういうものは公開せられましたでしょうかどうでしょうか。  もう一つは六十何団体とかの代表意見を聞いた、こういうことで、その参考人の中には、なるほど中小企業とか生活協同組合の代表の人もあったようです。そうであるならば、それらの参考人意見が、どのように答申案に反映しておるのか、そういう点を一つ教えていただきたいと思います。答申案内容についてはこれからぼつぼつと一つずつ尋ねたいと思いますが、答申案のどの点に、消費者代表意見が盛られておるのか、お伺いしたいと思います。
  11. 松尾金藏

    松尾(金)政府委員 審議会は実は御承知のように、内閣に設けられました審議会で、私からその内容を先ほど申しましたのは、私も、その審議会に幹事として出席しておりましたので、大体の経過を御説明したのでありますが、審議会のどの委員がどういう発言で、どうされたというようなことは、それを公開されないのが普通の扱いになっておると思います。これは私から直接にお答えできる立場でございませんので、また内閣の方に別途私からお話をいたしますが、普通の場合、公開しないのが常識だろうと思います。それから、今御指摘のございました消費者代表なり何なりの意見が、どのように反映しておるかという点は、これはまあ審議会答申について、私ども立場なりにそういう見方をするという判断の問題になると思いますけれども答申の中でも、御承知のように、カルテル等共同行為につきましては、やはりそれに伴う弊害がありそうな場合については、もちろん厳重に認可制その他で、その内容を十分に検討をした上でなければ、カルテル等共同行為ができないという、最終的な認可でしぼることを一応原則といたしてございますが、またこれを実際に法文に書きます際に、どういう表現にするかは別といたしまして、答申内容におきましても、それぞれ共同行為のできる場合を、目的あるいはその行為内容等について、厳重に制限しておるというようなところで、やはりカルテル行為その他につきましてはそれに伴う弊害を十分除去し得るような体制に答申案はなっておると思います。しかし、全体から申しまして、やはりカルテル行為カルテルにつきましては、ある程度緩和方向を打ち出しておるのでありますが、しかし、ただいまの答申案内容におきましても、不公正な取引方法取締りにつきましては、さらに厳正な運用をするように、不公正な取引方法取締り強化という意味で、いわゆる弊害の除去についての方向を強く打ち出しております。また、そのために、独禁法運用をされます公正取引委員会におきまして、そのような不公正な取引方法取締り強化というような意味合いも含みまして、公取機構人員を拡充整備することが必要であるというように、全体にこういう配慮がしてある、私どもはそのように解釈いたしております。
  12. 田中武夫

    田中(武)委員 審議会経過あるいは審議内容公開については、局長では答弁できぬ。それじゃ、大臣ならどうでしょう。
  13. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 これは内閣関係ですから、私の現在の立場としては、相談しないと、何とも申し上げられません。
  14. 田中武夫

    田中(武)委員 内閣関係だ。だが、大臣は閣僚の一人であります。従って、経済基本法であり、経済の憲法ともいわれる独禁法改正に当っての、それを答申した審議会議事録内容といいますか、そういうものは、当然一般に知らしむべきではなかろうかと思います。それじゃ、ここで答弁できなかったら、大臣閣議公開するように提案をし、閣議の決議をそういうように持ち込むだけの用意がおありでしょうか、いかがでしょうか。
  15. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 私は私個人の考えとしましても、こういう審議会内容公開すべきものかどうかについて、疑問を持っております。従来の例等考えまして、検討はいたしてみますが、おそらく、従来はそういうことを公開してないと思います。
  16. 加藤清二

    加藤(清)委員 関連して。ただいまの大臣答弁は異なことを聞いたものだと思います。この審議会に限って、秘密保持ということが原則となっているのか、審議会というのは全部がそうなのか、大臣いかがでございますか。
  17. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 この審議に限らず、ほかの審議会も、大体それが原則になっていると思います。
  18. 加藤清二

    加藤(清)委員 それでは承わりますが、当委員会関係のございます肥料審議会、全国民関係のある米価審議会等々の審議につきましては、新聞記者もこれに参加することができまして、そのつど報道をいたしておられるようでございますが、この方法は誤まった行き方でございますか。
  19. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 誤まっているとか、誤まらぬとかいう問題ではないと思うのでありまして、どの委員がどういう発言をしたかということまではっきりさせるべき審議会と、そうでない審議会とあると思います。
  20. 加藤清二

    加藤(清)委員 それでは米価審議会とこの独禁法に関するところの審議会とはどう性質が違うのですか。法律上、どこにそれが明記されておるか、はっきりさせていただきたい。
  21. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 米価審議会とか肥料審議会につきましては国会議員も入っておられ、国会にかわるというわけでもないでしょうが、そういう意味合いで、公開されるのは自然ではないかと思います。しかし、そういう審議会とは多少違う。
  22. 田中武夫

    田中(武)委員 大臣が、これは自分の権限では言えないが、公開する方がいいと思うから、内閣において公開するように、わしから言って、その方向に持っていきたいということなら、私はこの点についての質問を次に移ります。だが、今の御答弁によると、大臣はこれを公開することに対して若干の疑義がある、こういうふうに言っておられますので、なお伺いますが、どういう点に疑義があるのですか。最も国民経済基本となるような独禁法改正です。先ほど私が読み上げましたように、独禁法の第一条においても、そのことが明記せられております。そういった日本経済の運営に関して基本となるようなものの改正に当っての審議会内容を、なぜ公開できないか、なぜ公開したら悪いか、その点をもっと明確に御答弁願います。
  23. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 この審議会の意思として、すでにこういう結論が発表されております。その過程におきまして、どういう委員がどういう発言をされたということは必ずしも必要はない。よた、おそらくこの審議会委員も、それについては公開をされることを好んでおられないのではないかというふうに考えます。
  24. 田中武夫

    田中(武)委員 私はだれがこういうことを言ったとか、議事録全部の公開が望ましいと思います。私は審議方向、あるいは先ほど五十何団体代表参考意見を聞いたというが、それらの人たちがどういった意見を述べたか、そういうことを知りたいと思います。そこで、委員長にお願いをしておきますが、こういう問題について答弁できるのは官房長官が総理か知りませんけれども、これを本委員会に呼んでいただきたいと思います。  それから、松尾局長にお伺いいたしますが、消費者団体あるいは中小企業団体代表意見を聞いた。その中には独禁法はむしろ強化すべきである、現状でもなお足りないのだ、こういったような、いわゆる答申案とはまっこう反対の意見を述べられたものはなかったかどうか、お伺いいたします。
  25. 松尾金藏

    松尾(金)政府委員 関係方面意見として、審議会でいろいろと討議されました意見の概要を簡単に申し上げますと、産業団体あるいは金融関係団体あるいは貿易関係団体というような方面からの意見が、独禁法の存在は戦後の復興期においては、戦中戦後の統制経済の悪影響を打破し、自由競争を発展させ、経済民主化に寄与したけれども、現在においてはむしろ過当競争防止の障害となっているきらいがある。経済の変動を必要以上に大きくし、産業基盤育成強化輸出伸張の面にも、少からず影響を及ぼしているばかりでなく、業者自主的協調精神の涵養を妨げているというようなことをあげて、むしろ独禁法の大幅な緩和を強く要望するような意見が出ております。これに対しまして、消費者団体側、それから中小企業団体、あるいは農林関係団体等からは独禁法はこれまで消費者中小企業等について有形無形利益を与えてきている。独禁法改正するというのはそのような立場からは不利なことになるおそれがあるので、緩和すべきではないというような意見も出ております。そのような双方意見が、審議会で問題といいますか、論議のべースになりまして、先ほど申しましたような答申にまとまったわけであります。
  26. 田中武夫

    田中(武)委員 大臣、今、局長双方意見を述べました。その後段の意見に耳をかしていただきたいと思います。声なき消費者の声を十分聞いていただきたい、このように思うわけです。これはあとでまたお伺いいたしますが、この改正案が、果して出されるのかどうかわかりませんが、もし、そういうようなことがある場合におきましてはこの審議会における委員、あるいはそのときに参考人として出てきた人を、参考人としてまた呼んでいただくような機会も、委員長にお願いしておきたいと思います。  そこで、次に移りたいと思いますが、松尾局長が今言われたように、少くとも独禁法緩和すべきではない、こういう意見中小企業者消費者農林団体代表から出されたことは確かでございます。だが、答申案内容は、総じて緩和でございます。カルテル強化あるいはその条件の緩和、こういうことになっております。こういうことによって改正案が出されるかどうかわかりませんが、改正せられたときには当然消費者利益が侵されると思います。そうするならば、大臣消費者利益はどのようにして守っていこうと考えておられますか、お伺いいたします。
  27. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 答申案具体化ということは、なかなかむずかしいのであります、抽象的に答申が出ておりますから。しかし、独禁法根本趣旨である一般消費者に迷惑をかけるということは極力避けなければなりませんし、絶対といってもいいくらいだと思います。ただ問題は消費者にも迷惑をかけないし——かけるとおっしゃるかもしれませんが。不当に消費者が、業者は倒れてもいいのだ、それらを犠牲にしても、消費者さえ安ければいいのだというふうには考えておりません。この答申案を見ますと、先ほど企業局長が申しましたように、大幅な改正ではなしに、極力しぼって、そうして、どうしても国家全体の利益という立場から立つと、この程度はやむを得ない、またそれが、当然だというふうに考えられておりますし、また不公正な取引方法につきましては強化しようというようなことにもなっておりますので、両方の、大幅な改正意見と、それから改正してはいかぬという意見の調整が十分行われておるのではないか。もちろんこれを具体化するに当りましてはこの精神は貫いて、あくまで中小企業者なりあるいは消費者に迷惑のかからぬようにということは十分な配慮を持っていかなければならぬと思います。
  28. 小平久雄

    小平委員長 田中君にちょっと申し上げます。予算委員会が始まって、通産大臣にぜひ出席しろ、こういうことだそうですから、通産大臣に対する質疑は後日またしていただくことにして、公取委員長や、またあなたが、御要求の厚生省の社会局長等も見えておりますから……。
  29. 田中武夫

    田中(武)委員 それではもうちょっと、これだけ聞いてまたあとで……。  大臣は今、大体この程度はやむを得ないだろう、こういうようにおっしゃった。大体から、政府がこのようにしたいと思うことに賛成するような人ばかりを集めて、審議さして答申させたから、政府の思うような答申になるのは当り前だと思うのです。こういう点について、なお委員の任命その他に、大きな問題があったと思いますが、何回も繰り返しておりますから申しませんが、独禁法目的は、最初申しましたように、第一条にはっきり書いてある。消費者利益確保、これが第一だと思うのです。もちろん、物さえ安ければ業者その他がいかに困ってもよい、こう言っているのではありません。だが、独禁法の性格というか、目的精神それ自体は、消費者利益確保であるということだけは十分考えておいていただきたいと思います。  なお、たくさんあるのですけれども予算委員会関係があるそうですから、もう一つだけお伺いして次に進みたいと思います。独禁法審議会ができるとき、独禁法に対して根本的な検討をするのだ、こういうように言われておった。ところが、先ほど松尾局長の御答弁にもありましたが、この独禁法審議会が発足したのは、昨年十月四日です。そうして、わずか四カ月の間審議をやって、三十三年二月には答申を出さしめる。こういった期間的制限を設けて、四カ月の間に、経済の憲法ともいわれる独禁法の根本的検討は、できるはずがありません。何がゆえに、この審議に期限をつける必要があったのか、三十三年二月までに答申せしめなければならないといったような理由はどこにあったのか、お伺いいたします。
  30. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 御承知のように、昨年投資が過剰になりまして、いろいろな問題が起ったり、あるいは輸出振興上、非常に困る面があったので、こういうことが最初の動機でありました。もちろん、根本的な改正というふうに、われわれも考えておりまして、通産省の産業合理化審議会におきましても、長年これは研究されておった問題であります。従って、できれば、そういうふうにしていただきたい。また、期限を付しましたのも、できれば、今国会に提出したい、こういう意向からでありました。ところが、だんだん審議を願いますと、そう簡単には参りませんで、根本的な改正は相当な時日がかかるというようなことで、今回の答申は、根本的改正は将来に延ばして、一応現在必要と思われる面のみを取り上げよう、こういうようなことになったのでありまして、これは審議会委員の内部のお話でそういうふうになって参ったことを、御了承願いたいと思います。
  31. 田中武夫

    田中(武)委員 語るに落ちるという言葉がありますが、大臣の今の御答弁は、ついに語るに落ちたと思うのです。政府はいつも物事を改正するときに、むしろ改悪する場合に、審議会とか調査会を設けてその答申によってやるのだ、こう言って、それらの審議会調査会のかくれみのに隠れて、民主的な方向とは逆行する政策を打ち出しているのが、今までの状態であります。先ほどの御答弁によりましても、この改正については、通産省等において、すでに検討もしておったし、そう思っておった。だから、簡単に四カ月、すなわち二月までと期限をつけても差しつかえないと思ってやった、こういうことであった。それなら、すでに結論は出ておるのだから、お前さんたちは、審議をしたような格好だけして、われわれの思うような答申をしろ、こういうふうになったとも考えられるのです。  なお具体的な答申案一つ一つについて、御質問を続けていきたい、このように考えておりましたが、時間の都合があるので、これはあとに回して、後日に譲りたいと思います。ただ一言、現在なされておる答申案全般にわたって、大臣はどのように考えておられますか。あわせて、公正取引委員長はどのように考えておられるのか、これだけをお伺いしておきます。
  32. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 私は この答申案は、総体として妥当じゃないかと思っております。ただ、これを具体化しますのは、抽象的に書かれておりますので、ほんとうに具体的に法文を変えていきましたり、個々の条件を変えていくということは、今非常にむずかしい問題だと思っておりますが、ここに流れております精神は、私はこれでけっこうだと思います。
  33. 田中武夫

    田中(武)委員 今の大臣の御答弁によると、この答申案は、大体においていいだろう、こういうことなら、大臣、この答申案に基いて独禁法改正を出す、こうおっしゃるのですか、いかがでしょうか。
  34. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 私の立場からいいますと、出してもらいたい、こう思っております。
  35. 八木昇

    ○八木(昇)委員 大臣に簡単に一点だけ……。できれば十分に時間をとって伺いたいのですが、私も、あしたの夕方からちょっと不在にするものですから、やむを得ないですから、できるだけ簡単に伺います。  二月九日の毎日新聞に載っておったのですが、これは大臣も読んだと思いますが「百貨店の子会社経営に警告か、小売商から苦情、通産省品種制限など考慮」こういう見出しの相当大きな記事でございます。これは、今、独禁法緩和という方向へ事態が動いていっておることに対する中小零細企業者並びに消費者という人々の反撃が相当あるということに、実は関連しておると思うのであります。そこで、公取委員長に関するものにつきましてはあとでお伺いをいたしたいと思うのでありますが、大臣の御見解を一、二点だけ伺っておきたい。この中に書いてあります記事は、いろいろございますが、結局、最近各百貨店が、それぞれ百貨店法ができたために、合法的に脱法行為をやっておる、そしてそれぞれ子会社を盛んに作っておる。この記事の中に書いてあります特に東横百貨店の場合は、東横は、東光ストアというものを子会社として経営をしておる。資本金二千万円、その株式は一千万円を東横が、残りの一千万円を白木屋がそれぞれ持っておる。そうして実際上は、明らかに東横の子会社として、東光ストアなる会社をでっち上げてやっておる。そのために、従来付近で仕事をしておりました零細業者というものが、非常な打撃をこうむって、すでに店をしめたものが相当出てきておる、こういう事態になっておるわけです。こういうようなことについて、一体、通産大臣としては、どういうお考えをお持ちになっておるか。この新聞記事に書いてある事柄について、通産省は若干の措置をとられるように書いてあるのですが、果してそうであるかどうか、これが質問一つです。  それから第二点はもう少しくそれを具体的に言いますと、これは東横百貨店が、子会社を作って零細企業者を圧迫しておるというふうに新聞記事は書いてありますけれども、しかし、東横そのもののもとをたずねていくと、そのうしろには東急があるということは御承知の通りで、東急の五島慶太氏がやっているやり方を見ると、東横百貨店を持っており、白木屋百貨店あるいは東映、日東タイヤ等を経営しており、明瞭なコンツェルンを築いている。しかも、その東横が、さらに各地に進出をして出店を作る、こういうことになっていきますと、これは明らかに独占禁止法の禁じていることに対するあまりにも強引なやり方であると、われわれには考えられるのでありますが、こういう事態に対して、通産大臣はどう思っておられるか。しかも、その東光ストアなるものの社長は、現に東横デパートの取締役であり、仕入部長を兼任しているという話であるが、そういうことは、一体どういうふうになっているか。こういう点について、この際、時間がないそうでありますから、やむを得ず私も質問を詰めていたしましたが、御答弁をお願いいたします。
  36. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 実は、私はその新聞は読まなかったのですが、ただいまお聞きしましたところでは、百貨店法の脱法行為かどうかというような問題も含んでいると思います。また、中小企業者に影響を与えるということでありまするので、好ましい事態ではないと思います。従ってまた、それが独禁法に違反しているものでありましたならば、これは公取で十分取り締っていただかなければならぬ。またわれわれとしましても、好ましいことではないのでありまするから、その点につきまして、行政指導なり何なりで、できるだけやっていきたい、かように考えております。
  37. 小平久雄

    小平委員長 大臣、それではいいです。予算委員会の方へどうぞ。
  38. 八木昇

    ○八木(昇)委員 ちょっと今の答弁では工合が悪いですが、それではあしたまたやります。
  39. 横田正俊

    ○横田政府委員 先ほどの、独占禁止法審議会答申について、どう考えるかという御質疑でございますが、私も、実はこの審議会に直接関係しておりませんので、ここに出て参りましたものを客観的に拝見しまして、感想と申しますか、そういうようなものしか申し上げられないのでございますが、大体先ほどお話がございましたように、審議会に対する審議期間が、当初は一月の三十一日までということになっておりましたので、独占禁止法の根本的な改正ということについてはかなり無理があるということは、私は考えておったわけでございます。けれども、この答申案を拝見いたしますと、さすがにその点は気づかれたと見えまして、この前文にもございますように、基本的な改正は後日に譲って、その点は政府で適当に今後大いに検討してほしいということが出ておりまして、結局、当面必要と思われる範囲の改正についての要綱を答申する、こういうことになっておりまして、この審議会の態度に対しましては、私は、当然こうあるべきであろうと、この点は非常にけっこうに考えておる次第でございます。  それから、内容につきましては、いろいろこまかな点もございますが、やはり先ほどお話もございましたように、今回の改正につきましては、かなり反対の批判的な声もございますので、その点は、相当考慮された結果だろうと思いますが、業界等の要望に比しますると、この答申案内容は、緩和について、かなりのしぼりをかけているということが、全体として言われるかと思います。ただし、この内容は、はなはだ抽象的なものが多うございまして、先ほど通産大臣から申されましたように、これを具体化するという段になりますと、いろいろな幅が考えられるのでございます。もし、ここに書いてありますものを、ごく安易に法文化いたしますれば、なるほど、根本的改正は後日に譲るということになっておりましても、結果的には、非常に大幅な改正、二十八年の改正あるいはそれを上回るような大幅な改正になってしまうおそれもあるわけでございます。それで、結局、抽象的に書いてございますので、これが非常な緩和になって、消費者中小企業にまでいろいろな迷惑を及ぼすようなことになるかどうかは、今後の法文化の段階に問題があるのではないかというふうに私は考えておる次第でございます。  なお、不公正な取引方法については、むしろ強化を望んでおりますし、公正取引委員会の機構の拡充というようなこともうたわれておりまして、この点は、私どもとしては、非常にけっこうなことであると考えておりますが、要するに、この答申に基いて、どれだけの具体化ができるかということが、今後に残された、政府に託されました重要な課題であろうと思います。
  40. 田中武夫

    田中(武)委員 私の独禁法関係の今までの質問は、まだ序の口としてで、今後引き続き大臣公正取引委員長に御質問いたしたいと思っていたのですが、予算委員会関係上、大臣が立たれましたので、これを中断いたしまして、他の質問に移りたいと思います。だが、また中小企業長官も、何かお急ぎのようだし、こういうことなら、どうも委員会進めていかれないと思うのです。中小企業長官、時間はどのくらいよろしいですか。
  41. 川上為治

    ○川上政府委員 おります。
  42. 田中武夫

    田中(武)委員 それならばよろしいです。  で、もう一度大臣に、独禁法の各論にこれから入りますから、それについての質問の時間を与えていただきたいと思います。  そこで、中小企業の方の質問に入るのですが、その前に、一言、公正取引委員長にお伺いいたしたいのです。いろいろな点について、大臣と両方にお伺いいたしたいと思っておりましたが、大臣がいないから、そういうような点はやめます。ただ一言、さっきちょっと質問いたしましたが、今回の審議会答申案について、公正取引委員長としてどう考えておられるか、こういう点なんです。公正取引委員長はもっとしっかりしてもらわなければいかぬ、だんだんと上着を取られ、チョッキを取られ、ズボンを取られるという状態になっている、独禁法は、だんだんと緩和せられておる。できてから二年にすでに改正をせられ、その後、きのうも申し上げましたが、ここ二、三年来、当委員会に出てくるところのいわゆる経済立法のすべては、独占禁止法緩和法律である。いうなれば、石炭は別である。繊維は別である、いや何々は別だ、輸出は別だ、こういった独禁法緩和の特別法ばかりだったと思う。それにあきたらずして、今度はその本城、すなわち私的独占禁止法改正しようとしておる。いうなれば、もうズボンを取られて、それ以上脱がされてまっ裸になろうとしておる。こういう状態に対して、公正取引委員長は、この答申案に対して、経済基本法であり、経済憲法ともいわれる独禁法を守るべき立場にある。いうならば、憲法に対する最高裁判所のような立場にある公正取引委員長として、どのように考えておられますか、それだけお伺いしておきます。
  43. 横田正俊

    ○横田政府委員 公取のあり方と申しますか、存在理由ということついて、非常にりっぱな御忠言をいただいて、恐縮に存ずる次第でございます。今度の答申案については、ただいま、私がこの答申案を文字通り読みました場合の簡単な感じを申し上げたのでございますが、この答申案ができるまでの間に、公正取引委員会意見も、幹事を通じて徴せられておりまして、この答申案の中に盛られたことの全部が、公取が好ましいと思っておることの全部では必ずしもないのでございます。これはもちろん強化されました点は、けっこうではございますが、その他緩和されます点については、必ずしも全部公取がけっこうであるといっておるわけではございません。しかし、公正取引委員会としましても、二十八年の改正後、相当長い間にわたって、いろいろな実務上の実際の取扱い等の経験にかんがみまして、なお若干の改正の余地は残されておるということで、検討を続けて参ったような次第でございまして、そういう点からいたしまして、今度の改正の中には、公取としても、その程度のものは認めてよいと思われるものがあるわけでございます。従いまして、先ほど申しましたように、今度の答申案に基きます改正検討の際には、われわれの見解を打ち出しまして、できるだけ不必要な改正にわたらないように、十分努力をいたしたいと考えております。
  44. 八木昇

    ○八木(昇)委員 先ほど、私、大臣質問いたした後、まだ公取委員長からお答えをいただいておらぬのですが、念のために、さらにこの新聞記事のほかの部分を少しだけ補足して、お伺いしたいと思うのです。これは単に東横百貨店が東光ストアをやっておるだけではなくて、東横百貨店は東急文化会館、食料品店、名店街とか、目黒、高円寺、五反田、大崎など、随所にチェーン・ストアを開店しておるわけです。それから、高島屋に例をとりますと、高島屋も、古くから高島ストアというのをやっておる。それも九〇%、株は高島屋が持っておる。そうしてこれも関東一円だけでも、横浜、大宮、高崎、前橋、桐生、足利、伊勢崎各都市に連鎖店を開店しておる。このほかに、高島屋は、金融高島屋とか、高島屋ストア出資の連鎖店を錦糸町とか吉祥寺、あっちこっちに設けておる。あるいは名鉄百貨店、どの百貨店でも、多かれ少かれこういうことをやっておる。こういう事態に対して、公取としては 一体どう考えておるか、そして、どう対処せんとしておるかという点を御答弁いただきたい。
  45. 横田正俊

    ○横田政府委員 私も、今お示しのような詳しいことを存じておりませんので、あまり簡単にはお答えできないと思いますが、大体考えまして、株式を持ちまして、それが独占禁止法違反になります場合は、独禁法に規定しておりますように、不公正な取引方法でその株を持ちます場合、及び株を持った結果、一定の取引分野の競争が実質的に制限せられることとなる場合と、この二つになっておりまして、その不公正な取引方法が行われたかどうかは、これは個々の場合につきまして、よほど詳細に調べませんとわからないところで、今お示しのうちの、どれがそれに当るかどうかという点は、ここでそういう事実が明らかになりませんと、何とも申し上げられません。  もう一つの方の問題ということになりますると、一定の取引分野のとり方でございますが、そういう小売店等は、たくさんあるわけでございますから、東横が相当たくさんのいろいろなところの株を持ちましても、それだけで、一定の取引分野の競争の実質的制限ということには、とうていならないように考えられます。もちろん、これは、取引分野のとり方いかんによりまして、問題がないとは言い切れないのでございますが、大体において、そういうふうに考えられると思います。
  46. 八木昇

    ○八木(昇)委員 これほど世間周知の問題を、よく知らぬということでは一体公取は、何のためにあるかといわざるを得ないのです。従って、よく御存じであるにかかわらず、適当に御答弁になっておると、こう善意に解釈するよりほかにしょうがないのです。それで、実際この中のあるものは、利害関係人から、独禁法の四十五条による申請が出ておるはずです。どうでしょうか。
  47. 横田正俊

    ○横田政府委員 はなはだ不勉強でございまして、まだ聞いておりませんが、よく調べましてお答えいたしたいと思います。
  48. 八木昇

    ○八木(昇)委員 私は、その出されたもののうちの一つを、実は持っております。ですから、出ておるのです。これはもう少しスピード・アップをしてもらわぬと、実は困るのです。  そこで、さらに、少しくこれに関連して聞きますが、実は、そういう何とかストアとかいうような名前でやっておる店が、さらにまた小店に分れておるのです。それが使っておる、たとえば包み紙なんかは、その親元のデパートと包み紙と同じものを使っておるのです。それが東横なら東横というマークだけを、東光とかなんとかというふうにしてあるのであって、意匠から何から、全部同じものを使っておる、こういうようなやり方をしておるのです。そういうことは、一体いいものかどうか、ちょっとお伺いします。
  49. 横田正俊

    ○横田政府委員 独禁法は、法律の規定がございますように、どうも好ましくないと思われるようなことの、すべてを対象にしておるわけではございません。結局、不公正な取引方法にいたしましても、その他の問題にいたしましても、やはり法律のワクがございますので、そのワクにはまって参りませんと、独禁法上悪いということは申し上げられないのであります。ただいまのように、どこかの店の似たような紙を使っているということだけで、独禁法のどういうところに当りますか、よく検討してみませんと、にわかにお答えはいたしかねると思います。
  50. 八木昇

    ○八木(昇)委員 それは、もちろん研究をしていただいて、措置をしていただかなければならぬ、こう思うのですけれども、そういうふうに、実に巧みなやり方が盛んに行われておるという場合に、ただ手をこまぬいて見ておっていただくだけでは、工合が悪いと思うのです。それで、最初にも御質問を申し上げましたように、この東光ストアの社長は、現に東横の取締役であり、仕入部長である。こういう事実についてはどういう御解釈でしょうか。
  51. 横田正俊

    ○横田政府委員 これも株の持ち合いと全く同じでございまして、その役員を押し込みます過程が、やはり独禁法に規定しておりますような不正なやり方でやったかどうかということと、それから役員の兼任が、独禁法上の違反になるかどうか。これも二十八年に改正されました独禁法は、非常にゆるんでしまいまして、昔は、競争会社間の役員の兼任は許されなかったのでありますが、現在では、一定の取引分野の競争の実質的制限を来たさぬ限りは、競争会社間の役員の兼任は許される。こういう線になっておりますので、果してお話の兼任が、そのような重大な結果をもたらすものであるかどうかという点にかかって参りまして、どうもそれだけでは、独禁法違反というふうにも言い切れないように思われます。
  52. 八木昇

    ○八木(昇)委員 具体的な事実をずっとあげまして、これは第九条に当てはまりはしないか、あるいは第二条の第五項に当てはまりはしないかとか、一一論争をやっておりますと、きょうのところでは、とうていできませんので、また日をあらためますけれども、しかし、先ほど来の公取委員長答弁を聞いておりますと、公取委員長であるにかかわらず、独占禁止法の解釈を、できるだけ狭義に狭義に解釈しようとするように、逆に見えてしょうがない。公取委員長である以上は、独占禁止法というものの法の根本精神に基いて、むしろそれを拡大的に解釈するくらいの積極的な立場でないと、幾らでもこれは抜けられますよ。現に最近はどんどんそれを抜けておる。そして、今申し上げましたような各デパートのやり方というものが、将来にわたってどんどん広がっていくとするならば、一体、公取は何のためにあるかという非難を当然こうむらなければならぬと私は思うわけでありまして、従いまして、こういう問題がどんどん持ち込まれて参ります場合に、もっと積極的な立場で、公取委員長にやっていただくことを、私は切実に要望するわけです。  最後に、一点ですが、いろいろな違反行為について審査をやったり、あるいは審判をやったり、いろいろおやりになるのだろうと思うのです。一体、それはどのくらいの時間を要するものでしょうか。問題によって幾らか違いますが、過去の実情をちょっと承わっておきたいと思います。それで終ります。
  53. 横田正俊

    ○横田政府委員 審査に要しまする時間はこれは御指摘の通り、事件によりまして非常に差がございますが、ものによりましては、かなり早く処理しておるものもございます。ただ、非常に手不足な役所でございますので、その点で、やはり能力に限度がございまして、あせれども、なかなか十分の実証をつかみにくいという場合もございますが、簡単な事件でございますれば、かなり早く処理いたしておるつもりであります。
  54. 田中武夫

    田中(武)委員 それは、独禁法に関連しての大臣及び公正取引委員長に対するものは、あとへ回しまして、中小企業関係について若干お伺いいたしたいと思います。  まず第一に、御承知のように去る二十七臨時国会でてんやわんや、ようやく通過成立を見ました中小企業団体組織法は、来たる四月一日から実施せられる、こういうことになっておるわけでございますが、この法律実施について、現在どのような準備が進められておるか。たとえば、政令の点、ことに、参議院におきましても、また当委員会においても、中小企業団体組織法成立の際、むしろこれは法そのものよりか、運営に問題があるということで、いろいろと付帯決議等もつけたのでございます。これらのことが政令に盛り込まれ、あるいは中小企業団体組織法のいい面、悪い面、いろいろありますが、そのいい面を生かしていく、そして一番懸念いたしましたところの消費者に対する関係等において、どのようにしていくかという点については、大体政令においてきめられると思いますが、そういう点について、どのようになっておるのか、お伺いしたいと思います。もし、すでに政令の草案なりが、ある程度できておるなら、発表してもらいたいと思うし、できていないとするならば、ぜひ、これは重要なものでありますから、政令の草案ができましたら、一応当委員会において発表もしていただき、あるいはわれわれの意見も聞いていただきたい、このように思っておりますが、いかがでしょうか。
  55. 川上為治

    ○川上政府委員 中小企業団体組織法につきましては、今お話がありましたように、四月の一日に完全に施行ができるように、現在いろいろ準備を進めております。現在、政令について、法制局その他の方と、いろいろ打ち合せをしておるわけでありますが、一応私どもの方としての草案はできておりますので、近いうちに、この委員会なりでお話し申し上げたいと思っております。  それから、政令の内容につきましては、この前の国会におきます審議の状況から考えまして、私どもとしましては、十分衆参両院の意向をいれまして、慎重に作成したいというふうに考えておるわけでございます。
  56. 田中武夫

    田中(武)委員 政令ができましたら、これは重要な法律の施行令でございますから、ぜひ当委員会において一応説明を求めたい、このように思っております。  それから先ほど、長官はそういう御意見のようですが、ことに付帯決議を生かしていただくということ、それからあの審議過程において、いろいろ質疑等の中から、運営がむしろ大事である、こういうふうに申し上げておることも十分御承知だと思うので、そういう点について、十分留意していただきたいと思います。ことに、この法律のいわゆる過当競争を排する、中小企業団体強化していく、こういう点については、いい面だと思いますが、一面消費者に与える影響、こういうものは、よほど考えてもらわなければならない。このように思いますので、こういう点を、政令のやれる範囲内において、十分考えていただきたい。このように希望を申し上げておきます。  そこで、この法律の実施に当って、まず商工組合の設立については、いわゆる二分の一以上の同地区における業者が出した場合に、中小企業安定審議会の議を経て、これが将来、いわゆる不況のおそれがあるというような場合、と、いろいろ条件がありますが、この商工組合の設立には、比較的寛大な措置をとっていきたい、このように考えているというようなことも聞いておりますが、商工組合の設立に対して、どのような行政上の態度をもって臨まれるか。そして、また一面、価格協定については、どのような態度をもって臨まれるか。それから中小企業安定審議会のメンバーの選定でございますが、先ほど来、独禁法審議会のメンバー選定に当っても、大臣が言われたように、商工中金代表中小企業代表であり、農林中金代表が農耕者の代表であるというような間抜けた答弁をすることのないよう、このメンバーの選定に当っても、一つ十分考えていただきたいと思います。これは長官の方だけでやられるのかどうか知りませんが、メンバー等については、どのように考えておられるのか。この中小企業審議会は、施行と同時に発足するように準備が進んでおるのかどうか、そういう点をお伺いいたします。
  57. 川上為治

    ○川上政府委員 商工組合の設立につきましては、この法律によりまして、不況要件がありませんと、できないということになっております。しかも、その不況要件につきましては、安定審議会におきまして、その基準を作ることになっておりますので、安定審議会を四月以降に作りまして、そしてその安定審議会基準を十分検討していただきまして、その基準に当てはまるということになれば、これは積極的に商工組合を作らせるということになりますので、その基準を十分検討していただきまして、私どもとしましては、その基準に合うものは積極的に作らせるという考え方で進みたいと思っております。  それから、私自身の気持としましては、やはり商工組合というのは、なるべくこれは作らしていくというようなことに、積極的に考えていくべきではないかと思うのですが、ただ価格の協定とか、あるいはアウトサイダー規制命令とか、あるいは強制加入の命令とか、そういう問題は、一般消費者その他の方面に非常な関係がありますので、そういう問題につきましてはこの国会における審議あるいは付帯決議を十分尊重いたしまして、厳格にこういう問題についてはやっていきたいというふうに考えております。  それから、安定審議会のメンバーでございますが、まだ今のところ、実はきめておりません。しかしながら、私どもの方としましては、やはり法律の運営がきわめて大事であるということを十分考えていますから、消費者その他の代表も、適当な人を入れまして、そしてこの安定審議会が最も公平なメンバーによって組織されるように持っていきたいというふうに考えております。  それから安定審議会は、私どもの方としましては、やはり四月早々にぜひとも成立させたいというふうに考えておるわけでございます。  価格協定につきましては、先ほど申し上げましたように、非常に大事な問題でありますので、私どもの方としましては、一般消費者関係に、直接関係があるような面においては価格協定はなるべくやらしていかない。輸出産業とかそうした方面は私どもとしましては、むしろ積極的に認めていかなくてはならぬ場合があるかと思うのでありますけれども一般国民大衆に関係のある面においては、厳密に考えていきたいというふうに思っております。
  58. 田中武夫

    田中(武)委員 長官の御答弁がそのまま行われるとするならば、いいだろうと思うのですが、特にここで希望しておきたいことは、価格協定については厳格なる態度をもって臨んでいただきたい。それから、一面中小企業安定審議会のメンバーの選定についても、きのうの大臣のように、私も消費者だ、こういうようなばかげた答弁を、あらためてまた、これがきまったときに長官から私も消費者ですと言わぬようなメンバーの選定にしていただきたい、これを希望しておきます。  そこでこの中小企業団体組織法の制定に当りまして、中小企業等協同組合法を改正したことは御承知の通りであります。この改正によって、いわゆる零細企業と申しますか、工業ならば五名ですか、商業、サービス業ならば二名以下、こういうものは小組合を作ることができる、こういう工合になっております。そこで、小組合の組合員に対しては、税制上金融上の特別の措置を政府は講ずる、こういうことの規定も入っていることは御承知の通りであります。だが、四月一日に実施せられる中小企業団体組織法と相伴って、この中小企業等協同組合法の改正の中に盛られた零細企業小組合の組合員に対する税制金融上の措置については、どのようなことを考えておられるのか。これは大臣に聞きたいのですが、大臣よりもその方のベテランである次官がおられますので、次官からもお伺いしておきたい、このように考えます。
  59. 小笠公韶

    ○小笠政府委員 中小企業等協同組合法の一部改正の施行に当りまして、小組合の組合員に対する措置の問題でありますが、同法二十四条だと記憶するのでありますが、これの趣旨の達成の問題につきまして、一番最初やられる問題といたしましては、行政措置上やれる問題を、まず第一に取り上げていきたい。それは金融上の問題等におきまして、政府関係の金融機関におきまして、小組合に対する融資というようなものに対して、特別の便宜をはかろうというような措置をとって参りたいと思います。問題は、いわゆる税制上の特別の措置であります。これは審議過程におきまして、いろいろ議論もあったようでありますが、私どもといたしましては、税制上、制度として、小組合の組合員に特別の優遇措置を講ずるということにつきましては、なお検討を要する点もあるように考えますが、税法上の運用等につきまして、これらの問題について二十四条の趣旨に沿うように努力して参りたい、こういうふうにただいま実は考えております。
  60. 田中武夫

    田中(武)委員 長官も大体同じですか。
  61. 川上為治

    ○川上政府委員 次官と全く同意見ですが、金融の問題につきましては、私どもの方としましては、こういう小組合に対しては、何とか優先的な措置ができないものか。たとえば、商工中金から出しますときは、あるいはその特別なワクを商工中金の中に設けるとか、あるいは中小企業金融公庫から出します場合にも、同様な措置をとるとか、そういうことをやったらどうかというようなふうに考えまして、現在いろいろ検討をいたしております。
  62. 田中武夫

    田中(武)委員 ただいまお二人から御答弁をいただきましたが、今のところは、具体的に何ら措置がとられていないということだけは確かだと思う。そこで、二十四条の趣旨を生かす上において、若干の希望を述べながら、御質問いたしたいと思います。  まず税制上の措置の問題であります。もちろんこの共同修正の場合、小笠政務次官も小委員ではなかったかと思うのですが、与党側には「税制上」という言葉を入れることには、若干の難色があったことは事実でございます。だが、ともかく入ったわけであります。法律として、政府はこれこれを講ずべきである、こう規定せられている以上、法による政府の義務ではなかろうかと思う。そこで、政府としては、積極的にこれらについて考えてもらう必要が出てくると思う。私は考えるのですが、この中小企業、ことに小組合に属するような企業、これは、いわば事業主、おやじさんみずからが、まっ黒けになって、従業員とともに朝から晩まで働く、こういった企業である。もっと理論的に申し上げるならば、中小企業と一口に申し上げても、企業性の強いものと、いわゆる勤労性の強いものがある。この勤労性の強い企業、すなわち小組合に属するような企業に対しては、どうでしょう、事業税というようなものをかけることは、少し酷じゃないか。おやじさんみずからが、朝から晩まで菜っぱ服を着て、三人ないし五人の従業員とともにまっ黒けになって働いておる、前かけをかけて、自転車でものを配達しておる小商人、こういった人たちは、事業というより、むしろ勤労じゃないか、その得るところの所得は勤労所得ではないか、このように考えて、私は勤労所得という上に立って、これらの人たちは勤労所得でいいんじゃないか、このように実は考えておりますが、政府としてはどのように考えておられますか、一つお伺いいたしたいと思います。
  63. 小笠公韶

    ○小笠政府委員 生業に近いものでありますので、学問的に分類すると、企業性それから勤労性事業というふうに分けられるかもしれませんが、私はこういうふうな零細企業に対する税負担の問題を、できるだけ軽減するという方向に進むべきものであると考えます。そこで、税制の体系の問題は別にいたしまして、さしあたり問題になりますものは、御指摘のように事業税であります。この事業税を軽減していく、こういう方向に努力をいたしておるのでありますが、いろいろな事情で、まだ今国会結論を出すことができなかったのでありますが、どうしても、いわゆる勤労性企業に対しましては、事業税の面から税負担を軽減さしていきたい、こういうような考え方で実はおるのであります。その際に、問題になりますのは、小組合の組合員と組合員外との区別はできませんが、私は小組合を作る、作らぬにかかわらず、こういう零細企業に対する事業税の税負担というものは、引き下げるべきだ、こういうように考えております。
  64. 田中武夫

    田中(武)委員 次官がほんとうに腹からそう考えられているならば、いいと思うのですが、事業税の方は、いろいろと問題になっている。まあ小笠次官はそう考えておられるかは知りませんが、どうも天下の情勢は、そういうことではなさそうです。そこで、軽減ということを次官は言われましたが、私はこれは理論的に言っても、実際上から言っても、こういった企業の企業主、これは勤労者と何ら変りない、こういう上に立って考えていっていただきたい、このように考えるわけでございます。自治庁からも見えているそうで、事業税のことをお伺いしたいと思いますが、ここは税金問題の場所とは違いますので、また関連があれば伺うことにいたしまして、次に進みたいと思います。  次に、金融上の措置です。企業庁長官も、今ちょっとそれのようなことに触れられましたが、私は、やはり中小企業と一口に言って、中小企業金融公庫あるいは国民金融公庫、こういうところへ借りに行っても、比較的大きいものに食われてしまっている。そうして小組合に入るような零細企業は、金融上最も困難を来たしていることは、御承知の通りであります。そこで、最初からワクを、たとえば中小企業金融公庫の中で、百億なら百億のワクの中で、六十億は比較的大きなところ、四十億は小組合、こういうように最初からワクを分けて考えていくとか、あるいは金融機関を分けて、中小企業金融公庫は中小企業中比較的大きなところ、国民金融公庫は、小組合に属するような零細企業、こういうふうに性格づけていく、こういうようなことも、一つ方法ではなかろうかと思うのでありますが、今度の政府の財政投融資に関連する予算を見ましても、そういった措置を何も講ぜられていない。そうするならば、せっかく中小企業団体組織法を作って、いわばライオンやトラのような大企業と、それ以下の小動物はワクを別にした。だがしかし、その中にはキツネ、タヌキ、オオカミのようなものもいる。中には鶏とかウサギのようなものもいる。こういうところに、同じえさを与えるならば、やはり大きいものが食ってしまう。これは理の当然であります。従って、もう一つワクを設けてやろう、こういうのが、小組合の精神ではなかろうかと思う。そうすれば、ウサギとか鶏とかいったようなものには、他に脅威を受けることなく十分にえさがとれるような金融の道の開けるような措置が望ましいと思いますが、どういうふうに考えておりましょうか。
  65. 小笠公韶

    ○小笠政府委員 金融上の特別措置の方法として、御指摘のようなことが考えられると思います。ただ、田中委員の御提示になりました金融機関別に、A金融機関は零細企業、B金融機関はしからざるものと分けることは、かえって不親切になりはせぬかと、実は私は思うのであります。そこで、いわゆる政府関係の金融機関三機関に対しまして、特別のワクを作るとか、あるいはこういう金額のものは優先的にやるとか、こういう条件に該当して、これだけの借り入れ申し込みがあるものは特別の扱いをする、こういうふうな特別の措置を講ずる必要があると考えております。別途御審議を願います信用保険事業団の構想も、従来の融資保険を少くして保証保険に切りかえていくということは、とどのつまり、金額の少いものに対する担保力の補強というところに、大きな意味があるものと考えておりまして、これと相あわせまして、今御指摘のように、特別なワク、百億のうち四十億をどうするかという考え方がいいのか、あるいは一定の条件を具備したものを簡易に扱うという形がいいのか、これはなお検討を要すると思いますが、そういう趣旨で、来年度からぜひ実行していきたい、こういうふうに考えております。
  66. 田中武夫

    田中(武)委員 私があげたのは例でございますので、なおよく検討していただいて、ぜひとも二十四条が空文化しないように、これだけはお願いしておきたいと思うのです。このことにつきましては、いわゆる小組合に属するような零細企業の人たちは、大きな関心を持ってながめておるのであります。大きな期待を持っておりますから、ぜひ一つ、これは実現してもらわなければならないと考えております。  そこで、金融の問題ですが、予算書を見ましても、若干財政投融資関係では、商工中金あるいは中小企業金融公庫等も、昨年よりは五億程度ふえておるようにも思うのですが、政府出資金が全然ことしは入らないことになっております。御承知のように、財政投融資資金であるならば、頭から六分五厘の利子がつく。しかも、今日中小企業の金融をやかましく言いながら、その利子が高いということが一つの問題である。これは御承知のことであります。幾ら利子を下げろと言っても、頭から六分五厘の利子のつく金を使っておれば、それ以上下げられないのは当然であります。また、ことに国民金融公庫のごときは、御承知のたとえば恩給とか、あるいは更生資金とかというように頭から六分の利子で貸す、こういうことを義務づけられておるものもあるようです。一方六分五厘の利子を払いながら、六分で貸す。いわゆる逆ざやとか専門に申しますが、そういうような事態も生じておる。これを総じてながめた場合に、中小企業の金融の困難に加えて、たまたま借りられたとしても、利子が高い。ことに、政府が力を入れておられるようですが、保証制度の強化、これも担保力を持たない中小企業のためにはいいかもわかりませんが、これを利用すれば、御承知の保証金がかかります。保証料がかかります。そうするならば、利子を二重に払っておる、こういうような結果にもなるかと思うのです。先日私はある中小企業の人から、同じ国民であり、同じ政府の金を借りながら、農林中金から借りるならば、利子が安く、長期である。われわれ中小企業が、中小企業関係政府関係機関から借りるならば、短期でかつ利子が高い。同じ国民でありながら、なぜわれわれの借りるのが高く、かつ短期であるかということの質問を受けて、実は答弁に困ったのですが、小笠次官ならば、どのような答弁をして中小企業の方を納得さしていただけるか、一つ教えていただきたいものだと思います。いかがでしよう。
  67. 小笠公韶

    ○小笠政府委員 中小企業関係政府機関の貸出金利が高いということは、御指摘の通りのような事情からきておるのであります。この金利を引き下げていくというのには、二つの道があると思うのでありまして、一つは、いわゆる政府の出資を多くしていく。いま一つは、高い利子に対して利子補給をする、こういう二つの面から考えて参らなければならないと思うのです。この利子は、現在中小企業の金融の実態から考えますと、安い利子を豊富にということになろうと思います。ところが、ただいまは、まず先立つものは、量をふやしていくという方向に持っていくことが先決であろう。こういうふうな考え方をいたしておりまして、私どもといたしましては、本年度は出資を多く見ることができなかったということを残念に思っておりますが、将来、金利低下の方向として、政府機関に対する出資をふやしていくという方向に努力をいたしたいと思います。保証料の問題でありますが、今度の別途御審議願います中小企業信用保険事業団と申しますか、公庫と申しますか、これの構想は、現在五十一の保証協会で保証してもらったときに、保証料を払っておりますが、これを約一割ないし一割五分程度保証料を引き下げていこう、こういうふうな考え方で、できるだけ保証料負担というものを下げていくことにいたしたいと考えておるのであります。保険も全く同様であります。  それから、農林漁業に対する貸付の問題でありますが、これとの金利の差のあることも、農林漁業の中の特定のものにつきましては、安い金利で出しておる、こういうことでありますが、これは土地改良だとか、あるいは災害復旧のための費用とか、特定のものについて特別の低利の融資をいたしておるようであります。中小企業の場合におきましては、一般の運転資金を土台にしてその出資をとっていく、こういうふうな建前になっておりますので、長期にわたって土地改良をするとか、あるいは災害を復旧するという場合とは、若干違っているのではないか。そういう趣旨から、中小企業の場合よりも特別低利で出しているというのが、現状でございます。  私が、今申し上げましたように、すべての金利が同一の水準になることは望ましいのでありますが、その金の出す目的、いろいろな事情を考えて、金利の差が出てくるというのは、現実の事態から見て、やむを得ないと私は考えておるので、もちろん、低いに越したことはございませんが、ただいまのところから言うと、そういうふうに私ども考えているのでございます。
  68. 田中武夫

    田中(武)委員 小笠次官、実は私もそう聞かれて、答弁にちょっと困ったのです。同じ国民でありながら、なぜわれわれだけが高い金利で借りねばならないのか、こういう質問に対して、中小企業の人が今の答弁で満足すると思われますか。私は、最後には、これは社会党が政権をとれば安くなると言ったのですが、それを認められますか、どうですか。
  69. 小笠公韶

    ○小笠政府委員 政権が何党にあろうと、そういうことは私は別にいたしまして、同じ国民であるがゆえに、同じ金利の金を借りるのが当然という考え方自体に、私は問題があると思う。現在の経済制度を認めておる上におきまして、限られた資金運用につきましては、その資金の効率その回転数等々を考えて、差が出てくることは、またやむを得ないのではないか、私はそう考えております。
  70. 田中武夫

    田中(武)委員 先ほどもちょっと触れられたようですが、ことしは金融政府機関に出資金が一文も出されていない、こういうのは、どういうところに原因があるのですか。
  71. 川上為治

    ○川上政府委員 商工中金の問題でございますが、商工中金の利子を極力下げるという意味から、三十二年度におきましては、出資をある程度政府の方から出して、平均の金利を大体一割以下にしたわけであります。本年度におきましても、われわれとしましては、できればもっと金利を下げるために、そういう措置がとられれば、非常にけっこうじゃないかと思っていたのですが、何分商工中金というのは、政府の方も出資しますし、また民間の出資もありますので、大体民間出資とのバランスということを一応考えておるわけであります。そのために、本年度においては大幅な出資をするということができなかった。来年度においてもまた出資をするということが、今のところでは、そういう基本的な問題もあって、なかなかむずかしい状態だということに実はなっておるわけであります。
  72. 田中武夫

    田中(武)委員 先ほど次官も、言葉鋭く、現在の状況において、同じ国民だから同じ金を借りるという考え方が間違いであると、明確にお答えになったわけであります。しかしながら、金利が高いということは、お認めになっていると思う。それならば、やはり金利のつかない、ついても安い金を借りる、あるいはその利子を何らかの方法で補助してやる、こういうことが望ましいと思いますので、なおその方面に対して、考え方が間違いである、こういうようなことではなくて、次官あるいは政府考え方も、あらためて言っていただきたい、こう思うわけであります。  それから、中小企業助成法、これを出す出すとやかましく言っておられ、昨年四月五日に中小企業団体組織法が本会議に上程され、これに関連して私が本会議質問申し上げましたときに、当時の水田通産大臣は、出すと、こうおっしゃったのですが、一向に出ないのは何らか特別の理由があるのでしょうか。
  73. 小笠公韶

    ○小笠政府委員 中小企業の振興に関する法制の問題として、組織の強化の一翼として中小企業団体法ができました。これは組織の法律でありますが、実体的な規定といたしまして、小売には小売の特別の立法が必要であるということで、第二十六国会以来の継続審議で、社会党からも商業調整法案が提出されておる通りであります。それからさらに、中小企業全体を見まして、中小企業基本的に振興していく、こういう意味において、中小企業助成法というか、振興法というような、いわゆる中小企業振興の具体的方策を盛り込んだ法制が必要だと、実は考えておるのであります。ところが、中小企業振興の具体的な方法を盛り込むに当って、問題になりますのは、行政でできる分野と、立法を要する分野、いわゆる立法技術上立法事項になるもの、この二つを分けて考えなければならぬのであります。中小企業の振興助成法について、私ども準備というか検討を進めておるのでありますが、立法事項の多くない法律を提出するのがいいかどうか、率直に申し上げて、そこらの点で、今問題の検討の最中というところであります。中小企業振興助成法の名前だけできまして、その中に盛らるべき事項の範囲というものは、いまだ確定いたしておらぬのであります。中小企業振興助成法は、あたかもすでに国会で継続審査になっております産業分野の確保に関する法律案と同じような内容を持つ助成法にするかどうか、この点が一つ問題の焦点になると、実は私は考えておるのであります。これは法名だけで、内容が今確定しておらぬし、先ほど申し上げましたような立法事項と行政指導で可能なもの、こういうものの振り分けをして個々に法案をまとめるというような考え方で準備を進めておる、こういう状況であります。率直に申し上げます。
  74. 田中武夫

    田中(武)委員 まあ一年数カ月、いろいろと準備し検討せられたのであるから、多分いいものが出るだろうと期待いたしておきます。しかし、今のお話ですと、去年四月に、水田前通産大臣がお答えになった、すぐにでも出すように用意しているということとは、だいぶ違い、検討期間が長過ぎるように思う。今、次官がおっしゃったのですが、われわれが出している中小企業の産業分野の確保に関する法律案、この方こそ中小企業の安定振興には、最も必要な措置だとわれわれは考えているのです。この際、委員長においても、この法案の審議促進を一つ考えていただきたい、かように思うわけであります。  次に、ちょっと、方面を変えまして、やはり中小企業に関連をしてお伺いいたしたいのですが、次官も、中小企業庁長官も、わが社会党が、昨年来、政策審議会の中に、部落解放調査特別委員会なるものを設けまして、現在あり得べからざる差別待遇、これを根本的に解決するために、いろいろの政策を検討し、発表し、これを実行していきたいと考えていることは、御承知のことと思います。そこで、こういうことについて、若干関連してお答え願いたいと思うのですが、まず最初に、厚生省がお見えになっているようでございますので、部落解放の問題については、一般的に見て、今どういうような情勢にあるのか、厚生省としては、この問題に対して、どのような観点の上に立って、この種の行政を進めておられるのかというような点を、簡単でよろしゅうございますから、お答え願いたいと思います。
  75. 加藤威二

    加藤説明員 部落対策につきましては御承知のように、一口に六千部落三百万と言われておりますが、この部落に対しましては昭和十一年から、当時の内務省が、融和事業十カ年計画という総合的な計画を立てまして、昭和十一年から二十年までの間、当時の金で毎年約百四、五十万の経費を使いまして、部落民の解放のために、総合的な施策を実施して参ったのでありますが、終戦後において、進駐軍の方針等もありまして、こういった特別の対策はやめるべきであるということから、その後は、一般施策の中においてこの部落対策をやっていくということで、特に部落を対象とした特別な施策はなかったのでございますが、昭和二十八年に至りまして、やはり当時のいろいろな状況から、部落に対して特別な施策を打ち出していく必要があるのではないかということで、厚生省において、昭和二十八年に至りまして、初めて隣保館、共同浴場の設置について、約千三百万ばかりの補助金を出すことになったのでございます。それから毎年大体千四、五百万の予算を計上いたしまして、隣保館、共同浴場の設置を行なっているわけでございます。他方、厚生省といたしましては、隣保館、共同浴場のようなものの設置だけでは、とてもこの複雑多岐なる、しかも深刻なる部落問題の解決ができないのは、自明の理でございますので、各省の協力を要請いたしまして、やはり昭和二十八年から厚生省に地方改善事業連絡協議会というものを設置して、関係各省の局長及びこの問題に関する民間有識者四名を集めまして委員会を作りました。厚生事務次官が委員長となりまして、毎年この問題について、ことに、各省において、予算面その他において積極的な施策を打ち出してもらいたいということを、厚生省としてはそのつどお願い申し上げている実情でございます。しかしながら、今までの実績といたしましては必ずしも部落対策といたしまして、予算面その他において、非常に向上したという実績は、残念ながら今のところあまり見当らないのでございます。厚生省といたしましても、今後ますますこの問題につきましては、関係各省のこの問題に対する注意を大いに喚起いたしまして、厚生省が世話役になって、総合的な施策をできるだけ打ち出していきたい、かように考えております。
  76. 田中武夫

    田中(武)委員 今、御答弁のありましたように、何かやっておられるということは、わかるのですが、いわゆる隣保館あるいは共同浴場というようなことでも、予算の面からいっても、あるいはそれ自体の基本的な点からいっても、微温的というか、いわゆる、くさいものにふたをするという程度のものであって、この深刻な部落問題の根本的解決にはならないと思う。  そこで、中小企業庁長官にお伺いするのですが、この部落問題については、長年いろいろと深刻な問題を繰り返しておるわけですが、部落の産業というのは、御承知のように皮関係あるいは竹材、こういうようなもので、おおむね家内工業であり、零細企業です。ところが、最近、近代企業といいますか、近代的な産業に押されまして、それがだんだんとやりにくくなり、しかも、関西方面等においては、現実に就職等においても、差別待遇がなされておるそうであります。そういうところから、就職の機会には恵まれない、従来の家内産業はやっていけなくなる。そこで、日雇い労働者に転落していく。その日雇い労働者が、恒久的な職業になっておる、こういうのが実態でございます。しかも、部落なるがゆえに、大へんな目に見えない差別を受けておる、こういうような実態が訴えられておるのですが、中小企業庁長官のお手元で、こういった零細企業の現在の姿について、何か特別な措置、特別な調査をなされたであろうか、あるいは将来どういうように考えておられるか、お考えがあれば、聞かせていただきたいと思います。
  77. 川上為治

    ○川上政府委員 実は、この問題につきましては、率直に申し上げますと、私どもの方では、あまりよく知らなかったのです。最近、地方によりまして、いろいろ問題が起きておるということを聞きましたので、私どもとしましてはこういう差別待遇をするということは全く間違ったことである。私どもとしましても、従来、そういう差別的な待遇はしてないものというように考えていたのですが、最近、お話によりますと、たとえば、金融の問題にしましても、あるいは協同組合を作る問題にしましても、何かいろいろ問題があるように聞いておりますので、さっそく、先般私の方から各県知事に、そういう事情があるかどうか、また実際どういう状態になっておるか、そういう点を至急知らせてもらいたいという通知を出しまして、今、調査中であります。なお、その際つけ加えまして、何か差別的な待遇をしておるように聞いておるが、そういうことのないように、厳重に一つやってもらいたいというように申し伝えてあります。私自身の考えとしましても、さっきも申し上げましたように、そういう差別的な措置をとるということは、いけないと思いますし、これは零細企業でもありますから、その点も十分考えまして、なるべくこれが振興なりあるいは救済的な措置を、今後はとってやりたいというように考えております。
  78. 田中武夫

    田中(武)委員 今、長官の御答弁では、そういうようなことを聞いたので調査をしている、こういうことですが、文書だけで調査をしても、少くとも、頭から表面的に、差別をしておりますと答えるものはないと思う。だがしかし、それが現実にあるというのが、その人たちの訴えなんです。こういう点をよくみていただいて、一片の文書回答だけで事足れりということでなく、今後積極的な関心を持って進んでいただきたいと思います。ことに、たとえば部落産業のうちで、げたの鼻緒といったような産業がございますが、こういうのも、今日では需要の関係もございまして、だんだんと近代的な設備に押されるということもございますし、もうほとんどできないという状態である。たとえば、これをサンダルに切りかえて、輸出振興のための職業指導を必要とするとか、あるいは金融の面においても、先ほどちょっと長官も触れられましたが、部落なるがゆえに、ことに零細企業であるので、その面において一般的な金融面の困難も出ておる、その上にもう一つ差別を受ける、こういうような訴えがあるわけであります。従いまして、こういう点につきましても、国民金融公庫に対して、何か特別な更生資金というようなものを考えていくというようなことも望ましいのではないかと考えるわけであります。また、部落の産業の振興のためにも、たとえば、互助会とか、あるいは共同生産販売の協同組合とか、こういった組織を作る、そういうことも必要でなかろうか。そういうような点について、積極的な御指導と特別措置を考えていただきたいと思うのですが、これは次官、長官ともに、どのようにお考えになるか、お伺いいたしておきたいと思います。
  79. 小笠公韶

    ○小笠政府委員 御指摘の点、全く同感であります。差別待遇というお話がありますが、社会環境を明るくしていく、こういうことが基本的な問題であろうと思います。中小企業問題といたしましては、御指摘の通り、家内工業でありますから、まず第一に販路をどう見つけてやるか。販路の確保がなかなかうまくいかぬ。それから、御指摘の、いわゆる作業の指導といいますか、作業の指導と販路の確保というようなところに一つの重点を置いて、特に特産地のような場合には、この問題が非常に大事だ。いわゆる現在の流通機構の中におきまして、中小企業は、販路が見つけにくい、販路が細いというところに、いろいろな問題があると私は思いますので、特にこういう問題につきましては、そういう点に重点を置いて指導するということが必要だと考えます。従いまして、今、田中委員のようなお考えは、全く同感でございまして、積極的に各都道府県等に対して、こういうふうに指導してもらいたい、われわれもやるということにいたしたいと考えます。
  80. 松平忠久

    ○松平委員 今の部落解放の問題について、ちょっと関連して質問いたしたいと思います。先般、部落解放の大会があったのです。そこに通産省の代表が来て、通産省においてどういう施策をしているかということについて、質問があったのに対して、通産省の代表と称する者が、通産省の所見を、そこで述べたことがあります。それは中小企業庁のある課長であったのではなかろうかと私は思うが、その人が言うには、通産省としては、何らの対策も現在までにないのだ。ただいま、厚生省の係官の方から言われたように、二十八年に、この問題の解決は関係各省で、部落の生活改善、環境改善、経済の改善をはからなければならないという呼びかけがあったわけでありますけれども、その協力態勢というものが政府の中にできておらぬ、これが今日の実態である。それでただ厚生省だけでもって、環境改善というようなことで、若干の予算を特別のワクとして、特別の事業としてやっておる。ほかの各省においてはこういうことはない、こういう実態なのです。ところが、今も厚生省から話がありましたように、この問題は、進駐軍の進駐してきた当時から、いわゆる部落に対する表面の差別待遇というやり方はよして、一般政策の中で行なっていったらどうかという指導があって、これはやめたわけでありますけれども、昭和二十八年に、それではまだいかぬ、やはり事実上の差別があるのだから、差別の実態に即して、差別のあるこの事実を認識の上に政策を立てていかなければならぬ、こういうふうに国の政策が改まったわけであります。ところが、その国の政策が改まったということが、各省においては、まだ浸透しておらぬというのが現在の状況である、私はこういうように思うのであります。そこで、この問題を解決するには、何としても、私は経済問題であると思う。身分上の問題もありますけれども、身分上の問題よりも、今日は、この問題は、経済問題に非常に大きな関心を払わなければならぬ段階にきておると思うのであります。そこで、経済問題を解決するには、これは農林省と通産省並びに大蔵省等が、よほど力を入れてもらわなければならぬ問題ではなかろうか、私はこういうふうに見ておる。そこで、このことを、ただ単に地方長官等に命じて、そして直せといっても、直らない部分があるのではないか。ことに、その中で職業の問題に関しましては、ただいま田中委員からも発言がありましたけれども、一応いわゆる同化政策というようなことで、表面何らの区別もないというやり方のために、かえって職業を奪われておるというような状況になってしまった。すなわち、今までは身分上の差別はあったけれども、これと比例いたしまして、むしろ身分上の差別とともに、職業上の差別というものがそこにあった。そして、職業が保護をされておった。皮革にしても、あるいはげた、鼻緒というような類にいたしましても、これは保護をされておった。ところが、身分上の区別の撤廃とともに、職業も平等になってしまったために、今日その職業を奪われていくという状態が、ここに出てきておる。言いかえるならば、皮革、くつ等にいたしましても、大会社が出てきて、この零細業者を圧迫していく、こういうことになるから、両方の保護を受けないということになってしまって、ただ観念的に、身分上の差別はないのだという観念論に終止してしまって、その結果、実際は逆に生活がますます困難になってきたというのが、今日の状態です、どうしても、これはその経済上の立場から直してやる必要がある。ということは、区別があるという実情を一応認めて、そしてその人たちに特別のことを考えてやる、こういう政策をとっていかなければならぬ。それが昭和二十八年以降、そういう政策をとることになったにかかわらず、今日まで行われておらぬという状態なんです。そこで、これは今、小笠君も言われましたけれども、なるべく協同組合化ということを促進させて、その協同組合に対して、共同施設に優先的に補助金その他を出してやるとか、あるいは融資の道を優先的に講じてやる、こういう政策を企業庁あたりで積極的にとっていく必要があるじゃないか。先般の企業庁の代表である課長の話は、大会においては、不満足な声が満ち満ちておったという実情なんです。そこで、一つ認識をそういうふうに改めてもらって、昭和二十八年以降政策が切りかわった。それに合せていただいて、ぜひ考えていただきたいと思いますので、関連して私は意見を申し上げましたが、これに対する小笠君の答弁をお願いしたいと思います。
  81. 小笠公韶

    ○小笠政府委員 先ほどお答えいたしましたように、私は全く同感であります。そこで、経済的に自立の場をできるだけ多く作ってやることが先決だと思います。それには、やはり中小企業でありますので、協同組合化、それに対して政府が積極的な援助の手をできるだけ差し伸べるというような荒筋のもとに諸政策を進めていくことが必要だと考えます。今まで、御指摘のように十分でなかったことも、事実でありますから、大きな政治的観点から見ましても、絶対にそういう方向に持っていくように努力いたしたいと思います。
  82. 松平忠久

    ○松平委員 それを具体化する方法としては、こういう施策を推し進めたらどうかと思っております。それは、部落の多い県と少い県とありますから、それによって違うわけでありますけれども、一応考えられるところとしては、政府で適当なそういうような関係の予算を組んで、各県において同じくらいの予算を出させて、改善のための予算を組む必要がある。厚生省では、大体そういうことをやっておりますが、それと同じようなアイデアをもって、何か一つ特別の名目をつけた予算的措置が必要ではなかろうかと思います。同時に、各県では、これらの人たち経済を改善するための特別の経費を、予算に計上している県が多いのであります。そのうちの幾分かは、下水の改善であるとか、水道の補助金であるとか、そういうもののほかに、零細企業に対する助成制度をとっております。そこで、この地方の助成制度と国の助成制度とを結びつけていくことによって、地方をしてもっと積極化していくことが、手っとり早いやり方ではなかろうかと思いますので、この点、一つ研究をお願いしたいと思います。
  83. 田中武夫

    田中(武)委員 私も、もっと具体的に御質問したいと思っておったところ、ただいま松平委員からも、だいぶ御意見も述べられましたし、阿左美委員からも、なお質問があるそうでありますから、時間の関係もありますし、私は最後にこの問題について希望を申し上げて終りたいと思います。先ほど、松平委員もおっしゃいましたが、平等だといっても、出発に当って、すでにハンディキャップがこれらにはついておる。だから、同じような施策をもって臨んだら、いつまでたっても、この間隔は縮まらない。今までおくれているところ、しいたげられているところに対しては、特別の予算をつけるとか、金融の方法を講ぜられるとか、職業指導をやるとか、こういうことをやらなければ、幾ら平等といったって、そこまでいかない。経済上の平等がそこまでいかなければ、身分上の差別が出てくると思う。そういう点から、この問題の実態を見ていただきまして、表面だけを見ることなく、その基本的な根本を見ていただきまして、これらの部落産業のために、中小企業庁あるいは通産省の特別な措置を要望いたしまして、本日はこの程度にいたしておきます。
  84. 小平久雄

    小平委員長 阿左美君。
  85. 阿左美廣治

    ○阿左美委員 私は総合的基本政策に対しましては、いろいろお伺いいたしたいと思いますが、本日は時間もありませんから、一部の問題について、簡単にお伺いいたしたいと思います。現在、中小企業、ことに繊維工業に対しましては、非常な不況が参っておりまして、絹、人絹は申すに及ばず、最近、毛織物に対しまして、非常な不況が招来しておりますので、このままこれを放任しておきますれば、業界は瀕死の状態に立ち至りまして、倒産者が続出する結果になると思うのでございまして、これは一日も捨ておくことのできないような、きわめて緊急な問題になっていると感ずるのでございます。そこで、私の手元に、毛織物業界から陳情が参っておりますので、それを朗読いたします。   毛織物業界は、需給の不均衡と採算割を改善するため、昭和二十九年十一月日本毛織物等調整組合連合会を設立し、総合調整計画を設定して織機の登録、新増設の抑制を中心とする生産設備の制限と、未登録織機の使用禁止、登録織機の運転制限による生産制限等の調整事業を実施して参りました。   その間昭和三十年五月二日中小企業安定法第二十九条の規定による「毛織物業等生産設備制限規則」が公布施行され織機の新増設は非組合員を含んで禁止されましたが、毛織物の生産は依然として過剰の一途を辿り、更には昨春来の金融引締、原糸価格の不安定による織物価格の影響等と相俟って最悪の事態に直面しております。   もとより業界においては昨年八月より主要産地の協同組合を中心に三割の自主的申合せ操短を実施して、生産の抑制と在庫の調整および取引の改善等の策を講じて参りましたが、一部の業者の自主的操短のみでは実効を挙げることは出来ず、不況の様相は深刻の度を加えて誠に憂慮すべき状態に陥っております。   不況の原因は諸種の経済情勢の変化によるとはいえ生産の過剰からくる需給の不均衡がその根源となっていることは衆目の等しく認めるところであります。   羊毛紡績業界においても、梳毛糸については政府の勧告により二十五%、紡毛糸については日本紡毛調整組合において二十八%の生産制限を実施しておりますが、生産の過剰からくる需給の不均衡と価格の不安定は羊毛工業全般が直面している最大の不況の要因であります。   そこで本会は、紡績および織物の両業界が相呼応して生産調整を実施して過当競争を防止し、秩序ある生産態勢を確立することが急務であると考え去る十二月二十三日臨時総会を開催して織機の三割封緘(二台の基礎控除により実質は二割となる)による生産調整を即時実施することを決議し、併せて政府に対しても中小企業安定法第二十九条の規定に基くアウトサイダー命令の即時発動と右の生産調整に伴う資金需要の増大に対する長期かつ、低利資金の融資等強力な金融措置を要請することを決議致しました。   業界の安定を図るための調整は、もとより調整組合の自主的活動に俟たなければなりませんが、企業数において僅かであるとはいえ強力な非組合員が存在し、その事業活動が自由に放置されたならば組合の活動が阻害され、かつ、常に組合員の心理的動揺を招いて団結を弛緩せしめ、ひいては組合の弱体化を招くおそれもあって今後の調整活動は極めて困難となります。   本会は調整事業実施の機構を一層整備強化するとともに、全業者が一丸となって深刻な不況を克服するためには中小企業安定法にもとずく政府の命令を得て需給調整事業の効果的運用を行う以外に途はないことを確心し、通商産業大臣宛同法第二十九条命令の即時発動を申請致しておりますので、同命令発動の即時実施と強力な金融措置による業況の回復と業界の安定維持について格別の御配慮を賜り度く茲に参考資料を添え陳情致します。  こういうのが参っておるのでございます。  私は、もとより二十九条命令は、自主的に行うべきものでありまして、業界の要望により、また団結によってなすべきものであって、強制的にやるべきものでないと信ずるのでございますがいろいろな事情から考えてみまして、現在のわが国の毛織物に対しましては、確かに過剰生産である。ことに毛織物には、絹人絹よりも資金需要が増大するのでございまして、金融引締めというような影響は、特に毛織物には、相当の影響があることと思うのでございまして、どういたしましても生産を調節するという以外には不況対策はないと私は信ずるのでございますので、自主的にこれを完全に行うことができ得るものでありますれば、これは何をかいわんやでありますけれども、どうも中小企業一つの特異性といたしまして、なかなか自主的には行おうとしても行えない。つまり、中小企業というものは、団結に乏しいということと、倒れるまではやらねばならぬ、倒れて終るというようなことでございまして、どうしても、その間におきましては、何らかの行政指導が必要だと私は思うのでございまして、その道は確かに二十九条の発動命令以外にはないと私は信ずるのでございます。そういたしまして、お互い業界がこれに協力いたしまして、生産の調節をする、そうして価格の安定をはかるということ以外には、確かに私は道はないと信ずるのでございます。いろいろ二十九条命令の発動をするにおきましては、政府におきましても、その事態を大いに把握しなければならぬと思いますが、もうすでに二十九条を発動する時期は来ておるのじゃないか。研究したり調査したりする時期は過ぎておる、即時発動する必要があると私は考えますが、これに対しまして、繊維局長中小企業庁長官にお伺いいたします。
  86. 小室恒夫

    ○小室政府委員 毛織物の不況については、お示しの通りの状況であります。これが対策として、需給調節を強化する必要があるということも、その通りでございます。従いまして、毛織物の調整組合連合会で、三割封緘を二月から強制的に実施したということは、適切な処置であると思うのであります。また、これを関係業界、インサイダーとアウトサイダーを問わず協力してもらうことが、方向において望ましいということは私ども考えております。実はこの連合会で、二月からそういう生産調整を実施するということに関連しまして、アウトサイダーの中で、一番有力な羊毛紡績会に入っておる兼営の織布の会社でありますが、これに対してはこの三割封緘に協力するようにという意味の通牒をすでに出しておって、その方の業界も原則的に協力を約束しておるような状況であります。むろん、法律的にいえば、二十九条を出すということは、非常にけじめがはっきりするという面がありますので、私ども、そういう方向で今検討しておりますけれども、しかし、実は今毛織物の方では、ちょうど対米輸出その他の輸出の面で、船積みの時期も切迫しておるような契約も相当ありますし、そういうふうな輸出について、二十九条発動がどういう影響があるかというような点も、十分検討しなければなりませんし、また二月からは羊毛連合会で生産調整を実施してきた関係で、アウトサイダーとの関係で、なお調整を要する点もありますから、そういう点について、至急研究し、調整した上で、二十九条の発動という方向に進んで参りたいと考えておるわけであります。
  87. 川上為治

    ○川上政府委員 今、繊維局長からお話がありました通り、私どもの方としましても、この生産調整に対しまして、十分協力をいたしまして、現在いろいろ検討いたしております。従って、どうせ出すということであれば、すみやかに出した方がいいと思いますので、その点十分考慮して、善処したいというふうに考えております。
  88. 阿左美廣治

    ○阿左美委員 私は、もうすでに時期が来ているのではないかと思う。いろいろと御研究はけっこうでございますが、輸出の問題に対しましても、アウトサイダーに、やはり二十九条命令において協力させるということですから、二十九条命令が出たからといって、輸出に対する影響というようなことはないと考えるのでございます。全部の業者がそういうことを要望しておるのでして、尾西毛織調整組合の理事長渡辺治彦、名古屋毛織調整組合理事長渡辺健之助、岐阜県毛織物調整組合理事長渡辺六一、津島毛織調整組合理事長吉原一之、関東毛織物調整組合理事長佐藤卯三郎、尾北毛織調整組合理事長水野高三郎、泉州毛布調整組合理事長深井弥之助、三重県毛織物調整組合理事長二井四郎、京都府毛織物調整組合理事長上田堪一郎、こういう各業界の代表が、もう全部要望しておるわけでございますから、もはやこれを調査するとか、研究するとかいう必要は、私はないと思うのです。関東も入っており、全部でございますから、即時この二十九条命令の発動をやっていただくことが、業界の不況対策としては、最も可能な対策だと考えますので、その発動をする時期等を一つお示しいただくことができれば、業界はまことに不況対策として安定することになると思います。その時期がおわかになりましたら、一つ御言明を願いたいと思います。
  89. 小室恒夫

    ○小室政府委員 御趣旨はよく了解いたしますし、できるだけ早い機会に、二十九条の発動に持って参りたいとは思っておりますが、ただ二割ばかりアウトサイダーもありますし、二月から始めた生産調整について、十分アウトサイダーとの間の意見調整もやらないで二十九条を強引に出すということは、中小企業行政としても、あまり前例のないことでありますので、やはりその間の調整を十分施した上で、できるだけ早く出すということで参りたいというのが、私の考え方であります。
  90. 加藤清二

    加藤(清)委員 関連して。ただいま阿左美委員から、だんだんごもっともな御発言でございますし、すでにまた本件に関しましては、小室繊維局長は、もうプロフェッサーでいらっしゃいますから、あえて蛇足を加える必要はございませんが、この際、私どもの政策審議会でも、研究いたしました結果、業界の要望にこたえるのが妥当であろう、しかもその時期は一刻も早い方が、なおよいではないか、こういうことになりましたので、私ども意見を申し述べて、答弁をわずらわしたいと思うわけでございますが、ただいまお読みになりましたように、これは一地区でなく、全国の毛工が全員一致した意見でございますと同時に、今、小室さんがおっしゃいましたように、羊毛、紡績会の方も、これに賛成をいたしております。  もう一つ考えなければならないことは、これを消費、販売する方の関係でございます。全日本既製服連合会の会長岩井さん、同じく日本毛織物商業連合会の菅さん、こちらからも同じ趣旨の陳情が出ておりますし、片や、ただいまお話のございました輸出部門を担当しておられます毛麻輸出組合の理事長木村さんにも尋ねてみましたところ、ここもやはりそうすべきである、こういう御意見でございます。こうなりますと、これは全員一致した意見でございます。ただ、残るのは、この件が、消費者にどのような影響を及ぼすかの問題でございます。実は、消費者をほんとうに代表する消費生活協同組合その他にサウンドしてみましたところ、業界が倒れてしまってからではかえって消費者にも迷惑が来るであろう、従って、ころばぬ先につえをつけるべきである。こういうことで、ともすれば、統制であるとか、あるいは調整であるとか、相談であるとかいう点については反対を唱えがちな向きも、やや賛成でございます。ただ、ここに考えなければならないことは、操短の結果生ずる首切りとか、帰休とかいう労務問題でございますが、その点について、もし首を切るというようなことがあるならば反対であるという意見がございました。そこで、全国の毛工の理事長に、その点をいろいろ問いただしてみましたところ、ときに帰休をしてもらわなければならぬことが起り得るかもしれないけれども、首を大量に切るというようなことは考えられないのだ。縮小というても、これはスクラップ・ダウンをするのではないのだ、一時操短をすることによって、やがて輸出が伸びる、販売面も伸びていく。そういう見通しがつくので、今までよく働いてくれた人たちの首を簡単に切るというようなことは決していたさないのだ。特に毛織は、高級な技術の要る場合もございますので、熟練工を切るなどというようなことは絶対にやらないのだ、こういう言明でございました。そこで、諸般の情勢を判断してみますと、もうやるべきである、こういうことが考えられるのでございます。  あとは、簡単にいたしますが、第二点で、さきに本委員会において、絹人絹操短の決議が満場一致で可決されておりますが、これをほんとうに完遂する意味において、なお毛の方もこれに相呼応すべきではないか、こう考えられます。なぜかならば、毛織規格と申しましても、いわばオール純毛というのもございますけれども、オール・スフという規格もございます。特に輸出の中にもオール・スフでもって毛織物規格と相なっているものもございますので、片や操短しておりましても、片やアウト・サイダーが、がちゃがちゃとやり、あるいは毛織業界がスフ等をがちゃがちゃやっていた日には、さきに行われました本委員会の絹人絹の決議、これが十分に行うことができないおそれがなきにしもあらずでございます。従いまして、私はこの際、阿左美委員の御発言に、心から敬意を表すると同時に、ぜひ早急にこのことが実施されるように要望したいと思います。  そこで、繊維局長にお尋ねしたいのですが、ぜひ一つ二月の繊維審議会に本件をかけていただきたいと存じますが、もしそれが行われないとしますと、またここに一、二カ月延びる。そのことは、やがて春物の値切れのみならず、夏物の問題にも大きな影響を来たして参りまするし、やがて冬物の糸の仕入れにも影響がございますので、おそれ入りますが、ぜひ本月行われまする審議会に、この問題を議題としてかけていただきたいと存じておりますが、いかがなものでございましょうか。
  91. 小室恒夫

    ○小室政府委員 御要望はよくわかります。私どもも、できるだけ、先ほどから申しておるように、アウト・サイダーとの関係の調整に努めたいと思っておりますが、時期についてはっきり申し上げることは、この際差し控えたいと思います。
  92. 小平久雄

    小平委員長 残余の質疑は次会に譲ることにいたします。  次会は明十三日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。     午後一時十二分散会