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1958-03-25 第28回国会 衆議院 社会労働委員会文教委員会連合審査会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年三月二十五日(火曜日)     午後一時三十九分開議  出席委員  社会労働委員会    委員長 森山 欽司君    理事 植村 武一君 理事 大坪 保雄君    理事 田中 正巳君 理事 八田 貞義君    理事 滝井 義高君 理事 八木 一男君       小川 半次君    小島 徹三君       田子 一民君    中山 マサ君       藤本 捨助君    古川 丈吉君       山下 春江君    赤松  勇君       井堀 繁雄君    五島 虎雄君       中原 健次君    長谷川 保君       吉川 兼光君  文教委員会    委員長 山下 榮二君    理事 稻葉  修君 理事 高村 坂彦君    理事 坂田 道太君 理事 山中 貞則君       清瀬 一郎君    杉浦 武雄君       千葉 三郎君    並木 芳雄君       山口 好一君    小牧 次生君       野原  覺君    平田 ヒデ君       小林 信一君  出席国務大臣         文 部 大 臣 松永  東君         労 働 大 臣 石田 博英君  出席政府委員         文部事務官         (大臣官房総         務参事官)   齋藤  正君         文部事務官         (社会教育局         長)      福田  繁君         労働政務次官  二階堂 進君         労働事務官         (大臣官房長) 澁谷 直藏君         労働事務官         (職業安定局         長)      百田 正弘君  委員外出席者         文部事務官         (初等中等教育         局中等教育課         長)      杉江  清君         文教委員会専門         員       石井  勗君         社会労働委員会         専  門  員 川井 章知君     ————————————— 本日の会議に付した案件  職業訓練法案内閣提出第九三号)      ————◇—————     〔森山社会労働委員長席に着く〕
  2. 森山欽司

    森山委員長 これより社会労働委員会文教委員会連合審査会を開会いたします。  先例により委員長の職務は私が行います。  職業訓練法案を議題とし審査を進めます。本案につきましてはお手元に配布してあります資料によって趣旨は御了解願うこととし、直ちに質議を行います。山下榮二君。     —————————————
  3. 山下榮二

    山下(榮)委員 労働大臣に二、三お伺いいたしたいと思うのであります。まず最初に今審議されておりますところの職業訓練法案について伺いたいと思うのでありまするが、学校教育における職業教育労働省関係職業補導とどういうふうに違うのか、その辺をお聞かせ願いたいと思います。
  4. 石田博英

    石田国務大臣 学校におきましては、全般的に職業につくに必要な基礎的な教育重点を置かれる。従って教科内容が私は第一に違うと思います。われわれの方では、その地域に生じておりまする雇用の状態ににらみ合せまして種目を選定いたしまして、それに合うような教育訓練をいたします。  それからいま一つ対象は、私の方は学校教育と違いまして、限定をいたしておりません。学校教育を終った者を広く対象といたしておるわけでございます。
  5. 山下榮二

    山下(榮)委員 かってわが国においては大東亜戦争前あるいは戦争の最中にかような職業補導方法がとられて、当時はたしか、当時の商工省、今の通産省の所管であったと私は記憶をいたしておるわけでありますが、世の中の産業構造は一変いたしまして、今やオートメーション化時代に入って参っておるのであります。ことに職業教育技能訓練と申しましても、こういうオートメーション化時代に、各国がそれぞれ進歩せる産業政策をとっておりますときに、労働省考えておられるようなただ単なる職業補導教育だけでは、もう時代要請にこたえることはできないのじゃないかという感じを持つのであります。やはり根本的に科学の基礎学から教えていって、そうして初めて、旋盤を回すにいたしましてもその原理から、数学的にも科学的にも個々の個人に会得される、こういうことになってこなければならぬと私は考えるのでありますが、今ここに試みておられる職業訓練法に基く職業教育というのは、そういう方面に対しては一体いかなるお考えを持っておられるか、大臣のお考えを伺いたいと思うのであります。
  6. 石田博英

    石田国務大臣 学校教育教科内官時代の進展に伴って進歩をいたしまして、そうしてそのときどきの要請に応ずる訓練にたえられるような教育課程をとっていただくことを、労働省といたしましても希望いたすわけでございます。私の方でやろうと思っております職業訓練におきましても、もちろん基礎的な知識を伴いつつ教育をしていかなければならぬことは言うまでもないのでありますが、現在私どもの方としてはやはり実務の訓練重点を置いて、そしてその場所、そのときに要請される職種に応じて訓練をやって参るつもりでございます。
  7. 山下榮二

    山下(榮)委員 大臣のお言葉によりますと、ただ単なる職業教育だけのようにうかがえるのですが、この内容をいろいろつぶさに見てみますると、数学その他の基礎的な学校教育に匹敵するような教科科目等も相当設けられておるようであります。時間数の制約等も相当大幅に行うことが規定されておるようでございます。もし私が申し上げるようであるといたしますならば、これは一つ文教関係行政に関する事柄ではなかろうかということも考えられるわけでありますが、文教関係といえば、長年わが国はその担当は文部省がつかさどってきておることは皆さん承知通りでございます。今大臣の御答弁だけのようでございますと、労働省所管としての単なる職業教育にしかすぎないような感じがするのでありますが、これをつぶさに検討してみますと、必ずしもそうではないのじゃないかというふうに見受けられるのですが、もっと大臣からこの教科内容教育内容について伺いたいと思うのであります。
  8. 石田博英

    石田国務大臣 ただいま労働基準法によってやっております技能者養成機械工教事項と、それから高等学校機械工作課程と比較をいたしてみますと、たとえて申しますと、実習の時間が高等学校では二十五時間に対して、技能者養成機械工教習事項では九十八時間やっております。それから外国語その他機械をやるために必要な基礎的な学科を比べますと、高等学校の方が三十三時間に対して、私どもの方でやっておりますのが十九時間であります。実技を教えると申しましても、それに必要なある程度の知識を教えなければなりませんから、こういった関係した学科も教えておるわけでありますが、重点の置き方は今申し上げた通りであります。それから今まで現に労働基準法あるいは職業安定法でやっておりましたものを総合的に統一してやりたい、もちろんその教科内容その他につきましては、職業訓練審議会一定訓練基準というものを作りますから、今ここで申し上げたものとは変更があるかもしれませんが、重点の置き方は今まで申し上げた通りであります。
  9. 山下榮二

    山下(榮)委員 若い青年学徒諸君に大きな将来の希望を与えつつ、いろいろの教育あるいは職業につかしめることがきわめて重大なことでありまして、さような面から考えますと、今ここへ労働省所管として提案されておりますところの職業訓練法に基いて教育を施される職業教育というものは、一体進学の道が開かれておるのかどうかということを伺いたいのでございます。やはり青年には希望を与えて参らなければなりません。自分はそれだけでもうしまいで、とまりだというのでは希望が持てないのであります。文部省所管でございますならば、それぞれ進学の道が開かれる制度があろうと思うのでありますけれども労働省所管で区切って参りますと、その辺のことがなかなか困難ではなかろうかと思うのでありますが、こういう辺に対するところの大臣考え方進学その他の道は一体どういうようにお考えになっておるのか伺いたいと思うのであります。
  10. 石田博英

    石田国務大臣 一般の学校、たとえば定時制とか青年学級とか、そういうところへ通うことを妨げておるわけではありません。もう一つは、たしかこれは、私はっきり覚えておりませんが、学校教育法改正いたしまして、私どもの方の機関教育を受けた者も、その学科はやはり高等学校教育を受けた者に準ずるような取扱いをするように改正される、その間の資格その他を得るための所要の措置はとってあるはずでございます。
  11. 山下榮二

    山下(榮)委員 ただいま労働大臣答弁を聞きまして、ますます私は疑義を深くいたすのであります。そういう教育法等関連をいたしまして行われるということになりますならば、これはまた当然文部省所管で行わなければならぬ結果に相なるのではなかろうかと思うのです。文部大臣がお見えになったのでありますが、こういう今労働省から提案されておりますところの職業訓練法等に基く職業教育、こういうものが文部省所管として進学その他の道を開くということが、青年希望を与える、文部省としても当然さようなことを考えられるべきではなかろうかと考えておるのですが、文部大臣は一体これらに対して、いかようなお考えを持っておられるか、伺いたいと思うのであります。
  12. 松永東

    松永国務大臣 山下委員の御質問にお答えします。この職業訓練法は、労働省所管するものでありまして、主としてすぐ目前に仕事に従事している青年たちを、仕事に役立てるように訓練していく、こういう目的なのです。私ども所管いたしております職業教育の方は、基礎学を教えておる。そうしてあなたがさっき言われた通り、だんだん昇進していくという道に進ましていく、こういうねらいなのです。従って重複はいたしません。しかしお説の、青年に明るい希望を持たせていく、そうしてどんどん頭をみがき、腕を進めていくというようなことも、まことに望ましいことであります。そうした青年たちはやはり定時制教育を受ける、あるいは通信教育を受けるとかという方途に、やはりつかせたい。そこでそうした青年労働省所管職業訓練に従事しております場合には、それはやはりその従事しておる科目によって、定時制教育を受けたものの中に点数として計算します。そうしてやはり進学にそれを利用する、こういうふうな制度にしたいというふうに、私ども考えて進めておるわけであります。
  13. 山下榮二

    山下(榮)委員 今文部大臣のおっしゃるように、青年諸君希望を持たして向学心を燃えさしていくということのためには、教育法の中にも御承知通り高等学校等については定時制等制度が設けられておるのであります。さらにこの高等学校の中にも別科制度があって、そういう職業教育をできる法的な制度も設けられておることは皆さん承知通りでございます。今ここに職業訓練法という法律ができて、全国各地に多くの総合職業補導所というのですか、訓練所というのですか、多額国費を投じて建設されることは、わが国産業発展のためにはきわめて私は喜ばしいことではあると思うのでありますが、こういう教官法制度法律的には具備されておるわけでございますから、これらを活用いたしまして、真に教育軌道に乗っけて、青年諸君希望を持って勉強のできるような体制に私は持っていくということが、教育本来の考え方であり、また経済的に許し得ない諸君も、定時制その他の制度が設けられておるのでございますからして、そういう点を勘案されて、私はこれらのことが運用されるということに持っていくべきではなかろうか、という感じを持つのであります。これだけの多額国費を投じて行うことは、ひとりただ単なる職業補導という考え方ではなくして、もっと広く学校教育にもこの問題を考えて行われるべきではなかろうかと考えておるのであります。そういう点に対しては一体文部大臣いかようにお考えになっておるのですか。
  14. 松永東

    松永国務大臣 御指摘になりました点は、まことにごもっともでございます。文部当局といたしましては、仰せ通り、そうした通信教育等によって修練をいたしておりますところの青年たちを、何とかして一定軌道に乗った学問をさせるように、今の定時制教育とかいうふうで修練させたいと考えております。しかし労働省として御考案になっておりますところの職業訓練法、これはたとえばこの町あるいはこの市とかに、ちょっと腰かけというのはおかしいですが、一時的に仕事をしている人、そういう人々にあすからの仕事に事欠かぬように修練をさしてやる、こういうのがねらいどころだと思う。従って今後四年なり三年なり経過したところで、それにみがきをかけるという修練方法は、仰せになった今の定時制教育あたりでやらした方がいい。またそういう制度文部省内では設けていることは御承知通り。さらにまた文部省といたしましても職業教育の面に特段な別個なやり方をしたいというので、今研究していることは山下委員承知通り。ですからこれは目的が違うというふうに私は考えております。
  15. 山下榮二

    山下(榮)委員 今行われようといたしているこういう制度と、あるいは文部当局等でもお考えになっておりますところの今後の産業教育産業学校とも称すべき考え方等との関連は、一体どういうふうにお考えになっておりますか、伺いたいと思います。
  16. 石田博英

    石田国務大臣 文部省学校教育職業教育を加味し、それに重点を置いて進められていくことは、われわれとしても強く希望するところでございます。しかし先ほど冒頭にも申し上げました通り対象教科内容がはっきり違っております。対象は、文部省教育一定年次の人を対象といたしておりますが、私どもの方は学校教育を終った者から、年令、性別その他に差をつけずに、そのときどきのその場所の必要とする職業を身につけさせる。重点実技に置いてやっているわけでございます。重複を避けると同時に、相互に関連を持たせるという点は十分考慮して、密接な連絡をとって行なっているものであります。
  17. 山下榮二

    山下(榮)委員 この職業教育は、御承知通り企業の中にもそれぞれ養成工というのですか、制度がありまして、いろいろ訓練を各企業会社が行なっているのであります。さらに今までも御承知通り、それぞれ各府県におきまして職業補導機関を持っておるのであります。さらに今ここにこういう大規模な訓練法を出して、職業訓練が行われようといたしておりまして、考えてみますと、あまりにも複雑多岐にわたり過ぎるのではないかというきらいもないではなかろうと思うのですが、この法案要綱等を見ますると、これらの統一調整方法考えられてはおるようでございますが、各企業会社内におけるところの職業教育、あるいは今ここへ法案が出て参りましたこれらの訓練法との関連というのは、いかようにお考えになっておるか、労働大臣のお考えを伺いたいと思います。
  18. 石田博英

    石田国務大臣 ただいままで労働基準法でやっておりました技能者養成、それから職業安定法でやっておりました職業補導、これを全部この職業訓練法の中に統合してあるものでございます。そこで一本にまとめてやっていこう、こういうことであります。
  19. 山下榮二

    山下(榮)委員 法律的には一本にまとまることになるであろうと思うのですが、これは実質的にはどういう取扱いになるのか、ちょっとこの見当がつきにくいと思うのですが、たとえば今の訓練法に基き方々に作っておる職業訓練所を卒業する場合は証書を渡す、こういうことになっておるようであります。そういたしますと、各企業会社内において二年なり三年なりの年限を経た者と同一の技能上の資格、何かそういうものを与えられる考えがあって、こういう統一をしようとされておるのか、その辺がちょっと私にわからぬのですが、いかようになっておりますか。
  20. 石田博英

    石田国務大臣 まず構想を申し上げますと、中央職業訓練審議会というものをこしらえまして、そこで技能訓練基準を決定いたします。そして、それからこの訓練法運営方法というものを御研究願うわけであります。その一つが各企業でやります職業訓練になります。企業でやりますうちに二つございまして、自分企業でやれるものが一つ、それからいま一つ自分ひとりではやれないものが固まってやるものが一つございます。また別に府県職業訓練課、あるいはそれができないところは職業安定課を通して現在やっておりますような職業補導所、あるいは総合職業訓練所というようなものを利用いたしまして、片一方では基礎的なもの、総合職業訓練所では専門的な教育をいたすわけであります。そのおのおのの間の訓練基準あるいは訓練内容というものを調整をいたしまして、へんぱのないようにやって参りたいと思っておるわけであります。そこで今度は修得した者について別個の試験方法をとりまして、そうしてそれぞれ資格を付与する、こういう予定になっておるわけでございます。
  21. 山下榮二

    山下(榮)委員 もう一つわからないのですが、たとえば電気にいたしますると、工場に変電所がある場合等は第二種以上の資格免状を持った者でなければならぬ。たとえば溶接工にいたしましても、溶接工免状を持っていなければ、その企業内で溶接はできないとか、いろんなそれぞれの規定がありまして、職業上の資格を有する場合が各企業会社内では多いのであります。そういう面に対しまして、たとえばこの訓練法に基いて、何々にはそういう資格を与えるとか、それらの点が一体どうなっているか、その辺を伺いたいと思うのであります。
  22. 石田博英

    石田国務大臣 今御指摘のような既存のそれぞれの法律でできておるものと、これは相剋するものではございませんで、それはそれでありまして、それ以外のものについて訓練を行うわけであります。
  23. 山下榮二

    山下(榮)委員 それ以外と言われるが、そこが私にはわからぬのです。電気の場合で申し上げますと、これは公式な学校でなければ一種、二種という免状はもらえません。しかし溶接工とかいうようなものになりますと、それぞれの府県条例に基きまして試験をやって資格を付与しておる。たとえばこういう訓練所を出る場合には溶接工のような資格を付与されるのかどうか、こういう問題であります。
  24. 石田博英

    石田国務大臣 これを出ただけで資格を付与されるということではございませんので、別個に試験をいたします。それからそれぞれの法律によってきめられておりますものは、その法律に従って今まで通り資格を付与して参ります。しかしこれで訓練を受けました種目につきまして、法律にきめられておるものの試験を受ける場合もございましょうし、それから既往の法律にない職種について試験を受ける場合もございましょう。そうして新しい資格を付与されるわけであります。
  25. 山下榮二

    山下(榮)委員 それでわかりました。そこで私は質問をもとへ戻しますけれども冒頭に申し上げましたように、進学制度は申すに及ばず、さような資格等を付与するというところに、こういう制度がなければほんとうの希望青年に与えることはできないのではないか、ということを先ほど申し上げたつもりでおるのであります。従いまして、私はこれほどの多額国費を投じて行うことでございますから、できることならば、やはり教育法に基きましてこれが正規の文教教育として施されてそれぞれの資格、それぞれの進学制度が付与される、こういうふうにあるべきじゃないかということをなおさら痛感いたしておるのであります。そういう道を開くためには労働省文部省と今までのうちに話し合いをされて、そういう若い者に希望、期待を与えつつかような制度を実行される、こうあるべきじゃなかろうかと考えるのであります。これはいまさら言っても始まることではなかろうと思うのですが、文部大臣はもっと積極的にこれらの点について前から話し合いをされなければならなかったのではないかと思うのですが、そういう点について文部大臣、一体どうお考えになっておりますか。
  26. 松永東

    松永国務大臣 これは労働省所管の今度案として出ております職業訓練法の問題と、私の方の、すなわち文部省所管定時制その他の青年訓練とは、先ほど来申し上げた通り目的を異にいたしております。それは労働大臣も触れられたことでございますが、職業訓練法規定してありますこの訓練は、学生、青年、少年とは限っておりません。さっき労働大臣も言われました通り、老若を問わず、年令を問わず、一定職業に従事しておる人々訓練させて、そうしてあすからの仕事に間に合うようにさせたい、こういうのがねらいどころなんです。私の方の青年教育は御承知通り定時制あるいは通信教育、こういうふうな方面で、家庭が富裕でない青年等に勉学の道を与えるというふうにやっておるわけであります。従ってその青年層人々が、右申し上げた職業訓練法修練をせられた人々には、やはりそれは単位制で共通した点数といいますか、その資格を認めまして、そうしてやはり定時制教育を受けたのと同じようにその資格は認める、そうしてそれは校長が認めて、やはりむだな仕事をしなかった、むだな修練をしなかったことにする、こういうことになっております。従ってそれによって訓練法所定訓練を受けたものと定時制の方とが重複をしない、さらに密接な関係を持って進ませることができるというふうに考えております。
  27. 山下榮二

    山下(榮)委員 御承知通り職業教育あるいは産業訓練、いろいろなものが今たくさんあるのでありまして、最近の産業構造というものは、冒頭にも申し上げましたように、非常な進歩発展を遂げて参ってきておるのであります。従いまして、これらの要請にこたえるためには、単なる従来のごとき感覚であってはならぬのはもちろんのことであるのであります。ただ単なる職業を会得するということだけではなく、もっと深く根底から教育を施して真にその仕事原理が理解されて産業に従事してこそ初めて魂の入った製品が生まれ出る、そうすることにおいて世界市場日本発展を遂げていくことができる、かように私は考えておるのであります。さような意味合いからいたしまして、今ここへせっかく提案されましたこれらの職業訓練法に基く職業訓練も、さような線に沿って今後ますます日本産業界に大きく寄与できるようにされんことを切望いたしまして、質問を終ります。
  28. 森山欽司

    森山委員長 次に井堀繁雄君。
  29. 井堀繁雄

    井堀委員 職業訓練法案三条と二十五条、二十六条の関係について具体的な点を先にお尋ねいたしたいと思います。文部省学校教育法の一部改正法律案の四十四条の二で、定時制に関する改正を今国会に提案されておりますが、これはおそらくこの法案との関連においてだろうと思うのであります。まずこの点について具体的な点を一、二お尋ねしておきたいと思います。  現行法による定時制は四年制をとっておるわけでありますが、この四年制の全課程の中で、訓練法案で言いますと第二十五条、二十六条の中にありますように、たとえば二十五条の一号に、公共職業訓練または認定職業訓練を修了した者に対して、労働省の省令で一応の技能検定に対する規定を明らかにしております。二十六条では、技能検定を受けた者に対して技能士という称号を与える、こういう法律による明確な規定ができておるわけでありますが、これとこの四十四条の二との関係の点について明確でないと思いますので、明らかにしておきたいと思います。これによりますと、政令に譲るようになっておるようでありますが、今日の定時制関係だけでこれを規定するという点にも問題があるようであります。それは後刻お尋ねをして参りますが、とりあえず定時制四年の課程を、二年の課程でこの訓練を受けようとする場合もあり得ると思うし、あるいは三年の段階で受けようとする場合もある。そういうような問題についてはあらかじめ明らかにしておく必要があるじゃないかと思う。高等学校定時制の一年に入ってすぐこの訓練を受けるというような状態が起きた場合でも、あと三年間というものはやはりこの法律による規制を受けるのか。もっとこまかく言いますならば、単位などについてもある程度明らかでありませんと、この三案で言っておりますように、労働省文部省のそれぞれの見解に食い違いがありますと非常に不幸な事態が起ると思う。こういう点はできるだけ明確に法律の条文の中にうたうべき性質のものではないかと思います。この点は一応事務当局からでけっこうでありますが、どうせこれは文部省令に譲られる事項ではないかと思いますけれども、この機会に明らかにしていただきたい。
  30. 杉江清

    ○杉江説明員 最初の御質問は、訓練法案の二十五条一号と学校教育法との関連についての御質問のようでしたけれども、その点、私はこの両者のここでの関係はないように考えておりますが、私の理解の仕方がり誤まっておりましたら、また御指摘いただきたいと思います。  それから四十四条の二の学校教育法改正につきまして、この規定の趣旨は、定時制高等学校に来ております生徒が、たとえばその事業内で職業訓練を受けております場合に、職業訓練で受けております学習を高等学校教育の一部とみなしていくということでありまして、そのときに、その生徒が二年になって訓練を受けるようになったか、あるいは三年になって受けるようになったか、その場合にどういう程度において単位を認めていくかということは、文部省で後ほど一定基準をきめまして、その基準に基いて校長が認定することにいたしたいと考えておるわけであります。
  31. 井堀繁雄

    井堀委員 澁谷さんにちょっとお尋ねします。学校長の認定にまかせるという文部省の見解のようでありますが、そうすると、職業訓練を受けようとする人から言いますと——この第三条で学校教育重複を避けると言っておるのはそういう点を意味するのではないかと思うが、その点を明らかにする必要があると思う。文部省から言えば、この点に関する限りは文部省所管でということになるのですが、これはやはり重複をそのまま残すことになる。ほかはまたお尋ねすることにいたしますが、具体的な一例で伺いたい。
  32. 澁谷直藏

    ○澁谷政府委員 職業訓練法案職業訓練学校教育との関係につきましては、前にも御説明いたしましたように、非常に重大な関係を持っておりますので、私ども訓練審議会の審議の過程におきましても、その後政府部内において訓練法案の立案に際しましても、文部省当局とは数次にわたって会合を持ち、十分懇談を遂げた結果、文部当局も今回の学校教育法等の一部を改正する法律案を提出するに至ったわけでございまして、その間において両者の間に意見の食い違いはないわけでございます。ただ第四十四条の二に書いてございますように、「技能教育のための施設で文部大臣の指定するもの」こういうしぼり方をしておるわけでございますが、この技能教育のための施設で、どういう施設を文部大臣で指定するかという基準が実際問題としては非常に重要な意味を持ってくるわけでございます。その基準はこの第四十四条の二の第二項に書いてございますように、前項の施設の指定に関し必要な事項は、政令で、これを定める。」政令で基準を定めていくわけであります。従いまして、この政令の内容を固める際に、文部省労働省と十分話し合いをいたしまして、職業訓練法の施設が十分にこの第四十四条の二の規定に適合するように、その点は遺憾なきを期して参りたい、こういうふうに考えております。
  33. 井堀繁雄

    井堀委員 そういう問題を政令に譲るということは非常に重大なことだと思う。私は、政令に譲ってもいいと思うけれども、譲る以前に、こういう問題については文部省労働省の間には明確な話し合いが成立してなければならぬはずです。労働大臣がいなくなったので、文部大臣にお尋ねしておきますが、政令でということになりますから、閣議でされると思いますけれども、こういう問題が政府の人々考え方で簡単にきめられるということは、きわめて重大なことだと思う。     〔森山社会労働委員長退席、山下文教委員長着席〕 文部大臣は直接関係がなかったのでありましょうけれども、私どもはこの第三条で重複を避けるという点を非常に重視しておる。この訓練を受ける場合には、定時制学校をどういうように扱うか、いろいろなケースが出てくると思う。最初は職業訓練法に基いて、ここでいう技能士になろうという志で就職の機会を得ようとしてこの訓練を受仕け人々が、途中でいろいろな関係から上級学校にコースを変えようということがあり得るわけです。その自由を奪ってはいけない。そういう場合に、文部省労働省との板ばさみの中で、この青年は将来を全く閉ざされてしまうような危険性が起ってくる、このことが一つ。これは文部省としては重大な点でありますから、お考えいただかなければならぬ。また反対に、その人が純然たる技能士を通じて熟練労働者もしくは技術者としての新しいコースを実社会で選んで進んでいかれる一つのステップになるわけであります。そういう場合には労働の基本的な条件を決する第一歩です。そういう場合に、文部省の方からこれとこれとの単位を受けなければいけない、これこれのことをしなければいけないということで制約を受けられるようになりますと、その人の一生を棒に振ってしまうということになる。私は、この法案では一番大事な点はここにあるし、この盲点は明確にしておかなければ、この法律は将来災いをなすと思う。これはあとでいうようなものでなくて、この際こういう方法で文部行政と労働行政の間についてはこういう合理的な交叉をして、どちらの道を選んでもその人の自由が保護され、その人の前途に何らの障害を与えないという規定をここで明らかにしておく義務があると思う。労働省考え方と大蔵省の事務当局の見解はまだ完全に対立しておる。文部大臣はこの点に対してどのような考えを持って臨まれるのか、この点を明らかにしておいてただきたい
  34. 松永東

    松永国務大臣 私の方では、今御審議中のこの職業訓練法とは別に、先ほど来この委員会で問題になっておりました通り職業に従事している青少年の人々の向学の気持を失わせぬように、こうした訓練法に基いて訓練した人々一定資格を与え、定時制で勉強したのと同じような、取扱いをしようというのが今の四十五条の二の規定なので従って私の方では、この四十四条の二に規定してある通り、技術教育のための施設で文部大臣の指定するものにおいて教育を受けているときに、学校長は、当該施設における学習を当該高等学校における教科の一部の履修とみなすことができるということで、こうして訓練法所定訓練を受けている人々をむだ骨折りにさせないように、そうしてまた合法的に将来進学できるようにする道は、これで尽されていると考えております。
  35. 井堀繁雄

    井堀委員 文部大臣はこの点について、常識的には理解できるでありましょうが、法律の条文でいきますと、今あなたの方で提案されておりまする四十四条の二というものは定時制に対する問題で、現行法では、普通は三年のところを四年に規定しているわけです。その四年の中で、一年の課程を終えてそちらに入る者もありましょう。三年の課程を経て入る者もありましょう。やや専門的になるかもしれませんが、そういう点について、三年の場合にはこれだけの課程を終了しなければいかぬとか何とかこまかいものを書くのだろうと思いますが、そういうことはあらかじめ明確にしておくべきものだと思う。これは本質的には政令に譲るべきものではなく、法律として出すべき筋のものだと思いますが、法案にそうなっておりますから、一応協力する意味で、審議の過程においてお尋ねしているわけです。先ほど事務的なものとして、事務当局から御答弁をいただいたのですが、残念ながら両方の答弁が食い違っているわけです。そういうわけでありますから、この問題はあとで労働大臣に伺いたいと思いますが、ついでに文部大臣にお尋ねしておきたいと思います。これは日本教育制度の大きな分れ目に立っている一つの試金石だと思う。ここでは第三条に学校教育法の問題と、それから青年学級振興法の問題を具体的に取り上げて、その重複を避け、合理的な処理をはかるということを明確に原則としてうたっておりますから、これは大事な点です。これは言うまでもなく学校教育法にしても、特に青年学級振興法というのは、やはり社会教育法の精神を受けている。もっと基本的には教育基本法の精神を受けて立っている。特に第七条には、日本教育基本方針として、勤労の場所における教育についてかなり重要な規定をしているわけです。ですから文部省、すでに教育基本法あるいは社会教育法あるいは青年学級振興法によって、こういう問題については一つの方向が明確になっていなければならぬ時期だと思うのです。この法律が施行されてかなり長い期間たっておる。私はそういう点が教育行政の、要するに日本教育の民主化という具体的な方向への踏み出しがおくれていて、労働省の方が職業訓練をこういう法律で行おうとする場合に非常に矛盾したものが出てくると思う。この基本法の精神通りにいけば、こういう矛盾は生じてこないと思う。でありますから、一番具体的な問題を先に取り上げてお尋ねをしておるわけであります。言うまでもなく事業場におって学校教育が受けられることによって、今たとえば熟練労働者として何年かその職場に働いておりまして、その間に通信教育その他の方法であるいは上級学校に進級の道を開くというような形が行われてこそ、教育基本法の第七条の精神というものは生きてくると思う。昔のように学校学校教育としてワクの中へ押し込めしまって、不幸にして最初高等学校に進級することができなかった、あるいは高等学校から上級専門学校や大学に進級できなくて、一定の期間訓練を受けたりあるいは実社会に入って生活の道を自分の労働によって立てているような人が、再び上級学校に進級の道が許されるような条件が整ったときには、いつでも大学や上級学校に十分進級できるというのが教育基本法の精神でなければならぬ。文部大臣はこの点に対してどういうお考えですか。
  36. 松永東

    松永国務大臣 申すまでもなく、いやしくも教育のことに関する以上は教育基本法に準拠しなければならぬことは当然であります。従って今仰せになりました問題も、先ほど来申しております通り四十四条の二で私は解決し得る問題だと思っております。要するに問題は、あなたが今仰せになった通り訓練法を受けて、そうして一生懸命ある仕事の、ある業種の訓練を受けているような、かりに学生とします、それが今度は進学しなければならぬというので、そうしてあるいは高等学校課程を受け、あるいはさらに進んで大学の課程を受けようとする志のある者に対しては、すなわち単位の共通を認めておりますから、そこでその訓練法に基く訓練によって修練したところの単位を確認しまして、校長が認定しまして、そしてそれによって進学の道を開いていくということで私は事足りるのじゃなかろうかというふうに考えております。
  37. 井堀繁雄

    井堀委員 今あなたの御答弁のように、実際これでいけば、それに越したことはない。今まではそういう道が閉ざされていた。初めてここで出てきたわけですから、非常にいい傾向なんです。だからそれを軌道に乗せたいという趣旨からお尋ねをしておりますから、誤解のないように願いたい。これは民主主義の先進国にあっては、学問の自由というものがそういうところに道を開いているところに学ぶべきものがあると思う。社労ではさきにスイスの事例などをあげて政府と私どもの間に質疑応答を重ねてきて、政府もまたスイスのようなああいう教育方法について、あるいは職業訓練について学ぼうとしている努力が明らかになっている。その一つの萠芽がここにあるわけなんです。文教政策と労働政策のここが肝心かなめのところなんです。その肝心かなめのところにいってわれわれに明快な一つの御答弁がいただけるということでないと、せっかくこういういい傾向のものが生まれようとしても日の目を見ないで終るのじゃないかという懸念があるからなのです。それでよけいなことのようであったけれども教育基本法の問題を引き合いに出し、またここであげておりますただいまの法律改正が必要であったりしておるわけです。ところが今あなたの御答弁になりましたように、またこの法律に書いてありまするように、訓練の検定を受ける範囲においては、そこで一応の、労働大臣があらかじめきめた条件に従って検定が行われるわけでありますから、これは公式に検定の制度ができておるわけです。それを受けた者は自動的に、ここで言うならば四十四条の二にある高等学校課程を終えた者と、すみやかに左から右へ、右から左へというところにいく、そういう状態が開けてこそこの教育と労働行政との間に、第三条における合理的なものが生れてくるはずだと思うのです。どうもそこがなめらかになっていない。特にわざわざお聞き願ったのは、労働省の当局と文部省の責任者との間で明らかになりましたように、片方では高等学校の先生の認定にまかせようとしておるし、一方は技能養成は労働省のを出た者にちゃんと資格を与えるのですから、資格を与えたものをまた校長がどうこう言い出せば、これはやはり日本の古いなわ張り中から一歩も出てこない考えだ。文部省の役人の中にはそういう考え方が強いそうだということを聞いておりますが、こういう問題を踏み切るときは、文部省労働省との中にそういう点に対するもっと明確なものがなければならない、そういう意味で御答弁をいただいておるわけであります。これは非常に狭い範囲を限定しているので、これから大きくなっていこうというのです。芽が出ていこうとしていると思うのです。この四十四条の二には定時制の問題を規定しているだけなのです。正規の昼間の学校に行けない者に対しては、三カ年で済むものを四年間と、一年よけい課している。修学の自由をそこから保障しようという法律なのですよ。それとこの技能訓練を受けた者、二十四条、二十五条によってきびしい規定を設けて、その試験を受けた技能士にこれと同一の資格を与えようというところにあるわけなのです。ずばりそのものを与えるなら与えるということが必要なのです。一方で与えたものをまた文部省に持っていってやり直すということはどうかということを聞いているのです。そういう点をもっとすっきりさせることができぬか、その程度のことができぬならば、教育基本法の精神などは言ってみたって意味をなさぬじゃないかということをお尋ねしているわけです。この点に対して、事務当局からでもけっこうです、こんなものを政令に譲るとか、あとに残さずに、ここで明確にしておく必要がある。
  38. 杉江清

    ○杉江説明員 職業訓練法第二十五条の技能検定は、学校教育法における教育目的と必ずしも一致するとは限らないのであります。やはりここに書いておりますように、労働者についてその技能向上をはかるために、そういう見地から一級、二級等の区分を設けてこの検定が行われるわけでありますけれども、その技能の程度が学校において行います、たとえば高等学校の技術教育内容と必ずしも一致するとは限らない。だからこの検定を受けた者がすぐに、たとえば高等学校の工業課程における技術訓練と同程度であるということを認定することは、建前の上からむずかしいことだと思うのであります。しかし両者同じような訓練を受けておる場合があるわけなのです。二重在籍をいたしまして、企業内の職業訓練施設に学んでおる者が定時制に来ている場合に、同じようなことを学んでおってはこれは二重負担にもなり、能率も阻害するから、そこで単位の共通を認めて、技能養成施設におりながら高等学校単位を得られるように、両方の長所を生かしながら技能者の養成がうまくいくようにしたのが今度の学校教育法改正でありまして、この二十五条の検定を受けた者が直ちに高等学校単位を認めるということは、建前からできないものだと思います。そこで、先ほど学校長がその単位の認定をするのが、何か二重だというような御意見もあったようでありますけれども、この点についてなおちょっと立ち入って御説明申し上げますと、まずこの四十四条の二の適用を受けます施設については、その施設を政令で定める基準、たとえば一定の施設設備を持つものとか、あるいはある程度の恒久性で持つものとか、あるいは教員資格等についてある一定基準をきめまして、それに該当するものを文部大臣が指定する。今度は具体的な問題といたしましては、その指定された施設におる生徒が、この定時制に通学しておる場合に、これをどういう学科について、それからどの程度の単位を認めるかという問題が起ってくるわけです。そういうときには、やはり文部大臣の定める一定基準に従いまして、個々の生徒についてどういう科目、それをどういう単位を認めるということを具体的に校長が判定するわけなんです。どうしてもこの制度の建前から、この技能検定のほかにそういう手続が当然必要になってくるものと私ども考えております。
  39. 井堀繁雄

    井堀委員 今事務当局で説明されることで文部大臣はおわかりになったと思うのですが、時間を節約する意味で率直に申し上げますが、ここの場合は、四十四条の二というのは、高等学校定時制に関することだけなんです。他に及ぼすのじゃありません。その定時制の卒業資格を認めるか認めぬかということだけなら、訓練法の中には二十一条以降、四章という一章を起して職業訓練指導員に対する厳密な資格規定している。いわば高等学校の校長と、この部分においては同一資格がある者を選ぶようなむずかしい規定があるので、こちらの方で指定したら卒業の資格を与えるというようなことを明確にすることができないことはないと思う。さっきからほかの問題を引き合いに出したのは、教育基本法の精神というものを理解していないためにそういう議論が出てくるということを言うためですが、私はそれを専門学校に入れる資格を認めろとか、大学に入れる資格を認めろ、これを無条件に認めろと言っておるのじゃないのです。一年の課程を出たあとの三年間の課程を、新制高等学校の卒業資格と同一の単位ならこれくらいの単位を必要とするということを条件を付して、この訓練所にそういう協定を結ぶということならわかるのです。しかしそれをまた高等学校の先生に単位の認定をさせる、だから二つの試験を受けさせなければならない、冗談じゃないですよ。学校は、四年間の課程法律できまっておるのですから、四年間の課程で——片一方は単位を修得しなければその資格を与えられぬということはあり得るかもしれない。それは何も高等学校の先生の認定を待つまでもなく、その指導員の認定でいいのじゃないか、労働省の認定でいいのじゃないか。その程度を何かぐずぐず言うところに、日本の文部行政の古さがふんぷんとしてにおっておるように思う。文部大臣に具体的な例を申し上げて御答弁いただいたらいいと思うが、私自身のことを申して恐縮ですけれども、私は戦前に八幡製鉄所の職工養成所に学んだことがある。入学試験は非常にむずかしい、時期によって違うけれども。乙種工業学校以上の試験を受ける。もちろん実習はやりますが、その四年の課程を終えて、今度は当時の県立工業学校に入ることになりますと、最初からやり直しなんです。さらに高等工業に進もうとしたら、その乙種工業学校の成規の課程を受けないと入学試験を受ける資格も認めない。だからそれをやり直して高等学校試験を受けた経験もある。実にばかばかしい。専門学校ですから、この場合は学校教育もやるのです。だから、そういうところに社会教育、勤労者教育の実体を見ていかなければならない。それを無条件に大学に進級できる道を開けとかなんとかいうのではない。しかしこれは一定資格をどこで与えるかということの初めのものなのです。しかも三年で済むところを、四十四条で四年間の年限を課して定時制を設けたのですから、この法律の精神を一方に受け入れるならば、そこを済んだらまた校長の認定を受けるなどということは、学校教育をあまり偏重しておる考え方から出てくる思想じゃないか。教育は、学校教育に限るなら、日本の古い教育制度一つも変りはない。そういうところに文部行政の新しい息吹きが出てきてもいいのではないか。こういう簡単なものに対しても学校教育尊重の主張に文部省がこだわるに至ってはいかがなものであろうかと思う。文部大臣に御答弁をわずらわすわけです。
  40. 杉江清

    ○杉江説明員 校長の認定は、結局そういった両者連繋して学習している生徒にいろいろあるわけなんです。ある一つの指定された施設から来る生徒だけじゃない、いろいろな生徒があり得るわけであります。また同じ施設から来る場合においても、生徒によっていろいろ成績も違うし、いろいろな点で差がある場合がある。そういうときに、ある一定基準でそれを一応チェックするということは、どうしても学校教育制度を確保するためには必要になってくると思うのであります。施設そのものがすでに指定された施設もある、指定されない施設もあるというふうに、いろいろな施設がありますし、その指定された施設でも、その生徒によっていろいろ条件が違ってくる。それでその受けた教習を高等学校教育と同じだとみなすについては、一応そこで条件を具備しているかどうかを調べる手続がどうしても必要になる。それを言っておるのでありまして、ここであらためて何か一々学力検査をして、その単位の共通を認めるということではないわけであります。だから一応手続としまして校長がチェックする段階がある。それをこの際法的には認定ということで表現しておる。こういうふうに考えられるのであります。
  41. 井堀繁雄

    井堀委員 同じことを答弁しているわけなんです。学校教育というものを最上のもののように考えておる。いつも優位に物を考えておるからそういうことを言う。この訓練法を読んでごらんなさい。何もこの訓練法は技術だけ修得させるんじゃありません。私は文部省の学問というものの考え方は間違っていやしないかと思う。僕はこれは手放しに物を言っておるんじゃなくて、第四十四条の二にしぼって質問をしておるわけです。何も校長の認定をさらに受けるというような制度を設けなくても、片方はこの法律でこれだけの資格を与えるということになったら、それでいいんじゃないかと思う。重複を避けるといって、これはさらに重複しているわけです。今までは四十四条の二項でよかったのです。今度またこれと重なるようなことになった。三条の精神と違うから言っているのです。どうしてそういうことを文部省はこだわるかということですね。それは文部大臣よほど考えにゃいかぬ問題です。今までの教育基本法は日本教育行政のよりどころであることは今さら言うまでもありませんよ。ちっとも進歩はない。これは文部大臣一つ見解を尋ねておくに私は十分価値のある問題だと思うから、お忙しいところをあなたに御出席を願って御答弁を願っている。事務当局は何回も繰り返し繰り返し同じことを言っているわけです。
  42. 松永東

    松永国務大臣 井堀委員の体験に基いた御質問、まことにごもっともだと思います。しかしこれは考えてみますと、この訓練法によって訓練を受ける人の修練と、文部省規定しておりまするこの学校教育法改正の案にあります四十四条の二の場合と、多少違うのじゃなかろうかと思う。それはこの訓練法に基く訓練青年ばかりじゃありません。じいさんもばあさんも中にはおりましょう。老若男女を問わない。従ってそれは技術の上においてはもうりっぱな技術者もおりましょう。しかしやはりこれは点数として認めるときには、一応校長が一部の履修とみなすことができる。今も政府委員からも言った通り、何もこれはあらためて試験をしようとかなんとかいうのじゃないのです。一応やはり校長は自分学校点数を認めるのには、やはりその履修の一部の履修とみなすことができるというくらいな規定のあるのは、これはやむを得ぬのじゃないかと思う。しかし御説明は私も重々もっともだと思う。特に文部省といたしましては、昼間汗あぶらを流して働いている青年、少年連中が、さらに夜のひまを一生懸命打ち込んで、そうして腕をみがき頭を練ろうとする、こうした青年層には、やはり特段な庇護をせんければならぬというのが建前でなければならぬ。ですから過重な二重の負担をさせたりなんだりするようなことは全然考えておりません。でありますから取扱い方法として、相当御説の意味を体して善処したいというふうに存じております。
  43. 井堀繁雄

    井堀委員 ぜひ善処をお願いすることにして、あなたはお忙しいようですからこれで私の質問を終ろうと思いますが、あなたの今の御答弁の中でちょっと気になりましたことは、この訓練法の二十五条に、あなたの御懸念になっているように、だれでも彼でも資格を与えるということにはなっていないのです。第二十五条の一にはこの技能検定を受ける資格を表わして、二には「前号に掲げる者に準ずる者で政令で定めるもの」、この「政令で定める」の中で、きっときついことをいうに違いない。だからその二に掲げるものは、私今質問対象にしていないのです。だからしきりに言っているように四十四条の二項という、具体的にいえば定時制に学ぶ人々のことを私は言ったわけです。これは一番大事なことですから、そういう道がだんだん開けていけば日本教育も漸次新しい方向に、いわゆる基本法の精神にかなった方向に踏み出そう。今まで一つも具体的なものはないんです。それに引っかかっているものですから私はきびしく言ったんです。あなたが善処するというのであれば、また政令に譲るところもだいぶあるようですから、そういう線で十分配慮されてこの法を生かすようにいたすべきじゃないか。これはひとり労働者の職業を訓育するというのでなしに、社会教育法や基本法の中にあるように、学問のための学問でなくて、学問というものは何のために学問をやるのか、そういう点に問題がある。そういう点で、きわめて限定された狭い問題にこだわるに至っては、依然として学校教育偏重、学校教育優先、肩書きだけがものをいっている、そういう教育をやっていたのではいかぬのではないかという大事な問題に関連いたしますから、くどく私はお尋ねしたのです。善処なさるという御意思がございましたら、この政令をお作りになるときに、この精神を十分尊重されて政令をお作りになるように私は要望したい。文部大臣に対する質問は私はこれで終ります。
  44. 山下春江

    山下委員長 ちょっと速記をとめて。   [速記中止]   [山下文教委員長退席、森山社会労働委員長着席〕
  45. 森山欽司

    森山委員長 速記を初めて。滝井義高君。
  46. 滝井義高

    ○滝井委員 大臣お忙しいところを非常にお気の毒ですが、この法案をなるべく早いところあげてくれというものですから、こちらも無理に勉強してきて質問をするわけでございますから、一つ御了承願いたいと思います。文部大臣しかいらっしゃらぬので、文部省関係にだけ限って質問をして、労働省関係労働大臣が来てからやらしていただきます。  現在の日本教育を見ますと、一つの曲りかどに来ておるのです。現在文部行政で非常に議論をされておる面が、大ざっぱに分けて私は二つあると思います。一つは民主主義的な国家として社会秩序を確立しなければならぬということで、道徳教育の問題がここ二、三年来非常に台頭してきたということ。そして道徳教育関連をして体操科、いわゆる号令復活——これも一つの秩序の問題だと思う。きちんと団体的な行動をうまくやらせるというのは、広い意味の秩序の問題だと思います。こういう道徳教育と、いわゆる号令復活、体操科、これが一つ論議の問題になっております。いま一つは、これは世界的な趨勢でございますが、科学技術文明というものに近代的な日本がおくれをとってはならぬ、こういう思想が非常に台頭してきたわけです。特にソヴエトの人工衛星の打ち上げ、あるいはICBM、IRBM、こういうものの発明から、日本の今までの文化偏重の教育ではだめだ、やはり理科教育というもの、すなわちそれが科学技術の振興につながる教育だと思いますが、これをやらなければいかぬ。大ざっぱにいって、こういう二つの面がここ数年来文部行政で非常に大きな論議を呼ぶ形になっておると思うのです。具体的にいうと、あとの科学技術の面で、具体的に教育の面に現われておるのが、たとえば義務教育の中の中学校における三年のコースになると、これを進学職業の二つのコースに分けなければならぬ。こういう論が出てきております。さらに中学から高等学校にいくと、高等学校においてもやはり職業進学のコースに分けなければならぬ。進学は、さらにこれを文科と理科に分けなければならぬだろうというような論議が行われてきて、中教審ですか、あなたの方の審議会等で職業教育といいますか、そういうものが科学技術教育関連しながら、非常に論議されてきておるわけです。そういう中で今回労働省は労働階級の教育をやり、新しい労働秩序を確立するためには、やはり労働教育をやらなければいかぬというので、今度の四百三十六億のたな上げ資金の中から十五億の金を積んで、昔の協調会に非常に似通った日本労働協会というものを作って日本の労働教育をやる。一方においては新しく雇用をする人、あるいは雇用されておったが、失業して今度新しく就職しようとするそれらの諸君には、やはり技能教育職業訓練をやらなければならぬ。こういうことで、いわゆる労働教育と相待って、ここに職業訓練法というものを新しく石田労政が出してきておるわけです。これは今言った一連の文部行政の流れ、曲りかどに来た日本の文部行政と、労働教育職業訓練というものとは、時代の流れからいえば違うものではない。たまたま軌を一にしてやってきておるわけです。従って世界的な風潮としても、日本産業と社会が要望をしておる面にたまたま二つの面は——たまたまかどうかわかりませんが、とにかく一致してきたわけです。だとすると、今回ニュー・フェースとして出てきたところの職業訓練法というものは、学校教育との関連というものをきわめて密接に持たなければならぬことは当然なんです。そこでさいぜんから井堀君もいろいろ言っておったように、職業訓練法案の三条で、公共職業訓練及び事業内職業訓練というものは学校教育重複してはいかぬというようなことがいわれておるわけです。  そこで私は大臣の認識を尋ねたいのです。この法律大臣は読まれておるかどうかわかりませんが、この法律によると、公共職業訓練所というものは三つに分れておる。そうしてその一つは、一般職業訓練所であります。一般職業訓練所というのは技能的な訓練をやるところなんです。それから総合職業訓練所というのは専門的な訓練をやるところなんです。それから中央職業訓練所というのは、学術の研究とか調査という幾分研究所的なニュアンスを含んでおるところなんです。そうすると、一体これらの一般職業訓練学校教育、特に中学校教育との関係です。学校教育法の中学校の目標、三十六条の一項二号をごらんになっていただきますと、「社会に必要な職業についての基礎的な知識技能、勤労を重んずる態度及び個性に応じて将来の進路の選択する能力を養うこと。」とあります。そうしますと、一体文部省は、中学校教育と一般職業訓練との関係をどういう工合に認識しておるかということなんです。一般職業訓練をやると、これは公共職業訓練を受けることになるから、技能検定を受ける資格が多分できると思うのです。中学校教育公共職業訓練の中の一般職業訓練との関係というものについてどういう認識を文部省は今持っておるのか。これは大臣でわからなければ事務当局でけっこうです。
  47. 松永東

    松永国務大臣 滝井さん御質問ですが、職業訓練法のうちの第二章公共職業訓練、そのうちの一般職業訓練、この訓練と中学の方とはおそらく関係がないのじゃないか。それは劈頭にお説きになった科学技術教育の振興を、これからやろうと企てておることはもちろんでございます。しかしそれはそれとして、中学を終えて職業に従事する青年たちが、この一般職業訓練所に入っても、それは中学、すなわち義務制である中学との関連性は別段とりたててないのじゃないかというふうに考えております。
  48. 滝井義高

    ○滝井委員 労働省、今お聞きでございますか、中学校教育と一般職業訓練と何も関係がないという御説明なんです。これは午前中のものとは幾分違う。ここに明らかに、学校教育法による学校教育との重複を避けると書いてある。あなたの方では、文部省教育課程審議会の中等分科会というものが、三十七年から中学校においても中学校技術科、中学校職業家庭科、こういうようにしたいという答申をしておるはずなんです。その場合に、こういう技術科というようなものは一体どういうことをやるかということ、明らかにこれは職業教育をやるわけなんです。それはさいぜん私が御説明をちょっとしたのですが、中学校において、すでに三年においては進学コースと就職コースというのに分けるという形をあなた方はお出しになっておるはずなんです。そうしますと一般職業訓練というものは中学校を卒業して、そしてその子供が、たとえば定時制の高校にいきながらいくこともあるし、あるいはそうでなくとも、すぐにいくことがあるわけなんです。そうしますと一般職業訓練で、中学校で教えたことをまた教えればナンセンスなんです。当然ここに有機的な連絡というものがなくちゃならない。ここに文部行政と労働行政との妙味が発揮されてこそ初めてこの法律は生きてくる。そうでなくて今の大臣の認識のように、それが関係ないということになれば——だから労働大臣が来てもらわなければいかぬのですが、さっき労働大臣に尋ねたら、それは学校教育との重複を避けてやります、重複は絶対いたしません、うまく連絡してやります、こうおっしゃった。それじゃまるっきり労働省文部省は連絡がないということを暴露したことになっちゃう。その点もう少し労働省から先にはっきりしてもらって、それから文部省の方の見解を聞かしてもらいたい。
  49. 松永東

    松永国務大臣 今滝井委員のお話しになりました中学のコースは、三年で進学コースと職業コースとで分けるということは、それは審議会からそういう答申が出ておる。出ておるのですけれども、これを進学コースとか職業コースとかいうふうに二つにことさらに分くべきものじゃないのじゃないか。ことに同じ義務制である以上、差別待遇するというようなことは避けなければならぬじゃないかというような議論も強くある。     〔森山社会労働委員長退席、田中(正)社会労働委員長代理着席〕 従って審議会の答申案を直ちにそのままうのみにするかどうかということには、まだきまっておりません。きまっておりませんが、しかしいずれにいたしましても私ども考えておりますところは、かりに義務教育の中学校の三年で職業教育を教えたといたしましても、それはほんの基礎的なもので、労働省の企てております訓練法によります訓練は、これは技術の上においてそうした一般的、基礎的なものとはもう少し違ったものじゃなかろうか。すなわち老若を問わず就業訓練をするのであります。それで端的に技術を教えて、端的に労働者としていろいろな仕事につかれるときの手引きをするというふうな教え方であって、従って義務教育の三年のときに選択科目として、かりに教えることがあるといたしましても、それと重複するようなことはないのじゃないかというふうに私は考えております。
  50. 滝井義高

    ○滝井委員 私はもちろん現実に進学とそれから就職とに、中学のコースが分けられておるとは思いませんが、実際具体的には、地方にいくともうそういう形で行われておるのですね、現実には行われておる。そうしてその上にさらに昭和三十七年度から中学校の技術科というものを——問題は技術科の教員がいないのですよ。だからあなたの方は昭和三十七年までには教員の免許法を改正して、少くとも工業教育のできる教師を養わなければならぬ、養成しなければならぬというのが、あなた方の計画でしょう。農業や商業はうんとおるのですよ。工業はいないのです。現在日本産業を伸展せしめていくためには一体何が不足しておるかというと、いわゆる工業技術者が不足しておるのですね。商業や農業の技術者じゃない。工業技術者、特に旋盤とか溶接とか、そういうものが不足しておる。この不足を補う以外には、日本産業基盤を強化して、輸出を増加しながら経済の成長をやることができないというのが今の見解なんです。だから当然日本教育も、さいぜんいったように二つの方向の流れの中で、科学技術を振興する、理科教育を振興しながら八千人の大学の卒業生をふやしていくというからには、当然基礎になる中学校の教師にも、ベテランの教師が充足されなければならぬ。またそこに行われる中学校教育というものが——いわゆる一般の職業訓練というのは、大臣の言うそんな高度なものではない。六カ月かそこらしか訓練しないのですよ。そうすると中学校を卒業した子供が多くいくのですから、中学校で習った三年間のものが、わずか六カ月加味されるくらいだから、中学校とそう大して変ったものではない。そうしますと中学校教育の土台の上にそれが行われるという形をぴしっととっておいてもらわないと、これは重複したら意味がないということになる。六カ月かせいぜい一年しか基礎訓練は行わないのです。だからどうも心配があるのは、文部省教育と、この労働省の一般職業訓練、これは都道府県がやるのですが、その一般職業訓練とがお互いに連絡をし、重複を避けて、きちっと有機的な連係のもとに行われてないといかぬのじゃないか、ということになりますと、どうも今の質問に対する答弁を聞いてみると、文部省初等中等教育局と労働省の方との間の連絡がどうも足らぬようであります。もう少しこれは密接な連絡をとってやっていただきたいと思います。  それからその次は高等学校教育です。これは四十二条の二ですか、高等学校教育の定義を読んでみますと、「一般的な教養を高め、専門的な技能に習熟させること」になっております。そうすると今度の職業訓練の中の総合職業訓練というものは、やはり専門的なことを習熟させる。中学校の方はまあ大臣の言うように、そうここで目の色を変えて詰め寄るほどの関係は少いと思いますが、高等学校になりますとそうはいかぬです。これはもう義務教育じゃなくなっておるのですから、従って今後高等学校にいってそうして進学をしないグループというものは、当然日本の中堅的な勤労者なり、サラリーマンなり、職業人として立ち行かなければならぬと思う。そうすると、総合職業訓練なり一般職業訓練高等学校教育、特に定時制教育との関連というものが非常に重要になってくる。現在すでに定時制の高校と職業訓練との単位は、多分四十単位ぐらいは重複していると思う。同じものがずいぶん多い。ほとんど同じだ。そうすると、当然高等学校教育、特に定時制教育と総合職業訓練なり一般職業訓練、事業内職業訓練との関連というものを文部行政において考えなければならぬと思う。この点、どういうふうにお考えになって、今後学校教育、特に高等学校の中でも定時制をどういう工合に運営されていくのか。何か文部省労働省の間に密接な打ち合せがあって、こういう方法でやるということがおありなんですか。
  51. 杉江清

    ○杉江説明員 まず高等学校職業課程と、この職業訓練との関係で具体的に問題になるのは、事業内の職業訓練公共職業訓練とではちょっと関係が違うと思います。公共職業訓練の方は多くは半年ないし一年の修業年限でありますが、事業内の職業訓練の場合は三年以上の場合が多いと思います。だからその重複の問題ないし関係の問題として一そう具体的に考えなければならぬのは、事業内の職業訓練との関係だろうと思います。事業内の職業訓練は確かに学校教育とその内容において相当共通していると思います。しかし事業内の職業訓練はいわば私企業の設立する私的な性格を多分に持っているものでありまして、これは公的な性格を持つ学校教育とは直ちになり得ない。しかし両者それぞれ長所を持っている。というのは、学校教育においては一般的、基礎的な科目をやる場合には、学校教育の体系において、より能率のある教育ができます。それからまた実際に役立つ技能訓練をするということになれば、現場におけるすぐれた施設、設備を用い、またすぐれた指導者のある現場において行うことがより能率的だ、こういう面もあるわけであります。同じ生徒が両方に通っている現状にかんがみて、両者を調整していく、両者の連携を密にして両方を生かすような措置を講ずるということがこの問題を解決する方向だし、そういうふうなお打ち合せでこの学校教育法改正の措置もとられてきたわけであります。だから定時制教育の方向としては、定時制が事業内の職業訓練と連携をはかることによって、そういう方向を助長することによって両方を生かしていきたいというのが、定時制の今後のいき方にもなるわけであります。それから公共職業訓練につきましては、高等学校職業課程とは修業年限も違いますし、その内容も相当差があるわけでありまして、直ちに重複の問題にはなってこないと思うのであります。ただ別科等の問題については多少問題がありますけれども、これは運営の問題で解決できると考えております。
  52. 滝井義高

    ○滝井委員 どうも今の答弁には少し不満ですが、今の段階では日本の現状から考えて事業内職業訓練の方が、あなたは今それは私的なものだと軽くあしらわれましたけれども日本の現状では公共職業訓練所や総合職業訓練所というものよりか、大企業の事業内職業訓練所の方がすぐれているのですよ。その指導陣、いわゆる教授の陣容においても、あるいはその施設においてもすぐれている。どうしてかというと、この法案に出てくる公共職業訓練所の中の一般職業訓練所というものは、一カ月かそこらのきわめて基礎的なものしかやりません。しかし総合職業訓練所というものは失業保険の施設なんです。失業保険の施設で労働福祉事業団というものがやるものなんです。ところが企業内のものは自己の企業の運命をかけた子飼いを作るところですから、そこの企業における優秀な幹部級が行って教えるわけです。自分企業の運命をかける中堅幹部を養成するのですから、施設もよりりっぱなものなんです。むしろ権威からいえば、大企業における事業内の訓練所の方がいい。だからこの法文の全部を見ても、公共職業訓練所と対立するくらいの、二本の柱として事業内の職業訓練所を高く評価している。そういう関係から考えてみますと、私はやはり文部省としては当然高等学校の、特に定時制教育と、将来就職するということになれば高等学校の全日制だって同じだと思いますが、それと事業内の総合職業訓練所——大体この総合職業訓練所は、何年行けばいいのでしょうか、これを一応答えていただきます。それと、その関係についてもう少しやはり認識を深めてもらわなければいかぬのじゃないかと思うのです。学校という名がつかなければ、あるいは教育という名がつかなければ権威がないという概念が日本にはあるのですね。養成所とか何々訓練所というと、あれを卒業したってだめだ、給料も安い、こういう概念がある。何か学校へ行かなければいかぬ、こういう概念というものは、このように人口がふえて、そうしてしかも生産年令人口がふえて、そうして学校施設が少い、作るためには金がないという現状においては、ここらあたりで文部行政も何か融通を少しつける必要があるのじゃないか。もちろん一貫した文部行政の秩序を乱す必要はない。しかしその秩序の範囲内において、ある程度融通をつけていく必要があるのじゃないかと思う。それによって勤労青年というものが未来に対して夢を持ち得るということになれば、これは非常にいいことだと思うのです、ところがこういう形の、今のあなたのような御認識でこの職業訓練法が実施されたら、これは私、大した成果は上らぬと思うのです。日本の今の産業の中に中堅技術者が不足しているということになって、これを職業訓練や何かでやったって、それは大して役に立たぬという認識が、今のような御説明だと、社会的になる可能性がある。そうしますと、優秀な者は行かずに、やはり苦労力行してでも、昔の専検とかなんとかをとってでも学校教育の方に行かざるを得ない、こういう形に私はなるような感じがするのです。それか、まあ安んじて、養成工に入れび中堅の技術者まで行けるということで、そういうことになってしまうと思うわけです。もう少しそこらあたりを一つ明白にしていただきたいと思います。それと同時に総合職行訓練所の方の年限。
  53. 澁谷直藏

    ○澁谷政府委員 お尋ねの総合職業訓練所も、法文で明らかなように雇用の対策、就職の促進を目的としておる施設でございますので、期間は原則として一年、その訓練内容としましては、一般職業訓練所が基礎的な訓練を行うに対しまして、基礎的な訓練に加えて応用能力も含めたやや高度の訓練を行う、こういうふうに考えております。
  54. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、今の説明でますます明白になりましたが、一般職業訓練が六カ月か、せいぜい一年、それから総合職業訓練が一年だということになると、これはますます高等学校教育との関連考えざるを得ないということなんです。これを全く無視して、関連もなくやるということになれば、これは高等学校を卒業して、総合職業訓練なり、一般職行訓練を受けようとして行ってみたら、高等学校で習ってしまったということであったら私は大へんだと思うのです。どうしてそういう心配をするかというと、さいぜんから申しますように、事業場内職業訓練の履修科目高等学校における履修科目が非常に似ているのです。多分重複している単位が四十かそこらあったと思うのです。そこらあたりはやはり文部省労働省が十分連絡して、習うことは何回習ってもいいので、忘れるわけなんですが、やはり大事な青春の時代というものは二度と来ないのですから、そこらあたりをあれしてもらわなければ困ると思う。それはどうしてかというと、まずわれわれが人間を形成する場合に、ほんとうに私たちの将来を決定する時期というものは、まあ二十五才までだと思うのです。二十才から二十五才までに、人生の運命というものは大体方向がきめられていくと思う。老らくの恋なんというものもありますが、ほんとうに身も心も打ち込んでやる恋というものは、やはり二十才から二十五才、われわれ高等学校時代です。それから先は人生で経験を積み、学問を積んでも、それはわれわれの人間性を純化することはない。やはり社会的な理想とか、何か非個人的な目的のために人生を打ち込もうというときは、そういうときなんです。そういう人間形成のときに、同じことを二度も三度も習うことは、やはり青年にとっていいことではない。そういう点で、この際大乗的な見地から、やはり文部行政と、せっかくこういう法律ができるのですから、もうちょっと連関をしてもらいたいと思うのですが、どうも今の御説明を聞くと、労働省は十分文部省と連絡をとってやっておりますというようなことを再々にわたっておっしゃるけれども、今の皆さん方の御答弁では、そういうことがどうもはっきりしません。そこでここらあたりをもう少し連絡をとってやってもらいたいと思うのです。  次は学校教育における各種学校との関係です。これは、学校教育法の一条に書かれておる以外の学校は各種学校となっておる。そうすると各種学校というものは、多くやはり技能者養成をやっている。一体この各種学校訓練との関係を、どういう工合に考えておるのかということです。これはまた高等学校よりは大事なのです。各種学校というものは、高等学校教育よりか職業訓練については非常に重要な関係を持っている。これは一体どう職業訓練との関連でお考えになっているのか。
  55. 澁谷直藏

    ○澁谷政府委員 各種学校は、ただいま御指摘のように、その内容におきまして職業訓練の面が非常に多いわけでございまして、その点において職業訓練とは非常に内容的に関係が深いということでございますが、御承知のように、各種学校は届出をすればそれでやれる。しかも文部省の監督といいますか、コントロールが必ずしも十分に行われないという体制になっておるように承知しておりますので、この点につきましては、今後の問題として一つ検討して参りたいというふうに考えております。
  56. 滝井義高

    ○滝井委員 どうも各種学校は、今後の問題として検討されるとおっしゃいますが、この事業場内の職業訓練なり、あるいは公共職業訓練の中の一般職業訓練よりか、もし各種学校がすぐれておるとするならば、この際文部省労働省が話し合って——さいぜん言ったように、とにかく職業訓練というものは機動性を持たなければだめだ。日本技能者が不足をしておるというのは、労働大臣みずからがお認めになったように、地域的にも偏在しておるし、それからその不足の職種も非常にバラエティに富んで偏在しておる。しかも不足のものが恒久的に出る場合もあるし、一時的のこともあるということになれば、これは職業訓練が機動性を持たなければならぬ。機動性を持つとするならば、各種学校というものをやはり利用しなければならぬと思う。そうすると、各種学校文部省の監督も、大してよくないからということで、ほうっておいたのではしようがないと思う。もはや現在資源の少い、人口の多い日本においては、利用し得るすべてのものをやはり利用する姿というものをとらなければいかぬと思う。やはり各種学校が発生するには発生するだけの社会的な必然的な条件があったからできている。だからできたものは有効に使うことは、乏しい日本の国家財政からいっても必要なんだ。どうもこれは文部省労働省が、私の言うことについて満足の答弁ができぬことは非常に不満なんですが、せっかくこういう法律ができてから、何か自分のところのなわ張りだけやれば、あとはいいという考え方ではだめだと思うのです。そうしないと、世界の進運には負けますよ。だからそういう点、もう少し考えてもらいたいと思うのです。文部省の方で何か各種学校について、職業訓練との関係をお考えになったことがありますか。
  57. 杉江清

    ○杉江説明員 各種学校には御承知通り、そろばん塾から洋裁学校から、いろいろなものがあり、年限においても各種各様のものがあるわけであります。その中には工業技術に関するものもありますけれども、総体としては非常に弱い。文部省として技術者の養成には、これは教育の最も重要な問題としてただいま力を入れておりますけれども、それは最初に大臣からも御説明いたしましたように、今の高等学校、大学における技術者、技能者の養成に重点を置いているわけであります。高等学校におきましては工業課程の共設、産業科の設置等の措置を講じまして、高等学校教育課程の中でこの方面に十分力を注いでいく施策を講じているわけであります。各種学校も工業技術者の養成という見地から十分考える必要がありますけれども、ただいまのところ実体が非常に各種各様であり、またこの点は現行法制上必ずしも十分押え得ない面もあります。またこれを押えていいかどうかという点につきましても、なお研究を要する点がありますので、この点については今後の研究課題といたしたいと考えておるのであります。
  58. 滝井義高

    ○滝井委員 日本における技能者の不足というものは各種各様に及んでいるわけです。従って高度の大学を卒業した技能者ももちろん不足しておりますが、現在の日本の労働情勢を分析した結論というものは、中堅技能者が欠乏しているということなんです。そろばん塾はそろばん塾としての役割があると思いますが、従ってそれらの各種学校というものについて、これはやはり私は一つ技能訓練だろうと思うのです。だからそこらあたりもう少し検討して、各種学校がばらばらであるならば、それを監督官庁はぴしっとやはり引き締めて、そうしてそれだけの資格と、そうして認定を与えるだけの態勢はやはり整えさせることが必要だと思う。そうしますと、これがたとい私立であっても、わざわざ国の金をつぎ込んで事業場内の訓練所を、国は経費の四分の一の金を補助するのですから、既存のものがあればそれに金を注ぎ込んでやった方が早いから、それを文部省労働省の共管にして——共管というのは監督を一緒にやるという意味ですが、そうやっていただけば、私はもっと適切に行くのではないかと思う。新しく金をつぎ込んで、公共職業訓練所、県立の一般職業訓練所を作らなくても、そういうもので私はもう適宜適切に利用できていくのではないかと思うのです。そういうことをもう少し検討してもらわなくては工合が悪いと思うのです。  次には青年学級振興法との関係です。やはり今の三条の3に「公共職業訓練青年学級振興法による教育とは、重複しないように行われなければならない。」こういうことを書いて、その際には両者の間に密接な連携を保って行われなければならぬと、こういうことになっているわけです。そこで青年学級の定義を見てみますと、「勤労に従事し、又は従事しようとする青年」、勤労青年、これはちょうど職業訓練における雇用労働者です。今から雇われようとする労働者におそらく該当すると思う。その勤労青年に対して実際生活に必要な職業または家事に従事する知識及び技能を修得させる、こうなっている。従ってこれは各種学校よりさらにまた密接に職業訓練に結びつくものなのですね。この関係、これは社会教育局長の福田さんのところだと思いますが、現実においては、青年学級というものは多分現在文部省の予算で三十三年度は五千七、八百万円くらいの予算を計上していると思います。それで、これは大体農業課程が多いのです。実際には八割くらいが農業だと思いますが、二千をちょっとこえる学級は工業をやっております。そうすると、一体職業訓練青年学級との関係はどうなるのかということなのです。さいぜん井堀さんも問題にしましたが、本日配付された学校教育法の四十四条の二の関係です。高等学校定時制課程に在学する生徒、この人たちがもし青年学校に行っておるというときには、一体その青年学校というものは、「高等学校定時制課程に在学する生徒が、技能教育のための施設で文部大臣の指定するものにおいて教育を受けているときは、」というこの文部大臣の指定するものに当るのか当らぬのかということなのです。これはどうですか。当りますか、当りませんか。青年学級振興法の中で工業科の課程を勉強しておるその施設というものが、文部大臣の指定するものに当るか当らぬかということです。
  59. 杉江清

    ○杉江説明員 青年学級は一応法律においては事業と規定されております。しかしこれが公民館等において行われる場合、それからまた一定の施設を持つに至ります場合において、これを指定の対象とすることも可能だと考えておるのでありますが、もちろん現在の青年学級においては、この単位の共通性を認めるような、そういうような施設となり得るものはあまりないように考えますけれども、将来はそういうふうなものが生ずることも考えられるわけであります。
  60. 滝井義高

    ○滝井委員 現在学校教育法等の一部を改正する法律案四十四条の二に該当するような青年学級というものは一応ない、将来は考えられる、そうしますと、職業訓練法案に盛られておる現在の失業保険の施設による総合職業訓練所とか、都道府県の行なっている職業補導所が今度変る一般職業訓練、こういう施設の中で、この四十四条の二に該当するいわゆる政令で定める基準に該当するようなものがあるかないかということです。
  61. 杉江清

    ○杉江説明員 これは今後規定されます政令の基準のいかんにかかってくるわけでありますが、一応四十四条の二に規定されております施設には概念として入ることは当然であります。ただ具体的にこれが指定されるかどうかということになりますと、その基準をどうきめるかという問題であります。それと半年程度のものを指定するということもどうかという考え方もあると思います。ただこの点については今後労働省と十分お打ち合せしてその基準をきめて、それによって指定の手続がとられることになると思います。
  62. 滝井義高

    ○滝井委員 労働省にお尋ねしますが、今の御説明でおわかりのように、都道府県職業補導所から転換していく、一般職業訓練というものは六カ月間、せいぜい一年ということになると、やはり今までの文部省学校教育に対する概念からいえば、今課長さんが言われたように、当然当てはまらぬのが常識だと私は思う。そうしますと、文部省も大して認めないという形になると、学校教育法との関係重複を避けるとかなんとかいうことは大体必要はなくなってしまうのです。そうしますと、総合職業訓練所というものは失業保険の施設ですから、これはやはりなかなか認めにくいと思うのです。都道府県のれっきとした、日本の行政の下部機構においてさえもやっているものが学校教育ではなかなか認められないということになると、職業訓練法案というものは龍を描いて眼を入れない、画龍点睛を欠く法案になるのです。そういう感じがする。どうもそこらあたり、あなた方の文部省との連絡が足りない。少くともこの法案を通そうというからには、私がさいぜんから御指摘申し上げておるように、ここにはやはり政令が出てきて、これこれのものは文部省基準に該当するものだ、学校教育法の新しい改正の四十四条の二に該当するものはこれこれでございますというくらいの一覧表がここに出てくるくらいの段階になってこなければならないと思う。そうしないと、今この法律案が出て五月一日から実施されるということになった場合に、入る人はわかりませんよ。一体自分の運命というものはどういうことになるだろうかということがわからぬ。しかも労働大臣資格を認定してくれるし、修了証書までくれるのですが、そういうものをくれたって、それは一枚のほごになってしまう。やはり何といっても日本の大衆が考えておるのは、学校教育との関係は一体どうなるのかということです。だから職業訓練を受けるときに、職業訓練を受けた者は学校教育でどういうところに位置することができるのだということを知らしてもらわぬと若い青年が夢を描いて訓練所に入って、出てみたら資格も何もなかった、昔の乙種の商業や工業よりか悪いところだったということでは、青年希望が持てない。だから、その点もう少し明白にしてもらわなければならぬと私は思う。  そこで、福田さんお見えになりましたので伺いますが、現在日本青年学級というものは、その八割までは農業の方の学級が多いですね。そうしますと、現在の日本の長期経済計画を見てみますと、第一次産業たる農業労働の中で、特に家族従業者というものが多い。それを減らさなければならぬ。それを減らさなければ日本産業構造というものは近代化されないし、日本企業構造というものは依然として後進性を歩まなければならぬ。だから日本の農業労働の中で、できるだけ近代的な雇用労働者に転換せしめなければならぬ、そのためには職業訓練が必要だ、こういう形になるわけです。そうしますと、青年学級の振興において五千七、八百万円の金をことしも取っておりますし、昨年もそのくらい取ってつぎ込んでおったと思いますが、この際農業というものに重点を置くよりか——農業もやってもいいと思いますが、重点というものは工業に移す必要があるじゃないかということです。現在一万七、八千の学級のうち工業科としては二千百学級くらいしかないですね。もちろんこれは教える指導員、先生がいないということも一つあると思います。さいぜんあなたの来る前に指摘したのですが、中学校において技術科教育をやろうとしても、技術科を教える先生がいないということが日本教育の実態です。だから、農村における青年学級というものは多く中学校とか高等学校の先生が教えに行くわけです。そうすると、中学校に技術科を教える先生がいないということが、結局農村における青年学級というものが、技術科と関連のある工業科を振興することのできない致命的な欠陥として、おざなりな教育をやらなければならない結果が出てくるだろうと思います。これは職業訓練というものが大きく唱えられるとするならば、文部行政の中においても当然その一環をになう形で、日本の中堅技能者の不足を補うためにも、青年学級技能習得をさせるという目的を持っているとするならば、当然工業科というものを振興する方法を講じなければならぬと思うのですが、これに対してどういう考えを持たれておるか、これを一つお聞きしたい。
  63. 福田繁

    ○福田政府委員 滝井先生の御質問でございますが、御指摘のように、今までの青年学級が大部分農村の子弟のための教養科目あるいは農業関係の技術習得という点に重点が置かれてきたことは御指摘通りであります。青年学級を今後このままでいっていいかどうかというような点について、私どもも十分検討して参りました。御承知かも存じませんが、昨年社会教育審議会においてこの青年学級の振興方策というものを取り上げまして、いろいろ審議会でも研究いたしました。そして結論を出しましたのは、もちろん農業関係の青少年のためにも技術教育というものを大いに重視しなければならぬということはこれは申すまでもありませんが、しかしながら今申されましたように、今後工業関係、あるいはまた商業においても同様の問題があると思いますが、企業の中でも相当大きいものは、自分企業の中で従業員の技術訓練あるいはまた教養というものをかなりやっておりますけれども、中小企業に至りましては、なかなかそういった点に手が回らないというのが実情のようであります。従って、審議会におきましても、そういった中小企業等を対象とした工業あるいは商業等において、特にそういった技術の習得あるいはそれらの従業員の教養の向上といった面について注意をして、今後その方を拡充する必要があるのじゃないか、こういうような結論もいただいております。従って私どもとしては、与えられた予算の中でありますけれども、今後おっしゃるような方面にも十分注意をいたしまして、そちらの方にある程度伸ばしていきたい、こういうように考えておるわけであります。
  64. 滝井義高

    ○滝井委員 ぜひ伸ばしていただきたいと思うのです。それは私が午前中にもちょっと説明したのですが、農業白書の中を見ると、日本の農村に五つの赤信号が上っている。その一つに、日本農業労働というものは非常に脆弱化しつつある。日本の農村の労働力というものは老人と婦人が大部分を占めて、青壮年というものがみんな兼業になりつつある。戦前までの日本の農業というのは六割が専業で四割が兼業であったのが、今や逆転をして専業が四割で兼業が六割になった、こういう農業白書を書かれておるわけです。従って、日本の農業が劣弱な婦人や老人で行われておるとするならば、当然日本の農村における青壮年というものは、何か技術を身につけなければ新しい職場には行けない。もし技術を身につけず行っておるとするならば、それはきわめて低賃金の、技術の要らない肉体労働にしかついていないということなんです。そのことは同時に私は日本の農業の後進性を依然としてそのままに保持していくことだと思う。だから農業から兼業で出ていくその勤労者が、近代的な技術労働者として技術を身につけるならば、その人はやはり農繁期には帰って農業をやるんですから、いつの間にか日本農業に技術を導入してくるだろう。それが同時に日本の農業の近代化のてこにもなり得るという意味において、職業訓練というものは非常に日本の農業の近代化のためにも大事だということを指摘したのですが、それと同じだと思う。やはり青年学級において農業教育というものを一応やるが、同時に今後の重点というものは工業教育に置かれなければならぬと思う。そういう点でぜひ一つ努力をしていただきたい、こういう念願を持つわけです。  その場合に、この青年学級というものが公民館で行われておるという場合に、一体公民館と職業訓練との関係はどういうことになるのかということなんです。御存じの通り、公民館の開設者は市町村です。そうすると、市町村が一応職業教育をやることになる。ところが、たとえばそのAならAという市に青年学級が開かれ、市町村が職業教育をやるということになりますと、そこにたまたま大きな事業場があって、そこで事業内の認定職業訓練をやる。認定職業訓練をやるということはどういうことかというと、その経費の四分の一は国が出す、四分の一は県が出す。少くとも二分の一は公的なわれわれの税金によってまかなわれるという形が出てくる。一方においては同じような青年学級を公民館で、われわれ市町村の税金で行う。こういう二重の形が行われてくる。だとすると、この間の有機的な連絡というものが、単に法文の上で重複を避けてやりますと言っても、これは現実に行われる主体が市町村と事業場でありますから、違います。しかしそこにつぎ込まれる金はわれわれの膏血である税金である。だとすれば、ここに何か一貫した有機的な連係というものがとられて、その教育の場においても具体的にそれが重複しないような方策が講ぜられ、そこに行く勤労青年に二重の負担が課されないような方向がとられなければならぬ。一体こういう点についていかなる打ち合せを文部省労働省でやられたのか。一方は職業訓練でやり、一方は青年学級振興でやると言われるが、そこらあたりを両者から一つ御説明願いたい。
  65. 福田繁

    ○福田政府委員 これは労働省の方から御説明があることと思いますが、私どもといたしましていろいろ考えておりました点は、市町村あるいは企業の中でいろいろな職業訓練、技術教育が行われる場合には、そういったむだのないように考えなければならぬことは当然のことだと思います。ところで御指摘のように、青年学級は現在公民館でやっているのは相当ありますけれども、これは大体半分くらいだと思います。あとは学校等においてやっているのが大多数でございまして、これはいわば場所一定にしないで、特に指導者の得られやすいところへ開設していくというのが建前になっております。従ってそういった点で実施をいたしておりますけれども、御承知のように、まだ全国的に見ましても一万七千学級か、せいぜい八千学級程度しかいっておりません。従って全国津々浦々のところでこういうものが開かれたいという念願を私ども持っておりますが、あるいはまた企業の中でもそういうものを実際にやっておりますが、現実はまだそこまでいっておりませんので、労働省関係仕事と現実にぶつかっていくということは現在のところあまり考えられないのであります。しかしながら将来におきまして、そういった重複するような場面がもしありとするならば、これはこの指導者の面、あるいは青年学級も当然公民館だけでなく、将来におきましては企業の中で行うことも考えられますので、そういった面で、このどちらをとってやるかということは両者十分連絡を保ちながらむだのないようにやっていきたい、かように考えております。実際の面におきましては、まだ重複するようなところまでいっていないというのが現状でございます。
  66. 滝井義高

    ○滝井委員 実は重複してないで幸いだと思います。労働省職業訓練というのは失業保険の施設と、都道府県の一般職業訓練所があるくらいで、一万七千どころじゃない、りょうりょうたるものです。そうしますと、さいぜんから何回も申しておりますように、現在日本技能者の不足の状態というものは、非常に職種も多く、バラエティに富んでいる。地域的にも偏在しているという情勢にある。従ってその不足する技能者を養成する機関というものが全国的にないところに一つの悩みもあるわけです。従って労働省職業訓練の施設がないところは、文部省青年学級が肩がわりしてやれるだけの連絡がなくてはならぬと思うのです。そうしないと、あなたの方はあなたの方でやるし、労働省労働省だということになったら、同じようなものが二重にも三重にもなってくると思うのです。そういう意味で、むしろ現在ない現実においてこそ、文部省の本来の力を発揮して、職業訓練というものを青年学級がになうべきだと思うのです。そのために、労働省ができない間は労働省の予算を文部省に回すくらいの雅量がなくてはならぬと思う。各省がそれぞれのなわ張りをやって仕事をやっていると、同じように重複を避ける、避けるといいながらも、重複のものを作る可能性がある。私はそういう意味でさいぜんから各種学校、それから今言った青年学級これらのものを職業訓練の一環としてこの際文部省は積極的に労働省に協力をして活用せしめる、そうして労働省がその施設なり教授陣営が整わぬ間は、その予算は労働省の予算を文部省に回してでも、文部省がやはりやるべきだと思う。教授の陣容その他は、理論的な方面というものは文部省の方がはるかに持っておるだろうと思う。そうして具体的な技術面の方の指導は労働省から借りてきて、供出してもらってやれば、両省そうなわ張りをしなくてもうまくでもるのじゃないかと思うのです。そういう点、大臣どうお考えになりますか。やられる御所存がありますかどうか。
  67. 松永東

    松永国務大臣 御説の通り、それはどうしても店開きをした以上、これからそうせんければならぬと思って覚悟いたしております。
  68. 滝井義高

    ○滝井委員 店開きをしたら、ぜひ一つ石田さんと仲よく話し合ってやっていただきたいと思うのです。  それで、これは少し基本的なことになりますが、職業訓練ということと職業教育文部省の方は決して職業訓練という言葉を使っていらっしゃらない、職業教育という言葉を使っていらっしゃる。労働省の方は決して職業教育という言葉を使っていらっしゃらない、職業訓練という言葉を使っていらっしゃる。一体職業教育職業訓練という、この基本理念というものを今から明確にしておいていただかないと、将来やはり私は問題が残ってくると思う。今大臣から、お互いに持ちつ持たれつでやる、こういう御言明を得たので、こういう基本的なところをあなた方はどういう工合にお考えになっているか。これは一緒にしてもいいかどうか。おそらく概念的には一緒にはできないと思うのです。ですからここらの基本理念というものを、どういう工合に職業訓練職業教育というものを決定していくのか。私から概念的に申し上げれば、職業訓練というとこれは実技がおもだ、職業教育ということになると学科とか検定というふうなものをおもにやっていくのだ、こういう形ができると思うのです。ところが最近の日本教育というものは教養人を作るということに非常に力を入れてきた。普通の一般的な知識、文化的なものに力を入れてきておったうちに、いつの間にか技術教育というものがおくれをとるという形が出て、最近あわてて技術教育、こう切りかえられる形が出てきておる。常識として一般教養というものを高めることに力を入れると、技術というものがおろそかになることは、われわれ自身でもそういう感じがある。そこでこの際、その職業訓練職業教育という基本的な理念について、私は片方は実技、片方は教科という工合に簡単には割り切っておりますけれども文部省なり労働省はどういう工合にそれを考えて連絡調整をしておるのか、これを一つ御説明願いたい。
  69. 澁谷直藏

    ○澁谷政府委員 この点は臨時職業訓練制度審議会におきましても種々議論が出た点でございます。大体基本的には滝井先生御指摘になった通りでございますが、教育という場合は、その教える内容が基礎的であり、一般的であるというのが特徴であろうかと思います。それからその教える内容といたしましては、どうしても学科と申しますか、知識教育涵養というところに重点が置かれている。これに対しまして職業訓練の場合は、企業職業訓練の場合はもちろんでございますが、公共職業訓練の場合におきましても、その訓練方法といたしましては、先ほど先生が御指摘のように実地訓練重点が置かれる。従ってその訓練の中身としましては、知識の涵養というよりはいわゆる腕と申しますか、技能訓練重点が置かれる。もう一つ教育との相違点は、訓練の場合は一般的なものではございませんので、たとえば旋盤工なら旋盤工、板金工なら板金工という工合に、特定の職業と直結しておる技能の実質的な訓練である。これが大体職業教育職業訓練との主要な相違点ではないかというふうに考えております。
  70. 福田繁

    ○福田政府委員 ただいま労働省の政府委員からお答えになったことで大体よろしいと思いますが、私ども考えを申し上げますならば、この訓練という言葉からいたしまして、やはり実技技能の修得ということが主体だと考えております。従ってわれわれの使っております教育という以上は、もちろん実技の修得ということも教育の中に含まれると思いますが、それにプラス教養なり知識といった面で、先ほど滝井先生が御指摘になりましたような、そういった学科面も十分取り入れたものを両方含んだ意味で職業教育というように申し上げておるのであります。従って、これは初めからそういう使い方をいたしております。単なる実地の技能の修得というよりも、もう少し広く考えておるわけであります。
  71. 滝井義高

    ○滝井委員 両者の御説明で、大体職業訓練職業教育の基本的な考え方というようなものがおぼろげにわかったような感じがしますが、アメリカでもヨーロッパでも、一般教養を伸ばすということになると反面生産技術に応ずる職能人としての力が弱くなるというのは、大体一般に認められておる議論だろうと思うのです。そういうことから、それらの一般教養人としての立場と職能人としての立場を兼ね備えた新しい人間像というものを作らなければならぬ、こういう考え方が最近教育の中に出ておると私は思うのです。そうしますと、文部省における職業教育労働省における職業訓練との調和といいますか、そういう問題をよほど討議をしておらないと、あなたの方で職業訓練という言葉を使ったことは非常に少い。それから労働省の方で職業教育という言葉を使ったことは非常に少い。労働者教育、労働教育とは言います。しかし職業教育とはめったに言わない。あなたの方は職業訓練とはめったに言わない。ずっと今までの答弁を見ておっても言わないのです。明らかに、画然としてお互いに垣を持っているという気がする。ところがこれはさいぜん申しましたように、各種学校あるいは青年学級というような問題で労働省の施設ができない間はやはり文部省の方である程度肩がわりをしてでも、技能者の養成に一臂の力を貸そうという考えがあるならば、そこらの概念というものをある程度両方兼ね備えた形でやってもらわなければならぬと思うのです。そういう点で、幸い教育も曲りかどに来ておるので、一つぜひやってもらいたいという考え方です。  そこでそういう基本的な概念における一致を見ますならば、当然労働省が実施をするところの職業訓練計画と文部省のいわゆる職業教育課程との関係は、私はやはり密接な連携がとられなければならぬと思う。片一方に職業訓練計画というものを立てた。しかしその職業訓練計画というものは、広範な雇用と失業の状況や日本の工業の状態等を見て立てるわけです。そうすると、その職業訓練計画の中に文部省職業教育課程に対するものの考え方というものが入っていなければ、これは私はナンセンスだと思うのです。日本経済の基盤を養成し、基盤を近代化するための力というものは労働省だけではできないので、やはり高等学校を卒業する、あるいは短期大学を卒業する人たちがどんどん職業人として入ってくるわけですから、その場合に労働省のたとえば職業訓練計画とあなたの方の職業教育課程がある程度連携をして、うらはらの関係できちっと計画の中にどこか適当に位置しておらなければ、これはナンセンスだと思うのです。そういう点、労働大臣もお見えになりましたが、文部省労働省とはそういう過程でどういう話し合いをして、どういうことになっておるのか、伺いたい。
  72. 石田博英

    石田国務大臣 先ほどからいろいろ御議論がございましたように、それぞれの目標とするところ、対象とするところは違う面が多いのでありますが、徐々に日本産業基盤を強固にいたしまして、同時に就業あるいは職業の安定を期そうとすることでございますから、密接な連絡をとりまして遺憾なきを期するように話し合いをしながら立法に当った次第でございます。
  73. 滝井義高

    ○滝井委員 石田さん、話し合いをしたと言われたけれども、今文部省にいろいろ聞いてみたけれども、ちっともその話し合いが行われていないのです。中学校高等学校、各種学校青年学級といろいろ聞いてみたけれども、どうもさいぜんあなたからいろいろ御答弁いただいたことと——労働省の認識と文部省の認識というものが必ずしも進路を一にしておらぬということがわかってきたわけなんです。それでさいぜんから、もう一ぺんよく連絡をとってくれということを何回も申し上げたのですが、職業訓練計画と職業教育課程というものとはきわめて大事なものになるのです。あなたの方の職業課程日本の技術者が不足しているのと全く無関係にどんどんやられたのでは、出てきた者は職業訓練計画の中に入らないのですよ。だから文部行政における職業教育というものと、労働行政における職業訓練計画というものが、一体どこでクロスするかという点なんです。行き会う点がなかったらこれはナンセンスだと思う。出てきた者がものの役に立たなくて、もう一回労働省職業訓練をやらなければだめだということになったら、これは大へんです。しかも労働省職業訓練をやった者は、学校教育としての認定というものはなかなか六カ月や一年ではできぬという見解を文部省はとっておられる。ということになると、夢を持って職業訓練を受けた青年というものは哀れなものになってしまう。といって、学校職業教育を受けて社会に出てみたところが、もう一ぺん労働省の施設に入らなければだめだということになったら、これはまたナンセンスです。だからそこらは長期の計画のもとに職業教育課程というものを立てなければならぬ。それが職業訓練計画とマッチしないということではなかなか大へんなことだと思うのです。どうもそこらあたり抽象的なことで、もう少しよく連絡をして下さい。  それからもう一つお尋ねをしたいのは技能検定の問題です。技能検定を受けると、これは技能士になることになっております。これは労働大臣がやることになるのですが、私はこの際国家検定にすべきじゃないかと思うのです。労働大臣でも権威がないとは申しませんが、しかしながらやはり国家検定という形にしてもらうと非常に都合がいい。というのが、学校を出た人もその検定を受ける、訓練所を出た者もその検定を受けるという国家検定の形にしてもらうとこれは非常によくなる。そうしますと、学校を出なくとも実力があって国家検定でいくということになれば非常にいい。労働大臣のものだということになると、これは労働省だけの権威はあるかもしれぬけれども日本全国の権威というものは幾分欠けるところがあるような感じがするのです。それはわれわれはそう感じはしませんが、一般の社会というものはそういう感じがする。というのは、さいぜんから井堀さんがるる申し上げておるように、学校を出た者の方がどうも養成所とか訓練所を出た者よりもいいという先入観がある。ところがこれを同じように国家検定にして、そこに技能士とか終了証書というものをくれるということになると、これはだいぶ違ってくると思う。そこで技能検定の格付けとしての国家検定というものについてどういう工合にお考えになっておるか。
  74. 石田博英

    石田国務大臣 まあ大きく扱えば扱った方がいいという議論にもなるかもしれませんが、実際問題としては結局やはり労働省でこれをやることになりますので、労働大臣が証明書を交付するということで十分権威を保っていけると思っておるわけであります。  それから先ほどの、文部省職業教育を受けた者との関係は、法律案の第二十五条の二号で「前号に掲げる者に準ずる者で政令で定めるもの」、つまり受検資格をそういうところで両方の連係を保って参りたいと考えておるわけであります。
  75. 滝井義高

    ○滝井委員 いろいろ質問をしたのだけれども、どうも私の満足のいくような御答弁が得られないのですが、石田さんどうもかぜを引かれておるようで、きょうは少し切れ工合が悪いようなので、これでやめますが、二十五条に「前号に掲げる者に準ずる者で政令で定めるもの」、こうなっておるのであります。そうすると技能検定というものは学校を卒業した人も受ける、たとえば工業の高等学校を卒業してこの技能検定を受けると技能士ということになるのですが、学校を卒業した者もこれは受けることになるのですか。
  76. 澁谷直藏

    ○澁谷政府委員 その点は今後政令を書く場合に、どういう工合に書いていくかという問題でございますが、この点についても文部省の当局とは話し合いをしたのでございますが、従来の偏見といいますか、学校教育の方が技能教育よりは高いという考え方がまだ相当強く残っておるようでございます。従いまして工業高等学校を出た者がこの訓練法技能検定を受けることを喜ぶかどうか、その辺についてもいろいろ問題がございますので、政令を書く際に文部省と十分打ち合せの上、その点を一つ規定していきたいと考えております。
  77. 滝井義高

    ○滝井委員 実はさいぜん国家検定を質問いたしたのはそういうためなのです。この二十五条の二号というものの説明を見ても、学校のことは一つも書いていないのです。「政令で定めるもの」と書いてあって、普通ならば、たとえば高等学校以上とかなんとか学校のことが少しくらい出てこなければならぬが、出ていない。これは労働省法案だから出ていないのかもしれないけれども、説明くらいにはそこらのところを書いてもいいと思うのです。高等学校を卒業した者が実際に職業課程を習うということに今後なるとすれば、これは当然受けてもいいわけです。そうすると技能士というものがもらえるということになると、今度はあなたの方の総合職業訓練所なりを卒業した者は文部省の方の試験をも受けられる、こういう有無相通ずることができるわけなのです。そこが悲しいかな、さいぜんから私が指摘するように、職業訓練職業教育——学校という名称は文部省所管のもとでなければ用いることはならぬ、こういうことになっておる。だからあなたの方は学校でなくて訓練所とか養成所とかいうことになると思うのですが、そこらあたりをもう少し仲よく一緒に交流する形ができなければいかぬと思うのです。さいぜんから私が指摘するように、青年学級というものは市町村がやっておる。一方事業所内の訓練というものは事業主がやっておる。しかしその金は一体どこから出ておるかというと、われわれの補助金が行く、市町村にも行っておるということになると、同じわれわれの税金が、一方においては事業主に行く、一方においては市町村に、公民館に行くという形はナンセンスだというのです。そこは話し合いはうまくいくと思うのですが、そういう点、もう少し話し合っていただきたいと思うのです。  もうこれで終りますが、最後に……。どうも私の質問に満足のいくような明快な答が出ないので工合が悪いのですが、中央教育審議会が数日来勤労青年教育の振興に関する答申を文部省に出そうとする傾向が出てきておるわけです。これによりますと、今度出てくるこの職業訓練法と非常に関係が出てきておるわけなのです。勤労青少年に義務制をやろうとしておるわけです。就職して働いておる、それに義務的に教育を受けさせよう、こういう形が中教審で検討され始めているわけなのです。このことは、すでに労働省職業訓練法律が出ることと相呼応して出ている意見だと私は思うのです。私はこれは非常にいい、進歩的な意見だと思う。もしそういう形が今後の文部行政に入ってくるということになると、きょう今まで質問をして答弁できなかった点は一切解決します。それで十七才までは義務制の産業学校でいく。それから少くとも職業教育のためには専科大学というもの、専科大学は五年か六年ということになると当然前のコース、前半期というものは高等学校教育がそこに入ってくる。そうすると高等学校職業教育というものと職業訓練との関係が非常にうまくマッチすることができる形が出てくるわけなんです。こういう点、きょういろいろ質問をしてみて、すでに中教審がそういう検討をし、義務教育の意見も出ておるという段階で、文部大臣がこの法案をあまり研究されていないことは非常に私は残念だと思うのです。大臣は御老体でお気の毒だと思いますが、もう少しこのニュー・フェースの職業訓練法を十分御研究になって、そうしてこの勤労教育に新しい制度が今できようとしておるのですから、これを十分吸収されて、一つ石田さんよりかもっと上手をいくようにしてもらいたいと思います。私これ以上言いませんが、そういう傾向が出ていることは確実なんです。あなたの足元でそれがやられておる。労働省で今これからやろうとしていることを、ここで明らかに言っているのです。大学以下の教育の質的な面としては「青年学級、公共職業補導所」——公共職業補導所というのはこの法律ができると公共職業訓練になるわけですが、「公共職業補導所、」それから「経営伝習農場などと定時制高校との単位の通算を図る。」「ある管理された職場の作業も学習単位とみなし、職場の教育化を図る。」「技能検定制度の確立。」こういうこともちゃんと検討しておるわけなんです。そうしますと、今までわれわれの質問したことはすでにあなたの方の足下で検討がされつつあるということになる。おそらく今中教審というのは一番あなたの諮問機関の中でも権威ある機関だと思っております。ここでそういうことを出すということになれば、あなたの方からこれを無視するわけにいかない。当然実行しなければならない。それでこの法律通り、現実に日本職業教育の面で動くという形になると、文部省の方がむしろおくれをとっているという形になるわけです。だからこれはぜひ石田さんの方と文部省とが十分御連絡をいただいて、この法案はいつから実施されることになるかわかりませんが、あと一、二カ月のうちには動き出す法案だと思う。そうすると、それに乗っかって産業教育なり青年高校ですか、そういうものの義務制を考えて、仕事をしながら、事業主にも、虫のいい話かもしれませんが、ある程度給料を保障してもらって日本の勤労青年希望を持たせる方向に行ってもらいたいと思うのです。ぜひそういうことを一言お願いして、大臣の最後の答弁を得たいと思います。
  78. 松永東

    松永国務大臣 滝井委員の先ほどからのお話、全くごもっともであります。そうして私どもの方の文部省としては、この法律ができ上りますと、もとより労働省と緊密な連絡をはかって、御指摘のようないろいろな連絡を緊密にするということに資しようと考えております。さらにまた中教審に諮問をいたしましたのは、私の方でしているのであります。ですから労働教育どころじゃない、科学技術教育の振興についても、これは何とかせんければならぬというのでこっちは焦燥いたしまして、そうして今の中教審の答申を得ようということをこちらからお願いしているわけなのです。それができ上りますと御説のように、十分青少年に明るい気持を持たせながら勤労してもらうことができるようにしようというふうに考えております。
  79. 滝井義高

    ○滝井委員 どうぞお願いいたしておきます。今日はこれでやめます。
  80. 田中正巳

    ○田中(正)委員長代理 本日はこれにて散会いたします。     午後四時二十四分散会