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1958-04-10 第28回国会 衆議院 社会労働委員会 第36号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年四月十日(金曜日)     午前十一時十四分開議  出席委員    委員長 森山 欽司君    理事 植村 武一君 理事 大坪 保雄君    理事 田中 正巳君 理事 野澤 清人君    理事 八田 貞義君 理事 滝井 義高君    理事 八木 一男君       小川 半次君    小澤佐重喜君       大橋 武夫君    加藤 精三君       加藤鐐五郎君    亀山 孝一君       倉石 忠雄君    小島 徹三君       綱島 正興君    古川 丈吉君       粟山  博君    亘  四郎君       赤松  勇君    井堀 繁雄君       岡本 隆一君    五島 虎雄君       多賀谷真稔君    中原 健次君       長谷川 保君    吉川 兼光君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 堀木 鎌三君  出席政府委員         厚生政務次官  米田 吉盛君         厚 生 技 官         (公衆衛生局         長)      山口 正義君         厚生事務官         (保険局長)  高田 正巳君         厚生事務官         (引揚援護局         長)      河野 鎭雄君  委員外出席者         専  門  員 川井 章知君     ————————————— 四月十日  委員小川半次君、加藤常太郎君、草野一郎平君、  小林郁君、福田赳夫君及び多賀谷真稔辞任  につき、その補欠として楢橋渡君、綱島正興君、  加藤精三君、小澤佐重喜君、粟山博君及び淺  沼稻次郎君が議長指名委員に選任された。 同日  委員小澤佐重喜君、加藤精三君、綱島正興君、  楢橋渡君及び粟山博辞任につき、その補欠と  して小林郁君、草野一郎平君、加藤常太郎君、  小川半次君及び福田赳夫君が議長指名委員  に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  最低賃金法案内閣提出)他二件について、公  聴会開会承認要求の件及び委員派遣承認要求の  件  日雇労働者健康保険法の一部を改正する法律案  (内閣提出第一〇三号)  日雇労働者健康保険法の一部を改正する法律案  (八木一男君外十二名提出、第二十四回国会衆  法第四号)  戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正す  る法律案内閣提出第九五号)      ————◇—————
  2. 森山欽司

    森山委員長 これより会議を開きます。  内閣提出日雇労働者健康保険法の一部を改正する法律案及び八木一男君外十二名提出日雇労働者健康保険法の一部を改正する法律案の両案を一括して議題とし、審査を進めます。  両案に対してはすでに質疑を終了しております。  この際内閣提出日雇労働者健康保険法の一部を改正する法律案に対し、古川丈吉君より自由民主党提案にかかる修正案が、また八木一男君外十二名提出日雇労働者健康保険法の一部を改正する法律案に対し、八木一男君より日本社会党提案にかかる修正案がそれぞれ提出されております。これより順次両修正案について趣旨弁明を求めることにいたします。まず古川丈吉君。     —————————————
  3. 古川丈吉

    古川委員 日雇労働者健康保険法の一部を改正する法律案修正案はお手元にプリントで差し上げてありますが、その修正案につきまして、提案理由を御説明申し上げます。  政府提案日雇労働者健康保険法の一部を改正する法律案は、日雇い労働者健康保険傷病手当金及び出産手当金制度を創設するとともに、保険給付費に対する国庫負担及び国庫補助の割合を明らかにし、かつ保険料の額及び療養給付受給手続合理化をはかることにより、本制度の健全な進展を期する趣旨に出たものでありまして、その趣旨は了とするところであります。  しかしながら、政府原案におきましては、保険料中被保険者負担すべき第一級の保険料十一円のみを当分の間十円と読みかえ、事業主より軽減いたすこととしておりますが、疾病保険における保険料は、事業主及び被保険者折半負担原則とすべきであり、日雇い労働者健康保険におきましても、同様にその建前は貫くべきものと考えるのであります。政府原案においてこの原則が貫かれなかった理由は、この原則考慮しつつも、保険財政上やむを得ずとった措置と思量されますが、保険料については、来年度以降においてさらに考慮する道もあり、これによって財政収支改善をはかることも可能と思われますので、本年度は一応折半原則を貫くことが適当と考えるのであります。これらの事情を勘案いたしますと、事業主負担すべき第一級の保険料も軽減して差しつかえないものと認められますので、当分の間十円と読みかえると修正することといたしたのであります。  以上がこの修正案提案いたしました理由並びに修正の要旨であります。何とぞ御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いする次第であります。
  4. 森山欽司

  5. 八木一男

    八木(一)委員 私は日本社会党を代表いたしまして、日本社会党提出修正案趣旨弁明をいたしたいと思います。本修正案は第二十四国会提出されました衆法第四号の社会党提出による日雇労働者健康保険法の一部を改正する法律案内容の一部を修正しようとするものでございます。この修正内容につきましては、お手元に配付になっております案文によって御了承を願いたいと思いますが、簡単にその内容を申し上げますると、原案にありました傷病手当金出産手当金金額を、現在の生活状態に合せるため、九十円のものを百四十円にし、また百四十円のものを二百円にするというような、金額内容の変更を目途といたしたものでございます。そのほかに原案昭和三十一年四月一日が施行期日になっておりますのを、現在その日にちを経過をいたしておりますので、それに合せるために公布の日より施行することにいたしたいと考えたわけでございます。  以上が修正案内容の大綱でございます。何とぞ慎重に御審議の上即刻御可決あらんことをお願いする次第でございます。
  6. 森山欽司

    森山委員長 この際内閣提出日雇労働者健康保険法の一部を改正する法律案に対する修正案八木一男君外十二名提出日雇労働者健康保険法の一部を改正する法律案及び同案に対する修正案の三案に関する予算問題について内閣の御意見があれば御発言を願います。
  7. 堀木鎌三

    堀木国務大臣 ただいま古川委員から御提出になりました修正案につきましては、お話通り社会保険における保険料は従来とも折半原則として参りました。ことに日雇い労働者を使用いたします事業主立場は、一般常時使用されるものとの関係に比し特殊な立場にあることを考えますときは、今回の御修正考え方もごもっともと考えられるのでありますが、御承知通りまた本法案御説明をいたしました際にも申し上げました通り、被保険者実態から見まして一時的急激な負担増を避けたいと思いまして、附則で当分の間被保険者分を一円負担の軽減をはかったのでありますが、これは被保険者負担及び保険財政に対する考慮からやむを得ずいたしたような次第でございます。今回の御修正で理論的にはすっきりいたすものというお考えはよくわかるのでありますが、何分にも保険財政の今日の状況では、先ほど実施の上で財政収支の健全な発達も考えるというお話でありますが、果してこれが維持できるかということに危惧の念を持っているのであります。と申しますのは、今回の御修正によりますと、三十三年度で約一億一千七百万円の収入減を来たし、特に三十四年度以降の収支につきましては相当の赤字が出る懸念ないではございません。この際政府といたしましては原案で御決定願いたいのでございますが、国会の御意思が最終的に決定されます場合には、その御意思に沿うべく保険料確保になお一そうの努力を払わねばならないと存じております。その成果が予期以上上りませず、収支状況から見まして三十四年度以降健全化し得ないというふうな場合に至りました場合には、保険料についてまた御考慮をわずらわさなければならないかと考えておりますような次第でありますが、ともかくも国会の御意思が最終的にきまりました場合には、私どもとしてできるだけ保険料確保に努めて御趣旨に沿いたいものと考えておるのであります。  次に八木委員からの社会党の御提案にかかわりますところの修正案について申し上げます。これは御承知通り二十四国会において提案されたのでありますが、政府といたしましてはすでに昭和三十三年の三月十三日の閣議決定におきまして、国家財政見地から見まして、また内容的に見ましても同意しがたいという意見決定があるのであります。現在におきましても傷病手当金待期支給期間出産手当金支給期間療養給付に関する大幅な改善保険給付費に対する五割の国庫負担等の問題につきましては、日雇い健康保険財政上の見地よりいたしまして、御提案にかかる改正原案及びその修正案は、現在とうてい実現が困難であると考えておるような次第でございます。  以上政府見解を申し上げました。何とぞ御決定のほどを願いたいと思うのであります。
  8. 森山欽司

    森山委員長 次にただいまの両修正案について発言があればこれを許可します。——別発言もないようでありますから、日雇労働者健康保険法の一部を改正する法律案の両案及び両案に対するそれぞれの修正案を一括して討論に付します。八木一男君。
  9. 八木一男

    八木(一)委員 私は日本社会党を代表いたしまして、現在議題になりました両原案並びに両修正案についての討論をなさんとするものでございます。  日本社会党社会党提出にかかる修正案並び日雇労働者健康保険法の一部を改正する法律案について賛成し、そして自民党提出にかかる修正案並び政府提出日雇労働者健康保険法の一部改正案について反対の意を表明するものでございます。  日雇労働者健康保険法につきましては、再三衆参同院社会労働委員会におきましてもあるいはまた社会保障制度審議会あるいは社会保険審議会においても、この内容が非常に貧弱であるので、急速に健康保険と同じような給付内容にまで高めなければならない、その高める方法は、対象者の貧困な収入現状よりして、当然国庫負担を増大して保険料を値上けせずしてこの給付拡大をはかるべきであるということは、識者のすべてのあらゆる審議会、あらゆる委員会の一致した見解でございます。その意味におきまして日本社会党修正案並び原案は、最もかかる審議会要望に適していると私ども確信をいたしております。  この内容の個々に触れてみますると、まず日雇労働者健康保険法給付が現在一年しかないということが、健康保険の自体の効果を非常に減殺するものである。長期疾病にかかったときに、一年で打ち切られたならばそのあとはどうするかという問題を考えますときに、当然これは相当長期拡大をしなければならない状態にございます。社会党原案は、その意味におきまして現在の一年の療養給付を二年に延長しようとするものであって、まさにこのことに適していると思うのでございます。  次に傷病手当金出産手当金の問題でございますが。現在まで日雇労働者健康保険法においては傷病手当金制度がございません。出産手当金または保育手当金制度もないわけでございます。現金給付についてはわずかに埋葬料というものがあるだけでございまして、経常的な現金支出割度がない、これは非常に大きな欠陥でございます。特に労働者健康保険において傷病手当金がなければ、その保険の実効を上げ得ないということは、これまたすべての人が認識しているところでございます。国民健康保険その他の保険においても傷病手当金のある必要がございまするけれども、特に労働者の場合には、特にまた雇用の状態が不安定な労働者の場合においてはその必要がはるかに高いわけでございます。もの疾病にかかりましたときに給料が停止をされる、その場合に家族を養うために、傷病手当金がつかないために、療養給付を受けずして、医者の注意にさからってまでも働きにいかなければ一家が路頭に迷うということがございまして、そのために保険給付を受けないで、自分のからだを悪くするという状態がございます。それを救う道は当然傷病手当金継続的現金給付でございまして、この制度が今まで日雇労働者健康保険法になかったことは非常に大きな欠陥でございます。その意味日本社会党傷病手当金においては九十日、出産手当金においては労働基準法精神に従いまして産前産後合計八十四日の支給をしようとした。しかも修正案は現在の賃金水準に合わして二百円、百四十円の水準に引き上げようとしたことは、まさに最も適切なものであると確信をするものでございます。  次に、この日雇労働者健康保険法において適用要件が非常に過酷でございます。現在の状態におきましては二ヵ月に二十八日、六カ月に七十八日という要件に相なっておりまするが、二カ月に二十八日ということは一カ月平均にして十四日に相なります。日雇労働者の今の就労の実態は、全国的に平均十八日、悪いところでは十五、六日のところがございます。そうなりますると、自分の病気のためにもし一日、二日休んだならばこの要件に適当しないことになりまして、せっかく保険料を払いながら傷病給付療養給付を受けられないという条件にあります。そのためにこの要件を下げる必要があるわけであります。私どもはこれを二カ月二十八日の要件のほかに、六カ月六十日の要件にすべきであると考えております。六カ月六十日になりますと一カ月平均十日になりまして、これでありましたならばほとんどすべての人が給付を受けられることになり、また六カ月という要件でございますから、療養給付を受けるために日雇労働者になるというような反対の逆選択は起り得ないものといたしまして、そうして二カ月二十八日、六カ月六十日の二本立のどちらか一つを満たせばいいという要件にいたしたわけでございます。これも最も適切な方法であると確信をいたしている次第でございます。  さらにまたこの日雇労働者健康保険法の現在適用を見ている自由労働者以外に、それと同じような職種で同様の状態にある労働者が全国至るところにございます。現在擬制適用を見ております土建労働者ほんとうに法的に適用されるために、また現在その適用の恩恵を受けておられない山林の労働者、あるいは鼻緒工、あるいはつき添い婦という人が、法的に適用を受けられるように、この社会党案におきましては、認可による被保険者という特別の条項を設けまして、この道を開いておるわけでございます。これもまた最も適切なものと私どもは考えております。この問題を解決するために、この内容を実現するために、国庫負担を現在の一割五分の補助から、療養給付に対して五割にこれを拡大し、そして保険料値上げを全然せずして、保険料は現行のままにして、これを実現しようということは、最もこの法の精神にかなっていると私ども確信しているわけでございます。その意味において、私ども日本社会党提出修正案並び原案に対しまして、全面的に、確信を持ってこれに賛成し、これを皆さん方が御可決になることを希望するものでございます。  自民党提出修正案並び政府案に対しましては、私どもはかように考えております。今までなかった傷病手当金が今回幾分でも、十四日でもついたこと、これはごくわずかな前進でございます。そして次に国庫補助国庫負担になって、法律に明記されて二割五分になったということは、これはまた前進であると私どもは考えております。この二つのみでございましたならば、私どもは私どもの案についてもまた考え直しまして、皆さん方とともに話し合って、さらにそれを前進する修正を加えて、皆さん方賛成するのにやぶさかではございません。しかしながらほかに非常に改悪の点がこの法案には別に盛られております。それは保険料値上げでございます。保険料が、現在政府原案は基本的に第一級については二十二円にいたしました。十一円、十一円。当分の間労働者に関する限り十円という原案になっており、修正案はこれを両方十円、十円に当分の間しようという修正案でございます。いずれにいたしましても、修正案にいたしましても原案にいたしましても、現在より保険料値上げは非常に大きなものがございます。この金額傷病手当金あるいは出産手当金の新しい給付に要する金額よりも、はるかにたくさんのものがございます。でございまするから、傷病手当金等給付がふえた分に見合っている部分以外は、明らかに日雇労働者健康保険法保険料値上げ改悪法案ということができるわけでございます。その意味で私どもは、先ほど申し上げましたような措置をとることができず、この法案反対をしなければならない立場になっているわけでございます。特にひどいのは、一例を申し上げますると、保険料値上げは七月から実行する、傷病手当金給付あるいは出産手当金給付は十月からする。このように三カ月のサバを読んでいる。保険料値上げを先にしようというような内容まで含んでおります。明らかにこれは、半分は保険料値上げ法案ということができるわけでございます。その意味で私ども賛成ができないのでございます。私どもは、どうか私が今討論で申し上げましたことを、与党の皆さん方十分に御配慮なさいまして、自民党提案修正案並び政府原案について思い返していただいて、それよりも社会党提出修正案並び原案の方が健康保険法ほんとう精神にかなう、ほんとう健康保険適用を受けて、なおよくなることをこいねがっている労働者並びに新しく適用を受けたいと考えている労働者にとって適切なものである、この労働者は国をしょって立っている労働者であるという考え方から、ほんとうの大乗的な立場から、皆さん方すでに御提出になっておられますけれども、お考え直し下さいまして、皆さん方修正案並び政府原案反対し、そうして日本社会党修正案並び原案賛成していただきたいのでございます。  このような意味において、私ども日本社会党修正案並び原案賛成をし、自民党提出修正案並び政府提出原案に対して反対をするものでございます。
  10. 森山欽司

  11. 植村武一

    植村委員 私は自由民主党を代表いたしまして、日雇労働者健康保険法の一部を改正する法律案に関し、自由民主党修正案並び修正部分を除く政府原案賛成し、日本社会党修正案及び修正部分を除く原案反対いたすものであります。  日雇労働者健康保険は、昭和二十九年に発足以来逐次給付内容改善いたして参りましたが、最近保険財政が非常に不健全な姿となり、昨年度は六億円余の赤字を生じ、現状のままでは本年度相当額赤字が見込まれる状態に置かれているのであります。かかる状態を是正いたし、給付内容改善して、日雇労働者の福祉をはかるとともに、日雇保険財政抜本的立て直しをはかるため、政府改正法案提出いたし、保険財政健全化を期すると同時に、多年の懸案であります傷病手当金および出産手当金制度を新たに創設いたしましたことは、日雇労働者健康保険の本来の目的に一歩前進いたしましたものとして、きわめて重要な意義を有するものであります。なかんずく改正案の中には、多年要望の強かった医療費に対する国庫補助を増額いたし、それが単なる赤字対策としての臨時補給金的性格のものではなく、これを今回法律上一定の率として明文化いたしましたことは、真に時宜に適した措置であると申さねばなりません。さらに、本委員会においてしばしば論議され、指摘されました療養給付受給手続簡素化が実施されることとなりましたことは、当然のことながら特筆され、今後の運営に一段の努力を期待するものであります。  しかし政府提出原案保険財政赤字対策の一環として、保険料率の引き上げを行わんとしていますことは、全面的には賛成しがたく、社会保障制度審議会の答申にも、このことに触れ、日雇労働者実態から見て妥当ではないと述べていることは御承知通りでありますが、現下の国家財政から、一面また保険財政恒久的確立のためには事業主、被保険者も若干の犠牲はやむを得ない措置として認めざるを得ませんが、政府はさらにこの点について特段の考慮を払うべきであると思うのであります。従ってわが党においては保険料の急激を増加を防ぐため、修正案提出いたしまして、当分の間被保険者負担すべき第一級の保険料額十円と同様に、事業主も十円とすることといたしたのであります。  以上今回の改正案における諸措置は、現段階においてはまず適当と認められるものでありまして、私は本改正案については、自由民主党修正案及び修正部分を除く政府原案賛成し、日本社会党修正案及び修正部分を除く原案反対するものでございます。
  12. 森山欽司

    森山委員長 これにて討論は終局いたしました。これより順次採決に入ります。最初に内閣提出日雇労働者健康保険法の一部を改正する法律案について採決いたします。  まず本案に対する修正案について採決いたします。本修正案賛成諸君起立を求めます。     〔賛成者起立
  13. 森山欽司

    森山委員長 起立多数。よって本修正案は可決せられました。  次に、ただいまの修正部分を除く政府原案について採決いたします。これに賛成諸君起立を求めます。     〔賛成者起立
  14. 森山欽司

    森山委員長 起立多数。よって内閣提出日雇労働者健康保険法の一部を改正する法律案修正議決すべきものと決しました。  ただいまの議決の結果、八木一男君外十二名提出日雇労働者健康保険法の一部を改正する法律案は、議決を要しないものと決するに賛成諸君起立を求めます。     〔賛成者起立
  15. 森山欽司

    森山委員長 起立多数。よってそのように決しました。  なお、両案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  16. 森山欽司

    森山委員長 御異議なしと認め、そのように決します。     —————————————
  17. 森山欽司

    森山委員長 次に、戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案議題とし、審査を進めます。  質疑の通告があります。これを許します。長谷川保君。
  18. 長谷川保

    長谷川(保)委員 戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案が今回提出されましたのにつきましては、われわれ長年主張しておりましたが、今まで戦時中の政府権力によって動員されておりました多くの学徒、あるいはまた義勇軍、徴用工等々の諸君で災害を受け、障害を起し、あるいは死亡した諸君に対しまする当然の国家がなすべき援護の手がなかったり、あるいは不十分であった、これが今回取り上げられるに至りましたことにつきましては、私どもとしましては、長年の主張がここに取り上げられて参ったわけでありまして、賛成でありますが、一応この法改正によりまして適用されます人々の種類、人員、金額等について承わりたいと思います。     〔委員長退席植村委員長代理着席
  19. 河野鎭雄

    河野政府委員 ただいま御質問のございました戦傷病者でございますが、従前から適用になっておりました軍人軍属の分につきましては、特に範囲の拡大等はございませんので従前通りでございます。ただいま御質問のございました動員学徒等を含みますいわゆる準軍属——今度の法律では準軍属として正式に計上いたしたわけでありますが、この人たちは今までなくなった方に対して弔慰金をお渡しいたしておったわけでありますけれども、その数は大体七万というふうに考えている次第でございます。今回新しく準軍属傷痍者に対しましては障害年金、それからなくなった方の遺族に対しては遺族給与金をお渡しすることに法律改正をいたしたい、かように考えておるわけでありますが、その前者につきましては、推定でありますが、重傷者だけを対象としてにおります関係上約六百人程度かと考えております。それから後者の遺族給与金対象となります件数は大体二万八千件くらいになるのではないか、かように考えておるわけでございます。  それから金額のお尋ねでございましたが、準軍属障害年金は平年度にいたしまして一千九百万、約二千万円、それから遺族給与金は同様平年度にいたしまして七億一千四百万円程度と考えておる次第でございます。
  20. 長谷川保

    長谷川(保)委員 この給与金及び障害年金以外のものがどれくらいになりますか。
  21. 河野鎭雄

    河野政府委員 その他の部分につきましては、遺族年金の増額がございますが、平年度にいたしまして約十九億円でございます。それから軍人軍属関係障害年金の増額等に要します経費が同様平年度にいたしまして約五千五百万円、それから遺族援護法とあわせまして留守家族援護法の方を改正いたしたいと考えているわけでございますが、そのおもな点は留守家族手当の増額でございまして、これに要します経費が一億八千九百万円程度でございます。
  22. 長谷川保

    長谷川(保)委員 留守家族援護法による給与金を受けております者が何人ございますか。
  23. 河野鎭雄

    河野政府委員 留守家族援護法はたとえば引き揚げてきたというようなことで、年間に相当異動がございますので、大体中間をとりまして考えてみますと、約一万二千件程度になるかと思います。
  24. 長谷川保

    長谷川(保)委員 あとまだ帰ってくるという見込みのあります者、まだ外地におって、もちろん帰ってくるか帰ってこないか十分わかりませんでしょうが、なお外地に残っておると考えられる人々で、この留守家族援護法の、家族が対象になっております人はどれくらいの見込みでございますか。
  25. 河野鎭雄

    河野政府委員 ただいま手元に正確な数字を持っておりませんので、間違った数字を申し上げるといけないと思いますので、後ほどまた調べまして正確なところをお答え申し上げます。
  26. 長谷川保

    長谷川(保)委員 大臣にお尋ねいたしますが、だいぶん戦時のいろいろな意味での災害を受けました人々の援護の態勢あるいはその遺族に対しまする恩給その他の法の整備というものができてきたと思うのでありますが、これで大体全部できたとお思いでしょうか。なおこのほかにまだそういう法の援護から漏れておるというものが相当ございますとお思いでしょうか。内閣意見としてはここらで大体終りというような御意見でしょうか。
  27. 堀木鎌三

    堀木国務大臣 戦争の被害というものは御承知通りにほとんど全国民にも及ぶかと思われるような状況でございまして、その間にどこで線を引くかという問題は非常にむずかしい問題であろうということが考えられるわけであります。しかしながら今回恩給法の改正に当りましては、ともかくも従来懸案になっておりましたものをこの際に全般として、どうしても国家として考えなければならないというものを最終的に取り上げたいという意向から、今回の措置に相なりましたようなわけでございます。私どもこの問題を処理するに当りまして各般の情勢を考え、まず政府といたしましては最後的にいってできるだけのことをするというような見地に立ちましていたしたような次第でございます。従いまして先ほど御指摘になりましたように、今回は準軍属を取り上げていたしたような次第でございます。いろいろ国民の間に各般の理由はございましょうが、この種の問題としては今回をもって政府といたしましては最終的のものにいたしたい、こう考えておるような次第でございます。
  28. 長谷川保

    長谷川(保)委員 大東亜戦争が発生いたしました以後の人々に対しましては、御承知のようにほとんどそういう法による手当等ができておりますけれども、大東亜戦争発生以前の諸君で、いわゆる日支事変というようなものが起ってから後の人々で、戦地において、あるいは戦地に準じまする地区において傷害しあるいは死んだという諸君でいわゆる平病死というふうになっておる諸君、あるいは結核等でずっと長く障害を受けておる、あるいはそれに起因したと思われるようなもので病床に長くある、こういう諸君に対する援護というものがまだ手が伸びていない。そういう人々で今日非常に困窮の中にあって、もしあのときに赤紙あるいはそれに準ずるもので召集されなかったならば、そういうことにはならなかったろうというて非常に落魄しております人々があることをなお思うのでありますが、こういう人々に対する法の援護というようなことは、今回の措置においても漏れていると思うのでありますが、これはどうなりますか。
  29. 河野鎭雄

    河野政府委員 ただいま御質問の特例措置でございますが、御質問のございましたように、戦争犠牲者の範囲が非常に広いわけでございます。大臣からもお答えいたしましたように、全国民がいわば戦争犠牲者であるというふうな状態にあったと思うのであります。そこで、どこで線を引くかということが問題ではないか、特例法に定められております考え方といたしましては、大東亜戦争のときとその前と事情が非常に違うではないか、内地それ自身も戦場に近いような状態に置かれたという事情がございましたので、特にそういった制度が設けられておるものと、かように考えておるわけであります。従いましてこれをそれ以前の段階にまで広げていくということについては、御趣旨はわからぬことはないのでございますけれども、無理があるのではないか、かように考えるわけでございます。むしろ全国民が戦争犠牲者であるというふうなことから考えて参りますと、法に漏れた人たちにつきましては、その他の、たとえばただいま日程に上っておりますような国民年金制度をどうするかという、社会保障制度全般の問題として解決していくというふうな考え方がいいのではないか、かように考える次第であります。
  30. 長谷川保

    長谷川(保)委員 そこで、これは政治の上の大きな問題でございますから大臣に伺いたいのですが、今お話のように確かに私どもは今次の戦争というものが、軍人、軍属というような人ばかりでなく、全国民に対する戦争の災害があった。いわば全国民が戦争の犠牲者であったといってほとんど過言でない、こういう事態でありますから、本来ならばあくまでもこれは社会保障制度を確立して、国民年金を確立いたしまして、それによって援護するのが合理的であるということは、私どもは早くより主張をいたしたのであります。しかし今日こういうような軍人恩給が復活をし、そうしてまた軍人あるいは軍属あるいはそれに準じまする準軍人というような人々に対しまする援護の手というものが別個にできてきたということでありますれば、やはり軍人、軍属あるいは準軍人という人々に対しましては公平な扱いをしなければならない。日支事変というものは明らかに戦争であります。あれ以後は、大東亜戦争が始まった以前におきましても性格は同じであると思うのです。だからあれ以後とあれ以前とに、ただ国の財政上そうせざるを得ないという理由だけで分けるというのは、公平の原則にそむくと思うのです。でありますから、私どもは、今日以後においても何とかこれを国民年金に吸収していくという方針をとるならばともかくとして、軍人もしくは軍属、準軍人というものに別途こういう方針をとるとするならば、日支事変にさか上るべきである。そうでなければ公平の原則に反するものである。予算が足らないならそれを全体に割って平等にそういう人々を救済すべきである。しかし、もし将来こういうものを国民年金の中に吸収するということであれば、また一つの考え方があるわけです。国民年金をすみやかに成立させてそれに吸収することが合理的であると思いますけれども、一体内閣においては将来こういうものを国民年金に吸収するという御意思があるかどうか、まずこの点を大臣にお聞きしたい。
  31. 堀木鎌三

    堀木国務大臣 今回の恩給法改正に当りまして、世論が国民年金制度の創設を急速に要求して参りましたのも、ただいまお話のような国民感情を表わしておるのだと私は考えておるのであります。同時に、一方、戦後の日本の社会自身に大きな変革が起りまして、旧来の家族制度自身が一種の崩壊に瀕しておるというところから、この問題にさらに拍車をかけるに至った点がある、こういうふうに考えるのであります。従いまして、今おっしゃる通りに、非常に線を引きにくいところがある。ことに日支事変といえども相当多くの犠牲者があったのでございまして、それらについても考えるべきではないか、いわゆるどこで線を引くかという問題について私は相当問題が起って参ると思います。いよいよもって国民年金制度の創設を急がなければならぬ。なるほど終戦直後すでに国民年金制度創設を必要とする社会的条件は発生しておりましたが、一方経済的な面において全くそれを不可能にする日本の状態でございました。こうなって参りましたときに、戦争の犠牲者を、一般国民の生活状況から見ましても、この際国民年金制度によってできるだけ吸収するのが本来の趣旨でなかろうかというので、おっしゃいますような方向に向って従来考えておりましたよりはるかに年金制度の創設について急いでおるような情勢でございます。内閣といたしましては、国民年金制度を早急に創設して、国民に対する援後の手を差し伸べるべきである。その生活を安定させることこそ最も必要なことではなかろうか、こういうふうに考えておる次第でございます。
  32. 長谷川保

    長谷川(保)委員 国民年金をやろうということは、お互い与野党ともに今や国民に公約をするような段階であるわけでありますが、一体国民年金を将来やるとして、こういう援護法による年金その他との関係はどういうふうに持って行こうとするのか。今の内閣はすでに国民年金の看板を掲げているのだけれども、こういう援護法あるいは恩給とどういう関係に持って行こうとするのか、大臣が担当大臣ということになりましようから、それを承わりたい。
  33. 堀木鎌三

    堀木国務大臣 これはもう御承知通りに、各国の例も、学者の説もいろいろ分れておるところでございますが、国民年金を創設いたす責任官庁といたしましては、年金制度を創設いたします以上、できるだけ国民年金に最低限度、何と申しますか、固定した一定の額だけは共通部門を作って総合調整をいたしたいという考え方でおるわけであります。そういうふうな考え方であります際に、年金制度の限界をどこら辺に線を引くかということが相当問題になってくる。もっと平たく申しますれば、一つのまくらになっている国民年金の固定給的なものだけ共通にする道はないか、考えるべきでなかろうかと思うのであります。ただ、この問題につきましては、恩給その他につきまして別個に考えるべきだという外国の実例、及びそういうふうな説をとる人もございますが、私どもとしては、できるだけこの国民年金制度と恩給、援護法の関係とを総合調整いたしたい——どの点で総合調整するかという点を今具体的に研究いたしております。これらの問題についてつい意見的なことを申し上げましたわけでございますが、御承知通りに、内閣にあります社会保障制度審議会がどういう答申をするかということも私ども考え方に大きな影響がございますので、確定的なことを申し上げることは困難でなかろうか、こういうふうに考えておる次第でございます。
  34. 長谷川保

    長谷川(保)委員 確定的なことをお伺いすることはもちろん困難だと思いますけれども、ここに一つの大きな方針を打ち立てなければならぬと思うのです。つまり、国民年金を実施した場合に、国民年金とこの援護法あるいは恩給等の年金を重ねて支給するのか、それともまた重ねないで、国民年金の額をオーバーする部分だけ加給するように将来しようとするのか。これは将来国民年金を作る上において財政的にも非常に大きな問題である。それを越える分だけをそのとき与えて行こうとする方針か、それともまた併給まで行くのか、こういう方針はすでに内閣としてきまっているだろうと思いますが、きまっていなければ、担当大臣としましてはどういうお考えでありますか、その点を一つ。
  35. 堀木鎌三

    堀木国務大臣 この御質問の点が年金制度をしく際の一番大きな問題であるというふうに考えるのでありますが、御承知通りに、恩給、年金等の問題と、各種共済組合による分と、その他法律に基きまして現在厚生年金制度等ずいぶんございます。私どもとしては、年金制度本来の性質は、先ほども申し上げましたように積み重ねがあるが、基本的なべースは同じにしたい、これが一番すっきりした国民年金制度だというふうに考えることは、これはおそらく論を待たないところで、みな一致したところでなかろうか。しかし、実際問題に当りましてどう調整するかという問題が非常にむずかしい問題である。しかし年金制度をしきます以上は、各種年金がばらばらにあるということは、これは国民年金の本質から、いいものだとは考えられない。やはり付加方式をとって参るべきじゃなかろうか。つまり今おっしゃったうちで、基本のベースになるところは一緒にしてそのオーバーする分を積み重ねでいく、これが一番いい、徹底した方式でなかろうかということを考えておるわけでございますが、しかし、この積み重ね方式でいくので、ほかの方式は考えないのだと申し上げる段階ではないと思うのであります。それらについては、当然社会保障制度審議会が重要な問題として現在お考えになっておる最中でございます。従いまして、答申を得ました結果によって、現実に即しつつ、将来の理想的な国民年金制度に向いたい、こう考えているのが現在の政府、私ども考え方であります。その程度で御了承願う段階であることも御承知だろうと思いますが、確定的なものとしてお取り上げにならないように——私の今考えておるところを率直に申し上げました。
  36. 長谷川保

    長谷川(保)委員 私はこのことを今どうしても伺っておかなければならぬことは、この改正法案の二十一ページに出て参りまする附則第七項中の遺族年金と船員保険法の規定による支給ですね、これが今のオーバーする部分だけについて支給するようになっております。御承知のように、恩給も、給料のうちの百分の幾つかというものを出して恩給ができている。船員保険法も、御承知のように、賃金のうちの千分の幾つかというものを出して、船員保険法というものができている。ですから、それとこれと同じような関係になる。ここでこの原則を立てるとなると、やっぱり将来の国民年金というものとの関係も同様に考えていくであろう。この援護法自体と国民年金との考えもまた同様に考えていかなければならぬだろう。つまり共済組合の関係、あるいは社会保険関係、あるいは恩給、援護法の関係と将来の国民年金との考え方を、こういうようなアィデアのもとに進めていくとなると、これは将来の問題としてなかなか重要な問題です。将来国民年金制度をどうするかというときに、非常に大きな問題になるわけです。そこで私はこの問題を今しっかりと、ここで打ち出してこられましたものにつきまして、船員保険というものはみな賃金から——もちろん国庫の補助もありますけれども、同時に賃金の何分の幾つかを積み立ててきた、それとこれとの関係が、こういうような超過する分について支払うということになりますと、あらゆるものをこのアイデアでやっていくとなると、非常に大きな問題になると思うのです。そこで私は特にこれを聞いておきたい。大体船員保険法の支給と、それから援護法による遺族年金の額とはこえる分について支給をする、こういう原則をこの際確立してよろしいのでしょうか。これをお出しになりました意図について十分承わりたい。
  37. 河野鎭雄

    河野政府委員 船員保険との調整をはかっておりますのは、戦時災害の場合は全額国庫負担に船員保険の方でなっております。その関係がございますので、調整をはかっておるわけでございます。今後国民年金制度をどうするかという問題とは、ちょっと性格が違うのではなかろうか、かように存ずる次第であります。
  38. 長谷川保

    長谷川(保)委員 そうすると、今の点はわかりましたが、それでは今申しました第二の問題でございます。国民年金をやりますまでは、この軍人恩給あるいは援護法による年金その他の給付によって旧軍人あるいは準軍人あるいは軍属及びその遺族について国が援護していく、こういうことについて実際私どもが地方に参りましてずいぶんと涙を流される。同じように徴兵され、あるいは徴用されていって、今のような大東亜戦争という十二月八百という日を境にして、前の方で行った分についてはさっぱり適用されない。国民としましては日支事変以来連続の戦争です。途中で間があったわけではない、連続の戦争なんです。だから今の国家財政ということを考えてそうせざるを得ないという考え方がわからぬではありませんが、しかしそういう理論的な根拠というものは非常に薄弱だと思う。不合理だと思うのです。だから一般の遺族たちがよく私どもに泣いて訴える。もしあのとき家におればそんなに死ななかったろうに、あるいはその後長い間病気になって死ぬというようなことはなかったろう、今日自分の家の落魄した理由はそこにある。それだのにたとえば満州へ連れていかれた、そこでいわゆる平病といわれておりますような病気になって死んだ、あるいはその後家へ帰って死んだ、こういう者に対して何らの手当がないというのは困る。第一この人たちにしてみれば、お国のために死んだという名誉だけでもほしい。その名誉も与えられなければ、また金も与えられない、今日落魄しておる原因がここにあるといってよく泣かれるのであります。私どももっともな話だと考える。それが今度の援護法等で救済されると私は大へんよかったと思うのでありますが、日支事変までなぜさかのぼらなかったか、単に財政上の顧慮というようなことでは、これは同じように国に徴兵されていって死んでおるのが、ただ大東亜戦争という日を境にして差別されるということは、これはどうしても納得がいかないだろうと私は遺族諸君立場に立つと考えられる。どうして日支事変までさかのぼってこれをやらなかったかについて、せっかく法律を出すのですから、理論的な根拠を承わりたい。
  39. 河野鎭雄

    河野政府委員 日支事変中でありましても、公務で死亡したような場合には、大束亜戦争の場合と全く同じに扱っておるわけであります。公務といわれない病気で死んだという場合の特例の場合であります。大東亜戦争中は支那事変中と事態が違うということで特別に範囲を広げている、こういうふうな事情があるわけであります。むしろ考え方としては本来そこまでいくのは、従来の考え方だけでいけばいかがかと思われる範囲まで、大東亜戦争の特殊事情に基いて広げていったというような事情にございますので、その特例を日華事変までさかのぼっていくことはいかがか、こういうふうに考えておるわけであります。なおこの措置は、実は軍人についての恩給の扱いと平仄を合わしておるわけであります。そういうふうな関係から申しましても、援護法だけでどうこうというふうな性格の問題じゃないんじゃないか、かように考えております。
  40. 長谷川保

    長谷川(保)委員 だから恩給がこうだから援護はこうだというのでなしに、戦争は日支事変からずっとつながっておったものです。切れておったものならかまいません。けれども日支事変からつながっておったのに、ただ昭和十六年十二月八日という日を境にして、それ以後の者については軍隊に召集された者で、いわゆる平病死というようなものでもやっておりましょう。ところがそれ以前の者についてはやらない。これでは遺族には納得がいかないですよ。だからこの点援護法を改正するならば、やはりその前の人も救済すべきじゃないか。それから前というと、いわゆる第一次欧州戦争というのは切れてしまっていますが、少くとも日支事変以後というものはつながっている。実際私どものところにひどいじゃないかといって、何人もそれを訴えてきていますよ。それは遺族にしてみれば納得できませんよ。単なる十二月八日というものを境にして、その前の人は私が頼まれているのでも、満州におって、バンチ氏病というようなものでどうも受けられない。恩給法の改正であっても、援護法の改正であっても、法律をずっと読んでいきますと、大がいの人がこれに入るなというふうにわれわれは感ずるのだけれども、実際の個々の者に当りますと、公務傷病としての証明が確たるものがない。こういうことで救われないのが非常に多いのです。この点国家の名において動員したというものについては、とにかくそのからだを国家があずかっておる。だから国家の名において動員したものについては今度の援護法の精神のように、援護の手をずっと広げていくということであれば、国家の名において動員して、そのからだをその国家の機関において預かっている。その間において何らかの病気になり、再起できなくなった、あるいは死んだというようなものについて、日支事変以来つながっております戦争の状態、これを別途に考えるというのはどうしても不合理だと思う。ここまで広げるならばそこまで広げなければうそだと思う。     〔植村委員長代理退席、委員長着席〕 今次の援護法の改正についてもここまでやるならば、なぜそこまでやらないのか、その点内閣の意向はどうであったのか大臣に聞きたいと思う。
  41. 堀木鎌三

    堀木国務大臣 今お話のような実例に当りますと、お気の毒な例がたくさんあることは私どもも痛感するわけでございます。しかし何しろ今回の改正だけでも、御承知通り年度二百億にわたる経費の増加を来たすという点から考えますときに、どうしてもどこかで線を引くということも、これは御了承願える点であろうと思うのであります。それにつきましてむしろ私どもは私ども立場から、今まで顧みられなかった準軍属というものをともかくも、実際の軍人軍属であるだけでなしに、少くとも範囲を広げたいという考え方から実際は努力いたしましたような次第で、御不満な点は十分私わかると思いますが、われわれ自身これ以上のことはやはり社会保障的な見地から問題を解決していかなければ、ついに解決する道はなかろうじゃないかというふうに痛感いたしておるような次第でございます。結局のところどこで線を引きましても、本質的に先ほど申し上げましたような戦争の犠牲者というものは相当広範にわたっておるので、社会保障的なものとあわせて解決して参るよりしようがない、こういうふうに考えておるような次第でございます。
  42. 長谷川保

    長谷川(保)委員 どうもその点が全く納得いかないのです。だから社会保障でやるというならば、国民年金制度をすみやかにやる、その国民年金制度をすみやかにやるためには、今度の恩給法にしても、あるいは援護法にしても改正をしないで、国民年金制度一本でやるように進むべきだ。それを大東亜戦争の十二月八日を境にして、それまではやらない。戦争状態はずっと日支事変から続いておる。だから線を引くならば、日支事変の前で線を引くならばわかるのです。それをそうでなしに途中の大東亜戦争という——その日から戦争が始まって人が違ったわけではない。なるほどその日からアメリカとの戦争は始まったでしょうが、その前から中国とのそういう紛争、戦争という状態はあった。だからなるほど太平洋の方に進んでいったのは、あるいは南方に進んでいったのは十二月八日からでありましょう。けれども満州に行っている諸君、中国に行っている諸君、この徴兵され、動員されて参りました兵隊、その遺族にしてみれば、やはりみな歓呼の声に送られていったのであり、赤だすきをかけていったのであって、差別することは少しも納得できないという遺族考え方は当然のことでありましょう。だから社会保障制度をやるというならば、私どもも——ことに私は党で責任を負って恩給法の改正を最初からやったのでありますけれども、そのときも言ったのであります。やるなら社会保障制度で全部おやりなさい。軍人恩給を復活しないでおやりなさいと私は言った。けれども不幸にしてそれは敗れました。敗れましたが、今日も今大臣のお話のように国民年金制度をやる、社会保障制度というふうなものでやっていくのだというならば、今度の軍人恩給や援護法の改正をやって、千億近い金をそういうものに出していくというふうなことをしないで、ほかのものは一応いろいろな不合理があっても目をつぶって社会保障制度一本に、国民年金制度を実施するという方向に直進すべきである。社会保障制度をやるというならばそうすべきであった。けれどもそれができるまでの間何とか手直しをしていこうというならば、それならば今の線の引き方が変だ、どう考えてもこれは納得できない。遺族にしてみれば納得できないですよ。十二月八日を境にして、その前にいわゆる平病死といわれておって、公務障害と明らかに証明できない。証明できないけれども、親にしてみれば、戦地に持っていかれ、満州に持っていかれて、あの冷たい中で、不十分な食糧で、そうして過労で病気になって死んだというのは、幾ら平病だといわれても、それはあの戦地の勤務では病気が出る方が当りまえですよ。私もわずか八カ月でありますけれども、大東亜戦争が始まった直後に召集されて中国に参りました。北支の十一月、十二月、私山東省でもって敷くものがないのです。夜寝るのに敷くものがない。どうやらこわれて残った支那住宅に入りまして寝ますけれども、敷くものはコウリャンがらの竹のようなもの、これをほんの少し敷いて、そして毛布を一枚かぶって、着たままで寝るのですよ。あの中で病気が出ないのが無理ですよ。病気が出るのが当りまえですよ。よくも人間はやれるものだと、戦争に行ってきた者はどなたも考えるでしょう。そこではいわゆる戦争による公務障害と考えられない、いわゆる平病死として扱われておりまする人々の病気が出ない方が無理です。出る方が当りまえです。だから遺族の人にしてみれば、家におったら幾ら何でもあんなことにはならなかったろう、お国のために連れていかれたばかりにこうなったと考えるのは当然でありましょう。これは日支事変の最初ならばとにかく、少し進みました後におきましては、みんなこういう満州あるいは北支等におきましてはそういうひどい生活をしてきておる、病気が出るのが当りまえなんだ。だから、たとい平病であっても、日支事変以来ずっと戦争が続いておったのですから、私は当然すべきだと思う。だからこの援護法は私は反対ではありませんが、非常に中途半端で合理的でないから、これではなお納得しない遺族の方がありますよ。だからさっき私がお伺いしましたように、これで終るのですかどうですか。終るとするならばもう少しそこまで考えてやらなければいかぬ。たといそのために予算がふえても、憲法に従って全国民公平の原則というものは貫かなければならぬ。それでなければが通らないのでありますから、私はこれをもう少し直すべきだと思うのです。これに対する今の大臣の答弁では私は納得できない。線の引き方が不徹底です。この点についてなお休憩後に質問いたします。
  43. 亀山孝一

    ○亀山委員 今同僚長谷川委員の切々たる御意見並びに御質問を伺いましたが、われわれとしても大いに賛成であります。ただこの際大臣からはっきりしたお答えはできにくいと思いますけれども、先ほど大臣の言葉にあったように、これで打ち切るというようなつれないお返事でなくて、どうか今の問題等も含めて検討の余地があるというふうにしていただいて、来たるべき修正の機会にぜひとも御考慮願うように、私は長谷川委員と全く同意見ですからお願い申し上げます。
  44. 森山欽司

    森山委員長 午後二時まで休憩いたします。同時刻本会議開会中のときは、本会散会後会議を開きます。     午後零時三十三分休憩      ————◇—————     午後四時十五分開議
  45. 森山欽司

    森山委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案議題とし、質疑を続行いたします。質疑の通告があります。長谷川保君。
  46. 長谷川保

    長谷川(保)委員 午前中も伺ったのでございますが、次に私伺いたいことは、大東亜戦争の前に、たとえば応召軍人が満州におって結核になった、それがたとえば結核で内地に送還されてきた、その後内地で一応小康を得て国立病院等を退院した、ところがその後しばらくしてまた発病した、そうするとその帰ったときに小康を得て一応全治なら全治というような形になっていると、その後間もなく発病したとしても、それは結核が継続しておったとは考えられなくて、結局これらの人々は何ら援護法の対象にもならず、恩給の対象にもならずということで、その後長い結核に非常に因っているという、こういう実例が相当あります。大体昭和十三年、十四年、十五年、十六年、あのころの結核の治療の水準から見て、またことに地方にありまする国立病院その他の医療機関で診察をして、結核が全治したというようなことは確実には言い切れないものである。一体結核が全治したかどうかということは、これはずいぶん学説からいっても問題があると思うのですが、こういう結核が全治したというようなことを、あのころの状態から見て、今日の非常に進歩した医療の水準から見ればともかくとして、今日でも問題があると思うのですが、一体結核病の性質からいって全治したというようなことが言えるかどうか、この点公衆衛生局長に伺いたい。
  47. 山口正義

    ○山口(正)政府委員 結核が全治したかどうかという治癒の判定の問題のお尋ねでございますが、これは学問的に申し上げますと、ただいま長谷川先生御指摘のようにいろいろむずかしい点があるかと存じます。ごく初期でありますれば、申し上げるまでもなくレントゲンの症状がございましたりあるいはそのほかの症状がございましても、ことに最近の治療によりますときれいに所見もなくなり、また症状もなくなって、いわゆる全治というようなことが考えられるのでございます。しかしながら非常に古い形のものでございますと、レントゲンの所見が全然消えてなくなってしまうというようなことはなかなかむずかしい場合が多いのでございます。私どもが現在取り扱っておりますやり方と申しますか、昭和二十八年に実態調査をいたしまして、その後病変のあった者に対する追及をいたしておりますが、一定期間、これは学者によって意見が違うのでございますが、たとえば二年以上たってレントゲンの所見が全然動かない、もちろん菌も出ない、他に自覚症状もない、ただレントゲンの所見できれいに影がなくなってしまわないというようなものは大体略治というような形で、全治というのはなかなかむずかしい結論でございますが、略治というような形で一応治癒の取扱いをするというようなことをいたしているわけでございます。そういう意味から申しまして、全治というものは全然ないとは申し上げられないので全治の場合もございます。ただ症状が固定してしまって、レントゲンの所見がいつまでも残っておる、しかしそれを治癒という判定をするというようなことが、現在やっておるやり方でございます。
  48. 長谷川保

    長谷川(保)委員 今のお話でも、全治はないとは言えぬけれども、さればといって全治したということを言い切るようなことはずいぶんむずかしいことだ、これは局長自身も医師として十分お認めになろうと思います。結核の発病の事情を考えましても、大体非常な過労あるいは栄養が極度に悪い、こういうような場合、ことにこういうものが重なりますときには、結核の発病というようなことが起りやすいのであります。戦地におきましては、過労あるいは非常に不摂生な生活を余儀なくされる、また栄養等も欠けるというようなことは当然起りがちなことであります。こういうことで発病した。そのときに、結核だからいわゆる平病だ、こういうような判断をしばしばされておるのでありますけれども、そういうことはずいぶん実情と違った無情な判定であって、結核の場合にそういう点は十分な同情をもって見てやることが必要だと思うのです。大体今申し上げましたように、昭和十三、四年ごろから五、六年、こういうころの日本の国立病院などの診断というものが、果して全治というようなことを言い切るだけの水準にあったかどうか、こういう点について局長は一体どういうようにお考えになりますか。
  49. 山口正義

    ○山口(正)政府委員 問題は、全般的なことで申し上げるのはなかなかむずかしいかと思います。結局、治癒と判定したかあるいはまだ治癒してないかというようなことは、その一つ一つの例について担当の医師が判断されることによって判定されるのだろうと思います。最近は特に、先ほども申し上げましたように初期に治療いたしますれば全治するというのが非常に多くなってきておりますが、以前も全治というふうに考えていいのがある程度あったということは、私の先ほどの表現で全治ということが非常にまれだというふうにおとりいただいたとすれば、私の表現がまずかったのでありまして、決して全治はきわめてまれであるというような意味で申し上げたのではございません。ただレントゲンの所見などが残っておりますと、これは全治と判定いたしますのになかなかむずかしい場合があるというふうに考えるわけでございまして、ただ個々のケースをとってみますれば、レントゲンの所見は一応固定をした、自覚症状も、他覚症状もなくなった。それが少くとも三年ないし四年ずっと続いておるというような場合には、一応治癒したというふうに判定してもさしつかえないのではないか。以前はよく五年くらいのところの沿革成績をとって判定いたしておりますが、これはそのケースによることだと思うのであります。ただそういう人が再び何らかの原因によって発病してこられたということはしばしばあることでございまして、結核という病気は先生も御承知でいらっしゃると存じますが、現在の大体の学説では再感染ということは考えないで、一たん感染して発病し、それがまた治癒の状態になってまた再び再発するというようなことがございますから、新しく感染ということでなしに、どういう人にしても、最初に感染した病源体をからだの中に持っておる。普通ならばそれが動かずに済んでおるというわけでございますが、何らかの原因でまたそれが活動し出すというようなときに、発病あるいは再発といったようなことが起ってくるわけでございます。そこの判定はなかなかむずかしいのではないか、かように考えるのでございますが、先ほどから全般論として治癒ということを考え得るかどうかというようなお尋ねでございますと、やはり一応全般論としては治癒ということもあり得る、またそれから再発ということもあり得るというふうに申し上げなければならぬと存じますが、結局は私は個々のケースによっていろいろ判断をしていかなければならないのではないか、そういうふうに考えるわけでございます。
  50. 長谷川保

    長谷川(保)委員 私が申すまでもなく、医学の常識から申しまして、大体重度の結核になるといったような場合に、それが運よくある程度おさまったといたしましても間もなく一年なり二年なり三年なりのうちにまた相当ひどい結核が出てきたという場合には、私は前の病気が全治したと考えるべきではなくて、やはり継続したもの、こういうように当然考えるべきであるというように存ずるのであります。あの当時のことを考えますと、傷痍軍人療養所とか、国立病院とかいうようなものは、なかなか病院の方でも非常にすぐれた専門の医者が必ずしもおったのではなくて、今から見ればずいぶんいいかげんなものだ——失礼だけれどもこう考えられる病院が非常に多かった。また患者の方でも生活に困るとかその他の問題からいたしましていいかげんなところで出ておったということが多かったと思います。従って私は今そういうたぐいの人が相当数国内にあって、年金や恩給の裁定を願い出てもこれが却下になっておるという例が相当数あると思う。せっかくここまで援護法を変えるということであれば、やっぱりそれらの人のことも当然考えてやらなければ、こういう人々はほんとうに落魄している人が多い、非常に長い病気の人でありますから落魄している人が非常に多いのでありまして、ここまで改正するならばこういうところにもやはり援護の手を伸ばすべきだ、こう思うのです。公衆衛生局長のお立場で、相当重症の結核の人が一応全治というようなことで医療を打ち切ったといたしましても、二、三年以内にまた再発してくるというような場合にはやはりこの病気の継続だ、一時下火になっていたものがまた出てきたのだ、こういうように考えるべきだと思うが、その点は局長どうお考えになりますか。
  51. 山口正義

    ○山口(正)政府委員 先ほどもお尋ねに対してお答え申し上げましたように、個々のケースで判断しなければならぬと思いますが、前の病気が相当重症であった、そして一応おさまったものの二、三年後にまた症状が出てきたというような場合には、その間完全に治癒していなかったというふうに判定してもいい例もあるのじゃないかというふうに考えられます。これはあくまで全般論として申し上げることはなかなかむずかしいのでございまして、個々のケースでは、ただいま長谷川先生の御指摘のような、前の病気が相当重症であったというようなときにはそういうことも考えなければならぬというふうに考えております。
  52. 長谷川保

    長谷川(保)委員 そこで援護局長の方に伺いますが、今の山口局長のお話のような事情でありますが、実際私の扱いました事件でもそういうような関係のもので頼んできたものが幾つかあります。それで援護局なり恩給局なりの方へ行っていろいろ伺ってみると、やっぱりそういうような場合にはなかなかむずかしいのですね。むずかしいばかりでなしに、場合によってはその間見ておってくれた医者のずっと全部の継続した——何人かの医者にかかりましょうが、継続した結核であったというような診断書を持ってこなければ、これはどうも裁定するわけにいかぬというようなことが起ってくるのです。これは事実として不可能なんです。事実としてそんなことはできません。医者にしたってどこかへ行ってしまいますから、なかなかそれをみな集めてくるということはできません。また集めてきたところが、おそらくそうは書いてはきたけれども、医師が頼まれて書いたんだろうということで、なかなかこれがやっぱりそういうようにならないのですね。それでは困ると思う。ちょうどこの前の三十年ですかの改正でもって、公務で傷病死したのでないという証拠がない限り、恩給なり年金なりをくれるというようなことになって改正されたわけでありますけれども、この太平洋戦争後においてはそういうことになりましたけれども、その前でも実際問題として証拠書類を集めるといったってできません。ことに医者が死んでしまったなんていえばどうしようもない。また医者がどこかに転勤してしまったんではどうしようもない。だからこういうようなものは今の結核に対する医学の常識からいって相当大目に見て、これはやはり救ってやるという方針をとらなければだめだ、こう思うのです。そういう点について今後の方針をちょっと承わっておきたいと思います。
  53. 河野鎭雄

    河野政府委員 私どもしろうとが医学的な問題についてお答えするのはむしろあべこべのような感じがいたすのでありますが、結核問題につきましては、ただいまいろいろお話がございましたが、ことに戦地で発病したというふうな場合につきましては、必ずしも太平洋戦争中に限らず、前のものにつきましても相当ゆとりを持ってと申しますか、できるだけ援護対象に入れるというような気持で処理をいたしておるわけでございます。私どもの処理で足らない場合には、日本の最高の権威者をもって組織しております援護審査会もありますので、そこで十分御審議をいただきまして誤まりのないようにいたしておるわけであります。  再発の場合につきましても、その間にずっと継続して医者の証明が整っておるということであれば、これは問題がないと思うのでございます。その間間々歯が抜けたというような場合がありましても、ただそれだけの理由で一律にだめだというふうにいたすつもりはないわけでございます。そういった問題は個々のケースによって因果関係を認めていくか認めていかないかという問題もあろうかと思うのでございますが、方針といたしましては、これは先ほど申し上げましたように、できるだけ援護に欠けることのないようにという気持で運用いたしておるわけであります。  公務であるかないかというふうな判定につきましては、長年恩給法の運営によって一つの基準みたいなものがおのずからできてきておると思います。同じ国の法律であるとすれば、やはりそういった基準は一律に適用すべきものと考えておるのであります。それにいたしましても、医学の進歩なり医学的判断の変化等によりまして、逐次また実情に合うようにいたしていかなければならぬという点もあろうかと思うのでありまして、そういう点も十分考えるようにいたして参りたい、かように存じております。
  54. 長谷川保

    長谷川(保)委員 今ここで答弁を伺うとそういう答弁になるのだけれども、さあ事実やってみるとなかなかそういう親切な扱いをしない。局長も今援護審査会の委員を当然しておられると思いますが、そういう点は実際患者にしてみれば無念やる方ない。だから傷痍軍人療養所なり国立病院なりを、あの当時のことだから患者も長くなるし、あいてしまっていいかげんなところで出ていった、家へ帰った、しばらくはよかったがまた発病してひどくなってきたが今さらどうしようもない、そういうようなのが実際たくさんあるのです。これは援護審査会の方でそれをしっかりやってもらわなければどうにもならないので、この際私はそれを河野局長に注文をつけておきです。どうかそういう点を親切にやってもらいたい。またぜひ結核の特質というようなことを考えて、この点については厚生省の医務局やあるいは公衆衛生局の方でも一つ十分配慮するようにしてやってもらいたい、こう思います。  それでは次に、今度の法律でまた二年延長になりますいわゆる未復員患者の人数は今どれくらいありますか。
  55. 河野鎭雄

    河野政府委員 ただいま遺家族援護法で療養給付をいたしております数は、昨年末におきまして約四千六百件でございます。
  56. 長谷川保

    長谷川(保)委員 この諸君は毎年毎年期限がくるたびにびくびくしているのだけれども、どうしてこういうこそくなことで一年なり二年なり延ばしていかなければならないのか、この際一挙になおるまで見てやるというようなことにどうしてならないのか、何か特別な理由があるのですか。
  57. 河野鎭雄

    河野政府委員 これにつきましてはいろいろお考え方もあろうかと思うのでございますが、昨年私どものところで各施設に照会いたしまして、入院患者を中心といたしまして、その症状の程度とか、あるいは今後どれくらいで療養が終えられるかというふうなことを調べたわけであります。それによりますと、昨年の秋の調べでございますが、一応三年たてば大体のめどがつくという結論が出ております。そういたしますと、ことしの十二月からさらに二年延ばすということになりますれば三年余り——調査したときから三年余りというふうなことになりますので、一応二年延長という立て方をいたしたわけでございます。
  58. 長谷川保

    長谷川(保)委員 この諸君はやはり非常に長いために生活にずいぶん困っている。なるほど入院はしておりますけれども、あるいはまた恩給の裁定等もあって、もらった諸君もありますが、恩給の裁定があれば入院料が差し引かれますから、非常に困っている諸君がある。しばしば、療養のためのいわゆる小づかいがもう少し何とかならぬかと言っておるわけです。こういう点の実情をお調べになったことがあるかどうか。
  59. 河野鎭雄

    河野政府委員 先ほど申し上げました調査の際にも、実は生活保護法の適用者がどれくらいあるかということも一応調べてみたのでございますが、今ちょっと手元に数字を持ってきておりませんが、そう多くはなかったように記憶いたしております。
  60. 長谷川保

    長谷川(保)委員 こういう点はずいぶんわれわれに訴えてくる人もあるから、一つ親切にめんどうを見ていただきたい。最後でありますから、なおさら親切にめんどうを見てやる、あるところはあまり法規通りにやらないで大目に見てやっていただきたいと思います。  質問が前に戻りますが、年金等の交付を願い出て却下された者が一体どれくらいありますか。
  61. 河野鎭雄

    河野政府委員 今までの実績で申し上げますと、約二百十二万の受付件数に対しまして、却下されたのが七戸三千六百ばかりでございます。ただこのうちには相当程度——けさほどもちょっと御質問がございました特例法によって拾っていくということができます者が約四万くらいございますので、実際に却下せざるを得ない状況にあります者が三万余りというふうな見当になろうかと思います。
  62. 長谷川保

    長谷川(保)委員 その中で異議申し立てをして再度却下された者はどのくらいですか。
  63. 河野鎭雄

    河野政府委員 異議の申し立てのございましたのが、正確な数字がちょっと今手元にないのでございますが、約五千件くらい。そのうち通過した者が三百くらいでございます。
  64. 長谷川保

    長谷川(保)委員 そうすると大体却下された者が三万余、そのうちでさらに異議申し立てをした者が五千件、このうち通過した者は三百、こういう数字が出てきたが、けさほど来御質問申し上げました、本来国家権力によって徴用されあるいは召集されて、それで傷病あるいは死亡した、こういう者で、大東亜戦争前の傷病死亡者、いわゆる平病死、あるいはまた先ほど来申しましたような結核関係の者、こういうような者の数が大体ここらで見当がつくと思うのですね。そう大した数ではないのではないか。もちろんこれをやるとなったらずいぶんあと出るかもしれないが、そう大した数ではないのではないか。そうなればやはりここらでもう少し伸ばしてこれを救うという算段をすべきではないか。そうすれば戦争の直接の被害者である者、国家権力によって、召集もしくは動員されました諸君の救済が合理的な線で一線画せるのではないか。この前の改正でできました公務による傷病死でないという大東亜戦争後の該当者を救うということをもう少しそこまで伸ばせば、大体これで直接戦争の犠牲になりました諸君の問題は片づくのではないか、こういうように私は思うのです。だからこの問題をそこまで広げるべきだというように私は思うのです。  以上で私の質問を終ります。     —————————————
  65. 森山欽司

    森山委員長 この際公聴会開会承認要求に関する件についてお諮りいたします。  内閣提出最低賃金法案、第二十六回国会より継続審査になっております和田博雄君外十六名提出最低賃金法案及び家内労働法案について、公聴会を開会することとし、議長に公聴会開会承認要求をいたしたいと存じますが御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  66. 森山欽司

    森山委員長 御異議なしと認めます。よって公聴会承認要求をいたすことに決しました。  なお公聴会開会の日時は四月十七日とし、公述人の選定等に関しましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  67. 森山欽司

    森山委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。     —————————————
  68. 森山欽司

    森山委員長 なおこの際委員派遣承認申請についてお諮りいたします。内閣提出最低賃金法案、第二十六回国会より継続審査になっております和田博雄君外十六名提出最低賃金法案及び家内労働法案についての審査のため、議長委員派遣の承認申請をいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  69. 森山欽司

    森山委員長 御異議なしと認め、そのように決します。  なお派遣地、派遣委員の選定等に関しましては、すべて委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  70. 森山欽司

    森山委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。  本日はこれにて散会いたします。     午後四時五十一分散会