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1958-03-27 第28回国会 衆議院 社会労働委員会 第28号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年三月二十七日(木曜日)     午前十時三十分開議  出席委員    委員長 森山 欽司君    理事 植村 武一君 理事 大坪 保雄君    理事 田中 正巳君 理事 八田 貞義君    理事 滝井 義高君 理事 八木 一男君       小川 半次君    大橋 武夫君       加藤鐐五郎君    亀山 孝一君       小島 徹三君    田子 一民君       中山 マサ君    藤本 捨助君       古川 丈吉君    松浦周太郎君       山下 春江君    亘  四郎君       井堀 繁雄君    岡本 隆一君       堂森 芳夫君    中原 健次君       長谷川 保君    山花 秀雄君       吉川 兼光君  出席政府委員         厚生政務次官  米田 吉盛君         厚 生 技 官         (公衆衛生局環         境衛生部長)  尾村 偉久君         厚生事務官         (医務局長)  小澤  龍君         厚生事務官         (社会局長)  安田  巖君         厚生事務官         (保険局長)  高田 正巳君         労働事務官         (労働基準局         長)      堀  秀夫君  委員外出席者         厚生事務官         (保険局健康保         険課長)    小沢 辰男君         労働事務官         (大臣官房参事         官)      松本 岩吉君         労働事務官         (労働基準局監         督課長)    鈴木 健二君         専  門  員 川井 章知君     ————————————— 三月二十七日  委員竹山祐太郎君、福田赳夫君、西村力弥君及  び山崎始男辞任につき、その補欠として松浦  周太郎君、井出一太郎君、井堀繁雄君及び赤松  勇君が議長指名委員に選任された。 同日  委員井出一太郎辞任につき、その補欠として  福田赳夫君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  旅館業法の一部を改正する法律案内閣提出第  二六号)(参議院送付)  身体障害者福祉法の一部を改正する法律案(内  閣提出第五五号)(参議院送付)  社会福祉事業法の一部を改正する法律案内閣  提出第三四号)(予)  日雇労働者健康保険法の一部を改正する法律案  (内閣提出第一〇三号)      ————◇—————
  2. 森山欽司

    森山委員長 これより会議を開きます。  旅館業法の一部を改正する法律案身体障害者福祉法の一部を改正する法律案社会福祉事業法の一部を改正する法律案及び内閣提出日雇労働者健康保険法の一部を改正する法律案、以上四案を一括議題とし審査を進めます。質疑の通告がありますのでこれを許します。長谷川保君。
  3. 長谷川保

    長谷川(保)委員 昨日、社会福祉事業の経営に要する費用等についてお伺いをいたしたのでありますが、引き続いてそれについてもう少し伺いたいと思います。またこれに関連いたしまして、少しく本日議題となっておりますものにもかかわって御質問申し上げてみたいと思います。  昨日伺ったのでありますけれども小学校あるいは中学校に通います生徒の教科書代というのは、全部出してあるのですか。
  4. 安田巖

    安田(巖)政府委員 教育扶助の中の教科書代でございますけれどもこれは小学校の一年生から中学の三年生まで、全部実費で支給することになっております。
  5. 長谷川保

    長谷川(保)委員 昨日伺ったのですが、副読本参考書を買うというのは全然入っていないのですか。
  6. 安田巖

    安田(巖)政府委員 昨日も申し上げたのでありますけれども教科書に準ずる正規の教材として学校が指定するものについては、教育費のうちの教科書代を計上する場合には学校長指定証明書をとれということになっております。ただし、学校が買った方がいいとかあるいはあった方がよかろうという程度のものは学校長証明を出すかどうかわかりませんけれども、ワーワ・ブックとか、あるいは最近は先生が問題を出さないで、問題を印刷しましてそれに書いて出すようなことがございますが、そういうような費用のものはこれに含まれるわけであります。
  7. 長谷川保

    長谷川(保)委員 どうも現場に行って実情を調べてみると、その副読本参考書が買えない、買う金をもらえない、そのために施設子供たちあるいは生活保護を受けておるところの子供たちが非常に学校の中でも困る。たださえいろんな問題を持っております子供たちが、さらにひけ目を感ずる、こういうことなんです。だから、やはり参考書副読本を買ってやるというこ  とについてもっとこれをゆるやかに、まあ校長証明があればどんどん買えるというようにしてやる必要があると思う。こういうものに予算をそんなに惜しむ必要はないのだ、惜しんではならないのだと私は思うのです。昨日申し上げたように学用品代が一カ月八十円ということでございましたが、これではすずり箱と筆も買えない。筆でも三百円はかかるということではどうにもなりませんし、私どもみずから子供学校へやっておって、なるほどこれではどうにもなるまいということをしみじみと感ずる。だから、こういう次の時代を背負っていき、負って参りました不幸な境遇からりっぱに立ち上っていくというのに、何よりも学用品やあるいは通学費教科書代あるいは参考書とかいうようなものは買えるようにしてやらなければならない。事実今日参考書なしではなかなか無理です。義務教育学校はわれわれの時代よりもはるかに進んでおります。今日の教育のあり方としては、参考書なしでは無理です。参考書だけでもなお足りなくて、われわれ自身も自分子供を塾にやるとか家庭教師をつけるとかいうことをしなければ追っついていけないというようなことにもなるのであります。まして施設におります子あるいは生活扶助を受けております子供に対しては、児童憲章立場に立ちましても、あるいは基本人権という立場に立ちましても、義務教官が国の負担としてなされるという観点からいたしましても、これはもっとゆるやかに出してやらなければいけない、こういう点で現場では涙を流しております。そういうことのないように一つ考えてやってもらいたいと思います。これは政務次官文教専門にやっていらっしゃいますからよく御存じでありますけれども文教予算の方にもこの要保灘児童あるいは準要保護児童に対します教科書負担ということはありますが、それがあるからといってこっちの方で学用品代その他のものを節約するということでなしに、十分出してやるというようにしなければならないと思います。こういう点は、政務次官文教専門で大学の校長先生をしていらっしゃいますから、一つここらは十分考えてもらいたいと思います。今後の厚生行政の上で、これは予算としてはわずかなものですから、一つこの点を十分お考えをいただきたいと思うのですが、次官のお考えを伺たい。
  8. 米田吉盛

    米田政府委員 御意見は十分拝聴いたしました。ごくわずかの予算で、しかもそれが生きて愛情の政治が浸透する、こういうことは一段と工夫をいたしたいと考えて起りますから、結論としては御趣旨に沿うように努力をいたします。
  9. 長谷川保

    長谷川(保)委員 続いてもう少し具体的な問題を伺っておきたいと思いますが、電灯代というのは幾ら措置しておりますか。
  10. 安田巖

    安田(巖)政府委員 四十ワットの定額の実費になっております。
  11. 長谷川保

    長谷川(保)委員 大体百五十二円出ておると思うのですが、ところが電球、というのは切れる。切れたときにかわりを買うことができない。私ども生活では大した問題ではないが、昨日から伺っておりますように、とにかく生活扶助扶助金内容あるいは措置費内容事務費内容というものが、もうどうにもならぬほど切り詰めてある。なるほど数年来いろいろとわれわれも申し、当局もいろいろ工夫して、昨日お話しのようによけい働く人重労御する人には九十円の食費が出るというようなことにもだんだんなってきておって、改善はされておりますけれども、しかしそれにもかかわらず、きのう申し上げたように、刑務所で出しているよりも一般生活扶助を受けておる人たち食費の方が少いというような事態になっておるところからわかりますように、これは全く余裕がないのです。だから、電球が切れたときにはどういうようにしておりますか。
  12. 安田巖

    安田(巖)政府委員 なるべく切れぬように用心して使わなければならぬわけでありますけれども、年に二回交換する費用が入っております。
  13. 長谷川保

    長谷川(保)委員 第一線に行ってみますと、ほんとうにそういうときに困ってしまっている。ほがが全くぎりぎりもぎりぎり、大ぎりぎりだといいますから、そういう余裕がないのです。だからこういう点もぜひ考えてもらいたい。やはりもっとどこぞへ余裕をつけるというように考えてもらいたい。  ではもう一つ伺います。住居費用、これは四級地だと幾らなんですか。五人世帯で四級地を考えて。——五人でなくて一人、二人、三人というふうにずっと見てもらいましょう。
  14. 安田巖

    安田(巖)政府委員 一級地でございますと、五人以上が千百円でございます。それから四級地でございますと七百三十五円であります。
  15. 長谷川保

    長谷川(保)委員 多分私調べたのは四級地ですが、あるいは二級地、三級地かもしれません。一人ないし二人が三百六十円、三人ないし四人が五百五十円、五人が七百五十円、少し違っているかもしれません。大ざっぱに調べて参りましたが、そういうことになっております。今の一級地でも千百円とかいうことてすね。問題はこれでありますかというのです。事実これでありますか。幾ら四級地でも三百六十円で二人住む部屋が借りられるかどうか。三人ないし四人住むのに五百五十円で借りられるかどうか。これは事実私はあり得ないと思うのです。一体この住居費を算定して参りました基準というのはどこから出てきたのですか。多分地代統制令からきていると思う。ところかこんなことはいなかではつゆ知りません。どういうところからこれを算定してきているか伺いたい。
  16. 安田巖

    安田(巖)政府委員 実情を調べました資料から出ているわけでございますが、現実にはやはりそれ以下で入っておる人が大多数なんでございます。そこでこれは新しくそういうところを探してみろ、こう言われるとなかなかむずかしいかもしれません。しかしまあ間代である場合が大部分でございますから、その程度で従来から入っておる人があるわけなんであります。そこでもしそれでよりがたい場合がありますならば、これはもちろん特別基準があります。先ほど申しました千百円にいたしましても、あるいは七百三十五円にいたしましても、これは標準でありますから、実際にそれより安く住んでおる場合が多いのでございますから、安く住んでおる場合にはその実額しか出していないのであります。そういう調査がございますけれども、それはやはり基準より現実において低いのです。けれども、もしそれによりがたい場合がありますれば、これは特別基準をつける。たとえば第二種公営住宅なんかに入っておってそうして今度生活補助を受けるというようになった方もあるわけです。そういう場合には第二種公営住宅の家賃までも見てもいいということにしてあるわけです。要は実態に沿うようにということでございます。
  17. 長谷川保

    長谷川(保)委員 それじゃもう一つ先に進んでまた戻ってきましょう。これは何べんもこの委員会でも同僚委員から持ち出されている問題でありますが、衛生費、これは幾らになっておりますか、内訳を間かせていただきたい。四級地です。
  18. 安田巖

    安田(巖)政府委員 五人世帯にいたしまして、五人世帯というのは標準五人世帯でございますから、御承知子供の方が多い世帯でございますけれども、これで一級地が四百六十円七十五銭、それから今御質問は四級地でございますね。四級地でございますと、今申しましたのは標準世帯をたまたま申し上げたのでございますが、あと男女別年令別でずっとこまかくしてありますので、計算してみないとわかりませんが、大体今の費用を一〇〇といたしまして、地域差を七十二までに開いておりますから、それで大体の数字がわかると思います。
  19. 長谷川保

    長谷川(保)委員 その内訳入浴とか理髪代とかそういうような内訳を四級地のおとな子供に分けて伺いたい。
  20. 安田巖

    安田(巖)政府委員 ちょっと長谷川委員にお願いでございますけれども一級地じゃいけませんでしょうか。一級地だと書類があるのでございますが。
  21. 長谷川保

    長谷川(保)委員 一級地でもいいです。
  22. 安田巖

    安田(巖)政府委員 一級地でございますと、入浴料は各人が月三回ずっとなっております。それから理髪料は男だけが月一回となっております。それから歯みがき粉とか歯ブラシ、それから洗たく石けん化粧石けん、そういったようなものが組んであるわけであります。それから家庭薬として一世帯一年に二組というので一組が二百四十円、それから衛生綿一月に一包み、これは今申しましたように子供が多い世帯でそうなるわけでございまして、性別、年令別に相違があるわけでございますから、おとなが多ければこれがうんと上るわけてございまして、大体そういうことでございます。
  23. 長谷川保

    長谷川(保)委員 私の調査したところでは、四級地ですけれども入浴は一月二十五日です。大体一級地と比べましてほぼ三回と考えられるかもしれませんが、これも私はいかぬと思う。こういうものはやはりもっと、毎晩とまでもいかなくても、もう少しよけい入れるようにしなければいかぬと思います。理髪代もこの前もこの委員会で出たと思いますが、理髪代おとなが五十円、四級地でも五十円では一月一回できません。やはり百五十円です。おとなが五十円、子供が三十円ということになっております。それじゃ理髪ができませんよ。都会では理髪学校というので特別やるという線があります。ところがいなかではありませんからね。だからやはりこれはおとなが月一四刈られるようにしてやらなければいけませんね。  それからもっと困ることは、便所くみ取り料が入っていない。便所くみ取り料が入っていますか。
  24. 安田巖

    安田(巖)政府委員 一級地は一世帯につき四たるというのが入っております。
  25. 長谷川保

    長谷川(保)委員 四級地はないでしょう。
  26. 安田巖

    安田(巖)政府委員 四級地は農村ということで、そういうことで実情考えまして現在のところ入っていないのであります。
  27. 長谷川保

    長谷川(保)委員 このごろは急速に事情が変りまして、四級地の地方の小さい都市、こういうところも全部くみ取り料を出さなければくんてくれない。農家の肥料に対する知識は非常に増して参りまして、金肥を使う。屎尿というものは不便でもあり、不潔でもあり、重くもあって、これを運搬していては合わないというので、みな金肥を使っている。今四級地のこういう人たちくみ取り料がなくて困っています。月三百円かかります。これを見てやらなければだめです。これを保護基準に入れてあげないと困ると思います。  昨日お葬式ができないという話をしたのですが、何か資料が来たそうでございますが、私の行ったある養老院では、棺おけや骨つぼが買えない。仕方がないからお骨は新聞紙に包んでい出る、あるいは菓子のあき箱に入れるということです。きのう申し上げましたように、坊さんにお経を読んでもらおうと思っても、お経をあげてもらう料金が払えない。どうしてもお葬式全体で五千円かかるが、二千四日円しかない。特別基準特別基準とおっしゃいますけれども、本省ではそういうことで言いのがれができますが、第一線ではそんなことはやらぬですよ、だから、今申しましたような弾力性と出しますか柔軟性と申しますか、それをやらせて、これらの人々人権を守っていくということであれば、その点をよほど第一線に徹底させませんと、第一線ではやっておりません。特別基準なんというのは、言ったってできやしません。その特別基準を出せる予算というものをよほどつけてやるか、それに対してよほどの努力社会局長の方でなさらないと、実際において特別基準なんか第一線においてはほとんどはめやしません。それは福祉事務所の諸君が実際困っている。ですから、今のくみ取り料の問題を至久考える。また、きのうの葬祭扶助の二千四百円という基準は、内容はどうなっていますが、伺いたい。
  28. 安田巖

    安田(巖)政府委員 葬祭料でございますが、ここに一級地と二級地の基準内訳がございますのでちょっと申し上げたいと思います。これは三千円でございまして、葬祭料が千五百円、火葬料が八百円、搬送料が六百五十円、文書料か五十円、そのうちの火葬料の八百円につきましては、町村等条例等で定める場合は実費を出して差しつかえない、こういうことでございます。私どもの計算では大体これでやれると考えておるわけでございまして、きのう、骨つぼはどれへ入るかというお話がございましたけれども葬祭料千五百円の中で見ております。そこで今お話の、普通の居宅の場合でなくなりました場合には、香典とかその他のものが若干集まりますから、そういうものが助けになる、養老院等施設で死んだ場合はどうかというお話もあるわけでありますが、そういう場合にも大体今出し上げましたような費用内訳でやれるのじゃないか。中にはまた養老院等で、そういった場合に自分のところで葬式をおやりになるような例もありますので、まあまあこれでやれるのじゃないか。そこで、どうしてもこれでやれないということがあれば、昨日も申しましたような特別基準ということになるわけでありますが、普通一般基準といたしましてはこれでお願いいたしておるわけであります。
  29. 長谷川保

    長谷川(保)委員 それでは念のために聞いておきますが、施設ですが、実際やれないところがあったら、社会局長は責任を持って特別基準を出しますか。
  30. 安田巖

    安田(巖)政府委員 今申し上げましたようなわけで、この基準内訳が、骨つぼでありますとかあるいは死体を納める棺の代金であるとか、人夫賃であるとかいうものが全部一応積み上げてあるわけでございます。そこで善通はこういうふうにやれるのだけれども、そのときやったらたまたま高かったというのだったら困りますけれども、絶対にそういうことであってはやれないのだということであったら、これはやはり出さなければいかぬと思います。
  31. 長谷川保

    長谷川(保)委員 大へんいい答弁をいただきました。非常に困っております施設の方と社会福祉事務所の方へ私の方かりらその点は伝えておきます。  これは児童局長の方に関係するかもしれませんが、簡単なことでありますからお答えをいただきたいのでありますが、今夫が失跡しておる、あるいは刑務所に入っておるというときに、母子加算がつかないという事情かあるわけですが、私の調べたある福祉事務所におきましては六十世帯母子世帯で十二世帯ある。こういうことは私は非常に困ると思う。ことに施設に入っているというような場合には、隣の部屋母子の方はもらえるけれども、こちらの母子の人はもらえない。それで生活ができるならいいけれども、どうにも生活ができないというぎりぎりの線まで追い込まれているのですから、こういうものについて母子加算を当然すべきだと思うのですが、これについてどうお考えになっておりますか。
  32. 安田巖

    安田(巖)政府委員 私は実際の取扱いにつきましてまだ確信がございませんから、はっきりした御答弁はできませんけれども失跡の場合は、何か今の取扱いに起きましては一年という期間を置いておるそうでございます。その点調べまして、できるだけ工合のいいように考えたいと思います。
  33. 長谷川保

    長谷川(保)委員 それでは政務次官一つ意見を伺ってみたいのですが、ただいま申し上げましたようなことで、夫が一年以上の失跡でなければ母子加算はつけないというのでは、実際きょう困っておるのですからね、そういうことではいけない。現場で調べてみるとそういうようなことになっている。そして刑務所に行っておっても母子加算がついておらぬということです。これでは現実生活ができない。当然これは変えるべきだ。今申しましたようにこれが少い数ではない。私がある福祉事務所に行って調べますと六十世帯のうち十二世帯ある。こういう問題はすみやかにこの際変えるようにしてもらいたいと思う。それについて御意見を伺いたい。
  34. 米田吉盛

    米田政府委員 お説のように十分考えまして、できるだけ血の通ったやり方をもう一歩進めて、御期待に沿うようにいたしたい、かように考えます。
  35. 長谷川保

    長谷川(保)委員 ついでに、児童局長がいませんから、もう一つ政務次官にお伺いしておきたいのですが、今母子相談員というのがございます。これは非常勤になっておりますけれども、実際はもう常勤です。給与は私の県では八千田だが、多分そのくらいだろうと思う。ところが期末手当もなければ健保もない、共済組合もない、そういうようなことであってはならないと思う。事実常勤でありますから、常勤としての扱いをすべきである。そうしなければほんとう母子相談員としての仕事をやっていただくことができなかろうと思う。こういうものは当然変えるべきだと思うけれども児童局長かいませんから詳しいことは申し上げませんが、この際私はこのことを当然変えるべきだと思う。当然常勤にすべきだと思う。当局の御意見を伺いたい。
  36. 米田吉盛

    米田政府委員 今お尋ねの相談員の方は非常勤に今のところなっております。これは思いますのに、相当家庭のしっかりした奥さん方をお願いしまして、いろいろ生活経験があり、世間を知っておるような方をお順いいたしたい、そこで非常勤になったものと私は考える。ある意味においては生活のできる階級が生活困窮人々の力になる、積極的に持ち出すということはできないが、まあ八千円の手当があれは弁当代はあるというようなことで、こういうようなことになっているものと思います。この面につきましては十分研究はいたしますけれども、今まで大体私は御趣旨に沿うようにというお答えをしておりますが、この辺はいま少し研究をしてからお答えをさせていただきたい、かように存じます。
  37. 長谷川保

    長谷川(保)委員 これが事実上常勤でやっておるということになれば、もう少し方針を変えなければだめだと思うのです。それからあと同僚議員質問をお待ちになっておりますから、私はごく要点だけ伺って参りますが、生活保護法不足分を充足するという形の法律だということはよく心得ておりますけれども、しかし更生させていく、そこから立ち上って新しい生活に独立させていくことの努力がどうもこの法律の運用全体において私は足らないと思うのです。今御承知のようにこの子供たち中学校を出ていくという立場でありますが、たとえば中学校卒業子供が新しい勤務につく、少し遠いというようなときに当然自転車て工場に通えるようにしてやりますと、いいと思うのですが、そういう自転車を買う金を融通するとか、あるいは新しい勤めに出るのでありますから、今までのよれよれの破れた中学校の本線の服をせめて新しい服にして着せてやるということがお母さんの非常な願いであります。そういうようなことに対する配慮が非常に足らない。あるいはさらにもう少し年上になりました適齢期娘たちが、一家か生活扶助医療扶助、その他生活保護を受けておるというような場合に、やはりこの娘たちも少しはお化粧をする、あるいは結婚の支度をするようなことも許してやらなければなりません。それが今日非常に厳格にやるために、娘が幾ら働いても結婚もできないというような事情になりまして、それをやかましくするから医療扶助で入院をしております人々がもうどうにもならないから、自分を犠牲にして娘のために退院をする、妹のために退院をするというようなことが現実に行われております。だから今のような中学校を卒業した子供たち自転車を買って通勤をするとか、あるいは新しい職場につくのでありますから、よれよれの破れた服のほかにせめて一つくらいは新しい服を着せてやるとか、おるいはまた今申しました適齢期娘たち結婚のための結婚資金を積み立てることを認めるとか、こういうようなあたたかい行政をすべきだと私は思う。こういうことが全然なされておらないのだけれどもどうでしょうか。
  38. 安田巖

    安田(巖)政府委員 今のお話は大へんごもっともでございまして、私どもそういうことを心がけなければならぬと思っておりますが、大体東京あたりでございますと、中学校を出て就職をする場合の五割以上かやはり生業扶助の就労助成を得ておるようでございまして、この際必要な被服我等についてはそういった費用を出しているようであります。そうして今の必要な交通費というものは、長谷川委員承知のように、収入から差し引かないのでございますから、交通費が要るならばそれだけはみるわけであります。そうすると一々電車に乗るよりは、自転車の方がやはり便利である、しかも歩くのにはこれは少し無理だということの適当な例かありました場合には、自転車を買うということも私はよいことだと思っております。
  39. 長谷川保

    長谷川(保)委員 実際には現場でそういうことが行われていませんよ。だから本省の方でそういうことを考えられても現場で行われていませんから、遺憾のないように十分努力してやっていただきたい。今度の社会福祉事業法の一部改正の中にアラター・ケアを作ることが出ているわけでありますけれども、精神病のアフター・ケアをなぜお作りにならぬ、この方を作ることに努力することが必要ではないか、今日厚生白書によりましても、精神障害者は百三十万人あります。そのうち治療を受けている者はわずかに二・五%、入院を要する患者は四十三万人ぐらいであります。しかもこの精神病院のベッドは五万五千しかない、十万人に対して六十一人あるという精神障害者の治療を当然すべきであるか、治療かなされておらない者が九〇%もある、厚生白書にちゃんと書いてある、こういうときになぜ精神病のアフター・ケアをお作りにならぬか。ことに精神病の特質として一応治療をいたしまして、治癒いたしましてもそれから一カ月二カ月あるいは三カ月後というふうに、少し後にまたぶり返していく人が多いので、精通病者が在宅しているということは家族にとりましても、付近の住民にとりましても非常な不安のもとであります。当然精神病のアラター・ケアに対しましては、国は十分な努力をすべきである。そうしてこういう問題を解決してこの社会福祉事業の中にこの精神病アフター・ケアの施設をもあわせて入れまして、そうしてこういう不安をなからしめる、また気の毒な病人本人の人権を守ってやらなければならぬことは当然すべきです。こういう方面が何らなされておらないのはどういう事情でしょうか。
  40. 安田巖

    安田(巖)政府委員 今御指摘になりました精神障害者に対する具体策が不十分じゃないかということでございますが、これはまことにごもっともな御意見でございまして、私はやはりこの精神衛生関係の仕事というのは結核に次いで大きな問題になると思うのであります。現在におきましては、結核の方はとにかく治療対策があそこまで進んで参りまして、そうして同時に今ようやくアフター・ケアに手をつけたという程度でございますが、そういうふうな段階を見ますと、精神障害者に対する関係は一般的におくれておるわけであります。お話のように治療方面からベッドが足りないという問題がございましておくれておるわけでございます。現在のところでは辛うじて今の精神衛生法で医療措置を講ずるということ、それから児意福祉法によるところの精神薄弱児の施設、それから通院施設、それから生活保護法によりましての救護施設であるとか更生施設であるとかいうような点が、まあまあ今の施設あるいは措置ということができると思います。将来はお話のように病院には入らなくてもいいのだ、しかし何らかの保護あるいは更生するために必要であるというものの専門の対策を考えなければならぬじゃないか、こういうふうに思います。現在やっておりますのは、とりあえずいわゆる生活保護法の救護施設あるいは更生施設がそれに当っておる、こういうふうに申し上げなければならぬと思います。
  41. 長谷川保

    長谷川(保)委員 これは結核のアフター・ケアの制度を作るときにも、結核のベットが満員でどうにもならぬ。ことに長期の要するに病院に根が生えてしまった患者がおってどうにもならないからアフター・ケアを作って病床の回転率をよくしようということで、あわせて病床の大増床をして今日の二十六万というベットの数字になった。今日公衆衛生局長がおりませんけれども、精神病院は一〇〇%以上の全くの超満員でどうにもならないのですよ。入れたくてもどうにもならない。さっきも言ったように人口十万人に対して六十一人の患者がおる。だから要入院者が四十三万人もあるのに五万五千しかベッドがない。なるほどことしもベットの増床に対しては予算を組んでおります。組んでおりますがとうていそんなことでは足りない。要入院患者が四十三万人ある、それに対して五万五千しかない。こういうときこそ私は精神病のアフター・ケアの施設というものをどんどん作っていき、それに対しては法的な措置をしてそれが伸びていくようにすべきだと思う。ところがこういう方面にはまことに未熟である。何ら手をつけない。今日幸いにしてこういう結核のアフター・ケア施設などをこの社会福祉事業法を改正して入れようというのだから、当然これは入れるべきではないか。私はどうも国の厚生省の施策で解しかねるものがある。それはほんとうにこの営利事業あるいは私営事業というようなもので手の届かないもの、そういうものについて国やその他公けの施設を作ってそれか受け持つ。たとえば今日非常な問題になっておりまする医療制度の問題でもそうです。開業医諸君と国が競合する必要は何もない。とかく病院がなくてもいいところに国や県の病院かできている。そうしてできなければならぬ無医地区、こういうところにはさっぱり手が届かない。むしろその無医地区というようなところにこそ国は十分力を入れて、開業医諸君でできないところを国が受け持つ。ちょうど国鉄の赤字線、それは赤字線だけれども国全体のために、国民全体のためになくちゃならぬところだから、赤字を承知しなから作っていくと同じように、何も私設のものでできるところはそれにまかしておけばいい。できないところを国がやればいい。この精神病のアフター・ケアの問題でも、あるいは精神柄院のベッドの問題でも、こういうようなところにむしろ国が非常な重点を適いて施策をしていくべきであって、こういうものが抜けておるということは遺憾に思う。今回この社会福祉事業法をどう扱うかについては、われわれの党でもなお最後の相談をしなければなりませんけれども、当然こういうものを入れていくべきだ、この際こういうものを入れていく御意思はないか。
  42. 安田巖

    安田(巖)政府委員 政府が民間でやりにくい事業をやるべきじゃないかというお話ごもっともな点もあるわけであります。ただ新しい仕事をやっていく場合に、民間の社会福祉事業施設等の使命といたしまして、開拓者的な役割りをするということをよく言われるわけでありますが、政府として新しい試みをする場合に、それか確かにこうやればこうなるということがはっきりわからない場合に、なかなか動きにくい点もあるわけでありまして、そういう点から申しますと、民間と相呼応してやるべきじゃないかということも考えられるわけであります。そこで今お話の精神病院のアフター・ケアでございますが、今長谷川委員のおっしゃるような意味でございましたならば、実は私どもも二、三年前から緊急救護施設という費用をとっておりまして、来年度も保護施設の中に三カ所だけそういう費用をとっております。実は一昨年あたりから三、四カ所ずつ作っておるわけであります。これはもう医学的な管理というものはほとんど必要ないのだという人をそこに入れるという考え方で、府県にやらせるような措置をとっております。今後もそういうものをやっていきたいと思う。ただいろいろ私どもの方で考えましても、県等でなかなかそれに応じてくれない場合には、思うようにいかないという実例があったわけでございますけれども、そういう緊急救護施設ということでやっていけるのじゃないか。問題はそういうふうに精神病でなおった人とかあるいは精薄にいたしましても、もう二十才以上になってどうにもならないという人をそういうところに入れることはけっこうでありますけれども子供の精薄の施設に長くおりまして、十八才になってすぐ出た、そういう人を従来の浮浪者や何かと同じ施設に入れるということは、これはなかなか忍びないところがあるわけでありますから、そういった者を受け入れてもう少し、長い間かかってやった社会的訓練あるいはその他の職業的な訓練などを生かしていくような施設というものが必要じゃないかということは私ども考えておるわけであります。先ほどから申した意味はそういったようなことを考えておったのでありますが、とにかく精神病の病院から出てきた者をどうするのだということでありますならば、緊急救護施設というものを今後もできるだけふやして、そういった状態に応ずるようにいたしたいと思います。
  43. 長谷川保

    長谷川(保)委員 今のお話の十八才以上になりました精薄の施設も緊急にどんどん進めていかなければだめです。同時に今の精神病者というのは、また元に戻る可能性が非常に多いのです。ですからこの点は今のような医学的な管理をしないようなものではなくて、十分医学的な管理をするそういう配慮を持ちました精神病あるいは精薄の、ことに精神病の予後の施設というものが非常に必要だと思う。こういうものを一つ至急進めるように考えていただきたい。そうしなければ文明病はどんどん進んでいきまして非常に困ります。  それから精薄の問題が出ましたから、ついでにもう一つ伺いたいのですが、今売春禁止法によって不幸な婦人たちの更生の道がなされていますけれども、ここで非常に困りますのは、厚生省の方の関係——あるいはこれは法務省の関係になるかと思います。が、やっておりまするのは、収容の施設が五十人以上でなければできないということになっている。国の方でやらせるのはそういうふうに記憶しておりますが、私の記憶が違うかもしれません。大体五十人以上でなくてはならない。ところが問題はまともな婦人たち、いろいろな境遇でもってそこへ落ちた——売春をする動機につきましては、社会的な原因とか心理的な原因とかいろいろな問題がありますけれども、最後に非常に困りますのは、まともな人は結婚させるとかあるいはほかの職業に転換させるということができますが、ところがこの中には精薄の人が非常に多いのです。私のうちでも今三人ほどめんどうを見ていますけれども、精薄の人は引き取るものもなければ転換口もない。これは東京都のこの関係をやっております専門家の御意見を伺いましても、きょう私資料をうっかりして持ってきませんでしたが、この売春婦の方々の中の精薄の率というものは非常に大きい。ですから、精薄の人を受け入れる施設というものは五十人なんというものではできません。その人々に対しまして、私どもほんとうにその人権を尊重して、その人々ほんとうの相談相手になりてやる。そういう人々が更生していくようにする施設は十人以上ではだめです。十人以下でなければだめです。私は、ドイツのこの施設のことをいろいろ調べてみたのですが、やはり精薄の方の関係は十人以下の施設が多いのです。精薄の売春婦の今後の扱いということは、やはり非常に急速に対策を立てなければばいけません。そうしないと、憲法が保障するような基本的人権を尊重するということはできません。ですからこの問題は、法務省の関係になりますか厚生省の関係になりますか、やはりそういう人々を収容する施設ということになればこちらの関係だと思いますが、こちらの関係であるとすれば、やはり十人以下のそういう収容施設というもので、しかもこれはもうコロニー的な存在になります。そこから更生して、何か授産なり就職なりして社会に出ていくということはほとんどできません。出ていけば再び元へ戻ります、転落します。だからこれはコロニー的な存在であります。それも十人以下の人に一人なり二人なりの人がついて、ほんとうにりっぱに間違いなく人生を進めさせる、生活をさせるということをしなければならぬ。こういうような十人以下の施設というものを作って、それに対して国がやはり補助をしていく、こういうことをしなければだめだと思うのでありますけれども、これについて一つ意見を伺いたい。
  44. 安田巖

    安田(巖)政府委員 売春婦の中の精薄者についての取扱いについて、いろいろ有益な御意見を承わったわけでありまして、今後そういった点を参考にいたしましていろいろと措置をして参りたいと思っておるわけであります。お話のように売春婦の中に相当精薄者がおるだろうということは私ともも推測をいたしたわけでありまして、今長谷川委員お話になりました数字というのは、私が記憶しておるのでは三十二年の七月から十二月までに東京都の婦人相談所に来ましたもののうちで、これは売春婦だけではなくて要保護者もその中に入っておりますが、約二百人についてその知能指数を検査したことがあります。その検査の結果は知能指数が八〇以下というのが約五二%という数字が出ております。つまり八〇というとそろそろ精薄の始まりくらいの者でありますけれども、これが半分以上を占めておる。従来までに婦人相談所に来た者は、いろいろその実情をよく調べてみますと、どっちがというとかつらやあるいは頭に自信のある連中はあまり来なかったようなこともありますから、その数字が一般的に売春婦の知能指数の資料になるかということはわかりませんけれども、今お話になった長谷川委員の御論拠には確かになるというような気かするのであります。そこで現在私どもの方でやっておりますのは、婦人保護の吏生施設、これが従来十六カ所ありましたのが、その後三十九カ所の予算で四十八カ所に引き伸ばして使いましたから、六十四カ所かの施設ができるわけであります。この規模は私どもは三十人と考えております。今の五人とか十人とかいうことが徹底いたしますことはよくわかるわけでありますけれども、しかし経営の能率化ということを考えますと、必ず予算その他の関係でそういうふうにできるかどうかわかりません。あるいはまた知人等に頼みまして五人とか六人とかいうものを収容していただくような新しいタイプを考えればまたこれは別問題でありますが、そういう点についても十分研究してみたいと思います。  そこで、今あります施設がどの程度に充足されているかということなんですが、売春防止法を制定いたします当時におきましては、売春防止法を施行いたしました場合には、おそらく全国の売春婦の数から考えまして、こういう保護施設の中に相当数が一齊に入ってくるのではないかというふうなことが考えられておりましたが、ところが案外現在のところ入ってこない、希望いたしません。これは無理に連れてくる施設ではございませんので、そういうような状況等を考えまして、この施設の将来を考えてみますと、今お話のような方々かだんだんとこれからまた入ってくるということになるのではないかと思います。それで、理想的に申しますならば、保護施設の中で、そういった普通の人を保護更生させる施設と、それから知能指数の足りない人を入れておくところと別々にしなければならぬわけでありますが、今の段階ではそういうふうにあまり入り手がないというようなことから、一応全部込みで入れていき、まただんだんと機能が分化してくる、こういうことが実情でございます。今後、今お話しになったようなことは十分考慮に入れまして措置して参りたいと思います。
  45. 長谷川保

    長谷川(保)委員 この精薄の売春婦をしていらっしゃいました婦人たちは、非常に困ったことに、しばしば妊娠して臨月になって飛び込んでくるのです。これが普通の人であればそういうことは非常に少いのでありますけれども、私が預かっているのは二人ともそうです。飛び込んできて話をしている間にもう産気づいているのだから、こっちも全くあわてざるを得ないということになるのですけれども、そういう人たちほんとうに大事にしてやるということは公立のものではなかなかできません。むしろこれは、私設の社会福祉事業なりがほんとうに一はだ脱いで活躍するべきところだと思うのであります。それには、今申しましたような三十人以上というようなところではできない。特別に新しいそれ専門の施設を作るとなれば十人以下では経営できませんけれども社会福祉事業に尊心をしておりまする方々の中には、ほんとうにそういう人たち人権を大事にしていこうという熱情を持った人々もあるわけであります。そういう人々で適当な施設にお願いをしてそういうことをやってくれるならば、やはり国の方でそれを施設としてめんどうを見るというようなことにして、少なければ少いほど、二人でも三人でもいい、熱心にその専門家の人々が世話をするということをしていく。今もお話しの通りに、こういうような施設に案外来ないというのは、こういう施設事情を知らないのです。でありますから、一たび来られまして、人と人と会う、そうすると彼女らは、今までそういうような純粋な愛情を持って見てくれるということがありませんでしたから、ただからだをおもちゃにされてきただけでありますから、そういう純粋な愛情を持ちました人々に対しては非常な信頼を持つ、このときには、婦人とともに子供のこともともにめんどうを見る。私のところでも、そういうわけで突然飛び込んでこられました人をやむなくお受けいたしまして、専門の人がついてめんどうを見ております。赤ん坊も一緒に育てるということで、結局母親だけでなしに赤ん坊も一緒にめんどうを見ておりますが、これらの人は非常に愛に飢えておりますから、これをほんとうにめんどうを見てやれば再びそういう悪の道に転落しないでいける者になる。ところが、そういう事実を知りませんから彼女らは来ないのです。今は非常にチャンスだと思います。各地のそういう施設が廃業しておるときでありますから、今これに十分力を入れませんとまたどこぞにもぐってしまうということになるわけであります。私は、これは非常に緊急を要すると思うので、この点につきましては一つ当局におかれてもぜひ十分な配慮をこの際緊急にしてもらいたい。そして今のような社会福祉事業として、そういうごくわずかのものであっても、これに限っては、こういうような場合精薄の売春婦の人を扱うというようなことに限りましては、きわめてわずかの人であってもそれをやはり国が十分バック・アップしていくというような緊急の対策を立ててもらいたい。これは非常に大事なことです。  それからもう一つ伺いたいのでありますが、社会福祉事業の医療施設の医療収入の一〇%というものを患者の医療費の減免に使用するということの御通牒を出されたことは承知して起ります。まあ大蔵省等いろいろの関係でそういうようになったのだろうと思います。そこで私が伺いたいことは、この間医務局長でありますか保険局長でありますか伺ったのでありますが、国立病院の特別会計をずっと見て参りますと、これは滝井委員も非常に熱心に今までやられておりますが、今年度の予算を見ましても、御承知のように料金収入は七十五億四千万円、経営に要する費用は七十億六千万円、四億八千万円の黒字になっておる。五・一%ぐらい黒字になっておりますけれども、しかしそれに対しまして少くともさらに一般会計から入れていますのが十四億五千万円、そのほかに三千万円の金も入っておりますから、それだけ見ましても一九・四%の赤字になるわけです。これを計算すればそれだけ国の一般会計の方から入れるということであります。そうするとさっきの黒字の五・一%を引きましても一四・三%というものが赤字になる。いただきました資料によりますと、ここに投下しておりまする投下資本というものは、国立病院だけで百三十八億五千万円です。ところが私は総資産の見積り自体が非常に低いものだと思います。おそらく非常に低いものだと思う。けれどもかりにこれをこのままの資産と見ましても、当然この投下資本に対しまして、もし利子を払うとしますと、御承知のように厚生年金の金を借りるには六分五厘ということになるわけです。予定利子は五分五厘でありますけれども、実際は六分五厘も払っている。そうすると六分五厘利子を見るだけで少くとも八億九千万円、約九億円、こう考えて参りますと、なかなかどうしてこの利子だけでも一二%の赤字になっております。従って先ほどの赤字と合せますと、少くとも二六%からの赤字になるわけであります。このほかに御承知のようにたとえばこの前昭和三十二年に医療審議会ですか何ですか出しましたが、経営に要する費用とともに、社会通念からすると当然利潤というものを考えるということに一般の病院ではなっております。社会福祉事業でありますから、利潤というものを考える必要はございませんけれども、しかしそのほかに退職積立金あるいは償却費、火災保険料その他のものを当然考えねばならぬのであります。そうするとこの赤字はさらに大きくなる。社会福祉事業にこれを持っていってみるともっと大きくなる。国立病院がこういうことでやっているのでありますから、社会福祉事業の医療事業というものは、国立病院よりも状況がいいとは考えられないのでありますから、当然もっと大きな赤字になるということであります。こういうことが当然考えられるのに、どうして一〇%をどうして減免のために使わなければならないという御連牒をお出しになったのであるか、またそれを真実に実行させる御意思であるか、一つお伺いいたしったい。
  46. 安田巖

    安田(巖)政府委員 私の話の前に、国立病院のことが出ましたので、医務局長から答弁をいたします。
  47. 小澤龍

    ○小澤政府委員 ただいま国立病院の赤字の御指摘がございましたけれども、数字の点につきましては御指摘の通りでございます。ただ一番大きな赤字と申しますが一般会計の繰り入れば、御承知のごとくに建物の整備費でございます。旧陸海軍病院の非常に腐朽した建物でございますので、早急にこれを改修しなければならない。そこで年々十二、三億の金を使いまして、こわれかかっているバラック建てを整備して起るような次第でございます。さらにまた陸海軍時代のきわめて旧式の医療審具、機械しかございませんので、これを現代的な医療にかなうように機械を入れかえなければならない。さらにまた国立病院といたしましては、医療従事者の再教育とか養成とかいうことを一つの重要な任務にして起りますので、非常にたくさんの看護婦養成所を持ち、非常にたくさんのインターン学生の受け入れをやっております。これの教育に必要ないろいろな設備をしなければならないし、あわせて高度の医療、一般病院でできないような医療も扱わなければならないというようなことから、ガンの特別の診療センターであるとか高血圧のセンターであるとか循環器等のセンターであるとかいうような施設等をいたします関係におきまして、どうしてもそういう面からの赤字の制約を非常にたくさん受けている次第であります。そういうものを除きまして純粋の収支計算だけから申しますと、必ずしも赤字ではない、こういう実情でございます。
  48. 長谷川保

    長谷川(保)委員 その医務局長答弁はなっておらぬ。それは建物の整備あるいはガン・センターその他——私はきょうは武士が刀を忘れてきたようなもので予算書を忘れてきたので、予算書をこまかく申し上げることはできませんが、私が調べたところでは、その新しい設備費なんというものは知れていますよ。ほんのわずかなものです。もしたくさんであっても、今の設備全体から見ますと、割合から見ると知れたものです。それでたくさんでありましても、一般の病院もどの病院も医学の水準に合せて絶えず進歩する。ことに社会福祉事業のごときは、当然医学の進歩に合せましてどんどん設備の改善をしていかなければだめです。これは社会福祉事業として公的な性格を多分持っておりますもののお務めができません。でありますから当然それはやらなければなりません。また今の建物等におきましても、社会福祉事業は御承知のようにこれに対する資金の融通の道がほとんどありません。わずかに社会福祉事業振興会等々ができますけれども、これもまたきわめてわずかしか一施設に対して金を融通いたしません。これはわずかなものです。問題にならない。ことに医療事業のような非常に金のかかりますものに対しては、社会福祉事業の振興会なんというものはほとんど意味をなさぬという状況です。そうすると、一般銀行は貸してくれといっても社会福祉事業に貸さない。もし返さないときに差し押えができませんから貸さない。それだから融資の道はないのです。そこで非常に苦心惨たんをしておる。ほんとうに今の社会で認められておりますような医療事業というものは、苦心惨たんをしてその社会福祉事業の医療施設の改善に努力している。これは国立病院の比ではありません。なるほど看護婦の養成もやるということは、この間も話を承わりました。しかし看護婦の養成をやると申しましても、これは少し大きな病院は皆やっております。当然のことです。それから、この間もお話を承わりましたけれども、退職積立金も共済組合の掛金をしているというようなお話でございましたが、これは社会福祉事業でも同様でありまして、厚生年金及び健康保険に当然職員を入れております。そのほかに退職積立金をしなければならないというのが、民間の事業の実態であります。こういうように見て参りますと、償却も、当然健全な経営としてはしなければならぬというようになって参りますから、これはもう当然国立病院の経営が一般としては黒字である。しかし、特殊なものがあるから赤字であるというようなことは、しろうとに言うならともかく、少しでもこの方面を専門に研究している者から見れば、国立病院の方が、はるかに社会福祉事業の医療施設よりも黒字にならなければならぬという性格を十分持っている。しかるに、今申し上げましたように、国立病院全体を見て、新しい施設に一体幾ら金を使っておりますか。予算書をごらんになっても知れています。新しい機械、センターその他幾らありますか。ですから、そういうものはどこの病院でもやっていかなければならぬ。むしろ国立病院はそのやり方が足りないから、今日国立病院があまり評判かよくない。もしほんとうの医療をしようとするならば、まだまだその方に資本も入れなければだめです。社会福祉事業だって同様です。それに十分なものを入れなければ、りっぱにその任務を果すことはできません。だからこれは、今日の国立病院の赤字二六、七%というもの、あるいはこれは社会福祉事業として考えていけば、もっと赤字になる。こういうところに一〇%をしいるというようなことは、とんでもない話だと思うのでありますけれども、一体国立病院の経営について、この間も一般病院に比べてどこに一体まずい点があるかと伺ったら、先ほどのようなお話を承わりましたが、どうも私には理解できない。今日厚生省のやっておることは、今の国立病院から推して参りますと、また滝井議員が指摘しております日赤、あるいは済生会、あるいは健康保険の病院、診療所等から推しましても、こういうことにならぬのです。こういうような一〇%をしいるというようなことにはなりません。これをしいるならっば、社会福祉事業施設であります医療施設に向って、患者のサービスを悪くせよ、医療の水準を低下させろという以外の何ものでもないと私は考える。時間もありませんから、次の機会に譲りますけれども、私のこの主張に対しまして、医務局長、まだほかにこういう原因があるから、国立病院は悪いのだという御意見があります。
  49. 小澤龍

    ○小澤政府委員 国立病院の来年度の総支出は、九十一億でございます。これは看護婦の講習会から、本省に関する経費から何から何まで全部ひっくるめてでございます。その中で一般会計から受け入れているのが大体十五億。その中身を申しますと建築関係が十二億七千万円ほどでございます。それから診療センターが七千五百万円、それから先ほど申しました重要な医療機械の設備費が一億三千万円、それから僻地診療とか、あるいは看護婦養成とか、そういうものをひっくるめまして十五億、大体九十億に対する十五億ですから、そういう方面の受け入れの経費が非常に大きい割合を占めているということを、第一点に申し上げたいと思います。  第二点は、毎日々々の運営それ自体でありますけれども、この前も申し上げましたように、陸軍病院並びに海軍病院は、非常に立地条件が悪いし、建物その他の配置が不便にできているのでございます。陸軍病院のごときは、これはこの前前も申し上げましたけれども、南側に廊下をとって、北側に病室を作る。そして炊事場とか、あるいはふろ場だとか、あるいはボイラー室というものは、それぞれ飛び離れている。これは、まさに満州の野で戦うために、常時患者なり看護兵なりを訓練するために、わざと使いにくく作ったとしか考えられないような配置、構造になっているのでございます。従いまして、これを維持、管理するためには、一般病院に比べてよけい人手が必要である。たとえば燃料費等も、相当よけい必要である。御承知のごとく燃料費は、病院経営の大体一〇%強になっておりますので、燃料費がよけいかかるかかからないかというりようなことは、相当大きな要素になってるるわけでございます。また人件費についてもしかりでございます。さように、常時の経営に相当金がかかる。また国立病院におきましては、非常に気の毒なボーダー・ラインの人々が、初めからまるまる健康保険の診療費でもってかかるということをしないで、事情によっては減免いたした金額をもって徴定しております。つまり、減免した金額で債権を発生させるようにしているのでございます。  さような収入の面並びに日常の経営の面におきまして、相当のロスがあるのでございます。これを、もしも一般病院に比べてどうかという御質問があったといたしますと、比較する相手もあまりばらばらなので、これはちょっと比較ができないのでございますから、勢いお答えは抽象的にならざるを得ないのでございますけれども、そういった整備に要する金が、年々相当巨額になり、経営のロスが三百六十五日相当積み重なる。かような事情のもとに、とかく国立病院におきましては経営が苦しくなり、一般会計の援助を受けざるを得ない立場に追い込まれる、さように御了承願いたいと存じます。
  50. 長谷川保

    長谷川(保)委員 どうも今のお話も、私を納得させない。国立病院が、ごく最近できました社会福祉事業の医療施設、これはほとんどございませんが、そういうものとは、なるほど今お話になりましたような点でハンディーキャップを持っているかもしれません。けれども、戦前からあります社会福祉事業、あるいは戦争直後できましたもの、これは全く同様のバンディーキャップを持っております。国立病院会計を見まして、そして一般社会福祉事業と“違っているなというものは、確かにお話のような僻地診療所の運営費や設備です。しかし、これは国全体でわずか二千八百万円、しかもこれは年間に五十二箇所きりです。だから、一箇所に四十万円ばかりの金をつぎ込んでいるようなことでは、さっき社会局長に、一体厚生省は何をするのだ、開業医と競合するというようなばかなことを考えるな、民間の施設がやれないところを国がやるべきじゃないか、民間の施設がやれるところを、競争してどうするのだ、ということを申し上げました議論がそのままいくのでありまして、何ら今の社会福祉事業か一〇%以上の利潤をあげているから、それを片一方へ持っていかなければ税金をとるぞなんということは、保険局長も御説明になっておるのですが、私はこの間も申し上げたのですが、滝井さんの前々からのたびたびの議論からも、私の今の国立病院特別会計の分析から申しましても、今の診療単価は八・五%十月から上げるというのはどうも私は納得できない。もちろん診療報酬を上げるのには国が十分な施策をしなければなりません。そうしなければだめです。今のようなことではできません。しかし八・五%、十月から上げなければならぬとあなたはお考えになったのなら、なぜ四月一日から上げないのか。また今のようにずっと分析したところから申しましても、今申し上げただけを考えても、これは今の点数単価八・五%十月から上げるということ自体が私は無理だと思う。これはいわゆる奴隷医業を押しつけることになるという結論に到達せざるを得ない。この点ついでに伺っておくのですが、きょうはもう時間がありませんからこの一点だけを伺いたいのですが、保険局長はこの前八・五%十月から上げるのが合理的だとおっしゃったが、一体これでも合理的だとお考えになりますか。
  51. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 医療機関が今の保険の単価で非常に楽だというふうなことは私どもも決して考えてはおりません。ただ国立病院がこうであるから、それで非常に多くの医療機関である一般の診療所も同じような状態だということについては、るる御説明がありましたように、若干の特殊性もあるかと思います。しかしそれにいたしましても決して楽であるとは考えません。従って、引き上げたいということで私どもいろいろ検討をいたしました結果、値上げの幅は八・五%が妥当なり、こういう見解に到達したわけです。これが果して妥当であるかないかということにつきましては、これはもう先生方からもいろいろ御議論があるところであります。それからまた上げ過ぎるといって怒っておる人もおるわけなのです。従ってどこが妥当であるかということはいろいろ御議論があるところだと思いますが、私どもはこの委員会でも御説明したと思いますが、いろいろな計算基礎から八・五%が妥当である、こういう見解に到達したわけです。それから実施の時期でございますが、これは四月一日から私どもやりたいと思っておりました。しかし諸般の事情で十月一日まで延びたわけです。これははなはだ遺憾に存じます。
  52. 長谷川保

    長谷川(保)委員 今の点についてはきょうは少し突っ込んで議論をしたいと思いましたけれども、時間がありませんから、これは次の機会がまだございますからやります。最後に社会局長にもう一点今の問題で伺っておきたい。今の一〇%減免に使うということは、あくまで四月からやらせるつもりでしょうか。四月から九月までは一 〇%ではなく五%でもいい、そして十一月からは一〇%になるようにも伺っております。そういう点一つもう一度、それをあくまでやるつもりか、やれば、私の意見では社会福祉事業のサービスは低下せざるを得ない、医療水準は低下せざるを得ないと思いますが、それについてのあなたの御意見を承わっておいて、次の機会にまた伺うことにしまして、これで私の質問は終ります。
  53. 安田巖

    安田(巖)政府委員 国立病院のことにつきましては、先ほど医務局長からお話がありましたことで御了承いただきたいと思いますが、社会福祉事業の医療機関の診療につきましては、総収入の一〇%というものを減免に使えという通牒を出したわけであります。これは結論から先に申し上げますと、四月から実施をいたしまして、二年間は五%という暫定の率を適用してやりたいと思います。これはいろいろまた準備等もございますし、またやっていく場合に急激に変化を与えないようにという気持でございます。そこで五%なり一〇%なりの減免をやるときになれば、全部つぶれてしまうというようなお話もあるわけでございます。社会福祉事業の医療が特に一般の医療から劣ったものであってはならないということもお説の通りでございますが、ただ現在そういった医療機関が社会福祉事業法における社会福祉事業になっておりますのは、この法律の規定から申しますと、この点はもう長谷川委員もよく御存じの通りでありまして、生活困窮者に対して低額または無料の医療を提供する事業ということになっておるわけでございます。もし低額あるいは無料でないならば、これは社会福祉事業にならないわけです。ですから一 〇%なり五%の低額の医療ができないということであれば、これは社会福祉事業じゃないということになるのでありまして、もしそれは無理だからやはり前と同じにしておけということにつなりますならば、これは社会福祉事業の中から医療事業というものを抜けという議論にも逆になるわけでございます。そういうことも一時私は考えたこともあるのであります。昔は、少くとも今日のごとく社会保険というものが徹底しない、普及化していない、同時にまた生活保護のような公的扶助制度というものがありませんから、医療扶助につきましても同様に徹底しないという点で、実費診療というものが非常に意義があったわけです。これは社会福祉事業としては草分けのようなものでありまして、きわめて意義があったわけでありますが、今のように療養所などをごらんになると、これは保険、生活保護であって、自費患者の関係はほとんどないということになりますれば、そこに低額扶助とか実費とかが意味をなさないことになってくる、そういうことを根本的に考えていきますと、社会福祉事業の中に医療機関は要らぬじゃないかということになりますけれども、私どもといたしましては、なおそれにいたしましても医療施設を創設いたしましたそういう人々のとうといお気持あるいはそういった伝統、沿革というようなものもありますから、もしそれでできるならばやっていただきたい。そうしていろいろ研究さして計算をしました結果、まあ一〇%ぐらいならいろいろな点からやれるじゃないかというような結論を得たわけです。必ずしも私どもが進んでそういうことをやったというわけではないのでありまして、その辺は一つ御了承を願いたいと思います。
  54. 長谷川保

    長谷川(保)委員 今のお話ですが、最後に一言私は申し上げておきます。これはもちろん相当な、それをなし得るだけの診療報酬が与えられておればよいけれども、今日健康保険あるいは国民健康保険、こういうものの実情というものは、先ほど来の議論のように、これはもう非常に不当なもので、それを国から要するに押しつけているわけです。それだからその中でほんとう社会福祉事業家であれば、経営者であれば、あくまでそういうような無料、減額というようなことをいたしたいけれども、その余裕が全然ない、逆に従業員諸君に対して非常な犠牲を負わせて今日どうやら切り抜けているという事態、ことに社会福祉事業で経営者が今日非常に苦慮しておりますのは今の生活保護法の一部負担や、あるいは国民健康保険の自己負担、これを納めることができない。今日の医療の水準では相当医療費がかかります。医療費がかかりますから、それを個人の負担ではできない。従ってそれが納まらない、その納まらないのを何とかカバーしていかなければならない。しかし内側を見れば職員の給与はきわめて不当なものしか払われていないという事態、ここに真剣な真の意味における社会福祉事業をやろうとする者の非常な苦悩がある。でありますから、診療報酬が今日と変って、ことに八・五%というようなばからしいことを言っているのではなしに、相当な正しい合理的な診療報酬を与えるということになれば、その中からどんなに苦労してでも、社会福祉事業の経営者は、あくまで今の減免とか無料とかいう人々を何としても見ていこう、自己負担の払えない人のものは何としてもカバーして、今社会局がまことに冷酷に扱っておりますこの要保護者たち、あるいは一部負担人々を何とかそこであたたかく抱いていこう、こういう情熱を持っているわけです。ですから社会福祉事業が今日不要になったというのではなしに、それは今日の事態ではいよいよ必要なんです。いよいよ必要なんだが、やる能力がなくなっている。一方少しでも共同募金の配分を受けるものは、自分でもって一般募金をしてはならないという制約に押えられている。そこに非常な苦悩を感じているというのが現状なんであります。でありますから社会福祉事業に対しまして、もし相当な診療報酬を一方において支払うことができれば、それを利用いたしまして、今の法制のもとではみ出されますこの人々基本人権を守っていくということをなし得るわけです。従って私は一〇%それに使うという制度自体はいいと思うのです。ただ現状においてはそれをやったら大へんなことになるということを申し上げて、大へん長い間恐縮でありましたが、私の質問を終ります。
  55. 森山欽司

    森山委員長 滝井義高君。
  56. 滝井義高

    ○滝井委員 労働基準局長がおいでになるまで、保険局の方の見解を先にお聞かせを願いたいのです。旅館業について昨日来の保険局当局の御説明によりますと、健康保険法の十四条、いわゆる任意包括の規定を適用してやっていく、そのほかのたとえば温泉町等においては、旅館業が健康保険にとられると旅館町における国民健康保険の推進がうまくいかぬ、従ってそれは国民健康保険に大体入れていく、こういう御説明があったわけです。そこでこれは昨年でありましたか、前に旅館業法の一部を改正する法律案が当委員会に上程をせられたときに、山口公衆衛生局長に対して私御質問申し上げたのでございますが、そのときに任意包括で促進していくというお約束ができておったわけです。その後一体公衆衛生局なり保険局というものは旅館従業員の健康保険についていかなる具体的な促進の措置をとったかということなんです。国会というものは、その場その場で法案を通すときだけ政府委員なり政府当局が勝手なことを言ってその場を通せばいいというものじゃない。従って一体いかなる処置をとったか、これを一つ御説明正願いたい。
  57. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 私、旅館業を任意包括にしてどんどん旅館業の従業員を入れていくのだというお約束をしたかどうか、その辺はどうも記憶にないのでございます。昨日も申し上げました通り、旅館業のようなものは、滝井先生よく御承知のように健康保険法ではいわゆる強制適用の業種といたしておりません。その理由はなぜかと申しますと、その経営の実態なりあるいは雇用の実態なり従業員の実態というものが、健康保険の今のテクニックに乗りにくいような状態にあるということがその理由であろうかと存じます。ただ任意包括という制度もありますので、そういう実態が保険のテクニックに乗り得るような業態になり、それから雇用の実態になってくれば、これは任意包括という制度もございますので、そういう制度で包括し得るということでございます。従って私の伺い方が間違っておるかもしれませんけれども、旅館業の従業員を大いに任意包括で入れるために保険局で特別な努力をしたりなんかということはいたしておりません。これは他の適用外の業種におきましても同じことでございます。私どもといたしましては、繰り返し申し上げますが、そういう業態が保険のテクニックに乗り得るようになった場合には、強制適用ではないけれども任意包括の制度で包括し得るということでございます。
  58. 滝井義高

    ○滝井委員 任意包括の場合に、一体いかなる経営の実態と雇用の実態になれば任意包括ができるのか、いわゆるその前提条件を一つ明白にしてもらいたい。
  59. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 任意包括といいましても、適用外の事業の場合と、五人未満の場合と、適用の事業場であっても五人未満であるという場合と事情が変って参りますけれども、こめて申し上げますならば、事業がつぶれたり起ったり、つぶれたり起ったりするような、そういう性格の事業はなかなかかっちりした制度に乗せにくいということが一つ、従ってある程度その企業の基盤が確かであるということが必要であろうかと思います。それから従業員との関係におきましては使用関係が明らかになっておること、一体そこの事業の使用者であるのか、あるいは協力者であるのか、どういう関係になっておるのかわからぬというふうなことでは困るわけであります。それから賃金がつがめること、それから従業員があまりに移動性が強くないこと、従業員がニカ月したらかわる、しょっちゅう従業員がかわっておるというふうなことでありますと、保険料を徴収いたしましたり給付をいたしましたりする面で非常に工合の悪いことが出てくる。大体のところを申し上げてみますると、さようなことであろうかと思います。  ただ今申げし上げましたほかに、実はこれは滝井先生も前に御指摘になりまして御存じだと思いますが、二十九年か何かに私ども通牒を出しておりまして、報酬月額が健康保険の平均報酬月額に比較して著しく低額であること、賃金か非常に安いというふうな場合には、これを任意包括として承認をいたすには若干不適当だという条件も合わせて二十九年の通牒には入っております。この点につきましては、ただ私どもば三十三年度以降につきましては、かような賃金が低いからということで任意包括を断わるというふうな取扱いはいたさないつもりでございます。ただ言葉をもう少し端的に申しますれば、この通牒の修正をいたしたい、かように考えておるわけであります。
  60. 滝井義高

    ○滝井委員 すでに明治以来大きな基盤を持っている日本の旅館業というものが、今保険局長か説明したようなつぶれたり起ったりするような経済基盤のない業種であるかどうか。また従業員との間の使用関係が不明確なものかあるかどうか。それから賃金というものが旅館業の従業員ではつかめないのかどうか。それから従業員の移動がひんぱんかどうか。私はこれらの四つの条件は全部指定されて旅館業は確立されておると思うのです。これはあなたはどうお考えになっておるのですか。
  61. 堀秀夫

    ○堀政府委員 旅館の従業員の実態につきましては、旅館業主との間に使用従属関係があるのでありますから、労働基準法の適用につきましても、労働基準法の適用があることは当然であろうと思います。ただ旅館の特殊性がありまして、一般の工場労働者とまたおのずから違った面もいろいろあるわけでございますが、しかし根本は労働関係であることには間違いはありません。また旅館の従業員の移動等につきましては、やはりこれもその特殊性上一般の工場等よりもやや移動率は大きいのが事実ではないかという工合に考えておりますが、それも別に労働関係を変革するというようなものではないと思います。それから賃金の面でございますが、これもやはり労働関係があります以上、使用者が報酬として女中さんに払うものは、これは言うまでもなく賃金であるわけであります。ただ今までこれはわれわれも遺憾に思っておるのでございますが、この旅館の中におきましては、大旅館等は別といたしまして、中にはその労務管理がきわめて封建的であり、近代的でないというのが多く、そのため賃金額がどのくらいであるかということが必ずしも明確になっておらないようなところも若干見受けられるわけでございます。そのようなところにつきましては、やはり賃金をどのくらいもらっておるかということがわかりませんので、これはもう基準法の面から申しましても違法でございますし、労務管理自体の面からもきわめて封建的なものでございますから、われわれといたしましても最近はその関係を明確にさせるように、この点にも特に重点を置いて指導しておるところでございます。なお旅館の基盤が不安定であるというふうなこと、これはその場所なり態様なりによりまして不安定なところもございましょうし、またきわめて安定しているところもございましょうと思います。
  62. 滝井義高

    ○滝井委員 今の基準局長の御説明は保険局長おわかりだと思うのです。大局論としては旅館も任意包括の中から拒否する理論的な根拠は何もないということです。しかも健康保険の任意包括、十四条の対象としては適格な条件を備えておる、こう思うのです。そうしますとあなたの方においては、たとえば昨日も問題になっておりました山形県のごときは加入さしていない、拒否しているのです。こういう事態があることは、これはあなた方の通牒がそうしていると現地ではいっている。そういう行政、とにかく一つ内閣のもとで労働省の基準局が考えておることと厚生省の保険局が考えておることが違うということは、私はおかしいと思うのです。しかも昭和三十五年までには皆保険をやられるのです。その場合にはいわゆる雇用関係がある者は、これは理論としては健康保険に入れることが当然なんです。それを昨日の小澤さんの答弁では、どうも温泉町あたりでは、温泉の者か健康保険に入ったら国民健康保険かできぬのだというのですが、それなら健康保険を市町村の単位はやめて県の単位にした方がいい。県の単位にした方が負担力が広く希釈されるから、ますますいい保険ができる。だからそういう点において、旅館業が今のような実態で、きわめて不当な労働条件が、今局長が言われたような封建的なものが残存しているという中において、そのまま私たちば見のがすわけにはいかぬと思う。皆保険政策をやろうというならば、少くともまず健康保険で救えるところを救っていかなければならぬ。国民健康保険は、あなた方は二割五分しか金を出しておらぬ。これで皆保険ができますか。しかも五分は調整交付金という変なものになっているということでは絶対にできない。そうだとするならは基盤の確立をして昭和二年以来三十年の歴史と伝統を持っている健康保険に入れていくことが当然だ。しかも傷病手当金がついておりますから、そういう点で一つ次官に御答弁願いたいが、一体厚生省は、今後旅館の従業員も一人か二人しかおらないというような非常に例外の場合は問題がいろいろあろうと思いますが、しかし一応の原則論としては、旅館の従業員は申し出があるならば任意包括としてやっていくという基本方針を確立できるかどうか、御答弁願います。
  63. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 私が先ほど申し上げましたことは、旅館業というものにしぼって申し上げたのではなくて、任意包括のいろいろな条件というものであります。ところが旅館業といいましても、たとえば従業員の浮動性の問題につきましても、旅館一本の場合と料理業を兼業しているような場合あたりは、なかなか浮動性しがあるわけです。料理屋を兼業しているような従業員は相当かわっているのは事実であります。それから賃金の形態もたしか幾らかは払っておるでしょう。固定給というものがありましょうけれども、しかしチップといいますか、そういうものが大部分その収入になっておる。それを一体どういうふうにつかんでいくか。それから健康保険で、いわゆる賃金といいますか、標準報酬の中に算定するものは現物で給付するものもあります。現物で給付するものも賃金の中に算定していくわけであります。そういたしますと食事を給与されているとか、あるいは家によりましては衣服を給与されているというようなものも全部標準報酬としてつかんで参るわけであります。そういたしませんと、他の被保険者と非常に不公平な取扱いになるわけであります。その辺のところが私は旅館業を一本に論議をされる場合には、非常に保険のテクニックに乗せる場合には骨の折れる事業もありはせぬかということを言っているわけであります。しかし旅館業といいましても、がっちりと保険のしかけに乗ってくる業態もありましょう。従って私どもといたしましては、旅館業の従業員をどうするかというようなことは、私どもの方の立場からは論議がいたしかねるのでありまして、その業態をつかまえてみて、それが保険のしかけに乗ってくるのに無理のないようなものでありますれば、これは任意包括という制度でできるだけ吸収して参りたい。これはあえて旅館業だけに限らず、今日の強制適用以外のいろいろな業種の従業員につきましても高じような考え方でございます。そういうことを私ども考えておるのでありまして、旅館業だから全部任意包括を認めるのだとか、あるいは旅館業だから全部断わるのだという考え方ではないのでございます。
  64. 滝井義高

    ○滝井委員 私は原則論を尋ねているのです。旅館業の中でも今あなたの御説明のようにきわめて浮動性があり、賃金の形態も明白につかめないというものまで、今ここで一挙に全部任意包括にせよと言っているわけではない。原則的に旅館の従業員というものの形態を見てみますと、さいぜんあなたがおあげになった四つの条件は全部指定できる可能性のある資格を十分備えている旅館も相日あるのだということなんです。だから原則として、任意包括を申し出た場合に、あなたの言われる条件に合ったならば認めるかどうかということを言っているのです。今の答弁でようやく認めますということになったようです。そうすると、山形県のようなところは、旅館の従業員はいかなる場合でも加入せしめないという厚生省の通達が出ているといううわさがあるが、そういうことはないかどうかということです。
  65. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 先ほど申し上げましたように、二十九年に任意包括を認める場合の認可基準というものを通達いたしております。しかし、これはある特定の業種をつかまえてどうのこうのという扱いはいたしておりません。従って、旅館業は一切任意包括を認めないのだという通達は出しておりません。
  66. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、さいぜんあなたの答弁では、二十九年に出した通達は三十三年以降はやめる方針だとおっしゃったわけです。従って、今後は政府管掌の平均標準報酬よりは低くても、これは浮動性がないとか、基盤が確立しているという条件があれば加入せしめることができるわけですね。
  67. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 二十九年のは数項目ございますか、その中におきます標準報酬月額が非常に少いということで断わることは三十三年度以降はいたさないつもりでございます。しかし、私が先ほどいろいろ申し上げましたが、他の条項につきましては、おそらく保険としてこういう点か整備されておりませんと骨か折れるという条項に関連いたしますので、おそらく全部乗って参ると思いますけれども、その点についてももう一度検討し直してみたいと考えているわけでございます。
  68. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、少し具体的に聞きますが、今まで任意包括で加入している旅館は相当あるはずなんです。一体これらのものはいかなる事情と条件によって任意包括を適用していったのか。
  69. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 任意包括を認めるかどうかというのは、たしか都道府県知事に権限を委任いたしておりますので、私どもの方で出しております認可基準に適合すると認めて都道府県知事が承認したところがある、あるいはそういう旅館があるということであろうかと思います。
  70. 滝井義高

    ○滝井委員 大事なところになると都道府県知事に委任していると逃げられますけれども、許可する場合には当然あなたのところに内意を伺いに来ているはずである。内意を伺わずに勝手にやるということは私はないと思う。だから内意を伺いに来ていると思います。一体どういう都道府県でやっているのか。具体的にわれわれが考えてみると、温泉旅館なんかの非常に多い熱海とか別府はやられているだろうと思うのですが、温泉地にばかり旅館があるわけではない。だから逆に言って、一体いかなる都道府県だけが旅館業者を健康保険に加入せしめていないのか。何県と何県ですか。
  71. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 県別の資料は私ただいま手元に持っておりません。従って、ただいまの御質問にはお答えをいたす準備がございません。
  72. 滝井義高

    ○滝井委員 これは昨日もたれか聞いておったので、きょうもまたやるのですから、お調べになっておいてもらわぬといかぬのです。どうしてこの問題を言うかというと、結局旅館の従業員の待遇がきわめて低いということなんです。旅館にわれわれが泊った場合、女中さんに聞いてみても、健康保険を持っているというようなものはほとんどいない。蓼たるものです。昨日山下女史も口をすっぱくして言っておりました。持っていない。それでは何人おるかと調べてみると、三人や五人ではない。何十人とおる。それだけたくさんの人が働いておって、しかも封建的な劣悪な労働条件でやられておる。石田労働大臣は、昨年の春季闘争以来、政府も法律を守るから労働者諸君も法律を守れと胸をたたいた。一体こういう劣悪な労働条件のもとに置いておいて労働基準局は何をしているのかというのです。総評とかなんとかいう強いものには右の剣を抜いて頭からたたいていくけれども、こういう零細な労働者はなぜ左手にコーランで早く救ってやらないかというのです。そういうことなら基準監督署はなくてよい。高い給料を払う必要はない。それでわざときょうあなたに来てもらった。昨日は鈴木さんが来て、るる御説明を伺ったけれども、納得がいかない。か弱い未亡人その他が働いておるところに健康保険というものをやらない。それで労働基準法はうまつくいかぬ、旅館は特殊性があるというが、一体旅館に特殊性があるか。いかなる職業でも特殊性を持たないものはない。特殊性があるからこそ労働基準法施行規則二十七条やあるいは法六十二条等でぴしゃっと例外規定を作って、九時間やれとか深夜業はどうだとか作ってくれている。その特殊性の通り基準法のワクの中でやってくれたら特殊性というものはないはずである。あなたの御説明の中にも、基準法は適用しておりまして、これは工場労働者と違う特殊性だと言っているが、健康保険における五人以上の被保険者となるいわゆる強制適用の事業場というものは「イ」から「タ」まである。社会福祉事業法のところまで適用されるのです。社会福祉事業なんというものは、さいぜん長谷川先生が言ったように、きわめて特殊性がある。そういうところまで強制適用になっている。どうして旅館だけが特殊性のゆえをもって任意包括までも拒否されなければならぬかということである。これは明らかに両方の責任です。労働基準局ももう少しふんどしを締め直してやってもらわなければならぬ。あなた方がふんどしを締めれば賃金が確立し、雇用関係が確立します。有無を言わさず保険局がやらざるを得ない。昨年以来旅館業法は二回目の改正です。労働省と厚生省は話し合ったかどうかということです。旅館業で話し合いましたか。昨年も基準法の問題はここでずいぶん論議をしている。健康保険についても論議した。私は健康保険について山口公衆衛生局長さんに質問したところが、促進をいたしますという言明をしておるが、ちっとも促進していない。これはまず堀さん、どういう工合にあなた方は御相談されたのか。
  73. 堀秀夫

    ○堀政府委員 ただいま滝井委員お話にありましたように、旅館従業員ももちろんこれは労働者でございますから、労働基準法の適用があることは、もとより当然であるとわれわれは考えております。また特殊性云々ということがありました。先ほども私は特殊性という言葉を使ったわけでございますが、これは別に特殊性があるから監督を骨抜きにする必要がある、こういうことを申し上げたのではございません。たとえば移動性があるというような問題について工場労働者と違った特殊性があるという意味で申し上げたのでございまして、われわれといたしましては、特殊性かあるから基準法適用があっても監督を骨抜きにするというような意味では毛頭ないことを御了承願いたいと思います。なおこの旅館従業員の労働基準法の適用につきましては、これは率直に申し上げまして、従来は一般工場労働に比べまして、基準法がなかなか守られていなかったというのが実情でございました。この点につきましては、われわれも遺憾に存じておる次第でございます。そこでこの旅館業法の改正等につきまして、厚生省の方からもわれわれの方に相談がありました。われわれの方といたしましても、この旅館従業員の労働条件の確保ということは、他のあらゆる法律を施行する場合にもまず前提であるという工合に考えまして、昨年以来は特にこの旅館従業員の基準法の順守につきましても、われわれとしては重点を相当置いてきておるつもりでございます。その例を具体的に申し上げますと、たとえば昨年の末の労働基準局長の全国会議の際におきましても、この旅館従業員の労働基準法適用問題については指示をいたしました。また本年初めには、私から全国の労働基準局長あてに旅館の従業員の労働基準法の適用の順守について、やはり重点を置いてやってもらいたいという通達を出しておるわけでございまして、われわれとしても相当の努力をいたしておるわけでございます。ただ、お話のようにまだ旅館従業員の労働基準法の適用が円滑にいっておらないということはわれわれとしても遺憾に思っておりますが、遺憾に思っておりますだけに、今後におきましては、この面におきましても、われわれとしては重点を置いて基準法の適用を順守させるようにやっていきたい。またそれと同時に、やはり旅館におきましてその当事者が法律を守るという気分にならなけば、これは単に取り締るということだけではなかなかうまくいかないのでありまして、その意味におきまして、各県におきましても最近当事者と話し合いをいたしまして、基準法の線に沿った労務管理が行われるように努力しておるところでございます。たとえば一つの例を申し上げますと、和歌山の基準局におきましてはこの旅館の従業員の労働条件、それから基準法の順守につきまして業者を指導してきておるわけであります。この和歌山県の旅館業者の理事会におきましても、最近従業員の待遇改善、それから労働基準法に沿った労務管理につきまして申し合せを行いまして、この四月から実施することになっております。すなわちたとえば休日を明確にするということ、就業規則を具体的にきめて、賃金その他についてもはっきりときめていくということ、あるいは交代制とか当番制というものについてもしっかりやっていくというような申し合せをしてやっておったのでございます。われわれとしては一面においてこのような指導をいたしますと同時に、今後の問題につきましてこの間において特に悪質なものにつきましては、もとより法律の定めるところによって強硬な態度をもって臨む、このようなことでいきたいと思っておるわけであります。
  74. 滝井義高

    ○滝井委員 昨年以来通牒を出されて、重点的に旅館の基準法の順守を督励をした、こうおっしゃった。下部の旅館の従業員諸君の話を聞いてみると、積極的にやっておるところは一カ所ぐらいしかないというのです。一体通牒がいっておるだろうかどうだろうかということを従業員諸君は疑っておるという報告が私たちの方にあった。私は一、二カ所基準監督署に行ってみたが、基準監督署というものは律遇は哀れなものです。まず第一に出先の基準臨督署には自動車が一台ない、これでは広い管内を回っていろいろ災害の監督から今言ったような旅館の基準監督を指導するなんということはできはしませんよ。私は実はきょうは労働大臣に来てもらって、末端の基準行政というものは今のような姿ではいかぬということを言いたかった。自動車がない、機動力がない、基準監督行政というものは機動力なくしては絶対できませんよ。災害が起ったらすぐ飛んでいかなければならぬ、あるいは今言ったように機動的に調査に回らなければならぬのに、自動車一台ない。たとえば小倉のような大きなところでもありません。われわれのような炭鉱地帯で災害の発生するところでもない。こういうことでは幾らやれといってもできない、旅館のような小さいところを相手にしてもどうなるかということでそのままおっぽり出されるということになる。だから笛吹けども民踊らずという格好になっておる。この点はこの際基準監督行政については堀局長さん努力をしてもらって、予算も取って機動力をある程度強化しなければ、あなたが幾ら百枚の通牒を出しても、百日の説法何とかになってしまう。今あなたの心意気を私は壮として受け入れたいと思う。ぜひわれわれも及ばずながら助力をいたします。従ってまず、ぜひたくさんのものを一回に行政をやろうと思ってもできません。やはり各個撃破でいかなければならぬ。旅館か前の国会で問題になっております、だから旅館を重点的にやる、一挙に基準法を押しつけるということは無理でしょう、零細な旅館もあるのですから……。行政の重点というものをまず旅館で一つ実績を上げてみる、こういう形でやっていただきたい、こう思うわけです。それからそれに関達して保険局の方でも任意包括のテスト・ケースとして特殊性があるといわれておる旅館を一つとってみるということになりますと、あなたの方の厚生行政と労働行政がそこで一本の姿になって出ていきますと、旅館というものは二、三カ月のうちに見違えるようになると思う。従ってぜひそうしてもらいたいと思いますが、そういうことは高田さんできます
  75. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 十分検討してみたいと思います。私の方といたしましては、基準局も同じだと思いますが、旅館業だけを取り上げるということは非常に骨の折れることです。むしろサービス業というものは一番保険のしかけに乗りにくい業態なんです。それでありますので、特に旅館だけをつまみ上げて、先生仰せのように、ここに重点を置いて施行するということは若干無理かありはせぬかと思いますけれども、しかしだんだん旅館の業態というものが変って参りましてかっちりしたものになるということであれば、これは大いに研究の余地があると思います。御趣旨のこともございますので、一つ十分検討させていただきたいと思います。
  76. 滝井義高

    ○滝井委員 局長さん、この段階でそういう逃げ口上はだめだと思う、積極的にやってもらわなければ……。あなた方は皆保険をやるのだから、国民健康保険だって同じですよ、把握することになると、ちっとも変ったところはない。ただ傷病手当金がつくかつかないかだけです。国民健康保険法が全面的に解消されて一傷病手当金以外はほとんど右へならえです。運営の主体が市町村になるか保険者かという違いだけで、本質的にはそう変っていないと思う。そうすると、これらの従業員というものは国民保険にもいけないし、健康保険にもいけないということになったら大へんだ。だから形態としては失業保険が今後五人未満の事業場にもできていく形になれば、任意包括の失業保険ができていくとすれば、当然健康保険においても任意包括を促進する態勢をとらなければいけない、一方において労働者に適用される失業保険がある、一方においては国民保険というようなそういうちぐはぐな行政を行なってはならない、今あなたは努力ををしてもらいたいと思うのです。  次に基準局長さんにお尋ねしますが、旅館の従業員をやめた場合に、旅館には地区によって一定の期間その地区の旅館やなんかに再就職しちゃいかぬというような業者協定もあるのですが、そういう業者協定があることを御存じですか。
  77. 堀秀夫

    ○堀政府委員 私は今のところ承知しておりません。
  78. 滝井義高

    ○滝井委員 昨年鬼怒川で、何か二カ月間バン・ストみたいなものが行われた。これはやはりそういうことから起っておるらしい。問題はやっぱりこういうところなんです。結局基準監督署に機動力がなくて、おそらく人的構成も不足しておるからだろうと思うのです。これは河口湖なんかにもあり、どうも至るところにあったらしい。それは表面には出てきていないが、最低賃金が業者間脇定でやられると、僕らこういうことになりはせぬかと思って心配している。もう上げた業者は村八分だということになりはせぬかと心配するのです。就職さえもが、AならAの旅館に雇われた人がそこをやめると、今度は次の旅館に就職するのを二カ月とか、はなはだしいところは五カ年も雇っちゃいかぬというような業者間協定があるということを聞いておる。これじゃ旅館の従業員は大へんです。一体なぜそういうことになるのかと思ったら、お客さんを一緒に連れていくんだそうです。番頭さんがその旅銀をやめて隣の旅館にいくと、今までそこに来ておったお客さんを、隣に移るときに一緒に連れていくからいかぬのじゃというようなことだそうです。これをあなた方がお知りにならなかったということは、結局そういうことがないんだと見られておるんだが、私の耳にはそういうことがあるということが入っておる。これはまるつきり封建時代以前ですよ。こういうことか基準局長さんのお耳に入ってないという。われわれの耳には入っておるということなんですね。こういう点についても、もう少し監督行政をやってもらわなければならぬが、旅館の旅客の不払い宿泊料が、従業員の責任払いになっているというようなことが行われておりますか。
  79. 堀秀夫

    ○堀政府委員 旅館の従業員の間におきまして、たとえばただいまの不払いの場合、あるいは器物損壊というような場合に、これを従業員の負担にするというような事実があることは聞いております。この点については、これは基準法上の問題としては、たとえば賃金からそのまま差し引くというようなことがありますれば、基準法違反のおそれも出てくろわけでございますし、いろいろ問題もあると思います。また基準法は言うまでもなく、最低の労働条件の基準を定めるものでありまして、最低基準の上において合理的な労務管理を当事者の間において話し合ってやっていくという場合に、このような慣行は必ずしも好ましくないという工合に思います。そういう点につきまして、これは今後旅館の当事者間において労務管理の合理化と近代化をはかるために、十分話し合っていただきたいと思っておるのでございます。
  80. 滝井義高

    ○滝井委員 今のような非常に極端なことが、結局局長さんも言われたように、封建的な労働関係が行われておるところには行われがちなんです。その他にも今あなたか言われたように器物やら備品か破損したら、それは賃金から払わぬでも、お前のお客のところでやつたものはお前のところで払え、こういう形が、弱い未亡人その他が働いておるところ、そこを首になったらもう働くところがない、こういう弱い人には、えてしてそういうことがすぐ受け入れられがちなんですね。働かせられておる方でも、受け入れなければ首になるから受け入れざるを得ない。これではまるっきりかってあった売春婦の前借と同じですよ。形の変った、体のいい前借ですよ。だからこういうことが二十世紀の人工衛星が飛ぶときに、公然と日本に行われておるということなんです。しかも団体客が泊ったときのあの忙しい労働というものは、無給のサービス労働だというような形、こういうことはもう少し第一線の労働基準行政に当っておる署長さんその他の監督官の諸君が、じかにやはり労働組合にいって聞いてみるといいのですよ。それを監督署はやらないのです。こういうところにやはり問題があると思う。何か労働組合にいって話をしたり、ざっくばらんに意見を聞くとどうも工合が悪いというような、そういう感じが今の日本の労働行政にはみなぎり始めておる。労働省というのは労働省設置法三条に規定されておるように、労働者に対するサービスのためにできたものです。ところが今や弾圧機関となろうとしておるところに問題がある。それは労働省ができたあの設立当時の精神に復古の精神が必要だと思うのですね。あれに返らなければならぬ。できたときに返らなければいかぬと思うのです。それが復古ですよ。労働省が厚生省から分れたときのあの精神に返らなければならぬ。だから労働省の課長さんあたりは厚生省やその他の役所に比べてみな若いですよ。それはもう新進気鋭の士が分れて労働行政をやってみるということでやっておるはずです。だから厚生省の課長さんと労働省の課長さんを比べてごらんなさい。大学卒業の年次もぐっと労働省の方が若いですよ。隣りに厚生省の方がいらっしゃるから比べてごらんなさい。必ず若い。ところがその若い人たちがいつの間にか労働省の牙城によって、今や弾圧の方に変るなんて、分れたときの精神を忘れてはならない。もう三代目になると貸家とから様で書くように労働省がサービス機関でなくなったら大へんだと思うのですよ。そういうことで今の基準局の行政というものは、もう一回反省し直す必要があると思う。そしてこういうところを、もっとやはり局長さんを中心に、大臣にも言うべきところは言うし、それで下に対してはもっと辞を低うしてサービス行政をやっていく、こういうことでなければならぬと思う。きょうは私緊急上程の約束をしておりますから、まだたくさん材料を集めてきましたけれども、くどくどと申し述べたくありません。しかし私はいっかもう一ぺんやります。やったことは必ずやる男ですから、これからしばらくあなたの行政を見守りますから、ぜひやってもらいたいと思う。  次に旅館業法の八条三号関係の営業の許可取り消しあるいは営業停止ですね。一体これは具体的にどういう工合に実施していくかということなんです、これは病院なんかは指定の取り消しというのがある。ところが大きな病院などというもの、たとえば大学病院なんか、保険医療機関になると、指定の取り消しというものは実際問題としてできませんというのが、高田さん、今までの保険局長さんの答弁だった。そうすると旅館も小さいところはちょっと違反があるとすぐぴしっと取り消すことができるかもしれぬが、さて大臣やら、高級の役人やら実業家がいくような旅館は、なかなかこれは取り消しができぬという感じもする。従って一体営業許可の取り消しとか停止というものは、具体的にはどういう工合に実行していく所存なのか、これを一つ御説明を願います。
  81. 尾村偉久

    ○尾村政府委員 八条の違反の中で大きく分けまして、旅館業法のいろいろな施設基準あるいは許可の基準等に違反した場合、それから昨年改正のときに入りましたいろいろな風俗関係の罪を犯したという、この二つに大きく分けられるのでありますが、そのうちの旅館そのもののいろいろな条件に合わぬというものは、これは以前からそれに基いてやっておりますので、それぞれ改善命令を期限つきで出すというふうに、指導的に改善させております。どうしても悪質で、違反のまま無視して継続するという場合にこれを取り消すあるいは停止を命ずる、こういうことで長いことやっております。むしろ一番問題点は、今のお話のはもう一つの方の風俗の違反問題、新しい方が主ではないかと存じますが、これの方は昨年警察庁と厚生省の間で取りきめをいたしまして、どうやってこれを取り消しを実施するかという手続関係を取りきめております。すでに昨日も御説明申し上げましたが、最近もうすでに二県で具体的なこの法の改正による取り消しが、営業停止が行われました。すなわちこれらの罪を犯したということで検挙をせられまして送検をされる。その中でこの旅館営業をする場合に、営業の方の処分をしなければ不適当だという場合には、警察の方から通報がございまして、これを今度都道府県知事が十分内容を見まして、必要と認めたものを聴聞会にかけまして、本人を、営業者あるいは営業者と類似のものですが、これを呼び出しましてよくその内容をただす、その上で営業の取り消しないしは停止を命ずる、こういうことでございまして、われわれといたしましては大きいからとか小さいからとかいうようなことでなくて、この風俗営業の方はあくまで当該営業に関して犯した罪に基いてでございますので、将来またそういうようなことを未然に防止するというような建前で、今の手続に従ってこれは実施しておりますし今後もそうしていく、こういうつもりでございます。  前者の問題につきますと、従来旅館業法施設その他の違反は、比較的大きい旅館に少いわけです。どうしても小さいところで炊事場の方が不適正だあるいはきめられた基準が守られないということで、小旅館に比較的率が多かったことは事実でございます。これはあくまで旅館業法基準に違反という線で照らしておるわけでございます。
  82. 滝井義高

    ○滝井委員 もうベルが鳴りましたから、もう一、二ありますけれども、とにかく最終的には聴聞会を開いて、その意見を聞いて初めて取り消しなり営業停止の処分をやる、こういうことなんです。ぜひ一つそういうものにきちっと——警察その他だけの胸三寸でやるというようなことのないように、ルールをきちんと踏んでやってもらいたいと思います。聴聞会その他のことは個人的に聞かしていただいて、これで終ります。
  83. 森山欽司

    森山委員長 他に旅館業法の一部を改正する法律案に対する御質疑はありませんか。——なければ本案についての質疑は終了したものと認めます。  次に討論に入るのでありますが、別に通告もないようでありますから、直ちに採決いたします。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
  84. 森山欽司

    森山委員長 起立総員。よって本案は原案の通り可決すべきものと決しました。なお本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
  85. 森山欽司

    森山委員長 御異議ないと認め、そのように決しました。  午後二時まで休憩いたします。     午後零時五十四分休憩      ————◇—————     午後二時五十分開議
  86. 森山欽司

    森山委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  身体障害者福祉法の一部を改正する法律案社会福祉事業法の一部を改正する法律案及び内閣提出日雇労働者健康保険法の一部を改正する法律案の三案を一括議題とし、質疑を続行いたします。堂森芳夫君。
  87. 堂森芳夫

    堂森委員 政府にお尋ねいたしますが、日本全国の身体障害者の実数について御説明を願いたいと思います。
  88. 安田巖

    安田(巖)政府委員 昭和三十年の十月に調査をいたしましたときに、これは十八才以上の成年者の数でございますけれども、七十八万人が身体障害者として認められておるわけであります。
  89. 堂森芳夫

    堂森委員 私が見た数字では、たしかやはり局長の答弁のように七十八万五、六千人、こういうふうに記憶しておるわけでありますが、その中で重度の身体障害者はどれくらいありますか。
  90. 安田巖

    安田(巖)政府委員 大体重度と申しますと、一級、二級、三級くらいまでございますが、これが約三十四、五万だと承知いたして起ります。
  91. 堂森芳夫

    堂森委員 重度と申しますと、失明者、両足、両手がないというような全く労働力を失った人たちが含まれていると思うのです。これらの人たちが三十数万ある、こういうようなわけでありますが、これらの重度の身体障害者で、生活保護法、恩給、軍人恩給、厚生年金というふうな何らかの形で生活扶助というか、生活援護というか、公的にそうした物質的なものを得ておる人たちの数はどれくらいございましょうか。
  92. 安田巖

    安田(巖)政府委員 今ちょっと資料を持ち合せておりませんけれども生活保護を受けておりますのは、大体身体障害者の中で三割から四割くらいになっておるかと思っております。あとでまたすぐ資料を取り寄せまして確かな御返事を申し上げます。
  93. 堂森芳夫

    堂森委員 しかし局長、身体障害者福祉法の一部を改正する法律案をここに提案して審議するときに、三十数万の重度の身体障害者の中で、どれくらいの人が生活保護を受けているとか、恩給をもらっているとか、そうした何らかの物質的な収入があるとかいうことがわかっていないということは重大な問題だと思うのです。私は何千何百何十何人というこまかい数字のことを申しているのじゃないのです。大体どれくらいの人がおるかという御答弁が願えないということはおかしいと思います。
  94. 安田巖

    安田(巖)政府委員 生活保護お話しがございましたので、正確な数字がわからないと申し上げたのでありますが、大体普通の世帯に比べると、被保護率が二倍以上になっている状況でございます。それから身体障害者個人としては収入が皆無であるとか、あるいは五千円以下の収入の者が相当数あるわけでございます。ただ生活保護は御承知のように世帯単位でありますので、家族に扶養されているという状態が相当あるために、先ほど申し上げましたように、生活保護ではそれほど多くはないということでございます。これは昭和三十年の十月十五日現在の調べでございますけれども、全然無収入というのが四六・六%、それから千円までというのが二・六%、千円から三千円までというのが一一%、三千円から五千円までというのが九・一%、五千円から一万円までというのが一四・五%、一万円から一万五千円までというのが七・五%、一万五千円から二万円までというのが四・四%、二万円から三万円までというのが二・二%、三万円から十万円までというのが一・五%、十万円以上というのが〇・五%、わからないというのが〇・一%、これは身体障害者が自分で勤労をして収入を得るものでございますから、家族の資産の状況といったようなことは抜いた調べでございます。
  95. 堂森芳夫

    堂森委員 私がそうしたことをお尋ねいたしますのは、身体障害者に対する福祉という問題を考えるときに、これは根本的な問題であるからであります。そこでこれは私の記憶違いかもしれませんが、身体障害者の中で重度の身体障害者は約二十七万くらいあり、その中で生活保護、恩給、厚生年金というような収入が入ってくる人たちは約一万数千人ではないかというように記憶しているのです。これはあなたのところで出されている厚生白書で読んだと思うのでありますが、たしか一万五、六千人しかそういう援護を受けていない。あとの二十五、六万の人はそのままであるという状態だと思うのですが、もう一ぺんお調べ願って御答弁願いたいと思います。
  96. 安田巖

    安田(巖)政府委員 私が今申し上げました数字もこの厚生自書の中に出ております。ただこの重度というものの、取り方でございますが、かりに一級、二級、三級ということになりますと、もう少し数字が多いのではないかと思います。
  97. 堂森芳夫

    堂森委員 そこで米田政務次官がおられますので、お尋ねしたいのですが、身体障害者に対して年金というものを出さねばならぬ。こういうことについては前厚生大臣当時からたびたびそういう意向がこの委員会で、あるいは予算委員会でというふうにいろいろな委員会で表明されておるわけですが、一体政府は来年度から無醵出による身体障害者に対する年金を作っていく確信があるのかどうか、一つ答弁を願いたいと思います。
  98. 米田吉盛

    米田政府委員 年金の問題は最近とみに重大な論議になって参りました。障害者の方だけても先にやれ、こういうような意見のあることは十分承知いたしております。しかしこの年金の問題は、ただ年金という形式だけをやったのでは年金の精神は貫徹できないのであります。年金制度の必要性の根本にさかのぼりまして、何ゆえ年金が必要か、その必要性を満たすような結果にしなければ、形式だけ年金をやっても意味がない、そういうような観点から各方面にわたって実はこの問題を調査をいたしておることは、堂森委員承知の通りでございます。身体障害者だけ先にやるということは、今のところ実はそういう方向では考えないで、全般的に、身体障害で困っておる者も、その他の理由によって困っておる者も、ひとしく国民の困っているという点は同じでございますから、そういう点を考慮いたしまして、できるだけすみやかに踏み切る、その踏み切った場合には相当の額の国庫の負担となることは明らかでありますから、一年、二年実行してまたやれなかったらやめだという姿ではいけないと思いますので、十分各般にわたって正確な調査を実はやっておるわけでございます。明年はこれらの調査を徹底いたしましてできるだけ早い機会に実施できるようにという考えでおりますが、しからばいつできるか、明後年できるかという問題は、今のところその調査を熱意を持って進めばいたしまするが、調査を進めましたところでなければわからぬと思いますが、そう長くないうちにもちろんこれはやらなければならないこういうような現在の状況でございます。
  99. 堂森芳夫

    堂森委員 どうも政務次官の御答弁わからぬのですがね。年金制度を形式のために出す、それからほんとうに必要な人に——どうもよくわからないのですが、とにかく私がただいま申しましたのは、身体障害者の福祉法の改正法律案を審議しておりますから、従って身体障害者に年金を出すのが来年度から実現しますか、こう言ったのです。私は身体障害者だけ出せ、そんなことは言っておりません。そこで今度の農林漁業団体職員共済組合法案だとかいろいろああした厚生年金に附帯していくような年金が次々に出てくる、こういうようなことで、われわれの質疑に対して厚生大臣は、国民年金制度を早急に確立して、そうした体系が複雑多岐にわたっていくようなことを防ぐというような答弁もしておられるわけですが、身体障害者には年金制度というものはぜひ必要であります、他にもございますが。とにかくできるだけ早い時期にということですが、そうすると来年からやる準備はできないのでございますか、その点いかがでありましょう。
  100. 米田吉盛

    米田政府委員 ただいま私お答えしましたのが、少し回りくどく申しましたから、おわかりにならなかったかと思いますが、年金制度をやるやり方にも申しわけ的の金額を年金として出すやり方もあると思います。私それを形式的の年金制度、こう言いました。私らの考えておりますのは、年金制度の必要性を考えて、それを満たす程度のものを、実施するとすればすべきである、こういう意味で申し上げたのでございます。それからこれはいずれの年金につきましても言えることだと思うのであります。身体障害者の年金について明年から実施の用意ありやいなや、こういうお尋ねでございますが、これはまことに遺憾ながら明年度からは実施できません。三十二年度、三十三年度、これは御承知のように調査費が予算に計上されております。これは十分的確な調査をいたしまして、その上で踏み切る、これはやらなければならぬことでありますが、やる以上は、一年や二年やって国費がまかなえないというようなことでやめるわけにはいきませんし、各方面の問題を十分検討してやらなければいかぬ、そのために調査を進める——調査が二年かかるじゃないか、こういうおしかりがあるかもわかりませんが、これは事柄が相当大きな問題であります。身体障害者だけの問題ではございません。国民一般に年金を考えておりますのでそれに包括して身体障害者も考えていく。身体障害者だけを先にやるかどうか、この問題については政府としてただいま結論が出ておりません。また御承知のように内閣の社会制度審議会にもこの問題ば諮問してございますので、大体五月ごろにこの答申があるやに予想いたしております。それらの答申を見まして、十分御趣旨に沿うようには努力いたしますが、明年度からやるということは、政府としってただいま言い切る用意はございません。
  101. 堂森芳夫

    堂森委員 それは政務次官、われわれとしてはどうも納得できませんですよ。ということは、厚生大臣は、私がこの席で質問いたしましたときに、ついせんだってでありますが、厚生省の今までの年金制度に対する態度はどうも上すべりであった——私は上すべりという意味はわからないのです。選挙じゃあるまいし、上すべりという言葉はおかしいと思ったので、そのとき言葉じりをとらえてよっぽど言おうと思ったのですが、まあ言わなかったのですが、今まで非常に机上論が多かった、調査々々が多かった、そういうことをしておるから、それで他のいろいろな団体か年金制度を次々と別々に作っていく結果になってしまう、早急に具体策を作りまして、われわれは一日も早く——もっとも来年からとは言っておりませんが、しかしきわめて近い時期に年金制度の案を作って実行に入るようなことをにおわした答弁をしております。来年はできません、そんなことを言っておりません。それからまた大体厚生省における調査というものは、本年度と来年度と、この二年間でできないことはないと私は思うのです。またあなたはえらい財政のことを言っていらっしゃいますが、年金というものはそれによって生活が全部ささえられていく、こういうものじゃないと私は思うのです。たとえばかりに月に一千円か三千円年金が入る——多い方がいいですけれども、それでも老人あるいは老人の家庭あるいは身体障害者あるいは未亡人家庭がどれだけ助かるか知れません。もちろん年金によって人間並みの生活ができるかということです。これはできればいいですけれども、ながなかむずかしいことです。従って政府は来年からやれないのだ、こういうことでは厚生大臣が先般もたびたび答弁されていることとは非常に違うと思うのです。もう一度確かに来年はできません、こういう御答弁になるかどうか御答弁願いたい。
  102. 米田吉盛

    米田政府委員 三十四年のことは多少時間も先になりますし、できればそれを日遂に努力をいたしたいとは考えておりますが、これは諸般の調査の成果によらなければならぬことでもございますし、今仰せになったような、たといかりに月に二千円支給いたしますといたしましても、莫大な金額に上るわけでございます。収支の財源そういうような点も十分考慮いたさなければならぬわけでございますから、三十四年から必ずやるという政府の言明は、この際できにくいのでございます。この点は一つ御了承を願いたい。しかし十分努力いたしまして、それを努力目標として三十四年をやるという程度のことは、われわれもそういうようなつもりで努力いたしますが、その結果必ずしも三十四年にやらなかったじゃないか——この前医療単価引き上げの問題で神田厚生大臣の言質のようなことをここで私が言うわけにはいきませんので、立場をどうぞ一つ御了承願いたい。
  103. 中山マサ

    ○中山(マ)委員 関連して。調査という問題でございますが、思い出しますれば昨年の秋までに母子家庭の調査は済ませるということで、相当の予算も取ってあったのでございまするが、国民年金ということば非常に大きい問題でございますから、小さいグループから片づけていって、だんだん一つのワクにまとめるというようなことについての政務次官のお考えはいかがでございますか。国民年金といえば、これは相手も実に多いことでございまして、いろいろほかの年金がございますから九千万全部にやるということでもないでしょうけれども、それを差し引きましても相当の数なんです。これはなかなか大へんな仕事であって、英国の年金関係の大臣が神田大臣に、これに飛び込んでいけば徐々にやりなさいと言われたということを、あの方の帰朝報告の本の中に書いてございますから、私は一足飛びに飛び込んでいけとは言いませんけれども、昨年の秋までに母子家庭に関しては調査が済んでいるはずでございますから、一つここからでもやっていこうという御意思はないのでしょうか。
  104. 米田吉盛

    米田政府委員 いろいろ御意見を承わって、やり方について全体を計画しなくてもその小さい部分々々から一つ始めていって、結局積み上げていったら、こういう御意見だと思いますが、そういう行き方もあるだろうと思います。ただその行き方にするか、あるいは全般の見通しを立てて母子家庭であろうと身体障害者であろうと、その他の理由によろうと、年金を必要とする人の立場からいえばひとしく国民でありますから、できれば全部やりたい、こういうのが私らの実は考え方であります。ですから、部分的にやるか全般を、一緒にやるか、こういう問題そのものも、政府としましては正直なところまだ腹がきまっておらないのであります。それをきめるために実は調査を進めておる、明年度も調査費をいただいておる、こういう状態でございますので、一つ一つから積み上げてやるのだ、こういうことをただいまどうも私の立場として言い切るわけにはいかないと思うのでございます。
  105. 山下春江

    ○山下(春)委員 関連。米田政務次官お答え立場を察してくれということでありますが、あなたのお立場だから言ってもらわなければならぬことかある。そのような大事をおとりになっては百年たってもできません。身体障害者の重度の人に対して、月に二千円というような頭があるから問題になると思います。千円でけっこうです。五百円でもけっこうです。やらねばならぬということに対して踏み切っていただきたい。それは国民年金というものがあるからというのですが、国民年金というのは、政務次官仰せの通、容易ではありません。しかし国民年金をやるからやるからといううたい文句でいつまでも延ばされたのでは困るのであります。わが党は与党としてとてもそんな返事ではがまんも何もできないのでありまして、身体障害者の中の重度の者に対しては、たとい五百円でも千円でもやってもらいたい。堂森委員は年金それ自体は生活の全部をささえるものではないと言われるのですが、年金の本質はそうではないと思います。生活の全部をささえることの方が好ましいのでありますけれども、財政々々と政府はいつも仰せられますから、そこで財政を考慮いたしましてわれわれは五百円でもいいと思います。とにかく重度の身体障害者に対してやるというあたたかさがほしい。そんな調査なんてする必要はない。身体障害者は手帳を持っていてそれがわからぬはずはないから、調査という言葉はちょうだいできない。だからこの際大臣の代理として三十四年度からは身体障害者の申の重度の者に対しては金額のいかんを問わず年金を実施いたします、こういう御答弁を賜わりたいのであります。
  106. 米田吉盛

    米田政府委員 だんだん追い詰められまして非常に弱りますが、気持は同じです。あなたもかつて政務次官をおやりになったが、気持は同じです。私の気持は、これはある程度の調査ができないといけないということである。私の気持は、国民年金はそう長く調査々々で引っぱるべきものではないと思います。この前堀木大臣がそういう意味の御説明をせられたと思いますが、私もそういう気持です。だからそう長くないうちにこれを実施するから一緒にやっていいのではないかというのが私の正直な考えです。
  107. 山下春江

    ○山下(春)委員 身体障害者の重度の者と一番気の毒な母子家庭とは無醵出でやるということを大内兵衛さんが制度審議会の答申に書いておられまして、これは満天下が無醵出でやるものだと了承しておるのですよ。これに今から掛金をかけなさい、年金をやれなんていうことを言ったっても始まらない。社会局長はちゃんと知っておられますよ。どのくらいの人数の者が重度の者か、今まで手帳を出しておりますから知らないということは言えた義理ではない。調査ということはこの段階では必要はない。調査してはいけない。今までに調査ができている。たとい五百円でも千円でもいいから、財政がよくなったら、はしてやればいいのですから、無醵出のものを三十四年からやるように踏み切っていただけば、満天下の国民が賛成するのですから、予算が少しくらい要ってもそんなことはよろしゅうございますよ。それが政治ですよ。今から考えるの調査するのというようなことを言っておったのでは、どうにもこうにもなりません。ほんとうに厚生省の事務がそんなにルーズなものとは言いたくないが、社会局長はどのくらいの重度の者がいるかということをちゃんと知っておられますが、それだけはぜひ三十四年度からは、金額は申しませんから、踏み切って下さるように重ねて大臣として決意を御披瀝願います。
  108. 米田吉盛

    米田政府委員 これは大へん私として実際苦しいところでございます。のどから口に出かかっておるのでございますが、実際、言いますことは簡単ですが、言うた以上は責任を持って実施するわけでございますから、この点をどうぞお考え下さいまして、こういうような問題は厚生省としましても、大臣とも十分相談もしなきゃなりませんし、ここで問い詰められて苦しまぎれに答弁をしたということでは、ほんとう答弁ではないと私は思いますので、われわれもその気持でおることは間違いございませんので、大所高所から十分研究をいたしまして、その線にできるだけ沿うように努力はいたします。ただ必ず三十四年からする、こういうことだけは、今の段階では言明ができない、このことを一つ御了承願いたい。
  109. 堂森芳夫

    堂森委員 本日は身体障害者福祉法の一部を改正する法律案の審議でございますから、私は年金の問題についてはこれ以上追及いたしません。しかし米田政務次官答弁、まことに不誠意きわまるものであって、岸総理もどんな答弁をしておるか、国会の議事録もお読みになっていただきたいと思うのです。総理大臣もはっきり言っておるのです。でございますから、三十四年からやらぬなんということは、これは私は不満どころじゃない、閣内の不統一であるということを追及いたしておきます。  そこで法案に関連しまして質問をいたしますが、このたびの法案の改正によりまして、福祉法人が経営しておるそうした施設に入所する場合に、国と地方自治体が分担して補助を出すわけですが、現在全国でこうした施設がどれくらいあるのでございますか。
  110. 米田吉盛

    米田政府委員 堂森委員お答えいたしますが、私が三十四年からやらないといったようにおとりになっておりますが、そういうようにもし私が表現いたしましたら、私の意思と表現との不一致でございます。私は積極的にやらないということは申しません。そういう努力目標をそこにおいて努力する。しかし必ずやると積極的に言明はできない、こういうように申し上げましたので、十分その努力目標で努力いたしまして、私はやれるようにいたしたいと腹の中では考えておりますが、政府がここで言明いたしますと、責任がありますので、その点を先ほどからるる御理解を願うように申し上げておるわけでございますので、三十四年からやらぬと私が積極的に言うたということは、もしそのようにお聞き取りでありましたら、どうぞそうでないことを御了解願いたい。
  111. 安田巖

    安田(巖)政府委員 身体障害者の更生援護施設でございますが、国立が現在五個所、公立が五十九個所、それから私立、つまり民間施設は十四個所でございます。
  112. 堂森芳夫

    堂森委員 現在公立あるいは国立の施設以外に、私立のものが今度補助の対象になるわけですが、大体入所する人たち内訳で、生活保護の対象者、これはもちろん免費として入所できるでしょうが、自費で入所する人たちはどれくらいになるでしょうか。
  113. 安田巖

    安田(巖)政府委員 こういう施設に入ります方々は、ほとんど生活保護を受けておりますが、純粋な自費は大体一割くらいと推定いたしております。
  114. 堂森芳夫

    堂森委員 自費で入所しておる人たち費用は、月どれくらいになりましょうか。
  115. 安田巖

    安田(巖)政府委員 その場合の入所者の負担食費だけでございますから、大体千八百円ちょっとでございます。
  116. 堂森芳夫

    堂森委員 そこで、このたびの改正によりまして、事務費の国の負担ができたわけですが、そこで今後新しくできていくものも相当あると思います。新しく建てていく場合に、その建設費とか、そういうものに対しては全然補助だとか、そういうものはないのでございますか。
  117. 安田巖

    安田(巖)政府委員 身体障害者の収容施設に限らず、児童福祉施設におきましても、あるいは生活保護施設におきましても、新設の場合に、その建設費に対しまして補助を出すという規定は現在のところございません。ただ身体障害者を除きました児童施設、それから保護施設におきましては、既存の施設を拡張をいたすとか、修理をいたすとかいうふうな臨時費に対しては補助の道かありますけれども、身体障害者の場合には、今回の改正におきましてもその点はないのでございます。
  118. 堂森芳夫

    堂森委員 そうすると、拡張していく場合にも補助の対象にならぬのでございますね。
  119. 安田巖

    安田(巖)政府委員 身体障害者の施設という性格だけでは、現在のところ補助の対象にはならないわけでございます。
  120. 堂森芳夫

    堂森委員 今日身体障害者に対する施設がきわめて不足しておることは、局長もよく御承知だと思うのでありますが、現在のところ、そうした福祉法人がどれくらいまだあれば、ほぼ入所要求を満たすことができるか、一つ答弁を願いったいと思います。
  121. 安田巖

    安田(巖)政府委員 身体障害者は、先ほど申し上げましたように七十八万五千人ばかりおるわけでございますが、そのうちには軽い人もございますし、重度の者といえば三十七、八万くらいのことになるのであります。それが全部厚生関係の方の施設に入るわけでもございませんので、あるいは労働省の方の職業補導所に参ります。あるいはまたそのままの状態ですぐに就業できる方もあるわけであります。何人が厚生省の方の収容施設に入るかということは、今のところ数字をつかんでおらぬのでありますが、現在の各県にありますところの更生保護施設等の状況を見ますと、まだまだ不足しているということは十分わかるわけであります。
  122. 堂森芳夫

    堂森委員 私数年前ですが、北海道へ行ったことがあるのです。そして札幌でしたかに相当大きな施設があるのを見たのですが、あの広い北海道で収容者わずか数十名じゃなかったかと思うのです。北海道のような大きい地域で一カ所、しかも数十名しか収容していないという状態で、たしかその施設で働いておる人たちも強く要望しておったことは、もっと施設をふやしてもらいたいということでした。こういう点は厚生省当局もよく知っておられますか、いかがでございますか。
  123. 安田巖

    安田(巖)政府委員 入所希望者がございますと、それを一々選んで入れなければならぬという状況でございますから、今のお話のような趣旨については十分承知いたしております。
  124. 堂森芳夫

    堂森委員 そこで、この身体障害者の施設に泊り込まずに、たとえば授産の仕事をやっている場合ですが、泊り込まずに通えるような一人、盲人なんか健康であればできるのです。こういう方面の人たちに対しては、やはり何も補助はないわけですね、事務費だけだとすれば。職員に対する補助ということだけであって、他には何もないわけですね。
  125. 安田巖

    安田(巖)政府委員 先ほど申し上げましたように、今回の措置におきましては、そういう場合の補助の道がないわけであります。身体障害者の場合は、通う施設は主として労働省関係の軽度の身体障害者が多うございまして、厚生省関係の施設におきましては収容を主としておるわけであります。起請の盲人等の場合は、特に収容ということが必要な状態でございます。
  126. 堂森芳夫

    堂森委員 このたびの福祉法の改正によってふえる予算は、一体どれくらいでございますか。
  127. 安田巖

    安田(巖)政府委員 五日四十六万二千円でございます。これは十分の八の補助金でございます。
  128. 堂森芳夫

    堂森委員 これはきわめてわずかなものでございまして、厚生省の大蔵省に対する折衝がまだ成功しなかったのじゃないかと思うのです。そこで、今後さらに一段の努力が必要であろうと思うのです。それからこのたびの法律の改正によって、もちろん一つの大きな進歩があることは私も認めます。各地にあるプライベートの施設は、従来何ら補助がもらえなかった。このプライベートの施設に働いておる職員諸君のサラリーはきわめて低い。しかも年末手当も出ないという施設が非常にたくさんあったわけです。私もよくそういう陳情を受けたことがありますが、そういうことを国会で取り上げてもらうと厚生省の方からいやな目でにらまれるので遠慮するということもわれわれ聞きまして、非常に同情を禁ぜざるを得ないあるいは義償を感ずるような状態が従来あったことは、おそらく政府当局も御承知だろうと思います。その点がこのたびの法律によってかなり改されてきたことはきわめて喜ぶべき、また大きな進歩だろうと思うのですが、今後さらに一段と身体障害者に対する施策の進歩を念願しまして、私の質問を終ります。
  129. 植村武一

    ○植村委員長代理 角山委員
  130. 亀山孝一

    ○亀山委員 私は関連して二点だけお伺いしたいと思います。従来の厚生行政のうち比較的おくれておるのは、私が申すまでもなく母子家庭の問題と身体障害者の施設と養老施設の問題だと思うのです。そのうち母子家庭の問題は、本日ここにおられます山下委員を初め各委員の御努力で、もちろん十分とは申せませんけれども、最近いくぶんか発達を見ておる。ところが身体障害者については、今回の改正もありますけれども、残念ながらまだ遅々たるものでありますことは先ほど来室森委員当局との質疑応答にもあった。そこで私は、身体障害者年金のほかに、母子家庭に対して母子福祉資金があるように、身体障害者に対して身体障害者福祉資金というものが考えられないかどうか。もう一つは、直接厚生省に関係ありませんけれども——もちろん大部分がいわゆる貧困者であられますけれども、肢体不自由児を含んでこういう方を擁しておる家庭、御本人、これの所得税の減免の問題——現在ある程度控除はしております。けれども、私がるる申し上げるまでもなく、身体障害者で困っている方に対しては生活保護その他年金もやらなければならぬと思うのですが、それ以外の人たちに対してどうしても所得税の減免ということを考えるべきだと思う。これは大蔵省当局の問題かもしれませんけれども、厚生省としても当然考えるべきだと思う。昨年来関係団体から当局にも陳情しておられると思うのですが、この問題に対して当局はどういうように努力しておられるか、またどういうお考えをお持ちになっているか、この二点だけを一つお伺いしたいと思います。
  131. 安田巖

    安田(巖)政府委員 お答え申し上げます。身体障害者につきましてきわめて重要な問題だと思うのでありますが、第一の身体障害者のみを対象にいたします更生資金を考えたらどうかということでございます。実は前々からそういうふうな要求がありますものでございますから、私どもも寄り寄り考えたのでございますが、ちょうど世帯更生資金という大きな問題が出て参りまして、これをどうしても通さなければならぬという事態になり、現在では世帯更生資金をます獲得し、それを貸し付けることにいたしまして、その中で特に一般の身体障害者は優先的に貸し付けるようにという通牒を実は出しておるのであります。その結果、ここに三十年度、三十一年度の貸し付け状況がございますけれども一般の貸付人員は四七・七%でございます。ところが、身体障害者の方は七四・六%、三十一年度におきましても六八%と非常に高率を示しておりますので、そういった点で身体障害者だけの更生資金というわけには参りませんけれども、御質問の御趣旨につきましては多少沿い得たのではないかというような感じを持っているわけであります。  二点の所得税の減税の問題でありますけれども、現在の制度におきましては、一般の身体障害者は五千円、それから傷痍軍人につきましては七千円の税額控除があるわけです。これは税額控除でございますから、現在御承知のように所得税というのは四人くらいの世帯でございますと、二十三、四万円までは税がかからない。そこでその上で税がかかるということになりますと、やはり二十五、六万とか、七、八万とか三十万とかいう収入がある人が税がかかる。三十万くらいの人に五千円の税額控除をいたしますと、残らないということになりますと、私ども大蔵省にいろいろ折衝いたしますけれども、三十万とか三十四、五万くらいだったら、もう控除しなくてもいいじゃないかというようなことが出てきたわけです。もっと所得税の減免点というか、所得税がかかるそれが、割に低いときですと、つまり所得税が重いときはこれが非常に問題になったわけでありますが、だんだんと軽くなって参りましたために、自然今申し上げたような数字の状態になってきて、関係当局と折衡いたしましていくというと、非常に高いものになお今度は税額を控除しなければならぬことになる。これか税額控除の規定でございますので、まあまあ今の状態は、さらに努力はいたしますけれども、一応納得できるような状況に実はなっておるわけでございます。今後もしかしよく研究してみたいと思います。
  132. 亀山孝一

    ○亀山委員 今の世帯更生資金の問題は私もそう思うのですが、むしろ私の申し上げたのは、はっきりと身体障害者更生資金というものを打ち出したらどうか、ちゃんと分けて、ちゃんと置くように、六割、七割使っているのですけれども母子更生福祉資金と同じようにこれを分けたらどうかという趣旨であります。だからそれは世帯更生資金というワクに入っているからということでは、私は今後十分でないと思う。  それから今も所得税のお話がありましたが、それは社会局長一応制度はそうなんですよ。けれどもわれわれが体験からよく見ることは、相当の所得者であっても、身体障害者あるいは肢体不自由児をかかえた家庭費用というものは、これは数はわずかかもしれませんけれども、これはやはりあたたかい——単に生活保護とかいう問題でなくて、その人にいわゆる療育を与えるという意味からして、ただ中以上の所得者には今の税額控除があるということだけで満足すべきことではなくて、やはり今申し上げたような趣旨からお考え願いたいと思う。これ以上申し上げませんが、十分一つ御考慮を願います。
  133. 植村武一

    ○植村委員長代理 滝井委員
  134. 滝井義高

    ○滝井委員 どうも僕がいつも一番しんがりになって非常にお気の毒でございますが、今回身体障害者福祉法が二点にわたって改正をせられることになりますので、この際少し系統的に政府の方にお尋ねをしてみたいと思うのです。  私たちが身体障害者の福祉行政をやる場合においては、何といってもその行政を預かる第一線の自主更生援護機関というものがしっかりしておらなければならぬと思うのです。そういう意味から考えると、現在この行政を扱う第一線の機関は福祉事務所だろうと思う。特にこの福祉事務所において身体障害者の福祉行政というものはきわめて技術的な指導を必要とする行政なんです。従って専門家を必要といたします。その専門家がおそらく身体障害者福祉司と、こういうことになっておるだろうと思うのですが、一体現在全国の九百有余の福祉事務所に、身体障害者福祉司というものがどういう形で充足をされているのか、これをまず御説明願いたい。
  135. 安田巖

    安田(巖)政府委員 昭和三十二年九月現在で、福祉事務所に身体障害者福祉司でありますのが七百九十一人でございます。福祉事務所が九百六十七ございますから、福祉司のいないところがある。しかも七百九十一人のうち兼任が四百七十七人おりますからして、この充実の度合いというものば必ずしも満足すべきものではないということでございます。
  136. 滝井義高

    ○滝井委員 保健所に技術者が欠けて、日本の第一線の保健行政というものがうまくいっていないことは、社会局長も御存じの通りだと思います。少くとも福祉行政を推進しようとするからには、いかにりっばな法律ができ、いかにりっぱな機構ができても、そこに働く中心的な人間を欠いては福祉行政というものは動かぬと思うのです。今の御説明で九百六十七の福祉事務所の中で七百九十一人だという。しかもその中で半分以上というものが兼任だということになっておる。今福祉司になるためには一体どういう身分が必要なのか見てみますと、非常にこれは高い経歴を必要とするようであります。医師とかあるいは社会福祉主事たるの資格を有して、そうして身体障害者の更生援護その他の福祉に関する事業に二年以上従事した者、それから大学で社会福祉に関する科目をおさめた者、それからそのほかいろいろありますが、大体そういう非常に高い技術水準を必要とするものになっておるわけなんですね。そうしますと、四百七十七人が兼任だということになれば、七百九十一人の中で半分以上が兼任だということになると、結局身体障害者の福祉事務あるいはそういう技術的な指導というものは、これは刺身のつまになっているということなんですね。こういうことで一体やっていけるのかどうかということなんてす。現在福祉事務所における社会福祉主事の仕事というものはもう生活保護の事務で手一ぱいなんです。そのためにあるいは今度そういう身体障害者福祉司や何がの事務の補助的な役割を、協力機関として民生委員に委託することになったのかもしれませんけれども、一体これはどういう工合にして解決せられていく所存なのか。まず私たちは身体障害者を救う前に、この救っていく主体である機関を確立する以外にないと思う。これは一体どういう工合に厚生省はやられる御所存なんですか。
  137. 安田巖

    安田(巖)政府委員 身体障害者の福祉司は私どもの希望といたしましては各福祉事務所に一人専任でそれに当る人を置いておきたいというのが私どもの希署でございます。ところが現在の規定といたしましては、県の福祉事務所には必ず福祉司を置けと書いてある。それから市の福祉事務所には置くことができるとなっているわけです。ところが御承知のようにだんだん新市が多くなりましたために、市の福祉事務所の数というものは九百六十七のうち五百八十二ある。三百八十五が県の福祉事務所である。そういうことがこの福祉司の充足状況にも影響があるのではないかと実は考えているわけであります。そこで市におきまして身体障害者福祉司を置かないようでございましたならば、これは次善の策といたしまして県の福祉司の援助及び助言を求めることができる、こういう規定か置かれましてそういう指導をいたしているわけであります。それから今保健所の技術員をあげられたのでありますけれども、保健所の技術員というものはほとんど仕事が技術員でなければ動かないというようなことになっているわけですが、身体障害者の福祉司の方は比較的その度合いば弱いわけでございまして、今おあげになりましたように社会福祉主事の資格を持って身体障害者の仕事を二年もやればそれでいいということになりますというと、割に資格としては事務吏員として楽な資格なんでございます。問題は市等におきましてそれだけの専任の者を置くだけの人件費、財政的な余裕があるかどうかということの方が実は問題で、この点が保健所の場合と若干趣きを異にするのではないかという気がいたしております。いずれにいたしましても身体障害者の仕事を一般の福祉主事ももちろんやるのでございますが、それにいたしましても、専門にそういったことに携わる人が少しでも多い方が身体障害者に対する福祉の措置といいますか、行政が行き届くことば申すまでもないことでございますので、今後ともそういう点につきましては努力をして参りたいと思います。
  138. 滝井義高

    ○滝井委員 私が指摘したい点を局長さんがみずから指摘されて、私は非常に正直だと思ったのですが、九百六十七のうちに五百八十は市の福祉事務所であるということなんです。そしてしかもその福祉事務所は置くことを得ということで、これは置きません。すでにこれは国の予算の状態を見ても、予算が逼迫をしてしわが寄るときには一体どこに寄るのだといえば文部行政、厚生行政にいくのがこれはならわしなんてす。そうすると市町村の財政というものが苦しくなったときには、置くことを得というものが削られてしまうことは確実なんです。四百七十七人の兼任というのは、おらく大部分は市の社会福祉主事が兼任しておるということなんです。そうすると、社会福祉主事は生活保護の事務に迫われて身体障害者の指導なんというものはできない。ところが身体障害者福祉法の生まれたのは、一九四九年十二月に制定されて五〇年の四月から実施された、あのときの精神というものは、少くともこれは職業能力と生活能力を回復させていく、そして貧困に陥ることを遮断していくのだ、そのためには自主史生をやることが必要だ、自主更生をやるためには何をやるのだといえば、自主史生はまず医学的な援護ということが第一です。それから心理的な援護です。それから職能的なものなんです。そうすると、医学的、心理的、職能的な一貫した更生援護のこういうむずかしい技術的な指導をやろうとするからには、これは相当優秀な、しかもある程度高給で迎えた人ががっちりその福祉事務所に座っておらなければ、身体障害者の援護指導なんというものは実際できないのです。一九四九年にできて以来、一体過去において充足されたことが一回でもあるかということです。これは一回もないのです。いつも兼任か欠員でやってきているという実情なんです。だから法治国家で——労働組合に法律を守れ守れといこうことの前に、午前中も言ったのだが、やはり官庁がこういう弱い行政に法律を守る形を作ってやらなければいかぬと思うのです。置くことを得ということだから置かなくてもいいのだということになれば、結局市の住民の、市に住まっておる身体障害者というものは自主更生の契機をつかむことが非常におくれる、こういう実態になってくる。この点は、私きょう大蔵省の主計局を呼んで言わなければなすらぬところなんですが、しかし次官を通じてその点は努力してもらわなければならぬと思います。こういう実態では幾ら太鼓をたたいてもいかぬと思う。そうすると、おそらく今度はこの法律で苦肉の策として民生委員だ、こういうことになってくる。そうすると、失礼な言い分だけれども、民生委員が医学的、心理的、職能的なこういう高い技術指導なんというものばできませんよ。もう民生委員の皆さんは別に職業を持っておるのだから、今から心理学の本を読んであるいは職業訓練の本を読んでやるなんということはよほどの篤志家以外にはないと思う。そうするとこの行政というものば全く今より進むということはないと断言しても私は差しつかえないと思うのです。局長さんは、この人員の不足と身体障害者福祉主事の資質の向上というものに対して、一体いかなる策を今後とられていく所存なのか、それを一つ御説明願たい。
  139. 安田巖

    安田(巖)政府委員 滝井委員お話はまことに問題の核心をついた御議論でございまして、私ども、そういうふうな御理解のあるお話、御激励を賜わりまして非常に力強いのでありますが、何々とすることを得となっておりますと、とかくそういうふうなことになるのです。たとえば売春防止法等で保護施設を置くことを得となっているのですが、どうしてもおくれてくるのです。こういうものを作ります場合には、いつでも、置かなければならぬというふうなことを原案として出しますけれども、いろいろな関係でそれがうまくいかない場合もあるわけであります。ことに福祉主事にいたしましても福祉司にいたしましても、これは財源が交付税、交付金になっているわけでありまして、そういう点も関係があるのではないかということも実は私どもは心配をいたしております。しかし、先ほど申しましたように、福祉司の専門性、技術性というものが、保健所におけるほどきつくはない。たとえばいろいろと職能的、医学的というようなことは必要でありますけれども、各福祉事務所におりますところの福祉主事なりあるいは福祉司がその問題っ扱いまして、ほんとうに審査し更生相談に応ずるのには、それを持ち出すことは福祉主事なり福祉司がやりますけれども、身体障害者の更生相談所というのが県に一カ所ずつあります。ここには必ず医者もおりますし、専門的な知識を持って相談に応じ、指導もできるわけであります。そこに置くのが普通は例であります。そこでいろいろと審査をし、相談をし、補装具をつけるいろいろな措置をするということになるのが普通でございますので、福祉司が充足されるに越したことはございませんけれども、御心配のように保健所に医者がいないというほどの障害ではないということでございます。  それから民生委員の規定を入れましたのは、別にそういうふうな気持は毛頭ないのであります。生活保護にいたしましてもあるいは児童福祉にいたしましても、それぞれの法律に民生委員がどういうふうな役割を果すかということが出ているのであります。それから民生委員法自体にも福祉事務所その他の事務に協力しようということが書いてございますから要らない規定なんでございますけれども、先ほどから御議論のありましたように、何だ、身体障害者の方がちっとも熱心じゃないじゃないか、民生委員さんの方だって手伝うということを書いてくれないじゃないかという話もありましたが、これは書くに越したことはないのでございますからそういうふうな御改正を御審議願った次第であります。
  140. 滝井義高

    ○滝井委員 結局今、身体障害者福祉司の経費というものが交付税、交付金でまかなわれている、交付税、交付金は一般財源で、ひもつきではないために結局他に回ってしまう、弱いところにはいかない、こういうことになるのです。だから、法律を改正せられて、そうして民間機関の協力まで得ようとするならば、むしろこの際、身体障害者の福祉司の経費を二分の一なり三分の二なり国が持つ姿を作ることの方が、もっと進歩的な、もっといい方向にこれは向くことになるわけであります。それができないことが非常に残念ですが、そうしますと、今の御答弁の中にもありました医学的、心理的、職能的な判定をやることろの、各都道府県に一カ所ずつある身体障害者更生相談所ですね、これは医者もおるということでございますか、一体機動性はありますか。
  141. 安田巖

    安田(巖)政府委員 もちろん設備も必要でございますし、それから補装具の製作補修なども一緒にやっているところもありますが、そういうところは簡単な宿泊施設を持っているところもありますからそこが中心になるのでありますけれども、年に何回か巡回相談をやっておりますので、そういう機会にできるだけ、県庁所在地から遠く離れていなかに住んでおりますところの身体障害者を見出して相談に応ずるというふうにいたしております。
  142. 滝井義高

    ○滝井委員 その身体障害者更生相談所には、各県一台ぐらいずつ自動車ぐらい配付して、そうして巡回して審査や更生相談なんかをやっているのですか。
  143. 安田巖

    安田(巖)政府委員 まことにごもっともな御意見でございまして、私どももそういう点に気がついておりまして、巡回相談車というものを今十カ所はかり出しております。あとは普通の自動車でやっておるわけでございます。毎年予算の補助もいたしておるわけであります。
  144. 滝井義高

    ○滝井委員 身体障害者福祉司が人的構成において非常な不足をしておるとするならば、その各県にあります更生相談所から巡回審査あるいは更生相談をやる場合には、ぜひ一つそういう自動車を利用して機動性をもってやっていただきたいと思います。  次に更生医療の問題でございますが、七十八万五千人の身体障害者がおることが統計に出ておりますが、これは十八歳以上でしょう——そうだそうでございますが、そうしますと、七十八万五千人の身体障害者の中で、更生医療を行い得る身体障害者というものは一体どの程度あるのですか。
  145. 安田巖

    安田(巖)政府委員 この前三十年に調べましたのでは、更生医療の必要なし、やってもしようがないというのが八七%、やった方かよかろうというのが一三%でございますから、七十八万に一三%をかけますと、約十万人というものが更生医療が必要であろう。これは推計も相当入っております。
  146. 滝井義高

    ○滝井委員 大体十万人だということになりますと、予算面から見ると、昭和三十三年度の予算で五千十八万二千円、三十二年度で四千七百十七万八千円、対象人員が二千五百二十七人。だから、こういうことになると、五十年かかることになりますか。対象十万人とすると、五十年。これでは死んでしまうですね。はなばなしい年金なんか、やっぱり僕らも主張します。しかしゃっぱり物事は底流というものを見詰めておかなければいけないと思うのです。世の中が年金々々というと、われも彼も年金々々と言い始める。そして今までやっておった重要な政策は忘れてしまう。更生医療を必要とする者が十万おるならば、更生医療というものは一体いつやらなければならないか。もう五十も六十にもなって更生医療をやっても間に合いません。骨がかたくなっている、筋肉がかたくなっている、神経もかたくなっているときに更生医療をやっても間に合わない。やはり更生医療は適期がある。二千五百二十七人では五十年かかる。一体こういう点どういう工合にお考えになっているのか。もちろんそのほかに戦傷病者の更生医療が六百五十一人ありますから、三千人としても四十年ぐらいかかってしまう。こういうところは、局長さん、やはり科学的に大蔵省に詰め寄る以外にないと思うのです。実際の数はきまっておるのです。調査した数は一三%だ。十万そこそこだ。だから、少くともやはり機会均等でやってやるならば、五年計画か、六年計画か、七年計画か、そこらあたりでやってもらわないと、これはやはり民に不平が起りますよ。こういう点どういう工合にお考えになっておるのか。十万人更生医療をやらなければならない。しかも更生医療というものは、年が六十になってがら小児麻痺で曲っておる足をなおしてもらうといっても、ありがたくないと思うのです。やはりこれは五つか六つの子供のときにやってもらうとか、何かそういうことだと思う。私、身体障害者のなった原因を調べてみると、ほとんど大部分後天的なんです。後天的だということになると、早い方がいいのです。更生医療は早い方がいい。そういう点、あなた方は予算折衝をやられるときには、いかなる心がまえといかなる主張をされてやっておられるのか。
  147. 安田巖

    安田(巖)政府委員 大へん有益な御注意をいただいてありがとうございます。更生医療はすでに四、五年やっておりますから、一般の人で二万人ぐらい済んでおるだろうと思います。それから傷痍軍人の方ばだんだん減ってきておりますけれども、これは数字が示す結果はほとんど済んだということなんです。これはやはり二万人ぐらい済んでいるんじゃないかと私どもは思っております、従来の予算の実績からいいまして。そこでそれじゃあと七万を何年かかるのかということですが、今の十万人というのを出しましたのは抽出法によって出しました数字でございますから、よく結核で百三十万人入院をする者がおるんじゃないかという議論と同じように、それをどうしてつかまえるかという問題がもう一つあるわけでございます。それから更生医療をやりましてこれは私どもいろいろと経験をいたしたのでありますが、必ずしもやったら全部うまくいったというわけでもないので、中には痛い日見ただけでうまくいかなかったというまことに不幸なケースもあるわけです。そういうわけで、全部が全部すぐそういうことを望むかということを考えますと、現在の数字をだんだんと進めていくことによりまして目的を達し得るんじゃないか。ことに毎年々々の実績がございますから、その実績によりまして、非常にだんだんふえてくるようであれば翌年の予算はずっと出てきますし、それからその年の実績が非常に下ってくると翌年の実績が落ちてくる、こういった点もあるのであります。いずれにいたしましても、今後新しく出てくる障害者を別といたしますならば、もう少しの努力によりまして更生医療が行き届くわけでありますから、一そうの注意をいたしたいと思います。
  148. 滝井義高

    ○滝井委員 更生医療の問題は、統計的に的確にそれらのものを把握せられたならば、こういう肉体的に不自由な人を長くそのまま放置しておるということは、国民感情からしてもそれだけの人に非常にひねくれた感情を抱かせるわけですから、年次計画をもってやはりやっていただきたいと思うのです。風のまにまに予算がふえたり減ったりということでなくして、おくれておっても五年の後には自分の番が回ってくるのだ、これだけの希望を持てれば身体障害者の諸君も生活に張りが出てくるだろうと思うのです。ぜひ一つそういう点計画的にやっていただくことをお願いいたしておきます。  次に身体障害者の雇用の問題は、あとで労働省の方に来てもらいますので、それと一緒にします。
  149. 山下春江

    ○山下(春)委員 小さいことでちょっとお尋ねします。補装具の問題でございますが、昨年だか一昨年だか、厚生省ではドイツ人でアメリカ籍のある人で、名前は忘れましたが何とかという非常に優秀な人を招聘されまして講習等をなされたようであります。地方の身体障害者がこの補装具を得たいと思うのでありますが、その県が指定しているところでないと買えないとかなんとかいう非常にめんどうなことがありまして、たとえば古く作りましたのは関節にはめておったのが浅くて、動かせばすぐこくんと抜けるというようなことで、新しい補装具を得たいが、その製造メーカーと県とのつながりが悪いとかなんとかで、それを購入することができないとかということで、非常に地方で不便がっておりますが、そこのところはどういうふうに今なっておるかをちょっとお聞かせ願いたいと思います。
  150. 安田巖

    安田(巖)政府委員 お話のように補装具の製作の技術というのは——この前ドイツ系のアメリカ人でありますトスバーグという人が来たのであります。この人はお医者さんでなくて、むしろ補装具を作る方の畑から入って、そしてまた医学的な方の、あるいは生理学とか解剖学的の方の知識を持っておるという人なんでありますが、その人が言いますのは、やっぱり五十年くらいおくれておるんじゃないかということを申しておったのであります。私の方で全国的に何度も講習会を持ちまして、三週間ずつ二回くらいいたしました。その後さっきお話しになりました腕の方の補装具につきましても、これは横須賀の海軍病院にきておった人につきまして講習会をやったのであります。遺憾ながら今お話のような優劣な補装具を製作するというところまでうまくいっていないという点があるのであります。お話の腕の方につきましても、身体障害者の更生指導所だけでできる程度のものもあります。それから中には一般的にサクシヨンーソケットというのがありますが、これが大体普及して参ったわけであります。そういうことでできるだけ早く民間の人たちにその技術を覚えてもらいたいと思います。できれば私どもは、厚生省の身体障害者の更生指導所にそういった補装り具の製作所を作りたい。これは国内だけではなくて、東南アジアの人たちもときどき見えるのでありますけれども、東南アジアと比べると、そういった技術ばやはり日本が早く取り入れておりますので、最近非常に進んでおりますので、そういったようなセンターにもなるんじゃないかということでいろいろ計画をいたしておりますが、いまだいろいろな関係で実現しておりません。今のお尋ねの場合でございますとさ、そういう事情がございますので、もっと作れるようになりましたら、自由に指定をして手に入るようにいたしたい。なお具体的な問題で非常にお困り等のことがございましたらまた承わりたいと思いますが、そのような措置を講じております。
  151. 山下春江

    ○山下(春)委員 よくわかりましたが、ぜひそれは身体障害者の職業補導機関等で製作できるように御指摘を願い、予算等も要るならばつけていただいて、日本だけでなく、同病の東南アジアの方にもどんどん輸出していけるように、これがもし十分なものができますならば、就職に——これがあれば雇うというのが補装具の悪いために十分でないということがございますし、ぜひ一つ具体的にお進めを願って、明るい光を与えてやっていただきたいと思いますので、くれぐれもお願いいたしておきます。
  152. 滝井義高

    ○滝井委員 更生医療を与えて、さらに補装具を交付するという形になると、自立更生をするだけの気力というものが、肉体的な機能の回復によって出てくるだろうと思うのです。そうしますと現在七十八万五千人の十八才以上の身体障害者の中でそういう処置をとったところで、なかなか就職不能だというものが、多分これは厚生白書か年鑑かどちらかに書いてあったのですが、二七・六%は就職不能だ、こう出ておった。一体これらの就職不能者の対策というものを、どういう工合にやっていくつもりなのかということです。五九%くらいの人は何らかの形で就職しておる。そうしますと全然どうにもならぬという、約三割近くの就職不能者というものは一体どういう工合にしていくのかということなんです。これはただ生活保護でやっていくのだというだけでは芸がなさ過ぎると思う。これらのものを一体どういう工合に今後対策を立て、指導していかれる方針なのか。
  153. 安田巖

    安田(巖)政府委員 先ほど引用しました昭和三十年十月の調査によりますと、十八歳以上の身体障害者は七十八万五千人と推定されるのでございますが、このうち約六割はすでに社会復帰して従業中であるという数字になっておるのであります。また家庭にある女性、就職中の者等が約一割程度数えられるので、残りの三割、すなわち約二十三万人に対して主として更生援護か問題になってくる、こういう結果になります。これらの者の中には更生訓練により就業を要する、現在失業中の者のほかに、就業不能の状態にある者が相当な数に上っておるのであります。この就業不能の者の中には、高齢のためにもはや就業を要しない者も含まれていますけれども、障害が特に重度の者が多いのであります。現在失業中の者に対しては、肢体不自由者更生施設等の更生訓練の施設が主としてその援護に当るのでありますが、これら重度の障害者に対しましては収容授産施設において長期間にわたる援護が必要とされるのであります。これはいわゆるシェルター・ワーク・ショップというのでありますが、なお施設における収容援護を必要とする障害者は相当残されているのでありますが、回転率等を勘案いたしまして、国立、公立の施設の整備計画を進めますとともに、民間業者の収容委託制度も将来伸張をはかり、十分このような身体障害者の福祉に遺漏なきを期したいと存じます。  そういうことなんでありますけれども、やはり滝井先生の御質問で私の答弁に期待しておられるものは、いま一つだけ残っておるのではないかと思いますが、重度の身体障害者は私どものそういう更生援護施設に入れて、いろいろ訓練をいたすわけであります。これば高圧に触れて身体障害者になった場合が非常に多いのですけれども、中には両腕のつけ根から落ちておるのがあるのです。そういうのは先ほどのお話のような義手を使えない。使ってみても非常に工合が悪い。これは仕事だけではない、日常生活で御飯を食べるのも不自由だというのが入っておるのです。現に私どものセンターにも入っておったのです。これなど手が使えないときは口で御飯を食べておった。足でいろいろな作業をしておる。この人ですらほんとうに更生しようと思うと足で作業してラジオの組み立てができるのです。そこまでいきますけれども、いかにそういうふうに本人が熱心に更生をしようと努力いたしましても、さてそれでは社会に出たということになりますと、やはり自分一人では食っていけない。そうするとそういう人たちには先ほど申しましたシェルター・ワークショップのようなものがありまして、ある程度働く、働くことによって本人も社会の役に立ったということもありましょうし、生活の喜びも感ずるのでありますけれども、同時にそういう人を入れておけば赤字が出るにきまっておるのですから、その赤字を補充するようにしてやるような施設ということ。もう一つ施設に入れればいいのですが、家に帰って自常でやるとか、そういうことのできない人には、やはり最後には年金の問題が必要になってくる。どうしても重い身体障害者には年金という問題が、生活保護まで追いやらぬということのためには必要になってくると、私どもは経験上考えておるわけでございます。
  154. 滝井義高

    ○滝井委員 私の期待することもその通りだと思うのです。少くともやはり身体障害者に対する政策というものが総合的に行われていかなければならぬと思うのです。同じ身体障害といってもそれぞれ段階が、今婦長さんが言われた通りである。非常に重症なものあるいは中等度のものあるいは少し訓練等をすれば労働能力が正常人と変らない程度に出てくるもの、こうあると思うのです。従って身体障害者に段階があるならば、それに持っていく政策も段階的であってもよろしいのじゃないかと思うのです。従ってさいぜん山下先生と次官との間で、年金問題でやるやらぬの問題がありましたが、ある程度少くともワン・ステップとしてわれわれが年金を考える場合に、貧しい日本で一挙に保守党のもとで年金をやるといっても、これはなかなか無理だろうと思うのです。社会党なら非常な政策転換をやりますからできるかもしれません。けれども、一応保守党の政府のもとで、資本主義政権のもとにおいてわれわれは考えるとするならば、結局今の段階を置くよりしようがないということです。まず手も足も切れただるまさんのような人間がありとするならば、やはりその人を生活保護というものに陥れる前に、その人が工夫をして貧しいながらもラジオでも組み立て得るというならば、この組み立てて得る収入が少いということになれば、これは年金をある程度やるということになれば、これはそう莫大な財政負担を要しないのではないかと私は思うのです。これならば三十四年からでも——三十三年といってももう間に合いませんから、三十四年度からやることも可能だと思うのです。われわれも今保守党の政権のもとでそう無理は申したくない。まずでき得るものからやるとするならば、身体障害者もピンからキリまであるので、そのピンのところをまずやってもらうという形は一歩前進だと思うのです。そういう点で最終的には年金というものを、非常に重くてそうしてどうも独立して自分だけで生活できないというグループには年金を考慮しよう。それから上の者には何か特別な援護の施設に入れて、そしてある程度食費だけを支給してやれば生きていけるのだ、小づかいだけはとれるのだというグループには、もう少し財政がよくなるまで待とう、こういう段階が私はあり得ると思うのです。従ってぜひ一つそういう方向に身体障害者の福祉行政の方向というものは——一挙に何もかにもということを私は申しません。だから段階を追っていく。しかしその段階の最高の段階は、やっぱり年金というものがあるのだ、それも同時に貧しいながらも行われておるのだ、こういうことをとっていただきたいと思うのです。こういう形なら、次官、三十四年度から私は考えられ得るのじゃないかと思うのです。どうですか。段階的な年金制度を持っていく。非常に重度のということになると、これは重度の者で数はどのぐらいありましょうか知らぬが、就業不能だというのが三割と見ても、その中である程度施設に収容できる者もありますからつ、実際に年金がいくという数はその三割の中のまた三割で、一割か一割五分に私は限定できるのではないかと思う。一割とすれば七万です。一割五分にしても十万そこそこということになれば、そうこれは目の色を変えて大蔵省と議論をしなくても、まず保守党の政権のもとで身体障害者の年金ができた。これはそうすると母子家庭も右のような状態にならってステップを踏み出す、こういうことも私は可能ではないかと思うのです。さいぜんの議論よりもだいぶせんじ詰めった議論になってきたのですが、そういう意味で三十四年度ぐらいから考えられないものかどうかということなんです。
  155. 米田吉盛

    米田政府委員 保守党の政権のもとで年金制度全体をそう長くないうちにやりたいと私は決心いたしております。この点は社会主義政権でなければ年金がやれないと一つ覚えにならぬようにお願いいたしたい。  それから今のお説の点は、なるほど十万くらいな人であるからやろうと思うならばやれるではないか、それはその通りであります。私らもそういう考えでおります。しかし三十四年に必ずやれという先ほど来の御要求でありますから、まだ政府として確定しておらぬものを、私の希望意見を確定したかのごとく発表することは誠意ある答弁でない、こういう考えで私はそう申し上げたのでございます。われわれは十分そういうような考えは持っております。必ずやる、こういうような約束めいた発表は、予算ともからつ合うことでございますし、それはできない、こういうふうに申し上げたので、何か私が先ほど来否定的にこの問題を考えているかのようなお考えでございますが、それは大なる誤まりで、私の表現の下手な結果であるかもしれませんが、どうぞその点はお考えをそうでないというように御理解を願いたい。
  156. 滝井義高

    ○滝井委員 保守党の政権のもとにおいて年金はできないとは私は申しません。しかし社会党が政権をとれば、これは政策転換というものが行われるので、予算の編成その他が相当違ってくるわけです。いつ社会党が天下をとれるかわからぬので、従ってまず資本主義のもとにおける保守党政権でもやり得るものは、一体どの程度の限界をワン・ステップとしてやり得るかということになりますと、結局七十八万の十八才以上の身体障害者に、一挙に全面的に身体障害者年金を国民年金の一環として持っていくということは、今ここであなたにそれをやれ、どうだということは無理、と思うのです。しかし今のように非常にシビヤーに限定をして、特にその中から重い、だるまさんのような姿でなお一つラジオでも組み立てて生活保護のお世話にならずに自力更生をしてみようかという熱意のある者については、国がやはり年金というものを見ていくということを三十四年度からやるのだということを断言しても、これはちっとも恥にはならぬし、またそれはやり得るものだと思うのです。それをしもなお次官がどうもそういう言明をしたら工合か悪い、こうあつものにごりてなますを吹くような姿では、われわれとしてはどうも保守党政権のものとではやれぬのではないかという疑いを持たざるを得ないことになります。今次官は、全面的にやらぬのだというようなことに受け取っているがそうではないのだ、こう言われるが、そういうお言葉かあれば、一つそれくらいのものならば私も努力をしてやってみましょう——やってみましょうと言ってできないときはやむを得ないと思うのです。これはいろいろ経済事情もあります。しかし最小限度その程度のものならばこれはやれるのではないか。そうしますと、身体障害者福祉行政というものはぐっと伸びていくと思うのです。そういう点で言っておるので、次官がそこで言明をされたからといって、あげ足をとって今度またどこかに行ってこうだという意味のものじゃ決してないのです。きょうはお互いにこの法律をよりよきものにし、身体障害者福祉行政の方向というものをきめなければいかぬ——今実際混迷しているのです。第一線においても人的な機構を欠いておるし、それからあとで労働省との関係も尋ねますが、そういう点でやはりいろいろ問題がある。私いろいろ勉強してみると問題があるので、まずその頂点に当るところは年金なんですから、その頂点に当るところに太陽を輝かしてくれとは私は言いません。しかし暁の星のまばたきくらいのものはやはり上に掲げてもらっておかぬと、ピラミッドの底辺というものはできぬ、こういうことなんです。一つそういう点で次官の心がまえを聞かしてもらいたい。心がまえでけっこうです。
  157. 米田吉盛

    米田政府委員 心がまえでありますれば、三十四年といわず三十三年にやりたい、こういう心がまえであります。しかし実際問題として各党とも大言壮語、りっぱな政策を掲げていますが、社会党も天下をおとりになったことがあり、私はその当時議員をやっておりまして、協力した方でございますが、必ずしも言われるようなことは実現いたしませんでした。私はそういうことはきらいなんです。ことに身体不自由な方などにえさをぶら下げていつまでも食わさぬなんという、そんな非人道的な政治は私はきらいなんです。だから私はやると言えば必ずやるし、やると言わぬでも実際やる、こういう気持でございますから、心がまえであれば、今申したように三十四年を待たずして、三年でもやりたい。しかし実際は、私の気持としては三十四年度は何とか実現したい。何も身体障害者だけの問題ではないと思う。ひとしく国民の困っておられる人に、先ほど山下さんの言われたように、国が貧乏だから十分は出せない。しかしこれでがまんせいという愛情のあることは、私は貫きたい。こういう心がまえでございますから、気持の上はあなたと寸分違いません。社会主義でやるか、修正された資本主義でやるかという点は違いましても、気持の上は、日本の政治家として同じことを考えている。この点を御了承願いたいと思います。
  158. 滝井義高

    ○滝井委員 同じ高ねの月を仰ぐそうでございますから、上る道ば違っても、一つ三十四年にはできるだけ頂上に輝かしてもらいたい。われわれも一臂の努力を縁の下でやりたいと思います。  そこで、労働省が来ていただいたそうでございますから、雇用の問題について少しお尋ねしてみたいと思います。身体障害者の中で五割九分、約六割程度の諸君が、すでに何らかの形で就職をいたしております。ところが身体障害者の収入を見てみますと、一万円以下が八四%、さいぜん堂森君の質問でも、千円から十万円までに分類していろいろ御説明いただきましたが、八割程度が一万円以下だ、こういう実態である。そうしますと、当然これらの諸君の就業の状態というものは、非常に劣悪であるということが一応言えると思うのです。五割九分の就職しておる諸君はとにかく、身体障害者のゆえにまだ就職のできぬ諸君も相当おる。そういうことになりますと、何らかの形で雇用主の理解を深めて、労働行政の中で雇用を促進してもらわなければならぬ。現在労働省には身体障害者雇用促進協議会というものが設置をせられておるわけなんです。そのほか就職をしたならば、所得税額において五千円の基礎控除があるし、十三万円以下の所得の人についてば、市町村民税、住民税は免除されておるし、それから国鉄の無賃乗車証ですか、そういうものがあるわけです。恩典といえばそのくらいなものです。そうすると、やはり税金はとられても、雇用されておる姿を作ることば非常に重要なことだと思うのです。労働省は現在身体障害者雇用促進協議会というものを作っておりますが、その協議会はいかなる役割を演じ、いかなる実績を示しておるか、これを一つ御説明願いたい。
  159. 松本岩吉

    ○松本説明員 職業訓練法との関係においての御質問と承わって参ったのでございますが、福川対策全般となれば、安定局が……。
  160. 滝井義高

    ○滝井委員 その点だけでいいのです。
  161. 松本岩吉

    ○松本説明員 最近私は離れておりますので……。
  162. 安田巖

    安田(巖)政府委員 私の承知しておるところを申し上げますと、二十七年に身体障害者雇用促進協議会が設けられて、いろいろ第一線の安定所でもあっせんをされておるわけですが、昭和三十二年八月末現在までの希望登録は、累計七万二千百六人、これに対しまして就職件数が四万八千五百七十九名、それから身体障害者に職業技術を授け、その雇用を促進するための身体障害者公共職業補導所、これは全国に八カ所ございますが、これの昭和三十一年度における修了生が千九名、そのうち就職者が、自営業を含んで九百三十四名、こういう数字が出ております。
  163. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、身体障害者雇用促進協議会で四万八千ばかりの就職ができたということですが、四万八千ばかりの就職を世話したのですか。
  164. 安田巖

    安田(巖)政府委員 雇用促進協議会というのは、中央と地方にございまして、そういったことについて雇用を促進するために、関係者なり学識経験者が集まって、いろいろ相談をし、促進をする計画を立てるところでございますが、現実には各安定所でもって登録しているわけです。そしてその登録している者を、特別に就職あっせんをしている。その結果、こういうことになっているということだと思います。
  165. 滝井義高

    ○滝井委員 わかりました。雇用の問題に入る前に、これは安田さんの方に、一つ関連でつけ加えておきたいのは、最近非常に晴眼あんまさんがふえました。そのために盲人あんまの職業分野というものが、非常に狭められてきつつあるということです。昨日あん摩師、はり師、きゅう師及び柔道整復師法等の一部改正の法律案を通すときに、その数を聞いておいたのですが、あんまさんは二万四千六百人、いろいろ兼業がありますから、あんまという免許を持っている者が五万百八十七人です。そこで、最近晴眼あんまが非常にふえてきたということになると、身体障害者の中で一番不自由な目にあっているこのあんまさんたちの、新しい職業分野というものを確立しなければならぬ時期がやってきつつあると思います。これは身体障害者福祉行政の中においても非常に重要な点だと私は思う。これをどういう工合に社会局はお考えになっているのか。
  166. 安田巖

    安田(巖)政府委員 盲人の職業対策の問題、これは非常にむずかしい問題でございまして、今御指摘になった問題が、実は私どもの頭を一番痛めている点でございます。と申しますのは、あんまというと、従来盲人に限られておりましたのが、お話のように、だんだんと晴眼者が出てきているということでございます。われわれのような身体障害者の立場からいえば、一つあんまは盲人の専業にして、ほかの者に入ってもらいたくないというようなくらいの気持を持っております。そういうふうなことを実は考えたこともあるのでございますが、法制局等へ行っていろいろ聞いてみますと、憲法の規定に、職業の選択の自由というのがあるそうでございまして、そういうものにぶつかるということです。法律でやるなら、そのくらいのことはできるのではないかというような気持を、まだ持っておりますが、そういうわけで、現実にはどんどん晴眼あんまがふえております。今やっておりますことは、それに対する対策として、医務局と相談をいたしまして、そういった養成所の基準をうんと高くしてもらいまして、あまりふえないようにしてもらいたいということが要望の一つであります。それからもう一つは、無届けの、無資格者のあんまが働いているのを取り締りをしてもらいたいということを、私どもは申しておりまして、この点につきましては、医務局の局長も非常に理解を示して、実は最近協力をいたしてくれているわけであります。しかしそれにいたしましても、今後だんだんとそういうふうに、盲人の従来専業とされたあんまの方に、晴眼者が進出してくることは、これは避けかたいことでありますから、それではほかの仕事はどうだ、こういうことが次に起ってくるのであります。これにつきまして、私どもの方の身体障害者福祉審議会に小委員会を設けまして、わざわざ盲人の新しい職業の開拓について審議をしてもらった結論が出ております。その結果約十八種くらいの職業ができるということがあるのであります。ところがそういう職業ができるにいたしましても、それにはやはり社会の協力ということが必要であります。たとえば戦時中にも、外国の例等から、ピアノの調律師でありますとか、あるいは電話の交換手であるとかいうようなことを、いろいろ指導されたこともあるのですが、現実には、それでは交換をする場合に、今の交換台でありますと、電球が点滅するということで信号がわかるわけでありますが、それをブザーか何かにしなければならぬというようなことが、もうすぐに障害になってくるわけであります。それから、何かことずけを頼まれた場合にメモをしておかなければならぬ。点字ということもありますけれども、これも一つの障害になる。それから職場まで通ったり、あるいは交代するというようなときにもいろいろな不自由がある。そうなりますと、やはり雇い主かそれに協力をして、交換機なら交換機というものをかえるくらいの熱意を示してくれなければできないわけなんです。実際にはやはり依然としてあんま、はり、きゅうというのが多くて、そういう者に国立の光明寮等で、たとえば養鶏とか製縄をやってみようかということで、やっても続かない、これはそういうことを言うと悪いのでありますが、ほんとうにあんま、はり、きゅうはもうだめだというところまでいかないと、なかなか踏み切れぬという状況が確かにあります。言いわけばかりして役に立たぬわけでありますけれども、そういう点で非常にむずかしい問題が残っておるわけでありまして、今後もなおいろいろ研究してみなければいけないと思っております。
  167. 滝井義高

    ○滝井委員 今非常に高い御識見の御披露をいただいて、私も少しわかったような感じがしたんですが、これは今後相当政治問題になる問題だと私は見ております。というのは、売春禁止法の実施によって、最近は女のあんまさんが相当ふえつつある。そうしてちょうど芸者を呼ぶように、あんまさんの名前を何々さんと呼ぶわけなんです。これは売春婦の諸君がみんなそこへ転業していったというわけでもなかろうかと思いますが、そういう傾向がだんだん出てくると、やっぱり盲人の職域がだんだん侵されてくる形が出てくるわけです。ぜひ一つ科学的に盲人の新しい職業分野の検討をする機関でもお作りになって——公衆衛生局かどこか、そういう厚生省の機関でやってもらいたい。今のような何か専門的な研究をやってもらって、十八種くらいの職業ができるということになれば、その中であまり経費を食わぬものを何か選んでやるとか、そういうことをぜひ一つしてもらいたいと思います。  そこで、少し横道に入りましたが、次に……。
  168. 山下春江

    ○山下(春)委員 ちょっと関連して。児童局長がいらっしゃいませんから、社会局長が知っておられる程度でけっこうでございますが、今のあんまの職業について、就職あるいはあんまの業をやっていくのには小さな児童は非常にじゃまになる。今度改正されるように聞いておりますので、その点がよくなるかと思いますが、夫婦とも盲であんまの資格を持ってあんまをやっておると、ちょっとした収入が入りますが、保育所に入ることを基準で切られまして、身体障害者福祉法を守れという亀山委員のお説があった通りの事情であるにかかわらず、子供たちが入所できないというようなことで、地方に多少もめごとが起っておりますので、その点を今後どういうふうに御処置なさるかということについてちょっと伺っておきたいと思います。
  169. 安田巖

    安田(巖)政府委員 私正確なことはお答えできないのでございますけれども一つは所得がありまして保育料の負担能力がある、その負担能力を測定する方法をもう少しはっきりしたいということが一つあると思います。それから今のお話のような場合には、所得とは関係がなくても、子供を預けなければならぬという特殊な事情がありますから、保育所に入れることは私は差しつかえないし、むしろ入れなければならないと思います。そのときに負担の問題が残ると思いますけれども、そういった場合には入れなければ働きに出られないのでありますから、自己負担をして入所させる道は残されておると思います。
  170. 山下春江

    ○山下(春)委員 今の負担の問題について、それは児童局でないとわからないと思いますが、負担の問題を一般の所得の列で切らないで、身体障害者という特別な配慮を今度なさいましたかどうかということを聞きたかったのです。
  171. 安田巖

    安田(巖)政府委員 ちょっとはっきりしたことを承知しておりません。
  172. 滝井義高

    ○滝井委員 身体障害者に職業能力や生活能力をつけてやるためには、現在身体障害者の中で約六割程度就職をいたしておりますが、おそらく劣悪な条件だろうと思う。だとすると、それらの諸君によりよき収入を得せしめるためには、当然ここに職業訓練と申しますか、そういうものが必要になってくるわけです。厚生省では今回労働省が職業訓練法というものを出しているのを御存じになっておりますか。
  173. 安田巖

    安田(巖)政府委員 相談を受けております。
  174. 滝井義高

    ○滝井委員 その職業訓練法の中に身体障害者訓練所というものがあるわけです。まず私は労働省と厚生省がうまく連絡をとっておるのかなあという疑いを持った。どういう疑いを持ったかというと、今回私たちに配っておる身体障害者福祉法の一部を改正する法律案の参考資料というのを見てみますと、新旧条文対照表というのの十一ページ、十八条一項二号に「職業補や又は就職あっ旋を必要とする者に対しては、公共職業安定所に紹介すること。」こうなっておる。そして職業補導というものは今度なくなって職業訓練になるわけです。これは改正も何もやっていないのです。ところが今度労働省から出たものはこれを改正するのだといって出てきているわけです。同じ日に審議することになっている法案で、労働省の方は改正をして出してきておるが、本家本元の厚生省は改正も何もせぬで出してきている、こういうことなんです。この前も厚生省と労働省が連絡がうまくいかぬことをやかましく言ったら、厚生省のあるお役人が、先生、連絡が悪いのは厚生省だけじゃなかったでしょうが、こう言っておりましたが、やはり厚生省と労働省とは悪いのです。まずその点が一つ、そもそものところから伺いたい。
  175. 松本岩吉

    ○松本説明員 この点は厚生省と打合せをいたしておりまして、職業訓練法が先に出て参りましたので、今職業訓練法が先に通りますと、身体障害者福祉法はまだ改正になっておりませんので、それで職業訓練法の附則でむしろ身体障害者福祉法を直していくのがよかろう、こういうことで職業訓練法で直すことにいたしておるわけであります。
  176. 滝井義高

    ○滝井委員 一つ内閣で閣議決定をして出てくる法案です。もうすでにこの身体障害者福祉法は参議院を通ってきている。また職業訓練法は衆議院で審議しておる。ところがあなたの方のやつは修正するようにしてきているわけです。本家本元の法律は何もしておらぬ。だから簡単なことですけれども、こういうことになると、われわれ条文を続んだ場合に——たまたま突き合わしたからわかりたのだけれども、これがよその委員会でやっておったらわからぬでいってしまうでしょう。
  177. 安田巖

    安田(巖)政府委員 現在は職業補導という言葉を使っておるのです。そこで現行法をもとにしてこの法律を直しておりますから、そのかわり訓練法が通りましたならば訓練法の附則でこちらが直るようになっておりますから、その点は法律的に一向差しつかえないと思います。
  178. 滝井義高

    ○滝井委員 法律的にはそうなっております。しかしもし労働省の方が通らなかったときにはやはり問題が出てくるでしょうね。
  179. 安田巖

    安田(巖)政府委員 通っても通らなくても直るのでございます。
  180. 滝井義高

    ○滝井委員 直りますけれども、片一方は参議院を通ってきておる法律ですから、そういうことは言いわけにはなりますよ。話し合ってやらなければいかぬのです。しかも労働省は変えるのはそれ一つなのです。それは厚生省においては、労働省がたった一つ変える法律で、厚生省ものだから、やはりちょっと連絡して、お前の方で横へ筋を引けと言って筋を引いておったらいい。これはつまらぬことだけれども、それだけの連絡を密にしてくれということなんです。これから連絡を密にしているがどうかの内容に入るわけです。  一体厚生省は今回できる身体障害者職業訓練所にはいかなる人を推薦をしてお入れになるつもりなのか。身体障害者の所管は厚生省なのですから、いろいろ統計資料その他をお握りになっているのはお宅です。労働省も握っているかもしれないけれども、労働省の統計は厚生省よりシビヤーじゃないと思う。身体障害者については所得の状態から何からみなやっておる。そうしますと、身体障害者訓練所には公共職業訓練所に入れない身体障害者でも入れる人がおるかもしれない。入ることの困難である者に対して、その能力に適応した職業訓練を行うために身体障害者職業訓練所を設けることになっているわけです。従ってこれはいかなる人を入れるかということは当然登録をしておると思う。登録しておるならば、労働省に登録をしておるかもしれぬけれども、具体的にそれらのものを把握しているのは社会局なのです。それで、一体身体障害者職業訓練所にはどういう基準の者をどういう工合にして入れていくのか。これは社会局がわからなければ、労働省でもかまいません。
  181. 松本岩吉

    ○松本説明員 身体障害者の職業あっせんにつきましては、従来から公共職業安定所に特別の係を設けております。そこで一般の求職者と異なるカードを使いまして、それは就職してもしなくても、ずっとそのカードが残るような格好になっております。労働省のやりますことは就職のあっせんを直接自的といたしますので、一般の身体障害者を登録するというよりは、就職の意思のある者、就職活動を行う者を対象として就職のあっせんのルートに乗せて参りますので、求職者でございます。従って准録というよりは、窓口に現われたものが直接の対象になるのでございます。
  182. 滝井義高

    ○滝井委員 労働行政かそれほど消極的であっては困るのです。求職者、窓口に現われるものだけを対象にするということでは結局身体障害者福祉行政というものをしておらぬという証拠です。少くとも年金というものを作ってもらいたいというけれども、三十四年にもやりますということはなかなか言えぬ段階です。だとするならば、これは就職をせしめることが一番いい。ところが社会は身体障害者をなかなか雇用しない。犀川促進法を作ろうといってもなかなかできない。強制割当を官庁あたりでずっとやったらなさそうなものだ。それは幾分やっておりますが、なかなか意にまかせない。だとするならば、労働省と社会局とが連携をして、社会局の中でこれはやはり就職をさした方がいいだろう。更生医療をやり、補装具をやって、そしてした方がいいということになれば、身体障害者の訓練所にどんどん送って、これは積極的に社会局から世話をして、あなたの力にやってくれ、こういうことの方が行政ぱ一貫してくる。血が通います。それがただ求職者だけを待っておるというのでは、こういう身体障害者の諸君といういうものは消極的になっているから、それだけのものがやれるかやれないかということなのです。きのうは文部行政とあなたの方をだいぶいじめたけれども、きょうは厚生省との関係です。
  183. 松本岩吉

    ○松本説明員 説明が不十分でございましたが、厚生行政との関係におきましては、具体的には身体障害者か更生指導所に入る者と、それから身体障害者の職業補導所に入る者と、安定所の窓口に直接来る者とございます。従いまして、身体障害者の厚生指導所に入ります者は機能障害がまだ回復しておらない、そこに医療の手段を要する者、あるいは厚生行政の方は広く生業の付与ということもやっておりますので、対象はより広うございますが、その中で私の方で扱いますものは、更生指導所を終って職業安定所の窓口に来る者、なお更生指導所を終って職業補導所に入る者とございます。これらの具体的な連携は現地において十分とっております。ただ身体障害者の習性といたしまして人中に出るのをきらう者等がございますので、行政的に、あるいは非常に積極的に勧奨して窓口に引き寄せるということはいたしませんが、そういう意思のある者は十分厚生省と連絡をとって現地においてうまくいくように従来からそういう方針と方法をとって参っております。
  184. 滝井義高

    ○滝井委員 今の職業補導所と更生指導所というのは、身体障害者更生援護施設のことなんですか。
  185. 松本岩吉

    ○松本説明員 そうです。
  186. 滝井義高

    ○滝井委員 そうすると、職業補導所、更生指導所、それから安定所、これらの三つのものがあるが、第一段階は身体障害者更生援護施設に入っていく、こういうことになるのですね。第一段階は労働省のこの訓練所に入っていく過程でまず援護施設に入って、そうして肉体的な訓練をやったならば、安定所か補導所——これは今度訓練所になるのですが、訓練所に行くという形になるのですか。
  187. 松本岩吉

    ○松本説明員 大体においてさような形をとっておりますが、面接安定所の窓口に出てくる者もございます。その機関にいろいろ特殊性かございますので、機能がすっかり回復しておって、それで産業戦線に立ち得る者は直接安定所の窓口に伺います。しかしまだ機能が回復しない者、あるいは広く生業の方法を見つけたいという者は更生指導所にまず入るのが多いと思います。
  188. 滝井義高

    ○滝井委員 どうもそこらが少し私の見解と違うんです。私がこの身体障害者更生援護施設法律を読んでみますと、あなたの言うように、この援護施設に入っている者はすでに訓練を受けて自活の道を与えられるのです。この施設は、たとえば肢体不自由者更生施設、失明者更生施設、ろうあ更生施設、身体障害者収容授産施設、補装具製作施設、これらに「必要な訓練を行い、且つ、職業を与え、自活させる施設とする。」と、こうなっておるのです。従って職業訓練所と変らないのです。私が尋ねたいのは、労働省の設置する職業訓練所と厚生省の所管にかかる身体障害者更生援護施設との関係はどうなのかということです。今あなたのおっしゃったように、今度はこの援護施設から出て訓練所とか安定所の窓口に行くその系列がはっきりしていれば問題はない。問題ないが、もしそうではなくて、身体障害者の更生援護施設と訓練所とが並列的なものだということになると、これはよほど考慮しなければならぬ。もし並列的なものだとするならば、今度の職業訓練法案の中にそういうことを何かうたわなければならぬが、何もうたわれていないのです。文部省においては学校教育法あるいは青年学級振興法と重複しないように密接な連携をとってやりますと書いてある。ところがわれわれが一番職業訓練を熱望し、そうして大事に思っている身体障害者の職業訓練については、厚生省との関係は何も書かれていないわけです。教育のことについて書いてあるというのは、昨日も指摘したように、教育というものについては、学校というものを日本は事大主義的に非常に尊重する、従ってそれに対しては何かしなければならぬというので労働省はおそらく一生懸命になっていると思う。ところが厚生省の方は忘れておったんじゃないかという感じが私はこの法案を読んでする。一言も書かれておらぬ。これは当然この八条か九条あたりに何かそういうことが書かれなければならぬ。そうしないと、厚生行政と労働行政というものがうまくいかない。そうしてあなたの方の職業訓練、特に身体障害者の訓練は、今年の予算を見ても全国で人力所です。全国八カ所の身体障害者公共職業補導所に七万二千有余の登録希望者があった。その中で四万八千ばかりが就職した、こうおっしゃっておるわけなんです。身体障害者の職業訓練所というものは東京都外七府県しかない、これに委託することになる。そうすると、これらの身体障害者更生援護施設というものも、これは全国に非常にたくさんあるというわけにはいかない。もちろん各府県に一カ所や二カ所はあると思う。そうすると 全国に、東京都以外にたった七府県で八カ所しかなくて、五十四種目の職業訓練をやって、予算は九千九百八十三万三千円ですか、人数が千百五十人しかやれないのです。そうしますと、これはやはり厚生省の援護施設と有機的な連絡をとってやる必要ができてくる。これはあなたのところだけでは、たった千百五十人くらいしかできない。四、五十万の諸君というものは、これは再訓練でもやって生産性の向上に寄与させることが必要なんです。そうすると、千人そこそこしかてきないというのに、あなたの方だけで職業訓練をとっておく必要はないと思う。この際やはり門戸を開放して厚生省にもやってもらいたい、こういう有無相通ずる形というものを作らなければならぬと思う。そのためには援護施設でやるものについても、教科とかその他のもので密接に連携をとる必要があると思う。さらにあなたがさいぜん言われた理論の通りに、今度は援護施設から訓練にいくならばますますその必要が出てくる。ところがそういうことは何にも今度の法律には書かれていない。この点は局長は十分連絡をしておりますと、こうおっしゃったのだけれども、私が今指摘したことをお考えになるとわかると思うのですが、これでは死文ですよ。労働省は労働省の道を行き、厚生省は厚生省の道を行くのでは身体障害者がかないませんよ。これはやはり同じように連携をとってやったならば、少くとも身体障害者収容授産施設というようなものの訓練を受けたならば労働省の検定までも受けられるという、こういうあたたかい道というものがついておらぬと、どっちかの施設というものがむだになります。 こういう点どうお考えになっているのか。
  189. 松本岩吉

    ○松本説明員 この点確かに学校教官法のように、密接な連携をとるということは書いてございません。これは実は訓練法を作るときにも厚生省とも話したのでありますが、厚生省と労働省は従来から親子関係にありまして、従来も厚生省の中央身体障害者福祉審議会に私の方が参加し、私の方の身体障害者雇用促進協議会には安田局長が入っておりまして、この点についてわざわざ書くまでもないくらいの関係にあるのでございます。文部省とはいろいろないきさつがありまして書いてございますが、これに書かないから連携に欠けることがあるとは考えておらないのであります。
  190. 滝井義高

    ○滝井委員 これば口先きだけの連携の問題ではないと思う。それはかつて厚生省から労働省が分れたのでありますから、兄弟みたいなものだと思います。しかしいとこは他人の始まりという言葉もあります。今修正の話か行われるらしいのですが、身体障害者収容授産施設で一体何をやるかというと、「身体障害者で雇用されることの困難なもの又は生活に困窮するもの等を収容し、必要な訓練を行い、且つ、職業を与え、自活させる施設とする。」と書いてある。訓練を与えるのは、あなたのところと同じです。あなたのところもやはり「職業訓練を受けることが困難であるものに対して、その能力に適応した職業訓練を行うため、身体障害者職業訓練所を設置することができる。」と書いているわけです。訓練という字がまさか労働省の考え方と厚生省の考え方が違うはずはないと思う。それは職業教育と職業訓練の基本理念はどうだというなら、違います。しかし訓練という字を書くからにはどちらも同じでなくてはならぬと思う。ただ授産施設でやるか、訓練所でやるかということだけだと思う。肢体不自由者に二つの道はないと思う。やはりその肢体不自由に適応した訓練を労働省もやられるし、厚生省も授産施設でやられると思う。身体障害者も身体障害者職業訓練所を出たら修了証書をくれるでしょう。しかも技能士の試験を受けて受かれば技能士になるのでしょう。そうすると、一体労働省は厚生省のこういう更生援護施設を出たならば試験を受けさせてくれるかどうかということです。その点いかがですか。
  191. 安田巖

    安田(巖)政府委員 その点は十分連絡いたしまして、あとでそういうことにしようではないかということになっております。
  192. 滝井義高

    ○滝井委員 そういう点で他人の始まりにならぬように、いずれこれは政令で書くというようなことも書いてない。公共職業訓練についてはいろいろ詳しく書いているが、身体障害者の訓練についてはあまり詳しい条文がないのです。第八条と、あとは十一条で、無料でやって手当をくれるのだということくらいしかないのです。ですから、私は重箱のすみを突っつくわけではないので、これは非常に大事なところなんです。従ってその辺をもう少し話し合って、今度の法律の改正で間に合わなければ修正案を作る、あるいは厚生省の方とよく話し合って何らか条文に入れておく必要があると思う。もう時間も五時になって、速記の皆さんにもお気の毒でございますから、私の質問はこれでやめます。
  193. 植村武一

    ○植村委員長代理 長谷川君。
  194. 長谷川保

    長谷川(保)委員 大体今の滝井委員の御質問で十分だと思うのですが、私ちょっと厚生白書を読んでいって気がつきますることは、今のお話でもそうですけれども、どうも身体障害者の雇用の促進ということについて非常に消極的です。非常に困難な仕事だとは思いますが、雇用促進の施策というものがさっぱりできておらぬといっても過言でないと思います。やっているとは思いますけれどもほんとうに積極的にやっているという感じが持てないのです。先ほどお話の盲人の問題でも、私ども旅館へ泊って、あんまさんを呼ぶということになりますと、全部晴眼の人が来る。これは非常に困ったことだと私は思う。先ほど局長が言われた通り、この点はもう少し何とかして盲人の保護を考えてもらいたいと思いますが、私が今ここであらためて聞いておきたいのは、この厚生省をずっと読んでいきますと、身体障害者の新雇用というのが十四人以下の事業所において最大で二・四一%事業規模が大きくなるに従って少くなる、こう書いてある。一方また身体障害者の雇用をしているのを見ますと、五百人以上におきまして一・八二%、これが十四人以下の事業所で二・七一%に対しまして二番目に高い。これを見ますと五百人以上で使っているのは、その事業所でけがをしている者を使っているだけであって、新たに使ってくれているのは一つもない。本来ならば一番経営はやりやすい五百人以上のところではほとんど使っておらぬわけです。言いかえますと、そういう関係の雇用促進というものはちっとも行われていない、ということなんです。それで十四人以下の事業所で新規採用が最大であるということ、これはいろいろ原因があるだろうと思うが、当局は一体その理由をどういうように考えておるか。事業規模が大きくなるに従ってさっぱり新規採用をしないというこの事実をどういうように分析をし、把握しておられるか、それを承わりたい。
  195. 松本岩吉

    ○松本説明員 その仕事を直接担当しておりませんから的確なお答えにはならぬかと思いますが、先般まで雇用安定課長をしておりましたので、その経験から申しますと、大体御指摘の通りの状況でございます。それは大規模の事業場になりますと採用基準その他が非常に厳格であるために、とかくその選に漏れることがあります。従って現実問題としましては、小さい事業場の比較的採用の自由のきくところに多く吸収されるということでございまして、従来からこれを打開することか一番問題であると考えております。
  196. 長谷川保

    長谷川(保)委員 そこで問題が一つ新しく起ってくると思うのです。それは例の最低賃金法かしかれるとしますと、先ほどの収入別のところをずっと拝見しますと、大体五千円以下の人が未就業者を入れますと六九・三%、約七〇%が五千円以下です。私が見ますのに、おそらく雇用して下さいます十四人以下の事業所というものは、この人々に対しては相当劣悪な給与、低い給与をもって利用しているという面が多いのじゃないか。それが最賃法ができますと、結局これらの人が全部使えなくなってしまう。例外はありましょうが、ほとんど使えなくなってしまう。そうするといよいよ身体障害者の就職の道というものは断たれてしまう、こういうことになりはせぬかと、白書を読みながら心配をしたわけです。従って私は身体障害者を雇用するにつきましては、何か使用者に対しまして、一方それを補うだけの適当な恩恵——税金とかその他の恩恵を与えませんと、自営の人あるいは自分のうちで農業の手伝いをするというような人のほかは全部締め出されてしまいはせぬか、こういうように思うのです。一方において今のようなたとえば祖覚の障害者にとっては非常に有力な生業でありますあんま、マッサージというような仕事から締め出されてくる。一方においてはどうやら使っていてくれました十四人以下の事業所、これは平均賃金から申しましても三十人以下と五百人以上では、統計からいえば賃金は五一%くらいです。それが十四人以下になるとさらに低いのだが、その中でもまた低い給与だと思うのです。それからさえも締め出されるということになるとほんとうに困ってしまう。先ほどのお話のように早く障害年金でもできてくれないと、この人たちは全く生活補助を受ける道はなくなってしまう、こう思うのです。そこで何とかして雇用促進のための使用者に対する特別な、たとえば税金その他の措置をする必要があるのじゃないかと思うのですが、社会局長の方でそういう点について何か積極的に考えておられる点があるか、あるいは将来考えていこうという道があるか伺いたい。
  197. 安田巖

    安田(巖)政府委員 今の御見解、私ごもっともだと思います。またそういうことになるのではないかというおそれが十分にあると思うのでありまして、仕事の関係からいいますとこれは労働省の関係になりますが、私どもそういう点について何か一つ新しい構想で進めていかなければならないのではないかというふうに考えます。その考え方というのは、従来もありましたいわゆる雇用割当とか、あるいは強制雇用というような考え方でありますが、これはかつて五、六年前にそういうふうな考え方があったのであります。しかしこれは当時日本の産業がまだ混乱期と申しますか、回復期にあったために、そういうことはとうてい問題にならなかったので、なおだいぶ時代も変ってきたのでありますから、労働省ともよく相談してみたいと思います。そういったような民間産業にある程度負担をかけ、同時にまた恩恵を与えるという考え方だろうと思います。それと、三公社五現業のような国でやれるようなところから、手近に何か方法を考えてみたらどうか、そういうような方法もあろうかと思います。大臣からもよく言いつかっておりますので、研究してみたいと思います。
  198. 長谷川保

    長谷川(保)委員 最低賃金法は今国会は日が少くてできないかもしれませんが、多分今国会でも、社会党の方はできないかもしれぬが、一応政府案はできる可能性があります。それから次の特別国会にはおそらく完全にできるでしょう。こうなってきますと、早急にこの対策を立ててもらわなければ、いよいよ身体障害者は窮地に陥ることになるのです。この点は十分考えてもらいたい。
  199. 松本岩吉

    ○松本説明員 私法律を持っておりませんから的確な説明になりませんが、最低賃金法においては身体障害者は除外する例外規定を設けることになっております。  それから積極的雇用促進につきましては、今安田局長の御答弁の通り、労働省におきましても目下急いで研究しておる段階でございます。
  200. 植村武一

    ○植村委員長代理 ほかに本案についての御質疑はございませんか。——なければ、本案についての質疑は終了したものと的認めます。  次に討論に入るのでありますが、別に通告もないようでありますから、直ちに採決いたします。本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔総員起立〕
  201. 植村武一

    ○植村委員長代理 起立総員。よって、本案は原案の通り可決すべきものと決しました。  なお本案に関する委員会報告書の作成につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  202. 植村武一

    ○植村委員長代理 御異議なしと認め、そのように決しました。  本日はこれをもって散会いたします。     午後五時十九分散会      ————◇—————