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1958-03-26 第28回国会 衆議院 社会労働委員会 第27号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年三月二十六日(水曜日)     午前十時三十六分開議  出席委員    委員長 森山 欽司君    理事 植村 武一君 理事 大坪 保雄君    理事 田中 正巳君 理事 野澤 清人君    理事 八田 貞義君 理事 滝井 義高君    理事 八木 一男君       大橋 武夫君    加藤鐐五郎君       小島 徹三君    田子 一民君       中山 マサ君    藤本 捨助君       古川 丈吉君    山下 春江君       亘  四郎君    赤松  勇君       岡本 隆一君    栗原 俊夫君       五島 虎雄君    堂森 芳夫君       中原 健次君    西村 力弥君       長谷川 保君    山花 秀雄君  出席政府委員         厚生政務次官  米田 吉盛君         厚生事務官         (大臣官房長) 太宰 博邦君         厚 生 技 官         (公衆衛生局環         境衛生部長)  尾村 偉久君         厚生事務官         (医務局長)  小澤  龍君         厚生事務官         (社会局長)  安田  巖君         厚生事務官         (保険局長)  高田 正巳君  委員外出席者         総理府事務官         (公正取引委員         会事務局審査部         第三審査長)  八尋  昇君         警  視  長         (警察庁刑事部         防犯課長)   増井正次郎君         総理府事務官         (自治庁税務局         府県税課長)  細郷 道一君         厚生事務官         (保険局健康保         険課長)    小沢 辰男君         労働事務官         (労働基準局監         督課長)    鈴木 健二君         専  門  員 川井 章知君     ————————————— 三月二十六日  委員赤松勇君、多賀谷真稔君及び山口シヅエ君  辞任につき、その補欠として山崎始男君、福田  昌子君及び西村力弥君が議長の指名で委員に選  任された。     ————————————— 三月二十五日  国民年金制度実現に関する請願笹山茂太郎君  紹介)(第二二一七号)  職業訓練制度確立に関する請願竹内俊吉君紹  介)(第二二一八号)  同(横井太郎紹介)(第二三〇五号)  結核対策に関する請願平田ヒデ紹介)(第  二二一九号)  民間電気治療営業禁止反対に関する請願外七件  (福田昌子紹介)(第二二二〇号)  同(古井喜實紹介)(第二二二一号)  同外五件(河野密紹介)(第二二三七号)  同(平田ヒデ紹介)(第二二三八号)  同外六件(古川丈吉紹介)(第二二三九号)  同外三件(受田新吉紹介)(第二二六一号)  同外九件(永田亮一紹介)(第二二六二号)  同外四件(野田武夫紹介)(第二三〇一号)  同(橋本龍伍紹介)(第二三〇二号)  同外二件(福田昌子紹介)(第二三〇三号)  同外六件(山下春江紹介)(第二三〇四号)  医業類似行為既存業者業務存続に関する請願  (濱地文平紹介)(第二二六三号)  日雇労働者健康保険指定市町村範囲拡大に関  する請願三宅正一紹介)(第二二六四号)  日雇労働者賃金引上げ等に関する請願(松澤  雄藏君紹介)(第二三〇六号)  引揚者給付金等支給法の一部改正に関する請願  (小枝一雄紹介)(第二三〇七号)  同(山崎始男紹介)(第二三〇八号)  生活保護法基準額引上げ等に関する請願(神  田大作紹介)(第二三〇九号)  同(島村一郎紹介)(第二三一〇号)  同(岡崎英城紹介)(第二三一一号)  同外一件(原彪紹介)(第二三一二号)  同外一件(福井盛太紹介)(第二三一三号)  同(山花秀雄紹介)(第二三一四号)  医療保障制度確立に関する請願山本正一君紹  介)(第二三一五号)  国立病院等医師看護婦増員に関する請願(  神田大作紹介)(第二三一六号)  社会保険給付内容改善等に関する請願原彪  君紹介)(第二三一七号)  同(神田大作紹介)(第二三一八号)  社会保険診療報酬改訂反対に関する請願(神  田大作紹介)(第二三一九号)  同外一件(栗原俊夫紹介)(第二三二〇号)  国立病院等給食費増額及び完全給食看護基  準の明確化に関する請願神田大作紹介)(  第二三二一号)  同(武藤運十郎紹介)(第二三二二号)  結核回復者の職及び住宅確保に関する請願(神  田大作紹介)(第二三二三号)  同外一件(福井盛太紹介)(第二三二四号)  結核回復者優先雇用に関する請願島村一郎  君紹介)(第二三二五号)  同外一件(山花秀雄紹介)(第二三二六号)  日雇労働者健康保険法改正に関する請願外一  件(茜ケ久保重光紹介)(第二三二七号)  同(神田大作紹介)(第二三二八号)  結核保護施策恒久的制度確立に関する請願  外一件(茜ケ久保重光紹介)(第二三二九  号)  同(神田大作紹介)(第二三三〇号)  結核治療費全額国庫負担制度確立に関する請  願(神田大作紹介)(第二三三一号)  国立療養所の統合、廃止反対に関する請願(神  田大作紹介)(第二三三二号)  同(栗原俊夫紹介)(第二三三三号)  国立病院等燃料費増額に関する請願神田大  作君紹介)(第二三三四号)  同(武藤運十郎紹介)(第二三三五号)  結核児童療養に関する請願神田大作君紹  介)(第二三三六号)  同(武藤運十郎紹介)(第二三七号)  新医療体系案内容改善に関する請願岡崎英  城君紹介)(第二三三八号)  国民健康保険療養給付費国庫補助増額に関す  る請願神田大作紹介)(第二三三九号)  戦傷病療養者保障に関する請願神田大作君  紹介)(第二三四〇号)  付添看護基準引上げ等に関する請願原彪君紹  介)(第二三四一号)  公私立病院における作業療法認可に関する請願  (原彪紹介)(第二三四二号)  国立病院等における看護婦の産休のための定員  確保に関する請願福田昌子紹介)(第二三  四三号)  健康保険療養給付費増額等に関する請願(帆  足計紹介)(第二三四四号)  健康保険家族給付増額に関する請願帆足計  君紹介)(第二三四五号)  結核予防法に関する請願山花秀雄紹介)(  第二三四六号)  傷病手当給付期間延長等に関する請願山花  秀雄紹介)(第二三四七号)  結核予防法予算増額等に関する請願山花秀  雄君紹介)(第二三四八号)  国立病院等給食費増額及び看護設備改善に関  する請願山花秀雄紹介)(第二三四九号)  結核回復者寮の増設に関する請願山花秀雄君  紹介)(第二三五〇号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  あん摩師はり師、きゆう師及び柔道整復師法  等の一部を改正する法律案野澤清人君外七名  提出衆法第八号)  旅館業法の一部を改正する法律案内閣提出第  二六号)(参議院送付)  身体障害者福祉法の一部を改正する法律案(内  閣提出第五五号)(参議院送付)  社会福祉事業法の一部を改正する法律案内閣  提出第三四号)(予)  日雇労働者健康保険法の一部を改正する法律案  (内閣提出第一〇三号)      ————◇—————
  2. 森山欽司

    森山委員長 これより会議を開きます。  去る二十日付託されました野澤清人君外七名提出あん摩師はり師きゅう師及び柔道整復師法等の一部を改正する法律案議題とし、その審査を進めます。まず提案者より提案理由説明を聴取することといたします。野澤清人君。     —————————————
  3. 野澤清人

    野澤委員 ただいま議題となりましたあんま摩師はり師きゅう師及び柔道整復師法等の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由を御説明いたします。  本案による改正の第一は現在医業類似行為を行うことを本年末まで認められているいわゆる既存業者に対して、その期間をさらに三年間延長し、同時にその間にあん摩師試験受験資格を認め、これに合格した者はあん摩師免許を受けることができることといたすことであります。  第二は、指圧を業とすることを本年末まで認められていた者に対して、その期間をさらに三年間延長しようとするものであります。以上が本案の趣旨でありますが、何とぞ慎重御審議の上、すみやかに可決せられるようお願い申し上げます。
  4. 森山欽司

    森山委員長 次に質疑に入ります。通告がありますのでこれを許します。滝井義高
  5. 滝井義高

    滝井委員 あん摩師はり師きゅう師及び柔道整復師法等の一部を改正する法律案が今提案されたわけでございますが、私も提案者の一人なんですが、昭和三十年の七月にこの法律が一部修正をせられて、当時国会を通過したことを記憶しておりますが、そのときに三十三年十二月三十一日まで期間を延長して、そしてその間に医業類似行為を行う者の中の特に療術師ですか、そういうような諸君についてはできる限り行政指導をやって試験を受けていただく、そしてその後には何か適当に考えようということが、当時の付帯決議にも現われておったし、われわれもそういう考え方賛成をしてきたわけなんですが、その後政府は一体どのような指導医業類似行為を行う者の中の特に非常にあんまに似ておる療術師等に行なってきたのか、これを一つこの際御説明を願いたいと思います。
  6. 小澤龍

    小澤政府委員 いろいろ検討いたしたのでございますけれども、他に適当なよい方法も見出すことができませんでしたので、積極的に講習会を開きまして、これに受講させ、講習の終った者についてあんま師試験を受けさせるという方策を引き続き強化して参ったのでございます。しかしながら遺憾ながらただいまにおきましては全員が受講するという段階に達しておりませんで、まだ未受講者が八千人近く残っておるのではないかと推定しております。
  7. 滝井義高

    滝井委員 厚生当局が積極的に講習会を開いて、あんま試験を受けていただくように指導してきた。しかしまだ未受講者が八千人も残っておられるということですが、現実にこのあんま師と同じような行為をやっていらっしゃる、許可を与えた——多分あれは都道府県許可だったと思いますが、許可を与えておる療術師方々はどのくらいおられますか、明白に把握しておるところを御説明願いたいと思います。
  8. 小澤龍

    小澤政府委員 昭和三十一年末の調査で、正規免許を得て業を営んでおります者は、あんまが二万四千六百名、はり師が三千二百十三名、きゅう師が三千五百六十三名、それからあんまはり両者を営んでおります者が三千三百三十七名、あんまきゅう両者を営んでおります者が千二百四十二名、それからはりきゅうと両方やります者は九千二百八十五名、それからあんまはりきゅうと三者をいたしております者が二万九百六十八名ございます。柔道整復を営んでおります者が五千五百六十七名ございます。あんまはりきゅうは、今申し上げましたように、いろいろな組み合せで業が営まれておりますので、組み合せのいかんにかかわらず、あんま業をやっております者を取り上げますと五万百八十七名と相なっております。
  9. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、さいぜんあんまというものが二万四千六百と言ったのですが、重複しておるものもかてて、とにかくあんまをやっておる人が五万百八十七名、こういうことになるのですね。そうしますと、いわゆる療術師という部類の人、これは八千人の未受講者がおられると言ったのだが、その八千人の人は一体どういう部類に入っておりますか。今御説明になった中で……。
  10. 小澤龍

    小澤政府委員 ただいま申し上げました数字は、それぞれ正規あんま師なり、はり師資格を持って業を営んでおる者の数でございます。それから、いわゆる療術師と申しますのは、さような免許を持たないで、昭和二十三年当時登録いたしまして、そしてこの法律特例によって業を許され ている者でございます。それが昭和二十三年当時登録者は大体一万四千人おったのでございますけれども、その後四千人ほどの人間が講習を受け、それからあるいは業を廃止したり、死亡した者等を差し引きますと、大体残り八千人くらいが無免許で、この法律特例によって療術行為を営んでおるものと推定している次第でございます。
  11. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、四千人ばかりの人はあんまさんの免許を持っておる。八千人の無免許の人は、この法律が通れば、今後三カ年間今までと同じように仕事を続けていけることになるわけですが、どういう工合にして御指導をなさる方針なんですか。これはやはり基本的な人権というものを考えていかなければならぬと思いますし、また長くかかってその職を身につけたからには、一つ既得権を構成しておることにもなると思うのです。その職を禁止してしまうということになれば、職の転換をやらなければならぬとすると、相当年をとられた方も多いと思いますが、なかなか転換ができぬ、こういう状態も出てくると思うのです。従ってこの際厚生省としても、それらの八千人の免許なくして、登録を受けてやっていらっしゃる方々に対して、安心のいくような一貫をした指導方針というものを確立をしていないと、三年の日月がたつ間近になると、またいろいろ陳情その他が起ってくる。あん摩師はり師きゅう師及び柔道整復師法というものは、率直に言ってわれわれの鬼門です。これは一ついじれば、いろいろなところに連鎖反応を起してくる可能性のある法律案です。医薬分業もずいぶんむずかしかったのですが、むしろ医薬分業よりもむずかしい部面を含んでいる。そこでこれは厚生省としても、前の曽田さんの局長時代から、われわれは何か一つ確固たる方針でやってくれということで、いろいろお願いをしておったのですが、どうも当局の方もはっきりした方針が立っていないように思うのです。今度この三年間に、その八千人の人が路頭に迷わないように、この人たち生活権確立されるような方向で、何かいい方法考えてもらいたいと思うのですが、そういうことができるかどうか、一つ見解を承わっておきたい。
  12. 小澤龍

    小澤政府委員 昭和二十三年当時、こういう免許を受けないで、医業類似行為を行なっていた者が、先ほど申し上げましたように一万四千人となっておるのでございます。そのうち指圧療法をやっております者が八千人余りございました。この指圧療法をやっている方々は、その仕事の性質からいって、これは比較的容易にあんまに転業し得る可能性があるのでございます。そこで、私どもはこういったような業者に呼びかけをいたして、全面的に講習会を受講することをお勧めしておりますけれども、なかんずく指圧療法の人に呼びかけをいたしまして、できるだけこれを正規あんま師に転ぜしめるという方途をとっているのでございまして、今後三カ年の努力を継続するならば、この指圧療法に関する限りは、比較的他の業種に比べて、容易にあんま師の方に転ぜしめ得るのではないかと考えているのでございます。問題は、電気治療とか、温熱治療とか、刺激療法とか、そういったあんまと縁の遠い仕事をやっている方々の転業問題、これはなかなかあんまに転業しにくい事情がありますために、困難な問題となって残るのではないかと思うのでございます。しからば、これをどうしたらいいかという問題は、御指摘のごとく非常にむずかしゅうございまして、われわれもずいぶん知恵をしぼったつもりでありますけれども、実はいい試案がないのでございます。あるいは転業資金等をやって、他の職業についてもらうということも考えられますけれども、中には相当年輩の方がおられまして、容易に新しい職業につくということは、困難な事情の方も相当おるのでございます。今まで長い年月考えていい知恵が出なかったものを、今後三年間に、果していい知恵が出るかどうか、これは非常に問題ではございますけれども、私どもとしては十分検討をいたして参りたいと考えております。
  13. 滝井義高

    滝井委員 時間がありませんからこれ以上言いませんが、一つできるだけいい知恵をしぼってもらいたいと思います。と申しますのは、聞くところによりますと、はりをやる人も、きゅうをやる人も、温熱電気を用いているということです。従って療術師意見を聞くと、われわれの職だけが禁止をされるのはおかしい、すでにおきゅうという看板を掲げて、そしてそこにおいて電気を用い、あるいはいろいろな刺激療法をやっているのではないか、こういう御意見もあるのです。そういうことになりますと、療術師というものをだんだんあんまにしても、実質的な形態としては、電気を用いたり温熱を用いる、いわゆる温きゅうとかあんま以外の仕事を、きゅう師あんま師によって行われる形が出てきているわけです。こういう点についてはどういう御見解を持っておられるのか。
  14. 小澤龍

    小澤政府委員 御指摘のような傾向が、最近だんだん顕著になっておりますことは、私どもも憂えております。あんま師あんまの業ないしははりの業を営むものでありまして、温熱電気等を用いるべきものではないのでございます。行政方針といたしましては、漸次指導によりあるいは取締りによって、禁止する方向に持っていきたいと考えております。
  15. 滝井義高

    滝井委員 最後に政務次官に締めくくりだけしておいていただきたいと思います。このあん摩師はり師きゅう師及び柔道整復師法等の一部を改正する法律案というものは、おそらく今回三年延期することによって、この法律に関するピリオッドを打つことはほとんど不可能だと思うのです。これは一つ扱えば非常に多くの連鎖反応を起す法律です。現在すでにはりきゅう健康保険の対象にしてくれという要求もございます。柔道整復の方は骨折を当らせてくれという要求もございます。現在は日本の医療が一方には非常に分化して複雑になってきております。そういう中で皆保険政策というものがとられて参りますと、当然あんま師はり師きゅう師柔道整復師等の取扱いは一体どうするのだという根本的な問題に触れてくる要素を皆保険というものは持っているわけなのです。それから医師歯科医師、薬剤師の役割は一体どうするか、こういう根本的な問題が皆保険政策の中には内包せられております。従ってそれらの広範な問題を一挙に解決することはむずかしゅうございますが、やはり卑近なこういう一つ一つ派生をする問題から片づけていく必要があろうと思うのです。ぜひ一つ政務次官大臣のかわりにきょうおいでになっておるのですから、大臣として料率の問題等を今後積極的にこれらの人が路頭に迷わない方向において厚生省としては解決の熱意を持っておるかどうか、それを一つお伺いして、この法案に対する質疑を終りたいと思うのです。
  16. 米田吉盛

    米田政府委員 お説ごもっともだと存じまして、実はかねてからこの問題には何とか解決をしたいと努力したわけでございます。今医務局長も申しましたように、できるだけ正規試験に合格していただく、そして堂々大手を振ってこの業に闊歩していただく、こういう線を相当推進したのでございますが、今説明しましたような関係で、若干思うようにいかなかったのが結果でございます。また一面から考えますと、相当長年にわたってこの仕事に専念せられて、今にわかに年齢的にほかの試験を受けられないというような方もごく少数でありますが、あるようでございます。そういうようないろいろの問題を勘案いたしまして、将来こういう問題が長く尾を引いて国会の御心配をかけることのないように、一つ何らかの方途を見出したい、こういう考え方でおります。しかし現在の段階といたしましては、厚生省としましてはこの法案はやむを得ない、こういうように判断いたしております。残る問題についてもっと従来以上に積極的に解決の意思を持って取り組んで参って、滝井委員のお考えにぴったり結果が一致するように努力いたしたい、こういう考えでおります。
  17. 森山欽司

    森山委員長 他に御質疑はありませんか。——なければ本案についての質疑は終了したものと認めます。  この際お諮りいたします。本案につきましては別段御意見もないようでありますので、直ちに採決するに御異議ありませんか。
  18. 森山欽司

    森山委員長 御異議なしと認め、採決いたします。本案賛成諸君起立を求めます。
  19. 森山欽司

    森山委員長 起立総員、よって本案は原案の通り可決すべきものと決しました。  なお本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
  20. 森山欽司

    森山委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。     —————————————
  21. 森山欽司

    森山委員長 次に旅館業法の一部を改正する法律案身体障害者福祉法の一部を改正する法律案社会福祉事業法の一部を改正する法律案及び内閣提出日雇労働者健康保険法の一部を改正する法律案、以上四案を一括議題とし、審査を進めます。質疑通告がありますので、これを許します。五島虎雄君。
  22. 五島虎雄

    五島委員 旅館業法の一部改正は二十六国会で行われましたし、今度の改正売春防止法との関連ですから、この改正の問題にはさしたる意見はありません。ところがそれに関連いたしまして、これらが改正された後における旅館従業員処遇の問題で二、三質問しておきたいと思うのであります。二十六国会におきましても参議院衆議院でいろいろ旅館業法が拡充強化される、それからまた環境衛生法等々が通過をいたしまして、旅館業者はそれぞれ組合を持ち団結の力が増大いたしまして、そうしてそれぞれの業の発展のためには、いろいろ連絡その他協力ができるというようなことになったわけです。ところがここに忘れられているのが旅館従業員処遇の問題ではないかと思います。このようにして旅館業法がそれぞれ着々改正充実してきますが、ただいま申しましたように、従業員の待遇の問題がゆるがせにされておると、いろいろの問題がそこから派生するのじゃないかと思われるわけです。労働者生活に窮迫いたしますといろいろな弊害がそこから生ずる、しかもそういう実情の中から、全国で三十万と言われる旅館従業員生活維持向上を念願いたしておるわけであります。これを中心として衆参両議院でこれがかつて問題になりました。わが衆議院におきましても昨年末の臨時国会において労働基準法関連事項として、私が十一月十三日に労働省に対して質問をいたしております。その質問した理由といいますのは、かつての神田厚生大臣時代旅館業法の一部改正をめぐりまして、従業員処遇問題に関してどういうような見解厚生大臣は持っておられるか、それから山口局長に対しましても、これの問題について参議院で重点的に質問があったのであります。ところが当時神田厚生大臣は、旅館業法の整備する反面、従業員生活処遇の問題については十分考慮しなければならないから、労働省と綿密に連絡をとりつつ旅館業指導していくという約束をされたわけです。その後労働省に尋ねてみますと、確かに厚生省からは労働基準法完全実施というようなところで努力をしてもらいたい。そうして労働の面からもこれを行政的に指導してもらいたいという申し出があったということが明らかになったわけです。ところがさいぜん申しましたように環境衛生法等々の実施の中に、すでに全国で二十都道府県環境衛生法における旅館業組合というものを設立しております。今なお設立されていないところがあると思いますが、それはいろいろ理由があるでしょう。が、二十都道府県ではすでに旅館業組合というものが設立されておる。従って前には法上の組合でない旅館業親睦会等々か組合なんかがあったわけでしょうが、法上の旅館業組合ができますと、お互いの連絡等々も非常に円滑になってくるのではなかろうかと思う。ところがこれは厚生省の方から従業員組合処遇の問題を改善したりするのに連絡、通達等々が非常にやさしくなって、それが一段と可能性がついてくるのではなかろうというように私たちは考えるわけです。ところが現実の問題として端的に申しますと、全国の観光地におけるところの、あるいは温泉地におけるところの密集した旅館に対するところの措置が、あれからもうすでに一年にもなりますけれども、さほど目に見えるような行政的措置がありません。しかも基準局の方からは、昨年十月三十日ですか、全国の基準局長会議が行われて、そして厚生省の申し入れを基本として旅館従業員処遇の問題について善処するようにという打ち合せがあったというように聞いております。これは堀局長もそういうような意味を昨年十一月三十日のこの委員会において述べられたわけです。そして本年一月に旅館従業員に対するところの法の施行に関する特別の通牒というものが発せられているはずです。ところが各都道府県における出先の基準局は、業者に対する指導その他が全然見られない。これはあまりに表現が強過ぎるかもしれませんけれども、私が知る限りにおいてあまり目ざましいものはない。しかも環境衛生法による旅館業組合が設立されるのと並行いたしまして、従業員の方でもそれぞれ労働組合法に基くところの労働組合が設立されつつある。そういうようなところではだんだん目ざめまして、あらゆる就業規則の問題や、賃金の不安定な中に生活はしたくないという要望が非常に強まってきておる。ところが今まで言いましたように、厚生省も族館業者指導することがない、労働省基準局も実地に指導することがない。旅館の特殊性にかんがみてその指導は非常にむずかしいだろうということは一部推測されはしますけれども、むずかしければむずかしいほど、それに対して努力の見るべきものがなければなりません。努力と効果というものは、これは並行しないかもしれませんけれども努力だけはするということは行政担当官としての責任ではなかろうかと思うわけです。従いまして厚生省はその後いかなる指導をし、労働省基準局はいかなる具体的な指導をされておるかということについて質問をいたします。
  23. 尾村偉久

    ○尾村政府委員 旅館の従業員処遇の改善につきまして厚生省で今までやっておりますことについて御説明申し上げますが、お話の通り旅館の従業員の待遇改善はぜひ必要でございまして、これがうまくいきませんと、従来通り個人々々のお客との間でいわゆるチップの増額をはかるためのいろいろな事故、女子の従業員でありますと、やはり今度御改正を願っておりまする売春防止法との関連も、やはり間接ではありますが胚胎する原因にもなりますので、これらの処遇を安定させるということは確かに必要なのでございまして、これをわれわれの方も十分努力をしなければいかぬというふうに進んできておるのであります。ただ一番の問題は、先般からのタクシーの問題はもう急激に進んでおるようでございますが、旅館の業者等について調べてみますと、一そうむずかしい問題が一つございます。それは要するにお客の側の、和風旅館を快適に利用するという要望の中に、衛生措置がうまくいくとか、あるいは設備がいいというほかに、家庭的な雰囲気を旅館に泊っても要望する、すなわちそこのサービスに当る個々の人間のあったかい世話というようなことが旅館の利用の要求の中に相当入っておりまして、そのため古くからのチップ制度あるいは茶代制度ということがほとんどの旅館で行われておる、それがそれぞれの土地により、個々の旅館によりまして厚薄の差があるというようなことでございます。従ってこれを全部宿泊料一本制度にする、一定の料金をきめて、お客が旅館を利用する以上は一切を含めて千円とか千五百円というような宿泊料さえ払えばいいという制度にいたしますれば、この中で固定給すなわち人件費を正確に出すということもかなり共通的にできるのでございますが、それがお客との関連でなかなかできかねるということが一番むずかしい、こういうことでございます。しかしそうはいいましても、現にホテル、洋風旅館中心では、一割程度のサービス料をつけ出しまして、最後に一括して支払いを受けるというようなところもだんだんと増加しておるわけでございますので、急激に全部をきれいさっぱりそういうふうにするということは困難でございましょうが、できるところは逐次そういうふうにいたしまして、正常な雇用関係が成り立つような支払い制度にしていく、これは努力しなければいかぬ問題ですが、この点につきましてわれわれの方もまず料金制度の方から改めていく、それによりまして収入を確実にいたしまして、支出の中に十分人件費を正規に含ませる、かような指導をしてきておるわけであります。先般来できました府県単位の同業組合、ことに東京都がかなり早くできましたので、われわれの方では都の職員と先般来その点打ち合わせておるのでありますが、やはりこれはぜひそうありたいということは経営者側も逐次自覚して参っておりますが、ただ一挙に宿泊料一本は無理であって、さしあたっては茶代を廃止するという形で、チップ制度と宿泊料の二本制度が一番可能性がある、しかもチップ制度は個人々々がそのままふところに入れないで、これを共通にまずはっきりと提出させてこれを再分配する。まあ再分配する場合には頭割りでいく場合もありましょうし、共同でそれぞれの実績に応じてということもあると思いますが、そうなれば公けになりますので、非常にこれはいろいろな工合の悪い点が防げる。かようにいたしまして、確実な個人々々の従業員の収入の目標と、それから実績を立てる、かような点が非常にやりやすいというので、極力——組合が同業組合法律に基く事業をやる中に、営業の健全化の指導ということが任務になっておりますが、これに基きまして極力そういう申し合せから始めてやる、かように今指導しているわけです。ただ遺憾ながらまだ全国の連合会ができませんので、全国的に一挙に中央から指導するということが困難なので、その間は県の衛生部が同業組合の認可を逐次いたす指導をしておりますので、先般もこの同業組合に関する衛生部長会議を二度開きましたが、その際にわれわれの方からも極力——これは旅館のみを限定いたしませんですが、これと類似のところが飲食店その他あるわけでありますので、かような従業員の固定給がはっきりしない、そのためにいろいろな不適正があるというところについては、この組合の認可に当っての指導にぜひこの従業員の待遇改善とあわせて、健康保険が適切にいっておらぬ、すなわち未加入が多いものでありますから、できるだけ国保の中にこれを、同居者としてあるいはまた別な世帯を作るなり有利な方法で、入りやすい方法で入れる、かようなことは十分指導したわけでございます。ただ遺憾ながらまだしからばどこの県がどこの旅館をいつ集めてどの程度これをかなり強くやったかという実績がありませんで、これは申しわけないのですが、今度はそういうのをどしどし出して御報告できるようにしたいと思うのであります。  なおその際に、同業組合法律に基く指導権ができましたので、従来より指導がきつくなると思いますが、何といいましてもやはり労働省の出先機関と共同でやることが、これは威厳をもって押えられますので、この点は出先で組合指導する場合、あるいは個々の宿屋を指導する場合に共同でやるように、今後一そう鞭撻をいたしましてやる意思でございます。
  24. 鈴木健二

    ○鈴木説明員 旅館の従業員につきましては、一流ホテルを除いて労働条件にいろいろ問題があるということは先生の御指摘の通りでございまして、昨年の十月局長会議の席上、旅館の従業員労働条件の改善について手を打つように指示をいたしました。また本年一月二十九日に、文書をもって地方に通達をしたわけでございます。五島先生の御指摘のように、旅館の実態というものは公共的企業と違いまして、一律にこれを直すといってもなかなかむずかしい。また旅館だけをとってみましても、地域により、またその業態によっていろいろ内容が異なっているというので、これは一般工場監督と一律に律することは非常に困難ではないか、こういうふうに思っておりまするが、われわれといたしましては、まず第一に旅館に存在する非近代的な労働慣行をまず排除する。その次には労働条件を明らかにする近代的な労務管理体制を整えるということをと主眼として指導監督を加えていきたい。こういうふうに思っておるわけでございますが、これもただ取締りだけで所期の目的を達成できるということも考えられませんので、厚生省の経営の健全化という観点に立つ団体指導と力を合せて、一方においては指導し、一方においては監督する、こういう格好で今後この労働条件の改善をはかっていきたい。従来もそういうふうに手を打っておりまするが、今後もそういう手をさらに進めて参りたい、こういうふうに考えております。先生今何も実績として見るべきものが今のところないというふうなお話でございましたが、私どもはそれとは少し見解を異にいたしまして、ある局によりましては基準局で調査をし、監督をし、その結果業者に実質的に申し合せを行わせまして、就業規則を作って監督署に出す、あるいは休日を与えること、労働時間についても交代制その他の方法をとって基準法に合せるようにすること、というようなことを業者間で申し合せをさしたところもございますし、またあるところによりましては、今言ったような問題につきまして監督署から業者団体に対して勧告を行なって、賃金の明確化と固定給制の採用、賃金台帳の整備、支払い期日の確定、年次有給休暇の付与、休日の確定、こういう問題につきまして監督署長から業者代表に勧告する。また一方組合に対しましてはパンフレット等を作りまして、組合員がやさしく読んでわかる基準法というものを組合員に渡して、自分たちの労働条件というものはいかにあるべきかというふうなPRもやっている次第であります。
  25. 五島虎雄

    五島委員 最初厚生省の方から説明をされましたが、やはりこういう実例があるわけです。出先の方ではやはり意欲があって現地に出かけて業者たちとの指導の面に当ろうとする場合、一年に一回か二回出てきて、そうして業者の幹部とそこここに話をして帰っちまうというようなことで、目ざめた従業員はあれでは何にも指導にならないのじゃなかろうか、従ってそういうような話をされる場合は、観光地の発展のためにあるいは旅館業者の発展と労働者従業員の地位の向上のために、行政官庁はあらゆる面を取り上げて相談をし、そうして指導をしてもらいたいという欲望があるわけです。ところが全国でそういうところがないというようにも聞いておりますが、そういうことについては出先をよく指導された方がいいのじゃないかと思う。それからもう一つ健康保険の問題が出ました。もちろん言われる通りに健康保険に加入しているところも一部ありますが、それは旅館のうちの大企業といわれているところで一部加入いたしておりまして、その他の多くは全然健康保険等々については加入していないのが実情である。従ってこれを加入せしめるというような意図は了解できますけれども、ある県に行きますと、これは県名を言ってもいいのですけれども自後差しつかえがあろうと思いますので特に名は秘しますが、相談に組合が行った。健康保険に加入したいけれどもどういうような手続をしていいだろうかというように行きますと、旅館従業員みたいに少数のところでは健康保険には目下加入できないようになっているんだという指導をした。そうすると厚生省の本庁の考え方と出先の考え方はまるっきりうらはらになって逆の現象しか出てこない。そうすると東京ではこういうふうに考えてわれわれに説明されるが、現地の方ではそういうようなうるさい、あるいは保険料が高くつくとかあるいは費用が高くつくというような現実の問題が横たわって、加入したいという意欲が強いにもかかわらず、そういうものは一時ストップしているんだという行政措置をしてもろうたら、これは何のための国民皆保険かと言わざるを得ないわけです。そういう問題についても今後適切な指導をされるかどうかということについて質問したい。
  26. 尾村偉久

    ○尾村政府委員 ただいまの処遇の改善についての現地の指導方法が、ほんとうの常業者組合幹部だけの集まりでおざなりであるということのお話でございまして、確かに組合の役員を年に一度か二度集めましてのお話では、さようになるかと思います。ただこの内容が今言いましたように現地で複雑な内容を持っているものでございますから、確かにこれはそれぞれの関連者を集めまして、実態を聞いた上で指導しないと適切を欠くと思います。場合によっては個々のケースごとに判断をして指導しないといかぬという問題がございますので、ただ県単位というよりも、われわれの考えではやはり保健所単位ぐらいのこまかい指導が必要だ、そういう意味で衛生部長までの指導では不足と思いますので、さらに保健所長におろさせまして指導する、この場合には従業員の力の意見をできるだけ聞く、場合によれば町のいわゆる旅館でない理事者というものもまぜた方が実際うまくいく例が多いようでございます。さような点をわれわれの方で十分指示いたしたいと思います。なお先ほど申しましたように、その際労働監督署つまり出先機関、これと共同の方が一そう強力でございますので、この点は両省で十分連絡をとっていきたいと思っております。  それから健保の問題でございますが、多分こういう問題ではないかと思います。現在健康保険、いわゆる国保でない被用者の健康保険でございますが、これにはホテル業、旅館業の場合にはいわゆる法人である事務所の職員が加入できるようになっておりまして、ほんとうの意味の旅館従業員、女中とか番頭とかいうような者は、今のところ健康保険法そのものに職種の指定になっておりませんで、従いましてこれは現在のところ不可能だ。従って従業員はやはり国民健康保険で現行のところいく、しかも厚生省といたしまして、国保を至急普及するということになっておりますので、国保の加入を極力進める。ただ国保の場合には、旅館のように家族よりも従業員が同数以上いるというような場合に、いろいろと掛金の問題で非常なそれぞれ難点があるようでございます。それを適切に、いろいろな方式があるかと思いますが解決して、国保を中心に進めていく。もちろん資格がある場合には問題外でありますが、健康保険の加入資格を持っている旅館は非常に少数でございまして、さような形でこれは努力していきたい、かように存じております。
  27. 五島虎雄

    五島委員 基準局の方に質問いたします。昨年の十一月十三日に私がいろいろ堀基準局長にこれらの待遇の問題について質問をいたしておりましたが、基準局を中心として昨年の十月ごろから一カ月ばかりかかって旅館の従業員労働条件について調査をいたしておりますという答弁があったわけであります。もうあれから半年ばかり過ぎておりますから、その調査はもうすでに資料となって出ておりますか。
  28. 鈴木健二

    ○鈴木説明員 昨年の秋ごろまず旅館の実態調査をやる必要があるというので実態調査をやったのでございますが、全国的にやったわけではございませんで、おのおの特色のある一年間を通じて忙しいところとか、あるいは一定の時期に忙しいところ、あるいは大規模なもの、小規模なものと部分的に調査をいたしましたので、いわゆる統計として信頼に足る数字は出て参らなかったわけでございます。しかしその調査の結果を見ますると、先ほども申し上げましたように、一流のホテルを除いては、労働時間にいたしましても、金曜、土曜、日曜というようなときには十三時間ないし十五時間の労働が行われている。休日も一応一月に四日あるいは一月に二日、三日と与えるようなきめ方にはなっておりまするけれども、いわゆる従業員が収入の減るのをおそれてその休みをとらない、こういうふうな、一般にわれわれが頭で考えておったと大体同様の事柄が数字の結果として現われてきた、こういうふうになっております。
  29. 五島虎雄

    五島委員 それは資料としていただけますか。まあ信頼に足る調査ではないということを前提としての資料としていただけますか。
  30. 鈴木健二

    ○鈴木説明員 全般的な一応の傾向を見ていただくという意味で提出してよろしいかと思います。
  31. 五島虎雄

    五島委員 それからまた同日質問をいたしましたが、大体女子の労働時間というものは一体どのくらいになっているかという質問に対して、堀局長は大体九時間半くらいになっているのではなかろうか。ところが、今国会における三月七日の参議院の法務委員質問に対して、鈴本課長は九時間三十九分というこまかい数字を出されたわけですが、こういうようなことの食い違いはどこから出てきておるか、これはやはり今のデータの中から出てきておるのですか。ちょっとその点について。
  32. 鈴木健二

    ○鈴木説明員 局長は概括的な数を申し上げたのだと思いまするが、その出所は婦人少年局が昭和三十一年に未亡人の実態調査をやったわけでございますが、その中に旅館従業員の平均の労働時間といたしまして九時間三十七分でございますか、そういうふうな数字が出ておりますので、それをお答えいたしたわけでございます。
  33. 五島虎雄

    五島委員 さいぜん各旅館業者に対して就業時間、休日とか、労働時間とかあるいは就業規則等々を指導して早く作るように、全国ではそれができつつあるところもあるというふうに説明されましたが、私も知っております。それは組合ができて、何らさわらないものですから、それで組合がやっきとなって、こういうような通牒が基準局長から発せられているが、基準監督署はどうしておるのだというようなことを、組合から自発的に相談に行って、初めて乗り気になったところがある。それは上ノ山やあるいは赤湯温泉の監督署、上諏訪あるいは白浜、こういうところの監督署では組合の要請において乗り出して、そうしてその指導が非常に活発になったというような現象は見られるが、その他のところではなかなか活発でないという状況も聞きます。ところが、その就業規則の問題はもちろん労働者生活の基本になるわけですからいいのですが、ある温泉の旅館業組合ではそれぞれ話をし合って、もうこういうようなことになると就業規則も必要になった時代だ、組合もできたし、これは仕方がない、従って就業規則を作るのだというようなことで、どこと相談したかわからぬけれども旅館従業員の就業規前とはちょっとかけ離れたような就業規則を持ってきて、ある工場の就業規則と思われるような内容を持つ就業規則を持ってきて、旅館のおやじさんやあるいはその他の幹部の人たちが机にすわっていて、そして従業員を呼んで、さあこれに印をつけというようなことで印をつかしてしまった。そして監督署の方にはこれが従業員賛成したところの就業規則でございますというように出し、あとで従業員が、何だあれは就業規則だったかいなというようなことで、それをいつの間にか監督署が受けつけて、そして就業規則になるというようなことがあります。これははっきりこれにあります。兵庫県の有馬温泉のことです。ところが先日全国旅館従業員組合の大会が東京において行われた。全国のあらゆる人たちが来て、就業規則を大将が作ろうと言っている。ところがもう出してしまって、そうしてあとで異議も何にもないんだというようなことを、各地の従業員人たちが口をそろえて吉っておる。従ってこういうような就業規則を作る場合は従業員組合がない場合は、過半数の同意、あるいは組合があれば、組合の同意が要るし、意見が違えば意見を付して出さなければならぬのですから、そういうような行政的な措置もやはり必要ではないかと思います。最初にできる就業規則ですし、非常に長い間の慣行がある、この慣行を一つ一つ突き切るには、なかなか並み大ていの苦労ではないと思いますが、最初が大事なんですから、そういうような点についても、よく監督署は目を通して、そうして親切にこれを訂正なり何なりするようにせぬと、間違いだ、あるいはへんちくりんだと思うようなことをそのまま受け取って、これは従業員賛成したんだから、まあまあこれぐらいでいいんだ、旅館業組合の就業規則というのは非常にむずかしいのだから、まあまあこのぐらいでかんべんしておこうかというような行政的な措置をするということはわれわれは間違いではなかろうかと思います。ですから、こういうようなことも、私はここで言っておきますから、今後全国に中央からよく指導をしてやってもらいたいと思います。  それからもう一つの問題に、ちょっと食い違うことがあるわけです。この前の問題について、たとえば収入の大半がチップあるいは茶代というようなところから、従業員生活の資である給料というか、賃金というか、それによって生活をしているわけですが、そのチップの性格にいろいろある。たとえばこれは厚生省には初めてですけれども、女中さんはお客が来ると、そのお客づきの女中さんになる。そうすると、そのお客がお金を持たなかったり、何かしてドロンをきめ込むことがある。そうすると、部屋づきの女中さんになった人はそのサービス料をもらうどころではない。その宿泊料なんかをドロンをきめるもんだから、女中さんが宿泊料までしょい込まされて、そうして給料から差し引かれるというような面もあるわけです。これが労働条件ならいざ知らず、ただそこに女中さんとして住み込むか、あるいは勤務して、そしてお客についたら、お客がドロンをきめ込んだ、その宿泊料は女中さん持ちだというようなことなら、借金をしょい込みに女中さんの仕事に住み込んだというようなことになってしまう。あるいはお客さんがあやまって花びんを割ったり、あるいは酒を飲んで徳利を割ったり、あるいはおぜんを踏みこわしたりする、そういうような物品における損害賠償を、女中さんのチップ代から差し引くとか、あるいは給料から差し引くというような現実についてはこういう問題は大体雇用条件の違反ではなかろうか、労働基準法の違反ではなかろうかというように質問いたしましたら、そういう刑罰的なものを内容とする差し引きは、違反でありましょうと、基準局長は言った。ところが鈴木課長はそれ自体は労働基準法の違反ではないのじゃなかろうかと、法務委員会で言っている。こういうような判断についての、給料に対する正しい見解はどういうように解釈したらいいのですか。
  34. 鈴木健二

    ○鈴木説明員 先ほどの就業規則の問題でございますが、法律だけから申しますと、一応労働者の同意を得て提出したものは、一応受理しなければならぬ、こういうことになっておりますけれども、われわれの考えといたしましては、持ってくる就業規則そのものが、常に正しいものを持ってくることが最も望ましいことでございますので、業者並びに労働者に働きかけまして、正しい就業規則の作り方について指導いたしたい、こういうふうに考えております。なおあとの問題でございますが、私が法務委員会で申し上げましたのは、そういう賠償責任を負わすことが、直ちには基準法の違反にはならない、こういうふうに申し上げたわけでございまして、私が申し上げたのは賠償責任を負わすか、負わさぬかということだけのことなんで、それが給料から天引きということになりますれば、二十四条の違反になる。言葉が足りずに、局長と私の答弁が食い違ったような印象を与えましたけれども、そういうふうに賠償責任を持たすということだけでは、基準法違反とはならない、こういうふうに申し上げたわけでございます。
  35. 五島虎雄

    五島委員 その点は了解しました。それでは堀局長と見解が一致しているということを了解します。ところがこの旅館業法の一部改正は、売春防止法との関連において、四月一日から実施するがゆえに、旅館業法の一部改正が行われるわけですけれども、こういうような刑罰の内容を持った取締りの対象となって、何か全国の旅館が営業停止あるいは許可取り消しというようになったところが全国で今までどのくらいありますか。
  36. 尾村偉久

    ○尾村政府委員 昨年の旅館業法改正に基きまして、営業停止関係あるいは取り消し関係の実際の取扱いの指導を、これを警察庁と厚生省といたしましたのが、十一月十一日付両者の通牒でこれを出したわけです。その後取扱い方針がわかったわけでございまして、従いまして現在までではまだ実際に決定いたしましたのは少いわけであります。今われわれの方で内容まで明瞭になりましてすでに営業停止が実施されてきておりますのが、明白なのが二件でございます。一件は福井県でございまして、これはやはり勅令九号違反プラス児童福祉法の違反まで入っております。これが検挙送致されまして、取りきめに基きまして警察庁の通報がございまして、これを聴聞会にかけまして、その違反者である営業者に対して営業停止一カ月を直ちにやった。それからもう一件は群馬県で、やはり類似の問題でございます。これもすでに一カ月申し渡し済みで、現在営業停止中でございます。そのほかに昨日京都から三件すでに営業停止したという電報が入りました。なお石川県その他で現在聴聞会を予定したところがございます。これがそれぞれ多い県は三件くらいというふうになって、進行中でございます。
  37. 五島虎雄

    五島委員 最後に、この旅館業法改正されれば、今度は営業停止や許可の取り消しということになるわけですけれども、これはともすれば警察官の取締りが行き過ぎになる面も出るかもしれませんね。非常に微妙な関係を持つのじゃなかろうかと思います。厚生省は警察庁等との話し合いにおいて、この法施行後の旅館の取締り方法等々についてはよく話し合っておられるのですが、話し合っておられるならばその内容をちょっとここで説明してもらいたい。
  38. 尾村偉久

    ○尾村政府委員 十分両者でこの問題については話し合っておりまして、要するに今までは勅令九号、四月一日からは改正を願えれば売春防止法の第二章の各条項の違反、これを当該営業に関して罪を犯したとき、こういうことになっております。具体的に旅館業法行政処分の方に反映するのはどういう方法でいくかはよく話し合いができております。すなわちこのことに関して警察が検察庁に事件を送致した場合において警視総監または都道府県の警察本部長が必要と認めたときは、府県知事にこれを要請する。これを受けた府県知事は当該通報を旅館業法第八条の営業許可取り消しまたは停止に関する処分を決定する場合に当っての判断資料にする、こういうことになっておりまして、警察の方でさらにこれが将来営業処分の方にしないでいいか悪いかをまず選択をいたし、無条件に全部を送るわけじゃない。それをさらに今度府県知事が旅館業法に基いてやります場合にはこれを重要な判断資料にするということで、あくまで自主権は保留する、こういう話し合いができまして、警察庁次長と厚生省の公衆衛生局長がそれぞれ同日付で両者の系統に通知し、なおこれに基きましてそれぞれ会議の際に指導をしておるわけでございます。
  39. 五島虎雄

    五島委員 それではもうこれで終ります。今まで私は行政的な万全を期すように要望しましたし、いろいろな点について明らかにしましたが、これらの件についてはよく厚生省労働省も了解されて、今後いい行政措置をされるように要望いたしまして質問を終ります。
  40. 山下春江

    山下(春)委員 終られましたので関連というのがおかしくなりましたが、了解を得てありますので、今の従業員処遇の問題について、ちょっと触れられましたがまだ十分でないと思いますので、お尋ねをいたします。先ほどちょっと聞き漏らしましたが、健康保険に加入する資格のある者はごくわずかだから、大部分が国民健康保険に加入することを要請するというお答えのようでありましたが、それは大へん私の考えておることとは距離のあることであって、小沢課長に現在この従業員健康保険に加入しておる者が大体どのくらいあるかということをちょっと先にお尋ねをしておきます。
  41. 小沢辰男

    ○小沢説明員 実は旅館の関係の従業員につきましては、健康保険法の十三条で適用事業所になっておらないのであります。しかし私の方では同法律の十四条に任意包括適用の規定があるわけであります。この任意包括の者は大体全国で今のところ十二万おるわけであります。このうち旅館の従業員がどのくらいか、職種別あるいは業態別に分類をいたした資料を今とっておる最中でございまして、現在手元に旅館の者が何名というのは遺憾ながらございません。
  42. 山下春江

    山下(春)委員 任意包括が十二万、その中に何人いるかわからないというのですが、私の承知している限りでは、国民健康保険健康保険かとよく念を押してに聞きましたが、健康保険だという従業員を相当私は知っております。そこで今回の改正が、売春防止法に伴う問題が主たるねらいであるとするならば、売春防止をいたさなければならない一番大きな点は、従業員の健康をどうするかということが重大な問題になってくるのです。この中には御案内の通りに、相当子供を連れた未亡人が、パーセンテージにしても相当高いのでございます。これらの人々の唯一無二の資産、力は健康だけでございます。ところが休みますことは、自分の経済にも影響するし、子供をかかえているし、やむを得ずせっぱ詰まって倒れるまでは働くのです。旅館の女中というのは非常な重労働でございますから、病気を押して働きますので、倒れたときにはもう入院加療をしなければならないという状態です。一年くらい一生懸命になってせっせとためた貯金が、一カ月入院加療するとただになって相当の赤字が出る。これが現状であります。そこでその赤字をすみやかに解消するためにやむを得ず売春等の行為を犯すことがあり得るようでございます。そういうことがあると、まじめな朋輩等にも顔向けがならないというようなことで、つい店を変えるということになります。任意包括の形式でも何でも健康保険に入れるのに、実態が常に移動しているということが、その実態把握の非常に困難な原因にあげられておりますが、その実態が動き変ることの原因にはそういうものがございます。従いまして健康を守ってやるということであるならば、使用主の方でも半額負担どころではなく、もっと負担してもよろしいと、大阪あるいは広島その他東北一帯の旅館に泊るたびに私は主人と従業員の両方から聞くのでありますが、健康保険の掛金がいやだと言った雇用主は一人もございません。従って健康保険に入りたいという希望は、他の業種よりも従業員たちは非常に強く持っているにもかかわらずそれがいれないということは、法の不備であると思いますが、今回この法律改正されるに当ってはここの門を開かないと、ねらいが売春防止ということであっても、やむなき事情からそういうことに立ち至るその心情はまことに気の毒であります。そういう点から保険の問題は国民健康保険と仰せられましたが、半額負担という今の国民健康保険の状態では、これまた不可能に近いものがございます。これを将来どういうふうになさるおつもりか、これは早急に解決しないと、今回この法律改正なされても、ねらうところが実態からはずれてしまうのではまことに残念なことになります。法の不備から彼女らが別に悪心もないのにそこに落ちることを救う道についてはどのような方法考えておいでになりましょうか。
  43. 小沢辰男

    ○小沢説明員 確かに現在のところでは疾病が生活上の最大の問題になっておりますので、厚生省の方でも皆保険を大いに推進しようということを政策としてやっているわけでございますが、皆保険をやる場合に、御承知の通りに国保と健保の二本立てでやろうということで、できるだけ早い機会にこの二つの系列で医療保障の網の中に入れていくということは、われわれとして当然考えなければなりません。その場合に、おっしゃるように、やはり給付内容が違いまして、全額給付の健康保険と半額給付の国保の違いがございますので、私ども十三条の本来の規定からいいますと、旅館というサービス業は適用除外になっているわけでございますが、幸い十四条の任意包括の規定がございますので、できるだけこれを活用して個々に解決していく必要があろうと思っております。しかしながら本来十三条になぜ適用事業所としてあげなかったかと申しますと、やはり標準報酬の面でも、先ほど来質疑応答の過程にもありましたように、報酬というものがはっきりきまった形のものは非常に少い。その他の現物給付、あるいは食事、あるいは衣服、あるいはまたお客のサービスというようなものについていきますと、本来のいわば理屈の面から考えますと、健康保険では非常につかみにくい業種でございます。それに一方使用形態そのものも、今先生の御説明のように非常に気の毒な理由もありましょうけれども、その他にも雇用の形態、雇用の期間というものがはっきり確定してない例が多いものでありますから、従って本来健康保険の適用にはなじまないというようなことで、十二条から適用漏れになっておるのではないかと思うのでございます。私どもとしては結局この救済方法は、十四条の任意包括規定を積極的に活用するか、あるいはまた国民健康保険法律のもとで、ただいま普通の適用からいいますと半額でありますけれども、国保の規定の中には特別健康保険組合を作り、これでやれるという規定がございます。そういうような規定の活用もやりますと、これは当然法律改正にもありますように国庫負担がやはり出ることになっております。そしてこれは特別の組合でございますので、給付内容等も組合でそれぞれ財政状況を勘案して給付内容を上げていくことができるわけでございますので、そういう方法一つ方向じゃないか。現にその方法でやっている旅館の従業員もあるのでございます。私どもといたしましては、その国保の推進というものが現在のところまだそう全部に進んでいるわけでもありませんので、国保の進行状況、その地区における適用状況というものと、それからその事業所、旅館、あるいは従業員の全体の状況等もにらみ合せまして、幸いに政府管掌の健康保険は、最近財政状態もよくなりましたので、そういうような場合には積極的に十四条の任意包括規定を適用して、できるだけ救済して参るようなつもりでございます。
  44. 山下春江

    山下(春)委員 小沢課長のような健保に非常に熱心な方に熱意が足らぬというのは恐縮なんですが、特別健保の道も開けておるからと言われるのですが、特別健保とか国民健康保険とかということには私は反対なんです。実態の把握はむずかしくないんですよ。熱意を持ってやればすぐできるのです。そしてこれには厚生年金も発生しますし、失業保険もあるし、とにかくいずれにしても彼女たちはあそこでくたくたに相当の重労働なんです。これは少し古い調査でありますけれども、お客が一人入ってきて、あしたの朝、またいらっしゃいませといって送り出すまでには、重いものをかかえて三十四回も階段を上ったりおりたりしなければならぬというほどなんです、非常に重労働なんです。そういう重労働をしたものが十年なり二十年なりあそこで働いて、子供が学校を出て安心してやめるときには、もうほんとうに体はくたくたに老衰をしておりますから、厚生年金の発生する健康保険に入れてやることがほんとうに政治の愛情なんです。ですから特別健保とか国保とか、これが状況がよくなりましてもやはりこれらは健康保険のワクに救い上げてもらいたい。それはそんなにむずかしくありません、みんなで手伝いますから、絶対そのワクへ入れていただきたい。  ちょっとこれはいささか関連からはずれますが、二十六国会旅館業法改正いたしますときに、特に東北にその弊害が強いのでありますが、ふろが一つで、男女混浴なんです。こんなことではどうにもならぬということで、絶対に二つに分けなければいけないということを条件にしてわれわれはあの項目を——ここに中山委員がおられませんが、中山委員も私も強力に主張したのであります。法律はそんなようなことを大体いって作られたようですが、依然として直らないのです。あれは期間を付せられたのですか、それとも資金等のめんどうを見ることになっておったのをそれを見ないのか、ちょっと私忘れましたから聞くのですが、いつまでにこれを完成しなければならないことになっておったのですか。今度のこの改正等のいろいろな問題から、そういうことを放置しておいたのでは何にもならない。従って役所の方も、ここにおられる男子の議員の方も、とかくこういう問題は何といっても男の方が悪いのですから、どうしてもそういう設備を二つしなければならぬというようにしてもらいたい。東北などではこれが慣習になっているものですから、幾らしかっても警察を呼ぶぞというまでは入ってくるのです。そういうことがついついだらしのないことになりますので、至急にこれは各保健所に命じて検査してもらいたい。法律でどういうふうにおきめになったか、私忘れたのでありますが、われわれ非常にやかましくあそこを申し上げておいたのですから、法律にそれが載っているはずでございますが、現在どういうふうになっておりますか。
  45. 尾村偉久

    ○尾村政府委員 男女混浴の設備でありますが、実際には、そうなると男用と女用とを必ず別々に用意しておかなければならぬということになり、最低二つということになるわけであります。これは現在のところ法律並びに政令には規定しておりません。ただし指導方針としては、旅館の中の運営のこまかいものを府県ごとにこまかく条例で定めるようになっておりまして、県の条例に、それぞれの県で必要ならばぜひ入れるという形になっております。許可条件の中では、何平方メートル以上、炊事場を必ず備えなければならぬという程度まで国の政令で定めてあります。さらにこまかいのは、それぞれの県で若干共通線の中において、こまかく事情が違いますので、それぞれ条例で今定めつつありますが、その中に入れるようになっておりまして、国が定める方には入っておりません。これは風紀をなるべく守らせるという意味で運営基準を短めでおりますが、風紀を乱すような図書とか絵画を掲げたり広告をしてはいかぬということは政令できめました。その思想を敷衍しておりますので、県では今もうすでにきめたところもあります。必ず二つ以上男女別にするというような規則を条例で定めた県も相当ございます。
  46. 山下春江

    山下(春)委員 条例では困るのであります。東北ではそういう慣習の中に育ってきたのですから、幾らそれをやかましく言っても、私の知る限りでは一つも改まっておらない。それは条例などといわないで、こういう法律を作るときには、すべて行政指導しなければならない。二つ作らねばならぬということになると、一つしかない旅館では経費がかかるから、その点の措置がつかないから幾ら言っても直さないのかと私は思っておりましたが、条例となりますと各県の条例を一つ一つ厚生省に取り寄せて見せていただきたい。そんなことがちっとも守れないならああいう法律を通すのではなかったけれども、今では仕方がありませんから、とにかくそれはやかましく言っていただいて、大至急各県の条例をお取り寄せ願って、その条例を集めたものをできれば私どもに配付していただきたいと思います。この点はいろいろな法律が出されても、それが末端に行って法律がぼやけるということは、そういうところからも発生することを御認識願いまして、ぜひもう少し厳重に御指導願いたいと思います。関連で長い時間ちょうだいしまして、大へんありがとうございました。
  47. 森山欽司

  48. 西村力弥

    西村(力)委員 ただいま山下委員から健康保険旅館従業員に適用するという点に関してありがたい御発言がございましたが、私たちも、国民健康保険適用を推進するという立場ではなく、健康保険を適用させるという根本的な立場に立ってこれから指導していただかなければならぬということを強く考えておるわけであります。一方においてはこの従業員の雇用内容とか労働条件とかいうものを明確にし、また前近代的な問題を全部解消していくという一つ方向厚生省からも出されておるわけですが、健康保険加入を推進するというそのこと自体も、それと並行して労働条件の改善という方向と一致していくのだ、一方においては雇用内容を明確にし、労働条件を改善すると言いながら、一方では現状にとどまって健康保険適用を推進することはなかなか困難であるというので足踏みをしておるようでは、厚生省行政が分れておるのではないか、非常に矛盾しておるのではないか、こういう感じを持つのです。その点については、厚生省の根本方針として健康保険適用を主としてこれを推進しておるのだという、こういう点を一つ明確にしていただきたいと思います。
  49. 小沢辰男

    ○小沢説明員 先ほども五島先生あるいは山下先生からもお話がございましたので、私どもとしてはできるだけ御趣旨に沿うように研究してみたいと思います。ただ来年も、実は予算で御説明申し上げましたように、本来の被保険者以外に十四条の適用によります任意包括の加入を年間平均約五万人見込んでおるわけでございます。これは実は主として五人未満の事業所についての適用ということを考えたわけでございますが、その方針が流されますと同時に、各県から保険課長を通じましていろいろ希望が出て参りました中に、最も数多い希望はやはり旅館の従業員のことでございます。ただ私どもとしては、これはある地区々々等の例をとってみますと、その地区における国民健康保険の推進と非常にぶつかる面が出てくる場合があるわけでございまして、たとえば旅館が中心をなすような温泉地等の市町村の例をとってみますと、これらを任意包括で健康保険に適用いたしました場合には、その町なり村なりというものは国民健康保険の適用がほとんどできなくなる、残った住民の数は相当あるにもかかわらず、国保の事業として、全然採算がとれないからなかなか国保の普及ということができなくなるというような事例もあると考えられますし、また一方そう申し上げましても、国民健康保険の普及というものがおくれていました場合に、それらの従業員を依然としてそのままにしておくわけにもいきませんので、国保と調整をはかりつつ、できるだけこの十四条の規定の活用によりまして御趣旨に沿うように努力したい、かように考えておる次第でございます。
  50. 西村力弥

    西村(力)委員 実際におやりになる場合にはいろいろ関連もあり事情もあるでございましょうけれども、やはり従業員はれっきとした労働者であり、しかも先ほど山下委員の御質問になったように、その人々を放置することによって生ずる種々の予想される弊害というものを考えるときにおいて、やはり一つの基本的方向としては、いろいろの関連はあるにしましても、一つそれを断ち切って進まれる——私たちが考えますと、旅館の従業員健康保険をやる場合において、経理内容において赤字が加重するのではないかと、それだけをあなた方は気にしておるのではないか、そういうことが感じられるのです。それからまた一地区で旅館の従業員を国保から除外することによってその地区の他の住民の国保の適用が不可能になるという問題は別個に解決する方法をとらなければ、いつでも低い者から足を引っぱられるといとことになって、そういうことはあなた方の立場からでもあまり口にせらるべきことではないのではないか、そうせられることは率直に言って私はよろしくないと思うのです。どうです次官、一つ健康保険適用を主としてこれから進めるという方向をあなたははっきり打ち出していただけませんか。
  51. 米田吉盛

    米田政府委員 旅館従業員もその他の人もこれはひとしく同胞でありまして、私の考えといたしましては、できるだけその人の厚生に寄与できるような方向を基本としてやりたいと考えております。旅館の人だけを特別扱いするという考え方でなしに、そこの住民を一体として、相互扶助の根本精神によってやることの方が究極において問題を全面的に解決するのではないか、私はこういう考えであります。
  52. 西村力弥

    西村(力)委員 政務次官参議院の社会労働委員会において委員質問に対して答弁されているところを見ると、一読しましたが、旅館業法改正についても、あるいは従業員処遇の問題につきましても、あなたの答弁の基本的立場というものはどうも旅館臭というにおいが濃厚なんです。委員会委員からもそういう批判めいたことを言われているようにちょっと記憶に残っておりましたが、今おっしゃったことは確かに常識的に公平のようでございますけれども、私たちが実際にそういう社会保険的なものを推進する場合において、当然高次の保険に適用し得られる分野については、そちらの方を適用する方向にしむけていく、こういう工合にいくのが当然ではないかと思うのです。今のあなたの考え方からいきますと、現在の健康保険法によって高次の給付内容を受けている階層というものは、どうも自分たちだけが不当なる優遇を受けているような工合に見えてしまうのではないか、そういう結論になってしまうのではないか、こう思われる。理屈めいておりますけれども、当時旅館の従業員を強制加入から除外したということは、今のような工合に、旅館の従業員というのは労働者という立場がだんだんと鮮明になるという情勢というものはなかった、旅館の従業員というものは何が何やらはっきりわからないというのではとても強制適用はできないというその当時の実情からそういう工合になったのだろうと思うのです。これは労働基準局の方からお聞きしたいが、当時なぜ強制適用から除外したかということになると、その当時の現状が強制適用を不可能ならしめていたのではないか、このことからやむを得ずそうしたのではないか、こういうことを思うのです。今こういう工合に旅館の従業員の立場が、はっきりサービス業を本業とする労働者という立場に立っていろいろの権利も保護も受ける必要があるし、ことに今まであの社会におおいかぶさっておる前近代的なものを全部払拭しなければならぬということが一般の世論であり、また強制適用で施行するこういう段階になっておれば、強制適用から除外するということもまた簡単にはできないはずであるにかかわらず、当時除外したのは当時の事情によってそうやっただけである。現在はもっと考えが違っていくことも可能である、こういう工合に基準局は考えられないかどうか。強制適用を除外したのは当時の事情がそうせしめたのであって本質的なものではない、こういう見解に対してはどういう御意見ですか。
  53. 小沢辰男

    ○小沢説明員 健康保険の十三条で被保険者の範囲を確定いたしましたとき、またその後実はこの適用事業所の範囲は逐次拡大をされて参ったのでございます。それにもかかわらず旅館というものが入ってないということにつきましては、先生のおっしゃるように、労働形態あるいは労働条件というようなものがこの健康保険の十二条の適用事業所のようなところまでいってなかったというお説についてはその通りでございます。それが最近あるいは今後はっきりした労働形態、雇用形態なり、あるいは労働条件というものが確立されていきました場合においてはもちろん先生のおっしゃるように当然健康保険の適用ということも考えていかなければいかぬということは私たちも先生と同感でございます。ただ同時にそれらの状態が全部今日そろっておるのにもかかわらず、健康保険が適用されてないのだというふうには、おそらく先生も考えておられないと思いますが、それに応じまして健康保険の方の適用も考えているということについては、私どもその通りに考えております。それまでの期間、例外的な規定のようにございますけれども、十四条の任意包括規定がございますので、実質的にはこの規定の活用によって、そういうような条件の備わったところはできるだけ積極的に私どもの方で適用していくというような方針にいたしたいと思っているわけでございます。先ほどお話がありましたような、ただ政府管掌の財政に非常に悪い影響があるからというようなことだけで、この十四条の適用をするかしないかを考えるというようなことはしないようにということは、特に昨年来いろいろな全国の課長会議、署長会議等で指示をいたしておりますので、財政状況からだけで十四条の通用を云々するというような考えは目下のところ持っていないのでございます。
  54. 西村力弥

    西村(力)委員 どなたですが、私は初めてですからわかりませんけれども、御答弁大へんけっこうであると私は考えます。ただ次官、よいものの適用をしていこうという考え方に割り切っていただけませんか。現在の低いところに右へならえして平等というような考え方じゃなくて、いいものを適用させて、そのところにどんどん引き上げていくという熱意が厚生省当局になくて、どうして厚生行政の発展が得られるか。そういう点から言いますと、ことしの予算なんかは、あなたはあまり謙虚であるから負けてしまうという工合に考えられる。よいものの適用をしてそういうところに適用されるものはして、そこにどんどんと引き上げていくという立場、こういう基本方針厚生省として当然とらるべきだと思うのです。先ほどの御答弁にもございましたが、何とぞそのように一つ次官の方は基本態度を考えていただきたい、こう思うのです。御答弁は要りません。これで午後にさしていただきます。
  55. 森山欽司

    森山委員長 午後一時三十分まで休憩いたします。     午後零時十五分休憩      ————◇—————     午後二時二十三分開議
  56. 森山欽司

    森山委員長 休憩前に引き続き会議る開きます。  質疑を続行いたします。西村力弥君。
  57. 西村力弥

    西村(力)委員 午前中健康保険の適用を推進するという方針を承わりましたが、この問題については前にもそういう厚生省の基本方針委員会において答弁しておるではないかと思うのですが、今またあらためてそういう問題が問題にされざるを得ない。こういうことは一体どういうところに原因があるのだろうかと考えるわけなんです。私の聞くところによりますと、前に公衆衛生局長、どなたでございましたか、そういう答弁をなさったということを聞いておるのですが、前にそういう答弁をなさった記憶ございますか。
  58. 尾村偉久

    ○尾村政府委員 去る秋の臨時国会で厚生行政一般の御質問の中にございまして、そのときに公衆衛生局長それから環境衛生部長、それから保険局長さんだったと思いますが、国保と任意包括、それぞれ適当なものにやっていく、こういうふうに質疑に対して厚生省側から答弁したように記憶しております。ただしそのときにいずれの方についてもこの旅館従業員が移動性の激しいことと、それから賃金、いわゆる固定賃金、標準報酬に算定する固定給が大部分確定しておらぬので、これがそれらの保険に適用するのに非常に阻害しておったという事情は披瀝をいたしたわけであります。
  59. 西村力弥

    西村(力)委員 移動性が激しいというのは、その従業員の本来的な、性格分裂的な立場からきているものではなくて、やはり明朗なる、あるいは健全なる旅館営業というものが押えられておる、こういう問題からやむを得ず移動性を持たざるを得ないということが生まれてくるのだということ、それから固定給が明確でないこと、よしんばあったにしても非常に低額だ、そういう点から健保適用については相当の障害があるというような問題については、今後積極的にそういう賃金の正当なる姿における明確化、その点について十分御努力下さいまして、そうしてそれを推進する一助としてもつ健保適用を推進するという工合にぜひ進めていただくべきものであると考えるのですが、事情事情として認めながらもそれを発展的な方向にお考えを向けていくという工合にぜひ願いたいと思うのですが、この点御答弁いかがでございますか。
  60. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 午前に主官の課長の方からいろいろお答えを申したことと存ずるわけでございますが、現在の健康保険法というものは、御存じのように旅館みたいな業種につきましては強制適用の対象にいたしておりません。それにはそれの事情があるわけでございます。しかし同じように被用者でございますので、できるならば被用者保険の対象にして参りたいということは私ども考えておるわけでございます。できるならばと申しますのは結局一口に申しますと、その雇用の形態なり、賃金の形態なりというものが保険のテクニックに乗ってくるかどうかということであろうかと思います。今御指摘の点はできるだけそういうものを乗るようにその業態自身を指導をして、そうして健康保険の方に包括をしていくような方向でやったらどうかという御指摘であろうかと思います。私どもはその業態につきまして実体がだんだん保険のテクニックに乗ってくるような実体になって参りまするならば、これはできるだけ健康保険で包括をして参るという方向でものを取り運びたい、かように考えておるわけでございます。
  61. 尾村偉久

    ○尾村政府委員 ただいま保険局長からお話がありましたように、実体がうまく保険に乗りますように、私の方では十分協会並びにこれを監督しております他方庁を指導いたしまして、促進をいたしたい。なおこれを一そう促進させるためには労働省関係との協力が一そう効果があるかと思います。この点も密接に連絡を保ちまして、実体を早くそういうふうにするように指導するつもりでございます。
  62. 西村力弥

    西村(力)委員 健保関係についてはあとで滝井君からでもお願いすることにしまして、今公衆衛生部長の方から、保険局長保険経理という立場からいろいろ慎重を期せられている問題について、そういうものを適用させる条件の具備をはかるためにいろいろ指導を行うということでございましたが、やはりそれを適用させるという基本方針を立てられれば、業態の改善というところに自然と努力が向くことになるだろうと思うのです。だから要はそういう場合に健保を適用せしめるという基本方針が中心となって、いろいろなものを関連的に推進していくことになる、そういう工合に進めていただかなくてはならないだろうと思うのです。  さて、業態の改善についていろいろ指導なさる場合において、環境衛生法に基く同業組合、そういうものに行政指導をやる、その指導内容に、健全経営に関連する問題として従業員の健康保持あるいは明朗なる勤務体制の建設、こういうことは当然入ると思うわけですが、環境衛生が求めておる問題の中にそういう従業員の福祉増進というようなことによって環境衛生の改善向上をはかるという意味も十分入っておるじゃないか、だから環境衛生法に基く同業組合そのものには、その義務的なものとして当然それがあるではないか、こういう工合に考える。私のお尋ねしたいのは、環境衛生法に基く同業組合においては、自分たちの経営を守ろうとするさまざまな、料金協定とかサービスの何とか、そういうことばかりでなく、当然そこに従業員の福祉増進ということが義務づけられているものと解するのですが、それでよろしゅうございますか。
  63. 尾村偉久

    ○尾村政府委員 同業組合のやるべき事業が九項目、これは法律に載っておりまして、今お話の料金あるいは物の値段、それから営業方法、たとえば何時までやるとかいうような、この二つの項目につきましては適正化規程というのを作りまして、非組合員にも、時と場合によっては、省令を発布すれば強制できるようになっております。これはいわゆる強制規定でございますが、その他の七項目につきましては、組合が自主的にやるべき事業もあげてあります。その中に今の経営の健全化ということを、それぞれの組合員に組合指導するということがありまして、これはいずれも最近できつつあります同業組合が、設立に当りましての定款の中にこれらの項目も織り込んで、われわれの方に認可を申請してきておりますので、当然組合はさような意味のことをやる意思があるということでありますし、われわれの方も、当然同業組合はそういうものも含めて作られて、やるものである、かように存じております。ただ経営の健全化と非常にばく然としておりますので、これは非常に広うございまして、たとえばいろいろな共同施設をやって能率化するということもございましょうし、それから今の個々の従業員の待遇等を安定させて能率を上げさせるということも入っておりますし、いろいろな内容になってくると思います。もうすでに組合によりましては、さらに組合が定款の下に細則と組合規則をかなり具体的に、今のようなことも入れて作っておるところもございます。このように指導をいたしておりますので、今のお話の御趣旨の通りだと存じております。
  64. 西村力弥

    西村(力)委員 経営の健全化の内容として、従業員の衛生確保あるいは福祉増進というような問題も含まれるということになって、それを指導なさるわけなんですが、従業員の実態についてはなかなか実態把握は困難であるだろうと思いますが、先ほどの御答弁によりましても不確定なる資料しかない。そうして就業時間は平均九時間半だというようなことが出ておりますが、この資料をもしかりに厚生省が信じられておるとするならば、これはまことにうかつ千万ではないか。その平均の出し方において、相当労働条件が法にかなったような高い状態にあるものと、全然そうでないものとをただ単に平均しているのではないか、こういう工合に思われるのですが、そういう平均は意味がないのじゃないか。この算術平均を出していてどうなるのかというふうに感ずるのです。それでそれを同業組合のなすべき仕事一つとして、従業員の立場を向上させようとする指導方向としては、やはりもっと的確な資料を調査せらるる必要があるのではないか。そしてそれに基いて諸種の問題について関係当局と当然連結、提携してこれを進めていただくことが必要ではないか、こう考えておるわけです。ところで今置かれておる実態について、労働基準監督の立場にあるあなたの方では、根本的に旅館の従業員労働条件を改善していかれる場合において、基準法を適用するのだということが大前提になる。ただ特殊業態であるからそれを全面的に押し切るということも不可能であって、まあやむを得ない場合は最小限度にこういう工合に処置されるという基本方針をとるというようにいくのが当然であるし。そういかれておるのだろと思うのです。ところが先ほどからの答弁によると。やはりどうも特殊事情だけを表面に出されまして、基準法を適用するのだという大前提がどうもおろそかになるような気がするのです。その点は誤まりないことであるとは思うのですが、はっきりしたところ、これは基準法適用の業種であるのだ、この大前提に立って基準法を全面的に実施するのだという方向は堅持していくのだ、しかし特殊事情というものは、それを実施する場合に不可能であり、あるいはまた現状においてそれがなかなか決定的な困難を持つために、最小限度やむを得ずするんだ、そういう方向にぜひ行かれるべきであると思います。そういう基本的な考え方については、先ほどから私の受けた印象を一つはっきりと否定する方向を出していただきたいと思います。
  65. 鈴木健二

    ○鈴木説明員 旅館の従業員に対しまして、基準法が全面的に適用になるという前提のもとに指導いたしておるわけでございますが、あのような特殊な業態でございますので、初めからあまりに多くのものを求めたら、結局何も残らないというような結果になっては困りますので、現在一番問題になっておりまする非近代的な労働慣行の排除、労働条件の明示、賃金台帳の明確化というふうなものから始めて地ならしをしていく。そういうものができるようになれば、今度は何をやっていく、そうして基準法に規定していることを完全に守らすということが終局の目的でございますが、その手段といたしまして、段階的な方法をとって参りたい、こういうふうな考え方でございます。
  66. 西村力弥

    西村(力)委員 そういうお考えで、ぜひ進めていただかなければならぬと思うんです。ところがあなたの方でも、御承知かもしれませんが、私山形県なんですが——特定のことを申し上げて悪いのでございますけれども、山形の労働基準監督署が、私が参りまして以来相当従業員処遇の問題について関心と指導の立場を進められておりますが、それは敬意を表するわけでございます。ところがその監督署の署長が温泉組合長に出した勧告というものを見ますると、どうもあなたの方で基本的にとっておられる立場と違うような、ちょっと見捨てかねるような点があるんです。それはごらんになられませんか。それじゃちょっと問題になる点を読みますが、「劣悪な労働条件が温存され、法遵守の意欲も極めて低調であることは洵に遺憾とするところであります。斯る折柄、最近全国旅館業従業員を頂点とする地方の旅館業従業員の組織化が進められており、これらの従業員の一部は部外よりの支持応援を得て労働条件改善を中心とする一連の諸問題を提起して活発なる組織活動を開始する趨勢にある秋、労働基準法上の諸問題が好むと好まざるとに拘らず向後斯業の労使間における重要課題となるものと信ぜられるのであります。」こういう一節があるんですよ。この問題は労働組合も基準監督署の権能を正しく活発に発揮してもらいたいということを要請はしておりますけれども、一番最初に私も一緒に行ってお願いしておくのに、この文書を見ると「部外よりの支持応援を得て」こういうようなことを書いておるんです。これは全く私自身が部外より教唆扇動した一員というような工合になってくるんです。こういうような言葉に現われておる監督署の腹の底を考えますと、労働基準法を守り抜こうとする、清純な立場におけるあり方とはちょっと違うという工合に私は感ずるんです。  それから「伝来の一般慣行のみならずその特殊な環境と立地条件を伴うため、法に定められた水準まで労働条件の総てを引上げて、これを持続することの困難な実情にあることは容易に推察し得るのであります。」こういうことを言って基準監督署はその立場を一歩後退させて、そして旅館業主の立場を前提としてまず認めてからやるというやり方、また労働基準法を基本として指導していくというようなところに不安定な要素を私たちは認めるわけです。そういうことを言っておる最後には「近代的労働関係を一日も早く確立せられるよう茲に勧告申し上げる次第であります。」こういう工合に言って締めくくっておりますからいいのでありますが、私が先ほどから言っております二つの条項——従業員の一部は部外よりの支持応援を得て労働条件改善に今進んでいる、気をつけろ、というようなことですね。それからこっちは、あなた方の立場も十分わかります、こういうようなことを言って一段と後退して、その後に労働基準法の趣旨に沿うて労働条件の近代化をはかれ、この勧告文はこういう工合になっているのです。こういうような具体例から見ますると、本省において今ここで答弁されておる趣旨自体というものはまだまだ微温的あるいは皮想的に行われておる、こういう工合に、現場においてはそうさせられているのだということを私たちは感ずるし、事実そういう例を非常に多く知っているのです。この問題についこの勧告文は、最後の締めくくりいかんにかかわらず、また基本的にとっておる立場というものが、こういうことでは不十分であるということ、あるいはまた一部は部外よりの支持応援を得てというふうな言葉は、労働関係法の立場から見ても、明らかに慎しむべき言葉である、こういうことをあなたの方ではお考えになりませんか。
  67. 鈴木健二

    ○鈴木説明員 勧告の文章の表現が的確性を欠いておる点があることは、私どもも認め遺憾に思うわけでございます。ただし、考え方としましては、やはり従来からの陋習と申しますか、長い慣習が存在しているところに、初めから労働時間八時間をきっかり守れ、あるいは休日は完全に守らなければいかぬというふうな持っていき方をいたしましたら、こっちに顔を向けておるものがまた向うを向くというようなことでも、基準法の精神を実施していく上にほんとうに実効ある処置ではないというふうに考えまして、こういう問題の取扱い方は、一つ大きな世論の背景と申しますか、そういうふうな空気を作りつつ基準法の線に近づけていく、こういう指導をやるべきじゃないか、こういうことをわれわれは地方に指示しているわけでございますが、基本的な考えは、末端の監督署におきましてもそういうふうな考えをもってやっておると思うのでございますが、たまたまこの勧告文におきましては、表現がいわゆる世論の力を借りて、世論の背景のもとにやるというふうなことがこういう表現になって現われたのではないかと思いますが、根本的な考え方はそういうふうに思っているわけであります。
  68. 西村力弥

    西村(力)委員 私もあなた方のものの運び方について必ずしも否定的じゃない。ただ基本的に労働基準法を適用するんだ、こうこう業種であるんだということを大前提として緩急よろしく運ばなければならぬということはわかるのですけれども、その大前提についてはっきりした立場というものがまだ不十分ではないだろうかということなのです。これを私は非常に危惧いたしておるわけなんです。ぜひそういう大前提を明確にして、その情勢あるいは段階、一般世論、そういうものに即応し、緩急よろしきを得るという工合にしていかなければならぬのではないか、こう思うのです。確かに山形の某基準監督署長なんかはまことに熱烈な立場でやっております。ここで言うといかぬから名前は申し上げませんが、確信を持ってやっておる人が一人おります。私はよく知っております。そういう工合にやってくれればそれだけの反応もあるのです。どういう工合に反応が現われているかというと、その熱烈に監督しておるところの旅館業主の方は組合に対する回答とか話し合い等を即座にやっております。ところが今申し上げたようなところで監督しておるところにおいては、一月以上たっても従業員たちの一つの要望に対して答えも出さない、そんな工合に端的に現われてきているのです。そういう工合に現われるところは監督署の監督官その他の係官諸君の基本的な立場というものが明確であるかいなかというところに一番分れ道があるのではないだろうか、こういう工合に私は推察をいたしておるのです。いろいろな基準法に基く問題で是正しなければならぬ問題がありますが、前近代的な、人権無視的なこういう慣行に対しては、たといそれが基準法の対象外であっても、そういう人権無視的なものを解消した上に立って、基準法の全面適用をはかっていくということになれば、その人権無視という基準法以前の問題についてもそれを解消するという努力というものは、その前提として、労働監督行政一つ仕事として私はあるだろうと思うのですが、そういう点については一体どういう工合にお考えですか。
  69. 鈴木健二

    ○鈴木説明員 監督官が司法警察権を発動する立場から考えた場合には、そういう面について云々するということはできないと思いますが、労働者の保護をやらなければならぬという監督機関全体の問題といたしましては、そういうものに行政指導を加えて向上をはかっていくというのはわれわれの責任であると考えております。
  70. 西村力弥

    西村(力)委員 それはわかりましたが、司法権を持った立場においての行動をされないというような解釈をとっておるやに聞いておる問題で、一つはお客の与えた損害を従業員が代理弁償をする、こういう問題は基準法上の問題として取り扱わない、かように私は聞いておるのですが、それはどうも解釈が不徹底ではないか、こう思うわけなんです。その点一つ明確にしていただきたい。すなわち従業員の給与から天引きされる賠償というものはある限界をこえてはならないという規定が労働基準法にあったと思うのですが、結局お客が踏み倒した分について何千円と賠償しなければならないというなら、その条項を逸脱することになるのではないか。旅館の従業員の給与を現在平均一万円としましても、その中から賠償に引かれるべき限度というものは、ごくささいな額であるにかかわらず、何千円と弁償しなければならないということが出てくるように思う。これでは従業員の負担というものは、基準法からは明らかに違反であるというように私としては考えるのですが、いかがでしょうか。
  71. 鈴木健二

    ○鈴木説明員 従業員に損害の責任を与えるというふうな労働契約によっている場合には、それが直ちに純粋な法律問題として基準法違反とはならないと考えます。その損害賠償金を基準法所定の手続を経ずに給与から天引きされるという形が行われる場合には、基準法違反になるというふうに考えます。
  72. 西村力弥

    西村(力)委員 給与から天引きといいますか、給与全額を払ってもそれをまかない得ないという事情にあるときに、給与以上にというか、それはどのくらいかわからぬけれども、自分の所持金であるとか、貯金であるとか、あるいは借金をして払うということは給与から天引きする以上にその人の生活を破壊に導くものでありますから、これはやはり基準法の問題として、たとい帳面づらにおいてで、給与から引いたのではないにしても、それ以上の生活に響くところからひん抜いているのですから、やはり違法なものと考えざるを得ないではないですか。給与を三千円なら三千円、五千円なら五千円にきめたにしても、それでは間に合わないものを引いた場合にはこれは給与から引いたのではないから違法ではないということはいかがかと思いますが、その点どうお考えになるか伺いたい。
  73. 鈴木健二

    ○鈴木説明員 実際問題といたしましては先生のおっしゃったような問題があると思いますが、純法律問題といたしましては、基準法では、いわゆる賠償予定額の禁止の規定があるだけでございまして、実際に起った損害賠償について従業員が責任を負うということそのものを規定しているわけではございませんし、そういう場合に実際の損害が幾らか、たとえば一万円なら一万円というふうなことをまずきめて、それを払わすということは基準法で禁止しておりますけれども、実際の損害についてその返済責任を持たすということは、基準法といたしましては禁止はしていないと解釈いたしております。
  74. 西村力弥

    西村(力)委員 それでは、固定給であっても、わずかばかりの状態において苦しい条件下に働いている従業員諸君が、幾らでも無制限に給与を上回って払わなければならぬという現状にある場合において、あなたの方では、こういうことは厳密に法違反ではないにしても、それは好ましくない、これは是正さるべきであるというような御指導をなさるのか伺いたいと思います。
  75. 鈴木健二

    ○鈴木説明員 今のような問題は先ほど利が申しましたように、一つの前近代的な労務管理の残っている一つの姿であると思いますので、行政庁といたしましては、そういう形ができるだけなくなるように指導して参りたいと考えております。
  76. 西村力弥

    西村(力)委員 それでは次に自治庁の府県税課長にお尋ねしますが、旅館に泊ると、公給領収書にはサービス料というのが一割ないし二割くらいつきますが、あのサービス料というものは、その旅館ごとに適宜割合書をなさるのでしょうが、自治庁としてはたとえば遊興飲食税が公給領収だけで積算された税金では、この旅館は少しごまかしているというので、更正決定する場合に、公給領収書のものを積算するとこれだけだ、しかしこれでは足らぬから、実際にはもっと収入があるのだ、それに対する税金は何ぼだ、こういう工合に加算して更正決定をするという工合になると思うのですが、その場合に宿泊料や飲食料に対するサービス料の歩合いを大体どのくらいに考えていくかという問題、そういう点は大体のところどういう工合に見るものですか。
  77. 細郷道一

    細郷説明員 サービス料が遊興飲食税の課税標準である料金に入るかどうかという問題にからむ問題だろうと思うのでありますが、遊興飲食税の課税標準とされる料金に入るサービス料は、お客が対価として請求されるもの、それについてのみ課税標準に入れることにいたしております。従いましてお客さんが別に請求されることなく任意に、その旅館で申しますれば女中さんのサービスに対してチップを払ったといったような場合には、そのチップ代は課税標準たる料金には入らないのであります。こういうふうに法律的に解釈をされておりますし、またそのように通達をいたしております。従いまして今お説のように、サービス料の割合をぶっかけて更正決定をするということは、いろいろの場合があるのだろうと思うのでありますが、一般的には任意のサービス料しかないような旅館でありますと、そういうことが起り得ないのではないだろうかというふうに考えるわけであります。
  78. 西村力弥

    西村(力)委員 公給領収書を基礎にしてその店の税金、いわゆる徴税義務者としてとったものはこれだけだというけれども、その公給領収書に現われた通りにやる場合と、どうも大がいはそうではなくて、これには相当もぐりがあると見て全然それを無視してよけいにかける場合とか、さまざまあると思うのです。そういう場合に、公給領収書そのままでなく別に加算してくる場合にその加算する宿泊あるいは飲食の金額はこれだけ、それに課税対象となるべきサービス料はこれだけ、こういう工合にはじくのかどうか、そのときにはこれだけの宿泊、飲食があるからこれの何割としてサービス料はこれくらいという工合にはじくのかどうかということなんです、私の聞きたいのは。そうすれば、そのサービス料は大体何割と、かける場合に自治庁としては見るかということなんです。
  79. 細郷道一

    細郷説明員 公給領収書制ができます前でありますと、更正に当りまして更正の基礎となる数字をどこに求めるか、いろいろ問題があったかと思います。しかし公給領収書が三十年にできてから後は、私どもも府県に対する指導といたしましては、できるだけ公給領収書そのものを中心にして更正その他をするように、従いまして当てずっぽうで更正するというようなことのないように厳重に言っておるわけであります。従いましてそういう面から申しますれば、公給領収書は特別徴税義務者であります旅館については非常に繁雑な手数ではありますけれども、逆にこれを正確に発行いたしますれば、むしろ更生決定に対する一つの障壁になるような傾向すら見えるわけなのでございます。そこでそういうふうに調査の結果新たな資料に基いて、たとえば青色申告を法人税、所得税等においてしておる、従いまして全部記帳いたしておるわけでありますが、その青色申告の帳簿に出てきております売上額よりも下回った売上額につき遊興飲食税を申告する、こういった場合にはその間に明らかに脱漏があるわけでありますから、そういう場合のように明らかな場合において更正決定をするようにいたしておるわけであります。そこで料金についてそういうふうにして更正決定をいたすときに、サービス料についてどういう割合をかけるかというお尋ねでございますが、先ほど申しましたように、サービス料は任意のものには課税をいたさないわけであります。従いましてたとえば洋式のホテルのように、一定の割合、たとえば一割あるいは五%というようなサービス料を必ずそれにつけ出して要求するような店について、かりにさっき申し上げました更正を要するような事実があった場合には、この売り上げに対して、その店で用いております一定の割合をかけてサービス料を出すということはあると思います。しかしやみくもに更正決定をして、この店は大体二割だろうというようなサービス料の推定の仕方はいたさないように注意をいたしております。
  80. 西村力弥

    西村(力)委員 今のお話ですと、私としては疑問が出てくるわけですが、そもそも普通の旅館でもサービス料をかけるのがあるのですが、そういう場合、ホテルその他明確なところはとにかくとして、そうでない公給領収書にサービス料を入れるというような普通の旅館の場合には、更正決定に当っても、はっきりサービス料を課税対象として計算しない、こういう工合になるのであるかどうか、それが一つなのです。  その次には普通の旅館にせよ、あるいはホテルにせよ、サービス料に税金をかけるということ自体が、今の答弁からお聞きしますと妙に無理があるのではないか、こう思うのです。また答弁いかんにかかわらず、サービス料というものは一体だれに帰属するものと考えておられるか。旅館の経営の場合、経営者がこれをはじいて料金を決定する、また料金に合わせてその旅館の経営ができるようにサービスなり食事なり何なりをやっていく、こういう工合になるのだから、宿泊料金そのものによって旅館の営業は成り立つのだ、ところがサービス料というものは、その従業員がお客に対して家庭的な雰囲気を与えるとか、非常に安息の気分を味わせるためにサービスをする、それに対するサービス料としてそこにつけられるのだ、こういう工合に思うわけです、ですから帰属はあくまでも従業員のものだ、サービス料は、プライベートに手にわたるようなものでないサービス料でもこれは従業員のものだ、こういう工合に考えるが、その点はどういうふうに考えておるか。私の考え通り従業員のものだとするならば、それに遊興飲食税を課するということは非常にいけないじゃないか、労働者労働に対する対価に対して遊興飲食税をかけるということはおかしいじゃないか、こういう工合に私は考えるのです。その点について一つ見解を伺いたい。
  81. 細郷道一

    細郷説明員 サービス料といっても、店によって、その店の経営方針によっていろいろ違うわけでございます。従いましてお客に必ず宿泊料の一定割合を要求する、こういう経営方針をとっておる店もあるわけでございます。そういうような場合でありますと、お客さんはそのサービス料の要求に対してこれを拒否することができません。やはり払わなければならないわけであります。従いましてその旅館におきます宿泊という行為に対しましては、やはりサービス料込みのものが対価となるわけであります。従いましてそういうときにはそのサービス料も含めたその全体を対価といたしまして、それを課税標準にして遊興飲食税がかかる、こういうことになるわけであります。しかし店によっては全然お客につけ出しては要求しない。全くお客さんと女中さんの間の任意にまかせておる。お客さんも非常に女中さんのサービスに感激すればはずむこともあるわけでございます。そういったような任意のサービス料に対しましては対価とは言いがたいので遊興飲食税は課さない、こういう方針をとっておるわけであります。従いまして一般の普通旅館といったような場合でありますれば、多くの場合にサービス料はかからないのじゃないかと思います。しかしホテル経営のような場合でありますと、先ほど前段に申し上げたような事例に当ると思います。  そこで今お話のありました一体そのサービス料はだれに帰属するのかといった場合に、店でつけ出してくるという場合には、これは少くとも経営者に帰属いたします。経営者がこれをどういうふうに使うかは、あたかも席料をどう使うか、飲食代をどう使うかというのと同じ問題だろうと思います。ただ任意に女中さんにあげるものはこれはあるいはそのまま女中さんに全部帰属するかもしれませんけれども、あるいは女中さん仲間でその一部を出し合ってお互いの相互扶助に当てているところもあるだろうと思います。まあいずれにしましても多くの場合それが経営者に帰属することは割に少いのじゃないか、こういうふうに考えます。  それからもう一つ、サービス料自体に課税することはおかしいじゃないか、こういうお尋ねでございますが、実はサービス料といいましても普通旅館のような場合の女中さんのサービスと申しますと、全く単におぜんを運んでくるという程度であって、そういう店ではサービスは一定割合という要求の仕方はしないと思います。従って大ていの場合課税されないと思います。しかし旅館でも温泉地等の旅館になりますと料理店を兼ねておるのがございます。そういうところに参りますと、そこの女中さんが宴会にはべって一般の芸妓、酌婦と似たような行為をする場合もあるわけでございます。こういったような場合のサービス料の問題もございます。またまるで店が変りまして、キャバレーとかカフェーとかいうところのサービス料の問題もあるわけであります。一がいにサービス料という名前で全部をやめるというわけにはいかない、やはりその中には遊興、あるいは宿泊、飲食の対価と見らるべきものもあるわけであります。その辺のところは先ほど来申し上げておりますような任意のものであるかいなかによって区分するようにいたしておるのであります。
  82. 西村力弥

    西村(力)委員 サービス料は宿泊飲食の対価だ、こういうようなことはあなた方の勝手な解釈ではないかと思うのです。お酒一本飲んでみればおかん代から何から、そして場所代から、そこら辺の居酒屋で飲むよりうんと高くつくでしょう。それから宿泊だって、旅館としてはその食事の費用、あるいはその備品その他の償却、あるいはそのほか税金の関係、すべてを勘案して一定料金というものを作るのであって、その宿泊飲食の対価というものはそこでちょんになる。そのほかサービス料がそれに加わるのだから、やはりこれはその次に従業員がサービスをする労働に対する対価として当然サービス料がつけられておるのだ、こういうのが当りまえであって、旅館が宿泊料をきめるときにその償却やさまざまのものをやっていって、それにサービスをプラスしてというような考え方は、これは少し一方的ではないか、こういう工合に私たちは感ずるのです。あなた方がそう考えるのには、考えるだけの一つの、宿泊飲食の対価としてそのサービスを見るという基礎があるのでございますか。あなた方がそういう場合にサービス料に課税する、これは宿泊と飲食の対価だというふうに結論づける一つの根拠というのはどういうところにあるのですか。
  83. 細郷道一

    細郷説明員 遊興飲食税についての規定でありますが、地方税法の百十三条二項に、「料金とは、何らの名義をもってするを問わず、遊興、飲食及び宿泊並びにその他の利用行為について、その対価又は負担として支払うべき金額」、こういう規定があるわけであります。この解釈といたしまして、先ほど申し上げましたように、対価として払わるべきものは課税標準たる料金になる。従いましてお客さんがある店に入って、一割のサービス料を要求される。それを払わなければともかくそこで料金を払ったことにならないのだというような仕組みの店でありますれば、やはりお客さんにとってみますれば、食べ物なら食べ物の料金の一割増しというものが、その店での消費料金になるわけであります。お客さんはそれを払わなければ、それは債務として残るか、あるいは突き出されるか、どちらかということになるだろうと思います。従いましてそういうような区分によって対価として支払わなければならないものについてだけ、サービス料もそれを課税の標準たる料金にするというふうにいたしております。
  84. 西村力弥

    西村(力)委員 税法はその通りでしょうけれども、また払わなければ突き出されるとか、債務がそこに発生するとかいうようなことは、現状はその通りだと思います。しかしそういう考え方が法にあろうと何であろうと、改められるべきではないかということです。サービス料はあくまでも従業員に帰属する、従業員のサービス、労働に対する対価であるという考え方に改められなければならぬのではないかということです。現在の法がそうなっておるからそうしておるのだというような御説明ばかりではなく、そういう遊興飲食税のかけ方の問題として、それは検討を要する問題である。そういう工合にお考えになれませんか。
  85. 細郷道一

    細郷説明員 サービス料が従業員への給付と言えるかどうかについてはいろいろお店によって実は違うのではないかと思っております。お客の出したサービス料がまるまる従業員に素通りをしていくところもあるいはあるかもしれませんが、今申し上げましたように、つけ出してお客に一割増しを堂々と請求するというような店でありますと、むしろ必ずしも従業員にいかず、それは他の飲食遊興代と込みになって従業員に対する給与等は支払われていくのではないか。場合によっては、扱い高によります歩合というような問題は別途に起るかもしれませんけれども、それはむしろ回数その他の問題になると思います。  それからこれに対する税金でございますが、この税負担は申し上げるまでもなく消費者が払うわけであります。宿泊をする人が払うわけでございますので、別にその従業者がその分を負担するという形になっていないのでございます。そういったふうでサービス料についてはお尋ねのように問題がないとは私ども思っておりません。先ほど申しましたようないろいろな業態を通じて俗にサービス料と呼ばれておりますが、遊興面におけるサービス料もありますれば、非常に素朴なホテルにおけるサービス料もあるかと思いますが、その辺について私どもも実はかねてからいろいろ検討はいたしておりますが、なかなかうまい線が出かねているというのが現状であります。しかしそういった点については御質問の御趣旨もありますので、私どももなお今後検討を続けて参りたい、こういうふうに思っております。
  86. 西村力弥

    西村(力)委員 私がこう主張しているのは、サービス料だけが労働者の取り前であって、使用者はそのほか何ら考える必要はないという工合にとられると非常に困ることなんです。その点ははっきり申し上げておきます。もちろん使用者である限りサービス料だけで一人の人間を使って満足だというふうに考えられたんではとんでもないことで、そういうことは許されないことだと思うのです。ただ現状から言うて、そのサービス料さえもピンはねされているという実例が非常に多いのです。ですからこのサービス料というものの考え方をサービスに対する対価であるのだ、旅館経営に対してそういうものからはじいたものではないのだ、ということをもう少し明確にされることが必要ではないだろうかと私は考えておるわけです。その辺は十分御検討願いたいと思います。
  87. 岡本隆一

    ○岡本委員 関連して。ただいまのサービス料の問題ですが、これは発生の過程から見ていったらあなたとおのずから違った考え方が出てくると思うのです。というのは、今までお茶代とか女中に対する心づけを幾ら置こうかということで、客は非常に判断に苦しんだわけです。そこでそういう客の判断をわずらわすことが営業上かしこくない、それよりも明朗に一割なら一割とポンと打ち出した方がお客さんも歓迎するだろうという、客に対する旅館の一つのサービスの形態としてサービス料一割という制度が発生してきたのです。そういう観点から言うなれば、このサービス料は当然従業員のサービス行為に対して支払われる対価であって、旅館側の所得になるべき筋合いのものではない。そういう形でサービス料があるということが、結局今日旅館の従業員たちの健康保険への加入を困難ならしめている一つ理由である。というのはサービス料はそういう形のものだから完全な能率給なんです。旅館のほとんどといいますか、何割かは女中や男衆、風呂番だとか呼び込みに行く番頭さんという人に対して全然給料を出さない。そしてサービス料だけでもって全部の給与に充てているものすらあるわけです。従って、それらの従業員に対しては旅館から給料を出していないから標準報酬というもののきめどころがない。そのことが健康保険への加入を制度的に困難ならしめていた理由であると私は思うのです。あなたの今のお説のように、それはもう旅館の取るものであるから、それをどのように使おうとそれは経営者の自由である、従って、その中から給料を支払い、人件費をまかなって、残ったものは経営者が取っておけばよい、こういうことであれば、そういう業態の健康保険への加入の困難の理由が相当薄らいでくると思うのです。従って、あなたのようにそれが課税対象になってくるといわれるなら、保険局の方で、それに対して標準報酬がきまるし、その他非常に移動しやすいという理由もあるしょうが、今の特例として加入を何した場合に拒まれる何はないわけです。その点の解釈が相当違うと思うのですが、あなたの見解をもう一度伺いたい。
  88. 細郷道一

    細郷説明員 おっしゃる通り、旅館に行って何ぼチップを出したらよいかお客さんが非常に悩んでおったのが、だんだん合理化されて行って、いわばドライに行けるということになってきておるのございます。従いまして、そういう点からは御指摘のように、それに対して課税することはおかしいじゃないかということも一声えるのでございますが、遊興飲食税自体の税としての性格はどういうものか御説明するまでもないわけでありますけれども、やはりそこで行為をした人に税金を負担してもらう、こういう形になっておるわけであります。行為をしてその対価を払わなければちょっとその店から出て来れぬというような料金は少くとも課税対象になるのではなかろうか。そうして、しかも行為をする人が負担すべきではないか。税の性格から考えてみますと、お説のような考えをそのまま税の面に取り入れるということはちょっとむずかしいではないか。実は先ほども申し上げましたように、サービス料といってもいろいろございます。まさに遊興的なサービス料もあるわけでございます。その辺の限界について私どもいろいろ関係の旅館の方などの意見も聞いたりして研究をしてみたのでありますが、どうもうまい案が出ないので検討を続けたいということを申し上げたわけであります。
  89. 岡本隆一

    ○岡本委員 われわれが問題にしておるのは、遊興的なサービスをした場合のサービス料と普通の観光客もしくは宿泊客が支払う料金の場合で、それはおのずから変ってくると思う。そういう場合のサービス料は決して一割とかそんな安いものではない。かりにそういうものが一割というようなことがあったとしても、それは他の部門の料理の代金だとかそういうものの中でサービス料を先に取って、しかもサービス料を請求書につけてくる限りにおいてはそのような部門に対してつけてきているのではなくて、さっきも発生の過程で申したように、私の方は心づけの標準をこの程度に置いておりますからそれでお払い願います、こういう意味である。だから、あなたが今おっしゃるように、かりにサービスが悪くて客の方で拒否した場合、私は拒否し得るものだと思うのです。私は拒否できる筋合いのものがサービス料だと思う。その辺そういうふうな心臓を持つか持たないかで話がわかれてきますが、しかしあなたのように、あのサービス料というものは対価として当然支払われるべきもので、しかも、もしそれを拒否した場合は債権が発生するというふうなことは、あのサービス料に対する概念の上で行き過ぎであると考えますが、やはりあなたはそのように主張されますか。
  90. 細郷道一

    細郷説明員 あまり同じことを何度も繰り返して恐縮でございますけれども、やはりお客として払わなければならないという義務観を感ずる、おっしゃるようにサービス料だけは拒否するといいましても、たとえば帝国ホテルに行ってサービス料をつけ出されてきて、おれはどうもこれだけは要らないと言えるかどうかも問題があるわけでございます。その辺になって参りますと、やはり一般の社会通念として、あそこに入ればサービス料はつけられるのだ、こういうことで多くの場合お客さんというものはそういうことを意識して入るのじゃないだろうか、そうなって参りますと、遊興飲食税のような行為税に対する税負担としましては、お客さんとしても意識して払っていってもらおう、こういう税の建前に立っておるわけでございます。先ほどの旅館やホテルの経営の合理化といった一つ方向とは確かにからみ合って問題を残しておるわけではございます。ただお話にありましたように、いわゆる遊興面のサービスと普通旅館のサービスとは違うじゃないか、これは私どももそうだろうと思っております。しかしそういった二つの間でありますと、割合はっきりした区分ができますけれども、旅館兼割烹といったような場合でありますと、なかなかその区分がむずかしいのでございます。そういった面もございましたりして、私どもも今割り切れないでいる、こういう状態であります。
  91. 岡本隆一

    ○岡本委員 議論すればこれは堂々めぐりになると思うのです。ただ私たちの希望することは、たとえば自治庁のものの考え方、あるいは片一方でそういうふうなものに依存していく場合に、今度の最低賃金法ができました場合に、どこまでが給与であり、どこまでが給与でないのか、給与があるのかないのか、その給与の基準の置き方というものはサービス料というふうな形の制度が残っている限り、チップ制度というものが残っている限り、認定の置きどころがないわけであります。ところでまた旅館の不明朗な経営の中で、しかも小さい、経営の困難な旅館では、非常に従業員に対する給与というものは低いのです。だからそういう点で旅館経営というものをもっと古い習慣から脱して新しい方向へ持っていくように、基準局であるとかあるいはまた労働省あるいは自治庁、厚生省、みんなが協力してその従業員生活を安定させる方向へ持っていくように希望いたしておきたいと思います。
  92. 西村力弥

    西村(力)委員 警察庁の方にお尋ねしますが、この前参議院の法務委員会でもちょっと問題がありまして、この間山形の県会でも問題がありましたが、参議院赤松常子女史が山形に参りましたときに、従業員全員の集合を願って、そして数日前から、大へんいい機会であるから四月一日から完全実施になる売春防止法の問題について説明してもらいたいと要請しておいたのですが、ところが忙しいからと称して、当日もお願いしたのですがとうとう来なかったということなんです。そのことについて、まあ事情があるのでしょうけれども、中川刑事部長は、小さい警察であるからそれはできなかったというようなことを言っておりますけれども、そういうチャンスというものは最大に活用すべきが当然ではないかと思うのです。警察関係としましては、申すまでもなくひっくくるだけが能じゃなくて、犯罪予防の努力というものは警察の当然の、また重点を置かなければならぬ仕事だろうと思うのです。これは山形の県会でも問題になっておりますが、あなたはそのことを御承知でありますか。
  93. 増井正次郎

    ○増井説明員 ただいまの山形県の会合に係の者が出席しなかったのはどういうわけかというお話ですが、その後私どもの方が県の本部につきまして調査をいたしたのであります。その結果、ちょうど折あしく、その会合のありました日に他の事件があったり何かして、その方へ係の者が行かねばならぬということで出席できなかったような事情でございまして、この点はまことに申しわけないと存じております。私どもといたしましては、せっかくの機会でございますので、そういったような会合がございますならば、できるだけこれに出席いたしまして、なるべく法の趣旨徹底をはかるというふうなことを講ずることは当然だろうと考えております。今後ともこういう点につきましては十分注意して参りたいと思います。
  94. 西村力弥

    西村(力)委員 そういう場合に、予定しないというか、計画外の会合というものを利用することも当然なんですが、そのほかに、もう目の先に迫っている完全実施を前にして、警察としては相当な熱意を持って、これを予防するためのオルグ計画というか、そういう計画を、各府県ごとに当然持ってやるべきだと思うのですが、そういうことに対する警察庁の指導というか指示というか、そういうものはどうなっておりますか。
  95. 増井正次郎

    ○増井説明員 売春防止法の施行に伴う全体の問題でございますが、もちろん私どもといたしましては、法の趣旨徹底をあらゆる機会を通じまして、認識していただくということが必要であろうかと思っております。この問題につきましては、各府県本部におかれましても、府県の知事さんを中心といたしました売春防止対策本部というような機構もかねてからでき上っております。その機構と関連いたしまして、労働省であるとか厚生省であるとか関係各省各方面の方々の会合もいろいろと持っていただきまして、この法の施行に伴いまする法の趣旨の周知徹底、あるいは保護措置の関係、転廃業問題、そういうものを総合的に進めていただくように御配慮願っております。私どもといたしましても、その本部の行う施策の一環といたしまして、できるだけその趣旨に沿って関係各省とも連絡をとって参ろう、こう考えております。
  96. 西村力弥

    西村(力)委員 今三月ですが、事の責任を県の売春対策本部に全部移して、それに警察が参加するという、こういう姿の異なった方法をとっていらっしゃるが、そういう問題については、もう今までにとっくに相当の成績というか、実績というか、そういうものが積まれていなければならないのじゃないかと思う。ところが今申した上ノ山では一回もそういう計画が行われないで、四月一日からどうなるのだろうかというわけで、旅館主も従業員も警察の手というものがどういう工合に目を光らせてくるだろうかということを不安に思っている。だから来てもらいたいというようなことになったのに来れなかったということなんです。そういう工合に、今おっしゃったような自主的な計画に基いて今もうすでにこれだけ仕事を進めているということが私たちには見られないのです。今仰せられたようなことについては、いつごろまでに重点的に全面的にされようとなさっていらっしゃるのか。四月一日前に全部完了するという方向が一番正しかったのじゃないかと思うのですが、今そういう段階だとするならば、いつごろまでにそういうことを急速に行おうとなさるのだろうか、それはどういう工合に考えていますか。
  97. 増井正次郎

    ○増井説明員 売春防止法の全面施行という問題を考えまして四月一日からの対策という問題を考えますならば、先生のお話のように、周知徹底の方策あるいは指導方法というものを現在までに相当打ち出しておるべきであろうと考えるのです。繰り返すようでございますけれども、その点につきましてはかねがね、対策本部の行政指導というものを中心としてまず先行させていただきさまして、警察といたしましては、取締りを通じ、また行政指導の面にも側面的に協力しながら、四月一日からの施行を円滑にして参ろう、こういうことで努力して参ってきておるわけであります。その間そういう面の行き方につきまして、山形県の場合若干御不信を買うような点がありますのはまことに遺憾と存じます。なお今後におきましても、この方法の四月一日からの切りかえが円滑に参りますことを建前といたしておりますが、私どもといたしましては県本部の指導という場合にならいまして指導していただくなり、取締りの面を行う、こんなように考えております。
  98. 西村力弥

    西村(力)委員 そうしますとそういう啓発宣伝を行うということであるならば、四月以降は取締りが重点じゃなくて、啓発指導が重点になる、そんな工合に考えておるのですか。
  99. 増井正次郎

    ○増井説明員 啓発指導も大事でございますし、また当然四月一日からは法が全面施行になっておりますので、取締りも同時にやっていかなければならない、こう考えております。しかし取締りという問題も、私どもは当然法の全面施行を前提といたしております以上、一そうこの方面に努力して参るわけでありますが、他方さっきのお話のように徹底しておらない、まだ十分法の趣旨がわかっておらないという向きの面におきましては、行政指導の方で大いに一つやっていきたい、そういうことをお願いしておるわけであります。
  100. 西村力弥

    西村(力)委員 取締りによって法の趣旨を知らしめていくというような立場はあんまり感心しないんじゃないか。私は何も取締りをすることが悪いというんじゃない。大いに十分にやっていただきたい。それはあくまでも公正にやらなければならないと思うんですが、従業員とか旅館主に聞いてみると、この法がどういう工合に四月一日になるのかということに対する認識がほとんどないんですよ。そういうところに、知らないがゆえに法は免れないといえばそれきりでございますけれども、取締りをすることによって法を知らしめていくという方法は、警察の立場としてもあまり好ましくないと私は思うんです。法が実施された限りにおいて取り締らなければならぬ場合においては取り締るけれども、やっぱり一つ指導啓発ということを重点とした方向をとらるべきであろうと思う。それで今度は取締りをする場合、一体どうやって取り締るのだろうかということを私たちは非常に疑問に思っている。かってだと臨検とかいうことでどやどや何でもやってきたのですけれども、そういうことは簡単には許されないことであろうと思う。また風評に基いて、あそこはこんな風評だそうだから一つ乗り込んでいけ、こんなような工合にもできないであろうし、一体今後の取締りを具体的にはどういう工合にやろうとなさっておるのか、警察とかその筋の取締りはどうしようとするのか、それを一つ具体的にお話を願いたいと思うのです。
  101. 増井正次郎

    ○増井説明員 売春防止法に掲げておりまする各条項の行為について、違反があった場合の取締りをいかにすべきかという問題がございますが、やはりどもといたしましては、法の趣旨というものが、一つは勧誘を行うような、要保護女子の人々の取締りについては、保護更正ということを念頭に置いて扱うということが、まず法にうたわれておる。さらに二つの問題といたしましては、売春行為を助長させるような行為につきましては、厳重にこれを規制して参る、大きく二つの面を法は考えておるわけでございまして、その場合におきましては、違反があった場合の捜査については、どこまでもやはり個人の人権を尊重して、これを犯すようなことがあってはならないということは、法の中にもはっきりと明言されておる通りであります。そういう線をよく考えながら、私どもといたしましては、あくまでも捜査は合理的にしかも適正に行なっていく、こういうふうに考えておる次第でございます。先ほどお話のありましたような、単なる風評とか、あるいは臨検と申しますか、そういうようなことだけで捜査を進めて参るということはあってはならないと思うのであります。十分その点は人権あるいは取扱いにつきましても配慮いたしまして、一般の方々の御協力によって、その信頼を裏切らないような捜査の進め方をして参りたい、こう考えております。
  102. 西村力弥

    西村(力)委員 その通りでしょうけれども、それは言葉でありまして、具体的にいいまして、二人連れのお客が来た。番頭が服装を見るとどうも連れ込みのような工合に見えるという場合、しかしそれははっきりと売買恋愛というふうに断定もできない。こういうようなときにこれをあげるべきかどうかという問題になると、非常にデリケートな問題になってくる。はっきりこれは常習犯ということがわかっておれば、番頭はあれすることになるでしょうが、それを知っておったならば、情を知ってということになるから、これはやはり取締りの対象になる。しかし全然知らないのが、たとえはげ頭と若い女と二人で来たって、これはやはり任意恋愛かもしれないから、どうも処置ないということになっても因る。そういう場合に番頭が情を知ってという工合に追い打ちをかけられてしまうのではないかとか、そういう具体的な問題については非常にわからぬ点があるのですよ。心がまえというか、言葉はそれでよいのだけれども。それから私長いこと警察に御厄介になった場合、いろいろおまわりさんたちの話を聞いてみると、夜な夜な監視にきた人の話になるのですが、そういう関係に対する言動は相当ひどいものだった。これは今は民主警察だからそうでないかもしれないが、そういうことが将来行われないと簡単に保証はできない。こういう売春法実施に伴って、個人とか、あるいは旅館業主とかいうものが、警察との関係においてちょっとまずいというような場合において、下手なことをされる危険性も十分にあるわけですよ。そういうことが最も公正に行われるという保証を、やはり警察庁の方では考究すべきではないか、こういう工合に思われる。そこらについても十分に検討せられまして、法は厳正であるけれども、しかしそこに一切の私心というもの、不公正なことがないような工合に、こうやってわれわれはコントロールを加えていくのだというところまで、検討をされた一つ指導というものが、業者に行われるべきではないかと思うのです。そうでなければ、非常に不安を持っておるわけなんです。こういう点について具体的にどうなさるか、これを一つ御研究になって、その指導を進めていただく必要があるのではないか、こう考えるわけなんです。その点に関してお考えをお聞きいたしたい。  それだけにして私の質問を終りたいと思いますが、最後にとにかく今まで数回にわたって、旅館が健全明朗に運営されるためにそこの従業員生活あるいは福祉あるいは人権が守られなければならないという方向が強く論議されておるわけなんでございますが、そういう面について政府当局もはっきりした立場をもって、これから積極性ある打ち出し方をぜひお願いしたいと思います。答弁があればお聞きしたいと思います。
  103. 増井正次郎

    ○増井説明員 捜査の進め方あるいは捜査のやり方等につきましては、先生の御趣旨のような事柄を十分に検討いたしまして、この法律の今後の取締りの問題について遺憾のないように努力をいたしたいと考えております。特に教養、その他捜査に従事する人の人選の問題、いろいろあろうかと思いますので、そういう点にも十分配慮いたして参りたいと考えております。
  104. 森山欽司

    森山委員長 赤松勇君。
  105. 赤松勇

    赤松委員 基準局長が参議院の予算の分科会に出ておられておられませんから、遺憾ながら労働基準に関する質問は後日に延ばします。それから本会議も四時半からということで、なお同僚長谷川委員質問の予定でございますから、簡単に二、三点だけお尋ねしておきたいと思います。  第一の点は、この旅館業法にも関係がありますが、先般本委員会におきまして環境衛生適正化に関する法律が通りまして、ただいま鋭意その全国団体の設立に努力中であります。当時本委員会におきましては、自民、社会両党の強い要望によりまして適正基準をば高めていく、その施設の改善等をばはかる資金的なめんどうを見ていこう、そういう資金面の援助をば、特に従来はややもすればサービス業関係はその対象の外に置かれておりましたが、今回は他の中小企業団体と同じようにこれを融資の基準の中に入れて積極的にやっていこうということが、たしか通産、厚生両次官の交換公文によって当時約束をされておったと思うのであります。結局旅館の近代化というものをやりませんと、従業員の待遇の問題もひっきょうよくならない。しかし今日差し迫った問題は近代化のための資金が不足をしておる。こういう点についてひとり当時問題になりました六業種だけでなくて、食品関係等につきましても、こういう面についての考慮が十分なされておるかどうか、この点について厚生当局の御方針をばお伺いしたいと思います。
  106. 尾村偉久

    ○尾村政府委員 環衛同業組合に対する資金のあっせんでございますが、これは積極的にやっておりまして、われわれの方で最も確実でやり得るのが、商工中金と中小企業金融公庫、この資金あっせんは、これらは公的な特殊な団体同士でありますので、もつぱら集中してこれと折衝をやっております。ただこのうち中小企業金融公庫の方は現在例の中小企業団体法の方の資金あっせんとちょうどこれは伴うものでございますので、こちらに並行して取りきめつつありますので、まだ最終段階に達しておりませんが、商工中央金庫の方は大体の話し合いができ上りまして、特に今のお話の中の飲食店につきまして一番難点があったのでございますが、このうち風俗営業法の対象になっております、いわゆるキャバレーとかいうようなもので同業組合になっておるものは、まだこれはどうしても話し合いがつきませんので、不可能でございますが、ほんとうに大衆に関係のある大衆食堂、すなわち一般飲食店、これは同業組合の飲食店関係を四種類に分けましたが、そのうちの今の風俗営業を兼ねたものを除いた残りのものは、対象になるように大体話し合いがつきました。かつその融資すべき基準、すなわち対象でございますが、もちろん衛生措置を向上するということが一つの大目的でございますので、すなわち法令に規定されております衛生あるいは防火設備、それからこれに若干直接の衛生ではございませんが、広い意味の旅館の宿泊等の例をとりますれば、快適に宿泊ができるというような条例等できめてあります設備基準、あるいは条例でなくてももうすでに公けに府県等が通達を出しておるようなものは、これは第一等にそれらの改善については融資のあっせんをする。それから一番難点のありましたその他の増改築すなわちお客を一定度以上こなさないと経営がうまくいかぬ、単価が高くついて客にも迷惑をかける、すなわち健全な経営合理化に必要な新増築あるいは運転資金、これをも融資するということで大体話し合いがつきました。商工中金についてはさような段階でございます。中小企業の方につきましてもできるだけかような線へ近づけたいということでわれわれの方でもやっておりますが、これは団体法との関連でどこまでいきますか、まだ折衝の余地が十分ある、かように存じております。
  107. 赤松勇

    赤松委員 やはり重要度の問題が問題になると思うのです。この環境衛生法の対象になる団体と申しましても、しからば今問題になっておりまする旅館でも、あるいは理容でも、キャバレーなどと対照しますと、おのずからどちらをとるかということになりますと、その重要度が異なってくると私は思うのです。従いまして今の方針はいいと思います。ただ問題はどのように実行してくれるかという問題だと思うのです。業者間におきましてはせっかく法律は通ったけれども何もならないのじゃないか。これは中小企業団体法の不況要件の問題と違いまして、直ちに業者自身が衛生基準を高めるための諸方策をば講ずることになっているわけです。そこで本年度の財政投融資の中の中小企業関係の金融のワクは、まだこれは国会を通過しておりませんけれども政府原案の中で、これはおそらくお話し合いになったと思うのでございますけれども、今までは融資基準からはずされておったと思うのです。今度はその融資の基準の中に入ったのかどうかということが一つ。もう一つは総ワク、この対象になりまする環境衛生諸団体に対しまして総ワク幾らくらいのものをさくかということです。こういう点についてはどうでしょうか。
  108. 尾村偉久

    ○尾村政府委員 従来入っておらなかった融資基準が、今回は商工中金の方は入ります。先ほど申し上げたような範囲で入ったわけでございます。なおワクの額でございますが、この環境衛生同業組合にどのくらいさくかというワクはまだ確定はいたしておりませんが、ただこれは昨年ああいうふうに法律がまっ先にこういう種類のものではできたので、優先的に尊重するので、その組合から持ち出したものを押えるような事情にはちょっとない。むしろ十分これは今のところ自信がある、こういう回答を得ておるわけでございまして、それには組合がどの程度これの融資を希望しておるかという額と、それから中金側が予定しておる額との突き合せができますと、その点のバランスがわかるのでございますが、まだ全国的に、どの程度この希望がまとまるかということが、お互いにキャッチできませんので、今われわれの方から調査表を回しまして、われわれの方でこれをつかむ、こういうことを、今中央連合会ができたところは、すでに話し合いを始めております。従ってワクの点は、的確なことを申し上げられないので遺憾でございますが、大体そういう傾向でございます。なお商工中金については組合として融資を受けるということを原則にするということで話がついておりますので、これは一そう確実性が高まる、こう思っております。
  109. 赤松勇

    赤松委員 その組合単位で融資する場合には、中央が対象になるのでございますか。地方ですか。それはどうなんです。
  110. 尾村偉久

    ○尾村政府委員 これは両方になっております。ただ原則といたしましては、できるだけ地方の県単位の同業組合、これがすべてをまとめやすいわけでございます。中央の連合会というものは、県の組合の代表が一人ずつ出てきてやる、こういう会合になっておるものでございますから、今のような具体的な融資あっせんは、できることにはなっておりますが、非常に促進がおくれるということになりますので、地方中心にまず考えていきたい。なおその場合に、やはり地方の組合単位に中金の出資者になる、これも話し合いはできておりまして、額は少額でもいいから、出資者になった方が、すべてに発言権を持って有利である。こういうことで、これも過般の秋の衛生部長会議のときに、すでに徹底いたしまして、もしできてやるなら、そういう方が有利であるということを、それぞれの業界の方にも流しておるわけでございます。
  111. 赤松勇

    赤松委員 何しろ同業組合の結成がおくれる、というよりは、実は法律通過後まだ幾ばくも日にちがたっておりませんから、無理からぬ話だと思うのですが、意外にも法の施行につれて、危惧しておりましたアウトサイダーというものが、業態によりましては、だんだん自発的に組合に加入いたしまして、あなたたちやわれわれが一番おそれておりました、最悪の場合国家権力を発動させるというような避けなければならぬことが、そういう危険性がだんだんなくなりつつあることは喜ばしいことだと思うのです。しかし反面、アウトサイダーの組織化につれて、やはり資金の問題、あるいは減税その他の問題なども出て参りますが、今お話を聞けば、中金の出資者になるということなども、確かに一つ方法だと思いますが、遺憾ながら、まだ県の段階から下へおりていない状態なんです。というのは、下部の結成がおくれておりますから、そういうことになっておると思うのであります。従って広い意味におきまして、単に料金の問題だけでなく、もっと広くこういう融資の面その他の面で、中小企業の組織化が、結局組織化によってこんなふうに企業自身の近代化がはかられたという成果を、具体的に示していかなければならぬということで、特に内面指導の場合、お願いしたいということが一つです。  もう一つは、これは県段階でいろいろまとまりますが、これを全国的に集めて、それぞれの希望の額を厚生省の方から通産省へということになって参りますと、かなり時間がたつのじゃないだろうか。そこで県段階においても、県の同業組合が中金の出資者になればけっこうなんですが、ならない場合におきましても、直接折衝をして、いろいろ融資の恩典を受ける。その場合、従来の例からいきますと、国のワクがきまっておりませんと、なかなか地方では出さないということがありますので、この点について、特に強く金融関係機関に対して徹底していただきたい、こういうふうに思うわけでございますが、この点はどうですか。
  112. 尾村偉久

    ○尾村政府委員 まず第一に金融のみならず、同業法関係の趣旨の徹底でございますが、これはもう再度衛生部長会議でやりまして、いろいろ説明いたしましたが、その後さらに、今金融等を中心に発展した問題もございますし、先ほどの旅館業法改正等もございますので、あわせまして、一そう趣旨の徹底を具体的にはかりたいと存じます。  なお中金との関連は、お話の通り中央で集めて、それからワクをきめて発動するというのでは、とても時間がかかるので、最初からこれは府県の単位で、府県の同業組合自身と、これに府県の衛生部が応援をいたしまして、中金の出先機関と具体的な折衝をする。こういう指導をいたしておりまして、このためには、われわれの方の指導だけではだめでありますので、中金の本部から地方のそれぞれの出先機関に、もうすでに通達を出しております。昨日また、今度は具体的に、それぞれの出先機関は、できた同業組合の幹部を集めて、連絡をするようにという趣旨を伝達いたしてもらいました。さようなことで、お話の通り地方中心にすみやかにいくような形で進めたい。ただワクの問題は、お話の通り中央で十分融資をするといっておりますが、早くワクを示した方が一そう安心するかと思いますので、これは折衝を急ぐつもりでおります。
  113. 赤松勇

    赤松委員 それではこの点を厚生省に、特に強力に通産省と折衝していただくように希望しておきます。  次に、これは直接旅館に関係はないわけですけれども、旅館の従業員にいたしましても、あるいは環境衛生関係の業態の従業員が、その勤務時間において非常に不規律であるということは、事実だと思います。これは言わなくてもわかっていることだし、先ほど西村君も、強くその点を指摘して、当局の善処を要望したわけでありますけれども、この間も私は労働大臣に、例の神風タクシーの問題で、運輸大臣にまかしておかないで、早く労働省として、たとえば変則八時間問題等についても、もっと積極的な行政指導をやるべきであるということを言いましたら、しっかりやると言っておったが、きのうの新聞を見ると、一人睡眠不足で、過労のために心臓麻痺で死んでしまった。その運転手には高校二年生の子供さんがある。おそらく彼が死亡したことによって、非常に生活が苦しくなるから、そのお嬢さんは、結局学校を中退せざるを得なくなるのだと思うのです。そういうことが、当局がしっかりやる、しっかりやると言いながら、その口の下からそういうような問題が出ているということは、非常に遺憾だと思います。この点は、この問題とは少しはずれておりますけれども、なおあなたから基準局長に、いろいろ取り締るというのではなくて、こういう変則八時間の労働時間の問題等についても、十分検討を加えたいと言っておる口の下から、こういう問題が起きてきているのだから、この点については、運輸大臣等のしろうとにまかせないで、積極的に、内閣にも対策本部があるのだから、その中で、給与の問題ばかりでなく、労働時間にも、一つ検討のメスを加えていただきたいということを、強く言っていただきたいと思います。  それから、これも環境衛生団体の一つでありますが、新聞を見ますと、直営館が二十円値上げするということが報道されている。直営館だから一般の映画館ではないわけです。すなわち、独占六社が直営する館において二十円値上げをする。実は私地方行政委員会におりまして、入場税の問題を取り上げて、当時業者との間に、たとえば入場税を安くする、そのかわり必ず映画館の入場料は下げるという約束をいたしまして、入場税の値下げをやりましたけれども、その後映画館の入場料金は、いささかも改善されない。聞いてみますと、改善されないのは当りまえです。独占六社の手によって、その配給料金は実に六〇%、外国映画に至っては六五%から七〇%ひったくられてしまう。あとの三〇%もしくは三五%で館の経営あるいは従業員への支払い、そのものに充てておる。そういう現状では、やっていけないのが当りまえだろうと思うんです。直営館にあらざる一般零細映画館経営者の問題——今言った配給料金の問題をどうするか。環境衛生に関する法律あるいは中小企業団体法等に非常な期待を映画館関係者が寄せたのは、一つは、独占六社に対する団体交渉をやりたい、またやれる、そういう期待の上に立っておったと思うんです。ところが実際に独占六社との団体交渉ができない。まさに一方的にどんどん配給料金をおっかぶせてくる。大蔵という新東宝の社長は、昔日活館の映画弁士をやっておりまして、日活館を経営しておった人なんですけれども、彼は、明治天皇と何とかという映画で六億もうけたと言われているんですが、さっぱりもうからないから上げるのは当りまえだと言っているんです。こういうように野放図に、もうけほうだいに彼らはもうけておる。しかもそれは一般映画館経営者あるいは勤労大衆の犠牲の上にこういうような莫大なもうけをしておるわけですけれども、この点については公正取引委員会は独禁法違反だと、こういうふうに見ておられるということが新聞に出ている。私も独禁法違反だと思うんです。そこで、われわれは独禁法違反であると考えておりまするが、これに対して公正取引委員会はどういうふうな措置をおとりになるか、これは公取に対する私の質問です。一方厚生当局に対しまして、上映時間の問題が先般も非常に問題になっておった。ところが直営館では、こういうように独占六社が一方的に値上げをやって、そうして大衆の負担を重くしておる。他方においては、映画の配給についてこれまた一般勤労大衆やその他に非常な負担をばしょわせておる。こういう事実を何とごらんになりますか。旅館業法が今問題になっておりますけれども、ある意味でいえば、旅館の中においてもこういう階級格差というものがだんだんできて参りまして、こういうことをほっておきますると、やっぱり独禁法に触れるような大ホテルができて、そうして中小の経営者がなぎ倒されていくことが出てくるんです。これはひとり旅館業、映画館だけじゃありませんよ。おそらく今これに関連する環境衛生関係の中におきましても、そういうものがどんどん出てきておる。アイスクリームの面でいえば、明治、森永はやはり独占ですよ。これがいろいろなものを配給しているので、もう店ではいろいろなものを製造したのでは引き合わない。むしろ明治、森永から買って、マージンをとって売らざるを得ない。そういうところまでどんどん追い込まれつつある。ですから僕らは一方では明治、森永に対抗するために、業者が自主的に団結して、自分で生産手段を持って対抗しなさい、こういうような指導をやっておりますけれども、これなどはこの法律と無関係のものじゃありません。重大な問題ですが、公正取引委員会及び厚生当局のこれに対する見解をお聞きしたい。これは全体が不安を持っておる問題なんです。どうですか。
  114. 八尋昇

    ○八尋説明員 ただいまお話しになりました直営館の値上げの問題でございますが、これは先般来十分聞き及んでおりまして、目下調べるように準備をしておりますが、具体的にはまだ調べておりません。なおこれが独禁法違反になるかどうか、この点新聞で、違反になるというようなお話でございましたが、六社が共同行為をやりました結果、競争が実質的に制限されるということがはっきりいたしますと、これは独占禁止法違反になるわけですが、今のところ調べがまだいっておりませんのではっきり申し上げかねるわけであります。
  115. 尾村偉久

    ○尾村政府委員 ただいま直営館の入場料の値上げ問題は、われわれも新聞紙あるいは話で聞いておりますが、一番心配いたしましたのは、同業組合として直営館以外全部入っておりますが、これ全部が取りきめでもやったのではないか、そういたしますと組合はできましたが、適正化規程等はまだ認可も申請しておらぬのにやりますと、違反になるというので調べましたが、これは同業組合とは全然無関係に直営館がその系列だけで独自にやった、こういうことで組合としては関知しておらぬということでございますので、この点はなかったわけでございます。ただ先ほどのお話の、全般的に見まして、同業組合としてやるであろうと期待しておったと反対の現象が実はあるわけです。同業組合としてやりますのは、むしろ大企業等がダンピングをやる、あるいは特殊な人間がダンピングをやって客を奪うということに対して、一定の最低料金というふうなものがむしろきまってくるのではないか、それによりましてダンピングを防ぐということが起ってくるのじゃないかと思っておりましたところが、今度は逆に上の方の、入浴料金のような最高を何とか押えないといかぬという問題になってきました。これは同業組合の一般的に予想しておりますことと実は反対のことでございますので、同業組合として果して上を押える方がうまく進むかどうか、中小企業中心の組合がうまくやるという形の場合に直接出てくるかどうか、ちょっと疑問に思っております。従いまして、そういうふうな中に入っておる大きな系列のいわゆる大企業に対しては、組合に入っておればその館の数で押してどうするか、歩調を合せるという方へこれは出てくるのではないか、かように期待しておるわけであります。  それから上映時間の問題でやはり直営の系列会社と一般の小興行者との間の問題があったわけです。これも実は逆のような形になっておりまして、われわれの方から言いますと二時間半という線を一度閣議決定で打ち出しておりますが、衛生の面から言うとあまり長くない方がいい、従ってこれには大会社がそれに沿うならば配給するという形でむしろ沿ったようになっております。これに対して小さい館は抵抗ができぬ、お客を集めるためにはむしろ何本もやって、長時間同じ料金でやって、衛生とは逆な立場が一般の小館から出ており、取扱いは実は困ったわけであります。むしろわれわれの方ではさような意味のダンピング的な営業方法、お客の衛生はどうでもいいからうんと盛りだくさんにやっておるということは、むしろ申し合せでいわゆる衛生法の規制で出てくるのではないか、こう期待しているわけでございます。この点も現在起りつつあります大企業との関連で非常に判断に苦しんでおる現状でございます。
  116. 赤松勇

    赤松委員 法の運営上いろいろな矛盾が出てくると思う。確かに環衛法とは別個の形でこういうものが出てきた。そして直営館が値上げになることが、中小の映画館経営者にとって利益になるか不利益になるか、にわかに判断できないと思うんです。そういう問題は抜きにして消費者の立場に立ちますと、消費者に二十円の犠牲が転嫁されてくるということは大きな問題だと思う。もう一つの、さっき言った配給料金の問題は、何としても大きな問題です。この点について今配給料金を押えることはできぬでしょうけれども、たとえば今法が期待しているように、独占資本の手にまかさないように何らかの対抗策を講ずるような方法もまた考慮しなければならぬ。この点特に厚生省に善処されるように私は希望しておきます。公取の方はきょう国会委員長を任命するわけですけれども、おそらく問題なく任命されるでしょうが、きょうこのような議論が出たということを新しい委員長によく報告して、さらに公取として至急これに対する方針をきめて本委員会に報告してもらいたい。これを強く私は希望しておきます。なお、委員長からこの点を公取の方に希望しておいていただきたい、こう思います。
  117. 八尋昇

    ○八尋説明員 ただいまお話の通り十分に委員長に報告して措置をいたします。
  118. 森山欽司

    森山委員長 長谷川保君。
  119. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 社会福祉事業の経費が非常に不足をしておるというように一般的に言われておるのであります。厚生省におかれてはそれらの点についてどう考えておるか、まずその点から伺いたい。
  120. 安田巖

    ○安田(巖)政府委員 お尋ねの社会福祉事業の経費は御承知のように社会局関係、児童局関係でそれぞれ計算をして現在出しておるわけでありますが、毎年々々予算の時期になってそういった問題が出て参りますから、私どももできるだけそういう点については改善をして参りたいと考えておる次第でございます。
  121. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 時間もありませんから、率直簡単に伺いたいと思うのでありますが、御承知のように、社会福祉事業の経営に要する費用の不足を現実においては、一方では共同募金に負うている。一方においてはやらなければならぬ仕事があるけれどもできないからやらないというようなことにしたり、またあるいはいよいよやむを得ずして措置費なり事務費なりのごまかしをやるということになっているのが事実であります。まず、今の社会福祉事業の事務費、措置費その他の経費の不足に対しまして、共同募金との関係についてはどうお考えになっているか。
  122. 安田巖

    ○安田(巖)政府委員 今の社会福祉事業、これは民間の社会福祉事業施設のことだと思うのでありますけれども、これをどういうふうに考えるか、いろいろ考え方があろうかと思います。現在のところそれぞれ必要な経費を一応出しまして、それで必ずしも十分とは申しかねるかもしれませんけれども、一応の措置はそれでとれるというふうな考え方できておるわけであります。しかし実際問題として個々の施設をとってみますと、それぞれいろいろまだ経費が要る場合もあるわけでありまして、そういうものを共同募金で補うという考え方でございます。共同募金が始まったときには、御承知のように、民間の社会福祉事業施設というものに対する経費の不足を補うためということであったわけでありますけれども、その後民間の社会福祉事業施設がどんどんふえて参りまして、同時にまた共同募金の方の募集額というものはそれほど上って参りませんので、そこにまたいろいろな悩みがあるわけでございます。最近においてはお年玉つきの郵便はがきに寄付金をつけるというようなことで、その辺のことも若干潤っているのではないかというふうに考えております。
  123. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 公設の社会福祉事業にしても、あるいはまた民間の私営の社会福祉事業にしても、そこに収容し、保護する、あるいはそこで行います事業というものはやはり国が責任を負うということは、日本の憲法から申しましても当然のことだと思うのです。それを今のような共同募金にたよらなければできないような行き方をするとか、あるいは国の方で出します事務費、措置費等では足りないから、さらに別の方法でやらなければならない。そうでなければ最低も守られないということでは根本的に間違いだと思う。共同募金とか、その他それぞれの事業が募金をするというようなことは、より水準の高いものを行うためにそれをプラスして用うるということであればわかりますけれども、国が措置いたしまするところの措置費あるいは事務費というようなものでやれないという現状であってはならないと思うのですけれども、今日の事情というものはそれでやれるというお考えであるのか、先ほど予算の時期になると心配すると言われましたけれども、事実私が見てもやれないというようなものもあると思いますが、その点いかがでしょうか。
  124. 安田巖

    ○安田(巖)政府委員 民間の社会福祉事業が現在の措置費なり、あるいは事務費でやれるかやれないかということでございますが、これははなはだ微妙な問題でございまして、私の答弁も非常にむずかしいのでございますが、とにかく現在の措置費で計算をいたしまして、一応の経営の基礎はそれによって与えられているというふうに考えているわけでございます。もちろん施設における従業員でありますとか、あるいは食費の問題でありますとか、その他いろいろな問題があると思います。そういうものをいろいろ改正しなければならぬといったようなこともありますけれども、一応はそういうような形で経営の基礎がそれによって保障を与えられているというふうな考え方でいるわけでございます。
  125. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 それでは具体的にいろいろ伺ってみたいと思います。  先日、ある養老院に参りました。ところがそこは多分四級地になると思うのでありますが、葬祭料が二千四百円ということでありました。それで棺おけや骨つぼが買えないということです。具体的にやれるように措置してやっているつもりだというお話でありますが、一体葬祭料は幾らか、また棺おけや骨つぼは幾らに見積ってあったのか、まず伺ってみたいと思います。
  126. 安田巖

    ○安田(巖)政府委員 葬祭扶助の基準額は、一級地と二級地が大人で三千円、三級地が二千七百円、四級地が二千四百円、子供の場合では一級地と二級地が二千四百円、三級地が二千百円、四級地が一千九百円、こういう基準でございます。
  127. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 ここは四級地でありますが、火葬場は市のところへ持っていくこともありますし、どうしても五千円かかる。旅路の果ての方が葬式もできないということでは困るのでありまして、今の二千四百円というのも、たとえば棺おけとか骨つぼとかの内訳をこまかく積算して出てきたと思うのですが、どういうきめ方でやっているのか伺いたいと思います。
  128. 安田巖

    ○安田(巖)政府委員 葬祭費の内訳をどういうふうに積み上げていったかという資料を持ち合せておりませんけれども、葬祭と申しましても、いろいろございまして、ここで考えておりますのは、ほんとうに焼き場に持っていって火葬するというふうな一番最低のものを考えておるわけでありますが、そしてまた多くの場合に、実費でそういうものをやってくれる公共の団体等がやっております場合には、そういった便宜の方法があり、あるいはまた東京都であります場合にはそういった葬祭を社会福祉事業としてやっておるところもございまして、そういうところにも頼めるのではないかというふうなことも考えております。しかしこれは生活保護の基準でございますから、どうしてもそれでやれないというところでありますれば、これはもちろん特別基準を適用する道を残されておるわけであります。これは生活保護の基準の問題でございますから一般の事務費の問題とは若干違う点がございます。
  129. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 大体施設か病院で死んだのでなければ、これは香奠というものがあるのです。それを入れて何とかやっているようです。ところがこういう施設や病院で死んだというような場合にそれがないのです。だから実際方法がつかなくなるわけです。現にここの養老院ではもうどうにもしようがない、それで坊さんを頼んでお経を上げる、その謝礼というようなものが今の生活保護の中に計算されておりますかどうか。お経を上げてもらう坊さんにも全然お礼ができない。これも現実問題として私は旅路の果ての方々をお送りしますのにいかにも気の毒だと思うのです。こういうことは、今のような特別な市などで福祉的に公営の葬儀屋さんをやっているというようなところなら別でありますけれども、ここの話も、市営の火葬場に持っていくのですが、相当距離が離れておるとかその他のためにどうしても五千円かかる、それが二千四百円しか与えられないために、坊さんも頼めないというような状況です。これは私はいけないと思う。これを考えておいていただきたい。すでに本会議の予鈴が鳴っているようでありますから、いずれまたこういう点詳しく伺いますが、もう少しほかの例で具体的に伺ってみたいと思います。一体収容施設なだに入れております人の食糧の費用、これも級地によりますけれども、三級地なり四級地等では一人一日幾ら見ておりますか。
  130. 安田巖

    ○安田(巖)政府委員 これもやはり級地別がございまして、四級地で参りますと、養老施設で飲食物費が千二百十九円、厚生施設でございますと千四百三十六円でございます。一人当りカロリーが千八百二十二カロリー、厚生施設で二千七十六カロリーでございます。
  131. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員  刑務所の食糧費は幾らだか御存じですか。
  132. 安田巖

    ○安田(巖)政府委員 今ここに資料を持ち合せておりません。
  133. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 今のお話の四級地でございますと、一日五十円足らずであります。刑務所は七十何円かと私は記憶しております。刑務所より低い食糧費を与えるということでは、私は社会福祉事業というものの名に反すると思うのです。実際にこの施設では困るのです。こういうような点も、時間がありませんからまたいずれあらためていろいろお伺いをいたしますけれども、刑務所の食糧費よりも安いものを押しつけておったのでは、社会福祉事業ということの名に私は反すると思うのです。それでこの社会福祉事業法の一部改正でもって隣保事業やあるいは結核のアフター・ケアが入るということはけっこうであります。私賛成でございますが、しかし現実にこういうようなものを押しつけておったのではいけない。これはやはり国家が最終責任を負うという立場からいって、刑務所が七十何円なのに片方が五十円とか六十円ということであってはいけない。この点は十分お考えを願わなければならぬと私は思うのです。およそ国が行う社会福祉事業でありますから、十分お考えを願いたい。  それでは教育扶助のことで少し伺います。教育扶助のうちで、あるところに参りましたら、これは一年生でございましたが、これも多分三級地か四級地になりましょうが、いろいろな通学に要する費用が月十九円四十銭ということでございました。これではどう考えても雨がさも雨ぐつも買えないという。私はこれを聞いてびっくりした。これは無理ない。雨がさや雨ぐつも買えないというようなことではいけない、こう思うのです。一体通学のための費用というのは月どのくらい見ておりますか。
  134. 安田巖

    ○安田(巖)政府委員 先ほどの食糧費の話、ちょっと申し上げてみたいのでありますが、居宅保護、生活保護の基準よりか実に若干よくしてあるわけであります。それでもいいのかとおっしゃるわけでもございましょうけれども、少しよくしておるわけであります。その基準はいわゆる軽労作で働かないということを基準にしておることと、それから生活保護は御承知のように年令別でもってカロリー計算をしておりますから、日本人の標準栄養量を栄養審議会で出しまして、その栄養を確保するに必要なカロリーを計算しておるわけであります。そこで刑務所のものとお比べになります場合、たとえば働き盛りでございますと、今の費用を一級地に直しますと一日七十円くらい、これも労働しない建前になっております。ところがその人がかりに激労働する、たとえば炭坑夫のような労働をする場合には、生活保護でも実は百二円出しております。百二円の食費であれば、そう安いともいえないのじゃないか。あるいは中等労作、内職程度でありますが、これは八十円になる。それと強労作、これは日雇いなんかになりますと九十円になる。そういたしますと、この生活保護の方ではそういうように年別令、作業別にこまかくいっておりますから、比較する場合にそういうことを頭に置いて比較しなければいけないのじゃないか。問題はやはり生活保護、居宅保護を含めての基準の問題にまた返ってくるわけであります。これはまた後日機会がありましたらいろいろお話も承わり、御説明も申し上げたいと思います。  それから今の教育保護の方の問題でございますが、これはやはり一級、二級、三級、四級地に分れておりますが、たとえば一級地で東京なんかを見ますと、小学校の一年生でございますと学用品費が八十円あるわけでございます。それから通学用品費が四十円あるわけでございます。それに学校給食の実費が全部かかります。それから通学のためにもし交通費が要るならば、最低限度のものがかかります。それから現在学級ではたとえばワーク・ブックであるとか、テストをするための教師の費用でありますとか、そういうものを見ておりますから、四級地でも小学校の一年生でございますと、やはり学用品費が四十円、通学用品費が四十円、それに学校給食が加わり、通学の交通費が加わり、そしてまたそういった学級品のようなものが必要と認められれば認めておるという状況でございます。この方は大体私たくさんだとは申しませんけれども、必要最小限のものを満たしておるのじゃないだろうかというような気がいたします。
  135. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 今の学用品費はまた別に一カ月八十円というのが確かにございました。けれども一体一カ月八十円で、まあ私は常でも大へんだと思うが、ことに入学するようなときすずり箱や筆を買っても三百円、それを一カ月八十円でやれというのは無理だ、これはやはり考えなければならぬ。もう一つ通学関係で困りますのは、副読本とか参考書、これがやはり今日なくては子供は勉強できません。だからこういう点を考えてもらわなければならないと思う。ベルが鳴りましたからあとは明日でも続けたいと思いますが、施設の子供たちが学校に行っていじけないようにしてやるためには、ほかの子供が持っておる参考書を買うとか、副読本を買うとか、やはり学校の先生が見て必要だというものは出させるようにしてやらなければいい子供は育ちません。もともと施設にいる子供につきましては、御承知のような特別な癖がやはりできて参ります。それをなくするためにはできるだけ配慮してやらなければ、ほんとうにいい子供はできてこない。今の四級地の話ですが、一年生の通学の費用を幾らくれているのだと言ったら十九円四十銭、こういうことでありますけれども、やはりこれでは雨がさや雨ぐつも買えないということになると思う。食事の問題でも六十何円でしたか、重労働をする人の生活保護は別問題といたしまして、こういう施設にいる子供たち、ことに食べ盛りの子供はなかなか食べますから、お母さんが非常な苦労をすると思うのです。こういう点もなお引き続いて明日具体的にいろいろ例をあげて伺ってみたいと思うのですけれども、もっともっとあたたかい気持でやってやらなければ、こういうような保護を受けまする方々が涙なくて過ごすことができないと思う。これはやはり国が責任を持つ以上は、何らかほかのものをあてにしてというのではなしに、確かにこれならば常識的にだれが見ても、よくはなくても一応いわゆる最低の基準とは言えるものを——そう思うにはあまりに低過ぎるというのが私のきょうの言いたいところなのです。だからせっかく社会福祉事業法改正なさるに当りまして、もっとこの点をあたたかく考えてもらわなければならぬじゃないかということで、あとは明日にいたしておきます。
  136. 森山欽司

    森山委員長 本日はこれにて散会いたします。     午後四時四十三分散会      ————◇—————