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1958-03-25 第28回国会 衆議院 社会労働委員会 第26号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年三月二十五日(火曜日)     午前十時三十二分開議  出席委員    委員長 森山 欽司君    理事 植村 武一君 理事 田中 正巳君    理事 野澤 清人君 理事 八田 貞義君    理事 滝井 義高君 理事 八木 一男君       小川 半次君    大橋 武夫君       草野一郎平君    小島 徹三君       田子 一民君    藤本 捨助君       古川 丈吉君    松浦周太郎君       山下 春江君    赤松  勇君       井堀 繁雄君    岡  良一君       栗原 俊夫君    五島 虎雄君       中原 健次君    山花 秀雄君       吉川 兼光君  出席国務大臣         労 働 大 臣 石田 博英君  出席政府委員         総理府事務官         (内閣総理大臣         官房審議室長) 吉田 信邦君         調達庁次長   丸山  佶君         総理府事務官         (調達庁労務部         長)      小里  玲君         労働政務次官  二階堂 進君         労働事務官         (大臣官房長) 澁谷 直藏君         労働事務官         (職業安定局         長)      百田 正弘君  委員外出席者         専  門  員 川井 章知君     ————————————— 三月二十五日  委員松浦周太郎君及び井堀繁雄君辞任につき、  その補欠として竹山祐太郎君及び山口シヅエ君  が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 三月二十日  あん摩師はり師、きゆう師及び柔道整復師法  等の一部を改正する法律案野澤清人君外七名  提出衆法第八号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  職業訓練法案内閣提出第九三号)  駐留軍労務者の労働問題に関する件      ————◇—————
  2. 森山欽司

    森山委員長 これより会議を開きます。  駐留軍労務者の労働問題に関する件について調査を進めます。  質疑を許します。山花秀雄君。
  3. 山花秀雄

    山花委員 端的に二つ、三つ特に重要と思われる、また急ぐ問題について質問をいたしたいと思います。  その一つは、退職手当の支給が最近全然行われてないという問題であります。最近立川基地で十二月の十八日から三十一日まで、これは病気退職でありますが、五人ほど退職しております。それから本年に入りまして、一月中に七百八十七名ほど退職をしております。十日の日に七百名、十二日の日に二十九名、残余の期間で五十八名、ところがこの七百名に関しては退職手当規定通り支払われておりますが、十二月に退職いたしました五名と十二日の二十九名、一月中の残余の五十八名、これらの人々にはいまだに退職手当が支給されてない、こういうことは一体どうなっておるのかということを一応御説明を願いたいと思います。
  4. 小里玲

    小里政府委員 退職手当その他の日本政府労務者支払いました金のアメリカ軍からの償還のやり方が、昨年の十月新契約が実施になりまして以来、以前と方式が変っ参りまして、その間のふなれ、経過的な仕事のそごというような点がございましたことは事実でございます。そういうことで退職手当その他の支払いがスムーズにいってないということが労働組合等からも問題になりまして、政府としてはこれの促進に昨年来努めて参っておるのであります。特に退職子当人員整理でやめられた労務者のとりあえずの生活資金でもございまするので、これをできるだけ早くということで、ほかのものを差しおいてでも払えという方針で取り進めておるのであります。従って、ただいまお話のございました大口の分については支払いが済んでおるが、昨年の十二月あるいはことしの一月中のぽつぽつしたのが払ってないという御指摘でございまするが、何かの手違い等もあると思いまするが、その点十分実情調査いたしまして、至急支払いをするようにいたしたいと思います。
  5. 山花秀雄

    山花委員 至急に手配するという御説明がございましたが、この国会のこの委員会でこういう議論をしておるということは、これは政府当局でも、われわれ議員の関係においてもよくわかりますが、世間一般から見れば、労働者退職をして、しかも政府雇用になっておる者が退職手当をもらわれないというようなことがあり得るかどうか不思議に思うような話をこの委員会で今やっておるわけなんであります。何か手違いであるいは支給されていないかもわからないので、至急この問題を解決するというような御答弁でありましたが、今申し上げましたように、これは何かの手違いであったというような関係ではないと私は思います。根本的に何か大きな原因があるのじゃないかと思います。そういう原因を明らかにして、再びかようなことのないように、退職する、即退職手当を支給する、これが普通の常識になっておると思うのですが、この点もう少しわれわれの納得のいく説明をしていただきたいと思います。
  6. 小里玲

    小里政府委員 御指摘のように、退職をいたしましてすぐに退職手当をお支払いするというのが原則でございまして、資金融通のつきまする限り、ほかのものを差しおいても退職手当を払えという方針でやってきておりますので、こんなにおくれておるということははなはだ申しわけないと思いまするが、資金融通がつきまする限り払えということでありますから、前に退職になったのがおくれておる、これは何かの手違いではないかと私思うのでございますが、その点十分調査をいたしまして至急に措置したいと思います。
  7. 山花秀雄

    山花委員 今私の手元で明らかになっておりますのは十二月中に退職した五名、これは多少ばらばらになっておりますが、この十二日に退職した二十九名、一月中に五十八名の人が、二月以上たっておるのにまだ退職手当が支給されていないという点であります。これは即刻支給されるものでしょうか、どうでしょうか。ここで今この問題が表になって、何かの手違いとかなんとか言っておりますが、これは即刻支給されるものでしょうか。
  8. 丸山佶

    丸山(佶)政府委員 これは東京都を通じて支給することになっておりますので、おそらくその事情があることと存じますが、即刻東京都の事情を調べて処置するようにいたすつもりでございます。
  9. 山花秀雄

    山花委員 ちょっと聞いておりますと、東京都を通じてというような、何か東京都に責任の所在があるような感じのする御答弁でありましたが、一般民間の工場で、退職せしめなくちゃならぬ、ところが金がなくて退職手当が支払えないというような場合には、借金してでも退職手当を即刻支給するまで日給なり月給なり支給して雇用しているというのが実情です。ところが幾ら間接雇用と申しても、これは政府雇用であります。それが首は切りっぱなし退職手当は二月以上放任しておる、こういうもぎどうな話——一体労働行政として政府はこれをどう考えておるか。こういう労働行政を看過していいのかという点、どういう指導をしておるかということを、労働省の方に一つ労働行政の一端としてお伺いしたい。
  10. 丸山佶

    丸山(佶)政府委員 これはおっしゃるまでもなく退職したら直ちに支給すべきで、労働省労働行政方針としてもその通りだと私ども考えております。調達庁雇用関係もそのように努めておるわけでございますが、今御指摘のようなものがあったのはまことに申しわけないと存じます。たしか資金関係につきましては、その分を東京都に流す措置を数日前にとっておりますので、この問題は直ちに解決するだろうと考えておりますので、どうぞ御了承をいただきたいと思います。
  11. 山花秀雄

    山花委員 そういたしますと、大体調達庁考え方は、退職したときに退職手当を即刻支給するのが調達庁としての正常なる考え方である、こういうふうに承わってよろしゅうございますか。
  12. 丸山佶

    丸山(佶)政府委員 その通りでございます。
  13. 山花秀雄

    山花委員 そこで話が少しこまかくなりますが、二カ月以上おくれて退職手当を支給する場合には、利子か何かおつけになるようなお考えは持っておられますか。
  14. 丸山佶

    丸山(佶)政府委員 利子をつけるということは今のところ考えておりませせん。
  15. 山花秀雄

    山花委員 その話は少しおかしいじゃないかと思います。退職したとき退職手当を即刻払うというのが建前になっておる。たとえばわれわれは税金なんかでも少し滞納いたしますと、必ず延滞利子というのを政府は容赦なくとっておるのです。とるのはとって、与える方は全然考えていないということは、理屈に合わぬと思うのです。もう少しこの点はお考えになって御答弁願いたいと思います。三カ月も三カ月もほったらかしておいて、それでどのくらい退職した人が次の生計計画が狂っておるかという点です。これは単なる利子だけの問題じゃないのです。しかし問題は常識的に考えて、とるものは支払いがおくれますと延滞利子をとっておるという、そういういつもの政府のあらゆる会計の制度になっておる以上は、やはり支払うべきものがおくれたときには利子をつけて支払うというのは私は当然だと思うのです。それを全然考えていないというのはちょっと私は理解できないと思いますが、もう一回はっきり一つ答弁願いたいと思います。
  16. 丸山佶

    丸山(佶)政府委員 ニカ月も三カ月もおくれておるというのははなはだ遺憾な例でございまして、おそらくこれには何らか格別の事情その他があるのだと存じます。そこで今御指摘のものを、実は具体的に調達庁関係及び直接事務を扱っておる東京都の関係のことを私詳細に存じませんので、従いましてその事情はこれから直ちに調査いたしまして処置いたしたいと考えておるわけでございます。
  17. 山花秀雄

    山花委員 ここで私ははっきりしていただきたいことは今日にちをあげて、そうして数字をあげてあなたに申し上げておるのであります。だからこういう問題は私は東京都と話をすればはっきりわかると思うのです。わかれば即刻退職手当を支払う義務を履行していただけるかどうかという点、この点は一つはっきり御返事を願いたいと思います。
  18. 丸山佶

    丸山(佶)政府委員 東京都の事情も調べまして、直ちに処置いたす所存でございます。
  19. 山花秀雄

    山花委員 それではただいまの御答弁により、事情判明次第退職手当金は即刻支払われるべきものであると私は了承いたしまして、一応この質問を打ち切ります。打ち切るに先だちまして、ぜひこういうようなことのないように一つ監督を強化して、善処していただくことをお願いしたいと思います。  もう一つは、これは多分もう報告で御存じだろうと思いますが、立川基地内に最近非常に悪質な暴行事件が起きておるのであります。これはもう多分あなたの方にも報告が行っておると思いますが、日本人従業員に対して監督立場にあるいわゆる向うの兵隊さんであります、それが狂暴にひとしい暴行を行なっておるので、その日本人労務者身辺の危険を感じて目下休んでおる、こういう実情が私どもの手元には報告されておるのでありますが、あなたの方にそういう報告が入っておるかどうか、一つお伺いしたいと思います。
  20. 小里玲

    小里政府委員 正式な書面ではまだ情報を得ておりませんが、非公式に東京都あるいは組合等から情報を得ております。
  21. 山花秀雄

    山花委員 この問題の処理に関して、当局としてはどういうお考えを持っておられますか。
  22. 小里玲

    小里政府委員 この問題の内容は、ただいまちょっとお触れになりましたように、日本人労務者監督者である米人が、自分の使っておる労務者罵詈雑言あるいは時には暴行を加えるといったようなことで、労務者がその職場仕事を続けていくことができないような状態になったというので、現在休んでおる、こういう事例でございますが、この点につきまして、現地の立川労務管理事務所あるいは東京都とアメリカ軍当局と先週以来ひんぱんに会合をいたしまして、この問題の処理について打ち合せを進めつつあります。ただいままでのところ、労務者からの訴え、あるいは労働組合が言っておりますような暴行脅迫を受けたというこの事実関係について、アメリカ軍当局は、関係する部面を日本人も含めて調査いたしたけれどもそういう事実は見当らない、こういう見解を持っておりまして、非常に困ったことには、その職場には監督をしておる米人監督をされる労務者と二人きりしか働いてない部屋だそうであります。そういうことで、それを見ておった人もなし、はっきりした客観的な証拠がないということでございまして、その事実関係を果して明確にすることができるかどうかということで、ただいま労管でも非常に苦慮しておるわけでございますが、いずれにいたしましても、わが方からは米側に対して、事人権じゅうりん暴行脅迫といったような労務管理以前の問題でもありますので、慎重に調査を依頼すると同時に、場合によっては日本政府側アメリカ軍側との共同調査をして事態を明らかにしようというような申し入れをただいまやっておりまして、米側でも引き続いて調査を続行中でございます。
  23. 山花秀雄

    山花委員 今のお話を聞いておりますと、一人対一人の問題で、目撃者もなければその事態もあまりはっきりしない、またアメリカ軍当局の方ではさような暴行の気配、懸念がないと言っておるので、こちら側としてもなかなか突っ込んでいきにくい、こういう御答弁でありましたが、この労働者身辺の危険を感じて休んでおるという事実と、それからおそらく一人対一人の問題でございましても、大体が常習的暴行を働いておるということがそこに雇用されておる日本人間においても明らかにされておるのであります。その一人の当該労務者だけが言っておる問題ではないのであります。だから私はもう少し強腰になって、たとい相手アメリカ軍当局でございましても、やはり労管労管責任のもとにおいてもっと追及さるべき問題はきぜんたる態度で追及すべきが至当ではないかと思うのであります。そこでこの問題につきまして、問題の処理調達庁としてはどの程度のことを考えておるか、どの程度追及する意思を持っておられるか。調達庁の方でどうも相手アメリカ軍当局であるからまああまりさわらない方がいいというようなお考えを持ってこの問題を処理するということになりますと、事はやはり全般の労務関係にも影響すると思いますので、われわれといたしましてもこれは黙っておれないというようなことに立ち至りますので、もう少しはっきりした調達庁としてのこの問題に関する処理の方向について、一つわれわれの納得のできるような御説明を承わりたいと思うのであります。
  24. 丸山佶

    丸山(佶)政府委員 今労務部長から説明をいたしましたように、この点は現在地元の労管事務所及び東京都の担当部局立川基地担当軍側に対しその調査をいたしておるわけでございます。その実情によってあるいは処置がつくと存じますが、場合によりまして事実そういう勤務にも非常に支障があるような監督者のふるまいその他でやっておるということが判明しましたならば、これは実にゆゆしい大事と考えまして、それに対して軍側において何らかの処置その他もないようなことでありますならば、調達庁といたしましてはなお上級首脳部にも申し入れて十分にそれを是正すべき処置をいたさせるつもりでおります。
  25. 山花秀雄

    山花委員 私の承わるところによりますと、これは日本の旧軍隊においてもやはりそういう傾向はあったと了承しておるのでありますが、この兵隊さんはあまりいい階級じゃないそうです。ところが古い兵隊さんで上級監督立場にある人々においてもちょっと扱いかねるというような俗にいう古参兵と申しましょうか、そういうことでどうも扱いにくいというふうに聞いておるのであります。従いましてこの問題は単に出先の軍当局との話し合いではなかなかむずかしいのじゃないかと私は思います。ただいま丸山さんが言われましたように、もう一つ上級関係とすみやかに折衝されて、かような不安のないような明朗な職場一つ築いていただきたいと思うのであります。なかなか事態が判明しないというようなことでありますが、本人はたびたび傷害を受けまして、医者の診断書もある程度のものを持っておりますし、一人対一人でありますから、犯人はだれだということになりますともうその一人しかない、かえって一人対一人という方が事態明瞭な場合も出てくるのであります。暴行を働いたという事実は隠蔽することができないほど明瞭になっておる問題でありますから、一つ上級責任関係者話し合いをされまして、こういう不明朗な職場のないように一つ努力していただきたいと思うのであります。  それからもう一つは、例の採用切りかえの問題につきまして、これは非常に重要な問題で質問したいと思いますが、あいにく私個人の所用でこれより以上質問する時間の持ち合せがございませんので、これは後日次の委員会においてでも詳しく質問をいたしたいと思いますから、調進庁当局におきましても、この切りかえ問題につきましては一つ慎重に御配慮を願いたいと思います。一例を出し上げますと解雇者の一人の例でありますが、運転手をやっておる人でありますが、首を切られて、間接雇用のときには二万六千円ほどの収入があった、ところが切りかえ採用ということで国際興業という会社に採用されますと一万七千円になった。実に九千円からの賃金格差をそこに生じてきておる。全部といっていいほどそういう傾向が現われてきておるのであります。これは駐留軍に働いておりますところの労働者にとりましてもゆゆしい生活上の問題にもなって参りますし、特にアメリカ日本の低賃金を笑っております一面において、こういうひどいやり方を今強行をしておる。これらの労働者の利益を守っていただく調達庁なり労働省なり外務省なりが、もっときぜんたる態度でこの問題の解決のために受けて立っていただきたいことを私は要望したいと思います。具体的事例具体的対策につきましては、後日日をあらためて質問することにいたしまして、本日はこの程度で保留して私の質問を終りたいと思います。     —————————————
  26. 森山欽司

    森山委員長 次に職業訓練法案を議題として審査を進めます。質疑を許します。中原健次君。
  27. 中原健次

    中原委員 先日要求いたしました資料についてちょっと質問して御答弁をいただき、その御答弁を基礎にして法案と関連して質問いたします。職業訓練行政組織図という中の産業別等技能者養成状況というものですが、そこで全産業鉱業建設業製造業、こういうように見出しが出ていますね。その見出しの中身で、養成工の数というのがありますが、その養成工の数の中で単独共同という項がありますね。その共同の項の中で養成工総数が三万九千六百四十九、その内容一つ全部説明していただきたいのです。よくわからぬのです。
  28. 澁谷直藏

    澁谷政府委員 この表は産業別に現在の基準法の認可を受けまして、技能者養成をやっておる状況を表にまとめたものでございまして、ただいま御質問のございましたこの養成工の数がどの程度あるか、総数が五万五千百三十一人でございまして、そのうちで企業単独でやっておりますのが一万五千四百八十二名、その他零細な企業主が集まりまして、共同で養成しておりますのが三万九千六百四十九名ございます。その内訳は、それ以下に各産業別にずっと書いてあるのがその内訳でございます。
  29. 中原健次

    中原委員 必ずしも明確でありませんが、大体見当がつく。その中で非鉄金属鉱業、それから建設業総合工事業識別工事業、わかりますね、それは全部関連していますね。
  30. 澁谷直藏

    澁谷政府委員 関連しています。
  31. 中原健次

    中原委員 そこでその中で数の大きいのを見ますと建設業が一万一千七百三十六、これは間違いありませんね。それと職別工事業一万一千五百三十九、これは違いませんね。そこでその示すものは内容的には何か、それを一つ説明願いたい。この示すものの内容、これはどういう種類のものがこれか。
  32. 澁谷直藏

    澁谷政府委員 これは建設業が圧倒的に多いのは御指摘通りでございまして、その内訳総合事業、これは大きな建設業でございますが、その下の識別工事業というのが大工左官、石工といったような、いわゆる二人か三人の徒弟を持ちましてやっておる業態でございます。そういう業態が圧倒的に共同で養成しているのが多い。こういう実情でございます。
  33. 中原健次

    中原委員 そこで圧倒的に多数を占めておる部類が大工左官、数名の人を擁している業態、これでございますね。それはこの職業訓練法の中のどういうところに該当するのですか。
  34. 澁谷直藏

    澁谷政府委員 この職業訓練法建前は、御承知のように公共職業訓練と、企業内の訓練と、大別して二つ体系に分れておるのでございます。これのとらまえ方は、雇用関係にあるものはその事業主責任において職業訓練を行う、雇用関係のないものにつきましては国、都道府県、労働福祉事業団というような公共の機関が責任をもって訓練を行う、こういう分け方になっておるわけでございまして、ただいま御質問のございました職別工事業というようなものは、当然これは雇用関係があるものでございますので、企業内訓練体系に入るわけでございます。条文といたしましては、第三章の事業内職業訓練の章が全部該当するわけでございまして、特にこの共同養成をやっておるような小さな事業主に対しましては、第十五条、共同職業訓練団体の行う認定職業訓練、この条項適用されるわけでございます。
  35. 中原健次

    中原委員 そうなりますと、つまり第十五条でそれがその内容として取り上げられている、こういうことなんですね。第十五条の、ちょっともう一度言ってみて下さい。どれに値しますか。
  36. 澁谷直藏

    澁谷政府委員 第十五条では「事業主事業内職業訓練共同して行うために組織した団体」、この「共同して行うために組織した団体」というのがこの資料にございますような零細な事業主が集まって共同してやる、この第十五条の一番先の条項が該当するわけでございます。
  37. 中原健次

    中原委員 そこが明確にならぬです。「共同して行う」といえば、たとえばABCとありますね、そのものが共同するのですね。一つ単位のものだけでやっている場合はどうなんですか。共同していなくて一つ単位A親方B親方、そういうのがありますね。
  38. 澁谷直藏

    澁谷政府委員 共同で行わないものは、大企業等におきましては当然これは自己の単独負担におきましてやっているのでございまして、これはこの第十五条の共同職業訓練団体適用は受けないわけでございます。第十四条の中におきまして認定職業訓練、この適用を受けるわけでございます。第十五条を特に設けましたのは従来の実績にもございますように零細な事業主単独ではやれない、資金も足りませんし、施設もなく先生もない、教材もない、それでそういう人が何人か集まりまして、お互いに金を出し合い、あるいは会場を借り上げて先生共同で雇う、こういうような方法でやっているのが今までの状態でございます。ところが遺憾ながら今までの法規ではそういった零細な事業主共同でやる場合に対する法律的な予算的な援助の面がなかったのでございます。それを今回この職業訓練法一つの大きな重点事項として取り上げまして、特に第十五条でこの共同職業訓練団体というものを正式に認めて、しかもこれに対しましては予算面の裏づけをするというのがございまして、それは第三十三条でございます。法案の二十一ページの第三十三条の経費負担という条項がございますが、これの第三項におきまして「国は、都道府県が第十五条第一項の認定を受けた事業主団体に対して」、これが先ほどから御説明申し上げております共同でやる団体でございます。そういった団体に対しては「認定職業訓練に必要な経費の一部を補助した場合においては、当該都道府県に対して、予算の範囲内で、当該補助に要した経費の一部を補助することができる。」いわゆる零細な事業主単独ではなかなかできませんので、それは国と都道府県予算面においても積極的に援助していくという規定でございます。現在はそういう規定がございませんので、単なる予算補助として三十二年度におきましてはわずか九百万円の予算しか計上されておらないのでございます。それが三十三年度予算におきましては、この職業訓練法を基礎といたしまして国の予算が三千万円都道府県が当然それと同額を負担することになりますので三千万円で、合計いたしまして六千万円、あとの二分の一は事業主負担することになるわけでございますが、従いまして総体の事業費といたしましては一億二千万円になるわけでございます。
  39. 中原健次

    中原委員 非常にわかったような気がしてわからぬのです。どうも漏れておるような感じがするのです。共同で行うという分の、共同で行う事業場ですね。これが零細であることはもちろんわかりますが、しかしその零細な業者が、日本には長い伝統があって、これこそ神武以来の伝統なんですが、その神武以来の親方、徒弟という関係で一名か二名を擁してか細くやっておる。経営が膨大になって、そのうちにあなたの御答弁の中に消化されるのでしょうか。その消化される条項をもう一度……。どうもわかったようなわからぬような気がするのです。
  40. 澁谷直藏

    澁谷政府委員 この点は法律上もきわめて明確でございまして、繰り返し申し上げることになりますが、単独でやる事業主、いわば大企業でございますが、そういったものには第十四条でいくわけでございます。それで単独でやれない小さな事業主共同でやる——これはお配りした資料ですぐおわかりになりますように、圧倒的にそういった数が多いわけでございますが、それを特にこの職業訓練法におきましては大きな重点事項として取り上げて、第十五条でそれを正式に法規上も認めておるわけでございます。それを単に法規で認めたばかりでなしに、金の面でも積極的に裏づけをしようというのがただいま申し上げました第三十三条でございまして、しかも現に現在の国会で御審議いただいております予算案の中にはこれの裏づけとして国の予算が三千万計上されておる、こういうことでございます。
  41. 中原健次

    中原委員 大体わかったような気がしますが、共同でという一つの条件が入るのですね。単独共同ということの解釈なんですが、たとえば一つの作業場に動員されますね、左官なら左官大工なら大工、その作業場の親方とその徒弟が二名なり一名なりあるわけですが、その親方と徒弟が一緒になって作業しておる。この場合は共同とは言えませんね、単独でしょう。
  42. 澁谷直藏

    澁谷政府委員 そういう場合はこの十五条でいう共同で行う団体には入りません。それで、繰り返すことになるのでございますが、単独でやる訓練共同でやる訓練、その理想を言いますならば、単独でやる大企業に対しましても予算的な援助措置をやるというのも一つ考え方でございますが、そうなりますと膨大な予算も必要でございますし、現実に最も困っておりますのはただいま申し上げましたような零組な事業主が施設もない、先生もない、そういった人々に対しては特に法規の面においても予算の面においても積極的に助成していこうというのが、この訓練法のねらいであるわけでございます。
  43. 中原健次

    中原委員 そこで大事な点は、単独という解釈の問題が出てくるわけです。最初に単独と言われたのは大企業の場合だった。今の単独というのに関連するのは、零細のもう一つ零細の分に属するもの、それを私は言っているのです。それをどういうふうに扱うかということなんです。これは神武以来の伝統であって、その零細なものを無視したのではせっかくできたこのりっぱな法案が泣くのです。意味を失うのです。そのことを申し上げておる。
  44. 澁谷直藏

    澁谷政府委員 これは現在の技能者養成規程のもとにおいてもそうでございますが、職業訓練法におきましても、事業内の訓練考えておりますのは、いわゆる熟練工の養成でございます。熟練工の養成というのは先生も御承知のように、大体三年から四年の長期の教習を必要とするわけでございます。これは諸外国の例どこを見ても同じでございますが、そうしますると、その三年なり四年の教習の中身には、技能の訓練もももろんでございますが、そのほかにいろいろな学科の面も相当入っておるわけでございます。それを全部総合してやらなければ本格的な一人前の熟練工が養成されない。そうしますると、その熟練工の養成をするためにはどうしてもある程度の施設が要る、それから先生が要る、教材が要る、こういうことになってくるわけでございます。そうすると、大企業単独でも資力が十分ございますからやっていける。また現実にもやっておるわけでございますが、先生が先ほどから言われておりますような二人なり三人の徒弟を持ってやっておるような大工左官などにおきましては、単独でそういった施設を持ち、あるいは先生を雇う、教科書を作るというようなことはとうていできないわけでございます。従いましてそういった人たちは井同で集まって施設を借りるなり先生を頼むなりしてやっておる。それが共同養成体であるわけでございます。それでありますから、そういった共同養成体に対しましては、単独でやれるような資力のある企業とは特別扱いにして、法規上も予算上も特別な助成措置を講じていくというのがこの訓練法のねらいでございます。
  45. 中原健次

    中原委員 やはり答弁をちょっとそらされるのです。その共同でやっておるということは認めるのですよ。その共同でやっていない分があるのじゃないですか。単独でやっている零細業者——教材がないとか、いろいろな指導者がいないとかいうことを言われた。この場合は実態から言えば親方が指導者になっているわけですね。さっきから僕が言っている神武以来というのはそれを言っているのです。そこでその親方が現状の形の中では不十分であるとすれば、それに教材を与えるとかなんとかいうことになれば、なおさらこれこそ国家の協力の姿が要るんじゃないか、こういうことになるでしょう。この問題を申し上げている。これをそっとのけておいて話を進められたのでは、やはり納得がいかぬことになってしまう。納得がいったと思ってうっかりしたら、それだけはずされておったということになると、これは今日の日本実情からいえば大ごとなんです。今日の状態からいえば、やはりそれが大きな問題なんです。零細の零細かもしれません。しかし現実にそれがあるのです。これに対して不十分な点はなおさらのこと協力する国家の態勢というものが要るんじゃないか、そのことを申し上げておるわけです。
  46. 澁谷直藏

    澁谷政府委員 この法規の第十五条の適用を受けないで、単独でやるという人に対しましては、この第十五条なり第三十三条の補助の適用以外のこの訓練法で考えております一般的な援助は、当然指導面におきますなりあるいは教材の提供でありますとか、実際の行政面の指導であるとか、あるいは施設を利用させるとかいうような援助は、当然受けるわけでございます。これは当然この法規の適用の対象になるわけでございます。ただ私が繰り返し申し上げておりますのは……。
  47. 中原健次

    中原委員 何べん繰り返してもだめですよ。そのことを言わなければ……。
  48. 澁谷直藏

    澁谷政府委員 それはこの法で一般的な適用を受けるわけであります。
  49. 中原健次

    中原委員 まるで僕がわからぬような質問をしているという答弁ですよ。  そうすると、そこに答申案が出ておるのです。答申案の第四項の一番しまいの方に「右の共同職業訓練を行う団体については、職業訓練を当該団体責任において統一的に行わせることによって」云々、こう書いたあとに、一番末尾に「また、商工組合、事業協同組合等についても」云々という、「等」という字、これはこの前ちょっと大臣に質問をしたが、大臣はあなたよりもっと大きな話をするからわからなくなる。それではなくて、このことはこまかい話なんです。ほんとうに突き詰めて御答弁願わなければ妥当性がわからない。ひょっとしたら大臣もわかっていない。わかっているとすれば、これは大臣はとんでもない雄弁にまくし立てて済ましてしまっている。それではないのです。そこでこの「等」というのをこの法案の中ではどのように取り扱うていますか。
  50. 石田博英

    ○石田国務大臣 さっきから何度もお答えをしておることなんですが、とかく事業体で単独でやれる事業体とやれない事業体とがあるわけですね。そこで単独でやれない事業体はそれじゃどうして訓練をするかというと、共同でそういう訓練をする施設を設けてやる。単独でやれないのは力がないからやれないので、そういうものの方法は共同でやる方法を十五条で設けてあるわけです。その十五条でもあるいは単独でやれる場合と……。
  51. 中原健次

    中原委員 漏れるのがあるんですね。
  52. 石田博英

    ○石田国務大臣 どこが漏れるのですか。単独でやれるか、やれないか、二つしかない。単独でやれるやつは議論がない。やれないものは共同でおやりなさいということなんです。
  53. 中原健次

    中原委員 やりなさいというのですか。
  54. 石田博英

    ○石田国務大臣 共同でおやりになるものにこの法律によって援助をいたしますということです。単独でやれないものに単独でやる援助の方法ということは考えられないわけなんです。
  55. 中原健次

    中原委員 これは重大な点なんです。この点はもう少し明瞭にやっていかないと、言葉の魔術じゃだめですよ。やれないものだから、ここで共同でこのようにして協力してやるのだ、りっぱに聞えるのですよ。けれども共同でやれないというよりも、やっていない事実がある。これは実情からいってやれないのです。さっきから申しますように、親方と徒弟が二人、自分のむすこも使うてというようなのがあるわけです。この訓練はどういうふうに協力なさるかといえば、さっき局長が話したような変な話になるのですが、私はわからなくなってしまう。結局はうまいことを言っている。それなら、いよいよ申請したらどうするか、交通費まで負担しますかね。どういう場合に負担するのか。
  56. 石田博英

    ○石田国務大臣 これははっきりしていると思うのですが、事業体の中で単独でやれるものとやれないものがある。やれないものは力が足りないから自分の企業の中でやれないわけですね。だからそれは共同でその職業訓練をやる施設なり何なりを作れば、それに対して政府は所要の援助をする、補助をするという条項が十五条のわけです。そのどっちにも除かれて対象にならないというのは、私の方ではわからないのですがね。
  57. 中原健次

    中原委員 わからないのじゃなくて、何べんも申しますように、一名か二名のごく小さい企業があるわけです。そういう企業基準法ではたしか労働組合の中に組み入れられております。親方までが労働組合の組合員になることが許されているわけです。そういう経営があるのです。その経営が目に見えないのですか、見えるはずですよ。それが目に見えないからこの中に取り入れてないのだということになればこれは大へんなんです。目に見えます。
  58. 澁谷直藏

    澁谷政府委員 先生の御指摘になりましたことは、土建総連の傘下の組合で共同養成をやっております。これは私どもも十分に承知いたしております。ただこれも先生も御承知かと思いますが、この土建総連で共同養成をやっておりますのは、やはり一人か二人の徒弟を持った親方でございます。それで労働基準法関係におきましては使用者としての認可を受けております。また労働基準法建前におきましては、使用者でなければ基準法の対象にならないわけでございまして、使用者としての認可を受けて、そういう親方が何人か集まった共同養成体を作りまして、そこで共同養成をやっておるわけでございます。従いまして今後職業訓練法ができました場合に一体そういうものはどうなるのか、こういう御質問かと思いますが、これは先ほどから繰り返し申し上げておりますように、職業訓練法におきましても当然これは共同養成体として第十五条、第三十三条の適用を受ける、こういうことになるわけでございます。
  59. 中原健次

    中原委員 あとで相談しましましょう。これは話が通りませんよ。やはり扱いとして中小企業体の中に入っていない零細なものがある。こういう重要なものがあるということを申し上げているわけです。それがあなたの目に見えないのじゃないか、見えないとすれば大へんなことですよということを私は言っているのです。それをこそ重要視しなければ国家の協力態勢の意義が薄くなるということです。時間が来たようですから、あとで問聞しますから……。
  60. 赤松勇

    ○赤松委員 今中原君の質問しているのは、社会党の方ではこの訓練法を早くあげるように努力したい、御協力申し上げたい。ついてはいろいろあとで運営上疑問点が残るし、あるいはまたいろいろな方面からの問い合せもあるし、この際ざる法にならないようにできるだけこの法案の完璧を期したいという意味におきまして質問しているのですから、一つ政府の方も、また委員長においてもまじめに取り扱っていただいて、われわれとしてもできる限り協力申し上げますから、そのように一つお取扱いを願いたいと思います。
  61. 森山欽司

    森山委員長 委員長はきわめてまじめに取り扱っております。滝井義高君。
  62. 滝井義高

    ○滝井委員 大臣がおいでておられますから、少しこまかい問題はあとで事務当局にお尋ねするといたしまして、少し基本的な問題について大臣に質問をしてみたいと思います。実はこの法案を通観をして感ずることは、大きく公共職業訓練事業所内職業訓練と、こう二本の柱を立てられて、公共職業訓練で一般職業訓練総合職業訓練と中央職業訓練、別に身体障害者職業訓練というのがありますが、大きく二つの柱を立てられて、公共職業の中に主たるものとして三本で公共的な職業訓練をやることになっております。その場合にこの基礎的な技能に関する訓練を一般職業訓練がやることになり、それから総合的なものと中央職業訓練とは、これは労働福祉事業団が失業保険の施設をもってやることになるわけですね。その場合に一体系統的に図を書いてみれば、それらのものは系列的に並ぶわけなんですが、しかし具体的に現場で行われる場合に、訓練の系統が図で書かれるような工合にうまくいくかどうかということなんです。というのは実は労働福祉事業団法が通るときも、私たちは職業補導行政が二元化するんじゃないかということをおそれて、その問題についてはずいぶんここでもんだことを記憶しておるわけなんです。ところが今回一応そういう欠点を補う意味もあって、あるいはこういう形で出されたかとも思われるふしも感ぜられないことはないのです。しかし実際の運営として一つは失業保険の施設であるし、しかもそれらのものは失業保険の施設である総合職業訓練所というのが専門的のことをやるわけです。それから中央職業訓練所の方は幾分学問的なニュアンス、研究、調査というものが加わっておるということなんですね。そうしますと、問題は、基礎的なことは都道府県がやられるので、ある程度政府の意向はいくかと思いますが、この失業保険の施設でやる場合について、一体技能教育、技能訓練というものが政府の思うように一貫したもので、系統的にいけるかどうかということなんです。どうも職業訓練というものが、一般訓練と失業保険の施設でやるものと、いわゆる事業所内でやっていくものと三本に分れるような感じがするのです。一体それらのものを政府はいかにして系統的に一本でやれる姿ができてくるのかということです。それはあとでいろいろ指導、訓練をする指導員の問題、技能検定の問題、これらのものにすべて関連をしてくる問題だと思うのです。そこで私はどうも職業訓練行政が三本になるような感じがして仕方がないのですが、そこらの一貫した一つの意図を通していける自信と抱負がどういう形で大臣にあるのか、これをまず御説明願いたい。
  63. 石田博英

    ○石田国務大臣 中王職業訓練審議会が基本的な方向を定めて、そして今おっしゃった都道府県と、それから本省の機構と、それから福施事業団というようなものは、やはり行政的には労働大臣の監督下に一貫してございますから、中央職業訓練審議会の決定した方針によって統一し、一貫した形をとって参りたい、こう思っておるわけであります。
  64. 滝井義高

    ○滝井委員 大臣が今、それらの三つのものは大臣の指導監督下にあるので一応やれる、それからいろいろ具体的な問題は中央職業訓練審議会の意見も聞いてやるからということでございます。私は法案を読めばそういう感じがするのです。しかしこれをたとえば具体的な面になってみると、必ずしもどうもそういくかどうかということが非常に懸念される。たとえば中央職業訓練一つをとってみても、少くとも中央職業訓練指導所でございますから、全国の職業訓練の模範的な機能と運営がそこで行われなければならぬと思うのです。ところが実際はそれは福祉事業団の失業保険の施設でやるのだ、こういう形になってきますと、これは非常に問題が出てくるわけです。むしろ大臣が今後日本の技能労務者、少くとも中堅的な技能労働者が不足しておるから、それを養成するためにはということになれば、まず大脳をしっかりしておかないといかぬと思うのです。ところがそれが、あの問題の多い労働福祉事業団といえば、労災病院を運営することが主たるものであって、失業保険の施設というのは失礼な言い方かりもしれませんが、あのときは実際はつけたりだった。従って清水さんが会長になっておられる、これは社会保険の大家なのです。職業訓練については清水さんには失礼な言い方かもしれませんけれども、大家じゃないのです。そうすると、ベテランがおられぬ機構の中で、少くとも模範的な中央職業訓練というものをそこに打ち出していくという形で、全国がこれに右へならえするのです。それではどうもすみっこに置かれてモデル・ケースとしての役割が演じられない気がする。文の上ではできる形になっているかもしれませんが、第一機構そのものが失業保険の施設の中の片すみに置かれているということでは、これは私は問題だと思う。この点は労働協会等に大臣が非常に力を入れた場合に比べて、職業訓練というものは石田労政のもとにおいては労働協会において大臣が会長を任命してきちっとやったときの場合とはほど遠い感じがする。失業保険施設の一環だ、しかもやるところは、労働福祉事業団というものは労災病院を主たるものとしてやっておった。こういう形からいってどうもそこに私はふに落ちないところがあると思う。そこらあたりの石田さんの御見解を聞かし見ていただきたい。
  65. 石田博英

    ○石田国務大臣 労働福祉事業団の失業保険の施設を使われましたのは、予算的な物的な面でありまして、実際の運営指導というのは、先ほども申しましたように、中央職業訓練審議会で基本方針を立てて、そうしてその基本方針に従って一貫してやるつもりでございますが、特に三十二条の二項に「労働大臣は、この法律の目的を達成するため必要があると認めるときは、労働福祉事業団に対して、総合職業訓練所及び中央職業訓練所の運営に関して、報告を求め、及び必要な命令をすることができる。」という規定を設けまして、御心配のないようにいたすつもりでございます。それから中央職業訓練所の所長は、中心になる人は、御指摘通り当然権威者をもってあてて、その運営の万全を期せなければならぬことは申すまでもないことであります。
  66. 滝井義高

    ○滝井委員 おそらく頭のよい労働省のお役人方でございますから抜かりはなかろうと私は思うのです。おそらく初めの構想は少くとも労働省直轄の職業訓練所を作りたかったのではないかということをこの法案を読んで感じた。今大臣が予算関係で、とこうお漏らしになったことは、結局予算がとれなかったのでやむなく福祉事業団の方のすみっこと言っては語弊があるが、すみっこに作らざるを得なくなったのではないかという感じが実は私もしておった、やはり私は少くとも職業訓練を本格的に労働省がやられようとするならば、中央職業訓練所というようなものは大臣の直轄にすべきだと私は思う。そうしてそれを今度は他の事業場の訓練なり都道府県の一般職業訓練が見習う形が作られなければこれはどうも逆な感じがする。都道府県は直接大臣がうまくいけるでしょうが、実際に労働福祉事業団の今までの過去の実態を見ても病院経営もうまくいかぬのが実態なんです。そうして独立採算制でやらされて四苦八苦だ、そこの職員の待遇を見ると就業規則もできていない、こういう実態であったわけです。そういうところに今度は職業訓練をやらしたって、これは先が見えているのです。私は過去の労災協会の実態を知っているから言うわけです。大臣もおそらくそこまでお知りになっているかどうか知りませんが、これは私は大臣に一つ、今年度はやむを得ないにしても、来年度からは少くとも中央職業訓練所がやられるならば、労働省の直轄として考慮してもらいたいと思うのですが、その点どうですか。
  67. 石田博英

    ○石田国務大臣 今の滝井さんの御意見は私は十分傾聴すべき点が多々あると存じます。現在のこの法律の原案をもって万全を期したいと思っておりますけれども、御指摘のような点につきましても将来考究いたしたいと存じます。
  68. 滝井義高

    ○滝井委員 ぜひ一つ権威ある中央職業訓練所を作っていただくようにお願いをいたしておきます。  次に公共職業訓練所と事業内職業訓練との関係についてでございます。私たちが達観いたしますと、現在公共職業訓練所——今までの職業補導関係のいろいろの機関には大して殺到はしておりません。ところが事業内の職業訓練所には殺到しているのです。これは中学校を卒業しまして事業内の職業訓練いわゆる養成工には殺到しておる、どうして殺到しますかというと、この事業内の養成工の試験をパスしますと、将来その大会社の中堅職員として、いわば子飼いとして重きをなす。従って高等学校に行く試験よりか、大きい会社の、新しい言葉の事業内職業訓練の方がいいのだというので、これは最近高等学校の受験状況をごらんになっても、高等学校の受験の数というものはだんだん減りつつある。もちろん人口の関係もあると思います。ちょうどその年令の子供が少くなった、という関係もあると思いますが、とにかく少くなって、そうしてそういう大企業における養成所というものに殺到する傾向が見えてきておるわけです。これは先般井堀君もここで質問いたしておりましたが、公共職業訓練所にはいい先生がいらっしゃらない、指導員がいらっしゃらない。ところが事業内の訓練所は、大企業はそれぞれ最高の学校を出た技術者というものを持っておるわけです。この関係なんです。この公共職業訓練事業訓練との関係は、そういう場合に一つの地域に二つ事業内のものと公共のものがあったというときに、事業内に殺到していく、そうして公共はカンコ鳥が鳴くといったことがあってはならぬと思うのですが、一体そういう関係をどういう具合に今後調整をし、考えていかれるかということなんです。この法案の逐条説明なんかを見ましても、それらのことをちょっと書いておられます。どうもこれだけのことではそういう隘路の打開ができないじゃないかと思うのです。この公共職業訓練事業内職業訓練とは密接な連絡をとる、それで一元的な計画性を方針のもとに訓練内容の共通性を保持するというようなことが書かれておるわけなんです。しかし実際今言った事業訓練所の方がわんさ繁昌する、片方はそうでもない、こういう形なんです。これを一体どういう具合に一元的な方針のもとに総合調整をしていかれる方針なのか、それを一つ説明願いたいと思います。
  69. 石田博英

    ○石田国務大臣 詳しいことは官房長からお答えいたしますけれども、公共職業訓練、今の職業補導所も、今滝井さん御指摘のようにカンコ鳥が鳴くというわけではございませんので、やはり相当の競争率であります。それから補導所を卒業いたした者の就職率も非常に高い、高いと申しますか、一〇〇%をこえるような求人の申し込みであります。しかしそのレベルを同一にあるいは同じような基準に保っていきますためには、やはり訓練基準というものをまず中央職業訓練審議会等で設けまして、そうして設けると同時に中央職業訓練所でよき指導員の養成に努めまして、それにより両方の均衡をとって参りたい、こう考えておるわけであります。なお詳しいことは政府委員から説明いたさせます。
  70. 澁谷直藏

    澁谷政府委員 公共職業訓練事業内職業訓練との連携の問題でございますが、これは御承知のように、公共職業訓練は本省においては職業安定所、地方におきましては都道府県の系統で行われておる。それから事業内職業訓練の方は、本省におきましては労働基準局、それから地方の系統におきましては地方の労働基準局、こういうふうに本省、地方を通じてそれぞれ別個の系統で行われておる。従ってその両者の連携というものが必ずしも十分でなかったというのはどうしても否定できない事実だと思います。従って私どもが今回職業訓練法考えるに至った一つの大きなねらいは、当然密接な関連を持ってやらなければならないこの二つ訓練系統を一本の系統で実施するようにいたしたいというのが、この訓練法の一つの大きなねらいであるわけでございます。従いまして今回は中央におきましては職業安定機構の系統、地方も都道府県一本で行われることになりますので、当然これは従来よりははるかに両者の連携はよくなると思います。  もう一つ公共職業訓練事業内職業訓練との中身のつながりの問題でございますが、これも従来はきわめて不十分であったわけでございますけれども、今後におきましては公共職業訓練は半年から一年の短期の訓練で終るわけでございます。それを終りましてからその事業内に就職をする。それでその就職しました場合に、公共職業訓練で受けました半年なり一年の訓練がそのまま基礎になって事業訓練体系の中に吸収できるように、この両者のつながりを慎重に考えて参る必要があるのでございまして、これは先ほど大臣から申し上げましたように、中央で全体のそういった基準なり教科内容を検討いたしましてつながりをうまくあんばいしていきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  71. 滝井義高

    ○滝井委員 今後の職業訓練は一応大臣から都道府県と一本になっいく点は、私はこれは改善されて非常にいいと思うのです。問題はさいぜん申しましたように、私カンコ鳥が鳴くと言ったのですが、そういうところもあったので言ったわけですけれども、公共職業訓練に入れなかった場合には事業内職業訓練でおそらくお世話することになるだろうし、事業内職業訓練に入れなかったときには公共職業訓練においでなさい、こういう形になるだろうと思いますが、そこらの有機的な指導その他は具体的にどういう工合におやりになる方針なのか、ちょっとお尋ねしたい。
  72. 澁谷直藏

    澁谷政府委員 公共職業訓練はこの法律の条文にもはっきり出ておりますように雇用対策として実施されるわけでございます。職を求めておるけれども技能がないために就職できない、こういう求職者に対して、短期の職業訓練を行なって就職を促進するというのが公共職業訓練でございますので、その公共職業訓練に入って訓練を終った者は、安定所の系統を通じてそれぞれの適職をあっせんする。その就職率は大体一〇〇%の成績でございますので、この公共職業訓練を終った者は当然確実に就職できる。就職したあとは、半年か一年の短期訓練でございますので、それを基礎にしてさらに熟練工として必要な訓練を今度は事業内で受ける。その両者のつながりは十分に配慮して、うまくつながるように考えていく、こういうことでございます。
  73. 滝井義高

    ○滝井委員 口でうまくつながるように考えていくと言うことはやさしいのですが、現場の問題としてはなかなかむずかしいところが出てくると思うのです。具体的に申してみますと、たとえば中学校で百五、六十万の者が毎年卒業いたします。その中で実社会に出ていく者が八十万程度です。その八十万の中で結局家事労働につく者と雇用関係に入っていく者とあるわけです。その場合に、自営業につくというのはやはり適当の就職がないからやむなく自営の農業とか、あるいは自分のうちの番頭さんがわりにやるというような、こういう自営業についていくことになるわけなんです。それらの人が当然ある程度基礎的な技能を身につけておればおそらく就職もできるだろうが、それが今日本の中等教育にはないところに問題がある。私は学校教育と職業訓練等についてはいずれ文部省に来ていただきまして質問いたしますので、きょうは文部省をまだ呼んでいませんからやめますが、そういう点がやはり当然考慮せられなければならぬ。従って雇用対策としてまず一般訓練をやられ、それから就職して事業場内に入っていくという形になれば、これは試験があるのですから、当然一般職業訓練というものに入れない人の問題についても考慮されなければならぬわけなんです。それはさいぜん中原さんが言っておつったように、逆の質問になる。事業内職業訓練でやれぬところは共同でおやりなさい、こうなるが、入れなかった者は一体どうなるかというような問題も一方には出てくるわけなんです。その問題は、結局入れないような形でやるならば、学校教育で中学校のときに考えてみたらどうだ、こういう形が出てくると思うのです。わざわざ中学校を卒業して一般職業訓練に行って受ければ就職はよくなる。しかしたまたま中学を出てそれに行けなかったために、身に職がついてないために就職ができない、こういうことになれば、まず前の段階の中学校でなぜやらないのだ、こうなる。そうしますと、最近の文部省の中にできております教育課程審議会の答申等を見てみますと、大体昭和三十七年度から中学校において技術科というものを設けるという傾向が出てきたわけですわ。そうしますと、この法案が通ると三十七年くらいからそういうことになると、文部省は今から徐々にその準備を多分始めることになるだろうと思うのです。そうなるとこの法律というものも当然そういうことを見越した立て方といいますか考え方というものを私はやらたなければならぬと思う。というのが、御存じの通り今までアメリカのいろいろ指針を受けておった日本の教育制度というものが非常に過渡期で、十年を経過して転換期にあると思うのです。昨日あたりの新聞でも御存じのように、就業しておる勤労青年に対しても産業学校という義務制を作ろうという傾向が高等学校あたりで出てくる、あるいは短期大学というものを産業大学ですか、何かそういうとにかく昔の専門学校みたようなものに返そうとする動きですね。しかもそれが高等学校の課程もくっつけて五年ないし六年になるというような動き、こういう動きは必然的に一般職業訓練というものに非常に大きな影響を及ぼす問題だと私は思うのです。そこらの関係を大臣はどういう工合にお考えになってこの法案の立案に当られたのか。
  74. 石田博英

    ○石田国務大臣 非常に高度なもの、たとえば今御指摘の高等学校と短期大学とくっつけた高度なものは別といたしまして、それも含めて全体として学校教育が職業教育を加味し、職業につく前提の条件を整えていく方向に行ってもらいたいと労働省としては考えるわけであります。しかしその場合、今申しました高度なものを別といたしまして、中等学校等でも職業訓練、技術訓練というものをどんどんと積極的にやってもらいたい。しかしこれはどうしても基礎的、普遍的に結局なるものであり、またそうでなければならない。私どもの方でやりますものはその中から出てきたものを、特定の、その土地の事情あるいはその時期の需給の関係等をにらみ合せた特定の職種に適合せしめるように具体的訓練をしていくわけでございますから、この間に私は矛盾はない、こう思っておるわけであります。相互の連関を保っていかなければならぬ、こう思っておるわけでございます。
  75. 滝井義高

    ○滝井委員 実は文章の上だけで見てみますと、一般職業訓練というのは基礎的な職業訓練をやる。それから総合職業訓練というのは専門的な職業訓練をやるところになっておる。そうしますと学校教育法の中学校の目標というのを見てみると、「社会に必要な職業についての基礎的な知識と技能、勤労を重んずる態度」、こういうようなことが書かれておるわけです。それから今度は高等学校の目標を見ると、「一般的な教養を高め、専門的な技能に習熟させること。」こうなっておるわけです。ちょうど労働大臣の言う一般職業訓練総合職業訓練が中学校、高等学校とこう並列する形で出てきているわけです。特に高等学校の中でも夜間高校なんというのはこれはいずれ文部省にも質問するつもりですが、これは非常に総合職業訓練所との関係が微妙になってくる。なおそればかりでなくて産業学校というようなものが出てきますと、技能検定の関係あるいは職業訓練指導員との関係、これらの資格関係というものが当然やはり問題になってくるところなんです。学校教育の問題はいずれ文部省にも少し尋ねて、もう一回労働省の方にもお尋ねをいたしたのですが、そういう中学校の目標なり高等学校の目標等との関連というものが非常に微妙に関連してくるのです。従って国の財政的な見地から考えるならば、もし学校教育でそういうものがやれるのなら、わざわざ学校ということを言わずに、職業訓練所というようなことでやるよりか、むしろ学校でやった方がいいという考えも出てくることになる。というのはどうしてかというと、何といっても日本には事大主義の考え方が非常に強い。養成工なんか出たらどうも給料が学校出よりか上らぬという偏見がなお日本では支配をしている。それが日本の若い青年を支配をしているのじゃなくて、いわゆる会社の重役や経営者の頭にそういうことがあるということなのですね。従ってこれは結局よくないことなのです。私はどうしてそういうことを突如ここで言うかというと、これは事業所内の訓練所に関連をしてくる。たとえば私なら私が労働運動を一生懸命にやっているとします。そうして私のむすこを私の会社の養成工に入れたいと考えます。そうすると会社は、むすこを入れる条件として、滝井さん一つ労働運動はあまりやらぬようにしてくれと必ずくるのです。そのかわりあなたのむすこは入れますからという。そうすると親ばかですから、むすこかわいさに余って頼みますとこうなるわけです。これは一つのひもがつくのです。やはり民主的な労働運動を推進する上についてこういう点は微妙な、そうして同時にそういう形で入ったり、大きな事業場の訓練を受けた私のむすこは今度学校を卒業したらどういうことになるかというと、おやじがああいって入れてもらったのだからわしは子飼いじゃ、こういう企業内における特権意識が目ざめてくる。こういう点を私は事業所内の職業訓練というものについては真剣に考えなければならぬと思う。少くともその運営については労働組合職業訓練をやらせいという主張もわれわれはしたいと思うのです。そういう関係があると同時に、事業内の職業訓練の運営についても、今くらいに民主的に労働組合が発達したのですから、労働教育も大臣はやられようとしているのだから、やはり自分の子供あるいは自分と同じ労働階級である者の教育についても、技能訓練についても、その事業場の労働組合が幾分発言権を持つ姿というものは作っておかなければならぬと思うのです。これは最近の傾向、たとえば大学の傾向をごらんになっても、労働者のわしのむすこが大学の学生の間は赤旗を振って全学連の先頭に立った、しかし三年になったらぴたっとやめちゃう、そして高等試験というか、いわゆる公務員試験を受けて通る、そして会社に行く前とかなんとかはもう自民党支持でございますということになってしまう。そういう形は、日本の将来を考えると、日本の青年というものにうそを言わせる形になってくるのですね。だから何かそこらあたりにもっと堂々とした青年を作っていく、ほんとうに真実があるならば、やはり真実を主張せしめていくという形の訓練というものができる形を、私はやはり事業場内に作っていかなければならないと思うのです。そういう点で一般職業訓練事業内の職業訓練との関連を考える場合に、事業内の職業訓練というものがそういう危険をはらむおそれがある。特に労働協会というものができてわれわれの頭を洗脳していく、洗っていくという形になると、ますますその傾向を助長するおそれがある。これは私は石田大臣だから言うのですよ。そういう危惧を抱く者なのです。現実にそういうものをまのあたりに私は見ること再々であるのでますます言うのです。それはわれわれの知っている学生でもずいぶんそうなのです。勇敢にやっておったが、卒業する段階になるとぴたっとやめて、今までと打って変って手の平を返すような形になってくる。これはやはり人間ですからそれぞれ感情もあるし弱点も持っております。そういう点事業場内の職業訓練については、特に私は保守党の中の進歩的なチャンピオンといわれる石田大臣のもとでこれがニュー・フェースとして行われる立法なのですから、初めからやはりそういうことを注意しなければならぬと思いますが、事業場内の職業訓練を行うに当って、勤労者の代表が、労働組合か何か、そこに発言の機会を求めて、そういう悪い傾向の起らないような措置を講ぜられる意思があるのかないのか。
  76. 石田博英

    ○石田国務大臣 前段の、年をとってだんだん考えが変ってくるという場合は、われわれも覚えがあることでございまして、これは必ずしもそれが全体として否定せられる傾向であるかどうか疑問だと思います。御議論を承わっておりますと、わが党支持に変ってくる、反民主的なというようなお話しでございますが、私はそうは思いません。それから、たとえば事業内の職業訓練の施設に入ることを条件として労働運動にいろいろ制約を加えるということは、現行法規では明らかに不当労働行為であります。そういうことは当然戒むべきことであることは言うまでもない。労働協会等も、そういうことをもなくすることを目的として立案をいたしておるのであります。それから、それでは現行法規の中に何か組合の問題を入れろ、こういうお話しでありますが、先般来の御議論で、職業訓練審議会に労働者側の代表というようなものを入れろという御議論がずいぶんございました。私は、これは純然たる技術問題でありますし、そこを出た者が就業の機会を的確に得られるということが、やはり必要であると思いますので、そう利害が明確に対立しておる問題ではございませんから、今この法律に明確に入れろという御議論については、にわかに賛成はいたしかねるのでありますが、中央職業訓練審議会等の構成、運営について御意見の趣旨を盛って参りたい、こう考えておる次第でございます。
  77. 滝井義高

    ○滝井委員 中央職業訓練審議会に、そういう勤労者の意見を反映する形なり運用を考えたいということでございますが、事業場内の職業訓練というものが、一たび科目なり訓練の期間なりが決定せられて動き出しますと、これは中央職業訓練審議会までいろいろ意見を聞くことはほとんどなくなってくるわけです。事業場内自身で動く形が出てくるのです。そうしますと、さいぜん言ったように、自分なら自分のむすこを入れてもらうということになると、やっぱり人情ができて、なかなかそうはいかぬ場合ができてくる。で、これは経営者が自分の金で経営をして、ある程度労働大臣のいろいろの援助を受けるわけでありますが、多分四分の一くらい国が補助金を出すと思っておったのですが、受けるわけでございますから、それは労働者は金を出しておらないので発言権はないかもしれません。しかし、やはり自分たちのあとに続く者を養成するのですから、そういう意味ではある程度考慮をしておく必要があるんじゃないかという感じがするのです。これはこれ以上言いませんが、そういうことがあるということだけは、一つ御記憶にとどめておいていただきたいと思うのです。  それから時間の関係がありますから少し急ぎますが、次は、いつか大臣が就任間もないころに、自分は、今までの日本の長期経済計画というものは、物と金とがそのまん中にどっかりすわっておって、雇用というものがその柱の中心になっていなかった。これは日本の経済計画の欠点だ。自分は大臣になってから、まず日本の長期経済計画のまん中に一つ雇用というものを入れたいという発言があったことを大臣御記憶になっておると思うのです。で、今度の日本の長期経済計画を見ると、雇用というものは実はまん中に据えられていないということなんです。これはなかなか大臣が実力者であることは認めますが、一挙にそれはできなかったと思うのです。この考え方は大臣、今どういうお考え方になっておるのか、これをまず聞かしてもらいたいのです。
  78. 石田博英

    ○石田国務大臣 政治の要締は、やはり人をして安んじて、希望を持ってその職に当らせることであると思いますから、私が就任早々申し上げた考え方と今とは少しも変っておりません。あらゆる機会をとらえてそういう方向に持っていきたいと思っております。今の長期計画の立案にあったりましても、でき得る限りそこを柱に立案されるように、あらゆる機会に要望をたいして参ったのでありますが、特に三十三年度については、御指摘のように国際収支改善のためという目的が柱になって、雇用ということが柱にならないという御批判もあるかと存じます。しかし、今国際収支改善のための施策を講じておきますことは、やはり将来における雇用状態の改善にも資し得るもの、こういうふうに私どもは理解をいたしておるわけであります。
  79. 滝井義高

    ○滝井委員 昭和三十三年度の長期経済計画が、輸出を増進して、少くとも一億五千万ドルの国際収支の黒字を確保したいということが、ことしの柱になっておることはわれわれもよく存じております。大臣が就任の当初に言われた、長期経済計画の中心に雇用計画というものを持っていくということはできなかったわけで、一つ来年はできなくとも、だんだんそれに近い方向に持っていっていただきたいと思うわけです。  そこで職業訓練計画というこの四条の目的を達成するためには、当然職業訓練の基本的な計画を定めなければならぬ。そうすると、その基本的な計画を定めるにあたっては、当然雇用、失業の状態及び工業その他の産業の発達の状態等を十分見きわめて、そこに技能労務者の養成計画を立てる、これは当然です。そうしますと、雇用、失業の状態というものは経済の構造、産業構造というようなものと密接に結びついてくるわけなんです。一体現在の日本状態を見てみると、必ずしも普遍的に特殊の労働者が不足しておるというわけではないと思う。それは職種によって、あるいは地域によって、それぞれ不足の状態が違うと思うのです。あるいは産業によっても違うと思うのです。そうすると、一体職業訓練というものと、その日本産業の中における特定地域、特定産業、特定職種の不足といかにマッチせしめていくかということなのです。これが、まず私たちは、日本の長期経済を考え、同時にそこに基本的な職業訓練計画を考える場合に、マッチしていなければならぬとことだと思う。Aという職種が不足のところへBという訓練計画を立てれば、これはナンセンスですから、そういう全体的に達観してやられるならけっこうだと思うのですが、これはどういう状態でやられようとしておるのか、これを一つ説明願いたい。
  80. 石田博英

    ○石田国務大臣 非常に抽象的なお答えしかできない問題でありますが、おっしゃる通り労務者を職種別に見て、過不足の状態は非常に偏在いたしております。その偏在しておるものが一時的な場合と恒久的な場合とがございます。その点の見きわめが非常に必要であろうと存じますので、そういう点につきましても、やはり現実に即して、そういう雇用の需給関係と沿うように具体的な、そうしてまた流動性のある計画を立てていきたいと考えておるわけであります。
  81. 滝井義高

    ○滝井委員 過不足が偏在をし、あるいは一時的恒久的な状態、いろいろバラエティに富んでおるわけです。従って、当然職業訓練計画というものも、それに即応した形で行われなければならぬと思いますが、そうした場合に、一番動かなきゃならぬものは一体何かということなのです。一般の職業訓練というものは、御存じの通り基礎的なこと、初歩的なものをやることです。新しく雇用に臨もうとする人を訓練するところだ。そうしますと現実に不足をしておるこの技能労務者というものは、相当高度な総合的な職業訓練を必要とする段階のものだと私は確信をしておる。そうしますと総合的な職業訓練というものは至るところにあるわけではないわけですね。そうしますとこの日本の当面する産業構造の中で、その産業構造に少くともマッチする雇用労働者というものを持っていくためには、当然これはそこに機動的な総合職業訓練というものが行われなくてはならぬと思うのですが、そういう機動性というものが総合職業訓練に持たせられておるのかどうかということなんです。
  82. 澁谷直藏

    澁谷政府委員 一般職業訓練はもとよりでございますが、総合職業訓練もこの法文で明らかなように、雇用対策としてこれが役割を担当しておるわけでございます。従いまして雇用対策としての役割を担当する以上は、そのときどきの労務の需給状態というものに適用する計画を持たなければならないのは当然でございます。従いまして一般職業訓練は当然でございますが、総合職業訓練におきましても、その訓練の計画はそのときどきの労務の需給状態を確実に把握いたしまして、それに対して適用するように職種の転換なり教科内容の改訂なりを行なって参るようにいたしたいと考えております。
  83. 滝井義高

    ○滝井委員 いや問題は総合職業訓練所が、それぞれ職種その他自由に転換つができるかどうかということですよ。これはもう指導員の問題になってくるのです。そうしますと御存じの通り、たとえば中学校で相当の俸給を払って、中学校の数学とかあるいは技術の先生をほしいと思っても、なかなかいないのですね。それはすでに文部省の計画が八千人の理科系統を増加する形をとらなければどうにもならぬということなんです。ところが理科系統を八千人養成するといったって、一年ではできないのです。やはり三年、五年と長日月を要することになる。その場合にたとえば福岡県のAというところに総合職業訓練所があるが、しかし実際に不足しているのは山口県の宇部地帯に不足しておるのだということになると、これはなかなかむずかしくなってくるわけなんです。臨機応変にはやるといっても、実際には経済的な問題が伴う、通勤その他の問題が伴うのでなかなかうまくいかないということがあるのですね。そこで私はやはり総合職業訓練所というものにある程度機動性を持たせるということになると、これは事業内職業訓練との関連を考える以外にはないのじゃないかと思うのです。ある程度事業内の職業訓練総合職業訓練所の役割を同時にやらせる形が当然とられなければならぬと思うのです。そうすれば総合職業訓練所の数というものは、一般職業訓練所ほど普遍的にはないにしても、ある程度事業内でそれが当然やることになる。ところが事業内の職業訓練というものは、これは施設に限界があるのです。それからその教える指導員、先生というものが、その事業場の従業員である職員であるという点に、そんなに長く先生一本でいくというわけにはいかぬと、こういう隘路が、できてくるのですね。そうしますと、どうしてもやはり機動性を持った指導員のプールみたようなものを中央職業訓練所に作っておかないと、長期経済計画に見合う長期の職業訓練計画というものが立たないのですね。これでは学校はあるけれども、さて不足した技能者を養成するための先生がいない。先生を集めてきてやるというのではこれはもう間に合わぬ。こういう形が出てくるのです。そうするとやはり中央職業訓練所というものの中に絶えずプールしておって、普通は調査研究に従事しておる、しかしいざというときにはその人がやはり出ていかれる、こういう形でも作らなければ、これはなかなかうまくいかぬという感じがする。そういう点、一体労働大臣の方はどういう工合に——偏在し、そして一時的、恒久的に現われる、非常にバラエティに富んでおる職業訓練というものを、どういう工合に大体対応していくかという、もうちょっと具体的に御説明願いたいと思います。
  84. 石田博英

    ○石田国務大臣 まず第一、指導員の問題でありますが、それはおっしゃる通りでございます。しかし今のところはプールするもう一つ前の段階で、本年度はそのプールするところまではとても望めないと思いますが、方向としてはそういうことでなければならぬのじゃないか、こう考えております。法律の六条、七条にそれぞれ指導員の訓練条項を入れてございますのもその趣旨であります。それからもう一つ、機動性を持たせますために事業内の職業訓練施設に対して職業訓練の委託を行うことができる、これは第九条で規定しております。そういう方法をもちましてでき得る限り機動性を保って参りたい、こう思っているわけであります。
  85. 滝井義高

    ○滝井委員 そういう技術上の問題をいろいろ考えてみますと、なかなか職業訓練というものは容易ならざるものであるという感じがする。そこで現在日本では中堅の熟練工が不足しているということはすでに労働省の労働情勢が明白にわれわれに教えてくれているのですが、一体いかなる職種がどの程度不足しているのか、そしてその職種に対して今回この法案が具体的にどういう役割を演じてそれを充足していくことになるのか、それを一つついでに御説明願いたいと思います。
  86. 澁谷直藏

    澁谷政府委員 この問題は前会井堀先生の御質問に対してお答えしたのでございますが、三つございますが、そのうち特に事業場の技能労働力の不足の状況について調べました統計が二つございますので、それを簡単に御披露申し上げますると、昭和三十一年末で労働省の労働基準局が機械、金属等重要七産業について労働者数十人以上の事業場三千四百二十六、対象労働者九十三万九千七十五人について調査した結果でございますが、技能労働者の不足している職種並びに不足数は機械工が八千八百十七、仕上工が三千九百九十三、鋳物工が二千八百七十、機械組立工が二千三百六十六、溶接工が二千六百十三、製カン工千三百七十二、プレス工千二百二十七、板金工千百六、こういうことでございまして、不足数の合計が三万九千七百十二名となっております。それからもう一つの統計は昭和三十二年十月末で職業安定局が調べたのでございますが、電気、機械等主要九産業の規模十五人以上の五千百四事業所について調べました結果でございますが、これらの全職種の技能労働者の不足数は約四万三千、こういう統計になっております。
  87. 滝井義高

    ○滝井委員 それは日本全国のものでなくて特定の産業をピック・アップでやったものであって、職業訓練計画というものを立てようとするならば、全国的に見て一体どの程度の技能労務者というものがいかなる職種で不足をしているかということをやはり全国的なものを私たちに教えてもらわなければいかぬと思う。そうしないと一半だけで全部を推測していくということになると間違いが起る。わかりますか、わかればあとで一つ資料で出していただきたい。少し基本的な問題で大臣に尋ねたいので。そこで職業訓練計画と経済計画というものがある程度マッチしたものでなければならないのは当然なんです。それは雇用政策の目標というものを長期経済計画の中に書いておるわけなんですが、大臣これお持ちですか、これの六十六ページの上の方に書いてある「雇用政策の目標は、増加する新しい労働力の吸収、」——これは当然一般的な職業訓練というものをある程度やらないともはや生産性の向上も何もできないわけなんで、「新しい労働力の吸収、」それから「就業構造、産業構造の近代化の促進、不完全就業状態の改善、所得水準の上昇等である。」これだけの目標があって、そのためには経済の成長率を上げなければならぬ。経済の成長率を上げるためには輸入をどんどん持ってこないと、日本は原材料がないから、従ってそこに国際収支の矛盾が起ってくることをここで明らかに指摘しているわけなんです。従って国際収支の矛盾をなくしながら、高い経済の成長率を保って、そして雇用政策の目標を達成していくということになると、限界が出てくる。どんどん原材料を輸入すれば、日本経済は底が浅いですから、国際収支は赤になることは必然なんです。従って輸入に限界が出てくる。輸出も従って輸入によって規制されてくる。こうなりますと、この長期経済計画と職業訓練計画との関係で、まず第一にわれわれが問題にしなければならぬのは、産業構造との関係です。この雇用の増大と就業構造の近代化、これはおそらく労働省の出しているものだと思いますが、まず第一次産業を減らさなければならぬことになるわけです。第一次産業における就業者というものを減らさなければならぬことになる。そうすると、職業訓練計画の少くとも一つの目標としては農林水産業における若い労務者諸君を、訓練計画の中に乗せなければならぬと私は思う。まず第一にそういうことをやって、自営者自身を減らす方向に持っていかなければ、雇用構造の近代化というものはできないと思う。そうすると、産業構造の中で第一次の農林水産業というものを減らすためには、一体いかなる方向でこの訓練計画が動いていくかということです。やはりこの基本的なところを言わないで、ただ現象的に現われているものだけをやるのだ、やるのだと言ったって、私はほんとうの職業訓練計画は立たないと思う。やはり日本経済の基盤を見詰めながら、その基盤の上において長期経済と職業訓練計画とがどういう工合にマッチしていくか。その中でまず第一に、第一次産業についてはどういう工合に職業訓練の中に乗せていくのか。これはなかなか一挙には答弁できないかと思いますが、少くともこういう法案を出すからには、それだけの基礎的な検討が加えられておらなければならぬと思うのです。その点はどうですか。
  88. 石田博英

    ○石田国務大臣 一次産業における就業者を減らしていって、二次、三次に回していくために第一に必要なのは、訓練所の場所、それから設備、職種の選び方、そういう点に留意しなければならぬと思っております。第二には、やはりある程度高年次の人たち、年令の高い人たちも対象とし得るようにしていきたい。新規学校卒業者ばかりを——法律上も制度上もそうはなっていないのでありますが、実際の運営はどうも新しい学校の卒業者が主力をなしている。これはそうでない人も対象にしていけるように、実際の運営の上で心がけて参りたい、こう考えておるわけであります。
  89. 滝井義高

    ○滝井委員 大臣の今言われたように、一応抽象的には訓練所の場所、職種、施設、それから年令的に見れば弱年者ばかりでなく、ある程度高年令者も持ってこなければならぬ。私もその通りだと思うんです。そこで今度できるところの一般職業訓練所なり総合職業訓練所というものの配置計画は、やはり日本の農業構造の中における第一次産業の構造を見ながら、具体的に立てられておらなければならぬと思うのです。私がどうして今こういうことを言い始めるかというと、日本の農村の姿をごらんになると——農林白書が五つの赤信号というものを出している。その赤信号の一番大事な点は、日本の農業における雇用構造というものの非常に脆弱な状態が顕著に現われてきているということなんです。それは日本における農業の就業者というものが老人と婦人になってきているということです。そして農村における青少年、特に壮年層というものはみんな兼業に転化しているということなんです。もう一つ日本の農業における事業農家というものが少くなって、兼業農家が非常に多つくなってきているということです。そうしますと、出でては近代的な産業における労務者となり、かえっては前進的な農業労働者になるという一体日本の人口の四割を占める層を、どういうと工合に職業訓練をしながら日本の職業構造の近代化をはかっていくかということは、当面労働省が基本的に考えておかなければならぬ問題だと思う。すでにこの白書はこのことを指摘してくれておる。日本の経済というものは脆弱になっておる。しかも青壮年は外に出て行って、飯米農家がふえつつある。こういう現実の中で一体職業訓練ということをどういう工合に近代化していくかということです、これは近代化した労働の力によって農村におけるその青壮年の皆さん方が近代的な技術を工場で身につけるならば、それは同時にかえっては日本農業の近代化、有畜化に一つの大きな知的原動力を提供することにもなると思う。従って労働省職業訓練というものは日本農業の階層にまで及ぶ力があるものだというふうに高く評価しておるわけです。従って私どうもとっぴな質問をしておるようでありますが、ここらあたりが私はどうも今までの質疑応答を通じても労働省の盲点ではないかという感じがするのです。この点今の大臣の御答弁は抽象的な御答弁としてはその通りだと思う。しからば一体この法案がどの程度具体的に、どういう工合に実施されようとするのか。実際失業保険の施設を中心にしまして専門的な技術を養成するために失業保険の施設を使っていくとするならば、既存のものになってしまう。そうすると、失業保険の施設ができておるのは、一体どういうところにできておるかというと、大都市とその近傍です。農村にはできてないとすると、結局その職業訓練というものはおざなりの、今までの失業者に手当をする程度に終ってしまって、ほんとうに職業訓練計画と長期の日本経済計画と見合った訓練計画はできないのじゃないかという感じがする、その点どうお考えになっておりますか。
  90. 石田博英

    ○石田国務大臣 既存のものにつきましては、今指摘通り、そういう傾向があることは認めますが、本年度の予算におきましても相当新規なものができるようになっております。そういうものの決定に当ってはただいま御指摘のようなことを考慮してやるつもりでございます。それから地域、職種のほかにやはり対象性別、それから訓練の時間等も十分考慮したい、こう思っておるわけであります。それから農業の近代化に役立つということは、やはり直接的ではなくて、そういう訓練を受け、近代的な就業構造の中に入っていくということ自体を通じて農業経営の近代化に積権的な面で寄与し得られるものと考えておるわけであります。
  91. 滝井義高

    ○滝井委員 既存のものは私は今指摘申し上げ、大臣もお認めになったように、主として一般職業訓練所を除いてはこれは大体失業保険の施設を使っていくということになる。それから企業職業訓練、いわゆる認定職業訓練というのも主として大都市に集中しておるということになると、日本の農業労務者、すなわち第一次産業の従事者を第二次産業、第三次産業雇用労働者に引き上げていくためには、よほど職業訓練考え直してもらわなければならぬ点があると思う。そうすると、将来、たとえば今年度予算——私きょうちょっとうっかりして予算書を持ってきてないので、予算に対する質問は次会に譲るといたしまして、どういう計画で職業訓練計画を立てられておりますか、第一次産業の者をだんだん引き上げて、第二次産業、第三次産業雇用労働者にしていくというここ二、三年の具体的な計画というものはどういう工合にお考えになっておりますか。
  92. 石田博英

    ○石田国務大臣 総合職業訓練所は本年度四カ所増設することになっておりますが、それはただいま御指摘のような方向でいきたいと思っております。やはりそういう傾向を将来の予算編成その他の画において助長することによって、御趣旨に沿うような方向にいきたいと思っております。
  93. 滝井義高

    ○滝井委員 幾分基本的な質問になりましたが、そこらあたりが盲点ではないかという感じがするのです。ぜひそういう点に留意していただきたいと思います。  次に、産業構造と関連して就業構造の問題でございますが、すでにこの長期経済計画の中にも書かれておるように、昭和三十七年になって参りますと雇用労働者がずっとふえてくる形になっておる。これを見てみますと、産業別に見ますと第一次産業が、三十一年度の四〇・七が三十七年度には三五・七こういう工合に減っていって、第二次産業は二八・七が二九・九とふえていく、第三次産業も三〇・六が三四・四とふえていく。産業別に見るとそうなんですが、今度は従業上の地位別就業者の状態を見てみますと、業主は二五・六が二四・三に減少していく、雇用者は四二が三十七年度には四九・五になる、家族従業者は三二・四が二六・二、こういう工合に六程度減ってくることになるのです。従って当然訓練計画の重点というものは家族従業者にあると思うのです。特に家族従業者というものが家族従業をやめて雇用労働者に転化していく計画というものは、そこの雇用主の理解というものがないと職業訓練を受けにはやらないのです。あるいは夜の定時制の高校にもやらない、こういう形があるわけです。従ってわれわれが職業訓練計画をやるためには、労働者諸君に職業訓練を受けよという指導をすると同時に、さらに事業主あるいは資本家に対してそういう一つの啓蒙宣伝というものをやらなければならぬと思う。そうしないとこの目標というものは達成ができないという感じがするのです。家族従事者が第一であり、第二番目が業主なんです。こういう関係について、大臣はどういう工合に遭えて、これを軌道に乗せていく所存なのか。御存じの通り家族従業者というものは、いわゆるわれわれの主張する八千円の最低賃金以下の層なんです。そうすると、それらの者が家族従業を捨てて先ず職業訓練を受け、それから雇田労働にいかなければならぬが、一体小さな業者がそういうことをやるだけの経済的な余力が日本にはあるかないかということなんです。こういう点について労働省はどういう見解を持たれておるのか、石田労働大臣の見解を聞かしてもらいたい。
  94. 石田博英

    ○石田国務大臣 基本的には、たとえばそれが共同でやられましょうと、事業内職業訓練でありますと企業それ自体の経営にも役立ってくるわけでありますから、これは比較的問題は楽だと思っております。ただそうでなく、公共職業訓練所に家族従業者あるいは一部分の業主等が参加することについての困難性は非常に多いこともよく承知いたしております。これには、まず一番必要なことは啓蒙宣伝によって理解を深めていくことでございますが、しかし経済的な背景を作ってやる、これも必要だと思っております。しかし今回の場合は、特に具体的な訓練に対する補助はいたしておりませんけれども、そういうことに対する具体的な施策というものが考えられていないということは残念でありますが、将来そういう方法をも考慮しなければならぬのじゃないかと思っておるわけであります。
  95. 滝井義高

    ○滝井委員 私は長期計画を中心にして今質問しておるわけなんですが、やはりこういう数字を表わしてはっきりした目標を立てたからには、その裏づけがなければなかなかこれは実施ができない。というのは大臣も御存じの通り、この日本雇用状態を見てみますと、千人以上の企業における雇用量というものは全産業に占める雇用量の割合をとってみますと、これはイギリスやアメリカに次いで日本は世界第三位に高いのです。ところが今度は十人以下の企業雇用量を見てみますと、これは後進国であるブラジル、アルゼンチン以下なんです。そうしますと、一体最近雇用というものはどういうところにふえているかと見ると、大企業とそれから十人以下の零細企業にふえておる。いわゆる両極に雇用が増加していっておるという傾向なんです。そうしてわれわれが産業構造の近代化をはかり、就業構造の近代化をはかろうとするならば、この十人以下に集中しつつあるところの雇用労働者諸君の技術を高める以外にないということなんです。それはすでに燕市のあの単純な、ぽっと打ち出してフォークやらさじを作る。あれはすでにアメリカから、ことし十カ月間ばかりの判決の猶予を受けたようなものなんですが、あれなんかを見ても、結局アメリカに輸出のできておる間はよかったけれども、あれだけの技術ではもはやどうにもならぬということなんですね。ところが、あの労務者諸君が、あの過程で、非常に景気のよかった時代に何らかの形で技能訓練を受けておれば、今すぐにもっと高度なものに切りかえるということも可能なんです。ところが燕市における農家のなやみたいなところで、研磨機か何か一台持って電気メッキをやっておる、こういう形ではもはやどうにもならぬのです。こういう形は、結局十人以下の日本の下請工場の状態というものはみんなそういう状態です。職業訓練の道にこれらの雇用労働者というものを連れていくためには、これは日本における農業を私は先に出しました。日本における中小企業、これらのものの訓練というものを一体今度はどういうふうにして乗せていくかということなんです。これは農業における訓練と同じようにむずかしい。同時にこれらの十人以下の企業に働く労働者諸君は、農業の兼業農家からきている労務者かもしれません。それらは同時に二重のワクにはめられておるのかもしれませんが、こういう問題は結局日本の経済の矛盾を一手に引き受けている十人以下の零細企業の問題をどうするかということです。これを一体どうして職業訓練の計画の上に乗せていくかということです。私は一つ燕市の問題を出しました。あそこはおそらくそういう形を集約的に背負ったと思う。これは輸出産業です。その輸出産業が単純な手労働によって行われておって、何ら職業訓練をされていなかった。今急に職業訓練を施そうとしても、あの施設とあの年令ではどうにもならぬという状態なんです。これは具体的な燕市の問題であります。この日本の現実で、千人以上と十人以下の雇用に集中している状態の中で、千人以上は問題はないと思いますけれども、十人以下の企業の中で、いかなる職業訓練を計画の上に乗せてやっていくのか、これを一つお聞かせ願いたい。
  96. 石田博英

    ○石田国務大臣 これはこの法律の十五条にあります共同施設でやって参りたい。  それからいま一つは、やはり総合職業訓練所、公共職業訓練所をでき得る限りそういう必要度の高いところへ増設をいたすというような方法でいたして参りたい、そう思っておるわけであります。
  97. 滝井義高

    ○滝井委員 十人以下は共同施設でやることになるでしょう。そうしますと、当然そこに何らか共同施設の指導というものが労働省によって行われなければならぬことになるわけです。幸い今回任意包括の形にしても、五人未満の事業所にも失業保険ができる形になるわけです。そうすると当然失業保険の裏づけを持ちながら職業訓練をやるということは、これは私は非常に大事なところだろうと思うのです。そこで具体的にはそれらの十人以下の零細企業にどういう工合にして共同的な施設を作らしてやっていくのかということなんです。十人以下の零細企業は健康保険にもようかかっていません。それから失業保険ももちろん入っていないということになると、まだみずから食うことの問題さえもうまくいっていないところに、さらにより高い概念である職業訓練という概念を作るだけの、頭脳の切りかえというものがなかなかできない。とするならば何か労働省がみずからそこに金でも出して、施設でも作ってやるという方法をとらなければならぬが、その予算というものは私はないと見ておったのですが、そういう点具体的にどういう工合に推進されていく所存ですか。
  98. 澁谷直藏

    澁谷政府委員 ただいま御質問の点は、第十五条で、共同認定職業訓練をしてこれを推進していく、こういうことでございますが、確かに十人未満の事業主等におきましては、なかなか職業訓練に対する関心なり熱意というものがそう高くはないという実情にあるかと思います。従いまして職業訓練法が実っ施されますると、これは当然都道府県の当該職業課なりあるいは総合職業訓練所、一般職業訓練所の系統を通じまして積極的に啓蒙宣伝をやる必要があると思いますと同時に、予算の面の裏づけを施しまして、こういう訓練をやればこういう補助金も出る。また訓練をやった結果はこのような成果が上る、行政指導と予算の補助と相待って、漸次軌道に乗せていくことが必要であると考えております。
  99. 滝井義高

    ○滝井委員 啓蒙宣伝をいろいろやられることはけっこうですが、やはり緊急を要するところは、当面日本産業に必要な、さいぜんいろいろ機械工とか溶接工とかありました。そういうものを急速に養成することは必要です。しかし同時に日本産業を、ある程度産業構造を高度なものに、近代的なものにしようとするならば、やはり十人以下の問題というものを解消していく以外にないと思うのです。失業保険もなければ健康保険もない。実際は五人以上になっているのですけれども、十人以下で健康保険をやっていないところの方が、調べてみれば多いのではないか。従ってそこらあたりをやるためにはやはりある程度国が金をつぎ込んででも、やはり小規模な訓練所でも作ってやるという形にする以外にないと思う。小さい事業場にわれわれは共同化を推進してきたわけなんです。ところが実際に共同化さえもできない。仕事共同化ができないものが、職業訓練共同化ができるはずがない。まず先に仕事場の共同化ですよ。ところがそれができない。だからその点も今の御答弁では満足ができないのですね。もう少し予算でも取ってやられてにおるというのならば納得します。しかしどうも予算もそういうところははっきりしてこないし、ただ共同訓練をやって幾分の援助をしてくれるというだけでは——これは施設も要りますし、十人以下ではまず指導員がおりません。指導員が指導しておったらその間工場を休まなければだめだ、こういう形だと思う。従ってそういう点はぜひ一つ、今年はだめならば来年度はもう少し積極的に考慮していただかなければならぬと思う。
  100. 森山欽司

    森山委員長 本日はこれにて散会いたします。    牛後零時四十四分散会