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1958-03-18 第28回国会 衆議院 社会労働委員会 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年三月十八日(火曜日)     午前十時四十三分開議  出席委員    委員長 森山 欽司君    理事 植村 武一君 理事 大坪 保雄君    理事 田中 正巳君 理事 野澤 清人君    理事 滝井 義高君 理事 八木 一男君       小川 半次君    加藤鐐五郎君       亀山 孝一君    草野一郎平君       倉石 忠雄君    小島 徹三君       小林  郁君    田子 一民君       中山 マサ君    藤本 捨助君       山下 春江君    亘  四郎君       井堀 繁雄君    岡本 隆一君       栗原 俊夫君    五島 虎雄君       多賀谷真稔君    堂森 芳夫君       中原 健次君    長谷川 保君       山花 秀雄君  出席国務大臣         労 働 大 臣 石田 博英君  出席政府委員         労働政務次官  二階堂 進君         労働事務官         (大臣官房長) 澁谷 直藏君         労働事務官         (職業安定局         長)      百田 正弘君  委員以外の出席者         専  門  員 川井 章知君      ————◇—————
  2. 森山欽司

    森山委員長 これより会議を開きます。  職業訓練法案を議題とし、審査を進めます。質疑を許します。井堀繁雄君。
  3. 井堀繁雄

    井堀委員 職業訓練法案三条についてお尋ねをいたしたいと思います。  第三条は、学校教育法並びに青年学級振興法関係において、学校教育と、特に勤労青年職業教育との関係において、この法律では緊密な関連のもとに行うということと、重複を避けるということを明記しておるのでありますが、これはきわめて重要な事項だと思うのであります。ある意味においては、職業訓練性格を決定づける事柄とも存じますので、この点は文部省と、両方お尋ねするのが適当かと思いますけれども、一応提案者である労働省の見解を伺っておきたいと思います。  まず、重複を避けるという点については、どういう点を指すのであるか。また緊密な連係を持つというのは、抽象的には理解できるのでありますけれども、具体的には非常に困難を伴う事柄ではないか。そういう問題を解決することを、法案の中で明確にすることが重要ではないかと思うのでありますが、その点が、この説明や条文だけでは理解しがたいので、この点について具体的な御説明を伺っておきたいと思います。
  4. 石田博英

    石田国務大臣 具体的に重複をしないような、いろいろのことを考慮しております。これは政府委員から答弁させます。
  5. 澁谷直藏

    澁谷政府委員 職業訓練学校教育との関係につきましては、非常に密接な関連を持っておる点につきましては、井堀先生も十分御承知の通りでございまして、諸外国訓練制度を見ましても、学校教育との関係を非常に重視しまして、いろいろな規定が設けられておるのでございます。わが国におきましても、従来職業安定法におきましても、安定法に基いて実施いたしまする職業補導、それから学校教育との関係につきましては、消極的に重複を避けるべきであるという規定は、現行安定法にも定められておるのでございます。ただ、私どもが今回訓練法案を立案するに際しまして、この両者関連が非常に深い点にかんがみまして、消極的に重複を避けるということだけでは物足りないのであって、さらにこの際両者が積極的に提携してより総合的な効果を上げるようにすべきである、こういう考え方に立って、文部省当局とも数回にわたり懇談、折衝を持ったのでございます。その結果といたしまして、両方考え方に合致を見まして、この第三条規定となったのでございます。  これを具体的に申し上げますと、最初の車検を避けるという点でございますが、特にこの職業訓練との重複の点で問題になりますのは、定時制高等学校でございます。これは井堀先生も御承知のように企業内でいわゆる技能者養成を受けておりながら、同時に高等学校を修了したという資格をもらうために、夜間定時制高校に通っている。つまり、その点において労働者の二重負担になっているというのが、相当顕著に見られる現象であります。この二重負担を何とか避けまして、労働者負担を軽くしてやりたいというのが、労働省のかねての希望であったわけでございますが、学校教育の体系との関連で、なかなか文部省がその点は踏み切れなかったのでございますが、今回訓練法案を出すにつきまして折衝した結果、文部当局もこの点は踏み切ることに決意をいたしまして、その二重負担を避けるための必要な規定を改正するために、今回学校教育法の一部を改正する法律案を、この国会に提出することになっておるのでございます。
  6. 井堀繁雄

    井堀委員 私のお尋ねしたいのは、具体的にどのようにして重複を避けるかという問題だけを取り上げても、非常にむずかしい問題があると思うのです。一つには、訓練を受ける労務者の負担も、もちろん解消してあげなければなりませんが、それよりも、訓練目的をより効率的なものにするためにも、また国の行政面からいって、文部省労働省が張り合うようなことになりますと、非常な不幸なことになると思う。この問題は私の乏しい知識ではありますが、諸外国事例を見てもそういうことになりがちではないかと思う。それからことにこの訓練法が、日本特殊事情、すなわち産業経済の二重構造ともいわれる中小企業零細企業に対するてこ入れだという点にわれわれはきわめて関心を持っておるわけであります。そういう点からいきますと、きわめてこの点は実施上において問題の多いところであろうかと思う。こういう点を審議過程において明確にし、あるいは政令などに譲る部分がたくさん出てくると思いますが、そういう点を、できるなら私は法案の中である程度明確にすべき事柄ではないかと思うのです。たとえば大企業の例をとってみますと、昔から大きな事業場には技能養成については、かなり進んだ広範にわたる教育制度訓練制度を持ち、それと学校教育との間に事実上関係を結びつけております。戦前においては、私もその教育を受けたのですが、八幡製鉄所職工養成所のごときは、かなり充実した学校教育職業訓練の実を上げてきておる。それから川崎造船所のこれは育英制度のようにもとれますけれども県立工業夜間部を、造船所が一切の経費を持って、学校経営を助けるという形において、その反対給付の形で工員に一般乙種工業の課程を十分受けられるような便宜を供与しておるわけなんです。さらにその中から、今工科大学になっておりますが、大学まで進級するような道を開いて、技能養成のきわめて高い制度実施されてきている事例が、日本にもたくさんある。しかし訓練法は普遍的なものを対象と考えることが妥当だと思いますが、そういう点で、この点が非常に重要だと思います。大企業においてはそういう制度を事実上消化してきているわけです。この法案で、たとえば中小企業の場合において、そういう制度を持ち込める可能性があるかないかという点は非常に重要だと思う。さっきもあなたが指摘したように、中小企業零細企業ではそういう道を開いても、事実上そういうふうにしている間の生活費あるいは経費雇い主負担できないということになれば、この法案でいう事業主の行う事業を援助するとすれば、どういう方法で援助するかというような問題は、すぐこの第三条にかかってくるので、こういう点に対して中小企業恩典を受けられるような、文部省教育とこの訓練法との関係を明らかにする必要があるのじゃないかと思いますが、お尋ねをしておきます。
  7. 澁谷直藏

    澁谷政府委員 ただいまの点、先ほど説明した分の続きになるかと思いますが、確かに実際の企業で働いておる労働者が、今井堀先生の御指摘なさいましたように、大企業における非常にりっぱな施設で教習を受けておる。しかしながら、現行の法規の建前では、いかにりっぱな施設であっても、学校教育でない限りは、学校教育を終了したという資格は認めないというのが現在の文部省考え方であり、法律建前であるわけであります。そこで大企業は幸いに資力に恵まれておりますので、同時に学校の認可を受けまして、その面で学校を終了したという資格を与えておる。しかしながらこれはやはり職業訓練目的からいきますと、一つの回り道でございまして、大企業においても何とかこの点を解決してもらいたい。この点は今回の職業訓練法案を立案する際も、臨時職業訓練審議会においても労使公益委員から共同で非常に強調された点であったのでございます。それで先ほど御説明申し上げましたように、文部省職業訓練重要性ということを認識いたしまして、今回はその点を踏み切ろうということになったわけでございます。従ってこの制度実施に入りますと、大企業はもとよりでございますけれども、小企業で、自分でりっぱな施設を持つことができないというような中小零細企業に働く労働者は、特にこの制度恩典にあずかることができるのでございまして、私ども一日も早くこの制度が日の目を見ることを期待しているのでございます。
  8. 井堀繁雄

    井堀委員 これに関して労働大臣の御意見一つ承わっておきたいと思うのでありますが、そういう道がこの法律で開かれた、これには不十分な点があると思いますが。機会があったら修正の形で私たちは希望を付したいと思いますが、それに譲るとしまして、今の説明で大体の構想が明らかになったと思います。そこで問題は中小企業零細企業の場合においては、そういう訓練を受けるための経済的な負担能力のない雇い主の点については、この法案にはいずれもちょっと見当らないのでありますが、そういう点大企業と違って共同組織などでやる場合もありましょうが、そうでない場合の、今一番必要を訴えておりまする中小企業技能養成について経済的な援助の道なり、あるいは労働者の二重の負担を排除するための措置というものが当然予算的に考えられなければならぬと思いますが、そういう点はどういうふうになっておりましょうか。
  9. 石田博英

    石田国務大臣 三十三条の二項に、「国は、都道府県が第十五条第一項の認定を受けた事業主団体に対して認定職業訓練に必要な経費の一部を補助した場合においては、当該都道府県に対して、予算範囲内で、当該補助に要した経費の一部を補助することができる。」とあって、事業主団体に対する補助規定をここに設けてあるわけでございます。  いま一点は、結局働いている労働者諸君の、この訓練を受けている期間中の問題であろうと思うのでありますが、これは現在大企業の中においても一定の見習い期間として給与を与えつつやっているようでありますし、結局当該中小企業自体に将来貢献をなすことでございますので、それぞれの企業者において大企業並みのことをしていただくことを期待しているわけでございます。
  10. 井堀繁雄

    井堀委員 そこで事務当局お答え願いたいと思いますが、今この訓練法実施されますと、訓練を必要とする対象人員の見込みと、それからこの制度によって直ちに訓練を可能とする者をどのくらい見込んでおいでになるか、その予算関係などについては予算審議の際にちょっとお尋ねいたしたのでありますが、この機会に明確にいたしておきたいと思います。
  11. 澁谷直藏

    澁谷政府委員 この訓練法実施されました際に、訓練対象人員がどうなるかという御質問でございますが、公共職業訓練系統におきましては、三十二年度において対象人員の総計が四万三千七十五人でございます。それが三十三年度におきましては四万八千九百七十五名、約六千名程度の増員になるわけでございます。それから企業内訓線系統におきましては、三十二年度のあれがまだはっきり固まっておりませんが、大体三十一年度と同様の見当でございまして、五万五千人、これが三十三年度におきまして七万人になり、合計しまして約十万人という見当でございます。
  12. 井堀繁雄

    井堀委員 最初に明らかにしてもらいたいと思うのは、提案理由説明にもありますように、この訓練を必要とすると申しますか、答申案の中でもいっているように、日本経済産業が要求しているものをどの程度におつかみになっているかということをまず伺っておきたい。
  13. 澁谷直藏

    澁谷政府委員 その点につきましては、わが国における技能労働者が具体的にそのそれぞれの職種においてどの程度不足しておるかということについての正確な統計調査ができておらないのでございます。その点はやはり従来この職業訓練というものに対してほんとうのしっかりした対策なり法制というものができておらなかったことにも関連するかと思うのでございます。  それで現状でわれわれがつかんでおる資料について申し上げますと、先般も亀山先生の御質問に対して申し上げたのと同じでございますが、三つございます。そのうちの一つはしばしば大臣からも申し上げておりますように、昭和三十一年度におきまして安定所の窓口から見た技能労働力不足状況でございますが、これは御承知のように求人者求職者の数、未結合の求人者が約十三万人ある。そのうちの四割何分かが技能がないために結合できないという一つ資料があるわけでございます。それからもう一つは、労働省の基準局が機械金属等の重要七産業について、労働者十人以上の事業所三千四百二十六、対象労働者九十三万九千七十五名について調査した結果でございますが、技能労働者不足している職種並びに不足数は、機械工が八千八百十七、仕上工におきまして三千九百九十三、鋳物工が二千八百七十、機械組立工が二千三百六十六、溶接工が二千六百十三、製カン工が千三百七十二、プレス工が千二百二十七、板金工が千百六というふうになっておりまして、以上の合計不足総数が三万九十七百十二となっておるのでございます。それからもう一つ第三の資料では昭和三十二年の十月末現在をもって職業安定局においてやりました調査でございますが、電気機械等の主要九産業の規模十五人以上の五千百四事業所について技能労働力需給状況調査したのでございますが、その結果によりますとこれら九産業における五人以上の全事業所について、その職種労働者不足数を推計しますると、約四万三千という数字が見込まれるわけでございます。いずれもサンプル調査でございまするし、全国を網羅した本格的な統計調査ではありませんので、これをもって全国の正確な不足数を推計することは困難でございますけれども、以上申し上げました三つの調査いずれを見ましても、やはり相当の技能労働者不足しておるという点は相当確実に出ておるのではないかというふうに考えております。
  14. 井堀繁雄

    井堀委員 いずれ三条関係におきましては、もっと文部省考え方をはっきりしていただく必要が国会としてはあると思います。そういう機会を作られるよう委員長の方に御要求申し上げておこうと思っておりまして、その際まで保留しておきたいと思います。  次に第一条の目的の問題と三条関係等から、また法案全体の中で非常に重要な点が二つあると思う。一つ手続一つはこれによって他の法律の改正を必要とする事態についてであります。特に労働基準法についてでありますが、手続関係につきましては、ここでは一応職業訓練制度に関する臨時審議会を設置されてその臨時審議会諮問され、その答申を基礎にして起案されたと報告されておりますが、その他のたとえば職業安定法に基く職業安定審議会労働基準法に基く技能者養成審議会等機関にもそれぞれ諮問されたものと思いますが、そういう資料報告されておりませんが、それはどういう工合になっておりますか。
  15. 澁谷直藏

    澁谷政府委員 この職業訓練制度をどう打ち立てていくかということ自体につきましては、先ほどから申し上げておりますように、臨時職業訓練制度審議会という臨時審議会を設けましてここで御審議を願ったわけでございますが、この得ました答申につきましては、それぞれ職業安定審議会技能者養成審議会、それから基準審議会等にも諮ってございます。報告をいたしまして了解を得たのでございます。
  16. 井堀繁雄

    井堀委員 それは了解を求めるという程度ですか。それとも正式に諮問をされて答申をとっていると思いますが、その点はどういうことですか。
  17. 澁谷直藏

    澁谷政府委員 大臣から臨時職業訓練制度審議会諮問をいたしまして、その結果として得ました答申につきまして、それぞれの関係審議会報告了解を求めている、こういうことになります。
  18. 井堀繁雄

    井堀委員 これは多少議論にわたるかと思いますが、職安法からいくと、当然こういう重大な政策変更もしくは制度機構改革といったようなものについては、職業安定審議会諮問されて、またこの中には専門委員会を設置することもできるような規定があるわけであります。いわばこの臨時審議会はその専門委員会に類するようなものではないかと思うのであります。どうして職業安定審議会やあるいは基準法に基く技能者養成審議会などに諮問をされて、正式に答申を待ってそういう処置をおとりにならなかったか、どうもちょっと了解ができないと思いますが、政策上の問題でありますから、一つ労働大臣に伺いたい。
  19. 石田博英

    石田国務大臣 これは御承知のように今まで二つに分れてやっておりましたものでありますから、それを総合的に主として技能訓練という面で専門的に扱っていただきたいと思ったのが一つでございます。それからできるだけ早く通常国会に間に合せたいために、両方別々の機関答申を待ってそれを総合的なものにする、それはそうすることが一番いいと思いますが、その手続を省きまして専門審議会を作りまして、御承知手続答申を得たわけでございます。早くやりたい、そうして専門的なものを作りたいということが主眼でございました。
  20. 井堀繁雄

    井堀委員 とにかくいずれにいたしましても、二つ理由でこの二つの重要な法律に定められた審議会を通さなかったということについては明らかになりました。そこで、そういう理由でありますとするならば、ここでいう臨時職業訓練製度審議会というものは、二つ性格を兼ね合せたものでなければならぬと思うのですが、そういうふうに理解をしていいのですか。
  21. 石田博英

    石田国務大臣 と同時に、より専門問人々にお集まりをいただく、それから両方職業安定審議会及び基準審議会との関係は、先ほど官房長からお答えを申しましたように、こういうことを臨時職業訓練制度審議会でやる、答申をお願いするということは御了解をいただき、連絡をとって、最終的に、ただいま申しましたような御了解を得てやっておるわけでございます。無視したわけでは決してございません。
  22. 澁谷直藏

    澁谷政府委員 その点補足説明をさせていただきたいと思いますが、臨時職業訓練制度審議会委員の人選に当りましても、これら関係の深い審議会委員を人選するという方針をとりましたことが一つと、それから、御承知かと思いますが、この臨時職業訓練制度審議会におきましては、構成労使中立と三者の方が入っておったのでございますが、この出されました答申につきましては、満場一致で可決を見ておるのでございます。それから、それぞれの職業安定審議会技能者養成審議会労働基準審議会報告をしました場合にも、これは満場一致で御了解を得ておるのでございます。
  23. 井堀繁雄

    井堀委員 職業安定審議会技能者養成審議会両方性格をあわせ備えたものが臨時職業訓練制度審議会というふうに、一応今までの御答弁で理解することができると思います。ところが、この臨時職業訓練制度審議会委員メンバーを見てみますと、非常に食い違いがあると思いますが、お気づきじゃございませんか。
  24. 澁谷直藏

    澁谷政府委員 どういう点でございましょうか。
  25. 井堀繁雄

    井堀委員 これは一つ審議会との法を読んでみます。技能者養成は、基準法でいきますと七十条になりますが、これと、審議会構成については七十四条ですか、それから職業安定法でいきますと、十二条の規定にきわめて明確になっておりますが、職業安定審議会構成について、「職業安定審議会は、労働者代表する者、雇用主代表する者及び公益代表する者、各々同数でこれを組織する。」ということになっておる。基準法に基く技能者養成審議会も、同様の構成法律は命じておりますが、これは必ずしもそういうメンバー構成されていないと私は思いますが、食い違いはありませんか。
  26. 石田博英

    石田国務大臣 これは純然たる技能的な問題でございますから、なるほど連結をとりますために両審議会連絡のある人々をお願い申し上げましたが、必ずしも三者同数という構成はとらなかったのであります。これは三者と申しますが、労使の対立した問題というよりは、共通の基盤の上に立って御相談を申し上げることができる問題、純技術的な問題というふうに理解をして、いわゆる三者同数という構成はとらなかったのであります。しかし労働者側からは市川君と斎藤勇君と出ていただいております。同数ではございませんが、そういう取扱いをいたしました。ずっと御答申をいただいて、さらに所要の手続をとって法律にいたしますまでの過程におきましてこの三者構成の問題について御議論というものは承わらなかったのであります。
  27. 井堀繁雄

    井堀委員 これは労働大臣は大へん大胆な独断をおやりになると思います。先ほどお尋ねしたときには、二つ審議会にかけないで、こういう臨時のものを設けたということは、二つ性格のものを一つにしてお答えを求めようとした考え方と、それから時間的に急がれたためにという二つ理由をあげられておりますが、それを一応了承するにいたしましても、厳然と法律がそのことを命じておれば、特に政府、ことに労働大臣法律範囲内においてこういう問題を処理することをやかましく言っておる、あなたも法治国においてはということをたびたび強調されるくらいでありますから、みずから法律の精神をじゅうりんしたり、法律に明文化しておるものを勝手に都合よく解釈して運営するというようなことはおそらくなさるまいと思う、何かの間違いだと思うが、間違いとしては少し大き過ぎると思いますので、より明確にいたしていきたい。というのは、一つにはこれは国際的な関連も出てくるのであります。ILO職業安定組織構成に関する条約(第八十八号)、これは日本が批准をいたしております。このILO条約にもこのことを明確にいたして規定づけられております、それの第四条にそのことをきびしく規定してあります、これは局長は御存じだとと思います。これによりますと、三者構成を命じておるのであります。そうして同数であることを指示しておる。これは要するになぜ三者構成にしておるかということは、労働大臣が今簡単に技術的な事柄だといって言いのけられてしまいましたが、その事自体基準法技能養成に関する審議会性格について非常に重大なことが規定してあることをよもや御存じないわけはないと私は思う。労働条件関係する、しかも重要な労働条件に影響を持つ事柄であります。それから職業安定については、技能養成するということは、ただ単に労働者技能訓練を与えるというだけではなくて、それは手段であって、目的労働法のいずれの法律にも明らかにしてあるように、労働者の福祉、それから自由なる職業の選択と就職の機会を保証していこうという基本的なものにほかならぬ。そういうような問題はただ単に技術的な問題だけを取り扱うというように解釈されることは少々行き過ぎておりはせぬか、この点に対して労働大臣お答えをいただきたい。
  28. 石田博英

    石田国務大臣 技術的な問題だからそれぞれの立場に立っている人の代表意見を全然取り合わなくてもいいということを申し上げておるわけではないのでありまして、技術的な問題だから、技術的な専門家を、重点を置いて委員に委嘱を申し上げた、従って必ずしも三者回数という建前にはいたさなかったということを申し上げたのでありまして、労働者側使用者側代表はそれぞれ入っておるわけであります。それから今御指摘のILO条約の中におきましても、「公共職業紹介所及び関係団体特に使用者及び労働者職業的団体との間に協力を確保するため地方諮問委員会を設置しなければならない。」という規定がございまして、必ずしも同数ということをこれに規定されておるわけではございませんように私は理解しておるわけであります。  それから基準法職業安定法建前職業訓練法との建前とは、これは基本的には今井堀さん御指摘のように、労働者職業を定定させ、生活条件を向上させるということを目標といたしておることには間違いありませんが、その取り扱う問題といたしましては、やはり技術的な問題に非常に重点を置いて取り扱う問題で、労使相対立するという要素が全然ないとは申しませんけれども、私はそういう意味でむしろ純技術的な問題の方へ重点を置くべきであると考えたわけでございます。
  29. 井堀繁雄

    井堀委員 今のILO条約に対する大臣お答え見当違いをいたしておりはしませんか。私の手元にあります条文にはこう書いてあります。第四条の第三項「審議会における使用者及び労働者代表者は、使用者及び労働者代表団体が存在する場合には、それらと協議の上それぞれ同数が任命されなければならない。」と書いてある。これは言うまでもなく第四条は、一項にも明確にありますように、「職業安定組織構成及び運営並びに職業安定業務に関する政策の立案について使用者及び労働者代表者の協力を得るため、審議会を通じて適当な取極が行われなければならない。」と書いてある。第二項には、「それらの取極においては、一又は二以上の中央の審議会並びに必要な場合には地方及び地区の審議会の設置を定めなければならない。」そして第三項は同数と書いてある。これを受けて立ったのが日本職業安定法審議会制度であること、あるいは基準法技能養成審議会制度であることは私は疑いをいれないと思う。こういうものに対して解釈上の違いがあったりしますと大へんでございますから明確にいたしておきたい。私が判断するのじゃありません。そう条文に書いてある。それからなおもう一ぺん繰り返しましょう。それではILO条約はそれでいいとして、職業安定法審議会に関する規定をもう一ぺんそこで局長読んで下さい。どう書いてあるか。
  30. 石田博英

    石田国務大臣 今御指摘のものは八十八号の職業安定組織構成に関する条約の中でございますね。それから私が申し上げましたのは職業訓練に関する勧告を申し上げたわけであります。
  31. 井堀繁雄

    井堀委員 それで明らかなように、言うまでもなく条約ILO条約に基いて加盟国がこれを順守しなければならぬことは説明を要しないのでありますから、条約の第四条を忠実に守らなければなりません。それから職業安定法を局長読んだと思いますが、十二条を一つ読んでその解釈をして下さい。
  32. 澁谷直藏

    澁谷政府委員 職業安定審議会に関する安定法規定第十二条は、先生がただいま御指摘のように、労、使、公益者構成で、しかもこれは同数でなければならないという規定になっておるわけでございます。これと関連のあるILO条約は、第八十八号の職業定定組織の構成に関する条約でございまして、ただいま御指摘がございましたように、これの第四条第三項におきまして、これらの審議会における使用者及び労働者代表者は回数が任命されなければならないというふうに規定されておるのでございまして、この点は安定法は忠実にこの第八十八号の条約を安っておるわけでございます。これに対しまして職業訓練に関する勧告におきましては、ただいま大臣が読みましたように、「使用者及び労働者職業的団体との間に協力を確保するため地方諮問委員会を設置しなければならない。」という規定はございますが、職業安定組織に関する条約規定と違います点は、同数を任命しなければならないという規定は欠けておるわけでございます。この点を見ますると、ILO条約自体におきましても、職業安定組織における審議会とそれから職業訓練における審会とは、やはりその内容と申しまするかニュアンスを異にしておるということが現われておるのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  33. 井堀繁雄

    井堀委員 どうもそういう都合のいいように物事を——いや私はそういうことをしてはいけないのではないかと思うから、意地悪く言うのではないのです。条約規定し、日本もその安定法で明らかにしている。だからさっきから順々にお尋ねしていったじゃありませんか。ですからその点からいきますならば、だれがどう判断しましてもこういう制度を設ける、しかも立法、政策上の問題なんですから、当然この安定審議会諮問をし、技能養成のための審議会諮問されて、そして今言う勧告にありますように、専門的な事項については専門委員会を設けることを規定してあるのでございますから、専門委員会を作って、その専門委員会答申を受けられることもいいでしょう。しかしそれは当然もとであります審議会の方に報告されて、審議会を通じて答申してくるのが、この法律のしい運営の仕方だろう、こう理解しておるのです。そういうことを勝手におやりになりますとこれは重大なことになると思う。事実は明らかになっておりますが、そこでそういうことをあまり白いものを黒く言いくるめるということは問題を深刻にするだけだと思う。だからそうではなしに、やはりすなおに手落ちがあったらその手落ちを改めていくということは、万能じゃありませんから、これは大事なことではないか。それをいやそうじゃないというようなことを言われますと、これはきわめて重大になってくるので、私も引くに引かれなくなる。私がそのことをやかましく言っておりますのは、言うまでもなくこういう労働者の基本的な人権に影響を持つ労働者保護政策としては肝心かなめな制度なんですから、それが善意に基いていくからどういうことをしてもいいということではないので、特にこの手続をやかましく労働法関係が言っておりますことは、これは民主主義の共通した大きな使命でありますこともつけ加えておきたいと思っております。そこでこの法案関係してくるから、このことを手続を今言及しておいたので、あと御答弁をいただきますが、ついでにこのことについても一つ御答弁をいただいた方がいいと思います。そういうお考え方から出たものと判断できるのは、それによって労働基準法を改正してきております。職業訓練法の新旧対照表という資料をお示しになっておりますから、これでお尋ねしていきます。この資料の四ページで、労働基準法の七十四条を削除する。七十四条とは、先ほど私お尋ねしました基準法「第七十条の規定に基いて発する命令は、技能者養成審議会諮問してこれを定める。技能者養成審議会委員は、関係ある労働者代表する者、関係ある使用者代表する者及び公益代表する者について、労働に関する主務大臣が各々同数を委嘱する。前二項に定めるものの外、技能養成審議会に関し必要な事項は、命令で定める。」これを今度削除しようということになっておる。私はこれは基準法の重大なる改正だと思う。これは今さら申し上げるまでもなく、労働基準法については別の機会予算委員会で質問した場合明確にお答えになっておるように、今日基準法を改正する意思はない。言うまでもなく審議会諮問されて、審議会は長期にわたって慎重協議をいたしました結果答申されたのである。ただいまのところ基準法を改正する時期ではないという答申もありまして、政府もこのことを明確にしております。ところがこの法案に便乗して——という言葉は言い過ぎかもしれませんが、こっそりこういうことをやっておる。これは先ほどの関係と重大なあれがありますが、これは労働大臣はお気ずきにならなかったのか、事務当局がそういうふうに削ったのか。
  34. 石田博英

    石田国務大臣 これは七十四条に規定してあります仕事を今度職業訓練法でいたしますので、必要がないと思って削除することに同意いたしました。これは基準法の持っております労働者保護の建前の御趣旨とは違うわけでありまして、いわゆる基準法改正論というのは基準法の持っております労働者保護の建前に例限を加えよう、後退せしめようという意見基準法改正論でございますから、そういうことはいたすつもりはないということを申し上げたのであります。この七十四条の削除ということは実質的に基準法労働者保護の建前を後退せしめるものとは考えておりません。
  35. 井堀繁雄

    井堀委員 とんでもない答弁をすると思うんです。それで冒頭に申し上げたように、あやまちは追及しないと私は申し上げたんです。あなたの逃げどころをちゃんと与えております。挑戦してこられればこれは改悪でないなどということは、それじゃもう一つ事実の問題をお尋ねいたしましょうか。この法案にあなたはこれにとってかわる制度を設けたから、自然これは機能を失ってきたから削ったというような安易な御答弁をなさいました。それではそれにかわるべきものは何かというと、この法案を調べてみますと、二十九条です。それは中央職業訓練審議会は三者構成ではありますけれども、三者構成というにとはどこにも規定しておりません。「委員は、学識経験のある者及び関係行政機関の職員のうちから、労働大臣が任命する。」ということは御用機関です。これは重大なことなんですぞ。これがただ単に訓練上の技術問題だけを諮問されるという諮問機関でありますれば、基準法の七十二条を排除するということは軽率なことなんです。私は労働大臣とこの問題を議論しようとは思いません、専門家がたくさんお助けしておるわけでありますから。これで改悪になりませんか。
  36. 澁谷直藏

    澁谷政府委員 今回の職業訓練法の目的、ねらいとするところは、しばしば繰り返し申し上げておりますように、従来とも企業内の訓練についての積極的な助成の法規が欠けておったわけでございます。欧米諸外国の例は資料としてお配りしてございますが、いずれもりっぱな法制を持ち、行政組織を持って推進しておる。現状はどうかといいますると、御承知のように労働基準法の第七章技能者の養成の方にこの問題に関する規定があるわけでございますが、申し上上げるまでもなく労働基準法労働者労働条件を守る法律である。従って骨子とするところは、第七章におきましても第六十九条の徒弟の弊害排除、この精神を貫いてきまして技能者の養成過程におきまして労働条件の引き下げとか、あるいは労働者を酷使するというようなことがあってはならない、こういうところに規定の骨子が置かれておるのは当然であろうと思うのでございます。従ってあくまでこの第七質の骨子とするところは、労働条件を保護するための監督的な規定でございまして、それを離れて積極的に技能者養成を助長していくという精神は、この条項からは十分には読み取れないのでございます。  それでただいま問題になっております第七十四条は、その第一項におきまして「第七十条の規定に基いて発する命令は、技能者養成審議会諮問してこれを定める。」技能者養成審議会に関する規定でございますが、その七十条は、これに書いてございますように長期の教習を必要とする技能者の養成の場合に、その養成をするために必要な限度において契約期間、労働時間及び賃金というようなきわめて重大な労働条件に関する特例を定めてもよろしい、こういう規定が第七十条であるわけでございます。そういった重大な労働条件に関する特例を定める場合は、第七十四条におきまして三者構成からなる技能者養成審議会にかけてやりなさい。これが労働基準法構成であろうかと思うのでございますが、今回の改正は、従来基準法が持っておりました労働条件の保護の面と、もう一つ、きわめて不十分ではございますが、技能者を積極的に養成しようとする二つの両があったかと思うのでございますが、その点は特に労働省令の技能者養成規程の段階にきますると助長面が一そうはっきりしてくるわけでございますが、この両面がありました中で労働条件の保護の面は、従来通り労働基準法にそのまま残しておいて、それで基準法が基本的には所期していないところの技能者の養成の面、助長の面、奨励の面というのはこの際技能者養成規程から取りはずして、総合的な職業訓練制度の一貫として職業訓練法案に吸収する、こういう建前をとっているわけでございます。従いまして第七十条で規定しておりますところの契約期間、労働時間、貸金の特例に関する審議は、労働基準法規定によりまして労働基準審議会——これは言うまでもなく三者同数構成になっているわけでございますが、その労働基準審議会において審議することになる、こういうことになろうかと思います。
  37. 井堀繁雄

    井堀委員 そのことは私も理解しているつもりでございます。あなたが今おっしゃいましたが、技能養成関係が全然解消するかのごとき説明にとれる。そうじゃありませんよ。この法案の第一条にはこう書いてあるじゃありませんか。「この法律は、労働者に対して、必要な技能を習得させ、及び向上させるために、職業訓練及び技能検定を行うことにより、ここまではいい、これから先が大変ですよ。「工業その他の産業に必要な技能労働者養成し、」技能養成とは基準法の第七十条のことを指しているわけです。「もって、職業の安定と労働者の地位の向上を図るとともに、経済の発展に寄与することを目的とする。」と、こう明確に「目的」に書いてありますように技能労働者養成なんです。それからさっき私が第一条と第五条の関係をということで申し上げたのですが、事業の内容が書いてありますが、これはこの説明の前半にも出ておりますように従来労働者二つの局の所管に分立していた技能養成職業補導とを一つにして、技能をより高いものに持っていこうとするねらいであることについては、私は理解しており、そのことに対しては賛成なんです。しかしそういうときに技能養成の問題に対する一番大切なことについて、あなたは七十条を読みましたが、その後段の労働時間及び賃金に関する規程、技能養成は、言うまでもなく賃金や労働条件の向上を労働者は期待をし、またこの法律も、そうすることによって労働者経済的地位を引き上げようというのが目的なんです。しかし事実は必ずしもそうならぬで、第七十条及び審議会規定をここに期待していることも保護法の非常に重要な部分です。というのは、それは除外規定を設けておる。すなわち労働組合法や労調法などによって、たとえば団体交渉としてこういうものを取り上げないで、この法律によって幼年労働及び婦人労働ということを保護しようということは保護法の重要な使命なんです。大体この技能養成の場合は幼少工が多いわけです。青少年が多いわけです。そういうものの保護に基準法が重点を置いているということは今さら言うまでもない。こういう基準法の生命ともいうべきものをやすやすととりかえるようなことをやってはならぬということは、少し労働保護法の根本に触れてまじめにお考えになればわかることです。しかし立案者としては原案を固執される立場でしょうが、こういう点は審議の幅のあるところであって、野党とも話し合って改めていく性質のものじゃありませんか。それはそうじゃありませんとがんばれば議論になってしまう。議論の余地はないのじゃないかと思うが、労働大臣はこの点どうです。
  38. 石田博英

    石田国務大臣 御審議をなさって、その結果がどういう形になるか、それは私どもの申し上げることではございません。十分御審議をいただいて御結論を出していただきたいと思います。しかし私どもの方の立案しました考え方、態度というものは、先ほどから御説明を申し上げておるような次第であります。結局職業訓練審議会構成技能者養成審議会構成と違いがあるではないか、その構成が変ってくること自体基準法の精神の後退ではないか、こういう御議論だろうと思うのでありますが、私は立案するときにおいて決してそういうつもりで立案を命じたわけではございませんで、たとえば職業安定審議会等に例をとりましても、職業安定審議会で三者構成でやっております問題というのは、たとえば失業保険事業の運営とかあるいは公共職業安定機関以外の職業安定事業の認可の問題というような、やはり労使の利害に関する問題はそこで扱うわけでございますが、労使の安定以外に出た問題については必ずしも三者同数構成ということを必要としないのじゃないか。たとえば内閣に設けております雇用審議会あるいは教育職員養成審議会、そういうような構成もいわゆる三者同数になっておりませんので、そういう建前から現在御提示申し上げておりますような立案をいたした次第であります。
  39. 井堀繁雄

    井堀委員 議論にわたる点は、また委員会でほかの審議の仕方はあるに思いますが、いずれその問題については法案の修正をぜひとも私は考えております。そこでこの問題についてはそういうことで一応保留いたして、労働省の方ももっと慎重に御検討いただきたいと思っております。  そこで次の点についてお尋ねをしてみたいと思うのであります。それは簡単な事柄のように法律は扱ってのけたのではないかと思われるのは、第五条の中で、一般職業訓練に関する一、二、三、四項と出ておりますが、このいずれを見ましても、諸外国の例はいろいろな立法例もありますし、それから慣例が法律にされたもの等もあります。日本の場合も短かい歴史ではありますが慣行ができておるわけです。その中に特殊なものといえばなんですが、職業安定法の精神が部分的ではあっても不合理な点が露骨に現われたのは、日本の古い労働の歴史を作っております家職関係——建築労働者関係、大工、左官といったようなものです。これは伝統もありますし、それから仕事の性質からいって、職安法による職業訓練あるいは基準法による技能養成というものが非常に困難な環境にある。そういう点から、自然発生的ではありましょうが、事業主であるか労働者であるか、性格自身にもせんさくするとなかなか問題のありそうな、要するに親方が今まで弟子を雇っていた徒弟制度というものが法律で禁じられたものですから、技能労働者がだんだん跡を断つ、それではならぬという意味で、労働組合と事業主とが共同してやっているというふうに法律理解し、行政はそういうふうに取り扱っておるものと思いますが、実質は労働組合が熟練労働者の仲間を養成するというために、学校に近いような制度を作って技能賛成に相当成績を上げた事例を御調査になっておる。それがこの中ではどうも把握されぬのではないか、成立すると排除されてくるのではないか、こういう関係はどういう工合になされることになるのか、第五条関係じゃないかと思いますが、この点ちょっと伺いたい。
  40. 石田博英

    石田国務大臣 土建総連で労働組合の名前で技能者養成をやっておる、それに対して政府の方で基準法建前に従って補助を出しておる事例はございます。それは労働組合がやっているということではなくして、事業主共同体がやっておる、その事業主共同体に対して補助をするということでやっておるわけでございます。従ってそういう種類のものにつきましては、やはり第五条で救済対象にし得られると考えておるわけであります。
  41. 井堀繁雄

    井堀委員 そういうものは五条でかかえることができるというふうに御解釈のようでありまして、いずれこういうものは政令によってある程度補強されてくると思いますから、立案者の御答弁を信用して、私この機会にちょっと意見を加えさしてもらいたいと思います。ああいう特殊の熟練労働者団体というものは、やはり労働組合が健全な発達を遂げるためにもあの種の仕事をなさることがいいのじゃないか。それから技能養成するという目的からいっても、どうしても大きな建築業者と、ああいう零細な労働者とも請負業ともつかないようなものの関係を簡単に解消する制度というものは生まれてこないと思う。そういう点を十分配慮いたしますならば、むしろ事業者によってそういう事業をやるよりは、労組合にそういう事業をやらせる。もう一つは税金の面で、事業税と勤労所得税の問題で長い間問題を起してきておるようであります。こういう問題にも答えを与える必要が他の面であるくらいでありますから、特にこういうものをやらせることによって、そういう不可解な問題などもきわめて明確になってくるという労働保護の政策の上からいっても、私はしかるべき仕事ではないかというふうに考えております。また労働組合も微力でありますが少なくともそういうふうに協力をいたしてきておるわけであります。そういう点で、第五条関係でちょっと困難ではないかと思いましたのでお尋ねしたのですが、できるという御答弁でありますから、そういうふうに理解いたしたいと思います。  次に九条、十条関係であります。九条、十条の関係は、職業訓練の委託、それから公共職業訓練の基準でありますが、これは労働条件に直接間接に影響のある条文としてもっと深くかみしめなければならぬと思って、少しくこれを読んでみたわけであります。読めば読むほどこういう問題については審議会意見を求めていかなくてはならぬ事柄ではないか、また政令を設けるにしても、立案者の考えだけで行わないで、職業安定審議会あるいは今問題になっておりまする技能者養成審議会というようなところに諮問をされて、そして処理していく事項ではないかと思いますが、この点に対してどういうお考えですか。
  42. 澁谷直藏

    澁谷政府委員 第十条の公共職業訓練の基準でございますが、これは学校教育におけるカリキュラムに相当するものでございまして、この基準が合理的なものであるかどうかということが訓練の成果を左右するきわめて重大な内容でございます。従いまして第二十九条の中央職業訓練審議会は、諮問に応じて調査審議するわけでございますが、その第二十九条第二項に明確に書いてございます。「労働大臣諮問に応じて、職業訓練計画、職業訓練の基準その他職業訓練及び技能検定に関する重要事項を調査審議」する。従いまして当然この十条によって定められる職業訓練の基準は、中央職業訓練審議会の議を経て定めていく、こういうことになるのでございます。
  43. 井堀繁雄

    井堀委員 これは今の場合第二十九条の中央職業訓練審議会諮問する、こういっておりますが、これは先ほど来まだ保留にはなっておりますけれども、この性格のものに諮問すべきものではなくて、むしろ三者構成職業安定法に基く審議会諮問すべき性格のものではないかというふうにお尋ねをしたわけであります。  それからたとえば第九条の中で「都道府県は、」とこういうのですから、ここでたとえばこういう文字を使っておりますね「一般職業訓練所において職業訓練を行うことが困難又は不適当」なというような。だからどれが困難でどれが不適当かというような認定をする場合に、これはもう個人が行うべきでなくて、なるべく民主的な機関によってなさるべきということは、これは一般的な——こういう法律建前審議会にかけておるわけです。ここで簡単に、法律を作るときには目的がいいからということで功をあせって、結果に重大な過失をしてはならないというような問題が起りそうなところなのです。こういう点に対して立案者は……。そこでこの第二十九条の中央職業訓練審議会は、先ほど来説明がありましたように、職業訓練に対するいわば技術的な専門的な性格を持った審議会ではなくして、労働条件やあるいは労働者の基本的人権に影響を持つような問題については、ここに最初からずっと取り上げてきている問題があると思うのです。その辺の立案者のお考え方を明確に一つ伺っておきたい。
  44. 澁谷直藏

    澁谷政府委員 先ほども答弁申し上げましたように、現在労働基準法で定めております労働者労働条件に関する保護の面につきましては、従来同様労働基準法におきまして保護していく、この関係審議会としては、三者構成からなる労働基準審議会がございます。その労働保護の面と切り離してやるこの技術的な技能養成の助長面、奨励面は訓練法の方でやることになるわけでございまして、その面に関しては、この二十九条の中央職業訓練審議会なり三十一条の都道府県職業訓練審議会がこれを審議する、こういう建前をとっておるわけでございます。  それから第九条の職業訓練の委託の規定でございますが、これは法文上の表現といたしましては「一般職業訓練所において職業訓練を行うことが困難又は不適当であると認めるときは」というふうに包括的に書いてございますが、これは将来の事態に対処しての規定でございますので、一々具体例を詳細に申し上げることは困難でございますが、私どもが一番念頭に置いておりましたのは、現在問題になっております駐留軍からの離職者の対策でございます。たとえばあのような事態になりまして一斉に大量の失業者が解雇されて労働市場に出てきたというような場合に、都道府県が持っております職業訓練施設ではとうていこれをカバーできないというような場合が今後におきましても出てくることは考えられますので、そういうような事態が起きました場合は、都道府県は自分の訓練所以外のたとえば労働福祉事業団あるいは第十四条第一項の規定によってこの法による認定を受けた事業主にその実施を委託することができる、というような道を開いておいた方が将来のそういった事態に対処していいのではないか、こういう立案の気持でございます。
  45. 井堀繁雄

    井堀委員 次に第十二条の関係です。第三章全体が影響を持ってくるのでありますが、いわゆる事業内の職業訓練に関する定めでありますが、この十二条の労働大臣及び府県知事の事業訓練に対する資料の提供はわかりますが、「必要な援助」というものはどういうようなことをお考えになっておりますか。いずれこれは政令などによって明らかにされてくる事項だと思いますが、この際「必要な援助」というのはどういうことをお考えになっているか。またこの法案でどの範囲のことがやれるのか。これは中小企業等と大きな事業場との関係において非常に異なったケースだと思いますが、特にその点についてできるだけ具体的に一つ伺っておきたい。
  46. 澁谷直藏

    澁谷政府委員 第十二条はこの事業場職業訓練に関する労働大臣都道府県知事の包括的な援助の精神を法文化したものでございます。この職業訓練法案全体が監督法規ではございませんので、技能者を養成するために積極的にこれを助長していくという奨励法でございます。従いましてこれを奨励するためには労働大臣または都道府県知事は資料の提供その他いろいろな援助を行いなさいというのが第十二条でございますが、これをもう少し具体的に書いてございますのは、たとえば第十六条をごらんいただきますると、「次に掲げる援助を行うように努めなければならない。」、それで一号におきまして「一般職業訓練所又は総合職業訓練所の施設を使用させる」、二号におきまして「一般職業訓練所又は総合職業訓練所の職業訓練指導員を派遣する」、三号「教科書、教材その他職業訓練に必要な資料を提供する」というふうに規定されておりまして、現状におきましては企業訓練企業訓練だけで考えていくという法規の建前になっておりますので、せっかく同じ地域に総合補導所なり一般の補導所がございましてもその施設を利用する道が閉ざされているわけでございます。それで今回はこの職業訓練法案におきまして、企業企業外を含めて総合的に職業訓練を推進していきたい、こういう考え方に立っておりますので第十六条のような規定がここに出てきているわけでございます。
  47. 井堀繁雄

    井堀委員 そういたしますと事業場内の職業訓練については、これは従来もあることですが、しかしそれとこの公共同体や国の行うあるいは事業団の行う補導所の施設を利用させるという一点だけについて考えてみてもいいと思いますが、事実上そういうような事業場訓練の場とそういう場との結びつきが非常に重要なことだと思いますが、事実上そういうことが可能なのでしょうか。可能にするためにはそういう道を法律で開いたということはわかるのです。これはその対象になる量的なものについて資料が不十分でありますけれども、われわれの勘の上だけしか申し上げられませんけれども、かなり殺到してくるのではないか、特に総合訓練所のように設備の充実したようなものは方々使いたい。ことに中小企業などはそういうものをどんどん活用させてもらわなければこの法案はから回りするのではないかということで、ここでは一番期待を寄せてくる。そして施行当初においては悪くすると損だというようなことになってしまうきらいがあるので、ここではごたごたが起ってくると思いますが、この十三条の中ではこれこれは労働省令できめるというが、この法律で書くべき事柄ではないかということが考えられたのでお尋ねをしておるのです。
  48. 澁谷直藏

    澁谷政府委員 第十三条は先ほど出ました第十条の規定と同じでありまして、事業内の職業訓練の基準を定めていくという規定でございます。それから第十六条でございますが、総合職業訓練所なり一般職業訓練所の施設事業内の訓練に使わせていくということで施設が十分に使えるようになるかどうかという御質問でございますが、これはただいまも申し上げますように、従来はその関係が全然閉ざされておった、これは国あるいは府県の全体の職業訓練を考えます場全にきわめて不合理、不便益なことでございますので、これは相互に彼此融通して、総合的に活用していこうという考え方規定でございます。一切は今後の運用なり実際の行政活動に待たなければならないわけでございますが、私どもはこの第十六条その他この関係の条文の趣旨を体しまして、十分に企業職業訓練企業外の訓練施設を活用できますように、予算の面あるいは実際の行政運用面において努めて参りたい、こういうふうに考えております。
  49. 井堀繁雄

    井堀委員 あと先になってしまいましたが、第八条の身体障害者の職業訓練については従来もやってこられたことをここに持ち込んだというだけで、特別にこれに説明を加えるほどの問題はないんじゃないかというふうに読んでおりますが、そうでしょうか。
  50. 澁谷直藏

    澁谷政府委員 その通りでございます。
  51. 井堀繁雄

    井堀委員 そこで労働大臣にちょっとお尋ねいたしておきたいと思いますが、従来の身体障害者の職業訓練についてはかなり成績を上げておると思うのです。もっとあれを拡充して、もっと希望者の多くに満足を与えるようにすべきではないかと思うのです。それはそれとしてそれをやる意思があるかどうか。今度予算の中に入ってないようですが、この制度がしかれることによって多少そういう事業面で拡張されてくると思う。もう一つはせっかくここで適正な技能訓練を受けても、就職する場所がどうしても制約される。民間企業では事実上行き詰まるではないか、よほど特殊なものだけではないか、これはこの前予算委員会の分科会で厚生大臣お尋ねをして、私の主張に同感の意を表せられ、積極的に実施に当ると言っておりますが、あなたの方の直接関係でもありますこの法案にも出てきた。これはやはり公共事業の職場に使うということから先例を開いていかなければならぬ。そうしないとむしろ民間企業に入るということは、他の人の就職の機会をはばむような逆作用が出てくる。もっと非営利的な団体と申しますか、具体的に言えば三公社五現業はどうかということをこの前ちょっとお尋ねしたが、非常に共鳴して実施すると言っておりましたが、労働大臣としてはこの面についてはどうお考えになりますか。
  52. 石田博英

    石田国務大臣 身体障害者がせっかく技術を受けましても就業の機会が乏しい。この問題を処理いたしますために、今、諸外国、特にアメリカあたりでは、公共事業に一種のパーセンテージをきめて義務的に雇用させておるような事例も、私自身でも見て参りました。二、三年前であったと思うのでありますが、公共事業で優先的に使用するようにという閣議の決定をいたしたこともございます。しかし御指摘のようになかなか思うように進んでおりません。そこで労働省としてもこういうことについては積極的な勧奨の道を講じていきたい。要すれば何か具体的な措置を研究したいと思っておるわけでございます。  なお御質問ではございませんが、身体障害者だけでなく、精神薄弱者についてもそういうことを考慮して参りたい。それから身体障害者、精神薄弱者等について未成年の間には不十分でありますけれどもいろいろ施設がありますが、成年に達するとなかなかこの処理がむずかしい問題もあります。そういうものを加味した訓練所を積極的に作って参りたい、こう思っておるわけであります。
  53. 井堀繁雄

    井堀委員 今この御答弁はぜひ実行に移すように希望いたしておきたいと思います。とかく約束するけれども、なかなか行動に移らないので、できることですからすぐやっていただきたい。  そこで、次に第五章関係技能の検定の問題と労働条件関係、これは文部省関係もからんで出てくる問題だと思います。私勉強が足りぬのでありますが、この法案をずっと読んでみて、一つ一つあとでお尋ねしますが、総括的に見て、せっかくこういう制度を採用しておるにかかわらず中途半端ではないか。結論からいうと、そういう感じがいたすのであります。というのは他の例をとりますと、せっかくこういう制度に手を染めたのであるから、やはりどれを大きく伸ばしていくかという将来性の問題としてこういう法案に大きな期待をかけていきたいと思うのです。それはたとえばスイスにこの制度について多く学ぶべきものがあると思うのであります。労働省資料もちょうだいいたしましたが、私もあちらのものをもらってきて翻訳してみたのです。こういうものにすぐに役立つと思うのは、たとえば事業場内の訓練の実態をとってみまして、公共的なものとしては今日本では文部省の所管になっておりますけれども学校教育課程と事業場訓練関係がまことに有機的にしかも合理的に非常に効果的に運営されておると思われる一例でありますが、具体的な例を見ますと、工作機械をやっておるエリコンの工場がまず見習工、日本でいうと訓練を受ける幼年工員を採用するということがきまりますと、雇い主は一年間州なり国の建てた学校日本でいうと甲種工業の専門科といったような、いわば旋盤工になり、あるいは電気工になり、あるいは仕上工になり組立工になるということで、採用と本人の希望とが合致した場合には、その理論に対する徹底した裏打ちをするための学校教育が施される。その学校教育が終ると、事業場でさらに一カ年またその熟練工となるべき基本的な工作その他について実地の訓練を行う。そしてその後に熟練労働者の第一段階の資格を得て職場に入っていくという制度実施されておる。非常によい効果をあげておるとわれわれは思うのであります。今日の場合にはそういう点をこの法律の中でどういうように理解したらいいかということで、私はそういう外国の具体的な例をあげたのですけれども、この法案でいくと、それがどういうふうに日本の場合には実施の姿になって出てくるか、こう思うのですが、その点に対して、一つお答えを願います。
  54. 澁谷直藏

    澁谷政府委員 ただいまの御質問は、今回の職業訓練制度学校教育との全般的な関連の問題であろうと思うのでございますが、ただいま井堀先生が御指摘なさいましたように、スイスそれからイギリス等におきましては、この職業訓練学校教育との提携と申しますか、協力関係がきわめて円滑に行われておるようでございます。それでこの点は先ほどからも繰り返し申しておりますように、わが国の現状におきましては、どうも協力関係が円滑に行われていない。この点は、私どもばかりでなしに文部省当局も認めておるわけでございます。従って今回のこの職業訓練法の制定を機会両方が積極的に手を握り合って進んでいこう、こういうことで意見が一致したのでございまして、それが先ほど御質疑がございました第三条職業訓練の原則の第二項、第三項にうたわれておるわけでございます。技能検定につきましては、この技能検定の章において学校教育との関連をどうするか、いう問題も一つ大きな問題でございますが、これは第二十五条の受験資格規定をごらんいただきますと、第一号はこの訓練法規定しておりますところの「公共職業訓練又は認定職業訓練を修了した者で労働省令で定めるもの」と書いてございますように、この職業訓練制度との関連において技能検定を逐次実施に移していこうというのが第一号でございます。しかしながらこの訓練法による訓練を受けない者は一切技能検定を受けることができないというのは、あまりにも実情に離れておりますので、第二号におきまして、「前号に掲げる者に準ずる者で政令で定めるもの」ということで、この訓練法による訓練を受けない者も技能検定を受けることができる道を開いておるわけでございまして、この政令で前号に掲げるものに準ずるものと具体的に書いていくわけでございますが、その際には学校その他の訓練施設等の関係も十分具体的に織り込んで参りたい、こういうふうに考えております。
  55. 井堀繁雄

    井堀委員 私のお尋ねしたのは、今実例をあげてお尋ねしたように、学校教育法に基いてたとえば今の六・三制の中で高等学校の課程を終えた者がこの訓練を受けるときにはどういうコースをとる、それから専門学校の場合にはどのコースをとるとかいうことを今きめていくより仕方がないのじゃないか。しかし私はさっきスイスの例をあげましたように、そうではなくて、この職業訓練を受ける段階に一つ学校教育というものを——これは文部省関係になってくると思いますが、制度を設けなければ、既存の学校教育制度、たとえば学校教育法青年学級振興法に基いて出てきたものを、この訓練法の中で受け入れるということになると、事実上キャッチしにくいのじゃないか、そういうようなものについての定めがないようでありますが、こういうことをやかましく言いますのも、先ほどスイスの例をとったように、ここでも二十四条の二項にありますような検定の結果、一級、二級というようなものが公式に定められてくるということは、それはすぐ賃金や労働条件に影響してくるので、労働者にとっては重大な関係を持ってくる事柄になるわけですから、こういうような制度法律できちっときめられてくる場合には、学校教育との間でただ既存のものをそのままここへ持ち込むというやり方だけでは、ここに混乱が起きてきはせぬか。あなたの今の御説明によりますと、この訓練を受けた者としからざる者との二つの道を開いている。二十五条の説明にありましたが、これも労働省令でどう定められるか、あるいは政令でどう規定されるかということが、今後の問題に属するのでありますけれども、そういうように今の基本的な学校教育というものが、この訓練法と見合うような制度になっていないのではないか、そこら辺に問題が私はあるのじゃないか。これは文部省の方から答弁をいただかなければならぬことですけれども、今のところは学校教育法の改正の中を見ますと、そういう点には何も言及していない。この点は労働省の打ち合せの間に全く一致した意見が見出された、原則上の問題については一致したようですが、しかしこういうものは具体的でなければならぬ。抽象的に一致したところで、こういう法案にとってはむしろ混乱を招くだけではないか。それで便宜第五章関係お尋ねしたらわかりいいと思ってここでお尋ねしているわけです。原則的なことはわかりました。具体的な事例の上についてどういう意見の一致点があったかを御説明願いたい。
  56. 澁谷直藏

    澁谷政府委員 具体的な事例という御質問でございますので、お答えいたします。これはいまだ閣議決定を経てこの国会には提出されておりませんが、文部省の当局としては目下鋭意折衝を急いでおりまして、一日も早く国会に提出したいということで急いでおります。それは学校教育法の一部改正法律案でございますが、その中に改正の一項目といたしまして箱四十四条の二という新しい規定を設けることといたしておるのでございます。若干文句の表現等においては変化があるかと思いますが、現在の案の規定を読み上げてみますると、高等学校定時制の課程に在学する生徒が政令で定める技能教育のための施設において教育を受けているときは、校長は文部大臣の定めるところにより当該施設における学習を当該高等学校における教科の一部の履修とみなすことができる、こういう原案で現在考えられておるわけでございます。これが先ほど来私が縦り返し申し上げておりますように、昼間働いて、高等学校で習うと同じような科目を現場で習っておる。しかしながらこの道が閉ざされているために、同じ習った学科をまた夜学で習わないと学校を修了したとみなされない。これが一つの大きなガンになっておったわけでございますが、これは文部省も今回の職業訓練法の制定を機会に、従来の考え方を改めまして、ただいま読み上げましたような内容を盛った新しい条項を学校教育法の中に制定したい、こういうふうな具体的な運びになっておる次第でございます。
  57. 井堀繁雄

    井堀委員 それと反対の場合、学校の方では卒業資格を認めるということは、そういう法律改正が行われれば、可能の道が一つ開けるから、これは前進だと思う。しかし今度逆の場合は、今言うように高等学校在学中に、半年とか一年とか前に雇用契約が成立する、そうするとその学校教育を受けている間、雇用関係を認めていくかいかぬかという問題です。高校学校の場合は十五才以上だから、基準法では適齢にならぬでしょうが、しかしそれにも年令の特例がありますから……。それでさっきスイスの例を申し上げたんですが、スイスの例は今言うように、一年間か、その学校教育を受けている間雇い主が、賃金という言葉が当るかわかりませんが、初任給を定めて支払っているわけです。だからそういう道がこの中でとれるかどうか。そういうものをとろうとすれば、この法律ではだめかどうか、これはどうなんですか。
  58. 澁谷直藏

    澁谷政府委員 ただいまの御質問は、私どもも実はそこまでは踏み入って検討をいたしておらないのでございまして、至急一つ検討いたしまして、その上で答弁申し上げたいと思います。ただいま質問をお聞きしました私の感じで申し上げますると、現在の法制のもとではちょっとそれは困難ではないかという感じがいたします。しかしながら方向としては、スイスとかイギリスの例に見られるように、学校教育訓練との両者がそれぞれの立場で提携するということはもとより望ましいのでございますので、ただいま御質問の点は至急検討いたした上でもう一御答弁申し上げます。
  59. 井堀繁雄

    井堀委員 それは一つぜひ検討願いたいと思います。  そこでもう一つ次の点についてお尋ねしておきたいと思いますのは、指導員の資格訓練の条項になるのでありますが、これはどこの国でも問題になっておりまするのは、学校教育の場合には、一応無難な教育ができるんです。多少それに訓練を加味した目的教育といいますか、そういうような点については日本学校の今の制度でも、こういうものと有機性を持たせることによって、相当よい方向に向うことが期待できると思うんです。しかしいよいよ訓練所に入っていきますと、今の総合職業補導所の事例を見ましても、板金工なら板金工の一例をとりますと、その板金工の技術面における指導訓練には事欠かないけれども、やはり一種の教育課程の中に技術訓練をやっていくというこの訓練法学校教育の結びつきをどこで交差なせるかというところにあると思うんですけれども、知識は、ただ技術上といいますけれども、たとえば板金工の場合においては一応の理論というものを基礎的に詰め込んでいくためには——スイスの教育を見ますと、板金工の場合、旋盤工の場合によって多少異なっておりますけれども、仕事場に出てすぐまごつかないように一通りの理論とそれから工作に関する現実の指導を二年間やるわけでありますが、そういう関係を個々の場合でどう交差さしてくるかということが指導員の資格の上にまた重要だと思うんです。両方兼ねるような、技術は非常に優秀だけれども理論は十分把握してない方もあるし、さりとて学問的には相当の資格は持っているけれども、技術面においては全くゼロだといったふうに、ここで私はこの制度がスムーズに伸びるかどうかということは、指導員の実質のいかんにかかっているのではないかと思う。そういう点で指導員の第四章の関係を検当していきますと、そういう点に対する掘り下げ方が不十分ではないか。一々こまかく聞いておりますと時間がありませんが、そういう点に対する総括的なお考えを一つ伺っておきたい。
  60. 澁谷直藏

    澁谷政府委員 職業訓練の推進をしていく上において職業訓練指導員がいいか悪いかということが非常に大きな決定的な力を持つのではないかという御質問につきましては、私ども全く同感でございます。その点は臨時職業訓練審議会におきましても、現状の職業訓練指導員は資質内容におきましてはなはだ程度が低い状態にある。従って今後は、新しい職業訓練法においては、この訓練に当る指導員の資質を高めるように十分配慮すべきであるというのが結論でございまして、その線に沿って私どもは法の立案に当ったつもりでございます。御承知のように現在労働基準法に基いてやっておりますところの指導員の免許制度におきましては、地方の労働基準局長が試験を行い、また資格の一部免除も地方の労働基準局長が行い得るシステムになっているわけでございます。そのためばかりではございませんけれども、結果におきましては、指導員としてはどうかと思われるような人も若干免許をもらってやっておるというのがやはり多方面から指摘されておる状況でございますので、今後は一つそういうことのないように十分注意をしてこの制度を運用して参りたいと考えておるわけでございます。  なお法律規定でございますが、第二十一条の第三項におきまして「指導員免許は、申請により、次の各号の一に該当する者に対して、免許証を交付して行う。」一号におきまして、「労働大臣の行う職業訓練指導員試験に合格した者」と書いてございますが、この指導員の試験は第二十三条におきまして実技試験及び学科試験両面にわたって行う。従ってただいま井掘先生が御心配なさいましたように、実技だけはできるが、学問がさっぱりないというような先生区では、やはり欠けるところがございますので、実技の面と学科の両面において指導員としての資格を持ち得るように両面にわたって試験をやり、試験に合格した者でなければ指導員の資格は与えない、こういうふうに考えておるわけでございます。それから三号の「職業訓練指導員の業務に関して前二号に掲げる者と同等以上の能力を有すると認められる者」この号におきましては、これも井堀先生が御指摘なさいましたように、たとえば大学専門の学科を終えて実際の企業の現場において数年間働いて指導しているような人がありました場合は、あらためて職業訓練指導員としての試験を行うことなしに、この三号において指導員の免許を与えていこう、そういう面を通じて学校教育職業訓練との連係も考えていこう、こういうふうな考え方に立っている次第でございます。
  61. 井堀繁雄

    井堀委員 ちょっとこまかくなりますが、職業訓練指導員の試験、これは実際問題としては初めての試みだと思いますが、各国の事例を見てみますと、初めの間非常に失敗をしているのです。学科試験の場合はいいのですが、たとえば教授の資格などについても、いろいろな前例もありますが、実技と学科——学科だけでとるのなら簡単ですが、実技と学科ということになりますと、どうしても一定の経験年数というものが問題になる。そういう経験年数を積んでいるような者は学科試験の条件が整わないというようなことで、中途半端な者が任命されてくるというきらいがある。そういう制度を作って失敗して改正したということをどこの国でもやってきている。これは現実上やむを得ぬことかもしれません。そこでここにある二十一条の三の一号、労働大臣が行う職業訓練云々とありますから、これで一つの基準をこしらえられるわけですが、そこのところがこの法律を死文化したり、生かしたりする大きな問題点だと思います。さっきのスイスの例をまた申し上げますけれども最初は何回もやり直して指導員では悩んでいる。それで、大きな事業場になりますと、大体一定の学校教育を受けた技師だとか、技術員というような者がその工場て長年働いて、みずから実技も身につけているという人が比較的得られる。ですから、今日本で、大きな事業場には、そういう訓練法によってすぐ要求してくるようなものが比較的少くて、一番求めておる中小企業零細企業にはそういう指導員が実際上得がたいのじゃないか。この制度でそれをつかもうとするのかと思うけれども、ここに問題があると思うので、この点に対して、さっきあなたに聞きますと、地方の基準局長というものは大体法律専門家がそういう地位についておられる、全くしろうとなのです。だから今労働省のどこの面でこういう問題に対する確保をするかということで、そこで冒頭の問題に戻ってくるのであります。労働大臣はあっちに行ってしまいましたけれども、この臨時審議会メンバーを見ても、これが専門的だという点については具体的に批評するわけにはいきませんけれども、三者構成というのはただ単に労働条件の中でも分配問題に対する権利義務を争うためのバランスを調整するということだけのことであると思う。さっきも言うように、労働組合にも産別労働組合が成長してきているわけでありますから、熟練労働者が、たとえばスイスの例をとって言いますと、時計金属労働組合のごときは、この指導員を労働組合が送り込んで、それから成功してきている。だから形式的に上から採用してきたときにはみんな失敗しておる。だからこういう点についても、私はこの制度を運営する上に根本を誤まっておるじゃないかということで、冒頭申し上げておいた。学科の問題は今の学校にまかしておいていいくらいです。そこに交差するところに非常にむずかしい実際上の問題がある。私はこの審議会メンバーを見て申し上げておるのじゃありません。答申案を読んでみてもわかるように、よく勉強して下さっておると思いますけれども、それが一番むずかしい。外国も成功するまでに幾多の失敗を繰り返してきたのであって、その中の一番大きな失敗はこういうとこにあったと思う。  それから指導員の任免権の問題などについても、これが適格者であるかどうかということは雇っていて結果が出てくるまでには相当期間がかかる。この間経費をむだするだけでなく、その指導訓練を受けた者にとっては耐えがたい被害を受けてしまうのでありますから、あまり雇ってみて悪ければということにもいきかねる性質のものだと思う。こういう点で提案者外国のそういう事例をお集めになったかもしれませんが、日本のたしか東北大学の教授で、そういうことについて検討された方が、まだ報告書は見ておりませんけれども、たまたま私どもがスイスへ行ったとき、エリコンに泊り込んで勉強しておいでになったようでありますが、その人の結論をぽつんと聞きますと、指導員だと言う。指導員を選考する基準についてはよほど検討を要するということを言っておりました。案の定ここで見ますると、この二十一条でうかがい知ることのできるものは、試験制度がここに設けられる。それと任免権の問題が出てくるわけです。スイスの場合はやはり民主的な機関を大幅に尊重し——もちろん責任を片一方においてしょい込まないというずるさもあるでしょうけれども、そういう点が法案全体の中で出てくるのではないか。その点で訓練指導員の試験の条件と申しますか、そういうものはここでは明らかにされてはおりませんが、起案者としてはどういうものをお考えになっているか、できるだけ詳しく御報告願いたい。
  62. 澁谷直藏

    澁谷政府委員 職業訓練指導員をどういう基準で認めていくかという問題は非常にむずかしい問題でございます。しかしながらこれにつきましては、現在までに約十年間労働基準法のもとにおいてやってきました実績があるわけでございまして、この間免許を与えました数がラウンド・ナンバーで十一万人という実績を持っているわけでございます。ただこれにつきましては先ほども申し上げましたように、相当不十分なところがあるので、これはぜひとも改善しなければならないということが指摘されているわけでございます。従いまして職業訓練法が施行されますれば、従来不十分とされておった点等につきましては、この法律でも書いてございますように、専門のための部会を設置することができることになっておりますので、少しこういった方面についての専門部会を設置いたしまして、十分に検討して、りっぱなものにしていきたいと考えておりますのが一つ。  それからもう一つ井堀先生が御指摘なさいましたように、大企業におきましては自分で指導員のスタッフを持っております。しかしながら一番職業訓練が浸透しておらない中小企業においてはいい先生が得られない。これが実情であろうかと思います。従いまして今度の法案におきましては、第七条の中央職業訓練所というものが、今回初めて作られる施設でございますが、この中央職業訓練所の最も大きな仕事の一つとして、「職業訓練指導員の訓練を行う」と第二項に規定してございますが、ここを中心にして、それからもう一つは各府県に設置されます総合職業訓練所、これもはっきり法律でも書いてございますように、職業訓練指導員の訓練を行うことになっております。この二つ系統施設を通じて積極的に職業訓練指導員の養成訓練を行いまして、いい先生が得られない中小企業方面に迭り込んでいきたいという考えに立っているわけであります。
  63. 井堀繁雄

    井堀委員 時間の都合もありますので、他の部分は次会にお尋ねいたしたいと思いますが、冒頭に申し上げましたように、この法案重要性については、労働者については一生一代を決するような結果になると思う。というのは熟練労働者になりますと、それで身を立ててしまうということになるのであって、一方においては労働者職業選択の自由というものは、基本人権の中においてもきわめて重要な要素とされているわけであります。それに決定的な一つの方向を与えてしまうべき性格もあるわけでありますから、労働者を保護すると言われながらも、その出発を誤まりますと、一生を誤まらせる結果にもなるというので、いずれの国においても存外職業訓練については重視してきているわけであります。日本においては失敗した歴史を持っているわけです。職業紹介法などといって、全く労働者の自由意思が否定されるような権力統制の職業訓練の経験もあるわけであります。そういう点ではよほど注意すべきではないか、そういう意味で私は審議会のようなものについてはいささかも後退されるようなことのないように注意してやってもらいたい。それからよき職業訓練を行いまする、たとえば今も質問いたしました指導員の適格者を得るということもなかなかむずかしい問題であります。でありますから独断に陥らないように衆知を集めて、その衆知もできるだけ間口を広くしてやるべき仕事であるという点を強調いたしておきたいと思います。いずれまた次の機会に残された質問をいたしたいと思います。
  64. 森山欽司

    森山委員長 暫時休憩いたします。  午後は二時に開会する予定でありますが、本会議の模様によって開会時刻の変更のあるときは、委員各位に別途御連絡申し上げます。     午後零時四十一分休憩      ————◇—————     午後三時六分開議
  65. 大坪保雄

    ○大坪委員長代理 休憩前に引き続き会議を再開いたします。  質疑を続行いたします。井堀繁雄君。
  66. 井堀繁雄

    井堀委員 職業訓練指導員の養成のことについて、午前中事務当局から御答弁をいただいておりました。条文で行きますと二十一条の三項の一というところの「労働大臣の行う、職業訓練指導員試験に合格した者」という、この労働大臣が行う職業訓練指導員の試験の規定というものがいかに重要であるかということを、一、二外国の例を引例して事務当局にただしましたところ、その点は一応事務当局でも御検討なさっていると見えて、おわかりのようでございました。これは言うまでもなくこの法案の一番重要な働きどころだと思う。従って指導員の選択を誤まったり、指導員の養成を誤まりますと、せっかく莫大な国費を使い、また多くの人々に迷惑をかけることになる。なかんずく私どもはこの法の基本目的というものが、労働者に適正な職業を与え、生活の保護をし、経済的地位を引き上げようという目的である限りにおきましては、この目的にいささかでもそむくことのないようにいたさなければならぬ、そういう意味で、この規定についてはできるだけ提案者側から具体的な内容をお示しいただこうと思ってお尋ねをしたわけであります。しかしまだこの点については用意がないようでありますので、少くとも労働大臣としては、こういうものに対する構想があるだろうと思うので、抽象的でけっこうでありますから構想を述べていただき、さらにそれを具体化するためにはどうすればいいかを、事務当局から御答弁いただこうと思います。
  67. 石田博英

    石田国務大臣 これはまず第一に実務を教えることでありますから、実務について人を教えるに足るだけの技能を持っていただくことが必要であろうと思います。それから第二には、やはり技術だけでない、理論的な知識も必要であろうと思いますので、法律にも規定してありますように、術科及び学科の試験を行いたい。それから指導員たるにふさわしい人格的な要素、指導力、そういうものを加味いたしまして適切な試験を行いたい。こう考えておるわけでございますが、具体的な計画については、まだ目下検討中でございます。
  68. 井堀繁雄

    井堀委員 こういう問題については、できるだけ法律審議の際に具体的に明らかにすべきものだと思うのでありますが、用意がないとすれば、まことに残念ですが、今御答弁がありましたように、指導員というものの備えなきゃならぬ最小限度の条件を三つあげられておるようであります。一つは実技について、二つには理論的な、言いかえれば学問的な要素、そして三つには人格的な要素をあげられましたが、私はこの三つの条件を抽象的に述べることは容易だと思うんです。これを実際に当面してこれこれの条件で資格認定するということになるのでありますから、こういうものはできるだけ法律の上にも具体的に表現することが望ましいと思うんです。速急に一つ御検討いただいて、法案審議の終りますまでに、大綱だけでもいいからお示しをいただきたいと注文をいたしておきたいと思います。  それから次に問題になりますのは、先ほども事務当局お尋ねをいたしまして御答弁いただいたのでありますが、満足すべき御答弁でありませんので、重ねてお尋ねをいたします。それは午前中お尋ねをいたしました第三条関係、原則はこの第三条で明らかにされておりますから、この点については一応のみ込めたのでありますが、この実施面について最も重要な点がこの法案説明が不十分だと思うんです。それは学校教育からこの職業訓練過程における有機性でありますか、切りかえるというものではなくて、引き継がれるというような性格が強いと思うんです。あるいは交差するといいますか、両方に足を踏んばっておるような状態念において、技能訓練学校教育とが交差してくる。この点は、この法律の原則では重複を避けるということ、あるいは密接な関連を持たせるということで尽きると思うんですけれども、しかしこれを具体化していくためには、一つの悩みは、日本の行政上の職務権限、労働省の設置法やあるいは教育基本法などから発しまする一つの行政官庁としての強い一線があるわけであります。その点をどういうふうに調整していくかということは、できるでけ法律の中に書き込む必要があるんじゃないか。そういうものが明らかでないとするならば、立法当時における審議過程ででも明確にしておく必要があると思います。それで具体的なものをさっき午前中にお尋ねをして事務当局の御答弁もありましたが、私は一つスイスの例を引いたのでありますが、またここには労働省の出版しておいでになりまする主要諸外国における技能養成制度についての資料の中にもうかがえるのでありますが、スイスの場合は私のもっと詳しく調査したのがありますが、今その材料を持ち合せていませんからこれによるのでありますが、大体意味はこれに尽きると思う。この規定を読みますと、こういう文章になっております。第二条「最低年令に関する法令に従い最低年令(註十四才)に達した後の小学校の義務教育を免除され、この法律の適用を受ける職種を修得する目的で公私の企業に雇用されているすべての未成年者は、この法律技能養成工とみなす。」第二には、「訓練期間が一カ年未満の場合には、この法律技能者養成とはみなされない。」こういうただし書きがありますけれども、ここで明らかなように、この場合に、この法律はさらに使用者の義務規定をこう命じております。「使用者ば、技能養成工がその職種に必要な全工程について技術的教習を受けられるよう処置するとともに、訓練目的を達するためその教習ができるだけ系統的に施されるよう取りはからわなければならない。さらに、「使用者は、技能養成工を技能学級に出席させるとともに、賃金を控除することなく出席に必要な時間を与えなくてはならない。」二には「使用者は、技能養成工に法定の検定を受けさせ、その受験に必要な時間を与え、またでき得る限り、実技検定の準備に必要な原材料、工具及び設備を原価で供与しなければならない。」こういうように、きわめて明瞭なように、学校教育を受けながら、次の就職の目的が明確になって、技能訓練を受ける場合に、すでに雇い主は、学校課程を受ける間においても賃金を支払い、また技能訓練に必要な経費を具体的に支弁しなければならないことを明らかにしております。またその目的はこれこれであるということを明らかにしておるのであります。こういうようにならなければ、ここでいっております第三条の原則というものは絵に描いたぼたもちのようになりがちであります。ここにこの法案全体から見て、私はちょっとびょうがゆるんでおる、こう感じられますので、これは技術的というよりは本質的なものだと思いますので、この点に対する労働大臣の見解を承わっておきたい。
  69. 石田博英

    石田国務大臣 ただいま御指摘のスイスの立法例は、非常に理想的な徹底した法律でありまして、技能訓練職業訓練というのは、そういうところを目指していかなければならないという点については、私も同感でございます。ただ、ただいま日本の実情から考えまして、検討すべき問題ではございますけれども、今直ちに全面的にそう徹底したところまでいくことは、まだ少し早いのではないか、そういう方向に向けて検討及び努力を続けることはしなければならぬと存じておる次第であります。
  70. 井堀繁雄

    井堀委員 これは、スイスの一九三〇年六月二十六日の公布になるもので、その後改正されたものを私は持っているのです。決してこれは理想を掲げたものではなくて、この法律のいわば実施上の、私は今ここの提案された法律で言いまする第三条関係を具体的に表明したものだと思う。ここに重複を避けるとか、緊密な関連を持つというようなことを言っておりますのは、ここで文部省がお見えになればお尋ねしようと用意しておるのでありますが、学校教育法にいたしましても、ことに教育基本法が採用されるようになってきてからの日本学校教育というものは、社会教育にかなり重点を置くようになった。特に教育目的が明らかになりましたので、上級学校に進む者と、実社会に出る者とに対するきわめて明確な一つ学校教育目的というものが一方では明らかにされておるわけです。それを受けて立つ、ここに職業訓練法ができたのでありますから、その結びつきというものは重複を避けることはさして困難なことではないかもしれませんけれども、それと密接な関連とは、何も文部省労働省とが話し合いをすることが密接な関係だとは申せますまいが、少くともここで言っておりまする密接な関連とは、もうすでに学校に行っている人たちを学校教育訓練法の中で有機化するということになれば、今日の世の中ではやはり一定の雇用関係というものが目安にならなくてはならぬ。そういう点にこの法はどこか大事なところがピンボケしているのではないかというので、ここでさして言っているのです。こういう点は、もっとこういうものに対して提案者側としては、われわれにも納得させ、国民にもうなずかせるような御答弁を、こういう機会になされることが必要だと思いますので、そういう意味で一つ御答弁をお願いしたい。
  71. 石田博英

    石田国務大臣 学校教育職業訓練との関係は、午前中事務当局から御説明申し上げたと思うのでありますが、学校教育法の一部改正を文部省で提出をいたしております。そこでこちらの職業訓練を受けたものの課程は高等学校教育課程とみなすというような法律改正が行われる、その関係は非常に画期的に明白になっていると思うのですが、今私が非常に理想的な形で望ましいと申しましたのは、どういう条件にある人もみんな含めて、全部を対象とし、そして全部がそれに含まれる。そしてそれに対しては義務的に有給で行うという建前、雇用者とそれから使用者との間の関係をかくのごとく画一的にすることは、スイスでは現実的にできることでありましょうが、日本ではやはり現在の段階ではまだすぐやることはちょっといろいろな摩擦を生じるのじゃないかということを申し上げたので、しかしでき得る限りそういう方向に職業訓練法というものを整備していきたいと考えておるわけであります。
  72. 井堀繁雄

    井堀委員 くどいようですが、大事な点でありますから。決してこのスイスの法律でも全部の学童にというのではなくして、学童の中でそういう希望を持ち、あるいは雇用関係が成立するということが前提になるわけです。そうしなければ職業訓練も起ってこないわけでありますから。そこで日本の場合にも、全部のものが熟練工になるというしかけでもありますまいし、上級の学校に行くものもありましょう、あるいは他の職業を求めるものもありましょうが、とりわけこういう熟練労働者としての志を立て、そうして雇用関係が予定された場合のことをいっているわけです。きわめて局限されたものを取り上げてお尋ねしているわけです。そこで誤解のないような御答弁をいただきたい。そこで私がもう少し補足してみますと、日本特殊事情からいいますと、もっとこういうものをこの法案の中で生きた文章でわかりやすく表現してほしいという希望的なものがあるのでお尋ねしたわけであります。それはその提案理由説明であなたもお述べになりましたように、中小企業零細企業の面における熟練労働者がはなはだしく不足している、それは付加価値生産にも影響すれば、賃金格差というような社会悪も作り上げているというような情勢なども述べられているわけでありますから、いかにこの法案日本中小企業の熟練労働者養成に対してこたえようといたしているかということは、今さら問うまでもないわけです。そこで中小企業零細企業の場合におきまして問題があると同時に、いま一つにはそこに雇用を求める多くの人々はいわば低所得者の中でも、まあ少年の場合から収入の道を当てにして労働せしめようという家庭でありまするから、そういう人たちが上級学校に進むような経済的な余裕のないことは、いうまでもないわけであります。それが事業場の内において訓練をされるということに区切ってしまえば問題はありませんが、しかし学校教育との間をどうするかという問題は、そういう点に対して雇用者にその負担をさせるというスイスのような行き方はこれは一般的だと思う。もしそうでないとするならば、その期間は公共団体とかこの訓練所、ここに従って何かめんどうみるといったような方法が講じられなければならぬ。実際何回も繰り返すようでありますが、これは絵にかいたもちと同じことなんです。そこに一挙に何か理想的なものを求めて私は質問しているのじゃなくして、そういう段階について具体性が欠けていやしないか。その具体性をどうしてつけようとするかということについて、午前中事務当局の御答弁は、趣旨にはもちろん理解をし、そうしたいけれども、ただいまのところはそういう具体的な持ち合せがない、もちろん政策面にも関連するから御遠慮して御答弁がなかったものかと思う。多分にこういう問題は大臣のお考えが加わってこういう法案を完成していく、ために私も質問しあなたの方も御答弁をいただく、こういうわけですから、用意がなければなおまだ審議する期間もあろうと思いまするから、そういう点御検討いただいて御答弁してもらってもけっこうです。
  73. 石田博英

    石田国務大臣 補助金の予算上の処置は前年よりはよけい取ってありますが、今おっしゃいます点を法律上明確にいたしますところの——今私ひょっと思いついただけでも、たとえば訓練費用を使用者が持ってやる、やったあとの継続雇用の条件とか、そういうような点も考えなければならないわけでありますし、それからそういうことを負担する能力がない場合におきましては、国で具体的な予算措置、あるいは公共団体でやるそういう場合の予算的措置の問題、これも残っていると存じます。従って今井堀委員御指摘のようなスイスのような状態へ近づけていくための所要の研究は、これはいたしていかなければなりませんし、できるだけ早くそういうことの実現に必要な措置を行なっていきたいと思っておりますけれども、今この法律と同時にやれとおっしゃいましてもちょっと時期が早いし、それに必要な予算上の準備もまだないということを申し上げたのであります。
  74. 井堀繁雄

    井堀委員 一つ具体的に私の方から案を出してお伺いすればわかる。同じ時期に三つの法案が出て、労働省から御提案になっている重要な法案といわれている中で、日本労働協会法案に十五億の資金を政府が出資されようとする。利息をかせがせるわけです。むしろあっちよりもこっちの方がよかったんじゃないか、この点のお考えはどうですか。こっちの方に切りかえませんか。せっかく出したのでありますから、それはとにかくとして、そういうように考える。私は予算措置のやり方としては非常にいい時期だと思うのです。何もこれを切りかえていく必要はありません。それはそれで出されていいのですが、こういうところに政府はある程度の出資をなさって、それこそそういう管理するためのいろんな機構を併置していくということも意味があると思うのですが、こういう点についてお考えになったことはありませんか、また将来お考えになる御意思はありませんか。
  75. 石田博英

    石田国務大臣 大企業事業内におきます場合は、実際問題として給与が支払われておるし、その時間も提供されておると思います。ところが事業主共同体で行いますような場合におきましては、やはり国の予算措置を伴わなければなかなか完全に実施することは、今直ちに義務づけることは非常にむずかしいのじゃないか。しかし実際上の措置としては、連合体でやる場合におきましてもやはり使用者負担し時間も提供するように、大企業の場合と変りのないような実際上の措置はとっていかなければならぬと思っております。それをさらに徹底いたします場合においては、むしろ使用主がきまっていない者に対しても、共通に国がある程度生活費あるいは訓練費の負担をいたしてやることが望ましいということは、言うまでもないのでございますが、そこまで参るよりは、やはり今のところはできるだけ対象人員を広げていく段階ではないか。対象人員を広げられないで、施設もまだとしいときに、その施設を利用する者が格段によき待遇を受けるということも、公平の原則から見てどうかとも思いますので、財政上の理由その他から今直ちにそういうところにいくことはちょっと困難だ、こういうことを申し上げておるわけであります。
  76. 井堀繁雄

    井堀委員 もっと積極的な御答弁をいただこうと思ったのですが、まだ質問機会もありましょうから、そのときにもう一度突っ込んだ質問をいたしたいと、思っております。  次に技能の検定制度の問題ですが、法律でいいますと二十四条関係、ここで技能の検定については政令で職種ごとに一級、二級という区分をするというように法律は書いております。いわば熟練工の格づけを公けにやるわけです。このことは労働条件が裏打ちして出てくるわけです。一級が上か二級が上になるかどっちか知りませんが、上のクラスになればそれだけ賃金もよくなる、その他の待遇も保証されてくるわけでありましょうから、この点は労働者にとって非常に魅力になる、刺激になると思うのです。それだけに、ややもすれば行き過ぎがありましたり、あるいは誤認などに基いて非常な不幸な事態を招くということがあり得るのでございます。これは悪く持っていきますと、封建的な階級制度というようなものを生む危険もあります。身分上に差別をつけるような雇用条件というものが生まれないとも限らない、というよりは、諸外国のいろんな経験を一、二見てみますと、そういう失敗をしてだんだん改善されてきておるという歴史があるわけであります。日本の近い例から申しますと、徒弟制度を廃止したという中には明らかにそういう趣旨が含まれておることは、職安法の立法の精神にも明らかな通りであります。こういう関係からいきまして、この問題は労働大臣にとってはきわめて重要な責任事項になるようでありますので、あなたのこれに対する見解を明確にしていただきたいと思います。
  77. 石田博英

    石田国務大臣 格づけをいたします以上は、それに対して労働条件の裏づけがなければならない、これは全くその通りだと思います。特に先ほどちょっとほかの例をおあげになりましたけれども政府予算の組み方の中にも私どもとしては不満な点がありまして、技能の高い者も低い者もならした予算を組んである。これは公共事業予算を組む場合におきましても、やはりこういうことをいたします以上は、そういう考慮をしてもらわなければならないものだと私は思っておるわけであります。一級及び二級の格づけをいたします際には、御指摘のようなことが生じないように公正にかつ慎重に処理しなければならぬものだ、こう思っておるわけであります。
  78. 井堀繁雄

    井堀委員 そういう点は一つ細心の注意を払って、この条文を誤まることのないように十二分の御注意をいただきたいと思います。  次に、同じく二十四条の三項について、技能検定の実技試験及び学科試験を行うようになっております。これはほかの事項でもちょっと関連してお尋ねをしたのですが、技能検定とかあるいは実技に対する試験、科学的な試験といえばわかるような気がしますけれども、抽象的にはそうでありましょうが、これもこういう運営の上にとかく問題を起しがちの条項だと思います。これも立法当事者、特に労働大臣の見解をこの際相確にしておいていただきたい。
  79. 石田博英

    石田国務大臣 これは格づけの問題の基礎でございますから、同様の心がまえを持ちまして慎重に、要すれば、適切な権威のある機関によって、これは前の指導員の試験の場合も同様でありますが、社会的に認められるような方法をとりたいと思っておりまするし、中央職業訓練審議会には、そういう技能検定の標準というようなものを定める部会を設けて、それによって試験の方法等を、あるいは内容等を決定したい、こう思っておる次第であります。
  80. 井堀繁雄

    井堀委員 これは多少私の意見を加えさしてもらいますと、この問題は労働者には刺激になり、魅力になり、またその結果ば労働条件にもすぐ響いてくるわけであります。労使関係について悪くすると、封建的な身分制度を復活さしてくるという危険もありますし、またもう一つには、これを運営するに当りまして、労働大臣の地位あるいはその労働大臣の指揮命令を受けて立ちまする労働省の役人、あるいは委任を受けてやりまする知事などの権限というものに対して、労働者というものは権力の前にややもすればひるむ性格のものであります。すなわち利害を目の前にぶら下げて誘導していきまするから、誤まりますると、権力統制の邪道へ落ちるおそれのあるものであります。これは人間の弱さでありまして、権力ほど腐敗しやすいものはございません。そこに民主主義はきびしい監視といろいろな条件を設けて、その堕落を防止することに努めなければならぬという点に私はしぼられてくることだと思うのです。私は午前中前段で主張いたしましたように、こういうような問題は、いかに労働大臣がりっぱな人格者でありましても、長く権力の地位におりますと、どうしてもそうなるということは、これは今さら説明を要さぬところでありますから、そこを制度や、こういう規定で人間の堕落を防いでいくという大事な点がこの二十四条に私は相当程度あると思うのであります。それでお尋ねをしたわけであります。ところがこれは繰り返すようでありますが、あなたは三者構成審議会についてはそれほどの必要をお認めでないようではございましたが、こういうようにだんだん審議して参りますと、私は三者構成というものは、何も分配闘争における利害関係者が相集まって調整するといったようなものではなくて、また技術だけであるからということで、そういうものの知識経験のある者だけを集めればよいということだけではなく、やはり民主的な手段と機構、制度によってこういう危険を阻止していこうということになれば、万能とは言いませんけれども、今のところまあまあ三者構成というものが、民主的な機関として是認されておる既存の制度として、こういう場合に私は生かしていくべきではないか。一考が必要ではないかと思っておりますが、あなたのお考えはいかがですか。
  81. 石田博英

    石田国務大臣 使われる者の立場が職業訓練審議会において反映するように、これは十分心がけて参りたいと存じております。法案を提出いたしました以上は、これはその法案提出後におきます御審議の結果でございます。私は現在の現行法規をもってしても、ただいまおっしゃるような趣旨は十分貫くように努力したい、こう思っておるわけであります。
  82. 井堀繁雄

    井堀委員 これ以上は議論にわたりますから、避けたいと思いますが、大臣がいかに努力しようとしてもできないものもあるということはおわかりのようでありますが、いずれこの委員会で与党の方からも御意見が出るかもしれません。またわれわれもそういう点はぜひ法を正しく運営するために修正すべきであるという見解を持っております。次の段階で明確にいたしたいと思いますので、この点は一応保留いたしまして、次にお尋ねをしてみたいと思います。  それは同じく第五章の技能検定に関係いたします問題で、第二十五条の受検資格に対して、これも終了した者に対しては労働省が免状みたいなものをやるのでしょう。
  83. 澁谷直藏

    澁谷政府委員 そういうわけであります。
  84. 井堀繁雄

    井堀委員 それは労働省令でこれを定めると規定してあります。これがさっきの疑問に対する一つの具体的な現われになって参るわけであります。どういうような性格のものをお考えになっておるか。見方によっては非常な幅があるようだし、見方によってはただ単に形式をとどめるというようなことにもなりがちだと思います。これを伺えば前の問題に対する考え方がおのずから明確になると思いますから、これは事務当局から御答弁を願いたい。
  85. 澁谷直藏

    澁谷政府委員 第二十五条の第一号でございますが、これは御承知のように公共へ職業訓練につきましては、短期間のものは半年問、長期のものでも大体一年でございます。それに認定職業訓練の方は大体平均が三年と、比較的長期になっております。しかもその期間というものは職種ごとにそれぞれ異なっております関係上、法律の書き方としましては両者を書きまして、その終了した者で具体的に何年の訓練を終った者、あるいはその訓練を終った者でもう一つの仕上げの訓練と申しますか、研修的な訓練を終った者は技能検定を受ける資格を与える、こういうふうに具体的に書いていく必要がございますので、労働省令で定めるもの、こういうふうに規定してございます。
  86. 井堀繁雄

    井堀委員 そこで二十五条二号の問題で「前号に掲げる者に準ずる者で政令で定めるもの」というのは、具体的なものとして伺いたいと思いますのは、事業場の中において同等の訓練を受ける者などのこともさされておると思うのであります。あるいはこの制度によらないで、実質を備えた者に対してはこの受検資格を与えるという趣旨にとれると思うのです。そういう場合には、その二つの場合のケースのうち前のケース、雇い主が、あらかじめ自分の事業場において指導員がおるでしょうから、そういうところで資格を与えた者を機械的に有資格者として受け入れるというふうにも受け取れる。あるいはそこらに対する扱い方はどういうふうに起案者はお考えがございますか。
  87. 澁谷直藏

    澁谷政府委員 第二十五条の第二号は、午前中にも御説明申し上げたと思いますが、第一号はこの法律で定める訓練を終了した者という規定でございますが、この訓練法案による訓練を受けなくても、たとえば旋盤工として十年間働いた実績を持っておるという者が、この訓練法案によって技能検定を受けたいという者があります場合に、これを拒否することは適当でございませんので、これを第二号で救っていこう、こういう規定でございます。
  88. 井堀繁雄

    井堀委員 それは午前中も伺いましたしこの文章を読んでも理解できる。私も質問をする前に私の見解を述べたわけです。ただその資格については、一号の者と準ずるというのでありますから、一号に書いたものとぴったり合うか合わぬかということの認定をやるならば要らない。事業場の中で事業主が扱う——経営者が事業主ですから、事業主の方で資格があるからということで、人を出してくれば拒めないのではないか、こう伺っておるわけです。
  89. 澁谷直藏

    澁谷政府委員 そういう場合ももちろんこの第二号の対象となるわけでありますが、たとえば認定職業訓練の場合は非常に系統的な教科内容に従って、指導員の免許を受けた先生がついて、基本的な訓練をやる。一応それが三年で終った場合これに準ずるものとして取り扱うのは、何年くらいが適当であるかというような点が具体的な政令の内容になってくるかと思います。従いましてそういう点も相当専門的技術的な内容を持ちますので、中央訓練審議会なり、あるいは専門の部会にかけまして、その点を検討した上で定めて参りたいと存じます。
  90. 井堀繁雄

    井堀委員 初めて明確になりました。こういう場合については審議会審議をわずらわせようというところにいいところがあるわけです。だから審議会性格というものが問題になることを指摘したい。この前の質問で明らかにしたように、労働条件の裏打ちが出てくる。でありますから労働者の利益を代表するもの、すなわち労働組合法でいうならば団体交渉の精神です。すなわち労働者雇い主との対等の立場という原則をくずしてはならぬわけですから、そういう点では恩恵的な制度にこれが化したり、あるいは権力的支配の訓練に落ちてしまいますと、とんでもない邪道に落ちる危険性があるし、当然これは落ちるだろう。ですからそれを防止するには、労働者の対等の立場に立つというあの精神を生かす方法としては、今いう三者構成審議会以外にない。そういう点からいきましてもそれ以上のものがない。こういうふうに審議を進めて参りますと、また職業訓練審議会性格というものと、職業安定法並びに労働基準法の中にある問題、あるいは労働組合法の関係というものが一連のつながりを持つものであることが明確になったと思う。こういう点からも一つ十分労働省としてはそういう機関がいかに大切なものであるかということが、この条文の実施面における具体的事例をあげれば、私が尋ねるまでもなく、答えはおのずから明確になってくると思うのであります。こういう意味で、私は審議会性格に非常にこだわっている、こだわるというよりは、邪道に落ちることを阻止する義務を感じておるくらいであります。  次に同じくやはり関連事項でありますけれども、二十六条にも問題があります。その問題は今のとは異なった意味で問題でありますが、これはこういう資格をきめた、それを受けて立つわけでありますから、合格証明書、及び技能士合格証を大臣が交付することになっておるのであります。このことはよい点では、労働者自身も一つの誇りを感じ、それから世間もその訓練の結果をお認めになるわけでありますから、そのこと自体はもちろん異議のないところであります。しかしこの合格証を交付する場合、これは前の資格のある者で試験をして、そしてこうやるということでありましょうが、これがあまりきびしきに失しますと、何のことはなくなってくる。それからあまり甘くしてこれを乱用しますと、これは労務管理に権力の介入を意味することになる。スイスの法律にはこれはありませんよ。これはどうも労働大臣があんまりお世話をし過ぎるきらいがある。だからそういう証明に権威づけよう。大臣の出した資格証明ですから、非常にいいことなんです。それだけにまたそういう反作用も起きてくるということを考えなければならぬわけであります。だからこういう制度を運営する場合には、私が立場をかえて考えますならば、やっぱり人間の弱さというものを制度の中でどう警戒して失敗に陥らぬようにするかという点が非常に大事になってくるという一項が出てくる。受検資格においてすらそうでありますから、なおさら技能士に対する適格証明書を出すというようなことは、こういう点について労働大臣は深くお考えになったでしょうか。あなたは永久に大臣をやるわけではありませんけれども大臣の職につく人のために、起案者としてはこういう問題についてどうお考えになっていますか。それから事務当局には、そういう点について規定してある外国規定の中でそのままのものがあるか、これは善通どうなっているかということについてお答え願います。
  91. 石田博英

    石田国務大臣 外国の例等は私は承知しておりませんので、いずれ事務当局から……。どうもやっぱり日本人は何か称号が好きでありまして、証明書を出しますと、称号をつけた方が奨励になりますし、もらう方もけっこうじゃないか。それから技術者である、技能者であるということを明らかにするためにもいいんじゃないかというわけでこういう規定を設けたわけでございますが、これを甘くしてもからくしてもいけない。両方のいろいろな影響が強いことはよくわかります。従ってこれはやはり検定の内容、やり方に問題がありますから、職業訓練審議会で公正なものをおきめいただきたい、こう思っております。
  92. 澁谷直藏

    澁谷政府委員 具体的な例でございますが、スイスと西ドイツが大体この訓練法建前と似た建前をとっております。スイスの例は第四十八条でございますが、これを申し上げますと、産業団体の勧告に基き上級証明書の所持者は一定の称号を唱える権利を有する旨の命令を発することができる、その称号は規則によって定めなければならない、こういう規定がございまして、さらに称号は職種名に公認という名称を付して、たとえば公認会計士であるとか、公認組立工、または職種名にマスターという名称を付してさしもの師、洋服師という形式をとることを定めることができる、こういう規定になっております。
  93. 井堀繁雄

    井堀委員 ちゃんとそういうふうに今四十八条のスイスの条文をお読み上げになった。これはまず前提になるのは産業団体、これは労働団体を入れておるようですね、それの勧告に基くことになる。そしてその証明書に対する個々の場合は、ほかの条文に出てきますが、権力関係というものを非常に警戒をしておる。これは存外そういう点を軽視するというか無視するというか、全然出ていない。それでただ今大臣の御答弁がありましたように、職業安定審議会ですか、職業訓練審議会ですか、どっちかを意味するのでありましょうが、そういうものをこういうものによっているものと同じように考えていこうということですが、そうしますと、中央職業訓練審議会というのはますます妙なものになってくる。最初私が尋ねたときにあなたが言われた、技術の格づけだけをするのなら、学識経験者でいいわけなんです。でありますから、権力統制を排除するという面からいきますと、全く無力なものであるということにもなるわけでありますから、この点についても十分お考えいただく必要があると思うのであります。せっかくそういう能技者に対して格づけをして、その地位を社会的にも強調し、あるいは労働条件の向上の裏打ちなどにしようという点はよいのでありますけれども、それをこのままの条文の解釈でいきますると、悪くすると労務管理に、特に熟練労働者の場合においては踏み出しが大事である。そういうときに労使の公平な、すなわち対等の立場をこわすような恐るべき権力介入になる危険率が一番高い点である。こういう点に対する用意が不十分だという点を指摘いたしたいために私はお尋ねをしたわけであります。答弁で明らかになりましたが……。もう一つこれに関連いたまして、これもよほど警戒をしなければならぬと思いますのは、この前の議会で成立いたしました、この法案でいいますと、二十七条の中に試験の委託というところで、「労働大臣は、労働福祉事業団又は労働大臣が指定する団体に第二十四条第三項の実技試験又は学科試験の全部又は一部の実施を委託することができる。」と、こうありますね。ここにある福祉事業団というのは、これは法人格を持っているものであります。でありますから、この性格についてはよい悪いは別としても、きわめて明確であります。しかし「労働大臣が指定する団体」という、この団体はどういうものをさしておるのでございましょうか、まずこの点から伺っておきましょう、
  94. 澁谷直藏

    澁谷政府委員 この技能検定は言うまでもなく非常に技術的な、しかもむずかしい判定を行う仕事でございまして、しかもわが国の場合は初めての試みでございます。従いましてこの技能検定制度制度全体として整備され軌道に乗るまでには相当の年月を必要とするかと思いますが、そういう意味合いにおきまして私どもは福祉事業団ももとよりでございますが、その他たとえば溶接関係につきまして溶接協会というような強力な、しかも権威のある団体がある場合に、この技能検定試験の一部を必要に応じて委託してやらせるということはむしろ実情に沿うゆえんではないか、外国の法制等を見ましてもやはり技能検定については極力民間のこういった団体を活用しておる例が多いのでございまして、そういう点でこの規定を設けたのでございます。
  95. 井堀繁雄

    井堀委員 そこで前の御答弁とこことで食い違いを私は感ずるのです。労働大臣も繰り返し答弁しておるように、あるいは二十五条、二十六条の際に御答弁がありましたように、審議会の機構を民主的なものだといたしまして、そういうものの審議をわずらわして、こういうものに対しては細心の注意と、危険の伴わないようにするという御答弁は、私は確かにその通りだと思う。ところが労働大臣のやるお仕事は今一部とお答えになったが、この文章では全部または一部ですから、全部をやることもできるわけです。そこであなたはその団体については業界をさす、これは事業団体公益法人である団体でありまする労働福祉事業団についても問題がありますけれども、この場合は法律によってある程度明確化されておりますからなんですが、業界、たとえばあなたが具体的にあげられた何々協会とか、いろいろありますけれども、そういうものはこの法律には書けないとするならば、政令などにこれこれの団体と列挙なさるおつもりですか。それとも、もっとこういうものに対する具体的な説明を付加して、政令なりあるいは規程なりを設けられるかどうか。今一例をあげられたのですが、たくさんあると思うんです。
  96. 石田博英

    石田国務大臣 これは実施を委託するのでありまして、検定を行いまする基準は、職業訓練審議会で御検討をいただいてきめていただく。これはほかの学校の入学試験や、各種の試験においても大体そういうことをやって、ほかの市町村等に委託している場合も非常に多いのじゃないかと思うわけであります。  それからその職業訓練審議会構成、この中に、私が申しましたのは労働者使用者が対等の立場で参加する、つまりそういうそれぞれの立場の発言権をその中に確保しなければならぬということは、これは実際の運営でやっていきたい。しかしその場合でも、技術的な面が非常に多いわけでございますから、やはりその技術的な面を審議をするのに、差しつかえのないような構成を考えなければならぬじゃないか、こういうふうに考えておるわけでございます。
  97. 井堀繁雄

    井堀委員 そういう御答弁であればけっこうですが、この条文からいきますと、試験の全部または一部ですから、二部の場合はあなたのおっしゃられるように、これこれのことについて専門家の御協力を願うということで委託されればいいが、全部ということになりますと、大臣のおやりになることをその団体にやってもらうということになるわけなんです。それで全部ということになりますと問題がある。これは非常に大切な言葉が入っていると思います。
  98. 澁谷直藏

    澁谷政府委員 私の説明不足かと思いますが、その点は第二十四条におりきまして明瞭に、「労働大臣は、労働者について、その技能の向上を図るため、技能検定を行う。」そうしてその技能検定のやり方につきましては、第二十九条の中央職業訓練審議会規定の第七項におきまして、「技能検定に関する事項その他職業訓練に関する専門的な事項を調査させるため、中央職業訓練審議会に、技能検定部会その他の部会を置くことができる。」先ほども申し上げましたように、技能検定はわが国で初めての制度でもございまするし、影響するところも非常に大きいのでございますので、特別にはっきり名称を指定しまして、技能検定部会という特別の部会を設置することができると書いてあるわけでありまして、この技能検定部会で、その試験の基準なり、それから学科でいけばどういうような問題を出すかというような基本的な事項は、全部ここで審議をいたしまして、それを逐次実施に移すわけでございます。その実施に移す際に、何もかも全部労働大臣がやるという建前よりは、必要に応じては適当な権威のある、信用できる団体がある場合は、その一部を——全都の場合もあるかと思いますが、そういうものに委託していく方がより実際的ではないか、こういうことであります。
  99. 井堀繁雄

    井堀委員 第二十四条第三項に限ってというふうに解して差しつかえございませんか。この全部というのは……。この条文をもう一ぺん読んでもらいたいと思いますが、二十七条の、労働大臣はこれこれの団体に、全部または二部というのですが、一部の場合は問題はないかと思いますが、全部の場合は、労働大臣にかわってやるわけでしょう。この二十四条の三項というものは、技能検定は、実技試験及び学科試験によって行うというのですから、つまり条文から判読いたしますと、技能の検定ということになります。全部といったら、技能の検定については大臣にかわってやることでしょう。その点はどうですか。
  100. 澁谷直藏

    澁谷政府委員 技能検定は、第五章全体が技能検定に関する規定でございまして、従って、これはまず職種を、どういう職種技能検定を行うかというのが第二項でございますが、それは政令で定める。しかも試験は実技試験と学科試験によってやる。その試験の答案なりやり方、そういったようなものはどういうふにしてきめていくか。それから第二十五条でも、先ほど御質問がございましたように、どういった者に受検資格を与えていくかという問題、さらに合格した者には、合格証明書を交付するというような手続、その他これに付随するいろいろなことがございまして、その全体が技能検定の一つ制度になっているわけでございます。そのうちで技能検定の試験は、その技能検定制度全体の大事な部門ではございますが、一つの部門であるわけでございます。それで第二十七条は、その技能検定の実技試験または学科試験の全部または一部を委託することができるということでございますので、技能検定全体を民間団体にやらせる、こういうような趣旨ではございません。
  101. 井堀繁雄

    井堀委員 そういたしますと、第二十四条第三項の解釈を明確にいたしておきたいと思いますが、この三項の文章によりますと、技能検定は実技試験及び学科試験によって行うというのであります。ここで内容をいっているだけです。だから、技能検定ということは、実技試験と学科試験とによってやるということでしょう。そうすると、二十七条の条文は、この二十四条第三項の試験を、全部または一部やらせる、こういうことです。だから技能検定、こういっていろいろ書いてありますけれども技能検定の骨子はこの第三項です。検定は何かというたら、それは実技試験と学科試験だ、こういうことになるのではありませんか。それで証明書はどういうものをやるとか、一級、二級というようなものをつけるとかいうようなことは、これは説明的なものである。一体技能検定は何かといったら、それは実技試験と学科試験、こういうことになるではありませんか。それを全部やらせたら——一部じゃなくて、技能検定を、大臣のやることを今言った業界やあるいは労働福祉事業団にやらせるというのでありますから、全部ということになると、そうなるのじゃないですか。
  102. 澁谷直藏

    澁谷政府委員 その点は、繰り返すことになるかと思いますが、先ほどから申しますように、この試験の基準、それから問題の作成、それからそれに対してどういうふうなものを模範答案とするかというような試験の中身と申しますか、重要な基準は、全部労働大臣の方で定めるわけでありまして、それの実施を必要で、しかも信用できる団体があれば委託してやる、こういう趣旨でございます。
  103. 井堀繁雄

    井堀委員 説明でも明らかになりましたように、こういう非常に強い権限と、影響するところの大きい制度でありますから、よほど慎重に扱わなければならぬことは申すまでもありません。そういう点から、以上条文の例証的なものをあげてお尋ねいたしまして、大体明らかになったようであります。肝心なことは、初めての試みでありますから、やってみて悪いところは改善していくという性格を持つものであることを私も信じますが、しかしただ決定的な失敗をしないようにするために、どうしても中央職業訓練審議会だけに依存することがいかに矛盾し、また不合理であるかということも明らかになったと思います。なお審議会制度については提案者とわれわれとの間の意見の対立はやむを得ませんが、こういう点についてはしかるべき修正をして間違いのないようにいたすべき必要がきわめて明確になってきたと思います。まだ多くありますけれども、基本的なものがここに存するので、私の質問はこの程度に留保いたしておきまして、いずれ明確にいたします。
  104. 森山欽司

    森山委員長 本日はこれにて散会いたします。     午後四時十一分散会