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井堀委員 ちょっとこまかくなりますが、
職業訓練指導員の試験、これは実際問題としては初めての試みだと思いますが、各国の
事例を見てみますと、初めの間非常に失敗をしているのです。学科試験の場合はいいのですが、たとえば教授の
資格などについても、いろいろな前例もありますが、実技と学科——学科だけでとるのなら簡単ですが、実技と学科ということになりますと、どうしても一定の経験年数というものが問題になる。そういう経験年数を積んでいるような者は学科試験の条件が整わないというようなことで、中途半端な者が任命されてくるというきらいがある。そういう
制度を作って失敗して改正したということをどこの国でもやってきている。これは現実上やむを得ぬことかもしれません。そこでここにある二十一条の三の一号、
労働大臣が行う
職業訓練云々とありますから、これで
一つの基準をこしらえられるわけですが、そこのところがこの
法律を死文化したり、生かしたりする大きな問題点だと思います。さっきのスイスの例をまた申し上げますけれ
ども、
最初は何回もやり直して指導員では悩んでいる。それで、大きな
事業場になりますと、大体一定の
学校教育を受けた技師だとか、技術員というような者がその工場て長年働いて、みずから実技も身につけているという人が比較的得られる。ですから、今
日本で、大きな
事業場には、そういう
訓練法によってすぐ要求してくるようなものが比較的少くて、一番求めておる
中小企業、
零細企業にはそういう指導員が実際上得がたいのじゃないか。この
制度でそれをつかもうとするのかと思うけれ
ども、ここに問題があると思うので、この点に対して、さっきあなたに聞きますと、地方の基準局長というものは大体
法律専門家がそういう地位についておられる、全くしろうとなのです。だから今
労働省のどこの面でこういう問題に対する確保をするかということで、そこで冒頭の問題に戻ってくるのであります。
労働大臣はあっちに行ってしまいましたけれ
ども、この
臨時審議会の
メンバーを見ても、これが
専門的だという点については具体的に批評するわけにはいきませんけれ
ども、三
者構成というのはただ単に
労働条件の中でも分配問題に対する権利義務を争うためのバランスを調整するということだけのことであると思う。さっきも言うように、労働組合にも産別労働組合が成長してきているわけでありますから、熟練
労働者が、たとえばスイスの例をとって言いますと、時計金属労働組合のごときは、この指導員を労働組合が送り込んで、それから成功してきている。だから形式的に上から採用してきたときにはみんな失敗しておる。だからこういう点についても、私はこの
制度を運営する上に根本を誤まっておるじゃないかということで、冒頭申し上げておいた。学科の問題は今の
学校にまかしておいていいくらいです。そこに交差するところに非常にむずかしい実際上の問題がある。私はこの
審議会の
メンバーを見て申し上げておるのじゃありません。
答申案を読んでみてもわかるように、よく勉強して下さっておると思いますけれ
ども、それが一番むずかしい。
外国も成功するまでに幾多の失敗を繰り返してきたのであって、その中の一番大きな失敗はこういうとこにあったと思う。
それから指導員の任免権の問題などについても、これが適格者であるかどうかということは雇っていて結果が出てくるまでには相当
期間がかかる。この間
経費をむだするだけでなく、その指導
訓練を受けた者にとっては耐えがたい被害を受けてしまうのでありますから、あまり雇ってみて悪ければということにもいきかねる性質のものだと思う。こういう点で
提案者は
外国のそういう
事例をお集めになったかもしれませんが、
日本のたしか東北
大学の教授で、そういうことについて検討された方が、まだ
報告書は見ておりませんけれ
ども、たまたま私
どもがスイスへ行ったとき、エリコンに泊り込んで勉強しておいでになったようでありますが、その人の結論をぽつんと聞きますと、指導員だと言う。指導員を選考する基準についてはよほど検討を要するということを言っておりました。案の定ここで見ますると、この二十一条でうかがい知ることのできるものは、試験
制度がここに設けられる。それと任免権の問題が出てくるわけです。スイスの場合はやはり民主的な
機関を大幅に尊重し——もちろん責任を片一方においてしょい込まないというずるさもあるでしょうけれ
ども、そういう点が
法案全体の中で出てくるのではないか。その点で
訓練指導員の試験の条件と申しますか、そういうものはここでは明らかにされてはおりませんが、起案者としてはどういうものをお考えになっているか、できるだけ詳しく御
報告願いたい。