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1958-03-13 第28回国会 衆議院 社会労働委員会 第21号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年三月十三日(木曜日)     午前十時五十五分開議  出席委員    委員長 森山 欽司君    理事 植村 武一君 理事 大坪 保雄君    理事 田中 正巳君 理事 野澤 清人君    理事 八田 貞義君 理事 滝井 義高君    理事 八木 一男君       小川 半次君    大森 玉木君       加藤 精三君    加藤鐐五郎君       亀山 孝一君    菅野和太郎君       倉石 忠雄君    小島 徹三君       田子 一民君    藤本 捨助君       古川 丈吉君    堀川 恭平君       山下 春江君    亘  四郎君       井堀 繁雄君    岡本 隆一君       中原 健次君    長谷川 保君       山花 秀雄君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 堀木 鎌三君  出席政府委員         厚生事務官         (大臣官房長) 太宰 博邦君         厚生事務官         (医務局長)  小澤  龍君         厚生事務官         (薬務局長)  森本  潔君         厚生事務官         (社会局長)  安田  巌君         厚生事務官         (児童局長)  高田 浩運君         厚生事務官         (保険局長)  高田 正巳君  委員外出席者         総理府事務官         (国家消防本部         総務課長)   横山 和夫君         大蔵事務官         (管財局国有財         産第一課長)  天野 四郎君         厚生事務官         (保険局健康保         険課長)    小沢 辰男君         厚 生 技 官         (保険局医療課         長)      館林 宣夫君         専  門  員 川井 章知君     ————————————— 三月十二日  委員神田博君、南條徳男君及び松岡松平辞任  につき、その補欠として小林郁君、福田赳夫君  及び松浦周太郎君が議長指名委員に選任さ  れた。 同月十三日  委員加藤常太郎君、小林郁君、福田赳夫君及び  松村謙三辞任につき、その補欠として大森玉  木君、堀川恭平君、加藤精三君及び菅野和太郎  君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  日雇労働者健康保険法の一部を改正する法律案  (内閣提出第一〇三号)  未熟児養育医療社会保険との関係等に関す  る問題  救急車における医療行為に関する問題      ————◇—————
  2. 森山欽司

    森山委員長 これより会議を開きます。  この際、未熟児養育医療社会保険関係等についての問題に関し発言を求められておりますので、これを許します。高田政府委員
  3. 高田正巳

    高田(正)政府委員 未熟児健康保険医療給付関係につきまして申し上げたいと存じます。  未熟児は単なる早産児と異なりまして、生理健康児に比し諸種欠陥を有しておりますので、これに対しましては、医師一般的治療行為、特に医療上の指導を必要とする事例はきわめて多いのでございます。最近の医学進歩によりまして、これらの点がさらに深く認識せられて参っております。従って今回の児童福祉法改正に伴いまして、保健所指導訪問等によって未熟児が多く発見され、これによって医療を受ける必要があるとされる未熟児も、従来に比し多数に上ることと考えられるのであります。これらの者の一部はもとより保健所勤務医師によって療養上の指導を受けることとなるのでありますが、また多数の者は開業医師その他の一般医療機関の診察、指導等を受けることとなると思うのであります。このような場合、健康保険としても、ただいま述べました未熟児に対する最近の医学進歩も十分に配慮いたしまして、これが軽々に単純な健康相談に類するものとして取り扱うようなことのないように、指導の徹底を期して参りたいと存じております。
  4. 森山欽司

    森山委員長 ちょっと速記をとめて下さい。
  5. 森山欽司

    森山委員長 速記を始めて下さい。滝井義高君。
  6. 滝井義高

    滝井委員 ただいま養育医療について政府見解の表明がありましたが、そうしますと今の見解政府としては、入院できない家庭における未熟児については、当然健康保険証でこれを入院と同様に見てもらえる、こう解釈してよろしゅうございますか。
  7. 高田正巳

    高田(正)政府委員 今の御質問の御趣旨を私取りかねたのでございますが、入院と同様にという御質問でございましたらば、私ども考えは、健康保険在宅患者と同様に、こういうことでございます。
  8. 滝井義高

    滝井委員 御存じ通り現在農村ではまだ医療機関が必ずしも入院の設備を持っていない。従って千八百グラムぐらいの未熟児が生まれますと、保健所に届け出なければなりません。保健所に届け出ますと、医師、助産婦あるいは保健婦が回ってこれを指導します。その場合に、日本の家屋は御存じ通り保温にきわめて不便でございますので、入院した方がいいのだ、こういうことを言われるわけです。ところが実際に入院する医療機関は遠くてできない。従って医師に代診を求めることになる。それは保健所医師往診をしてもらえば一番いいのです、金もかからず無料になるわけであります。ところが現在の日本保健所の機構というものは、そういう未熟児指導往診をするだけの人的な整備もないし、時間的な余裕もないことは、これは保険当局御存じ通りです。従ってそれは私的医療機関あるいは公的医療機関がそれに当ることになります。その場合に一体それを保健証でずっと見てくれるかどうかということなんです。問題はそこにあるわけです。
  9. 高田正巳

    高田(正)政府委員 先ほどお答えをいたしましたように、この未熟児生理健康児に比して諸種欠陥を持っているわけでありますが、それを養育医療等によりまして医師療養を受ける必要があるという指導をする。その未熟児医師が見ました場合にはこれは公けの機関であろうとプライベートな医療機関でございましょうと、私ども取扱いとしては同じでございます。
  10. 滝井義高

    滝井委員 療養指導ということになると一週間に一回なんです。五点です。それ以外には認められない。入院をすれば、一日、過去の実績から見て五十点程度です。そうするとこれは入院をしなければ損だということになるわけです。地方の者は無理をしても全部入院をさせてもらいたいということになる。乳幼児死亡率が高いということで養育医療が出てきたわけだ。しかも日本乳幼児死亡の三分の一は未熟児が占めておる。だから未熟児死亡を防ぐためには養育医療が必要だということになるわけです。従ってみな入院をしたいという気持が出てくるわけです。そうすると実際に入院予算は一万人のうち千人ちょっとしか組んでない。従ってあとの九千人ばかりの人は必然的に地域の医者に見てもらう以外にない。千八百グラム以下といえば正常でない。異常であることは確実だ。異常であるならば、その異常である約九千人の指導健康保険が見てやることが当然だ。だからここで少くとも健康保険でそれを見ますというぐらいの発言をもらわなければ、厚生省は何のために未熟児対策を立てたかわからないのですよ。保険局保険局で勝手な道を歩み、児童局児童局で勝手な道を歩むというのならば、何のために厚生省が頭に一人の堀木さんという大臣をいただいておるかわからぬということになる。行政が二分してくる。保険行政児童行政とはやはりどこかでクロスする点がなければならぬと思う。従ってそのクロス点というものが今言った未熟児問題にも一つ出てくるわけなんです。どうも今の保険局長の御答弁では満足がいかないのです。さらに入院をした場合を考えてみると、最近の分べんというものは、大都市においては全部産院あるいは病院に入院をして分べんをする傾向が強くなってきた。あるいは農村においてもある程度そういう傾向が出てき始めたわけです。そうしますと、お母さんが入院をして分べんをしてそこに未熟児が生まれた場合には、一体それがどうなるかというと、今の健康保険では入院の項では、御存じ通り生後十日以内に限って一日につき二点だけを認めてぐれることになっている。そうしますと、母親と一緒に入院をすれば一日二点なんです。母親と別個に入院すれば一日五十点なんです。同じ医療でありながら健康保険建前養育医療建前が違っていいということはあり得ないはずです。だからまずこの点は、入院の場合は一体どうなるのですか。
  11. 館林宣夫

    館林説明員 今日新生児の十日間、一日につき二点の加算が認められておりますが、これは新生児が健康の場合でございまして、新生児未熟児であって医療を必要とする場合は、これは一個の人間として一人分の入院料が請求できるわけでございます。従いまして二点の加算と別な扱いになるわけでございます。
  12. 滝井義高

    滝井委員 二点の加算と別にするということですが、健康保険のこの診療報酬点数表の中には、これは明らかに介護を含んでいるのです。あなたの方でこの際養育医療の新しい概念が入ってきたわけなんですから、少くとも政府の政策として医療の中に入ってくることになる。従ってそれに治療指針というのですかそういうものが今度必要になってくるのです。二千五百グラム以下の子供未熟児とこういって届出の義務を負わせるわけですから。二千五百グラム以下というのは何万人とおるのです。そうするとそれらのものは、まあまあ治療を要するものは千八百グラム以下かもしれないけれども、親としては普通の生理的な現象が肉体に現われていない二千五百グラム以下の子供を親が病気だとこういう認定をして医者に連れてきて、医者もこれはあなたの家に置くよりか入院させた方がいいと言って入院せしめた場合には、当然これは治療しなければならぬ。従って今後保険局児童局見解の食い違うようなことがあってはいかぬので、一体どういうような治療指針をもって保険当局審査なり指導なりに当っていくかということなんです。これは児童局見解はもうわかっている。呼吸困難がある、チアノーゼがある、脂肪の代謝がうまくいっていないとかいうことを十項目ばかりあげでさくれておるわけです。従ってその児童局見解保険局はそのまま認めるかどうかということなんです。これは意思統一をしておかないと——児童局見解はまず第一に現金で払える人は現金でやってもらいなさい、それから保険のある人はまず保険でやってもらいなさい、現金も出せない保険もない、こういう貧しい人については今度は養育医療で見ましょう、こういう形になっているのですから、先行するものはまず自力です。それから健康保険。だからそこらあたり見解を、もう三日四日ばかり研究の期間を与えられていらっしゃるのですから、一つ少し明白にしておいていただきたいと思います。
  13. 館林宣夫

    館林説明員 未熟児であって入院を必要とする場合の基準につきましては、おおむね児童局から答えました通りであると思います。ただやはりこのようなものは、正式に入院基準として私どもがきめますには学会の御意見を十分聞いた上で成文化する必要があるわけで、この問題健康保険でございましても被保険者である場合は絶対にないわけであります。必ず被扶養者でございます。家族の側が半額負担をする結果となるわけであります。鮮いましてそれらのかね合いもありまして未熟児の全数が入院するという事態にもなりませんでしょうし、やはり医師医療上必要と認めた場合に入院が行われるという実態が起ることと思います。私どもの現在の考え方は、医師入院治療をするという判定を下したものは、これは入院給付の対象になる、かように考えている次第でございます。
  14. 滝井義高

    滝井委員 そうしますとお尋ねしますが、介護とはどういうことですか。
  15. 館林宣夫

    館林説明員 今日二点の加算の普通の新生児介護と申しますのは、おむつの取りかえというような、あるいは場合によっては母乳の出ない場合の人工栄養等を見るというような、普通家庭においても別に医師特別指導をしなても、普通の新生児に対して母親ないし家族が行う養育上の措置について申しているわけでありまして、医師医療上の見解をもって諸種の処置を講ずるものはこれは介護と私ども解釈いたしませんで、医療行為考えております。
  16. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと介護とはおむつの取りかえとか家庭で育児上いろいろ注意してやる程度のことが介護であるということになると、養育というものはどういうふうに保険局では考えるのか。一つ養育保険局概念を教えて下さい。養育治療療養とは違うのです。養育とは一体何ですか。
  17. 館林宣夫

    館林説明員 特に今回この法律養育医療という言葉が用いられておりますが、医療であることに間違いはないわけであります。医療の一種でございまして、このような未熟児につきましては生命の維持のために諸種医療行為が必要になって参るわけであります。単純な切り傷の措置とかいうものと非常に異なりまして、生存していくそのことが脅かされている状態でございます。従いまして疾病治療というか不完全な人間生命を維持するための医療行為でございますので、特にこれに対しまして養育医療という術語を用いたわけであります。
  18. 滝井義高

    滝井委員 その養育医療というものは、あの条文をずっと読んでもらっておかぬといかぬですよ、読みますと、いいですか、指定養育医療機関というもので養育医療をやることになっている。その指定医療機関養育医療をやるのはいかなる方法でやるかというと、健康保険診療報酬にならってやる。従ってあなたの方の保険局児輩局とは十分話し合いの上で私はあの法律を作ったものだと思っている。今回のあの児童福祉法改正というものはあの養育医療のところが一番おもなんです。眼です。ところが、そこについて保険局当局が大して知識を持っていないということはこれは児童局長、あなたの方の連絡不十分ですよ。養育医療をやるのは指定医療機関でやるのでしょう。そして指定医療機関でやるのは一体いかなる方法でやるかというと、金銭の支払いというものは健康保険診療報酬の例にならってやるのです。ほかの方法はない。そうでしょう。そうしますと、保険局当局が今から学者意見を聞いて、そして養育医療とは何ぞやという基準をきめなければならぬというが、この法律は四月一日から実施じゃないですか。この法案参議院を通るまでには、やほりその全貌というものが国民にわかっておらなければならぬと私は思うわけです。だからこの前から、むずかしいだろうということである程度の時間的な余裕を与えたのですが、やはりこの法案を審議する前には、あなたの方と保険局と打ち合せをしておかなければならぬわけです。今から学者意見をお聞きになるそうですから、お聞きになってけっこうです。これ以上言いません。従ってあの法案参議院を通るまでに、もう一回ここでやって、まだ国民健康保険もありますし日雇い労働者もずっと審議しますから、養育医療治療指針と申しますか基準と申しますか、そういうものをもう少し明確にしていただいて、甲表とか乙表とかいうものがいつ通るかわからぬのですが、現実に四月一日から現行法で動くのです。だからもう少しはっきり、よく児童局と話していただいてやっていただきたいと思うのです。児童局は一日五十点をお認めになっておるわけです。一日五十点を認めるには、この審査基金にいくのですよ。だからあなたの方で五十点を認める科学的な根拠があったからこそ、五十点を認めたはずなんです。ところが今話を聞いてみると、どうもあの五十点というものはあなたの方は知らぬ、こういう格好のようです、一日五十点を認めるならば、一体どういう科学的な基準から一日五十点、七十日間というのが出てきたのですか。その科学的な基準があれば、ここで明白にしておいてもらいたい。
  19. 高田浩運

    高田(浩)政府委員 未熟児問題に伴います法律改正については、ももろん省内の関係でありますので保険局と打ち合せを十分いたしまして、これを提出したような次第であります。これにつきましてはこの前に申し上げましたように、児童福祉法による養育医療その他のいわゆる未熟児対策というのは、保険その他で行われておりますベースの上に乗ってこれだけのサービスをプラスするということでございますので、御理解の上だとは思いますけれども、その点を一つ十分御了承いただきたいと思います。  それから保険の方でこの問題を将来どういうふうに取り扱っていくかということは、時間的な相違というものはすべての制度の場合に当然起り得る問題でございますし、その辺はよく連絡し合って参りますけれども、かりに前後の問題が起りましても、それはそういう本質的な性格のものであるというふうに御了承いただきたいと思います。従いまして、この児童福祉法によります未熟児対策実施につきましては、従来の保険その他による経験を基礎にしまして予算も編成しましたし、予算は一日五十点平均というふうに組んでおりますが、実際問題としてはそれより上下する場合が当然起り得るだろうと思います。  それからこれの法律実施についての基準は、やはりこの法律に基く一つ基準として作らなければなりませんので、この法律の根本の趣旨にのっとった基準なりやり方というものが当然考えられなければなりませんので、その点は実際に施行せられるに至るまでなお私の方で足りない点がありますれば、準備を進めたいと思います。そういうようなことで、根本的には現在のベースの上にこれだけのサービスをプラスするということを一つ十分御理解いただきにまして、全般の問題を御了承いただきたいと思います。
  20. 滝井義高

    滝井委員 私は今度の養育医療というのが健康保険ベースの上に乗ったということはよくわかるわけです。従ってその乗った健康保険ベースは一体どういう基準でやるのだ、こういうことです。それがわからないのですよ。だからあなたの方は砂上の楼閣の上に乗っておるのです。それじゃくずれてしまうのですよ。というのは、養育医療という概念健康保険にないのだから困るのですよ。だから今度の五十点というものは一体いかなる科学的な根拠に基いて出てきたか。ということは、養育医療に対する治療指針というものがあって初めて五十点というものは出てくると思う。たとえば厚生省お得意で、高血圧治療性病治療結核治療、みんな指針を出しておるのですよ。だから養育医療という新しい概念が出たらそれに対する指針というものが出てこないと間違いが起ってくる。私きょう持ってきておりませんが、この前あなたが言われた十項目くらいあったですね。そういうことはそういうことでけっこうです。これは参議院を通るまで時聞がありますから、十分話し合って、意思統一をされて、そうしてこれならば入院しても認めます、あるいは在宅においても健康保険で見られる。何も入院在宅とが治療の上で変るはずはないのですよ。もし入院ならば濃厚診療していい、在宅患者ならば入院と同じ程度治療をしちやいかぬという規則はどこにもないのです。それは入院であろうと在宅であろうと、疾病程度が同じであるならば同じ治療をしていくのが健康保険建前だと私は理解しておる。従って、あの法文では、入院した者だけは特権を得るけれども在宅ではだめなんです。そこで在宅をカバーするためには健康保険というものが動いていかなければならぬのですよ。その動く要素がないのですから、これは一つ保険局長さん、もう少し打ち合せて、少くとも四月に間に合うように、日雇労働者健康保険法の審議の過程でもう一回基準らしきものをある程度学界の意見を聞いて明らかにしてもらいたいと思うのです。  私がなぜそういう点を心配するかというと、すでに具体的な事実が出てきたわけです。それはこの前もここでちょっと触れておきましたが、答弁次会にということでお願いしておったのですが、京都でことしの二月の十七日に矢野という社会局技官生活保護監査に参りまして、そうして社会保険で認めておる薬を薬価基準に載っていないという理由で一方的に削減をしてしまった。こういうことは、すでに厚生省の内部で保険局社会局との間で意思統一ができていないということなんです。だから今の養育医療問題保険局児童局はよほど意思統一をしていないと、今度は具体的になった場合に現場の療養担当者なり被保険者が非常に迷惑をこうむる。そこで私はあつものにこりたわけではないが、特にこういう具体的な例があるので言うのです。そこで大臣にお尋ねしますが、技官監査に行って、そして保険当局が認めておるものをだめだといってずばずばとみんな削減してしまう。そうしてその余った金を返せ、こういう強い態度に出ているわけなんです。こういうことが一体許されるかどうかということなんです。なるほど法律上は薬価基準に載っていなければ薬を使うことはできません。ところが実際は薬価基準は一体どういう工合に改訂されているかということなんです。もはや薬価基準の改訂というものは一年に一回くらいしか行われないのです。そうしてどんどん大衆が使っておる薬でも、あとからおくれてしか登載できないのです。現実では日進月歩科学は進んでおる。そこで保険局日進月歩科学にできる限り追いついて保険の不満をなくそうということでそういう便宜措置をとったと思う。便宜措置をとって、それを今度は県の保険課なり基金審査委員会というものは、薬価基準に登載されていない薬の使用については、やはり厳重に審査をやって支払いをやっておるわけです。ところが社会局だけが、今度は一定基準に乗っておらぬからまかりならぬといって削ってしまえば、生活保護医療とそれから健康保険医療というものは、現実においては健康保険に準じて生活保護をやっておるわけで、同じなんです。同じ医療をやるのに片一方はよろしいと認め、片一方は削る、こんなばかげたことはない。一体この問題をどういう工合大臣はお考えになるのか。
  21. 堀木鎌三

    堀木国務大臣 今実例をおあげになってお話しでございますが、確かに薬価基準というものが、この日進月歩薬品の向上といいますか、医療上非常に進歩した薬品が出て参るというときに、絶えず注意しなければならない。ことに保険医療を通じてなるべく国民の健康を保持しよう、そしていい給付内容を持とうという場合には、よほど注意しなければならぬということは十分考えられます。ただ、今の場合がどういう場合でございますか、詳しくは存じませんが、いずれにいたしましても、局が違うためにその適用において誤まりがあったら是正させるべきものである、こう考えております。
  22. 滝井義高

    滝井委員 局が違って違った取扱いをすることは是正をさせると、こう大臣はおっしゃったわけです。その矢野という技官はそればかりではありません。結核患者の場合に、たとえばブドウ糖十本注射をしておる、そうすると七本に削っております。五本を三本に削る。きわめて機械的なやり方をしている。従って金を返すということになる。これだったらもはや地方療養担当者生活保護に協力しないですよ。生活保護だからといって、健康保険と同じ治療をやってはいかぬという原則はどこにもない。むしろ生活保護を受けている諸君の方が栄養が悪くて、治療に日数が長くかかることは、もうすでに社会局当局でも、健康保険当局でもみんな知っておるところなんです。こういう削り方というものは許されぬと思うのです。従ってこの金というものは取り返さずに、やはりそのまま医師に支払ってもらわなければいかぬと思うのです。もしそういうことをやられるならば、薬価基準を三カ月に一回ずつ追加をして、変えていってもらうかどうかしなければ、やっていけないことになる。
  23. 安田巌

    安田(巌)政府委員 生活保護法医療扶助診療方針及び診療報酬につきましては、保護法の五十二条の規定によりまして、厚生大臣が別に定める場合のほかは健康保険の例によることになっておるわけであります。健康保険で新しい療法による医療を定める場合には、生活保護法における医療扶助の立場から必要な検討を加えまして、これを採用するか、しないかを決定しまして、その準用について当局から指示しておるわけでございます。現在生活保護においては薬価基準に収載されておる医薬品、及び厚生省の公文書によって認められておる医薬品以外のものについては採用いたしておりません。先般京都府の管下において保険医の機関紙の紙上に「薬価基準に登載のない薬品についての使用を認められた薬品」という記事を掲載しておる事例が見受けられたのであります。立ち入り検査においても右の薬品を使用している事例が発見されたのでございます。そのうち四十九品目については、近く薬価基準の改訂により収載される予定でありますが、残りの十一品目については認められておりません。これらの医薬品治療上必要不可欠であるということではないようでありますので、薬価基準に載ってなく、また厚生省も正式に認めていない右の医薬品について、立ち入り検査の結果減点することは、不当な取扱いではないと思っております。なお社会保険においても生活保護と同様の見解でございまして、両者に食い違いはないと私どもは思っております。しかしながら生活保護法は最低医療という立場から、例外的には保険で認められているものも認めない場合もあり得るということを申し添えます。
  24. 滝井義高

    滝井委員 大臣、今の御答弁でおわかりの通り、明らかに社会局見解保険局とは違ってきているのです。保険局はもはや認めてきたわけです。たとえば具体的にいうとノブロンなんという薬は認めてきたわけです。それは基金本部にも県の保険課にも一年も前に報告している、返事をくれておらぬが報告している。そうして健康保険では全部支払ってきている。ところが医者というものは同じ薬を、そんなに経済的であるならばその薬を買って使うのは当然のことです。生活保護健康保険に準じてやっている。最低の医療であっても、それは健康保険より悪い治療生活保護にやっていいということは絶対にない。医者医学的に見てこれは必要だと思うからこそやるのであって、そこに健康保険生活保護に区別をつける理論的な根拠というものは何もない。生活保護患者であろうと、健康保険患者であろうと、自由診療の患者であろうと、必要不可欠な薬はやらなければならぬと思う。そうした場合に、今のような、保険当局は県でやっているにもかかわらず、今度は社会局が中央から行ってそれを削ってしまった、こういうことになれば、これは生活保護にみな協力しませんよ。こういう点がすでにもう保険局社会局が違うように、さいぜんの養育医療も同じです。児童局児童局で勝手なことをやっているけれども保険局はなかなかそれを了承しない。今保険局がやっていることを社会局が了承しないのとちょうど逆な形になっている。大臣のもとにおける行政がこういう実態なんです。こういう大事なところで、皆保険を今からやろうという大臣のもとで、こういう実態である。私はこういうところはもっとはっきり責任をもってきちっとさせなければいかぬと思う。大臣も今お聞きの通り保険局社会局意見が違っているのです。
  25. 高田正巳

    高田(正)政府委員 保険当局も同じ考え方でございます。薬価基準に登載されている医薬品しか使ってはならぬということになっているわけです。ところが先ほど滝井先生も御指摘のように、医学、薬学等は進歩しますので、薬価基準改正というものはそうたびたびはできませんから、それでこういうような薬を使ってもいいかということを中央に伺いを立てて、中央でよく検討してよろしいといって、公文書で回答をいたしましてそれが使えるという、一つ便宜の手段を講じているわけです。ところが京都の今御指摘の件は、京都の審査委員会がきめたものです。それを保険医新聞か何かに登載をして、それをやっているわけです。幸いにそのうちの四十九品目についてはすでに告示をいたしましたが、今回の薬価基準改正で取り入れております。従ってこの点については問題がなくなるわけであります。ただ先ほど社会局長がお答えになりましたように、十一品目については今回の薬価基準にも登載されておりません。従いまして、保険局としても薬価基準に登載されておるもの並びに公けの文書で認めたもの、これだけを使うことを認めておるわけでございます。そういうわけで、別に両方で大きな食い違いがあるということではないのであります。
  26. 滝井義高

    滝井委員 高田さん、言を濁しちゃいかぬですよ。薬価基準に登載されていないものでも、とにかく現実には県の保険課なり審査委員会で認めておるということは認めるでしょう。特殊のものについては今まで認めて支払っておるということは認めるでしょう。
  27. 高田正巳

    高田(正)政府委員 今申し上げましたように、薬価基準に登載されていなくても、伺いを立てて回答をして、こういうものはよろしいという公けの文書でそういう取扱いにしたものは認めております。しかし勝手に各府県の基金審査委員会が中で申し合せをして、こういうものは切らぬでおこうじゃないかというふうなことで運用をしておられる分につきましては、一体それはどうなんだ、こう言われればそれは認めるわけに参りません、こういうことになります。
  28. 滝井義高

    滝井委員 それなら間違いが起りますから、薬価基準に登載してないものは全部認めないことにして下さい。今のようなあいまいなことではだめなんです。これは何も近畿だけじゃない、中国ブロックだってやっている。みんな審査連絡会議でちゃんときめてやっています。しかも京都の場合には一年も前に、これを認めてやるがよろしいかといって保険課にも、基金本部にも報告済みである。それを基金本部なんかは一年間も放置して返答をやっておらぬ。ところが実質的には、現場においては健康保険で全部認めているんです。だから、あなたの方が今のような態度をとるならば、これは生活保護にならって、全ブロックにわたって薬価基準に登載していないのは全部引いてみて下さい。このことをやり切るならば保険局長不信任が出て大へんですよ。あなたが幾ら言ったって現場では認めておるんだからやれないですよ。こういうふうにもうすでに語るに落ちたりで、保険局長の言葉と社会局長の言葉と違うわけなのです。現実には保険局の下部の方では認めてきている。ところが中央から行った保険局矢野技官というのは削っている。しかも結核患者にブドウ糖を十本打つのは七本、五本は三本と機械的に削っている。一体こういうことが許されるかということなんです。だからこういうふうに天下りに役人が行ってむちゃくちゃにやるなら、私はここに矢野技官を呼んで、一体いかなる科学根拠によって十本を七本に削り、五本を三本に削ったかということを私は聞かしてもらわなければいかぬということなんです。こういうようにあなた方の意見が食い違ったことは明らかなんです。そうしますと、一体大学や何かはどうなるのかということです。これは濃厚治療の標本です。社会局では大学なんかどういう扱いをしているのですか。
  29. 安田巌

    安田(巌)政府委員 先ほど私が御答弁申し上げましたことは、実は保険局と打ち合せ済みでございますから、そういう点では少しも食い違いがないと思っております。薬価基準問題は、とにかく薬価基準以外の薬を使ってはならないという規則もあることでございますし、少くともそれが一つ基準でございますから、それ以外の薬をこれもこれも使ってもいいんだということをちゃんと一つ機関紙に出して、それを使ってもいいという審査をする審査会の権限というものは少くともないものじゃないか、こういうふうに考えております。その点では、今高田局長が申しましたように、保険局と同じ意見でございまして、私どもといたしましては、新しい薬をどんどん入れるということも一つ方法かもしれませんけれども、しかしやはりこれが生活保護医療でありました場合には、その薬がある程度一般的に効果がある。そしてそれが妥当なものだということが認められる一つの期間というものは必要ではないだろうかということを考えているわけでございます。それの一つの証拠としては、今薬価基準にないものでありましても、しばらくたちました場合には、また薬価基準に入れられる場合もあるわけでありますから、それを一つの一般的な基準として、基準にないものを生活保護医療に使うというふうな取扱いはできかねるのではないかと考えております。
  30. 滝井義高

    滝井委員 私は、建前はよくわかります。しかし現実の現場の問題として県の保険課なり、それから実際に支払い事務に当っている基金審査会なりが認めているものを、わざわざ上から技官が行って、寝た子を起す必要はない。それならば帰ってきて、保険局とも十分打ち合せて、今後の注意として、薬価基準に使っていないものは使っちゃいかぬということにしたらいい。しかしこれはきのうきょうではない、現実に長い間やられているのです。たとえば鳥取のブロックなんかは一年も一年半も前からやっている。そして今まで生活保護だってやってきている。そこでお尋ねしますが、一体大学で使っている薬が薬価基準に載っているか、大学で使っている薬の大部分は薬価基準にもほとんど載っておりません。そうすると大学の保険診療というものは余部違反だ、大学の指定医療機関は取り消さなければならぬ、取り消せますか。東大でも、九大でも、京都の大学でも行って調べて下さい。全部薬価基準に載っていない。だからそういう行政についてはしゃくし定木に考えずに、まず一ぺん忠告をして、それからやらなければいかぬですよ。機械的にブドウ糖を十本したら七本に削る、五本なら二本に削るでは全き医療はできない。生活保護が最低だといっても、一人の人間が死のうというときには、最高の治療をやらなければならぬ。それが最低の治療だと言ったって、それでは最低の治療とは何ですか。健康保険と、それとどこが違いますか。
  31. 安田巌

    安田(巌)政府委員 最低と申しますのは、必要にして十分だということだと思うのですが、たとえば七人委員会の答申なんかでも、そういう点を出しておりますけれども、同じ薬でも片一方の方がより一般的であって、これで治療ができるということであれば、その他の薬をたくさん認める必要はないじゃないかという考え方はあるわけです。そういった点が健康保険と多少違うところでございまして、たとえば現在でも保険で認めておりまして、こちらで認めていないような薬も若干はあるわけでございます。
  32. 滝井義高

    滝井委員 たとえば、ノブロンなどはウインタミンやグレランを二つ使うより経済的で、もっと安い、だからそれを使ったが、まかりならぬと切られた。それならより高いグレランやウインタミンを使った方が医者も得だ。しかしそれでは国が損をする。そこをおもんぱかって地域の保険課なり、審査会というものは、この際ウインタミンとかグレラン、二つのものを使うより、ノブロンを使う方がいいのだということでやっている。ところがあなたの方は、安いものはいかぬ、高いものを使え、これでは結果においては逆なんです。ですから、生活保護が最低の治療だと言っても、それが必要にして十分な治療だということなら健康保険と同じです。答弁のための答弁ではいけないので、問題は一体京都の事態をどういうふうに収拾していくかということです。
  33. 安田巌

    安田(巌)政府委員 京都の事態も、私自分で行ったわけではないのでございますけれども薬価基準というものが、とにかく現在の保険医療、あるいは生活保護医療一つ基準であるにとは、これは確かなのであります。その基準と違った基準審査会で認めたからといって作って、そしてそれが一つ機関紙に載って、これだけは使ってもいいというふうな取扱いは私どうも納得ができないのでありまして、その揚において私が上司としてその部下に対して間違っておることを指摘して、お前のやっていることは間違いだと言うわけにはいかぬと思うのです。
  34. 滝井義高

    滝井委員 審査会は公けの機関ですよ、私的機関じゃない。今のあなたの言明だったらば、われわれ国民審査会の決定したことに従いませんよ。
  35. 安田巌

    安田(巌)政府委員 私は具体的な例で申し上げますと、そういうふうに審査会というものは一つ基準に従って審査をする権限があるわけです。権限内のことをやるわけです。ですからもしそれをこういう事情につよって認めなければならぬということであるならば、そういうことについてあらかじめ了承を得るなり、あるいは一つのケースについて了承を得るという措置が必要じゃないかと思う。そうではなくてただ二十品目なり三十品目なりというものを追加しまして、そしてこれは厚生省薬価基準よりほかにワクが広がったものであるというふうに印象を与える措置をとることは、妥当ではないだろうという気がいたします。
  36. 滝井義高

    滝井委員 その通りです。従って県の保険課なりに通達しておるわけです。それではもしそれをほおかぶりしていったら、県の保険課長が事務怠慢です。あるいは基金の幹事長が事務怠慢です。それだけ手を尽しておる。これはブロックの実情を認めてきたときは、保険課にも基金本部にも報告済みです。そうすると一体療養担当者なり被保険者というものは、どこの言葉に従ったらいいかということです。あなた方はそれは基金のやることでわれわれの許可がないから認めない、こうおっしゃる。許可があったかなかったかということは、公けの機関ですから一般大衆はわかりませんよ。そうすると今のあなたの言葉なら、基金が今まで減点をしたり審査をしたりするのはどうもこれはあやしいといって、いつも疑いを持って見なければならぬことになっちゃうのです。従って社会局長見解はよくわかりました。そうしますと今のあの問題をあのまま強行せられるとするならば、これは大学を全部やってもらわなければなりません。一京都だけの問題じゃありません。大学なんというものは全部使っておりませんから、お調べになって下さい。各大学の使っておる薬の状態をお調べになると使っていない。しかしそういうことをやられればそのかわり日本の研究はストップします。  保険局にお伺いしますが、大学の保険の請求は全部薬価基準に載っている薬であるかどうか、東京大学それから九州大学、京都大学、各大学の実態を一つ薬価基準に載っている薬で大学の治療が行われているかどうか、これは答弁いかんによっては委員会として直ちに東大その他に調査にやらしてもらいたいと思うのです。
  37. 高田正巳

    高田(正)政府委員 大学が使っておる薬は、薬価基準登載品目以外のものが大部分だというふうなことはないと私は思います。御存じのように大学では、まだ製造許可を受けない前の、あるいは受けた後におきましても、宣伝中の薬を各メーカーから使ってみて下さい——いわゆる試供品と称しております。これはメーカーあたりが工夫をして、そして大学で研究的にお使いになっていることもよくあります。これはそういうふうな純粋の試供品でありますれば、大学でお使いになりましても保険の請求の中には入ってこないと思います。薬価基準登載以外の薬が大学の請求の中に一品もないかということになりますと、これは調べてみなければわかりませんけれども、今先生が仰せのように大学で使っておる、しかも保険に請求をしておる薬は、ほとんど大部分が薬価基準に登載されてないものだというようなことはないと思います。薬価基準は3千から四千品目ぐらい登載があるわけでございますから、日本のおもな薬のほとんど大部分は登載されておるわけなのでございます。その辺のところはなお私どもよく調べてみたいと思います。
  38. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと大学の診療は、保険局見解としては、大部分が薬価基準に登載されておるということですね。たまに試供品的なものがあるというと、その試供品的なものは、患者から健康保険の金を取るのですか、取らぬのですか。
  39. 高田正巳

    高田(正)政府委員 試供品というのは大てい寄付をするのでありまして、これはおそらく代金を取らないで施用されていると私は考えております。しかしそれは保険の方には関係のないことであります。大学のやり方問題であります。大学の請求の中で、保険に請求をいたします薬の大部分が薬価基準に登載のないものだというふうなことはないと思います。
  40. 滝井義高

    滝井委員 これは大事なことですから確認しておきます。今の言明で、大学で健康保険薬価基準に載っている以外のものは大がい試供品だ、そうしてそれは無料だ、金を取ってない、こういう確認ですね。大事なところですから言を濁してはいかぬ。
  41. 高田正巳

    高田(正)政府委員 試供品について患者から金を取るかどうかということは、私どもは承知をしないところであります。これは大学がどういうふうにお使いになるか——個人のお医者でも、試供品として提供されたものをお使いになって、ただでもらったからただで使ってやろうという方もありましょうし、あるいは患者からは金を取るという方もありしょう。しかしそういうものを保険の請求の中に入れてこられるということは、試供品でありますれば、おそらく大部分は薬価基準に登載のないものでありまして、保険の請求の中に、こういう薬を使ったからこれだけ払えと言って請求される薬の大部分が、そういう種類のものであるということは少くとも私はないと思います。
  42. 滝井義高

    滝井委員 大事なところは、その試供品は金を取るか取らぬかということです。取ってもいいというなら健康保険違反ですよ。無料だというなら話がわかる。大学であろうと何であろうと、健康保険患者から金を取ってはいかぬ。それは建前です。その試供品は金を取ろうと取るまいと自由だという発言を局長がされておるから私はありがたく受けておきますが、取ってはいかぬ。大学は薬価基準に載っている以外は使ってない、大部分という発言をしたが、私は相当使っているという認識を持っておる。使わなければ日本医学の研究はできないと思っておりますから、相当使っておる。その場合に生活保護なり健康保険はどうなるか。これは健康保険の審議に重大な関係がありますから、大学に来てもらって実情を聞かせてもらいたいと思います。今の保険局見解として、試供品は金を取ろうと取るまいと大学の自由だという見解でいいのですか。
  43. 高田正巳

    高田(正)政府委員 私は、その点は大学がどうしておられるかということは十分承知をしませんということを申し上げただけでございまして、それが差額徴収のような形になって参りますれば問題になって参ります。
  44. 滝井義高

    滝井委員 実情を知る知らぬは問題外です。法律上の見解を尋ねておるわけです。大学の治療は、薬価基準に裁った薬以外はできないということは確認いたしますね。社会局長はうんとうなずいておりますから、社会局長は確認いたしました。保険局長はどうですか。
  45. 高田正巳

    高田(正)政府委員 薬価基準に登載されたもの、並びに先ほど申しましたように中央からこれはよろしいといって公けの文書で認めたものを使うということでございます。
  46. 滝井義高

    滝井委員 社会局は、薬価基準に載っていないそういうものを認めますか。
  47. 安田巌

    安田(巌)政府委員 薬価基準は、私の方で言いますと、生活保護医療に使う場合の薬の種類をきめたものでございまして、これは現在保険局もそれを準用いたしておるわけでありますけれども、これは厚生大臣が必要な機関に諮ってきめたことでございますから、それは私はあくまで原則として承認しなければならぬと思うのであります。保険の方でそういうふうに特別な事情がありまして特に本省の方で認めるということがありますならば、私の方はその都度その問題について考えます。
  48. 滝井義高

    滝井委員 いや、私は原則論を言っておるのです。原則としては、社会局としては薬価基準に載っているもの以外は認めないということですね。そうすると、そこで保険局一つの食い違いができたわけです。保険局は中央より内議したものはある程度よろしい、こういうことになっておるのです。
  49. 安田巌

    安田(巌)政府委員 今高田局長が言いましたのも、薬価基準というものは原則であるということを言っておるわけなんです。ただその中で公けに厚生省の方が特に薬価基準に準じて認めるものもあり得る、そういう場合にはこのものも認めるという御返答であります。私の方は薬価基準以外は認めないのだ、しかし保険局でそういう措置がとられることがありますならば、私の方もその都度考える、こういうことを申し上げたわけであります。
  50. 滝井義高

    滝井委員 だいぶんゆとりかできてきたですね。それでようやく保険局との見解の統一ができた。従って保険局薬価基準を認める、しかし保険局がよろしいと言ったものは社会局もよろしいのだ、こういうことになったわけですが、これは間違いありませんね。
  51. 安田巌

    安田(巌)政府委員 先ほどから申し上げますように、保険局薬価基準に載せると申しましても、私の方で採用していないものもあるのであります。でございますから、今申しましたように、保険局薬価基準に載せないものであってもこれは認めなければならぬという事情がありまして、特にそれは認めるという措置をとった場合には、私どもの方はその都度考えさせていただきたい、こういうことであります。
  52. 滝井義高

    滝井委員 それならばだいぶニュアンスが違います。保険局が認めたものでも必ずしも社会局は認めるとは限らない、こういうことなんですね。社会局社会局の自主性をもってやろう、こういうことなんですね。そうすると、その見解一つ両者の名前をもって、本日の答弁と同じ内容のものを地方保険課いわゆる民生部に御通達を願いたいと思うのです。これはそうしないと非常な食い違いが出てくるのです。
  53. 安田巌

    安田(巌)政府委員 これは地方はもうよく存じておりまして、薬価基準に載っておりましても、たとえばクロール・プロマジンのようなものは私どもの方では約半年ほどおそく採用いたしております。それから現在におきましても、ある特殊な薬については私どもの方で使ってないものもありますから、黙っておれば健康保険薬価基準でやりまして、私どもの方でその都度何かの意思表示いたしました場合にはそうでない場合もある。しかし大部分の場合は、先ほど申しましたように、保険局と天体同様な措置をとっている、こういうことであります。
  54. 滝井義高

    滝井委員 それはよくわかりましたが、必ずしも保険局と一致しないのですね。その都度あなたの方は自主的な立場で判断されていくのだから、保険局がよろしいと言ったものはイコール社会局のよろしいということにはならないのだ、社会局は独自な立場でよろしい、よろしくないということを言っているのです。だからあらためて御通達を流して下さいということなんです。これは一つぜひ直ちに流していただきたい。これは両者の局長名で流していただけましょうか、どうです。
  55. 高田正巳

    高田(正)政府委員 京都の問題がありまして、いろいろそういう点が不徹底であるという御指摘がございましたので、私どもの方といたしましては、すでに通達を流しました。はっきり書いた通達を流しました。
  56. 滝井義高

    滝井委員 私は、あらためて社会局長保険局長の名前で流してくれというのです。それは違うのです。今までわれわれは保険局見解が出てくればそれにみな従えるという見解をとっておるわけです。ところがこれはそうはいかないのです。今のお二人の答弁を聞いてもはっきり食い違っているのです。ある一点になると紙一重の差が出てきている。意見の一致というものが完全にイコールではない。従ってこれは両者の名前で流せるか流せぬか、どうですか。お二人とも一つ相談してみて下さい。統一した意思で言って下さい。流せるならば流せると言って下さい。流せないならば流せないでいいですよ。
  57. 安田巌

    安田(巌)政府委員 私の方はいつでも流しますが、そこでもう一度申し上げますけれども健康保険の方の医療基準というものと、それから……。(滝井委員「それはわかっている」と呼ぶ)おわかりでありましたならば重ねて申し上げませんけれども生活保護基準というものに若干の違いはあるのであります。これは一応皆さんのお認めになっていることがある。たとえば歯の治療などについてはそういうことがあるわけでありますが、そこで薬につきましても、私どもは原則として薬価基準、つまり健康保険で認めたものをそのまま使うのであります。しかし例外的にそうでない場合がございますということを申し上げておるわけでありまして、そういうふうなことは民生部長が知っておりますけれども、もし重ねて出せということでございましたならばそういう趣旨のことを重ねて通知をいたします。
  58. 滝井義高

    滝井委員 保険局長どうですか、二人一緒に連名で出してくれるかどうかということを言っているのです。
  59. 高田正巳

    高田(正)政府委員 連名で出す必要はないのであります。私の方は事態を明らかにしてすでに通達をしておるのであります。社会局の方針は社会局長が通達をお出しになればいいわけであります。連名で出さなければならぬというわけのものじゃないと思います。
  60. 滝井義高

    滝井委員 われわれは議員として特にそれを要請しているわけです。それでは一つ大臣を呼んでもらいましょう。二人の局長の間でそれができないならば、大臣が来てからその点は言います。
  61. 高田正巳

    高田(正)政府委員 それでは連名で出しましょう。
  62. 滝井義高

    滝井委員 それならば早くそう言えばいい。  その次の問題を確認しますよ。大学が使っている品物は薬価基準に裁っているもの、そのほかは、特に保険局が使ってよろしいという薬価基準に準ずるもの、それ以外は大学は健康保険に関する限りは使っていないはずだ、こういうことですが、これは間違いありませんね。これも確認しておきますが、そうですね。
  63. 高田正巳

    高田(正)政府委員 そういう建前になっております。
  64. 滝井義高

    滝井委員 いやいやそれはいけないのです。建前ではいけないのですよ。それはどうしてかというと、そういう建前になっているというあいまいなことをやるから今度は——社会局ではいかぬということになったわけです。だからそれは建前ではだめなんです。建前ということは、そうでなくてもある程度よろしいという弾力のある言葉なんですよ。建前がそうでも幾分してもよかろう、こういうことになる。ところが普通の診療機関でそんなことをしたら切られてしまう。これは局長さんもう少しはっきりして下さい。私は次にもう一つあるのだから、その点もう少しはっきりしてもらわなければいかぬです。どうですか、もう社会局ははっきりしたのですよ。
  65. 高田正巳

    高田(正)政府委員 私がお答え申し上げていることで十分御理解いただけると思うのでございますが、言い方が悪いという仰せでございますれば言い直してもよろしゅうございます。しかし、大学でございましょうと一般の医療機関でございましょうと、いわゆる保険のきまりというものは薬価基準に登載をされた医薬品を使うのが原則でございます。それが規則に書いてあるのであります。ただしそれでは非常に窮屈だから、先ほど申し上げたように中央に内議をしてこれがよろしいと認めたものだけは風穴をあけておく、そういう建前は、これは全部の医療機関に対する建前でございます。
  66. 滝井義高

    滝井委員 よくわかりました。原則としては薬価基準に載っておるもの、それで間に合わないときには、中央から適当に指示をしているから、その指示の範囲でやるということ、これはけんけん服膺しなければならぬ点だということはもうはっきりしているわけです。そうすると、次にお尋ねしますが、さいぜん言ったように試供品や薬価基準に載っておらないものを大学が使っておる場合には、一体それは無料なのかどうかということです。患者は金を払わなければならぬのかどうか。これは無料でも有料でもどちらでもいいという御意見があった。そこを一つはっきりして下さい。
  67. 高田正巳

    高田(正)政府委員 差額徴収になるようなことになりますれば、これは保険の方では認めるわけに参りません。差額徴収を認めておるものにつきましては、これは先生も御存じでございますが、今認めておるものもございます。これは医薬品ではございませんけれども、そういうふうなものにつきましては、これは本人から徴収をするということは差しつかえございません。
  68. 滝井義高

    滝井委員 これは日本の今後の医療の運命を決定する大事な点ですから、はっきりしておいていただきたいと思う。大学ではたくさんな試供品や、また薬価基準に登載されていない新しい薬をどんどん使っておりますね。そういうものは患者から現金をとっていいのか悪いのか。簡単によろしい、悪い、これだけでけっこうです。
  69. 高田正巳

    高田(正)政府委員 保険診療ではそれを認めるわけには参りません。
  70. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、大学であろうと、それをやっておれば処罰を受ける、保険医療機関の指定を取り消される、こう確認して差しつかえありませんね。
  71. 高田正巳

    高田(正)政府委員 それはやめていただかなければなりません。
  72. 滝井義高

    滝井委員 よくわかりました。これは日本医療の非常に重要なポイントになってくるわけですから、参考人でけっこうですから、次の機会にぜひ大学を呼んでもらうように、委員長にお願いいたします。  今言ったように、社会局見解保険局見解とはだいぶ一致してきました。しかしなお幾分問題があるわけです。こういうことになれば、今後基金審査の上においても、生活保護に対する審査とそれから健康保険に対する審査の上においても相当の違いが出てくるわけです。現場の療養担当者なり患者諸君というものは生活保護であろうと健康保険であろうと、少くとも治療内容については同じだという概念で大体きている。従ってこういう点、きわめて問題がありますので、日雇い労務者という貧しい階層が医療を受ける場合には特に私は差別待遇があってはならぬと思う。いわんや生活保護においてもそうです。従って、一つ参考人を呼んで大学の実態を明らかにして、どうしても大学が例外を作らなければならないというのなら、健康保険の二重指定の改正も同時に大学についてはやらなければならぬ、こういうものが出てくるだろうと思いますから、ぜひ一つ大学の関係者を呼んでいただきたいと思います。
  73. 森山欽司

    森山委員長 本件につきましては、明日理事会がございますから、その際理事会において御相談の上決定をいたしたいと思います。
  74. 岡本隆一

    ○岡本委員 先般の三月五日の委員会で児童福祉法問題についていろいろお尋ねしたのでありますが、その節児童局長から御答弁をいただきましたが、私どうもふに落ちない点がありますので、もう一度お伺いしておきたいと思います。ことに保険局長がいらっしゃるからちょうど都合がいい。それは未熟児養育医療の施設に収容された場合、あるいはその他の場合でもそうでありますが、そういう場合の一部負担金の支払い義務がどこにあるかという問題でありますが、その節局長から御答弁では第一次的には県が負担をして、そして県が本人から徴収をする。つまり最終的には——最終的というよりも、とにかく県が負担をするのだ、こういうふうな御答弁であったのであります。しかしながら現在まで、たとえば生活保護法の一部負担金にいたしましても、それから国民健康保険の一部負担金はもちろん健保の負担として、全部これは本人が負担しているわけですね。支払い義務を持っているわけですね。それで先日局長のおっしゃったような建前になりますと、児童福祉法の場合だけ特例になるわけです。しかしながら、これはそうなってきますと、基金からおそらく経由で支払ってくるのではないかと思うのですが、間違いありませんか。
  75. 高田浩運

    高田(浩)政府委員 この前申し上げましたように県から支払いまして、県が本人から徴収をする、そういう仕組みに考えております。
  76. 岡本隆一

    ○岡本委員 そうすると、基金を経由せずして、たとえば府県の金庫から直接支払ってくるという形の支払い形式になってくるわけですか。
  77. 高田浩運

    高田(浩)政府委員 基金は経由いたします。
  78. 岡本隆一

    ○岡本委員 基金を経由されますね。それでは保険局長基金の方と関係がありますから伺っておきたいと思いますが、支払いの請求書が参ります、ほかの保険の場合と同じように基金の方で取り扱って、一部負担金をも含めて全額基金の方から支払ってこられることに了解はついていますね。
  79. 高田正巳

    高田(正)政府委員 さような了解がついております。     —————————————
  80. 森山欽司

    森山委員長 日雇労働者健康保険法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。質疑に入ります。八木一男君。
  81. 八木一男

    ○八木(一男)委員 厚生大臣参議院の方に行っておられるので、ちょっと困るのですけれどもあとで来られるそうですから、来られましたならば同じ質問を繰り返すかもしれませんが、一応それまでの間保険局長に伺いたいと思います。保険局長は、今度出していただいた日雇労働者健康保険法につきまして、この前も申しましたが、社会保険審議会、社会保障制度審議会の答申が二つ出ているわけでございますが、これについて実現化のために厚生省としてはどのような御努力をされたか、それを一つ伺いたいと思います。
  82. 高田正巳

    高田(正)政府委員 御答申の中でとうていこれは努力をしてみても、予算もきまっておることであるし、実現不可能なものと、それからこういう点は何とかして実現したいというふうなものといろいろあるわけでございますが、全体的に申しまして予算がきまっておりまするので、やはり一定の動きのワクというものがあるわけでございます。従いまして私どもといたしましては御答申の趣旨を実現するのは、べんに今回の法案で全部実現するということでなしに、逐次努力をいたしまして、御答申の線に近づきたい、こういうことで、基本的にはそういう態度であります。ただ答申の中で、原案は傷病手当金、なおそれに賃金の段階を四段階ということにいたしておりまして、それに従って傷病手当金の額も四段階になるわけでございます。出産手当金も同様でございますが、それを二段階にすべしというように御答申がございましたので、この点は関係者の事務の繁雑というようなこともございまするし、またそこは失業保険とそろえた方が諸般の事情からよろしいというふうなことでございまするので、これを二段階ということにいたしました。なお保険料の点につきましても、原案よりは三十三年度におきまして年間六千七百万円程度であったと記憶いたしますが、その程度減収になるような、保険料を少し安くするという操作をいたしました。年間に直しますと、もう少し大きな金額になります。それらの点がおもな点でございまして、今回設けまする偽病手当金の内容、給付の金でありまするとか、あるいは待期の問題でありまするとか、そういうふうな基本的な内容改善の問題は今回は今の予算の範囲内におきましてはとうていむずかしゅうございまするので、将来の問題として譲ったわけでございます。
  83. 八木一男

    ○八木(一男)委員 まだ法律がきまらない間に予算が出るということ自体に一つ問題があると思うんです。法律は、国会で審議してどういう法律が要るか、その裏づけをきめてから予算を出すという考え方もあるわけです。今のように予算が先行していることは、政治のやり方として非常にまずいわけでございます。そういう点はまずいわけでございまするが、そういう立場があるので、予算がきまったといっても、そこにはいろいろな弾力を考えなければならぬわけです。弾力の限度内において日雇労働者健康保険法の国庫の支出の部分は総予算に比べてみれば大した予算じゃありませんから、わずか二割なり三割ふやすということは弾力性の中で相当にやっていける部分がある。  それからもう一つ保険経済、日雇労働者健康保険特別会計の中に赤字があるとか、将来赤字が見込まれるといっても、その中にも弾力があって、国庫負担が限定されていても、そのときは来年国庫負担をふやすという予測のもとに、ことしはやり繰りしてやっていこうということも当然できるわけです。そういうようなことで最大限の努力をされるのが当然であろうと思うわけでございまするが、その点の御努力が十分でない。はなはだ不十分であると私ども考えるわけでございまするが、それについて厚生省の御意見を伺いたい。
  84. 高田正巳

    高田(正)政府委員 努力が不十分であるというおしかりをこうむりましたが、私どもも実は数次にわたり関係当局とも話し合いをいたしまして、現在許される範囲内におきましては、答申の線を尊重するという意味で、十分努力をいたしたつもりなんでございますけれども、しかし何しろ微力でございまして、この程度に終ったわけでございます。しかしながら私どもといたしましては、今回実現をしなくても将来の問題として十分答申の線に沿った配慮をいたして参りたい。その努力を今後も続けていくつもりでございます。
  85. 八木一男

    ○八木(一男)委員 その答申の実現に努力をされるということは非常にけっこうで、ぜひそうしていただかなければならないと思うわけであります。今回でも、今微力とおっしゃいましたけれども厚生省高田さん初め一生懸命になっておられることは私もわかっております。また厚生大臣も一生懸命になっておられます。しかし大蔵省の壁にぶつかって、これからの修正は別として、こういう原案になったということにつきまして、厚生省だけで御努力になっておられたということは、この間の厚生大臣の御答弁からはっきりわかるわけであります。これにはやはり労働者の関係から労働省の協力を得る、あるいは内閣総理大臣の協力を得るという方法をとっておったならっば、もっと問題が打開されたと思うんです。厚生省の御努力自体はいいですけれども、それがそれだけで通れば別に何とも言いません。それだけで不十分の場合には、他省なり内閣自体なりにそういう立場を相談されて、それの打開に努めらるべきであったと思うのです。それについてそういう御努力をされたかどうか。されなかったら、そういうことをされなかったことがよかったかどうか、御意見を伺いたい。
  86. 高田正巳

    高田(正)政府委員 労働省に応援を頼んで、あるいは内閣に応援を頼んでやったか、こういうお話でございますが、労働省あたりとは事務的な相談は、これはいたすのがあたりまえのことでございますけれども、その折衝についてこれらの関係者を応援団に連れていってやったというふうなことはございません。それが適当であると思うかどうか、という御質問でございますが、これは内閣に頼みましても、内閣というところも、名前は内閣でございますが、これはやはり省の方が、むしろこういう問題になりますと本腰を入れて十分努力をすることの方が、他人をたよるよりは、この際のとるべき態度であると考えております。
  87. 八木一男

    ○八木(一男)委員 高田さんは事情を十分御承知ですけれども、去年の通常国会で総理大臣の前で、高田さんにえらい強硬なことを申し上げた。あの経過はあの場を見ておられる方しかわかりません。あれは御承知の通り法律建前によってああいうことが行われているのであって、何も私は自分の点数かせぎにハッパをかけたわけじゃない。法律が守られてない。社会保障制度審議会設置法が守られていない。そういうことで、今の岸総理大臣はその守られてないということについて、私どもは違法であったと思うし、政府の方は、大綱だということで逃げられたけれども、それは別として、守らなければいかぬということは確認をされているわけです。ですから内閣自体でこういう健康保険関係問題については、総理大臣は御認識があるはずです。ですから堀木さんがそうおっしゃれば動くはずですが、堀木さんの答弁からすると総理大臣におっしゃった形跡は一つもない。労働大臣には、この前の社会労働委員会で、社会保障関係問題は、厚生省だけの問題ではない、少くとも労働者に関係のある社会保険に関しては、労働者の福祉として、これは労働大臣としてもそれの推進に努めなければならないということを申し上げて、その通りでございます、そうやります、と労働大臣も言っておられる。ですから総理大臣や労働大臣は受け入れ態勢があるわけです。そこで、厚生省自体でやってみせる決意はいいです。けれどもそうした壁を押し破れない場合には、ほかに受け入れ態勢があるのですから、そういうところと交渉して、その問題の打開に努められるのがほんとうだと思う。ところが堀木さんは、この前の岸さんとのやりとりのときを御存じありません。ですからこの間も答弁をするときに、私が申し上げたら高田さんに聞かれた。高田さんは条文を示して社会保障制度審議会設置法の第二条の二項の説明をされたはずですが、その条文があることすら知らない。そういう観点のもとに厚生省だけでやらなければならない。それを補佐しておられる高田さんとしては十分御承知なのですから、そういうことを補佐されて前からやるべきであるけれども、少くとも最後の壁にぶち当ったときには、総理大臣とか労働大臣の応援も得て、そして大蔵省の壁をぶち破る努力をされるべきである、そういう補佐が不十分であったと思うのですけれども、過去を追っても仕方がありませんから、これから即時そういう努力をしていただきたい。そういう点について御意見を伺いた  い。
  88. 高田正巳

    高田(正)政府委員 将来はさような点につきましても配慮をいたして参りたいと思います。
  89. 八木一男

    ○八木(一男)委員 それでは厚生大臣にも伺いますけれども、幾分具体的な点に入ります。  社会保障制度審議会と社会保険審議会の答申の内容をでき得る限り実現に努める、できないことは将来も努めていくという御答弁でございます。そこで、国庫負担率を明文化したという点だけ入っております。これは努力の結果だろうと思います。その次に、今の二段階に分けたということをちょっとおっしゃいました。二段階というのは、答申の内容の中では軽度の方のものだ。社会保険審議会の答申の中の第四項を読んでいただくと、つけたりに書いてあるのです。「なお、保険料額についての等級の区分は、賃金日額二八〇円以上及び二八〇円未満の二等級とすべきである。」なおという、ただし書きではないけれども、そういうことが加わっている。その前に重大な問題があるのです。「保険料額については、日雇労働者の生活等の実態からみて、これを引き上げることは大いに疑問があり、諮問原案は高きに過ぎる。」はっきり言っています。「給付内容の改善及び国庫負担率の法制化を前提とするならば、最少限度の負担増は止むを得ないものと思われる。」ということがつけ加わっている。これは私は非常に不満ですけれども、私どもは前からの日雇労働者健康保険法の制定の経緯及びその他の各委員会の審議、それから各審議会のいろいろな勧告、答申、そういうものを見まして、保険料の値上げは断じて一文もすべきでないという態度を持っております。そして厚生省もそういう方がいいと思っておられると思う。それはとにかくといたしまして、資本家代表も入り、労働者代表も入り、各省代表も入り、社会保険審議会が初めて満場一致の答申をした。それからまた議会の代表が与党、野党両方入り、各団体の代表も入り、各官庁の代表者、各省の次官が入っているのです。大蔵次官も構成メンバーになっている。社会保障制度審議会も答申を出しており、これのほかにさらに国庫負担率を緊急に引き上げなければならないということを出しておる。そういうふうなところで出した内容は、ほんとうに厚生当局が御努力になったら、これはやはりその答申に従ってことし実現化するということができ得る前提になるわけです。制度審議会でも大蔵次官が構成メンバーになっている。そして審議として満場一致できまっている。これは大蔵省を動かす力になるわけです。社会保険審議会も労働者代表も資本家代表も各省代表も入り、今まで多数意見、少数意見ということばかりやっていたが、これに関する限りは満場一致できめた。これは大きな力になるわけです。その力の活用の仕方が非常に手ぬるいといわなければならないわけです。これは厚生大臣に申し上げることであっても、保険局長も聞いておいていただきたいのです。  ところで保険料の内容が高きに過ぎる、それから最小限度の負担増はやむを得ない、これは私は反対ですけれども、とにかくやむを得ないとなっている。最小限度というものは、普通の常識では非常に少いものであるはずだ。日本人の常識で言えば、八円、八円のところで一円上げる、これは一割二介五厘上るわけです。八円、八円で十六円のやつが九円、九円で十八円になる。最小限度という普通の言葉は、どんなに引き上げたところで一円以上、一割二分五厘以上という意味を示さないものだと思います。それであったら、私は九円、九円だってこれはいけないと思うけれども、少くとも厚生省の原案としては一級の方、高い方が九円、九円で出てくる。あるいは九円、八円で出てくるというようなことが当然であろうと思う。そういうことがなされていない。一級の方は十一円、十一円、当分の間労働者に対しては十一円、十円、そういう原案が出てきている。そうなると、前の厚生省の原案よりも部分的に悪くなっておる。前は厚生省は四級に分けた。それを今度は一つにまとめて、一級、二級を一級にしたということです。前は十一円、十円、ところが今度は法律的には全部が十一円、十一円になっておる。当分の間という抜け道で十一円、十円、そうすると、前の厚生省の原案よりも保険料は上っておる。ところが制度審議会も保険審議会も、上げることは断じてよくない、だけれども仕方なしに上げるなら、一応最小限度においてということになっておる。そういう答申がついていながら、厚生省が前に考えて審議会に諮られたものよりもこの部分だけだったら保険料の値上げになっているわけです。これは努力の結果ともいえない。努力をして力尽き矢折れたというのだったら、前より高くなるというような、そんなばかな話はないわけです。ちょっとしかとれなかったというなら、それは一萬田代を呼んでその点について大いに攻撃しなければなりません。だけれども厚生省としても保険料の値上げをしてはいけないという上台で、値上げをさせないように努力して、総体的に六千七百万円とおっしゃいましたけれども、遂にこういう値上げの部分がある。しかも一級の方は対象者の方が八割三分占めておるわけで、大部分が保険料の値上げになっておる。それからまた三級の方は労働者負担率が前の原案よりもふえています。二級の方というのは賃金が非常に少い人です。賃金が少くて保険料の負担に耐えられない人です。それらの人たちの方が原案よりふえているわけです。これでは保険料を上げてはいけないという答申に基いて努力された結果じゃなしに、逆に原案より悪くなる部分がたくさんある。こんなことでは努力されたとは言えないわけです。努力をしたが、大蔵省がかさにかかって、前の勢いを盛り返して、今度はあなたの方がへっこんじゃって、それにつぶされておるわけです。それでは困ると思うのです。厚生省が前に大蔵省と話し合って大体きめて、そしてもっとよくしろ、保険料を上げるなという答申がきた、それで話を持っていったら、逆に悪くなったということだったら、それこそ厚生省全員あげて大蔵省へなぐり込みをかけても、そんなばかな話があるか、総理大臣に立ち合ってもらって、どっちが正しいか言ってもらってもいい、私は別に総理大臣とか大蔵大臣とか、はったりで言っているのではなしに、これがよくなったらいいのです。せっかく皆さんが一生懸命になっているのに逆に悪くなっておる。そんなことだったら、ほんとうに厚生省の全員が大蔵省にすわり込みをかける、そんなあほらしいことはできないというなら、総理大臣に談じ込んで、総理大臣の手で抑えさせるなりする、そのくらいのことはやってもらってもいいと思うのですが、保険料の値上げになった点について、どういう経緯か、どう考えておられるか、御答弁願いたいと思います。
  90. 高田正巳

    高田(正)政府委員 日雇い労働者保険料はできれば上げたくないというのが私ども考え方でございます。ただ、これは八木先生よく御存じのことでありますが、御考慮の中に入れていただきたいことは、普通の被川者保険でありますと、賃金ベースが上る、すなわち所得が上りますとおのずから保険料も上ってくるようなしかけになっておるわけであります。ところが日雇い労働者の方は定額で、きまっておりますので、賃金のペース、平均賃金が上って参りましても保険料はそれに従って上るというしかけになっておりません。実際のと平均賃金を調べてみますと、制定当時から比べますとだいぶ上っておりますが、そういうふうな日雇い労働者健康保険の方のしかけに特殊性があるということも一つ御考慮のうちに入れていただきたいと思います。  それから原案より悪くなっておるじゃないか、これはけしからぬとおしかりでございますが、悪くなっておるという見方をなされば、あるいはそういうことも言えるかもしれませんけれども、実際には今申し上げましたように、六千七百万円程度保険料を減らしたわけでございます。これで私どもは原案より保険料としては、不満ではあるかもしれませんけれども、値上りを抑えた、こういうつもりでおるわけでございます。
  91. 八木一男

    ○八木(一男)委員 お約束がありますから、あと一問でやめます。保険料六千七百万円下ったというけれども、今度は八割三分の点で傷病手当金の方が額が変ってきますでしょう。ですから保険料の下ったことだけをおっしゃっては困る。支出が減っているのですから……。そんなものはあたりまえです。だから保険料が六千七百万円だけ下ったからよかろうということは、それだけおっしゃるとバランスを失する。そういう点は私ども知っております。だから結局厚生省はよくやったと申し上げるわけにはいかぬ。こっちは下っているのですから……。  それからもう一つ、賃金の点です。大体低賃金であることはおもに労働省の責任ですが、これは低賃金なんです。それで低賃金のところで健康保険をやるということですから、二十七年の厚生省の原案で三割三分の国庫負担、それから五年経過していろいろな社会保険が少しずつ進歩しているのです。それからいえば今度の二割五分国庫負担は前進ではありますけれども、十分なものとはいえないのです。そういう点で考えていただいて、賃金が固定しているから、かわりに上げなければいけないというようなことは高田さんも考えておられないと思います。だけれどもそういう大蔵省の理屈に負けるような態度をとってはいかぬ。それは大蔵省の理屈です。それでそういうことをやるには労働省が就労日数をふやせば、保険料率なんか上げなくたって、保険料はたくさん入ってくる。一つは上げることが最大の問題で、保険の会計のバランスを合せるのが一つ問題だ。それで保険料を上げようというのでしょう。だからそういうように保険料を上げなくても、就労日数をふやせば、同じ保険料であっても日数だけよけい入りますから消えるのです。それが本質なんです。それを大蔵省の頑迷固陋な、労働者のことを一つ考えない、帳じりだけ合せる連中は、そういうへ理屈を言う。厚生省自体がそんなことに負けては困る。そういうことです。  きょうは委員長と与野党の理事の方との申し合せで、時間がございませんし、厚生大臣参議院答弁していらっしゃるそうですから、まだまだ問題はありますがここで打ち切りますけれども、今申し上げたことは高田さん全部おわかりですから、これから御努力を願いたい。今国会中に——これは普通はないだろうといわれるけれども参議院予算案の修正ということだって、法制的にはないとは言えないわけです。また予算の中の弾力性を持たせることができるわけです。それから特別会計の中の弾力性を持たせることができるわけです。金に関係なくても、法律やいろいろのことに前進を示すこともできるわけです。そういうことがありますので、これは日雇い労働者健康保険をよくしたい、答申勧告をよくしたいとおっしゃったのですから、そういう御努力を、来年以降じゃなしに、ことしも即座に最大馬力を上げて厚生大臣を補佐されてやっていただくということを要望して、きょうの質問を一応ここで打ち切ります。
  92. 森山欽司

    森山委員長 午後一時半まで休憩いたします。     午後零時四十四分休憩      ————◇—————     午後二時開議
  93. 森山欽司

    森山委員長 休憩前に引き続き会議を再開いたします。  救急車における医療行為に関する問題について発言を求められておりますので、これを許します。野澤清人君。
  94. 野澤清人

    ○野澤委員 実は三月三日の産経新聞に「法律か人情か」という題で、「医療器具のない救急車」という新聞記事が出ました。この新聞の記事を見ますと、「消防署の救急車には医者が乗っていないため、車の中で消防署員が応急処置をとることは医師法違反になると東京地検から東京消防庁に非公式通達があったため、消防庁では二月はじめから救急車医療器具を引きあげてしまった。このため一刻を争う急病人に応急処置を施すこともできなくなり、人命に関する問題」だ、こういうことで日刊紙が大きく取り上げておるわけです。そこで厚生省にも消防庁の方にもその旨を伝えましたけれども、なかなかはっきりしませんので、きょう本部の方からおいで願っていろいろとお聞きしたいと思うのですが、一体全国で消防署に救急車が何カ所くらいで、どのくらいの救急車があるのか、この点向いたいと思うのです。
  95. 横山和夫

    ○横山説明員 お答え申し上げます。三十一年の四月一日現在の統計書によりますと、全国にあります救急車の総台数は九十九台でございまして、設置されておりますのは二十六都道府県でございます。その後若干の増加台数があるかと思いますので、大体百台をちょっと越した程度で三十都道府県、都市にしまして大体三十都市くらいに救急車が配置されておるという状況かと思います。
  96. 野澤清人

    ○野澤委員 それで東京都庁の方を調べてみますと、条例でもってこれらの業務に関する規定ができておるようですが、本部の方ではこれに対して何ら統括した示唆は与えてないのですか。それともまた一応のモデルを示して、各都道府県で実施のできるように県条例に移行してこれをきめさせるというような方針をとっておるわけですか。
  97. 横山和夫

    ○横山説明員 御括摘の東京都におきましては、二十七年の十月に都条例の九十四号をもちまして東京都の救急条例というのを制定しておるのでありますが、その他の都市におきましては、それぞれ各都市で大体同じような線で救急条例は作っております。そのもとにつきましては、条例の準則になるものを国家消防本部の方で流しておるという形はとっておりませんが、会議その他適当な方法によって指導はいたして参っております。
  98. 野澤清人

    ○野澤委員 そうしますと、本部の方としては救急車のやる業務内容については、全国的にこういうことをやりなさいという打ち合せはしてないのでございますか。それともまた一応話し合いをして、文書では流してないが、会議等でその精神を伝えておる、こういう意味なんでございますか。
  99. 横山和夫

    ○横山説明員 救急の問題だけを取り上げまして、救急はこういう業務内容で、こういう工合にするのだというような具体的な指導なり、あるいはその準則というようなものは流しておりません。ただ各都市の相互の連絡協議会等によりましてそれぞれ情報の交換をいたし、また研究をいたしまして、内容的には大体同じような内容のものが実施されるという杉になっておると思います。
  100. 野澤清人

    ○野澤委員 実は都の条例を見ますと、これには「消防関係救急業務の意義」という、この第二条にはっきりと例示してあるのです。これを見ますと、救急という業務は何かということの意義を書いてありますが、定義らしきものには「災害の現場から病院又は診療所若くはその他の場所へ救急自動車により輸送する業務をいう。」ということで、しかも例示されていますのが、第一が「地震、水災、火災その他の災害により傷いを受け又は疾病にかかった者、第二には、「交通事故により傷いを受けた者」、第三には、「公衆の集合号する場所において傷いを受け又は疾病にかかった者」、第四が「前三号に準ずる者で知事の指定する者」、こういうふうに具体的に示されているのですが、現在は二十六府県が救急車を設けておるというお話でありますけれども、これに対して本部の方ではこうした救急業務の内容について統括した意思の通達をはかるなり、あるいは通牒なりでもって徹底させるというような御意図がおありかどうか。もう事態がここまで来ますと、これは社会的にも非常に大きな問題になり、日刊紙の取り上げるように、単に法律か人情かというような表題で民意を暢達するという程度のものでは済まぬと思うのです。御承知の通り毎日々々の交通事故等の実績から見ましても、これらに関してもう少し国としましてしっかりした基本要領を作り、しかもまたこれに相当の熱意を入れて機動力を持たせぬと、事人命に関する問題でありますから、こういう点について別段責任ある御回答というのでなしに、もう時代の要請がそういうふうになってきておるのじゃないか、こういう考え方から軽くお伺いしておきます。
  101. 横山和夫

    ○横山説明員 ただいま野澤先生から御指摘の通りでございまして、私たちも同じような時代と申しますか、事態の認識をいたしております。救急条例自体の準則というものを流すという措置は講じておりませんが、本日も用意して参りましたけれども、私の方で、国家消防本部で編さんをいたしまして、これは編さんにつきましてはそれぞれ各方面の権威者に相談したのでありますが、消防教科書の一つに救急法という教科書を出しておりまして、全国の消防職員等を集めまして教養いたします場合にも救急という講義科目を入れておりますし、なおこの教科書を通じて救急業務の徹底を期するという方向に持っていっておるわけであります。御指摘のように実際の問題としてこの人命救助という仕事は消防にとりましてきわめて重要な仕事でありますし、これの強力な遂行をはかるべきだと存ずるわけであります。従いまして取り上げられました本件につきましても関係厚生省その他と十分に連絡をとりつつ、最も適正に人命救助が行われるという線を強く出しまして適切なる指導をいたしたい、このように考えておるわけであります。
  102. 野澤清人

    ○野澤委員 そこでお尋ねしておきたいのですが、新聞にありますように、医師法違反だと言われた行為は、おそらく救急車内で、医者がいないところで応急手当をする。その応急手当をする範囲が、医業行為に抵触するのではないか。おそらくこういうふうな疑いで、地裁からそういう御注意を受けたり、あるいは東京都の消防庁が自主的に撤去されたりしたのだと思うのですが、大体この医師法違反ということは、切開手術をするとか、足を切断するというようなことまで救急車がやるはずはないのですから、おそらく救急に注射等をされる。自殺者があった場合に、これに強心剤を打って持っていきたい。特に日本は、戦後非常に衛生兵がはびこっていますから、民間で注射することも流行ですし、列車等で事故が起きて、車掌がアナウンスすると、注射器を持った者が十人もかけつける。かけつけてみたら医者でなかった。こういう事例が非常に多い民族性ですから、おそらく衛生兵でもやっておった人が消防士になっていて、応急措置をしているのだろうと思いますけれども、被害状況を見てみますと、昭和三十二年中に東京都内だけで、被害件数が相当の数に上っているのです。これらの実態というものを考えてみますと、外科の一般というものが一万二千二百件あります。それからやけどが四百五十三件、内科の方で服毒というのが三千二百三十四件、循環器系が二千五百八件、ガス、毒劇物の中毒というものが千二百五十八件、こういう件数から判断しますと、おそらく救急車が行って患者を収容する間でも、救われる者も、家族の者も、あるいは雇用者等におきましても、救急車が来て助かるということが第一の条件になってくるのじゃないか。そういう場合に、親切にやりたくとも医師法違反だというので、カンフル注射もできぬということになりますと、これは一般都民の相当の問題になると思うのですが、この点に関して、どういう経過で注射器等を撤去されたのか、裁判所の方から撤去命令を受けたものか、それともまた自主的にこれを撤去されたのか、その辺のところがあいまいなんですが、何か本部の方でお聞き及びの点がありましたならば、お教えを願いたい。なかったらないでけっこうであります。
  103. 横山和夫

    ○横山説明員 これは、文書等で調査をいたしたという経緯をたどっておりませんので、聞き及んでおる程度でお答え申し上げたいと思います。救急車に積んでおりますいわゆる救急用の薬品、衛生材料というものは、普通の非常に軽易なものだけなのでありますが、問題になりますのは、御指摘になりましたカンフル注射液及び注射用の器械ということなんでありますけれども、昨年、御指摘の新聞に出ました事故のあとにおきまして、いろいろ医師法違反ではないかというような説も出ましたので、そういう見解が明確になるまでの間、薬液と注射器だけは、一応救急車からおろしておこうという措置を、自主的にいたしておるというわけでございます。従いまして、望むらくは本日のこの会で、その間の解釈がはっきりいたしますならば——決して全部をおろしたわけでも何でもございませんので、当面の液と注射器だけの問題でございますので、その解釈された線によりまして、再び積むなり、人命救助の目的を達するように、消防庁としてはいたしたいということを念願しておるのであります。
  104. 野澤清人

    ○野澤委員 都条例の四条を見ますと、「救急業務の実施に当ってはつとめて患者の意思を尊重するとともに患者の最も利益となるよう業務を行わなければならない」という義務規定が載っているのです。ここで厚生省にお尋ねしたいのですが、救急措置に対する見解というものは、今日まではっきりしておらぬと思う。こういうふうに条例そのものは、都民を代表して患者の意思を尊重する、しかもまた患者の最も利益となるような業務を行わなければならないと、一方では強制的に義務づけておいて、そして救急の場合に、その患者にカンフル注射等をするというような場合が起きたとして、これを医師法違反として指摘するということは、どうも不合理だと思うのです。これに関しては、おそらくこの条例ができますときに、厚生省の方と打ち合せをされてやっておれば、こういう事態は起きないと思うのです。ただそういう事態というものは、不慮の災害の場合にたまに発生することだからというので、実際は気がつかなかったのだと思うのです。たまたま、だんだん科学や文化の程度が発達してきますと、応急措置ということをしろうとでも考えなければならぬ、こういう事態になったのだと思うのですが、これに関しては、単に法務省の見解とか、検察庁の見解とかいうのでなしに、行政官庁である厚生省自体として、はっきりした見解を示しておかぬと、今後も医師法違反だと言うておどかざれたり、警察に引っぱられたりしたのでは、公益業務というものがおそりく停滞して、そのために、あたら人命を失う結果を招来するのでにはないか、こういう感じがしますが、医務局長としてのはっきりした見解を、簡単でけっこうですから承わりたい。
  105. 小澤龍

    ○小澤政府委員 ただいま問題になっております、救急車において傷病者を輸送する途上、当該傷病者の生命なり身体に対する、現在差し迫っている危難を避けるために、やむを得ないと認められる事情のもとに救急処置を行なった場合におきましては、一般的には、医師法第十七条にいう医業とは解されないのでございます。従いまして、ただいま議題になっているような事柄は、このような場合に限りまして医師法違反にはならない、こう解釈しております。
  106. 野澤清人

    ○野澤委員 客観情勢としてはそれで足りるのですが、やむを得ない処置だというふうに解釈するのは、だれが責任を持つべきかということです。たとえば、問題救急車だけですと、そういうことを消防庁の総監なら総監が、その責任を負うのだといえば、それできまりがつくわけです。ところが、これと同じような事態で、学校の養護教諭が、お医者さんが来るまで教室あるいは校庭等で処置しなければならぬというような場合とか、それから保健所保健婦が巡回している際の救急の場合とか、また列車だとか、長時間人里離れた場所を走っているバスの中の救急の場合とか、あるいはまた長時間かからなければ、医者が普通の方法では来診できないというような僻地、たとえば、最近やかましくいわれる離島のようなところ、あるいはまた山奥のような場合、こういうふうな場合も連想されますし、また、かつて問題になりました船医のおらない航行中の船の中、こういうふうな場合も考えられるのです。そこで、このやむを得ないと判断するのはだれかということが基本的になってくると思うのですが、これは社会通念として常識でいくのか、あるいはそこの責任者が判断すれば、一応医師法違反にならないならならないという見解を明らかにしておく必要があると思いますが、どうぞこの点をお願いいたします。
  107. 小澤龍

    ○小澤政府委員 ただいま御指摘になりましたいろいろな場合、すべてを通じまして救急の場合に行う医療行為につきましては、救急車の場合と同様に、それが生命、身体に対する危難を救うためにやむを得ないと認められる事情のもとに行われました場合におきましては、一般的に申しまして、医業を行なっているものとは解されないのでございます。ただし、以上私が申し述べました行政当局の解釈を、拡大して解釈いたしまして、応急処置に籍口してもぐり医師がばっこするようなことを私どもはおそれておるのであります。そこで、ただいま御質問の、だれが判断するかという問題でございまするが、それはおのずから関係者みなが判断いたしまして、それが当然のことであれば、おそらくは問題にならないと思うのでございます。それが関係者が当然なことでないと感じた場合においては、当然問題になってくると思うのでございます。さような問題が出て参りました場合におきましては、個々のケースにつきましてわれわれ行政当局が判断いたしまして善処いたしたいと存じます。
  108. 野澤清人

    ○野澤委員 それで大体厚生省見解も明らかになったわけですが、今局長の指摘されたように、救急という解釈で、案外不心得なものが出ないとも限らないという御意見に対しては、私もやっぱり心配しているものであります。そこで、これは最初に消防庁の方にもお願いしましたが、全国を一貫した指導方式でやっていくかどうかというお尋ねをしておきましたけれども、こういう問題については、プライベートなものでなしに、公的性格あるいは公益的な性格を持ったものに対しては、一応厚生省としての見解を明らかにして、各都道府県に通牒なら通牒をされることが必要だと思う。それからそれを野放しにしておきますと、それこそ医師会からも苦情が出るでしょうし、また社会一般の住民が不安をかもすという段階に至ると思うんです。特に救急車患者を運ぶというような場合に、注射をしなければならぬというケースはきわめて少いと思うんです。こういうことについて、厚生省としてもおそらくそれはきわめてまれなケースだというお考えだと思うんですが、たといまれなケースにしましても、不安を醸成しないという建前から、一応救急車なら救急車を中心にして、限定された範囲内でもけっこうですから、各都道府県に通牒を一つお出しになっていただいたらどうかと思うんです。こういう点に関して御両所で御協力が願えるかどうか、御確言できるならば、なるべくすみやかに善処していただきたいと思うんですが、お二人からその結論をお聞かせ願いたいと思います。
  109. 小澤龍

    ○小澤政府委員 ただいま議題となっている問題は、従来は実はあいまいもことしておったわけでございます。救急車問題が出たのは、これを明確にする上においてかえって好都合であったと考えております。従いまして救急車問題を契機といたしまして、これ以外の、先ほど御指摘のありました学校における救護室等の問題もございまするので、それらの具体的事項につきまして、各個に吟味いたしまして、それぞれ関係官庁と連絡をとりまして、できるだけ早急に都道府県知事に通達を出したいと存じております。
  110. 横山和夫

    ○横山説明員 消防の方といたしましても、ちょうどいい機会でありますので、厚生省と十分連絡をとりまして、消防の行います人命救助、これが的確に行われるように最大限の善処をいたしたい、こう考えております。
  111. 野澤清人

    ○野澤委員 薬務局長も見えておりますからお尋ねしておきますが、これはおそらく薬務局には連絡なしに救急車の衛生材料が積み込まれていると思うんです。そして私の方でとりました資料を見ますと、注射薬もなく、ほとんどヨーチンとかオキシフルという程度のものです。こういうものも一つ——せっかく医務局と話し合いをするのだったら、薬務局の方でも、中に入れる常備薬として最小限度のものこれだけは許容するのだけれども、常に積まなければならぬものと携行して歩けるものとの区分くらいは、話し合いの上できめられて、消防庁の行う救急車についてはどれだけが最小限度の救急用具だという、かつての軍隊における衛生材料の定数とまではいかなくても、最小限度この程度のものは携行してよろしいのだ、また携行すべきだという基準をおきめになることが必要じゃないか、これは全くの希望でございますから答弁は要りません。  以上で私の質問を終ります。     —————————————
  112. 森山欽司

    森山委員長 日雇労働者健康保険法の一部を改正する法律案の質疑を続行いたします。滝井義高君。
  113. 滝井義高

    滝井委員 日雇労務者の健康保険法の改正案が上程をせられて今審議に入っておるわけでございますが、いかなるりっぱな保険制度が法律でできても、それを受け入れる病院というものが動きのとれない状態になっておったのでは、これは絵にかいたもちになってしまうんです。そこで私は日雇労働者健康保険法が含まれております厚生保険特別会計の中における保険施設の費用、あるいは福祉の施設の費用、こういうようなものに関連をして、先般政府の方にもろもろの社会保険の診療に当る、特にその中でも代表的な機関である日赤と、それから聖路加病院と東京第一病院というようなこれらの病院が、厚生省のおっしゃったような八・五%のワクの拡大によって、二十七年三月当時に比べて二・一倍の収入がほんとうに出ることになるかならないか、それは現実一つ三カ月くらいやってみたらいいだろう、こういう御質問を申し上げたわけですが、実際に大臣はそれがやれないわけですね。御答弁ができない。従って保険局が粒々辛苦して立てた、いわば高田理論と申しますか、そういうものはきわめて多くの不確定要素を含んでおって、確実な証明ができていないというところに一つ問題があるのじゃないか。そこで東京第一病院は医務局の所管だし、日赤は社会局が一番大きな関係を持っているところだし、聖路加病院は準民間の病院だということになると、例を保険局自体の所管のもとにおける社会保険病院にとって、そしていろいろ御説明を聞いて、あなた方の正言う八・五%のワクの拡大によって日本医療機関が、近代的な医学進歩を取り入れ、従業員の待遇も十分与えて、なお生々発展をしていく姿があるかないかということを明白にさしていただけば、あなた方が今まで言ってきたことが、真実なりやいなや、日本医療に貢献するだけの理論を吐いているかどうかということが明白になってくるだろうと思う。そういう意味で、特にあなた方にきわめて親近感のある、あなた方自身のたなごころの中にある社会保険病院を取り上げてみたい、こういうことなんでございます。  そこでこの前一、二お尋ねいたしましたけれども、どうも保険局長よく御存じなかったのですが、きょうは一週間以上の時日もありましたので、十分眼光紙背に徹する程度の御勉強をされてきているだろうと思います。そこで一つ一つこの前の復習をしながらお尋ねをしていってみたいと思うのです。  まず第一にお尋ねしたいのは、一体一口に言うと健康保険病院というのはどんな病院ですか。
  114. 高田正巳

    高田(正)政府委員 健康保険法の二十三条であったかと思いますが、その規定に基いて厚生保険特別会計をもって設置された福祉施設でございます。法律上の性格はそうこうものでございます。  それでこの病院あるいは診療所の設置の目的でございますが、これは政府管掌の健康保険の被保険者を見るというのが主たるねらいでございます。もちろん病院でございますので、一般にも開放はいたしております。従って他の被保険者をも実際の診療におきましては見ておりまするけれども、設置のねらいはそこにあるのでございます。
  115. 滝井義高

    滝井委員 健康保険法の二十三条に基いてやっておる厚生保険特別会計の中の福祉施設だそうでございますが、そうしますと、当然これはわれわれ国民の膏血である税金がこの病院のために出されておるわけですね。
  116. 高田正巳

    高田(正)政府委員 税金は関係ございません。
  117. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、一般会計からは、この福祉施設には一銭もいかないのですか。
  118. 高田正巳

    高田(正)政府委員 参りません。結核対策で結核病床を拡充をいたしまする施策を過去においてやって参ったのでございますが、その際に、国立療養所でやりまする場合はこれはまるまるでございますが、保険関係その他地方公共団体等がやりまする場合には三分の一の補助金をもらって増床をいたしたことがございます。それは結核対策の面からでございまして、その他におきましては一般会計から金が投入はされておりません。
  119. 滝井義高

    滝井委員 業務鑑定の中を見てみますと、一般会計からの受け入れは二十億余りの金があるわけです。これは当然歳出の部面に行った場合は、金にはしるしがついていないのですから、その二十億というものは関係ないのですか。
  120. 小沢辰男

    ○小沢説明員 ただいま先生のおっしゃいました業務勘定の一般会計繰り入れの予算といいますのは、健康保険特別会計の中で言っておりまする業務勘定の繰り入れとは全然別でございまして、それは一般の健康保険事業あるいは年金保険事業等、要するに保険政府管掌でやっている関係の業務を行うためのいわば事務でございます。そういうものが業務勘定の中に一般会計から受け入れしまして、それで保険の職員の人件費その他いろいろなことをやっておるわけであります。従いまして、健康保険病院等の施設費その他の経費とは関係がない数字でございます。
  121. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、業務勘定の中の他勘定よりの受入金、すなわち健康保険とか、日雇い健保とか、あるいは年金勘定から入ってきた金がそれらの保健施設なり福祉施設に回る、こういうことなんですね。
  122. 高田正巳

    高田(正)政府委員 さようでございます。健康保険病院の関係におきましては、厚生保険特別会計の健康保険勘定の方から業務勘定べ繰り入れまして、業務勘定がそれを受けてやるわけでございます。
  123. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、この健康保険病院の金というものは、結局関係のある健康保険や日雇い保険や厚生年金の金からまかなわれていく、幾分の金が出てくる、こういうことになるわけです。  では一体その病院というものはいかなる性格のものですか。性格からいえば私立ですか、それとも国立ですか、それとも公立というんですか、県立ですか。
  124. 高田正巳

    高田(正)政府委員 施設の所有者は国でございます。国の特別会計でございます。経営は公共団体あるいは個々の法人に委託をいたしております。国有民営という形——公共団体が委託を受けております場合は民営ともちょっと申せませんけれども、そういう形をとって運営をいたしております。
  125. 滝井義高

    滝井委員 国有民営ということは、形からいえばそうなんですが、たとえば私立とか、国立とか、県立とか、こういう形があるんですが、そういう場合には一体何になるんですか。それのどれにも属さぬものということになると、どういうことになるのですか。
  126. 高田正巳

    高田(正)政府委員 健康保険法二十三条に基く病院ということでございまして、それが国立か、府県立か、何立かということではどこへ入れますか。その点どこへ入れたら適当かわかりませんが、性格は今申し上げたように健康保険法二十三条に基く福祉施設でございまして、施設の所有者は国の特別会計、経営は公共団体または公益法人が経営をいたしておる、こういうことでございます。
  127. 滝井義高

    滝井委員 そうすると、この病院は公的医療機関ですか、それとも私的な医療機関ですか。公的でも私的でもないものなんですか。
  128. 高田正巳

    高田(正)政府委員 いわゆる俗に言う公的医療機関一つではあると存じます。ただ医療法に公的医療機関というものの規定が三十一条以下にございますが、医療法の関係のことは少し調べてお答えをいたしたいと思います。
  129. 滝井義高

    滝井委員 そこらあたりを少し明白にしてもらいたいですが、健康保険法の二十三条の保険者が被保険者または被扶養者の保健増進のためにやる施設、これは健康保険法の二十三条に書いてあるから、はっきりしました。ところが医療法の三十一条をごらんになると、「この章において、「公的医療機関」とは、都道府県、市町村その他厚生大臣の定める者の開設する病院又は診療所をいう。」こうなっておる。だから私はさいぜんから県立なのかそれとも私立か、国立か、何かはっきりしたものがあるか、こういうことなんですが、「厚生大臣の定める者の開設する」中に入るのか入らぬのかということなんです。
  130. 高田正巳

    高田(正)政府委員 医療法の「厚生大臣の定める者」というのがおそらく告示か何かに出ておると思いますので、それを念のために調べてみたいと思いますが、その点をただいま私承知をいたしておりません。
  131. 滝井義高

    滝井委員 実は日本の病院というものは非常に複雑になっておるのです。われわれは公的医療機関というのは、常識的に考えたら私的医療機関以外は全部公的医療機関だ、こう考えておったのです。ところが都道府県と、市町村と、厚生大臣が定めるものというのは、日赤とか済生会くらいでしょう。こういうところまでに限られておるようです。あとの国立病院というのは公的医療機関の中に入っていない、第三の範疇に属するものなんです。そういうことを、この前実はこれはむしろ発見をしたといったらいい、発見をしたのです。それで私は、今あなたの方の所管のこの病院というものは国有民営であるということはわかった。それから保険者の施設であるということもわかった。しかしそれは一体公的医療機関なのかどうなのかというとはっきりしない。ここらあたりは研究してもらわなければいけませんが、はっきりしないのです。そこでまず第一に病院の性格というものがどういうものかまだはっきりしないままに、あとでわかれば教えていただきますが、次に入っていきます。  そうすると一体病院の運営の責任者というのはだれになるのですか。
  132. 高田正巳

    高田(正)政府委員 病院を運営いたします当面の責任者は、経営を委託されております団体でございます。
  133. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、その経営を委託を受けておる団体、これは大蔵省にお尋ねしますが、この施設は多分国のものだと思うのです。大蔵省はだれにこれをお貸しになったのですか。
  134. 天野四郎

    ○天野説明員 これは国の財産、いわゆる国有財産法で申します国有財産でございまして、それは設けましたのは厚生大臣でございまして、国有財産の方におきましては各省各庁の長というような表現になっておりますが、この場合は厚生大臣が設置いたしたものでございます。さらにそれを厚生大臣が自分の出先機関である府県知事に委任しているわけでございまして、これを国有財産法では部局長といっておりますが、府県知事がそのような管理の責任にあるものでございます。
  135. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、この国有財産を借りている責任者というものはまず第一次的には厚生大臣、そしてその次の段階にいくと都道府県知事だこういうことになるわけですね。そうしますと、その国有財産を使って収益をあげる人、経営委託者というものが病院の責任者だと、今こうなったわけなんですが、この関係は、大蔵省にはだれだれに委託してこうなっておりますということが十分わかっておるのですか。
  136. 天野四郎

    ○天野説明員 それは厚生省の方で府県知事に対しまして通達が出ておりまして、健康保険病院あるいはまた日雇労働者健康保険病院の経営委託契約書というようなひな形が通達してあります。それに基いて、その自治的な団体に経営が委託されておるわけでございます。従ってその委託された範囲におきましては、実際の財産の管理の責任者は委託者でございますけれども、国有財産の方から申しますと、府県知事が管理の責任者でございます。
  137. 高田正巳

    高田(正)政府委員 今の関係のことをもう少し詳しく申し上げますと、健康保険法の施行令の第二条に都道府県知事に委任をいたしておりますことが列挙してございますが、その第五号に、健康保険法第二十三条の規定による施設に関する事務というふうにございまして、二十三条は先ほど申し上げましたように福祉施設でございますが、その福祉施設に関する事務を都道府県知事に委任いたしております。一方、先ほど大蔵省の方からお答えがございましたように、国有財産の関係の事務はやはりその所在地を管轄する都道府県知事が部局長ということで責任を持っておるわけでございます。そういう両方の権限を知事が持っておるわけでございますが、病院というふうな特殊な施設でございますので、その知事がみずから経営するよりは、公共団体、主として市でございますが、市なりあるいは公益法人なりに契約によって委託さしておる、こういう関係になっておるわけでございます。
  138. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、国有財産の最終的な管理の責任者は、一応国としては都道府県知事だ。それから健康保険法三十三条の責任者はやはり一応都道府県知事だ。従ってその健康保険法二十三条の施設の方の責任と国有財産の責任が知事でぴたっと一致したわけですね。これで一応そこの問題は解消いたしました。  そこで医務局長さんがおいでになりましたから、問題に入る都合上ちょっと先にお聞きしますが、社会保険病院は公的機関かどうかという問題です。
  139. 小澤龍

    ○小澤政府委員 社会保険病院はまだ公的医療機関としては指定してございません。
  140. 滝井義高

    滝井委員 私もおそらくそうだろうと思っておったのです。国立病院もそうじゃないのですから、これは公的医療機関ではないわけです。それが一つわかってきた。私的医療機関でもない、公的医療機関でもない、第三の範疇に属するものですね。一応病院としては何に属するものかわからぬ。そこで厚生大臣に国が貸して知事まで持っていったその国有財産というものは一体それは行政財産なのか普通財産なのか。
  141. 天野四郎

    ○天野説明員 行政財産でございます。
  142. 滝井義高

    滝井委員 行政財産というと種類が四つくらいあるのです。公用財産、公共用財産、皇室用財産、企業用財産とあるのですが、これのどれに属しますか。
  143. 天野四郎

    ○天野説明員 公用財産でございます。
  144. 滝井義高

    滝井委員 そうすると私はこの健康保険の病院というものは国の事業ではないと思います。公用財産ならば「国の事務、事業又はその職員の住居の用に供し、又は供するものと決定したもの」、こうきまっておるわけなんですね。これは国の事務ではないと思うのです。そうすると公的医療機関ではないのです。そうして行う仕事というものは国の事務ではないんですね。そうするとこれは行政財産の第一の範疇の公用財産には入らないのです。
  145. 高田正巳

    高田(正)政府委員 健康保険法二十三条に基いて設置をされておりまする病院でございますので、この病院は国の事業であると私は存じます。
  146. 滝井義高

    滝井委員 保険者は国ではないのです。国がやる施設なら私は国、国家、こう書くべきだと思うのです。保険者は、政府管掌だけならば、これはある程度高田保険局長といえば国にかわり得る場面が相当出ると思うんですね。ところが保険者といえども健康保険組合も入ってくる、健康保険組合は国じゃないのです。従って保険者という書き方をしたときには政府管掌の保険者、こう言えば話はまた別なんです。従って私が今言ったように、公用財産ということになれば国の事務、事業なんですね。だから二十三条の規定を国の行うものだとこうなると、これはそういう解釈は私はできぬと思うのですがね。できますか。     〔委員長退席、植村委員長代理着席〕
  147. 高田正巳

    高田(正)政府委員 健康保険法は多くの場合に政府管掌も組合管掌も含めて書いておる場合がたくさんございますので、これは両方を含めて書いておるのでありまして、これは政府管掌の施設でございますから、その場合には主体は政府でございます。だからこれは政府の事業だということになると思います。二十二条に「健康保険保険者政府健康保険組合トス」とはっきり書いてございます。それから厚生省設置法にも健康保険に関する事業は厚生省の職務権限としてはっきりうたってあるわけでございますから、だからここに保険者と書いてあるからこれは政府じゃないのじゃないかという仰せですが、保険者の中には政府と組合とがあるわけでございます。
  148. 滝井義高

    滝井委員 どうもそこらあたりは明快に納得がいきかねるところがちょっとある感じがしますが、一応その答弁で先に進みたいと思います。  そこで公用財産ということが一応はっきりしました。その公用財産を知事はさいぜんの局長の御登弁のように、経営委託団体というのですか、それに出している、こういうことなんですね。その経営委託団体というのは何ですか。経営委託じゃなくて経営受託団体じゃないですか、おそらくそうじゃないかと思うのですが、受託団体とは一体何ですか。
  149. 高田正巳

    高田(正)政府委員 それは先ほど申し上げましたように公共団体——市でございますが、公共団体かあるいは公益法人、そのいずれかでございます。
  150. 滝井義高

    滝井委員 そうしますとその経営を受託しておる公共団体あるいは公益法人と社会保険協会とはどういう関係にありますか。
  151. 高田正巳

    高田(正)政府委員 今の都道府県社会保険協会も公益法人の一つの種類でございます。その他公益法人と申しますけれども、大部分は都道府県の社会保険協会でございます。一、二違ったものがございますが。そうして他は市でございます。市に委託をいたしておるわけでございます。
  152. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと委託を受けた公共団体である市も、それから公益法人である——公益法人の中の社会保険協会、これけ社団法人ですか、とにかくその場合には市は社会保険協会に会員として入っておりますか。
  153. 高田正巳

    高田(正)政府委員 市は入っておりません。都道府県社会保険協会は財団法人でございます。
  154. 滝井義高

    滝井委員 健康保険協会は財団法人だけれども、これは社団法人じゃないですか。
  155. 高田正巳

    高田(正)政府委員 財団法人であると思います。
  156. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと経営委託団体は公共団体と公益法人とがある。公共団体の、たとえば市に委託をしておる分については社会保険協会には入っていない、こういうことが明白になって参りました。  大蔵省にお尋ねしますが、その知事が委託をいたしております、受ける側からいえば受託団体である社会保険協会の財産の状態その他について国有財歴の総括機関は大蔵大臣なのですね。一応全国的な市町村の調査を総括をしなければならぬということにもなっておるし、管理は当然大蔵大臣が用途の目的その他十分検討することになっておるわけなのですね。大蔵省はそういうことをときどき社会保険病院についてやられておりますか。やられたことがありますか。
  157. 天野四郎

    ○天野説明員 おっしゃる通り大蔵大臣は総括機関といたしまして、各省各省の所管する財産につきまして監査をいたします。ところが監査いたしますスタッフが少うございます、と同時にこれに反して各省々の主管される財産は非常に膨大なものでございます。ことに大蔵省自身が非常に大量の旧軍用財産、財産税の財産等かかえておりますので、そういう方面に相当仕事がございまして、そう各省々々の財産を監査をしておるわけじゃございません。従ってなるべく各省々々に責任を持っていただきまして、自分の所管する財産を適正に管理していただくというような方針をとっておるわけであります。この関係の財産につきまして、最近監査をしたかどうかは、私正確に記憶しておりませんので、ここではちょっと申し上げかねます。
  158. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、この行政財産である施設は、当然無料でお貸しになっておるでしょうね。
  159. 天野四郎

    ○天野説明員 これは国の財産を市なりあるいは社会保険協会に対しまして管理、経営を委託するという関係でありまして、その限りにおきましては無償でございますが、と同時に、それに反しまして、その施設をいろいろと運用する費用は国が負担しておりませんから、そういうよらな関係で無償とおっしゃれば無慣でございますけれども、かえって国の方で手数料を払わなければならないような関係じゃないかと思います。
  160. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、国の方で手数料を払っておるというのですか。
  161. 天野四郎

    ○天野説明員 むしろ払うべきではないかというような——国の仕事をつまりその団体にいろいろとやっていただいているわけでございますから、本来なれば払うのが筋道だろうと思いますけれども、これに反しまして、その施設を運用いたしまして入ります収入は、その団体の収入としておりますから、それで差し引き払わないということになっております。その関係は私は直接担当者ではございませんから、はっきりは知りませんが、理屈としましてはそういう理屈じゃないかと思います。
  162. 滝井義高

    滝井委員 保険局はお金を払っていないですね。無償で貸与されておるわけですね。そしてまた同時に手数料なんかももらっておるわけではないのですね。
  163. 高田正巳

    高田(正)政府委員 御指摘の通り使用料といいますか、いわゆる貸し料もとっておりませんし、また委託料といってこちらから命も払っておりません。受託団体の負掛において病院の経営をやっていただいておるわけでございます。  それから、先ほどこういうものの監査といいますか、そういうふうなことをどういうふうにやっておるかということでございますが、今のような関係でございますので、第一次の監督権は都道府県知事が持っておるわけでございます。従いまして、都道府県知事が年一回ないし二回程度病院の監査をいたしておるわけでございます。なお、厚生省本省でも監査をやっております。その状況を申し述べますると、二十九年度には十五施設、三十年度には二十施設、三十一年度には三十一施設、三十二年度には、これは年度の途中でございますが、二十七施設を本省で監査をいたしております。
  164. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと金は払っていない。無償で行政財産として貸付を受けておるわけです。そうしますと、その経営受託者である社会保険協会というものが、当面一切の病院の責任は持っているということなんですか。病院の責任者はだれか、当面の責任者は経営受託団体ですね。これをまずはっきりしておきたい。
  165. 高田正巳

    高田(正)政府委員 経営の責任は、その受託団体が第一次的に持っておるわけでございます。ただし、その次に権限を持って控えておりまするのは都道府県知事でございます。都道府県知事がそういう受託団体に委託をいたしております。その受託契約といいますか、委託契約に基まして、受託団体が経営の第一次的な責任者でございます。
  166. 滝井義高

    滝井委員 第一線の病院にいろいろ問題が起る。問題が起ったときに、その問題を責任を持って解決するものは一体だれなのですか。知事ですか、それとも社会保険協会なのですか、病院長なのですか。
  167. 高田正巳

    高田(正)政府委員 その経営を受託しておりまする者が第一次の責任者でございます。病院長かどうかとい御質問でございますが、その経営受託者が病院長にどれだけの権限を与えておるかということにその問題はかかって参ると思います。それは経営受託団体の内部の問題でございまして、どの程度の権限を委託しておるかということでございまして、法律的には、第一次の責任者は受託団体でございます。ただし病院でございますので、医療法上の責任というものは、他の病院と同じように、院長にいろいろ責任なり権限なりがあるととは、他の医療機関と異なりません。
  168. 滝井義高

    滝井委員 診療内容は当然病院長が決定していくと思いますが、一体従業員の給料はだれが最終的に責任を持って決定いたしますか。
  169. 高田正巳

    高田(正)政府委員 責任者は受託団体でございます。しかし、内部的には院長さんあたりがある程度の裁量権をお持ちになっておる場合も相当あろうかと思います。しかし責任者は受託団体でございまな。
  170. 滝井義高

    滝井委員 責任者は受託団体、それでいろいろその具体的な権限、答申等は院長がおそらくやるだろうと思います。全国に七十七、八くらい社会保険病院があると思いますが、これの給料の基準は、国家公務員の給料の基準によることになっておるわけですね。全国的に見ますと、社団法人全国社会保険協会連合会というものがあるわけですね。当然一番上には厚生大臣がおらっしゃるし、その次には保険局長がおらっしゃる。その次には知事がおらっしゃる。その下には保険課長がおらっしゃる。そうしてその下に受託団体があるわけであります。従って、これは全国的な組織ができておるわけです。全国的な組織ですから、当然給料は国家公務員の給与にならって一般職の職員の給与法を準用する、いろいろ書いておるのを読むとそうなっておるのですが、そうですか。
  171. 小沢辰男

    ○小沢説明員 先ほど局長からお答え申し上げましたように、受託団体とは、経営の委託契約というのを都道府県知事が権限として結んでいるわけでございますが、その委託契約書にもありますように、運営の方針等については、別に厚生大臣あるいはその委任に基づいた都道府県知事が指示するところによるような契約になっておるわけでございます。私どもといたしましては健康保険病院の運営規程の準則というものを定めまして、これを通知をいたしておるのでございます。その準則の第六章に給与及び賞与という章がございます。この第二十八条以降で大体一定の範囲は設けつつも、大体のところは公務員に準ずるような内容を持った折示をいたしておるのでございます。
  172. 滝井義高

    滝井委員 指示しておるのではなくて、現状は七十有余の病院の医療従業員の給与というものは、最近六・三%の国家公務員の給与の改訂が行われたわけなんですから、当然それらの医療機関ベース改訂が行われなければならないわけです。どうしてかというと厚生大臣が一番親玉です。その次は保険局長、その次は知事がおるのです。だからあなた方だけ給与が上って、自分の傘下の病院は上らぬでよろしいというそういう行政はまさかあなた方は行わぬだろうと私は信頼しておる。だからそういう行政がやられておるかどうかということなんです。六・三%の俸給が上ったかどうかということです。
  173. 小沢辰男

    ○小沢説明員 御承知の通り昨年から国家公務員につきましては給与の引き上げがあったのでございますが、医療職の俸給表というものを定めて、それに従って切りかえを実施したわけでございます。私どもの方でも当然準則をそれに合わすような改正をいたしました。格病院においてもこの準則の範囲内で、これを基準にしつつ各病院の経営の状況によってやはり実施をいたしておるのでございまして、早いところは昨年の十月に切りかえをいたして、所要の引き上げの措置を講じております。また俸給表というものの完成が政府の方で非常におそかったこともございます。あるいはまた国立病院等につきましてももちろん実施はなされておりましたけれども、正確にどの職種をどういうふうにということの表がきまりましたのがだいぶおくれておりますので、その関係等もあり、また一方個々の病院の経営の状況等もありますので、逐次切りかえつつあるわけでございまして、おそいところでも大体一月一日を切りかえの時期にして実施しているという報告を受けている次第であります。
  174. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、病院の実情によってばらばらだということは、結局国家公務員の一般給与にならえと、こう言っておるけれども、病院の実情による。というのは、結局もうかる病院は早くやってもよろしい、もうからぬ病院はおくれるぞ、こういうことなんですか。
  175. 小沢辰男

    ○小沢説明員 大体の病院は、人件費につきましては公務員並みに切りかえをやっておるわけでございますが、ただおっしゃるように個々の病院々々の比較をとってみますと、あるところは非常に経営が苦しいというような向きもございますので、そういうところについては実施の時期が若干すれるということも、独立採算をとっております関係上やむを得ないところでございます。私どもとしてはそういうようなアンバランスの状態を、やはり同じ健康保険病院の職員でありますから、これを同じような待遇と、そして責任と義務のもとに働いてもらいたいということで、今後はそういう点に特に留意をいたしまして、指導をして参りたいというつもりでございます。
  176. 滝井義高

    滝井委員 医務局長にお尋ねしますが、国立病院もずいぶんアンバランスですね。東京第一病院のように非常にもうかると言っては語弊があるが、繁栄しているところと、非常に悪い、県に払い下げるというようなところもあります。これはどうですか。国立病院もやはり悪いところは給与をあと回しにしていますか。
  177. 小澤龍

    ○小澤政府委員 国立病院は全国一律に昇給いたさせました。ただ今のお言葉で、東京第一病院ははやると申されましたけれども、収支のバランスから言うとあまりいい方の病院ではございません。
  178. 滝井義高

    滝井委員 全国一律にやっているそうです。国立病院と社会保険病院は範疇は同じなんです。公的医療機関ではない。国立病院も第三の範疇に属するものです。公的医療機関ではない。私的医療機関でもない。同じなんです。そうすると病院には労働協約はありますか。労働協約は私が説明するまでもなく労働問題、人を使う場合には少くとも経営者側と働く人とが対等の立場で、お互いの生きるための基本的な自由を話し合うのが労働協約なんですね。それによって雇われましょう、雇いましょうと話がきまって雇われるわけです。おそらくインテリばかりの、国家試験を通っている者ばかりが集まっている病院ですから、まさか労働基準法違反はやっておらぬと思いますが、労働協約はおありでしょうね。
  179. 小沢辰男

    ○小沢説明員 個々の病院における職員組合との労働協約というものは現在行われていないと思います。
  180. 滝井義高

    滝井委員 昔徒弟制度というものはありましたけれども、看板は、この社会保険協会の事業の第三に、病院、診療所の委託経営及びその他の施設というのは、健康保険における療養給付の完璧を期し保険診療の模範とすべき社会保険専門の病院や診療所の経営を行うことであると書いてある。これは社会保険専門の病院や診療所の経営を行う、しかも模範になるということは、これは診療内容だけではないということなんですね。そこに働く従業員も少くとも国家公務員程度の待避も受けるし、内容も少くとも無税なんですから、しかも国有財産を無料で貸しているんですから、近代的な日本医学保険の許す最先端を行く治療が行われる、私はこういう理解をしているわけなんです。ところが病院の給与を見ると、まだ従業員のベース・アップも行われておらぬ。自分たちは一足先に去年やっている。いわばこれはあなた方の部下ですよ、簡単にいうと。あなた方の保険医療のモデルを全国に示したところの病院なのです。だからそこの従業員の給料が、ますあなた方が先に上ってあとがまだ続いておらぬというのではこれはちょっといただけぬ思うのですわ。しかも労働協約もない。これではモデル病院にはなりませんよ。模範病院にはなれない。そういう給料の、いわば身分保障もない、労働協約がない、就業規則もおそらくそういうところでは不完全きわまるものであると思う。これは保険局長さん、保険のことも大事です、しかしやはりモデル病院ですから、あなたの所管における社会保険病院の従業員の労働問題についてもやはり頭を置いていただかなければならぬと私は思う。局長さんにお尋ねしますが、七十有余の病院の中で六・三%のベースアップをやって国家公務員と同じ水準に達している病院が幾らありましょうか。試みに日赤を見てみますと、公的医療機関の最先端を行く日赤、九十六日赤の病院があります。その中で六・三%のベースアップのできた病院は一つもありません。一つもない。三%、半分のベースアップのできたのが六十あります。あと三十六はできていないのです。半分もできていない。これが実態ですよ。こういう医療機関の実態をそのまま放置しておって、日雇い労務者の健康保険を変える、あるいは国民健康保険を出すということがもうナンセンスなんですよ。まずわれわれが日本の皆保険政策をやろうとするならば、受け入れ態勢というものをきちっと作らなければならぬのです。受け入れ態勢が徒弟のような、あるいは長時間労働をやり労働協約もないというような病院に、一体どうしてわれわれとうとい人間の命を預けることができますか。われわれは高い天に輝く星も見詰めなければならぬのですけれども、まず足下を見詰めなければならぬ。それを受け入れる医療機関の実態がこういうことでは話にならぬのです。お役人さんはすでに六・三%上っておるけれども、その自分たちの政策を押しつけるところの医療機関というものは——これは公的医療機関ですよ、税金のない医療機関さえあなた方と同じだけベースが上っていない。しかもあなた方自身の所管の社会保険病院というものは労働協約もできていない、ベースも大して上っていない。一体七十四のうちで幾らできておりますか。どれくらいの施設がベースアップをやられておりますか。
  181. 小沢辰男

    ○小沢説明員 私の方では先ほど申し上げました健康保険病院の運営準則の一部改正に関する通達をすでに昨年出しまして、それに基きまして各病院が個々に切りかえをやっているわけでありますが、現在個々の病院別のものは持ち合せがございません。総額で申し上げればほぼ全体の趨勢は御了解願えると思うのでありますが、公務員に準じて、ほとんど公務員並みの給与に切りかえを終っておると言うことができると思います。あるいは……(滝井委員「数だけ言ってくれればいいのです」と呼ぶ)実は大部分は私どもは公務員の平均並みだと思っておりますが、なお公務員以下の待遇でやっておるようなところについてその施設が幾つあるかということは、今実は通牒に基く切りかえの実施状況を取っておりますので、それが出て参りましたらお答え申し上げたいと思います。
  182. 滝井義高

    滝井委員 あなた方の切りかえはもう早く終ってしまったわけなんです。従って、今年一月一日現在で幾らあるのか。たとえば日赤の九十六のうち、六・三%のベースアップをやったにもかかわらず三%しかできなかったものが六十だ、実際六・三%行っていないのですよ。それから三%以下が三十六だ、三%以下というのはこれは全然できていないということなんですよ。だからあなたの所管の七十有余の社会保険病院の中で、国家公務員のベースアップがあるなしにかかわらず、ベース改訂をやったものが幾つあるのですかというのです。七十六のうちに六・三%引き上げたのが幾らあるかというのです。これがわかりますか。わからなければまた次回でけっこうです。
  183. 高田正巳

    高田(正)政府委員 手元に全部の報告を持っておりません。従いましてわかりません。ただいま調査をしておるようでありますから、報告が全部出そろいますれば御報告ができると存じます。
  184. 滝井義高

    滝井委員 わかりました。出たら一つお知らせしていただきたいと思います。  そうすると、施設は国のものだ、それから看板は健康保険の模範的な診療をやる、こういう形になって、そこで働く従業員は国家公務員の給与に見ならっていくのだ、従ってこれは当然ベースアップもやらなければならぬ、ところが矛盾が出てきた、個々の病院の切りかえというものの実態を見なければいかぬ、こういう状態を見て報告する、こういうことになっておるのです。そうしますと、個々の病院の実態を見るということは、これは結局その責任は一体だれが持ってやるのかということになるのです。さいぜん責任は厚生大臣保険局長、県知事、こうきた。そしてそれを第一次的には社会保険協会という財団法人にやらせるのだ、こういうことになっておる。しかしその財団法人というものがやらぬときには知事が責任を持つかどうかということです。もしそんなものは持たぬというのなら、こういうものはやめた方がいいのです。やめなければいかぬ。ぬえ的な存在は皆保険政策のもとにおいては許されぬと思うのです。公的医療機関でもなければ私的医療機関でもない、何かわからぬ、そして国のとうとい財産というものを、何か古いお役人の姥捨山みたいにして社会保険協会というものを作ってやらしておる。そして給料というものは国家公務員にならっておるけれども、あなた方とすぐ一緒には上げられぬ、こういうことなら、私は医療行政をすっきりするためにはやはりやめた方がいいと思う。やめて、その経営を県立ならば県立とはっきりするべきである。責任体制のはっきりしないところにこういう問題が起っているのです。しからば、病院の収入が不足をした場合はどこから病院の収入は運用をしていくのですか。
  185. 小沢辰男

    ○小沢説明員 経営受諾者の大部分は社会保険協会でございますが、社会保険協会は、先生もおっしやるように実はただ形式上作った法人ではありませんので、政府管掌健康保険の適用を受けている事業主が集まりまして作った社会保険協会でございます。ここで経営受諾をしているような病院につきましては、赤字が出れば当然社会保険協会でその跡始末をするということでございまして、その点は、個々の病院の努力にもかかわらず赤字が出る、収支相償わないというような場合には社会保険協会で責任を持つということははっきりしていると思います。
  186. 滝井義高

    滝井委員 社会保険協会が責任を持てないときには知事が持たなければならぬことになっている。さいぜんのあなた方の説明では、第一次責任は社会保険協会で、最終責任は財産を国から委託を受けている知事である、二十三条の施設の委託を受けている知事だとおっしゃっているでしょう。それでは尋ねますが、社会保険協会がやると言うけれども社会保険協会の財政は一体何によってまかなわれておりますか。皆保険政策のもとにおいて事業主が日本の診療を握るという時代感覚があるから保険局はだめなんです。社会保険協会は事業主ばかりだ。日本の病院行政を資本家だけが握って労働者が参加しないということがどうして今の世の中に成り立ちますか。社会保険協会には参加しておりませんよ。会長は鹿島守之助、参議院議員じゃありませんか。また常務理事保険課長、そうしますと、保険協会で責任を持てないものは当然保険課長が責任を持つ、それから知事が責任を持つということですが、課長は官吏ですよ。この前も私はそれまでは簡単に言っておいたが、入っては保険課長となり、出ては社会保険協会の常務理事となる。ちょうど中央社会医療協議会における高田さんと同じだということを私は言ったが、高田さんは、入っては保険者代表となり、厚生省に帰っては監督の保険局長になり、家に帰っては共済組合の被保険者になる、実を言うとこういうことでは保険行政は明朗にならないですよ。これがうまくいっておれば私は文句はないが、ところが見てごらんなさい、蒲田病院、松籟荘、至るところで問題が起ってきた。なぜ問題が起ってきたかということですが、もはやああいう責任体制が明白にならない組織では日本の病院行政はどうにもならぬところまできているのです。従ってまず話をもとに戻して、協会の財政は何によってまかなっておりますか。れっきとした昭和二年以来の歴史と伝統を持っていらっしゃるその協会の財政は一体何によってまかなっていらっしゃるのですか。
  187. 小沢辰男

    ○小沢説明員 社会保険協会はやはり会員のいろいろな分担等の経費で協会の費用を運営しておるわけでございます。
  188. 滝井義高

    滝井委員 会員の何ですか。会費ですか。幾ら出しておるのです。どういう形態で会費を出すのです。
  189. 小沢辰男

    ○小沢説明員 これは各県々によっていろいろ事情が違いますけれども、私どもでそれを画一的にいたしておりませんが、規約、定款その他できまっているものだと思います。
  190. 滝井義高

    滝井委員 そこなんですね。病院の経営が困ったらどうなるのか、それは社会保険協会が責任を持つのだ、こうおっしゃる。そうすると社会保険協会というものは監督者はだれですか。保険局長さんであり保険課長さんじゃないのですか。あなた方でしょう。あなた方が監督者ですよ。そして同時にあなた方は責任者ですよ。会費を一体幾ら取っておるかわからぬで、赤字になって困ったらそこの財政でやれといったって話にならない。大体幾らの会費を取っておるのです。まさか日本の資本家が今それだけの愛情は持っていないと私は思うのですよ。病院が赤字になった場合に、あるいはベースアップができぬ場合には、自分の金をどんどん出してくれるだけの自由は日本の経営者は持たぬはずだと思う。そうすると社会保険協会は会費でまかなっておる。一体会費は幾らです。
  191. 小沢辰男

    ○小沢説明員 実は各県の財団法人なりあるいは保険関係の財団法人なり社団なりというふうなものについては、厚生省の方で直接こまかい点についての管理はいたしていないのでございます。都道府県知事が政令の規定に基きまして福祉施設の事務を管理する権限の委任を受けているわけでございますが、その権限に基いて都道府県知事が社会保険協会を適当とする場合には協会に委託いたしておりますし、また当該所在地の市町村が適当だと思う場合は市町村に委託をしているわけでございます。また法人の監督権からいいましても、全国組織の法人であれば当然その所管の各省に監督権が出て参りますけれども、その他のものにつきましては都道府県知事の監督下にありますので、各県の社会保険協会の会費がどのくらいでどうだということについては、今のところ私ども資料を持ち合せていないのであります。
  192. 滝井義高

    滝井委員 公費はわからぬでけっこうであります。そうしますと、厚生保険特別会計の歳出関係を見ますと、健康保険の保健施設に必要な経費が一億三千七百四十一万七千円、健康保険の福祉施設に必要な経費が六億六千四百三十四万五千円、日雇労働者健康保険の福祉施設に必要な経費が二千三百八十五万三十四、厚生保険の福祉施設に必要な経費が五億一千三百七十二万九千円とこうあるわけです。これは当然健康保険に関する限りで言えば、六億六千四百三十四万五千円というものはそういうものになっていくわけです。病院施設の金になっていくわけです。あなた方がその六億有余のまあ税金に準ずる金を出していくわけなんですよ。しかも無料で国有財産は貸し与えておって、そして保険課長が常務理事に大がいなっています。それは御存じでしょう。都道府県の保険課長が常務理事になっていることは御存じでしょう。——まあ頭を縦に振っているから御存じなんでしょう。そうするとこれはあなた方の部下ですよ。全国保健所会議というものはしょっちゅう開かれていらっしゃるわけですね。そうしますと、その報告がないわけですか。とうとい国の財産、これはわれわれの血税ですよ。国有財産は血税ですよ。われわれの血税のかたまりである国有財産を貸し与えておる。そうしておって、そこの病院がうまくいかなかった場合に、一体その責任はだれが持つかといったら協会が持つ。協会がその責任を持てない段階にきたら当然知事ですよ。あなた方ですよ。ベースアップができぬというのは一つの責任です。だからベースアップのできる方法を講じてやらなければいかぬです。ところがそれは個々の医療機関にまかして、おれらは知らぬというなら、こういう病院はおやめなさいと言わざるを得ない。私の言うことはこれは筋が通っていると思う。少くとも全国の健康保険のモデル病院だ、模範病院だといって全国的に宣伝をしているのでしょう。だからそこらあたり一つ……。会費はまあわからぬでもけっこうです。私本のあっちこっちを探したらあったのです。たとえば東京の協会の状態を見ると、本会の設立の日に有する基金、会費、寄付金、財産から生ずる収入、事業に伴う収入その他の収入、こういう六つから財政はなっておるでしょう。ところが病院は特別会計になっております。これは協会の財政とは全然別ですよ。病院は特別会計になっておるということは何ということですか。独立採算ということですよ。だから借入金や何かはおそらく病院がやらなければならぬのじゃないかと思うのです。厚生年金の還元融資なんか多分小倉の朝日新聞に委託をしておるのなんかやっておると思う。これらは収入が単価が上らぬのでやっていけない、赤字で困っておる、そういう実態なんですよ。そうすると、特別会計でやるということになると一体どういうことになるのかということなんです。たとえば東京なんかでも予算というものはそう何億という予算ではありません、全部で多分二千万かそこらくらいの予算なんです。病院が赤字になったらとても協会にはつぎ込むだけの金なんというものはないですよ。病院は全部特別会計でやられておる。そうしますと、特別会計でやられておるということになると、一体病院の組織はどういう組織になっておるかということです、これは御存じないですか。病院はいかなる組織と機構で運営せられておるか、おわかりになりませんか。
  193. 高田正巳

    高田(正)政府委員 御質問趣旨がよくわかりません、病院の組織というのはどういう意味でございますか。
  194. 滝井義高

    滝井委員 財政は特別会計なんでございますが、一体病院の収入、支出というものはだれが責任を持ってどういう工合にやっていっておるのか、協会が全部持っていって責任を持つというならば、たとえば東京だけでも病院は相当ありますぞ。     〔委員長退席、八田委員長代理着席〕 東京だけでもちょっと数えると今九つぐらいある、ここに載っておるのは昭和三十年で九つぐらいある。そうしますと、これは社会保険協会が自分の予算としてきちっと一括して組んでおるものなのか。それとも個々ばらばらの、蒲田病院なら蒲田病院、松籟荘なら松籟荘というふうにみな別々にやっておるかということです。いわゆる財政上の組織、それから人的な組織もあるでしょう。一体それがどういうことになっておるか。私はこの前から一週間ばかりの時間を与えておるのだけれども、十分御研究になっておらぬようです。これはやはりまじめにやっておると思います。私は、税金がかからすに、国の財産を借りてやっておる病院がふしだらなことではいかぬと思うのですよ、国有財産ですからね。それを無料で貸してもらってやるというのは、簡単に言えば、こんな病院経営くらい楽なことはないですよ。ところがそこにごたごたが起ってくるというのは、何かそこに欠陥があるのです。その欠陥は一体何なのかということはわれわれが探求する前に当然あなた方が探求しておらなければならないはずなんです。ところがこれは調べれば調べるほど複雑です。病院の経理なんというものは、私もずいぶんいろいろ調べたけれどもよくわからないところがある。しかも全国に七十有余もあるということで、われわれにはわからないのです。まあ病院の組織等ははっきりしないのでありますが、組織はとにかくとして、そうしますと一体この病院は公益性があるとあなた方は思いますか。国の財産を借りているというだけでは、公益性があるとは言えませんよ。一体、私的医療機関とどこが違いますか。社会保険病院は資本家が運営しておるとすれば、これは私的医療機関以上のものです。資本家が労務政策のために利用しておるとすれば、私的医療機関以前のもので、封建的な関係のものだ。これは一体、公益性はどこにありますか、教えて下さい。
  195. 小沢辰男

    ○小沢説明員 病院の組織はどうなっているかという非常にばく然とした質問でございましたので、再度御趣旨をお伺いしたわけでございますが、私の方では病院の運営準則というものの中に相当詳細な規定を定めておりまして、それによって、まずこの病院が健康保険の福祉施設として規定された病院でございますので、たとえば各病院で病院の運営委員会を設け、しかもその委員は事業主、あるいは被保険者、あるいは公益を代表する者、あるいは病院を代表する者等の代表によって運営委員会を設けて、この委員会で病院に関する重要な事項を審議するための機関を設けておけとか、あるいはまた病院には職員及び職務という規定を置きまして、院長、副院長、あるいは医務部長、看護部長、あるいは薬局長というような組織も、基準としては明確に指示をいたしております。また職員の任免及び懲戒につきましても、大体国の行き方とならいました詳細な規定を置いてございます、またその経理につきましては、会計の事業計画を立てる場合に必ず監督官庁の承認を得るとか、あるいは決算の場合には経理自体については都道府県知事の承認を得なければならないということで、詳細に準則を定めましてこの準則通りの運営をやらすようにいたしておるわけでございます。また各病院もこれによってやっておるのが実情でございます。  またただいまお話の、協会からの予算を見るとこの病院の責任をとるような予算が作られてないように思うがというお尋ねでございますが、病院の事業運営のためには、この準則では病院特別会計を設けろという指示をいたしております。そして、その病院特別会計で運営をやるようにということを言っておるわけでございます。  なお、社会保険協会が事業主の集まりであるということからいたしまして、資本家が運営しているというような御非難でございましたが、この病院の性格はあくまでも健康保険の福祉施設として、被保険者のための病院を保険料のうちから若干のものをさいて設けているということでございますので、施設そのものは政府管掌という関係上国有でございますが、これらは一般の税金が全然関与していないわけでございまして、たまたま結核増床に協力する意味で保険料から三分の二を出し、三分の一を国の方から出してもらって、例のベッドの割当を消化する意味での結核増床はいたしましたけれども、その他は一般会計のいわゆる税金とは、おっしゃるような関係は全然ないわけでございます。しからば一体この病院の性格はどうだという再度のお尋ねでございますが、健康保険法の規定に基く被保険者の福祉施設でございまして、できるだけこの社会保険病院を被保険者が利用できて健康保険の診療をいかんなく受け得るようにしよう。もちろん歴史的には、御承知の通り終戦後の医療機関の壊滅というような事態もございましたために、被保険者の診療を何とか確保したいという念願等もありまして発足した施設でございますから、そういう意味で健康保険の事業の面から、私どもとしては大いにそういう面での公益性はあるというように考えておる次第でございます。
  196. 滝井義高

    滝井委員 私ちょっと時間がきましたので、あと次会に譲りますが、この準則に基いて契約を結ぶ、というその契約の四条には、乙、これは協会です。社会保険協会の会長ですね。乙は病院を経営するために、病院特別会計を設置し、その収入をもってその支出に充てるものとする。ともうこうきまってしまっておるのですよ。収入で支出に充てることになってしまっておるのです。そうしますと、これは独立採算制で収入が少いとベースアップも何もできなくなってしまうのです。そういう行き方が今許されるか。だからこれは一つ私はお願いしたいのです。二十三条に基く施設ですから、少くとも労働者が保険料の半分を納めておるということです。そうしてしかも社会保険協会の会費というものは何によってやるかというと、十人未満の事業所は三百円、たとえば東京に例をとれば、これはまさか資本家が自分のふところから出しておるわけではない。おそらく保険料から出しておるのではないかと思うのです。たとえば被保険者数の区別、会費年額十人未満三百円、十人以上三十人未満六百円というふうにずっときまっていっておる。そうしますと、この常務理事とか、理事者には少くとも労働者代表を入れるべきです。——社会保険協会には入っていない。そうして運営をやることがほんとうにモデル病院になっていくのです。ところが見ると、こんなりっぱな事業案内を作って金をかけていますが、こういう写真が載っています。鹿島守之助、その次に初代会長中山正則、石川島重工業株式会社取締役、総務部長、それから宮尾さん、これは健康保険のベテランです。当時藤倉電線株式会社の取締役、三代目松本昇、当時参議院議員、資生堂社長、全部載っている。支部長です。式場隆三郎さん、勝又勘作さん、芝運送株式会社、みんな載っている。私は労働者の代表が一人くらいあるかと思ったら一人もない。これでとにかくモデル病院になって勤労者のあれをやるということは、昭和二年のときの慈恵政策そのままだと思う。もはや二十世紀の後半で、原子爆弾ができて、人工衛星が空を飛ぶ時代になったらこれは改組しなければだめですよ。どうですか、社会保険協会を改組する考えありますか。
  197. 高田正巳

    高田(正)政府委員 ただいまおっしゃいますように、確かに社会保険協会は事業主の集まりでございますが、しかし保険料から会費を出すということは絶対にありません。事業主がそれぞれメンバーとしての会費を分担いたしておるわけであります。  それからなぜ社会保険協会というものがそういう組織になっておるかといいますと、御承知の通り健康保険法では事業主がすべての責任の主体になっております。保険料も全部事業主の義務でございます。たとい被保険者の分といえども、被保険者が納めないからといって、あるいはまた納められないからといって事業主がわれわれに対する保険料の納付を怠るわけにはいかぬわけでございます。とにかく事業主を中心にした法律構成というものをとっておるわけでございまして、それと協会とは法律的にはもちろん関係はございませんが、社会保険協会というものはそういう意味では事業主の集まりとして協会ができまして、保険の事業にできるだけ協力しようという組織ができ上ったわけでございますが、そのために病院の運営が、先生のおっしゃるように事業主の色彩だけで運営されるようなことがあってはいけないので、われわれの方の準則では、病院に運営委員会というものを作るように指示をいたしております。個々の病院に全部運営委員会というものを作らせるようにいたしまして、その運営委員会には被保険者、事業主あるいは病院を代表する者、あるいは公益を代表する者それぞれ平等の立場で関与せしめまして、これが当該病院の運営を健康保険の福祉施設らしく運営するための諮問機関として存在させるようにいたしておるわけでございますし、また一方われわれの方も常時この社会保険病院に、先ほど申し上げました国有財産の管理なり、あるいは運営方針なり、あるいは経営の内容等につきましていろいろ先生のおっしゃるような弊害が起らぬように処置をいたしておるつもりでございます。現在もちろん勤務員の給与問題等も重大な関心でございますので、私の方でも実は過般近くのものを呼びまして、その点の切りかえを指示いたしておりました。東京で先ほどおあげになりました蒲田にいたしましてもあるいはまた東京で事業をいたしております松籟荘にいたしましても、この松籟荘は現在のところすでに公務員並みの給与の実態になっております。また蒲田にいたしましても医師は前歴の年数の八割を勤務年数に加え、さらにプラス四号俸というようなことにするなど、労働組合との相談の上に給与表を作り上げて一月から切りかえを逐次実施しておるという状況でございますので、資料の出そろい次第、私どももそういう点の行き届かない面につきましては十分指導をして参るつもりであります。
  198. 滝井義高

    滝井委員 私はこういう国の財産を貸してそして運営するものが、資本家だけの集まりでは今後はいかぬと思うのです。それはなるほど会費は資本家が出すかもしらぬけれども、施設の金というものは少くとも労働者が半分出している。労働者の保険料がその中に入っていっておるわけです。しかも労働者のために模範的なものをやってくれるのだといっても、受ける方の側に発言がなければ何もならない。ですからこれは少くとも、昭和二年にできて伝統があるかもしれないけれども、現在の社会保険協会というものにメスを入れて、きちんと民主的な運営のものにすべきだと思います。そうでなければ国有財産などは貸せませんよ。まるで今の日本の政治が大資本のために奉仕するような傾向になって、体のいい慈恵的な労務政策によって運営せられてしまうとも限らない。あたかも資本家が作り出しているような格好になっている。ところがあにはからんや調べてみると、結局施設というものは健康保険の会計の中から業務勘定にある程度出ている。あるいは運営の一番中心になるものはわれわれ国民の血税なんですよ。しかも資本家は協会へわずかな金を出しておって、あたかも全部を出しているような擬装が感じられるのです。外から見たらそう感ぜられる。われわれも社会保険協会というものが運営の主体だと思ったら、全部金を出してくれてやっておったと思って調べてみたら一文も出していない。これはまるで公益性がない普通の私的医療機関以上です。国の財産を借りておって、そして従業員は国家公務員と同じものをやっておるというが、搾取が行われておる。激しい搾取がそこでは行われているかわり公益性がない、これはほんとうは税金をかけてでも一ぺんやらしてみるべきです。ところが国の財産を借りているというようなわけで、あたかも公益性があるような感じを受けるだけのことなんです。実態は公益性は一つもない。今までの質問を通じてみても、労働協約もつけておらぬ、これは今度社会労働委員会に切りかえて、労働大臣呼んでやらしてみたらあなた方まるきり処置なしです。しかも国家試験を受けたインテリばかり集まった病院です。日本の最高の技術者が集まった病院です。私はまだだいぶありますが、大体実態がわかりました。従って、これによってももはや日本公的医療機関、あるいは第三の範疇に属する公的医療機関に類似したものはやっていけぬ状態が出てきたことは確実なのです。役人と同じようなベースアップもできない。ですから高田理論の八・五%というものは実行したところでとてもだめだということがこれではっきりしてきた。あなたがもしやれるというならば、三カ月でもいいから、問題の一番起っている蒲田病院や松籟荘をやってごらんなさい。そうしてあそこの従業員諸君が国家公務員と同じベースになり、健康保険のモデル病院になるというならば、私は全国を説得して回って、高田さんの八・五%に賛成いたします。そういうことができない前に、日雇い健康保険をその上に重ねていったら大へんなことになるのです。ますますそういう弱いところに悪い医療が重なってくる結果にもなりかねない。ですから、法律の審議は、これからゆっくりやらせてもらいますが、まずあなたの所管の病院だけは、医療従業員の待遇も治療の内容も経理も公開をして一つ見せてもらいたいと思う。そこでさいぜん病院の組織を言いましたが、次会には、何なら決算委員会で調べさしてもいいです。あなたの方で一つ東京の実態を明らかにして下さい。もう日本医療というものはふたをする段階ではない。全部大衆の前に明らかにしていかなければならない。そうしていかに日本医療というものが大衆に圧力を加えておる医療であるか、保守党の政府のもとにおける社会保険政策というものを赤裸々に示さなければいけない。見てごらんなさい、あなた方が三十億とったものが、またぼやかされたじゃありませんか。こういう実態が明らかにこういう施設に現われてくるのです。それは医療従業員の給料になって現われる、次の段階には結核患者に十本注射したら、それを七本に切るという、こういう情勢になって現われてくる。その次には、結核患者が病院に行った場合には十本の注射は受けられない、七本になってしまう、こういう実態が徐々に現われてくる。ただ医療は急激に現われないで、徐々に現われてくるだけのとです。こういうことが現われる前に、やはりわれわれはこれを明確にしなければならぬ。そこで、一番早いのは東京ですから、国民健康保険の過程で、この社会保険協会の鹿島守之助さんに何なら一ぺんきてもらってけっこうだと思うのです。たとえば問題のあった蒲田病院それから松籟荘というような東京にある病院の収支の状態、それからそこにおける公務員の給料、特に国立東京第一病院あたりと比較して、一つ資料として次会までに出していただきたいと思います。これは資料として次会までに出すことはできるでしょう。主なところはもうやってしまったのですから、次会にはそういう具体的なところをやってもらって、そうしてあなた方に協力してモデル病院を作っていく。しかも、保険課長が常務理事なのです。その運営はもう少し民主的なものにしてもらいたい。社会保険協会というものを資本家の集まりにする必要はないと思う。労働者のための施設として国有財産を使っておるならば、資本家だけにまかせる手はないのです。だから、そこは少くとも労働者代表も入ってフェアに運営ができる、民主的な健康保険のモデル病院ができるように、中小企業の劣悪な労働条件にある諸君に、厚生施設によってそれをまず補わなければいかぬから、そういう中小企業の労働者代表が当然そこに行って発言ができる機会を作る場所を設けなければいかぬと思う。単に病院の運営だけではない。しかもこれは日本の社会保障の指導的な方向を確立するためにできておるというのが社会保険協会の目的の中に書いてありますよ。  あと社会保険連合会のことをまだ聞いておりませんから、次会、そういう資料が出たら連合会の方ももう少し聞かしてもらいたいと思います。私は保険局全体のこういう外郭団体的なものを全部一ぺん、この前も言っておったように、ある程度洗わなければならぬ段階がきた、というのは、今後年金をやる、国民健康保険をやる、そして健康保険をやるということになると、高田さんの領域というものが膨大になる。厚生省行政というもののほとんど大半というものは、あなたの行政のもとに入りましょう。いずれあなたの方は、これは外局の保険院か保険庁というものを作るという構想があるとか、二、三日前の新聞に出ておりましたが、そういうものにいく前に、今の機構というものをきれいに、そして民主的な運営を確立して、しかもほんとうに国民医療にたえ得る機構というものを作らなければいかぬと思うのです。手足まといと言っては語弊があるけれども、前時代的な機構というものをあなたのしりにつけていったのでは、あなたの名誉のためにもよくないと思うのです。そういうわけで、忙しい時間の中を二日も三日も博間をかけて実は私は調べてきたのです。次会は東京における病院が一番いいと思うのですが、二つ、三つでけっこうですから、いいもの、悪いもの、中ごろくらいのものを出してもらって、そして給与の実態を国立病院の代表というようなものと比較してもらう。そして、社会保険協会の連合会のことを少しお聞きしたい。大体以上で終ります。
  199. 八田貞義

    ○八田委員長代理 長谷川保君。
  200. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 時間もおそいようですから、少しだけ私は質問をしてみたいと思います。ただいま滝井議員から非常に熱心に健康保険関係の具体的な問題についていろいろお聞きになったのでありますが、私も滝井議員と同じように、今回の日雇い健保の改正というものは、われわれ長年主張しております事柄の一歩前進したという意味において、けっこうなことだと思うのでありますけれども、心配になりますのは、こういう一部分の改正が、前進的な改正がなされるということによって、今日非常に大きな問題になっている根本的な問題は、やはり依然として解決されておらないのじゃないかということを思うのです。滝井委員健康保険病院のことについて、いろいろその点を心配されて、追及をされておりますけれども、私はまる一年間よその委員会に席を持っていたので、私の質問するところが、すでに滝井議員、その他多くの方々から質問されてニ重になっていることかもしれませんけれども、ということであればまことに恐縮なことでありますが、時間もありませんから、今後私の質問を展開することについての基礎的なことを少し承わりたいと思うのであります。  まず保険局長に伺いたいと思いますが、この十月一日から社会保険診療報酬の会合化をするというために八・五%の単価の値上げをするということでありますけれども、八・五%を十月から上げるということで、この問題は適当に解決されるというお考えであるか、この点をお聞きしたいと思います。
  201. 高田正巳

    高田(正)政府委員 十月一日から八・五%程度診療費を上げたい、かように考えておりますが、私はそれが適当であるというふうに考えております。
  202. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 あなたはおそらくおなかの中では適当であるとは考えておられない。不適当だと考えておられると思うのですが、諸般の事情からそうなったということでありましょうと思いますが、そうおっしゃれば私はあまり追及する必要はない。けれども適当であるというお答えをいただくとすれば、これはいろいろ根掘り葉掘り伺わなければならぬということになるわけです。それでは医務局長に伺いますが、国立病院の今日の経営は満足であると思われるのですか。
  203. 小澤龍

    ○小澤政府委員 どの程度にいったならば満足であるか、実はその標準をどこに置くかということが一つ問題になります。もっと楽な程度の高い運営といいますか、行き届いたサービスをするといいますか、富裕な外国の先進国に比べれば、わが国の病院の運営の現状は不満足ではないかと思いますが、しかしながら標準の置き方によっては、日本は貧乏なのだからこの程度でがまんしなければならないということになれば、がまんしなければならないか、こう考えております。     〔八田委員長代理退席、植村委員長代理着席〕
  204. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 そうすると、予算要求額事項別調の方で、具体的に基礎的なことを伺いますが、明細書の四十ページ、三十三年度国立病院特別会計予算要求額調、この中の積立金よりの受け入れ、これは三千万円ですか、三億円ですか。
  205. 小澤龍

    ○小澤政府委員 三千万円であります。
  206. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 この三千万円はどういう意味の受け入れでありますか。
  207. 小澤龍

    ○小澤政府委員 御承知のごとく病院の収入と支出は、実は予定通りにぴったりいくものではありません、年度末に黒字になり、あるいは赤字になる場合があり得るわけであります。従来予想したよりも若干でも収入がふえた場合は、これを積立金として積み立ててあります。総額はたしか二億円ちょっとこすかと思います。毎年度の予算を編成するに当りまして、診療費の収入のほかにいろいろの収入を見込みまして、なお相当程度前年来の黒字の積み立てがございますので、それを目の子算用でございますけれども若干繰り入れて全体のバランスを合わせる、こういう考え方でございます。
  208. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 国立病院の診療費の一割引している部分は年間幾らありますか。
  209. 小澤龍

    ○小澤政府委員 実は国立病院では建前といたしまして、健康保険診療報酬でやっておりますので、割引をしておりません。国立療養所ではさらにそれよりかも二割引をいたしております。その総額が幾らになるかということは、ただいま資料がございませんので、申し上げることはできません。
  210. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 これは全部一割引ではありませんか。私の聞いたところでは一割引があるということでありますが、これは療養所の関係ですか。
  211. 小澤龍

    ○小澤政府委員 制度的に割引しておりますのは、療養所だけであります。療養所だけは終戦以来引き続き今日まで二割引をいたしております。国立病院は割引をしておりません。
  212. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 国立病院の方では結核の方も二割引はしておらないのですか。
  213. 小澤龍

    ○小澤政府委員 国立病院におきましては、結核に対しましても二割引はいたしておりません。
  214. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 わかりました。私は国立病院という名前をつけている療養所で聞いたのでこういうことになったのですね。わかりました。  国立病院への投下資本、今日でいえば全体の財産ということになるのですか、時価では見積れないかもしれませんが、全体は幾らになりますか。
  215. 小澤龍

    ○小澤政府委員 国立病院の現在の資産というものは、計算したものはございますが、ただいまその資料をここに持ってきておりませんので、お答え申し上げかねます。
  216. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 三十三年度の雑収入の内訳は大体どういうようなものですか。
  217. 小澤龍

    ○小澤政府委員 雑収入としてあげました中には、たとえば職員の国庫納金であるとか、あるいは不用品の売り払い代であるとか、さようなものが含まれております。
  218. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 義肢等の販売及び修理の収入が千二百九十九万になっておる。それから支出の方を見ますと、これが四百七十万八千円かになっておりますけれども、この差益と申しますか、これはどういうことで出ておるのでしょうか。
  219. 小澤龍

    ○小澤政府委員 この支出の中身は実は材料費でございます。人件費等は別に人件費に組んでございます。従って収入は義肢等の販売及び修理の収入の全般でございますが、ここに現われておる支出は材料費の支出が主たるものである、さよう御了解願いたいと思います。
  220. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 四十一ページの方で出て参ります国立病院経営に必要な経費、これは人件費は含んでいると思われますが、さように考えてよろしゅうございますか。
  221. 小澤龍

    ○小澤政府委員 人件費はこの中に含まれてございます。
  222. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 国立病院の診療の料金の収入は七十五億四千万円、経営に要する費用は七十億六千万円というようにここに出ておりますけれども、そうすると、差引国立病院の表面上の収入は四億八千万円ということになるのでありますが、大体これが五・一%の利益率と考えることができると思うのです。こういうように考えて参りますと、国立病院のこの差益を総利益と見るとしますと、医師の診療収入の二八%ということがよく所得税課税のときに問題になるのでありますけれども、その医師の診療収入の二八%というのは所得税を課税するようなそういう見込みというものは妥当だと医務局では考えておるのでしょうか。
  223. 小澤龍

    ○小澤政府委員 大きな病院経営と小さい診療所の経営はおのずから経営の内容が違ってくるかと思います。従いまして二八%が課税対象になるということを一律にきめることが妥当であるかどうかということになりますと、いろいろな問題が出てくるのではないかと思うのでございます。特に開業医を対象とした場合、現状におきましては二八%程度が適事ではなかろうかと考えております。
  224. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 ごく基礎的なことだけ伺っておきますが、四十ページの3のところに、一般会計からの受け入れ十四億四千七百万円というのがありますが、これは七十五億四千万円に対して一九%に当ると思われるのであります。大体国立病防の会計の支出の方には不当な支出と考えられる項目は見当らないのでありますけれども、この一九%のものを受け入れなければ国立病院というものはやっていけない、こういうことに考えてよろしいのでしょうか。
  225. 小澤龍

    ○小澤政府委員 この十四億四千万円の一般会計からの受け入れの大部分を占めるものは施設整備費でございます。施設整備費はたしか十二億程度であったかと存じます。御承知のごとく国立病院は陸海軍の病院をそのまま国立病院に直したものでございまして、非常に古い建物あるいは戦時中五、六年持てばいいという意味で建てて、非常に粗悪なバラックがございますので、これをできるだけ早く整備しなければならぬという建前からいたしまして、その他の一般病院と比べましてこの整備に要する費用は比較的多くならざるを得ない、かように考えております。なおそのほかに相当たくさんの看護婦養成所を経営しております。あるいは器械等も陸海軍時代の古いものもございます。医療器械、器具類もできるだけ早く整備しなければならぬ、かような立場から一般会計よりの受け入れがおのずから多額になる次第でございます。
  226. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 これだけのものを入れて施設整備をしておるわけでありますけれども、これは一般の私立病院あるいろは私立診療所またはこれに準ずるようなものも当然自分の資本で入れております。これだけのものを入れまして、なお国立病院は一般の今日の医療水準に比べていいとは私はいえないと思う。まだまだよほど設備をしなければいけないのではないか、こういうように思われるわけです。そういうことになると、どうもいろいろ滝井委員からも国立病院の内容について追究があったようでありますけれども、やはり相当先ほどのような生活保護健康保険診療報酬というものでやっておる病院には相当外部からつぎ込んで、なお実際にはまだまだ医療設備等におきましても非常に不十分であるというように考えられるのでありますけれど、そういうことになって参りますと、先ほど保険局長の言われました八・五%を十月から上げるということで適当だという考え方はどうも変だと思うのでありますが、保険局長はどうお考えになりますか。
  227. 高田正巳

    高田(正)政府委員 医療の適正な値段というものをどういうところにきめるかという場合におきまして、特に問題としましては地域的な問題もございまするし、あるいは医療機関の規模等の問題もあるわけでございます。それで国立病院というようなものは医療機関としてはやはり一種の特殊なものでございまして、国立病院として概して大病院が多うございます。それから国立病院として一般の医療機関が行なっていないようないろいろな業務をやっております。従いまして私どもといたしましては基準医療機関の数のうちで非常に多くを占めておりまする診療所にとったわけでございます。しかしこの診療所はプライベートな診療所だけ、いわゆる個人開業医だけをとりませんで、公けのものをもとりまして一緒にいわゆる医療法にいう病院、診療所、その診療所を基準に実はいろいろな計算をいたしたわけでございます。そのやり方につきましては、これは論議のあるところでございます。調べてみますると、診療所と病院とではコストも違う場合が相当あるわけでございます。それは大いに論議のあるところでございますが、従来から医療費の値段をきめまする場合には、機関の数として非常に大多数を占めておりまする診療所というやり方をいたして参っておりますので、今回もいろいろ検討をいたしました結果、やはり従来のやり方をとるよりほかに方法があるまいということになりまして、診療所を基準にものを考えて参ったわけでございます。病院の、ことに大病院の場合等には、違ったいろいろな経費等もかかるわけでございます。それかと申して医療費の値段を、病院と診療所と二つに分けることも、これは実情としてなかなかむずかしいところでございます。従いまして、いろいろ論議があったところではありますが、診療所を中心にものを考えるということでございます。診療所を中心にものを考えました際に、その計算の過程は非常に複雑な、詳細なものでございますが、私ども見解といたしましては八・五%程度が妥当なところであるという結論が出てきたわけでございます。その意味におきまして、規模的にもあるいは性格的にも特殊でありまする国立病院にこれを当てはめてみまして、それがぴたりといかないという点もあるいはあるかと存じます。しかし私どもといたしましては、体制として医療機関を一本に——公私医療機関、大規模、小規模を一本に考えるといたしますれば、今の診療所を中心にしてものを考えた八・五%というものが妥当である、こういう見解に到達をしておるわけでございます。
  228. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 そうすると、私先ほどほかの委員会をやっておったので十分注意しておりませんでしたが、甲表乙表というような診療報酬問題が先ほど出ましたが、あれはどういうことなんですか。
  229. 高田正巳

    高田(正)政府委員 甲表乙表というのは、病院、診療所の区別なく、病院であってもどちらでもおとりを願いたい、診療所であってもどちらでもおとりを願いたい、こういう建前で私ども考えておるわけでございます。ただ甲表の方は従来の点数表とは相当大きく変っておりますので、従って各科によって出入りがあるわけであります。そういう際に、各科を備えております総合病院では、片一方があまり伸びなくても片一方がよく伸びるとかいうことで、全体の病院経営としては調整がっく。ところが診療所で、たとえば眼科なら眼科の診療所ということになると、眼科のことしか関係がないわけでありますから、調整がつかない。そういうところから、比較的大きな病院が甲表をとることが容易であるという点が一つと、もう一つ診療報酬の請求事務が、甲表は非常に省略されてしまうわけなんです。そういたしますと病院なんがうんと請求書を出すものですから、その事務のスタッフというものが、もう病院経営の経費の大きな部分を占めているわけです。そういう方が節約できる。これが個人の開業医等でございますと、自分がやったり、奥さんがお手伝いになったり、看護婦さんがやったりして、家内労働的なところでやれるから、従来よりはあまり変らない方がいいというお気持もあるわけであります。そういう点で甲表は、比較的病院の方で評判がいいわけでございます。しかし建前はあくまでもどちらでもおとり下さいということでございます。なお個人開業医といえども、診療所の中の個人の開業医師といえども、これは年令の関係でございますとか、いろいろその方の経営方針によりましては甲表を好まれる。また当てはめてみると甲表の方が得になるという方もだいぶあるわけでございます。従いましてこれを片一方に病院向き、片一方は診療所向きというふうなやり方にいたしますれば、むしろ非常に窮屈になりまして実情に即さないのではあるまいか、こういうふうな考え方をいたしておるわけでございます。
  230. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 おのずからそこに、甲表乙表をお作りになったのにはいろいろな理由もありましょうけれども片一方は病院向き、片一方は診療所向きというお考えもあったのではないかということを、私は表を拝見いたしまして考えておるのでありますけれども、時間もありませんからこまかくは次に伺うといたしまして、今の保険局長のお話に、国立病院というものの特殊性というようなお話もありましたが、医務局長にお伺いしたいのですが、国立病院のベットは、たとえば大きいのは千もありましょう、小さいのは百とか二百とかいうベットがありましょうが、数で申しまして国立病院の中で、たとえば三百持っている病院が一番多いとか、二百五十持っているのが一番多いとか、五百持っているのが一番多いとか、そういうベット数——これは概略でかまいませんけれども、一応ベット数でどれくらいあるのが一番数が多いのでしょうか。
  231. 小澤龍

    ○小澤政府委員 御指摘のごとくに千ベット近くのものから百ベットの間でありますが、大体四百前後、三面から四百、あるいは四百少し上というのつが最も多いのではないかと思います。
  232. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 七十六カ所の病院でもって二万四千三百床というような数字を考えてみますと、大体そんなふうにも考えられるのでありますけれども、大体三百ないし四百というベットを持っておるとすれば今日の病院経営では一番やりやすい。先ほどの、国立病院が特別な関係のものだというようなお話の中で、療養所としてはずいぶん不便なところもございますが、しかし大体国立病院の方は療養所と違いましてそうひどく不便なところは少い。外来も来やすいというところが一般に考えられる。そうすると大体三百ないし四百あれば今日の病院経営では一番適当な施設であって、しかも今言ったような国立病院としましては、療養所と違いまして都市にあるということになりますと、先ほど保険局長のお話の特別な事情があって、必ずしも収支がうまくいかぬというような結果にはならないと思うのです。看護婦の養成所というお話もございましたけれども、少し大きな病院では看護婦、準看護婦の養成は皆やっていると考えてよろしいのでありまして、従って私は国立病院の経営が今日のように非常にかんばしくない事情になる理由がわからぬのですが、どういう理由があるのか、そこを保険局長医務局長から御答弁願いたいと思います。
  233. 小澤龍

    ○小澤政府委員 国立療養所と国立病院と比較いたしますと、御指摘のごとく、国立病院は、国立療養所よりも比較的便利なところ、民衆の利用しやすいところにあることは間違いないのでございますが、しかしその他の一般病院に比べますと、なお立地条件が非常に劣悪だということがいえるのではないかと思うのです。もともと陸軍病院は、多くは練兵場の隣でございますから、今日でも郊外が多いのであります。海軍病院に至りましては、海軍の兵隊さんを陸に揚げて治療、静養させるところでございますので、不便なところに多く建てられておるのでございます。従いまして、たとえば一般の病院でありますと、入院患者一に対して——結核、精神等の特殊病院を除く一般病院では、入院患者一に対して、外来は二・五くらい来るのが世間一般の例でございますが、国立病院は、今日におきまして入院、外来の割合は一対一でございます。このことをもっていたしましても、国立病院の立地条件は一般病院に比べて不便なところにあることがおわかり願えるのではないかと存ずるわけであります。  さらにまた、建物の構成、配置というものが非常に不便にできております。これは、おそらく陸軍などは、満州において野戦病院を開設したときの訓練ということを考えたのじゃないかと思いますけれども、陸軍病院の多くは廊下が南側で、北側の寒い方が病室になっておるのでございます。それから炊事場と病棟との間は、著しく距離り間隔が開いたところにありまして、一々運搬するのは大へんであります。しかもボイラーなども反対側についておりまして、熱のロスが多い。戦前は、陸軍、海軍病院でありますと、従業員を雇用するのはきわめて容易であった。赤紙一つで幾らでも採用できたという関係から、人手ということはあまり考慮しなかったらしいのでありまして、むしろ訓練ということを主にしたと考えられるのでございます。そういうふうに、他の一般の病院に比べて、今日国立病院はなお劣悪な経営の条件下にあるということもいえるのではないだろうかと思うのであります。その他いろいろ例はあげれば多々あると思いますけれども、おもなるものをあげるとさようでございます。
  234. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 国立病院は、一般の病院に比べまして、いいところもたくさん持っている。経営としては非常に有利な点を持っている。先ほど申した投下資本の問題もあります。資本に対する利子というものも、一般の病院の経営の場合のように考える必要はない。一般の病院では、借金をすれば、大体一割の利息を出して、そして施設を作るわけですが、それも必要としない。さらに税金はもちろんでありますが、償却費もなし、保険料も、限職積立金もないというように考えておりますけれども、さよう考えてよろしいのですか。
  235. 小澤龍

    ○小澤政府委員 国立病院といたしましては、特に投下資本に対する利息は考えられておりません。従って、減価償却というものは考えないでもいいのであります。退職積立金は、別途職員共済組合の方でこの業務を行なっておりますので、その方への使用人側としての振り出しは、相当額ふえていると思います。
  236. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 今の退職積立金ですが、もちろん共済組合にも入っておりますけれども、国立病院会計からは出ていないでしょう。
  237. 小澤龍

    ○小澤政府委員 国立病院会計から、つまり事業主側の負担分が出ております。
  238. 植村武一

    ○植村委員長代理 本日はこれをもって散会いたします。     午後四時三十五分散会