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1958-03-11 第28回国会 衆議院 社会労働委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年三月十一日(火曜日)     午前十一時十分開議  出席委員    委員長 森山 欽司君    理事 植村 武一君 理事 野澤 清人君    理事 八田 貞義君 理事 滝井 義高君    理事 八木 一男君       小川 半次君    亀山 孝一君       草野一郎平君    小島 徹三君       田子 一民君    中山 マサ君       藤本 捨助君    古川 丈吉君       亘  四郎君    赤松  勇君       井堀 繁雄君    岡  良一君       五島 虎雄君    中原 健次君       山花 秀雄君    吉川 兼光君  出席国務大臣         内閣総理大臣  岸  信介君         厚 生 大 臣 堀木 鎌三君         労 働 大 臣 石田 博英君  出席政府委員         内閣官房副長官 田中 龍夫君         厚 生 技 官         (公衆衛生局         長)      山口 正義君         厚 生 技 官         (公衆衛生局環         境衛生部長)  尾村 偉久君         厚生事務官         (社会局長)  安田  巖君         労働政務次官  二階堂 進君         労働事務官         (大臣官房長) 澁谷 直藏君         労働事務官         (職業安定局         長)      百田 正弘君  委員外出席者         労働事務官         (大臣官房労働         統計調査部長) 大島  靖君         専  門  員 川井 章知君     ————————————— 三月七日  委員栗原俊夫辞任につき、その補欠として阿  部五郎君が議長指名委員に選任された。 同月十一日  委員岡良一辞任につき、その補欠として中村  高一君が議長指名委員に選任された。 同日  委員中村高一君辞任につき、その補欠として岡  良一君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 三月六日  職業訓練制度確立に関する請願古井喜實君紹  介)(第一三三二号)  同(小島徹三紹介)(第一三九九号)  引揚者給付金等支給法の一部改正に関する請願  (星島二郎紹介)(第一三六三号)  同(高橋等紹介)(第一四〇〇号)  医業類似行為既存業者業務存続に関する請願  (中馬辰猪紹介)(第一四〇一号)  同(平田ヒデ紹介)(第一四〇二号)  衛生検査技術者身分法制定に関する請願(羽  藤榮市紹介)(第一四〇三号)  国民健康保険の全市町村実施に関する請願(山  口丈太郎紹介)(第一四〇四号)  清掃施設に対する国庫補助増額等に関する請願  (山口丈太郎紹介)(第一四〇五号)  日本バルブ争議に関する請願安平鹿一君外二  名紹介)(第一四〇六号) 同月十日  引揚者給付金等支給法の一部改正に関する請願  (高橋禎一紹介)(第一五一三号)  同(亀山孝一紹介)(第一六八六号)  同(小林郁紹介)(第一六八七号)  同外一件(山崎始男紹介)(第一六八八号)  衛生検査技術者身分法制定に関する請願(保  科善四郎紹介)(第一五二四号)  医業類似行為既存業者業務存続に関する請願  (足立篤郎紹介)(第一六二二号)  同(相川勝六紹介)(第一六二三号)  同(荒舩清十郎紹介)(第一六二四号)  同(池田正之輔君紹介)(第一六二五号)  (同植原悦二郎紹介)(第一六二六号)  同(臼井莊一君紹介)(第一六二七号)  同(大島秀一紹介)(第一六二八号)  同(大野市郎紹介)(第一六二九号)  同(岡崎英城紹介)(第一六三〇号)  同(奧村又十郎紹介)(第一六三一号)  同(川野芳滿紹介)(第一六三二号)  同(菅太郎紹介)(第一六三三号)  同(神田博紹介)(第一六三四号)  同(北れい吉紹介)(第一六三五号)  同(北村徳太郎紹介)(第一六三六号)  同(北山愛郎紹介)(第一六三七号)  同(小金義照紹介)(第一六三八号)  同(小島徹三紹介)(第一六三九号)  同(小山長規紹介)(第一六四〇号)  同(纐纈彌三君紹介)(第一六四一号)  同(河本敏夫紹介)(第一六四二号)  同(齋藤憲三紹介)(第一六四三号)  同(椎名隆紹介)(第一六四四号)  同(重政誠之紹介)(第一六四五号)  同(島村一郎紹介)(第一六四六号)  同(首藤新八紹介)(第一六四七号)  同(世耕弘一紹介)(第一六四八号)  同(關谷勝利紹介)(第一六四九号)  同(田口長治郎紹介)(第一六五〇号)  同(田中伊三次君紹介)(第一六五一号)  同(田中彰治紹介)(第一六五二号)  同(田中龍夫紹介)(第一六五三号)  同(高岡大輔紹介)(第一六五四号)  同(高瀬傳紹介)(第一六五五号)  同(高橋等紹介)(第一六五六号)  同(高見三郎紹介)(第一六五七号)  同(竹山祐太郎紹介)(第一六五八号)  同外一件(渡海元三郎紹介)(第一六五九  号)  同(戸塚九一郎紹介)(第一六六〇号)  同外一件(中嶋太郎紹介)(第一六六一号)  同(中村梅吉紹介)(第一六六二号)  同(中村庸一郎紹介)(第一六六三号)  同(永山忠則紹介)(第一六六四号)  同(二階堂進紹介)(第一六六五号)  同(西村直己紹介)(第一六六六号)  同(西村力弥紹介)(第一六六七号)  同(畠山鶴吉紹介)(第一六六八号)  同(鳩山一郎紹介)(第一六六九号)  同(濱野清吾紹介)(第一六七〇号)  同(花村四郎紹介)(第一六七一号)  同(林讓治紹介)(第一六七二号)  同(林博紹介)(第一六七三号)  同(廣川弘禪君紹介)(第一六七四号)  同(福井順一紹介)(第一六七五号)  同(藤枝泉介紹介)(第一六七六号)  同外一件(堀川恭平紹介)(第一六七七号)  同(眞鍋儀十君紹介)(第一六七八号)  同(前田房之助紹介)(第一六七九号)  同(松山義雄紹介)(第一六八〇号)  同(森下國雄紹介)(第一六八一号)  同(山手滿男紹介)(第一六八二号)  同(山村新治郎君紹介)(第一六八三号)  同(山本友一紹介)(第一六八四号)  同(吉田茂紹介)(第一六八五号)  樺太引揚韓国人援護に関する請願島上善五郎  君紹介)(第一六八九号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  職業訓練法案内閣提出第九三号)  地方改善事業に関する件      ————◇—————
  2. 森山欽司

    森山委員長 これより会議を開きます。  この際岸内閣総理大臣が出席されましたので、地方改善事業に関する件について調査を進めることといたします。質疑の通告がありますのでこれを許します。八木一男君。
  3. 八木一男

    八木一男委員 岸内閣総理大臣部落問題について本日御質問を申し上げたいと存じます。  昨年の十一月十二日に開議でこの問題をお取り上げになって推進していかれるという御決定になりましたことを私ども伺いまして、長年放置された非常に重大な問題をお取り上げになるという御決意をなさいましたことについて、心から敬意を表したいと思うわけでございます。その点につきまして私どもは、この長い間の間違った状態を直すために全国民がこれをやっていかなければならない、もちろん岸内閣が続く限りにおいて強力に取り上げていただかつなければならないと思います。また将来の内閣もこれを取り上げていただき、各政党も、与野党をあげてこの問題を取り上げていかなければならないと考えております。その意味で私どもも、内閣なり与党なりに、この問題に対する私ども考え方を率直に申し上げまして、御協力を申し上げたいと思いまするが、総理大臣また自民党の総裁とされまして、全国民と相談し合ってこれを進めていくお気持を強くお持ちであろうと私どもは期待いたしまするが、この点についての総理大臣の御決意を伺わせていただきたいと思います。
  4. 岸信介

    岸国務大臣 ただいま八木委員から御質問のありました部落問題ということはきわめて重大な問題でございます。歴史的の因襲とはいいながら、今日なおそういう誤まった差別感が、たとい国民の一部にでも、社会の一部にでもあるということは、私は非常に嘆かわしいことであると思います。申すまでもなく、憲法のもと、新民主主義を実現する過程におきまして、そういうことが社会的に残っておることは、一面からいえば全く日本の恥辱であり、またそういうにとが少しも許されぬことは言うをまちません。  この問題は、法律制度の上から見れば、今日は何もそういう差別が存しておるわけではない、長い因襲の誤まった差別感社会の一部、国民の一部に残っておるということでありますから、従ってわれわれが政治に当る場合におきましては、これは全く党派を超越している問題であり、内閣を超越している問題であり、またこの問題については広く国民に、十分理解を深めて協力をしてもらわなければならぬ。そういうことをわれわれが国民の間に浸透せしめて、一日も早くこれを払拭することが絶対に必要である。このためにいろいろな施設をし、もしくは方策をとることにつきましては、私は各方面の、憂いを同じくし、これをなくそうという熱意を持っておられる方々協力し、その御意見も十分取り入れて、一日も早くこれを実現していくように努力したい、かように思っております。
  5. 八木一男

    八木一男委員 総理大臣の御決意を伺いまして、ほんとうに私どもうれしく存じ、また力強く存ずるわけでございます。実はこの部落問題を、私どもの属しております日本社会党では昨年から一生懸命取り上げまして、部落問題解決政策要綱というものを発表したり、いろいろいたしております。ところが、この問題について、非常に激励して、大いにやってくれ、また自民党方々一緒にやってくれ等、いろいろの御意見を伺います中で、眠った子を起すのはどうであろうかというような御意見もたまにまじって参るわけであります。私どもはその問題を前から感じておりましたので、その問題について一生懸命考えました。それで結論として、眠った子を起すなという考え方は間違いであるという結論に達したわけでございます。いろいろ調査の結果——内閣の方でも御調査になっておられると思いますし、これからももっと精密に御調査になると思いますけれども、私ども考えるところでは、眠った子を起すなと言う人は、未解放部落出身の方で、本人の非常な努力もあり、また社会的な運にも恵まれまして、自分で経済的、社会的に進出された方が一部でございます。そういう方々は、今の民主主義の世の申のせいもありまするけれども、実際上差別的な取り扱いを受けておられないで、自分ではかなりの、解放されたという感じを持っておられる。ですから自分の身に比して、こういう問題がまだ残っておるけれども、もうしばらくしたらなくなってしまうのではないかというような感じをその人たちは持っておられる。またその人たちとつき合っておられる一般人たちも、自分はその人たち差別的概念で対していないから、これはまだ残っているけれどもそっとしておけば、しばらくしたらなくなるのではないかというような感じを持っておられる。ところがこれは非常に表向きな皮相的な見方であり、部落の中で社会的、経済的に進出した方はごくわずかです。残りの大部分、私は九割九分と言いたいのでございますが、大部分はそういう状態にありません。非常に貧困状態にございますし、非常な差別の中にあるわけでございます。総理大臣山口県の御出身でおられますから、実態をよく御承知であろうと思いますが、政府の中には、北海道出身の方は実態をほとんど御存じない、また東北では薄いし、東京では薄いというふうで、いろいろセクションがおかわりになると、そういう方々はまた同じような考えで、そういうものは必要がないと言われるのでありますけれども関西以西の問題に関心のある方は、そういう差別的事態があることをおわかりの方が大部分であります。結婚の問題で大きな差別がある。どんなにその結婚の当事者である若い二人が好き合っていて、そうして適当な相手であっても、両方の親が反対する。これは一般の親だけではありません。未解放部落の親も、その縁談自体については喜んでも、まわりに非常な差別感があるために、その結婚は将来うまくいかない、非常な苦労をするということを考えて反対をします。また観たち理解がありましても、親戚がどうしても、そこでも動かないでこれを引き裂いてしまうというようなことがありまして、そこに自殺とか虚無とかいうことが起って、一つも罪のない若い人たちの運命を大きく狂わせていることは、関西以西では残念ながらひんぱんにあるわけでございます。それからそれをささえているものは貧乏であると私は思うわけでございますが、大ぜいの人の非常な差別と貧乏を直すためには、ごく一部分の、百分の一くらいの人が眠った子を起すなと言っても——その人たちはそっとしておいたらいいですけれども、ほかの人たちが受けている、自分たち責任でない不当な扱いをよくして、今すぐ直らないにしでも至急に直して、少くとも子供時代、孫の時代にはそういうことが全然なくなくなるようにするには、やはりそのもとを直すために強力な施策をしなければならないと思うわけでございます。その点についての総理大臣のお考えを何せていただきたいと思うのであります。
  6. 岸信介

    岸国務大臣 お話通り私もかつて役人をいたしておりました当時、同和事業と申しましたか、委員会があって、それに出ておったにとがありますし、私の出身山口県でありますために、子供のときからそういうことも目に触れております。従ってその実態につきましてはある程度認識を持っております、お話のような一部の、そういう問題を取り上げて論議することが、寝ている子を起すとか、あるいはかえって何ら差別感を持っていない人に何らかの気持を起させるからまずいのではないかという説も私耳にいたしております。しかしその点に関しましては、私も八木委員と全然同じ考えを持っておりまして、残念ながら事実上存しておる差別感をそういう議論でほうっておくということは、国の政治としてやるべきことではない。やはりその問題に取り組んでいかなければならぬ。それには根本的には今言っているように教育の問題にも関係しましょうし、あるいは次のゼネレーションを待たなければ、その意識とすいうものは払拭できないかもしれませんが、何といっても長いそういう因習から来ておって、たとえばそこの部落におけるところの衛生施設が悪いとか、あるいはいろいろな文化的施設がないとか、貧乏の程度が他のところよりもひどいとかいう事態そのものが遺憾ながら現在あると思うのです。これらに対してはやはり政府が適当な施設をしてそういう事態を早くなくする。一面今言っているところの国民のそういう差別感をなくする。国民理解協力を求めるというのをあわせて行なって、一日も早くなくしていくように努めたい、かように思っております。
  7. 八木一男

    八木一男委員 総理大臣の深い御認識で非常に私も安心いたしましたし、非常にうれしく存ずるわけであります。今部落問題というと、普通観念的な差別の問題と見られている向きが多いと思います。ところが最近観念的な差別で、いろいろの通称でその人たちを呼ぶというようなことはほとんど見受けられなくなってきたので、そのなめにこの問題が少くなっているというふうにばく然と認識している人が大部分でございますが、私どもの調べたところによると、観念的な差別の名称で呼ぶことは減りましたけれども、実際の差別概念は、少くと関西以西では依然としてございますし、部分的にはふえている点がございます。ふえる原因は何かと申しますと、総理大臣も言われましたように、たとえばトラホーム患者が多い。そうなると衛生概念の強い、神経質な人だとトラホームがうつるといやだという感じがございます。またトラホームにかかっている目というものは容貌をそう美しくするものではございません。ですから美しくない顔を見ると、美しい顔を見たよりは愉快ではないというようなことが差別概念一つになるわけでございます。ところが、トラホームというものが何から起るかというと、環境が悪くて貧乏なために一つの手ぬぐいを数人で使うとか、自分のうちの浴場がないから共同浴場に行くと、その設備があまりりっぱでないので、結局そこでトラホームにかかるというようなことになります。ある学者の統計によると一畳に一人以上の居住の密度ですと、ひとりでにトラホームが発生するという学説がございます。トラホーム一般には付着伝染でございます。空気伝染や偶発的に発生するということは一般的にいわれておりませんけれども、その学説が正しいかどうかは別にして、そういう密集地帯においては、昔の学説によっても畳についたそういうものが伝染するというような状態を現わしておると思う。トラホームの一例がそうでございます。またたとえば粗暴な人が多いのじゃないかということで差別概念のもとになる。それは結局非常に貧困でございますから、長欠児童が多いとか末就学児帝が多いという状況がございます。ですから初めから親と一緒子供のときから働かせるから、どうしたって学校に行けない。あるいは行っても小さい子のお守りをさせるから学校が休みがちになるということになれば、普通の条件としては成績がよくなる条件ではございません。従って中学校卒業成績が悪くなる状態が多い。しかもその困難を押し切って非常によく勉強していい成績をとる子がある。その子が今度就職しようといたしますれば、実際上は大企業には差別があって、身元引き受け能力を調べて、そんならこっちの方がいいということでとってくれない。そうすると自分よりも成績の悪い、努力してなかった子がそっちの方に行って、自分が就職できないということになると、どうしても虚無的になる。結局そういうふうに就職できないとすれば、その人たちが何かかせがなければいけないことになる。例を言って悪いですけれどもパチンコ屋の使用人になるとか、非常に環境が悪いところの就職しかない。そうなると、ひとりでに気分も虚無的になって荒くなり、前から抱いている不満が爆発して言葉が荒くなるという現象が現われると思う。しかし一つもその青年の責任ではない。ところがそういうようなことのために、けんか早いから近寄るなよ、そうっとしておいた方がいいというような気持があるわけです。それがやはり差別概念になっている。部落出身の人には近寄るなということが潜在的に差別概念になっている。今の衛生の面もそうですが、それから教育についても子供が末就学になっていると、家計の苦しさも知らずにあそこの観たち教育に不熱心だと、ちっとも苦労を知らない奥さん連は言いますけれども、不熱心なのではなく、教育できないような生活状態にあるのです。そういう潜在的差別をなくする民主的人権教育という方向に行きつつあるのに、非常な貧乏のためにそれがなくならないで食いとまっておりますし、また逆にふえているような状況にあると思うのでございます、そういうことでございますので、差別概念がなくなるということでなしに、逆になくならない状態にあり、さらに潜在的なものがふえているような状態にあるので、そういう状態をなくするために強力な施策を国全体となって進めていかなければならないと思うのでございますが、それについてちょっとお伺いいたしたいと思います。
  8. 岸信介

    岸国務大臣 お話通り今なお事実的にいろいろ差別的な考え方が残っている。その原因が、生活環境が十分改善されておらない、あるいは生活そのものが非常に貧困で工合が悪いとか、あるいは産業上の施設その他のものが十分講ぜられておらない。衛生上の施設であるとか、いろいろな問題に関連して元の形のものとは違っても、なおやはり事実上差別を生ぜしめているような事態があり、そそれがいろいろそういうことを生んでおり、またそれが次のゼネレーションの青少年の人には何らの責任なくして、そういう一つのつらい立場に置かれるということは、八木委員お話になりました通り、われわれとしては政治の上において十分に考えていかなければならぬ。今度の予算におきましても、わずかでありますが、部落に対する経費を計上したほかに、いろいろ各省予算運営の上におきましては、住宅の点においてもその他の点においてもできるだけ改善していく、そうして生活環境をよくしていって、そういうことから生ずる差別的な感じをなくするために、われわれとしても具体的に予算運営の上におきましては、特に注意をしていきたいと考えております。
  9. 八木一男

    八木一男委員 総理大臣の方から予算のことをおっしゃっていただきましたので、その問題に触れさせていただきたいと思いますが、実は本年度予算は三省から部落関係要求がございます。厚生省の方は約一億一千万円の御要求でございまして、大蔵省の方で査定をされてだいぶ減らされたわけでございますが、そこにおられる堀木厚生大臣初め厚生省方々が一生懸命復活にねばられまして、結局二千四百九十七万でございますか、約二千五百万円の予算をとって、昨年より一千万円増額している点は非常に少いものですけれども、けっこうだと思います。それから建設省関係では不良住宅関係で二十億の要求に対して三億七千九百万円という査定になって、約七分の一になっているわけでございます。文部省関係では五百五十四万円の要求は全部削除されております。この金額は非常に少い金額で残念でございますが、去年の十二月十二日の閣議でお取り上げになりましたが、各省予算はその前の七月ごろから組まれたので、ことしの予算要求額が少かったことはいささか仕方がない事情もあったと思うのですけれども、来年度予算ほんとうにそういうことに取っ組んで、必要のある予算各省で組まれて要求するり必要があると思います。ことし少くともその前の考え方で組まれたものが、大蔵省査定で削られたということは非常に残念でございまするけれども、これを何とか直す機会があったら直していただく、補正の機会なりまた中でやりくりできる機会があったらできるだけしていただかなければならないと思うのです。来年度予算なり来年度予算決定査定なりで、ことしのような考え方じゃなしにほんとうに取り組む考え方で、予算をふやすという考え方でやっていただけるかどうか、総括的でけっこうでございまするからちょっと伺わしていただきたい。
  10. 岸信介

    岸国務大臣 本年度予算につきましては、この問題を非常に重要とされる立場から見ますと遺憾な点も多かろうかと思います。しかし私は先ほどここで申し上げましたような考えでもってやっていきたいと思いますから、三十四年度予算編成の場合におきましては、十分に一つその心がけでもって編成に当るようにいたしたいと思います。
  11. 八木一男

    八木一男委員 そこで予算一つほんとうに本腰になってやっていただきたいと思いますのは、貧乏の問題であります。この問題については、ほんとうに貧乏ということは経済状態が悪いとか政治が悪いとか、いろいろなことがあります。これは今の内閣に言っているわけじゃなくて貧乏の根源は歴代の内閣が悪いのです。その貧乏の中でもこの未解放部落人たちの貧乏は、本人なりその関係者には一つ責任がない。非常な抑圧のもとに起った貧乏という点で特に重視して考えていただく必要があると思います。部落問題が何からゆえんしているか、いろいろの学説がございますけれども、そういう昔の問題は時間もありませんから差しおきまして、ごく近代的な問題としましては、戦国時代に一応実力時代でこういう問題の現象が少くなりました。ところが徳川時代徳川政府が政権を握ったときに百姓の収奪政策をやろうとしまして、百姓をして食わしむべからず飢えしむべからずという方法をとりました。そのときに百姓を収奪する代償として、また百姓にほかの階級がくっついて百姓一揆が強くなることをおそれて、分裂政策と両方を兼ねまして、百雄には士農工商というふうに、そのときの支配階級である武士階級の次の階級を与えました。そして商人とかいろいろ工業関係の人というような百姓と同じような実力のある人もさらに下にして、百姓に上を与えた。それでもまだ足りないでその下に穢多非人という階級を置いて、百姓の名誉心を盛り立てて、それからお前たちは国の宝だぞという名目のもとに無理やりに百姓が食えるぎりぎりの線まで収奪をされた。そのことのために逆にほかの人を人間扱りいしないでむちゃくちゃに押えつけたというような封建時代の政策が今の状態原因なんです。ところがそのときには代償がございました。というのは斃獣処理権とか、その皮革とか、さむらいの乗った馬や百雄の使った牛が死ぬと、それの処理の独占権は近所の部落民に特権があったわけです。百姓自体さむらい自体がこれを処理できなかった。皮革は馬具になったりして事業として成り立ちますから、そういう点で食える方は十分な状態ではないけれどもかすかに維持されていたわけです。ところが明治時代に太政解放がございました。これで万民一緒になった。一応非常にいいことでございましたが、このことが部落民にとってかえって逆にマイナスになった。というのは階級制度が一応なくなったようではあるけれども残っておりました。華族制度があり、それから位階制度が残っておりました。そしてまだ士族という名前が残っております。あくまでも前にさむらいであった人はとうといとされていたために、その余波を受けて前にいやしい階級とされていた人はあくまでもいやしいものだということが、明治時代から大正時代を通じてずっと残っていたわけです。身分制度は表面上消えた格好だが、実質上は残っていた。ところが太政官布告で万民全部平等になりましたから、職業の制限は消えたわけです。そうすると皮革に対する独占権が取られたのです。片一方おさむらいの方は俸禄はなくなりましたが、なくなったかわりに秩禄公債というものが明治年代に二億一千万円発行されました。今の金ですと少くとも四千億円ぐらいになります。ですから武士階級は俸禄はなくなったけれども、中には農地を買って大百姓になりあるいは実業家になる、そういうような金の面の裏づけをされて、おまけに前のたっとい階級であるので、おさむらいさんが商売をするならということで条件もよかったし、土地開墾の条件もよい条件を与えた。武士階級はよかった。身分的にとうとばれる状態が残っておった。ところが部落民は身分的に差別条件が残っていて、産業的な独占権は奪われた。ですから前より経済的に非常に状態が悪くなった。明治の解放のときには、全然土地はとれなかった。持っていた入会権なんかもいろいろな土地の改革で入会権がはずされて、村有になったりいろいろなことで、入れるようでも入れなくなったというようなことで貧乏の原因を作った。そうして今度は都会に出ていろいろな商売をしようと思っても、差別観念があるから、商売をさせないとか、そういう店からは買わないとか、象を貸してくれないとか、都会に住めないとか、同じ条件で同じ家賃を払うといっても家を貸してくれなかったり、そういう状態でずっときたわけであります。  それから資本主義が発達しても、結局半永久失業者がおることが労働者を低賃金にしておくためにはいい条件ですから、積極的にそういう状態を改善しようというようなことはいたしておりません。明治末期から大正の初めにかけて思想はますます悪くなり、大正から昭和にかけてちょっと部落改善事業はやられましたけれども、問題が非常に大きくなったのは米騒動のときで、それから水平社の運動が起って、全国的なほうはいたる運動になった。それでびっくりしてこの環境改善費を出した。毎年五百万円で十カ年五千万円の事業が始まったが、戦争で一時中断されてなくなってしまったという状態であります。戦後農地改革のときに農地の解放がありました。ところが農地解放は三反歩以上の自作農を創設するという方針で、小作権を持っている人に分けるという方針でやられたが、部落農民の大半は小作権を持っておらなかった。農業労働者で手伝いという状態だった。持っていた人もおる。苦心惨たんして手に入れた人もおりますけれども、そういう人はほとんど農地解放の恩恵に浴していない。農村を中心とした農林関係の部落民の持っている農地は、全国平均の半分以下です。部落農民の持っておるものは関西あたりで二反歩だ。私のおります奈良県では二反歩以下くらいしか持っておらぬ。持っている農地はあとから手に入れたので、災害があれば流れてしまうような土地とか、山ぎわで日が当らないところ、作物が育たないような土地で、一里も二里も歩かなければならぬ、そういう土地しか持っておらない。農民としてそれでも持っている方はいいのです。全然持ってなくて、農業労働者として季節労働者として働くだけしかできない人がおる。ですから農民として立ちません。今度は零細企業者として立っていこうとすると、皮革の方は、日本皮革とか明治製革とかいうものに全部とられてしまって、くつの方も大きな業者にとられてだめになる。特殊産業であるはきもの工業、げた、鼻緒、これは生活様式が変ったから売れ行きが悪くなってだめになった。今度は就職しようとすれば、貧乏だから上級学校に行く機会は少い、それから義務教育でも、さっき申し上げましたように、長欠、未就学というような状態です。それを乗り越えてがんばってやった人が、今度は就職のときには実質上差別をされる。ですから労働者としても成り立たない。漁民の問題も同じです。漁具の問題、漁船の問題、そういうようなことで生活の根拠がないわけです。そういう状態です。ほんとうに気の毒だ。気の毒というより申しわけないと思う。徳川時代以来の歴代の政府のやり方が悪いために、その間何百年人間外の暮しをしてまだその条件が残っておる。いつ完全に直るかわからないという状態ですから、これを直すのは全国民責任だと思う、各政府責任で、各政党の責任だと思う。私は政党の利己心で、社会党でやるとか、そういうことは言いたくありません。自民党にもぜひやっていただきさたい、社会党もぜひやりたい、共産党もぜひやっていただきたい、緑風会もぜひやっていただきたいと思う。そういう意味で、この問題を根本的に解決していくことは政府責任であって、各政党の責任であって、その人たちが早く直してほしいと要望することは権利であると私は考えるのです。その点についての総理大臣の御決意一つ聞かしていただきたいと思うのです。
  12. 岸信介

    岸国務大臣 八木委員の御意見なりお話を聞いておりまして、私も全然同感であります。かくのごとき事態が生じたということについては、部落民の責任に帰すべき事由はない、一つ社会制度なり社会のいろいろの変革等からきた問題であり、またその都度一面においては形式的には差別が撤廃されておるとは言いながら、実質には残っておる、それが一方いろいろな変革の場合において産業上の不利な状況に置かれてきて、そういうことが重なってかくのごとき貧乏なりあるいは生活環境というものを来たしておるわけですから、先ほど来申し上げておるように、この問題は、こういう事態を放置しておるのは全く日本の民主政治の恥辱であり、従って民主主義の完成の上からいいますと、政党政派を超越し、内閣のいかんを問わず、われわれは力を合せてこの問題の解消ないしそういう事態のなくなるように努力すべきものであると、私も全然その点八木委員と感を同じくするものであります。
  13. 八木一男

    八木一男委員 総理大臣の御決意を伺ってほんとうにうれしく存じます。ただ、まだ二つ三つありますけれども、もう一つ総理大臣に伺っておきたいことは、部落問題となると環境改善の問題だというふうに認識されておる向きが多いのです。共同浴場を建てるとか、隣保館を建てるとか、不良住宅を直すとか、そこの道を直すとか、これは非常に大事なことだと思うのですから、これはすぐ直さなければなりません。それからあとは同和教育の問題というふうに思われておる。その問題は全部大事で、やらなければなりませんが、それとともに生活の根源を立てるという方向に向かなければならないと思うのです。結局は完全雇用、就職できるということが、一番大事です。しかし完全雇用と口に出しても、そんなことは簡単にすぽっといけるとは私も申し上げません。少くとも雇用を非常に増大させることが必要です。それからもう一つ、増大しただけではなしに、そういう非常に条件が悪い労働者が生活が成り立っていくためには、たとえば雇用が増大して一応就職をしても、神戸辺の社外工という問題では、ほとんどがその土地の仲介業者に吸われて、同じ労働をしながら半分以下の労働条件しかない。普通に待遇される労働者さえ低いのに、それの半分くらいしかないというしぼり方をしておるのであります。そういうふうに条件が悪いから、そういうところしか就職できない。それで臨時工というものに部落民がたくさんいます。そしてその人たちは、同じ労働をしながら非常にしぼられておる。こういう臨時工、社外工の問題を片づけるとか、あるいは当面の問題として——関西以西の職安の自由労働者は、その六割以上が部落人たちです。この部落人たちは、半永久失業者で、それが生業なんです。ところが失対事業は摩擦失業を救うというような建前で一応考えておられるが、その法律の建前ではなしに、そういう就職できない人は六千部落三百万人と言われて、ずいぶんたくさんおるわけですが、この人たちがそれだけを生活のかてとしてやっている場合に、やはりそういう観点から賃金の問題もワクの問題も考えていただかなければならないと思うのです。  それから、これは総理大臣はけっこうです。こまかいことは別に申し上げません。労働大臣にやっておるのでありますが、また適格基準ということを労働省がやっておりますが、一軒に一人しか手帳を与えない。ところが部落民は家が少いのです。極端に言うと、四畳半に十三人住んでいる例があります。六畳に七、八人というのはざらなんです。家がないからどうしたって同じ世帯に住まなければならぬ。それを形式的に一世帯一人というようなことにすると、そこに失業者が三人も四人もいるのに一つしかくれない。そうしたら、ただでさえ食えないのがさらに食えなくなる。そういうふうに行政上の形式面と実質面が合わない面がある。大体適格基準で一軒に一人しか就職させないということは非常に冷たい行政であって、失対事業というものがあるのですから、失業者で働かなければ食えない人には、全部手帳をやるのがほんとうなんですけれども、それが大蔵省の財政とかなんとかいう関係でぎゅうぎゅう締めるということで問題が起っておるのであります。これは労働大臣に詳しく申し上げますけれども、そういうようなことがあります。そういうようなことを直していくことも一つです。たとえば今度は商売人ですが、零細企業の方の中小企業対策を非常に政府の方も一生懸命やっておるし、われわれも一生懸命主張しておりますけれども、現状は、中小企業の金融にしてもほかのいろいろの技術指導にしても、これは中小企業の方の中企業に先に行っており、小企業に行かない。零細企業中の零細企業にはすべてのものが回ってきません。それでは部落民は助かりません。信用能力はどうかということは、政府の方針としては形式的には決定したけれども、一文の融資も行かないということがないようにしていただかないと部落の産業は発達いたしません。あるいは今のげたの産業をサンダル工業に発達さして東南アジアに輸出するという道もあります。ところがそれを外国と商売を取りつけていくという時間的、金銭的な能力が部落の出先中小企業者にはないわけです。そういうことをすればそういう商売も発展するという道もありますが、今の農地の問題の新しい開墾にしろ、そういう昔からの状態をいれて、開墾地を先に与えるとか、入会機の問題を解決するとか、ほんとうに零細農の助かるような農業政策を立てるとか、そういう方針が必要だと思う。長年のことでありますから、岸内閣で一ぺんに片づけて下さいと言っても無理ですけれども、そういう方針で進めていただく必要があると思うのです。そういう意味で、環境改善の問題も、それから住宅の問題も教育の問題ももちろん大事ですけれども、それをどんどん進めるとともに、そういう生活の根源を直すような方針をぜひ岸内閣から始めていただいて、それを大きく進めて、早くこの問題が解決する場をぜひ作ってもらいたいと思うわけでありますが、それについての総理大臣の御意見を伺いたい。
  14. 岸信介

    岸国務大臣 この問題を解決するのには、今八木委員お話にありましたような労働政策の問題ももちろんありますし、あるいは金融の問題もありましょうし、産業政策の問題もございまして、あらゆる面が協力しなければならぬと思います。お言葉のように、中小企業金融というような場合において、労働者の問題におきましても、中小企業というようなものを取り上げる場合におきましても、零細中の零細なものについて、またほんとうの家内工業のごく零細なものについてまで、従来から見ましてもこれが十分徹底しておらない。またこれを徹底せしめるには、今までの金融制度やその他の何でなかなかいかない。それをどうしてやるかということを、部落の問題だけでなしに、一般零細産業や企業についても政府としては考えなければならない、そうして、部落のそういうような産業が零細中の零細であるという実情もよく認識して、格政策をそういうふうに協力して徹底するように努めていかなけれならばない、こう私は思っております。
  15. 八木一男

    八木一男委員 総理大臣にお願いしたいことは、今の零細企業、零細農、それから生活保護の問題も、いろいろな失業対策の問題もみな関連がありますが、これが一般の人との競合の問題で私はこう考えているのです、実は、部落民だから特別になんとかかんとかいうようなことは、今の民主主義の法律上困難であろうと思います。ところが実質上一番貧乏な零細企業、一番困る零細企業、一番貧乏な零細農一番貧乏な失業者というものか部落民に非常に多い。ですからそういう貧乏な零細な人に対する政策を全般的に強力に進めてもらうことはもちろんです。そこで、そういうような人たちが歴史的に残されているのですから、一般のものを、これだけのものをこれだけ高めていただくと同時に、そういうものをつけ加えていただく。つけ加えていただいて、法律の面では一緒でけっこうですが、その配分面のときに、たとえば何々県は特に失業者が多いということがそういう状態でわかりますから、特に零細企業が多いというときは、全体をながめていただいて、そこの部分をつけ加えていただいたものを政策なり予算に組んでいただいて、その配分を、そういう人が多いというところにたくさん配分する。金融でも財政でもそういうことでやれば、一般の同様の貧乏との問題の相剋がなしにいくと思うのであります。ただ部落対策をやるということで一般の貧乏の対策の分を食ったならば、一般の人の貧乏の配分の分が減って、それでは何にもなりません。それではまた分裂政策になる。それではなしに一般の貧乏対策をふやして、それから部落の貧乏対策を別につけ加えて、それをならして配分のときにまたそこにやる、そういう方式が一番よいと考えるわけです。それについて総理大臣の大局的な御意見一つ
  16. 岸信介

    岸国務大臣 お話通り、私ども部落民の差別感を根本的にはなくするということを考えなければいけませんけれども、しかしそうかといって全然その差別があることを見て見ぬふりをしていくというわけにいかない。最も有効な方法は、今お話のように初めから差別感に立つのでなしに、しかし実態がそういうふうに非常にひどい状況にあるということを頭に置いて、いろいろな零細企業に対する対策を考える場合におきましても頭に置いて、そういうものをつけ加えたものを一緒にして考えるということは、一方から言うと形式的に差別感を増進するようなやり方はなるべく避けていって、しかも実質的に差別があることを頭に置いて、実体的にはそこに持っていって、特別にいろいろな施策が有効にいくというふうに考えるということが非常に望ましいだろうと思います。従って今八木君のお話のようなことを、実際の予算運営の上からも、将来予算編成する場合において頭に置いて考えることが適当であろう、こういうふうに思います。
  17. 八木一男

    八木一男委員 総理大臣は私の申し上げた真意を理解していただいていると私信じたいと思いますけれども、今のところが非常に微妙なところで、誤解をされると大へんなことになる。部落対策は絶対に強力に取り上げていただかなければならない。法律的にたとえば未解放部落民には特別の年金を与えるとか特別の何かをする、そういう法律は作れぬのです。貧乏な人のために——今老人のために年金を作る、そういうことは、年金は平等でいいですけれども、それから失業者のために失業対策をする。その失業対策事業について何県にどう配分するという問題については、今のを一般的にふやす、今まで考えていた摩擦失業以外にそういう潜在的失業があるからその分をふやす、それをならして失業対策の費用に組む、それの配分のときにこういうふうなところにやる、そういうことなんです。部落対策は特別な問題として眠った子を起すなという考え方ではなしに取り上げていただく。しかし法律的な点では特別に未解放部落民についてこうということは特別にうたいません。ところが配分の点でふやした分をこういうふうにやる、それでないと一般の方に食い込みます。そういう考え方でやっていただきたいと思う。そういうことにつきまして、部落問題は総理大臣十分御承知の通り厚生省の問題が非常に多いのです。環境改善の問題は当面の一番大切な問題で、特に生活保護の問題も関係がございます。将来の無拠出年金の問題も、この問題の解決のために一つの大きな推進力になると思いますし、それから生活保護の中の医療扶助の問題、国民健康保険の問題、日雇い労働者健康保険の問題、みんな関係がございます。それから労働省の問題では臨時工の問題、社外工の問題、日雇い労働者の就労の問題、ワクの問題、適格基準の問題、そういう問題が関係があります。また通産省、農林省は先ほど申し上げましたように零細企業、零細農対策として、また零細漁業対策としても関係がございます。文部省の教育の問題はもちろんでございます。教育がいかないのはやはり同じ弁当を持てないという点もありますから、給食の問題も当面の問題ですし、教科書の無償配給の問題も当面の問題です。社会教育の問題も当面の問題です。育英ということも関係がございます。それからまた人権問題で法務省も関係がございます。家の問題、道路の問題で建設省も関係がございます。それから地方では実際にやっているけれども、地方財政の点でうまくいかない。おまけにそういう地方がやるときにその問題があるからたくさんやる、そういうところは、たとえば市町村だったら、貧困部落民が多いところだから、税金がたくさん入ってこない、税金が入ってこないのにやることが多いということで、地方で一生懸命やっているところはだんだん手をあげてきておる。それから初めからほうり出すところがある。それで地方が実際やらなければならないところが制約されている。それで地方に対する地方税の配分の問題、交付税の問題、起債の問題、そういうことも十分ではありません。こういうことでまた自治庁の関係もありますし、その全体の財政で大蔵省の関係もございます。そういうことでこの問題は内閣全体の問題でございます。その意味で内閣でも——石井副総理のお話をこの聞伺いましたら、内閣でお考えだそうでございますが、この大きなそして複雑な問題について十分な調査をし、そして十分な対策を立て、内閣でその方針で御決定になり、各省の面でそれを実現なさるということが必要であろうと思います。その意味で強力な内閣直属の部落問題に関する審議会というものをお作りになっていただくことが最もよいことではないかと思うのです。その問題は厚生大臣にも申し上げました。岸総理大臣考えておられると思いますが、内閣に強力な審議会をぜひ置いていただいて、岸内閣がこの問題を新しく取り上げて解決の第一歩を踏み出されたということを、ぜひことしのうちに、この国会のうちに作り上げていただきたいと思います。私ども社会党ではそういう法案を今作っております。しかし政党利己心でそれを出して何とかということはございません。内閣なり自民党なりと御相談をしてまとまった意見で、政府提案なり両党の共同提案なりで一日も早く出していただきたいと思うのです。そういうような内閣に対する審議会を作る御意向をぜひ持っていただきたいし、持っていただいておると思うわけでございまするが、その点について一言。
  18. 岸信介

    岸国務大臣 お話のように、この問題を進めていきますのには、現在の各省に分属しておる仕事、これをそれぞれの省においてやらなければなりませんが、同時にそれを統一する徹底的の調査と立案とそして協力ということを実現するのには、今八木委員お話になりましたような機関ができることは望ましいと思います。政府においても検計をいたしておるとろでございます。
  19. 八木一男

    八木一男委員 今国会に——解散は岸内閣総理大臣が権限を持っておられまして、解放がいつかわかりませんし、解散が早ければ間に合わないことになりますけれども、とにかく今国会に出すというお気持でぜひやっていただきたいと思いますが、それにつきましてもう一言。
  20. 岸信介

    岸国務大臣 できるだけ早く成案を得たいと思います。
  21. 八木一男

    八木一男委員 最後に、国策の点でそういうように御推進になっていただいて非常にけっこうだと思います。ところが、大正時代に融和事業十カ年計画というものが行われまして、五千万円の継続事業で、年五百万円でございます。今の金にかえますと、甘く見てかりに三百倍としても、年間十五億、十年間百五十億ということになるわけです。これはいろいろ予算の組みかえが、各省に分れたりそのまま集中したりという点でいろいろな点がございますが、あの十カ年計画というのはそう大した計画じゃなしに、環境改善だけを限った問題です。そう十分なものとは言えないのです。ところがそれが今ほとんどなくなってしまっているという状態ですから、これはとんでもない状態だと思います。ですから国策樹立を強力に進めていただくということと、予算はことしのように厚生省がやると言いながら前と同じ要求をしている。そしてそれが四分の一くらいにへずられている。一千万円去年よりふえたということですけれども、これは浴場が七つ建つのと、去年と同じですが、隣保館が六つ建つ、そんな問題で解決する問題じゃないのです。強力な施策を立てていただく、予算を強力にふやしていただく、そしてそのために今のことをやっていただくということをぜひお願いしたいと思う。ただこれは岸さんが一ぺんに片づけようと思うと、どんなに岸さんが有能であってもできないことで、これはあとに続く内閣は全部やります。われわれも協力します。ここで大きな突破口を岸さんの手で作っていただく。これをぜひお願いしたいのです。予算面についても去年みたいな考え方でなしに、各省が本腰で取り組んで出してこい、大蔵省にはそれを形式的に、今までの部落問題を取り上げてない時代の前より、ちょっとふえればいいというような無感覚な状態でなたを入れるなというようなことを、ぜひ総理大臣が指導して、そうして岸内閣の手でやっていただきたい。そういう概括的な御返事でけっこうでございますが、それについての御決意一つぜひ伺わしていただきたいと思います。
  22. 岸信介

    岸国務大臣 御趣旨の点はよく拝承いたしました。十分私としてはできるだけの努力をいたしたいと思います。
  23. 八木一男

    八木一男委員 最後に、それから今年度予算は非常に不満でございます。しかし行政措置でいろいろやれる点がございますので、各省の大臣にお願いしたいと思いますが、行政措置について、今のできるだけのことをするというようなことを、一つ総理大臣から関係各省の方に御指令なり、御協議なり、一つぜひしていただきたいと思いますが、それについてお伺いいたしまして、私の質問を終ります。
  24. 岸信介

    岸国務大臣 先ほど申しましたように、この予算の点は、少いという点はありますけれども、その運営の上におきましては、十分一つその方向に役立つように運営していくようにいたしたいと思います。
  25. 八木一男

    八木一男委員 岸内閣総理大臣の真剣に取り組まれた御答弁に対しまして、心から感謝を申し上げたいと思います。先ほど言われましたように、わが党はこの問題解決のために、政府や与党と協力する用意は十分整っております。いつでも一つおっしゃっていただきましたら、御協力をいたしますので、ぜひその点でそういう場を作っていただきたいと思います。
  26. 森山欽司

    森山委員長 植村武一君。
  27. 植村武一

    ○植村委員 八木委員の先ほど来の質疑応答によりまして、総理大臣気持もよくわかったのでありますが、私案は同和地区の人と一緒に大きくなってきて、きょうまでその方々と最も親しくつき合いをいたしておる関係上、同和地区の方々考えておることもよくわかります。ただこの問題は、こうすれば問題が解決するというきめ手がありません。こういう面につきまして、非常にこれはむずかしい問題と私は思うのでありますが、特に私は年来要望いたしておる点がございますので、それを総理大臣に特に聞いていただいて、将来の一つ行政措置の参考にしていただきたいと思うことがあります。それは先ほど来八木委員お話のように、できるだけ貧乏をなくすということはけっこうなことです。所得の増大をはかり、行政措置やっていただくことはけっこうだと思いますが、所得が増大しましたら、それをむだ使いせず、これを貯蓄せしめるという指導がこの際特に必要じゃないかと思います。そういう面で、日常常にこれをだれかりっぱな——政治的な野心がある人がリーダーになってはだめです。一生この同和問題の解決に精進するという気持の同和地区の指導者を得たい。私はそれを念願する。そうして社会局長さんにもよく言うのですが、隣保館を建てになる。隣保館という一つの建物を建てられても、この建物を通して同和地区の人々を指導する一つの道場にしなければならぬと私は思います。そういう、先ほど申しますように、ほんとうに自己を一新してこの同和問題の解決に打ち込む、そうして地区の指導者を得てその方が隣保館を運営して、そうして同和地区の大衆を引っぱっていく、これが一つ。外からまたこれらに対してできるだけバックアップして、これを推進していくという内外呼応してのやり方をやらなければ、とてもこれは解決する問題でない。部落解放という言葉に酔って、ダッと電気がかかったような気持がある間は、私全然問題は解決するものでないと思う。そういう一つの構想を持っていただけぬかどうかというのが一つ。もう一つは、今申し上げたことは成人教育といいますが、社会教育といいますか、そういう問題に属すると思いますが、今度は児童の問題、長欠児童の問題、これらの問題については、その地区の学校の校長先生初め先生方は非常に苦労している問題です。だからそういう地区に配置されることは、先生としては望みません。しかしながらこれを喜んで行かすような、文部省としては教育上の措置を私はとるべきだと思う。そういう人に対してはやはり特別な手当を出すとかいうようなことによって、喜んで同和地区のその指導に当るということの欲望を起さすということが必要でないかと思うのであります。これが二つ。  もう一つは、これも社会局長さんにいつも言っているのですが、不良住宅区の改善も、建物を建てることだけではだめなんです。これは御承知の通り非常に密集した部落で小さな建物ですから、その地区だけの改善は、私は完全なものはできないと思う。地区を広げなければならぬ。私どもは若いときから同和地区の人をどうして同和させるかということに対しては、十分同和地区の人とも研究しました。相談もしました。これは分散したらどうだろうかというようなことも考えたこともありますし、また指導者にそういうことを相談したこともありますが、やはり自分の土地に愛着を持たれるということは当然の話。そうすればどうしても不良住宅を改善するためには地区を広げなければならぬ。総理大臣は役人をしていらっしゃいましたから御承知だろうと思いますが、内務省当時の社会局の地区整理というあの事業をもう一度今日呼び起して——私の隣の部落は地区整理によって広がって、非常によくなった。それ以来非常に乱暴する者もなくなりましたし、そしてわれわれの町との交際も非常にスムーズに行くようになった。これはやはり環境改善ということは非常に私は必要なことであると思う。そういう点に対する総理大臣の御構想を伺うとともに、今後そういう面に格段の御配慮をいただきたいにとをお願い申し上げておきたいと思います。
  28. 岸信介

    岸国務大臣 今お話がありましたように、この問題を解決するのには、一面からいうと、一般の人が十分に理解を深めて、こういう差別感をなくすることに強く協力すると同時に、今度はこの地区の人々がやはり自覚を増してそれを自分から改善し、自分から立ち上ってあらゆるものを克服していこうという一つの意欲を盛り上げてこられ、両方が相協力していくということがきわめて望ましいことであると思う。その意味においてこれらの地区の人々が一方から収入を多くし、そういうものを貯蓄してそうして将来の備えをし改善なり自分たちの生活の安定をしていくというふうに指導することが非常に必要でありまして、隣保館というものがそういう道場的な意義をもって地区の人々がみずから励まし、また同時にふるい立つという気持を起す、それがための日常生活の改善を自分たちで実行していくというようなことを身につけられるということが非常に望ましいことであり、またそういうことをしていかなければならぬと思います。また学校教育の問題につきましては、お話通り、特に児童や若い人々の間にそういう差別感がなお根を張るようなことがあってばなりませんし、また実際上融和するとともに、先ほど八木委員お話しになりましたように、これらの地区の人が十分に勉強できぬとか、あるいは平素の品行がよくないというようなことのないように、りっぱに育て上げていくということにつきましては、校長初め先生方の苦心も格段であろうと思うのです。教員諸君においても一つ十分にその使命を理解してもらう必要がありますと同時に、そういう苦労をされるところの者に対して何らかまた報いるところがなければならぬという植村委員のお考えも、私もごもっともだと思います。いずれにいたしましても、この問題は、先はど八木委員も言われたように非常に長い沿革があり、社会的にしみ込んでおり、これらの差別感を一切なくするというこの大事業は、非常に問題が複雑でもございますし、またある一つの方策をやればこれで一切解決するのだというようなきめ手のない問題でありますので、先ほど来もお話がありましたように、各方面のこの問題に対して御研究になり、また何とかこれを改善しようという熱意を持っておられる方々の御意見を十分に聞いて、いろいろな方策をあわせ行い、そうしてその結果を得るように努力しなければならぬというような点につきましても、それぞれ十分理由のあることでございますから、審議会と申しますか、調査会というか、そういうもので方策を立てる場合におきましては一つ取り入れて、そうして総合的に実施するようにいたしたいと思います。
  29. 植村武一

    ○植村委員 私はもうこれで終ります。ほかの方がありますから譲ります。
  30. 森山欽司

    森山委員長 古川丈吉君。
  31. 古川丈吉

    ○古川委員 私は八木君の隣の大阪府でありますが、八木君の話では、前よりも差別がかえって強くなっているのではないか、こういうようなお話がありましたが、これは八木君が非常に強調するために言われたことで、私はむしろ以前に比べれば非常によくなっておる、こう考えております。ただこの問題は、何といっても差別感をなくする、従ってこの問題を解決するのに部落解放を政治闘争で解決するのだというような行き方は、私は自他ともに差別待遇の意識を深めるだけであって、もっとじみに解決しなくちゃならぬ問題だ、こう考えております。それにつきましていろいろな問題を八木君からも指摘されましたが、環境衛生の問題がまず第一で、下水にいたしにましても、水道にいたしましても、その他の問題、また道路にいたしましても非常に狭い。また住宅にいたしましても非常にごちゃごちゃいたしております。従ってこの問題は、考え方として今審議会の話も出ましたが、離島振興の予算は御承知の通りまとめてやっておりますので、そういう場合に浴場であるとか隣保館だけではなくして、住宅の問題であるとか、おそらくその申の道路は市町村等の小さい道でありますが、道路の拡張であるとか、植村委員からあげられました地域の区画の問題であるとか、こういうものを一つ将来総合的に予算を見てもらうことによって非常に改善されるのじゃないか。考え方としてはそういう式で、総理大臣に将来考えていただくことができるかどうか、その点だけ一つ総理大臣にお願いしたいと思うのであります。
  32. 岸信介

    岸国務大臣 先ほど来の論議でもはっきりしているように問題がきわめて複雑でありはして、この施策を行う場合におきましてもあらゆる面からの施策を行なっていかなければならない。その間にやはり連絡をとり、また場所々々によりまして、特に重要な措置として実行すべき事柄があるだろうと思います。一般的にもさっきから述べられているような問題はありますけれども、実際に実行していくのにつきましてはやはり各県各場所の特殊事情というものを頭に置いて、そして緩急よろしきを得てこれを実行していくということになるだろうと思います。予算の総額をふやすこともできるだけ努力はいたしますけれども、全体の財政のワクというものも考えなければなりませんから、従ってそこには相当緩急を考えてやっていかなければならぬという問題も起りましょうし、また長い間の差別感から起ってきておるいろいろな因習に集いておるものでありますから、これをなくすためには相当な年限をかけて力強く推進していくということも一つでありましょう。そういうことをいろいろ見まして、政府としては最も有効な方法をとっていくといことになるのであります。お話通り皆様の御意見がみな一致しているのでありますが、この問題は政党の一つの政略的な問題でもありませんし、あるいはこれを政争の具に供すべき性格のものでもありません。私はこのことについて政党間に対立があるわけもないし、またあってはならない問題であると思いますから、十分に一つ連絡協力してこの問題の解決に当りたいと思います。ただその方策を離島振興問題のように取り上げて、すべて各省に属しておるものを一まとめにして予算要求し、成立させ、そして各省がそれぞれやるというような方法がどうだという問題に対しましては、十分に今の趣旨に基いて強力に行うのにどうしたら一番いいかという頭で一つ今後検討して参りたいと思います。
  33. 古川丈吉

    ○古川委員 離島振興のようにまとめてやるということではかえって特別扱いのような感じがしますから、そうでなくても私はけっこうだと思いますが、とにかく総合的にやってもらいたいということが一つ、それから補助金の率であるとかあるいはワクの問題は特に厚くやってもらわなければ実際問題としてできないということを申し上げて、私の質問を終ります。
  34. 森山欽司

    森山委員長 五島虎雄君。
  35. 五島虎雄

    ○五島委員 私は時間が非常に少いので質問をやめようかと思ったのですけれども、さっきから岸総理がこの問題に対して非常に熱意があるというように八木委員との質問応答の中から感知されたのですが、ただ一点非常にばく然となっているとろがありますから、その点だけさらに確認しておきたいと思います。というのは、岸総理はこの問題は非常に複雑な問題だ、歴史的な問題だというようなことを言い、その解決のためにはあらゆる協力者の意見を聞いて、解決の方向に進みたいというようなことの方向はわかりますけれども、一体どうすれば解決の方向に向くかという具体的なことが何らひっぱり出せないものですから、その点について質問をしておきます。臨時国会におきまして、八木さんが言われた通りに、厚生大臣あるいは労働大臣に当委員会においてはいろいろ質問しました。ところが厚生大臣は新しいモラルの樹立ということで表現されまして、そしてこの解放のために努力するということを言われたわけです。労働大臣は労働大臣で、私も京都出身でこれらの問題はよくわかっておるから、雇用の問題の解決等々については今後十分努力すると言われたわけです。そこでこの問題は総理が言われるように非常に困難な、長い歴史的な問題があるし、経済的な問題もありましょうし、社会的な問題もあります。ところが総理御承知の通り政府には厚生省を中心として連絡協議会が持たれ、各担当者が年に二、三回ずつ大体予算編成前に当って連絡協議会が持たれるわけです。そして各省では非常に多くの予算要求されるだろうと思うのです。要求されているはずです。厚生省においても一億一千万円の予算要求を出し、あるいは建設省においても、さっき八木さんが言われたように二十億の予算要求を出されておるにもかかわらず、今回の予算ではそれが二千四百九十七万円に削られてしまった。私は厚生大臣に、新しいモラルの樹立のためにはいろいろな問題解決のために、今回は大蔵省とけんかしてもいいから、一億一千万円要求されたら一億一千万円を完全にとりなさいよ、あなたの顔を見ているとどうも切られることを想定して一億一千万円出されているような顔じゃないんですかというように聞きづらいことも言ったわけですけれども、やはり依然として五分の一に削られている。そういうように厚生大臣が言い労働大臣がおっしゃっても、閣議決定があったにもかかわらず、政府ほんとう意見でこの部落解放の問題と三十三年度は取っ組んでおられないのじゃないか。閣議決定をして、そして総理はこの問題の解決のために主力を注ぐべきであるということを確認されておるわけです。そして今八木委員質問に対しましては十分これがための努力をすると言っておられる。従ってこれは政争の具に供するわけではありません。自民党の政策部会ではいろいろ検討されておることを私は知っておるし、八木さんが言われるように、われわれ社会党の政策審議会でも法律案等を準備しつつあるわけです。しかしこの問題はやはり政治的にこれを解決しなければならぬ、経済的にこれを解決してやらなければこの問題の解決はなかなかできないと私たちは考えておるわけです。従って八木さんの質問に対して努力すると言われましたけれども、今まで連絡協議会等等をやっても数十年来、戦後十二年間この問題は解決できない。このまま放置しておけば、首相やあるいは厚生大臣、労働大臣の観念の中には、何とかやろうという意欲はあってもなかなか現実にはやれないだろうと思います。そこで私たちが考慮していることは何としてもこれを総合的な対策の中から、政府のどこかに、厚生省でもいいしあるいは内閣でもいいですから、審議会というふうな特別な機関を作って総合的にやるというような、実体的な姿と取り組んでやって、初めて総理の考え方がそれに入っていく。そしてあらゆる意欲を持っている人たち意見がそこに集中されて、そしてそれが窓口となって、これらの問題の一歩前進、二歩前進になっていくのではなかろうかと思うわけですが、この点について非常に不分明ですから、さらに首相に、この点だけにしぼってお尋ねしておきますから、一つはっきりした答えをお願いします。
  36. 岸信介

    岸国務大臣 お話通りただ単に熱意を持っておるとか、あるいはその問題に努力するというだけでは、なかなかこの問題が解決するわけでもございませんし、それからこの問題に対して真剣に取り組んでおいでになる方々からいうと、従来の長い沿革を見て非常に御不満であるということも私よくわかりました。従って今八木委員がおあげになりましたように、かつて内務省時代に融和事業の十年計画を立てて、私も何かそのときの幹事か委員であったように思いますが、そういう一つの方策が立って、十分ではなかっただろうけれども、とにかく継続してやられた。これはどうしても継続して各方面の何がやらなければ、なかなか実効は上げられないと思います。  そこで問題は、何か今ある連絡協議会というふうな一時的な、そして事務的なものではなかなか解決ができない、従ってさらにこれを有力な、また政府がかわってもかわらないような一つの具体的の方策を立て、総合的にこれを実施するようにしていくのには、そういうような強力な審議会というようなものをあるいは内閣等に置いたらどらだという先ほどの質問に対しまして、私はその御趣旨に賛成であります。それの方法につきましては政府においても検討をいたしております。なるべく早く結論を出してそれの実現をはかって参りたいということをお答え申し上げた通りでありまして、これは決して口先だけではなしにほんとうにそう思っているということをつけ加えて、御答弁といたします。     —————————————
  37. 森山欽司

    森山委員長 次に職業訓練法案を議題として審査を進めます。質疑を許します。岡良一君。
  38. 岡良一

    ○岡委員 先般の委員会で、私は御提案の職業訓練法ときわめて密接な関係にある、むしろ不可分な現在の日本における生産性向上あるいは生産性向上運動に対する政府の所見を承わったのでありますが、この際さらに続けて政府の御所見を承わりたいと思います。先般の委員会で私は統計に基いて労働大臣の所見を承わりましたが、御答弁は遺憾ながらきわめて不分明でありましたので、そのうち骨子となるべき部分だけを重ねてお尋ねをいたします。  生産性向上あるいは生産性向上運動は、雇用量を増加する、国民生活の水準を高めると同時にまた労働者の賃金を向上せしめる、こういうことをうたっていることは労働大臣も御存じの通りであります。ところが日本の重要な産業の中で新しい設備と技術が導入されている若干の産業について、私は先般統計につきまして労働大臣の所信を伺いましたが、重ねて伺います。鉄鋼、造船、化繊、電気、これは労働省並びに総理府の統計でありますが、鉄鋼におきましては、生産の指数は、この八年の間に二七四と伸びております。雇用指数は一二一、賃金の指数は一二八にとどまっております。造船におきましては、この八年の間に三六一、生産は三倍半に伸びております。雇用は一二五・七、賃金は一五三・六、ここにとどまっております。化繊は、生産は四七一、ところが雇用は一一九、賃金は一四七、電力は、生産が一八二、雇用の指数は一一五、賃金指数は一四八、こういうことになっております。従って生産性向上運動の雇用を増大する、あるいはまた労働者の賃金を向上せしめるといううたい文句は、生産性向上が事実行われているこれらの重要な大規模産業においては何ら実現されておりません。これは生産性向上運動の現在の姿に対する大きな疑点と相なっておるのでありますが、この間の事情について労働大臣の御説明を願いたいと思います。
  39. 石田博英

    ○石田国務大臣 雇用を増大して失業をなくし、就業構造を近代化し、労働者諸君の賃金の上昇をはかっていくその最大の前提は、国の経済力を強めていくことだと私ども考えます。従って国の経済力を強めていくのには生産性向上が必要である。従って生産性向上運動は、雇用の増大、就業構造の近代化、賃金の上昇をもたらすべきものだと私はそう強く信じます。その過程においてしかしいろいろの現象は生じてくるでしょうが、大筋の方向はそうでなければならず、そうであるものと信じておるわけであります。  ただいま御指摘の統計の中でも明らかに言えることは、生産性向上の率に伴って雇用の増大、賃金の上昇はそれはなかったでしょう。しかし明確に雇用も約二割ないし三割上昇し、賃金もまた三割ないし五割上昇している。雇用の上昇の率というものはやはり年々に出て参りまする新規就業人口というものと、労働人口の伸びと見合っていかなければなりませんから、私は生産性の向上と同じだけ雇用が増大しないからといって、これは逆に言うならばそれだけ生産性が上ったとも言えるし、それだけ国の経済力が上ってきたとも言えるのであって、そのまま並行して上らなければならないものだとは考えておらないわけです。それから生産性向上の利益は賃金だけでなく、やはり国家に還元される、国民全体に還元される。いま一つはやはり資本の蓄積に充てられて、経営の基礎を強化する、この三つに分けて行われなければならないものだと思いますから、三割ないし五割は生産性に伴ったやはり賃金上昇の結果と考えていいのではないかと私は思っております。その度合い、十分、不十分の議論はありますが、ただいまおあげになった統計を私が拝見を、いたしておりましても、生産性向上を否定する材料であるとは考えておりません。なおこまかい統計上の数字につきましては、私の方の統計調査部長から説明をいたさせます。
  40. 大島靖

    大島説明員 生産性向上ないし、技術水準の向上と雇用との関連でございますが、長期的に全般的に見ますと、三十一年の数字を二十二年に此べますと雇用指数で約二割一分、経済が正常化いたした二十六年を基礎といたしますと約一割六分の増大を見ております。さらに雇用の量の増減と生産額、付加価値額あるいは付加価値生産性、この辺の関係を見てみますと、大体二十五年——三十年の間におきまして、それらが大体二倍ないし二倍半、三倍、この程度の増加を示しておるのでありますが、これに対して雇用の量がどうなっておるか、すなわち生産の伸びに対する雇用の伸びの比率とこの弾力性係数をとってみますと、これがもしマイナスになりますれば生産性の向上、技術水準の向上が雇用の減少をもたらしたということになるわけでありますが、統計上の算出といたしますと、大体〇・四二から〇・四九という数字を示しております。すなわち生産一の伸びに対して、四割ないし五割の雇用の増と、こういうふうな関係になるわけでございます。お話のように、生産性の向上と雇用の量の増減、この関係はもちろん企業レベルにおいて、あるいは産業レベルにおいて考えられるべきであると同時に、国民経済全般のレベルにおいてやはり考えていく。たとえば企業レベルで考えますと、同一工場内におきましても工程によって、職種によって、あるいは男女によって、学歴によって、いろいろその生産性向上の雇用の量の増減に及ぼす影響はまちまちなんです。ただ国民経済全般の観点から見ますと、岡先生も御承知の通り、雇用量というものはもちろん、技術水準と生産量ないし産出高、これによって決定される。その技術水準の向上というものは、理論には雇用の減少をもたらすということでありましょうが、逆に産出高の増大というものは雇用の増加をもたらす。現実の経済はこの両者がからみ合って作用しておる。従ってこの設備の改良、投資の増大というものが技術水準の向上をもたらしますと同時に、この産出高の増大をもたらす。また技術水準の向上も一面において量の増産はなくしても質の向上という場合もありましょうし、生産量の増大を来たす場合もある、こういうふうな各種の要因がからみ合って作用いたしておるわけなんでありますが、結果といたしましては、ただいま申しましたような生産性の向上に伴って、全般としては雇用の増大を見ておる。これは日本においてもしかりでありますし、世界各国においてまた同一である。これは一九五六年のILOの事務総長の生産性に関するレポートにおいても明瞭にせられているところであります。この辺の関係が相関いたしました生産性と雇用との関係であろうか、とかように考えます。
  41. 岡良一

    ○岡委員 私が申し上げることは別に——とにかく工場においてあるいはその産業において生産指数が伸び、それはしかしながら事実上一人の労働者たる単位生産量の伸びというものが全体としての生産指数の伸びになっている、そしてまたそのことが生産性向上の一つの目的であり結果となっている、このことを否定するものではない。ただしかし日本のこの雇用状況あるいは労働力人口等の実態においてこのような形の伸び、賃金指数の伸び、雇用指数の伸びというものが果して生産指数つとの間にバランスをとっているのかどうか。ここに私は問題があると思う。それはその単位工場だけの雇用の状態ではない。もっとバック・グランドをなすたくさんの不完全失業者なりあるいは完全失業者をかかえている日本の雇用構造の中において、こういう姿というものがバランスがとれているかどうか。労働大臣はこれがバランスがとれているかどうかということは別の問題であると言われます、労働大臣はこの賃金指数の伸びと生産指数の伸び、この指数の伸びと雇用指数との関係はバランスのとれた伸びであると思われますか。
  42. 石田博英

    ○石田国務大臣 これは生産性向上運動が国の経済力の上昇を来たし、それから雇用の増大と就業構造の近代化及び労働者の生活条件に役立つものだという前提の上に立っての御議論でございますかどうか。私はその前提の上に立っての御議論であるとするならば、バランスはやはり一面におきましてはその企業の内部における、労使間においてバランスをとった形における、生産性向上の利益の分配が行われる適切な制度というものを考えなければならぬ。それは今生産性向上本部におきましてはいわゆる労使協議制というようなものを検討されておりますし、あるいは西ドイツにおきましても同様あるいはそれに類似した性質のものがすでに行われているわけであります。そういう形における利益の分配というものが行われるべきものと思っております。理論的にあるいは観念的には、生産性向上の利益というものは私はやはり三つに分けることができると思う。一つは労働者、一つは資本の蓄積、一つはやはり国民に対する還元という形に処理せらるべきものと思っているわけであります。ただその企業内における労使の関係というものは原則的には労使双方の対等の立場における問題の処理に向けられ解決せらるべきものであり、その具体的方法としては先ほど申しましたようなことを検討していきたいと思っているわけであります。今度は国民経済全体から考えてみます場合におきまして、やはり基幹産業その他における生産性の伸びは、日本のような中小企業の非常な後進性、前時代的な様相あるいは賃金の低さ、それを解決するためには、基幹産業における生産性向上の伸びはやはりその基幹産業の資本の状態あるいは労働者の状態から考えまして、これは国民に還元をする要素すなわちその還元する産業の経営条件をよくしていくという方向に現在向けられることが、やはり産業構造や就業構造というものをよくしていくゆえんだ、と現在の段階ではそう考えております。しかしこれは全体として、先ほどから申しました通り、企業内においては、労使双方の話し合いによってきめられるべきもので、行政的、法律的にこれをどうこうする性質のものではない、ただ大きな目から見れば、冒頭に申し上げました通りに、私は生産性向上運動というものは助長すべきものだ、こう考えておる次第であります。
  43. 岡良一

    ○岡委員 生産性向上そのものをただ一般的な概念として考えれば、これはもう科学技術の振興というものが時代の必然の勢いであるように、そのことが具体的な現場においては生産性向上という姿になって現われてくることもこれは必然だと思うのです。この問題は、だれがイニシアチブをとって生産性向上をやるかということが一つの問題点です。もう一つは、なるほどILOの報告を部長はあげられました。しかしここにあげられておる西ドイツなり、イギリスなり、フランスなり、アメリカなり、ここでは雇用の構造というものが日本とは全く違っておる。と申しますことは、この完全就業者というものの統計においては日本は問題にならない。あるいはこれらの国々における中小企業と大経営等の技術的な格差も問題にならない。これらの国々においてはむしろ中小企業の中において高い技術的な水準を持ったものさえある。こういうものを報告だけで、生産性向上が、うたい文句のように国民経済を高め、労働者の所得を高め、国民生活の水準を高めるのだ、問題はこの雇用の実態の中で、日本の中小企業がおくれた中小企業の型であるという経済構造の実態の中で、だれが生産性向上を進めるか、ここに生産性向上運動というものを現在に打ち出してくる大きなずれがいろいろな面に出てくるわけです。私はその点を今申し上げました。統計もその一面を示しておるのである。だからこれは是認されるのかどうかということを私は労働大臣にお伺いしておるのであります。
  44. 石田博英

    ○石田国務大臣 問題はだれがイニシアチブをとるかという点、それは運動の本質にも影響を与えてくるでありましょうから問題でありましょうけれども、生産性向上運動が今やられているイニシアは、経営者と労働者とそれから第三者を交えた構成で行われておるわけであります。従ってイニシアはきわめて公正な人々によってとられておるものと私は考えております。  それからわが国の統計の中から見られております賃金と生産性との関係、これはほとんど規模別の賃金格差と並行しております。そういう状態から考えましても、特に中小企業の面に対しましては生産性向上運動の普及ということが、ひいては中小企業の経営の条件の強化を来たし、その劣位にある労働条件を向上させる要素となり得る、それから大企業の場合におきましては、それが主として基幹産業でございますから、基幹産業は勢いそれに関連する産業の経営の基礎、ひいては労働条件に大きな影響を及ぼして参ります。従ってその間に相互的な連絡をとって、そうして中小企業の経営の基礎を強化するような方向、言いかえれば大企業における生産性の伸びの利益はやはり国民に多く分ち与える。大企業の労働者の賃金あるいは資本の蓄積が他の中小企業に比べて低いなら別でありますが、それが同等あるいは同等以上であります場合におきましては——現在は非常に同等以上でありますが、そういう状態におきましてはやはり関連する中小企業その他に向けられる、生産性向上運動の具体的なこれからの実施の方向は私はそうあるべきものだ、それからその利益の労使の間における具体的な分配は、先ほど申しましたような労使の協議制あるいはそれを基本とするような考え方の実施に向っていくべきものだ、現在の生産性向上運動はそういう方向に向っているものだ、また向っていかしむべく政府としては協力をしていかなければならず、やっておるつもりであります。
  45. 岡良一

    ○岡委員 ところが、これも政府統計で申しますが、たとえば先ほど申しました非常に生産指数が伸びておる化繊では、設備投資の費用を年次別に申しますと、昭和二十九年には四十四億、三十年には十八億、三十一年には五十二億、三十二年には推定百三十二億、総額二百五十億の設備投資をしておる。ところが化繊では、すでに帝人では本工の首切りを始めておるのであります。あるいは日レにしたって東レにしたって、旭化成では系列化している賃加工の地方の織屋に対しては三割の操短ではまだあえぐという状態で、系列の解除をしておるではありませんか。そうしてみれば、あなたの言われる生産性向上になるものも、なるほど大経営はやっておる、膨大な設備投資をかかえてやっておる。その結果雇用に何が起っておるか、それからそれが中小企業にどういうしわ寄せとなっておるか。中小企業へのしわ寄せば、中小企業に対する失業なり首切りという脅威となっておるのが現実の姿ではありませんか。そうしてみれば、労働大臣は抽象的に生産性向上をたたえられるが、また、指導のよろしきを得ようとしておるが、よろしきを得てわらないじゃありませんか。この点、重ねてあなたの御所見を伺いたい。
  46. 石田博英

    ○石田国務大臣 そういう繊維産業その他に現れておる現象、特に今次の国際収支の改善に伴います緊急施策の影響、これは労働政策の問題ではなくて、経済政策の問題でありますと同時に、そういう投資の行き過ぎの現象が現在のような状態を招いておるということは、それ自体が生産性向上運動の本質的な方向を否定するものではない、こう思っております。
  47. 岡良一

    ○岡委員 しかし労働大臣は、資本の蓄積をはかり云々ということで、生産性向上運動はそのもの自体が国家経済と不可分であるということをさっき仰せられた。しかも、国民の生活水準、あるいはそこに働いておる労働者の所得は、これはまた国民経済全体の立場から見るならば不可分ではありませんか。国家の繁栄だといって生産性向上をやる。ところが、そこに働く者が首切りの不安に襲われなければならないということでは、生産性向上運動なるものが国家の経済と労働者の幸福というものと不可分一体のものとして進めるということになっておらないではありませんか。
  48. 石田博英

    ○石田国務大臣 現在織維その他の産業に出ております現象は、生産性の向上ということから直接的に現れてきた現象ではないのであって、これは客観的な経済情勢の変化その他によって出てきたのもでありまして、しかもこのこと自体は生産性向上というものを否定する要素ではない、こう申し上げておるのであります。
  49. 岡良一

    ○岡委員 それでは労働大臣に一度現場を見てもらいたい。たとえば日本レーヨンなり東洋レーヨンにおきましては、生産性向上なる名のもとに、あるいはアメリカのデュポンの設備を入れ、あるいは技術を入れ、あるいはオランダの有名な権威のある技術を入れ、設備もそのまま入れておる。しかも入れられた設備は三分の一も遊休化されております。これは生産性向上運動というものが、結局利益を目的とする大経営の意欲に動かされながら進められておるという結果が、設備は大きくしたけれども、工場の労働者は首を切られなければならないという状態になってきておるのではありませんか。生産性向上運動が現実にこうしてわれわれの前に展開しておる矛盾をどうすればよいか、どうすべきかということがわれわれの大きな課題なのですよ。労働大臣はどう思われますか。
  50. 石田博英

    ○石田国務大臣 一時的にあるいは客観的な経済情勢の変化によって、そういう好ましからざる現象が出てくることを否定するわけではありません。その事実を否定するわけではありませんが、全体として生産性向上運動が結局国の経済を官まし、海外競争力を増強させ、ひいては労働者諸君に雇用の機会と賃金上昇の機会を与えるものだ、こう考えております。一時的に出た現象に対しましては、あるいは失業保険制度の活用とかそのほかの施策によってそれを防遏し処理していかなければなりませんが、その一時的の現象をもって全体を否定することは間違いであると信じます。
  51. 岡良一

    ○岡委員 別に一時的な現象で全体を否定しようというのではない。そこで私がさっき申し上げておるように、だれが生産性向上を進めていくか、これが雇用の構造の中における大きな断層なり、生産性向上の運動が掲げておる目的とは反した結果になっておるということを指摘しておる。これ以上イデオロギーの問題は別として、しいて申せば、問題は、このような大経営に国も財政投融資の中に大きなワクをそのまま認めながら——これはもう繊維産業だけではありません。電力にしろ、造船にしろ、鉄鋼にしろ、設備投資をやり原料を買い込み、さて運転をしたところが物が売れない。操短でもなかなか六割の賃金を払えないからというので、本工の首切りまで始めている。これが一時的な現象か。ここに現在の生産性向上運動の持っている本質的な大きな矛盾があるのではないか、私は矛盾があるということを申し上げたい。それはそうといたしまして、そういうような形で生産性向上が営まれておる。ところがせんだっても申し上げましたよう、日本の生産性向上は自主性がない。これははっきり申し上げられると思うのです。ということは、昭和二十九年、三十年、三十一年、三十二年に外国から買った技術ノー・ハウ、それを大体四カ年間に四十六億支払っておったものが、本年度の推定は三倍の百四十億払わなければいけない。技術を買い、技術とともにぞろぞろと設備がそのまま流れ込んでおる。それが現場の姿です。そういうことになっておりますから、いかに生産が上っても結局その大経営の中では雇用の余地がないという状態になるから、日本の雇用。というものは今度は零細な企業の中に入っていかなければならない。日本の中小企業というものは戦争中の旋盤さえ持っている工場がたくさんある。そこへ日本の新しい労働力人口あるいは不完全就労者というものは行こう行こうとしている。そこの数字を申し上げますと、これは有沢教授の数字でやや古いのですけれども、昭和二十六年と昭和二十九年と比べましてなるほど就業者の増加は百三十万人、ところがその中で一五%は同人以下の零細企業にいっている。五七%は九十九人以下の零細経営の中にいっておるのです。でありますから、なるほど雇用は全体として百三十万人伸びておる。しかしその中の七二%というものは、いわば経営規模百人未満の中小企業にいっておる。こういうことは私は日本の雇用の健全な姿ではないと思う。労働大臣、どう思われますか。
  52. 石田博英

    ○石田国務大臣 第一に、生産性向上に用いられております技術、設備、それが原則的にはわが国のもので間に合わすべきもの、わが国の技術の進歩あるいはわが国の機械工業の発達というものによって処理せられるべきものだということについては、私は同感であります。しかしそれにこだわっておって外国からの技術あるいは機械等の利用を怠ることも、やはり過渡的には間違いであると思います。  それから第二には、だれがイニシアチブをとるかという問題でありますが、それだからこそ生産性本部では労働組合の方にも呼びかけてともどもにこの運動の効果的な、あるいは現実的な発展を企図しておるのであって、決して門戸を閉ざしておるのではないと信じます。むしろこれにこだわってこれに参加しない労働組合が一部にあるとこをかえって遺憾としています。イニシアの問題を問題にするならば、やはり開かれている門戸にはともどもに参加していくべきだと私は考えております。それから生産性向上運動が現在までのところ大企業におもにこれが実施せられている。これはやむを得ない点もあるかと思いますが、この運動の特に日本におけるあり方としては、私は遺憾な点であると思っております。従って、これから生産性向上運動は中小企業に向けられていくべきである。特に日本の中小企業の経営の薄弱さ、それに働いている労働者諸君の賃金の低さは、主としてその生産性の低さに由来しておることであり、その生産性の低さはその多くが設備の古さ、あるいは経営形態の前時代的様相、こういうものにあることは、これも御指摘の通りであります。従って生産性向上運動の向けられるべき方向は、これから中小企業に向けていくべきものだ、こう考えておるのでありまして、それと政府施策であります、ただいま御審議を願っておりまする職業訓練の実施によりまして、中小企業の労働者諸君の技術の向上をはかることによって——今規模別、規模の小さいものは非常に劣悪な条件にある、不完全就業状態を近代的な雇用関係、近代的な就業構造に向けていかなければならない。その向けていく処置の一つとして本法案を提出しているわけでございます。
  53. 岡良一

    ○岡委員 通産省は本年度中小企業の設備等の近代化についてどれだけの予算を一体出して、どういうような施策を講じておられますか。
  54. 石田博英

    ○石田国務大臣 それは私の所管外でありますから、正確な数字は持ち合せておりません。
  55. 岡良一

    ○岡委員 私もきょうここへは持ってきておりませんが、ぜひお知らせ願いたい。私が調べた範囲内では、昨年は通産省が出したものが全部大蔵省査定で削られておる。本年度はまたきわめて微々たるものだと思う。特に新しい技術を中小企業等に導入しようということで、私どもが所管をしておる科学技術庁では理化学研究所を作る。しかしながらその運営費は一億五千万円です。一億五千万円で一体近代科学技術というものを果して中小企業に出せるか、それは出せないことは目に見えておるわけです。でありまするから、口に中小企業の近代化をはかろうと言ったって、何ら予算的な措置をやらないということでは単なる一片のうたい文句、から手形ではありませんか。しかもこういう努力の足りなさというものがこの中小企業と大工場におけるあらゆる労働条件の格差というものをますます広げているということは当然だと思います。
  56. 石田博英

    ○石田国務大臣 よそ様の所管の問題は、これは別であります。私は私の所管と責任において中小企業における労働者諸君の雇用の安定、それからその条件の向上に努力しているのでありまして、私はそういう意味におきまして最低賃金法を提出し、あるいは職業訓練法を御審議を願い、あるいは今五人未満の企業に対し、失業保険の拡張適用を考えておりますのは、私は私の所管の、私の責任を持っておる範囲内におきまして努力をしておるのでありまして、よその所管のことについての御批判は、私は個人的には別のものがありますけれども、これはお答えいたす筋合いではありません。
  57. 岡良一

    ○岡委員 やはり国務大臣として内閣の共同責任感に立たれたならば、そう無責任な態度では私は困ると思う。しかし問題をしばって、今申しましたような形で一応生産性向上、技術革新というものが大経営では全く盲目的な設備投資の競争という姿をとりながら、大きく技術革新というものが現場で行われている。ところが日本のこういう姿が日本の全体の雇用構造に対しては何ら寄与しておらないということを私は申し上げたかった。それはお宅の方でいただいた統計を見ましても、昭和二十九年と昭和三十二年の八月、十月平均で第二次の産業における雇用量の伸びは大体八百二十一万が千三十五万、二五%、第三次産業の伸びば千三百九万から千五百二十一万、二五伸びておる。しかしこの第三次産業の中でいわゆるサービス業というものに流れ込んでおる労働力を見ると、三百七十九万が四百九十七万、三二%、ここに生産性向上運動というものが大経営偏重で、そこでは雇用の伸びが押えられておる。一方で中小企業に殺到している。なるほど第二次産業の就業は伸びておっても、事実はサービスという方面にどんどん伸びておるというような状態は、健全な日本の雇用政策というものではないのじゃないでしょうか、労働大臣はどう思われますか。
  58. 石田博英

    ○石田国務大臣 私は生産性向上運動が大企業に偏重せられておるという姿は、正しい姿ではないと思います。従ってこれからは中小企業の方へ重点を向けられるべきだと、そう考えております。しかしそれだからといって、今まで大企業、基幹産業に見られた生産性の向上というものがわが国の経済、ひいてはわが国の雇用問題に何の影響を及ぼしていないということは間違いで、やはり基礎固めに役立っておるものと思います。それから今あげられました数字については、統計調査部長から御説明を申し上げたいと存じますが、私は結局中小企業の経営の向上ということは、やはり中小企業自体の生産性の向上を主眼としなければなりませんので、それに重点を置いた施策を行なっております。それから大企業におきましても、先はどおあげになりました通り、二割あるいは二割五分の雇用の上昇を示しているわけであります。それから規模の小さいところに流れていくということ、それ自体に雇用政策としての間違いがあるのではなくして、規模の小さいところの雇用が不安定であり、その経営が不安定であるというところに問題があると私は思います。従ってそういう点からの労働政策上の施策を講じているわけでございます。
  59. 大島靖

    大島説明員 ただいま先生のおあげになりました教学は、先ほどの生産性の向上と雇用の関係、これのバランスの問題と非常に関連する問題であると思います。たとえば先ほど私から申し上げました生産の伸びと、雇用の伸びの倍率の相関関係、弾力性の係数にいたしましても、企業々々によって非常に違うわけであります。たとえば小規模におきましては〇・四九という数字、大企業におきましては〇・四二という数字、あるいは雇用吸収率におきましても大体二倍から三倍、小規模の方が、定の生産額に対する雇用の吸収率は高いというふうな関係も出て参るわけであります。さらに先ほどお述べになりました産業別の関係におきましても、産業によりましてはいろいろな影響の変りがあるわけでありますが、ただ産業別の場合におきましても、紡織産業におきましては、二十五年から三十年の間におきまして、約〇・五四という数字を示しておりますし、第一次金属、鉄鋼等におきましても〇・四という数字を示しておるわけであります。従って長期的に見ますれば、産業別の偏差はあるにいたしましても、やはり生産性の向上に伴って、雇用の伸びが見られているということはいえると思うのであります。それからさらに日本の産業構造ないし就業構造の特殊性という問題につきましても、最近の生産年令人口の中から就業者に吸収されます数を見ましても、第一次産業よりも第二次産業、第三次産業において多く、業主、家内労働者よりも雇用者に多い。すなわち産業構造及び就業構造を逐次近代化して参っておるということもいえると思いますし、さらに御承知の五カ年計画においても、そういうふうな産業構造の高度化と就業構造の近代化、こういう方面に計画の方向は指向される、かように思うわけであります。
  60. 岡良一

    ○岡委員 そこで、今部長は就業構造ということを申されましたが、その点について、現実に一体どういう就業構造が行われているかということを指摘をいたして労働大臣の御所見を承わりたいと思います。労働省の統計によりますと、昭和二十九年に比して昭和三十二年十月は、四十九時間以上の就業者が九百三十万から千百十万になっております。また六十時間以上労働している者が九百五十万から千二百七十万と、非常にふえている。一体労働時間だけを見ても、中小企業が経営が近代化されるということになれば、こういうように労働基準法を無視した就労が行われたことは全く矛盾といわなければならない。近代化どころか、むしろこれはマヌフアクチュア時代への逆転だといわなければならぬ、こういう現象はどうなんですか。
  61. 大島靖

    大島説明員 詳細な数字に及びますので、私から御説明申し上げたいと思います。ただいま御引用になりました統計は、労働力調査によります就業時間別の数字でございますが、たとえば一時間ないし三十四時間の就労者と申しましても、たとえば学校へ行っておってちょっと手助けをいたしますために働いたものとか、あるいは家事が主であるが、それが何かの都合で働いたというものも、この数字に入って参りますものですから、非常に膨大な数字になるわけであります。従ってこの数字が全部、いわゆる短時間就労——不完全就労という意味における短時間就労ないし長時間就労というのはちょっといかがかと思われるのでありますが、なお中小企業におきまして、労働時間が大企業に比べまして多いということは事実でありますが、必ずしも全般的にこういう数字が労働基準法違反の事実生示すものと直ちには断定しがたい、統計はもちろん全般の平均の数字でございますので、さように御了承願いたいと思います。
  62. 岡良一

    ○岡委員 重ねてお伺いしますが、それでは、これはあなた方の方から出していただいた数字なんだが、就業時間別就業者数、四十九時間以上五十九時間以下の人たちが、昭和二十九年九百三十万、昭和三十二年十月は千百十万、六十時間以上が九百五十万から千二百七十万、これはいわば過多な労働力というものが、労働時間において近代化されるどころか、きわめて非近代的な状況に追い込まれようとしているという事実を私は物語るものと思うのです。そうではない、ただ若干この数字の中にはいろいろな事情の者もあるかもしれないが、全体としてこの数字は、私が前段に申し上げたような一つの傾向を物語るものと思うという見解に対しては、そうではないとおっしゃるのですか。
  63. 石田博英

    ○石田国務大臣 傾向についての統計の見方は、あとで統計調査部長から御説明をいたさせます。ただわが国の今の就業構造というものが健全なものでないということは私も同感であります。それからわが国の雇用及び失業の問題を考えますときに、実は完全失業者の数に問題があるのではなくて、不完全就業者が非常に多いというところに問題があるということは私も認めます。その原因が過多な労働力にあるということも御指摘の通りでありましょう。そこでそれを改善していく処置として、労働力の需給関係が直ちに労働条件の悪化をもたらさないようにするための法律的処置を今政府がとっておるのであります。それから基準法の適用についても、たとえば休日制の実施あるいは労働時間の順守、賃金の問題その他についても、昨年就任以来督励をいたしまして、いろいろの実績を上げてきておるわけでありまして、そういう健康でないわが国の就業条件というものを直すために、たとえば職業訓練法を提出し、最低賃金法を提出いたし、また失業保険の拡張適用の法改正を行おうといたしておるものであります。
  64. 岡良一

    ○岡委員 まず、過多な労働力が労働時間においてはこういう状態にある。もう一つはその所得を見ても、ここでは中小企業と大経営とのはっきり区別した統計政府の方では出しておられる。これは申し上げるまでもないのですが、製造業について、五百人以上の経営規模においては、昭和二十九年を一〇〇とすれば百人未満は五九・五、にれが三十一年に五六・二、五百人以上に比べてこの百人未満の人たちの賃金の格差というものが、かえってはさみ状に差を広げてくるわけです。これは失業保険の保険料報告書の賃金統計においても同様なことがいえます。しかも健康保険あるいは政府管掌健康保険等の標準報酬についてもはっきり一万八千円、一万三千円弱という数字も出ておる。こういう形で、一方では労働時間というものがどんどん延長される傾向にある。一方では少数の大経営と大多数の中小経営とにおいてはいよいよ賃金の格差がひどくなる。これで健全なる雇用政策かどうか。一体これをどうしたら押しとめられるか。中小企業の近代化ということについては政府は何ら責任ある施策をとっておられない。これはソーシャル・ダンピングの状態です。労働大臣は、貿易の振興だ、そのためには生産性の向上と言われますが、大経営が莫大な設備投資を競って、しかもそこで雇用の伸びが十分でない。過多な労働力人口が年々ふえてくる。それが中小企業になだれを打ってくる、そこでは長時間労働、低賃金が待ちかまえておるわけで、あなたの言う貿易の振興というものも、労働者においては、低賃金・長時間労働というソーシャル・ダンピングの形における犠牲が強要されておるということではありませんか。これが現在の生産性向上というものが、今日われわれの前に数字をもって示しておる事実だと思う。この点について労働大臣はどうお考えになりますか。
  65. 石田博英

    ○石田国務大臣 労働賃金の規模別格差というものが開きつつあるという事実は、統計の示す通りであります。その事実はきわめて遺憾なことであります。従ってその解消のために、政府は最低賃金法を提出いたしているのでありますし、またその大きな原因は生産性の低さにあるのでありますから、中小企業の近代化あるいはそこに働く人々の技術の向上を目ざしまして、職業訓練法を提出いたしているのでありまして、岡委員御指摘の通り現状は決していい状態ではない、むしろきわめて遺憾な状態であると思えばこそ、それを直すべき立法措置をいたしているわけでございます。
  66. 岡良一

    ○岡委員 私は結論だけを申し上げますが、とにかく労働大臣の御答弁は満足ができないのです。私は特に数字をもってお示ししたように、数字の解釈にはいろいろありましょうけれどもしかし明らかに一つの基本的な傾向を物語っている。日本の生産性向上というものは、単に重要産業、大経営に集中されているにすぎない。しかも中小企業は近代化のかけ声だけはあるけども、何ら政府施策においても、予算的にも責任ある措置は講ぜられておらない。しかも一方では年々労働力はふえ、過多な労働力が存在している。こういう片手落ち名生産性向上という中では、どんどん中小企業にこれらがなだれを打っていっておる。そこに待ちかまえているのは低賃金と長時間労働である。しかも中小企業自体がこういう大経営本位の生産性向上のしわ寄せを受けて沒落せざるを得ない、そうすると、中小企業も、そこに働く労働者以上に大きな犠牲、しわ寄せを受けている。こういう格好では日本の雇用政策、経済構造そのものに対しても、現在の生産性向上というものが真にその言葉の正しい意味における国民経済なり、全国民の生活水準の向上に役立っておらない。単なる大経営の利潤に奉仕しているにすぎないではありませんか。先ほど来の私の質問に対する労働大臣の御答弁は満足できないのですが、いずれまた日をあらためましてお尋ねいたしたいと思います。きょうはこの程度でやめておきます。
  67. 石田博英

    ○石田国務大臣 私はその事実の認定ということについては岡委員とほとんど違うところがない、違うのは一点だけであります。その一点は、最近の生産性向上を中心とする、あるいはその他の要素を加味した傾向というものについての事実の認定が、あなたは悪い方にいっているとおっしゃるが、私どもは速度は不十分ではあるけれども、改善する方向にいっているという点が事実の認定において違うのであって、あとは全くあなたのおっしゃる通り同感であります。同感であればこそ、そういう状態を直すために、たとえば生産性向上運動は大企業偏重をやめるべきである、中小企業に向ってその手を伸ばすとか、あるいは賃金政策におきましても、あるいは技術訓練の方法においても、その改善を目ざしてやっているのだということでありまして、事実の認定においては全然違っておりません。またその認定に基いての施策をやっているつもりでございます。
  68. 岡良一

    ○岡委員 何しろ長年の間議院運営委員長をやられた石田労働大臣の措辞の巧妙にはほとほと敬服をいたしました。これ以上何をかいわんやであります。
  69. 森山欽司

    森山委員長 午後一時四十五分まで休憩をいたします。     午後一時十九分休憩      ————◇—————     午後二時三分開議
  70. 森山欽司

    森山委員長 休憩前に引き続き会議を再開いたします。  職業訓練法案の質疑を続行いたします。中原健次君。
  71. 中原健次

    ○中原委員 職業訓練法に入る前に、それとの関連もあるのですが、ただいま起っておる国鉄労働組合の問題に関して質問しておきたいと思います。  それは聞くところによると、昨日国鉄岡山地方本部の代表が監理局長との会見を行うておる場で、動員された警察官の実力行使がなぐり込みをかけた。そのために負傷者も出た、こういうことを仄聞しておるわけであります。従って労働省としては、特に労働大臣としてはその経過をある程度御存じだろうと考えますので、その経過について一応この場で御発表願って、それに関連してまた質問をしたいと思います。
  72. 石田博英

    ○石田国務大臣 ただいま御質問の問題について、現在まで手元へ入っておりはす報告を御説明申し上上げます。  国鉄労働組合の岡山地方本部は、一月昇給問題について解決がついていないので、二月十三日広島地方公共企業体労働委員会に対して、調停申請を行なっておったのであります。そこで同地公労委は調停を受理することなく直ちにあっせんに入りまして、昨三月十日広島地公労委の浜井委員長が労使双方よりの事情聴取のために岡山監理局に参りました。これを見た組合側は、午前八時三十分、浜井委員長に陳情をすると称しまして、約三百名の組合員を動員して監理局に押しかけたのであります。その組合員の一部約百五十名、まあ半分くらいでございましょう、は直ちに同局の屋上に上ってすわり込みをやりました。当局側はこれに対して再三このすわり込みの回避を申し入れたのでありますが、組合側はそれに応じなかったために、当局側はついに警官の出動要請いたしました。約六十名が到着をいたしました。この間に監理局の局長と藤井地本委員長との間において、この問題についての話し合いが行われておりました。組合側はまず警官隊の退去の後解除することを申し入れ、当局側は双方同時に解除することを主張して意見が対立の状態になったのであります。この話し合いがつかないまま警官隊六十名、公安官四十名が実力をもって屋上のすわり込み隊の排除に当りました。この排除に当ってトラブルが生じ、小林無明同地本の組織部長ほか十数名が負傷を負ったのであります。以上がこの事件の私の手元に入っております報告であります。
  73. 中原健次

    ○中原委員 大ざっぱな報告を聞いたわけでありますが、事が非常に実は重大なのであります。
  74. 森山欽司

    森山委員長 ちょっと速記をとめて下さい。     〔速記中止〕
  75. 森山欽司

    森山委員長 それでは速記を始めて下さい。
  76. 中原健次

    ○中原委員 それではかねて申し入れをしておきました運輸大臣並びに国鉄当局、特に総裁の出席がまだないようでありますので、やがてきわめて近い日にそういう機会を作っていただいて、関係者のおそろいの中で質問をすることにいたしたいと思います。  ただこの場合、せっかくただいま労働大臣からきょうまでにわかっておる程度の御発表があったのでありますから、そのことについて私の見解を一言だけ述べておきたいと思います。と申しますのは、労働大臣の発表の内容というのは、大体新聞の記事で書かれた程度のことを出ておらぬように考えられますので、従って問題をさらに掘り下げていくためには、かなり責任上の問題もありますので困難かと思います。ことに私の仄聞しておりまする範囲とはだいぶ内容が違うわけなんでして、異なった内容があまりにも距離を持っておる場合に、その形の中で話を進めていくということは、これまたわれわれの責任上どうかと考えますので、先ほど申しましたような形にすべてを託す、こういうことにいたしたいと思います。従ってただいま議題になっておりまする職業訓練法の問題について一言お尋ねしておきたい、こう考えます。  職業訓練法案関係資料というのを配付されておるわけですが、その資料を見ますと、一番末尾の方に、職業訓練制度の確立に関する答申、こういう答申書が臨時職業訓練制度審議会の方から提出されておるようであります。これをながめてみますと、今度出ておりまする法律案そのものとこの答申書との間に、かなり内容の開き、相違点というものがうかがわれて参るわけです。そのことについて、私は逐一御説明を聞きたいと思いますが、それはいずれ局長にお尋ねするといたしまして、大臣に特にこの場合承わっておきたいりと思いますことは、この職業訓練制度の性格といいますか、本質といいますか、そういうものについて、眼目とするものは一体何かということをちょっとお聞きしたい。
  77. 石田博英

    ○石田国務大臣 一つは、今のわが国における労働者諸君の技術上の問題であります。それは、科学の進歩、生産性の向上というようなものに伴いまして、だんだんと技術を有する労働者諸君の需要が高まって参りました。もう一つは、技術を持っておる人の雇用が安定しているという事実も顕著になって参りました。それから特に、技術者をだんだんと要求いたします結果、中小企業における技術者の不足が非常に目立って参りました。それは賃金、待遇その他から申しまして、どうしてもその不足を大企業は中小企業から引き抜いて埋めるという傾向が多くなりました、従って、中小企業の生産性の低さ、技術の劣等性というものがいよいよ加重される、こういう客観的へいろいろな条件の中から、職業訓練制度の拡充の必要性を痛感いたしておりまするにとが一点。それから第二点は、原因は同じとにろにあると思うのでありますが、今職業紹介所の窓口を全部通しまして、約十数万人の未充足求人がございます。この未充足求人は、もちろん原因はただ単に技術の不足ということだけではございませんけれども、しかし主として技術の問題にあると考えられることが多いのであります。従って、一面におきましては、この技術の訓練を実施いたしますことによって雇用の増大に役立てたい、同時にすぐれた技術を付与することによって、雇用の安定に役立てたい、そして同時に技術者の不足しておりまする中小企幸に技術を供給いたしますことによって、それ自体の経営の安定に資したい、こう考えておるわけでございます。一方私どもがやって参りました実績の面からみましても、私どもの方の役所でやりました職業補導所を出た者は、一〇〇%の就職率を示しております。そういう状態から、この制度の拡充の必要を痛感いたしたのであります。さらに、これは説明のときにも申し上げておいたのでございますが、補導あるいは訓練を拡充してやりまするのに一番困難を来たしますのは、指導員の不足でございます。その指導員の充足も、一つ今回同時にやりたい、指導員の増大と相待ってこの制度の拡大に努めて参りたい、こう考えておるわけでございます。
  78. 中原健次

    ○中原委員 ただいまの御答弁の中に、大企業が中小企業の中のいわゆる技能熟練労働者を抜いていくというお言葉があったと思います。私はこれについて思うのですが、大企業の中にいわゆる生産性向上が非常にやかましくはやし立てられまして、その生産性向上の態勢が整ったころには、その過程の中でだんだん熟練労働者を失業さした、追い出した、こういう事実が介在しておるのです。従って、せっかく優秀な技能を持っておる労働者が、その場で非常にきつく排撃された、つまり労働力が排撃された、あるいはその労働者が庭掃除のようなことにくらがえさせられた、部署の転換がさせられた、そういう事実のあったことも知るわけであります。従って、ある程度態勢が整うてきたときに、今技能労働者が不足だから中小企業からこれを抜いていくという形が出て参りましても、それは労働力が増強したということとは違うわけなんです。たまたまそういう問題の中からもちょっと混乱されるような御答弁があったわけでお尋ねしたわけです。従ってせっかくあった労働力をほっぽうり出して穴があいて、そのあいた穴を、全部ではありませんけれども、わずかながらも埋めようということからきた需要ですから、これは労働需要が増強されたということと別な意味です。このことを私は最初に申し上げておきます。  なおただいま御指摘になりました性格の問題の中で私はこの職業米訓練所のいわゆる指導権、指導力といいますか、職業訓練所の運営進めて参りますために、いわゆる審議機関が設置されるというふうになっておると思うのです。そこでその職業の審議機関というものはこの法案の示すところによりますと、必ずしもスムーズに運営ができそうに思えないような構成が法案の中に織り込まれておるということを気づくわけなんです。それについてまず大臣の御見解を聞いておきたい。
  79. 石田博英

    ○石田国務大臣 私はあらかじめお断わりを申し上げておきますが、この法案の説明に当って労働事情が好転したとか悪化したとかいうことを申し上げておるわけではございませんので、そういう批評は別問題です。実情を申し上げ、その実情に対処するためにどうするか、その実情が好転したのか悪化したのか、生産性の関係はどうなのかという議論は先ほどいやというほどしましたから、別なわけです。そういうことをここで申し上げておるわけではありません。それから中央職業訓練審議会がこれで通用がうまくいかないように思うとおっしゃいますが、私どもの方といたしましては万全を期し得ると考えておりますが、いかなる点が運用がうまくいかないとおっしゃるのか、その点を御指摘をいただきたい。
  80. 中原健次

    ○中原委員 そうなりますと、ちょっとこまかくなりますが、たとえば第二十九条の中央職業訓練審議会というくだりを見ますと、審議会の委員は二十人以内をもって組織する、その委員は学識経験のある者及び関係行政機関の職員のうちから労働大臣が任命をする、こういうことになっております。そこでこの第二十九条の四項ですか、これの一つ説明を聞いてみたい、ここに私は矛盾があるような気がする。
  81. 石田博英

    ○石田国務大臣 これは先を勘ぐって申し上げるのはなんですが、労働者の代表や使用者側の代表も入れるべきではないかという御意見だと思います。しかし、この職業訓練という事柄は労使対立の中で取り扱わなければならない問題ではないと私は思います。これは労働者側も使用者側もその技術の向上を望む点については全く同一であろうと存じます。従って純技術的な問題でございますから、学識経験者と関係行政機関の職員でやるということで十分である、その方が正しいのだ、この中へ労使の対立を持ってくることの方が間違いである、私はそう考えておるわけでございます。ここで決定せられることは、訓練の方法もありますが、いかなる職種を訓練するか、それからそれに効果を上げるべき訓練の方法でございます。純技術的な問題であると考えておるわけであります。
  82. 中原健次

    ○中原委員 労使を対立させるというために訓練所の審議機関を設ける必要はない、それはわかっております。それは必要ない。それは労使が法の示すところに従って互いに行うであろう団体交渉その他の方法で対立の条件は出てくるわけですけれども、それはそれでいいわけです。従ってこの場でこの審議の運営について相談をするということの中に労働者の見解を入れることが悪い、経営者の考え方をも入れてはならぬという論理は出てくるようには思わない。しかもその直接の関係の当事者を除外しておいて——関係行政機関の職員だから政府職員ですね、あるいは学識経験者、そして学識経験者ということについても当然議論が起るわけです。一体学識経験者をどういうふうに選考するのか、学識経験者にもA、B、C、Dがあるわけです。決して一様ではない。それをどういうふうに選考されるだろうかというところにも問題もありますし、いわんや片や関係行政機関の職員をもってするということになって参りますと、この職員というものは、それなら労使いずれをも超脱して、労使いずれもが納得のいくような考えを作り上げていくことができるであろうか、この問題なんです。これはせっかくの石田労働大臣の御明言にかかわらず私が了解できない。いやおそらく了解できない人が多いのではないか、これは国民一般が疑問を持つ点ではないか、そう思います。
  83. 石田博英

    ○石田国務大臣 私の申し上げておるのは、この職業訓練審議会の中に労使の対立を持ち込むことということではなくして、職業訓練という問題それ自体が労使の対立を来たすべき問題ではない、こう申し上げておるのであります。従ってその審議会に、労使の対立によって発生する事件、あるいはその問題自体が労使の間に意見の対立を来たすべき事案でありますならば、その処理をいたしますために労使双方からの代表を求めることが適当でありましょう。しかしこの問題はそういう性質のものではないのだ、純技術的な問題であるということを申し上げておるわけであります。それから実際上の措置といたしまして工場の技術者、工場経営の立場の人々、あるいはまた一般的な学識経験者というものを選んで参ります結果として、やはりみずから労働の経験を持っておる人、あるいはまた労働者側の立場に立っておられた人、あるいは経営の立場に立つ人、今日においでは初め雇われておってあとで経営者の側に立つという人が大体でございます。そういう者が結果として選ばれてくるだろうと存じておる次第でございます。それから学識経験者としてA、B、Cいろいろございましょう。政府としてはA、最高級の人を御委嘱申し上げたいという考え方でございます。
  84. 中原健次

    ○中原委員 そこでれは問題が非常にむずかしくなるのです。政府のいわゆるAクラスというのは、国民がなるほどAクラスだと了承できるようなAクラスであろうか、これはそうはいかぬのです。それは大臣がどのように言われてももはや重なる委員会だけで考えても、その学識経験者の選択の仕方が、Aクラスどころじゃなくてとんでもないダッシュが五つも六つもつきそうなそういう者を学識経験者として指定される場合がよくあるのです。名前までは申し上げません。名前まで申し上げることのできぬほど明らかなんです、とって見れば。この任命を大臣がするということをかね合せて考えればなおさらこれは大へんなことなんです。従ってそれだけにこの機関の中へはいわゆる経営の代表者も労働側の代表者も加えて、いろいろな経験の中ら発言をせしめて方針をきめていくということがより妥当性が出てくることになるのではないか。いかようにお考えになられてもこの委員は学識経験のある者あるいは関係行政官庁の職員をもってするというのでは片手落ちもはなはだしい。これは無遠慮に言ってしまえば、官僚独裁になってしまう。官僚の考え方がいつも一番正しくて、一番妥当で、一番国民性があるということに独断されてくる。そうじゃないのです。それは官僚の中にもいわゆるA、B、Cがあるでしょう。あるけれども、いわゆる官僚だけが支配権、指導権を持つような形がいけないと同じように、やはり学者の選考の仕方にも問題がある。要するに選考の仕方に問題がある。学者が悪いということではない、役人が悪いということではない。選考の仕方に問題があるということを私は申し上げておるのです。きょうは時間がなさそうですからこのくらいにして預けておきます。これはまだ終りませんから、あなたもしっかり一つ御勉強を願います。  ついでですから、もう一つ。ここに大きな矛盾がある。第十五条を見ると「事業主が事業内職業訓練を共同して行うために組織した団体その他の事業主の団体が」云々とこう書いてある。ところがこれに該当すると覚しきいわゆる答申書を見ますと、職業訓練を行う団体等についての指摘がある。事業協同組合等については云々、「等」という字がここに加えられておる。ここは「等」という字が省いてある。そうするとここに明確に指摘されておるものだけというふうに解釈されるのです。その点はどうですか。
  85. 石田博英

    ○石田国務大臣 前段の問題でございますが、これは純技術的な問題でありまして、政治問題でございませんから、はかの政治的な色彩を持っておるものと同一にごらんいただくことは本案の趣旨に沿わないものだ、こう私は思っております。労働大臣が選任をするその選任の仕方に御信用いただけないことは、これは身の不徳のいたすところはなはだ恐縮に存じます。しかし、私はそういうことであるならば同じく三者構成にしましても、やはり選考に信頼が置けないということになると同様でございます。  それから中央職業訓練審議会というのは、この答申をいただきました臨時職業訓練制度審議会の人をお選び申し上げたと同じ建前とその精神で選びたいと思っておるわけでございます。ここに出ておる人方の中で、私はみなAクラスと思うのでありますが、特にB、C、Dに位するというようなこと、たとえばこうだというならば、これは公開の席上では困りますけれども、御注意をいただきますならば、その選考に当って十分留意したいと思っております。  それから官僚独裁になる、官僚が独善になるということでありますが、私が官僚出身でないことはよく御承知の通りでございますが、役所に入りまして官僚諸君の長所も欠点もよくわかっております。従ってそういう形に決してするつもりはございませんし、委員の構成の中で官僚出身諸君の度合いが多数を占めるようなことをいたすつもりもございません。それから官僚の考えることがすべて国民的なものだというような考えを持っておりませんが、中原さんがよく国民国民がとおっしゃいますが、中原さんのお考えが全部の国民考えを代表しておるとか、多数を代表しておるとか私も受け取らないのでありまして、これは全部客観的な冷静な判断に立って処理しなければならない問題だと思っております。  それから十五条の問題でございますが、答申に「等」とあるものを法律で「等」というものをどうして取ったか。これは法律でございますから、特にこの場合はいろいろな補助その他を行うのでありますから、対象は明確にしておく方がよかろう、こう思った次第であります。これも先を勘ぐってお答えを申し上げるようでございますが、おそらく労働組合で自主的にやっておるものについてどうだという御質問が出てくるんじゃないかと、あらかじめ想定をいたすわけでございますが、これは実際問題といたしまして労働組合でやっておりますのは、現在対象としておるものといたしましては、長期かつ継続的にやっておるものはほとんどないのでございます。それからこれを十五条で受けておりますのは、基準法でやっております技術的な技能訓練、これを大体受けておるわけでございますが、当初からそのワク外に出まして、あまり膨大になすものよりは、やはり対象を明確にして、徐々にそれを広げていくことの方が、私は現実的である、こう考えておるわけでございます。
  86. 中原健次

    ○中原委員 非常に都合のいい御説明ができましたが、もちろん政治問題としてこの職業訓練法案というものが取り上げられておるというわけではないでしょう。純粋な一つの経済的な問題としてこういう法案を出したんだということになるかもしれぬけれども、しかし政治と切り離してはどのようなものでも考えられぬわけですね。実際は政治と組み合っているわけです。これは政治問題でないと言い切られても、だれも賛成のしょうがないのであって、やはり多分に政治性を内包しているということになるわけです。その理屈はいいとしまして、大臣はもちろん官僚の出身じゃない。よくわかっております。新聞記者の出身であることも承知しておりますが、だからといって、あなたが良心的に事をなされましても、あなたの良心そのものがいわゆる普遍性があるだろうか。こういうようなものを考えられる場合に、その良心の足を踏みつけた場所、所在が問題になるわけですね。そこでいわゆる労働する者は労働者階級としての考え方があり、あるいは搾取をもって自分の生活を高めておる人は、搾取する立場からの野心もあるし、判断もあるということになるわけです。あるいは為政者というものは、その為政者が経済的に何につながっておるかということのせんさくから、その為政者の足の踏みつけ場所というものがおのずから確定するわりです。ですからこれは純粋に何でもかんでも超脱して、いわゆる超然的に存在するものではない。それまで理屈を言う必要はありませんけれども、ただいまのような御議論があると、やっぱりそう言わなければ仕方がない。従ってそのことをとわれわれは認めていかなければならない。やはりものを持てる立場の者考え方と持たざる立場考え方。人を使う立場と使われるものの立場。あるいはその他各種各様の職種の立場でいろいろなことが言えるわけです。従ってだからこそ、より公正にものを扱おうと思うならば、せめても三者構成というにとが問題になったんだと思います。三者構成とはただ外貌をそろえた外観的なものじゃない。その中に内包する、そういう事情が、まあ三者構成なら何とか公正にいけるのではなかろうかという判断が、敗戦直後わが国のいろいろの場合の方針に採用されたのであろうと私は考えるのです。従ってこれは大臣が任命するというところに、どう考えても大きな問題があるわけなんです。これは次の協同組合法の中にも、あらゆる法律案の中にも問題があると思うのですが、そういうことをかれこれ考えますと、そう簡単にわしは良心的にやるから安心しろ、もし注意があるならば、注意を受ければそれぞれ考えようと言われてみたって、それはごもっともである、それでよろしかろうというわけには参らぬと思うのです。そのことを私ははっきり申し上げておきます。従ってこの条項の指摘する内容というものは、やはり残念ながらある特定の人の独断に陥ってしまって、身動きならぬような傾向が出てしまうのではないか、こういうことがいえるわけでして、いずれこれは逐条の審議の中でもう少し議論させてもらい、またお話も聞きたいと思います。  そこでただいまのお話のあとに属する分ですが、等というものを取り除いたというとについて、しからばここに出ておる内容の分析ですね。これを一々内容の分析をしてもらいたいのです。そしてなお最後に大臣が自分の思い過ごしかもしれぬけれども、自主的にやっておる組合というものを云々されたが、この組合を除外しなければならぬという理由が一つもないわけですね。これはないわけです。せっかく御指摘になられたので申し上げるわけですが、ないわけです。なぜならば今せめてもその業界における規律ある組織、法も認める組織を持つものは現存しておるわけです。何も一時的のものでも何でもない、現存しておるわけです、法が認めておるわけです。そのものを除かなければならぬというには相当の理由がなければならぬ。これは大臣が言われたから一応このこともあわせて聞いておきましょう。
  87. 石田博英

    ○石田国務大臣 それは人間が自分の育った環境とか、あるいは自分の今立っておる立場によって、ものの判断に影響を与えられるということは、それは私も原則としてはそういうことがあると思います。しかし全部がそうでない証拠には、あなたの方の党は、労働組合に支持されておる、労働者の立場に立っておられる、その中にも、相当大きな企業を経営されておられる人、経営者の立場に立って、ときどきストライキなども受けておられる人もあるわけなんで、一がいにそういうわけには参らないと私は思います。特に私などは一度も人を使う立場に立ったことはございません。もっぱら月給取りでございます。従ってそういう御議論から出発いたしますと、私は完全に雇用者の側に立ち得る者と考えておる次第であります。  それからあとの等を取った問題でありますが、それは労働組合のやっておるものだけでありません。市町村などがやる分も、この対象から除外いたしております。つまりこの対象に明確に規定しておりますものはこの法律の対象としてやり得るだけの実績と能力とが明確に判定し得るものに一応限局したわけでございます。法律の詳細の内容等については事務当局から説明させますが、そういうことであります。
  88. 中原健次

    ○中原委員 この問題についても、もちろん議論が尽きませんと思いますが、しかし本会議が始まっておる様子でありますから、出席しなければなりませんので、一応これで質問を預けます。そこで最後にちょっとお願いしておきたいのですが、資料要求です。技能者養成の状況、現行職業訓練のいろいろな制度の概況、外国の主要な技能者養成の研究資料、そういうものをお持ちだろうと思うのですが、なるべく新しいものをこの三つについてそろえていただきたい。質問は一応留保して、資料を配っていただいてからやります。
  89. 森山欽司

    森山委員長 次会は明十二日水曜日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。     午後二時四十九分散会