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1958-02-28 第28回国会 衆議院 社会労働委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年二月二十八日(金曜日)     午前十時四十三分開議  出席委員    委員長 森山 欽司君    理事 植村 武一君 理事 大坪 保雄君    理事 田中 正巳君 理事 野澤 清人君    理事 八田 貞義君 理事 滝井 義高君    理事 八木 一男君       大橋 武夫君    加藤鐐五郎君       亀山 孝一君    草野一郎平君       小林  郁君    田子 一民君       中山 マサ君    藤本 捨助君       山下 春江君    亘  四郎君       井堀 繁雄君    岡本 隆一君       多賀谷真稔君    中原 健次君       長谷川 保君    山花 秀雄君  出席国務大臣         労 働 大 臣 石田 博英君  出席政府委員         労働政務次官  二階堂 進君         労働事務官         (大臣官房長) 澁谷 直藏君         労働事務官         (労政局長)  亀井  光君         労働事務官         (労働基準局         長)      堀  秀夫君  委員外出席者         労働事務官         (労政局労働法         規課長)    辻  英雄君         専  門  員 川井 章知君     ――――――――――――― 二月二十八日  委員岡良一君及び山口シヅエ辞任につき、そ  の補欠として井堀繁雄君及び多賀谷真稔君が議  長の指名委員に選任された。 同 日  委員井堀繁雄辞任につき、その補欠として岡  良一君が議長の指名委員に選任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  職業訓練法案内閣提出第九三号)  国際労働機関の採択した諸条約国内労働法規  との関係等に関する件      ――――◇―――――
  2. 森山欽司

    森山委員長 これより会議を開きます。  去る二十一日付託されました内閣提出職業訓練法案議題とし、審査を進めます。まず政府より趣旨説明を聴取することにいたします。石田労働大臣
  3. 石田博英

    石田国務大臣 ただいま議題になりました職業訓練法案につきまして、その提案理由を御説明申し上げます。  最近、産業界におきましては、高度の技能を必要とする生産分野の拡大に伴って、技能労働者確保が強く要請されて参っているのでありますが、労働軍場現状を見まするに、約五十万に及ぶ完全失業者と多くの不完全就業者をかかえている反面、技能労働者が著しく不足しており、このことが雇用生産の両面における隘路ともなっている実情であります。また、労働者技能水準向上職業の安定、労働者地位向上とともに産業振興の基盤をなすものでありますが、このために必要な職業訓練の諸制度について見ますと、一部のものを除いては、必ずしも十分とはいいがたく、なかんずくわが国産業構造上重要な地位を占める中小企業において著しく低調に終始している現状にあるのであります。この点、欧米諸国におきましては職能組合等発意煙と想待って、つとに職業訓練及び技能検定制度が確立されており、政府及び民間においても、技能労働者養成確保のために多大の努力が払われているのでありまして、これに比較いたしますとき、わが国現状は著しく立ちおくれているといわざるを得ないのであります。最近、科学技術教育振興が叫ばれておりますが、産業進歩発展のためには、科学技術教育と並んで、労働者技能向上させるための職業訓練を系統的に行うことによって、生産現場における技能水準向上技能労働者確保をはることが緊急の要務と考えるのであります。労働省におきましては、従来職業安定法に基き、求職者に対する職業補導を行う一方、労働基準法によって、事業主が行う技能者養成指導援助を行なって参ったのでありますが、以上の実情にかんがみ、この際これらの諸制度について再検討を加えて職業訓練を一そう充実させるとともに、さらに技能検定制度を設けて労働者技能水準向上をはかる等により総合的な職業訓練制度を確立する必要を痛感するに至ったのであります。このため、さきに閣議決定に基いて設置されました臨時職業訓練制度審議会の答申を十分尊重し、その意見を基いて所要規定を整備することとし、この法律案提出することといたしたのであります。次にその内容概要を御説明申し上げます。  ます第一に、職業訓練法目的として以上申し上げました趣旨規定いたしますとともに、公共機関が行う職業訓練事業主の行う職業訓練とが系統的に実施されること、及び職業訓練学校教育等との密接な連係をはかることを明らかにすることといたしたのであります。  第二に、公共機関が行う職業訓練につきましては、現下の雇用及び失業情勢に対処し、無技能労働者に対して訓練を行うことによってその就職の促進をはかるとともに、事業主の行う職業訓練に対する援助を積極的に行う趣旨のもとに、都道府県が設置する一般職業訓練所及び労働福祉事業団が設置する総合職業訓練所等において行う職業訓練に関する事項について必要な規定を設けることといたしたのであります。  次に、事業主がその雇用する労働者に対して行う職業訓練につきましては、国及び都道府県が積極的に必要な援助を行うよう努める旨を規定するとともに、職業訓練に関する合理的かつ効果的な基準を設けて職業訓練の効果を最大限に確保せしめることといたしたのであります。特に中小企業に対しましては、その職業訓練が円滑に行われるように共同職業訓練の方式を認め、かつ積極的にこれを助成することといたしました。  第四に、職業訓練指導員につきましては、その資質いかん職業訓練の成果を左右する重要な要素であることにかんがみまして、これに関する免許及び試験制度を定め、職業訓練指導員資質向上をはかることといたしたのであります。  第五に、諸外国における職業訓練制度の例にならって、職業訓練を修了した者を中心として労働者技能検定を行うことによってその技能向上に資することといたしたのであります。技能検定二つの級に分けて、実技試験及び学科試験によって行うこととし、技能検定に合格した者は技能士と称することができることなど、技能検定について必要な規定を設けることといたしたのであります。  以上のほか、労働省及び都道府県に設置する職業訓練審議会に関する事項について規定を設けるとともに、職業訓練及び技能検定に関する行政を一元的に行わせるため、労働省職業訓練部を設置することとし、これに伴う労働省設置法の改正その他この法律制定に伴う経過措置並びに他の法律との調整等について所要規定を設けることといたしたのであります。  以上この法律制定理由並びに法律案概要を御説明申し上げたのでありますが、何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。     ―――――――――――――
  4. 森山欽司

    森山委員長 次に国際労働機関総会における労働問題に関する件について調査を進めます。  まず昨年の国際労働機関総会中心としまして、労働条件の改善に関する討議の経過及び結果の概要について、きわめて簡潔に政府説明を求めます。澁谷政府委員
  5. 澁谷直藏

    澁谷政府委員 昨年の三月ジュネーブで開催されました第四十回ILO総会におきまして、わが国労働者代表から、最低賃金決定制度創設に関する条約(第二十六号)及び結社の自由及び団結権擁護に関する条約(第八十七号)の批准促進に関する二つ決議案提出されたのでございます。  右決議案提出を受けた決議案委員会におきましては、その性質にかんがみ、それを条約及び勧告適用に関する委員会に付託することといたしたのでございます。この付託を受けました条約及び勧告適用に関する委員会は、結社の自由及び団結権擁護に関する条約批准促進に関する決議案につきましては、未批准国に対して、この条約批准可能性検討するように希望いたしました。  もう一つ最低賃金制度創設に関する条約批准促進に関する決議案につきましては、提案者の同意のもとに、明年の専門家委員会調査の結果を持つことといたしたのでございます。なお条約及び勧告適用に関する委員会における審議に際しまして、わが国政府代表は、日本政府は右二条約批准可能性検討しており、これについて労使団体と協議する意向である旨の発言を行なったのでございます。
  6. 森山欽司

    森山委員長 質疑の通告がありますので、順次これを許します。山花秀雄君。
  7. 山花秀雄

    山花委員 ただいまILOのいろいろ話し合ったことの簡略なる説明がございましたが、そのうちで結社の自由と団結権擁護問題に関しまして、政府の所見を概略承わりたいと思うのであります。今ILOに入っておる国は七十九あると承わっておりますが、それ以後の増加があるのかどうかという一点と、それから最低賃金批准を行なっておる国が一体幾らあるかということと、それからただいま問題になりました結社の自由、団結権擁護批准しておる国が幾つあるかということを、まず第一にお尋ねをしたいのであります。
  8. 澁谷直藏

    澁谷政府委員 ILOに加盟しておる国の数は、昨年十二月末現在におきまして七十九カ国でございます。それ以降変更はございません。それから結社の自由及び団結権擁護に関する条約批准国は三十一万ヵ国でございます。そのうち主要なる国の状況を申し上げますと、イギリスフランスソビエト西ドイツ批准しております。カナダにおきましては、連邦と州との権限分配関係で、いまだ批准いたしておりません。それからインドもいまだ批准をいたしておらないのでございます。イタリアアメリカ中華民国、以上三国もいまだ批准をいたしておりません。
  9. 山花秀雄

    山花委員 もう一つお尋ねしたのですが、最低賃金の問題です。
  10. 澁谷直藏

    澁谷政府委員 最低賃金制度条約に対する批准国は三十五ヵ国でございます。おもなる国で批准いたしております国をあげますと、イギリスフランス西ドイツカナダインドイタリア中華民国批准をいたしておりまして、ソビエトアメリカはいまだ批准いたしておりません。
  11. 山花秀雄

    山花委員 ただいま承わるところによりますと、加盟国は七十九、そして結社の自由及び団結権擁護に関する条約批准した国は三十一と承わりました。ILO関係は、私が申すまでもなく、長らく日本は戦争の関係で、関係がなかったのであります。終戦直後、昭和二十四年、初めてオブザーバーとして参加をいたしました。昭和二十五年には、アジア関係において第一回の正式総会がありましたときにも、日本オブザーバーとしてこれに参加いたしました。昭和二十六年に初めて正式加盟をいたしました。それから御承知のように、今日では理事資格をもって参加しておるのであります。ただいま承わるところによりますと、結社の自由、団結権擁護に関しては三十一ヵ国がこれに批准をしておると、こう聞いたのであります。日本理事として参加をしておる、特にアジア関係においては、自他とも許しておる工業的には先進国家一つであります。これはいなめない事実であります。そういう点から考えて参りますと、この批准がなぜおくれておるか、政府はすみやかに批准を行う決意を持っておるかどうか、この点、労働大臣より御答弁を願いたいのであります。
  12. 石田博英

    石田国務大臣 山花さんのただいま御質問の内容につきましては、国内法との関係その他におきまして、いろいろ諸論もございますし、意見もありますので、労働問題懇談会に付議いたしまして、ただいま小委員会を設けられて御審議をいただいているわけであります。その結論を待ちまして善処いたしたいと考えている次第でございます。
  13. 山花秀雄

    山花委員 ただいまのお答弁は、労働懇談会ですか、予算委員会その他のこの問題に関する質疑に、大臣としては通り一ぺんの答えをずっと続けられておるのであります。そこで、国内法との関係というのは、特に公企労法関係のことをさしておられると思うのでありますが、そうゆうちょうに考えていいかどうかという点であります。それで労働問題懇談会結論を出すようなことを言っておられましたが、いつごろ結論が出る見通しを持っておられるか、労働問題の懇談会結論が出たならば、すぐにそれを実行する、その結論がどのような結論が出ても、それを実行する意思があるかどうか。それから労働問題懇談会結論が、日本批准するなと、こういう傾向と相反した結論が出ても、政府としては批准を急ぐお考えを持っているかどうか、この問題は日本労働運動労使関係にも重要な関係がございますので、この際政府のはっきりした確信ある所信をお答え願いたいと思うのであります。
  14. 石田博英

    石田国務大臣 私はこの問題について、いたずらに時日を遷延することを目的としておりませんことは、私が就任早々この問題を労働問題懇談会に付議いたしましたことをもって御了解いただきたいと存じます。決してほっておくということではありません。今こまではほっておかれましたが、私は就任早々この問題を付議いたしました。その結論はもちろんできるだけ早く出していただくことを希望しておるわけでありますが、なかなか問題がいろいろございますことは御承知通りでございますので、いつまでに出るだろうというようなことを、私ども御相談をお願い申し上げている側に対して、できるだけ早くできることを希望いたしますけれども、私の口から申し上げるわけには参らないのではないかと、私は思っております。それからその結論が出た場合、私といたしましてはその結論を尊重したいと思っている次第であります。
  15. 山花秀雄

    山花委員 政府の御熱意をお伺いする意味で、多少仮定論になって参りましたが、労働問題懇談会結論が、批准するに至らずというような結論が出た場合においても、政府はこれを批准を急ぐというような処置をとられるのかどうか。労働問題懇談会結論にも、一切が盲従といえば少し誤弊がございますけれども、どんな結論が出てもそれに従うのだという私は制約がないと思うのでありますが、この点、政府熱意いかん一つお聞きしておるであります。
  16. 石田博英

    石田国務大臣 ILO決議あるいはILO精神というものを尊重して日本国内の諸条件を、そのILO決議勧告をすべて批准できるような水準にまで、立法的にも行政的にも、あるいはその他の社会環境の上からも引き上げていくことが必要であると存じております。しかしILOは一方において、その国の自主性というものを決して制約をしていないわけでありますし、またそれぞれの国によっていろいろな条件も違うわけでありますから、最終的には日本のそのときの条件によって考え日本政府日本政府の責任によって解決しなければならぬ問題だと思っております。しかし仮定お話でございますが、私の一般的な考え方の方向といたしましては、今申し上げました通りILO精神決議勧告というようなものを、できるだけ批准できるような諸条件を整えていきたい、それは必ずしも立法的な問題ばかりではない、そういうふうに考えておる次第であります。
  17. 山花秀雄

    山花委員 ILO決議を尊重し、それに近づけるように政府としては大いに努力をしていきたい、こういう決意のほどの一端を示されました。先ほどの説明によりますと、この批准のできないのは国内労働法関係にもあるというような説明がなされました。そこで国内労働法のどういうところがこの問題の批准をおくらしておるかという点を、この際一つ明瞭にしたいと思いますので、御答弁を願いたいと思います。
  18. 亀井光

    亀井政府委員 今お話条約につきましては、八十七号条約につきまして問題点はたくさんございますが、おもな点だけ申し上げます。これも先ほど大臣が申し上げましたように、労働問題懇談会の小委員会で今検討中でございまして、私らからその問題の所在につきましても一応はお諮りをしておるのでありますが、結論的なことはこの小委員会において御検討いただきますので、私としましては結論的な問題ではなくして、問題の所在だけを御説明することにお許しいただきたいと思うのでございます。  まず第一は、第二条の問題でございまして、第二条は御承知のように、「労働者及び使用者は、自ら選択する団体を事前の認可を受けることなしに設立し、且つその団体規約に準拠することを唯一の条件として、これに加入する権利を、いかなる差別もなしに有する。」というのが第二条の規定でございますが、この中で一番問題がございますのは、差別なしに自由に設立した組合に加入する権利を、国内法におきましてどういうふうな制約が加えられておるかという問題でございます。これにつきましては国家公務員法地方公務員法等職員団体につきまして問題がございますし、また公労法四条三項あるいは地公労法五条三項、こういうところに問題点があるわけでございます。すなわち加入する者は国家公務員法地方公務員法におきましては職員というものに限定されておる、また公労法四条三項、地公労法五条三項においても、職員以外の者が組合員になりあるいは組合言役員になるということを禁止しておるという点に問題点一つあります。それからもう一つは、これに関連をいたしまして、管理監督あるいは秘密の保持に関します事務に従事する者につきまして除外されておる、これは公労法四条の一項あるいは地公労法五条の一項並びに二項というものがこれに該当する、こういうところにこの条約の二条関係問題点があろうかと思います。  次は第三条でございますが、三条の内容は「労働者団体及び使用者団体は、その規約及び規則を作成し、完全な自由の下にその代表者を選び、その管理及び活動を定め、並びにその計画を立案する権利を有する。」この中の「完全な自由の下にその代表者を選び、」という問題につきましては、先ほど申し上げました公労法四条三項、地公労法五条三項、すなわち職員以外の者が組合役員または組会合員になれないという問題との関係におきまして、被選挙の資格代表者に選ばれないというところの問題点がございます。  次は条約四条関係でございますが、四条趣旨は「労働者団体及び使用者団体は、行政機関によって解散され又はその活動を停止されることはない。」というのでございますが、これにつきましては人事院規則におきまして、国家公務員について登録を受けなければ交渉相手ともなり得ないし、またその登録が取り消されますと法人格も取り消されたものとみなされるというふうな制限があるわけでございます。そこで登録内容の問題がこの四条との関係においてどうひっかかってくるかということで、国家公務員並びに地方公務員について問題点があるわけでございます。  次は第五条でございますが、「労働者団体及び使用者団体は、連合及び同盟を設立し及びこれに加入する権利を有し、また、これらの団体連合又は同盟は、労働者及び使用者国際的団体に加入する権利を有する。」いわゆる連合会あるいは同盟を設立するの自由に関します条項でございますが、これにつきましても、完全に自由にそういう連合あるいは同盟を設置しあるいは加入する権利があるかどうかという問題につきましては、やはり公労法四条三項、地公労法五条三項、あるいは国家公務員法、先ほど来説明いたしましたそれらの条文の関係、さらに連合体につきまして地方公務員につきましての制限、こういう問題がこの関係におきまして問題点になろうかと思うのであります。  それから六条は問題はございませんが、七条関係におきまして、七条の趣旨は「労働者団体及び使用者団体並びにその連合及び同盟による法人格取得に対しては、この条約の第二条、第三条及び第四条規定適用制限するような性質条件を附してはならない。」という、法人格取得についての制限を付せないようにという趣旨でございますが、これにつきましても、先ほど申し上げました国家公務員につきまして当局との交渉相手になりますには登録を受けなければならないという一つ条件があるわけでございます。その登録を受けるにつきましての諸条件人事院規則に掲げてございます。その話条件の中に、職員の範囲だとかあるいは組合地位組合役員地位というふうな規定がありまして、それが国家公務員法の九十八条の二項にございますように職員のみでという、この職員という資格制限関連してひっかかって参るのではないだろうかという問題点がございます。同じように地方公務員につきましても職員に限定されておるというところに、この第七条との関係における問題点があるのではないかという気がいたします。  あと九条につきましては、一応条約におきまして軍隊と警察を除いておるのでございます。この問題につきましては、わが国国内法国家公務員法九十八条の四項におきましては警察、消防、海上保安庁、監獄職員団結につきまして若干の問題点がある。これが九条関係の問題でございます。以上おもな点につきましての問題の所在だけを申し上げた次第でございます。
  19. 山花秀雄

    山花委員 ただいま第二条、第三条等々の説明がございました。これは労働者基本的人権をはっきりうたって、わが国憲法第二十八条とも共通する問題点であります。ところが国内法で、たとえば労基法あるいは国家公務員法地方公務員法等々がこれに抵触するという点も明らかになっております。そこで、われわれはILOには加盟しておる、理事国家にもなっておる、先進国家の体形を一日も早く整えていきたい、こう労働大臣も言われておるのでありますが、今障害になっておりますところの、これらの国内法の解決をはかってILO決議にだんだん近づいていくような努力をお考えになっておるかどうかという点、労働大臣のお答えを願いたいと思う。
  20. 石田博英

    石田国務大臣 法律は突然できるものでなくて、やはりそれが必要とする各観的条件があったものと思います。従って、この問題の処理をいたします場合には、やはりその法律を必要とする客観的ないろいろな条件処理が前提になると思います。そういうことをも含めて努力したいと思っておるわけであります。
  21. 山花秀雄

    山花委員 そうなりますと、これは具体的に一つ問題点を取り上げて質問したいと思いますが、去年の春闘から秋の戦い、ことしの瀞闘にも関連いたしますが、一番大きく問題点が浮び上ってきておりますのは、機関車労働組合の問題だろうと思うのであります。先だって裁判になりまして判決がございました。判決はよく労働大臣もご承知だろうと思いますが、二様の半決が出ておる。一つ案件二つ判決内容を含んでおる。一つ似、機関車労働組合は、憲法に照して合憲組合であるということをはっきり判決しておるのであります。それから国鉄当局がとっておる団交拒否の問題に関しては、これは公企労法のただいま説明のございました第四条三項によって、これも許されるべき態度である、こういう判決が下っておることは御承知通りであります。これはわれわれが考えますと、非常にすっきりしない判決法律というものはやはりすっきりした筋を通した、条理を尽した判決が出ない限り、なかなかこの判決に承服できないのであります。特にその基本的問題は、何を中心考えていくかということになりますと、やはり憲法中心にわれわれは考えていきたい。憲法に抵触しない合憲労働組合であるという組合が、団体交渉拒否をされるという、それがただいま国内法の問題に関連をしておる、こう考えて参りますと、われわれはやはり憲法中心物事考えていきたい。これが国を立てる一つ基本線だと考えております。ただいま労働大臣は、もろもろ社会情勢云々と言われましたが、基本問題としてやはり憲法中心物事考えていきたい。もう一つは、国際関係をも十分考えていきたい。それからもう一つは、日本は何といってもアジア関係においては工業の先進国家である。その先進国家の体制を、国家もろもろの諸条件法律のもとにおいて整えていきたいと考えて参りますと、一日も早くこの矛盾を除去するためには、今問題になっておりますところの公企労法の改正をはからなくちゃならぬと私どもは考えておりますが、こういう問題に関しまして政府の所見をもう少しはっきりお伺いしたいのであります。
  22. 石田博英

    石田国務大臣 裁判所の判決について批評をいたすことは、私は差し控えたいと思います。それから第二の、憲法中心にして物事考えていきたい、これも同感であります。しかし、その建前から申しましても、公共企業体関係の労働法は、私は、憲法に抵触する法律ではない、やはり憲法の定めるところによってでき上った法律である、こう考えておるわけであります。労働者団結権団体交渉権、その他の規定は、ただいま御指摘の通りでありますが、それと同時に、すべての国民に対して平等権、自由権、あるいは財産権、それからその他の基本的人権憲法は保障しておるわけであります。それから、常に公共の利益というものとの関連において、あらゆる権利考えられなければならぬことも規定をいたしておるわけでございます。そういう観点から公労法という法律制定をされているのでありまして、従って、私は公労法が現存いたしておりまする以上、この公労法の建前を関係労使当局が守ってもらうことが必要である、こう考えておるわけでございます。
  23. 山花秀雄

    山花委員 公労法制定されるときにも、今石田労働大臣説明をされました点がずいぶん論議になりました。公共の福祉とは何ぞや、これに関連いたしまして、たとえば、国鉄の事業と私鉄の事業、一方は国家経営という形、一方は私の経営という関係ではございますが、公共の福祉という点については、私は何らの相違点がないと思います。ところが、一方では団体行動の自由権がある。片一方は団体行動の自由権がない。ここの差別が、一体公共の福祉のどの程度の差異によってきめられるかという点であります。もちろんわれわれは公共の福祉を尊重しなくちゃならぬという憲法条件をよく心得ておりますが、また一面には、基本的人権、人間の生存する権利を守られる人権、これがやはり優先すべきである。その優先が相待って公共の福祉というように結集をされてくる、かように私どもは考えておりますが、具体問題といたしまして、同じ運輸関係である国鉄と私鉄との公共の福祉の相違点は、一体法律を左右するほどの大きな相違点があるかどうかという点、政府の所見を承わりたいのであります。
  24. 石田博英

    石田国務大臣 私鉄と国鉄との根本的な違いは、まず片一方は完全な国有法人であるということであります。片一方は、一般の私法人である。それからもう一つは、その事業の及ぶ範囲が、一方は地域的であり、一方は全国的であるという点でございます。
  25. 山花秀雄

    山花委員 地域的、全国的といっても、今私鉄は、昔のようにちっぽけなものばかりじゃございません。戦争中を通じて相当大きな統合整理が行われまして、広範囲に運輸事業をやっておることは、御承知通りであります。私は今国鉄と私鉄の関係をピック・アップして申し上げましたが、公企労法関係は、国鉄の労働者だけでないということは、御承知通りであります。たとえば、タバコを作っておる。タバコ事業がどのくらい公益の福祉に関連性があるかどうか。たとえば、電話の架設の事業というような問題、あるいは、国の専売になっておりますがアルコールその他の問題、これが果してどの程度公共の福祉といえるかどうかという点であります。今は国鉄と私鉄という問題だけをピック・アップして申しましたが、タバコなんかを公共の福祉といえるかどうか。私はちょっと解せないと思うのですが、いかがなものでしょうか。
  26. 石田博英

    石田国務大臣 公労法制定に至ります間の基本的な違いは、二つ指摘いたしましたが、国有法人であるという点においては共通しておると思います。ただ、公共企業体のあり方につきましては、御承知のように、今公共企業体審議会で答申を出しておりまして、それに基いて政府は具体策を検討中でございます。その具体的な処置が決定をいたしますれば、今御質問のような事柄につきましても、公労法上の再検討をしなければならなくなるでありましょう。そう考えております。
  27. 山花秀雄

    山花委員 労働大臣予算委員会の方に呼ばれておるということも了承しておりますが、向うの質問も多分この問題に関連すると思いますので、私はこれより以上引きとめたいとは考えておりません。詳細な点につきましては、同僚議員の多賀谷委員の方からお伺いすると思いますが、ただ一点最後にお伺いしたいことは、ただいま労働大臣答弁なすったように、公企労法関係のあらゆる層にわたる点については検討中である。ただ国家事業という点においては一致しておるが、個々の事業々々の、たとえば仕事、製品その他の点については検討中である。その検討中というところに、労働大臣はいささか矛盾があるという点を自認しておられるのではなかろうかと、私はそう推察するのでありますが、この点いかがなものでありましょうか。そしてその検討してもらっておるということは、公企労法を何とか改正しなくちゃならぬというふうにお考えになっておるかどうか。この一点は非常に重要な点でありますので、労働大臣の確信ある御答弁を願いたいと思うのです。
  28. 石田博英

    石田国務大臣 矛盾という言葉は私は使いたくありませんが、問題が幾つかあることは認めます。それから、現在の公共企業体のあり方、これは労働問題だけでなくて、そのほか運用、経理一切を含めまして、いろいろの問題があることも認めます。そういう問題を解決いたさなければならないと思っておるわけであります。従って、公共企業体のあり方というものが正式に最後的に決定しますれば、公労法もまたそれに対応して検討を加えなければならぬことは当然であります。
  29. 山花秀雄

    山花委員 いろいろ質問したい点がたくさんございますが、やはり予算委員会においても同僚議員から多分この問題についての質問があると思いますから、労働大臣予算委員会の方に行っていただいてよろしゅうございます。それでは、あとこまかい点につきましては、同僚議員の多賀谷君が詳細に質問いたしますから、私の質問はこれで終ります。
  30. 森山欽司

  31. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 労働省にお尋ねいたしますが、今国際労働条約で採択になっているものは百七であり、日本批准しておるのは二十四であると聞いておりますが、それで間違いございませんか。
  32. 澁谷直藏

    澁谷政府委員 その通りでございます。
  33. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 その二十四の批准した条約のうちで、海上関係が十、陸上関係が十四、こう考えておりますが、これも間違いございませんか。
  34. 澁谷直藏

    澁谷政府委員 わが国批准いたしました二十四条約の内訳を申し上げますと、労働基準関係が五、労使関係が一、職業安定関係が三、社会保障関係が三、船員関係が八、これが海上の関係だと思います。移民関係が一、非本土地域関係が二、その他一、合計二十四でございます。
  35. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 今の点は、海上でも船員関係以外の海上、たとえば基準法――いわば船員法というのは基準関係ですから、今のあとの二の関係がはっきりしませんが、おいおいわかると思います。それで国際労働条約批准促進ということがかなり大きな問題になっておりますので、私は今から、百七ありますうちで二十四を除きますあとの条約について、一体どうして批准ができないか、その理由をお尋ねいたしたい。  そこで最初の第一号条約の「工業的企業に於ける労働時間を一日八時間且一週四十八時間に制限する条約、」この条約日本労働基準法との関係において、この条約批准するには、日本の労働法規のどういう点が抵触するのか、そういう点を概略まずお聞かせ願いたい。
  36. 澁谷直藏

    澁谷政府委員 ただいまの条約第一号でございますが、わが国労働基準法では、交代制に限らず、すべての場合に四週間平均で一週間四十八時間のワク内で一日または一週間の労働時間の延長を認めておるわけでございます。ところが条約の方ではそういった建前をとりませんので、その点でわが国基準法とは建前が異なっておるわけでございます。それから時間外労働は、条約の方におきましては、特定事由のある場合に限られ、かつその最大限を定めることを要するということになっておるのでございますが、基準法におきましては、時間外労働は労使協定があれば、事由のいかん及び時間数に制限なく認められる、こういう点において食い違っておるわけであります。
  37. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 細部の点もあるかと思いますが、大きな点だけでよろしゅうございますから、お答え願いたい。第二号の「失業ニ関スル条約」は、これは批准になっておりますから、問題ございません。第三号の「産前産後に於ける婦人使用に関する条約」は、なぜ批准にならないのか。これは国内法との関連はどういうようになっておるか、それをお聞かせ願いたい。
  38. 澁谷直藏

    澁谷政府委員 この条約内容を申し上げますと、条約におきましては、産前産後各六週間は婦人を労働させてはならないということになっておるのでございますが、基準法におきましては、産後の絶対的就業禁止期間が五週間であるわけでございます。それから条約におきましては、婦人はこの期間中一定額の給付を受け、及び無料で医師または助産婦の手当を受ける権利を有する、右の休業期間中または妊娠もしくは出産に基因する病気による休業期間中は、この休業が一定期間を越えない限り、婦人を解雇してはならないというのが条約内容でございます。これに対しまして基準法におきましては、解雇が禁止されるのは産前産後各六週間及びその後の三十日間であって、妊娠または出産に基因する病気による休業については、特に解雇制限規定がないのでございます。また基準法は御承知のように、同居の親族のみを使用する事業には適用されておりませんが、この点も条約と食い違っておるわけであります。
  39. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 次に「夜間に於ける婦人使用に関する条約」、第四号でありますが、こういう点は重要でありますから、日本国内法との関連をお聞かせ願いたい。
  40. 澁谷直藏

    澁谷政府委員 この条約第四ひと基準法との相違点は、この条約の方で例外規定があるわけでございますが、その例外の場合に、午前十時から午後五時までを、午後十時から午前五時までに変え、また管理地位にある女子に条約適用しないというわが方の基準法の建前が、この条約と食い違っておる点でございます。
  41. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 交代制については変っておりませんか。
  42. 澁谷直藏

    澁谷政府委員 手元に条約の原案その他詳細持ってきておりませんので、検討した上でお答えいたします。
  43. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 第五号の「工業ニ使用シ得ル児童ノ最低年齢ヲ定ムル条約」、これは批准済みであります。これは問題ございません。  その次に「工業に於て使用せらるる年少者の夜業に関する条約(第六号)」これを御説明願いたいと思います。
  44. 澁谷直藏

    澁谷政府委員 条約内容は、十八才未満の年少者は、夜間、すなわち午後十時から午前五時までを含む継続十一時間において使用してはならないという規定があるのでございますが、基準法では年少者の深夜業が禁止されるのは午後十時から午前五時までの間であって、条約に定める継続十一時間の要件を満たしておらない、これが主要なる相違点でございます。
  45. 森山欽司

    森山委員長 多賀谷君、百七全部お聞きなんですか。
  46. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 全部聞きます。実は私は五年間ほど労働委員をやっておりますけれども、一度も正式に伺ったことはない。この前実は伺いかけたところが、まだ勉強不十分で答弁できなかったものですから、一応政府から一条ずつ僕は聞きたい。本日は幸いにして委員長の方でこの国際労働条約批准について議題にしておりますから、正式に一条ずつ聞きたい。一条ずつ聞くというのは、ここ数年間初めて聞くのです。ですから私は一条ずつ聞いていきたい、かように思います。一つ御了承願います。
  47. 澁谷直藏

    澁谷政府委員 ただいまの多賀谷先生の御発言で、今まで質問したが政府の方の勉強が不十分で資料が出たことがないというお言葉であったのでございますが、最近私どもの方でも相当勉強いたしまして、一応百七条約につきまして、それぞれ国内法と抵触する点がどういう点にあるかということも、全部検討は終っておるのでございます。資料も整備してございますので、これを一つ一括資料として提出することにお願いいたしたいと思いますが、よろしく一つ……。
  48. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 澁谷官房長から、検討した国内法との比較が出ておるということでありますので、それを配付していただきまして再度質問をいたしたいと思いますが、私たちが率直に考えて、この条約批准できるぐらいになっておるのじゃないか、あるいは国内法を若干変えれば批准可能ではないか、こういう条約についても従来比較的放置されております。この前、倉石労働大臣のときに、たとえば婦人の地下労働作業禁止の問題、その他二、三批准の手続をとられましたけれども、どうもわれわれが推進をし促進をしなければ、なかなかその努力をされない、わずかなことでも国内法の改正の手続をあまりおとりにならない、こういう点で非常に遺憾に考えるわけです。  そこで私は、今比較的批准可能性のあるといわれております条約の一、二について申し上げてみたい。賃金の保護に関する条約、これはあるいは批准の方向にいくという話も若干聞いておるのですが、これは一体どういう点に問題があり、さらに国内法を整備されて批准の手続をとられるという考え方があるかどうか、これをお聞かせ願いたい。
  49. 堀秀夫

    ○堀政府委員 賃金の保護に関する条約につきましては、この内容は次のよなうことを規定しております。賃金は通貨で直接かつ定期的に労働者に支払わなければならないという根本原則を立てまして、そのほかに、たとえば現物給与のうち酒類等による支払いは許されないとか、あるいは工場売店の利用を強制してはならないとか、支払い日は労働日、支払い場所は作業場において行うということ、それから先取特権としての優先権を確保すべきである、このようなことを内容にしておるわけでございます。これに対しまして労働基準法は、賃金は通貨で直接に一月一回以上定期的に労働者に支払わなければならないということを、御承知のごとく二十四条規定しておるのでございます。そこで、この点につきましては目下検討中でございますが、原則は大体一致しておると思うのでございます。ただ基準法の中には、たとえば現物給与につきましては、これは労働協約で定めれば現物給与を許しておるわけでありますが、たとえばアルコール分の高い酒類で払うというようなことは認めないということは基準法にはないわけでございます。そのほか今の先取特権の問題等につきましては、御承知のごとく、これも民事訴訟法等によりまして先取特権は認められておりますが、この先取特権というものが抵当権等と関連して、どのようなことに条約規定しておるのか、その趣旨がどうであるかという点について、やや疑義があるわけでございます。これらの疑義の点を目下検討しておりますが、基本原則はただいま申し上げましたように一致しておるわけでございますので、これは検討いたしまして、今の技術的な点が解決いたしまれすば批准可能ではないかという工合に考えておるわけでございます。
  50. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 今の賃金保護に関する条約の先取特権の問題ですね、優先的債権、この問題は条約はどの程度考えておるのですか。
  51. 堀秀夫

    ○堀政府委員 条約は十一条に「企業の破産又は司法上の清算の場合には、その企業に使用される労働者は、破産宣告著しくは司法上の清算手続開始前の法定の期間中に提供した労務に対して支払われる賃金又は国内の法令で定める額をこえない額の賃金につき、優先的債権者として取扱われなければならない。」このようにいっておるわけでございます。この点は問題はないと思うのです。ただその中に、第十一条の二項に、「優先的債権を構成する賃金は、通常の債権者の資産分配に対する請求権が確定する前に、全額支払われなければならない。」このようにいっておりますのが、果して日本国内法に比べてどうであるかという点に疑義があるわけでございます。形式的にこれを読んだけでは、ちょっとよくわからないのでございます。特に第三項に「優先的債権を構成する賃金と他の優先的債権と優先順位は、国内の法令で定めるものとする。」というように書いてあるところを見ますと、これはまた、たとえば抵当権等におくれてもいいというふうにもとれるのでございます。この点につきまして疑義がございまするので、目下ILO事務局等に照会いたしまして検討をいたしておるのでございます。
  52. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 抵当権との関係は、これはもう予算委員会でもたびたび出ておりますが、どういうようにお考えですか。
  53. 堀秀夫

    ○堀政府委員 抵当権との関連につきましては、従来からいろいろな御意見があるわけでございます。われわれの立場といたしましては、これは賃金債権はなるべく他の債権よりも優先する、最優先的に処理されるべきである、このような考え方で他とも折衝しておるわけでありますし、二十四条のたとえば監督基準といたしましては、これは賃金優先の原則に立ちまして、われわれはやっておるわけであります。ただこれを民法上の問題として考えますときに、これは抵当権等を優先させることは、一般取引安全の見地からぜひ必要である、これをくずすと一般の私法取引の体系を全部くずすことになる。そこで、現在金融等が行われておるが、この体系をくずすと、企業に対する金融等がきわめて不円滑になるではないかという考え方が、法務の実務家の間にはきわめて強いのでございます。その点につきまして、これはわれわれといたしましては、われわれの立場から目下いろいろ検討しております。なかなか困難な問題があることは御承知通りでございます。
  54. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 次に第六号の、「工業に於て使用せらるる年少者の夜業に関する条約」、これはどうですか。
  55. 堀秀夫

    ○堀政府委員 工業に使用せらるる年少者の夜業に関する条約につきましては、これは条約内容は年少者の夜業を禁止しておりますが、ただその中身について見ますと、就業禁止につきまして、夜間は継続十一時間という原則を規定しておるわけでございます。基準法では、これも御承知のように六十二条によりまして、十時から朝五時までを深夜業として、禁止の時間としておるわけでありますが、この関係条約と対比いたしますと、どうもこの条約の要件は満たしておらないというふうに考えますので、これは批准不可能であるという工合に考えております。
  56. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 では十四号の週休の問題です。「工業的企業に於ける週休の適用に関する条約、」これはどうですか。
  57. 堀秀夫

    ○堀政府委員 十四号の、「工業的企業に於ける週休の適用に関する条約」の内容は、七日ごとに一回休暇を与えなければならないという原則を規定しておるわけであります。ただこれに対しましては、人道的、経済的考察のもとに労使と協議の上、週休制の原則の全部または一部について例外を認める、このように規定しておるわけでございます。これに対しまして、労働基準法は、御承知のごとく一週一回の休日を規定しておりますが、基準法の建前から申しますと、四週を通じて四日の休日を与えればよろしい、このようになっておるわけでございまして、条約が厳格に七日ごとに一回の休暇という工合にいっておるのと比べますと、やや批准困難ではないかという工合に考えます。ただこの条約の、ただいま申し上げました第二の原則の例外規定でございますが、この例外規定が人道的、経済的考察のもとにと書いてありまして、例外を認めるとなっておるのは、果してこの基準法のように、四週を通じて四日であればいいということになるのかどうか、この点に疑義があります。批准はこの点につきまして考えますと、やや困難ではないかという色彩が強いと思っておりますが、この点もILO事務局と目下検討中でございます。
  58. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 では次に三十号の、「商業及事務所に於ける労働時間の規律に関する条約」、この点についてお聞かせ願いたい。
  59. 堀秀夫

    ○堀政府委員 「商業及事務所に於ける労働時間の規律に関する条約」、これは第一号、「工業的企業に於ける労働時間を一日八時間且一週四十八時間に制限する条約」、これと一つの組になりまして、工業と非工業的企業における労働時間を規律する条約でございますが、この二つは同じ問題でございます。そこでこれにつきましては、この両条約とも一週四十八時間、一日八時間の原則を規定しているわけでございます。ただ例外といたしまして、一週四十八時間のワク内で一日の労働時間を十時間とすることができるという例外はございます。それから時間外、労働の場合は、業務繁忙等の場合に限って、その最大限をきめることによって例外を認める、このようになっているわけでございます。基準法は御承知のごとく一日八時間一週四十八時間の原則を規定しているという点で、もちろん原則はこの両条約と一致しているのでございますが、ただ例外的な規定につきましては、これも御承知のごとく基準法は労使協定によって、三十六条の協定によって時間外休日労働を認める、このようになっているわけでございます。労使の協定があればその団体意思を尊重して事由と時間の制限なしに時間外労働ができることになっているわけでございます。その点でILO条約は繁忙の場合に限ると規定していること、かつ時間外労働の例外を認める場合には最大限をきめるというふうに規定しております点と比べますと、基準法では批准できないということになるわけでございます。もっともその半面におきまして、たとえばこの条約は年少者の時間外労働の問題につきましては、これは一般成年者同様に扱って、年少者だから特に保護するというようなことはないわけでございますが、基準法では御承知のように、年少者については協定等によっても時間外労働ができないというような制限があります。この点は基準法の方が上回っているわけでございます。それからもう一つは、基準法では、労働時間に対しまして一定の休憩時間を与えなければならないということを具体的に規定しておりますが、条約ではそのような規定はございません。これも基準法が上回っているわけでございます。そのように、一方においては条約が上回り、一方においては基準法が上回っているわけでございますが、とにかくただいま申し上げました面におきまして基準法が下回っている点がございますので、この条約批准できないわけでございます。
  60. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 四週を平均してという日本基準法の観念は、大体どこから来ているのですか。
  61. 堀秀夫

    ○堀政府委員 四週平均してと申しますのは、たとえばアメリカの公正労働基準法によりますと、一日何時間ということは一応言っておりますが、一週向うは四十時間でございますが、一週四十時間をこえなければよろしい、こういうことになっております。そのような弾力的な一週のワクをきめるという立法例がその他の諸国においても見受けられますために、基準法が制定されましたときは、そのような一週間のワクを認めるという考え方の上に立って作られたものであると承知しております。
  62. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私が聞いておりますのは、一週四十八時間はわかるのですが、四週を通じて平均してという、こういう観念はどういうところから来ているのでしょうか、外国の立法例があるのでしょうか、あるいは日本では一カ月という観念が入っているのでしょうか、こういうことです。
  63. 堀秀夫

    ○堀政府委員 これはアメリカの公正労働基準法の中でも、そのような読みかえの規定を設けておりまして、そのような立て方にならったものであると承知しております。
  64. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 続いて四十六号、「炭坑に於ける労働時間を制限する条約」、これについてお聞かせ願いたい。
  65. 堀秀夫

    ○堀政府委員 「炭坑に於ける労働時間を制限する条約」につきましては、この内容は、一日の在坑時間は七時間四十五分をこえてはならないということと、日曜日及び法定休日における坑内地下作業に労働者を使用してはならない、こういう原則を規定しておるわけであります。これに対して基準法は、これも八時間ということにしております。ただし在坑時間は全部労働時間とみなす、こういう規定を設けておることは御承知通りでございます。それで八時間と七時間四十五分の違いというのがございますので、現行の基準法では批准ができないわけでございます。
  66. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 在坑時間の、二時間をこえる限度においてはいいという、あの問題もやはり批准関係ありますか。
  67. 堀秀夫

    ○堀政府委員 その問題も関係がございます。この四十六号の改正になりました条約では認めておらないわけでございます。そのような点もございまして、今批准しております国も、わずかにキューバとメキシコの二ヵ国でございます。相当きびしい条件になっておりますので、批准が困難なのではないかという工合に考えております。
  68. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 それから第三十三号の、「非工業的労務に使用し得る児輩の年令に関する条約」、これと国内法とはどういう関係になっておるでしょうか。
  69. 堀秀夫

    ○堀政府委員 これにつきましては、軽易な労働に使用し得る最低年令を十三才と規定しております。基準法では十五才を最低年令にしておりますが、軽易な労働については、行政官庁の許可を受ければ十二才以上であれば使用し得るということになっておりまして、この点で批准は困難と考えます。
  70. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 四十一号で、一九三四年に、「夜間に於ける婦人使用に関する条約」の改正があったわけですが、これについてお聞かせを願いたい。先ほど澁谷さんからお聞きしたのですが、どうも的確に把握できなかったものですから……。
  71. 堀秀夫

    ○堀政府委員 「工業に使用される婦人の夜業に関する条約」の内容は、「権限ある機関の定める夜十時より朝七時に至るまでの間における少くとも七時間の継続する時間を含む少くとも十一時間の継続する時間」について婦人の夜業を禁止する、こういう原則になっております。基準法は先ほど申し上げましたように、午後十時から午前五時までの七時間の就業禁止をしておりますが、その継続十一時間という面において基準法と抵触するわけでございます。
  72. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 四十一号の改正はどうですか。
  73. 堀秀夫

    ○堀政府委員 四十一号はさらに八十九号によって改正されております。私は今八十九号の改正されたものについて申し上げたのでございます。
  74. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 次に、第五十二号の、「年次有給休暇に関する条約」について、回内法との関連をお聞きいたしたい。
  75. 堀秀夫

    ○堀政府委員 「年次有給休暇に関する条約」の内容につきましては、一年間継続勤務した者に対しまして、少くとも六労働日、それから十六才未満の者には少くとも十二日の年次有給休暇を与えなければならないという原則を規定いたしております。それとともに、年次有給休暇の分割支給につきましては、ただいま申し上げました最小限の労働日をこえる部分でなければ分割休暇は認めない、このような原則になっているわけでございます。それに対しまして、基準法は御承知のごとく六日の有給休暇を規定しておりまして、この点は条約と一致しているわけでございますが、分割休暇は認めているわけでございます。これは国情の相違等もございましょう、日本におきましては一日をさらに分割するということは認めておらないわけでございますが、御承知のごとく一部の労働者諸君の間においては、これをさらに分割してもらいたいという希望すらあるくらいでございまして、要するに分割して使うことがむしろ風習になっているわけでございます。基準法はこれに合せて規定してあるわけでございますが、この点でも批准できないわけでございます。それから基準法は二十才未満の技能養成工に対しては十二労働日の年次有給休暇を与えるとなっておりますが、これが先ほど申し上げました条約の原則とやや違っていて、特に技能養成工に対してのみ、このような特典を日本基準法は与えております。向うは十六才未満の者については技能養成中であるといなとを問わず、この特典を認めているということでございます。ただしそのかわりに、二十才という点では日本の方がやや高いというような食い違いがあるわけでございまして、以上の点を総合して、結局この年次有給休暇の条約批准が困難である、かように考えております。
  76. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 次に九十四号の「公契約における労働条項に関する条約」でありますが、この公契約というような観念、日本では割合に公契約に関する労働条件というような出発の仕方をしておらない。これはアメリカあたりで政府が使う、あるいはまた政府が発注をする品物を作る工場における労働条件政府が行い得る最小単位の工場の労働者条件規定する、こういうところから出発したのだろうと思いますが、いわば政府が模範を示してやるという、こういう規定は、今後日本では現在の基準法でカバーをするから、こういうものは批准をしないという考え方でいくのか、あるいは日本でもそういう考え方を入れるのか、この点ちょっと政策的な問題になりますけれども、今考えられている点をお聞かせ願いたい。
  77. 堀秀夫

    ○堀政府委員 公契約の問題につきましては、ただいまお話のごとく、アメリカにおきましては公契約法というような法律がありまして、政府が発注する場合におきまする賃金の規制をしておるわけでございます。それからこの公契約の労働条項に関する条約におきましては、賃金と並びまして、労働時間等の労働条件につきましても必要な条項を設けなければならない、このようになっておるわけでございます。わが国におきましては、このような考え方は今はとっておらないわけでございます。ただ一般職種別賃金、PWにつきましては労働省告示として出しておりますが、これは賃金だけの問題であることは御承知通りでございます。そこでこの公契約の問題につきましては、アメリカ等において特にこの考え方が発達したのは、実はこれも御承知かと思いまするが、例の不況克服対策としてニュー・ディール政策を実行したその際に、政府が発注する場合にはなるべく有効需要を喚起するようにやっていく、こういう一連の考え方に立って、その一環として実施されておるわけでございます。わが国におきましては今のところ、このような情勢はありませんので、私は今のところまだ必要はないと思いますが、しかしこの公契約に関する問題につきましては、わが国では絶対に考える必要がないということではございません。この点につきましても十分検討はいたしたいと思いますが、ただいま早急にこの問題を取り上げる実益はないのではないか、かように考えております。
  78. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 わが国でもやはり、たとえば最低賃金という問題一つ考えましても、少くとも政府が発注をする品物について、それを生産する工場に対する最低賃金の設定、むしろこういうものが考えられるのじゃないか。日本政府はみずからやらないで、そうしてやれやれというけれども、もう少しみずからやるということを考える必要があるのではないか。ことに労働省に私はそう要請をしたいわけです。たとえば多発的な失業者の発生地帯というような場合に、政府の発注を同一価格で納入できるような、そういうところにある工場に発注をするとか、あるいは御存じのようにアメリカでやっている――大体アメリカは割合に、今お話のように有効需要喚起の面から政府が乗り出している、これは中小企業の需品を政府が買うという場合もやはりその考え方ですが、最低賃金等につきましてもこういう観念を入れるべきではないか、こういうように考えますが、ちょっとお聞かせ願いたい。
  79. 堀秀夫

    ○堀政府委員 この公契約の考え方につきまして、実は外国の考え方を申し上げますと、政府が民間の事業に対して公契約を結んで、それを発注する場合に、その労働時間あるいは賃金等を規制するということになっておるわけであります。そこで一つアメリカ等で特に特長として考えられますことは、一般の労働基準法、公正労働基準法、その他州の各法における労働保護法の基準よりも、さらにもうちょっと上回った条件で発注する、このようなことになっておるわけであります。これは先ども申し上げましたように、有効需要喚起というねらいに基いておるわけでございます。それと同時にもう一つは、他の国等の例を見ますと、労働基準関係の法規がわが国労働基準法のように、一般産業に全部適用になる、一人でも労働者を使っておれば全部適用になる、このような構成をとっておるのはむしろ少く、適用を限っておる国が相当ある。そういうような労働保護法規が適用されないような場合でも、政府が発注する場合には一定の労働条件確保する、こういう契約で発注すべきである、このような考え方も取り入れられておるように思っておるのであります。そこでわが国の場合でありますが、最低賃金法につきましては、やはり民間産業労働基準法適用があるものについては全部一応の適用をする、このような考え方に立って作られておるのであります。それから基準法につきましても民間産業一律に適用することになっておりますので、今申しました沿革的な趣旨から申しますと、その実益は割合少いのでございます。しかしこれもただいまお話のありましたように、特にアメリカ等において見られますことは、失業対策というような観点から、失業者がある地点において多発する、総合的に集中するというような場合には、政府はそこに集中して発注する契約を行う、あるいは事業を行う、かような考え方をとっておりますので、このような考え方は非常に参考になると思います。労働省全体あるいは政府全体の問題でありますので、われわれとしても十分検討を加えたいと思います。
  80. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私はやはり過渡的段階、経過処置的な過程においては、こういう公契約的な考え方がやはり必要ではないか、かように考えるわけです。最低賃金の問題はまた後に出ますから、いずれあとでいたしますが、第百号の「同一価値の労働に対して男女労働者に同一の報酬に関する条約」こういった簡単な、しかも大原則の条約がまだ批准されてないのは、どういうことですか。
  81. 堀秀夫

    ○堀政府委員 ただいまお話条約につきましては、その内容は、男女同一労働賃金の原則を全労働者適用すべきであるという決議と同時に、職務評価が本条約の実施上役立つ場合には、これを促進する措置をとらなければならないという原則を規定しておるわけでございます。わが国労働基準法におきましては、男女同一労働、同一賃金の原則を御承知のごとく規定しておりますので、その基準は満たされているわけであります。そこで私は、この条約は大体批准可能であるという工合に考えておりますが、なぜそれは批准がおくれたかという問題であります。あとの職務評価の問題につきまして、果して法制的な措置をとるのが必要であるか、あるいは事実問題で足るのかという点が問題になりまして、この点を目下検討しているわけでございますが、大体のところ原則は一致しておると思いますので、私はこの条約批准可能なのではないか、このような考え方のもとに、目下その調査準備を進めているところでございます。
  82. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 そうすると、近い機会にこれは批准の手続をとられるはずですか。
  83. 堀秀夫

    ○堀政府委員 この問題につきましては、目下ILO事務局と技術的な面を検討しておりますが、その点が解消すれば批准可能なことではないか、かように考えております。
  84. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 百七の条約の採択があって二十四しか批准を見ていない、しかも今ピック・アップして条約内容を、さらに国内法との関係をお聞きしたわけでありますが、もう少し政府批准をするという意思があるならば十分に検討をされ、そして早い期間に手続が完了されておるはずだと思うのです。ところが今お話を聞きましたようにたとえば男女同一賃金の問題にいたしましても、実は職務認定の問題が研究をされていなくて、今いろいろ検討しておる、こういうことでありますけれども、もう少し早い機会に行われるはずであったのに、むしろさぼっておる、といえば語弊があるかもしれませんが、あるいは事務当局はさぼっていないつもりでも、さらに首脳部の方でさぼっておったのかもしれません。私はこれだけ大きな国際問題になっている日本労働条件について、貿易その他の面においても、少くともこういう労働条約に合わすようにして、やはり多く批准をすべきである、このように考えるわけであります。アメリカのように、初めから国際連盟相手にせずということで、労働条件は高くても、実際批准の手続をしない国は、これはまた別です。これは特殊でありますから別です。それかといって労働条件の悪いという国もありませんから、これはまた別格であろうと思いますけれども、日本のようにダンピングの危惧があると外国に考えられておる国においては、やはり批准のできるものはどんどん批准していく、国内法を変えさえすれば批准ができるというならば、どんどん批准をしていく、こういう態度が必要ではないかと考えるのですが、これに対して政府の御答弁一つ政務次官から願いたいと思います。
  85. 二階堂進

    ○二階堂政府委員 ILOで締結されました条約精神というものは、先ほど大臣が申しました通りに、あくまでも尊重していくことは、これはもう当然のことであろうかと考えております。しかるに非常に批准の数が少いじゃないかということでありますが、私は、故意にその批准をおくらせておるということではないと考えておりまして、ただいま局長からいろいろ説明いたしました通りに、国内法規との調整の問題、あるいはまた国内法規を改正するにつきましては、いろいろな関係、客観的な条件の整備というような問題もいろいろあろうかと思っておりまして、この点につきまして最善を尽して、条件の整うものにつきましては、なるたけ促進いたしまして批准をいたすつもりでございます。
  86. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 政府では、ILOの国際労働条約批准の特別委員会か何かできておるのですか。
  87. 澁谷直藏

    澁谷政府委員 特別の委員会は設けておりません。
  88. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私は、労働問題懇談会に散発的に出すということでなくて、これだけ大きな問題になっておる日本の国際労働条約批准がおくれておるということに対しては、政府は積極的に熱意を示さなければならぬと思うのです。それがためには、やはり何か民間を入れた対策委員会を持って、私は断片的にお聞きしたのですが、こういうふうに逐条的に十分資料を整備して、一体どれを改正すれば労働条約批准ができるか、こういった熱意を示して、そうしてどんどんその方向に進んでいく。あるいは全然事情が違って、とても批准ができないという問題もあるでしょう。しかし政府はやはり批准手続をとられる責任者ですから、私は恒久的な機関を持ってこれをやる必要があるのではないか、かように考えるわけですが、これに対して次官はどういうようにお考えですか。何ならあとから大臣から答弁を承わってもけっこうです。
  89. 二階堂進

    ○二階堂政府委員 御趣旨ごもっともな点があろうかと思いますので、よく検討いたしまして善処いたしたいと思っております。
  90. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 これはきわめて大きな問題ですから、さらに大臣から御答弁願いたいと思いますので、一応その程度にいたしておきます。  今問題になっております結社の自由及び団結権擁護条約について、再度質問をいたしたいと思います。国内法との関係は先ほど労政局長よりお聞きしたわけでありますが、条約第九条の問題、たとえば消防とか監獄職員といったようなものがあるので、その点からもまだ批准の段階に至っていない、こういうことですが、これはどういうように御処置なさるつもりですか。
  91. 亀井光

    亀井政府委員 先ほど大臣からもお話がございましたように、その条項につきまして批准可能であるかどうかという最終的な結論は、労働問題懇談会の小委員会検討いたしておりますので、私からその結論じみたことを申すことは差し控えさしていただきたいと思いますが、この国家公務員法の九十八条の四項を一応見ますと、「警察職員、消防職員及び海上保安庁又は監獄において勤務する職員は、第二項に規定する職員団体を結成し、及びこれに加入することができない。」ということになっております。条約九条の方は「軍隊又は警察の構成員」云々ということになっておりまして、その点で、消防というものが戦前の消防でございますと、これは警察の中に一応入っていると解釈して差しつかえないのでございますが、現在の消防というものが警察の中に入るのかどうかという問題も、問題点としてはあるわけでございます。それからまた海上保安庁ですが、これは昔の水上警察でございますが、そういうものが現在の警察の観念の中に入るのかどうかというような問題点が、この国家公務員法第九十八条の四項一つをとりましてもある、こういうことを申し上げるにとどめまして、これが批准の妨げになるのかどうかという点につきましては、さらに労働問題懇談会の小委員会検討に持ちたいというふうに考えております。
  92. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 これは労働問題懇談会の問題じゃないでしょう。条約との問題でしょう。国内的にどうするかということは別ですよ。あなたの方は、これは批准すべきだと出たらどういうふうに手続的に御処置なさるつもりであるか、こういうことです。
  93. 亀井光

    亀井政府委員 この問題は、ILO事務局とのいろいろの過去における折衝の過程がございますが、しかし現在の段階では、事務的にはどうも警察の観念の中に入りがたいというような結論に近いようでございます。しかしそれが、先ほど申しましたような労働問題懇談会の小委員会で、どうしてもこの問題を入れてこの条約批准をやるべきであるというようなことになれば、そのときの問題は別になる。私としましては、今申しましたような問題点所在だけを申し上げて結論は申し上げかねるというのは、そういう趣旨であります。
  94. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私は技術的にお聞きしているのです。政策的ではなくて技術的にお聞きしているのですが、消防職員というものが団結権を持たなくてもいいという何らかの意思表示があれば、こういうことを条件条約批准は可能ですかと言うのです。
  95. 亀井光

    亀井政府委員 これは国家公務員法規定がございまして……。(多賀委員規定ではない、規定は改正するものとして」と呼ぶ)団結権が実際に必要であるかどうかということの御質問でございますか。もう一度お願いいたします。
  96. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 国際労働条約との関係で、国内法で禁止をしてあれば批准できるのかどうか。率直に言いますと、消防職員が、こういう団結権あるいは結社の自由は要らないのだという意思表示があれば、条約批准はでるきのかどうか。
  97. 亀井光

    亀井政府委員 国際労働条約は、軍隊及び警察だけを一応除外いたしておるのであります。従いまして、先ほど来申しますように、消防がわれわれの解釈からいって警察の中に包含されがたいということになりますと、やはりむずかしいのではないか。従って消防にも団結権の自由を与えるというような国内法の改正の問題になってくれば、これはまた別問題になって参りますが、現在のままではむずかしいのではないかということを私は申し上げたのであります。
  98. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 国内法を改正しないでも、何らか便法があるのじゃないですか。
  99. 亀井光

    亀井政府委員 解釈上の問題としてお尋ねだと思いますが、先ほど来申しますように、消防につきましては、ILO事務局との過去の折衝の段階におきましても、解釈上むずかしいのではないかというふうな段階でございます。
  100. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 では、今の問題は今後の研究の問題として残しておきまして、当面問題になっております同八十七号の条約の問題が、次のILO総会でもかなり問題になるので、政府はどういう態度でいかれるつもりであるか、これを重ねてお伺いしたい。
  101. 亀井光

    亀井政府委員 これは私よりも大臣に御答弁いただく筋合いの性質のものでありますが、先ほど大臣が御答弁しました通りでございまして、一応労働問題懇談会にこの問題の検討をお願いをいたしておりまして、その結論が出まして、政府として、国内法を整備することによって条約批准という問題を取り上げるのか、あるいは批准がむずかしいという結論になるのか、それは先ほど大臣から申されました通りでございまして、労働問題懇談会結論をわれわれは待っておる次第であります。
  102. 森山欽司

    森山委員長 ちょっと速記をやめて下さい。
  103. 森山欽司

    森山委員長 速記を始めて下さい。  本会議散会後まで休憩いたします。     午後零時二十六分休憩      ――――◇―――――     午後三時三十四分開議
  104. 大坪保雄

    ○大坪委員長代理 休憩前に引き続き会議を再開いたします。委員長指名により、私が委員長の職務を行います。  質疑を続行いたします。多賀谷真稔君。
  105. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 午前中に引き続きまして、大臣ILO条約批准について質問をいたします。具体的な問題といたしまして、今問題になっております「結社の自由及び団結権擁護に関する条約」について、さらにその具体的な問題として派生をしております日本国有鉄道の機関車労組の問題について質問いたしたいと思います。政府はいかなる理由で機労の団交権拒否が正当であると考えられておるか、これをお聞かせ願いたい。
  106. 石田博英

    石田国務大臣 公労法四条三項の規定によって、職員でない者が機関車労働組合代表者となっておりますために、そういう状態において国有鉄道公社側が団体交渉に応じない事態もやむを得ないと申しますか、そういう事態が生じておるものと考えております。
  107. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 四条三項の規定組合資格の要件ではないと考えておりますが、その点はどういうようにお考えですか。
  108. 石田博英

    石田国務大臣 労働組合法の上から参りますると、御説のようなことに相なるのでありますが、しかし国有鉄道は公共企業体でありまして、公共企業体の労使関係規定しておりまするのは公共企業体等労働関係法でございますから、公共企業体におきまして団体交渉その他の行為を行う要件であると思っておる次第であります。
  109. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 ところが、労働組合法第五条適用を受けるべく公労法第三条があるわけでありますが、その第三条は昭和三十一年の改正の場合に、公労法上の組合としての認定、すなわちこの法律規定する手続に参与する資格あるいは救済、こういう問題について公労委がこれを認定することになっておりますが、その場合には改正がございまして、第二項並びに公労法の第四条第一項のみが資格の認定基準になっておるようであります。これは従来非常に紛争がありまして困難な結果、これをはっきり明示するためにわざわざ三十一年に改正をなさっておるわけでありますから、当然公労法としての組合資格要件ではない、こういうように考えるのでありますが、その点どういうことでしょうか。
  110. 石田博英

    石田国務大臣 私のただいま申しました答弁通りでありますが、なお法律上のこまかい問題は政府委員から答弁いたします。
  111. 亀井光

    亀井政府委員 御指摘のように、公労法の三条の中で、労働組合法の適用につきまして、三十一年の改正によりまして、第二項並びに公共企業体等労働関係法第四条第一項ということで、第一項のただし書きの「監督の地位にある者及び機密の事務を」云々というものにつきましての適用があるわけでございまして、組合自体の資格審査というものにつきましては、お説の通りだと私は考えております。
  112. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 そういたしますと、現在の機関車労働組合は、公労法上の組合であると考えてよろしゅうございますか。
  113. 石田博英

    石田国務大臣 組合であると認めることはできるかもしれませんが、完全なる適格性、合法性というものは欠いておる、こう思います。
  114. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 あまり政治的な御答弁をなさるものですから、私は一応法律上の見解を聞いておるわけですから、私が質問する範囲内で答えていただきたい。これは公労法上の組合考えてよろしいでしょうか、こう聞いておるのです。
  115. 石田博英

    石田国務大臣 私は、その適格性を欠いておるということを言っておるわけであります。
  116. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 現在の機関車労働組合というのは、組合資格の要件としては、今お話がありましたように、第二項並びに公企体の第四条第一項の規定が審査の要件であるから、この審査の要件は満たしておるから、当然公労法上の組合考えていいと思うわけですが、どうですか。
  117. 亀井光

    亀井政府委員 これにつきまして、裁判の判決によります理由とは別にいたしましても、われわれとしましては公労法上の組合だというふうに言っていいんじゃないかと思います。ただ先ほど来大臣が申し上げますように、団体交渉をし、その結果に基いて労働協約の締結をするにつきましては、適格性を欠いているのだということを申し上げたのであります。
  118. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 そういたしますと、公労法上の組合としては適格性は欠いてないけれども、団体交渉をする場合には相手が適格性を欠いておる、こう理解してよろしゅうございますか。
  119. 石田博英

    石田国務大臣 その通りであります。
  120. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 基準法の三十六条の協定を、各機関車労組の支部といいますか、あるいは監理局相手といいますか、そういうところで結んであると考えておりますが、それはその通りでしょうか。
  121. 石田博英

    石田国務大臣 おっしゃる通りです。
  122. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 三十六条の協定は、監理局とその機関車労組の支部で行われている。そういたしますと、基準法二十四条の賃金控除の問題、これは協定が行われてないと聞いておりますが、これは一体どういう理由でしょうか。
  123. 石田博英

    石田国務大臣 この問題は全体に共通する問題でございますから、そういうふうになっているのだろうと思います。
  124. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 三十六条の問題は全体の問題ではないが、二十四条の問題は全体の問題だというのは、どうも了解に苦しむのです。基準法上、そういう区別をすることは了解に苦しむのですが、これはどうですか。大臣でなくてもけっこうですかつら……。
  125. 亀井光

    亀井政府委員 三六協定は、現場現場のいろいろな事情があるわけでございます。従いまして現場の実情に合せるように、管理者側としましては、その協定の締結の権限を下部におろしていく、組合もまた同じようにおろしていくという形の実行が各公社において行われているようでございます。ただ賃金カット、第二十四条の協約に基きます賃金からの組合費の控除等につきましては、これはやはり全国一律の方針のもとに、あるいは指導のもとに行われるべき性質のものでございますので、各地方の実情とか、そういうものは考慮されずに行われなければならぬ問題だと思われますので、そういう形になっているのだと思います。
  126. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 賃金の支払いのただし書きの問題は、これは全国一律に行われるべきものであって三十六条協定は当該事業場で行われるべき性格だ、こうおっしゃっておりますが、基準法からは同じことじゃないかと思うのです。当該事業場の労働者あるいは労働組合ということですから、これは基準法上は同じ取扱いをすべき問題ではないか、こういうふうに考えますが……。
  127. 亀井光

    亀井政府委員 その問題につきましては、かつての旧法と違いまして、法律が改正になりまして、三六協定と二四協定と同じ形式をとって参りました。従いまして、これは管理当局組合との間の話し合いでございますから、各地方の実情といいますか、地方におろしまして、その地方における管理側と組合の支部との間で協定を結ぶここともできます。もちろん組合の本部と当局一本で全国的なものを結ぶこともできる。これはその労使間における話し合いの結果において、どちらでも形はとれるのじゃないかというふうに思っております。現実的には各地方別にやられておるようでございますり。
  128. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 そういたしますと、機関車労組の場合は、現在における本部の役員が被解雇者ですから、その場合は地方でやれば問題ない、こういうことになりますね。
  129. 亀井光

    亀井政府委員 労働基準法にございまするように、組合としての存在がない場合には、労働者の過半数の代表者という形で結ばれていくわけでございます。そこで法律的に組合の方からそういう形のものを作って要望しているということになれば、これは協定ですから、当局側が断われば拒否することはできるわけであります。話し合いがつかなければ、それは効力を生じない性質のものでありまして、話し合いがつけば地方的にもそれはできましょうし、また中央一本でもできるという筋合いのものだと私は考えております。しかしそういう態勢のもとで組合が要求をすることは、これはできるのじゃないかと思います。
  130. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 そういたしますと、それは賃金控除の問題もやはり拒否することはできぬわけですね。地方における交渉は……。
  131. 亀井光

    亀井政府委員 それは協定でございますから、お互いの合意がなければ成立しない性質のものでございますから、それには応じられないという当局側の態度が出てくれば、これは協定として効果を発生しないということになるのじゃないかと思います。
  132. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 そういたしますと、本部の代員が団体交渉の適格性がないという理由では、正当な理由というわけにはいかないでしょう。団体交渉拒否の理由といたしましては……。
  133. 亀井光

    亀井政府委員 その問題は今公労法の第四条の三項の解釈をぎりぎり詰めて参りますると、いろいろな法律問題がそこに出てくるわけでございます。そこで本部の組合といいますか、本部の三役につきまして四条三項違反の状態にある機労の組合でございます。従いましてぎりぎり四条三項の解釈を詰めれば、これは瑕疵のある組合であるという形のものが出てくるわけでございます。組合である存在は、私は先ほど申し上げましたように、否定はしないのでございますが、瑕疵のある組合だという、適格性を欠く組合であるという形のものは出てくると思います。そこで、それを当局がそういう理由のもとに拒否するということは、これは一応あり得ることじゃないかというふうに考えております。
  134. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 四十六条協定の場合、オーケーといって協定をしておいて、二十四条協定の場合は拒否するという理由はどこにもないでしょう。
  135. 辻英雄

    ○辻説明員 ただいまの御質問でございますが、三十六条、二十四条の協定当事者でありますものは使用者、一方が労働組合、あるいは労働組合がない場合には労働者の過半数の代表者ということにつきましては、先生のお話通り二十四条も三十六条も同じものでございます。ただいま三十六条を締結して、二十四条拒否することがどうかということでございますが、内容は別といたしまして、こまかい具体的な実態は別といたしまして、考え方といたしましては、労働者の過半数を代表するものとして、一般の場合には締結をいたしておるように私どもとしては聞いております。
  136. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 それは奇妙な解釈を労働省省はなさるのですが、三十六条は、「当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定」というわけですから、どちらでもいいわけではない。第一次的には労働組合、組織を有しない場合には労働者の過半数。そこで三十六条協定は、いかに理由をつけましても当然労働組合がある、しかも過半数を制する労働組合があるのですから、労働組合とされるべき性質のものであって、どちらでもいい、選択というわけにはいかないと思いますが、どうでしょう
  137. 辻英雄

    ○辻説明員 ただいまのお話は、機関車労組なりあるいはその支部の問題の協約締結能力と申しますか、交渉能力ということに問題の発端があるかと思います。お話のありましたように、機関車労組の本部の組合は、公労法四条に適格でありまするところの役員が存在をいたしておりませんので、労働組合を代表して交渉に当るべき者がおらないわけでございます。支部の場合について見ますと、これは委員長その他適格の者が大部分でございまして、この場合には、支部といたしましてはそういう能力を持っておらないということはいえないわけでございます。そういうことでございます。
  138. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 そうすると、支部としては不適格というわけにいかないから、支部の支部長と、それから管理者といいますか監理局といいますか、そういうところとの締結はできる、三十六条の協定はそういうようにされておる、こう解釈していいですか。
  139. 辻英雄

    ○辻説明員 個々の機関車労組の支部におきまして協定がどういう形で締結されておりますか、私ども具体的には承知をいたしておりません。
  140. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 しかし課長は、先ほどは労働者の過半数を相手にしたのだ、こうおっしゃった。ところが法律はそういうような選択的にできていない。実際は、組織を持って過半数を占めている労働者は――一次的には労働組合、もしない場合は労働者の過半数ということでありますし、現実には労働組合があるのですから、当然労働組合と締結するべきものである、こう考えてよろしいわけでしょう。
  141. 辻英雄

    ○辻説明員 私が先ほど申し上げましたのは、一般的な場合につきまして、労働組合がありましても、交渉当事者能力がないような組合の場合に、三六協定をどう処理するかという一般的な問題を申し上げたのでございます。そっの場合には、労働組合がないわけではございませんけれども、現実に三六協定の交渉当事者能力がある組合が存在していない、そういう場合には、ない場合に準じまして、従来から慣行的に過半数代表者と協定が結ばれておるということを申し上げているわけであります。
  142. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 そんな例はないでしょう、実際問題として。ありますか。慣行としてと言われるけれども、慣行なんかないはずですよ。
  143. 辻英雄

    ○辻説明員 慣行としてと言いましたのが、あるいは表現が悪かったら訂正いたしますが、法律上の解釈上、ない場合に準じて取り扱わるべきものだというふうに考えております。
  144. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 実際問題として、そういう例は今までないのでしょう。組合があって、そうして代表者が適格能力を欠いておる……。これは、国労とか機労の話をすれば別ですけれども、民間の組合は、そういうことをすれば不当労働行為になると言っておるのだから、そういう組合があるはずがないのですがね。ないでしょう。
  145. 辻英雄

    ○辻説明員 民間については、そういうことはなかろうかと思います。
  146. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 じゃ今まではないわけですね。そういう事実はないわけですね。
  147. 辻英雄

    ○辻説明員 詳しい前例が公企体関係にありましたかどうか、ただいまのところ、ちょっとはっきりいたしません。
  148. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 また三十六条協定、現在やっている協定というのは、問題が起きてから後に起った問題だろうと思うのですね。ですから三十六条協定があるという、やはり労働組合相手の協定だ、労働省としてはこう考える、こうわれわれが理解してよろしいですか。
  149. 辻英雄

    ○辻説明員 国鉄と機労の支部の間でどういう具体的な協定が結ばれておりますか存じておりませんので、その具体的な事実の上で申し上げたいと思います。
  150. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 現実に地方では、役員が解雇になっていない、こういう場合を一応現実問題を離れて想定いたしましょう。解雇されていない。そうして三十六条協定が結ばれる、こういうことはやはり労働組合と協定をすべきである、こう考えてよろしいですか。
  151. 辻英雄

    ○辻説明員 一般的にそう考えていいと思います。
  152. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 一般的にと言われても、僕は問題をはっきりして申し上げておるのですから、そうだと思えばそうだとおっしゃっていただきたい。
  153. 辻英雄

    ○辻説明員 多賀谷先生の御設例の場合は、その通りでけっこうだと思います。
  154. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 そういたしますと、三十六条協定と二十四条のただし書きの賃金控除の場合とは差異をつけるべきものではない、こう了解してよろしいですか。
  155. 辻英雄

    ○辻説明員 法律的にその通りでございます。
  156. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 大臣、お聞きの通りでありますが、あなたは法律を守れ、法律を守れということをよく言われるのですが、そこで現実は三十六条協定は結んでおるわけです。ところが二十四条協定は結ばぬ。僕はそこに何らの差異がないというように考えるのです。また今こおっしゃった通り何らの差異がない、こう言われるのですが、大臣はどうお考えになりますか。
  157. 石田博英

    石田国務大臣 二十四条協定を国鉄公社当局がどういう理由で現在結んでいないのか、たとえば内容について話し合いの一致を見ていないのか、あるいは話し合いそれ自体に応じようとしていないのか、私は実は詳細な報告を受けておりませんから、それについての私としての判断を申し上げる段階でないと思います。
  158. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 段階ではないという程度を言っておられるが、大臣はよく御存じないから今答弁できない、こういうことでしょう。そこで大臣、今差異がないということをおっしゃっておるのですから、これ以上この問題について、大臣はよく実情をお知りにならないでしょうから追及いたしませんけれども、差異がないならば、法律順守の立場から、一つ大臣はそういう態度をとっていただきたいということを要望しておきます。
  159. 石田博英

    石田国務大臣 今の法規課長その他の説明通り、話し合いそれ自体に応じていないならばそういう問題が生ずると思いますけれども、内容意見の一致を見ないからといって、それが直ちに法律違反であるとかいうことは言えないと思います。
  160. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 実は一切話し合いに応ずるなという通牒が出ておる。そうして二十四条協定が結ばれていない。三十六条の協定は結ばれておるから、私はどうもその点が不思議なんです。三十六条協定を結んでおいて、自分の都合のいいものだけを結んでおいて、二十四条ただし書きは拒否するなんていう態度はないと思うのです。本部相手の問題なら別ですが、同じ事業単位に結ぶべき性格のものなんです。またそれは代表者が被解雇者であるということを理由には言えない問題である。そういう問題に関して拒否をし、差別をするという理由が見当らぬわけですがね。
  161. 石田博英

    石田国務大臣 それはどういう通牒であるか私は存じておりませんけれども、しかし話し合いにさえも全然応ずるなということは、それはやはり今この説明とは一致しないと思います。しかしその内容は、一致しないことはやむを得ないと思うのです。
  162. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 通牒は職労の第一二四九号という通牒です。これは副総裁から各支社長、各監理局長にあてた通牒であります。それから二十四条のただし書きの協定が結べないということで、現在地方調停委員会に提訴になっておるわけです。これは事件として起っておるのです。通牒を示せと言われますので、通牒をお示しいたしましたから、御答弁願いたいと思います。
  163. 石田博英

    石田国務大臣 ちょっと読んで下さい。
  164. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 「機関車労働組合に対する今後の取扱方について(依命通達)機関車労働組合は去る十二月十八日の臨時中央委員会において「解雇されたものを三役として組合本部にとどめ現行態勢のままで対処する」ことを決定した。機関車労働組合団体交渉権については、昭和三十二年十一月二日付の東京地裁の判決もありまた国鉄労働組合に対して出された「藤林あっせん案」の主旨にかんがみても一切の団体交渉を行わないことは既定の方針であり、このことについては既に通達ずみであるが、今次の事態に徹し更に次の点について特に留意されたい。一、非公式であると否とを問わず、機関車労組との間に絶対に申合せ、了解等の合意を行わないこと。二、内容いかんを問わず一切の陳情、話合い等に応じないこと。三、昭和三十二年八月五日付職労第七七五号依命通達を厳格に実施すること。」実はこれを理由に、地方では二十四条ただし書きの協定は応じられません、こういうことを言っておるそうであります。
  165. 石田博英

    石田国務大臣 その通達の意味する内容、意図等について、国鉄当局から事情を聴取いたしました上に、労働省としての見解を申し上げたいと存じます。
  166. 井堀繁雄

    井堀委員 関連して。これは何も労働省首と国鉄当局との間に話し合いをしなければわからない問題というよりは、もっと重要なことが一つあるのです。これは公労法精神自身を、労働省がどういうように把握しているかということに起因すると思うのです。これは大臣も御存じのように、公労法四条の三項によって、団体交渉の当事者である役員の適格性の問題で争いになる。従ってこの適格性を持たなければ、団体交渉の場を持つことができないまでに限定されてくるわけです。今多賀谷委員が質問しておるのは、職場における労使関係において、ことに基準法に命じられておる雇い主の義務規定がある。これは当然法律によって拘束を受けるわけであります。その場合には第四条の三項に基く適格性のあるものでなければ、その協定ができないという場合にも問題になる。でありますから、本質的な問題としては、この機労という労働組合団体交渉をやる機能に対する一部の法律制限が加えられて、その制限については、今法律解釈で争いになっておる問題でありますから、この問題については、意見を差しはさむことを避けるということはやむを得ぬことだと思うのです。しかしそれ以外のことについてまで踏み出した場合には、労働省としては労働法の運営上あやまちのないように、注意を与うべき積極的な義務があるのです。そのことを今尋ねておるわけであります。何か、争いの渦中に入って問題をさばくというようなことについての質問があるというなら、話し合いをしなければわからぬ、あるいは当局の意向を聞いてということになるだろうと思うが、今聞いているのは、そういうことを聞いているのじゃない。争いになっている問題は、第四条三項にかかわる機労と国鉄との団体交渉の機能に関する意見の相違が出ておる、そのことを聞いておるのじゃない。基準法の、ここ規定されております事項というものは、労働組合がなくても、労働者の過半数の了解、承認を得なけばならぬという法律規定である。団体交渉の機能を失ったからといって、労働組合を全然否認するようなことをやったら、これはとんでもない違法行為である。労働省は知らなければとにかく、気がついたら、早速注意を与えて、そういうものは違法行為だから撤回させろという措置をとるべきものである。今の御答弁を聞いていると、そういう措置もとっておいでにならないということが明らかになったようであります。それどころじゃなくて、そういうことをやるべきじゃないかのごとき口吻で答弁されるに至っては、これは言語道断と言わなければならない。
  167. 石田博英

    石田国務大臣 今の通達の事実を、私は今初めて知ったのであります。今聞いたところだけによりますと、三六協定それ自身も含めて、何か全然話し合いに応ずるなというような文章のようにも聞きとれたわけです。しかし、そういう通達を出しました国鉄側の法律的な見解、立場というようなものも、やはり私どもは、私どもの判断をする前に開いておかなければならない。そういうものを聞いた上で労働省としての態度を明らかにしたい、こう申し上げているのであります。
  168. 井堀繁雄

    井堀委員 そう持って回らないがいい。問題をすなおにぴしぴしとやったらいい。こっちで聞かぬでわかることをお答えがあるのです。公労法四条の第三項というものは、機労と当局との間の団体交渉というものについてあらかじめ規定がある。これこれのことについては団体交渉できめるのだ。それ以外の問題は職場できめることもありましょう。あるいは団体交渉の席に譲らなくても、労使関係というものは幾つも問題がありますから、そういう問題は当然さばいていくべきである。ところが今ここにお尋ねしている基準法の第三十六条というのは、これは機労であろうと民間の労働組合であろうと、とにかく基準法の適用を受ける事業場におけるところの、雇い主の義務を規定してある。その義務は、当然労働組合の承認、協議を得て、あるいは労働組合のない場合においては、労働者の過半数の同意を対象としなければならぬという規定であって、これに対してどうかということを多賀谷君はさっきから聞いている。これはどんな通牒が出る、出ないということは別です。この規定に基いて雇い主の義務というものは、公労法四条第三項の規定で争いがあるからといって、こういう問題までそういう義務を免除されるということが、あるかのごとき、ないかのごとき答弁をしたら、これは重大な事柄になる。このことだけは明確にしておく必要があるという質問をしている。
  169. 石田博英

    石田国務大臣 私の申し上上げているのは、第一今聞いたばっかりだということです。それから第二は、今聞いたばっかりの通牒を、私が耳にしたところによりますと、三六協定もそれから二四協定も何もかも、非公式であろうと話し合いに応ずるなというような文章のように聞えたが、実際部分的には三六協定は結ばれているところもある。そうすると、実情と通達との間に非常に違いがございます。そこで、そういう実情と通達との違い、それから初めて聞いたことでございますから、やはり断定を下す前に、一応私としては公社側の考え方、あるいは主張というものを聞く義務がある。だからそれを聞いた上でお答えを申し上げるということを申しておるのであります。
  170. 井堀繁雄

    井堀委員 私が横取りをしては悪いけれども、重要な問題はほかにあると思うのです。しかし今の法律解釈の問題は、労働省としてはがっちりしておいてもらわなければ困る。これは基準法という保護法の、一番大切な法律を施行される労働省として、こんなものに対して迷いを生ずるようなことがあっては大へんなことになるというので、私は関連質問で発言を求めたのであります。この点は明確にしておかなければならぬ。それから、そういうことまで何か争いの渦中に引きずり込んでやりますと、これはまるで労働省が雇い主の一方に加担して、法を曲げてみたり、運営したりするようなことになりますから、これは重大なことが起る。まさかそこまで、労働大臣が労働組合をたたきつぶすほどの悪意があろうとは思わないのですから、好意的に、私は混乱を避けるために質問をしたのであって、それに今あなたが言うような、何か国鉄から出した書類の内容を見なければわからぬとか何とか言うことは、かえって痛くもない腹を探られることになる。そんな必要はないではないか。とにかくこういう法律解釈上の問題について間違いがあれば、間違いがある方を正すというのが労働省の当然の立場です。いいも悪いもあったものではない。
  171. 石田博英

    石田国務大臣 労働省としての法律解釈は一定しております。ただいままでお答えを申し上げた通りであります。たださっきから申し上げておる通り、初めて私は聞いたのです。だから、初めて聞いたということは、私どもが何も国鉄の労使のいずれとも特別の連絡をとっていないという何よりの証拠でございまして、まして労働組合に対して悪意を持っているなどということではございません。善意だけであります。そこで初めて聞いたことについて、私は今ここにすぐに労働省としての具体的な事例に対する見解を申し述べるのには、私どもといたしましては、やはり国鉄当局側のそれについての考え方、主張というものを一応聞いてみる責任がある。それからもう一つは、先ほども申しました通り、その通牒を聞いておりますと、三六協定もみんな否定しておるように書いてありながら、事実は三六協定を部分的に結んでおるところもあるということでありますので、その通牒の権威と申しますか、オーソリティと申しますか、それはどうもあまり手ごろに解釈されておるようにも思われる。そこで、そういうことを実情調査いたしました上でお答えを申し上げます。これはどうも初めて聞いたことをいきなり答えろと言っても、ちょっと御無理ではございませんかな。
  172. 井堀繁雄

    井堀委員 そういうことを聞いているのではないのですよ。さっきから課長といい、局長といい、あなたの答弁といい、自信のないことおびただしい。速記を見てごこらんなさい。さっきから言っていることは、きっとまちまちなことを言っているに違いない。公労法四条の三項というのは、何回もくどいようですけれども、これは団体交渉に対する機能の一部を喪失するということが問題になるわけです。しかし先ほど質問されている基準法の三十六条の問題にまで及ぶに至るということになると、とんでもないことになるということを心配して、もっと明確な答弁をしておく必要があるということをさっき、聞いたのです。そこへ今あなたがこの問題を持ち込んできてしまったんだが、これは何もあなた方の答弁をどうしようというのではない。書いてある。だから問題は、この法律規定に違反した事実があるかどうかということを聞かれたときに、それでは事実を調査してと言うならわかる。そこで次に問題になるのは、これは予算委員会でも、時間がありませんで、ちょっと国鉄の当局に注意をする意味で質問をしておいたのでありますが、あくまでも公労法精神に基いて、国鉄当局も労働組合も善処しなければならぬことは言うまでもないと思うのですが、肝心なことは、労働者側が違法行為があるときびしくこれを罰したり、あるいはこれをきびしく取り締るというような感度であって、もし万一雇い主側に違法行為や、あるいはこれに類するような行為があった場合に対してはこれを見送るようなことがありますれば、これは当局の態度は適当でない。特に労働省の立場から言いますと、労働基準法の厳正公平な運営をやらなければならぬ。しかも保護立法なんだ。でありますから、本来ならば労働者側が違法をやることはあるべきはずはない。ところが雇い主側は、あなたは見ていないというならごらんになったらいい。これはあとで私は御答弁をいただこうと思うのでありますが、こういう行為に対しては厳重に、それが国鉄であろうと民間企業であろうと、違法行為は違法行為として厳重なる処断をしていくという態度がなければ、これは公正な立場に立って労働行政を運営すると言ったって、威信を失墜する重大な事柄になると思うから、私は何も知らないものを追及してどうこうと言うのではなくて、そういうことであってはならぬというのこで、これはもうここで取り上げられてきているのですから、こういうものをすなおにお認めになって、事実がわからなければ、事実がわかったらそのときに法律の解釈に照らして善処するという答弁をされるのが適当だと思う。何かそれを言いのがれするかのごとく言われますと、私自身はあなたの腹を見通しておりますけれども、言葉を通じ、あるいは速記を通じて他の人が見た場合、労働省、くさいぞ、どうやら国鉄に参っている、労働組合弾圧ということは単なるデマでなくて、どうやら本腰を入れて、ああいうところからいたずらしているわい、ということになるのです。そういう手落ちのないようにと思って、私は関連質問をちょっとしたのです。今までのあなたと私のやりとりを速記の上だけで見ていって、それを問題にすれば、そういう巷間伝えられる労働省の態度が、どうも片手落ちだということが裏づけられる証拠になってしまうそういうことで、私は何も一本とろうと思ってやっているのでなくて、明確にしようと思って質問しているわけです。
  173. 石田博英

    石田国務大臣 法規の実施について、労使いずれかの側に特に有利な判断をし、解釈をするという意思は毛頭ございません。それは明確に申し上げておきます。ただ、ただいま提示されました具体的事実についての労働省側の意見及び措置というものは、その通牒を出した側の意見を聞き、主張を聞いた上で、私どもの法律解釈にのっとって措置をとりたい、こういうことであります。
  174. 井堀繁雄

    井堀委員 これはあなた、何かそこにこだわっておられる。これはこれでやめておきますけれども、実はこの前の予算委員会でもっと伺いたかったのは、私は公労法精神を雇い主がどう理解しているか、また労働法の公正な運営を労働省はどう考えているかということを実は聞きたかったのでありますが、時間がなくて聞けなかった。いい機会だと思いますから、関連質問でどうかと思いますけれども、大事な点だからお尋ねしてみたい。というのは、言うまでもなく公労法精神は、公共企業体における労使関係というものは、民間企業でも産業平和を希求せざる者はありませんけれども、ことに公共事業は一般の国民に影響するところが甚大だから、その労使関係というものは、いつも平和的な労使関係を維持するために、いろいろとむずかしい注文をつけているところに公労法の特別の存在が出てきたことは言うまでもない。だから第一条の精神が重要なんです。ところが第四条の三項のような、組織の全体としては問題はない、しかしその機能について、雇い主と労働者の間の争いができているというこの事実、だからその争いがいずれに理があり非があるかということは、第三者が介入してとやかく言うことは避けたいと思う。私ども避けたいと思う。現にこの問題は法廷へ出て黒白をつける段階に今入っているわけでありますから、なおさらのことだ。しかし大事な点は、労働省としてはこの公労法精神に基いて、争いの理非がいずれにあるかということよりは、そういう争いを片ときも早く解消せしめつるためのいろついろな措置を講ずべきなんです。もちろん争いが起って経済上の争いになりますならば、仲裁、調停のそれぞれの機関にかけて処理するという法律は置いておりますが、必ずしもそういう委員会にかけることばかりが能じゃない。でありますから、先ほど指摘されておるような通牒というようなものを大臣が知らなかったということはあなたにとっては非常な黒星なんだ。そういう事業の間に争いが起きているということを知らぬわけはないのでありまして、知らぬどころではなくて、その争いは間違いを起しますと、どういう事故を起すか知れません。そういう場合には国鉄自身の責任も問われるし、労働組合も世論の擯斥を受けるでしょうし、その持つ内容の一番大事な事柄について、知りませんということは、はなはだ名誉になりませんよ。だから私のお聞きしたいことは、知らないなら知らなくてもしようがない。こういう重大な法律運営の衝に当っている労働大臣としては、よほど考えなければいけませんよ。
  175. 石田博英

    石田国務大臣 労使間の紛争というものは、原則として自主的にこれを解決してもらうことを期待しているのでまあって、一々各企業体の内部におきまする労働問題処理の方針なり、通達なりというものを、私が一々承知していなくても、別に私の黒星とは思っておりません。だだ、それによって問題が生じ、問題が提起されました場合においては、それについての処置を私どもは考えればいいのであって、今幸いに問題が提起されましたから、その問題の実態について調査をいたしました上でお答えを申し上げます、また処置もいたします、こういうことを言うておるわけであります。  それから公労法精神は、公共企業体における産業平和の確立にあることは申すまでもありません。その産業平和を確立するためにいろいろな規定が設けられているわけでありまして、その規定を守っていくということが産業平和確立の基本的方法であると私は考えておるわけであります。それで、産業平和を守るために規定はじゅうりんしてもいいということは、結局長い意味における産業平和確立のゆえんではないと私は考えておるわけであります。
  176. 井堀繁雄

    井堀委員 どうも小意地の悪いものの言い方はしたくないのでありますけれども、今あなたのには、からんでくるようなところがあるので、からまれればからまなければならぬということになるんです。もっとすなおに受け取れぬですか。ここで問題になりますのは、四条三項の問題は、さっきから言っているように、これは仕方がない、争いになっておるんだから。それが違法になるか、違法ならざるかということはあとの問題になる。しかしそのことのために労働組合の正常な団体交渉が今日行えないということは、雇い主も損失を受けておる。労働者の方も必ずしも利益じゃない。いわんや紛糾が作業未の上に影響するようなことがありましては国民自身が迷惑する。こういう問題ですから、よほど注意をして見守っていただかなければならぬ。労使関係の紛争ということについては、何も私はあなたを攻撃する意味で言っているんじゃない。労働省のお仕事に忠実であってほしいということを願うあまりに言っているんです。そこであなた、あとで事実をお調べになって、それをてきぱき処置をおとりになるということでありますから、それを期待しておるのであります。そうなると、私は紛争については、いい意味においても悪い意味においても、いろいろ問題があるでありましょう。そういうものに対する解決をぴしぴしとつけていただかなければならぬ。労働省としては、これは明らかに基準法の違反だ。この通牒が本物かうそかという疑いもあるでしょう。お取りになって事実ならびしゃっと解決をつけて、その結果は、国会開会中でありますから、また別な機会にお伺いできる。即刻調べて処置をとっていただきたい。同時に希望しておきたいことは、問題の解決については、これはあくまで公労法精神によって、それが国鉄であろうと民間企業であろうと、もっとすなおに労使関係の正常化のために努力すべきだと思う。特に国鉄の場合は監督者が閣僚におるのだから、これはあなたに言うよりは運輸大臣に申し上げた方が至当だと思っておるのでありますが、運輸大臣お話し合いの上、やはり当局に行き過ぎのないように、争いというものはとかく勢いに流れがちのものであります。両方にそういう傾向があるかもしれません。特に国鉄当局に対して、そういうことのないように、あなたから一つ運輸大臣にも十分お伝えいただいて善処されることを希望いたしておきます。
  177. 石田博英

    石田国務大臣 私の方もすなおに産業平和の確立のために努力をいたしますが、願わくば組合側もすなおに、四条三項の規定があります限りは、それを守るようにしていただきたいものでありまして、そうして近く開かれるでありましょう通常大会における組合側の処置に期待をいたしておるわけであります。
  178. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私は今紛争になっております第四条三項の問題について、解釈論でなくて政策論、立法論として大臣の御意見をお聞かせ願いたいと思うのであります。大臣は今、懇談会の方にかけておるからということですが、やはり政府としての、大臣としての、こういった問題に対する態度というものが必要ではないかと思う。そういう意味で政策論、立法論としてお聞かせを願いたい。  そこで私はしばしば引用いたしますけれども、どうも四条の三項の規定というのは立法論として理解に苦しむ。それは民間では、この前も引用いたしましたが、「昭和二十五年五月十三日労発第一五七号労働協約の締結促進について」という指導通牒では「組合員資格制限」というところに「ユニオン・ショップ条項と引き換えに「組合員は従業員でなければならないという条項を協約に規定することは、組合の純粋な内部組織問題を協約で拘束することになり、と不当である。」これを強要することは使用者の不当労働行為となる。」こう明記されておる。これは指導通牒であります。一方においては、悪いと言い、使用者はしてはならぬぞ、こういうことを、政府としてはむしろ逆に、しなければならないと、こう差異のある点が私はどうしても理解に苦しむわけであります。一方に悪いということが一方はいい、しかもそういうふうにしなければならぬのだ、――してもしなくてもいいのではなくて、両者とも強制的な規定です。あなたの方は強制規定ではないとおっしゃる。われわれは、それは解釈論としては任意規定だと言っておりますが、解釈論は別といたしまして、一方においていいということが、一方においては悪いという。労働行政上そう差異のあるべきはずはないのです。この点、大臣はどういうようにお考えですか。
  179. 石田博英

    石田国務大臣 四条三項の規定についていろいろの議論と問題点があることは私は認めます。しかしこの法律制定せられましたときの四条三項挿入の理由は、これは国鉄という企業の公共性によるものと私は考えておるわけであります。しかし問題のあることは私は認めます。その問題についての各方面の見解をとりまとめておるわけであります。
  180. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 公共性と言われましても、私企業だって公益事業もありますし、公共性の強い事業もある。電力などは鉄道とほとんど変らない大きな公共性を持っておる。あなたの言われる場合ならば、電力の場合は広的地域の独占事業ですから、Aという会社がいやだからといってBという会社にいくわけにいかない、こういう意味から言えばそうでしょう。交通の場合は他に求めることはできますけれども、電力の場合は他に供給を求めることができない。あなたの方はそれを理由にスト規制法を出された。一方の方は、それは不当労働行為になりますよ、こう言って、片一方では、しなければならない、交渉に応じてはならぬ、こう差異のあるべきはずはないじゃないか。どう考えてもその差異は見出し得ないと考えるのですが、どうですか。
  181. 石田博英

    石田国務大臣 国鉄及び公社、公企業の場合は、もう一つの特殊性は国有財団である。その国有財団であるということと、それから非常に広い地域、全国的に公共性を持っておるということであります。
  182. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私は四条三項のことを聞いておるのですよ。争議権のことを聞いておるのじゃないのですよ。そこを誤解しないで下さい。役員の問題、組合員資格の問題を聞いておるのですから、そういった面に限定して御答弁願いたいと思う。
  183. 石田博英

    石田国務大臣 公社の職員国家公務員に準ずる職員であります。その事業自体が国有財団であり、しかも非常に公共性のあるものである。従ってそういうものが外部の人にいろいろ影響を受けて、その本来の運営を害することのないようにという配慮からであります。
  184. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 外部の人にいろいろ影響を受けるというのは、大きな企業ならその立場は同じでしょう。何も国有財団であるからということじゃないでしょうこれは同じですよ。
  185. 石田博英

    石田国務大臣 国有財団ということは、その企業自体が国民の税金によって成り立っておるというわけで、他の私企業の場合とは、その性格が非常に違っておるわけであります。さらに公共性という点も、他の私企業よりは非常に範囲が広いのであります。
  186. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 事業の性格からいかに言われても私は出ないと思うのです。大臣は公的性一本やりで言われておりますが、この四条三項だけはどうも納得いかない。公務員に準ずるといいましても、それは国有財団であるから準ずるので、初めから公務員であるから国有財団だというのじゃない。ですから事業の公共性といいましても、電力なんかのように一般国民大衆に影響のあるものは、あまり差がありませんね。むしろ電力の方が他に供給源を求めることができる。ことに電力の場合は、こういう点から言えば同じですね。それから地域が広いじゃないかといわれますけれども、地域の広いということも、なるほど電力の場合は九分割されており、国鉄の場合は一本だというけれども、これはやはりよそに求めることができないのですから、これも同じです。むしろそういう性格からいえば電力の方がひどいかもしれません。ですから国有財団ということだけで組合員資格が違うという点はどうも理解できないのです。率直に意見を聞きたいのですよ。ただ懇談会にかけて答申を待っておるからということじゃなくて、もう少しはっきりした大臣の見解を伺いたい。
  187. 石田博英

    石田国務大臣 私は問題点があることは認めるわけです。従って労働問題懇談会を通じまして、各方面の意見が取りまとまるのを待っておるわけなんです。それを委嘱しておいて私が個人的に見解を述べますることは、懇談会に対して非礼に当ると思いますから、私は申し上げません。
  188. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 これは国際労働条約の問題からも御存じのように、すでに問題になっておりますからあえて言いませんけれども、民間労組に対しては不当労働行為ではない。好ましくはないが不当労働行為ではない、このくらいの程度ならまだ差異が少いと思うんですが、一方においては不当労働行為だと、こうきめつけておる。悪だ、こう言っておる。一方においては、そうしないことが逆に悪いのだと、こう言っておる。まるっきり考え方が違うのですね。あるいは公益性という点から見れば、争議権とか、争議権の制約とかいう問題は出てくるでしょう。しかしこの問題だけは、そういう観念からは私は絶対に出ないと思うのです。あるいは企業によりますと、労使間で、組合員は従業員でなくちゃならぬということをきめた時代があります。それは労働協約の発展の歴史から見ると、ことに戦後の日本の場合はそういうことをきめた場合があります。これは企業組合の色が濃厚である、ところが今日においてはそういう組合もないし、そういうことは不当労働行為だということで通牒が出ておるのですから、民間はそういう規定を持ったところはほとんどないと思う。二十四年に公労法ができましたときは、まだ通牒が出ておりませんでした。その後二十五年に通牒が出たのですから、そういうように考えを変えられたんだ、こう期待をしておったのですが、公労法についてもそういうように考えを変えられる意思はないか、そこまで言いますと、まだ懇談会の方へかけていると言われるかもしれませんが、私は大臣によく考えていただきたいことは、何でもかんでも制限をしてはいけないと思うのです。こういったことは、一方においては労働法の大原則に反するからというので禁止をしながら、一方においては逆にそういうことをしないことがいけない、一方はしなければならぬ、一方はしてはいけない、まるっきり逆ですね、こういうことが一体労働行政上許されるだろうか、公労法はあなたの方の所管の法律ですからね。同じ所管の法律でこう差異があるべきはずはないと思うのですが……。
  189. 石田博英

    石田国務大臣 従って先ほどから申し上げている通り、問題があることは認めます。その問題について、どうせそういう答弁をするだろうとおっしゃったから、あなたの今おっしゃった通りのことをこれから二度繰り返してもしようがないから――ちょうどあなたのお考え通りのことを考えております。
  190. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 大臣はなかなか答弁がお上手で、一回言ったことを同じように録音のようにおっしゃるから、これ以上は言いません。しかし歴代の保守党の大臣というのは、同じことを言うのが名答弁だとされておる。ちょっとでも違うとすぐしっぽを出すから同じことを言えと、先輩に教えられたんだと思うので、これ以上突っ込みませんが、私はどうもその点は理解に苦しむ。同じ官庁が扱っておってこう違った解釈をし、またこうまで違った立法を出すという態度、これはやはり慎しまなければならない問題ではないか、かように考えます。そこで具体的な問題ですが、六月にILO総会が開かれるわけですが、御承知のように外国の労働組合が注視し、そうして現在日本の公企体について調査をし、その答申をし、さらに報告書をおのおのの組合に出しておる。これらが何らかの形でILO総会に出ると思いますが、それに対して日本政府としてはどういう態度でいかれるのか、これをお聞かせ願いたい。
  191. 石田博英

    石田国務大臣 その問題が今四条三項のその中に含まれるわけでありますが、その問題を含んで今労働問題懇談会で御研究を願っておるわけであります。ただ最低賃金に関する条約の方は私の方で出しております。法律案の通過に御協力をいただきますならば、批准できると思っているわけであります。
  192. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 大臣は自分の都合のよいことばかりを言って、われわれが聞いていることを答弁なさいませんけれども、では六月までには結論を求め、政府の態度を決定する、こう考えてよろしいでしょうか。
  193. 石田博英

    石田国務大臣 結論はなるべく早く出ることを期待いたしております。
  194. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 六月の総会までに結論を出すように、政府として要望されているわけじゃないのですか。
  195. 石田博英

    石田国務大臣 特に何月ということを切ったわけではございませんけれども、でき得る限り早く結論が出ることを期待をいたしておるわけであります。ただ午前中亀井政府委員からも御説明申し上げましたように、団結の自由に関する決議批准いたしますためには、四条三項だけでなく、ほかにも問題が幾つかある、従って特にほかに問題があります部分については、さらに一層困難な問題も多いのであります。従って、できるだけ早く結論を出していただくことを期待いたしますが、同時に日本現状ということも考えますと、なかなかむずかしい問題を含んでいるように思います。
  196. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 政府は、都合のよいときは急がしておる、あまり都合のよくない場合は黙っておる、そうしてのろのろ委員会を開かれておる、こういうような状態です。独禁法なんという、ああいう大法案を、一月末までに答申を出せ、こういうことは私たちとしては言語道断だと思うのです。これはあなたの所管じゃないのですけれども、ドイツだって、アメリカだってあんなに研究して、ドイツは国会でも何年もかかっておる。そして案を出すまでにはかなりの年月を経ておる。アメリカでも現在まだ改正しようと思って、ここ数年間も準備をしておる。こういうような膨大な法案を、都合のいいときはわずかの期間で、一月の末までに出してくれと言う。六月の総会を控えておる今日です。しかも各国の労働組合の注視中に聞かれるこのILOの六月の総会に対して、政府が何らかそれまでに答申を求めて結論を出さぬということは、私は怠慢のそしりを免れないと思うのです。すでに去年も議題になっておるわけでしょう。ですから、ことしも検討中であるということでは逃げられないと思うのです。ですから、政府としては何らかの具体的な意思表示をなさらなければいけないと思うのですが、これに対して大臣はどういうふうにお考え正ですか。
  197. 石田博英

    石田国務大臣 私は労働問題懇談会結論を早く出されることを期待をいたしております。しかしそのこととは別で、一般論になりますが、ILO条約、その精神、これは尊重をいたします。しかしそれは決してその国の自主性というものを阻害しているものではないのであり、またわが国においてはいろいろな特殊性もございます。そういう特殊性を考えての政府の判断は独自になさるべきものであって、私はそれが一年たって出されないからどうのこうのとは考えておりません。
  198. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 昨年の総会で小委員会に付託になって審議をされておるわけですね。日本政府としても検討を進めておられるわけでしょう。ですから、それは政府自主性でやるこう言えばそれまででありますけれども、国際信義の上からいいましても、やはり政府として結論を持っていくのが至当じゃないかと思うのです。それを大臣は、ただできるだけ早くと言っておるけれども、いつ出るかわからぬ、こういうような態度ではいけないので、やはり結論を出すように準備をし、心がまえをされる必要があるのではないか、こういうことを申し上げておるわけです。
  199. 石田博英

    石田国務大臣 先ほどから何度も申し上げておりまする通り、できるだけ早く結論が出るように期待をいたしております。
  200. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 どうも大臣答弁は、誠意があるようで、実際はきわめて誠意のない御答弁をなさっておる。政府としては、常に目標を定めて、そして六月の総会なら総会に出すべく答申を求め、政府意見をまとめて、やはり日本政府としては意思表示をさるべきが至当である。今まであらゆる条約批准をしておった国ならば別です。日本は今まで批准をされないということで、あるいはソーシャル・ダンピングという汚名を受けたり、その再現を危惧されている国ですから、やはり日本政府としては、はっきりした態度をもっていかれることが必要ではないか。かように考えておる次第であります。  大臣は同じような答弁をされますから、次に進みますが、先ほど私は、実は労働条約の一号から百七号までの内容をお聞きしようとしたわけです。時間がないということと、それからあとから資料を出しますということで、十条ほど聞いたわけでですが、すでに批准の手続をとっても、あまり支障のない条約もある、あるいはまた国内法を少し変えれば批准ができる、こういう法律もある。あるいはまた日本の国情としてはとても批准のできそうにない、なかなか見通しが困難だという条約もある。そういう条約はやはり整理される必要があるのではないか。毎年々々ぼつぼつ、二年に一回くらいずつ批准の手続をされるということは、日本政府としても、どうも不見識だと思うのです。そこで私は、政府におかれましては最近いろいろな対策委員会を内閣に持っておられますが、ILO批准に関する対策委員会というものを持って、総ざらい検討をして、どの程度までが批准できる条約であるかということを、権威ある政府機関として、しかも労使を入れて検討される必要はないか、そういう機関を設置される気持はないかということをお尋ねいたします。
  201. 石田博英

    石田国務大臣 ILO条約決議批准につきまして、それを促進するとい方針については異存ございません。しかし具体的な措置といたしまして、労使双方あるいは公益第三者の御意見も聞く機会をでき得る限り持ってやりたい。労働省といたしましては、その場所を労働問題懇談会に求めておるわけでございます。また同時に、この問題は私どもの役所だけの問題でなく、外務省との関係もありますから、今の御意見について直ちにここでお答えをするわけには参りません。
  202. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 やはりこういった問題は日本の貿易上にも非常に大きな問題でありますから、私は権威ある対策委員会を設けて検討される必要があるではないかと思う。戦争中から戦後にかけて、日本はプランクであったときがあるのですから、当然今までの条約を総検討をして、現在の国内法を整備して批准の方向に行くという日本の態勢を確立する必要があるのじゃないか。このことは、私は貿易の促進の意味からいっても、きわめて重大なことだと思うのです。大臣は今のところありませんと、ぽっと逃げられましたが、将来の課題として、そういう気持はないですか。これをお答え願いたい。
  203. 石田博英

    石田国務大臣 御意見趣旨はよくわかりました。  それから、日本はいかにもILO条約決議批准が他国に比べて非常に少いようにおっしゃいますが、決してそうではなく、水準には達しております。こまかい数字は覚えておりませんので、諸外国の例と比べてどの辺にあるかということを今政府委員から説明させますが、決して少いわけではありません。
  204. 澁谷直藏

    澁谷政府委員 主要参加国におけるILO条約批准の状態を申し上げますと、アランスが七十三で一番多うございます。次にイギリスが五十七、イタリアが五十七、西ドイツが三十三、日本が二十四、インドが二十三、カナダが十八、ソ連が十八、中国が十四、アメリカが七ということでございまして、大体加盟国平均よりはやや上位に位しております。
  205. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 そういうことを、言っちゃいかぬ。アメリカのような国は国際連盟に入っていなくて、労働条約よりも高い水準であっても、伝統的に今まで批准していないのです。そういった国をここに持ち出して、アメリカは七じゃないかといったところで、アメリカはそういう労働条件が悪いという非難は出てこないのです。このことは万人認めておるのですよ。ですから、そういったお話はなさらない方がいいではないかと思います。日本の国際労働条約批准のかなりの部分は海上なんです。ことに批准されたのは、戦前はほとんど船員関係ばかりです。これは国際的な海運関係批准をなさっておる。これは海の問題で、割合に共通性がありますから批准をしておる。こういう事情がありまして、日本の方は批准の程度は決して低くはないのだというようなことにはならないと思う大臣批准の程度は決して少くないというふうにお考えですか。
  206. 石田博英

    石田国務大臣 アメリカの場合だけをお取り上げになりますが、ソ連なんかも大体同じなんで……。(多賀谷委員「ソ連も伝統的に批准しないんだよ」と呼ぶ)それでは日本も伝統的にということになってもやむを得ないわけでありますが、決しておっしゃるように列国の水準よりもはなはだしく低いものだとは思っておらないということを言っているわけです。  それから、これから批准促進する努力は続けて参ります。
  207. 森山欽司

    森山委員長 次会は明三月一日土曜日、午前十時十五分から開会することとし、本日はこれにて散会いたします。     午後四時五十一分散会