○岡本
委員 お調べの参考に事件の内容を申しておきます。ある被
保険者が私のところに
陳情に参りました。二、三年前じん臓膿腫でもって片方のじん臓を摘出しておった。ところがその患者はまた尿に白血球がまじったりしまして、悪くするとじん臓結核の疑いも持てないでもないというような
状態でありました。
健康保険に加入しているはずだということで、工場主は
健康保険の被
保険者としての手続中だから、これでもって治療してくれという証明書を発行している。医師はその証明書に従って治療しておった。ところがいつまでたっても
保険証がやってこない。それで本人は医薬
機関から請求されるままに何べんも
保険証を早くくれということを工場の方に請求するわけです。三十名ほど人を使っているその工場の方は、金を渡したブローカー的な人間を追い回しても、どうにもならない。そのうちに詐欺としてひっつかまってしまったというわけです。幾つかのところでそういう事件を起しているわけです。そういうような
機関があることは私も前から知っておりました。それは各工場
労働基準
関係のことをやっております。たとえば年に二回の
健康診断なんかを請け負う。そうして
労働基準法に基く身体検査を請け負います。それからまたそれに伴っていろいろな
保険関係の
事務一切を代行いたします。従って今度は失業
保険から
健康保険というような
事務一切の代行をしてきて参っておったわけですが、その代行を業としておった者が、たまたま何かで使い込んで失綜してしまったためにそういう事故が出て参ったわけであります。従って
労働基準署
関係も社会
保険出張所
関係も、そういう業者があることは十分
承知しておったろうと思います。同じ人間が幾つかの
事業場の
保険料納入の代行をしているわけですからよく御存じだったと思います。ただ零細企業車の
保険事務所はかなりめんどうなものです。なかなかまだ法律になれない業者が多い。私
どもでもああいう
こまかい法律とか規則を読むのは、
滝井君のようではないから、非常に混乱して困る。だから日ごろ商売のことよりほか何も
考えない業者にとっては、ああいう無味乾燥なものはまるでわらでもかむような感じがするだろうと思います。そういう感じがするので、まかすだろうと思います。また役所に行っても
事務的な返事をされるので
こまごましたことがわからない。わからないままに仕事ができないから、ついそういう人があればまかせてしまう。それで今度は一番迷惑をこうむってきているのは被
保険者だ。
現実にそういう病気の疑いがあり、しかも
保険料は第一回は徴収して支払っておる。二回目は事故のために取りにきておらぬから払っておらぬ。
現実に被
保険者たる資格がありながら診療が受けられない。しかも一般の
医療機関ではそういうような精密検査ができないから、大学に行って大学
病院でもってじん臓結核かどうかよく調べて、その上で万一そうであれば直ちに適当な処置をしなければならない。しかもその人はじん臓が片方しか残っていないので、もう片方摘出することは死ねということだ。だからもうその人にすれば実に真剣な問題なんです。しかも働いておって得られる給料は少いのに、そういうじん臓検査というようなものは非常にお金がかかる。レントゲン検査なんかやらなければならないし、御存じのようにじん臓造影は非常にお金のかかることです。膀胱検査を受けたり、じん臓の機能検査を受けたりする金のかかる治療検査は受けられない。だから一日も早く
保険証がほしい。それを持って指定された
病院に診断を受けに行きたいが、待てど暮せど
保険証はこない。その人は
医療機関と業者との間をうろうろして催促しておる。事業主に幾ら催促しても、その人間を追っかけ回しておるだけでどうしていいかわからない。それで私はこの間事業主にそんなことはほっておいてはいかぬからすぐ相談に行って、これから後でも早く
健康保険に加入してしまいなさいと言って勧めておいたのですが、それにしてもそうなってくると、その人はそういうような病気が発生してから被
保険者になる。病気のからだをもって被
保険者となるということになると、今度はまた
保険給付の面で問題が出てくると思う。もっと早くから
健康保険に入っておればそういう問題は起らないが、そういう病気が発生してから被
保険者になって、その加入した日から
保険給付を受けなければならないということになってくると、今度は
保険者たる政府の方から文句が出ると思う。そういうことになってくると、一番かわいそうなのは何も知らない被
保険者だ。そういう点についての事故については政府はどういう責任をとっていただけるのか、あるいはそういうような患者もあたたかく
保険給付の対象として被用者
保険の中に吸収していただけるのか、他の健康な者はもちろん無条件で被
保険者として受け取っていただけると思いますが、そういう事故があった場合には、そういう患者は被
保険者として受け取っていただけるのかどうか、もしそれが結核であった場合には、三年間の療養の給付をやっていただけるのつか、またそういうふうな特別な場合には、何か除外例のような形でもってそういうふうな規定があるのか、その辺のところもあわせて承わりたいと思うのです。