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1958-02-07 第28回国会 衆議院 社会労働委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年二月七日(金曜日)     午前十時四十二分開議  出席委員    委員長 森山 欽司君    理事 植村 武一君 理事 大坪 保雄君    理事 野澤 清人君 理事 八田 貞義君    理事 滝井 義高君 理事 八木 一男君       大倉 三郎君    大橋 武夫君       加藤鐐五郎君    亀山 孝一君       草野一郎平君    小島 徹三君       小林  郁君    田子 一民君       山下 春江君    亘  四郎君       岡本 隆一君    栗原 俊夫君       堂森 芳夫君    中原 健次君       山花 秀雄君    吉川 兼光君  出席国務大臣         労 働 大 臣 石田 博英君  出席政府委員         労働事務官         (大臣官房会計         課長)     松永 正男君         労働事務官         (労政局長)  龜井  光君         労働事務官         (労働基準局         長)      堀  秀夫君         労働事務官         (婦人少年局         長)      谷野 せつ君         労働事務官         (職業安定局         長)      百田 正弘君  委員外出席者         労働事務官         (大臣官房労働         統計調査部長) 大島  靖君         労働事務官         (労働基準局労         災補償部長)  村上 茂利君         専  門  員 川井 章知君     ————————————— 二月六日  委員松浦周太郎辞任につき、その補欠として  竹山祐太郎君が議長指名委員に選任された。 同月七日  委員加藤常太郎辞任につき、その補欠として  大倉三郎君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 二月六日  国立療養所給食費引上げに関する請願(勝間  田清一紹介)(第六四一号)  国立療養所給食費増額に関する請願中村時  雄君紹介)(第六四二号)  国民障害年金法制定に関する請願田中幾三郎  君紹介)(第六四三号)  保育所予算に関する請願春日一幸紹介)(  第六六八号)  日雇労働者健康保険法改正に関する請願(田  中武夫君紹介)(第六六九号)  同(宇都宮徳馬紹介)(第七二七号)  同(中原健次紹介)(第七六〇号)  簡易水道普及に関する請願(田中武夫君紹介)  (第六七〇号)  医業類似行為既存業者業務存続に関する請願  (田中武夫君紹介)(第六七一号)  同(薩摩雄次紹介)(第七二八号)  同(田原春次紹介)(第七六一号)  労働者災害補償保険法の一部改正に関する請願  (三宅正一紹介)(第六七二号)  調理改善法制定反対に関する請願森下國雄君  紹介)(第六七三号)  国民年金制度創設に関する請願村上勇君紹  介)(第七一九号)  里帰り婦女子処遇改善に関する請願小牧次  生君紹介)(第七二三号)  同(伊東隆治紹介)(第七二四号)  同(中馬辰猪紹介)(第七二五号)  職業訓練制度確立に関する請願中村三之丞君  紹介)(第七二六号)  烈風被害に対し災害救助法発動に関する請願(  鈴木善幸紹介)(第七二九号)  生活保護法保護基準率及び実施要領に関する  請願鈴木善幸紹介)(第七三〇号)  社会保険診療報酬引上げに関する請願中馬辰  猪君紹介)(第七三一号)  結核後保護施策恒久的制度確立に関する請願  (松平忠久紹介)(第七六二号)  国民健康保険療養給付費国庫補助増額に関す  る請願松平忠久紹介)(第七六三号)  精神衛生対策推進に関する請願松平忠久君紹  介)(第七六四号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  労働行政について説明聴取      ————◇—————
  2. 森山欽司

    森山委員長 これより会議を開きます。  労働行政一般について、昨日に引き続き労働大臣に対する質疑を続行いたします。八田貞義君。
  3. 八田貞義

    八田委員 最低賃金制賃金問題は、非常に関連はしておりますが、事柄として多少違うところがあると思います。それで最近の賃金問題の動向がどうなっているか、まず御質問いたしたいと思います。  賃金問題について一番やかましく言われていることは、毎年々々総評あたりベースアップ闘争ということを叫んで、そうしてそのような闘争がなされるたびに若干の賃金の値上げが行われております。こういう状態を続けていったら、最後には賃金は支払えないような高さになるのではないか、こういう問題があるわけです。従ってこの問題を知るためには賃金とそれから労働生産性とを比較して検討してみる必要がございます。賃金上昇日本労働生産性伸び方範囲に納まっておる限りは、賃金上り方よりも物のふえ方の方が大きいわけで、インフレも起らないし、また日本経済が行き詰まるということもございません。そこで、戦前、戦後にかけて、最近までのこの間の事情を、統計上の数字をもって御説明願いたいと思います。
  4. 石田博英

    石田国務大臣 賃金問題につきましては、今御指摘のいわゆるベースアップあるいは画一賃上げ闘争というものが行われて、それが生産性を上回ってインフレーションやその他の原因になるということも一つの問題でございますが、これは特に定期的、画一的に行われ、これが力関係だけによって決定しようとされ、さらにそれが主として基幹産業、大企業において行われる。従ってその大企業賃金上昇が強く影響いたします場合におきましては、その基幹産業の動きが他の産業にも及んでくるわけでございますから、政府といたしましては、民間の労使間の労働問題に対する紛争につきましては、原則として自主的に解決せられることが望ましいと考えており、その立場を堅持いたすつもりでございますけれども、しかしそれぞれがやはり国民経済的な立場に立って、良識ある解決の方法をとられることを希望いたしておるわけでございます。ただいま御指摘賃金問題についてはそれが一点。  第二点は、その賃金問題に対する労使間の今日までの取扱いが生活給的な、あるいは画一的な取扱いでございましたために、職種別職能別労働の量、質に伴う合理的な賃金体系というものが、まだ生まれているとは思えないのであります。政府は、これに対しましては本年度新たに予算を計上いたしまして、労働の質、量に伴う賃金あり方についての合理的な統計を得たいと努力いたしておるわけでございます。  第三は、大企業と小企業の、企業規模別による賃金格差の問題でございます。これは年々その格差が開いて参りまして、大企業を一〇〇として、中小企業は五〇以下の指数になっております。この格差あり方をどうするかという問題であります。その格差を縮め、低い賃金労働者層諸君生活水準向上せしめますために、最低賃金法を今度制定いたしたわけでございます。なお賃金構造、あるいは今までの賃金分布状態等については事務当局よりお答えを申し上げます。
  5. 大島靖

    大島説明員 ただいま御質問のございました最近の賃金上昇の概況あるいは国民経済全般との関連における賃金の問題をかいつまんで申し上げます。戦後の賃金上昇の大体の様子を見ますと、消費者物価指数戦前と比べて約三百倍上っておる。戦前と申しますのは、平均的と思われます昭和九—十一年をとって、それを一〇〇とすると、消費者物価指数が三百倍、これに対して製造業種名目賃金上昇は、これまた昭和九—十一年を一〇〇として、三百七十六倍と出ております。従って実質賃金上昇戦前と比べて一・二五、すなわち二割五分の上昇を示しております。これが三十一年の状況でございます。  こういうふうな名目実質賃金上昇国民経済との関連においてどうかというお尋ねでございましたが、分配国民所得戦前、戦後の数字を申し上げますと、分配所得のうちの勤労所得を一人当りに直しますと、戦前昭和九—十一年を一〇〇として、三十一年が三百七十一倍になっております。一方、今申しました一人当り名目賃金の平均が三百八十倍になっております。すなわち一人当り勤労所得と一人当り名目賃金、大体パラレル関係であります。この一人当り勤労所得、ないし勤労所得全般国民所得の中でどの程度の割合を占めておるか、この割合変化を見ますと、戦前におきます勤労所得国民所得全般に占める割合は三八・九%、これが昭和九—十一年。三十一年になりますとこれが五〇・一%、すなわち国民所得全般に占める勤労所得割合というのは、戦前から約一割以上上昇いたしております。こういう状況でございます。  なお全般の戦後の生産指数ないし労働生産性、この辺と賃金との関係を見ますと、戦後の労働生産性賃金との比較を見て参ると、三十一年で、昭和二十二年を一〇〇といたしますと、生産性は五四六になり、名目賃金は一二二六、実質賃金が約四〇〇。それから戦後の経済が平常化いたしました二十六年あたりを一〇〇と置きますと、生産性が一七四、賃金が約一六五、戦後におきます生産性上昇賃金上昇というものが、ほぼ長期的に見ますと、パラレル関係において推移しておる、大体そういう状況でございます。全般といたしまして、戦前に比べまして賃金は非常に適当な上昇を示しておると思います。従って実質賃金もかなりの向上を見ておる。また戦後における国民経済全般との関連におきましても、生産性向上とほぼ見合った賃金上昇を示しておる。大体かように思います。
  6. 八田貞義

    八田委員 今の答弁で大体わかるのですが、これをもっとはっきりするために、昭和二十三年を一〇〇として、最近一体労働生産性がどれだけ上ったか、賃金がどれだけ上ったかということを簡単にお知らせ願いたいのです。
  7. 大島靖

    大島説明員 今私が申しました数字昭和二十二年を一〇〇と置いております。二十三年を一〇〇といたしますと、もう一度計算し直しませんといけませんから、また後ほどお手元へお届けいたします。
  8. 八田貞義

    八田委員 私の計算したところによりますと、二十三年を一〇〇としてみますと、賃金は二十三年から今日までの間に大体一二七%、労働生産性は一五五%、こういうふうな数字が出て参ります。すると上昇の度合いは五五%に対して二七%ですから、賃金は半分の率しか上っていないということになるわけであります。こういうのが現在の姿になっておるわけですが、これと関連いたしまして、一体賃金というものは、国民所得全体の中からどれだけを労働分配分としてとるかという問題があるわけなんです。もちろんそれには一定の限界があるのだ、そこで日本経済の全体の姿を知るために、日本国民所得分配の比率というようなことを、この際やはり知っておく必要があると思うのです。そこで、国民所得が約七兆円といわれておりますが、これが一体どのように分配されておるか、たとえば勤労所得とか、あるいは業主所得、あるいは法人所得、こういうふうに分けて御説明願いたいと思うのです。
  9. 大島靖

    大島説明員 今勤労所得割合について申し上げたのでありますが、三十一年度について申しますと、勤労所得が五〇・一%、個人業主所得が三四・九%、法人所得が一一・四%、大体かような数字になります。
  10. 八田貞義

    八田委員 そこでお尋ねしたいのですが、多分前にお話があったと思うのですが、勤労所得戦前は何パーセントでございますか。
  11. 大島靖

    大島説明員 三八・九%であります。
  12. 八田貞義

    八田委員 一割くらい上昇したわけなんですが、すると一割は、その分配率から見まして、一体どこから一割が出てきたかです。私は法人所得の方からその一割が勤労所得の方に移しかえられたのだ、こういうふうに考えますが、その点いかがでしょうか。
  13. 大島靖

    大島説明員 国民所得の中で勤労所得の占める割合、これの年次別変化を見ます際に、まずやはり一番大きいのは勤労所得を生みますその人員——大部分は雇用者なのでありますが、雇用者国民全般の中に占める割合、これによって大きく変ってくるわけなのであります。主としては雇用者増高、それから賃金水準その他の勤労所得水準増高、これがからみ合わされまして約一割の増高を来たしたと思います。
  14. 八田貞義

    八田委員 少くとも勤労所得戦前から一割以上、所得分配率が上ったということですね。そうしますと、これは就業人口との割合から出していかなければならぬのですが、一体今の日本就業者はどれくらいに抑えられておるか、その就業者の中の分類、たとえば勤労所得をとっている人がどれくらい、それから家族従業員がどれくらい、それから業主というような格好でそこで就業しておる人、こういった数字をちょっとお知らせ願いたいと思うのです。
  15. 大島靖

    大島説明員 労働力調査によりますと、総人口が三十一年におきまして約九千万になります。そのうち満十四歳以上の人口労働可能人口でございますが、これが六千二百万——概数で申し上げます。この十四歳以上の人口が、労働力人口と非労働力人口とに分れるわけであります。労働力人口が約四千二百万、それから非労働力人口が約二千万。この労働力人口の中が就業者完全失業者に分れる。現在完全失業者が平均いたしますと五、六十万あるのでありますから、それを引きました数、これも約四千二百万になりますが、これが就業者の総数であります。そのうち農林業が千六百万、非農林業が二千五、六百万、こういう数字になっております。  それからこれを従業上の地位別、すなわち今お話のありました自営業主家族従業者雇用者、こういう形に分けますと、農林業におきましては、自営業主が五百六十万、家族従業者が約一千万、雇用者は六十万、非農林業におきましては、自営業主が約五百万、家族従業員が約三百万、雇用者が約千七百万、大体就業者産業別ないし従業上の地位別の内訳は以上の通りであります。
  16. 森山欽司

    森山委員長 ちょっと速記をやめて。
  17. 森山欽司

    森山委員長 速記を始めて下さい。
  18. 八田貞義

    八田委員 今大臣もお聞きになったように、就業人口と、それから雇用労働者関係、それから労働生産性賃金上昇割合というものが、大体のところがわかったわけなのですが、大体労働人口の三五・六%を占めておるのが雇用労働者数になっております。こういった労働人口の三五・六%を占める雇用労働者が、国民所得において五〇%以上の配分を今後受けることが可能かどうか、この点です。伸ばし得る幅は非常に小さいと思うのです。今後一体賃金所得として取り得る分はどこまでいけば一ぱいになるだろうかということです。国民所得分配率から考えまして、そうして労働人口の中の雇用労働者の数から考えてみまして、今後一体伸ばし得る幅はそう大きくはないはずです。この点を十分に考えていかなければならぬのですが、この問題をよく考えていくためには、日本の全体の国民所得がもしこれ以上伸びないというならば、毎年々々の賃上げ闘争というものには、やがて頭打ちが来るという状態を予想しなければなりません。賃金が伸びていくことをささえるためには、国民所得がもっと大きくならなければならぬわけです。言葉をかえていうならば、労働生産性が上るということでありますが、総評労働生産性向上ということに反対しております。こういったことに対しまして、総評労働生産性向上ということに対して、なぜ反対しているか。実態は、国民所得との関係からいいまして、そう分配を上げるわけにはいかないのです。もう、こういうような賃上げ闘争ばかりやっておるなら、近い将来頭打ちが来る。こういう問題について大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
  19. 石田博英

    石田国務大臣 労働人口の中に占める勤労者割合、それから国民所得におきまする勤労収入割合、これはどの辺が適当であるか、どの辺まで伸ばし得るものであろうかということは、それぞれの国の産業構造によっても、パーセンテージからいきますならば違うと思うのです。しかし絶対額を上げて参りますのには、やはり今御指摘のように、結局生産性向上することができなければ上らないわけでありますから、それは実質的には生産性向上に伴わなければならぬものだと存じております。総評生産性向上反対をいたしておりますることは、これは事実でございまするし、その反対理由というのは、これはやはり総評のとっております——あれは表向きには違ったことを言っておりますが——実質的に考えております労働運動に対する指導方法というものからの一つ論理的結論でありまして、その論理的結論がそういうことになるから、そういう結論を機械的にとっているんだろうと思うのでありますが、実質的には総評傘下組合というものは、ほとんどいわゆる企業別組合でございます。企業別組合であります以上は、その企業別組合が個々において実際は生産性向上に協力せざるを得ないのであり、また協力しておるのが実情であろう。ただその指導部の方向と傘下の各企業別組合実質上の行動との間には隔たりがある。しかしその観念的な指導方針をいつまでもとっておりますことは、私は総評自体のためにも、いい労働運動のためにも、それは愚かなことだと私は考えているわけでございます。
  20. 八田貞義

    八田委員 それからもう一つの問題は、日本の狭い意味賃金の問題の中で、一番重視しなければならぬことは賃金格差の問題です。この賃金格差が、産業あるいは企業によって非常に大きいということが今度問題になって、きのうの質問の中にも、大企業、中企業、小企業とに分けて、大企業を一〇〇とすれば中企業は七九、小企業が六五というような賃金格差が出ます。ところが三十人以下の問題になりますと、はっきりしていないわけです。ですから小規模零細規模のものが、数においては半数ぐらいを占めながら、その賃金が大企業従業員の半分以下になっているという国は、世界じゅうで日本ぐらいと思うのです。イギリスでもフランスでも西ドイツでも、企業規模による賃金格差というものはこんなに大きくはない。これは外国では企業系列というものがちゃんとできておって、大企業利益があれば中小企業でも利益があげられるように系列ができているということがその理由一つであるということと、もう一つ労働運動というものが、日本のような会社別企業別組合が母胎になっているのではなくて、一つの同種の仕事をしている人間、いわゆるクラフト労働組合が中心になっているからであろうと考えられます。同じ種類組合であれば、賃金差を初めから設けるようなことはしません。だから印刷工という一つ種類従業者を持っている職種では、その職種としての賃金をきめておいて要求するので、大会社印刷工を雇おうと、小さい会社印刷工を使おうと、大体賃金は同じになるわけであります。それが日本の場合には全くない。労働組合というものは、会社別労働組合ができると、あらゆる職種のものがみな一緒になって参ります。こうした場合に、一緒になって一番困る例は石炭鉱業でございます。坑内に入っている石炭を掘る人間と、机の上で仕事をする人間が同じ組合に入る、そして同じような要求をする、これではとても職種による賃金の統一というものはあり得ないと思う。だから力の強い組合であれば、利益が上る大会社では、どんどんねらわれて賃金が上ってくる。そうでない小さいところは、利益も少いし、組合の力も弱いから、賃金の方はあまり上らない。これがずっと積み重なって、今日では大企業ほど賃金水準がよいということになっておると考えられます。これは日本労働運動にとって非常にむずかしい、ある意味では世界の情勢におくれている点で、ここからいろいろな困難な問題が起っているように考えられます。こうした労働運動の現状について大臣はどのような労働行政を施して改善されていく考えか、お答え願いたいと思います。
  21. 石田博英

    石田国務大臣 労働組合あり方が、企業別がいいのか、あるいはいわゆるクラフト・ユニオンが正しい形であるかということは、これはいろいろ議論があると思います。またその国の労働組合生々発展の過程というものを見なければならない問題だと存じますが、日本の場合におきましての賃金格差が生じまするのは、これは労働運動あり方ということよりは、私はやはり日本産業構造、特に中小企業あり方の方に問題があるのではないか、私どもはこう考えておるわけでございます。それからもう一つは、いわゆる賃金の先取りと申しますか、力によって上昇し得られる業種というものが全部基幹産業で、逆に言うと、基幹産業が全部大企業であり、そういう形で賃金上昇が行われておる。従って中小企業の安定をはかり、かつ中小企業に従事する労働者諸君賃金上昇をはかっていくのには、政府としては、先ほどから申しておりますように、最低賃金法を下からのささえとしてやりますけれども、実際的にそれを促進し、実効あらしめますためには、一つにはやはり中小企業対策の促進、もう一つには中小企業経営者労働問題についての理解を深めるということ、労働生産性あるいは労働規律確立労働者勤労意欲振起というものがどういう形によって効果的に行われ、それが実質的に経営の安定にも資するかという正しい理解を、やはり経営者に持ってもらうことが第二に必要だと存じております。第三には、やはり基幹産業あるいは重要産業経営者あるいは勤労者という人たちが、自分の関連産業労働者諸君貸金上昇に協力をするという考え方を持ってもらうことが私はやはり必要なのじゃないか、こういうふうに思っておる次第でございまして、政府としては、先ほど申しましたように、最低賃金法を施行いたしまするとともに、失業保険適用範囲を拡大する等、社会保障あるいは厚生施設その他の援助も行いまするが、一方におきましては、労働の量、質においての賃金あり方というものについての正しい調査研究結論を早く得まして、それを明らかにするという方法で対処して参りたい、こう考えておるわけでございます。しかし労働問題、特に賃金の問題にからみまする労使間の問題について、政府がこれを意識的に規制するという方法は、やはり労働行政としては本筋ではないのでありまして、労働行政といたしましては、労使双方の良識の振起を待ちまして、自主的に解決していただくことを建前とするのが本筋であろうと存じておる次第でございます。
  22. 八田貞義

    八田委員 時間もありませんので、どんどん質問の形をとって参りますが、きのうの予算委員会あるいは社会労働委員会におきまして、大臣は、全産業一律的な最低賃金制を実施しておるのはアメリカとフィリピンである、しかもアメリカ法律によってやってみても、ステートステートの間においてその取りきめが違っておる、こういうふうな御答弁があったのでありますが、アメリカ最低賃金制に関する法律ですね、これは日本のように最低賃金法というような名前ではないはずなんでしょう。アメリカのそういった最低賃金制を取りきめた法律名前と、それから一体いつ制定されたか、この点、事務的にお伺いいたします。
  23. 石田博英

    石田国務大臣 詳細は事務当局からお答えをいたしますが、昨日私が本委員会におきまして同様種類答弁をいたしました際に、山花委員から、連邦法州法との関係において、州法の中に連邦法を下回らないという規定が一般的にあるような御発言がございましたが、これは誤まりでございまして、連邦法は一時間最低一ドルときめておりますが、各州法は、低いところは五十セント前後、高いところでも七十五セントくらいになっておりまして、州法連邦法との間には差が現実的にございます。それから連邦法は、いわゆる州際産業と申しますか、ステートステートとにまたがっておる、いわゆる大きな規模産業に適用されております。そうでないものはやはり区別されておる。ですから、これをいわゆる完全な、今総評諸君が主張しているような一律八千円、一律幾らというような最低賃金制度アメリカでも作られていない。それからアメリカの場合は日本と違う産業構造でありまして、特に中小企業の実態について非常に相違のあることはどなたもよくお認めになることと思います。そのアメリカのようなところにおいてさえも行えないことを日本において行えということは、これは事実上無理な話であるということを申し上げざるを得ないと存じます。
  24. 堀秀夫

    ○堀政府委員 アメリカ最低賃金法につきましては、連邦法といたしまして公正労働基準法が制定されております。公正労働基準法は一九三八年に制定されました。その後四回の改正を見まして、現在は最低賃金額については、ただいま労働大臣から説明のありました一時間一ドルという最低賃金がきまっているわけでございます。そのほかに国家機関との契約につきましては公契約法、これは一九三六年制定、それから一般機関に関するデビスベーコン法というものがございまして、これは一九三一年制定でございます。なおこれは連邦法でございまして、州際産業に適用されているのでございますが、そのほか各州内の企業につきましては、それぞれの各州法できまっております。きまっておりません州もございまして、現在約三十三州で実施されておる。われわれの方の調査ではそのようになっております。
  25. 八田貞義

    八田委員 今の一九三八年の公正労働基準法ですね。大臣にお知り願いたいのは、公正労働基準法というものができた前提なんですが、これは経営者が、たまたまその地方の民度が低い、あるいは生活程度が低いということを理由にして、安い賃金で人を雇う、そういう形において競争力を持つということは不当な経済競争である、経営者としてはこれを公正な競争の範囲内に入れることが必要であるという考え方から、公正労働基準法というものがアメリカにしかれたわけです。先ほども大臣から御答弁がありましたように、州という範囲を越えて全アメリカに適用される法律ができましても、それを今度は各州がそれぞれ事情に応じて修正して、それぞれの州の法律とする国柄でありますので、統一的な最低賃金法律ができても各州によって違うことはお答えの通りでございます。ところが、こういうステートステート間において違うということになって参りますと、その中の一番安いところの方に工場を移しかえようというようなことが起ってくるわけです。そうすると、やはりそれぞれの州間における法律ができましても、不当な経済競争というものが起ってくるわけです。そこで、こういったことを直そうということでタフト・ハートレー法というものができまして、そのような経営仕事は不当労働の行為であるという規定をその中に挿入したわけであります。その後経営者の方でもそれを了解し、賃金の相違をもって経営の競争力にするのは不当な競争であるという考え方に基く最低賃金制というものが厳重に行われておるのだ、こういうふうに私は了解しておるわけです。大臣の先ほどの答弁ですと、その間において私の考えと少し違うようでございますが、公正労働基準法とタフト・ハートレー法の関係について、少しお知らせ願いたいと思うのです。
  26. 石田博英

    石田国務大臣 私の理解しておりますのは、もちろ今八田さんの御指摘のようなことも一つ理由でありましょうけれども、やはり制定されるに至った基本的な精神というものは、低賃金を救おうとする人道主義的な立場、それからもう一つは、一九三八年ごろはアメリカは非常に不況でありましたので、不況対策の一つとして行われたもの、ですから今お話のように、経営の公正な競争ということはもちろん一つの大きな目標ではございましょうが、基本的な考え方の前提には、もう一つやはり私が今申し上げたようなことがあるのだ、こういうように理解しておるわけであります。
  27. 八田貞義

    八田委員 総評とかあるいは社会党から出た最低賃金に関する法律の問題ですが、総評あたりの考えの中に横たわっておる基礎というものは、大企業間の大幅な賃金格差は、低いものは上げればよいというような単純な考え方が根幹をなしておるようです。八時間労働によって十八才の男が八千円をとる、こういうような法律でございます。ところが今日本労働時間を平均してみますと、八時間じゃないのです。大体九時間くらいになっております。そうすると、八時間労働に一時間のオーバー・タイムが加わって参ります。このオーバー・タイムには二割五分の割増しがついてくるわけです。こういうようなことから考えますと、八千円という要求の最低賃金最低最低であって、実際にはオーバー・タイムに対する支払いも含まれてこなければならぬわけです。賃金統計上の賃金というものは、オーバー・タイムを含めて、実際に払った金というものが表わされておるわけです。かりに十八才で最低六千円の賃金ということにしますると、年令が積み重ねられていけば、上の方はさらに高くなってくるわけです。たとえば大学出はそれの二倍とか二倍半ということに当然ならざるを得ません。そういう組み立てをして参りますると、その場合の平均賃金は現在の平均賃金よりもずっと高くなると考えなければならないわけでございます。そういう点からしますと、八千円という要求は見かけよりも非常に大きな金になってくるわけです。最低八千円の上に積み上げられる賃金加算というものは、年令加算、それから勤続年数加算、あるいは学歴加算となって、現在の倍くらいなことになろうかと思うのであります。倍になること自体はけっこうでございまするが、国民所得全体から九〇%というものを賃金、俸給にとられてしまうということになってくるのです、こういうことでは、先ほど統計数字で申し上げましたように。国民経済というものから、どうしても計算が成り立たない要求であるということになってくるわけであります。日本の場合で申しますると、農民が全部食えなくなるというような結論が出て参ります。従って八千円という要求は、これを一律にやろうとすれば、現実問題としては成り立たぬ、私はこういうふうに考えるのですが、総評なりあるいは社会党の要求を大臣としてどのように考えられて、今度の中央賃金審議会から答申をもらわれてどういうふうに比較対照してお考えになるか、率直にお伺いしたいと思います。
  28. 石田博英

    石田国務大臣 賃金、特に最低賃金についての最終的な理想は何かというと、やはりどこにいようと、どうあろうと同じような生活を営めるということが最終の理想だと存じます。それは同時に、どこにいようと消費者物価にも変りがない、どんな産業の収益率にも、産業種類あるいは規模によって変りがないということが伴ってこないと、現実的にそういうものにならない。ただ最終の理想がそうであるということは私も認めます。認めますが、無条件ではないのであって、それには他の条件も伴わなければならぬということは私は申し上げておきたいと存じます。中央賃金審議会の答申の中にも、私の申しました条件は書いてはございませんけれども、一応全国一律の最低賃金制というものは理想ではある、だから理想であるということは私は前提条件づきに認めます。しかしそれがわが国の現状に合わないのは、第一その前提が全然違っておるからであります。というのは、まず最低賃金は一体何から定めらるべきかというと、その労働者の再生産できる生活に要する費用、それからその経営の支払い能力、そういうものによって最低賃金というものは考えられなければならぬということはILO決議にも明確になっておるわけであります。それから参りますと、わが国の地域的な消費水準の相違というものは厳然と存在しておる。存在しておればこそ、総評傘下の官公労では地域給というものを要求される。そういう前提がまずございます。それから職種別に収益率が違い、規模別に収益率が違うということも、これは厳然たる事実であります。従って前提が整っていない。それからもう一つは、先ほどから御議論がございましたように、どの程度のものであるかということは、的確な数字で申し上げることは現在統計上あるいは理論上できるに至っておりませんけれども、国民所得の中に勤労収入が占めることができる割合というものは大体限度がある。その限度を越えた場合においては国民経済全体に大きな影響を及ぼすのでございますから、各企業別の問題、地域別の問題は別といたしましても、今もし一律八千円というものを実行いたしますると、それによって新たに賃金に支払わなければならないものは非常に膨大なもので、ある人の計算によりますと千二百億円になるだろうというようなことも言われるわけでございます。そういうものにたえられるか、それが適当であるかというと、そういう急激なる変化というものには日本経済はまだたえられないと思う。しかも世界じゅうにおいて日本経済力において格段の相違があり、産業構造も著しく異なっておりまするアメリカにおいてさえも地域差というものを認め、また州際藤業と、そのステートの内部に限られておる産業との中における規模別賃金差というものも現実的には認めておる、こういう状態でございますから、現状におきまして総評や社会党の言っておりまする一律八千円、経過期間は六千円というようなものは、私としては賛成いたしかねる、こう考えておるわけでございます。
  29. 八田貞義

    八田委員 時間がございませんから、これでやめますが、この最低賃金制度を施行する場合に、時期尚早だとかいろいろと議論が出ております。そこでいろいろと、理由は申し上げませんが、二十九年の五月に中央賃金審議会から、純日本的な零細企業である絹、人絹織物業などの四種の業種に限って最低賃金制を実施すべきだということを勧告しております。ところが、これが経済上の困難が大き過ぎるということで実施に至っていないわけです。この場合に、二十九年に勧告されたものがなぜ今日までできなかったのだということですね。ところが、よく調べてみますと、勧告書の中につけ加えられておった金融の面で、大いに政府の方がこれに助成を加える、あるいは技術の面でサポートしてやるのだ、あるいは税金の面で減免してやるのだ、こういったことが中央賃金審議会の勧告の中につけ加えられてあるのです。それに対して、政府は何らの助成措置というものを講じなかった。今日もこういった四種の業種に限った勧告案というものが、全然実施されていないのです。こういった点から見ますと、いろいろと今後の最低賃金制実施について考えていかなければならぬ問題がたくさんあるのです。ところが、これは日本一国だけをとらえての問題でございますが、これを国際社会間にとって考えてみると、今日八十四の国がある間で、ILOに加盟しておる国は大体三十五ヵ国です。ユネスコに加入している国がほとんど八十に近いのです。そうした三十五ヵ国の間でILOに加盟しておるわけなんですが、この国は大体最低賃金制というものを何らかの形においてやっておるわけであります。しかもまた、ILOの世界における十大工業国ということになりますと、日本もその中に入っておって、しかも五番か六番目の工業国になっておるわけです。こういった国際社会間の問題を見ますと、日本は早急に最低賃金制というものを何らかの形において実施していかなければならぬのだ。そうしないと日本の輸出というものが全然伸びていかない。今日のアメリカとの問題にしましても、たとえば、ミカンとかカニのカン詰の問題にしましても、あるいは一ドル・ブラウスの問題にしましても、一つ日本最低賃金制を持たないから、アメリカの業者間に対する不信という念が起っておるわけです。ですから、今後、もちろん先ほどからの御答弁のように、日本最低賃金制実施ということについては、いろいろな問題があるわけです。わが国の中小企業というものは、いわば未知の曠野である。地域別、業種別の賃金形態は、はなはだ雑多である。さらにその背後には一そう広い家内労働のこんとんが横たわっておる、こういった日本状態から見ますと、日本は、まず業者間の協定を持って、次いで労使協定に推し進めて、実質的の最低賃金というものを確保していく。それと同時に、中央賃金審議会の調査研究と相待って、早く一般的な、統一的な賃金制度をしこうという状態日本があるのだということ、こういった構想に対して、労働者の中には、今度の答申案の中に盛られたこういった思想に対して、こんなものでごまかすのではないか、また、あるいは業者の間にも相当の抵抗があるようでございます。こういった問題について、今後どのようにして最低賃金制を、できるなら理想形態に近づけていくかという問題でございます。これについて大臣お答え願いたい。
  30. 石田博英

    石田国務大臣 労働組合側と申しましても、総評を除く他の労働組合の代表は、中央賃金審議会において、あの答申案に賛成をいたしておるわけであります。総評の代表者の人たちも、一律八千円ということを言うてしまっておりまするから、賛成ということは申すわけには参らないけれども、答申を出すことには異存はなかった。また私どもいろいろ公式、非公式にお目にかかっております総評の代表の諸君も、この案が前進であるということは認めております。これはごまかしであるとかなんとかというのは、やはり政治的プロパガンダにすぎない。私は現実に即した前進的なサービス立法だと強く確信をいたしております。  それから中小企業者の諸君反対は、一つには無理解からくる、本案に対する理解の不足からくると私は思います。従って、本案についての理解を深めていくことが第一であります。第二には、中小企業経営者労働問題に対する理解の仕方の不足からくる。やはり、繰り返し申しますように、人を使って事業を営むのには、だれでもできることではない。それは一定の道徳的な考え方の資格があると思う。それは、自分の使っている者に対して、生活の安定向上を保障する責任、それから、それとともに歩んでいくんだという、そういうモラルの面の資格が当然必要だと思う。それともう一つは、労働に、秩序と、そうして生産性向上に対する労働者諸君の協力、勤労意欲振起させることが、かえって中小企業の近代化を促進し、その経営の安定をもたらすものであるという中小企業経営者諸君の自覚を促していくことが第二である、私はこう考えております。  それから、中央賃金審議会におきまして、一昨年確かに数種の業種を限って最低賃金制を実施せよという勧告がございました。それについて労働省といたしまして、いろいろ努力をいたしてみたのでありますが、諸種の難点がございまして延びました。延びましたが、今回の中央賃金審議会の答申はその問題を議論した上において作り上げられたものでございます。で、数年前に行われました具体的な、いわゆる実効ある措置を行えという勧告は今日もなお、具体的な事例は示されておりませんけれども、行われております。しかし、中小企業経営の中にあります幾多の問題の中には、この労働賃金の問題も一つでございますが、他の金融の問題、あるいは設備の改善の問題、一切を含めた能率の向上の問題がございます。従って、その幾つかの要素の中で、賃金の問題だけを対象といたしました特別な措置というものは適当でない。やはり、中小企業の中に含まれておる幾つかの問題を総合的に対象といたしました中小企業施策を行わなきゃならないと思います。で、本年度予算におきましては、私は決して十分だとは思っておりませんけれども、特に中小企業対策に対しまして、政府は実効ある措置をとっておりまするので、それと見合って本法案を実施いたしましても、中小企業経営に、そう大きな混乱、摩擦を生ずることはない、むしろ本法案を実施することによって、中小企業経営の近代化を促進し、あわせて公正なる競争を確保し、さらに輸出貿易品に、ソーシャル・ダンピングであるというような国際的非難を免れることができる、これはひいては中小企業経営の安定になお資することができると私は信じておる次第でございます。
  31. 森山欽司

  32. 中原健次

    中原委員 私は大臣と、それから局長を初めとする事務当局答弁を願いたい、そう考えております。ただいま聞くのに、時間がかなり窮屈になってきたようであります。十二時までに大臣に対する質問は結びをつけたい、こういう理事からの忠告がありますので、極力そのようにしたいと思いますが、しかし、これは私の考え方からいえばまことに因った話なんで、どうにもこうにもけじめのつけようがないのでありまして、中途半端になると思います。しかしまだ長い会期中で、機会がありますから、そのときにいたします。  第一番にお尋ねしたいと思いますことは、去年の暮れでございましたか、国際自由労連の代表が日本に参りまして、運輸労連の方も一緒に来られたのですが、そのときに共同調査団という形でおいでになられて、日本の各個所をかなり調べられたようです。政府の方でもお会いになっておいでのようです。その結果、日本の国を離れるに際しまして調査団の見解発表というものが出て参りました。当時の新聞各紙がこれを大要書いたと思います。従って国民はみんなこれに注目をしております。なぜ注目するかといえば、これは申すまでもありませんが、ただいまも八田さんに対する御答弁の中で、ILOの決議などを引用されて御答弁ができるほどに重要視しなければならぬ国際機関でありますから、それだけ国民は非常な関心を寄せておることは言うまでもないことであります。私はここに朝日新聞の切り抜きを、まことにしろうとらしく持って参りました。その朝日新聞の十一月二十九日の記事に基いても、日本労働事情に対する認識が、実に妙を得てずばりと指摘されておる点が多々あるわけであります。それについて、なお聞くところによれば、その見解というのは政府の方にも申し入れをしておる由であります。そうであってみれば、労働大臣としてはこの見解に対する政府の見解あるいは政府の対策などというものが大体きまっておいでになるのじゃなかろうか、こう考えますので、そのことについて一応ここで承わっておきたい。  第一番に指摘されておりますのはいわゆる国際労働機関の条約八十七号で問題になっておる点であります。いわゆる団結権の擁護と結社の自由に関する条約です。この問題について、日本政府は依然として批准をちゅうちょしておる、こういうことが指摘されておるわけです。これほどわかり切ったことはないのですが、そのわかり切ったことなのにかかわらず、いまだなお批准をするための用意を進められない、ちゅうちょ逡巡しておる、こういうことははなはだ遺憾なことである、こういう事項のようであります。もちろんそうです。従って、それに対して政府はどう考えておいでになるか、一応承わりたい。
  33. 石田博英

    石田国務大臣 ILOの精神あるいは決議というものは、政府は原則的にこれを尊重する建前で参りたいと思っております。ただ、しばしば申します通り、尊重していくということと、日本労働行政に対する自主性を保つということとは、それぞれ別個に確立されなければならぬ問題だと考えておるわけでございます。今御指摘の団結並びに結社の自由に関する条約につきましては、いろいろ御議論もございますので、ただいま労働省に設けられておりまする労働問題懇談会に付議をいたしまして、現在小委員会を設けて審議中でございます。その結論を待って考えたい、こう思っておるのでありまして、放置してあるわけではございません。
  34. 中原健次

    中原委員 もちろん放置しておいでになるとは思わないのです。放置しようべくもないことです。しかしながらこの前の会議でも、それに似通った問題について答弁を承わっておるわけなんですが、やはりどうも逡巡しておいでになったように受け取りました。そこでお尋ねをするわけですが、ことにILO、すなわち国際労働機関の指摘事項については、今も御答弁がありますように、政府としては尊重する、尊重するが、日本国内の労働事情に対するいわゆる自主性といいますか、そういう言葉で、現状のいわゆる国際労働機関の常識よりかなり隔たったものをそのままに行なっておいでになるというのが現状のように見える。その、はなはだ隔たっているものを行なっているところに対して、それに対して合理性を与えようとする努力、そういうものの取扱い方、表現の仕方をさしているのじゃないか、そういうふうに私は思うのです。従って、ただいま申しました労働団結権の問題と結社の自由に関する問題というものは、これは今さら問題にしなくても、日本国憲法はそのことを言うているわけです。それは今さらどうだこうだと言ってみるような問題ではないと思う。すでに憲法はこのことを明確に表明している。これの解釈は、この前も倉石君が労働大臣の時分に言ったのだが、これはいまだに私は腹が立ってならないのだが、学者は曲学阿世だ、こういうことを時の一国の大臣が公けの席で発表されるというに至っては、はなはだけしからぬと私は思っております。実際問題として、そういう事柄がいまだに動いているのじゃないかと、ちょっと話が脱線しますけれども、思っている。そこで、そういうふうにさえ言おうとするいわゆる学者の諸君——きわめて少数の反動的な学者は別といたしまして、おそらくその他の学者は、憲法においてこのことの規定をみな認めているわけです。おそらく、石田労働大臣がそんなとんでもないことを言われるとは思いませんけれども、やはり与党ともなれば、あるいは政府当局ともなれば、そういう言い方でもしなければならぬほどに論理的には、学問的には困った立場に実は立たされているのではないか。困ったときには、そういうとんでもないことを放言するものだ。しかし、そういうむだごとはよしといたしまして、労働大臣はそういうようなとんでもない見解に立ってもらっては困るということを私は前提として申し上げておきたいのです。  そこで繰り返しますけれども、この第一項の問題は、すでに憲法も承認していることなんでありますから、今さらこれをちゅうちょ逡巡するのは当らないということがはっきりいえるのではないか。これについて一応御回答を願っておきたいと思います。  さらに第二段は、公労協の紛争の大きな原因は仲裁制度が不完全なことにある、こういうことをずばりと言っております。これは先般来からわれわれがここで幾たびか論争したことなんであります。従って、この公共企業体の労働者がスト権を拒否されているというところに理解のできない問題があるのではないかということまで、はっきり言っておると思うのであります。これは新聞の発表ですけれども、おそらく間違いないと思います。真相であると思いますが、この問題が第二点の問題であります。  それから、時間の関係があるので、さらに続けて第三点の問題ですが、国労に対する処分は再検討を要する、再検討して、これは復職させなければいかぬじゃないか、そういうことはすでに手続上間違っているじゃないかということを明確にずばりと言っているわけなんです。  これらの三つの問題に対して御答弁を願っておきたい。
  35. 石田博英

    石田国務大臣 第一の、団結権と結社の自由の条約についての見解並びにその取扱いは、先ほど申し上げた通りでありますが、私は別に、とんでもない、あるいは固定した観念を持ってかかっているわけではございません。しかし学者の見解々々とおっしゃいますけれども、学者の見解は、数が多い方が正しい、数が少いものは正しくないというものでは私はないと思う。それからもう一つは、一体その数はどのくらいが総数なのか、総数をつかまないで、どっちが数が多い、どっちが数が少いということは、第一言えない問題だと思います。それから、御自分の意見に反対なものはみな反動的だということも、また一方的な考え方だと思います。ただ私は、この問題につきましては国内法との関連があります。国内法との関連があることは次の問題にも関連してくると思いますが、国内法との関連がありますから、それをどう取り扱うべきかということを労働問題懇談会、これは労働者側の代表も経営者側の代表も第三者の立場の方々も入っておられる権威のある懇談会でございますが、そこで御協議を願って、そこで集約された世論のあり方というものを期待しておるわけでございます。  それから第二の公労法上の問題、仲裁裁定の問題とスト権の剥奪の問題、これが憲法との関連においての御議論、あるいは今また国際自由労連の報告書に基いての御議論でございましたが、第一憲法との関連は、憲法には確かに各種の権利が規定されております。しかし同じく十三条におきましては、それは公共の利益というものとの調整を必要とすることを明記してあることは御承知の通りであります。特に十五条におきましては、公務員は公僕でなければならない、国民に対する奉仕的な立場をとらなければならぬということを、つまり公務員に対する特別の義務を付加しているわけでございます。従って公労法においてスト権を剥奪しているということが、私は十三条と十五条と照らし合せてみまして、憲法違反ではないと確信をいたしておる次第でございます。  それから仲裁制度の問題でございますが、これは検討を要することは私も認めます。ただ御承知のごとく、ただいま公共企業体等審議会の答申が出ておりまして、それに基いて公共企業体のあり方について今政府は研究中でございます。その実際的措置が行われれば、当然それに伴って公労法の大きな改正をいたさなければならないと思っております。その時期が早ければ、そのとき一緒にやるべきだと考えておりますことが一点。それから第二点は、実はこの仲裁制度につきましては、御承知のごとく、一昨年でありましたか、一昨々年でありましたか、改正が行われたばかりでございます。あまり朝令暮改に過ぎることは私は適当でないと考えますばかりでなく、きのうも大坪委員が、百パーセントを期待することはできるものではないとおっしゃいましたが、でき得る限り、百パーセントと申しますか、完全なものに今度直すときはいたしたい、こう考えまして、仲裁制度をして権威あるものたらしめるために、今労働省といたしましては検討を加えつつあるところでございます。  それから第三の国鉄の処分者に対する御意見でございます。これは、ちょうど国際自由労連の代表の方が私のところにおいでになりましたときにも、同じようなお話を私になさいました。ただし、そのときはいろいろ事情を御説明申し上げましたところが、それでは国鉄の組合が今までの法律軽視の態度を改めて、政府が仲裁裁定を完全に実施するということを前提として、今後公労法の精神にのっとってその範囲内にとどまるということを明確にするならば処分の問題はどうなるか、こういう御質問がございました。私はそのときは、これは事情というものが全く違ってくる、現在は国鉄の組合ないし総評では、公労法は悪法であるから公労法を乗り越えて戦う、つまり法律の制約を無視して戦うということを明記しておる。先ほどから公労法その他についていろいろな方面から御議論がございますが、法改正を問題といたしますときには、まずその前提は法に従うのだ、改められたものについては従う、つまりできたものについては従うのだという精神が前提にならないで、気にいるように改められなければこれを無視するのだという考え方から法改正を議論されても、それは法治国としては何の価値もない。前提が整うことが必要であると思います。  それからよく労働問題についてのILOの決議と日本労働政策との関連をおっしゃいますが、しかし各国の労働事情というものは違います。それから各国の労働組合運動のあり方が違うことは、たとえばその組織形態において違っておることは、これは中原さんの方がよく御存じだと思います。従って画一的に何でもかんでもILOの決議通り行うということが国際的水準に達するということではないことは、ILO自身が、それぞれ各国が自主的に批准することを認め、自主的に検討することを認めておる。そのまま無条件に各国が従うことになっておらないということは、各国のそれぞれの特殊事情及びその自主性を尊重しておるからだと存じますので、私はILOの精神を尊重し、その他国際的な労働機関の御意見には十分耳を傾けますけれども、わが国の労働行政はやはりわが国の実情に基いて、日本政府の責任によって行うべきものだと考えておる次第でございます。
  36. 中原健次

    中原委員 もちろん日本の特別な事情というのはだれもわかるわけです。日本の事情が全世界の事情とそっくりそのまま同じものであるなどという考え方は許されぬことであり、私もそう思っておらぬし、大臣もそうだと思う。ただ大切なことは、労働権を公共の福祉云々ということに結びつけて、労働者の当然保障されなければならぬ基本権を抑圧する、あるいはそれを軽視する、ときにはそれをじゅうりんするようなことが、やむを得ないことであり当然のことであるかのように考える、そういう基本的な考え方、そこにやはり問題があるのではないか。まずもって一番最初に労働者のあるべき基本的な労働権を生かしめよう、保障しよう、確保させようというところに前提がなければならぬのではないか。それが前提であるならば、起ってくるあらゆる事象がことごとくそれを公共の福祉と正面衝突させるように扱っていくというところに問題があるのではないか。しからば一体公共の福祉とは何だということになってくる。公共の福祉、公共の福祉といわれるけれども、一体公共の福祉とは何をいうのだ。公共の福祉の内容に国民があることはいうまでもない。国民の中の内容に労働者も間違いなくおるわけです。ですからそういうような問題をかれこれ詮議していけば、公共の福祉ということは全然国民から遊離した、別個のところに存在するものではないということなのです。少くとも労働問題に対する深き理解のあるといわれておる石田労働大臣なら、そのことはわかると思う。私はそのことを期待するがゆえに、今の質問に対しても、もう少し熱意のある答弁がほしかったわけなのですが、残念ながら、例によってあなたの言葉に託して、立場を御弁解になられたわけです。私としては、はなはだ残念に思います。しかしながらただ一点、労働問題の懇談会に一応相談しておる、意見を聞きつつあるということなのでありますから、その審議会の方でどういう経過が持たれるか、そうしてその経過を通してどういう結論が出てくるかということは、われわれとしては、今後の大臣労働政策のかなり重要な基礎になるだろうと考えますので、あくまで凝視していきたいと考えております。  ただ私ここで申し上げたいのは、仲裁裁定の問題なのであります。この前の仲裁裁定は、完全実施が政府の御見解によれば多いわけなのです。しかし実情はそれと違うわけなのですね。そこに実情と政府の解釈と違う点がある。たとえば最近の仲裁裁定でも、あれは政府によれば完全実施になっておるわけでしょう。一体あれがほんとうに完全実施であるかどうかという問題なんです。これらも、ある現実の姿を歪曲して、完全実施だというふうにやってしまう、それを基礎としての完全実施であったのでは、やはり仲裁裁定それ自身に問題があるということになるのじゃないかと考えるわけなんです。ことに仲裁裁定というやつは実は実行せぬでもいいことになっておりますね。公共企業体等労働関係法では、ちゃんと逃げるようにできた落し穴が作ってあるところに、この立法の精神というものがあるわけです。それを多数でのまされてきたわけなんです。先ほども、法治国の国民だから、よかろうがあしかろうが法律は守れという御意向でございましたが、もちろんわれわれは守らされております。守らされておるけれども、得心はしておりません。やはり国民が得心のできるような法の精神あるいは内容でなくちゃならぬと思う。大臣も先ほど言われたように、多数できまったから、それが必ずしもいいというわけじゃない、これは学者の学説の問題だろうと思いますが、少数といえども尊重されなくちゃならぬと言われたが、いつも私どもはそう言っているわけです。かりに否決されても、われわれの論議が少数論議であろうとも、これは尊重されなければならぬ。少数の論議だからこんなものは一蹴し去って顧みる必要はない、こういう態度を持たれたのでは、国民の納得のいく政治にならぬ。ただ多数できまったからこれを押しつけていく、こういうことでは九千万の国民はなかなか了承できぬ。できるだけ国民に了承せしめるに足るような立法措置あるいは行政措置が行われていかなければならぬのじゃないかと思うのです。そうであってみれば、この公共企業体等労働関係法というやつは、実はよう納得せぬ、納得しておらぬのであります。従って朝令暮改とかいいますけれども、これは何もそういう言葉で片づけるような問題ではないと思う。これはそもそも改正を直前に控えているわけです。きのう制定して、きょう改めるというような、そういう意味じゃないと思う。だから、よしんばきょうすぐにこれを改正に持っていこうとも、かりに時間的に非常に接近しておろうとも、ちっとも遠慮しなくていい、改正すべきじゃないか。たまたま国際的なそういう批判も受けているのです。国際的なそういう批判を受け、そういう申入れまで受けている今日の段階としては、やはり政府も、ただ単に機関が決定するのを待つのだというような消極的な態度ではなくて、政府自身がもっと積極的にこの問題を処理、解決していくのだ、こういうことで本腰になってもらいたい。時間がありませんので、まことに残念ですが、ただ今の一点だけ申し上げまして、また次の機会に大臣に対するお尋ねをすることにいたします。
  37. 森山欽司

    森山委員長 八木一男君。
  38. 八木一男

    ○八木(一男)委員 労働大臣に御質問を申し上げたいと存じます。実は雇用全体の問題から賃金の問題、基本権の問題についてお伺いをいたしたいと思ったわけでございますが、非常に時間が迫っているようで、それに論及ができないことは非常に残念でありますが、後の機会に必ずこの問題について御質問をさしていただきたいと思います。時間がありませんので、ごく具体的な、緊急に迫った点を一点だけ御質問申し上げます。  と申しますのは、失業保険の五人未満の事業所に対する適用の問題でございますが、これは去る八月、石田労働大臣が御就任になったときに、社会労働委員会において労働大臣が公約をせられたことでございます。それについて、現在法律案を作成しておいでになるようで、努力のあとは見えているわけでございますが、そのときに石田労働大臣のわれわれにお話しになった御決意、またそれから受け取ったわれわれの期待から大きくはずれている内容のように私どもは考えるわけでございます。具体的に申し上げますと、五人未満の事業所に強制適用を必ずするような法律を出していただけるものと私どもは考えておりましたところ、それが任意包括方式で、一部だけしかすくい上げないというような方式をとっておられるというような内容と伺っているわけでございます。特に五人未満の零細企業労働者は、失業の状態になる危険性が非常に多分でありまして、また失業しましたときに、その生活に耐え得ない状況は、大企業労働者よりもはるかに大きいわけでございます。その点で、失業保険の重要性は最も多いといわれなければならないのに、今まで放置されたことは非常に遺憾でございますが、この問題が取り上げられまして、五人未満に適用しなければならないという世論が高まって参りましたこの機会に、労働大臣がそれを強制適用まで持っていかないで、任意包括にとどめておくということは、非常にその問題の解決のために手ぬるい方法であると思うわけでございます。現在法案は提出されておりませんので、どうか一つ今の間にもう一回考え直していただいて、強制適用をすべしという、そういう改正案に変えて御提出を願いたいと思うわけでございますが、それについて労働大臣の御意見を伺いたいと思います。
  39. 石田博英

    石田国務大臣 それは一ぺんに強制加入さすように現実的にできれば、これはもういいことは言うまでもないのです。しかしながら現在の失業保険を強制適用いたしておりまするところが、事業場の数で二十八万、そうして労務者数では約九百八十万でございます。ところが五人未満の事業場は百千万、そうして従業員が二百二十万、こういう数に上っておるのであります。それをどういうふうにしてつかむか、事務的にどう処理するか、それからそのほか困難な幾つかの問題が残っておるわけでございます。一ぺんに強制適用をしようとすると、それについての調査や準備やなんかで相当の年月日がかかります。その年月日をかけて強制適用に一ぺんに持っていくか、あるいは調査やなんかの年月日は並行してかけるといたしましても、現在なら現在可能な任意加入方式を今やるか、私はそこに問題があると思う。私は、そういう実情の上から立てば、現在やれる任意加入を今やる。そうして同時に調査や研究や準備を進めていくということを並行してやる方が、私は幾らかでも早く救えるだけいいじゃないか。一ぺんに全部救えないのだから、幾らかでも救えるやつを、一ぺんに救えるまで待てという議論は私としてはとりたくないと思います。
  40. 八木一男

    ○八木(一男)委員 今救えるものを今すぐ救うという労働大臣の考え方は、私は否定するものじゃありません。それは救えるだけすぐ救ってもらったらいいのです。ところが、今全部救える方法があるのに、一部しか救わない方法をとるということは手ぬるいということを申し上げている。強制適用をすれば捕捉が非常に困難であるという、事務当局がよく言う問題でございますけれども、強制適用であれば、全事業所に失業保険が適用されるということになれば、捕捉の問題はそれでずいぶんと解決がつくはずでございます。労働者というものは全部失業保険を持っているという認識が労働者に高まれば、なまけている事業主がありましたら、必ず労働者から申し出て、それをつかむことが可能になる大きな道が開けるわけでございます。現在五人以上の事業所にもなまけているところがずいぶんございますので、この問題を解決するためにもそれが必要でございます。というのは五人以上の事業所で失業保険をなまけている事業所がある。その隣に四人の事業所があるために、隣にもそういうものがないじゃないかということで、労働法規を知らない、社会保険法規を知らないこういう労働者はごまかされてしまったり、あるいは雇用主のにらみをきかされて、逆らうと賃金その他で損をするというようなことで、泣き寝入りをするというような状態があるから、この問題の捕捉なり、逃げている者がつかまることが困難になっている。全企業に、どんな小さいところでも失業保険があるということを作れば、捕捉も楽になるし、また逃げもきかなくなるわけです。その点で、強制適用を断固としてやられるべきであると思うわけでございまするが、その点についてもう一回一つ
  41. 石田博英

    石田国務大臣 議論としてはどうでも立てられると思います。おっしゃる議論の通りでも、それは私どもは御議論に対しては反駁しようとは思いません。しかし現実的に二十八万の対象を一ぺんに百十万にやることが可能かどうかということになりますと、私はそれは現実の問題を扱っている方からいたしますと、不可能に近い困難な問題だ。従って、やはり漸進的にものを進めることの方が結局は早くいくのだ、私はこう考えておる次第でございます。
  42. 八木一男

    ○八木(一男)委員 労働大臣の今の御見解でけっこうでございまするが、現実的にものを進めて、将来早く強制適用をさせたいというお気持をお持ちになっているかどうか、もう一回はっきりと……。
  43. 石田博英

    石田国務大臣 もちろんそれは一日も早く強制適用をしたい、すべきものであると考えております。
  44. 八木一男

    ○八木(一男)委員 それでは具体的に一つ、私どものこうしていただきたいというお願いを申し上げたい。きのうの労働大臣のごあいさつにもあった通り、野党の意見を聞いて考えるというお気持を、もう一回深くしていただいてやっていただきたいと思います。現在の任意包括の方式は非常によく研究されておって、私はその労働省の御苦労はよくわかります。非常によい具体的な方法だということはわかっております。しかしそれだけでは強制適用の道は開かれませんので、現在の法案に、たとえば二年後には強制適用にするという条文を入れて、それまでの間、現在の具体的の任意包括をよく研究された方式でやるというようにお考えになっていただければ、非常にけっこうだと思うわけです。それで具体的な、よく研究された方式が二年後に強制適用になれば、事業所が事務能力が足りないという問題を解決する大きな要素になってくると思います。それで、どうか条文の中に、二年後なら二年後に強制適用するのだ、それまでは任意包括でやるのだ、強制適用をしてからも、事務的にまとめてやる方式をとるのだというふうに考え直していただければ、なおいいと思います。労働大臣のこの推進に当られたお気持は、私は非常にけっこうだと思います。労働省の御苦労も非常にりっぱなものであったと思うわけでありますが、それにさらに光彩を添えて、さらに労働者が助かるように、そういうことを一つ考えていただきたいと思いまして、特に法案提出の前にお願いをしたわけでございますが、お考えいただけるかどうか。
  45. 石田博英

    石田国務大臣 ごもっともな御議論でございますので、十分考えたいと思います。
  46. 森山欽司

    森山委員長 本日はこれをもって散会します。次回は来たる十一日、火曜日午前十時より開会することといたします。     午後零時十三分散会