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石田国務大臣 第一の、団結権と結社の自由の条約についての見解並びにその
取扱いは、先ほど申し上げた通りでありますが、私は別に、とんでもない、あるいは固定した観念を持ってかかっているわけではございません。しかし学者の見解々々とおっしゃいますけれども、学者の見解は、数が多い方が正しい、数が少いものは正しくないというものでは私はないと思う。それからもう
一つは、一体その数はどのくらいが総数なのか、総数をつかまないで、どっちが数が多い、どっちが数が少いということは、第一言えない問題だと思います。それから、御自分の意見に
反対なものはみな反動的だということも、また一方的な考え方だと思います。ただ私は、この問題につきましては国内法との
関連があります。国内法との
関連があることは次の問題にも
関連してくると思いますが、国内法との
関連がありますから、それをどう取り扱うべきかということを
労働問題懇談会、これは
労働者側の代表も
経営者側の代表も第三者の
立場の方々も入っておられる権威のある懇談会でございますが、そこで御協議を願って、そこで集約された世論の
あり方というものを期待しておるわけでございます。
それから第二の公労法上の問題、仲裁裁定の問題とスト権の剥奪の問題、これが憲法との
関連においての御議論、あるいは今また国際自由労連の報告書に基いての御議論でございましたが、第一憲法との
関連は、憲法には確かに各種の権利が規定されております。しかし同じく十三条におきましては、それは公共の
利益というものとの調整を必要とすることを明記してあることは御承知の通りであります。特に十五条におきましては、公務員は公僕でなければならない、
国民に対する奉仕的な
立場をとらなければならぬということを、つまり公務員に対する特別の義務を付加しているわけでございます。従って公労法においてスト権を剥奪しているということが、私は十三条と十五条と照らし合せてみまして、憲法違反ではないと確信をいたしておる次第でございます。
それから仲裁制度の問題でございますが、これは検討を要することは私も認めます。ただ御承知のごとく、ただいま公共
企業体等審議会の答申が出ておりまして、それに基いて公共
企業体の
あり方について今
政府は研究中でございます。その実際的措置が行われれば、当然それに伴って公労法の大きな
改正をいたさなければならないと思っております。その時期が早ければ、そのとき
一緒にやるべきだと考えておりますことが一点。それから第二点は、実はこの仲裁制度につきましては、御承知のごとく、一昨年でありましたか、一昨々年でありましたか、
改正が行われたばかりでございます。あまり朝令暮改に過ぎることは私は適当でないと考えますばかりでなく、きのうも大坪
委員が、百パーセントを期待することはできるものではないとおっしゃいましたが、でき得る限り、百パーセントと申しますか、完全なものに今度直すときはいたしたい、こう考えまして、仲裁制度をして権威あるものたらしめるために、今
労働省といたしましては検討を加えつつあるところでございます。
それから第三の国鉄の処分者に対する御意見でございます。これは、ちょうど国際自由労連の代表の方が私のところにおいでになりましたときにも、同じような
お話を私になさいました。ただし、そのときはいろいろ事情を御説明申し上げましたところが、それでは国鉄の
組合が今までの
法律軽視の態度を改めて、
政府が仲裁裁定を完全に実施するということを前提として、今後公労法の精神にのっとってその
範囲内にとどまるということを明確にするならば処分の問題はどうなるか、こういう御
質問がございました。私はそのときは、これは事情というものが全く違ってくる、現在は国鉄の
組合ないし
総評では、公労法は悪法であるから公労法を乗り越えて戦う、つまり
法律の制約を無視して戦うということを明記しておる。先ほどから公労法その他についていろいろな方面から御議論がございますが、法
改正を問題といたしますときには、まずその前提は法に従うのだ、改められたものについては従う、つまりできたものについては従うのだという精神が前提にならないで、気にいるように改められなければこれを無視するのだという考え方から法
改正を議論されても、それは法治国としては何の価値もない。前提が整うことが必要であると思います。
それからよく
労働問題についてのILOの決議と
日本の
労働政策との
関連をおっしゃいますが、しかし各国の
労働事情というものは違います。それから各国の
労働組合運動の
あり方が違うことは、たとえばその組織形態において違っておることは、これは
中原さんの方がよく御存じだと思います。従って画一的に何でもかんでもILOの決議通り行うということが国際的水準に達するということではないことは、ILO自身が、それぞれ各国が自主的に批准することを認め、自主的に検討することを認めておる。そのまま無条件に各国が従うことになっておらないということは、各国のそれぞれの特殊事情及びその自主性を尊重しておるからだと存じますので、私はILOの精神を尊重し、その他国際的な
労働機関の御意見には十分耳を傾けますけれども、わが国の
労働行政はやはりわが国の実情に基いて、
日本政府の責任によって行うべきものだと考えておる次第でございます。