○
坂公述人 先に
内閣から御
提出の
改正案につきまして、その次に
島上さんほか八名御
提出の
改正案について、私の
考えを率直に申し上げます。
これは、一昨日資料をいただいたのでありますが、法文のこまかいことまではとても調べがつきません。幸い
法律案要綱というものをいただいておりますので、その
要綱に基きまして申し上げたいと思います。
第一は、
選挙区に関する
事項でありますが、これは、実は、私は、
選挙制度調査会の
委員をいいつけられまして、その方の
調査会で、
府県会議員の
選挙区の
関係は最近に
答申をいたしたのであります。大体その
答申の線に沿った
改正案と思われるのでありまして、従いまして、私個人といたしましては妥当な
改正でないかと思っておるのであります。もっとも、これは
選挙区のことであり、
全国に
関係のあることでありますから、非常に重大なことであるには違いありません。違いありませんけれ
ども、なぜ事が起ったかといいますと、郡が、ことに最近の
町村合併によりまして非常に変な
格好になってしまいました。たくさんに割れたのもありますし、いびつな
格好になったのもありまして、従って昔の郡と様子が変っておるものですから、その変った郡を昔のように
郡市を強い
意味の基本とする
選挙区に
考えていくということは、ちょっとまずいのじゃないかということが、事実上
全国的に起っておりまして、従ってそれを是正するという
意味と私は承知しております。従って、
考え方によりますと、きわめて
事務的な
改正でありまして、あまり政治的な
考慮というものは入っておらぬものであります。従って、政治的のお
立場からも、あまり
議論というものはないのじゃないかと私は
考えております。郡が変な
格好になりましたけれ
ども、しかし、郡を全部取っ払ってしまいまして、
町村というものをつかまえて、それで
選挙区を作っていくかということも
考えられぬことはないのでありますけれ
ども、しかし、また、これは、
選挙区の作り方がいろいろ紛争の種になりましょうし、めんどうな問題も起るでありましょうから、やはり郡というものは一応の
標準としては従来
通り残しておいて、しかし、そのうちで、妙な
格好になっておるところは適当に是正する。あるいは分けるとか、集める。集める方が主でありますが、ばらばらに郡が五つにも六つにも分れたようなところもありますし、そうでありませんでも、二つにも三つにもなっておるところもありますので、そういうものを集めてやる。そして適当な
格好にする。そのやり方は各
府県が
府県の議会で
条例でやられる。こういう
考え方であります。あまり小さなものは、どうしてもそこで一人定員をとりますと、他の方に悪い影響を与えますから、あまり小さいものはどうしても合せてしまわなければいけないし、そうでもない
程度のものは、やるかやらないかということは
条例できめる。各
府県の
自由裁量に待っておるのであります。飛び地についても大体
考え方は同様と思います。こういうことでありますから、これは、ひっくるめて申しまして、妥当でなかろうかというように
考えております。ただ、合せる場合の
標準については、ここにも書いてありますように、「
行政区画、
衆議院議員の
選挙区、地勢、
交通等の
事情を総合的に
考慮して」というのでありまして、こういういい方をするほかはないと思います。
全国それぞれ
事情が違いますから、一律に
標準をきめることは、かえってしゃくし定木になって困る場合も起りましょうから、こういうことは、
あとは
府県側の良識に待つということになると思うのであります。これは妥当ではないかというように
考えております。
それから、
経過措置の問題でございますが、これはきわめて部分的なことではありますけれ
ども、
町村合併を国策としてやって早く済んだところは、
特例を使ってすでに一回
選挙が済んで、
特例が二度使えないことに
現行法ではなっております。この
町村合併がおくれておるところは、来年の
選挙のときに、そでの
特例が使えるということになります。これは、それでもよいじゃないか、一ぺん
特例でやったのだから、それで
均衡がとれておるのじゃないかというような
考え方もあるかもしれませんが、しかし、来年の
選挙というものを頭に置いて
考えてみますと、どうも
彼此均衡を失するという点もあり、そう一回限りということをあまり厳格にいうほどのこともないのじゃないかというので、次の
選挙だけは、早く
町村合併の済んだものでも、最近合併したものと同様に、
特例を認めてもよいのじゃないか、そういうふうな
趣旨であろうと思います。そういうふうに
調査会では審議いたしたのであります。同様の
趣旨でありますならば、私はそれでけっこうじゃないかと
考えております。
それから、次は、
選挙期日の問題でありますが、これは、全体を率直に申しますと、きわめて
事務的な
改正でありますけれ
ども、これは若干そうでないという
考え方もあるであろうと思います。
新聞でもこのことにはかなり
批判的な論調があったのを私も読みました、二十五日を二十日に縮めるというのでありますが、これは、
新聞その他にも、現在ここにお集まりの
議員の方方の前で悪いですが、現在の
議員の方が
自分に都合のいいようにするために、つまり競争に有利にするためにこういうようにしたのだ、こういう
考え方や
批判もあるようであります。そういう
考え方もあるかもしれません。それも否定できないかもしれませんが、しかし私はそうとばかりも思わないのであります。実は、率直に申し上げますと、私は大した問題ではないというように
考えている一人であります。二十五日であろうと、二十日であろうと、これはあまり極端に二十五日が縮まってしまってもいけないのでありますが、五日くらいなことは大して問題じゃないのじゃないか、こう思っておる一人であります。
選挙が、告示があってから
選挙の日までの間が二十日とか二十五日で一切が済むものならば、大
へんなことでありますが、実際は、もう長い間にわたって、
政策の徹底、
政党活動、組織の
活動にいたしましても、すべて年じゅう行われておりまして、私はそれは正しい
意味においてよいことだと思うのであります。
選挙は、
選挙のときだけをいうのではなくて、常
日ごろから
自分たちはこういう
考えを持っている、あの人はこういうものの
考え方をしている、そういうものの
考え方は
自分たちは
賛成だからそれに
投票するというような
行き方が、むしろ正しい
行き方ではないかと私は思っております。そういうことでありますと、二十日か二十五日ということは、そういう
日ごろの努力をそこであぶり出しにするといいますか、そこでいよいよ具体的な結果にまとめ上げるという作用をするもののようにも思われるのでありまして、そういうことを
考えますと、二十日くらいでいいんじゃなかろうか、それでもいいじゃないかと思います。これは多少私の想像が入りますが、おそらく金がかからなくて済むとか
——金がかからなくて済むといいましても、
法定費は変えてないそうでありますから、
表向きは
法定の
費用は変らないわけでありますけれ
ども、私
どもは
局外者として申し上げてよろしいでありましょうが、そう
表向きでないような
費用もやはり幾らか要るんじゃないかという気もするのでありまして、結局
期間が短かいということは、
候補者の
負担が軽くなるということがあるのではないかと思います。それから、二十五日やりますと、からだがえらく疲れて、しまいには歩けなくなって、はしご段をはって上ったというような話をよく聞くのでありますが、そういう
意味の効果もあるかもしれませんし、かたがた私も世間でとやかく言っていることを知っておりますけれ
ども、これでいいんじゃないか。外国でもそんなに長くやってないのじゃないか。もっとも、これは
制度がいろいろ違いますから、簡単に比較することはできないかもしれませんけれ
ども、まあいいのじゃないかと私は
考えております。
それから、
投票、開票に関する
事項は、これはほとんど
事務的なことでありまして、特に申し上げることもないのであります。ただ、
不在者投票のことだけは、従来
郡市であったのを
市町村単位に
不在者の
範囲をきめることになりまして、かなり
不在者の
範囲が広がって参りますと、悪くいえば乱用されるのじゃないかというような非難もあり得るとは思いますけれ
ども、私は、
投票というものは、弊害のない限りなるべく便宜を計らって、自由にできるようにしていくのがいい、こういう基礎的な
考え方を持っておりますから、
投票事務をする人は
事務がふえてちょっとめんどうになりますけれ
ども、できればこういうことをやっていいじゃないか。ことに、郡という
格好が先ほ
ども申し上げましたように変なものになっておりますから、これを
市町村に変えることもよかろうと思っておるのであります。
選挙運動に関する
事項は、これは、
はがきを何枚ふやすとか、
ポスターをふやすとか、
町村長の
選挙のときに
自動車が使えるようになるとかいうようなことでありまして、それについては私は取り立てて
意見というほどのものを持っておりません。これでいいじゃないか、こういうことで皆さんがいいとおっしゃるなら、それでけっこうだろうという
程度の
考え方であります。
町村長だけなぜ
自動車を使えないんだと、
町村長が何だか不満らしく言っておられたことも、二、三回私の記憶にありまして、できるならそういうことも認めてやったらいいじゃないかと思っております。その他、
立会演説会は
選挙管理委員会の指定する
町村でやるとか、
点字投票をどうするとか、あるいは
立会演説会の
演説の
順序のきめ方を、今までのように、一律一定に、一ぺんきまったらそのまま繰り返してぐるぐる回るということではなくて、抽せんでできるような道を開くということも、
実情に合っておるのではないかと思います。私
どもはその辺のことはよくわかりませんが、それが
実情に合っているのではないかという
感じがいたします。
それから、その次は、
一口にいうと、
選挙管理委員会が、
裁判所でやるように
証人を呼び出して、きちんとした形で証言を求めて、そこで
訴願の
裁決をするという道を今度開こうということになっているようであります。これも私は
賛成であります。私は、
弁護士をしておりますので、
選挙訴訟のことをときどきやるのでありますが、実際
高等裁判所に出て参りますと、
訴願の
裁決といいましても、第一審の判決と同じように両方からひどくやります。
裁判所の方もやりますし、攻撃する
立場の人はどんどん攻撃していきまして、
県選管としてはやりにくいだろうと思います。何かきちんと
自分の
意見をまとめる道を作っておいてやらないと、その道を作らないで攻撃だけやたらにされるということは気の毒でありますから、この
程度の、
証人に宣誓をさせて
陳述を正確にさせる。
——これは、事実として、
証人が
裁判所でころっとひっくり返って前と全然別なことを言ったという事例もあるのでありまして、そういうことがないようにするということはいいのじゃないか。少くとも、
選挙管理委員会に
訴願という
制度を認める限りは、この
程度のことは必要であろうと思います。
それから、
市町村の
選挙管理委員会の定数を、三人を四人にするというのでありまして、これも三人では一人が出てこないとすぐ困るというところから、
事務的に四人にする
——府県がたしか四人でありますが、それと同じようにしよう、
管理委員会の運営をなめらかにしようという
趣旨のように理解いたしますので、これもけっこうでないかと思っておるのであります。
それから、
一つちょっと申し落しましたが、
立会演説会で騒ぐ人間に退場をしてもらうという場合の
秩序の
保持に関する
規定が強くなっておりまして、今までは「退場させることができる」というような
規定だったのが、「退場させなければならぬ」というようになっておるようであります。これも事実そういった必要の場合があろうと思います。従って、それ自体を決して悪く言う
理由はありませんが、ただ私がちょっと
心配しますのは、これが
選挙管理委員会の仕事となりますと、
選挙管理委員会でうまくやれるかどうかということが
一つ。それから、なかなか言うことを聞かない人が出てくるのじゃないかということ。それから、このごろは
訴訟を言い立てる人がいろいろなことを言うのでありまして、これが
選挙管理委員会がそうしなければならぬという義務になっておりますと、それを十分にやらなかったということを
選挙無効の原因の
一つに並べる
——それだけではどうかと思いますが、入れて、こういうことを十分やらなんだということで、
選挙訴訟の種を
一つふやすような
心配が若干ないことはないと思います。これは
立会演説会の
秩序の
保持のためにやむを得ぬということであり、またその方の強い
理由によって必要であろうかと思いますけれ
ども、この点が少し
心配ではないかというふうに
考えております。
以上、
内閣御
提出の案につきまして概略申し上げた次第であります。
それから、
島上さん外八名御
提出の社会党の方の案であります。
第一は、
連呼行為、
自動車の上で連呼する
行為を八時から六時までの間やらしたらどうかという御
意見でありますが、これは、前にあってやめて、今度は少し前よりも
——前は時間の
制約があまりなかったのでしょうが、とにかく復活しようとするような
格好になるのですが、私は、これはどうだろうか。そう強く御
反対申し上げることはありませんけれ
ども、何しろ騒々しくて、何々さんを頼みますとか、ごあいさつに上りましたとか、人の名前を唱えるだけで一向中身のないものでありまして、せっかくやめたものなら、すぐ変えなくてもよかろうじゃないかというふうには
考えております。
それから、
立会演説会を七十回以上という、これは
立会演説会を御利用になることは非常にけっこうと思いますが、七十回という
回数に
意味があるようでありますけれ
ども、七十回というのは多い。実際は、よく存じませんが、四十回かせいぜい五十回、そんなものじゃないかと思うのです。これを急に七十回にしますと、朝からでもやることになるのでしょうが、
選挙の
期間二十五日が二十日になるという点にもからんでくるのかもしれません。従って、二十日にするのには
反対だということになるのかもしれませんが、少くとも二十日になった場合を
考えますと、これが七十回というと、一人一日の
負担が非常に多くなりまして、うまくやれるであろか。人が集まってくるだろうか。それ以外の
選挙運動にかなり
制約をつけることになりますと、そういう点で少し多過ぎるのではないかという
感じはいたしております。
それから、その次の、これは非常にむずかしい
規定なんですが、
一口に申しますと、
各国会議員の
方々は
後援会というものを持っておられるようでありまして、その
後援会名義でいろいろな方面に
寄付する、それが事実上の
脱法になっておるのだから、その
後援会名義の
寄付をやめたらどうか、こういうことに御
趣旨があるのであろうと思われるのであります。私は、その
後援会名義でどういう
程度の
寄付が
全国的にあるのかないのか存じません。よく事実を知りませんので、従って、その点からどうも申し上げることに遠慮があるのでありますが、これは非常にたくさん行われておって困るということであれば、何とか
方法を講ずることは必要であると思います。従って、こういう
趣旨の
立法をされることに私は決して
反対ではありません。しかし、これは、
立法技術の点からいいますと、かなりめんどうなこともあろうと思いますので、十分その点は
考慮を必要と思いますけれ
ども、
趣旨は、もしこういうことが広く行われておるのであれば、やはり
脱法を防ぐという
意味においてけっこうではないか、こういうふうにも思うのであります。
大体以上申し上げた
通りであります。