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1958-04-09 第28回国会 衆議院 公職選挙法改正に関する調査特別委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年四月九日(水曜日)     午後一時四十六分開議  出席委員    委員長 南  好雄君    理事 青木  正君 理事 石坂  繁君    理事 古川 丈吉君 理事 井堀 繁雄君    理事 島上善五郎君       植原悦二郎君    加藤 精三君      橋本登美三郎君    原 健三郎君       井手 以誠君    田原 春次君       松本 七郎君    森 三樹二君  出席国務大臣         内閣総理大臣  岸  信介君         国 務 大 臣 郡  祐一君  出席政府委員         法制局長官   林  修三君         総理府事務官         (自治庁選挙局         長)      兼子 秀夫君  委員外出席者         総理府事務官         (自治庁選挙局         選挙課長)   皆川 迪夫君          総理府事務官         (自治庁選挙局         管理課長)   桜沢東兵衛君     ————————————— 四月九日  委員山本利壽君及び横錢重吉君辞任につき、そ  の補欠として原健三郎君及び田原春次君が議長  の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  公職選挙法の一部を改正する法律案内閣提出  第一五〇号)  公職選挙法の一部を改正する法律案島上善五  郎君外八名提出衆法第一一号)      ————◇—————
  2. 南好雄

    ○南委員長 これより会議を開きます。  内閣提出公職選挙法の一部を改正する法律案及び島上善五郎君外八名提出公職選挙法の一部を改正する法律案一括議題とし、前会に引き続き質疑を継続いたします。  この際申し上げますが、総理大臣出席されております。本会議関係もあり、また質疑を通告されている委員もただいま四名ありますので、総理大臣に集約して質疑をなされるようお願いいたします。  森三樹二君。
  3. 森三樹二

    ○森(三)委員 総理大臣に特に御出席を願いまして御質問申し上げます。  いよいよ解放目前に控えまして、公職選挙法改正案が提案されたわけでありますが、どうも選挙が近づいてこういう選挙法改正案が出るということは、非常に私どもは遺憾だと思うのです。非常に重要なこういう法案につきましては、十分にお考えになって、もっと早く出すべきである。こういうまぎわになって出すことは、選挙管理委員会等におきましても、いろいろ法律改正によってまぎらわしい点ができまして、実に下部の選挙管理委員会等では困っておるという実情なんです。岸総理ほんとう選挙法改正をなさろうという意向があったのかどうか。どうも、今度の選挙法改正案をわれわれ見ますと、党利党略に走ったようなきらいが多々あると思います。あなたは、自由民主党総裁として、自党選挙を有利にするためにこういう法案提出したというもっぱら世論が高い。われわれもそういうように考えておりますが、これはいかがですか。
  4. 岸信介

    岸国務大臣 選挙法はきわめて東要法案であって、その改正については慎重にしなければならぬという御趣旨につきましては、私は全然同感でございます。今回の改正は、すでに内容的に御審議になってはっきりいたしておりますように、町村等合併から来るいろいろな変更、これは当然やらなければならぬ。それから、参議院選挙法等改正に関連いたしまして、これとの見合いから適当に改正しなければならぬ分、あるいはさらに、管理委員会選挙管理をできるだけスムーズにかつ公正に行わしめるという趣旨から見まして、今回の改正はまことに最小限度のものでございまして、決して、今森委員のお話のように、党利党略であるとか、自党選挙を有利ならしめようというような考え方は、毛頭この中には含まっておらないのであります。これは、内容的に御審議いただけば、きわめて明瞭であろうと思います。今回はそういう意味における必要最小限度改正をいたす、こういうわけでございます。
  5. 森三樹二

    ○森(三)委員 総理は、党利党略じゃない、きわめて必要の最小限度にとどめた法案だとおっしゃる。それならば、なぜもっと早くお出しにならないのかと言いたいのです。町村合併その他によるところの不合理を是正して合理的に選挙法改正しよう。あるいは参議院選挙に関する手続を改正しよう。そういうことならばきわめて簡単であって、あなたはもっと早くお出しになればよかった。あなたがほんとうにお考えになっているところは、私はあとでお問いしますが、選挙運動期間を短縮して、そしていわゆる地盤、カバン、看板によるところのそういう旧来のボス選挙、すなわち、言論戦を非常に封じて、金力によるところの選挙に切りかえよう、こういう意図が非常に大きいと思うのです。あなたがおっしゃるようなそういう手続的な最小限度のものならば、なぜあなたはもっと早くお出しにならなかったのですか。あなたのおっしゃることに私非常に矛盾を感ずるのです。いかがですか。
  6. 岸信介

    岸国務大臣 私は、先ほど申しましたように、選挙法改正は、内容的にきわめて重要な法律でありますから、その改正等についてはできるだけ慎重にしなければならないという御趣旨については賛成だということを申し上げましたように、たとい簡単な改正でありましょうとも、それは十分慎重に各般の事情を調査し研究して成案を確定することは、当然であろうと思います。国会の会期の相当たった後に出したということにつきましては、今申しましたように、あらゆる点から慎重に検討を加えたという結果でございまして、私としては、こういう法律をなるべく早く国会に提案することは望ましいことであり、十分に御審議をしていただかなければならぬことは当然でございますが、そういう意味でございまして、決して他意かあったわけではございません。
  7. 森三樹二

    ○森(三)委員 総理他意がなかったというようなことを非常に強弁しておりますが、これは、あなたがどんなにおっしゃっても、そういう手続的のことであるならば、もっともっと早く提案されたはずです。あなたが、この国会解散、衆議院の解放目前に控えまして、自民党つまり政調会において、こういうような一つ期間であるとかあるいは運動方法というような問題に関して、にわかに自分たちの党の有利な態勢を整えようとするこの改正案であるととは、もう衆目の見るところでありまして、総理のただいまの答弁は私きわめて遺憾であると思うのであります。  そこで、質問を進めまして、しばしば論議されておりまするが、岸総理といたしましては、政治的に非常に大きなミスをやってきたと私は思うのであります。それはいろいろありまするが、かつて自由党民主党とが合同いたしました場合において、つまりこの合同を基盤とした鳩山内閣ができ、さらにまた石橋、岸というような三代の内閣が更送をしておりますが、これは、だれしも言うごとく、民意によらざるところの内閣である。やはり選挙当時は自由党民主党とお互いにしのぎを削って政策を争って、そうしてあなたらは当選しておる。それが、政策の違った政党が一緒になってそして内閣を作っておるということは、そもそも民意に反するものであって、どうしてもこれは選挙をやって、民意に沿うて政治をやるべきであった。そういうことについて、総理として政治的な責任というものを十分お考えにならなければならぬと思うのです。ところで、そうした過去の大きなミスをやっておって、しかも戦後最悪の予算であるといわれるようなことしのあの予算提出なさった。われわれとしては解散要求決議案出して対決したわけでありますが、岸総理はもっぱら予算成立を期待いたしまして、予算はようやく成立した。そうするならば、それにからむところの予算執行等法案等もありましょうけれども、今や解散の機は大いに熟していると私は思う。世論もこれを認め、あなたもこれを認めているようであります。あなた御自身としては四月解散というものを肯定しておられると私は思うのでありますが、いかがでありますか。
  8. 岸信介

    岸国務大臣 解散の時期につきましては、しばしば国会の本会議あるいはこの委員会等において御質問がございまして、私としてはいつ解散するということをきめておりませんということを明瞭に申し上げております。今日なお、私は、時期について、四月解散であるとか、五月解散であるとか、八月解散であるとかいうようなことを、具体的に私の考えとして決定をいたしておるわけではございません。
  9. 森三樹二

    ○森(三)委員 あなたは非常に抽象的なばく然とした御答弁をなさっておりますが、やはりあなたは国民世論の声というものを十分にお聞きにならなければいかぬ。国民世論としては、岸内閣というものは国民の意思によらないところの内閣であって、すでにもう解散を昨年のうちにもやらなければならぬということを言っておるのであります。それをだんだんずらして今日まできておるのでありますが、この四月解散という声は、ほとんど国民の常識になっておると思うのです。ただいま解散の御答弁を関すますと、まだ四月か五月かわからないと言う。あなたのお考えとしては、この際できる限り政府提案法律案成立させて解散をしたいというような腹でございましょうが、しかし、もう今の時代は、政府出しておる法律案を全部通すというような甘い情勢ではないと思うのです。しかも、この選挙に関しては、できるだけ農繁期を避けたい、あるいはまた日曜日を避けたいとか、あるいはメーデーを避けたいとかいうようなことも、あなたの新聞記者との会見等においてしばしばあなたの口から漏れておる。こういうことに対してあなたはどういうようにお考えですか。なるべく農繁期を避けたい、あるいはメーデーを避けたい、日曜日を避けたいということを具体的におっしゃっておる。現在出されておるところの選挙運動期間を二十日にするという法案が通るか通らないかわかりませんが、かりに通った場合を仮定いたしますと、世間がいうところの五月十八日に選挙を執行する、あるいは五月二十五日に選挙を執行するというようなことが、逆算をしてくると、いわれてくると思うのであります。総理もやはりこの点については大体のめど国民に示して、国民の納得した時期において解散を早急にしなければならぬと思うのですが、その点一つ率直な御答弁を願いたいと思います。
  10. 岸信介

    岸国務大臣 従来、解散のことについては、民主政治の本体として、国民世論動向に対してこれを謙虚に受け入れていかなければならないということは当然のことであり、そういうことを自分考えておる。また、同時に、総理として、内閣の首班として、政治上の責任を持っておるがゆえに、その時期をきめるにつきましては、国政全般の問題ともにらみ合せて考えなければならないということを申しております。今日過去において一月解散というような声も当時相当にあったことは事実でございます。また、社会党におきまして解散決議案が出されたことも、私もよく承知しております。しかし、私がその当時日本の内外の情勢から考えると、この国会においてわれわれが提案しておる三十三年度の総予算の問題その他重要案件成立せしめることが、国民の福利のために必要であり、国の繁栄のための基礎を作ることであるから、ぜひそれに全力をあげて自分としては努力したい、従って一月の解散はしないということを申し上げたのでありますが、その考えはずっと一貫して今日まできておるわけでありまして、幸いに予算成立をいたしましたけれども、なお重要な案件相当に御審議中でありますのっで、それを一日も早く成立をいたしますように、実は私自身も努力をいたしておりますし、党の総裁として、党の諸君に対しましても、特に勉強をしてもらうように私も要望いたして、御審議を願っておるわけであります。今日いつ解散するのだということをいろいろ各方面からお尋ねになりますが、私は、終始一貫今お答えをしておるように、これはいろいろな御批評なり御意見はありますが、今申しますように、総理として、これはこの国会成立させることがぜひ必要であって、必要欠くべからざるものであるということで出しておるものを御審議願っておる最中に、それがまだ成立もしないのに解散するというようなことは、私は、実際考えろと言われたって考えることはできないと思います。これをまず一つ御理解いただきまして、今日そのことを私申し上げることができないというこの衷情を十分御理解願いたいと思います。
  11. 森三樹二

    ○森(三)委員 衷情衷情でありましても、やはり、私は、総理民主政治家であって、自分民主政治家として今後日本の再建に当りたいということは、あなた方いつも言っておられます。毎回の質問に、あなたの太平洋戦争の責任を問われた場合にはいつも聞いておりますが、ほんとうにあなたが民主政治家であるとするならば、やはり国民世論というものをあなたは十分にお考えにならなければ、民主政治家ということをみずから言う資格はないと思う。その世論としては、もう四月解散であるということは世論である。その世論をあなたがお認めにならないとするならば、あなたみずから民主政治家であるということを否定しておるものと思うのです。しかも、この法案がかりに通ったとするならば、二十日の運動期間を五月十八日の投票日を予定して逆算してくると、大体四月二十八日に告示になって、それからまた逆算していきますと四月二十二、三日ごろが解散めどだというのは、これは一般しろうとでもわかることなのです。総理の頭の中には、いわゆる日ソ交渉成立し、各法案が大体のめどがつけば、すべての法案が通らなくても、ここには解散の時期が到来しておるものとお考えになっておると思うのですが、やはり率直に、国民の前に、自分は大体このめどにおいて解散をするんだ、こういうことをおっしゃらなければならぬと思う。衷情というものは個人的感想情であって、あなたは個人的な衷情を訴えるようなことはいかぬと思う。やはり、民主政治家として、あなたは、国民の前に率直な御意見を、自分は大体こういうときに解散したいということを起っしゃることの責任が、私は十分あると思う。
  12. 岸信介

    岸国務大臣 今も申し上げておるように、私は、民主政治の本質として、国民世論動向に関しては、常にこれを謙虚な気持で把握し、これを正確にとらえて、これにこたえていくことを考えておるということを申し上げております。これは私の政治家としての根本の考え方でございます。解散の時期をきめる場合においては、その上に首相として政治上の最高の責任を持っておる立場というものを考慮して、諸般のことを考えていかなければならぬということを申しております。これが心がまえであります。しこうして、現在の情勢におきましては、そういう世論がだんだんと盛り上ってきておるという事実は、私も率直に認めております。しかし、私に総理として課せられておるところの、この国会責任をもって提案しておる重要案件が今なお御審議中であり、真剣に与野党を通じて御審議になっておる際に、私は、それに応じて私も勉強して成立をさせようというので、思いが一ぱいであって、まだ解散の時期のことについては考えておらないということを申し上げたのであります。
  13. 森三樹二

    ○森(三)委員 いわゆる衷情をじゅんじゅんとして披瀝なさる岸総理気持もわからぬわけではありませんが、しかし、いわゆる従来の解散の時期を実施したところのその責任、しかも、今や、国民世論の前には、あなたは民主政治家として断固としてやらなければならない責任が課せられておると思うのです。しかも、あなたは、しばしば、新聞記者会見において、農繁期は避けたいとおっしゃっておられる。農繁則を避けるということは、やはり五月末、中旬ごろが選挙を施行しなければならない時期ではないかと思うのです。しかも、あなたはメーデーは避けたというようなことを言っておられる。こうしたところのあなたの判断はいかがですか。一応お伺いしたい。
  14. 岸信介

    岸国務大臣 私は、この選挙権の行使というものは国民の最も大事な権利でありまして、国民全体はその権利が行使できる時期を選ぶことが望ましいと思います。この意味において、農繁期というような、農民の方々がその生業上選挙権を行使するについても、御迷惑になるようなことをなるべく避けるということは、これは私は政治家として当然望ましいことだと思います。メーデーの問題につきましては、これは言うまでもなく世界的の労働者労働祭でございまして、一切のものを忘れてその日を祝うということは、これは戦後に特に普及しておる労働一つのお祭りでございますから、それがスムーズに行われるということを考えなければならない。そういうことが選挙とからまってくることについて、いろいろ支障を来たすおそれもあるから、なるべくそういうものとかち合わないようにするということを望むのも、これまた私は当然の配慮であろうと思います。
  15. 森三樹二

    ○森(三)委員 私も質問を短かくいたしますから、総理も言葉を短かくしてお願いしないと、あなたはなかなか答弁が御熱心の余り長引くようですから総理の御答弁は要点だけ、ポイントだけ短かくおっしゃっていただきたいと思います。  そこで、私は解散の時期についていろいろ御質問したのですが、総理農繁期についてはなるべく避けたいということをおっしゃっておられます。メーデーについてもこれを避けたいと言われますが、しかし、自民党諸君は、メーデーであおられたのでは自民党はかなわないから、メーデーは避けてくれと言っておる。それから、あなたは、この問、岸・河野会談の際に、河野経企長官は、五月十八日は日曜日ですが、その日曜に何もこだわる必要がないというようなことを言って、岸総理は了承したというようなことを言っておるのですが、その会談は必ずあったと思うのです。あなたと河野氏とが会談して、五月十八日の日曜日にはこだわらないで、日曜以外の日を投票日と選んでもいい。その場合、河野氏は、日曜以外の場合は、特にこれを休みにしてもいいのではないかということを言っておりますが、それは新聞に堂々と出ておる。あなたもお読みになっておると思うのですが、これについて一応御答弁を願いたい。
  16. 岸信介

    岸国務大臣 河野君と会会うことは、同じ閣僚でありますから、しばしば会っております。意見の交換ももちろんいたしております。今特におあげになりましたような会談をいたしたわけではございませんが、従来、選挙日を日曜にするかしないかということにつきましては、いろいろ御意見があるようであります。しかし、最近の日本慣行を見ますと、大体日曜に行われておるのが慣行になっております。しかし、必ずしも日曜でなければならないという性質のものではなかろうと思います。あるいはその日を必ず休日にするということの必要があるかどうかも、これも議論のあるところであろうと思います。問題は、一体いつ解放するかという問題がきまらない今日、五月十八日というものをすでに予定していろいろな論議が行われておるようですが、私は、一つ参考意見としては、そういう御意見に対して耳を傾けるにやぶさかでありませんが、まだ十八日を確定的なものだとは考えておりませんから、日曜でなければならないとか、あるいは日曜でないときは休みにするとか、いうようなことについては、別に具体的に考えておらないというのが実情であります。
  17. 森三樹二

    ○森(三)委員 常利党略でもって、日曜をはずせば勤労者の票が相当ふえる。日曜日を選挙日にすれば勤労者の票が減る。そういうような党利党略に私は非常に気を使っておられるように思うのですが、もしそうだとすればはなはだ遺憾であるから、そういうことは十分訂正していただきたいと思う。  次に、私は解散方法についてお尋ねいたします。解散方法はいろいろありまするが、憲法第七条をもってする場合、あるいは第六十九条をもってする場合、いろいろあなたはお考えになっておるようですが、しかし、本来ならば、不信任案が提案された場合には、正々堂々と国会の場において論議を尽して解散するのが、一番国民に対して納得をさせる民主政治の要諦であると思うのです。われわれは不信任案を早急に提出する意向を持っておりまするが、この場合において、堂々とやはり不信任案提案理由を説明させ、そうして、与党においては、これを否決の討論もあるかと思いまするが、そうした場を通じまして、その提案理由の説明あるいは討論国民に十分聞かしめて、正々堂々と解散することが、民主政治に最も適合したものであると私は考えておりますが、総理の御答弁を願います。
  18. 岸信介

    岸国務大臣 憲法上、六十九条の場合と七条の場合があるのであります。これについては、憲法上の議論もあるようでありますが、私どもは、七条でやる場合がある、こう考えております。いずれにしても、今の場合は六十九条の場合ではなかろうと思います。おそらく、不信任案が出ましても、この不信任案成立するということは、これは社会党諸君もそう考えておいでにならないと思います。そういう時期でございますので、私どもは七条によって解散をするというつもりでございますが、そういう必要があるとすれば、七条によって解散するという考えであります。その時期について、先ほど来いろいろ議論もありましたが、まだ考えておりませんので、方法もいろいろな御議論のあることは、私承知いたしておりますが、まだ私はどの方法でいくかということは考えておりません。
  19. 森三樹二

    ○森(三)委員 私が先ほど申したのは、不信任案が出た場合、つまり野党の提案理由を堂々とそこに解明し、それに対して、与党は、ある場合においては、これを否決せんとするところの討論を行う場合もあるのでありますが、その採決に至らず、そこで四つの相撲をとって、大いに言論を戦わせ、そうして解散する手もあると思う。そういうようなことは一応考えておられるかどうか、簡単に一つ答弁願います。
  20. 岸信介

    岸国務大臣 今方法についてはお答え申し上げましたが、何とも考えておりません。
  21. 森三樹二

    ○森(三)委員 そこで、だんだんと質問も終局いたしたいと思いますが、現在提案されておる法案の一番中心でありまするところの、選挙運動期間を二十日にするという法律案が出ております。従来の例から見ますと、三十日の場合もあり、二十六日の場合もあるわけでありますが、特に今回二十日間にしたということは、私は、先ほど申し上げた通り、全く党利党略であると思うのであります。なぜかというならば、すなわち、十分運動期間を認めまして、つまり言論によって国民にその政策なりあるいは候補者意見を開陳する機会を十分与えなければならぬ。これを短縮することによって、選挙運動というものは非常に悪質化し、地下運動化し、金の選挙になる、こういうような状態が私は必ず発生してくると思う。この点いかがです。
  22. 岸信介

    岸国務大臣 私は、今森委員とは反対の意見を持っておるものであります。私は、選挙期日については、もちろん十分に選挙民候補者を選定するのに必要な期間が必要である、また候補者も十分に自分考え選挙民に批判せしめるだけの運動のできる期間が必要であると思います。しかし、その運動期間というものが、どの辺が妥当であるかということは、いたずらに長いことが必ずしもいいことではないし思います。長ければ長いほどいいというものではありません。また短かければ短いほどいいということも、おのずから標準があります。そこで、その関係は、やはり政党発達状況やあるいは交通機関通信網発達状況であるとか、政府が行なっておる公営の性質を半面に持っておることは当然でありまして、それを拡充するというそれの程度の問題であるとか、いろいろの点を考えまして、最も適当なところへきめるということがいいだろうと思います。現行の二十五日というのがきまりましたのは、今の時代時代の違う相当前にきまりました。その当時から見ますると、今私があげましたような点において非常に事情が変ってきておりますので、われわれとしては、むしろこの際二十日くらいにすることが最も適当であるという結論を得て、提案いたしておるわけであります。
  23. 森三樹二

    ○森(三)委員 これは、従来二十五日あるいは三十日も運動期間を認めた場合があるのですが、しかし、総理答弁を聞いていると、二十日がいいと思うというのですが、二十日という期間は全くあっと言う間の期間でありまして、それなら十五日でもいいじゃないかという議論が出てくる。しかし、私は、できる限り選挙民候補者意見というものを言論を通じて聞かしめなければならぬと思うのです。すなわち、今度は、ポスターであるとかあるいははがきを、五千枚を八千枚にしたり、一万三千枚を一万八千枚にしたというのですが、これはいずれも文書で、書面です。その書面というものは人に書いてもらう。人に書いてもらって、選挙費用をうんと使えば、それでも当選できる。しかし、国会はいわゆる言論の府であって、おしではできない。ところが、選挙運動というものについて、文書をだんだんと尊重して、言論というものを尊重しなくなれば、たとえば、人に選挙公報を書いてもらう、あるいはそのはがきに自己の政見を書くというようなことができて、直接選挙民にその政見を言論でもってやるということができなくなる。いわゆる言論戦というものを封じまして、一方においてはポスターやはがきをふやしたようなカムフラージュをして、そうして選挙運動期間を短縮せんとした。これはいわゆる党利党略の案であると思う。岸総理言論戦を封ずるということについてどう考えるか。つまり五日間短縮することによって、一日三回の立会演説会として十五回減るわけです。それから、個人演説会を、私らも最終近くになりますと、一日に五回から十回やります。それが、五日間減らすのですから、二十回から五十回減る。街頭演説でも、一日十数回として、これも五、六十回減るということになります。そういうようなことであって、選挙運動が非常に言論から離れてくるということが、この改正によって結果として現われると思うのでありますが、総理はいかにお考えですか。
  24. 岸信介

    岸国務大臣 五日減らすことによって、立会演説会の回数が減るのじゃないかというお話がありましたが、実例から見ると、われわれはこれは減らないと思うんです。というのは、今までの平均のなにを言いますと、立会演説会が始まりますのが、告示されてから八日前後かかっておるようであります。この手続やなにを今度は非常に短縮する考えでおりますので、そういう点においては、事実上この立会演説会が減るわけではございません。  それから、もちろん言論、これはあくまでも公明選挙ということ。公明選挙ということは、一方から言うと、政党に公認候補というものを立てるわけでありますから、個人の必要であることと同時に、政党そのものの主義主張なり政策というものが、やはり国民が審判する場合の判断の非常な大きななにになることは、政党政治のなにから言って当然のことであります。そういうことから言いましても、政党の活動というものが従来より非常に増しておりますから、そういう素地のできておるところにりっぱな候補者がその考えを述べるというなにでありまして、決して私は五日減らすことによって言論を圧迫するとか、そういう結果にはならぬと思います。あるいはポスターであるとか、あるいははがきというようなものも、これはやはり、われわれが言っておる言論というのは、口でしゃべることだけでなしに、そういうものもやはりその人の政見なり何なりを示すものであります。そういう関係から申しまして、われわれは、決して、これでもって言論を圧迫するとか、あるいは抑圧するというような考えは毛頭持っておらぬということを明確に申し上げます。
  25. 森三樹二

    ○森(三)委員 総理にお尋ねしますが、自民党選挙法改正案は、今もうしろに声がありましたが、立会演説会を廃止する、トラックまで廃止するというような案であったのです。あなたはそれを御存じですか。立会演説会、これを廃止するという案を作ってあったのですよ。それを御存じですか。その法案は削りましたけれども、最初は立会演説会をなくしてしまおうというお考えだったのですよ。それを御存じですか。それこそ言論を封ずる尤たるものではありませんか。
  26. 岸信介

    岸国務大臣 私が聞いているのは、そういう案が中にあったというふうには聞いておりません。なるほど、私の党にはたくさんの党員がおりますので、いろいろな議論があったようであります。しかし、今一方で言われるように、案がきまっておって、それをどうしたというようななんでは絶対にないと私は信じております。
  27. 南好雄

    ○南委員長 森君、もう一問でお願いいたします。
  28. 森三樹二

    ○森(三)委員 それでは、今度は事前運動についてお尋ねいたします。総理は車前運動についてどのようにお考えか。検察当局も、選挙にからんで、事前運動の取締りを非常にきびしくしようというお考えのようですが、総理としてはやはり十分にお考えにならなければならぬと思う。その意味において、選挙の事前運動をあなたはどういうふうに考えておるか。私は一つ十分にお考え願いたいと思う。ところが、せんだっての日本経済新聞を読みましたところ、「主導権ねらう各派の選挙対策」として、まず第一番にあなたの写真が出ていて、どういうことが書いてあるかというと、「岸首相は『現有勢力を維持するように』との意向を川島幹事長に指示している。」として「資金面の援助なども行い、選挙後の総裁派の拡大を図っているようだ。岸派は政権に連なっているだけに、選挙運動資金は党内で一番豊富といわれ、昨年末に三十万円から、五十万円、つい最近もほぼ同額を百数十名に手渡している。」こうなっておりますが、私らの聞いているところによりますと、あなたの方の秘書が、グラント・ホテルで年末もち代を三十万円渡そうとして、社会党の中島という代議士を呼んだところが、違っておった。当時中島違いのことが新聞にも出まして、あなたもその点は自粛しておったようですが、何のためにそういう金を渡すのですか。あなたば事前運動を奨励しておるのではないか。新聞かちゃんと事前運動の金と書いてあるじゃないですか。
  29. 岸信介

    岸国務大臣 新聞はいろいろなことを書いておりますけれども、この事前運動につきましては、これはなかなか取締り上むずかしいところかあると思うのです。(発言する者多し)私の答弁をお聞き願いたいと思います。なかなかこの区別がむずかしいところがあります。新人も、あるいは議席を持っている人も、将来行わるべき選挙に対して、国民自分考えなりあるいは自分の主張なりというものを十分に理解してもらう方法を正当な方法でやることは、私は禁止すべきものじゃないと思うのです。法律で規定されておるような事前運動——一定の期間のことは別ですけれども、その期間がきまっておらない時期におきまして、正当な方法自分考えなり自分の将来の支持というものに対して選挙民の理解を得るような方法を講ずるということは、私は全部いかぬということじゃないと思う。しかし、それにはおのずから度があり方法があり、それを越えるところのものは、これはいろいろ取締りの対象になる性質のものであって、その区分か非常にむずかしいということは、私は検察当局が苦心されておることであろうと思う。それを検察当局が行き過ぎると、やはり人権じゅうりんの問題も出てくるものですから、そこに非常に手心のむずかしいところがあるということは、私は十分了解をいたしますが、そういうつもりで、新聞が書いておることに関しまして、私は一々そういう事実を承知しておりませんし、あなたの御心配になるように、事前運動を奨励しているというようなつもりでは毛頭ないということを、明確に申し上げておきます。
  30. 南好雄

    ○南委員長 森さんに申し上げますが、お約束の時間がかなり超過いたしておりますから、もう一間にお願いします。
  31. 森三樹二

    ○森(三)委員 とにかくもち代を渡しておることはあなたも知っているんでしょう。国会議員というものは歳費をもらっておるんでしょう。歳費をもらっておってもち代を渡すということは、あなたおかしいじゃないですか。結局事前運動を奨励しているのと同じじゃないですか。詭弁ですよ。あなたは、中島という議員を間違って、中島違いをして渡して、恥さらしをしているんじゃないですか。ですから、選挙運動期間を減らして、その足らざるところをカバーするために事前運動費を渡して、大いに事前運動を奨励している。これか私は本法案改正について非常に遺憾千万なところだと思うのです。  そこで、一番最後に、けさの朝日新聞に出ておりました点を質問して終りたいと思います。けさの朝日新聞は読んだでしょう。最高裁判所の裁判官の国民審査と衆議院議員の選挙の投票用紙は、従来は、別々に渡して、衆議院議員の投票を済まして、一巡しましてから最高裁判所の裁判官を罷免するかどうかという投票さした。今度はこれを一緒に投票させるというのです。投票用紙を、一緒に渡すというのです。さなきだに無効投票というものが相当あるというのに、そこへ持ってきて投票用紙を一緒に渡すということになれば、私は非常に大きな無効投票というものが出てくると思う。これは重大な問題です。総理はこの新聞をお読みになっておるかどうか知りませんが、こういうことでは、私は衆議院議員の選挙というものは公正にいかないと思う。この点をお尋ねしたいと思います。
  32. 郡祐一

    ○郡国務大臣 中央選挙管理委員会におきましてそのような意見を持っておるものはございます。これは、国民審査の場合の投票の内容が、投票をいたす瞬間に、記載台に寄らないで、持っていけばそれでそのまま有効な投票になりますために、それを何とか秘密投票の保持ができるようにいたそうじゃないか、という観点から論じておるもののあることは承知いたしておりますが、次に行われまする総選挙につきましては、従来通りの方法で行なって参りたいと考えております。その点は御心配ないと思います。
  33. 森三樹二

    ○森(三)委員 この次というのは今回の解散を言うものだと思うのですが。
  34. 郡祐一

    ○郡国務大臣 この点につきましては、さらに広くいろいろな立法の手段等によりまして整えるべきものは、将来もまた選挙制度調査会等の答申を得まして考えなければ相ならぬと思いますけれども、次に行わるべきと申してよろしいか、あるいはその後引き続いて行われる部分も、法的な措置等がきちんときまりますまでの間は従来通りの方法で行われる、こういうふうに理解していただいてけっこうだと思います。
  35. 森三樹二

    ○森(三)委員 今回の選挙については、この新聞に出たような、投票用紙を一緒に渡すというようなことはしないというのですか。
  36. 郡祐一

    ○郡国務大臣 将来のことまで申しましたので、いわんや今回につきましては従来通りと御了承を願います。
  37. 南好雄

    ○南委員長 松本七郎君。
  38. 松本七郎

    ○松本(七)委員 今度の改正案の中では、やっぱり今問題になった二十五日を二十日にする、これが一番中心で大事な点だと思うのですが、これは、今後の日本民主政治確立の上でも、相当いろいろな面に影響が出てくると思います。  そこで、第一にお伺いしたいのは、このように相当重要な内容を持った選挙法改正というものが解散選挙直前になされるということは、果して適当かどうか。その点については総理はどう考えておられますか。
  39. 岸信介

    岸国務大臣 私は、選挙法改正というものは、先ほど申し上げたように、慎重にしなければならぬという考え方は一貫して持っております。しかし、選挙法のどの規定も同様なウエートを持っておるかというと、必ずしもそうも言えないと思います。今回の改正の他の点は別として、二十五日を二十日にするということは、相当に御議論があるように、意義が重大であろうと思います。十今御論議を願いたいと思いますが、私は、先ほど来申しておりますような諸種の事情考えてみますと、こういうふうにしたことが適当であろうという考えを持っておりますので、必ずしも、選挙がいつある、そのために公示期間相当置いておかなければならぬというふうには考えておりません。この改正選挙の直前に行われましても、これが適当であるという結論を得るならば、決して混乱を生じたりあるいはその他選挙に支障を来たすようなことは絶対ない、かように考えております。
  40. 松本七郎

    ○松本(七)委員 先ほど、森委員は、次の選挙のための党利党略という言葉でもって表現されたわけですが、これは党利党略という面もあろうと思いますけれども、そのことは別として、第一に、現議員と、それから新しく出てこようという、今まで選挙民にもあまり政見を訴えたことのないような人が新しく出る場合がこれから当然出てくるのだから、それは、自民党のように候補者が多過ぎて、その公認を調整するのに困るというような、たくさんの候補者を持っておられるところなら、それはあれですけれども社会党は御存じのようにまだ正直に言って空白の地帯もあるのです。都会の方では自民党と同じようにメジロ押しという地帯もありますけれども、しかし、ところによっては、これから新しく候補者を探して立てていかなければならぬというところもあるわけです。また、二大政党といっても、これから日本政党が健全に発達していく場合にどうなるかもわからないし、また自民党社会党だけが発達すればいいものでもない。ほんとう民意をどうやって国会に反映させるか、その観点から今後の政党発達ということもわれわれは考えていかなければならぬ。そういう点から考えてみますと、なるほど宣伝の機関も発達しており、交通機関発達しておる。従って、昔やったよりも今日の方がすべてスピーディなんですから、当然選挙運動期間は短かくていい。この面からいえばそのことは言えるけれども、しかし、新しく出てくる人の運動方法と、それから現議員のふだんからの事前運動といっても、内容いかんではふだんの活動が事前運動であっていいわけです。ましてや、政党政治となれば、その政党の日常の活動というものが集約されて選挙に現われてくる。そういう面から見れば、むしろ最後の集約の期間というものは短かくてもいいはずなんです。ところが、理屈はそうなんだけれども、現状からいえばどうかというと、それは必ずしも日本民主政治のレベルというのが政党本位ということにはなっておらない。連記制を見ても、鳩山さんと野坂さんの連記が出るように、そういう面もあるし、これは必ずしも悪いことではないが、また選挙という場合には当然重視しなければならぬことではありますけれども、しかし、その候補者個人という面も、ある程度考えなければならぬということになってくる。そうなると、この二十日にしたことだけを問題にするのではなしに、今回の二十日にしたものがかりに通ったとしても、今後これに合せて日本選挙制度をどういうふうに改革していって、国会ほんとう民意がそのままできるだけ正確に反映するようなものに持っていくかということが、私は、二十日にすることと関連して、次の非常に大事な点だと思うのです。そこで、かねがね、私どもあるいは世間でも、岸総理は小選挙区制の論者だというふうになっておるのですけれども、この運動期間を短かくすることと関連して、やはり岸総理は今後できるだけ早い機会に小選挙区に改めた方がいいと依然としてお考えかどうか。まずこの点です。
  41. 岸信介

    岸国務大臣 私が小選挙区論者であるということは、今おあげになりました通り、私はそういうふうに小選挙区が望ましいという従来からの考えを今日も持っております。ただ、今回のこの改正が、それと何か関連があるようにお話しになっておりますが、私はそれと関連させて実は考えておるわけではございません。小選挙区の問題につきましては、小選挙区の問題として、十分衆知を集め、いろいろな方面の御意見も聞き、慎重に、これこそ選挙法相当根幹に触れている根本的の一つの問題でございますから、これは十分に審議し、十分に各方面の意見を聞いて検討すべきもので、私一個がそういう論者であるからというので、簡単に解決すべき問題ではございませんから、これは将来慎重に考えてみたいと思います。今回われわれが提案しております二十日にしたというのは、その考え方と必然の関係はございません。  それから二十日にしたことによって、新人が出ることに非常に支障があるじゃないかというお話でござましたが、私はその点ある程度はそういう議論が成り立つだろうと思います。しかし、実際問題から見ますと、今、あなたは、二大政党になったけれども、まだ政党のなにだけではなしに、個人の影響力が投票の場合に相当あるということをお話しになったが、それを私は否認はいたしません。しかし、だんだん政党の活動というものが盛んになってきておるところの事実も無視できないのであります。従って、国民も、やはり、その人が社会党に属しておるか、あるいは保守党に属しておるかというようなことも、相当に判断の標準になってきておると思います。こういうようなことを考えてみまして、五日ほど短縮したから、理論的にいうと、今あなたの言われるような御懸念もあろうかと思いますが、実際問題として、新人がそれでは非常に出にくくなるかというと、その御心配になるようなことは要らないのじゃないか、こう思っております。
  42. 松本七郎

    ○松本(七)委員 せんだってから、自民党の中でも、この際小選挙区も同時にこの国会でやったらどうかというような意見相当あったように聞いておりますが、その際、総理大臣は、今回は見合わすということで、それを押えられたそうです。これは次の国民の審判を待たなければ、何ともわかりませんけれども、あなた自身の抱負として、かりに続いて政権担当をされるような場合には、今度は小選挙区法は見送るとしても、次回にはぜひともやりたいというようなお気持を依然として持っておられるかどうか。
  43. 岸信介

    岸国務大臣 次回とかあるいはいっとかいうようなことを私今具体的に考えておるわけではございませんで、私自身は本来小選挙区論者であるが、しかし、小選挙区制を施行するにつきましては、かつての経験から申しましても、各方面の理解と慎重なる検討によって適当な案を得るということがまず先決問題でございます。今いつそれをやるのだということにつきましては、私具体的にまだ考えておりません。
  44. 松本七郎

    ○松本(七)委員 先ほど総理も言われたように、短縮することによって、少くとも新人の選挙期間の不利をどこかで取り返さなければならない。ふだん、現議員というものは、いろいろなことで選挙民に日常からアピールする機会がそれだけ多いのですから、どうしても、選挙運動期間が短縮されればされるほど、今度はそのハンディキャップを別な方法でカバーしなければならぬという気持になるのは当然だと思います。そこで、さっき森さんも指摘されたように、事前運動が新人ほどひどくなるということが考えられる。ですから、これは、新人であろうが、現議員であろうが、そんな区別なしに、やはり、事前運動についても、もう少し積極的な対策が今後必要になってくるのじゃないか。そういう面は具体的に何かお考えでしょうか。
  45. 郡祐一

    ○郡国務大臣 事前運動選挙の公示から選挙運動期間中のあいさつ行為、それらは一切取り締っておる。しかし、実際問題としましては、短かい期間関係もありますから、取締りの対象となる場合、それはおのずから限度がきまっておりますけれども、現在は、選挙運動期間になりますと、政党政治活動が相当制限されますが、平素における政治活動というものはきわめて自由に現在の制度はいたしておる。これが、二大政党の対立ということともからみ合せまして、一つの大きい選挙運動の要素になっていると思います。それから、個人の場合にも、自己の考えておりまする政治的な考え方、これらを国民に訴えますることは、それぞれ講演会等の機会を持って合法的にやっておるのであります。これも、選挙運動とまぎらわしい言動というものは、きわめて気をつけております。ことに悪質な場合を気をつけておりますけれども、私は、現在、政党の活動なり、また個人にいたしましても、それぞれ自分考えを訴える機会というものは十分保障されていると存じております。
  46. 松本七郎

    ○松本(七)委員 先ほど、総理は、今度二十日にすることと小選挙区制というものは必ずしも結びついたものじゃないんだ、それと関係なしに小選挙区制度の持論を自分は前から持っているんだ、こういう御説明だったのですが、私は、二十日に短縮したこの機会に、民意というものを正しく反映させるという努力が今後あらゆる面で必要だと思う。そういう点からこの二十日の問題も私は取り上げているわけですけれども運動期間ということは、いろんな活動のスピーディになったことから考えて、かりにその面だけから見れば適当だとしても、しからば、選挙制度ということからすれば、何か妥当か、果して小選挙区が妥当かどうかということになると、これはまだ非常な問題があると思う。総理はそういう御持論ですけれども、今度これを二十日に短縮してやってみて、もう一度選挙制度については根本的に考え直してみる必要が出てくるのじゃないかという気がするのです。政党もだんだん発達してきますけれども、かりに政党名簿式の比例代表というようなことをやりましても、まだなかなか党内の調整その他が外国の例のようにうまくいくとも限らない。その場合には、やはり何らか個人というものをある程度重んじた単記移譲式比例代表制と政党名簿式比例代表制とをからみ合せた、日本実情に合った新しい比例代表制というものをここで研究してみる必要があるのではないか。この二十日に短縮することを機会に、今後、小選挙区がいいんだという前提に立っての選挙制度の調査ではなしに、一切を白紙に返した選挙制度の根本的な検討というものを総理としてはなさる御意思がないかどうか。この点を重ねてお聞きしたい。
  47. 岸信介

    岸国務大臣 選挙制度は、世界各国の選挙制度の沿革、日本における沿革等を見ましても、実態的にこれが最良不動のものだというものは、なかなか見出すことができないと思うのであります。やはり、その国の実情なり、その国の各般の客観的事情というものも大事でありましょうし、沿革も尊重しなければならぬ点かあると思います。そういうものを無視して、ただ理論だけできめるわけにも参らないと思います。しかし、現行選挙制度につきましては、私はやはり根本的にこれを検討してみる時期にきているんじゃないかという気持がしております。それは、単に私が小選挙区論者であるがゆえにだけではなしによく議論されますが今の選挙区制と日本の戦後における人口の配置が、最近の状況からいうとずいぶん変っておることも御承知の通りです。これに対して、別表を改めなければならぬという議論がしょっちゅう出てくることも、私は当然であると思うのです。こういうこととも関連いたしまして、今いろいろな比例代表のお話がありましたが、この制度につきましても、実際実行しておる国の実情を見ましても、これが完全なものであるということも言いかねる。いろいろそれのいい特徴もありますが、また欠点もあるわけでございますから、そういうこともあわせて、やはり選挙制度の根本については私は慎重な検討をしてみたいという考えを持っております。
  48. 南好雄

  49. 島上善五郎

    ○島上委員 期間の問題ももう少し伺いたいのですが、時間があまりないので、これは割愛しておきます。  岸総理は、かねてから熱心に汚職追放、清潔な政治ということを唱えております。これはまことにけっこうであって、われわれも、そのことをほんとうに本気になってやるならば、大賛成です。国民もまたこれを望んでおります。しかし、それには今の選挙法改正をぜひやらなければならぬという点が相当あると思うのです。しかるに、今度の政府提案は、それらの問題はけろりと忘れ去ったように、全然触れていない。私は、清潔な政治を実現するためには、きれいな公明選挙をやることが出発点ですから、きれいな公明選挙をやるためには、最小限現在の法律でこの程度の改正はしなければならぬという点があると思うのです。それについて伺いたいと思うのですが、まず第一に、政治資金を規正するという点です。これは実は昨年たしか三月六日の予算委員会で私は総理質問しました。つまり、現行法では寄付を制限しておりまするけれども、国または公共企業体と請負その他特別の利益を伴う契約の当事者である者は選挙に関して寄付してはならぬ。これだけの制限があるのみであります。そこで、制限のないのは何かというと、財政投融資、補助金、交付金を国から得ておる団体は、今日選挙に関して寄付をしても差しつかえない。本年度の予算にも財政投融資がずいぶん多額にありまするが、一方において、財政投融資、補助金、交付金を与えておいて、その団体から選挙に関して寄付を受けるということは、汚職あるいは疑獄の温床になるおそれが多分にあると思うのです。これに対しては、岸総理は、きょうはここに今記録を持ってきておりませんが、「御趣旨その通りです。今法律をどう改正していいかという答弁はできないけれども、その御趣旨のように改正するために検討いたします。」こうはっきり答弁しておる。自来一年余りたっております。どのように検討されたか、そういうような改正について今日なお必要であるという熱意を持っておるかどうか、まず伺いたい。
  50. 岸信介

    岸国務大臣 汚職追放、きれいな清潔な政治の前提として公明選挙をやらなければならない。従って、政治資金の規正の問題、いやしくも汚職の温床になるような危険のあることに対しては、一つ十分な検討を加えてなにしなければならないというお話の御趣旨につきましては、私は全く賛成であります。政治資金を一体どういう方面から受けるかという問題につきましては、保守党といわず、社会党といわず、国民から一つの疑惑を持たれるような方面からこれを得られるということは厳に慎しむという態度でなければならぬことは、言うを待ちません。ただ、選挙には何といっても相当の金が党として要ることも事実であります。この資金を結局各方面から政治資金として寄付を受けるということも、また選挙をやる上から言うと政党としては必要なことであり、それ自身をとがめるわけにはいかぬ。どこに限界を引くかという点につきましては、一応現行法の線が出ておりますが、これでもって果して十分であるかどうか、これが一番望ましいかどうかということは、私この前も申し上げました通り、検討を要する点があると私は思います。しかし、その点につきましては、実際の問題としていろいろの点を私は考えなければならぬと思うのです。今おあげになりまりしたところに直ちに線を引いていいのか、さらにそれに類似したものをどの範囲にやるか、これは保守党内においてもずいぶん議論がありますが、社会党と組合との関係における資金をどういう点に線を引くかというような問題、いろいろの点を考慮しなければならぬことは言うを待たないのでありまして、そういう各般の問題を審議いたしておりまして、この改正にまでに結論を得ておらない。私どもは、それよりも、今回はただ必要やむを得ない限度にだけとどめておいて、そういう問題については続いて誠意を持って研究する、こういう態度をとっておるわけであります。
  51. 島上善五郎

    ○島上委員 政党選挙に際して資金を必要とすることはもう言うまでもありませんし、私どもも認めております。従いまして、あらゆる献金を制限しようあるいは禁止しようということも毛頭考えておりません。しかし、少くとも、国民の血税を一方において財政投融資、補助金、交付金といったような形で特別の便宜を与え、あるいは利益を与えている団体からは、選挙に関して献金を受けないということは私は当然だと思うのです。それから、国または公共企業体の場合には、選挙に関しようと関しまいと、政党に献金することはやめるべきではないかと思うのです。こういうようなことはそう大して議論する必要はないと思う。これはもう世論の一致して支持するところであります。また、選挙制度調査会における議論においても、この点においては全く異論がない。しかるに、こういうような異論のない必要なことを改正しないために、いろいろ問題を広げて、労働組合がどうだとかあるいはこうだとか——われわれは何も普通の会社から献金することを差しとめようとはしない。労働組合からの献金も従って何もやめる必要はないと思うのです。そういう問題をいろいろ検討する必要があるといって、わざと幅を広げて問題を大きくしていってずらしておる。時期をおくらしておる。問題の焦点をしぼってやりますならば、この改正には、そんなに時間をかけてそんなに引き延ばす必要のない問題である。政治資金規正法の改正については、私どもはすでにこの国会の四回も前から出し、依然として継続審議になっておりますが、保守党の諸君はこれを審議しようとしない。委員長には悪いけれども、今度の選挙法委員会でも継続審議になっておるこの案件をやろうとしない。私は、本来ならば、この選挙法改正よりも、継続審議になっており、かつ必要なこの政治資金規正法を先議すべきものだと思うのですけれども、それをしない。これは政治資金規正に対する熱意が全くないという現われだと思うのです。  そこで、私は時間がないから質問を進めますが、もう一つどうしても改正を必要とすると思われる点は、後援会の寄付制限であります。今日、現行法でも、百九十九条の二には、公職の候補者もしくは公職の候補者になろうとする者は、選挙区内の者に対しては、選挙に関しいかなる名目をもってしても寄付をしてはならない、こうなっておる。それから、三には、公職の候補者になろうとする者が、会社の取締役、監査役、理事その他の代表者の地位にある場合には、その者の名前を表示し、あるいは類推されるような方法でもって寄付してはならないと、個人の場合と会社の場合と両方禁止しております。ここで当然これとの関係においても問題になるのは、後援会の名による寄付——後援会は箕山会とか春秋会とかいったような名前のわからぬ後援会もありますが、しかし、おおむね候補者となろうとする者の名前を一番上に冠して作っております。賀屋興宣後援会などは実にはなばなしくやっておる。その後援会の事務所に行ってごらんなさい。何十人という人間が、渋谷区担当、世田谷区担当と、地図をつけて、ばってんをつけたり、まるをつけたりしておる。そうして、その事務所の奥には、自由民主党公認衆議院議員候補者賀屋宣というポスターがちゃんと別に張ってある。これは、選挙法上、表へ張らないで奥へ張っておるから、差しつかえない。選挙法の穴をねらってやっておるわけであります。これは選挙に立っためのものであることは言うまでもない。それが実にあらゆるところに寄付をしておる。社会党主催の講演会まで賀屋興宣後援会でございますといって、金一封。(笑声)個人の寄付と会社の寄付を制限していながら、後援会の寄付をこのように野放しにしておくということは、法律のバランスの上からいっても、現実に起っておる幾多の弊害を見ましても、これは制限すべきものだと思うのです。総理大臣はどのようにお考えですか。
  52. 岸信介

    岸国務大臣 選挙の取締りに関しましては、今島上委員のお話のように、実際の実績から見まして、いろいろの不均衡であるとか、あるいは穴であるというようなことが、実際の実践上からいろいろと出てくると思います。これらをなるべく完璧なものにしていくということは、われわれが選挙法を扱っていく上においては、考えなければならぬことであります。具体的に、今、後援会の名前でやる場合において、個人や会社の場合は取り締るが、それが後援会の場合はないじゃないかというふうな点を今おあげになったわけでございます。いろいろ立法技術の問題もございましょうし、先ほどから申しておるように、選挙の問題の検討もございますから、そういう問題も今おあげになっておるものを私も聞いておりますし、確かにそれはふつり合いでおかしいと私も思います。しかし、それは立法技術の問題、法全体の改正の調子も問題でございましょうし、これは私それだけでもってここでなにするわけにはいかない。選挙法全体の総合的な研究も私はいたしておりませんし、御趣旨の点はごもっともな点があるようでありますから、そういうこともあわせて一つ将来の問題として研究することにいたしたいと思います。
  53. 島上善五郎

    ○島上委員 それほど趣旨に賛成して下さるならば。法文の問題その他は社会党が十分に究研した上で改正案出しておりますから、これも一つ御賛成を願いたい。他とのつり合いも十分研究した上で、完璧なものを——少くともその項に関しては完璧なものを出しておりますから、これはあとでよくごらんを願って、ぜひ、少くともこの項だけでも賛成しませんと、今度の選挙では相当たたきますよ。しかも、その後援会の発起人に岸信介という名前を冠しておるにおいておやですよ。ですから、この項にだけは少くとも私は賛成願えると思って、古川君などはみな御趣旨賛成というような顔をしておりますが、(笑声)これはぜひ賛成してもらって、これを通したいと思う。  時間がないから、趣旨に賛成ですから、今度はほかの問題にちょっと触れますが、今度の運動期間の短縮の理由の中に、交通機関発達運動方法の進歩ということをあげております。最近テレビが非常に普及して参りまして、外国ではテレビを選挙に使っておるところもあるようですが、日本においてもそろそろテレビを選挙運動に使う、ラジオとあわせてテレビの放送を使ってもいいという時期に来ておるのではないかと思うのでありますが、この点どのようにお考えになりますか。
  54. 岸信介

    岸国務大臣 私は、将来の問題として、テレビというものは確かにラジオと同様に扱っていくべきものである。御承知の通り、テレビは現在の日本状況から見ますと、まだラジオとは相当普及発達の程度も違っておりますけれども、将来の問題としては、これはぜひラジオと一緒に考えるべき問題である、かように考えております。
  55. 島上善五郎

    ○島上委員 それでは、これをもって最後にします。言葉じりをとらえる意味ではもちろんありませんが、先ほど、松本君の質問に対して、小選挙区制については、各方面の意見を聞いて、適当な案を得るということが大事なことである、こういうお話がありました。実は選挙制度調査会において答申した案がある。私どもは、この答申については、答申そのものが十分な審議を経たものではないので、いろいろ異論を持っておりますが、答申がある。今までの答弁の範囲においては、この答申を尊重する。——これにいろいろと党利党略、ゲリマンダーを加えたものが出されて、この前は世論の袋だたきにあって、ついに完全に葬り去られましたが、この完全に葬り去られた事実にもかんがみまして、今までは選挙制度調査会の答申を尊重する、もし出すとすればあれで出す、こういうように言っておられたと私ども承知しておりますが、先ほどの答弁によりますと、どうやら、選挙制度調査会の答申は白紙に返して、もう一ぺん検討し直すというふうに受け取れるのでありますが、そのようなお考えであるかどうか。また、こういうような大きな問題は、各方面の意見を聞くことももちろん必要であります。私ども選挙区制に根本的に反対ですけれども、小選挙区制にする場合、その一つの段階として二名、三名区にするといったような意見もあるわけですし、西ドイツのようなドント方式をとるという意見もありますが、いずれにいたしましても、こういう選挙制度を根本から変えるような問題については、両党で十分に話し合うということも、また重要なことではないかと思うのです。この二点についてどのようにお考えになっておりますか。
  56. 岸信介

    岸国務大臣 この前小選挙区案を提案いたしまして、これが通過を見なかったあの時代と、最近における小選挙区に対する世論なり両政党考え方もよほど変ってきているように私は思います。社会党の中におきましても、小選挙区論に対して少くともまじめに検討してみようというようなお考えも、相当に出てきているようでございまして、やはり二大政党を健全に発達せしめるためには、この小選挙区制が望ましいというのが、従来の私の考えでございます。ただ、具体的に申しますと、この理論そのものについては、相当国民の間にあの当時におきましても支持があったけれども、別表のなにをどういうふうに具体的にきめるかという点については、非常に熾烈な議論が起ってくることは当然でございます。なかなかに別表のきめ方というものはむずかしいなにがありますが、やはり第三者の公平なる立場においてきめるという形をとらないと、別表そのものについては、言うまでもなく、両政党の——政党だけじゃなしに、個人々の相当利害関係の深い問題でございますので、こういうことに対しては、小選挙区の理論がいい、それでいこうという場合において、別表をどう定めるかというのは、第三者が公平な見地からこれを定めることが私は望ましいのじゃないかと思います。この意味におきまして、従来あります選挙制度調査会のきめた案というものは、一応私は尊重すべきであると思います。ただ、その後におけるいろいろな事情の変化もございますし、その後のいろいろな論議から見まして、あの別表そのものの間にも、必然的にある程度の修正を要するような点もありますので、さらにああいう選挙制度調査会というような権威ある審議会で審議してもらうというような方法をとるか等につきましては、なお今後の推移について考えなければならぬ。  それから、二大政党であるから、こういう選挙法のような問題については、両党において話し合いをし、両党において事前に十分打ち合せをする必要があるのじゃないかというお考えにつきましては、私も、最近の情勢から言うと、よほど社会党も当時のお考えと変っておる。これも正確に社会党として党議でおきめになったわけではございませんけれども、いろいろ議論を聞きますと、当時とよほど考えも変っておる方も相当あるようなことを承わっておりますから、従来のようななにでは、真正面から話し合っても、これはとても歩み寄りも何もできないわけでありますが、最近の情勢から見ると、そういうことについて相当に話し合う情勢が出ているのではないか、それは非常にけっこうなことであるように実は考えておるのであります。
  57. 南好雄

    ○南委員長 井堀繁雄君。
  58. 井堀繁雄

    ○井堀委員 時間も大へん詰まっておるようでございますから、ごく簡単にお尋ねいたしたいと思います。本会議で私から質問を申しました節に御答弁をいただきました中で、ぜひ明らかにいたしたいと思うことがありますので、まずこの点について御答弁いただこうと思います。  私がお尋ねいたしました幾つかの中で、選挙法改正に対する一国の総理大臣の立場から、その態度について明らかにしてもらいますための質問をいたしたわけであります。ところが、あなたの御答弁を速記録で拝見してみますと、選挙法がいかに国民及び日本民主政治に重大な影響を及ぼすかについての質問に対して、同感の意を表されております。同時に、選挙法の政正というものは従って軽々に行うべきものでないという点についても、同感の意を表されております。しかるところ、今回突如として選挙法改正したのはいかなるわけであるかという問いに対しては、あなたの御答弁によりますと、この選挙法は根本的にあるいは基本的な改正ではないので、いわば手続上の問題を中心にして改正するのだ、こう御答弁が明確になっております。非常に私は重大な御答弁だと思う。できるなら再質問をと思いましたけれども、この機会が得られますことを期待いたしまして、今日まで待っておったわけであります。私の質問の要旨をここで繰り返すことは避けたいと思いますが、あなたのここでお答えになっております基本的なものの改正でないという点について、私は、基本的なものに幾つも言及されている改正である。この点をまず明らかにしてもらい。次は、あなたかここで言っているように、手続に関する規定に限定しての改正であるから、それほど重要視しないという御答弁趣旨であります。手続に関連してのいわば軽い意味での改正という御答弁趣旨だろうと思います。しかし、言葉の上から速記録を、拝見いたしますと、手続上に関する規定につきまして、この際いろいろな事情の変化に伴うて改正したという御答弁であります。私は、手続上の問題について軽々しく取り扱うべきものでないという基本的な一つ考えがある。元来、選挙法というものは、言うまでもなく民主政治の手続を規定した法律であります。おおむね選挙法というものは手続を中心として構成されてきておるのであります。しかも、言うまでもなく、民主政治、多衆政治である。多くの民意政治にいかにして反映するかという手続を規定したものが選挙法でなければならぬ。その手続の重大な部分を改正しようということは、いかに条文が簡単であろうと、改正の範囲が、条文の上で狭い範囲でありまして、その及ぼす影響が重大である場合には、決して、手続の上に対する改正であるからといって、これを軽々しく取り扱うということは許されない。この点に対する責任ある総理大臣としての答弁をこの際明らかにしておくことが、今後われわれが選挙法に臨む上に非常に大切だと思いまするから、共同の責任の立場に立って明確にしておきたいと思いますので、この際明らかにしていただきたいと思います。
  59. 岸信介

    岸国務大臣 選挙法というものが民主政治の上できわめて重大な法律であって、これの改正というものは慎重にやらなければならぬということにつきましては、私井堀委員のお考えに賛意を表しておりますように、私もそう思います。ただ、私が申し上げようとして言葉が足りなかったかもしれませんが、それは手続だから軽々にやってよろしいということを申したわけではもちろんないのです。選挙法のうちには、この民主主義の原則に関するもの、選挙の本体に関するものが一方においてあると同時に、今お話しのように、考えようによると、これは国民が直接にすべての政治に関与することができないから、結局選挙を通じて意思を表わすという意味におけるその手続であるというふうな御議論も、もちろん妥当かと思います。たとえば、この選挙法におきましても、普通選挙であるとかあるいは直接選挙であるとかというようなことは、これは言うまでもなく一つ民主政治の基本であって、そういうことが改正されるとかなんとかというようなものではもちろんないが、われわれは、選挙を施行してずっとやってきておるこの経験から見まして、選挙法中の、主としてそういう原則でない手続に関する規定については、実際上のわれわれの経験や施行の成績等から見て、時代に合うようにこれを改正していくということも、もちろん考えなければならないということを申したわけであります。しかし、いずれにしても、軽々にやってよろしいとか、このものは非常に簡単だから簡単に片づけるのだというような気持は、私毛頭持っておらなかったということをはっきり申し上げます。
  60. 井堀繁雄

    ○井堀委員 明確になりまして、まことに、私どもといたしましても、これからの法案審議の上に、一つの足場を明確にしたものであると思います。しかし、あなたの率いられる自民党選挙法に対する態度は、今後の問題に属するのでありますけれども、すでにこの委員会で審議を幾回か続けてきておりますが、どうも、私どもは、今のあなたの御答弁自民党の態度とは相反するかに感ずるのであります。たとえば、この選挙法審議期間を、いかにも頭から日にちできめてしまおうとするような行き方は、十分審議を尽しながら、あるいは簡単にその結論を得ることができるかもしれない。あるいは思わざる重大な問題に当面するかも、これは審議をしてみなければわからない。私どもはむしろ重大な問題がこの中に伏在しておると信ずるのであります。それを、審議もしない前から、もう何日にはこの法案を上げようではないかといったような態度は、今のあなたの答弁とは全く相反する態度だと思うのであります。これは、政府として一日も早く法案を通したいという御趣旨はわかる。しかし、あなたの所属する政党としては、すなわち総裁の立場としては、やはり、選挙法のごときは、民主政治の基盤を確立していくためによほど慎重にかまえなければならぬ問題であることにつきましては、もう意見が一致しておりまするから、多く述べる必要はないと思います。こういう点について非常な遺憾の点がありまするので、十分総裁としての御注意を私は喚起いたしたいと思うのであります。  そこで、二、三重要な点を指摘いたしまして、あとは担当の国務大臣から順次明らかにしてもらう用意がございますが、三点ばかり一つ重要だと思われる点を伺っておきたいと思います。  その一つは、なるほど、条文の中では、ごく簡単な文字の入れかえによって修正がなされておるのであります。しかし、その持つ意義はきわめて重大だと思われる点があるので、この改正の要綱は、大体、説明にもありますように、要約して三点に分けることができる。一つは、地方の府県会議員の選挙区というものが、町村合併その他の事情に基いて、必然的に改められなければならぬ。事態を変えようというのであるから、その必要性についてはよくわかる。第二の問題は、衆議院の選挙の期日を二十五日から二十日間に短縮しようとする、さらに印刷物を何がしかふやそうというお考えである。第三点は、選挙管理委員会に関する管理運営に関する問題に言及する。この三点でありますが、第一の地方議員の選挙区の問題につきましては、非常に重大な問題が起ってくると思われるのであります。その第一は、この従来の公職選挙法によりますと、郡市の単位が選挙区の基準単位となってきておることは明瞭であります。そのうちの郡の単位を——文書の中では郡市の単位を、原則という点は貫いておりますけれども、事実は郡の単位は私はこれによってめちゃめちゃにこわされてくる第一歩がここに開けたと思う。このことは、ひとり選挙法関係するものではなくて、日本民主政治の基盤を作るに最も重要な地方自治体の将来に関する私は大きな影響があるものと思うのであります。また、あなたの持論でありまする小選挙区法を施行する場合には、衆議院の選挙区の単位というものを一体行政区のどれに求めるかということを考えますと、郡というものにたよらないでいいという見通しが立ってこなければならぬ事柄だと思うのであります。このように、この改正案は、事務当局としては、まことに器用な結論で、見上げたものだと、その点では大いに敬意を表しておるのでありますけれども、残念なことには、こういう基本的なものについては配慮が加えられていない。もちろん、自治法の第七条に県及び市の境界についての総理大臣の権限が重く規定されております。あなたの権限によらなければ区域を変更、廃合できないことになっておるのでありますから、この点は、非常に、自治の区域というものを変更するということがいかに重大であるかを、法律も重く見ておるのであります。一方には、町村の合併やあるいは行政区域の変革、変更をしなければならぬ必然的な事情が起ってきておることは、私も切実に認めておる。そういう問題とこれとを、同じ自治庁の所管でお作りになった原案であろうと思いますけれども、要するに、そういう事務的なものからのみものを判断して、基本的なものに十分な検討を加えられていないと私は思います。総理大臣はそういう点に対してお気づきでございましょうか。またそういうものについては当事者の提案したものをうのみになされるお考えでありましょうか。また、重大であると考えるならばどうすべきであるかについて、この際あなたの御態度を明確にしておいていただきたいと思います。
  61. 郡祐一

    ○郡国務大臣 私から、地方制度に関係することでございますし、一言お答え申し上げます。  郡というものは、一つの地理的名称ではありまするけれども、国の行政でも、自治の行政でも、これを行政区画に用いておる現状であり、私は行政上の区画といっておりますが、選挙区などという言葉を使わずに、行政区画といっておるのも、そういう思想だと私は思っております。そういたしますと、郡というものは、広い意味の府県、またその基礎の町村、これがつり合いをとりながら、将来、御承知のように地方制度では、自治法では郡は廃置分合できることになっております。郡に手をつけるということは、おっしゃるような意味合いで、よほど慎重にいたさなければ相ならぬと思います。従いまして、選挙区をこしらえますのにも、町村を集めまして、手ごろな町村の数を寄せて、人口を見て選挙区にいたすというのでは、井堀委員御指摘のように、本末を転倒するような点もあると思います。従いまして、飛び地あるいは著しく人口の減りました郡等を他の選挙区に加えるというような措置をいたしておりますけれども、郡市の区域というものをどこまでも基本にしていく、この考え方では、井堀委員のお考えのように考えておる次第でございます。
  62. 岸信介

    岸国務大臣 私自身、実は、具体的なことにつきましては、十分に研究をいたしておりませんけれども、やはり、今郡国務大臣がお答えをいたしましたように、選挙区をきめる場合に、郡というものの従来からの位置をこわすようなことはしないように考えていくべきである、かように思っております。
  63. 井堀繁雄

    ○井堀委員 唐突としてお尋ねした形になってしまったのであります。しかし、この点について御案内ないとすればなんですが、昨日自治庁の長官なり当局の御説明によりますと、全国で五百四郡あるそうです。その中で今回対象になっているものをお答えいただいたわけです。まあ法律でいいまするものを通称強制合区あるいは任意合区に分けて、強制合区が二十八郡、任意合区が五十九郡、そして区は百五十五地区と百二十八地区、合計二百八十三地区、飛び地が百四十七郡に及ぶというのでありますから、これは、私は、郡の行政区画に対しては一大変革を行われる一つの機会を与えた。このこと自体を私は重視いたすのではありません。こういうように郡というものがすでに市町村や県のような法律の行政単位からだんだん後退してきておるときでありますから、私は、こういう根本的な問題に対して、ある程度の国の方針というものをお立てになって、それとにらみ合せて選挙法のこういうような区画というものを立ててきませんと、非常な失敗を将来招く。総理大臣がいつまでもその責任の地位においでになるわけではありますまい。また、二大政党を施行しておる限りにおきましては、私ども野党がまた責任の地位につく場合もあり得ると思うのです。こういうような問題は、将来に尾を引く問題であるし、また民主政治の基本的な問題に関係することでありますから、よほど討議を重ねていくべき事柄の一つであると思うのであります。こういう点に対して、私は今回の提案理由を伺い、今まで、わずかの期間でありますが、質疑を重ねているのでありますが、一向理解のできる方向に進んでこないことを非常に憂えております。この点につきましては、一つ総理といたしましても御検討をいただきまして、すぐ御答弁をいただくことを私は無理に希望いたすわけではありません。非常に重大であるということについて御検討をいただきたい。本会議が始まったそうでありますから……。
  64. 南好雄

    ○南委員長 関連して質疑の要求がありますので、これを許します。田原春次君。  簡潔にお願いいたします。
  65. 田原春次

    田原委員 総理に簡潔に一つお尋ねしたい。これは形は小さい問題ですが、実際は無効投票をなくする最良の方法なのであります。どの選挙法になっても、これは実行したらいいと思います。それは記号式投票用紙を採用してはどうかということであります。従来の投票用紙は一々候補者の名前を自書するわけですね。従って、誤字、脱字があるし、無効があるし、中には俳句や川柳を書いたりすることがあります。そうでなくて、二大政党になったのですから、順番等は問題でありますが、あらかじめ自由民主党はだれだれ、日本社会党はだれりだれ、その他だれだれということを投票用紙に印刷しておく、そして投票所ではそれにチェックなりまるをつければいいわけです。これは長い問論議されておりますが、いつも参議院の全国区の問題がひっかかってだめだけれども、衆議院は実行が可能だと思います。これをこの選挙法改正に際して思い切って採用されてはどうかと思います。たとえばいろは順なり年令順にするということが不可能ならば、からかさ式印刷法というのがありまして、こういう投票用紙にぐるっと岸信介から佐藤榮作というように印刷して、そしてその中にまるをつければいい。こうすればどちらがどうということにならぬわけであります。思い切って記号式投票法をやったらどうか。これは諸外国は相当やっております。この際これをやった方が無効投票をなくする点において非常にいいのじゃないかと思いますが、どうでしょう。
  66. 岸信介

    岸国務大臣 今おあげになりました記号式の投票というものは、今お話しのように、無効投票をなくするという意味においては相当の効果があるだろうと思います。しかし、どうなんでしょうね。現在のところで申しますと、二大政党といっても、まだそれ以外のいわゆる無所属の候補者相当出ますし、立候補した両党の公認候補だけを書くわけにもいかぬでしょうから、全部なにしていかなければなりますまいが、相当数が多いところにおいては問題があるのじゃなかろうか。候補者の数がもう少し整理されてすっきりすると、今お話しの点のなにはあると思います。なお、しかし、これはいろいろ専門家の研究もありましょうから、今私がここで思いつきだけを申し上げることは適当でないと思いますから、十分研究してみます。
  67. 南好雄

    ○南委員長 井堀繁雄君。
  68. 井堀繁雄

    ○井堀委員 次に基本的な問題で、これも非常に重要なことですぐ御答弁いただけるかどうかも疑問を持つくらいのものであります。それは、今度の改正案によりますと、地方議員の選挙区が変りますと同時に、議員定数に関する有権者の人口比例がはなはだしく変ってくる。これは、従来は、公職選挙法によって衆議院や参議院議員の定数を定めておりながら、一方地方議員の定数については地方自治法によっておる。私は、こういう点では選挙法の矛盾がここにあると思うのであります。これは歴史的にはしからしめたいろいろな理由はあると思うのでありますが、本来でありますならば、そういう議員の定数というものは少くとも公職選挙法の中に規定さるべきものだ。そうしませんと、たとえば、選挙の場合に一番大事になりますのは、定数を定めることはさほどじゃなくとも、そのきめられた定数に対する有権者の人口別配当というものは非常に重要だと思う。特に、民主主義は人格主義をとるもので、一人々々の国民、市民の意思というものが、どの政治にも正当に公正に反映するということが、基本的原則となるのであります。それがある地域では十人の人の審査を受ける、あるところでは一万人の人の審査を受けるといったような事柄についてば、これは、いずれの国にいてもその合理化のために論議されていることは学ぶべきだと思うのであります。日本公職選挙法によりますと、参議院と衆議院の場合は別ですが、あとは地方自治法によるといったような矛盾がそのままになって、この法律改正では、地方議員の選挙区を改めるということではありまするけれども、これに関連を持ってくる問題であります。でありますから、必ずしも、今度の改正というものは、そう単純なものではない。ここに一つ問題がありまして、これについてはあなたも御意見があろうと思うのであります。  続いてもう一間。それは期間の短縮という点につきまして、本会議でも私はお尋ねをいたしました。しかし、この期間の短縮の問題について、あなたは、立会演説会あるいは個人演説会あるいは街頭演説会などの言論の自由については、さしたる制限は加えぬで済むという見解のようでございまするが、しかし、これは、私はいろいろな科学的機械を利用することによって補おうという意味だろうと思うのです。あるいは、自治庁長官に言わせますと、交通機関や宣伝機関が、非常に発達しているということを言っておる。しかし、それに正比例して、一体、有権者の意思というものが、そういう機関を通じて、選挙にどれだけ合理的に結びつくかという具体的事実を検討してみなければ、軽々にそういう結論を出すべきではない。総理大臣や自治庁長官がそう考えるということとは、個人の意見であって、そういうものは国民の総意に問うて是非をきめるべき事柄であって、言いかえれば、公聴会などの意見を十分尊重して、あとう限り、選挙民の側から、こういうものに対して二十日間でよろしいとか、あるいは十五日間でいいというような意見が出てきて、それに呼応して改正すべきが選挙法の建前だと思う。こういう点に私は重大な問題があると思う。  この二つの質問については、非常に重大な関係がありますので、時間がありますならば御意見を伺いたいと思います。またそういう機会を作っていただくかもしれませんが、一応お答えを願います。
  69. 岸信介

    岸国務大臣 議員の定数、すなわちその背後にある人口との比例の問題は、これは、今井堀委員お話しの通り、民主主義において重大な問題である。それを府県会議員等については自治法にまかしておるということであって、この選挙法にない点を御指摘になっておりますが、これは立法の沿革等もございまして、自治法と選挙法の調和を十分にはかって、今御指摘のような人口比例の原則を堅持するように、この両方の調整をはかるということに努力をしなければならぬ問題であると思います。十分にそういう意味で努力して検討いたしたいと思います。  それから、二十日に短縮するという問題は、御指摘になるような重要な点がございますが、特に一般的に非常に関心の深い規定であると思います。御意見の点等も十分なにしなければならないと思いますが、自治庁長官や私が勝手にこう考えているということじゃなしに、最近におけるいろいろの選挙情勢というものを公平に客観的にながめてみると、やはり選挙方法なり、あるいは二大政党のやっていることや、あるいは通信、またラジオ等の利用というようなことにつきましても、国民の間に非常普及して参っておる現状から申しまして、この程度に短縮しましても、決して言論の圧迫とか、あるいは実際上の候補者運動に支障を来たす、あるいはもう少し大事な、国民が投票する上において、十分に選定をし批判をするための時日がないというようなことは、私はこれは万なかろうと思います。従いまして、これはもちろん御審議のことでございますから、公聴会をお開きになって御意見を聞かれるというようなことが全然必要ないということを私が申し上げることは、なるほど適当なことじゃございませんから、御審議のなにでございますけれども、決して私や自治庁長官が勝手に考えていることでないことを、一応御理解を願いたいと思います。
  70. 南好雄

    ○南委員長 本日はこの程度にし、次回の委員会は明十日午前十時より開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後三時三十六分散会