○
井手委員 なおその点も
お尋ねしたいのでありますが、時間の都合で先に進みたいと思っております。
私は、
地すべり対策の中心をなすものは家屋の
移転であると考えております。最近惨害を引き起しました
佐賀県の伊万里市や佐世保の世知原その他、
移転させなくては
人命が危ないということで、県も市当局も再々
移転の勧告を行いますけれ
ども、
農家というものは金は持っていないのでありまして、やりくり算段でやっとその日その日を過ごしておるような
程度でありますから、家屋
移転ということがなかなか難事でございます。たとえば伊万里市のあの人形石山におきます
地すべりにおきましても、別に掘立小屋は作っておりました。しかし田畑がその
地すべり地帯の中心にありますために、どうしてもそこにおらなくては農作業かできないということで、掘立小屋は作りながらもやはりもとの家に起居しておったということから、ああいう悲劇を起したのであります。
それじゃなぜ
移転ができないのか。私はこまごまとしたことは本日は聞きませんが、根本問題であります。なぜ
移転ができな
いかといえば、もちろん土地に対する愛着がある。それとともに金がないのであります。さあ
移転しろ
移転しろと申しましても、金かなくては
移転するわけには参りません。この
移転ということは、それじゃ金を貸してやればいいじゃな
いかということにもなるかもしれませんけれ
ども、その
移転する前後のかなりの期間は仕事ができない。現金の収入もないわけです。そういう環境のもとに家を
移転しなくてはならぬということになりますと、やはりそれに対する十分の融資がなくてはならぬ。しかし融資をいたしましても利子をつけて戻さなくてはならぬわけです。先刻当局から御説明がありましたように、
公共の
施設を守るために、
国土を
保全するために家屋を
移転しなくてはならぬという御
答弁かありました。中には、自分はあくまでも父祖伝来の土地と家を守るという人もありましょう。しかしその
農地なりあるいは家屋を守るために
移転を本人が希望しなくても
移転をさせる、あるいは土地利用をするためには
移転させなくてはならぬという、この
地すべり地帯における家屋
移転問題について、当初は
建設省においても
農林省においても——
農家はあなたの方の
関係ですよ、
建設省にまかしておくべきような問題ではございません。この
農家に対して家屋
移転の命令を出すことかできる、いわゆる家屋
移転を勧告する、こういうふうな建前になっておって、
移転の勧告をした場合には若干の補助を出そうという構想があったというふうに私は承わっておりましたけれ
ども、提案されたこの
法律案によりますと、補助というものが全然ない。先刻来
大野委員との間の
質疑応答を聞いておりますと、三十三万円
程度までは貸してやろう、こういうわけでありますけれ
ども、今の
住宅金融が
いかに手続がめんどうであるかは私は多くは申し上げません。とにかく危険にさらされておる
農家が
移転しなくてはならぬのに、ああいうめんどうなことが果してできるかどうか。しかも家屋の方は
住宅金融公庫に行かなくてはならぬ。畜舎、農舎の農業刑
施設については、今度は農林漁業金融公庫の方にお百度参りしなくてはならぬ。そういうことが実際できるかどうか。非常に手続がめんどうである。しかも両方に行かなくてはならぬ。本人は家屋
移転で一生懸命朝から晩まで走り回らなくてはならぬというこの家屋
移転の人たちに対して、まあ要望もあったから融資の道を開いてやろうという
程度では、一番大事な家屋
移転の円滑な推進はできぬと思う。場合によっては自分は動きたくないという者を強制的に立ちのかさせねばならぬ事態もたくさんあると思う。そういうときにはやはり補助も若干出してやろう、融資も簡単な
方法で必要な者には出してやろう、そこの親心と申しますか、その点が私は一番大事だと思う。なるほど
農地も大事だ、家屋も大事だけれ
ども、一番大事なのは、家屋を
移転して
人命を守ってやるという措置が一番大事である。その点については十全の措置が講ぜられていないような感じが非常にいたすのでありまして、この政府
提出の
法律案に対して、
関係地方民の要望はここに集中されておる。家屋はできないまでも、少くとも農業
施設に対して——
災害復旧なんかには、
法律の補助が認められている。二十八年度
災害には九割までも補助が認められた農舎、畜舎に対しては、今度はびた一文も補助がございません。この家屋
移転という大きな問題に対して、大臣から
一つ誠意ある御
答弁をこの際承わっておきたいと思います。