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近藤参考人 近藤でございます。
産業計画会議の下積みの
委員会といたしまして
技術小委員会というのが持たれたのであります。私はその
技術小委員会の
委員の一人であったということで本日お呼び出し下さったことだと思いますので、
技術委員会の立場でも若干申し上げなければならぬかと思いますが、
技術委員会からの
報告は、
産業計画会議の
レコメンデーションの
付属書類として多分お
手元に御配付になっておると存じます。
産業計画会議の
レコメンデーションそのものが
技術小委員会の
意見書に全面的に合致しているかどうかという点につきましては、必ずしも全面的に合致してはおらない、こう思います。どの点において合致しておるか、どの点において必ずしも合致していないかということは、詳細は
一つ文献でごらんを願いたいと思います。ただ
神戸—東京間の
高速道路の
路線の
選定力につきまして、
中央山岳道路の
路線は不適当であって、
東海道路線の方が適当であるという点にむきましては、
産業計画会議のリコメンデーションも
技術小委員会の
意見書も、完全に同じでございます。この
路線の
選定は非常な問題であると思いまするので、私は主としてこの
路線の
選定の問題について若干の
参考意見を申し述べたいと思います。
道路は
交通のために作るものでありますから、そういう
原則からいたしまして、
道路投資の効率というものはどうしても
交通量の多少によってきまるということは、これは曲げられない事実であろうと思います。かりに私が申し上げました
原則が曲げられるとするならば、およそ科学的経済的な
道路政策というものは
立ちようがないのではないか、こう私は信じます。そういうことからいたしまして、
東京—神戸間に多大の
投資をいたしまして
高速道路を
建設し
よう、その
路線を
選定するに当りましては、まず第一義として、いずれの
路線を選んだ方が
交通量が多いか少いかということの検討は、根本的に必要な要件であろうと思います。さて、かりにこの
山岳道路に
高速道路を作った場合、そうではなしに
東海道に
高速道路を作った場合、どちらが
交通量が多いであろうかということはこれはもう
常識からいたしまして、
東海道の方が
交通量が断然多いであろうということにはどなたも異議はなかろう、これは
常識であろうと思う。ところがおかしなことがあるのであります。それは
建設省の
道路局におきまして、当初いわゆる
東海道弾丸道路の
計画を立てられました際に、
交通量の
予想をいたしております。どう
予想をいたしておるかと申しますると、
昭和三十六年度にこの
道路が完成したものとして、公開したものとして、
戦前の
平均交通量は、これは多い
部分もあります、少い
部分もございましょうが、
平均いたしましての
戦前の
交通量は、一日に
自動車交通が七千四百台であろう、こういう
調書ができておる。そうして年々大体五%ずつ
交通量は増すであろうという
予想が立てられておりまするので、これを
比較のために、
一つ現在を標準にとりまして
昭和四十年を換算をいたしますると、一日八千九百台、こういう
数字になるのでございます。ところが
縦貫道協会で発表せられておりまする
中央山岳道路の
交通量は、
昭和四十年におきまして、
大阪—名古屋間で一日一万三千八百台です。
名古屋—東京間におきまして一万一千六百六十五台、こういうことに
報告せられております。
戦前の
平均の
距離を乗じて勘案して換算いたしますると、
平均一日一万二千六百台の
交通があるであろう、こういう
報告書になっております。
〔
大島委員長代理退席、
委員長着席〕
私
どもの
常識によりますれば、
東海道弾丸道路の方がよほど
交通量が多いであろうというのが
常識であると思いますのに、二つの
報告はまるで逆になっております。
建設省の、
東海道弾丸道路の八千九百台に対しまして、
山岳道路の一万二千六百台、四割以上由の方の
路線が
交通量が多い、こういう
報告がなされておるのでございます。これは少くともどっちかがひどく間違っておる、こう判断するよりほかに考え
ようがないところでございます。私の私見を申しますならば、
建設省の
想定はやや手がたいところであろうかと、こう思われるのでありますが、
縦貫道協会の
想定は、これは多分にでたらめの懸念がありはせぬかと思われます。こういうことでありまして、私
どもはこの
高速道路の
路線問題がどう落ちつくかということに多大な興味と関心を持つ
国民の一人といたしまして、基本になる
交通量の
想定にかくもはなはだしい食い違いがある、すこぶる迷わざるを得ないのが
実情であると思います。どうぞ
一つ国会におきましても、これをためにする
調査でなしに、厳正公正な
調査機関によってこの点を御究明下さることが必要ではないかと思うのでございます。そうすればおのずから妥当適正な
予想量というものは立つであろうと思うのでございますが、それではその
調査ができ上るまで全然かいもく見当のつかぬものであるかどうかということになると、必ずしも私はそうでないと思います。ここには
一つの
洞察というものをきかしてもよくはないか。
建設委員会の
皆様にも若干の
洞察というものがなければうそじゃないかと、こう思うのでございますが、私の
洞察なり
皆様の御
洞察の
参考になる
一つの
実地調査の一例を私は御
報告申し上げたいと思います。それは
東海道の
国道の上にあります
藤沢市で、一昨年綿密な
交通調査をいたしました。
藤沢市を通る
交通につきまして、その
交通がどこを
出発点とし、どこを終局の
目的地としたかということを明細に調べた
調査の
報告がございます。その
調査報告をごく簡単なところへ私が
数字を要約いたしまして、次の
ようなことが申し上げられるのでございます。これは
昭和三十一年のある日の日中、九時間の
交通調査でございます。まる一日ではございません。二十四時間ではございません。九時間の
調査でございます。
藤沢市を通りました全
交通量が、一日に約六千四百台であります。それでこの
交通量を、
内容の性質を分析いたしました。そういたしましたところが、
神奈川県の外から
神奈川県の外へ行った、たとえば
東京から
名古屋へ行った、あるいは
静岡から千葉へ行った、いずれでもよろしゅうございます。その
交通量がどのくらいあったかといいますと、これはいわば
長距離交通と銘打ってもよろしかろうと思いますが、六百九十五台であります。全
交通量のわずかに一・〇八割くらいであります。一割一分に足りません。そういたしまして、今度は
神奈川県の外から
神奈川県へおさまった
交通量、あるいは
神奈川県の中に発生して
県外へ出た
交通量、これがどのくらいあるかというと、一千六百二十四台、全
交通量のパーセンテージをとりますと、二五・二%であります。そういたしまして最後に、県内におさまった
交通、つまり
県外には
関係のなかった
交通はどのくらいかと申しますと、四千百三十一台、実に六四%、六割四分というものはこういった
近距離交通であります。そうして
藤沢市の
市内だけで発生した、ほかには
関係のない
交通量を念のために調べますと、四百二十六台、こういうことになっております。従いまして最初に申し上げました、
県外から
県外にわたる、いわゆる通り抜けの車というもの、
長距離の
交通量というのが六百九十五台、その中には、
静岡から
東京を通り越して
崎玉へ行くというものもあれば、それから
神戸から
東京を目がけてくるもの、さまざまの
交通量がこの中に入っておるわけでありまして、このうち
阪神地区ないしは
中京地区から素通りして
東京目がけてくる車は、さらにこのうちのごく少
部分であります。こういうわけでありまして、
東京—神戸間の
幹線交通と申しまするけれ
ども、その
長距離を一気に走るといった
ような車の
分量というものは、わずかに一
藤沢市内の
交通にも足るか足らぬかの
程度のものであります。これを要約いたしますると、
交通というものは、
近距離交通ほど
分量が多いものでございます。そうして
距離が遠くなればなるほど、その
分量は小さくなるものである。これが
交通の真のある姿だと思う。特に
道路交通のある姿はこれであります。従いまして、
東京—神戸間の
高速道路と一口に言うと、いかにも二大
工業地帯、
大都市連絡のための
道路の
ような錯覚に陥りやすいと思われまするけれ
ども、
内容はそういうものでございます。これをかりに、開けました
東海道の沿線の諸
都市を避けて
中央山岳に持っていって
路線を
建設いたしますならば、少くとも半分以上の
交通のための便宜というものは犠牲にしてしまって、ごくわずかの
交通のために
巨額の
投資をしたという結果になるのは、私は必定であろうと思います。私の
洞察から申しますならば、
東海道弾丸道路を作った場合と、
中央山宿高速道路を作った場合と、その
交通量を
比較いたしますると、おそらく山の方は
海岸路線の半分に足りない
交通量しかないはずであります。私はそう
洞察いたします。両方の
路線とも、
構造といたしましては、四
車線の
自動車専用道路ということに提案をせられております。四
車線の
自動車専用道路は、一体
交通能力はどのくらいあるか、これが大へん大切なことでございます。しかしながら私がながめますところ、
皆さんのおおむねの
方々が、そのことさえも頭から忘れて議論をなさっておる
ようなうらみがありはせぬかと思うのでありますが、四
車線高速道路の一日の
交通量の
能力というものは、欧米の
常識から申しまして、一日四万台ないし五万台の
交通量、これが
常識であります。そうしてこの
高速道路の
能力というものは、同じ
走行車線四
車線を持っている
一般道路—平面道路、
混合道路、
一般道路に比べて言うならば、三倍の
交通量を少くとも二倍の
スピードで走らせることができる、こういうしろものであります。こういうことからいたしまして、
日本がこれから大いに
高速道路政策を取り入れ
ようということは、きわめてよいことだと私は信じますけれ
ども、
交通量のそんなに多くないところに
巨額の
投資をされてこういった大きな
能力の
道路を作るということは、きわめてこっけいと申しますか、
水力電気の需用のないところに膨大な
水力計画を立てるということと同じ弊に陥るのでございます。四
車線高速道路の
能力が四万台ないし五万台、
一般の四
車線走行の
一般道路ではその三分の一とおきますと、普通の
道路の
能力も相当あるわけなんでございますが、現に
横浜—藤沢間あたりでは、あれがいわば
日本のよくできた代表的の完全二
車線の
道路であるということができると思うのでありますが、それがすでに普通の
道路でもって一日一万台前後の
交通を処理しているのが
実情であります。特に江ノ島の
海水浴場のシーズンや何かになりますと、おそらく一万五千台あるいは二万台に近い
交通を、
スピードは低下いたしますけれ
ども、どうにか処理しているはずでございます。こういう点から申しますならば、山地の
開発をもし
目的とするならば、
能力の点から申しまして、
一般の二
車線道路でたくさんであります。またそれが当りまえであります。事実、世界の
道路のニュースに私はよく目を通しているのでございますが、フィリピンではミンダナオ島の
開発、
エジプトは
エジプトの世界一の
開発、
南米諸国は
南米諸国で大
開発という
工合に盛んにやっておりますけれ
ども、これは
未開地を
開発して沃野にし
ようという
計画が多いのであります。それらの中で、
未開地の
開発に
高速道路の
建設をあえてしたという例は
一つも聞かないのであります。そんなことはないはずであります。逐次
開発が進みまして、たとえば
東海道線の
ような
工合に、従来の
交通量ではしのぎ切れぬ、もう少し
交通能率を上げたいのだという必要に迫られて後に初めて
高速道路の
建設ということが問題になるのが、世界的の順序であります。私はそう信じております。この
交通量の観点からいたしまして、
中央山岳縦貫高速自動車道路でなしに、これはぜひとも
東海道の
路線に乗りかえるということがしごく妥当であり、必要なことであると私は信じます。
なお念のために申し上げますと、すばらしい機能の
道路でも、それが幸いにして安く
建設できるといった
ようなコンディションに置かれるならば、これは作った方が、それだけ多々ますます弁ずるのですから、いいのですが、
建設費の非常に高くかかりそうだというところは、
交通能力をいかに上げたいと申しましてもそうは参らぬ、こういう関連のものだと思います。
さて、
中央道路の
建設、あの
山岳道路の
建設に幾らかかるかという問題でありまするが、
縦貫道協議会の
調書では、
比較的安くできる
ような御
報告になっておりますが、私はその構想において提唱せられるごとく、百キロ、百二十キロで走る、
東京—神戸間を五時間あるいは六時間で結ぶといった
ような
高速走行を真にねらうならば、おそらく一キロ十億円以内でできることはあるまいと私は考えます。私がこういう大胆なことを申し上げるには、
一つの非常にいい例があります。それは
南米の北の方の
ベネズエラの国でありまするが、
首都が
カラカス、これは
熱帯国でありますので、
高原の高いところにこしらえております。それから
海岸に、
ベネズエラ最大の
貿易港の
カラカスという港町がございます。その間に
ベネズエラ政府は、
高速道路の
建設をいたしました。
延長わずかに十七キロ、ここから
横浜へ行くより少いくらいであります。言いかえますならば、
小田原から箱根の峠を登るくらいの
距離であります。そうして
カラカスの
高原の標高がどのくらいあるかと申しますと八百メートル、ちょうど箱根峠にちょっと毛をはやした
程度の高さでありまするから、
山岳の層は、私見ませんからよくわかりませんが、大体
箱根山の
程度、こう考えて間違いはなかろうじゃないかと思われるのでございまするが、これに
ベネズエラの
政府は、どうしても
首都と
国随一の
貿易港との
連絡でありまするから、どうしても
高速道路をこしらえたいというので断行いたしまして、これが
山岳道路として世界的に珍しいほどの
一つの例になっております。その
建設に何ぼ費用をかけたかというと、一キロ当り十四億八千万円もかけております。それでどれだけりっぱな
道路ができたかと申しますると、四
車線は四
車線でありまするけれ
ども、
山岳という地形を克服するのに非常に苦しんだ。その結果、百キロの
スピードは当然出したかったでございましょうが、そういう大きなカーブはとれなかった。半径で申しまして、
高速道路ならあたりまえなら六百メートルくらいの半径が最小限度ほしいところを、やむなく泣き泣き二百八十メートルの半径でがまんした。その結果乗用車で
平均時速五十一キロ。乗用車で
平均時速五十一キロの
高速道路を山に作るために、一キロ十四億八千万円をかけた実例があります。この実例から私はあえて、
中央山岳道路に百キロ、百二十キロの
スピードの
道路をほんとうに
建設するならば、一キロ十億円以内でおさまることはあるまい、こういうことを申し上げることができる
ように思うのであります。
なお
道路の問題につきましては、用地の問題が
一つの大きなファクター、政治問題になりかけているほどのファクターとして取り上げられそうでありますけれ
ども、本来純理から申しますならば、高速
自動車専用道路というのは、先ほ
ども申し上げました
ように、普通の平面
道路の、同じ
走行車線を持った
道路に比べまして、三倍の
交通量を二倍の
スピードではかすことができるというしろものでありますから、必要な
道路面積を最小限度にする、土地を最小限度でまかなうということが、一番賢明な方法であります。その
高速道路の用地の問題に四苦八苦するというのはおかしい。もしほんとうに四苦八苦せられるならば、土地がたっといから
高速道路をこしらえるべきか、こしらえるべきでないかという問題でなく、政治の貧困ではないか、私はか
ように思うのでございます。その根本の原理だけは、私の言うことを
一つ御理解を願いたいと存じます。私が特に申し上げたいことは以上の点でございます。