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1958-02-11 第28回国会 衆議院 決算委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年二月十一日(火曜日)     午前十一時二分開議  出席委員    委員長 坂本 泰良君    理事 關谷 勝利君 理事 田中伊三次君    理事 山本 猛夫君 理事 吉田 賢一君       大森 玉木君    加藤 精三君       中垣 國男君    堀川 恭平君       青野 武一君    淡谷 悠藏君       細田 綱吉君    山田 長司君  出席国務大臣         国 務 大 臣 石井光次郎君  出席政府委員         行政管理政務次         官       榊原  亨君         総理府事務官         (行政管理庁行         政監察局長)  高柳  保君  委員外出席者         総理府事務官         (行政管理事務         次官)     岡松進次郎君         総理府事務官         (行政管理庁行         政監察局監察         官)      松本 操一君         会計検査院事務         官         (第一局長)  大澤  實君         参  考  人         (元総理府事務         官行政管理庁行         政監察局主査) 高田茂登男君         専  門  員 黒田 久太君     ————————————— 二月一日  委員猪俣浩三辞任につき、その補欠として神  近市子君が議長指名委員に選任された。 同月六日  委員小川豊明辞任につき、その補欠として上  林與市郎君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  歳入歳出実況政府関係機関収支及び国有  財産に関する件      ————◇—————
  2. 坂本泰良

    坂本委員長 これより会議を開きます。  歳入歳出実況政府関係機関収支及び国有財産に関する件につきまして、前会に引き続き調査を進めます。  本日は右件につきまして、参考人高田茂登男君の出頭を求めておりますので、参考人高田茂登男君より意見を聴取し、その後に行政管理庁当局質疑を行うことといたします。  高田参考人には御多用中のところを本委員会に御出席下さいまして、まことにありがとうございました。  それでは、これより高田参考人から質疑応答形式意見を聴取することといたします。発言の申し出がありますので、順次これを許します。吉田賢一君。
  3. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 参考人高田茂登男君に伺います。あなたは昨年の十月以来「不正者天国」という表題の書物を著作して発行しておりますが、この内容はもちろんあなたはよく記憶しておりましょうね。
  4. 高田茂登男

    高田参考人 はい、記憶いたしております。
  5. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 二、三伺ってみたいのでありますが、その前にあなたは元行政管理庁監察局主査として勤務しておったが、現在は免職処分になっておると聞いておりますが、いつその処分が行われて、その後どういうふうにしておりますか、その処分関係を簡単でいいから述べておいていただきたい。
  6. 高田茂登男

    高田参考人 処分を受けましたのは、去年の十一月十六日でございます。それから現在はその処分は不当と認められますので、人事院に対して審査の請求をいたしておるところでございます。第一回の審査は四月七日に開かれる予定になっております。
  7. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 あなたは処分を受け、免職になったその理由を覚えておりますか。
  8. 高田茂登男

    高田参考人 覚えております。
  9. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 要するにどういう趣旨でありますか。
  10. 高田茂登男

    高田参考人 その趣旨は、第一の理由が、公務員として秘匿すべき事項を無断で発表したということであります。それから第二は、この本の内容が事実を捏造しあるいは歪曲誇張して、行政監察の信用を傷つけたということであります。それから第三は、従来の性向にかんがみ、公務員としての業務を忠実に履行することが期待できないということが、その理由となっております。
  11. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 あなたは今摘示した「不正者天国」という書物をどういう意図のもとにどういう目的をもって発行することになったのでありますか。
  12. 高田茂登男

    高田参考人 この本を私が書きました動機といいますか、目的は、私は行政監察の仕事に従事しておりまして、従来から行われておったところの行政監察が、あの中に書いてありますように非常にゆるふんであったということ、また現在の不正、汚職が続出して跡をたないこの現状下において、このような監察では不十分である、現在の監察は、いかにも訓令であるところの監察業務運営要領によりまして予防的な監察をやるということになっておりますが、私はこの予防的監察だけでは不十分である、それにはやはりあくまでも不正不当の事実を摘発追及いたしまして、そうしてこれをどんどん国民にも発表する、また行政責任も追及する、そうすることによって初めて国民批判も高まり、監察の効果も期待できるものだ、こういう信念のもとに私は各省の不正の事実を特に選んで、浮き彫りにして、それによって国民の不正を怒る感情を強めて、それによって初めて現在の行政監察首脳部に対しても批判反省改善が加えられるであろうということを考えまして、こういう趣旨で書いたわけでございます。
  13. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 あなたはこの書物記載されてある文章は、あちらこちらに散見するやや不確実もしくはあなたの独断になるような記事があるかのようにわれわれも見て感じるのだが、そういう点についてはいかがです。全然そういう事実はないというふうにお考えになるか。もしくはあなたの著述の内容は、そういう趣旨におきまして相当行き過ぎも間違いもあるということは認めるのですか、その点いかがですか。
  14. 高田茂登男

    高田参考人 この本の中に、政府側理由によりますと、内容が事実を歪曲し、捏造しておるというふうに書いております。しかしながらこれは前委員会において吉田委員からも質問されましたように、この本の根幹となるものについては何ら触れておりません。ただこの本のいわば枝葉、末梢的な部分については、いかにも誇張というようなこともあるいはあるかもしれません。しかしながらそれは決して捏造でもなければ歪曲でもない。ただいかにしてこの実情を国民に訴えるかという気持があり余って多少筆が走って誇張したと見えるような点もあるかもしれません。たとえばこの前政府側のあげましたところによりますと、金融公庫の融資の件についてでありますが、これについて、これはこの本の「歪められた行政」の最後のところでございます。百七十ページです。ここで「公庫総裁がわざわざ監察局中央)にやってきて、その内容を公開しないでもらいたいと特に懇願したといわれる」というふうに書いてあります。これは事実無根であると言っております。しかし私がここで言おうとしている最も重要な問題は、国民血税が北海道の八木農協というわずか二十八名の、しかも一般農民組合員になっていない、農協としての実態を備えていないようなものに対して、一億九千数百万、約二億円近い国家の重大なる資金が不当に貸し付けられ、しかもそれが焦げつきになっておる。さらにそれに対して何ら責任の追及もなされておらぬ。このことがここでいわゆる最も重要なる骨格であり根幹であります。これに対して、いわば公庫総裁云々の件は刺身のつまである、技葉にすぎません。ところがその枝葉そのものも実はほんとうなんです。これはたまたまこの監察に従事したところの主任の事務官が、公庫調査に行った際に頼まれたというのが真相であって、これは私にあとで述懐しました。これは君、ちょっとまずかったな、公庫からこっちへ頼みに来てやったんじゃないんだよ、向うに調査に行ったとき頼まれたということなんです。それで私はこの前政府側説明を聞いておって、場所柄もわきまえず、ここで危うく吹き出してしまうところだった。もみ消そうとした場所が、中央監察局ではなく、調査に行った現場だったという違いだけなのです。こんなことをもって歪曲捏造だというような政府の弁解はまことに矛盾もはなはだしい。言語道断なこれこそ誹謗であり、歪曲した理由であると私は考えるのです。
  15. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 ところで百八ページ終りから三行目、「長官をつるしあげた防衛庁監察」という「血税ゆくえ」のページですね。このページには行管は二十九年度に一回監察しただけで、防衛庁監察をその後やっていないような趣旨になっておるのだが、その後行政管理庁提出の当委員会への資料によりますと、二十九年の一月から四月まで、同年十一月から三十年六月まで、三十年十月、三十二年の四月よりそれぞれ本書発行の以前に、数回にわたって監察業務を行なったということに書いてあるのだが、これらの点についてはどういうことになりますか。
  16. 高田茂登男

    高田参考人 ここは「血税ゆくえ」の第一のところでございますが、ここで私は防衛庁監察につきましては、たとえば三十年度だけでも八百二十六億円の予算のうち、実に三百二十五億円という膨大なわれわれ国民血税調達に向けられておる。従って防衛庁監察に当っては、この物資調達が適正効率的に行われているかいなやという問題に重点を置いて監察をすべきである、こういう前提に立っておるわけであります。そうしますと、そういう前提に立ったところの監察はこれ一回しかやっていないのであって、これを何回もやっているというのは、これは政府側の何といいますか、歪曲した説明であります。たとえばただいま吉田委員から御質問のありましたのは、海上自衛隊糧食給養業務とかあるいは霞ケ浦武器補給処監察業務、こういうものをやっているじゃないかという例だろうと思います。これはしかしながらただいま申し上げましたような観点からいたしまして、前の自衛隊糧食給養業務というのは、いわゆる部隊員に対する給養状況がうまくいっておるかどうか、こういうことに重点を置いた監察であります。また霞ケ浦武器補給処監察というのは、武器補給処の車両の保管状況がいいかどうかということの監察であって、従って物資調達という点において重点を置いた監察というのはこれ一回しか行わなかったというのは、これは真実なのです
  17. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 よくわかります。よくわかりますが、今の防衛庁海上自衛隊の食糧の問題あるいはその他霞ケ浦防衛庁の施設その他の各般の問題についても、当委員会でも実は問題になったのであります。若干私も知識を持っておりますが、要するにこの書き方はやはり文章としては非常に興味を引くけれども、正確さにおきましてはもう少し注意をして文章を書いていくということが、役人としてある事実を指摘する際、説明する際には必要であり、適当であろうと思うのだが、そういう点については、一般的文章の作成のように流れておるので、いろいろと誤解も生ずる、こういうふうに考えるが、その点についてはあなたはそういうふうに気がつかぬですか。
  18. 高田茂登男

    高田参考人 ただいまちょっとヤジが入りまして、ヤジの方に気をとられたので少し聞き漏らしたところがございますが……。
  19. 坂本泰良

    坂本委員長 ヤジに気を使わないでやって下さい。
  20. 高田茂登男

    高田参考人 そういう多少書き過ぎたという点はあるいはあるかもしれませんが、これは先ほど申しましたように、いかにして事実を国民に訴えて批判を起すかということに重点を置きましたために、筆が走った点は確かにあろうかと思います。
  21. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 この行政管理庁提出資料による捏造歪曲誇張の事例としてあげております百八ページ終りから三行目、百七十ページ終りから百七十一ページ、百七十八ページ等々につきましても、やはり筆が走ったということでやや事実の関係が適切に、正確に表現されておらぬということは、これはやはりわれわれがこういうものを見る常識から考えてもその通りだと思うのだ。その点はやはりあなたもお認めになった方がいいじゃないだろうかと思う。なお例を引きますならば、神戸の林野庁の関係につきまして、「監察参事官もみ消しに踊る」という記事についても、あなたはやはり事件の事情を描写するような文章を書いておられますが、やはり事実の報告としましては、あなたの主観が書かれておるというので、他の要素が文章の中に入ってしまうので、文章全体から受ける感じが非常に間違って生ずるおそれがあるわけです。でありますから、この点につきましても、あなたはそれはあなたの主観文章であるということは間違いないでしょうね、その点は……。
  22. 高田茂登男

    高田参考人 文章表現の方式、描写方法につきましては、ただいまの御意見通りだと存じます。
  23. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 そこでそういうこと、それから歪曲の事実につきましてですが、これは至るところ、行政管理庁当局、つまり一般及び行監だが、ゆるふんだという言葉を使っておりますが、このゆるふんということはどういう趣旨かよくわかりませんけれども、いずれにしても非常に上品でない言葉であるということは間違いないと思うのだが、こういうような形容詞がざらに使ってあるというところも、やはりあなたの筆の走りから起ったことでありますか。これも誇張歪曲指摘されておることなんでありまするが、その点いかがですか。
  24. 高田茂登男

    高田参考人 ゆるふんという言葉は、これは私としては筆が走ったものではなくして、監察実態をうまく表現したものだと思っております。
  25. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 ゆるふんという言葉の語源といいますか、たとえば辻教授もゆるふんという字句を使っておるというような、そういう文章もこの中には出ております。出ておりまするが、やはり文章として、一つの秩序の中にあるときには、ある機構の中にあるときには、もっとほかに正確な表現の仕方があるのではないかと実は思うのであります。たとえば例をとると、会計検査院検査報告書をあなたはごらんになっておるだろうと思いますが、かなり文章に注意しております。少し文章に注意し過ぎているので、かたくなり過ぎているように思いますが、これはやはり事実の不正確な表現をおそれている一つの表われだと思います。こういう点につきましては、これは筆が走ったというよりも、あなた自身信念の表われかしれませんけれども、やはり内部の批判に対しましては、ゆるふん言葉はそれくらいにしますけれども、とかく非常に怠慢な措置であったとかいうような言葉が、随所に出てくるのでありますが、こういう点は事実としてあなたの感じるところを、主観を述べたというのがおもで、価値判断方法が熟しないような感じをどうも受けるのだが、そういう点、あなた自身反省しませんか。
  26. 高田茂登男

    高田参考人 私はこれについては、その表現方法とか、そういうものは確かに行き過ぎた点はあろうかと思いますが、あくまでも私の信念をここに出したのであって、反省というものは別に持っておりません。
  27. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 私はあなたに好意的にものを言っているのでありまして、やはり人間ですから、神様でなし、あやまちなしということはできませんので、あなたがあやまちがあったからといって、直ちに行政管理庁があやまちがなかったという意味ではないのでありますから、やはりこれはこれで一応問題になっておりまするので、問題になっておるものを私ども国会としまして、冷静に、白紙になって考えたときに、あなたにもやはりそういった行き過ぎがあったのではないかということは、実は率直に受ける印象なんであります。しかし信念はあなたがあと書きにも書いております。きょうも述べました。だから信念のあるところはよくわかります。これは了とします。多とします。そういうわけでありまするが、ただあなたとしまして、文章の走り方がなかなか激しくなって、つい行き過ぎておるというようなことが随所に見えると思いますので、今のように、あなたの価値判断方法が熟しないのではないかということを、率直に申し上げた次第なのであります。しかしそれを、いや天地に恥じないのだ、おれがやったことは何ら反省すべき余地はないのだし、完全であるのだし、ということであれば、別にあなたと議論する気持はちっともないのであります。ちっともないのでありまするが、やはり人間判断の仕方に熟しないこともあり得るのですから、それで申し上げたのにすぎないのであります。  そこであなたとしまして、当初述べました通りの著書の動機について、そのように不正をなくし、行政の適正を期待するというような動機、そういう一つの純真な動機から出発したというのであれば、一つの組織内における適切な方法を、外へ向って言うよりも、上司に向ってなしたという事実はないのですか。
  28. 高田茂登男

    高田参考人 それはしばしばやっております。二十九年ごろから、そういうふうにして上司意見を発表したり、場合によってはけんか、口論にまで及んだ場合もございます。また文書等でも、部内行管広報というような機関紙もございます。そういうのに発表したこともあるし、上司に対して直接行政監察あり方について改善を要すべき点というようなものを上申したこともございます。しかし部内においてそういうことをやっても、蝸牛角上の争いで何ら反省改善が行われない、これは世論の力をかりてやるより以外にないという結論に達したので、この本を出したのであります。
  29. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 その場合の一つあり方としまして、やはり公務員たる地位を去って、自由な立場に立って、法律、命令、訓令等の覊束を受けない立場に立って国家国民に訴えるというような、そういう手段を選ぶことも一つ方法だったと思いますが、そういうふうには考えなかったですか。
  30. 高田茂登男

    高田参考人 ただいまの御意見のような方法でやるべきだという意見もございます。また、それが正しいと言う方もあろうと思います。しかし私は公務員として、国民の公僕として役所に勤務しておる以上、その役所を真に国民のためになるような監察に仕立て上げたいという情熱をもって部内において革新をすることは、公務員の本旨に沿うものであるというふうに考えて、それでやめてやる必要はないと考えたわけでございます。
  31. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 もうちょっと聞きたいんですけれども、この機会に行政管理庁のどなたでもいいですから、ちょっと確かめておきたいんですが、このいただいた資料のうち「誇張したと認められる」という点についての御説明でありますが、つまり(三)でありますが、この中に、「1、二頁十一行目より十二行目にかけて、「しかし、農林省事件は、浮かび出た氷山一角に過ぎない。一般国民の目のとどかないところでは、あらゆる不正、汚職が行われている。」との」記載、これが誇張というふうに言われておる。第二には「2、五頁三行目から五行目にかけて、「これから述べる各役所行政の本態を知ったとき、異常な驚きと憤りをおぼえるにちがいない」との記述」、それから「う、四〇頁終りより八行目から七行目にかけて「国鉄はこのように、外郭団体利益を大にするためには、国鉄損害など意に介しないのが常套手段である。」というこの記述」、次の「6、六〇頁八行目「外郭団体国鉄ダニである。どれ一つとして汚職臭のないものはない。」という記述」、これが誇張的表現として指摘されておるのです。実をいえば当委員会におきまして、国鉄農林省事件を扱ったときにも、氷山一角ということも、しばしば委員批判として指摘された表現であります。それから、国民の憤りということどころか、実際国民国会に押しかけるだろうというくらいの表現さえあったこともあり、国鉄外郭団体利益を大にするために国鉄損害を意に介しないとか、外郭団体国鉄ダニであるというようなこと、汚職のないものはないというような表現、こういうことは実は精確に外郭団体を解剖しますると、そういう批判もし得るのでありまするが、これを誇張だというふうに認定するのは少し酷ではないかと思うんだが、その点いかがでしょう。
  32. 高柳保

    高柳政府委員 ただいまお話がございましたのでありますが、国会なり一般国民なりという立場からは、自由にそういうふうな感じ表現することができるかと思いますが、行政監察局監察の結果、これが全部そういうことであるという断定は決してできないのであります。ことにその公務員の一人といたしまして、こういう表現をするということが、やはりわれわれの役所といたしまして誇張というよりほかないと思います。
  33. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 そうなりますと、この記載及びその価値判断の適否ということになってくるのですが、しかしこれは国会でも公けにどんどんとそういう言葉が使われておるときに、かりにも免職理由になるような場合でありまするから、やはりこの見方は少し酷でないかというふうにも考えられます。今後氷山一角という言葉が使えなくなっちゃいます。全部本体を知ったなら非常な驚き及び憤りを感ずるだろうというようなこともできなくなっちゃうし、国鉄外郭団体を責めることもできなくなっちゃう、これは大へんなことであります。国鉄外郭団体を責めることはわれわれも今後大いにやらなくちゃならない。ことにあなたの方はだんだんと国鉄監察をなさって、いろいろの点を御指摘になっておるのであります。農林省関係につきましてはずいぶんたくさんの公共事業あるいは多目的ダム、そのほかいろいろと御指摘になっておるのでありまするから、これはもう言うたものだから今どうにもならぬというような態度じゃなしに、やはりここは静かに反省すれば、免職理由として事実誇張なりという認定をするには少しどうかと思うのですが、その辺は率直にお考えになれぬでしょうか。やはり国会でありますから、あなたの方が本人と問答なさるのじゃないのですから、どうぞその辺を一つそのおつもりで御答弁願いたい。
  34. 高柳保

    高柳政府委員 だんだんとお話がございまして、その免職理由としての判断いかんというお話でございますが、われわれとして監察をいたしまして指摘し、勧告いたします場合には、推測等は絶対にいたしませんで、具体的事実によってやることが建前になっております。これは大体推測と申しますか、一つの事実から全部を推測してのことでございますから、これはわれわれの立場からはできないということで誇張である、こう申し上げたわけであります。
  35. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 しかしそうはおっしゃるけれども、事実の誇張というのだから、あくまで事実を限定して一般的な批判はもう少し控え目にすべきだということはよくわかりますが、けれどもやはり事実というのはあくまでも事実でありまするので、それを検査院にしても実際しぼりにしぼって最後にあんな少数になってしまうことは、これは公知の事実であります。おそらくあなたの方の監察年報におきましても、年報に集約される前になまの各地方の報告というものはずいぶんあるだろうと思う。これはみな同じことであります。でありますが、特に必要なもの、特に顕著なものを記載されて年報になさるという編さんの御方針であろうということにもわれわれ推測するのでありますが、そういうふうに書けば、そう氷山一角だと言ったからといって、目にかど立てて行政庁全部不正があるかのように思われちゃいけない、そういう懸念は私は要らないと思うのであります。いかがでしょう。
  36. 岡松進次郎

    岡松説明員 私からお答え申し上げますが、ただいま監察局長が答弁いたしましたように、われわれの監察建前といたしましては、事実に基いてその結果を発表する、高田君は現職立場においてその事実を指摘しておるのでございまして、第三者なりあるいは部外者文書のあやとして発表することはお説の通り自由と思いますけれども、やはり監察現職の者がその監察資料に基いて発表する形式としてはやはり少し誇張に過ぎるのじゃないかという判断でございます。
  37. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 やはりこれは議論になりますけれども、もし免職になっておらなければ問題にはならぬでしょう。やはり免職に付せられておる理由として指摘されておるのでありますから、事実なら事実に限定して、しかし全体の批判をこういうようにやっちゃ困るというなら、また別の角度から取り上げるべきではないだろうか、こう思うのであります。やはりここに事実を誇張したという記載指摘、その例証をここに幾つかおあげになっておりますが、このおあげになっておることは、どうも国民の常識をそのまま書いておる。それは直ちに事実でないんだというような今の御判定の仕方、内部の者が書く書き方として適当でないという今の御説明の仕方、そういうことはこの際少し筋が通りにくいのではないだろうか。やはり本人とても、さっき私が高田君に聞きただしておりましたごとくに、全体の事実に対する価値判断の仕方が、非常に熟しない事実を私は指摘しておったのでありますが、そういうふうに、全体の批判について、少し——少しといいますか、批判の仕方がよくなかったということに帰する問題点でないだろうか、こういうふうに思うのでありますが……。見解の違いになったらもうやめますけれども。
  38. 岡松進次郎

    岡松説明員 いろいろ吉田委員からのお話もうなづけるのでありますけれども、われわれの立場といたしましては、やはり本の性質上、一応誇張——事実でないとは申しませんが、事実を誇張して、その結果その本から受ける不信の念を非常に助長しておるという意味で、やはりわれわれの立場としては誇張であると申し上げるよりほかないのであります。
  39. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 それならこういうように伺ってみます。たとえば農林省の毎年起りまする不正事件、昨年の全購連事件とか、前の多久島事件とか、その他幾多の事件、こういう事件は、われわれは氷山一角だと考えておるのです。ただ私どもは何もかも問題にしようと思っておらぬだけのことであります。そういうことに対して、どうお考えになるのですか。それからまた国鉄外郭団体はほとんどが問題視すべきであります。弘済会にしたって、交通公社にしたって、当委員会においてまだ取り上げるべき問題も幾つもあるのです。その他あげれば際限がありません。枚挙にいとまないのであります。これは今日では世論化しておるのであります。こういう点につきましては、それはお前が部外人だからそういう判断もやむを得ないであろう、こういうふうにお考えになるであろうかどうであろうか。しかしそうじゃない。吉田の発言も誇張だ、誇大な表現で、事実はそういうことはない、そういうことを言われたら各官庁、その他公共企業体、ことごとくそういうふうな外郭団体をたくさんに持っておるものが、いずれも内部にたくさんの不正があるように思われることは、事実を非常に誇張した、ゆがめたことだ、こういうふうに御判断になるであろうか。私は部外人だから、そういう常識はやむを得ないが、部内の者だから、これは適当でなかった、こういうのでしょうか。その点どうなんです。それともあなたの方は、氷山一角というのはけしからぬ、非常に限定された、あの特定の不正事件がほとんど全部である、外郭団体指摘された幾つかのみである、こういうふうに厳格にお考えになっておるのであろうかどうか。
  40. 榊原亨

    ○榊原政府委員 第三者のお感じでこういう表現を使われる場合もあるかとは存じますが、役所の人でよく内部の事情を知っており、各行政庁の内情も知っておるという立場の方が、たとえば国民の目の届かないところであらゆる不正、汚職が行われている、あるいはそのほか国鉄の問題にしても、国鉄損害など意に介しないのが常套手段であるというように断定しておられるところから、私どもはこれは少しく行き過ぎ言葉ではないかと考えておる次第でございます。
  41. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 少し行き過ぎだというお考え方ならそれはそれでいいのです。私はどっちも行き過ぎだと批判もできると思うのです。ごとに高田君におきましてはいろんな独断も入っておりますから、公務員立場として、もっと適切な文章の書き方がなかったかとまで私は指摘しておるのであります。しかしながら、国鉄損害を意に介しないという文章がいいか悪いかは別ですけれども、ともかくけしからぬことなんですよ。けしからぬというのは国民の世論です。常套手段と断定したのがいいとかいかぬとか、そんな文章の末にとらわれるというようなことで一体汚職の追放なんてできますか。そんなことでは、本気でやっておるのかどうかと言わねばならぬのであります。ことにいろんな動機もあろうと思いますから、できるだけ善意に解していくということもし、厳格に解するということもしながらせねばなるまいと思うのです。国鉄のこの問題について、今の政務次官のようなお考え方では国鉄調査なんてできやしませんぞ。国鉄調査の実情を見てごらんなさい。ずいぶんとひどいことをやっているのがしばしば指摘されておるのであります。けしからぬ話ですよ。あんなものは会社だったら直ちに辞職ものですよ。それほど重大な責任を持つべき案件がどんどん出ておる。今度も国鉄をここでやることになったのですが、きょうはやらぬことになっておる。でありますから、そんなに弁護する理由は私はないと思うのです。文章の末にとらわれてあんまり強弁されることは行政管理庁立場じゃないと思います。あなたの方は事実を指摘するのみにとどまるので、批判などは行き過ぎだ、いかぬというお考え方はけっこうであります。けっこうでありますから、行き過ぎたらいかぬという場合は、万人いずれも行き過ぎたらいかぬということをお互いに守っていかなくちゃなりません。私は、この誇張事実というものが免職理由になっておらぬなら、そんな批判もしませんけれども、やはり首になっておるのですから——高田君にどういう財産があって、どういう収入があり、どういう生活をしておられるか知りませんけれども、これは日本の国家公務員の身分の保障の問題として考えたときに、汚職追放、財政紊乱に対する追及ということとの関連におきまして、一つのけじめをつけておかなければなりません。そういう意味で私はお尋ね申し上げるのであります。ましてやこれは懲戒処分、処罰処分じゃないでしょう。七十八条の三号でありますから、処罰処分じゃなしに分限処分です。分限処分理由になっていくのでありますから、やはりその辺はあなたの方におきましても、国会で御答弁なさるのなら、何もかも完全であったという態度では、私は、批判がなお次から次へ起ってくる、こう思われるので、これを国内のすべての公務員のために私は心配するのであります。これは答弁はなくてもよろしいです。
  42. 坂本泰良

    坂本委員長 淡谷悠藏君。
  43. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 高田さんに私二、三お伺いしたいのですが、あなたの処分理由に職務上知り得た秘匿すべき事項につき、上司の承認を得ずして一般に発表したものであるというふうになっておりますが、職務上知り得た秘匿すべき事項というのは、何かこまかい規定がまだほかにあるのか、あるいはまた上司においてこれは職務上知り得た秘匿すべき事項だと認定しただけでいいのかどうか、その点、あなたのお考えを率直に伺っておきたいと思う。
  44. 高田茂登男

    高田参考人 職務上知り得た秘匿すべき事項ということにつきましては、何ら規定はございません。これは上司判断したものでございます。
  45. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 さっき吉田委員からしばしば追及されました通り、私もあなたの著書の中に書かれたことは必ずしも捏造しあるいは事実を誇張したものとは考えられません。われわれも大いに共鳴する点がある。文章上、これは官公署の刊行物じゃありませんので、非常におもしろくかつ売れるように書かれておるのは事実でありますけれども、事実そのものは誇張でもなく歪曲でもない、むしろこの通りで、これに対して処分をした方が歪曲しておるような感じも持っておるが、これについて上司からその中止を勧告されたということがまた処分理由になっておりますが、具体的にはどういうような勧告をされたのか、できるだけこれは詳しく伺いたい。
  46. 高田茂登男

    高田参考人 処分理由にはいかにも上司から中止を勧告したということになっておりますが、この中止の勧告というのは正式に堂々とやったのではなくして、監察局の職員の私の同僚を通して、私の自宅まで参りまして、こういう本を出すと役所として非常に困るからどうしてもやめてくれ、どうしてもそれがやめられないというようなことならば、これはとんだ問題になって役所がつぶれるかもしれない、そうなれば役所がつぶれてしまったために役所の職員が路頭に迷う数千人の路頭に迷う者が出てきて君のうちになぐり込みをかけるかもしれぬ、そういうおどかしの手を用いたとか、あるいは印刷等で経費のかかっている場合は、向うの出版社に対して金の補償もする、君には今後心配かけないからやめてくれというような懐柔とか、そういうものがとられただけであります。
  47. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 あなたの非常に率直な御答弁に対して、あっちこっちから盛んに雑音が入るようでありますが、雑音は雑音として歯牙にかけないで、堂々と述べられたいと思うのであります。私も今の官庁内部を見た場合には、あなたと同じような義憤を感じるのです。今言ったようなことは決してうそではないと思う、あり得ると思うのです。上司より中止を勧告されたというのはどうもあなたが今言ったようなことにあるのではないかと思います。この点どうでしょうか。あなたの方で主張される以上は、何月何日にどういう形式で本人に対して中止を勧告されたというような事実があるはずですが、この点はどうですか。今高田君の言うところでは、そうじゃない。その点を行政監察局の方から御答弁願いたい。
  48. 高柳保

    高柳政府委員 お答えいたします。今高田参考人の言われた点についてはわれわれは不明でございます。しかし上司といたしまして中止を勧告し、また警告したということは事実でございます。この出版のあるといううわさを聞きました前、十月五日に担当の庶務課長が自宅に参りまして、当時休んでおりましたが、高田君にやめたらどうかという実は内容のものでございますが、言った事実がございます。また十月の中旬に私の部屋に高田君がおりましたときに、たまたまおって私が入ってきたわけでございますが、そのときに出版の計画をしているという話であるが、ほんとうかということを私が聞きましたら、そうだという返事がありまして、それから私は、内容監察の結果報告書、監察情報等から抜くそうであるが、それは事実かと言うと、そうだという返事でありました。それならばなぜ私の許可を得ないかということに対しましては、本人は黙っておりました。もしそういう許可を得ずして出すようなことがあれば、相当な処分を受けるのは覚悟しているだろうなと念を押しました。それについては相当の覚悟をしておるという返事でございました。以上が事実でございます。
  49. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 今高田さんの方から話された、つまり同僚あるいは部内の人からの勧告というのはその意味かもしれませんけれども、一体そのときに、高田さんが今度の「不正者天国」に書かれた原稿等はお読みになったのですか、それともばく然とした推測から、多分こうもあろうということからその注意を勧告されたのか、その点を一つ聞きたい。
  50. 高柳保

    高柳政府委員 内容は存じておりません。ただそのうわさを聞きまして、監察結果報告書から抜いたかどうかということを確かめましたら、事実抜くという話しでありましたので、警告を発したわけであります。
  51. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 監察報告書の中から抜いた事項は絶対に他には発表してはならない、あるいはまたどんな単なる抜き書きであっても、上司の許可を得なければ外部には発表してはならないという規則はちゃんとありますか。
  52. 高柳保

    高柳政府委員 大臣の「達」ということになっておりますが「行政監察に従事する職員の服務規程」これは資料としてお渡ししてあります中の十条に「職員は上司の指示又は許可を受けた場合の外、外部に対し資料の提供その他発表を行ってはならない。」ということは明瞭に書いてあります。
  53. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 もしもそういう報告書から抜かないで、高田君がまた職務外に知り得たことで本を出されることについては、何か取締り規則がありますか。
  54. 高柳保

    高柳政府委員 職務外の問題についてはこれは関係いたさないことになっております。
  55. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 そういたしますと、この「不正者天国」の中にどのような記載がありましても、この報告書以外の事実であり、かつ職務外に知り得た事実であれば、別段今度の免職には当らないというふうに理解してかまわないのですか、その点はどうなんでしょうか。
  56. 高柳保

    高柳政府委員 この服務規程違反、義務違反については当らないかもしれません。ただし官職の信用を傷つけるという意味において、公務員法に該当することがあり得ると思います。
  57. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 この理由の中には「従来の性行に照し」というふうに書いてありますが、今のような勧告を行われる前に、何か高田さんの性行に関してこういうふうなことを理由としなければならないような、具体的な事実があったかどうか、その点をお聞きしたい。
  58. 高柳保

    高柳政府委員 前に参考人が話しましたように、行政監察のただいまの行き方に対して非常に不満を持っているという事実は高田君の言われた通りでありまして、これが相当長く続き、意見を出された。ただしこれは内部の問題でありますので、これに対しては議論としてのことであります。しかしそれがいよいよがまんできなくてこういうことになったんだ、しかも決して反省をしないのだ、いいことをしたと思っているということでありますと、いつ今の監察結果報告なり監察情報なり、資料がわれわれの知らない範囲において発表されるかわからないわけであります。そういう意味におきまして、将来とも部内の秩序を保つことができないという意味において「従来の性行に照し」というような言葉を使ったわけであります。
  59. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 さっき高田さんの発言の中には、今の行政管理庁の中のことにつきまして、上司に向っても自分の所信を表明したということがありましたが、この高田さんの所信自体が間違っておったのか、あるいはその態度が悪かったのか、あるいはその前に上司の許可を受けないで、しばしばそういう事実を外部に発表したという事実でもあったのか、それをもう少し明瞭に私は知りたい。この点どうですか。
  60. 高柳保

    高柳政府委員 ただいま前段にお話しになりました意見の問題、これは先ほどから言われた通りであります。また外部に発表をした事実があるか、こういうお話でありますが、その事実もございます。これはやっと十一月ごろわかったわけでありますが、そういう事実もございます。
  61. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 その事実をもう少し具体的に知りたい。
  62. 高柳保

    高柳政府委員 一つ、はっきりわかっていることを申し上げます。昭和三十一年七月、だいぶ前でありますが、某新聞社社会部の記者に対して、おもしろい種があると電話をして、監察結果報告書を記事材料として提供するという、提供することについて取引的行為をした。その話でその新聞社はメッセンジャー・ボーイをして自宅にその監察報告書を取りに行かせた。その報告書はその新聞社にまだあると思います。こういったことで、部内監察結果報告書をいつ外に出されるかわからない、こういう従来の性行もあったわけであります。これと今度の出版とあわせて、公務員としては不適格である、こういうことに考えたわけであります。
  63. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 三十二年の十一月に知り得た事情というのは、三十一年の七月、某新聞社に関する事件一つだけでございますか。あとは例がないのか。なおまた人間の一身上の問題に関することでございますから、できるならば某新聞社等と言わないで、はっきり新聞社の名前を出してもらいたい。
  64. 高柳保

    高柳政府委員 産業経済新聞であります。
  65. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 その事実はほんとうであるということを確かめてからあなたがこういう行動に出られたか、あるいは単なるうわさや聞き込みでなされたか、その点はどうですか。
  66. 高柳保

    高柳政府委員 事実ありと認めて申し上げました。
  67. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 高田さんに……。あなたの従来の性行というものは、そうした新聞社等に部内報告書を出したことで大体判断されているようでありますが、今言われたことがほんとうかうそか、一つ正直に言ってもらいたい。
  68. 高田茂登男

    高田参考人 今の三十一年の七月に産業経済新聞に私が記事を提供したということでありますが、そしてその記者が私の家まで来て持っていったということでありますが、これは全く事実無根であります。産業経済新聞の記者が私の家に来たことはありません。おそらく私の家を知っている記者はないと思います。
  69. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 従来の性行というものは、それ以外には判断材料がありませんか。ただその一点だけですか。しかも、今本人が否定した以外に、従来の性行というものをあなた方は判断される材料はないのですか。
  70. 高柳保

    高柳政府委員 ただいまのは的確な資料でありまして、その他にも、これはうわさでありますが、そういう事実もあるように聞いておりますが、これはうわさでありまするので、私は申し上げません。しかし、一回前回あったということ、それから今回の事情、それから今回の問題について本人が反省していないという事情、これは部内職員としてはどうも不適格ではないかという判断には十分であろうと思います。それでやったわけであります。
  71. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 それは官吏として部内の規則に従わないのも、むろん悪かったでしょうけれども、人間一人を処断する場合に、不確かな材料をもって、しかもうわさだから言えないというようなことをもって、従来の性行を云々することは、あなたの方に非常に事実に対する認証がない。産業経済新聞という名前さえ出た以上は、事実が偽わりであれば、産業経済新聞としても黙ってはいまいと思いまするから、やがてそのうちに明瞭になるでしょう。ただ、もう一つ高田さんにお聞きしたいのは、上司からその中止を勧告されたことについて——十月の五日と十月の中旬に明らかにそのことを勧告したと言っておりまするが、こういう事実はございますか。
  72. 高田茂登男

    高田参考人 十月五日に庶務課長が自宅へ見えたことは、事実であります。しかしながらその内容は、君の書いている本の内容役所の名誉を傷つけたり、個人の信用を傷つけて名誉毀損事件を起すようなことがあるんじゃないか、それを大へん心配されているので、その点は私はないと思う、私は監察あり方がこれじゃいかぬから、こうすべきだという私の私見を、いろいろの具体的な事実に基いて書いておるだけだから、そういう心配はないと思うというふうに答えておるので、やめろという勧告ではありません。それから中旬ころ高柳局長室に行ったことも事実であります。しかしながら、先ほど局長は、なぜ許可を得ないのかと言ったと言われるけれども、そうは言っておりません。このときに言われたのは、報告書の中からもとっておるかと言われるから、とっております、年報だけじゃないんだな、年報だけじゃない、年報ならば一応公表したものと認められるからいいけれども、そうでない一般報告書からとっておるということになると、これは責任をとってもらわなくちゃなりませんぞ、こう言われた。いや、それは覚悟しております——なぜ許可を得ないかというようなことは、一言も聞いておりません。
  73. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 これは本人も非常に悲壮な決意をもって、この行政管理庁内、ことに監察局内の従来の行き方に対して、自己を犠牲にした行動をとつておる。多少やり方に行き過ぎがあろうとも、これはここまでくるとやむを得ないと思うのでありますが、この際私は、やはりお互いに感情を抜きにして、この行政監察の本体について、また各官庁の、決算委員会等でしばしば問題になる汚職、疑獄を一掃するため、虚心たんかいに審議を進めていきたいと思う。この出されました「「不正者天国」中ねつ造、歪曲誇張の事例」の中には、さっき吉田委員からも強く言われました通り、むしろこの線をもっと監察局自体に、捏造歪曲なんというふうにとらないで、徹底的に追及してもらいたいということは、われわれ自身にもある念願であります。この事例を、さっき吉田委員から言われた以外の点について、私いろいろ調べてみましたけれども、この二ページの3の事項です。「一七八頁「2監察参事官もみ消しに踊る」の項中、大森参事官が、神戸営林署の国有林産物払下監察の際、同署の不正事件の処理に対して極めて消極的態度をとり、同事件のもみ消しに努めたという意味の記述は事実無根で、根拠なく、ねつ造したものである。又、「この事業課長は責任を負って平職員におとされた。」というのは事実と著しく異なり、この事件に関連して、当時の営林署長、事業課長、木炭係員の三名は退職、その他関係者八名は他署へ配置換されているのである。」これは事実が著しく違うというんですが、やっぱり当時の営林署長、事業課長、木炭係員三名は退職になっておるんですな。これは一体どういうことになるか、このまま違った点は違ったとしまして、どういうことなんですか。
  74. 高柳保

    高柳政府委員 事実をよく知っております松本監察官に申し述べさせます。
  75. 松本操一

    ○松本説明員 ただいまの御質問の前段の方ですが、「監察参事官もみ消しに踊る」これは全く事実無根でありまして、私は当時監察官として、大森参事官に仕えてこの仕事をやっておりましたので、その事情を最もよく知っておるわけでございますが、それについて、大森参事官が消極的態度をとり、また事件のもみ消しに当ったというようなことは、全然ござまいせん。また次の、「又」以下の文句でございますが、これは事実を歪曲した分に入るのですが、前と関連がございますので、ここにあわせて書いたわけでございまして、この意味では、あるいはこの部分だけ切り離して、歪曲の方に回すのが事実かと思いますが、著書には確かに、当時の担当課長が平職員に落された、こういう程度の表現にしかなってないのです。従って、責任の追及がきわめてなまぬるい、こういうような表現になっておるのであります。事実は、ここに申してございますように、相当徹底的な処分がとられておるということを申し上げたわけでございます。
  76. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 そういたしますと、つまり、「事実と著しく異なり」という事項は、あなたの方は歪曲の方に直したいというお気持だということがわかりましたがね、著しく違っていないんだが、歪曲されている、これなら話が通るのですが、この「平職員に落された」という責任と、三名を退職にしたというので、あなたの方では、これは決して簡単に処分したのじゃないという表現だと思う。この本がさまざまな文章の走った点もあるということを著者の高田さんが言われておりますが、今のような話になりますと、やはりこの席上で高田さんから、決してこれは歪曲でも、事実の著しい変更でもないということを、特にこの「もみ消しに踊る」という中にある、大森参事官がこの不正事件の処理に対してきわめて消極的態度をとったということについて、あなたの考えておる点をここで言っていただきたい。
  77. 高田茂登男

    高田参考人 この問題につきましては、この本の中にも百七十八ページに書いてありますが、「このようなユル褌の極端なあらわれとして、次のような話が部内に伝えられている(情景描写は筆者の推測による)。」とこういうふうに書いてありますように、これは監察報告書にも、何も載っているわけではありません。従って物的証拠はございません。だから、私はこういう話が伝えられているとして書いておるわけであります。しかしながら、私はここに書く以上は、単なるうわさであって何ら信憑性のないものは書いてはおりません。もしもこれが事実と違った場合においては、場合によっては私は名誉毀損の刑事上の責任も負う覚悟で書いておるのであります。従って、これが事実であるかないかということは、当委員会におきまして証人を喚問してお調べいただければ、その真相が明らかになると思います。その証人としましては、大森元監察参事官、それから兵庫地方監察局長、現在神奈川地方監察局長をやっております今井氏であります。それから河内第二課長、それから坂本事務官、それから当時大阪管区でこれを担当していた原田課長、これは現在中央監察官になっております。それからさらに当時の出勤簿、出張命令簿等を物的証拠として提出を願って、その事情を調査されれば、おそらくこれが事実無根でないことが明らかになると私は信じております。
  78. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 次に三ページの(二)にあります事実を歪曲したということですが、「本書に記述されている監察結果について、その大部分が、当庁の勧告により、改善され又は改善措置がとられているにも拘らず、改善の事実には殆ど触れずに、当庁の監察は「ユル褌」であるとして誹謗しているのは、本書の内容が全般的に、如何に事実を歪曲し、悪意をもって記述されているかを証するものである。なお、個別的な事実についてこれを歪曲したものと認められるものは次の通りである。」として個別的な事実ですが、「八頁一行目より三行目中「このような不正を発見したにもかかわらず、別にその責任を追及することもせず、今後気をつけなさいということで、ウヤムヤにしていることだ。それどころか、その内容を秘密にして発表さえしなかった。」との記述は、当庁の鉄道会館調査結果の措置を緩慢であるとして非難したものであるが、甚だしく事実を歪曲した記事である。即ち、本件調査結果は、ウヤムヤにしているのでなく、二十八年十二月二十四日に運輸省に対し勧告を行い、これに対する回答を二十九年三月二十七日受領したが、当庁勧告の結果、契約条件の明確化、使用料の適正化等の改善措置がなされた外、最高責任者たる加賀山社長、立花専務の更迭を見たのである。又調査結果は、報告書に記載しており、一般に公表はしなかったが、相手方に交付しているのであって、秘密にして発表さえしなかったというのは当らない。」というのがあるのですが、公表はしなかったが相手方に交付しているということだけで、秘密にして発表しなかったというのは当らないという結論がどうして出ますか。どうも私はこの文章がわからない。
  79. 高柳保

    高柳政府委員 この文章は最初に、秘密にして発表さえしなかったという事実よりも、相手方に交付したというところに問題があったのでありまして、前文の「ウヤムヤにしている」ということの反証であります。もちろん、その内容を秘密にしておったということについては相手方に知らせているのでありまして、これはそういう意味で、公表という意味においてはしていないことは確かでございます。ただこの文章の解釈の問題でございますが、「ウヤムヤにしている」ということに対する反証であるとお考え願いたいと思います。
  80. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 これは単なる文章の問題だけじゃないと私は思うのです。この文章から見ますと、交付したことを一つの発表だというふうに考えるならば、これからもし高田さんのような義憤に燃える人たちがたくさん出て参りまして、だれか私たちに、国会議員じゃなくてもよろしい、自分のじっこんな人その他の人に話をしただけで、発表もしくは公表と見られるおそれが多分にあるのです。これはあなた方の考え方は一体どうなんですか。たった一人にでも発表すればこれは発表になるのですか、この点ははっきりさしておいてもらいたい。
  81. 高柳保

    高柳政府委員 監察結果報告書は相手方に知らせます。そのうち公表すべきものは選んで公表することにしておりますが、この点につきましては、これは当時私あまりつまびらかにしておりませんが、相当部分が国会で問題になりまして、公知の事実になった問題ではなかったかと思います。そういう意味で特に当方としては発表しなかった問題ではなかったかと記憶しております。そういう意味でわれわれとしてはこういうふうに書いたものであります。
  82. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 その答弁は私は少し苦しいと思う。何も高田さんは国会でうやむやにしたとはいっていないのですよ。監察局の方でうやむやにしたというふうに書いておる。それを国会でこれが問題になったからといってあなた方がその陰に隠れて自分の責任を回避することはできないと思うのです。なおこの文章の不明朗な点は私は直してもらわなければならぬと思うのですが、もし相手方に交付しただけで実際に公表していないのであれば、この高田さんの本というものは歪曲しておりませんよ。その通り伝えておる。むしろあなた方の方がこの本を歪曲しておる、私はこうとらざるを得ない。
  83. 高柳保

    高柳政府委員 ここに問題としておりますのはうやむやという言葉でありまして、われわれの立場としては相手方に勧告して筋は通しております。これを公表するかしないかの問題でございますが、その内容によって、あるいは世間に与える価値について判断をいたしまして、公表する範囲、するかしないかをきめるわけでございます。われわれとしては勧告し改善をすることが任務だということで筋は通しておるつもりでありますので、うやむやということが当らない、こう申しておるのであります。  それから公表さえしなかったという問題でありますが、この文については当時ただいま言ったようにすでにある一部分は公知の事実になっていたものと私は考えております。ただ公知になった事実についてわれわれは別にそれを利用したというような意味ではございません。
  84. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 本委員会に提出されました書類は公けの書類でありますから、私厳密に取り扱いたいと思います。さっきも一カ所ありましたが、この文章最後の「秘密にして発表さえしなかったというのは当らない」というのはそれじゃお取り消しになりますか。
  85. 高柳保

    高柳政府委員 これは誤解を生じますので取り消したいと思います。
  86. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 すでに私があげました二つの例について二つともあなた方の方では取り消しをしておる。これ以上追及するまでもなく取り消したい事実があるならばあなたの方から取り消してもらいたい。私は最後までやりますよ。見ますと取り消してもらいたいことがずいぶんだくさんある。少くとも人間の一身上に関する問題について決算委員会に提出する書類がすでに二カ所指摘されて二カ所ともあなた方が取り消ししなければならないということは、あなた方のこの説明書がいかにずさんなものであるかわかるのです。これはやっぱり高田さんが怒るのは無理のないことだと思う。これもゆるふん一つの例です。私ははっきり申し上げるのですが、この短かい文書の中でまだ半分もやっていないのに二カ所取り消した。もう一度検討されますか、再検討されないというならば追及します。もう一ぺん検討しなさるならそれでやります。どうしますか。
  87. 高柳保

    高柳政府委員 前の分は取り消したつもりではございませんので、これは一応説明を申し上げました。あとの分につきましては、そういった意味で問題の中心がうやむやの問題でありましたが、この点を御指摘になりますと、あるいは誤解を生ずるかと思いますので、これは一応取り消した方がよろしかろうと存ずる次第であります。ほかの点につきまして誤まりがあるとか、取り消さなければならぬという事実につきましては、私はそう思っておりません。
  88. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 済みませんが、ちょっともう一ぺん……。
  89. 高柳保

    高柳政府委員 取り消すか取り消さないかという二点を御指摘になりました。前の分は取消しはいたしません。解釈上もし歪曲の方が御理解に適するのであれば、これは歪曲の方に回した方がよろしい、こう申し上げたわけでありまして、次の「秘密にして発表さえしなかったというのは当らない。」こういうことが私の説明に必ずしもじかにぶつからないというふうな御理解でございます。私も多少誤解を生ずることになりますので、ただいま取り消した方がよろしかろうと申し上げたわけでありまして、ほかの点についてどうかと言われる点につきましては、私はそれ以上そういった点はないと存じております。
  90. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 議事進行について……。十二時を過ぎましたが石井長官も来ませんので、暫時休憩してもらいたい。
  91. 坂本泰良

    坂本委員長 それでは暫時休憩いたします。     午後零時二十二分休憩      ————◇—————     午後二時五十七分開議
  92. 坂本泰良

    坂本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  休憩中におきまして臨時理事会を開いたのでありますが、その理事会における申し合せを御報告いたします。  一、石井長官に釈明を求めること。  一、所管事項について委員から大臣の出席を求めた際は、理事会においては、これを制限しない。  一、問題があった際に、国会対策委員会同士の話し合いに移さず、自主的に運営するごとく理事会は協力すること。  以上御報告いたします。
  93. 山本猛夫

    ○山本(猛)委員 ただいま休憩中の理事会において申し合せをいたしました申し合せ事項に関しましては、その趣旨を尊重いたします。ただし今委員長から御報告になりました石井長官の釈明以外の事項に関しましては、わが党は御承知のごとく社会党さんと同様、天下の公党でございますから、その公党を運営する建前というものは、厳固としてございますので、その基本に沿うことを原則といたしまして、ただいまの御報告の件に対しまして了承いたします。
  94. 坂本泰良

    坂本委員長 委員長から石井長官に釈明を求めます。それはただいま休憩中におきまして、臨時理事会の申し合せによるものであります。石井長官が午前中御出席にならなかった点について釈明を求めます。
  95. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 私が出席がはなはだおくれまして、皆さんに御迷惑をかけて恐縮でございました。午前中こちらへ出るつもりで待機いたしておりましたが、なかなかお呼び出しがないので、私ぜひ午前中に会わなくちゃならぬ人が一人ありましたものですから、自分だけで考えて、時間があるからよかろうと思って、用足しに参りました。帰って参りましたら休憩になっておるようなわけで、そのためにはなはだ皆さん方に御迷惑をかけて恐縮でございます。今後もっと連絡をつけておくようにいたしたいと思います。
  96. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 議事進行について。ただいまの石井長官の御発言は、これは速記録に載るわけであります。そうしますると、何か一方的に呼び出しの手続をなすべき方が手落ちでもあったかのような感を与える御釈明でありまするので、そういう事実はなかったのでありまするから、私も当委員会理事の一人といたしまして、その点について、前後の経過とまではいきませんが、要点だけを述べておかねばならぬのであります。  それは十一時ごろに、こちらの理事会の申し合せに基きまして、私は予算委員会のわが党の理事に石井長官の出席方について申し入れをいたしました。その結果、私の面前におきまして、予算委員会の社会党の理事、自由党の理事が御会議になりまして、あと三十分で決算委員会へ石井長官に出席してもらう、決算委員会においては二十分くらいで質疑を終了する、こういう趣旨になりまして、そこでその趣きをこちらへ帰ってまた委員長に一応報告しておいたわけです。ところで予定のごとくに三十分になる前に、委員部を通じまして、出席方を要請いたしましたところが、まだこちらへ御出席がない。時間が三十分経過いたしましたので、私は質問を中止して、そして予算委員会に出かけてみましたところが、石井長官がおられない。わが党の理事に、どうしたのですか、こちらでは時間が経過してしまって、約束の時間もあることだからと思って、私は質問を途中で切ってきたんだが、どうしたんだと言ったところが、いやそれは説明にいわく、予算委員会は石井長官は決算委員会へ出席するという了解でここを退席してもらっておる。そんなはずはないんだ、もう行っておるものと思っておった、こういうようなことで、そこでまた与党の理事との間に話し合いがあって、そして愛知官房長官に対して、そのことの趣旨をなじっておりました。委員部の方から、どこに行っておられるかわからぬというような御報告がある。これでは決算委員会は進めようがないじゃないか、どうしたんですか、こういうふうに言っておったのであります。ついにこの委員会が、零時半ごろでありましたか、休憩に至るまで石井長官は顔を見せられない、所在が明らかにならない、こういう事態であります。よってこの委員会が石井長官をお呼びに行かなかったので来られなかったというような、そういう事実の経緯にはなっておりません。石井長官の御説明では、あたかもこの委員会の怠慢によってこういう時間が経過したように聞えます。そういう事実は断じてありません。これははっきりしておいてもらいたい。
  97. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 私は予算委員会で、予算委員会の方はきょうは用事はないので、決算委員会の方にあるそうだから、その方においで下さってけっこうだということでありましたので、そのときは、二十分とか三十分とか時間も何も聞かないで下におりたのでございました。しばらく待ったのでございましたが、今申したような何もございませんでしたから、ちょっと行ってこようと思って出かけましたのでございまして、あなたの方がお呼びがなかったと私が断言しておるわけではないのでございます。私は今のような程度にしか聞いておりませんでした。はなはだ御迷惑で申しわけありません。
  98. 坂本泰良

    坂本委員長 それでは石井長官に対する質疑を許します。吉田賢一君。
  99. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 石井長官に伺いますが、大体行政管理庁は、当委員会と同様に、国政につきましては、予算その他行政各般にわたる紊乱とか汚職とか、そういうものがなくなるように、できるだけ能率が上るように、できるだけ行政趣旨がりっぱに行われますように、こういうことを一つの念願としてできている官庁でもあるし、あるいはまた行政管理庁の設置法等によりましても、かなり当委員会あるいは会計検査院、あるいは各省の内部監査機関、そういうものと共通の立場にある官庁であるとわれわれは了解をいたしております。そういう了解のもとに、本日お招きしていろいろものを聞かなくちゃならぬということは、内心実は気持も明るくないのであります。しかしながらやはりこの反面におきまして、今回の高田事件というものは、これはやはり取り上げられている「不正者天国」というこの冊子の内容が、ほとんどがやはり決算委員会的感覚で扱われた問題が多いのであり、またこの委員会でもしばしば問題になった事柄が指摘せられておるのがずいぶんとあるのであります。こういうような角度から、私はやはり行管あり方につきましてもけじめをつけておく必要があるのではないか、ことに全国の多数の公務員の身分に関する重大な問題が高田事件によって提起されておりますので、こういったときに、下手をすると、やはり汚職追及ではなくして、ほこ先が鈍ってしまって、行管がほんとうにその趣旨目的とするところの仕事ができないおそれがあるのではないかということの心配もありまして、あなたに少し聞かなくちゃならぬと思って御質問するわけであります。  第一に伺いたいことは、高田茂登男という、もと監察局に勤めておった方が、今回昨年の十一月十六日付で免職されております。これは過去の免職の事例によって見ましても、分限法によって免職になっているということは稀有の事実であります。それほど重大なできごとができているのであります。そこで当委員会がすでにこの問題を取り上げましていろいろと検討しているので、各般の事情を御調査になっていることと思いますが、一体高田免職事件というものはどういうふうにお考えになっておりますか。これはやはり行管を主宰しておられるあなたのお立場として、及びあなたは一面副総理の重責を持っておられるので、これはきわめて重大な影響のあるお立場でありますので、あなたのこの問題に対する考え方をまず聞いておきたい。
  100. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 高田茂登男君の出版されました「不正者天国」等につきまして、私どもの方でいろいろ研究をいたしました結果、御本人には大へんお気の毒でありますが、高田君を免職いたしました。それは事まことに大事なことでございまして、私どもが仕事としております点は、日本のすべての行政の機関がりっぱな運営をするように、その改善をさせるためには勧告もし、いろいろな方法によって当該官庁に注意を促して改善の実をあげつつあるのでございます。そのもとになります行政管理庁の役人としてどうあるべきかという心がまえが、まず第一にこのとき取り上げられたわけでございます。私どもは各役所、あるいはそれに関連するところの監査をいたしますに当りましては、上司の命によってすべて調査いたしたものは上司報告いたしまして、それはすべて部外秘になっておるのでございまして、これらのものを発表する場合には必ず上司の許可を受けなければならないということに——当然のことだと思うのでありますが、そうしておるのであります。ところがこの高田君の場合におきますと、そうやって職務上知り得た秘匿すべき事項をどしどし発表されたということ、また出版につきましては、出版をしないように警告もいたしたのでございましたが、これらのことが無視されまして、ついに「不正者天国」というものが出版されるようになりました。この状態を見ますると、もしこういうことが当然のこととしてどんどん許されるようなことになりましたならば、行政管理庁の仕事はずいぶん私はやることが困難になると思うのです。私はそういう意味におきまして、この高田君の行動は、公務員としてはなはだ不適当な行動であったということに基きまして、いろいろ研究をいたしましたが、万やむを得ぬことであるということで、免職の処置をいたしたような次第であります。
  101. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 ここ一両年来の日本の国家公務員におきまして、国家公務員法七十八条の三号違反事件で、一体首になった人はございますか。あなたはそれを調べていませんか。
  102. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 まだそれは調べておりませんそうであります。私も知りませんが、いずれ……。
  103. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 私は高田君が実質的にどの程度の地位にあったか、それはよくわかりませんが、主査だから係長クラスかと思いますけれども、しかしやはり行管業務が、あなたがお述べのごとくに重要であればあるほど、同時にまた、その身分保障という問題につきましても、相当これは慎重な態度でいかねばなるまいと思うのであります。信賞必罰は厳格にすべきことは当然でありますけれども、この分限法といいますか、分限に関する規定は、身分の保障ということが前提になっている規定であることは、これは御承知の通りであります。何か今あなたのお考えによりますと、やはり一種の懲戒的趣旨においてこれを免職したようなお考え方らしいのであります。一人の人が職を失うということは、常に重大なことであるが、とりわけ行管のような立場、あるいは検査院のような立場、あるいは裁判官のような立場、そういう立場におきましては、一そう業務免職の因果関係というようなものは、最も慎重でなければならぬ。ところが、あなたはまだよく調べていない。この身分保障に関する規定によって免職になった者が、最近あるのかないのか知らないというようなことで、どうするか。係長は小さな役人かもしれないけれども、あなたの部下の一人として、首になるという場合にはそれくらいのことをお調べになっておかずに——私はとんなに忙しい大臣であろうとにかかわらず、これはむしろ怠慢ではないかと思うのです。どんなに低い役人でも、首になればこれは重大な影響があります。ましてや公務員全体に対する一つの基準を示すことにもなるわけでありますので、こんな重大な裁断をするのに、知らないということはとんでもないことなんです。一体こういうようなことは下僚まかせで、何でもないことで、雑草でも切るようなつもりであなたはやっているのじゃないですか。
  104. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 人一人を免職する問題でございますから、慎重にも慎重を期すべきことは当然であります。私はこの本が出、この話を聞いて、関係の者と幾たびかこの話し合いをし、みんなから研究してもらった結果を持ち寄りまして、そうして私どもはどこに当てはめるかということで慎重に考えた結果、七十八条の三号に該当するという決定をしたのでございます。私どもは大根や菜っ葉を切るような心持でやる、そんなことではならないのであります。私どもはそういう心持は一つも持たないで、まことに残念であるけれども、これよりか方法はないという結論に到達したわけでございます。また、ほかの方の例を調べておかないのは手ねかりではないかというおしかりでございます。ほかの例は私実際知らないので申しわけないのでありますが、戦後こういう規定によっての現職の者の——もちろん現職でなければこれは当てはまらないでしょうが——者は、今のところは見つからないということでございます。
  105. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 当委員会におきまして各省の不正、汚職事件が、毎年審議の対象になっております。ところがこれが免職になるというような場合は、これはたとえば公金の使い込みにおける裁判所関係事件などで、きわめて希有なことであります。こういうような懲戒の場合はそういうことが若干あるのでありますが、それでも農林省事件等におきましても、あるいは国鉄等の事件におきましても、刑事裁判以外の場合の免職というものは、ほとんどないのであります。注意とか勧告とか戒告とか、あるいは減俸というようなことが通常になっておる。刑事事件等によらず、むしろ分限のこの規定によりまして今のような処分をするということは、これはよほどの重大な理由がなければならぬ。ところが資料として出されておる各般の事情を考察し、不正者天国なる書物内容を検討してみまするというと、やはりこれはそんなに重大なことではないのじゃないかというふうに考えられる。ただし、これはたとえば役人としての規律と組織の中におって、ことに行管のような重要な、特殊な立場にある者が、どんどんと自分の筆にまかしてものを書いて社会に訴えるという書き方が行き過ぎであることは、私もはっきり認めております。その点は午前中本人の高田君に向って、君の態度のよからざりし面のあることは自認しなければなるまいということすら、私は言っておるのであります。しかしながら同時に、やはりあなたの方としても、ことにあなたは行管の長官であると同時に、半面においては副総理の立場である。従ってこの内閣におけるきわめて重要な立場におられる。申すまでもなく、しばしば岸総理申されるごとくに、汚職の追放とか根絶とか官紀の振粛というようなことをしばしば言っておられる。こういうようなときに、この書物内容は大半この委員会が扱ったものである、あるいは会計検査院報告書に載っておるものである、あるいはあなたの方の行政監察年報に載っておるものである。ただこれにつけ加えて種々見解が述べられておる。種々な想像記事がひっついておる。これは私はけしからぬと思うのでありますが、全体から受ける印象は、まことに官庁の事務というものは、なんというだらしないのか、こういうことが事実であるとするなら大へんだということは、読んだ人がひとしく受ける印象だそうであります。そうであるとすれば、この大半というものは、むしろ汚職追放に対する一役を買うものでないかとさえ考える。こういうことなんです。それならば、そういう半面についてあなたの方ではしんしゃくすることなしに、ただ服務規律に従っておらぬ、そういうような理由がおもになっておるようであります。もっとも分析してみると、処分理由は、秘匿すべきものを公表したというようなことがあり、あるいは歪曲され、あるいは誇大に吹聴されておるようなことも指摘してありまするけれども、いずれにいたしましても大半は——大半というよりも骨格は、公知の不正、汚職的事実が骨格をなしておる。でありまするので、むしろ汚職追放を叫ぶ者から言うならば、民間のものであるならば、これは大いにやるべしというくらいな書物です。ほかに類似な書物が数冊出ておりまするけれども、これの方が相当具体性を持っておる、こういう点から考えましたならば、かえって今の内閣の声明しておる立場に沿うということがこういう書物の傾向ではないか。悪い面もあるけれども、反面においてはあなたらが主張しておる、声明しておる趣旨に沿うておるのではないかとさえ考える。こういう面は顧慮しなかったのかどうか。そういうことをもし顧慮しなかったら、これは義憤に燃えた者を殺してしまうことになります。大へんなことです。ことに高田君——私はしいてこの人を弁護しようとするのではないですよ、高田君という人は、このあと書きにも書いておりまするが、公務員の憲法上の国民へ奉仕する、公けへ奉仕する、全体へ奉仕する、この立場をかなり強調しておる。ですから、そういう立場からするならば、私はむしろ内閣の汚職追放の根本の趣旨に沿うておる傾向を現わしておるのではないかとさえ思うのです。そういうことをあなた方はお考えにならないのかどうか。長官の立場は反面において副総理の立場でもありまするので、こういう点はやはりはっきりしておいてもらわなければいけない。役人が一々官庁の不正事件を、公けになっておるものすらこれを指摘するようなことを封鎖していくというようなことになっていきましたならば、おそらくは汚職追放なんということはできやしませんぞ。これを思いまするので、この点につきましてのあなたのお考え方を一つはっきりしておいてもらいたい。
  106. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 御趣旨は私も同感でございます。しかしこの場合のお話としては、少し私の考え方と違うのであります。いいこともあるんだから大目に見たらいいじゃないかというふうに聞えましたが、私また同時に官吏というものはきちんとした態度をとっていく、そして起るべき問題も起らないようにしていくことが大事だということを考えます。官吏がどういう心持で公務員として勤むべきかということは、公務員法にもちゃんと書いてある通りでありまして、そうしてこれは秘密なりとして——それが秘密にすべきかすべからざるかという議論はありましても、一応役所において秘というものが書いてあるものを勝手に持ち出して、それがその役人によって公表される、いいことだからいいじゃないかということだけでは、私は官吏の統制と申しますか、きちんと行政の実を上げていこう、官吏はしっかりして正しくやっていこうという線を少しく逸脱するのではないか、こういうふうに思うのであります。もし官吏でなくして、いろいろな点から探し出されて、そして批評されるような場合ならば別でございましょうが、官吏として立ち、かつまたこういうものの発表につきましては、そうすべきじゃないじゃないかということで、上官の諸君が、幾たびが警告をし、注意を促したのにかかわらず、こういうことをやられたのでありまするから、こういうことが当然だ、まことに国のためにもりっぱなことだといって認められるようでありますれば、私ども行政監察をやっておりまする行政管理庁の仕事そのものにも、私は非常な悪い影響を及ぼすと思うのであります。どんどんいろんなことが発表されるということでありますと、各役所その他においては悪いことであっても悪いことでなくても、どんなことでも、なんか因縁をつけられはせぬかと不安で、資料等の提供等も非常に渋られるようなことがありますと、私どもの役所は検察庁であるとか会計検査院とかいうような立場と違いまして、話し合いでいろんなものに資料を提供してもらって、これをわれわれ厳正に監察していくという立場にあるのでございますが、そこに大きな障害を生じてくるというようなことを私どもはおそれるわけでございます。
  107. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 あなたはまだ十分にこの書物については御検討になっておられない、お忙しいからお読みになっておらないかもしれませんけれども、大体免官の理由となっておりますることは、秘匿すべき事項の発表ということであります。しかしながらこの文書の全体を通覧いたしましたときに、ほんとうに秘匿すべきものといったら何であろうかということなのです。といいますのは、これはほとんどが公知の事実なんです。そしてそれに若干尾ひれがつけられております、主観もあり、想像もあるのです、それはよくないと私は思っておりますけれども、大半は公知の事実なんです。でありますから、秘密でも何んでもないのです。これを秘密なりとして秘匿されるべきものが公表されたということで処断されたということは、私はやはり汚職追放、追及の士気をにぶらす以外の何ものでもないと思うのであります。だからあなたの抽象的なお話はわかるのです、官吏服務紀律あるいは国家公務員法におけるいろいろな職務に忠誠なること、そういう立場を守らなければならぬということはわかるのですけれども、具体的なことは私、さっきに申し上げましたように、当委員会その他におきましてすでに公知の事実になっていることが大半なんですよ。だからそういうものが書物に出たからといって、そんなに御心配になるほど行管の名誉もあるいはまたそれらの役所の人たちの立場も不利にすることはありはしません。行管年報を出しておれば、その内容等については農林省国鉄その他の方面におきまして幾多の大きな功績があることは認めておりますけれども、さりとてこんなものを出したからといって、一々そんなに大きく目かどを立てるほどのことはないだろうと申しているのであります。お話が抽象的でありますので、私の申し上げることもやや抽象的なことになりましたけれども、事実は、この書物内容なるものが大半公知の事実であるということ、若干尾ひれがついて筆が走ったということ、あるいは売らんかなの文章もあることは認めるのでありますけれども、さりとてこれを免職にするというやり方は、不正に協力するという心理的な何かがあるのではないかとさえ国民は疑うおそれがありますが、そこであなたの所信をはっきりしておかなければ、その点におきましてけじめがつかなくなると申し上げるのであります。こんなものを一々出されては資料も出なくなるというそんな御心配はいりませんよ。こんなものは幾らでもありますよ。この中にいわゆる汚職という冊子と重複しているものもずいぶんあります、新聞の記事と重複しているものもずいぶんあります、この速記録に出ているものもずいぶんあります、大半は公知の事実です。そういうことでありますので、あなたにおきましてはあまりその点を規則あるいは紀律というものから、伸び伸びとするものを押えつけてしまうということであったら、とうてい汚職追放なんという目的は達せられません。そういう角度からあなたの所信を聞いたわけであります。
  108. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 その中にもうすでに一般にも出ているようなものもたくさんあるとおっしゃいましたが、その通りであると思います。同時に公知でない事実もその中にはあるのでございます。これらの事案をいろいろ考えまして、さっきから申しまするように、私どもはいたずらに人を傷つけるべきものではなく、また同時に私どもの行政管理庁というものの仕事がどんなに重大か、今おっしゃった汚職追放という線にわれわれも協力する一つの大きな力であらねばならぬのでございますから、その意味からいたしましても、こういう問題は私たちから考えまして、勝手にいろいろなことを発表されるというようなことになりますると、統制がとれなくなり、またさっき申しまするように、ほかの役所との関係もいろいろむずかしい問題があって、この行政管理庁の仕事の本体をくずすということになるおそれがありますので、私どもは涙をふるってこういう処分をいたしたわけであります。本体の行政管理庁がかくあるべしというお心持ちは私ども同感であります。その心持ちで私どもやっていきたいと思っております。
  109. 坂本泰良

    坂本委員長 淡谷悠藏君。
  110. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 長官に大へん失礼な質問になるかもしれませんけれども、重大でございますからあえて申し上げたいと思います。のみならず長官はいろいろ忙しいお仕事がございますので、こういうことをあえて聞くのでありますが、さっき吉田委員から話がありましたが、今問題になっております「不正者天国」という本を長官は丁寧にごらんになったかどうか、その一点をまずお伺いしまして、それから一つ質問を展開したいと思います。
  111. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 私はこの本を見せられまして、またこういう点がどうだ、ああいう点がどうだという説明をつけたのを見ました。
  112. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 その説明というのは当委員会に提出されております「「不正者天国」中、ねつ造、歪曲誇張の事例」というパンフレットでございますか、あるいは他のものでございますか、その点も一つ伺っておきたい。
  113. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 ここにどういう程度出ておりますか、私の手元にある書類では、ここに出ておるよりも多く、何かたくさん付せんをつけて説明をお聞きしたように思います。
  114. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 私吉田委員とは別な観点に立って長官にお聞きしたいのでありますが、高田茂登男君が官吏としてこのような本を書くに至ったのは非常に大きな決意があったのだと私は思うのです。午前中もいろいろ話をいたしましたが、以前からもしばしば上司に向って今の行政監察局がこのような状態であってはとうてい汚職、疑獄の粛正はできないから、もっとはっきりした態度でやった方がよろしいということを数次にわたって進言しているようであります。それからまたこの本を出すに当りましても、上司から勧告ともつかないようなことを言い含められたことも本人みずから言っておるのであります。こういうふうなことを聞かないで、自分の職を犠牲にしてこういう本を書いて世の中に訴えたということは、これは本人にとっては非常に悲壮な決意を持ってやった行動と私は思うのです。ですから結局官吏としては高田茂登男君のこの本が、行き過ぎはあったでしょう。けれども悲壮なるその国民に奉仕するという点だけは、長官は十分買ってやるべきだと思う。あなたは涙をもってこれを切ったと申しますが、涙をもって切る場合に、あなたの涙をちょうだいしましても、おそらく高田茂登男君は浮かばれまいと思う。要するに一身を犠牲にしたのは、あえてこの本を天下にも発表し、またあなた自身にもよく見ていただいて、この内容について指摘されていることをもっと長官に十分なる覚悟をもって善処してもらいたい。自分の進言がいれられなかったので、こういう非常手段をもって訴えても、あえてこの行政管理庁監察局、こういう機構に対して非常な大きな反省を求めるという熱情があったと思いまするが、その点は長官はこの本をお読みになってお感じになりませんですか。
  115. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 私はこの本が出る前からいろいろな話を聞いておりましたので、こういうことをされない方がいいと思っておったのでありましたが、ついに出るようになりました。それを見まするといろいろなことがたくさん書いてあります。それに対してこれは違っておるとか、これはこうだったとか、これはその通りであるとかいうように書いてあったと思うのでありますが、こういうことをされる心持、今お話しのように本人は悲壮な決心で、日本の行政監察というものが、りっぱに行われ、そうして日本の行政がますますりっぱになるようにしなければならぬ、それにはこんなものがある、こんなものがあるからもっと力を入れろという心持で書いたんだろうというお話です。あるいはそうかとも思います。私どもはこの出てきた事実につきまして、こうであろう、ああであろうという心持を推していろいろ言うことはできないのでありますが、そういうことを思いますので、いろいろ上司から戒告をし、また注意を促して、そういうことをしないで、話をし、そうして行政監察の実をあげようという心持で出版を見合せろと言うたわけなんでございます。さっき吉田さんに私からお答え申し上げましたように、こういうことがあったことははなはだ遺憾でございますが、行政監察をつかさどるわれわれといたしましては、この際心をもう一つ新たにして、りっぱな監察の仕事をやっていこうという覚悟をすると申し上げたのはその点でございます。
  116. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 それは長官の今のお立場からはやむを得ないだろうと思いますが、高田君が一身を犠牲にして投じたこの事件について、やはり長官はもう一つうちへ入って、高田君にあえてこういうことをさせた内部に対しても、この際新しい決意をもって向われた方がよろしいのではないかと思う。たとえばきょうわれわれ配付を受けました「「不正者天国」中、ねつ造、歪曲誇張の事例」、これは実は午前中長官にもおいでを願って、長官のいる前で私はそういう指摘をしてみたかったんです。この一冊の本について指摘しました薄いパンフレットですが、この薄いパンフレットを自信をもって出された。それがわずか一枚か二枚を検討しておる間に、一カ所はこれを訂正し、一カ所は取り消すといったような、こういうふうなパンフレットを出すようなことであっては、高田君の怒るのは当然だと思う。ですから上司がほんとうに正しいところがあり、上司の言うことが当を得ておるならば、私はあの純真な高田君があえて自分の身を犠牲にして、こんな本を出す必要はなかったと思うが、そこにやはり上司に向って誠意をもって上申しても、その進言がいれられなかったという今日のこの監察局内部の問題が伏在するということは考えられる。これに対して分限法か何かで、涙をふるって切ることはやむを得ないとしましても、そういうことをあえてさした官庁内部の問題についても、私は十分目を届かせることが長官としての当然の任務だと思う。赤穂義士の例を引くのもおかしいですけれども、四十七士に切腹させたことはいいとしても、やはり四十七士をして、あの国法を犯させたのは、吉良上野介というものがあったからだと思う。この本を読んでみましても、あるいはこの本によらざる事例をもってしましても、最近の事例をあげるまでもなく、私は吉良上野介がたくさんおるような気がする。そういう点に対して、長官はやはり高田君に対して、切るに涙をもってするならば、涙をもって馬謖を切るくらいなら、あなたの部下に伏在しておるさまざまなものを十分に調べ上げようという熱意を現在持たれておるか持たれておらぬか、この点はっきりお伺いいたします。
  117. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 よその役所の仕事を監察する立場におる者といたしまして、非常にその責務の重大なことはみんな感じなければならぬ、そのつもりでみんなやっておると思います。しかしどんな場合でもたえず反省をして、そうしてもっといい仕事をしていくということに心がけなくちゃならぬのでありまして、さっき申しましたこういう問題を起したあとから、われわれはみんな心を一つ新たにして、なおりっぱな仕事をしていくようにしようということを申し上げたのは、私のみならず私の部下一同に対する私の心組みであり、部下の心組みだと思います。そういうつもりでやっていきます。
  118. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 高田君の処分の問題ももちろんこれは重大でありますし、今後の、全国の役所に勤めておる人たちにとっては大きな関心を持った問題でありまするが、一体高田君が官吏として不適当であるならば、こういう不適当な官吏を出すに至った、今のうのうとしてなお残っておる人々の中に、さらに指摘されなければならない者が多くあるということを長官お考えになりませんか。私は高田君が不適当であるならば、やはりその場合には指摘された事実について、もっと不適当な役人がたくさんいるということが考えられる。これに対してもっと断固たる態度をもって臨まれるというお気持はございませんか。
  119. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 そういう事例がありましたならば善処するつもりでございます。
  120. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 実はこの行政管理庁行監察局から渡されました「ねつ造、歪曲誇張の事例」をなおわれわれは十分に検討してみるつもりであります。すでに二ページの中にこれくらいの訂正個所がある、著しい事例の中にたくさんあるならば、私はやはり長官としてもあなたの現在の認識を変えて、もう一ぺんこの本に基いた事実をもっと慎重に、かつ公平に検討される必要があるだろうと思いますが、この点はいかがですか。あえて確かめておきます。
  121. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 おしまいのところをちょっと……。
  122. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 わかりやすく申しますが、実はきょうこの高田君の本に対する一つの反駁ですか、このパンフレットを受け取った。これをいろいろ検討してみますと、書いた人は捏造歪曲誇張といっておりますが、いろいろ質議応答の中にこれを出された方自体が、この点は非常に書き過ぎであったとか、歪曲しておったということを供述されました。もうすでに取り消しますとまで言われておる。これは一つの出版者の営業政策が加味されたか加味されないか知りませんけれども、これでは、一般に出したこの本につけ加えられたニュース・ソースの問題でも大きな問題になっているのに、責任を持って国会の決算委員会に出された正規のこのパンフレットが、当初においてすでにこのような誤まりを犯しているとするならば、これは出版以上の責任だと私は思う。これは一体だれが書いたのか、だれが一体このパンフレットの責任をとるのか、書かれた人をはっきり言ってもらいたい。
  123. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 それはだれが書いたか知りませんが、なおお話のように……しばらく聞いて下さい。まだなお御研究いただくということでございますし、御研究の結果こういうものはどうだということをお示し願えれば、それをよく検討いたしましてしかるべく善処いたします。
  124. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 けさこれに対していろいろ御答弁をした人がありましたが、この書類を出す場合に、私は責任者を明らかにしないということになれば、ちょっとこれは困る。やはりこのパンフレットについて問題が生じた場合に、だれが一体責任をとるか、その点をまず明らかにしてもらいたい。
  125. 高柳保

    高柳政府委員 この書類を提出いたしました責任者は行政監察局長でございます。  修正なり取り消しということを午前中申し上げましたが、何ゆえであるかということをもう一ぺん弁明さしていただきたいと思いますが、よろしゅうございますか。——最初の捏造のところで書き加えてありますものは、ちょうど同じ事件であります。事実は異なっております。しかしこれが捏造よりも歪曲の方が解釈しやすいではないか、こういうお話でありますので、それでは歪曲の方に回しましょうということが訂正でございます。  それから次の問題でございますが、「その内容を秘密にして発表さえしなかった。」ということに対して「一般に公表はしなかったが、相手方に交付しているのであって、秘密にして発表さえしなかったというのは当らない。」というので、「秘密にして発表さえしなかったというのは当らない。」というのは取り消した方がいいのではないか、こういうお話でございました。それで私はこの問題の中心は、うやむやにするということが中心で、それをこれは主張しているのである。公表ということについては、「その内容を秘密にして発表さえしなかった。」という問題は、行政管理庁監察は必ずしも発表しなければならぬというわけではございません。それで発表しなかったそのことが、うやむやの証拠だということをここで言っているわけでございますので、公表しなかったことは確実でありますが、うやむやにしたのではないということを申し上げた。ただし誤解を生ぜられる「秘密にして発表さえしなかった。」という事実は、これは公表しなかったのでございますから、もし誤解を生ずるのであれば、取り消しても差しつかえありませんという意味において、取り消しますと申し上げた。これについて責任をということになれば、私の責任でございます。
  126. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 これは長官の前ではっきりさせておいた方がいいと思いますが、「秘密にして発表さえしなかったというのは当らない。」というような単なる文句の上の問題ではないのです。つまり官吏が相手方に一つの書類を交付して、これを発表と考えるような監察局の態度であれば、非常に混乱を生ずるから、これを一体発表と見るのか見ないのかということを言ったら、これを発表と見ないとはっきり訂正をなさった。と同時にあなたの答えを長官の前ではっきり言っておいてもらいたいのは、このあともし誤まったり、もっと検討を加えるところがあるならば、一ぺん引っ込めてもう一度出したらどうですかということを私は言った。——ありますよ。私はちょっと読んだだけでも、その条項はまだたくさんあります。あなたに取り消しをやってもらいたいことがまだたくさんある。ですから私は、やはり監察局というのは決算委員会と一緒になって心から汚職をなくしようという方向に向うべきものなのだから、いたずらに問題をかもすよりも、もう一ぺん引っ込めて、もう一ぺん出しませんかと言ったら、その必要はないというあなたのお答えですが、まだそのお気持は変りませんか。
  127. 高柳保

    高柳政府委員 私の気持責任者として変りありません。
  128. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 そのような状態でございまして、私はこの「不正者天国」という一冊の本をめぐって、国民の疑惑またこれに対する官庁側の今のような考え方、これはますます今後大きく発展していくだろうと思う。この場合片一方を切るならば、もっと公平にこういうあなたの部下を切らなければならないような状態に追い込んだ方面に向っても、あなたが十分に涙をふるってもっと根本的に、抜本的にやられるようにくれぐれもお願いいたしまして、質問を終ります。
  129. 坂本泰良

    坂本委員長 細田委員
  130. 細田綱吉

    ○細田委員 私は実は石井長官に非常に期待しておった。というのは石井長官は操觚界というか、新聞界の出であるということなんですが、さすがに岸官僚内閣の副総理だけあって、あなたのおっしゃることは何だか過去の官僚の代弁者であるという感じを深く持つのです。私が今さら釈迦に説法申し上げる必要もないが、民主主義の治下における政治は、これは申し上げるまでもなくガラス張りが原則だと思います。あなたのお説を聞いていると、戦争中の軍隊は非常にスキャンダルに満ちておった。それをいわゆる憲兵、警察のためにおおい隠して国民に知らしむべからず、寄らしむべしという態度で、国民は知らなかった。そこでその上にあぐらをかいて、ひとり強いものは軍人であるというような態度をとっておったことは、終戦後ほとんど国民が知っておる。従って、民主主義の治下における行政というものもガラス張りのものでなければならぬ。ところがあなたのおっしゃるところを聞いていると、綱紀の粛正は秘密の保持であるという印象を与えるのです。そこでまず長官に伺っておきたいことは、職員は職務上知得し得た事項についてはいかなる事項でも部外に発表する自由を持たないか、もしあり得るとするならば、それは標準はどこに置かれるか、この原則を一つ長官から伺っておきたい。
  131. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 どんな場合でも黙っておれ、目をふさいでおれ、口をふさいでおれというわけではないのでありまして、そこは官吏といたしましてちゃんと道が開いてあります。特に行政管理庁におきましてはこれを重用いたしておるのでありますが、発表はすべて自分の上長の許しを受けて発表をするというのが建前になっておるわけであります。
  132. 細田綱吉

    ○細田委員 そうすると、長官の御答弁は、いかなる事項といえども発表する場合には上長の許可を得るというふうにうかがえるのですが、そこで一つ伺いたいことは、あなたがよく言われる綱紀粛正ですが、綱紀粛正ということは国家行政事務の能率化と相反してはいけない、相反の関係ではない、能率を進めるということと綱紀の粛正ということは、決して、並行はしても相反する関係には私はないと思う。何でもかんでも口をふさいで上長の許可を得ない限りはできないというようなことは、綱紀粛正に該当はするが、綱紀違反に該当することであるとしましても、それが一面国家行政事務の能率化に寄与する、それを助長するものであるとしますならば、これは一面許されないにしても、極刑までに該当しないことではないか。この点、国家行政事務の能率化と綱紀粛正とは相反の関係にないとするならば、それがかりに上長の許可を得ない問題でも、国家行政事務の能率化に寄与する場合には、極刑に値する問題ではないのではないか。これはきわめて抽象的な御質問ですが、副総理と申しましょうか、行政管理庁長官としての御意見を伺っておきたいと思います。
  133. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 部外秘になっているものを勝手にこうやった方が能率的であるということで発表するというようなことがありますれば、官吏の組織というものはもう成り立たないと思うのであります。そこの役所あり方はかくあるべしということできめられたもの、それを遂行するに当りましては上司がすべて相談の中心になるものであります。そこで相談をして、これは発表してよろしい、どういう形で発表しようとかいうことを相談してやるものでありまして、これは国のためにいいのだという自分一個の考えでどしどし何でも発表していいということは私どもとらぬところであります。
  134. 山田長司

    ○山田委員 関連して伺います。  ただいまの長官の話を伺っておって、どうしてもふに落ちない点があるから一点伺うのですが、会計検査院の場合におけるところの報告については、こういう報告会計検査院の場合には毎年出されるが、この会計検査院報告書を出されるのには、検査官会議で三人の検査官がこういうものを出すに当っての収録の相談をし合う。ところが行管の場合においては、やはり長官が言われるように、これを発表することについて、発表していいかどうかというようなことの結論を長官一存で出すのですか。だれがこの相談に乗ってそういうことの結論を出すのですか。
  135. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 政府委員をして答弁させます。
  136. 高柳保

    高柳政府委員 ただいまのは事務的な問題でございますので、私から答弁させていただきたいと思うのであります。  発表の権限は、訓令によりまして行政監察局長に与えられております。そしてこれは部内の機関でありますが、監察審議官等で作っておりまする監察会議というものがございまして、これに行政監察局長がかけまして、慎重に審議して決定することにいたしております。
  137. 山田長司

    ○山田委員 それは、会計検査院報告書を出す場合にも慎重に審議することには別に変りはないわけであります。ところが、その慎重に審議をする場合に、あなた方がいろいろしんしゃくする過程において、それがかなり収録されるかされないかという問題については、その中においてもいろいろな意見があるだろうし、さらにそれを出そうとするところの調査官などのいろいろな意見もあると思うのです。そういうものをあなた方が圧殺するところに、やはりこういうものを出してでも知らせようという意図が起ってくると思うのです。そういう場合における検討はどんな形でなされるのですか。
  138. 高柳保

    高柳政府委員 検討の基準は一番問題にいたしますのは、その監察効果をいかに上げるかというところに中心を置きます。  なお、一般に公表いたします範囲はそれが監察の効果をバックしていただくために最も有効であるという範囲にわれわれは考えております。
  139. 山田長司

    ○山田委員 部外秘の問題にしましても、国会で社会党や自民党だけでなく共産党までが存在している今日の議会政治におきまして、あなた方が部外秘と言っても、国民の世論によってそれが要求なされた場合は出さなければならぬ性質のものですよ。部外秘を作るよりも、そういうヴェールを張って国民に何から何まで知らしむべからずという態度をとるよりも、そういう腐れ切った事態があることをもっと明確に知らせることの方が必要でなければならない。あなた方が幾ら知らせまいとしても——今の日本の官僚機構というものはやはり封建的な残滓の姿として残っており、その姿としてヴェールを張っておると思うのでありますが、なぜいろいろな事態というものをもっと明確にしないか。やたらに印刷物をたくさん作ることばかりが能じゃないのです。国民が納めた血税などをやたらにめちゃくちゃに使われる事例というものは、この報告書に出ている以外にたくさんあるわけです。決算報告書によると六十五億の不正があるというだけだが、これは会計検査院だけではなくて、あなた方が調べられた金額だけでも相当莫大な不正事実がある。それが世に出ずにおるということ自体がおかしいのです。なぜヴェールを張らなければならないのか。それを部外秘で明らかにせずに済まそうなどと言わないで、なぜもっと全部明確に出してでも知らせるという方向に持っていくように努力しないのですか。ここに私はこういうパンフレットが生まれてくる理由があるのだと思うのです。そういう点を感じませんか。どうです、出す必要があるのですよ。
  140. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 私の方で出しておりまする監察年報というのは今のような話であります。そのほか時に応じましてこういうことは発表して、そうしてほんとうに行政がりっぱな方向に進んでいく実があがるのだ、こうしたらという場合には努めて新聞等にも発表をいたしておる事実があるのでございます。あなたのおっしゃるように何から何までという発表はいたしておりません。しかしそういう心持でおることは事実であります。
  141. 山田長司

    ○山田委員 私は長官の言われることだけでは納得できぬのですが、そういうものの中に、もっとあなた方が調べたものについて、報告すべきものは、国民代表までまじえて、これはどうしようかということは相談されなければならないと思うのです。あなた方だけの主観で、これで日本の行政能率が上るのだと考えているだけであって、それはあなた方の主観に基いたものだ。そういう点で、私は公けにする以上は、どうしたらその禍根を断つかということを、収録する前に、やはり審議会的なものを設けて、もっと国民代表というものがその中に意見を入れられる機構があってほしいと思うのだが、長官はどう思いますか。
  142. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 ただいまそういうことまでは考えておりません。
  143. 細田綱吉

    ○細田委員 今同僚山田君からいろいろ御質問の通り、もっと国民にどんどん発表すべきなんで、行政監察年報も、私の記憶に間違いがなければ、二十八年、二十九年は出たけれども、三十年は……とにかくこういうものは特別なところだけしか配られないし、官庁用語でちっともおもしろくない。やはり国民に親しまれるような方法でこういうものが出ることは、私はむしろ必要だと思う。むしろ今山田委員の言われるように、もっとあなたのところの仕事を国民に徹底させる、これがほんとうなんです。官庁の各省の事務を検査して、その内容国民に周知徹底させるということが、ほんとうに民主主義の中におけるガラス張りの行政じゃないかと私は思う。ただ綱紀粛正だ、特記すべき事項だというようなことで、このあなたの方の資料を拝見しても、一番行政監察局長の御意に召さなかったのはユルフンというようなことであったらしい。ユルフン、これは誇張だ、歪曲だ、どうもこの中にユルフンという言葉が出て、これが局長の御意に召さなかったということの印象を深く受けるのであります。これは確かです。これは長官がごらんになってもわかる、見てごらんなさい。至るところユルフンという言葉が引用されて、誇張だ、歪曲だといわれておる。しかし、だれが見ても、行政管理庁が、ほんとうに人間の最高度の能率を発揮し、やるべきことをやっているとは、だれも思っていませんよ。国民の一人だってそんなことを考えていやしません。長官だってやはりそうだと思う。われわれが見たって、これは相当のユルフンであることは確かであって、まあ一つの例をあげれば、ことさらにたとえば林野庁の立木払い下げについて三十億の損害だ。これを指名入札や随意契約が多いから、競争入札にしたらどうだというちゃんと根拠を示しておるのに、そうじゃないのだ、市場価格の把握が不適切だというようなことを言っておる。これは同じことだ。これはあまりにも言葉の上でけちをつけんがために一つの例を取り上げておるとしか思えない。これはもう随意契約じゃない競争入札にするのが一番最高度に落すのですから、これは一番国損を少からしめるためのものであり、従って規則の上だって、長官御存じのように、競争入札というのは国家財産の払い下げの場合のこれは原則ですよ。随意契約や指名入札というのは変則です。そのために三十億の国損が生じておるというのを、これは市場価格の把握の不適切によるのだというような変な理屈をつけて、そうしてこれが歪曲だという一つの例にとられる。そうして悪意に満ちた歪曲記事であるというのは、これを称して言っておるのだ。行政官理庁行政監察局の出してきたこのデータが実際そうなんです。今申し上げたように林野庁で三十億の国損を見たというのは、明らかにそうなんです。  そこで私は最後一つ伺っておきたいのですが、高田君の処分によって全官僚の萎縮する気分の方が、あなたの方でいろいろ御心配になって各省を検査するよりももっと大きいと私は思う。国家事務の停滞等で憂える現象が起きる。一人の馘首によって全官僚が萎縮するその損害の方が大きい。そこでさらに、しきりに山本委員が御心配になるから結論を申し上げますが、現在国家公務員法を見ても、懲罰にはいろいろ段階があります。これは先ほども同僚、先輩諸君から申し上げた通りです。それをあなたのところは高田君一人に対して極刑をもって臨んでおる、こういうことが全官僚に対するいわゆる綱紀粛正というよりか、事務の非能率化を来たす原因であると思うのですが、将来同じようなケース、発表ということは別として、このようなことが起きた場合に、いずれも極刑をもって臨むか、いわゆる悪意に満ちた批判というものはむしろ行政監察局長にあると思うのですが、これはあなたの立場としてそうであったとも言えないと思うのでありますが、将来同じようなケースができた場合に、常に極刑をもって臨むのか、こういう点を一つあなたからお伺いしたい。
  144. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 どういう場合がどういうふうな形で出るか、これに似たようなものだとおっしゃるが、その場合になってみないとわかりません。その出てきたものにつきましてケース・バイ・ケースで慎重に扱っていくつもりでございます。その方針は、今おっしゃったように、官吏というものの綱紀が粛正され得るという線で、そうなるようにしたいと思って私どもやっておるわけでありますから、その線を逸脱せぬようにして臨んでいきたいと思います。
  145. 坂本泰良

    坂本委員長 山本猛夫君。
  146. 山本猛夫

    ○山本(猛)委員 ぼくは長官以外の方にお尋ねいたします。まず基本的な問題につきまして榊原政務次官にお尋ねを申し上げます。昭和二十七年の訓令第十一号、すなわち監察業務運営要領、この第一条に「監察国民一般の福祉に即した公正な立場において、国の行政運営の改善目的として実施するもので、」云々とあるのでございます。そこで私は社会党さんがだいぶ時間をおとりになりましたので、具体的な問題を一つここで取り上げてお尋ねを申し上げてみたいのでございます。  まず第一点、今日では私どもの知り得る範囲では、物資需給の調整に関しまする法律というものは、もうなくなっていると思いますが、もしこの法律がなくなっておるといたしまするならば、この法律があるがごとくに装われて、行政官庁が誤まてる行政運用をやっていたといたしまするならば、あなたのお役所はこれに対してどういう態度をもってお臨みになりますか。まずこの基本的な問題を伺っておきたいと存じます。
  147. 榊原亨

    ○榊原政府委員 ただいま御指摘の法律はすでになくなっておると存じますので、かようななくなりました法律に準拠して誤まったいろいろな施策、行政ということが行われておりますならば、これは行政の誤まりあるいは不適正でございますので、これは指摘をいたしましてその改善方に努力をしなければならぬと考えております。
  148. 山本猛夫

    ○山本(猛)委員 それならば具体的な問題を一つ題材としてお尋ねを申し上げます。昭和二十九年六月八日付をもちまして食糧庁の長官から通達が出された問題であります。それは、昭和二十九年四月以降の精糖設備、すなわち新設工場に対しては、原糖に対する外貨の割当は認めないという通牒が出されておるのであります。ところがその後、そういう通牒が出されましたにもかかわりませず、昭和二十九年八月十一日に設立せられました四国精糖及び富国精糖の両製糖会社が、昭和三十年度の九月期から原糖の割当を認められておるのであります。かようなちぐはぐな問題が起っておりますが、こういうようなものに対しまして、先般も行政監察をなさるようにということを当委員会において要請をいたしましたが、その後どういうことになっておりますか伺いたい。
  149. 榊原亨

    ○榊原政府委員 先般も山本委員から、この問題につきましていろいろ御指摘がございましたが、ただいま年度の計画監察をやっている最中でございますので、ただいますぐに計画監察ということはできませんが、とりあえず情報がどうであるかということで、情報の収集を通達いたしまして、実態の把握に努めておるのであります。また年度が変りますというと、こういう問題につきましては御指摘のようにいろいろ問題があることでございますので、これはぜひ一つ監察の一翼として取り上げまして努力をいたしたいと考えておる次第であります。
  150. 山本猛夫

    ○山本(猛)委員 それでは事務次官にお尋ねを申し上げます。ただいまの政務次官のお答えでは、物資需給調整法という法律はなくなっている、従ってこれに類するものはあり得ないというお答えでございましたが、現実に食糧庁におきましては、かような原糖の割当につきまして、あたかも物資需給調整法があるかのごとくな態度をもって、かような統制を行なっております。これに関しましては、是とお思いになりますか非とお思いになりますか、それを伺っておきます。
  151. 岡松進次郎

    岡松説明員 お答え申し上げます。ただいまの御質問に対しましては、具体的の事例を承知いたしませんと、何ともお答えできませんが、抽象的にそういうような効力のなくなった法律に準拠してやるというような行政が行われております場合には、それは非常に間違った行政でございますので、監察するに当りまして、そういう事態が出て参りました際には、適当に勧告を行い、改善に尽す考えでございます。
  152. 山本猛夫

    ○山本(猛)委員 それではもう一つお尋ねを申し上げます。先般も当委員会お話申し上げたのでありますが、ただいまの事務次官のお答え、政務次官のお答えによりますと、さような誤まてる行政運営の結果が、先般申し上げましたが、たとえば名古屋精糖のごときは、昭和二十三年の八月五日に資本金わずか五十万円で発足いたしましたものが、数年ならずして十二億の巨大な資本金になって膨大な配当を年々行なっている。またただいまの配達をせられました夕刊の日本経済新聞の第三面を拝見いたしておりますると、日新製糖が九千万円の使途不明事件によって警視庁に幹部が検挙された、とこういうのでございます。これらはいずれも巨大な暴利を得られました結果がかようなことになっている。従ってわれわれはこういう保護政策の美名に隠れまして、誤まてる行政運営がかようなことを生んでいることに関しましては、ただいまも政務次官のお答えによりますると、まだその監察の計画に乗っていないとか、あるいはこれを乗せるべくただいま用意をしているとかいないとかいうような手ぬるいことでなしに、即刻にこの問題をお取り上げになる御意思はないかどうか、再び具体的に伺っておきたいと思います。
  153. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 議事進行について。ただいま山本委員の発言がありましたが、きょうは先ほどの理事会において、すでに高田茂登男君の「不正者天国」に関する件が取り上げらております。また参考人も現に呼ばれております。砂糖に関する問題はその他ということでございましたけれども、これは他日に譲りまして、当面待っております高田茂登男君を呼んで午前の議事の続行をお願いしたいと思います。
  154. 山本猛夫

    ○山本(猛)委員 私は一例として申し上げておるのであります。砂糖の問題を論議しようと考えておるのではございません。一例として申し上げて、行政運営の誤まりを指摘なさるといっているのであるけれども、現実においてこういう問題がありますが、これを即刻指摘をなさる御用意があるかないかということを伺っておるのでありまして、砂糖の問題をきょう取り上げておるのではございません。ですからどうかそのまま一つ継続を願いたい。
  155. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 ごもっともな話でございますが、前会も参考人を呼んでおきまして、夜中まで待たして、再々これを帰して当委員会が混乱を重ねた実例があります。私はよもや山本委員は達識の士でございますから、再び決算委員会を混乱に陥れようなんというような非望はお持ちではないと思いますので、この際御協力を願いまして、せっかく高田君もけさから待っておりまするので、できるだけ早く高田君を呼んで、その議事の進捗をはかられるようにお願いいたします。
  156. 坂本泰良

    坂本委員長 ちょっと速記をとめて。
  157. 坂本泰良

    坂本委員長 速記を始めて。  ではしばらく休憩いたします。     午後四時二十二分休憩      ————◇—————