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1958-03-19 第28回国会 衆議院 外務委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年三月十九日(水曜日)     午前十時二十三分開議  出席委員    委員長 床次 徳二君    理事 櫻内 義雄君 理事 須磨彌吉郎君    理事 森下 國雄君 理事 山本 利壽君    理事 戸叶 里子君 理事 松本 七郎君       植原悦二郎君    高岡 大輔君       並木 芳雄君    松本 俊一君       大西 正道君    田中 稔男君       中居英太郎君    原   茂君       穗積 七郎君    森島 守人君       渡辺 惣蔵君  出席国務大臣         外 務 大 臣 藤山愛一郎君  出席政府委員         外務政務次官  松本 瀧藏君         外務事務官         (アメリカ局         長)      森  治樹君         外務事務官         (欧亜局長)  金山 政英君         外務事務官         (条約局長)  高橋 通敏君         外務事務官         (移住局長)  内田 藤雄君         厚生事務官         (引揚援護局         長)      河野 鎭雄君  委員外出席者         外務参事官   三宅喜二郎君         外務事務官         (経済局次長) 佐藤 健輔君         農林事務官         (振興局参事         官)      大戸 元長君         水産庁次長   西村健次郎君         専  門  員 佐藤 敏人君     ――――――――――――― 三月十九日  委員勝間田清一君、田中織之進君及び西尾末廣  君辞任につき、その補欠として原茂君、中居英  太郎君及び渡辺惣蔵君が議長の指名で委員に選  任された。     ――――――――――――― 三月十八日  米沖繩高等弁務官布告による法令改正に関する  陳情書外一件  (第六二二号)  日中国交回復等に関する陳情書  (第六二八号)  北洋漁業安全操業に関する陳情書  (第六五二号)  沖繩地方自治権擁護に関する陳情書  (第七〇二号)  農業労務者派米事業促進に関する陳情書  (第七〇三号)  沖繩日本復帰等に関する陳情書  (第七〇四号) を本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  国際情勢等に関する件      ――――◇―――――
  2. 床次徳二

    床次委員長 これより会議を開きます。  国際情勢等に関する件を議題といたします。質疑がありますのでこれを許します。中居英太郎君。
  3. 中居英太郎

    中居委員 私は、主として日本中華人民共和国との漁業問題について、外務大臣並びに水産庁に二、三の点をお伺いしたいと思います。  御承知のように、日本中国との漁業協定は、現在民間同士協定で取り行われておるわけであります。同協定は、御承知のように一九五五年調印されまして、今日まで二度延長いたしまして、過去において中国との間に続出いたしました漁船拿捕あるいは乗組員抑留というような不幸の事態を防止しただけではなく、安全操業による漁獲の安定、あるいは台風時における緊急避難等漁業全体についての非常に大きな貢献をしてきたことは御承知通りであります。しかしこの協定は、本年の六月十二日をもって有効期間が切れるわけであります。そこで政府は、この際この日中の漁業問題を解決するために、政府間の協定をやる御意思があるかどうかという点を、まず第一番に伺いたいと思うわけであります。
  4. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 日中漁業協定は、お話のように非常に円満にスムーズに運行されております。従って今後期限が参りましても、引き続き民間協定でやることが適当だと考えております。
  5. 中居英太郎

    中居委員 この民間漁業協定内容を、もちろん政府では十分に知っておられると思うのでありますが、この協定の第九条の中には、すみやかに政府間の話し合いによる協定によって、この問題の根本的な解決をはからなければならないというようなことがうたわれておるわけであります。その九条に従いまして、今日まで過去二回、わが国民間団体から政府に対して、すみやかに政府協定に切りかえてもらいたい、こういうことを要請しておるわけでありますが、その際政府では、閣議の了解事項といたしまして、現在の情勢から見て、これを直ちに実現することは事情が許さない、こういうようにいって拒否して参っておるのでありますが、しかしこの政府が言うておる現在の情勢ですみやかにこの実現ができない事情がある、こういう回答はどういうことを意味するものであるか、率直にこの見解を披瀝してもらいたいと思うのであります。どういう事情があって実現ができないのか。
  6. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 現在日本中共政府承認しておりません。また従って中共政府相手にして政府間の交渉をこの段階においてやることは、私は不適当だと考えております。
  7. 中居英太郎

    中居委員 いや、もちろん現在日本中華人民共和国承認してはおりません。しかし承認していないから協定が結べない、こういうことは私はあり得ないと思うわけです。現に日ソ漁業問題も、日ソ間の国交が回復する以前に、わが国現実に即して日ソ漁業交渉というものを過去において締結しておる実績があるのです。従いまして、その国を承認するとかしないとかいうことには関係なく、この漁業協定というものを政府間において話し合いを進め、妥結に努力するということは、これは現在の情勢から見て、現実に即した賢明な道ではないかと思うのですが、重ねてお伺いいたします。
  8. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 現在の段階においては、政府として中共とこの問題を政府間レベルにおいて話し合いをしようという考えは、まだ持っておりません。
  9. 中居英太郎

    中居委員 そうすると、もし六月十二日で期限が切れた際に、中国側日本に対して、現在の民間協定再々延長する意思がないというような態度に出てきましたらどうしますか。無協約状態を繰り返して、また往時におけるような漁船拿捕というような不幸な事態を招いてもやむを得ない、こういう御見解ですか。そういう事態が起ったらどうあなたはお考えなんですか。それでも政府間で話し合いをする意思がない、こう答弁なさいますか。
  10. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 今日民間協定が円満に実行されておりますし、日本中共との関係は将来の問題でありますので、現在において私ども民間協定で円満にいっているわけでありますから、そういう意味において今後とも民間協定をやることを望んでおるわけであります。
  11. 中居英太郎

    中居委員 もちろんこの民間協定再々延長が、本年の六月スムーズにこれが行えれば、次善の策としてこれもやむを得ないと私は思うのです。しかし過去二回の延長の際における中国側の発言を聞いておりますと本年の再々延長は非常にむずかしいのではないか、こういう見通しを私どもは持っておるわけですが、この点外務大臣はどのような見通しを持っておりますか。
  12. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 民間協定お話のように円満にいっておりますので、中共側においても、民間協定の過去の経験というものを決して悪く考えているとは思っておりません。従って民間協定でも十分締結されるのではないかというふうに考えております。
  13. 中居英太郎

    中居委員 まあ民間協定がスムーズにできるかできないかということは、今後の推移に待たなければならぬ問題と思うわけですから、私はその点はそれじゃ質問をやめますが、ただ現在結ばれておる民間協定内容を見まして、政府は、日本側にとって満足すべき内容によって東海あるいは黄海における漁業問題が解決されておる、こう思っておるわけですか。
  14. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 内容のこまかい点につきましては、政府委員から答弁させます。
  15. 三宅喜二郎

    三宅説明員 現在までの民間協定内容を見ますと、政府にとりまして必ずしも満足でない事項があるわけでございます。そういったような意味から申しましても、内容的に申しましても、これを政府間の協定に振りかえるということは不適当であります。ことに現在は海洋に関する国際会議も開かれておる際でございますので、これに対する影響等考えまして、やはり民間協定によりまして日本民間業者が自主的に締結されていくという方式が適当であると考えております。
  16. 中居英太郎

    中居委員 そういう答弁はおかしいと思うのですよ。現在民間協定が大体満足すべきような条件のもとで締結されておるというような見解ならば、民間協定にまかしておいても私はいいと思うのですよ。しかしあなたも認められておるように、現在の日中民間漁業協定内容というものは、著しく日本側にとって不利な内容で結ばれておるわけです。従いましてこういう不利な状態をいつまでもいつまでも放任しておくということは、私は日本全体にとって必ずしも賢明な策ではないと思うわけです。そこで、政府間の話し合いによって、その不満足な点を是正するような努力をするということが必要なことではないか。そのためにも、この問題を政府が積極的にもっと取り上げて検討すべき段階にきておるのではないか、こういうことを私は申し上げておるわけですが、この点の見解はいかがですか。
  17. 三宅喜二郎

    三宅説明員 仰せのように、内容によりまして満足でない点があるのでございますが、さればといって、これを政府が取り上げまして、承認していない中国政府との間に交渉を行い、協定を結ぶということは、日本中共に対する根本政策からいきましてなお尚早であるというふうに考えられます。
  18. 中居英太郎

    中居委員 そのどういう点で是正すべき点があると思っておるのですか。内容に必ずしも満足な点がないと言うのですが、おもなものを二、三あげてもらいたい。
  19. 三宅喜二郎

    三宅説明員 たとえば軍事禁止区域というようなものにつきましては、全然その地域に入ってはいけないということであります。軍事警戒区域につきましては、それに入るならばみずからの危険において入るべきである、実際上は入れないというような内容がございます。それからまた調整のための規制区域につきましても、日本側にとって不利な点があるというふうに考えられます。
  20. 中居英太郎

    中居委員 この内容の点について一々申し上げると、非常に時間がなくなりますから、私は申し上げませんが、ただ政府でも認めておられるように、現在のこの漁業協定というものは、漁業協定の最近見られる資源保護という原則よりも、ただ海上において頻発した拿捕事件というものを、何とかして解決しようという安全操業一点張りで結んだ内容であります。従いまして、その面における目的というものは、ある程度私は達しておると思う。拿捕事件の問題は目的を達しておると思う。しかし根本精神であるところの資源保護という点については、何らこの内容は触れていないわけです。従いまして、拿捕をのがれるために、中国の一方的な主張をのまざるを得ない。こういうような内容によって締結されておるのが本協定であるわけであります。従いまして、日本政府は、資源保護という立場からこの問題を取り上げて中国政府話し合いをして、そうしてわが国漁業の将来を誤まらないような処置をとることが賢明ではないか、こういうことを私は申しておるわけであります。昨年協定延長に当りまして、わが国民間団体は、不平等な個所についての修正をいろいろと中国漁業協会申し入れをしておるわけであります。ところがこれに対する中国側回答は、協定民間協定なんだ、従って中国漁業協会としても中国政府の設定した禁漁区域の変更ということについて発言することはできないんだ、また日本民間団体にしたってその通りなんだ、日本政府がかくかくの個所は不平等であるから、あるいはどうしても納得することができないからというようなことで中国政府申し入れをして検討すベき問題ではないか、こういうことを中国側が発言しておるわけであります。従って私は、この問題をただ単に安全操業の問題にとらわれないで、さらに積極的に魚族資源保護というその根本的な問題にまで触れて協定を結ぼうとするには、どうしても政府間の協定としてこの問題を取り上げなければならない、こう主張するわけでありますが、この点についての見解を承わっておきたいと思います。
  21. 三宅喜二郎

    三宅説明員 仰せ通り、公海におきます漁業規制につきます日本根本方針は、科学的な基礎に基いた魚族保存のための共同措置、また漁業紛争のための共同措置協定によってやっていくというのが根本方針でございます。しかし、そういう内容におきまする協定を結びますと、やはり相手国中国政府承認するというようにとられますので、現在といたしましては、先ほども仰せのように、みずから拿捕を防止する、拿捕せられました場合に、相手国政府承認しておりませんから、外交交渉によってこれを解決するということもむずかしいことになりますので、みずから拿捕事件が起らないようにという点から、しかし向う規則に直接従うのじゃないので、向う規則で定めたような内容を、日本業者がみずからの措置として自主的に守って、そしてその間に紛争が起らず、拿捕されないようにという実際的な方法を講じております。現在の中共不承認段階においては、それでも不満足であるけれどもやむを得ないというふうに考えておる次第であります。
  22. 中居英太郎

    中居委員 中国承認の是非の問題は、これは別問題ですから申し上げませんが、ただ現在の日本中国との関係の中で、政府中国に対して協定申し入れをしている事実があるんですよ。事漁業の問題に関してだけは、国交回復云々に籍口してこれをやろうとしてない。現に郵政省では電波協定を結ぼうという方向まで打ち出しておるわけです。気象協定も結んでおります。政府間で他の機関が現在の日中の関係の中において、可能な限りこの問題の解決をはかろう、こういう線を出しておるとき、ひとり外務省や農林省だけが国交問題に籍口してこの問題を放置するというのは、これは許されない怠慢ではないか、こう思うわけです。百歩を譲りまして、現在のあなた方の説に譲歩するといたしましても、民間の取りきめである限り、民間同士で結んだ協定内容を誠実に実行するということは不可能になっております。現に一年間百隻以上もの日本漁船禁止ラインを突破して、中国政府拿捕されておるのです。もちろん帰っては来ておりますが拿捕されておる。そうしてそういうことが頻発するので、中国政府では、民間協定によってはこの問題の解決をすることはできない、そういうことが原因して本年の再々延長というものについて、中国側が非常に渋った態度を示しておる、こういう情勢にあるわけでありますが、この点について外務大臣ほどのようにお考えになりますか。
  23. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 気象協定のような、特に技術的な問題について、承認の道に直接関係のないものにつきましてはむろん技術的にそういう問題を取り上げることになろうかと思いますが、しかしながら、漁業の問題というような問題になりますと、かなり大きな、両国の政治的な問題にもなるわけであります。そういう意味において、現在の段階では、まだ政府間の折衝をする段階ではない、こういうふうに考えております。
  24. 中居英太郎

    中居委員 それならば、根本的な漁業協定というものは民間にまかしても、これの実際的な実施運営についての協定を結ぶ意思がありますか。たとえば海難救助協定についての両国間の取りきめ、こういう純技術的な問題についての話し合いをする御意思はありますか。
  25. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 純技術的な問題について話し合いをするということは、今申し上げましたように、気象問題等でやっておりますので、どの程度が純技術的であって、どの程度がそれを越えておるかというような問題については、それぞれ今後研究しなければならぬと思うのでありますが、そういう意味において純技術的な問題の取りきめは進めて参りますが、しかしそれ以上にわたりますようなものにつきましては、われわれとしては現在の段階でいかない、こう考えております。
  26. 中居英太郎

    中居委員 大体日本政府考え方が明らかになって参りましたが、根本に触れるところの条約あるいは協定というものは、現在の段階ではできない、こういうことですね。ただこれの実施運営に伴う必要な技術的な点については、話し合いをする意思がある、可能だ、こういうことですね。私は先ほど申し上げましたように、台風時における緊急避難の際における取りきめ、あるいは海難救助の取りきめ、あるいはまた制限海域共同管理の問題、こういう技術的な点についての話し合い検討の余地がある、こういうことで了承していいわけですね。
  27. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 ただいま申し上げましたように、この漁業協定実施について、どういうのが技術的であるかということは、十分研究してみませんければならぬわけでありますけれども、技術的な、たとえば気象というような取りきめをやっておるような意味においてのものならば、そういう取りきめをいたすことはできると思います。
  28. 中居英太郎

    中居委員 台風時における中国の港への避難というようなことは、私は政治問題じゃないと思うのです。これは純然たる人道問題だと思うのです。ところが現在のような民間同士の取りきめでは、台風時においても当然救助されるべき、あるいは避難できるような状態に置かれておりながら遭難にあっている、こういうような事例を私どもはたくさん見ておるわけです。大体一年間に二百数十隻の船が、台風時において中国の港に避難をしておる。しかしこれは手続を踏まないので、あとで高額な罰金を課せられる、あるいは非常に連絡が困難であるために、避難すべき処置をとることができないで沈没したとか、こういうような問題が現に起きておるわけです。従って、事こういう海難救助の技術的な、あるいは人道的な問題については、すみやかに本協定とは関係なく、中国政府話し合いをして、問題の解決に当ってもらいたいと思うわけであります。  さらに、私がこの際もう一つお尋ねしておきたいことは、昭和二十二年からこの民間協定ができる昭和三十年までの間に、大体五百隻の日本船中国拿捕されております。そうしてそのうち百四隻の漁船がまだ帰ってきてないのです。聞くところによると、中国政府がこの漁船を没収したというような話も私は聞いております。あるいはまた、人によっては、中国政府はその漁船処分をまだ保留状態、白紙の状態に置いておるのだ、そして日本政府から何かの話し合いのあることを期待しておるのだ、こういうことも私ども聞いておりますが、この問題について、政府中国政府にどのような話し合いをなさったことがありますか。
  29. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 水産庁次長が来ておりますから、その者に答弁いたさせます。
  30. 西村健次郎

    西村説明員 私、今はっきりした数字承知しておりません。
  31. 中居英太郎

    中居委員 数字ではなく、政府がどのような折衝をしておるのですか。まだ帰ってきてない百四隻の漁船処置について、どういう考えを持っておるのですか。数字はどうでもいいですよ。
  32. 三宅喜二郎

    三宅説明員 その点は申すまでもなく、中共政府との間に外交関係がございませんので、折衝することができない状態でございます。
  33. 中居英太郎

    中居委員 政府が公式に表玄関からそういう折衝はできないでしょう。しかし裏口を通して非公式に、そういう問題についての照会あるいは調査というものは当然あるべきだと思うのですが、そういうこともないのですか。放置しっぱなしですか。
  34. 三宅喜二郎

    三宅説明員 それは、非公式にも別にやっておりません。
  35. 床次徳二

    床次委員長 中居君、申し合せの時間が近づきましたから……。     〔「これは大事なことですよ。申し合わせの時間なんか問題じゃない」と呼ぶ者あり〕
  36. 中居英太郎

    中居委員 私どもが聞いてみますと、私どもはもちろん外交権を持っておりませんからですが、非公式に私どもが聞いてみるところによると、向うでは処分保留をしておるのですよ。処分保留して、日本政府から何かの問い合せがあるであろうということを期待しながら、五年も十年も向うでは待っているのです。それを公式、非公式のいかんを問わず、日本漁船が百数隻も拿捕されて、向う抑留されおるというような事態を、五年も十年もそのままかまわないでおくということは、政府の怠慢ではないのですか。今からでもおそくはないのですが、正式に中国政府に対して、いまだ帰ってきてない漁船の返還あるいは処置についての交渉をすべきだと思うのですが、どうですか外務大臣
  37. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 民間からもそういう要望がないわけでありますが、今後それらの問題についてよく調査をいたします。
  38. 中居英太郎

    中居委員 その漁船処置については、すみやかに、政府では、どのような方法でもいいですから、交渉してもらいたいと思うのです。これは別な話ですが、ソビエト抑留されて、現在帰ってきてない漁船が百十四隻ありますが、これはソビエト外務省を通じて私どもが聞いたところによると、正式に裁判に付されて没収されておるのです。そうしてすでにこれは国内的にコルホーズに売却処分されておるのです。従ってこの問題についての方法ということは、これは賠償を請求するなり、あるいは現在外交関係があるわけですから、正式に交渉もできると思うのです。しかし中国ソビエトとは別なんです。中国では処分されてないのです。裁判にもかけてない。そうして中国では、中国漁船が足りないから買い取ってもいい、適当な価格で買収してもいいのだ、こういうことも言っているわけです。従ってこの問題はすみやかに政府において正式に取り上げて、方法いかんを問わず交渉を進めてもらいたい、こう思うわけです。  それからもう一点だけお伺いしておきますが、この中国との間あるいはソビエトとの間、あるいは韓国との間に、今日まで非常に多くの拿捕事件が惹起し、船員抑留されたという事件がありました。しかしこの拿捕された船員に対して、保険加入者は別として、未加入者に対して、韓国抑留された漁夫にだけ政府見舞金あるいは手当金というものを支給しておる。そうしてソビエト関係抑留者あるいは中国関係抑留者に対してはびた一文出していない。この点を私は先般予算委員会で聞きましたら、赤城農林大臣は、中国関係あるいはソビエト関係は数が少かったから出していないのだ、こういうことを申しております。しかし数が多いとか少いとかいう問題ではないと思うのです。韓国抑留された漁夫よりも、あるいはもっと悲惨な生活の状態にあるのがソピェトに抑留された漁夫家族であるかもしらぬです。中国抑留された漁夫家族であるかもしらぬです。しかも韓国抑留された漁夫に対しては、政府手当を支給するという態度をきめてから遡及して支給しているのです。昭和二十六年から抑留されておる者に対しては、その昭和二十六年にさかのぼって、月額手当一万五千円、未加入者月額一万円を支給しておる。従って中国関係抑留された漁夫ソビエト抑留された漁夫のうちで、保険に加入していない人たちに対しても当然同じような国内措置をとるべきではないか、こういうことを私は申し上げたいのでありますが、この点について、赤城農林大臣検討してから善処する、こういう答弁でしたが、その後この問題についての検討はどのように進んでおりますか。現在どういう結論を得ておりますか。
  39. 西村健次郎

    西村説明員 今中居委員お話抑留漁夫一人々々というものを比べますと、お話のようなことがあるかと思います。私の方といたしましては、赤城農林大臣がすでに答弁されましたように、現実の問題としまして、たとえば北洋につきましては、責任者である船長を残してあとはすぐ帰すというようなことで、実態は非常に違っておる。韓国の場合と相当違っておるというようなこともありまして、現在のところ何ら援護の——見舞金等を出す措置はとっておりません。今後につきましてどういたしますか、その点につきましては、いまだ何ら決定をいたしておりません。
  40. 中居英太郎

    中居委員 私は今後の問題を聞いておるのじゃないのです。過去において抑留された漁夫に対してどういう処置をするのか聞いているのです。韓国漁夫については遡及して支給しているでしょう。ソビエトに半年あるいは一年抑留されて帰ってきた漁夫は、帰ってきたからいいんだということでは、私は済まされないと思うのです。当然遡及して支給すべきではないか、こう思うのです。
  41. 西村健次郎

    西村説明員 私の申し上げ方がちょっと悪かったと思います。私の申し上げるのは、今後と申します意味は、これに対してどう処置いたすかということについてまだ決定いたしておりません、こういうことを申し上げたわけであります。
  42. 床次徳二

    床次委員長 須磨彌吉郎君。
  43. 須磨彌吉郎

    ○須磨委員 簡単にお伺いをいたしたいことが二件ございます。一つは、日中貿易協定に関連いたしまして、台湾政府は何らか非常に強い態度をとるという新聞報道がありますが、その新聞報道と相待って私が聴取したラジオ放送によりますと、台湾の部内においては日本との商売をこれからとめるということも一つあるそうですが、中には非常に強硬なる議論として行われておることは、こういうことがだんだんと現実に行われてくるならば、日本との国交を断絶することが必要であるという強硬論が相当有力なる人から発言されておる、こういうことを聞き及んだのでございますが、さような国交断絶というようなことは、これはあり得ないことだと思いますけれども、いやしくもいかなる国からも国交断絶を受けるというようなことは、これは外交上の重大問題でございますので、大臣のお手元に参っております情報等、あわせましてその対策及び模様について伺いたいと思うのであります。
  44. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 台湾においていろいろ意見がありますことは、公電等においても承知いたしております。むろんたいまお話のありましたように、一部には最強硬論というものもあるようであります。それから一部には反対論ではありますけれども、今最強硬論というところまでいっていないような議論もございます。日中貿易そのものにつきまして、日本の貿易をやらなければならぬという立場は、暗黙のうちに了解はしておるようでありますけれども、しかし何か国旗掲揚その他の問題については相当強硬な意見があるようでありまして、これらの問題につきましては十分情報等もとりまして、今後われわれが考えていくべき問題だ、こう考えております。
  45. 須磨彌吉郎

    ○須磨委員 いま一つお伺いいたしたいことは、わが日本の諜報施設が、きわめてもう裸に世界にわかっておるということは、これは争いがたい事実でございます。しかるに私はきょう実は持ってくる資料を忘れて参りましたけれども、少し古いものではございますが、十一月の十一日付になっております御承知中共で最も大きな新聞の一つの大公報という新聞がございますが、その大公報の通信によりますと、これは驚くべき事実と私は考えたのでございますが、日本の外交文書並びに外務省の機密書類というようなものが、最近において北京図書館の入手するところとなって、これは買い入れたそうでありますが、きわめて詳しく書いてあります。これは値段にいたしますと八万七千元、ドルに直して四万米元となっておりますが、こういう値段をもちまして日本の明治から昭和に至るものが二千一百巻、昭和から最近に至りますものが八百四巻、さらにまた昭和の文献がほかに七百二十二巻、そのほか雑報が百六十四巻、また専門的な報告としては百八十五巻、この巻と書いてありますのがどれだけの厚さであるかわかりませんが、その叙述によりますと、外務省における公文書、そういうものに朱をもって筆を入れた原稿まで入っておると書いてあるのであります。これは現物を見なければとうていわかるわけではございませんが、相当長い通信をもちましてかような内訳をいたしまして、わが日本の重要書類が最近入手された、しかもそれはそれだけの巻の数のものが入ったのみならず、その他フィルムとして映写いたしました、これに関連する重要物件も入っておる。こういう相当詳しい通信があるのでございますが、外務当局においてはこれにお気づきになっておりますか。まずそれからお伺いいたしたいのでございます。
  46. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 私としましては、ただいまのお話は初めて伺うわけでありまして、日本外務省の文書が、今の記述によりましてどの程度のものであるか。過去において明治以来といいますか、明治以後といいますか、相当有力な方々が筆を入れられたような文書が古文書的に出たものであるのか。あるいは現実の外交文書としてのような種類のものが出たものでありますか。それらをなお十分そういう点についてはつまびらかにいたしておりませんので、今日何とも申し上げかねるわけであります。しかしながら外務省の公けの文書が、そういう形において市販されるということは、私はあり得ないことではないか。当時の外務卿その他がいろいろ残されましたものが出たのではないかというふうに考えますけれども、そのものにつきましてはっきりしたことを存じておりませんので、申し上げかねます。機密保持については、省内十分注意いたすように再々申しておりますので、今日そういうことがあろうとは考えておりませんけれども、なお今後ともそういう問題につきましては、十分注意をして参りませんといけないということを感ずる次第でございます。
  47. 須磨彌吉郎

    ○須磨委員 私もただいまの大臣の御答弁のようでありたいことを念願いたしておりまして、何も現実関係のあるものでないことを希望いたしておるのであります。むろんこの内容がわかりませんから、はっきりいたしませんが、ただここで一般的に申され得ますことは、今のお言葉の中にもちょっとありましたのですが、わが日本の情報、諜報というものを守る法律も何もございませんし、そのままでずるずると出ておりますことは、私ども想像にかたくないことであります。そういう場合において、こういうような新聞記事を見つけましたことは一つの機会にすぎませんのでありますが、これは私どもこれからよほど注意に注意を重ねませんと、大へんなことだと思うのであります。それと同時に、これを特に私が問題にいたしたいことは、最近私どもは国会活動の中で、あるいは私ども委員会等において話をいたした——公開いたしておることはもちろんでございますが、公開いたしておりませんことでも、新聞紙上等に出ましたり、外国通信員の通信の内容となって出ていることはしばしばあることであります。こういう点におきましては、何も秘密主義ということではないのでありますが、いやしくも外交というような国家の重大案件を扱います根本的な基礎というものは、申すまでもなく機密を要するものが非常に多いことは、これは各国通じてのまた古今を通じての原則であるわけであります。この点においては、今のお言葉にも十分これには注意を払っておると申しておられたのでございますが、こういうような記事が、今日まだ国交を開いておりません中共でございますから、私どもの手に入ります情報等はきわめて少いのでありましょうけれども、これについては香港総領事館等において、特にこういうようなことについての注意をする施設があることを、昨年の予算討議の際から承わっておったのでございますが、その内容等についてもこの際承わっておきたいのであります。国交のない国の中におきます情報並びに諜報についても、十分な注意を払って調査をいたすとともに、手当をしなければならぬのでございますが、そういうものについてはいかなる手当を今日までしておられますか、こういう機会に承わっておきたいのでございます。
  48. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 政府委員より答弁いたさせます。
  49. 松本瀧藏

    松本政府委員 先ほど須磨委員からもお話がございましたので相当こまかく御説明申し上げますと、誤解を招く面もございますが、予算の許す範囲内におきまして、たとえば中共の情報でしたならば、中共から香港経由でお帰りになる方々からいろいろな事情を聞いたり、あるいは外国の新聞記者等あたりが香港に立ち寄りましたときにいろいろと話を聞いたり、あるいはできる限りの資料を手に入れまして報告しておりますが、それ以上こまかく、どういう工合にこういう手を打ってやっているというようなことを申し上げることは、いろいろと差しさわりがあると思いますので、この程度の説明で一つかんべんしていただきたいと思います。
  50. 須磨彌吉郎

    ○須磨委員 これは話題が違うのでございますが、最近の国際情勢の中で一番目立って参っておりますことは、申すまでもなく頂上会談でございます。これはしかし海のものか山のものか一向わからぬのでございますが、いやしくも頂上会談が開かれるということになりますならば、一番の大きな命題は平和であると思うのであります。私ども日本というものも、何にも増して平和というものには非常に精神を込めて邁進しなければならぬことでございますが、そこに持ってきまして、わが日本は国連に入っておるのみならず、非常任理事国という席をば安保理事会において占めておるわけでございます。また、何も自負するわけではありませんが、東洋における一国として非常に勉強いたしておるわけでありましょう。そういたしますならば、この平和というものの根本的な条件が論議されるであろうところの頂上会談が開かれるような場合におきましては、もちろんわが日本といえどもいろいろな手段を用いまして、平和のために日本が貢献する場合は貢献する、あるいは平和に一つの障害となり得るような関係がわが日本との間に存しておるならば、これを除去するために努力するということは当りまえのことでございますが、さようなことにつきまして外務当局においては前広にそういうようなお取扱いになって、すでにいろいろな問題について考究を遂げておらるるかとも思うのでありますが、これはたとえば今日問題となっております日ソ漁業交渉の問題でございますとか、日韓の問題でございますとか、その他あげますならば幾多の平和に関連する問題があるわけでありますから、そういう問題を、その角度を頂上会談というピントに合わせつつ、そういうような御計画等をなされておりますでございましょうか、お差しつかえない限りその御抱負を承わりたいのであります。
  51. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 頂上会談が開かれますことをわれわれは希望もし、期待もいたしておるわけであります。頂上会談のことでありますから、非常にこまかい問題が全部取り上げられるとも思いません。結局はやはり軍縮問題を中心にした核兵器の問題、あるいは核実験の問題というような問題に重点がしぼられていくものではないかというふうに考えております。それらの問題につきましては、われわれとしてはぜひとも、少くも核実験の禁止、進んで核兵器の使用の禁止、またそれを基礎にして、頂上会談において将来軍縮会議が円満に開かれる——今日国連における軍縮会議はソ連が参加を拒絶しておりますが、そういうことでなく、ソ連が参加するような方向によって、軍縮委員会等が十分に進行していくというような問題について、いろいろな日本側考え方というものを準備し、それぞれの外交ルートなりあるいは国連代表部を通じて、日本の意向を各国に打診をいたしております。また各国がどういう問題を取り上げるかというようなことについても、打診もいたしておるような次第でございます。
  52. 須磨彌吉郎

    ○須磨委員 よく御趣旨は了解いたしましたが、たとえばその議題をきめることが先決であるということが関係国の間に論議され、書簡の往復等があるわけでありますが、そのうちで一つ思い出されますことは、東西両ドイツの統一問題、こういうことが一つの前提であるというようなことをばこの二年前の頂上会談と申しますか、巨頭会談以来の宿願といたしている様子であります。これもまた論議の的となっておりますが、今お話のような核実験でありますとか、核の問題でありますとか、軍縮の問題であるというようなものは、当然これは入るのでありますけれども、そのほか日本の独自の問題として、東洋の平和を害することあるべき要素について日本が顧慮する、心配をすることは当然のことでございますから、一つ私どもの伺いたいことは、与えられたる軍縮問題といったことのみにとらわれず、わが日本として東亜の地位にありますこの地位から、当然生じてきます特殊の固有の問題についても御準備等をなさることは、私は必要ではないかと実は考えるわけでありますが、そういうような御用意もあってか新聞に散見したのであります。アジア外相会議も招集してみるかもしれぬというようなお言葉も新聞に見えたのでありますが、こういうものと関連いたしまして、そういう特殊な問題をお考えになっておられますか伺いたいのであります。
  53. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 もちろん頂上会談が開かれます場合に、ドイツがヨーロッパの問題として両独の統一ということを提唱するだろうと思います。議題としてこれが取り上げられるか取り上げられないかは今後の問題だろうと思いますが、当然ドイツからそういう問題が持ち出されるのではないかと思います。日本といたしましても、むろんアジアにおける平和の問題につきましては、非常に関心を持っているわけであります。ただお話のような頂上会談のことでありますから、あまり日ソ関係とかいうようなこまかい点に言及いたしましても、これが議題となる可能性は少いと考えるのでありまして、広範囲な意味におけるアジアの安定というような問題については、われわれとしても当然研究をして、それらの話し合いの一つの話題としてもらいたいということを考えております。
  54. 床次徳二

  55. 原茂

    ○原(茂)委員 三点外務大臣並びに厚生省の援護局長もおいでになっているようでございますからお伺いしたい。  まず第一に、農業労務者の、特にアメリカのカリフォルニア州に対する派米を行って参っておりますが、その実情について一点お伺いしたいわけです。現在まで派米協議会が主体になりまして、農業労務者として加州に対する派遣が行われて参ったと思うのですが、その今日まで派遣されました内容、それの外国における状況、これを一つ先にお伺いしたい。
  56. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 政府委員より答弁させます。
  57. 内田藤雄

    ○内田政府委員 今お話の派米短期労務者の問題は、一昨年の七月ごろから送出が行われて、最後には昨年の五月になったと思いますが千名を送ったわけでございます。その条件等につきましては、大体一時間の賃金が九十五セントないしたしか七十五セントと、これは地域などによって違いますが、そういう条件と、ある一週間の間に一定時間に必ず労働をさせる。また同時にある限度以上には労働させないというように伺っております。また居住等につきましてもある一定の基準がきめられておるのでありますが、現在までのところそういう契約が守れなかったというような意味での問題は起っておりません。ただ実際問題といたしまして、参りました人が、これは個人々々でいろいろな希望あるいは期待を持っておったのでございましょうが、そういうようなことが必ずしも満たされないというようなことから起りました、不満あるいはトラブルというものはないわけではございません。先に参りました中で二十名が帰ってきております。しかしその大部分は両親がなくなったとか、いろいろな家庭的な個人的な事情によるものであります。その中の七名がただいま申し上げましたような一種の紛争と申しますか、トラブルによって帰ったものでございます。その内容は冒頭に申しましたように、必ずしも契約違反というわけではないのでありまして、ただある農場に相当日本人が、そこがかえっていいところだというので、割合に多く集まりまして、与えられた労働時間が比較的少い。むろんこれは契約を下回るものではないのでございますが、その時間が少いといった関係で、収入も思ったようにないといったことから、ほかの農場にかわりたいというようなことを申し出ましたが、それがうまく参りませんで、結局七名の者が日本に帰ってきたというケースでございます。しかし聞くところによりますと、その人々も今では後悔しておって、やはりとどまっておった方がよかったということを漏らしておるのでございますし、そうでございますから、必ずしもこれが本質的な意味で、非常な障害になるようなケースとは考えておりません。
  58. 原茂

    ○原(茂)委員 大臣にお伺いする時間が何か途中で半端になるようですね。
  59. 床次徳二

    床次委員長 大臣になるべく……。
  60. 原茂

    ○原(茂)委員 事務的な選考の方法等に関してはあとでお伺いします。大臣にお伺いしたいのは、現在あちらに行っております労務者が、実際には最初の契約の内容等がよく理解されていないために、今報告のあったような内容以外のトラブルを非常に多く起しておる。今その御説明がなかったのですが、たとえば御承知だろうと思いますが、この労務者があちらに参りますには協定がある。その協定には、要するに、アメリカの農業の最も進歩した技術を修得する機会を与えることを目的とすると書いてある。そのためにこれを前段としての協定を結んでいっておるわけなんです。その内容にふさわしい労務者の作業内容であるかどうかということを御調査になったことがあるかないか。ここから大きなトラブルが起きておるのですが、この点御調査になったかどうか。
  61. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 派米青年の短期農業者にトラブルがあったということは、石黒先生あたりから聞いてはおりました。ただしかし、その詳しい内容については聞いておりません。当時私が石黒先生等から伺ったのでは、やはり向うに行って、いろいろ最初に予想したよりも若干違っていた。それから生活環境等が困難であるので、初め六カ月くらいはどうしてもいろいろな意味において、向うの習慣にもなれない、いろいろな意味において食い違いが起ってきておる。そういうことのために不満が大きい。いろいろな意味で問題が起ったのであるけれども、だんだん落ちついてくるに従って、これは解消してくるだろうというような、総括的な話は実は伺っておったわけであります。こまかいそういうような点につきましては、私内容を深く伺っておらないのであります。
  62. 床次徳二

    床次委員長 原君、はなはだ恐縮でありますが、大臣は参議院の関係がありますので、十分ばかり中座させていただきまして、その間事務当局の方に御質疑をいただければ幸いだと思うので、差し繰っていただきたいのですが……。
  63. 原茂

    ○原(茂)委員 それでは当局にお伺いしますが、今の派米農業労務者の選考の仕方をまずお伺いしたい。それが一点、それから現在まで行っております数、おそらく一昨年選考を終って行った者だけで、昨年は正式には派米されていないと思うのですが、その数字も一つ一緒にお願いします。
  64. 内田藤雄

    ○内田政府委員 選考に関連をいたします問題は、こちらに農林省の方がお見えになっていらっしゃ、いますから、あちらから御答弁願うことにいたしまして、今の後段の御質問に私からお答えいたします。  先ほど申しましたように、三十一年度の分は昨年の五月までかかりましたが、とにかく一千名出ました。その次年度の千名の分につきまして問題が起ったわけでございます。その問題と申しますのは、必ずしもわれわれ日本側にとりまして不利な意味で起ったわけではございません。一つには労働組合などの反対ということも動機ではございましたが、ともかくいろいろ調査してみますと、必ずしもアメリカ側の農場主のやっているやり方あるいはその条件等が、本来のただいま御指摘になりましたようなこの事業をやる趣旨に合っているかどうかという角度から、いろいろアメリカ内部の問題になりました。国務省あるいは向うの法務省に属します移民局あたりが、むしろ参りました青年たちの利益を擁護する意味において、いろいろな注文を農場主に出したのでございます。われわれといたしましてはもちろん青年の利益になることでございますから、できるだけそういう国務省なりあるいは移民局の主張が通ってもらうことを一方では希望いたしておりましたが、同時にこれがなかなか農場主側の受け入れるところとならない。そのために非常にごたごたいたしまして、約八カ月ほどが徒費されたと申しますか、時間が立ってしまったわけであります。ようやく最近に至りましてその話し合いがつきまして、大体一般的な意味においてはまた受け入れの態勢ができたわけでございます。今後の問題は、現実にその農場主が自分の農場では何人の労務者がほしいということをアメリカの国務省に申請するという段階でございますが、他方その後アメリカの景気が頭打ちになったとかいろいろなことで、カリフォルニアに相当失業者が出ておる、そんな関係から、労働組合などで外国労務者の受け入れに対して反対運動、プレス・キャンペーンなどが行われておるという関係で、今すぐ日本人の労務者が受け入れられるようなそういう申請が行われるかどうかまだわかりませんが、しかし大体の見通しとしては、農繁期になりますれば、おそらくやはりそういうことがまた問題になって、大体千人くらいの者は本年中には送られるのではないか、そういうように考えておる次第であります。
  65. 大戸元長

    ○大戸説明員 選考につきましては、派米協議会が主体となりまして、農林省が監督等をいたして行なっておりますが、先ほど外務省から御答弁がありましたように、三十一年度につきましては千人を送りました。それの選考につきましては、三十一年の七月ごろたしか向うが受け入れるということがありまして、直ちに選考を開始しまして、第一回の送出が九月でございましたので、これは非常にあわただしかったわけでございます。もっとも一ぺんに全部千人の選考をしたわけではございませんで、二回に分けて行なっております。そこで選考の経過といたしましては、ます各府県にあります海外協会と、それから農友会というのがございますが、これが募集をいたしまして、そうしてそれの推薦で県知事に申請書が提出されるわけでございます。それを県におきましてまず書面申請で資格者に限って認めるわけでございます。資格といたしましては、年令二十才から三十五才までの男子であって、農業の経験がある者、それから身体が強健であって、一定の病気を持っていない——これは診断書によるわけでございますが、それから思想堅固であって、極左あるいは極右の思想を持っていない者というわけでございます。こういう基準で書面選考をいたしまして、それから面接選考をいたしますが、この面接選考には農林省からも参りまして立ち会いまして、県で一応候補者をきめてそれを中央の派米協議会において最後に決定するわけでございまして、派米協議会が決定いたします場合には農林省も立ち会ってやっております。それからその選考におきまして、千人を約一割上回る数字を一応とりまして、それからその後の再審査あるいは訓練の過程において落ちてくる者ができて参りますので——現にそういう者が昨年おりまして、そういう経過をたどって千人を送ったわけであります。
  66. 原茂

    ○原(茂)委員 今の御説明は、まず選考するのに基準はこういう基準だ、それから選考する機関はこういう機関だという御説明があった。では、もう一つ違った面から選考するときに、あるいは逆に募集をするときに、実は派米された後の仕事の内容はこういうものだということを徹底的に普及するような何か方途を講じているのかどうか。労務者自体があちらへ行ってから話とはだいぶ違うというふうにがっかりするわけです。ここに大きな問題がある。ですからむしろこういった募集を行う場合には、選考をする基準等でピック・アップすることだけにいろいろな努力をしないで、もっと突っ込んであちらへ行って戸惑うことのないように、あちらへ行ってからの作業内容あるいは契約の条件等を詳しく周知徹底せしめることが一番大事なんですが、そういう機関またはその方法をどういうふうに講じてきたのかをお伺いしたい。
  67. 大戸元長

    ○大戸説明員 今の御指摘の点、第一回のときにはこういう契約内容であるということも印刷物にいたしまして配付いたしておりまして、それに応じてやって参ったのであります。それから選考後訓練期間がございますが、その訓練期間中にもそのことは十分言ってあったわけでございますが、何しろ第一回でございますのと、それから先ほど申しましたように、非常に期間があわただしかった点で、あるいはその点で徹底を欠いた点があったために、御指摘のようなことが起ったのではないかというふうにも考えられますので、その後の選考につきましては、三十二年の選考でございますが、これは六百人ばかりすでに選考をしておるのでございます。この分につきましてはその点は十分に第一回の点を考慮いたしまして決定いたすようにいたしておりますが、第一回の点については、あるいは非常に急でありましたことと、それからこの問題をお取り上げになりまして新聞なんかは非常に書き立てまして、何か行ってすぐ百万円になるようなことを書き立てましたので、あるいは応募した者の中にそういうことで迷わされると申しますか、そういう意識を持って、安易な気持で行った者があるいは多いのではないかというふうにも懸念いたすわけであります。
  68. 原茂

    ○原(茂)委員 その百万円だなんという経済的な問題がトラブルの中心になっている例は、実はほとんどないのです。そういうことじゃなくてもっとほかに問題があるのです。この第一回のときには印刷物あるいは訓練期間中に知らせるという努力に欠けるものがあったかもしれないが、三十二年の約六百人の選考済みになった者に対しては、前回のあれを生かして十二分に徹底してやる、こうおっしゃるのですが、この十二分に徹底するための印刷物の中で、中心になるものをどういうところにウェートを置いているのか、それから訓練期間中に十分知らせるというのですが。何を十分に知らせるようにしているのか、二、三点ずつでいいですからそれを一つ……。
  69. 大戸元長

    ○大戸説明員 向うへ行っての労働というものが、労働の質が違う。非常に単純労働で、日本の労働とは非常に質が違うというようなこと、従って日本でやるよりも非常につらい労働であるというような点、それから時間的にきわめて制約されますと申しますか、働く間はほんとうにこき使われる。働く時間内は非常につらい労働であるというような点を、これは単に口で申すだけでなく、御承知のように派米青年というのが昭和三十七年から参っております。これが向うの労働を体験してきておりますので、そういう派米青年ですでに帰っておる人なんかも頼みまして、講習に行ってもらって、向うの労働が相当つらいものであるというようなことも申しております。それから賃金などにつきましては、先ほど移住局長からお話がありましたような賃金、労働条件、それから場合によりましては非常に多くの者がキャンプへ入れられて、一緒に生活するのであって、そこで共同生活というものが非常に必要であって、ある程度がまんをせねばならぬというようなことを主眼に置いて訓練いたしております。
  70. 原茂

    ○原(茂)委員 今の労働の内容が非常に単純だというところが問題になるのですが、実はその単純であるというよりは、労働が行く人の期待している目的と全然違うというところに問題があるのです。進歩したアメリカの技術を修得する機会を与えるということと単純労働とあわせて見ますと、もし最も斬新なアメリカの農業技術というものを、あるいは機械化等を修得するならば、実は行った者のほとんどは満足するのです。ところがあちらに行ってみますと、実際には機械は使わせないことを原則にしている。機械というものを使わせない。ほんとうにわが国における四つんばい農業と同じように、とにかく手と足を使って土と取っ組むというような単純な、いわゆる労働力だけを土の上に提供していくという形をとられているために、基本的にトラブルが起きるわけです。単に労働が単純であるとかなんとかいうのではなくて、一番大きな、目的の前段にうたってある進歩したアメリカの農業技術を修得せしめるという機会を実は与えていない。実際にはあっちに行ってみますと、雇い主——会員に聞きますと、初めからそのことははっきりと協会にも言ってあるんだ。機械なんか使わせようと思いません。機械を使わせるならなれた機械技師が幾らでもこちらで雇い得る。日本からやってくる労務者というものは、文字通り労務者なんで、機械には乗せません。機械は扱わせません、こう言っているのに、今のあなたの説明あるいはニュアンスの中にもあるように、いかにも進歩したアメリカの機械技術を修得できるがごとく錯覚を持っていくところに問題があるのですから、単に単純労働であるとかあるいは時間的に非常に制約されるんだ、賃金がこうだということを教えるよりも、むしろあそこで働いているものを実際にニュースでもとってきて、機械を動かしているのは外国人だよ。あの泥と取っ組んで四つんばいになっているのが日本人だ、端的にはこういうことをはっきり知らせないと、実は問題がいつでも残るわけです。そういう面の指導はしていなかったんじゃないかと思うのですが、この三十二年度の六百人にもそういう指導をしていないんじゃないか。もししていないとすると、また第一年度と同じ問題が起きます。とにかく日本の相当希望を持つ水準の高い優秀な青年をあちらにやって、六カ月更改で三年間とにかく腐り切らしてしまうのですから、そういうもったいないことと、そういうような気の毒な目にあわせないためにも、この六百人の三十二年度の選考した人に対しては、もっと突っ込んだ適切なほんとうの指導をすべきだと思うのですが、そういうことを私の言ったような趣旨でやっておるのかどうか。それを一つ……。
  71. 大戸元長

    ○大戸説明員 第一回につきましては、先ほど申しましたように、そういう点で相当認識が欠けておった点があるだろうと思いますが、第二回につきましては、その点は向うへ行って現に見てきた人を呼びまして話を聞かして、相当認識をさせるようにいたしております。なお一そうそういう点は徹底さすようにしたいと思います。
  72. 原茂

    ○原(茂)委員 今度三十二年度に選考された六百人の中の一名を私知っているのです。だが、そんなことを教わっていませんよ。私が言ったような、そういった大事なことを、きちっとポイントとして認識していません。これはおそらくこの人一人じゃない。これが怠けていたんじゃなくて、全部にまだそういうような教育ができていないと思う。この点はそういういいかげんなといいますか、多分やっているだろうというのじゃなくて、その訓練の内容あるいはパンフレット等の内容を、もっと真剣にここで考えてやる必要がある。これが第一点、これはぜひやっていただきたい。  それから第二点に、こういったような現実の問題は機械を使えないのに、斬新な農業技術を修得できないのに、それを目的とするというようなことが協定書にあること自体が大きな問題だと思うので、こういう協定書自体を、これは農林省でなくて、外務省の立場から考えるべきかもしれませんが、はっきりと一つこの協定内容に対して再検討を加えて、ここにもっとはっきりほんとうの姿を浮き彫りにするような協定に直すという御意思があるかどうか。そうさすべきだと思いますが……。
  73. 内田藤雄

    ○内田政府委員 非常に重要な点でございまして、協定自身が羊頭狗肉である、内容をごまかしておるというような事実がございますれば、これはわれわれの責任だと思いますから、そういうことのないように、今後十分検討いたしたいと思います。
  74. 原茂

    ○原(茂)委員 羊頭狗肉のそういうことがあればというのでなくて、今私の言ったこと自体を一つ調査していただきたい。それがあったときには、必ずこれは検討をし直して、もちろん改訂をするという態度をとっていただかないと、あっちへ行った人が気の毒です。これは大臣が来られてからあと三点お伺いしたいと思いますので、この問題は一応これでよろしいと思います。  農業労務者の問題は大臣の来られるまで一応保留いたしまして、第二点にお伺いしたいのは、遺骨の問題に関して、外務当局と厚生省にお伺いしたいと思います。まず第一にお伺いしたいのは、フィリピンの遺骨収集がすでに相当の成果を上げたのですが、この収集されるに至りました間の、おもにやりました機関、それと費用の点に関して、これをどのように償いをやってきたのか。費用というものは、国あるいは政府は一切関与しないのか、この点を一つお伺いしたいと思います。
  75. 河野鎭雄

    ○河野政府委員 今回のフィリピンの遺骨収集につきましての経費の点についてのお尋ねだと思いますが、これは政府の派遣団を組織しまして現地に差し向けた次第でございますので、その経費も国において負担をしたわけでございます。予算措置としましては予備金支出としてまかなった次第でございます。
  76. 原茂

    ○原(茂)委員 政府で負担をした、予備金から支出してまかなったということですが、経費はどのくらいかかったのですか。
  77. 河野鎭雄

    ○河野政府委員 正確な数字は持ち合せてございませんが、約五百万円であったと思います。
  78. 原茂

    ○原(茂)委員 あれだけの遺骨収集をやるのに、政府が負担をしたといいながら五百万円でできるはずがないと思うのですが、その数字は間違っていませんか。
  79. 河野鎭雄

    ○河野政府委員 練習船を使ってあれしましたので、そういう点は別途の予算で、これは運輸省関係になるわけでございますが、航海訓練を一方においてはする、その上に遺骨収集の任務も負っていくというふうな従来の扱い方をしておりますので、航海訓練の方の経費は、今申し上げた数字とは別でございます。ちょっとその数字は私存じておりませんが、それを合せますと、もちろん五百万円では上っていないわけでございますが、厚生省の関係として使いました金がただいま申し上げましたような数字になるわけであります。
  80. 原茂

    ○原(茂)委員 そこでお伺いしたいのは、前々から問題になっております中共の遺骨の問題、これは二つあるわけです。日本にある中国人の遺骨送還の問題もあるし、それから中国にある日本人の遺骨をこちらに引き取りたいという問題、これがある。昨年の十一月のたしか十二日だったと思いますが、特別委員会で厚生省等からやはり来ていただいてその点の審議をいたしました。この経過はおそらく御存じだと思います。  そこでお伺いしたいのは、あのときにもはっきり約束していただいたのですが、一番大きな問題になったのは、中国人で戦争前後に日本に来ておりまして、これが殉職をするとか殉難をする、あるいは捕虜として日本の国内で働かされているうちに殉職、殉難をする、死んだという者に対する扱い、これも所管が外務省なのかあるいは厚生省なのかが、当時米田さんもおいでになりましたが、どうも両方とも話が食い違っておりまして、急速にこの所管をどちらでやるべきであるかを一つきめておきますということをはっきり答弁になられたのですが、その後その所管がはっきりきまっているかどうか。
  81. 河野鎭雄

    ○河野政府委員 中国から日本に参りました労務者は、私ども承知しておるところでは、法律上俘虜ということではないのではないかというふうに考えておりますが、この点はいずれにいたしましても、六千ばかりの人たちがこちらでなくなったというふうに承知をいたしておるわけでございます。この遺骨を中国に送るという問題は、ただいま御指摘になりましたように従来から問題になっておるわけでございます。従来のやり方といたしましては、民間団体がこれを収集してお送りしておるということは御承知通りだと思いますが、その際引揚船がございますので、それにお乗せをしてお送りするというふうなことが従来から行われております。その際外務省から御依頼を受けて、私どもが船に乗せてお送りする便宜を供与するというふうな扱いをしてきておるわけでございますが、そういう意味におきましては、外務省の所管として行われてきたのではないだろうかというふうに私ども考えておったわけでございます。また入れますときも、実は戦時中でございますが、大東亜省がお世話して、そのあと外務省に引き継がれたという関係もありまして、外務省の所管というふうな考え方をとっていいのではないかということをこの前の委員会でも申し上げたのであります。ただ今後これを政府でやるとした場合に、従来通り考え方でいいかどうかということは、これはまた別問題になるのでありまして、その点がこの前の委員会でも不明確であったような御指摘を受けて、その後外務省ともいろいろ御相談をいたしまして、政府でやるといたしました場合には、両省で分担をするようにしたらどうだろうというふうな話し合いを実はいたしたわけであります。  具体的に申しますと、たとえば調査、集骨というふうなことは国内でやることでございますので、むしろ厚生省がやった方がいいのじゃないか。送還というふうなことになりますと外務省に御担当願うというふうに分担をしてやる、こういうふうにしたらどうかということを実は両省で相談をいたしたのであります。具体的に実施に移すことになりますと、従来のいろいろの経過がございます。そういった事情を十分調査をし、計画も十分練ってやりませんと実効が上らない。せっかく政府でやるということになりますれば、十分実効が上るような段取りを立ててやる必要があるということで、私どもも慰霊実行委員会等の従来のいきさつ等をいろいろただいま聞いているわけでございます。ちょうど紅十字会が見えたりなどして先方も非常に忙しくてなかなか時間がとれなかったというふうなことで、その点延び延びになって恐縮に思っているのでございます。極力従来のいきさつ等も聞きまして、また今後の進め方等についても十分話し合いをして善処して参りたいと思っている次第であります。
  82. 原茂

    ○原(茂)委員 そうすると、所管の件に関してははっきり両省の間できまった、そして国内における調査、発掘、整骨ということは厚生省がおやりになる、整骨されたものをあちらに送り帰すことを外務省が所管事項として扱う、こういうことにきまったわけですね。
  83. 河野鎭雄

    ○河野政府委員 一応そういうふうな線でいったらどうかというふうな話し合いをいたしているわけでございます。正式に政府態度としてきまったというふうに申し上げていいかどうか、もう少し事務的に進め方等をきめてみなければならない点がございますので、それとあわせて考えて参りたいと思っているのでございます。所管の点がどうこうということでこの問題がネックになって動かないというふうなことはないと信じております。
  84. 原茂

    ○原(茂)委員 所管の問題がきまらないからネックになって延びるということはないというようなお話ですが、いやしくもずっと前から問題になっているものを、昨年の十一月にとにかく両省の局長あるいは次官が来られて、これは不統一で申しわけない、急速に統一をし、所管をきめるとおっしゃって自来とにかく今日まで四カ月たっている。この間まだきまらないでおいて、それがきまらなくてもネックになるようなことはないのだ、事実きまっていないとこれを推進する政府機関というものが実はないことになるわけです。フィリピン等に対してはわれわれの遺骨を引き取るということに一応とにかく踏み切ったわけで、予算も行使してやることができた。日本の遺骨だけは引き取るけれども、諸外国の、特に今問題になっているデリケートな関係にある中国の、そうでなくても早く国交回復等をしなければならないという国民的な世論の中にあって、しかも中国人としての死者というものが六千ないし七千、数多くあることが一応わかっていながら、とにかくこれを早期に帰そうという誠意、努力を示さないということは、もう一点中国に今置いてある私どもの同胞の遺骨を引き取る熱意のないということにも裏返せばなるわけです。これを前から何とかして引き揚げたいというので、ずいぶん——これは今もお話があったようにいろいろな団体から聞いていると思うのですが、そういうことを実行するためにも、こちらにある中国人の遺骨というものに対して、積極的な誠意ある態度を示して、初めてあちらにある遺骨をこちらに引き取ることができる。フィリピンにおいては遺骨引き取りがすでに行われているが、中国にあるわれわれ同胞の遺骨というものはフィリピンにあるより以上あるかもしれない。これに対する引き取りというものは同時に考慮されなければいけないのに、それに対する考慮は払われていなかったのだということと同じになるのですね。ですから今のようにまだきまったんじゃありませんが、とにかくそういうことにしようかという話をしたんだというようなぼけただまし方といいますか、いいかげんな態度で昨年の十一月以来今日に至ったということは、私は重大な責任だと思う。フィリピンに対してはとにかく日本人の遺骨の引き取りを政府がやられる。同じ日本人でいながら、中国にある遺骨に対してはその熱意を示さない、その引き取り得る手段をも講じない。その手段の第一段としては、中国人の国内の遺骨に対して手厚くこれを発掘し、整骨してやろうという誠意ある態度を示すことが常識なんです。とにかくそれをやろうという熱意を欠いていることは、中国にある日本人の遺骨を引き取ろうという熱意のないことと同じことになる。ですからこれは今言ったように、そんな話をしているというのでは困るんで、外務当局もそれから厚生当局にしても——きょうあとに大臣が来たら外務大臣としてのはっきりした決意をお聞きしますが、話し合いをしておりますじゃなくて、そういうふうにいたしますというくらいのところまで、相談をしているのなら言えるのじゃないかと思いますが、この点どうですか。
  85. 河野鎭雄

    ○河野政府委員 事務的にはそういう話をいたしておりまして、一応そういうことでいこうというふうなところまで来ているわけなのでございます。
  86. 原茂

    ○原(茂)委員 そこでそういうことでいこうというところへ一応来ているんですが、現在予算が審議中なんですけれども、その面に関して厚生省が国内における遺骨の発掘とか、あるいは整骨等にどの程度の予算をお使いになるつもりですか。
  87. 河野鎭雄

    ○河野政府委員 ただいまの問題は具体的な計画をもう少し詰めてみませんと、どのくらいかかるというふうなこともはっきりいたしませんので、さしあたりの予算の措置といたしましては特に組んでございませんが、この点は大蔵省とも内々相談をしておりまして、その計画ができた上で大蔵省に予算的措置をとってもらいたい、こういうふうなつもりでおるわけです。
  88. 原茂

    ○原(茂)委員 もう少し大きい声で答弁してもらいたい。私半分しか聞えなかったのでダブるかもしれませんが、そうすると、とにかく大蔵省とも話し合いをした上で、現在どのくらいの費用がかかるか調査を進めている。従ってその額等は一応作業ができれば、厚生省の予備金かあるいは大蔵省から別途支出せしめるか、とにかく来年度この面に対する支出というものは考慮している、こう解釈していいですか。
  89. 河野鎭雄

    ○河野政府委員 来年度の予算につきましては大蔵省とも十分打ち合せしまして善処いたしたい、かように思っております。
  90. 原茂

    ○原(茂)委員 だいぶ今までより進歩したことになるが、これはあと厚生大臣にも別の機会にお尋ねをする必要があると思うのですが、あなたがおっしゃればそれでいいのかもしれませんけれども、現在までは政府としてはこの種のことに予算等を支出してなかった、来年度からはとにかくその道が開けるということになるわけですから、これは非常に大きな前進が約束される、こう思います。  そこで次にお伺いしたいのは、中国人の遺骨をこちらからお帰ししよう、こういうようなときに、外務省としては一体その機関はどこを通じてやろうとなさるのか、こちらの今までの経験から言うと、日赤を通じて帰してやったという経験は持っているのですが、外務省自身が今後これを正式に帰すことは所管事項である、こういうふうにおきめになったのですから、きめたあと、それを送還する手続、その機関はどの機関を使うのか、それからその費用は一応どの程度考えておられるのか、これを一つ来年度についてでけっこうですから伺いたい。
  91. 三宅喜二郎

    三宅説明員 ただいま援護局長からお話しになりましたように、国内の調査と、それから収集の方は厚生省でやられる、送還の方は外務省ということに話は大体実際上きまったと言っていいと思います。送還に関しましては、やはり船の問題につきましては予算を伴いますし、これは大蔵省とも折衝して適当な予算をいただくということにいたしたいと思いますが、まだ金額等はきまっておりません。なお送還する場合には、もちろん民間の赤十字等の協力を受けまして、実行いたしたいというふうに考えております。
  92. 原茂

    ○原(茂)委員 僕にはどうも聞えなくて耳が遠くなったのかと思って心配しているのですが、もう少し大きい声で言ってくれませんか。半分ぐらい大事なところが聞えないのです。自信たっぷり答弁してもらいたい。聞いておりますと、声の色から言いましても、自信がなくてごまかしで答弁しているような気がします。そうじゃなくてもっと大きな声で自信を持って答弁していただきたいのです。  要するに船は何をお使いになるとおっしゃったのですか。それを聞かなかったのですが、送り帰す船、あるいは送り帰す機関、これをどういう手段でやるのかを一つ大きな声で聞かしていただきたい。
  93. 三宅喜二郎

    三宅説明員 船につきましては、特別の船を仕立てるか、便船を利用するか、そういう点につきましてまだきまっておりません。それらの点を含めまして、外務省においても研究し、その結果に基きまして、大蔵省に折衝いたしたいというふうに考えております。
  94. 原茂

    ○原(茂)委員 そこで次の問題とからめてそのことをあとで伺いたい。というのは、この間第四次日中貿易協定を結ぶために、池田さんを団長とする使節団があちらに参ったわけです。この使節団が行った中で、わが党の勝間田代議士が李徳全あるいは廖承志外何氏かと一緒に会談をした席で、昨年から、今問題になっております里帰り数十名、あるいは先般釈放になりました八名、それから永久に日本に帰ってきたいという者がたしか四百名ぐらい、それをとにかく日本に帰すというときに、話の中に日本人の遺骨を二千二十六体、これは整骨ができておりますので、これも一緒にお帰ししたいという発言があったのです。この点は政府としても多分聞いておられると思うのですが、どうでしょう。
  95. 河野鎭雄

    ○河野政府委員 そういう新聞情報を私ども手にいたしまして、その辺の真偽を確かめる必要があるということで、三団体からも今月の初めごろでございましたが、電報を打ったわけでございます。と申しますのは、紅十字会から先般参りましたときの話と北京放送の内容とがだいぶ違いますので電報を打った、その電報の返事には、八百人くらい収容できる船をよこしてくれというふうなことがあっただけでございまして、遺骨の問題には正式には触れておりません。しかしこの前紅十字会が来たときにもそういうふうな話があったということを伺っておりますので、おそらく北京放送の線はほんとうであろうと私ども考えております。ただいまその配船関係のことについて相談中でございまして、期日に間に合うように配船したいというふうに考えて準備を進めておる次第でございます。その際に向うからお渡し下さる予定になっております遺骨もあわせてその船でいただくようにいたしたい、かように考えておる次第であります。
  96. 原茂

    ○原(茂)委員 そうすると、これも昨年十一月以前から問題になっている配船をとにかくしなければいけない。その配船も五十人乗りみたいなちゃちなものじゃだめだ、大型船が必要だというようなことが焦点になって越年しているわけですが、大型船を配船するということにもうおきまりになったわけですか。
  97. 河野鎭雄

    ○河野政府委員 今回は先ほどの引き揚げ輸送の問題についてちょっと違った電報が入っておるわけでございます。今回の船には里帰りは乗せないようにしたいというふうな趣旨のことが電報に入っております。今回は戦犯を含めました永久帰国者を切り離して帰したいというふうな趣旨にとれるわけでございます。従いまして、向うの言うております線に沿うような配船をいたしたい、かように思ってただいま関係省と協議中でございますので、近いうちに、一両日中には結論が出るのではなかろうか、かように考えております。
  98. 原茂

    ○原(茂)委員 そうすると、少くとも勝間田氏が行ったときには四百人以上といっていたが、現在では八百名以上ということが日赤等を通じていわれているはずですが、これが乗れるような大型船を派遣する準備が一両日中にできる、こう解釈していいですか。
  99. 河野鎭雄

    ○河野政府委員 その通りでございます。
  100. 原茂

    ○原(茂)委員 先ほどの話なんですが、そういうときに日本中国人の遺骨があれば、その船等を利用して送還をするというようなことはできますか。
  101. 三宅喜二郎

    三宅説明員 先ほど援護局長からお話しのように、政府が従来の遣霊実行委員会の事務を引き継ぐという話し合いをしております。それができました上でありますれば、政府としてはそういう便船があれば送り帰すというふうにいたしたいと思います。これは収集されました遺骨の数等による次第でございます。
  102. 原茂

    ○原(茂)委員 委員長にちょっとお断わりしておきたいのですが、外務大臣がすぐ帰ると言って、来ないようですが、今私がこうやっている時間は最初の三十分の中に入れないようにしていただきたいと思う。外務大臣が来ませんと、けじめのつかない問題がありますから、来てから、お前時間がないと言わないようにして下さい。だいぶ時間がたっておりますから……。  今、もし遺骨が準備できれば中国人の遺骨を帰す、そういうことがはっきり答弁があったわけですが、そうしますと、現在集まっているその数のいかんによってそういう処置をとるのか、あるいは数が多かろうと少かろうとその船に乗り得る数であるならばお出しになるのか、この点はどうですか。
  103. 三宅喜二郎

    三宅説明員 従来集まっております遺骨の数は大体百五、六十柱でございまして、今度の船でそれを帰すことに大体きまっております。
  104. 原茂

    ○原(茂)委員 政府の費用で思い切ってやってただくように急速にきめていただけば、百数十なんということはないはずなんです。私の知っているだけでも実は百体くらい別にあるわけですが、これは費用さえあればすぐ整骨できるんです。ですから先ほどきまったような予算の措置を講ずるということになれば、急速にあと何体か全国では出てきますから、決して百数十体ではないはずです。そういう点はふえたら、その出船の時期に間に合ったら積み込み、一緒に送還するということに解釈してよろしいかどうか。
  105. 三宅喜二郎

    三宅説明員 できるだけそのように努力いたします。
  106. 床次徳二

    床次委員長 原君、大臣が見えましたから……。できるだけ簡潔に願えたらけっこうです。
  107. 原茂

    ○原(茂)委員 大臣に今のことについて引き続いてお伺いしておきたいのですが、現在中国にある日本人の遺骨——戦争でなくなった者、それから開拓団で行って引き揚げ途中で死んだ者等が相当あるわけですが、この遺骨は、実は置いてきた人があちらに行かないと、どこにその遺骨を埋めてあるのかわからない。わからないままにいろいろあちらの工事等が進んでしまいますと、永久に出てこない。実は何百あるいは何十という遺体を埋めてきたところをよく知っている引き揚げてこられた責任者の方がたくさんいるわけです。こういう人があちらに行けば、ここにあるんだ、ここには何人あるんだということがわかるのですが、そうでないと、戦場という大きな戦闘等の行われたところでは相当の遺骨が集められてあちらの中国人の手で処置してあるのですが、遺骨というものは収集できない。そういう状態に実は置かれているわけです。ですから開拓とかその他であちらに参りました者の残して参りました遺骨というものは実はわかっておるだけでも数千あるのです。そういうものは引き揚げた責任者があちらに何名か行くと、ここにあるということがわかるのですが、それを調査という言葉を使うことは不穏当でいけない、いやしくも中国という独立国に日本調査するということはいけないということで、昨年来紅十字会からも意思表示があったわけです。結局現地にある日本人の慰霊をするんだというような名目でいいかどうか知りませんが、何らかの方法で、日本へ引き揚げて参りました人で埋めてあるとっころを知っている方を派遣する必要が私はあると思う。フィリピンにはすでにその手を打って、とにかく政府の予算を使ってこの遺骨の収集ができている。中国に対してはまだできないというような状態に置かれているのですが、時がたつに従って、実は遺骨のある場所がいろいろな工事、作業等が行われると、今後の収集は全然できないような状態になるのがずいぶんあるわけです。ですから急速にそれをやる必要があるのですが、そういうことをやるように御努力を願いたいと思いますが、その御意思があるかどうか。
  108. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 この遺骨収集の問題は重要な問題でありまして、できるだけ円滑にそういう問題をすみやかに解決することは必要なことだと私は感じております。従いまして赤十字等を通じてできる限り、向う側の感情も害しないような、ただいまお話のように、調査というようなことでなく、そういうような方法を赤十字等とも相談することにいたしたい。ただやはり向う側の国内のことでありますから、多数の者が行くということもこれまた問題でありましょうし、そこらの点は十分今後研究の上で、できるだけ善処して参りたい、こういうふうに考えます。
  109. 床次徳二

    床次委員長 あとの方のお約束の時間がありますから、質問を簡潔に願います。
  110. 原茂

    ○原(茂)委員 それでは大臣だけにお伺いしますが、善処するやつが約半年や一年すぐたつのですが、そうでなくて、この問題を善処してもらって実行できるように期待しながらお伺いしたいのは、その場合の向うに参ります費用、あちらに行ってから慰霊をして歩く費用等を、これはフィリピンと同じように当然政府の費用でやるべきだ、こう思うのですが、この点どうでしょう。
  111. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 その点はなおよくその場合の事情等を総合して研究した上で、できるだけ遺骨収集が円満にいきますような方法考えて参りたいと思います。
  112. 原茂

    ○原(茂)委員 それから先ほどの問題に返る前に、大臣は時間がないようですから、もう一点ついでにお伺いしておきますが、実は戦争中に多くの艦船が沈没しているわけです。これは非常にたくさんある。この艦船の中にはそれこそ間違いなく日本人の遺骨がたくさんある。これの収集は何も諸外国と困難な折衝をしなくてもできるものが日本の沿海、海域にもずいぶんあります。たとえば山口県の沖にある陸奥などは、これは二百数十体あるのではないかといわれていますが、とにかく手をつければできるはずです。こういうような問題は厚生省でお伺いしますが、外務大臣にお伺いしたいのは、日本の領域にない、一応諸外国の海域だといわれるところに沈没しているのはたくさんありますが、こういうものに対しては、やはり遺骨収集が昨年フィリピンで行われ始めた以上は、全般的に手をつけてやるべきだと思うのですが、こういうことは外国との折衝が必要になります。その折衝を起して、この艦船の中にある——引き揚げはあとにしましても、遺骨だけは収集さしてもらうような交渉をしてもらいたと思うのですが、この点どうでしょう。
  113. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 陸上にありますものと違いまして、海中にあるものでありますから、潜水技術等の関係もございましょうし、そういう問題が完全に解決し得るかどうかということを私ちょっと今のところ御答弁しかねるわけであります。しかしながら遺骨収集という意味からいえば、陸上にあろうと海中にあろうと同じような関係にあるわけでありますから、海中であるから特に忌避するということでなく、政府としても善処していくことが適当であろうと考えます。
  114. 原茂

    ○原(茂)委員 その点は遺骨収集をしようということにきまれば、技術的な問題は解決できるところもあります、不可能なところもあるようです。ですから、これはやはりやることにきめて、全面的にその面の交渉等を行なってもらいたい、こう思います。  それから、いなくなる前の前段の問題に移りますが、派米農業労務者です。先ほどからお留守のときに話しておきましたが、この労務者が問題になっているの、あちらに参りましてからアメリカの機械技術をとにかく修得しようといっても、その機会を与えられていないというところに問題があるのです。その件に関しては事務当局からいろいろ御答弁がありました。そこで大臣に私この点をだめ押し的に御答弁をお願いしたいのですが、まず第一は派米労務者に対する協会と労務者との間の協定です。この協定文の中の目的が、アメリカの斬新的な機械技術を修得するのだと書いてありますが、これは当然改めなければいけない。実態に合っていないのですから、改めるような交渉をしていただきたいと思うのです。これが一点。  それから第二点には、あちらにおります雇い主、これは会員と言っておりますが、雇い主自体がアメリカで今行われている最低賃金より下回らない賃金を払うというようなことをこの協定の中で書いているのですが、実際に行ってみますと、やはり賃金そのものが最低賃金を下回らないというようなことが実行されていないのです。いろいろなことから最低賃金を下回るような状態に実は置かれている。これも今言った協定内容を改めなければいけないだろう、実質に沿うようにすべきだと僕は思うのですが、これに対する意見。  それから第三点は、あちらにいましてとにかくここではとても勤まらない、何とかして国へ帰るかあるいはよその農場に転換したいのだ、こういう労務者がいます。これは善意でそうなる場合があるのです。ところが六カ月間はどんなおとがあっても、病気その他の理由がない限りは帰れない。もししいて帰るとすると、その費用等の出どころがないというようなことにぶつかるわけですが、少くともわが国の青年をあちらに派遣して、それが私ども考えて正当な理由で転換しなければいけない、帰国しなければいけないといったようなときには、それに対する費用というものは、やはり大きく日本政府で見てやるというくらいなことにこれを改めていかないと私はいけないと思う。本人が積立金をしておりまして、それで帰ってくることが原則になっておるのですが、そういう原則であるために、ずいぶん無理な病人がそのままがまんしてあちらで寝ているというようなことが起きていますが、そういうことのないように、やはり正当な理由がある場合には、政府が責任を持って帰してやる、あるいは他の農場へ転換すべき正当な理由がある場合には、転換をさせてやろうというようなことをも、この協定の中で第三点として立てていってやらないと、ほんとうの意味で農業労務者を日本の力で保護してやるということにならないと思います。  以上三点に対して御答弁を聞いて終りたいと思います。
  115. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 この問題につきましては、三十一年度から行われた問題でありますので、これを実施に移しました場合に、いろいろ初年度の経験があると思うのであります。御指摘のようないろいろな問題等について考えなければならぬ点もたくさんあるのではないかと思います。従いまして今後やはり日本の農村青年がアメリカにおいてアメリカの農業を習うということも、日本の農村のためにも非常に必要なことだと思うのでありますし、そういう意味からいいましても、こういう制度をできるだけ続けていくことになりますれば、それらの問題については十分今後考えまして、そうしてこの派米関係の仕事が円滑にいきまして、日本の農村にも役に立つ、また受け入れ国側としてのアメリカも、日本の農村青年を受け入れて満足するというふうに改善をしていく必要があろうと思うのであります。そういう点については今後十分研究をいたしまして、処置して参りたい、こう考えます。
  116. 床次徳二

    床次委員長 渡辺惣蔵君。四十分に終りたいと思いますから、そのつもりで質疑をお進め願いたいと思います。
  117. 渡辺惣蔵

    渡辺(惣)委員 藤山外務大臣に質問を申し上げるわけですが、私実は質問の通告事項がただいまの原君の最終に発言されました、アメリカヘの派米労働者問題についての質問だけ、一点にしぼって質問を申し上げるわけです。  実は私昨年衆議院から派遣されて、三カ月各国を回ったのですが、その視察の途次三つの日本人で海外で働いておる人たちと会って、それぞれ現地調査をし、座談会を持ったのです。一つは西独ルール炭田に行っております日本の炭鉱労働者、御存じかどうか知りませんが、これは第一班五十九名が昨年の三月に行っておりまして、今年一月二十一日に第二班が行き、第三班がやがて行って総数二百四十名ということで、三年間西独の炭鉱労働に従う。ここへも参りましてそれぞれ現地座談会を持ったのです。もう一つはただいま原君が指摘いたしましたカリフォルニアにおける一千名の短期農業労務者の問題であります。もう一つ、スイスでいわゆる国際農友会の農業実習生、八カ月もしくは一年間であります。これは費用が農業実習生の方は政府が半額を出して、府県が四分の一、本人が四分の一でありますし、宿所は農家に泊って私生活も一緒にする、食費はかからないということですから、農業実習生の場合は同じ経費でもおのずから全然別個で、個人として技術その他を修得するのに大いに役立っておる、こう思っております。  問題になりますのは、同じ短期労務者としてドイツとアメリカと両方に行っておるわけであります。そしてドイツの方は、ドイツの国内労働法の保護を受けておるわけです。完全にドイツの炭鉱労働者と同じ規定の上に立って、賃金の取得も、労働時間も、労働法も一緒にされておるのだが、アメリカのカリフォルニアに行っておりますのは——片一方は全部三班そろいましても二百四十名ですけれども、しかもそれは集団的にルール炭田の一地方に同じ条件の労働に従事しておるのですから、おのずから取扱いの方法があります。アメリカのあの広大な地域に一千名を送り込んでおる。しかもそれは北部と南部とは全く待遇が違い、労働条件が違う。そこへ持ってきまして、一昨年の七月ごろから募集して、九月に第一班が行って、昨年六月まで大体予定の一千名が行っている。そうすると、今後、三十二年度に一千名が行き、三十三年度に一千名が行く、都合大体三千名という目途であったにかかわらず、第二年度の三十二年度は一人も行けなくなっているわけですね、それはアメリカの国内問題が発生していて行けないわけですね。そうしますと、当初計画したものと全然事情が違ってきているということが問題になってくるわけです。  それでこの問題は、原君から指摘されたアメリカのいわゆる栽培者協会の雇い主側とこちらとの契約条項の問題もありますが、もう一つ基本的にアメリカ政府日本政府話し合いができていないということです。あなたはどうお考えになっていらっしゃるか知りませんが、あなたもアメリカへ行っておられますが、しかしこの問題については、アメリカでは国務省や農務省や労働省や法務省がみな連合会議をしておりますし、アメリカの下院の法務委員会においては公聴会まで開いて、この問題は政治問題になっているわけです。アメリカにおける日本の短期農業労務者というものはそんな簡単なものではない、非常に政治問題化しておる。そして下院の法務委員会の結果、関係三省の現地視察の調査まで出ておるという状態です。現実に私はオックスラード農場の視察に参りましたし、自民党の保利茂君はメキシコ側のベラ農場の現地視察に同時に行っております。事情を直接見聞して参ったのですが、あなたの楽観しているように、日本とアメリカとの友好関係を保持しようとか、このことを日米のかけ橋にしようとかいうような意図がもしあなたにおありならば、全然お考えになっているのと違った条件が出ておるわけです。その点は外務省は少し勉強が足りぬ、私はそう思うのです。  所管の方はどういう見解をとっておられるか知らぬが、西独の方は、去年私は行きましたけれども、昨年三月二十四日にたった五十九名しか行っておりませんのに、それぞれこの人々を出発させた大きな会社、たとえば三井、三菱、住友などというのは、鉱業所の鉱務課長もしくは庶務課長等のりっぱな人も現地に行って、その人々がドイツ語の修得や生活環境になれるまで、三月ないし四月、長い人は一年近く現地に残って労務者の補導に当っておる。さらに西独の場合は、あなたも御存じだろうと思うのですが、労働省の法規課長をしておった石黒拓爾君を外務省に籍を移させて、ボンの大使館に参事官として配置をして、わずか五十九名の——今になりますと二百四十名ですが、当時私が行きました七月にはわずか五十九名の西独におります炭鉱労働者のために、この西独のルール炭田の労働者と、現地の使用者側、あるいは政府側等との調節に当っておる。それほど労働省の方は、事この短期の炭鉱関係の労働者に対しては、きわめて慎重を期していっております。  ところがアメリカへ行っておりますのは、その規模においてはるかに違う。一千人を送り出し、さらに年々三年にわたって三千名を出しますということになりますと、これは当然政治問題化し、社会問題化するのは当りまえのことなんですが、一体外務省はどうしておられるのかということです。大体ロスアンゼルスの総領事なんかもてあましておるのですよ。迷惑ですからね、率直に言うと。総領事館の方はもう定員がきまっているのですからね。総領事館というから大きいかというと、五人か二人しかいないところがあるのですからね。それをあのアメリカのカリフォルニアの大きなところに一千名も押しつけて、その監督を一体ロスアンゼルスもサンフランシスコも総領事館がやれると思うのがおかしいのですよ。できませんよ。一体外務省はこれだけの人を送り出しておいて、これはどうするのか。いろいろな事故が起るのは当りまえですよ。いろいろな事故が起っていますよ。保利茂君が行ったペラ農場なんかは、九州組が行っているのですが、暴動一歩手前だという非常に騒然たるところへ行って慰めてきた、彼も色をなして視察から帰ってきました。そういう現状をなしているのに、外務省は一千名、今後はまた一千名、全部開拓訓練所か農業伝習所で十日間も訓練して、当分の間待機しているのです。この問題はあとで申し上げますが、そういう現地へ送り出したことに対する責任は、一体あなたはどうなさっておるのか。労働省では石黒参事官を現地に送っているのですよ。わずか二百名前後の、現在いる二百四十名の人に対して、ボンの大使館に参事官を送っているが、一体アメリカの方にはどういう措置をされているのか。この点について責任を明らかにしてもらいたいと思います。
  118. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 短期農業労働者の送り出しは、ただいまお話のありましたように逐次ふえても参ります。従ってわれわれとしてもこれがアメリカにおきます雇用関係、アメリカにおける労働組合と雇い主との関係、あるいはその間を調節する政府関係、いろいろな関係が起ることは当然でありまして、従ってワシントンの大使館におきましては朝海大使がもっぱらこういう問題についてアメリカの政府と接触しておるのでありまして、その点についてはできるだけスムーズにこういう問題がいきますように努力をいたしておると私は信じております。ただお話のように、アメリカは非常に広いところでありますし、現地の総領事館は、ただいま御同情いただきましたように非常に手薄なところもたくさんあるのでありまして、そういう面については、新しくこういう人たちが行くことになりますれば、むろん現地の総領事館等を強化していくというようなことをやらなければならぬのでありまして、そういう面についての予算措置等についても考えて参らなければならぬのであります。外務省としてはそういう面を十分考慮して、今後ともやっていくつもりであります。実際にいって予算が足りないからということは逃げ口上になるというふうにお考えだとも思いますが、しかし総領事館としてはかなり切り詰めた人数でやっておりますので、従来まで必ずしも行き届かなかった点もあろうかと思います。従って今後こういう問題が、引き続き三千人にも及んで進展して参りますし、また大きな領域の中に散在することにもなりますれば、やはり総領事館等の機構等についても、こういうものが新たにあるということを対象にして考えて参らなければならぬと思うのであります。そういう点については十分手を尽して今後とも参りたい、こう思っております。
  119. 渡辺惣蔵

    渡辺(惣)委員 私が申し上げておりますのは、現地の総領事館その他の事情もよくわかっておるのですが、問題は、予算があるとかないというよりも、家族から人の生命を預かって、現地に三千人の人を向うへ出しておいて——最終年度の第三年目にはちょうど三千人がだぶつくのです。最初の一年は千人ですが、二年目には二千人、三年目には三千人になる。四年目には千人帰りますから、また二千人に戻るわけですけれども、ともかく現実に片っ方のドイツの場合は、わずかに百人か百五十人なのに、労働省から外務省に出向したのかもしれませんが、参事官が向うへ行ってそれをやっておる。外務省が予算がないというのなら、農林省と話をして、そういう人を向うへ常駐させて、そういう問題を大使館や領事館にまかせないで——向うでは大使館でも領事館でも非常な迷惑なんで、その問題に何も参画しないで、来てしまってから、政治問題、社会問題になって、これを処理しなければならぬというのですから、熱も入りません。問題の性質が労働問題で、一般的外交問題でない。従って国と国との問題でなくて、日本人が行って散らばって仕事をして、いろいろ個人々々の間あるいは集団と集団の間に起るトラブルです。この問題を適正に処理するためには、やはりそのことに専念する、国の責任を負った人が行ってやらなければならぬ。西独でやれることがなぜアメリカで今の外務省にはやれないのですか。外務省は農林省と話をして、そこへ人を派遣して、専任の指導官といいますか、監督官といいますか、そういう人を配置して、十二分にやるという努力ができるのかどうか、これができなければ、あとの質問をしてもむだだと思いますが、この点に対するもう少しはっきりした御表明を願いたい。
  120. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 西独は御承知のように、雇用主あるいは労働組合等、平常の労働問題につきましても、日本は教わるところが非常に多い。従ってただ労働関係の人を五十九人出したから労働省から参事官が行っておるというだけでないのでありまして、一般的にドイツの産業平和の関係を十分調査研究することも必要であるという見地からも、西独には出ておるのであります。しかし御指摘のように、今後そういうような人たちに対するアメリカにおけるいろいろな生活事情なり、トラブルなり、そういう問題が起ってくることも事実だと思いますから、そういう問題についてはやはり総領事館等の手をふやし、これらの改善をはかっていくということも私は必要だと思います。従って今後ともそういう問題については十分考慮しながら善処いたしていくつもりでございます。
  121. 内田藤雄

    ○内田政府委員 ちょっと大臣の御答弁を補足さしていただきます。ただいま大臣がおっしゃいましたように、ボンに労働省の石黒参事官が派遣されておったことは事実でございますが、これは必ずしも五十九名の問題ということではないのでございまして、同じように在外公館には各省からいろいろな人が参っております。その一つとして労働省からボンに一人派遣されるということになって、石黒氏が行っておったわけでございます。もちろん石黒氏が労働省から行っておられます以上、この五十九人の炭鉱労務者の世話を非常によくやって下さいまして、これはわれわれとしても多としておるわけでございますが、政府態度が炭鉱労務者にだけは手厚くやるが、米国の派米青年に対しては非常に冷淡だという御趣旨でございますならば、必ずしもそういうわけではございません。と申しますのは、総領事館は今定員外に一人桑港にやっておりまして、この人が非常によくやっておりますが、それ以外に派米協議会の現地の事務所というものができておりまして、これは発足のときは非常に貧弱なものでございましたが、漸次これも充実して参りまして、現在その人々が約七名おります。それで今度の予算が通りますと、さらに充実できる、これを期待しておるわけでございます。従いまして間接ではございますが、派米協議会の現地の人々のいろいろ御努力によりまして、ただいま御指摘のような問題は相当今後解消させていくことができるのではないかというふうに考えておる次第でございます。
  122. 渡辺惣蔵

    渡辺(惣)委員 それは今の答弁はおかしいと思うのです。別段外務省以外の者が行っているのはボンだけではない。ロンドンだってどこだって、通産省からも大蔵省からも行っている。そんなことを聞いているのではない。やはり石黒君が行っておるのは、この問題がきっかけになっておるということは明らかなんです。理由はそればかりではないけれども、しかし少くともそれが契機として行って、それが重要な仕事として行っている。私も彼と一緒に行ったのです。現に当時の松浦労働大臣も私より二週間も前に入りまして、私も自民党の同志と一緒に入りましたし、私のあとに同じ六月のうちに、石炭鉱業会の伊藤会長も行ったし、炭労の直江調査部長も行っている。国会も政府も資本家も労働者も、四者が同じ六月に一緒になって現地調査をしている。しかしそれはたまさかそういう条件が整ったから、西独の場合にはお互いに条件も整って、第二班、第三班と行った。炭労は最初は拒否していたのが、第二班、第三班と行ったので、西独だけを優遇しているなんてだれも言っていない。人を海外に出してお錢以上は、それが当りまえなのである。しかしアメリカの方においては、今のお話だと派米協議会の事務局があるというような話ですが、これは全く現地で今まで信用がなかったのです。派米協議会というのは一体どういう性格の団体なんですか。われわれほまだわからない。一千名毎回募集されていく人々も、派米協議会というのはどういうものなのかわからない。大体この問題が発足してから、一体どこでこれを主宰されたのか。最初この募集を日本でだれがやったのか、外務省がやったのか、農林省がやったのか、一昨年の五月に募集をし始めて、あわてて途中からおととしの七月ごろになって、海外団体を集めて、そうしていわゆる社団法人日本短期農業労務者派米協議会というものをでっち上げたのじゃないですか。初めは派米協議会なんというものがあったのじゃないですよ。日本のどこに一体派米協議会なんというものがありましたか。社団法人日本短期農業労務者派米協議会という団体ができたのは、しかもそれが国際協議会とか海外協議会とかブラジル協議会とか、何だか知らないが、いろいろな団体をかき集めてそうして派米協議会というものを作って、この仕事をやらしているじゃないか。その責任の所在は一体どこにあるのですか。そこでこの派米協議会というもの自身に、一体外務省はどういうような関連があるのか。外務省の古手の人々を配置して仕事をやらしているが、一体外務省が直接責任を負うのか、派米協議会に責任を負わすのか、そこが問題なんです。現地でこう混乱しているのは、派米協議会というものの性格が明らかでない。国自身であるのか、国の代行機関であるのか、国から補助金をどれだけもらってやっているのか、国の監督は一体農林省が監督しているのか、外務省が監督しているのか、その監督の責任の所在が明らかでないために、こちらから送り出す農民の家族も不安であるし、地方の行政官庁、地方の公共団体、府県がみんな不安がっていますよ。一体どこが三千名も送り出すところの行政上、政治上、社会上の責任を負うのか、この点を明らかにしてもらいたい。
  123. 内田藤雄

    ○内田政府委員 まず西独の場合とアメリカに送る場合と根本的に違っている点を一つ申し上げたいのですが、それは西独の場合は、第一に国家間の協定ができております。それからもう一つ、あの場合には石炭経営者協議会というものが、それに参加しておりますおのおのの会社の自分たちの労務者を提供と申しますか、選出いたしまして、そして向うへ送る。その向うの労働が済んだならば、またもとの職場に復帰する、こういう建前で送られておるわけでございます。従いまして、石炭経営者協議会に参加しておりますこれらの会社自体が非常な強い関心を持ち、そうしてただいまお話のございましたように、自分のところの労務関係の者をしばしば現地に出しておるというようなこともそこから参るわけでございます。  ところで北米に送られます短期労務者の問題は、御指摘のようにこの問題が起りましてから、これを主宰する団体を作り上げた、作り上げたと申しますか、作ったわけでございます。その団体は外務省と農林省の共管ということになっております。予算などにつきましても、外務省が今度千五百万円この団体の補助金を出しておりますが、他方農林省におきましても、九百万円ほどの補助金を別に計上しております。大体の仕事の内容を申し上げますと、農林省の方では国内におきましての募集、選考ということを主宰していただきます。われわれ外務省の方は、現地におきましてこの問題、いろいろその青年に関連して起ります保護と申しますか、そういったトラブルの調停とが、そういうことを大体外務省の方の責任においてやるということになっております。
  124. 床次徳二

    床次委員長 渡辺君、時間になりましたから、簡潔に願います。
  125. 渡辺惣蔵

    渡辺(惣)委員 簡潔にいたしますが、次会にはできないことですからもう少し伺います。千五百万と九百万、合せて二千四百万という膨大な金が実際に使用されている。主としてその金を使用する部面は派米協議会である。そうすると地方の自治体、公共団体、たとえば府県では、この募集に関する事務費その他というものは全く受けておらない。従ってたとえば府県では、農務部とかあるいは開拓部という機構があったとしても、外務省の所管を扱うところはないのですから、非常に戸惑いしているのです。募集から訓練までは農林省でありますが、内地で訓練していることは問題でない。向うに行ってからのことが第一の問題になってくる。  それから派米労務者は行ってから、いろいろ所得から控除されております。調べていらっしゃると思いますが、七十五セントから八十五セント、一時間働いて得る所得のうち、毎日の総収入のうちから天引きで労務者から五%取っておりますね。これは行政費ともいい、厚生資金ともいい、わけがわからない。現地の人は働いた中からピンはねされているのではないかという不安を持っているのです。飛行機で行くのは、十五カ月月々取られているのです。二十五ドルずつ賃金から差っ引いているのです。それから保険費も取られているし、強制積み立ても月五十ドルの金を取られていますし、食費は一日一ドル七十五セント取られているし、全部天引きで取られて、その上総収入から五%取られている。現地では行政費とかなんとかいっておりますが、一体外務省は補助金を出しているのか。労務者が非常な苦労をして働いた中から五%取っている金は何に使われるのですか。
  126. 内田藤雄

    ○内田政府委員 五%取っておることは事実でございます。それは私の了解しておりますところでは、労務者に関していろいろ不時の問題も起りますし、また特に途中で帰還しなければならぬというような者も現に過去においても起っております。将来も起り得ることでございますので、そういったことも加味いたしまして、そういう費用を総合的にまかなうという趣旨において五%ずつ取っておるというふうに聞いております。
  127. 渡辺惣蔵

    渡辺(惣)委員 今の答弁は少しおかしいと思うのです。給料から五%を天引きしておる。話を聞いておりますどころでは、これは外務省の監督がおかしいと思うのです。人の勤労所得、本人に賃金が渡らない前に天引きで五%はねている。その使途が、かりに途中で帰る者があったとしたって、帰る人は帰る人の負担です。全体の人に関係はない。みな一勢に途中で帰るわけではない。しかもアメリカとメキシコとの間の労務者の協定では、メキシコの労務者については、一人に対して三十八ドルの旅費が支給されておる。日本はそういう補助は一つもなく、五%のピンはねをされておるという感じがすると現地では言っておる。片方ではメキシコの労務者は一人三十八ドルの旅費の補助を受けておる、片方は五%はねられたのでは、これで一体筋が通りますか。
  128. 内田藤雄

    ○内田政府委員 メキシコの場合は、今お話のようにアメリカとの協定がございますし、数から申しましても、これはけたが違うわけでございます。年に大体三十万くらいの者が来ておるのでございますから、これはアメリカとしても協定に基いてやるという考えは当然だと思いますが、まだ日本の場合は、遺憾ながらアメリカが協定をもってやろうというところまでは来ておらぬわけであります。  それからもう一つは、旅費の問題でございますが、なるほどわれわれとしましてもグローワーズが旅費を負担してくれるということは非常に望ましいと思っておりますが、先般来国務省の移民局などがあっせんいたしまして、グローワーズとの間にようやく月一ドルだけグローワーズが自分の負担で積み立てるということになりました。これで幾らかはよくなったわけでございますが、しかしまだまだメキシコと比べますと確かにそういう条件はよくございません。これは将来の問題としまして、われわれ十分に労務者のためになるように条件などを改善して参りたいと思っておりますが、まだ御承知のようにこの問題は起ったばかりでございまして、この際としては何が一番大事かといえば、千人が毎年レギュラーに確実に行ける状態を確保したい、そういう角度から考えますと、なるほどいろいろな条件を言い出したいのはやまやまでございますが、そういう条件を言い出したことによって、この話が全部こわれてしまうということになったのでは、元も子もなくなるわけでございますので、その辺われわれとしても非常にジレンマに感じておる次第でございます。しかし御指摘の御趣旨は十分われわれとしても考えておる点でございまして、この話の進行と申しますか、発展の状況に応じまして十分に青年の利益を擁護するために、必要があれば外交交渉もいたし、いろいろ努力して参りたい、こう考えております。
  129. 渡辺惣蔵

    渡辺(惣)委員 同じ問題が、メキシコの方では三十万人だ、こっちは一千人だからといって差別待遇をここでもはっきり受けておる。日独協定はしておりながら日米協定はしていない。日米協定も軍事協定の方ばかり力を入れて、肝心な生活を守る方はさっぱりやっておらない。それも何もみなが行きたいと言ったのではない、募集して宣伝をして連れて行っているのです。義務づけられて行ったのではない。従って準備が不足しておる。もう前後三年たっておりますから、今さらテスト期間なんていうことではないと思う。初めからこういうことが明らかでない。たとえばメキシコでは所得税は取っていない、免除されておる。日本の労務者は所得税を取られておる。しかも日本の労務者は、帰ってきてからまた日本で二重に所得税を取られはしないかということを心配しておる。メキシコは旅費を二十ハドル支給されておる、所得税も免除されておる。日本の労務者は五%のピンをはねられて、しかも旅費の補助もない、所得税は取られる。そういう意味においても、日本の労働者とメキシコの労働者との間には現地では大へんな待遇の差がある。しかもこういう盲点が足かけ三年、まる二年になって、今もって解決がついておらない。条件が違うからだということは、私はやはり監督官庁の努力が足りないせいだと思います。何と申しましても努力が足りない。農林省でも外務省でもこちらから送り出した直接の人が——朝海大使や何かに話をされておる、熱意を持ってやっておるとは受け取れない。この点については時間がないので、もう終りにしますが、もう全国で一千名が待機しており、去年の五月ごろ訓練を受けている、それで一年間ほうりぱなしだから、これは大へんなんです。その募集に応じてテストを受け、そして訓練所に入れられて十日間の訓練を受けて、そしてきまったことになりましてから、餞別はもらうは、服は作るは、もう一切出る支度をした。ところが一年間ほうられているのです。そして、その試験に合格した、第二班でアメリカに行く千名の人たちは、今村におられなくて、そして、いつ行くんだ、いつ行くんだ——餞別はもらってしまった、金は使ってしまったし、といってアメリカへ行く支度をしたのですから就職するわけにいかない。一年間行けないために村へ帰れないで、仕方がないから町へ出てくる。みんな因っておる。泣きの涙です。私が視察の報告を新聞に書きましたところが、地方から私のところに手紙がきて、損害賠償の訴訟を起すという。一年間ほうられているために、若い青年が一年間行き場がないという。こういう何らの計画性のない、募集しておいて一年間もほっぽらかしておく。現地に行った者は苦労する。こういうことでは筋が通らないと思うのです。  私はもっと——こういうじみな問題が外務委員会にかかったのはきょうが初めてかもわかりませんが、きわめて重要な問題で、これはほうっておけない。国内で三府四十三県みな出ておるのです。みんな役所がタッチしておる。農業協同組合、開拓農業協同組合がタッチしておるのですから、私の持っておる新聞だけでも大へんなものです。全国毎号この問題が出るたびに書かれておるのです。そんな簡単な問題ではないのですから、そういう点について外務当局は、この問題について緊急に態度をきめて、農林省と外務省がもっとはっきり責任態勢を固めて、派米協議会などという莫大な補助金だけを取ってピンはねをしておるかのごとき——しておるというのではありませんが、そういう誤解を生むような行為を、一つ徹底的に解明していただきたいということを希望いたしまして、私の質問を終ります。
  130. 床次徳二

    床次委員長 本日はこれにて散会いたします。次会は公報をもってお知らせいたします。     午後零時五十三分散会