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1958-03-11 第28回国会 衆議院 外務委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年三月十一日(火曜日)     午後三時十六分開議  出席委員    委員長 床次 徳二君    理事 菊池 義郎君 理事 須磨彌吉郎君    理事 森下 國雄君 理事 山本 利壽君    理事 戸叶 里子君 理事 松本 七郎君       伊東 隆治君    高岡 大輔君       野田 武夫君    松田竹千代君       松本 俊一君    大西 正道君       田中 稔男君    森島 守人君  出席国務大臣         外 務 大 臣 藤山愛一郎君  出席政府委員         外務事務官         (経済局長)  牛場 信彦君         外務事務官         (条約局長)  高橋 通敏君  委員外出席者         外務参事官   白幡 友敬君         専  門  員 佐藤 敏人君     ————————————— 本日の会議に付した案件  日本国インドネシア共和国との間の平和条約  の締結について承認を求めるの件(条約第二  号)  日本国インドネシア共和国との間の賠償協定  の締結について承認を求めるの件(条約第三  号)  旧清算勘定その他の諸勘定残高に関する請求  権の処理に関する日本国政府インドネシア共  和国政府との間の議定書締結について承認を  求めるの件(条約第四号)      ————◇—————
  2. 床次徳二

    床次委員長 これより会議を開きます。  日本国インドネシア共和国との間の平和条約締結について承認を求めるの件、日本国インドネシア共和国との間の賠償協定締結について承認を求めるの件、旧清算勘定その他の諸勘定残高に関する請求権処理に関する日本国政府インドネシア共和国政府との間の議定書締結について承認を求めるの件、以上三件を一括して議題といたします。  質疑を許します。田中稔男君。
  3. 田中稔男

    田中(稔)委員 前回の本委員会において、同僚戸叶里子君から、およそ問題点考えられる諸点につきましては、漏れのない質問が行われたようでありますが、私は重複を避けまして、若干の点について藤山外務大臣に質問申し上げたいと思います。  まず第一に、政府としてはこの平和条約賠償協定を、本国会においてすみやかに通過させたい、こういう御意向のようであります。一方インドネシア国会におきましても、すでに委員会を通過しまして、近く本会議に上程されることになっております。何でも十五日ごろには本会議において可決される見込みだそうであります。政府一体衆参両院を通じて、これが国会を通過する予定について大よそどういう見当をつけておられますか。社会党としてももちろん協力する意向はあるのでありますが、一応承わっておきたいと思います。
  4. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 ただいまお話のありましたように、インドネシア議会が大体十五、六日でもって休会と申しますか、あるいは第一回の会議を終るというか、そういうような状況にあるようでございます。そしてインドネシア側も、そのころまでに承認を与えるように現在考えられております。従ってわれわれといたしましても、少くもその前後、二十日ぐらいまでの間にはどんなことをしても承認をしていただきたい、こういうふうに考えておるわけでありますが、大きな問題でありますから慎重に御審議を願う場合がありましょうから、よろしくお願いします。
  5. 田中稔男

    田中(稔)委員 そういうことならば、私ども野党協力いたしますから、外務大臣総理大臣衆参両院委員会などによく出ていただいて、一つ審議を促進していただきたいと思います。  それからインドネシアは、サンフランシスコ平和条約に署名をしたのでありますが、その後本国の国会において反対を受けてついに批准ができなかった。その間のインドネシア事情を簡単に御説明願いたい。
  6. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 御承知のようにインドネシアの政情は現在においても若干複雑なものがございますけれども、その当時はインドネシアとしてはまだ独立早々でありまして、非常に数多く政党もあったわけであります。その間のいきさつがじゃまをしたことではないかと考えております。むろんインドネシア対外政策の上から見て、日本立場というものをもう少しはっきり認識したいというような点も考えられるわけであります。そういうようなことからいろいろな意味批准されなかったと思います。
  7. 田中稔男

    田中(稔)委員 たしか当時はインドネシアにおいてはマシュミ党スキマン氏を首班とする内閣があったやに記憶しております。マシュミ党といえば親西欧、親米的な政派でありまして、今日スカルノ政権に対してむしろ反対党立場にある。またサンフランシスコ平和条約というものはアメリカのイニシアチブによってでき上ったものでありまして、私どもはその当時反対したわけであります。そういういろいろな事情がありましたので、インドネシア政府としましては、アメリカに従属するような外交の所産であるサンフランシスコ平和条約反対したのだろうと私は思うのであります。その後スカルノにより、いずれの陣営にも属しない積極的中立主義外交の線をたどっているインドネシア政権が確立されたわけであります。そういうときに、ずいぶんおくれましたけれども日本インドネシア平和条約が結ばれるということは、私は非常にけっこうなことだと思います。そういうことにつきまして、藤山外務大臣はかねて日本アジア・アラブ・グループの一員であることを日本外交の建前とされておるようでありますが、そういう立場からの御感想を聞きたいと思います。
  8. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 日本はかねて私が申しておりますように、地理的にも経済的にもあるいは人種的にもアジアに属していることは申すまでもないことだと思います。アジア人考え方は、西欧人考えとはその思考方法において違いがあるということははっきりしているのじゃないかと思っております。しかしそのアジア式考え方だけがいい、西欧式考え方が悪いということは私は申さないのであります。おのおの特徴はありますが、アジア人としては一つ思考方法を持っている、そういう意味において、アジア人というものは感情的にもまた今申し上げたように地理的、歴史的あるいは経済的な関係から見ましても、一つになっていくことが非常に有益なことであり、大きく申せば平和の時代を出現させるために必要だ、こういう考え方を私はかねてから持っているわけであります。ことに政治的には植民地主義というものがすでに前世紀の遺物になっております。私はかって民間におりますときに書いたことがあるのでありますけれども西欧人たち自分たち植民地として育てた国家がだんだん一人前になってきた、従って、お前たちも一人前になったから自分で早くやったらいいじゃないかというような気持西欧の人がなってきた、また過去において育てられ教育されたことは、いろいろな悪い点もあったかもしれないが、また今日独立の機運までこれるような状態になってきたのだから、西欧人たちに、自分たち独立する域に達したから独立して諸君たちと大いに友好的に話い合いをしていきたい、お互いにこういう気分になっていけば、この問題はなめらかなうちに解決していくのじゃないかということを私前にも書いたことがあるのであります。私は、国際的な民主主義立場からいいましても、各国人たちがそれぞれその所を得、その自分たち風俗習慣その他を尊重しそれをもとにして発展していく、世界のあらゆる国々からいろいろな長所を取り入れて、自分の持っている過去の長い間の素質を生かしていくということは非常に必要なことであり、またそうあらねばならぬと考えております。従って私といたしましては、アジアアフリカのそれらの人たちの今日の独立に燃えておる気持に共感し、またわれわれ今申し上げたように感情においてもあるいは思考においても同じような系統にある者は比較的理解しやすいわけでありますから、そういう立場に立って物事をやり、同時にまたそれらの気持でもって西欧側にも話しかけていくことが必要であろうと思います。そういう意味において、アジアアフリカ新興国民に対して最大の敬意を表し、ともに手を携えて参りたいと考えております。
  9. 田中稔男

    田中(稔)委員 平和条約の第三条には、「バンドンにおいて開催されたアジアアフリカ会議における決定精神に従って」云々と書いてある。これは私けっこうだと思いますが、そのあとに「両国間の経済関係をさらに緊密化することを希望する。」と書いてある。これはこれだけでは物足りないと思う。御承知のように、アジアアフリカ会議の広範な問題について意見を述べた長文の最終コミュニケに、一切の討議の結果がまとめられておりますが、それには、経済協力文化協力、人権及び民族自決従属人民の問題、その他の問題、世界平和と協力の促進についての宣言というような項目があるのであります。最後にこれを平和十宣言としてまとめてある。そこで私は、平和条約においてバンドン精神をただ日本インドネシア両国間の経済関係だけに適用するというようなこういう書き方は、狭過ぎると思うのです。全面的に、特に政治文化の面において、バンドン精神を尊重する、両国間はこのバンドン精神によって規制するというようなことを私は当然考えなければならぬと思うのです。これについての御所見を伺いたい。
  10. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 御指摘の通りバンドン宣言あるいはバンドン会議精神は、広いアジアアフリカ友好親善、並びにそれに基いての今後の世界政治に対する一つ考え方あるいは共通に持ち得る考え方をとったところでありまして、むろん個々の問題について、それぞれの国が違った立場、問題の処理をする場合もありますけれども、大きな精神としては、そうあろうと思います。従ってその意味においては、単に経済関係だけでなしに、他の文化政治、学術、いろいろな面におきましても、そういう意味で提携をいたしていくことになろうかと思います。またその精神を尊重して、両国間の問題をできるだけ規定していく、あるいは調整していくということになろうかと思います。従ってアジアアフリカ会議における決定精神に従って、今回特に経済関係だけがここに抽出されましたということは、私は一面ではインドネシアの現状における一番適切な状態を物語っているものであり、またわれわれもそれがインドネシアの今日の非常に大きな問題であるということを思うのであります。そういう意味におきまして、こういうふうに経済問題が特に摘出された、こう考えております。
  11. 田中稔男

    田中(稔)委員 ひとり経済関係にとどまらず、政治文化の面においてもバンドン精神は尊重されなければならない、こういう趣旨の御答弁でありました。私はそれに満足をいたします。  その他としますと、バンドンの平和十原則の中の四でありますが、他国の内政に関与または干渉しないことというのがある。ところが今は御承知通りに、パダンを中心として反革命政府、名前は革命政府といっておりますが、私は実質的には反革命政府反乱政府だと思う。そういうものができており、これに対してオランダが好意的な、何か支援を送っておる事実、さらにまたダレス国務長官言明等を通じてみましても、何かアメリカ方面が、まだ具体的な支援はしておりませんが、少くとも、モーラル・サポートを与えておる、そういう感じがする。これが発展いたしますと、内政干渉になると思います。その内政干渉を未然に防ぐということが必要である。そういうことになりますと、バンドン精神から申しまして、われわれはそういう内政干渉が起らないように、両国でやはり協力し合う必要がある。また十原則の第六には、いずれかの大国の特定の利益に役立たせるために、集団防衛の取りきめを使わないことというのがある。今日、日米安全保障条約というようなものは、これは政府日米が対等の立場に立って結んだ平和のための取りきめである、こういうふうに解釈されておりますけれども世間一般には、あれはやはりアメリカ極東における反共軍事同盟日本を巻き込んだ姿である、こういうふうに解釈しておる。むしろこれが国際的には通説であります。こういうふうに、いろいろバンドン精神を具体化した十原則をずっと拾い上げて参りますと、非常に今の日本インドネシア両国関係において、やはり重要な問題になる事柄があるわけであります。そしてたとえば、これは少し飛躍しますけれども、現在マニラSEATO理事会か開かれており、アメリカ構想に基きますと、SEATONATOとかあるいはバグダッド条約とかいうものとずっと連関させていきたい、そしてまた日本台湾、朝鮮を含んで、いわゆる東北条約機構といいますか、NEATOというような構想がこの中から浮び上ってきている。これももちろんグローバルなそういう一つ集団防衛体制の中に包括されるという見方もあるわけです。そういうことになりますと、日本からアイスランドまで、ユーラシア大陸にわたって一つ反共軍事同盟ができる。そういうことになりますならば、これはインドネシアにとってやはり重大な関心事になると思う。こういう私の言葉は幾らか飛躍的な想像をまじえたことでありますけれども、これも事態の発展いかんによっては、そうなり得る可能性はひそんでおると私は思う。こういうふうな問題について藤山外務大臣は、特にこのバンドン精神との関連においてどういうふうにお考えになりますか、お尋ねしたい。
  12. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 バンドン会議は、私も当時民間におりましたけれども衆参両院の顧問の方々とともに列席をしたのであります。御承知のように歴史的な会議であったと私は思います。そうしてその中では、今お話のように、バンドン会議に出席した国々が、それぞれ過去におきまして、あるいは当時においていろいろな立場を持っておった国であることも事実であり、またその国々の間に相当なそれぞれの立場あるいは歴史的背景を持ちまして激しい議論が行われました。そうして私ども見ておりますと、場合によっては会議が決裂するのじゃないかというふうに感じたこともあるのであります。しかしながら、とにかくアジアアフリカ人たちが将来に向って一つの大きな目標を作っていこうという精神が最終的にはあの原則をまとめたと私は思います。従って、それぞれの立場において、あるいはそれぞれの環境において、いろいろな意味で今日でもまだバンドン会議加盟国全部が割り切っているわけでもございませんし、またそれぞれの立場によろうと思います。しかしながら、やはり遠く目標としているところは今申したようなところにあるからこそ、あの十原則というものがとにかく最終的にきまった。そういう意味におきまして、私どもとしては、最終的なアジアアフリカ目標として、そういう問題を頭に入れつつ、現在の情勢を考えながら、これに対処していくというのでなければならぬと思っているのでありまして、われわれとしてはそういうことに考えておる次第であります。
  13. 田中稔男

    田中(稔)委員 それで経済関係と書いてありますが、これはバンドン精神政治経済文化、そういうすべての関係に適用する、こういうふうに条約の文面を修正する可能性はないのですか。
  14. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 今ここで条約の修正をいたしますことは、向うの議会による批准の進行もありますしいたしますから、非常に困難なことだと思います。しかしながら、両国友好関係を打ち立てるため今回の平和条約ができました、そういう関係から言いまして、私は単に経済ばかりでなく、政治関係においても、文化方面関係におきましても、円満に、しかも大きな理想であるバンドン精神に沿っていくことは、インドネシア側においては疑いのないことであり、また日本側もそれに対応して両国関係はそういうふうに進めていけるものと信じております。
  15. 田中稔男

    田中(稔)委員 今私が申しましたことと関連しますが、マニラで開かれておるSEATO会議で、SEATONATOバグダット条約機構に連関させるという、ダレス考え方、これについてと、もう一つは、よく言われておりますが、日本台湾、韓国、それにフィリピンなどを加えた東北アジア条約機構NEATOですか、そういうふうな構想について藤山外務大臣はどう考えておられるか。日本としてはそういうものを作るには反対であるという御意向であればはっきりここで一つおっしゃっていただきたい。
  16. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 現在のSEATOに入ることは考えておりません。NEATOというものが果してできるかどうかも考えませんが、私ども世界の平和を達成するためには、むしろそういうふうな部分的集団機構を作りますより、やはり巨頭会議その他で根本的な解決がなされることが一番好ましいことであり、われわれの努力しなければならぬ点だと思うのであります。そういう立場から、どうしても今後そういう問題が起るとも思いませんが、起るような場合には善処していきたいと思います。
  17. 田中稔男

    田中(稔)委員 SEATO日本は参加しないということはわかりましたが、もう一つSEATONATOバグダッド条約機構と結びつけて一つのグローバルな集団安全機構を作ろうというアメリカ考え方、これについて日本関係しないといえば関係しないのですけれども、特に国連に加盟しておる今日、日本世界の問題にすべてタッチする必要がある。それについての外務大臣の御見解を伺いたい。
  18. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 私は日本立場として、やはり相互武力によって包囲態勢を作る、あるいは武力によって攻撃態勢を作るということでは、総理も言われておりますように、武力武力の対立が続く限りにおいてほんとう意味での平和はこないのではないか。やはり巨頭会談その他を通じて軍縮を達成し、核兵器その他の使用、製造等も禁止されて、そして初めてそこにほんとうの安定がくるのではないかというふうに思います。
  19. 田中稔男

    田中(稔)委員 そこでこの際お尋ねいたしたいのは、わが社会党日米安全保障条約もすみやかにこれを廃棄しなければならぬ、と同時にまた日本対象とし、あるいは日本と結んでいるアメリカを真の対象としている中ソ友好同盟条約というものができている、それも一つ一日も早く解消してもらいたい、そして日米ソ中、こういう極東の主要な国を中心とした全般的なアジア安全保障体制を作るべきである、こういうことを主張しておりますが、この構想についてどういうふうにお考えですか。
  20. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 お説ではありますけれども、現在の場合そういう構想が必ずしもでき得るとは私ども思っておりません。われわれとしては日本の今までの立場から見まして、やはり日米間の協調を十分立てて、そうして日本国際的に、経済的にも政治的にも、あるいは自衛力日本自身で十分に、侵路ではありませんけれども自衛立場がたもてるまでは、日本としてはやはり友好関係アメリカにつけておくべきことは当然であり、むしろそれなくしてもどことも友好関係をして参ります。従って現在のような対立した中においてそういう構想が発展することは考えられません。しかしながら両陣営巨頭が相集りまして、将来根本的に平和な状態になるような話し合いによっていきますれば、そういう機構なしにでも軍縮その他が達成されていくのだと思います。そういう点についてわれわれとしては今後全面的な両陣営不安解消に伴い、また両陣営武力による対抗そのものが一歩でも少くなっていくように努力すべきだろう、こういうふうに考えております。
  21. 田中稔男

    田中(稔)委員 巨頭会談に努力すべきだとすれば、極東の地域に限って一つ小巨頭会談というものを考えたらどうかと思う。たとえばソ連からブルガーニンが出る、アメリカからダレスでもいいのですが、日本から岸総理が出る、願うならばこれに中国から周恩来が加わればいい、中国はどうしても困るというなら中国を除いて日米ソ三国の、最高級の巨頭でなくてもいいので、総理大臣級の者であってもいいのですが、極東的規模において極東の平和と安全の問題について話し合う極東小巨頭会談というようなものを開くことはどうですか、これは御賛成のはずですが……。
  22. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 今日のような状態におきまして、それぞれの国の政治責任を持った人たちが相ともにごくフランクリーに話し合うということは、私はやはり国際間の信用高め誤解を解き、何らかの平和にいく道であると思うのでありまして、そういう観点において各方面の人々がそれぞれ話し合うということが必要ではないか。従って今のような巨頭ばかりじゃなく、中巨頭も小巨頭もいろいろある、あるいは巨頭と中巨頭一緒になる、小巨頭とも一緒になるということも私は必要だと思います。何としましてもやはり一番のことは、国際信用と申しますか誤解もあることでありますし、そういうものの上に立って政策が立てられるということは好ましいことではない。ただ会いました結果は逆な方向に向いますことそのことは非常におそろしいのでありますから、そういうようないろいろな問題が起ってきた場合には十分準備企画をしてやる必要があろうかと思います。従って私としましてはただいまのお話のように巨頭であるか中巨頭であるかわかりませんけれども、いろいろな各国首脳者か集まって話すことについては異議はございませんし賛成いたします。
  23. 田中稔男

    田中(稔)委員 だいぶ横道にそれましたが、せっかくの際ですから申し上げます。今のお答えは少し歯ごたえがあるようですが、藤山外務大臣自分は気楽にどこにでも行くんだ、たしかある機会にソ連に行ってもいいというようなお話もあったように思います。そういうことであればどうでしょうか、あなたがワシントンに行くとかモスクワに行くとかいうようなことでなく、東京米ソ両国大臣頭か小巨頭か中巨頭、何でもよろしい、少くとも外務大臣クラス以上でなければいけませんが、東京に来てもらって岸総理なりあなたが相手をされて、そして問題はやはり極東の平和と安全の問題に限定していいわけですし、それから漁業問題なんかにも発展するかもわかりませんが、そういうような地域的な巨頭会談をおやりになるということをほんとうに真剣にお考えになってはどうだろうか、これはあなたが外務大臣として大きな仕事をされることになりはしないか。御答弁は求めませんが、強く要望しておきます。  次に今度本筋に帰りまして、平和条約の第三条の(b)に、「いかなる第三国に与える待遇に比較しても無差別な待遇相互に与えるものとする。」こういうのがありますが、この「無差別な待遇」というのはよく使われます「最恵国待遇」ということと同じ意味であるかどうか、御説明を願いたい。
  24. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 これは最恵国待遇と全く同じでございます。
  25. 田中稔男

    田中(稔)委員 次に第四条の1でありますが、「戦争中に日本国が与えた損害及び苦痛を償うため」賠償するんだ、こう書いてあります。ところがそのあとの方に、「すべての損害及び苦痛に対し完全な賠償」を行うということは、日本経済力をもってしては不十分であるというようなことも書いてある。そこで、今度焦げつき債権を棒引きすることによって、実質的に四億ドル程度賠償を払うことになるわけでありますが、損害及び苦痛を完全に償うとするならば、一体日本インドネシアにどの程度金額賠償を払うべきであるのか。つまり四億ドルというのは完全な賠償じゃないだろうと思います。少し足りないがこれでがまんしてもらいたい、日本経済的な事情考えてもらいたい、こういうことだろうと思うのです。だから、日本側から、今こういうことを言うとあるいはまずいかもわからぬが、ほんとう損害及び苦痛を完全に賠償するとすれば、およそどのくらいの金額考えられますか。
  26. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 インドネシア側からは百七十億ドルというような大きな金額も最初出ております。しかし、その後のいろいろな経過でこうなってきたのでありまして、日本側からどの程度払ったら完全かということは、非常に困難な問題じゃないかと思いますが、それは参事官から交渉の経過等お話しすれば、若干その点が明瞭になるのではないかと思います。
  27. 田中稔男

    田中(稔)委員 そのことはあまり追及してもどうかと思いますからやめます。  その次に、一項の(b)(1)ですが、「この条約の効力発生の時にその管轄内にある日本国及び日本国民のすべての財産、権利及び利益」とありますが、これは外務大臣でなくても局長でもけっこうですが、どういう種類の財産や権利や利益がどの程度あったのか。これを一つ御報告願いたい。
  28. 白幡友敬

    ○白幡説明員 お答え申し上げます。これも実は完全に詳細な数字はなかなか出にくいのでございますけれども、その中で比較的大きなものと考えられるのは、戦前日本の商社が向うで持っておりましたエステート、これが何と申しましても大きゅうございます。これの評価はいろいろやり方もあると思いますけれども、またその資料も必ずしも完全ではございませんが、私どもが知り得ました範囲内では、商社といたしましては野村とか石原、東山、その他のものを合せまして、しかもこれは大体土地のリースでございましたので、それを現在の割合でもって検討してみますと、やはり相当の量に上ると思います。ドルにいたしまして二、三千万ドルくらいのものになるのではないかと思われます。それが比較的大きなものだと思われます。それ以外には、若干の鉱物資源を開発しておった所もございますし、それからまた御承知のように戦前あそこへ日本の小さな商社と申しますか、貿易商がかなり進出しておりました。こういう人たちの持っておりました家屋あるいはその他の財産というものが相当あると思われます。
  29. 田中稔男

    田中(稔)委員 次に賠償協定の方ですか、昭和二十八年十二月十六日、沈没船舶引き揚げに関する中間賠償協定というものが調印されて、発効には至らなかったのですが、今度いよいよ賠償が実施されるとすれば、この沈船引き揚げの作業もまた始まるものと思いますが、一体インドネシアの近海に沈船としてはどのくらいの船が沈んでおって、そしてその引き揚げ作業が開始されておるか、そのことについて御説明願いたい。
  30. 白幡友敬

    ○白幡説明員 お答え申し上げます。日本側の調査は完全に行き届いておりませんので、大体インドネシア側、と申しましてもこれはまだ占領軍がおりました当時に占領軍それからインドネシア側から入ってきた統計と申しますか調査がございます。正確な数字は私ただいま記憶しておりませんので、後ほど詳細なものを差し上げたいと思いますが、船の数にいたしまして大体七十ぱいくらいじゃなかったかと思いますが、これは大小さまざまの船でございます。ところがこれが、インドネシアの場合には、御承知のように、近海が遠浅の所もありますが、かなり変化がございまして、相当深くに入っておるものもございます。おそらく今度インドネシア賠償が始まりますと、そのうち特に港湾などに沈んでおって航行に障害を起すようなものに対して、まず第一次的に沈船引き揚げ作業ということをインドネシア側が希望いたしましたときにはさっそく起ってくる問題だろうと思います。しかし、フィリピンの沈船は御承知のように比較的湾の中に沈んでおりまして、しかも湾が比較的浅うございましたので、調査が比較的容易であったわけであります。インドネシアの場合は、その点が、非常に散在しておりますし、海底の状況が深くなっておりますので、調査に相当時間かかかるのじゃないかと思います。
  31. 田中稔男

    田中(稔)委員 賠償協定の附属書にいろいろな計画が載っておりますが、この計画のうち、大体政府においてこういう計画を取り上げたらいいという、何か今までの調査あるいは民間のいろいろな調査で見当のついておるものがありましたらお示しを願いたい。
  32. 白幡友敬

    ○白幡説明員 御承知のように賠償は、求償国の方の要求がまず出てくるわけでございまして、日本側から特にこれを先方に強制するわけにも参りません。しかし、ただいままでに私どもが先方と話しております間に得ました印象では、やはりインドネシアの五カ年計画のうち特に基本産業と申しますか基本施設というようなもの、特に彼らが具体的にあげておりましたのは、電源開発の問題とか、交通運輸関係もございます。これは海運も陸上も含むのでありますが、そういうものでありますとか、あるいは製鉄であるとか、基本産業を特にやっていきたいという希望を持っておるようでございますから、おそらくそういう方面にまず先方の要求が向けられてくるのではないかというふうに考えられます。
  33. 田中稔男

    田中(稔)委員 賠償として供与される生産物は原則として資本財となるわけであります。しかしインドネシア側で現在インフレーションが相当激しい、これを鎮圧する必要もあるし、また日本としては繊維製品のストックが非常に大へんなものですが、これを処理する必要がある。両国意向がちょうど合致して繊維製品を中心として消費財も相当供与されることになるのじゃないかと思いますが、そういうことにつきまして御答弁を願いたい。
  34. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 賠償原則としてキャピタル・グッズ並びにサービスということになっております。その原則を曲げるわけには参りませんけれども、しかし賠償を実施して参りますということは、やはり両国間の生きた関係において動かして参らなければならぬことは事実なんであります。従いましてビルマの場合にも、ビルマ側が若干の消費財を要求したような場合に、全体のワクを変えない限りにおいては供与した例もあるのでありまして、インドネシア経済発展のために貢献する意味でありますれば、運用面においてそういう面は考える。しかし原則としては、やはりそういうものをあらかじめ供与するという立場はとらないでおります。
  35. 田中稔男

    田中(稔)委員 そうだとすれば、この賠償協定第二条の第三項に、「賠償は、両国の間の通常の貿易が阻害されないように、かつ、外国為替上の追加の負担が日本国に課されないように、実施しなければならない。」こういう義務の規定があるわけでありますが、消費財を贈償として供与する場合、この義務規定に反する結果になりはしませんか。
  36. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 もちろん「通常の貿易が阻害されないように、」というこの規定を犯してまでやる考え方は、日本側ではないわけであります。しかしながら、ただいま申し上げましたように、インドネシア側が建設進行の過程においてあるいはインフレ防遏のために若干そういうものを必要とするような場合において、本協定の精神を害さない限りにおきましては考慮する場合もあり得ないことはないというわけでありまして、原則としてはここに出ておりますようなことを守っていくことは当然であります。
  37. 田中稔男

    田中(稔)委員 この役務の一部として、たとえばインドネシアの留学生を日本で教育するというようなことも行われるといいますが、そういうことについて政府としてかねて研究をされているようなことがあるかどうか。民間におきましては、たとえば下中弥三郎氏あたりが何かそういう計画を持っていて、大津のキャンプの跡なんかを敷地としてすでに考えられておるようでありますが、これは行き悩んでおります。そういうことは非常に重要なことだと思いますが、何か研究されておることがありますか。
  38. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 日本において賠償を通じて留学生もしくは技術研修生等を受け入れますことは、この賠償計画の精神には反しておらぬと思います。従いましてインドネシア側においてそういう希望がありますならば、そういう問題を日本側でもできるだけ好意的に、また十分目的の達成するように取り上げていくのがしかるべきだ、こう考えております。現在コロンボ・プラン等におきましても、日本の技術研修生としてすでにインドネシアから来ているのもございます。しかしながら何しろわずかな人たちでありますが、それもまた相当の成績を上げて帰っておりますので、インドネシア経済のためには、そういう意味でのサービスを日本がいたしますことは非常に有効だと思いますので、そういうこともわれわれはむしろ進んで考えていきたい、こう思っております。
  39. 田中稔男

    田中(稔)委員 私の質問は終りました。
  40. 床次徳二

    床次委員長 大西正道君。
  41. 大西正道

    ○大西委員 今の田中君の留学生の問題をもう少し発展させてお伺いしたいのですが、東南アジアインドネシア、現地の事情を見ますと、日本文化と学術などに対して非常な尊敬と申しますか、期待を持っているわけです。それで今そういう国々からの文部省の留学生の受け入れの状態を見ますと、一つの国にわずか一名とか二名とか非常に微々たるものです。しかもこちらへ来て勉強したいというのは、その何十倍かに上っておるようですね。だからそういうものはまた文化交流とかいうようなものでも解決のできる問題ですが、今田中君からお話のありましたように、この賠償協定の中に、賠償一つの目的として、それを解決するかどうかという基本的なことにつきましては、今向うが望めばこちらに用意がある、こういうお話でありましたが、これはぜひそういうことが実現されることを望むのでありますけれども、この点について、今日までのインドネシアとの折衝の段階において、留学生の問題などについてどの程度の話し合いがされましたでしょうか。これはこの協定の案文よりも事実の交渉の問題としてお伺いしたいと思います。
  42. 白幡友敬

    ○白幡説明員 インドネシアでは日本に留学生を送るということに対しまして非常に熱心でございまして、ただいままでは、大西委員からただいまお話のございましたように、日本の文部省の経費によるごくわずかの留学生とか、あるいはごくわずかのコロンボ・プランが送りました者、それから民間で若干やってございます、たとえば関西にございます近畿大学で全額出してインドネシアから学生を呼んでいるものもありますし、それから民間の商社でもって若干学生だとか研修生を置いているものもあります。  しかしこれらのほかに、四年前でございますが、御承知と思いますつが、インドネシア政府の経費でもって七十五名ばかりの学生を一挙に送ってきたことがございます。そうしましたところが、実は当時といたしましては、日本側といたしましても、それだけの大量の学生を受け入れるだけの十分な心がまえと申しますか、ございませんでした。しかし極力世話をいたしまして、各方面に分散いたしまして教育したのでありますか、向うから参ります学生は、主としてインドネシア政府政策といたしましては——独立戦争中に学業半ばで独立戦争に参加した者がおるわけでございます。それが独立戦争が終りましてからまた再び学業に帰ります。これを復員学生とわれわれ俗称しておりますが、その復員学生に対して、国のために奉仕したのだからやはり優先的に何かやってやりたいというのがインドネシア政府の希望でありまして、政府出資の場合にも、またプライベートの出資の場合にも、とかくそういう学生が優先的に来ているわけでございます。ところがこういう連中の中には、やはり一時相当荒っぽいことをやってきた連中だものでございますすから、精神的に、気の荒くなっている者がありまして、そのためにインドネシア政府から送って参りました学生の中に、若干名、どうもおもしろくない学生もおったわけでございます。しかし大部分はなかなかいい成績を上げております。特に日本の銀行関係で勉強した者、それから造船関係で勉強いたしました者は、非常にいい成績を上げました。それで帰りましても相当団結して、現在向うの政府で相当重要な役割をやっております。ところが中に若干名、そういう分子がありましたために、その他財政上の理由もございましょうが、その後は大量の者を送ることはございません。昨年はそのかわり十数名でございますが、やはり向うの政府の出資でやってきております。この場合はやはり独身であるとどうも気か荒くなるというので、できるだけ夫婦同伴でやって参りまして、奥さんの方も日本で勉強しておるという状況になっております。  こういう状況なものでございますので、私どもが今までわかりました限りでは、やはりインドネシア政府の経費——これは先方の予算の上から申しますと、文部省とそれから復員軍人省というのがございますが、大体それの共管になっております。それでこの計画を立て、そこの予算でもって送ってきている学生、こういうものを、できれば日本賠償計画に乗せる、賠償計画で受け入れたいという考えを持っております。それ以外に私どもが具体的に話しましたのは、先日スカルノさんと一緒に参りました海運相のナジールさんという人が——やはりインドネシアにとっては造船というのは非常に重大な産業でございますので、こういう造船業に従事すべき工員の研修生を日本で養成してもらいたいという希望がございます。これもおそらく先方が具体的にそういう案を作りましたならば、やはり賠償計画の上にも載ってくるのではないかと思います。現在のところ一体どれくらいの規模で参りますか、そこまでは実はまだ話はいっておりません。
  43. 大西正道

    ○大西委員 大へん向うも積極的であるということはそれでわかりましたが、他の賠償物資の取引のようには簡単にいかぬのでありまして、今お話のように受け入れる学校がやはり問題になります。さらに宿泊の問題があります。それから風俗習慣も違いますから生活の問題もある、言葉の問題もある、こういうふうにいろいろな問題があります。ですから政府の受け入れ態勢というものも、よろしいと言われる場合には、それ相応の具体的な準備がなければならぬと思うのです。今これをどうこうせいということは、もちろんこちらから何も押しつけるわけにいかぬから言えませんが、その点は十分な御配慮がなければ、せっかくよい意図でやっても結果は非常に悪い結果が残ることになると思うから、この点留学生の問題は大いに進めていただくと同時に、受け入れの態勢については最善の注意を払っていただきたい、こう思うのです。これは向うの留学生をこちらへ受け入れるという問題です。  それから向うに発電所を作るとか、あるいはその他いろいろな向うの施設を日本が作るということなんですが、それに関連して向うに学校を作る、日本の問題を中心にしたところの大学ですね、こういうことも私はもし向うが望むなれば、日本としては大いに意義のあることであろうと思うのです。こういう点については附属書のVIの6うというところにありますが、果してこういうところで処理できるものでしょうか、いかがでしょうか。それと向うの希望として現地に学校を作ってくれ、しかもその学校は日本の学問その他を中心にしたものであり、教師は日本の教師が教える、こういうふうな点まで発展した話し合いというものはなかったでしょうか、この二つです。
  44. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 日本のそういうような文化的な施設をインドネシアに置くということ、その建物を建てるということは資本財のうちでできるわけであります。インドネシア事情から言いまして、学校を作るとか病院を作るとかいうようなことは、要求がありますれば私どもは当然できるし、またやることが必要ではないかと思います。教員を全部が全部日本人のサービスといいますか、それでやるということはどうか、向う側がそこまで希望するかどうかわかりませんが、少くも優秀な日本の教師がサービスというような意味で行くことは私は好ましいことであり、可能なことではないかと考えております。
  45. 大西正道

    ○大西委員 私の言っているのは、こちらへ来ていろいろ不便な、そういう生活その他が違う中でやるよりも、向うで直接そういう施設を作り、設備を充実した方がいいのではないかということなんでありまして、いいということが向うでもわかれば、もちろん押しつけるわけには参りませんが、それ相応の民間の使節等を派遣して、そしてそういう意思の疎通をはかってみる、打診してみるというようなことも私は有効な方法だと思いますが、そういうようなことについてのお考えはございましょうか。
  46. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 私はただいま大西委員の言われましたように、原則としてこれはインドネシアばかりではないのでありますが、東南アジアの留学生を日本に受け入れる、同時に賠償あるいはその他の話し合いによって現地に日本の手によって学校の施設ができ、あるいはその教員の一部を日本が出す、これは一面では賠償でできませんでも、あるいは文化協定等将来やりますれば交換教授というような形でも出せるわけでございますし、そういう意味においてやりますことは非常に好ましいことであり、また日本としてやらなければならぬことだ、これは大きな日本の東南アジアに対する——日本の過去の経験なり技術なり、あるいは学問なりというものを親しくしていくことは必要なことだと思うのでありまして、私は御趣旨は全く賛成であります。ただ向う側に作りますことにつきましては、向うともよく話し合いをして、またこちら側もよほどりっぱな考え方をもってそれに対処していかなければならぬ、そういうことを考えながら今後ともインドネシアに接触していきたいと思っております。
  47. 大西正道

    ○大西委員 それで留学生の問題についてはけっこうなことだという御意見でありますが、今申しました附属書のVIの6うというところはどうも技術者と職人だけを対象にしたようであって、一般の学問をやるとかいうようなことは、何かここの表現では除外するというように見えるのでありまして、もし今のような意見でありますれば、ここまで限定して書かなくても、むしろ積極的に学生その他ということを加える方が、より今後そういう問題を発展させるためにもいいのではないかと思うのですが、なぜこういうふうな表現になったのでしょうか、大した追及ではないわけですが、ちょっと私は合点がいかぬからお尋ねしておきたい。
  48. 白幡友敬

    ○白幡説明員 お答え申し上げます。特にこの表現は非常に広い意味でもって書いたわけなのでございます。そこで今お話のございました先方に学校を作りまして教育をいたします問題、これは私どももだいぶ前から研究をしておったものであります。また先ほど田中委員からもお話がありました下中先生の御意見も私はしばしば伺っておりますが、インドネシア側考え方といたしましては、あそこは教育程度が低いのであります。これを大いに高めなければならぬのでありますけれども、その場合に小学校、中学校程度は何と申しましてもやはり自分の国の人間を先生にするという考え方が強うございます。外国人の教師を受け入れますのは大体それ以上でありまして、どちらかと申しますと、相当専門化されているということになるわけであります。そこでこれにはもちろん先方の要求が当然出てくると思いますが、同時に言葉の問題とか、そういういろいろな障害がございまして、現在インドネシアでは、外国の教師を迎え入れます場合に、条件といたしましてインドネシア語か、あるいは英語ということになっておりまして、それ以外の言葉では通用しないことになっておりますので、日本から行く人も少くともそれくらいの準備をしていかなければならぬということになりますと、日本の場合にはかなりいろいろな条件の制限が出てくるのではないかと思われます。がしかし基本的な考え方といたしまして、特殊な技術学校というものにつきましてはもしも向うの希望がありましたら、日本側から何か考えてやるということは、内々ではございますけれども、先方の連中と話したこともございます。
  49. 大西正道

    ○大西委員 私はそういう留学生の問題を重大視しているのであれば、ここになぜ一般の留学生の問題を排除したような技術者及び職人の訓練というふうに限定してきたのかということを言っているのです。
  50. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 大体先ほど御指摘がありましたように、たとえば平和条約アジアアフリカ会議精神にのっとり、そのあとになぜ経済的という問題だけで、文化的あるいは政治的というのが出てこないのか、あるいはこういうような賠償協定の中にも、賠償を通じてやり得るようなそういう文化的な問題が出てこないのか、これが上ってこなかったかという、両方とも関連していると思うのですが、インドネシア側考えからすれば、おそらく現在の、ことにこの話が進行しております十二月前後の状態から考えまして、何としてもインドネシアの日常の消費経済活動を充足する、あるいは運輸、交通を充足する、また基本的にはそういうような消費物資の生産等に必要とする動力源を求めるというようなことが、賠償協定を通じて非常に大きなインドネシア側の命題であったのではないか、従ってなるべくこういう経済的な問題を主として上に表わしてきたのではないか。日本側としてはインドネシア側文化的な問題を拒絶する何らの理由もないのでありまして、従って今度の場合においては、そういう環境からそういう表現が主としてこの両条約の間に出てきたのではないかというふうに感じております。
  51. 大西正道

    ○大西委員 それから資本財を主にするのであるけれども、話し合いによって消費財もこれはある程度よろしいということ、インドネシアの国内事情のことも田中君からお話がありましたので、私はこの繊維製品の輸入の問題は触れないでおきます。これで見ますと、この賠償協定が成立しますと、賠償それから日本の対外的な債務、これらを含めて一体どのくらい日本政府は外国に支払わなければならないのか、多少支払いの性格は違いますけれども、それをどう見ておられるのですか。
  52. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 日本賠償並びに対外債務の全額については、私今手元に数字を持っておりませんので、正確には申し上げかねるのでありますが、御承知のように、ビルマの賠償が二億ドルでございます。十年で二億ドル。それからフィリピンが五億五千万ドルで、最初の十年間が二千五百万ドルずつ、後の十年間が三千万ドルずつということになっております。今回の賠償が二億二千三百八万ドルでありまして大体十二年目で完済することになりますので、やはり年間にすれば二千万ドル前後であります。従ってこの三賠償でもって六千五百万ドルくらいが年間の賠償義務として支払うことになるわけであります。それからその他の債務というものは、例の問題になっております焦げつき債権というものがあるわけでありますが、これはいずれも今後処理していくわけでありまして、四千七百万ドルの日韓間の焦げつき債権については、日韓の正式会談が開かれましたときに、われわれとしてはこの問題をあくまでも請求することにいたして参りたいと思います。その他の焦げつき債権につきましては、たとえばエジプトの問題が出ておりますが、あれも、綿花と米を輸入することによってごく近い機会に三百万ドルくらいになりますので、そう大してありません。アルゼンチンの問題は五千五百万ドルが三分五厘の利息で十年賦になります。これは処理済みと申してもいいわけであります。従ってその他の問題についてはそうない。あと小さいイタリアでありますとかあるいはインドとの関係における戦時関係の問題が若干ございます。その金額は私正確に申し上げかねますけれども、まず五億円とかあるいは十億円とかの程度で片づくような問題がまだ二、三残っております。
  53. 大西正道

    ○大西委員 いろいろなのをごっちゃにしておっしゃったようですが、賠償として払うものはこれは一応性格ははっきりしておるのだが、焦げつき債権の問題までも何かそれと一緒にされて計算をされておるようですが、どうも私若干性格が違うように思いますし、またアルゼンチンやエジプトや台湾や韓国のも支払われたのであるかどうか、そのことも聞きたいと思いますが、賠償の問題はこれは当然政府が国民の負担において払うべきものですが、焦げつき債権の問題を直ちに政府の責任であるがごとく言われるのは少し考えが違うのじゃありませんか。
  54. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 今私の申したいわゆる対外債務という確定したものは、今申し上げたような三国の賠償と、それからただいま申し上げたようにインドとの間あるいはイタリアとの間において若干、五億円か何とかいうような戦時中のいろいろな処理問題が残っておる以外には、大蔵省関係の借款関係その他のものがあろうと思いますが、外務省の関係においてはございません。今の焦げつき債券の問題はむろんこれはむしろこちらが債権を持っておるわけでございまして、ただその処理のいかんによってはあれしなければならぬ問題ですから、これは全然別個の問題として御了承願っておきます。
  55. 大西正道

    ○大西委員 それではちょっと話がそこへいきましたからお伺いしますが、焦げつき債権は今どのくらいあるのですか。ちょっとおっしゃいましたが、数字的にずっと並べてみて下さい。
  56. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 私が承知しておる範囲ですから若干数字が違うかもしれないので、その点お含みを願いますが、韓国に四千七百万ドルございます。それからエジプトが千二百万ドル、それから台湾が二千三百万ドル、それからアルゼンチンが五千五百万ドルありまして、これは十年賦で第一年の償還五百五十万ドルがございました。これは三分五厘で処理済みになっております。
  57. 大西正道

    ○大西委員 これはもう処理しつつあるものとまだ手がついてないもの、もう処理が終ったもの、これはどういうふうになっておるのですか。
  58. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 今のアルゼンチンのものが処理済みでございます。十年賦で三分五厘の利息をつけて分割払いで、第一回の五百五十万ドルは払っております。それから韓国の四千七百万ドルが未処理でございます。それからエジプトと台湾の問題は、これはただいま申し上げましたように現在の時限においてとれば焦げつき債権でありますけれども、今エジプトからエジプト綿を輸入する、米を輸入するということができております。また台湾からは御承知通り、本年度砂糖と米を輸入することになりますので、むしろ台湾は数カ月たちますと、スイング以内になって、決して焦げつきはないということになります。ただ現在の時限では、スイングの差があるということであります。
  59. 大西正道

    ○大西委員 これはよく論議された問題でしょうけれども、私は聞きますけれども、国内の商社には政府から立てかえてお払いになっているのでしょうね。
  60. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 清算勘定取引の経路を申し上げるとおわかりになりましょうが、むろん国内の商社には払っております。
  61. 大西正道

    ○大西委員 私はやはりそこらに問題があると思うのです。民間商社のそういう問題を、政府が肩がわりをして、そうしてまず民間商社に支払ってやる、こういうことになりますと、御承知のように、これはやはり国民の税金ですから、こういうことを将来もやっていくというような方針でありますれば、これは大へんな問題になると思うのです。今日までもそういうことを軽々しくやったということについては、理由はあるでしょうけれども、私は大へんな問題があろうと思う。もし国内の商社には支払ったが、相手国からは取れなかったというような場合には、政府はどういうふうにいたしますか。
  62. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 御承知のように、戦後の日本の貿易は清算勘定でやってきておるわけであります。バーター・システムとも言えるわけであります。従ってそういうことによって日本の貿易を伸ばしてきた。また各国の戦後処理の上からいきまして、為替関係上の問題がありますので、あるスイングの限度を置きまして、その中において清算勘定をやって、それを一年決済で締めくくりをつけていくわけであります。従って今日までそういう方式をとっておりますけれども政府としても数年前から、清算勘定方式は、だんだん世界経済が改善してくるにつれてこれをなくしていこうというので、二十くらいありました清算勘定方式が、現在は六つくらいになっております。将来政府の方針としては、清算勘定をなくしていくという考え方であります。
  63. 大西正道

    ○大西委員 それではこれはこのくらいでおきますが、今のお話の中にガリオア債務については何も触れられませんでしたが、これも将来は払うことになっているのかと思いますが、吉田前首相がこの問題を取りきめられてからかなりの日がたっていますし、一体政府考え方というものは、最後には払わなくてもいい、時効がきて消滅するとでも考えておられるのですか、どうなんでしょうか。
  64. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 ガリオア債務につきましては、これと同じような、ドイツにありましたアメリカのものは、御承知のように、三分の一の切り捨てでドイツはこれを払うということにいたしております。日本としては、ドイツの方式そのままでそういうことを受諾するかということは、あまり考えておらぬのであります。今後の対米折衝の問題になるかと思います。
  65. 大西正道

    ○大西委員 やはり払うという基本線ですね。私ども、これは借りたものなら、はっきり言うならば、払う準備を早く進めていった方がいいと思うのですが、あまり急がなくてもいい南ヴェトナムの問題は、やあやあ言って進めておきながら、はっきり債務だということを確認しておいて払わない、しかも話し合いも進めていかないというのは、ほっておいたらこれはただになるというふうな考えを持っておるのじゃないかと思いますけれども、私どもはこれはあのいきさつからいっても、もらったものであると思って、感謝決議までしたのだし、社会党といたしましては、払うべきものではないという考えを持っておる。一向話は進まぬし、いろいろな問題について対米折衝をいたして、防衛分担金の問題やら、自衛隊の費用の問題を話題にあげるというと、すぐこの問題が出てきて、直接間接にこれが何か政治的の取引の圧力、手段に使われておるように私どもは見ておる。そういうことになりますれば、むしろ早くつけるものは早くつけて、あなたがいつも言われるように、また岸さんも言われるように、対等の立場で云々と言われておるのだから、こんなものを借金して弱味につけ込まれて臨まれるというようなことは、対等の立場でも何でもない。私はこの際一つ、払わなければならぬという政府考えならば、その一番条件のいい額と時期を一応考えて交渉を始めるべきだと思うのですが、この点いかがでしょうか。まあ将来のことだと言われても延ばしておいて時効消滅するならけっこうだけれども、来る年来る年予算の編成の段階において、これを手段に何か因縁をつけられるというような、こういう現状は私は早く解消していったらいいと思う。
  66. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 むろんこの問題について最終的な解決を考えていかなければならぬのであります。われわれとしては、一日も早く最終的な解決をするように考えて、方策を立てて参らなければいかぬと思っております。しかし今御指摘のように、それを処理をいたしてないから、これを理由にして日本を何らか圧迫をするようなことは、この問題に関してはあまりないように感じております。
  67. 大西正道

    ○大西委員 ないと言われても、私どもはいろいろな資料に基いて見ますと、ないことはない。あるのです。ないとあなたは言われるけれども、私どもはあると認めておるのです。そうしますと、これはいろいろと工夫もしているというお話ですが、今までやらないという理由は何ですか。解決のために話し合いを進めないという理由は、どういうのですか。将来長くたてば時効になるとか、さらに三分の一か五分の一になるという見通しがあるというならば別として、なぜやらないか、この理由を一つ聞かしてもらいたい。
  68. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 先ほど申し上げましたように、ドイツとアメリカとの関係も、片づいておらなかった時期もあるわけであります。これが片づいて参りました以上、われわれとしてもこの問題については考えて参らなければならぬわけであります。ただ財政上の日本状態もあります。そういうものを考え、またできるだけ有利にこれを解決するということのために、適当な時期にこの問題を取り上げるということが、今日まで解決が延びていた理由ではないかと考えております。
  69. 大西正道

    ○大西委員 財政的な理由ということを言われましたから、もし払うということがきまれば財政的な負担が加重する、こういうことなんでしょうね。そういたしましたら、なぜ南ヴェトナムのような問題を、そんなに急がれるのですか。これだってやはり財政的な点から考えますと、むしろこういうものはあとに延ばしてしかるべきじゃないですか。しかもわが党の議員の質問のように、政治的にも南北に分れておるような段階において、さらに根本的に、賠償義務ありやいなやという問題もある。対米債務の問題だけに、財政的な理由、これがあとに延ばしておる理由の一つだと言われるのだが、ほかの問題、南ヴェトナムの問題なんかを促進される理由がわからない。非常にこれは矛盾しておる。一体そんな経済的な理由を言われるのであれば、こういう賠償、債務その他を含めて一体どの程度までならよろしい、どの程度までなら日本経済を圧迫しない、財政の上に過重な負担にならないというような何か科学的な見通しのもとに一々この賠償の問題を解決されているのですか、もしそうであればまことにけっこうであるし、その根拠も知らしてもらいたい。
  70. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 日本が持っておりますそういう債務と申しますか、まずやはり賠償の問題を片づけて、そうして賠償が一体どのくらいなら、日本の財政上の負担になるのかということを見きわめた上で、それぞれの、今のガリオアの問題その他に取り組んでいくのが適当であろうと思います。またガリオアの問題を扱われた方々もそういう観点から延ばしてこられたのではないかと思うのであります。従って賠償というのは、やはり何らかの形において損害も与え、精神苦痛も与えた、そういうものに対しての処理だけは、困難な財政の中でもやはり優先的に片づけていく、アメリカ側に対してこれを返さなくてもアメリカ人自身に苦痛を与えるという意味でもないようにも考えられます。やはり賠償の責任を果す、その財政負担がどの程度になるか、それらのものも勘案して、そうしてこういう対米債務というようなものの処理に当るのが順じゃないかと思います。
  71. 大西正道

    ○大西委員 一応筋道の立ったお考えのようで賠償交渉に当っておられるわけですが、米国に対して、賠償を先にやってから、対米債務はそのあとにする、こういうことについての了解のようなものは得られておるのですか。それに従って今あなたの御発言があったのでしょうか。
  72. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 賠償を先にするまでお前の方には払わぬ、おれの方も払わなくてもいいという特別な了解があったわけではございません。
  73. 大西正道

    ○大西委員 私はそれが賠償の履行であるか、あるいは債務の返済の履行であるか、焦げつき債権の肩がわりによるところの何であるか、そんなことは、これは内容の問題ですが、要するにこの賠償と債務の履行ということについては、これはやっぱり払うということについては私は同じだと思うのです。日本政府のきんちゃくから出ていくのですから。そんなことになれば、全体を含めて一つの計画のもとに賠償の問題もここまでは譲れるがここまでは譲れないという話し合いの基準というものが出てこないじゃないですか。そうしますと、賠償がふくらんで——南ヴェトナムの賠償も向うの言う線をあまり押えることができなかった、それで賠償の額がふくらんだという場合に、あなたの御判断でこれ以上どうも日本経済が財政の負担に耐えられないという場合には、米国に対してはそういう理由を言って負けてもらえる、そういう見通しなんかもあるんでしょうか、そういう自信はあるんですかね。
  74. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 大蔵大臣としては一応のそういう問題に対するある方針を持っておられると思います。もちろん賠償等の折衝に当って、私どもは、その内容については外務省だけで独断できめるわけにはいかぬのでありまして、大蔵当局と十分相談の上、大蔵当局としても日本が今後発展する事情から見て、大体総括この程度の範囲内ならばよろしいというような目安をつけられまして、賠償問題の実質的な内容については私どもに指示を与えておられるものと私は考えております。
  75. 大西正道

    ○大西委員 それは大へん重要な発言をなさったので、私はそれほどまでに御準備がないのかと思っておりました。それではまた後日大蔵大臣にこの委員会に来ていただいて、あなたが言われましたその実質的な内容の裏づけを一つ聞かせてもらいたいと思います。そこであなたのお話は、南ヴェトナムの問題で、相手側が六千五百万ドルですか、という要求をしておりますが、まだこれはとうていこちらの考える線にはほど遠いのだというようなことで、それで折り合わないのですね。新聞の報ずるところによりますと、この問題について大蔵省が、非常に態度が硬化したというか、この賠償の交渉はしばらく延期すべきだというような意見であったということを申し述べておるのでありますが、そういうふうな事実はございますか。
  76. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 大蔵大臣から、まだあらゆる意味においてそういうことについて何も聞いておりません。
  77. 大西正道

    ○大西委員 賠償の話について、一応それをきめてから、一応の計画的な数字も腹の中にはあって話をしているのだ、こういうお話ですが、南ヴェトナムの賠償の六千五百万ドルの要求に対して、それが非常にわれわれの要求よりほど遠いと言われる日本の主張の額は、大体どの程度のことを腹に入れて交渉しておられるのでしょうか。これは折衝の過程だと申しましても、しかしまた言ってかえってそのことが交渉を進める場合に有利なこともあると思うのです。私はその点は言えないこともないと思うのですが、いかがでしょう。
  78. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 折衝しておりますことでございますから、その内容については申し上げかねますけれども、現在お話のような線を、われわれは、ほど遠いと申しますか——考えてはおりません。
  79. 大西正道

    ○大西委員 ほど遠いというのは、半分でもなかなかまだ自分らの主張には近づかぬ——ほど遠いという意味は、非常に懸隔があるという意味でしょうか、もう少し努力してこれがやれるという見通しでしょうか。
  80. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 折衝中の問題でありまして、今後どういうふうになりますか、私から今申し上げかねます。
  81. 大西正道

    ○大西委員 もう一つだけ。これに関連しまして、平和条約が成立いたしますと、あらゆる領域において友好的な関係が樹立されていくわけですが、今問題になっております漁業の問題、それから領海の問題、こういう問題についてちょっと心配があるからお聞きしますが、インドネシア政府もこの間何か領海宣言をやったように私は記憶いたしておるのでありますが、そういうインドネシアの領海の宣言によって、将来日本の船がそこを通過するとか、あるいはそこで魚をとるというようなことに支障が起きるというようなことはないでしょうか。
  82. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 結論から申しますれば、私はないと感じております。御承知のように、領海の問題については、日本は三海里を主張しておりますが、インドネシアは従来十二海里説の方をとっております。ただ、今問題になっております領海宣言は、オランダとの経済関係の際に起りました非常に広範なものを、宣言を一応したわけでありますが、私がインドネシアの人と話しましてその事情を聞いてみますと、これはスマトラの反乱軍その他に密輸というような問題が相当あるようで、そういうものの取締り等につきましてもこの際必要な処置をしなければならぬというような問題がありまして、そしてああいう大きな領海宣言をやったというふうに説明をしております。ただあれに対してはAAグループの中でも、やり方が相当激し過ぎたのではないかというインド等の説もありますので、インドネシア側としても最終的にあれを議会にかけておらぬようであります。議会の了解を求めておらぬようであります。そういう意味におきまして、あの問題は当面の問題であって、ただその後に起ります領海の問題というのは、三海里説と十二海里説——ジュネーブの国際海洋法会議において議論さるべき問題ではないか。こう考えます。
  83. 大西正道

    ○大西委員 あなたが向うに行かれたお話ですから、かなり現地の空気も了解されてのことだと思います。密輸なんかが行われることを防ぐため、それが第一の目的だと思うのです。しかし初めはそういう目的でも、やがては換骨奪胎して別な目的のために利用されるということは、たくさんの教訓があるわけです。しかしあなたがそう心配ないと言われればそれを信ずるよりほか仕方がないと思います。今のお話のように、十二海里、三海里説ですか、インドネシアも十二海里説ですね。日本は三海里説を主張しているのですが、私はこの前の海洋法案のときにもちょっとお聞きしたいと思ったのですが、日本の三海里の主張の根拠は何ですか。昔からそういうことをやっておった、英国その他もそういう主張だ、それをそのまま自分らも便利だし、こういうことなんでしょうか。今になってみると、何か十二海里説というようなことを強く主張するものも出て参りますね。あっちこっちにだんだんふえているのではないでしょうか。こういうことは果して今の世界情勢に合っているかどうかは別の問題といたしまして、そういう中で三海里説を主張する根拠は、単なる昔からそれが大多数の国でどうこうということでなくて、もう少し今理由をはっきりと言うべきだとすれば、どういうことを根拠に主張なさいますか。
  84. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 条約局長から御説明申し上げます。
  85. 高橋通敏

    ○高橋政府委員 三海里説は御承知通りその発生の昔におきましては、着弾距離とかそういうことから言われたというふうに聞いておるのでございますが、現在におきましては、そういうふうな成立の過程の問題から離れて、ほとんど大多数の国が三海里説をとっている。日本といたしましても一八七〇年でございますか、普仏戦争のときの中立宣言に三海里ということを主張しているというのが一番古いのじゃないかと思います。それ以来われわれといたしましても、ずっと三海里の主張を堅持して参った次第でございます。  そこで何ゆえに現在に至りまして三海里説を主張するかという根拠といたしましては、やはり日本は海洋国と申しますか漁業国でございますので、なるべく広範囲にその漁業の自由、海洋の自由ということを確保するというのが最もいい行き方ではないか。それからもう一つは、ほかの国で最近非常に領海とか、公海の管轄権を広く主張するという傾向が強くなって参ったように思います。そこでそういうふうな考え方にも対抗する上からも、われわれは従来の伝統的な三海里説をどうしても強く主張しなければならないのじゃないか、こういうふうに考えている次第でございます。
  86. 大西正道

    ○大西委員 何だか防衛庁の方では三海里説というものに対して反対の意見が出ているということを聞いておりましたが、そういうことはございませんか。
  87. 高橋通敏

    ○高橋政府委員 防衛の見地よりすればいろいろの議論もあろうかと思っておりますが、しかし日本の全般的な問題としまして考えます場合には、領海の幅が一定していないという事情でございますので、これが画一的にはっきりときまらなければならない。これが第一の根本的な原則であろうと思います。われわれといたしましては、防衛の見地もいろいろございますけれども日本の漁業という見地から、できる限り三海里の方向に画一的にきまるのが最も望ましいのじゃないかと考えております。ただ、御指摘の通り三海里のほかに十二海里という説もございますが、六海里という説もございます。従いまして今度の海洋法会議におきましていろいろ論議の末、われわれとしましてはまず画一的に、しかもなるべく三海里の線に沿ってこれができるというのが望ましいし、われわれはその線で主張したいと思います。
  88. 大西正道

    ○大西委員 これで終りますが、初めの留学生の問題ですけれども、これは一つ十分御配慮を願って、向うから要求がありました場合には、すぐ即応できるように、これは長い準備の要る問題ですから、こちらの態勢を整えていただきたい。このことを一つお願いしまして、大臣からもう一回御意見をいただいて終ります。
  89. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 私ども留学生を日本に招致する、あるいはこちらからも出す、あるいは先ほどお話のありましたように、もし向う側が可能ならば、向うにも校舎等も建築をするという問題については、十分に努力をして参りたいと思っております。ことに留学生を日本に招致する問題は非常に必要なことだと存ずるのでありまして、そのことにつきましては日本の文部行政の上で、相当考えていただかなければならぬ問題がある。たとえば日本に来る外国留学生が、もう少し日本語で日本の技術を勉強する。それには来てすぐに予備的な何らかの方法によって日本語を一年なら一年勉強する。今日まである程度日本人と同じような試験でやっていたということも無理だと思うのでありまして、そういう点については、文部行政の上で相当考えていただかなければならぬのじゃないか。日本の対東南アジアとの提携という大きな意味からいたしまして、できるだけ私としても努力するつもりであります。それから賠償を使ってやっても、受け入れ機関が十分ないと困る、そういう点は大西議員あたりも、どうか御努力願います。私どももともども努力をいたします。
  90. 床次徳二

    床次委員長 次会は明日午後一時より開会いたすことにいたしまして、本日はこれにて散会いたします。     午後四時五十七分散会