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白幡説明員 お答えいたします。オランダと
インドネシアとの関係は、御
承知のようにオランダが今度の第二次大戦の終了まで三百年余にわたって植民地政策をしいておったわけでありますが、太平洋戦争が終りまして、
日本軍が全面的降伏をいたしました。そうしますと、直ちにオランダは
インドネシアを再び旧来の植民地と同じ形で押えようという軍事行動を起してきたわけであります。御
承知のように、一九四五年から四九年の末まで、いわゆる革命戦争というものが行われたのでありますが、不幸なことに、五年にわたる血を流すこの争闘の間に、オランダ人と
インドネシア人との間に、なかなか抜くことのできないくらい深い感情的な対立を作ってしまったということが根本ではないかと思います。そうしまして、その後の
事態は、御
承知のように一応政治的には
インドネシアが独立国家としての体裁をとったのでありますが、
経済的には依然としてオランダの
経済力が
相当支配的で、その力というものは抜くことができない。
インドネシアといたしましては、国が政治的に独立したのだけれ
ども、何とかして
経済的にも独立したいというところから、だんだんオランダの勢力であるとかあるいは華僑の勢力というものを排除していきたいという
考え方になって参りました。たまたまこれと並行して起って参りましたのが、西ニューギニア問題でございます。西ニューギニアの問題は、
インドネシア側としましては、旧聞領東
インド全部が独立するのだ、つまりオランダとの間の円卓
協定によって、
インドネシアとして独立を認められるのは旧蘭領東
インド全部にわたるものである、そうなりますと、西ニューギニアも入るのでありますが、こういう
考え方を持っておったのに対して、オランダ側は、そうじゃない、西ニューギニアは地理的にも歴史的にも
民族的にも別種のものであるという
考え方で対立して参りました。これは一九四九年に円卓
協定ができましてから今日に至るまでの長い
一つのオランダと
インドネシアとの間の争いになっております。そしてその間に西ニューギニアに対する
インドネシア人の
考え方というものは、これを自分たちのものにしたいという
考え方、
インドネシア人はこれをナショナル・アスピレーションと言っておりますが、全
民族としての
民族的な欲求でございます。
インドネシアのあらゆる政党、派閥というものを越えて、このアスピレーションは非常に強く起っております。ただその方法論、どうやってやったらよいかということについては、若干意見の違いはありますが、この点については非常に強いわけです。そこで、この問題は国連の総会などでしばしば取り上げられたのでありますけれ
ども、なかなか具体的な解決の道に進まないというので、昨年の暮れになりまして、この感情の対立関係というものが非常に悪化いたしまして、そうしてオランダの勢力を駆逐すると申しますか、そういう形になって出て参りました。しかしながら
インドネシアの
経済というものは、先ほど申し上げましたように、オランダの
経済組織あるいは
考え方というものが
相当残っております。これを一瞬にしてぬぐい去るということはまず不可能なことじゃないかと思います。それからまたオランダ側から申しましても、御
承知のように、
インドネシアにはオランダは最大の海外投資をやっております。概算的に約百億ドル近い投資をオランダはしておるといわれておりまして、オランダから見ましても、
インドネシアは
経済的に非常に重要なところでございますので、私
どもは
インドネシアとオランダとの関係というものは、そう一挙に清算されると申しますか、縁が切れてしまうというふうなことは非常に考えにくいというふうに思っております。この問題につきましては、私
ども再三現地に参りましたときに、オランダの連中とも
インドネシアの連中とも、また中立的な立場にあります
インドであるとかアメリカの連中などの意見もいろいろ聞いてみました。が、結局その関係というものはそう簡単に清算されるものではないということははっきりいたしております。現在の段階におきましては、両者の感情的な対立というものがちょっと激しくなり過ぎましたので、これを簡単に話をつけるということもそう容易なことじゃないだろう、しかしいずれはこの問題について平和的に
お互いが話し合うような状況にいかなければならないのではないかということを言っております。われわれも大体そういうふうに考えております。ただあそこにはオランダのいろいろな権益がありまして、この権益を、国全体というよりも、個々に守るという
意味から、どちらかというと、いわば個人的な動きというものが、オランダ、
インドネシアの問題の背後に若干ないことは言えないかもしれないとは思いますけれ
ども、私は全体といたしましては、やはりオランダの
政府も
インドネシアの
政府も、理性的な判断のもとにこの問題を解決していく意思があるのではないかというふうに考えております。