運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1958-02-17 第28回国会 衆議院 外務委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年二月十七日(月曜日)     午後一時四十七分開議  出席委員    委員長 床次 徳二君    理事 菊池 義郎君 理事 須磨彌吉郎君    理事 森下 國雄君 理事 山本 利壽君    理事 戸叶 里子君 理事 松本 七郎君       伊東 隆治君    植原悦二郎君       大橋 忠一君    高岡 大輔君       並木 芳雄君    野田 武夫君       松田竹千代君    松本 俊一君       水田三喜男君    田中織之進君       田中 稔男君    西尾 末廣君       森島 守人君    和田 博雄君       川上 貫一君  出席国務大臣         外 務 大 臣 藤山愛一郎君         国 務 大 臣 津島 壽一君  出席政府委員         防衛庁参事官         (防衛局長)  加藤 陽三君         外務政務次官  松本 瀧藏君         外務事務官         (大臣官房長) 田村 景一君         外務事務官         (アジア局長) 板垣  修君         外務事務官         (アメリカ局         長)      森  治樹君         外務事務官         (欧亜局長)  金山 政英君         外務事務官         (経済局長)  牛場 信彦君         外務事務官         (条約局長)  高橋 通敏君         外務事務官         (国際協力局         長)      宮崎  章君         外務事務官         (情報文化局         長)      近藤 晋一君  委員外出席者         専  門  員 佐藤 敏人君     ――――――――――――― 二月十五日  原水爆実験禁止に関する陳情書外二件  (第二七五号)  原水爆実験禁止等に関する陳情書  (第二七六号)  同外八件(第三四  一号)  日ソ近海漁業暫定協定締結に関する陳情書  (第二七七号)  日ソ間の懸案解決に関する陳情書  (第二七八号)  沖繩日本復帰に関する陳情書  (第二七九号)  原水爆実験禁止協定締結に関する陳情書  (第三四〇号)  根室近海における安全操業に関する陳情書  (第三四二号) を委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  在外公館の名称及び位置を定める法律等の一部  を改正する法律案内閣提出第四一号)  国際情勢に関する件      ――――◇―――――
  2. 床次徳二

    床次委員長 これより会議を開きます。  最初に、国際情勢に関して質疑の通告があるので、これを許します。並木君。
  3. 並木芳雄

    並木委員 第一にお伺いいたしますが、フランスチュニジアとの関係でございます。フランスチュニジアとの関係が険悪化しておりますが、その紛争解決について、国連安保理事会両方から提訴されております。わが日本はその理事国となっておりますので、外務省としてもこれに対する見解を持つべきであると存じます。そうでなければ自主外交ということも言えないわけでございますが、これについてどういうふうにお考えになっておられますか、お尋ねいたします。
  4. 松本瀧藏

    松本政府委員 チュニジアの問題は、御承知のごとく非常にこれは複雑多岐のいろいろな問題がありますが、事の起りは、アルジェリアにおきまするフランスに非常に抵抗している軍隊フランスではこれを反乱軍と称しておりますが、これがチュニジアとの国境を越えました。それに対する追踪権と申しますか、そういうようなことで乗り込んでいって爆撃したということで事が起っておるのであります。従いましてこの問題を明十八日に国連安保理事会にかけるという前ぶれでいろいろ折衝が行われましたが、かける前に何とかしてフランスチュニジアとの間に妥協線を見出すことはできないだろうかというので、アメリカを中心といたしましてフランスあるいはチュニジアにいろいろ折衝しております。またわが松平国連大使も、訓令に従いましていろいろとエジプトであるとかあるいはカナダあたりの代表と密なる連絡をとりまして、うまくこれを解決するようにという努力をしております。これは安保理事会にかかりますときわめて事が微妙になるという観点からいたしまして、事前にもし解決する方策が得られるならばそうしたいという方針目下のところ外務省方針を立てております。なおこまかい点に関しましては、政府委員から答弁いたします。
  5. 宮崎章

    宮崎政府委員 現在、チュニジアフランス両方とも安保理事会に提訴しておりまして、チュニジアの方の主張は、フランスの行いましたサキエト・シジ・ユーセフ地域に対する爆撃を問題にしておるわけでありますが、それに対してフランス政府の方はアルジェリアの反徒に対するチュニジア援助ということを問題にして、それに対して訴えておるわけであります。それで、日本時間で言いますと明後日、安保理事会が集まってこれについての会議をすることになっておりますが、今フランスの方ではこの二つの問題を同時に討議してもらいたいということを申し出ております。議事の規則によりますと、先に出した方の案から順番に討議をしていくわけでありますけれども、そういうふうにフランスでは同時討議を要求しておるわけであります。どういうふうになりますかわかりませんけれども、あるいはその際、両案をともに討議していくということも、決をとってきめますから、そういうふうになっていくかもしれません。いずれにいたしましても、フランスの方はそういうふうにチュニジアの方の援助ということをしきりに言い立てるわけであります。日本といたしましては、そういう手続問題は別といたしまして——チュニジア問題はアルジェリア問題と非常に深い関係がございます。アルジェリアにつきましてはすでにバンドン会議の決議の中に、それに対して同情的な立場をとるということをうたっておりますので、そういうすでに日本が与えましたコミットメントのワクの中で、できるだけこの事件解決に資するよう、いたずらに一つの国だけを言葉の上で非難するということよりも、むしろ実質的にこの事件解決するように、また将来におきましてもそういう事件が再発するのを防ぐということを大きなラインとして、問題の解決に貢献していこうと考えておる次第であります。
  6. 並木芳雄

    並木委員 次にお伺いいたします。それはエニウェトクにおけるアメリカ実験通告についてであります。また四月五日から性こりもなくアメリカエニウェトク実験をやるそうでございますが、それに対して政府としては、今後こそ腹をきめてかなり断固たる抗議を申し込むやに承わっておりますが、その通りでありますか。その抗議はすでに申し込みをされたのでありましょうか。その辺のところを明らかにしていただきたいと思います。
  7. 森治樹

    ○森(治)政府委員 ただいま御指摘のように、アメリカは十二月十四日に太平洋における核爆発実験のために危険区域設定を声明したわけでございます。しかしながらこの実験につきましてはすでに昨年九月十五日にアメリカの国防省と原子力委員会共同発表によりまして、本年の四月から太平洋地域において実験をするという予告を行なっておったのであります。従いまして、日本政府といたしましては、九月の十七日に当時の岸外務大臣代理からマッカーサー大使に対して、右実験中止を要請する旨を伝えられまして、これに対して昨年の十月七日に、アメリカ側としては遺憾ながら本実験をやめる意図はないという通報に接しておる次第でございます。従いましてこのアメリカ実験に対する日本政府の措置というものは昨年すでにとられておるわけでございます。しかしながら、今般さらに危険区域設定がございましたので、これに対しましてさらに前回の申し入れを繰り返すとともに、もしこれによって損害の発生を見た場合は、その損害の補償を請求する権利を留保するという趣旨の申し入れを行う予定でおりまして、その旨過般情報局長の談として発表されたわけでございます。
  8. 並木芳雄

    並木委員 その申し入ればどういうチャンネルを通じてやる予定ですか。
  9. 森治樹

    ○森(治)政府委員 ごく最近の機会に、従来の例によりまして、おそらく在米大使館から申し入れることになると思います。
  10. 菊池義郎

    菊池委員 ちょっと関連質問。この前英国がクリスマス島で実験をやりましたときに、民間団体船団を組みましてすわり込みをやろうという計画をしました。その計画が腰が折れてしまったのは、政府がこれに反対したからであったのでありますが、われわれそういう場合においては非常手段をもってもそれをとめなければならない、またとめることができると思う。あのときもし政府がこれに賛成してすわり込みを肯定したならば、あの船団は必ず行って、そうしてクリスマス島の実験をやめさせることができたと思う。そしてマクミラン内閣は崩壊したかもしれぬと思うのでありますが、もし民間団体がすわり込みをやろうという場合に、政府としてはやはりとめるつもりでありますかどうでしょうか、その点お伺いしたい。
  11. 松本瀧藏

    松本政府委員 政府が反対したからこの前すわり込みの船団中止になったとは限らないと思うのですが、われわれの知っておる限りにおきましては、内部におきまして賛否両論が対立いたしまして、送らない方がいいであろうということになったので中止されたという工合に聞いております。なお今回また船団を送る場合に、これに対して政府はどういう態度をとるかということでございますが、奨励するわけにもいかぬし、またもちろん絶対にいかぬという工合に言うわけにも参らないだろうと思います。そのときの情勢、また国内のいろいろな動き等を参酌いたしまして、われわれとしては考えるべきだと思います。
  12. 並木芳雄

    並木委員 私は、核兵器持ち込み禁止の問題とアメリカ原爆実験を禁止しないという状況とをからんで考えますときに、どうも先日来政府答弁にたよりなさがある、一まつの不安がある。核兵器を持ち込まない、自衛隊核兵器装備はしない、大丈夫だと言明しつつあるけれども、やはりどたんばへきてまた今度の実験で、これが力で押されてきたわけでございますが、そういう状況が繰り返されないとは限らないのです。ですからせっかく岸さんとアイゼンハワー大統領との間でアンダースタンディグができておると政府は言われても、やはりどうしても不安が残るわけです。ましてや重光・アリソンの口頭の契約だけではほんとうに不安が残る。これは私は一日本国民として考えます。ですからどうして政府は新たな契約を結ぶことを渋っておられるか、この点が私の非常に聞きたいところなんです。ほんとうにそういう心配を取り除くために、私はぜひアメリカに対して文書によるところの契約を作り上げてくれという申し入れができるのではないか。それをやらないならば、やはり口先では核兵器は持ち込まないとは言いながら、いざとなって持ち込まされるようなおそれがあることを前提として政府は逃げ道を作っているのではないか。どうなんです。
  13. 松本瀧藏

    松本政府委員 ただいまの御質問に対しましては総理外務大臣もしばしばこれに答えております。私ども繰り返して申し上げるまでもないことだと思うのでありますが、終局におきましては、お互い信頼をするか、お互いお互い立場をよく理解してそしてその気持を守るかということによって、これが実際の効果を上げられるのではないかと思うのです。たとえば条約等を結びましてもあるいは文書交換をいたしましても、日本国民の意思を無視しこれを破ろうと思えば一方的に破られた例もあるのであります。そういう意味におきましてお互いがほんとに信頼しているか、お互いがほんとにお互い立場をよく理解しているかということの方がむしろ大切ではないか。その意味におきましてこの方面に十分なる努力総理外務大臣も払ってきているという答弁に尽きるのではないかと思います。
  14. 並木芳雄

    並木委員 一種外交道徳論みたいなものを今次官から承わったのですが、それはすべてその通りだと思うのです。それならば一切の条約もそれほど必要もなくなるだろうしするのですけれども、今度のエニウェトク実験なんかだって、日本人の今の悲願であり、国際情勢のデリケートな点から考えても、アメリカはやるべきじゃないわけなんです。それにもかかわらずやはり強引に押してくるのですから、そういう力で押されてきた場合に、こちらの力の弱い点がわれわれの不安となって残るわけなのです。しいて外務次官がそれほどまでに道徳倫理的にこれを取り扱って拒否しなくてもいいのではないですか。そういうことをやられると、かえって何かその裏にあるのではないか、口ではそう言っていても、結局しまいには核兵器を持ち込まれることは拒否できなくなるのではないか、もっとそんたくすれば、腹の中では核兵器装備して強い防備力ができた方がいいのではないかと考えているのではないかとまで言いたくなるわけです。私個人はどっちかというとその方なんです。自衛隊を持ち国防軍を持つ以上は正直に申し上げて強くなればなるほどいいわけなんです。近代的な装備を持てば持つほどいいと私個人考えている。しかし政府はそうではなく、あくまでも核兵器は持ち込まない、それで装備しないのだというならば、やはり国民全体に信頼してもらえるような態勢に持っていくことが必要であるという見地から私はお尋ねをしているわけなんです。ですから今すぐでなくても、将来の問題としてこの問題を研究し取り上げてみよう、こういう御意見だけでも私は発表してほしいと思っているのです。
  15. 松本瀧藏

    松本政府委員 非常に微妙なところまで押してこられたのですが、将来におきましてあるいはそういった文書交換をするようなことを研究したらどうかという御質問であると思うのであります。私は今のままでもお互いお互いを信じ合って、お互い立場日本国民の感情をよく理解している限りにおいては、そこまで追い詰める必要はないと思うのですが、将来のことにつきましては非常に微妙なことでありますし、外交問題として将来の予想をここに立てることは私ども困難でありますから、ちょっと答弁は控えさせていただきたいと私は思います。
  16. 戸叶里子

    ○戸叶委員 関連して一つ。この間から岸さんも藤山さんも今と同じような答弁をしておられたわけなんですけれども、私どもが伺っておりますと、それだけ相互信頼があってお互いに理解し合っていられるのだったならば、日本の国情というものをよくアメリカもわかっておると思う。日本国民の要望もどういうところにあるかということがわかっているのですから、それだけ信頼している政府の言うことなんだから、それでは何とか言うことを聞いてやろうというのであるいは書いたものを取りかわさないとも限らない。ただそういう点で努力が足りないのではないか、私はこういうふうに思うので、もう一歩積極的にやはり何らかの形で文書を取りかわしておくということの方が国民も安心しますし、その方が、相互に理解しているならば理解しているということを証明する上においてもいいんじゃないかと思うのですが、この点はいかがでしょう。
  17. 松本瀧藏

    松本政府委員 先ほどから答弁しておりますこと並びに総理及び外務大臣答弁を参酌して下さいまして一つ御了承願いたいと思います。
  18. 並木芳雄

    並木委員 なるべく理解したいと私も努力はしておるのですけれども、なかなかむずかしい感じがいたします。たとえば現実の問題となりますが、水爆なら水爆を積んだ飛行機日本に来る場合を想定して、持ってこないんだ、そういう相互信頼の上にあるのでありますけれども現実の問題としてどれかの飛行機が積んでくる、あるいはまた日本の領空を飛んでいるという場合に、政府としては今のところ一つもチェックはしていないでしょう。向う飛行機日本基地に出入りする場合の実際の取扱いはどうなっておりますか。どういうものを積んできているとか一々報告を受けているわけでもありますまいし、立ち会ってそれをのぞいているわけでもありますまいし、その出入に対しては現在どういうようになっておりますか。ここで机の上で抽象論をやっているだけではらちがあきませんから。現実取扱いなんですから。
  19. 松本瀧藏

    松本政府委員 通報は受けておると思いますが、こまかい技術問題に関しましては私よくわかりませんので、必要でございましたら政府委員から答弁いたさせます。
  20. 森治樹

    ○森(治)政府委員 私ども承知いたしておりますところでは、現場関係相互間において通報を受けておるといううふうに承知いたしております。
  21. 並木芳雄

    並木委員 通報を受けているだけで、こちらの官憲としては向う飛行機を別に臨検するようなことにはなっておらないのでしょう。
  22. 森治樹

    ○森(治)政府委員 そういうことにはなっておらないと存じております。
  23. 並木芳雄

    並木委員 従って現実の問題としては、一種の治外法権的に飛行機が出入りしているということになるのではないですか。
  24. 森治樹

    ○森(治)政府委員 この点は先般来岸総理予算委員会で御説明になりましたように、行政協定第五条によりまして先方日本の港及び飛行場に出入する権利を持っており、そうしてそれに基いてまた日本航空法特例が設けられておる。この航空法特例行政協定第五条によりまして先方日本に出入し寄航する権利を持っているので、日本側としてはこれを阻止し得ない態勢にある、こういう状態でございます。
  25. 並木芳雄

    並木委員 そのことは飛行機のみならず海上における軍艦でもおそらく同じでしょうね。
  26. 森治樹

    ○森(治)政府委員 さようでございます。行政協定第五条にはアメリカ合衆国の航空機及び艦船という言葉使用されております。
  27. 並木芳雄

    並木委員 ですから私松本外務次官にお願いするのですけれども、終戦直後であるならばそういう状態も仕方がなかったと思うのですけれども、だいぶ年月がたっておるのでございます。どうしてもこの辺で行政協定というものを改めて——それではほんとうに対等になっておりません。向うの言いなりほうだい、やりほうだいということで、かりにここで相互信頼向うは何もそれにそむくようなことはないんだと言っておっても、現実にそういうことが行われた場合には一つも阻止するよすががないわけであります。せめてその現場においては立ち会って、実際にこういう申告通りになっているんだということを、日本としては確かめることができるような方法をとっていいんじゃないでしょうか。そういう申し入れを私はしていただきたいと思う。
  28. 松本瀧藏

    松本政府委員 もちろんだいぶ時代も変ってきておりますので、当初締結いたしました行政協定のままでいいとは私ども考えておりません。従ってこれを改正する方向に努力したいということは何回も申し上げている通りであります。
  29. 並木芳雄

    並木委員 その点はぜひ私お願いしたいと思う。もしその方でいい成果が上げられれば、かりに新しくアメリカとの間で別途の条約を結ばなくても、その方からチェックできるのですから、日本政府一つの具体的の権限が出てくるのでございますから、ぜひそう努力していただきたいと思います。次に私は基地の問題についてお伺いしたいと思います。最近アメリカが、これは岸さんがアメリカへ行って交渉しての結果であろうかと思いますが、米軍が次々と基地の要員を減らして撤退をしていくことになっておることは、日本として望ましいと思われるのでございますが、今問題になっております砂川基地でございます。立川飛行場拡張の問題。これなども、最近ではあの線に沿って、もはやこれ以上の拡張は行われないのではないか、中止になるのではないかという見通しをする人もございますし、ごく最近羽田の方から、米軍飛行場利用軍隊でございますか、それがあそこへ移動することになりました関係上、これじゃまた拡張を従来通りやるのじゃないか、あれやこれやで両方の見方があるわけなんですけれども政府砂川の問題、立川飛行場拡張については従来通り何らの変更はないと言明されるのでしょうか。それとも今後の米軍撤退の模様によっては、基地拡張をやめるような場合もあり得ると言われるのでしょうか、私はっきり承わりたいと思います。
  30. 松本瀧藏

    松本政府委員 その後いろいろと経過もございますので、政府委員からこの問題は答弁させます。
  31. 森治樹

    ○森(治)政府委員 本件は調達庁長官所管事項でございますけれども、私どもの承知いたしております範囲内で御答弁申し上げます。羽田飛行場は、本年の六月ごろに全面的に日本側返還されるということは、アメリカ側から通報を受けております。ただいまこの羽田飛行場使用中でございますので、普通の施設日本側への返還と違いまして、技術的にこの施設を動かしつつ移管を受けるわけでございますから、ある程度そこに相当詳細な技術的な打ち合せが必要でございますので、現在日米双方で技術的な委員会を構成いたしまして、引き継ぎについて打ち合せを開始したところでございます。なお羽田返還になりました後におきましては、羽田に現在おりますアメリカ軍輸送部隊は、立川に移るというふうに私どもも承知いたしております。立川飛行場拡張の問題につきましては、私どもの承知いたしておりますところでは、目下裁判所係争中である、この係争中の問題の裁判所における決定を待って、日本政府としては既定の方針でやられる方針である、こういうふうに承知いたしております。
  32. 並木芳雄

    並木委員 その他の飛行場で、最近何か目立った動きはございませんか。やめるとか撤退するとか移動するとか……。
  33. 森治樹

    ○森(治)政府委員 これも調達庁長官所管事項でございますが、私どもの知っておる範囲で申し上げますれば、新潟の飛行場はやがて日本側返還されるのじゃないか。アメリカ側といたしましては、立川、小牧、横田等の少数の飛行場は今後とも保有していく、こういうふうに承知しております。
  34. 並木芳雄

    並木委員 次官にお伺いいたします。この米軍撤退縮小ということは、岸さんが行って交渉した結果だろうと思いますが、ただそれだけではやはりアメリカはやるはずがないのです。そこで国際情勢緩和というのですか、緩和に向ったというためでしょうか、あるいは最近の兵器の変動によって、日本基地使用というものがそれほど価値を持たなくなったためなのでしょうか、アメリカ軍撤退実質的理由というのはどこにあるのでしょうか。
  35. 松本瀧藏

    松本政府委員 実質的な理由につきましては、もちろん日本自衛隊が強化されてきたからということになるのでございますが、多少の武器の進歩とかあるいは配置がえというような計画等あたり考えられたのではないかと思いますが、主なる理由は、地上部隊は、日本にも自衛隊が相当強化されてきたので、撤退してよかろうということから、向うが賛成の意を表しておるのではないか、こう考えます。
  36. 並木芳雄

    並木委員 この問題に関連して、沖縄の問題になるのですけれども沖縄で先般選挙が行われて、アメリカにとってはずいぶん不利な結果になったわけです。面目をつぶしたような結果になったのだし、かねてわれわれが主張しておるところの沖縄というものの施政権日本に返して、そうして日本アメリカの間で結ばれておるような現在の日米安保条約、そういうものを沖縄についても適用するような方法、つまり沖縄を含めての安保条約というものを交渉してみたらどうか、そろそろその段階にきたのじゃないかと思うのです。政府はその点お考えになっておるのでしょうか。大ぜいの人が言われるので、私もそれを聞いて確かにもっともだなあと思っておるのです。どうしてあそこだけをアメリカ支配下に置いて、潜在主権なるもののへんてこなるヌエ的な存在に置いて、世界の世論を、ほこりをかぶらなくてもよさそうなものじゃないか。アメリカとしても堂々と日本との間で日米安保条約を別個に結んでもいいし、安保条約の中に沖縄を含むとやればいいのです。あとは実際現在やっておるような方法でそれを利用すればいいのですが、それを交渉してみるお考えはございませんでしょうか。
  37. 松本瀧藏

    松本政府委員 事態もだいぶ変りましたので、最初沖縄の問題を講和会議のときにいろいろ論じますときにも、ずいぶん意見があったことを私は記憶しております。当時あの条約の批准のときにも、議論の出たことを承知しております。もちろんこのリースは、十年間なら十年間の期限付のリースです。あるいはただいま並木委員のおっしゃるような、それを含めた安保条約みたいなものを作ったらどうかという議論もございました。確かに沖縄施政権返還の運動と相待ちまして、多少状況の変化はございますので、十分研究する余地はある、こう考えます。
  38. 並木芳雄

    並木委員 私、今非常に次官から力強い答弁をいただいて満足いたしました。私はぜひこれをやっていただきたい。とにかく鳩山さんの時代には、日ソ交渉をして国交回復をやったので、一つのホームランを打っております。外交の上で。見る人によって違いましょうけれども、われわれの見方からすれば、一つのホームランを打っておる。藤山外交、岸外交は何をやっておるか、なかなかホームランが出ないで困っておる。もし今おっしゃるような次官の熱情と力をもって、この沖縄の問題を一歩前進せしめて、安保条約の範疇の中に持ってきたら私は大成功だと思う。ぜひ一つそういう方に持っていっていただきたいと存じます。  それからソ連との間の平和条約でございますが、この前松本次官菊池委員質問にお答えになって、平和条約の話を進めていくことは、国際情勢の変化あるいは国際世論のわが方に有利になるのを待ってやるべきだというふうにお答えになったと私聞いておりましたが、そういたしますと、なかなか、いつになって糸口ができるのかわからないのじゃないかとも思うのですけれども、この辺のところで積極的に日本の方から領土問題について督促をするという手はありませんか。先般来安全操業、漁業委員会、平和条約、三本のレールが今ソ連と日本との間で敷かれつつあるということははっきりいたしました。独立しておる一つのレールである平和条約というものも、両方でじっとしておったのでは、これは時効になってしまう。しかもこれが時効になった場合に不利をこうむるのは日本で、向うは現状のままで歯舞も色丹さえもまだ押えておるのですから、ずいぶん日本としてはばかげた話だと思うのです。実際現実の問題からいえば、とにかく歯舞、色丹だけはよこしておけ、あとのことはあとのことで話し合おうといっておいた方が得なわけじゃないでしょうか。それを領土問題には触れてはいけないというので、一方で硬論があるために、やはり政府としても動きがとれず、結局ソ連の方の態度が改まらざる限りは、この話はだめだというふうに思い込んでおられる。そのために現実には歯舞、色丹だけはこっちでどんどん使うべき状況にあるはずでございますのに、それすらマイナスになっておる。そういうことを考えますときに、じっとしていて時効になって損をするのは日本。ですから私は藤山さんがせっかく本会議の壇上で、白いハンカチを振りながら、領土の問題では断固として譲れないと言ったんだから、あの意気を現実に私は外交交渉に乗せてもらいたいと思うのです。私はさっきから、沖縄の問題とこの問題は大臣に直接要望的の質問をしたいと思っておるけれども、大臣に劣らざるところの松本次官に申し上げておけば十分だと思うから、今申し上げておるのです。ぜひ一つ領土問題はどうなっておるのか、いつソ連の方としてはこれについて回答をよこすのか、そういうような督促、そうして平和条約の進行開始という手はあると思うのです。次官はどうお考えになりますか。
  39. 松本瀧藏

    松本政府委員 先般菊池委員質問に対してお答えいたしましたのは、御承知のごとく、今講和会議を開く用意があるかということであったのですが、いわゆる本格的の講和会議に至るまでのいろいろな継続的な折衝というものは行われておるわけなんです。ただここで本格的の会議を開くかどうかという問題につきましてはそのとき使いました言葉は、技術的に今これを行う段階ではない、技術的という言葉を私は申し上げました。と申しますのはそのときも説明いたしましたごとく、一番問題になります領土問題、この問題に対する見通しがつかない限り、なかなか困難だということを註釈的に申し上げました。先方が領土問題に対してどういう見解を持っておるか打診したことがあるかというような質問がございましたが、もちろん直接これを打診いたしましても、向うの回答というものはほぼノーだということがわかっておりまする今日、やたらにこのデリケートな問題をつつくということはどうかと思います。従って通商協定とかその他のいろいろな会議を通じまして、徐々にこの関係というものは改善されてきておると思います。従ってこういう実績をだんだん積み重ねまして、時期が来たならば一つ本格的に領土問題あたりの打ち合せもするようなときが来るんではないか、こう考えております。
  40. 菊池義郎

    菊池委員 関連して。積み重ね云々ということをおっしゃいますが、国際情勢が有利に展開するような場合には講話会議を開いてもいいというようなこれまでの政府答弁でありますが、その国際情勢の有利に展開するという場合、具体的にその実例を申しますと、一体どういう——われわれはどうも想像できないのでありますが、たとえばどういう場合にこの平和条約の締結を持ち出した方がいいとお考えになりますか、それを一つお伺いしたい。
  41. 松本瀧藏

    松本政府委員 これは非常にむずかしい問題ですが、たとえば領土問題に関しましては、御承知のごとく国内におきましてもまだ世論が統一されておりません。たとえば政府がとっております領土の範囲と社会党のとっておる領土の範囲というものも少しそこに食い違いがございます。さらに南千島の帰属の問題に関しましては、サンフランシスコ講和会議のときのあの調印いたしました条文の解釈につきましても、まだ調印いたしました当事国の間にもしっかりしたいわゆる統一意見はないように考えております。アメリカは一応見解を述べましたが、フランスとか英国あたりは、まだはっきりした見解を述べてないというような状況もございますので、こういう問題がだんだんほぐれて参りまして、はっきりしたときの方が、時期としてはいいんじゃないかということを先般申し上げたのであります。
  42. 菊池義郎

    菊池委員 そういう問題がほぐれてくるという場合は、一体どういう場合でありますか。そういう点がさっぱりわれわれ考えられないのであります。もちろんどの国にも、講和条約を締結する場合には、甲論乙駁、各党各派の間にいろいろの意見の隔たりがあります。それから国民の間にもいろいろ見解の相違はあります。ありますが、サンフランシスコ条約の中心国であったところの米国が、明らかに南千島は日本のものであるというて裏書きしているのにもかかわらず、どうも日本がこれを強硬に主張しないということは、はなはだ理解に苦しむところであります。敗戦国の外交というものは普通国家の外交よりも十倍も百倍も強くなければならぬと私は考えておる。ヒトラーは御承知のごとく二千五百億マルクの賠償を踏み倒すということを叫び続けて、彼が一たび政権を握ると、残りの半分を徹底的に踏み倒してしまった。それから各国から無理に押しつけられた平和条約もこれをじゅうりんして、そうしてドイツ再建のために奮闘したのでありますが、彼はあまりに横暴にふるまったために、英米各国の恨みを買ったために、ドイツを戦火の中に引き込まなければならぬという結果になったのだけれども、それをいいかげんのところでとめればよかった。ところが敗戦国日本の歴代の外交を見ると、まるで何をやるのか。いなか者の陳情団みたいに、ほんとうにわれわれ聞いていて情ないようなありさまです。これではとうていだめだと思う。こっちがもっと強く出なければならぬと思う。アメリカ側があの通りしり押しして、そうして裏書きしておる。これほど有力な資料はないと思うのでありますが、いつになったらばこの平和条約を締結するという機運が来るとお考えになるのでありますか、その点お伺いしたいと思います。
  43. 松本瀧藏

    松本政府委員 これは非常に困難な問題で、いつになったら機運が来るかということはやはりこの世の中は動いておりますし、非常に動勢的であります。しかも非常に今日の世界各国の動きというものはダイナミックであります。従ってそういうさなかにおきまして、案外早く来るかもしれません。あるいはいろいろな国際情勢のさらに進展あるいは悪化によりまして、これがどういう工合にまた動くかわかりませんので、いつごろということはちょっと私ども予想づけるわけにいきません。
  44. 菊池義郎

    菊池委員 これを長引かせますと、歯舞、色丹までもとることはできないようになりはせぬか。国際法上も、何か今までの国際条約の慣例から申しましても、中断する期間が長いと、全く効果を失うというふうなこともあり得るので、そういうことも考えなければならぬ。私はこの南千島が日本の方へ当然に来るような機運が向いてくるときはないと考えるので、やはりこれは強く押して押し通さなければならぬと考えておるのでありますが、もう一ぺん御答弁を願います。
  45. 松本瀧藏

    松本政府委員 非常にタイミングということは大事であります。野球に例をとることははなはだ不穏当かと思いますが、バットを早く振り過ぎますとフアウルになります。おそくなりますとフライになります。やはりヒットを飛ばすときは手の伸び切ったときだと思いますので、このタイミングを参酌いたしまして、ソ連との交渉に入らなければならぬと思います。
  46. 菊池義郎

    菊池委員 鉄は赤く燃え切ったときに打たなければだめだという言葉もあります。私はやはり機会を逸することは日本のために非常に不利益であると考えておるのであります。まあ御答弁はよろしゅうございます。
  47. 並木芳雄

    並木委員 次官答弁を聞いておりますと、平和条約についてはかなり悲観的なために、今度の安全操業について、平和条約との問題で抱き合せでやろうということは、これは全然日本政府としては取り上げませんか。
  48. 松本瀧藏

    松本政府委員 最初からこれを抱き合せてやるということになっておりませんので、平和条約の折衝と安全操業は、全然別個のものでありますので、既定方針に従ってわれわれは折衝を続けたい、こういう考えでおります。
  49. 並木芳雄

    並木委員 例の漁業委員会との話し合いの抱き合せはいかがですか。漁業委員会安全操業の点を話し合おう最初の提案、これについて絶対に断わっていきますか。
  50. 松本瀧藏

    松本政府委員 これも別個のものであります。従って別個のものとしてわれわれは進めていきたい、こう考えております。
  51. 並木芳雄

    並木委員 もちろん漁業交渉の点についても、これと平和条約とをからみ合せてきても、日本政府は断わりますね。
  52. 松本瀧藏

    松本政府委員 既定方針に従って進みたいと思ます。
  53. 並木芳雄

    並木委員 ただ、ほかのと全然ひもをつけずに、ソ連の方で単独に平和条約の話を始めようと言ってきた場合には、これは断わる必要もないわけだと私は思うのですが、その通りに解釈してよろしゅうございますか。
  54. 松本瀧藏

    松本政府委員 ただいまでも継続しておることになっておりますので、ただ本格的の会議を開こうという場合には、先方のものの考え方の輪郭、特に領土問題についてどういう態度を示すかというようなこともわかると思います。こういった新しい事態が起りますれば、もちろんこれは応ずべきだ、こう考えております。
  55. 並木芳雄

    並木委員 今度、安全操業の問題と平和条約の問題とを結びつけて言ってきたソ連の真意那辺にありやということは、人によって見方も違うだろうと思います。われわれもソ連が意地悪をしておるのじゃないかという見方もあるし、ごく軽い意味で、こっちの方で、やった方が便宜ではないかという便宜主義からきておるのじゃなかろうかという見方をする人もありますし、まちまちのようでありますが、日本政府としては、ソ連が今回ああいう申し入れをしてきたことに対するほんとうの腹、ねらいというものは、どこにありとお考えになりますか。
  56. 松本瀧藏

    松本政府委員 これも非常に困難な答弁ですが、先ほどあげられましたようないろいろな理由があるであろうということを、一応われわれもこれを基準にして検討してみました。さらに中には、断わる理由として、便法として、あの問題を出したのじゃないかというようなことも、われわれ他の方からそういう情報を得ておりますが、那辺にあるかということにつきまして、われわれはまだ確実な結論を下す段階にございません。
  57. 並木芳雄

    並木委員 それでは時間がきたようですから、最後にもう一点だけ。インドネシアで起ったと伝えられております内乱でございますが、別個の独立政府ができたというような報道がございますが、これに対して情報はいかがですか。今われわれはインドネシアとの賠償その他の条約を審議中でありますので、そういう内乱、内紛ということが、この条約などに及ぼす影響ということも考慮しなければならぬと思うのですが、今日現在のところで、われわれはこれをどうとっておいてよろしゅうございますか、お答えを願いたい。
  58. 松本瀧藏

    松本政府委員 一応スカルノ大統領が帰りましたので、だんだんと安定の方向に進むであろうというような考え方をしておりますが、こまかい情報等につきましては、一つ事務当局から答弁いたさせます。
  59. 板垣修

    ○板垣政府委員 まだ私の方も新聞に伝えられている以上の詳しい情報はございませんが、公電によりますと、新聞に伝えられていることは大体事実のようでありまして、去る二月の九日に、パダンにおきまして国民大会が開かれて、ジュアンダ内閣の解任と、バッタ前副大統領とジョクジャカルタのザルタンとの連立内閣を作れ、それから現在の容共政策をやめろ、こういうような要求が出されたことは、御承知の通りであります。これに対しましてジュアンダ内閣の方では、この首謀者とみなされるフセイン中佐を罷免したわけであります。こういう関係から、ついにスマトラのいわゆる反乱政府軍の方で独立政府の宣言をして、シャフルジン内閣を樹立したと伝えられております。この動きが今後どういうふうに発展をするかはもちろん予断を許さないのでありますが、一応私どもの現在の判断といたしましては、これは過激ではありますが、一種の政治上の一闘争手段というふうに考えております。現に現在においても活発なる妥協工作がスマトラ側と中央政府との間で行われておりますし、スカルノ大統領も帰国いたしましたので、今後時局収拾政策に乗り出すと思いますので、私どもの現在の判断といたしましてはこれが大きく本格的な内乱に発展するというようなことはないものと一応判断をいたしております。     —————————————
  60. 床次徳二

    床次委員長 それでは在外公館の名称及び位置を定める法律等の一部を改正する法律案を議題として、質疑を許します。松本七郎君。
  61. 松本七郎

    松本(七)委員 大臣が来られて御答弁願わなければならないことがあるのですが、その前に事務当局に質問をしておきたいことがあります。第一点は、今回はちょうど在外公館の新設あるいは変更が国会開会中ですから、こうやって審議することができるわけでございますけれども、同じ開会中であっても、審議ができないような事態も予想されるし、それから閉会中のような場合、あるいは今回のように非常に急いでおって、国会の承認を得ることができないような事態の場合には原則としては当然それは国会の審議を経なければならぬけれども、法律論としてそういう場合には政令でやることができる建前になっておるのですか。
  62. 松本瀧藏

    松本政府委員 さようでございます。
  63. 松本七郎

    松本(七)委員 それから今度の急な措置、二つの国が一緒になったというな事態に対処して、急にこういう措置をとった場合の経費については、どのような予算面の変化が現われますか。それから人員の変動について……。
  64. 松本瀧藏

    松本政府委員 こまかい問題ですから、政府委員から……。
  65. 田村景一

    ○田村政府委員 まず予算につきましては、今度ダマスカス、つまりシリアの公使館が総領事館になりますので、公使の費用が給与の中からなくなります。公使の給与がなくなりまして、第一号俸、つまり総領事以下の号俸だけが残るわけでございます。それからエジプトの方は、これは連合共和国に対する大使館ができますので、今までの大使の俸給はそのまま残っております。そのほかの予算的な事務費の問題は何らかわりはございません。また人員の点は、今のとろは変化がなく、つまりダマスカスにある公使館の人員はそのまま総領事館に残るわけでございます。それからエジプトの大使館におります人員は、そのまま連合共和国に対する大使館の職員になるということになっております。
  66. 松本七郎

    松本(七)委員 それからエジプト及びシリア両国とわが国と結んだ条約がありますね。エジプトとは文化協定を結んでいる。シリアとは通商協定を結んでいる。両方が競合しないものは当然存置すると考えていいのですが、万一競合するような条約があり得る場合には、どういう処置をするのですか。
  67. 松本瀧藏

    松本政府委員 この問題に関しましては、しばしば先方と連絡がございまして、シリアと結びました取りきめ、あるいはエジプトと取りきめました協定も、これは継続するということになっております。暫定憲法が先般採択されましたが、この新しいアラブ連合共和国の暫定憲法の中にも、それを継承するということが書いてございますので、この問題は別段に技術的には困難を生ずることはない、こう考えます。
  68. 松本七郎

    松本(七)委員 大臣が見えましたから大臣に伺います。いろいろ取りざたされておるわけですが、エジプト、シリア両国の合邦を、一部ではシリア国内の共産主義の勢力を押えるために、シリア自身が特にこの合邦を求めたのだというような報道が新聞紙上に相当出ておるのですが、日本政府としては今回の合邦のほんとうの原因はどこにあるとお考えになりますか。
  69. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 ただいまの御質問でありますが、シリアとエジプトの合邦につきましては、各方面でいろいろな見方をし、いろいろな流説も飛んでおりますが、しかしアラブの連中が、何らかの形でもって団結をしたいというのは、前々からアラブ各国にあった空気でございまして、そういう空気がおのずから醸成されてきて、そうしてエジプトとシリアとの問題は、先般のシリアの問題その他の問題を契約として急速に進んだのではないか、こういうふうに考えるわけであります、
  70. 松本七郎

    松本(七)委員 そうすると、やはり根本的な理由は、植民地主義あるいは帝国主義から民族主義あるいは自己の国そのものの保全、そうい立場に立っての合邦、こう日本政府考えておるわけですか。
  71. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 大体そうだと私ども考えております。
  72. 松本七郎

    松本(七)委員 そうすると、この両国の合邦で当然中近東諸国の情勢に変化を生ずることが予想されると思いますが、どのうような予想が立てられますか。たとえばイスラエルに対する関係、あるいはアラブ王国諸国との関係、そういう関係でどういう影響がくるとお考えになりますか。
  73. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 アラブの諸国が大同団結をしたいという気持があることは申し上げた通りであります。ただ、いろいろその国の政体の関係その他によりまして、必ずしも急にそれらのものが統一されるということもないかと思いますが、シリアとエジプトの合邦を契機としまして、王制を持っております国々がまた一つその関係において集まってみようという動きも出ていることは御承知の通りであります。こういう問題が発展して参りますと、イスラエルとの関係も相当やはり困難な問題がさらに強まってくるのではないかというふうにも考えております。
  74. 松本七郎

    松本(七)委員 こういうふうにだんだん反植民地主義、反帝国主義の動きが具体的に非常に強く今後も現われてくるだろうと思いますが、そういう時期に際会して、今後日本がアジアの一員として具体的にどういう行動をとってくるかということは、非常に注目の的になるだろうと思います。特に最近のようにチュニジアでああいう問題が起ってくると、もうさっそく日本政府国連においてどう行動するかというようなことが、すぐこれは注目の的になるだろうと思います。エジプトの問題が起きたときに重光さんが向うに行かれて、どっちの立場をとるのかさっぱりわからないという非常な非難をアジア・アラブ諸国から受けた、ああいうことを繰り返してはならないと思います。もう最近国連においてはこのチュニジア問題については相当具体的な運動が出てきておるようです。チュニジアフランスの侵略を非難する決議案を出すという動きまで出ているのです。こういう動きに対処して政府はどういう具体的な方針をもって臨まれようとしておるか。
  75. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 政府といたしましては、再三申し上げておりますように、反植民地主義の線については同情を持ってこれを考えていく、こういうことであります。ただ過激な手段ではなしに、できるだけ問題が解決されることを希望しております。
  76. 松本七郎

    松本(七)委員 過激な手段でないと言われるのはどういうことですか。たとえば今度チュニジアが出そうとしておる決議案に日本政府は賛成される動き——かりにそれに賛成をして行動をともにする、そういうことはきわめて穏健なやり方だと思うのですが、どうですか。
  77. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 できるだけ話し合いによりまして穏健に、また世界の世論に訴えて平和裏に解決されるということをわれわれは希望するわけであります。またそのためにできるだけ日本としても努力をするつもりであります。
  78. 松本七郎

    松本(七)委員 私の聞いておるのは、国際連合そのものが平和機関です。ですから国際連合で話題になった場合には、国際連合で行動するということは、これはきわめて穏健な平和的な話し合いによる解決です。その議事のやり方としていろいろあるわけですが、そのときにチュニジアが今フランスの侵略排撃の決議案を出そうとして動いておる、そういう場合にどっちつかずの態度をとったのでは、またエジプト事件のときに対処したあのあいまいな態度で物笑いになったのと同じようなことを繰り返すことになる。従ってそのフランスの植民地主義、あるいは帝国主義に反対しようとしておるチュニジアと行動をともにするというような、はっきりとした態度をきめられる決意があるかどうかということです。
  79. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 かねて申し上げております通り、反植民地主義に対してはわれわれ同情を持ち、同感の意を表しながら、これをできるだけサポートしていこうという気持でやっていきたいと思います。
  80. 松本七郎

    松本(七)委員 これはまだ態度がきまっておらないと見ておくよりしようがないのですが、そういうことでいつまでも態度をきめないということになると、また物笑いになりますから、どうかはっきりした態度をすみやかにきめていただきたいと思います。もうとっくにきまっております。もう一つは、エジプトとシリアが、いわゆるアイゼンハワー・ドクトリンを過般拒否いたしました。この拒否した理由はどこにあると考えられますか。
  81. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 エジプトとシリアがアイゼンハワー・ドクトリンを拒否したというのは、何らかの形でもって、あるいは武器の援助等をもって武力的な力が中近東に加わりますことは、これは、中近東の平和を害するということだと思います。
  82. 松本七郎

    松本(七)委員 新聞の報道によりますと、最近また一緒になったヨルダンとイラク、この統合は君主は単一でありながら、国際連合では二つの議席を保有するというようなことが伝えられておるのですが、この新しい国家の国際法上の主体は、一体単一であるのか複数であるのか、この点はどうなんですか。
  83. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 まだはっきりした情報を得ておりませんが、それらの問題につきましては、欧亜局長から御説明申し上げます。
  84. 金山政英

    ○金山政府委員 石黒公使からこの問題に関して詳細な報告がきておりますので、御披露いたしたいと思います。十四日にアラブ・ユニオンが成立したわけでありますが、まだ具体的に、法律的にこれが国際連合に対してどういう立場をとるかというような問題について、最終的な決定はまだできていないようであります。ただ国旗その他の問題につきまして一応の報告がありますので御披露いたします。国旗は連邦及び加盟国を通じて一九一七年のアラブ独立運動のときに用いられた国旗とする、国民は同じ国籍としたいという意向であるというのですが、まだこういう点もはっきりしていないようであります。それからイラクとヨルダンの在外公館一つにするが、国連の議席は二つにしたい、こういう点も、突き詰めて向うの意向を聞いてみますと、まだ法律的にそれじゃどうする考えだというところまで具体的にきまっていないようであります。それから外国の大公使の問題でありますが、これはヨルダンの方とイラクの方と交互に、首都を毎年かえるというようなことがありまして、非常に複雑な関係にあります。その場合はどうなるんだと石黒公使が問い詰められたときに、事務所を両方に持ったらいいじゃないか——こういう点もまだはっきりしていない模様であります。そういうわけでありまして、まだ決定的に、どういう形のものになるか、現在ではフェデレーションということを向うが言っておりますので、連邦というふうに考えておりますが、そういった情報を集めまして将来の問題を考えなければならないと思っております。
  85. 松本七郎

    松本(七)委員 そうすると、国際連合で議席を二つ占めるという点は、新聞では報道されておりましたが、まだこれもはっきりしないのですか。
  86. 金山政英

    ○金山政府委員 石黒公使が先方政府の当局者に尋ねたところでは、希望としては議席を二つ持ちたいというふうに言っているだけで、これが可能かどうかという問題はまだ突き詰めていないようであります。
  87. 松本七郎

    松本(七)委員 今のお話でいきますと、エジプト、シリアの合邦は、これを連合国家、ヨルダン、イラクの場合には国家連合、こういうふうに国際法上は考えていいですか。
  88. 金山政英

    ○金山政府委員 イラクの政府当局者がフェデレーションという言葉を使っておりますので、そういう方向に向ける意向であると考えます。
  89. 松本七郎

    松本(七)委員 藤山外務大臣にこれと関連して一つ伺っておきたいのは大体国家の承認とかあるいは政府の承認という問題が出た場合に、これに臨む基本的な態度ですね。日本は承認しようとする相手国に対して、政治的考慮も当然払わなければならない、その政治的な考慮に重きを置くか、あるいは事実問題、すなわち国際法上に規定されているところの国家または政府としての要件ですね、そういう必要条件をその国家なり政府が備えておるかどうかという、この事実問題に重点を置くのか、いずれに重点を置いて対処されようとしておりますか。
  90. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 承認をいたす場合には事実上の要件も必要であろうと思います。が、しかし、政治的考慮を加えますことも当然必要であります。
  91. 松本七郎

    松本(七)委員 そうすると、たとえば国連憲章の第四条の加盟要件に、主権国家であることということが一つ、それから国際法上の権利義務を履行する意思と能力があること、こういう点が具体的に述べられているわけなのですが、そういう国際連合で認めた具体的な事実に重点を置いて国家の承認あるいは政府の承認ということを運ばないで、承認しようとする国の政治的判断を加味してくると、いろいろここに複雑な問題が生じてくる可能性が多くなるわけですね。外務大臣の今の御答弁では、それでは今から承認しようとする相手国によってその基準というものをそのつど変える、こう私どもは了解してよろしいですか。相手国によっては日本の政治的判断を重く考え、相手によっては国際連合で規定したところの客観的事実を重んじて考える、そういうふうに国々によって基準を変える、常にこれは動揺しなければならぬ、一定の方針というものがないのですから。そういうふうに解釈していいですか、今の答弁は。
  92. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 ただいまお話のありましたような国際連合なりあるいは国際法上の事実というものの上に立って、なおかつ政治的な日本立場からの考慮をするわけであります。
  93. 松本七郎

    松本(七)委員 そうすると、そういう国際法で定められた要件というものをやはり中心に考え、その上に日本側からする政治的考慮も加味してやる、こう理解していいですか。
  94. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 当然政治的な立場からの問題を考慮しなければ承認という線は出せないと思います。
  95. 松本七郎

    松本(七)委員 この間の中国の承認問題でいろいろ大臣が御答弁になっておるのを聞いておりますと、結局日本政府考え方というものは、日本が現在中華民国を承認しているという事実から中華人民共和国の承認は今やるべきでない、こういうふうな結論に達しておるのです。そう解釈していいですか。中華民国を承認しておるということが、中華人民共和国を日本政府が承認しない一番大きな理由かどうか。
  96. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 そうでございます。
  97. 松本七郎

    松本(七)委員 そうだとすると、たとえばエジプトは中華民国を承認していたわけですね。ところが昨年中準人民共和国を承認した。いわゆる切りかえた。そうしてイギリスのように台湾に領事を置くということはやらない。エジプトは全部引き揚げてしまった。こういう例もあるのですから、中華民国を承認しておるから中華人民共和国の承認はできないということは、これは国際法上からいうと通用しないんじゃないかと思いますが、いかがですか。
  98. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 日本が中華民国に対している立場とエジプトが中華民国に対している立場とは全然違うと思うのであります。それだけで言うのはあれだと思います。
  99. 松本七郎

    松本(七)委員 いやいや、外務大臣は、まず国際法で定められた、国家あるいは政府としてのいろいろの存立の要件を備えておるということがまず第一、それに政治的考慮も加味するのだ、こう言われるわけでしょう。中華人民共和国の場合には、これが承認できないのは、中華民国を承認しておるという理由が一番大きな理由だとさっき言われた。ところがその理由については、まあエジプトが簡単に切りかえた例もある。残る問題は、中華人民共和国政府が、それならば国際法に定められたところの要件を備えておらないかどうかということになってくるわけです。そうすると、事実上の具体的な現実が、中華人民共和国と中華民国を比較した場合に、中華人民共和国の方が中華民国よりも国際法上定められた要件を具備しておらないという判断がなければ、これをいつまでも切りかえないでおいておく理由がほかにないということになる、この点を聞いておる。
  100. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 それですからただいま申し上げましたように、日本と中華民国との関係と、エジプトと中華民国との関係と同じ簡単なもので割り切れないものがある。それが政治的な日本立場だと思います。
  101. 松本七郎

    松本(七)委員 それだから、そうなれば大臣がさっき言われたように、具体的な要件よりも、中国に関する限りは政治的考慮というものが今度はウエートが重くなっている、こう言わなければならぬ。そうすると相手国によってそのウエートの置き方がいつも違ってくるのかというさっきの質問に戻ってくるのですが、どうです。
  102. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 国際法あるいは国連で定められた要件がない国は、それは当然承認はできないと思います。しかしながら要件がある国であっても、なおかつそういう日本との関係における政治的考慮をしなければならぬ、こういうことを申し上げたのであります。
  103. 松本七郎

    松本(七)委員 それじゃ中華人民共和国政府に対しては、国際法上の要件は備わっておる、しかし政治的考慮から判断して、日本政府の態度は、まだこれは承認できないんだ、こう解釈していいですか。
  104. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 私はまだ中華人民共和国に要件が備わっているとも、備わっていないとも申し上げているわけではありません。それは一つ条約局長から……。
  105. 高橋通敏

    ○高橋政府委員 ちょっと補足的に説明さしていただきたいと思います。ただいま承認の問題につきましては、法律的な問題、法律的な条件、それから政治的な条件とか、政治的問題ということで問題になる次第でございますけれども、実は私ども承認ということはいわば非常に政治的な問題ではないかというふうに考えている次第でございます。と申しますのは、国際法的に見ましても、実は承認という分野は法律的に見ましてまだ非常に未開拓な分野じゃないか、こういうふうに国際法的には考えられているんじゃないかと考えております。従いまして国際法のいろいろな学説やいろいろな理論で、いろいろな条件やその他が申されておりますけれども、やはり実証的に見ます場合、そして国際法の現在の進歩の状況を見ますと、そういう一応の法律的な基準というのはあげられておりますけれども、実証的な国際関係、国際法の適用という部面を考えますと、これは本来非常に政治的な分野の大きく作用するところであり、国際法的にもそういうふうに見られている。従いましていろいろな承認の条件というのが一応はあげられております。しかしあれは法律的に見ましても、一応学説的にあげられているという問題でございまして、そのウエートと申しますか、それは非常に微弱なものじゃないか、すなわちむしろ政治的な分野の活動する分野が非常に大きいんじゃないか、われわれはこのように考えている次第でございます。
  106. 松本七郎

    松本(七)委員 まだ少しあるのですけれども、いずれこの承認の問題についてはまたの機会にゆっくり質問することとして、一応これでやめておきます。
  107. 山本利壽

    ○山本(利)委員 ただいま松本君にお答えになりましたことで、ちょっと関連質問を二つだけさしていただきます。  その一つは、法律的な問題ですが、エジプトとシリアが連合した、こういう場合には一つの国家ができたと思うのですが、その際に日本日本国とエジプトあるいは日本国とシリアとが今日まで締結しておったところの協定とか、条約というものは継続するという御答弁があったのです。新しい国ができたのだから、その内容は継続するとしても、今度は一つの国家としてアラブ連合国というものと日本国との条約に変るわけであるから、それだから形の上では別個な条約を締結しなければならないと思うが、こういう点については法律的にどうなんです。ことにエジプトに対する協定あるいは条約と、日本対シリアとの協定、条約の内容が違う場合、こういう場合においてシリアと締結しておった条約または協定が引き続くならば、そのままエジプトに向ってもそれは効力を及ぼすか。あるいは反対にエジプトと締結しておった条約や協定というものは、シリアの方にもこれは当然及ぶべきもんだと思うが、場合によっては違う協定を結んでいることがある、あるいは同じ協定であっても、これは新しい条約としてあるいは協定として結ばれるべきものであって、そのまま放置すべき問題ではないと法律的に考えるか。その点はどうなのか御答弁を願いたい。
  108. 松本瀧藏

    松本政府委員 この問題は私先ほど答弁いたしました関係上、関連だと思いますので、私からお答えさしていただきたいと思います。  第一点は、シリアとエジプトと二本立で同じような協定でないということが一つ。それからシリア及びエジプト両国から新しい連合共和国ができましたときには、そのまま協定取りきめを継承してもらいたい、さらにこれを裏づけまする先ほど申しましたごとく暫定憲法の中にもこれを加えておりますので、法律的にはこのまま継承していいというような建前でわれわれ進めております。それで差し迫ってこれをもう一度交渉し直さなければならないというほど急迫した取りきめではこれはないのであります。
  109. 山本利壽

    ○山本(利)委員 次の点についてお尋ねしますが、とにかく新しい連合国ができたのでありますから、これに対して日本がこれを承認しようとする場合には、いろいろの点から十分考えていかなければならぬ。これは一昨年の暮れごろからエジプトとシリア対イスラエルの問題が非常に緊迫しておった。同時にソ連はチェコスロバキアを通じて両国に対してたしか二億八千万ドルからの武器を供与しておった。そうしてイスラエルに当らした。イスラエルはイギリスやフランスのバックを受けておったわけです。ところが今度このアラブ連合ができてみると、何だか反共的な空気を持っているように見える。ここらの点を、今度新しくできたアラブ国家というものに対して日本は大体これを反共的と判断しておられるのか。もしそうだとすれば問題は、これらの国と——あれだけ多額の武器の供与を受けた、その武器は対イスラエル戦争で半分以上は失われているようでありますけれども、それとソ連との関係がどうなるのか。これを容共と認めるか反共国家と認めるか、そういう点も考慮しなければならぬと考えるのであります。そうしてもう一つ聞きたいことは、その隣のあれほど激しい対立関係を持ったイスラエルと、今度できるこのアラブ連合国というものとがどういう関係に立つのか。ここらは非常に緩和して共存的な立場に立とうとしているのか。アラブ国家というものはやはりイスラエルを滅亡させようとはかるものか。そうすればこの西欧国がバックしているところのイスラエル国というものに対抗するためには、私は親ソでなければならぬと考える。ここらの問題が私は非常にデリケートであると考えますから、これを外務省においてはどう判断して対処しつつあるかということをお聞きしたい。
  110. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 エジプトが共産党を非合法化しておりますことは今日までの事実であります。がしかしそうかといいましてエジプト、シリアの合併された国を、ただ単に言葉の上で反共であるとかあるいは親ソであるとかいうふうに割り切ることは私は、適当ではないと思います。やはりエジプトにしてもシリアにしても、アラブ国家としての自分自身の立場を堅持していくという形だと思うのでありまして、今にわかに親ソであるとかあるいは反共であるというようなことを前提として問題を考えることは適当ではないと考えております。  イスラエルに関しましては、アラブ諸国の共通的な観念というものは今日までもあるわけであります。しかしながら、それが今後二つの国が一緒になりました結果どう動きますかは、今後の問題として注意して見て参らなければならぬ問題だ、こう考えております。
  111. 床次徳二

    床次委員長 ほかに御質疑はありませんか。——質疑がなければ、質疑を終了し、これより討論に入りたいと存じますが、討論の申し出がございませんので、これより直ちに採決いたしたいと存じます。在外公館の名称及び位置を定める法律等の一部を改正する法律案を原案の通り可決いたすに御異議ございませんか。
  112. 床次徳二

    床次委員長 御異議がございませんので、本案は原案の通り可決いたしました。  なお、ただいま可決されました法律案の報告書の作成に関しましては、委員長に御一任をいただきたいと存じますが、御異議はございませんか。
  113. 床次徳二

    床次委員長 御異議がございませんので、さよう決定しました。     —————————————
  114. 床次徳二

    床次委員長 これより国際情勢等に関して質疑を許すことにいたします。時間は一人二十分ないし三十分程度にお願いいたします。川上貫一君。
  115. 川上貫一

    ○川上委員 私は、時間も十分にありませんので、外務大臣に対して二、三の質問をいたしたいのでありますが、まず第一点は、日韓交渉の問題でありますが、この問題では、われわれ国民の間にまだなかなか割り切れない問題があります。その中で二つ、三つの点をお聞きしたいと思います。しかし政治論的なことは申しませんので、具体的な事実をお聞きしたいと思いますので、簡単でけっこうでありますから、外務大臣からお答えを願いたい。  日韓の共同覚書によりますと、合衆国政府の見解を基礎として云々という文句があるのでありますが、その基礎となった合衆国政府の見解、これはどういうものであるのか、お答えを願います。
  116. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 アジア局長から……。
  117. 川上貫一

    ○川上委員 外務大臣にお聞きいたしておる。
  118. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 アメリカの解釈というものは、日本が請求権を放棄したそのことを十分念頭に置いて韓国側が問題を考える、こういうことでございます、一口に言えば。
  119. 川上貫一

    ○川上委員 それはわかっておりますが、その見解を基礎としてという見解、それは文書なのでありますか、アメリカからの日本あるいは韓国に対する忠告なんでありますか、あるいはアメリカの声明なんでありますか、それを聞いておるのであります。
  120. 板垣修

    ○板垣政府委員 昨年の末に締結されました予備協定におきまして、いわゆるアメリカの覚書の内容は発表しないことに日韓双方で打ち合せておりますから、内容は申し上げられませんが、経緯を申し上げますと、日本の対韓請求権を放棄するかいなかにつきましては、法理的に従来疑いがあったのでありますが、その後日本側でも研究をいたしまして、たまたま平和条約に主役を演じましたアメリカ側との解釈も一致いたしましたので、その解釈の基礎のもとに対韓請求権を放棄するということに決定を見たわけでございまして、その参考といたしまして、アメリカ側の解釈なるものが文書になってできておるわけでございます。
  121. 川上貫一

    ○川上委員 その文書というのは、請求権解釈の米国見解として日本の印刷出版物に紹介されておるあれと心得てよろしゅうございますか。外務大臣にお願いいたします。
  122. 板垣修

    ○板垣政府委員 これは外部に発表しないことになっておりますが、たまたまある通信の資料に出たことは事実でございますが、この内容が同一のものであるかどうかにつきましては、申し上げることはできません。
  123. 川上貫一

    ○川上委員 申し上げることができぬとおっしゃるのは、申し上げにくいのでしょうか。あそこに出ておる。具体的に言うてもよろしい。共同通信社の「世界資料」二月、これに出ておる。これが日本の請求権に対するアメリカの見解、こう心得て間違いありませんかということを聞いておる。
  124. 板垣修

    ○板垣政府委員 某通信資料に出ましたものは少し古いものでありまして、私どもが十二月の末に協定を結んだときにアメリカ側から提出されたものとは違っております。
  125. 川上貫一

    ○川上委員 日本と韓国との交渉あるいは会談、それの共同声明の共同覚書の中にちゃんとある。アメリカ政府の見解によりとある。その見解を国民に知らせることができないという。これは了解ができない。日韓共同声明の中に、アメリカ合衆国政府の見解云々と書いてあるのです。ところがその見解というものは国民には知らさぬ。これはどうも通り一ぺんのことでないと思うんですが、外務大臣はこれは奇妙なことだとお考えになりませんか。
  126. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 両者の話し合いは、適当の時期に公表することになっております。
  127. 川上貫一

    ○川上委員 適当の時期に公表ができるものを、なぜ今公表ができないのか、これをお聞きいたします。
  128. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 日韓間の交渉というものは非常にデリケートな段階にありますので、私どもは一日も早く抑留漁夫が帰ってくることを願っております。またそのためにベストを尽したいと考えておるわけでありまして、そういう意味からいって、会談がスムーズにいきますようにできるだけ考えて、すべての問題を処置したいと思います。
  129. 川上貫一

    ○川上委員 スムーズにいくように外務大臣がお考えになっておるということはよくわかります。これは了解できますけれども、これを発表するようなことをしたら、どうしてスムーズにいかなくなるのですか。
  130. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 日韓間の話し合いの上から、私は適当の時期まで公表しない方がスムーズにいくと考えております。
  131. 川上貫一

    ○川上委員 外務大臣はスムーズにいくとお考えになっておるのでありましょうが、国民はどうもそれでは割り切れない。これを発表してはならぬという何か条約上、話し合い上の根拠がありますか。
  132. 板垣修

    ○板垣政府委員 内容の上からいいまして、特に発表してならぬという理由はないわけでありますが、昨年の末、韓国側の強い希望で、しばらく発表を見合してほしいという申し出があり、これに対しまして日本側が承諾をいたしましたので、しばらく発表をしないというだけの理由でございます。
  133. 川上貫一

    ○川上委員 その点ははっきりわかりました。韓国側の方から、発表してくれるなということがあったので、それを日本政府は受けて、発表しないことにしたという。そうすると、昨年末に韓国と日本との間に二つか三つの覚書を交換しているはずだと思う。その中にこのものは発表しないということがある。それからそれ秘密の覚書、秘密という言葉が適当かどうか知りませんが、覚書の中に、一九一〇年から四五年までの間に朝鮮半島から持ち去った美術品を返還する約束、それから、韓国の日本に対する財産請求権を本会議討議するということ、それからアメリカの今問題にしております見解のテキストの交換、こういうことが行われたはずだと思いますが、そういう事実がありますか。
  134. 板垣修

    ○板垣政府委員 ただいまの米国の覚書を当分発表しないという約束は、別に書きもので十二月三十一日の当日行なったわけで、初めからそういう書きものがあったわけではございません。それから文化財の引き渡しにつきましては書面上の約束はございません。従いましてそれ以外に不発表の書類はないわけでございますが、ただ従来の交渉の経過を摘記いたしました議事録がございます。従来ともこういうものは発表しない慣例になっておりますので、これは発表されておらない。こういう関係があるだけでございます。それからもう一つ、対日請求権の問題について全面会談の議題にするということは議事録にはございますが、これは前々から全面会談を開くにつきまして、従来の全面会談で討議になった議題を議題とするという話し合いの結果、そういうものを議題にするということが議事録にうたわれているわけでございます。
  135. 川上貫一

    ○川上委員 藤山外相に聞きますが、そうすると韓国が日本に請求しようとしておる財産請求権というものは、日本は韓国に対する請求権を放棄したようでありますが、韓国の分、韓国の日本に対する請求権はどうするつもりでありますか。
  136. 板垣修

    ○板垣政府委員 先ほど申し上げましたように、平和条約の解釈から日本の対韓請求権はなくなりましたが、韓国の対日請求権は理論上あるわけでございます。しかしながらこれに対してどういう処理をするかは、これこそ全面会談の中心討議になる次第でございます。
  137. 川上貫一

    ○川上委員 それは会談になるのでありますが、結論はどういう態度で政府が会談に臨むのかということを外務大臣にお聞きしたい。
  138. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 三月一日以降日韓会談を開くのでありますから、その交渉の内容につきまして私から今日申し上げることは不適当だと思います。
  139. 川上貫一

    ○川上委員 外務大臣はだいぶ遠慮なさっておられる。交渉の内容を全部言わぬでもよろしいが、韓国の日本に対する請求権に対して、どういう腹がまえで臨むかということも一言えませんか。それならついでに一緒に聞きますが、韓国が日本に請求すると考えられるこの請求権、これは韓国は三十八度線以北の朝鮮人民共和国に属する請求権も韓国が請求したり、あるいはその結果請求権を放棄したりするものだ、こういう建前で交渉に臨まれますか、その点どういうお考えでありますか。外務大臣の御意見をお聞きしたい。
  140. 板垣修

    ○板垣政府委員 韓国側が対日請求権についていかなる内容、いかなる範囲のものを請求するかは、私どもには全然予測を許さない次第でございます。
  141. 川上貫一

    ○川上委員 そんなことを聞いておるのじゃない。よく聞いて返事をしなさい。韓国が持ち出す請求権の内容には北の方の朝鮮の人民の請求権も一緒に韓国がやると心得ておりなさるかどうか、これを聞いておる。
  142. 板垣修

    ○板垣政府委員 その点がわからないと申し上げておるわけであります。
  143. 川上貫一

    ○川上委員 わからぬということはわからぬでしょうが。政府としてそんなばかな態度がありますか。そうすればあらためて聞きますが、北の方の朝鮮の請求権も韓国政府がわしが一緒に請求するんだと言った分にはどうしますか。
  144. 板垣修

    ○板垣政府委員 おそらく韓国政府としましては韓国政府従来の立場からいいまして、全朝鮮の問題を代理して請求してくることがあるかもしれません。その場合には韓国政府日本とのこの問題の交渉のステータスにつきましてどういうふうにするか、そのときに十分韓国政府と話し合わなければきまらない問題だと思います。
  145. 川上貫一

    ○川上委員 韓国政府と話し合う問題じゃない。日本がどういう態度でおるか、これできまる問題です。韓国政府が三十八度線以北の朝鮮人民の請求権まで代表する政府であると日本政府考えるか、二十八度線以北の人民の請求権は韓国政府にはないと日本考えるか、これを聞いておるのです。韓国と話し合わなければわからぬとそういうばかげたことはない。
  146. 板垣修

    ○板垣政府委員 私どもが韓国政府と交渉いたしますにつきましては、建前といたしましてはやはり韓国政府を合法政府として交渉いたすわけでございますから、やはり理論的には全鮮を代表する政府として交渉するわけでございます。しかしながら今の請求権の問題あるいはその他につきまして、現在の韓国政府の支配の及ばざる地域があることもまた事実でございます。従いまして条約の実施上不可能な問題もあろうかと思います。その点については前もって理論的にいわゆる割り切って臨むことは不可能だろうというふうに考えております。
  147. 川上貫一

    ○川上委員 これが理論的に割り切れぬようなことだから日韓会談はだめなんです。これは私が言うまでもなく南と北とに朝鮮が分れておって、両方政府があって、これを適当に統一しなければならぬということは、これはもう国際的な常識なんです。国際舞台に上っておるのです。国際舞台の中に朝鮮の政府が韓国だけということになっておりはせぬのです。それだから南北統一の問題があり、休戦会談が成立しておる。北には現実的にあるのです。それを日本が認めるか認めぬかということ、これを私が今論議しておるわけじゃない。両方に厳然として国際的にあるではないか。こういう場合に日本が北の方にある政府を現在認めておる認めておらぬということはこれは今論議をあとにして、韓国の請求権が朝鮮人民共和国の請求権をも含むと解釈するかせぬかということは、韓国と話し合いできめる問題ではなくて、日本政府がきめてかかる問題なんです。これはどうきめておかかりになるかという点を、これは大事な問題だから聞いておるので、技術上の問題じゃないから外務大臣答弁を求めます。
  148. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 日韓会談は韓国政府とやることでありまして、一応われわれは韓国政府を合法政府として交渉の相手として進めて参ります。
  149. 川上貫一

    ○川上委員 そうすると外務大臣は韓国政府は三十八度線以北の朝鮮人民共和国の請求権も全部ひっくるめて日本に請求する権利がある、こうお考えになっておられますか。
  150. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 これ以上はデリケートな日韓会談を前に置きまして私から申し上げることはできないと思います。
  151. 川上貫一

    ○川上委員 それだからだめなんです。そういう態度でいらっしゃるから日本と李承晩との交渉はこんなぶざまなありさまになる。どうして日本はもっとしっかりした態度がとれぬのですか。これはデリケートな問題でも何でもない。そうすると外務大臣は朝鮮人民共和国は、日本がこれを認めておる認めておらぬは別にして、厳然として存在しておるとお認めになるのか、あそこには政府も何にもない。もう秩序紊乱、むちゃくちゃな地域があるだけだとお考えになっておるのですか。これは外務大臣はどうお考えになりますか。
  152. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 三十八度線以北に韓国政府の力の及んでないということは認めております。
  153. 川上貫一

    ○川上委員 力が及んでないのはもう何べんも答弁でわかっております。あそこには何にもないのですか。人間がぐしゃぐしゃと寄っておるだけなんですか。何かあるのですか。これはどうお考えになっておりますか。
  154. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 日韓会談の対象といたしましては、ただいま申し上げましたように、韓国政府を相手にして私どもは話をするつもりでおります。
  155. 川上貫一

    ○川上委員 外務大臣全くどうもお困りのようですが、そうすると日本におる朝鮮人、この国籍はどうなるのですか。
  156. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 日本におります朝鮮人の国籍につきましては、将来日韓会談と並行して国籍を選択する権利が認められることになるのだろうと思います。
  157. 川上貫一

    ○川上委員 もう一度お聞きします。よく聞き取れぬ、意味がわからない。
  158. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 日本におきます朝鮮人の国籍につきましては、将来日韓会談と並行しまして、みずからの希望によって国籍の取得が決定するのではないか、こう考えております。
  159. 川上貫一

    ○川上委員 これは実にたよりがない。日本政府考え方というものは韓国と打ち合せをせなければきまらぬのですか。日本外務大臣日本政府というものは、韓国人の国籍がどっちになるのか、あるいは財産請求権というものが、北の方の請求権をも南の方が代行するのか、主張し得るのか、一そういうことまで全部ひっくるめて、韓国と相談をせなければ日本の見解はきまらぬと解釈してよろしゅうございますか。
  160. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 私は日本の見解すべてを韓国と相談しなければきまらぬとは申し上げておりません。ただ会談の前に私からそういうデリケートな問題についていろいろ申し上げることを差し控えるということを申し上げております。
  161. 川上貫一

    ○川上委員 どうしてそんなに李承晩がこわいのか。こわいのでしょう。なすことすることが李承晩だ。こういうことだかう、予備会談が終ったあとでも日本の漁夫は拿捕されておる。これは実に不信義きわまる。こういうようなことをしてくる理由は、あなたが弱腰だからだ。どこにひもがついておる。こういう形になるということじゃ、私は将来日韓会談そのものがりっぱに解決されないのみならず、たとえば竹島の問題にしても、李ラインの問題にしても解決しはしない。日本政府が自信もなければ見解もない。すべての問題というものは韓国に相談をしなければ何にもきまらぬ。時間がありませんから、私はこれ以上言いません。およそ政府のこの無定見、日本政府の朝鮮人民に対する態度さえも韓国と相談しなければ何一つきまらぬ、こういうような態度が日本政府の態度であるということを私は確認して、次の質問に移ります。  アメリカの艦隊が原子兵器を持っておるということは、アメリカ政府当局がもう言明しておるということはたびたび新聞にも出るし、きのうの新聞にも出ておる。第七艦隊は持っておるのです。これはもう世界の世論で、国民もそう考えておる。ところが政府は、岸首相も外務大臣も、アメリカ軍隊核兵器日本に持ってはこないというてたびたび答弁しておられるのですが、アメリカの艦隊が原水爆を持っておらぬという証拠、アメリカの空軍が原水爆を持って日本の領空をパトロールしてはいないという証拠、これを国民の前にこの際ぜひ明らかにしてもらいたいと思います。外務大臣、証拠を一つ聞かしてもらいたい。
  162. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 日本と現在のアメリカの友好的な関係からいいまして、また総理アイゼンハワー大統領との共同宣言の趣旨からいいまして、私どもアメリカ日本核兵器を持ち込むことはないと信じております。
  163. 川上貫一

    ○川上委員 外務大臣がないと思うということを私は聞いておるのではない。それはどう思ったってよろしゅうございます。実際に国民を納得させるような事実、そういうことを現在もしておらぬし、将来もしないという証拠をこの席で明らかにしていただきたいということを私は外務大臣に頼んでおる。証拠です。わしが思うというのはもうけっこうです。
  164. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 両国の友好関係にあること自体が大きな証拠だと思います。
  165. 床次徳二

    床次委員長 川上君だいぶ時間が接近しましたから、すみやかに結論に入って下さい。
  166. 川上貫一

    ○川上委員 時間が少くなりましょうが、こういう答弁ではだめです。そうではないのです。私が思うというのを聞くのではないということを言っておる。証拠がないのならないと言われたらどうなのです。それで私は文句を言おうとはしない。ないのですか。持っておらぬという証拠は。
  167. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 持っておるという証拠はございません。
  168. 川上貫一

    ○川上委員 持っておらぬという証拠はないということを外務大臣は言われました。そうすると拒否するとか絶対に持ち込まさぬとかいう総理大臣、外務大臣答弁は、これは証拠も何もないのですからさっぱり当てにはならぬ、こう解釈せざるを得ませんが、それでけっこうですか。
  169. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 持っておるという証拠はございません。
  170. 川上貫一

    ○川上委員 持っておるという証拠がないとかいうことでなく、持っておらぬという証拠を私は聞いておる、持っておるという証拠があるなら私は聞きません。わからぬから聞いておる。
  171. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 私どもは日米友好関係から見て持っておらぬ、こう信じております。
  172. 川上貫一

    ○川上委員 だめです。私が思うとか思わぬとかというのはどっちでもよろしい。証拠がありますか、持っておらないという証拠はない、こう確認してよろしゅうございますか。
  173. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 持っておるという証拠はございません。
  174. 川上貫一

    ○川上委員 それではなまず問答と同じだ。とにかく持っておらぬという証拠はない。それではもう一つ聞きます。第七艦隊が沖縄におります。これは核武装をしておるということは、アメリカ当局がたびたび言明しておる。これが横須賀に来る時分には、どこかでその原水爆だけおろしてくる、これは外務大臣どう思われますか。横須賀に入るときにどこでおろすでしょう。これは政治的な問題ですから外務大臣から……。
  175. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 私は持っておらぬと思っておりますから、先ほど答弁した通りであります。
  176. 床次徳二

    床次委員長 川上君、だいぶ時間がたちましたから……。
  177. 川上貫一

    ○川上委員 こういう答弁はもう少ししっかりした答弁をしてもらいたい。国会はいいくらいのところを言って、大臣と議員がやりとりをしておもしろがるところではありません。ここの大臣の答弁国民が聞いておる。議員の質問国民が聞いておるのです。私は持っておらぬと思うというようなことで済ませるような問題ではありません。八千幾百万の国民が一番問題にしておるのは原水爆です。この問題を証拠がない、わしは持ってはおらぬと思う、こういうようなことをぬけぬけと国会で言って、これで一体一国の、八千万国民の生命財産をになっておる政府の態度と言えますか。もっとはっきりした態度をなぜしない。たとえば持っておらぬ証拠がないのならないと言ったらよいのに、持っておる証拠はありません。三百代言のような返事をするものではないです。外務委員会です。われわれは国民の代表として外務大臣に聞いておるのです。ここで言い抜けをしさいすれば、いいという問題ではないのです。もう一ぺん私は聞きますが、外務大臣はそういうような答弁をしておいて、それで実際に八千幾百万の国民が原水爆を心配しておることに報いる政府答弁だと思いますか。まじめな質問だ。何を言っている。これくらいまじめな質問があるか。国民に聞いてみろ。原水爆質問をするのがまじめでないという国民があるか。外務大臣答弁をお願いいたします。
  178. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 私は重大な問題でありますので、まじめにそう信じておるということを申し上げておる次第であります。
  179. 川上貫一

    ○川上委員 このなまくら問答はちょとよう言わぬわ。外務大臣も、これは持っておるという証拠はない、わしは持っておらぬと思う。そういうことでは国民ほんとうに安心することができません。岸総理大臣がアイゼンハワーに会って、このことをほんまに約束したと言うなら、あるいは外務大臣が、何かこういうことがあってアメリカは信義を持っておるから大丈夫だと言うなら、それを国民が納得するように明文化して国民の前に明らかにする意思があるかないか。この明文化の道にはいろいろある。日米委員会で覚書を交換してもよろしい。日米共同宣言をしてもよろしい。どうしてもいかぬというなら日本が単独に宣言したらよろしい。たとえばこの三つ。これをする意思があるか。そんなことは全然考えておらぬか。この点だけをお答え願いたい。
  180. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 こういう問題は両国の信頼関係が基礎でありまして、私は信頼関係によって円満に解決していく問題だと考えております。
  181. 川上貫一

    ○川上委員 明文化する意思はない、こう理解してよろしゅうございますか。
  182. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 明文化するしないにかかわらず、とにかく両国の信頼関係がなければこういう問題はだめだということを重ねて申し上げます。
  183. 川上貫一

    ○川上委員 もう一つだけ質問します。ネール首相から書面が来ておりますか。外務大臣にお聞きします。
  184. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 ネール首相から書面は来ておりません。
  185. 川上貫一

    ○川上委員 インドのネール首相から、緊張緩和の問題について岸首相あてに書面も何も来ておりませんか。
  186. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 ネール首相から緊張緩和に関する書面は来ておりません。
  187. 川上貫一

    ○川上委員 どんな書面が来ておるのですか。
  188. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 おりませんとお答え申したので、どんな書面と言うわけにはいきません。
  189. 川上貫一

    ○川上委員 いや、そうではない。緊張緩和に関する書面は来ておらぬという御返事であるから、そんならどんな書面が来ておるかとお聞きしたのです。
  190. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 その他に関する書面も、ネール首相直接からは何も来ておりません。
  191. 床次徳二

    床次委員長 川上さん、時間がきておりますから、それ一つで終えていただきます。
  192. 川上貫一

    ○川上委員 外務大臣は中国の中華人民共和国政府をどんな政府だとお考えになりますか。
  193. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 中華人民共和国政府は、お話のように、長い間北京に政権を持っておる政府だと思っております。
  194. 川上貫一

    ○川上委員 あれは反乱政府ですか。外務大臣にお聞きします。
  195. 高橋通敏

    ○高橋政府委員 国際法的に見ますと、そういう過程を考えますと、一つの正統政府がありまして、それに対して反乱政権が起りましてそれが正統政府を圧迫する……。
  196. 川上貫一

    ○川上委員 条約局長に聞いているのではない。外務大臣が反乱政府とお考えになるかということを聞いておるのです。
  197. 床次徳二

    床次委員長 政府委員答弁中ですから……。
  198. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 中国に国民政府の中華民国政府がありまして、それに対する反対勢力としてできた政府であるということは——反乱政府という言葉が適当であるかどうか存じませんけれども、そういう状態でできておる政府であります。
  199. 床次徳二

    床次委員長 それでは時間がきておりますから……。
  200. 川上貫一

    ○川上委員 時間がきておりますが、これはひっかかりの問題です。高橋条約局長は反乱政府だと言われておる。ところが外務大臣は、反乱政府と言うのは適当でない、そう思わぬ、こう言われておるとすれば、条約局長の発言を取り消しますか。
  201. 高橋通敏

    ○高橋政府委員 私は、学説とか国際法の学問上のテクニカル・タームと申しますか、そういう学説上の用語としましては、こういう過程にあるときの政府を一応反乱政府という名で呼んでおります。ただこれは法律上の用語でございまして、政治的な問題とは全然関係ない言葉でございます。
  202. 川上貫一

    ○川上委員 法律的な用語、政治的な問題というのを議会の中でべらべらやると、その影響がどうなると思う。そうでなくてさえ政府の態度については中国は非常に激怒しておる。これに対して参議院において政府の当面の答弁者が、反乱政府、これが正統政府を圧迫しておるのだ、こう言うておるのだ。外務大臣はこういう不謹慎な発言を取り消すべきだという考えはありませんか、けっこうであるとお考えですか。この答弁は隣国にも影響しますし、世界に影響しますから、外務大臣答弁一つここでしておいてもらいたい。
  203. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 私が今申した通りで、高橋条約局長答弁が適当でなかったと思ったら取り消しをいたします。
  204. 川上貫一

    ○川上委員 最後にもう一つお伺いしますが、私はこの二十二日に出発して民間貿易の第四次協定の交渉をする予定になっております。この交渉の前回行った分の協定の覚書文については政府は十分に見ておられると思います。でき得る限りこれに調印して帰りたいと思うが、調印のあとで——この協定覚書は政府の手に回っておると思うのですが、この調印した協定の覚書を政府がその精神によって善処する意思があるかないか、これを外務大臣から聞いておきたい。
  205. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 先般第四次協定を締結に行かれましたその経過については、私どもは若干承知しております。しかしあのままの形でもって全部そのまま適当であるかいなかということについては今日言明の限りではございません。
  206. 田中織之進

    ○田中(織)委員 関連して。ただいま川上委員から質問いたしました、近く各党からの代表者によりまして日中貿易に関する第四次協定が調印せられるという見通しのもとに代表が中国へ参るのでありますが、その協定の内容等についてはすでに先般池田正之輔君等の代表が参りまして話をして参りましたものを最後の仕上げをするという形になるわけであります。民間の通商協定のようなものでありますが、これに調印して参りました場合に、その内容が実行に移されるかどうかということについては、やはり政府の政治的な高い立場における御承認がなければならぬと思う。その意味で今川上委員からは、この協定の精神をくみ取って、その内容が実現するように政府の方で善処せられるかどうか、こういう意味のことを言われたのは、川上君としてはきわめて控え目な、しかも事理を尽した質問であると思う。それに対してただいま藤山さんからお答えになった点は、協定の全部については適当なものであると認めるかどうかということについて今言明の限りでない。こういうことでは——実質的には今度いよいよ調印を目途として代表団を派遣するについては、議連の代表たちとの間にいろいろ外務大臣もお話し合いをなされていると思うのです。そういう了解の上に立って協定が調印され実現することが、日本経済の上に大きな寄与をもたらす、こういう信念のもとに、池田君以下の川上君を含めた代表が中国に参ると私は思うのであります。今の段階になって、その内容のすべてについては適当であるかどうかという言葉がございましたけれども、いささか私は各党からの代表が出発するに当って、ただいまの外務大臣答弁では全くこれに水をぶっかけるようなさびしい気持がいたすのであります。この点については、少くとも第四次協定の内容に盛られておる精神については、政府があらゆる意味において便宜をはかって、その他いわゆる政府の善処という意味で表現される面については、やはり私は最大限の誠意を披瀝されるべきが当然だと思うのでありますが、この点について重ねて外務大臣から明確な政府の所信を表明して、池田君以下協定調印のために中国に参る諸君へのはなむけとしていただきたいと思います。
  207. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 第四次協定がスムーズにできますことは、今日の段階において必要であることは通産大臣も申しておる通りであります。私もその通り考えております。ただ協定そのものを結びます場合に、いろいろな字句上の問題その他についてわれわれもまだ意見があるので、池田氏にもその点は申し上げておるところでありますから、それ以上ちょっと言明できないということを申し上げたのであります。
  208. 床次徳二

    床次委員長 次は大橋忠一君。
  209. 大橋忠一

    ○大橋(忠)委員 最近新聞によりますと、蒋介石主席が、台湾と韓国と日本を結ぶ北東太平洋同盟というようなものをすべきである、早く日本と韓国との間が仲直りして、そういう方向に進むべきである、こういうような演説をしたのであります。  岸総理はしばしばSEATO、東南太平洋同盟に対しては反対であるということを言っておられるのでありますから、おそらくこのNEATOに対しても反対であろうと思いますが、外務大臣はこの蒋介石主席の意見にどういうような考えを持っておられるのでありますか。これは来たるべき日韓会談にも関連のあることでありますから、御答弁をお願いいたします。
  210. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 現在政府といたしましては、SEATOに加盟する考え方は持っておりません。また将来どういう形でかそういう問題が取り上げられることがあるとすれば、それはその時期においてわれわれが国際情勢その他を判断して決定する問題だと思います。
  211. 大橋忠一

    ○大橋(忠)委員 新聞によりますと、過般岸総理から特使として矢次という人を韓国に出す。そうしてこの両国の空気を緩和するというので、新聞雑誌等においても相当大きく取り扱われたのでありますが、その後どうなったか、さっぱり消えてなくなったようでありますが、この矢次特使問題の経緯、現在これはどうなったか、その点を一つお知らせ願いたいと思うのであります。
  212. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 日韓交渉をスムーズにするために、だれか適当な人を民間の特使として出したらどうだという考え方は、総理にあったようでありますけれども、その後これが進んでおらないこともこれまた事実であります。
  213. 大橋忠一

    ○大橋(忠)委員 京城電報によりますと、韓国の外務当局はそういうような者は歓迎しないというようなことを放送しております。そうすると出しても歓迎されない、あるいは拒絶されると思ったから取りやめになった、そう了解して差しつかえありませんか。
  214. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 それほど問題が具体的に進行していたとは私ども考えておりません。
  215. 大橋忠一

    ○大橋(忠)委員 そうすると、外務大臣は直接これには関係はなさらなかったことと了解してよろしいのですか。
  216. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 総理が何らかの形で親善関係をしたいために、そういうだれかを出したらいいだろうという考え方をお持ちであったことは、私が先ほども申し上げた通りでございます。しかしこれが具体的に進行しておるとはまだ信じておりません。
  217. 大橋忠一

    ○大橋(忠)委員 私もこの一衣帯水の韓国との間に懸案を解決して東亜の安定を進めるということには賛成でありますが、今日の李承晩大統領のごとき思想を持った人が当主である国と交渉するに当って、私はただこちらから親善的のゼスチュアを送るということだけでは、とうていこれは解決するものではない。こちらが弱く出れば出るほど向うがつけ上りまして、そうしてこちらの親善的態度を日本の弱腰と誤解をして、ますますつのってくるというのが現在の韓国の態度ではないかと思うのであります。政府はまず抑留者の相互釈放ということによって空気をよくして、それから会談に入ろうというようなお考えのようでありますが、むしろ韓国がまるで日本に対して戦勝国であり、征服者であるがごときそういう態度を改めさせる。そうして対等の地位まで日本立場を強めて、五分と五分の立場において、そうして合理的な解決をする。五分と五分との対等の地位まで日本立場を高めぬことには、とうてい公平な日韓問題の解決はできないだろうと思うのであります。まじめな話というものは、まず折目を正してから話さぬことには解決はできない、話にならないのであります。しかるに現在、金という大使が日本に来ておる。しかもこれに準外交官的な特権を与えておる。しかるにわが方からは代表が韓国に行っておらぬ。向うはまだ治安が悪いから外国の使臣を受け入れる準備ができないということを言って断わっておるそうでありますが、これは口実でありまして、私は一方的に韓国だけ特権を持った代表者を日本に置いて、これは日本を非常に下目に見ておる証拠であると思うのであります。そこで会談を成功せしめる準備の一つとして、相互信頼相互が尊敬をもって会談し得るためには、やはり日本からも一つ金大使に匹敵するところの代表者を先方をして受け入れせしめる。そうして相互平等の立場に立つということに努力することが、私は会談を成功せしむる一つの基礎であろうと思うのであります。従ってこの向うの一方的な圧制的な態度を改めぬ限りは、私は会談してもだめであろうと思うのですが、この点は外相どういうふうにお考えでありますか。
  218. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 外交折衝の上で日本だけがいばりますことは、これはいかぬことだと思いますが、しかし同時に日本がいたずらに卑屈になることも、円満な問題の解決ではないということは、私も大橋委員と同じような考えを持っております。
  219. 大橋忠一

    ○大橋(忠)委員 そうすると、私は会談に入る前にこの問題をまず解決してから、実質的の会談に入っていただきたいと思います。  さらにまた、韓国の軍艦は従来無断で自由に日本の港湾に出入をしておった、現在もしておると思うのであります。またいつか李承晩大統領が日本へ参ったときにも、日本の承認も何もなく、日本の方に通知もせず、勝手に飛行機日本の内地に乗り入れたということを当時聞いておったのでありますが、現在においてそういう状態がやはり引き続いて行われておるのでありますかどうか、その点を一つお尋ねしておきます。
  220. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 現在そういう事実はございません。なお詳しいことは局長の方から御答弁いたさせます。
  221. 板垣修

    ○板垣政府委員 私も詳細は存じませんが、従来飛行機、艦船等が占領時代に無許可で自由に入って来たことはあるが、現在はそういう事実はございません。一々許可をとっております。
  222. 大橋忠一

    ○大橋(忠)委員 そうすると、一番大きな問題は使節の問題であります。会談に入る前に交渉の基礎であるところの相互信頼相互の間の尊敬を高める意味において、ぜひ一つ日本の使節も韓国に駐在し得るような約諾をしてから、そして折目を正してから私は交渉に入っていただきたいと思いますが、いかがですか。
  223. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 抑留漁夫の問題もございますし、従いまして、できるだけ早い機会に日韓間の会談をいたしたい、こう思っております。ただいまのような有力な御意見は参考にいたしたいと思います。
  224. 大橋忠一

    ○大橋(忠)委員 なおこの李承晩ラインの問題でありますが、新聞の伝うるところによれば、最近は李承晩ライン以外の日本の漁船までも拿捕するというような状態があると伝えられておるのであります。日韓会談の一番の大きな問題は、財産請求権の問題よりも、むしろこの李承晩ラインの問題であろうと思うのでありますが、この問題を解決するために、ただテーブルの上で理屈をこね合って議論しても国際法研究の結果わかったことは、国際法というものはないことであるというようなことを公然と言っているような首脳部が韓国にある。そういような韓国ととても口舌の上で争って解決できるものではないと私は思う。私はもう数年前から公海におけるわが漁船は実力をもって護衛すべしということを、本会議の席上においても当委員会の席上においてもしばしば発言したのでありますが、一つも実行されない。そのうちに韓国はますますのさばってどしどしわが漁船を拿捕し、ついに李承晩ライン外の漁船までも拿捕するようになった。これは私の推測でありますが、ただ単に韓国の漁業資源を擁護するためばかりではない、一人でも多く日本の漁夫を捕獲して、そしてこれを人質として日本を圧迫する外交手段に用いている。従いまして、今後抑留者の交換を終って相互に釈放してなくなってしまえば、さらに李承晩ライン外の拿捕が盛んになって、結局九州や中国付近の漁船までも安心して操業ができなくなってしまうだろうと私はおそれておるのであります。  そこで防衛庁長官にお尋ねいたしますが、なぜ海上自衛隊を持つ防衛庁が、公海における海賊行為を防止するだけの措置をとってないのか、わが方の実力がそれを防衛するだけに十分でないのか、あるいはアメリカを背後にしている韓国と事をかまえることは適当でないと思っておられるのか。一体どういうわけでわが漁船を保護することができないのでありますか。われわれが海上自衛隊に望むところは、こういうときにこそ働いていただきたい。こういうときに働いてこそ海上自衛隊の存在の理由がある。こういうときに手をつかねていつまでも待っているような海上自衛隊なら、何のために莫大な国費を使って維持しなければならぬか。私は海上自衛隊の存在を裏づける意味からしても、海上におけるこの海賊行為を防いでいただきたい。今までこの長い間次から次へと拿捕され、わが国の国民立場が弱いから、歯を食いしばりながらがまんしておるのです。憤激の極に達しておるのです。いなかの子供まで怒っておる。これを拱手傍観して、保護されなかったのでありますが、その理由をこの際一つ明白にお答えになっていただきたいと思います。
  225. 津島壽一

    ○津島国務大臣 お答えいたします。海上自衛隊の出動につきましては、自衛隊法に明瞭な規定がございまして、武力攻撃による場合、これに自衛のために出動するというのが第一点でございます。今日までの李承晩ライン外におけるいろんな事故というものは、侵略であり、また武力攻撃があるというところまでに至っておらぬと認めておりますので、海上自衛隊は出動を見合しております。これが対策としては、主として海上保安庁でやろう、保安庁の巡視船、監視船、これによって非違をただしていこう、こういう方針で一貫して参っておる次第でございます。なお外交上の措置において、これらの事故がないようにすることは当然でございますが、現状において、また過去の事実においては、まだ海上自衛隊を出動するということは適当でない、こう考えておる次第でございます。
  226. 大橋忠一

    ○大橋(忠)委員 なぜ適当でありませんか。これほど適当なことはないと思う。もし現在の自衛隊法が自衛隊の出動をはばんでおるものならば、一日も早くその自衛隊法をお変えになって、自衛隊によっても漁船の保護ができる、海上警備隊だけでは手に余る場合には自衛隊も出るというように、私は改めらるべきだと思うのであります。これは私のみならずだれに聞かれても、私はこれを希望するだろうと思うのですが、今の自衛隊法をお変えになる意思はありませんか。
  227. 津島壽一

    ○津島国務大臣 ただいまお答えいたしましたように、現状において海上自衛隊が侵略行為として出動するという段階には至っておらぬと思っております。また現状における事態に相応して、自衛隊法を改正するのがいいかどうか、こういう御意見、御質問のようでありますが、この点はまだそういった措置をとる必要はないと思っておる次第でございます。
  228. 大橋忠一

    ○大橋(忠)委員 この問題が起ってからもう五、六年なんです。そうして国民は憤激の極に達しておる。自衛隊法を変えることが適当であるとは思わぬとか、そういう意思はないというようなことをいって、じんぜん時を経て、無辜の漁民がつかまってひどい目にあっておるやつを見ておられますと、そういうふうな自衛隊ならない方がいいというような世論が起りますよ。従ってこの全国的に広がっておるところの国民感情をよく御検討の上、もう一度総理ともよく御相談になって、自衛隊法を変える以外の方法でも何でもいいから、この漁船を保護する方法を至急講じていただきたい。これを保護する方法を講ぜずして、どんどん向うをして勝手気ままに李承晩ラインの内外を荒せしめて、わが方の漁民を圧迫する態度を黙認しておきますると、交渉によって李承晩ラインをやめせようといったって、できるものじゃありません。韓国のごときパワー・ポリティックをもって臨む、リーズンというものは聞かない国民には、李承晩ラインというものを維持することができない、また維持することが不得策であるという客観的情勢を作る以外にはこの李承晩ラインを撤廃させる交渉を何百ぺんやったって私はできないと思う。従ってもし日韓交渉、この李承晩ライン問題を解決することが、哀れなる西南地方の漁民の救済のためにどうしても必要というお考えならば、わが漁船を保護する等の方法によって、韓国が李承晩ラインをどこまでも守るのは不得策である、損である、またそれが事実上できないというところまで施策を講じていただく必要がある。従ってもし事が起った場合に、わが方の兵力が足らなくて逆にやられるおそれがあるというならば、ミサイルとかそんなもののために金を使うよりも、わが国の漁船を保護するために、これこれの海上自衛隊が必要である、お金がこれだけ必要であると御要求になれば、国民はこれを納得するだろう。これほど納得する問題はないのであります。その点一つよくよく頭に置かれて、御検討になっていただきたい。いかがでしょうか。
  229. 津島壽一

    ○津島国務大臣 御意見は御意見として承わっておきまして、十分考慮いたしたいと思います。ただ私が申し上げましたの、現在の自衛隊法の規定の上からいって、現状において自衛艦隊その他を出動させるという時期ではないと、こう思う次第でございます。
  230. 板垣修

    ○板垣政府委員 だいぶん過激な御質問で、今後の交渉にも影響があると思いますし、一言政府立場を弁明させていただきたいと思います。確かに御趣旨はわかりますけれども、それからまた、韓国側の立場も、われわれ当りまして確かにおもしろくない態度をとっておるということも十分承知しておりますが、また韓国側から言わせますれば、やはり日本が従来の力を持つ政策をとっておるということで、非常に相互に不信の念があるというところに、今まで日韓交渉がうまくいかない原因があるわけでございます。平和ラインにつきましても、確かに私どもはこれは不合理な主張を向うはやっておると思いますが、しかしそういう態度をとってこれが解決するわけでもございませんし、政府の現在の態度といたしまして、あくまで話し合いによって、平和裏にこれを解決する努力を、いま一度三月一日からやりたいというのが私ども考えであります。     〔大橋(忠)委員「軟弱な態度ではだめなんだよ、絶対解決しない、かえって悪くなる。」と呼ぶ〕
  231. 床次徳二

    床次委員長 正式に発言をお願いします。大橋君、約束の時間が近づきつつありますから、簡潔に結論にお入り下さい。
  232. 大橋忠一

    ○大橋(忠)委員 さらにわが国の外交は、国際連合を中心にするというのが一つの特徴であります。これは非常にけっこうなことであります。そうして最近は安保理事会のメンバーにもなっておる。そこでこの韓国の公海上における海賊行為、あるいはソ連の北方における北海道の零細漁民に対する圧迫、これは大きな意味におきましてやはり武力の脅威による国際紛争の一種であります。従ってこれは一つ間違うと、こちらの護衛船を向うが撃沈する、その撃沈した敵の船をまたわが方の飛行機が爆沈する。これを大きくすると、非常に大きな国際紛争になる、戦争にまで発展し得る可能性のある重大問題であります。そこで私はこの李承晩ラインの問題もはたまた北方における安全操業の問題もロシアと話し合いがつけばよろしい、つかない場合においては、当然これは国際連合に訴えて、この世界の世論の支持によってその解決を促進することを考うべき段階に近づきつつあるものと思っておる。これに対して藤山外相のお考えをお聞きしたいと思います。
  233. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 国連によりまして二国間の問題を解決することは時期によりまして適当であろうと思いますが、しかし何でもかんでも初めから国連に全部持ち込んで行って、そこで解決をするというよりも、われわれとしてはできるだけの範囲内において、両国間の話し合いをしまして、そうしてどうしても解決つかないような場合の方法として、さらに国連その他の問題を考うべきだと、こう考えております。また一方、現に国連によります海洋法の会議も行われて、十二海里、三海里等の問題も、広く論議をされるわけでありますから、そういう情勢を見ながら判断をして参りたいと、こう考えております。
  234. 大橋忠一

    ○大橋(忠)委員 これは国連に出すということにはやはり非常な準備を要します。そこで日本の生命線の一つである公海漁業、これを無法なる海賊行為から防ぐという問題は、これは非常に大きな問題であります。従って私はこの解決のために、国連を利用する。そうして世界の世論を動員するというこの問題を、今からでもおそくはないから、よく御研究になって、そうしてこの方が得策であるという結論に達せられたら、達慮なく国連に出していただきたい。安保理事会のメンバーにもなっておる。しかも政府国連中心主義をうたっておる。こういうような問題につき、国連を利用することがないということでは、国連中心主義の外交も怪しくなる。他国の問題についていろいろ心配するよりも、わが国の死活に関する重大問題があるのでありますから、一つぜひこの問題解決国連を利用するということを考えていただきたい。こう私は思うのであります。  最後に、私はアメリカ日本との関係でありますが、先般来盛んに核兵器の持ち込みにつきまして、アメリカから文書を取りつけるという問題が起りました。これに対して岸総理及び藤山外相は、そういう必要はない。アメリカの好意に信頼するということをおっしゃったのでありますが、私はこの問題については追及いたしませんが、しかしながら現在の安保条約、及び行政協定におきまして、アメリカは勝手に日本軍隊を置き、勝手にこれを引き揚げていく。いかなる武器も勝手に持ち込むことができる。知らぬ間にそれを朝鮮に送る。まるで軍隊に関する限りは自由自在であります。なるほど安保条約行政協定の上からそれはできるのでありますが、これでは一番国の大事な防衛問題がほとんど外国によって全部支配されておる。日本自衛隊というものは、ほとんどその補助部隊であるというような観を呈しまして、これではいかにアメリカが自制をして頭を出さないからといいましても、少くとも理論的に日本国というものは独立国ということは言えない。だから共産圏のごときはやっぱりまだ日本というものはアメリカの占領治下にあるという解釈さえあるのであります。そこで私は、岸総理アメリカに行かれるずっと前に、どうしても安保条約をある程度に改正せぬと、日本の独立国たる面目は保たれないのだということを力説いたしまして、いろいろ運動したのでありますが、なかなか安保条約の改正ということはできずに、かえって安保委員会というものができて、そこの議論の結果、結局行政協定及び安保条約の改正にまで導く……。
  235. 床次徳二

    床次委員長 大橋委員、時間でありますから、簡単に一つ結論だけ……。
  236. 大橋忠一

    ○大橋(忠)委員 こういうような結論になったのであります。しこうしてこのアメリカにおけるアイク大統領と岸総理の共同コミュニケの中に合衆国軍隊日本における配備、及び使用につき、実行可能なときいつでも協議する、こういうことがうたってある。従ってこの核兵器の持ち込み問題も、結局このアメリカ軍隊の日本における配備というところに含まれるのであります。そこで私はもう少しアメリカ軍隊の移動、出入、あるいは兵器弾薬の輸入その他の問題について独立国にふさわしい程度の、かつアメリカにあまり苦痛を与えない程度の制限を研究をして、そうして安保委員会において十分論議をされまして、そして先般国連憲章と安保条約関係について公文を交換されましたが、この例にならって交換公文その他の方法によって、日本を守る主体は自衛隊であって、アメリカの方がそれを援助するという主客を転例する程度まで、私は安保条約の解釈及び運営を訂正するように御尽力を願いたい。そうしてどうしても安保条約行政協定を結局直さぬことにはできないというならば、安保条約行政協定を直さぬことにはできないという結論を出し、そしてこれを日米両国に提示して正式に安保条約行政協定の改訂にまで導くというのが、私は岸総理大臣が訪米された一番大きな結果であろうと思うのであります。どうもそういう方面の努力というものが外に現われていない、こういうような努力をわれわれの知らぬうちに大いに研究し、勉強しやっておられるかどうか。今後どういう方針でこの点をディベロップされるのでありますか、その点をお伺いしておきます。
  237. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 安保委員会のできました趣旨は、御承知のようにアイゼンハワー大統領と岸総理との間と共同声明に発しておるわけであります。その第三項に、両国の国民の願望に沿うように安保条約その他の問題を検討すると書いてあります。その線に沿いまして安保委員会においても検討をいたしております。
  238. 床次徳二

    床次委員長 もう時間ですから簡潔に……。
  239. 大橋忠一

    ○大橋(忠)委員 最後に一つ。ぜひこの点をしっかり勉強して岸・アイク会談が無意味に終らぬように、——世間では結局これは無意味に終ってしまうのじゃないか、何もならぬじゃないか、岸総理の訪米は、日米関係の新機軸を開くなんという岸声明はうそじゃないか、こういう声が非常に高いのであります。この非難、疑惑を解くためには、私は今言った方面に御努力になることがただ一つ方法だと思いますから、防衛長官とも岸総理ともよく御連絡をとられまして、全力をあげて一つこの方面にお進みにならんことを希望いたしまして私の質問を終ります。
  240. 床次徳二

    床次委員長 次会は公報をもってお知らせいたすことにして、本日はこれをもって散会いたします。     午後四時二十九分散会      ————◇—————