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1958-02-12 第28回国会 衆議院 外務委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年二月十二日(水曜日)     午前十時三十一分開議  出席委員    委員長 床次 徳二君    理事 菊池 義郎君 理事 櫻内 義雄君    理事 須磨彌吉郎君 理事 森下 國雄君    理事 山本 利壽君 理事 戸叶 里子君    理事 松本 七郎君       植原悦二郎君    高岡 大輔君       並木 芳雄君    野田 武夫君       松田竹千代君    松本 俊一君       田中織之進君    田中 稔男君       福田 昌子君    森島 守人君       和田 博雄君  出席国務大臣         外 務 大 臣 藤山愛一郎君  出席政府委員         外務政務次官  松本 瀧藏君         外務事務官         (大臣官房長) 田付 景一君         外務事務官         (アメリカ局         長)      森  治樹君         外務事務官         (欧亜局長)  金山 政英君         外務事務官         (経済局長)  牛場 信彦君         外務事務官         (条約局長)  高橋 通敏君         外務事務官         (国際協力局         長)      宮崎  章君         外務事務官         (移住局長)  内田 藤雄君  委員外出席者         外務参事官   三宅喜二郎君         外務参事官   白幡 友敬君         専  門  員 佐藤 敏人君     ――――――――――――― 二月七日  委員松岡駒吉辞任につき、その補欠として田  中織之進君が議長指名委員に選任された。 同月八日  委員北澤直吉辞任につき、その補欠として小  坂善太郎君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 二月六日  日本国ソヴィエト社会主義共和国連邦との間  の通商に関する条約締結について承認を求め  るの件(条約第一号)  日本国インドネシア共和国との間の平和条約  の締結について承認を求めるの件(条約第二  号)  日本国インドネシア共和国との間の賠償協定  の締結について承認を求めるの件(条約第三  号)  旧清算勘定その他の諸勘定残高に関する請求  権の処理に関する日本国政府インドネシア共  和国政府との間の議定書締結について承認を  求めるの件(条約第四号)  日本国パキスタンとの間の文化協定締結に  ついて承認を求めるの件(条約第五号)(予)  日本エティオピアとの間の友好条約締結に  ついて承認を求めるの件(条約第六号)(予)  政府間海事協議機関条約締結について承認を  求めるの件(条約第七号)(予) 同月十一日  在外公館名称及び位置を定める法律等の一部  を改正する法律案内閣提出第四一号) 同月六日  原水爆実験禁止等に関する請願(阿部五郎君紹  介)(第六五八号)  同(五島虎雄君紹介)(第六五九号) の審査を本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  日本国ソヴィエト社会主義共和国連邦との間  の通商に関する条約締結について承認を求め  るの件(条約第一号)  日本国インドネシア共和国との間の平和条約  の締結について承認を求めるの件(条約第二  号)  日本国インドネシア共和国との間の賠償協定  の締結について承認を求めるの件(条約第三  号)  旧清算勘定その他の諸勘定残高に関する請求  権の処理に関する日本国政府インドネシア共  和国政府との間の議定書締結について承認を  求めるの件(条約第四号)  日本国パキスタンとの間の文化協定締結に  ついて承認を求めるの件(条約第五号)(予)  日本国エティオピアとの間の友好条約締結  について承認を求めるの件(条約第六号)(  予)  政府間海事協議機関条約締結について承認を  求めるの件(条約第七号)(予)  在外公館名称及び位置を定める法律等の一部  を改正する法律案内閣提出第四一号)  国際情勢に関する件      ――――◇―――――
  2. 山本利壽

    山本(利)委員長代理 これより会議を開きます。  床次委員長が所用でちょっとお出かけになりましたので、委員長の御指名によりまして、その間暫時私が委員長の職務を行います。  去る二月六日付託されました、日本国ソヴィエト社会主義共和国連邦との間の通商に関する条約締結について承認を求めるの件、日本国インドネシア共和国との周の平和条約締結について承認を求めるの件、日本国インドネシア共和国との間の賠償協定締結について承認を求めるの件、旧清算勘定その他の諸勘定残高に関する請求権処理に閲する日本国政府インドネシア共和国政府との間の議定書締結について承認を求めるの件、日本国パキスタンとの間の文化協定締結について承認を求めるの件、日本国エティオピアとの間の友好条約締結について承認を求めるの件、政府間海事協議機関条約締結について承認を求めるの件、及び昨十一日に付託されました在外公館名称及び位置を定める法律等の一部を改正する法律案、以上八件を一括して議題といたします。政府側より提案理由説明を求めます。松本政務次官     ―――――――――――――
  3. 松本瀧藏

    松本政府委員 ただいま議題となりました日本国ソビエト社会主義共和国連邦との間の通商に関する条約締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  一昨年十月に署名された日ソ国交回復に関する共同宣言第七項において、両国貿易海運その他の通商関係を安定したかつ友好的な基礎の上に置くために、条約又は協定締結するための交渉をできる限りすみやかに開始することを約束しております。また、それと同時に関税通関手続などに関する最恵国待遇及び船舶取扱いに関する最恵国待遇の相互許与に関する議定書署名され、右共同宣言第七項に予想される条約または協定締結されるまで、関税通関手続等及び船舶に関する最恵国待遇相互に許与することとなりました。  そもそも日ソ両国は、隣国であるにもかかわらず従来通商上の実績は見るべきものがなかった次第でありますが、国交回復とともに漸次軌道に乗り、両国間の貿易量も次第に増加の傾向を示して参りました。今般これをさらに発展、安定させることを目的とし、かつ、右の共同宣言第七項による義務を果すために、政府は昨年八月ソビエト連邦に対し交渉開始方を申し入れ、九月より東京においてソビエト連邦側代表との間に交渉を始め、自来折衝を重ねました結果、十二月三日に至りようやく実質的合意に到達し、同六日日本側全権委員廣瀬公使と、ソビエト連邦側全権委員セミチャストノフ外国貿易次官との間で、通商に関する条約署名調印を行なった次第であります。  この条約の骨子は、関税通関手続に関する最恵国待遇船舶出入港及び船舶取扱いに関する最恵国待遇内国税に関する最恵国待遇、為替及び貿易制限に関する無差別待遇等の相互許与について規定するとともに、貿易実施に関連して問題となる仲裁判断の執行、ソビエト連邦通商代表部設置、法人の互認、身体財産保護等を規定しております。  なお本条約は、批准書交換の日から五年間効力を有することとなっており、その後も六箇月の予告をもって廃棄しない限り効力を存続することとなっております。  また本条約にはその不可分の一体として、日本設置さるべきソビエト連邦通商代表部法的地位を規定した附属書があります。ソビエト連邦国家貿易を行う体制をとっているため、この代表部設置は、日ソ貿易実施の上に必要であるばかりでなく、その促進の上にも望ましいものであるので、その設置を認めることとし、同時にその法的地位について、附属書で詳細に規定したものであります。  この条約によって両国間の通商に関する基礎的事項が詳細に定められ、今後日本にとって新市場ともいうべきソビエト連邦との間の通商が大きく発展することが期待されるわけであります。  よって、ここにこの条約批准について御承認を求める次第であります。何とぞ慎重御審議の上、本件についてすみやかに御承認あらんことを希望いたします。  次に、日本国インドネシア共和国との間の平和条約締結について承認を求めるの件、日本国インドネシア共和国との間の賠償協定締結について承認を求めるの件及び旧清算勘定その他の諸勘定残高に関する請求権処理に関する日本国政府インドネシア共和国政府との間の議定書締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  御承知通りインドネシア共和国昭和二十六年九月にサンフランシスコ市で開催されました対日平和条約に関する会議に参加し、同平和条約署名したのでありますが、その後これを批准せず、また賠償問題が解決されるまではわが国との平和関係を回復しないという方針をとって参ったのであります。  そこで、わが国といたしましては、一方におきまして昭和二十七年六月に事実上外交事務をつかさどることのできる総領事の交換に同意をすることによりまして、両国国交調整に努力いたすこととするとともに、他方におきまして、同国との間の賠償問題の早期解決をはかるため、昭和二十六年十二月以来数次にわたって同国政府交渉を重ねて参りましたところ、昨年十一月二十七日のジャカルタにおける岸総理大臣スカルノ大統領との間の会談の結果、賠償問題に関する基本的了解が成立するに至り、この了解に基き、十二月八日にはジャカルタ小林政府代表ジュアンダ総理大臣との間に平和条約賠償協定等締結に関する覚書が作成されました。  政府は、この覚書基礎として、これらの条約協定等案文につき昨年十二月下旬から具体的交渉開始しましたところ、交渉は円滑に進捗し、去る一月二十日ジャカルタにおいて藤山外務大臣スバンドリオ外務大臣との間で、この日本国インドネシア共和国との間の平和条約日本国インドネシア共和国との間の賠償協定及び旧清算勘定その他の諸勘定残高に関する請求権処理に関する日本国政府インドネシア共和国政府との間の議定書署名されたのであります。  これらの文書のうち、平和条約は、さき締結されましたビルマとの平和条約と大体似た内容を有しておりますが、賠償条項におきまして賠償金額を十二年間二億二千二百八万ドルとする旨が明記されております。また第三条におきまして、通商航海条約締結されるまで両国間の貿易海運等経済関係において相互に無差別待遇を与える旨規定されております。賠償協定は、この二億二千三百八万ドルに相当するわが国生産物及び日本人役務供与の細目を定めておりますが、これは、さき締結されましたビルマ及びフィリピンとの賠償協定と大体似た内容を有しております。第三番目の請求権処理に関する議定書は、昭和二十七年八月七日に締結されましたインドネシア共和国との間の支払い取りきめ及びその他の陶係文書により両国間の貿易決済方式が定められたのでありますが、その後インドネシア側におきまして一部を除きこれらの方式による支払いを履行いたさなかったために日本政府債権が累積する結果となりましたが、平和条約賠償協定締結により両国間の国交が正常化いたしますのを機会に、一括この累積債権を放棄しようとするものであります。  これらの条約協定議定書締結によりまして、わが国賠償金額の限度において負担を負うこととなるのでありますが、他面インドネシア共和国との間に正式の国交が開けることは、わが国の対東南アジア外交を大きく一歩進めることとなる次第でありまして、まことに喜ぶべきことと考えます。  つきましては、慎重御審議の上、すみやかに御承認あらんことを希望いたします。  次に日本国パキスタンとの間の文化協定締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  この協定につきましては、昨年四月スラワルディ・パキスタン首相の来日を機として岸首相から交渉開始方を申し入れるとともに案文を手交し、自来両国政府間において交渉を続け、岸首相パキスタン訪問の際、すなわち、昨年五月二十七日にカラチで岸首相スラワルディ首相との間でこの協定署名調印を行なった次第であります。  この協定内容は、従来わが国締結いたしましたフランス、イタリア、メキシコ、タイ、インド、ドイツ等との間の文化協定とおおむね同様のものでありまして、両国間の文化交流のための各種便宜供与文化活動の奨励、学者、学生の交換等について規定したものであり、この協定締結によりパキスタンとの文化関係促進を通じて両国民の間の相互理解も一そう深まり、両国親善関係増進に資するところ大なるものがあると期待される次第であります。  よって、ここに本協定締結について御承認を求める次第であります。何とぞ、慎重御審議の上、すみやかに本件につき御承認あらんことを希望いたします。  次に日本国エチオピアとの間の友好条約締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  この条約につきましては、昭和三十一年秋、エチオピア皇帝ハイレ・セラシエ一世陛下の御訪日を機にわが方より条約案文を提示して交渉開始し、自来アディス・アベバにおいて折衝を続け、昨年十二月十九日に山津代理公使とアクリル・アブテ・ウォルド副総理との間でこの条約署名調印が行われた次第であります。  この条約内容は、さき締結されましたカンボジアとの友好条約とおおむね同様のものでありまして、両国間の平和友好関係の存在、主権と独立の尊重、科学及び産業上の知識の交換等について規定したものであり、この条約締結によりまして従来とも両国間に存在していた平和と友好関係が一そう強化され両国親善関係促進に大いに寄与するところがあると期待される次第であります。  よって、ここに本条約締結について御承認を求める次第であります。何とぞ、慎重御審議の上すみやかに本件につき御承認あらんことを希望いたします。  次に、政府間海事協議機関条約締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  海運分野における国際協力は、海上衝突の防止、人命、財産救助等海上における安全の確保を中心とする技術的諸条約締結に始まり、国際連盟のもとにおいても、情報交換条約の、作成等によりその実をあげて参りましたが、戦後、国際連合のもとに、海運分野における常設的な国際機関設立が要望されるに至ったのであります。すなわち、航空、電気通信労働等の各分野においては、国際協力を確保するため、それぞれの常設的な専門機関設立されておりますが、国際的色彩のきわめて強い事業たる海運分野においても、常設的な協力機構設立必要性が痛感されたのであります。その結果、一九四八年にジュネーヴにおいて国際連合海事会議が開催され、この会議におきまして、政府間海事協議機関条約が作成されたのであります。  この条約は、海事に関する政府間の国際協力を推進するための常設的国際機関設立目的としております。すなわち、この機関は、海運に影響のある技術的事項を検討し、海上の安全を確保するためのより有効な措置の採用を勧告し、政府間の情報交換を容易にすることを主たる目的としているのであります。有数の海運国たるわが国は、戦前から各種海事関係国際条約締約国でもあり、この分野において重要な任務を遂行する常設的な国際機関に参加することにより、海運分野における国際協力に積極的に寄与することができるとともに、わが国海運の利益の増進、ひいてはわが国通商貿易発展に資することができると考えられます。  なお、この条約は、近い将来に効力を生ずることが予想されており、第一回総会効力発生の日から六カ月以内に開催されることになっておりますから、わが国としてもすみやかに受諾書の寄託を了して、第一回総会からその議事に参加することが得策と考えられます。  よって、この条約受諾について御承認を求める次第であります。御審議の上本件につきすみやかに御承認あらんことを希望する次第であります。  最後に在外公館名称及び位置を定める法律等の一部を改正する法律案提案理由説明いたします。  御承知通りエジプト及びシリア共和国大統領は、二月一日カイロにおいて、エジプトシリア両国を合併して新たにアラブ連合共和国を結成する旨の共同宣言に調印いたしました。二月五日両国議会はこの統一承認するとともに暫定憲法を採択し、二月二十一日統一承認及び新大統領選出のための国民投票が行われることとなりました。国民投票の結果直ちにエジプト及びシリア両国は消滅し、アラブ連合共和国が正式に成立いたす次第であります。  わが国は戦後エジプトシリア両国外交関係を樹立して以来、エジプトには大使館を、シリアには公使館を開設し、政治、経済及び文化諸般分野にわたり終始友好関係を維持してきたほか、国際連合においてもこれら両国と緊密に協力してきた次第でありますが、今般両国アラブ民族の大同団結を目ざす共通の理想達成の先駆として完全に合併し、単一国家を形成することとなりますについては、今後も不断の友好関係を保持いたしますため、アラブ連合共和国正式成立の上は、直ちにこれを承認する方針であります。  しかるに、ただいま申し上げました通りわが国は現在エジプトカイロには大使館シリアダマスカスには公使館を置いておりますが、新国家が正式に成立し、わが国がこれを承認しました際は、直ちにこれを切りかえる措置を講ずる必要がある次第であります。すなわち、在エジプト日本国大使館及び在シリア日本国公使館は、新国家成立と同時にエジプトシリア両国が消滅いたします関係上、対外的にはその地位を失うこととなる次第でありまして、このような事態に対処いたしますため、アラブ連合共和国が成立し、わが国がこれを承認いたしました時をもちまして、カイロに在アラブ連合共和国日本国大使館を置き、ダマスカスに在ダマスカス日本国総領事館を置く必要があるのであります。  このように、現在わが方の在外公館を置いてある国が消滅して新しい国が生まれ、在外公館を直ちに切りかえるという異例の必要がありますので、あらかじめ法制上の準備を整えておきますため、この法律案提出する次第であります。  以上が、この在外公館名称及び位置を定める法律等の一部を改正する法律案提案理由であります。  何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御採択あられんことをお願いいたします。
  4. 山本利壽

    山本(利)委員長代理 これにて提案理由説明は終りました。  ただいまの各件に対する質疑は次今に譲ることといたします。
  5. 戸叶里子

    ○戸叶委員 資料提出をお願いしたいと思うのです。その資料は、賠償国別実施状況、その中で役務生産物を別々にして出していただきたい。それから生産物の内訳がどうなっているか、それから日本側契約者の名前、もう一つは、それらの賠償協定に伴って、経済協力が両方で話し合われているはずですが、経済協力実施状況、これらの資料をお願いしたいと思います。
  6. 山本利壽

    山本(利)委員長代理 今の資料提出は、政府においてはよろしゅうございますか。――そのように計らいます。     ―――――――――――――
  7. 山本利壽

    山本(利)委員長代理 ただいまより国際情勢について質疑を許します。菊池義郎君。
  8. 菊池義郎

    菊池委員 日ソ漁業交渉が行き詰まっておって遺憾でありますが、新聞を見ますと、わが方の北洋安全操業の問題の交渉提案に対しまして、ソ連側から回答があって、領土問題とこの問題とは不可分である、従って平和条約交渉開始提案するという回答があったということでありますが、これは事実でありましょうか、どうでありましょうか。
  9. 松本瀧藏

    松本政府委員 お答えいたします。向うからそういう旨の通知があったことは事実でございますが、ソ連との本式の講和条約締結するに至るまでには相当まだいろいろと準備も要ると思います。特に領土問題につきましては一朝にして解決はできないので、従って、ごく簡単に技術的にこれを向うと交渉するまだ段階でないという気がいたします。なおこまかいことにつきましては局長から回答させます。
  10. 金山政英

    金山政府委員 お答えいたします。けさ毎日新聞に出ておりました記事は、一部分事実であります。この北海道近海安全操業の問題に関しましては、すでに当委員会においても御報告いたしたと思いますが、昨年の六月四日に当方から問題を提起したわけであります。その問題の原因となりましたのは、北海道近海千島並びに樺太の南、におきまして、日本の小漁船がたびたび拿捕されまして、両国間に非常に不愉快な事件がたびたび起っていたのであります。その原因は、要するにソ連側が十二海里の領海を主張しており、日本が三海里を主張しておるのでありまして、そのために先方漁船を拿捕する。わが方はそのたびごと抗議を申し込んでおるのでありますが、ただそういう抗議を繰り返すばかりでは問題の解決になりませんので、具体的に、実際的にこの問題を解決するためには、ソ連の主張している十二海里の以内において日本の小漁船が操業し得るように、何らかの協定に達する必要があったわけであります。わが方の提案に対しましてソ連側は八月に至るまで返事をいたして参りませんでしたが、口上書をもって、日ソ友好関係を推進するために、わが方の提案受諾して、提案があった若干の地域において、日本側漁業を許す用意があるということを申して参りました。そこで日本政府といたしましては、さっそくそれに対する具体案ソ連側に提起いたしたわけであります。その具体案につきましても、もし御要求があれば全部申し上げてけっこうでございますが、それ以来――八月に先方交渉用意があるということを申して参りまして以来、今日に至るまで門脇大使を通じ、あるいは東京において、ソビエト側に対して十数回にわたって回答を督促いたした次第であります。その間ソビエト側日本側の案を検討中であるとか、もうすでに案ができたはずであるとか、いろいろなことを申しまして、具体的に回答をしてこなかったわけでございますが、去る二月の五日に至りまして、ゴスプランの副議長でありますイシコフ大臣が、門脇大使に対しての来訪を求めまして、この問題に対する返答をするからということでありました。その返答内容は「昨年六月、日本政府ソ連政府に対し千島列島付近ソ連領海における日本人の漁獲、水産物採集問題を申し入れた、ソ連政府においては日本政府日ソ外交関係上の諸問題を解決する措置、特に平和条約締結措置をとられるものと考え、千島列島付近領海一定区域における日本人漁業につき日本政府交渉に入る用意があることを表明した、しかるに日本政府日ソ共同宣言署名より相当の時日を経過するにもかかわらず、今なお平和条約締結する用意を表明しない、右にかんがみソ連政府本件漁業問題を審議する条件がいまだ熟していないと認める」こういう返事をいたしたわけであります。従来の交渉の経過から申しまして、このソ連側回答ははなはだ了解に苦しむところであります。と申しますのは、わが方の提案の中には、具体的に平和条約締結に至る暫定的な措置として、両国関係の改善のためにも何らかのこの問題について解決をしてもらいたいということを規定してあります。またこの問題については、領海の範囲の問題が非常にコントラヴアーシャルな問題でありますので、その領海、領土の問題を全部不問にして、何らか両国関係の打開のために、その増進のために、ソビエト側の好意ある解決案を期待していたわけであります。それにこういう事態返答が来たわけでありまして、門脇大使は従来のソビエト側回答ぶり、また数カ月をこの問題に費して、その間たとえば日ソ通商協定などの締結された事態がありますが、そのような事態において、こういう返事をもらったことは、こういう返事をされるということは食言であるとまで強調して、ソビエト側に反省を求めておられます。これが現在までの交渉の経過であります。
  11. 菊池義郎

    菊池委員 この漁業交渉は全く日本側がほんろうされておるような形で、われわれ残念でたまらぬのでありますが、向うがそう言ってきまするならば、この平和条約とからんで交渉開始してもよきそうに思います。一体いつごろまでこの平和条約政府は延ばすつもりであるか、またどういう機会が到来したならばこの平和条約締結しようという考えであるか。どういうわけで延ばすのか。その点がさっぱりわからぬので、政府の大官でありますところの松木政務次官にその点お伺いしたいと思うのであります。
  12. 松本瀧藏

    松本政府委員 一番大きな問題は、御承知のごとく南千島の領土の問題でございますが、この問題に関しましてはいろいろと、当時サンフランシスコ講和条約締結しました国あるいはその主導権を握りました国の間に意見が出ておりますが、だんだんとやはり国際的の世論あたりが煮詰まって最も有利な背景をもって交渉開始することが適切ではないかという考えをもっております、従って今急速に開始するまだ時期ではない、こう考えております。
  13. 菊池義郎

    菊池委員 南千島を日本領内と確信し、どこまでもこれを日本の領土として確保する信念に徹しておるならば、日ソの戦争がすでに、終結しております今日において、南千島からソビエトの軍隊を撤退することをまず要求しておくことが先決問題、これは重要なことであると思うのであります。それをなぜやらぬのであるか。よしんば南千島がとれるにしてもとれないにしても、形式的にもこの申し出はせんければならぬ。それでなければ国民日本政府が果して南千島を日本にとろうという信念を持っておるかおらないか、それを疑わざるを得なくなるのでありますから、政府としては当然この措置はとるべきであると思うのでありますが、なぜその申し入れをしないのであるか。この点をお伺いしたい。
  14. 松本瀧藏

    松本政府委員 はなはだ抽象的な、答弁になるかもしれませんが、諸般の国際事情、これは菊池委員もよく御存じだと思いますが、非常に微妙な点もございますので、いろいろと時期を見ておる次第でございます。
  15. 菊池義郎

    菊池委員 サウジ・アラビアから日本の武器を買い入れたいという申し入れがあった、それに対して日本はこれを応諾するような新聞報道がありますが、これに対する政府の意向はどうでしょうか。
  16. 松本瀧藏

    松本政府委員 私どもの承知しておる限りにおきましては、民間との折衝をしたらしいということは聞いておるのでございますが、何らまとまった結論は出ない、むしろそういう段階にないということをわれわれ承知しております。
  17. 菊池義郎

    菊池委員 向うから申し入れがあったら日本としてはそれを応諾するつもりでしょうか、どうでしょう。
  18. 松本瀧藏

    松本政府委員 こまかいことは、どういうものを求めておるか、民間側の方との交渉ですから、われわれ政府としては、これはもちろんまだ関知しておりません。
  19. 菊池義郎

    菊池委員 それでは大臣に対する質問はあとにして……。
  20. 山本利壽

    山本(利)委員長代理 政府委員で答えられることで、質問する方は、ございませんか。  暫時休憩いたします。     午前十一時九分休憩      ――――◇―――――     午後二時十三分開議
  21. 床次徳二

    床次委員長 これより再開いたします。  午前の会議に引き続き、国際情勢等に関して調査を進めたいと存じますが、その前に前委員長野田武夫君より発言を求められておりますので、これを許します。野田武夫君。
  22. 野田武夫

    ○野田(武)委員 私委員長在任中は不敏のために、委員会運営等について皆様にいろいろと御迷惑をかけたと思いまして、恐縮に存じております。しかし曲りなりにも大過なきを得ましたのは全く委員各位の御協力のたまものでございまして、衷心から感謝いたします。  まことに簡単でございますが、一言ごあいさつを申し上げる次第でございます。どうもありがとうございました。(拍手)
  23. 戸叶里子

    ○戸叶委員 社会党を代表いたしまして、野田前委員長に一言お礼を申し上げます。  この委員会は大体ほかの委員会に比べまして、大へんにうらやましがられるほど運営のよろしきを得て仲よくやっているわけですが、野田委員長も大へんに公平な方で、やたらに時間制限もなさらないで大へん円満に運営をやられましたことに対して、厚くお礼を申し上げます。(拍手)
  24. 床次徳二

    床次委員長 それではこれより通告順に質疑を許します。なおお一人二十分ないし三十分程度の割合でもってやっていただきたいと存じます。  まず菊池義郎君。
  25. 菊池義郎

    菊池委員 先刻ソ連から、日本漁業交渉に関する申し入れに対しまして、漁業交渉平和条約とからんでやるのが妥当であるといった回答があったということを御報告せられましたが、そしてさらに日本としてはこの平和条約にからんで漁業交渉をやることはできないという御答弁でございました。ところでこの向うの申し入れを日本が聞かないとなると、さらに漁業交渉は難航するものと見なければならないと思います。このときに、日本といたしましては、新聞にもありますように大臣級の人でも出そうというお考えでありますか、どうでしょうか、その辺をお伺いしたいと思います。
  26. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 近海の安全操業に関します漁業交渉につきましては、こちらから案を具して交渉開始を希望したわけであります。平和条約と関連さしてこれをやりたいという向うの意思が発表されたわけでございまして、従いまして安全操業とこの問題をどういうふうに取り扱っていくかということはまだ決定しておりません。ただお尋ねのところはあるいは現在行われております漁業交渉のことであるかとも思います。現在モスクワで行われております日ソ間の漁業交渉につきましては、現在八回くらい会合を開き、それぞれ分科会等を開いてやっております。相当に議論は隔たっておるわけでありまして、相互の立場が違っております。しかし門脇、平塚両代表が熱心に分担をされまして、しかも現実の漁業関係と政治関係とを総合されてやっておりますので、新しい代表を送るというようなことは現在の段階ではまだ考えておりません。
  27. 菊池義郎

    菊池委員 安全操業漁業交渉に含まれるわけでございますが、安全操業と関連いたしまして、平和条約を同時に締結したいという向うの申し入れは、結局向うの意図するところは、この際日本を困らせて一挙に領土問題を片づけて、そして南千島を獲得しようというのが目的であろうと思われるのであります。向うの言い分も一理あることで、領土の問題が片づかなければ安全操業の問題はちょっと交渉がめんどうではないか、かように考えるのでありますが、これを切り離して片づけることのできる自信がおありでしょうか。
  28. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 はっきりさしておいていただきたいのは、ただいまやっております日ソ漁業交渉と、北海、北洋におきます安全操業の問題と二つございますから、その点をまずはっきりさしておきたいと思います。  安全操業の問題につきましては、ソ連側が、先ほど申しましたように、平和条約その他の問題と関連して討議をしたいという申し出をしてきておるわけであります。われわれとしては北洋、北海の零細漁民の毎日の生活を考えまして、一日も早く日ソの間に安全操業の取りきめができますことを希望し、それがまた将来の日ソ平和条約の推進にもなり、あるいは基盤にもなる、こう考えてきたわけなんでございますが、ソ連側で、ただいま申し上げましたような状況で、これを関連さして問題を取り上げたい、こういうことでありますので、その点問題が非常にむずかしくなってきておるということは事実だと思います。
  29. 菊池義郎

    菊池委員 こういう交渉でもって、国際機関を利用する手はございませんか、どうですか、
  30. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 国際機関を利用することが絶無とも申し上げかねますけれども、安全操業の問題のごときは、ソ連友好のうちに話し合いをしていきますことが、一番適切な、円満な解決にいく道ではないかと考えております。
  31. 菊池義郎

    菊池委員 それからブルガーニン書簡について、これは古い話ですけれども、これを慎重に検討するという政府の答弁でありますが、あの書簡の内容を見ますと、別に慎重に検討すべき点などほとんどないと思うわけです。ソ連の言いそうな、ほとんどきまり文句だけでありまして、一日も早くこれに対して回答を与え、むしろ日本の方からも、積極的に向うに呼びかけるべきだと思うのでありますが、外務省の御意向はいかがでありましょうか。
  32. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 お考えの通りでありまして、できるだけ早い機会に、積極的に呼びかけるような形の回答をいたしたい、こう考えております。
  33. 菊池義郎

    菊池委員 それからアジア開発基金の五十億でございますが、財政困難の折柄とは申しながら、ちょっと構想が小さすぎるように思われるのであります。もっと大きな構想を持って、このアジア開発の目的を達するというお考えはないかどうか、外務大臣の構想を簡単にお伺いしたいと思います。
  34. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 アジア経済開発基金の構想は、岸総理が先般東南アジアを回られたときに提唱されたのが基本となっております。従いまして当時の構想は四億ドル前後の資金を各国と共同で出し合いながら、また受益国とも話し合いながら、これをアジアの経済開発に使っていこうという構想であったと思います。しかし御承知のように、各国それぞれの、この構想に対する意見もあります。また方法論についてもいろいろの論議があります。従って今日までまだ具体的にその構想が固まってきておりません。しかし私ども日本としましては、東南アジアの経済的安定また経済開発というものが喫緊であるということも感じておりまするし、また小規模ながらもこういう構想が進んでいくことも希望をされます。そういう観点からしますと、提唱者である日本がとにかく若干の資金を出して、日本がこういう気持で進めていくということを示して参りますことも必要だと思います。従いまして財政等の理由によりまして少額ではありますけれども、まずこの程度の金額を出して、そうして一歩前進をはかっていこうということが私どもの考え方であります。決してこの金額に満足いたしておるわけではございません。
  35. 菊池義郎

    菊池委員 インドネシアに対する賠償が、貿易じりまで天引きにいたしますと八億ドル以上になりますので、最初のサンフランシスコ条約締結当時の見通しでは南方全域で十億ドルという考え方であった。しかもそれは役務ということに限られておったのでありますが、これが相当大きなものとなったのであります。要するに国交の回復に伴うところの経済関係の好転あるいは貿易の増大、いろいろ考えた結果でありましょうが、それには一日も早くこの通商航海条約その他の経済協定を今から準備する必要があり、もう準備がおありのことだと存じますが、大体の今後の経済工作のお考えを承わりたいと思います。
  36. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 賠償交渉と同時に調印いたしました平和条約にも、互恵の立場をもって通商関係を規律としていくことを書いてございます。今後これらの問題について具体的な話合いを遂げまして、協定その他も進めて参りたいと、こう考えております。
  37. 菊池義郎

    菊池委員 日本の移民は戦後わずかに二万しか行っていない。イタリアは同じ敗戦国でありながら、一カ年に平均十四万、終戦後すでに百六十万も行っておるという勘定になっております。欧州諸国だけで十二年間に七百五十万といわれておるのであります。日本のこの移民に対する金の出し方があまりにも少いのではないか。一カ年わずか十億ではどうにもならないと思うのであります。外務省としてはすべからく大蔵省その他の方面とよく折衝せられまして、軍人恩給とか何とか、あんなところにそうたくさん出さないで、そういったような方から移民の方にも振り向けるということを考えてもらいたいと思うわけですが、どうでありますか、こういう点についてお考えを承わりたい。
  38. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 移民を推進して参りますことは、私どものぜひともやらなければならぬ仕事と考えております。ただ御指摘のように、日本の財政事情もありまして、使える資金の点もございますが、同時に受け入れ国との関係、輸送する船舶等の関係、それらいろいろな条件が重なってきております。がしかし今後外務省としましては、極力これらの資金について充実できるように努力をして参りたいと思っております。
  39. 菊池義郎

    菊池委員 この移民の問題は軽視してはならぬ。群民によってこの人口問題を解決できるわけではございませんけれども、解決の一助となるわけでございます。これは国際収支にも重大な関係があることで、今後大いに移民を奨励して、そうして大量の移民が出るようにしたいと思うのであります。私はここに外務大臣に申し上げたいのですが、あのスカルノ大統領が今日本に来ております。あの人は日本がインドネシアを占領しておりますときに、日本から行きますところの名士に対して、だれにでも彼にでも異口同音にこういうことを言っている。われわれにも言いました。日本人がもし国籍を脱してくるならば、二千万人――これは二百万人、二十万人でもない、二千万人受け入れることができるのだということを言っておりました。ちょうど日本に来ている最中でありますから、この人をとっつかまえて移民交渉をせられたらどうか。証人になる人はわれわれでも、ほかに幾らでもございます。
  40. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 スカルノ大統領がそういう御意見を持っておられるというようなことは、ただいま初めて拝聴しました。将来参考にいたしたいと思います。
  41. 菊池義郎

    菊池委員 参考でなく、ちょうど日本におられる最中ですから、この人をつかまえて、交渉せられたらどうですか。この機会を逸してはならぬと思います。
  42. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 スカルノ大統領は今日本に来られまして、公式の接待を辞退して静養しておられますので、適当な機会につかまえることにいたします。
  43. 菊池義郎

    菊池委員 予算委員会でも川崎秀二君から話が出ましたが、われわれは世界連邦ということを真剣に考えております。英、米、フランスその他の欧州の十七ヵ国、米国の二十六州議会にはこの世界連邦実現のための委員会が設けられまして、みな真剣にこの運動をやっておりますが、日本といたしましても、国連に対しまして世界連邦の構想を実現するために、一つ提案せられては、いかがであるか、これを一つお伺いいたします。
  44. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 世界連邦という考え方については、大きな人類社会の理想の一つとして考えられることであります。ただ現実に今国連にそういう提案をするかいなかについて、今日お返事いたしかねると思います。
  45. 菊池義郎

    菊池委員 宗谷が南方の氷海でああいったようなみじめな状態になっております。もうこれで二回です。ああいうことになりますと、いかにも日本が夫開国ででもあるかのような印象を世界に与えて、非常な不利益だと思うのです。他の国々の船にもそういうのがございますが、決してそれは文明国の船ではなかったようです。日本だけが文明国であるにかかわらず、ああいったような状態で、世界に対して非常に情ない印象を与えることと思います。あんなことは、文部省とも話し合って、今後出すときにはしっかりした船を出すように、一つ戒告願いたいと思います。これは答弁には及びません。  それからして、南方諸国に対しまして、日本の軍人の舎利を拾って山の中を歩いている、これまた実にみっともない。いかにも野蛮国のような印象を世界に与える。今後ああいう舎利拾いのようなことはなるべく――なるべくじゃない、絶対に出さぬように、外務省からして厚生省をとめてもらいたいと思います。この点いかがでございましょうか。
  46. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 国民的な感情もあることでありますし、相手国との十分な了解がつく範囲内において適当に処置していくのが適当だろうと考えております。
  47. 菊池義郎

    菊池委員 それからこれは昔のわれわれの選挙区でございました小笠原の人々が、どうしても帰れないという見通しをつげてあきらめまして、補償金を要求するという運動に変っておるのでございます。アメリカの強硬態度からして、土地賃貸料の一括払い、それから漁業権の一括払い、そういうことをやってもらう方面に運動が変りつつあるのでありますが、長く借地権を米国が持つことになりますと、永久にあきらめなければならぬというようなことも予想されるのであります。これに対して、こういうことをやりますと、沖縄の方にも直ちに大きな影響を与えることになりまして、われわれ深憂にたえないのでありますが、何とかして小笠原の島民を帰すことのできるように積極的にお骨折りを願いたいと思う。どうもアメリカとの間に大きな懸案がありますと、その方が大事で、この方を先にするとその方がおろそかになる心配があるという懸念からかどうか知りませんが、外務省がどうもこの問題についてあまり積極的でないというような印象を受けているのであります。八千人の人たちにとっては深刻な問題であります。もう一度外務省側の御答弁を願いたい。
  48. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 外務省としては、この問題を決して軽々な問題として低く評価をして扱っていることは断じてございません。従来の日米交渉においても、小笠原帰島問題というものは相当熱心に、数回にわたって機会あるごとに持ち出しております。ただなかなか達成せられませんので、その間帰島連盟の方々が本問題の解決は引続き主張してもらう、自分たちも捨てておらぬのだが、しかしその間の補償等について、あるいは借地料の支払い等について、今日までは本問題の解決と同時に考えているが、この際それを切り離して主張してもらいたいという御意見もあるわけであります。帰島連盟の方々のそういう希望は、できるだけ達成するように外務省が努力するのは当然だと考えております。
  49. 菊池義郎

    菊池委員 よろしゅうございます。
  50. 床次徳二

    床次委員長 次は戸叶里子君。
  51. 戸叶里子

    ○戸叶委員 先日のこの委員会でも問題になりましたけれども、沖縄の問題ですが、沖縄の施政権の返還ということはたびたび言われていることであって、政府もいろいろと交渉をしているというようなお話をしておりました。先ごろのわが党の鈴木委員長の質問に答えられても、沖縄住民の希望はそのまま日本国民の要望であると述べて、さらに要望の実現にはあらゆる努力をしなくてはならない、こういうふうに答えられております。それからまたあるときの答弁では、政府は十分関心を持って施政権問題では今も米国と話し合っている、こういうふうに答えられましたし、また予算委員会では、市長選の勝利の事実をあげて意見を述べ、交渉を続けている。ある時期がくれば外交交渉以上の話し合いも必要になるかもしれないと思っている、こういうふうな答弁をされておりますけれども、何かその間に施政権の返還について具体的にこういうふうなことをしたというふうな具体性が何にも見られない、何か話し合いを続けているというマンネリズムに私は陥っているような気がするのです。このままの状態でいけば、結局施政権の返還ということは幾ら話しても、ああ考えましょう、またお願いしますというような結果で終っていくんじゃないか。そうしてまたこの間の市長選の結果を見ましても、アメリカの世論も何とかしなければならないというふうな空気に私はなっていると思う。そこでちょうどいいときだと思いますから、やはりアメリカと日本との間で沖縄の問題、ことに施政権の問題についての話し合いの場というものを今後作っていかなければならないんじゃないか。たとえば防衛の問題もありましょうし、いろいろな問題があると思うのですけれども、特に日本とアメリカとの間で沖縄問題に関してのお話し合いの場というものを設けるお考えがあるかないかを承わりたいと思います。
  52. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 御質問にありましたように、私どもとしてはこの問題が日本国民全体の要望であることも十分承知しておりますし、また熱意をもってこの問題の解決に当らなければならぬということも考えております。従いまして総理や私が渡米しまして、そしてワシントンに参りましたときも、必ずこの問題については問題をいろいろの角度から提起して話し合いをしております。また常時外交経路を通じまして、朝海大使とワシントン国務省の当局者等とも常時起っている時事問題その他をとらえ、それらの解明とともに時々努力していることも事実であります。そういうことで努力はいいしておりますけれども、全体として何か具体的なつかみ方ができないかということなんです。われわれとしてもそういうことを極力考えていかなければならぬわけです。今お話のように何かこういう問題について時期もきたんじゃないか、沖縄、那覇の市長選挙もあり、あるいはアメリカの国論の中にもいろいろ批判もある、そういうような時期をとらえて適当な話し合いの場を考えてみることはどうだ。私どもも実はお説のような何かそういう場を持ち得る時期があるんじゃないか。またどういう形かで、今お話のような、情勢が移って参りますれば、持ってみることも適当なんじゃないか。それ自体が全部の解決をはかることかいなかは別としまして、考えてみる必要があるのだ、こう考えております。
  53. 戸叶里子

    ○戸叶委員 当然日本とアメリカとの問の何々委員会というようなものを設置して、そしてそういうふうな問題を具体的に話し合っていく、こういうふうにする御意思と私は思いますが、そういうふうに了解してよろしゅうございますか。
  54. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 まあ何々委員会という銘を打ったものにしますか、そうでなくただ単に、私がたとえば大使と話をする、朝海大使が向うの国務省と話をするという以外にもう少し何か形を整えてやることが考えられると思うのであります。まあそこらにつきましてはまだこういう確定的な委員会を持つということも考えておりませんけれども、お説のように将来そういうことを考えてみる必要がある、また考えてみても、だんだん実効が上るような、全部の解決ではないにしても問題の進展に役立つじゃないかという期待は、私はできる時期が若干きているんじゃないかということも考えて、あわせて申し上げているわけであります。
  55. 戸叶里子

    ○戸叶委員 なるべく早い機会にそういうふうな話し合いの場を、特に沖縄なり小笠原の問題に限ってするような場を作っていただきたい、そうでない限り前進はないと私は考えますので、この点をぜひ考慮していただきたいと思うのであります。  それから今菊池委員も触れられましたけれども、小笠原の島民の問題はこれは午前中の予算委員会岸首相がはっきりされたことによりますと、施政権の返還とそれから日本に引き揚げてきた人の帰島問題、あるいは長引くならば日本にいる住民の損害の補償というようなことも考えるというふうな説明でございました。ところがきょうの新聞によってもはっきりいたしますように、小笠原の島民の人たちにしてみれば、よくよく追い詰められて、おぼれる者はやはりわらをもつかむというような気持がありますために、何かアメリカ側からの誘いというような形で地代の一括払いなどというような話でもくれば、やはりそういうふうなものにもたよってみたいというような気持になってきているんじゃないか。これは私どもから考えて大へんな問題になることでございまして、やはりその人たちに対する一事的な損害の補償ということを考えるとか、また現在差し迫った問題としての生活の保障のために、沖縄の人たちにしたような、政府が一時払いをするとか、こういうふうな話をやはり進めていかなければならないと思うのですけれども、この小笠原の帰島促進連盟の方々にそういうふうな安心のいけるようなお話し合いをしてあげるという努力をなさるかどうかを伺いたいと思います。
  56. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 小笠原帰島連盟の方が、今戸叶委員の言われたように、何か少しさびしくなって、わらでもつかむような解決――というところまでは、私どもお話をしていてなっておられぬと思います。補償をしてもらいたい、もう帰島は断念しちゃって、そうして別途の解決の方法だというところまであきらめてはおられぬと思います。従ってけさの新聞にもありましたように、帰島を断念ということは、今後の交渉の上に非常に支障になると思って実は困っておる、因るのでありますけれども、小笠原の、ここに来ておられる方が帰島を断念しておられるということは、私ども島民の方とお話ししていて感じません。従ってその線に沿って今後もいく。ただし長くもなっておりますし、今申し上げたように、地代等の支払いについても、本問題とは別に払ってもらうことは、向うの連盟の方々の今日の生活権の必要からも考えられると思うのであります。そういう意味において私どもは交渉をするつもりでおるわけです。
  57. 戸叶里子

    ○戸叶委員 その場合に、地代の一括払いなどというようなことは当然お考えにならないでのお話し合いでございましょうね。
  58. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 さようでございます。
  59. 戸叶里子

    ○戸叶委員 それではこの問題についてアメリカ側と早急にお話しになる御意思がございましょうか。
  60. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 私の承知している範囲内においては、ごく最近の機会に帰島連盟の方が大会を開いて要求をお出しになるようでありますから、それらのものを見て、その要求をできるだけ本問題とあわせてお取り次ぎしたい、こういう形がいいのではないか、こう考えております。
  61. 戸叶里子

    ○戸叶委員 次に伺いたいのは、これも予算委員会で少し問題になったとは思いますが、ソ連門脇大使からの手紙によりますか、門脇大使からの通知によって、今日の北洋の安全操業につきまして、二月五日にイシコフ漁業部長が、これは領土問題と関係があるから平和条約と切り離して考えられないと言われたのに対して、二月七日に門脇氏がフェドレンコ氏に会ってそれを確認した、こういうふうなことが日本に伝えられてきたということがいわれておるわけで、これが予算委員会でも問題になりましたけれども、ソ連はこの北洋の安全操業ということと平和条約は切り離さないといっておる。岸さんの方では、きょうの答弁を伺っておりますと、それと切り離して考えていくと言われているようなわけなのです。  そこで外務省として門脇大使にどういうふうな通知を出して今後の交渉を進めさせようとなさるかを伺いたいと思います。
  62. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 イシコフ漁業相から五日に門脇大使に対して話がありましたのは御報告した通りであります。それにつきましてフェドレンコ次官に七日に確認したことも午前中御報告ができたと思います。これは平和条約交渉の再開を直接この言葉で提案したととるのはやや早急なきらいがある、しかし平和条約と関連さしてこの問題を論議し、あるいは平和条約を取り上げてやるということなので、それまではこういう交渉にあまり進んでいけないのだという向うの気持を表わしたものだと思います。私どもはそのまますぐこれを受け取りまして平和条約交渉をするまでもう安全操業の問題を取り上げないのだという考え方ではないのでありまして、できるだけ今日まで提案していた安全操業の問題を論議してもらいたい、話し合いをしていこうじゃないかということをソ連側に申し伝えていきたい、こう考えております。
  63. 戸叶里子

    ○戸叶委員 安全操業の話し合いをしていってほしい、そういうふうに申し入れることはわかりましたけれども、ソ連側が言っておりますのは、やはりこれと関連して平和条約の問題を話し合っていこうと言われているときなので、日本側安全操業だけの問題を出しましても、おそらく外交交渉が進められないのじゃないか、こういうふうに考えますが、この点はどうお考えになりますか。
  64. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 こちらは平和条約のことも考えておるが、さしあたりとにかく安全操業の問題は去年の八月から申し入れている問題だからやってもらいたい、こう言いましても向うが応ずるか応じないかは重ねての折衝になるわけでありまして、これからの問題だと思います。しかし私どもとしてはそれを重ねて向うに交渉してみまして、一日も早く安全操業の問題を解決していきたい。と申しますのは、平和条約の問題については領土の関係の問題がございます。これが解決すれば安全操業の問題というものもある程度並行して解決し得るのだと思いますが、しかしソ連側の今日までの様子を見ておりますと、必ずしも領土の問題というのはわが方の希望のように簡単に解決するやいなやは私ども予見できません。予見できない以上は、できるだけ近海の安全操業という面でも問題の解決されることを希望しておるわけであります。
  65. 戸叶里子

    ○戸叶委員 今の藤山外務大臣の御答弁によりますと、安全操業の問題だけ一応出して、先ごろの通知によると、両方関連させて話し合いたいというふうな向う側の意向からすれば、それに必ずしも応じられるか応じられないかわからないけれども、一応安全操業の問題を向うに出して、そうして応じられないときには重ねて考える、こういうことでございますか。
  66. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 さようでございます。元来が安全操業交渉をいたしますときに、この問題を申し入れましたときに、向う側は安全操業の問題として話し合いをしようということであったわけです。従って日本が八月二十九日に安全操業に関する日本提案をいたしたわけなのです。それは向うが呼け取ったのでありますけれども、その後再々催促をいたしておるのですが、それに対する返事が来なかった。十二月十六日に今やっております安全操業でなくて、日ソ漁業交渉の場においでやったらどうだという話も向うから一つは出たわけなのです。しかしこれは全く問題の性質が違うところでありますので、その場でやることにはなっておらない。ところが今回二月五日のイシコフ漁業相の提案になってきた、こういういきさつであります。
  67. 戸叶里子

    ○戸叶委員 それはわかるのですけれども、先ほど私が冒頭に念を押しましんのは、イシコフ漁業部長のさきに言われたのを門脇大使がもう一度フェドレンコさんのところへ行って、そうして確認をしたのだ、こういうことになってみますと、藤山外務大臣が安全保業の問題だけを出されましても、やはり領土の問題と関係しているから両方一緒にするようにというふうな話になってくるのじゃないかと思うのです。そこで藤山さんが安全操業の問題だけ出そうとなされましても進展しないのではないかと私は心配するのですが、この点についての自信がおありになるのですか。
  68. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 イシコフ漁業相が言ったことでありますから、フェドレンコ外務次官のところに会見に参りました。会見に行った結果ははっきりしたわけであります。従いまして、これに対してわれわれは回答すると申しますか、申し入れをしていかなければならぬ。それで、今のお話では、そこまで向うのフェドレンコ外務次官も言ったことだし、もはや申し入れをしても目的は達しないだろう、こういう御意見だと思うのですが、達するか達しないかはわかりませんけれども、われわれとしては従来のいきさつから見まして、ソ連側が初め安全操業の問題を別個に話し合いをしようという八月二十九日のわが方の提案受諾したまでの経緯もございますので、当然日本としてはそれを、申し入れるべきだ、こう思っております。  なお、関係のあれについては、局長から今までの事情等について御説明申し上げます。
  69. 金山政英

    金山政府委員 この問題の交渉を始めました経緯を御説明することが、あるいはこの問題を御理解願うのに役立つと思いますので、申し上げます。実はこの問題は、千島及び南樺太周辺の近海において、日本側漁船がたびたび拿捕されるという事態が起ったものですから、早急にこういう日ソ間の国交を阻害するような不愉快な事件を除かなければならない、そういう観点から日本側提案したものであります。それでその提案内容をたびたび日本側から向うに言ってあるのでありますが、たとえば領水の問題、十二海里、三海里というような主義上の問題ないしは領土問題の解決が非常にむずかしいということを前提にして、その前提のもとに日ソ関係のために悪いこういう状況を除去しようということから始まった交渉であります。しかもソビエト側は大臣も申されましたように、たびたびこの問題について好意的な考慮を払って、交渉用意があるということを申してきているのであります。今回こういう回答が参りましたことは、私たちとしては非常に意外に感じている次第であります。それでこの交渉が始まりました経緯から申しまして、そういう領土問題ないしは領水の問題と切り離して交渉する意図がソ連側にあったと考える十分なる根拠があるわけであります。ですから、こういう交渉の経緯における先方の矛盾をただしまして、あらためてこの近海操業問題を切り離した交渉を申し出ることは決して矛盾ではないと思います。
  70. 戸叶里子

    ○戸叶委員 今御説明にあったようなことは大体私もわかっておるのです。ただ問題が出てきたからその問題をどう処理するかということで私は質問しておるわけなんです。  そこで外務大臣の先ほどの答弁をもう一度繰り返しますと、一応安全操業の話を進めていく。それに応じられなければまた考えるということでございますが、そうなると、午前中の岸さんの答弁とは私は違うと思う、岸首相は、やはり安全操業平和条約の問題とは分けておっしゃっておられましたけれども、安全操業の話もすべし、同時に平和条約の話も進めていくんだ、平和条約も急いでやるんだ、こういうふうなことをおっしゃっておられます。私はこれは自分でメモしてきましたからわかっておるのです。そうなると、岸さんのお考えと外務大臣のお考えがちょっと違うのではないかということが一つと、それから午前中の菊池委員の質問に答えられまして、松本政務次官が、ソ連との平和条約の話し合いは諸般の情勢からなかなかできないというようなことをおっしゃったように私は聞いておりますけれども、この辺の外務省と岸さんとの食い違いをどういうふうにお考えになるかを承わりたいと思います。
  71. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 ソ連との間に平和条約を作りますことは、一昨年ああいう共同宣言によって国交も回復したわけでありますから、日本国民だれでも希望しております。私どもとしましては安全操業の問題を取り上げまして、今申しましたような経緯で安全操業交渉をしておりますので、これをまず軌道に乗せていくということが必要だろうと思います。従ってこれはこれで交渉してみる。昨年の六月以来の交渉の経緯に見ましてもこれに終止符を打つにしてもはっきりした形で終止符を打たなければならぬのでありますから、われわれとしては当然十分な交渉をしてみる必要があると思います。通商協定でありますとか安全操業の問題でありますとかあるいは将来文化協定の問題等が積み重なって平和条約ができるというのが今日までの考え方だと思うのでありますけれども、そうでなくソ連側平和条約を早く締結しようというならば、ソ連側としても何か平和条約締結すべき用意を持っておるのかどうか、そこいらも打診してみませんと、今にわかにソ連側がどの程度の平和条約締結の意図をもっておるのかもはっきりしておりません。あるいは前と意見が変ってきておるのかどうかもわかりません。そういう意味におきまして総理の申し上げたことも私の言っておることも食い違いはないと思います。
  72. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうしますと今おっしゃったようなことを勘案して、もう一度ソ連の方に問いただすというふうに了解していいわけでございますね。
  73. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 さようでございます。
  74. 戸叶里子

    ○戸叶委員 それからもう一点、今ソ連との漁業交渉が行き詰まっているようでございますが、それに対して先ほど菊池委員が、交渉を進めるために何か上の方のだれか行くのではないかというような発言があったように思いますけれども、もし藤山外務大臣にそういう話があったらいらっしゃる意思がありますか、どうですか。
  75. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 現在漁業交渉が、これは毎年の例でもありますけれども、非常に困難な状態で進行しておるということ、意見が食い違っておることは申すまでもないのであります。しかしながら、例年の例からみましても、一月十三日に交渉開始いたしまして以来ですから、まだ一カ月ほどでございます。従って今後この交渉がどういうふうに展開していくかわかりません。のみならず門脇大使並びに平塚全権が行っておられますので、これらの方が最善の努力をしておられますから、現状においてまただれかこの状態を打開するために行くという必要はないと思います。しかし非常に問題が起りました場合あるいは行き詰まったような状況が起ってくるようなときには、その妥結の方法を考えなければならない、こえ考えております。
  76. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そのときにいらっしゃるということもお考えになられますか。
  77. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 私はいろいろな機会に申しておりますように気軽にどこにでも出かけて、気軽に交渉してみるつもりでおります。ただそのような時期における国内の状況、議会の状況その他によりまして、また問題の解決の仕方によって、専門的な方に行っていただくのがいいか、あるいは政治的に問題を処理した方がいいか、それらの問題もありますので、私は世界中どこに飛んでいくことにもやぶさかではありませんが、この問題で行くか行かないかはまたそのときの問題であると思います。
  78. 戸叶里子

    ○戸叶委員 もう一つ東南アジア開発基金の問題で私二、三点伺いたいと思うのですが、あれは岸さんが非常に大きな構想を立ててアジアの一つの国として経済外交を進めていくために成功させたいと考えられた、こういう点ではわかるのですけれども、私は結局今の段階では何かうやむやになっているような感じがするのです。それはなぜかと申しますと、岸さんが行かれてアメリカに申し入れをしても一応断わられた形で、そのあとも、おそらく藤山外務大臣がいらっしゃってその引き続きの交渉をされたと思いますけれども、そのときにもきっとあまりいい返事はされなかったように思いますが、いかがでございますか。
  79. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 この問題につきましては総理が各地で提唱をされてきました、それに対する各国の反応がいろいろな形できております。趣旨において賛成であるけれども方法論について意見のある国もございます。われわれとしてはこの提唱が東南アジア経済のために役立つものとして、そういうものを参考にしながらやっておるのであります。アメリカにつきましては、ただいまお話しになりましたように従来の二国間の援助によって相当金も出しておる、あるいは既存のいろいろな計画もあるので最初から非常に乗り気であったとは考えられません。しかしながら、その後われわれもこの問題について十分な説明をいたしております。また最近の事情からいいますと、アメリカの考え方も若干好意的に動いておるようにも感じられるのでありまして、せっかく努力をいたしておる次第であります。
  80. 戸叶里子

    ○戸叶委員 先ほどの菊池委員に対する御答弁で、日本が一応先に提唱したから五十億円だけ組んだのだというお話でございますが、それはこれを基にして東南アジア開発に寄与するための国際機関をお作りになる構想で始められたのですけれども、そういうふうなことを近い機会にやり得る可能性があるとお考えになりますか。
  81. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 まずこういう基金を日本用意いたしまして――もっともこの五十億という基金は多い基金ではないのでありまして、われわれの考えからいえば財政事情さえ許しますればもう少し大きい金額を日本みずからも最初に出すべきである、こう考えておりますが、今日の外貨事情、財政事情等から一応この程度の基金を積んでスタートを切ってみよう、こういうことによりまして、日本の意図もあれし、非常に大きな構想になりますかなりませんかはあれですけれども、とにかく同じような考え方を持っている国とともにこういうものが国際的な基金として成り立ち得るように、今後とも進めて参りたい、こう考えております。
  82. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうしますと、この金額が多いか少いかは別問題としまして、藤山外務大臣としては、そういう同じ志を持った国を集めて、なるべく早い機会に国際機構を作ろうというお考え、で構想を進めておられるわけでございますか。
  83. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 その通りであります。
  84. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうしますと大体どういう国を考えていられるわけでございますか。
  85. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 東南アジアに位置しております国は、当然、全部とは申しかねるかもしれせんが、今日までの経過でもってある程度この趣旨に賛成している国もございますので、それらの方法論等については今後も打ち合せて参らなければなりませんけれども、そういう問題を説明しながら進めて参りたい、また西欧の国でもこの問題に興味を持っておる国もありますので、現実にどういう形でどういうふうにしていくかは今後の問題として考えて参らなければならず、また折衝して参らなければなりませんので、今にわかに申し上げかねますけれども、日本も提唱した以上は、それだけの責任を負って提唱しているのだという形を現わしながら進めて参りますことが、同調を得る国に対しても日本のすべき義務だ、こう思うのであります。そういう意味からこういう基金を計上することにいたしたわけであります。
  86. 戸叶里子

    ○戸叶委員 東南アジアの国々はわかりましたが、それでは、アメリカの世界開発基金などにもある程度依頼をしたいというような考えを、なお続けて持たれますでしょうか、どうでしょうか。
  87. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 公平な立場で公正にこういう機関を運用していこうという国の資金というものは、当然私は入れるべきだと思うのであります。もしこういう機構ができますれば、資金量の多いほど有効に動くこともまた当然なことでありまして、従ってアメリカが資金的醵出をしてくれるならば、私どもは喜んでこういうマルティラテラルな機関には加わるべきだ。ただ世界的な世界銀行とかいろいろな組織もありますわけですから、それと重複するというような考え方を持っている国もありますし、いろいろなので、今にわかにどこがどれだけのものを醵出するという段階にまでは至っておりません。
  88. 戸叶里子

    ○戸叶委員 きのうの新聞によりますと、来日中のフィッツジェラルド米国国際協力局次長が丸ノ内のプレス・クラブで内外記者団と会見して、こういうふうな基金には出資しないというようなことをはっきり言っているわけでございます。そういうふうなところから見ても、そしてまたアメリカが入ってあるいは東南アジアが果して賛成するかどうか、こういったようないろいろな問題を考えてみますと、このための基金を出し合って、基金をプールして何かしようとするその国際機構というものは、なかなか早急にはできないのじゃないかということを私どもは懸念いたします。岸首相が一度上げたアドバルーンだから、何とか一度収拾をつけていかねばならぬじゃないかというような考えでやっていられるようにも考えられるのでございます。  そこで、それはともかくといたしまして、五十億のお金をプールできるまでに、今一体全部使うことができるのですか。それともその一部しか使えないのでしょうか。それからまた、お使いになるとしたら、今のところ一体どういう計画を持っていられるか、これを伺いたい。
  89. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 この基金につきましては、いずれ予算関係その他で説明はされると思いますけれども、今申し上げましたよらな国際的な機関ができますときの出資金に充てるというのが第一の目的。それから、しかしそういう機関が時間的にすぐにできない。その間に、そういう機関ができたらば取り上げられるような二国間もしくは三国間の何かプロジェクトがありまして、将来そういう機関ができたときにも、そういうところに移行さしてもし不自然でないようなプロジェクトがございますれば、そういうものに投資していくという考え方で進んでおります。
  90. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうしますと、今のところは具体的に何も考えておらないということになるわけですか。
  91. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 具体的にプロジェクトそのものを考えてはおりませんけれども、こういう基金ができて参りますれば、従来、東南アジアの各国の事情からしまして、自分たちの経済開発に対してああいうものができたら相当いいのじゃないか。資金不足でできないものもあるというような場合もございます。従ってそういう問題を取り上げていくのに、必ずしもそういうものが絶無だとは私ども考えておりません。ただ今、どこの国のどこの特定のものに出すというところまでこれをきめて、この案を出しているわけではございません。
  92. 戸叶里子

    ○戸叶委員 こういうことは考えられませんか。今技術研修生などで日本に来たい人が東南アジアなどにずいぶんあるわけでありますので、予算がなくてなかなか来られないと、いうような場合に、そういう学生に充てるというようなことは全然考えられないわけですか。
  93. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 大体今お話のようなものは、コロンボ・プラン等で、日本も、十分ではございませんけれども、予算にも若干の増加をして御審議をお願いしているわけで、技術者も日本に来て交流していくというような問題については、そういう問題が取り上げられていくと思います。従いましてこの基金は、主として何か実際の仕事と申しますか、プロジェクトに対する投資というような面に限って使ったらどうか、こう考えております。
  94. 戸叶里子

    ○戸叶委員 もう一つ伺いたいのです。先ごろの新聞に、カンボジアが賠償を放棄したことに対して、日本が十五億円の経済援助を三カ年でやるというようなことが出ていたのですが、このことはもうきめられたのでしょうか。そしていつごろから始められるのでしょうか。
  95. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 十五億円の経済援助をやろうということで、現在カンボジア政府に、どういう点についてカンボジア政府がこれを有効に利用するかという先方側の意思を聞きつつあります。話し合いは現在スムースにある程度のところまで進行しておると思いますが、こまかいことは説明員から……。
  96. 白幡友敬

    ○白幡説明員 具体的なことを申し上げますと、御承知のようにだいぶ前からこの問題があったのでありますが、昨年、岸総理がカンボジアを訪問なさいましたときに、基本的な了解ができたわけでございます。この基本的な了解は、大体日本の円で総額十五億円ということで、これは経済協力という形をとるようになっております。この内容は、カンボジア側でもいろいろ構想が移り変ってきていたのでありますが、終局的には、農業を中心にしたものに使いたい、しかもできれば非常に多目的といいますか、一般的なあそこの農業に役に立つもの、つまり農業センターというような考え方を大体持っているようであります。しかし具体的な構想については向う側から出されておりません。むしろ具体的な構想についても、こちら側からの意見を向うに言ってやりまして、そして何か全国的に役に立つようなものを作っていただいたらいいというので、ただいまは、基本的な協定と、それからそれをどういうふうにして使っていくかという両面から、話し合いを進めております。しかしまだまとまった段階にまで至っておりませんので、なるたけ早くこれをまとめていきたいと考えております。
  97. 戸叶里子

    ○戸叶委員 ことしの予算には全然組まれていないのですか。
  98. 白幡友敬

    ○白幡説明員 十五億円組まれております。
  99. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私の質問はこれで終りますけれども、もう一つ次の質問に移るために伺っておきたいのです。この間の参議院の外務委員会でちょっと問題になったかもしれませんけれども、日本国交が回復しておらない国との間に、経済的な協定なり、あるいは郵便上の協定とか、そういったよらな個々の協定が結ばれましても、その国の承認ということにはならないだろうと思いますが、この点はいかがでございますか。外務大臣に伺いたいと思います。
  100. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 この点につきましては、条約局長から……。
  101. 戸叶里子

    ○戸叶委員 外務大臣のお考えはいかがですか。
  102. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 私は、実は法律論というのは一番苦手なので、すべてしかられておるわけなんですが、私は協定を結びましても、必ずしも承認に進まない、承認と同効力を持たない協定があり得るのではないかと思っておりますけれども、しかし法律論からいろいろ議論されると私はわからなくなるものでございますから、それは差し控えておきます。ただかりに法律論から批准に進まない協定があり得たとしても、現在の段階で必ずしもそういう政府間の協定を結ぶことが適当かどうかということについては、私はあまり適当だとは思わないということを、この間参議院でも申し上げたつもりでおるのでございます。
  103. 戸叶里子

    ○戸叶委員 わかりました。
  104. 床次徳二

    床次委員長 次は高岡大輔君。
  105. 高岡大輔

    ○高岡委員 この委員会で、たびたび大臣に対して同僚諸君から質問があったのでございますけれども、まだ私が了解するところまで参りませんので、補足的といいましょうか、つけ加えた点でお伺いしたいと思います。  その第一点はアジア開発基金なんですが、これはただいまの御説明をいろいろ聞いておりますと、何かまだ政府部内としては最後の決定段階に入っていないようにも聞えるのであります。またきまったようにも聞えるのでありまして、従って私はお伺いをするわけであります。といいますことは、言葉をかえて私が先ほど来の御答弁を総合して聞きますと、アジア経済開発基金というものは、世界銀行のアジア版のような性格も持っておれば、またそういう国際機関というものはなかなか容易でないから、それができるまでの間に二ヵ国ないし三ヵ国の間に話し合いがまとまったものに対しては、その方面にもこの基金を使っていくというような解釈と了解をするわけであります。そこでただいまの戸叶委員の御質問で何かきまったものがないかというお話に対しては、さしあたって今どうこうというものはないというお話でございますが、問題点から一つお伺いして参ります。一つの例を申し上げますと、今のカンボジアのは別ワクで予算が取れていますから、これはただいま政府委員の御答弁によってもある程度了解できます。しかしこの問題はまた非常に今まで紆余曲折を経た問題でありますから、それはしばらくおくとしまして、タイ国との間に話し合いが進んでおるやに聞いております日本の漁師の前線基地とでもいいましょうか、タルタウ島の問題が出ていますが、これは両国の間に話し合いが進んでおるように聞いておりますし、これはあるいはこのままスムーズにいけば三十三年度内に話がつくかと思うのでございますが、そういう場合には五十億の基金というものはお使いになるのかどうか、その点をお伺いします。
  106. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 五十億の基金は、先ほど申し上げましたように、国際的な開発基金というような構想ができましたときにはそこの出資金にする。しかしそういうものができない前でも、そういうような機関が投資し得るようなプロジュクトの問題が起ってきたときには、日本としてあの基金から投資をする。従いまして、タルタウ島の漁港の問題につきましても、この問題は相当そういう性格を帯びたものだと思っておりますので、具体的に話が進行し、なおこれらの国際機関ができますまで内閣に臨時の経済協力審議会もできますので、そこいらに諮問されまして、その決定等によって使用され得る道も開かれるかと思います。
  107. 高岡大輔

    ○高岡委員 そうしますと、新聞等によって報ぜられておりますいわゆる臨時経済協力審議会といいますか、その審議会でいろいろ審議した結論によって使途をきめていく、こう解釈してよろしゅうございますか。
  108. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 臨時審議会では必ずしも一々のプロジェクトそのものの可否というものをきめるとは思いません。しかしこういう種類のものならば適当であろうという大きなワクはきめられると思います。
  109. 高岡大輔

    ○高岡委員 そうしますと、今東南アジアでいろいろと問題になっておりますものを合計しますと、五十億を使い切ってしまうのじゃないかという気がするのであります。今申し上げましたタルタウ島の問題もございますし、そのほかインドにおける技術センターの問題もあるようでありますし、またメコン川開発問題でありますとか、いろいろ列挙して参りますればおそらく五十億では足りないのじゃないかというような感じを受けるのであります。それと、もう一つ私はこの際大臣からこの五十億というものについての性格とでもいいましょうか、今後の進め方についてお話を承わりたいことは、先日インドに対して百八十億の金を援助しようということが出ておりましたが、東南アジアのうちのたった一国に百八十億を出し、残る全部に対して五十億ということになってきますと、他の諸国は、これじゃわれわれは一体何ほどの経済協力をいただけるのだろうかという、ある意味の悲観を感ずるだろうと思う。従いまして先ほど大臣の御答弁にもありましたように、このたびは財政上その他のことで五十億しかないけれども、将来はこれを世界銀行のアジアといったような大きなものにしていくのだ、しかもその際各国がもしも出資に困るような場合には、ある国によっては賠償の金を話し合いの上でその方の投資に振り向けることも考えられるのだといったような、この問題の将来についての一応のお話を大臣から承わることにおいて、国際的にある程度の理解ができるのではないか、かように考えるのでありまして、この点について大臣の御説明を得られれば幸いだと思います。
  110. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 アジア開発基金の構想は、ただいま高岡委員の言われましたように、世界銀行のアジア版あるいは商品金融会社のアジア版、そういういろいろな広範囲の内容を含んだものが岸総理から提唱されておるわけであります。従ってそういう意味において、りっぱにこれが成長し上ることを私どもとしては念願して努力するわけであります。今日の状況はまだそこまで参りません。しかし日本としては、提唱しました以上は独力でもやるというくらいの意気組みで、できるだけ資金を出して、そして各国の協力を得つつやるべきだと思うのであります。お説の通り五十億では足りないことは重々われわれも知っているのでありまして、今後この基金を充実していかなければならず、また引き続いて日本国際機関としての出資金としてももっと多額のものが必要なことはもちろんであります。またそういうものができるまでの、いろいろなアジア経済に対して協力する投資の基金としても、もっと多額に要ることは当然のことであります。今後とも財政事情と見合いながら努力して参るつもりであります。
  111. 高岡大輔

    ○高岡委員 時間がございませんから飛ばして参りますけれども、私が昨年の暮れにアメリカに参りまして、いわゆるアジア開発基金問題についてアメリカの民間側との話し合いをやってみたことがございます。その場合向うの危惧しておりますことは、一体東南アジアにどれだけの仕事があるのか、しかもどの仕事が一体経済的にペイするのだろうか。そういった具体的な問題は、これはアジア諸国にいろいろそういう計画を立ててみろといったところで立ち得ないだろう。そうかといってアメリカがこれを調査したのでは、すぐもう経済進出だというようなことで、親切気をもって調査に行っても、逆に非常な反撃を食う。従って日本がせっかくそういうことを考え、またその点でアジア諸国の了解を求めつつ日本が進むならば、日本が中心という言葉は語弊がございますけれど、日本が心から協力をして一つの開発計画というものを立ててみたらどうか。そういうものが具体的に出てくれば、アメリカとしても十分考えられるんじゃないか。ただ東南アジアのいわゆる低開発地帯は開発しなくちゃいけないとか、生活水準を上げなければならないとかいうようなことは、これは抽象論とはいいながら、わかり切ってはいるけれど、じゃどうするのだというところまではまだ話は進んでいない。そういうところへ一体幾ら出すかと言われたところで、こっちの方としても幾ら出すなんというようなことは言えないんだというような意味のことを言っておったのでありますが、これは必ずしも政府当局が言ったわけではございませんので、こういう点は外務大臣がとくと一つアジア全体の構想というものを、それぞれの国の希望もあり、それぞれの国の自主的な考え方はもちろん尊重しなければならないのでありますけれども、それらの国々の希望を尊重しながらアジア全体の開発計画というものをこの際、先ほどおっしゃいました審議会あたりが十分議を練ってしかるべきじゃないか、こう考えるわけです。果してその審議会というものはそういう性格を持っておるかどうか、一つお伺いします。
  112. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 今の高岡委員のお考えの通り日本もこれに協力します以上は、経済的に、技術的にアジア開発に対する協力の方法なりあるいはアジア特有の発展方法なりというものについて研究もして、アジアの各国に協力していきますと同時に、投融資をいたします西欧諸国に対してもそういう問題の解明をしていくことは必要なことだと思います。さらにそれらにつきまして日本に何らかの大きな調査機関筆を持って材料を収集し、東南アジアの各国の人の参考にもなり、また西欧の入の参考にもなるというような機関を設けたらいいだろうという考え方は持っております。いずれこういうような問題につきましては、今回臨時にできます内閣の経済協力審議会がそういう問題について諮問を受けることになるのじゃないか、こう考えております。
  113. 高岡大輔

    ○高岡委員 それは審議会そのものの仕事ではないかもしれませんけれど、話はちょっと飛躍して、語弊があるかもしれませんが、かつて満鉄が膨大な調査機関を持っておったことがあります。私は少くとも今日の日本は、しかも東南アジアに対して経済協力を進めるというからには、内容は別としまして、規模においてはかっての満鉄が持ったくらいの調査機関というものをこの際作ることが絶対必要ではないかというような考え方を私はするのであります。しかもこの調査機関ができることを前提としますれば、今の五十億というのは、この調査機関の費用くらいにしかすぎないのではないかという感じすら持つのでありますが、そういう点は、これは政府としてはまだそこまで話が進んでいないかしれませんが、財界人でいらっしゃいました外務大臣としてはそれだけの気持がおありかどうか、一つお伺いしたいと思います。
  114. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 総理の提唱されましたアジア開発基金の構想を大きく広めて参りますために、アジア開発基金の構想の中には一つの調査機関の問題が提起されております。従って今お述べになりました満鉄のような機関は、御例示であると思うのでありますが、私は日本が中心になりまして、東南アジアの各国の方々とともに一つのまじめなそういう調査機関みたいなものを持つことも、これはアジア開発基金のあるワン・デパートメントではありますが、一つの構想ではないかと考えております。従って資金的にそういうものが非常に集まらなければ、岸総理の構想の中の一部分であるそういうものを東南アジアの各国のエキスパートが集まってやっていくこともアジア開発基金の構想の出発点としては適当な考え方ではないか、こういうふうに考えております。
  115. 高岡大輔

    ○高岡委員 この問題はいろいろお伺いしたいのでありますけれども、ただ時間の関係で切り上げますが、最後に私は一言お願いしたいことがございます。それは将来この東南アジア開発というものが軌道に乗って進んだといたします。そうしてどこどこのこういう企業をやるんだということになってきますと、残念なことには、日本のあらゆる会社とでもいいましょうか、事業家がわんさと寄ってきまして、ここに醜い姿が生まれるのではないか。ただ単に醜いだけではない。非常に損する姿が生まれてくるのではないかということを懸念するわけであります。現在東南アジアを回ってみましても、どこの町へ行きましても、幾つかの会社の代表が行っていられましてお互いに競争をやっております。大体日本との商売をみなきらうのは、だんだんと注文を取ってみると、日本人はとかく値を次次と下げていくから、先に買っただけ損するからというので、日本との貿易はきらわれるのであります。この東南アジア開発をやっていきます場合に、もしも日本の国内のこの姿をこのまま野放しにしておきますと、鉄屋さんは鉄屋さんで競争する、セメントはセメント屋さんで競争するということで、その点が非常に混乱してくるのではないか。従って醜い姿でもあると同時に、日本はむだな損をする。そこへいきますと、先日私は話を聞いて非常に感心したのでありますが、さすがドイツは、例のエジプトのアスワン・ハイ・ダムの問題にしましても、国内のこれに関係するあらゆる会社を全部一まとめにしまして、一つになってアスワン・ハイ・ダムの開発に進出しようとしている。従ってドイツ国内には何らの競争がない。しかも全企業が打って一丸となってそれに当ろうとしている。従って調査に至っても実に緻密であり、膨大な調査が行われているということを聞いたわけでありますが、私は今後の東南アジア開発というものは非常な大規模な開発が今後数十年、あるいは下手をすれば一世紀、二世紀にわたっての仕事が今後続いていくだろう。その際に日本の今日の経済界というものをそのままに放任しておくということは、日本の混乱があるのみだと私は深く憂えるのでありますが、この点は外務省の仕事ではございませんけれども、外務大臣はむしろこの方の大権威者であり、大実力者でいらっしゃいますので、ここで外務大臣でなく、岸内閣の国務大臣としてこの問題についての御識見を一つお聞かせ願いたいと思います。
  116. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 東南アジアばかりでなく、経済外交を推進して参ります上において、相手国の利益と経済発展のために貢献していく、これが経済外交の基本的な線でなければならぬと思うのであります。日本のメーカー、商社の目前の利益だけを追求するのでは、今後の日本経済外交のあり方としては、欠陥があると思うのであります。従って経済協力をしていきます各国の民生の向上というものを基幹として、われわれ問題を考えなければならぬと思いますが、そういうことから考えますと、今後、東南アジアをとりますれば、東南アジアの経済を撹乱しないで、ほんとうに東南アジアが政治的独立の裏打ちを持つにふさわしい、民生の向上をするような方向に進めて参らなければならぬと思うのであります。そういう意味において、日本の産業界、金融界が反省をすべきところは多々あると思うのでありまして、私どもとしましては、その経済外交の信念からしまして、国内商工金融行政を担当しておられます通産大臣なり大蔵大臣に時々意見を申し上げまして、完璧を期して参りたい、こう考えております。
  117. 高岡大輔

    ○高岡委員 ただいま拝聴したのでありますが、国全体から見ますれば、貿易会社というものの数はほとんどずっと横ばいでありましょうが、その中身を見ますと、きのうできたのがきょうはつぶれ、またあすは一つできるといったようなことで、非常に醜い姿だろうと私は思うのであります。従いまして、私は決してかっての三井、三菱という意味ではございませんけれども、貿易会社も海外貿易に関する限りは、もう個々の自由貿易ではないと私は思うのです。今後はある意味の国家間の貿易であり、バーター貿易に近いような姿が相当続くのではないかというようなことを考えますと、ぜひこの際通産省並びに大蔵省あるいは経済企画庁あたりに、もっと政府としてはっきりした、これは統制という言葉を値いますとまた差しさわりがありましょうけれども、私はそこに本腰を入れて、東南アジア開発という大事の前にはよほど覚悟をなすっていただかなければ、この大事業は決して成功するものではないという感じがしますので、せいぜいこうした面につきましては、一つ大臣を初めとして岸内閣閣僚の皆さんに切望してやまない次第であります。これは、さらにこまかいことを言いますれば、規格の統制も要りますし、もっと進めば商標の統制まで入らなくちゃいけないのじゃないかというような気が私はするのであります。そうしたこまかいことはあえて本日は申し上げませんけれども、かつての財界人の最高指導者でありました大臣に、この点は一つ十分お考えを願いたいと思うのであります。  あと一点だけ申し上げますが、先ほど来沖縄問題について、予算委員会でもそうでありますし、それから当委員会においてもいろいろ論議されたのでありますが、これは私は外務省としてこのようにお願いができないかという気がします。それは、沖縄問題は問題点をしぼって参りますと、一括払いに対する反対というのが沖縄における一つの大きな運動であります。もう一つは賃借料を適正にやってもらいたいということと、それからもう一つは講和発効前の補償問題という三つにしぼられます。さらに他の沖縄問題を拾って参りますれば、移民問題と産業振興の問題であります。教育問題等もこの国会でいろいろ論じられたのでありますけれども、御承知のようにこれは去年の暮れだと思うのでありますが、日本内地の教育基本法を初め、いわゆる教育に関する法律そのままが沖縄の立法院議会において決議され、それをそのままムーア高等弁務官が承認しましたので、いろいろと教育権の一部返還などという問題も出たことはございますけれども、現在では日本国内の教育法は完全にそのまま沖縄に施行せられておりますので、その問題は今のところは一応なくなった、そう思っております。これらの問題をずっと見ますと、結局一括払いという問題が一番大きな問題であります。私がニューヨーク・タイムスの極東担当の論説委員と話し合いましたときも、三千マイルの沖合いでアメリカが行政をやっているなどということはナンセンスだ、沖縄をアメリカの基地にするのではなくて、沖縄にもアメリカの基地を置くべきだ、こういう形にしなくてはいけないということを、論説委員は私に言ったのであります。これをもう一度私は繰り返して確認したのでありますけれども、それは平和条約第三条の暫定的なものに終止符を打とうとする考え方だと解釈してよろしいかと言ったら、その通りだと言っておりますし、また今の言葉によりますと、沖縄の一角に日本との間の話し合いによって軍事基地を設けて、他は全部その施政権を日本に即時返還すべきだという意見とも解釈したのであります。そういう点から見まして、あるいはアメリカ全体の世論からしますればただ一部の議論かもしれませんけれども、この小さな声をだんだん大きくしていきまして、やがてこれをアメリカ全体の世論にまで持ち上げていかなくてはいけない、こういうことがすなわち日本の外交でなくてはいけない、私はかように考えるのであります。さらに私はこの問題を話し合いましたときに、私はアメリカのことを知らないものですから、初めはアメリカ国会の軍事委員会ないしは外交委員会でこういう問題が論議されるのだろうと思って参りました。ところがこういう問題はアメリカとしましては国内問題だとして、アメリカ国会の司法委員会でこれを取り上げるのだという話でございます。しかもただいま申し上げました軍用として不用の土地を一刻も早く返してくれということは、大臣も御承知のようにプライスの報告文に書いてありますが。それでは一体どこが不用であり、どこが一体入用だかということをだれがきめるのかという話し合いもあったのであります。従いまして先ほど戸叶委員からお話がありましたけれども、この際私は一つの形としましては、両国のジョイント・コミッティによって沖縄というものと真剣に取り組んで考えたらどうか、もしもこれがめんどうであるならば、アメリカとしてはあまりにも沖縄を知っておりません。従ってこれをほんとうにアメリカの政治面から沖縄問題というものを実地に調査するなり何かしまして、そうして沖縄問題というもののいわゆる終局の結論をこの際出すべきではないか、一括払いに対しても一つの考え方を私はきめなくてはいけないのではないかというような感じすら持っておるのでありますが、問題は一括払いという問題であります。従いましてこの一括払いにつきましては、昨年一月四日に今ペンタゴンの参謀次長になっておりますレムニッツアーは、所有権はとるのではないということを声明しておりますけれども、なおかつこの問題は沖縄の方々としては承認できない内容でありますので、この折衝といいましょうか、平和条約第三条の問題に触れてみますときに、私は外務大臣としてこのアメリカが言っております一括払いの趣旨というものに対して、どうお考えになっていらっしゃるのかという点が、先ほども話のありました小笠原問題にも私は関連してくるだろうと思うのですが、この点を一点だけお伺いしたいと思います。一括払いに対してどういうお考えであるかという点です。
  118. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 私としましては沖縄の方々が一括払いを希望しておらぬということも知っております。また一括払いというものが土地の取り上げにつながっているというような予想を持たれるということも、レムニッツアー書簡によって取り上げられるという心配を持たれることも、ある程度当然だと思うのであります。従いましてこの問題は、やはり金を一括して払うのか、分括して払うのかというだけの単純な問題ではなく理解しておるつもりであります。
  119. 床次徳二

    床次委員長 松本七郎君。
  120. 松本七郎

    松本(七)委員 最初に日ソ関係についてお伺いしたいと思います。日ソ関係は、平和条約の問題はいろいろまだ議論があるところでございますけれども、とにかく通商協定もできるし、それからそれに関連して航路に間する話し合いも進んでおるし、だんだんに推進しつつあることは非常に喜ばしいことだと思うのでありますが、この前の松本俊一委員の質問に対する御答弁でも、文化協定もなるべくすみやかにやりたいという御意向のようでありました。これは私ども社会党の代表がモスクワに去年行きましたときも、ソ連の外務省も非常に文化協定を希望しておったようであります。外務省ばかりではない、文化省においても非常にこれに期待しておる向きが多いようでございます。もう一つは、航路協定と関連することですけれども、航空協定の問題、これもソビエト側としては非常に大きな関心を持って、すでに御承知のようにアメリカとの間にもあのような協定ができておるような状態ですから、私どもに対しては相当具体的に航空協定に対する基本的な構想というものを文書にしてまで出したくらいです。それで私どももその当時正式に日本に対してそういう意思表示は今まであったのかと聞いたところが、それはない、しかしやがてそれはしたい、そういう話だったのです。その後当然、私どもが行ったときの観測では、正式に何らか日本政府に言ってくる時期じゃないかと思うのですが、何か言ってきておるのでございましょうか。
  121. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 まだ正式には何も言ってきておりません。
  122. 松本七郎

    松本(七)委員 政府に対して、たとえば外務省の担当はどこですか、欧亜局ですか、欧亜局なんかにも何も言ってきておりませんか。
  123. 金山政英

    金山政府委員 まだ何とも言って参っておりません。
  124. 松本七郎

    松本(七)委員 私の知る範囲では何か本年に入って意思表示があったように聞いたのですが、そうじゃないのですか。航空協定に関する意思表示です。
  125. 金山政英

    金山政府委員 まだ私のところにはそういうものは届いておりません。
  126. 松本七郎

    松本(七)委員 日本側としてはどういうものでやるか、検討は進められておるのですか。
  127. 金山政英

    金山政府委員 まだどういう内容のものであるか判明いたしませんので、検討する段階に至っていないと思います。
  128. 松本七郎

    松本(七)委員 それは私の知る範囲では、すでに外務省に対してはソビエトの意向は伝達してあるのじゃないかと思うのです。もし局長御存じないとあれば――おそらくあなたの局が担当窓口だろうと思うのですが、至急調べていただいて、来ておらないのかどうか、もう一度返事していただきたいと思います。
  129. 金山政英

    金山政府委員 さっそく調べて御返事をいたします。
  130. 松本七郎

    松本(七)委員 もしまだ来ておらないとすれば、おそらく近く何らかの意思表示はあるだろう。というのは、私ども野党に対してさえ、相当具体的な向うの基本的方針というものを示したのです。ですからそういう動きを見ても、当然ある程度の申し入れというか、希望表明というものはあると思うのです。もし近くあれば、さっそくそのときに内容も発表していただきたい。私はすでに来ているはずだと私どもの情報で億考えられますので、もう一度さっそく調べていただきたい。
  131. 金山政英

    金山政府委員 先般社会党の議員団がモスクワに行かれましたときに、そういう提案があったということは承知しておりますので、その範囲においてどういう構想であるかということも、一応承知しております。しかしそれは公式の申し出ではありませんので……。
  132. 松本七郎

    松本(七)委員 それは私どもも駐モスクワの日本大使館にその内容はお話ししましたから、当然日本大使館から、私の持っておるのと同じものが報告が来ておると思うのです。けれどもそれは正式のものではないのですからいいですが、それ以外にその後たしか来ておるはずです。ですからその点を調べていただきたいと思うのです。非公式ながら門脇さんから報告されたという私どもに伝えられたそのソ連側の意向というものに対しては、外務大臣としてはどう考えておられますか。つまりあのようなソ連側はハバロフスクまで、日本東京または――初めは重光外務大臣のあの話し合いのときにちょっとたしか出たことがあると思いますが、そのころは東京を固執しておったようです。けれどもその後ソ連側東京を必ずしも固執しないで、ソ連側東京または他の日本領域内の地点へと変更してきておるわけですが、一応日本側としては東京または、その他の地点、ソ連側としては、ハバロフスクということですみやかに航空協定を結ぶことが、通商協定もできればなおさらのこと、やはり日本にとっては必要ではないかと思いますが、これに対しする大臣の考え方をこの際伺っておきたい。
  133. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 ただいま申し上げましたように正式のあれが来ておりませんが、航空協定は必ずしも他の協定と急いでやるという気持はないのですから、まだ十分研究しておりませんので、必ずしも適当なお答えができるとは思いません。ただ航空協定をやる場合に、日本がハバロフスクまででいいかどうかということには相当の問題があると思います。そういう問題については今後よほど研究してみないと今にわかにお答えはできないと思います。
  134. 松本七郎

    松本(七)委員 大臣はソ連側から私どもに渡された内容は御存じですか。
  135. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 正確な情報としては、書類としては承わっておりません。
  136. 松本七郎

    松本(七)委員 門脇大使から報告された文書はごらんになっておらないのですか。
  137. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 門脇大使からの一応の報告は受けております。しかし……。
  138. 松本七郎

    松本(七)委員 それはどういう程度の内容ですか。
  139. 金山政英

    金山政府委員 門脇大使からの報告の内容は一応大臣に御報告してありますが、詳細な点に関しましては、まだ大臣の御検討を願う段階に達していないと思いますので、私限りで研究しておる次第であります。
  140. 松本七郎

    松本(七)委員 そうするとどの程度のところまで大臣に報告してあるのですか。概略と言われるけれども、その報告された内容をちょっと言って下さい。
  141. 金山政英

    金山政府委員 社会党議員団があそこに参られましたについて、航空協定のみならず他のいろいろなお話を門脇大使に話された、その内容が外務大臣のところに報告が参っておる次第であります。この航空協定の問題に関しましては、従来から非公式ではありますが、この地が的な町から日本の首都べということはたびたび言ってきておるのでありまして、内容的にはそれとさしたる相違がない問題であります、今回のソ連側の社会党議員団に示した内容というものは……。その段階において、まだ詳細に大臣に御検討願って御決裁を得る段階に達していないと判断いたしましたので、ただその点だけを申し上げた次第であります。
  142. 松本七郎

    松本(七)委員 その点だけというと、社会党代表団にソ連側がそういう意向を表明したということだけを言われて、内容には触れていないということですか。
  143. 金山政英

    金山政府委員 内容はまだ大臣に御報告してありません。
  144. 松本七郎

    松本(七)委員 そのソ連側の私どもに出した文書は、ただ意向表明じゃないのですね、文書で来ておるのです。しかもそれはソ連日本間直接航空連絡設定の基礎、こういうふうにして項目を八つに分けて相当具体的にこまかいものです。それを私どもも、やはりこれは重要な問題ですから、門脇大使のところにはその内容をそのまま御報告したわけです。それをおそらく言ってきたんだろうと思います。それを一応検討する段階にないかどうか、それは大臣が判断することであって、それを局長、あなた自身がまだ報告する段階じゃないからといって、その内容も示さないで置いておくということは果して妥当かどうか、これは大臣の御意向を一つ伺っておきます。
  145. 金山政英

    金山政府委員 私といたしましては、すでに社会党の議員団が行かれたあと、正式にソ連政府から日本政府に対して通告のあるものと考えていた次第であります。
  146. 松本七郎

    松本(七)委員 大臣はどうですか。今までこんなに長い間――もうずいぶんだっておりますよ。おそらく門脇大使から言ってきたのは、昨年の十一月終りごろだろうと思います。
  147. 金山政英

    金山政府委員 そうです。
  148. 松本七郎

    松本(七)委員 そうでしょう。今までそういうことを来るだろうからというので放置しておくことは妥当かどうか、大臣の御意向を承わっておきます。
  149. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 今金山局長のところへそういう報告があったということであります。従いましてどの程度の内容が来ておるか私は存じておりませんが、しかしそういう問題について、局長の判断によってできるだけすみやかに私のところに内容を申すべきが適当だと思います。
  150. 松本七郎

    松本(七)委員 それじゃさっそく――おそらくもう正式な意思表示も遠くないと思うのです。ですから同じものかどうかわかりませんけれども、あの当時ソ連が考えておったことは日ソ交渉のころとはまた多少違っておるところもあるでしょうし、やはりその経過は知っておかなければならないと思う。ですからすみやかに検討していただきたいのですが、いかがですか。
  151. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 検討いたします。
  152. 松本七郎

    松本(七)委員 金山さん、あなたにもしもその詳細の全部が来ておらないようでしたら、私の方のをもちろんお回しいたします。
  153. 金山政英

    金山政府委員 航空協定に関しましては、ソ連のみならず各国との間に締結の運びになっておりまして、そういう個々の具体的、技術的な問題に関して一々外務大臣の御決裁を従来得ておりません。その交渉が成立いたしました暁において、あるいはその交渉の経緯を御報告するとかいうことはございますが、ソビエトとの間の問題だけを取り上げて違った進め方をする必要があるかどうか疑問だと思います。
  154. 松本七郎

    松本(七)委員 そうすると今まで放置しておったのは当りまえであって、見せる必要はないというのですか。
  155. 金山政英

    金山政府委員 まだ私のところで研究しておるべきものであって、正式の申し入れがあって初めて大臣の御決裁を得るべきものであると考えております。
  156. 松本七郎

    松本(七)委員 それじゃわれわれ、たとえば野党がそういうものをもらって、それが新聞で報道されたというなら別ですよ。けれども重要な問題と考えたればこそ、正式の大使にこれをわれわれは報告したわけですね。大使としてもこれは重要問題だと考えたればこそ、われわれの会談について特にこれはどういう内容かということを知ろうとされた。それはもう一つあります。安全操業の問題、これは先ほども御答弁があったように、当時日本政府回答を促している最中だった、それであるいはわれわれに何か話があるのではないかということで、その会談内容については逐次報告してくれということで、私どもはなるべく詳細に御報告したわけであります。そういう問題について大使が必要と認められたから、それを今度本省に報告されたんでしょう。それを局長自身が検討して、航空協定の話が具体的に正式に取り上げられるまで大臣に報告する必要がないという考え方は、どうしてもわれわれに解せない。そんならわれわれも、全然その正式な話がないから、野党であるわれわれにこられた話だから、大使にも何も報告する義務がないということになる。大使の考え方とあなたちょうど逆のような感じがする、どうですか。
  157. 金山政英

    金山政府委員 社会党の議員団であるから大臣に報告しなかったというような事実は全然ございません。ほかのソースを通じましても、政府を通じた正式な提案があった場合、その重要性に応じて大臣に御報告いたしております。
  158. 松本七郎

    松本(七)委員 この問題ばかりあまり時間をとっても何ですから、大臣に一点伺っておきたいのですが、こういう問題についてやはりいろいろな動きですね、ちゃんと正式に政府から政府に窓口に来て初めて知ってああそうかということじゃいつも手おくれだ。やはり動きをいつもつかまえておかなければならない。そういう観点からしても、こういう問題は事前にやはり実情を聴取することが大臣として必要じゃないかと思いますが、いかがでしょう。
  159. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 お説の通りだと思うのであります。航空協定については、航路延長その他の問題もあるわけでありまして、そういう点は従来の航空協定にプラスされるところでありますから、原局においてできるだけ慎重に調査した上でその結論を答申されてしかるべきだと思います。ただ新しく航空協定を結ぶか結ばないかというような問題になりますと、これは政策的な大きな問題となりますので、できるだけ早い時期に報告されてしかるべきだと思います。たまたまちょうどその時分に私がかぜをひいて寝ておりましたから、あるいは局長にその意思があったと思いますけれども、その時期を失したのではないかと思います。今後そういう点について注意をいたすことにいたします。
  160. 松本七郎

    松本(七)委員 それから次は日米関係ですが、特に安全保障委員会の運営についてこの前発表された三つの原則、一つは在日米軍の配備及び使用についてでき得る限り協議する、それから第二は、安全保障条約に基く一切の措置が国連憲章に適合するよう確認するため協議する、それから第三は、安全保障の分野両国民の必要と願望に適合すべく調節する、この三つは今も間違いない基本方針であると確認してよろしゅうございますか。
  161. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 その通りであります。
  162. 松本七郎

    松本(七)委員 そうするとこれの前提になっておる考え方は、日米両国間の共同防衛ということだと理解してよろしゅうございますか。
  163. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 安保条約を中心にして検討するわけでありますから、そうだと思います。
  164. 松本七郎

    松本(七)委員 それは共同防衛ですか、はっきり答弁して下さい。
  165. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 ただいま申し上げましたように、安保条約は共同防衛の関係説明しておりますので……。
  166. 松本七郎

    松本(七)委員 安保条約が共同防衛の概念に一致するというのは、どこの条文でそういうことを言うのですか。
  167. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 日本が侵略されたとき、あるいは日本事態の混乱というものをあれするのですから、共同防衛という言葉はあげてありませんが、日本の防衛に関する諸問題を討議するのだろうと思います。
  168. 松本七郎

    松本(七)委員 その建前から、それでは基本方針である日米の協調が具体的に今後どういうふうになるかという点について、実はいろいろな問題があると思うのです。この前、ちょうど大臣が臨時国会のときお休みでしたから、これは直接大臣にはお伺いすることができなかったのですけれども、新しくICBMがソ連で成功してから、アメリカの戦略体制というものも非常に内容が変ってきていると思う。そういうときに、日本が共同防衛の立場から、特に日米の協調をどう具体的にやっていくかということが、これから非常に大きな問題になるだろうと思うのです。  そこで一つの問題になるのは、「外交青書」にも、「わが方の自主的立場を強化するとともに実効的な協力体制を確立し、将来安保条約改正を含む新情勢に適応すべき体制に移行することを目途とする」、こういうふうに政府方針が明示してあるわけですが、これが果して日米安保委員会でどのように今まで取り上げられてこられたか。十二月の第四回会合でサイドワインダーの問題が出たわけですが、ちょうどヨーロッパではNATOの会議その他が開かれて、そういうときに、今言う安全保障条約の改訂問題が具体的にいつどういう議題として取り上げられたか、経過を御説明願いたい。
  169. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 安保委員会の運営につきましては、御承知のように、ハイ・レベルにおいて問題を話し合うということ、配備及び使用等についても話し合いますが、同時に、三の、日米両国関係を、両国国民の必要及び願望に適合するように話し合っていこうということで会合を進めておるわけであります。従って安保条約に伴って起ります諸般の問題、また安保条約を将来どう改善したらいいかという問題についての検討をやはり並行していたしていくわけでありまして、配備及び使用について、アメリカ軍の撤退その他がありましたので、相当重要な問題として取り上げられてはきておりますけれども、そういう問題だけをこの委員会で論議しているわけではございません。
  170. 松本七郎

    松本(七)委員 この不平等条約改正の問題は、どういう議題となって具体的に出てきたかということです。いつ論議されたのですか。
  171. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 この委員会というものは、必ず議事規則を作り、議題を明示し、そうして審議を進めていくという種類の委員会ではないのでありまして、お互いに問題を出し合いながら話をしていく、こういう委員会として運営をしております。
  172. 松本七郎

    松本(七)委員 やり方のいかんを問うているのではなくて――それじゃ、内容的に、安保条約改訂の問題は、いつどういうふうな話し合いになったのかということです。
  173. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 会合の内容を、一々事こまかく申し上げるわけには参らないのでありますけれども、今申し上げたような点を話し合いをいたしております。むろん配備及び使用等についても話し合いをしております。
  174. 松本七郎

    松本(七)委員 会合のあった回数をずっとあれしてみると、逆にあげれば昨年の十二月の第四回会合のときはいわゆるサイドワインダーの話が出ている。それから第三回その他は、大体アメリカが核戦略体制に軍事的方針を切りかえた、それに伴う在日米軍の撤退、そういう問題が主になっているわけですね。そうすると、安保条約の改正を意図して安全保障委員会を運営していくんだという岸さんの最初の日米共同声明、それから、掃ってこられて、こういう新しい委員会を作って、ここで正式に安保条約の改正はやれなくても、この委員会でだんだん運営もよくしていくのだ、そうして将来この改正に向っていくんだ、こういうことを言われたのと、実際はこの委員会の性格というものが違っておったという不安を国民に与えつつあるわけです。それで私は聞いておるのでありますけれども、これは共同防衛という立場に立っておる限りは、どうしても軍事的な面についてもいろいろ話し合う機関というものが必然に出てくると思うのです。これは過去における同盟関係を見れば明らかなんです。日独伊三国同盟でも必ず参謀本部と参謀本部との間の軍事機関というものができたわけですから、だから日米が共同防衛の体制に立っておる限りは、何らかの形で軍事的な話し合いをする軍事機関というものが私は必要だろうと思うのです。ですからアメリカ側から言ってみても、そういう体制にいる限りは日本との間に軍事的な話し合いの機関を設けようというのは理の当然だと思う。ただ問題は、安全保障委員会は、岸さんはこれは軍事的な話し合いをするのではないのだ、安全保障条約の運営をよくし、将来これを改正するためにこれを使うのだ、こういうことを国民の前にはっきりされておるわけなんです。それが今までの一回、二回、三回、四回の会合の内容――大臣は詳しくはおっしゃらないけれども、大体新聞に報道したところ、あるいはその他によれば、安保条約の改正問題というようなことよりも、この軍事機関にこれがなりつつあるのじゃないかというような不安を国民の間に与えておる。少くとも新聞に載っておる範囲で見る限りはそうなんですね。ですから、いやそうじゃないのだ、あくまでもこれは安保条約改訂を中心にここで話し合うのだ、こう言われれば、やはり国民がああそうか、と納得できるような、今までの運営はこうやってきた、こういう議題もやっているということをある程度明らかにしてもらわなければ、国民の不安というものは私は解消しないと思う。そういう意味で聞いておる。
  175. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 総理が言われましたこの委員会を作る目的通り目的を持って、私としてはこの委員会を運営しておるつもりでおります。従いましてこの委員会においてそういう問題が論議されることは当然なことであり、また論議しなければならぬと思っております。ただ一々の会合について、私はどこの何の会合でどういうことが言われたかというようなことは申し上げかねると思います。
  176. 松本七郎

    松本(七)委員 それでは伺いますが、私どもはアメリカの戦略体制というものがどうしてもこれからはミサイル基地を強化するということが一つと、それから核ミサイル基地を強化して、ソ連の攻撃を分散させようということをペンタゴンでははっきり出しておるわけです。そういうことが一つと、それから原子力潜水艦でICBMに対抗しようという行き方、それから航空機に絶えず原水爆を搭載してヨーロッパ、アジアその他を航行させようということ、こういうことはもうアメリカの国防省のいろいろな意見にもはっきり出てきておる。ですからこの三つが私はおそらくこれからの基本になっていくのではないかと思う。そういうアメリカの動きを見ると、この日米安全保障委員会のこれからの行き方というものを、やはり国民が非常に心配するのは無理がないと思う。ですからもう一つ聞いておきたいのは、ちょうど大臣お休みのときに私は総理大臣に聞いたのですが、この日米共同宣言を作るときの交渉過程で、今「在日米軍の配備と使用」ということになっておりますけれども、このアメリカ軍の装備の強化、これはあのときの話し合いでいえばむしろ安全保障委員会での話し合いの対象にはならないように私どもは解釈していた、むしろアメリカはそういう意図でこれを作ったと思う。ところがきのうからの予算委員会なんかの答弁では、岸さん一人で、配備も装備も同じだというような、あたかもそういう趣旨の答弁をされておる、装備についても当然安全保障委員会で、話し合いがなされるというような答弁をされておるのですけれども、今までのあのワシントンにおける話し合いの経過から言うと、つまりアメリカ軍の装備を強化するについては、必ずしも日米安全保障委員会では協議の対象にしなくてもいいというふうにアメリカは解釈しているのじゃないか、この点をはっきりと協議の対象にするとアメリカも理解しておることを、外務大臣はどのような根拠で確認されたか、この点を伺いたい。
  177. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 総理が言われましたように、日本における配備及び使用について、配備の中には当然装備が入っているだろうということは、総理も言われた通りであります。従ってこの話し合いの精神によって、安保委員会におきましてもそういう問題が協議され、持ち出され得ると考えております。
  178. 松本七郎

    松本(七)委員 総理はそういうふうに解釈していても、はっきり装備というものを入れてなぜ悪いかという問題が一つあるわけですね。もし国民全体が総理が勝手に配備の中には装備も含まっているというような考え方をしていたのではどうしても不安だ。やはり装備も含めて、日本にいるアメリカ軍の装備を強化する場合には、必ず日本政府の承諾を得てからでなければならない、こういう文書の取りかわしでもしておいてもらいたいというふうな気分が国民に強くなってきた場合には、政府に一つ努力して新たにそういう取りきめをされる御意思はございませんか。
  179. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 現在われわれは両者の善意をもって岸・アイゼンハワー共同声明の趣旨から、配備及び使用についてということで事足りるということは総理も言われている通りであります。われわれもその線に沿って仕事をしておるわけであります。ただお話のように、それほどあってもやはりそれだけでは字句が足りないのじゃないかという非常に不信の点があるということになりますと、アメリカと日本との関係をそこまで不信に見ていいかどうかという問題もございますが、そういうようなことになってくれば、根本的に日米間のよき関係が必ずしもスムーズに打ち立てられないという場合であろうかと思うのであります。しかし将来の問題として――そういう事態が起らぬことを私どもは確信しておりますけれども、起るような場合がありましたら、あるいはお説のようなこともわれわれは考えていかなければならぬと思います。
  180. 松本七郎

    松本(七)委員 もう一つは同じときに総理大臣が答弁された中に、これは私の質問に対して答弁されたのですが、つまり日本語で言えば、日本におけるアメリカ軍の行動もアメリカ軍の日本における行動もほとんど同じに聞えても、英文ですれば明らかに違うわけですね。岸さんとしてはアメリカへ行かれたときに、日本にいるアメリカ軍の行動全体を、たとえば日本にいるアメリカ軍が外に出るというような場合にも日本政府の承諾を得てからやってもらうという取りきめをはっきりしたがったわけなんです。ところがこれをわざわざダレスの意見で修正されて、アメリカ軍の日本における行動に限定したわけです。だからこの点について私はこの間の臨時国会で岸さんに、それではアメリカ軍の日本における行動だけは話し合いの対象にするけれども、日本にいるアメリカ軍が外に出て行動する場合はこれは話し合いの対象にはならないのか、こう聞きましたら、総理大臣はそれはならないのだ、こうお答えになった。それに間違いないかどうか、外務大臣からはっきりしてもらいたい。
  181. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 私は当時のいきさつは直接関与しておりませんから存じませんけれども、岸総理の解釈通りだと考えております。
  182. 松本七郎

    松本(七)委員 そうすると、非常に危険なことになるのじゃないですか、日本にいるアメリカ軍が何か事あって出動するのに日本政府は全然関与できない、こういうことでいいのですか。
  183. 高橋通敏

    ○高橋政府委員 字句の点につきましてちょっと補足させていただきたいと思いますが、今の協議という点は、まさしく協議という言葉がございますけれども、協議ということを含めて安保条約に関して生ずる問題を検討するために、政府間の委員会設置するとございますので、やはりそのようなことは安保条約に関して生ずる問題であることは確かであろうと思います。その面で検討の対象にはなるだろうと思っております。
  184. 松本七郎

    松本(七)委員 おかしいじゃないですか。それでは条約局長は協議の対象になるというのですか。
  185. 高橋通敏

    ○高橋政府委員 協議の対象は、ここにありますように合衆国軍隊の日本における配備及び使用について協議することを含み、安保条約に関して生ずる諸問題を検討するために委員会設置すると書いてあるわけであります。そこでまず第一にそういう問題で協議することは当然であります。協議することに入らない部面がありましても、安保条約に関して生ずる問題は私は一つの検討の対象にはなるかと思います。そういう意味でございます。
  186. 松本七郎

    松本(七)委員 安保条約に関連して生ずる問題として検討の対象になる、こういう法律解釈のようですが、それは検討の対象にはなるつが、たとえば日本にいるアメリカ軍がどこかへ出動したい、検討の対象にされる、安保委員会で。日本政府としてはそれは困るという意見が出た場合に、日本政府の意思はアメリカ側を規制することはできない、必ずしもその共同声明からは規制力は直ちには生じない、こういうことになると思うのですが、この点はいかがです。
  187. 高橋通敏

    ○高橋政府委員 それはこの文字通り解しますと、具体的の場合もございますし、それから一般的の場合もございますが、規制するとかしないとか、そういう問題も含めましてやはり検討ということになるのじゃないかと思います。
  188. 松本七郎

    松本(七)委員 大臣にお伺いしますが、大臣は法律論は非常に苦手だと言われるけれども、今お聞きのようにこれは法律論の問題ではないですよ。法律的にああだこうだといろいろ解釈できるほど複雑な表現、またあいまいな表現なんです。一番われわれが大事なのは、日本にいるアメリカ軍が外に出動するような場合に、果して日本政府に御意見を聞いて日本政府がよろしいと言ってからでなければ出ないかどうかということなんです。どれだけそういう点をアメリカはほんとうに日本の立場になって真剣に考えてくれるか、この点なんです。ですからもし多少でも法律論その他でしろうと外務大臣にもどうもわかりにくい――法律論はなかなかわかりにくいですよ。しかしいやしくも外務大臣をやっている以上は大事なつぼどころは押えて、そしてこうした解釈で押していくのだということがなければならない。それすらもなかなかむずかしいような微妙なそういう表現をやっている場合には、これをもっとすっきりしたものに変えるとか、あるいは足りないところを首脳会談をやって、そしていざ動くときには日本政府と協議して日本政府承認を受けなければならぬというふうに、もう一札ここへとるというくらいのやり方を私はする必要があると思うのですが、この点に対する大臣のお考えを伺っておきたいと思います。
  189. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 岸総理が言われましたように、日米の間の相互理解というものは、決して今のような法理論一片だけで規定するものでなくて、もっと友好親善な関係が生まれておる、相互理解が生まれておる、そういう立場からまた共同声明もなされたことであり、岸・アイゼンハワー会談後の日米の新時代が生まれてきた、こう考えるわけでありまして、従いまして、お説のような心配が起り得ることは、相互理解が高まっておればないというのが、おそらく総理の御見解だと思います。私どもとしましても、むろんそういう点で日米相互理解によって、これが単純な法律論以外に、ほんとうにしっくりした運営をされることを念願としてやっておるわけでございます。ただお話のように、両国民の願望に沿って、安保条約を将来検討するということの一つの材料としては、やはりそういう問題は考えていかなければならぬ問題であると私どもとしては考えております。
  190. 松本七郎

    松本(七)委員 時間がありませんからこれでやめますけれども、今の御答弁を聞いておると、非常に何というか、あいまいというか、日本国民の心配しておるところ、ほんとうに心配するというあれが出てこない。これは日本国民だけじゃないと思うのです。これから藤山さんが東南アジアその他と経済協力もしようと言われる。そういうふうに、日本経済をどうしてもそっちの方へ向わさなければならなくなると思うのですけれども、それをやるには、アジア各国民日本に対する信頼ということが一番大事です。この点がアジア国民の信頼を得るか得ないか、こういうところにかかってきておるのです。アメリカと日本との関係がどういうふうになってくるのか、アメリカの今の戦略体制にただ無条件に日本が巻き込まれるのじゃないのだというところをはっきり打ち出すことを、アジアの諸国民は非常に注目して待っておるのです。これができるか、できないかで、私はアジア諸国と日本がほんとうに提携できるかどうか分れてくると思う。そういう大事な岐路に立っておるので、私はこの問題を取り上げておるのでありますが、今の御答弁を聞くと、はなはだどうも心もとない。しかし今後ともおそらくそういうことをもっと真剣に考えなければならぬときがくると思いますが、どうかおくれないように、事前にそういうところを十分肝に命じて対処していただきたいことを特にお願いして、私は質問を終ります。
  191. 床次徳二

    床次委員長 次会は公報でお知らせいたすことにいたしまして、本日はこれをもって散会いたします。     午後四時三十二分散会