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1958-02-27 第28回国会 衆議院 科学技術振興対策特別委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年二月二十七日(木曜日)     午前十時十五分開議  出席委員    委員長 齋藤 憲三君    理事 菅野和太郎君 理事 中曽根康弘君    理事 前田 正男君 理事 岡  良一君    理事 志村 茂治君       須磨彌吉郎君    橋本 龍伍君       平野 三郎君    山口 好一君       岡本 隆一君    佐々木良作君       田中 武夫君  出席政府委員         科学技術政務次         官       吉田 萬次君         総理府事務官         (科学技術庁長         官官房長)   原田  久君         総理府事務官         (科学技術庁企         画調整局長)  鈴江 康平君  委員外出席者         科学技術事務次         官       篠原  登君         参  考  人         (日本学術会議         会長)     茅  誠司君         参  考  人         (東京芝浦電気         株式会社専務取         締役)     瀬藤 象二君         参  考  人         (株式会社科学         研究所会長)  村山 威士君         参  考  人         (財団法人望月         電波研究所所         長)      望月 富防君     ――――――――――――― 二月二十五日  関西学術研究用原子炉設置に関する陳情書  (第四八〇号) を本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  理化学研究所法案内閣提出第七三号)      ――――◇―――――
  2. 齋藤憲三

    齋藤委員長 これより会議を開きます。  理化学研究所法案を議題とし、参考人より意見を聴取することといたします。  御出席参考人は、日本学術会議会長茅誠司君、東京芝浦電気株式会社専務取締役瀬藤象二君、株式会社科学研究所会長村山威士君、財団法人望月電波研究所所長望月官防君、以上四名の方々であります。  この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。本日は、御多用中のところ、本委員会法律案審査のためわざわざ御出席をいただきまして、まことにありがとう存じました。厚く御礼を申し上げます。理化学研究所法案は、現在の株式会社科学研究所を改組して、特殊法人組織理化学研究所を設けて、各種試験研究を総合的に行うとともに、新たに新技術開発、その成果普及等事業を行わしめ、もって科学技術振興を一そう強力に推進せんとして、政府より提出されたのであります。本委員会といたしましては、本案審査に当り、試験研究機関組織、そのあり方、新技術開発等の諸問題について、関係各界を代表する参考人各位より御意見を承わり、もって本案審査に万全を期したいと考えまして、ここに各位の御出席をわずらわした次第であります。何とぞ参考人各位には、それぞれのお立場より、忌庫のない御意見をお願い申し上げます。  なお、御意見は約三十分程度にお取りまとめを願いまして、あと委員諸君の質疑により、お答えを願いたいと存じます。  それでは瀬藤参考人より御発言を願います。瀬藤参考人
  3. 瀬藤象二

    瀬藤参考人 私は瀬藤でございますが、本日お招きを受けましたのは、どういう意味かということははっきりいたしませんが、前々に、理化学研究所時代に、あすこの中に一つ研究室を持ちまして、主任研究員として相当長い期間研究をいたしておりましたことと、大学教授として本務をやっておりましたことと、現在ある会社役員をいたしております、この三つのことが、私のこの問題に関係して意見を申し上げる根拠と考えていただいていいんじゃないかと思います。  自分のことを少し出し上げておく方がいいかと思いますが、理化学研究所大正の六年ごろに設置されましたときに、私は先輩の鯨井教授のお勧めを受けまして、理化学研究所研究のことを、大学の職員である本務のかたわらいたしておったのであります。その後、大正十五年と思いますが、主任研究員を言いつかりまして、理化学研究所の中に瀬藤研究室というものが設置されたのであります。主として電気関係のことを研究いたしておりまして、その研究成果の中には、皆様承知アルマイトというものがございます。これはアルミニウムもしくはアルミニウム合金の表面に電解的の方法で酸化をいたしまして、相当しっかりした被幕を形成する、そのものアルミニウムを主体とする器具類摩耗腐食を防止する性能を持っておりますので、これを工業化することに努めましたのであります。アルマイトという名前は私どもがつけたのでありまして、世界では、そういう仕事を始めたのは最初のものであります。その後、世界各国でいろいろなことが行われるようになりましたが、それは私どもあと続いていろいろなものができ上った、こう言っていいと存ずるのであります。これは、そういうことを作り上げようという意図を持って始めた研究でありませんので、熱に耐える電気絶縁物を作り上げるという研究の、その最初目的から新しい事実が見つかったことに基因しまして、最初目的と離れたけれども、有用なる応用が見出された一つの例だと存ずるのであります。後に申し上げますことに関係があるから、それを特に取り立てて申した次第であります。  日本学術界産業界に対しまして、理研が今までになし遂げた業績というものについては、ここに御臨席の皆様方が十分御認識をしておられることと思います。ところが現状はどうであろうか。私は最近しょっちゅう参っておるわけではありません。もう主任研究員をやめて数年になりますので、ときどきしか参りませんのでありますが、かつて日本有数研究機関であったそのおもかげというものは全く消え去ったと言っても過言ではない。ちょっとひどいところは化けもの屋敷のようなところで、必死のあがきをして、研究者が勉強をいたしておるという状況と申してよかろうと思います。  どうしてこんなことになったがということを少しお話し申し上げたいと思います。終戦直後でありましたが、GHQ——連合軍司令部の中に経済科学局というものがありまして、その中に科学技術課というのがありました。そこの次長をしておりましたH・C・ケリーという男がおったのでありますが、このケリー氏がいろいろの方面日本科学技術を立て直すことに非常な好意を持って、かつ熱心に進めておってくれたのであります。その全体の功績は非常な大きなものでありまして、これはみなこの関係方面諸君が感謝しておるところであるのであります。ところが、そのケリー氏が、この理研というものを株式会社にして出発したらいいだろうということを、当時としてはアドヴアイスという言葉を使いましたが、大体において指令をしたと同様であります。その結果、昭和二十三年の初めでありましたか、株式会社科学研究所として理研が最出発をすることになったのであります。今から約十年前であります。ケリー氏のやったことの中で、この指令を出したということは、一つ失敗であったと思います。当時、理研の再興に当ったのは仁科芳雄君でありまして、ときどき私も仁科君からそのときの状況を聞き、かつ、たまにはケリー氏にも会って私の意見を申したのでありますが、彼の言っておる株式会社として研究商売にするということは、日本ではとうてい成り立たない、少くとも当分の問は成り立たないことであるということを私は相当強い言葉でもって申したのでありますが、しかし、ケリー氏は米国の例を引きまして、米国では数多くの研究所研究商売として成り立っておる、日本は今後科学技術で国を立て直すほかないのであるからして、理研株式会社として立っていけるはずである、もしこれで立っていかないようならば日本自身がだめなんだ。必ず株式会社で立っていかれるようになるべきだというのが彼の主張でありました。しかし御承知のように、その当時のことから今に至るまで、私どもが見るところでは、研究商売として成り立たないということは事実として明らかになって参りました、余談でありますが、私は一昨年アメリカへ参りましたときに、二回ともケリー氏に会いました。そのときに、君が日本で在勤中にやったことは大体ばいい結果に向っておる、ただ一つ理研株式会社にしたということは失敗であったと率直に申したのでありますが、彼も、彼が帰ったあと理研がどうもうまくいっていないということを人ずてに聞いたのでありましょう、自分もそう思う、今非常に後悔しておるということを、しょげた顔をもって言うのであります。あまりしょげるものですから、君も神様でないから、必ずうまいことばかりはないので、失敗するのはやむを得ないんだということでなぐさめたぐらいであります。もちろん今はわれわれ日本人自分たちの問題として、現在の科研をどうすればいいかということを考えるべきでありまして、ケリー氏がやったことだとして、彼に罪を着せて済ませておくというわけにば参りません。  私は平生から研究所というもののことをこう考えておるのです。研究所研究者というものを中心として、土地、建物、設備など合せて、一つの生きた生物のようなものである、研究所は固定した無生物ではなくて、生まれて栄養をとって育っていくべきものである、こう思うのであります。生まれてきてからたどってきた境遇とか環境とかいうものとともに、一つ性格を形作っていくことはその結果当然でありますが、理研か戦前にたどっていった経路というものは、大学研究室あるいは大学付属研究所、あるいは各官庁研究所あるいは会社研究所などの、そのいずれとも幾らか違ったものがあると思います。すなわち、理研としての一つの独自の性格を持って育ってきた生きものであるというような感じがときとしてはするのであります。今やその性格なるものが日本にはもはや必要がなくなったのであるということとは、どうしても考えられないと思うのでありますが、独自の性格というのは何かと考えてみますと、これは単なる学問研究機関でない点で大学研究室と違っておる。また各官庁研究所というものはそれぞれの官庁使命、職責を果すために存在しておるのが本来の使命でありますが、そのものとも違っておる、会社研究所はそれぞれの会社製品品種の改良、進歩、開発使命とするものであるので、その点においても、必ずしも理研のようなものと一致した点ばかりではないと考えるのであります。理研の場合には、各種基礎科学というものを逐次発展させつつ、その成果産業応用して実用化するということか今までたどってきた一つの行き方であります。すなわち一方において自然科学から生まれるところの成果産業応用するという面であります。他方、産業の要望する新方面開発するのに何が隘路であるかということを見定めまして、自分研究所の中に持っておるところの基礎科学をその隘路打開のために総合して、その解決をはかるという面を持っておるのであります。数々の理研業績の中には、この二つのことが両方とも達成された実績を持っておると考えられます。総合してそういう結果があげられるという一つのバランスのとれた研究組織というものは、これは一朝一夕にできるものではありませんので、現在の科研か持っておるこの素質というものは十分尊重され、かつそれを伸ばしていくことによって、国民の要望するところの科学技術成果が、ほんとう国民の幸福、国民経済生活の向上に役立つことができることと考えるのであります。素質が十分あるということは、これは私一人の考えでなく、皆様もお考えなさることと思うのでありますが、しかし、今までのようなやり方で、また科研現状のように荒廃した設備そのままで、また聞くところによれば、研究者給与のごときも、およそ考えられる同種の仕事をやっておる人たちに比べますと一段と低いというような、その状況のままでこの素質を生かして、国民期待するところを達成されるということは、これは相当無理なことと思うのであります。  今度の特殊法人理化学研究所法案というものは、その目的の項の中で、「科学技術に関する試験研究を総合的に行い、新技術開発を効率的に実施し、並びにこれらの試験研究及び新技術開発成果を普及することを目的とする。」こう記載しておられるのでありまして、御趣旨は非常にけっこうと存じます。ただ考えておかなければならないことは、現在の科研は、先ほどから申し上げましたように、戦後長い間栄養不良で、着物もずたずたにちぎれたものをまとって着せられておる。まあ極端にいえば半病人のような状態にあるということであります。これに栄養を与えて、着物も一応まともなものを着せて、そして元気を回復させることが第一であろうと思います。元気を回復したならば大いに働くということか可能でありますが、あしたからすぐ走り出せ、走り、かつ、短距離競走ですぐゴール・インせよというようなことを期待するのは、これは私の考えでは無理なことではないかと思うのであります。従いまして、今ここに掲げられてありますところの法案自体は、けっこうでありますが、それに準拠してとられまする予算的措置あるいは運営実態については、何がしかの希望を申し述べたいと思います。  その第一は、何よりもまず大切なこととして、研究者に対して将来に対する希望を持たす、よく勉強するならば必ずあの理研というものを一生の働き場所として守り続けることができるのだという気持を持たせることだと思います。これかありませんと百般の施設はむだに終るのではないか、こう思うくらい重要と思います。  第二は、従いまして研究者給与研究に悪いようであるのを、これを世間並みに改めるような措置が講ぜられることであります。  第三には、さっき申した設備相当更新しなければならない。現実にあれだけの力を持っている研究所で、相当りっぱな、かつ大規模研究規模を持って研究させておる公立官立研究機関が非常にたくさんございますが、それに比べますと、まるで見劣りがし、かつ実力に応じたものとしての設備とは申せないと思います。  四番目には、経営費自立経営として支弁していけるようになるまでの期間のことでありますが、これをあまりせっかちに短かく設定しないことか肝要であろうと思います。あまりに短かい期間ゴール・インせよということばかりしいますと、その研究成果はごまっちい、小さいものばかりをねらうことになり、長い間に成果を上げて、ほんとう国民希望を満足させるようなことに向けにくいことになろうと存ずるのであります。  第五には、今の科研では、これはどういうことか知りませんが、役員としては、現職研究員はだれもいないようであります。これは研究に専念することを第一の目標として、その人たちには役員というようなアドミニトレーティヴな仕事をやらせないのがいいのだという見地かと想像されますが、今度の特殊法人理化学研究所役員の中には、その理事としては現職研究員の中からだれか適任の人を選任されまして、研究者考え役員会業務運営方針に直結して反映させるようにされることが、この研究所運営上肝要なことであろうかと存ずるのであります。  次に、理研以外で、実験室的の規模などで芽ばえた新技術理研が取り上げて開発するということが、この法案の意図されておる中にあるのかと想像される節が見えるのでありますが、これを新理研業務範囲ともし考えておられるものとすれば、これは必ずしもそううまくいかないかもしれない。何となれば、理研性格上といいますか、専門の分野におきましても、よそで芽ばえたものを取り上げてそれをものにするというだけのところまでは、範囲を広く持っておらないと考えられますので、そのことにあまり大きい期待をかけますと、期待はずれということになろうかと思うのであります。  最後に、これは小さいことのようでありますが、現在の科研経済からではできないことのように思いましたので、つけ加えて申しますが、優良な発明が新しい理研の中に生まれた場合に、国内はもちろんのことでありますけれども、主要な外国に対しては特許出願かできるだけの措置考えられておることを必要と思います。これは一件について十五、六万円というような費用がかかるのでありますから、もちろん厳選しなくちゃなりませんが、せっかくできた発明国内だけにとどまって、これを外国までその権利を確保することができませんと、現在でもすでに外国からの技術に対して日本相当特許料外国に払わせられているということに対するしっぺい返しはできないことになるので、これは厳選はしましても、相当の果敢な出願方針をもって臨まれることを要望したいと思うのであります。  以上、私は平生考えておりましたことを一応申し上げたのでありますが、何かまた御質問でもありましたら、申し足りないところを補わさせていただきたいと考えておりますので、一応これでもって私の陳述を終りたいと思います。ありがとうございました。
  4. 齋藤憲三

    齋藤委員長 次に、村山参考人の御発言をお願いいたします。村山参考人
  5. 村山威士

    村山参考人 私から申し上げることはあまりないと思います。というのは、今度の法案及びその趣旨が、現在科研がとっております運営方針に全く完全に合致しております。従って、非常にけっこうな案だと考えるのであります。しかし、それだけじゃあまり簡単ですから、陳述申し上げます。  これはもう皆さん御存じの通りで、この法案をいろいろ審議なさったその根本方針は、そこから出ておると感ずるのでありますが、御承知のように、日本人研究能力というものは、諸外国に決して劣ってはいない、こう考えられます。しかるにその研究成果が実際化されて、そうして、国内はもちろん、進んで技術輸出をするというようなものははなはだ微々たるものしかない。従って盛んに、御承知のように技術導入をやる。結局技術植民地であるというような感がいたします。早くこれを脱却しなければ、日本の国力というものは充実しないと考えます。従って、この基礎研究、いわゆる純粋の学問的の基礎研究では相当見るべきものがあるんじゃないかと思いますが、これを実際化するしっかりした機関がないことが、今日本の一番の欠陥じゃないか、こう考えられます。従って、今の科研では、人数も少いし、小さなものではありますけれども、将来これを中心にしてますます拡大して、そうして実際化して、産業界に直接に貢負献するような研究所が必要じゃないか。その意味において、今度の法案は非常にけっこうだと存じます。  大体、大づかみに申しますと、大学のようなところでは、いわゆる学問的の基礎研究を大いにやってもらわなけりゃならぬ。しかし、今では理科系教授の数も少いし、従って研究の時間的余裕が少い、及び研究費が非常に少い。従って、その二つを充実することによって、大学などで純粋の基礎研究、これは研究のもとになるやつですから、これを大いにやるべきじゃないか。  それからその次には、今度の法案にありまするが、科研のような一つの総合された総合研究所が、その先いわゆる応用研究から工業化試験までやる。もちろん自分自身一つ産業界に直結する、直接貢献するようないわゆる目的基礎研究目的基礎研究から応用研究工業化試験までやる、こういうようにして今の日本欠陥を補うということが一番いいと存じております。それには御承知のように、基礎研究にはさほど金は要らないのですけれども応用研究工業化試験には相当金が要るかと思います。従って、この研究所にはうんと金を注ぎ込まなければ、その目的を達することができない、こう思います。  それから第三番目に、どうも日本産業界は、外国研究成果あるいは特許であれば、直ちに信用してこれを導入する。そのために、みずてんで導入したために失敗した例を一、二私も承知しておりますが、しかるに日本研究者研究して完成したものについては、なかなか容易に信用しないという点があります。従って、その研究所工業化試験というものが進み、あるいは科研——研究所以外のほかの方面工業化試験が済んだというものを企業化するのに、非常にいいものがあっても、なかなか産業人はすぐ飛びつかない。従って、今度の案のような開発機関を設けて、企業化を促進することが必要だと考えられます。つまり、大学のようなところで純粋な基礎研究をしっかりやることと、今度のような研究所でもって工業化試験のみをやることと、それから開発機関でもってこの企業化を促進していくこと、この三位一体となって初めて技術振興ができるのじゃないか、こう考えられるのであります。  そこで、実際のこの法案について一、二——しいて別にぜひにと申すわけじゃないのですが、しいて申しますと、そういう意味であれば理化学研究所という名前はふさわしくない。最初技術庁あたり考えておられた科学技術研究所ということが実態にふさわしいのじゃないか、こう考えられます。  それからもう一つ開発機関の方ですが、この開発機関は大いに発展させなければならぬ仕事だと思います。しかるにこの案を見ますと、理事長のもとに副理事長が一人、こういうようなことになっておりますが、私の希望を申し上げますれば、理事長というものは二人にして、一人は研究部門の方に専念する、それから一人の理事長というものは、開発部門を大いに発展さす責任を持ってやるということがいいのじゃないか、こう考えます。  はなはだ簡単ですか、以上のようなことを申し上げます。
  6. 齋藤憲三

    齋藤委員長 次に、望月参考人の御発言をお願いいたします。望月参考人
  7. 望月富防

    望月参考人 私の意見を申し上げます前に、大体私がどういうふうな経歴で、どういうふうなことを現在やっておるかということをまずお話した方が、私の意見のよってきたところがよくおわかりになると思いますので、そのことをまず簡単にお知らせしたいと思います。  私は二十数年来、民間の各二、三の会社や、あるいは海軍の技術研究所あたりにおりまして、研究発明に専念して参りました。そうして現在は財団法人研究所を数年前設立しまして、そこの所長を兼ねて引き続いて発明研究をいたしておりまして、現在までに特許実用新案を登録されたものが一千一百件、出願中が五百件、現在でも毎月大体十数件は引き続いて出願しております。その業績によりまして、一昨年の三月には、紫綬褒章を受賞しております。  そういうふうな経歴の私がここで参考人としまして意見を述べますためにいただきました理化学研究所法案提案理由によりますと、そのおもな目的としまして、研究所研究活動を一段と活発ならしめるために、国の援助を強化することと、それからもう一つ技術開発という国家的事業の遂行を実施させようとするものであると思われますが、ここに特に注意しなければならぬことは、この二つ事業というものは、私の考えでは、性格的にも全くの異なるものではないかと思うのです。実は私も申しおくれましたが、昭和十年ごろからしばらく理研に勧めていたことがあります。その昔の理研特徴を今度の法案で生かそうとなさろうということだと思いますけれども、そういう特徴ある理研でやる研究ということと、それからこの法案に出されております新技術開発ということは、ほんの一部においては一致する点かあるかもしれませんけれども、その性格が全く違うのであります。私としてまずはっきり申し上げたいのは、この二つのことは全然分離して、理研にこれをやらすべきではない。理研はもともとの特徴を発揮するような方向にだけ持っていかせるべきじゃないかと思います。この法案にあります新技術開発というにとが、理研で基礎的な研究をやったことを理研でもって開発することでしたら、これは話はわかりますけれども、ほかの民間——この法案によりますと、大学とかその他の公立研究所ということがあげられておりますけれども、そういうふうな機関において実施化することが困難なようなものを、一部を理研開発し、あるいは民間企業との間の橋渡しをしてそれを企業化しようとする仕事は、理研木末の伝統ある研究活動を生かすということとは違うのじゃないかと思います。しかし新技術開発という仕事は、理想としましては、これは独立した機関を設けまして、専門的にも強力にも推進すべきものでありまして、今の科学研究所にくっつけたような形でもって所期の感果をあげることは、とうてい私は不可能ではないかと思います。そして万一その結果が失敗いたしましたことを予想しますと、新技術開発という国家的にきわめて重要な事業の持つ価値を軽く見られるようなおそれが多分にあると私は心配しておるのです。また理化学研究所といたしましても、このようなほかの研究機関と、民間の企業との連絡事務をおもにするようなことになりかねない仕事を一緒くたにしてやるということは、先ほども申し上げましたように、研究所特徴ある本来の研究活動を活発ならしめようとする第一の目的に対して、マイナスにこそなれ、決してプラスにはならないと私は思います。そしてかりにこの法案が成立しまして、前の二つ事業がともに研究所で行われるようになった場合をまた考えてみますと、国からの援助資金というものは、当然これは私としましても——先ほども意見がありましたが、たとえば理事長と副理事長を置いて、おのおの分担するというようなお話でしたが、たとえば会計の面で見ましても、国からの援助資金は当然これは研究活動に対するものと、それから新技術開発に関するものと別個にして、それぞれ独立会計でもってやることが必要じゃないか。このようにしますと、研究所というものはますます二重性格を持たざるを得なくなりまして、運用上の重複もありますし、経費のむだもある。また二つ事業の援助資金があるのでありまして、もしこの重複とか経費のむだを避けるために、二つ事業に対する援助資金というものを一緒にして、もし研究所政府の方から出した場合を考えますと、研究所本来の研究活動と、それから技術開発によって得られました成果というものは、果してそのおのおのに対してどういうふうな成果が上ったか、そういうことを区別して成果を見ることが非常に困難ではないかと思われるのです。  このようなわけで理化学研究所に新技術開発という仕事をまかせるということは、非常に私としましてはまずいのではないかと予想されます。とはいっても、新技術開発ということは非常に大きな費用のかかることですし、国の予算やその他の関係でもって独立した機関を作ることができないとか、あるいは独立した機関を作ったところで、どうもうまくいくかどうかわからないのに、初めから大きなことをして予算も出せないというようなことで、たまたま株式会社科学研究所というものを改組して、特殊法人の理化学研究所にしようという機運が熟してきたので、どうもほかに持っていきどころかないから理研にそれをやらしてみようじゃないかというような程度で、これは当局の方には非常に失礼ですけれども、もしそういうような考えでもってこの法案を作って、理研仕事を押しつけるような形でやらそうとするならば、これはスタートにおきまして、新技術開発という面では非常にうまくいかないことになるんじゃないかと思います。  そこで、それならばこの新技術開発という問題を理化学研究所にやらせない場合に、しかも予算その他の関係で独立した機関を新しく作ることができないという場合に問題になりますけれども、その場合には——具的の案は私にも今ここで申し上げられませんが、従来の政府機関なりあるいは半官半民的な機関にも、この仕事に対してでしたらもっと適当な機関があるように私も承知しております。話は今回の法案そのものから少し横道にそれましたけれども、いずれにしましても、新技術開発ということを考えますと、とても理化学研究所仕事の一部門としてやるような、そんななまぬるいことではとうていできないことであって、少くとも近い将来に積極的に独立した機関を作って、とにかく十分の予算を出してやらしてみるということをやりませんと、諸外国でもそういう例がありますように、かなりの研究費を出している国でさえも、それとまた別個に開発機関に対してたくさんの費用を出しているのでありますから、日本としてもよほど積極的にやらなければならないと思います。そういたしまして、結局新技術開発という仕事理研から——今度の法案から取り除いた面でしたら、これは非常にけっこうなことでありまして、大いに理研のために国家としても援助していただきたいと思います。その場合にもう一つ注意しなければならぬことは、国から援助したことによって、理研の伝統ある自主性が失われまして、その自主的な運営が抑圧されることがないように希望したいと思います。  それからもう一つ、もとの財団法人理化学研究所というものは、先ほどもお話がありましたように、終戦後改組されまして株式会社科学研究所になり、その後も今日に至るまでの経過をいろいろ資料なんかで見ますと、実に多くの変化がありまして、政府からも何回かにわたって出資金が出ているようですか、それでもなおかつその後約十年近い年月を経てもうまくいかない。その原因はそれではどこにあるか。株式会社組織というもの自身にあるようにいわれておりますけれども、今度は単にその組織だけを特殊法人に変えただけでもって、果して理化学研究所というものがもとの理研のような形でうまくいくものかどうか、その点に相当懸念される点もありますので、今までうまくいかなかった原因をよく究明していただきまして、もし欠点がありましたら政善していただいて、そうして理研そのものの本来の使命を大いに仲ばしてやっていただきたいと思います。私どもが勤めていたところの約二十年ほど前の理研ですと、理研に就職したということが非常に名誉であり、また秀才であったというようなことを言われまして、私どもちょうど年ごろで結婚するにしても、理研に勤めている人なら大丈夫だということを言われて、事実そういう評判がずいぶんあったんです。そんなふうな理研に今後持っていかなければいけない。それでこそこの法案の効果があるのじゃないかと私は思います。
  8. 齋藤憲三

    齋藤委員長 以上をもちまして、瀬藤参考人村山参考人及び望月参考人の御意見発表は終りました。  引き続き質疑を行いますが、瀬藤参考人は非常にお急ぎのようでございまするから、瀬藤参考人に対する御質疑がございましたならば、それの方を先にお願いをいたします。  質疑は通告に従いまして順次これを許します。  岡良一君。
  9. 岡良一

    ○岡委員 瀬藤さん大へんお急ぎのようだということでありますが、村山さんに一、二点お伺いして、それについて実は瀬藤さんの方をお聞きしたい、こういうことでありますので、お許しを願いたいと思います。  そこで、村山さんにお尋ねをいたしますが、現在の科研運営は、瀬藤さんの御指摘のように、やはり研究者運営の衝に当るべきだ、そこにやはりこういう事業体におけるいい意味運営の民主化があるのだと私ども考えておるわけです。現在科研運営はそういう研究者運営にタッチをするというような形はどういうふうに具体的に行われておりますか。
  10. 村山威士

    村山参考人 お答えいたします。現在は、役員の中には、研究者としては佐藤社長が研究者で社長をしておられるわけです。内部の研究者運営にタッチする機構としては、内部を今六つの区に分けております。たとえてみれば有機化学であるとか無機化学であるとかその他六つに分けております。その六つの区から一人ずつ——その六つの区に八つ、七つ、平均して七つの研究室がありまして、そこに主任研究員がおるわけです。その主任研究員の中から一人理事というものを——今度は法案が変りますと名前が変るでしょうけれども理事というものを出しておるわけです。それで、その六人が理事会というものをやっておりまして、その六人の中から理事長と副理事長とを互選できめております。そうして、いろいろな運営のことについて研究者としての希望を経営者の方に持っていく、あるいは経営者の方が全般に知らさなきゃならぬというような問題についてば、理事会に諮って、それを実行に移すということにしております。その上に常勤の役員会のようなものを毎週一回ずつやっております。そのときには、重役会に理事長と副理事長とは必ず列席する。それ以外にただいまでは昼食を役員室でみな一緒にするのですが、そのときも理事長と副理事長とはその昼食会には出る、こういうような方法で研究者希望なりを反映させるというような機構にしております。
  11. 岡良一

    ○岡委員 今、科研の現在の運営を聞きまして、私ども民間においても、現に瀬藤さんはその道の専門の権威でおられながら、東芝のトップ・マネージメントの衝に立っておられる、こういう姿に今後進めていってくれることが望ましいと思っておるわけでもあり、特に理化学研究所一つの大きな意図のもとに出発をするとした場合には、今’村山参考人の仰せられたような運営の方式は、やはり理化学研究所の今後の人事運営においても大きな示唆になると私思うわけですが、この点、村山さんの御意見についてさらに瀬藤さん、あなたの立場からの御見解があったら伺っておきたいと思います。
  12. 瀬藤象二

    瀬藤参考人 現在やっておられますことについては、私今初めて村山君の話でわかったのでありますが、責任という面から言いますと、やはり役員の中に現役の研究者が入っている方が望ましい、こう考えております。現実にこのリストを見ますと、井上春成君、真島正市君、この両君は大なり小なり理研——真島君などは前に理研研究員をしておられた人であります。現実に研究室を持っておられないのでありまするが、こういう方が入っておられることも一つのやり方だとは思いますけれども、しかし、望むらくは、研究者でありかつマネージメントについてもある程度の理解を持った現役の研究者役員の中に加わっている方が、直結してかつある程度の責任を持ってこの運営に協力するという形がとりやすいんじゃないか、こう考えております。
  13. 岡良一

    ○岡委員 それでは政府にお聞きいたします。科学技術振興という波に乗って、政府もいろいろの試みをなされておられることについては、われわれもこれを多とするものでありますが、今度理化学研究所が発足するに当って、三億三千万円の出資をするというようなことから、ついつい今、村山さんなり瀬藤さんから御発言のように、研究者も参加して、研究者の意欲が運営に十分に反映されるような理化学研究所としての人事、構成、運営の面におけるそういう方向というものが私どもは望ましいと思うのです。それについて、あなた方の方ではどういう方針を持っておられるか伺いたい。
  14. 鈴江康平

    ○鈴江政府委員 人事の点については、まだ成案を得ていないのでございますけれども、各方面の御意見を聞きまして、十分とるべきものはとって考えていきたいと思っております。ただいまお話がありましたように、理研は何と言いましても研究者中心のものでございますので、研究者の意思が十分反映できるという形をぜひともとっていきたいと思っております。従いまして、ただいま瀬藤参考人からお話のございましたような点は十分考慮していきたいと思っております。
  15. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 関連してちょっと参考人の先輩にお聞きしたいと思いますが、大体法律というものは政治的妥協の所産であって、そのことは、正直に申し上げまして、この法案もその通りです。それで、ただいま望月さんが、おっしゃったことは、実はわれわれが非常に心配しておったようなことをおっしゃったんで、非常に敬意を表します。特に新技術開発ということと研究ということは、そう両立するものではないし、同じ世帯にこれが雑居しているということは、あるいはマイナスになりはせぬか、そういう考慮はずいぶんしたんです。ですけれども、党内のいろいろな意見等もあって、とりあえずこういう形で発足させなければ間に合わぬ。ないよりあった方がいい、そういう感覚でこういう法案にまとまったわけなんであります。しかし今までの参考人のお話を承わっておりますと、何か今の科研をそのまま手入れを加えてやるという前提をお持ちのようでありますが、これは科研とは関係のない理化学研究所という新しい研究所を作るのであって、私は村山さんにも皆さんにも申し上げたんですけれども科研というものは相当贅肉を切らなければだめだし、換骨奪胎して、新しい基礎工事の上に新しい研究所を作るのだ、だから今の科研というものを前提にして、役員の構成とか運営方法とかそういうものを考えたら全く意味のないものになるだろうと私は思う。今瀬藤先生がおっしゃったように、株式会社という形でああいうものを発足させたことは、大失敗であったと私は思います。そういう意味において、理化学研究所をこれから発足させるに当っては相当周到な配慮を持って、将来を考えて、新構想で、新しい土台からもう一回前の仁科さんの方の理研をある程度頭に置きながら発足させるのがいいのじゃないか、そういう気がいたします。  そこで一つの問題点は、いかにして有能な人を集めるかということだろうと思います。科研の所員ならお嫁さんをやろうかという程度まで、実際は持っていきたいと思う。それにはさっき先生のお話を承わって、非常ないいヒントを得たのでありますが、先生は教授で兼任しておられる。大学教授の優秀な人を相当研究員なり、主任研究員なりに迎えて、そうしてその教授のスタッフと、それから現在の研究員である人で優秀な人、それからある程度マネージメントの能力を持っている人を融合させて研究所を作るのがいいように思うのですけれども、果して大学の先生が来てくれるかどうか、またこういう形のものに大学の先生がどの程度協力してくれるかどうか、みんな自分研究所を持っておったり、講座を持っておるものだから、それが可能かどうか。仁科さんのころの状況とにらみ合して、もし御意見があったら承わりたいと思います。
  16. 瀬藤象二

    瀬藤参考人 中曽根さんの御質問の部分に対しては、私は可能だと存じます。大学教授の職責をいたしながら、新しい理化学研究所のおい立ちを、大学教授のままで兼任しながら協力していく、それは可能なことと存じます。ただしかし、それには今のままでははなはだどうも協力のかいがないとさえ考えられる。こればお話のように新構想をもって出発され、そうして適当なる分野において欠けるところがございましょうから、それをとりあえずそういう方法でもって補い、行く行くは独立の研究者がそこにおい立つようにはぐくんでいく。さっきちょっと申しましたが、研究所がやっぱりそういうふうに生々育々、おい立っていく過程を持つべきものと確信いたしておりますので、私ども大学教授として、兼任しながら研究所に協力しておりましたのも、その趣旨にほかならない。趣旨が徹底しますならば、必ずそういう人が得られると確信しておる次第であります。  それからついでに申しますが、今の科研の中で贅肉とおっしゃるのはちょっとはっきりしませんが、なるほど主要目的をここに掲げられまして、そうしてその目的に邁進するというために、もしある種の分野か、あそこでやるよりも、もっと適当な場所を探してやらした方が、この理化学研究所の主要任務を果す上にも、そういうところの部分まで考慮を払わないで済むということが可能になりましょうし、またその人たちも喜んで進路を得て進む道があろうかと思います。頭の中に描いているのは、宇宙線の研究であります、宇宙線の研究ということは非常に大事でありますが、あれをこの理化学研究所の中に持ち続けるのがいいのかどうかというような具体的な問題になりますと、おのずから意見がありましょうと思います。私はもし適当なところがあれば、その人たちがもっと別のところで活発に研究できるようにしてあげた方が、御本人たちのためにもよかろうし、また新理研のためにもかえっていいんじゃないか、こういうことをばく然と考えております。これは宇宙線についてはあまり専門でありませんので、果して当っているかどうかわかりませんが、さしあたってはそういう考えを持っております。
  17. 岡良一

    ○岡委員 それから、これは政府側また参考人の方の御意見、特に村山さん、瀬藤さん、望月さんの御意見を伺いたい。原子力研究所理化学研究所があるが、これはたとえば年金法を見ても、農協の年金が出てくる、恩給の増額が出てくる、あれやこれやで割拠主義というものが何か時流に乗ってくると、すぐ各省競って、あるいは省内においてもいろいろなものが芽を出してくる。結果において乏しい金、あるいは乏しい資材、乏しい人間の力というものが一本にまとまらないで分散するというのが、私は日本の現在の政治の大きな欠点であると思う。原子力研究所理化学研究所というものは、もちろん担当の分野は違いますが、やはり行政的な面から見た一つの体系の中にその位置付けをされなければならぬと思う。そういう点についての政府側の構想を何か持っておられるかどうか。
  18. 篠原登

    ○篠原説明員 ただいま御指摘がございました点につきまして、原子力研究所あるいは理化学研究所におきまして研究がダブるのではないかというような御心配もございますが、そのようなことは十分に協調をとりまして、原子力研究所は原子力研究所本来の原子力開発に邁進していく、そういうことを主といたしまして、たとえばラジオ・アイソトープが他の分野におきまして利用されるというような面につきましては、その点において一部を理化学研究所が協力をするというような点はあると存じますけれども、全体として総合的に統制のとれた研究体制をとっていくことが、一番日本科学技術振興に役立つのではなかろうかと考えけす。
  19. 岡良一

    ○岡委員 近代科学というものは、私どももしろうとだが、それぞれの専門分野が深く真実を求めていけばいくほど細分化する。しかしそれが一つの有用な応用なり、工業化なりというところにくると、細分化されたものを一つにまとめて、一本の手綱で引きずっていく、かり立てていくという運営がやはりなければならぬ。そういう意味でぜひ一つ——これは大臣にもお出ましを願って、法案審議のときに私どもよくその見解をお聞きしたいと思いますが、ぜひやってもらわなければと思います。  それから村山さんにお尋ねいたしますが、ことしの科研の収支の実態と申しましょうか、経営のごく大づかみな数字でけっこうですからお知らせ願いたい。三億三千万円の出資額が入った特殊法人としての理化学研究所ができるとした場合、これはあなたの立場からは、一極の予想ではありましょうが、あるいは御希望でもよろしゅうございますが、収支の実態というものは一体どうなっておりますか。
  20. 村山威士

    村山参考人 お答えいたします。大体研究という仕事は、幾ら金があっても足りない仕事なんです。だから予算の範囲内においてやればやれるし、もっとどんどんたくさんほしいという希望はあるわけなんです。たくさん金があれば、従っていい研究がたくさんできてくるということになると思います。それで、現在では細々ではありますか、この三十二年度、本年度に政府から一億五千万円出資していただきましたし、それに収入が約三億ありますので、四億五千万円で細々やっているわけです。従って、三十二年度におきましても、今の開発機関の八千万円というのは、先ほど望月さんからお話がありましたように、全然会計は別にしてやるわけですから、研究の方は二億五千万円であります。三十二年度よりは一億多くなりますが、今まで多年資金が欠乏しておったために、やりたいことがたくさんあるわけであります。その中の第一番のものは、先ほど瀬藤さんからもお話がありましたように、所員の給与で、ただいまではどうやらこうやら公務員のところまでいっております。それも少しずつ上げていって、ようやくそこまでただいまではいっております。しかし、それでは足りませんから——たとえて見ると、原子力研究所では、一般公務員より平均三割高いのですね。ですから、少くも原子力研究所並みに持っていかなければならぬということが一つと、それから設備の更新が、これも瀬藤さんから御指摘がありましたように、非常に古くて、貧乏しておったものだから更新ができていないわけであります。だから家にしましても、爆撃を受けまして、それを間に合せの修理をやっておりますが、十分な修理ができていないわけであります。それで、設備の更新は、人並みにざっとやりまして三億かかります。それで、ことし一億余分につきましたもので、今の考えではその半分の五千万円を設備の更新に充当しよう、それから三千万円くらいを所員の給与の増額にしよう、これはまだ政府当局と御相談していないことで、ただ私の考えだけを申し上げるのですが、いずれ技術庁あたりと御相談してきめなければならぬ問題なんですけれども、そうしますと、二割余り上るかと思います。それともう一つは、これも三十二年度で研究者を六人ばかり入れたのですけれども、従来年にようやく一人ぐらい入れるというような程度であったわけですから、従って若い研究者が非常に少いのであります。そこで二十人ばかり新しい人を入れようという、つまり一億の金を、設備の更新と所員の給料の増額とそれから新しい人を入れる、そういうものに使いたい。そうすると、あとの一億五千万円、ちょうど三十二年度と同じように一億五千万円でいくのじゃないか。そうすると、新しい人を入れますと、それだけ経費が要りますが、ただいま収入が三億ありますのが、ことしはおそらく少くも三億三千万円くらいになると思います。それでもって新しい人の費用が出てくるわけです。そういうわけで大体はいく。今一番足りないのは、設備の更新費が非常に足りないということになります。  それから、ついでにちょっと中曽根さんのさっきの御質問にお答えしたいと思います。大学の先生が主任研究員の形として科研に来るかどうかという問題ですが、ただいま研究室が四十三あります。しかし、主任研究員が欠員で、副主任というのが代行しているのがたしか五つくらいあるかと思います。従って、三十八人くらい主任研究員がおるわけです。その中で十五人は大学の先生です。ごく最近にも都立大学の千谷君に主任研究員に来てもらいまして、それと今交渉中のが二人くらいあります。それだから、約半分は現に大学の先生か主任研究員を兼務しておるのです。そうして今でも二人ばかり、多分来てもらえるでしょう。従って、大学の先生は今でも、いわんや特殊法人になればなおさら来てもらえると思いますので、その御心配はないと思います。
  21. 岡良一

    ○岡委員 瀬藤さんに率直な御意見を聞かせていただきたいのですが、理化学研究所が発足する。科研とは別個に、新しい基礎の上に、新しい構想というかその上に発足する。今お聞きすると、とにかく今、日本に一番欠けておる基礎研究を目標に立てての研究に、さらに応用化、工業化試験、こういう大きな構想のもとで、現実に供給される資金は四億に満たないという、こういうことで一体そういう大目的ができるか。新しい構想の上に発足する理研というものが、予算でこのように縛られておってできるかという問題なんです。そこでこの際、日本の諸官庁にいろいろな試験研究所がある。たとえば工業技術院が三十五億の予算で、四千人の人間をかかえている。聞けば科研は四百人しかおらない。防衛庁には二十億の新しい発明研究機関の予算をとっている。こういうような形で厚生省にも農林省にも、至るところにある。なるほど諸官庁が必要な試験なり分析なり計量器等の検定なり、そういうことをやることは、それは官庁の当然の務めとしてよかろうけれども、それ以上に大きく基礎分野にわたり、将来発足しようとする理化学研究所の分野にまですでに入り込んでおるのです。そうして、そこにいわば予算が非常に分散して、従ってその効率的な運用が妨げられ、人も分散し、設備も陳腐化したものが改善されない。こういう点について、もう少し科学技術振興というかけ声に立つ以上は、こういう点をもっとやはり大きく解決をしていくという意欲と、またそれを実際やらなければいかんのじゃないかと思うのです。従って、現在諸官庁にまたがっておる各種試験研究所の中で、特に通産省の工業技術院のようなものについても問題があるので、これはやはり諸官庁の必要とする試験、検定、分析等についてはこれはやむを得ないが、しかし将来理化学研究所の分野にまたがるようなものはまず一つにまとめて、理化学研究所仕事に持ってくるのが必要じゃないか。特に瀬藤さんの取引のあるゼネラル・エレクトリックなんかは、おそらく総収入の一〇%以上も研究費につぎ込んでおるのじゃないかと思うんです。あるいはそれ以上かと思うんです。日本民間会社などは、先ほど来、なかなか日本国内における新しい発明発見というものが信用されないというお言葉で御意見があったくらいで、従って、民間会社は、ともすれば安易について、高い技術料を払って、ノー・ハウを買い取っておるというようなことで、そこにも現に資金が昭和二十九年には四十六億、今年は百四十億、ここ四カ年間に三倍となり、五カ年間に三百六十億という莫大な金を技術導入やノー・ハウのために払っておる。こういうものをやはり国内における科学技術振興、特に理化学研究所の主たる目標のための試験、あるいは応用化、工業化の試験、こういう方向にどっと打ち込んでいく。これには、瀬藤さんのお立場からしましても、そうした機構とそうしたむだなお金の使い方についてもよほどしっかりと切りかえをしなければならぬ。こう思うんです。あなたの率直な御意見はいかがですか。
  22. 瀬藤象二

    瀬藤参考人 ただいまの御質問は多岐にわたっておると存じます。先ほどもちょっと御発言があり、また今も御発言の中にちょっとあったかと思いますが、研究の重複という問題は、これは研究をやっております者の立場としては、なるべく効果的に、重複を避けるということはもちろん考えますけれども、しかし研究に重複をいとわないということに一つ意味がある。たとえば先ほど御指摘の各官庁研究にいたしましても、それぞれの官庁の存在のために必要なる研究ということから分け入って、ある程度の基礎のことまでやらせなければ、ほんとう成果を上げ得ないことは言うまでもない。ただその範囲か問題であります。今ここに問題になっております新しい理化学研究所については、私がちょうどバランスのとれた一つの体系がそこに考えられるという意味で申したのは、基礎研究応用の分野とが互いに一つの場所にあって、それらが研究に互いに協力し合うという一つの理想形といっては少し言い過ぎかもしれませんが、そういう形がけっこうであるということを言っておるだけであります。今お話の外国技術の導入、それによって払うところの国の外貨支払いというものの多いことについては、私もこのままでいいとは決して存じておりませんが、しかし今までのおくれを取り返すという意味で、どうしてもそれだけのことが日本国民経済生活を向上させるために必要であるという見地のもとに、自由主義経済日本においてそういう方向に進んだということは、一応了承してやらなくちゃいけない、こう思います。いつまでもこのまま続けていくことが適当でないことは言うまでもありませんので、画期的に科学技術振興なさろうという当委員会の御方針を、われわれは非常に大きな期待をもって迎えておるということを申し上げることになると思うのであります。各方面にそれぞれの組織を持ったものが現存する場合に、それに相当の国費をつぎ込むことによって、それが画期的に立ち上り、そしてその成果にあまりせっかちな期待をかけずに、ある程度長い目で見るというその期間を与えますれば、今御指摘のような外国技術に依存するということが逐次減って参ることは、確信を持って言えるだろう、こう存ずるのであります。御質問の意味にすっかり当っておるかどうかわかりませんが、概略そういう考えを持っておるということだけを申し上げたいと思います。
  23. 齋藤憲三

    齋藤委員長 茅参考人がお見えになりましたので、この際、本案に対する御意見を承わりたいと思います。茅参考人
  24. 茅誠司

    ○茅参考人 私は、私以外の参考人の皆さんがどういう御意見をお述べになったか伺っておりませんので、重複する点があると思いますが、私この法律を拝見しまして、ただ条文からだけで、果して内容がどういう意味なのかわかりかねるところがありますけれども、こうであったならばよいという解釈を申し上げてみたいと思うのであります。  私はかねがね日本に、ドイツで申しますと、マックス・プラン・インスティチュート、イギリスで申しますとナショナル・フィジカル・ラボラトリーといったような総合的な研究所がないことを非常に残念に思っておった一人であります。総合研究所と申しますのはどういう意味かと申しますと、御承知の通りに、近代の科学技術は非常に高度に分化しておりますので、いわば一つの針みたいなもので、非常に高い技術を持っておるのでありますが、それを完成するのには、他の分野の技術がどうしても必要になってくる。つまり自分だけではとうていやれない、人の助けをかりなければできない。それで、先ほどもお話になりましたように、各官庁、学校、大学等にいろいろの研究所ができておりますが、それは相当分化された研究所であります。原子核の研究所とか物性論の研究所とか高電圧の研究とかというように相当分化されております。しかし、それらの研究所は、その研究所だけで成果を上げられませんので、全国の研究組織の中に協力態勢を求めて、お互いの研究班を作るとか、そういうようなことによって、不足を補う、足りない点を補っていっているわけであります。そういう意味におきまして、ぜひ一つの大きな研究所を作りまして、その研究所で高度の分化された研究を行うと同時に、この研究所内の総合的な協力によってりっぱな研究が完成するようにしたいということ、マックス・プラン・インスティチュートやナショナル・フィジカル・ラボラトリーといったものが果してそうなっておるかどうかわかりませんが、そういう目標のものを仕付ちたいということを私かねがね思っておったのであります。そういう研究所を作るという場合に、あまりに小さな、つまり中途半端な研究所では役に立たない。そうですと、お互いの協力というものができないわけですから、やはり相当広い分野にわたって研究をする、その研究全体を包括した研究所でなければ、そういう理念の研究所というものは意味をなさない。つまり、ここに出ております総合研究所という、総合的な研究をするという意味を、私が申したような意味に解釈いたしますと、そのためにはこの研究所相当いろいろの分野の研究者を包括してなくちゃいけないと同時に、基礎から応用にかけて、そういう方面のつまり専門分野の違う点と、同じ専門でありましても、基礎から応用という方面にかけて、開発という点にかけてまでの研究の専門の人たちも網羅しなくちゃいけないのだろうと思います。そういうのを私は理想体系と考えております。  で、それが大学研究所とどういう関係に立つかという点は、大へんむずかしいところでありますが、先ほど瀬藤参考人もおっしゃったように、大学研究と重複する場合があってもやむを得ないのじゃないか。それは基礎研究範囲においては私はやむを得ない、しかし応用研究等になりまして、非常に金がかかるという場合には、そこに調整する必要ができてくると思います。ですから私は、この研究所におきましては、その基礎研究における態度は、大学研究者と少しも変りはない、そこに重複があってもよろしい、いわば極をまく時期でありますから、種の中には伸びるのもありますし伸びないのもございますから、そういう重複はかまわない。しかし、成績を上げてくるにつれまして、そして金がよけいかかってくるにつれまして、逐次その重複を避けて統合していく、そういう態勢ができればいいのだと思います。  で、この法律を読みますと、経済の基盤となりますところの総合的な研究を行うことになるのだろうと思いますが、この二十九条の第一項の一と書いてあるところに、「科学技術に関する試験研究を行うこと。」これだけございますから、私が言ったような意味がこの中に含まれているのかどうかわかりませんけれども、そういう意味科学技術に関する試験研究がここで行われるとしますならば、私としては非常にけっこうなことだと思うのであります。かっての理化学研究所に対してわれわれ非常なあこがれを持っておるのでありますが、その後、周囲の状況がだいぶ変って参りまして、いろいろの研究所がたくさんできて参りました。従って、そういう研究所とにらみ合せるということが幾分必要になってくるじゃないかという議論もございますが、私は幾分の重複はやむを得ない、そういう意味におきましてこれが非常に——非常にという言葉はちょっとまずいかもしれませんが、少くとも成績を上げるのにはある程度以上大きくなくてはならない、それも小さければ意味がないじゃないかという感じでございます。今度二億五千万円のお金が出るということになっておりますが、それか果して妥当な数字であるかどうかということは、私専門が違いますのでよくわかりませんか、できますならば、第一期、第二期、第三期と逐次そういう金額も増額さしていただいて、今私が申しましたような理念が貫かれる研究所になることを希望しておるわけであります。  で、かつての理化学研究所と申しますのは、だいぶ批判もございますけれども、今申しましたような意味においては、相当の実績を上げてきたと存じます。さらに大学研究者が兼任となりまして実験室を持ち、従って、大学のよい卒業者がどんどんと理化学研究所に残る、大学に残るよりも理研に残りたいという時代がございました。従ってそういう人たちが第一線の研究者になりまして、りっぱな業績を上げたのであります。御承知の通りに、現在の日本の学界における第一線の研究者理研関係のあった者が非常に多いということからお考えになりましても、かつての理研が重要な役目を演じたということは、御理解になれると思います。私はそういうように大学との間の関係も自由につけていただいて、そうして理研にいるといい研究ができるんだ、しかも協力態勢のもとに、どんどんとそれを実施するところまで持っていくことができるんだという喜びを持って、よい頭脳を持った人たちがこれに参画できるような研究所を作っていただきたいということを心から希望しておるのであります。  しかし、これに開発業務がついておりますが、これは私は、理化学研究所そのもの使命とは幾分違うように思うのであります。しかし、こういうものが日本に欠けている現状でございますから、こういうところでその業務を見られるということについても、私は賛成したいと存ずるわけであります。  以上であります。
  25. 齋藤憲三

    齋藤委員長 質疑を継続いたします。前田正男君。
  26. 前田正男

    ○前田(正)委員 この際、茅さんに一つお聞きをしたいと思うのでありますが、理化学研究所を今度作るに当りまして、われわれいろいろと考えた問題は、基礎的な研究というものと応用的な研究というものの間の連絡という問題でございます。この問題は、この一つ研究所で、昔の理化学研究所というものでやっておられたから、できるであろうということはわれわれも考えますが、理化学研究所が、従来の純然たる基礎研究あるいは純然たる応用研究というものの間の分野を明瞭にしないで、一つの総合的な研究を行うということが書いてあるわけでありますけれども、先ほど来お話がありました大学のやっておられます研究官庁がやっておられます応用研究、こういうものとの間の連絡というものは、実は日本では非常に欠けておるのではないかと思います。そういうものは、一つの方法として、理化学研究所としては、あるいはやれるんじゃないかと思いますけれども日本全体として、そういうものはどういうふうにしてやっていったらいいのか、いわゆる理化学研究所みたいなものをどんどん拡大していくべきものであるか、あるいは行政的に科学技術庁みたいなところが、大学がやっておられる研究官庁のやっておられる研究を結びつけていくべきものであるが、あるいはまた一つの構想としては、先ほど岡委員からもお話がありました通りに、官庁研究機関というものは全部やめてもらって、検査と検定だけにして、官庁研究機関というものは全部はずしまして、これを一つ総合研究所に持っていくべきであるか、こういうふうないろんな意見が分れておりますので、日本では非常に困っておるわけなんです。理化学研究所というものは一つのその道であると思いますけれども、この理科学研究所というものを非常に膨大に大きなものにしていって、そういうふうな連絡をすべきか、あるいはここへ人を入れて、しょっちゅう大学の方からもあるいは官庁研究機関からもここへ人が来て、連絡をつけていくようにすべきであるか、あるいは行政で連絡をつけるか、これは非常に困った問題でありまして、率直な御意見一つお聞かせ願えれば幸いだと思います。
  27. 茅誠司

    ○茅参考人 今御質問になりましたけれども、私もそういう御質問を申し上げたい一人なんでありまして、お答えできる人間ではないのでありますが、そういう理念に立ちまして、実は東大の中に生産技術研究所というものがあります。生産技術研究所というのは、よそでできた研究開発まで持っていくというのではありませんで、自分のところでできたものを、どこまでも伸ばしていこう、こういうのでありまして、幾分理念は違うんです。たとえば、東京大学でパラメトロンという研究をやった。これを実際に応用するのには、どういうところでやったらよいかということを頭で考えてみますと、ほんとうを申しますと、こういうものが新技術開発として必ず利益がもたらされるんだということを生産会社ほんとうに知っていてくれればそれで済むのでありますが、現状では決してそういうふうにいっていない。私は、それまでの暫定的措置ではないかと実は思うのであります。そういう暫定的措置がどれくらい続くか私はわかりませんが、会社みずからがそういう新技術の芽を取り上げて、それを育ててくれるという時代が来るまで、とにかく相当期間、何らかの機関がなければならない。この理化学研究所がそういうたくさんの研究者を持ち、たとえば現在おられる研究者でもってそういう業務をお引き受けになったとするときにどうかといいますと、私は、これはなかなかむずかしい仕事じゃないかと思うのであります。これにはやはり相当実務を、実際の工場というものの仕事を知っている方がおって、そういう観点からそれを工業化していくということでありまして、経済的な頭のない人たちがそれをやったのではいけない。ですから、結局、たとえば理化学研究所でそういうよそで完成された基礎研究応用並びに生産の段階まで持っていくという仕事は、これは新しくそういうエキスパートを選んでお入れにならなくちゃ非常に困難なんじゃないか。それだけの目標でもってこの理化学研究所というものをお立てになるのでは、非常にむずかしいと思うのであります。やはり理研というのは、自分のところでできたものを自分たちの手でお互に育て上げていくというのが木筋である。しかしそのほかに今のような点をせよとおっしゃるならば、それはやはりそういう方面仕事を新たに始めることは、私がもしそういうふうになったとしますと、なかなか自信は持てないのであります。私にも明快な返事ができないのは残念でございますけれども、それは現在の日本全体の研究者の悩みの一つでありまして、どうしていいか、実はみな研究者が迷っておる段階だと思います。そういう意味でざいますから、こういうところでそういう仕事をするのだということをとにかくお始めになって、そこにすぐに失望したりなんかしないで、ある程度時間をかけ、金をかけて、むだになってもいいから、おやりになっていただいて、そうしてその結果を見てまた考えるということが必要なんじゃないでしょうか。私は自信を持った御返事ができないのが非常に残念であります。
  28. 前田正男

    ○前田(正)委員 大体今のお話である程度の問題点はわかったのですが、さっきの質問の中で、もう一つの問題点は、今ちょっと私も言いましたけれども、要するに、今度はこういう理化学研究所とか大学の付置研究所とか、それから官庁の、通産省とか各省の持っている研究所、要するに両方とも国費を使っている。この理化学研究所も、全額国費ではありませんけれども、要するに国費を使って研究をしておる問題について、この問の調整といいますか、連絡というか、これが実はなかなかできかねているのじゃないか。この理化学研究所大学研究と一般の研究との間をつないでもらえばいいでしょうけれども、しかし理化学研究所自身は官庁研究の方とはあまり関係がありません。理化学研究所自身は、さっきからの質問で、大学の先生方も兼任していただけるようでありますから、そうなると大学との間の連絡ができるけれども、一般の官庁研究との問の連絡はつかない。これは理化学研究所期待することはむずかしいかもわかりませんけれども、要するに官庁研究機関大学研究機関——これは科学技術庁もそれを期待しておったのでありますけれども、御承知の通り、科学技術庁の業務からは大学研究というものは除くことになっております。今度は科学技術会議というものができて、一応文部省と科学技術庁の問は、文部大臣と科学技術庁の大臣が入って、内閣である程度調整いたしますけれども、これは基本の総合的な問題でありますから、そういうこまかい実際の具体的な研究という問題には入ってこない。従って、たとえば予算の問題とか研究の方針の問題とかというようなことになってくると、科学技術会議ではあまりこまかく取り上げないと思うのです。しかしそれは実際は研究をやっておられる同士では、お互いに非常に関係があるのじゃないか。大学の付置研究所のやっておられるようなことと官庁研究機関が基礎的な部門までやっておられることとは、ほとんど一致しておる部分があるのじゃないか。あるいは今度の理化学研究所のそのように研究されることも、また一致しておる部分があるのじゃないか。この三者のいわゆる一致すると思われる基礎から応用のちょうどその境目くらいのところの研究というようなものは、実はこれができても、私はほとんど連絡なしにいくんじゃないかと非常に心配しておるのであります。その中で特別に重要な研究は、近く重要研究促進法というようなものを国会に提案して、それによってたな上げされておる資金を使って、核融合反応とか、こういった特別なものは調整がつくと思いますけれども、一般的な日常の研究というもの、たとえば機械工業とか、あるいは化学の方の工業の問題とか、こういった一般的な問題、しかも現在の日本産業と非常に関係の多いもので基礎的なものは、ほとんど連絡なしに今やっておるのじゃないかと思うのです。私はこれをダブってやることは決してむだでないと思いますけれども、しかし同じダブってやるにしても、お互いの今まで学んだ研究の知識というものは、単に学界の公開された席で公表してお互いに相談していくという程度でなしに、すでに研究の段階においても連絡調整ができなければならぬのじゃないかと非常に感じるわけです。ところが、現在国費を使うものに対しての調整をするということがはなはだ困難なような段階なんです。これに対して、一つ茅さんから率直な御意見を伺えれば幸いと思います。
  29. 茅誠司

    ○茅参考人 全く同じ悩みを私も感じておりまして、御返事ができないのははなはだ残念でありますが、学界等だけではとてもそういうことはできないということも、私も実はそう思うのであります。しかし、少くとも学界等はこういう問題について考えなくちゃいけない。たとえば学術振興会というものもございますが、その学術振興会でたとえばある一つのトピックを取り上げまして、それで官界、学界、大学、諸官庁研究者民間研究者が全部入りまして、そして、その間で技術振興をはかっていくという制度がありましたが、こういう一つの融通性を持った何かがなくちゃいけないだろうということを私ども学術会議を作るころから考えておりまして、学術振興会がそういう役目をすることができないものだろうかということを考えておったのであります。不幸にして、幾分はやっておりますけれども、ほとんど微々たるものでありまして、そういう役をしておらないのであります。少くとも今申しましたような融通性のある何か特殊なものができまして、そういう特別な問題につきまして相互連絡をはかる、そして、その間の技術等についてお互いに協力できる体制を作るべきじゃないかと思うのであります。先ほどおっしゃいました官庁間の金、つまり予算が他の官庁に行くことができないというのは実はガンでございまして、そういうことも、何かそういうものができますと、そこにプールしまして、それを通してある程度その困難が除かれるのじゃないかと思います。御承知の通り、最初に原子力の予算が出ましたときに、学術振興会を使いましてそういうことをやったのでありますが、大へん不十分でありましたけれども、ああいうものをもっと強化して、何か今おっしゃったようなそういうことができないものであろうか、これはちょっと考えただけのことでありまして、自信を持ってお答えできないことはまことに残念であります。
  30. 岡良一

    ○岡委員 時間もありませんので、一、二点だけお尋ねいたします。まず村山さんに、さっき私の瀬藤さんにお尋ね申し上げたことに関連してでございますが、三点お尋ねいたします。  今、茅さんからのお話にもありましたが、私はやはりかっての理研が、コンツェルンとして富を生み出し、現在の有数な研究者を生み出し、業績を生み出したということで、当時私ども学校を出てすぐ自然科学に携わった者としては、メッカのような感じをもってあれを迎えておったわけであります。その当時と今とは、日本のあらゆる条件が違うと思います。資本主義が上向期にあるときと、戦争という大きな虚脱の中でまた再びかけ上ろうとしておる時期とは違いますが、事、科学技術に関する限りは、しかしそれらの条件に左右されないで、いろいろな圧力をはねのけるはっきりと明確な強い科学技術振興方針は持たなければならぬ。こういう観点から私どもやはり総合理化学研究所というようなものにこの理化学研究所を発展させることが、国会の与えられた任務ではないかと思う。ただ、これは茅先生も御指摘のように、今すぐやろうと思ったってできません。これは、四億余りの金はあるか、事実上の運営費は一億五千万円程一度である。これではなかなか私ども期待するようなものになりませんが、ステップ・バイ・ステップにやって、総合的な理化学研究所を打ち立てていくということが、私ども国会としての理化学研究所を育てるための大事な心がまえではなかろうかという私どもの所感に対しての御意見。  いま一つは、まずステップ・バイ・ステップにやるといたしまして、今申しましたように、他の諸官庁にまたがっておる。きわめて重複をし、むしろ目捷重点がそちらに向けられておるかのごとき予算措置さえも講じられておるような諸官庁にまたがる試験研究所については、なるたけこれを整理して、一本にして、できるだけ乏しい金や物や人を一本にまとめていくということが、ステップ・バイ・ステップの第一歩ではないかと私は考えるわけであります。  いま一つは、なるほど日本がおくれを立ち直すためには、——二十九年が四十八億円、三十二年が百四十億円の技術援助の外貨支払いになっており、四年通算で三百六十億を支払っておる。なるほどおくれを取り返すためには、先進国のすぐれたものを学ぶべきことは当然であると思いますが、しかし、この現状を放置しておくということは、やはり日本の自主的な科学技術振興のためにはとるべき道ではない。何らかこれは規制をして、その金をむしろ国内における科学技術振興に振り向けるというような方向に国の施策を打ち出さるべきではないか。  この三点について、村山さんの率直な御意見を聞かせていただきたい。
  31. 村山威士

    村山参考人 全部同感であります。今度の新理化学研究所総合研究所として使命を果すには、あまりに小さ過ぎると思います。だからもう少しうんと大きくして、各分野の研究者を集めて、一大総合研究所になることが望ましい、こう考えます。  それから今の技術導入の外貨の問題ですが、これは先ほど瀬藤さんからお話がありましたように、非常なおくれをとっておる日本としては当分はしょうがない、こういうことは言えると思います。しかし、いつまでもそういう状態ではいけないのですから、順次日本科学技術を実際化していく。そうして先ほど申し上げましたように、日本国内はもちろん、技術輸出でもできるようなところまで持っていかなけりゃいけない。そうすれば、順次技術導入の外貨の消費額もだんだん減ってくるんじゃないか、こう考えております。
  32. 岡良一

    ○岡委員 茅先生にお尋ねいたします。これは非常な仮定でありますが、理化学研究所ができた、そこで人工衛星を作ろう、こういうような計画がかりにあったとした場合、これは言うまでもなく天体物理学だ、電子光学だ、そら熱に耐える金属材料だと、各方面研究成果が人工衛星に集約されていく。そこへいくと、今度は基礎研究という問題が非常に問題になってくる。そこで、私どもが今度の理化学研究所というものについての態度をきめる場合に、大きな条件となり、前提となるものは、日本の現在の基礎研究というもの、特にこれは大学における基礎研究というものが、どういうふうな処遇を国から与えられておるかということがやはり不可分の問題になってくるわけであります。先生は東大に御就任になったのでありまして、その間長い間いろいろと現実を御応じなので、私若干お伺いしたいと思います。  まず第一点は、現在の大学研究室、特に自然科学部門の研究室はこれでいいのかということであります。これは、定員は教授を含めて四名ということになっております。あるいは大学の一講座あたりに二百十万円程度ですか、今年はやっと二〇%ばかりふえたようですが、それにしても教授の自由に使用し得る金額は、二十万円にも満たないものではないかと思う。定員が少い、あるいは予算が足りない、先生の処遇はどうか。実は理工科の停年に近い先生方の所得を若干調べてみましたが、これも文官のレベルに比べて非常に低い。六万円から五万円の間だ、そういうような状態である。それからまた施設はどうか。これも国会の方で調べさしてみると、東大の工学部——先生のおひざ元で、とにかく戦後の新しい目立った施設というものは、総設備の一%余りじゃないかなんていうことで、明治、大正時代のものが七三%という数字が出ている。そういうような状態で、処遇は悪い、人は足らない、そうして設備は古いというようなことで、ほんとう基礎研究というものが進むのであろうかということを、そういう統計の数字を見て私は実に寒い気がするわけです。問題は、理化学研究所を作り、これを将来総合研究所にまで持っていこうとするなら、やはり国民全体の自然科学の水準を上げなければならぬ。特に若い世代の人たちが入って、基礎研究でがんばってくれる受け入れ態勢、基礎研究の分野というものも考え、そうして応用化、工業化への結びつきを、この理化学研究所でやるというふうにして、全体総合された姿でなければならぬと思う。私ども理化学研究所についても予算が少いということで話をしておるわけですが、一方の大きな基礎研究分野というものが、まだまだ忘れられておるというような感がしてしかたがないのです。この点、先生は直接タッチしておられますから、率直に先生の立場からの御所見を聞かしていただきたいと思います。
  33. 茅誠司

    ○茅参考人 全く私は寒心にたえない現状だと思っております。実例を申しますと、私自身の研究室は、助教授一人、助手二人、大学院の学生その他合せまして全部で十五、六名おります。それに対して、自分で勝手に使える研究費は、一年に大学から来ますのは二十万円にならない程度でありますが、文部省の科学研究費等を入れまして約四十万円くらいになっている実情であります。大学の昨三十二年度の実験講座の経費が九十七万円でございます。戦争前は、昭和十一年から十四年の平均が約二万円だそうでありますが、現在に直しますと三百七十万円、それが現在は九十七万円、約百万円でありますから、あと三倍半しませんと戦前のレベルまではいかない。今年ふえましたのは二〇%とおっしゃいましたが、あとで三%引かれましたから、十六万四千円ふえただけでございます。本年は九十七万円、これを簡単に申しまして百万円といたしますと、三カ年計画で戦前の三百七十万円にしていただけば、まず重点的でない研究はできる。つまり普通の研究はできよう。それに特に金の要る研究に対して研究費を、つまり文部省の科学研究費といったようなものを重点的にやるというのは、そういう段階においてすべきじゃないかというので、今年八十万円予算をふやしていただき、来年九十万円ふやしていただき、再来年百万円ふやしていただきますと、三カ年で三百七十万円になるというので、ずいぶんいろいろとお願いして回ったのですが、ついに十六万四千円ふえたということになってしまったわけであります。私は自分大学におりますので、こういうことを申すのは大へんに心がひけるのでありますけれども、何といいましても研究者の大部分は大学におる、その大部分の研究者研究が、能率よく行われるようにしていただかなければならぬ。つまり研究者に働きよい場所を与えていただくのが一番大事だと確信しておったのでありますが、どうもその点がさっぱりよくならない。先ほどおっしゃいました通りに、研究者の待遇というのは、一般公務員に比べてどうかは、私よく詳しくは知っておりませんけれども大学教授で停年まぎわになっていただける月給が、諸手当、つまり税その他を引きますと五万五千円くらいになるのが、これが大学教授としての最高給であります。昔は講座を担任している者には講座料といったようなものとか職務俸とかいうものがありまして、幾分よかったのでありますが、今はそういうものがございませんので、その程度であります。助手階級が大体二万円ないし三万円くらいの収入になっております。どうしても一家を養っていくのには、何かはかに適当な仕事をしないとやっていけない。そこに持ってきまして、今の研究費が足りないというので、なかなか思うような研究はできません。しかし、私は今申しましたように、大学研究費をふやしていただきたいと思うと同時に、御承知の通りに、近代の科学は巨大設備が必要になって参りましたので、分散していてはいけないということだと思うのです。現在のように大学は、短期大学を合せますと四百九十九とかいっておりますか、そういうふうに分散しており、文理大学のごときは、今年の物理の卒業生は二人であったとか三人であったとかいうようなところにりっぱな設備をしようと思っても、私はできないのじゃないかと思います。先生も分散している、設備も分散している。従って、教育はしっかりしたものができませんから、出る卒業生の質も悪いということになります。今年理工系の卒業生をふやせという要求がございましたが、質の悪い卒業生をふやしたところで何にもならないと思うのであります。ぜひ質をよくした上で数をふやすということ、もし二段階であるならば、そういうやり方でやっていただきたいと思ったのでありますが、どうもそういう点まだ緒につかないのではないか。今度の文部省の予算等を見ますと、やはり新設があります。新設する必要はないんじゃないかと思うのでありまして、既設のものを拡充して、よくしていくというのが一番重要だと思うのでありますが、新設等もございます。そういう点できるだけ新設を避けて、古いものを——東大が古いから言うわけじゃありませんけれども、既設のものをなるべくよくして、そうして集中的な設備をしていくのでなければ、有効に使えないんじゃないかと思います。私はこの委員会等でも、大学がどんな状態にあるかということをぜひ知っていただきたい。ただしかし、私がここで申し上げましたのは、ずいぶん悲観的なことを申しましたが、日本の学界の現状は、そう悲観していただかなくてもいい。最近の国際会議等を開いてみますと、外国から来た人が感心して、きたない研究所でりっぱな研究をやっている人が相当あるということを感心しておりますから、研究者の意欲は上っているのでございます。一つ十分費用をかけていただきたいと思うのでございます。
  34. 岡良一

    ○岡委員 私最後に、いろいろお話を承わって、村山さんの科研の経理の実態、茅先生から大学基礎研究実態というものを承わりまして、この理化学研究所法案の審議には、ぜひ一つこの際委員長の方において、大蔵大臣、文部大臣の御出席を要求せられたい。そして十分多角的にこの法案の審議にわれわれは勢力を集中したいと思いますので、そのように一つお取り計らいを願いたいと思います。
  35. 齋藤憲三

    齋藤委員長 ただいまのお申し出につきましては、適当に取り計らいます。  ほかに質疑はございませんか。——なければ、参考人各位よりの意見聴取は、この程度にとどめます。  参考人各位には、長時間にわたり、しかも貴重なる御意見を御発表賜わり、まことにありがとうございました。本案審査に資することきわめて大なるものがあったと存じ、委員会を代表して、私より厚く御礼を申し上げる次第であります。  本日の議事はこの程度にとどめ、次会は公報をもってお知らせいたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後零時十一分散会