運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1958-02-19 第28回国会 衆議院 科学技術振興対策特別委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年二月十九日(水曜日)     午前十時二十一分開議  出席委員    委員長 齋藤 憲三君    理事 秋田 大助君 理事 有田 喜一君    理事 菅野和太郎君 理事 中曽根康弘君    理事 前田 正男君 理事 岡  良一君    理事 志村 茂治君       須磨彌吉郎君    山口 好一君       石野 久男君    岡本 隆一君       佐々木良作君    田中 武夫君  出席国務大臣         国 務 大 臣 正力松太郎君  出席政府委員         科学技術政務次         官       吉田 萬次君         総理府事務官         (科学技術庁長         官官房長)   原田  久君         総理府事務官         (科学技術庁企         画調整局長)  鈴江 康平君         総理府事務官         (科学技術庁原          子力局長)  佐々木義武君         総理府技官         (科学技術庁調         査普及局長)  三輪 大作君  委員外出席者         科学技術事務次         官       篠原  登君         参  考  人         (東京大学教         授)      宮本 梧楼君         参  考  人         (大阪大学教         授)      岡田  實君         参  考  人         (東京大学原子         核研究所所長) 菊池 正士君         参  考  人         (工業技術院電         気試験所所長) 後藤 以紀君     ————————————— 本日の会議に付した案件  原子力行政に関する件(核融合反応に関する問  題)      ————◇—————
  2. 齋藤憲三

    齋藤委員長 これより会議を開きます。  原子力行政に関する件につきまして、調査を進めます。  本日は、核融合反応に関する問題につきまして、参考人より意見を聴取することといたします。  御出席参考人は、東京大学理学部教授宮本梧楼君、大阪大学工学部教授岡田實君、東京大学原子核研究所所長菊池正士君、工業技術院電気試験所所長後藤以紀君、以上四名の方々であります。  この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。本日は、御多用中のところ、本委員会調査のためわざわざ御出席下さいまして、まことにありがとう存じます。厚く御礼を申し上げる次第であります。御承知のように、去る一月二十四日には米英両国核融合反応研究成果発表があり、将来核融合反応平和的利用も可能であるという確信を持つに至ったと伝えられておるのであります。わが国におきましても、先般の原子力シンポジウムにおきまして、核融合反応に関する諸論文の発表があり、ようやくこの研究に対する世間の注目を集めて参ったのでありますが、来年度においては、わが国独自の研究成果を期待し得るのではないかと考えられるのであります。このときに当り、本委員会といたしましては、原子力平和利用の将来に資するため、核融合反応研究に深い関心を持つとともに、この研究の芽ばえを均衡のとれた健全なる方向へ育成する必要を痛感するのであります。従いまして、本日は参考人各位より、核融合反応研究現状とこれに関連する各種の問題について、それぞれの御研究立場より忌憚のない御意見を承わり、もって科学技術の振興に資したいと考えましてここに各位の御出席をわずらわした次第であります。何とぞ隔意ない御意見の御発表をお願い申し上げる次第であります。  なお、御意見は約三十分程度におとりまとめを願いまして、あとは委員諸君の質疑により、お答えを願いたいと思います。それでは、まず宮本参考人より御発言を願います。
  3. 宮本梧楼

    宮本参考人 宮本梧楼です。簡単に核融合反応の問題についての参考になるようなことを少し申し上げたいと思います。プリントをお渡ししましたが、お配りしていただければ大へんけっこうだと思います。  原子エネルギー利用が非常に重要だということはもうもちろん御存じのことでありますが、差しあたり二つ方法考えられます。一つは重い原子核、たとえばウランというようなものを分裂させるというような方法で、その次はここでも問題になっております核融合、たとえば重水素というものを結合させるような問題が出ております。この融合法も時間的には前から考えられていたのですが、しかしウラン分裂なんかは先に利用されるようになりましたが、しかし融合法十分成功見通しがありますし、相当利点も多いように考えられます。  では、この融合反応利点はどんなものかということをまず考えてみますと、ウラン分裂炉と比べますと事情がはっきりいたしますが、まずこのウラン分裂炉なんかでは、すでに諸外国指導権をとられてしまっておりまして、たとえばこちらで何かやろうとしますと、すぐに外国特許にかかります。あるいは技術導入というもので向うのものを入れなければならない。そういう不便が相当あります。日本で根本的な大きな改良なんかをしようと思いますと、日本技術家は非常に優秀なんですが、それにもかかわらず効果が割に少く、非常に困るわけです。部分的な改良だとか特別な技術面での改善はもちろん行われておりますし、これらも期待するわけなんですが、しかし融合反応炉というようなものを想像しますと、こんなような束縛はほとんどなくて、自由に平等の立場で出発できるという強みがあります。  次に、燃料について考えてみますと、融合炉ではおもに重水素を使います。ウランの非常に少いわが国でも、輸入する必要もなく、自由に使えるという利点がまず考えられます。海の水の中には非常にたくさんの水素があります。その七千分の一ぐらいは重水素ですから、それを取り出せば十分使いものになります。たとえば、現在世界の使っているエネルギーの千倍ぐらいずつ使っても、優に十億年間保つというふうに言われている程度なんですが、この数字は当てにならないにしても、相当長い間十分使いものになるということは言えると思います。  その値段についても、値段はあまりはっきりいたしませんが、ウラン一グラムをかりに十五ドルぐらいとしますと、重水素ガスは大体十五円、ドルと円ぐらいの違いがありまして、大体三百六十分の一見当値段なんであります。出力の方も、完全にニュートロンまで全部使い得たという理想的なパイルを考えますと、ウランの場合は一グラムが二十二メガワットパーアワーぐらいでありますが、重水素の場合には九十七メガワットパーアワーぐらいになりまして、大体数倍になって参ります。従って、同じエネルギーをとるのに、燃料の点からいえば重水素の方が千分の一以下ということになります。  また次にいいところとしましては融合炉では融合の灰というものがほとんどありません。わずかに中性子による二次的な灰がありますが、しかしそれも大したことはありません。中性子までほかに使うというようなことのために、有害な灰というものは非常に少くなります。  さらに四番目に、災害のときにも危険が非常に少いように思います。というのは、ウランの炉ですと、燃料全部を炉に入れまして連鎖反応させるというような行き方なんですが、融合炉ではごく少量の水素を入れまして、それを完全に反応さして次に進むという行き方なんです。たとえば、一ミリグラムずつ水素を入れまして、一ミリセカンドの放電で完全に反応させるという仮想的な炉を考えますと、それは優に二億五千万キロワット程度の大きな炉になりますが、想像したそんな大きな炉であっても、ミリグラムぐらいの燃料しか入れませんから、被害はあっても割合少いだろうと思います。もちろんこんな炉で災害があっては困りますが、かりにあったとしても、少いだろうと考えられます。  最後に五番目として、利用の面でも、融合炉というようなものでしたら、熱を通じないで直接に発電するというようなことも割に楽ですし、船舶とか大きい飛行機なんかに、直接に推進力にするということも割に楽のように考えられます。もちろん動力にするということもできますが、こんな利点考えられるわけであります。  しかし、利点はありますが、欠点ももちろんたくさんあります。たとえば、原子核一個当りの出力としては百万ボルト見当ミリオン・エレクトロン・ボルド見当出力がありますが、しかし、それを出させるためにキロ・エレクトロンボルト程度エネルギーをあらかじめ貸し与えてやらなければならないわけです。結局数百倍になって返って参りますから、差引すれば得になりますが、一度相当大きいエネルギーを入れてやらなければならぬということは、相当困難なことであります。もっと大きい困難なことは、まだ完全には実用になる段階にはなっていないということです。技術面では非常に多くの問題が残っております。超高温とかあるいは特殊な加速器によって反応を起させるというような、いわば基礎研究段階で、そのために非常に大きな金額が要る。それが欠点と言えば非常に大きな欠点であります。しかし、いずれにしても、欠点よりも利点の方が多いように思いますから、各国でも競ってこの研究を行なっている現状であります。  そうしますと、各国では一体どんなふうにやっているかという現状なんですが、これは多くは秘密のうちに研究されておりまして、あまり公表されていないんです。しかし、いずれにしても、まだ基礎研究段階だというようなことは確かですが、しかし成功も時間の問題で、いずれは成功するだろうということは言えると思います。わずかにわかったことを申し上げますと、たとえばアメリカなんかでは、戦後間もなくこのような研究相当大きく行われておりますが、一九五一年ごろにはシャーウッド計画とかマッターホルン計画というような名前で組織化されまして、聞くところによりますと、数百億ないし数千億円の年間予算で、人も数百人以上の研究者がこれに携わっている、そう聞いております。シャーウッド計画としては、ロス・アラモス研究所のタック、テーラーというような偉い学者が、またリヴアモアーのカリフォルニア大学放射線研究所では、ヨーク、コルゲートというような優秀な学者が参加しました。名前で言いますとコロンブスというような名前試験装置だとか、パーハプサトロン、これは多分できるだろうというような意味らしいのですが、そんな装置を試作しているわけであります。コロンブスというのは、普通の長い管に重水素ガスを詰めまして、管の中に電極を置いて、それに非常に強い放電を起させる。ピンチ効果というものを使いまして、ガスを非常に高温度に熱し、しかも壁から離して数百万度で百万分の数秒というぐらい時間を続かせまして、中性子の発生を認めているわけであります。新しいS4というような形では、この縦方向磁場を重合しまして、ピンチを安定化して時間を延ばすという試みを行なっております。パーパップサトロンというようなものでは、原理は同じようなものですが、形がドーナツ型の丸い格好の骨を使いまして、初めは絶縁容器でしたが、新しくは金属——アルミニューム容器なんかを使いまして、重水素ガスを詰め、電極のない、無極放電というようなものを行わせます。これもS3というような新しい形では、磁場を重合しておりますが、ちょうどこれは先日発表されましたイギリスのゼータとほとんど同じ形式を踏んでおります。このほかに、オークリッジ、ニューヨークというようなところでやはり融合反応研究が行われておりますし、さらにマッターホルン計画というようなものでは、プリンストン大学のスピッツア、これは天体なんかで非常に有名な方ですが、ステラレーター、これは星と加速器一緒にしたようなものですが、ステラレーターというようなものを作りまして、それは一九六〇年ごろには完成するということが伝えられております。内容は全然わかりませんが、想像するところでは、東大なんかで提案されています誘導ピンチというようなものを使ったものと同じじゃないかと思われる節があります。ほかに海軍の研究所でも衝撃波なんかで大いに研究がなされておりますし、民間の研究所でも、たとえば石油会社というようなところでは、非常に大きな予算で、ウラニウム研究なんかも差しおきまして、その次の段階融合反応研究を行なっております。  英国ではハウエル研究所ゼーターというようなものが、これは予算は三億円くらいだったと聞いておりますが、出力はゼロではありますが、ガス中の放電で五百万度ぐらいを千分の数秒間保ちまして、熱核反応——ただ融合反応でなく、もっと厳密な熱核反応による中性子を初めて検出したもようなんです。これは将来に非常に明るい見通しを与えていることは御存じだろうと思われます。ほかにオルダーマストン、これは電気力研究所のようですが、ゼータのモデルともいうべきセプター、ゼータよりもっと小型なものですが、そんなものを作って研究を進めております。  ソ連の実情はどうも私たちにはあまりわかりませんが、しかしまつ先に数百万度の高温中性子を検出して、そのメカニズムがどうだというようなことも言っておりますし、また一九五六年にクルチャトフ——ハウエル研究所を訪ねたクルチャトフというような学者発言をしまして、英国の学界を非常に驚かしたというようなことから見ましても、ほかの自由諸国に劣らない程度には進んでいるんじゃないかという感じをいたします。学術的な発表相当たくさんありまして、だいぶいいものが出ておりますから、やっていることも相当いいだろうという想像をする次第であります。  このほかに、小さい国ではスエーデン、ドイツ、フランスというようなところでも相当行われているというように聞いております。  では、翻って日本現状はどうかと申しますと、理論的には日本でも相当進んでおります。しかし、実験の方ではまだあまり進んでいないように思います。たとえば、理論的方面では、京都大学を初め、非常に多くの研究者によって天体核融合反応研究というもの、あるいは中間子によって反応を起させるという可能性検討なんかが行われておりますし、東大その他では新しい着想とかその実験計画理論的な検討というようなことが行われております。全国各場所で原子核反応だとか放電のいろいろな研究というようなもので、融合反応に関係した見るべきものがたくさんあります。しかしまだ理論的なものがおもで、計算機械によって非常に大きな数値計算が必要なんですが、それはほとんど進んでおりません。実験方面では先ほどちょっと触れましたように、あまり思わしい結果が行われておりません。わずかに電気試験所とか大阪大学というようなところで放電実験が行われております。これはほとんど研究費もなく、設備もないというところでこれだけの成果をあげられたということは、非常に感心していいことなんですが、しかし、正直に申しますと、ほんとう研究はこれから始まるものであって、今まではほんとう予備実験程度じゃないかというような感じがいたします。  では、そんなむずかしいものであれば、できる可能性があるかないかというようなことが問題になりますが、おそらく見通しとしては近くできそうなんです。その技術的な方面見通しを少し申し上げますと、原子核、たとえば重水素というようなものを融合させるわけなんですが、そのときにクーロンの反発力というものがありまして、あらかじめ相当エネルギーを与えないと反応が起きません。しかし反応が起ればエネルギーは十分回収できるのですが、起るまでに相当エネルギーをつぎ込んでやらなければなりません。このためにいろいろな方法考えられますが、たとえば、第一番目に非常に高温度に加熱するということが考えられます。しかしこれは加熱しただけではごくわずかな量しか融合しませんから、加熱したものをどうしても非常に長い間保つということが絶対に必要になります。技術的な方面では、この保つということにだいぶ重点が置かれているようです。その加熱には電気放電であるとかあるいは衝撃波というようなものが普通考えられております。問題は今言った高温度のものをいかにして長く保つかということなんですが、長く保つことができれば、ほとんど成功したと考えていいように思います。たとえば密度が十の十五乗から十六乗程度、一立方センチメートル当り、重水素のあるガスです。これは普通実験に使う標準的な程度なんですが、そういうような量で百キロ・エレクトロンボルト、これは温度にしますと十の九乗度で、十億度ぐらいですが、十億度ぐらい熱したとしましても、平均して一つ原子核反応するまでには十秒間ぐらい飛び回らなければなりません。距離にいたしますと、地球を一周するほどに飛ばなければ、反応が平均して起きないという程度なんですから、相当長い時間保つということが必要になります。これらの非常に高温度ガスを保つのに足るような、溶けないような物質の炉がないものですから、どうしても物質でなくて電磁場の壁を作って閉じ込めておかなければならないのです。そのためには、多くの場合は放電のときのピンチ効果といいますが、放電が非常に小さくなりまして、壁から離れて放電が起きるという、そういうピンチ効果を使います。しかし、電極を入れた直接の放電によるピンチ効果というようなものは不安定であるということが実験的にも理論的にも知られております。これを安定化する方法というようなものが検討されております。たとえば、先ほど発表されたゼータというようなものでは、縦の磁場をつけ加えております。そのほかに金属の壁を使いまして、鏡像反発、鏡のような作用で、中の熱いガスが近づくと壁で反発される性質がありますが、そんなものを使いまして、ゼータなんかではある程度成功をおさめております。ある程度成功というのは、時間を長くするということが必要なので、今までの常識の千倍程度の時間まで延ばしたという成功をおさめております。このほかわが国でもいろいろな提案がされておりますが、不安定なものを安定化するというのではなくて、初めから安定なピンチ放電を起させる、そういうようなものが提案されております。たとえば、誘導ピンチ効果空間ピンチ効果というようなものを使う方法が提案されております。そのほかの方法もいろいろと考えられておりますし、外国でもこれらについて発表はありませんが、おそらく秘密のうちに同じようなことをやっておるんじゃないかというような感じはいたします。二番目の、そのほかの方法としまして、超高温によらなくてもエネルギーを与えればいいのですから、加速器なんかでイオンを繰り返し作用させまして、衝突しそこなったものを何べんも何べんも当てて衝突を起させるというわが国独特のものも考えられております。次にまた中間子というようなものを触媒のように使う方法なんですが、アメリカで提案されたのですが、理論的には日本でも非常に進んでおりまして、すでに日本でも十分検討されております。天体核現象も前に申し上げました通り日本でも相当多くの寄与が与えられております。このような天体核現象ということは直接そのままで地上の炉にするということには向きませんが、しかし炉を作るときの基礎的なデータとして、ぜひともこのようなもののデータが必要になって参ります。結局種々いろんな型が提案されてはおりますが、現在のところは検討が進められているという程度、なんです。ある程度成功は続々出ておりますが、まだ今理論的あるいは実験的な検討段階なんです。しかもその基礎的な研究というようなものがないと、検討するだけにも不十分なんです。さらに独創的な型式の現われる可能性もありますし、これは世界現状なんですが、見通しは非常に濃くて、近くできるというような気はいたします。それも、物理学的な、経済性を無視した実験的な炉でしたら割に早いように思います。しかし、期間を予測するのは非常に危険なことでして、ここで軽々しく言うことではありませんが、憶測をたくましくいたしますと、三、四年を出ずして一応型式の決定を見るぐらいまでのものができるのじゃないかというような感じがいたします。しかし、それを実用するということになりますと、さらに工学者技術者というような者の力に待たなければなりませんが、そのような場合には、そのほかに、大きいものになりますから、社会的とか経済的な種々の制約も出ておりますが、物理学徒である私が軽々しく想像することはできません。しかしウラニウムの炉なんかの実例から見ましても、あるいは時間のスケールが短かくなっているという事実、これは過去のいろんな技術研究成果が全部一緒になりまして、その上にさらに新しい技術が加わって、その技術によって事が進むものですから、時間のスケールが非常に短かくなっております。そういうようなことまで考えに入れますと、おそらくはこの後十年くらいでできるのじゃないかというような感じがいたします。少し前にゼネバの会議で、バーバーという人が二十年以内だというようなことを述べておりますが、おそくともそのくらいまでにはできるというような気はいたします。これらの数字はあまり信用がおけないにしても、核融合反応炉というようなものの成功が、単に時間であるということは間違いないと思います。  それでは日本ではどうしたらいいか、これは貧弱な考えなんですが、基礎的なことをまず進めていただきたいというような感じはいたします。今までわが国では、非常に多くの部門で外国に少しずつおくれていたように思います。で、多年にわたって、明治以来ずっと技術導入あるいは技術提携というような名前向う技術を買い入れまして、非常に多くの特許料を払いまして、不自由な、大へん不利な立場にあったように思います。これにはいろんな事情があると思いますが、融合反応利用というようなことについては、このようなあやまちを犯すことなしに、十分な対策を立てるべきだと考えます。いずれにしても非常に追ったことでありまして、緊急を要するものですから、数年たって様子を見てからというのではもうおそいわけです。今からでも少しおそいような気はいたしますが、しかし全くの手おくれというわけではありません。進め方次第では十分成功すると思います。この融合反応研究ということは非常に新しい領域でして、現に研究段階にあるということは申し上げた通りなんです。従って、ある独創性のあるものを入れるというようなことももちろん必要ですし、それとともに、十分な基礎研究がなければ完成しない、これははっきり申し上げていいことだと思います。基礎研究といっても、融合反応は非常に大きな設備を要するのであります。今まで基礎研究といいますと、研究室のすみで、こそこそやるようなものを想像されがちなんですが、非常に大きな設備を要するというようなことで、それが非常に欠点ですが、これを何とか克服していかなければならないと考えます。資源にも乏しく、日本は国費もあまり豊かであるとは思いませんが、貧乏な日本であればこそ、一そうこのような研究、そうして早く完成するというようなことが必要だ、そう痛感いたします。  その対策なんですが、基礎研究と私今言って参りましたけれども、これには二つ意味を持っておりまして、一つには現在大学なんかで行われているような融合反応関連のある基礎的な研究です。たとえば原子核反応であるとか、加速装置であるとか放電現象であるとか、あるいはプラズマの物理学、材料・真空工学というようなものの理論実験、これを純粋基礎研究とかりに呼んでおきますと、こういうような方面、もう一つは、基礎研究ではありますが、融合反応炉に直接関連のあるような基礎研究、たとえばセータだとかステラレーター、そういうものを作ってみる程度研究、あるいは非常に大きい規模の放電であるとか、大きい規模の加速器、こんなような、直接に関連した基礎研究との部門があるわけなんです。それぞれの純粋研究というものは理論実験とを助成していかなければならないと考えますが、しかし部門も非常に多いですし、先ほど言ったように相当金もかかることですから、施設としては現在の大学とか文教施設というような場所でやるにしても、予算規模がそのままでは困難だと思います。かりにそのような予算の中でやりくりをして重点的に集中したとしましても、融合反応の部分だけ発達しても、ほかの方が非常に圧迫を加えられるというようなことでしたら、かえって悪い害が及んでしまいますから、少くともほかの方は圧迫しないようにしておいて、別途に融合反応関係の予算を組まなければならない、そういう感じがいたします。  もう一つさらに大きいものは、大学研究室というところでは無理なものでありますから、どうしても研究所を作って早く研究を進めていかなければならないと考えます。これは全然勝手なことでありますが、新設するということも考えられますし、原子力研究所のようなところを非常に拡張して、そのようなところでされるということも考えられます。しかし何度も申し上げますが、基礎部を十分強力にしなければ何もならないということで、くれぐれも基礎を重視していただきたいということをここで申し上げる次第であります。  それから基礎部門といいますか、研究所を作っても、その中にも純粋な基礎部門まで入れなければ何もならない、ただ普通の意味の基礎だけでは困るので、あまり関係がないと思われる広い基礎まで必要であります。それがないと、ほんとうの直接的な基礎研究は浮き上ってしまいます。かりに浮き上らないにしても、大学なんかでやっておる研究とギャップができたら大へんなことであります。ある程度重複することは学問の進歩に非常に望ましいことでありますが、ギャップができるということは、ここで決定的な欠点になります。だからそういうことまで注意して、研究所というものを考えてほしいと思います。たとえば、研究所を作るとしますと、どんな部門が必要かということをそこに四つあげましたが、基礎研究部、これは純粋基礎研究、独創的な研究を小さい規模でやってみる、ほんとう意味基礎研究。そのほかに計算・理論部、これは理論的な検討のほかに相当大きい計算機が要りますから、計算機の運転のようなものも含んでおります。次に広い意味では基礎研究になりますが、予備実験部と書きましたが、直結した基礎研究、たとえばゼータのようなものが向うでできておりまして、それをそのまま移すのは日本的でないというならば、それにかわる程度の国内の装置を作るという意味であります。そのほかに工学関係の研究部が必要だと考えます。  ともかく、こういうようにして、できそうであるし、やらなければならないということから、次のような結論を私は出したいと思います。それは、核融合反応十分成功見通しがあります。わが国でも、貧乏なわが国であればこそ早く始めなければならない、しかも基礎研究を始めるべきである。一刻をためらって手おくれになるということであれば、また技術導入とか悪い繰り返しをすることになりますから、くれぐれも注意したいと考えます。そのためには具体的に、一つには現行の大学とかいろいろな研究所がありますが、その研究所で関係した基礎部門を別口で大きく助成するということ、もう一つには研究所を作って大きい型の準備研究を始めてほしいということであります。  御清聴を感謝いたします。
  4. 齋藤憲三

    齋藤委員長 次に岡田参考人より御発言を願います。
  5. 岡田實

    岡田参考人 私大阪大学岡田でございます。ここにプリントを差し上げてございますが、それは昨年九月に私が執筆いたしたものでありまして、その後情勢がだいぶ変っておりますから、あとでつけ加えさせていただきますが、今、宮本参考人から一般的なことをいろいろ御発言がありましたので、私がここに書いておりますことも相当重複しておりますので、その点は省略いたしますが、この融合反応は資源が無尽蔵に得られて、またその分布がどこにもあるというような利点がありますことと、燃料費が非常に安い、エネルギーの得られる量が大きい、放射性の灰が出ない、それから直接発電の可能性分裂炉に比べると大きい、それから暴走の危険が少いというような点が、分裂反応炉——現在の原子炉よりもはるかに有利な点だろうと思います。そこでそれをどういうふうにして実現するかということは非常に問題でありまして、ここに三つばかりの方法考えられておりますけれども、現在の段階としましては、大電流放電によってスタートをさせる、つまりプラズマを作って、そこで最初のエネルギーを出して、それをさらにディヴェロップして、発展さして反応を継続させるという方にいくべきだろうと思います。従って、現段階では大電流衝撃放電、大電流を通じて放電させる、その方法研究のまず正道といいますか、ロイアル・ロードといいますか、そういったところにあるのでないかと思います。各国研究いたしておりますのも、いろいろな分野に属しておると思いますけれども、融合反応についての研究結果が発表されております大部分はこの大電流衝撃放電によっておるわけであります。  ここに表を掲げてございますが、(各国核融合装置表は、本号末尾に掲載)ソ連では一九五六年にクルチャトフ発表がありまして、これは直線型の放電管を使っております。蓄積エネルギーは五百キロ・ジュール、コンデンサーの容量は四百マイクロ・フアラット、充電電圧は五万ボルト、そういうふうになっておりまして、X線及び中性子を認めておりますし、到達温度は百万度以上。それから、英国ゼータは先月二十四日に発表されたものでありまして、蓄積エネルギーが、——これは放電管がドーナツ型になっております。誘導によってドーナツの中に電場、——起電力を作りまして、そうして放電させる方法であります。蓄積エネルギーは同じでありますが、最大電流は非常に少い、二十万アンペアくらいしか出ておりません。このドーナツ型ではどうしても、その下の方に書いてあります電位傾度が小さくなる。従って、たくさんの電流を通すのには非常に大きな装置を要するわけでありまして、ゼータでも三億八千万円ですか、そのくらいの装置費を要しているようであります。そして、中性子は一回の放電について三百万くらい、到達温度は五百月度と称しております。それからアメリカのコロンバスのIIというのが、直線型の放電管でありまして、これは最後に書いてあります大阪大学のものと非常によく似ております。充電電圧、それから蓄積エネルギー、ともに同じであります。これでは中性子はわれわれの方よりもずっとたくさん出たことになっております。それから、その次が米国のパーハブサトロンSIIIというやつですが、これは放電管はドーナツ型であります。内容はここに書いてあるようでございます。それからスエーデンのジーグバーンのやられた研究はずっと小さいものでありますが、中性子はかなりたくさん検出されております。  最後に大阪大学のものでありますが、これはあとでごらんに入れますが、(写真を示す)大体こういうふうなコンデンサーを二重に円形に並べてございます。百個並べておりまして、電気容量、充電電圧なんかここに書いてある通りでございます。それで放電管は今大体一種類しか使っておりませんので、ガラスの放電管と金属放電管と、ともに長さが五十センチで、ダイアメーターが二十三センチで、私の方では最近に硬X線及び中性子を検出いたしましたのです。まだ十分検討しておりませんので、数値は非常に低いところ——これ以上低くならないというところを押えております。現在研究を進めておりまして、検討、計算その他の方もやっておりますので、おそらくこの倍ぐらい、温度も四百万度から五百万度ぐらいが至当でないかと思っておりますし、中性子も一けた上るのではないか、そういうふうに考えておりますが、一番低いところを押えまして、ここに発表してございます。何分にも先ほど宮本参考人からお話があったように、私の方の設備は、コンデンサーの方はかなり優秀だと考えております。電圧その他におきましても、たとえばコロンバスに匹敵する。スエーデンその他のものよりも、直線型としては大きく出ておりますから、そういう意味相当実験はできると思いますけれども、計測装置はほとんどございません。全部借りものというような貧弱な状態であります。ゼータが三億八千万円要しておるものに対して、そしてわれわれの方はわすかに五百万円機関研究費をいただきまして、それでまかなっておるような次第であります。半分以上は借金しておりまして、もし、あと金が入らなかったら、首が回らなくなると思います。しかし、結末としては非常にはっきりした結果が出ておりまして、たとえばX線におきましても、これは五回の放電でちゃんとそのX線の透射写真を出しております。ソ連のクルチャトフのX線を認めたのは、多少エネルギーの低いところでやっておりますけれども、百回ぐらいの放電でX線を認めておる。私の方はこれは五回でありますし、これは十回放電してX線の写真をこういうふうにはっきり認めておるわけであります。  そういったわけでございまして、今の段階としては、ある程度外国データに匹敵するようなものが得られておると考えますが、何分にも研究費その他の点で非常に不如意でありまして、十分なことはできないわけであります。それで差し上げましたプリントにいろいろなことが書いてございますが、それは内外の昨年九月における現状をまとめたものでございまして、多少訂正を要しますし、またつけ加えなければなりませんですが、最後の問題点とかあるいは結論のところは大体同じょうに考えます。そこをちょっとかいつまんで申し上げますと——その前に、私どもやっておりますのは、加速による融合と、それから温度が上昇したために起る粒子の活動による融合、そういう二つの要素を含んでおりますが、これをまとめて熱核融合反応というふうに一応研究の対象としてはいっておりますから、ここに「熱核融合反応炉研究の問題点」というふうにしてございます。熱核融合反応理論的にも実際的にも起り得ることは、もうすでに事実が証明しておることで、問題はないと思います。要はその制御、いかにコントロールするかということと、それからエネルギーの発生の方法と条件の吟味、そういった点では理論的には電磁流体力学などの知識を融合炉にいかに適用できるか、大いに研究を要する問題だと思います。第一には高温保持でありますが、これには先ほど宮本さんからお話がありましたように、電磁容器を使うことがどうしても必要だ。それから工学的な点からいいますと、エネルギーの損失を低減して有効な出力を得るようにする。その前にどこまでエネルギーをサプライすれば反応が続くかという臨界実験をやらなければなりません。その臨界実験までは、できれば大学研究室あたりでやった方がいいのでありますが、それ以後の動力炉というような研究になってきますと、これは原子力研究所などが適当だろうと思います。御承知のように、日本には原子関係の有能な科学者がたくさんいられますけれども、原子炉を作るとなると、すべて外国から輸入してくる。第一号も第二号も輸入して、動力炉も輸入するというふうな現状はどうして起るかと私考えますに、工学的の関係のものとして考えますのに、理論と実際、理学と工学とが分離しておるからそういう状態になるのであって、理論的にできるものがすぐに実験に現われるように、工学と理学の関係が並行的に進んでいったならば、日本技術というものがすぐに役に立つ。理論理論技術技術外国に直結しているというような状態では健全な発達はできないのではないか。  それで、簡単に結論を申し上げますと、先進国では非常に巨額の費用を投じ、最高の熱意を持って研究成果を凝視しておりますが、まだ英、米、ソともに完全制御には成功していないようであります。どこがまっ先に成功するかは、これは人工樹屋にも増して人類史上における一大事業であると存じます。経済的、社会的、政治的な影響は非常に大きなものでないかと思います。日本研究は、率直に申し上げまして、多少立ちおくれであろう。しかし、阪大の新しい装置、それから日大とか電気試験所などにも強力な放電装置が新設されようとしておりますから、協力態勢が強化できますと、日本研究陣も決して微力ではない。これを外国に先んじてやり得るくらいの実力は持ち得るのではないかと思います。こういう点は皆さん方の方でもよく御考慮いただきまして、善処していただくことをお願いする次第であります。
  6. 齋藤憲三

    齋藤委員長 次に菊池参考人より御発言を願います。
  7. 菊池正士

    菊池参考人 こまかい点につきましてはすでに宮本さん、岡田さんからいろいろお話がありましたので、私はほとんどそれにつけ加えることはございませんけれども、今宮本さんからも、基礎部門に重点を置けとか、また岡田さんからも、工学部門と理学部門を並行して進めなければならないというような話がございましたので、この点についてふだん考えていることをちょっと述べさせていただきます。これは融合反応を今後進める上にも非常に重大な関係があると思うのです。  まず、はなはだ釈迦に説法みたいで恐縮かと存じますけれども、技術というものはどういうものかといいますと、要するに自然というものをよくわれわれが知って、その自然の持っている性質を人間の目的にかなうように、自然自身を動かしてやるという、根本的にはそういうことであります。たとえば山の上に水をためれば、その水が非常な勢いで落ちてくるという性質を使って発電をする。またウラニウム原子核中性子に当ればこういう性質があるから、その性質を使って巧みに自然を自分の思う方向べ引っぱってくるわけです。ですから、一番大事なことは、自然というものに関する正確な知識をわれわれが持っているということが、技術を立てていく上の根本的なものになります。これはあまりいい例ではありませんけれども、日常生活で皆さんがだれか相手を利用しようとする場合——あまりいい言葉ではありませんが、利用しようとする場合、一番大切なことは、相手を非常によく知るということであります。非常によく知っておれば、その人に対してこう仕向ければ、その人はこう出るということがわかっておりますから、その人を十分利用することができる。知らないでうっかりしたことをしてしまえば怒らしてしまうとか、そっぽを向かれるということであります。ですから、自然を知るということが技術の根本になるわけであります。ですから、近代科学が発達し始めた二、三百年の間、結局最初は自然を知り、同時にこれを利用するというのが一緒にくっついて発達してきたわけでありますが、だんだんと技術が発達し、対象となる自然の範囲が膨大になってくるにつれて、これがだんだん分離しまして、分業的になりまして、自然を知るということを目的に研究する部門と、それからそっちの方でわかってきた性質を利用して、そしてそれをわれわれの目的に使うように利用していくという、いわゆる理学部門と工学部門がそこで分れてくるわけであります。欧米におきましては、この二つの部門が初めから申しましたような有機的な関連を持って発達してきております。従って、理学部門と工学部門の関連というものが非常にいいのでありますけれども、日本では近代科学が非常に立ちおくれておりまして、明治初年に西欧文明を導入する場合に、工学部門の方は主として産業経済の面を通して、先ほどもお話がありましたように、外国から直接技術が輸入された。一方理学の面は、これもまた別に外国から導入されて、一方は主として大学というところへ閉じ込められちゃって、これがいわゆる象牙の塔というふうになってしまった。産業家は、日本自身にある理学に頼らずに、外国の理学または技術に頼るというような工合で、ここに日本の理学と工学との関連がつかないままに進んできているわけであります。その弊害は今日でも非常に強く残っているわけであります。しかし、これはそれをどういうふうに取り戻すかということは、非常にむずかしいことで、今日外国から技術導入をすべてやめてしまって、日本の理学が発達するのを待つというようなことは、もちろん得策ではありません。適当に外国技術を導入するということはもちろん必要であります。それと同時に、この基礎部門を十分発達させるということが非常に大切なのでありますが、どうしてもこの点が十分な理解が得られないと思います。今、日本ではその技術を導入するというようなことは——つまり一つ技術がここにありますと、それには非常に深い広い根を持っているのでありますけれども、日本ではまずりっぱな木が外国ににゅうっとはえますと、びっくりして、その根の方を見ずに幹から上だけを見まして、何か丸太ん棒かなんかを持ってきてそこへぶつ立てる。それに何か人工の木の葉かなんかをくっつけて作るというようなやり方が非常に多いのでありますから、その根をほんとうにはやすというような努力が非常におくれているように思います。  この融合反応の問題でありますが、融合反応が現在研究段階にあるということが盛んにいわれておるのでありますが、事実そうなのでありまして、まだこれは決して日本でも外国でもだれでも、融合反応を使って何か工業的なものを作ろうなんといいましても、幾ら金があっても、とうていできることではありません。まだわからない部分が多過ぎます。現在行われているのは、それに関連したいろいろな自然の性質、たとえば今もお話にありましたような大電流の放電によって起るいろいろなプラズマが示すいろいろな現象、こういうものを知るということが一番大事な段階にあります。それで今日われわれの持っている知識だけで、これをこうすれば核融合の実際の工業的利用成功するという段階にまできておりません。私はそう思っております。まだだれもそういうことお断言することはできさないだろうと思います。ただ、われわれは、この二、三年、新しいプラズマに関するいろいろな現象が発見されたわけでありましてそれで百万度とが五百万度とか、その前まではほとんど考えられなかったような高温度を発生する仕方を覚えたわけであります。今からさらにこの高温度のプラズマの性質を研究していく。そしてその研究していく段階で、おそらく今われわれが予期していないようないろいろな現象が発見されるだろうと思います。そういうことが加わってきまして、初めて工業的な核融合反応炉というものができてくるのだろうと思います。これはウラニウム原子核分裂による原子炉が発明されるにつきましても、そういった原子核の中に非常なエネルギーをたくわえているということがわかりましたのは、今からもう五十年も前であります。これが取り出されたら、非常にわれわれの役に立つということは五十年も前からいわれていたことなのであります。しかし、われわれは直ちにこれを解放するということはとうていできなかった。  それでは最近その原子炉ができるまでの四十年間何をしてきたかといえば、要するにわれわれは地道に原子核というものの性質を調べてきた。何も目の前にそれを取り出して電気を起そうとかなんとかいうことは考えずに、原子核というものはどういう性質を持っておるものかということを地道に調べてきた。その結果、ついにウラニウム原子核というものが持っている特別な性質を発見した。それがもとになって、今日のいわゆるウラニウム原子核分裂による原子力の問題が発達してきているわけであります。ですから、その下には何十年か、あるいはその前の何百年間か、そこに発達してきた基礎的な学問があるのであります。それが原子力というものの下に、非常に大きな根を張っているわけなのであります。この融合反応の問題も、そういう意味で私はまだ研究段階にあるというふうに考えております。つまり今はまだ高温のプラズマの性質を十分に研究していくという段階である。これに対して、いつになったら完成するかというような時期の問題は、私は、そういうことは、問うべきことでもないし、また答えるべきことでもない。ただわれわれは極力その性質を究明していって、そうしてそれを何とかしてものにしたいと思っております。その時期はあるいはあしたであるかもしれず、あるいはやってみた結果、この方法ではどうにもならぬということにならないとも限りません。しかし、どうなるにしろ、今も申しましたように、自然というものを十分にきわめていくということが技術の基礎であり、また技術行政を立てる面からいえば、ただやたらに——もちろんそこに多少の方向づけはあります。この方向を行けばというある程度見通しというものは考えなければなりませんが、そういう意味基礎研究というものに重点を置くということが非常に大切なことであろうと私は思っております。それで、この融合反応の場合が、ちょうど今そういう例でありまして、これが今日もうすでにすぐ発電に役立つから、ここで大いに金を出せとかいうことでなしに、もう少し長い将来を考えられて、これに関する基礎研究が非常に大事なのだという了解のもとに、ここで方針を打ち立てていかなければならない問題だと思っております。これにつきましては、必ずしも融合反応に関しません。原子炉の問題につきましても、今日まだ純粋に工業的なものになったとはいえない面がたくさんあります。基礎研究を必要とする部門が非常にたくさん残っております。必ずしも融合反応と限りません。あらゆるそういう面で基礎研究ということが非常に大事であるということを、私は特に強調したいと思っております。  ただ、日本現状として、基礎研究ということと、そうでない工業的な部門との非常な差は、いろいろな面に現われて参ります。たとえば、原子力予算というようなものが——基礎研究というものは現在乏しいながらも大体大学関係で行われております。ところが原子力予算というような膨大なものになりますと、これは現在のところでは、大学研究室の方に流れ出る道が全然ないくらいにふさがれております。こういうような状態ではとてもいけないので、もう少しそういった面のいろいろ改正も、たとえばこの融合反応の問題などを強力に進めようと思いますと、そういった面の改正も必要になってくるのではないかと私は思います。  大体私の申し上げたいことは以上でございます。
  8. 齋藤憲三

    齋藤委員長 次に、後藤参考人より御発言を願います。
  9. 後藤以紀

    後藤参考人 以上三人の方よりお話がございまして、全般的のことはすでに大部分言い尽されておるように存ずるのでございます。それで私は最初に電気試験所における状況を簡単に申し述べまして、次に所感をつけ加えたいと思っております。あいにく、プリントを用意いたしましたが、部数が少な過ぎまして、全部にごらんになれない状態かと思います。はなはだ不行き届きでございまして、いずれまた後ほどそろえてお渡しいたしたいと存じております。  電気試験所におきましては、大電流あるいは避雷器の研究等と関連いたしまして、だいぶ以前にコンデンサーの大容量のもの、言いかえますと個数のたくさんのコンデンサーが高電圧実験室に設備されておったのでございまして、それはエネルギーが百十五キロジェール、すなわち十一万五千ジュールでございまして、あそこの表の蓄積エネルギーというのをごらんになりましても、一〇〇とか一二とか五〇〇とかいうふうに書いてございます。相当大きい方になるわけでございますが、ただ目的が、もちろん核融合反応のために作られたものでございませんので、エネルギーのわりに電流をそれほどよけい出さない。当初は二十万アンペアを出す予定にして使っておったのでございます。それで、そのほかに大電流の測定でありますとか、あるいは放射線関係の測定等につきさまして、それぞれの専門の部門がございまして便利がございますので、このコンデンサーの配置を変えまして、エネルギーは同じでございますが、電流を流れやすくいたしまして、昨年大体六十万アンペア程度まで放電させて、流してみたのでございます。それでその後いろいろ改善いたしまして、現在直線的な放電炉によりますもののほかに、ドーナツ型の、リング状の放電炉を使うもの等を試作いたしまして、現在実験を行なっておるのでございます。  なお、来年度に対しましては、もし議会で認めていただけますならば、大体二千万円程度の特別研究費がいただけるはずになっております。それによりまして、さらにコンデンサーをふやしまして、またその他主として測定装置をさらに完備いたしたいと思っておるのでございます。それで、従来のものとあわせまして、少し変った実験も行いたいと計画いたしておるわけでございます。そのほかに、測定装置といたしましては、非常に短い時間の現象を見なければなりませんので、ケル・セルを使いまして、大体二百五十万分の一秒程度の現象を写し得るような撮影装置を試作いたしましたのですが、現在ではまだ百分の一秒程度より使っておりません。今後さらに改良いたす予定になっております。  それで、先ほども宮本さんその他の方がお話しになりましたように、現在は非常に多くの着想が出されておりまして、また現実における大電流の実験としましては、大阪大学及び電気試験所日本では実験が行われておるわけでございますが、何分にも新しい問題でございますので、超高温のプラズマというものを扱うといたしましても、それの特性等につきまして十分によく測定をいたしまして、理論その他に使っておりますところの過程が果して妥当であるかどうかということを確かめながら、理論実験とがほぼ並行して進まなければならないわけでございます。またこれに対しましては、理論に対して、実際に合うような理論を作ろうとしますと、その過程のほかに、さらに計算というものがまた複雑になって参ります。それで、それに対してはまた計算機が必要であるということになるわけであります。幸い私の方では、自動計算機をすでに作って、実際の一般の御用に立てておりますので、今後も大学その他各方面の方々とよく協力いたしまして、理論実験というものを並行して進めるようにいたしたいと計画いたしておるわけでございます。  現在におきましては、先般原子力局の世話でできました核融合研究の懇談会というのがございまして、京都の湯川さんその他の方、それからこちらにおいでになります方々等みな加わられまして、その他たくさんの関係者が入られまして、懇談会ができておりまして、これまでも数回会合して研究発表あるいは協力等が行われておりますが、さらにまた小範囲に自由な研究者のみの——研究者のみと言いますと語弊がありますが、直接関係して担当しておる者のみの自由な集まりでありますところのやはり研究会もできております。そういうものを利用しまして、相互の連絡、それから協力等が現在行われながら進んでおるわけでございます。現状はそういう状態でありますので、いましばらくはいろいろな実験あるいは着想等を、勝手にあっちを抑えたり、こっちを押えたりしないで、できるだけ伸ばすということが必要であります。今後のいろいろな施策を考えられます場合にも、そういう点を十分考慮せられてやっていただきたいと思っておるわけでございます。私どもも、現在大電流の放電設備を現に所有しておりますのは、大阪大学電気試験所とでございますので、ほかの方々とも十分協力して、一般に利用していただけるようにしたいと思っております。とかく大きな予算を出すということになりますというと、一カ所だけに集中してしまいまして、ほかの方が逆に圧迫されるというような結果が現実には起りやすいのでございます。これはこういう席で御相談あるいは御意見を伺いますれば、そういうことはないのでありますけれども、現実にはそういうふうに大ていなるわけなんであります。それで、こういうふうにまだ型も何もきまらない。世界中きまらないというような状態におきましては、どういう考えが最後において実際に実用されるものになるかということはちょっと見当がつかないわけであります。そういう点で、ある一つのものにだけ集中してしまうということがないような方法考える必要がある、こんなふうに思うのでございます。
  10. 齋藤憲三

    齋藤委員長 以上をもちまして、参考人の御意見の開陳は一応終りました。  これより質疑に入りますが、菊池参考人は十二時までの約束で御出席を願っております。菊池参考人に対する質疑がありますれば、これを先に行いたいと思います。  それでは、順次質疑を許します。  中曽根康弘君。
  11. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 岡田先生、宮本先生、菊池先生及び電気試験所の所長さんのお話を非常に有益に拝聴いたしました。日本学者が非常な努力をもって、世界的水準に追いつくような懸命な努力をしておられるのを私はただいま拝聴いたしまして、国民といたしまして非常に敬意を表するものであります。それから、われわれ科学技術委員会、国会議員といたしましても、何ら先入観や偏見にとらわれることなく、国民的要望にこたえて、皆様方の御事業をできるだけ御援助し、御協力申し上げたいと思っております。  ちょっと御質問申し上げたいと思いますが、この間阪大でおやりになりました実験が、かなりの成功をおさめたということは新聞でも読んでおりますが、中性子が五百万個くらい検出されたとか書いてありましたが、これが果して融合反応によるものであるかどうかが問題になっておるようであります。イギリスのゼータの場合でも、それが融合反応によるものかどうかは検討されておるようでありますが、阪大の場合について、岡田さんなり宮本さんなり一つ御判断をお聞かせ願いたいと思います。
  12. 岡田實

    岡田参考人 私から阪大の実験について御説明申し上げます。私の方でやりました実験の結果、五百万個出たというのは融合反能によることは確かであります。ただし熱核融合であるかどうかという問題は検討の余地がある。それは裸の粒子が加速されてぶつかりますと、ある値以上の大きいエネルギーの場合には融合するわけでありまして、温度が上昇して動く場合と、ある何かの力によって加速されて動く場合と両方あるわけです、われわれの場合には温度が高くなるということと、それからいわゆるピンチ効果といって、最初放電をいたしますと、壁の方から放電をするのでありますが、それが瞬間にしてまん中にぴっと集まるわけです、これをピンチ効果といっております。電流が多くなるほどそういうピンチ効果は強いわけであります。またその電流の変化率、電流がずっと増加していきますが、増加する割合が多いほど加速する力が多くなります。それで私どもの方の二百万度という温度からいたしますと、温度だけによるいわゆる熱核融合というものは非常に少い。それで加速による方が有力になってくる。ことに私の方の装置はソ連のものに比べますと、電流の増加率が二倍くらい、電圧が非常に高くなっておりますから、ピンチ効果を起す力はソ連のよりもはるかに強い。ソ連では直径を約七ミリ半くらいまでしぼっておりますけれども、私どもの方のは一ミリから二ミリくらいの直径にまでしぼる。そういう点からいたしますと、加速による融合反応というふうなことがかなり強くいえると思います。しかし同時に、非常にピンチされた状態が保たれているとすれば、相当温度が上昇するわけでありまして、ここに掲げました二百万度というのは非常に低いレベルで押えております。測定器が不十分なものですから、あまりオーバー・エスティメートしてはあとで困りますから、非常に低いところで押えております。従って、熱核反応が全然ないというようなことは言えないだろう、これは今後検討してみれば、どういうパーセンテージになっているかということが明らかになってくると思いますので、そういうふうに御承知を願いたいと思います。これは水素とかほかのガスを入れてもやっておりまして、その場合には出ておりませんですから、重水素融合反応によることは確かだ、ただし熱核融合反応によるものか、あるいは加速による反応であるかということについては、なお検討を要する。現在のところでは加速によるものが大きいだろうというふうに考えております。熱核融合反応が全然ないということは言えないだろうと思います。
  13. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 幼稚な質問かもしれませんが、ちょっとお聞きしたいと思いますのは、今のように容器を作って実験をして自然の状態を調べて、それをいよいよ成功したら実用化するということに動くと思うのでありますが、その実用化していくという方向について、どういう段階でだんだん実用化する方向に動くのか、その研究の過程といいますか、これからのプロスペクトを大体お示し願いたいと思います。まだこれはさまってないとは思いますが、しかし大体のアウトラインか見通しというようなものをもし持っておいででしたら、お尋ねしたいと思います。
  14. 岡田實

    岡田参考人 私から——また宮本さんからもお話があると思いますが、私の方といたしましては大電流衝撃放電、今あります装置をフルに活用いたしまして、プラズマの性質その他基礎データを十分に得たいと思っております。そして、同時にわれわれの方の考え方としましては、直接発電を目標にした融合炉に進むべきだ、従って、衝撃電流による、大電流放電による最初のプラズマの生成というのは、今のような方法によって起しますけれども、その次の段階は、これを連続といえないかもしれませんが、継続的な反応として直接発電をする、つまりこういうふうな、そこにも一つの例が書いてございますが、誘導電流によってこういうふうにプラズマを収縮させまして反応を起させる、そうすると爆発的にこれが広がる、また収縮する、こういうふうな同期的なあるいは共振的な作用を起させるような装置を現に考えておりますが、そういうふうなものを併用して、直接発電を加味したゼロ・パワーの融合炉というものをわれわれの方では次の段階としてやっていく。そしてパワーが十分出るようになれば、これはもう大きな動力炉として発展し得るのではないか。それまではあまりはっきりしたことは言えませんけれども、われわれの計画としてはそういったふうに進みたい。
  15. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 その場合、超高温の持続とかそれから熱に耐える容器と申しますか、そういうことが問題点であろうとわれわれ新聞なんかでは読んでおりますが、今ここにあるものの中で、一番最大限持続したのは、秒の何分の一くらいですか。
  16. 岡田實

    岡田参考人 ゼータが千分の一秒オーダーになっております。
  17. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 日本の場合はどれくらいですか。
  18. 岡田實

    岡田参考人 百万分の一秒……。
  19. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 百万分の一秒。
  20. 岡田實

    岡田参考人 だから千分の一秒くらいになります。
  21. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 それが平和利用できるにはどれくらいの秒数を持続する必要があるのですか。
  22. 岡田實

    岡田参考人 秒のオーダーにくれば非常にいいでしょうが、しかし、こういうふうな振動を起させる段になりますと、同期的になって、ある場合に反応をしてそれから膨張する、また収縮したときにこういうふうなかなりサイクルが多いものがそこに書いてございますが、そういうふうなものですと、反応継続時間というものは非常に少くても、それが同期的に行われるようになればいいだろうと思います。
  23. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 それから容器の場合、平和利用に実用化していく場合でも、今のように磁場を作って、まん中でそういうことをやらせるだけで可能なんですか。
  24. 岡田實

    岡田参考人 今の段階としては、磁場以外には方法はないと思います。
  25. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 磁場でそういうことを実用化し得るという見通しはあるのですか。
  26. 岡田實

    岡田参考人 それはございます。現にゼータでもだいぶ磁場でもって、まん中の方にプラズマを閉じ込めて、千分の一秒なり千分の二秒、そういう時間を継続しておりますから、プラズマを閉じ込めるのは磁場が最も適当だ、それ以外にはまず方法はないのじゃないかというふうに考えます。
  27. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 先生の御研究についてちょっとお伺いしたいのですが、一体いつごろから阪大は融合反応をやろうと思って先生の教室ではおやりになったのですか。何人くらい助手とか助教授とかアシスタントを使っておやりになったのですか。
  28. 岡田實

    岡田参考人 はっきり融合反応をやろうときめましたのは、一昨年の正月です。ですから満二年になります。私の講座の、しかも半分くらいしかそれに携わっておりません。助教授が一人と助手が一人、大学院の学生が二人、それだけであります。
  29. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 そこで、それだけの装置をお作りになるについて、いろいろ基礎的な科学の御協力もあったのだろうと思うのでありますが、先生方が持っておる知識だけでおやりになったのか、あるいは理論物理のその他の先生方と研究会を作るとか協力態勢をお作りになってやったのか、その辺を伺いたい。
  30. 岡田實

    岡田参考人 これは一昨年われわれが核融合実験を始めるということになりましたときに、理学部及び産業科学研究所などの同じようなコースの方に話し合いまして、研究会を組織したわけです。理学部と工学部及び産業科学研究所相当のメンバー、約二十名くらい、それがまず協力してやるということにいたしまして、理学部は理学部で基礎研究をやっておりますし、工学部の方では、私の方で今申しましたような装置を作って放電したということで、知識の上では理工その他の部門の方も入っておられます。それから一昨年の六月に第一回の公開実験をやりました。そのときに皆さんの御要望もあって、超高温研究会というものを組織した。これは全国的な組織でありますが、いろいろな方面からの方々がこれに参加入会していただきまして、そういう方の知識もわれわれは受けております。私どもはどちらかというと工学的にものを考えていくものでございますから、理学的な基礎はそういった理学の専門家から供給されておると考えていただいていいと思います。
  31. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 宮本先生のお話の中に熱核融合反応研究を促進することはいいが、ほかの方を食ってはならぬ、そういうお話がありまして、われわれも全く同感に思うのであります。そこで、今度国会といたしましても、科学技術会議というものを閣僚会議のレベルで作りまして、学者の先生方の御参加をいただいて、そういう研究の重点とか研究推進の方法とか、そういうことをきめていただく方向に今進んでおるのであります。おそらくそういう場合には核融合反応の問題は第一に取り上げられるべき問題であって、それは別途の経費で取り上げるべきだ、そういう意味で、今度の予算でも重要研究促進費というお金をとってありまして、そういう国家的に見て重要だと思うポイント、ポイントにプラス・アルフアで資金を供給していこう、こういう計画になっております。ただいま岡田先生の話を聞、て、五百万円の金でやって、まだ相当借金があるということを聞いて、われわれもほんとうに恐縮に思うわけであります。これはおそらく文部省に何か欠陥があって、文部省の役人や大臣がまごまごしておったのだろうと思う。正力さんならこんなことは絶対にやらせぬだろうと思いますが(笑声)これは大いに改めたいと思います。  そこでお尋ねしたいと思うのですが、この資料のあとの方にいろいろ協力を要する部面が出ております。そこで、具体的に熱核融合反応というものを各学者、各界のチームを編成して、基礎から実用に至るまで計画的に長期的に進めていく上について、現実問題としてわれわれが科学技術会議その他で取り上げる場合、どういう段取りで進んだらよろしいか、先生のお考えがあれば承わりたいと思います。
  32. 宮本梧楼

    宮本参考人 はっきりしたそれほど具体的なものを持っておるわけではございませんが、ここに書きました通りに現在ある大学とか付置研究所というようなところで関連した広い部門に相当程度のお金を出して、現在のシステムのままで続けていただきたいのと、もう一つは、相当まとまったものをやってみるのでしたら、まとまった研究所のようなものを作っていただきたい、この二本立を考えておるわけです。
  33. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 まとまった研究所を作るには、しかしある程度見通しがあって、ある程度進んでいないと無理ではないかと思うのです。今までの菊池先生その他の先生の話を承わりますと、必ずしもまだそういう目鼻だちが整ってきたというところまでいかないで、基礎的な研究に重点が置かれるように思われる。しかし、阪大の成果なんかを見ておると、必ずしもそうばかりとは言えません。われわれは判断に迷うわけでありますが、おそらく付置研究所とか大学とかそういう基礎部門に対して相当な費用も見てやって、おのおのの分野を発展させるということが当面第一だろうと思います。しかし、それをやるについて、何か一つのそういうかたまりを作っていただいて、だれか上になってそれを統裁して、研究の分野をおのおのきめて、そうしてそれをどういうふうに統合して協力させるか、そういう態勢が必要じゃないかと思うのです。そうするとそれは、電気試験所もあるしあるいは天文学の方もあるし、あるいは大学の方もあるというわけで、非常に横断的に広がっていくわけですね。そういうものを一つまとめて、だれか学者が上に乗って、チーム・ワークを作ってやっていくということは有用でありますか、それともあるいは別にいい方法がございますか、その辺の知識を供給していただきたい。菊池先生でもけっこうでございます。
  34. 菊池正士

    菊池参考人 今度、文部省関係だけでは、総合研究班を新設していますね、宮本さん。
  35. 宮本梧楼

    宮本参考人 そうです。
  36. 菊池正士

    菊池参考人 総合研究班を作りまして、班長はだれですか。
  37. 宮本梧楼

    宮本参考人 湯川さんです。
  38. 菊池正士

    菊池参考人 湯川先生——それで総額幾らですか。
  39. 宮本梧楼

    宮本参考人 総合研究で八百万円です。
  40. 菊池正士

    菊池参考人 そういうふうに非常にわずかです。これは文部省の機関研究費を当てにしているわけです。総合で八百万円ですから、一つ一つでは非常に小さなものになってしまいますが、それではとてもだめだと思います。それから、それと離れて、各大学から機関研究費としておそらく数千万円が出るだろうと思います。だから組織としては、その文部省関係だけでいうならば、今の総合研究班というものもできております。しかし、それは文部省だけになりますし、電気試験所その他の私立の大学あるいはほかの省にわたるところまで広げられない。従って、それだけでは不十分だと思います。
  41. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 そうしますと、文部省関係は文部省関係で一つの体系があるように思われますが、私立大学とかあるいは官庁の電気試験所とか、そういうあらゆるものを総合した大きな体系を作る必要があるように思いますし、先生もそれを肯定されているようでありますが、それを具体的にどういうふうに作ったらいいか。これは科学技術会議ですぐ問題になる問題じゃないかと思います。そういう意味におきまして、もしアイデアがありましたらお示し願いたいと思います。たとえば、中心は何がなるべきか。ばらばらにやったってできっこないんですから、どれが中心の軸になって、そのまわりをどういうものが協力してこれを作り上げるか。たとえば文部省のそういう系統が中心になって、電気試験所とかその他のまわりで協力していくのか、あるいは上に別のものを作って、全部を同じレベルで協力させるのか、学問の進歩や内容によってそういうものがきまってくるだろうと思います。その辺はいかがでございますか。
  42. 岡田實

    岡田参考人 私から申し上げてどうかと思いますけれども、昨年原子力局が世話役になりまして、核融合懇談会——湯川さんが会長で、核融合懇談会というものができた。しかしその後原子力局の方からは金が出なくなって、宙に浮いたようであります。現在は学会的な活動をしようかということになっておりますけれども、私個人の意見としては、こういう問題には政府がうんと金を出して、そういうものを促進する必要があるんじゃないか。原力子局の金が非常に使いにくくて、途中でそういうふうな変なことになったということは遺憾に思う次第であります。こういう点を一つ御考慮願いまして、できれば相当の額をそういった核融合懇談会——原子力局に直属したような組織になって出発したわけなんですが、それが途中でそういうふうになったということを御承知いただきまして、そういう核融合懇談会というものを強化し育成していただけば、相当効果が上るんじゃないか。  もう一つ研究所について私の方でも計画しておりまして、超高温理工学研究所という、ちょっとここに持っておりますが、内容なんかも御検討いただいたらいいんじゃないかと思います。そういった組織を、阪大に限りませんで、どこに作ってもいいのですが、そういうものを作っていただくと、有力にこの実験も進めることができるのではないかと思います。
  43. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 岡田先生のお話ですと、科学技術庁の系統の原子力局というものがあっせんしてできたものが一つの母体になって、それを拡大発展させるというような方向のように考えられますが、先生も大学の先生だけれども、今まで科学技術庁というようなところがやるよりも、むしろ文部省がやるべきだとか、科学技術庁が文部省の研究の方に踏み込んでくるのはけしらぬとか、そういの議論もないではない。大体工学部の先生方はそういう点非常に目が開けておるが、理学部の先生は目が開けておらぬ。そういう点は実はお聞きしたがったのです。ただ、今の核融合反応懇談会というものを中心として拡大発展させていく方向でよろしいのか、もう一回問題を提起いたしますから——四人とも一つお答え願いたいんですが……。
  44. 宮本梧楼

    宮本参考人 私今の段階基礎研究段階で、先ほども基礎研究ということを申しましたら、研究所を作るにはまだ家がまとまっていないのではないかというような御質問もあったと思いますが、それは基礎研究とは言いましても、融合反応は規模が非常に大きいわけであります。ただ普通でしたら、コンデンサーの放電というごく小さいことでも、融合反応についてのコンデンサーの放電となりますと、ピンチ効果を起すために数百万アンペアというような電流が要ったりしますから、事柄は小さくても、設備や規模が非常に大きくなりますので、ちょっとした試みをやるのにも、すぐに研究所程度の規模が必要かと思うのです。ごく内輪の、小さい大学研究所でできることはそこでやればいいのですが、少し大きいことであれば、普通でしたら大学でやっていいようなことも、研究所に持ち込んでまとめてやらないと予算なんかも大きくなって困るじゃないか、そういう気がしたものですから、先ほど研究所一緒に作った方がいいということを申し上げたわけです。たとえばサイクロトロンとか小さいシンクロトロンとかは各大学にあってもけっこうですが、同じものでも少し大きく々ると、原子力研究所の方でまとめた方が国家的にいいと思いますから、少し大きいものをまとめていただくつもりで先ほど研究所と申し上げたわけです。  あとの方のどういうふうにやっていくかというようなことのお答えですが、今まで申し上げた通り、基礎的なことで岡田先生なんかはだいぶ実用的になるようなお話も聞きましたけれども、私たちの考えとしてはまだどの型がいいかも実はわかっていない。相当基礎研究を進めて、どの型がいいかきめるということまでこれから始めていかなければならない段階だと思います。そのために、基礎的なことでいいますと、今まで文部省関係が多くやったものですから、文部省関係が適当だとは思いますが、しかし大きくなりますし、ほかとの関連もありますから、文部省だけでなしに、全部が仲よく一緒にやっていただければ非常にけっこうだと思います。湯川さんの主宰されている核融合反応懇談会というのも、全国的な規模に立っておりますし、別に文部省とか、一つの役所に限ったわけではなくて、全部をまとめておられるように思いますから、そういうなところが主体になって大きく発展させるようにしていただくとけっこうだと思います。ただ湯川さんなんかやっておられると、今予算なんかもほとんどないというようなことで、菊池先生は基幹研究とおっしゃいましたが、実は総合研究のことですが、総合研究で全国で八百万円くらい、予算を請求はしているのです。しかし、二、三十カ所くらいだと思いますが、集まってそのくらいの程度要求しているので、それはおもに連絡だとかごく簡単な研究を予定している。前に、計画なんかでは、湯川さんのところでまとめられたので、相当大きい計画も全国から出ております。湯川先生の会を少し経済的に援助するなり発展させるなり、さしあたりはその方向に進められた方が一番間違いがない、そういう気がいたします。
  45. 菊池正士

    菊池参考人 研究組織のことでございましたら、実際の研究者の間でいろいろ話し合いますと、研究組織の体制を作るということは、非常に簡単に現在でもできつつありますし、できると思いますが、問題は、要するに研究費の受け入れ態勢というところで、どこが統轄するかということが問題となってくると思います。その点になるとどうも私にはわけがわからないのでありますが、実際いろいろ種類の予算がありまして、原子力予算については大学の方から何か申し入れがあったりしましたけれども、大学の方も委託研究というものを受けないと言っているわけではないので、研究費というものの受け入れ態勢として何か一つの組織を持つ必要があるのか、あるいは現状のままでも、委託研究とかその他の方法によって十分それができるのか、そこらが私にはよくわかりません。研究体制そのものだけであるならば、研究者の方にまかしておいて下さっても、その態勢は十分とれると思います。  研究所の件でありますけれども、これは少し話が大きくなってくれば、当然原子力研究所でやるべき仕事だと思います。新しく核融合に関する研究所を建てる必要はないように私は思います。
  46. 後藤以紀

    後藤参考人 宮本さん、それから菊池さん等の御意見がございましたが、先ほどの予算の問題に関しては、核融合懇談会というものがすでにございますので、そういうところを利用して配分するというようなことが比較的妥当なんではないかと考えます。それは先ほども何回もお話がありましたように、いろいろな案がありまして、今後それがどういうふうに発展するかということは、非常にわかりにくいのでございます。ある少数の人だけで判断いたしますと、とかく外国でこういう型のものをやっている、だからそれでやればまず大てい大丈夫だということで、それだけにいってしまうという場合が多いのであります。新しい、全然離れたようなものが出ましても、これはやってみてうまくいくかどうかわからぬというので、まず大がかりな実験はあと回しにするというような結果に大ていなってしまう、現実の場合には非常にそうなりやすいのです。それで、それには、やはりほんとうの専門家だけが集まっておりますところの会合でよく検討して、一番最初に、もし一つだけやるにしても、どれを先にやったらあとのためにいいかというようなことを相談するということでありますと、やはりほんとうの専門家同士が集まって相談するという方が確実性があると思います。それで、そういうためには、やはり核融合懇談会みたいなものを経てきめるというようやり方がよよろしいのではないかと思います。最後はどこで取りまとめられても、これはよろしいのですが、現在は科学技術庁原子力局がその世話をやっておられます。それはそれでもよろしいと思います。ほんとに具体的に、実質的にきめるところはそういうふうなところを利用するということが安全ではないかと考えます。たくさん案を持ってきて、最後にどこか少数の人でまとめてもらうという行き方でいきますと、まず安全なところをとったらいいのじゃないかというような結果になりやすい。  それから研究所の問題でございますが、先ほど宮本さんがお話になりましたように、ほかの研究と違って、基礎研究というのは相当規模を大きくしないと、できないということがあるわけでございます。ところが現在すでにコンデンサーなんかを持っておりますところは、日本ではわずかに現在はまだ二カ所よりないというような状態になっておる。それでうんと大きな設備をやります場合ならば、それも基礎実験のうちでありましょうけれども、ほんとう意味の本格的な基礎実験というようなものになりますと、これはやはり別の実験所みたいなものが必要になるだろうと思いますが、これを新しい核融合研究所という形にするかどうかというところに非常に大きな問題があると思うのです。それは基礎実験であれば、まだ各方面からいろいろな案を持ち寄って、そこで実験をするということが必要でありますので、それですとやはり共通の実験所というような形で初めは進むのがいいのじゃないかと思います。それは、もちろん管理するところは、たとえば原子力研究所にくっつけたにしましても、あるいはほかの研究所にくっつけたにしましても、これはまた考えようがあると思いますが、核融合専門の研究所という形にしますと、今度はそこに必要な部門というのは、先ほどありましたように、あらゆる部門がみんな必要になってくる。そうしますと、ほかの研究所あるいは大学等でそれを利用するという場合に、非常に複雑な関係が出てきて、かえってやりにくい場合が多いかもしれません。それで共通の実験所という形にしまして、それを保管し、維持するための少数の医師とか何とか、そういうような人は、そこに常駐しておかなければなりませんけれども、新しいアイデア、そういうようなものは各方面から持ち寄って、そこで実験をする。それをどれを先にやるかというようなことは、これは先ほどの核融合懇談会等で相談してきめるというようなやり方も一つ方法ではないかと思います。後にはそれは独立の研究所というような形になるかもしれませんけれども、最初はやはりできるだけ広く同じような立場利用するというような形にしておく方がいいのではないか、こういうふうに考えます。なおそのまだ手前の状態では、これはできれば各新しい案を持っておられますところへ相当設備を置けるようにするということが必要だと思いますが、万一それがやりにくいというような場合があるかもしれません。すでに設備を持っておりますところの大阪大学とかあるいは電気試験所等の設備は、これはもちろんそういう場合には十分共通的に利用できるようにするということも必要である。重ねて申しましたように、そういうふうにいたしまして、一方を立てるために一方を押えるというようなことがないような形にしておかないと工合が悪い、そういうふうに考えております。
  47. 齋藤憲三

    齋藤委員長 関連質問を許します。田中武夫君。
  48. 田中武夫

    ○田中(武)委員 関連して。私が後ほど岡田参考人その他の参考人の諸先生にお伺いいたしたいと思っておりました点をただいま中曽根委員が御質問せられまして、話題がそこに参っておりますので、この際関連して一点だけお伺いいたしたい、このように思います。  岡田先生は、先ほどの参考意見を述べられました結論といたしまして、日本研究は率直にいって立ちおくれである。しかし阪大の新放電装置の完成に続き、日大、電気試験所でも強力な放電装置の新設が計画されているようであるから、協力態勢を強化できれば、日本研究陣も決して微力ではない。こういうふうにおっしゃっております。そこでこの協力態勢とか、そういう組織について、今話題が出ておるわけなんですが、先ほどの皆さん方の話を伺っておりますと、今持たれておる核融合懇談会ですか、こういうものを中心にしてやればいいのじゃないか、こういうようなお話も出ているようですが、先生がこれをお書きになった当時、また今やはりこれを引用して参考意見を述べられたというなら、今そういう考え方をお持ちだろうと思う。そこで、この協力態勢といいますか、そういうことについて、今まで、率直にいって、各研究所あるいは学校間にお互いに実験研究途上の問題でありますから、十分腹を打ち明けて相談ができなかったというようなことが今まであって、そのために十分研究が進まなかった、こういうようなことも批判しておられるのじゃないかというなことが、この文面から受け取られるわけですが、そういうことがあったのか。それから今後もしやるとすれば、今言われるような、こういう核融合懇談会というようなものでいいのか、もっと協力的な措置を必要とするのか、それとも自主的に各大学研究所の間にそういった協力態勢ができ上る、こういうような状態があるのか、そういうような点についてお伺いいたしたいと思います。  なお、委員長にお尋ねいたしますが、幸い正力国務大臣がここに見えておりますが、どうも委員席にすわっておられるのですが、質問してよろしいでしょうか。(笑声)
  49. 齋藤憲三

    齋藤委員長 御質問がございますれば、正力国務大臣にも御質問願います。
  50. 田中武夫

    ○田中(武)委員 それではあとでまた……。
  51. 岡田實

    岡田参考人 第一の問題ですが、そこに書きましたのは、協力態勢が今まで不十分であったかどうかという御質問に対しては、そういう意味で書いたのではございませんので、田中さんがそういうふうにおとりになったら憶測でありまして、御訂正願いたいと思います。今までも各研究所の中ではかなり緊密に連絡をとっております。日大の方で新しい装置を作られるのについては、私の方の新しい装置を一週間も来られて見て、実際にやられてマスターしていかれるというふうに、私の方の研究室は開放しておりますので、どこからでも来てやっていただけるようになっておりますし、全国的に協力態勢ができていなかったということはございません。ですから核融合懇談会なんかをもう少し強化していただけば、そういうものである程度目的は達し得られるのではないかと思います。しかし、テキサスの会社がやる核融合研究でも一千万ドルという予算でやっておられます。昨年来られたD・ホフマンという人の話ですが、日本では一千万ドルは四十億円になりますが、そういう金がそうたやすく出ないだろうと思いますから、あまり総花的に予算を分配したのでは効果が上らない、ある程度基礎研究段階でありますから、これは分配しなければなりませんけれども、適当に重点を考えなければ効果的な費用の使い方にはならないのじゃないか、こういうふうに考えます。  それから何でしたっけね。
  52. 田中武夫

    ○田中(武)委員 核融合懇談会を今日より強化すればある程度いいのじゃないか、こういう御意見ですが、もう少し具体的に、どういうふうに強化したらいいか、そういう点についてお考えがありましたら聞かしていただきたいと思います。  それから、正力国務大臣に、先ほど来の中曽根委員の御質問なり、各参考人の諸先生のそれに対する御答弁、こういうものを聞いておられまして十分おわかりと思いますが、いわゆる核融合反応の完全制御の問題についての今後の問題は、日本国内における各研究員あるいは学校、研究所等の協力態勢が必要である、こういうことは言うをまたないと思うのです。そこで科学技術庁長官であり、原子力委員長である正力国務大臣としては、どういうようにすればいいか、こういった問題についてお考えがあればついでに承わりたいと思います。  なお関連質問ですから、時間の関係で続けてお伺いいたしますが、先ほど宮本先生も参考意見を述べられる際に、「その対策、私案」というところで、今までわが国では多くの部門で列国に一歩ずつおくれ、多年にわたり技術導入の名のもとに多くの特許を買い、はなはだ不利な立場に立っておった、こういうように言われて、この問題について今後このあやまちを再び犯してはならない、こういうように言われております。この種の問題については今までも何回か当委員会等において正力国務大臣にもいろいろとお伺いしたこともあると思うのです。こういった問題もあわせてこの際大臣の御所見を承わりたいと思います。——その前に岡田先生から具体的に、どういうように強化するか、そういうことを言うていただいて、あと正力さんから……。
  53. 岡田實

    岡田参考人 核融合懇談会というのは現在でもいろいろな部門に分れておりますが、そういう専門家が集まってきて討論をする場、そういう討論の場を相当作る必要があるわけなんですけれども、若い研究員が出てくる費用もないわけなんです。今度組織が変ってから第一回をやりましたけれども、何か原子力研究所から旅費を少し出していただいて、きわめて少数の人だけが集まり得るような態勢で懇談会を開いたというような結果になっております。若い研究員が実際にやるのでありますから、そういう若い人がどんどんそういう会合に出てこられるような費用すらない状態で、あまり強化することはできないわけなのでして、政府の方で相当バック・アップしていただいて、具体的にシンポジウムとか研究会とか懇談会というようなものがしょっちゅう開けるようになりますと、これはお互いの意思もよく疎通しますし、研究体制の効果も十分上げ得るのではないか。もちろんその前には自分の研究室相当研究して成果を持っていくのでないと、ただ空論を戦わしているようでは困るわけなんですが、今の段階としては少くとも旅費でも出していただいたら、かなり強化できるのではないかと思います。
  54. 正力松太郎

    ○正力国務大臣 核融合の問題につきましては、原子力委員会において、今検討しておるのでありますが、しかし私は先ほどの諸先生の意見を聞いてますます総合研究、総合調整が必要だと思いますから、これはどうしても今度できる技術会議において研究しなくちゃならぬ、またますます技術会議の必要を痛感いたしたわけであります。
  55. 田中武夫

    ○田中(武)委員 もう一点だけ。これはもう質問というより要望になると思うのですが、私しろうとですから技術のことはよくわかりませんが、大体われわれの常識的に考えておるといいますか、今まで聞かされておることは日本実験室あるいは理論上においてはそう負けない、よそよりか早くいろいろなことについても研究をしておる。だがそれを実際の面に移す場合、実用に移す場合に、おくれておる、こういうことが今までのすべての部門における実情ではなかったか。そこで宮本先生も参考意見でああいうように言われたのじゃないかと思う。そういうようなことについて、十分大臣としては、きょうここで質疑応答が行われた事項とか参考人の諸先生の参考意見をお聞きになっておられたと思うのですが、もう一度一つ大臣の御所見を承わっておきます。
  56. 正力松太郎

    ○正力国務大臣 先ほども申し上げましたごとく、諸先生の意見を聞いても、またわれわれがかって考えておったごとく、どうも総合研究——みな力を一つにしてやる点が非常に欠けておると痛感いたしておりますので、それで先ほど申し上げましたように今度技術会議を作ったわけで、それにいわゆる日本のオーソリティの人も委員に入ってもらい、それからまた予算の関係もあるから、大蔵大臣、企画庁長官も入ってもらい、また文部省は一つのなわ張りになっておりますから、文部大臣にも入ってもらって、それで一つ御趣意に沿うようにしたい、こう思っているわけです。
  57. 石野久男

    ○石野委員 関連してちょっと簡単に一言だけ参考人の諸先生方にお伺いしますが、研究を総合的にやります場合に、従来やはり研究していられた方々がそれぞれの設備を持ち、またそういう考え方もあるのですが、総合研究をやります場合にはどうしても一カ所に集めるのが便利だと思うのです。その一カ所に集めます場合に、先ほど菊池先生からも原研あたりでやるのが一番いいだろうということをおっしゃっておられました。そういうことを勘案いたしまして、研究者立場、特に参考人の皆さん方の研究立場からして、一カ所に集めて研究をする場合に、何かとやはり便利な面と不便な面があるだろうと思うのです。われわれにとっては、便利な面よりも不便な面がどういうふうに出てくるのかということをこの際聞かしておいていただきますと、あとでまた正力さんあたりが考えていただくのに非常に参考になるだろうと思いますが、日本の現在の実情また今までみたいな予算的措置の中で、研究所を一カ所にしたときに出てくる不便な面を一つ率直に聞かしていただきたい。
  58. 宮本梧楼

    宮本参考人 総合研究とおっしゃっても、実は二つ私たちは予定しております。二つといいますと、文部省で総合研究というような形で出した研究ですが、これはたとえば湯川教授が金額全部を一応受け取られるのですが、各大学研究者全部が相談いたしまして、君の方はこの問題をこの程度でやりなさい、こちらはこの程度のものをやったらいいというので協定をして、研究場所は各場所ですが、何度も寄り集まって、一緒にまとめるとか議論するという立場で全体をまとめておられて、研究場所だけが各大学とか研究所になっておる、そういう総合研究一つあります。もう一つの総合研究は今お話しになったように、相当大きい設備なんかの場合には、一つ研究室で全部が集まってやるということがあるわけであります。普通の小さいものとか、あるいは各任地でできるものでしたら、ばらばらで、それぞれの場所で研究しまして総括をするとか、意見の交換なんかを集まってやるというやり方の方が、非常にスムーズにいっていいと思います。しかし、大きい設備を要するものですと、今のお話の通り、当然一カ所に集まってやらなければならない。しかし、集まってやるのも、あるものを作るという段階でしたらいいのですが、まだ現在の段階は、どんなものを作っていいかというところまで検討しなければならないのです。ある人が集まって永久的にその地位で研究するとなりますと、すぐに行き請ったり方向が誤まらないとも限らないわけです。一カ所に集まってやったとしても、全国の人が口を入れる可能性がないと困るわけです。そんな意味で非常に気軽に参加できるような体制にしていただきたいというようなことが希望なんであります。そのときに気軽に参加するなんていうことは、意見なんかを出すというような点ももちろんありますし、基礎の部門を相当作っておいて、そちらからどんどん新しい知識を入れて、大きくまとめていくという点も必要だと思います。今のところ一つにまとめるとか、いろいろな意味の総合研究を作っておけば、総合したという被害はそれほど認めておりません。ただ研究費がないという点で集まれないとか、今、岡田先生も旅費がなくて集まれないというようなことを言われたんですが、実際意思の疎通とかいうようなことで、手紙なんかの往復はいたしますが、だいぶよくない影響はありますから、結局予算のことになるかもしれませんが、スムーズに連絡がとれるようにしていただきたいと思います。  ちょっと御質問からそれるかもしれませんが、学者とか会社の人というような者は、今相当緊密に連絡をとっております。湯川先生の懇談会ももちろんありますが、その下につくというようなもので、東京付近でも、研究会という名前のもとにみんな有志が集まって勉強しているわけです。通知だけを出しますと、毎回七十人から八十人参加して署名する人がいる程度です。それは大学の方もおりますし、会社の方もおりますし、いろいろな方が集まりまして、方面も物理とか放電とかいうだけでなしに、非常に広い方が集まって、仲よくいろいろな自分たちの研究したこともすぐそこで話したり、意見を聞くというようなこともしておりますから、そういう学者仲間の意見の疎通とか協力という点では非常にうまくいっている。ただ予算の点だけで私たちは困難している状態であります。
  59. 岡田實

    岡田参考人 宮本参考人からお話がありましたのに補足さしていただきますが、大きな設備を作って核融合の総合研究をやるという段階にはまだきていないのじゃないか、その前の段階だと私は考えます。従って、実際に動力を発生するような融合炉は、もちろん原子力研究所あたりに作るのが一番適当だと思いますが、その前の段階は、たとえば東京と関西というふうに、ある程度地方的に共同利用のできるような設備を作られるのがいいんじゃないかと思います。そうでないと、われわれ文部省の関係の者はそう遠くへ長く出張するということは許されませんので、三時間くらい以上のところでは、おそらく出張していけないようになると思います。ですから、現在の段階としては、あまり大きなものを一カ所にまとめてしまうということはちょっと不適当だ、その前の段階だというふうに御承知願ったら適当ではないかと思います。
  60. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 先ほどお聞きいたしますと、湯川先生の核融合懇談会に対する補助金でありますか、交付金でありますか、ことしは何か打ち切られたというような話ですが、佐々木原子力局長にちょっと聞きます。なぜ一体こういう重要な経費が渡らないのか。
  61. 佐々木良作

    ○佐々木政府委員 湯川先生のやっておられると申しますか、こちらで補助金を出したのではないのでありまして、これは文部省の方から出れば出ると思います。ただ先ほどお話は、そうでなくて、原子力委員会の下部機関といたしまして、核融合懇談会というものがありまして、一種の専門部会のような形式で、それぞれ大学の皆さんにお集まり願って、湯川さんが主として主宰して、いろいろ今までの経過なり研究の過程なりを話し合う場を作ったわけでございます。これに対する、これは別に補助金ということではないのでありまして、会合費その他と見ればよろしいわけですから、その方はできる限りお世話をいたしまして、数回会合されました。ですから、補助金の問題はむしろ文部省の問題かと思います。
  62. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 そうすると、湯川さんは二つの会に関係していられるわけですか。今は、原子力委員会の下部機構というか、そのもとの専門部会的な一つの会があって、湯川さんがおいでになる。そのほかに何か核融合懇談会というような、プライベートなものか、あるいは文部省系統のものでもあるのですか、その点はいかがです。
  63. 岡田實

    岡田参考人 私から簡単に申し上げますが、最初は核融合について、第一回を六月ごろにやったと思います。それから十月ですかに第二回をやりました。それは原子力局が世話役で、そちらの方からいろいろなお世話を願っております。その後に総合研究をやるというので、費用をお願いしたように思っております。私、幹事でありませんけれども、幹事と一緒に行っていろいろお話を承わったので、ちょっと知っているわけであります。そうしたら、第二回のときには、原子力局の方から、多少余分の金があって、それを核融合懇談会に使い得るのでないかというふうなお話があって、第二回のときはそれを目当てにして、核融合懇談会の将来というものを計画したわけであります。その後その金は、予算措置がむずかしいので、そういう方面には使われない金だというふうになって、核融合懇談会は、原子力局から遊離した。だから現在は原子力局から遊離した存在であって、プライベートの団体だというふうに御承知願いたいと思います。
  64. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 核融合反応のようなことは、当然原子力委員会が責任を持って、協力してやるべきものだろうとわれわれは思います。原子力委員会が文部省方面とも連絡をとって、学者の創意工夫を尊重しながら統合していくという位置にあるのだろうと私は思うんです。原子力局、原子力委員会の昨年以来の方針にしても、核融合反応は強力に推進するというようなことが書いてあるにかかわらず、そのような状態にあるということは、怠慢もはなはだしいと私は思います。きょうお話を承わって、われわれも非常な欠陥に驚きましたが、正力国務大臣におかれて、すみやかにこの事態を収拾して、軌道に乗せて、相当な費用を計上するように自分は要望いたしますが、正力大臣の回答を求めます。
  65. 佐々木良作

    ○佐々木政府委員 ただいまの岡田先生のお話でわかりましたのですが、その問題は、実は三十二年度、本年度の委託金に関する問題でありまして、委託金は、実はこの問題が大きく出てくる前に第一次の募集が終りまして、なお予備にとっておいた金がありましたので、その予備費から核融合分の使途に出したいということになったのであります。ところが、委託費を出しますに際しましては、必ず事前にテーマをきめ、募集をいたしまして、その募集に従ってそれを審査いたしまして、いろいろ使途をきめるというふうな内部規定があったのであります。従いまして、募集をいたしまして、ただいま七件ばかり応募が来ております。そのいずれに出すかということをただいま審査中でございまして、まだ決定しておりません。  それから三十三年度、来年度に関しましては、本年度の分がきまりますれば、それに引き続きましてその問題は確定していくべきものでありますので、電気試験所の方には、先ほど後藤先生からお話がありましたように、二千万円の試験研究費はつけておりますけれども、その他の分野に関しましては、今年度の募集の審査の結果を待ちまして、それに関係したものとして今後発展していきたい。これはまだきまりませんので、何とも申し上げられませんが、委託費あるいは補助金は、御承知のように、初め使途を明確にきめませんで、テーマを原子力委員会できめまして、そのテーマに従いまして募集するわけでございます。来年度、三十三年度も同じでございまして、委託費、補助金等は一応のワクはいただいておりますけれども、具体的にどこにいつ出すかという問題に関しましては、一たん募集しましてからやる関係で、本年度の審査の結果を待って来年度のものをきめていきたいというふうに考えております。なお先ほど懇談会そのものの費用かと私聞き違えておったのでありますけれども、そのものの費用に関しましては、できるだけ原子力研究所あるいは私の局の方からお世話いたしまして、そして会合等には差しつかえないようにいたしたいということで、万全の措置をとります。
  66. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 今のお話を聞きましても、非常におろそかにやっているように私は思います。どうせ重要研究促進費というものは、今年出るにしても、年度末おそくなるだろうと私は思う。それまでのつなぎとしても。原子力研究所あるいは科学技術庁において相当手当してやらなければならぬと思う。おそらくそれは委託費とか、そういう形になるのでしょう。その点についてすみやかに原子力委員会において措置されんことを私は要望いたします。一体委託費として配当できる予算は今年どれくらいとってありますか。
  67. 佐々木良作

    ○佐々木政府委員 第二次募集全部核融合とは限りませんけれども、主として核融合になっておると思いますが、約二千万円予定しております。
  68. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 それは電気試験所に渡す別の分ですか。
  69. 佐々木良作

    ○佐々木政府委員 三十二年度の分であります。電気試験所は三十二年度の予算でございます。今申し上げましたのは三十二年度の分であります。
  70. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 そうすると、三十三年度は、委託費としてどれくらい回せる予定ですか。
  71. 佐々木良作

    ○佐々木政府委員 委託費として、核融合のみじゃございませんので、まだきめておりませんが、今年度の分がきまりまして、その関連等も考え、募集の結果全部の予算額からどのくらい入りますか、必要な分だけは優先的に出したいというふうに考えております。
  72. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 全部の予算のワクはどれくらいにあるんですか。
  73. 佐々木良作

    ○佐々木政府委員 三十三年度の予算におきましては、試験研究の助成に関する経費といたしまして、予算額二億七千万円、それから債務負担行為が一億で、三億七千万円という額でございます。それから委託費といたしまして約二億です。
  74. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 それだけの金があれば、私は三十三年度当面はしのげるだろうと思うので、その金の相当部分を、とりあえずそのような重要研究に回されんことを私は希望いたします。特に今までの話を聞いてみると、科学技術庁はこの問題に対してやや関心が薄いように私は思う。今まで動力炉であるとか、あるいは原子力研究所燃料公社の充実に相当力を入れてこられたようであるけれども、しかし時代の趨勢から見ると、融合反応相当な力を入れていいだろうと私は思います。その点については、正力大臣が文部大臣と話し合いをして、やはり基本大綱をきめて、体系を整備されんことを私は希望いたします。  以上のことを申し上げて、最後に正力大臣の感想を伺って、私の質問を終ります。
  75. 正力松太郎

    ○正力国務大臣 ただいまの中曽根委員の趣旨には私も全く同感であるし、またそういう意味で今まで努めてきておったつもりでなんですが、それで今度幸い予算相当とりましたので、これに今後大いに力を入れていきたい。先ほど申し上げたように、これは非常に慎重を要する問題でありますから、今度の技術会議でもよく検討いたします。
  76. 齋藤憲三

    齋藤委員長 岡良一君。
  77. 岡良一

    ○岡委員 いろいろ私どもただしたい点がすでに尽きましたので、若干お尋ねいたします。  そこで、私が気がかりなのは、核融合反応は、全く一種の社会的なブームの姿を今呈しております。しかしこれが私は、核融合反応の堅実な研究開発発展の一つの危機になるのではないかということを心配しております。かって原子力ブームというものがありました。その結果、原子力の研究開発がどういう実績を上げてきたかということを謙虚に反省をして、その上で、今度は本格的に、この核融合反応研究開発に進んでいかなければならぬ。この自己批判がなしに、またブームの間に間にこれが動かされるということになったのでは、せっかくの貴重な、まじめな若い科学者の諸君の努力が無になるわけであります。そこで原子力研究開発について、どういう矛盾があり、どういう誤謬が犯されたか。核融合反応の今後を進めようという皆さんにとっては、当然重大な関心事であろうと私は思いますが、この機会に宮本さんから率直な御意見を承わりたいと思います。
  78. 宮本梧楼

    宮本参考人 今、御質問になったことは私も非常に同感で、ブームに乗ってそのまま変に進むというようなことは、厳重に警戒しなければならないと思います。ただ普通の、たとえば外国データ発表されたのを私たちから見ますと、学問的にはすでに発表されていることをあんなに大々的に発表することはどうか、私には了解できないのです。おそらくいろいろな政治的な意味もあると思いますけれども、そういうものに引きづられて、日本でも同じように上ずった研究をすると非常に大きな災難を来たします。前から言っております通りに、核融合反応が必要だからやるということはけっこうです。ただそれだけでなしに、関連した基礎研究まで十分含めて大いに発展を期するようにしていただきたいと思います。ただブームに乗らないで、着実に研究を進めるようにしていただきたい。それはただ普通の——新聞が悪いというわけではありませんが、新聞なんかに書かれますと、幾分それでいいことのように思いましたり、有名になって、そちらの方にお金を出すということになりかねないと思いますが、そうではなくて、もっとまじめな学者意見を聞いてやっていただきたい。具体的にお金を出すときについては、ほんとう研究者の集まりに諮問をしていただきたいと思うのです。ただ有名だからこっちに金を出すというのじゃなくて、ほんとうにこちらがいいというようなことを、学者の議論の上できめていただきたい、そういう希望であります。
  79. 岡良一

    ○岡委員 私も全く先生の御意見に同感です。なお私は具体的にお尋ねいたしましが、原子力委員会の今日までの足取りを見て、私どもが自己批判をするならば、まず第一にあげなければならない問題は、原子力研究開発というものがいわゆる政治的な干渉によってゆがめられておるということです。次には、官僚的な干渉がはなはだし過ぎるということです。第一点の顕著な例は、たとえばここに正力国務大臣がおられる。この方は老いの一徹で、(笑声)原子力発展には全くやっきになっておられる。私はこの純情にはまことに敬意を表するのでありますが、しかしこうなりますと、結局基礎研究というものはおろそかになります。一般国民も、原子力に対する認識というものがまともなものではなく、そういう実用化された面に原子力というものをすぐ結びつけて考えてくることになりますと、国民全体の原子力に対する認識というものも、どちらかといえばゆがめられてくる。私はこういうような、いわば原子力行政をみずから担当する責任者の意図によって、原子力行政というものの基礎分野における研究がおろそかになりがちになろう、あるいは国民の関心がともすればこの基礎的な充実という方向からずれてくるというようなことがあっては私は大へんだと思うのです。もう一つは、官僚的な干渉というものがある。何と申しましても、今はやはり役人がデスクで最終的にものをきめておる。なるほど民主的にきめる、今先生のおっしゃったように、学者の皆さんの意見を十分尊重すると言いながら、事実はやはりお役所のデスクでものがきめられる。妥当にきめられればいいけれども、妥当でない結論が出たのでは困ると思う。現に先般、ある学者との公開の座談会で、その学者が申しておる。この人は核融合に非常に熱心な学者ですが、それはどういうことかというと、この核融合懇談会に対しては、原子力委員会の気に入らないわれわれは入れてもらえなかった。——私はそういう事実があるかどうかわかりません。しかしながら、そういうようなことがあるとしますれば、せっかくの日本学者諸君の協力一致の核融合研究推進の態勢というものは、その一角からくずれてくる。そういう点で、政治的な干渉、官僚的な干渉というものがない、そうしてほんとう学者の皆さんの正しい意欲を中心に、自主的に、自由な研究開発が進められねばならね、これがこの核融合反応の今後の取扱いの根本方針でなければならぬ、こう私は考えております。岡田先生あるいは宮本先生の御所見を、重ねて、イエスかノーかだけ伺いたい。
  80. 岡田實

    岡田参考人 今の御発言に対して、全く同感であります。官僚的な支配あるいは研究者の意思を曲げるような行動は、できるだけなくしていただきたい。そういう意味核融合懇談会は最初はそういった形がありましたけれども、現在はそういうものはないと思います。純粋な学者の集まりと見ていただいていいんじゃないか、そう考えております。
  81. 岡良一

    ○岡委員 先ほどからお話が出ておりまする核融合懇談会、核融合班それぞれ湯川さんが中心と承わっておりますが、これはやはり二本建でいった方がいいのですか。もうこういう段階になり、国も相当予算を出してこのことにがんばろうという段階では、やはり関係の方々の一本の協力態勢へのまずスタートを組織の上でお作りになる必要があるのではなかろうかと思われるのですが、それはいかがでしょうか。
  82. 宮本梧楼

    宮本参考人 確かに組織を作った方がいいんですが、現在湯川さんが主宰されてできておりまして、それがこの前の会合では、もう一度解散して全部の意見を総合して、たとえば委員長を選挙するなりしてきめたらいいかというような話はありましたが、ただ当分の間はまた湯川さんが非常にうまくやっておられますし、別に反対もないようですから、次の秋の学会ぐらいまでは今のままで進んでいく、秋の学会に湯川さんのままでやったらいいか、もう一度学会の意見を聞こうじゃないかというところまでいっているわけであります。私もその程度行き方でけっこうだと思います。
  83. 岡良一

    ○岡委員 私の構想ですが、学術会議核融合反応特別委員会を設けるというところまで、皆さんはその実現をしていただくべきじゃないかと私は思うのです。もちろん学術会議は文部省所管であり、文部省はまことに事務的には弱体であります。予算を取る腕においてはまことに私ども心もとない。しかし先ほど正力国務大臣もはっきり明言されたように、まっ先に科学技術会議なるものがこの核融合反応についても重大な関心を注ごうと言われる。しかも重要研究促進費には二十億のお金がある。ならば、当然宮本さんの構想である諮問機関をと言われるならば、学術会議が正規にこの核融合反応特別委員会を設けて、そこで必要なる予算その他研究コース等について学者の皆さんが自主的におきめを願う、所要の予算を要求され、所要の計画をまた発表される、こういう形を皆さんが中核となってやっていく、学術会議が中核となってやっていく、こういう形をとった方が私はいいんじゃないかと思うのですが、その点はいかがでしょうか。
  84. 宮本梧楼

    宮本参考人 そのような意見学者仲間でも出している人がおりますし、私もある程度までは賛成しております。それについては、学術会議の中に原子核特別委員会というのがありまして、名古屋大学の坂田昌一教授が主宰されているのですが、その方の意見でも、現在学術会議でそういうような委員会を作るかどうかを相談しようと言っておられます。相談した結果できるかできないかは私はわかりませんが、現在そういう関心があって相談中だということは確かだと思います。
  85. 岡良一

    ○岡委員 ぜひそういうふうな方向に十分な御考慮を願いたいと思います。  それからなお私は電気試験所の方と正力国務大臣にお尋ねしたいのであります。きょうこうしてせっかくお見えをいただきましたが、ところが試験所の方では、こうした核融合反応については具体的に着々研究を進めている、ところが科学技術庁所管にはまだこれだけの実績を示しているものがない、こういう状態です。これは私がいつも大臣に申し上げることなんですが、日本は人も足りない、金も足りない、施設も乏しいということならば、やはりこれは政府官庁としても、核融合反応というものを一本にして研究を進めていくという態勢を整える必要があるのではないか。この点はやはりはっきりとそういう方向に踏み切らなくては、現在の官庁のセクショナリズムというものをこのままの状態に放置しておくということでは、私は政府としては無責任だと思います。現に電子局を作りたい、大臣は強い御意思です。電子工学の発展というものはどうしても必要なことだ。ところがさて事務官僚が集まって相談をしてみたところが、官庁のセクショナリズムというものが、電子局を作るに至らないで、電子審議会を作ろうということになった。昔からの言葉に、ひさしを貸して母屋をとられたということがありますが、これはひさしどころか、まるで電子審議会という旗さし物一本もらって敗退をしてきた姿が正力国務大臣の姿といわなければならない。こういうようなことでは私は困る。この際やはり政府の諸官庁が一本で、核融合反応関連する基礎研究は一本にまとめたい。そうして民間とタイアップしてやる。民間は民間で協力態勢を作る。こういうすっきりした形を特に科学の分野ではとらなければ、こういうこれまでの不合理な状態は許されないと思う。これは大臣の踏み切るか踏み切らないかという御意思が、日本核融合反応の将来を決定するポイントだと思う。ぜひ正力国務大臣の御奮起を願いたいが、御決意を承わりたい。
  86. 正力松太郎

    ○正力国務大臣 岡委員の非常な御熱心なるお話はまことに敬意を表します。しかしながら、先ほど何かブームに乗って大いに進めていくというようなお話もちょっとありましたが、決してわれわれはブームに乗っておるのではありません。しかも基礎研究をいかにもおろそかにしているという、そんなことはない。基礎研究は十分正力しております。従って、私どもは文部省に向っても研究費をふやさなくちゃならない、あるいは国民教育、国民に科学知識を与えなきゃいかんと非常に熱心に言っている。決してブームに乗っておりません。  それからあるいは皆さんにこういうブームに乗ったように思われるのは、何としても原子力がこのように来たということは、ヒントン卿が来て、経済べースに合うという一言からです。これでみな民間が振い立ったんです。これは決してブームに乗ったんじゃありません。原子力の研究というものを盛んにやらして、一面において原子力というものは実際上経済ベースに来ているんだ、日本の産業革命はこれによって起るんだというあの力を得たことが、今日盛んになったので、決してブームに乗ったのじゃありません。それから、繰り返して言うようですが、基礎研究に対してわれわれは非常に熱心であります。従って、その費用についてもできるだけ出すということに骨折っておるのでございます。しかしながら、これほど民間が原子力に対して乗って来たにもかかわらず、まだ一般の——これは官僚の欠点かもしれませんが、役人はまだそこまで来ないのであります。それで私どもは技術会議というものを主張したんです。あの敗退というものは、あの技術会議ができてこそ打破し得るんです。また先ほどの電子審議会、これはむろん——しかしこれはほんの一部分のことです。そんなことよりも、根本的にセクショナリズムを打破しなくちゃならぬ。これこそほんとう日本科学技術の進歩をはかるのであります。だから私は、幸いにして皆さんの好意によって科学技術会議ができたということ、しかも非常な反対が各地にあったにかかわらずここまで来たということは、これは国会議員諸君に深く感謝をするところであります。
  87. 岡良一

    ○岡委員 せっかく参考人の方をお迎えして、与党の大臣と野党が論戦をしたんではまことに御迷惑でありますから、ぜひ正力国務大臣も長生きをして、せっかくがんばっていただきたい。(笑声)  そこで、先般私ども原子力一般について、また科学技術振興一般について大臣の御所見を伺い、また与党の同僚議員も予算委員会でもたびたび御意見も伺ったが、しかも私どもの納得しがたい結論が実は出ておるわけであります。それはこうして皆さんが相当予算を持たれ、そして、もちろん今直ちに総合研究所を——核融合反応のための推進機関を作ることが是か非か、これは皆さんで十分判断していただいて、皆さんが皆さんの教室の独創的なアイデアを生かし、これを積み重ねていくという形で総合的研究所が自然にできるものだろうと思いますので、この点は皆さん十分に御研究を願いたいと思います。しかし何といっても日本の立ちおくれというものは、私どもこれをやはり克服しなければならぬということになりますると、そこの表にも示されておりますような、英国ゼータあるいはソ連のクルチャトフ研究なんというようなものについて、やはり日本も科学者の皆さんがじかに出かけていって、みずから親しくあなた方の立場から専門的な識見を深めてこられる、こういう意味の科学の交流というものがあるべきではないか、これをもっと活発にすべきではないか、現にたとえば外国から技術を導入する費用がどれだけかと申しますと、四年前には四十六億、ことしは百四十億から払っておる。そうして先ほど菊池先生が御指摘になったように、ものまねに終始する、でき上った結果だけをまねをする、これだけの費用をまるまるとは言わないまでも、皆さんが外国でみずから技術の根本を身につけるというような方向に働かしていくならば、これは大へんに将来の日本の自主的な科学の進歩になると思う。そういう意味で、科学は国境を越えた問題でありますから、アメリカにも英国にも行ってもらう、ソ連にも行ってもらう、インドにも行ってもらう、こういうふうに東西の両陣営というような現在の人為的、政治的な対立を越え、国境を越えた科学の振興のためには、日本の皆さんは大いに外国に行きたいという意欲が私はあると思う。そうしてまた政府はどんどん出すべきだと思う。こういう点、特に核融合反応に着手せられるという立場から、どういうふうにお考えになるか。お聞かせ願いたい。
  88. 後藤以紀

    後藤参考人 先ほど共同研究に対する支障の点をずっと前に御質問がありました。それからまた今セクショナリズムの話も御発言がございましたので、両方合せましてちょっと意見を述べさしていただきます。  先ほど宮本岡田両教授よりお話がありましたように、現在は、いろいろな案につきまして、相当大規模な基礎的実験を行わねばならぬ時期にあります。しかも、いたずらなブームに乗らず、着実に基礎的な超高温プラズマその他の点を調べるとか、計算と実験との比較を行うというようなことが必要な状態にありますので、私どもが先ほど申しましたように、もし非常に大規模な設備を作るならば、共同利用のできる実験所をどこかへ置くという形が非常に適当である、重ねて申したいと思います。一つ研究所にまとめるということは、机の上では非常に強力のように聞えますけれども、その場合には、関連する範囲が非常に広いのでありまして、それはなおその一流の人をあちこちから集めなければできない。そうしますと、それがまた現在関連してやっております仕事の方にも影響は必ず及ぼすわけでありまして、しかも全部まとまりますまでにも相当な期間を必要といたします。空白期間ができてくるというような関係もありまして、共通の実験室を持つというような形が最も適当であろうかと思います。  それから先ほどセクショナリズムのお話もございましたが、現在私どもの電気試験所は、通産省工業技術院に所属いたしておりますけれども、原子力関係の予算については、科学技術庁の原子力局を経て予算案が考えられておる状態でありまして、私どもがほかの研究所あるいは科学技術庁その他と協力いたします上においては、少しも現在は支障は感じておりません。つまり科学技術庁と別になっておるということによる支障は感じておりません。むしろ先ほども申しましたように、関連する知識が非常に多く必要であるという点からいいまして、たとえば大電流に対する測定の研究を長年やってきておる、ほかの目的の業務をやってきておるということによる知識の集積というようなものが、相当役に立っておるわでございます。そういう面でほかの研究所あるいは大学というようなものとも十分に協力ができるというふうに考えております。
  89. 岡良一

    ○岡委員 私、最後に総括して要望だけ申し上げておきます。  予算の問題につきましては、ぜひ一つまた正力国務大臣におかれてもできるだけ御努力願って、せっかくきょう来ていただいた、このまじめに核融合反応に邁進しておられる方々の本意を十分遂げていただけるように、一つ御協力願いたいと思います。  それから、この研究体制の問題については、申し上げるまでもなく、とにかく基礎研究ということにできるだけ重きを置いていただきたい。これが核融合反応が将来日本で自力で花を咲かすかいなかの分れ目ですから、この点では私は皆さんの御意見に全く同調いたします。どうか社会的ブームというような流れに乗ることなく、真剣に、基礎研究の道にできるだけ御努力願いたいと思います。  それから、第三点といたしましては、どうかそういう意味で学術研究者の皆さん、科学者の皆さん、専門の権威の皆さんの意見一つにまとまって、それが政府に力強く反映し得るように、そういうような仕組みをぜひ一つこの際もう一段と御工夫いただいて、今後そういう機関を、皆さんの御要求というものを、予算なり設備の面に十分反映し得るように、一つ十分御努力願いたいと思います。  同時にまたあわせて諸外国研究等についても、十分摂取せられることについては、私どもも及ばずながらできるだけ御協力申し上げたいと思いますので、どうかお考え願いたいと思います。  なお政府の方については、先ほど来るる申し述べました諸点について、どうか核融合反応というものの将来を大きく育てようというあたたかい親心でできるだけやっていただきたい。  これだけのことを申し上げて、私の質問を終ります。
  90. 齋藤憲三

    齋藤委員長 本日の質疑は、この程度にとどめます。  参考人各位には、長時間にわたり、しかも責重なる御意見の御発表を賜わり、まことにありがとうございました。今後の本委員会調査に資するところきわめて大なるものがあったと存じ、委員会を代表して、私より厚く御礼を申し上げる次第であります。  本日の議事はこの程度にとどめ、次会は公報をもってお知らせいたします。  これにて散会いたします。     午後零時五十八分散会      ————◇—————