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宮本参考人 宮本梧楼です。簡単に
核融合反応の問題についての
参考になるようなことを少し申し上げたいと思います。プリントをお渡ししましたが、お配りしていただければ大へんけっこうだと思います。
原子エネルギーの
利用が非常に重要だということはもうもちろん
御存じのことでありますが、
差しあたり二つの
方法が
考えられます。
一つは重い
原子核、たとえば
ウランというようなものを
分裂させるというような
方法で、その次はここでも問題になっております
核融合、たとえば
重水素というものを結合させるような問題が出ております。この
融合法も時間的には前から
考えられていたのですが、しかし
ウランの
分裂なんかは先に
利用されるようになりましたが、しかし
融合法も
十分成功の
見通しがありますし、
相当利点も多いように
考えられます。
では、この
融合反応の
利点はどんなものかということをまず
考えてみますと、
ウランの
分裂炉と比べますと
事情がはっきりいたしますが、まずこの
ウランの
分裂炉なんかでは、すでに諸
外国で
指導権をとられてしまっておりまして、たとえばこちらで何かやろうとしますと、すぐに
外国の
特許にかかります。あるいは
技術導入というもので
向うのものを入れなければならない。そういう不便が
相当あります。
日本で根本的な大きな
改良なんかをしようと思いますと、
日本の
技術家は非常に優秀なんですが、それにもかかわらず
効果が割に少く、非常に困るわけです。部分的な
改良だとか特別な
技術面での改善はもちろん行われておりますし、これらも期待するわけなんですが、しかし
融合反応炉というようなものを想像しますと、こんなような束縛はほとんどなくて、自由に平等の
立場で出発できるという強みがあります。
次に、
燃料について
考えてみますと、
融合炉ではおもに
重水素を使います。
ウランの非常に
少いわが国でも、輸入する必要もなく、自由に使えるという
利点がまず
考えられます。海の水の中には非常にたくさんの
水素があります。その七千分の一ぐらいは
重水素ですから、それを取り出せば
十分使いものになります。たとえば、現在
世界の使っている
エネルギーの千倍ぐらいずつ使っても、優に十億年間保つというふうに言われている
程度なんですが、この
数字は当てにならないにしても、
相当長い間
十分使いものになるということは言えると思います。
その
値段についても、
値段はあまりはっきりいたしませんが、
ウラン一グラムをかりに十五ドルぐらいとしますと、
重水素ガスは大体十五円、ドルと円ぐらいの違いがありまして、大体三百六十分の一
見当の
値段なんであります。
出力の方も、完全にニュートロンまで全部使い得たという理想的なパイルを
考えますと、
ウランの場合は一グラムが二十二
メガワット・
パー・
アワーぐらいでありますが、
重水素の場合には九十七
メガワット・
パー・
アワーぐらいになりまして、大体数倍になって参ります。従って、同じ
エネルギーをとるのに、
燃料の点からいえば
重水素の方が千分の一以下ということになります。
また次にいいところとしましては
融合炉では
融合の灰というものがほとんどありません。わずかに
中性子による二次的な灰がありますが、しかしそれも大したことはありません。
中性子までほかに使うというようなことのために、有害な灰というものは非常に少くなります。
さらに四番目に、
災害のときにも危険が非常に
少いように思います。というのは、
ウランの炉ですと、
燃料全部を炉に入れまして連鎖
反応させるというような
行き方なんですが、
融合炉ではごく少量の
水素を入れまして、それを完全に
反応さして次に進むという
行き方なんです。たとえば、一ミリグラムずつ
水素を入れまして、一ミリセカンドの
放電で完全に
反応させるという仮想的な炉を
考えますと、それは優に二億五千万キロワット
程度の大きな炉になりますが、想像したそんな大きな炉であっても、ミリグラムぐらいの
燃料しか入れませんから、被害はあっても割合
少いだろうと思います。もちろんこんな炉で
災害があっては困りますが、かりにあったとしても、
少いだろうと
考えられます。
最後に五番目として、
利用の面でも、
融合炉というようなものでしたら、熱を通じないで直接に発電するというようなことも割に楽ですし、船舶とか大きい飛行機なんかに、直接に
推進力にするということも割に楽のように
考えられます。もちろん動力にするということもできますが、こんな
利点が
考えられるわけであります。
しかし、
利点はありますが、
欠点ももちろんたくさんあります。たとえば、
原子核一個当りの
出力としては百万
ボルト見当、
ミリオン・エレクトロン・ボルド見当の
出力がありますが、しかし、それを出させるためにキロ・
エレクトロン・
ボルト程度の
エネルギーをあらかじめ貸し与えてやらなければならないわけです。結局数百倍になって返って参りますから、差引すれば得になりますが、一度
相当大きい
エネルギーを入れてやらなければならぬということは、
相当困難なことであります。もっと大きい困難なことは、まだ完全には実用になる
段階にはなっていないということです。
技術面では非常に多くの問題が残っております。超
高温とかあるいは特殊な
加速器によって
反応を起させるというような、いわば
基礎研究の
段階で、そのために非常に大きな金額が要る。それが
欠点と言えば非常に大きな
欠点であります。しかし、いずれにしても、
欠点よりも
利点の方が多いように思いますから、
各国でも競ってこの
研究を行なっている
現状であります。
そうしますと、
各国では一体どんなふうにやっているかという
現状なんですが、これは多くは
秘密のうちに
研究されておりまして、あまり公表されていないんです。しかし、いずれにしても、まだ
基礎研究の
段階だというようなことは確かですが、しかし
成功も時間の問題で、いずれは
成功するだろうということは言えると思います。わずかにわかったことを申し上げますと、たとえば
アメリカなんかでは、戦後間もなくこのような
研究が
相当大きく行われておりますが、一九五一年ごろには
シャーウッド計画とか
マッターホルン計画というような
名前で組織化されまして、聞くところによりますと、数百億ないし数千億円の
年間予算で、人も数百人以上の
研究者がこれに携わっている、そう聞いております。
シャーウッド計画としては、ロス・
アラモス研究所のタック、テーラーというような偉い
学者が、またリヴアモアーの
カリフォルニア大学の
放射線研究所では、ヨーク、
コルゲートというような優秀な
学者が参加しました。
名前で言いますと
コロンブスというような
名前の
試験装置だとか、
パーハプサトロン、これは多分できるだろうというような
意味らしいのですが、そんな
装置を試作しているわけであります。
コロンブスというのは、普通の長い管に
重水素の
ガスを詰めまして、管の中に
電極を置いて、それに非常に強い
放電を起させる。
ピンチ効果というものを使いまして、
ガスを非常に高
温度に熱し、しかも壁から離して数百万度で百万分の数秒というぐらい時間を続かせまして、
中性子の発生を認めているわけであります。新しいS4というような形では、この
縦方向の
磁場を重合しまして、
ピンチを安定化して時間を延ばすという試みを行なっております。
パーパップサトロンというようなものでは、原理は同じようなものですが、形がドーナツ型の丸い格好の骨を使いまして、初めは
絶縁容器でしたが、新しくは
金属——アルミニュームの
容器なんかを使いまして、
重水素ガスを詰め、
電極のない、無
極放電というようなものを行わせます。これもS3というような新しい形では、
磁場を重合しておりますが、ちょうどこれは先日
発表されましたイギリスの
ゼータとほとんど同じ形式を踏んでおります。このほかに、オークリッジ、ニューヨークというようなところでやはり
融合反応の
研究が行われておりますし、さらに
マッターホルン計画というようなものでは、プリンストン
大学のスピッツア、これは
天体なんかで非常に有名な方ですが、
ステラレーター、これは星と
加速器を
一緒にしたようなものですが、
ステラレーターというようなものを作りまして、それは一九六〇年ごろには完成するということが伝えられております。内容は全然わかりませんが、想像するところでは、
東大なんかで提案されています
誘導ピンチというようなものを使ったものと同じじゃないかと思われる節があります。ほかに海軍の
研究所でも
衝撃波なんかで大いに
研究がなされておりますし、民間の
研究所でも、たとえば
石油会社というようなところでは、非常に大きな
予算で、
ウラニウムの
研究なんかも差しおきまして、その次の
段階の
融合反応の
研究を行なっております。
英国では
ハウエルの
研究所で
ゼーターというようなものが、これは
予算は三億円くらいだったと聞いておりますが、
出力はゼロではありますが、
ガス中の
放電で五百万度ぐらいを千分の数秒間保ちまして、
熱核反応——ただの
融合反応でなく、もっと厳密な
熱核反応による
中性子を初めて検出したもようなんです。これは将来に非常に明るい
見通しを与えていることは
御存じだろうと思われます。ほかにオルダーマストン、これは
電気力の
研究所のようですが、
ゼータのモデルともいうべきセプター、
ゼータよりもっと小型なものですが、そんなものを作って
研究を進めております。
ソ連の実情はどうも私たちにはあまりわかりませんが、しかし
まつ先に数百万度の
高温で
中性子を検出して、そのメカニズムがどうだというようなことも言っておりますし、また一九五六年に
クルチャトフ——ハウエルの
研究所を訪ねた
クルチャトフというような
学者が
発言をしまして、
英国の学界を非常に驚かしたというようなことから見ましても、ほかの
自由諸国に劣らない
程度には進んでいるんじゃないかという
感じをいたします。学術的な
発表も
相当たくさんありまして、だいぶいいものが出ておりますから、やっていることも
相当いいだろうという想像をする次第であります。
このほかに、小さい国ではスエーデン、ドイツ、フランスというようなところでも
相当行われているというように聞いております。
では、翻って
日本の
現状はどうかと申しますと、
理論的には
日本でも
相当進んでおります。しかし、
実験の方ではまだあまり進んでいないように思います。たとえば、
理論的方面では、
京都大学を初め、非常に多くの
研究者によって
天体の
核融合反応の
研究というもの、あるいは
中間子によって
反応を起させるという
可能性の
検討なんかが行われておりますし、
東大その他では新しい着想とかその
実験計画、
理論的な
検討というようなことが行われております。全国各場所で
原子核の
反応だとか
放電のいろいろな
研究というようなもので、
融合反応に関係した見るべきものがたくさんあります。しかしまだ
理論的なものがおもで、
計算機械によって非常に大きな
数値計算が必要なんですが、それはほとんど進んでおりません。
実験方面では先ほどちょっと触れましたように、あまり思わしい結果が行われておりません。わずかに
電気試験所とか
大阪大学というようなところで
放電の
実験が行われております。これはほとんど
研究費もなく、
設備もないというところでこれだけの
成果をあげられたということは、非常に感心していいことなんですが、しかし、正直に申しますと、
ほんとうの
研究はこれから始まるものであって、今までは
ほんとうの
予備実験程度じゃないかというような
感じがいたします。
では、そんなむずかしいものであれば、できる
可能性があるかないかというようなことが問題になりますが、おそらく
見通しとしては近くできそうなんです。その
技術的な
方面の
見通しを少し申し上げますと、
原子核、たとえば
重水素というようなものを
融合させるわけなんですが、そのときにクーロンの
反発力というものがありまして、あらかじめ
相当の
エネルギーを与えないと
反応が起きません。しかし
反応が起れば
エネルギーは十分回収できるのですが、起るまでに
相当の
エネルギーをつぎ込んでやらなければなりません。このためにいろいろな
方法が
考えられますが、たとえば、第一番目に非常に高
温度に加熱するということが
考えられます。しかしこれは加熱しただけではごくわずかな量しか
融合しませんから、加熱したものをどうしても非常に長い間保つということが絶対に必要になります。
技術的な
方面では、この保つということにだいぶ重点が置かれているようです。その加熱には
電気放電であるとかあるいは
衝撃波というようなものが普通
考えられております。問題は今言った高
温度のものをいかにして長く保つかということなんですが、長く保つことができれば、ほとんど
成功したと
考えていいように思います。たとえば密度が十の十五乗から十六乗
程度、一立方センチメートル当り、
重水素のある
ガスです。これは
普通実験に使う標準的な
程度なんですが、そういうような量で百キロ・
エレクトロン・
ボルト、これは
温度にしますと十の九乗度で、十億度ぐらいですが、十億度ぐらい熱したとしましても、平均して
一つの
原子核が
反応するまでには十秒間ぐらい飛び回らなければなりません。距離にいたしますと、地球を一周するほどに飛ばなければ、
反応が平均して起きないという
程度なんですから、
相当長い時間保つということが必要になります。これらの非常に高
温度の
ガスを保つのに足るような、溶けないような
物質の炉がないものですから、どうしても
物質でなくて電
磁場の壁を作って閉じ込めておかなければならないのです。そのためには、多くの場合は
放電のときの
ピンチ効果といいますが、
放電が非常に小さくなりまして、壁から離れて
放電が起きるという、そういう
ピンチ効果を使います。しかし、
電極を入れた直接の
放電による
ピンチ効果というようなものは不安定であるということが
実験的にも
理論的にも知られております。これを安定化する
方法というようなものが
検討されております。たとえば、先ほど
発表された
ゼータというようなものでは、縦の
磁場をつけ加えております。そのほかに
金属の壁を使いまして、
鏡像反発、鏡のような作用で、中の熱い
ガスが近づくと壁で反発される性質がありますが、そんなものを使いまして、
ゼータなんかではある
程度の
成功をおさめております。ある
程度の
成功というのは、時間を長くするということが必要なので、今までの常識の千倍
程度の時間まで延ばしたという
成功をおさめております。このほか
わが国でもいろいろな提案がされておりますが、不安定なものを安定化するというのではなくて、初めから安定な
ピンチ放電を起させる、そういうようなものが提案されております。たとえば、
誘導ピンチ効果、
空間ピンチ効果というようなものを使う
方法が提案されております。そのほかの
方法もいろいろと
考えられておりますし、
外国でもこれらについて
発表はありませんが、おそらく
秘密のうちに同じようなことをやっておるんじゃないかというような
感じはいたします。二番目の、そのほかの
方法としまして、超
高温によらなくても
エネルギーを与えればいいのですから、
加速器なんかでイオンを繰り返し作用させまして、衝突しそこなったものを何べんも何べんも当てて衝突を起させるという
わが国独特のものも
考えられております。次にまた
中間子というようなものを触媒のように使う
方法なんですが、
アメリカで提案されたのですが、
理論的には
日本でも非常に進んでおりまして、すでに
日本でも十分
検討されております。
天体の
核現象も前に申し上げました
通り、
日本でも
相当多くの寄与が与えられております。このような
天体の
核現象ということは直接そのままで地上の炉にするということには向きませんが、しかし炉を作るときの基礎的な
データとして、ぜひともこのようなものの
データが必要になって参ります。結局種々いろんな型が提案されてはおりますが、現在のところは
検討が進められているという
程度、なんです。ある
程度の
成功は続々出ておりますが、まだ今
理論的あるいは
実験的な
検討の
段階なんです。しかもその基礎的な
研究というようなものがないと、
検討するだけにも不十分なんです。さらに独創的な
型式の現われる
可能性もありますし、これは
世界の
現状なんですが、
見通しは非常に濃くて、近くできるというような気はいたします。それも、
物理学的な、
経済性を無視した
実験的な炉でしたら割に早いように思います。しかし、期間を予測するのは非常に危険なことでして、ここで軽々しく言うことではありませんが、憶測をたくましくいたしますと、三、四年を出ずして一応
型式の決定を見るぐらいまでのものができるのじゃないかというような
感じがいたします。しかし、それを実用するということになりますと、さらに
工学者、
技術者というような者の力に待たなければなりませんが、そのような場合には、そのほかに、大きいものになりますから、社会的とか経済的な種々の制約も出ておりますが、
物理学徒である私が軽々しく想像することはできません。しかし
ウラニウムの炉なんかの実例から見ましても、あるいは時間の
スケールが短かくなっているという事実、これは過去のいろんな
技術や
研究成果が全部
一緒になりまして、その上にさらに新しい
技術が加わって、その
技術によって事が進むものですから、時間の
スケールが非常に短かくなっております。そういうようなことまで
考えに入れますと、おそらくはこの後十年くらいでできるのじゃないかというような
感じがいたします。少し前にゼネバの
会議で、バーバーという人が二十年以内だというようなことを述べておりますが、おそくともそのくらいまでにはできるというような気はいたします。これらの
数字はあまり信用がおけないにしても、
核融合反応炉というようなものの
成功が、単に時間であるということは間違いないと思います。
それでは
日本ではどうしたらいいか、これは貧弱な
考えなんですが、基礎的なことをまず進めていただきたいというような
感じはいたします。今まで
わが国では、非常に多くの部門で
外国に少しずつおくれていたように思います。で、多年にわたって、明治以来ずっと
技術導入あるいは
技術提携というような
名前で
向うの
技術を買い入れまして、非常に多くの
特許料を払いまして、不自由な、大へん不利な
立場にあったように思います。これにはいろんな
事情があると思いますが、
融合反応の
利用というようなことについては、このようなあやまちを犯すことなしに、十分な
対策を立てるべきだと
考えます。いずれにしても非常に追ったことでありまして、緊急を要するものですから、数年たって様子を見てからというのではもうおそいわけです。今からでも少しおそいような気はいたしますが、しかし全くの手おくれというわけではありません。進め方次第では
十分成功すると思います。この
融合反応研究ということは非常に新しい領域でして、現に
研究の
段階にあるということは申し上げた
通りなんです。従って、ある
独創性のあるものを入れるというようなことももちろん必要ですし、それとともに、十分な
基礎研究がなければ完成しない、これははっきり申し上げていいことだと思います。
基礎研究といっても、
融合反応は非常に大きな
設備を要するのであります。今まで
基礎研究といいますと、
研究室のすみで、こそこそやるようなものを想像されがちなんですが、非常に大きな
設備を要するというようなことで、それが非常に
欠点ですが、これを何とか克服していかなければならないと
考えます。資源にも乏しく、
日本は国費もあまり豊かであるとは思いませんが、貧乏な
日本であればこそ、一そうこのような
研究、そうして早く完成するというようなことが必要だ、そう痛感いたします。
その
対策なんですが、
基礎研究と私今言って参りましたけれども、これには
二つの
意味を持っておりまして、
一つには現在
大学なんかで行われているような
融合反応に
関連のある基礎的な
研究です。たとえば
原子核の
反応であるとか、
加速装置であるとか
放電現象であるとか、あるいはプラズマの
物理学、材料・
真空工学というようなものの
理論と
実験、これを
純粋基礎研究とかりに呼んでおきますと、こういうような
方面、もう
一つは、
基礎研究ではありますが、
融合反応炉に直接
関連のあるような
基礎研究、たとえばセータだとか
ステラレーター、そういうものを作ってみる
程度の
研究、あるいは非常に大きい規模の
放電であるとか、大きい規模の
加速器、こんなような、直接に
関連した
基礎研究との部門があるわけなんです。それぞれの純粋
研究というものは
理論と
実験とを助成していかなければならないと
考えますが、しかし部門も非常に多いですし、先ほど言ったように
相当金もかかることですから、施設としては現在の
大学とか文教施設というような場所でやるにしても、
予算規模がそのままでは困難だと思います。かりにそのような
予算の中でやりくりをして重点的に集中したとしましても、
融合反応の部分だけ発達しても、ほかの方が非常に圧迫を加えられるというようなことでしたら、かえって悪い害が及んでしまいますから、少くともほかの方は圧迫しないようにしておいて、別途に
融合反応関係の
予算を組まなければならない、そういう
感じがいたします。
もう
一つさらに大きいものは、
大学の
研究室というところでは無理なものでありますから、どうしても
研究所を作って早く
研究を進めていかなければならないと
考えます。これは全然勝手なことでありますが、新設するということも
考えられますし、原子力
研究所のようなところを非常に拡張して、そのようなところでされるということも
考えられます。しかし何度も申し上げますが、基礎部を十分強力にしなければ何もならないということで、くれぐれも基礎を重視していただきたいということをここで申し上げる次第であります。
それから基礎部門といいますか、
研究所を作っても、その中にも純粋な基礎部門まで入れなければ何もならない、ただ普通の
意味の基礎だけでは困るので、あまり関係がないと思われる広い基礎まで必要であります。それがないと、
ほんとうの直接的な
基礎研究は浮き上ってしまいます。かりに浮き上らないにしても、
大学なんかでやっておる
研究とギャップができたら大へんなことであります。ある
程度重複することは学問の進歩に非常に望ましいことでありますが、ギャップができるということは、ここで決定的な
欠点になります。だからそういうことまで注意して、
研究所というものを
考えてほしいと思います。たとえば、
研究所を作るとしますと、どんな部門が必要かということをそこに四つあげましたが、
基礎研究部、これは
純粋基礎研究、独創的な
研究を小さい規模でやってみる、
ほんとうの
意味の
基礎研究。そのほかに計算・
理論部、これは
理論的な
検討のほかに
相当大きい計算機が要りますから、計算機の運転のようなものも含んでおります。次に広い
意味では
基礎研究になりますが、予備
実験部と書きましたが、直結した
基礎研究、たとえば
ゼータのようなものが
向うでできておりまして、それをそのまま移すのは
日本的でないというならば、それにかわる
程度の国内の
装置を作るという
意味であります。そのほかに工学関係の
研究部が必要だと
考えます。
ともかく、こういうようにして、できそうであるし、やらなければならないということから、次のような結論を私は出したいと思います。それは、
核融合反応は
十分成功の
見通しがあります。
わが国でも、貧乏な
わが国であればこそ早く始めなければならない、しかも
基礎研究を始めるべきである。一刻をためらって手おくれになるということであれば、また
技術導入とか悪い繰り返しをすることになりますから、くれぐれも注意したいと
考えます。そのためには具体的に、
一つには現行の
大学とかいろいろな
研究所がありますが、その
研究所で関係した基礎部門を別口で大きく助成するということ、もう
一つには
研究所を作って大きい型の準備
研究を始めてほしいということであります。
御清聴を感謝いたします。