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1958-02-07 第28回国会 衆議院 科学技術振興対策特別委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年二月七日(金曜日)     午前十時二十一分開議  出席委員    委員長 齋藤 憲三君    理事 秋田 大助君 理事 有田 喜一君    理事 菅野和太郎君 理事 中曽根康弘君    理事 前田 正男君 理事 岡  良一君       小平 久雄君    須磨彌吉郎君       岡本 隆一君    佐々木良作君       田中 武夫君    原   茂君  出席国務大臣         国 務 大 臣 正力松太郎君  出席政府委員         科学技術政務次         官       吉田 萬次君         総理府事務官         (科学技術庁         長官官房長)  原田  久君         総理府事務官         (科学技術庁企         画調整局長)  鈴江 康平君         総理府事務官         (科学技術庁原         子力局長)   佐々木義武君         総理府技官         (科学技術庁調         査普及局長)  三輪 大作君         海上保安庁長官 島居辰次郎君  委員外出席者         科学技術事務次         官       篠原  登君         文部事務次官  稲田 清助君         海上保安監         (海上保安庁船         舶技術部長)  水品 政雄君         参  考  人         (原子燃料公社         理事長)    高橋幸三郎君         参  考  人         (日本原子力研         究所理事長)  駒形 作次君         参  考  人         (日本科学技術         情報センター理         事長)     別宮 貞俊君     ————————————— 本日の会議に付した案件  科学技術行政に関する件      ————◇—————
  2. 齋藤憲三

    齋藤委員長 これより会議を開きます。  科学技術振興対策に関する件につきまして、調査を進めます。  本日は前会に引き続き、正力国務大臣の所信並びに明年度科学技術庁関係予算に対する質疑、あわせて観測船宗谷科学性の問題及び日本科学技術情報センターの活用の問題等に関しまして、質疑を行います。     —————————————
  3. 齋藤憲三

    齋藤委員長 この際、参考人決定につきましてお諮りいたします。すなわち、本日の議事に関して、日本原子力研究所理事長駒形作次君、原子燃料公社理事長高橋幸三郎君、日本科学技術情報センター理事長別官貞俊君、以上の方々を参考人決定し、その意見を聴取いたしたいと思いますが、これに御異議ありませんか。
  4. 齋藤憲三

    齋藤委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  5. 齋藤憲三

    齋藤委員長 それでは、通告順に従いまして、順次質疑を許します。  岡良一君。
  6. 岡良一

    岡委員 きょうせっかく情報センター理事長さん等お見えでございますので、明年度予算に関して、まず情報センター昭和三十二年度における御活動の実績をお伺いいたしたいと思います。
  7. 別宮貞俊

    別宮参考人 別宮でございます。当日本科学技術情報センターは昨年の八月十六日に設立いたしまして、現在の役員は、理事長理事、監事の役員のもとに、企画室情報部調査部及び庶務課がございます。それで人員は現在六十一名でございます。  予算は御承知の通り、三十二年度が、政府出資金四千万円、それから補助金三千万円、合計七千万円、民間資金出資金四千万円、寄付金三千万円、合計七千万円、それから自己収入としまして予想しておりますものが四百六十九万円、合計一億四千四百六十九万円でございます。  業務といたしましては、当センターは、わが国における科学技術——人文科学のみにかかわるものは除いておりますが、情報に関する中枢的機関といたしまして、内外科学技術情報収集分類整理、保管するとともに、これを提供閲覧させることを主要業務といたしております。三十二年度は、設立第一年度に当りますので、上記業務遂行に必要な基礎調査と、それから準備体制の整備に置いております。  情報収集は、三十二年度収集いたします情報源は、主として内外理工学関係定期刊行物特許関係資料といたしました。外国定期刊行物は、二千種程度収集する目標のもとに、さしあたり昨年十一月に約千八百種を発注いたしました。航空便による第一回分は一月二十一日に到着いたしまして、その後引き続き参っております。また国内定期刊行物につきましては、学協会誌その他の科学技術関係定期刊行物調査いたしまして、情報センターにおいて蓄積の対象となり得る雑誌千二十三種を選定いたしました。そのうち寄贈及び購入によって、すでに四百三十六種が到着しつつあります。特許資料につきましては米、独、英三国の特許抄録上記三国の電気、機械化学の三部門につきましては特許明細書を発注いたしましたが、これについても、第一回の航空便によって、その一部がすでに到着いたしました。  次に、情報整理につきまして申し上げます。将来の情報処理量及び需要などを推定いたしまして、これを最も合理的に処理するため、数種の検索機械検討した結果、現段階においてはIBM統計機械組み合せによる方式を採用することといたしました。将来これにまさる機種の現われることをも考慮いたしまして、これから可能になるであろう機械及び検索方法については、引き続き調査研究を行なっております。  情報センター情報蓄積基礎となる整理方針につきましては、国内ドキュメンテーション専門家及び部内職員による情報整理委員会を設置いたしまして、その細部にわたって検討しつつある状態でございます。情報センターは、分類法といたしましては国際十進分類法を採用いたしまして、この詳細版作成UDC協会委託いたしました。  次に、情報提供について申し上げます。定期刊行物によって、三十二年度本格的提供業務は行えなかったのでありますが、三月には外国雑誌に含まれる論文と特許資料について索引誌を刊行いたします。依頼による情報提供については、三十二年度検索機械準備できないため、十分な業務は行えなかったのでありますが、可能な範囲においてこれを行いまして、現在までに約五十件の依頼を受け、これに回答しております。その他は国内におけるこれまでのドキュメンテーション事業の成果をまとめて、一般の利用に供するため、国内で行われた抄録の総目録を作ることを計画いたしまして、今年度はまず日本化学総覧の一九四〇年より五五年に至る十五年間の総目録作成を、日本化学研究会委託いたしました。これは近く刊行する予定でございます。  次に、業務遂行体制について申し上げます。情報センターわが国科学技術情報に関する中枢的機関として十分な活動を行うため、国際ドキュメンテーション連合——FIDと申しておりますが、それに加入するなど、各国ドキュメンテーション機関と連携をとりつつあります。また、国内学協会協力を得ることに努めるとともに、国際十進分類法協会文献活動協議会等に加盟いたしまして、全国における協力体制の確立に努力いたしております。  大体、以上でございます。
  8. 岡良一

    岡委員 この情報センターは、昨年の八月に発足をいたしたということでありまして、まだ昨年度においてはその準備をせっかくしておられるという御事情を聞かせていただいて、そこで私考えるのでありますが、本年度も助成、出資等八千万円が計上されております。今お聞きいたしますと、内外の、いわば科学技術に関する専門図書、特に外国図書を千二百種ほどを取り寄せられる、これを国内にいわば広報するということになると、やはりただの翻訳者ではだめではないかと思います。やはり専門的な識見を持って、しかも語学にたんのうな人たちがこれに従事をしなければならぬ。定員が六十一名という職員ということも聞きましたが、しかし、こういう定員とこの程度予算科学技術情報センターとしての十分な活動ができるかどうかという点を、私ども非常に案じておるのであります。その点、理事長としての率直な御所見を承わりたいと思います。
  9. 別宮貞俊

    別宮参考人 ただいまのお尋ねでございますが、部内職員だけでもって所期の目的を達成するということは全く不可能でございまして、部外のいろいろな協力団体を今作ることに努力いたしております。それで、日本でこういう仕事が従来活発に行われていなかったのでございますから、それの専門家を養成していくということも相当大きな仕事でございまして、定期刊行物でもって情報提供する、かたがた部内においてそういう専門家を養成するということにも、相当に力を尽しております。それで、一ぺんに大きな目的を達するというのは非常に困難であることは申すまでもございませんが、みなそのことを十分腹に入れまして、将来の完成を目ざして、目下力を尽しておる状況でございます。何分皆様の御指導、御援助をちょうだいしたいと存じております。
  10. 岡良一

    岡委員 国内の方で二百五十件ばかりの委託があったという今御報告がございましたね。
  11. 別宮貞俊

    別宮参考人 委託がございましたのは、五十件ばかりです。
  12. 岡良一

    岡委員 その内容は、どういうことでございますか。
  13. 別宮貞俊

    別宮参考人 申し上げます。調査依頼を受けました件数は、文献所在調査が十件、文献複写十七件、翻訳九件、調査八件、業務問い合せ十四件、合計五十八件、以上でございます。
  14. 岡良一

    岡委員 この情報センターが発足するときに、私どもこの委員会で強く申し上げておったことは、科学技術振興ということは、これは世界各国政府があげて努力をしておることであるが、日本のような経済構造、いわば中小企業零細企業というものが非常に多いという状態の中で、この零細企業中小企業に対して近代的な科学技術というものの所在を知らしめる、そしてそこに自己の経営の近代化あるいは技術の進歩についての示唆を与え、意欲を啓発するということが、いろいろな情報センターの私は非常に大きな仕事ではないかということを強く主張しておったわけでありますが、そういう方向に向ってのセンターの御計画は何かおありでございますか。
  15. 別宮貞俊

    別宮参考人 情報センター提供いたします情報は、現在の段階では、印刷物でもって発表された情報に限られております。それで、国内企業者から、企業遂行についてのいろいろな意見のようなものを求められましても、それはちょっと困難じゃないかと思います。どう申しますか、個人の主観の強いようなものを提供することは、いろいろな弊害があるだろうと存じますので、この民間企業者が面接その仕事に非常に参考になる。そういう示唆基礎になる材料の提供というところに限られるのじゃないかと存じます。
  16. 岡良一

    岡委員 それから、この予算書を拝見いたしますと、政府省庁図書購入費等費目が分散しておるわけであります。そこで、これは三輪局長並びに理事長にお伺いしたいのですが、もちろん各省庁にも研究試験所等もあり、従ってそこには必要な図書も当然購入が必要ではありましょう。しかし、何しろこれを翻訳し、これを広報するということになると、日本語というものが私は徹底的な隘路だと思うのです。そこで、せっかくの資金を投じて各省庁それぞれが予算を計上し、図書購入して、さてそれを日本語翻訳して流すということになると、そこで全部が大きなボトル・ネックに打ち当ることになる。私は情報センターというようなものが、将来ますますその機能を拡大をし、発展をしていただくためには、こういう機構の点でもう少し一本にしぼって、そうして資金を有効に使い、外国図書購入なり翻訳なりその啓発宣伝、広報にもっと合理的にやる方法がないものだろうかということを、予算書を見てつくづく感じておるものであります。これは情報センターの当事者としての理事長さんのお考え、特にまた科学技術庁三輪君あたり、どういうふうにお考えになっておられるか、将来の御方針をもかねて聞かしていただきたい。
  17. 三輪大作

    三輪政府委員 翻訳とかあるいは外国雑誌日本の各所で同じものを重複して購入したり、あるいは訳したりすることはきわめて不経済である。従いまして、これをなるべく統一的な能率的な機能を発揮いたしまして、情報活動をやるべきであるという御指示に対しましては私ども情報センターを作るときに、そういう考えで、情報センター中枢的機能を発揮するようにいたさなければ、センターの設置の意義がないと考えまして、センターの任務といたしましては、国内翻訳なりあるいは提供業務というものをセンター自身が全部やるというわけには参りませんが、ここが中心になりまして、重複を避けたり、あるいは十分協議をいたしまして、それぞれの機関と十分な連絡をとる。そのとる役目は、センターがいたすということにいたしますれば、将来重複とか、そういう問題は起らないと思いますが、さしあたって、センターができた当初でございますので、まだ十分な効果は上っておりませんけれども、将来はそういう方向で、岡委員の御指摘のような方向に向って運営をしていかなければならぬと考えております。
  18. 別宮貞俊

    別宮参考人 情報センターは、国会図書館とそれから文部省学術情報部通産省通商局調査課資料室日本学術会議図書館または東京大学の付属図書館、そういうところと緊密な連絡をとりまして、資料を借用いたしますとか、または調査を御依頼するとか、そういうようなことを十分にやっております。以上。
  19. 岡良一

    岡委員 この通産省特許庁予算を見ても、こうして特許庁関係図書購入費原子力関係図書購入費特許公報発行費等相当計上されておるわけです。理事長先ほどの御報告を聞けば、特許資料等もやはりニュースを翻訳し、その索引もとりあえず出し、引き続きまたその内容についてもこれを知らしめるような方法も将来講ずるということになる。こういうところで、もうすでに経費がダブっておるのです。作業もダブり、経費もダブる。こういう点はこれからの問題として当然科学技術庁が責任を持って、できるだけセンター中心に、このセンター目標とする事業を一本に統べていただくように、私どもは強く要求したいのです。  その次には、本年度予算の中で、原子力に関する点を若干お尋ねをいたしたいと思う。そこでこの原子力予算では、一番大きなものは、何と申しましても、動力炉導入するということが費目としても一番大きなものになっております。原子力研究所理事長がおいでのようですが、これについては私どもがいただいておる資料では、「動力試験炉導入の概要」という資料があります。昭和三十二年十二月二十三日、これで見ますと、日本原子力研究所動力試験炉委員会審議をされた結果を公表せられたものであると、こう私は解釈するのですが、そのような意味を持った資料でございますか。
  20. 駒形作次

    駒形参考人 動力試験炉予算を要求いたしました当時におきましては、動力試験炉委員会なるものはまだ設立をいたしておりませんでした。しかし大蔵省予算提出後、ちょっとはっきりした時期は覚えておりませんけれども、その後に至りまして動力試験炉委員会というものを作ったのでございます。それはなぜそういう委員会を作る必要を認めたかと申しますと、この問題につきましては、やはりもうちょっと各方面意見をお聞きする必要がある、かように考えましたので、委員会を作りました。しかしながら、予算が国会にかかるようなところまでいくかどうかというような点もございましたので、その委員会は一回開きましたにとどまっております。そして、予算大蔵省の原案の中に盛り込まれたということがはっきりいたしました後、さらに一回開いております。そういう事情でございまして、動力試験炉委員会というものは、原子力研究所理事長諮問機関というわけでございます。そこにいろいろなことを諮問いたしまして意見も徴し、原子力研究所はさらに各関係方面とお話し合いをいたしました上、決定するというふうな工合に運ぶ所存でございます。
  21. 岡良一

    岡委員 その点は、この資料にうたわれてある「此の動力試験炉ベルギー建設中の加圧水型軽水減速発電炉BR—III云々改良型である。」「此の炉は適当な附属装置と簡単な改装を行う事により沸騰水型の動力炉として特定の実験を行うことも可能である。」等々、個条が書いてあるわけであります。日本原子力研究所としては、やはりこのような諮問機関の意思というものを中心として、新しき動力試験炉導入に臨んでおられるのであるかどうか、この点いかがでしょう。
  22. 駒形作次

    駒形参考人 原子力研究所といたしましては、その委員会の答申というものを、相当重く参考として考えるべきだと思っております。特にその際に、この事柄につきまして、今お読み上げになりました点は、当時の状況といたしまして、大蔵省予算折衝をする段階でございましたので、相当事柄をはっきりいたしまして予算化をはかる必要がある。ただし相当金額でございますから、十分検討をする必要があるということは、どこまでもその事柄に対してつけ加えられておるわけでございまして、そういうわけで、まずそういうタイプで具体的に検討をその当時いたしました次第でございます。
  23. 岡良一

    岡委員 原子力局長にお伺いしますが、本年度予算に計上されておる動力試験炉予算の数字はどういうことになっておりますか。
  24. 駒形作次

    駒形参考人 予算トータルといたしまして、二十五億七千万円の内訳といたしましては、原子炉プラントに十三億五千万円、タービン・プラントに五億二千万円コア代といたしまして、燃料を除きまして七億円、合計いたしまして二十五億七千万円、その二十五億七千万円のうち、三十三年度現金分といたしまして一億円、残りは負担行為といたしまして二十四億七千万円、これが二十五億七千万円の内訳でございます。
  25. 岡良一

    岡委員 この資料では、二十六億九千五百万円ということになっておりますね、二十五億七千万円というこの差額は、どういう事情なんでしょう。
  26. 駒形作次

    駒形参考人 お手元に行っておりますのは、動力試験炉導入についてというのかと思いますけれども、その後におきまして、動力試験炉導入について改訂という書類がございます。これをごらんいただきますと、さらに今申し上げましたことがおわかりと思いますが、その改訂が十一月二十五日というふうになっておりますから、このことでいろいろと大蔵省との折衝は行われている次第でございます。
  27. 岡良一

    岡委員 そこで問題は、このPWRを求めようとされるのか、BWR導入されようとされるのか、どちらを選ばれようとしておるのか。原子力委員会としては当然御決定があったかと思うのですが、その間の経緯をお話しいただきたいと思います。
  28. 佐々木義武

    佐々木政府委員 原子力発電のための長期計画というものが原子力委員会としてはきまっておりまして、その中にはただいま問題になっております濃縮ウラン二重冷却型の動力試験炉を一基入れるべきであるというスケジュールになってございます。ただその濃縮ウラン二重冷却型の中で、お話のありましたPWRの方がよろしいか、BWRの方がよろしいかという選択の問題に関しましては、原子力研究所の方で先ほど駒形理事長からお話がありましたように研究を進めておりましたので、あるいはもっとさかのぼってお話しいたしますと、運輸省船舶試験用の炉を一基建設いたしたいというかねがねの要望もございましたが、これを原子力研究所と一本にいたしまして、できますれば船舶用原子炉と、発電用原子炉試験とを兼ね合せて将来の増殖炉試験もいたしたいという意味も兼ねまして、研究所の方へいずれを採択すべきかお願いしておったのであります。先ほどお話のありましたように、まず運輸省の方とのお話し合いがある程度まとまり、それを基本にいたしまして、学界あるいは民間のこの問題に造詣の深い皆さんにお集まり願って、そうして原子力研究所ではいろいろ研究いたしました結果、一応PWRの方が、そういう意味ではよろしいのではなかろうかという話になりましたので、原子力委員会の方といたしましては、現在の段階ではPWRの方が、そういういろいろな目的を兼ねてやるためにはいいのではなかろうかということで、そういう態度にしてございます。今後さらに研究を進めまして、現在の予算範囲内で、さらに安くてしかもそういう目的に合するようなものが実際の購入折衝の過程でできました際には、そういうものにあるいは変えていくということはやむを得ないものではなかろうかというふうにも考えております。
  29. 岡良一

    岡委員 この動力試験炉は、ベルギー建設中の加圧水型軽水素減速発電炉BR—III改良型である。従って、本年度予算に要求せられた金額は、このベルギー建設中の動力試験炉の価格というものをそのままに要求されたものである、こういうわけですか。
  30. 駒形作次

    駒形参考人 お答え申し上げます。まず第一に私ども考えておりますのは、先ほど局長からお話のありましたごとく、PWRだけというのではなくて、PWR並びBWRというものが、いずれも試験をすることが可能であることが非常に望ましい、こういう考え方を一つ持っております。これは将来の濃縮型のああいうタイプ考えますと、それぞれに非常に利点があるわけであります。しかし、技術的に考えまして、PWR一〇〇%、BWR一〇〇%、というものは非常に金もかかりますし、そういうことをいたしますと、かえってトータルにおきましては同じものを二台買うことになるかもしれぬ、その方が技術的には簡単になるかもしれぬがというようなことにもなり得ますので、そこまでは考える必要はない。PWRが一〇〇%で、BWR試験が三〇%でも四〇%でも、それは今後いろいろできる範囲において十分検討して参りたい。BWRが一〇〇%、PWRが五〇%くらいできるということでも、私は実は望ましいと考えておるわけであります  さて次の問題といたしまして、ベルギーPWRとの関係はいかんということですが、ベルギーの一万キロのPWRというのも、これまた試験的な炉でございますから、いろいろと試験ができるような工合にはなっております。なっておりますけれども先ほど私が申し上げましたような事柄で、われわれはさらにそれ以上の実験ができる試験炉ということを望んでおるのでございます。従って、ベルギー炉そのものではございません。従って、値段もそのままではございません。そういう関係でございます。
  31. 齋藤憲三

  32. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 正力国務大臣が時間に迫られておるようでありますので、根本的なお考えにつきまして、一、二お伺いをいたしたいと思います。昨日、科学技術振興のための基本施策についての長官の御所見を承わったわけでありますが、一々ごもっともでありますし、長官が最近の世界情勢に基いて、特に科学技術振興のために、懸命な努力をされようとしておることにつきましては、心から敬意をささげるものであります。しかしながら、ここで一つ正力さんに十分に私は考えていただきたいと思うことがあります。それは言うまでもないことでありますけれども、次々にいろいろな政策が樹立され、これを実施されることになると思いますが、それを樹立し実施するのは言うまでもなく正力さん自身が所属しておられるところの内閣が指導しておるところの行政府であります。現在の行政府に、実際に科学技術振興対策を立てて、しかもそれを実施する資格があるかどうか、もう一ぺん反省をしてみてもらいたいと思う。私は何よりも、考えられるように、たとえば総理府科学技術会議を起されるとしましても、どういう段取りでどういう方策を立てるかというとにろまで、ほとんど全部おそらく現在の官僚を中心にして作文が書かれると思います。原子力会議を見ましても、その他の政府部内にあるところの協議会審議会等を見ましても、全部同じようなことでありますから、似たような運営をされるだろうと思います。また同時に、この科学技術振興のために、根本的な問題といたしまして、科学技術教育の振興ということを非常に強くうたっておられる。この科学技術振興対策を樹立し、そして振興政策を実施していくもの、これもまた文部省を中心としての官僚だけと思う。そこで正力さんの方が直感的におわかりになっていると思いますが、現在の世界のインテリゲンチアの中におきまして、最も科学技術を軽視し科学技術者を冷遇しておって、今正力さん自身が最も必要と思っておられる科学技術振興対策に対してむしろ反対的な動きをしておるのは日本行政府であり、現在のところ行政官庁であると思う。こんなものが中心になって、現状のままでほんとうに科学技術振興対策が樹立でき、実施できるとお考えになりますか。私はむしろ正力さんが科学技術振興対策のためにほんとうに熱意を示されるのでありますならば、閣内に強引に科学技術の合理的な、根本的な行政機構の改革でありますとか、人事の配置転換でありますとか、あるいは行政官庁内部における科学技術者の待遇改善措置でございますとか、これら科学技術振興対策を樹立し、実行し得る機関を、イロハから改善する措置を断行されることが前提条件だと思いますけれども、御所見を承わりたいと思います。
  33. 正力松太郎

    正力国務大臣 ただいまのお話は、まことにごもっともな点もあります。しかし何しろ行政を執行するには、今の行政組織でやるより仕方がないのでありますので、私は今日のいわゆる官僚主義について、いろいろな非難もありますし、また私自身も感ずるところが十分あります。ありますけれども、どうしても今これを一気にやるということはなかなかむずかしいことでありますので、私が今度科学技術会議というのを設けたのも、やはりそれを幾らか打破する意味科学技術会議というのを設けたわけなんであります。そうして、これは行政府だけではいかぬから、民間の人も入れて、実行するのは行政府でありますから、そこに持っていきたいと思うのであります。実行するについても、今までの役人だけの考え方ではいけない。今まで民間の人を入れても、ただ原子力委員会は別といたしまして、ほかはみんな会議というて一月に一ぺんか二へん開いたものであり、実際には仕事はできていない。そこで今度は原子力委員会のように常任の学識経験者を加えて、そうしていつも私が問題にしておるのは、私一閣僚の力ではなかなかいかぬので、これは一つこれに関係の各閣僚に入ってもらって、そうしてお互いに国家的立場からやりたいということで、あの科学技術会議というものを設けたのであります。これによって御趣意を幾分なりとも実行に移したい、こう考えておる次第であります。
  34. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 もしほんとうに科学技術振興考えられるならば、国務大臣としての正力大臣は、むしろ科学技術庁長官なんかより行政管理庁の長官になられた方が手っとり早いと思います。これは言うまでもないと思いますけれども、行政官庁の中で技術官吏と一般事務官との状態をごらんになってごらんなさい。それで科学技術振興をやれだの、それから一般に科学技術者の待遇改善をやれということ、そういうことを言う者自身、資格がないでしょう。それは私は痛感されると思います。そういう状態であるから、また現在の行政府に、悪いけれども、あまり程度の高い技術屋は集まりがたい状態に実際になっておる。しかもなお行政府におきましては、ほとんど明治時分からの保安行政監督面がそのまま行政権限として残されております。これであなた一体仕事ができるか。これはテレビをやられて——ああいうテレビなんかは新しいものだから、明治時代にはなかったから取締りはあまりなかったかもしれぬけれども、電気一つとってみても、これは我田引水で悪いようですが、電気技術者の一番いいのはみんな民間におる。それを民間に対する行政面の監督は全部役所の程度の低いのがこまかくやらなければならぬことになっている。それでもって科学技術を発達させろだとか振興しろだとか、そういうことはおこがましくて私はお話にならないと思う。それからもう一つ、同じような意味で、たとえばこれも電気で恐縮なのですけれども、ヒューズが一本飛んで、それをちょっとでもいじって電気をつけたら、これは罰金か何かでひどい目にあいますよ。それでもって一般民間人の科学技術的な常識を高めようと思ったって高められるわけがない。私はこの辺に常識的な、根本的な科学技術対策の問題があると思うのです。従いまして、本気になって政府が問題を提起するならば、やはりますみずからをおさめなければ、人をおさめるだのという大きなことを言える資格はないわけでありますので、まずその政策を立てる行政府自身が、科学技術的な振興についてものを言えるような格好に出直してきてからにしてもらいたい。そうしないと、一般民間の方がむしろ迷惑です。できもせぬ程度の低いのが、科学技術云々という波に乗って官僚的な権限を振り回して、じたばたつまらないことをぐずぐず言われたら、正直な話、ますます困る。十分一つお気をつけ願いたい。  一つ例をとりますが、たとえばいろいろな行政が乱れ、そうして最近その面の予算措置の変更もあったようで、これはいいような、おかしいような格好でありますけれども、たとえば補助金政策なら補助金政策というものがある。これが少しルーズに流れている、そうしてこれがルーズに流れようとすると、何とかこれをルーズに流れないように取締りをうんと強化しなければならぬ、そうすると今度は会計検査院が強引にのさばり出してくる、強引にのさばり出してくることはいいけれども、これまでひまでひまでしょうがなかった一番末端のチンピラ役人どもが一般の役所に出ていって、三十万や五十万のものをがんがんと洗い立ててわあわあ言って、そうしてしかも官吏としてわれわれが見るに忍びないような格好で圧力を加えてくる。目的は今言いましたように官紀の紊乱を粛正するという意味で、その本筋は正しい。正しいけれども、自分自身がまだそういうことをする資格のない者にそういう権限を持たせれば、これは子供に刃物を持たしたような、まことに危険な状態に相なるわけであります。私は、今度の科学技術振興政策なるものは、まことに方向はいいし、正しいのでありますけれども、これと同じような弊を生み出さないように、十分に一つ気をつけていただきたいのであります。今、御承知のように、役所の中では技術官吏は逼塞しておりまして、ふんまんやる方ないものがあります。しかも今言いましたように、程度は高くないと言ったら悪いかもしれないけれども、大体そういうことだから、あまり程度は高くないに違いない。それが一般民間の方は、今世界の趨勢に基いて、ぐんぐんと技術的な向上を求めて、ことしの卒業生で見てごらんなさい、就職でも、一般文科系統よりも技術系統の方がよほど就職率はいい。大体月給も高い。わあわあ言わなくても、ちゃんと行くべきところへ行っておる。そういうところに、役所の方からつまらない者が火をつけて、今のような振興に名をかりて取締りみたいなことをすると、これはむしろ船をうしろ向きに戻すような結果になるということを、私は心から心配するものであります。従いまして、何とか会議というようなものもいいかもしれませんけれども、その中でまっ先にやってもらいたいことは、ほんとうに行政面における技術監督のやり直し、技術監督のいろはからの考え直し、現在なら現在の電気技術行政の中でほんとうに民間にまかせられないもの、政府として、官吏として監督しなければならない線、それから同時に監督する者の質的向上を十分にできるように措置、これがとられてからでないと、あまり大きな声で行政府からわあわあ言ってもらいたくないと私は思います。十分一つ御考慮願いたいと思います。  それから時間がなさそうでありますから、南極観測隊につきまして、むしろ科学技術センターとしての御所見を伺いたかったのでありますけれども、あとで時間がありましたら伺うことにしまして、ほかにしましょう。  先ほど同僚の岡委員から、日本科学技術情報センターお話が出ておりました。これを一つ、正力大臣自身の口から私ははっきり聞いておきたいと思います。情報センターの設置自身はいいことでありますし、この活動がだんだん本格的になることはいいことであります。しかし私がこれでも同じように心配するのは、科学技術の紹介ということをめぐって、日本の行政官庁、あるいはこれに類するものの中に、もうすでに強引なるセクトと派閥が生まれつつあるということでありまして、むしろこのことは、私は費用の非常な乱費と、それから総合的な機能を発揮し得ない結果になることをおそれるものであります。御承知のように、国会図書館には国会図書館で、科学技術の紹介なり、あるいは研究なり、あるいは情報センターに似たような仕事なりをしようとする動きが現にあって、そして予算を要求し、今度におきましても二千五百万円程度予算にあげられております。これは大体五千万円程度になるという話を聞いております。同じような意味で、統一されるならば、されなければならぬ問題に、特許庁の似たような、特許に関係のある技術面の資料整備の問題がありまして、この関係にやはり同じように二千五、六百万円が計上されているように聞いております。私どもは国会図書館と科学技術図書館の創立ということにつきまして、その辺の事情を少々聞いてみましたところが、さっぱりお互いに連絡もなければ相談もないし、そうして全然総合的な運用もされておらない。おのおの勝手に、それこそ競争みたいな格好でやられようとしておる。先ほど聞いてみますと、外国図書並びに雑誌をどれだけ入れるかどうかというような話があった。私は雑誌なんかは相当部数が重複して入ってもいいと思いますが、しかしながら、それを紹介したり翻訳したりする仕事は、もう少し本格的な総合がされて、そして運営のよろしきを得るならば、私は相当な効果をこれからでも上げ得ると思います。聞くところによりますと、アメリカにおきましても最近海外技術情報センターというものができたそうでありますけれども、これは現実に技術図書館と共同作業的な格好で仕事を進めておるようであります。従いまして、私は今後このものがどういうふうに運営されるのか、本格的に科学技術図書館を科学技術図書館として総合されるような方向にこの情報センターを持っていかれるつもりがあるのか。情報センター情報センターとして、ほかのものは別として、当面の活動だけを行なおうとされるのか、この基本的な運営方針考え方をまず伺いたいと思います。
  35. 正力松太郎

    正力国務大臣 お話の点はまことにごもっともで、私ども実はきのうも、図書館の方の問題もあるし、この点は考えなくちゃならぬと言いました。お話の通り、どうしてももう少し連絡をよくとってやらなければならぬと思っております。何分まだできたばかりのものでありますから、とりあえず外国情報をとることに今のところに専心しておりますが、なお一つ国会図書館ともよく連絡をとってやります。何しろ予算もわずかなことでありますから、結局今お話のように、少くとも連絡を密にしなくちゃこれはむだになりますから、その点は十分注意しますが、御趣旨は御趣旨の通りに考えております。
  36. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 それでありますと、今の具体的の措置は別問題としまして、大体諸外国に見られるような科学技術図書館的な方向に次第に総合されていくというふうに見ていけばいいのでしょうか。
  37. 正力松太郎

    正力国務大臣 その通りに考えております。
  38. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 私も同感でありまして、そういう方向になるべく一日も早く総合されていくように指導をしていただきたいと思います。それがためには、少々の予算でありましても、三十三年度から合計いたしますと一億数千万円の金がついたことになっておりますから、この金の使い方自身を総合的に相談をされて、そうして現実に総合した活動ができるような状態で三十三年度運営を御考慮いただきたいと思います。それでは大臣に対する質問を先にいたしますので、一応正力大臣に対する質問はこれで中止いたします。
  39. 齋藤憲三

    齋藤委員長 原茂君。
  40. 原茂

    ○原(茂)委員 大臣に対する質問として二点だけお伺いしたいと思います。大臣から本国会においてまず基本的政策の説明がされて、その中で国内資源を最も有効に利用するという基本の立場が明らかにされたのですが、本来、ことに原子燃料あるいは核燃料物質等に関しては、国内の問題もさることでありますが、海外におけるこの物質の入手ということも今後相当重要視されなければならぬ問題だと思います。特に動力協定等がどういうように内容がきめられるか、今進行中でありますが、将来のわが国の動力源というものを考えるときには、この燃料に関する相当大きな注意力がなければ、おそらく長期の計画等は立て得ない、こう考えるわけです。こういう観点から、ここに高橋さんが来ておられますが、いわゆる燃料物質というものは、たとえばこれは原子燃料公社を例にとりましても、国内の資源だけを確保する、あるいはこれを探鉱するということに、現在知らないうちに力が注がれているように思うのです。何か政府の立場で、国として大きく海外にこの物質を得るという点へ目を向け、それに対する働きかけを行なっていかなければいけないと思うわけですが、この点の具体的な、海外に対する調査あるいは折衝等、そういうものを行う御意思があるのか、行いつつあるのか、その内容を大臣から一つ基本的な立場だけでけっこうですからお伺いしたい。
  41. 正力松太郎

    正力国務大臣 燃料お話の通りに、燃料公社をして国内において十分やらせつつありますが、しかしそれと一方、やはり海外のことを考えなくてはならない。日本の内地だけでは燃料は十分と見込みがまだ立っておりませんので、それで海外の方、まずカナダとかあるいは今度イギリスから炉を買うについても、燃料を少しイギリスからとることになりはせぬか。その条約も今協定しつつあります。それからなお東南アジアの方面でも、たとえて言いましたら、ビルマとかタイとかいうところにも燃料があるということで、この方面民間からも調査をしておりますし、なお政府からも人をやって調べさせております。いずれにしても内地には力を入れておるけれども、内地だけでは不安の点がありますので、それで海外からも一つ、値段等の点も考えて、入れることも考えつつあります。
  42. 原茂

    ○原(茂)委員 今の御答弁の中で、東南アジアに対しては、政府が人を派遣して調査を進めているというお答えがあったのですが、やっておられますか。
  43. 正力松太郎

    正力国務大臣 やっております。現にタイなどもやりましたし、ビルマの方もやりたいと思っております。
  44. 原茂

    ○原(茂)委員 政府が東南アジアの諸国にこの調査をしようというのには相当の手続、国際間の話し合いが必要なんですが、そういう順序を経てやっておられるのですか。
  45. 正力松太郎

    正力国務大臣 ちょっと申し上げますが、正式にやったのは公社の人だけでありまして、内々は調べておるのです。それをちょっと訂正しておきます。
  46. 原茂

    ○原(茂)委員 大臣がお済みになったあとで高橋さんにお伺いしますが、この調査の結果は、どれくらいの期間やっておるか知りませんが、現在英国あるいはその他と燃料輸入の交渉等が行われている最中に、別途に日本独自の立場で海外から核燃料物質を手に入れるというのを建前にしての調査政府なり公社でやろうときめてやっておられる、こう考えてよろしいのですか。
  47. 佐々木義武

    佐々木政府委員 昨年原子燃料公社理事が参りまして、いろいろ向うの調査と申しますか、資源関係研究したわけでございますが、政府として正式に外国と外交交渉の上でどうこうするという問題に発展する段階にまだないのでありまして、実情を把握したいというくらいのところでございます。また、公社といたしましては、国際的な外交問題あるいは政府自体として正式にこの問題に乗り出すというふうな、そういう考えではございませんので、御了承いただきたいと思います。
  48. 齋藤憲三

    齋藤委員長 ちょっと委員諸君に申し上げますが、正力国務大臣は、地方行政委員会よりの要求がありますので、約五分間退席をいたしたいとのことでございますが、いかがいたしますか。
  49. 秋田大助

    ○秋田委員 ちょっと私関係がありますので、その問題に関連して申し上げたいと思います。ちょうどその東南アジアの核燃料物質なりその方面のことについての交渉に関連して、原さんから質問がございましたから、私個人的に多少関係がありますので、御参考までに申し上げたいと思います。  それは、前宇田大臣のときに、大臣一行が欧米諸国に原子力研究に行かれた際、個人的でありますが、故宇田大臣から、一つ東南アジア方面に行って、この資源関係調査なりあるいは核燃料に関する調査あるいは何らかの措置等について研究する、その目的をもってそっちを回ってくれないかというお話があり、実は私は東南アジア方面の経路をとり、大臣とは別に、まずタイに行き、またインド方面へ行こうと思ったのでありますが、いろいろな関係でタイだけにとどまったのであります。この点は帰りまして正力さんにも口頭をもって御報告を申し上げておりますので御記憶と思いますが、私はタイに一泊して、タイの鉱山局次長、名前は忘れましたがお会いいたしました。従来日本としても燃料公社あるいは私営の営利会社の方々は、タイの南方方面調査されておる。ところが燃料公社の高橋さんからも当時お話がありまして、タイの北方地帯の方にいろいろ資源が理蔵されておる見通しがついておるから、タイの北の方を探査する調査隊を送ることをタイ国政府に認めてもらうと非常に都合がいいというようなお話がありましたので、この点を諮ったのでございます。個人的な資格であります。タイの大使館におられるタイ語の通訳官とともに参りました。約半日お話をしましたが、鉱山局次長のお答えを要約いたしますと、タイの北の方の地帯は、一つの温存地帯と申しますか、封鎖地帯のようにして、従来外国人に見せてない。しかし日本政府においてその希望があるならば、タイと合弁事業ならば許されると自分は個人的に思うというような結論的なお話でございました。そして自分はきょうは個人的資格で来ておるが、日本に帰ってからそれを政府に申し上げて、何らかの措置なりに出るであろう、交渉するかもしれぬ、そのときはよろしく頼むということをもって会見を終って、タイを出発したわけでございます。事は私的でございますが、私は当時科学技術庁の政務次官という肩書きで行っておるのでありまして、日本政府としても公式ではございませんが、その点は考慮と、予備交渉のまた先べんを開いておるという事実はあるのでございまして、この際御参考委員諸君に申し上げたいと思います。
  50. 齋藤憲三

    齋藤委員長 それでは大臣以外に対する質疑を続行していただきたいと思います。
  51. 原茂

    ○原(茂)委員 今大臣にお伺いした関連の問題で、高橋さんにお伺いしたいのですが、この原子燃料公社は、公社法によって設立され、しかも今日運用されておるわけですが、この公社法の建前からいって、海外における核燃料物質に対する正式な調査あるいはこの入手のための人の派遣、これを行うための諸外国との折衝、こういうことをやり得るものという大臣のお考えでございました。従って、すでに公社としてはやっておられるような佐々木局長先ほどの御答弁があったわけですから、これを具体的にどの方面にどういう人を派遣して、どんな調査が具体的に今進みつつあるかという三つに分けて、一つお知らせ願いたいと思います。
  52. 高橋幸三郎

    ○高橋参考人 先ほど佐々木局長からお話のありました公社の佐藤理事がタイ国の調査をしたのは、公社としての資格ではなしに、政府からの派遣の形でやった調査でございまして、目的はマレー一帯のトリウムを原料とした場合に、モナズ石つまり砂錫と一緒に出てくるモナズ石を採集する可能性がありやいなや、その鉱床の現状はどうなっているかという調査をした事実があります。公社として正式に海外に原料調査のために派遣したその実績はまだございません。しかしわれわれとしましては、仕事をやる上にどうしてもさしあたってウランの鉱石が必要であって、それがなければ試験なり研究が進められないという現状でありますので、昨年イギリスの燃料公社と当公社が話し合いの上で、途中に民間の商社も入っておりますが、試験試料として二酸化ウラン約百キロを試験目的ということで、ごく限られた数量をわれわれがもらって、それを公社はもちろん、その他民間関係方面あるいは大学方面研究室にそういう試料を配付して、それを現在元手として研究を進めておるのが唯一の海外から来た試料でございます。百キロだけではとうていわれわれの目的にかないませんので、引き続きアメリカ方面にも、二酸化ウランその他金属ウランを含めたある数量の入手の方法はなかろうかということで、かなり具体的に交渉を進めました。現にその交渉は進みつつありますが、最初の話では、それくらいのことならば何とかしてやるよと向うのAEC方面の人は言っておられたけれども、しかし実際問題として、それでは現物を一ついただけませんかと言って話を突っ込んでいくと、そうはいかぬ、政府政府との国際関係がはっきりしなければ具体的取引はできないという段階に現在入りつつあるわけであります。結局はやはり日英あるいは日米なりの一般協定が確立しなければ、実際のそういう取引、サンプル程度のものでもなかなか困難のような現在の情勢だと私どもは判断しております。唯一のものはイギリスから買いました百キロの二酸化ウラン、これは非常に有効に国内で今資源が利用されております。現在のところはそんなところであります。
  53. 原茂

    ○原(茂)委員 今私が御質問申し上げたのは、既定の事実といいますか、前に百キロ入ったのをお答えになっておりますが、アメリカとも新しい交渉を進行しているというだけではなくて、特に東南アジアに焦点をしぼっているわけです。東南アジアのただ一国、タイあるいはこれを中心としたマレー一帯のトリウムを一度調査したことがある。その間に、これは佐々木局長もいいかげんな答弁をしないでほしいと言いたいところですが、政府からもやらない、公社からも行かないというかと思うと、高橋さんの御答弁では、公社から行ったのではなくて、政府から派遣して行ったのだという、これは政府間の話し合いが一応できて、そうして公社の職員を派遣したということになっているのだと思うのです。その範囲は、単にマレー一帯といっても、全域にわたるのではないだろうと思います。しかも長期継続的にやっているのではなくて、ある思いつきといいますか、一時期を画してやったにすぎないので、従来の基本的な長期計画の構想のもとに、東南アジアにおける核燃料物質というものの相当長期にわたる調査、いわゆるこれに対する計画を持ち、構想を持った行動のその最初がいつの時期かになされており、引き続き今日も行われているということにはなってないように思うのです。その点は大臣の御答弁が必要になるわけですが、大臣がいないので佐々木さんでもけっこうです。一体そういうことをやった事実があるにいたしましても、基本的に日本の国家の立場から言うならば、国内のこういう種類の物資を探査するだけでは、将来長期にわたるわが国のいわゆる原子力を云々しようとするこれからの科学の進歩に合せることが不可能だ。こういうことを考えていくならば、当然国外におけるこの種の物資の長期の入手というものに目をつけなければいけませんし、当然これはパラレルに考えていかなければいけないはずである。大臣は、これは考えねばならぬことであり、考えておることであると先ほど御答弁があったのでありますが、その建前からいうならば、今日まで引き続いて行われつつある計画の一部として、かつてマレーに行き、あるいは秋田委員が言われたように、前宇田大臣のときに、独自の立場で個人的ではあるが折衝をやってきたというようなことも、全部長期の構想にわたっての一部であるということになるのであるか。あるいは原子燃料公社が発足して以来今日まで、この公社法の解釈が知らない間に悪い意味のエナーシャで何かすっと国内資源に対する開発ということに向けられてしまって、基本的な日本の将来にとっての長期にわたる核燃料物質に対する入手構想というものが何かぼやけてきたということなのか。あるいはそうではなくて、海外に対しては何々の事情によって一部一時期に限ってそういうことをやっておるのであって、今手が届かないので途切れておるというのか、そのどちらであるのか、これは大臣ならいいのですが、佐々木さんでもけっこうですから、お答えいただきたい。
  54. 佐々木義武

    佐々木政府委員 まず前段の御質問からお答えいたしますが、タイに参りました公社の佐藤理事は、一昨年のたしか暮れに参ったと記憶しております。その際になぜ行ったかと申しますと、ここにおられる前田議員並びに社会党の松前議員が欧米を回りました帰りにタイに参りまして、いろいろと向うの要路とお話した結果、ああいう鉱床があるということでぜひこちらから行って調べてもらいたいというお話がございましたので、私どももぜひ御要望に沿って実態を研究したいという意味でその適任者を選んだのであります。何と申しましても、事柄の性質上佐藤理事が一番よかろう、ところが公社には、できたばかりでございましたので、海外出張旅費がなかったのでありまして、そこでやむを得ず佐藤理事政府の嘱託ということにいたしまして、そうして原子力局で持っておりました海外出張旅費でこれをタイの方に派遣いたしたというような格好になっておりますので、理事長の言われるように、公社の人として、また同時に政府の人という格好で参っておりますから、その間先ほど私の申しましたことがあるいは穏当を欠いたのかもしれませんが、事実はその通りでございます。  それから第二段の問題でございますが、アトランダムに思いつきで調査をしておるのか、そうじゃなくて、長い日本の将来の原子燃料対策の一環としてそういう調査を進めておるのかという御質問でありますが、もちろん希望といたしましては、国内の資源をまず調査発見してこれを開発したいという念願は変らないところであります。同時に、どうしても国内資源のみでこれを解決するのには非常に無理もあるように現段階としては考えられますので、できますならば、英米等各先進国の援助を仰ぐという第二段の処置は当然必要かと思います。しかしながら、同時にできますれば、お話のように、東南アジアあるいは南米のブラジル等いろいろ新しい資源がこの問題に関して発見されつつある国々に対しましては、何とかしてその実態をきわめると同時に、できますればわが方との話し合いで、こういう資源を御援助いただくような方途をとり得ないものだろうかという気持は、これは政府としても強く持っているつもりでございます。  ただウラン製錬の問題は、普通の鉱物と違いまして、非常にデリケートな国際関係に置かれてありますのは御承知の通りでございます。従いまして、石油があるから、あるいは石炭があるからという問題とはおよそ違った国際環境下に置かれた問題でございます。ただ希望があるからといって、なかなか単純に乗り出せないような状況にあるものでございますから、その間、できますれば、希望はただいま申し上げましたような希望でありますけれども、事の運びといたしましては、極力慎重にかまえてそして所期の目的をあげていきたいというふうに考えている次第でございます。  長い計画を持っているのかといいますと、希望としては持っておりますが、具体的には、何国から何トン、何国から何トンというふうに持っているかと申しますと、これはただいま申しましたように、やはり順次相手国との話し合いが進みませんと、政府としては計画としてきめ得ませんので、ただいまの段階としては、希望として持っており、それを慎重に運んでいきたいと考えておる次第であります。
  55. 原茂

    ○原(茂)委員 私の聞いているのは、単なる希望を持っているという言葉で表現するようなことをお聞きしているのでは実はないわけです。少くとも日本基本的な燃料対策というものを考えたときには、国内における資源と同時に、海外において、日本がある意味では面接的に入手し得るいわゆる資源というものをどこかにつかまなければいけないという構想をはっきりと持って、その構想に従って、国内に対する施策と同時に、海外に対する国家的な施策というのを推進していこう、こういう方針のもとに動いているのかどうかということをお伺いしたわけです。単に希望を持ったり、あるいはどこの国から何トン、どこから何トンというようなことを今数字をあげて交渉をするとか、入手しようとするというようなことを言う前に、基本的な国家としての考え方、政府としての構想、こういうものを私はお伺いしているわけなんであります。まあ、この点、大臣がおいでにならないと、佐々木さんの御答弁ではちょっと苦しいかと存じますので、その点はあとに譲るといたしまして、ただ、これはまた高橋さん、佐々木さんどちらでもけっこうですが、私は、今申し上げたように、基本的な構想、しかも燃料に関する限りは、海外からの入手というところに相当ウエートを置いた国内あるいは国外に対する施策というものがなければいけないんじゃないか、こう思うわけです。そうするためには、まず第一に考えられるのは、国と国との間に正式にこの種のウラン鉱あるいはトリウム鉱に対する調査ができるような話し合いというものを正式機関を通じて進める必要がまずあるだろうと思う。ですから、大臣がおいでになれば、それは外務省を通じてそのことが正式に進んでいるのかどうかということをお聞きしたかったのですが、現在では進んでいない、正式にそういう話が取り結ばれたところがないわけです。これは非常に怠慢だと私は思う。どうしてもこれは早期にこのことをやりながら、しかもそれにもずいぶんと時間がかかるわけですから、その間動力協定等を通じてのいろいろな、これから輸入しようとする燃料に対する問題が解決するでしょう。同時に、海外に対する基本構想に基いて、そのときの国際間の正式手続を進めていくという努力がやはり科学技術庁としてはなければ、科学技術庁の存在からいってもおかしいんじゃないか、私はこういうことを質問聞いたしているわけです。そういう観点から、二人のうちどちらからでもはっきりと、そういう国際間の話し合いを取り付けるために、現在正式機関を通じて交渉が進行中であるなら、一部分でもその通りに簡単にお答え願ってけっこうですし、なければ、私はないと見ているのですが、ないということをお答え願っておいて、あと大臣の質問に譲っていきたい、こう思うわけです。
  56. 佐々木義武

    佐々木政府委員 ただいまの段階では、公式には東南アジア諸国に対して、そういう意味調査を可能にする外交交渉というものは、行われていないという状況でございます。
  57. 原茂

    ○原(茂)委員 それに引き続いて佐々木さんにもう一つお答え願いたいのですが、今度政府考えている東南アジア開発基金構想の中に、あの基金を設定するに当っては、科学技術庁中心の核燃料物質の調査、このための東南アジアに対するサービスあるいは協力、こういったような面への使用というものは、この基金構想の中には入っていない、こういうことになるのか、御存じなければけっこうですが、もしおわかりでしたら、そこまで一つ御答弁願いたい。
  58. 佐々木義武

    佐々木政府委員 私ども、はなはだ不勉強でございまして、開発基金の内容等をつまびらかにしておりませんので、間違うといけませんから、御答弁は差し控えさせていただきます。
  59. 岡良一

    岡委員 燃料公社の高橋さんにお見えをいただいたのは、実は三十三年度事業計画を私はお聞きしたかったのですが、書類をいただきましたので、概略はこれで理解することができました。  そこで、先ほど来同僚の委員諸君からも原料の問題についていろいろ御意見が出ており、しかも政府としては明確な対策が明らかにされておりません。それで私は、日本が今後原子力の平和利用をいよいよ発展させていくためには、何といってもこれはもう、原料問題の保証というものが大前提になろうと思うわけです。しかしながら、この問題について、あるいは東南アジアの諸国なり、ブラジルなり、その他の各国にウラン鉱がある、しかしまだそこまで手が伸びない、カナダとの交渉も中途半端なままになっておること。もう一つの問題は、この国際原子力機関にアメリカはすでに五トンの濃縮ウランの供与を声明しておる。英国もソ同盟も、それぞれ提供を声明しておる。ところが今いろいろ同僚委員等の質疑応答の内容を聞いておると、こういう点について何ら科学技術庁なり原子力局としては手が打たれない。あるいはその手を打つすべがないのではないかというような懸念が感ぜられる。日本国際原子力機関理事国になり、国際原子力機関は、憲章にも明らかなように、原料なり施設なり技術なり、あるいは資金なりのあっせんまでも積極的にしようということになっている。してみれば、日本理事国となり、機関運営の衝に立つということになり、機関の第三条では明確に、後進地域におけるところの原子力の平和利用の普及発達には重大な関心を払うものであると規定しておるのだから、もう進んで日本国際原子力機関運営において原料問題を積極的に解決する、こういう方向に当然いくことが大きな太い筋だと私は思う。ところが原子力局あるいは燃料公社は、そういう国際原子力機関との関連において打つべき手というものは考慮しない。そういう問題は外務省の問題だというようなことで、日本のこうした原料の確保に関する科学技術庁なり原子力委員会なり原子力局の政策というものは、非常に局限されたワクの中に追い込められておるというというふうなことは、私は今後もっと一本に、特に国際原子力機関中心に、核原料物質の確保に当るというくらいな方針で、一つこれは進んでもらわなければならぬと思います。  なお燃料について若干お尋ねしたいと思いましたが、宗谷丸の問題で昨日佐々木良作君から御質問の旨が申し出られてありますので、佐々木君の質問のあとで私は申し上げたいと思います。
  60. 齋藤憲三

  61. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 南極観測の問題につきまして関係の方々から少々伺いたいと思っておったのでありまするが、この一両日来、各委員会におきましても、同僚議員諸君によりましていろいろと質疑が展開されておりまするし、それから新聞の報道によりますると、昨日ともかくも宗谷は外洋に脱出することができたそうでありまして、従いまして、現在の観測隊の行動について私どもは心から御苦労を感謝いたしますとともに、今後の御奮闘を祈るわけでありまするので、簡単に要点だけ一つ御事情を御説明願いたいと思います。  まず第一に、いろいろ世評を受けておりまするところのこの観測隊の本部機構、それから遠征隊の編成の内容等につきまして、その指揮命令系統が混乱をしておるとか、あるいは本部と出先との間の連絡が不十分であるとか、あんまりひどい混成旅団でありまするがために総合性を欠いておるとか、昨年の経験にかんがみましても、各隊員の手記等によりましても、その辺は相当問題であったようでありますが、しかし大体昨年と同じ形でことしも出発するようになった。似たような批判が最近また起っておるというような問題につきまして、特に隊の編成それから命令系統等につきまして、稲田さんから一応の御説明と、それから一般批判に対する御所見とを承わりたいと思います。  それから、続きまして、特に宗谷の性能、装備等につきまして、これは国際水準と比べてどういう状態になっておるのか。われわれのところに報道せられるのは、昨年のソ連のオビ号との比較、それから今度の場合には米国のパートン・アイランド号との比較等が中心に比較がされておるのでありまして、従ってあの辺に比べると、どうもわれわれしろうとにはわからぬけれども相当性能も劣っておるような状態で出発しておるのではなかろうか。この辺に最も非科学的な状態が出ておるのではなかろうかという心配をいたしておるのでありますので、この辺につきまして島居長官あるいは船舶技術部長等からお話を承わりたい。  そして最後に、どなたからでもけっこうでありまするから、観測隊の本日以降の予定と目標につきまして伺いたいと思います。  右三点を簡単に一つ御説明願います。
  62. 稲田清助

    ○稲田説明員 ただいまの御質問の第一点、南極観測に関しまする本部機構及び現地との連絡の問題でございます。この点についていろいろ御心配の点を承わったのでありますが、この南極地域観測の仕事は、各省庁に属しまする公務員あるいは大学の研究者または海上保安庁所轄でありまするところの巡視船宗谷の乗組員の協力のもとに成り立つものであります。そうした次第でございまするので、この間の連絡統合という問題が非常に重要でございます関係上、その仕事実施に先だちまして、昭和三十年十一月でありましたか、閣議決定のもとに、南極地域観測統合推進本部という機構を設けました次第でございます。この本部の構成員といたしましては、関係省庁あるいは学術会議関係の学識経験者等から構成せられておるわけでございます。ただいまお話がございました船と、それから観測隊の連絡の問題でございます。観測隊を構成いたしまする学者あるいは各省庁の公務員につきましては、やはり翌年の閣議決定をもちまして、文部大臣が各省庁の同意を得て隊員として委嘱いたしておりまして、隊員は隊長の指揮命令を受けるというような組織ができております。従いまして、本部でありまする文部省から隊長にいろいろ連絡し、指示いたしまするのが、中央の政府関係と現地の隊の連絡でございます。隊におきましては、隊員によって組織せられまするオペレーション会議、直訳すると作戦会議といってちょっと語弊がありますが、計画実施会議というものがありまして、隊員の意向をまとめて隊長が本部に連絡いたします。それから一方宗谷の船長は海上保安庁長官の指揮下にありまして、その指揮命令を受けるわけであります。現地におきましては隊長と船長と常に緊密な連絡をとりまして、どういう事項については、相談の上、船長から、どういう事項については、相談の上、隊長からというような取りきめがこまかくできておりまして、この間常に相談の上、隊長は文部省に、あるいは船長は海上保安庁にその連絡もし、また意見も具申して参ります。本部におきましては、本部の会議を開くことはもとよりでございますけれども、事と次第によりましては、あるいは幹事会を開く、またごく緊急なことでありますれば、ごく少数の人によって緊急連絡会議を開くのでありますが、もっと常々、私とここにおられる海上保安庁長官とは毎日顔を合せるなり、あるいは電話で話すなりして緊密な連絡をとっているわけでございます。本部におきまして重要な方針決定いたしますにつきましては、常に船側の意見を聞き、隊側の意見を聞き、それを重要な参考資料といたしまして、方針決定いたしております。現地との連絡も日に何回か親展電報その他でいたしております。そういうわけで、世上心配せられるように、現地と東京との意思の疎通しないといったような問題あるいは隊側と船長側との意見の確執があるといったようなことは、現実にあり得ないことでございます。ただ多少、報道する人たちが報道いたしましたときに、現地において予想しないことが起ったとかなんとかいうこともちらほら見えておるのでございますけれども、これは帰ってくれば皆様はっきりされることだと思いますけれども、ある事柄によりましては、船長が腹にしまってこちらと連絡することもございますし、事柄によりましては隊長が、隊の全部にまだ知らせないうちに、いろいろこちらと相談するような問題もあろうかと思います。私どもといたしましては、その報道の文言等を見ますれば、これはああした次第だなということははっきりわかるのでございますけれども、いずれそういう点は明確になりますが、少しもそういう意見の疎隔とかあるいは何というか、全然知らないうちに一方において事が取り運ばれたといったようなことはないわけでございます。ことに、報道等に出ております外国に対します協力依頼等の問題につきましては、これは相当時日をおいて準備いたしませんとできない問題でございますので、一般に公表する前に、あるいは一般の隊員等が知る前にも、船長、隊長あたりとは緊密に連絡をはかって参ってきております。そういうことで、あるいは一部の隊員が知らなかったといったようなことがあるかもしれませんけれども、この機構運営について支障のあるようなそごはなかったと考えております。また今後とも十分その点は注意いたしたいと思っております。
  63. 水品政雄

    ○水品説明員 宗谷の性能並びに各国で南極で使っております船舶の性能等について概要の比較を申し上げたいと思います。  まず御承知のように南極の海域は場所によって非常に変化が多いのでございまして、たとえばイギリス等におきましては、砕氷船でない普通船でもって南極の探険に従来当っておるようでございます。それからベルギー等の場所につきましては、四百トンとか六百トンという程度の、これは普通にポーラー・ヴェッセルと称しておるのでございますが、氷の中へ入っても船がつぶれないという、船の強度上の問題に特別の注意を払ったという程度の船をもってこの探険に当っておるようでございますし、オーストラリアの例を見ますと、宗谷より簡単にいって一回り能力の落ちるという程度の船をもって、従来やってきておるわけでございます。しかしアメリカの例を見ますと、アメリカのロス海の海域では——従来アメリカでは、今度宗谷の救援に来ております船と大体同型の船が七隻くらいあると思います。これは砕氷能力三メートルといわれておるのでございますが、そういう船を当てておったのでございますけれども、それでも十分でなく、いろいろの事故も起したので、二年ほど前だと思いますが、グレイシャーという世界で最も強力な砕氷船だと思いますが、それが現在旗艦となって、南極ロス海の海域で活躍いたしております。こういう種の船と宗谷と比較してみますと、まず第一に砕氷能力の問題でございますけれども、宗谷はあの大きさの船としては、現在一メートル二百程度と公表されておりますが、そのくらいの砕氷能力が、大きさの面から一応限度と考えられますが、この一メートル二百程度の砕氷能力を基準として考えますと、ソ連並びに米国以外では、宗谷以上の船を使っておるところはないようでございます。  それから宗谷自体の性能について概要を申し上げますと、砕氷能力はさっき申し上げた通りでございますが、まず氷中航海で一番問題になります性能といたしましては、船の強度の問題があろうかと思います。この宗谷の船の強度につきましては、現在南極で使われております各国の船舶と比較いたしてみましても、決して劣らない強度を持っております。すなわち、いかなる状態の浮氷にはさまれても、宗谷がつぶれるというようなことがないように設計されておりますし、その他航海関係のいろいろな性能につきましても、砕永能力以外の点では、相当優秀な部類の性能を備えておると確信をいたしております。
  64. 島居辰次郎

    ○島居政府委員 宗谷の今後の見通しにつきましてちょっと御説明さしていただきたいと思います。宗谷は長く四十六日もの間、氷に閉ざされて西の方へ西の方へと圧流されておったわけでございまして、ずいぶん皆様方に御心配をかけましたが、やっと昨晩の七時三十分に氷海から脱出することができたわけでございます。けさの無電によりますと、まずビーバーのテスト飛行を一時間やっておるようなわけでございまして、外海に出たばかりでありまして、前回入りかけたリュツォポルム湾の東の方、今回また入りかけました東の方、ちょうど昨年の十二月二十六日に入りかけたところまで帰りますのに約二百五十海里ございます。宗谷の能力については、先ほど舶技術部長から話がありましたが、先般翼を破損したとはいいながら、両舷で参りますと、一時間十ノット程度は出るわけでございます。これをまっすぐ帰りますと約一日の船程でございます。しかしながら、飛行機をテストしたりその他の準備のことで、今多少おくれておりまして、また現在右舷だけの片舷の航行、これはやはりテストでありますが、そういうものをやっておりますので、多少はスピードが落ちておりますが、こういうようなわけて、まだ東の方の入口が全然調査してなかったので、まずビーバーを飛ばせまして東の方の水路の進入路、それから昭和基地あたりまでずっと偵察いたしまして、それからそのデータをもとにして、どういうところから入っていくか、あるいはバートン・アイランド号と協力して、どういうふうにしてどの道を入っていくかということを今後現地で研究し、またそのデータを中央に言ってくると思っておるのでありますが、まだ出たばかりでありまして、きょうあしたそのデータがくると思いますので、今後の見通しにつきましては、もし進人口があったならば、その進入路はもちろん昭和基地の方に向っていくことになると思います。先般入りかけた十二月二十六日の場所から昭和基地まで百二十海里でありまして、これは平水ならばもちろん半日の航程でございますが、もちろん氷があると思いますので、そう短時間には参れないかと思っております。もし昭和基地の付近まで行ければ、そこで最小限度の越冬隊員を残す、それから現在おられる方の収容ということになる段取りであります。まず今の見通しはデータを得てからきめたい、こういうふうに考えておる次第であります。
  65. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 簡単にお伺いいたしますが、まず最初に稲田さんにお伺いいたします。お話によりますと、連絡その他不十分なところはないと言い切られるわけであります。責任者としてはそれ以外に言い方はないと思うのでありますけれども、昨年の経験が今年どれだけ生かされているか、われわれしろうとが見ましても、昨年と同じようなことで、別に系統その他やり方に変ったところは認められないのであります。にもかかわらず、昨年の隊員間及びそれを見ておった一般の者に相当強い批判があったことを承知しておられると思います。従いまして、私どもはやはりどこか骨の一本足らぬところがあるのじゃなかろうかという心配をいたしておるわけであります。たとえば、今度の救援依頼の件につきましても、これは報道の責任だといえばいい得るかもしれませんが、現在われわれが一番心配するのは、その報道を通じてでないと、一般のわれわれにはわからぬわけでありますから、従って、ちょうど戦争のときだと、報道自身を陸軍報道部が支配して、現実には負けても勝った勝ったといっていさえすれば、われわれも勝っておるのかなと思っておったような形で安心をさせられた。今度の場合には、むしろ今度は当局でそういうふうに言えば言うほど、報道はさかさま向きの報道を行なっているわけでありまして、そうすればやはりわれわれがいよいよ心配になってくるのは当りまえの話で、従って、それが心配でないのならば、本部におきまして何らかの方法で心配のない状態を作るように、心配のない常識が作られるような努力がされないと、一般の誤解は解けないだろうと私は思います。現に今度の救援依頼の問題についても、ともかく一般報道には、現地部隊は、こっちから救援依頼をしたということを知らなかった。知らないうちに、ともかく救援船の方が先に行動を起しておったというふうにわんわと言われておる。そうして今度は昨晩になってみますと、それ見たことかみたいに自力で外洋に出た。そうすると、やはりこれは本部の方がおかしかったのじゃないかということにもならざるを得ないのでありまして、その辺の状況はもう少し——私はほんとうのことをいうと、報道自身も少し騒ぎ過ぎると思うのですが、しかし騒ぎ過ぎるといっても、現実に騒いでおるのでありますから、これに対してもう少し世論指導といったらおかしいのでありますが、世論にもう少しこたえられるような形で安心感を与えられる方法が講ぜられたいと思うわけであります。  それから同じ意味で、二番目に船舶技術部長あるいは鳥居さんに対してもでありますが、この装備の点におきましても、昨年宗谷がとうとうオビ号に引っぱってもらう直前の状態を思い起してみましても、グレイシャーでしたかに救援を依頼するとかさせぬとか、その場合宗谷の能力とグレイシャーの能力というものは何だかちっともぴんとこなかった。しかしながらグレイシャーも相当強いだろうという話があった。ところがソ連のオビ号の話がちょっと新聞に出たけれども、多分あれは能力がだめだろうというくらいの話しか出なくて、しかも少しがさがさと、それこそわれわれ報道だけに頼って見ている者から言うと、日本がぐらぐらしているうちに、オビ号はまさに普通のところを歩くみたいな格好で押し分けていって、ずっと引っぱり出してきた。そうしてみますと、私どもは一般に宗谷なるものの装備に対しまして、あるいは宗谷の装備と外国船の装備との間によほどの大きな開きがあるのかなあ、やはり竹やり戦術みたいなことをやっているんじゃなかろうかという心配を持たざるを得ないのでございます。従いまして情報あるいはそういう新聞屋が騒ぎ過ぎるということでこれは片づけられない問題である。むしろさかさま向きに、これは皆さんの方からもいろいろと特別発表されたりして、そうして新聞を引きつけておられるような面もあるわけでありますので、そういうふうな引きつけて情報として、あるいは世論に一つ大きくアッピールしようというような動きもあるのでありますから、なおさら私はこの辺に対してもう少し懇切丁寧であってほしいと思います。そのことがむしろこういうことを成功させ、あるいは大きく科学技術的な発展を来たすゆえんになる。必ずしも私はどうも予算が足りない、金が足りないということだけではなさそうな感じを持つわけでありますので、この辺につきまして一そうの御検討、御再考をお願いいたしたいと思います。  それから最後にもう一つだけちょっと聞いておきますが、これはどっちの所管になるのか、おそらく文部省の所管だろうと思いますが、この隊員及び乗組員の安全保障といいますか、これはどういう取りきめになっているのか、ちょっとつけ加えてお聞かせを願っておきたいと思います。
  66. 稲田清助

    ○稲田説明員 ただいまのお話の第一点でございますが、先ほど申し上げましたように、われわれの方である根本的な方針をきめます場合には、必ず現地の意見を徴して、それをもとにしていたしておるわけであります。先ほども多少触れましたけれども外国船の救援の問題につきましては、海上保安庁から船長に対して、手配するとなれば少くとも二週間前に手配しなければならないから、状況を知らせろということを言ってありまして、現地からのそれに対する意見に基きまして手配をしかけたわけでございます。もちろん、その外国船手配の問題は、相当これはデリケートな問題でございますので、はっきり方角がきまりますまでは発表しにくい問題であることは、御推察いただけるだろうと思います。従いまして船長、隊長とわれわれとの間におきましては、かなり前から、この問題についてはお互いに意思交換があるわけでございまするけれども、あるいは一般隊員が知りましたのがそのあとであったということは、それはあったかもしれないと思うのであります。そういうような次第でございまして、実際の運航等につきましては十分緊密な連絡をとっておりますことを重ねて申し上げ、御了承をいただきたいと考えております。  宗谷が自力で出るか、あるいは救援されて出るかというような点につきましては、これは島居さんから話された方がいいのでございますけれども、われわれといたしましては、当時発表いたしましたように、一月の末か二月の初めには気候の変化の機会を得て、宗谷は脱出する機会をつかみ得るという判断であったのでございます。にもかかわらず、外国船を依頼いたしましたのは、ここで時日を遷延いたしますれば、あとの仕事に差しつかえる。宗谷が自力で出ることについては疑いを持っていなかったのでございまするけれども、それよりおくれましても、あるいはクック岬を回れば、ある時期なら自然に出るような潮流、海流だと判断したのでございますけれども、しかしそれが非常におそくなるとあとの仕事に差しつかえますから、外国船を頼んだわけであります。到着までに自力で出たわけでありますけれども、出たからこっちがえらいとか、あるいは救われたからどうとかいうことは私ども考えずに、どこまでもその安全を期し、まじめな科学的な問題としてこれを取扱ってきたわけであることを御了承いただきたいのでございます。  それから最後の、いろいろ手当等につきましては、極地手当、あるいはまたそういうことを想像するということもいかがでございまするけれども、いろいろな場合を考慮いたしましての給与につきましては、人事院との間に十分話し合いをつけておるわけでございます。
  67. 水品政雄

    ○水品説明員 オビ号の性能その他について事前発表が非常におくれておったというお話と、それから宗谷の性能についての御疑問でございますが、これも御承知のように、世界各国の砕氷船はほとんど全部にわたって公表されているのでございます。それで私どもの現在まで入手いたしております書類で見ますと、ソ連におきましてもほとんどの砕氷船の性能を公表しておりますし、そういうものをまた基準にして見ますと、さっき申しましたアメリカのグレイシャーが現在は一番強力な砕氷船、そういうふうに信じております。ただソ連でもごく最近、大体グレイシャーと同じ程度の一万トン、二万一千馬力という二隻の砕氷船が完成しているはずでございます。しかし、オビ号については何らの発表がいたされておりません。それはソ連でも砕氷船のカテゴリーに入れておらないのではないかと思われる節がございます。私どもも宗谷の乗組員の諸君その他でき得るだけ書類等で調べてみますと、現在の私どもの判定では、あれはいわゆる砕氷船ではないと思います。先ほども申しましたが、北欧各国ではポーラー・ヴェッセルという、氷の中に相当入り込める船を各国とも持っておりますが、オビ号の場合も、そういう氷の中に入り込むような強度及び多少の砕氷ができるような配慮の構造になっていると判断いたしておりますが、そういう面から見ますと、オビ号の砕氷能力は、公表がございませんから正確ではございませんが、あの七、八千馬力というようなものを基準にいたしますと、大体先般入りましたような海域が限度——と言うと言い過ぎかもしれませんが、あの程度のところに入るというような能力の船であろうかと思うのでございます。宗谷の場合は馬力におきましてもオビ号の約半分くらいになりますので、これは船の大きさ、馬力等の観点から、オビ号と二つ並べれば、とうてい比較にならないものになっておりますけれども、オビ号自身が非常に強力な砕氷船だと——現在まで集めた資料で判断いたしますと、どうしてもそういう結論は出て参りませんが、おそらく宗谷を基準として砕氷能力を計算すれば、一メートル半とか、そういうふうな程度のものではなかろうか、これは推定でございますけれども、そういうふうに判断いたしております。
  68. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 時間がありませんのでこの辺で打ち切りたいと思いますが、くれぐれもまず要望を申し上げておきたいことは、これは言い方はおかしいかもしれませんけれども、私どもから見ましても、過ぎるほどこの問題には一般の日本の中で関心が払われ過ぎている。従って皆さん方が、たとえば本部及び出先機関連絡、あるいは本部内連絡等々につきまして、一般のことだけでなしに、問題が大きく扱われ過ぎていることを御承知になれば、今度は皆さん方の方のそういうものに対する心のつけ方も、普通より以上に私はつけらるべきだろうというふうに思うわけでありますので、特に御留意を願いたいと思います。私は先ほど申し上げましたように、日本の官庁の中の科学技術というか、あるいは合理的な仕事の場合にじゃまになっているものがセクトである、先ほど情報センターの問題の場合にも現に現われている、従って、やはりここに現われていることは、一つの行動に現われるだろうという想像が出ざるを得ないのであります。従いまして、今度の問題にも同じようなセクト的な問題があっちこっち出ているんだろう、こう想像せざるを得ないのであります。特に文部省には悪いのでありますけれども、私どもは宇治の原子炉の問題で、もう大体こんなものは使いものにならないんじゃないかというほど、その辺をシビャーに感じているわけであります。これは学問研究でなくて、一つの行動隊でありまするから、学問研究ならば種々意見が出たり、それに統制がなくてもかまわぬわけでありますけれども、一つの行動を起すのには、それをじゃまするような状態でないということをもう少し説明が的確に加えられて、一般の人々が安心がいくような状態にしていただきたいと思います。そのことは、同じ意味で装備等の点についても私は要望を申し上げておきたいと思います。  それから安全保障の問題につきましては、これはここでこれ以上突っ込むことはちょっとどうかと思いますので差し控えまするけれども、私ども情報の問題や装備の問題から推しはかりますと、いざという場合に責任のなすり合いみたいなことになるんじゃなかろうかという心配もまたせざるを得ないという感じがしておるわけで、そのことがまた一般の心配をそそっておることにもなっておろうかと思うわけであります。十分一つ気をつけていただきたいと思うわけであります。  南極観測の隊員についての質問を終りますが、一言だけ、せっかく正力さん見えましたから、私は所感をお伺いしておきたいのでありまするけれども、昨年、ちょうど今ごろだったと思います。私は宇治の原子炉の問題をあげて、かりに学術的にいかに正しくても、そしていかにあれは心配ないものだといっても、宇治の連中がこれはどうも心配だといえば設置でき得ない現状だ。そして日本の一般的な常識は、一番学者で偉い人と思っているところの京都大学の先生どもと大阪大学の先生どもとが、要するに分れて、川上の方では大丈夫だと言うし、川下の方ではやっぱり危ないと言うしという印象をはっきりと受けた。まあ悪いけれども、私どものうぬぼれておる社会党自身でさえも、われわれのうぬぼれておる政党でさえも、あの問題をめぐって、現に京都の大学と大阪の大学とでは対立するぐらいな状態にあったわけです。そういう常識程度のところで絶対にこれは正しいのだとか正しくないのだとかいう。それは学者の間では現実に正しいことでありましても、客観的に正しくないということになるわけであります。つまりそういうわれわれの政治能力、それからわれわれの学者に対する信憑の程度、それが一般国民の感情になっておりまする場合には、それにこたえる客観性を持たなければ、正しさを証明するわけにはいかないわけであります。従いまして、私はあの原子炉の問題をつかんで科学技術的な発展を考慮されるのならば、あれが心配ないという常識を作るところに最大の方針を出されなければならないと思う。宗谷に対してもちょうど同じことです。宗谷に対して日本国民は、氷詰めにあって、そしてソ連の船に引っぱり出してもらわなければならぬというようなことは、常識的には思いもしなかった。それが現実には、あの時分の新聞によりますと、われわれの船は一メートルしか氷が割れないで、ソ連の船がきたら一ぺんに六メートルの氷が割れたのだそうだというようなほど常識がはずれてわれわれには伝わっております。従ってまたそういうような状態でありまするならば、私どもは単に予算というような問題だけではなくて、そういう勇ましい挙でありまするが、科学技術的あるいはその他の能力においてそこまで達していないなら、無理してそういうところに参加しなくてもいいじゃないかというような感じが起きたほどの問題でありましたことを御承知であったと思います。私どもは昨年のちょうど今ごろ同じようなことを日本科学技術の発展のために正力大臣に要請したわけであります。それから一年を経まして、今度は正面から切って科学技術振興対策を内閣も取り上げられ、そして担当大臣としてデビューされてきたわけでありまするが、今度の南極観測隊につきまして似たような感じになったことを私は遺憾と思いますると同時に、この問題についての正力さんの御所見だけを伺いまして、質問を終りたいと思います。
  69. 正力松太郎

    正力国務大臣 ただいまの御趣意には私も全く同感ですが、元来私はこの原子力の最初の委員長になったとき、またまだ委員長にならぬときからでも考えましたのは、とにかくこういうことは大衆に理解させることが必要だ、原子力の平和利用ということ——それで私はならぬ先からすいぶんそれに微力ながらできるだけのことをやったんです。そうしなければ、大衆の理解せぬことには、幾ら正しいと思うてもなかなかむずかしい。だから大衆を理解させることに努めましたつもりでおるんです。従って先ほどの全般の科学の問題についても、科学の振興をはかるについては、大衆に理解してもらわなければならぬ。それで実は私は文部省にもうあのときすでにどうしても小学校から科学技術の思想を養成しなければいかぬ、そうしてさらに高等学校へいっては生徒をふやさなければいかぬということを盛んに言うたものでありまして、全く御趣意の通りのことを私も大いにやってきたのです。やってきたが、微力にしてまだ徹底しなかったことは遺憾に思いますが、いずれにしてもこの大衆に理解せしめるということは、私は政治家の一番の要諦だと考えております。ただ権力をもって無理にやってはいかぬ、それは私の根本的の考えで、努力してきておるのであります。ただ力が及ばなかったことは残念に思いますが、要するに教育を直す、大衆を理解させなければならぬということが今後の科学技術の要諦だと私は考えておるのです。それで先ほどお話もあったように、文部大臣も今度は理工科の生徒をうんとふやすようにしてきた。そうしてまた技術者の待遇についても、これはどうしてもよくしなければならぬという考えに持ってきましたし、科学技術庁としては、技術者に対して、公務員でも六千万円という予算をとってあるわけでありますので、これは現実に待遇が改善されます。ですから、御趣意の通りのこと、私は同感で、またそれを実行しつつきたということを申し上げたい。ただ微力にして自分の希望が達せられなかったことは遺憾に思いますが、今後もなお一層努力しまして、科学技術の発達をはかるためには大衆を引きずっていかなければいかぬ、またそうやりつつあることをここで申し上げておきます。
  70. 齋藤憲三

    齋藤委員長 原茂君
  71. 原茂

    ○原(茂)委員 先に一つだけ知らないことを教えておいてもらいたい。南極探検の目的は何ですか、それを一つ伺っておきます。
  72. 稲田清助

    ○稲田説明員 御承知のように、現在国際地球観測年ということが国際的に学者の協力で行われております。これは地球をあらゆる角度からあらゆる専門家研究する、調べ上げる仕事でございますが、もちろん国際地球観測年の仕事としては、内地におきまして実施しておる問題もございます。しかし南極地域につきましては国際協力でやろうじゃないかという話が国際会議でございまして、それに日本が参加したわけでございます。現地におきまして、地磁気であるとか極光であるとか、あるいは宇宙線であるとか、地震、地質あるいは海流、気象、こういうことについて一年にわたって調査いたしまして、その資料各国に交換する、これが主目的で観測に従事しておるわけであります。
  73. 原茂

    ○原(茂)委員 簡単に御答弁願いたい。私も、時間がないようですから簡単に聞きますから。この間イギリスの探検隊が先に到着したあと、たしかどこの国が言い出したか知りませんが、南極を探検といいますか、ある程度先に占有というのか、何かそういうことを中心にした問題が起きて、国際連合でこれは解決しなければいけないのではないかというようなことが何か新聞にちょっと出たように思うのですが、そういう御記憶がありますか。
  74. 稲田清助

    ○稲田説明員 そういう報道は聞いておりますが、文部省といたしましては、これはもう純粋の学術調査という立場において参画いたしております。
  75. 原茂

    ○原(茂)委員 そういうことを聞いておられるのでしたら、日本の立場から言うと、今あなたのおっしゃるのは、全然あの種の問題には関与しないどころか、全然その意図を持っていない、どこか発見したところを占有し、その資源等を自分のものにするとかしないとか、どこで開発するとかいうことに関しても、一切これには日本の今の探検を行いつつある政府の立場からは関与しないし無関心である、こういうふうな解釈でよろしいのですか。
  76. 稲田清助

    ○稲田説明員 わが国がいたしておりますのは、これは探検と申すよりも純粋の科学調査であります。現に行動いたしておりまするところも、ノルウエーのディペンデンシーの地点でございます。
  77. 原茂

    ○原(茂)委員 私の言っているのは、今行っているところが問題ではなくて、南極探検を通じて、あの種の問題が起きたときに、政府のこれに対する態度、見解——もう国際連合の非常任理事国にもなったら、政府というものは、南極探検についてはあの種の問題が起きることは当然でありますから、起きたら政府の態度、考え方というものは一応いつのときにも用意されていなければならない、そういう建前からお伺いしているのですから、もう一度……。
  78. 稲田清助

    ○稲田説明員 これは私ども以上のレベルの問題だと思っておりますけれども、われわれが閣議決定に基いていたしておりますることは、やはり純粋の学術調査の領域に限っているわけでございます。その出発点、観点からいたしまして、それ以上のことにつきましては、いまだ政府といたしましては何ら考えを持ってないということをお答えするほかはないと思っております。
  79. 原茂

    ○原(茂)委員 国務大臣にお伺いいたしますが、本論に入る前に、正力さんから、国務大臣として今のことに対して一つ政府の見解を伺いたい。
  80. 正力松太郎

    正力国務大臣 南極を探検することも科学技術振興上必要なりとは思いましたけれども、まだそれほどこれについては深くなにしておりません。
  81. 原茂

    ○原(茂)委員 国務大臣としてはあの種の問題はやはり重要だと思うので、一応思想統一をはかられるか、閣議でも政府の見解はいつでも発表できる用意は必要だと思いますね。これは余談で、私のきょうの本論じゃないのです。  それからお伺いしたい。先ほどの続きですが、どうも大臣の御答弁を聞いておりますと、御自分の意思では非常に強くそうやりたい、そうすべきものだと直感的にお思いになると、もう政府なり、公社なりがやっているはずと考えて、即断をして、ぐんぐん進んでいるんだというように聞える答弁をなさるわけなんですが、あとからお留守のうちにいろいろお伺いしてみると、それほどまだはっきりと政府なり公社が、国と国との間の話し合いに基いて、この種の燃料に対する海外調査等は進めていない、こう言えると思うのです。さっきの大臣の御答弁は、そんなことはもうやっているのだというように私には聞えたのです。そういう気持はよくわかるのですが、やるべきだし、やらなければいけないはずだとお考えになっても、よく一つ考えていただいて、今やっているのかどうかくらいはもっと正確に慎重に御答弁いただかないと、よけいな時間がかかるので、この点一つお願いをしておきます。あと質問を続けますから御答弁はそんなつもりで答弁を願いたいと思います。  先ほど質問をいたしました中に問題が二つあるわけです。やはり基本的には核燃料物質等の入手というものを、将来とも海外に求めるという態度が、わが国の電力事情等を考えたときに当然必要だ、こう私は考えます。そういうふうな考えからいくなら、現在できているウランなり、あるいはトリウムなり、あるいはその他ウラン鉱を——動力炉の種類によって違っては参りますが、これを諸外国から燃料として求める前に、やはり特に近くの国々にあるであろうこの種の物質に対する調査は、今からも進めていかなければいけない、こういう基本的な立場を私は日本の国としてとるべきだと思うわけです。こういう建前からいくならば、早期に、ただ公社が、ついでに政府の嘱託としてかってどこへ行った、あるいは秋田当時の政務次官が個人としていろいろタイとの折衝を行なってきたというようなことだけではなくて、政府基本的な態度として、せっかく燃料公社ができたのでございますから、この燃料公社が、まず第一に重点を二つにはっきり置きまして、一つは国内、一つは海外、こういう建前からの仕事を進めていくということが私は必要だ、こう思うわけです。そうすると、その前提として、やはり国際間のこの種の調査が正式にできる話し合いを取りつける、このことが次に必要になると思うわけです。このことをだれがやるかといえば、やはり大臣がおやりになる以外にないわけでありますから、この点は大臣として早期にそれをおやりになるお覚悟があるかどうか。今までやっていないのですよ。先ほどはいかにもどんどんやっているようなお話でしたが、やっていない。それでこれを早急に進めていただきたいと私は思うのですが、そのお気持があるかどうか。あるとすれば、あとは事務的な問題ですが、一体どういう順序でこの問題を進めて行こうとなさるか。これが第一点。  第二点は、現在すでに予算が組まれて国会に提出されておりますが、この原子燃料公社事業計画内容等を見ましても、あるいは予算内訳を見ましても、この予算の中にはおそらくその種の予算としてはっきり何千万なり何億なりの金が載っていないのではないかと思います。これが載っていないとすれば、もしその話し合いが今年できたとすれば、三十三年度でやればできる話し合いがついたとしたならば、一体この予算範囲でどのようにやっていこうとなさるのか、この点を一つ。二点に分けてお答えを願いたいと思います。
  82. 正力松太郎

    正力国務大臣 先ほど私の話でどんどんやっていると言うが、あまりやっていないじゃないかという話がありましたが、実は今燃料公社としては内地ので精一ぱいです。予算もあまりございません。従って、燃料公社には内地の方をやらしている。それからまた外国のものは——われわれは、正直なことを申しますれば、実はその燃料の問題よりも、ほかのものをもっと急がなくちゃならぬという考えも多少ある。現に燃料は今すぐはたくさん要るわけではないのです。そうして内地で十分やれるのだから、それよりも急ぐ問題をやろう、ありのままの話をしますればそういう考えです。それで実は民間からあっちにある、こっちにあると言ってきております。それは事実なんです。熱心に言うてきております。先ほど秋田さんが、自分でももう見ておるという話もあるのでございます。そこで私は、秋田さんは個人的であったかもしれないけれども、やはり当時の政務次官という肩書で出かけられたもんだから、それで混同しておりました。そういうわけで、事実今燃料はそれほどでもない、もっと急ぐことがあるのだということで、燃料公社にやらしているのは内地で手一ぱいなんです。だから燃料公社は外国に手が出ない。また外地から取り寄せればいつでも取り寄せ得るというわれわれの考えがあるものですから、その点どうぞお含みを願いたい。
  83. 原茂

    ○原(茂)委員 私のお伺いしたことに一つも答えていないのですが、今のお答えの中で、燃料国内のものを探鉱するだけでも精一ぱいだ、海外まで手は届かない、こういうお答え、同時にそれほど燃料に不足を来たしていない、どうしても国内で間に合わないときには海外から買えばいいのだ、こういうふうに御答弁があったわけです。そこでまた基本的な問題としてさかのぼらなければいけないのですが、足りなければ買えばいいのだという考えで将来とも行くのか。私ども日本の手で国内からその資源を開発する、同時に不足分は燃料として買うのではなくて、私どもがせっかく外交交渉等を通じて直接この資源の開発ができる地域があり得るならば、それに大きな力を注いで、自力による資源の開発をやっていくべきだという基本的な構想を持たなければいけない、こう私は先ほどから申し上げているわけです。この態度の否定になるわけなんですが、そういうものなんですか。
  84. 正力松太郎

    正力国務大臣 私の言葉が足りなかったかもしれませんが、あえて否定しておるような意味じゃないんです。とにかく内地では燃料公社がやっておるので手一ぱいであることは事実なんです。それから、先ほど申し上げた通りに、海外の燃料を得るためには、外国と条約を結ばなくちゃならぬ。その条約の締結のため、イギリスとは盛んに交渉をやっております。またアメリカともやっているのですから、この条約さえできれば、燃料は手に入るという考えを持っております。だから、それよりもまず内地で早く探させた方がよかろうという考えでおるのであって、決しておろそかにしておるわけじゃありません。
  85. 原茂

    ○原(茂)委員 今のは私の言っているのと次元が違って話をしているようなものだからいけないんですが、基本的な構想として、東南アジア等にもし資源があり、自力による開発を促進することが必要だと考えるならば、今内地で手一ぱいであることが大臣にはっきりしているのなら、海外まで手が伸ばせるような予算措置を講ずるのが大臣の責任じゃないか。今の原子燃料公社のやっている仕事の負担能力では、国内がせい一ぱいなんだというのを知っていながら、そのまま見のがすというのは、基本的な態度として、われわれの自力による燃料物質の開発を海外にまで及ぼそうという構想を持っていないということと同意義語になる、イコールになるわけですが、それではいけないんじゃないか、こういう意味で質問しているのです。
  86. 正力松太郎

    正力国務大臣 いや決して否定の意味じゃありません。私の方は先ほど申し上げたごとく、外国に対してはまず条約を進めなくちゃならぬ。それでその条約をやっておるのです。いま一つは、今燃料がそれほど急に要るわけでもないからして、まず条約をやって、条約ができてからでもおそくはないじゃないかという考えを持っているわけです。御趣旨の筋は決して否定いたしません。十分わかります。
  87. 原茂

    ○原(茂)委員 燃料は今要らないといっても、実際にはもし海外の開発をやったにしてもずいぶん時間がかかるのです。その場合にはいろいろ国際間の手続も要るから、それを今からやっても決して早過ぎないのです。そんな楽観的な態度で、今日のこの人工衛星時代に、科学技術庁長官が、まだあわてなくていいんだと言ってやっておられては話にならぬと思うのです。大臣は、まず条約を結ぼう、結ぼうと言うのですが、この種の条約というのは何を結ぼうとなさるのですか。今大臣がお考えになっているまず条約を結んでからというのは、何をさしておられるのか。
  88. 正力松太郎

    正力国務大臣 条約というのは、要するに燃料のためのものです。たとえて言うと、ウランならウランですね。その条約を進めなくちゃ、なかなかすぐには手に入りません。
  89. 原茂

    ○原(茂)委員 どうも行き違いになっているんで、条約という言葉が出てきたのだと思います。私どもの理解によりますと、この際条約の問題が御答弁に出てくるのは、問題が違うんですから実はおかしいのです。とにかく態度が違うといいますか、否定はしないと言いながらどうしてもマッチしないのは、基本的な態度が違う。とにかく今からでも早過ぎないのですから、海外におけるこの種の核燃料物質の入手というものを眼目にした、いわゆる開発を目標にした予算措置を講ずるよう、もし燃料公社が手一ぱいであったならば、手を広げてでもこれをやらせるように大臣としては努力することが私はどうしても必要だと思うのですが、この点についてはどうでしょうか。
  90. 正力松太郎

    正力国務大臣 その趣意には全く賛成だと申すのです。
  91. 原茂

    ○原(茂)委員 御承知だと思うのですが、ビルマなりタイに対しましては、イギリスを中心にした非常に大きなこの種の調査隊がすでに一年半も調査を行なっているわけです。この間ビルマの一等書記官から聞いたところによりますと、国土の大部分とは言いません、ああいったゲリラのあるところですから大部分とは言いませんが、相当有望な地域で、かなり広範にわたってすでに調査が進められているわけです。これがイギリスの場合、ビルマを終ったらどこに行くかというと、タイに行くといった。タイを終ったらどこにいくかというと、インドネシアに行くといった。これでもう一年半も続いているのです。それを大臣のお考えなんかで、趣旨には賛成だが、もう今年は努力をしない、あまりやかましかったら来年からやろうかなんて調子でやっていると、二年三年たつうちには、アジアのこの種の地質調査は全部終る。終り得るのです。今四カ国が行っているのです。そのあとでこんなことを幾らやろうとしたって、そのときにはすでに東南アジアという日本の一番近接地域にある資源に対する私どもの発言権は、もうなくなってしまうだろうと私は思う。そうしていやでもおうでもイギリスなりアメリカからでき上った燃料なりあるいは向うで採掘した鉱物質を買うということを押しつけられる、そういう立場に日本は追い込まれる、その危険があることを十分に今から考えていかないと、ほんとうにわが国科学技術振興しようという基本的な立場はこの一点だけでもくずれる。いやしくも今日日本科学技術考えるときに、原子力を無視して考えるわけにいかない。とするならばまずウラン、トリウムに対する資源の確保に対する努力が最も先になされなければほんとうの意味わが国科学技術振興の土台には通じていかないわけ合いになると私は思うのです。今日わが国の一番隣接している東南アジア諸国の、各国がここに来て調査をしている状況考えてみると、大臣の今の感覚はあまり間延びがし過ぎている。マンマンデー過ぎる。どうもこれでは心配だというのが偽わらざる私の心境です。考え方です。そういう意味から、ただ趣旨には賛成だなんというのんびりした考えでなくて、もっとはっきりとこれに対する基本的な大臣の考え方を聞かしていただけないといけない、こう思うわけです。
  92. 正力松太郎

    正力国務大臣 先ほどの答弁が、言葉が足りなかったかもしれませんが、燃料公社は今内地を盛んにやっておるのだということです。また東南アジアの問題については、民間でも盛んにやっております。やっておるのだが、ただこちらが民間にまかせておるという意味じゃないのです。だからもうその点は考えます。ただ、要するに今それよりもっと急ぐ問題があるものだから、それにとられておったのですが、御注意でありますから、なおその点考えます。民間でも非常にやっておることは事実です。それからまたウラン鉱でも大体、燃料の目安をつけることが必要です。だからそれはもう御趣旨に同感です。同感だが、現にやりつつある。ということは、燃料公社が内地だけでも手一ぱいになっておるということです。しかし東南ア方面も何とか考えるようにいたしましょう。
  93. 秋田大助

    ○秋田委員 ただいまの核原料物質の確保は、ただに国内のみならず、国外、特に東南アジア諸地域に注目をして、現実的に手を打つべきであるという原委員のお説は、まことに傾聴に値いするものがあると思うのです。大臣もいろいろお忙しくて十分目を通しておられないのじゃないかと思うのですが、われわれの理解するところによりますと、今度の予算措置においても、燃料公社の予算の中に予備費として一億数千万円がとってあります。これを活用して、その方面調査活動に支障ないようにという御意図も燃料公社のあれの方にあるわけであります。政府としてもその意図を持っておるということが、予算の数字中に現われておるというふうに私は理解しておるのでありまして、ただこれを実施に移します場合、先ほど原子力局長からもお話がございました通り、核原料物質並びに核燃料物質が国際的に非常に問題のあるものでありますから、わが国がその調査を東南アジア諸地域に進めるということを実行するに当りましては、その相手交渉国並びにこれを取り巻く国際関係が非常にデリケートで、その点を慎重に考慮に入れて措置を講じなければならないものと思いますので、これは私の希望と、釈迦に説法でございますが、感じたことを申し上げまして、大臣の御参考に供したいと思います。
  94. 原茂

    ○原(茂)委員 今秋田委員から、実は大臣からそう言っていただくとありがたいと思うことを言われたわけですが、多分大臣も同感だろうと思います。この予備費がそれに使われるのだという建前なら、額の大小はともかくとして、その一部分は使い得る、使う予定を立てておるのだということになると、だいぶ話が進捗するわけです。ぜひこれはただ話だけでなくて、はっきり大臣もこれを保証する立場で、きつく推進していただきたい。従って、その裏づけになるのは、今秋田委員も言われたように、非常にむずかしいいろいろデリケートな問題を含んでいる物質の問題ですから、国際間の話し合いを別途にお進めするという強い決意を大臣がお持ち願わないと、実際にはこそこそやる以外にはない。それではだめなんですから、もう一ぺん大臣から、国際間の話し合いというものを強力に進ませるように努力するという決意を一つお述べ願えれば、この問題はよろしいと思います。
  95. 正力松太郎

    正力国務大臣 ただいまの原委員の趣旨には全く同感であります。大いにこれからその点に、予算もとってあることでありますから、努力いたします。
  96. 原茂

    ○原(茂)委員 全面的にお願いしたいと思います。  それから第二点にお伺いしたいのは、戦後におけるわが国科学技術は非常に諸外国に比べて低位にある。こういうことを大臣はお述べになっておられるのですが、日本科学技術というものが諸外国に比較して低位にあるという諸外国、われわれよりも上にある諸外国に、一体どの程度日本が低位にあるとお考えになっているのか、これが一点と、一体わが国科学技術を低位ならしめた原因というのはどこにあるのか、こういった二点に分けて、一つ簡潔な御答弁をお願いしたい。
  97. 正力松太郎

    正力国務大臣 第一の低位にあるというのは、英、米、ソ連に比較してで、これは公知の事実であります。それからまたそれはどういう原因かと申しますと、これは明治以来から、日本は文科尊重でありまして、理工科系を軽んじておりました。これが原因だと思っております。
  98. 原茂

    ○原(茂)委員 英、米、ソ連に比べて日本が低位にあるというのは、少し甘いと思うのです。科学技術という問題を一般論として論ずる場合には、日本はほかの国よりももっとたくさん低位にあるだろうと思うのです。これはどっちでもいいのですが、その原因の方に問題があると思うんです。原因は単に文科偏重であったということだけで割り切ることはむずかしいと思う。たとえば、日本の医学なら医学を戦前までの水準で考えていくと、これは世界的に言っても、今低位にあるとランクされるほど低いところになかったわけです。ほかのものも、ずいぶん上位にあったものも日本にはあるんですね。それがなぜそうなったかというと、第一に大きな原因は、私はやはり戦争だと思う。戦争に日本が参加したということが、今日の立ちおくれを来たした大きな原因だと思うのです。それから第一、第二とウエートをつけるわけじゃありませんが、もう一つ考えられる原因としては、理科学教育に対する国としての力の入れ方が非常に少かった。これはもう何と言っても争えない事実じゃないか、こういうふうに私は考えるわけです。この点は、大臣のお答えになることも一部そうでしょうし、私の言うことも一部当っているかもしれません。ですから、あえて申し上げないのです。そこで学校教育というものに関連して、今からでも思い切った力を注いでいかないと、実際には、おくれた低位にある日本の水準を引き上げることは不可能だ、こういうふうに考えるわけです。この学校教育の問題に関して、現在日本のやっております教育内容等を考えたときに、いわゆる大臣の責任ある立場から言うと、やるべき分野がたくさんあると思うのですが、この点何か、御説明の中には一部触れておりますが、基本的な構想として、閣議等で問題になって、ではこういう面の理科学教育をここで切って、これ以上はどうするといったところまで閣議で真剣に論ぜられた結果がここに出てきているのか、ただ学校教育というものを一大臣としてのお考えでここに書いてこられたのか、この点を一つ先にお伺いしたい。
  99. 正力松太郎

    正力国務大臣 学校教育といいますのは、これは先ほど申す文部省のやることでありますが、どうしても国民全体がやはり科学に関心を持たなければいかぬ、それについてはやはり学校教育が必要だというのが私の基本考えです。そして今申す通りに、それにいま一つ待遇を改善すること、つまり文科系統の方は、どっちかといいますと出世が早くなっており、理工科は先ほど言いましたがおくれておるということが、何としても科学技術に熱心になっていない原因だと思います。それからいま一つ考えられることは、科学技術に対する研究費が足らぬ、つまり経費が足らぬことですね。先ほど何か戦前においては日本はそれほど劣ってなかったじゃないかというお話がありましたが、戦前においてもみんな、ことに進歩した医学の人でも言うのは、研究費がない、われわれは欧米人に対して頭は遜色はないけれども、何しろ研究費がないんだ、これがおくれておるゆえんだということを私どもたびたび聞いております。事実そうだと思います。だからどうしてもここに予算措置を講じなくちゃならぬ。そうして研究費も十分にしなくちゃ科学技術振興せぬ。だから科学技術振興の私の根本的思想としては、まず国民に科学教育の思想を入れるということが第一点、それから第二は、科学技術研究する費用、研究費、これを十分にしなくちゃいけない。またいま一つ、科学技術者の優遇、出世の道を考えてやらなければいかぬ。とにかく何というても、今までのような文科尊重主義だとすると、科学に向う人は少いです。先ほどだいぶ佐々木委員から話がありましたが、どうしてもこの点をやらなければならぬ。だから学校教育をやるということも大事です。学校教育については、理工科系を尊重してやらなくちゃいかぬということ、それから待遇を改善すること、さらにいうならば、これは功利主義に見えるかもしれないけれども、これによって理工科系の人が文科系に比して出世がおくれないということをしなくちゃならぬ、こう思っております。
  100. 原茂

    ○原(茂)委員 私のお聞きしているのは、これは単なる技術庁としてのお考えでなくて、閣議で今おっしゃったことが論ぜられて、そうすべきだときまったのかどうかと聞いているわけです。
  101. 正力松太郎

    正力国務大臣 これが、先ほど申した通りに、科学技術会議設立を言うておるゆえんです。そうしてそこの科学技術会議でそれをきめて、それから決定は閣議に持っていくということだと思います。
  102. 原茂

    ○原(茂)委員 そうすると、科学技術会議はこれからできて、科学技術会議でこれから練って、その練ってできた答えを閣議に持ち込んで、これからきめる、こういう態度ですね。そうしますと、今度の予算の中には、そのいわゆる学校教育を中心にした科学技術振興策に要する費用というものは入ってないことになりますね。そういうことになりますか。正式にお答え願いたい。
  103. 正力松太郎

    正力国務大臣 科学技術庁予算としてはふえておりませんけれども、文部省の費用としてふえております。
  104. 原茂

    ○原(茂)委員 私先ほどちょっと申し上げたと思うんですが、国務大臣としてお伺いするといって聞いているので、科学技術庁予算を言うときには、科学技術庁予算とか、あるいは燃料公社の予算とかこれから申し上げますから、そうでなくて、国務大臣に予算の中に入っているかと聞くのは今政府が出している予算のことをさしているのだとお考えになって、御答弁願いたいと思います。  では、国の予算の中には科学技術振興のための教育に関する予算は含まれているんだ——これは後刻また文部大臣によくお伺いしなければなりませんが、含まれているんだということになっているわけですね。ところが実際には、科学技術庁長官として出されたこの所信の表明の中には、低位にある日本科学技術振興のためには、学校教育に重点を置かなければいけないのだということを述べておられる。その述べておられる基本的な考え方は、これからできる科学技術会議に持ち込んで、そこで答が出たのを閣議に持っていくのだということになっていますから、科学技術庁がいわゆる学校教育が低位にある、低いから、今の日本科学技術振興というものはできないんだという建前からする、いわゆる閣議にまでかけておられる科学技術振興というこの方策の基本構想の中には——文部省の今出している予算の中には、今言った内閣の基本構想である科学技術振興というものの意向はまだ入っていない。科学技術振興するための学校教育というものをやるんだということになっていながら、文部省からそのための予算を出しているんだけれども、これからできる科学技術会議にかけて、その答が出たのを閣議で決定してから、学校教育に対する科学技術振興のための施策を行うのだという御答弁があったのですから、すると、ずいぶんこれは矛盾をしてしまって、文部省から出ている科学技術振興のための学校教育の予算の中には、内閣としての科学技術振興をするための学校教育を、低位から上位に引き上げていこうという意思はまだ入っていない、こういうことになるわけですね。そういうことになりますね。
  105. 正力松太郎

    正力国務大臣 文部省から出ておる予算には、やはりそれは入っておるのです。
  106. 原茂

    ○原(茂)委員 それが入っていますと——それは入っているんですが、これからできる科学技術会議によって、学校教育の科学振興というものはどの程度化学教育をやるかをきめて、それがきまってから閣議にかけてきめるのだという前段の御答弁があったのですが、それと食い違いませんか。
  107. 正力松太郎

    正力国務大臣 それは別に食い違っておらぬつもりであります。それは文部省の予算はこっちでの何はやっておりますけれども、やはり文部省のまた見解がありますから、なかなか思う通りに行かないのです。それだから、これを全体閣議に持っていくためには科学技術会議というものが必要だ、そういう意味であります。
  108. 原茂

    ○原(茂)委員 私は同じことを繰り返してもいいのですが、大臣の方で今答弁しているうちに、少し時間がたつと、だんだん最初に言ったことを忘れちゃっているんじゃないかと思いますが、全体の御答弁をずっと合せていくと、科学技術庁考えている、学校教育が重要だ、これを引き上げなければ、日本の科学振興はできないという建前から、こういう長官としての施策についての所信表明がなされたのですが、私がこれに対する御答弁を要求しましたら、これから科学技術会議にかけて、その答を閣議にかけて、いわゆる学校教育に対する態度をきめるんだという答弁が先ほどあったのです。ところが政府提出の予算の中には、文部省の側から出たものの中には、あなたの意思は全然通じていないという形になるのですが、とにかく科学技術振興のための学校教育の理化学教育振興のための予算というものは別途に出ているんだ。とすると、文部省の出した予算科学技術庁の意思とは全然相通じていないし、閣議を通じて一つのものになった政府の責任ある予算としては出ていないんだ。なぜかと言いますと、文部省が出した予算は勝手に出したんだ、学校教育の理化学振興というものをどのようにするかは、これからいわゆる科学技術会議にかけて、その出た答えを閣議にかけてきめるんだというのですから、これは全然あなたと文部大臣あるいは閣議を通じての意思が、予算中心にして統一されていないのだというふうになるわけです。
  109. 正力松太郎

    正力国務大臣 いや、科学技術に関する文部省におけることは、やはりこっちが何するのです。それは言葉が少し足りなかったかもしれませんが、ただよりよくするためには……。
  110. 篠原登

    ○篠原説明員 ただいまの大臣の御答弁につきまして、事務当局としては申し上げる筋ではございませんけれども、大臣の御意思をそんたくいたしまして、御参考に申し上げたいと存じます。科学技術の教育の振興につきましては、もちろん現政府ではその重大性を考えまして、昨年度に比べまして、ある程度科学技術教育の予算をふやしておりますけれども、それではなお不十分であり、なお科学技術教育の面と、科学技術庁でやっております科学技術の一般の振興問題等につきましても、今後十分な連絡をとって、さらによりよい教育の前進と科学技術振興とをあわせて行うということのために、科学技術会議を設けていって、本年度におきまして多少はふえておりますけれども、さらにそれを大きく前進させる意味において、今後の科学技術会議の役割が果されていくんじゃなかろうか、かように考えます。
  111. 原茂

    ○原(茂)委員 何かあわてて壁を塗られた感じですが、まあそれでいいでしょう。それ以外に答弁はないと思いますが、ただ不満足なのは、いやしくも現内閣が非常に大きな基本政策として取り上げた科学技術振興というもの、しかも新たに科学技術会議を設けるほど大きく取り上げているこの構想に基いて、本年度予算を出すのに、少くとも学校の理化学教育の内容というものをどの程度にするかぐらいの基本構想がなければ、予算を組めないのが私は当然だと思う。それが全然できていないうちに、予算の一部分にしろ、とにかく前年度より増額しておけ、幾らでもいいからふやしておけという態度でふやして、ふえたのに対して、あとからどういうふうにしようかきめる予算の編成の仕方、態度というものは重大だと思う。と申しますのは、大臣が先ほど研究費という言葉でちょっと言いましたが、待遇を改善するということに重点を置かれたのでありますが、実際には、学校の教育のほんとうの問題になるのはどこかと言いますと、人にウエートを置くことは大事です。確かに待遇をよくしなければいけないのですが、もっと大事なことは科学技術教育をするための理化学実験施設あるいは実習施設、こういう施設に思い切った金をかけなければ、ほんとうの理化学の学校教育の充実ははかれない。先生の能力に百点、九十五点、九十点があった。九十点の先生よりは百点の先生がいいに違いないが、九十点の先生でも、施設が十分であれば、その方が数多くの生徒に対する教育は十分に行き届くということも、私は言えると思う。理化学教育というものはそれくらいに施設が重要なんです。そういう点からいうと、そういう面を全然考慮しないうちに、その基本的な考え方というものがちゃんとデータが出てこないうちに、予算を組んだという御答弁に通ずるわけですが、これは重大だと思う。予算編成というものが、もしそういう態度で現政府によってすべてなされているとすれば、これは予算の編成に対する基本的な態度がすでに誤まっているということが言えると思うのです。この点、次官からでもけっこうですが、どうですか。
  112. 正力松太郎

    正力国務大臣 予算を編成するに当って、去年より少しふやしておけというのでやったのではございません。こういうことが科学技術振興上必要だからふやすということで、やったのであります。
  113. 原茂

    ○原(茂)委員 そういうことが必要だからというのを——文部省に注文を出す科学技術庁だとおっしゃっておきながら、その科学技術庁が、これから持つ科学技術会議審議をして、その出た答えを閣議にかけてきめるんだという前段の答弁があった以上、今の大臣の御答弁と通じないじゃないですか。
  114. 正力松太郎

    正力国務大臣 科学技術会議諮問機関であります。決定機関ではありません。ただここで政策の大綱をきめるということであります。
  115. 原茂

    ○原(茂)委員 堂々めぐりになるから少し論議を戻していきますが、学校教育の充実をはかって日本の低位にある科学技術振興しようとなさるときに、一体科学技術庁考えておられる学校教育の充実しようとする方向内容はどんなものですか。
  116. 正力松太郎

    正力国務大臣 要するに科学技術振興しようとするための方向です。
  117. 原茂

    ○原(茂)委員 そういう程度日本の学校教育を充実して科学技術振興をはかろうというのでは、ちょっと私は心細いと思う。しかし大臣は所信表明ではっきり重要だということをうたっておられるのです。ご自分でも閣議でもこういう問題に対する内容の詳細な検討をされていない、あるいは科学技術庁として一体学校教育の基本的な内容をどうするかを大臣を中心審議をされていない証拠だと思う。今の御答弁のような答弁だったら。もし次官にあるなら……。
  118. 篠原登

    ○篠原説明員 科学技術庁といたしましては、科学技術振興の立場から、将来産業構造がいろいろ科学技術の発達に伴いまして変って参ります、たとえば原子力におきましても電子技術におきましても合成化学におきましても、従来の教育過程においては不十分な点も出て参りますし、アンバランスも出て参ります。従いましてこれから五年、十年先にどういう方面技術がどういう産業に浸透していく、そのためにはどういう科学技術者が必要であるというようなことは十分に検討しなければなりませんので、科学技術庁といたしましてもそういうような検討を不十分ながらやっております。それに伴いまして従来の科学技術審議会において検討をいたしまして、文部省にたとえば電子技術課というようなものを設置するし、あるいは原子力の講座を置くべしというような点につきまして、それぞれ審議会で御討議願いまして文部省に申し入れております。文部省はまた独自の立場からいろいろ検討をいたしておりますけれども、また科学技術庁意見も十分に尊重いたしまして、今後の科学技術の進展に伴う産業構造の変化に合うような学生を今から養成していくということにつきまして十分に意を用いているのでございます。従いまして、予算の編成につきましては、それらを重点的に十分考え合せまして、下から積み上げまして予算ができ上っておるのでありまして、ただつかみということではもちろんございませんので、そういう態勢において従来参っております。そういたしまして三十三年度予算は、科学技術振興につきまして、教育方面では約三十億ぐらいの増を見ております。けれどもそれではまだ不十分である。今後ますます十分な観点のもとに立ちまして審議検討をしていく必要がある。確固たるその審議に基きまして将来大きく科学技術一般を展開していくために、先ほど大臣の申されました科学技術会議を設けまして、よりよき前進のために備えようということであろうかと存じます。
  119. 原茂

    ○原(茂)委員 今の御答弁は一部分だと私は思う。ほんとうに日本の学校教育の振興をはかって科学技術を引き上げようというならば、きっと次元を下げたところから、教育の一番低いところから教育内容の充実をはからなければだめだと思う。上の方の科学技術者の養成をし、五年、十年の先に合うような、そのときにおくれないような科学技術教育の内容は一体何か。これは確かに必要だし、常に持たなければならぬ船の羅針盤と同じように大事なことです。しかし、それでほんとうの国民の科学というものが出てくるかというと、もっと次元を下げたところに問題があるのですから、科学技術教育をほんとうに口にしようとするならば、私は小学校、中学校、高等学校におけるいわゆる理科学教育というものをどうするかにもっと重点を置かなければ、ほんとうの意味日本の学校教育を通じての科学技術振興にはならない、こう思うのです。そういう点からも今の御説明は半分しか通じていません。この点にも何か考慮を払っていますか。
  120. 正力松太郎

    正力国務大臣 今のお話先ほどたびたび申し上げたことです。どうしても科学技術振興は国民全体、それについては小学校からやらなければならぬと、先ほどからたびたび申し上げております。
  121. 原茂

    ○原(茂)委員 大臣からお答えがあったんですが、今までたびたびお話があったそうですが、小学校からやらなければいかぬ、いかぬと、それほど強くおっしゃるからには、小学校からやるための今度文部省にアドバイスされた予算内容で、一体どの程度理科学教育拡充のための小学校の予算がふえているか御存じでしたら、お伺いしたいと思うのです。
  122. 篠原登

    ○篠原説明員 まことにごもっともな御意見でございますが、これは文部省所管でございまして、私から申し上げるのはどうかと思うのでございますけれども、文部省におきましても、たとえば理科教育振興法あるいは産業教育振興法に基きまして、特に中学校以上でございますが、中学校、高等学校にそれぞれ予算を補助いたしておるわけでございます。なお一番大事なのは、やはり先生方の理科知識の、そう言っちゃいけませんが、不足等のこともございまして、そういう先生方の再教育のような経費も文部省予算に計上しておるかと存じております。いずれにいたしましても、小学校、中学校、高等学校の科学教育は非常に必要なことと存じますので、今後も科学技術庁といたしまして文部省と十分御協議をいたしまして、われわれの方も文部省にそれぞれ資料を差し上げたい、かように存じております。
  123. 原茂

    ○原(茂)委員 さっきも二度目に大臣がここへ来られた冒頭に私は申し上げたのでありますが、大臣は自分でやりたい、当然やるべきだというお考えがあると、もうやっているんだというお考えになって答弁していることは困ると私はお断わり申し上げたんです。今の答弁もそうなんです。今次官から、よく御存じだから、うしろから答弁があったんですが、中学校以上の理科教育に対する予算は増額されています。でも、こんなものはちょっぴりです。小学校に対してやらなければならぬ、やらなければならぬということを再三大臣はおっしゃっておる。にもかかわらず、その大臣の意図が全然実現されていない。それが現実なんです。小学校からやるんだ、やるんだと口じゃ言うけれども、実際には小学校に対する理科教育に対して基本的などういうことが必要なのかということすら国務大臣としてまだおわかりになっていないと思うのです。ましてやそういうことを口にしても、一つも小学校に対する理科教育というものを特にやるんだという予算は出ていないというのが現実なんです。これじゃだめだと思う。実際に日本科学技術を国民的な立場で引き上げていこうとするならば、一番大事なことは、やはり小中高等学校にもっと力を置かなければいけないと思うのです。もっと力を置こうとするときに、今次官も御説明がありましたが、何といっても先生を再教育するとか、この先生になる科学技術者を養成することが大事だということは確かにこれは否定いたしませんが、同時に大事なことでしかもお金のかかる問題ですけれども、科学研究施設というものがなければだめなんです。最近の小学校なり中学校へ行って、子供の出している手工という課目があります。社会科というのかもしれませんが、出てきた工作というものを見ますと、物のまねをした形はたくさんある。実にうまいが、しかし私の子供時代と言っちゃおかしいんですが、もっと昔のことを思い起してみますと、これは何だといって笑われるようなものであっても、自分の考えで自分で作ろうという意気で自分の独創的なアイデアを盛り込んだ工作というものがたくさん出ている。今日ではほとんどそういうものが見られない。何かのまねをして小ぎれいにまとめてくるということだけで、工作のときにそういうものしか現実に出ていないんです。独創的な、物を研究し、自分で作ってみようという自分の持っているアイデアというものを形に表わそうという気魄すらなくなっておる。これは学校の環境が実はそうさせているんです。小中高等学校へ行っても、ちょっとひまがあったら見にいこう。どこへ行くか、そういうところがない。実は理科学教室というものがほんとうに整備、拡充されていれば、子供たちはそうでなくてもそういうものには大きな興味を引かれる。休み時間に見に行っただけでもそれが勉強になるのです。学校には見に行くものがない。教育に一番大事なことは、やはり始終目に触れさせることです。教育は耳から入れることです。目から耳からという視聴覚教育が一番大事なんです。そういう面からいったって、現実にこの理科学教育をしようというのなら、理科学教育の研究施設、実験施設、模型、こういうものをやはり低学年のうちから始終まわりに置いてやろうという努力がなければ、ほんとうの国民の科学水準は引き上げられない。こういう面から、これは文教委員会でまた別の日にお願いしなければいけないと思いますが、正力大臣に対しては私はただ、学校教育を通じて科学技術振興をしようといううたい文句でなくて、さわりだけでなくて、ほんとうの意味の学校教育、理科学教育の拡充というものはどうしたらできるのか、もちろんあとでは予算措置がもっと大幅に必要になると思いますが、今からでももっと真剣に、実際科学教育を振興しようという立場に立った一番大事な基本は、国民の科学水準を引き上げるというところにあるんだという信念を持って、今までもるるお述べになったのですから、それを実行に移すというもっと強い熱意を私は如実に示していただきたいと思う。このことがなければ、うたい文句では、日本の科学を国民の視野において発達することはあり得ないと思う。こういう意味から、この所信表明の中のいわゆる学校教育ということに対して、私は大臣の所信をお伺いしたいと考えて発言したのが第二点であります。  第三点にお伺いしたいのは、電子技術振興方策ですが、この電子技術振興方策というものは、簡単に言いますと、言いやすくて何か簡単にできそうなんですが、日本の現在の学校の教育内容あるいは先ほどから言われる科学技術者の数、その水準等から言って、これはなかなか困難な振興方策だろうと思うのです。一体電子技術振興をしようとするための方策として、大筋ではどんなものをお持ちになっているのかを一つ簡潔にお答え願いたいと思う。
  124. 正力松太郎

    正力国務大臣 電力技術振興の問題、実はそれで電力技術審議会というものを作ったわけなんですが、私どもが第一にテレビジョンを始めたのも、電子技術の発達に一番いいと思ったからやったのであります。  それから先ほどだいぶ小学校の分について予算が足りなかったという御非難がありましたが、今年三十億ふえたということは大へんな奮発なんです。今まで文部省の予算というものはなかなかふえないのです。それを今度は大幅にあれだけふやしたわけなんですから、ただ話をするだけじゃないのです。それはつまり大蔵省もそれをようやく認めてきたのです。先ほどお話の通りに、小学校にみな理科の実験室とかいうものがあるようにしていくのがほんとうなんです。来年度はもっとやりますけれども、ことしはあれでもなかなか容易じゃなかったということを一つ御記憶願いたいと思います。
  125. 原茂

    ○原(茂)委員 あとの方でまたよけいなことが出てきたのですが、あとでまた小、中、高等学校の段階別にちょっと予算内容を御検討願っておくことにしまして、今の電子技術振興方策ですが、振興方策のうちのテレビもそれだ、そのために電子技術審議会があるんだ、こうおっしゃったのですが、審議会は諮問機関なんです。諮問する側が手ぶらで、何もなくて、ブランクで何を審議するのか、その審議会にかけようとする基本的な方策があるはずですから、その大筋をお述べになっていただきたい、こういうわけです。
  126. 篠原登

    ○篠原説明員 電子技術に関しましては、これは今後非常に重大な問題でございまして、たとえば飛行機を飛ばすにいたしましても、電子技術が非常に大事であり、また原子炉を操作するにいたしましても電子技術が大事であり、さらに工業方面でオートメーション等の利用その他あらゆる方面で、電子技術が産業に浸透して参っております。これを振興させる方策といたしましてはいろいろございますが、何せ戦争中約十年の空白のために、かつては相当進んでおりました電子技術が、今ではやはり平均して十年ぐらいおくれて参っております。そのために、たとえばテレビジョンの受像機の問題につきましても、アメリカの特許を買って参らなければできない。最近のトランジスター等におきましても、アメリカ等の技術を入れまして日本でやっておる程度でございまして、なかなか困難な問題がたくさんあると思います。そのために、日本として、やはり確固たる研究のもとに電子技術振興していく。それから外国から入れるべきものは最小限度入れまして、日本で解決すべきものはずんずん伸ばしていく。たとえばパラメトロン等についても日本でいろいろ研究されております。あるいは電子計算機、電子交換機等の模型程度のものはできておりますけれども、これがなかなか実を結んでおらないという点もございます。今後やはり大学の研究を初めといたしまして、研究所における研究、あるいは産業面、あるいは行政面、すべてが力を合せまして電子技術に打ち込んでいって、今後の発達を期していかなければ、現在のままではなかなか不安がございますので、今後もそういった御協力をいただきまして、われわれといたしましても十分その間の調整をして、電子技術の発達を期していきたいと考えております。
  127. 原茂

    ○原(茂)委員 今注意されてだいぶ時間がたっているので驚きましたが、今の電子技術振興方策については、この次の委員会でもう少し教えていただきたいと思うのですが、今の御答弁でこれが審議会にかける筋なんだというのでは、非常に権威がないと思います。やはり電子技術振興方策というものは政府の責任においてお立てになるべきだと思いますので、今の御答弁を筋立てた、こういう筋でいくのだというもう少し確たる方策をお示しになることこそ、電子技術振興の一番もとになることであります。このもとが全然なくて、ただ振興するのだ、振興するのだ、審議会がそのためにできたんだというのでは、これでは電子技術振興になりません。ただ学校技術内容をもっと充実をはかっていこうとか、この面の科学技術者の養成をするとか、あらゆる民間産業等の協力も得よう、政府機関も総動員しよう。これは皆さんのできる行政措置として当然おやりにならなければいけない現段階における仕事なんです。そうでなくて、新たにここに電子技術振興方策というものをうたった以上は、その方策のない限り、この言葉を使ってはいけない、このくらい厳密な気持で、電子技術振興というものに対処しなければいけないのではないか。それほど重要なものであるという意味から、方策に対する大筋は政府においてもっとお立てになる必要がある。そんな、ないままで、審議会にかけては困るということを申し上げて、この点はこの次の委員会でもう少し教えていただきたいと思います。  最後に、また最新外国知識の導入をはかる、こういうことをうたっておられる。これは毎年々々まくら言葉みたいに出てくるのですが、外国というものの中から、何といっても人工衛星を考えても、ソ連の技術相当な進歩というものは世界が衆知の事実であります。で一体日本科学技術振興させるのに、米、英の側とは非常に緊密な連絡なり、一致ができているのですが、三年来、四年来の懸案であるのに、またこの科学技術、特にこの問題に関する限り、ソ連とのもっと緊密な連携あるいは交流がはかられないと、かたわな日本科学技術というものになっていく心配があると思うのです。やはりソ連を中心にした科学技術というものとの、もっと密接な連絡関係を持てるような方策が必要ではないか。その後三、四年たっておるのですが、毎回、毎年やらなければ、いけないという答弁が、元正力国務大臣からも再三聞かれたわけです。もちろんこれに対する確たる方途と、今講ぜられている段階があると思いますから、これを一つ御説明願って終りたいと思います。
  128. 正力松太郎

    正力国務大臣 実はこの前、岡委員からも質問がありましたし、その前にも答弁しておるわけですが、その点は非常に必要だと私も感じていますので、なおよく考究して参りたいと思います。
  129. 原茂

    ○原(茂)委員 よく考えておいて下さい。ただ必要だと言うだけでは済まない問題だと思いますから——それはこの次に譲ります。
  130. 齋藤憲三

    齋藤委員長 本日の質疑はこの程度にとどめます。  参考人各位には御多用のところ長時間にわたり御出席を願いまして、まことにありがとうございました。委員会を代表して私より厚く御礼を申し上げます。  次会は公報をもってお知らせいたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後一時三十一分散会