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1958-04-01 第28回国会 衆議院 運輸委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年四月一日(火曜日)     午後三時三分開議  出席委員    委員長 赤澤 正道君    理事 畠山 鶴吉君 理事 濱野 清吾君    理事 山本 友一君 理事 井岡 大治君    理事 松尾トシ子君       有田 喜一君    伊藤 郷一君       原 健三郎君  早稻田柳右エ門君       小山  亮君    下平 正一君       正木  清君    山口丈太郎君       眞鍋 儀十君  出席国務大臣         運 輸 大 臣 中村三之丞君  出席政府委員         運輸事務官         (大臣官房長) 朝田 靜夫君         運輸事務官         (海運局長)  粟澤 一男君         運 輸 技 官         (船舶局長)  山下 正雄君         運輸事務官         (船員局長)  森  嚴夫君  委員外出席者         運輸事務官         (海運局海運調         整部長)    辻  章男君         運 輸 技 官         (船舶局首席船         舶検査官)   藤野  淳君         海上保安官         (海上保安庁警         備救難部長)  松野 清秀君         専  門  員 志鎌 一之君     ————————————— 三月三十一日  委員原健三郎君、多賀谷真稔君及び仲原健次君  辞任につき、その補欠として中川俊思君、上林  與市郎君及び辻原弘市君が議長指名委員に  選任された。 同日  委員中川俊思君辞任につき、その補欠として原  健三郎君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 三月三十一日  鹿児島飛行場の開設に伴う農耕者補償に関す  る請願床次徳二紹介)(第二五四七号)  中央線電化複線化に伴う路線変更に関する請願  (早稻田柳右エ門紹介)(第二五七六号)  岡多線敷設促進に関する請願早稻田柳右エ門  君紹介)(第二五七七号)  河和港局部改良事業日国庫補助増額等に関する  請願早稻田柳右エ門紹介)(第二五七八  号)  道南西海岸線鉄道敷設に関する請願田中正巳  君紹介)(第二六八八号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  海運南海丸遭難事件等)に関する件      ————◇—————
  2. 赤澤正道

    赤澤委員長 これより会議を開きます。  本日は海軍に関して調査を進めます。最初南海丸遭難事件のその後の経過について政府より報告を聴取いたします。粟澤海運局長
  3. 栗澤一男

    栗澤政府委員 昨日までに収容いたしました遺体数最初に申し上げます。百五十八体昨日まで収容いたしました。そのうち男子は百二十九名、女子は二十九名でございます。引き揚げました場所の区別を申し上げますと、舶内で八十六名、船外で七十二名、合計百五十八体の遺体を収容いたしました。なお未収容の遺体は九体残っておりまして、そのうち船員が二名、旅客が七名という内訳になります。なお捜査は漁舶その他を用いまして今日も鋭意続行いたしております。  それから先般会社といたしましては見舞金を各一万円、葬祭料等として八万円を御遺族に贈ったということを御報告申し上げましたが、その補償の内払いといたしまして、弔慰金をおとなに二十五万円、十二才以下の方は十三万円、四才以下の方には七万円というものを会社といたして決定いたしました。三月十五日から各御自宅へ連絡いたしまして持参をいたしておる、こういう状況でございます。  なお南海丸船体引き揚げを完了いたしました。その引き揚げ状況並びに船体状況等につきましては、船舶局長から御報告していただきます。
  4. 赤澤正道

  5. 山下正雄

    山下(正)政府委員 南海丸浮揚状況につきまして、四国海運局から報告がきております。この報告本船が三月二十日に完全に浮揚しまして、二十三日の午後に日立造船向島工場へ曳航されましたが、四国海軍局では完全浮揚の直後に、先任船舶検査官徳島支局検査長をして実地調査を行わしめたものでございます。この概況を申し上げたいと思います。  船体一般状況でございますが、船体左舷を下に横倒しにした状況で沈んでおりました関係上、海底の泥が特二等、普通二等等左舷側に半分ほど充満しておりまして、角窓下側ガス切断をいたしまして排泥を容易にして初めて完全に浮揚いたしました。上甲板下水面上に現われたところでは、ほとんど外板及び舷窓ガラス等は完全に閉鎖されたままで損傷を受けておりません。左舷のボート・ダビッとは曳航移動中に脱落いたしました。マストは折損をいたしております。ブリッジのアレグラフの指令盤は、船橋では「用意」、機関室よりの応答針は「全速」というふうになっております。かじ左舷に六度を指示しておりますが、船橋かじ取り機室も同じでございます。それから舷檣放水口はいずれもその作動は異状はなかったようであります。  それから機関室一般状況でございますが、主機補機ともに外見上特に揚傷は認められておりませんが、機関室の敷板は大部分脱落しておりました。機関室テレグラフ状況船橋と同じ状況でございます。燃料ハンドルの位置は七十五分の十二で、これは停止かきわめてスローな状況推定されます。起動空気用カム移動用応急ハンドルははめ込まれたままでございます。機関が偉止したので急ぎ起動しようとしたようにも判断されますが、詳細は不明でございます。空気弁は元のストップバルブ及び機関室側ストップバルブも閉止したままでございます。  それから救命具船内一般施設状況でございますが、無線室の柱時計は六時三十一分で停止しておりまして、沈没した時間を指示しておるものと推定されます。無線機械及び船内放送機のスイッチも入れられて使用状況にあったようであります。救命設備といたしまして、救命艇沈没当時は船体とともに水底にあったが、引揚作業中に二隻とも脱落いたしました。救命浮器救命艇と同じ状況でございます。救命胴衣は浮揚時は相当数船内に残っておりました。救命具はいずれもほとんど使用されていない状況でございました。  以上のような状況でございまして、南海丸は三月二十三日午後に七重丸に曳航されまして、明石海峡を経由、広島の尾道の日立造船向島工場に向ったわけであります。以上報告を終ります。
  6. 赤澤正道

    赤澤委員長 質議の通告がありますからこれを許します。小山君。
  7. 小山亮

    小山(亮)委員 今の御報告に関しま関してちょっと伺いたいのですが、南海丸浮揚しました現状において、かじはどういうふうにとってありましたか。
  8. 山下正雄

    山下(正)政府委員 取りかじ左舷でございます。その状況船橋かじとりの部屋も同じような状況でございます。
  9. 小山亮

    小山(亮)委員 上甲板下丸窓がありましたが、その丸窓は全部水密に締っておったのですか、多少あいておりましたか。
  10. 山下正雄

    山下(正)政府委員 この報告によりますと、ガラスは全部異常なくしまっておったというに記載してございます。
  11. 小山亮

    小山(亮)委員 上甲板角窓はどういう工合になっておりましたか。それから機関室に行くところのドア、あるいは三等船客が入るところの人口の両舷のドアですね。
  12. 山下正雄

    山下(正)政府委員 先ほど申しましたように、この報告は詳細をきわめておりませんが、報告によりますと、上甲板下水面上に現われたところでは、ほとんど外板及び舷窓ガラス等完全閉鎖のままで、損傷を認められないということでございます。非常の出入口等につきましては実は記載がございませんので、どのような状況であったか、今のところ私どもにはわかっておりません。
  13. 小山亮

    小山(亮)委員 船舶局専門家である検査官その他の方々がわか丸検査され、さらに引き続いて南海丸浮揚した現状ごらんになりまして、大体今度の遭難は一体どういうところに原因があるか、具体的にその状態についての推定がつくようでありますか。
  14. 山下正雄

    山下(正)政府委員 この海難原因につきましては、実は専門家の詳細な調査の結果真相が判明するのではないかと思いますが、私どもといたしまして考えられますことは、相当大きな波があり、相当大きな風が吹いて、船が復原性を失って沈没したのではないか。またこの報告にもございますように、エンジン状況がとまっておったかのような判断をされるようなデータが出ております。これらの問題等は、今私どもがこれが原因であるという推定を申し上げますことは、非常に軽率のそしりを免れないと思いますので、はっきりしたことを申し上げるのは差し控えたいと思います。
  15. 小山亮

    小山(亮)委員 これはこの間の新聞で見ましたが、南海丸沈没に関しまして徳島地方裁判所検察庁の方が、二十日から三日間これに対する実地検証を行なった結果を二十七日に発表しております。これを見ますと、運航上の注意書を無視して、荒天時には海水の侵入を防ぐ水密とびらを完全に締めなければならないことになっていたのを、これを怠っていたことと、さらに南海丸空船のときにローリングがひどいので、海運局からこの点について特に慎重に注意書を渡されたにもかかわらず、遭難当時は貨客燃料を合わせても十一トン余、満載時は二十八トンしか積まず、空船に近い非常に危険な条件のもとに荒天を乗り切ろうとしたことなどが指摘されている、こういうふうにあります。これは文書で発表したものか口頭で発表したものか知りませんが、私どもから言うと、船にあまり経験のない検察庁の人が三日間実地検証を行なって、その結果こういうような発表をしておられる。これは事実か事実でないかわかりませんけれども、少くともこの事件に関しましては、遺家族の人たちは非常に関心を持っておいでになると思うのです。その際に検察庁ですらあれだけの発表をするのにかかわらず、責任があり、専門立場におられて、船舶の構造とかいうような問題や、あるいは運行上の注意とかいうようなことに対して、特に責任ある立場におられる海運関係の人が、何らの発表をしないでほおぶりでだまっているということはおかしいと思う。これは何かあなた方の方でも、ここまで見てくれば大体こうではないかという原因がつかめるのではないか。みな死んでしまっておりますから、当時の状態をはっきり間違いないということは言えないけれども、せめて南海丸浮揚するまではと思って私たちは駄っておったけれどもわか丸を調べられて南海丸が浮かび上ったことをごらんになった今日、これ以上調べようがないから、あなたの方でこれに対するところの最終的な何らかの見通しというのが、推定というものを御発表なさる責任があるのではないかと思うので、伺うのです。知らぬといってほおぶりをしておられる問題ではないから、発表はいつやるか。できるなら今発表していただきたい。きょうでなかったらいつ発表するか。こういうことを駄っておりますと、ほかの方からいろいろな雑音が入りますから、雑音が入らないようにするにはどうしたらいいか、それを考えてあなたの方で処置がなさるべきだと思いますが、責任のある御意見を伺いたい。
  16. 山下正雄

    山下(正)政府委員 徳島地検の検事正がどのような意図で、またどのような推論でそういう御発表をなさったか、実は私どもはよく存じませんが、ただいま小山先生の仰せられましたように、沈没原因につきまして私どもはいろいろ推測はいたすことができます。しかしその推測が果して正確なものであれば非常にいいわけでございますが、しかし生存者もおりませんし、また海上気象状況等につきましても、実は私ども調査と申しますか、現状がいかなる状態であったかということを十分に承知しておりません。従いまして少くとも船が沈没したことは事実でございますので、この沈没についてはやはり復原力喪失ということが一番大きな原因でなかったかと思います。この復原力喪失を起します原因といたしましては、先ほど申しましたように、非常に大きな波があったり非常に大きな風があったり、またはエンジンストップ状態があったのではないかというような推定がされるとしますれば、当然船としてはこのような事故が起り得る状況ではなかったかということ以外にはちょっと申し上げにくいのではないかと存じます。いずれこの問題につきましては、海難審判所の方でいろいろ調査もしておられますから、的確な専門家の御意見が出ると存じます。それまでわれわれはどちらかといいますと被告の立場と申した方が適当じゃないか、こういうように考えておりまして、なるべく推測等をまじえまして言いました場合のわれわれの発言が、無用な摩擦や無用な波乱を巻き起すのは私どもは避けたい、こう存じております。その点御了承願いたいと思います。
  17. 小山亮

    小山(亮)委員 そうすると海難審判所の方の発表がない間は、あなた方はこれに対しては聞かれても何にも言えない、こういうわけですか。
  18. 山下正雄

    山下(正)政府委員 先ほど申しましたような範囲におきまして申し上げるのが適当かと存じております。
  19. 小山亮

    小山(亮)委員 そうしますと、南海丸に対しての質問はもうこれでできないわけなんですね。この委員会では何にも言えないということならば、この原因その他については質問できないわけですか。もう一ぺん伺いたいのです。
  20. 山下正雄

    山下(正)政府委員 決してそういうわけではございませんので、具体的な私どもにわかっております範囲でございましたならば、お答えを申し上げたいと存じます。
  21. 小山亮

    小山(亮)委員 私はもうこれは繰り返し繰り返しこういうようなことを言いたくはないのでありますけれども、それでは南海丸の問題でなくて、わか丸の問題として伺いたい。わか丸南海丸というのはほとんど同型の船ということになっておりますから、わか丸の問題を突き詰めていけば南海丸の問題は察知できるわけだから、南海丸の問題についてはあなた方は答弁できないとしても、わか丸の問題に対しては答弁ができるわけでしょう。従って私はわか丸の問題からお伺いしたいのです。それについていろいろな資料を出していただきましたが、どうも最初から私は非常に不思議に思っておるのは、南海丸わか丸両方とも非常に重心が普通の船よりも高いように思うのです。それは数字から私どもはこれを計算しまして、お出し下さった資料計算しまして、そうして計算した結果そういうふうになるのですが、わか丸の深さは三メートル六ということになっております。それでありますが、わか丸新造当時の満載出漁のときのKG、キールから重心までの高さ、それから水深というものとをずっと計算して私は出しているのですが、今回試験したときのKG喫水とその差、それから新造当時のKG喫水、こういうものが違っておりますね。これは新造当時はKGが多少低かったが、作ってから後に今日までの間にいろいろな設備を上の方に加えたわけでしょう。私はそう思うのですがね。従って非常に上が、頭が重くなり過ぎていて、それがために重心が非常に高くなっている。比較してみると相当高くなっています。同じようにそれよりか一年前にできたところの南海丸でありますから、つまりわか丸新造当時から今回の試験までの間にKGが高くなりましたその率、それよりも、おそらく南海丸新造のときから今日遭難しましたまでのKGがふえてきた率というものは、一年先にできているのですからもっとよけいだと思うのです。それをかりにわか丸にふえたところの同じだけの高さがふえたものと仮定しましても、沈んだときの南海丸推定されるところのKGの高さ、これは船の深さよりも高いですね。これはこうなっていますね。満船入港のときのKGの高さ、つまり重心の高さというものは深さの上にあるのですから、上甲板よりかちょっと上に船の重心がある。それから空船のときを見ますと、さらにそれよりかもっと上にあるわけです。三・六六の二ですから、空船のときは。それから満船のときの入港のときは三・六四の二ですね。それで深さは三・六ですから、どうしても上甲板よりももっと上になるわけです。上甲板より上に重心がある。そうすると浮力の中心というものは喫水の下ですから水の中にある。重心は、べらぼうに上にある。こうなりますと、ある特定の限度まで傾斜した場合にはいいのですが、一定の限度を越えて傾斜しました場合には、もう復原性がなくなってしまう。これは造船学上からいっても当然のことなんで、復原性がなくなってしまうからもとに戻らない。それからわか丸試験から私どもが見まして、わか丸が一体どのくらいまで傾斜すれば危ないか、どれまでの傾斜ならいいかというような限界がございますね。傾斜限界、それを伺いたい。
  22. 山下正雄

    山下(正)政府委員 このたびの試験では、わか丸限界角まで出しておりません。新造当時におきましての限界角につきましては、前回の委員会でお話し申し上げましたのでございますが、部屋にあります窓の関係上、限界角を四十三度で切って、そこまでで復原性計算を出しているわけであります。
  23. 小山亮

    小山(亮)委員 この間あなたの方からブルー・プリントをいただきまして、南海丸の建造当時のそれを私は計算しますと、十五度以上傾斜しますと大体上甲板水面が達しますね。だから十五度以上かしがるとスカッパーから水が入ってくる勘定ですよ。それは私の意見とあなたの方の計算と違いますかどうですか。
  24. 山下正雄

    山下(正)政府委員 調べておりますから、ちょっとお待ちになって下さい。
  25. 正木清

    正木委員 関連して。今小山委員からも質問されたのですが、三月二十八日の朝日によりますと、運輸当局の方から注意されたその注意事項を完全に守らなかったところに、この沈没原因があるのだ、こう報道しているのです。それは徳島地検が二十日から三日間実地検証をした結果を二十七日発表したのがこの記事なのです。そこであなたの注意をされたという注意事項について、過般の当委員会で私が質問をしたその質問に答えた速記をあらためて見直してみますと、注意事項はこうなっています。ですからあなたの答弁に基いてこれから質問を試みたいと思いますので、御答弁を願いたいと思います。すでに船は引き揚げを終ったのですから、あなたが注意をされたバラスト十五トンは完全に船の中にあったのかないのか、それを調査されたかどうか、それを答弁願いたい。
  26. 山下正雄

    山下(正)政府委員 本船現状並びに試験につきましては首席検査官が現地に行って調べておりますから、首席検査官からかわってお答えいたします。
  27. 藤野淳

    藤野説明員 南海丸バラストのことでございます。本船引き揚げられた状況は、先ほど船舶局長から四国海運局からの報告を御報告申し上げましたが、バラストは計測できる状態にはなかったようでございます。従いまして何トン積んであったかということはわからないという状況でございます。
  28. 正木清

    正木委員 実は残念ながら私その新聞切り抜きをなくしてしまいまして、責任ある資料にならないことをはなはだ遺憾に思っておるのですが、その私の紛失した切り抜きには、当委員会で、あなたの方から明らかにした注意事項の中に、バラスト十五トンを積むことを命じた、ところがその新聞には十五トンが積んでなかったのだという記事が出ておったのですが、それを私失ってしまいまして真相を究明する上において非常に残念だと思いますが、今あなたの答弁されたのは、やはり十五トンという責任ある回答はここでできないのだ、こういうことなんですか。
  29. 藤野淳

    藤野説明員 引き揚げられた南海丸につきまして搭載されたバラストを計測できないという状態であったと申し上げたわけであります。確認できないという状態でございました。
  30. 正木清

    正木委員 三十三年の二月六日の当委員会における山下政府委員答弁によりますと、こうなっているのですね。あとほかのこともございますが、「それを防ぐために、バラストを十五トンほど搭載いたしました。その結果さらに復原性能試験をやりまして、そのときに船首尾水槽に水を張らなくても、空艙入港でも十分の復原力ありということで、そのときには復原性能の規定が実施されましたから」注意書というものは出さなかったのだ。それであなたの方は、中間試験の結果このバラストを十五トン積みましたことによって復原性というものに信頼を置けるのだ、こういう答弁なんですね。ところが私のなくした新聞切り抜きを見ると、引き揚げられたこの船には十五トンのバラストが搭載されてなかったのだ、こういうことなんです。そこで二十八日の朝日新聞を見ますと、具体的にはそのことには触れていませんが、遭難当時は貨客燃料を合せても十一トン余(満載時は二十八トン)が必要なのに、十一トンしか積んでいなかった。これが沈没原因だ、こう報道しておりますね。ですから私は泥が入ろうと何が入ろうバラストバラストなんです。私は専門家のあなたたち立場から調べれば、沈没原因というものがある程度明らかになってくるのじゃないか。抽象的に神がかり的に突風が起きて、三角波によって転覆したのであろうとか、私のこの前の質問はそれで終ったわけですが、そういう抽象論でなくて、すでに船が引き揚げられたのですから、引き揚げられた限りにおいては責任ある行政官庁としては、沈没真相について責任ある発表をすべき立場にあるのがあなた方じゃないかと思うのです。それをいまだに発表がないから、僕は委員長を通じて特にきょう中間報告を求めておるのです。検査をしたとか調査をしたとか責任ある発表は、われわれから質問がなくても、あなた方からあってしかるべきではないか、そう思いますから私は質問をいたしておりますので、どうかその調査した責任ある結果を当委員会で明らかにしてもらいたい。
  31. 山下正雄

    山下(正)政府委員 今お話のバラストの問題でございますが、南海丸バラストはこもに入れて船底に置いておったわけでございます。従いまして船が横転した場合に、そのこもが破れたり何かして泥と一緒にまざっておるわけでございます。そして排泥作業とともに砂は出ますので、実際に幾ら積んでおったかという計測はできなかったわけでございます。  後段のお尋ねの沈没真相につきましては推測はいろいろされるわけでございますけれども、しかし私どもの勝手な推測が、事件のほんとうの真相を曲げて解釈するなり、また曲げて判断した場合は、われわれとしても非常に責任がございますので、この問題につきましてはその道の専門家で十分御審査を願いまして、これこれの原因だというふうなおきめを願うのが私どもとしては最も適当な方法でもあり、またその場合に船についてのいろいろなまずい点がございました場合には、私どもとしてはそれについて十分反省もし、今後の対策も考えていきたいと思いますが、その真相そのものが実ははっきり私どもの具体的な事実をもってつかめておりませんので、まことに残念ございますが、これこれの事情によってひっくり返ったのだということの御答弁ができないのを遺憾に存じております。
  32. 正木清

    正木委員 そうすると事情はわかったような気もするのですが、先ほどここで御発表になりました内容の資料はどこから出たのですか、そしてだれがあの調査を命じて発表に至ったのですか。その点を一つお聞かせ願いたい。
  33. 山下正雄

    山下(正)政府委員 その発表四国海軍局長から正式な公文として報告がきております。先ほど申しましたように四国海運局先任検査官徳島支局検査長が現場に参りまして、船の実情をつまびらかにしておるわけでございます。従いましてこの記載事項については間違いがないと思いますが、ただこれらの個々の事実をもって、この船はこういう状態であっただろう、ひっくり返ったのだろうということを私どもが独断的にきめますには、あまり問題が大きいのでございます。ただはっきりここにございますように、窓ガラスが完全な状況であったとか、またはかじが取りかじ六度であったとか、またはエンジンテレグラフ指令盤等状態等につきましては、はっきりした事実でございますから、これを申し上げたわけでございまして、こらの事実からやはり専門家がいろいろのそのほかの事態と一緒に考えられまして、推察されて、原因はこうであろうということになる一つの資料ではないかと思います。
  34. 正木清

    正木委員 そうしますと、その四国海運局調査をいたしましたその調査報告書に関する限り、あなたの方から注意をされた注意事項なるものは、バラストを除いたほかは完全になされておった、こう心得てよろしいのでございますか。
  35. 山下正雄

    山下(正)政府委員 この報告書だけでは、私ども注意しておりますことが完全に守られておったかどうか、この文面だけでは判明いたしません。
  36. 正木清

    正木委員 ちょっとまた私疑問が出てきたのですが、少くともこの南海丸が事故を起した、そこで大きな問題になった、そこであなた方は責任ある立場で当委員会でそれぞれの答弁をされた、その答弁をされた中に、私の質問に対して、二月六日に、これとこれとここに欠陥があったから、そういう欠陥は直ちに直すようにという注意事項をした、こういう答弁をされておるのですから、四国海運局の方がその船について実地検査をする場合においても、こういう点こういう点こういう点に注意事項をしたのだから、こういう点を十分責任ある調査をするようにというような命令は、あなたの方ではなさらなかったのですか、その点をお伺いしたいと思います。
  37. 山下正雄

    山下(正)政府委員 復原性注意事項につきましては、もちろん南海丸遭難前の中間検査におきましては、前回注意されておりまする事項は完全に改善いたしまして、中間検査としては復原性の規定の上では完全に合格をいたしておるわけでございます。しかもその注意事項と申しまするのが具体的な問題でなくて、一般的な乗客の急速な移動をしてはいけないとか、または波や風のあるときには注意して運航しろというような一般的な事項がございまするので、具体的な事項は先ほど申しましたように、遭難前の中間検査では完全に実施しておるわけでございます。従ってあとの記載事項については、検査官としては確かめるにも確かめにくい事態であったかと思います。船長がすでにおりませんので、そういう事態につきましては確かめにくかったのではなかろうかと思っております。
  38. 正木清

    正木委員 そこでまたお尋ねしたいのですが、結論から言うと、あなたはこう答弁しておるのです。「完全に検査に合格いたしておりまして、検査証書その他を発行いたしております。以上でございます。」というのですから、前回の委員会でも、あなたの答弁を速記で詳細に調べてみますと、中間検査をやったその結果これこれの注意をした、しかも中間検査をやった結果完全に合格したので検査証書も渡したのだ、こうおっしゃるのです。そうすると、今あなたがここで報告されました事項についても一般的なもので、議会を通して国民のなぜ一体ああいう大きな間違いを起したのだという疑問は、全然解けないわけでございます。その解けない理由は、今あなた方は責任ある立場にあるのだから、海難審判所の結論の出ない限り私どもは十分注意をすべきではないかと思う、非常に謙虚な立場でおられるわけですそこで私はお尋ねしたいのですが、その謙虚さはここはそれでよろしいと思いますが、一体あなた方は船舶安全法に基いてこういう検査もやれば、船の中へあなた方の職員も立ち入ることができるのだと思いますが、あなた方が検査をして完全に合格したのだ、こういうことになってきますと、これは非常に仮定的なことになりますが、もしあなた方の検査に間違いがあった結果に基く事故だということが明らかになりますと、行政的な責任は一切あなた方にある、こう断定してよろしゅうございますか。この点法律的にいかがです。
  39. 山下正雄

    山下(正)政府委員 検査官の重大なる過失によりまして船の危険を生じたというような場合には、やはり検査官の職務としての非難が当然あることでございます。しかし検査官が——この南海丸検査の場合は、検査官の過失がないと私どもは信じておるわけでございますが、あらゆる場合に検査官が完全無欠であるとはなかなか言い切れないのでございます。と申しますのは、たとえば船のいろいろの部分をすみからすみまで検査いたしまして、そして完全にいいという状態をコンフアームするにはなみなみならぬ努力が要りますし、また検査されていた以外の場所でまた欠陥が起きる場合もあるわけでございます。検査官といたしましてはそういう間違いのないように、全力を上げて技術の練磨と検査の場合のよりよき注意をもっていたしておるわけでございまするが、しかしかりに重大な過失によって船に相当大きな、また人命等に大きな損害なりが起きました場合においては、検査官といたしましてはその面におきまして非難を受けることは当然だと思います。
  40. 正木清

    正木委員 そこで、前回の私の質問に対して木村政府委員はこういう答弁をしておるのですが、これを調査されたかどうかをまずお尋ねしたいのです。「今回遭難いたしました南海丸引き揚げましてその計器等を調べまして、それにより原因の究明に役立つかと存じます。なお気象条件につきましても、目下のところきわめて御満足のいくような報告はございませんが、その当時におきます、たとえば十分間において吹いた突風がどこかの漁船であるいは捕捉されていやしないかという希望もございます。そういう点も合せまして原因調査に役立たせたいと思います。」こう木村政府委員答弁しているのです。ですから、この計器の究明というようなことが、今回の海運局調査された報告書の中にあるのかないのか。それからもう一つは、これは運輸省、あなたの方全体のことですが、気象条件について、これは私時間をかけて徹底的にもう一回あらためて質問をしたいほど、私には大きな疑問があるのです。これなどについても、当時ここに漁船がおって捕捉されたというような調査をなされたことがあるのかないのか。これも原因究明の一つになろうかと思いますので、調査されたならばその点も報告されたい。
  41. 山下正雄

    山下(正)政府委員 ただいまお話の船を引き揚げました場合の計器の調査等はいたしております。たとえば先ほど申しましたような機関室テレグラフとか、ブリッジにありますテレグラフ指令盤の応答の針というようなものが、このときの船の状態を指示する一つの目安になると思います。また燃料のハンドルの位置とか起動用のカムの問題とか、また空気弁が締っておったとかいうようなことも、やはり先ほどお話にありました当時のいろいろの計器を調べることによりまして、海難事項をきわめる一つのよすがになっておるわけでございます。それから当時の風の状況につきましては、船舶局といたしましては調査をいたしておりませんが、海上保安庁におかれましていろいろ調査をされたデータもあるやに聞いております。
  42. 正木清

    正木委員 そうすると運輸省としては一切海難審判所調査に待って、あなたの方の独自の調査はおやりにならないのですか。
  43. 山下正雄

    山下(正)政府委員 原因はいろいろ調べておりますが、しかしそれを今公けにしましたり、またこうであろうという推論をいたすのは差し控えたい、こう考えております。
  44. 正木清

    正木委員 あなたは、やはり二月六日ですからはっきりしておきたいと思うのですが、こういう答弁をしているのですね。「確かに私ども検査並びに規定の上におきまして、船がこの程度の風には十分復原力ありという検査もし、また事実そういう性能であったと存じております。しかしこの船が現実には沈没しているのでございますから、私どもも実に意外な感じがしております。この原因につきましてはどこにその原因があったかということを徹底的に調べたいというふうに考えおります。またそうすることがなくなられました死亡者の遺族の方々への一つの供養にもなり、また今後の船舶行政を推進していく上の非常な力になる、またそうしなければならぬ、こういうふうに考えている次第でございます。」あなたは委員会でこう答弁されておるのですよ。答弁されておる限り、今あなたがおっしゃったようなことではいけないのじゃありませんか。あなたは六日の委員会で、私の質問に対してこう答弁されておる。当然海難審判は海難審判、それから徳島地検徳島地検検察庁検察庁、しかし行政を担当するあなたの立場からもやはり独自の責任ある立場に立って調査をなさって、その結果をあなたの持っておる権限と責任範囲内で当委員会を通じて国民に明らかにすることが、あなたのおっしゃった遺族に対する供養でもあるし、同時に今後の船舶行政に対するあり方ではありませんか。今のような答弁では、私はあなたの立場は不親切だとしか言い切れないのですが、いかがです。
  45. 山下正雄

    山下(正)政府委員 今のお説のような見方もあると思いまするが、船の問題につきましては、基本的な復原性の問題にいたしましても構造上の問題にしましても、そう急速に、しかも簡単に結論を出すことは非常に危険があるわけでございます。私どもとしましては、この復原性の規則を制定されましたときの資料も十分検討し、また現在いろいろの事件がございますが、この事件等につきましても十分調査をして、これで十分解決ができるというところで諸規定の改正を行うというふうにしなければならぬと存じております。従ってこの原因その他技術的な面につきましては、十分先生の申されましたような趣旨に従って、船舶局内で調査もし研究もいたしておりますけれども、それを直ちに海象、気象の問題またはそのほかのいろいろの問題に結びつけて、今回の事件はこうであったということを私ども独断で断定を下しますには、あまりにもほかの事態をよく存じておりません。私どもはたとえば十分な調査機関がございまして、風の状況とか波の状況とか、またそのほか実地検証等もいたしまして十分調べておるなら、独自な見解もできるかと思いますが、しかし運輸省内で同じようなことを二つやりましても非常にまずいことにもなりますし、また私どもがそういうことをやりますことにおいて、検察当局とも称すべき理事官が調べております仕事の牽制をすることになってもこれまた申しわけない。私どもは謙虚な気持で技術的な問題につきましては十分調べますが、公平な立場理事官が決定される事項について、私どもは十分関心を持ってはおりますが、その決定につきまして、もし不当な決定がなされたときは私どもとしましては十分調べました資料に基いて、それはこうではなかろうかということは申し上げる機会もあろうかと思いますが、先ほど申しましたような趣旨で調査はいたしておりますが、それを公けにはしたくないということでございます。
  46. 正木清

    正木委員 そうしますと調査はしておるが公けにはしたくない、こうおっしゃるあなたのお考え方は、非常に一般に与える影響が大きいからというお考えだと思いますが、たとえば当委員会委員長の宣言によって秘密会等に移した場合、それではあなたが今日まで調査されたことを秘密会で発表する御意思がありますか。
  47. 山下正雄

    山下(正)政府委員 少くとも船の技術に関しておりまして、私ども責任を持ってお答えできる範囲においてはお答え申し上げたいと思います。
  48. 正木清

    正木委員 私は運輸大臣にお尋ねをしたいのですが、あなたがまだ出席しない前に、小山委員からも私からも質問の中で出されたのは、三月二十八日の朝日新聞に、運航注意書を無視した結果こういう間違いが起きたのだ、一口に言うとこう報道されておるわけです。その報道されておる内容は、徳島地検が二十日から三日間にわたって実地検証の結果を二十七日に発表しているのです。その内容を一口に申し上げますと、避難当時は貨物とお客と燃料を合せてわずかに十一トン余、本来ならば満載時は二十八トン積まなければならないものを十一トンしか積んでいないで、荒天を乗り切ろうとしたところに問題があるのだ、こう発表しているのです。そこでこれが問題になりまして、三月の六日の私の質問に対しても、その中間検査をした結果、復原性の問題でバラストを十五トン積むことを注意した——ところがバラストが積んでなかったという新聞記事を見た記憶があるのです。これは私も実は失った新聞記事で、記憶で非常に残念ですが、それで今質問してみると、そのバラストが果して十五トン積んであるのかないのか、船の中へ泥が入ったからわからぬ、こういう答弁なんです。そこでこれは、運輸省が大臣の名をもってどなたかを派遣して、徳島地検調査した結果を、これは相当詳細に聞かしていただくことができると思うのです。これは秘密事項でありませんから、徳島地検調査した結果、どこにほんとうに欠陥があったか、十一トンしか積んでないという、その十一トンとの推定はどういうものか、本来からいうと、二十八トン積まなければならないものを、十一トンしか積んでないところに原因があったというようなことは、私は大臣の名をもって徳島地検に係官を派遣して、徳島地検調査の結果をさらに調査させることはできると思うのです。そういう親切なお考えがないかどうか。私は遺族の人々も国民も、一体なぜ沈没したのだろうかという、この疑問を一時も早く解きたいという気持で一ぱいだと思うのです。私などは非常に今度のこの船のことについては、何だか心の中で申しわけないという気持で一ぱいなんです。だからきょうのこの委員会等についても、私の方から委員長にお願いして、特に中間報告を求めているのです。原因がわからぬですから、そういう処置をおとりになるお心持がないかどうか、運輸大臣に私は聞いておきたい。
  49. 中村三之丞

    ○中村国務大臣 今の新聞記事は私も読みました。そこで果してその地検の検事でありますか、そういうことを、言ったのかどうか、これについていろいろございまして、参議院の運輸委員会では委員の方々の中には、海難審判しないうちに、そういうことを言ってはどうかというような意見もございますが、運輸省では次官が法務省にこういうことを言ったのかどうかということを確めておるはずであります。私は事原因に関する問題でございますから、一応確めてみることを考えております。そしてこれは海難審判庁の審判を待つまでもなく、私どもはあらゆる方面から調べたことをここで公開で御報告する、これは私は考えております。それでございますから、私はここへ報告したと思うのでございますが、海上保安庁の須田部長を派遣いたしました。私は読売新聞であの人の意見を見て、君がそういう意見新聞に発行なさるならばいらっしゃいというので、私は派遣いたしました。私はこの報告をある程度聞いたのでございますが、委員会には言わなかったかどうか、これはもし機会があったら私は報告するようにさせます。もとよりあの人の見たところは、海上保安庁のいろいろの方面の情報、ことにあの当時には運隆丸とか喜志丸とか、あるいは大きな貨物船も通っておる。そういうものについても海上保安庁は調べておるはずでございます。それでございますから、これをもって決定的だという御判断はどうかしていただかないことにして、一つの見方であるというふうにしてお聞き取り下さいますならば、私はこの次にでも、今でも須田部長を呼んで、あの人のまじめな報告でございますから、これは皆さまに申し上げてよろしい、同時にまたわか丸検査をいたしました結果、皆さまにも書類を差し上げておる、私はこういうことは最終的には海難審判庁の審判に待つべきものと思います。しかしながら運輸省として各方面で調べたことを、御批判を受けてもかまいません、御報告申し上げて、お互いが検討する、皆さまも検討して、われわれも検討している。これは今お話のように秘密会を待つまでもなく公開的に、こういう見方もある、そういういろいろな見方を総合すれば、そこに真理があるのではないかとも私も思いますから、これはいつまでも御報告申し上げていくことは、私どもはやりたいと思っておりますが、今の徳島のは、これは私も新聞記事だけであります。もう一つどこかの技術課長が何かしゃべっている記事を見ましたが、これも私は読みましたが、いずれにいたしましても、そういう意味でごらんを願い、またお聞き下さいますならば、いつでも私は須田君から報告をさすことは手続いたします。
  50. 正木清

    正木委員 私はこれて質問を終りますが、委員長にお願いしたいのですが、今大臣のおっしゃったこと、そういうものを総合的に委員長の方で整理下さいまして、そうしてまた現地に行って調査された方その他もございましょうし、それから今の政府委員答弁では、秘密会に移していただけば、技術的な問題については自分たち責任ある調査をしたのだから発表するとおっしゃるのですから、そういう適宜な方法を委員長のお考えによって、とっていただきたいということをお願して私の質問を終ります。
  51. 赤澤正道

    赤澤委員長 善処いたします。
  52. 小山亮

    小山(亮)委員 さっき正木委員質問に対して船舶局長答弁された中に、バラストは袋か俵に入れた砂なんかだから、それから水に沈んでから後に、船外から侵入してきた水とまじって、そうしてその砂が流れたからわからない、こういうことを言われたが、バラストに砂をお積みになりますか。私の常識では船内に積むのには砂を避けますがね。これは排水する必要がありますから、砂が入っておったらパイプが詰まってしまって、ビルジが入ったものを、ビルジを排除するときに、その中に砂が入っておっては、ポンプが詰まって困るので、砂が入られることは、船では一番困るのですよ。従って砂は積まない。石は積みますよ、鉄材は積みますが、それもきれいに洗って、砂がつかないようにして積むのが常識ですが、あなたは砂を積めという命令をなさったのですか、それを伺いたい。
  53. 山下正雄

    山下(正)政府委員 砂は間違いでございまして、小石を詰めたのでございます。
  54. 小山亮

    小山(亮)委員 私はこれは大臣にほんとうは伺いたいことですが、事は専門ですから、大臣に質問することは無理だと思うから、大臣は冷静な立場で聞いておいていただきたい。いつか中村運輸大臣が言われましたように、戦前において海軍の駆逐艦が沖縄において沈没したことがある。それから朝鮮沖において沈没したことがある。いやしくも駆逐艦が風や波のためにひっくり返ったということは、もってのほかだということで、議会はこの問題を非常に強く取り上げた。復原力の問題、復原力を無視してまで小さな船にいろいろな大砲や何かを積まなければならぬくらいに、つまり日本では船の保有量を制限されたために、その船の上に思い切った武装をしなければならぬという無理を冒した。それがために非常に頭の重い船を作った。つまり重心が非常に高いところにあって、わずかに限界を越えて傾斜すれば復原力がないようなものをこしらえまして、それが大きな問題になったが、この事件はちょうどそれと同じなんです。つまりこの船を見ますと、今まであなた方の方から出していただいたデータを見ますと、四百四十五人ぐらいの定員を乗せる船は大体六百トンです。そのほか同じようなものを見ましても、四百九十五トンの船に四百四十五人という定員を乗せている船は一つもありません。これはずいぶん無理をして人を乗せようと思って作った船なんです。それからまたこんなに小さな船で速力が十三半なんという高速力を持っているのは、これは無理です。だからこれだけの速力を出させるためにはこの青写真を見てもわかります通りに、非常に船がやせてしまって、肥瘠係数が〇・五〇というのですから、非常に細いものです。ですからしりがほっそりとしたもので頭がでかい大きな重い船なんです。だからさっき私が言いましたように、全体の重量の中心である重心点が船の上甲板の上にある。これはあなた方の報告書によりますと、KGが三メーター六三二になっていて船の深さが三メーター六ですから、上甲板の上にあるわけですね。限界を越えてかしげばもう戻りっこはないわけなんですよ。それから限界傾斜角というのを私はあなたに質問したら、四十度とかおっしゃったが、これはほんとうですか。このわか丸限界傾斜角は何度でしょうか。試験なすったからおわかりなんでしょう。
  55. 山下正雄

    山下(正)政府委員 藤野検査官からお答えいたさせます。
  56. 藤野淳

    藤野説明員 ただいまわか丸資料を本日持って参りませんでしたけれども、同型船の南海丸について申し上げますと、バラストを搭載いたしました後の復原性範囲は、四十七度から五十七度の範囲内でございます。これは満載入港から空船出港までになっております。先ほど傾むと十五度でデッキのラインを水が越すという小山先生のお話でございますが、これはまさにそうでございます。十五度内外で水線がデッキを越えることになりますが、デッキ・スカッパーはサイトに出ておりますので、船底に導いたのかもしれませんので、船はなおずっと傾きまして、計算上はデッキ・ハウスの角窓の下縁までは水密になるように構造してございます。ただし旅客室の出入口、あるいは倉口すなわちハッチでございますが、これらは全部水密に閉鎖できるようになっておりますので、閉鎖してありました場合には、角窓の下縁までが海水の流入角というのが計算でございます。それが大体三十八度から四十四、五度だったと思いますが、大体そういう範囲でございます。
  57. 小山亮

    小山(亮)委員 このブルー・プリント、これはごらんになればわかりますが、この船が十五度かしぎますと、このブルーワークの下にくるのです。四十五度かしぎましたらプロメネード甲板に水がかぶってしまう。その次にこの中が水密であればこれは沈まないとおっしゃるのですが、潜水艦じゃないのですから、暴風雨が来て水の中へもぐるなんということは、この船の連中は夢にも思ってはいませんよ。それがいきなりぐっとかしいだときにはこれはもとへ戻りっこないです。水が入ってきたら水密ドアなんか外からぶち割って入ってきてしまいますよ。そうでなければこの船が沈むわけがないのですよ。どうして沈んだと思いますか。ぐっといきなりいってしまって、そしてこのブルーワークから水が入り込んだ。合間がおおいになっておって全部サイドが鉄板で張ってあるのですから、その中へ入った水がすぐはけないからぐっと押していって沈んでしまったのです。それしか考えられないでしょう。ごらんなさい、水を飲んで死んだ人がないのですからショック死でしょう。水を飲まない間にぐっと深いところへ入ってしまって、ショックで死んでおるというところを見ましても、この船がいきなりぐっといってもろに沈んでしまったということ以外には考えられないでしょう。これはあなた方は死んでみなければわからないとおっしゃればそれまでですけれども、死んでみないでも大ていこれでわかるでしょう。だれが考えたってそうでしょう。おそらく船のことに関係している日本じゅうの人がだれもショック死でこうなったのだ、これは一ぺんにいったな、それにはこの船体構造上に重大な欠陥があるとだれも思わぬ者はありませんよ。それは船長も不注意だとか、船員が不注意だということもありましょう。それは戸を締めるべきところも締めなかった、それは水密にすべきところを水密の手当をしなかったということもありましょう。だから沈むのは当りまえだという理屈は立ちませんよ、客船ですからね。軍艦であるとか、潜水艦であるというならあなた方の理屈は成り立つが、そこにお客が乗っている、その部屋にいきなり波が来てぐっと大傾斜をしようなんということは夢にも思っていませんよ。  私はこの船がいかに脆弱な船かということを、あなた方の調査された調査資料から一つずつ伺いますよ。あなた方は傾斜試験をおやりになったでしょう。傾斜試験をおやりになると、上甲板で二十人、下甲板——船の中の三等室で二十人、それがこの船の片舷にずっと一ぺんに寄った、それで試験した結果、最初が九度、二度目が十一・九度ですから約十二度ですね。それから今度十度でしょう。それから横ゆれが七度で、九・四五度ですから平均して九・七五度かしぐですね。四十人がずっとこっちへ行ったらそうかしぐでしょう。それは間違いありませんか。
  58. 山下正雄

    山下(正)政府委員 今の船の傾斜の問題でございますが、そう簡単に船はかしぐわけではございませんので、笛に合せてこの周期になるように、笛が大きく鳴るたびに何べんも行ったり来たりやるわけでございます。ちょうど池にたらいを浮べて足でたいらいの両側を交互にふんばるように、人があっちへ行ったりこっちへ行ったり、笛に合せてやっておるわけでございます。従いまして周期をはかりますためには角度が大きくなりませんと、はかりにくいものですから、そういうような操作を何べんもやりまして、そのときにそれだけの傾斜ができて、それから周期をはかり始めたというわけです。
  59. 小山亮

    小山(亮)委員 まことに御親切な御説明でありがたく思いますが、なるほどこの船はいかりを入れておって、あるいはブイにつないでおいて停止中に試験した、しかし沈んだのは風の荒い波の上なんです。しかも突風がきて非常にゆれておるときなんです。ほっておいてもゆれるのです。そこへ四十人がこっちへかしいだらどのくらいかしぐか、もっと私はその反動がひどいと思う。ただそうした試験の結果おやりになって、四十人があっちへ移動しこっちへ移動しやると、九・七五度ゆれるということはお認めになりますか。試験の結果だし、あなたの出した資料に書いてあるのだから、認めないというわけにはいかないでしょう。
  60. 山下正雄

    山下(正)政府委員 その角度まで傾斜ができるように移動させたわけでございます。
  61. 小山亮

    小山(亮)委員 今度はこの船が全速力で走ったときに、一番大きくかじをとると普通三十五度までいきますね。ところが三十五度はどういうわけか書いてないのだ。三十度までしか出ていません。三十度まで出たとき、この大かじをとったときの船の傾斜が七度幾つになっていますね。そうしますと三十五度ですと、八度から九度まで傾斜があるでしょう。お認めになりますか。
  62. 山下正雄

    山下(正)政府委員 首席からお答えいたさせます。
  63. 藤野淳

    藤野説明員 先般のわか丸試験におきまして、三十度かじをとりました場合に七度半ばかり傾いておりますが、これは計器ではかりました傾斜角でございまして、計器自体の遠心力による修正はいたしておりませんので、一度内外のマイナスの修正をしなくちゃならぬかと思いますので、七度以下になるのではないかと考えております。
  64. 小山亮

    小山(亮)委員 だんだんこれはおもしろくなってくる。あなた方の方はさっき正木君が言われたように、ざっくばらんに問題を聞かしてくれと言っても、なるべく船の構造がよかったように答弁しよう、なるべく小さく言い、聞かれないことは答えないように答えないように、何か隠そう隠そうとしているような感じが、そうじゃないだろうけれども、私たちはする。何も責任がない、規定に合っているものを作ったのだから、一つもあなた方の方で責任がない、こういう強い信念のもとに御答弁なさるのなら、何でそんなにものをこそこそ隠したような答弁をされなくちゃならぬのですか。堂々とお答えになったらいいじゃないか。三十五度の試験はおやりにならなかったのか。十度、十五度、二十度、三十度までの試験をやったのは出ていますが、三十五度はやらなかったのですか。
  65. 藤野淳

    藤野説明員 三十五度はいたしておりません。
  66. 小山亮

    小山(亮)委員 どうして三十五度をやらなかったのですか。面かじ取りかじ、ぐっと一ぱいやって三十五度までくるのが普通でしょう。面かじ一ぱい、取りかじ一ばいというのが普遍の船で使用する号令ですよ。それが一ぱいでなくて五度減らせなんというかじのとり方はないですよ。
  67. 藤野淳

    藤野説明員 船長が本船は三十五度のかじはとったことはないと申しますので、三十度にとどめたのであります。
  68. 小山亮

    小山(亮)委員 船がとったことがないからやらなかった。しかしこの船の構造が三十五度はとれないのですか。
  69. 藤野淳

    藤野説明員 とれるようになっていると思います。
  70. 小山亮

    小山(亮)委員 とれるようになっているなら、十度、二十度、三十度までやったら、三十五度という最大の舷角までおとりになるのが普通のやり方じゃないでしょうか。私は船にいた経験があるのですが、普通の言葉でスターボードとかポートとかいいますね。歌にもあるでしょう、取りかじ一ぱい、面かじ一ぱいとかいってかじをとるわけですよ。それを面かじ一ぱいじゃいけない、五度減らせ、そんなことを船長が言うのはおかしいじゃないですか。そこでとまって動かないのなら別ですがね。もし船長が三十五度をやったことがないと言うなら、なぜあなた方がやってごらんにならないのですか。船長がやらなかったと言うなら、なおさらやってみたらどうですか。やらなかったのはどういうわけですか。
  71. 藤野淳

    藤野説明員 とってもよろしかったのでございますけれども、実はZ航行試験というのをやりまして、Z航行試験で大体操舵性能がわかるという学者の説でございましたので、Z航行試験の上に旋回試験をやったのでございまして、とてもよかったのでございますけれども、データーの整理上……。
  72. 小山亮

    小山(亮)委員 お役人さんというものがそういうものかどうか知りませんが、せっかく当委員会からも嘱望されて、国家の貴重な金をもらって、時間をとっておいでになった——何分から何分までしか検査しちゃいけないという規定があれば、時間の都合でできなかったということはありますが、十分に検査してこいという使命を帯びておいでになったのに、十分検査をしないということになると、しなかった人は責任をとらなければなりますまいが、その点はどうですか。
  73. 藤野淳

    藤野説明員 そうおっしゃいますと、三十五度の試験をしなかったのは手落ちであったと考えます。
  74. 小山亮

    小山(亮)委員 そうしますと、波があってゆれるときに四十人片一方のサイドへ移動する。そうしてかじを大かじに三十度——あなた三十五度までとらぬで三十度、そうすると七度かしぐでしょう。人が移動すると約十度、それで十七度になりますね。そういうことが偶然にこれが一致する場合が考えられませんか。しかも四百四十五人も乗る船ですから、その中の四十人くらいがあっちへ行きこっちへ行くということはあり得るでしょう。これが汽車や飛行機の腰かけのようになっていれば動かないかもしれぬ。しかし船で、しかも観光船で定位置にすわり切りでいるということは無理でしょう。お客はどうしたって甲板に出て景色を見物し、魚なんかいれば、おもしろがって片一方へ寄って見ますよ。そうでしょう。そうすると四百四十五人も乗る船ですから、四十人どころじゃありませんよ。五十人も六十人も片一方のサイドへ寄るということがないとは言えぬでしょう。そういうときにはずっとかしぎますね。私の経験では、十五度かしぎますと、船内のいすが全部向うへすべって飛んでしまいます。ことにこの船は大ぜいの者を乗せるようにしてあるために、三等船室が畳になっておりますから、十五度もかしぎますと、ずっとこっちへ寄せられてしまう。そういうことがあるのですよ、あるどころではない、あなた方も経験されたことがあると思う。そうしますと、この船はやはり作るときから考えなければならない船ではなかったか。この船の三等船客の部屋の中を見ますと、大体まん中に通路が仕切ってありません。これは二等の部屋にはついているが、三等の部屋には通路はついていない。わか丸も今度どう改装されたか知りませんが、三等だけはまん中に通路がない。二等はまん中にレールがあって、こちらのものは向うまでいきませんが、まん中におったものはサドイドまで行きますね。この仕切りがないと、全都右舷のものは左舷へ行ってしまう。そうするとさらにまた傾斜がひどくなるでしょう、そういう点はお考えになりませんか。
  75. 藤野淳

    藤野説明員 最初かじをとると七度半傾く、その上に四十人の人が移動しますと十度くらいとおっしゃいましたが、そういう同調のような状態が起りますと、あるいはそういうことになるかもしれませんけれども最初御説明申し上げましたように、十度近い動揺は、非常な傾斜状態におきまして、同調週期で人を何回往復させて動揺を多くさせた場合にできましたものでありますから、簡単にはそう相ならぬと思いますけれども、後ほどおっしゃいましたような何十人の人が一度に片舷に動くというようなことがあるといたしまして、それがちょうど波と同調するということがかりに起るといたしますと、どの程度傾くかということは、勘定の結果出てくるのではないかと思います。それ以上は、いろいろ勘定をいたしてみませんと、何度くらい傾くかということははっきりいたしません。それから客室の中に縦に通路がなかったらどうとかいうような話がございましたが、二等室は通路はございますけれども、三等は通路はございません。ただし中央部に階段の相当長いものがございますので、遮断をされているようなところがところどころにございまするので、全面的に広がったものはそう長くはないと考えております。
  76. 小山亮

    小山(亮)委員 あなた方は船をごらんになっているのでしょう。私は船を見ないのですよ。見ないのだけれども、この図面をよく研究して私は知っているのです。この船などは一ぺんも見たこともないが、つまり下甲板船内の前方は三等船室です。そこにはところどころに柱が立っておって、スタンションがあるだけです。まん中に通路はございません。そこに一番多く客が乗るのです。それから船内の後部の三等船室、これも柱だけでまん中に仕切りがなくて広い畳です。そこも一番人が乗るところです。ですからそこの一番よけい乗るお客が船が動揺した場合に、船の中におって右左に移動するのです。それからもう一つ、あなたは今この傾斜した角度は、人が何回も何回もやってはかった最大のゆれの角度だと言われた、それはそれでよろしい。しかしこの船が沈没した当時の状況はどうか、南東の風が吹きつけている。そうして波も南東からの波を受けている。それを横に受けて船が走らなければならぬ状態ですよ。南東の風、しかも突風で二十メートル以上というのでしょう。この船を見ますと、私が説明するまでもないでしょう。水中面積と風圧面積の比はばかに違うじゃないですか。風を受けて押し倒される面積はばかに大きくて、水の中に入っておってこれを防ぐ力というものはきわめてわずかでしょう。重心上甲板の上にある船で、風が横から吹いている、それに伴って波が来る、それを船体が受ける、だから相当かしぐ、だからそれの操舵をやっておる間に船がかしいで、一ゆれ大きな波浪が来れば、中にいるお客はぐっと反対側に移動しますよ。それはあり得ることです。そう思いませんか。あなたがはかられたのは、検査のときに書いてある通り、ほんとうに静かな風が吹いて静かな波の上にいかりをおろして、港の中で船をとめておいて、そこではかったのでしょう。しかしこの船が遭難して沈没したときの状態というものは、相当の風があり、相当の波があったと見なければなりますまい。そのときに頭の重い船の、普通でない状態のときの動揺の仕方というものを考えなければなりますまい。私が今動揺の度合いが九度、七度と言ったのや、あるいは船が全速力で走って大かじをとったときに船が七度も八度もぐっとかしぐ。——あなた七度も八度もかしいでごらんなさい、気持が悪いものですよ。われわれだってそうですよ。七度も八度もぐっと一ぺんにかしがれたら、一通りでない不安を感じますよ。それがそういうような不安定の船だからこそ、あそこの人たちは、船が沈む前にあの船はばかにゆれる。——ゆれるといってもぐらぐらゆれるのじゃなくて、ぐっと気持悪くやられるのをいうのです。ですからわか丸もあんなにゆれる船だから、あの船には乗れないということを言っているのでしょう。これは天は人をもってこういうことを言わせるのです。だれ言うとなくこの船は構造がよろしくないということを言っておった。またもう一つ申しますと、新しくできましたときにあなた方は、大ぜいの者が上甲板に上っちゃいかぬ、遊歩甲板に上っちゃいかぬということを注意書きに書いてある。それから大きなかじをとつちゃいかぬから注意せよ、そうして下のタンクには水を張らなければならない、バラストは十五トンとって、下のタンクにはアフター・ピーク二十三トン、フォア・ピーク十一トンの水を積んで、それでなければ走っちゃいかぬぞということを指令しておる。しかし沈没した現状においてフォア・ピーク十一トンの水はどれくらいありましたか、あるいはアフターピーク二十三トンの水はどれくらい残っておりましたか、お調べになりましたか。それから十五トンの石バラストはわからないにしても、今のウオーター・バラストはあなたごらんになっているはずだ。あるいは油がどれくらい残っておるかということもごらんになっておるはずだ。油は流れてしまってわからないと言うならそれでよろしい。しかしあなた方注意書きをなさったと言うが、大きなかじをとつちょいけないなんて、こんな乱暴なことはございませんよ。船を操縦するのに、面かじ一ぱい、取りかじ一ぱいとっちゃいけない、そんなばから船がありますか。船が右にも左にも方向を変えられるのに、一々びくびくしていなければ船の操縦ができない、そんなことで船長に責任をおっかぶせたら、船長は何百人あったって足りませんよ。かじは思うままにとれないし、お客は上甲板には上つちゃいけないなんて、そんな客の乗っちゃいけない甲板なんかなぜ作らせるのですか。瀬戸内海なんかでは、観光船ですから、中におれと言うことは無理ですよ。景色のいいときは——あるいは少しくらい景色が悪くても、水にぬれても付近の風光をながめたいものです。上甲板に出るのが当りまえなのです。それを上の甲板に出ちゃいけない、ことに遊歩甲板まで作ってあって、遊歩甲板にも大ぜい出ちゃいけないなんて、どうしてそんな甲板を作ることをお許しになるのですか。甲板がなければ出はしませんよ。出なければ安心じゃありませんか。大かじをとっちゃいけないといっても、大かじが思うように十分とれなくて船の安全が保てますか。そんな不自由な船は工学者のデスクの上では動くかもしれませんが、船を操縦する者がかじを自由にとれない船なんというのに安全を保証しろという、そんなことは無理です。どうですか、これは初めから無理じゃないですか。
  77. 山下正雄

    山下(正)政府委員 今かじを大きくとる問題の御質問が出ておりますが、もちろん普通の場合においてかじをとることは一向支障ございませんけれども、この船が非常な風浪の影響があるときに大きなかじを引くということは、やはり船長の常識を、越えたことじゃないかと思います。また甲板に人が多く乗るなという問題がございますが、風浪の場合に遊歩甲板に出て風の吹くのを見ておるという人はありません。天気のいいときはある程度遊歩甲板に出て付近をながめるということもあるかと思ます。従いましてそれらの状況に応じまして、船長がしかるべく適宜な処置をしなければいけない。飛行機におきましても御承知のようにあらゆる場合において、大きなかじを引いて安全だとは限りません。やはり天候状況、気象の状況等に応じまして、機長が技術的な見地からかじを適当に引くなり、また高度をとるなり、いろいろの操作をやると同じように、船におきましても、あらゆる船があらゆる場合においてあらゆる操作をやっても安全だということにはならないと思います。その点非常に抗弁するようでまことに申しわけございませんが、そういうものではなかろうかと私は思います。
  78. 小山亮

    小山(亮)委員 あなたは船舶局長としてそんなことをおっしゃったら、大へんな責任ですよ。船はおよそ海上にある間は、あらゆる場合に安全でなくちゃならないのですよ。あらゆる場合に安全な船を作らなければならない。絶対に沈まない船を作らなければいけないのですよ。それがあなた方の役目ですよ。海軍だってそうです。絶対に沈まない軍艦を作れというので苦心して、不沈戦艦というものを作ってきたのですよ。商船もそうです。どんな場合だって必ず安全であるという船を作るのが当然ですよ。あなた方の教わった先生の山県さんに聞いてごらんなさい。それは大笑いですよ。そうしてまた風が吹いたときやしけたときに大かじをとってはいけない、そんなことはありませんよ。ふだんこそ船は大かじをとらなくてもやっていけるのです。非常事態に遭遇したときに大かじでなければ、船は危険を切り抜けられませんよ。これはもう大波が来てかじが持たないときには、しょっちゅう両方にフルに回しておりますよ。四時間で交代するかじとりを三十分ごとに交代させてやるというような非常事態にやるのです。それは波があり、風があり、あるいは霧があり、そのしけの中に波風に吹きつけられて、そうして先も見えなくなった大しけのときに、向うの方に何か怪しいものが見えたというようなときには、ぐっと大かじをとりますよ。とらなければぶつかってしまうのですから。船と船とが衝突するような場合もありますよ。そのときに大かじをとらなければ、どうして船の安全が保てますか。あなたはとんでもないことを言う。船舶局長がそんなばかを言って今の日本の船が作れますか。今日の造船技術というものはそんなものじゃありませんよ。どんな暴風雨に遭遇しても、沈まない確信を持っておる船を作らなければいけないのです。それをあなたはいつもかじを大きくとっちゃいけないとか、風が吹いたときやしけたときに大きなかじをとるということはあり得ないなんということは、だれがそんなことをきめたのですか。また普通の場合だってそうですよ。私は鳴門海峡なんか十二、三回通ったことがあります。あの渦の中を突っ切るときには、面かじ、取りかじ両方とも一ぱいでなければ船は動かないのですよ。そんなでたらめなことをこの委員会で言っちゃいけませんよ。知らぬ者がおるところならいい。中学校や青年団に行って話すならそれでもけっこうでしょうけれども、ここへ来てそんなことを言うなんて何ですか。沈まない船を作らなければだめですよ。沈むような船を作っていいのですか。計画造船や何かであなた方は計画していろいろな世話をしておいでになるが、国家の貴重な金を借りて作る船は、絶対に沈まない船を作らなければいけない。この点どう考えているのですか。そんなばかな話はない。取り消しなさい。
  79. 山下正雄

    山下(正)政府委員 発言があらゆる場合を網羅するような表現であったかもしれませんけれども、やはり波の状況によりまして大かじをとる場合もありますし、またとってはいけない場合もあるのではなかろうかと思います。ことに南海丸の件につきましては、波の状態、風の状態等が非常に異常な状態であった。実は先般も申されましたように、須田水路部長さんの御報告を聞いたわけでありますが、当時の状況としましては、波高が八メートルないし十メートルぐらいあったであろう、そして風も三十メートル以上の風が突風的には吹いたであろうということが推定をされております。このような状態において、しかも先ほど船の引き揚げました現状につきましてデータが出ておりますように、エンジンがどうもとまったやに存ぜられる向きもございます。このような状態におきまして、しかもかじ左舷に六度とってあるというような状態等を考えますと、専門家であられる小山先生に申し上げる必要はないと思いますけれどもかじを初めに左舷にとった場合には、やはり船の頭が左舷に少し沈みます。その次にエンジン力で反対側にかしぐわけでございますが、そういうような状態等から考えました場合に、私どもとしましても先般もこの委員会で申しましたように、まことに申しわけないことでございますけれども、ほんとうに実に意外な感じがしておるわけであります。その点われわれも技術的に見まして、もう少し十分いろいろの点を研究してその結論を出しませんと、そう軽率に私どもがこれこれであったからこうだということを申し上げるのには早いのじゃないかというような気がいたしておるわけでございます。まことにお言葉を返すようで申しわけございませんが、もう少し事件の其相を私ども見きわめまして、しかし現実には船が沈んだわけでございまするから、先般も申し上げましたように僚船のわか丸につきましては、不沈船の問題について相当程度改善をいたしておるわけであります。どうか一つその点御了承願いたいと思います。
  80. 小山亮

    小山(亮)委員 船舶局長、あなたは言葉を返すようで申しわけないというような、そんなことは言う必要はない。私の方はあなたに言ってもらわなければならぬ。質問しておりますから言葉を返すのは当りまえで、黙っておられたら困る。そんな変なことを断わる必要はないと思う。ただ問題は、今機関をとめておると言われた。これは大かじをとってはいけない場合に、機関エンジンを使って回す場合があるのです。この船は私の見たところによると、船首の方面が風圧面積がばかに大きいので、たとえば右舷から風をどんどん受けているときに右舷に向けて船を回すことは困難だ。どうしても左舷に落される。かじではなかなかきかない。そのときに右回りのスクリューを持っている船は、逆にかける。そうして船を波に向ける場合がある。船を風に立てる場合ですよ。横から風を受けて、どうしても風下へ風下へと落されて進路が保てない場合には、一たん風に向けて踟躊する場合がある。波浪を避ける場合がある。そのときには波が強烈であると風圧のために船首が押えられて、かじだけでは船が言うことを聞かなくなり、浪のためにスクリューもから回りをしてしまう。それがためにどうしても風に対して船が立てられない場合は、右旋暗車であると、それを逆に左旋させると波をたたくでしょう。そうするとそれで船首を風に向けるということがあり得るのですよ。だからただ単に機関がとまったから、これはそれで沈没したとかなんとかいうことは言われないし、だから船体の構造がよかったにもかかわらず沈没したのだというようなことにはなりませんよ。ただそのときの臨機の措置として、船長がどういう気持でこのエンジンをとめようとしたか、あるいはかじをどういうふうに取り直そうとしたかということはわかりませんが、しかしその当時の状況において、船の風圧面積は船首の方が、ブリッジや何かが前にありますために、船尾よりも船首の方がぐっと押されてしまって、船が風に立たないということはわかる。従ってその場合に船長として沼島の方に行ったのは、沼島の陰に避難泊地を求めようとして島の方に近づいて行ったものだと思う。しかしその方に向け変えようとした瞬間に、船はどうしても風に頭をたたかれて、船の進路を右の方に持っていくことができない。やむを得ず機関の全速力後退を命じて、あるいは半速後退かもしれませんが、それを命じて船の頭を立てようとする。その場合に全速前進から全速後退にはすぐかかれないから、一度ストップしなければいけない。停止して全速後退をやる。これに機械をいじっている者はだれでもわかっていることですから、その場合にその瞬間の動揺と波とによって一ぺんに船が転覆したのではないかと、これは推測ですが、私たちには考えられる。  しかしいずれにしてもその場合に船というものは、絶対安全な構造でなければなりませんよ。あなたの言われるように、船は沈むこともあり得るのだというようなことで軽視されたのでは大へんで、絶対船は沈没しないという確信のもとに、そういう船をあなた方の方で作らせなければならぬ。なかなか南海丸なんか欲の深い作り方ですよ。さっきも言いましたように、四百九十五トンのトン数の船は四百四十五人、一トンに一人というような割合で乗せようというのですから、これはもうけということだけを専門に考えて、安全ということを忘れたのではないかと思う。その際にややもすれば金をもうける事業家は金もうけに夢中になって、足元を見ない場合があり得る。そのときにちょっと待てといって、それじゃ安全性を保てないからこうやれと言われるのがあなた方の役じゃないでしょうか。それをこしらえてしまって、それを検査してみたが、こしらえたものをこわすわけにはかぬ、それじゃ前方のタンクに水を積め、うしろのタンクにまた水を積め、バラストを十五トン積め、十五トンでも足らぬければもっと積め。それならば検査なんか要らぬじゃないですか。あなた方はこの設計書を作る前に審査なさったのですか。なぜ作る前に審査されたのならば、そんな安全性のない船を作らせなければいいじゃないですか。あなた方から見れば、私は造船の面においてはしろうとですが、それでもこんな船は、私は見たとたんにこいつはひどい船だと思いますね。それをあなた方はお作りになる前に、図面でもって許可申請をしてきた場合に、造船技術の優秀なといって誇っているところのあなた方の局の人たちが、これをごらんになって、これでよろしいといって作らせたのでしょう。そうしてそれを作った結果、やってみてこれはいけない。試験した結果これは頭が重過ぎていけないからというので、タンクに両方に水を積め、そうしてバラストも十五トン下に積め、こういうことになる。それならばそのときからもっとバラストを積めばいいわけです。そうでしょう。わか丸を今度はあなた方検査された結果、四十トンバラストをふやすことにした。そうしますと船尾の二十三トン、船首の十一トンと石バラスト十五トンとそれにプラス四十トンということになりますと八十九トン、約九十トンのバラストを今度わか丸に積むわけです。そうでしょう、計算が出ているから間違いがない。四百四十五トンの船にバラストだけを九十トン近く積むということは、これは私はまだ聞いたことがない。非常なものですよ、これは。その船を最初からそんな不経済な船を作らないように、あなた方の方に書面で設計書を出して申請した場合に、そのときあなた方がごらんにならないで造船所まかせにしておったから、こうなったのじゃないかと私は思うのですがね、どうでしょう。この点は、まあ造船所の技師や何かも学校の関係であなた方の先輩や後輩や同僚がおって、まあというようなことを言えば、そうか貴様が設計したのか、それならばまあそのくらいでよかろうというくらいのことでやっているのじゃないでしょうか。それだったら私はやはりいけないと思う。これはやはり見るものは厳重に見て、——おい一つ頼むぞ、そうか、というようなこともそれはあり得るですよ、信頼している者は。しかしもう少しほんとうに安全ということを考えて、権威のある検査や許可をおやりになるというのでなければならぬと思うのですが、どうでしょうか。
  81. 山下正雄

    山下(正)政府委員 私どもそういうようなケースが、実は製造許可の問題にからんで注意しなければならぬことは相当あるのじゃないかと考えているわけでございます。と申しまするのは、五百トン以上の船につきましては製造許可を出しておるわけでございまするが、それ以下の船につきましては実は臨時船舶建造調整法におきまして、実は許可を要しない、業者は届けだけでいいということになっております。その点に今後の検査の大きなポイントがあるのじゃないかと私どもは考えておるわけであります。しかしこの船の製造規模につきましては、法律に基いた事項でございますので、これは今直ちにというわけにはいきませんが、少くとも行政的な措置によりましてそういう事態が起きないようにいたしたいと考えております。たとえば一つの定期航路に、または不定期航路に客船を作られる場合に、当然その話は地方の海軍局または本省の海運局の方に御相談がございましょうし、そのときに船舶局または地方の船舶部がそれぞれの運航の方の部と十分密接な連絡をとりまして、製造許可の有無に関せず、そういう客船につきましては事前に十分連絡をとらせまして、図面等の審査をして、運航の面とまた造船の面と十分考え合せまして、先生の仰せのように安全の点についても十分な考慮を払って、その上でその定期航路を認めるなり、またその客船の建造を認めるというような行政指導を、今後十分行なっていきたいと考えているわけでございます。この南海丸につきましては三級船で、そういうようなことで、だからもうそれでいいというものではなくして、やはり一応復原性の基準からは調査はいたし、検査もいたしている。先般も申しましたように復原性の規定の適用外の船でございましたけれども、それに復原性の規定をアダプトいたしまして、十分検査もしたというようないきさつもございまして、決してなおざりにしているというような意味ではございませんが、異常な事態であったことも事実でございましょうし、また私どもといたしましてもこの復原性の基準そのものにつきまして、いろいろの面から検討を加えたいと考えて、今後それらの船の建造について十分注意をいたすつもりでいるのであります。
  82. 小山亮

    小山(亮)委員 船舶局長は、これは五百トン以下の船で三級船である関係上、検査をしなかったというような意味のことを言われたが、私はこの問題が起きました一番最初質問に、五百トン以下の船であって三級船であっても、どうして検査をしなかったかと言ったところが、あなたの答弁は、南海丸は五百トン以下の船であっても、三級船であってもわれわれは検査をした、それから事前に書類の検査もした、もちろん人が乗る船である以上は、あなた方の役所では必ずその検査をするのだということを言われた。五百トン以下であってもするのだということを言われた。それは速記録にあります。あなたが、ないと言われるならお目にかけましょう。ここの点は私はそれをあらかじ最初にそういう答弁をするかと思ったから、そこを聞いた。ところがあなたはこれは検査をしたということをはっきり言われた。だからおそらくわか丸もされたのでしょう。そうすればあなたが今言われる通り、これからあらためてそういう行政指導をするとおっしゃるが、それは今までやっておってこんな船ができてしまえば、やっても何にもならないということじゃないですか、どうですか。
  83. 山下正雄

    山下(正)政府委員 もちろん南海丸、またわか丸等につきましては、図面の審査、製造中の検査はいたしております。このケースを除きましてさらに一般的に申しますると、法律の建前としてはそういうことになっておりますので、今後とも十分一つそういう点については抜かりのないようにやっていきたいということを申し上げたつもりであります。
  84. 小山亮

    小山(亮)委員 さらにあなたがこの船の復原性についての注意書をお出しになっている船が十数隻ありますね。それは事前に審査をされ、そうして検査をされ、許可されたのですか。その十数隻も。
  85. 山下正雄

    山下(正)政府委員 注意書を出しているそれらの船につきましては、検査の過程におきましてやっているわけでございます。従って復原性の基準そのものの実施がおそかったこともございますし、それらの船がいろいろの船がございますが、実施以前にすでに着手して竣工している船もございましょうし、もちろん今後新しく作るものにつきましては、当然事前にそういう審査を十分いたしてやるわけでございます。従っていろいろ船がございまするから、それが一々どんなケースに当っておったか今申し上げられませんが、今後につきましては製造に着手します前に、復原性の点について十分一つ確かめてから仕事を進め、また検査をしていくというふうにいたしたいと思います。
  86. 小山亮

    小山(亮)委員 そうしますとわか丸南海丸だけに検査を事前にされた、審査もされた、しかしほかの船はやらなかった、こういうことですか。そうするとわか丸ができましてから南海丸ができるまで一カ年、その間に一、二隻できておりますが、それは審査をされたのですか、されないのですか。
  87. 山下正雄

    山下(正)政府委員 大きな船につきましては、造船所等からあらかじめ製造図面等を提出いたしまして、検査の申請のときにわれわれはそれを調査する機会があるわけでございます。そのほかの船につきましてはどういう状態であったか、今ここで直ちに申し上げられませんが、しっかりした造船所でやっておる向きにつきましては、多分同じような手続を踏んでおるのじゃなかろうかと思います。ただし私どもが今心配しておりますのは、もっと小さい船とか、または能力が小さい造船所、技術的に見て低いレベルにある造船所等がこういう客船を作ります場合に、現状のままでおいては、こういうような事態がまた起き得る可能性ありというふうな感じもいたしております。従いまして先ほど申し上げましたように行政措置によりまして製造許可の要らない船につきましても、あらかじめ建造に着手する前に図面審査を十分やるというふうにいたしたいと考えております。
  88. 小山亮

    小山(亮)委員 どうして私がこの質問をするかといいますと、大体五百トン以下の船は本省の方の手にかかわらないのですよ、審査しなくていいわけになっていますから。そこで出先の海運局の手で検査官に連絡しましてそれで船を作るのですが、この間のいわゆる神武景気なんという時代に、船がほしいときに、なかなか作る方もずるくて、規格はずれの、薄いブリキみたいな鉄板で——ブリキはひどいけれども非常に薄い鉄板で、規格にないのですからどんな薄い鉄板でもいいわけですから、それで作って、エンジンなんかは解体のために取りはずしたエンジンを据え込んで、補機も主機も中古のものを使用して、外観だけは新規のように見せた、五百トンといいながら、でき上ってしまったときには六百トンにも七百トンにもなってしまった実例があるのですよ、瀬戸内海の小さな造船所では。検査官の方ではこれはけしからぬ、規格にはずれているじゃないかと言うと、まあまあというようなことで、どういうことか知らぬが大目に見さしてしまうのですね。そういうものがたくさんございまして、現に私の方に名前がございますが、三十七、八隻あります。あなたの方でそれの名前がお入り用だというなら、いつでもお目にかける用意を持っております。それだから私はこれを言うので、やはり五百トン以下の船でも原則として検査された方がよくないのか。ただ役人がそこに入ると、とかくうるさいことを言って仕事にじゃまになるようなことをやられると困るのだが、そうでない意味で、ほんとうの安全性を確保するという意味で、五百トン以下の船でも、しかもことにお客を乗せる船は全部あなた方の方がごらんになるように、法規がもしそれになければそういうふうに改正なすったらどうか。あるいは南海丸わか丸も、この報告書にありますように、わか丸を再検査したところが船舶の安全法にも復原性の規則にも一つも違反しておらぬ、その点においてはもう原則通りの船だということをまず前提としてこれを調べられた結果、やはり不備と見られたのでしょうか、あるいはさらにもっと大事をとられたのか。四十トンのバラストを載せる、計約七十九トンですから八十トン近いバラストを四百八十八トンの船に、そのうちの何分の一ですか、五分の一ですか、六分の一以上ですね。それはバラストを積むのですから全然役に立たない。全然何の経済的効果のないものを載せる。それがためにむだなものを積んで船が動くのですから、燃料から何からもうむだなことをうんとやる。そういうようなことをすることは、何か法規に不備があるのではないでしょうか。今までの法規ではまだ足らぬのではないですか。何かもう少し法規を完全にする必要がありはしないかと私は思うのですが、それはどうですか。
  89. 山下正雄

    山下(正)政府委員 船の検査の問題でございますが、三十メートル以上の船につきましては、船の製造過程につきまして、一々検査を受けなければならぬ義務がございます。従いまして検査がなしで船が建造されるということはございません。  それから第二段のバラストの件でございますが、もちろん船にはいろいろな種類がございまして、この一々の構造その他を規定の上できめるということは、なかなか困難な問題ではなかろうかと思います。従いまして、私どもとしましては設計の初期の段階におきまして工場側の船の要目並びに構造、艤装等を十分調査し、また資料を出させまして、その復原性の規定の上にこれを当てはめまして、それで総合的にその船の復原性が規定に合格しておるかどうか十分確かめることによりまして、所期の目的が達せられるのではないかと考えております。もちろん先ほど私が申し上げましたように復原性そのものについては、私どもとしては航路とかいろいろな点から十分に研究を今後進める。進めたあとの規定に今の工場から出たいろいろなデータを入れて、その上でいいか悪いかの判定をしたらどうかと考えておるわけであります。
  90. 小山亮

    小山(亮)委員 いろいろ御説明をなさるが、説明をされればされるほどこの船の設計が不備だったということを、かえってあなた方が立証されておるような気がするのです。わか丸藤野さんがごらんになって改修を命ぜられたかどうか知りませんが、まずわか丸の後部の三等船客のところの上甲板から遊歩甲板までの間はすっかりめくらで、鉄板を張って、そこに予備浮力を作ろうとするのでしょう。それは四百八十八トンの船に八十トン近くもバラストがあれば、足がそれだけ入れば、ともの方の喫水はうんと中に入りますから、どうしても予備浮力を相当のものを作らなければならないことになります。これは私どもわかりますよ。ですから初めからこれは無理で、初めからそういうようなことをやってはいけないと思ってやらなかったのか、初めは気がつかなかったのかということになるのですよ。もう一つは、これをやって、後部の船内の三等船客の部屋の船窓、丸いスカッツルをみななくなすのでしょう。そしてその丸窓を上に持ってこられるわけでしょう。閉じた上に丸窓を持ってこられる。そうすると船内の後部の三等船客室はまっ暗になってしまうわけだ。あかりをつければよいとおっしゃるけれども、瀬戸内海を航行する観光船が、窓のないようなまつ暗なところにお客を入れる。私はやはり通風と光線のエリアがあると思う。部屋の中の光線のエリアが一人当り幾らというものがあると思う。やかましいものだと思うのですが、それはどうするのですか。これは倉庫にしてしまって、荷物でも積むのか、やはり人間を入れるのか、人間を入れれば採光のエリアをどうするか、これは人ごとですが、また問題が起ってくると思うのです。私が今ここで黙っていても、これはまた必ず改造してから、お客をまっ暗いところへ入れやがって、牢屋じゃあるまいし、穴ぐらみたいなところに入れて、通風と採光のエリアをどうするのだという小言が出ることでしょう。これはちゃんと規則できまっていることで、人間が居住する規則はやかましいですからね。荷物じゃないから、それをどういうふうに解決されるか、それを伺いたい。
  91. 藤野淳

    藤野説明員 窓の点でございますが、動的復原力が規定以上余裕のある船をよく調べてみますと、上甲板下の客室に窓のない船が非常に多うございまして、あそこの窓は今回計画の喫水は越えませんけれども、ラストを積みまして常時相当深く船足が入りますので、水面上あまり高くないところに位置いたしまして、安全性ということを考えますと、物に触れて窓がどうとかなるというような危険も考えられないものではございませんので、窓を廃止した方が望ましいということではずしたわけでございますが、その反面、上甲板下の三等室は自然採光がなくなりまして、もっぱら人工照明にたよるというふうになりまして、かりに夜間航行などをいたします場合には、非常電源が発動しない限りは、停電の場合には暗くなるということは考えられますけれども、まず短距離でありますし、電気の照明にたよって窓の安全性ということと、バランスをとりまして、その辺今後研究を要すると思いますけれども、まず安全性ということを考えまして、御指摘の点はがまんするということにいたしたのであります。
  92. 小山亮

    小山(亮)委員 これ以上やめますが、安全ということなら全部鉄板で張ってしまって、窓を一つもあけない方が絶対安全ですよ。ですけれども、これは観光船ですから、観光客を乗せるという目的でやる船ですから、まっ暗なところへ、潜水艦みたいなところに入って、お前は短かい距離だからがまんしろ、夜は電気があるじゃないかということになったら、これではちょっとお客が気の毒だと思うのですよ。それからこれは非常に苦しいからこういうふうなことをおやりになったと思うのですが、どんなに改造しても頭の重い船であることだけは事実です。それからこの速力に比較して船がこれだけのお客を乗せて小さ過ぎることも事実です。人のことですからどうでもいいようなものの、全面的に改造すれば、上甲板のレールの上のあいているところ、これをみんなふさいでしまって丸窓にする、全部ふさいでしまえば、船をまん中から切断して何メートルか伸長するということは可能ですね。現在のままでは計算上これを伸長する余地はありませんが、この上甲板の上のプロムナード・デッキとの間のあきをすっかり鉄板で張って、これを大きい丸窓にすれば、ぐっと広げて六百トンないし六百五十トンくらいの船になると思うのです。一番まん中の広いところを広げれば、速力があまり変らないで、むしろこの会社が採算のとれる船になるのじゃないかと私は思うのです。これは会社がやることで委員会の議題とは別ですが、無理してあなたが苦しまぎれにおやりになって、こうやくばりのような改造をおやりになると、また新らしい問題が起ると私は思うのです。これは質問外ですから参考にして下さい。  それからもう一つ、役人はあつものにこりてなますを吹くということをよくやるのです。たとえば第五北川丸の事件が起った、定員以上乗せては大へんだというので、警官が瀬戸内海のお客の乗るところに立っていて、お前のところは幾人乗っちゃいかぬということをやって、一時あの付近の小さい汽船会社は悲鳴をあげたことがあります。だから設備規程によってきめられたところの乗客の数と実際に乗れるお客というものを考えて、ほんとうに実際に当てはまった定員というものを運輸省がおきめにならなければならない。これは旅客課の方ですね。定期船の方ですか、そっちの方が考えられてしかるべきで、もう考えておいでになるだろうと思いますが、それともう一つ、あまりしゃくし定木に、こんな事件があったからといって何でもかんでも取り締るというようなことをやって、迷惑を他に及ぼすようなことがあっては困る。だからなるべく常識的にやってもらいたい。たとえば新聞にありましたが、文部省のおしょろ丸、今度日蝕の観測に南洋に行くというところが、今度こういう事件があったからあなたの方が検査して、これはもういかぬ、船も小さい、乗客の設備もないし、救命設備もないからということをおっしゃるが、外洋に出まして南洋に行くくらい楽な航路はございません。南洋のあの島々の中に入ったら、このくらい波のない楽な航海はないのですよ。そういうところへ行く場合に、それは規則によっては許されないこともあるでしょうが、それに千五百万とか二千万とか金をかけて、相当に設備を改良して何とかかんとかやっていけるような程度にまできたら、おしょろ丸でも観測に行って差しつかえないというふうにはならないものでしょうか。現状のままではいかぬが何か改良すればいい、しかし大改造して今言ったようにまん中からぶち切って、両方足せということを言ったってだめだが、そうではなくて何とかこれが学術研究のために役立つようにする、それにはあなた方が考えて規則の一ぱいにこれを見てやって、安全性というものが——行くところが最も安全なところですから、荒波を越えて行くのだったらだめですが、最も安全なころに行くのですから、使うところの実情に沿うて、何とかこれに対する対策を講じてやるというようなことはなし得ないものですかどうか。もしできるならばおしょろ丸の性能というものについてちょっと聞かせていただきたい。
  93. 藤野淳

    藤野説明員 おしょろ丸につきましては、船舶の安全法の取扱い上、試験、指導船も含めまして漁船というのとそうでない一般の船との取扱いをはっきり分けておりますので、漁船の活動範囲も航行区域ということではなくて、御承知のように第何種漁船、おしょろ丸は第三種漁船という業種で取締りをいたしておりますので、これをほぼ同じぐらいの大きさの一般の船に比べますと、非常な安全上の較差があるわけでございます。漁船に対しては船員で最も熟練した非常にりっぱなシーマンが乗っておりますので安全に対する人間的な施設は非常に条件がいいわけでございますが、そうでない一般船にありましてシーマンでないお客を乗せます場合には、よほど注意いたしませんと一般船との取扱いに較差を生じるという不都合がございますので、なお今後研究しなければならぬ問題だと思いますが、表面的にはそういう問題が出て参るわけであります。
  94. 小山亮

    小山(亮)委員 おしょろ丸について金のない文部省が弱っておるらしいのですが、一つ規則を破ってやってくれというようなことを言うのではないのですが、規則の上から見て、しかもまたそれに対してあなた方の方で専門的な立場から、多少の改修を加えるというところで行けるというようになりましたら、なるべくこういうことは行けるようにしてやっていただきたいというのが私の希望なんです。これはお答えは要りませんから、運輸大臣もこの点はとくとお考え願いたい。  なおきょうは大蔵大臣あるいは主計局長の出席を願って、海運に対する大蔵省の考え方を——海運に対する知識が非常に希薄だというふうに思うものですから、来ていただいて、各関係の方々から実情も聞いていただいて、大蔵大臣に十分理解してもらいたいと思ったのですけれども、きょうは出られないそうですから、日を改めて大蔵大臣の出席を願って、大蔵大臣に対するわれわれの最後の要求をしたい、こう思います。きょうはおられませんので、これで質問をやめます。大ぜいおいで下さいましてまことに申しわけないが、質問はこの次にしますから……。
  95. 赤澤正道

    赤澤委員長 本日はこの程度にいたし、次会は明日午前十時より開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後五時二十一分散会