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小山(亮)
委員 船舶局長、あなたは言葉を返すようで申しわけないというような、そんなことは言う必要はない。私の方はあなたに言ってもらわなければならぬ。
質問しておりますから言葉を返すのは当りまえで、黙っておられたら困る。そんな変なことを断わる必要はないと思う。ただ問題は、今
機関をとめておると言われた。これは大
かじをとってはいけない場合に、
機関で
エンジンを使って回す場合があるのです。この船は私の見たところによると、船首の方面が風圧面積がばかに大きいので、たとえば右舷から風をどんどん受けているときに右舷に向けて船を回すことは困難だ。どうしても
左舷に落される。
かじではなかなかきかない。そのときに右回りのスクリューを持っている船は、逆にかける。そうして船を波に向ける場合がある。船を風に立てる場合ですよ。横から風を受けて、どうしても風下へ風下へと落されて進路が保てない場合には、一たん風に向けて踟躊する場合がある。波浪を避ける場合がある。そのときには波が強烈であると風圧のために船首が押えられて、
かじだけでは船が言うことを聞かなくなり、浪のためにスクリューもから回りをしてしまう。それがためにどうしても風に対して船が立てられない場合は、右旋暗車であると、それを逆に左旋させると波をたたくでしょう。そうするとそれで船首を風に向けるということがあり得るのですよ。だからただ単に
機関がとまったから、これはそれで
沈没したとかなんとかいうことは言われないし、だから
船体の構造がよかったにもかかわらず
沈没したのだというようなことにはなりませんよ。ただそのときの臨機の措置として、船長がどういう気持でこの
エンジンをとめようとしたか、あるいは
かじをどういうふうに取り直そうとしたかということはわかりませんが、しかしその当時の
状況において、船の風圧面積は船首の方が、ブリッジや何かが前にありますために、船尾よりも船首の方がぐっと押されてしまって、船が風に立たないということはわかる。従ってその場合に船長として沼島の方に行ったのは、沼島の陰に避難泊地を求めようとして島の方に近づいて行ったものだと思う。しかしその方に向け変えようとした瞬間に、船はどうしても風に頭をたたかれて、船の進路を右の方に持っていくことができない。やむを得ず
機関の全速力後退を命じて、あるいは半速後退かもしれませんが、それを命じて船の頭を立てようとする。その場合に全速前進から全速後退にはすぐかかれないから、一度
ストップしなければいけない。停止して全速後退をやる。これに機械をいじっている者はだれでもわかっていることですから、その場合にその瞬間の動揺と波とによって一ぺんに船が転覆したのではないかと、これは
推測ですが、私
たちには考えられる。
しかしいずれにしてもその場合に船というものは、絶対安全な構造でなければなりませんよ。あなたの言われるように、船は沈むこともあり得るのだというようなことで軽視されたのでは大へんで、絶対船は
沈没しないという確信のもとに、そういう船をあなた方の方で作らせなければならぬ。なかなか
南海丸なんか欲の深い作り方ですよ。さっきも言いましたように、四百九十五トンのトン数の船は四百四十五人、一トンに一人というような割合で乗せようというのですから、これはもうけということだけを
専門に考えて、安全ということを忘れたのではないかと思う。その際にややもすれば金をもうける事業家は金もうけに夢中になって、足元を見ない場合があり得る。そのときにちょっと待てといって、それじゃ安全性を保てないからこうやれと言われるのがあなた方の役じゃないでしょうか。それをこしらえてしまって、それを
検査してみたが、こしらえたものをこわすわけにはかぬ、それじゃ前方のタンクに水を積め、うしろのタンクにまた水を積め、
バラストを十五トン積め、十五トンでも足らぬければもっと積め。それならば
検査なんか要らぬじゃないですか。あなた方はこの設計書を作る前に
審査なさったのですか。なぜ作る前に
審査されたのならば、そんな安全性のない船を作らせなければいいじゃないですか。あなた方から見れば、私は造船の面においてはしろうとですが、それでもこんな船は、私は見たとたんにこいつはひどい船だと思いますね。それをあなた方はお作りになる前に、図面でもって許可申請をしてきた場合に、造船技術の優秀なといって誇っているところのあなた方の局の
人たちが、これを
ごらんになって、これでよろしいといって作らせたのでしょう。そうしてそれを作った結果、やってみてこれはいけない。
試験した結果これは頭が重過ぎていけないからというので、タンクに両方に水を積め、そうして
バラストも十五トン下に積め、こういうことになる。それならばそのときからもっと
バラストを積めばいいわけです。そうでしょう。
わか丸を今度はあなた方
検査された結果、四十トン
バラストをふやすことにした。そうしますと船尾の二十三トン、船首の十一トンと石
バラスト十五トンとそれにプラス四十トンということになりますと八十九トン、約九十トンの
バラストを今度
わか丸に積むわけです。そうでしょう、
計算が出ているから間違いがない。四百四十五トンの船に
バラストだけを九十トン近く積むということは、これは私はまだ聞いたことがない。非常なものですよ、これは。その船を
最初からそんな不経済な船を作らないように、あなた方の方に書面で設計書を出して申請した場合に、そのときあなた方が
ごらんにならないで造船所まかせにしておったから、こうなったのじゃないかと私は思うのですがね、どうでしょう。この点は、まあ造船所の技師や何かも学校の
関係であなた方の先輩や後輩や同僚がおって、まあというようなことを言えば、そうか貴様が設計したのか、それならばまあそのくらいでよかろうというくらいのことでやっているのじゃないでしょうか。それだったら私はやはりいけないと思う。これはやはり見るものは厳重に見て、——おい一つ頼むぞ、そうか、というようなこともそれはあり得るですよ、信頼している者は。しかしもう少しほんとうに安全ということを考えて、権威のある
検査や許可をおやりになるというのでなければならぬと思うのですが、どうでしょうか。