○小山(亮)
委員 ただいまの質問に関連しましてお伺いしたいと思います。
南極を探検するということはよほどむずかしいことなんです。普通の船が行かれるところに行くのじゃないので、船の絶対行かれないと考えられるようなところに行くのでありますから、困難なことは当然なんです。またそのたびに必ず成功するものであるというふうに安価に考えるならば、
南極探検なんということは大事業じゃないのです。何回行っても、必ず
最後にその
目的を果す、非常な努力をもってこれを遂行するというところに、私はこの大きな事業というものがいかに価値のあるものかということが、これによって定められると思うので、安価に出かけていって、必ず
南極に行って帰れるというようなものじゃないと私は思う。だから、失敗するのが当りまえであって、成功するということは非常に僥幸である。ことに、私は率直に申しますと、
世界の
各国が用意して
南極探検に向けております船の装備あるいはその準備というものから比較して、
日本があの古い
宗谷丸を改造いたしまして、そうしてあの小さな船であれだけの装備で
南極探検に出かけていくことすら、私たちは実に冒険だと思っている。それを直ちにそのまま成功して帰るというように安価に考えたならば、これは大きな間違いで、
南極探検という事業そのものの本質を知らないのだと私は思うのです。その点からいきまして、二月一日に離岸ということをもし固持するならば、この
南極の最小限度の越冬もできなくなるだろうというようなことも言われております。もとより二月一日というのは一つの限界であって、
南極の天候といえ
ども天候でありますから、必ずしも毎年々々同じものであるとは言えないのです。二月一日が二月三日になるやら二月十日になるやらわかったものじゃない。要は
南極に行って、ほんとうに身を挺して探検に従事しておられる人々のその考え方によって、私は本部の態度も決定されるものだと思うのです。従って最悪の
事態が参りましても、これに対する万遺憾なき対策さえ講じてありさえすれば、私はそれで十分だと思う。もし天候がわれわれに幸いに味方をしてくれて、
目的を果すことができたなら、これに越した喜びはない。しかし私は失敗をしたところで、だから
当局が悪かったとか、あるいは
南極探検
隊員が悪かったなどということは、間違っても口に出すべきものじゃないと考えます。この点において、いろいろな立場においていろいろなことを言う人があるでありましょう。しかし私としては、どうか本部が十分なる
連絡をとって、そして
南極におられる人がその
目的を達成することができますように、できるだけの努力をしていただきたい。それが私の希望でありまして、今日
南極の事情がたとい
目的を果すことに非常に困難なような状態になりましても、私
どもは必ずしも悲観しておらない。
また、この際特に
当局に対して私がお願いしたいのは、とかく
宗谷丸の問題等に対しまする発表があまりに誇大に過ぎると私は思う。たとえば
プロペラの羽が一枚落ちたということが報道されますと、もう船がほとんど運航がとまってしまうように人々は騒ぎ立てる。二つスクリューがあるのでありますから、一つのスクリューが四枚ずつの羽を持っておる。その四枚の羽のうちの一枚が、船を
航海さしておりますと落ちるということはあり得る。あるいは水中に沈んでおるところの材木に打ち当るような場合、あるいは港の中で人の船の錨鎖にスクリューを打ち当てるような場合には、必ず羽が折れるのです。羽が折れたからといって、必ずしも速力が落ちるというものではない。四枚のうちの一枚折れた場合に、かえって速力が増すという場合もある。これは実際の理外の理なんです。実際において四枚のうちの二枚になった。二枚になってもまだ速力は変らなかったという実例があります。船に乗っておる者から見ましたら、船のスクリューが一枚折れたぐらい大したことではない。しかるにもかかわらず、スクリューが一枚折れたから何か船の速力が四分の一になったとか、船の
砕氷能力が六割に落ちたとか、非常に大きく伝えられる。それがため人は非常に心配するのです。そんなものではありません。実際に船というものはそんなものじゃないのでありますから、それを騒ぎ立てるということは、いかに海事思想というものを国民が知らないかということです。だから
当局は、こういうことに対してはもっと懇切に、そういう心配のないような発表をされるように留意されることを望みます。私は自分の考えとしましては、どんな難局に遭遇しましても、
目的を達成することができるように万全の努力を本部によって払っていただきたい。万一
目的を達成することができないようになりましても、万全を尽しさえすれば私は何にも遺憾に思うところはない、こう思うのであります。どうかその
意味において
当局は、いろいろな国民の杞憂を克服して、またいろいろな多少の非難もありましょう。その非難を克服して所期の
目的を達成するように、勇敢に
行動していただきたいことをお願いします。もしできるならこれに対するところの
長官の責任のある力ある御答弁をお願いしたい。