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1958-02-06 第28回国会 衆議院 運輸委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年二月六日(木曜日)     午前十時五十六分開議  出席委員    委員長 赤澤 正道君    理事 生田 宏一君 理事 畠山 鶴吉君    理事 濱野 清吾君 理事 井岡 大治君    理事 松尾トシ子君       有田 喜一君    伊藤 郷一君       小泉 純也君    關谷 勝利君       塚原 俊郎君    中嶋 太郎君       原 健三郎君    淵上房太郎君       池田 禎治君    小山  亮君       下平 正一君    田中織之進君       中居英太郎君    正木  清君       松原喜之次君    山口丈太郎君       眞鍋 儀十君  出席国務大臣         運 輸 大 臣 中村三之丞君  出席政府委員         運輸政務次官  木村 俊夫君         運輸事務官         (海軍局長)  粟澤 一男君         運 輸 技 官         (船舶局長)  山下 正雄君         運輸事務官         (船員局長)  森  嚴夫君         運輸事務官         (鉄道監督局         長)      權田 良彦君         海上保安庁長官 島居辰次郎君         気象庁長官   和達 清夫君  委員外出席者         運 輸 技 官         (船舶局首席船         舶検査官)   藤野  淳君         海上保安監         (船舶技術部         長)      水品 政雄君         海上保安監         (警備救難部         長)      松野 清秀君         運 輸 技 官         (気象庁予報部         長)      肥沼 寛一君         日本国有鉄道副         総裁      小倉 俊夫君         日本国有鉄道常         務理事     石井 昭正君         専  門  員 志鎌 一之君     ――――――――――――― 二月四日  委員河野金昇君辞任につき、その補欠として永  山忠則君が議長の指名で委員に選任された。     ――――――――――――― 一月三十一日  失業駐留軍要員によるタクシー事業免許認可に  関する請願伊東岩男紹介)(第六二九号)  県道大洲近永線国鉄バス運行に関する請願  (井谷正吉紹介)(第六三〇号)  智頭、上郡間鉄道敷設促進に関する請願(大村  清一君紹介)(第六三一号)  三陸沿岸縦貫鉄道予定線調査線編入に関する  請願小澤佐重喜紹介)(第六三二号)  只見線未開通区間開通促進に関する請願(八田  貞義君紹介)(第六三三号) の審査を本委員会に付託された。 二月一日  堺港を重要港湾指定に関する陳情書  (第一六六号)  観光施設整備拡充に関する陳情書  (第二一四号)  特定水域航行令の一部改正に関する陳情書外一  件(第二二一  号)  日本海沿岸港湾整備拡充に関する陳情書  (第二三三号)  国鉄輸送力強化に関する陳情書  (第二三四号)  南九州地方気象観測用レーダー設置に関する  陳情書  (第二三七号)  三江鉄道敷設促進に関する陳情書  (第二三九号)  国鉄内子線伊予大州駅に接続変更に関する陳  情書(第  二四〇号)  海難事故防止のための監督強化等に関する陳情  書(第二四  一号) を本委員会参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  南極観測船宗谷運航状況等に関する説明聴取  日本国有鉄道経営等に関する件  青函連絡航路における浮流機雷の問題に関する  説明聴取  南海丸遭難事件に関する件      ――――◇―――――
  2. 赤澤正道

    赤澤委員長 これより会議を開きます。  この際お諮りいたします。前国会の開会中陸運及び観光に関する調査のため、関西方面委員を派遣いたしたのでありますが、その調査報告書委員長の手元に提出されております。これを会議録に掲載をいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり]
  3. 赤澤正道

    赤澤委員長 それではさよう決定いたします。     —————————————
  4. 赤澤正道

    赤澤委員長 次に南極観測船宗谷運航状況等について、当局より説明を聴取いたします。島居海上保安庁長官
  5. 島居辰次郎

    島居政府委員 宗谷行動につきましては日夜皆様方にいろいろ御心配をかけておりますので、本日は宗谷行動あらましと今後の見通しというようなことにつきまして、御説明させていただきたいと思います。  前回のときに現地を二月十五日に離岸いたしまして、帰る途中でひっかかった苦い経験がありますので、本年はそういうことのないようにというので、大体二月の初旬に現地を離脱するように、従って東京の方も十八日ばかり早く出発いたしまして、十月の二十一日に東京を出航いたしたのであります。その後予定通り順調に参りまして、十二月二十一日極地のエンダービー・ランドクローズ岬の沖に到着いたしました。これから大陸に沿いまして西南方のコースをとり、ヘリコプターをもって進入水路調査を行いながら、リッツオホルム湾の方に接近していったのであります。そちらの方に宗谷航跡図がございますので、それをごらんいただけばけっこうかと思います。この間に飛行機を組み立てまして水路偵察に備えておったのであります。それからこの図面によりますと右の一番上の方に書いてございますが、二十三日の未明より氷盤が多少大きくなって航行はだんだん困難になってきましたが、ヘリコプターによる進入路偵察及び水路調査を続行しながら、氷盤の弱いところを選んで少しずつ前進していったのであります。そして二十六日に前方にビーバーの発着可能と思われるような海水面を発見いたしましたので、これに接近するように氷原に進入したのでございましたが、氷状が急激に変化いたしました。一進一退を余儀なくされまして、三十一日には強力なブリザートに襲われまして、その後はほとんど行動の自由を失いました。宗谷の全能力をあげ、また乗組員隊員の最善の努力にもかかわりませず、大氷原とともに西に西にと圧流されまして、一月三十一日までにその距離はざっと二百四十海里氷原とともに西に流されたのであります。この一問自力航行で行った距離は、わずかに四十海里であります。またしかし宗谷との連絡は、特に極地に着きましてからは密接な連絡をとりまして、毎日六時間ごとに航海状況報告をやらしておるのであります。ところがもうわずかばかりというところになりまして、この一月の三十一日に至りまして、氷状がやや好転いたしましたのでまた行動を開始いたしまして、最後のクラッシュということで、外洋に向けまして氷原離脱を強行したのでありますが、あいにく行動中、二月一日の午前五時三十分に、左舷のプロペラの羽が四枚ありますが、そのプロペラの四枚の羽の一つの羽が約四分の三ばかり折損いたしたのであります。これはちょっと乗組員にとってはショックではございますが、砕氷能力低下、つまり氷を推していくそういう推す力、推力につきましては、私の方の計算では二割程度減じたのでありますが、船が進む力、これにつきましてはそう大した低下もございませんので、多少はもちろん低下いたしましたが、大体十ノット程度は保持できると思っておるのであります。その後爆破作業も両舷のプロペラを使いまして懸命に行なっておりますが、氷原は依然として前進をはばんでおりまして、毎日少しずつ前進を続けておりますが、現在外海までには大体七海里くらいであります。七海里と申しますと、おわかりだと思いますが、参考のために申し上げますと、東京竹芝桟橋から観音崎までが二十五海里でございますので、その三分の一くらいであります。ですから、羽田の沖のちょっと向うというくらいに想像していただければけっこうだと思います。その七海里のうちでも、外洋に当ります二海里は、ヘリコプター調査いたしますと、その二海里は粗群氷でございまして、これはもちろん航行可能でございます。氷量が五または六程度でございます。結局それを除いた五海里というものが氷量九または十で、目下難航を続けていっております。それは航跡図でごらんいただきますと、一番左のところに最後の五日現在のところが書いてございますが、なお目下援助を依頼いたりました米国砕氷艦バートン・アイランド宗谷の現在位置から今東の方に七百三十海里離れたところに宗谷の方に向ってきておるのであります。  そこでちょっと横道になりますが、この砕氷艦をどうして選んだかということを申し上げますと、今年は南極の氷が非常に悪いのでございまして、よく外国のベテランが言っておりますように、三べんや四へん行ったって、とても南極というものはわかるものではないと言っておられる通りでありまして、一昨年も悪かったようでありますが、一昨年もアメリカの軍艦でさえ三隻もプロペラをとっております。去年は非常によかったのじゃないかと思うのでありますが、ことしは非常に悪くて、外国砕氷船も数隻氷に閉じ込められておるような次第であります。そこで私の方といたしましては、一月の八日ごろからだんだんその氷原を流れて行くので、いろいろ必配いたしまして、何とかして観測の使命を達成しなければならぬ、こういうふうな状況で、外国砕氷艦につきまして外務省を通じて調査を依頼しておったのでありますが、アメリカソ連、ノルウエー、ベルギー、オーストラリア、英国等でありますが、そのうちには、宗谷よりも能力の劣っているものでは役に立たないのでありまして、宗谷よりも能力のあるもので、しかもあのリッツオホルム湾になるべく近いもの、早く来れる艦という意味で、結局のところバートン・アイランドがそれに上ったわけであります、バートン・アイランド号は今のところでは明後日の八日の午前中くらいに現地に到達する予定でございますが、そのバートン・アイランド号が来る前に自力で出るかとも思うのであります。もし出まして、もと入りかけたところ、去年の十二月二十六日ごろの場所まで約二百五十海ぐらいございますが、そこまで帰るには宗谷が一時間十ノットで行けば大体一日の航程でございますので、帰れると思いますが、その帰る前に飛行機を飛ばしまして、そうして進入路とか、あるいはリッツオホルム湾の東の方の状況、またオングル島に海水面があるかどうか、現地からは海水面があると言ってきているようでありますが、もう一ぺんそれを確認いたしまして、そうして越冬隊をどの程度残すか、非常に悪い場合には観測もできなくなるのじゃなかろうか、その場合には、昭和基地に残っている十一人をビーバーに乗せて宗谷に収容する、こういうふうな段取りになるのでありますが、いずれにいたしましても宗谷外海へ出ないことには調査できませんので、そういういろいろな段取り外海へ出てからということになるのであります。もう二、三日のことでございますが、なるべく早く外海へ出てそういう段取りにいかなければ——去年のような状況でも二月十五日に出てひっかかったのでありますので、秋もどんどんきておりますので気ばかり急ぐわけでありますが、今のところではこういう段階にきているのであります。  参考までにそのバートン・アイランド能力を申し上げますと、排水量が六千五百十六トンでありまして、馬力は一万二千馬力砕氷能力は十二フィート、こういうことになっておりますので、宗谷よりも相当能力があるのでございます。  以上大体宗谷行動あらまし、今後の見通しについて申し述べさせていただいたわけであります。ありがとうございました。
  6. 赤澤正道

    赤澤委員長 質疑の通告があります。これを許します。山口委員
  7. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 私はただいまの宗谷行動について御説明を聞きましたが、簡単に二、三の点について質問をいたしたいと思います。  昨年来地球観測年観測に協力をいたしまして、わが国からも海鷹丸並びに宗谷の二船をこれに派遣いたしまして、昨年はおおむねその目的を達したのでありますが、しかし昨年の宗谷が閉じ込められましたときにも、実は私どもはきわめて不可解に思ったことがあるのでございます。それは何かといえば、海難であるとかあるいはその救助におもむく場合においては、いかなる国であろうとも最短距離にあるものが救助に向いますことは当然のことでありますが、昨年も宗谷が閉じ込められているにもかかわらず、最も近距離にありますソ連の船には援助を請わないで、最初アメリカ船援助を請うて、それが現地に到着するには非常に多くの日数を要する、しかも燃料の補給等のために一たん基地に引き上げてからにしなければならないというようなことで、やむを得ずソ連船救助を依頼した、実はこういうような醜態ともいえる行動を演じておるものと私どもは見ております。これはその政治形態がどうあろうとも、たといそれが共産圏の船であろうとも、そのこととこういう重要なことまでも混同してああいう醜態を演ずるようなことは、私はまことに不可解なことであると思うのです。本年のソ連船状況がどうあるのかは知りませんけれども宗谷が閉じ込められ、その行動がだんだん不如意になって参りまするや、この南極観測に従事しております者の家族からは、これに対して適切な救助方策を講じてもらいたいという悲痛な叫びもあげられたと報道せられております。しかるに政府のとった措置は、今申しますように、昨年醜態を演じたのと同じようにどうもあまりにも意地を張り過ぎて、せっかくの本観測の重要なときに当ってその行動の時期をみずから逸するような醜態を演じているのではないか。この点に関してどういう具体的な措置をとられたか。あまりにも意地っぱりといいますか、自分の面目を保持することにこだわって、家族にそのような不安、動揺を与え、悲痛な叫びを叫ばしめるに至っても、なおかつ世界物笑いになる結果に終るような措置をとったとすれば、政府は非常に重大な責任を感じなければならぬと思うのでありますが、私はこの点に関して運輸大臣並びに当局から具体的に承わりたい、かように思っております。
  8. 中村三之丞

    中村国務大臣 宗谷状況につきましてはただいま海上保安庁長官より御報告申し上げた通りであります。遅々として進まない点ははなはだ遺憾でございますが、しかし全然まだ目的を達せないというわけでもないのでございますから、今後は適切な処置をとりまして、世界物笑いにならないようにせねばならぬと思っております。
  9. 島居辰次郎

    島居政府委員 御説明いたします。去年とことしとの救援の依頼の状況は多少趣きを異にするのでございまして、去年のはある意味エマージェンシー緊急事態でございました。こういうものは御存じと思いますが、スリーX、それからSOSというもので船から直接の連絡をとるのが海運航海の常識でございます。去年は宗谷から直接にオビにずっと前から一日一回ずつ連絡をとっております。またグレイシャーとは反対側におりましたので、南極通信状況のいろいろな関係から連絡をとれませんので、宗谷から東京東京から米国米国から現地というふうな通信径路をとっておったのであります。そこで去年は宗谷から直接に船の方にいろいろの状況報告し、情報をとって救援を頼んだようなわけでございます。それが海運航海の場合にやる普通の措置でございます。ところが本年のはいわゆる航海におけるエマージェンシー事態ではまだないのでありますけれども、何とか観測を成就させるために一日でも早く氷海を脱出させよう、自力でもできるかもしれませんが、少しでも早く出ないことにはあとの日が少い、こういうようなことで現地と私の方とで連絡をとっております。そうしてその間先ほど申し上げましたように南極における各国砕氷船状況——どこにおるだろうか、その能力はどういうものだろうかということをいろいろ調査いたしたのでありまして、その具体的の例をあげますと、最も近いところには昭和基地の西の方約三百海里のところに今年新しくベルギーブライド湾というところに基地を作ったのであります。そこにベルギー砕氷船がおるのでありますが、これは二隻とも宗谷よりも能力がうんと小さく、簡単に言いますと五分の一程度でございます。そしてその二隻ともが氷に閉ざされておる、こういうような状況でございます。また東の方には、約六百マイルのところに豪州モーソン基地というのがございまして、ここにも約二千百トンばかりの砕氷船がおります。これは豪州が用船しておる船でございますが、これも宗谷よりも能力が小さいのでございます。それもまた氷に閉ざされておる、こういうような状況でございます。それから英国の方は別に南極には砕氷船をやってないという返事がきております。そこで宗谷よりも能力の大きいものと申しますと、大体アメリカグレイシャーとかあるいはその他の砕氷艦、それとオビ号。先ほど申しましたように、本年は非常に氷の状況が悪いので、各地で氷に閉ざされており、またグレイシャーは羽を少し折損してニュージーランドで修理中ということでございます。オビ号は初めはソ連から連絡がございませんでしたが、最近になって参りまして、それはずっとジョージ五世ランドの沖の方百五十海里のところにおる。そして目下ジョージ五世ランドに向け航行中であるが、その後石炭積み込みのためにニュージーランドに向っておる、こういうことをソ連から言ってきております。  この地図でごらんに入れた方がいいかと思うのでありますが、日本のポジション、昭和基地はここでございます。先ほど申しましたベルギーの三百海里西の方の基地はここでございます。ここに二隻閉ざされておる。アメリカの一隻もここで閉じ込められておる。それから東の方、ここにモーソン基地がありますが、ここは約六百マイル、ここにも豪州の船が閉ざされておる、今グレイシャーはこちらの方に行っておる。それからオビはこんなところにおるわけでございます。それからいまのバートン・アイランドはたまたまこの辺を貨物船を護送してこっちの方に来ておった、非常に近いところにおる。今現にこの辺に来ておりますが、非常に近いところにおりますので、ロス海とかいろいろあるでしょうが、こんなところではとても遠くて日数が大へんかかりますので、最も近いところで能力のあるものを選んだようなわけで、具体的に申し上げますと以上の通りであります。
  10. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 大体今の説明救助の困難が了解できました。しかし私が思いますのに、どうも当初の考え方は、昨年も外国船からの救助を受けたのであるが、本年もまたまた救助を受けるということは非常に面目ない、従って外国船との間に早期に連絡をとることをしないで、あくまでも自力でやるということにあまりにもこだわっていたために一そう時期を失してしまって、本観測要員基地への送り込みを困難にしてしまったのではないか、こういうふうに私は強く感ずるわけであります。もう少し早く打開の道を講ずる方法はなかったのか。またソ連からは何の連絡もなかったと言いますが、それはこちらから、ソ連だけではなく、積極的に各国砕氷船あるいはその砕氷船行動等について、たといそれがどのような国情である国でありましょうとも常に密接な連絡をとって、そして世界地球観測年の成果を上げるようにお互いに協力し合うということが、私は科学の進展のために日本が協力するゆえんであると思うのであります。なぜもっと早くからそういうような方法をとっていなかったのか、そういう状況についてどうも私は納得いきませんので、この点に関して御説明をいただきたいと思います。
  11. 島居辰次郎

    島居政府委員 科学的の観測でございますのでおっしゃる通りでございまして、そういうふうに国柄とかいうことには全然関係なく、もっぱら技術的な見地からいろいろな措置をやっているのでございます。そうして今のように現地との連絡は悪くなったからすぐにということはなかなかむずかしいので、相当の時日を要するからその見通しを言ってきてくれるようにということを、常に松本船長とは中央庁といたしましては連絡をとってやっていたのであります。そこで一月の八日が大体最初予定の接岸時期でございましたので、そのころからいろいろ外務省にも連絡してやっておったようなわけなんでありまして、結果的にはこういうことになりましたが、措置としていろいろやっていることにおいては相当前からやっておったと私たちは考えておるのでございます。
  12. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 今後の問題について私は長官にただしておきたいと思うのですが、御説明によりますと、ただいまのところでは近くアメリカの船が宗谷の閉じ込められておる現地に到着して氷海を脱する見込みがあるというのでありますが、今御報告になりました通り宗谷はすでに機能を相当程度減殺されている現状である。しかも南極はすでに内地でいえば夏を通り越して秋の気配に入っておる。こういうような中にありましてたとい宗谷が脱出をしたとしても、昭和基地に近づくことができないとすれば、一体本観測要員昭和基地に送るにはどういう方法をとられるのか、あるいは放棄されるつもりか。またもしそういう重大な時期に相なるという見通しがつくとすれば、一刻も早く予備観測隊員を救出する方法をまず第一に考えなければならないが、その方法、施策はどういう方策をとられるか、この点についてきわめて重大でありまするから、この際その計画を明らかにしていただきたいと思います。
  13. 島居辰次郎

    島居政府委員 宗谷はおそらく今の状況では自力で脱出するかとも思うのであります。わずかあと五海里でございます。しかし何といっても氷量九または十で、爆破作業を続けておりますが、なかなか困難でございます。あるいは出るかと思うのでありますが、万一明後日ぐらいまでに出られなくてバートン・アイランドが参りましたならば、向うの砕氷能力は先ほど申しましましたように十二フィートぐらいありますので、それは割ってくると思っております。そこで出ることはまず確実でありますが、外海に出ましたならば何といってもまず飛行機を飛ばしまして——去年も入って参りましたし、また今年も入っていこうとしておる東の方の進入路でございます。あの辺の海流というものが東から西へ流れておりますので、リッツォホルム湾氷原というものは西の方へずっと移動するわけであります。西の方にはクック岬がありますので、それで西の方の側は丁度クック岬氷原が当ってなかなか水路はできないのでありますが、東の方はそのすき間ができますのでよく割れ目ができるわけであります。そこで去年もそこを入っていったのでありますが、そこでまず飛行機を飛ばしてその進入路偵察するわけであります。そこで出てみなければわからないのでありますが、その進入路があればもちろんその進入路宗谷は入っていくという段取りになるわけであります。そこで時期もだいぶおそくなって参りましたので、宗谷能力でいかない場合はバートン・アイランド援助してもらってある程度のところまで入っていきたい、こういうように考えておるのであります。そしてできるだけ昭和基地の近くまで行ければ非常にけっこうでありますが、これは何ともわかりませんので、そのビーバーを飛ばした状況にもっぱらよるわけでありますが、もし昭和基地のなるべく近くに行けたら、雪上車昭和基地連絡をとってそれぞれ越冬隊を残す、こういう段取りになると思うのであります。しかしながらそういうのが全然だめな場合、バートン・アイランドもなかなか入っていけない、こういう非常に悪い状態の場合には、ビーバーでもって昭和基地付近偵察するわけです。これはフロートをつけていきますので、水面から水面に行かなければなりません。オングル島の近くには昭和基地からの連絡によりますと開水面が先般できた、こういう話でありますが、しかしながらもう一ぺんビーバーで現実に出たなら昭和基地付近を探しまして、開水面が依然としてあればその開水面におりて従事員の人たちを収容できる、こういうことになるわけであります。それから距離でございますが、昨年の十二月二十六日の位置ぐらいから昭和基地までは大体百二十海里ぐらいありますので、ビーバーにすれば約一時間の航程であります。それではオングル付近開水面ができておったけれども、万一もうなくなった、こういう場合においてはビーバーはおりるところがありませんので、これはそりをつげなければならぬかと思うのであります。そこで去年の現地状況また、経験からいきましても、昭和基地付近はそりでおりられるところはかなりあるわけであります。あるわけでありますが、今度は離陸する方面が大へんなことで、定着氷でございますと大体なだらかなんでありますが、定着氷でないと、ハンモッキングしておるような氷原では五百メートルも平坦なところを作るということは大へんなわけであります。ですからそういうふうなコートが悪い状態という場合は、バートン・アイランドヘリコプターの大型のシコルスキーを持っておりますので、これならいかなるところからもいかなるところへもおりられるものでありますから、これを利用して現地の人々を収容するということになる、こういういろいろの段階があるかと思います。こういうふうないろいろな場合を想像して、それぞれ対策を作っておる次第でございます。
  14. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 どうも私の質問に対して御説明はありましたけれども、それは説明程度でありまして、根本的な方策については何ら触れられておりません。今そういう根本的な方策について触れることは非常に重要なことであり、かつまたむずかしいことでもあるかもわかりません。しかし日一日と時期が経過をいたしまして、険悪な状態になっておる。しかも私どもの承知しておるところでは、南極の気候は急激に変化するものである。一たび時期を逸すれば、あるいは船もろとも越冬も考えられる、脱出不可能な状態に陥ることも考えられるというのであります。こういうようなときでありまするから、私は本部において、早く意思の統一をして、そして一刻も早く適切な指示を現地に伝達をして、そしてこの従事しておりまする隊員に万遺憾のない処置をとることが必要であるということを痛感するわけであります。当初申しましたように、すでに家族においてもきわめて悲痛な叫びをあげられているようであります。こういうときに当って、私は当局がもっと確固たる方策を示さない限り、不安は取り除くことができない、かように考えるわけであります。一体宗谷は脱出をした後に、今言われておりますような甘い考えで、さらにこの業務を遂行できると時期的に見てもお考えになるのですか。それとも脱出はするが、しかしもう本観測に当っては隊員を上陸させることは不可能である、従って隊員を引き揚げることに全力を注ぐとか、そういうような重点的な施策の考え方があるのかないのか、これはもちろん運輸省だけではございませんで、文部省の所管でもあり、文部大臣が隊長となっておるのでありますけれども、重要な任務を負っておりますのは——観測に関しての重要な任務は文部省が持っておるといたしましても、運輸省はその観測を遺憾なく遂行させるための輸送のいわゆる根本を握っておるのでありますから、この肝心な足の輸送の任に当るものが確固たる方策を持って臨まなければ、世界物笑いになり、日本の面目をつぶす結果になる、こういうふうに考えるわけでありますが、運輸大臣は一体これをどういうふうに考えておられるのか。今までに文部省に対しても、あるいは地球観測年関係機関に対してもどういうような協議をされ、あなたはどういう決意を持っているか、一つ伺っておきたいと思います。
  15. 中村三之丞

    中村国務大臣 私は今のところ海上保安庁長官報告を聞きまして、それによって海上保安庁長官に輸送の任務を果すように言っておるのでありまして、まだ最後の決意をするために各方面と折衝はいたしておりません。私は松本船長の技能とそれから今の報告、これを刻々聞いておる程度でございまして、随時適切な方策を講じて参りたいと思いまして、最悪の事態にならざるよう決心をいたしておるのでありまして、海上保安庁長官報告を今信じておる次第でございます。
  16. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 もう一点で私はあとに譲りますが、それでは大臣にお尋ねをいたします。新聞の報道等を基礎にする以外今まで方法がなかったわけでありますが、その報ずるところによりますと、一から十まで本部の指令通り行動しなければならぬ、そして現地の意見というものはあまり中央において尊重していないのではないか、最初のうちは。ところがどうも手も足も出ないために、今度は現地の船長の判断いうものを大きく取り入れるようになった、こういうことであります。そういうようなそのときどきまかせのことをやっていたのでは、こういう重要な業務を遂行することはできさないと思うのです。今後なお今までのように中央の指示を強く現地行動に反映さして制約しようとされるのか、それとも現地報告を主にして適切な方策を立てるとともに、現地の船に対して船長の判断によるように行動の自由を与えていこうとされるのか、また、今後これを完成させるためには、当初申しましたように、いわゆる政治的にあまりにも偏し過ぎたような考え方ではなく、広くこれに協力を要請して、この観測年の業務を完全に遂行しようとされるのか、そういうような点について運輸大臣のはっきりとした所信をこの際表明しておいていただきたい。
  17. 中村三之丞

    中村国務大臣 この目的を達成するということには極力努力をいたさなければなりません。そして現に松本船長のもとに船があるのでございまして、またその氷量氷状、こういうことにつきましては、船長が一番よく知っており、また船長も刻々報告をいたしております。従って船長の判断、報告東京の本部において牽制するとか干渉するというようなことはないのであります。現地東京とは連絡を密にして、一体となって行動をしておるように私は報告を受けておりますから、そういう点につきましては、今後とも一そう努力をいたして参りたいと考えております。
  18. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 私は最後の希望として、少くとももうすでに時期的に見ても決断をすべきときにきておると思うのであります。従ってこの時期に決断を誤まらないように、一つ早急に態度を明確にして、現地行動を移されるように希望いたしまして、あと小山委員の質問があるそうでありますから、私は質問を終ります。
  19. 赤澤正道

    赤澤委員長 小山委員
  20. 小山亮

    ○小山(亮)委員 ただいまの質問に関連しましてお伺いしたいと思います。  南極を探検するということはよほどむずかしいことなんです。普通の船が行かれるところに行くのじゃないので、船の絶対行かれないと考えられるようなところに行くのでありますから、困難なことは当然なんです。またそのたびに必ず成功するものであるというふうに安価に考えるならば、南極探検なんということは大事業じゃないのです。何回行っても、必ず最後にその目的を果す、非常な努力をもってこれを遂行するというところに、私はこの大きな事業というものがいかに価値のあるものかということが、これによって定められると思うので、安価に出かけていって、必ず南極に行って帰れるというようなものじゃないと私は思う。だから、失敗するのが当りまえであって、成功するということは非常に僥幸である。ことに、私は率直に申しますと、世界各国が用意して南極探検に向けております船の装備あるいはその準備というものから比較して、日本があの古い宗谷丸を改造いたしまして、そうしてあの小さな船であれだけの装備で南極探検に出かけていくことすら、私たちは実に冒険だと思っている。それを直ちにそのまま成功して帰るというように安価に考えたならば、これは大きな間違いで、南極探検という事業そのものの本質を知らないのだと私は思うのです。その点からいきまして、二月一日に離岸ということをもし固持するならば、この南極の最小限度の越冬もできなくなるだろうというようなことも言われております。もとより二月一日というのは一つの限界であって、南極の天候といえども天候でありますから、必ずしも毎年々々同じものであるとは言えないのです。二月一日が二月三日になるやら二月十日になるやらわかったものじゃない。要は南極に行って、ほんとうに身を挺して探検に従事しておられる人々のその考え方によって、私は本部の態度も決定されるものだと思うのです。従って最悪の事態が参りましても、これに対する万遺憾なき対策さえ講じてありさえすれば、私はそれで十分だと思う。もし天候がわれわれに幸いに味方をしてくれて、目的を果すことができたなら、これに越した喜びはない。しかし私は失敗をしたところで、だから当局が悪かったとか、あるいは南極探検隊員が悪かったなどということは、間違っても口に出すべきものじゃないと考えます。この点において、いろいろな立場においていろいろなことを言う人があるでありましょう。しかし私としては、どうか本部が十分なる連絡をとって、そして南極におられる人がその目的を達成することができますように、できるだけの努力をしていただきたい。それが私の希望でありまして、今日南極の事情がたとい目的を果すことに非常に困難なような状態になりましても、私どもは必ずしも悲観しておらない。  また、この際特に当局に対して私がお願いしたいのは、とかく宗谷丸の問題等に対しまする発表があまりに誇大に過ぎると私は思う。たとえばプロペラの羽が一枚落ちたということが報道されますと、もう船がほとんど運航がとまってしまうように人々は騒ぎ立てる。二つスクリューがあるのでありますから、一つのスクリューが四枚ずつの羽を持っておる。その四枚の羽のうちの一枚が、船を航海さしておりますと落ちるということはあり得る。あるいは水中に沈んでおるところの材木に打ち当るような場合、あるいは港の中で人の船の錨鎖にスクリューを打ち当てるような場合には、必ず羽が折れるのです。羽が折れたからといって、必ずしも速力が落ちるというものではない。四枚のうちの一枚折れた場合に、かえって速力が増すという場合もある。これは実際の理外の理なんです。実際において四枚のうちの二枚になった。二枚になってもまだ速力は変らなかったという実例があります。船に乗っておる者から見ましたら、船のスクリューが一枚折れたぐらい大したことではない。しかるにもかかわらず、スクリューが一枚折れたから何か船の速力が四分の一になったとか、船の砕氷能力が六割に落ちたとか、非常に大きく伝えられる。それがため人は非常に心配するのです。そんなものではありません。実際に船というものはそんなものじゃないのでありますから、それを騒ぎ立てるということは、いかに海事思想というものを国民が知らないかということです。だから当局は、こういうことに対してはもっと懇切に、そういう心配のないような発表をされるように留意されることを望みます。私は自分の考えとしましては、どんな難局に遭遇しましても、目的を達成することができるように万全の努力を本部によって払っていただきたい。万一目的を達成することができないようになりましても、万全を尽しさえすれば私は何にも遺憾に思うところはない、こう思うのであります。どうかその意味において当局は、いろいろな国民の杞憂を克服して、またいろいろな多少の非難もありましょう。その非難を克服して所期の目的を達成するように、勇敢に行動していただきたいことをお願いします。もしできるならこれに対するところの長官の責任のある力ある御答弁をお願いしたい。
  21. 島居辰次郎

    島居政府委員 小山先生のおっしゃる言々句々はほんとうに全くその通りでありまして、私の方から申し上げたいのでありますが、私の方から言うと手前みそになりますので、黙っていざるを得なかったのでありますが、ほんとうに南極というところはむずかしいところでございまして、ことに最近あの事件から聞いたのでありますが、ソ連でもアメリカでも南極へ行ったら無事に帰ってくれば成功だ、こういうのだから君たち元気でやれということを聞いたのであります。おそらく南極へ二十ぺんも何べんも行った人は、小山先生のような感じを抱かれるだろうと思うのであります。そこできょうは帰りましたら、さっそく今小山先生のおっしゃったこと並びに本日のこの委員会の御激励のことを南極に言ってやりたい。そうしたら松本船長初め永田隊長はどれだけ感激することかと思っておるのであります。  それからスクリューの話でありますが、おっしゃる通りでありまして、去年アメリカ砕氷艦宗谷より能力はいいのでございましたが、これがやはりちょうど同じように左舷の翼を一枚四分の三ぐらい折損いたしまして、しかもゆうゆうと暴風圏を突っ切って、途中で修理せずにアメリカ本国まで帰っておるような事例もあるのでありまして、こういう事例はたくさんございます。いろいろ御激励の言葉をいただきましたことを海上保安庁を代表しまして厚く御礼を申し上げます。     —————————————
  22. 赤澤正道

    赤澤委員長 次に、日本国有鉄道経営等について質疑の通告がありますからこれを許します。濱野清吾君。
  23. 濱野清吾

    ○濱野委員 国鉄の経営に関する問題はいろいろ大きな問題もありましょうし、また非常に小さい問題もあろうかと思うのであります。私はこの問題については国鉄自体が日ごろ十分注意していなければならないことではあるし、また国鉄その他の輸送の業務を指導監督しております運輸大臣におかれましても、今の世相にかんがみて、ずいぶん注意していなければならない問題だと存じます。気持の上からいけば、こういう質問はしたくないのでございますが、しかしこうした事件が勃発しましては、その処理をする上から申しましても、一応お尋ねしておくことが結局よいことだと存じましてお尋ねをする次第であります。  去る一月二十七日から六日間にわたって、静岡市において開かれた国鉄労組の第十七回臨時大会は国鉄労使間の関係の正常化に大きな影響があるものと考えまして、私どもは重大な関心を持っておったわけであります。ところがこの大会の問題とは別に、大会開催に関連して、いわゆる国鉄職員による二等寝台車不正使用事件なるものが発生して、東京都内の朝日新聞や毎日新聞、読売新聞、東京新聞など、各紙を非常ににぎわしておりました。今特にその代表的な記事であって、しかも意見を加えた朝日の二月一日付の記事を申し上げてみることは、本件の疑惑についても便宜ではあるし、さらにまた国鉄当局においても、あるいは運輸省当局においても、さらに考え直してみる大きな参考の資料になろうかと思いますから、恐縮でありますが、これをちょっと読み上げてみます。  朝日はこういうことを言っております。「二等寝台車を”無賃ホテル”にして泊っていた国鉄労組員はさぞいい気持だったろう。静岡で開かれた国鉄労組臨時全国大会に出席して一部の労組員が、二等寝台車二台を勝手に東京から回送させ、静岡駅構内にとめ置いて、五日四晩もタダで寝泊りしていたという。「寒いから暖房を通せ」と駅員に申し出たことからわかり、調べてみたら客貨車協議会の代議員三十人ばかりが、もとの一等寝台車、今の二等A寝台、二人一室のコンパートメントで、備えつけの毛布、ゆかたなどを使って、ホテルがわりにロハで寝泊りしていたという。国鉄の二等寝台券は高いものだ。A寝台だと下段二千七百六十円、上段二千百六十円。乗車券や急行料金を払った上にこの寝台料だから、一流ホテルの宿泊料より高い。そこに検札なしの高まくらで四晩も無札で泊っていたのだから、いい気なものだ。追徴金をとったら二カ月分ぐらいの月給がふつ飛ぶだろう。列車の編成、運転は国鉄当局の権限で、労組員が私用に無断で動かしてよいものではない。どこをどうごまかしたか、一番上等の寝台車を空車で東京から静岡に回送して、五日間も宿屋がわりに独占していたのだから、労組員の”国鉄私物化”もきわまれりというものだ。そればかりではない。この国労大会に傍聴に行く労組員の家族に無賃乗車もさせていた。「乗車方便宜依頼方の件」というガリ版刷りの用紙を労組静岡地本が発行して、それを切符がわりにロハ乗りさせていた。これは検札にひっかかって料金をとられたものが大分あったらしい。かつて国鉄労組員が”人民電車”を動かしたことがある。家族パスも世間の風当たりが強く、家族割引になった。そこへ今度の”労組寝台車”や私物の家族無賃切符とあっては国鉄一は一体だれのものと心得ているのかと、その常識が疑われる。こんな法規の無視ぶりでは”順法闘争”をいうのもおかしくなる。」まだいろいろ書いてあります。この論調は東京都内の各新聞の論調も同じようでございます。そこで私どもは何とかこの問題の片をつける上におきましても、一応当委員会でその経緯を説明していただく方がむしろよいのではないかと考えた次第であります。  それで、まず第一に御説明を願いたいことは国鉄の経営の大きな面を持っております、しかも大事な個所であります車両、すなわち一般普通客車あるいは今回問題になったような寝台車などという車両を、本来どういう手続で輸送すべきものであるのか、この点は国鉄にもいろいろ法規があろうかと存じます。御承知の通り、それが貨車でありましても、ボギー車でありましても、ことに優等車、寝台車などは一千万円以上の経費をかけて、さらにそれを運行して初めて収支が償うのでありますから、貨車を動かすということや、あるいはボギー車、要するに客車を動かすということは国鉄としては大事なことでなければならない。レールを作っても、その上に走らす客車や貨車の動かし方が悪ければ、国鉄の収支は決してよいものにはなりませんし、国民はこの問題につきましては十分承知しているわけであります。従いましてこうした貨車とかボギー車、客車というものを動かすということにつきましては、国鉄ははっきりした法律的な規定が、それぞれの場合それぞれの規定があるはずでございますが、本来のこの規定、動かす基本原則というものを、第一に御説明を願いたいと存じます。
  24. 石井昭正

    ○石井説明員 このたびの国鉄の労働組合の静岡における大会に際しまして、組合側の一部でございます客貨車協議会、これは組合本部ではございません。一種の執行部に対する職能別の諮問的な機関でございます。各職種ごとにできております。この客貨車協議会の人々が、いろいろないきさつがございましたが、二等寝台車を静岡に回送いたしまして、宿舎代用にしていたということにつきましては私どもといたしましてまことに疎漏でございまして、まことに申しわけないと思います。ただいま濱野先生の御質問の客車の手配でございますが、その手配につきましては大体実施時日までに余裕のある場合におきましては旅客課におきます輸送計画者が関係部課と打ち合せをいたしまして立案をし、決裁をいたしまして、これを局報に掲載いたします。その決裁に基きまして輸送手配書というものを作りまして、その手配書を旅客課の当直、いわゆる指令をする責任者でございますが、この手元に置きまして、この指令者が手配をいたしまして、関係現場へ電報あるいは連絡をするというやり方をいたしております。実施時日までに余裕がない場合におきましては部課長がおります場合は部課長から、局報掲載にかえまして電報で関係現場に連絡いたしております。なおもっと緊急の場合で、部課長の不在の場合は、一応当直の責任者で手配をいたしまして、事後旅客課の車両運用の担当者に報告をするというような形になっております。
  25. 濱野清吾

    ○濱野委員 客車、貨車の輸送についての原則のお話はよくわかりました。そこで次にお伺いいたしたいのでございますが、問題になっております二等寝台車二両が、実際上どういう手続によって回送されたかということを、この際知っておきたいと思うのであります。私の聞き及んでいる限りでは二台の寝台車は東京鉄道局所属のもので、尾久客車区に予備軍としてあったものだと承知しております。これに間違いがあるかないか。そうしてその予備車として尾久客車区にありましたそのものが、東京の尾久駅から箱根を越えて、はるばる静岡駅までごろごろころがっていって、しかも無料宿泊所、ホテルに早変りしたという具体的な業務運営の手続は、一体どうした状態であったのか、その具体的な事情を御説明願いたいと思います。
  26. 石井昭正

    ○石井説明員 問題の客車二両が尾久駅所属の予備車であることは御質問の通りでございます。  それから尾久駅から静岡に回送に至りましたてんまつにつきましてはこれはいささか古くなりまするが、昨年の十二月の初めころ、先ほど申し上げました国鉄労働組合の客貨車協議会の、これは全国にまたがるものでございまするが、その池田という副議長から東鉄に対して、組合大会の傍聴者に宿舎がわりに使いたいから寝台車を貸してもらいたいという申し入れがありました。これを拒否しているわけでございます。ところが本年一月十一日ころでございまするか、この客貨車協議会の静岡地方の議長をやっております鈴木という男が、静岡管理局運転部客貨車課の方から東鉄の方へ客車の貸し渡しの申し入れをする——借りることになっておるが、どうなっておるか聞いてくれというような話があったそうでございます。そこで静岡の方から東鉄に聞き合わせました。ところが東鉄の方では静岡の管理局においてそういう話が成立しておるというふうに誤解したのじゃないかと思うのでありますが、予備車はあいておるのが二両尾久にあるという返事をしたそうでございまして、そこで一月十三日、再び両者の打ち合せで、この車両の両数をきめ、東京鉄道局から静岡管理局に貸し渡すという手配書類を、東京鉄道管理局の客貨車課員が作りまして、その輸送手配書を成規の手続を経ずして、すでに決裁済みのものと同じ取扱いにいたしたのでございます。従いまして東京鉄道管理局の客貨責任のある者がこの手配書を見ないで、そのまま手配書が済んで、ただ手配をいたせばよろしいという格好になっておった。そこで一月二十五自に手配する段取りになりまして、現実の手配をいたします者はこれを機械的に現場に指令をいたしまして、そのまま静岡に回送されたというような状態になっております。
  27. 濱野清吾

    ○濱野委員 重要なことでありますが、この場合東鉄に配車の要請をいたしました池田辰雄君という方は、どういう身分で、地位で、その権限はどういうことになっておりますか、御説明を願っておきます。
  28. 石井昭正

    ○石井説明員 池田辰雄君と申しますのは国鉄労働組合の客貨車協議会の副議長でございます。国鉄の職員としての身分は、品川客貨車区の車両掛でございます。しかしながら副議長は組合専従職員として、現実に国鉄の職員としての仕事はやっていないものであります。
  29. 濱野清吾

    ○濱野委員 労働組合の専従員というものは、国鉄の常時の業務には関係がない、それはわかりました。  もう一点大事なことは、車両掛という方は管理者側に立っての人でありましょうか、それともどういう立場の人でありましょうか。
  30. 石井昭正

    ○石井説明員 お尋ねの点は管理局の客貨車課で車両の輸送手配書などを作ったりする者のことでございますか。ただいま車両係というお尋ねがございましたが、車両係というのは池田辰雄君の職名である車両係のことでございますか。
  31. 濱野清吾

    ○濱野委員 その人の職務の権能です。
  32. 石井昭正

    ○石井説明員 車両係という職務は現場でもって車両の検査、製造あるいは修繕等を行なっている現場職員でございます。管理職ではございません。
  33. 濱野清吾

    ○濱野委員 副議長をやっていらっしゃる池田辰雄君が管理者の立場はとれない方であり、しかも労組の専従員であるということがはっきりいたしましたが、この方から最初要請を受けました東京の貨客車課では、ただいまの説明だと二回にわたってこの要請を拒否しているようでございます。この方々の身分と権能はいかがでございましょうか、御説明をお願いしたいと思います。
  34. 石井昭正

    ○石井説明員 私どものただいままでの調査でわかっておりますのは、最初は運転部の客貨車課長の浜田君であります。これは客貨車方面の仕事を担当しております。局長のスタッフであり、運転部長の下についておりますスタッフであります。その次に二回目にそういう話を受けたと聞いておりますのは、客貨車課の運用係の蓮見君という人であります。この方は客貨車課長の部下に属する人でありまして、身分は客貨車課の首席であります。組合員でございますが、仕事としては管理的な相当のポストにある方でございます。
  35. 濱野清吾

    ○濱野委員 そういたしますと、二等寝台車二両を要請した方が池田辰雄君であって、その池田君と係のだれとの間において二両の輸送手配書を作られたのか、この点一つ明らかにしてもらいたいと思います。
  36. 石井昭正

    ○石井説明員 池田辰雄君からの依頼によって発動したものとは、ただいまのところ私ども調査では認められていないのでございます。静岡鉄道管理局の方から東京鉄道管理局に貸し渡してもらいたいという話があった。それが宿舎代用になるということを十分承知しておってやったのか、あるいはそこまで気がつかずにやったのかよく存じません。調べておる最中でございますが、推測としてはまあ宿舎代用になることを承知しており、課員同士の間で打ち合せて行われたのが実情ではないかとただいまのところ考えております。
  37. 濱野清吾

    ○濱野委員 池田さんが直接要請したのではない、静岡管理局で要請したのであろうという話でありますが、静岡管理局のどういう身分の人が東鉄のどういう方に要請して輸送手配書の原案が作成されたのか、これは重要なことでありますから、もしおわかりであったら御説明願いたいと思います。
  38. 石井昭正

    ○石井説明員 この件に関しまして静岡鉄道管理局の仕事に関与しておりました職員は、上野岩男君といいまして客貨車課員でございます。運転部の係でございます。それから東京鉄道局でこの上野君と連絡をとって手配をいたしましたのは福山文三君という東京鉄道局の客貨車課員でありまして、この福山君が輸送手配書の作成をいたしたわけでございます。
  39. 濱野清吾

    ○濱野委員 よくわかりました。そこで私はお尋ねいたしたいのでありますが、車両の輸送手配書を作成して現場まで流した場合、その手配書は一種の業務命令の性質があるものと考えているのでありますが、当局はどう考えられるでありましょうか、この点をお伺いいたしたいと思います。すなわち国鉄が客車や貨車をいかに能率的に回転せしむるかということは、その経営について最も重要視されなければならないことであります。従ってこの輸送手配の決定の事務は、とりもなおさず車両の回転を効率化する点におきまして大事なことであって、しかもその内容は業務命令の決定にほかならないのであります。ところがただいま石井さんの御説明によりますと、この業務成績に大きく影響している大事な輸送手配、すなわち先ほど申しました通り言葉をかえれば業務命令書の決定を、しかるべき地位と能力と責任とを持っていない者に常時担当させておる現状だということは、国鉄経営について一体過失なしと言い得るか、この点は非常に大事なことでありますし、その点の考え方が今後こういう事故を未然に防ぎ、国鉄の効率を高めるという点について意義のあることだと思います。この点をあわせてお答え願いたいと思います。
  40. 石井昭正

    ○石井説明員 輸送手配書は業務命令を記載したものと私考えます。しかしながらその業務命令の決定は、輸送手配書を作成することによって行われるのではなくして、その前の段階でもって正式の決裁なり、あるいは余裕がないときは責任者に対して口頭の打ち合せ等で行われる。御承知の通り車両の運用は緊急を要する場合もありますので、そういう措置も事情によっては許されざるを得ないのじゃないかと思っております。従って御指摘のように輸送手配書が正式の決裁を経ないまま、すでに経たごとく取り扱われたということにつきまして、私どもは非常に申しわけのない結果ができたと感じておりますので、この点を手続その他について検討いたしまして改善を加えて、こういうことのないように今後処置いたしたいと存じます。
  41. 濱野清吾

    ○濱野委員 ただいまのお答えではやはり私どもは了解ができないのであります。輸送手配書というのはこれなんですね。あなた方はこれでおやりになった。これは確かに一片の書類には違いない。しかし、ここに書き込んで、そうしてこれを下に流したときには、これは明らかにこの二等寝台はどこそこに回送すべしという業務命令です。しかも上司の決裁を得るひまがあればそれぞれの局報に掲載して、各責任者に公知せしめることになっておることは言うまでもないのであります。しかしそのひまがないものは同報に掲載することは不可能なことでありますから、やはりこれ一つが業務命令として末端のそれぞれの機関に通達されるわけであります。確かにこれは一つの書類ではありますが、この書いた内容は少くとも業務命令の内容である。しかも書いたとたんに業務命令を決定したと言わざるを得ないのであります。ただいま石井さんの御説明でありますと、上司の許可を得る、承認を得るとおっしゃっておりますが、実際国鉄は非常にわずかの時間に効率を上げるために、その決定を急ぐわけであります。その決定を急ぐ人たちが管理者側でなかったということになれば、これはどうも業務命令を出す人が結局責任を負えない人だ、そういう人に出させておるのだ、こういうことになるのではなかろうかと思います。たとえば、あなたの方の御説明では、必ず旅客課長なら旅客課長がその決定権を局長にかわって代行する。これは法規の命ずるところでありますから、それは合法的であって、順当であって、しかも経済的に議論する余地はありません。しかしながらただいま御説明下さいました福山さんとか、さらにまた上野岩男さんとか、さらにまた専従員の池田さんであるとかいうような方々が、自由に、気ままにこういう膨大な財産を勝手に利用でき、不法に配車でき、あるいは業務命令を作成することが可能だというような事実上の状態に置くということが、一体どういうものであろうか。これはよほど考えなくちゃならぬことではなかろうかと思うのでありますが、石井さんどうですか。あなたのおっしゃいます正式の決裁というものは、一体こういう方々が事実上全部持っていらっしゃるのですか。敏速に事を運ぶために、そうして即決を要すべきものはこういう方々にその権能ありというお考えでございましょうか。この点、また将来にとって重要なことでありますから、一つお答えを願いたいと思います。
  42. 石井昭正

    ○石井説明員 私の説明が足りないようでございましたけれども、客車を回送するとか、どこへ貸し渡すとかいうような問題につきましては、これはあらかじめ業務命令というものが決定しておる。そこでその業務命令の内容を記載して手配に移る。その手配につきましては、もちろん現場でその車を所定の列車に連結し、また着駅においてはそれを解放するというような仕事がございます。そういう仕事に対しましては、お説のように業務命令の内容を書いたものとせざるを得ないと思います。それでただいまお話のありましたように、業務命令を出す権限を持っておるかどうかという点につきましては、本件の場合は、これは所管が旅客課の仕事でございますが、客貨車課の福山君が輸送手配書を作りまして、これを旅客課に合議しないで、輸送手配がもうすでに決裁が行われたものと同じ取扱い方をいたしたという点にあるので、いわば成規の手続によらない越権行為でございますので、権限のないことをいたしたということでございます。そういう越権行為がなされる余地があったのを気がつかないでおったという点については、私どもも事務処理上、なお検討、改善を要すべき点がございますので、適当な措置を考えて参りたいということを申し上げたわけでございます。
  43. 濱野清吾

    ○濱野委員 越権行為をやり、不法行為を行うた点につきましては、もう過ぎ去ったことでもありますし、これはどなたも御承知のことでありますから、私はそれを今責めようとはしていないのであります。またこれを聞いてみたところが仕方がないのだが、実際国鉄経営で、しかも貨車と客車を運用しなければ、国鉄の仕事というものは成り立たないのに、その貨車と客車を運用する点について、業務命令の実際を行使するその人々が、敏速に事を運ばなくちゃならぬという立場から、業務命令の決定と行使とを無視されて果していいだろうか。これは少くとも大事なことですぞ、こう言っているのですが、これは石井さん、おわかりにならないでしょうか。
  44. 石井昭正

    ○石井説明員 ただいま濱野先生のお話のように、業務命令の決定と実施とを混同してはならないということは全く仰せの通りと思います。この点につきまして、いわば最近まで私どもの方の管理態勢と申しますか、そういうものが特に労働問題等に関連いたしましては、非常に弱かったという点は率直に申し上げなければならぬと思います。そういうことが、昨年来逐次努力して改善を加えて参りましたが、まだ十分徹底しなかったことはまことに遺憾に思います。なお一そうその点につきまして反省いたしますとともに、できましたことにつきましても、おわびを申し上げる次第でございます。
  45. 濱野清吾

    ○濱野委員 もうわかったかと思いますけれども、私は一つのねらいがあるのです。建設的な意見をぜひ、国鉄の副総裁も石井さんも最高幹部でありますから、申し上げておきたいのであります。輸送手配書を作成するということは、この列車をこの列車に、あるいはこの貨車をこのボギー車に、ああつけるこうつけるという計画から起きて、それが命令として決定されて、そうしてそれが伝達されるわけですね。これは何といっても大事なことでしょう。ところが実際私が調査してみますと、この輸送計画、輸送当直司令、こういうような人々は現状では管理者側の責任のある人が事実上実務をとっていないのじゃないか。そうしてその説明を求めようとすれば、貨車の回転率とか、あるいはボギー車の要請ということの敏速をとうとぶということについて、大事なことを書いている。これは何億あるいは何千億の費用を使ってレールを作ってみたが、あるいは橋梁を作ってみたが、しかしほんとうの輸送の効率をどう上げるかということについて、これは大きなミスではなかったか。これは重ねて申し上げますが、この場合における二等車の回送の決定権は、東鉄では旅客課長さんが持っておったはずなんです。ところが実際問題としては、この場合でもそうであります、普通の場合でもそうでありますけれども、実を言えば課長が留守のときにはだれが一体決定するのか。命令を出す資格のない方々が、ただ事務的に決定して、ただ敏速をとうとぶという説明をしているわけなんです。それですから実際問題としては、貨車の回転効率がどうなったかというようなことは、使った後の記録を見て初めて反省する以外にはないわけです。国鉄の仕事というものはそういうことではないでしょう。三両の貨車を使えば済むものを、命令を発する方々には、もうすでに使ったあとで、これは五両使ってしまったというようなことが、連続的にないとは言えないと思うのです。どの輸送機関であっても、諸施設やあるいは資産の利用、活用というようなものについては、きわめて経済的に、また合理的にこれを運行することが企業の成績を上げることであり、あるいはまたその機関の目的を達成するゆえんだと私どもは考えているのです。ですから計画とか、少くとも日直とか、輸送手配書を事実上作るそのポストに、だれか課長にかわって課長の職務を代行し、国鉄の総裁にかわって業務命令を発する人がここにいなければ、これは企業運営の見地から見ても、あるいは事故防止の見地から見ても、また今回のような不正事件の防止をする意味においても、私はどうしても必要だと思います。この点につきまして、石井さんの見解並びに副総裁の見解を一つ聞きたい。これは大事なことだと思うのです。
  46. 石井昭正

    ○石井説明員 大へん適切な御意見でございまして、私どもも、この仕事が非常にルーティンな仕事でございますので、機械的に、事務的に行われ過ぎていたためにこういうような事件を起したということを、深く反省いたしております。その決定権は、相当重大な責任を有する者が常に行えるような仕組みに持って参りたい、かように考えている次第であります。
  47. 濱野清吾

    ○濱野委員 もう一点お伺いしておきたいのでありますが、これは運輸大臣に、一つあなたの考え方を聞いてみたいと思います。副総裁にも、この点は重要でありますから、一つお考えおきを願いたいと思うのでありますが、今回のこの国鉄の財産を不法に利用した、こういうような問題は、私は一、二の労働組合専従員が、宿賃云々、静岡市にホテルがないから云々というような単純なことで行われたのだというように、簡単には考えられない点があろうかと思うのであります。実はそういうふうに考えたいのでありますが、なかなかそうも考えられない点があるようだと思うのであります。実は昨年の十一月中に和歌山県の白浜において、全国客貨車協議会というような会合が開催されたようであります。その会合で何かこの旅客車の利用ということの相談があったのではないか。一説によりますと、この白浜の会合で、静岡に便宜上寝台車を一つ都合しようではないか、そしてその手配は静岡管理局と東京鉄道局の仲間でやることにしようではないか、こういう謀議が実は昨年の十一月、和歌山県の白浜で行われている、こういう話があるわけであります。私はこれは話は話としてこのままにしておきたいのでありますが、今度の御説明を承わりますと、池田辰雄君は少くとも東京の客貨車協議会の副議長である、さらにまた組合の専従員である。これらは私どもの得た情報とどうもまことによく合致しそうな状態にある。しかも静岡方面から配車要請をしておりますこの上野岩男君、さらにまた鈴木貞一君、これは浜松でありましょうが、鈴木君のごときもやはり専従員であると私どもは承わっているわけであります。こういう人々が計画的に、しかもこれは労働組合じゃない、国鉄労組の諮問機関であるといわれておりますから、私はこれ以上は追及いたしませんけれども、この職場を同じうする人々が、今度のこの大会に関連して、東京と静岡の管理局で、二等車を回してもらいたいというような謀議があり、しかも計画的に、書面を見ますと昨年の十二月から執拗に、断わられても断わられても、この二等寝台車を要請して、ついに今年一月の十三日に、やっと非合法的にその車を獲得することができた。これらの経過を見ると、どうもこの点は、まだまだ十分注意しなければならぬような状態ではなかろうか。こういうことが国鉄労組の客貨車全国協議会というようなものの専従員諸君が謀議して、そうして何回も何回も、月にわたって執拗にこの計画をし、実行をし、しかもついに成功してしまった。不法手続をもって、そうして国民の知らぬうちに、また管理者の知らぬうちに、その権限を行使し、不法にこうしたやり方をした。こういうことを見ると、これはずいぶん同情をしている朝日新聞を初めとして読売の方々も、思い切って書かざるを得ない、これは私はそう思うのです。ですから私は言いたくないのでありますが、国鉄の今回の大会等におきましても、不法処分を受けた方々を再び国鉄労組の最高の責任者に選ぼうじゃないかというようなことは、やはり思想的は一連のものがあるのじゃないか。大臣は自分の監督する国鉄などのこうした行き方を見て一体どう考えられるのか。順法闘争もときによってよかろう、しかし自分たちだけは法を守らない、たとえば検札事務でもそうであります。列車の中の国民に対しましては遠慮会釈なく検札をする、そうしてどんどん摘発をして、不正乗客からは運賃を取り上げる、これは私は正しいと思う。いつかどこの党の代議士であったかはわからぬが、特二の乗車券の問題でだいぶ世間を騒がせたことがある。あれは自由党であったかもしれぬし、社会党であったかもしれぬ、私はよくわからぬ。ああいうような問題でさえも世間はうるさくなってくる。しかし私はあのときに摘発した車掌は正しいと思う。これは少くとも勇気のある、しかも正しい車掌であったと思うのです。ですから私は国鉄労組あたりも順法すると言っておるのでありますから、法だけは少くとも守ってもらいたいものだし、かつまた運輸大臣は法を守らせる工夫をしなくてはなるまいと思うのです。この点につきましてはすでに国鉄の副総裁も通達を出したようでありますから、これ以上深くはお尋ねいたしませんが、少くともこうした雰囲気において一体国鉄を運営する最高責任者はどういう考え方を持っているのか、運輸大臣はこうした現実の状態にかんがみて一体どういうお考えを持っているのであるか、この点をお尋ねして私の質問を終りたい、こう思うのであります。
  48. 中村三之丞

    中村国務大臣 国鉄職員の今回の行為につきましては、国鉄から報告は受けました。これはただいま石井常務理事のお答え申し上げましたごとく、越権行為であります。また国鉄の信託財産を私物視したものと見てもよろしかろうと私は思っております。しからばそれがどういう動機でどうなっておるか、私ども監督の立場として国鉄の管理態勢に欠くるところありと私は判断をいたしておりますから、この国鉄の管理態勢を確立するという見地から、私は今鉄道監督局長にしかるべく措置するように話をいたしております。
  49. 小倉俊夫

    ○小倉説明員 今回の事件につきましては、私ども責任者といたしましてまことに相済まないと思っております。国鉄は近来いろいろな事件で非常にきびしい御批判を受けておりますので、われわれは始終誠心誠意をもちまして、国鉄の綱紀粛正ということに努力を続けて参ったのでございまするが、今回の事件につきましても、公物を私用に供してはならぬ、あるいは無賃乗車をしてはいかぬということは、規定からも申されますが、規定以上の、全く常識的な判断から見ましても全くなすべからざることでございまして、今後は再びかかることを繰り返さないように、もっともっと職員一般に公物の尊重あるいは公益に対する奉仕の精神ということを涵養して参り、十分反省して粛正の実をあげて参りたい、そう覚悟いたしております。
  50. 赤澤正道

    赤澤委員長 生田君。
  51. 生田宏一

    ○生田委員 濱野議員から大体のことはお聞きしましたので、私は二、三、小さいことですけれどもお尋ねします。  それは東京で池田という人から客貨車課の責任者に交渉があって二度断わられておる、今度は静岡の現地の交渉に移しておる、こういうことですが、それについては、静岡の鉄道管理局の運転部客貨車課員の上野岩男という人が、国鉄労組の静岡地方客貨車協議会議長鈴木貞一君から、二等車寝台の使用について静岡の現地で申し出があった、そこで上野君は東京の鉄道管理局の運転部の客貨車課員の福山文三君に電話で問い合わせをした、そこまではわかっておるのですが、それではどんな電話をしたのか、福山君はそれではどうしてこれを貸してやろうという業務命令を書いたのか、その辺の意思の所在といいますか、そういう業務命令を書こうとした動機、そういうことは何ら御説明がないのですが、ここは私たちははなはだ不可解なところです。現に何回にもわたって池田君からの申し出を上司は、浜田君にしてもあるいは蓮見君にしても断わっておるものを、下僚の福山という人が、静岡の現地から交渉があったのを、なぜそれを貸そうという気になったか、おかしいのです。その辺はどういうような事情なのか、聞いてみたいと思います。  それから静岡へ行って、おそらく二等車二両ですから数十名だろうと思うのですが、傍聴者というのですけれども、それはどういう種類の人が乗ったのか、国道労組の人なのか、あるいはそれ以外の人が乗ったのか、乗ったとなればどういう種類の人が宿泊をしたのか、それはわかっておるはずですから、それをお尋ねします。この二つです。
  52. 石井昭正

    ○石井説明員 静岡の上野君と東京の福山君、この間でどういう取引が行われたかという点につきましては、ただいま両局長をして取調べさしてあるのでありますが、必ずしも両方の言い分が合致しておりませんので、ここで私がこうであると判断してお答え申し上げるわけにいかないのでございます。ただ常識的に考えますならば、やはり宿舎代用に使用するということは両者ともわかっておったことではないかと考えております。  それからいま一つの宿泊人でございますが、これは客貨車協議会に所属する国鉄労組の組合員が、日によって違いますが、約三十名ないし四十名程度、大会の傍聴に静岡へ行った者が泊っていたというように、調査の結果、ただいまのところではそういうふうに判断いたしております。
  53. 生田宏一

    ○生田委員 意思の点ですが、福山君がなぜこれを貸そうという決意をしたか、どうしてそういう意思をきめたか、その理由が何かあるでしょうから、それをお聞きしたい。
  54. 石井昭正

    ○石井説明員 これは調査の結果の私の推量でございますので、公開の席で断定的なことを申し上げるわけには参りかねるのでございますが、おそらく静岡の方で話がついたから東鉄の方は貸しさえすればいい、手続さえすればいいというふうに即断いたしたのではないかというふうに、現在のところ判断いたしております。
  55. 生田宏一

    ○生田委員 あなたはそう判断したのでこれは不確かな推量ですから、それではということでは私は進めませんけれども、上司が二度も断わったものを、下僚がなぜそれを貸すまでになったのか、おかしい。上の方の相談は東京で二度もやったのですが、下の方へ移してこっそりと静岡と東京の間でやみ取引をしたような格好で、そうして貸しておるというところに、私は不可解なところがある。それから業務命令を出して、出しっぱなしなんですか。あるいはこれをきめたときにはいつきめたのですか。そのときには上司がいなかったのですか、どうなんですか。
  56. 石井昭正

    ○石井説明員 きめたのは、先ほど申し上げたように一月十三日……。
  57. 生田宏一

    ○生田委員 何時ごろ……。
  58. 石井昭正

    ○石井説明員 時間ははっきりわかりません。十三日でございますが、これはそのときはもちろん上司はおったと思います。それからさらに実施に移すまでには約十日ばかりあるわけです。この間輸送手配書というものはすでに決裁が終って、二十五日になって手配をしなければならないつづりにとじ込んでおいたのでございます。ございますので、その間何人もその点についてはチェックするという機会がなかったのです。これは輸送手配書は毎日二十件とか三十件とか、たくさんたまりますので、その種別に従ってつづりを作って保存しておくわけであります。
  59. 生田宏一

    ○生田委員 驚きましたね。これ以上申し上げませんが、たった一言副総裁にお聞きしておきますことは、これは処罰するのは厳重にお罰しになりますか。
  60. 小倉俊夫

    ○小倉説明員 ただいま捜査中でございますが、よく事情を取り調べまして、その責任を究明するつもりでおります。
  61. 生田宏一

    ○生田委員 処罰ですが、これは三十一条の「この法律又は日本国有鉄道の定める業務上の規程に違反した場合」ということになりますと、非常に重い処罰になると思いますが、それが適用されるようなものだと私は思うのですが、いかがですか。
  62. 小倉俊夫

    ○小倉説明員 私どもの内部機関といたしまして、処罰という場合には、公正妥当を期するために懲戒委員会というものを新たに設けまして、そこで実情あるいは行状その他、先例等を比較いたしまして決定するのでございまして、それまでは私としていかなる処理に該当するかということは申し上げられません。
  63. 生田宏一

    ○生田委員 一言、言うておきますが、これは命令を発した方の東京で発覚せずに、命令を受けた方の静岡で発覚したというところに、僕はあなた方の業務上の監督の不行き届きがあると思うのです。不正な命令を出した者を上司がそれを見ていれば、翌日にもそれを見ればすぐわかることなんですが、それを静岡の方の命令を受けた方からあなたの方に言ってきて初めてわかったという、これはほんとうに綱紀が弛緩していると思うのです。その点を特にいかぬと思いますので、厳重な処罰をしてもらいたい。
  64. 小倉俊夫

    ○小倉説明員 先ほど濱野先生からも御指摘があり、今生田先生からも御指摘がございましたが、とにかく車両という重要な公物の回送その他につきまして、いささか今まで事務上あるいは規定上欠くるところがございまして、こういう点につきましては十分自粛自戒しまして、手続、規定が不完全なところはこれを修正もいたしますし、また実際の事務上の取扱いにつきましても、厳重に改善を加えるつもりでおります。
  65. 田中織之進

    ○田中(織)委員 議事進行。これから委員長の方では、先般の南海丸の遭難事故の問題についての委員会の審議に入る予定だと承わるのでありますが、今朝からの委員会の運営につきましても、実はこの南海丸の事故の問題は近来にない多数の、また一名も生存者がいないという大きな海難なんであります。そのことに対して、実は政府当局からこれの救難その他についての報告が、いまだ国会に対しては正式にないわけなんであります。これは民間会社の船でありますから、洞爺丸だとか紫雲丸というような、国鉄その他が経営しておる公共船舶の事故ではないことはもちろんでありますけれども、いろいろこの事故の原因等を究明して参りまするならば、私はやはり運輸行政の立場からも考えなければならぬ重大な責任問題も発生するのではないかと実は考えるのであります。そういう意味において本来なら、こういう委員会が開かれた機会には、政府側からもまず本件についてのその後の救援作業等についての状況報告を求めて、これについての国会側の意向を明らかにするというような進め方を、私はやはりしなければならぬと思うのです。その点についてわれわれの方では、明日開かれる本会議において、そのことについての正式要求をいたしまして、それに関連して、本会議における質疑もやらなければならぬとは考えておるのでありますけれども、私は当委員会としてのことについて、一言議事進行上提案したいと思うのでありますが、実は先般運輸委員会が、一番先にこの事故の問題を取り上げたことは事実でございます。委員会から実は速刻委員を派遣いたしまして、事故原因等の事情についても調査するということが、各委員の方々から取り上げられたようでありますけれども、しかし事故の原因その他については海難審判も始まることではあるし、もっと資料を整備してからというような御意向もありまして、とりあえず自民党と社会党がそれぞれ党の立場で現地に見舞団を派遣するということで、私も党から派遣されまして、生田委員等自民党から派遣された諸君とともに現場へも参ったものでございまするが、そのときに遺族代表等からの要請は、国会の委員会として正式にやはり調査団を派遣いたしまして、この事故の原因を調査するとともに、遺族の立場から考えれば、事故の発生したことはいたし方ないといたしましても、この種の海難事故の起ることを絶滅を期するという観点から、国会の当委員会における権威ある調査団の派遣を要請する声が非常に強いのであります。さらに参議院の方では、委員長以下すでに現地にも参りまして、一応現地調査を行われたようでございます。私一番最初に取り上げたときからの懸案でもございますので、特に委員長におかれましては、理事会等におきまして、この調査団の派遣の問題について早急に具体案を立て、また実施に移すように特別な取り計らいをしていただきたいということを、この際議事進行としてお願いしておきます。
  66. 赤澤正道

    赤澤委員長 よくわかりました。あと理事諸君とはかりまして善処いたしたいと思います。
  67. 中居英太郎

    ○中居委員 関連して。私は簡単に質問申し上げたいと思います。大体二等寝台車の問題について、私どもは実は質問等はすまい、こういう考えを持っておったのであります。ところが先ほど来の濱野、生田両委員の質問と、これに対する当局側の答弁を聞いておりますと、あたかも今回の二等寝台車の使用が、労働組合側の一方的な不正行為であるというような印象を与えまして、しかも最後には懲罰などという問題にまで発展しておるわけでありまして、事態がこうなりますと、私ども静観していようと思いましても静観しておるわけに参らないわけでありまして、私どもの知っておる経過を申し上げ、かつまた当局に対しても、私どもの要望というものも申し上げておきたい、こう思いまして質問申し上げるわけであります。  両委員の質問に対しまして石井さんは先ほど来答弁いたしましたが、その話を聞いておりますと、あたかも静岡鉄道局の上野君が無断で東鉄の福山君に回送の要請書を出して、福山君がこれまた独断で指令を出して、二等寝台車を二両静岡の構内に回送した。そうしてこれを労働組合側が四日間ですか五日間かにわたって使用した、こういうような答弁をなさっておるようであります。しかし私ども調査した経過によりますと、決してそのような単純なものではない。これは石井さんも前段お話しになっておりまするように、当初東京に滞在しておる客貨車協議会の池田副議長から東鉄の客貨車課長に、五度にわたって申し入れをやっておる。ところがいかにもこの客貨車課長はこれを拒否しております。労働組合からの申し入れによって二等寝台を貸与するわけにいかない、こういうふうに拒否しております。それは事実であります。ところがたまたま同席しております係長が、私は名前を申し上げませんが、係長がある示唆を与えております。それは正式に静岡鉄道局から貸してほしい、転送してほしい、こういう正式の申し入れがあれば、東鉄としては貸すであろう、こういう示唆を与えております。そこでこの池田君はその旨を静岡鉄道局の鈴木支部議長に対して電話で連絡をしております。そこで静岡の鈴木議長は、静岡鉄道局の運転部長並びに客貨車課区長と数度会いまして、了承を得ておる。そうして正式に静岡鉄道局の名によって、東京鉄道局に対して寝台車二両貸してもらいたい、こういう要請書を出しておるわけであります。そうしてその要請書に基いて東鉄局では二両の寝台車を静岡に転送しておる。これが事実であります。内面的な事実であります。ところが今日になって静岡鉄道局の運転部長あるいは客貨車課長という者が言を左右にいたしまして、そういうことがあったとかないというような態度を表明しておるのが、この問題を紛糾さしておる一番大きい原因ではないか、私はこう思っておるわけであります。いずれにいたしましても、上野君というような、ただ一介の職員が、自分だけの独断の意思で東京鉄道局に対して二両の寝台車を要請するというようなことは今日の職制上できるものではないのであります。はっきりと局の部長なり課長なりという者が暗黙の了承を与えておる。そしてその上で東鉄は転送しておる、こういうのが事実でありまして、決して労働組合側が指令書を偽造したとか、あるいは不正な書類の作成によってそういう行為を行なった、こういう事実は私はないと思っております。この点について、私が今申し上げました経過について、石井さんはどのような御調査をなさっておりますか、重ねてお伺いいたしたいと思っております。
  68. 石井昭正

    ○石井説明員 静岡鉄道管理局の取扱いにつきましては、目下調査しております。今中居先生がお話しになるような情報も私どもも一部聞知しておりますので、厳重に調査をいたしております。ただ私が越権行為と申しましたのは、これは寝台車の回送というのは旅客課の所管事項であります。それが客貨車課の係員だけによって行われたということが越権行為だというふうに判じておるのであります。
  69. 中居英太郎

    ○中居委員 それからもう一つ、これは決して労働組合側だけの独断による不正行為でない。こういうことの証左には、二十六日に静岡の駅で出しておる駅報にちゃんとこれが出ております。これを組合側が独断でやったとすれば、当局側の駅報にこれが掲載されるはずはない。明らかにこれは当局側の意思によってなされたものであるということが、このことによっても証明されると私は考えておるわけであります。しかもこの問題が世間に、新聞記事等に掲載せられる以前に、すでに客貨車協議会では所定の料金を払うという申し入れをしておるのです。所定の料金を払う、一両について十方円の所定の料金を支払うということを局に申し入れておる。ところが問題がたまたま営業と客貨の二つの意見の相違によりまして、明るみに出て、しかもこの問題をとらまえて、組合を弾圧するような方向に利用しようとする動きが活発になってきておる今日において、労働組合でも、それならば売られたけんかでわれわれもやろうではないか、こういうように態度が硬化しておることも事実であります。しかし当初から無断で使用しよう、無料で使用しようというような考えのなかったことは、私ども調査ではっきり明らかにせられておるのであります。そこで私はこの問題の一つをつかまえまして、この行為がよかったとか悪かったとか、あるいは命令系統がどうとかこうとかいうことも確かに一つの論議の対象にはなろうと思いますが、しかしこういう行為というものはただ単に今回起った問題だけでは私はないと思っております。これはたまたまこの問題が新聞記者にかぎつけられて、そうして新聞の紙上をにぎわした。そうして国会にまでこの問題が論争せられておるということだけでありまして、こういうことは国鉄部内においては日常茶飯事で行われておる。労働組合だけではない。むしろこれは当局者が大いにこういう慣例というものを作っておる。そういうところに私は問題があるのじゃないかと思う。この問題を論議するならば、そういう慣例が国鉄部内において今日まで日常茶飯事のように行われておる、そういうことを論議して、そういうことがいいか悪いか、こういうことを検討してみるのが一番重要なことではないか、こう私は思っておるわけであります。私は国鉄の当局者が寝台車をあるいは特別二等車を無料で外郭団体あるいはいろいろな団体に貸与しておる、こういう事実を具体的に知っております、こういうことについて一体小倉副総裁はどういうお考えを持っておるか、この問題をただ単にいいとか悪いとか、責任者を処罰するとかしないとか、こういうことでこの問題を処理しようとしておるのか。あるいはこれを契機にして、根本的に今日までの国鉄のそういった慣例に対する検討を加える意思があるかないか、こういうことがむしろ重要ではないかと思うのでありまして、その点をむしろ副総裁から伺っておくことが重要なことではないかと思うわけであります。
  70. 小倉俊夫

    ○小倉説明員 この問題につきましては、非常に関係者の多いことでございますし、場所も東京と静岡にまたがっておりますので、先ほど申しましたように、慎重に慎重を重ねて調査をいたしております。それで全く白紙の気持で、実際どうしてこういうふうなことが起ったかということを、公平に色めがねなしにはっきり事実をつかんでいきたい、こういうことでございまして、もうしばらく調査に時日をかしていただきたいと存じます。それから先ほど私申し上げましたように、国鉄への近来のいろいろな手きびしい世評に対しまして、われわれ一生懸命に誠心誠意各方面につきまして努力を重ねております。それは単に事業の仲張ばかりでなく、綱紀粛正といったような点につきまして、日夜心を砕いておる次第でございまして、まことに力足らず、常に全く——しかしできるだけの努力を尽して将来自粛自戒をしていきたい、こう存じております。そういう見地からも、今回のことは一つの機縁になりまして、先ほど申しましたように公物を尊重して、いやしくも損壊あるいは私用に供すべからずということが規定にもはっきりうたってありますが、これは規定の問題だけでなく、精神の問題でありますから、そういう点で多少とも今までゆるんでいたところがございましたら、こういうことを機会に全く管理者といわず、職員といわず、全般について改善、自粛して参りたい、こういう考えでおります。
  71. 中居英太郎

    ○中居委員 最後に要望しておきますが、この問題を労働組合の弾圧とかそういうことには使わないでもらいたい。これだけは厳重に副総裁に要望しておきます。そういう性質のものじゃないです。以上です。     —————————————
  72. 赤澤正道

    赤澤委員長 この際お諮りいたします。各党の理事の了承を得たのでありますが、南極観測船宗谷に対し激励電報を本委員会より打電いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  73. 赤澤正道

    赤澤委員長 それではさよう決定いたします。その電文は、  乗組員及び隊員諸君!各位は本年度絶大なる困難に逢着しつつも勇敢に、よく之を突破されんとする努力は吾々一同の感激措く能わざるところである。吾々は各位の崇高な任務達成に関しては如何なる後援も之を惜しまない。この際英気を振起して、慎重なる行動の下に、光輝ある任務遂行に邁進せられんことを祈る。   松本船長   永井隊長宛 といたしたいと存じますが、御異議ありませんか。(拍手)     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  74. 赤澤正道

    赤澤委員長 それではさよう決定いたします。  なお打電の方法等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  75. 赤澤正道

    赤澤委員長 それではさよう取り計らいます。
  76. 中村三之丞

    中村国務大臣 ただいまは満場一致をもって、船長、隊長に対する激励の電文に関する御決議を賜わりまして、まことに感謝の至りにたえません。運輸省、海上保安庁の方からも、皆様のおぼしめしを伝えたいと存じます。
  77. 赤澤正道

    赤澤委員長 それではこの際暫時休憩いたします。     午後一時十二分休憩      ————◇—————     午後二時四十六分開議
  78. 赤澤正道

    赤澤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  最初青函連絡航路における浮流機雷の問題について当局より説明を聴取いたします。松野警備救難部長。
  79. 松野清秀

    ○松野説明員 まず最近津軽海峡の中で確認されました浮流機雷の数について申し上げておきたいと思いますが、津軽海峡の中で確認された機雷は昭和二十六年に三個、二十八年に二個、二十九年に二個、三十年に一個、三十一年に四個、昨年は津軽海峡の中では発見されておりません。なお先月の二十九日に一漁船が、白神岬灯台の約三海里沖合いにおきまして機雷らしいものを発見した、こういう報告をして参りましたので、海上保安庁からは巡視船三隻、それからシコルスキー一機、これに海上自衛隊から出動いたしました艦艇二隻、これらと協力いたしまして二十九日の午後から三十一日の午後にかけましてまる二日間捜索いたしましたが、発見できませんでした。その間、三十日の午後になりまして尻屋崎灯台の三百四十二度、九海里付近におきましてドラムカンを一個発見いたしましたが、どうも海流その他から計算してみますと、それの誤認ではないかというふうに私どもは推定いたしております。  なお、この津軽海峡へ入ってきまする機雷の警戒につきましては、海上自衛隊と協力いたしまして、現在におきましては常時船艇二隻を津軽海峡の西口に配置いたしまして警戒をいたしております。なお海上保安庁におきましては、白神と龍飛に機雷探知所を持っております。レーダーでございます。このレーダーによっても機雷の発見に努めておる、こういう現状でございます。
  80. 赤澤正道

    赤澤委員長 質疑の通告があります。これ許します。正木清君。
  81. 正木清

    ○正木委員 ただいま津軽海峡における浮流機雷状況について報告があったわけですが、この機会に私は一言海上保安庁に御質問を申し上げたいと思います。海上保安庁としては、例年のことでございますが、どのようなこれに対する警備をしておって下さるのか、その点をまずお伺いしたいと思います。  それから国鉄関係にお尋ねしておきたいことは、二十九日にも津軽海峡に浮流機雷らしいものが発見されて、しかもそれが青森県の陸奥湾入口付近に漂流しているのではないかという大体の見通しから、青函局は大事をとって夜間航行を一切中止をした、こういうことを実は承知をいたしておるわけでございます。それでなくても冬季間は津軽海峡が荒れます関係上、しばしば昼間、夜間の航行を禁止するために、貨物の輸送、旅客輸送に大きな支障を来たしておることは、あなた方御存じの通りでございますので、こういう機会に、私は海上保安庁としての警備の状態、それから現在津軽海峡をはさんでの貨物の輸送状況がどうなっているかを、ここで一応明らかにしておいてもらいたい、こう思います。
  82. 松野清秀

    ○松野説明員 御承知のように機雷は流れてくる経路から申しますと、山陰方面の沖合いからだんだん日本海を沿岸に沿って北上いたしまして、津軽海峡の方にくる、こういうような経路をとっておりますが、全般的に見ますと、やはり今までの記録から申しますと、冬季が非常に多いので、海上保安庁におきましては毎年十二月の一日から三月の末日までを特に重要視いたしまして、機雷対策につきましては全力をあげておるような次第でありまして、津軽海峡につきましては、先ほども申したのでありますが、従来とも海上自衛隊と協力いたしまして、御承知のように津軽海峡の潮の流れは日本海から太平洋の方へ入っておりますので、そういう関係で津軽海峡の西口に重点を置きまして、海上保安庁の船艇と海上自衛隊の船艇とが協力いたしまして、警戒線を張っておる、こういう状況になっております。現在は先ほど申しましたように、常時大体二隻を配置いたしております。なおまた今申しましたように、白神、龍飛の機雷探知所から、レーダーをもちまして機雷の警戒をやっておる、こういう現状でございます。
  83. 正木清

    ○正木委員 現在は夜間航行は心配がないのかどうか、それからこれは毎年のことで、当委員会でもしばしば問題になるのですが、レーダーというものについてわれわれが安心し切っていいものかどうか、この点をお伺いいたします。
  84. 松野清秀

    ○松野説明員 レーダーについて申しますと、これで必ずキャッチできるというような精度までは現在のところ持っておりません。従いまして船艇も出して警戒をやっておる、こういう状況であります。そういうことで、それでは現在あそこの航行が安全かどうかということでありまするが、今申しましたように、私どもの方は日本海沿岸ずっと一帯にわたって一連の警戒をいたしておりますので、そういう機雷を発見したとかいうような情報がない限り、そう危険はないだろう、こういうふうに見ております。
  85. 正木清

    ○正木委員 私は今の答弁には、何としても大きな実は不安を感ずるわけです。今日まで運輸当局のとってきた処置は漁船が発見するなり、何らかが発見した場合にのみ、自衛隊、それから海上保安庁が非常配船の手配をしてそれを捜索する、捜索するというところに重点が置かれているわけです。そうではなくして、常に海上保安庁が中心になって、それを未然に発見するというところに重点が置かれない限り、万一事故が起きたときに当委員会がお互いにどのように議論しても、その問題は解決しないわけです。だからこそ、当委員会が海上保安庁の充実には予算が伴うのであるからして、予算を獲得しなければいけないということを強く要望しているゆえんもここにあるわけですが、私どもは今のあなたのその答弁では非常な不安を感じます。さなきだに、もうすでに二月に入ってきておりますから、いつ何どき津軽海峡を中心として、またぞろ大きな事故が起きないとは、だれが一体断言できますか。この点責任ある答弁を願いたい。
  86. 松野清秀

    ○松野説明員 たとえば漁船その他が発見した場合に出動するというようなこと、むろんでありますけれども、しかし私どもとしてはそういうことでなしに、やはり未然に、進んで私どもの船艇をもってできるだけ警戒して発見に努めるという方針で進んでおります。先ほど申しましたように、津軽海峡の西口で私どもの船艇が哨戒に当っておりますが、これもやはり津軽海峡へ入るのを未然に早く発見して防ごう、こういう趣旨でやっているのでありますので、御了承願います。     —————————————
  87. 正木清

    ○正木委員 今の津軽海峡の機雷の質問はこの程度にして、直ちに留保になっております南海丸遭難に関する質問をしたいと思いますが、よろしゅうございますか。
  88. 赤澤正道

    赤澤委員長 ちょっとお待ち下さい。南海丸遭難事件について、当局よりその後の状況について一応説明を聴取いたしたいと思います。粟澤海運局長。
  89. 粟澤一男

    粟澤政府委員 その後の状況を御報告申し上げます。所管によりまして、後ほど海上保安庁その他からも発言があるかと思います。主として事業者に関係いたしますことについて私から申し上げたいと思います。  まず遭難者の数でございますが、ただいままでに判明いたしました遭難者の数は百六十七名でございまして、うち船客が百三十九名、船員が二十八名でございます。この百六十七名の遭難者のうち、乗客は百三十九名でございますが、府県別に申し上げますと、大阪が六十九名で最も多く、その次が徳島の三十一名、次が和歌山の十四名、それ以外に兵庫、京都、奈良、東京、愛知、岐阜、香川、岡山、鹿児島、鳥取というような各県の乗客がございますが、それはいずれも十人以下という数字でございまして、合計百三十九名になります。うち男子は百十一名、女子は二十八名、こういう性別になっております。  前回御報告申し上げました以後の船体発見後の状況でございますが、二十八日に南海丸船体が、海底において確認されまして、自後鋭意今日まで遺体の引き揚げを会社としては努力して参ったわけでございます。私どもといたしましても、とりあえず遺体をできるだけすみやかに引き揚げること、なお遺族その他につきまして、弔慰等の処置は誠意をもってできるだけ努力するということを指示いたしておりました。その後の遺体の引き揚げ状況は二十八日から始めまして昨日までの間に百十一の遺体が引き揚げられておるのであります。男子は九十名、女子は二十一名という数字になっております。捜索、引き揚げ状況を見ますと、先月の三十日と二月二日、当日は、荒天のために潜水を中止したというようなことがございましたが、そのほかの日は鋭意引き揚げに努力いたしております。発見場所は、船内で七十一体、船外で四十体、こういう状況でございます。なおこの遺体につきましては、とりあえず小松島の方へ揚げまして、そのうちで四国の者でないということがはっきりいたした者は和歌山の方へ移送いたしております。なお揚げたときに、どちらの所属かわからぬ者は、もちろん小松島、和歌山の両方へ持って参っております。わからない者は一応小松島の方へ揚げておりますので、小松島でさらに和歌山の方へ移送の手続をとっております。これらにつきましては、会社の船あるいは保安庁の巡視船等の協力を受けまして、すみやかに取り運ぶようにいたしております。なおできるだけ遺体の引き揚げをするという方針で参っておりますが、最近になりまして状況相当悪くなりました。船底等にどろが入っておりますために、その下に埋もれておるというような場合には、なかなか引き揚げが容易でないのでございます。一方遺族の方からも、船体を引き揚げてもらいたい、そうすることによって、さらに遺体の発見も容易になるのじゃないかというような希望もございまして、引き揚げの方向に進むことにいたしました。大体日本サルベージに依頼いたしまして、これを引き揚げるということに決定を見た模様であります。そういたしますと、今後は船体の引き揚げとできる限り遺体の引き揚げも並行して行う、こういう形になったと思います。なお遺族に対する弔慰でございますが、前回に遺族に一万円の見舞金を贈った、こういう御報告を申し上げましたが、その後さらに遺体を遺族へお届けするに当りまして、会社から八万円の金額を各遺族にお贈りいたしております。なお和歌山県、徳島県両県でも弔慰の方法を講ずるということを決定したやに聞いております。  それから前回御質問がございました当時付近航行中の船の状況でございますが、あの近所の航路といたしましては、南海汽船の小松島——和歌山航路、これが一旦三航海なされております。それから関西汽船と阿波国共同が共同でやっております阪神——小松島航路、これも一旦三航海、それから宝海運という会社がございまして、これが徳島——和歌山を一日一航海、それから共生汽船、これが徳島——大阪間を一日一航海、また関西汽船が大阪——高知間、これを一日一航海、こういう航路がそれぞれございますが、事故当時前後におきまして、当日欠航いたしましたものは、南海汽船の小松島——和歌山航路の和歌山発十九時のわか丸でございますが、これは事故が発生いたしまして救援のために定期航路を取りやめて、救援に従事いたしております。それから関西汽船の阪神——小松島航路、これは大阪発の航路でございますが、神戸まで参りまして、神戸で停船いたしております。それから同じく関西汽船の大阪——高知間の航路でございますが、これが大阪発の分は十七時四十分に大阪を出ておりますが、神戸で停船いたしております。それから高知発十七時という船がございますが、これは室戸岬の手前まで参りまして、天候状況が悪いために引き返して欠航いたしました。以上が当日の欠航状況でございます。
  90. 正木清

    ○正木委員 私は南海丸遭難に関しての質問をこれから行うわけでございますが、まず私の調査したものを総合的に申し上げてみますから、答弁をなさる方々も、犠牲になられた霊に対して謙虚な気持で一つ真実を御答弁願いたいと思います。  私の調査したものを要約して羅列してみますと、まず第一に問題になるのは、徳島地方気象台が強風注意報の発令をした時期が果して適切であったかどうか。それから注意報の発令を知った小松島営業所長が船長に通報した時間がおそきに失しておったのではないかという点が問題になります。三番目には遭難地点は鳴門海峡と紀伊水道の潮流関係が果してどうなっておるか。その次に私の非常に疑問になって参りました点は、遭難のほんとうの原因は突風による三角波が原因ではなかったのか。その次に、私の疑問になって参りました点は、南海丸の検査は一体定期的に行われておったのかどうか。行われておったとしても、その検査それ自身に今回の遭難と大きな関係があったのではないか。それから南海丸自身に構造上非常な欠陥があったのではないか。従って検査、それから船の構造等から当然行政的な責任と、これを作った船会社にも責任があるのではないか。それから気象上の問題で私の深く考えさせられる点は、異常気象ではなかったのか。こういう点が私の調査を土台にして起きてきた疑問でございますので、これらを土台としてこれから質問を展開して参りたいと思います。  まず第一に海上保安庁にお尋ねいたしますが、三十三年の一月二十八日、あなたのところでわれわれに配付した旅客船南海丸沈没事件概要の中でこういうふうにうたってあります。「超短波無線電話にて、南海汽船小松島営業所に対し「危険、危険」と連呼したまま消息を断った。当時の気象状況は南々東約一五米で、小雨、視界不良であった。この「営業所に対し「危険、危険」と連呼したまま消息を断った。」このことについては質問をいたしませんが、「当時の気象状況は、南々東約一五米、小雨、視界不良であった。」この「一五米、小雨、視界不良であった。」という資料は一体どこから出て、この日の何時の気象状況がこの資料になって現われたのか、これを具体的に説明願いたい。
  91. 島居辰次郎

    島居政府委員 その報告は私の方の小松島保安部からの報告でございまして、小松島保安部における現場のおそらく推定だろうと思います。何もほかの船がいなかったようでございますし、陸上と海上とはだいぶ強さが違いますので、陸上というか、港湾付近から見た推定だろうと思います。
  92. 正木清

    ○正木委員 推定だろうと、非常にたよりない無責任な答弁でございますが、私が開口一番申し上げたように、なくなった霊に対してもお互いに謙虚な気持でやろうではないかと言ったのはここなんです。ただ推定を非常に責任ある資料の提出だというのでは私は心もとないと思いますが、この十五メートルはむしろ陸上でございましょう。海上は違いますが、それにしてもこの「一五米で、小雨、視界不良であった。」ということは、一体海上の視界が不良であったのか、陸上の視界が不良であったのか、しかもこの十五メートルというのは一体この日の何時の気象状況であったのか、それを的確に御答弁願えないと、議論しようにも議論にならない。質問しようにも質問にならない。その点を明確にしてもらいたい。
  93. 島居辰次郎

    島居政府委員 先ほど申しましたのは、陸上ではございませんで、海上の推定でございます。そこで今の巡視船その他がおりましたので、さっそく出かけましたので、その巡視船における推定だと思います。
  94. 正木清

    ○正木委員 そこで私は中央気象台にお尋ねいたしますが、やはり「昭和三十三年一月二十六日南海丸遭難に関する気象資料概要、昭和三十三年一月二十八日気象庁」でございますが、これをごらん願いたいと思うのですが、あなたの方は「四国東部および紀伊半島沿岸においては、最大風速は十五ないし二十メートル程度に達した。」こうなっているのです。この二十六日夕刻から十五メートルないし二十メートルに達したということは、これは陸上だろうと想像いたしますが、この点について、一体夕刻とは二十六日の何時ごろなんですか。そうしてこの資料は一体どこから出たのか、これを明確にしてもらいたい。
  95. 和達清夫

    和達政府委員 この気象概況は概況でございまして、詳しく後ほど申し上げるつもりで出したものであります。これらの資料はことごとく気象庁の管下の気象官署から出たものでありまして、みな陸上と申しましても、海岸に近い陸上の資料であります。
  96. 正木清

    ○正木委員 そこで私はどなたでもけっこうですから責任ある方から御答弁を願いたいと思うのですが、ただいま海上保安庁の長官の答弁では、南々東約十五メートルとは陸上ではなくて海上でございますという答弁をされた。それから一方気象庁は、十五メートルないし二十メートルについては、これは陸上でございますと答弁した。そうすると私はそこに非常に大きな疑問がわいて参ります。私の調査した結論から言うと、先ほども前段で私が申し上げたように、これは突風を食らって三角波で沈んだと、こう私は考えておるのですから、海上における気象は異常だ、陸上では判断できない異常突風が来て、そこで三角波が起きてやられたのだ、こう結論的に考えておるのですが、専門的な行政上のお役所であるあなた方の間で意見の食い違いがある。海上保安庁は海上で十五メートルというが、海上で十五メートルで船が沈むようなことは常識上だれが考えても考えられない。ところが一方の気象庁では十五メートルないし二十メートルは陸上でございますと答えた。一体どちらをわれわれは真実としてとることがいいのか、これに対してどなたでもけっこうですから、責任ある御答弁を願いたい。
  97. 和達清夫

    和達政府委員 この間お手元に差し上げました気象資料概要に徳島と沼鳥と和歌山の風速が出ております。ここに出ておりますのは特定の時間でありまして、この間をこまかく検査いたしますことは観測の自記紙を調べなければ出ないのでございますが、大体はこれでわかります。先ほどの海上推定十五メートルというお話は、これは遭難の時刻に近いところをおっしゃったのだと思います。それが十八時から十九時の間でありまして、ここでごらんいただきますと徳島は四・六メートルと八・四メートルが十八時と十九時になっております。これは地勢の関係上風は少く出ております。沼島におきましては十八時が八メートル、十八時三十分が十一・七メートル、十九時が九・六メートル、和歌山におきましては十八時が十一メートル、十九時が十メートル、これは大体です。この気象庁が十五ないし二十メートルと言いましたのは、夕刻から南風が強くなり、この程度までに達したというのでありまして、この時刻以後風は西北西に回りますが、この回ってからが強いのであります。南海丸の遭難はおそらく回る前に起ったのではないかと思います。回ってからはごらんのように、たとえば沼島でも十八メートルも吹いておりますし、徳島でも回ってからは強い。それから室戸とかもっと外洋のは、四国東部及び紀伊半島沿岸で二十メートル近くも吹いておりますから、ここで十五ないし二十メートルと申し上げたのであります。
  98. 正木清

    ○正木委員 ますます気象関係のものが奇々怪々になってきたわけですが、そこで私は気象庁長官にお尋ねするのですが、徳島から二十六日の十七時発令を出しておりますね。徳島気象台より十七時発表の強風注意報の電報の内容、これはあなたの方でもお調べだろうと思いますから、その内容をここで詳細に御発表願いたい。
  99. 和達清夫

    和達政府委員 肥沼予報部長からお答えいたさせます。
  100. 肥沼寛一

    肥沼説明員 今のお答えをいたします前に、先ほどのお話でございますが、気象庁の発表が陸上で十五メートルないし二十メートルというのは、和達先生の誤解でございます。これは海上としてございます。陸上では十メートルないし十五メートル、海上で十五メートルないし二十メートルという発表にしてございます。海上保安庁のと食い違ったというお話でございますが、こちらのは予想でございますので、幅を持たして、十五メートルないし二十メートルと、こう申しておりますので、非常に大きな食い違いではないと存じます。  それから今の十七時に発表した内容でございますが、これはこのようになっております。低気圧が当地方の北方を通過する見込み、全域今夜半前から南の風が強くなり、後西の風に変り、明日も続く、陸上の最大風速は十ないし十五メートル、海上では十五ないし二十メートルの見込み、こういうような内容でございます。  なおこれにつけ加えまして、これは予想でございましたので実際の変化を申しますと、これは先ほど和達長官からもお話があったようでございますが、もう少しく説明を加えますと、今の内容に北方を低気圧が通過するとございまして、低気圧には二本の不連続線が付随しております。そうしてこの不連続線に沿って風が強いのが私どもの常識でございます。実際この徳島の風の実際は、私どもの方からお配りいたしました表でごらんになるとわかりますように、徳島では十四時に風が十メートルという強さになっております。これは今申しました前の方の不連続線が通過したものでございます。それから今夜半前後より強くなると申しましたのは、あとの方の不連続線が来る予想を立てて申したのでございますが、実際に比較してみますと、二十二時に十一・五メートルという風を観測しております。もちろんこれは徳島の陸上でございますから、少し海上よりは弱いとは思いますが、こういうふうになっております。その間の風は、一番弱いのが十八時の四・六メートルでございます。強いのがその後の八・四メートルでございます。従いましてその夕刻ごろはまだ弱くて、十時から最も強くなったということは、実際に徳島の気象台が出しました注意報の内容とは、厳密に申しますと予想でありますから、食い違いもございますが、大筋では間違っていないと私ども存じております。以上でございます。
  101. 正木清

    ○正木委員 徳島地方気象台十七時発表の強風注意報の電報の内容ですが、私の調査したところによると、その電報内容はこうなんです。参考までに私の方でも読んでみましょう。  徳島地方気象台より十七時発表の左記強風注意報電報を十八時二十分に受領。低気圧が日本海を通過する見込みです。全域強風が強くなります。今夜夜半前から強くなります。明日もまだ続きます。南の風後西の風、陸上の最大風速十メートルないし十五メートルの見込みです。海上最大風速は十五メートルないし二十メートルの見込みです。私の調査した電報の内容は以上の通りでございます。しかしこのことはさしてここでは問題にならなくなって参りました。なぜ問題にならなくなってきたかということ、この南海丸が遭難をしたであろうという時刻の風速が、今的確にあなたの方の資料で明らかになったわけですね。ということは、これは徳島でございますが、十八時から十八時三十分の間では四・六メートル、それから十九時から十九時三十分の間で八・四メートルですね。これは間違いございませんか。その点簡単でいいです。間違いがあるとかないとか……。
  102. 肥沼寛一

    肥沼説明員 十七時あるいは十八時、そういう時間は私どもの方は十分間の平均になっております。数字は間違いございません。
  103. 正木清

    ○正木委員 そうすると常識的に考えて、十八時から十八時三十分、すなわち六時から六時三十分の間は四・六メートルの風速であった、それから十九時から十九時三十分ですから、七時から七時三十分の間は八・四メートルであった、こう了解してよろしゅうございますか。
  104. 肥沼寛一

    肥沼説明員 ただいまの三十分間のはもう一ぺん計算し直さないとわかりませんが、私どもの方でふだん使っているのは十分間の平均でございます。これは十八時あるいは十九時、そのときの十分間の平均で、それが今正木先生のおっしゃった数字でございます。
  105. 正木清

    ○正木委員 いずれにしても、この時間内における海上における風速というものは非常に少かった、非常に平穏であった、こう理解してよろしゅうございますか。
  106. 肥沼寛一

    肥沼説明員 ただいまのは徳島の数字でございまして、陸上に関しては多少の数字が違いましても、大体どこも風が弱かった。これは間違いのないことでございます。ただし海上につきましては私ども推定をしているだけで、実際の観測がまだ入手することができませんので、申し上げかねます。
  107. 正木清

    ○正木委員 海上の風速に対するあなた方専門家の推定でよろしゅうございますから、ここではっきり発表願いたい。
  108. 肥沼寛一

    肥沼説明員 これは陸の方から風が吹くか、あるいは海上から吹いてくるか、あるいはみさきのようなものがじゃまをするかということで、風の方向、地形によってかなり違います。しかしおよそのところを申しますと、私ども今申し上げましたような陸上の十分間推定のものの大体三割増しから五割増し、もちろんこれは風の方向によって非常に食い違いがございますが、そのくらいの推定をしております。
  109. 正木清

    ○正木委員 これは推定でございまするが、たとえば四・六メートル、八・四メートルに対するかりにあなたのおっしゃる五割増しに風速が高まったとしても、船が遭難するような強風ではなかったのだということはここで明らかになったわけです。  そこで私が当局にお尋ねしたいのは、この海上保安庁の南海汽船小松島営業所に対して「危険、危険」と連呼したまま消息を断ったのだ、これが今ここで明確になったように問題になってくるわけです。徳島の気象台を土台にすることが一番妥当だと心得て、私は徳島の気象台を土台にしたのだが、陸上は四・六メートル、十九時三十分にして八・四メートルなんです。それから私の調査した徳島地方気象台が十七時に発令した強風注意報は今夜半前から強くなるからという、この夜半前の定義が問題になってきます。夜半前とは一体どこから夜半前なんだ。これは常識上考えれば、相当夜おそく——夜半前ですから——それから陸上において十五メートルないし十メートルの強風が出てくる、海上においては十五メートルないし二十メートルの強風が出てくるのですから、夜半というこのころはいずれも仏様になっておる時期です。実際遭難時期は六時から七時までの間です。そうすると、陸上においては、今ここではっきりしたように、四・六メートル、八・四メートル、これは微風でございます。かりにこれに五割増しを加えましてこれを海上の風速にたとえても、これは決して突風でもなければ強風でもないわけです。だとするならば、なぜ一体この船が沈んだのだ。小松島営業所がとった「危険、危険」と連呼したまま消息を断ったのだ、これが問題になってくるわけです。疑問になってくるわけです。海上は微風状態なんです。波風立っておらないわけです。だのに、「危険、危険」と連呼したまま消息を断ったのだ。そうするとこの船の沈んだ原因は一体何だ。ここに大きな疑問が出てくるわけです。これに対して、私は船舶局長がその方の担当だと思いますので、あなた方も海難審判所を通じてこの真相を相当究明されておると思う。だから、私はこの委員会でこれに対するはっきりした答弁をお願いします。
  110. 木村俊夫

    ○木村政府委員 実は私も非常に専門的でないお答えをして恐縮なんですが、私もしろうと考えといたしましては、こういう気象台の通報下においてどうして南海丸が転覆したかということにつきましていろいろ考えておりましたのですが、今正木先生の御指摘になりましたような気象情報下におきまして私が考えますのは、きわめて局部的な突風が起りまして、時あたかも潮流の変化の時期でございますので、この二つの悪条件が重なりまして転覆したのではないか、こういう感じを持っております。しかしながらこれは非常に専門的でございませんので、今後専門的な調査によりましてまた訂正をさしていたただきたいと思いますが、この気象台の専門的な、たとえば、和歌山地方気象台とか、徳島気象台の予報能力の及ばないような突風がきわめて瞬時的に、局部的に起ったのではないか、そのために潮流とともに、それに御指摘になりましたような三角波が起って転覆の余儀なきに至ったのではないか、こういうふうに私は感じとして考えております。
  111. 正木清

    ○正木委員 私は政務次官の答弁もさることながら、私どもとして聞きたいのは、船舶局長なり、当の運輸省の中で、これを担当する責任者から聞きたい。仮定の問題ではなくして、真実を聞きたい。
  112. 小山亮

    ○小山(亮)委員 議事進行について。正木委員が今質問しておられることは、これはだれも不思議に思っておることでありまして、私もその原因をどんなことをしても——これは日本の将来の海上航行安全のために、原因はどんなことをしても私は追究し、きわめなければならぬと思っております。木村次官のお話を伺いますと、それは木村次官の想像なんです。想像だけでこの問題を解決していこうということは許されない。今日私どもは科学的にその原因がどこにあるかということを、これでなければならぬというところまで突きとめなければならぬ。それがために質疑を展開しておるのでありますから、ただ政府当局者が自分の仮定の想像だけで、私はこう思っているのだからと言って質問を封じようというような感じを持たせるような答弁は遠慮を願いたい。どこまでもこの原因をきわめ尽さんとするのでありますから、その意味で正木委員の質問は重大でありますから、どこまでも科学的にはっきりと原因を突きとめることについてはあなた方も協力していただかなければならぬ、そのつもりで御答弁願います。
  113. 肥沼寛一

    肥沼説明員 先ほど正木先生からのお話は、徳島のことを中心にしてお話でございましたので、徳島の資料についてのみお答えいたしましたが、今のに関連いたしましてほかの海上の観測はありませんので、あの海峡の周囲の風について申し上げたいと思います。なお先ほど海上では五割増しと申しましたが、そのほかに考えなくてはならないことは突風でございます。先ほど申し上げましたように、私ども観測は十分間の平均、突風はかなり強くなることは、この前の洞爺丸事件のときにも五十メートルの風が吹いた、いや三十メートルだということは、これは平均と突風の食い違いでございます。今回の場合もその食い違いについてはお考えおき願わなければならないと思うのです。先ほど風の方向によって海上の風がかなり違うと申しましたが、ここにありますのは、和歌山で申しますと当時の風は南々西の風でございます。徳島は少し陸に入っておりますし、また小松島は観測がございませんけれども、これも四国の南のみさきにさえぎられて多分風が弱かっただろうと推定されます。しかし和歌山の方は真正面に風が吹いてきたのでありますが、そこでは十六時の風が十メートル、十七時十メートル、十八時十一メートル、十九時十メートルという風になっております。確かに徳島より強くなっております。それからなおほかに資料がないかと思って私どもいろいろ調べたのでありますが、あの船が沈没しましたすぐ北の沼島にたまたま風の観測がございました。これはその観測所が島の少し北側で位置が悪いから、一これもほんとうの風の推定にはならないのでありますけれども……(正木委員「推定ではなく、責任を持って答弁しなさい」と呼ぶ)これは海上の推定にはならないと今申したのであります。風は現地観測した実際の風でございます。十七時に六・九メートル、十八時に八メートル、十八時三十分、これは記録から読んだのでありますが、十  一・七メートル、十八時三十分には最も強くなっております。十九時には九・六メートル、十九時三十分が十二・九メートル、徳島とはだいぶ様子が違っていることがこれでわかる。実際船が沈んだ現地のことについては今何と申しましてもお答えできないのが残念でございます。
  114. 正木清

    ○正木委員 私気象庁のあなたに真相を答弁しろなどと言っているのではないのです。答弁の内容がどうかと思うので、そこで謙虚な気持で答弁をしてもらいたいのです。理由のいかんにかかわらず日本は毎年多くの犠牲者が出ているのですから、その霊に対してもわれわれは謙虚な気持で責任の所在を明らかにしなければならぬじゃないかと言っているのです。あなたは和歌山の例をとりましたが、私は今回の遭難事件にはやはり徳島の気象台の資料を中心にすることが妥当だ、和歌山は離れている、こう考えたから徳島を土台にしているわけです。沼島の場合にしても、今あなたがはっきりおっしゃったように、六・九から十八時三十分には十一・七なんですから、これで船が沈もうなんということはだれが考えても常識的に考えられないことです。しかもあなたの答弁の中でその風速観測所が適当な位置ではないけれどもと言っている。あとで速記をごらんなさい。それであるならば最初から適当なところへ観測所をお作りになったらどうです。そういう答弁ではいけないのであって、その方の専門的な担当者から、なぜ風速が少いのに船が転覆して、とっさの間に百数十名の犠牲者を出したのか、これだけ時間が経過している今日、運輸省は海難審判所その他の機関をもってなぜ中間的な責任ある報告ができないのか、これを質問しているのです。
  115. 山下正雄

    ○山下(正)政府委員 確かに私どもの検査並びに規定の上におきまして、船がこの程度の風には十分復原力ありという検査もし、また事実そういう性能であったと存じております。しかしこの船が現実には沈没しているのでございますから、私どもも実に意外な感じがしております。この原因につきましてはどこにその原因があったかということを徹底的に調べたいというふうに考えております。またそうすることがなくなられました死亡者の遺族の方々への一つ供養にもなり、また今後の船舶行政を推進していく上の非常な力になる、またそうしなければならぬ、こういうふうに考えている次第でございます。
  116. 小山亮

    ○小山(亮)委員 ちょっと関連して。私は海上保安庁長官に伺いたいのですが、船の沈没しました原因についてはどういうわけで沈んだかということを私ども非常に疑いを持っております。従ってどうにかしてその原因をきわめたい、原因をきわめることが将来の海難をなくするゆえんでありまして、私はそれがために役人を首にしようという考えは毛頭ありません。ほんとうに日本の海上航行を安全にするためにはどうしたらいいかということを真剣に考えたい。ですから、沈没しております状況を私たち知りたい。どちらの方を向いてどういう角度で沈んでいるのか、それからまた救助にサルベージをお入れになったその報告はどんな報告をあなた方が得ておられるか。少くとも沈没した原因というものに対して、私たちが何らかの推定を下し得るような報告が来ておるかどうか。話に伺いますと、沈没をいたしました船の遭難者を救助してみると、ほとんど溺死じゃない、水を飲んでないで海の中で死んでいる。ショック死ということを私は非常に不思議に思うのです。ですからほんの瞬間にぱっといったのじゃないか。だんだん沈んでいくのじゃなくて、ほんの瞬間にさっといった場合に何らかのショック死が起るのじゃないかというような点で、従来の遭難者の状態ときわめて違う。これはきわめて珍しいできごとだと私は思うのです。でありますから、もう捜査をされた方々はそれを知っておられるわけなんだ。そうしますと、運輸省のこれに関係しておられる方は相当これに対して論議をしておるはずなんだ。しからばどうしてそういうことをそれだけのことでも議会に報告にならないか。これだけ心配しておる議会に対して、そういうことを一言も報告しないということはどういうわけだ。私はそれをほんとうに伺いたい。毎年毎年、第五北川丸事件におけるところの遭難者の遺霊に対しても、また今度の南海丸の遺霊に対しても、私どもは実に申しわけないと思う。同様の気持をあなた方責任あるところの役人は持っておいでになるはずでありましょうから、それに対してのあなた方のほんとうのことを私は御報告を願いたいと思うのです。
  117. 正木清

    ○正木委員 小山委員の質問と関連して私も今質問しようと思っておったのですが、さらにつけ加えて答弁の資料にしたいと思いますことは救命胴衣はつけていないと新聞は報じているのですね。ありのままの服装で、しかも救命胴衣はつけていないのですから、全くこれはせつな的に転覆したのだ、こう想像することが妥当ではないか。こう考えてくると、海上は全然船の沈まない程度であることは今ここで明確になったのですから、木村政務次官が言うように、何か突風でも起きて、その三角波でいったとも想像つきますが、ほかに何か原因があったのじゃないか。それからもう一つ、私、答弁の資料として申し上げたいのですが、新聞の報じているところによりますと、船長の胴体が何か艦橋に縛られておった、こういうことを見たような記憶があるのですが、(「あれは違う」と呼ぶ者あり)まず第一にショック死が考えられる。そのショック死だと想像する原因は、服装が通常のままであったということ、それから救命胴衣はつけていないということ、しかもその死体が全然水を飲んでいない、ありのままだということが新聞に報道されていると、ほんとうのせつな的にいったということを考え合せると、私は従来の遭難の状態とはまた異なった点で徹底的に究明する必要があるのじゃないか、こう考えますので、責任ある答弁を願います。
  118. 松野清秀

    ○松野説明員 南海丸の船体の沈没状況ですが、船首を北に向けまして、最初のころは二月一日ごろの報告では船体が約真横よりももっと、百十度くらい傾斜して、左舷に横転しておる、こういう報告を受けておりましたが、ごく最近の報告によりますと、だんだん角度が減りまして、現在では約九十度横転のような状態にある、こういうことを言ってきております。これは間違いないと思っております。
  119. 正木清

    ○正木委員 君の答弁は何だ、そんな失礼な答弁があるか。船の沈んだ傾斜角度を私は質問しているのじゃないのだ。船の沈んだ動機について、小山君も僕も質問していることは遺体を揚げてみると全然水を飲んでいない、新聞はこれをショック死と報道している。服装もありのままだ、救命胴衣もつけていない。だとすればせつな的に何らかの事故によって沈んだのだろうということがわれわれの質問の中心です。だから沈んだ原因というものを、あなたが答弁するに当っては責任ある答弁をしなさい、こう言っている。どこに原因があるか、こう言っているのです。
  120. 松野清秀

    ○松野説明員 遺体はほとんど全部だと思いますが、これは救命胴衣はつけておりません。お話の通りです。それから私ども調査したところでは、大部分がやはりショック死であるといわれております。ですからこれは瞬間的に横転したものであることは明らかだと私は考えております。しかしどうしてそんなら瞬間的に横転したかという点につきましては、今まだこうだと申し上げる段階までは至っておりません。
  121. 正木清

    ○正木委員 そこで私はさらにお尋ねしたいのですが、これだけの事故でございますから、運輸省関係海難審判庁、これらも相当調査が進んでおると思うのですが、その中間的な報告書は運輸当局に来ておりませんか、これをお尋ねいたします。
  122. 中村三之丞

    中村国務大臣 神戸の海難審判理事所の理事が行っております。しかしこれはまだ私の手元には報告は来ておりません。これは検事でございますから、果して報告しますかどうか知りませんが、しかしその報告によって真相はわかると私は期待しておるのでございますが、今のところ報告はございません。
  123. 正木清

    ○正木委員 私は残念ながら大臣の答弁としてはやはり不親切ではないかと思う。たとい海難審判庁が検察庁的な役割を果そうとして、かりにあなたのところにまだ中間報告が来ないとしても、当然運輸省は現地に行って、検察庁自身が捜査の手を広げておるのですから、あなた方自身も責任ある調査をやるべきではありませんか。相当の時日がたっておるのではありませんか。本日のこの委員会でもこうして質問を展開してみると、あなた方が責任ある答弁をなさっていないではありませんか。あなた方の出した資料は何でございます。どうもわれわれに出した資料は、これことごとく気象関係、強風関係が土台の資料ではございませんか。私はそういう不親切なことであってはいけないと思う。いっときも早く現地に責任ある人を派遣して、たといその調査が結果的には的がはずれたとしても、誠心誠意をもってこの原因を究明する努力をなさるべきではないか、私はこう思います。  そこで重ねて私は質問を進めますが、この南海丸の検査は、三十一年の何月に一体定期検査をやったか、こういうことをまず聞きます。それから中間検査は三十二年の何月にやったかということをまず聞きます。そしてこの定期検査及び中間検査でどういう結果が出て、その結果に基いて会社に対して運輸当局はどういう処置をとったかを詳細にここで明らかにしてもらいたい。
  124. 山下正雄

    ○山下(正)政府委員 お答え申し上げます。南海丸は船の建造につきましては製造中検査という検査を受けております。昭和三十一年四月二十七日に第一回の定期検査を終了いたしまして、そのときに検査証書を授与いたしております。それからそのときに船の復原性能の試験をいたしましたが、先般もお話し申し上げました通り、復原性能につきまして法令には当時規定はございませんでしたけれども、予備的に復原性能について調査をいたしました。その結果、先般の委員会で満載入港と申しましたが、あれは空艙入港と訂正を願いたいと思いますが、空艙入港の場合に船首尾水槽に水を張らなければ、強風の場合に若干復原性に欠けるところがあるという結論になりまして、従って先般も御説明申し上げました通知書に、空艙入港の場合には船首尾水槽に水を張りなさい、しかしその場合はもちろん荒天の場合でございまするが、荒天の場合の空艙入港の場合には船首尾水槽に水を張りなさいということを船長に指示をいたしております。その後船が通航いたしておりまして、第一回の中間検査を昭和三十二年六月二十一日に終了いたしております。そしてそのときにおきましてビルジ・キールと申しまして船の湾曲部にありますひれを増大いたしております。その理由としましては、この南海丸はGMと申します船のスタビリティに関係のある性能が割合に大きいために、船が強くゆれるという苦情がお客の方からあったわけであります。従いまして船の動揺週期を長くし、ゆれ方を少くするためにビルジ・キールを取りかえております。それから先ほど申し上げましたように、空艙入港の場合にスタビリティに若干の問題があるという点もございましたし、また本船の前後の傾斜、トリムと申しますが、トリムが少し少くて推進効率が落ちるわけでございます。水面からプロペラの先までの距離が割合に少かったために推進効率が落ちますので、それを防ぐためにバラストを十五トンほど搭載いたしました。その結果さらに復原性能の試験をやりまして、そのときに船首尾水槽に水を張らなくても、空艙入港でも十分の復原力ありということで、そのときには復原性能の規定が実施されましたから——注意書というものがありますが、注意書というものは出しておりません。検査の過程を通じまして格別悪いというようなところもなく、完全に検査に合格いたしておりまして、検査証書その他を発行いたしております。以上でございます。
  125. 正木清

    ○正木委員 今あなたが答弁されたことは、大体私の調査したところと一致しておるわけなんです。そうすると検査をされた結果に基く南海丸の不備と見られる点は、一応行政的な処置によって改善をされておる、こう見て間違いないと思うのです。そうなると一体この南海丸が、これも専門的なことになるのですが、どの程度の強風まで安全性を保ち得るのかという疑問が出てくるのです。乗客は百数十名なんですから、乗客を多く乗せたことによってこの問題が起きたとはどうしても考えられない。これに対して御調査があったら御答弁を願いたい。
  126. 山下正雄

    ○山下(正)政府委員 お尋ねの復原性能の点でございまするが、私どものこの復原性能の規定にございますように、計算といたしましては常風毎秒十九メートルの風が真横から吹きまして、その場合にその風を真横に受けました船がこの風によって起きました波に乗るわけでございます。乗って約七割程度の同調をしてゆれます。波の傾斜によりまして船がゆれますが、七割程度同調してゆれる。そしてさらにその上に約五割増しの突風が船に加わって、船を最も悪い状態に陥れたというときにも、船が返り得るということを基準にして復原性能の計算をいたしております。その計算の過程におきまして、この船は十分合格しておるわけでございます。しかし現在の造船学の上におきまして、たとえばその海流を計算に入れますとか、またはそのほかいわゆる波にいたしましても、普通あり得る波を想定いたしておりますけれども、それが三角波であるとか、また非常にむずかしいような気象の状況につきましては、この計算上取り入れることがなかなか困難でございまするので、そういう特殊な例につきましては考えを及ぼすことができないわけでございます。
  127. 正木清

    ○正木委員 そこで今のあなたの答弁からも大体予想されますことは、今の段階ではどうしてもこの沈没の原因が究明できないのだ、想像がつかないのだ、こういうことでございますが、私が飛んで歩きましていろいろの専門的な人から聞いてみたところ、遭難の原因は突風による三角波が原因ではないのか、こういう意見を言われる方が専門家の中で相当ございました。しかしあなたの今おっしゃる十九メートルに対して五割増しとすれば二十八・五メートルということになるわけですね。この二十八・五メートルでもなおかつ南海丸は安全なんだ、これが造船学から見て常識なんだ、こうおっしゃってくると、沈没の原因はどうしてもきようの委員会ではどなたからも責任ある答弁はいただけないのだが、そこで運輸当局にお尋ねすることは、この原因というものは一体どういう方法調査を進めたならばこの真相が明確になるのか、調査方法を明らかにしてもらいたい。
  128. 山下正雄

    ○山下(正)政府委員 ただいま十九メートルに対しまして五割増しということを申し上げましたが、それは風圧で五割増しでございますから、大体風の圧力というものは速力の二乗ということに考えますと、風の速さとしましては約二十三・五メートルくらいになるわけでございます。首席検査官からちょっと御報告したいと思っておりますが、よろしゅうございますか。
  129. 藤野淳

    ○藤野説明員 復原性能規則が作られました経緯を調らべてみますると、ただいま船舶局長から御説明申し上げました突風を受けた場合の船の安定の限度が風の速さとどういう関係があるかという問題が焦点でございますが、十九メートルの定常の風が船の真横から吹いているとします。その場合の波はいろいろな不規則な波が重畳しておる波でございまして、中には三角波のようなものも考えられます。その場合に風を受けますと船は傾きまして、傾いた位置を中心にいたしまして、風上と風下にゆれるわけでございます。そうしまして風上の方にゆれましたときに圧力で五割増し程度の突風が起る。その場合に風下の方に傾くわけでございますから、これは非常に理想化された計算をいたしたわけでございまして、これの五割増しの圧力とは風の速さに換算すると一体幾らのスピードになるかということになりますと、二十三・五メートルという数字が出まするけれども、突風がやはりやや定常的に突風になる——非常に論弁のようでございますけれども、十九メートルの風でも、突然、次の瞬間には船が風上から風下までゆれる間においてずっと同じ速さで五割増しの圧力というふうなことにいたしますと二十三・五メートルでございますが、その瞬間三十メートルになって次は二十五メートルになって二十メートルになるというふうな瞬間的な吹き方をいたしますと、大体瞬間風速はあるいは三十メートルになるかもしれません。そういうことは十分計算の中には考えられておるわけであります。ちょっと御説明申し上げました。
  130. 正木清

    ○正木委員 あなたにもう一つお尋ねしますが、かりに二十三・五から三十というような瞬間風速が出た場合にはこの南海丸は非常な危険な状態になる、こう考えてよろしゅうございますか、良心的に専門的に御答弁願いたいと思います。
  131. 藤野淳

    ○藤野説明員 瞬間的に三十メートルになりましても、瞬間風速の吹く長さがございますので、瞬間と申しましても非常に申しにくいわけでございます。従いまして処理しにくいものでございますから、ただいま申し上げましたように、圧力で五割増し程度というふうな処理の仕方をしております。
  132. 正木清

    ○正木委員 実はその瞬間ですね。瞬間とは一体どれくらいの時間なんだということになると、この海上保安庁から出ておる資料によると、先ほど私申し上げたのですが、南海汽船の小松島営業所に対して「危険、危険」と連呼したまま消息を断った、こう明確になっているのですね。だからこれは無線電話なんですね。だからその「危険、危険」と連呼して消息を断ったというのですから、これからあなた方は専門的に大体想像がつきませんか、これをお尋ねしたいのです。
  133. 藤野淳

    ○藤野説明員 ちょっと想像がつきかねるのでございます。
  134. 正木清

    ○正木委員 私先ほど質問したに対して答弁がないのですが、最後にはこの遭難の真相は一体何だというと、残念ながらきょうの委員会では全然具体的なものをつかみ得なかった。ただし言い得られることはこの気象関係におけるあらゆる資料を土台にして出た結論は当時の海上というものは船が遭難するような強風は吹いておらなかった、これだけはもうはっきりしたわけですね。しかし今の答弁にあるようにせつな的な強風というものはあり得るのだという疑問点が一つ出たわけですが、そこで一体このまま真相を究明しないでほうっておいてよろしいかというと、そうではないと思うのです。では真相を究明するために当局はどのような努力をしているのだ、それで大体いつごろになればこの真相が明らかになって国民の前に発表することができるのだ、これを答弁願いたい。
  135. 木村俊夫

    ○木村政府委員 運輸省といたしましてはこういう海難事故の権威ある調査、また権限のある調査海難審判所がやっております。目下海難審判所の理事官がその原因の究明に当っております。しかしながら運輸省といたしましてもいたずらに理事官の報告を待つのではございません。そこでまず考えられます点は船舶構造上の調査でございます。この点につきましては幸い同型のわか丸が残っております。また当南海汽船におきましてもわか丸が就航しておりませんその間に、運輸省におきましてこのわか丸を対象といたしまして復原力の再調査をいたしたい、こう考えております。と同時にこれは大体四十日以上かかるそうでございますが、今回遭難いたしました南海丸を引き揚げましてその計器等を調べまして、それにより原因の究明に役立つかと存じます。なお気象条件につきましても、目下のところきわめて御満足のいくような報告はございませんが、その当時におきます、たとえば十分間において吹いた突風がどこかの漁船であるいは捕捉されていやしないかという希望もございます。そういう点も合せまして原因の調査に役立たせたいと思います。
  136. 正木清

    ○正木委員 そこで私はもう一点お尋ねいたしますが、海難審判所の結論というものは今回の遭難事故では船長以下全部でございますので、なかなか困難だと思います。そこでこの同型であるわか丸を試験台としての調査が四十日かかるとあなたおっしゃっておりましたね。
  137. 木村俊夫

    ○木村政府委員 わか丸はすぐできます。
  138. 正木清

    ○正木委員 すぐできますか。それから遭難した南海丸が四十日ぐらいで引き揚げられる、そうすると大体結論が出るというお話でありますから、私の質問は一応きょうは打ち切っておきますが、最後に大臣に一言伺っておきたいのです。この犠牲になりました遺族に対する慰謝料といいますか、損害賠償といいますか、先ほどの報告ではまず一万円、続いて死体の引き渡しと同時に会社から八万円ということでございましたが、先般の当委員会で同僚の山口君の質問に対して大臣は南海汽船はわずかな会社であるが、その背後に控えている南海電鉄は大会社であるからして、今度は十分取ってやるのだと、非常に熱意を持っての御答弁を承わったのですが、その十分なる慰謝料、損害賠償とは大臣はどの程度の額を考えておられるか。もうそろそろ遺族会も心配になってくる時期でございますので、大臣の委員会における答弁に非常に大きく希望を持っておりますので、この際明らかにしておきたい。
  139. 中村三之丞

    中村国務大臣 私は今何十万円、何百万円の補償を取るということは、ここで金額は申しかねます。この間私が最大限の補償をするように指示したということ、その通りでございますが、今回の場合は定期船協会を保険者とし、船会社を被保険者として海上保険が一人前二十五万円かかっておりますから、これは完全に取れます。と申しますことは、これは定員を超過して乗せておりませんから、第五北川丸あたりと違いましてよろしいと思いますが、今見舞金とかあるいは葬式料は出しておりますが、いわゆる問題は補償でございます。これは遺族会と会社あるいはその親会社との話し合いになると思います。従ってその話し合いの場合に、不当な補償を会社が申し出た場合は私は運輸省として十分のことをするように会社に申すはずであります。しかし今幾らがいいかということは私から申し上げることはちょっとできません。これは遺族会にもいろいろのお考えもあると思います。遺族会と会社と話し合いをしていただいて、その間をわれわれがあっせんをしていくということは辞しません。しかし今ここで、繰り返して申すようでございますが、新聞に伝えてありますような何百万円——多いほど私はけっこうと思いますが、何百万円ということは私から申し上げることはお許しをいただきたいと思います。
  140. 正木清

    ○正木委員 今大臣がおっしゃったように、これは船主協会に加盟している定期航路としては有力な会社でございますから、あなたがおっしゃった二十五万円については私は問題なかろうと思います。そこで一言お尋ねしたいのですが、この南海丸の保険はどのくらいついておったか、当然お調べになっておると思いますので、御答弁を願います。
  141. 中村三之丞

    中村国務大臣 これは海運局長がよく知っておると思います。
  142. 粟澤一男

    粟澤政府委員 一億円の船体保険であります。
  143. 正木清

    ○正木委員 私どもの方の調査でも一億間違いございません。そこで私は大臣に、これは要望でございますが、おそらく遺族会としては、この遭難の真相が明らかになればなるほど、やはり相当の要求をされるもの、こう考えております。しかも同時に昨年の北川丸などは事情を異にするわけですから、もし船会社と遺族会の間、それから船会社の親会社と遺族会の間でいろいろの問題ができましたときには、当然われわれ当運輸委員会にもいろいろ陳情があろうかと思いますが、本日の大臣の答弁を信頼いたします。あなたがかりに大臣から身を引かれたような場合があっても、きょうの委員会の答弁を土台にして最善の努力を払ってもらいたい、この点を強く要望いたしまして、私の質問を終ります。
  144. 赤澤正道

    赤澤委員長 生田委員
  145. 生田宏一

    ○生田委員 先ほどからいろいろと御質問もあり、お答えもありましたので、事件の全貌もだいぶ固まってきたようでございますが、この際私たち現地関係のあります者は、避難遺族の者からきわめて切実な訴えを受けております。それは避難者の中でまだ遺体の揚らない者が六十体——六十二体と申しておりますが、約六十体ございます。避難現場からの情報によりますと、もはや今の状態では六十体の遺体を探すことは困難である、こういう趣きのようでございます。その原因は船が四十メートルばかり泥中に沈んでおって、五つの船倉の中にあります遺体については、潮流が激しいために泥土がその船倉の中へ入っていって、それを取り出しても取り出しても潮流のために泥土がその船倉に入っていく、その作業が非常に困難であるということと、その船倉の中には遺体はあるには違いないが、視界がきかないので、かいもく見えないので作業ができない。またその船倉から出ておるものでありましても、船の下敷きになって泥中に埋もっておって、それを取り出すことも困難である、そういう状況であるから遺体の取り出しはまずこの程度で作業をやめて、船を浮揚せしめて、しかる後に船倉にある遺体なりあるいは泥中に埋もっておる遺体なりを発掘する方がよかろう、こういうふうな結論になって、船の浮揚についての作業に今の作業を変更せしめよう、こういうような方針であるということでございます。これは遺族にとりましてはとうてい耐えられないことでございまして、今政務次官からは四十日という作業日数についてのお見通し説明がありましたが、現地におる者としましては準備その他を加えて七十日ぐらいは必要ではなかろうか、こういうように言っておるわけでございます。そうしますとかりに遺体が現場にありましても、七十日間その遺体を引き揚げることができない。その気持というものは遺族としては耐えられないものであるから、万難を排してでも現場において遺体の発掘ということはできないものであろうかどうか、そういうのが遺族の切な願いでございますから、現場における作業の実態と、また海上保安庁なりが現場を指導しておりましょうから、実際はどういう状況にあるのか、それをお聞かせ願いたいと思うのでございます。
  146. 中村三之丞

    中村国務大臣 遺体をすみやかに遺族に引き渡すことが運輸省の目下の最大の任務であり、大きな義務であり、また人道上当然だと思いますので、船舶局長に申しまして、サルベージその他を使って会社が費用を惜しまずやるように船舶局長に言わせておりますが、それについてはできるだけのことをしまして、本日船主である南海汽船と引き揚げの契約を日本サルベージとすることになっております。そうしてすみやかにこの問題を解決する大きな前提として、遺体はすみやかに遺族にお渡しいたしたいと考えております。
  147. 生田宏一

    ○生田委員 船体引き揚げ以外に方法がないという前提に立っての大臣のお話であったと思うのでございますが、現実はもうそこまで来ておるのでございましょうか。その点について遺族としてはなおあきらめ切れない気持があるのですが、海上保安庁におけるその点の見通しはいかがでございましょうか。
  148. 島居辰次郎

    島居政府委員 二十八日に船体を発見して以来、潜水作業によって船内捜索をやっておりまして、あとは漁船を手分けして船体付近の捜索をやっております。それから巡視船によっては海上面をそれぞれ捜索しておりますが、作業が天候の平穏のときにだけ限られる関係上、意のごとく現場でも進んでおりませんが、巡視船は最近ずっと十二隻出ておりまして督励してやっているようなわけでありますが、船内の捜索は泥に埋まっていない部分についてはもうほとんどやってしまって、引き続き船体内部の泥の中にある遺体収容作業にかかっておるけれども、その作業はまずサンドポンプによって泥を排除する必要がある。技術的に相当な困難があるのでかなりの日数が要るように思われる。そこで引き続きその督励はいたしておりますが、大体の結論は生田先生からお話があったようなところに来ているわけであります。
  149. 生田宏一

    ○生田委員 海上保安庁長官の御答弁も私が申した通りということになりますれば、もうこれ以上現状のままで遺体の取り出しはむずかしいということだと拝聴いたします。  それからもら一つお尋ねしたいと思うのですが、日本サルベージと南海汽船との間に契約が本日できるそうでございますが、現に沈没以来現場の作業に従事をしておりましたのは、日本サルベージではなくて岡田組のサルベージではなかったかと思いますが、遺族などにいたしましては、サルベージ会社が変りますと、現場の状況調査について一週間や十日は空費するということも心配するようでございます。そういうところにまで遺族はあせりを持っておるわけでございましょう。それで私はよく知らないのでございますが、珍事勃発以来今日までやっておりました同じサルベージ会社と契約するわけでありますか、あるいは資本あるいは作業能力等によって別の会社に請け負わさざるを得ない、こういう状態になるのでございましょうか。私は事情を知りませんものですから、わかっておりましたらお答えを願いたいと思います。
  150. 中村三之丞

    中村国務大臣 これは南海丸の保険関係、この契約者であります東京海上保険会社からの連絡がありまして、東京海上保険会社との関係だろうと思います。日本サルベージに引き揚げをせしめる、こういうふうになったという報告でありまして、今まではいかなるサルベージが関係しておったか、これは私は詳しいことは存じませんが、局長が知っておりましたら申し上げます。
  151. 田中織之進

    ○田中(織)委員 関連して。南海丸の、遺体六十体を残した船体そのものの引き揚げが、今大臣が答弁されるように、保険の関係から、東京海上保険と日本サルベージとの間に契約が締結できるということは、実はゆうべのラジオの放送でやられておるのです。ところがそのラジオ放送を聞いた遺族の人たちで、なお六十体の遺体の中の関係の遺族の人たちから、けささっそく電話がかかってきておる。生田委員のところに電話がかかっているのもその人たちからだろうと思います。ところが先ほど木村政務次官は、四十日で船体の引き揚げはできるとおっしゃるのですが、ゆうべのラジオ放送は私も聞きましたが、七十日間かかる、こういう放送なんです。それで海上保安庁を中心にしていろいろ努力されていることはわかるけれども、自分たちの肉親が、これから七十日もかからなければ浮揚しない。しかもそれがうまく船室に泥にまみれてでもあってくれればいいけれども、ない場合は一体どうか。それはなぜかならば、私らが現地に参りましたときには、ちょうど四十三体の遺体の収容ができたのです。船室から収容いたしたのはわずかに十一体で、あとの三十二体というものは漁船によって海上をくまでのようなもので捜査した結果引き揚げたものであるということは、そこにおられる救難部長も現地で聞かれたはずであると思うのです。そういう関係から、六十体の中に自分の肉身の遺体が含まれておる。そのまま船室にあればいいけれども、ない場合、七十日たって遺体の見つからぬというようなことではたまらない。それだから結局船体を引き揚げるということになると、これは会社の責任になるわけなんだけれども、六十体というとうとい人命をささげた犠牲者の遺体がある限りは、やはり海難救助という国家的な任務を帯びている海上保安庁の仕事なんだから、この点については海上保安庁で、まず六十体の遺体の引き揚げを先にやってもらいたいのだ。それが技術的にどうしてもできないということであれば、今日日本の、世界一だというサルベージ技術をもって、わずか五百トンの船を、どんなに深いところか知らぬけれども七十日もかかるとは一体何事だ。しかもそれをサルベージ会社と船会社との契約にまかせて、今度はもう海上保安庁も、船の引き揚げになるのだから、おれの方は関与しないのだ、こういうような形では一体われわれ国民の立場から見てどうしてくれるだのだ。こういうことが具体的に、けさ私の郷里、これは南海汽船の本社のあるところです。遺体のまだ引き揚げられない、たとえば三菱電気の労働組合員等がおります関係から、けさ私のところに長距離電話で入っているのです。だから大臣が言われる気持はわかります。なるべく早く、一日も早く、一瞬も早く遺族に遺体を引き渡してあげたい。現実にもう泥が四メートルも五メートルも埋まってきて、遺体はきのうもおとといも揚っていない。そうい状態でこれから七十日待たなければならぬのかということの切実な声が来ておるのです。私はそういう点で、ただいま生田委員らと打ち合せをいたしまして、今生田さんに代表して質問をしていただいたのですけれども、もうこの段階では、どんなに手を尽しても六十体の遺体を引き揚げるということは、技術的に不可能なら不可能、その意味で遺体を含めたままの船を引き揚げるということに全力を注ぐ。それは民間会社の仕事には違いない。民間会社が営利のためにやっていた船が沈没した、海難には違いありませんけれども……。先ほど正木委員から追究しておりますように、南海丸のように事こまかに注意書がつけられておる船はほかにはない。そういう船を外海とひとしいあの紀淡海峡の航路に就航することを認めた運輸省の船舶行政の責任者に、この沈没の最終責任がないとは私は言わせない。そういう建前から、会社が日本サルベージと契約して、七十日かかるか、あるいは六十日でできるか知らぬが、船体が揚らなければ、残りの遺体が収容できないということでは、遺族が承知しません。このことについて、あなたたち運輸省がどういう処置をとられるかということなんです。本日の委員会はその意味で遺族は非常に注目をしておる。今までそこまで突っ込んだ形であなたたちが関係当局と話し合いができておるかどうか、私にはわかりませんけれども、できていなければ、今ここででも責任ある答弁をいただきたいために、相談をして、私は確固たる返事をしていただきたい。それでなければ現地がおさまりません。はっきり申し上げる。
  152. 山下正雄

    ○山下(正)政府委員 サルベージ業者の監督をしております建前から、私からお答え申し上げます。本件につきましては今お話がございましたように、遺体の引き揚げということが何よりも先決であることは当然であります。ところが現在の段階におきましては、遺体の捜査も見れるところは一応見たという段階でありまして、今後は船のあるいは下になっておるか、または船を起した場合に船が入りやすい場所もできると思いますが、そこにまた遺体があることも可能である。従いまして私どもといたしましては、船の引き揚げと並行しまして、遺体の捜査もやるようにということをサルベージ会社に、また電鉄会社の方に指示をいたしております。また船の引き揚げ等につきましては、火薬等を使って遺体を損傷することのないようにというような注意をサルベージ会社にいたしております。  それから期間の問題でございますが、現地は深さが四十メートルございまして、しかも二月は気象状態が非常に悪い。従って作業をやる日数が少いし、おまけに先ほど申しましたように水深が深いために、一日三時間ないし四時間しか作業できないというので、この仕事を計画いたしましたサルベージ会社におきまして、七十日という非常に余裕のある日数を計上しておるかとも思います。その点につきましては私どもはサルベージ会社を呼びまして、この計画の内容につきまして十分に説明を聞き、その日数を極力詰めるように努力をいたしたいと考えております。実は船の引き揚げにつきましては、海上保安庁とは常に密接な連絡をいたしておりまして、小松島の遺族大会におきましても、早く船体を引き揚げてくれという要望があったということを、第五管区本部から電話で連絡も受けております。また今までいろいろ打ち合せましたことを海上保安庁を通じまして、現地と中央と離れ離れにならないように、仕事の上の連絡をよくいたしていっておるつもりでございますが、今後もまたそういうふうにいたしたいと思います。
  153. 生田宏一

    ○生田委員 お答えで大体のことはわかったのでございまするが、結論としては私あるいは田中委員からも申し上げた通りに、遺体引き揚げについての最善であって最も早い方法を選ぶというこの一点にしぼって、これからの作業をやっていただきたい、こう思うのでございます。  それから政務次官からお答えがありました船体の構造上の欠陥がこの避難の最大の原因ではないかというのは私のみならず運輸委員のひとしく考えておるところと思います。しかしその構造上の問題は、船体の性能試験をしたときの状況で判断するか、あるいはまた現存する姉妹船を調べてみるか、この二つしかございません。それでこれはもう運輸省の方で厳格にすみやかにやっていただきたい。そのことは過日の運輸委員会におきましても私から船舶局長には要求しておいたところだと私は覚えておるわけでございますが、つきましてはこの際私が運輸省の海運行政についてどうしてもお聞きをしておかなければなりませんことは、戦後の遭難の状態を考えてみましても、わが国の運輸行政の中で海運行政は、特に内海航路については一種のゆるみを持っていないか。というのは、海外航路については相当の設備とそれから準備をしてそして船が出ておる。しかし内海航路については内海だから大したことはないのだという考えのもとに、一切の問題が処理されていないか。たとえば船体の性能試験においても、今私が配付を受けております南海丸の船体の性能試験をした場合における資料を見てみましても、必ずしも十分でない。あるいは船の底に水を張れとか、あるいはバラスを入れてようやく安定性を保とうというようなことでしょうし、あるいはバラスにしましても右左に船がゆれますためにバラスというものは移動しますから、必ずしも重心を下げるという問題ばかりではなしに、流動するものですからバラスを入れるということはある場合においてははなはだ危険を伴うことだ、私はしろうとですが、そういうふうに考えるわけですが、そういう便宜手段もとっておられる。  それからもう一つは、これは海運界の人ならばだれも知っておることなんですが、小松島から和歌山に至るあの海面というものは、内海航路とはいっておりますけれども、実は海洋の性格を持っておる。太平洋から直接うねりが入ってきて、暴風雨のときには南風が紀伊水道へ押し込んで参りますから、内海ではなく海洋の性格を持っておる。そのことがわかっておりながらも、あの小松島と和歌山を結ぶ線を単なる内海として船の性能試験をする、その前提のもとにやっておったとしたなら、これは確かに一種のゆるみであるといいますか、特に内海でありましても気象の変化が来たときには、おそるべき様相を呈するということを軽視しておる。そういうところに私は確かに大きな目から見れば問題が発生した原因があると思うのです。  また気象通報にしましても、これを的確に十分に責任を持って通報しておる、あるいは受理しておるということでなしに、ある程度形式的にルーズになっておる。というのは、これは通報をした、これは通報をしてない、受理している、受理してない、あるいは無線電話を船との間でかけてみたところがかからなかったとか、実は自分の方では——たとえば和歌山の方から小松島の南海汽船の支店の方へ無線電話で通知をしたということになっておるが、実はしようと思ったけれども通話してなかったとか、そういう話が究明していくと出てくる。というのは、そういう問題について処理が的確でない。つまり内海航路気象通報というものを形式的に取り扱って、筋金が入ってない。少くもそういうような遅怠しておるといいますか、緩慢な状態がある。たとえば二十九年に青函連絡船で洞爺丸の事件が起きた、また紫雲丸事件が起きた、第五北川丸事件が起きた、今度また南海丸事件が起きたというように、ひんぱんな海難事故というものはすべて内海航路であるということになると、海運行政の中で特に内海航路というものをこれから引き締めていかなければならぬ責任が運輸省にはあると思うのです。そうしなければ、われわれ四国の島に生まれた人間は、海を渡ってくる以外に本土に渡ってくることはできないのですから、これはたまらぬ思いをするということになるので、この際私は大臣以下その衝に当る人が内海の海運行政について一段と緊張せられなければ、こういうような悲惨事は将来といえども絶えない、こういう考えを持っておるわけでございます。  そこで例の姉妹船のわか丸の検査でございますが、これらについてはすみやかに的確に少しも仮借することなしに、かりに船体の性能検査にいささか運輸省の手抜かりがあったとしてもそれはそれとして、率直にその責任の所在を出してもらいたい。また会社自体が自分の営業本位のためにスピードを増す船を作りたいというために非常に不安定な船を作って、そして外洋航路とおぼしきあの航路に就航させたという責任があるならば、これもはっきりその責任の所在を出してもらいたい。そうしなければこういう惨事は根絶しません。その点を特に私は望みたいと思います。  またわれわれはこの間慰問に参りましたけれども、この問題についての調査という問題は、運輸委員会としてもこれはどうしてもなおざりにできないことでございますから、それ相当のことをしなければならぬわけですが、当局においても同様な気持でもってこの問題を処理してもらいたい。特にこの際一言しておくわけでございます。
  154. 赤澤正道

    赤澤委員長 小山委員
  155. 小山亮

    ○小山(亮)委員 私は問題の原因を突きとめたいと考えます。戦後日本の近海において起りました海難はこれで八度目であります。どうにかして事故を全減させなければならぬ。新聞等を見ましても今度のような事件は天災ではない、これは人災であるということをいっております。私も今度のような事件を見まして、これは決して天災ではない、人災だと思う。ということの証拠は、すでに洞爺丸事件が起きましたときに政府の答弁は、今も私は記憶しておりますが、現在の造船技術においてこれ以上の船はできません、つまり下に貨車を積んで上にお客を乗せるということになれば、どうしてもトップ・ヘビーになる、現在の造船技術においてはこれ以上のものはできませんということを言われた。洞爺丸が危険であるということは、すでにそれより二、三年前に飛巒丸が暴風雨に遭遇しまして、船尾からおびただしい風を受けて波を船内に打ち込まれて、ほとんど沈没に瀕した事件があるのです。ですから洞爺丸の事態は飛巒丸の事態からすれば当然起り得る事態であった。にもかかわらず当局の方の御答弁は、現在の造船技術においてはこれ以上のものはできないということをおっしゃった。しかるにその後十和田丸が改進されてでき上ったものを見ますと、完全に船尾から打ち込む波を防ぐような装置ができております。つまり人間の力というものは自然と常に戦って、それに打ちかつだけのものを常に打ち立てておるのです。そういう意味からいいましてああした事件は、さらにその次に再びこの事件をなからしむるために、さらにいろいろな技術の面において考究を加える、一歩前進をしていく、それでなければならぬと私は思う。今度の事件もはなはだ悲しむべき事件でありますが、この原因を追及するということは、同時に将来かかる事件をなくすための前提でなければならぬと私は思うのです。従って当局の方としては、あるいは場合によれば自分の責任になりやしないかというような不安から、なるべく問題が軽く、ないようにないようにと避けてお話しになるように私たちは感じられるのでありますが、それであってはならないと私は思う。運輸省みずから進んでこの問題の究明に率先して乗り出さなければならぬ。もしあなた方のお力だけで足りないなら、あらゆる民間の人あるいは学識経験者を網羅したところの、かかる事件を追及するための、もっと積極的な調査方法を講じなければならぬと私は思うのです。  これを前提としまして私は伺うのでありますが、この沈没しました南海丸——先ほどの山下船舶局長のお話からちょっと不安になったのでありますが、南海丸の満船の際の船首の喫水と船尾の喫水、それはどのくらいのものでありますか。それからそうした場合にスクリューの効果を少からしむることがあってはならないということを先ほど言われたが、それはどういう状態のときにそういうお考えが出たのですか。ちょっと伺いたいのです。
  156. 山下正雄

    ○山下(正)政府委員 お答え出し上げます。改造後の喫水は、平均でございまするが、軽荷状態で一メートル九十四、満載状態で二メートル四十七でございます。船首尾につきましては、今資料をそろえまして御報告申し上げます。
  157. 小山亮

    ○小山(亮)委員 へさきが突っ込んだような状態であったから、あるいはそうでなければイーヴン・キールであるというようなことから危険を感じられて、船尾に十五トンのバラストを積むという指示をなさったのじゃないですか。
  158. 山下正雄

    ○山下(正)政府委員 喫水について御報告白し上げます。軽荷状態におきまして、前部の喫水が一メートル三十六、後部の喫水が二メートル五十一、満載の出港状態で船首が一メートル五十、後部の喫水が三メートル三十三、満載入港状態におきまして前部が一メートル三十四、後部が三メートル二十七、空船出港状態で前部が一メートル三十七、後部が二メートル九十四、空船入港状態におきまして前部が一メートル四十九、後部は二メートル七十二でございます。
  159. 小山亮

    ○小山(亮)委員 そうしますと、これはバラストを積んでから後のものですね。
  160. 山下正雄

    ○山下(正)政府委員 さようでございます。
  161. 小山亮

    ○小山(亮)委員 それからもう一つ伺いたいのですが、南海丸とわか丸の二はいの船の肥瘠係数はどのくらいですか。
  162. 山下正雄

    ○山下(正)政府委員 お答え申し上げます。肥瘠係数は両方とも〇・五〇でございます。
  163. 小山亮

    ○小山(亮)委員 そうするとこの南海丸、わか丸のフリーボードはどのくらいですか。
  164. 山下正雄

    ○山下(正)政府委員 満載で一・一二メートルでございます。
  165. 小山亮

    ○小山(亮)委員 保安庁の方に伺いたいのですが、沈船の状況を先ほど伺いますと、船首を北に向けて甲板を西に向けて、つまり左舷の方に傾いて沈没しているということでありました。そのような状態から推察しましてどういうような波を受け、どういうような風を受けて沈没したのではなかろうかというような推定がつきますか。
  166. 島居辰次郎

    島居政府委員 その場の風の方向というのはちょっと私の方でわかりかねますが、潮流の方向はわかっております。これは私の方で昭和二十九年五月五日から六月十日までにあの辺の潮流を全部調査したその資料に基きますと、あの辺はその当時のそのときの時間におきまして北から南へ行っております。それから沼島の方に行きますと東から西の方へ流れております。
  167. 小山亮

    ○小山(亮)委員 先ほどから復原力の問題について山下局長からお話がございましたが、昭和二十四年六月二十一日に瀬戸内海姫島の東方で青葉丸が沈没しました。青葉丸は御承知のように改造船でありますけれども、それ以来運輸省では船がこういうふうに簡単にひっくり返るということはあり得ない、船舶技術がこういうようなことを見のがしておってはならない、日本の船舶技術の権威を高めるために、何かこれに対して規格を作らなければいかぬというので規格をお作りになった。これは私は進んでそういうことをおやりになったことに対しては非常に敬意を表しますが、その作ったそれ自体が金科玉条ではないと私は思う。だから私はこの船を見ましたとたんに考えたのは、四百九十五トンぐらいの小さな船に四百四十四人という人を乗せる、そうしてまた十三・五ノットというような高速力を持たせるということは相当困難じゃないか、私はここに無理があるのじゃないかと思うのです。これだけの人間を乗せ、これだけの速力を持たせるなら、少くともこれは七、八百トンの船でなかったならば無理ではなかったか、こういう小さな船にそれだけの速力を持たして人を乗せるということは、金もうけ本位に考え、安全ということにさっぱり重点を置かないでやればこういう船になると私は思う。設計図などを見ましてもはなはだ心細いような細い船です。それですからこれは大ぜいの客を取っても船自体がうんとかしがる船だろうと私は思う。それからいただいた資料によって計算をしますと、南海丸の重心の位置は非常に高いのです。これはあなたの方からすでに復原力が不十分であるからといって注意をされた船、それが同型船に四隻、その他平水航路の船に対して七隻、こういうように注意を出しておいでになりますが、その注意を出しておる。平水航路の第三八重島丸はキールから重心までの高さと喫水、これを比較してみますと二・一三メートル喫水よりも上にある。その他あなた方の方から注意書をお出しになった船の全体を見ますと、一番ひどいのでも八汐丸というのが〇・八一六メートル、つまり船の喫水よりも重心が上にある。重心が喫水よりも上にあるということは危険です。われわれは不安定に思うのですが、それでもまだこれは一メートル以内です。しかるに南海丸は実に重心が高過ぎるのです。空船の出港状態のときにキールから重心までの高さと喫水までを比べてみますと一・一九メートルです。空船入港のときは実にひどいのです。喫水が二・〇三メートルで、キールから重心までの高さが三・五五メートルです。そうしますと一・五二メートル、非常に高いのです。また満船入港のときでもその差が一・三七メートルありますから、あの船はうんと高いところに重心がある。だから船の動きがないとき、波がなくて船が静かなときははなはだ安定したように見えますが、一たんこれが風が出て波で傾き出した日には、重心が高いのですから、なかなかこれは危なくて返りやすい船です。だからこれはあなた方の方がアッパー・デッキ、一番上のデッキにあまり人間を乗せてはいけない。あまり乗せて片方に片寄らせてはいけないとか、あるいは大きなかじをとって、船をぐっとねじ曲げてはいかぬという御通知をお出しになるのは、この船の重心が高過ぎて不安定な船だからということで、あなた方がそれだけの注意をお出しになったのだろうと思うのです。それからもう一つは風圧面積が非常に大きい。船体が水中に入っておるところの面積と水中から出て風を受ける面積を比べますと、風圧面積が大きい。普通の平水船と比較になりませんけれども、大洋を航海していく船でありますと、水中に入っておるところの面積というものは非常に大きい。貨物船なんかになると、三分の二が水中にもぐっておって、水の上に出ておるのはわずかに三分の一です。しかるにこれが逆だ。三分の一以下が下に入っておるというような状態で、しかもそれが肥痩係数が少いのですから細い船で、しかも上は風を受ける面積が大きくて重心が上にある。だから風を受ければ、ぐっと帆前船のようにかしいでしまうということはあり得るでしょう。私はそれが悪いというのじゃない。それだからこそあなた方の方はこういうものに対する許可をするとき、苦心をされたことだろうと思う。しかしそれは造船規定に不備な点がありはしないか。なぜこういう船に、船の中の容積だけで許可をしたり、何か規定をおきめにならないで、トン数できめたらどうか。つまりこれだけの資格を持ち、これだけの速力を持った船、しかもこれだけの人間を乗せる船には七、八百トンの船でなければならぬということをおきめになったらどうか、それを五百トン以下でおさめようとするところに無理があるのじゃないか。初めから無理を承知しながら、あなた方は許可しなければならなかったのじゃないか、こう私は思うのです。しかも私が非常に不思議に思っておるのは、四百九十五トンというふうに小さな船でありますが、実際に中の面積や何か調べてみますと、五百トン以上あった船じゃないか。それを五百トン以下にしますと、いろいろな面で助かるのです。乗組員も資格の非常に下った人で済む。それから検査の場合でも、部分品の検査というものが一切要らない。救命艇の検査とかそういったようなものに対して、規定からいって検査を受けないでも済むような状態となっておるのでありますから、いろいろな面で手が省ける。だから船主は費用をかけないで安く船ができ、しかも収容能力をたくさんにして、金もうけ本位の船で安全性のない船ができるということになります。これが三級船ですが、沿海航路であるからといってこれだけ客の乗れる船を三級船というのはおかしいと思います。どうしても二級船でなければならない。魚をとりに行く船ですら二級船です。人間をこれだけ乗せて動く船がどうして三級船であるべきであるのか。これは規則ですからあなた方が悪いのではない。もしこれが悪かったならばもう一度ここで考え直して、規則自体を根本的に直すということをお考えにならなければならないだろうと思います。こういう点についてあなた方のほんとうのお考えを伺いたいのです。これはだれが悪いかれが悪いというのではなくて、造船規定自体に、あるいはあなた方の基準自体にまだまだ足りないところがあるのじゃないか、そういうふうにあなたはお考えになりませんか。さらに一歩を進めてもう少し改良するところがあるというふうにお考えにならないかどうか。またよく船が沈みますと不可抗力にするのですよ。洞爺丸のように突風の風速が五十メートル、前例未聞の風が吹き込んだから沈んだというようなことを言ってしまう。だれも見ておりませんからね。そうして、とにかく船長が死ぬと全部船長の責任になるというような、不思議なことに死んだ人がみな責任を負わされておる。今度の場合でもそうです。黙って原因を追及しておらなければ、みんな船長が悪いことになるでしょう。私に言わせるなら、こういう船がひっくり返るということは私には考えられるのですよ。ひっくり返るはずのない船がひっくり返ったというのならおかしいということになりますが、どうも今までの経過を見ますと、返るべきいろいろな条件を備えた船がひっくり返ったのだというふうにしか考えられないのでありますが、率直な答弁を第一に局長から伺いたい。
  168. 山下正雄

    ○山下(正)政府委員 前段の造船技術の問題でありますが、一般の技術と同じように造船技術も日を追うて進歩いたしております。従いまして現在のものがベストであるということは言えない。従って現在でベストであると考えておりますことでも、今後ともますます研究いたしまして、技術の進歩、またその進歩に伴いまして船の諸規定の改正ということを従来ともやらなければならないと考えております。  次に重心の問題でありますが、確かに先生のお話のように重心は上にあるのでございます。また風圧の面積の問題にいたしましても、最近の客船の傾向といたしまして、この程度のものが一応普通でありまして、特にこの船が悪いというようなケースにはなっておりません。従ってこれらの重心の問題と風圧面積の問題につきましては、これらのことを考えに入れて、この復原性の規定がきめられておるわけであります。重心がどれだけ上にあり、また風圧面積がどのくらいありというようなことを考えてこの規定ができておるわけでありますが、先ほどもあ話がございましたように、この船の実際の遭難の原因は何にあるかということと、今までこの船の性能につきましては、一応完全な調査はできておりますけれども、さらにこの調査を再確認いたしまして、それから今後さらに試験を行いまして、改善すべき点について研究を進めて参りたいと考えております。従いまして今後の研究の結果、風圧面積をもっと小さくすべきであるという意見が出ますか、また重心をもっと下げるべきだという意見になりますか、その点は専門的に十分斯界の権威者を集めまして、この問題の究明と同時に、客船一般についての研究を推進をいたしたいと考えております。  それから五百トン以下に本船がなっておりますが、これはスペースが十分ありながら五百トン以下になっておるだろうというお話のように伺いましたが、速度の規定に基きまして間違いなくはかって速度を出しておるわけでありますから、間違いはないことと思います。それから五百トン以下の船につきましては、設備検査等の省略が行われる、なぜこういうような客船を三級船にしたかというような御質問かと思いまするが、検査の面につきましては御承知のように三級船としましては船の長さでありますが二十メートル以上の船、二級船としましては三十メートル以上の船、一級船としましては六十メートル以上ということになっております。しかも船の長さが三十メートル以上の船につきましては、製造検査というものを実施いたしておりまして、この検査は御案内のように申請をいたします場合に図面等を添えまして、一々承認を得てから工事に着手いたします。また工事の過程におきましても、規定にございますような時期に現場に参りまして、一々詳細な検査をいたして、その上でこの船が完成をいたしておるわけでございます。五百トン以下と五百トン以上の船との違いはおもに船員の資格の問題のみでございまして、船の検査につきましては船員関係に若干五百トン未満でございますと軽減されておりますが、はっきり本船は三十メートル以上でございますから、規則に基いて検査をいたしておりますから、二級船とあまり大きな違いのない検査の過程を経ております。
  169. 小山亮

    ○小山(亮)委員 そうするとちょっと伺いますが、あなたは今二級船も三級船も違いのないような意味合いにとれるようなことをおっしゃったが、そうするとこの三級船は鉄板の厚さだとか材料、資材というものの検査をなさいますか。
  170. 山下正雄

    ○山下(正)政府委員 三級船につきましては、材料のテストはいたしておりません。しかし規定がございまして、鉄板の厚さは幾らでなければならぬということは指定はされております。規定がございます。
  171. 小山亮

    ○小山(亮)委員 規定はあっても果してそれを実行しているかどうかということは、あなた方が検査をされて初めておわかりになるのです。きめてあることだけきめておいたから、必ずそういうものを作っているのだというふうに軽くお片づけになることが、あなた方がほんとうに人命を尊重する気があるかどうかということさえ、私は疑るのですよ。普通の荷物を積む船ならまだそれでもよろしい、しかしかりにも人間を積むのですよ。しかもこれが四百人もの人を積むのですから、そういうような場合には、ただ規定があるから鉄板の厚さはそれだけだろう、資材もこういう規定があるからそういう資材を使っておるだろうということでなくて、やはり責任がある人がこれを検査されなければならぬ。またできれば日本の海事協会、ああいったような民間側の機関に検査させるように船主を指導なさるのがほんとうじゃないでしょうか、またそうでなければあなた方の方でそういうふうに規則をお変えになるのがほんとうじゃなかろうか、こう私は思うのです。それを私は言うので、あなた方はこういうことをやっているからもう永久に検査する必要はないのだ、資材もそのままでよろしいのだ、現行の法規はそのままで一つも心配はないのだということは言い切れないだろうと私は思う。いけなかったところは進んで直したらどうか、それを私は伺うのです。
  172. 山下正雄

    ○山下(正)政府委員 材料試験はいたしませんが、鉄板の厚さ等につきましては規定がございますので、検査官が一々製造検査の過程におきまして船へ参りまして、現物の厚さ等を調査して規定に合格しておることを証明をしなければ、造船工程を進めるわけには参らないということになっております。その点は御心配はないと思います。それから検査全般につきまして、これはおもに設備の規定の関係になるかと思いますが、この点につきましても本船の調査と同時に、船客の救命についてもっと改善すべき点があるかどうかにつきましては、十分検討いたしたいと考えております。先ほどおっしゃったように、やはり救命艇にいたしましても進歩をいたしますし、また新しい考え等も出ますので、それを十分研究した上で、支障がないことが判明いたしました場合には、新しく規定にそれを取り入れていくということをやっていきたいと思います。
  173. 小山亮

    ○小山(亮)委員 五百トン以下の船で、資材とか鉄板とかいうようなものについては、製造検査を検査官がやるから間違いない、御安心下さい、何も心配することはないとあなたはおっしゃったが、そのほんとうの事情をあなたは知っておいでになるのですか。この間神武景気だというので、船を作れなどと言っていた時分には、従来は老朽船は廃船にして新船にかえなければならぬと言っておったにもかかわらず、五百トン以下の船をどんどん作り出して、しかもその作った船には解体した古い船のエンジンなどを持ってきてくっつけて新しい船のような格好をさせる、しかし鉄板は薄くて見ておられないようなもので作った船がたくさんあります。もしあなたがそういう船が絶対ないとおっしゃるなら、私は自分が調査しておりますから、ほんとうに調べたものを持ってきたらあなたはどう責任をとりますか。事実なんですよ。それは保険会社でもこれでは保険がつけられないからと弱っているのがずいぶんある。私の言うことがうそだと思ったら船主協会をお調べになればわかります。船主協会でもこのデータを持っております。それから保険協会も持っております。私だけで不安ならそういうところを調べてごらんなさい。あなたはこれは製造検査を検査官が検査したから心配ないのだということを言われますが、私はその検査する検査官を疑う。あなた方本省の方が責任を持っておやりになるのではない、地方の海運局の検査官がやる。私はこれ以上触れたくないが、飲ましたり、食わしたり、つかましたりすれば、どんな検査でもするような人間がもしあったとしたらどうしますか。だから変なのができる。あなたは自分の部下だからそんなこと絶対にないとおっしゃるかもしれないが、もしあったらどうする、ないとは言われない。もし役人が全部正しかったら何であんなに疑獄事件がありますか。三百六十五日、新聞を見てごらんなさい、役人の疑獄事件の記事の出ていない日はないじゃないですか、海へ行けば海運疑獄、陸に行けば陸運疑獄、歌にまでうたわれるように疑獄事件があるから、だからあなたの部下が一人残らず必ずしも間違いないとは言い切れない。かりにそうであっても、もっと謙虚な気持で、自分の部下は正しいと思うが、しかしそういう事実があるとすればさらに一そう注意するとか、あるいはまた海事協会のような民間団体によって検定するように慫慂するとかなんとか方法はあるし、またそういう言い方があるでしょう。全然間違いがないのですか。全然間違いないとおっしゃるなら言って下さい、私は責任を持ってそういう船を持ってきますから……。
  174. 山下正雄

    ○山下(正)政府委員 そういうことの間違いがないように、今後大いに部下も督励いたしますし、綱紀の粛正につきましては格段の努力を払っていくつもりでおります。
  175. 小山亮

    ○小山(亮)委員 私はあなたをそういうふうに追及する気はないのですよ。こういうことがあるから、ないようにするにはどうしたらいいかということです。私の言うことが間違っていることもあるでしょう、間違っているなら間違っているでいいのですよ。この製造検査というものに不備な点がもしあったら大へんなことになります。だからそういう点において万誤まりのないように、注意の上に注意をし、念の上に念を押して、人命尊重をやらなければならぬということを私は言うのですよ。あなたの部下が悪いことをしているからひっくくれ、そんなことを言っているのではないから、その点は誤解しないで下さい。売り言葉に買い言葉でそうなってしまったのです。  それからもう一つは波もそうなんです。沈没をしました方向を伺ったら、北向きで、左舷に傾いて沈んでいる。私もそうじゃないかと思っておった。これは三角波で沈んだなんていうのはしろうとです。三角の波が立ったから船が沈む、そんなものじゃありません。しけの中心に入れば三角波が立ちますが、三角波が立ったときにはどうなるか。かじがきかなくなってしまう。イレギュラーの波が来るから速力がなくなって、上下動、水平動、やたらにやられるのですから、かじがきかなくなって、船が進行できなくなる。従って船首がどっちへ向くかわからなくなる。そのときに波がぶち込まれるのがこわいのです。そのときに向い波にぼんとやられると、想像以上に波をぶち込まれるから、南海丸のようなああいう構造でいきますと——最近の新しい船になって参りますと、新しい船はみな囲ってあります。あれはしろうとが見ると非常に安心できるように見えますが、あれに波がぶち込まれると排水が十分でない。レールだとずっと出てしまいますが、レールじゃないから、ウォッシュ・ポート、スカッパーを十分とってあるといいますけれども、大きくぶち込んだ波を一ぺんにはかすようなスカッパーはありません。大体船は三番目に大きな波が来るでしょう。三番目には必ず大きな波がぶち込んでくるのですが、あの船は次の三番目の波が来る前に水がすっかりはけるようにはできていませんよ。そうすると、ぶち込んだ波が風と一緒になってぐっと船を押し倒していくという状態にもしなったとすれば、これはあっという間もなくひっくり返るのではないかと私は思うのですよ。これはどこまでも想像ですが、二十三メートルか二十四メートルの風まで大丈夫だとおっしゃった。そんな風は吹いていないのですから、せいぜい二十メートルでしょう。波があったといったところで知れたものだと思うのだ。それは突風ですから、数時間連吹して二十メートルの風が吹いておったということになれば相当な波ですよ。突風なんというものはそんなに波がいきなり出るものではない。ただ大きな波が船内にぶち込む場合がある。それは船の進路が保てないで、風の下の方に頭を振られた船がかじが保てないで、いきなり上に向いてきた場合、そのときちょうどぶつかった波があったら、これは大きいですから、それにがぶっとやられると、想像以上の波が入って、あの船の構造からいってまるでバケツみたいな船ですから、ぐっと押し倒されたとすれば、あるいはああいうような不慮の事件が起るかとも思うのです。そうしますと、現在運輸省のあなたの方で、これは適格船だからよろしいといって許可されたような船は同様な状態になったら全部危ないということになる。もしそれが全部危ないということになったら、船に乗る者はありません。私がこの間非常に心配したのはラジオを昼間私の家の者が聞いておった。そうすると、だれだか知りませんけれども、普通の人がこういう質問をしておったという。どこかの大学の先生に、船に乗る場合に、この船は沈む船か沈まない船か見分けるのにはどうしたらいいでしょうと聞いている。そうすると、その大学の先生か何か知りませんが説明しているのに、船を見て、上の方にやたらに部屋がたくさんあって下の方が細い船は危ないから、お乗りにならない方がいいと言っている。そんなことを言ったら瀬戸内海で乗れる船はありませんよ。海国日本でそんな説明をしなければならぬのが情ないのです。海の上ならだれが乗っても、いつ乗っても、命なんか決して心配ない。海国日本ですよ。海がなければ日本というものは発展しないとするならば、だれが船に乗っても、船は心配ないというふうに海事思想を普及してやってもらわなければ困る。従ってそれだからこそ気象観測についても、あるいは海難設備にしても、今のような貧弱なしみったれな情ないようなものでなくて、もっと思い切ったものをやってくれと私は言うのです。これは運輸大臣も船に対するところの熱意が私はなさ過ぎやしないかと思う。口では大言壮語しておられるようだが、そんな口先だけで海運振興なんというものはできるものではありませんよ。さっき言われたような事件の内容についても、自分は何も報告を受けておらぬ、知らぬ、海事審判官が調べておるだろうが、あれは検事みたいなものだからと言われた。そんなはずはありませんよ。運輸大臣報告を求めるのです。だれが悪いかかれが悪いかというような、最後にあれは乗組員に対する処罰をやるのですから——その乗組員がみな死んでしまっているのですから、だれが悪いかいいかということをきめる海事審判の連中、理事官なんかが調べたところで、その大臣に対する内容を聞きたいとあなたが言われたら、向うは喜んで来て説明しますよ。これを議会に説明ができないようで、聞かれて困るようでは私は運輸大臣としては非常に不注意じゃないかと思う。  さらにまたさっき同僚の委員が言われましたように、この救助の補償の問題もそうであります。果して運輸大臣の行政上こういうふうなことをやるのかやらぬのか、私は知りませんが、「第五北川丸は非常に資力の薄弱だった会社で、いろいろめんどうなことも起りまして大体は解決したようでありますが、今度はあの南海汽船会社は三千二百万円の資本を有し、そのうしろに南海鉄道があるのでございますから、私はこういう資力のある会社並びにその親会社はなくなった方々に対して十二分の弔意、補償の方法をとらするという決心であります。また彼らはその資力あると思いますから、私どもは最大限のことを指示するはずであります。」こう言っておるのです。これは運輸大臣のほんとうの気持ですか。ありさえすれば取ってやる、なければよせ、こういうのですか。私は人間の命には変りはないと思う。あったってなくたって出すものは出さなければいかぬと思う。でありますから、こういうことでなくて、もし当然の弔意金が出せないような会社があれば、なぜそんな会社に人間の運搬を許可なさるか。人の運搬を許可なさるにはそれだけの十分な資格がある会社でなければならぬ。そうでなければ、ありさえすれば取ってやれ、なければよせ、ない会社の船には乗るな、危ないからある会社の船だけに乗れ、そんなばかなことは私はないと思うのです。こういうのは前後緩急よろしきを考えて、それぞれの点について御答弁をなさらぬと、あとでおれはそんな長く運輸大臣をしておらぬ。それだから賠償の問題が起きたときはおれは知らないのだと言われればそれまでだと思いますが、そんなものではないと思う。これはどうしたって解決しなければならぬ問題です。運輸委員会に持ち込んでくる問題ですから、こういう問題は、私どもは大臣が慎重に考えて答弁をしていただかなければならぬと思う。もう一度私は大臣の答弁を求める。
  176. 中村三之丞

    中村国務大臣 この間補償をどうするかというお尋ねでございましたから、私の意中を申し上げたのでありまして、今お読み上げになりました速記録と今のお考えは少しも変っておりません。しかしものには順序がございまして、先ほどもお尋ねのごとく、今何百万円出させるかということは、これは私として今言えないのです。この点は一つ御了承をいただきたい。しかしあの会社が相当な会社である。その背後に電鉄会社がある。これは事実でございますから、第五北川丸事件のように、まああれも皆さんの御努力によって三千万円でございますか、一人について二十七万円ぐらいの解決はいたしておりますから、私も現在並びに将来この補償の問題については努力をするということを申し上げたのでありまして、これは依然として変りはございません。
  177. 小山亮

    ○小山(亮)委員 物事には限度がある。何百万円の金は出せない。私もあなたに何百万円出せと、金額なんか一ぺんでも言ったことはありません。私の話で金の数字をあげたことはありません。ただあなたは十二分の弔意、補償の方法をいたすというのです。ものは十分ということはあるけれども、十二分というから、まだそれ以上なんだ。その上にいく。今になって遺家族の人がああいう状態になっているときに、十二分の弔意を取ってやるということをあなたが責任を持って言われるなら、あなたは御解決なさいますか。あなたが一身をもって解決なさるならば、運輸委員会は全然何もしないでありますから、あなたが全部おやりになることならば、それでよろしいのであります。
  178. 中村三之丞

    中村国務大臣 何も私が一人でやるというようなことは申しません。これは皆様の御協力をできればお願いをするのであります。しかしあのときの御質問に対して私の決心を表現したのでありまして、多少強く言っておるとおっしゃるかもしれませんが、しかし十二分ということで努力するという私の決心はお認め願いたい。五分くらいでやるとも言えますまいと私は思います。私の決心を申し上げたのでございまして、その点に沿つて私は努力いたす考えでございます。
  179. 小山亮

    ○小山(亮)委員 よく古い政党の大臣は、羊頭をかかげて狗肉を売るようなことを言ったが、今は時代が違っておるのだ。そうは言われないと思う。やはり物事には、だれが考えても、これはただ勢いよく人前でやる大衆の広場での演説と違うのですから、議会の権威ある運輸委員会においての、また権威ある委員の質問に対する答弁ですから、権威がある落ちついた御回答があってしかるべきものだ。これは日比谷の原頭か何かで威勢よくやる演説とは違うのですから、あなたの方の御決心が十二分のことをやるというけれども、そうはいうけれども、それは実は勢いよく言うただけであって、よろしくやるのだというようなことなら、何もこんな問題になりはしないです。ただこういうような答弁を伺ったのは、私の寡聞にして、運輸大臣としていろいろな事件がありました、鉄道の事件もありました、いろいろな事件も繰り返し繰り返しあったが、初めてだから、きわめて珍しい御答弁だから私は伺ったのです。重ねて御答弁があったらお伺いいたしましょう。
  180. 中村三之丞

    中村国務大臣 補償の問題について努力することには、私は変りはございません。
  181. 田中織之進

    ○田中(織)委員 だんだんと同僚諸君から質問がありますので、私は重複を避けますが、先ほど生田委員から質問を申し上げまして、運輸当局船舶局長から御答弁を願った残っておる遺体の収容の問題は、現在の段階におきましては、船そのものの引き揚げと関連を持たなければ、非常に困難だという事態になっておることは、委員会の答弁で明らかになったと思うのでありますけれども、遺族の人たちは、やはり船があがる前にということについての非常に切実なる願いを持っておりますので、この点は、特に遺体の収容について今まで努力された海上保安庁は、所管の責任者を通じて、遺族の人たちに、今後船体と切り離しての遺体の収容が困難であるというような実情について、十分納得のいく説明をして、すみやかに船体とともに遺体が引き揚げられるような点については——船そのものの引き揚げは会社の責任になるわけですけれども、そういうことではなくて、その中には海上保安庁の責任を持たなければならぬ遺体が、多数まだ残されておるという点を、一つ心がけてやっていただきたいと思います。  それから一つだけ質問をしておきたいのは、南海丸につきましても、五項目にわたる注意書がついておるのであります。それから本日いただいた資料によりますと、なお十に近い五百トン未満の船についての、特に復原力についての注意書が出ておる船があるわけであります。私らたまたま小松島へ参りまして、遺族代表と会見をいたしましたときに、自分たちの肉身の遺体を早く揚げてもらいたいという要請と続いて出ました要望は、まだ南海丸の僚船にもわか丸がある。それからちょうど国会の二十八日の委員会の質問の状況をその遺族の代表が知っておった関係もありますが、なお南海丸と同じように運航上復原性について注意を受けている船が幾つかある。そういう船はこういう南海丸のような事故を繰り返さない意味において、運航を停止させてもらいたいということがわれわれ社会党、自民党から見舞に参りました者に対して、実は要望があったのでありますが、この点は、その注意さえ守られれば一応心配がないのだ、こういうことになるかもしれませんが、一体こういう注意書が、その通り守られているかどうかということについての確認は、運輸省においてどういうようにやられているのですか。この辺について率直な御答弁を願いたい。
  182. 島居辰次郎

    島居政府委員 遭難船につきまして、ずっとわが海上保安庁といたしましては、巡視船を出しまして、遺体の収容その他について督励、またみずからやっておるようなわけでありますが、昨晩も遺族会の代表と対策本部にいろいろ会合を持っておりまして、先ほどの船舶局長の話を補足させてもらいますと、これからどんどん砂が入ってきて、ますます船体は埋もるばかりであるから、何とか早く船体も揚げたらいいというふうな結論に到達した。遺族の代表も呼んでこういうふうなお話でありますが、サルベージももちろん揚げられようとしておりますが、私の方ももちろん巡視船が行きまして、それと並行してできるだけ遺体の捜査その他につきまして努力させる。現場は努力しておると思いますが、なお私の方からも注意してそういうふうにしていきたいと思います。
  183. 山下正雄

    ○山下(正)政府委員 お答え申し上げます。注意書に記載してあります事項につきましては、一般的な注意事項が、初めの段階におきましては相当各船に同じように述べてございます。と申しますのは、復原性の基準、またその規定の立て方というものを船長によく知らしめるために一般的な注意書を書いておるわけであります。それ以外の本船として特に注意しなければならぬという、たとえば、船首尾水槽に水を入れろとか、またはバラストを搭載しろということは別に書いてございまするが、それは本船特有に守らなければならぬ事項でございます。その検査に指定しました事項の確認につきましては、これは船長の義務として、安全法上注意された事項の順守の責任があるわけであります。それを実際やっておるかどうかにつきましては、これは船が入港しました場合に臨検するというような手段はございまするが、実際問題といたしましては、なかなかやりにくいのでございまして、その必要があった場合には特に調べるということになっております。もちろん船長の義務としまして、船首尾水槽に水を入れたとか抜いたとかいうことは、航海日誌等に書くようになっておると思います。またバラストを移動したときには、移動してはいけないということは言ってあるわけでございますが、もしかりに移動したとすれば、その規定の違反にもなりますし、また当然航海日誌にも書かねばならぬわけでありますから、現場の確認につきましてはできるだけ確認の方法をとりたいと思いますが、現状におきましてはなかなか困難な面もあるかと存じております。
  184. 田中織之進

    ○田中(織)委員 注意はどうしても守らなければならぬ最低の条件であろうと思うのです。ところが注意も出しっぱなしではこういうことになる。南海丸をきわめて参りましたら、たとえばバラストについて十五トンというものが正確にあったかどうかということはわかることでありますけれども、どうもそういう点船が入港したとき、あるいは出港するときの臨検というようなことについて——これは海上保安行政の方面かもしれませんけれども、いずれにしても今度そういう注意書のついている船は国会に提出された資料で名前もあがっておりまするから、そういう船はだんだん乗船客にも響いてくるのではないかと考えられるのであります。特に私らはしろうとであるから南海丸等についてはよくわかりませんけれども、あまり急な大かじをとってはいかぬというようなことから、あらゆる面にわたってこういう注意が守られなければ危険があるという、船の運航を認めた——これは規則の上で差しつかえないということになっているのだから、責任がないとおっしゃるかもしれませんが、そういうところにやはりとうとい人命の輸送に当るだけに、私は政府としての重大な責任があると思うのです。そういう観点から、いずれこの沈没の原因については本委員会からも調査団が派遣せられるようでありますし、もう少し事情がわかりましたならば重ねてその点についての質問をいたしたいと思いますが、少くとも今われわれに資料として配られた船については相当の注意条件がついているわけでありますから、これを完全に実行せしめるように、格段の注意を喚起するように措置さるべきことを強く要望いたしまして、私の質問をこれで終ります。
  185. 畠山鶴吉

    ○畠山委員 私は各委員から今質問されましたことに関連いたしまして一言お尋ねしてみたいと思うことは、話は違いますが、ついこの間のことですが、東宝劇場の火災がありました。その跡始末についていろいろ聞いてみましたが、非常に円滑に、円満に即時解決をされております。しかし当委員会でたびたび議題になります船舶の問題については、数を重ねておるにもかかわらず、最初のうちは責任問題を究明しておりますが、それが済んでいよいよ最後の弔慰金等のことに至った場合、まあおざなり主義、場当りでこれを解決しているような向きが非常に多いように思うわけであります。しかしこれはあらかじめ予想している問題ではありせんけれども、やはりとうとい人命の問題を解決するという場合においては、弔慰金等についても十分考えを持たなければいけない。先ほど運輸大臣のお答えにありましたが、この重大な人命の問題を処置するに当りまして、保険金が二十五万円あるとか、あるいは北川丸が二十七万五千円で解決したとかいいますが、今日の時代にこれは多いということは言えない、むしろあまり少な過ぎるではないか。さっきも今回の問題につきまして、見舞金が一万円であとは何だか八万円とか出されたといいますが、東宝あたりの解決の方法を見ましても、とりあえず責任者の見舞金として三十万円、またこの始末については何百という金が出て即座にこれらは解決している。それをまねせよというわけではありませんけれども、まあいろいろな観点から考えて、そういう弔慰金を出すような重大な事故を起さない一つの防止策にもなるのではないかということも考えられますので、先ほどから伺っていまして、私は各委員が質問を回避しているような、弁解のような意見のところがところどころに見受けられるので、小山委員あたりからいろいろ指摘された点についても同感でありまして、まず事故の起ったことはやむを得ないといたしましても、この解決についてはもっと考えを新たにする必要があるのじゃないかと思いまして、最後に一言私の意見を申し上げた次第であります。
  186. 赤澤正道

    赤澤委員長 本日はこれにて散会いたします。     午後五時三十六分散会