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国務大臣(岸信介君)
日本の輸出貿易を振興する上におきまして、米国市場というものは、今おあげになりましたように、
日本の非常な大きな市場であります。しかして、
日本との貿易
関係が非常にアンバランスであるということも、おあげになりました
通りであります。従いまして、この米国市場に対して、
日本品のより一そうの販路を拡張するということは、今の事態からいってきわめて重要であります。ことに、今の支払い
関係の困難な国際情勢から申しましても、アメリカ市場というものは非常に大きなものであります。ところが、これに対していろいろな
日本品に対する輸入
制限のような運動が持ち上ることは、私
ども非常に日米の協力という大きな
立場からも、また
日本の経済の上からも非常な重要な問題であると思う。御
承知の
通り、アメリカは幾多の州に分れておりまして、州法でもっていろいろな立法をなして、その州において商品に対する
制限等も行い得るような建前になっております。すでに
日本品に対して差別対遇をするような二、三の州法が制定をされたり、あるいはされようとするような傾向もありまして、これに対しては、すでにアメリカの憲法違反という訴訟も起きておりますし、アメリカの
政府におきましては、こういう運動に対して、これを阻止することに対しましては、あらゆる努力をいたしております。しかし、同時に
国会において、それぞれ選出されておる自分の選挙区の
事情から、
日本品に対する業界等の要望に基いての立法等が
国会に提案されるような事態も出ております。これらに対しては、従来もちろん、われわれは
外交のルートを通じ、また日米の基本的なあり方につきまして、十分アメリカの
政府とは交渉し、アメリカ
政府も、これに対しては
日本の
立場を十分理解して、国内におけるそれらの動きに対しましては、アメリカとして、
政府として、できるだけの努力をしていることも私は現実であると思います。そこで、一体そういう問題が起ってくることについての、でき上ったとか、現われてきたことに対しての
外交的の
措置はもちろん、われわれとしてあらゆる
方法をとってやっておりますが、未然に防ぐ、そして
日本の販路を拡張する
方法はどうかということにつきましても、いろいろわれわれは、あらゆる面から考究をいたしております。つまりアメリカに参りましたときに、いろいろアメリカの経済界の有力者ともその点につきまして話をいたしてみまするというと、アメリカの方で言っていることの何で、
日本としても
考えるべきであると思う一、二の点は、
一つは、アメリカの市場は十分購買力を持っているのだから、
日本品に対して、
日本はもちろん、
日本の工業力からいってもすでにいいものができる、
世界一流の品物ができるのだから、今入っているような安い品物を安い値段で入れるというような
やり方を、
日本の方においてもぜひ
一つ考えてもらいたい。われわれは、ヨーロッパの高い、いい品物に対して、これを購入しておるが、これに対する反対は起っておらぬ。ところが
日本からのものは非常に安く、しかも粗悪なものがくるというようなために、アメリカの方面から非常な反対が起きておる。
日本の工業力がそういうものしかできないという
事情であればやむを得ないけれ
ども、
日本の工場を見ると、
世界の一流の品物ができるような何があるじゃないか。現にアメリカ等もこれは
世界一流のどこの国にも負けないようなものに対しては、
日本品に対する排斥は起っていない。むしろ
安売りされるということが非常な問題であるから、この点について
考えてもらいたい。それから、ある品物が売れるという場合に、そのものにあまりに集中し過ぎて、一時に洪水のごとくくるために、その影響を受けてある一部のアメリカの
業者が倒れるとか、あるいは失業を生ずるというようなことになるというと、その地方における世論というものは非常にやかましくなる。従って
国会でその土地を代表しておるところの人は、当然その利益を擁護するような立法を
考えなければならぬというようなことになる。だから、いわゆる秩序のある輸出について
日本側においても
考えてもらいたい。また、こういう問題を十分実情に即して調査するためには、かつてカナダとの間に、商工会議所等に
委員会を設けて、十分そういうものをカナダの人とアメリカの人が共同で調査して、これに対する対策を立てたような場合もあるから、
日本においても、日米の共同調査
委員会というようなものを商工会議所の中に設けて、そうして共同してそういう事態を調査し、またそれに対する対策を、事が表面化する前に処置するというような
措置も講じたらいいじゃないかという話も出ております。現に綿織物につきましての問題については、
日本の
業者の自粛によるところの
方法によって、一時
日本の綿織物、その他の繊維製品に対する
制限を行おうとしたことが、実際は非常にスムーズにいっている例もございます。従って、基本的にこれが起ってくる原因につきまして、私
ども日本の方の側で反省すべきこと、また処置すべきこともあると思います。これらについては、
日本も進んでやるし、またアメリカ側の方におきましても、今申しますような
日本の
立場、及びアメリカ市場というものが
日本にとっていかに重大であるか、またこの経済
関係が、ひいて大きな日米
関係にも非常な大きな影響を持っておるということについて、十分に
政府当局は理解しておりますけれ
ども、さらに国民全体にPR運動をやる必要があると思います。従いまして、
外交の正式ルートを通じては、今申すように、直接の相手はアメリカ
政府でありますけれ
ども、その方面は一応とにかく、アメリカ
政府もよく理解して協力を惜しまない態度に出ております。また
国会方面に対しましても、さらにわれわれは理解を深めるような処置を講ずる必要があると思っておりまして、
政府としても、その方についても方策を
考えております。さらに経済界、国民一般に対するPR運動についても、今後積極的に進めて参りたい。また
日本側において、国内において
考えるべきことについては、通産省を
中心に、いろいろとこれに対する対策を立てている、こういう次第であります。