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1957-11-09 第27回国会 参議院 予算委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年十一月九日(土曜日)    午前十時二十七分開会     —————————————  出席者は左の通り。    委員長     泉山 三六君    理事            伊能 芳雄君            小幡 治和君            剱木 亨弘君            武藤 常介君            中田 吉雄君            中村 正雄君            吉田 法晴君            森 八三一君    委員            石坂 豊一君            大川 光三君            木島 虎藏君            小山邦太郎君            佐藤清一郎君            高橋  衛君            館  哲二君            土田國太郎君            苫米地義三君            苫米地英俊君            一松 定吉君            本多 市郎君            三浦 義男君            内村 清次君            岡田 宗司君            加瀬  完君            北村  暢君            栗山 良夫君            曾祢  益君            千葉  信君            松浦 清一君            山田 節男君            湯山  勇君            千田  正君            市川 房枝君   国務大臣    内閣総理大臣  岸  信介君    法 務 大 臣 唐澤 俊樹君    大 蔵 大 臣 一萬田尚登君    厚 生 大 臣 堀木 鎌三君    農 林 大 臣 赤城 宗徳君    通商産業大臣  前尾繁三郎君    運 輸 大 臣 中村三之丞君    国 務 大 臣 郡  祐一君   政府委員    内閣官房長官 田中 龍夫君    法制局長官   林  修三君    大蔵省主計局長 石原 周夫君    大蔵省銀行局長 酒井 俊彦君   事務局側    常任委員会専門    員       正木 千冬君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和三十二年度一般会計予算補正  (第1号)(内閣提出、衆議院送  付) ○昭和三十二年度特別会計予算補正  (特第3号)(内閣提出、衆議院送  付) ○昭和三十二年度政府関係機関予算  補正(機第2号)(内閣提出、衆議  院送付)     —————————————
  2. 泉山三六

    委員長泉山三六君) ただいまから委員会を開きます。  まず、委員の異動について申し上げます。  十一月八日豊田雅孝君が辞任せられ、その補欠として奥むめお君が指名されました。     —————————————
  3. 泉山三六

    委員長泉山三六君) これより昭和三十二年度一般会計予算補正(第1号)  昭和三十二年度特別会計予算補正(特第3号)  昭和三十二年度政府関係機関予算補正(機第2号)  を一括議題といたします。  昨日に引き続きまして質疑を続行いたします。
  4. 森八三一

    ○森八三一君 昨日、今問題になっておりまする中小企業団体法の問題に関連して通産大臣質問中であったのでありますが、私も非常に困難をしている中小企業者の正常な発達をはかりますために万全の措置をとりたいという気持については、政府見解を一にするものでありますが、といって、きのうも申し上げましたように、その目的を達し得る他の手段があるのに、あえて憲法に抵触するのではないかというような疑義の持たれるような措置をとる必要はないのではないかというのでありました。他に講ずる方法がないということでありますれば、これは考えなければならぬことも目的を達するためには存在すると思いますが、他に適当な手段があるとすれば、通産大臣もはっきり御了解願いましたように、必ずしもそういうような疑義のある手段をとる必要はないというふうに、もう少し謙虚な立場に立ってお考えをいただきたいと思うのであります。  それに関連してもう一つお伺いいたしたいことは、今度の法律は、ねらいとするところが、業者間に過当競争が起きて、それが結局社会公共福祉に反するような結果を招来する危険がある、これをためていきたいというところにこの法律目的趣旨が存在をしていると思うのであります。そういう観点から、異種業者の間に過当競争というものは存在するのかどうか。呉服屋さんなら呉服屋さん同士の間には、これは過当競争が起るという危険が私は想像できます。できますが、呉服屋下駄屋、魚屋と八百屋の異種業者の間に過当競争はあり得るかどうか。私の見解をもっていたしますれば、そういうことはないのではないかと思うのであります。ところがそういうことがあると御認定になったのか。今度の法律の十条には異種業者組織員とする地域商工組合を認めるという制度が設けられておるのでありますが、この見解通産大臣どうお考えになるのかお伺いいたします。
  5. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 確かに地域におきます異種業者のいわゆる商店街組合というもの、これにつきましてはやはり過当競争なりいわゆる不正販売といいますか、おとり販売とか、いろいろな無理な投げ売りとか、そういうような問題がありまして、商店街組合に限って異種業者組合を認めておるわけであります。
  6. 森八三一

    ○森八三一君 そういうふうな事態が発生いたしましても、異種業者間に過当競争が起るということにはならないのではないか。その地域に存在するそういう行為を行う人と、他の地域におる同種の業者との間には問題は起きません。起きませんけれども、同一地域内における異種業者の間に問題が発生する危険はないのではないか。もしそれを認めると、私は法律狙いと逆効果が生れてくると思うのであります。と申し上げますのは、現にそういう事実が存在しておる。それは甲の地域区域とする異種業者が組織しておる組合と、乙の地域区域とする異種業者間に組織されておるものと、おのおのがその地域繁栄をはかろうためにいろいろな問題を巻き起す、かえって地域組合を認めることによって過当競争を誘発するという危険が存在する。今度の法律ではそういうことをためていく何らの措置が講ぜられておらぬのです。ですから九条の方に規定しておる同一地域内における一定の業種をもって組織する組合でありますれば、私は十分目的を達することができると思いますが、十条の方の異種業者を会員とするものを地域別に認めるというと、その地域繁栄をこいねがうために、かえって逆の効果が出てくる。狙いとは別の結果が生れてくるという危険を感ずるのでありますが、しかもそういうことをためていくなんらの法律規定はここにはないということでございますので、おそらく狙いと逆の効果が出てくるのではありませんか。そういう場合、一体通産大臣はどうお考えになるのか。
  7. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 調整事業をやります場合については、すべて認可が要るのであります。その認可の場合に不当な制限というようなことは認いたしませんし、結局において私は商店街組合等におきましては正札の販売、そういうようなことの励行をするというようなことが行われるので、ほかの地域との過当競争をやるというようなことは行われないであろう、かように考えております。
  8. 森八三一

    ○森八三一君 行われないであろうということは希望的な一つの御意見でありまして、現に地域的に存在しておるそういうものが、地域繁栄をこいねがうために過当競争をやっているという事例はあるのです。それを今度の法律では防ぐ手段は講ぜられておらぬというのでありますので、そういう点についても問題が存在する。要するに理念の違う人が作った案を寄せ集めて二・一天作の五をやったという結果が今度の法律でございまして、そこには一貫しておらぬ理念が存在しておる、木に竹をつないだような格好になっておるというところに私は今度の法律の非常な矛盾が存在しておると思うのでありまして、昨日も非常に謙虚な気持でお考えを願った部分もあるのでありますが、そういう問題について、もう少しこの問題についても慎重に考えていただきたい。あくまでも正常な業者の発展を企図することを考えていただきたいと存じます。私は時間がありませんので、いろいろこの問題については質問を申し上げたいと思いますが、専門商工委員会でも論議されておりますので、時間の関係上省略いたしますが、もう少し親切に謙虚な気持考えていただきたいということを申し上げまして、通産大臣に対する質疑は終っておきます。  次に、時間がございませんので、一点だけ農林大臣にお伺いしたいと思いますが、赤城さんが御就任になりましてから初めて農林産業の現状を赤裸々に分解せられまして、そこに存在する問題点を指摘して、政府も当業者も一体となって問題の解決に努めようというような態度に出られましたこと、すなわち農林水産業の白書を御発表になって、いわゆる五つ問題点が存在しているということを指摘して、警告を発せられたということにつきましては非常に敬意を表するのでありまして、その五つ問題点が解明されまするように、昭和三十三年度の予算その他を通じまして、十分御善処をいただきたいと思うのであります。  ここでお伺いいたしたいことは、生産者米価の問題であります。この問題をめぐってとかく世間では政治米価だ何だかんだといっていろいろ非難をしておる。私どもはこういうようなことが、国民の主食である限りにおいて今後とも発生いたしませんようにしなければならぬと思うのでありますが、それにつきまして考えますることは、昭和三十二年産米価決定するに当りまして、当初政府昭和三十二年の予算を編成されるときに、昭和三十一年産政府買基本価格九千六百四十八円ですか、というものを基礎にいたしまして、昭和三十一年の七月から昭和三十二年の予算編成期、すなわち十一月までの農業パリティ指数を参考とせられましてはじき出した金額が、たまたま一万十六円という金額になりましたので、予算米価では一万円ということで国会に提案をせられておったのであります。ところが具体的に時が進行いたしまして、本年昭和三十二年産米予約集荷をしなければならぬという段階になりまして、すなわち五月になって同様の方法計算をされますると、十一月から四月までの時の進行に伴って物価が上昇して参りまして、四月末の農業物価指数は一二四・三五という指数を示した。それを採用してやりますると、同様な方法計算いたしまして一万百六十六円という数字が出て参りましたので、当時の新聞は筆をそろえて昭和三十二年産米生産者価格は一万百六十六円という額で諮問をされるであろう、これが決定されるであろうということを報じておりました。ところがこれが諮問されまする機会がおくれまして、とど米審が開かれたのが六月の下旬であります。そうしますと、五月の物価指数というものが上ってきた。指数は一二四・四八という数字でございまして、〇・一三、わずかではありまするが上昇いたしました。同様の計算方法で参りますると、通念としては農業パリティ指数が上昇すれば、結論価格は上るであろうということであったのにもかかわらず、一万百五十三円という数字が出て参りました。物価が上って価格が下るという万人夢想もしなかった結果がここに生まれて参りました。そこで当時の農林省におきましては、これでは世間は納得しないだろう、生産者も納得せぬので、現に昭和三十一年産価格決定する当時におきましては、物価が下りましたので昭和三十年産米よりも約百円ほど下げたのです。これは物価が下ったのだから下げることについて生産者も了解してくれ、物価が上ったときにはまた上げるのだということで一応納得した格好になっておった。今申し上げますように、四月末は物価指数は一二四・三五、それではじき出すというと一万百六十六円、五月末の物価指数は一二四・四八、物価が上っているのに同じ計算方法でやると百五十三円ということで逆に十三円下ってしまうという奇態な現象が出てしまう。これではいけないということで、急遽昭和二十九年、三十年、三十一年と三カ年の政府買基本価格平均九千五百十五円というものをベースに持ってきて、そして昭和二十九年七月から昭和三十二年五月末までの物価指数を分母として今申し上げました昭和三十二年五月末の物価指数一二四・四八の指数を当てはめて計算いたしますと、たまたま一万百七十円という数字が出て参りました。わずか四円ではありますが、物価が上ったことによって結論価格が上るということになるので、これを諮問されたのです。そういうようにパリティ指数基礎にして計算するいわゆるパリティ計算方式というものは非常に矛盾があるということであります。こういうことでありますがために、すでに米価審議会は過去三カ年にわたってパリティ計算方式は現在の生産者米価決定するためには妥当な方法ではないという結論に到達しましたから、生産費所得補償方式をもって計算すべきであるということを政府答申しております。一回ではありません。三回にわたって答申をいたしておる。政府米価審議会答申というものは尊重いたしますということは繰り返し繰り返し言明をなすっておる。そこでどうして計算米価審議会答申通りおやりにならぬかということをお尋ねいたしますると、遺憾ながらそういう方法計算をいたしたのでありますが、諸般の資料が整っておりませんからということで、今日までじんぜんと日を送ってきておるのであります。今まではパリティ計算というものがそういうような矛盾があるということがはっきりいたさなかったので、まあまあパリティ計算方式でやりましても生産者その他も納得したのでありますけれども、こういうような矛盾がはっきりして参りますと、昭和三十三年産生産者米価決定する場合に、そういう矛盾の存在する方法計算したということでは、これでは納得できぬと思うのであります。でありますから、私はすみやかに理論的な、しかも米価審議会が三年にわたって答申しておる生産費所得補償方式に準じて計算をすべきであると思うのであります。そのためにはどうしてもそういう計算方式計算し得るような基礎資料というものをすみやかに準備しなければいかぬと思う。つきましては、大臣は来年の四月末までにそういうような生産費所得補償方式学者も主張し、生産者も要求しておるその方式によって計算し得るということについての基礎資料を整えるための何らかの措置、私をして言わしむるならば、米価審議会の中に小委員会でも設けて、そういうことによって意見を一致せしめて算定方式というものを一つ作り上げてしまうということで努力すべきだと思うのであります。どうお考えかをお伺いしたいのであります。
  9. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 生産者米価決定方法につきましては、御承知のように食糧管理法の中に「生産費及物価其ノ他ノ経済事情参酌シ米穀ノ再生産確保スルコトヲ旨トシテ之ヲ定ム」、こういうふうに書いてあるのであります。そういうことでありますから、生産費を基調として米価を定めるということは、生産者米価を定めるということはこれは方針として当然とるべきところじゃないかと考えております。ただ、戦後今もお話がありましたように経済事情などが非常に変動がありましたり、労賃等につきましても的確なるといいますか、固定的な数字をとることが非常に困難であった、こういう事情のためにパリティ計算方式によって生産者米価決定をして来たのでありまするが、今もお話がありましたように、純然たるパリティ計算だけではいけませんので、生産費の調査を非常に強くにらみ合せましたり、あるいはまた所得方式ということも加味いたしまして本年度の生産者米価決定された、こういうような事情でありますことはただいまお話通りであります。でありますので、今の算定方式は暫定的なものだというふうに私ども考えておりますので、これはもっと的確なものに改めたい、こういうふうに考えております。そこで生産費方式についてでありますが、これは今も申し上げましたように、所得方式を加味して生産者米価決定してありますから、パリティー本やりではないのであります。ただ、生産者米価決定について一番問題になりますのは、もう御承知のことだと思いますが、労賃算定をどこにおくか、農村における労賃平均で行くか、あるいは都市労働者労賃で行くか、その点をどういうふうに見て行くかという問題が一つであります。それから生産費につきましてどの程度の生産費を見るか、範囲であります。バルク・ラインの取り方、こういうものがありますので、こういう技術的な問題を一つ解決して行けるようなふうに進めて、御趣旨のように進めたい、こう考えておるわけであります。そこで米価審議会等に小委員会でも置いてこれを的確にきめたらどうかということでありますが、この間米価審議会におきましては、消費者米価につきましてはいろいろ話もありまして、小委員会等も設けてなお検討してみたい、こういうことを申しておいたのでありますが、生産者米価についてはそういう話もありませんでした。せっかく今お話もありましたので、そういうことも検討いたしまして、御趣旨に沿うような方向へ極力進めて行きたい、こう考えております。
  10. 森八三一

    ○森八三一君 私の趣旨を御了解いただきまして、努めてそういうようにとり運ぶことの考慮をするということでありますので、これ以上申し上げることはございませんが、お話にもありましたように、ただいまパリティ計算方式だけではいかぬから、それに生産費を加味して米価決定されておる、まさにその通りでありますが、そういうことが政治米価だ何だかんだといって、うるさい議論を巻き起す種になっているのですから、そこでそういう議論をせずに端的に申しますれば、米審なんというものはなくてもきちんとすぐ計算ができるような方式というものを作っておくということが、私は一番大切な米の価格というものをきめるのには好ましい姿であると思いますので、御答弁にもございましたように、早急に労働賃金をどうするか、土地資本利子をどうするかといったような問題点がございます。そういうことについて学者消費者生産者も含めた社会全体の納得のできるような線を一つとりきめるということに御尽力をいただきたいという希望を申し上げまして、私の時間はございませんので、まだお尋ねいたしたいことは山積しておりますが、他の機会に譲りまして私の質問はこれをもって終了いたします。
  11. 吉田法晴

    吉田法晴君 ちょっと関連。先ほど森委員質問に答えて通産大臣は昨日からの、公共福祉とそれから強制加入命令の問題について、組合共同利益公共福祉であるかのごとき答弁等もして来られましたが、先ほどの答弁では、地域的な商工組合において投げ売りあるいは過当競争を防止したい。あるいはそれを防ぐことが公共福祉に合するがごとき答弁をせられましたが、投げ売りについては、これは投げ売りが——投げ売以外に過当競争というものがどういう工合考えられておるのか知りませんけれども、あるいは安売り、あるいは景品つき売り出しという点もございましょう。投げ売りという言葉がございましたが、投げ売りについて先般来電気器具等についていわば安売りといいますか、投げ売りが行われたものを禁止しようとした業者の動きについて、これを独禁法違反として公取判定をいたしましたことは、これは私ども記憶に新しいところであります。従って通産大臣地域的商工組合においても投げ売りさえやることは望ましくない、あるいはそれを押えるべきだ、こういうことを言われることは、これは通産大臣考え方が現在の民主的な考え方じゃなくて昔のようなことを考えている、非民主的なことを考えておられる。そして非民主的な考えに基いて中小企業団体法を運営していこうとされるのじゃないか、こう考えられるのでありますが、投げ売りあるいは過当競争等をどういう工合に押えようとしておられるのか。今の公取その他が示しましたこの公正取引法違反云々判定矛盾をするような御答弁であったのでありますが、その点関連してお尋ねいたしたいと思います。
  12. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 投げ売りという言葉があるいは適当でなかったかと思います。景品づき販売だとか、おとり販売とか不当な販売方法によって競争に勝とうというようなことで、しかもそのために半数以上の業者が非常な不安定になり、あるいは倒れるというような状態になりますことは、これは好ましいことではありませんし、また公共福祉にも反することであるというふうに考えております。この独禁法との関係において、私は別に、観点が非常に違っていると思います。
  13. 吉田法晴

    吉田法晴君 今の話の中で、協定価格以下で売る投げ売りもいかぬ、あるいは景品づきの売り出しあるいは安売りもいかぬといったような答弁がございましたが、そうなんですか。そういう考え方独禁法に言われておる何と申しますか、民主主義的なやり方をすべきだという現在の建前と違った考え方である、あるいは違ったやり方中小企業団体法を通じてやろうとされておるのじゃないかという御質問を申し上げたわけであります。投げ売りあるいは景品つき売り出しあるいは安売り等が、これが不当だ、あるいは協定違反、こういう工合に言われましたのか、この点もう一ぺんはっきり伺っておきたいと思います。
  14. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 不当な販売方法と、こういうことだと思います。そのためにまた業者がどんどん危殆に瀕するというようなことでありまして、極力安く売るという意味につきましてはこれは何にも禁止する必要も何にもないと思います。組合もおそらくおとり販売というような式のことをなくしよう、しかし価格に対する制限が御承知のように非常にむずかしい条件のもとに行われるのでありまして、おそらく価格制限と規制ということをやりますことは余り私は実際上には起らないと考えております。
  15. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 千田君に申し上げます。あなたの御要求に外務大臣がございますが、藤山外務大臣病気で登院をいたしておりません。つきましては、岸総理大臣からかわりに答弁をいたしたいとのことでありますから、御了承を願います。
  16. 千田正

    千田正君 第二十大国会以来約半歳を経て第二十七国会がただいま開かれましたが、その六ヵ月の間に世界の情勢が非常な変化を来たしつつある、こういう点からみまして、私は外交問題について特にお伺いしたいと思いましたが、藤山外相が御病気のために出られない、もちろん外務大臣といたしましては岸総理大臣の意向をもって外交折衝に当られておるのでありますから、岸総理大臣からお答えいただけばけっこうでございます。  そのまず第一点としまして、私が特にお伺いいたしたいのは、昨日も同僚曾祢議員からもこの国際関係について御質問になっておられましたが、さらに私は別な立場から岸総理大臣にお伺いしたいのであります。それは何かと言いまするというと、今や世界をあげてソ連の人工衛星の打ち上げあるいはミサイルの問題等中心として、全世界世界外交の面において幾多の変化を来たされるんじゃないかという予想のもとに——犬人工衛星に乗って走っておる状況、一秒といえどもおろそかにできないような状況のもとに置かれておる今日、私は今後における世界戦争か平和かを中心課題として、防衛体制そのもの変化してくるものと考えられるのであります。特にその点において日本日米条約その他によってただいま日本の周辺に、日本主権国でありながら基地として貸与しておるところの小笠原、あるいは沖繩等の問題を中心にして首相にお伺いしたいのであります。将来かりにこの長距離におけるところの弾道弾が発達してきて戦争というものが回避できるとするならば、また国連が平和を求むることを中心としてただいま論議の課題になっておる現況においては、将来はこの問題を中心として戦術体制防衛体制というものは当然変化を来たされるものとわれわれは考えられる。そこで長距離核兵器が今後の戦争に役立つか役立たないかは別としまして、今日の段階ではさらに戦争をわれわれは回避しなければならないということは、先般来首相が国民の輿望をになってこの悲願を国際連合のヒノキ舞台にかけたことは申すまでもありません。同時にわれわれは戦争を回避するという一つの原則から言いますれば、この大陸弾道弾の発明によってもう戦争というものはやめてほしい、やめなければならないという立場から考えて、そういうものがありとするなれば、一体小笠原とかあるいは沖繩というものは中距離の原子爆弾の発射基地として、あるいは短距離の基地としての防衛には役立つかもしれませんが、今後ICBMのような、こうした進歩した科学兵器のもとにおいては、この基地は役に立たないとわれわれは思います。また役に立たすべきではないと私は思う。そういう意味からいって小笠原あるいは沖繩のこの主権を回復するのは当然と思うのでありますが、これに対して首相としましてはどういう手を打たれるのか、あるいは手を打ったのか。先般アメリカの新聞で見まするというと、藤山外相はダレス国務長官、あるいはウィルソン長官と会見した際においても、この小笠原、沖繩の返還に対して日本政府の意向を伝えたようでありまするが、先方とのこの交渉の結果はどうなっておるのか、その点を一応お伺いしておきたいと思うのであります。
  17. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) 科学の発達が政治、外交、防衛、あらゆる面に非常な大きな変革をもたらすであろうということは、いろいろな面から論議をされております。また私どもがそういうことを発達が将来人類の幸福のために、世界平和のために用いられるという方向にぜひとも行かなければならぬし、また行かせるように努力をしなければならぬということは、今千田委員のお考えと同様に私も強く考えておるのであります。こういう問題に関連し、将来のいろいろな点をわれわれは十分頭において、すべてのものを考えていかなければならぬことは言うを待ちませんけれども、ただ同時に、現在までのいろいろな関係において来ておる実情も、これを全然無視するわけにはいかぬこともまた言を待たない。ただ沖繩及び小笠原につきましては、これがミサイルの基地として用いられるかどうかということに関連なく、実はわれわれとしては当然日本の一部であり、また日本の国民はこれが一日も早く日本に回復されることを強く要望しておりますから、従来といえども、その点に関して日本側の主張というものは、あらゆる機会にアメリカ側に提示されてきておるのであります。また私が過般の訪米に際しましても、またその後の藤山外相の訪米に際しましても、やはりこの問題に関する日本側の意向というものは強く主張され、またその方向に向って事態を改善し、解決する方向をつけようとして話し合いをいたしております。ただ六月の私とアイゼンハワー大統領との会談において、この問題に関して両者の意見が全然一致を見るに至らなかったということも共同声明に明らかにされておりますが、今日まだ私はこれがわれわれの希望する方向において解決の事態に至っていないし、まだその方向もはっきり出ておらないということは非常に遺憾でございます。われわれは今後といえども、あらゆる日米の間の交渉はもちろん、その他の方法におきましても、これを日本に回復する方法として、有効であり、適切であるというものは、これを十分に用いて、われわれの願いを達するように努力しなければならぬ、かように考えております。
  18. 千田正

    千田正君 岸総理大臣はしばしば本会議においても、総理大臣に就任されると同時に、日本外交の原則を主張されておったのであります。いわゆる岸構想における三原則、外交三原則としまして、国連中心主義、自由主義諸国への協調、またアジアの一員としての立場、この三つの基調を中心として、ただいまも外交方針を進められておると思いまするが、第一の国連中心主義は、国連に参加して、非常任理事国としての立場を確保されたということは同慶の至りでありますが、次の自由主義諸国との協調と、アジアの一員としての立場というこの二つの問題は、ややもすれば矛盾を生じてくるおそれがあるのじゃないかという私は杞憂を持っておるのであります。自由国家群との間の協調は、従来日本は、ある人から言えば、これはもう米国の従属国じゃないかというほどの批判を受けるほど、アメリカを中心とする自由国家群との間の協調はやってきておる。しかしながら世界の情勢は社会主義国を除いても、アジア・アフリカの情勢というものは、必ずしも自由国家群との協調によって、アジア・アフリカのグループとの協調は保ち得るかどうかということは、はなはだ疑問なのであります。先般来、御承知通りのエジプトの問題、あるいは最近起きておるところのシリアの問題、その他インド、パキスタンをめぐるカシミヤ問題等々をあげきたれば、必ずしもこれは、自由国家群とA・Aグループとの間には一つの断層があるということをわれわれは考えざるを得ないのであります。そういう立場に置かれて、日本はいずれの立場につくかということを考えまするというと、相当これはむずかしい問題ではないかと私は考えるのでありますが、今後においてもこの自由国家群との協調はもちろんやるでありましょう。しかしアジア・アフリカ——A・Aグループとも協調を持っていくとするならば、容易ならざる段階に入ると思いますが、もしもアジア・アフリカ・グループとの協調ができないとするならば、日本そのものが、アジアにおいては孤立した立場に立たなければならないというふうに考えるのであります。先般、日本政府が提案しました、国連におけるところの原子爆弾のこの核実験の禁止の問題につきましても、あの表決の結果を見ましてもよくわかる通り、A・Aグループは、果して日本立場を応援したかということになると必ずしもそうではない。この自由主義国家群との協調と、アジア・アフリカの一員としてのアジアの立場を堅持するということ、この二つの二面外交において、総理大臣は、どういう方針で今後とも臨むかという基本方針をはっきり伺っておきたいと思うのであります。
  19. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) アジア・アフリカ・グループということがいわれておりますし、また、バンドン会議においてこの国には、ある一つの共同声明、決議の採択もいたしております。アジアの一国として日本も、そのバンドン会議にも参加いたしておりますし、ここに共通の問題があることは言うを待たないのであります。ただ現状のアジア・アフリカの実情を見ますと、あるいはある人は、アジアは一つじゃない、二つじゃないか、あるいは三つになっているのじゃないかというような説をなす人もありますくらい、アジア間におきましても、必ずしもすべての面において、すべてアジア・アフリカなるがゆえに、すべてが一致しておるという現状でないことも、千田委員の御承知通りであります。私どもは、やはりこの私があげております三つの外交の路線というものを通じて、一つの動かすことのできないものは、やはり国連憲章に明らかにされておる通り世界の正義に基くところの平和の確立という一つの根本原則がすべてのものを貫いておるのです。アジア・アフリカの諸国が、長い西欧の植民地から独立して、非常に強い民族主義のもとに独立を完成しようという熱望に燃えておることは、私どもアジアの一国として、心から共鳴をいたし、その完成にできるだけの協力をやっていかなければならぬということを、強く決意しておるのでありますが、同時に、それがあまりにも急激に極端に行われる結果として、かえって目的を達する上においては得策ではないというふうな事態も、この国際間においてあると思うのであります。これらのことを、やはり日本がアジアの一国とし、また、今申しました正義に基くところの世界平和の確立というこの立場から見まして、調整する必要の起ってくる場合もまだあると思います。また、先ほど言っておるように、アジア・アフリカ自体の間におけるところの意識の完全に統一されておらない問題に関しても、われわれは、やはりこれが調整と、アジアの繁栄と進歩のための協力を作り上げるということに努力をいたしていかなければならない。この最近の国際情勢の変遷、また複雑なる国際関係というものを見ますと、外交の路線におきまして、いろいろな具体的な事実そのものをいかに解決するかということにおきましては、あるいは矛盾もし、あるいは撞着の起ってくるような国際情勢が基本的に存在しておることは、これはいなむことはできぬと思いますが、この間における日本立場としては、あくまでも、今申し上げたような精神のもとに調整に対して努力をして、そうしてアジアの繁栄と進歩を通じて、真の世界平和を作り上げるという大きな目標に向って努力していくと、事態そのものにすでに矛盾が含まれておる場合もありますから、これの解決に際しましては、われわれとしては非常な努力を要し、苦心を要することは、もちろん私は多々あると思います。しかし、われわれが真の世界の平和を望み、正義の基礎に立った世界平和というものを作り上げようとする上におきましては、現在国際間に生じておるところのいろいろな矛盾に対して、矛盾なるがゆえにわれわれが辟易してはいけないのでありまして、ここに非常な努力を要するものである、かように考えております。
  20. 千田正

    千田正君 今、首相のおっしゃる通り、アジア・アフリカは、民族独立運動というものが民族の最終の悲願であり、最大の問題であるとして、ただいま国際連合においても一貫した団体行動をとっておられます。自由主義諸国は、従来の植民地政策そのものを踏襲して、こうした民族独立運動というものに対して一応の制限を加えようとするのが、現在のヒノキ舞台におけるしのぎを削っておるところの問題だろうと思います。その中間に立って日本は調整をしていこうというお考えのようでありまするが、まことにけっこうな案でありますけれども、実際起きてくるところの問題は、首相のお考えになっておるように簡単ではない、かように考えるのでありまして、そういう問題が如実に起きてきた場合においては、一体、日本はどっちにつくんだと、民族独立運動の立場に立って、東洋の民族なり、あるいは同じようないわゆる人種の、民族の回復運動に日本が応援するのか、それとも従来のような、アメリカやイギリスのような自由主義国が、こうした未発達の国民をある程度制限しながら、自国の繁栄にむちうっていこうという、いわゆる自由主義諸国の繁栄にいくところの姿というものの、いずれにつくのかということを考えるというと、日本立場はそう安易なものではないと思うのであります。  そこで、私はもう一ぺんお伺いしたいのですが、日本の現在の立場は、民族独立運動というものの、この悲願達成のために、今まで被征服国とされておったところのこの人たちの真の意図を生かすために、日本外交考えていくのか、それとも、やはり自由主義国に従属するがごとく、諸国から非難されつつも、その協調の立場に立っていくのか、この二つのいずれを選ぶかということが、今後の外交に対しての重大な起点だと思いますから、もう一度明確に御所信を承わっておきたいと思います。
  21. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) 私は、アジア・アフリカのグループの国々が、民族の独立を完成しようとしておるこの念願、熱意というものは、われわれは根本的にこれに同調して、それを達成せしむるようにあらゆる努力をすべきものであることは、私が先ほど申し上げました通り、それは当然である。これは、われわれが特にアジア・アフリカの一国でありますから強く感ずるのでありましょうが、同時にアジア・アフリカでなくとも、私は、やはり世界の正義に基くこの平和という観念のうちには、あらゆる民族がやはりその独立を完成しようとする意欲を持つ場合において、その意欲が達成せられて、完全な独立、りっぱな独立ができていくということは、これは正しいことであると、かように考えております。ただ、その手段であるとか方法であるとかいうものについては、われわれは十分にやはり協力をする場合において、真に有効であり適切であることを考える必要があると、こう思います。
  22. 千田正

    千田正君 次に、外交の最も重大な一つの方途としましての経済外交、この面につきまして私は一言お伺いしたいと思うのであります。  今度の首相並びに大蔵大臣の今国会における劈頭の演説にも承わっておきましたが、日本は今、輸出貿易というものに重点を置いていくのだという場合において相手国がなければ輸出ができないことは、言うまでもありません。私はここに日米貿易という問題に対し、一言首相に伺っておきたいと思うのであります。それは、一昨年以来、アメリカが日本商品の輸入に対して制限してきておる。そうして、さらに本年に入ってからは相当の熾烈なる運動をやっておるようにわれわれは考えるのであります。たとえば、米国内におけるところの関税委員会なるものが受理しておるところの日本の商品に対するところの課税の問題、こういう問題は毎日々々山積しておる。このアメリカの国内事情日本の貿易に影響することが非常に大きいと思うのであります。アメリカのこの輸入制限に対して、緩和する方策をどういうふうにとっておるのか。これは総理大臣並びに通産大臣にもお伺いしておきたいのでありますが、現在アメリカは日本の商品を歓迎しない、歓迎しないどころではない。最近に至っては排斥運動までしておる。これに対しどういう手を打っておるか。昨年の日本の米国向けの輸出の総額は大体五億四千五百万ドル、米国から日本が輸入した額が大体十億六千五百万ドルでありまするが、ほとんど倍額というものを日本が輸入しておる。むしろ日本が日米協調という立場からいって、自由国家群のいわゆる宗家ともいうべきアメリカが、日本とともに生きようというならば、一番苦しい立場にあるところの日本のこの貿易事情というものを緩和するのが当然ではないだろうか、私はさように考えるのでありまするが、アメリカ側においては、やはり本年も昨年と同様、日本品の排斥あるいは輸入制限によって、日本商品のアメリカ内に輸入されることを食いとめようと、こういうアメリカの運動に対して、日本はどういう外交手段をもってこれを解決していくのか。あるいは通産の問題においても、どういうふうにして日本の商品の輸出というものを考えていくのか。御承知通り、東南アジアの市場は、西欧諸国によってどんどんこのマーケットは開拓されていっております。中共は、これもまた西ドイツやあるいは英国が、日本がもやもやしておる問にどんどん進んできておる。輸出貿易というものを今後の政策の重大なる根幹として考えておるところの岸内閣としましては、われわれは自由国家群に対して協調する、協力するといいながら、実際においては、その宗家であるアメリカでさえも、日本の商品に対しては制限を加え、排斥運動までしておる。これに対して外交的にはどういう手段をもって、こういう問題を解決していくのか、この点をお伺いしておきたいと思います。
  23. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) 日本の輸出貿易を振興する上におきまして、米国市場というものは、今おあげになりましたように、日本の非常な大きな市場であります。しかして、日本との貿易関係が非常にアンバランスであるということも、おあげになりました通りであります。従いまして、この米国市場に対して、日本品のより一そうの販路を拡張するということは、今の事態からいってきわめて重要であります。ことに、今の支払い関係の困難な国際情勢から申しましても、アメリカ市場というものは非常に大きなものであります。ところが、これに対していろいろな日本品に対する輸入制限のような運動が持ち上ることは、私ども非常に日米の協力という大きな立場からも、また日本の経済の上からも非常な重要な問題であると思う。御承知通り、アメリカは幾多の州に分れておりまして、州法でもっていろいろな立法をなして、その州において商品に対する制限等も行い得るような建前になっております。すでに日本品に対して差別対遇をするような二、三の州法が制定をされたり、あるいはされようとするような傾向もありまして、これに対しては、すでにアメリカの憲法違反という訴訟も起きておりますし、アメリカの政府におきましては、こういう運動に対して、これを阻止することに対しましては、あらゆる努力をいたしております。しかし、同時に国会において、それぞれ選出されておる自分の選挙区の事情から、日本品に対する業界等の要望に基いての立法等が国会に提案されるような事態も出ております。これらに対しては、従来もちろん、われわれは外交のルートを通じ、また日米の基本的なあり方につきまして、十分アメリカの政府とは交渉し、アメリカ政府も、これに対しては日本立場を十分理解して、国内におけるそれらの動きに対しましては、アメリカとして、政府として、できるだけの努力をしていることも私は現実であると思います。そこで、一体そういう問題が起ってくることについての、でき上ったとか、現われてきたことに対しての外交的の措置はもちろん、われわれとしてあらゆる方法をとってやっておりますが、未然に防ぐ、そして日本の販路を拡張する方法はどうかということにつきましても、いろいろわれわれは、あらゆる面から考究をいたしております。つまりアメリカに参りましたときに、いろいろアメリカの経済界の有力者ともその点につきまして話をいたしてみまするというと、アメリカの方で言っていることの何で、日本としても考えるべきであると思う一、二の点は、一つは、アメリカの市場は十分購買力を持っているのだから、日本品に対して、日本はもちろん、日本の工業力からいってもすでにいいものができる、世界一流の品物ができるのだから、今入っているような安い品物を安い値段で入れるというようなやり方を、日本の方においてもぜひ一つ考えてもらいたい。われわれは、ヨーロッパの高い、いい品物に対して、これを購入しておるが、これに対する反対は起っておらぬ。ところが日本からのものは非常に安く、しかも粗悪なものがくるというようなために、アメリカの方面から非常な反対が起きておる。日本の工業力がそういうものしかできないという事情であればやむを得ないけれども日本の工場を見ると、世界の一流の品物ができるような何があるじゃないか。現にアメリカ等もこれは世界一流のどこの国にも負けないようなものに対しては、日本品に対する排斥は起っていない。むしろ安売りされるということが非常な問題であるから、この点について考えてもらいたい。それから、ある品物が売れるという場合に、そのものにあまりに集中し過ぎて、一時に洪水のごとくくるために、その影響を受けてある一部のアメリカの業者が倒れるとか、あるいは失業を生ずるというようなことになるというと、その地方における世論というものは非常にやかましくなる。従って国会でその土地を代表しておるところの人は、当然その利益を擁護するような立法を考えなければならぬというようなことになる。だから、いわゆる秩序のある輸出について日本側においても考えてもらいたい。また、こういう問題を十分実情に即して調査するためには、かつてカナダとの間に、商工会議所等に委員会を設けて、十分そういうものをカナダの人とアメリカの人が共同で調査して、これに対する対策を立てたような場合もあるから、日本においても、日米の共同調査委員会というようなものを商工会議所の中に設けて、そうして共同してそういう事態を調査し、またそれに対する対策を、事が表面化する前に処置するというような措置も講じたらいいじゃないかという話も出ております。現に綿織物につきましての問題については、日本業者の自粛によるところの方法によって、一時日本の綿織物、その他の繊維製品に対する制限を行おうとしたことが、実際は非常にスムーズにいっている例もございます。従って、基本的にこれが起ってくる原因につきまして、私ども日本の方の側で反省すべきこと、また処置すべきこともあると思います。これらについては、日本も進んでやるし、またアメリカ側の方におきましても、今申しますような日本立場、及びアメリカ市場というものが日本にとっていかに重大であるか、またこの経済関係が、ひいて大きな日米関係にも非常な大きな影響を持っておるということについて、十分に政府当局は理解しておりますけれども、さらに国民全体にPR運動をやる必要があると思います。従いまして、外交の正式ルートを通じては、今申すように、直接の相手はアメリカ政府でありますけれども、その方面は一応とにかく、アメリカ政府もよく理解して協力を惜しまない態度に出ております。また国会方面に対しましても、さらにわれわれは理解を深めるような処置を講ずる必要があると思っておりまして、政府としても、その方についても方策を考えております。さらに経済界、国民一般に対するPR運動についても、今後積極的に進めて参りたい。また日本側において、国内において考えるべきことについては、通産省を中心に、いろいろとこれに対する対策を立てている、こういう次第であります。
  24. 千田正

    千田正君 せっかく日本は国連の理事国になっておるのでありますから、国連の世界貿易憲章の中にも、自由な世界通商の精神と同時に、アメリカが常に叫ぶところのいわゆる互恵通商協定の精神に基いて、当然日本側としましても、こういう問題については十分なる日本政府の意思を代表して、外交面において働いていただきたいということを要望いたします。  さらに私は、今の外交の中で置き忘れられておるじゃないかという一つの大きな面を取り上げて首相にお尋ねいたしたいのは公海漁業の問題、海洋自由の原則がただいまのところ制限されておるというよりほかにありません。戦前、七つの海をわれわれの共通の広場として、日本の漁民は世界一のいわゆる漁民としての誇りを持っておったのでありますが、戦争という痛苦の陰で結ばれたサンフランシスコ条約においては、残念ながら日本はある程度不利な立場に立って、日、米、カナダの三国条約によって、北太平洋への進出がある程度押えられた。その後においては、これは条約でありまするから、当然日本政府としてはやむを得ない、この条約を守って今日に至っておるのであります。しかるに最近に至っては、アメリカ側は、このサケ・マスの漁獲を中心としまして、これはアメリカあるいはカナダに育ったサケである、これはアジアで育ったサケである、大部分アジアで育ったサケであるが、太平洋沿岸、アメリカ及びカナダ方面から行ったサケであるから、このサケは制限区域を拡張すべきだということさえも主張している。こういう問題が一つ。もう一つは、御承知通り一九五二年に李承晩が自分で勝手にいわゆる李承晩ラインの宣言をして、日本の漁船の公海自由の操業というものを拒否した。しかも不法拿捕して、今日一千人になんなんとするところの漁夫が、三年たってもいまだ日本に帰ってこれない。一体この日韓問題はどういうふうになっていくのか。まず第一に、私はこうした問題をお聞きしたいのであります。  さらにオーストラリアとの問題は、御承知通り真珠採取法というもので制限されまして、そして日本の漁船がオーストラリアのあの大陸だなにおいて活動できない。この問題については、へーグの国際司法裁判所に日本側が訴えることを要請したのに対して、オーストラリアもこれに同調したにもかかわらず、今もってこの国際司法裁判所がこれを取り上げて、判決までに至っておらない。  さらに最近に至っては、御承知通りクリスマス島の原爆の実験によって、また太平洋の海も制限されてきておる。クリスマス島の原爆の問題は、すでに行われた損害賠償に対しては、日本側はどういう要請をしておるのか、どういう結果になっておるのか。イギリスの国防省が先般発表したところによりますというと、明年の一月、再びクリスマス島周辺において原爆の実験をやるという。これに対して一体どういうふうな、日本政府としては英国側に、この問題についての交渉をしておるのか。  さらに、ソ連との間は、昨年日ソ条約が結ばれて、そうして北洋漁業問題は一応解決したごとく見えておりまするけれども、本年もやがて暮れなんとしております。明年早々、再びこの問題を中心として、日ソ漁業委員会において論争を繰り返さなければならない。日本側の要求はどの程度までやるのか。北洋におけるところの、御承知通り、歯舞、色丹あるいは中部千島、樺太を中心とするところの日本の零細漁民の進出というものは、やはりこれまた日本政府の折衝いかんにかかっておる。私はかように思うのであります。この八月には、ピョートル大帝湾においては、不法にも日本の漁船は退去を命ぜられた。ピョートル大帝湾は、いわゆるソ連の十二海里説からいいましても、当然あそこは公海と称してもいいじゃありませんか。にもかかわらず、ソ連は、これを内水面と称して、内海の宣言をしております。石川、新潟、秋田、青森等の、日本海に面した漁民は、常に沿海州沿岸におけるところの漁場を捨てなければならない。今日暮を控えてこの漁民が、どこに漁場を求めるかということにさまようておる姿であります。こうした外交面における、海に関する国際外交の面においては置き忘れられておるのではないかと思う。  今まで申し上げましたところの、いわゆる日米加漁業条約の問題に対して改訂する御意思があるかどうか、あるいは李承晩ラインの問題を中心としまして、日韓会談はどうなっておるのか、クリスマス島を中心としたところの英国に対する損害賠償はどうなっておるのか、オーストラリアとの問題における国際司法裁判所の提訴の問題はどうなっておるのか、日ソ間におけるところの、ただいま申し上げましたところの北洋漁業における漁獲に対するところの、今後の漁業委員会に提出すべきところの十分な用意があるのかどうか、ピョートル湾におけるところの問題は今後どういうふうに解決するか、この六つの問題について首相の御答弁をいただきたいのであります。
  25. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) 近時、公海の自由という世界の大きな原則が、一方的な意思表示によってじゅうりんされつつあるというような事態が相次いで起っておることは、これは、私は非常に遺憾であり、また、世界の平和を念願する立場から申しましても、これは捨ておけない問題であることは、今、千田委員のおあげになりました通りであります。これに対しましては、日本としては、十分一つ対処すべき方策を立てて臨んでいかなければいかぬ、こう考えております。ただ、公海におきましても、魚族の保護その他の目的で、国際条約、あるいは場所によりまして二国間の条約によって、いろいろ魚族の保護、あるいは水産資源の将来の確保の問題等に対して、条約が起る、もしくはそういう制限が行われるということは、私は、これは国際条約なり、あるいは特に海域いかんによっては、二国間においてそういう協定ができるということは、これはあり得ることであります。また公正なことであると思います。ただ、一番の問題は、一方的な意思表示で勝手にこれを制限し、もしくは禁止し、あるいはそこの運航すら制限するというようなことが、あるいは原水爆の実験によって、あるいは一方的の意思によって内海宣言をするとか、あるいは大陸だなの問題について特殊の主張をして、一方的にこれをやるというようなことは、これは私は、あくまでも世界の公海自由の原則に反するものであり、また、これを是正するように、あらゆる方面から考えて努力しなければならぬ、こう思っております。あるいは国連等において取り上げて、これに対する原則をはっきりするというような方策も将来において考えなければならぬというように考えておりますが、今おあげになりました具体的の問題、日米の間におけるサケ・マスの漁獲量の制限の問題につきましては、いろいろな資料に基いて、われわれは具体的な資料に基いて、これに対する対策をきめるべきものである。十分その資料等、あらゆる面からこれが調査検討をいたしております。  またクリスマスの何につきましては、この前行いましたイギリスの実験に対しましては、御承知のようにわれわれは、国をあげてこれを阻止しようと努力したのでありますけれども、それにもかかわらず行われたのでありまして、これに対する日本側の損害については、われわれは、これをもちろんイギリスが全責任を負うべきものであるということを申し述べておりまして、これが損害についても、なかなか損害の算定その他についてはいろいろな困難がございまして、具体的な資料を持って、われわれが主張する以上は、りっぱな根拠に基いて、正確なる損害を要求すべきものであるという意味におきまして、これまた十分な検討をいたしておる。  大陸だなの豪州の問題につきましては、御承知のように、ヘーグの司法裁判所にこれは提訴いたしております。が、同時に、これは両国間において通商協定もでき、また、両国間の合意によって妥当な解決方法があるならば、これを見出すように、両国の間においても、これと並行して、両国間の交渉なり、あるいは検討をいたしております。  北洋漁業の来年度の問題につきましては、本年の経過にもかんがみ、また、その実績にもかんがみまして、十分なる準備をしてこれに臨む用意をいたしております。  日韓問題につきましては、私は、就任以来、これを早期に解決するために、非常に努力をいたしておりまして、それは、とりあえず釜山に抑留されておるところの漁夫を日本に帰すということを目標とし、続いて正式会談において李承晩ラインの問題、その他財産権の問題等について、従来の懸案問題は一切正式会談において行う、その前提として、まず、両方で抑留している者・を釈放し合うという見地に立って交渉をいたしたのであります。しかるに韓国側としては、正式会談において論議せらるべき問題のある基本的な考え方について両国を一致さしたいという見地で、いろいろ提案が行われておりまして、われわれとして、確定的に譲り得るものはすべて譲って、これが妥結をして、一日も早く漁夫を帰したいという念願のもとに交渉を進めておりますが、現在までの状況からいいますと、はなはだ解決のめどが立たないことは非常に遺憾とするところであります。もちろん、この李承晩ラインの問題は、どうせ正式会談において——これはまあ予備会談におきましても、根本的には両者の意見が全然相反しております。それで正式会談においてきめるという、論議してきめるということに現在はしておるわけでございます。もちろん、正式会談におきましては、この問題に関して両方の主張が相当離れておりますから、これをどういうふうに調整するかということは、今後の問題であると思いますが、私は、要するに一番の問題は、一方的に公海の自由を制限するというようなことは、これはあってはならぬ、われわれは、魚族の保護その他の見地から、両国間において、ある地域についてお互いの行動を制約するということを合意するならば、その合意に基いての事実を発生せしめるということには、できるだけ妥当であり、公正である限りにおいては協力すべきものである、かように考えておるわけでございます。
  26. 千田正

    千田正君 時間もなくなったわけですから、最後に一点だけお伺いしておきます。  たくさん伺いたいことはありますが、最後に一点だけ。首相は、この前の二十六国会においても、今度の二十七国会の冒頭の演説におきましても、青少年に対する希望を述べておられる。クラーク博士は、ボーイズ、ピイ・アンビシャスという言葉で表現されたのであります。岸総理大臣は、日本の次の世代を背負うところの青少年は希望を持てということを仰せられております。私は、今の青少年に果してどういう希望を持てるかということを非常に悲しむものであります。先般来、文部省において経済五カ年計画のもとにおける雇用問題についての調査をした。その発表を見ましても、今日、大学あるいは高等学校の卒業生が就職にあえいでおる姿というものは、まずおそらく最近にないところの数だろうと思うのであります。五カ年において十六万という、こうした教養を身につけた青少年が、ちまたに出て就職難にあえいでおる。失職者になってしまう。そういう青少年、一体、就職も満たされない、希望を失っておる青少年はどこにいくかということを考えただけで、われわれはりっ然とせざるを得ないのであります。こうした次の世代を背負う青少年に対して希望を持てと言う首相は、一体、希望を持たせるような政治的施策は何をもって報いるかということをはっきりしていただきたい。いろいろな点があるでありましょう。海外移住の問題もあるでありましょう。あるいは、技術を身につけて国内において就職する点もあるでありましょう。しかしながら、年々増加するところの人口と、そうして次の世代を背負わなくちゃならないこの世代の人たちが、みずからの職さえも満たし得ないというこの段階をどう切り抜けるかということは、むしろ私は、今日におけるところの首相の、いわゆる青年よ希望を持てというならば、その希望を持たせ得るところの政治は、どういうふうな施策をもってやるかということを一つ明言していただきたいと思うのであります。この点だけを最後にお伺いいたしまして、私の質問を終ります。
  27. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) 青年に希望を持たすということは、これはわれわれは、特に政治家が全面的に考えなければならない問題でございますことは言うを待ちません。ただ口先だけで希望を持てと言って希望を持てるものでないことは言うを待ちません。これは非常に広い問題が私はあると思いますが、一つは、日本が自主独立の立場において、日本民族というものが世界の上においての使命ということを十分に認識し、また、日本が一国に従属するとか、あるいは占領下にあったようなあの悲惨な民族的姿ではなしに、自主独立の精神を十分に身につけるような教育の問題が一つありましょうし、また、政治の体制をそういうふうにすることは言うを待ちませんが、さらに私は、教育のことにつきましても、先日も申し上げたわけでありますが、具体的には、やはり日本の将来の青年の進む道は、科学技術の点において日本民族の優秀な過去においてなしたこと、また将来においてなし得ることを身につけるように、いわゆる文科と理科の割合等についても、教育制度の上において、十分に一つ政治の上に具体化して参りたい。また、青年諸君の活動の将来の範囲は、決して四つの島だけに限られておるものではない。あるいは東南アジアの諸国が、民族独立の熱意に燃えて、これに対してわれわれの協力を求めておる。これに対してわれわれは、青年が必要なものを身につけているならば、また、これらの国々に対して十分な同情と、また謙虚な気持を持って進んでいくならば、双手を上げて歓迎され、その活動の範囲というものはあるのであります。そういうことを十分に知らしめるような措置を講ずる。このためには、あるいは青年の交流を考えてみたい。あるいは現実におけるところの外交路線において、大いに海外に進出できるような方法もとっていく必要があろうと思います。さらに私は、青少年諸君に対しては、特に国家が育英制度を考えて、そして非常な才能を持っている若い世代の人々が、その才能を十分に伸ばし得る、ただ、家の経済的理由等によって、せっかく英才を抱いておりながら、これが発揮されないというようなことのないように、自分がほんとうにりっぱな才能を持ち、勉強をするならば、自分が最高度にこれを発揮できるというような育英制度を考えることも、これらの青少年諸君の奮起を促す道であると思っております。あらゆる面から、青少年諸君が、その将来の自分たちの活動の範囲、自分たちの将来は、勉強いかんにより、努力いかんによって、非常に光明が輝いているのだというふうなことを与えるように、経済政策、文教政策あるいは外交政策等の全体を通じてこれを推進していきたい、こう思っております。
  28. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 関連質問
  29. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 時間の都合がありますから……。
  30. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 きわめて短かく……。昨日のアイゼンハワー大統領の演説はお読みになったことと思うのであります。その演説は、フルシチョフの最高級の会談に対しては何も答えないで、そしてミサイル生産を強化する、そうして集団防衛を強化することを強く訴えておるのであります。この集団防衛の強化ということは、やがて日本をも含む問題でございますし、また、日本におけるアメリカの駐留軍の強化の問題とも関連しておるのであります。私どもが非常な危惧の念を持ちますことは、日本に対しまして核兵器を与える、あるいは配付するというような問題につきましては、岸首相は、核兵器は持ち込まないということを、それには反対することを言明されておるのでありますが、在日駐留軍がアメリカの新しい方針に基きまして、各種ミサイルをもって装備される、そうして事実上これが基地になるということになって参りました場合に、日本側はこれに対して、現在の日米安全保障条約あるいは行政協定のもとにおきましては、何ら抗議することも、あるいはこれを阻止することもできないのであります。その点、われわれ非常に危惧の念を持っておるのでありますが、首相はこのアイゼンハワーの演説と関連いたしまして、将来そういう問題が起るようなときに、いかなる方針をもって臨まれるか。この点一点だけお伺いしたいと思うのであります。
  31. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) その問題につきましては、私、部分的にはすでにお答えを申し上げておりますが、私自身この核兵器の持ち込みや、また、核兵器によるところの自衛隊の装備に対して、はっきり私のこれを否定する意思を申し述べておりますように、今後このミサイルの問題につきましても、私は同様な考えでもってこれに当りたい。もちろん現在の安保条約ができました当時におきましては、いろんな、今のような科学的な非常な発展というものを予想してこの協定ができておりませんから、従って、あるいは将来起ってくるところの事態というものを、一々これがすべて網羅しておるような規定にはなっておらぬと思います。しかしながら、われわれは、この運営に処して考えなければならぬことは、今お答え申し上げましたような、とにかく今具体的になっておるところの問題については、すでにわれわれの考え方というものをはっきりしておいて、その精神で、将来起ってくるいろんな武器の変革等にも対処していくというようなのが私の考えの根本でございます。
  32. 泉山三六

    委員長泉山三六君) ちょっと懇談に入りたいと思いますから、速記をやめて下さい。   〔速記中止〕
  33. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 速記をお願いします。  暫時休憩をいたします。    午前十一時五十一分休憩   〔休憩後開会に至らなかった〕