○迫水久常君
ソ連がさきに大陸間の
誘導弾を完成したということを発表して、またそれを裏付けるような
人工衛星を打ち上げましたということは、全くこれは重大な事件でございます。もし
日本が昔のように軍備を持っておって、英米や
ソ連と肩を並べて相対抗しておった時であったならばそれこそ大さわぎになって、来年度以降の
予算というものは軍事
予算が膨大なふくれ上りでしょうし、
大蔵省今ごろは非常にお困りになっておるのじゃないかと思いますし、まかり間違えば岸
内閣さえつぶれてしまうほどの大事に至ったと思うのです。ところが
日本国民はそれほどこの問題について衝撃を受けた様子はないということは、実に私としては心外にたえないところでございまして、敗戦の結果
日本が
世界の強国の列から離れてしまった、そういうあきらめから来る気安さのお蔭であるか知れませんけれども、考え方によっては全く情ないと思うのでございます。そこで何と言ってもこの新
事態に対しては、われわれは深刻に検討しなければならないわけでございまして、先般来
社会党の方々の御
質問にも、その意味において傾聴をいたしたような次第でございますけれども、と言って今さら今度は、ロシアが強くなりそうだ、今度は、この前は弱い方の国に入っておって負けたのだから、今度は強い方の国に入ってやろう、そういう簡単なことで
日本の態度をきめることもできません。
社会党の方々は中立々々ということをよく言われますけれども、実際問題としては、中立ということは、実は自分自身の中にほんとうに大きな力がなければ中立ということはできないのであって、その力のない場合に中立なんということを考えると、それは中立ではなくて宙ぶらりんになってしまう危険があると思うのでございます。そう考えて行くと、
社会党のお唱えになる中立論というのは、結局
一つの口頭禅のようなものであってむしろそれは
ソ連のグループの方に近づくということになるわけだと考えるものでございまするけれども、先般来、岸
総理は、きわめて明瞭に
日本が引続いて自由主義のグループにおるということを一言っておられるのでございますが、問題は自由主義のグループの中におって
日本がこれからどういうことをして行くかということだと思うのであります。またこの新
事態は、同時に
日本の
防衛の問題にも大きな
影響を与えることは想像にかたくございません。先般来の御
質問にもその点が明瞭に出ておりまするけれども、ただいま
防衛庁長官がおっしゃったように、
ミサイルその他の有効な
兵器が出て来たから、今の
日本の自衛隊のような装備では何にも役に立たないから、自衛隊なんかはやめてしまえという議論は、これは成り立たないと思います。集団強盗が非常に多くなって、集団強盗がいるから、鍵をかけているくらいではとても防ぎ切れないから、その戸締りもやめてしまおうじゃないかというような議論と同じであって、私はこの前のスエズの事件のごときは、もし
原水爆のようなものがなかったならば、おそらくあれは第三次
世界大戦にまで
発展していったのではないかと、こう思うのでございまして、極端に言えば、
原水爆があるから、むしろ局地的な武力抗争、
言葉は悪いかもしれませんけれども、こそどろ的な侵略行為というものも多くなってくるのではないかと思うのでございます。(「誰がやったと」呼ぶ者あり)そのこそどろ的なものに対しては一応戸締りをして、鍵をかけておけばそれは十分である。集団強盗でも、戸締りのない家よりは、戸締りがしてあって中にピストルの一丁もあって、中の者が死にもの狂いに抵抗するであろうと思えば、よっぽど性根を据えてからでなければ入ってこないのであります。自衛隊の存在ということが
日本の
防衛の上に非常に役に立つということは、これは当然であると思っているのであります。
そこで私は、こういう立場において岸
総理にお尋ねいたすわけでありますけれども、実は
日本は、これから本来の
日本の使命を果すべき時期がいよいよ来たのではないかと思うのです。と言うのは、
日本は御
承知のように、原爆による唯一の被害国民でございまするから、その立場というのは、
世界に対して真剣に心の底から戦争の防止ということを訴え得る唯一の国民であるという立場に通ずるものと私は思います。そこで従来とも岸
内閣におかれては、
世界平和のために今回新たに入った国連等において御活動ではありますけれども、いよいよこれは
事態がむずかしくなってきた、
バランスが破れて戦争の起る可能性も出てきた今日においては、岸
内閣の
日本の平和工作、平和のために対する
努力というものが一そうなされなければならないと思うのでありまするが、この点につきましての岸
総理大臣の御抱負を承わりたいと思います。