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1957-11-08 第27回国会 参議院 予算委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年十一月八日(木曜日)    午後二時三十四分開会     —————————————   委員異動 十一月七日委員八木幸吉辞任につ き、その補欠として市川房枝君を議長 において指名した。 本日委員豊田雅孝辞任につき、その 補欠として奥むめお君を議長において 指名した。     —————————————  出席者は左の通り。    委員長     泉山 三六君    理事            迫水 久常君            伊能 芳雄君            小幡 治和君            剱木 亨弘君            武藤 常介君            中田 吉雄君            中村 正雄君            吉田 法晴君            森 八三一君    委員            青柳 秀夫君            石坂 豊一君            大川 光三君            木島 虎藏君            木村篤太郎君            小山邦太郎君            佐藤清一郎君            下條 康麿君            高橋  衛君            館  哲二君            土田國太郎君            苫米地義三君            苫米地英俊君            一松 定吉君            本多 市郎君            三浦 義男君            内村 清次君            岡田 宗司君            加瀬  完君            栗山 良夫君            佐多 忠隆君            曾祢  益君            千葉  信君            羽生 三七君            山田 節男君            湯山  勇君            梶原 茂嘉君            千田  正君            市川 房枝君   国務大臣    内閣総理大臣  岸  信介君    大 蔵 大 臣 一萬田尚登君    厚 生 大 臣 堀木 鎌三君    農 林 大 臣 赤城 完徳君    通商産業大臣  前尾繁三郎君    郵 政 大 臣 田中 角榮君    国 務 大 臣 津島 壽一君   政府委員    法制局長官   林  修三君    法制局次長   高辻 正己君    防衛庁長官官房    長       門叶 宗雄君    防衛庁防衛局長 加藤 陽三君    経済企画庁調整    局長      大堀  弘君    大蔵省主計局長 石原 周夫君    大蔵省主税局長 原  純夫君    大蔵省理財局長 正示啓次郎君    大蔵省銀行局長 酒井 俊彦君    大蔵省為替局長 石田  正君   事務局側    常任委員会専門    員       正木 千冬君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事補欠互選調査承認要求の件 ○昭和三十二年度一般会計予算補正  (第1号)(内閣提出衆議院送付) ○昭和三十二年度特別会計予算補正  (特第3号)(内閣提出、衆議院送  付) ○昭和三十二年度政府関係機関予算補  正(機第2号)(内閣提出、衆議院送  付)     —————————————
  2. 泉山三六

    委員長泉山三六君) ただいまから委員会を開きます。  まず、委員異動について申し上げます。  十一月七日八木幸吉君が辞任せられ、その補欠といたしまして市川房枝君が選任せられました。
  3. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 次に、理事が一名欠けておりますので、委員長は先例に従いまして理事中村正雄君を指名いたします。
  4. 泉山三六

    委員長泉山三六君) この際、お諮りいたします。  予算執行状況に関する調査承認要求書議長に提出いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 御異議ないと認め、さよう決定いたしました。  なお、要求書の案文の作成及び手続等委員長に御一任願いたいと存じます。
  6. 泉山三六

    委員長泉山三六君) これより昭和三十二年一般会計予算補正(第1号)  昭和三十二年度特別会計予算補正(特第3号)  昭和三十二年度政府関係機関予算補正(機第2号)  を議題といたします。  これより質疑に入るわけでございますが、その前に、去る十一月六日の委員長及び理事打合会におきまして協議決定いたしました事項の大要を報告いたします。  一、今般の補正三案は一括して審査を行い、十一月十一日中に審査を終了する。  一、従って、本委員会審査は、本院に対する予算案送付を待ってすみやかに開始する。  一、質疑時間は四百二十分とし、各会派の割当は次の通りとする。自民党百三十分、社会党二百分、緑風会五十分、無所属クラブ二十分、第十七控室二十分。  一、質疑の順位は前例に従い、社会党自民党緑風無所属クラブ、第十七控室とし、各派一名ずつ、この順序を繰り返して行う。  以上が理事会で決定した事項でございます。委員長理事会の決定の通り委員会の運営を行うことにいたしたいと存じまするが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 泉山三六

    委員長泉山三六君) ではさようにいたします。
  8. 岡田宗司

    岡田宗司君 私は過日予算常任委員会に対しまして、昭和三十三年度の防衛庁大蔵省に対する予算要求、それと三十三年度における防衛庁の自衛隊の拡張計画についての資料要求しておきましたが、それが配布されておらぬのであります。それをどういうふうにお取扱いになっておるか、その点をお伺いいたします。
  9. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 岡田君にお答えいたします。資料要求につきまして十一月六日の委員長理事打合会におきましてお話しが出て参り、従いましてただいまの岡田君の御要求防衛庁に対する資料要求の問題が出て参りまして、協議いたしました。岡田君の御要求昭和三十三年度防衛庁予算概算要求に関する資料と、こういうことでございまするが、理事会におきまして、政府側との折衝の経過を聞きまして、その結果協議いたしまして、予算概算要求ということでは多少無理があるのではなかろうかと、こういう見地から、事務当局から防衛庁にいろいろ折衝を重ねまして、その結果、これを改めまして、内容は同じようなものでございまするが、昭和三十三年度防衛庁業務計画の大綱に関する資料、こういうことでいかがでしょうか。それを事務当局の方から岡田委員に御了解を求めておった事情でございまして、岡田委員において御了承のことと存じます。
  10. 岡田宗司

    岡田宗司君 各省におきましては概算要求を発表しておるのであります。たとえば私は法務委員会に属しておるのでありますが、法務省の要求をすでに法務委員会においては十分に御説明さえあった。私はその資料をいただいておるのであります。防衛庁だけがなぜ出せないのか、これを私は防衛庁長官にお伺いしたいと思います。
  11. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 委員長からちょっとお答え申します。ただいまの岡田君のお話は、私、初めて伺いますので、事務当局の方からの連絡では、岡田君の方からも御了解をいだいたやのお話がございまして、それでただいま申し上げましたような資料要求の題目に基いてそれを要求いたしております。それがすみやかにというわけで、多分本日中に提出されることに相なっております。ただし、ただいま岡田委員の御発言は私は新しい問題のように思いますから、いずれなお理事会に諮りました上で、すみやかに御要求に沿いたい、こう存じますが、いかがでございましょうか。
  12. 岡田宗司

    岡田宗司君 これは先ほどあなたのお話しのように、私の方にそういうことの了解を求めて参りました。しかし私はこれに対しまして、他の省におきましては、そういうものを、すでにそれぞれの委員会において、ちゃんと印刷にして配り、また説明さえしておる、それを私は防衛庁予算について要求したものであります。それと同じことをお願いしておるのであって、私は初めてこういうことを……他の委員会で、あるいは他の省でもってやらないことを申し上げているのではないのです。ですから防衛庁が出せないというのはおかしいのではないですか。そこに問題がある。しかも、その概算要求とおぼしきものがすでに発表されておるのであります。それをなぜ出せないかというところに問題があるので、私は防衛庁長官にお伺いしたい、こういうわけです。
  13. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 委員長からお答えいたします。ただいまも申し上げました通り岡田委員要求資料の問題につきましては、十一月六日の理事会でただいま申し上げましたような話し合いが出ましたので、その線に沿うて実は資料要求をいたしておりました。ただし、ただいまのお話しのようにほかの前例がいろいろございますようでしたら、委員長から防衛庁の方に、なお、とくと岡田委員の御趣旨を体しまして交渉いたしたいと思いますから、御了承を願いたいと思います。
  14. 岡田宗司

    岡田宗司君 それでけっこうですが、防衛庁長官がここにおられるのですから、私は直接お伺いしたいと思っているので、それは委員長のお取り計らいはそれとして、防衛庁長官に、なぜ出せないのか、それを一つ伺ってみたい。
  15. 津島壽一

    国務大臣津島壽一君) ただいまの御要求ですが、実は私までそういった資料要求があったということは実は今聞いたわけでございまして、その事情を十分私は聞きまして適当に一つ処置したい、こう思います。初めて伺ったわけであります。
  16. 岡田宗司

    岡田宗司君 防衛庁長官が初めて伺ったようなわけでございますと言うのですから、事務当局が勝手に、そういうことについて他省でやっておることも、おれの方ではやらないのだというつもりでもって出せないということになったのだろうと思いますけれども、それではどうも私は納得できませんから、一つ委員長からも今後防衛庁事務当局がそういうことのないように、きつく一つ言っていただきたいと思います。
  17. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 承知いたしました。  では、これより質疑に入ります。     —————————————
  18. 曾禰益

    曾祢益君 私は先般参議院本会議におきまして、わが党の代表の岡田議員から、総理防衛庁長官等質問がなされました外交防衛根本的な問題について、あらためて特に総理大臣、また内容によりましては防衛庁長官だけに限りまして御質問を申し上げたいと存じます。  私が今さら申し上げるまでもなく、最近の世界情勢を見ておりますと、いわゆる宇宙兵器と申しまするか、あるいは大気圏外ミサイルというような言葉も用いておりますが、こういうような画期的な科学進歩に伴った兵器の革命的な進展が行われ、またこれに伴いまして人工衛星が二つも打ち上げられた。これは科学の問題であるとともに、やはりその持っておる非常に大きな軍事的意義をわれわれは見のがすわけには参らないと思うのであります。だれが考えましても、このような事態というものは、一国の防衛、一国の安全保障、また従って外交上非常に大きな画期的な変化をもたらすものだということは、今さら私が申し上げるまでもないところと思うのであります。そこで先般来の応酬はございましたが、あらためて総理に、総理はこのような変化をまだ研究中である、具体的に検討してみなければわからないというような、そういう認識をお持ちなのか。真に重大な防衛外交上の画期的な事態であり、従ってその転換期が来たというような認識をお持ちであるかどうか。まず根本的な認識についての御所信を伺いたいと存じます。
  19. 岸信介

    国務大臣岸信介君) お答えいたします。近時科学的な非常な発展発達が、将来世界の各方面に非常に大きな影響をもたらすということは、もちろん根本においてわれわれ考えなければならぬと思っております。しかし、われわれはいかなる場合におきましても、現実というものと将来の動向というものとの間のギャップを起させないように考えなければならぬ、こういう立場に立っております。
  20. 曾禰益

    曾祢益君 きわめて抽象的なお答えですが、問題は現実が変りつつあるということで、今日私は空想論をやっているのじゃございません。月の世界にまだ人工衛星が届いていないのを現実であるかのごとき論をしているのではなくて、すでに現実に起っている事態が日々刻々に兵器の革命的な変化国際情勢外交防衛に対する画期的な変化を来たしつつあるという現実をどう認識するかということを申し上げたのでありまするが、原則論で時間をとってもしょうがありませんから、さらにこれを具体的に伺いたいと思います。  特に最近の特徴は、申し上げるまでもなく、ソ連の方におけるミサイル分野における——少くとも一部のミサイル分野におけるアメリカを凌駕したこと、言うまでもなく、人工衛星については本日のアイゼンハワーの特別なテレビ放送においても、アメリカに打ち勝ったことを認めておる次第でございますが、こういうような事態ということは、これは非常に大きな事態ではないか。従来の、まあ少くとも一九五五年のジュネーブ会談以来の事態は、いわゆる原水爆による行き詰りといいますか、一種の均衡というか、ステールメートといわれておりましたが、そのステールメートの中でも、何といってもアメリカの方が原水爆の量及び質において優位であったというような、アメリカのやや優位に立った上のバランスがあったやに考えられておるのでありますが、最近の事態は、これをくつがえすような新しい根本的な傾向であるからこそ、アメリカも非常にこれに対して苦慮もし、世界もこの成り行きを注目しておることは、今さら私が申し上げるまでもないところでございます。そこで、こういうような従来のアメリカ根本的な防衛外交基本、これは最近においても、先般、岡田委員が明白に指摘されたように、ことしの九月のダレス氏の「フォーリン・アフェアーズ」に出したこの外交論、あるいは戦略論についても、まだこのバランスの上に立っての、しかも、小型戦術核兵器の使用によって、いわゆる大戦に至らざる局地的な紛争についても、アメリカがそういうような外交防衛をとる、こういったような構想が現われた。しかも、その背後にはさらに、皆さんも御承知と思いまするけれども、キシンジャー教授の、核兵器外交政策という、一つのこれは画期的な核兵器並びに外交に関する論文と思いまするが、こういうような一つ理論構成というものがあった。これすらも果してこの事態において、新しい事態に適応し得るやいなや、これがまさに一つの大きな問題になっていると思う。そこで、この新しい事態発展に応じて、アメリカにどういう影響を与えているか。これは世界の平和に関心のある日本として、なかんずくアメリカのいわゆる優勢の上に立った防衛力に依存して、その範囲内でそれとの取り組みによって日本安全保障をはかるという現内閣基本方針からいって、アメリカにいかなる戦略的な、外交的な影響を与えたかということを判断することは、これは当然になされなければならないと思うのですが、この点どうお考えでございますか。
  21. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 先ほどもお答え申し上げましたように、私は、この科学進歩というものは、いろんな形において、世界人類のいろんな面に影響を持ってくることはもちろんでございます。また、最近における人工衛星ミサイルの問題において、ソ連アメリカよりも一段とすぐれておるということを示した事実も、これも現実の事実である。それがアメリカに対して大きな衝動を与えておることも、その後におけるアメリカのいろいろな言説等に見まして、これがうかがえるのであります。と同時に、またアメリカ側におきましても、いろいろ科学進歩発達技術発達をはかるための努力がなされております。従来のある技術について、どちらが優越しておるかというような問題につきましても、絶えず両陣営においていろいろな努力が払われ研究がなされておりまして、いろいろな変化を来たしておることも御承知通りであります。私は将来、そういう意味においてこの技術的な進歩発達というものに対応して、われわれのあらゆる問題も考えていかなければならぬという根本につきましては、全くさように考えておりますが、しかし、同時にこのミサイル現実一つ実用段階に入っておるかどうか。また入るのにどういう段階を必要とするかというような問題に関しましても、いろいろ専門家の間にも意見のあるところでありますし、また私ども、そういうようなことが、将来長い目で見て非常に大きな変革を起すということは、今申すように、一方において頭に置いて考えなければならぬと同時に、現実の問題がすぐ飛躍的に、それであるから飛躍的な変革というものを直ちにやるということは、また私は考えていかなければならない。従いまして、アメリカにおける今のことが大きな衝動を与えておりますが、アメリカ自体が、あるいは防衛の面において、あるいは外交の面において、直ちに根本的に非常な大きな変革現実に現われているというふうに見ることは、それはなおそこに飛躍があるように思うのであります。従いまして、そういうことに関しましては、十分な一つわれわれは慎重に検討をすべき問題である、こう思っております。
  22. 曾禰益

    曾祢益君 ただいまの総理の御答弁では、私の質問に的がはずれておる。私は、この最近のソ連ミサイル及び宇宙兵器、あるいはスプートニクにおける優位というものが、軍事的バランスにいかなる影響を与えたか、アメリカの優位にいかなる影響を与えて、これをくつがえしたのか、その程度がどうなのか、どう見ておるかということを伺ったのであって、それを端的に率直に、変っておらないならおらない、変ったけれども大したことはないならない、あるいは大したことがあるのかということを伺えばいいのです。それをお答え願いたいのと、お言葉ではございましたが、たとえば、ミサイル実用の域に入ったか入らないかと言っておられますけれども、これは、先ほどのアイゼンハワーテレビ放送の中にも、みずから、もう実用の域に達したところのミサイルがある、そのほかに試験的のミサイルは、大陸間の弾道弾も数種持っている、実用の域に達している、IRBMに至っては完全に実用の域に達しておると言っているのですから、もはや空想段階ではない。そういう上に立って——もちろんほかの点もあるでしょうが、最近の進歩を比べ合ったら、米ソバランスにいかなる影響を与えたか、これは測定一応できることなんです。また、アイゼンハワーばかり引っぱり出して恐縮ですけれども、少くとも日本防衛庁があり、防衛最高責任者総理大臣である限りは、あらゆる科学的の知恵も動員して、これをどう判定するか、その判定をしてから、日本外交なり防衛をやられるのが当りまえだ。まだわかりません、具体的に問題を研究しますでは済まなくはないか。そういうような研究の準備、あるいはスタッフをそろえておやりになっておるのかどうか、まず総理大臣に伺いたい。
  23. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 今もお答え申し上げましたように、これに対しましては、われわれは慎重に、真剣に検討すべきものであることは言うを待ちません。しかしながら、今この段階において、直ちに非常な変革が起っておって、われわれは今までの外交方針やあるいは防衛について、根本的な変革をすべき段階とは考えておらない、こういうことであります。
  24. 曾禰益

    曾祢益君 津島防衛庁長官の御意見を伺いたいと思います。津島さんは、私の申し上げたキシンジャーのこの本は、お読みになったことがあるかどうか、これをあわせて。それから、あなたの方のスタッフで、この問題にどの程度の人を、人材を集めて、この核兵器の問題、世界軍事バランスの問題を研究されておるかどうか、はっきりしたお答えを願いたいと思います。
  25. 津島壽一

    国務大臣津島壽一君) お答えいたします。この著書そのものではございませんが、「フォーリン・アフェアーズ」に出ましたダレス氏の論文は熟読いたしました。なおまた、防衛庁といたしましては、幕僚初め、この問題については非常な熱心な研究を続けておる次第でございます。なおまた、これに付随して申し上げますれば、技術研究面科学研究の部面は、御承知のように技術研究所があるわけでございまして、これは二十九年以来、きわめて少額の予算でありまするが、研究を続け、今年度予算においても相当の金額がございまして、特に誘導兵器関係については、第八部というところで専門研究をしておる次第であります。なお、今後においては、最近の事態に照応して、この方面に最も力を入れていきたい、こういう所存でございます。
  26. 曾禰益

    曾祢益君 お言葉ですけれども、この「フォーリン・アフェアーズ」に出たダレス外交論文なんかは、これはあまり、軍事的価値はゼロだ。その基本になっておるキシンジャーの本ぐらいぜひ読んでいただきたい。お貸ししてもいいです。これは冗談じゃありません。しかもこれだけ、一九五七年の九月までにおいては、これはアメリカの少くとも戦略方式を超党派的にリードするだろうといわれる相当権威のある本なんです。しかもそれですら一体今の時代権威が疑われるという、これだけの画期的な進歩がある。それから何とか言っておられました——いろいろな研究書物を集めて研究している。それから、お言葉ではありまするけれども、防衛庁の今やっているような誘導弾研究を私は奨励しているのじゃなくて、みずから持つことの奨励でなくて、日本防衛外交を考える上に、世界のこういったような科学的な進歩がどの程度になっているかというようなことは、これは防衛庁スタッフだけでわかるような問題では断じてありません。これは原子力最高権威もいるでしょう、あるいはミサイル方面権威、いろいろな人を集めて、一体そういうことを判定した上で、あなたが言っておられるような、日本みずからがミサイルを持つのがいいかどうかということより、その前に基本的研究はなされなければならない、こう思うのです。ですからこの点については、ただいまの御答弁は、はなはだ失礼でありまするけども、私は納得できないということを申し上げておきたい。  そこで、米ソバランスにいかなる影響を与えたかには、いろいろの見方がございましょうが、少くとも当面のアメリカ外交防衛に対する出方については、これはもうはっきりわかっていると思うのです。まずそれはマクミラン、アイゼンハワー共同声明にも現われ、またダレス国務長官の五日の記者会見にも現われておりまするように、またさらには、きょうのアイゼンハワー大統領の国民に対するやや悲痛な、とでもいいましょうか、訴え的な呼びかけにも現われておりまするが、まだ負けておらない、まだ核兵器の方は量的、質的にまさっておる、まだ中距離誘導弾あるいは小型原水爆はまさっている、まだ軍事基地がある、だからこの科学をプールして、あるいは原子兵器同盟国に貯蔵させ、前進基地を固めることによって、ミサイル基地として前進基地を作っていくということを、はっきりとダレス氏は言っております。そういう方向によってこの当面のバランスをとり、あわせてその間にミサイル分野、あるいはスプートニクにおけるおくれを取り戻そう、こういうことになろう。われわれはこの事態を悲しむものであります。いずれにせよ、力によるこういうような競争軍拡競争というような時代が来はせぬかということをおそれますが、冷静、客観的に見れば、アメリカ政策はそういう方向へ進むのではないか、かように考えられるのでありまするが、この点に関しては、アメリカのそういったような外交政策、言いかえるならば、原子兵器同盟国に貯蔵させる、あるいは、ミサイル基地前進基地として利用していくと、はっきり言っておりまするが、その点をどう解釈されておるか、これは総理大臣から伺いたい。
  27. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私自身はこういう科学発達、それからいろいろな新しい発明、発見等のことが、人類の平和のために用いられることは、原子力についてもわれわれが念願しているごとく、また強くそういうことを念願をしておるわけであります。この人工衛星やあるいは大陸間の弾道弾に関する研究等が、将来に向って軍拡の競争の形に激化していくか、あるいは世界の平和の方向に大きな画期的な歩みをなすものかということについても、いろいろの見解がありますことば当然でありますが、私どもとしては、何としてもこれが平和的に利用され、人類の福祉のために用いられるような方向にあらゆる努力を傾けるべきである。今後、国連等におきましても、そういう方向に向ってのわれわれの努力を集中したいと、こう考えております。
  28. 曾禰益

    曾祢益君 今の私の質問に対する直接のお答えでなかったようですが、続けさしていただきます。私みずから考えるところによれば、こういうような、いわゆる宇宙兵器時代になったということは、これは一国の安全保障の上では非常に大きな問題であるとともに、まあ基本的には、この間ネールさんがこういう言葉を言ったといわれるのですが、こういう時代になっては軍事ブロックというものはもう時代おくれである。私はまさにそういう感じがしてならない。(「その通り」と呼ぶ者あり)これはなぜかと申しますと、一体、弱い国が安全保障をはかる、そうしてこれがために強い同盟国と同盟関係を結んでいる。ところがこの宇宙兵器時代になると、もし不幸にして事が、戦争が始まった場合には、なるほど仮想敵国もこれらの誘導弾等で傷つくでありましょう。大きい方の自分の同盟国も傷つくかもしれない。その結果がどうなるかわからないけれども、弱い同盟国自身は壊滅してしまう。それは相手方も傷つくであろうし、強い同盟国である——日本の場合であれば、ソ連も傷つくし、アメリカも傷つく。しかし、日本は壊滅する。こういうような論理といいまするか、経過をたどることが必然的ではないか。もしそうだとすると、弱い国の安全保障というものは、これはよほど根本的に考え直さなければならないのじゃないか。特に、これは申すまでもなく、アメリカのように外線作戦をとっている場合には、前進基地というものは非常に大きな危険を伴っていることは、今まででもそうであるけれども、今後ますますその危険が大になってくる。しかも、みずからこういう運命を避けようとするならば、安全保障の道というものは、大きくいって二つに分れる。一つは、そういう軍事ブロックから抜けてしまう。軍事ブロックから抜けて、同盟国を持たないで、そうして安全をはかる道がこれは一つだ。いま一つは、いかに強大な国にたよっておっても、やはり基本的には、みずからに対する直接の仮想敵国からの攻撃を、これを制御するために、みずからがやはりミサイルなり核兵器を持つという積極的な方法をとる国、これもある。たとえば、これがイギリスであり、フランス並びに西ドイツがそういう方向を示していることは御承知通り。で、いずれかにしないで、そうして今までの岸内閣の言っているように、アメリカとの軍事同盟は続けていく、しかも核兵器はみずから武装しない、こういうことが完全に行き詰まったのではないか、そこの矛盾に私は逢着しているのではないかと思うのですが、これに関する岸総理のお考えを伺いたい。
  29. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 長い目で見て、われわれの防衛、またわれわれの安全保障を、いかにして国の安全をはかるかということは、これは国際の一般情勢なり、いろいろな点を考えて、わが国の安全をはかっていかなければならぬことは言うを待ちませんけれども、現在のところにおいて、私どもはしばしば申しておるように、現在の状況において直ちにわれわれの今までとってきておる防衛体制そのものを基本的に変える時期に来ておる、かようには考えておらないのでありまして、従来の方法によってあくまでもわが国の安全保障をやっていくということを私どもは考えておるわけであります。
  30. 曾禰益

    曾祢益君 私は矛盾を感じ、総理は矛盾を感じられないというのですから、これは禅問答みたいですけれども、そんなものじゃないと思うのです。少くともこういう点についてあなたは矛盾をしておられる。一方では核兵器ミサイルアメリカに軍事同盟でその防衛力に頼っている、他方ではこの間ネールさんが来られたときのあなたとネールさんの共同コミュニケには、こういうことを言っている。「大国による大量破壊兵器の貯蔵は世界平和に重大な危険を招くものと確信している」、私はその通りだと思う。その通りだと思うけれども、アメリカの方にのっかっておりながら、両大国とでもいうのですか、米ソ両国による「大量破壊兵器の貯蔵は世界平和に重大な危険を招く」、これは私は筋が立たない。あなたの率直な意見から言うならば、アメリカが持っているのは危険がないけれども、ソ連が持っているのは危険だ、だからアメリカに頼っているというのは一つの筋が立つ。そこに矛盾がありはしないか。また総理はしばしば核兵器の持ち込みは断わる、またミサイル基地については、先般の岡田委員に対する答弁はやや明確を欠いたと思いますので、あらためてはっきりお答えを願いたいと思います。私の理解したところでは、やはり核兵器持ち込みと同じ気持でやる、ただミサイルにはいろいろあるからというようなことを言っておられましたが、ところが一方において岸総理のかねての御発言によれば、日本の方が核兵器のある種のものを持つことは必ずしも違憲でない。また防衛庁長官のお考えによると、誘導弾という名前による研究の方はやっていく、これも私は矛盾じゃないかと思う。この点をあらためてどうお考えになるか、御説明願いたいと思います。
  31. 岸信介

    国務大臣岸信介君) あらゆる面から科学技術発展に対して、われわれが研究を開発し、あらゆる研究を進めていくべきことは当然でございます。しかしながらいかなる形において、いかなる装備によって日本の安全をはかっていくかという上におきまして、私は大量殺戮を目的としているようなこの原水爆もしくはこれに類したところの核兵器をもって武装するという意思はない。またそういうことはしないということを申しておるのであります。もちろん誘導兵器のなににつきましては、いろいろな誘導兵器の種類があることも御承知通りであります。これらに対して十分な研究を進めて、研究を開発するということは、これまた科学進歩発達の国際的な態勢から見まして、私は当然なことである、そこに矛盾とかあるいは撞着があるわけでは決してないのであります。
  32. 曾禰益

    曾祢益君 たとえばIRBM、ICBMの基地は貸さないということは、はっきりしているわけですね。
  33. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私はそういうものの基地に日本がなることについては、やはり原水爆等に反対すると同じような趣旨において反対したいと思います。
  34. 曾禰益

    曾祢益君 いま一つ、私はこの際、先般安全保障条約と国連憲章との関係についての日米交換公文について御質問いたしたい。これはいかにもあの交換公文によって、特に日本が心配しておったように、これは保守党の諸君も含めてでありますが、安保条約に書いてある、極東の国際平和と安全のためにアメリカ軍が出動する場合に、日本に無関係にそういう出動をとめるということが根本の目的であり、あるいはこれが安保条約の改訂の第一歩だというような意気込みで交渉されたらしいのでありますが、その結果を見ていると、言っていることは、国際連合憲章に反してはならぬ、これは当り前のことです。しかし結果からみると、アメリカ軍は出動することはできる、自衛権によって。国連憲章五十一条による出動権をはっきり認められている。ただし五十一条によるからアメリカ軍が勝手に出動して、あとで、あるいは日本と相談して出動するかもしれませんが、あとでは国際連合の安全保障理事会の事後の指揮に待つ、これだけのこと、すなわち日本から出撃することは何らあれによってとめてない。こう解釈するのですが、この点はきわめて外務省の発表等が巧妙であって、国民がその点の危険性を知らないきらいがあると思うのですが、この点どうお考えになりますか。
  35. 岸信介

    国務大臣岸信介君) これは直接に米軍の出動そのものにワクをはめたということを直接の目的にしておらぬことは、あの交換公文の全体が、国連憲章とこれとの調和と言いますか、それが相矛盾をしているものではないというようことを確認した趣旨であります。実際の効果がどうなるかということは、また別の問題でありますが、直接に出動についてワクをはめるという意図でもって行われたものではない、かように御解釈を願いたいと思います。
  36. 曾禰益

    曾祢益君 ところが藤山外相は、安保条約を実質的に相当大きく修正したと言える。その他これは外務省の正式発表ではないけれども、これで米軍の出動は、在日米軍の行動にワクができたのだ、これで行き過ぎはないのだというふうに皆報道されている。事実はそうでない。今総理の言われたように、国連の憲章に従った権利なら日本本土から出動できるのだ、これをさらに確認したのですね。それじゃ、念のために、これは安保条約をさらに生かして、それをさらに裏づけしてこれを補強したことになるのではないか、という点を私は伺っておきたい。
  37. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 実際問題から言うならば、私はこの米軍の出動ということが、これによって実際は私は従来の全然何にもなかった場合とは違って制約をされる結果になると思います。目的は今言っているように、それを直接の目的とはいたしておりませんけれども、国連憲章の定めるなにに基いてでき、またこれを報告しなければならぬということになりますというと、勝手な出動ということが行われるというようなことに対する心配はなくなる。また実際はそういうふうに運用されるという結果になると思いますが、表面的にこれを真正面からワクをはめるという目的でもってやったものでないということは先ほどお答えした通りであります。
  38. 曾禰益

    曾祢益君 これは並行線ですが、これ以上意見の相違を明らかにするだけの時間がありませんから、次に、第二の問題として、軍縮と核兵器の禁止についての日本の国連における活動については、藤山外相以下代表各位等も非常に奮闘努力されたことはわれわれも大いに多といたしております。また残念ながらこの日本の提案が敗れ去られたということについてははなはだ遺憾千万でありまするが、これをこの際、この過去を振り返ってみて、今後どう考えていくか。今ちょうど私は反省すべき時期だと思うので、過去のことまで含めて一つ根本の点だけを御質問申し上げたいと思います。  私は今度の日本の提案は少くとも前の岸内閣の態度よりも非常によかった。よかったという意味は、核兵器の全面的禁止や軍縮の前に少くとも停止をやれ、この点は一つ進歩であったと思います。そういう意味でこの基本においては、細目は別ですが、基本においてはその方向を支持したわけでありまするが、ただ私がどうも納得しかねる点は、これが何とはなしに米ソに変に気がねをしながら、はっきりした一つのバック・ボーンなしに出したのではないか、こういう感じがしてならぬ。そうでもなければ、何回も何回も、これは軍縮と切り離したのではない。いわゆる切り離し方式ではない。またソ連から巧妙な、あなたのアッピールに対する返事がくると、わざわざ、いやソ連とは違うのだ、ソ連は誤解しているのだ。なぜそういうように言っていかなきゃならないか。私はどの国といえども、まじめに考えたときに、核兵器の実験禁止もしくは停止、核兵器の全面的禁止及び軍縮とを完全に切り離せると思っている国はありませんよ。問題は、西欧案のように、核兵器の生産のストップということに、絶対に実験をくぎづけるかづけないか。その意味ではあなたの提案はいろいろ日本からも誤解がある。あるいはわが党の人でも誤解している人があるかもしれませんが、それは切り離し方式なんですよ。その点においてはソ連案と変らない。堂々となぜそれを言わない。ただし、ソ連案のごとく実験の停止あるいは禁止、使用の禁止、五カ年禁止、生産の禁止、生産の禁止は何も言わない。そういうことは一いけない。ソ連案との違いはそこだということをなぜはっきり言わない。そして初めから外務大臣は一般演説、施政演説——施政演説はおかしいですが、総会の一般演説においては、もうすでに軍縮問題全般としては西欧案を歓迎するというなにを、すなわち支持を表明しておる。何のことやらわけがわからないじゃないですか。そういうあやふやな態度でいくことが、せっかくいいことをやろうとしたのだけれども、全く皆から、その真意が捕捉しかねるということで、孤立したという悲惨な姿になったのではないか。非常に残念だったと思う。私はそれを過去のことをえぐるのが愉快で言うのではなくて、そういうような反省がこの際私は必要じゃないか。もっとしっかりして、西欧案を、片方は軍縮の方は西欧案を持ってこよう、それから原水爆の実験のストップの方は、国民の世論だからこれを継ぎ合せていこうというようなことがもしありとすれば、そういう態度で両陣営のかけ橋なんかというのはおこがましい、私はこう言わざるを得ない。そういう点についての基本的な御反省があるかないか、お伺いしたい。
  39. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 国連総会において日本の提案したところの案が少数で否決されたことは、私も非常に遺憾と思っておるものであります。しかし日本案の趣旨に対してできる限り西欧側、ソ連圏の国々、また中立の立場をとっている国々等に、十分に日本の案の趣旨を説明いたしまして、少数ではありましたけれども、従来からいえば、いろいろソ連圏と考えられておる国、もしくはアジアのグループであるとか、中南米であるとか、あるいは北欧の、少数ではありましたけれども、支持を得たということは、日本案に対する私は理解がいったからだと思います。私は結局あくまでもこの実験禁止というものを早く実現するということが、日本の一番の目的であろう。また、そのことを実現しようとして実は努力をいたしたわけであります。西欧案と、それからソ連案とは非常に相離れた主張で、これが両方の間において合意ができないということは、ロンドンの軍縮委員会におきましても、あれだけ長い論議があったにもかかわらず、これがまとまらなかったという経緯から見ましても、また両陣営の提案しておる、まだ私どもが提案するときには具体的に提案されておりませんでしたけれども、提案しようとしておるこの意見からいいましても、相対立しておる。私どもは何とかしてこれを実現したいという趣旨から、両方がある程度、これは理論の問題であるとか、あるいは趣旨がどうであるかということを離れて、現実にある程度譲り合った案においてこれを実現せしめるということが、一番実現性の早い問題であろう、こう考えて実は提案をいたしたわけであります。その趣旨につきましては、そういうふうに妥協的な案というものでありますから、主義あるいは理論からいっていろいろな批判もあった。しかし、われわれの真意がどこにあるかということにつきましては、外務大臣の再度の出席、並びに国連のわが方の代表者が各国に向って十分説明し、私は相当にその点においては理解を深めたもの、かように考えております。
  40. 曾禰益

    曾祢益君 われわれは正しいことですから、いかなる少数であっても、否決されても、正しい主張をそのまま貫くといいますか、いわゆる万歳攻撃になってもいいという見方と、なし得る限りは多数を得て、少しでも多数を得てその通過に努力する、両方の考え方があると思うのであります。だれでも多数を得て通過するのが望ましかったわけなんでありますが、そういう意味からいうと、やはりせっかくネールさんと個々における話で、特に代表部に訓令してまで両方の意見の合致した原水爆の実験停止と軍縮並びに全面禁止の問題について協力をしよう、これが結局できていない。これはいろいろのいきさつはあったと思います。しかし、どうもわれわれがその点納得しないで、私自身は必ずしもインドの提案がいいとは思いません。存外、無条件のようであるけれども、関係大国に訴えるというには弱い点もあるし、しかし、こういうことを虚心たんかい、率直に、何とか一本にまとめるという努力、あるいは完全な一致行動がとられて、お互いに棄権するというようなまずいことにならないで、できなかったものであろうか。これは死児のよわいを数えるようなことになるかもしれませんが、われわれはいかにも残念でならない。これについてどうお考えになりますか。
  41. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 東京におきましてネール首相と私との会談において、日本及びインドのこの問題に対する根本的な考え方、立場等についていろいろ話をしたのであります。その結果、われわれはソ連やあるいは英米というような、これを持ち、これの実験をしておる国とは違った立場であります。純粋に人道的な立場から考えておることも一致しておるのであるから、できるだけ協力しようじゃないかということで、両方から両方の国連代表部にその旨を打電して、両方の協力を求めた。また藤山外務大臣が参りまして、インドの代表との間にも数度会談をいたしたのでございます、協力を実現したいという……。しかし、これはいろいろなその内容等につきましては、詳しくは申し上げかねますけれども、しかし、われわれの努力にもかかわうず、またネール首相及び私の方からも打電しておいたにもかかわらず、ついにそういう国連における協力が実現しなかったことは、これははなはだ遺憾でございますが、努力は十分にいたしまして、できるだけ協調したいという考え方をしたことはもちろんでございます。結果はうまくいかなかった、こういうことでございます。
  42. 曾禰益

    曾祢益君 今後の問題として、私は安全保障理事会のメンバーになった日本として、いろいろ大きな問題があろうと思いますし、また、国連の軍縮委員会はいろいろごたごたしておりまするが、これができることをわれわれは強く望みますし、安全保障委員会のメンバーになった以上は、いかなる改組が行われようとも、重大な軍縮委員会には当然に出席するわけです。そういうことを考えると、今までのいろいろ失敗といっては語弊があるにしても、いろいろな経過を辿って、今後いかにして、この核兵器の実験のストップ、それから全面的禁止と軍縮を戦い取るかということについては、これは容易ならない前途が控えておると思うのです。また、今やこれは他国の問題として、他国に頼る問題ではなくて、狭い範囲でもみずからの力によって、その場を通じて戦って行かなければならない。そういう場合に、われわれが今後少くとも再び西欧案によって行くというようなことがないだろうか。実験禁止については、これをいわゆる切り離して、切り離すという意味は、先にやるという意味で、あくまでそれを貫くお考えであるか、この点だけを伺っておきたい。
  43. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 安保理事会の非常任理事国に選ばれまして、軍縮の会議の一員にもなることは当然であると思います。また、西欧案が一応とにかく採択された格好でありますから、続いてこの軍縮の会議も開かれ、軍縮問題に関してもできるだけこれを促進して、その結論を得るように努力理事国としてすべきことは当然です。しかし私は、その方面努力をするとともに、さらにあらゆる機会において、われわれが核実験はまず停止されるべきであるというわれわれの日本案の趣旨の実現につきましては、今後といえども努力するつもりであります。
  44. 曾禰益

    曾祢益君 時間がちょうどなくなりましたので、あと賠償問題について一点だけ伺い、中国問題について二点だけ簡単に伺って終りたいと思います。  インドネシアについては、いろいろないきさつがございましたが、今度は向うに行かれる以上は、これを必ず円満に解決してこられる御決意であるかどうか、この点を伺いたいと思います。また、われわれもそれを強く望んでおることは御承知通りであります。  中国問題についても、大きな問題はしばらくおきまして、当面の問題である第四次協定の問題につきまして、言うまでもなく根本問題はこれは指紋問題でございまするが、従って指紋問題をこの際思い切って解決してしまうお考えはないか。この点だけから言うといろいろ支障もありましょうけれども、全般の関係から、指紋をとるというようなことは、おそらく意味をなさなくなってきているので、これを解決し、あわせて民間通商代表部の問題についてもこれを円満に大乗的に解決する政府の御決意があるかどうか、非公式に、なるべくタッチしないで、議員連盟にまかすというようなことも方法としてはわかるにしても、政府のやはり決意はどうであるかということを伺って私の質問を終りたいと思います。
  45. 岸信介

    国務大臣岸信介君) インドネシアの賠償につきましては、御存じのように長い沿革を持っておりまして、最近ハッタ氏及びスジョノ局長が参りまして、いろいろその前に小林移動大使が向うをたずねました。こういうような事態から相当に従来の関係が進展をいたしまして、総ワク等について大体の考え方は原則的に一致しております。他にいろいろな技術的にも考究すべき問題もございます。しかし私はちょうど向うをたずねる機会もありますので、この問題を大局的に最後の解決に持って行きたいという念願をもって努力をするつもりであります。  中国に対する第四次貿易協定が、御承知のような形において一応中絶いたしましたことは非常に遺憾でございます。これを早く円満妥結を促進することは、もちろん政府として望むところでありますし、また、そういう意味において努力をしなければならぬと思っております。指紋問題に関しましては、ある程度の便宜の扱いにつきましても、政府部内の意見はある程度は調整をいたして参っているのでありますが、しかしさらに指紋法全体の問題として、これを根本的に検討する必要があるのじゃないかという議が議院内においても相当に具体化す傾向になっております。私もその何に応じて、責任のある法務省、外務省に対して。これに対して具体的な検討を命じて善処したいと思います。いずれにいたしましても、表面的には中華人民共和国に対して、立場は根本的にありますけれども、貿易そのものを促進し、また、この指紋問題に関連して、これが行き詰まるというようなことのないように今後とも努力したい、かように思っております。
  46. 岡田宗司

    岡田宗司君 関連質問。先ほどの曾祢君の防衛庁長官に対する質問に関連して一、二点お伺いしたいと思います。  第一点は、ICBMがまだ実験の段階であろうと思いますが、IRBMあるいはSRBMというようなものは、すでに実用段階に入っていると私は見ているのであります。すでにアメリカではそれをもとにいたしまして、戦略、戦術を立てている、こういうことになっております。おそらくソ連圏の方におきましてもそうであります。そういたしますというと、防衛庁の方では、このIRBMなり、SRBMが、すでに実用段階に入っていると認められているかどうか、その点、防衛庁長官の御意見を承わりたいと思います。
  47. 津島壽一

    国務大臣津島壽一君) ICBMの方は、過日のソ連の実験が成功した第一回のものだろうと思います。IRBMの方は、すでに種々の形態のものがあるようでございます。実験も相当たびたびやったという情報も得ております。従って、まだ今後実用段階に入るには相当期間を要するといった意味はICBMの方である、こういうようにわれわれは考えております。もっともアメリカソ連において中距離弾道弾の実験等はたびたび行われたが、これが量的生産とか、そういった段階に達しているということは明瞭な情報を得ておりません。これがわれわれの承知している情報であります。
  48. 岡田宗司

    岡田宗司君 すでにIRBMにつきましては、実験が重ねられて、そうして成功を見ている。またSRBMについては、すでにこれが各地に配置されて、アメリカはそのために、たとえばペントミック・ディビィジョンを設けるというような事態になっている。そういたしますと、防衛庁の方もその点を認められたとすれば、日本の自衛隊が、これは陸海室ともにIRBMなり、SRBMなりの攻撃に対して、どういうふうにこれに対処するかということを御研究になっていると思うのでありますが、それの研究は進んでいるか、それに対応する態勢をどうするか、ということをお考えになっているか。それを承わりたい。
  49. 津島壽一

    国務大臣津島壽一君) 先ほどの御答弁を一応補足しておきます。  今のICBMが実験において成功をしたということは、これは事実だろうと思います。というのは、人工衛星のあの状況から見て、これは実験に成功しただろう。ただ、これに対する実験の結果のデータがまだ発表になっておらぬわけであります。どこの地点からどこに着いたとか、またその誤差があったかどうかといったような、そういったようなデータと申しますか、報告はまだ発表されていないようであります。従って、成功という意味は的確に目標物体に対して弾道弾によって到達し得るかどうかということについては、十分な情報を得ていない。こういう趣旨において成功したと、こういう意味で御了解願いたいと思います。これは私の得ている情報によって申し上げるところでございます。なお、IRBMについても同様、正式な発表されたデータというものは、まだわれわれは入手いたしておりません。しかしながら、この方はすでに相当長期にわたって検討され、また種々実験もされたということが報ぜられておるのでございまして、ICBMよりは、その難易の差が非常に多いものである、従って、こういったものが、今後もし万一実戦といった場合に、利用されるということは想定する必要があろうかと思っております。その点において、わが国の防衛の上において、これらのいわゆる中距離弾道弾であるとか、こういつたような超飛躍的な飛翔体が実戦に応用されるといった場合もあり得るということは、軍事の面から考えられることでございます。その点においては、われわれ当局においても検討し、これにどう対処するか、ただ、今日の日本の装備したる自衛隊の装備の関係においては、こういったものに直接対抗し得ることができるかどうかという点には、われわれは少からず危惧を持っておるのでございますが、これは全体の安全保障体制といったものをそこに必要とするということが、日本防衛基本的な方針になっておるということも、あわせて考えなければならぬ点だと、こう思っておる次第でございます。
  50. 岡田宗司

    岡田宗司君 ただいまIRBMはおそらく近く大量生産されて実用段階に入る、そういう認識を持たれて、それが実戦に供せられるような事態も起るであろう、それに対して日本側でも検討しておるのだ、しかし今の日本の自衛隊がそれに対処できるかどうかということについて、非常な危惧の念を持っておるということは、すでに防衛庁長官が、このミサイル時代においては、日本の自衛隊がそれに対処する力がないのだということをお認めになっておることだと思うのです。おそらくこの兵器発達は、軍の装備並びに編成というものを大きく変えて行くだろう。特に日本の場合におきましては、この今持っておりますところの自衛隊というものが、おそらくこれらの新しい兵器の前にはそれぞれ無価値になるだろう。たとえばIRBMに対しましてはジェット戦闘機は何の役にも立たない。また爆撃機のかわりに参りますこのIRBMを防ぐ方法はない。あるいはまた海上自衛隊もこれには対抗できない。また陸上自衛隊もこれに対しましては何ら力がない。そういたしますというと、これはまあ価値を検討しなければならぬ、こういうことになると思うのでありますが、その点はどうお考えになるか。それから第二の点は、そういうふうな事態が起るということを御認識なさいました場合に、これは閣議におきましても重大な問題として検討されなければならぬと思う。まあ曲りなりにも、あれがどのくらい役に立つものか、どれだけの力があるものか疑問でありますけれども、そういうことのために国防会議というものが設けられておる。そうすると、そういうものをお開きになってこれを検討されるかどうか、その点を岸首相にあわせてお聞きしたいのであります。
  51. 津島壽一

    国務大臣津島壽一君) IRBMが今言われた大量生産されて実用段階にあるという、そういった表現は私は用いなかったと思います。これはいわゆるICBMよりは製作等においての技術上の困難性が少い、アメリカにおいてもこの方は非常に研究実験をされておるという段階である。直ちに実用程度の、もう多量生産の段階に達したということは私は申し上げなかったつもりでおりまするから、今の御質問の中にそういった点があったら、私の答弁はそうでなかったと御了承願いたいと思います。  それから、こういったような新式の兵器と言いますか、ミサイルに対して、現状において直接これを防衛し得るかという問題、これは日本だけの、わが国だけの問題ではないと思います。これは、これに対抗し得るような新式のミサイル、強力なるそういうものを持った国は非常に少いと思います。これらに対処するためには、これはやはり集団安全保障、または安全保障といったようなもので、いわゆる共同措置というもので防衛するようなことになる必要がある、これが国防の私は基本方針になっておるので、この点からいって、これを基本的に変える必要はない。しからば今のような新式の兵器ができた場合に、わが防衛は必要なしというようなことが考えられるかという点においては、私はそうは思っておりません。また、基本的にこれらの……。(「できるか」と呼ぶ者あり)いや、この点はしばらくお聞き願いたいと思いますが、これは在来の兵器、通常兵器の今後の戦争様相に対する役割という問題に関係すると思います。従って今日こういったような新式のミサイルを持った国は、在来兵器、通常兵器は要らないで戦争ができ得るという態勢に変化するかどうかという問題になる。いわんや、それがないものは全部、防衛のもう何と言うか、そういったようなものを、通常兵器を廃するかどうかという問題に相なるのでございます。これは非常に今後の戦争様相の見通しとか、そういったようなことにも関連してくる問題で、あらゆる角度から検討いたしまして、私は日本の現在の自衛隊がさらに科学的の研究を増し、これを開発をいたし、また質的の改善を加え、あらゆる角度から、こういった部面の補強をするという必要は認めておりまするが、もはや安全保障体制のもとにおいても日本防衛というものは不可能であると、こういうことは全然考えておりません。
  52. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 国防会議において、こういう科学的な最近の発展等に関連しまして、われわれはあらゆる情報をこの国防会議において検討もいたしておりますし、また、それが日本の国防力に対しての影響を持つようなものにつきましては、もちろん国防会議において十分に検討して行くべきものであると、かように考えております。
  53. 山田節男

    ○山田節男君 関連質問。さっきの曾祢君の対中共貿易問題に対する御質問に関連して質問いたしたいと思いますが、先ほど総理の御答弁によると、今回の対中共貿易の協定が失敗に終った根本的のものは指紋の問題である、あるいは代表部員の人数、その他代表部の治外特権の問題で失敗してしまった、こういうふうに私は伺ったのであります。しかし、私は今回のこの対中共貿易問題の失敗した根本的な背景をなしているものは、これは先般、岸総理アメリカへいらっしゃって、これはわれわれもその当時非常にこれを憤慨したのでありますが、少くとも日本総理としてきわめて不用意な、中共を刺激するような発言があった、これが私は今回の協定の行き詰まりと申しますか、失敗の一番大きな問題じゃないかと思う。で、私は十月の二十八日に国連の第十一回総会に際しまして、あたかもインドが中共国連加盟を許すべしという決議案を出した討論を、二日間にわたって聞きました。従来は、中共の国連加盟の賛成は、主としてソ連並びにその衛星諸国家であったのでありまけれども、ことしはアイルランドがこれに対しまして熱烈な支持の演説をしました。それからイギリス、アメリカその他オーストラリアなども反対の演説をいたしておるのでありますが、こういうようなことは初めてであります。しかもこの人口六億を擁する中共を許さぬということは、国連の性格上どうしてもこれはいかぬ、こういう声が国連において、自由主義国家群に属している国においてもしかりという説がある。それに対しまして、これはロンドンの列国議員同盟会議で、アメリカの上院議員、下院議員に、私は評議員としてしばしば説明いたしました。この中共の承認問題について、まあ茶飲み話をしましたけれども、これらの上院議員あるいは下院議員においても、これはノーランドのいわゆるチャイナ・ロビーというものは絶対におくれている。ノーランドは来年の改選にはカリフォルニアの知事に今度出る。ノーランドがいなくなればそこに一つの転換期がきやしないかと思う、こういうことを言っておる。こういうような情勢下にありながら、過般ワシントンにおいて岸総理がきわめて中共を刺激するようなことをおっしゃった。このことはことに日本の地理的にアジアの最も中共に近い国としまして、総理がかような発言をされたことが、今日大きな禍根を残しているというように私は考えるのであります。そこで今後のこの中共貿易でありますが、これも岸内閣としましては、中共の方で拝んで物を買ってくれるのだというような気持が私はあるのじゃないかと思いますが、御承知のように先月イギリスの商工省の政務次官が参っております。その前に十月の初めには西ドイツのこれは実業団の使節が参っております。こういう工合でこの中共といたしましても、日本から物を買わなくてもいい、イギリスあるいは西ドイツから買えるのであります。われわれとしては、貿易を開拓するためにも、これは中共に対してどうしても貿易をやらなくちゃならぬ、こういうような情勢から判断いたしますと、今の日中貿易の協定を成立するためには、単なる指紋の問題あるいは代表者の人数の問題でなくいたしまして、その奥にひそむ一つの岸総理のこれら中共に対する観念というものを、少くとも刺激している状態を何か回復することを考えなければ、この問題は解決しないのじゃないか。先ほどいろいろおっしゃいましたけれども、まずその前にこの中共をもう必ず来年中には加盟させるようになるのじゃないか。そのときにあって、岸総理が今なお、もうアメリカにおいてすでに古くさい、危険人物が言うような対中共観念をお持ちになっているということになれば、これは私は今の御答弁では対策ではないと思いますが、あなたが明らかに刺激された中共に今回代表が日本から参りまして、いろいろ協定の話をしておりましても、決して向うは総理大臣岸ということを言わないそうであります。岸信介と言うそうであります。もう中共と日本の岸政府との問の緊張は、これより私はひどいものはないと思う。一体こういう緊張を緩和する、あなたが今おっしゃいました対中共貿易を善処するということにつきましては、私はそういう基本についても十分な御考慮がなくちゃならぬと思いますが、これについてどういうお考えか。一つ明快に、このことは必ずや中共に、ラジオやニュースでいくのでありますから、明快に一つ答弁を願いたいと思います。
  54. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私がアメリカにおいて何か中共を刺激するような言葉を言ったということで、ありますが、これは全然事実に反しております。そういう事態は全然ございません。また私が台湾政府を訪ねたときの事柄も、事実に反したことが伝えられ、それが相当むしろ向う側からも刺激的な言動が日本になされたことも当時御承知通りであります。私は、しかしながら、日本と中国との関係は、長い歴史的また地理的、経済的、文化的に非常に密接な関係があって、これに対して経済あるいは文化等の関係において、いろいろの事実を作り上げていくということについては、決して今までも反対もしておりませんし、むしろこれを進めていくという態度をとっておる。しかし現在の日本の置かれている立場、また台湾政府あるいはこの国連の一般情勢から見て、直ちにこれを承認するということは適当でないという考えできておりますが、しかしながら貿易その他の関係においてこれを進めるということについては、私は決して非友好的や刺激的な考えで従来対しておらない。またそういうことの言動をした事実は私にはないということを明瞭に申し上げます。     —————————————
  55. 迫水久常

    ○迫水久常君 ソ連がさきに大陸間の誘導弾を完成したということを発表して、またそれを裏付けるような人工衛星を打ち上げましたということは、全くこれは重大な事件でございます。もし日本が昔のように軍備を持っておって、英米やソ連と肩を並べて相対抗しておった時であったならばそれこそ大さわぎになって、来年度以降の予算というものは軍事予算が膨大なふくれ上りでしょうし、大蔵省今ごろは非常にお困りになっておるのじゃないかと思いますし、まかり間違えば岸内閣さえつぶれてしまうほどの大事に至ったと思うのです。ところが日本国民はそれほどこの問題について衝撃を受けた様子はないということは、実に私としては心外にたえないところでございまして、敗戦の結果日本世界の強国の列から離れてしまった、そういうあきらめから来る気安さのお蔭であるか知れませんけれども、考え方によっては全く情ないと思うのでございます。そこで何と言ってもこの新事態に対しては、われわれは深刻に検討しなければならないわけでございまして、先般来社会党の方々の御質問にも、その意味において傾聴をいたしたような次第でございますけれども、と言って今さら今度は、ロシアが強くなりそうだ、今度は、この前は弱い方の国に入っておって負けたのだから、今度は強い方の国に入ってやろう、そういう簡単なことで日本の態度をきめることもできません。社会党の方々は中立々々ということをよく言われますけれども、実際問題としては、中立ということは、実は自分自身の中にほんとうに大きな力がなければ中立ということはできないのであって、その力のない場合に中立なんということを考えると、それは中立ではなくて宙ぶらりんになってしまう危険があると思うのでございます。そう考えて行くと、社会党のお唱えになる中立論というのは、結局一つの口頭禅のようなものであってむしろそれはソ連のグループの方に近づくということになるわけだと考えるものでございまするけれども、先般来、岸総理は、きわめて明瞭に日本が引続いて自由主義のグループにおるということを一言っておられるのでございますが、問題は自由主義のグループの中におって日本がこれからどういうことをして行くかということだと思うのであります。またこの新事態は、同時に日本防衛の問題にも大きな影響を与えることは想像にかたくございません。先般来の御質問にもその点が明瞭に出ておりまするけれども、ただいま防衛庁長官がおっしゃったように、ミサイルその他の有効な兵器が出て来たから、今の日本の自衛隊のような装備では何にも役に立たないから、自衛隊なんかはやめてしまえという議論は、これは成り立たないと思います。集団強盗が非常に多くなって、集団強盗がいるから、鍵をかけているくらいではとても防ぎ切れないから、その戸締りもやめてしまおうじゃないかというような議論と同じであって、私はこの前のスエズの事件のごときは、もし原水爆のようなものがなかったならば、おそらくあれは第三次世界大戦にまで発展していったのではないかと、こう思うのでございまして、極端に言えば、原水爆があるから、むしろ局地的な武力抗争、言葉は悪いかもしれませんけれども、こそどろ的な侵略行為というものも多くなってくるのではないかと思うのでございます。(「誰がやったと」呼ぶ者あり)そのこそどろ的なものに対しては一応戸締りをして、鍵をかけておけばそれは十分である。集団強盗でも、戸締りのない家よりは、戸締りがしてあって中にピストルの一丁もあって、中の者が死にもの狂いに抵抗するであろうと思えば、よっぽど性根を据えてからでなければ入ってこないのであります。自衛隊の存在ということが日本防衛の上に非常に役に立つということは、これは当然であると思っているのであります。  そこで私は、こういう立場において岸総理にお尋ねいたすわけでありますけれども、実は日本は、これから本来の日本の使命を果すべき時期がいよいよ来たのではないかと思うのです。と言うのは、日本は御承知のように、原爆による唯一の被害国民でございまするから、その立場というのは、世界に対して真剣に心の底から戦争の防止ということを訴え得る唯一の国民であるという立場に通ずるものと私は思います。そこで従来とも岸内閣におかれては、世界平和のために今回新たに入った国連等において御活動ではありますけれども、いよいよこれは事態がむずかしくなってきた、バランスが破れて戦争の起る可能性も出てきた今日においては、岸内閣日本の平和工作、平和のために対する努力というものが一そうなされなければならないと思うのでありまするが、この点につきましての岸総理大臣の御抱負を承わりたいと思います。
  56. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 最近しばしば御質問があり、お答えしましたように、最近の科学発達というものは非常な驚異的なものであります。これが将来世界のいろいろな点に大きな変革をもたらすであろうということは、一応各方面で言われている。しかしその変革が、果してわれわれの希望し期待するような平和を増進する方向に行くか、あるいは平和を脅威する方向に行くかということは、これはまたいろいろ議論があることでありまして、われわれの努力がまさに、これらの新しい科学発達というものが、人類の幸福と人類の平和のために用いられる方向に、あらゆる努力をすべきであることは、私は言うを待たぬと思うのであります。原子力そのものが原水爆等によって、大量殺人によってわれわれの文明あるいは人類の福祉というものを破壊する方向に用いられることはやめて、そうしてこれが平和的利用によって人類の福祉に用いられるようにわれわれが従来とも努力をしてきていると同じように、さらにこういう新しい科学発達というものの、あらゆるものを、人類の平和の脅威にならないように、むしろ平和、福祉を増進する原動力としてこれらが利用され、用いられる方向に、われわれとしてはあらゆる努力をすべきものである。国連というものがなおいまだ十分な機能を発揮するだけ有力でないこともはなはだ遺憾でありますけれども、私はやはり、第二次世界大戦後における世界の良識が生んだところの一つの組織であり、これを完成していき、この力によって世界の平和をもたらすということは、われわれれのやはり尊いこれからやっていかなきゃならない努力の中心がそこにあると思う。幸いにわが国が安保理事会の非常任理事国にも選ばれたことであり、軍縮会議にもこれに加わるというようになっておりまして、ますますこういう意味における日本の活動の分野、並びにこの活動の世界に対する影響力というものも、大きくなっているわけでありますから、私としては、あらゆる面において、先ほど来申し上げたような趣旨において、今後世界平和の増進のために努力すべきものである、かように考えます。
  57. 迫水久常

    ○迫水久常君 私事を申し上げて恐縮でございまするけれども、終戦後間もないときであったと思いますが、時の宮内大臣石渡荘太郎さんに私はこういうことを御進言申し上げたことがあるのです。というのは、皇室財産、これは相当膨大なものであって、その皇室財産が全部進駐軍によって取り上げられそうだということを知りましたときに、石渡さんに、皇室財産を基幹として一つの大きな財団を作って、世界の平和運動のための一つの財団でも作られたらばいいのではないかということを申し上げたことがあります。不幸にして進駐軍が無理解で、皇室財産は大部分財産税として取られて、いつの間にかなしくずしに使われてしまっている実情でありますけれども、何か岸総理大臣におかれても一つの画期的な仕組みをお考え下すって、一さい日本が戦争に巻き込まれないように、日本国民の一番の願いというものは一さい戦争に巻き込まれたくないというところにあるのでありますから、格段の御努力を願いたいと思います。  それで、続いてお伺いいたしたいのでございまするけれども、日本が自由主義のグループに入っているということになりますると、すぐに社会党の方々は、日本アメリカの従属国である、そうして戦争でもあったらば、日本アメリカに対して武力の供給をしなければならぬ、こういうことを言われるのです。まあソ連のグループに入っていたらば軍隊を供給しなければならなくなることは同じことだと思っているのでありますけれども、この従属国だ、従属国だということは、私はそうは思わない。しかしどれほど青年の夢をこわしているかということは、はかり知れざるものがあるのでございますので、この機会に総理大臣から、日本アメリカの従属国ではないということをお話を願いたいと思います。
  58. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 日本が戦争に敗れました後、長い占領下にあり、また戦争に敗れたために国力も非常に衰えて、あらゆる面において破壊されました結果として、日本が果してどうして立っていけるかというふうな、非常な混乱と、それから一つの失望とを戦後において与えておったと思うのです。ところが占領軍によりまして、とにかく社会不安が除かれ、またある程度の経済の基礎が作られてくるというときになりますと、まず何となしに、精神的に、その占領軍の中心であったアメリカに対する依存の考え方が、日本の国民の頭にいつとはなしにできたことも、私はいなむことはできないと思います。それからまた日本防衛そのものというものの防衛力を一切なくして、あるいは軍事力が破壊され、また軍需産業が破壊され、なくなった。ところがこれをさらに国際情勢に応じて、日本の自衛というものを整備していかなければならぬということになってきますと、日本としてこれをいかにして作り上げるかというようなことの現実から、アメリカに依存しなければならぬという度合いも出てくる。あるいは経済の復興についても、アメリカの援助を受けなければならぬというような事態があったことはこれは事実であります。しかしながら私どもはこの占領から独立をし、さらにわれわれ自身の力によって、われわれの自衛力についても、日本の国情と国力に応じて、われわれみずからが作っていこうという努力をしてくるようになり、さらに経済におきましても、われわれ国民の非常な努力によって、日本の経済がだんだん繁栄の基礎を取り戻してきた。こうなって参りました以上は、われわれは、さっきいったような、何となしアメリカにたより、アメリカによって依存していこうという感じを、私はあくまでも自主独立の立場からこれを考えるように頭を切りかえなければならぬ。また、日米関係においても、そういう立場に立って、対等な立場で現在及び将来の問題に対処し、これを解決するという基礎を作らなければいかんという考えで、実は過般のアメリカ訪問をいたしたわけであります。私は、すべての問題がわれわれの希望通りに解決されたということはもちろん申し上げるわけじゃありませんが、この根本的な考え方——われわれが自主独立の立場から、今後アメリカとの間においては対等の立場においてすべての問題を処理し、話し合いを進めていくという基本を確立したのでありまして、私は、そういう意味において、あるいはアメリカの駐留軍をわれわれの力によるところの自衛力の増強に伴ってこれを撤退させるというようなことも、また、われわれが占領後におけるところの真の独立の立場からは、忌まわしい事態がからむところの進駐軍をわれわれの領土からなくするというようなことにも努力してきているわけでして、私は、日本の経済も、非常に最近においては基盤ができたと思う。もちろん、貿易の点であるとか、あるいは外資の導入であるとか、技術の提携というようなことにおいて、アメリカの力を利用すべきものを利用するのは、対等の立場で利用する以上は、何ら従属的な考えではないのでありまして、あくまでも日本としては、自主独立の立場から、将来とも対等の立場にあるということを強く頭に持って進んでいかなければならない。こう考えております。
  59. 迫水久常

    ○迫水久常君 こいねがわくは、今後内閣の御施策において、ぜひ、今、岸総理のおっしゃったことを一般の国民がそのままに受け取ることのできるように、御施策を願いたいと思います。  次に私は、人の名前を引用して、まことに恐縮でございまするけれども、御質問を申し上げたいと思うことは、先月の初めに、社会党の鈴木委員長が世田谷の代田小学校において演説会をお催しになりましたときに、私は、一体、社会党の方々はどんなことをお話しなさるのかと思って、興味を感じたので、私の信頼する一人の青年をその会場に派遣しまして、話を伺わせました。鈴木委員長は、いろいろのお話の中で、こういうことを言われたそうです。岸首相の今回の渡米の目的は、核兵器日本持ち込みの話し合いに行ったのだ。そのためには憲法を改正しなければならない。その前提として、労働組合を弾圧することをアメリカと約束してきたものである、と言われたそうでございます。そして委員長はさらにそのほかにも、自民党はストライキを誘発さして、国民をして労働組合をひんしゅくさせ、その背後にある社会党に対する嫌悪の感情が一番高まったときに解散を断行する意図を持っておるのだ。こういうことを言われたそうでございまするが、少くとも核兵器の問題については、岸総理は、前々から、絶対に日本には持ち込まない、これを拒否するということを仰せられておる。一方、鈴木委員長は、今申し上げたようなことを言われたとすれば、事実は一つである以上、どっちか真実でないことを言っておられるとしか思えないのでございますが、岸総理お答えを願いたいと思います。そのついでに、解散の問題にも一言触れていただきたいと思います。
  60. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 鈴木委員長がどういう演説をされましたか、事実は私承知いたしませんが、今、迫水委員の引用されたような意見であるとするならば、それは、私がアメリカにおいてアメリカの首脳部と話し合った事実とは全然相反しておるわけであります。私は、決して核兵器の持ち込みについての話に行ったわけでもなければ、憲法改正を約束し、あるいは労働運動を弾圧するということをアメリカの首脳部と話し合ったということはない。さっき申し上げたように、自主独立の立場から、われわれは対等の立場で話をするということを根本に置いて、いやしくもそういう国内問題についてアメリカの首脳部と話し合った、あるいはそういうことを要望されたということの事実も絶対にあり得ないと私は申し上げるほかない。  それから、解散の問題につきましては、これは現在、憲法におきまして、政府がいつ解散するかということは決定するようになっておりますが、しかし私は、従来からはっきりと幾たびか答弁をいたしておりますように、解散することは考えておらないということを従来から繰り返し申し上げておるのであります。今の御質問に対しましても、同じ心境でございます。
  61. 迫水久常

    ○迫水久常君 けさの新聞は、ソ連の新国防相が、ソ連世界最大の、また未曾有の軍事力を持った、ということを非常に得意げに演説をしたということを報道しております。私は、その昔、日本がやはり世界最大の軍事力を持とうと考えておった当時を考えて、まことに想慨無量なものがございますが、同時にまた、ソ連というものは、人工衛星の打ち上げや何かで、現在では世界最高の科学技術の力を持っておると思われます。軍事力において世界最大、科学の力において世界最大、そういうところにいる青少年というものは、どんなに希望を持ち、何といいますか、元気が出てくるのじゃないか、こう思うのでありまするが、それに反して日本の現状は、いかにも青少年に希望がない。岸総理大臣は、青少年に国家のために非常な期待をかけておられるのでありまするが、そこで私は、一体日本世界一になるものがあるかどうかということを考えてみたのでありまするが、それは結局、科学技術だと私は結論を出したのであります。日本人の優秀性から申しまして、世界一の科学技術の国になる可能性及びその速度というものは、それにどれだけのお金をかけるかということによって決定されると申しても過言でないと私は思うのでありますが、従って、昔だったならば、軍事予算が膨大にふくれ上る、あるいは内閣さえつぶれる、こういう事態におきまして、来年度の予算については、一つ科学技術の振興のために、大いに予算を盛っていただきたい、そういうように思うのであります。科学技術ということが——ソ連人工衛星の打ち上げということが、私の家の子供にさえ非常な刺激を与えて、一つの希望を持っておるようでありますが、科学技術進歩によって、資源でない——今まで資源として使われなかったものが資源として使われることになる、あるいは海の底から物が取れる、そういうようなことになったならば、岸総理の貧乏追放ということにも大きな役割を果すでございましょうし、また、東南アジアの開発というような問題についても、多くのコンサルタント・エンジニアというふうな技術陣も必要でございましょう。そうしてこういう技術陣が海外に進出して行くならば、必ずそのあとからはプラントの輸出があり、それから他の輸出もこれに続いていくものでありますので、何が何でも日本科学立国、科学世界一になるということを覚悟をきめて、これから新規まき直しにやっていただきたいような気がいたしますので、岸総理大臣の御意見を伺いたいと思います。
  62. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 科学技術において日本の将来進む道を開いていくべきだというお考えにつきましては、私は多くの共鳴を持つものであります。日本の教育の制度を見ますというと、従来理科系統の大学の学生の数を見ましても、理科系統の学生と文科系統の学生との比率は、大体文科が七で理科が三というような状況であります。もっとも国立の大学におきましての比率は違っておりますが、全部の大学を網羅しますというと、そういうようなことになります。今日いろいろな大学生の就職難のこと、この事態が学生の将来に対して暗い影を与えていることも事実でありますが、その就職難の実態も、理科系統の卒業生ではなくて、むしろその方は、相当求人に応ずることのできないほどの求人があるようであります。文科系統の人々に非常な就職難があるという実態から見ましても、私は、やはり大学の教育について理科と文科との割合を、少くとも第一段においては理科と文科を五対五ぐらいの比率にまで持っていくためにいろいろな設備の改善や、その他教育内容の充実も考えなければならない。またその前提として、小学校からの教育において、理科の教育に非常に力を入れるべきであるというようなことも、これは当然考えなければならないと思っております。いずれにしても、理科系統のこの科学技術の点において、青少年の諸君が、世界的に活動する分野がわれわれに非常に広く開けているというところに一つの希望を持ち、そういう勉強をされるということは非常に望ましいことである。また制度、設備等もそれに応ずるように、国家の施策も対応してやっていかなければならない。かように考えております。
  63. 迫水久常

    ○迫水久常君 一萬田大蔵大臣にお願いをいたしておきますが、いずれ提案せられる明年度予算において、科学技術の振興に関する予算が、われわれが目をみはるくらいふえておるということを期待をいたします。  次に、岸総理大臣にお伺いしたいと思いまするが、先般来三悪の追放ということをお唱えになっておられます。汚職と暴力の追放というのは、おのずから方法もあると思いまするが、貧乏の追放ということは、これは非常なむずかしいことだと思うのです。実は、この標語を聞きましたとき、私は、約二十年前、高橋是清大蔵大臣が言われた、人は高く物は安く、という言葉を粛然として思い出しました。古い資本主義の時代においては、あるいはこれとは逆に、人は安く物は高くというのが事業経営の要素であったかもしれませんけれども、福祉国家の建設を目標とする今日においては、保守党も社会党も、人は高く物は安く、でなければならないことは当然でございます。これがいわゆる貧乏追放の具体的内容であると思いまするが、社会党の方々は、おそらくそれは、社会主義社会になって初めてできることだ、こう言われましょうけれども、お手本のソ連や中共の実態を見ますると、果してそうなのか、大いに疑問であり、むしろ事実は、物のために人がこき使われているのではないかと思われますので、私はやはり、自由主義社会及び私有財産を認める、個人の企業の自由を認める前提のもとにおいてこそ、一そうこのことが実現しやすいと信ずるものでございます。そこで私は、岸総理大臣にお伺いいたしますが、総理は、申せば四つの島という限られた資本設備によって九千万人の人を雇用しなければならないという宿命を持った、日本という一つの大きな生産会社の社長であるわけでありまするが、しかも、実際事業の各部門を見ますると、単位面積当りでは、世界でも飛び抜けて高い生産を上げながら、なおかつ貧乏と別れられない農民があり、景気変動の波のまにまに浮き沈みする中小企業がありまするし、一部ではまた、食糧の自給度を上げろという議論があるかと思うと、一部では、むしろそのような努力はやめにして、工業一本やりでいけという議論もあるようで、まことに複雑でございます。聞くところによると、ソ連のプランの中には、日本が共産化した場合には、日本の人口の三分の一くらいはシベリアに強制移動させる計画があるとも聞いておるし、中にはまた、日本は全然アメリカに食わせてもらうほかはないと言う人もおるのでありまするが、岸総理はいかなる構想を持っておられるか。問題が非常に大きいのでありまするから、概念を一つお示しを願いたいと思います。
  64. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 貧乏の追放については、私は、大きな方向としては、二つのことを考えていきたいと思う。一つは、言うまでもなく経済の繁栄、産業の拡大によりまして、国民に就職の機会を多くし、また国民所得もふやしていくというこの経済政策というものが、これが一つの道であり、またもう一つは、社会保障制度の拡充によって福祉国家を作り上げる。これは、申すまでもなく、いかに経済が繁栄しましても、人間が逃れることのできない病気であるとか、あるいは年をとって働くことができなくなる。あるいは一家の支柱を失うというような不幸にあった人々に対する社会保障制度というものの拡充、この二つでいくべきであると思います。  ただ、しからば経済繁栄、産業拡大というこの事態を考えてみまするというと、お話通り日本のこの国土の狭いところにおって、多数の人口を持って、これがどうして産業の繁栄ということを考えられるかという基礎になってきますというと、日本の経済、産業構造からいって、御承知通り、貿易に依存する度合が非常に多いのであります。従って、日本としては、何としても輸出貿易というものを振興させることを考えていかなければならない。輸出貿易の方策も、これはいろいろ考えていかなきゃならぬと思いますが、同時に、いろいろな施策をあわせ行うべきことは当然でありますけれども、要は結局、日本の生産を、できるだけいい品物を安く作るというねらいをもって、産業の近代化や、あるいは生産性の向上、あるいは能率の増進というようなことを十分にやっていかなきゃならぬ。私は、この意味において、われわれがとっておる自由経済主義というものは、日本のような国においては最もふさわしい考え方である。こういう国で重要生産手段を公有にするとか、あるいは重要産業を国営にするとかというような、社会主義の公式的なやり方では、決して日本の経済というものは繁栄しない、こういう考えを持っておるのであります。  今御指摘になりました農業の問題や、あるいは中小企業の問題等、日本産業に特有ないろいろな問題がございます。これらに対して、それぞれ施策をしなければならぬことは言うを待ちませんが、私は、やはり日本の産業については、こういう中小規模の産業というものが日本の実態に合っており、また幾多の美点を持ち、長所を持っておるということを見逃してはいかぬと思うのです。ただ、これらのものが経済的に弱いから救済するという頭ではなしに、この形において日本が貿易の面にどういうふうに発展し得るかというようなことを十分に考えていくべきである、こういうふうに大体考えております。
  65. 迫水久常

    ○迫水久常君 ただいま岸総理お話がございましたように、日本の貧乏の追放ということについては、貿易ということが非常に大きな問題であるのでございまするが、その点について若干のことを主として大蔵大臣にお伺いをいたしたいと思います。  世界経済調査会の調べを見ますると、日本国民経済の貿易依存度は、輸入で一三%、輸出で一一%ぐらいのところで、しまいの方から十数番目くらいの低い位置にあるのでございます。米国の貿易依存度は、その表によりますと、日本より低いのでありますけれども、わが国のような原材料の資源の賦存度の低い国で、貿易の依存度がこう低いということは悲しむべきことだと思います。  そこで、どうしてもこれから先貿易を盛んにしていかなければならないわけでございますけれども、最初にお尋ねをいたしたいことは、だいぶこのごろはよくなって参りましたけれども、それでも、原則的にいって、物を輸出するよりもむしろ輸入する方がもうかるという状態が、今でも存在をいたしておるようでございます。このことは、輸出増進という点から申しますと、まことに致命的なことではないかと思うのでございまするが、私は、為替の相場を変更せよという考えを持っておるものではございませんけれども、この問のことを是正するために、大蔵大臣あるいは通産大臣は、何かお考えがあるか、お伺いいたしたいと思います。
  66. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 傾向といたしましては、輸出よりも輸入する方がもうかるという傾向をとっております。これは、輸出は買手を求めていくという点に非常に困難性があり、輸入は、こちらがまとめて買うというような点もいろいろありますが、要は、結局よく売れるということにあると思うのであります。従いまして、どうしてそんならよく売れるかといえば、やはり輸入した物が国内で消費される、こういうところに一番大きな原因があると考えます。従いまして、輸出ということを国内の消費ということを調整をいたしまして、今後考えていくのが一番適当である。輸入の方がもうかるからといって、為替相場自体を、輸出と輸入と違ったものにするということは適当でないと考えております。
  67. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 輸出がもうからぬ、輸入がもうかるというのは、金融の面でそういうことが言われておると思います。その点につきましては、輸出金融の優先ということで、極力輸出金融に困らせないようにしなければならない。最近におきましては、金利の引き下げ、あるいは特別ワクの設定ということも要望されておりますが、特別ワクにつきましては、まあ実質上そういうふうにやっていこうというので、最近におきましては、金融の問題は、輸出輸入の関係においてそう困った事態でないと思います。  問題は、結局において、輸出がもうからぬというのは、さっき総理も言われましたように、極力コストを下げていかなければならない。それにつきましては、産業上あらゆる問題から解決していかなければならないのであります。国際物価に比較しまして、輸出が、日本の商品が高いということは、われわれ十分考えて、産業構造全体から考えていかなければならない問題だと思います。  それから、輸出がもうからぬという点につきましては、確かに非常に努力が要ります。それに対して、あらゆる政府の施策も考えていかなければなりません。現在御審議願っておりますように、税法上の特典、あるいはまた将来、輸出の価格変動準備金の延長というような問題、あるいは市場開拓に対する準備金の問題、というようなことを解決していきたいと思っております。また、保険料金というような点につきましても、改善をやっていかなければなりません。ただいまのところは、そういう早急にやらなければならぬ施策、それから先ほど申し上げましたように、将来にわたってコストを引き下げていくという両方の施策をやっていって、結局輸出が引き合うのだということでいかなければならないと思います。
  68. 迫水久常

    ○迫水久常君 時間がありますれば、もう少しその点の問題について深く入ってお尋ねをしてみたいと思いまするが、与えられた時間がございませんので、次の質問を申し上げます。  戦後の国際経済の特徴の一つとして、通貨のコンバーティビリティが著しく制限されているということをあげることができると思います。ポンドさえドルにはかわらない、こういう状態でありまして、これは貿易には非常な障害をなしておるわけでありまして、極端に言えば、貿易は各通貨ごとにバランスを保つようにしていかなければならないというようなことで、戦前に比べると、実にこれはむずかしいのであります。しかも、先般フランス・フランの実質的な平価切り下げがございまして、以後ポンドの先行きも非常に不安になって参りました。もっとも、ただいまでは若干の小康を得ているようではございまするけれども、この世界通貨の不安ということは、実は、わが国にとっては重大な問題であると思うのでございます。現に、アルゼンチンに対するあるプラントの輸出について、先方がポンド決済を固執するのに対して、大蔵省では、ドル決済でやりなさい、ドル決済でできなければ、しいて商売する必要はないではないかと言ったとか言わないとかで、先般も私に訴えてきた人がおりますけれども、とにかくこの点は、日本の貿易振興の上に非常に大きな問題でございまするので、大蔵大臣のお見通し、また、それに対する対策をお伺いいたしたいと思います。
  69. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) ただいまの御質問は、主としてポンドの価値の見通しにあったように存じますので、その点について私の考えを申し上げます。  フランが実質上二割切り下げられた、その影響もありまして、ポンドの価値について不安があり、投機が国際的に一時行われましたことは、御承知通りであります。これにつきましては、イギリスは非常な強い決意で、大体一国の通貨を安定さすのには、その国の政府並びに国民のいわゆる強い決意、これが一番基本的な必要要件であるのでございまするが、イギリスは非常な強い決意を示した。御承知のように、英蘭銀行は金利を当時五分から七分にした。これも英蘭銀行史から見れば非常なことでありまして、破天荒と言うてもいいかもしれません。さらに、当時実行予算も組み、あるいはまた、当時における残高以上に銀行信用の拡張を禁止した。さらにまた、第三国貿易のためにポンドを使う場合、リファイナンスを取りやめる、こういうふうなことは、完全雇用ということを、それはもう憲法のようにしているイギリス政府のとる政策としては非常な決意である。同時にまた、ポンドが世界的通貨ということにやはりプライドを持ってるその通貨を、国際的な意味において使うことを取りやめてほしいということをイギリス自体が言うということも、いかにイギリスがポンド価値の防衛に決意を示したかということがはっきり現われていると思うのであります。同時にまた、それだけじゃありません。イギリスは、十三億ドルに及ぶ国際通貨基金からの借り入れをした。当時なお七億五千万ドルぐらいの借入残が残っておるのでありますが、今なお残っておると思いますが、同時にまた、アメリカの輸出入銀行から五億ドル借款をしている。こういうふうな決意と同時にポンド防衛、特に投機に対する対策として、いつでも来いというような形で、具体的な準備も十分しておる、こういう状況である。  それで私は、こういうふうにやれば、ポンド価値について不安がないだろうと思うのでありまするが、問題は、しかしやはり基本的には、世界におきまして非常に経済上強いアメリカ、西ドイツ、こういう国々が当時非常に輸出超過になっておりました。こういう強い国が輸出超過になる、たとえばアメリカ等におきましては、当時上半期の情勢は四十億ドルになりはしないかという程度の出超が予想される。これでは、一方では対外援助を大きくしながら、ドルは吸い上げられるというのでは、とても自余の自由国家がやっていくのに非常に困難を感ずる、こういうことになるのであります。そこで、アメリカや西ドイツがどんな態度をとるか、これが先般私が参りました国際通貨基金における一番大きな問題点であったのでありますが、これについて、西ドイツもアメリカも、今後大いに輸入を増加させる。そのためには、特に西ドイツ等においては金利も下げておるし、関税率も引き下げていくが、さらに従来の借款も繰り上げ償還をする。これは西ドイツのことでありますが、それでもなお受け取りになれば、これはやはり再投資ということも考えなくてはならない、こういうふうに非常に、これに対してアメリカも大体同じ考えであるということを述べておりました。こういうふうに、この不安な通貨国自体が非常な決意と準備をなし、同時に、これを国際的に支持していくという態勢まで整えたのでありますが、これをもってすれば、私はポンド価値は十分防衛ができると、かように考えて、事実その後ポンド価値は強気を、強調を示しておるわけであります。ただ問題は、国際会議において、強い国が国際的な協力をするからという言葉だけでは私は十分でないので、今後それなら、アメリカや西ドイツの国際収支がどういうふうな傾向を具体的に現わすかということが、一番大切である。それらを見て、長い目では、いろいろの国の通貨価値というものもやはり注意深く見ていかなくてはならぬだろうと思うのであります。がしかし、今のところ、何ら私は不安はないと考えております。
  70. 迫水久常

    ○迫水久常君 次に、先般一萬田大蔵大臣がアメリカにいらっしゃいまして世界銀行に交渉なさいました三億ドルのインパクト・ローンのことについて、一、二お尋ねをしたいと思います。  その一部の五千五百万ドル相当額の政府保証のことが、実は当委員会の審議題目の一つでございまするが、このインパクト・ローンは、前の池田大蔵大臣当時、日本の外貨事情の悪化に直面いたしまして、外貨補充の意味で考え出したものと思いますが、最初は、私どもも三億ドルの外貨が早く手に入るものと考えておりましたが、実際はそうは参らないようでありまして、今回の御提案もそのうちの七千五百万ドル、こういうことで、それもすぐではなくて、何年間かの間というふうに書いてあったと思うのでありますが、そうすると、このお金を借りて、そうして仕事をする貸出先というのは、外国からの輸入物資をあまり必要としない、大部分日本の国内の資金でまかなえるものであるのでございまして、いわばこのインパクト・ローンは外貨の補充ということを考えてやられたものと思うのですが、実際はその後の国際情勢もやや改善してくる徴候もございまするし、今ここでやられる必要があるのかどうかということについての若干の疑問を持つものでございます。ことに金融引き締めの政策をやっておられるこの際、あるいは矛盾するような気持もいたすのでございまするが、その点についての大蔵大臣のお考えと同時に、またその資金を実際使う会社に対して、日本開発銀行は外貨建で貸すのか、あるいは円で貸すのか、言葉をかえて言うならば、将来の為替相場の変動、ポンド・スターリングのことについては当面一応の強さを感じまするけれども、長い何年かの間の問題というのは、なかなか問題であると思いまするが、そういうような点、あるいはそのためにお金を借りた事業自身が困ってしまうような事態が来やしないかとも思うのでありまするが、そういうような点についての大蔵大臣の御意見を承わりたいと存じます。
  71. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) インパクト・ローンにつきましては、これはインパクト・ローンをせぬでも済めば、これにこしたことは私はないと思います。が、御承知のように、特に後進国——まあ日本もある部面において後進国でありますが、特にたとえばエネルギー、それから輸送、こういうものは常に経済が拡大をする場合の隘路になる、言いかえれば、こういう面が非常におくれております。これをある意味においてスピードアップしていかなくてはならぬと私は考える。そうしますと、ある程度においてインパクト・ローンをいたしまして、こういう一国産業の発展の隘路になって、特にスピードアップしてやらなくてはならぬものに使う場合におきましては、私はよかろうと、こういうふうに考えておるわけであります。  なお、今回借ります外貨は、貸出先には外貨そのままで貸す、こういうことにいたしております。
  72. 迫水久常

    ○迫水久常君 次に、来年度の予算のことについて若干お伺い申し上げたいと思います。大蔵大臣は来年度どういうふうに金を使うのかということを聞かれることを、非常におきらいだそうでありまするから、私はそれをきょうはお伺いをいたしません。ただ一つ根本的なことを伺ってみて、若干の希望を申し上げさしていただきたいと思います。  戦後日本の経済は、アメリカや西ドイツなどとは全く違って、実に著しい景気、不景気の起伏を経験した。アメリカではまことになだらかに推移しておる間に、日本ではドッジさんの緊縮政策、朝鮮ブーム、その反動の一兆円予算、二十九年以降の世界的好景気に基くいわゆる神武景気、その結果の腹下しに対する絶食療法というように、実に起伏がひどいのであって、こういう起伏がひどいために、どれほど中小企業なんかも困っておるかわからないのでありまして、いわばこれまでも一ずっと政権を担当しておった保守党としては、深くこれは反省をしなければならないところだと思うのでございます。やることが、対症療法的で、主動的なところはなかったと言ってもいたし方ないのだと思うのでありまするが、来年の予算ということにつきましては、一萬田大蔵大臣は渋い予算ということを言っておられます。これはなかなかうまい言葉だと思う。派手でなく地味でなく、いわゆる渋い予算ということだと私は思うのでございまして、一萬田大蔵大臣が非常な配慮をされておるのだと思いまするが、すなわち、ただ単に緊縮のための緊縮予算というような格好にはならないのだと考えておるのですけれども、問題は、予算のワクというものをどうきめるか。何と申しても、予算というものは日本経済の主動力でございます。景気の起伏は全く金と物とのアンバランスによって起るものでございまするから、予算のワクをきめます場合には、今さら賀屋元大蔵大臣の三原則を引き合いに出すまでもありませんし、また私や佐多忠隆君などがやった物動計画をやるまでもございませんけれども、少くとも予算と国際収支の関係、予算と重要物資の需要との関係については、はっきりした数字の根拠をもって見通しをつけられて、きめていただきたいと思うのであります。  昔、一兆円予算ということがありました。この一兆円というワクがどうしてきまったのか、ほとんどこれは合理的説明をつけなかったと思うのでありまするが、ぜひ一つこの予算のワクについては科学的な検討を遂げられて、この次に予算を御提案になるときには、十分にその根拠を御説明下さるようにお願いを申し上げたいと思うのでございます。この点についての大蔵大臣の御感想はあとでお述べを願いたいと思いまするが、同時に、参議院自由民主党は、余裕財源があるならば——いや、そうではなくて、むしろ積極的にも、中小企業対策の一環として、事業税及び法人税の減税を強く主張いたしておりますので、この点についての一つお考えを承わらしていただきたいと思います。同時に、自由民主党が党議できめておる、地方税、地方交付税の一・五増加の点について、一つ答弁を願いたいと思います。
  73. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 今の御質問の点は、三つほどあったかと、私思います。  一つは、来年の予算基本的な考え方でありますが、これは先般基本構想として発表いたしておきました。これで十分御了承願えると思います。  それからもう一つは、物の需要といいますか需給といいますか、あるいは国際収支と予算との関係という点があるわけでございますが、これはもう今日の事情を顧みますれば、きわめて明白であります。消費が盛んでありますれば、どうしてもこれは投資景気になる。これがだんだんとまた行き過ぎれば、輸入の増大になる。そうして、消費のうちで一番やはり大きな消費は国がやる。そうすると、国の予算というものが、国際収支との関係でいかに深い関係があるかということは、もう申すまでもありません。これは十分注意いたして、今後考えていく。来年度予算も、やはりその点が中心になって考えられるわけであります。  それからいま一つ、中小企業とも関連をして、事業税等についてどういう考えをとるかということでありまするが、これは来年度の予算の編成の具体的な事柄に関連をいたしますので、今私ここで述べる段階にありません。私が何もこの来年度の予算について述べるのをきらいだとか好きだとかいう、そんな問題ではないのです。ほんとうをいうと、時期至ればきわめて明白に、堂々と、こうするのだということを実は待っておるのですが、しかし、まだその段階にまで今の段階は行っておらない。今後いろいろと考えた上で、そういうことがきまるわけです。きまったならば、正確に御報告申し上げます。(「交付税はどうです」と呼ぶ者あり)
  74. 迫水久常

    ○迫水久常君 それでは、私の時間も参りましたので、大蔵大臣に対して、来年度の予算編成の上でなさるときに考えていただきたい問題を二つ申し上げまして、私の質問を終ります。  その第一点は、中小企業の対策の一環としての考え方でありまするが、来年はだいぶ予算も余るようです。大蔵大臣は、その一部をたな上げをしようとお考えになっているということも聞きましたが、私どもは、それを減税に差し向くべしということを主張いたしておるのでありまするけれども、もしできることならば、中小企業の対策の一環として、中小企業が苦しんでおりまする担保の不足ということを緩和するために、一定の基金を作って、信用保証の機関を創設をしていただくことを考えていただきたい。  それが一つの希望であると同時に、もう一つは、輸出振興の問題に関連をいたしまして、現在の状況においては、いかにも日本商品の海外に対する宣伝、あるいは世界市場の状況に関する正確な情報の迅速なる収集ということについて、非常に大きなる欠点がある。これを何とかうまくやるならば、日本の輸出というものはもっとすみやかなる伸展を遂げ得ると考えられるのでありまして、下手な補助金というようなものを出すよりも、日本商品の宣伝あるいは正確なる情報の収集ということに、政府の予算上の支出をされたならば、きわめて有効ではないかと、こう思うのであります。  この二点についてお考えおきを願いたいと思います。私、そのほかまだ御質問をしたい点がございまするけれども、時間もございまするので、これをもって私の質問を終ります。
  75. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) この機会に一つ基本的な考え方を明らかにしておきます。私は、今後の財政経済の施策の一つ方向として、大企業を頂点とする部門と、それから他面中小企業、それと農業部門、これの間の格差を是正をしていくというのが、大きな一つのポイントになるだろうと思っております。そういう意味におきましても、中小企業というものについては、今後格段な、むしろ単に金融をどうするということ以上に、中小企業が当然受くべき取扱いといいますか、あるいは姿というものを、今後出していかなくちゃならぬだろうと、こういうふうに考えております。そういう意味におきましても、来年度いろいろと中小企業については施策をせなくてはならぬと思います。今お話がありました信用保証制度、これは今日保険制度もありまするが、いろいろとこれが幾つも幾つもあっていいか、そういういろいろな点は考えて一つにした方がいいかもしれません。そういう点は考えてみなければいけませんが、そういう点を強化するということは考えております。  それから輸出について宣伝が不十分じゃないか、こういう点も、私も海外を歩いてみてそういうふうに思いますが、同時にまた、宣伝の仕方も非常に下手だ。必ずしも金を使わないということではありませんが、使い方も下手な点があるようです。これは、特に民間等においてはそういう点がある。これは、官民通じて、輸出をうまくやるためにどういうふうに宣伝すればいいか、これは十分検討を加えまして、いい案ができれば、予算的にも考えてよかろうと私は考えております。     —————————————
  76. 森八三一

    ○森八三一君 私は、当面する内政問題の二つ三つについて、お伺いをいたしたいと思うのです。  その第一は、地方交付税の問題であります。このことにつきましては、前国会におきまして、地方団体が非常に財政的に困難をしておるために、その財源等につきましても、政府としまして格別の施策も講じていらっしゃる。そのときに、たまたま一千億円の減税というような問題も起きまして、三税の基礎に政府の措置によって相当の狂いが起きてくるというような問題等、いろいろの関連からいたしまして、地方交付税の税率二六%を二八にしろとか、いろいろな議論がありまして、最終的に、両院の委員会等で検討の結果、明年度から二七%五、すなわち現行の税率に比べまして一・五%を上昇せしめるということがおおむね理解せられまして、当時の地方自治庁長官も、明年度におきましては、このことはどういうようなことがあろうとも実現をするということを、明確に委員会において発言をされております。その当時担当の大臣の御意見などでは、まだ必ずしもそれは十分なものではないというようなことなどからいたしまして、当時の池田大蔵大臣の御出席もいただきまして、財政当局としての御意見はというようなことまで論議をせられました結果として、財政当局、池田大蔵大臣も、多少不承々々ではあったかと思いますが、当時の国会の情勢、世論の情勢等にかんがみられまして、明年度におきましてはこれを実現するというようなことを明確に答弁をされております。さらに与党の自民党におきましても、伝え聞くところでは、党の方針としてこれを確認せられておるというようなことでありまして、私どもは、明年度においてこのことが必ず実現される、これは政治的な一つの約束であると了解もし、理解もし、安心を実はしておったのであります。  ところが、新聞紙の報道でありますので、あるいはその正否を確言するわけには参りませんが、この臨時国会の会期中において、衆議院の予算委員会でありますか、この問題の質疑が行われたときに、大蔵大臣の御答弁は、必ずしも前国会で明確に約束せられておることが実現するんだというように、明確な御答弁がなかったように、報道をされておるのであります。そういうようなことなどからいたしまして、私も、近ごろ地方団体の方から、この実現を期すべしというような陳情だの、いろいろな問題が巻き起ってきている。総理のおっしゃいますように三悪の追放ということも非常に大切なことで、どうしてもこれは実現しなければならぬことでございますが、政治的にも一番知っていることに対して、陳情だ何だということで文書を出したり、人がやってきたり、そうして忙しいときに応接するというようなことも、これはなるべくやめていくようにした方がいいと私は思う。そういたしますると、この問題は明確に、明年度は実現すると、当然のことなんですが、はっきりしていただければ、地方団体等も旅費を使ったり、いろいろな策動がましいことをやめてしまうということで、明確になると思うのでございます。これはもう端的に、一つ総理の御所信を伺っておきたいと思います。
  77. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 私からお答えします。  私の予算委員会における言葉も引用されたのでありますが、私はこういうふうに思っております。これは来年度予算については、今どこの部門をこうするというふうにはさまっておらないのです。大蔵大臣として、この部門だけまずやってやろう、そういうようなことは、とうていやれるものではないので、三十三年度の予算の全体の関係においてすべてのものが処理されていくのであって、みんな公平に扱われる。そういう意味において、今そのことについて申し上げる段階ではない。かように思っております。
  78. 森八三一

    ○森八三一君 前国会におけるいきさつは、その当時大臣は大臣でなかったのですから、そういういきさつを承知ないかと思いますが、私どもが担当の委員会におきまして論議いたしましたその経過というものは、明年度の財政上の都合がどうあろうとも、こうあろうとも、このことは必ず実現をいたします、こういう御答弁をちょうだいしておるので、今、明年度の全体の割り振りを考えて、これを白紙に戻して考えるというようなことは、これは政治的に私は非常に不信なことだと思うのです。担当大臣もはっきりおっしゃっておる。大蔵大臣も明確にされておる。そうして内閣を組織している党も、その総会において決定をしておる。そういうような段階を経ている限り、国民は、それが次の国会において実現をする、予算的にも確定をするということは、これは約束として受け取っているのですそれを、今、明年度の予算のことは明年度のことだから、その歳入なりそういうものを考えて、公平に配分するんだというような発言では、これは国民は納得しないと思う。そこに政治の不信が生まれてくると思うのです。これはもっと明確に……。その答弁に私は満足いたしません。  これは総理、どうお考えになりますか。党の総裁としても、これは明確にしてもらわなければ、私はまた、こんな答弁では、地方団体は陳情だの、上京してくる。これは非常に私は、三悪の追放と同じ意味において、いかぬことだと思うのです。きまったことは、そういうような策動がましいことはやめてもらう。民主政治ですから、民意のあるところを上にあげてくるいうことは、拒否いたしません。拒否いたしませんが、きまりきったことについて、そういう行動をとらしめるということは、私は政治としては満足すべき姿のものでない、こう思いますので、大蔵大臣は財政担当の大臣として、割り振り上、全体の歳入その他を考えて考えるということであるといたしましても、全体を総括せられる総理としては、これは明確にしてもらわぬと困ると思います。いかがでございましょうか。
  79. 岸信介

    国務大臣岸信介君) すでにわが党にしても、この問題に関しまして意見を決定いたして、発表をいたしております。国会の議決、従来の何に対しましては、十分これを尊重して考えなければならぬことは、言うを待ちません。ただ、大蔵大臣の申しておりますように、予算というものを、一つ一つこれはきまったんだ、これはきまったんだというような扱い方はせずして、全体を有機的な関係において最後の決定をするという意味において、大蔵大臣が申しておるわけでありまして、従来の沿革等のいきさつ等につきましても、また党の関係におきましても、十分これらは尊重して考えることは当然であります。
  80. 森八三一

    ○森八三一君 大体総理お話了解はいたしますが、最後に、私は別にだめを押すつもりではありませんが、最後のただいまの御答弁は、明年度の予算においては二七・五にする、そうしてそれに要する法律的措置は講ずるというものであると私は了解をいたしまして、ただいまの御答弁を受け取っておきたいと思いますが、もし私の了解に違っておるということがございますならば、あらためて御説明をいただきたいと思います。私はそう受け取りますし、そういうふうに了解いたします。もし間違っておりますれば、御訂正をいただきます。
  81. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 大蔵大臣の申しておりますことも、われわれの方におきましても、今最後の決定をするということではなくて、趣旨は十分尊重して全体として有機的に決定する、最後の決定をする、こういうことでありまして、御趣旨の点につきましては十分に考慮をいたします。
  82. 森八三一

    ○森八三一君 くどいようですけれども、もう少し明確にしていただきたいと思うのです。と申し上げますのは、前の国会では、池田大蔵大臣も御出席になり、田中自治庁長官も御出席になり、そうしてそれはあなた方担当大臣としての御意見でございますか、内閣の御意見でございますか、ということまで、実は心配であったので、各同僚委員の諸君から突きとめておる。それに対して、これはもう閣議でそういうことにいたしておりますので、いかなることがございましても、これは実現をいたします。その当時はやはり岸内閣でありますので、総理は変っておりません。そういたしますると今の御答弁では、私は大体気持の上では了解いたします。別に不審なことは考えませんでございますが、表現がそういう表現でありますと、また新聞報道なんかを見て、県知事さんだの、あるいは町村長さんだのが、ぞろぞろやってくると、うるさくてかなわない。また政治としてはそういうことはいけないと思いますので、はっきりおっしゃっていただきたいのでありますが、いかがでございましょうか。
  83. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 今、私が申し上げたことで、趣旨は、はっきりしておると思います。
  84. 森八三一

    ○森八三一君 私の質問の要旨と、それから最後に総理がはっきりしておると思いますというこのいきさつは、前国会からのことにかんがみまして、明年度においては必要な法律的措置、それから予算的措置が講ぜられるというように私は了解いたしまして、このことは一応打ち切っておきます。  その次に、私は内外ともに平和であり、穏やかであることを念願してやみません。これは私のみではありません。国民全体がそういうことを常に期待をし、努力いたしておるわけであります。  総理、もうお帰りになってけっこうです。その一言だけ聞けばもうよろしゅうございます。  そこで、そういうように非常に穏やかであることをみんな希望もしておるし、みんながそれのために努力しておるということでございますが、しかし、いつ何時、どういうような不測の騒擾が巻き起らないとも、混乱が起らないとも、これは保証できない。そこで、そういうような国内に不祥事、混乱が起きた場合に、一番心配される問題は、私は経済上の問題だろうと思います。その経済上の問題の先端をいくのが金融上の問題だと思います。かつて大正十二年ですか、東京を中心として関東に大震災が起き、こういうような混乱が起きた。その当時、日本の国力というものは相当充実しておった。けれども、非常な混乱が予想されましたので、金融上の措置として支払い制限、モラトリアムが実施されたということは、私どもの記憶に新しいところであります。今私どもはそういうような外から来る混乱があるとかないとかということを予期いたしません。けれども天災地変なんてものは、これは起きるかもわからぬことでございまするし、いつ何どきそういう事態が起きるかもわからぬ。そういうときに、明治憲法のときには緊急勅令という手段があったんですから、人心の安定なり、経済上の混乱を防ぐために、政府は機敏な処置が行政上とれたんです。今の憲法では、そういう問題に取り組んでいく措置が私はできぬと思う。これは国会を召集して、要する法律を議決しなければ対処していく手段がないのではないかと思うのです。大蔵大臣、そういうことを十分当局大臣として御心配になっておると思うんですが、そういう場合に取り組んでいく、国民の不安を除去し、日本の経済の混乱を除去していくということのためにとるべき措置は、どういうふうにお考えになっておるのかを、この際に承わっておきたいと思います。
  85. 林修三

    政府委員(林修三君) 御承知のように、現在の憲法では、旧憲法のような緊急勅令という制度はございません。結局緊急にいろいろな施策をする必要がある場合には、現在におきましては国会を召集するか、あるいは衆議院が解散の場合には、参議院の緊急集会を開いて、緊急の施策をやるということしか方法がないわけでございます。で、御承知のように金融問題につきましては、外国為替管理につきましては、外国為替及び貿易管理法に多少緊急事態に対処する規定がございます。しかし、国内の金融問題につきましては、現在何も規定がないわけでございますから、やはり国会を開いてやるという以外に方法はございません。
  86. 森八三一

    ○森八三一君 今法制局長官お話しのように、非常事態に取り組んで経済上の混乱を未然に防止していくというような緊急措置がとれない。それは国会を召集するなんていとまは私はないと思うんです。また、そういう手続やってたんじゃ間に合わぬということになるんですが、担当大臣として、これはどういうふうにされるつもりなのか。そういうことは当分ない、ないからこのままでいいんだ、こういうようにお考えになっておるのか。私は非常に心配なことと思うんですが、いかがなものでしょうか。何か御研究なさって……。
  87. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) まことにごもっともなことでございして、そういう際にどういうふうにすればいいか、今まで幸いにそういうことがなくて済みましたが、今後これをどういうふうにするかということを検討してみたいと考えております。
  88. 森八三一

    ○森八三一君 私はまあ、今まで占領中、二十八年までは向う様がおったんですから、向う様の威令によって緊急措置はできたんで、それは好ましい姿ではなかったが、方法はあったと、独立してからはその手段がなくなったんで、今日までぼんやりしていたことは怠慢のように、私、実は思うんです。まあ、幸いにして天災地変もなしに無事にこれたんだからよかったんですけれども、これがもし関東の大震災のような問題がこの間に巻き起ったとすれば、これは非常に大きな失政を生んでおったと私は思います。つきましては、これは今死んだ子の年を数えてもいきませんので、早急にこの問題は処理をされるという手続を運ばれたいという希望を申し上げておきます。  その次に、これも内政上の問題ですが、通産大臣に一つお伺いしたい。それは今この国会は、一番中心課題が例の中小企業者の団体法の問題にあるんですが、その問題をめぐってまた一番論点の中心になっておるのは、例の五十五条の団体の強制加入の問題であると思います。そこで、私は不勉強でよくわかりませんが、通産大臣、一体憲法の自由の権利というものと、それからその自由の権利というものは公共の福祉に反してはならぬという関係、公共の福祉ということを一体どうお考えになっておるのか。ああいう原案をお出しになるについては、十分御勉強なすって規定をせられたと思うんです。公共の福祉とはどういうことなんだか、一つ通産大臣としての御見解を承わりたいと思います。
  89. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 公共の福祉というのは、一般、大ぜいの人の福祉という問題であると思います。加入命令を出します際には、ある団体の大部分の人がわずかな人の、員外者のために、破産に瀕するという第九条の不況要件に該当する場合に、そのわずかな員外者のために一般の組合員が破産に瀕する、あるいは半分以上が倒産に瀕する、こういう場合であります。これは十分公共の福祉に反するものというふうに考えていいと思います。
  90. 森八三一

    ○森八三一君 特定の団体の組織員に対して、これを公共という観念に当てはめてよいというふうに御答弁になったんですがこれは法制局長官どうですか。特定団体の組織員の利益を守ることが、公共の観念に通ずるということは、あまり飛躍し過ぎてしまって、もしそうだとすれば、これは労働組合でも何でもその組合の利益を守るために強制加入だとかいろいろのことがずうっと発展してくるんで、これは憲法の解釈上重要な問題ですから、はっきり一つ御見解を承わりたい。
  91. 林修三

    政府委員(林修三君) 今問題の中小企業団体法案のあの強制加入のところには、御承知のようにいろいろ条件が書いてあります。結局中小企業のある分野におきまして非常な過当競争が行われる、しかもそれは一部の員外者による、それが入らない者によって非常に過当競争が激化して業界が危殆に瀕する、さらに国民経済に重大なる影響を及ぼす、そういう要件がある場合に強制加入命令が出ることになっておりまして、国民経済全体とのつながりを考えた上において運用する、こういう建前になっております。公共の福祉とのつながりがそういう面において考えられる、かように考えます。
  92. 森八三一

    ○森八三一君 過当の競争が起きて、業者問にいろいろな問題が起きるという結果として、公共の福祉を阻害するとかいうことは私も理解はできます。できますが、そのために基本的な人権を剥奪しなければそういう措置が講ぜられないのか、まだほかに考える道があるのではないか。ほかに考え得る道をとらずして、基本的人権を剥奪することを考えていくというのは、私は行き過ぎではないかと、こう考えますが、通産大臣どう考えますか。
  93. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) あの加入命令を出します場合には、あらゆる方法を尽して、もうこれ以外の方法はないという場合でなければ出しません。
  94. 森八三一

    ○森八三一君 強制加入をせしめるという趣旨は、過当競争によってその組織員間に不要な摩擦が起きたり何かして、その結果が公共の福祉に反するということをお考えになっている。過当競争の防止ができれば、基本的な人権を剥奪する必要はないんじゃないんですか。過当競争を防ぐことが他の方法を講じてもできないということではありますまい。別にとるべき手段は私はあると思う。その手段を講ぜずして、すぐそういうことに発展していくのは危険があると思うが、それはいかがですか。ほかにいい方法はございませんか。
  95. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) ほかにない場合において加入命令を出すのでありまして、ほかに方法があれば、これは私は加入命令を出すべきではないと思います。
  96. 森八三一

    ○森八三一君 ほかにいい方法があれば、加入命令を出すべきでないということでございますれば、ほかにいい方法があれば、強制加入という趣旨はおやめになりますか、はっきりしていただきたい。
  97. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) そういう、ほかにいい方法がない場合が予想されます。従ってその場合には、加入命令をやらなければならぬという意味で、加入命令はどうしても必要だと思います。
  98. 森八三一

    ○森八三一君 私の質問は違うんです。いい方法があれば、その手段はおとりになりませんかと聞いておるんです。いい方法があるかないかはあとの問題です。いい方法があれば、過当競争を防止し得る他にいい方法があれば、強制加入の手段はおとりになりませんか、当然でしょうこれは。
  99. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) ほかのいい方法があれば、加入命令は出しません。しかし、ほかにいい方法がない場合において加入命令を出さなければならぬ、そういう場合が予想されますから、あの加入命令の条項というのは必要だと思います。
  100. 森八三一

    ○森八三一君 まだ私の質問の趣旨をはき違えていらっしゃるのです。いい方法があれば、ああいう手段はおとりになりませんかということなんです。あるかないかというのは、これからの論議なんです。いい方法があれば、あの手段はおとりになりませんか。他に目的を達するいい方法があっても、あの手段をとるということではないでしょう。だから私の質問通り他にいい方法があれば、目的を達するために、あの基本的人権を侵害するような手段をとらなくてもいいのではございませんか。
  101. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) そういう方法があれば、これはとらなくてもいいわけです。
  102. 森八三一

    ○森八三一君 そういたしますると、はっきりして参りました。他にいい方法があれば、つまり過当競争を防止して組織員間の不測の損害を生ぜしめず、公共の福祉にも反しないということの確認せらるる方法があれば、強制加入の手段は講じなくてもよろしい、これは明白になりました。そういたしますると、現在の調整組合法にございますように、アウト・サイダーが過当な競争を挑発しておる、それが公共の福祉に反するという危険を招来する場合には、その部分についてそのことに服する命令を発すればそれで目的は達するのじゃありませんか、それでもいけませんか。どうしていけないか、それを説明してほしい。
  103. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 現在規制命令と同様なことはやっております。これでは非常に実際問題としてアウト・サイダーの規制ができない。むしろ、その自主的の組合であります組合に入ってもらってやるのが原則でありますし、それは結局において、規制命令よりもその方が民主的な方法であり、同様な効果があるわけであります。その点につきましては、むしろ加入命令の方がよりよい手段だと私は考えております。
  104. 森八三一

    ○森八三一君 どうもおかしいのですが、加入命令がいい、その基本的な人権を剥奪して目的を達することがいいのだという観念がおかしいのです。同じ目的を達し効果を上げる方法があって、しかもそれが基本的人権の剥奪なんというような疑義を生じないことでありますなれば、その道を選ぶことが私は正義だと思うのです。ないとおっしゃるなれば、私は今申し上げましたように方法はあるのだ、組合員になっても規制命令を出したのを守らん、守られなければ同じじゃありませんか。問題はその規制命令を守ることにあるのです。組合員たる資格にあるのではないのです。守ることにある、そうでしょう。だとすれば現在の調整組合法にあるごとき強制命令を出すことによって、過当競争は防止し得るのです。それができないというのはおかしいじゃありませんか。組合員にしたって同じことですよ、それは。しかも組合員にすることによって、その組合に加入前に累積しておった負債等でもありますれば、自分の関与せざる時代における負債、財的な責任まで組合員たる資格を得るということは負わなければならぬという義務が生ずるのです。これは私は非常に問題だと思います。しかも民主的、民主的とおっしゃるが、加入、脱退自由の原則ということがこれが組合の原則、民主的の原則です。その原則を破るというところに、問題があるのです。しかし、過当競争によりまして、大衆の福利を阻害するわけにはゆきませんから、そこで問題が起きてくるが、その道は調整することによって私は達成できると思うのです。ですからあなたのおっしゃったように、他にいい方法があれば、憲法上の疑義を生ずるような手段はとらなくてもようございますという御答弁に私はよるべきであって、それを考えて参りますれば、どうしても私は調整命令を出すことによって目的を達することができる。もし現在の出してある法律の中に調整命令を出すという規定がなければ、それを入れることこそが、私は正しい方法だと思うのです。それを省いておるから、現在の原案にそういう道がないとおっしゃるのが不可解なので、原案にそれを入れればいいのです。そういう修正を政府の方でやれば目的を達するのです。現在の法律にはそういう規定がないから、あの法律ではできないとおっしゃるかもしれないが、だったら法律が不備なのだから、それをお直しになれば目的を達することができる。
  105. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 規制命令と加入命令と私は結局同じあれで、自由の原則を阻害されてはならぬ、しかし、仰せのように私は規制命令の方が加入命令よりもよいとは思っておりません。加入命令の方がより民主的で、組合員に入ってもらって、そうしてお互いやっていくという方が、これはよりいいものだと私は思います。
  106. 森八三一

    ○森八三一君 今の解釈は実はおかしいので、組合員に強制加入をせしめることの方が民主的であって、事業の部分について調整命令を出すことが非民主的とおっしゃるのは逆なんで、それは組合員たるの資格を得るということは別ですよ。しかも、組合の原則は、あくまでも加入、脱退自由の原則に立っているのです。それに例外規定を作るのですから、その例外規定を作るときには、何のために例外規定を作るか、それは過当競争によって業者間にいろいろな問題を起す、それが及んで公共の福祉を阻害する、こういうことなんですから、その過当競争を防止すればいいのです。その過当競争を防止するということは、組合員としての資格を与えるということじゃないのです。その事業の部分について規制することが過当競争を防止するゆえんなんです。これくらいのことは三つ子でもわかりそうですがね。一ぺん出した原案だから、どうしても固執するのはやむを得ませんが、あなたが良心的におっしゃった他にいい方法があれば、強制加入命令を撤回するのにやぶさかでありませんと、こうおっしゃいますが、ほんとうの御意見だと思う。そこでいい方法といえば、こういう方法がございますよ。それが現在の法律にはそういう規定がない、それなら入れたらどうかという御相談を申し上げているのであります。そういう御解釈になるといいのですが、あまりこだわらずにあっさり答えて下さい。
  107. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) あっさり考えても、私は加入命令で組合に入ってもらって、そうして自己の主張をいろいろ述べてもらって、自主的に規制をやるということが、よりいい方法だと思っております。
  108. 森八三一

    ○森八三一君 そうしますと、私があとで申し上げましたように、加入前にその組合で負った債務の分担までさせるということはいいことですか。自分が組合員としてその経営に関与しておったときに生じた赤字の分担をするということは、これは組合員としても当然の私は責任だと思うのです。しかし、自分が関与していない、しかも強制的に加入せしめるということによって、組合員たる資格を得たために、全然知らぬときの借金の負担まで背負うということが正しいことですか、そうお考えですか。
  109. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 現在の法案でいきますと、認証という制度もありますし、組合の前の経費を分担するということは、これは必ずしも必要ではありませんが、しかし調整に必要な、規制に必要な経費その他は、当然これは外部におられても負担していただかなければならぬ問題でありますから、私は先ほど来申し上げておりますように、あなたのおっしゃる方法の方がいい方法だとは、一つも思わないのです。
  110. 森八三一

    ○森八三一君 それはおかしいじゃありませんか、加入前に生じておった債務について加入後に負担する必要がない、その調整に要するといいますか、その事務に要する費用の負担はあるけれども、組合員たるの資格に関連した負担というものはないということはおかしいですよ。それはありますよ、当然なければおかしい。だからあなたがおっしゃるように、認証という手段があって、どうしてもいやというやつは加入せんでもいいという道があります。しかし、新しく業を始める者はどうなります。これは認証の手段はありませんよ。発足するときに認証の手段はあるけれども、新規加入の人は認証の手段はありません。そうすると、前の負債を背負うのをいやだと言う者は、新しく業を始めることができない。営業の自由をそこで奪うのですこれはおかしいですよ。もし、あなたが非出資を認めておると、出資をせんでもいいという道を開いておるとおっしゃるかもしらぬ。それによって持ち分上の負担はないと、こう逃げられるかもしれませんが、そうではない。それは次の総会で会費の負担についてきめられるというと、やはり負担は起きてくるのです。だからいやおうなしに、加入前に生じておる欠損についての分担の責任を、組合員たる資格を得ることによってこれは生ずるのです。調整命令だけでやればそういうことはありません。私はどういう観点から考えても、加入前に生じている債務の分担を強制的に命ずるということは、これは重大なものだと思う。そういう観点からいきましても、私は目的を達し得るといたしますれば、憲法上疑義を生ずる、あるいはそういうような財産上の問題を派生するというようなあえて強硬な手段をとらなくても、加入、脱退自由の原則に立つ真の民主的方法によって問題の解明をすべきである、こう思うのであります。これはいつまでやっても、大臣の頭の中はかちかちに固まってしまって、意見を聞こうとはお考えになってはおらぬようでありますから、時間の関係もありますから、私はやめておきますが、よくこれは御反省いただきたい。そんなものじゃ私はないと思います。(「議事進行、定足数足らぬよ」と呼ぶ者あり)
  111. 泉山三六

    委員長泉山三六君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  112. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 速記を始めて下さい。  森君の質疑は、あと五分間の時間の余裕がございますが、本日はこれにて都合上質疑を終了しまして、明日は午前十時から委員会を開きます。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時三十四分散会     ————————————