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1957-12-19 第27回国会 参議院 法務委員会 閉会後第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年十二月十九日(木曜日)    午前十時三十八分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     青山 正一君    理事            大川 光三君            一松 定吉君            棚橋 小虎君            宮城タマヨ君    委員            雨森 常夫君            大谷 瑩潤君            赤松 常子君            亀田 得治君            小酒井義男君            辻  武壽君   国務大臣    法 務 大 臣 唐澤 俊樹君   事務局側    常任委員会専門    員       西村 高兄君   説明員    法務政務次官  横川 信夫君    法務大臣官房経    理部長     大沢 一郎君    法務省矯正局長 渡部 善信君    法務省保護局長 福原 忠男君    大蔵政務次官  白井  勇君    大蔵省主計局主    計官      上林 英男君    最高裁判所事務    総長      五鬼上堅磐君    最高裁判所事務    総局人事局長  鈴木 忠一君    最高裁判所事務    総局経理局長  岸上 康夫君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○審査報告書に関する件 ○派遣委員報告検察及び裁判運営等に関する調査  の件  (報告書に関する件)  (昭和三十三年度法務省関係予算に  関する件)  (昭和三十三年度裁判所関係予算に  関する件)  (昭和三十三年度法務省並びに裁判  所所管営繕関係予算について内閣に  対する申入れに関する件)   —————————————
  2. 青山正一

    委員長青山正一君) ただいまから開会いたします。  議事の都合によりまして、初めに未了報告書の件についてお諮りいたします。閉会中継続審査及び調査になっておりました裁判所法等の一部を改正する法律案予備審査)、恩赦法の一部を改正する法律案刑法等の一部を改正する法律案幼児誘拐等処罰法案及び検察及び裁判運営等に関する調査、以上、五件につきましては、いずれも審査及び調査を終了するに至っておりませんので、未了の旨の報告書を提出することにいたしたいと存じます。つきましては、報告書は、いずれも委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 青山正一

    委員長青山正一君) それでは、さように取り計らうことに決定いたしました。   —————————————
  4. 青山正一

    委員長青山正一君) 次に、派遣委員報告書を聴取いたします。去る十二月三日、多数委員の方の御参加を得まして、裁判所法等の一部を改正する法律案につきまして大阪において聴聞会を開きましたほか、矯正施設改善あるいは売春防止法の施行連借状況調査のため、委員派遣を行なっておりますので、それぞれ報告をいたしたいと存じます。参加されました委員の方は、第一班一松君、棚橋君、小酒井君、青山、第二班大川君、大谷君、亀田君、辻君の皆様でございますが、聴聞会関係は私から、矯正施設改善営繕関係小酒井君から、売春関係名古屋地区棚橋君、京都地区大川君からそれぞれ報告することにいたしたいと存じますので、この点御了承いただきたいと存じます。  それでは、これから私が第一班を代表いたしまして最高裁機構改革問題を含む総括的な報告をいたしたいと存じます。  本班の派遣委員は、一松棚橋小酒井の各委員に私の四名、随行員、は西村専門員田向調査員今井調査主事一行七名で、去る十二月三日より五日まで四日間、大阪岐阜愛知の三県にまたがり、大阪高等裁判所大阪府庁笠松刑務所愛知県庁名古屋刑務所名古屋高等裁判所の六庁を回って、最高裁機構改準問題、売春防止法運用問題、法務関係施設の三項目について調査を行なって参りました。  まず第一に、最高裁機構改革問題につきましては、大阪高裁において第二班と合同して調査会を開催し、学界、法曹界、財界、労働界、新聞界等より選定いたしました八名の参考人より終日にわたって意見を聴取いたしました。また第一班のみ、名古屋高裁において、裁判所検察庁、弁護士会関係者十七名出席のもとに懇談会を開き、意見を聴取いたしましたが、名古屋では、一松委員憲法調査会出席せられる余儀ない御都合のため、大川委員にかわって御参加願い、また、地元の草葉隆圓議員には御多忙中わざわざ参列下さったことを特に申し添えておきます。  次に、売春防止法の問題については、大阪府及び愛知県の各当局から説明を聴取し、かつ、大阪松島赤線地区名古屋は名楽園赤線地区において、それぞれ業者代表より転廃業に関する実情を聞き、その実態を視察して参りました。  第三に、法務関係施設については、笠松刑務所及び名古屋刑務所現況を視察いたし、いろいろ実情を聴取いたして参ったのでありますが、名古屋刑務所については、名古屋市及び市議会側から刑務所移転の陳情を受けました。  以下引き続いて、売春防止法の問題については棚橋委員に、法務関係施設については小酒井委員に、それぞれ概要を報告していただきたいと存じます。  なお、詳細の報告は、現地提出の資料を付し、調査室に備えつけておきますから、それについてごらん願いたいと存じます。  それから、最高裁機構改革問題に関する調査要綱並びに参考人意見要旨等は、別にこれを取りまとめ、本日の速記録に掲載いたしたいと存じますから、御了承願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 青山正一

    委員長青山正一君) 御異議ないと認めます。  それでは最後に、今般の調査に当りましては、法務省最高裁大阪高裁より特に甚大な御協力をわずらわしたことを申し添え、感謝の意を表したいと存じます。  それから、名古屋矯正管区長佐藤備六郎君には、笠松及び名古屋においていろいろお世話をこうむったのでありますが、御不幸にも去る十一日急逝せられました。ここに、一行を代表いたしまして、つつしんで哀悼の意を表したいと存じます。  さて、最高裁機構改革問題の大阪における調査会は、公聴会に準じた形式によりまして石坂高裁長官宮本検事長、柴田弁護士会長等傍聴されまして、午前午後にわたりまして、参考人八名、すなわち、大阪市立大学教授黒田了一君、総評大阪地評事務局長怙佐義行君、弁護士吉川六二郎君、大阪地裁所長稲田得三君、京都大学教授平場安治君、朝日新聞大阪本社論説委員鷹津丸郎君、大阪商工会議所議員浅田敏章君、大阪地検検事正竹原精太郎君から、最高裁の性格、違憲審査権内容上告理由拡大最高裁判事増員減員ワンベンチ論国民審査制少数意見調査官秘書官の整理、最高裁判事待遇改善等一般的問題点最高裁法廷制度、小法廷判決に対する異議申立制度裁判官諮問審議会等政府原案に関する問題点、その他、第一審の強化との関連における問題点等について、それぞれ意見を聴取し、これを録音におさめて参りました。  そこで、参考人の主要な意見を概観いたしますと、第一に、最高裁は、司法権最高機関としての使命を果すため、違憲訴訟以外の争訟についても終審裁判所となるべきである、従って、上告理由は、これを判決影響を及ぼすべき法令違反の線まで拡大するとともに、最高裁判事も三十名程度増員するのがよろしいという意見が案外に多かったのであります。減員論を述べたのは、大阪地裁所長稲田参考人一人にとどまりました。そこで、上告理由拡大し、裁判官増員する場合、当然大法廷構成等が問題になってくるわけでありますが、この点になると、参考人意見区々に分れ、あるいは三十名の最高裁判事をもって五人構成の各小法廷を置き、その中から七人なり九人を選んで大法廷事件を処理させるのがよいとする案、あるいは、すべての最高裁判事に平等に違憲審査権を与えることを建前として、違憲審査にあずからない判事を撒くことに対する非難を避けつつ、数個の小合議体に分れて事件を分担処理するのがよいとする案等、いろいろであります。  第二に、ワンベンチ論については、それが憲法上の要請であるという論者は一人もありませんでしたが、違憲審査についてはワンベンチでするのが望ましいとする見解にほとんど一致しております。要するに、裁判官増員し、ワンフルベンチによらないで違憲審査をすればよいというのが大方の傾向であります。  第三に、民刑事上告理由同一にすべきかどうかの点については、理由にはいろいろありましたが、結局、同一にすることが望ましいが、現在の法体制のもとでは違うのもやむを得ないという結論が圧倒的であります。それから現行の小法廷最高裁ではないという説に対しては、これに賛同する参考人はなかったことをつけ加えておきます。  第四に、少数意見の表示を存続するかどうかという点については、賛否が対立して、おります。  第五に、調査官秘書官を整理すべきかどうかという点については、これも意見が分れますが、大体調在官だけは何らかの形でも存続する方がよいという意見に傾いております。  第六に、法律案最高裁法廷制度について、この小法廷が、最高裁に対しては下級裁高裁に対しては上級裁であることに大体異論はありませんが、同時にまた、小法廷件格がはっきりしない、特にその名称に至っては不適当であるとの意見が多く聞かれました。  第七に、小法廷判決に対する異議申し立て性質については、上訴、あるいは一種上告、あるいは一種特別上告等参考人の解釈は区々であります。そうして、かかる異議申立制度是非については、四審級になるという理由反対論と、一応最高裁法廷制度の設置を肯定することを前提として最高裁の終審的、要請に基く是認論とに分れております。  第八に、小法廷判決に一応確定力を認めることの是非については、異議申し立ての乱用を防ぐためやむを得ないという賛成意見と、異議理由ある場合複雑な結果を招くことや、最終審であり得硬い小法廷裁判に一応確定力を認めることを憲法上疑問とすることによる反対意見とがあります。それから法律案では、死列判決にのみ当然の執行停止を認めておりますが、これに対しては、他にも同様の停止を認めるべき場合があるのではないかという疑問や、また、小法廷裁判中間的性質からして、異議申し立てのあった場合には、一般的に裁判確定執行停止することがより合憲的であるという批判が提出されております。  それから第九に、法律案には大法廷から小法廷事件を逆送する規定がありますが、これについては、審理遅延を招くおそれがあるという反対もありました。  第十に、参審制陪審制採用については、時期両県論がほとんどを占めております。最後に、刑事控訴審の構造については、続審に改めるべきであるとの意見が相当強く出されております。  次に、名古屋高裁においては、高木高裁長官堀検事長大畑弁護士会長、外、裁判官検察官、弁護士等十七名出席され、羽田家裁所長深井地裁所長堀検事長熊沢検事正大畑弁護士会長広浜弁護士から意見が述べられましたが、時間の関係もあって、各人が調査項目の全般にわたって意見を披瀝する程度に参りませんでしたので、側々的にその主要なものについて触れておきます。  まず、裁判所側として羽田家裁所長から主として、違憲審査ワンベンチですることは憲法上の要請である、違憲審査に関する限りは十五人の裁判官は多過ぎるという陳述がありました。次に、熊沢検事正からは、主として、改正法律案の線に沿う支持意見が述べられましたが、同じ検察部内でも、堀検事長は、若干異なわ、改正法律案にはあえて反対ではないがとの前提のもとに、上告理由判決影響を及ぼすべき法令違反まで拡大し、最面裁判事を三十一名くらいに増大し、その全員違憲審査権を有することを建前として必ずしもワンベンチに拘泥せずに、交代制により九ないし十一名くらいの大法廷判事を選んで、これに違憲審査をさせることが事件迅速処理をはかるための適当な方策ではなかろうかとの意見を披瀝されました。両者とも参審制陪審制採用は時期尚早とし、控訴審の続審化については、事実上、続審的色彩を帯びている現状に照らし、続審にする必要はないという意見に一致しております。  次に、弁護士会側からは、上告理由拡大裁判官増員ワンベンチ論反対の主張を中心として改正法律案反対意見が述べられましたが、その内容は日弁連の対案の内容と同様でありますから、ここでは省略いたします。  以上、細部にわたる意見報告書に譲ることにいたしまして、大阪名古屋調査結果を通観いたしますと、調査項目の多くの問題点については、なお有力な意見の対立が目につくのであります。しかも、それが改正法律案の取扱いや、最高裁機構改革主眼点に関するだけに、当委員会としては、今後なお慎重に研究しなければならないと感じましたことを最後につけ加えまして、私の報告といた、します。  次に、棚橋委員から御報告願いたいと存じます。
  6. 棚橋小虎

    棚橋小虎君 それでは、売春防止関係調査結果を御報告いたします。  まず、大阪府においては、山村副知事外関係部課長ら十名の出席を得て、種々状況を聴取いたしました後、夜間松島新地実態を視察し、金沢組合長外業者代表六名と懇談して参ったのであります。  大阪府においては、昨年十一月婦人相談所を設置し、昭和三十二年より経営委託により婦人保護施設二カ所を設置し、婦人相談員大阪市十名、その他十一名を配置しており、今後なお、婦人保護施設一カ所、婦人相談員数名を増設する予定となっております。相談所活動状況は、数字的になりますので説明を省略いたします。  このほか、売春対策機関として本年四月より婦人保護対策協議会知事付属調査審議機関として発足し、九月より売春防止対策本部が設置せられ活動に入っておりますほか、近く啓蒙宣伝及び対策本部への協力機関として、売春対策推進委員を設置することになっております。  かように大阪府の売春防止体制は着々整備されておりますが、府下の売春地区は、赤、青線その他を含め五十二カ所、業者千五百七十五名、従業婦六千百六十四名を数え、潜在売春婦を入れると約一万八千余名を見込まれるにもかかわらず、業者転廃業状況は、法施行後、廃業十二件、休業十八件という微々たる現状であります。大阪市内代表的赤線地区飛田松島、港、住吉、今里の五地区でありますが、このうち転廃業に積極的であるのは松島新地ぐらいのものであって、飛田に至っては全くその動きもないということであります。  私どもが視察したのは、この最も積極的であるとされている松島新地でありますが、ここでは転業対策委員会を設け、早期転廃業従業婦全員解雇の二つの方針をうたっており、常業にも一応自粛のあとがうかがわれるのであります。しかし、この新地業者百九十五名の軽業希望を見ますと、旅館が最も多く約五〇%、次いで待合一六%、アルバイト料亭一三%、下宿九%、料理屋五%、その他となっておりますが、その前途は必ずしも明朗ならざるもろもろのデータをはらんでいるようであります。すなわち、業者の約半数自己資金不足のため、いまだに国庫補助を希望してむなしく下をこまねいております。従業婦の方も七百人のうち五百人は親や子持ちで、月々送金しなければならないという状態に置かれております。従ってまた、業者全員解雇の線を打ち出しているといっても、希望者には転業後の旅館住み込み女中料理屋待合住み込み仲居等に再雇用するという、牛は牛連れ式態度を捨て切れないのであります。また、直接私どもが見聞した範囲では、業者業者自己転廃業に苦慮することで精一ぱいのありさまで、実際は従業婦に対する積極的な相談もなく、従業婦従業婦で明日は明日まかせの態度で計画もなく、ぎりぎりまで商売することも仕方がないとしております。これが大方実情であります。ここに私ども関係当局の一そうの努力を要望しなければならないのでありますが、それについては、後にまとめて申し上げたいと存じます。  次に、愛知県においては、梅村民生部長小川衛生部長石田県警防犯部長外関係課長等六名出席のもとに種々懇談の後、夜間、名楽園新地実情を視察し、森下カフエー組合連合会長外業者代表五名と会ってきたのであります。  愛知県においては、本年一月婦人相談所を設置し、経世委託により婦人保護施設一カ所を設置し、婦人相談員県下に二十四名、うち名古屋市内に七名を配置しておりますが、これらの活動状況は、大阪府と同様数字的になりますので、省略いたします。  このほか、売春対策機関として、本年十月より売春対策本部売春対策推進委員を設置して活動に入っておりますが、対策本部では、十一月婦人保護取締り転業の三対策推進するため要綱を決定し、これに基き現在従業婦の一斉調査を実施中であります。  かように、愛知県においてはむしろ大阪府以上に法の運用を薄々進めておりますが、県下赤線地区は二十九カ所、その赤線業者六百九十九名、従業婦二千七百十五名、昨年十月より一年間の転廃業状況業者三十三名、従業婦六百七十名という、理想には至って遠い現状であります。もっとも愛知県の赤線業者は、岐阜、三重、静岡三県の赤線業者とともに性病予防東海連盟なる団体を結成し、全国に先がけて年内転業を声明し、売春企業の放棄、従業婦解雇、前借金の棒引の三原則を打ち出し、愛知県内傘下組合員六百九十四名のほとんど全部が年内転業確約書を提出したという目ざましい進展をみたのであります。その転業希望の内訳は、旅館が最も多く、次いで料理店飲食店下宿屋、喫茶店、カフエー等の順序になっております。連盟幹部諸君は、年内転業実現のため、非協力者に対する警察取締り強化転業許可面便宜操作転業資金融資あっせん従業婦更生資金援助等について強力な行政推進を要望しておりますが、これが関係当局との間に完全な了解がついていないためもありまして、最近に至って転廃業確約者の約七〇%が自信を失い、中には年内転廃業反対動きも出ているとのことであります。  以上、二業界実情を通観いたしますと、業界幹部の一部には、真に転廃業に熱意を持つ者もありますが、業者の大部分並びに従業婦のほとんど全部はあるいは去就に迷い、あるいは洞ケ峠をきめ込んで、最後の百まで常業を持続しょうとしているかに見えるのでありまして、このまま推移するときは、ついには必ず混乱を惹起して法の犠牲者を輩出し、あるいは売春の潜行を誘致し、法をして空文に化するに至るべきことが憂慮されるのであります。転盛業が渋滞している原因としては種々ありましょうが、そのおもなるものとして、第一に、転廃業が心理的、地域的、経済的、行政的諾条件に制約せられて容易でないこと、特に擬装転業の疑いを避けて完全に転業するためには多大の資金を要するが、みずからこれを調達する熱と力に乏しいこと、第二に、売春に関する反省が甘く、社会の必要悪として根絶不可能であるとの観念を捨て切れず、かつ、売春営業により高率の利益を搾取する夢からさめ切らないこと、この二点があげられると思いますから、これらの対症療法的な行政措置警察取締りを一そう強化していくことが肝心であろうかと考えます。  この点について、最近関係当局においては、新たな措置方針を定め、通牒を出したかに聞いているのでありますが、今後なお、十分対策を研究されることが望まれます。なお、私どもは、業者従業婦とが関係を切らないで一緒になっている状態が最も転廃業をおくらせている原因であると見ておりますので、この点に対する当局の特段の検討を望むのでありますが、さしあたっては、保護更生の諸施策を拡充強化し、二百もすみやかに従業婦を泥沼から解放してやることが急務であろうかと存じます。これをもって私の報告を終ります。
  7. 青山正一

    委員長青山正一君) 次に、大川委員から、京都売春関係について御報告を願います。
  8. 大川光三

    大川光三君 私から、第二班の現地調査の結果を御報告いたします。  第二班は、大谷委員亀田委員辻委員それに私が加わり、奥村調査員、及び三嶽法制局参事を伴い、十二月三日大阪高等裁判所において、第一班と合同して、最高裁判所機構改革問題について参考人から意見を聴取いたしました。  また、売春防止法運用に閲する調査については、亀田委員辻委員とともに、大阪高等裁判所調査会終了後、京都市におもむき、夜の赤線地域現地視察を行い、翌四日午前中三時間にわたり、京都府庁において、府知事以下関係当局から説明を聞き、業者代表とも懇談を行いました。  第一に、大阪高等裁判所における最高裁判所機構改革問題に関する調査結果につきましては、同調査は第一班と合同して行いましたが、その結果については、先ほど委員長から総括した詳細にわたる御報告がありましたので、これを省略いたします。  第二に、京都府における売春防止法運用に関する調査の結果を申し上げます。  まず第一に、京都府における発布防止対策といたしましては、本年十一月九日売春防止法施行に関する啓発宣伝、婦女の保護更生関係業者転廃業取締り強化等の諸施策を合理的かつ効率的に推進するため、関係行政機関の長並びに関係行政機関職員等から、知事の任命、委嘱する部員、幹事二十九名からなる売春防止対策本部が設置され、同時に本部内に婦人保護対策取締対策転業対策の三部会を置き、専門事項について調査研究に当らせ、同対策本部目的遂行に寄与することになりました。  その二は、婦人保護更生についてでありますが、昨年十月一日市内婦人相談所を設置し、現在十二名の婦人相談員京都市に八人、郡部に四人の割当人数により、熱心に要保護婦女子指導に当っております。婦人相談所開設以来、本年十一月末までの受付総件数は三百五十七件でありまして、そのうち解決されたものが三十五件となっております。決して満足すべき数ではありませんが、その半数生活困窮による転落者であり、今後の更生方向が不明で調査指導中の者や、更生意欲等欠除から処置方法なしとして指導停止または保留される者が三割を占め、最も多い実情から見ましても、婦人相談員の苦労は並み大ていではないと思われるのであります。この困難な社会的に重視すべき職務に携わる婦人相談員待遇として、非常勤月九千円、交通費二千円というのは低きに過ぎ、生活保護の観点からも考慮してほしいと訴えられました。一時保護収容所は本年六月十七日婦人相談所と同じ場所に完成を見、十二月四日現在十二名収容中でありまして、また、京都府の婦人保護施設については、昭和三十二年度において予算措置が講ぜられ、桃山地区に定員三十名の保護施設が建築中で、間もなく完成収容の運びに至っており、府知事の強力なる推進によるものと思われます。  その三といたしまして、取締り対策について申し上げます。  まず、売春関係地区現況は、京都における赤線地域京都一帯の八カ所、すなわち西陣新地、祇園、宮川町、七条新地、島原、中書島、撞木町、橋本の八カ所と、郡部六カ所すなわち月見、猪崎、朝代、龍宮、丸山、新浜の六カ所に分けられますが、営業者及び従業婦の数において、京都一帯は全体の八割以上を占め、昭和三十二年十月末現在、京都府警察本部調査によりますれば、京都赤線業者一千二十人、従業婦二千四百八人に対し、京都一帯のそれは業者八百八十七人、従業婦二千九十四人で、業者一人に対し従業婦数は平均二、三人の計算となり、業種は貸席、お茶屋等であります。  赤線以外の地域における売春業態として容疑のあるものは、総数七百八十一で、そのうちで旅館業が最も多く、四百四で、全旅館数の約三割に当り、その他は料理屋飲食店、カフェーの順であります。また、警察の厳格な推定では、この他散娼約二百人、ポン引き約百三十五人とされ、新げん芸妓三百二十三名のうち六割が売春の対象となり、もぐりやとなが五十名存在し、席貸しを利用いたしており、売春の八割が旅館で行われているという現状であります。  売春事犯の取締り状況につきましては、本年一月から十一月末までにおける検挙件数と検挙人員を昨年のそれと比較いたしますると、検挙件数は昨年の四一%、八百四十一件、検挙人員は昨年の二五%、四百六十八人にそれぞれ減少しております。従業婦の漸次的減少傾向がおもな原因と思われまするが、警察取締りの困難牲を物語るもので、特に夜間取締りの実際に当っては困難をきわめ、人権尊重と取締りの徹底化との大きな矛盾に逢着し、成果のあがらない結果となっている現状であります。さらにつけ加えますと、本調査の前々日の事例でありまするが、一赤線業者の検挙で、組合登録の三名の従業婦のほかに八名のやみ売春婦が存在していたことが発見されております。かような実情、これはその実情を察知する一つの好適例であろうかと存じます。  以上の現況から、警察側は、来春四月に至っても取締り陣容に変りなく、しかも取締り地域が全般に拡大されるに及んでは、真に徹底した取締りの成果をあげることができるかどうか、深い危惧の念をもって臨んでおります。  性病予防法違反の警察取締りは不活発でありますが、府衛生部長は、性病予防の見地から、検診費用は全免無料とすべきで、現在の半額から少くとも、十分の八を下らぬ額の国庫負担に引き上げるよう性病予防法第二十一条の改正も必要であると強調し、これは府知事においてもっとに留意する点でもありました。  その四は、最近の業者並びに従業婦転廃業その他の動向であります。  まず、業者についてみますと、京都府貸席お茶屋組合連合会では、去る十一月二十六日業者転廃業に関する基本方針を決定し、転業促進を申し合せました。それによりますると、  (一) 完全転業するとともに接客婦についても明朗な就業を勧める。  (二) 転廃業の時期は、明年二月末日までとする。  これは全国性病予防自治会連合会の申し合せ時期たる明年一月末より一カ月おくれることになりまするが、京阪神地区業者の申し合せによるもので、正月の収入期をはずさないためと言われております。  (三) 転業上所定基準に欠ける場合の行政措置について条件又は期限を付してもできるだけ便宜を払われたい。  (四) 当面の資金は自力と組合の資力に待つこととし、不能の場合は融資のあっせん方を当局にお願いする。  (五)転廃業完了後本連合会を解散する。  というものであって、右のような申し合せを行いつつも転業資金に悩みがあり、転業構想をめぐる利害関係もあり、業者の大半は転業について自己の腹がまえがまだきまっておらず、また、組合も指導精神なく、政府当局の出方を見守っている現状であると見受けられました。最近に至って政府は、各都道府県あてに売春関係業者の職業指導についての通牒を発したと承わっており、今後、業者転業が大いに促進されることと思われますが、本年一月以降十一月末までの転廃業率は約五%、五十三名でしかない状態であります。  転業希望業種について最近一部組合でまとめたものを見ますと、旅館、風俗営業希望が圧倒的で約八割を示しております。旅館等への転業については、擬装転業でないと言い切れぬものがあるとする警察側の見方と、まず、希望業種に常業許可を与えるべきで、違反行為があれば取り消し処分にすればよく、転業前から疑いを持たれるのは心外だとする業者意見との対立がここでも見られました。  次に、従業婦の場合ですが、本年十月末現在で二千四百人の赤線従業婦が存在し、新規雇用が禁止されているので、業者は現在員の温存に力を入れており、それでも毎月平均五十人から百人ずつの減少傾向を示してはいるものの、このままでは来春四月に至ってもなお、二千人の従業婦が残存することになり、知能も低く、更生意欲のない者が大半で、かつ、一人平均三万円から五万円の前借ある者が半数であるという実情を考えますと、まことに憂慮にたえないものがあります。  次に申し上げたいのは、以上のような業者及び従業婦の動向に対し、京都売春防止対策本部では、特に府知事以下転業資金の積極的あっせんについて真剣に考慮され、一般貸付窓口の開放に向って進んでいること、また、従業婦更生資金集めが郡部婦人団体等の手で行われ、功を奏している実情を聞き、深い感銘を受けたことであります。  以上、京都府における売春防止法運用に関する調査結果を概要申し上げましたが、 これを要約いたしますと、(一)京都府における売春防止対策の重点は、転廃業資金のあっせん、婦人保護施設の充実、性病予防の三点に置かれ、知事以下の指導のもとに諸施策推進されておりますが、(二)業者転廃業の腹がまえはまだきまらず、従って、従業婦も同様で、来春四月法全面施行時期まで大半が現状のまま推移する傾向にあり、その期に至って旅館、風俗営業等へ擬装転業するおそれがある。(三)結局、現在政府の確固たる売春防止対策指導方針が強く望まれておる。  以上であります。  なお、この詳細の報告は、現地提出の資料を付し、調査室に備えておりますからごらんを願います。  これをもって、第二班の報告を終ります。
  9. 青山正一

    委員長青山正一君) 次に、矯正施設営繕関係報告棚橋委員からお願いいたします。
  10. 棚橋小虎

    棚橋小虎君 法務関係の施設について、調査結果を御報告いたします。  まず、笠松刑務所の方では、佐藤名古屋矯正管区長、高井刑務所長外関係部課長等から運営状況について説明を聴取した後、所内施設を視察し、また、女子職員十一名に集まってもらい、その待遇状況について懇談いたしました。なお、過般委員会で取り上げられた興風寮の問題について横山更生保護委員長及び茨木保護観察所長外関係局課長に来所を願い、興風寮の運営状況について説明を受けたのであります。  笠松刑務所は、御承知のように、全国四カ所の女子刑務所の一つでありますが、紡績工場を改造して周囲には普通のへいをめぐらしてあるだけで、居室には錠前や格子もない開放的処遇をしている特異な女子受刑者収容施設として知られております。職員も百名中七十名は女子職員によって占められ、所内はいかにも清潔に片づけられ、刑務所としての一般概念からはおよそかけ離れた感じを受けた次第であります。  先般、委員会において、女子刑務所における女子職員の差別待遇問題が赤松委員から取り上げられたのでありますが、笠松刑務所においては、女子職員から、ただ官舎の不足に対する希望があったくらいのもので、男子職員との比較において超勤手当、休暇等の点については何ら不満の声もなく、むしろ他の刑務所より勤めやすいという感想が述べられたにとどまったのは、いささか物足りないくらいでありました。もっとも、この刑務所は、比較的性格のよい服役者を収容していることと、職員の出張が少いため代勤の回数も少く、自然勤務過剰となることも起らない特殊事情もあるようで、女子職員の待遇については、もっと総体的に調査を進める必要があろうかと存じます。  当所の収容定員は、病舎を除き四百七十六名、収容人員は二百八十五名で、他の刑務所と違って過剰拘禁の問題もありませんでした。  収容者の大半は、刑期一、二年以下の者、全体の三分の二を初犯者で占め、半分は窃盗罪による者でありますが、売春の経験者が六十一名いるというのも女囚ならではの現象であります。この売春経験者である出所者の更生保護に間違いがあったことが興風寮事件原因になっているのでありますが、これはあとに述べます。  この刑務所の特色は、東洋産業株式会社(この会社が当所の笠松刑務所の敷地、施設の寄付者でありますが)の紡績請負作業にありまして、受刑者の約三分の一が作業に従事している姿は、一般工場の女工とあまり変らないのですが、その労賃一日最高百七十円、平均九十円という低廉には、いつものことながら驚くのであります。もっとも、これは本人の勤労所得にはならずに、国庫収入になるわけですが、出所の際に別に受ける作業賞与金の平均が千四百五十円(本年十一月現在)という哀れな実情を顧みるならば、収容者にも勤労の報酬を与えることが監獄法改正の機会に十分考慮されてしかるべきものと痛感いたしました。  建物は比較的新しいので、格別取り上げる点もないようでありますが、浴槽のセメントにひび割れが入って入浴に不便を来たしていること、窓の防虫網が修理もせずにところどころ破損したままになっていることが目につきました。これは修繕夫(囚人)がいないためということであります。  それから、刑務所の南側は現在水田になっていますが、将来民家がここまで発展してきた場合教化上困るというので、土地を買収しておいた方がよいという意見も聞きました。  次に、財団法人笠松興風寮の問題に触れますが、同寮の武馬補導主任が入寮者三十一名を売春婦に周旋した事件の発生原因については、大体次のような三つの原因が考えられるようであります。  第一は、更生保護会の運営が予算、経費の関係上窮屈となり、職員手不足のため、武馬主幹に一切の経営、補導をまかせきりにしたこと、第二は、周旋された入寮者は大部分売春婦、水商売等の経験者であって、堅気の仕事に向かない者が多く、着物ほしさなどから手軽に収入にありつける住み込み女中等に就職を急いだこと、第三は、寮の運営費の予算が少い関係上、入寮者を短期間で出所させなければならない結果、十分な更生指導ができないこと等であります。この点、現地当局では少くとも一カ月以上の入寮を要望しております。  武馬主任は先月十八日職業安定法違反で起訴公判に付せられましたが、今後売春防止法の完全実施に即応し、売春経験者に対する更生保護活動に十全を期するため、当局の十分な配慮を望んでおきます。  次に、名古屋刑務所について申し上げます。同刑務所では、佐藤管区長、小和田所長等から説明を聴取した後、施設を視察しましたが、主として私どもの注意をひいたのは移転問題であります。これについては、視察に先立って岡田市会議員、栗林名古屋市建設局総務課長外四名から移転の陳情を受けましたが、その要旨は、刑務所敷地の一部が都市計画街路に含まれていて、その現在地が市の経済的発展地の中心に近い関係上、都市美観及び生活環境上不適当であるから移転を望むというのであります。都市計画によれば、刑務所敷地二万八千三百七十七坪の約二四%、官舎用地千七百三十三坪の約七〇%が都市計画線にかかっております。それで視察しましたところ、計画路線は刑務所の一端において行きどまりの格好になっていることが認められました。一方、刑務所は工場、倉庫、房舎等にわたって新改築を要する老朽建物が少くなく、中には倒壊の危険ある工場(第三工場)さえあります。また、刑務所敷地自体も近代刑務所として十分の広さではありません。それから所内の用水も不十分で、衛生、保安上遺憾な状況にあります。官舎も戦後応急の粗末なものである上に、数も不足しておる状態であります。  かように名古屋刑務所は、施設の各般にわたって改善に迫られておりますが、ただいまは移転問題の解決待ちという状態にあります。しかし、名古屋市は、市当局と市議会との間においてようやく意向が一致した程度であって、まだ愛知当局との協力の段階にも入っておらず、また、直接管理権を持つ名古屋矯正管区長への正式な伝達もなければ、移転地の選定もできていないという状態でありますから、問題の進捗にはなお時日の経過が必要のように思われます。  私どもは、問題の解決には一応名古屋市からの希望を勘案し、計画することが適当だろうと思いますが、市として真に移転の希望を実現させたい考えであるならば、ただいま述べました諸点について筋を通すべきであるということで、青山委員長とともに、陳情者側に対し好意的注意を与えておいた次第であります。  その他、運営面等については、特段のこともありませんので、委細は報告書に割愛いたします。  これをもって報告を終ります。
  11. 青山正一

    委員長青山正一君) これで全部出張報告を終りましたのですが、ただいまの御報告につきまして御質疑並びに御意見のおありの方はどうぞ御発言願いたいと存じます。
  12. 一松定吉

    一松定吉君 非常な有益な御報告がありまして、しかもその御報告はおのおの具体的に精密な御調査の結果を発表せられましたので、私は喜んで拝聴いたしました。いずれそういう各般にわたりまする質問は、大臣等の御出席の際に、各項目にわたってお尋ねしたいと思いますが、実は私きょうはほかの用事で退席をいたしますから、今特に質問ということでなくて、大臣の今後御出席をお願いする意味においての前提として、ほんの五分間ばかり、ちょっと私のお願いを申し上げておきたいのであります。  最高裁の問題、法曹一元化の問題につきましては、また別の機会を見ましてお願いを申し上げまするが、ただ、この売春防止法の実施に伴いましての更生保護の問題と転業の問題でありますが、特に転業の問題がりっぱに目的を達成いたしますれば、この売春防止法の実施等の効果が百パーセントであろうと思うのでありますが、転業がうまくいかないということになりますると、これはなかなか重大な問題が起ろうと思うのであります。そこで、閣議におきましても転業者に対しての転業の方法等については、でき得べき限り政府がその方法を考えて低業の指導に当るということになっておるということを聞きました。ところが、今の御報告によりますると、そういうような方法は考慮されておるようでありまするが、まだなかなかそれが実施には縁遠いような状況にあることを今御報告を承わって、私は非常に落胆したのであります。そこで、私は今具体的に一つ申し上げておきたいのは、旅館とかカフェーだとか料理屋というような転業はどうかというと、ほんとうにこの業務に従事しておった人の完全転業とはいえない。何どきこれが擬装軟業に変ずるかもしれないというようなおそれがあるのでありますから、なるたけこういうものは、そういう従来営業しておったことに類似するような業務の転業はなるたけ避けるようにして、今までとは縁遠い、ほんとうのこれは転業したんだと認められるような仕事に従事するように政府並びに関係者はこれを指導誘掖する必要があると思うのでありますから、この点はよほど考えなけりゃならぬのではなかろうか。それからかりにそういうものを、旅館とか料理屋とかカフェーだとかバーだとかいうような方面に転業させるといたしましたときに、そういう業務に適応するような施設がないということを理由にして、政府がその転業を容易に許さないというようなことでは、これまた転業ということによほど困難を生ずるのでありまするから、なるほど君から出願した旅館常業については、施設の点についてこれこれの点がまだ欠点がある、だから、それは六カ月なら六カ月のうちにこれを補正しなさい、ただし、その補正するまでは一時やはり転業を許す、旅館業を許すというようなふうにしてやれば、容易にこの転業ができるように思うのでありまするから、それを旅館とか料理屋とかカフェーとかバーとかいうものの施設に、法令できめられておる通りに、完全に合致しなければ許さぬというようなことになって参りますると、なかなかこれは容易でないと思いまするから、その点は一つ取締りの方において、寛厳よろしきを得るような方法を講じてもらいたいということが一つ。ただ私が奇異に思っておりますことが一つありますが、それは神戸のある業者が十人ばかり一致結束をいたしまして千五、百万円という自己資金を出し、そうして従事しておる婦人は全部更生するような道をちゃんと考え、そうして誓約書までとり、自己資金千五百万円をもって自動車常業をするということで、ちゃんと計画を立て、自動車会社にも買い入れの予約をし、自動車置場所の設置もすでに手をつけ、そうして運転に従事するような者の採用というようなことにも手をつけて、そうしてこれを大阪の陸運局に願書を、もうよほど六カ月前から出して、そうしてこれが許可されればその日からわれわれは転業しますと言って、腕をさすって待っている。しかるに今月の十七日でありましたか、その公聴会を開きました結果によって許可されたものは、内閣できめておりまするアメリカ兵に雇われておった労働者が解雇されたその者に対しては、自動車業等その他のものを優先的に許可するという閣議の意思を尊重せられまして、その種類のもの二人だけは自動車を許可された。それからあとのものは、自動車営業に従事しておるものに多数許可した。それから土建業に従事しておるものが許可されて、売春業の方面から転業して自動車常業をしようという、今私が具体的に申し上げましたような人については、一顧だも与えられなかったということで、これは却下された事実があるのであります。実は私はびっくりして、このことを幹事長まで昨日申し出ておいたのでありますが、幹事長も、そういうような転廃業者が、しかも自己資金でそれだけの仕事をして喜んで転業するということに努力しておるものを、一顧だも与えずに従来の自動車常業をやっておるものに、また重ねてたくさんの自動車の運営を許可するというがごときことは不都合下万なことであるばかりでなく、土建業者の、何も転業しなければならぬ必要も何もない土建ということによって十分に生活を営んで業務を運営しておるものに対して、自動車常業を許可して、そうして最も必要な発布業の転廃業について憂慮しておるもの、政府の金も要らず、自分の自己資金でそれだけの施設をし、それだけの運営をすべく時期の到来を待っておるものに対して一顧だも与えず、これを許可しないということは、はなはだ不都合千万だと思う。聞くところによりますと、ある代議士がそれに介入して、そんなものはよろしい、おれのところに来ればおれが話をしてやればできるといって、そういう転廃業の必要がなくて従来やりつけておるものや、土建業者あたりに許可することを陸運局長の方に要求し、また、陸運局長も、どういうものでありますか、自分のところに一ペんもこれらのものは顔を出さなかったというようなことで、感情上、そういう許可しなければならぬ、転廃業の必要である要件を具備しておるようなものを、一顧だも与えなかったということは、これははなはだ不都合だと思う。これではこういう売春業者が快く転廃業しようと思うても、思うようにはできません。そういうようなことで、目的が阻止されるということになると、せっかく四月一日から完全に転廃業させて、こういうような醜業を除去しようという法律の趣旨というものをじゅうりんされることになる。これは何らかの一つお考えで、こういうようなものがほんとうは完全に転廃業のできるような施設をこしらえて、自分から、政府の力を借りずに許可してくれさえすれば、自分らは完全にやるというものを、一顧だも与えずに、許可せんでもいいようなものを、それからいろいろ運動してやったようなものに許可したというような風聞が流れておるということは、これはこの際、調査してさらに是正してもらう必要があると思いますから、この意味におきまして、厚生大臣、運輸大臣等に一つ次回に適当なときにおいでを願いまして、それらのことを法務委員の意思としてお伝えをし、なお、関係当局の御意見も承わりたいという考えでありまするから、適当な時期に一つおいでを願うようにお取り計らいあらんことを特にお願いしておきます。あとのことはまたいずれ適当な時期に質問いたすごとにいたします。
  13. 青山正一

    委員長青山正一君) ただいま一松委員の申し入れの件、更生保護の問題、あるいは転業の問題、その他売春防止法運用の問題について、次回の委員会において調査検討することにいたしまして、その際、大臣なりあるいは関係政府委員に御出席願うことにいたしたいと存じます。  ほかに御発言の方……。
  14. 赤松常子

    ○赤松常子君 ちょっと簡単に棚橋先生にお聞きしたいのでございますが、大阪の方においでになりましたときにいろいろ御調査いただきましてそのときに、この婦人相談員の数でございますけれども、また、最近の報告を聞いておりますと、定員に満たないということを聞いております。まだ八名も定員に満たない数であるということを最近聞いておりますが、そういうことを御調査なさいましたでしょうか。この婦人相談員のなみなみならぬ苦労も私どもいろいろ存じておりまして、やはりこの数が足りないから一人に多くの仕事がかかってくる。で、もちろん交通費、あるいは手当の不足、これはいずれの相談員でもそれを訴えていらっしゃいますが、その数の不足がまだあちらこちら見受けられる現状でございますが、こういうことが大阪で問題になったのでしょうか。御調査になったのでしょうか。ちょっとお伺いします。
  15. 青山正一

    委員長青山正一君) 今、赤松さん、私が棚橋委員にかわってお答えいたしたいと思いますが、大阪なり、あるいは京都もそうだったろうと思いますが、事実この婦人の相談員ですね、これは仰せのように非常に足らないというような現状であります。というのは、まだはっきり政府の意思が徹底していないということと、もう一つは、市自体が市会を開いて予算的措置をまだ講じていないというところが多いわけでありまして、現に、昨日神奈川をちょっと調べた結果、二十九名のうちに八名も足らないという現状なんです。それも横須賀の市会においてまだ予算的措置を講じていない。また、政府の意思があまりにも、つい最近そういう、ような意思を発表したのであって、まだそこまで徹底していなかったので、まことに相済まないと、こういうふうなお話でした。まあ拙速主義でなく今後やっていきたいと思いますと、それから現状においてはまだそれほどまでに感じていないという御説明もあったわけです。まあ以上のようなわけであります。
  16. 赤松常子

    ○赤松常子君 それでは、この次にやはり厚生大臣の御出席を願いましてその点の充実を要望したいと思いますから、ぜひそういう機会をお作り下さいますように……。そのほかいろいろな予算の点につきましても申したいと思いますから。
  17. 青山正一

    委員長青山正一君) そういうふうに取り計らいます。
  18. 亀田得治

    亀田得治君 先ほど一松委員から発言された点に関連してちょっと要望しておきますが、次回の委員会の際に、この陸運局の資料を、自動車を許可するについての最近、先ほど御発言があったその審議会の資料、これがやはり事前に私どもに配付してほしいのです。その後の運輸大臣に対する私どもの質問が具体的にできていいと思いますので、資料として、その日議題になったものを全部を一つ目録として出していただきたい。許可になったもの、ならぬもの、全部これを要求しておきます。それから、できれば、陸運局長もおそらく来られるでしょうが、一緒に来てもらいたい。  それからもう一つは厚生省の関係ですね。私ども調査に行っておるときでしたか、それから直後でしたか、厚生省が転廃業について相当厳格な基準を何か出しているような感じを新聞で見ました。で、その厚生省の決定した、並びに地方に出した通牒をこれも原文で一つ資料として事前にいただきたいと思うのです。で、ともかくこの問題はああいう売春汚職事件等があるものですから、何かそういう肩をもつようなことを言うと疑われるとか、そういったようなことで、正しい意味での転廃業にまでそういうことが響いていったのじゃ、これははなはだ私は間違いだと思います。だから、そういう意味で、私ども調査の結果から見ても、どうもあまり政府としては人を疑い過ぎているのではないかという感じを持っております。だから、そういう点について十分厚生当局と質疑をしたいと思うのでして、その前提として厚生省が今まで出したそういうような指示なり、そういうものを全部資料として事前に配付してもらいたいということを要請しておきます。
  19. 一松定吉

    一松定吉君 今の亀田君の御意見ごもっともだと思います。私のお願いしたのは大臣だけではわかりませんから、やはり陸運局長をして御喚問を賜わり、かつ業者から申請した書類が出ておりますから、そういうものを見てみると、いかにこれが不適当な不都合な許可をしたかということがわかると思いますから、亀田君の御趣旨に全然賛成いたしますから、陸運局長を御喚問賜わると同時に、その許可したものと不許可したものの申請の書類を携帯してくるように、非常にけっこうです、賛成いたします。
  20. 青山正一

    委員長青山正一君) 一つ法務政務次官お願いいたします。こういった資料を、あるいは厚生省の社会局のお方もおいでになっておりますが、一つどうか次の委員会までに、はっきり各委員にわかるように御準備願いたいと思います。
  21. 一松定吉

    一松定吉君 今の亀田さんと私の言うのは、運輸省の方です。
  22. 青山正一

    委員長青山正一君) 運輸省の方も用意いたさせます。ほかに御質問ございませんか。
  23. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 ちょっと二点だけ質問いたします。婦人相談員の数のことについては御報告ございましたが、その質の点について、その適任者が選ばれているかどうかという問題、それからもう一点は、宿屋、ホテル、料理屋、カフェー、バーなんかの転業擬装転業と思われるものがあるという報告でございましたが、その擬装転業と思われる原因は、今までの売春婦を連れて転業しているから擬装転業というふうに思われるという意味でございまし工うか、どうでございましょうか、この二点についてお答えを願いたいと思います。
  24. 青山正一

    委員長青山正一君) 婦人相談員の質の問題は、これは各県知事なり、あるいは地元の市長などの推薦によってあるいは婦人団体あたりから非常な推薦があって、ほとんどどの県も適任者を選んでおるかのように見られます。ただ問題は、その婦人相談員の中に、男の関係と女の人を、まあ両面から雇い入れるわけなんですが、どうもこの売春婦というものは、女のことを女の相談員に話しにくいというような関係もありますので、やはりその婦人相談員の中に男子の相談員も少しは僕は必要じゃなかろうか、こういうふうに特に考えられます。  それからもう一点の後段の御質問の、売春婦を連れて擬装転業する面と、それから連れていかない面と両面があります。もちろんこれははっきり申し上げますと、たとえば滋賀県のごときは、これはまあ京都のすぐそばにありますが、そこは全部芸者の置屋に転業する、こういうことになります。その場合、全部その売春婦を連れて転業するというような面もあります。また、ところによっては、もし雇い入れるならば、知事なり、あるいは地元の警察署長のはっきりとした、これは擬装転業じゃないのだ、擬装転業じゃないのだからそこに使わせてもらいたいというはっきりとした知事の許可を得る、あるいは警察署長の許可を得てそこに雇う、雇われたい、こういうふうな行き方でする面もあろうと思います。その点、お答えするわけであります。
  25. 棚橋小虎

    棚橋小虎君 ちょっと今の宮城さんの御質問の第二点でありますが、その点について、実際において擬装伝業であるかどうかという点ははっきりしないにしても、今までの従業婦を引き連れてそうして転業する、あるいはカフェーだとかいろいろなことをするということになれば、そういう擬装職業という疑いも起ってくるわけであります。ほんとうに転業するということであれば、まず、今までの従業婦をひまを出して、それと縁を切る、それを引き連れておる限りは、転業しても何か明朗でないものがあるように思えるのです。だから、第一番は、今までに雇っておった従業婦と完全に手を切って、そして国へ帰すなり何なりして解決するということは、これは松島遊郭でも、中村遊郭の方でも言っておりました。ところが、実際において従業婦の中には、松島遊郭の例をもって言うと、自分でうちへ帰るとこるがあると、あるいは自分で何か生活の設計をもっておって、これから職業をやっていくというような考えのあるものは、まず三〇%、あとの七〇%は行くところもなければ、自分でそういう考えもなくて、結局ひより見という格好である。こういうようなことを申しておりましたが、結局問題は、その従業婦と手を切るということが前提でなければならない。そういうふうにわれわれ言って参りましたけれども
  26. 大川光三

    大川光三君 宮城さんのお尋ねの点で、私の方からもお答えをいたします。  京都の場合でありますが、先ほども申し上げましたように、大体赤線地帯の従業婦が二千四百人、その中で約四百人だけが、他の地に転業する、あるいは国へ帰るという方針がついておって、あとの二千人は依然として方針がきまらないで業者にくっついておる。その二千人と業者の結びつきが切れたい以上は、やはり擬装転業ということの疑いが持たれる。いま一つは、業者そのものに資力がないものですから、なるべく今までの設備をそのまま利用しての常業をやろうという施設の面と、従業婦との縁が切れないという、そこに擬装転業の疑いが起ってくる、こういう状況でございます。
  27. 青山正一

    委員長青山正一君) 大臣も非常に無理をして御出席なさっておられるので、この御質疑は、またあとの機会にいたします。   —————————————
  28. 青山正一

    委員長青山正一君) 次に、昭和十三年度法務省関係予算並びに裁判所関係予算について議題にいたします。  両件につきましては、いずれも開会中に、法務省並びに裁判所当局から説明を聴取いたしておりますので、本日は直ちに質疑に入りたいと存じます。御質疑の方は御発言を願いたいと存じます。
  29. 亀田得治

    亀田得治君 この裁判所並びに法務省関係の予算はまあ問題にすればきわめてたくさんありまして、そのどれから言っていいかわからないような実は感じなんです。全般的にともかく仕事分量に比較して人が足らない、庁舎が足らない。もうこういう状態が慢性化しておるのが現状です。そういうことが、たとえば検察庁であれば非常に大事な国民の告訴事件、もちろん非常に不必要に出すようなものもあるのでしょうが、そうでないものもある。ところが、やむを得ず警察等が扱っておる、身柄を拘束しておるような事件、これは事柄上先にやらなければならないというふうなことでその告訴事件等が不当にいつの間にか延ばされておる。そういう現象が全般的に出ておる。私はそういう状態では、個々の問題は別として、国の司法そのものに対する信頼といいますか、そういう立場から見てはなはだ問題だと思う。そういう現象が毎年々々少しずつでも改善されていくという傾向にあるのであれば、希望が持てるわけですが、私どもの感じではそうではないと、むしろ逆じゃないか、ほかのいろいろの国家の設備の整備等に比較いたしまして、そういうふうに思っておるのですが、幸い法務大臣が来られましたから、そういう大まかな大きな点についてどういうふうにお考えになっておるのか、そうしてまた、どういうふうに予算要求の際に対処されてきておるのか、こういう点を一つ最初に承わっておきたいと思います。
  30. 唐澤俊樹

    ○国務大臣(唐澤俊樹君) ただいまのお尋ねでございまして、まことにごもっともに存ずる次第でございます。法務省といたしましては、年々人件費関係における経費の増、それからまた、営繕関係等も、仕事をさばく上に非常に大切でございますから、これら二点について、毎年大蔵省に対して要求をいたしておりまするが、何分にも御承知のような国家財政の状況で、各省にもやはり同じような状況がありまするためか、法務省にだけ特に増額というわけにいかずに、不満足な状態で、その間、不満足ながらできるだけの努力をいたしておるようなわけでございます。今年度におきましても、いろいろと仕事がふえることが想定されまするので、人件費、営繕費その他の増を要求いたしておりまして、今大蔵省で査定いたしておりまするが、詳しいことは政府委員の方から申し上げたいと思いますが、お話の点は全く同感でございまして、でき得る限り、大蔵省に対してそれらの点を補ってもらえるように努力したいと考えております。
  31. 青山正一

    委員長青山正一君) ちょっと皆さんに申し上げたいと存じます。本日は、唐澤法務大臣のほかに、横川政務次官、荻野営繕課長、大沢経理部長、福原保護局長、それから大蔵省から白井大蔵政務次官、上林主計盧、それから最高裁の方は五鬼上事務総長、鈴本人事局長、岸上経理局長、こういった方々がお見えになっております。どうぞ御質疑を願います。
  32. 亀田得治

    亀田得治君 最高裁からもお見えになっておりますから、そちらからもただいま質問申し上げたことに対して、総括的なお考えをお聞きしたいと思います。
  33. 五鬼上堅磐

    説明員(五鬼上堅磐君) ごもっともな御質疑でありまして、私どもの方では一番困っておるのは、特に因っておるのは営繕の予算であります。と申しますのは、御承知の通り、明治二十三年のあの条約改正当時に、裁判所の、地方裁判所、あるいは控訴院、大審院というような建物が建てられたのが大部分であります。それが大体木造が多いために非常に危険である、修理が不可能になっておるような庁舎が相当ある。それから裁判所としては新憲法になりまして、新しい裁判制度ができ、すなわち簡易裁判所が六百余り新設され、それから家庭裁判所が、本庁が四十九に、支部が二百三十八か新設された。これは新しい裁判所でありますから、すべてそういうものを、要するに施設を作っていかなくちやならぬ。本庁に同居したり、地方の本庁に同居したりいろいろして、今のところ、借家をやったりして曲りなりにも動かしているのですが、また、そのほかに戦災でやられたという庁舎が相当ありまして、これを急いでバラックで建てたりしたというようなものはすでに十年、もはや使いものにならない。たとえば一番私どもの困っておるのは、幾らか昨年あたりから大蔵省当局にも認めていただいておるのですが、東京の地方裁判所などは、全くどこへ行ってもかような裁判所はないのじゃないかというほど朽廃しておるわけであります。あるところは、事務に危険で使えないというようなところが相当東京の地方裁判所にあるという状態であります。私どもの方としては、なるべく早く一つそういうものを復旧していただきたいという考えのもとに、年々予算の要求はいたしておるのでありますが、まあ国の財政の点もありまして、いろいろの点からして、私どもの要求には満足はいかないものではありますけれども、昨年あたりからある程度、大蔵当局の御認識も得られつつあるのじゃないか、かように考えておるのであります。
  34. 亀田得治

    亀田得治君 これはまあ一例を申し上げると、大阪の場合は、私はときどき参るものですから、行ったたびに思うことですが、大阪の地方裁判所判事の皆さんがおる部屋ですね、これは地位からいって相当上級の方です。ほかの行政官庁へ行けば個室を持つなり、少くとも事務の責任ある仕事というものが、落ち着いた格好でとれるような、そういうやはり仕組みというものができておるのです。それをどこか大部屋の、たまり部屋みたいなところに全部押し込んで、ああいうことでは、全く仕事の能率が上らぬですね、それから大阪の地検でもそうです。公判担当の検事がおられるのは、二十人ぐらいおるようですがね、そういう現状を大蔵省の諸君が知っておるのかどうか、私はほんとうに知っていたら、もう少し認識が改まってしかるべきだと思うのです。そういうことは、一体わかっておってやらないのですか。私はわかっておれば、まあ予算のワク、ワクとは言いながらも、ほかの行政官庁に比較すれば、当然そういう状態は、それは気の毒だということに当然なるべき問題だと思うのですが、その辺の認識を、最高裁なり法務省としては、実際に与えてあるのかどうか、一々行くのがめんどうくさがったら、たとえば皆さんが大部屋でいて、いろいろな者が来たりすれば、雑然としているのです。それは正式に理論的に頭を使って訴訟書類などを見ていく人たちの部屋じゃないですよ。そういうところを写真にでもとって、大蔵大臣に見せるとか何か、そういうような具体的な努力をしてもらいたいと実は思っているのですが、その辺の認識の度合いは、一体どういうことになっているのですか、法務大臣どうですかね、認識が足らぬのじゃないですか、第一。
  35. 唐澤俊樹

    ○国務大臣(唐澤俊樹君) 法務当局として知っているほど精密には大蔵省でも御存じないかと思いますが、ただいま大阪の例でお話になりましたけれども、もう手近な東京だっても全く同様でございますから、私ども関係、それから裁判所の方の関係、実にただいま御指摘になったような状況で、遺憾にたえません。これは地元でございますから、大蔵省の方もよく御存じと思っております。また、法務省といたしましては、予算を要求するごとに、これは十分説明をいたしておることでございます。
  36. 青山正一

    委員長青山正一君) 大沢経理部長に一つ御説明願います。
  37. 大沢一郎

    説明員(大沢一郎君) 法務省所管の施設が老朽廃し、また、手ぜまでございまして、職員の執務能率を阻害していの点、並びにそれを利用せられる方々に、非常な御迷惑をおかけしている点は、ただいま御指摘の通りでございまして、まことに申しわけなく存じておりまして、われわれといたしましても、早急にかような状況改善いたしたく努力はし、また、今後もいたす覚悟でおるのでございますが、何分法務省所管の組織と申しましても、営繕関係ではその数が三千四百余に及んでおるのでありまして、その組織も検察庁、法務局、また、刑務所等の収容施設、そういうふうに非常にたくさん、ざいます上に、その規模その他も種々雑多でございます。第一、大きな刑務所は数千坪に達しますし、あるいはまた、法務局の出張所は数十坪というような小さいのもございまして、しかしながら、その総数にいたしますと約八十五万坪に上っておるのでございます。なおまた、所管の施設組織が終戦後裁判所から独立いたしましたものもありますし、また、新たに新設せられたものもございまして、今までの営繕の施設としましては、とりあえず新設あるいは独立したものを、その施設をとりあえず設けようというようなことに追われまして、いまだにまだ、法務局では狭い裁判所の中に遭いていただいておるというような状況でございましたために、全体的に改善整備するということまでには実は立ち至っていない状況なんでございます。きたないとか、狭いとかというよりも、独立の庁舎を持ってないのがございまして、これらのものを何とか整備しよう、設置しようというのに追われておるような状況で、ただいま御指摘を受けましたような状況に立ち至っておるのでございますが、しかしながら、昨年度から長期営繕計画を立てまして、順次その状況を大蔵省御当局にも御認識を願いまして、昨年より、ようやくその緒について、順次それを進めていきたい、かように存じておる次第であります。
  38. 亀田得治

    亀田得治君 法務大臣からは、法務関係の諸君ほどには認識がないかもしれぬが、まあ幾らかの認識があるように言われたわけですが、政務次官来ておられるわけですが、私が先ほど二つの事例を申し上げたわけですが、東京でも一緒だと思うのですが、そういう現状を知っておられますか。
  39. 白井勇

    説明員(白井勇君) 私今御指摘のありました個所は私個人としましては承知いたしておりません。ただ地方に参りましていろいろそういう関係の手狭でありますとか、あるいは老朽庁舎のありますことは、そういうことはよく話にも聞かされ現実にあることも知っております。最近また、法務省当局からもいろいろ御連絡がありまして、この面の営繕関係を急がなければならぬということにつきましてはよく承知いたしております。
  40. 亀田得治

    亀田得治君 よくお知りにならぬようですから、私はやはり大蔵省当局の方でも現実に見てもらいたいと思うのですね、要求の出ている個所については、そうすれば、おそらくはかの官庁と比較してこれは不適当だというふうにもう必ずお考えになると私は思うのです。そういう現状をごらんになって、なおかつ、まあまあといったようなことをおっしゃる方でしたら、これは大蔵省をあずかる私は資格の問題になってくると思うのです。ですから、ともかくまず何よりも非常に強い要望がこれはどこに行っても出るわけですから、現状を見るように大臣から一つ努力してもらいたいと思うのですね。  それで、私法務関係のことで特に最近いろいろぶつかった問題がありますので、大沢さんの方がいいかと思いますが、お聞きしたいわけですが、京都ですね、最近調べたのによると、京都では法務局が、本局、それから支局が五つ、出張所が二十九、合計三十五カ所あるのです。あるのですが、この中で法務省の予算でストーブを配置してあるのが十五しかないのです。あとの二十というものはほったらかしになっておるのです。法務省としては、従って、まあ仕方なくその地方の自治体のお世話になったり、あるいはまあ関係業者の世話になったり、また、そういうこともできないというところでは、結構個人が炭を家から持ってきてそうしてまあ暖をとっている。そういうところに限ってもう庁舎も古ぼけておって、大体すき間風の多いような、そういうところなんですね。これはもう官庁としての最小限度のことを通り越えていると思うのですね、こういうとは。そういう状態でやっておいて、そうして規律がどうだとかいろんなことを言ったって、とても私は言う方が無理だと思うのですね。これは京都の一例でありますが、おそらくはかも一つ一つ各県検討すれば同じようなことになるんじゃないかと思うのですが、この法務局のストーブの問題ですね、これはこういう現状だということは御存じでしょうか。また、そういう現状であれば、何かそれに対処するようなことが今度の予算要求等の中で考えられているのかどうか。そこまで実はとても手が側らぬのだということであれば、これはっけ加えてもらわなければならぬ問題なんです。どうでしょう。
  41. 大沢一郎

    説明員(大沢一郎君) まことに詳細な点まで御調査願いまして、われわれとしましては汗顔の至りでございますが、この庁費関係は職員数に応じて大体配賦を受けているのでございます。ところが、普通の官庁でございますと、一庁に数十人、数百人というふうにまとまった官庁、官署の形をとっておられるのであります。法務局におきましては、登記の関係で、京都府におきましては出張所が二十九カ所というような多数の庁になりますので、一庁当りの職員数が非常に少いのであります。特に出張所に参りますと、一人、三人というような庁がございますので、さような庁ではいわゆる庁費というものが非常に少くなる。ストーブその他薪炭というものはそれから支出いたしますので、十人についてもストーブ一つ、一人でも一つというようなことになりますので、つい行き渡りかねる。そこで、本年度も、毎年この庁費を全体的に見ましてストーブを順次割当てておることにして、また、実施しておるわけでございますが、まだ全部に行き渡らないような状態でございまして、われわれとしましても、かような執務の能率にも影響いたしますので、全国的に見てすでに順次配賦していく、特に寒い地方から先配賦していくという計画で進んでおる次第でございまして、何分にもさように庁の数が非常に多うございますので、一庁に一つということもなかなか令部に渡るのに日月を要する次第でございます。しかし、努力はいたしておりますので、なお一そう御指摘の点につきまして気をつけまして かような事務支障のないように努力いたしたいと思います。
  42. 亀田得治

    亀田得治君 たとえば京都の例を、応とったわけですが、あとの二十カ所についてはこれはいつごろになったら、そのストーブが最小限度一つは行き渡るという見当でしょうか。具体的に一つずつ片づけてもらいませんと、いつまでたってもだめなんだから……。
  43. 大沢一郎

    説明員(大沢一郎君) ただいまストーブの点につきまして、ちょっと資料が手元にございませんが、人頭庁費につきまして、増額を要求しておりますので、早い機会に実現いたしたいとかように思っておりすが、今手元に資料がございませんので、いつまでと、ただいま宙で記憶しておりませんので……。しかし、人頭庁費の増額を要求しておりますので早急に実現したいと考えております。
  44. 亀田得治

    亀田得治君 人頭庁費の使い方ですね。それはやはりその人数の少いところにはむしろ割高になるということはこれはやむを得ない現象なんで、人数一人だからおまえの方は寒さをがまんしておれ、そういうわけには私はいかんもんだと思うんです。むしろ十人くらいおれば、ストーブがなくても体温で若干暖まるかもしれません、常識から言って。一人だったら凍えてしまいますよ、登記所なんかさびしいところだから。そういうところを私はもっとほんとうに一つ具体的に吊してもらって、法務白書というものを出してもらって、欠点というものを出してもらって、具体的に説明してもらえば、これを承知せんという大蔵大臣や政務次官であったらこれははんとうに不信任案に値いしますよ。それくらいにやはり具体的な何をあなたの方で指摘してもらうようにして、ほしい。  それからもう一つ、そのついでに私いろいろその諸君から聞いたんですが、電話ですね、電話が二十五カ所のうち十三カ所しかないんですね。これもまた、私は近代的な人工衛星の時代に電話すらないような役所が大半ですが、これはこの電話の増設は一体どういう計画なんですか。これはすべて電話がかかると隣の役場に行ったわ、学校の方へ行ったり、そういうことをやっているらしいんですよ。そんなことではそれは能率が上りませんよ。この電話は一体どういう計画ですか。
  45. 大沢一郎

    説明員(大沢一郎君) これも同様に庁費から支出いたしますので、つい最近も各出張所ごとに電話の架設の有無を全部調べ上げまして、件数の多いところから順次架設するという形で計画を立てまして、来年度予算で出張所で未架設電話の架設費並びに従来の不足経費というものを要求して来年度には実現したいと、こういうふうに思っております。すでに本年度におきましても、重要なものから順次つけて参りまして、来年度におきまして未架設をなくしようというので要求はいたしております。
  46. 亀田得治

    亀田得治君 来年度の要求は、未架設のところは全部つけるという予算になっておりますか。あるいは幾らか、三分の一とか、そういうことですか。
  47. 大沢一郎

    説明員(大沢一郎君) 来年度は全出張所につけるべく予算要求をいたしております。
  48. 亀田得治

    亀田得治君 京都の場合には、特に所長一人という出張折が左方所もあるんですよ。だから、これがどこか電話でもかけに行くと、そこにはだれもおらぬことになるんですよ。しかし、大事な書類を預かっているわけでしょう。だから、人数でいかないで、むしろ一人くらいのところに優先的にかけてもらったら、最近のどうも本省ははなはだ民主的になったというので、非常に私は一ぺんに評判があがると思う。せっかく要求されているのですから、もし全部架設できないような数字であったら、私はどこからつけるかということを十分具体的に場所を検討していただいてやってもらいたい、お願いしておきます。赤松さんも御質問があるようですから、私も適当にまたの機会にしたいと思うのですが、これは私一つの例をあげただけなんです。それで各庁にこれに類したことがたくさんあるわけですよ。それから人件費の方にしたっていつも問題になる。いろいろな保護関係の人件費なんかでも人をばかにしたような単価ですね。だからそういう点について実は私ども地域的に少し調べて歩こうかと実際思っているくらいなんです。具体的な例として出しませんとなかなかうまくいきません。これは皆さんの方でも毎年毎年要求される問題ですが、何かやはり要求の仕方などについても格段の二つこの辺でやり方を検討してもらいたいと思う。これはまあ要求しておきます。いずれこまかいことはおいおいまた質問なり希望を申し上げることにします。  最後に、きょうは関係の方が御出席ないかもしれませんが、公安調査庁の経費ですね。これが相当増額要求されているわけです。で、これの理由ですね。それから増額された経費の使い方の内訳ですね、相当詳細な内訳、こういうことについて知りたいと思っているのです。なお、それに付加して、従来の調査庁の経費、これは各項目いろいろあるわけですが、令までは大まかな数字しかもらっておらぬわけですが、できるだけ詳細な一つ資料を実はいただきたいと思っておったのです。これは本日でなくてもけっこうですが、その点だけを一つ特に私要望しておきます。それはすぐ御提出願えるでしょうか。大臣からでもちょっと。
  49. 唐澤俊樹

    ○国務大臣(唐澤俊樹君) ただいま御要請がありましたことは、直ちに担当の方に伝えまして、なるべく早く御希望に沿うようにいたしたいと思います。
  50. 赤松常子

    ○赤松常子君 私、大沢部長にちょっとお尋ねいたしたいのでございますが、せんだって私たまたま一週間ほど前に佐賀県の鳥栖に参りまして、二時間ばかり時間がございましたので、麓刑務所をちょっと訪問したわけです。そこで、私驚きましたことは、一昨年も麓に参りましたとき、婦人の収容者の人っておられますところが非常に荒れておりまして、そしてもう風が吹けば、暴風がくれば倒れそうになっているのですね。何か突っかい棒がありまして、非常に危険なんです。それは一昨年のことでございまして、これは大へんだ、もしものことがあったらといって、早く改築をなさってもらいたい。また、本庁にも私御要望を伝えておきましょうというお約束をいたしました。所長も改築のことはたびたび言ってあるけれども、なかなか回ってこないとこぼしておられました。それで、この一週間ほど前に参りましたけれども、まだ旧態低然なんです。一昨年のそういう風が吹けば倒れそうになっているのがまだ今にほってございまして、それで私も驚きました。これは所長さんいわく、風が吹く、この警報が出れば待避訓練をしているんだとおっしゃる。夜中でも、いつでも、ぞろぞろ逃げ出す訓練をしているとおっしゃっている。私もこれはほんとうにほっておけないと思うんですが、来年度の計画の中に入っているのでしょうか。ほんとうに私、一昨年のことがいまだに残っておりますことを、非常に驚いておるわけでございますが、御計画があれば伺いたいと思います。
  51. 大沢一郎

    説明員(大沢一郎君) お答え申し上げます。刑務所の施設のいたんでおる所は、もう全国各所にございまして、われわれといたしましても、急を要するものから、そのつど修理いたしておるわけであります。本年度も、各所修繕の費用として相当額を要求しておりますので、ただいま御指摘の点をさっそく調査いたしまして、緊急なものはさっそく修理いたしたいと思います。
  52. 赤松常子

    ○赤松常子君 新規要求額と前年度と比較いたしますと、これは五百万円だけふえているという計算でしょうか、五千万円でございましょうか。これの中にございますわけでしょうか。私、急いでおられますからこの切は少し、また、この次に明確にお返事下さいますように。それからぜひ、私のお願いは、そこを早く修理して、そうして倒壊しない前に、死傷者の出ない前に、早くしていただきたいことを要望いたしておきます。
  53. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 私の伺いたいことは二点ございますが、まず、白井次官と上林主計官にちょっとお伺いしたいのでございますが、それは五万近くあるところの保護司の手当は、一件一カ月百三十円に今までなっておるのです。ことしは少しは高く支給されるように御努力願っておりましょうか、どうでございましょうか。それを一つ伺っておきたいと思います。
  54. 上林英男

    説明員(上林英男君) ただいまの御質問でございますが、三十三年度予算につきましては、目下査定中でもございまして、大蔵省の省議にもかかっておりません段階でございますので、この段階では、ちょっと発言を差し控えさしていただきたいと存じます。
  55. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 上林主計官は、特にこの法務省関係、それから保護関係について、今まで非常にお骨折り願っておりますから、この際お願い申しておくのでございますけれども、実はこの売春婦の婦人相談員に対しましては、これは厚生省関係でございますが、月の手当が九千円出ております。それから足代というのが二千円出ております。一万千円でございます。実際、保護司の仕事と、売春婦に対する相談員の仕事との内容を比べてみますというと、保護司の骨折りに比べますというと、雲泥の差だと思っております。だけれども、これは最近にてきた法律によってきめられることですが、この保護司の方は、今から四十年近、ても前から始まっている仕事でございまして、その当時というものは、金なんか問題じゃなかったのでございますから何でもなかったんですが、今日比べてみますと、保護司が一人に対して百三十円でございましたら、十人持っておりましたら千三百円です。千三百円の報酬でもってあれだけ苦労する者に対しまして、非常に私、これは厚生省と法務省とのつり合いがとれないと思っているのでございますが、いかがでございましょうか。こういう問題について御検討下さいましたことがございますでしょうか。どうでしょうか。今日、五万近い保護司の人が、もしも非常に功利的に考えまして、この仕事をやめたといったら、一体日本の国は治まるでしょか、どうでしょうか。犯罪者はどういうことになるのでございましょうか。これは大へんゆゆしい問題だと思っております。きょうは時間がございませんがら、簡単にお答え願いたいと思います。
  56. 上林英男

    説明員(上林英男君) 婦人相談員のことは私どもの担当でございませんので、あるいは間違っておるかもしれませんが、あれは市の吏員と心得ております。保護司さんの場合は、いわば民間の篤志家等の方に、更生保護事業の仕事を御援助願っておるという関係でございまして、若干感覚が違うかと思いますが、たとえば同じ法務省の中に、人権擁護員などの問題があるわけでございますが、これは、たとえば人権擁護員でありますと、昨年の予算で約九百万円くらいございますが、それを一人当りにいたしてみますと、約千五百円くらいに相なっております。保護司さんの場合は、トータルの金額が一億七千百万円くらい入っておりますが、約五万人でございますから、一人当りにいたしますと、約三千五百円くらいになるわけであります。こういうようなバランスも考えまして、もちろんいろいろと御苦労を願っておることでございまするので、そういう点も十分考え、あるいはバランスの点なども考えてやっておるつもりでございます、なお、そのほかの点につきましても、いろいろと考慮をいたしておるつもりでございます。
  57. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 いろいろまだ伺いたいけれども、次にいたします。法務大臣は、保護司の手当が、月一人に対して百三十円くらいということはよろしゅうございましょうか。何か一つ手を打ってもらっているのでございましょうか。どうでございましょうか。
  58. 唐澤俊樹

    ○国務大臣(唐澤俊樹君) この点は、私もまことにどうも窮屈過ぎるというふうに痛感をいたしておる一つでございます。一体法務省の予算は、まあひが目かもしれませんが、特に各省に比べて、何か非常に窮屈のような感じがいたしますが、そのうちでも、先ほど亀田委員から御指摘になりました営繕関係、いろいろ諸施設の点などは、いかにも窮屈過ぎると感じますが、また、この保護司の関係もそうでございまして、建前が、まあ民間有志の方から援助をいただくというような、名誉職的な色彩があるという関係もございましょうが、先ほどお述べになりましたように、対象者一人について、月手当百三十円、しかも毎月大体対象者と三回ぐらいは連絡をとる、こういうようなことになっておりますから、実費弁償と申しましても、実費相当額を弁償しておらない実情でございまして、みんな献身的の努力プラス自分の自弁と、こういうことになっておりますから、この点も強く大蔵省にお願いをいたしておるわけでございまして、たしか予算要求は、ほとんどその倍額の二百五十円を要求いたしておると思いますが、この点などは、特に大蔵省に一つ調べてもらいまして、増額をしていただきたいと、強く考えておる一つの事項でございます。
  59. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 この保護司活動というのは、この仕事の犯罪者の問題についての、ことに少年問題についての一番中心の活動でございますので、この点は、この財源がどこから出ましょうが、売春婦に対する仕事についての月九千円に足代二千円、一万千円というものに比べますというと、あまりに比較にも何にもならないものを一体ほっておくということが、私納得できないのでございます。どうか一つ、まあ法務省は片から予算を取らぬというのが定評でございますけれども、予算を取っていただきたいと思います、唐澤大臣ですから。  それから次の質問でございますが、これは唐澤大臣と、それから保護司長に伺いた。それは、この間、国連の防犯及びその犯罪者の処分に関する世界会議の東南アジア会議がございましたことは御存じの通りでございますが、あそこにおきまして、やはり問題の中心は、保護司活動の問題てございました。保護局長御存じの通りで、大へんやかましかったのでございますが、そこで私は非常に感じましたことは、家庭裁判所なんかを大会の人たちの視察いたしましたときの、調査官というものと、それからこの法務省関係のフロヴェーション・オフィサーというものは、幾ら説明してもそれがよくわからない。わからないはずでございます。そうしてこれは外人にわからすためというだけでなくて、一体一貫してすべき仕事に対して、法務省と、それから裁判所と二つ分れるようなやり方というものは、法律がいかにあろうとも、やり方というものはほとうに効果的であるかうかということを、私は法務省なり、保護局長なり、御当局の方はどういうふうにお考えになっているのでしょうかということをまず伺いたい。
  60. 福原忠男

    説明員(福原忠男君) この少年保護に関しまする宮城先生の御経歴から申し上げて、何とお答えしてよいのか、その点については非常に苦心するのでございますが、実はこの少年保護制度というものは日本でかなり——日本のいわば醇風美俗と言いましょうか、従来の考え方から成り立って、ちょうど四十年ほど前の少年法の制定に始まるのでございますが、その後、終戦後のその制度に対しまする当時のアメリカ側のいろいろな示唆というようなものから、かなりいろいろな改変が加えられまして、もともと保護という制度は新しい制度の上に、そのようないろいろな要素が入りましたために、現状は御承知の通り、かなり私たち自身といたしましても非常に複雑多岐にわたっているということを痛感いたしております。  それで、実は内輪みたいな話でございますが、今度の国連アジア会議を通じましての諸国の方々の御発言を通じて、われわれ非常に感銘するところがありまして、実はよりより最高裁判所のその部局の方、それから法務省のその部局の者など、その他関係の者が、できますならば早急に——もちろん私的なものですが、委員会程度のものを作りまして、この新しい制度をいかようにして今後恒久的な、しかも確立した制度になすべきかということを研究し、その成果をできるだけ早くあげて実現まで持っていきたい、こういうふうに考えております。
  61. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 よくわかりましたが、その御趣旨は、そのお考えは法務大臣もやはりその通りでございましょうか。もっと言ってみれば、少年法にメスを入れるべきときがきているということを保護局長おっしゃるのでございましょうね。その点について法務大臣いかがでございましょううか。
  62. 唐澤俊樹

    ○国務大臣(唐澤俊樹君) 私も全く同様に考えております。
  63. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 それではお願い申しておきます、いい機会でございますから、どうしてもこの際、極端に言いますというと、少年法を御破算にして、ほんとうに正しい少年を守る法律を、つ作り上げていただきたいということをお願い申しておきます。  それからいま一つは、ちょうどアジア大会がございます最中に、例年の通りに、更生保護大会が——つまり保護司大会が東京で開かれましたのでございますが、そのときに、全会員に発表されましたものによりますというと、自民党だけの議員をもって更生保護議員懇話会というものができまして、そうして唐澤大臣は顧問におなりになっておりますが、これは一体私そのとき発表になりましたので驚きましたけれども、こういう一党一派に偏したようなことで、これは将来問題を起しゃしないでございましょうか。唐澤大臣、顧問として一つ御答弁願いたいのであります。
  64. 唐澤俊樹

    ○国務大臣(唐澤俊樹君) ありていに申しまして、これは私そういう考え方で団体を結成しつつあるというようなことは存じなかったのでございますが、できて、そうしてその趣旨を聞いていきましたところが、いかにももつともな趣旨でございますから、私もそこへ名を連ねるようになったわけでございますが、これは別段そういう仕事を、一つの党派とか、一つの団体だけで独占するというわけでございませんで、あらゆる方面でそういう苦労をして下さる団体ができて、しかも相互に連絡をとっていただくようになればけっこだと存ずるのでございます。ただ、ただいま御指摘のような御心配もあることでございますから、十分注意して参りたいと存じております。
  65. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 実はその大会が終り写してから、あの会議の中で少しいろいろな材料を持ち寄って、非常にこの保護司活動というものが、党一派に属するようなことがあってはならないのじゃないか。中には、まあうわさでございますから、そっと聞いておりましたけれども、全国の保護司五万人を、しかもその地方の地区では非常に有力な保護司を自民党でつかむということは、選挙対策としましたら、非常にこれは有効であるということを話しておったという話がございまして、ちょっと問題をかもしかけていたようなにおいもいたしましたのであります。だけれども、そういうことになりますというと、はなはだ私はこの仕事の上に因ると思っている。これはもう社会党といわず、緑風会といわず、それから全国民が寄って、私はこの仕事を援助しなかったら、それは完成しないというように私は思っております。それで、つこういうことは——私も成り行きのことをよく存じませんけれども、一つ研究を進めていただきたいと思います。
  66. 亀田得治

    亀田得治君 ちょっと関連して……。  これは大へん気になることを聞きましたので、お聞きしますが、ほんとうに更生保護という立場で、そういう問題に熱心な議員の方がいろいろ相談をした問題を促進する、これはけっこうなことだと思うのですが、もしそういうことであれば、宮城先生なんかは年来のこれはもう非常なその方面の熱心家なんでね。そこいう方が当然そういうところに名前が並ばなきゃ、私はいかぬと思う。あるいはまた、ほかにもいろいろおありだろうと思うのですね。で、なぜそういう点について、法務大臣としてはちょっと注意をされれば、そういうふうな一つのグループだけででき上るというようなことにはならなかったのだと思うのですが、その辺のいきさつをもうちょっと御説明願えませんでしょうか。
  67. 福原忠男

    説明員(福原忠男君) 実はこの更生保護議員懇話会というものが、本年の保護司の全国大会というのが行われました際に結成されたのでございますが、実はこの更生保護事業に関しまする予算がきわめて少いというところから、現実には各地の保護司の方々が非常に、自弁でいろいろな活動をなされているというようなところから、その地元におきまする有力者として、それぞれの国会議員の方に御連絡なぞもあり、そしてそういうふうな事情を直接お述べになる機会も多いようでございます。そして昨年からこの保護司の全国的な組織でありまする全国保護司連盟という組織があるのですが、その連盟が更生保護強化運動というものを始めたのでございます。それは保護と言いましても一般社会の有識の方々はおわかりですが、なかなか新しい制度ですから、おわかりにならないので、これが啓発宣伝ということと、この事業の重要性に比較して、国家予算が少な過ぎるから、国家予算の拡充を目標にするという二つの目標のもとに始めしれたのでございますが、そのような関係から非常に各地で保護司の方が国会議員の方とかなり接触があられたわけです。それで、保護司のそういうような御熱意にこたえて、各地の議員の方々で何らかの措置を講じなければならないというようなことを寄り寄りとお話し下さったように聞いております。ところが、現実の問題といたしましては、当初そういうような議員の方の大同団結的なものというような話もあったようでございますが、なかなかに結実しませんで、昨年は過ぎ、ことしになりましてから私たち聞いたところでは、やはりその熱心さというとあるいは語弊があるのでございましょうが、特に熱心な方がやはり自民党の方に多かったように思います。そしてその方々が三十数人で何か最初会合を開かれて、そうしてそれが数日の間に議員懇話会という形をとりまして私の方に御連絡があった次第でございます。当初私たち今お話のあったように、たとえば従前から法務省に大へん御関係のある宮城議員その他お名前をあげては失礼ですが、何人かはおられるのですが、そういう方々にそういうような形がとられるということを大体お伝えしたりなんかしたことがあったのですが、結果としては、その仕事がやりやすいと申しましょうか、議員の方の総意を結集するのに仕事がやりやすいということで、自民党だけのそういう会ができたということになったのでございますが、もちろん先ほど大臣も御注意があったのですが、これが更生保護というきわめて政治的に無色でなければならないものに対して、もし、党一派に偏したというようなことになりますならば、それは大へん問題だと思いますので、そういう点はおそらく良識のある議員懇話会の方々といたしましても十分御理解があっての御活動だと思って応援いたしておるような次第でございます。
  68. 亀田得治

    亀田得治君 その懇話会というのは、たとえば保護司連盟、これは半ば公けの性格を相当持っていますね、保護司連盟。そういうものとはどういう関係になっております、事実上。
  69. 福原忠男

    説明員(福原忠男君) この連盟といいますのは全く私的の機関でございます。
  70. 亀田得治

    亀田得治君 だけれども、保護司が集まって……。
  71. 福原忠男

    説明員(福原忠男君) 保護司の方々が、これは民間の方でございますから、そういう方が仕事をする上においていろいろと、大会を持つとかそれから啓発宣伝をするとかいうときの必要に応じまして自発的にお作りになっておるものでございまして、別に公的性格はございません。
  72. 亀田得治

    亀田得治君 私の聞くのはそうじゃない。保護司というのはこれは公けの立場です、一人々々の保護司は。だから、その人が集まったものは半ば公けの性格を持ったもの、こう言ったわけです。半ば……。だから、そういうものと懇話会というものは相当どうも密接な関係があるというふうに今の御説明でも若干とれるわけですが、そういうことになると、保護司連明なり保護事業自体に対して私はやはり問題が起るのじゃないかという感じがするのですが、これはどういう関係になるのでしょうか、保護司連盟とこの懇話会の関係は。
  73. 福原忠男

    説明員(福原忠男君) 今までのところ、私承わっている限りでは何ら直接の関係はございません。連盟の幹部の人たちがいろいろと陳情にしる対象として議員懇話会があるような形になっております。
  74. 亀田得治

    亀田得治君 そうすると、関係が出てくるわけです。連盟の大会を契機に作られたということも経過上明らかなようだし、そうして陳情に上る対象としてということになれば、それはもう半ば公けの格好というのが出てくるわけです。何も連盟が陳情に上るのは個々には私とももいつも地元から陳情を受けますよ。それから理論的には、先ほどあなた何か保護の問題について、自民党の方が熱心な方が多かったからこうなったというようなことを言ったんですか、あれはもう重大な失言ですよ、そんなことは……。それは選挙運動などに結びついているからそういう形が出る場合があるわけなんです、熱心に見えるように……。本気で保護事業というものに対してどこまでやっているかということは別な問題です。私どもは、本質的にそういう保護事業というものについてはやはりある程度正確な認識をもって、それが選挙に結びつこうがつくまいが、お手伝いすべきところはすべきものだ、その結果がどの方に結びついておろうとそういう感じですよ。私どもの考えはそういう考えなんですから、それを二つ比較して、それがどっちがしからば保護事業に熱心かということは、保護局長ともあろうものが、そんなことを簡単にこういう公けの席上で言われちゃわれわれははなはだ迷惑するわけです。それは私は、ああいうことはやはりちょっと取り消してもらわないと、公けの記録にとどめられちゃうんじゃこっちがまるで不熱心のような感じになりますからね。それと、先ほど申し上げるようにだ、保護司連盟が陳情の対象というものは懇話会だ、そんなことはあなた僭越ですよ。そう思いませんか。むしろ与党の方は財政をちゃんと握っているわけですからね。そんなものを作らぬだってむしろ動ける方法が幾らでもあるわけでしょう、実際は。だからそうじゃなしに、むしろそういう権限のない人たち、そういうものこそ大事なんですわ、逆ですよ。しかし、権限のない立場の野党のものだけで作るということもおかしいでしょうから、やはり作るとすれば、常識的に各党全部入って、そうしてこの問題に熱心な方が顔を並べて協力する。これは貿易問題だって何だって皆そうなっているじゃないですか。これだけをこういう格好ででき上り、そうしてそれが陳情の対象だと、そんなことを幾らかでも背後で考えながらやっていたんでは、私どもも、一体保護司連盟とか、保護司制度そのものに対してちょっと検討しなければならぬですよ。そんな動きが出てきたんではほんとうの保護司としての、いろいろな子供なり、犯罪者なり、そういう人たちに接する、それがもう不純になってだめです。これは私は有害だと思うんです。もしそういうふうな内容のものであれば……。私きょう初めて聞くんですよ。私は有害だと思うんですがね。大臣どうですかね。
  75. 唐澤俊樹

    ○国務大臣(唐澤俊樹君) これはもうすでに宮城先生も、亀田先生も御承知の上で御発言になっていられることと思いますけれども、保護司の仕事は一党一派に偏すべきものじゃなく、どの政党も非常に御熱心にやっていただいておりますし、これはもういわば政策を離れて、国会に議席を持っているものならば全部の方々が御熱心に推進していただいている問題でございますし、また、そうあるべきものだと考えているわけでございまして、先ほど選挙関係というような御発言がありましたけれども、さようなことがあってよかるべきものではございませんし、さようなことは毛頭考えておりません、ただいまちょっとおとがめがございましたが、局長の熱心な云々ということは、これはもうわれわれの党の中にも非常にこの方のことを御研究になって熱心に窓口として働いて下さっている方もございますし、専門の違いでもってそれほど御熱心でないという方もございますから、その御熱心の方で結成されたのだ、こういうふうに私は承わっておったのでございます。両派の関係のような響きがございますれば、それは仰せの通りでございますが、われわれにいたしましても、事務当局にいたしましても、さようなことは絶対に考えておりません。ただ、私どもといたしましては、これが大事な仕事であるにもかかわらず、いかにもじみな仕事でございますから、なかなか皆さんの注意を喚起することがむずかしいことでございますから、私ども所属しております党の中で熱心な方がそういう団体を作って下さって、そして保護司などのいろいろの事情の説明も窓口として聞いていただいて、そして党の政策の方へこれを伝える。こういうような人たちが働いていただくことはまことにありがたいことでございまして、これはわれわれの所属しておる党ばかりでなく、どの政党といわずそういうふうに保護司一般の連絡をとるような団体ができて下さいまして、これをよく聞いて下さって、そして推進していただくことは、これはまことにありがたいことでございます。さように考えておるわけでございまして、選挙云々というようなことは絶対にさせてはならないことであり、また、そんなことのあるべきはずのものではないと、かように考えておるわけでございます。
  76. 福原忠男

    説明員(福原忠男君) 先ほどからの私の説明につきまして、言葉が足らないため誤解を生じましたことにつきましては、まことに申しわけございませんが、ただいま大臣の御答弁の通りでございまして、更生保護事業について自由民主党の方々だけが熱心であるなどとは決して考えておりません。自由民主党の中の熱心な方々が議員懇話会を結成されたという意味でございましたので、どうぞ御了承いただきたいと存じます。なお、保護司の方々が昨年来、更生保護関係の予算獲得について、国会議員の方々に陳情をしておられますが、更生保護事業の本質上超党派的な動きをしておられまして、一党一派に偏することは全くないように承知しております。私といたしましても、国会の全部の皆様から更生保護事業の発展のため力強い御指導をいただきたいと存じておりますので、よろしくお願い申し上げます。
  77. 青山正一

    委員長青山正一君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  78. 青山正一

    委員長青山正一君) 速記を始めて。  どうでしょうか。きょう無理してもらってこういう関係者にお集まり願ったわけなんですが、現在一時ということになりますが、まだ一時間以上の質問があろうと思いますので、これは棚橋さんもあろうし、小酒井さんもあろうし、いろいろあろうと思いますが、一応休憩にしましょうか、それとも……。これで法務大臣はお帰り願うことにして、大蔵省ではどうでしょう。
  79. 白井勇

    説明員(白井勇君) 私どもは御承知のように、主計官初め徹夜で仕事をやっているさなかでございますので……。
  80. 青山正一

    委員長青山正一君) 予算の関係で、法務関係の主計官も来ておられるでしょう。これを聞くということは一番重要なことですから、一つぜひ……。
  81. 亀田得治

    亀田得治君 ここの質疑を聞いてもらってあちらへ帰って仕事をしてもらわなければだめですよ。
  82. 赤松常子

    ○赤松常子君 一言大臣に伺いますが、今宮城先生の御発言で初めて伺いまして、私もほんとうに不明朗で、不可解な思いを深くいたしましたが、懇話会の顧問に法務大臣は大臣として顧問におなりになったのでしょうか、個人としておなりになったのでしょうか。
  83. 唐澤俊樹

    ○国務大臣(唐澤俊樹君) 個人でございます。
  84. 青山正一

    委員長青山正一君) 休憩いたします。一時半から再開いたします。    午後零時五十七分休憩    ————・————    午後二時九分開会
  85. 青山正一

    委員長青山正一君) 休憩前に引き続き、委員会を町開いたします。  昭和三十三年度法務省裁判所関係予算を議題といたします。  御質疑の方は、御発言をお願いいたします。
  86. 大川光三

    大川光三君 最初に、私は、白井大蔵政務次官、五鬼上事務総長、それから横川政務次官、お三人に総括的なことを伺いたいのであります。  先般、われわれ委員会大阪公聴会を開きましたその席上で、在野法曹を代表されまする大阪弁護士会の吉川参考人から出た意見でありますが、いろいろ最高裁機構改革の問題、あるいは第一審強化の問題、審理促進の問題、人権尊重の問題も、要するに、法務省関係の予算の獲得にあるのだということを申されまして、おられました裁判所検察庁あるいは学界、新聞社関係参考人諸氏も、その言葉に非常な共鳴の態度を表わしておったのであります。そこで、同弁護士は言葉を次いで、根本は法務省の予算の獲得にあるのだ、一体それに対して法務大臣は今までどうしておるのか、最高裁判所は一体どうしておるのか、しかも、大蔵省は一体行政官庁と司法というものに対してどういう比重でものを考えておるのかというような論議も出たのでございますが、言葉は簡単でございましたが、要するに、予算の獲得にあるというこの言葉に対しまして、法務省関係最高裁判所関係、大蔵省関係の皆さんから御意見を伺いたいのであります。
  87. 横川信夫

    説明員(横川信夫君) ただいまの御指摘の点、私どももまことにお話の通りでありまして、私法務省に御厄介になりましてから約半年でございますが、その間にいろいろの施策を進めて参りますにつきまして、行き着きますところは、すべて予算が足りないというところに帰着して参るのでございまして、特に、先ほど来御審議いただいた内容でございまする保護司の問題あるいは施設の問題、人件費の問題等につきましては、私も長いこと法務委員をいたしておりまして、よその役所の姿をおぼろげながら存じておるのでございますが、それらに比較いたしまして、あまりに法務省の予算が少うございます。私どもは三十三年度の予算請求に当りまして、何も法務省だけが特によくなるようにという要求はいたしておりません。せめてよそ様並みにそのレベルにまで引き上げていただきたいということをお願いしておるのでございますが、申し上げるまでもなく、予算というようなものは、既往の実績の上に積み上げて年々増減いたして参るものでございますので、急速に法務省の予算が大拡張するということはなかなか期待できないだろうと思うのでございます。幸いにも、本委員会委員の方々は、法務省の予算の実態をよく御理解を願っておるようでございます。皆様方の御支援をいただきまして、先ほど大川委員からお話のございました司法の理想的な姿に一歩でも近ついて参りたい、さようなことを念題いたしておるものでございます。
  88. 白井勇

    説明員(白井勇君) 大蔵省としまして、特に、法務省関係の予算につきまして差別待遇をしておるという考え方で事を運んでおるとは私は承知いたしておりません。やはり全体の規模の中におきまして、他との振り合い、その当時の情勢等を勘案いたしましてきめられておると思いますが、現に三十二年度の先ほどから問題になっておりまする営繕等の費用につきましては、三十二年度は前年度からたしか五割ぐらい増加いたしました形になっておりますが、もちろんこれは先ほど来お話のありまするような実態に十分であるとは考えられないかもしれませんが、そういうような方向に考えておるわけでありまして、今後とも予算の範囲内におきまして、できるだけのことは考えていかなければならぬのではなかろうかと考えております。
  89. 五鬼上堅磐

    説明員(五鬼上堅磐君) 休憩前にも申し上げましたように、裁判所の設備というものは、かなり古いひどい状態であるということは、これは大蔵当局にもいろいろの資料をもって毎年予算で御説明申し上げておるのでありますが、実は先ほど大川委員の御質疑の中に、一審強化ということのお言葉がありました。これは昨年度最高裁の方で委員会を設けまして、何といっても裁判の促進をするためにはまず一審を強化しなくちゃいかぬという考えからして、立法の手続では職権特例をつけた判事補を高裁に送って、そうして高裁の相当年輩の判事を一審に回し、そうして法廷の開廷回数等もできるだけ多くし、また、裁判への信頼にこたえるために合議制をだんだん多くしていく。かような考え方から一審の充実ということを全国にわたっていろいろ通達その他を流して、全国の裁判所並びに検察庁に御協力を願ったのですが、行き詰まるところは結局施設の問題で行き詰った。たとえば、一週三回法廷をやっておったところを四回やるといってもやる法廷がない。そういうことでは、ただ単にかけ声だけで、一審強化を唱えるだけ、一向実績が上らぬじゃないかということを言われておるのであります。先日関西の近畿弁護士大会に行きましたときにも強くこういうことが叫ばれました、ことに弁護士大会においては、一体裁判所の予算についてはどうやっておるのか、こんな予算ではどうにもならぬじゃないかということを代表の弁護士の方が述べられまして、近畿弁護士大会の決議となって表われておるのであります。その節私もいろいろ事情は申し上げましたのですが、ただ各省の予算と違いまして、私の方の予算というものは、実は予算閣議はだれもその代表者が出てございません。従って、実際には法務大臣その他からいろいろこちらの事情を訴えて十分反映してもらうつもりでおるのですが、実際に裁判所の予算を代表するという者は出していない。そこで、財政法でいわゆる二重予算の制度というものはございますけれども、そういうようなことを国会に政府の予算とは違うから審議してくれということを申し出ることもできる道は開けておるのでありますけれども、これもまた、裁判所はいろいろな点から慎重に考慮しなければならぬというような点がございまして、私どもとしては国会、政府の方々にまず一番わかりよいところの裁判所の施設の状況をよく御賢察願って、そうして一歩々々改善していきたい、かように考えます。
  90. 大川光三

    大川光三君 白井大蔵政務次官に重ねてお伺いいたしますが、御承知の通りに、裁判官及び検察官に対する待遇改善の問題につきましては、先般一般政府職員と均衡を保つために俸給、報酬増額の法律が通りました。しかし、一面、行政官庁の施設と司法関係の施設にはなはだしい等差がある。言いかえますと、今日の行政官庁はいずれも堂々たる建物、十分なる施設がある。それに引きかえて裁判所の中、あるいは検察庁にいたしましても、法務局にいたしましても、きわめて老朽の建物が、間に合わぬような建物、危険を感ずるような建物が多いのでありますが、一体大蔵省の方では行政官庁のそういう建物と司法関係の建物とに等差がないというふうにお考えになっておるのでしょうか、 いかがでしょうか。
  91. 白井勇

    説明員(白井勇君) 法務省関係の建物につきまして、今お話のように、他の官庁の施設と相当遜色があるのではなかろうかというようなことは、私たちもそうじゃなかろうかと思っております。これはもちろん、中には終戦後焼けまして、非常にりっぱな建物が建っておる所もありますし、一面には、大体におきましては、やはり歴史が古いために建物そのものは相当老朽化しておる、こういう実態じゃなかろうかと思います。これはほかの官庁におきましても、御承知の通りに、やはり歴史の古いものは、どういたしましても数のうちにはそういうものは非常に多いわけでございまして、決して法務省関係のものが他よりもよけい多くなっておるというふうに私は実は考えていないであります。
  92. 大川光三

    大川光三君 重ねて伺いますが、申すまでもなく、行政の面も大切であるのでありますが、さらに司法の重要性ということを特に御考慮をいただきまして、今後大蔵当局として、法務省関係の予算について格別な御考慮をいただきたいと希望を申し上げておきます。  それから営繕関係について多少事務的な質問をいたしたいのでございますが、午前中にも各委員から御質疑がございました通りに、われわれ法務委員会といたしまして、法務省所管の施設を視察して参りました。一見して何と申しますか、老朽のもの、ほとんど廃物に近いもの、その営造物の中に入れば危険を感ずるようなものさえある。その中で働いておる人自身に対しても人権をじゅうりんすると思われるような老朽施設が多いのでございまして、これは歴史的にそうなって、結局古いものがある。しかし、時代は着々として進歩しておるのでありますから、時代に即応したような施設を設けて、そうして重要なる司法の使命を果さなければならぬ、かように考えるのでございますが、この点について、法務省としてはどういう根本策をお持ちになっておるか、お伺いしたいのであります。
  93. 大沢一郎

    説明員(大沢一郎君) ただいま御指摘いただきましたように、法務省の所管の施設は非常に老朽したものが多いのでございまして、また、事務処理に支障を来たすほど狭隘な施設も多いのでございましてまことにわれわれといたしましても遺憾に存ずる次第でございます。従来からもこの施設の改善に努力して参ったのでございますが、休憩前の御質疑の際にも申し上げました通り、いかにも数が多いのでございますのと、その所管の組織のうちには終戦後独立いたしましたり、また、新たに設けられた役所もございます。それらを早急に設置しなければならないというような事情で、全般的に改善整備するというところまで手が回っていないような状況なのであります。最近当委員会で御視察と、実態調査を願いましたところでも、裁判所等に間借りしておるところも幾多あるような状況でございまして、全般的な改善にまで手が届かなかったものでありますから、昨年度来長期営繕計画というものを樹立いたしまして、幸い大蔵省御当局の御認織を得まして、昨年度からその実施に移ったわけでございまして、順次この計画に基きまして、事務能率の増進のため、また、利用せられる皆さん方の利便をはかるように努力をしていきたいと考えております。
  94. 大川光三

    大川光三君 ただいまの御答弁のうちで、長期営繕計画を立てておる、その内容を差しつかえなければ具体的に御説明いただきたいと思います。
  95. 大沢一郎

    説明員(大沢一郎君) 現在法務省所管の施設のうちで老朽廃しておるために新営を要するものといたしまして、全組織を通じまして、庁の数にいたしまして全体の約半数の千七百カ所に及んでおるのであります。これを金額にいたしますと、約四百六十五億に相なるのでございますが、その中で特に急を要しますものを第一次といたしまして、われわれといたしましては、十年以内にそれを整備いたしまして、続いてその余の整備に移りたい、こういう計画で年度の計画を立てたのであります。大蔵省にその費用を要求しておるわけであります。
  96. 大川光三

    大川光三君 十年計画で四百六十五億円、そこで、そのうちで第一次的に可及におやりになる分に対する予算というものはどんなものですか。
  97. 大沢一郎

    説明員(大沢一郎君) 十年以内に整備をいたしたいと思っております第一次計画の所要経費は、約三百六十億円でございますが、とりあえず昭和三十三年度におきましては、そのうち特に緊急を要するものを拾いまして、約五十五億円を計上したわけでございます。しかし、三十三年度には、このほかに売春防止に関する婦人補導員の施設費もございますので、それは別個に七億円ばかり要求しております。
  98. 小酒井義男

    小酒井義男君 計画的な営繕のあれに関連をすると思うのですが、全国に相当数刑務所で移転をしなければならないのがあるように聞いておるのです。こういう刑務所の移転等についてもやはり計画をお持ちになっておるのであるか、その点をまずお尋ねしたいと思います。
  99. 大沢一郎

    説明員(大沢一郎君) 現在刑務所が、もとは郊外等にございましたが、市街の発展によりまして、市街の中心部を占めるようになりまして、各都市の都市計画、あるいは都市の発展を阻縛しておるというような実情と相なりましたので、われわれもこれにつきましては、刑務所の移転ということを痛切に考えておるわけであります。特に最近各地からかような御要望がございまして、まことにごもっともな点もございますので、早急に御要講に答えて、刑務所を最も適当な地に移したいと考えておる次第でございまして、何分にも刑務所を移転新築いたしますとなりますと、非常に大きな施設でございますので、膨大な経費を要するわけでございます。また、移転します先につきましては、その敷地獲得につきまして少なからぬ困難を生ずるのであります。将来の都市の発展計画も考えなければなりませず、また、交通事情等も考える必要もございますし、また、刑務所が移転いたしますと、職員が大ぜい刑務所と同一の場所に行かなければなりません。その生活並びに職員の子女の教育ということまでも、いろいろ考慮いたさなければなりませんので、われわれといたしまして、今各地からいろいろな御要請を受けておりまするが、これにお答えいたすべく刑務所の立地状況を各方面から総合的に調査して、計画を順次実現したいとかように考えておる次第であります。
  100. 大川光三

    大川光三君 ただいまの刑務所移転問題に関連するのですが、具体的に一つだけ伺いたいのですが、名古屋市の場合、実は私も現場を視察したのでありますが、今日非常な発展を遂げておる名古屋市の場合に、あのどまん中に刑務所があるということは、都市の繁栄の上にも非常な障害となるように考えられるわけでありますが、この名古屋刑務所の移転問題に対する当局意見を伺いたい。
  101. 大沢一郎

    説明員(大沢一郎君) 名古屋の刑務所につきましても、過日、私名古屋刑務所の位置を視察いたしまして、都市計画が着々進んで名古屋刑務所のところで行き詰まりになっておるような状態も拝見いたしまして、また、都市の繁栄、商業の中心地から非常な近い距離にありまして、名古屋市の発展上、また、刑務所といたしましても、囚人の教化上、適当な場所とは考えられない、かように見受けられまして、われわれといたしましては、移転につきまして大いにこれから検討して実現いたしたいと、かように考える次第でございます。
  102. 小酒井義男

    小酒井義男君 大蔵省側にちょっとお尋ねをしておきたいのですが、刑務所の移転が、建物が相当古くなっておりますね。刑務所それ以外でもそうですが、今刑務所の話が出ておりますからですが、名古屋の例が大川先生の方から出ましたので、私も実は名古屋の刑務所を見まして、早急に修理をしなければならぬところがあるのですね。いつまでもほっておけぬ。しかし、これに金をかけて修理をする、しかしまた、移転が一方では促進されておる、こういうことになると修理をするだけの予算を使うのは非常にむだになるのではないか、そういうところは、やはりできるだけ早く関係者と話し合って、移転をするような方向へ持っていくことの方が経済的じゃないかというふうに考えておるのですが、こういう点どうですか。
  103. 白井勇

    説明員(白井勇君) これは大蔵省としましては、お説の通り、予算の執行上はあくまでも効率的に予算の執行ということに力を注いでおるのでありまして、今お話しのような点は、これはまことにごもっともな点だと思います。ただ、今具体的に法務省の方からお話がありますかどうか、よく知っておりませんので、もし主計官の方で事情がわかっておりますればそれをお答えいたさせます。
  104. 上林英男

    説明員(上林英男君) 名古屋の点につきましては、私も法務省から御説明を聞いております。ただ一般的に見ますと、いろいろそういうお話が、都市の発展に伴って多くなっております。一般的な問題として考えました場合に、いずれにいたしましても、刑務所の移転という問題は、将来の問題としては考えていかなければならぬと存じております。ただ、先ほどからお話がございましたような、既設の設備にいたしましても、なかなかうまく手が回らないような事情もございます。それから一刑務所を移報いたしますと、まあたとえば名古屋でございますと十億程度以上の金がかかるものと私心得ておりますが、相当に資金も要するわけでございまして、それを実現して参りますためには、その施設も老朽し、いずれは建てかえなければならぬというような事態が起りました場合には、計画的にこの予算のワクの中で、いろいろとお考えを願っていって、移転の問題と建てかえの問題とをあわせて考えていくというような格好で、お考えをいただきたいというように、私どもとしては考えている次第でございます。
  105. 小酒井義男

    小酒井義男君 抽象的にはそうでしょうが、すでに都市計画の道路になるようにきまっている名古屋の場合ですと、道路にとってしまったのでは刑務所として使い切れない、しかももうあまり長くほっておけぬほど、非常に老朽をした建物が中にはある、こういうことが具体的なんですね。十億かかるだろうというお話ですが、その現在の施設の評価もありましょうし、新しく作る全部の額を国から出さなければならぬということにはなるのじゃないかと思うのです。そういう点はやはりいろいろな条件がありますから、そういう条件をやはり総合的に考えて、これは早く、いつまでにそれをやるというような見通しがつけば、修理をしなくてもがまんをして、それまでいこうということになります。その見通しがいつまでもつかぬでは、やはり現地の刑務所を預かっている人としては、修理を早くしてもらいたいという、こういう要求が出てくると思うものですから、大体私は法務省と大蔵省とでいろいろな点を検討されて、大体の修理なり移転をする時期というものを、おきめになっていただく必要があるのじゃないかと思うのです。
  106. 大沢一郎

    説明員(大沢一郎君) ただいま名古屋刑務所の問題に限定いたしまして、実は私経理部長になりましてから三月半でございまして、私就任いたしまして早々、名古屋市の皆さん方、関係者の方から問題をお聞きいたしまして、さっそく検討にかかっている次第でございまして、ただいまお話のございました旧施設と新施設、所要地等の交換ということも、各地で行われていることでございますので、しかしながら、評価が済みませんと交換もできません、また、計画も立てかねますので、現在刑務所を移転するといたしまして、どこがいいか、適当な地があるかということの決定が先決問題でございますので、これはまあわれわれとして、当然法務省として適当な地を探さなければならないのでございますが、何分にも都市の将来発展とか、あるいはまた、経済的、その他いろいろな事情が各地にございますので、われわれだけでは十分な調査もできませんので、できますれば地元の府県、市町村の方々のお力を得まして、適当な地所を一つ教えていただきまして、そうしてその場所がきまりますれば、その評価等もいたしまして、それで計画を立てて大蔵省にお願いに上りたいと、かような段取りで、ただいま検討に差手したところでございます。それがっきます次第、大蔵省にお願いして、一刻も早く実現したい、かように存ずる次第でございます。
  107. 小酒井義男

    小酒井義男君 まあ今非常に名古屋のことについて御発言があったので、それに関連して、名古屋に限定したのですが、名古屋だけでなしに、やはり移転を必要とする地域はいろいろな点をやはり総合的に検討せられて、そして大体のどこからかかっていくとか、何年ごろにはその刑務所の移転をやられるのであるというような方針を一つおきめ願って、それに大蔵省も一つ御協力していただく、こういうような方向に進めていただくことを一つ要望しておきたいと思います。
  108. 赤松常子

    ○赤松常子君 ちょっと刑務所のことで関連いたしまして……。ただいま長期計画をお立てになっていらっしゃいますことを私伺いまして、ほんとうにいいと思うのでございますが、この間、私ども堺の刑務所をたまたま視察に参りました。あそこは御承知のように、非常に収容者が多うございますけれども、何か構内をおけをかついで歩いておられる方に、それは何ですかと言ったら、水だとおっしゃるのですね。水道がないとおっしゃる。こういう毎日飲んでいらっしゃる水を、おけで、あそこは四千人くらいいらっしゃいますね。それをちょこちょこやっていらっしゃるので、所長さん大へんだと私は思いました。特に人命に関する飲料水などのことが非常に不足しておるわけでございます。それで私伺いたいのは、先ほど電話の不足のこともございましたが、長期計画はことしは電話だとかあるいは水道だとかいうふうに横にそういうものをお取り上げになるというのですか、あるいはブロック別にことしは東北とかことしは近畿とかというふうにブロック別に重点主義をおとりになって整備の順序をお立てになっていらっしゃるのか、その辺のことをちょっと伺っておきたいと思うのです。私は水などは一番早く整備して、水道をとってあげていただきたいと思うわけです。どういう長期計画の順序ですか、序列をちょっと……。
  109. 大沢一郎

    説明員(大沢一郎君) ただいまの長期計画は、新営計画についての長期計画でございまして、これは老朽廃あるいはまた、事務の都合というので、その緊急度に応じまして年度計画を立てておるわけでございます。それから給水計画でございますとかあるいは電話あるいはけさほど御質問のございました暖房等は別個に年度計画を立てて行なっておるわけでございます。まあ堺の刑務所の水の件のことはこれは隠すわけでもございませんので、堺のみならず、全国各地にございますので、それも刑務所の増築ということが一時にできませんので、刑務所の中で、まあもう御案内のことと存じますが、明治の建物と大正の建物と、そして昭和の新式の建物とが雑然と中に入っておるわけでございまして、さようなところへ、同じ刑務所に入りましても、あるところは各房に水道ができておるので水洗便所がある。ところが、あるところでは、いまだに飲料水までおけで配付しておるというようなところがございますので、さような給水計画なども別個に順次計画を立てまして改善していきたい、かような考えで進んでおるわけでございます。
  110. 赤松常子

    ○赤松常子君 人間を収容しておるところでございますから、どうぞ機械とか何とかいうことより以上に、ほんとうに重点的に配付してあげていただきたいとお願い申しておきます。
  111. 大川光三

    大川光三君 福原保護局長にお伺いいたします。  御承知のように、売春防止法がいよいよ来年四月一日から全面的に施行されるようになりました。それについて考えられますことは、犯罰防止方策として更生保護制度の充実を考慮すべきであると考えますが、その具体策を保護局長より御説明をいただきたいと思います。
  112. 福原忠男

    説明員(福原忠男君) ただいまお言葉にありましたその犯罪防止対策として、更生保護制度の充実について考慮すべきであるというふうに伺ったんですが、非常にありがたいことだと思います。と申しますのは、先ほど来御審議願っております通り、法務省というきわめてじみな仕事をしておる中でも、この更生保護の分野はことに見劣りのするところなんでございます。と申しますのは、まだこの制度が制定されましてから、日なお浅いということもございますが、必ずしもこの制度全般が社会的な認識を得ておりませず、従って、国家予算等もきわめて貧弱であるというようなことが、われわれとして非常に痛感しておるところでございます。従いまして、ただいまのお言葉に便乗するようなことになりますが、われわれといたしましては、更生保護事業全般を拡充強化するというような面で、昨年から更生保護強化ということを題目にして、非常に各方面の御理解を願っておる次第でございます。それの具体策といたしましては、大体国家予算の貧弱なところを十分に獲得したいというところが重点でございますが、これを大体三つに分けられると思います。  その一つは、保護というものは、ほかの刑事政策と違いまして、役人だけの仕事でなくて、その根幹を、実は民間の方も御協力と申しましょうか、お力によって推進するという特殊の部門でございます。従いまして、現在の更生保護制度におきます民間協力ということは、保護司の方及び更生保護会、これが刑務所を出まして寄留先がないとか、あるいは検察庁で許されたけれども、環境の非常に悪いところに帰らなければならない。これは売春対策の場合も同様なのでございますが、そういう人たちを預るところといって、篤志家の方の更生保護施設というものがあります。そこに寝泊りして、それから就職のあっせん等をさせるのですが、その保護司と保護会というものの拡充をしたい。この点につきまして、昭和三十三年度の予算の重点をそこに極力盛り込んでおります。  それから第一点は、これは更生保護を担当いたしまする地方の官庁といたしましては、保護観察所というものがございます。これは各府県に一カ所しかありません。そうしてこの機構も案はまだ七、八年しかたたないので、全国四十九カ所ありますが、そこに勤めまする職員数全体が九百人というような、およそこれだけ申し上げれば御想像のつく程度のことでございます。そして犯罪の前歴のある人、あるいは更生保護の対象になるという人というのは、各府県必ずしも県庁所在地だけに集まっているわけではございませんので、その点保護観察所の支部がぜひ必要であるということで、官庁機構といたしましては、保護観察所の支部を置こうということを、第二の重点といたしております。  それから第三の重点は、これは先ほど申し上げましたように、有識者の方から御理解願っておりますが、まだまだ社会全般の御理解を願えてない面もございますので、言葉は過ぎるのでありますが、啓発宣伝の必要を感じておりますので、その方面にやはり国の多少の予算を振り向けてもらいたいということを第三の点に考えております。
  113. 大川光三

    大川光三君 一体更生保護制度でですね。現行どれほどの予算を持っておられるのですか。
  114. 福原忠男

    説明員(福原忠男君) 大体この法務省の全予算から言いますと、その三%程度のものが保護局の全体の予算でございます。これは金額といたしますと、今は七億一千万円ほどが私どもの予算なんです。これを三十三年度では十三億六千万円程度にしてほしいという要求を大蔵省に提出してございます。しかし、このうちで、かなりの分野は、その機構とかその他の費用にかかりますので、現実にここで先ほど重点的に申し上げた点と関連して申し上げますと、第一の、保護司あるいは更生保護会関係の予算といたしましては、先ず保護司には、現在は何ら給与的なものを差し上げておりません。すなわち、やかましく言いますと、無給非常勤の国家公務員という資格を与えておりますが、無給ということになっております。しかし、保護司の方にお動き願っておるので、対象者には月に三回は少くとも接触せよというようないろいろな形をとっておりますので、その実費が要りますので、これを一カ月に一人の対象者を相当いたした実費としまして、これはならして月に百三十円を差し上げておるわけでございますが、これはいかにも電車賃にも足らないということで、最近は新聞紙上などで取り上げられたので、意外に反響を呼んでいる分野がございますが、これを私たちとしては、来年はぜひとも二百五十円程度にしてほしい、大へんこれも小さいことを言うようでございますが、いろいろと私の方であれこれ考えまして、資料なども集めまして、大体保護司の方は相当身銭を切られるのだろうと思いますが、実際調査いたしますと、それだけの金をかけているという統計が出ておりません。大体私の方の調査では、二百六、七十円の金をお使いになっている計算になっておりますので、二百五十円と出したわけです。これ臓ある席上でお話して笑われたんですが、現行予算といたしまして、三十一年度は一億七千方円が、百三十円の一人一カ月ということになるのですが、これが対象者がふえたりなんかいたしますので、来年度はこれを三億五千万円にしてほしい。すなわち、一億八千万円ほど増額してほしいということをお願いしております。  それから第二の更生保護会、対象者を寝泊りさしてその世話をするという民間施設ですが、この費用が、今までは四千四百万円程度のものを全額で出しております。というのは、大体これは補助金制度でありまして、民間の慈善事業から出発した、こういう施設なものでございますので、その人たちの努力で、その地方の篤志家の寄付あるいは助成金というようなものでまかなっているのが従来の例ですが、終戦後はなかなかそのようなことでは費目が出ませんものですから、かなり困窮しているという実情でございます。そして大蔵省もその点御注目になられて、ことしは五、六月ころ法務省と連携していただいて、百六十幾つかの全国の保護会の実態調査をいたしまして、その経理面を、きわめて鋭い経理的な専門の方の、大蔵省のお役人から見ていただいたりして、どこに保護会の難点があるかというと、結局職員に一人当り月に三千円程度の国が俸給の補助金として出しているわけですが、一人三千円でございますので、ほかの役所の関係その他と御比較下さればすぐわかるように、きわめて少な過ぎるのであります。そういう点にかなり難点があるということがわかりましたので、いろいろと私どもの方で研究いたしまして、これを大体一万六千円程度の一般の単価に引き直して、これに対しての補助を考えてほしいということ、しかし、その点もなかなか急激にはそういうことができませんので、大体その更生保渡会がいたしました仕事、一人の人を扱ったならば幾ら上げようというような形で、はっきりとこの事務委託費という形で支出しておる、こういうことでございます。そうすると、四千四百万円の本年度の予算が、計算いたしますと一億五千万円程度の支出を必要とする、すなわち、一億円ほどこれは増額をお願いしておる、こういうことになります。それから先ほど申しあげました第一の保護観察所の支部という問題は、現在は、先ほど申し上げたように、全然ないのですが、各県庁所在地に一カ所二十人足らずの保護観察官が駐在するといいますか、保護観察所があるだけですから、これの支部を全国に、少くとも家裁の甲号支部がありまする七十八カ所程度にほしいというつもりでしたが、これもいろいろ計算しますと、なかなか膨大な金になりますので、そのうちでも、特に必要な、ことに網走だとか、かなり県庁から離れていて、その仕事の対象者の多い、仕事の分量の多いという所を十六カ所選びまして、その十六カ所分を要求するようにいたしております。これの費用は新規要求でございますが、三千万円程度です。これは今現行予算には全然ございません。それから犯罪予防、啓発宣伝ということを第三に申し上げましたが、これも現在予算はございませんが、これも八百万円程度の新規要求をいたし、それで御存じだと思いますが、毎年七月、社会を明るくする運動ということをやっております。名称からいいますと、法務省のやっておるような運動ではございませんか、実は社会を明るくする運動というのは、法務省が主催でやっておるのであります。が、この費用も、今まで民間の協力と、自発的献金のみでやっていたんですが、やはり国家的意義があるということから、八百万円程度の国家予算の支出をお願いする、こういうことにいたしております。
  115. 青山正一

    委員長青山正一君) 保護局長、少し形容詞が多過ぎますから、簡単直明に一つこれからお願いいたします。
  116. 大川光三

    大川光三君 大蔵当局に、ただいまの問題に関連して伺いたいのでありますが、お聞きの通りに、更生保護関係の予算が、法務省関係の予算において、わずかに三%、これではお話にならぬ、ほんとうに生きた仕事ができぬと思います。そこで、今、保護局長から、予算経過について、いろいろ詳細な御説明があったのでありますが、この新規要長の予算に対して、大蔵当局はどうお考えになっておりますか、伺いたい。
  117. 上林英男

    説明員(上林英男君) 三十三年度の予算につきましては、先ほども申し上げました通り、目下査定中でございますので、申し上げることは差し控えさしていただきたいわけでございますが、今いろいろ仰せられました点につきましては、私どもは私どもなりに意見を持っておるわけでございます。そういう点につきましては、よく私も保護局長と、去年の予算折衝あるいは今年度の予算要求の際に、いろいろとお話を申し上げておるわけであります。来年度の問題につきましては、また、予算折衝の際によくお話を申し上げ、よく御相談をしながらやって参りたい、こう考えております。
  118. 大川光三

    大川光三君 御承知の通り、犯罪防止という点は、きわめて消極的な仕事のようでありまするけれども、もたらす影響も大へん大きいのであります。そこで、犯人を作ってからその事後処置として費用を使うよりは、いわゆる犯罪防止の面で相当張り込んだ費用をかけてやるのが私は適当だと、かように思いますので、いずれにしても、更生保護関係で三%というのは、これはお話にならぬのでありまするから、十分その点を念頭に置いていただいて、できればうのみにしていただいて、うのみで足りなければ、逆に保護局長のしりをたたいて、もっとしっかりした予算を出せというようにまで御尽力をいただきたい、かように思っております。  それから最後に、もう一つ保護司会のことについてちょっと伺いたいんですが、保護司会の一つの活動というものは、やはり犯罪防止のために、きわめて重要な役割を果しておる、かように考えておるのでありますが、その保護司会に対する予算措置というものは、一体あるんでしょうか。保護局長より伺いたい。
  119. 福原忠男

    説明員(福原忠男君) 保護司会の経費というものは、予算上何ら計上してございません。
  120. 大川光三

    大川光三君 そこで、先ほど保護司に対する費用の点で、いろいろ御計画を述べられたのでありますが、たとえば今度できました婦人相議員ですね。それに対する手当が非常勤であって九千円、そのほかに月に二千円の交通費が出される、これでさえがなおかつ少いので語ります、という声がございまして、関係市の方からその増額方を訴えられておる、こういうような現状でございまして、その婦人相談員に対する物的待遇と保護司に対する待遇という均衡上からも相当考慮されなければならぬと思いますし、やはり保護司会として活動する場合には、これは会内における保護司同士の親睦というような意味じゃなしに、保護司会の対外的な活動というものは犯罪防止の上に非常な役割を演ずると思いますから、これについての予算措置というものも一つ考えてもらいたい、かように希望いたしておきます。
  121. 亀田得治

    亀田得治君 最高裁の方へちょっとお伺いしますが、これも第一審強化の問題等に関連するわけですが、裁判官の宿舎の問題ですね。こういうものはどの程度整備されているのでしょうか。
  122. 岸上康夫

    説明員(岸上康夫君) 裁判官の宿舎につきましては、三十一年の十二月現在で一応の統計を作っておりますところによりますと、戸数といたしまして約九百戸ですが、これは戦前のものと戦後のものと両方含まれております。戦前のいずれも木造で約九百戸、それで裁判官の総人員が二千二百人でございますので、率から申しますと約四一%というのがいわゆる充足率、総人員の四一%のものは官舎に入れるような戸数があるというのが現状でございます。
  123. 亀田得治

    亀田得治君 それで例の裁判官の異動等の問題ですね。第一審に有能な裁判官がもっと出れるようにしたい、これはなかなか予定通りいかぬわけですね。それはやはり終戦直後のようなことは、宿舎の事情もそんなひどいことはないと思いますが、柵状でも相当やはりそういう宿舎などの問題が裁判官の異動に大きな一つの障害になっているのじゃないかと思いますが、そういったような点はどうなっておりますか。
  124. 岸上康夫

    説明員(岸上康夫君) その点は御指摘の通りでございまして、私どもの方で異動の場合に必ず官倉があるかないかというのが問題になります。実際問題としても、現状では借家ということはなかなか困難でございます。あっても非常に高くて、裁判官が住むに適しないようなところしか見出すことが困難だということで、私どもといたしまして、人事を円満にするために官舎の整備ということの必要性は非常に痛感いたしておるわけでございます。何とかこれもできるだけ早く整備したいというふうに考えておる次第であります。
  125. 亀田得治

    亀田得治君 で、これは普通の一般の公務員の官舎とやはり非常に意味か違うので、今最高裁で建てておるそういう大きな政策がこれによってはばまれるかどうか、そういう点が関連している問題ですからね。この点はもう少し大蔵省の方なんかでも認識するようにしてもらいたいと思いますね。ことしはこれは何戸建てる予定であと何年くらいで大体この問題を片づける、その辺のところを。
  126. 岸上康夫

    説明員(岸上康夫君) 本年度の裁判官の官舎の予算は八千百万です。これは一般の公務員宿舎施設費のうちから移しかえを受けまして、それによって実施いたすことになっております。ただ、そのうちで約一割の八百万円が繰り延べになりました関係上、実際に三十二年度でできますのは、それを引きました七千三百万程度でございます。それで大体今予定しておりますものは、全国に戸数にいたしまして約八十戸くらいでございます。大体一戸当りは十五坪の分と二十坪の分でございます。
  127. 亀田得治

    亀田得治君 来年度の予算では何ぼくらいですか。
  128. 岸上康夫

    説明員(岸上康夫君) 来年度の要求は、官舎の分といたしまして全部で三億五千万ほどの要求をしております。
  129. 亀田得治

    亀田得治君 何戸くらいになるんですか。
  130. 岸上康夫

    説明員(岸上康夫君) 大体一戸当り……、ちょっと正確な数字は覚えませんが、土地代も含めますと百万ちょっと、三百五十戸程度
  131. 亀田得治

    亀田得治君 これが要求通り全部認められたとしても、なかなか、相当年数がかかる数字ですね。昨年も大体同じくらいの要求をしたのだが、結局八十戸分ということなんでしたか、昨年の要求はもっと要求自体が少かかったわけでしょうか、どうなんでしょうか。
  132. 岸上康夫

    説明員(岸上康夫君) 要求は大体同じでございます。
  133. 亀田得治

    亀田得治君 大蔵省の方に聞きますがね。これは私やはり普通の行政官庁の役人の方は家へ帰って勉強せぬでもいいとは言いませんが、相当これは職掌柄違うわけなんですね。これは当然私も裁判官になっていて、どっかへ行け、その場合に住むところがない、どこでももぐり込んでおれと、そういうわけにはちょっといかぬと思う。体面とか、そういうわけじゃなしに……。だからこういう点はね。一般の公務員宿舎とはちょっと違った性格があるのでね。もっと強くそういう要素を認めてもらいたいと思うんですがね。主計官の方、どうでしょうかな。
  134. 上林英男

    説明員(上林英男君) ただいまの制度によりますと、公務員、裁判官を含めまして公務員宿舎の建設費は一本で計上いたしております。三十二度度におきましては、そのために十五億の予算が計上されておりますが、これをどに幾ら配分するかということは、宿舎審議会というのがございまして、そこで各省から集まられまして御相談を申し上げて配分をきめているわけでございますが、従いまして、その宿舎審議会で決定された配分に従い建築される格好になっているわけでございます。これは実は私どもの主計局のやっていることではございませんで、管財局が主管いたしておりますが、私ども聞いておりますところによりますと、今お話しのような裁判官の特殊性にかんがみまして、ある程度の配慮はいたしておるというふうに私も考えておりまするが、なお、これは所管といたしましては管財局でございまするので、御要望のほどは伝えておきたいと思います。
  135. 亀田得治

    亀田得治君 宿舎審議会というものの構成はどういうようなメンバーでやられているのですか。
  136. 上林英男

    説明員(上林英男君) 各省からそれぞれの代表者の方が出ておられます。私ちょっと正確に存じておりませんが、最高裁判所からもどなたか、そこの委員なり幹事なりになって出ておられるはずでございます。
  137. 亀田得治

    亀田得治君 例の財政法で、二重予算という考え方が最高裁の予算についてとられておるわけですね。で、私は、そういう立場からいきますと、まあ予算編成の過程において、もっと独立性を認めるべきだと考えるんですが、いわんやその予算が通ってしまったあと、なおかつ、この裁判所のワクがきまっておらないというような逆用は、これは私はその財政法の精神からいったって間違いだと思うのです。やはりああいう規定が財政法の中へ入ったのは、裁判所に対してはあまりそういう問題についてわずらわすまいという、官庁の性格上、大体まあかけ引きをして予算を多くとるなんというような適当な人があまりおらねといういろいろなことを考えてああいうふうになっている。それを予算が成立した後にも、その辺が一つになっていて、あとさらに努力しなければならぬ。これでは私はちょっと筋が通らぬと思う。第一、審議会に最高裁から出ていても、これはまた一人か二人でしょう。あとは一般の行政官庁の方が多いわけです。そうすれば、どうしたって裁判所の独自の立場というものを、はんとうに主張して、それが認められるというふうにはなかなかなりにくいじゃないかと思うのですがね。従来の宿舎審議会における配分の実績、これを一度ここ五、六年分か、まあ終戦後全部でもいいですが、一ぺんそれを出してみてもらいたい。はなはだしく、やはりいわゆる行政上、力があるとか、折衝が上手だとか、そういう所がよけいとって、そういう実際の必要性というものに、必ずしも沿ってないんじゃないかと思うのですけれども。今主計官の方の御希望といいますか、伝えておくという意味の事柄は、これはぜひお願いしますけれども、ともかく昨年度八十戸ぐらいしか建たぬということでは、これはもう裁判官増員なり、そういう問題が一方にあるのだが、それは客観情勢が、まあ受け入れ態勢ができておらぬことなんですよ、そんな状態では。それは新しく司法の修習を終って、弁護士になろうか、裁判官になろうかといったって、そんなことは、みんなやはり直接なる人は研究しているわけですね。どうも裁判官の方はよくないぞということになれば、これはもう幾ら政策上裁判官増員強化なり、そんなことを言っておったってだめになるのですがね。そういう意味で、橘舎審議会ですね、一ぺん資料を全部出してもらって、そしてさらにこの点はもう少し私は検討してみたい。で同じ数であっても私はちょっと承知できないところがある。
  138. 青山正一

    委員長青山正一君) 一つ、大蔵政務次官は、ただいま亀田さんがおっしゃった通りに、寄舎審議会にこの宿舎の配分実績というものを、この五カ年間あるいは十カ年間でけっこうでございますが、短期間でけっこうです。二十年は要りません、十カ年ぐらいでけっこうですが、その関係、それから法務省裁判所関係ですね。そういうふうな按分の関係を一つお調べ願って、こちらへ資料を提出していただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
  139. 上林英男

    説明員(上林英男君) 承知いたしました。
  140. 赤松常子

    ○赤松常子君 ちょっとお話が前に返りますが、保護会のことにつきまして、やっと今度予算を新規におとりになるということを伺いましたのですが、従来は民間の寄付、これでまかなっていたということになるんでございましょうか。
  141. 福原忠男

    説明員(福原忠男君) 先ほど申し上げたのは、保護再会の予算が全然計上してないというのであって、保護会では従来から、全額で四千四百万円ほど計上されておると申し上げました。
  142. 赤松常子

    ○赤松常子君 それではもちろん足りていないから、民間からも大へん寄付が集められている、ようでございますね。それはどうなんでございましょうかね。実はこの間私、先ほどの麓へ参りましてたまたま駅長さんに、ちょっと時間の都合で駅長室でお話ししておりました。麓の話が出まして、この四百五十万円ね、付近で寄付を実は集めているんだ、その苦労をいろいろお話しなさいましてね、これが刑務所の何にお使いになるのか、ちょっと私ども時間が迫ってはっきり聞きませんでしたけれども、それほどの金を、あの麓は五、六万の小さい町なんですが、それでいて民間から四百五十万円も集めなければならぬというお声をちょっと聞きまして、私これは大んですねと申したんでございますが、どうしてこういううふうな金を民間から集めなくてはいけないのか、そこをほんとうに国家でしなくてはいけない事業を、こういうふうに付近の人に押しつけているというような事情が、私ちょっとわからないのでございますが、これが保護会に使われているのかあるいは刑務所自体の建物に使われる金なのか、おわかりでございましたら伺いたいと思います。
  143. 福原忠男

    説明員(福原忠男君) 麓の女子刑務所を出所する人、さらには来年の売春防止対策の一環として、あの地に女子を対象とする保護会を設立するという運動も展開されていることは承知しております。更生保護会というのは、本来民間のそういう有志の方の献金によって、そうしてある施設ができ、そうしてできますと、これを法務大臣が認可してその事業を行なっていく、これに対して補助金を出す、こういう形で運営しているのでございます。
  144. 大沢一郎

    説明員(大沢一郎君) ちょっと今の刑務所では、民間から寄付をいただいて施設を作ったり、運営費に充てることは絶対にございません。
  145. 赤松常子

    ○赤松常子君 それでは民間の自発的な募金運動であったわけですか、そういうふうに解釈してよろしゅうございますね。
  146. 福原忠男

    説明員(福原忠男君) その通りでございます。
  147. 赤松常子

    ○赤松常子君 それはよくわかりました。  それで次には、保護会のことでございますが、これは大蔵省の方にもちょっと聞いておいていただきたいんでございますが、保護会がいかにも貧弱でございまして、私も二、三ちょっと拝見いたしました。この日曜日にはたまたま東京拘置所に用事があって行って、そうしてその帰りに前の真哉会という保護会を訪問いたしましたものですが、私その貧弱なのに実に驚きまして、東京のおひざ元でこんなに貧しい、それから何とも言えない荒れた建物で実に驚いたわけでございます。御承知のように、小菅刑務所は最近モダーンなりっぱな建物ができておりまして、大へんいいことですが、それと対照いたしましていかにもおんぼろでございまして、それで所長さんの御苦労もさこそとお察しして、いろいろお話も申したわけでございますが、こういうふうな所に、まあこれは一種のアフター、ケアーでございますが、小管刑務所の所長さんに聞いてみますと、だれも出迎えに来る人もなして、ほんとうに寒々と出ていらっしゃる。そういう方が、行き場がないからこういう所に来ることになるのでございますが、あまりここが寒々としておりますものですから、また刑務所に帰るというように、出たり入ったりなさるわけで、結局それは予算をむだにするということになるわけでございます。東京のおひざ元でああいう寒々とした所でございますから、他は推して知るべしだと、私も実はほんとうに心配でならないのでございますが、どうぞこういうことについて、実際見ていただきたいと思うんです。さっきから申されますように、何か金をもうける生産の省には金が多く行くけれども、こういうほんとうの人間を教育したり、あるいはよくしていくというような消費省には実際金がいかないというとが、根本的に今日の政治の盲点だと私どもは思うわけでございますけれども、もっと大蔵省の方もこういうような所をこまごま見ていただいて、人間を大事にする、人間のそういう収容施設という観点にお立ちになりまして、こういう保護会にも十分な予算を組んでいただきたい、こういうふうなことを私最近見て参りましたものですから、ほんとうに要望いたしておきたいと思うんですが、どうも何べん申しても同じことでございますけれども、もう少し法務省関係に予算をとっていただきたいと大蔵省の方に切望いたす次第でございます。
  148. 青山正一

    委員長青山正一君) 赤松さんのお話があったので、それに関連しましてちょっとお聞きしたいと思います。  犯罪者予防更生法の第一条第一項に、「犯罪予防の活動を助長し、もって、社会を保護し、個人及び公共の福祉を増進することを、目的とする。」、第二項に、「すべて国民は、前項の目的を達成するために、その地位と能力に応じ、それぞれ応分の寄与をするように努めなければならない。」、こういうふうな条項がありますが、この更生保護の費用として相当寄付金が出るはずなのに、集まらないのは、これは法務政務次官なり、それから大蔵政務次官に特にお聞きを願いたいと思いますが、税金がかかるがためにほとんどそういう面の寄付がない、こういうわけなんです。そこで、これはこの法律を改正する必要があるんです。なぜなれば、第二項において、そうしてはっきりと何か国民は全部そういうふうに寄付しなきゃいかぬと、ある面に強要しておるというふうにみなしてもいいわけなんです。その反面に、寄付したらみんなそれに対して税金をかけていくというような行き方になっておりますから、この点がどうも私はふに落ちないと思うんですが、法務省なりあるいは大蔵省なり、皆さんが寄ってその点を検討する必要があろうと思いますから、一つ課題を投げておきます。
  149. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 五鬼上総長にちょっとお伺いいたします。私のこれは調査の不足からかもしれませんけれども、家庭裁判所調査官の俸給は、書記官の俸給並みになっているのじゃないかと思いますが、いかがでございますか。
  150. 五鬼上堅磐

    説明員(五鬼上堅磐君) 人事担当の人事切長が来ておりますから、人事局長に……。
  151. 鈴木忠一

    説明員(鈴木忠一君) 書紀官より下回っているということはないのでございますけれども、人数の紋別定数がよけい取れていないという関係で、現地の調査官の若干の不平があるらしいのでございます。紋別定数をよけいにふやすということは、事務局の方で大蔵省側と折衝して努力いたしております。
  152. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 現在の調査官の俸給のレベルは、書記官のワクと同じでございましょう。その点いかがです。
  153. 鈴木忠一

    説明員(鈴木忠一君) 級別定数は、書記官より高くなっておるわけです。書記官と同一なことはないのです。ただ、取ってある一番高い方の人数が割合に少いものですから、それで現地の方の需要に応じ切れないといううらみがあるわけです。
  154. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 紋別定数とおっしゃるけれども、その級というのは、たとえば、上席調査官ですか、ちょっと呼び方を私今忘れておりますが、特別の人は別のようですが、十三、十四級というのもあるようですけれども、一般の調査官は書記官のワクの中に入っていると思っております。いかがです。
  155. 鈴木忠一

    説明員(鈴木忠一君) 調査官にもそれから書記官にも、それぞれ首席の調査官それから首席の書記官、主任の調査官それから主任の書記官というようなワクがございます。そのワクの中で、首席の家庭裁判所調査官の方は首席の書記官よりも高くなっております。下の方は大体同様になっております。ですから、上が高くなっておるから、結局、調査官は全体として瞬くなっておるという感じでいいのじゃないかと思います。
  156. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 それが私伺いところなんですけれども、役付は書記官よりも上でしょうけれども、一般の調査官は書記官と同じワクの中だったと私思っておりますが違っておりますか。
  157. 鈴木忠一

    説明員(鈴木忠一君) 今の予算の項目を見ましても、調査官が書記官に劣っておるということはないのです。同じクラスに格づけをされておっても、そのクラスの人数のトータル、従って、あるクラスに格づけをされておる比率がそれぞれどのくらいのパーセンテージに上っておるかということを双方比べますと、調査官の方が上回っております。
  158. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 調査官とそれから書記官とがつまり最低線は同じだということを今もおっしゃったのですけれども、これは、仕事の性別から申しますと、家庭裁判所の、ことに少年の調査官なんというのは、私は、ある意味では判事より大事と思っている。そうして判事以上の仕事をしている。それでございますから、書記官といったら、言い方が少し語弊があるかもしれませんけれども、機械的の仕事をするだけの、つまり、機械をもってもかえることができる。もう外国にはすでに日本でいう書記官という仕事はないのですから、皆機械化しているのですから、そういう機械的の仕事をする人と、ほんとうに精神を使って予供の保護にあるいは犯罪防止に当っている調査賞とを最低線が同じだと説明なさるのですけれども、そこが私不合理じゃないかというように考えているところなんでございます。  これに連関しまして、レフェリーの制度は、どのくらい、調査と申しますか、問題が進んでいるかどうか、これは最高裁判所の方できっと研究が進んでいると思っておりますが、その点五鬼上事務総長いかがですか。
  159. 五鬼上堅磐

    説明員(五鬼上堅磐君) 今御質問のレフェリー制度は、私どもの方の家庭局で研究させておりますので、ちょっとここで具体的にどうこうということは私申し上げかねます。
  160. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 このレフェリー制度がつまり制事のかわりをするのですから、そういう意味合いで、今度逆に言いますというと、むしろ調査官判事とをある点は同じように見るというのはちょっと語弊があるかもしれませんけれども、それくらいの仕事をしておる調査官と機械的な仕事をしておる書記官とが最低線が同じであるというその考え方、その取扱い方は私大へん納得がいかないのですけれども、それは五鬼上さんいかがですか、あなたの考えを聞きたい。
  161. 五鬼上堅磐

    説明員(五鬼上堅磐君) 実はこの新憲法になりまして、裁判所の制度が相当変ったのに変らぬというのが、まあ大体訴訟手続における書記官の地位というものです。これについては、大体最高裁判所の方では、書記官制度研究委員会という委員会を作りまして、これは最もプライベートのものですが、いろいろデータを集めて検討いたしておるのであります。で、おっしゃるようにアメリカあたりのコート・クラークというものにして、現在判事が持っておる仕事のあるものを書記官に移しでそうしてその他は今までやっておるような、いわゆる筆記とかいうようなものはこれはステノダイプあたりでやっていきたいという大体の方向は考えております。調査官制度については、これは新しい制度でありまして、おっしゃるように、レフェリー制度と関連いたしまして、調査官制度というものもこれも家庭局において研究しておる次第でございます。
  162. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 今おっしゃったのですが、日本の書記官というのは、いわゆる機械でやることのできる仕事きりしかやっていないのですか、判事の仕事をやっておるのですか。
  163. 五鬼上堅磐

    説明員(五鬼上堅磐君) これは訴訟法において、書記官に特に与えられた書記官の仕事というものはございますけれども、まあ実質的の仕事は調書の作成ということにあるのでありますから、従来日本の、この裁判所あたりの要領筆記というようなもので調書を作っております。従ってまあおっしゃるように、ある程度は、全部はいかないと思いますが、ステノタイプをもってかえることはできるだろうと思います。その方に実は進んでおりまして、書記官研修所でその点は今養成しておる次第であります。
  164. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 この点について、一つ最高裁判所で考えていただきたいと思うのです。アメリカがどうであろうと、新憲法がどうであろうと、実際仕事をしておるその様子を見ますと、調査官と同じレベルなんと言ったら私はとんでもないと思います。実に調査官を侮辱したものだと思います。もっと調査官は、むしろレフェリー制度が確立するという日がこなくとも、あれは裁判官の片腕ですから少し同じレベルで、最低も同じにしておくということはおかしいのじゃないかと私は思いますが、一つこの点は最高裁判所で研究してみて下さいませんか。
  165. 五鬼上堅磐

    説明員(五鬼上堅磐君) かしこまりました。十分検討いたします。
  166. 亀田得治

    亀田得治君 これも最高裁の方に聞いた方がいいのですが、例の給与の問題ですね、ともかく現状では、はなはだ実質的に均衡がとれない、こういうことが一般的に認められておるわけですが、ほかの仕事とか、そういうことには手を出せるわけでもないし、ところが、それに対する対策ですね、どういう格好で今度の予算要求には出てきておるのですか。
  167. 五鬼上堅磐

    説明員(五鬼上堅磐君) 裁判官の給与の全般的な問題については別に考えなければならないところだろうと思うのですが、さしあたり私どもが今一番苦慮しておるのは一般判事の、つまり一号に特号がついた判事の給与、それから高裁長官、その上の最高裁判事というようなものとの給与のバランスが非常にアンバランスでして、と申しますのは、これはベース・アップの際、二、三度認証官というものがベース・アップをしないでおかれた。そういうような関係からして、ほとんど実収入が同じような——むしろ高裁長官よりも地方裁の所長の方が収入が多いというような、こういう不均衡を来たした。これは何とかしなければならぬというので、実はこの前の法務委員会で、当委員会で御決議を願って何とかしろということを政府の方へもおっしゃられておるようでもありますし、また、私どもの方もどうしてもこの際はこのアンバランスは直さなければならぬ、最低何とかしていただかなければならぬというので、実はこれは検事長にも関係ございますものですから、私とそれから馬場法務次官の名前で先日文書をもって大蔵省の方へ強く要望いたしてあるのでございますが、予算の方もむろん計上いたしまして、大蔵省の方へ請求いたしておるのでございます。
  168. 亀田得治

    亀田得治君 そういうアンバランスの是正ということは、これは理論的には当然だと思うのですが、大蔵省の方ではどうなっておるのですか、この事務的な運びは、大体その考え方を認める立場に立って計算をされておるのかどうかという点てすな。
  169. 上林英男

    説明員(上林英男君) 給与の問題につきましては、雲は私というよりもむしろ給与課長と、うのがおりまして、そちらの所管でございまするので、私実は当面の責任者でないわけでございますが、一般的な問題といたしましては、公務員の御存じのような先ごろのベース・アップをいたしました関係もございまして、特別職の問題についてはなお検討いたしておりまする段階でございまするので、その程度でどうぞお許しいただきたいと思います。
  170. 亀田得治

    亀田得治君 これは前にまあ委員会としての決議もあった問題ですし、この点はそちらの方面のわかる人を次回に一つ呼んでもらいたい。  なお、それはまあアンバランスの是正の問題ですが、アンバランスが是正されても、全体としてはなはだやはり低いというのが一般的な声ですね。だからそういうことに対して、どういうふうな解釈の仕方をされるのかということを聞きたいのです。
  171. 五鬼上堅磐

    説明員(五鬼上堅磐君) これは私どもち二うど今年が判事の十年——下級裁判所判事は御案内のように、憲法で任期十年と定まっておりまして、ちょうど切りかえの時期が参りました。従って、切りかえの場合にはやめられる判事の方もおるし、また、そういっては何ですが、やめてもらわなければならない人たち、在任をしない判事もございまして、そういう関係で相当の、これは当分の間欠員ができては因るというので、前もって私ども日本弁護士連合会の方へ申し入れいたしまして、法曹一元、法曹一元といわれているけれども、この際に一つ裁判所に実際に仕事のできる、まあ研修所を出てから十年ぐらいたったところで、実際に仕事のできる人をせめて全国で二十人補充したいから来て下さいということでかなり強く要望いたしたわけですが、ついにほとんど二名か五名ぐらい、まあ二、五名のところで、まだ要望しておるのですが、来てくれそうにない。その原因を実はこの間、近畿弁護士大会でいろいろお話し伺ったのですが、一体今の裁判官の給与が安い。われわれの法曹から裁判官を採ろうという考えならば、もう少し給与を思い切って上げなければ行く者がいない。それが一つの原因。もう一つは裁判所の方に行っても給与だけの問題でもないのだ、一体まあ四十四、五才になっておる各省の人を見ると、皆車を持って、行政官の長をなしている。ところが、裁判官というのはどうも大きなふろしき包みを下げて電車に乗ってこつこつ通っている。そういうようなことをしていたのじゃ、それは事務総長、お前が幾ら法曹一元を叫んでもだめじゃないか、そういうことがなぜわからぬ。この間ある所へ研修に行ったところが、裁判所の自動車あるかと言ったら、あるんだけれども、もう修繕屋に行って一カ月も直ってこないと、で、一九三〇何年型の自動車だと、それじゃ困るじゃないかというので、弁護士さんが自動車をお世話をして、そうして裁判所のことだから、それへ乗ってくれと言うことはいかないから、互いに割って、いわ偽る割勘で自動車に乗っていったと、こういうようなことをさしておいて、おまえたちは訴訟促進とか一審充実とか、東京で言っておってもしょうがないじゃないかということで、関西でおしかりを受けて帰ってきた状態です。実際都会もそうですが、地方に行くというと、みじめな判事の生活というものが、先ほど申したように、官舎もない、そういうような者が相当ある。これには非常に苦慮いたしておるのですが、まあ給与の改善をすると同時に、やっぱりそういう設備と申しますか、待遇を考えてやらなくちゃならないのじゃないか、かように考えております。
  172. 亀田得治

    亀田得治君 それできょうは、法務関係の特殊性を大いに私言い過ぎるくらい言うわけですが、この給与の場合でも、一般の公務員の給与体系、それと比較してやっているから問題が片づかないのだと思うのです。やはりこの法曹一元という考えは、在野の法曹諸君も同じ立場なんだ、裁判官と。そういうやっぱり考え方ですよ。そうすれば、この裁判官待遇はどうあるべきかという場合に、両者をごっちゃにした、正当な待遇はどういうものかという基準を考えなければならない。これはあなた一般の行政官のそれに追いついてみたって、なかなかそれで片づくかといえば、この人事の交流ということは片づかぬです。だからその辺の問題を、他と比較して、何かこちらの主張をあとから追っていくようなことじゃなしに、やっぽり法律の専門家としての待遇というものはどうあるべきなんだと、そういうことで、もっとこれも白書式にみんながわかるように考え方を組み立ててほしいと思うのですね。それでそういう点をはっきりして、それじゃ給与体系は直ちに手をつけることができないということなら、専門家としての研究費とか、そういうことでもいい、やはりそこはそういう特殊性というものを認識させて、そうしてもう少し強く大蔵当局に要求するという格好にならぬと私はいかぬと思っておりますが、あまり一般の公務員なりと比較ばかりしないで……。
  173. 五鬼上堅磐

    説明員(五鬼上堅磐君) 大へんありがたい御質問で、私どもどうもしりをひっぱたかれている感じをいたしておるのでありますが、御承知の通り、裁判官の給与の報酬は、一般の官吏がベース・アップをすれば、同じ率でベース・アップをするという十条の規定がございまして、それにのっとってベース・アップはずっと下級裁判所判事はそうなってきたのですが、しかし、そのほかに、たとえば管理職手当だとかいうのは、行政官にはついているが、裁判官には、ことしの予算からはわずかについたけれども、これも一二%にすぎないというようなところで、初めのうちは法曹一元をやるのだということで、令法脚が力んでおって、そうして最初のうちは弁護士も入っていたのです。ところが最近になっては、今のような状態で、こちらからお願いして、一つ出してくれと言うてもなかなか出てこないというような状態で、御承知の通り、裁判官待遇については根本的に私どもとしては検討して、そうしていろいろ御認識を願わなければならぬまさに時代がきたということと思っております。
  174. 青山正一

    委員長青山正一君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  175. 青山正一

    委員長青山正一君) 速記を始めて。
  176. 棚橋小虎

    棚橋小虎君 矯正局長おいでになりますか。
  177. 青山正一

    委員長青山正一君) おいでになっております。
  178. 棚橋小虎

    棚橋小虎君 ちょっとお尋ねしたいのですが、刑務所の受刑者が労働してお心わけなんですが、その受刑者に対して、受刑者の労働に対する賃金というものですね、これは外部の作業を委託しておる事業主と、それから刑務所の方とでもって適当に話し合いをして決定するのですか、あるいは他に何か本省の方からそういうものに対しては指図をするのですか。
  179. 渡部善信

    説明員(渡部善信君) 刑務所におきまする刑務作業につきまして作業賞与金を支給いたしておるのでございます。これは御承知のように、刑務所におきまする懲役受刑者につきましては、別役に服すという刑法の建前からいたしまして、作業につくべき義務を課されておるわけでございます。その作業からあがって参りますものはすべて国庫の収入に帰属するわけでございます。その労働に対する対価を支給するという趣旨ではなくて、ただ本人たちの作業意欲を促進せしめ、そうして勤労精神を養わせていくという建前から、恩恵的にこれは賦与するという建前が現在の監獄法の建前でございます。従いまして、もちろんその作業に応じまして勤労意欲を促進するように、段階を設けて現在支給いたしております。作業の内容によりまして二種類に分けてございます。そうしてそれをさらに五段階に分けまして、一等級から五等級まで分けて支給いたしております。しかしながら、ただいま申し上げますような恩恵的な措置でありまするために、非常に賞与金は低いものでございます。
  180. 棚橋小虎

    棚橋小虎君 受刑者の作業に対して、国から一定の標準によって金を支給するというのは、なるほど恩恵的な事実であろうと思うのですが、つまり受刑者の労働というものに対して外部の事業主、作業を委託しておる人との関係は、恩恵でも何でもない、これは労働賃金だと思うのですがね。その労働賃金の決定は一体どういう標準でやっておるのですか、それをお聞きしたい。
  181. 渡部善信

    説明員(渡部善信君) 外部との契約に当りましては、これは国家が契約の衝に当るわけでございます。これは普通の一般の労務賃金に相当するものを契約として取っております。これはすべて国庫の収入になっておるわけであります。これと受刑者に支給しまする賞与金とは全く別個でございます。
  182. 棚橋小虎

    棚橋小虎君 その外部の事業主とそれから刑務所の方との労働要件ですね、それは何か基準があるのですか、法律か何かあるのですか。あるいは当該の刑務所の責任者とこの事業主の方とがそのときの場合に応じて勝手にきめるのですか、その点どうなんですか。
  183. 渡部善信

    説明員(渡部善信君) それは一般に労働基準法等にはのっとるわけでございますので、当該の契約の内容自体につきまして、刑務所と当該の請負人との間の自由契約できめております。
  184. 棚橋小虎

    棚橋小虎君 その賃金が不当に社会一般の賃金に比べて安いことはないのか、あるいはそれに対して政府はそれを何か監督する方法があって、班に監督をしてやっておるのか、あるいは自由にまかせておるのか、その点はどうなんですか。
  185. 渡部善信

    説明員(渡部善信君) それは不当に安いことはないはずでございます。これは刑務作業におきましては、受刑者を働かせるにつきまして、看守が必ずつき添って参ります。かようなことから実働時間があるいは多少普通の契約の場合よりも制約を受ける場合があるわけでございまして、さような面から絶対数によりますと、あるいは少いかもわかりませんが、作業時間等から考えますれば、決して一般の賃金よりも特に安くするということはないはずでございます。ただそれを監督することは、もちろん契約内容につきましては、管区なり、あるいは局の方にそれぞれ手続をして参りますので、その内容の検討につきましては、上司のやはり認可を受けておるわけでございます。なお、その後の結果につきましては、会計検査院等からも検査の対象になりますし、その契約内容は決して当該刑務所長だけのところでおさまるものではありません。十分監督もいたしておるわけであります。
  186. 棚橋小虎

    棚橋小虎君 その点について不当に安いことはないと言われますけれども、その点はどうも私ども疑問を持つのです。そこで、一応刑務所についてその点をお調べになって、そうして結果をこちらへ御報告願いたい。  それからもう一つお尋ねしたいことは、受刑者に対して直接国から給付するところの金ですね。これは何か規則があってやっておられるのか、もしそういう規則なり何か基準があるならば、それは一体何年ごろにできた基準であるのか、明治時代にできた基準か、大正時代にできた基準か、それをお聞きしたい。
  187. 渡部善信

    説明員(渡部善信君) ただいま仰せの労務費でございますが、何か具体的な資料をお持ちでございましたならば指摘していただきますれば、それにつきまして私どもの方でも十分調査いたしたいと思います。私どもの方でそういう点は十分気をつけてやっておるつもりでございますので、どうぞ一つお漏らしを願いたいと思います。  それからなお、受刑者に支給いたしまする作業賞与金でございます。これは決してそう古いものを使っておるわけではございません。年々改めまして、最近改訂いたしましたのは三十年当時の分で支給いたしておるはずでございます。
  188. 棚橋小虎

    棚橋小虎君 その支給している金が私は方々の刑務所でもって聞いておるわけなんですが、非常に安い。この間、笠松の刑務所でもって調べたところによりますと、これは一つの例でありますが、一日最高百七十円、それから平均九十円、それからそういうものをためておいて、それが釈放されるときに作業賞与金として渡したところの金の平均が千四百五十円、本年十一月現在、こういうことになっております。いかにも額が低いわけです。これでは受刑者も労働の意欲、勤労の意欲というものは、おそらく麻痺してしまうのではないかと思います。それからこの金は受刑者が出所するときの更生資金として持って出て何かに利用する金だったら、もう少し金額が多くなければほとんど意味をなさないと思います。それから先ほど申されるように、事業主と刑務所の方とでは社会の普通の労働賃金に比較して安くはないと言われる。ところが、国から受刑者に支給する金はそのように低額なものです。その間の差額というものは、非常にもうけていることになってしまう。こういう不当なことは、受刑者だからそれはよんどころないとは言いますけれども、実にひどい差額ができて、それを国がとっているということは、これは私は行刑の本旨に反するのじゃないかと思うのです。こういうことは私は改良の余地があると思うのですが、矯正局長としては、この規則を改正して、受刑者に対して支給する金を、もう少し多くするということはお考えになりませんか、どうですか。
  189. 渡部善信

    説明員(渡部善信君) 仰せのごとく、賞与金は非常に少額でございます。ただいま仰せございました笠松の例は、大体各刑務所ともそんな程度でございます。私らといたしましては、突け少くとも出ますときには、次の就職にありつけるまで、何とかやっていけるだけの賞与金を持たして出したいのでございます。現在この刑務所の在所期間は約一年二、三カ月でございます。従って出ますときに、少くとも次の就職にありつけるまでぐらいの金額は持たしたいのでございますが、なかなか国家予算の関係から、無印大蔵省出局の方にも折衝を続け、増額をお願いいたしまして、年々増額はしていただいてはおりますけれども、非常にその率が少いのでございます。本年もこの賞与金の増額につきまして、大蔵当局の方に折衝中でございまして、何とかその点で、仰せのごとく、賞与金を増額してやりたい熱望に燃えているわけでございます。  なお、この作業賞与金の法規上の不当でございます。われわれ監獄法の改正につきましては、この賞与金の問題を取り上げて、もう少し増額するように考慮を目下いたしておるわけでございます。外国の法制によりましては、いわゆる貸金制をとっているところもあるようでございますが、これにつきましては、いろいろ議論もありますので、現在の刑罰制度も根本に持つ問題でございまして、なかなか異論もあることだと思いますが、われわれといたしましては、賞与金を何とか増してやりまして、本人の更生を裏づけてやりたいということを考えております。この点につきましても、十分考えております。
  190. 棚橋小虎

    棚橋小虎君 局長のお考えはよくわかりましたのですが、ついでにお聞きしておきますが、どういう名前の費目で、幾ら本年計上しておりますか、指摘願いたい。
  191. 渡部善信

    説明員(渡部善信君) 実はきょうは施設の方の御質問だということでございまして、その方の資料を持って参りませんで……。ことしの要求は一億五千百四十九万八千円ということになっております。次に、ことしの予算は、八千八百万、約倍ぐらいの増額でございます。
  192. 青山正一

    委員長青山正一君) まだ予算の問題については、いろいろ御質問もあろうと存じますが、本日は一応この程度にとどめたいと存じます。  大川君の方から、いろいろ申し出があるそうです。
  193. 大川光三

    大川光三君 本日は午前、午後にわたりまして、委員各位からきわめて適切かつ御熱心な御質疑が行われました。しかも、中には政府当局に要望をせられる事項が多うございましたので、私はこの際、当法務委員会といたしまして、裁判所並びに法務省営繕関係予算弄処方を政府に要望する決議を行う動議を提出いたします。今その要望書案を朗読いたしますから何とぞ御賛同を賜わりたいと存じます。    要望書案   最高裁判所並びに法務省は、法秩序確立の重大な使命をになっているにもかかわらず、その各所管の諸施設は、老朽狭隘を告げ、あるいは改善拡張の要に迫られているなど、すでに現下の要請に添わないもの少しとしない。   政府は、この遺憾な現状を直視し、すみやかに両者の営繕関係等予算の増額措置を講じ、もって司法の通常の十全を期し得られるよう努力せられたい。   右要望する。
  194. 青山正一

    委員長青山正一君) だたいま大川委員から、法務省並びに裁判所営繕関係予算に関する要望事項について本委員会の決議とされたい御趣旨の発言がございましたが、本件につき、御意見のおありの方は御発言願いたいと存じます。
  195. 棚橋小虎

    棚橋小虎君 私はこの決議に賛成であります。法務省関係の建物、いろいろな施設がすでに老朽の域にいって、実際の連勝にも非常に支障を来たしておるということは明らかなことでありますが、昨年の夏北海道へ参りましたときなど、北海道の釧路裁判所なんかは、拘置所です、これは検察庁と裁判所が一緒になっておりまして、そこの拘置所でございますが、御承知の通り、釧路などは夏の六、七、八月は濃霧のためにほとんど連日、日を見ることがない、非常に陰うつな天候のもとで毎日、日暮れのような状態になって、じめじめした中でありますが、そこの拘置所などはほとんど畳二畳敷ぐらいのところで、まっ暗なところで、畳などはおそらく腐っておるのではないかというようなところに拘置されておるような状態で、ああいうことでは、人権じゅうりんと申しますけれども、これは人権以前の問題だと私見ておりました。ああいうところは北海道に方々ありまして北海道ばかりでなく、他に内地にもああいう老朽の施設があるわけでありまして、こういうことでは、ほんとうに法の運営もできないし、国民が司法に対して信頼をするということができないだろうと思うので、この決議に従いまして、一日も早く、当局はこういう施設の改善を考えることを私は強く要望をいたす次第であります。本決議案に賛成いたします。
  196. 亀田得治

    亀田得治君 私も決議案にはもちろん賛成いたしますが、これを決議すると同時に、できましたら一つ当委員会として、できるだけ末端の現状を具体的につかむというふうな何か工夫をしてもらいたいと思うのです。法務省なり裁判所から出る資料等は、結局そういう具体的な事情がぼかされて、一つの統計なり数字となって表われてくる場合が多いので、なかなか私どもの知りたい点に必ずしも触れておらぬわけですね。そういう点等も考慮して、ぜひ委員長の方へ手段方法は一任いたしますが、そういう点の調査をやって、そうしてそういうものが一つ予算要求の中に具体化されていくように、そういうふうに委員会としても一つ努力してもらいたいことをお願いします。  私ちょうど先だって京都へ行ったときに、たまたま登記所の関係の方から聞いた問題を、先ほど実は申し上げたのですが、ああいう問題はもう末端へ行くと山ほどころがっておるのだと思いますね。そういうものを一つ法務委員会の白書にしてもいいですから、その点一つお願いしておきます。
  197. 青山正一

    委員長青山正一君) ただいま亀田君の申し出もあり、また、宮城さんからもしょっちゅうそういった問題について申し出があるわけでありますが、当委員会と、たしましても、いろいろこの問題について検討もし、場合によれば、近県地区なりその他を一つ単独出張というようなことで適時調査いたしたいと、こういうふうに考えております。  ほかに御発言もなければ、ただいまの大川委員提出の要望事項についてお諮りいたしたいと存じます。  営繕関係予算に関するただいまの要望事項を本委員会の決議とし、内閣に申し入れることにいたしたいと存じます。御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  198. 青山正一

    委員長青山正一君) 御異議ないと認めます。ただいまの要望事項について、大蔵当局並びに法務当局の御意見を伺いたいと存じます。
  199. 白井勇

    説明員(白井勇君) 御決議の点は、さしあたり三十三年度の予算に関連をいたしておりますことと拝承をいたすわけでありますが、御承知の通りに、現在予算は作業中でございまして、近ぐ政府の編成方針も決定を見ることと思います。その編成方針に基きまして、大蔵省といたしましては取りまとめをいたしまして、年内に原案を作成いたしたいという運びになっておりますので、皆様方現状御視察になりましたり、十分御検討ありましたしの御決議でありますので、その過程におきまして、私たちは十分この御決議は尊重いたしまして、できるだけの善処をいたしたいと思います。
  200. 青山正一

    委員長青山正一君) どうもありがとうございます。法務次官の横川さん。
  201. 横川信夫

    説明員(横川信夫君) ただいまの御決議の通り、法務省所管の施設は老朽であり、かつ狭隘であることは事実でございます。今後一そう大蔵当局現状を御理解願い、そうしてこの御決議の御趣旨が実現するように私どももさらに一そうの努力を続けて参りたい、かように覚悟いたしております。
  202. 青山正一

    委員長青山正一君) どうもありがとうございました。ただいまの要望書につきましては、委員長は、即刻これを内閣総理大臣宛送付することにいたします。  本日はこれにて散会いたします。どうもありがとうございます。    午後四時八分散会    ————・————