○
説明員(
塩崎潤君) ただいま
議題になりました
租税特別措置法等の一部を
改正する
法律案につきまして、御
説明申し上げたいと思います。
法律あるいは要綱で申し上げましても非常に複雑なものでございますから、
一つ計算例で御
説明した方がおわかりいいのではないかと思いますので、
計算例を持って参りましたので、
一つこれを御配付していただきまして、これで見ていただくことにいたします。
まず、
数字に入る前に、
現行制度の
概要について申し上げます。
昭和二十八年の八月一日から
租税特別措置法が
改正になりまして、
輸出につきましては、当時西独において行われておりましたような
制度が入れらわたわけでございます。現在もその基本的な
制度は維持されておりますが、その
制度の
概要は、今から申し上げるわけでございます。
まず第一に、
昭和二十八年八月一日から
輸出取引を行なったものにつきましては、
輸出取引額の
商社ならば一%、
メーカーならば三%、これは
昭和三十年からの
改正でございますが、
メーカーのうち
プラントでございますと五%、この
金額を
輸出所得から
控除することができるという
制度になっておるわけでございます。ただし、
昭和二十八年の八月一日からは、
輸出所得の五〇%が
最高限度となっておりましたけれ
ども、
現行制度におきましては、
輸出所得の八〇%
程度でとどまる、八〇%が
最高限度である、かようになっておるわけでございます。これが
現行制度の
概要でございます。
ところで、今度、御
承知の
通りに、去る六月十九日の
輸出改善のための
総合対策がとられましてから、
輸出を大いに増進したい、こういうことが強く言われまして、その一環といたしまして、この
輸出所得控除制度につきまして何らか政策的な
減税を与えて
輸出に大いにドライブをかけたい、こういうことが要望されまして、それに基きまして、
改正案が出されておるわけでございます。
改正案の
大要は、こういう今から申し上げますような
大要になっております。
まず、
昭和三十二年八月一日から三十四年十二月三十一日までの期間に
輸出が行われました場合におきましては、前一年の
輸出取引金額の半分、これを
基準輸出金額といっておりますが、これをこえるものにつきましては、
先ほど申し上げました
現行制度の一%、三%、五%の五割増し、
商社ならば一・五%、
メーカーならば四・五%、
プラントならば七・五%の
金額を
控除することを認めると、しかもまた
現行制度におきましては
輸出所得の八割でとどめることになっておりますが、その前一年の
輸出取引金額をこえる
部分につきましては、それに対応する
輸出所得の全部まけてもよろしい、こういうことに
改正しようとするものでございます。一方、今申し上げました前一年間の
輸出取引金額の半分、これを
基準輸出金額といっておりますが、この半分のもの以下につきましては、これは
現行制度の一%、三%、五%、
輸出所得の八割で
最高限度とする、こういうふうにとどめる、こういう
考え方をとろうとしておるわけでございます。
このねらいは、御
承知の
通りに、現在の
緊急対策が、ことしよりもなお
輸出をふやしたいのだ、できるだけ
輸出をふやしたいのだ。
輸出を伸ばしたものに
恩典を与えたいという
趣旨で、前一年間に比べまして、
輸出がふえたものに対して
恩典を与えたい、こういう
趣旨が
一つあるわけでございます。しかし、前一年だけの
輸出金額をとりますと、たまたまいろいろな
事情で前一年
輸出金額が非常に多かったというものもございますれば、前一年
輸出金額が少なかったものが出て参ります。これは内需の方が旺盛でございますから、
輸出の方を努力しなかったというものもございます。そんなようなことで、前一年をそのままとりますと不公平な面も出て参りますので、そこは不公平をならすという
意味で、前一年の
輸出金額の半分を
基準輸出金額といたしました。これも、もう
一つ考え方といたしましては、まあ過去三年の平均くらいという
考え方もございまするけれ
ども、
税務執行面におきまして過去において
輸出取引があり、しかもそれがどの
程度免税を受けておったかということを、一々引き出すと非常に繁雑である。やはり前一年をとることがいいという
考え方で、前一年をとる。今申し上げましたたまたま
輸出が多かったもの、あるいは
輸出の方をサボったもの、これらのバランスがございますので、半分をベースといたしまして、半分をこえるものにつきまして、今申し上げました五割増しの
恩典と、
最高限度につきましては、対応する
輸出所得金額の
全額まで免除する、こういう
改正案を準備いたしたわけでございます。
非常におわかりにくうございますので、ただいまお配りいたしました
計算例で御
説明申し上げれば、この点ははっきりいたすのではないかと思います。ただ、
計算例は非常に数が少いので、いろいろな
計算例が出て参りますが、普通あり得るものとして、この
程度のものが多いのではないかという
意味におきまして出したわけでございます。
まず、
現行制度を見ていただきます。
現行制度によりまして、今度の
改正案が実施されないといたしますと、
当年度の
輸出金額が一万となっておりますが、単位は
幾らでもよろしゅうございますが、千万円といたします。
メーカーも千万円、
商社も千万円という
意味でございます。ところが、
取引基準額と書いてございますが、これは、
先ほど申し上げました
現行制度によりますと、
メーカーなら三%、
商社なら一%の
基準でございます。そういたしますと、2によりまして、
商社ならば、一千万円の一%の十万円
輸出所得から
控除される。
メーカーならば三%でございまするから、三十万円
控除されるということになるわけでございます。ところが、
先ほども申し上げましたように、
現行制度ならば、
輸出所得を
全額控除するというようなことではございません。八〇%で頭打ちということになっておりますので、
取引基準か
所得基準か、いずれか少い方になるわけでございます。
輸出所得金額を求めまして、その八割をはじき出さなければならない。それが
所得基準額でございますが、まず
輸出所得金額は、どういうふうにしてはじき出すのかといいますと、
普通商社の
純益率というものは大体〇・五%
程度でございます。それをかけまして、
商社ならば五万円であり、
メーカーならば五十万円である。その八掛は、
商社ならば四万円で、
メーカーならば四十万円である、こういうふうになるわけでございます。そこで、この2と4とを比較いたしますと、
商社の方は非常に
純益率が低うございますから、
取引基準の一%は
控除し切れないわけでございます。利益は、十万円
控除するときは五万円しかございません。そこで、十万円
控除が、五万円から
控除し得るのは十万円ではなく、
所得の八〇%、四万円だけ
控除するということになります。これは、5の欄の四万円、これが
現行制度でございます。
メーカーならば、
純益率が五%高うございますので、
取引基準はゆうゆうと引いて参れます。
輸出所得の八〇%が四十万円でございます。三十万円は引けますから、これは
商社の場合と違いまして、
取引基準の方が
控除金額になって参ります。こういうことになります。それが
現行制度で、
改正案か出されなければこんなようなことでいくと。そこで、
改正案によりますとどうなりますかというのが、2の
改正案のところでございます。
まず、
当年度輸出金額、今までの
通り千万円と計算いします。そこで、
当年度はこうであったが、前一年の
基準の
取引金額は
幾らであったかということを、その次に求めるわけでございます。これは2の欄の
カッコ書きにございますが、前一年の
輸出実情は八百万円であった。その二分の一の四百万円が
基準輸出金額となりまして、それを上回る分が国からのボーナスと申しますか、今度の
減税恩典が参る、こういうことになります。
基準輸出金額はこの場合、八百万円といたしますれば四百万円、こういうことになる。そこで、まず
当年度輸出金額を、この
基準輸出金額を上回る
部分とそれ以下の
部分とに分けるわけでございます。そういたしますと、
マル3
マル4の欄にございますが、
割増控除適用を受けます分が六百万円になる。
通常控除分が四百万円、これは
商社も
メーカーも同じ
金額でございます。
その次は、そこで
取引基準だけではございません、
輸出所得金額を出すということになります。これはあとで八割、
全額との
関係でぜひ出さなければならぬものでございますが、そこで
輸出所得金額は、
現行制度で御
説明申し上げますと、
純益率の同じ〇・五%と五%をもちまして、
商社の場合は五万円、
メーカーの場合は五十万円で出て参ります。そこで、今申し上げましたように、
上積み、
下積み分と私
どもは申しておりますが、
割増控除適用を受ける
部分とそうでない
部分とを、
所得において区分けする必要が出てくるわけでございます。これはやはり
輸出所得金額を六、四で分けるということになるわけでございます。上が、
割増控除分が六百万円、下、
通常控除分が四百万円でございます。六、四で分けます。そうなりますと、五万円は三万円と二万円に分ける。五十万円は三十万円と二十万円に区分できるわけでございます。
そこで、その次は、いよいよこの
改正案が実施されますと、どの
程度損金算入になるかというのが、
損金算入額の欄でございます。
マル8から御
説明申し上げますと、
割増控除適用分が
幾らになるかということになるのでございます。
マル8を見ますと、
取引基準は一・五%に
商社は上って参り、
メーカーは四・五%に上って参ります。そこで
商社の場合は、六百万円に一・五%かけまして、九万円でございます。
メーカーの場合は、六百万円に四・五%かけまして、二十七万円になる。で、これが
割増控除の
上積み部分に
適用されるところの
取引基準でございますが、しかし、何といっても
所得全額こえてまで引いて、
損金に算入するということは、税の性格から見ましておかしい。
繰越損を認める
趣旨ではございません。そこで、
所得基準額を見るわけでございますが、
所得基準額というのは、この対応する
部分、六・四に分けた
部分の六の
部分は全免となっておりまするから、
所得基準をそのままとったらいいのでございます。
マル6の欄を持って参りまして、
商社は三万円、
メーカーは三十万円でございます。それが
マル9の欄でございますが、
マル10の欄を見ていただきますと、
マル8または
マル10の低い方の
金額になりますと、
商社は依然として
取引基準の額が多いのでございます。
所得が小さいものでございますから、
所得全額でやって参る、三万円でございます。
マル10の欄の
メーカーの方は、依然として
所得が多いのでございますから二十七万円は引ける。
取引基準そのままはじきまして、まだ
所得基準の
ゆとりがあるわけでございますが、
取引基準でこの方は頭打ちする、こういうことになります。
割増控除の
適用を受ける
部分は
商社は三万円、
メーカーは二十七万円。
その次は
下積み部分と申しますか、
通常控除、
現行制度の
適用のある
部分であります。そのうちの
マル11は、
取引基準の
部分でございまして、
マル4かける一%という
マル4を見ていただきますと、
通常控除に該当するところの六、四の四の
方所でございます。四百万円に一%かけまして四万円、
メーカーならば四百万円に三%かけまして十二万円で、この次は
所得基準を見るわけでございます。この
下積み部分の方は、
現行制度と同様でございますから、
所得の八割で頭打ちする。この方の
部分は
恩典が少いわけでございます。そういたしますと、
マル12の欄にあります
通りに、
所得は六、四で分けました
マル7の欄の二万円に対しまして、八掛の一万六千円、これは
商社でございます。
メーカーならば、二十万円に対しまして八掛の十六万。この
マル11または
マル12のいずれか比較いたしまして、低い方を
控除する。
商社ならば、
先ほどから申し上げたのでありますが、
所得が一万六千円で、
所得の方しか
控除できない。
メーカーの方は、まだ八掛にいたしましても
ゆとりがございます。十二万円をまるまる引ける。そこで
マル10と
マル13を足しましたものが、
改正案実施後の
通常控除適用部分と
割増控除適用部分との
控除額の合計でございまして、
商社の場合は、
現行制度ならば四万円であるべきものが四万六千円である。
メーカーの場合は、三十万円が三十九万円になる。こういうのが
改正案の
概要でございます。
3の
損金算入額の
増加割合というところに、その
割合がおのおの書いてございます。これは参考までに、今まで申し上げましたことを
数字で整理しました。どの
程度増加割合がふえるというのが上の欄でございますし、ふえた分だけの
増加割合を
適用したのが下の欄でございます。
以上が
概要でございます。