○説明員(
立川宗保君)
長期経済計画の
農林水産の関係について御説明申し上げます。
資料を二つお手元に差し上げてあると思いますが、
経済審議会農林水産部会の報告と、横に長い新
長期経済計画の
農林水産部門の
参考附表、この二つについて御説明申し上げます。
この
長期経済計画の一環として
農林水産部門があるわけでありますが、この
長期経済計画を本年の
春あたりから
経済審議会で審議を進めておりました。これは経済企画庁が事務局になりまして、いろいろな各方面の
学識経験者を網羅いたしました
経済審議会というのがございますが、そこでわが国の、
長期経済計画を審議をして参ったわけであります。で、過ぐる十一月の二十五日に、この
経済審議会で
長期計画、今後昭和三十三年を初年度として三十七年まで五カ年間の経済の見通しを盛った
長期計画を政府に答申をいたしました。それで、その中に、
農林水産の事項がいろいろ入っておるわけでありますが、その
農林水産関係の事項を御説明をするということにいたしたいと思います。
で、ここにお手元にあります
農林水産部会の報告は、
経済審議会の中の
部会報告でありまして、これは
経済審議会で七つの部会を作りまして、鉱工業でありますとか、あるいはエネルギーの関係でありますとか、あるいは
財政金融ですとか、貿易ですとか、そういういろいろな部会を作りまして、その一つに
農林水産部会があります。この部会でいろいろ御検討になって、報告をされたわけであります。これがこの
総合部会に対する報告ありまして、
総合部会で全体のいろでろな
関係産業部門を総括して、最後に一つの
答申案をまとめております。で、いわば
答申案の素材になったものでいありますが、
答申案を御説明をいたしますよりも、
農林水産部会の報告をなまのままお話を申し上げる方が、いろいろ明瞭であると思いますので、これを御説明申し上げたいと思います。報告書について、読みながらこの所要の御説明を加えていきたいと思います。
まず三ページの第一章、「第一章、第一次
産業部門の
長期的課題と計画の目標」として「新
長期経済計画の基本的な目標は、均衡のとれた
国民経済の
安定的成長を達成することにある。そのために第一次
産業部門、すなわち
農林水産業は、増大する需要に対応して、十分な食糧及び原材料を供給するとともに、
生産性を他
産業部門の
生産性とつり合いのとれたものにすることが必要である。しかしながら、第一次
産業部門、とくに農業についてみれば、周知のように労働集約的であり、
農産物の
供給力は、
農業人口が
有業人口の四割を占めているにかかわらず、
食糧輸入を必要とするほど脆弱なこと、しかも、その国際的な競争力は、小麦に見られるように貧弱なこと、さらに一方、その
就業構造は
兼業農家の増大、労働力の
老幼令化、
婦人労働への
依存増大にみられるように、最近とみに劣悪になってきていることなど、改善を要すべき問題に当面している。」これが問題を出しておるわけであります。「これらの諸問題は、経営の零細性と
就業機会の乏しさと結びついて、
労働生産性の低いことに根本的な原因がある。そのため農漁村における
所得水準及び
消費水準は、都市に比較して相対的に低くなってきている。
最近第一次
産業部門の
労働生産性は、
鉱工業部門の急速な発展、特に
重化学工繋化の進展に伴う
生産性の急激な上昇と比較した場合、その立ちおくれは顕著なものがある。従って、第一次
産業部門が
国民経済的要請に応じ得るためには、
生産性を飛躍的に向上させ、その内部にひそむ諸矛盾を是正して、他部門と
生産性をバランスのとれたものにしなければならない。
以上のような認識に基き、
農林水産部門計画の
基本的目標は、食糧、原材料の
供給力をできるだけ強化し、
総合的自給力を高めること、
生産性及び
所得水準の向上を期し得るように
農林水産業の
生産基盤を育成強化し、それによって他
産業部門との不均衡を是正することである。この
基本的目標を短期間に達成することは、
産業自体の特性並びに
国民経済自体の
発展規模——特に
雇用面——から見て困難である。」短期にはなかなかむずかしい、非常に長い間かかってしんぼう強くこの目標を達成するほかはないというわけであります。「従って、三十七年度に至る
計画期間中においては、この
基本的目標べの接近を極力指向することとし、年率六・五%の
国民経済の
成長率に即応した
計画目標を次のように定める。
一、人口増及び
食糧消費の
高度化に伴う需要の増加に即応して食糧の
国内供給を増大させること。さらに
鉱工業部門、
住宅建設部門等の需要に沿う木材の供給を行うこと。
二、
農林水産物輸出を極力増大させ、
国内供給の可能な
農林生産物輸入を漸次減少させること。」これはあとに詳しく出ておるわけです。
「三、
農林水産業の近代化を推進し、特に農業については家畜及び機械を導入した
合理的営農方式の確立により、就業者一人
当り所得の増加率を、二次、三次
産業部門と極力均衡させること。」
第二章の計画の内容に入って参りますが、
「計画の内容
一、食糧及び
木材需要の見通し
国民経済の成長事が年率六・五%で三十七年度まで上昇する場合、一人
当り所得の
成長率は五・七%になる。」これは全体の
経済計画が、毎年日本の
国民経済が六・五%ずつ伸びていくという前提を含んでおります。それを前提にして考えておるわけでありますが、人口がふえますために一人当りの所得は六・五%まで伸びませんで、五・七%になるわけであります。「この所得の成長に伴い、主要な
農水産物需要も大幅な増加を示すものと思われる。」所得がふえますから、
農水産物もつまりよけい買うようになり、消費の増加を来たす。
「これを一人
当り消費量について見れば、三十一年度(以下特に断らない限り平常状態をいう)に対して急速な増加を示す品目は」一番消費が伸びるものは「大豆、果実、肉類、牛乳、乳製品、けい卵、
食用油脂及び砂糖で、いずれも三十一年度より一〇%以上の増加となる。」これは詳しくはこの参考の附表のところの一ページのところの二欄目に「
人当り消費の伸び率」という数字が書いてありますが、そこに詳しく出ておるわけであります。本文に戻りまして、「特に牛乳、乳製品は七七%増の見込みである。これら品目は、いずれも
所得弾性値が高く、国民の消費の方向に合致したもの、であり、しかも、将来の
国民栄養改菩の点からも重要なものである。
三十一年度より微増ないし現状にとどまる品目は、」今度は横ばいに近いものですね、それは「米、小麦、
バレイショ、澱粉、野菜、鯨肉、魚介類及びみそ、しょうゆで、比較的伸びる魚介数も一五%増にとどまる。
所得水準の上昇につれて穀数の液費は漸減する方向にあるが、米は三十七年度までのわが国の
所得水準の
上昇程度では漸減するには至らないものとしてほぼ三十一年度の水準に止まるものとした。ただ小麦の
消費量は、戦後の食生活の変化によって、主食に占める比重が増大する傾向にあるので、若干の増加を見込んだ。野菜の
消費量が三十一年度より量として伸びないのは、
量的消費から
質的消費に変化する状況を織り込んだためである。」つまり、たとえば大根みたいなものがあまりふえませんで、ホウレンソウとかタマネギとかセロリとかトマトとか、まあそういったようなものが伸びるというわけであります。
「三十一年度の
消費量より将来減少する品目は、精麦、雑穀及び
カンショで、いずれも
所得水準の上昇につれ、減少する品目である。」これは減ります。「また、これら品目は、
畜産物の増産のために、飼料としての利用度も高まる傾向にあって国民の口に直接摂取されることは今後ますます少くなろう。
以上のような品目別の
消費変化をおり込んだ三十七年度における国民一人一日
当り摂取カロリーは、約二千二百カロリーとなろう。これは、三十一年度二千百四十三カロリーより約三%の上昇である。
この計画の力点は、
摂取カロリーより蛋白、脂肪の
摂取量の増加におかれている。すなわち、蛋白は、三十一年度の六十五・一グラムより三十七年度に約六十八グラム、脂肪は二十三・九グラムより約三十グラムへと、それぞれ大幅な増加となっている。特に蛋白において植物性のものから動物性への変化が大きく見込まれた。なお、
資源調査会が四十五年の日本人の栄養について
労作別年令別に検討した結果、望ましいものと発表した
摂取カロリーは二千三百二カロリー、蛋白は七十二グラム、脂肪は三十・三グラムであるが、四十五年の日本人と三十七年のそれとの
労作別年令別構成の相違を考慮すれば、四十五年を待たずその望ましいとされている
栄養状態に達するであろう。」この三十七年度の想定の
栄養状態のテンポでいきますと、四十五年を待たずに、かつて
資源調査会が立てました日本人の望ましい
栄養水準というところを、より早く達成をすることになるであろうというふうに思われます。
「木材の需要は、鉱工業の急速な弊展、
国民所得水準の上外から、急激な増加をたどるものと思われる。特に
パルプ用材の需要は三十一年度実績より四五・六%増となる。その他包装材、
建築材等も大幅な
需要増加があると思われるが、
木材資源の制約を前提とし、
木材利用の
合理化が一そう推進されるものとして、需要全体としては、現状より若干の増加を見込んだ。」需要の伸び方に供給がなかなか追いつかないような傾向がありますので、いろいろ工夫をしなくちゃならないと思われます。「このため木材の需要は、三十一年度実績の一一・一%増加になった。しかし、需給の均衡をもたらし、
木材価格の高騰をさけるためには、
林地廃材、
製材くず等を十分に利用して供給面の増強をはかると同時に、
需要面においても、
技術進捗と代替材の活用によって現行のベース以上の
合理化を推進することを見込んだ。
薪炭については、産業用の需要は相当増加すると思われるが、家庭川燃料としての地位は、
生活様式の
高度化とともに漸減するものと思われる。このため、総
需要量として微減するものとした。
二、
農業生産計画と需給
耕地面積は三十一年度実績の五百七十五石町歩に、開墾、干拓の
造成面積を加え、将来の
壊廃面積を差し引いて三十七年度には五百八十七万町歩と約十二万町歩の増加となる。土地の利用率は三十一年度実績では、水田一三八%、畑一五%、田畑あわせて一四四%であるが、
農業技術の進歩と
土地改良事業の推進を考慮して、三十七年度には水田一四二%、畑一六〇%、田畑合せて一五〇%を見込んだ。この結果、作付総面積は三十一年度実績より約六四%増となった。
作付面積が三十一年度実績より大幅に増大するのは、大豆、
トウモロコシ、果実、菜種、
テンサイ及び
肥飼料作物で、特に
肥飼料作物は三十九万町歩から三十七年度には七十五万町歩と、畜産の伸張にあわせて大幅な増加を期待する。」ここが一番顕著に出ております。「米の
作付面積は三十一年度実績の三百二十六が七千町歩より、約一万町歩の増加にとどまるであろう。一方
減反傾向を示すものは麦類で三十一年度実績の百六十五万三千町歩より約八万町歩の減となっている。これは三十一年度から三十二年度にかけての現実の減反分を織り込んだもので、三十三年度以降は横ばいにとどめている。
反当収量は、
土地改良及び
品種改良、
営農技術の進展に伴い、いずれも増加するものと期待される。そのうち、三十一年度の
反収水準を二〇%以上上回る作物は陸稲、小麦、大麦、
カンショ、
バレイショ、大豆、
トウモロコシ及び
テンサイなどである。水稲は、過去の反収の
上昇傾向を加味して、三十七年度には三十一年度の七・八%増を見込んだ。」過去の
平均上昇率よりも高く見込んでおります。
「以上の結果、総
生産量において、いずれも三十一年度より相当の増産が見込まれている。
主要品目についてみると、米五百八十八万七千石、小麦百十七万七千石、大麦百七十九万五千石、大豆百八十六万石、
トウモロコシ百八十五万石の増産となる。
飼料作物の増加と対応して、実畜の増殖は、馬を除いて大幅な増加を見込んだ。特に乳用牛は、三十一年度の五十八万八千頭から、百二十四万七千頭と、二倍以上の増加となっている。」これがやはり一つの特色を持つ点であります。「その他の家畜も三十一年度より五〇%以上の増を示すと思われる。家畜の増殖と
品種改良等による搾乳率の上昇や、一頭
当り肉量の増加によって、三十七年度の
畜産物の
生産量は、三十一年度に対して、牛乳における一二三%増を初めとし、肉類二八%、鶏卵五八%の増と、それぞれ画期的な大増産を達成することになっている。一方、必要な飼料は、極力国内で自給する建前をとり、
飼料作付面積は、三十一年度実績の十八万町歩から、五十五万町歩にする計画であり、反当収量も相当の増加を織り込み、乳牛について
飼料自給率七五%を見込んでいるが、それでも
飼料輸入の増加は避けられない。すなわち、三十一年度の実績の五百十七万トンから、三十七年度には百六万八千トンとなる。特に
トウモロコシ輸入は、鶏の増加に伴って、二十六万二千トンから、六十三万トンへと大幅な増加を示すと思われるが、これは、多く東南アジア及び南アフリカからの輸入に期待するものとする。」それで、今農業の生産、
農産物の生産がずっと出ておりますが、これは、これの組み方といいますか、立て方は、先ほど
食糧需要の方の見通しを最初に書いてございましたが、つまり非常にふえるもの、あまりふえないもの、むしろ食糧としては減るもの、こういう需要の方を先に見当を立てられまして、その需要に応じて生産を伸ばす。つまりよけい必要であれば、それに応じた
生産計画を合せていく。ものによっては、需要ほど生産が伸びないというものもありますし、その分は輸入でまかなうとか、あるいは需要はあるけれども、そこまで消費が伸ばせられないというような組み方がありますが、生産から出発して喜需要を組んだわけではなくて、需要の方から先行して、逆にそれだけ需要があれば、生産をやっても間違いがないというような組み方、で、その生産はいろいろな
土地改良、あるいは技術の改良、営農の改善というような点から達成できるかどうかという検討を加えて、この数字を一つずつ積んでおるわけであります。
次に、十ページのところの蚕糸の関係に参ります。「生糸及び絹織物は、
人造繊維の発達によって、将来
国民所得の上昇にかかわらず、
国内需要の増加は小さいと思われる。計画では、人口の増加を織り込んで、三十一年度実績の五・一%増とした。」これは国内では一人当りの生糸、絹織物の
消費量は伸びないという見当をつけております。「しかし、生糸及び絹織物は、
輸出農産物としては、依然海外の需要は
増加傾向にあると思われるので、
輸出量は三十一年
暦年実績の四六・七%増とした。
上記の
生産計画に基く
主要品目の需給を見ると、米の総
需要量は、三十七年度には千二百五万四千トン、八千三十五万石となり、三十一年度実績の三・二%増となるが、生産も三十七年度には千百三十九万六千トン、七千五百九十七万石に達するので、要
輸入量は、精米で六十二万一千トン、四百三十九万石にとどまるであろう。この
輸入量は、三十一年度実績の
輸入量精米五十五万八千トン、三百三十四万石より若干の増加となるが、三十一年度実績の
輸入量は、三十年、三十一年の二カ年
連続豊作による
特殊事情を反映したものとすれば、
通常年間輸入百万トンといわれた日本の
米輸入は、三十七年度には相当の減少を見ることになる。このほか小麦、大立の
輸入量は若干増加し、大麦の
輸入量は、ほぼ二九−三一年度平均の実績にとどまる。」大麦などは横ばいでありますが、これは
国内生産は飼料に非常に回りますので、構造は変ってくるわけであります。「これら
輸入量を確保すれば、将来の
国民所得及び人口の増加による、需要の増大も、
国内供給力の増血によって、需給はバランスするものと思われる。なお、砂糖については、極力国内で
生産増強を行うが、需要の著しい増加に応じ、輸入は増大することとなろう。
この結果、
農業生産の伸びは、耕種で三十一年度の一一四・六%となるが、畜産の上昇を三十一年度の一六二・六%まで見込んだので、全体の
生産指数は、三十七年度には、三十一年度の一二一・五となった。以上のように、年率三・三%に及び飛躍的な生産の
成長率を確保するためには、
土地改良等、
生産基盤の
整備拡充が
前提条件となることはいうまでもない。このため、
農地開発行政投資が確保されねばならない。この投資額の
算定方式としては、一つの方式として、
長期的観点に立って、昭和五十年度までに一切の
土地改良、開墾及び
干拓事業を完了することを目標とし、かつ、事業の
効率的運営をはかるため、
事業期間を極力短縮することを目途として、
積み上げ方式により、その
長期計画の一環として、三十三年度から三十七年度に至る五カ年間の
行政投資の規模を算出すれば約三千億円となる。他の方法として、過去の所得の成長と
固定資本投下量との関係から
限界資本係数を求め、これを媒介として年率三・三%という
農業所得の成長に対応する
農地開発行政投資を巨視的に推計すれば、約二千三百億円となる。
三、
水産業の
生産計画」であります。
「水産物の
生産量は、最近の
需要動向を勘案し、各種の
増産施策を積極的に推進することを期待して、三十七年度には六百万四千トンと見込まれている。
これは三十一年度五百八万五千トンにくらべて一八・一%の増加となる。
この
増産計画を
生産指数で示すと、三十一年度に対し、三十七年度には一一八・五となる。なお漁港については、
計画期間内に五七・四港の整備を行う「
漁港整備計画」がある。
四、
林業生産計画
林業生産計画は、木材の
需要増大に対応しつつ、
国土保全及び
国内資源の開発をはかり、植伐の状況を現状より悪化せしめないために、用材の生産は、三十七年度に一億五千八百万石にとどめ、輸入を三十年度実績より五〇・四%の増加、一千四百万石と最大限に見込んだ。そのほか、
薪炭需要の停滞にかんがみ、薪炭林の
用材転用と、廃材の
高度利用を含めて、三十七年度の
用材供給量は、三十一年度実績の一二・二%増となる。木炭及び薪の生産はほぼ現状にとどまるものと思われる。」薪炭はあまり変りはありません。用材の問題であります。
「以上を
生産指数で表わすと、三十一年度に対し、三十七年度には一〇八・二となる。うち、用材の
生産指数は、その伸びが高く、三十一年度に対し一一・三である。なお、
造林林道事業については、
計画期間内にそれぞれ約二百三十万町歩の造林及び三万三千キロメートルの林道を開設を行う計画がある。」以上のような需要と生産を考えますと、輸出入の関係が出てくるわけであります。
「五、
農林水産物輸出入計画
農林水産物は、
外貨手取率が高いので、その輸出の
国際収支の改善に果す役割は大きい。
農林水産物の
輸出総額は、三十七年度に約四億四千六百万ドルと見込んでいるが、これは三十一年
暦年実績の三億四千九百万ドルの約二七・六%増である。
輸出伸長の大宗は農水産、かん詰、
冷凍水産物、
水産油脂、生糸及び木製品からなっている。」合板のごときものであります、木製品は。
「
農産物の輸入の主要なものは需要の項で見たように、米、麦、大豆及び
トウモロコシである。これらについては、極力国内で効率的な増産をはかり、輸入を抑制する建前をとったが、畜産の伸びとの関連で、
トウモロコシの輸入が大幅に増加するのと、砂糖の輸入の増加によって、
輸入金額は二九−三一年度
実績平均五億八千九百万ドル(二九−三一年度
平均単価による)にくらべて、三十七年度には六億四千六百万ドルと、約七・九%増となっている。以上の結果、総
輸人金額に占める
上記農産物の割合は、二九−三一年度
実績平均の二一・五%から、三十七年度には十三・七%に低下する。」金額では、
輸入金額はふえますけれども、総体の輸入の規模が国全体としてふえますために、
農産物輸入の比率からいいますと、かなり
国内需給度が向上をする。つまり二一%から十三%にまで下ると、こういうことになるわけであります。
次は所得の関係であります。
「六、第一次産業の所得と
生産性農林水産業生産計画により、第一次
産業部門の
生産指数は、三十一年度に対して一一九・四になり、年率にして三〇%の増加である。最近における第一次
産業部門の所得率は、肥飼料や農薬の購入量の増加、大農具の普及等によって、低下の傾向を招き、生産の増加ほど所得が増加しない傾向が顕著になっている。そして、過去においてはこの所得率の低下傾向は、農林魚産物の価格の相対的上昇によって緩和されてきたような状況である。計画においては、この状況が今後も継続するものとし、かつ、飼料の自給化、その他購入資材の合理的使用及び気産物の品質向上の可能性をもさらに考慮して、所得率の一定とし、第一次産業の所得も三十一年度から三十七年度まで年率三%の増加を期待する。」以上ずっと初めから御説明をいたしましたように、
農林水産業の
生産計画が考えられますと、それに応じて
農林水産業に携わる農漁民等の所得が出てくるわけであります。それは三%総体として年々生産が伸びるのに対応しまして、所得も三%づつ伸びるように考えていきたい。そのためには、ここにありますように、いろいろ所得率を落さないという配慮が必要となって参ります。「第一次
産業部門の就業者一人
当り所得は、三十一年度に対して三十七年度には約二五・六%の増大を見込んだ。これは、雇用部会の報告に見られるように、三十一年度より約八十五万人の就業者数の減少を見込んだので、第一次
産業部門全体の所得の伸び率一九・四%に比べ、若干高くなっている。」これは
農林水産部門のほかに雇用の部会がありまして、そこでいろいろ研究をいたしたのでありますが、日本の雇用人口は、五年間にもちろん非常に増加をいたしますが、それは
鉱工業部門が発展をするのにつれまして、だんだんそこに全体として集中をしていきまして、
農林水産部門からは人聞がそちらの方へ移っていく。約八十五万人就業者が減るであろうという判断を立てております。で、それを受けてここで考えておるわけでありますが、ほんとうは、もし就業者数が減らなければ、所得は五年間に一九・四%しか伸びないのでありますが、頭数が減りますので、この今言いました二五・六%くらいに達するであろう、こう判断されるわけであります。「しかし、就業者数の減少は、投資を増大させ、技術を逃歩させて、第一次産業内部にこれを可能とならしめるような条件を作り出すことと相待って初めて期待できることである。」内部の
合理化の条件が相待って必要だ。
で、最後に第三章として、以上見ましたような生産の計画を達成をいたしますために、あるいは所得の確保を達成をいたしますために、いろいろなものが考えられておりますが、こまかいことは別としまして、大づかみに大切なことがここに政策の方向として掲げられておるわけであります。
「計画の予定する経済成長の諸条件を充たすため、食糧の
総合的自給力を高め、年率三%という生産の成長を達成し、あわせて、過剰労働力の減少を期待するには、
長期的観点に立って、
農林水産業の出産性を高める諸施策が総合的、効率的に実施されることが必要である。
農林水鹿業の
生産性向上の物的基礎条件が、農用地、林道、漁港等、
生産基盤の確立にあることは言うまでもないが、その
整備拡充の現状ははなはだ不十分である。これを農業について見れば、土地条件の整備が、耕地の大半についていまだなされておらず、このような劣弱な耕地の上に立って、米麦などの物量的確保に重点を指向した経営が行われていたため、地力の減退が著しく、さらには労働力配分の季節的繁閑を強めて、
就業構造を不健全にし、
農産物の生産費の高騰を招く結果となっていた。これら農業内部の悪循環を打破するためには、地域と個別経営の実体に即応して
生産基盤を整備強化し、家畜と機械力を導入した合理的作付方式を確立することが必要である。これが農業をして
食糧消費の
高度化あるいは人口増に伴う需要の増大に対応し、
国民経済的要請にこたえさせ、同時に、その
生産性を高め、コストを引下げ、所得を大幅に増大せしめ得るゆえんである。」食糧事情に対応して増産をはかる方法として、こういう合理的な方向で所得を上げ、
生産性も高めるという方向が必要である。
「
水産業については、漁港の整備、漁船装備の近代化及び漁場の改良、開発がはかられなければならないが、この際、とくに停滞的な沿岸漁業の振興に留意する必要がある。
林業については、林道が整備され、従来の採取林業から育成林業への脱皮が行われなければならない。これらの対策が実施されることを前提として、就業者八十五万人の減少と年率三%の生産の成長を見込む就業者一人当り生産は、約二六%の上昇を見ることとなるが、かかる上昇をもってしても、第一次産業の
生産性は、他部門に比べればその較差は完全に改善されるとはいいがたい。従って、これらの
生産性向上対策を基軸とし、これを補完するものとして、
農林水産物の流通
合理化、消費改善、利用
合理化、生産資材の安定確保の諸政策、または
農産物の価格の安定もしくは支持政策が講ぜられる必要がある。」
生産資材の安定確保は、これは肥料とか農薬とか農機具とか、そういうような必要な資材を、農民に合理的な価格で確保されるように考えるということが必要であるということをいっております。
「以上のような方向に沿って、この計画を達成するために必要な政策を要約すれば、次の通りである。
一、資本設備の
高度化
生産性向上の物的基礎条件として、何よりも資本装備の
高度化が進められなければならない。特に耕地、草地、林道、漁港等
生産基盤の整備強化のための投資が効率的、計画的に実施されるべきである。これらの投資は、個々の経営体では行いがたいものであるから、
行政投資および財政投融資面の強力な支持を必要とする。このことは、つり合いのとれた経済成長を目標とするこの計画の達成のために、欠くことのできない条件である。
生産基盤の整備については、従来閑却されがちであった焔地および草地の改良にも力点を注ぐとともに、特に粗放利用地および未開発地について農用地および林地の利用区分を明確にし、これに基いて開墾を積極的に推進して、資源の
高度利用をはかる等、総合性のある施策が要請される。これらのことは、経営規模の拡大や合理的作付体系の確立のための基礎条件として重要である。また、
国土保全を考慮しつつ木材供給の増大をはかるための未開発林の積極的開発及び国内森林生産力を飛躍的に増大させるべき拡大造林の措置が講じられなければならない。
生産基盤の強化と並んで、機械及び家畜の導入を促進するために、
行政投資、財政投融資、あるいは系統金融を総合的、効率的に活用することが必要である。
労働生産性の向上、労働力の季節的繁閑の緩和等は、以上の施策の効果により、初めて実現されよう。
なお、新漁場の開発、国際漁場の確保等により、沖合遠洋漁業の伸長を期することはもとより、特に沿岸漁業については、漁船の動力化、水海増殖事業の拡大、漁業の改良、水質汚濁防止等がはかられなければならない。
二、技術指導体制の強化 米単作または米麦三毛作方式を脱して、地域及び経営の実体に即応しつつ、畜産を取り入れた輪作体系を促進し、年率八・四%という畜産の発展を実現することは画画期的な事柄であり、その達成には並み大ていでない政策的な努力を必要としよう、このため、資本装備の
高度化を必要とすることはもちろんであるが、この変革を推進すべき人と技術の養成普及が絶対的
前提条件となる。すなわち、従来ややもすれば米麦に偏重していた技術指導体制の改善強化がはかられなければならない。この計画の方向は、
計画期間を越えてさらに持続させなければならないから、その必要性はますます痛感される。
このため、試験研究の総合化、指導者の養成及び普及体制の改善が望まれる。これらのことは、一朝一夕には行えないものであるから、着実にこれを実施することが必要である。
三、流通の改善。生産資材の安定的確保及び
農林水産物価格の安定
農林水産物の流通の改善によって第一次
産業部門の所得を増加させ、他産業との所得較差を補てんし得る余地は非常に大きい。このことは畜水産物について特に強調することができる。
流通改善の主眼は、農畜水産物の需要を増大させ、同時に
農林水産業が安定的に生産物を供給し得る体勢を整備強化することにおかれなければならない。このため、まず農林畜水産物を原料とする処理加工業の育成強化、農漁民の自主的経済組織である農業協同組合等の活動の強化が必要である。次にこれとともに、生鮮魚介、生乳等の迅速なる輸送を可能ならしめるよう配慮された道路その他の運輸政策が要望される。
以上の措置と相待って、学校給食、農村生活改善普及その他の食生活改善対策が実施されれば、それはひいては経営の近代化を促進するものともなろう。なお、木材については需給を均衡化させるため廃材及び代替資材の活用等、利用
合理化対策が強力に推進されなければならない。
流通の改善対策と相待って、生産資材の安定的確保及び価格安定の対策を適切に実施すべきである。すなわち、肥飼料、農薬、農機具、漁業用燃油等生産資材の価格の低廉化の努力が要請せられる。それとともに、
農林水産物の価格については、その安定をはかるための措置を講じ、また、
生産性の向上をはかりつつ、段階的に価格支持、または輸入調整の措置を考慮しなければならない。」
以上のようなことでありますが、一つ註釈を加えておきますが、この五年間の長期の計画を計画するときに、当然価格の問題が問題になります。しかし、これはひとり
農林水産物の価格だけでなくて、国内価格全体あるいは国際価格全体、そういうものの関係が出て参りますが、これは価格が非常に上るとか、下るとかいうような要素を織り込みますと、計画自身がなかなか組めませんために、これは、価格水準は一定の水準で一応動かないという前提のもとに計画を組んでおります。もちろんその前提は動き得るわけでありますけれども、計画を組むための必然の前提として、そういう工合に組んで、一定価格が横ばいという前提の上に立って需要と供給と生産を見通してみたい、こういう次第でございます。