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1957-12-10 第27回国会 参議院 農林水産委員会 閉会後第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年十二月十日(火曜日)    午前十一時十一分開会   —————————————   委員の異動 十一月十三日委員近藤鶴代辞任につ き、その補欠として田中茂穂君を議長 において指名した。 十一月十四日委員仲原善一辞任につ き、その補欠として西田隆男君を議長 において指名した。 十一月十五日委員加藤正人辞任につ き、その補欠として梶原茂嘉君を議長 において指名した。 十一月十六日委員西田隆男辞任につ き、その補欠として仲原善一君を議長 において指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     重政 庸徳君    理事            柴田  栄君            東   隆君            清澤 俊英君            島村 軍次君    委員            秋山俊一郎君            雨森 常夫君            佐藤清一郎君            関根 久藏君            田中 啓一君            田中 茂穂君            仲原 善一君            堀  末治君            堀本 宜実君            河合 義一君            北村  暢君            戸叶  武君            上林 忠次君            千田  正君            北條 雋八君   事務局側    常任委員会専門    員       安樂城敏男君   説明員    外務省経済局第    二課長     吉田 健三君    農林大臣官房参    事官      立川 宗保君    農林省農林経済    局経済課長   二子石揚武君    農林省振興局長 永野 正二君    林野庁林政部林    産課長     中川久美雄君    日本専売公社副    総裁      舟山 正吉君    日本専売公社塩    脳部塩業課長  守田 富吉君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○農林水産政策に関する調査の件  (農林水産業長期計画及び五カ年  計画に関する件)  (日ソ通商農林水産業との関係に  関する件)  (流下式製塩による農作物被害に関  する件)   —————————————
  2. 重政庸徳

    委員長重政庸徳君) ただいまから農林委員会を開きます。  最初に、委員の変更について御報告いたします。  去る十一月十三日近藤鶴代君が辞任され、田中茂穂君が選任され、十四日仲原善一君が辞任され、西田隆男君が選任され、十五日加藤正人君が辞任され、梶原茂嘉君が選任され、十六日西田隆男君が辞任され、仲原善一君が選任されました。   —————————————
  3. 重政庸徳

    委員長重政庸徳君) 次に、参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  明日、中央卸売市場に関する件について、東京都副知事佐藤基君、東京中央卸売市場長飯田逸次郎君、及び東京中央卸売市場業務部長石井孝義君の三名から意見を聴取してはいかがかと存じますが、御異議ございませんか。   [、異議なし」と呼ぶ者あり]
  4. 重政庸徳

    委員長重政庸徳君) 御異議ないと認めます。  それでは、その手続等につきましては、委員長に御一任をお願いいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 重政庸徳

    委員長重政庸徳君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。   —————————————
  6. 重政庸徳

    委員長重政庸徳君) 農林水産長期計画及び五カ年計画の件を議題にいたします。  去る十一月六日、農林省振興局から、昭和三十二年産米豊作技術的要因について見解が発表され、その中に、「わが国の今後の人口増加を考慮しても米の完全国内自給を近い将来の現実的目標とすることが十分可能となったということができる。」と述べられておりまして、かかる農林省見解に対して、島村委員から質疑の御要求がありましたので、これらの問題をも含め、最近の課題となっております農林水産長期訂血及び五カ年計画について、農林当局説明を求めます。
  7. 立川宗保

    ○説明員(立川宗保君) 長期経済計画農林水産の関係について御説明申し上げます。  資料を二つお手元に差し上げてあると思いますが、経済審議会農林水産部会の報告と、横に長い新長期経済計画農林水産部門参考附表、この二つについて御説明申し上げます。  この長期経済計画の一環として農林水産部門があるわけでありますが、この長期経済計画を本年の春あたりから経済審議会で審議を進めておりました。これは経済企画庁が事務局になりまして、いろいろな各方面の学識経験者を網羅いたしました経済審議会というのがございますが、そこでわが国の、長期経済計画を審議をして参ったわけであります。で、過ぐる十一月の二十五日に、この経済審議会長期計画、今後昭和三十三年を初年度として三十七年まで五カ年間の経済の見通しを盛った長期計画を政府に答申をいたしました。それで、その中に、農林水産の事項がいろいろ入っておるわけでありますが、その農林水産関係の事項を御説明をするということにいたしたいと思います。  で、ここにお手元にあります農林水産部会の報告は、経済審議会の中の部会報告でありまして、これは経済審議会で七つの部会を作りまして、鉱工業でありますとか、あるいはエネルギーの関係でありますとか、あるいは財政金融ですとか、貿易ですとか、そういういろいろな部会を作りまして、その一つに農林水産部会があります。この部会でいろいろ御検討になって、報告をされたわけであります。これがこの総合部会に対する報告ありまして、総合部会で全体のいろでろな関係産業部門を総括して、最後に一つの答申案をまとめております。で、いわば答申案の素材になったものでいありますが、答申案を御説明をいたしますよりも、農林水産部会の報告をなまのままお話を申し上げる方が、いろいろ明瞭であると思いますので、これを御説明申し上げたいと思います。報告書について、読みながらこの所要の御説明を加えていきたいと思います。  まず三ページの第一章、「第一章、第一次産業部門長期的課題と計画の目標」として「新長期経済計画の基本的な目標は、均衡のとれた国民経済安定的成長を達成することにある。そのために第一次産業部門、すなわち農林水産業は、増大する需要に対応して、十分な食糧及び原材料を供給するとともに、生産性を他産業部門生産性とつり合いのとれたものにすることが必要である。しかしながら、第一次産業部門、とくに農業についてみれば、周知のように労働集約的であり、農産物供給力は、農業人口有業人口の四割を占めているにかかわらず、食糧輸入を必要とするほど脆弱なこと、しかも、その国際的な競争力は、小麦に見られるように貧弱なこと、さらに一方、その就業構造兼業農家の増大、労働力の老幼令化婦人労働への依存増大にみられるように、最近とみに劣悪になってきていることなど、改善を要すべき問題に当面している。」これが問題を出しておるわけであります。「これらの諸問題は、経営の零細性と就業機会の乏しさと結びついて、労働生産性の低いことに根本的な原因がある。そのため農漁村における所得水準及び消費水準は、都市に比較して相対的に低くなってきている。  最近第一次産業部門労働生産性は、鉱工業部門の急速な発展、特に重化学工繋化の進展に伴う生産性の急激な上昇と比較した場合、その立ちおくれは顕著なものがある。従って、第一次産業部門国民経済的要請に応じ得るためには、生産性を飛躍的に向上させ、その内部にひそむ諸矛盾を是正して、他部門と生産性をバランスのとれたものにしなければならない。  以上のような認識に基き、農林水産部門計画基本的目標は、食糧、原材料の供給力をできるだけ強化し、総合的自給力を高めること、生産性及び所得水準の向上を期し得るように農林水産業生産基盤を育成強化し、それによって他産業部門との不均衡を是正することである。この基本的目標を短期間に達成することは、産業自体の特性並びに国民経済自体発展規模——特に雇用面——から見て困難である。」短期にはなかなかむずかしい、非常に長い間かかってしんぼう強くこの目標を達成するほかはないというわけであります。「従って、三十七年度に至る計画期間中においては、この基本的目標べの接近を極力指向することとし、年率六・五%の国民経済成長率に即応した計画目標を次のように定める。  一、人口増及び食糧消費高度化に伴う需要の増加に即応して食糧の国内供給を増大させること。さらに鉱工業部門住宅建設部門等の需要に沿う木材の供給を行うこと。  二、農林水産物輸出を極力増大させ、国内供給の可能な農林生産物輸入を漸次減少させること。」これはあとに詳しく出ておるわけです。  「三、農林水産業の近代化を推進し、特に農業については家畜及び機械を導入した合理的営農方式の確立により、就業者一人当り所得の増加率を、二次、三次産業部門と極力均衡させること。」  第二章の計画の内容に入って参りますが、   「計画の内容   一、食糧及び木材需要の見通し   国民経済の成長事が年率六・五%で三十七年度まで上昇する場合、一人当り所得成長率は五・七%になる。」これは全体の経済計画が、毎年日本の国民経済が六・五%ずつ伸びていくという前提を含んでおります。それを前提にして考えておるわけでありますが、人口がふえますために一人当りの所得は六・五%まで伸びませんで、五・七%になるわけであります。「この所得の成長に伴い、主要な農水産物需要も大幅な増加を示すものと思われる。」所得がふえますから、農水産物もつまりよけい買うようになり、消費の増加を来たす。   「これを一人当り消費量について見れば、三十一年度(以下特に断らない限り平常状態をいう)に対して急速な増加を示す品目は」一番消費が伸びるものは「大豆、果実、肉類、牛乳、乳製品、けい卵、食用油脂及び砂糖で、いずれも三十一年度より一〇%以上の増加となる。」これは詳しくはこの参考の附表のところの一ページのところの二欄目に「人当り消費の伸び率」という数字が書いてありますが、そこに詳しく出ておるわけであります。本文に戻りまして、「特に牛乳、乳製品は七七%増の見込みである。これら品目は、いずれも所得弾性値が高く、国民の消費の方向に合致したもの、であり、しかも、将来の国民栄養改菩の点からも重要なものである。   三十一年度より微増ないし現状にとどまる品目は、」今度は横ばいに近いものですね、それは「米、小麦、バレイショ、澱粉、野菜、鯨肉、魚介類及びみそ、しょうゆで、比較的伸びる魚介数も一五%増にとどまる。所得水準の上昇につれて穀数の液費は漸減する方向にあるが、米は三十七年度までのわが国の所得水準上昇程度では漸減するには至らないものとしてほぼ三十一年度の水準に止まるものとした。ただ小麦の消費量は、戦後の食生活の変化によって、主食に占める比重が増大する傾向にあるので、若干の増加を見込んだ。野菜の消費量が三十一年度より量として伸びないのは、量的消費から質的消費に変化する状況を織り込んだためである。」つまり、たとえば大根みたいなものがあまりふえませんで、ホウレンソウとかタマネギとかセロリとかトマトとか、まあそういったようなものが伸びるというわけであります。  「三十一年度の消費量より将来減少する品目は、精麦、雑穀及びカンショで、いずれも所得水準の上昇につれ、減少する品目である。」これは減ります。「また、これら品目は、畜産物の増産のために、飼料としての利用度も高まる傾向にあって国民の口に直接摂取されることは今後ますます少くなろう。  以上のような品目別の消費変化をおり込んだ三十七年度における国民一人一日当り摂取カロリーは、約二千二百カロリーとなろう。これは、三十一年度二千百四十三カロリーより約三%の上昇である。  この計画の力点は、摂取カロリーより蛋白、脂肪の摂取量の増加におかれている。すなわち、蛋白は、三十一年度の六十五・一グラムより三十七年度に約六十八グラム、脂肪は二十三・九グラムより約三十グラムへと、それぞれ大幅な増加となっている。特に蛋白において植物性のものから動物性への変化が大きく見込まれた。なお、資源調査会が四十五年の日本人の栄養について労作別年令別に検討した結果、望ましいものと発表した摂取カロリーは二千三百二カロリー、蛋白は七十二グラム、脂肪は三十・三グラムであるが、四十五年の日本人と三十七年のそれとの労作別年令別構成の相違を考慮すれば、四十五年を待たずその望ましいとされている栄養状態に達するであろう。」この三十七年度の想定の栄養状態のテンポでいきますと、四十五年を待たずに、かつて資源調査会が立てました日本人の望ましい栄養水準というところを、より早く達成をすることになるであろうというふうに思われます。  「木材の需要は、鉱工業の急速な弊展、国民所得水準の上外から、急激な増加をたどるものと思われる。特にパルプ用材の需要は三十一年度実績より四五・六%増となる。その他包装材、建築材等も大幅な需要増加があると思われるが、木材資源の制約を前提とし、木材利用合理化が一そう推進されるものとして、需要全体としては、現状より若干の増加を見込んだ。」需要の伸び方に供給がなかなか追いつかないような傾向がありますので、いろいろ工夫をしなくちゃならないと思われます。「このため木材の需要は、三十一年度実績の一一・一%増加になった。しかし、需給の均衡をもたらし、木材価格の高騰をさけるためには、林地廃材製材くず等を十分に利用して供給面の増強をはかると同時に、需要面においても、技術進捗と代替材の活用によって現行のベース以上の合理化を推進することを見込んだ。  薪炭については、産業用の需要は相当増加すると思われるが、家庭川燃料としての地位は、生活様式高度化とともに漸減するものと思われる。このため、総需要量として微減するものとした。  二、農業生産計画と需給  耕地面積は三十一年度実績の五百七十五石町歩に、開墾、干拓の造成面積を加え、将来の壊廃面積を差し引いて三十七年度には五百八十七万町歩と約十二万町歩の増加となる。土地の利用率は三十一年度実績では、水田一三八%、畑一五%、田畑あわせて一四四%であるが、農業技術の進歩と土地改良事業の推進を考慮して、三十七年度には水田一四二%、畑一六〇%、田畑合せて一五〇%を見込んだ。この結果、作付総面積は三十一年度実績より約六四%増となった。  作付面積が三十一年度実績より大幅に増大するのは、大豆、トウモロコシ、果実、菜種、テンサイ及び肥飼料作物で、特に肥飼料作物は三十九万町歩から三十七年度には七十五万町歩と、畜産の伸張にあわせて大幅な増加を期待する。」ここが一番顕著に出ております。「米の作付面積は三十一年度実績の三百二十六が七千町歩より、約一万町歩の増加にとどまるであろう。一方減反傾向を示すものは麦類で三十一年度実績の百六十五万三千町歩より約八万町歩の減となっている。これは三十一年度から三十二年度にかけての現実の減反分を織り込んだもので、三十三年度以降は横ばいにとどめている。  反当収量は、土地改良及び品種改良営農技術の進展に伴い、いずれも増加するものと期待される。そのうち、三十一年度の反収水準を二〇%以上上回る作物は陸稲、小麦、大麦、カンショバレイショ、大豆、トウモロコシ及びテンサイなどである。水稲は、過去の反収の上昇傾向を加味して、三十七年度には三十一年度の七・八%増を見込んだ。」過去の平均上昇率よりも高く見込んでおります。  「以上の結果、総生産量において、いずれも三十一年度より相当の増産が見込まれている。主要品目についてみると、米五百八十八万七千石、小麦百十七万七千石、大麦百七十九万五千石、大豆百八十六万石、トウモロコシ百八十五万石の増産となる。飼料作物の増加と対応して、実畜の増殖は、馬を除いて大幅な増加を見込んだ。特に乳用牛は、三十一年度の五十八万八千頭から、百二十四万七千頭と、二倍以上の増加となっている。」これがやはり一つの特色を持つ点であります。「その他の家畜も三十一年度より五〇%以上の増を示すと思われる。家畜の増殖と品種改良等による搾乳率の上昇や、一頭当り肉量の増加によって、三十七年度の畜産物生産量は、三十一年度に対して、牛乳における一二三%増を初めとし、肉類二八%、鶏卵五八%の増と、それぞれ画期的な大増産を達成することになっている。一方、必要な飼料は、極力国内で自給する建前をとり、飼料作付面積は、三十一年度実績の十八万町歩から、五十五万町歩にする計画であり、反当収量も相当の増加を織り込み、乳牛について飼料自給率七五%を見込んでいるが、それでも飼料輸入の増加は避けられない。すなわち、三十一年度の実績の五百十七万トンから、三十七年度には百六万八千トンとなる。特にトウモロコシ輸入は、鶏の増加に伴って、二十六万二千トンから、六十三万トンへと大幅な増加を示すと思われるが、これは、多く東南アジア及び南アフリカからの輸入に期待するものとする。」それで、今農業の生産、農産物の生産がずっと出ておりますが、これは、これの組み方といいますか、立て方は、先ほど食糧需要の方の見通しを最初に書いてございましたが、つまり非常にふえるもの、あまりふえないもの、むしろ食糧としては減るもの、こういう需要の方を先に見当を立てられまして、その需要に応じて生産を伸ばす。つまりよけい必要であれば、それに応じた生産計画を合せていく。ものによっては、需要ほど生産が伸びないというものもありますし、その分は輸入でまかなうとか、あるいは需要はあるけれども、そこまで消費が伸ばせられないというような組み方がありますが、生産から出発して喜需要を組んだわけではなくて、需要の方から先行して、逆にそれだけ需要があれば、生産をやっても間違いがないというような組み方、で、その生産はいろいろな土地改良、あるいは技術の改良、営農の改善というような点から達成できるかどうかという検討を加えて、この数字を一つずつ積んでおるわけであります。  次に、十ページのところの蚕糸の関係に参ります。「生糸及び絹織物は、人造繊維の発達によって、将来国民所得の上昇にかかわらず、国内需要の増加は小さいと思われる。計画では、人口の増加を織り込んで、三十一年度実績の五・一%増とした。」これは国内では一人当りの生糸、絹織物の消費量は伸びないという見当をつけております。「しかし、生糸及び絹織物は、輸出農産物としては、依然海外の需要は増加傾向にあると思われるので、輸出量は三十一年暦年実績の四六・七%増とした。  上記の生産計画に基く主要品目の需給を見ると、米の総需要量は、三十七年度には千二百五万四千トン、八千三十五万石となり、三十一年度実績の三・二%増となるが、生産も三十七年度には千百三十九万六千トン、七千五百九十七万石に達するので、要輸入量は、精米で六十二万一千トン、四百三十九万石にとどまるであろう。この輸入量は、三十一年度実績の輸入量精米五十五万八千トン、三百三十四万石より若干の増加となるが、三十一年度実績の輸入量は、三十年、三十一年の二カ年連続豊作による特殊事情を反映したものとすれば、通常年間輸入百万トンといわれた日本の米輸入は、三十七年度には相当の減少を見ることになる。このほか小麦、大立の輸入量は若干増加し、大麦の輸入量は、ほぼ二九−三一年度平均の実績にとどまる。」大麦などは横ばいでありますが、これは国内生産は飼料に非常に回りますので、構造は変ってくるわけであります。「これら輸入量を確保すれば、将来の国民所得及び人口の増加による、需要の増大も、国内供給力の増血によって、需給はバランスするものと思われる。なお、砂糖については、極力国内で生産増強を行うが、需要の著しい増加に応じ、輸入は増大することとなろう。  この結果、農業生産の伸びは、耕種で三十一年度の一一四・六%となるが、畜産の上昇を三十一年度の一六二・六%まで見込んだので、全体の生産指数は、三十七年度には、三十一年度の一二一・五となった。以上のように、年率三・三%に及び飛躍的な生産の成長率を確保するためには、土地改良等生産基盤整備拡充前提条件となることはいうまでもない。このため、農地開発行政投資が確保されねばならない。この投資額の算定方式としては、一つの方式として、長期的観点に立って、昭和五十年度までに一切の土地改良、開墾及び干拓事業を完了することを目標とし、かつ、事業の効率的運営をはかるため、事業期間を極力短縮することを目途として、積み上げ方式により、その長期計画の一環として、三十三年度から三十七年度に至る五カ年間の行政投資の規模を算出すれば約三千億円となる。他の方法として、過去の所得の成長と固定資本投下量との関係から限界資本係数を求め、これを媒介として年率三・三%という農業所得の成長に対応する農地開発行政投資を巨視的に推計すれば、約二千三百億円となる。  三、水産業生産計画」であります。  「水産物の生産量は、最近の需要動向を勘案し、各種の増産施策を積極的に推進することを期待して、三十七年度には六百万四千トンと見込まれている。  これは三十一年度五百八万五千トンにくらべて一八・一%の増加となる。  この増産計画生産指数で示すと、三十一年度に対し、三十七年度には一一八・五となる。なお漁港については、計画期間内に五七・四港の整備を行う「漁港整備計画」がある。  四、林業生産計画  林業生産計画は、木材の需要増大に対応しつつ、国土保全及び国内資源の開発をはかり、植伐の状況を現状より悪化せしめないために、用材の生産は、三十七年度に一億五千八百万石にとどめ、輸入を三十年度実績より五〇・四%の増加、一千四百万石と最大限に見込んだ。そのほか、薪炭需要の停滞にかんがみ、薪炭林の用材転用と、廃材の高度利用を含めて、三十七年度の用材供給量は、三十一年度実績の一二・二%増となる。木炭及び薪の生産はほぼ現状にとどまるものと思われる。」薪炭はあまり変りはありません。用材の問題であります。  「以上を生産指数で表わすと、三十一年度に対し、三十七年度には一〇八・二となる。うち、用材の生産指数は、その伸びが高く、三十一年度に対し一一・三である。なお、造林林道事業については、計画期間内にそれぞれ約二百三十万町歩の造林及び三万三千キロメートルの林道を開設を行う計画がある。」以上のような需要と生産を考えますと、輸出入の関係が出てくるわけであります。  「五、農林水産物輸出入計画  農林水産物は、外貨手取率が高いので、その輸出の国際収支の改善に果す役割は大きい。農林水産物輸出総額は、三十七年度に約四億四千六百万ドルと見込んでいるが、これは三十一年暦年実績の三億四千九百万ドルの約二七・六%増である。輸出伸長の大宗は農水産、かん詰、冷凍水産物水産油脂、生糸及び木製品からなっている。」合板のごときものであります、木製品は。  「農産物の輸入の主要なものは需要の項で見たように、米、麦、大豆及びトウモロコシである。これらについては、極力国内で効率的な増産をはかり、輸入を抑制する建前をとったが、畜産の伸びとの関連で、トウモロコシの輸入が大幅に増加するのと、砂糖の輸入の増加によって、輸入金額は二九−三一年度実績平均五億八千九百万ドル(二九−三一年度平均単価による)にくらべて、三十七年度には六億四千六百万ドルと、約七・九%増となっている。以上の結果、総輸人金額に占める上記農産物の割合は、二九−三一年度実績平均の二一・五%から、三十七年度には十三・七%に低下する。」金額では、輸入金額はふえますけれども、総体の輸入の規模が国全体としてふえますために、農産物輸入の比率からいいますと、かなり国内需給度が向上をする。つまり二一%から十三%にまで下ると、こういうことになるわけであります。  次は所得の関係であります。  「六、第一次産業の所得と生産性農林水産業生産計画により、第一次産業部門生産指数は、三十一年度に対して一一九・四になり、年率にして三〇%の増加である。最近における第一次産業部門の所得率は、肥飼料や農薬の購入量の増加、大農具の普及等によって、低下の傾向を招き、生産の増加ほど所得が増加しない傾向が顕著になっている。そして、過去においてはこの所得率の低下傾向は、農林魚産物の価格の相対的上昇によって緩和されてきたような状況である。計画においては、この状況が今後も継続するものとし、かつ、飼料の自給化、その他購入資材の合理的使用及び気産物の品質向上の可能性をもさらに考慮して、所得率の一定とし、第一次産業の所得も三十一年度から三十七年度まで年率三%の増加を期待する。」以上ずっと初めから御説明をいたしましたように、農林水産業生産計画が考えられますと、それに応じて農林水産業に携わる農漁民等の所得が出てくるわけであります。それは三%総体として年々生産が伸びるのに対応しまして、所得も三%づつ伸びるように考えていきたい。そのためには、ここにありますように、いろいろ所得率を落さないという配慮が必要となって参ります。「第一次産業部門の就業者一人当り所得は、三十一年度に対して三十七年度には約二五・六%の増大を見込んだ。これは、雇用部会の報告に見られるように、三十一年度より約八十五万人の就業者数の減少を見込んだので、第一次産業部門全体の所得の伸び率一九・四%に比べ、若干高くなっている。」これは農林水産部門のほかに雇用の部会がありまして、そこでいろいろ研究をいたしたのでありますが、日本の雇用人口は、五年間にもちろん非常に増加をいたしますが、それは鉱工業部門が発展をするのにつれまして、だんだんそこに全体として集中をしていきまして、農林水産部門からは人聞がそちらの方へ移っていく。約八十五万人就業者が減るであろうという判断を立てております。で、それを受けてここで考えておるわけでありますが、ほんとうは、もし就業者数が減らなければ、所得は五年間に一九・四%しか伸びないのでありますが、頭数が減りますので、この今言いました二五・六%くらいに達するであろう、こう判断されるわけであります。「しかし、就業者数の減少は、投資を増大させ、技術を逃歩させて、第一次産業内部にこれを可能とならしめるような条件を作り出すことと相待って初めて期待できることである。」内部の合理化の条件が相待って必要だ。  で、最後に第三章として、以上見ましたような生産の計画を達成をいたしますために、あるいは所得の確保を達成をいたしますために、いろいろなものが考えられておりますが、こまかいことは別としまして、大づかみに大切なことがここに政策の方向として掲げられておるわけであります。  「計画の予定する経済成長の諸条件を充たすため、食糧の総合的自給力を高め、年率三%という生産の成長を達成し、あわせて、過剰労働力の減少を期待するには、長期的観点に立って、農林水産業の出産性を高める諸施策が総合的、効率的に実施されることが必要である。  農林水鹿業の生産性向上の物的基礎条件が、農用地、林道、漁港等、生産基盤の確立にあることは言うまでもないが、その整備拡充の現状ははなはだ不十分である。これを農業について見れば、土地条件の整備が、耕地の大半についていまだなされておらず、このような劣弱な耕地の上に立って、米麦などの物量的確保に重点を指向した経営が行われていたため、地力の減退が著しく、さらには労働力配分の季節的繁閑を強めて、就業構造を不健全にし、農産物の生産費の高騰を招く結果となっていた。これら農業内部の悪循環を打破するためには、地域と個別経営の実体に即応して生産基盤を整備強化し、家畜と機械力を導入した合理的作付方式を確立することが必要である。これが農業をして食糧消費高度化あるいは人口増に伴う需要の増大に対応し、国民経済的要請にこたえさせ、同時に、その生産性を高め、コストを引下げ、所得を大幅に増大せしめ得るゆえんである。」食糧事情に対応して増産をはかる方法として、こういう合理的な方向で所得を上げ、生産性も高めるという方向が必要である。  「水産業については、漁港の整備、漁船装備の近代化及び漁場の改良、開発がはかられなければならないが、この際、とくに停滞的な沿岸漁業の振興に留意する必要がある。  林業については、林道が整備され、従来の採取林業から育成林業への脱皮が行われなければならない。これらの対策が実施されることを前提として、就業者八十五万人の減少と年率三%の生産の成長を見込む就業者一人当り生産は、約二六%の上昇を見ることとなるが、かかる上昇をもってしても、第一次産業の生産性は、他部門に比べればその較差は完全に改善されるとはいいがたい。従って、これらの生産性向上対策を基軸とし、これを補完するものとして、農林水産物の流通合理化、消費改善、利用合理化、生産資材の安定確保の諸政策、または農産物の価格の安定もしくは支持政策が講ぜられる必要がある。」  生産資材の安定確保は、これは肥料とか農薬とか農機具とか、そういうような必要な資材を、農民に合理的な価格で確保されるように考えるということが必要であるということをいっております。  「以上のような方向に沿って、この計画を達成するために必要な政策を要約すれば、次の通りである。  一、資本設備の高度化  生産性向上の物的基礎条件として、何よりも資本装備の高度化が進められなければならない。特に耕地、草地、林道、漁港等生産基盤の整備強化のための投資が効率的、計画的に実施されるべきである。これらの投資は、個々の経営体では行いがたいものであるから、行政投資および財政投融資面の強力な支持を必要とする。このことは、つり合いのとれた経済成長を目標とするこの計画の達成のために、欠くことのできない条件である。生産基盤の整備については、従来閑却されがちであった焔地および草地の改良にも力点を注ぐとともに、特に粗放利用地および未開発地について農用地および林地の利用区分を明確にし、これに基いて開墾を積極的に推進して、資源の高度利用をはかる等、総合性のある施策が要請される。これらのことは、経営規模の拡大や合理的作付体系の確立のための基礎条件として重要である。また、国土保全を考慮しつつ木材供給の増大をはかるための未開発林の積極的開発及び国内森林生産力を飛躍的に増大させるべき拡大造林の措置が講じられなければならない。  生産基盤の強化と並んで、機械及び家畜の導入を促進するために、行政投資、財政投融資、あるいは系統金融を総合的、効率的に活用することが必要である。労働生産性の向上、労働力の季節的繁閑の緩和等は、以上の施策の効果により、初めて実現されよう。  なお、新漁場の開発、国際漁場の確保等により、沖合遠洋漁業の伸長を期することはもとより、特に沿岸漁業については、漁船の動力化、水海増殖事業の拡大、漁業の改良、水質汚濁防止等がはかられなければならない。  二、技術指導体制の強化 米単作または米麦三毛作方式を脱して、地域及び経営の実体に即応しつつ、畜産を取り入れた輪作体系を促進し、年率八・四%という畜産の発展を実現することは画画期的な事柄であり、その達成には並み大ていでない政策的な努力を必要としよう、このため、資本装備の高度化を必要とすることはもちろんであるが、この変革を推進すべき人と技術の養成普及が絶対的前提条件となる。すなわち、従来ややもすれば米麦に偏重していた技術指導体制の改善強化がはかられなければならない。この計画の方向は、計画期間を越えてさらに持続させなければならないから、その必要性はますます痛感される。  このため、試験研究の総合化、指導者の養成及び普及体制の改善が望まれる。これらのことは、一朝一夕には行えないものであるから、着実にこれを実施することが必要である。  三、流通の改善。生産資材の安定的確保及び農林水産物価格の安定  農林水産物の流通の改善によって第一次産業部門の所得を増加させ、他産業との所得較差を補てんし得る余地は非常に大きい。このことは畜水産物について特に強調することができる。  流通改善の主眼は、農畜水産物の需要を増大させ、同時に農林水産業が安定的に生産物を供給し得る体勢を整備強化することにおかれなければならない。このため、まず農林畜水産物を原料とする処理加工業の育成強化、農漁民の自主的経済組織である農業協同組合等の活動の強化が必要である。次にこれとともに、生鮮魚介、生乳等の迅速なる輸送を可能ならしめるよう配慮された道路その他の運輸政策が要望される。  以上の措置と相待って、学校給食、農村生活改善普及その他の食生活改善対策が実施されれば、それはひいては経営の近代化を促進するものともなろう。なお、木材については需給を均衡化させるため廃材及び代替資材の活用等、利用合理化対策が強力に推進されなければならない。  流通の改善対策と相待って、生産資材の安定的確保及び価格安定の対策を適切に実施すべきである。すなわち、肥飼料、農薬、農機具、漁業用燃油等生産資材の価格の低廉化の努力が要請せられる。それとともに、農林水産物の価格については、その安定をはかるための措置を講じ、また、生産性の向上をはかりつつ、段階的に価格支持、または輸入調整の措置を考慮しなければならない。」  以上のようなことでありますが、一つ註釈を加えておきますが、この五年間の長期の計画を計画するときに、当然価格の問題が問題になります。しかし、これはひとり農林水産物の価格だけでなくて、国内価格全体あるいは国際価格全体、そういうものの関係が出て参りますが、これは価格が非常に上るとか、下るとかいうような要素を織り込みますと、計画自身がなかなか組めませんために、これは、価格水準は一定の水準で一応動かないという前提のもとに計画を組んでおります。もちろんその前提は動き得るわけでありますけれども、計画を組むための必然の前提として、そういう工合に組んで、一定価格が横ばいという前提の上に立って需要と供給と生産を見通してみたい、こういう次第でございます。
  8. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 この部会で今御説明になりましたような事項がきまったようでありますが、これをこの通りに実施していった場合の経費といいますか、予算といったものは、一体どれくらいになるかということの検討はできておりますか。
  9. 立川宗保

    説明員立川宗保君) これは、この計画全体の計画としましては、一つ一つの仕事の所要経費を一々計画を組んでおりません。つまり、鉄に幾ら、石炭に幾らという工合に、一つ一つ部門について計画を組んでおりませんで、全体の経済バランスといいますか、そういう意味で組んでおります。それは、申し上げますと、全体としましては、年々六・五%づつ経済伸びて参りますから、日本国民経済の幅が非常に大きくなっていくわけであります。そこで、その中で国の財政の規模を全体として見ておりますが、財政の規模としては、この国の経済の全体の幅に対して財政が占める幅、その中で政府の投資と、それからいろいろな人件費、物件費その他の消費、政府の消費部門と、こう区分けをして組んでおりますが、投資の部門は、むしろ現在の比率よりもふえる、それから、政府の消興の部門は、むしろ減りぎみということで組んでおりまして、行政投資部門は、総体としてふくらむ、ある程度ふくらむという計画を組んでおります。
  10. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 よくわかりませんが、この農林水産部門においてこれだけの計画を立てておると、そうすると、農業部門においてはどの程度に経費が必要であり、また水産、林業、畜産等についてもそれぞれこの計画を実施する上においては年々どれだけの経費を計上しなければならぬかということが出ませんと、ここに何パーセント増であるとか、あるいはどれだけの拡張をするとかということが、単なる作文に終ってしまうような感じがするのですが、もちろんその経費を出すためには、それぞれの部門において積み院げていかなければ、経費が出てこないと思いますけれども、大ざっぱでも、これが果して日本の財政上から見て可能なものであるかどうかということの判断も、それがないと、ちょっとわれわれにはわからない、これはこれだけあるが二兆も三兆も甲の経費が要るのだ、全体的に見て。ということであれば、単なる絵にかいたもちのような感じがするのですが、そういう点はいかがですか。
  11. 立川宗保

    説明員立川宗保君) 数字でちょと申し上げますと……
  12. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 これは数字の表か何かないのですか。
  13. 立川宗保

    説明員立川宗保君) これは、今の一つ一つ数字でなくて、全体の数字しかございませんので、数字だけちょっと申し上げたいと思いますが、国の財政の関係で、政府消費とそれから行政投資と、二つに分けております。行政投資漁港ですとか、林道ですとか、あるいは道路ですとか、そういう投資になる、それから政府消費は、さっき申し上げました人件費でありますとか、いろいろな物件費ですとか、そういう消費的な経費、そういうものが入るわけでありますが、それが昭和三十年度には行政投資が四千二百四十一億でありますが、それが三十七年度には六千七百八十億にふえる、従って、これはいろいろ道路も要りましょうし、いろいろなその他の投資部門がふえるわけでありますが、それが、全体の計画としては、ほぼ効率的にいろいろ事業をやっていき、合理的にその計画を進めていくならば、まずまずこの全体の産業の発展のテンポに見合うだろう、こういう判断をこの審議会はつけておるわけです。ついでながら、行政消費の方は三十年度には九千四百十九億でありますが、三十七年度には一兆三千四十億になると、こういう見通しを立てております。これはしかし、国民経済全体の占める比率としましては、行政投資は三十年度には五%の比率を占めておりましたのが、三十七年度には五・二%の比率を占めるということで、非常に比率が上っておりますが、政府の消費は、三十年度には一一%の比率が三十七年度には一〇%という工合に比率が下ると、こういうことになっております。
  14. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 この数字は、これはこの計画全体でありますが。農水部門だけですか。
  15. 立川宗保

    説明員立川宗保君) これは国民経済全体の数字であります。農水部門でございません。
  16. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 この長期計画に要する行政投資あるいは政府消費全体でございますね。
  17. 島村軍次

    島村軍次君 だいぶ広範なので、お伺いしたいこともたくさんありますが、時間の関係もありますから、私は全体を余裕があったらやるとして、先般来御発表になりました「三十二年度産米豊作の技術的要因」というようなのが出まして、そしていろいろなことをおあげになって、結論として、今後においては、米の国内自給を目標とすることが十分可能である、この計画には輸入量を相当上げておりますが、この意味を、一つどういうところから出たのか、その点を一つ説明をお願いしたいと思います。
  18. 永野正二

    説明員(永野正二君) この機会に御説明をいたしておきたいと私も考えておりましたのでございますが、先般私の局といたしまして発表いたしました昭和三十二年産米の作柄がどういうふうにしてやられたかという技術的分析を行いました。これは、むしろ世間で、単に豊作だ、お天気がよかったので豊作が続いたのだというような印象があるかもしれないけれども、それはそうではないのであって、三十二年度の米作の背景になりました気象的な条件、あるいは病虫害その他の災害の条件というものは、相当むしろ平年以下といってもいいくらいの条件であったけれども、近年著しく改善されたいろいろな耕種改善技術とか、あるいは土地改良の効果というようなものが総合的に発揮されてこういう作柄になったのであるということを、要因として発表いたしたのでありますが、それの実は結論と申しますのは少し言い過ぎかもわからないと思うのでございますが、それだけ分析をしてみまして、最後に何らか将来の動向につきましても付言をするといたしますれば、私どもといたしましては、こういうふうな技術改善あるいは土地条件の整備等、今後まだ相当残っておる部分がございますので、こういう部分を続けて強力に実施して参るならば、遠からざる将来におきまして、たとえ人口増加という要因を片方で考えてみましても、内地米につきましては自給をするということが現実的な目標になる。従来とかく米の国内自給ということは理想的には掲げられましても、なかなかそれが現実的な目標になるまでには、相当問題があったのでございますが、最近のようなこういう技術の発達を考えるならば、それを具体的な、現実的な目標にすることが可能になっておるということを、いわば結論としてではなく、一種の今後の私どもの心がまえとして書いたような次第でございます。一部報道機関等が非常にこれを国内自給が可能だというふうに断定したような報道をいたしたのでありますが、真相はそういうところであるのでございます。先ほど企画室長から説明のございました三十七年までの長期計画につきまして御説明がございましたように、完全自給はできないという数字になっております。これはもちろん農業関係におきましては、いろいろな施策を講じましても、たとえば土地改良をやりましても、その効果というものは相当あとから出てくるわけでございます。単に四年とか五年とかいう将来にすぐ効果が出るというわけにはいきませんが、三十七年にはそういう計画になっております。私どもとしては、別途もう少し先の長い計画を、もし立てるとすれば、国内自給も可能なりというような計画も立て得るのではないか、こういうふうに考える次第でございます。
  19. 島村軍次

    島村軍次君 これは地方では非常な大きな影響を持っておると思うのです。まあそれはただいまの御説明で、新聞の報道が、振興局長が御発表になったよりは、過大に記述が行なわれたということもあったんであろうと思うのですが、少くともこの結論を見まするというと、人口増加を考慮しても、米の完全国内自給が、現実的な目標とすることが可能であるということには、これは相当の数字的根拠がなければならぬ。既往におけるいろいろな内容を拝見しますると、現実に、たとえば保温折衷苗代の普及とか、あるいは品種の改善とかというようなことがあげられ、また、肥料需給情勢等があげられておりますが、これは現実の今までの増加傾向であって、この増加傾向をそのまま将来においても可能であるものとし、かつまた、そのほかに技術改善の方法を、ただいまお話のように、なお要因として残っておるものをやった場合にはどうなると、こういうふうな根拠が一応想定されたものと、われわれは了解するのですが、その点はいかがですか。
  20. 永野正二

    説明員(永野正二君) 御指摘の通りこれだけのことを言うためには、一応数字的な作業もいたしておるわけでございまするが、ちょうどまだこの要因分析をいたしますときは、先ほど御報告がございました長期計画の策定の途中でございまして、その途中において、いろいろ異なった数字を言うということはいかがかと思いまして、数字的な点には全然触れておらないのでございます。現在におきましては、政府全体として長期計画数字がきまっておるわけでございますので、少くとも三十七年度までの計画としては、それが公式な計画になるわけでございます。私どもといたしましては、それとは別に、昭和五十年ごろを一応の目標といたしまして、そのころの人口増加、そのころの内地米の需要量というようなものを計算いたしたのでございますが、これは試算でございますけれども、八千三百九十万石程度というような計算が出てくるわけでございます。これらの数字をにらみ合せまして、今後土地改良なりあるいは耕種改善のためのいろいろな諸施策を、今後なお強力に続けて参るとすれば、十分この程度のものは国内生産ができるのではないかということを、私どもは考えておるわけでございます。
  21. 清澤俊英

    清澤俊英君 今のお話だというと、これとは別なんですね。それからそうなってきますと、農林の関係においては、五カ年計画が一回立てられて、それが六カ年計画に変って、今度はこれと、これとまたあなたの計画が違うということになると、これは全然問題にならないということなんですが、これらの関連はどう考えられておりますか。
  22. 永野正二

    説明員(永野正二君) 先ほどの御説明を繰り返すことに相なるのでございますが、政府といたしまして、各般の産業にわたる長期計画といたしまして、三十七年までの計画がきまっておりまして、その部門農林水産計画というものは、先ほど企画室長から御報告をいたしたのが計画でございます。私どもがそのできます途中の段階において、三十二年産米の作柄を分析して、あるいは努力次第によっては国内自給ができるんじゃないかという計算をいたしました過程は、今私が御説明申し上げた通りでございますが、それは、長期計画数字とは一応離れた別のものでございます。しかし、それはまだ政府の計画という段階ではございませんので、私どもがこの技術的要因を発表いたしますときの試算といたしましては、そういう心組みをしておったというだけの程度のものでございます。
  23. 清澤俊英

    清澤俊英君 室長ね、これを出された審議会では、どんな腹がまえで、どんな心がまえでやっておられるか、これをあなた方が答申するときの企画庁の根本方針。
  24. 立川宗保

    説明員立川宗保君) 根本的な考え方といたしましては、日本国民経済が今後やはりかなりな勢いで伸びるであろう、これが一つ。その伸び方としては、大体年々六・五%の伸び方をするだろう。そこで、そうすると結局全体として国民所得がふえてきますから、そのふえるに応じて、いろいろ農産物水産物をよけい買おうという傾向が出てきます。そうすると、大体五年を前提にしますとその五年日あたりにはどれくらいの購買力が農産物に対して出るか、それに対して国内でどれくらいの生産がやれるだろうか、こういうことで計画を立てておるわけでございます。
  25. 清澤俊英

    清澤俊英君 大体これはまだ固まらぬでしょうね。企画庁としては、これをやるということじゃ固まっておらない……。
  26. 立川宗保

    説明員立川宗保君) 経済審議会としては、最終的にこれは固まっております。政府がこれを取り上げていかにこれを実際に運営していくかは今後の問題になるかと思います。
  27. 東隆

    ○東隆君 私はこのお話を伺って、米が自給の度合いに到達するようなお話と、それから小麦輸入がふえていくだろう、こういうことなんですが、審議の過程において、こういう問題は触れたことがなかったんですか、われわれの生活水準が上っていきますと、結局主食としての米麦というものは非常に減っていく、こういう問題ですね。これは、農業従業者が減るという線だけではなくて、全体として私は米麦を食べる量というものは、これは滅っていくと思う。われわれがごちそうを食えば、米はそんなに食わなくたって済むんですから、これは非常に重要な要素になると思う。従って、現在の米の生産というものを土台に置いても、人口の増を考えなければ、米はそう需要増加しない、こういう考え方が出てくるんじゃないか、こう考える。そうすると、全体からいって、計画をかりに立てるとすると、海外から入ってくる小麦を減すと、こういうような方面に重点的な施策がやっぱり行われていかなければならない、こんなような考え方がつくんですが、それは、そういうような方面には考えられないで、そしてあまり考え方が安易な方法でもって出てきているんじゃないか、だから、問題はこういうことになるわけです。食管会計の赤字がなくなるような方向でもっていろいろ計画をされておるようだけれども、しかし、そうではなくて、もう一つ考えて、国の国際収支のバランスにおけるところの赤字、こういうような問題と関連をして計画というものをやはり立てなければならぬと思いますが、そんな点どうなんですか、この触れ方は。
  28. 島村軍次

    島村軍次君 関連して。私もそれはあとからお聞きしようと思っていたのですが、逆な聞き方になるようですけれども、米の需給計画を一応想定されたのは、まあこれは主食のものだといっても八千三百万幾らかで、この審議会のこの計画によるというと、米の増産もあるけれども、国民全体の食糧なり経済情勢を考えて、そして食生活まで触れている。そこで、およそそれらの関連をどう考えて立案されたか、これはまあ非常に重要な問題だと思うのです。その点を一つ企画室長でも振興局長でもけっこうですが、東さんのお等えに関連して。
  29. 立川宗保

    説明員立川宗保君) この附表の二ページのところにありますように、二ページの第二表、国民栄養摂取量の過去と現在と将来、こういうものがありますが、二番目の二十九年−三十一年の実績と、それから四番目の三十七年の目標を比べますと、いわゆる主食として、米麦、それに雑穀が入りますが、これから摂取するカロリーは、二十九−三十一年の実績が千四百三十二カロリーで、三十七年度には千四百七カロリーとして減ってきておる。総カロリーは、このカロリー合計ですが、二千百二十一から二千二百九とふえるわけでありますから、まあ主食の部分が減ってくるという、そういう傾向もまあ当然あるわけです。これは東委員の御指摘の通りだろうと思います。そこで、まあ大体趨勢としてはそういう工合に一応参るのでありますが、これはただ頭から出てきたわけではなくて、むしろ前の第一表のところの分析から導き出てきたわけであります。これの立て方は、結局ごく最近三カ年の、つまりだんだん年々やはり国民所得がふえつつあり、それに応じていろいろ食物のとり方が変ってきておりますが、それから導き出して、今後所得がふえたらどういうものをより余計とるであろうかということを判断をした客観的な材料、まあ意識を入れない客観的な材料から判断をいたしますと、この三番目の一人当り消費伸び率で見ますように、米につきますと、内地米と外米と合せますとあまりふえませんが、小麦は、やはりパン食でありますとか、そういう畜産物肉類がふえましてどうもふえるということと思われます。精麦に至りますとずっと減るし、雑穀ももちろんまあ滅ってくるということになりまして、主食全体では減りますが、うち、小麦はやはり食生活改善といいますか、どうもふえる客観的な趨勢にあるようであります。それで、そういうことから判断をいたしましたので、特別に食管会計の赤字を云々という政策的な意図はございません。結果としての計画でございます。従って、まあそういう工合にこう踏んで参りますと、全体としての国内生産伸びまして、むしろどうも輸入の比率が減少してくるということを、先ほどこの報告書の十六ページのところで申し上げましたが、そういうことになりまして輸入は総体比としては減退をするという傾向になってくる、こういう工合に考えております。
  30. 島村軍次

    島村軍次君 ちょっと、この計画を読んでみますと、十四ページの「巨視的に推計すれば」という、これはどういうことですか。
  31. 立川宗保

    説明員立川宗保君) これはどこの土地改良事業が必要だということを一つ一つ押えて、その概略の計画を立てまして、所要事業費を求めて、まとめていくというやり方ではありませんで、むしろその農業生産がある程度の伸び方伸びると、そのためには全体としてしてたとえば土地改良事業費というものはどのくらいのボリュームで伸びるのかという全体の大づかみ判断ですね、むしろ全体判断から見ていくというやり方で計算したという意味でございまして、一つ一つのこまかな積み上げ計算、従来農林省がよくやっておりましたそういう計算でない計算であります。
  32. 島村軍次

    島村軍次君 これはまあわれわれの頭では、新語だと思うのですが、こういう言葉はあるのでございますか。
  33. 立川宗保

    説明員立川宗保君) 近ごろよくマクロ的とかミクロ的だとかいう言葉を使っておりますが、まあそういう意味でございます。
  34. 島村軍次

    島村軍次君 そうすると、これは平たく言えば全体的と、こういうことですか。
  35. 立川宗保

    説明員立川宗保君) まあ一つ一つこまかにずっと計算をしてそこでその全体は幾らということでなしに、むしろ上からこう一つ一つの積み上げでなしに、全体として幾らと、こういうやり方と御了解いただきたいと思います。
  36. 島村軍次

    島村軍次君 ついでに承わりますが、ここの計画のうちで、八十五万人の就業者の減少を見込むと、こういうことになっておるようですが、十七ページですか、つまり、これは水産部門だけですか、この八十五万人というのは。これはどこの……。
  37. 立川宗保

    説明員立川宗保君) 農林水産全体でございます。
  38. 島村軍次

    島村軍次君 全体ですね。そこで、この八十五万人の就業者数の減少は、この間の発表によりますと、鉱工業生産を八%増加すると、そうして農林水産業は約三%、そこで、それを総体的に見れば六・六%ということから出たのだろうと思いますが、これはまあ鉱工業生産の八%に吸収すると、こう  いうことですか。
  39. 立川宗保

    説明員立川宗保君) 平たく言ってさようなことでございます。
  40. 雨森常夫

    ○雨森常夫君 この八十五万人というのは生産人口なんですか。総体のこの非生産人口も入っての八十五万人なんですか。
  41. 立川宗保

    説明員立川宗保君) これは生産労働に従事する就業者ということでございます。
  42. 佐藤清一郎

    佐藤清一郎君 この第一表の「基準状態」の米の二百九十七、これはグラムですか。
  43. 立川宗保

    説明員立川宗保君) グラムです。
  44. 佐藤清一郎

    佐藤清一郎君 グラムね。これは升に換算して何斗何、石になるのですか。これを一つ明確に教えてもらわないというと、われわれ見当がつかぬ。一年の消費量がどれだけになりますか。一升幾グラムに計算するのですか、そうすればわかるでしょう。
  45. 立川宗保

    説明員立川宗保君) お答えをいたします。二百九十七グラムは一日でございますが、一合九勺八。それから一年間三百六十五日に計算をいたしますと七斗二升三合七勺ということになります。これは白米についてであります。
  46. 島村軍次

    島村軍次君 このうちの計画で第十三ページにあります砂糖の問題に関して、私は全体計画に関連してお聞きしたいのですが、たとえば北海道におきましてはテンサイが非常にふえてきた、そこで、テンサイ工場が三つもできる、これは前の農林大臣当時から御計画になって、今相当の増額を来たしておる、そこで、内地におきましても早期栽培をやった、ところが、反別が相当増加してきておるのですが、手っとり早い例からいきますと、九州地方におきましてもテンサイを作るというと、北海道の反当収量にして約一倍半で、砂糖の量にしても普通一八%ですか、二〇%ですか、それが二四%ぐらいだと、こういう実績をやった所があるのです。私の県あたりでも、もうすでに三年前から農業試験場でやっております。そうしてこれが今一工場当り五千町歩というのが基準のようですが、反当収量がふえ、糖分がふえていくというと、約一工場当り三千町歩あれば可能だ、こういう計算をしている人がある。従って、知事はこれは一生懸命で放送をしておるわけです。そういう場合におきまして、砂糖消費は、将来日本としてこの計画によると、相当輸入せにゃならぬ、こういうことなんですが、今の問題と関連して、飼料に使えば、これは直ちに輸人飼料にも影響を持ってくることになると思う、テンサイを使うと。そういう問題については、新しい計画の五カ年計画には、どう織り込んでおられますか。
  47. 立川宗保

    説明員立川宗保君) 砂糖につきましては、附表の第四表、四ページのところの一番下に「てんさい」と書いてございます。作付面積では三十一年度の一万町歩が三十七年度には四万三千町歩にふえまして、反収も上りますので、一番右の生産高のところにいきますと、三十一年度に六億七千九百万斤が三十七年一度には十八億四千九百万斤、比率にして二七二・三%の増加になります。従って今お話の、ビート・パルプでありますとか、最近新しい白班病に対する強い品種ができたりなんかして、その葉っぱを食わせるというようなこともできるようなことになっており、ますので、それは需給飼料計画の中に織り込みまして、飼料もふえるというようになっております。それが表の十ページないし十一ページあたりに出ております。ここに組み込まれておるわけでございます。
  48. 永野正二

    説明員(永野正二君) 私から多少つけ加えて御説明をいたしておきたいと思います。ただいま御指摘がございましたように、水稲早期栽培の裏作の問題といたしまして、暖地におきますビートを取り入れられないかという問題は、非常に大きな問題でございまして、私の方といたしましても、各県、瀬戸内方面、あるいは四国、南九州等の方面で実際に試作をいたしまして目下試験研究を固めておる段階でございます。御指摘のように、反収あるいは含糖度その他、非常に水円の裏作として有望な作物だと考えております。ただ、北海道等の寒い地方と違いまして、原料の貯蔵といいうような点には、いろいろ問題があるわけでございます。従いまして、まだ実際の工業化にすぐ取りかかるという段階に至っておりませんけれども、これは極力できる、ような方向に推進して参りたいと、こう考えております。ただいま申しあげました昭和三十七年の四万三千町歩というのは、一応北海道方面におきます作付増加というものを見込んでおるわけでございます。
  49. 清澤俊英

    清澤俊英君 関連。それはあれですか、テンサイ作付増加等は、今北海道がやっておるように、砂糖の価格との対比においてやつほり補助金の政策で増加していくのか、それはやらないで増加して、いくのか、どういう見方かということ。どちらですか。
  50. 永野正二

    説明員(永野正二君) テンサイの栽培につきましては、一部採種圃等の事業につきまして、若干の補助がございますが、テンサイを作っております農家に、テンサイ作付に応じて補助金をやるというような制度ではないのでございます。ただ、テンサイにつきましては、御承知の通り、食糧管理特別会計におきまして、できましたテンサイ糖を買い上げるという制度がございまして、それによりまして、農家からテンサイ糖工場がテンサイを買います値段を指示をしておるわけでございます。そういう価格指示の制度というものは、これは当然将来のテンサイ国内自給という見地から、ふやして参りたい、あるいはまた、畑作の改善畜産等に結びつけるという意味でふやして参りたいという方向を考えておりますので、この制度は、当然維持をすべきではないかと考えておるわけでございます。
  51. 島村軍次

    島村軍次君 だいぶん時間も経過したようですから、この問題は、まあわれわれも勉強した上でまたお聞きするとして、これに関連して、本年の稲作について、今実収をどう見ておられますか。関西における稲作の情勢から見ますと、大体反当一俵ぐらいかま入れ不足といいますか、そういう情勢なんです。これは、おそらくわれわれの県だけじゃないと思うんですが、実際の収量をどう見ておられるか。それから、特殊の地力として、御承知のように、イグサの地帯では、これはまあ一歳か一俵ぐらいの程度の収縦の所が多いんですが、そういう問題について、は、災害補償にも関連するわけですが、実収高というものを最近では農林省はどういうふうな見方を持っておりますか。その点を伺っておきたいと思います。
  52. 永野正二

    説明員(永野正二君) 推定実収の報告につきましては、まだ私ども統計調査部から聞いておりませんのでございます。ただいま御指摘のように、九月の天候が非常に低温寡照でございまして、その関係で、実際かま入れました場合の、かま入れ不足というような懸念も実は持っておるのでございますけれども、数字的にはまだ全然統計の方でまとまっておりませんので、今私からこうだろうという見込みは、ちょっと申し上げかねるのでございますが、そういう懸念はいたしております。
  53. 重政庸徳

    委員長重政庸徳君) この件については、本日はこの程度といたします。  午後二時から再開いたします。    午後零時四十三分休憩    ————・————    午後二時二十一分開会
  54. 重政庸徳

    委員長重政庸徳君) 委員会を再開いたします。  日ソ通商農林水産業の件、最近日ソ通商交渉の妥結が伝えられ、今回の通商協是等の内容及びこれがわが国農林水産業に及ぼす影響等について堀委員から質疑の御要求がありますので、この際御発言を願うことにいたします。  なお、この件について政府からの出席者は、ただいまのところ、農林省農林経済局経済課長二子石君、林野庁林産課長中川君、外務省経済局第二課長古田君の御出席があります。
  55. 堀末治

    ○堀末治君 今、委員長のお話の通り、今度日ソ通商協定が妥結したのでありますが、承われば、この交渉には他の諸国と違って約三カ月間にわたる交渉が重ねられ、まことに当局の御努力を多とするものでありますが、またすこぶるいい結果を見たと喜んでおるのでありますが、まずその交渉の内容、窓口一本化の問題で、最後だいぶ難航を続けたということを聞いておりますが、それらについて一通り御説明を顧って、続いて農林当局からこの通商の協定によってわが国農林水産業に及ぼす影響等を御説明を願いたいと思います。
  56. 吉田健三

    説明員(吉田健三君) 御説明申し上げます。  今回の日ソ交渉に関しましては、大体新聞等にはかなり外務省の方から詳細に発表して参りましたので、一応の外形的なことを、あるいは御了承いただけたかとも思いますが、もう少し詳しく申し上げますと、今年の初めのころに、政府といたしましては、積極的にわが方からイニシアチブをとって日ソ貿易を促進させたい、こういう希望を定めまして、ソ連の方にこの方針のもとに調査団を送るというようなことも申し入れまして今回の交渉のわが国の全権をやりました広瀬公使を団長といたしまして事務打ち合せのためにモスコーの方に関係各省からなる使節を出したわけであります。その調査に基きましてソ連の方に、東京一つ交渉を始めたいということを申し出たのでございますが、ソ連側の方でさっそく今回セミチャストノフという向うの外国貿易省の次官を長といたしまして非常に優秀なスタッフを送ってこられましてそれで九月十二日から先週の金曜日の調印式を了しますまで、ほぼ三カ月間にわたって交渉をやったわけでございます。交渉の第一段階におきましては貿易支払協定のごとがほぼ中心になっておりまして、これが約一カ月かかったわけでございますが、これによりまして現在日ソ間には貿易支払に関する協定がありませんので、ある意味では過渡的な変態的な貿易をやっておったわけでございますが、つまり、形態においてはバック・トウ・バック方式をとりまして、それから決済方法におきましても非常にめんどうな方式をとっておったわけでございます。これでは貿易の本来の姿にはそぐわないわけでございまして、今回の交渉では日本国側の方といたしましては、日本の通商政策全般の方針からいたしまして現金決済で自由に取引する、つまり日本が買いたいものは買う、ソ連の方でお買いになりたいものは日本から一つ買っていっていただく、そのかわりそのつどお金は現金で一つ払っていただく、いわゆる帳じりにつけてあとで清算するオープン・アカウント方式、清算勘定方式というものは日本政府としてはずっとこれをやめることにしておりますし、ソ連とやります場合も一つ現金決済でやりたいということを最初申し出たわけでございますが、ソ連側の方は最初幾つかの清算勘定方式による対案を出しましたけれども、結局日本側の言う現今決済方式を採択してくれたわけでございます。  第二の点は、取引をいたします品目は、一応の参考としてこういう品目を取引いたしましようという表を作ったのでございますが、ただ品目を並べておくだけではソ連の方といたしましては計画経済をやっておりますので、めどがつかないから、ある程度日本側で差しつかえない限り重要な品目については金額あるいは数量というものを載せてほしい、こういう申し出があったわけでございます。わが方も特にそれに支障はないということになりましたので、主要品目につきましては、一応の見積りといたしまして、金額及び数量を掲げてございます。もちろん、これはあくまで一応の努力目標としての見積りでございまして、日本側がこれだけ買わなければならない、あるいは、これだけどうしても売らなければならないという拘束性のある、つまり義務性のある数字もしくは金額ではございません。そうしてまた、この金額もしくは数字を上回る貿易がなされることは何らこれを妨げるものではないのでございまして、大いに促進させたいという方針でございます。また、品目表に載っておりません品目につきましても、これを取引することは何ら妨げないわけでございます。品目表には一応重要なもので大きなものだけを一応のめどとして載せてある次第でござ、います。  これが大体今度できております貿易支払協定の骨子でございますが、細部はお手元に配付になっているかと思いますが、資料を、条文を御参照をいただければ逐次御了解いただけると思うのでございます。  さらに、これに引き続きまして、ソ連側の要請もありましたので、現在、去年の末、日ソ間の国交回復に関する共同宣言及びこれに伴って締結されました議定書というものがございます。これは本格的な条約ができるまで、とりあえずの貿易を規定する、最恵国待遇等をお互いに与え合うということについて、簡単に規定した議定書というのがございます。今度それをもう少し詳しくしたいというソ連側の希望がありましたので、私たちの方でこれを検討いたしてみました結果、これをある程度具体化しておくことは日ソ間の通商関係を円滑に発展させるために非常にいいという結論に達しましたので、通商に関する条約というものを並行して、その後引き続き交渉をいたしたわけでございます。   さらに特殊なものといたしましては、その条約の中に一個条通商代表部というものに関する規定がございまして、その規定に基いて別に付属書というものが作られました。それによって通商代表部というソ連の国家貿易独占の形態からくる特殊な制度といいますか、これは各国に、ソ連が現在多くの国とその条約を結んで、そういう代表部を作っておりますが、これを日本にも、ある程度日本の実情に合うように多少修正いたしまして、この条約が締結されたわけでございます。  全般といたしましては、非常に友好的な雰囲気でなされまして、私たちといたしましては、日本側の主張が非常によく通っていたというふうに考えておるわけでございますが、これはあくまで法律的な骨組みを作ったわけでございまして、戦争前にもなかった、ある意味では新しい条約もしくは協定というものが初めて日ソ間にできたわけでございます。今後これをどういうふうに運営していくか、この骨組みに、日ソ間の理解と友好精神によって、お互いに経済的に差しつかえのない限り、共存共栄できるように、貿易を拡大していくという線が具体的な商談なりあるいは取引を通じて発展していくことを期待いたしておるわけでございます。
  57. 千田正

    ○千田正君 関連して。今堀委員の御質疑に対してお答えなされましたが、私は詳しいことは知りませんが、先般来、たとえば隣の中共との貿易のような場合は、チンコムやココムというような特殊な自由国家群の間の制限を受けて十分な取引ができないというのが現在の状況なんです。これはあなたも御承知の通りなんだが、ソ連といういわゆる社会主義国との貿易に対して、そうした通商条約あるいはそれに基くところの運営に対して、自由国家群からは何らの制約とかそういうものは受けない立場にありますかどうなんですか。
  58. 吉田健三

    説明員(吉田健三君) お答え申します。今回の交渉を通じまして、日本政府といたしましては外国政府から何らの干渉も文句も言われたことはございませんし、あくまで日本政府独自の判断と行動をもって交渉してきたわけでございます。
  59. 千田正

    ○千田正君 決済はオープン・アカウントじゃなくてやるとすれば、キャッシュを主体としてやるならば、新聞ではポンド・システムをやろうと、ドル決済でなく、ポンド決済と、これが当分続いていこうというのでしょうか、それを中心として取扱いの金融銀行そのものがどういうところにアカウントを支払いするのですか。
  60. 吉田健三

    説明員(吉田健三君) 今度の父渉で定めましたことは、原則として何もないときはポンドの現金でやる、しかし両方が合意すればドルでもスイス・フランでもいい、そのほかの通貨でもよろしいわけでございますが、取引を実際決済いたしまして、方法といたしましては、ある日本側の銀行とソ連側の方の銀行と直接交渉していることと私たちは聞いております。具体的には銀行間でもってお互いに手形なりLCなりをもらったときにそれをすぐ金にかえてくれるという約束で、いわゆるコルレス契約の、業務契約を組ふことになっております。これができれば、これは銀行間の、あくまで民間ベースによる銀行同士の話し合いでございましてこれでどんどん決済が行われてきまして、何ら支障はないと考えております。
  61. 千田正

    ○千田正君 代表部の進出は、これは当然今度の条約で、大きな政治と経済の分野の日本側に対する進出でありましょうが、同時にその裏づけとしての金融機関の進出ということも予想されるのですが、その点には触れていないのですね。
  62. 吉田健三

    説明員(吉田健三君) お答えいたします。今度の条約におきましても協定におきましても、決済をすることだけきめておりまして、ことに条約の方におきましては、営業活動といいますか、あるいはお互いに投資をしたり事業活動をそれぞれの国でし合うということは全然規定いたしておりません。当分私たちとしても別にソ連の銀行が日本へ出てきて金融活動を行うというような段階までにはまだ考えておりませんし、将来の問題になると思います。
  63. 千田正

    ○千田正君 これがわれわれから実際に経済をやる場合に、実行する場合において、いずれかの金融機関がいずれかの当該国において駐在するなりあるいは何か置かない限りにおいてはスムーズにそうした決済ができないというのが従来の貿易の原則のはずなんです。そういう原則に触れないで、一応は骨組みだけが通商条約として現われた、こういうふうに考えていいわけですね。
  64. 吉田健三

    説明員(吉田健三君) 法律的に骨組みなり重要事項だけを法律でございますから定めたわけでございますが、今度実際の運営の段階に入りますと、いろいろ具体的なケースで話し合いをしていかなければならないと思います。ことに今御指摘の金融関係につきましては、これはそれぞれの銀行の出先、たとえば日本の方でいいますと東京銀行なりその他の住友銀行とか富士とかの銀行の支店がモスクワに置かれ、またモスクワのいろいろな銀行が日本の方に置かれるということになれば、それはもっとも円滑になるのかもしれませんけれども、現在の、あるいは当面予想しております貿易の姿から見まして、日本側の、たとえば東京銀行その他の銀行とモスクワの方のソ連側の銀行との間にそれぞれコルレス契約を結んでおけば手形の決済その他においては何ら支障がありませんので、貿易は金融の、あるいは銀行関係の業務の点からくる支障というものは特に大きなフアクターにはならないのじゃないかというふうにも考えております。
  65. 千田正

    ○千田正君 なぜ私がこういう質問をするかというと、大体ソ連とか中共との貿易というのが、現在日本で行われておる場合においては、東京銀行もしくはその他の銀行が、英国あるいはアメリカ、まあ中共側にはアメリカということはどうか知らぬが、そういう銀行を通じて、第三国の銀行を通じて今までは貿易の決済をやっておるのが多かったわけです。現実にはその当該国との間に直接取引できれば日本の享受するところの利益は相当あるにもかかわらず、占領軍治下当時は、外国との貿易は大体イギリスとか、あるいはその他のオランダとかというような金融機関を通じて貿易がやられておった、それが現実の姿だった。今度は、日本は独立国となって直接自分の力の金融機関を動員して、自分の国の利益を直接に享受するような立場にあるのですが、それが今度日ソ間の場合においてもそういうことが適用されることを望むわけです、私自身は。しかし政府自身がまだそういう点までは思いをいたしてないようでありますので、今後の伸展についていろいろ変ってくると思いますけれども、一応わかりましたので……。
  66. 堀末治

    ○堀末治君 今の御説明によりますと、品目、数量、金額は一応きめた、軍票なものだけきめたのである、こういうお話のように私承わったんですが、ここに品目が出ておるのですが、そうするとここに出ておる品目、数量のほかに、場合によってはいろいろなものが要するに取引できると、こういうことですか。
  67. 二子石揚武

    説明員二子石揚武君) 先生のおっしゃった通りでございまして、ここに出ております金額は単に見積りにすぎないということになっております。そこに出ております品目以外のものでありましても、もちろん通商の対象になり得るということになっております。
  68. 堀末治

    ○堀末治君 そうすると、今までココムというようなもので制限を受けております。がこれには何らそういう制限はないのですね。
  69. 吉田健三

    説明員(吉田健三君) ココムの問題に関しましては、ソ連側と私たちの方と話し合いをいたしまして、今回の交渉の前提になっておりますのは、ソ連はソ連の政治的の立場上いろんな方針があるであろう。日本日本の基本的な立場としてのいろんな方針を持っておる。そういう現存の国際的に約束されておることは、これはお互いに妨害しないし、現在それぞれの立場においてできるだけ実際的見地から貿易を拡大していく措置をとろうという精神と了解に基いてこれをやったわけでございます。この協定文にもございますように、それぞれの国の輸出管理令、もしくは為替関係の法令に従ってやるということになっておりまして、その他、現在やっております輸出統制のある問題につきましては、これは当然向うが了解しておりまして、何ら影響を受けるものはございません。またもう一つ根本にございます条約の方におきましてもはっきりした規定が個々にございまして、いずれそのうちにこの条約の御審議をいただきますときに問題になると思いますが、通商に関する条約の第十三条で、「この条約のいかなる規定も、いずれか一方の締約国がその重大な安全上の利益の保護を目的とするいかなる措置をも執ることを妨げるものと解してはならない。」という条項がございまして、これによって日本の持っております重大安全上の利益保護の緊急措置、あるいは法令措置は条約上保護されておるわけでございます。
  70. 堀末治

    ○堀末治君 さっきもお尋ねしたのですが、窓口の一本という問題は大体話があって、それが適当に妥協がついたというふうに聞いておりますが、それはどんなふうになったのですか。
  71. 吉田健三

    説明員(吉田健三君) 窓口一本化ということでこの交渉の最終段階におきましていろいろ議論されたのでございますが、私は率直に申しまして窓口一本化というものが一体何であるかとか、具体的には一体どういうことをやるのかということについての問題がはっきりきまっておりませんので、条約の建前からいきますと、はっきりこういうことまでできます、あるいはこういうことはできませんというふうなことははっきり書いてないわけなんです。そのかわり将来具体的に日本の立場から見まして窓口一元化、あるいは別の言葉で貿易調整機構と申しますか、何らかの措置を日本が必要となりましたときには国内法との関係、あるいは実際の業界の利害関係、あるいはそういうものを作って果して日ソ貿易が伸びるか、伸びないか、角をためて牛を殺すようなことになっては、これはやぶへびになるわけでございます。が、最後に条約の問題がどうなるかということになるのでございますが、これは問題が具体化してからもう一度議論することになるのだろうと思います。現在のところは、従って情勢に応じて弾力的に判断、あるいは措置をできる建前になっております。
  72. 堀末治

    ○堀末治君 それでは条約の方はいずれ御審議されるときに伺うことにします。  続いて項目の中に盛られている農林水産関係のものがありますが、これについての農林省の影響についての見解一つお聞かせ願いたい。
  73. 二子石揚武

    説明員二子石揚武君) お答え申し上げます。日ソ通商農林水産業関係でございますが、これは主として輸入輸出と両方に分れておりますが、おもな点は、輸入につきましては、ソ連材、沿海州における木材輸出につきましては、生糸及びそのほかの雑商品があるわけでございます。この協定に先だちまして各関係の筋から日ソ交渉ができ上りました場合に輸出を希望すると見られます品目を集めましたところが、大体その品目といたしましては、生鮮果実、これはおもにミカン並びにリンゴでございます。それからカン詰果実、これは主としてミカンカン詰をさしております。それから一部にはモモがございます。それに新鮮野菜、その点は玉ねぎが中心になっております。そのほかにハッカ脳、ハッカ油、グルタミン酸ソーダ、澱粉、緑茶及び紅茶、それに生糸、これだけの品目輸出の対象として取り上げたいという話をしたわけでございます。交渉の経緯につきまして、これらの品目の整理は、正糸は繊維の中に入れて別品目といたしまして、そのほかのものは農林水産物並びに製品という表現で、日本側の輸出希望品目の中に入れるということになったわけでございます。交渉の途中におきまして一度は両国の間に、ここに貿易及び支払に関する協定、それに付属しております品目表というのがございます。その中にはソ連側から日本輸出する物、それから日本側がソ連側に輸出する物の二つに分れておりまして、そのうち日本からソ連に輸出する分につきましては、先ほど申し上げました通り、農林水産物及びその製品並びに生糸というものが農林水産業関係では含まれておったわけであります。しかしながら、この項目別の審議を進めていくに当りまして、ソ連側の方は今のところかような農林水産物、特に消費財については関心が薄い、従ってこれらの物を特掲品目として載せることには承諾できない。その点は生糸も含めてでございましたけれども、そういう申し出がございまして、その点について種々にわたりまして交渉をいたしました。ところが、ソ連側の態度は交渉とともになかなかはっきりした方針であることがわかって参りましたので、その点につきましては、今の品目表の最後に一般商品というのがございますが、その中にカッコいたしまして、農林水産物を入れるということで進んではどうかという話になったわけでございます。しかしながらその後、審議が進みますにつれまして、ソ連の方から、日本側が輸出品目の一般商品の中に農林水産物並びにその製品というものを入れるならば、ソ連側から日本に出す一般商品というものの中にそういう表現を入れてもらいたい、こういうふうな話し合いになって参ったわけであります。それに対しましてわれわれといたしましては、日本側からソ連側に輸出いたします農林水産物は非常に伝統的な産物でありまして、戦前においては相当の輸出をした実績があり、ことにお茶、ハッカ、その他につきましては、相当の量が輸出されておりましたのに反し、ソ連側のさしております農林水厚物は今度初めて輸入されるような品目が多い。そのほかソ連側は中近東から多少の農産物輸入するということをはっきり協定に言っているという例もあり、さらに現実に中共あたりから相当のものがソ連側に入っているじゃないかという点で、特に日本側の農林水産物輸出、ソ連から日本に対しまする農林水産物輸出とは意味合いが違うというようなことで、日本側の輸出品目の中に農林水産物を入れるけれども、ソ連の方には入れたくないということを要求したわけでございます。ソ連側が何を日本に持って出たいかという品目についてでございますけれども、ソ連の代表の話によりますと、それらの品目は例示として、こういうことを言っておりました。たとえばアルコール類でウォッカ、それから水産物と申しますのは、メンタイの子、あるいはノリ、コンブ、そのほか腸詰の製品、朝鮮ニンジンのようなものを言っておりまして、いずれもこれらの品目につきましては、農林省といたしましては、あまり輸入をそのまま認める自信がない品目ばかりであったわけであります。従いまして両方互恵の立場で相互に農林水産物を入れ合うということは、かえってあとに弊害が起るということをおそれまして、今回の貿易並びに支払に関する協定の中の品目表の中には一切農林水産物という字句は人っておりません。しかしながら話し合いの上におきまして、その他一般商品というものの中には農林水産物はもちろん入るのであるということと、将来の経過を見て、もしもそういう商品の取引が多くなる場合には特掲品目として載せることを次の機会に考慮しましょうといもことになりまして、今回の貿易品目表の中には全然農林水産物という字が消え去ったわけであります。他方輸入におきましては、日本にとっての輸入でございますが、それについては沿海州のソ連材がございます。このソ連材につきまして当初われわれは輸入量を二十万キュービックメートルという割合少い数字に限ったわけであります。その理由はおととしからソ連材の輸入が行われておりますけれども、この輸入実績が大体それに近いということと、現在のソ連材の積出港がきわめて北部の僻陬の地にありますマゴ並びにラザレフという単なる二港に限定されます場合には、木材の引き取りが年間を通じて行うことができない、大体において一年のうち四カ月ぐらいしか輸入する期間がないということがありますし、さらに現在の輸入の体制におきましていろいろと問題が起きたというケースもありますので、一応二十万キュービックメートルあたりが一番無難な数字であるということで、それで打ち出しておったおけでございます。この点につきましてソ連の方では強くその数量の増額を希望いたしまして、最後には五十万キュービックメートルという結果になったわけであります。ただし、その交渉の途次におきましては、積出港を前記の一港に限らないという要求を強くいたしたのでございますけれども、この点につきましてソ連側は、開発計画によればその木材の切り出す土地は特に北に偏しておるわけでありまして、直ちに今その木材の伐採地を南に持っていくということを確言することはできないということと、たとえばナホトカのような港に船を持っていきまして、積み取るような場合には、この点は一般的な航海に関する取りきめができ上った暁において考えられることだということになりまして、数字としましては五十万キュービックメートルがそのまま残ったわけであります。あとに多少農林水鹿業で関係がありますのは、漁船とかニシン工船がございますが、これらにつきましては相当具体的な契約が行われておると承知しております。ただ一般的な船舶という表現が出るということもあったわけなんでありますけれども、これは主として中古の漁船が入るという話を聞いておりますが、それらにつきましては将来の厄介な問題の起きますのを避けます意味から、この品目表に載せることは避けていただいたわけであります。大体の格好は以上の通りでございます。
  74. 柴田栄

    ○柴田栄君 今のお話で木材は大へん向うは数量増加要求している、こういうのですが、実際問題として今まで取引されてきた状況からいうと、果して五十万立方メートルというものが、しかも積出港が北の方に限って、また何か吃水その他の関係でえらいやかましい問題があったわけですね。そういう問題を解決せずにとれはできる見通しがあるのですか。
  75. 中川久美雄

    説明員中川久美雄君) 木材輸入の問題でございますが、二十九年にようやく八千石が見本輸入されまして、その後昭和三十年に五万九千石、昭和三十一年に二十五万五千石、本年度でございますが、本年度は当初民間のベースにおきまして六十六万石が予定されておったのみでございますが、いろいろとことに商社間におきまして過当競争がありましたために、また同時に日本の船運賃が非常に高騰しておったために、結果は実は思わしくなかったのでございます。現在四十八万石程度が実現をされておるというような状況でございます。  そこで、私どもは先ほど経済課長からもお話がありましたようにこの遠方のマゴ、ラザレフといったような二港のみではとうてい大量に木材を持ってくることが不可能である。ただ私どもは日本木材需給関係から申しまして、特に針葉樹の需給関係から申しましてソ連材は実はほしいわけでございます。  そこで私どもは特にこの二港のみではなく、もっと南の方に、たとえばナホトカであるとか、あるいはワギノであるとか、あるいはデガストリであるとかいったような南の方に開港いたしてもらって、そこでオール・シーズンに航行のできるような格好にいたしてもらいたいということと、先ほどの堀先生の御質問にもございましたように、輸入の秩序というものを考えなければ、いたずらにソ連の木材価格をつり上げてしまうのではないかというようなおそれを持っておるわけでございまして、輸入秩序をどうするかという問題につきまして実は業界の自主的な窓口一本化と申しますか、あるいはその表現がろまくないというようなことになりますれば、自主的な輸入秩序を保つような一つの機関を結成するというようなことによりまして、大量の木材を持って参りたい、かように考えておるわけでございます。御参考までに本年度の輸入状況を申し上げますと、一般用材といたしまして、進展実業が八万立方メートル、また東邦物産が七万立方メートル、それから生活協同組合貿易によるものが二万立方メートル、またパルプ用材としまして北越製紙の方におきまして扱った相互貿易のものが七千五百立方メートル、中越製紙におきましてパルプ用材といたしまして輸入したものが和光交易の商社におきまして四千二百立方メートル、造船工業用としまして、滞船用材として扱ったものが日本海貿易による二千四百立方メートルということになっておるわけでございます。さらにこれを輸送の機関別に申し上げますると、十一月現在におきまして日本船によるものが四十二隻、八万九千三百四十二立方メートル、ソ連船によるものが三隻でありまして、一万二千四百十一立方メートル、海洋いかだによるものが二十一ございまして、四万五千十七立方メートル、合計現在まで六十六隻、十四万六千七百六十九立方メートルを運んだのであります。この一立方メートルの石換算でございますが、これは三・三石ということにいたしておりますので、大体四十八万五千石程度のものが、現在入ったということになっております。
  76. 柴田栄

    ○柴田栄君 今、場所的に、季節その他の関係で、非常に制約されるという問題と、それから窓口がこういうふうになっておって、なかなか自主的に調整がとれないという問題と合せて、一体価格の面で調整ができないということはなかったのですか。
  77. 中川久美雄

    説明員中川久美雄君) 当初価格の面につきまして、これははなはだどうも遺憾な傾向が見えておるのでございまするが、二十九年のときのFOB価格、三十年のFOB価格、三十一年のFOB価格、毎年々々契約をいたしますたびに価格が上って参っておるわけでありまして、現在のFOB価格を申し上げますると、マゴ積みにおきましてエゾマツが一立方米当り八ドル六十、石換算にいたしまして一石九百三十八円ということになっております。同じくエゾマツでラザレフの積荷のものが十一ドル二十四、一石当りの価格に換算いたしまして千二百二十六円、それから落葉松の価格でございますが、これはいろいろと長さによりましてだいぶ差がございますが、平均の価格がこれはちょっと出ておらないのでございまするが、一番大きい大径材を主体にとりますと、マゴ積みのものが十六ドル五十、石当り千八百、ラザレフ積みのものが二十ドル、二千百八十二円ということになっております。これは発港渡しの価格でありまするが、これに日本の船運賃が加算されるのでございます。当初航行の期間は、非常にこれが間宮海峡の北にありまして、しかも間密海峡が非常に浅いといったような関係で、マゴで満船をして全部持ってくるというわけにいかないのでありまして、マゴで半分くらい績んでからラザレフで満船にして持ってくるといったような、非常に不便な航行の状況になっておりますことと、六、七、八、九月の半ばを過ぎますると、非常に航行の危険を伴うというようなことで、航行期間が四カ月半といったような関係上、また当初日本の船運賛が非常に高くありまして、石当り千二百八十円といったような呼値があったようであります。そういう関係で非常に高い材木を入れて参ったというのが当初の状況でございましたが、その後金融引き締め等の関係、また船運賃が非常に下りました関係で、船運賃はたしか七百円くらいに下ったかと思いまするが、だいぶ下りまして、ただ下った時期が九月の終り、十月のころになったために、そのころにまた積荷が殺到したということで、非常にいい結果ではなかったのですが、先ほど申し上げたような数量を入れてきたということでございます。従いましてソ連できめておりまするFOB価格というものは、今の日本木材の市況から申し上げますると、そうべらぼうに高いものではないという判断が一応考考られるわけでございまするが、ただ日本の船運賃が当初非常に高かったために、高い木材輸入せざるを得なかったということになっておるのでございます。
  78. 柴田栄

    ○柴田栄君 今の非常にこちら側で、相手方は一つのはずですれ、こちら側で賢い競争をしたために契約がおくれるとか、あるいは非常に不利な取引をしたというような事例はないのですか。
  79. 中川久美雄

    説明員中川久美雄君) この不利な事例を申し上げますと、これは本年度の事例が一番それに当てはまるかと思うのでございますが、ソ連の方は、いわゆる木材輸出公団一本でありまして、日本の方におきましては、ソ連材を扱う商社だけでも、数えましてたしか十九商社が数えられるのでございまして、そのおのおのの商社が、それぞれソ連の代表部に参りまして貿易を申し込むといったような状況になっております。選択権は全部ソ連にある関係から、一社に一つの契約をするように話し合いが進むということになりますと、さらにつり上げた価格で、次の商社がまたソ連に話し合いをする。そうしますとソ連は、つり上った価格で契約する、そうすると前の契約をした商社なるものは、今度日本の船を全部一括船会社の方と契約してしまって、あとからの契約した商社に、まあそういうようなことを行なったという事例は本年に確かにございました。
  80. 柴田栄

    ○柴田栄君 まあ、今のお話で大体わかりましたが、どうも交渉経過において、窓口一本ということがなかなかむずかしくて、きまらなかったようですが、きまらないということは、やはり向う側に不利だということもあり得たのじゃないかという気がするが、これもしかし、そういうことで一応話がきまったとすれば、こちら側で、少くとも自主的に、こういう不都合に対しては、相当対策を考えられる必要があるのじゃないかという気がしますがね。お話の通り長期計画においても、林産物の需給度はずいぶん窮屈で、需要に対してよほど強力な手を打っても、なかなかバランスをとることはむずかしいのだというときに、価祐的に何とか間に合うならば、ソ連材を相当入れてしかるべきだとは思うのだが、そういうことが促進できないとすれば、それに対しては相当強力に考えてもいいのじゃないかという気がいたしますが、その点について具体的に聞かせをいただくまでにはなっていないかもしれぬが、少くとも一つ、それは政府側としても、かなり強力な実質的な対策をお考えをいただきたいということを希望いたしまして、私の質問を終ります。
  81. 千田正

    ○千田正君 経済課長に伺いますがね、このうちサケ・マスカン詰製造設備並びにカニ工船のカン詰の製造設備というもののプラント輸出の問題がありますね。御承知の通り戦前までは、日本の北洋漁業のカン詰はソ連地区で相当生産されて、世界の市場を満たしておった。今度こういう優秀なものを輸出するかどうかわからぬけれども、そういうものは、プラントで輸出されて、向うのカン詰が生産された場合、日本水産業界、こうした面のマーケットその他に及ぼす影響は相当あるのじゃないかと思いますが、その点については、あなた方の方ではどういうふうな観点に立っておられるのですか。
  82. 二子石揚武

    説明員二子石揚武君) 先ほどの点につきましては、われわれといたしましても確かに好ましくない希望であるということは十分感ぜられたので、その点につきまして水産庁といろいろ打ち合せをいたしましたけれども、現在の貿易形態のもとにおきましてこれらの品目輸出を拒むという理由がございませんのて理由と申しますか、根拠がございませんので、あまりわが方としては希望はしないけれども、先方が強くそれを輸入することを望んでおりますので、この中に入ったわけでございます。
  83. 千田正

    ○千田正君 そうすると、当然私は将来の北洋漁業というものの漁獲の制限その他の問題にも出てくると思いますし、これは相当慎重に考える必要があると思いますが、もう一つだけお伺いしたいと思いますのは、この原油の輸入に対しての制限がありますが、これは、たとえば黒海の沿岸の諸港から積み出すということでありますが、北樺太及びシベリア地区におけるところの油田からの原油を、むしろその方を引いた方がもし輸入するとするならば日本側としては有利なコストにつくのではないかと思うのだが、向うからだけ取るということはどういうわけでこういうきめ方をやったのですか。これは外務省に……。
  84. 吉田健三

    説明員(吉田健三君) この原油及び重油に関しましては、いろいろ交渉したわけでございますが、ソ連の方が北樺太の原油は出せない、余力がないと言っております。ないものはやはりどうしても引けませんので、向うとしてはやはり出すのが黒海の方、こういうことであります。これは私たちの想像でございますが、北樺太の原油は非常に御存じのようにオクタン価の商い非常にいいものもあるの、でございますが、向うが軍用その他にそれを使っておるようで余裕が全然ないと言っております。もちろん将来はこれは余裕が出てくれは問題になるかもしれませんけれども、当分だめだ。これははっきり出せないと言っているので、これはしようがないので、向うの方の希望でこれは黒海積み出しというふうに入ったわけであります。
  85. 千田正

    ○千田正君 こっちの方で、日本のさ井の事業は非常に進んでいるのだから、貧鉱地帯であっても日本の石油さく井業というものは非常に進歩しているのだから、場合によってはそういうもののやはりプラント輸出こそ日本経済活動に最もよいもので、そういうものをむしろこっち側が希望したらどうですか。
  86. 吉田健三

    説明員(吉田健三君) これはまた相手のある話でありまして、向うが要らないと言っているのに無理にこれを買えと言って押しつけるわけにいきませんので、いろいろ話をしてみたのでありますが、要らないと言っておりますのでやむを得ず入らなかったのであります。
  87. 堀末治

    ○堀末治君 私尋ねようと思っておったのが千田君が聞いてくれたからけっこうですが、私はもう一つ尋ねたいのは、ニシン工船とマグロ漁船が行くのですが、これらの問題についても、これはさっきのように好ましくない注文だとおそらく答弁するのだろうが、これはやはりカン詰設備などに関係して日本には非常に多いのです。ことにニシンなんかについてみると、北海道はほとんどとれないので沿岸漁民と沖合い漁民とあの通りに痛烈に争っている、そこへいってもし向うの漁船がだんだん沖合いでとるということになるというと、日本もこれに対応して何らかのニシン漁業に対する方策等を考えなければならぬと思うのですが、これらの方遂についてはどう考えられますか。水産庁は来ないのですか……、来なければ、あなた方はこの交渉の経過のときにどのように考えたかどうかをお話しできればけっこうですが、あとでまたあらためて水産庁に聞くことにいたします。
  88. 二子石揚武

    説明員二子石揚武君) 先ほど御指摘がありました通り、ニシン工船、マグロ漁船につきましてもわれわれとしては決して好ましくない、しかしながらこのようなソ連側の申し出を断わります場合には、あらゆる国に対してこういう工船ないし漁船を出すことを拒むということにいたしませんと、最恵国の条項がございますので、そういう最終的な措置までとる自信がないという点がございましてここに入ったわけでございます。
  89. 堀末治

    ○堀末治君 もう一つ。しかしこの点については水産庁ともよく打ち合せしてあるんでしょうね。
  90. 二子石揚武

    説明員二子石揚武君) してあります。
  91. 堀末治

    ○堀末治君 それじゃあらためてこういう問題を水産庁に聞くことにいたします。
  92. 東隆

    ○東隆君 輸出の方に農産物は切られてしまっているのですが、向うから亜麻が入ってくるようになっていますが、これは実は北海道だけにしかない特産物ですがね。おそらく亜麻会社は二、三年前に非常に困難な状態になり、それから麻会社でもって扱っておったところの苧麻、そういうようなものを国内生産されたものは大ていひどい目に合わされている。そういう少くとも広義の麻の原料というものについては国内生産が非常に圧迫をされている。それでこいつのもちろんソビエトの力は非常な生産地なんですけれども、そこから輸入することはだいぶ影響が大きい。それでこいつについて何かお話がありましたか、その点について。
  93. 二子石揚武

    説明員二子石揚武君) 亜麻につきましては、現在の輸入制度がすべて自動承認制によって輸入することになっておりますので、ここには二千トンと出ておりますけれども、輸入方式によっては幾らでも入るということになります。ただし、その亜麻そのものの輸入が非常に多くて国内産と競合するという暁におきましては、あえてソ連と限らず、現在の自動承認制による輸入そのものを考慮しなければならないということになるのでありまして、この日ソ交渉においてはこれらの品目が、ただいま申し上げました通りAA品目であるということによって入っておる次第でございます。
  94. 東隆

    ○東隆君 依然として国内生産の原料によって繊維製品を作るという考え方でなくて、初めから原料は輸入して、そして繊維製品をこしらえてそれを出す、こういう考え方に立っているので、この点から考えて麻の製品なんかについては特に考える必要があろうと思うので、この点は輸入をするもの、これに相当制限を加えなければいかぬじゃないか、こういうふうに考える、そうじゃないですか。いろいろのものが自由に輸入をする場合に非常に問題を起してくる、こう思いますが、どうですか。
  95. 二子石揚武

    説明員二子石揚武君) ただいまの点につきましては全体の、ソ連以外の輸入ともにらみ合せまして再検討したいと考えます。
  96. 東隆

    ○東隆君 この肥料のカリ塩ですね、これは国内輸入のそう大きなパーセンテージではないと思いますが、何ですか、価格その他で相当自信があるのですか。
  97. 二子石揚武

    説明員二子石揚武君) カリ塩につきましては交渉の当初、その産地が黒海沿岸になっておりましたので、ヨーロッパの近い地域になっておりますので、とうてい価格の点では引き合わないだろうという予想でありました。ところが、ソ連側の大体の態度は、このかかるカリ塩はCIFベースで競争し得るものを出すのであるということは言明しておった次第であります。しかしながら最近の情報によりますと、カリ塩につきましてナホトカ積みで非常に安い価格が出ておりますが、これはまだ買付には至っておりません。
  98. 重政庸徳

    委員長重政庸徳君) この件については、本日はこの程度にいたします。   —————————————
  99. 重政庸徳

    委員長重政庸徳君) 次に、流下式製塩による農産物被害の件を議題にいたします。  この件については、過日当委員会の問題となりまして、当局の善処が求められていたのでありますが、当局の措置に見るべきものがなく、問上題の解決は何ら進んでいないようでありまして、この問題に関して、重ねて堀本委員から質疑の御要求がありましたので、この際、御発言願うことにいたします。なお、この件について政府からの出席は、ただいま日本専売公社副総裁舟山君、日本専売公社塩脳部塩業課長守田君、農林省振興局長永野君の御出席があります。
  100. 堀本宜実

    ○堀本宜実君 この問題は、委員長がただいま申されましたように、十一月の七日に当委員会において専売局並びに農林省から出席されまして、一応の経過並びにこれらの問題に関しまする処理のお考えについては伺ったのでありますが、その後、まだ時日もそんなに経過はいたしておりませんが、これに対しまする熱意が足りないというふうに考えます。従いましてこの十一月七日にここでこれを取り上げまして以後、各地から要求がございました。それらの問題をくるめて、重ねて専売局並びに農林省の意見を伺いたいと思うのでございます。この相当被害額が出ておりますが、今のところ風の被害か、虫の被害か、あるいはその他の原因による被害か、この塩害の被害かという判別が非常に困難であるということのために、これらに対しまする賠償その他の円満なる解決の処理がおくれておるようでございます。かように考えますと、いつの時代にでも農作物の被害を、的確に、正確に判定いたしますることが困難であると思うのであります。従いまして、言葉の上では、いろいろ通牒を出し指導をしておるとおっしゃいますが、しかし、現実になお重ねて被害があることを見ますると、私はその指導が現実に役立っておらないというようなふうに考えるのであります。そこで、広島県の試験場等でこの話を伺ってみますると、これは塩風と申しまして塩の風と、鹹雨と申しまして塩の雨と、この二つによる被害のようであります。これらに対しましての被害予防の一定距離基準というようなものが設けられておるかどうか、これを伺いたいと思うのであります。
  101. 守田富吉

    説明員(守田富吉君) お答え申し上げます。枝条架の被害につきましては、お説の通り塩害に当る部分の被害がどの程度であるかということは、非常にむずかしいわけでございまして、具体的になかなか判定が困難なのでございますけれども、少くとも枝条架による被害が認められるというものにつきましては、公社といたしましては、現地の出光機関を通じまして、極力塩業者と農家との間にあっせんに努めまして、逐次損害額の補償等も解決をして参っておるわけでございます。なお二、三現在懸案中で、まだ解決を見ていないものもございますけれども、これらも近日中に何とか現地解決がはかれるものと考えております。
  102. 堀本宜実

    ○堀本宜実君 その言いわけはね、前の委員会でももうたくさん聞いた。誠意のあるところは認めている。しかし、誠意だけでは解決がつかないから、重ねてここで質問をしている。具体的に、一体どうするかということでなければならない。塩害の被害を与える方は、少くとも製塩業者である。被害をいつも受ける方は、農民その他その周囲の耕作物を持っておる人たちであるわけだ。いつの場合がきても塩業者は痛うもかゆうもないんですね。何の痛痒も感じないという立場にある。それでいて、誠意をもってやるとか、あるいは完全に指導をいたしますとか……。もともとこれは政府が指噂したものですね。あなたの方で指導したもので、こういう方が製塩の率がいいとか、そういうことについて、あなたの方が指導をした。奨励をした。そういう立場であるにもかかわらず、こういう被害が出てくると、やれ見舞金を出すのだとか、金銭の拠出によって円満なる解決をはかるつもりであるというようなことでは、われわれは承知はできないと思う。そういうようなものではないと思う。金を出せば解決はつく。今もそういう話だ。その被害の程度の区分が十分でないということをお認めになっておる。従いまして、いずれの場所におきましてもこの被害の上区分が明確でないために紛糾が起る。農民がこれだけの被害があるから、これだけ払ってくれといったときに、それだけ払えば問題を起さない。ところがその区分が、やれ虫である、風である、他の原因である、イモチであるといってその区分がはっきりしないところに問題があるのだから、私は、もっと抜本的な問題から解決をしなければならないと考えるのでありますから、あなたの方で、いやそのうちにできるとか、あるいはうまく指導しておるとか、そのケースだけでは、われわれは承知ができないと思う。ことに塩業者というものは大きな企業だ。偶然に起ってくる、突然起ってくる不可抗力の問題ではない。それを撤去してしまって、現在のつまり塩害の損害を与えた枝条架の撤去をいたせば、今後そういう問題は起らない。これは問題はごく簡単なのです。私はそのことからお聞きすることがよいことかと思うのでありまするけれども、国策として一応そういう施設を奨励し、しかもでき上っておるものを、今撤去をしなさいというようなことを申し上げましても、これは指導的立場にあられる専売公社としては非常に困難であろう。こう考えますから、もっと適切な問題についての処理方法を考えておってはどうか。こういうことを要求するわけです。おざなりなことを聞くんなら、もう聞かぬでもいい。これは重大な問題なんだ。私は、この際、農林省にも申し上げておきたいと思うのですが、農林省も先般の答弁によりますと、都道府県知事あてで、製塩者と協議の上円満に解決するようにという手を打っておる。こういうことなんであります。それ以上に農林省がこれらの国家的見地から施設を、枝条架のこの増築を、構築を奨励しておるという立場を考えるならば、一塩業者と周囲の被害を受ける人たちとの間の問題ではないと私は思う。政府日体が、国がそういうことをやっているのだから、これは国の農林省と、少くともこの専売当局との間で、一方は保護する立場に立って、この際、指導してやらなければならぬ責任が私はあると思う。ただ一片の通牒を流しただけで、これを看過するということは、いかにも私はこれは軽視をしておるのではなかろうかと考えるのでありますが、その点もあわせて農林省からも伺いたいと思うのであります。
  103. 舟山正吉

    説明員(舟山正吉君) 春以来、塩害のために農業、特に柑橘類その他の裁培につきまして御迷惑をかけた次第でございますが、その塩害の主たる原因というものが、枝条架の増設にあったということも、これは農林省と公社との専門家の共同調査によりまして、判明をいたした次第でございますので、公社といたしましては、枝条架の高さ、あるいは向いとか、あるいはその据え付ける位置とかにつきましては、これは慎重に考えなければならぬということで、公社の試験地におきまして、その研究を現にこれはやっておる次第であります。まあすでに損害が起きましたものにつきましては、ただいま課長が申しましたような塩業組合との話し合いによりまして、できるだけ補償するという方針で進んでおるのでありますが、この根本方方針につきましては、厳重にただいま申しましたような枝術的な点について研究するように、指示はしておるのでございますが、それで、またその後、大体の検討もできつつあるのでございますが、それを全面的にまだ実施するというところにいっておらないために、あるいはその後塩害が起っておる所もありはしないかということをおそれているような次第でございますので、この研究を極力急ぎまして、公社といたしましても塩害の防止については、これは誠意をもって根本的に防止したいというふうに考えておる次第でございます。
  104. 堀本宜実

    ○堀本宜実君 これは実に意外なことを承わるのでございますが、研究をしておるというのですけれども、もう今年度しまいでしょう。全国予想外にできているという、この前塩脳部長が言うている、これだけ作ろうと思っておったのではないが、それ以上にできているということを述べているが、いつ終るのですかと言ったら、もう今年で終わると言った。おそらく補助金も出さ金は打ち切りになるのじゃないですか。現に被害が起っているのに、今さら研究するというお答えでは納得いきません。そういうものではありません。国の施策が、自分の方で一つも痛くない、自分の方で困らないということをもって今ごろ研究をしているというようなことで、これをおっかぶせていくということは、これは私は誠意がないと思う。
  105. 永野正二

    説明員(永野正二君) 農林省の方のこの問題についての従来とった対策はどうかというお尋ねがございましたので、御説明いたしたいと思います。  この問題につきまして、先ほど副総裁からお答えがございましたように、農林省と専売公社の技術者が参りまして現地を調査いたしたのでございます。その報告といたしまして要するに塩水を飛ばして農作物に被害を及ぼすような危険のある場合には、流下式製塩の方の操業を調整することにしたらいいとか、また適当な揚言には、流下武製塩の刷りに、鹹水を防止するような防止策を講じたらいいとかいうような答申があったわけであります。そういう答申を私どもの方といたしましては、各該当の県知事の方に流しまして、こういうことを現地でおのおの製塩業者と相談をして、対策を講じてもらいたいという通牒を出したわけでございます。もとより単なる通牒でございますけれども、それはそれぞれの現地の事情がいろいろあると思いますので、現地の塩田の状況に応じて、そういう具体的な相談をするようにというので、通牒を出したのであります。その後、私の方では先月の末から今月の初めにかけまして、また各関係の知事に照会を出しまして、その問題についての対策はどうなっているかということを照会をして、その回答が参っているのでございます。兵庫、岡山、広島、山口、愛媛等から参っております。その中を見ますると、たとえば岡山県の一例でございますが、製塩業者の方では、たえず風速計を備えまして、風速が十メートル以上になったら絶対に操業をやめる、三メートルくらいになったら塩水がどのくらい飛ぶかということを機械でもってはかっていく。絶えず現場の主任という責任者を置きまして、その責任者が農作物の方に被害が及ばないように、操業を調整するというような取りきめを、現地の農家と製塩業者の方でやっておるようでございます。また、特別な例といたしましては、大部分の枝条架を、被害の危険のないような所に移すというような取りきめもいたしているようでございます。ただ、こういうふうにほんとうに現地に即応しました徹底した対策が全部とられているかと申しますと、その点はまだ実はそう完全にいっておらない所もあろうかと思います。私の力といたしましては、ただいまこういういい実例を各県に流しまして、できるだけ現地の実情で両方がよく相談をいたしまして完全な農作物に対する防止対策をとらすように、なおあらためて各県に督励して、この問題を根本的に解決したい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  106. 舟山正吉

    説明員(舟山正吉君) 塩害の主たる原因が枝条架の増設にあるという事実はございますけれども、ただこの際、お話のように、まあこれまで増設した枝条架をすぐに撤去してしまう、こういうようなこともいたしかねる次第でございます。塩の増産のために、当局の方針といたしまして枝条架をこしらえさせてきたわけであります。その中には、塩害とは全く関係ないものもあり、ますし、ただ、場所あるいは高さ等の方法によりまして、塩害を生じているような次第でございます。これらにつきましては、各地の地理条件によりまして、及ぼす影響が非常に違うと思うので、全部についていまだ徹底して改善策を講じ得られないということはあるかもしれませんけれども、少くともできるだけ早くこれをいたしたい。なお、枝条架の新設につきましては、こういう際でもございますので、もう現に抑制している次第でございまして、まあ枝条架の中で塩害を起している原因となっておりますものにつきましては、個々に拾い上げまして、具体的対策をとりつつあるということでございます。
  107. 堀本宜実

    ○堀本宜実君 それりゃ具体的に伺いますが、枝条架の被害予防に対する一定の距離というものがなければならぬと思うのですがね。所により、あるいは吹く風の方向等によりまして、必ずしも一定はしないと思うけれども、つまり被害の、最小の、小さい距離で、どのくらいな距離以上を耕作物その他の人家等から離さなければならぬというような距離があると思うのです。これはなければならぬはずですね。ただでたらめに専売公社がこれを奨励したのではなかろうと思う。少くとも科学的根拠がなければならぬと思うのですが、そういうものについて、それから強風時には送水停止の措置を講ずるというのですけれども、それはそういうことを言われるのですが、強風時に逆水を停止することをしないから塩害の被害が起る。これはいくら自分で規約を作り、みずから自粛を唱えてみましても、現実に被害が続出してくるのですから、われわれはこういうことを言わざるを得ぬことになる。そこを一体どういうふうに考えられて指導しているのか、具体的な例から一つ伺いたいと思います。
  108. 守田富吉

    説明員(守田富吉君) ただいま現地でやっております対策といたしましては、先ほど農林省の方からもお答えがありましたのですが、大体風速五メートルもしくは場所によりましては六メートル以上のときには、作業を停止する。もし違反した場合には、それぞれ塩業組合の内部でそれに対して罰則を設けて厳重に取り締るということを、これは農家の方からも委員を出していただきましてそういう人たちと打ち合せの上で、できるだけ実効の上るような方法を講じておるわけでございます。  なお、詳細なデータにつきましては、私の方の防府の試験場に、特に風洞を設置いたしまして、この風洞によりまして枝条架の水量と風速並びに飛散量との関係、風向との関係等を、現に先ほど副総裁から申し上げましたように、詳細なデータを集めております、このデータが集まりますれば、それぞれの現地に即したこの飛散防止の対策を立てまして、具体的な指導をいたしたいと考えておるわけであります。ただいまは、先ほど申しあげましたように、風速五メートルないし六メートル以上のときにはやめる。それ以下のときにつきましては、できるだけ飛散を防止するために、農地に近接しておる所に、枝条架におきましては漁網を張りまして飛散を防止する。あるいは場所によりましては、ササを風下に設けまして、しぶきをササで受けとめる。それから上のとい部にふたをいたしまして、従来といの上からあわになって飛んでおったのが相当あったわけであります。といは今ふたを全部するように指導をいたしております。こまかい点でございますが、大体そういうふうな現在具体的な指導をしておる次第であります。
  109. 堀本宜実

    ○堀本宜実君 これはまあああいうことをした、こういうことをしたと、いろいろお聞ききしますけれども、これはもう水かけ論で、ここで現実の問題を解決するわけにも参りません。そこで、私は最後にこういうことを提案をしてこれが守れるかどうかという決意をお聞ききしたいと思うのでございますが、被害の農作物に対する損害補償というものは現地で行うんだ、現地で行え、塩業者と農業者とだけの、被害が起った後の協議にするということでなしに、政府が少くとも指導して、この間伺いますと、奨励したよりもたくさんできた。また高さにおいても、こちらが規定するものよりも高いものもある。また作る場所においても、相当指導したつもりだが、被害を及ぼすような所へも作っておるのを発見した、こういうことを言っておられる。でありまするから、十分な指導が足りないことは明白であります。そういう指導をしたのにもかかわりませず、損害が出ておりますることは、この速記録を見ましても明白であります。そういうことから考えますと、この被害処理に対しまする、つまりこの補償に対しましての国家的な立場から、国が、農林省と公社とで御合議の上で、支払ってやる、地方の押し問答にまかせない、損得のない立場から、公平な立場で国が処理をしてやるということが可能かどうか。そういう決意があるかどうかということを、まず一点伺います。  それから次に第二が、農作物の被害防止対策をすみやかに講ずる、これはもういつも申し上げるのでありますが、しかし漁網を張るとか、あるいはその上のとい部を管にするということだけでは、これはだめなんです。昼はなるほどあれはコックですから、バルブですから、バルブを締めておけば点滴になる。バルブを開ければ、モーターがついているんだから、たくさんの鹹水なり塩水を吹き上げてくるわけなんです。昼はあまりやらないが、夜はバルブをかなり全開して風にかけておるということをいいます。これは各地でそう言っているんです。しかし、これは全く夜の仕事であり、これは確実にそれを証明するものがありません。双方ともにないと思うんです。だから、これは私はそういう背徳的なことはないとみずから考えますが、しかし、往々風の吹いておるときに飛ばすことにおいて起るんですから、利潤追求の立場からの業者としましては、私はまたそういうこともあり得るから、損害が起り、被害が起るのである、こういうふうに推測いたしておるのであります。従いまして、そういうようなことをあえてやるという立場から考えてみまするならば、板張りにするとか、何か目に見える構築物をもって遮蔽をし、あるいは障壁をめぐらすということにするがよいのではないか、要するに、この防止対策をすみやかに確立するということの決意があるかどうか、そういうことを指導できるかどうかということが第二であります。  第三は、五メートル以上のときは、直ちに作業を中止すると、どこの塩業組合でも言っておられるようでありますが、これは確実に守っていただきたい。夜といわず昼といわず、これは当然守らなければならない。しかし、そちらの機械の操作は塩業者で操作しておりますから、一般周囲の人たちは、これは疑えばきりのないことでありますが、良心、要するに自粛の立場から、完全に、五メートル以上はやらない、六メートルと先ほどお話がありましたが、いろいろわれわれの聞いたところによりますと、五メートル以上は被害がたくさんある、こういうことを言っておるようでありますので、この点についてのお考えはどうか。  最後に、私は四つ目に、完全な被害防止対策が確立しない限り、枝条架の新規なものは、先ほどお話がございましたように、認めないということを、ここではっきりと一つ確約をしていただきたいと思います。奨励する意思はないとか、あるいはしないはずだとかいうんでなしに、対策が確立しない限り、新規にはこれを作らせない。現在被害を与えている枝条架のことはわかります。この枝条架が被害を与えておりますことは、すぐわかります。従いまして、その被害を与えます枝条架をいかにするかということを協議するために、農業者と塩業者との合同による調査会なり、あるいは被害処理の協議会を作ってこれを処理する。先般伺いましたところによりますと、塩業組合ごとに、枝条架の塩害防止に関する申し合せ規約を作ったと、こうおっしゃるのでありますが、それは私の聞きますところによりますと、農業者も加わって、たとえばここへ作ってもらったのでは、五メートル以下の風でも被害を及ぼすということのために、そういうものをのけてくれ、あるいは撤回してくれということを申し入れましても、なかなか困難だそうであります。農業者の発言権が少いのではないかと思うのでありますが、私はそういうこともよく考慮して、そうして双方から代表者が出て協議をする協議会なるものを設置して、そうして協議会の結論によって、ここに設置してよろしいとか、一応附近住民の同意を求めて存続するかどうかを決定するそういう組合を作り、組織を作ってやろう、こう思うのであります。この四つについての御意見を伺いたい。
  110. 舟山正吉

    説明員(舟山正吉君) 第一のお尋ね、塩害に対する補償を公社または国でするつもりはないかというお尋ねでございますが、これはこの塩害を将来起さないように極力努めておるのでございまして、この塩害は、この経過期間においてある程度起りましたけれども、これらにつきましては、これは塩業者と農業者とのお話し合いによって解決していただく、公社は、その間極力農林当局と一緒になりまして、ごあっせんするということが適当であろうと思いますし、まあ将来は塩害の起らぬ方に力を入れて参りたいと考えておる次第でございます。  それから被害防止対策につきましては、万全を期することは申すまでもないことでございまして、まあ障壁を設けなければならぬ所、まあ場所によりましては、それを作ることになりましょうし、これは各地各様の対策があろうと思います。先ほどもお尋ねがございましたが、枝条架の進歩発達というものは、ここ近年でございまして、その効用が予想以上にあがっておるのでありますが、その反面、いろいろ損害を及ぼす等の弊害につきましては各地各様で、必ずしも一様に捕捉しかねる点がございます。これは先ほど申し上げましたように、鋭意研究中でございますが、その土地に応じた予防策というものは、ぜひともこれはしなければならぬものであろうと考えております。  それから風速の強弱による操作の点でございますが、これは後ほど塩業課長からお答え申し上げたいと思います。  それから新規許可につきましては、ただいま申しましたように、枝条架の及ぼす害というものがどの程度か、しっかりつかめておらぬ点もございますので、さしあたって新規許可は停止しておりますが、今後もそういう安全率と申しますか、そういう問題が判明するまでは、少くとも新規許可は押えて参りたいと存じます。  その後どうするかというような点につきましては、これは枝条架の許可というものは、各塩業者間それぞれ順序をつけまして、先に許可したものもあり、あとに待ってもらう人もあるわけでありまして、その間の公平をはからなければならぬといったような問題もあるかと思いますので、その後の問題につきましては、ただいま何も考えておりませんので、お答えを差し控えたいと考えております。  それから塩業者と農業者は何か協議会をこしらえて協議したらどうかということにつきましては、新しい御提案でございますので、検討さしていただきたいと思います。
  111. 守田富吉

    説明員(守田富吉君) 先ほど五メートル以上はやめよというお話がございましたのですが、五メートル以上になりますれば被害が相当出てくる場合が多いのでございまして、現に私どもの方も五メートルないし六メートルという指導をいたしているのでありますが、これは六メートルといいますのは、香川県の下笠居の方で、これは農家の被害対策委員会と塩業組合の委員会とで話し合いをいたしまして、一応六メートルまではよかろう、六メートルをこした場合には枝条架をとめてくれ、これは自発的に六メートルという例が出ているのでございますので、地形等によりましては、あるいは枝条架が農地に接近している場合、その近接の程度によりましては、五メートルでもってとめなければならぬという所も多く出てくると思うのであります。こういう場所につきましては、現地々々に応じた制限をいたして参りたいと思っております。
  112. 堀本宜実

    ○堀本宜実君 最後に、農林省並びに専売当局に申し入れをいたしておきたいと存じまするが、ただいま国が補償する意思はないというようなお話のように伺ったのであります。端的に国が補償せよと言っても、それは国が直ちに補償しましょうということには相ならぬと思いまするけれども、少くとも塩業という専売品であって、国が相当の助成、奨励指導をいたしておりまする事業でありまするので、これらが常時災害を起しておりまする現状にかんがみまして、少くともあっせんをするとか注意を促すとかいう立場でなしに、もっと懇切な立場でこの指導をしなければいけない、こう私は思います。被害をこうむります者の立場から考えてみますると、たとえばミカンの被害、あるいは桃、ナシ等果樹の被害が相当たくさんあるのでありますが、そういうような果物の果樹の被害は一年だけでは済みません。その損害は四年、五年のあとまで続くものであります。そういうようなことが起りますことを、そのまま地方の者だけにまかして、お見舞金を差し上げないというようなことでは、私は解決がつかないのではないかと思うのであります。で、私はもうここで、今後はあり得ないと思うのでありますが、もし今後でも——この席で今後はない、今後ないように注意する、こういうお話がございましたが、今後おそらくないことを私は希望いたしますが、それだけの御決意がありまするならば、ないであろうということを信ずるのでありますが、もしこれでそういうことが出てさましたら、今度は一体どういうお考えをお持ちになりますか。これをあわせて伺っておきたい。これはあり得ないことを抽象的に申し上げまして御意見を聞くことはどうかと思うのでありますが、私は、そういう固い御決意でこの損害防止に努められるかを伺いたいと思うのであります。  また、農林省にもう一つ申し上げておきたいと思うのであります。  農林省としましても、これだけの問題が起っておるのでありますから、共同調査であるとか、事後調査でなしに、一度これを根本的に、抜本的になくするという立場で、この常に被害を受ける方の人たちの状況をよく調査されて、それを基礎にされて何かこれに対する保護的な話し合いを専売公社と今後される意思があるか。そういうことについても伺っておきたいと思うのであります。
  113. 舟山正吉

    説明員(舟山正吉君) 塩害によりまして、農作物に被害を与えましたものについては、まことにいけないことであったというふうに考えておりますので、この予防策につきましては、真剣に取り組みまして、技術の方面から見ましても、また指導の面から見ましても、そういうことのないように、これは公社の責任においてやっていきたいと考えております。
  114. 永野正二

    説明員(永野正二君) 農林省といたしましても、こういう問題を国会でお取り上げいただきましたことを契機といたしまして、ただいま専売公社の副総裁の御言明がありましたように、今後の事故防止を安全にするために、十分公社と協議をして参りたい、こう考えておるのであります。  なお、各地で起っております事態につきましては、現在も、先ほど申し上げましたように、いろいろ調査をいたしております。できるだけ事態の把握に十分努めたいと考えておりますが、ただ、起きました個々の事態につきまして、被害をいわば査定すると申しますか、その損害賠償についての農林省の方としての結論を出すということにつきましては、これは私の方の技術者の人の数なり、能力なりというものとも関係がございます。農林省といたしまして、今後それを全部引き受けるというふうに、ただいまお引き受けをすることも、ちょっと実は困難ではないか、こういうふうに考えておるわけでございます。できるだけその現地の実情を把握いたしまして、努力をすることには変りはございません。
  115. 重政庸徳

    委員長重政庸徳君) 私最後に……。全く堀本君の意見と同意見ですが、専売公社も、農林省も、できるだけの努力をする、最大限の努力をするということであるのですけれども、塩業という商売は、風が吹けば吹くだけ増産になるだろうと思う。だから、そういう意味からいうと、規約で五メートル以上はとめるとか何とか言うてみたところが、夜もあるし、なかなか私は将来塩害の被害というものが起きぬということは、これは堀本君と反対に、必ず一つも起きぬということはないだろう。そこでこれは僕の知識が足らぬところだが、検塩器とか何とかいう、今の知識からいって簡単にそいう機械、塩がきたかこぬかということを調べるそういう簡単な機械は今あるのですか。専売公社にお尋ねしますが、あれば……。もしなかったらば、こんなものは専門家に研究させればすぐでき肥るだろうと思うのだ。そしてそれを私は設置する必要があると思う。そうすると、要するところ、農民と、この塩業との問題も、今聞いておれば、やれいもちであるか、害虫であるか、塩害であるかというような、こういうことは、きわめて非科学的だろうと思う、現在の世の中で。だから、これは機械によって明確にした方がいいので、そういう機械を公社は塩業者に向って必ず設置するように、私は、指示してもらいたい、もしあれば。なければ至急研究さす、こういう点どうですか。
  116. 守田富吉

    説明員(守田富吉君) 風速の程度によりまして、現在自動的にポンプのスイッチが切れまして、枝条架がとまるというふうな設置を今研究しておりまして、大体その具体化ができてきた。こういうものを設置いたしますと、たとえば五メートル以上風速があるときには、それによってポンプが自動的にとまる、夜間も知らぬ間に作業をするというふうなことは避け得ると思うのであります。なお、これを確実にするために、ただいま委員長からお話がございました検塩器の設置につきましては、研究させていただきたいと思います。
  117. 重政庸徳

    委員長重政庸徳君) 現在ないのですか。
  118. 守田富吉

    説明員(守田富吉君) 塩田の方には設置いたしておりません。
  119. 重政庸徳

    委員長重政庸徳君) それだから塩田に設置しなさいというのです。塩田の周辺の農業地帯に設置しなさいというのです。
  120. 守田富吉

    説明員(守田富吉君) なお設置の方法等もございますので、一応私の方で研究させていただきたいと思います。
  121. 重政庸徳

    委員長重政庸徳君) それがおかしいのだ、そのくらいな熱意がなくしてこの塩害が防げるものですか、僕はそう思う。農林省はどうですか。
  122. 永野正二

    説明員(永野正二君) 私その方は専門でございませんので、これが当っておるかどうかはわかりませんが、私どもで調べました一、二の事例では、何とか飛沫検定器と申しますか、しぶきがどこに飛んでおるかというようなことを調べる機械はあったようなふうに聞いております。
  123. 重政庸徳

    委員長重政庸徳君) そうするとね、それを設置する必要がある。専売公社、そういう考えはないか、それがないということになると、熱意がないと僕は断定できるだろうと思う。
  124. 舟山正吉

    説明員(舟山正吉君) ただいまお話のありました飛沫検定器というものが、どの程度の確実性を持っておるかどうかということに私は不案内でございますが、そういうものが被害防止に有用である、有効であるということでありますれば、その設置等も考えていきたいと思います。
  125. 重政庸徳

    委員長重政庸徳君) それではね。被害防止に有効であれば——、だから困るのですよ。有効ではないだろうと思うけれども紛争を解決する上において確実な基礎を持っている、そういうものが設置してあれば、今言うように五メートルという規約、あるいは五メートルでも風の状況によったら被害をこうむるだろうが、そういう規約でもって、五メートルなら回してもいいという規約なら、その五メートルで被害をこうむったら、塩業者は、それは規約通りで、おれは知らぬというわけにも私はいかぬと思う。あなた方の研究にもなるだろうと思う。そうむずかしいことでは、しろうとだけれども、ないように思う。簡単なものであろうと思う。飛沫の検定というようなものは。原子爆弾ができている今日、これはもう全く子供みたようなものだろうと思うんですがね。そこまで決心されているかどうか。
  126. 舟山正吉

    説明員(舟山正吉君) その検定器、その他いろいろな角度から塩害防止については研究いたしたいと思います。
  127. 清澤俊英

    清澤俊英君 防止はいいんですがね、もちろん防止してそういうものをなくするのはいいんですけれども、研究しているうちに災害は発生していく。計画を研究しているうちにこれが確定できなかったら、災害は発生していく危険性はやはりあるんですよ。それに対する対策はどうなんですか。
  128. 舟山正吉

    説明員(舟山正吉君) 先ほど来申し上げておりますように、塩害が起るようなおそれのあります所は、もうすでにいろいろと手を尽している次第でございます。この検定器その他の問題は、もっとより確実と申しますか、絶対に塩害を防止するような、何か科学的な方法はないかというような意味において いろいろもっと研究したらどうかというお示しのように拝聴しているわけであります。それにつきましては、私どもも技術的にいろいろと研究することをお約束している次第でございます。それ以外におきましても、塩害ができるだけ起らぬように配意していることはもちろんでございます。
  129. 清澤俊英

    清澤俊英君 ちょっとおかしいところがあるんですよ。いろいろ起きそうな所は手を尽しているのだと言うんだが、起きそうな所で、害があるような所は手を尽しているから要らないんだ、こう解釈していいかどうか。だから不完全であればこそ、いろいろな施設もしたり、いろいろな研究もして、完全を期す、こういうことになると、未完全なものが残って、そうしてそこに害というものが残るだろうと思う。それに対してどう考えておられるか、こういうことなんです。あなたの言われる通り、いろいろ危険性のある所はもう手を尽している、手を尽していないという所はおそらくありません、こういうことだろうと思う。こう解釈している。ありませんものならば、いろいろのめんどうなことを言う必要はない。私はめんどうなことはないと思う。まだ危険性があればこそ、あれもしたら、これもしたらよかろう、この研究もよかろう。そうした場合に、起きたときにはどうなるか、わずか残っている場合の起きたときにはどうお考えになっているかということなんだ。起きている損害に対しては、国の方で何らかまわぬと言うんでしょう。あなたの方もかまわぬ、農林省もかまわぬと言うんでしょう。これは両方でやれということなんじゃないですか、今わきで聞いておりますと。両者間で話し合いをつけろ、農民と塩業者と話し合いをつけて損害補償をやれ、こういうことじゃないですか。これはあなた方中べ入って、こうしたらよかろうといったときにははい、はいと言っているかもしらぬけれども、金もまとまらぬときに、訴訟にでもなると、おれは知らないんだ。飛んでいった。いや飛ばないんだと言っておったら、十年くらいかかるだろうと思う、この問題の裁判の決定なんといったら。それじゃ全く問題にならない。だから、その問題は一応防止して、なくするということと、損害をどうしてやるということが、これはやっぱり私は重大問題として、今現実に残っておるのじゃないかと思うのです。養蚕とタバコの裁培の問題だとか、あるいは農薬と貝類の問題とか、いろいろそういうものが出てくると、何年かかっても調査中、研究中で、なかなか片がつかぬ、片がつかぬうちに損したものが泣き寝入りと、こういうことになってしまう。そういうことじゃ問題にならぬと思う。だからやはり一つのそこへ現象が出てきた、あなた方は、農林省でも公社でも、これは一つのそれによって生じた損害だと、こう見たら、それに対する対策は、やはり何らかの形で考えておいて、次の研究と言えば話がわかる。それに対してどうお考えになっておるか、そういう何かの立法をやりつつ御研究して完全を期される、こういうことをお考えになっているのかどうか、こういうことをお伺いしておるのです。
  130. 舟山正吉

    説明員(舟山正吉君) この枝条架による塩害につきましては、先ほども申し上げましたように、枝条架の採用が比較的新しいものでございますから、その及ぼします害と申しますか、それがどういう程度であるかということは、もちろん土地の位置、あるいはそのときの風速、天候といったようなことに左右されますので、これならもう絶対間違いないというようなところまで研究は進んでおらぬわけであります。しかし、塩害を及ぼすおそれがあると認めましたものにつきましては、着々予防手段を講じておるのでございますが、なおそれ以上に的確な塩害の防止に役立つような技術、機械等につきましては、これはできるだけ急いで研究して、それが被害防止に役立ちますならば、それを採用していきたい、こういうことを申し上げておる次第であります。
  131. 重政庸徳

    委員長重政庸徳君) この点については、本日はこの程度にいたします。本日の委員会の経過にかんがみ、当局の善処方を重ねて強く要望しておきます。  本日は、これをもって散会いたします。    午後四時十二分散会    ————・————