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1957-11-12 第27回国会 参議院 大蔵委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年十一月十二日(火曜日)    午前十一時十四分開会     —————————————  出席者は左の通り。    委員長     豊田 雅孝君    理事            木内 四郎君            西川甚五郎君            江田 三郎君            平林  剛君            天坊 裕彦君    委員            青木 一男君            木暮武太夫君            塩見 俊二君            土田國太郎君            増原 惠吉君            宮澤 喜一君            山本 米治君            栗山 良夫君            椿  繁夫君            野溝  勝君            杉山 昌作君            前田 久吉君   国務大臣    大 蔵 大 臣 一萬田尚登君    通商産業大臣  前尾繁三郎君   政府委員    大蔵政務次官  白井  勇君    大蔵省主税局長 原  純夫君    大蔵省為替局長 石田  正君    通商産業省通商    局長事務代理  杉村正一郎君   事務局側    常任委員会専門    員       木村常次郎君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○たばこ耕作者耕作権保障等に関す  る請願(第三七八号)(第三七九号)  (第三八〇号)(第三八一号)(第  三八二号)(第三八三号) ○租税特別措置法等の一部を改正する  法律案内閣提出衆議院送付) ○設備等輸出為替損失補償法の一部を  改正する法律案内閣提出衆議院  送付)     —————————————
  2. 豊田雅孝

    委員長豊田雅孝君) これより委員会を開会いたします。  昨日の委員会において決定を留保いたしておりました、たばこ耕作者耕作権保障等に関する請願議題といたします。  速記中止。   〔速記中止
  3. 豊田雅孝

    委員長豊田雅孝君) 速記開始。  本件を採択することに決して御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 豊田雅孝

    委員長豊田雅孝君) 御異議ないと認めます。よってさよう決しました。     —————————————
  5. 豊田雅孝

    委員長豊田雅孝君) 次に、租税特別措置法等の一部を改正する法律案設備等輸出為替損失補償法の一部を改正する法律案  以上二案を便宜一括して議題として質疑を行います。
  6. 江田三郎

    江田三郎君 租税特別措置法内容はせんだって来いろいろ質疑応答がなされ、私もそれを聞いておったのですが、率直に言って、これは最近のいわゆる外貨危機、こういうところに便乗した、きわめて慎重を欠いた法案ではないかという印象を受けるわけです。主税局長主計局に長いことおられて、私どもも長いつき合いで、なかなか筋の通った骨のある人として、われわれも敬意を払ってきたわけなんですが、そのわれわれが今までつき合った主税局長人柄から考えると、どうもこういうものに賛成されるはずはないのじゃないかというふうに思われるのですが、そういう便乗法案ではないかという私の印象が間違っておるなら、主税局長本来の人柄に立ち返って聞かしていただきたい。
  7. 原純夫

    政府委員原純夫君) 大へんお答えのむずかしい御質問でございます。特別措置を扱います場合には、いつも税負担の公平という問題と、それから特定政策目的のために軽減あるいは免除するという必要と、この二つのものをどう調和させるかという問題にいつもぶつかるわけであります。その際私一般的な腰のかまえとしては、税負担そのもの相当にまだ重いということがございますから、それの一般的な軽減ということに努めたいという気持を相当強く持っております。しかしながら一方で政策的な要請というものが、その場合々々によりましてかなりにあるのであります。それらをはかりにかけて結論を出すというのは非常にむずかしい問題でありますから、間違いはないということは保しがたいというふうに思います。そういう意味でいろいろ御議論があるというのはまことにやむを得ないと申しますか、ごもっともなことだと思います。今般の場合におきましても、もちろんそういう意味問題点は感じながら仕事をいたしましたけれども特別措置全般の系列の中で、常々私どもそういう意味で何と申しましょうか、必要の濃淡、厚薄というようなものをやはり常々考えなければならぬ立場におります。そういう意味で孝えております面から申しまして、輸出所得控除というのは割合私ども優先順位が強いというふうに思っております。それが一つと、そこで春以来の外貨収支鈍調を契機としての総合対策を急遽とるという状態になりました。その必要性ということを考えあわせまして、やはりこの程度のことは必要ではないかというふうに結論を下したわけであります。結論にいくのに数字的な支点がないものでありますから、まことに御納得になりにくい、本来こういう問題についての御判断にいろいろお立場、お立場意見の分れてくるような問題でありますので、ぴたりと御説明しにくいのですが、そういうようなことで今回の措置をとろうというふうに政府としては考えた次第でございますので、御了承願いたいと思います。
  8. 江田三郎

    江田三郎君 大臣こられて、栗山委員の方から大臣質問がある予定になっていますから、私は予定外ですから申しませんが、ただ一言だけ主税局長に申し上げておきたいことは、たとえば輸出実績が前年度より非常に上回ってくるのだ、そういうときにこの特別措置を広げていくというなら話はわかりますけれども、今度のような内容というものはどう考えたっておかしなものであって、今の答弁を聞いておりましても、どうも私ははなはだ残念ですけれども、今まで原局長がやってこられた仕事ぶり、あるいは態度というようなことから、非常にぼけてきたというふうに思うのです。来年度の予算編成ということは非常に重要な問題を含んでくるので、なかなか筋の通った話ばかりは出てこない。そういうときに、あなた方がなさる役割というものには私ども大きな期待をしているわけであって、あまり局長になられて、八方円満にいかれるのもほめたことでない場合もあるのではないかと思いますので、今回のことは、私はどうも今の説明では納得できないということだけを申し上げておきます。
  9. 平林剛

    平林剛君 大蔵大臣が見えましたから、ただいまの法律案につきまして若干質問をいたしたいと思います。  最初に大蔵大臣にお尋ねいたしますが、政府には輸出振興政策としてどういうものがあるか、所管大臣ではありませんけれども大蔵大臣として政府の枢要な地位におられるわけでありますから、輸出振興政策の概要について御説明を願いたいと思います。なぜ私がこんなことを申し上げるかというと、ただいま提案されている法律案は、輸出振興のための措置であると説明をされておるわけであります。しかし私どもが今議会でこの法律案を検討いたしてみますと、輸出所得特別控除制度昭和二十八年に創設されましてから何回か拡充をされて、今日ではその減税額は百億円近くに上っておる。従来までの減税額は約七十八億と説明がありましたし、今回提案された法律案によるとさらに二十四億円の減税になる。このように輸出所得特別控除制度拡充をされて、相当部分の税の減収をきたしているということは、逆の立場からみると、政府輸出振興政策税法上の特典でカバーをされ、あるいは税法上の特例に頼った輸出振興政策をやっているのではないだろうかという誤解すら生れてくるわけであります。そこで、政府にはいやそうでないのだ、あくまでこの輸出振興政策として税に頼る部分はその一環であって、そのほかにこれこれのものがあるから、われわれは租税原則を破っても、この際その一助としてこうやろうと考え提案したのだという説明を、私は大臣から聞きたいのであります。そうでないというと、今日税制全般についてかなり鋭い批判があり、租税原則を常に政策によって破っているという声がかなり強いのであります。そこで私が申し上げたような趣旨で、政府にはこればかりでなく、これこれの輸出振興政策があるのだ。そういう説明を聞いて国民全般納得をしてもらったらどうだろうか、私はそう思うので、大蔵大臣政府輸出振興政策をお尋ねするわけであります。同時に、できればその他の輸出振興政策で、政府予算的にどの程度の援助をしておるか。つまり金額で比較するのは単純比較で適当でないかもしれませんけれども租税特別措置によって百億円使うておる。しかしその他の輸出振興政策においてもこれだけの予算をかけて、政府は国の基本政策として熱心にやっておるのだ、こういうことが単純比較の上からも明らかになるのではないだろうか、そう思うわけでありますから、できればそれに要する経費についてもこの際お聞かせ願いたいと思うのであります。これが第一であります。
  10. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 輸出振興が、特に大蔵大臣立場といたしましては、物価を国際水準に安定をさせるということが基本であることは申すまでもありません。従ってそういう財政金融政策をとるのでありますから、要するに特に今後、輸入力が非常に減退をいたしております関係から、輸入による原料によってできた製品をなるべく輸出に向けるように、国内消費に充てないように、言いかえれば一方において貯蓄を非常に奨励をいたしまして国内消費を妥当なところに抑えていくということが、実は基本的なものになると考えております。その他につきましていろいろと輸出振興策があるのでありますが、これはそういう基本が確立した上のことであります。そういう基本をまず十分確立して、その上でさらに、今日の国際情勢、特に競争力のはげしい貿易面についていろいろと輸出振興するのであり、ある意味において当面の施策というものが立つという見地から、いろいろ御審議を願っております。税法上の優遇、あるいはまた輸出保険金額の拡大、あるいはまた輸出金融について金利上の優遇措置をとる。あるいはまたプラント輸出に特別な延べ払いを設けて輸出をする、こういう各種のものを総合的にやる、こういうことであります。特に今ここで問題になっております輸出所得特別控除制度でありますが、これは私も非常にやはり考慮を加えたわけでありましてこれが単に輸出業者の経理をよくする、それにとどまるということがあっては、これは相ならないのでありまして、今日の貿易商社海外等における各般拡充に対して、いろいろと競争をしていくという上において、こういうことを考えてそして輸出を奨励させる、こういう見地に立っておるのであります。税の原則的な論議からいたしますれば、いろいろと御意見もあろうと思うのでありますが、当面特に輸出を増加せしめる金融が大事であります。非常な緊要性をもってやるという意味から、特に御審議を願っておるので、御承認を得たいと、かように考えます。
  11. 平林剛

    平林剛君 私の質問に対してまるきり答えになっていない。これは栗山委員もおみえになりましたから、その方面から質問があると思いますから、これ以上申し上げませんけれども、今日の政府輸出振興政策というものが、あまりにも税の特別措置にたよりすぎているのじゃないだろうか。この間までに現われた昭和二十八年から創設をされた制度については議論もなかったと思いますが、百億円に近い措置が行われることになりますと、次第に国民の中からも新たなる目で迎えられることになります。それだけに政府は、租税特別措置だけにたよる輸出振興政策であってはならぬということも当然に強まってくると思う。現状においては、はなはだ私どもとしては政府政策に遺憾の点が多いということだけを指摘しまして次の質問をいたします。  第二に私、どうもこの法律案で最大の疑問は、この輸出所得特別控除制度が行われてから今日まで、ずっと最近の輸出状況について検討してみたのであります。また、政府からも今日までの輸出状況の概括について説明を聞きましたけれども、一体税の特別控除制度がどの程度効果があるかということは、的確に確認をすることができない。それは昭和二十八年度以降輸出状況をながめてみますというと、かなり状況はよくなっておるとはいえますけれども、それは各般政策の、対策の総合的な結論であって、税における特例があったから、これだけの結論になったのだということは、なかなか説明しがたいものである。きのうもこの効果について疑問を出しまして、政府では一体効果がどういうふうに具体的に現われているかということを調査したことがあるだろうか調べてみましたところが、今日までにおきましては、委員会に対してもそれに適当な資料の提出もないということになりますと、今日まで七十数億円、今度入れれば百億円に近い金額輸出振興のために使われていながら、その効果がどういうふうになったかという確認がないということになれば、ゆゆしき問題であると私は思うのであります。少くとも今日まで、三千に近い商社があるといわれますが、そのうち大どころでは五億円程度の利潤があって、大体その商社では、この税法上の恩典で二千万円から三千万円の恩典を受けていると仮定しますならば、政府はその二千万円なり三千万円の金が輸出振興のためにどう使われているだろうかということを監督し、調査する義務があるのじゃないか。大蔵省がいろいろな補助金を与え、ある特定の団体に対して二千万円あるいは三千万円の金を使ったならば、それがどういうふうに使われているか報告をさせることさえやっているでしょう。ところがこの輸出振興という名目に隠れてしまって、二千万円ないし三千万円の恩典を与えながら、それがどうなっているかという確認もないということは、国民の血税を使うのに、まことに無責任すぎることに私はなると思う。そこできのうも百億に近い税の恩典を与えれば与えるように、その輸出商社政府に対してこういうようなことをしましたという報告をするくらいの義務があるのじゃないか。政府でも、たとえば幾つかの商社について専門的に調べて、これこれの効果がありましたと具体的数字をあげて、それが品質の面で、あるいは輸出振興の点で、あるいは企業内留保の点でこうなっているということを提出し、われわれに説明をできなきゃうそだ、こういうふうに思うのであります。この点について私は大蔵大臣は、今回この二十四億円の、当然入るべき税を入らないでもいいことにした以上は、相当の覚悟があると思う。今後これらの輸出商社がどういうふうにこの国民の税の負担の不公平をやり、特定恩典を受けて、どれだけのことをしたかという報告をとるとか、あるいは政府が責任をもって、こういうふうになっていますということの報告をわれわれにできる仕事をするとか、何かそんなようなことをしてもらわない限りは納得できないのじゃないか。大蔵大臣一つこの点についての今後の対策をお聞きしたいと思う。
  12. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 私も同じ考えを実は持っておるのであります。持っておって、それが正しいと思います。が、しかし商取引のことでありますから、またそのやり方があまり煩瑣になるとかすると、かえってこういう制度を設けて、その効果がない。こういうふうな、また角をためて牛を殺すということになるようにならぬとも言えぬ。それでその辺は慎重に、私はどういうふうにしたらいいか、これは業者とも十分相談もし、また通産省等において十分協力を願うことにすればいいと思うのですが、ただ言い得ることは、今後私は、この輸出所得特別控除でありますが、この額の相当部分企業内部に保留させるような行政措置をとることは適当であろう、かようにまあ考えております。と申しますのは、こういうことをやるのも、日本商社が非常に力の強いもので、十分外国のいろいろな商社に対して対抗ができていくというようなことであれば、私はこういう措置は必要ないと思うのですが、何分にも戦後における日本商社は力が弱い。それでまあこういうふうなことも考えておるというのでありますから、今申しましたような企業内部に保留させるという行政措置は適当であろう、私はそれほど別に何も商取引に差しさわりを与えるということはない。これは私今申し上げていいと思います。
  13. 平林剛

    平林剛君 企業内に保留をさせる行政措置をとるということは、まあどういうことかわかりませんけれども、ただ一片の通牒を出して、そしてこの程度企業内に留保すべきだ、税で二千万円の恩典を与えたから、二千万円、企業内に留保するというようなことは、そういうことは申し上げませんけれども、少くともある程度企業内に留保するとか、あるいは企業内に留保させるだけでなくて、それがまっすぐ輸出振興にいくものでなければ意味がないことになります。そのためにこれが提案をされてきているのでありますから、やはりその確認も必要だ。単なる行政措置、これがどういうものであるか、私はわかりませんけれども少くとも報告をとるくらいのことをしなければ、通牒を出しっぱなしになってしまっては、確認ができないのじゃないのですか。私はやはりこの点については報告させるというところまでいかないというと、百億円の金が生きているのか死んでいるのか、単なる業者のもうけだけになっているのか、そうでないかということは、だれもわからないということになりますので、今の行政措置ということは、報告という義務、そういうことも含めてのお話でしょうか。それを一つ明らかにしておいていただきたい。
  14. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 今申しましたように、私は考え方自体は、むろんこういうふうな恩典を与えるのですから、報告をとるとか、いろいろそれはいいと思います。考え方はいいと思いますが、ただ問題は、あまりそういうことをやることによって、非常に煩瑣に事がなって、かえって輸出意欲を落すというようなことがあってもいけない。またこのことはひとりこの輸出ばかりに限りません。そういうふうなことによって、すべてのものについてやはり同様な措置をとる必要も起ってくる。まあいろいろありますので、御意見は私原則的に異論はないのですが、そういう実際的な影響をよく考え検討を加えることにいたしたいと思います。
  15. 平林剛

    平林剛君 どうも大蔵大臣は、今の御説明でありますと、まあ原則的には私の意見に賛成をしてくれているようでありますが、今のお答えは、まるで輸出振興というものは気分でやっているような感じになりますが、要するに、そういう報告を求めることが仕事が煩瑣になる。そういうことの結果、輸出意欲というものが消えるなんてことになれば、まるで輸出業者恩典だけを受けて、それについての、恩典に対する、生かしたか殺したかということは業者の勝手である。そんなことをやかましく言うならば、輸出意欲がなくなってしまうぞということに言われて、それを認めているような大臣の言明ですね。これはやはり根本的に誤まりがあるのではないだろうか。二千万なり、三千万なりの恩典を受けた以上は、国策として全般国民がそれをこらえているのですから、特定人たちに対して百億円に近い税の軽減をはかることを、税負担の不公平だと知りながら、国策のためにこらえているのだから、気分でもって、それをやればうるさいことになるだろうなんてことで、理屈に合っていることをやらないということはこれはむしろ怠慢だと私は思うのです。
  16. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) これはまあ大蔵大臣としてはかたくかたくいくことに必ずしも異論はないのでありますが、しかし通産行政からみますと、やはりそこに実際の商売でありますから、いろいろ問題がおありになるだろうと私は思っているので、これは通産大臣意見も十分聞かないといかないという私の考え方であります。
  17. 平林剛

    平林剛君 それじゃ通産大臣がお見えになったらまたあとで。他の委員からもお尋ねがあるものだと思いますので、一応留保しておきます。  そこで第三にお聞きしたいことは、この輸出所得特例措置は、政府提案説明によりますというと、臨時輸出振興措置説明がされておりますが、これにはうそはないのでしょうね。うそはないということはおかしいけれども臨時輸出振興措置として額面通り承わっていいんでしょうね。私はなぜこんなことを聞くかというと、往々こういう場合の特例というものは、その期限がきますというと、輸出振興という名目にとらわれて、それに負けてしまって、それが大義名分があるものだから、往々にして既得権的なものになってしまう。期限が参りましてさあこれは期限付き法律であったから、今度からなくなるのだということになると、いや、それでは輸出振興がとまる、輸出意欲がなくなると言って、またそこから文句が出て参りますというと、今日までの状態では、それに押されて結局それが恒久的な措置になっていってしまう。そうしていつも税の特例措置にばかり頼った輸出振興になっている、こういう傾向があると思うのであります。今日その効果が明瞭につかむことができない、また将来において政府の研究の結果、ああこれは何と言っても偉大なる効果があったということになれば、これはまた別でありますけれども、今日の状態においては、的確な確証もない、なかなか今後においても私はつかむことがむずかしいのではないかというようなことになりますというと、今後国策の中心になるだけに、政府はこういうことだけに頼るような政策を持っておったのではどうも困る。そこでそのためにも、やはりこの輸出所得特例措置というものは、やはり額面通り臨時輸出振興措置として、それまでに一つ本格的な根本となる問題について考えてもらう、期限がきたときにはこれを廃止する、本日ここに説明されてありますように、あくまで臨時輸出振興措置であるということとしたいわけであります。きのうも事務当局にそのことを聞きましたところが、またその期限がきたときには、まあ趨勢としてはまた一年なり二年延期になるかもしれませんねなんということを言うものだから、そういうようなことではどうも国会に対してうそを言って、そうして通しておいて、またあとでもって引き延ばしをやるということになるということでけしからぬ話だと指摘をしておいたのでありますが、大蔵大臣としては提案理由説明通り臨時輸出振興措置であるというふうにお話し願えると思うのでありますが、この点はいかがでしょうか。もしそうだとするならば、昭和三十四年十二月三十一日期限がきたときに、輸出業者の方から、これをやられたのでは、これをもし廃止されたのでは輸出意欲がなくなりますと、また延ばして下さいなんと言われないようにするためにも、この切りかえのときの何かの方法を考えておかなければならない、そういう考えが、対策がないというと、今日は臨時輸出振興措置として国会にお願いをしておいて、期限がくるというと、もうそんなことを忘れてしまって、輸出振興という名目によったまま、さらにそのまま続けてもらいたいなんということになるおそれがあります。もし、これは臨時輸出振興措置であると、こういうことであるならば、その切りかえのときにはどういうことを考えているかということがなければうそだと私は思うのであります。いかがでしよう。
  18. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) むろんこれは臨時措置でありまして、これはもう申すまでもありません。そして政府はむろんこういうふうな特別の措置を好むものではありません。しかし一つ国家目的を達するために、今日の場合において事情やむを得ず適切であると、こう考えるから出すのであります。同時にまた日本貿易商社にしても、こういう措置にたよるというような、そんなにいくじのないことじゃ絶対にないと思います。これは私事情もよく承知しておりますが、そういうふうなことではとても今日まで日本貿易がここまで伸びるということもあり得ないので、業者もこういう措置はある程度恥かしく思っておると思うのであります。ただしかし今日事情やむを得ないから、大いにやるために一つお助けを願いたい、こういうことなんですから、この期間の間、業者もそういう意識を持ってやれば、もう期限がくれば十分ひとり立ちができる、こういうふうに進んでいくことを確信いたしております。
  19. 原純夫

    政府委員原純夫君) その点につきましては昨日のお答えが私非常に不十分であったというのを発見して、昨日訂正と申しますか、敷衍して申し上げたいと思います。お答え申し上げましたときに、今回の臨時措置による増加の分と、既存の分と両方合せて実は私感じを申し上げたものですから、ああいうお答えになった、つまり全部を三十四年末に切ってしまうということにつきましては、相当激しい議論が出るのじゃないかという意味で申し上げたのであります。割増しの問題や、先日来申し上げておりますように、非常な緊急な必要に応じて、いわばたとえばカンフルというようなつもりでやっておるものでありますから、そういう際において、最も臨時的なものの分類に属するものとして考える、その点をあやを分けてお答え申し上げました。
  20. 平林剛

    平林剛君 原局長のきのうの発言の中で、もう一つ私の納得のしがたいものがある。それは、この恩典を受けているところの商社の数と、おもなるものの名称ですね、提示してもらいたいと言ったが、その名称を明らかにすることがいろいろ差しつかえがあるような言明がありましたが、しかもそのときはAとかBでもいいと言いましたけれども、やはり一つの会社に二千万なり三千万なりの恩典を受ける、受けているということですね。それは国策として受けているのであり、当然国民の前に明らかにして、われわれは皆さんの税負担の中からこれこれの恩典を受けて、国策として輸出振興のために努力をしているということは、これは一般の所得を隠すことや、あるいは所得調べをするのと違って、やはりはっきりさしていいのじゃないか、どこの会社ではどれだけの恩典を受けている、どこの会社ではどうだということをあいまいにする必要はない。先ほど申し上げたように、むしろこれは政府に対してどういう経過になりましたという報告をするくらいの義務がなければならぬというくらいのものでありますから、その点についてもおそらくできるし、しなければならぬ性質のものだと思いますが、この点今お答えがなくてもいいのですが、一つ研究されまして、出せるものなら当然出してもらいたい。きのうのにつけ加えて要求しておきます。  で、大蔵大臣に第四の質問があるわけでありますが、この輸出振興、私は今のお答えのように、あくまで臨時輸出振興措置としてこの法律案は承知をいたしたい、こう思っております。しかしこの輸出振興措置が八月から実施されているということはどうも理解しがたい。今日十一月、臨時国会法律案提出をされておる。われわれは政府からの説明を聞いて、なるほど現在の段階でいろいろ議論はあるけれども臨時輸出振興措置として認めようとする場合に、その法律が成立をしてから実施をするというのが建前でなければならぬ。しかるにこれは八月から実施をするとなっておる。きのうもこの点を議論をしたのでありますけれども政府事務当局説明では、例の国際収支の改善をする緊急対策のときに、その一環としてこれが考えられた、そういう説明がございまして、八月実施ということにお願いをしておるのだという説明は一応あったのでありますが、どうも八月からするという根拠はそれだけでは理解しがたいものがあります。大蔵大臣から、なぜ八月から実施をすることになったのか、十一月に実施をするということであればどういう影響があるのか、この点について大臣のお考え一つお聞かせを願いたいと思います。
  21. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) この措置輸出振興に役立つ、こういうふうに考えましたので、やはりそうなればなるべく早くからこういう輸出振興措置をした方がよかろう、こういう見地から八月ということになったと私は考えております。
  22. 平林剛

    平林剛君 大体その国際収支の悪化を来たしたというのは、これはだれの責任かというのは、今度の議会でもだいぶ議論をせられたところであります。私どもの見解に従えば、政府の積極政策の破綻から国際収支の悪化を来たして、国民から激しい追及を受けておる、そうして政府はそのとき、やむを得ない窮余の策として輸出振興措置として二十四億円の減収を覚悟してこの制度考えられたものと思うのであります。すなわち政府の財政政策の失敗から、国民は、当然国庫の収入になるべき二十四億円を犠牲にしておるわけです。これは政府は二十四億円の減収を来たしたという意味でも重大な責任がある、こういうことになると思うのであります。しかもそればかりではありません。今日まで税の法律の中で、さかのぼって税金をとらなくなる、しかもこれは十月すでに申告をしてあるのであるから、いろいろな手続をすれば税金の還付も受けることができる、至れり尽せりになっております。ところが今日までの税法のもとでは、こういうのは非常な悪例になるんじゃないだろうか。今後も同じような問題が起きて、そうしてこういう措置をとられるということになりますというと、これはしめしがつかなくなるんじゃないですか。税法上のさかのぼって課税をしないなんていう建前をこの機会に許してしまうということになれば、大蔵大臣今後一体どういうお考え税法の取扱いをしていくおつもりですか。私はこれは非常な悪例になってしまうというおそれを感じておるのであります。で今日まで——青木先生もここにおられるし、大蔵委員会では税の取扱いについてはきわめて厳格であって、そして税金についてはこれは国民義務として、あるいは国民がそういう気持でもって国家の経営をするという建前にならなければならぬことを、やたらさかのぼっていいんだなんていうことになり、万人納得のできるところの確証があれば、これはまた別でありますけれども、今日われわれ指摘しておりますように、かなりあいまいな点があって、ただ抽象的な輸出振興というだけで、いわんやこれが出されたのは政府の失政の責任もあるということになりますと、そのために税法上の悪例を残すということは、これは二十四億や輸出振興という名目だけに限らない、もっと大事なものもあるんじゃないだろうか、大蔵大臣としてはその責任はよほど痛感してもらわなければならぬと思うんです。同時に国会に対しても大へん失礼な話だと思うんですね。政府が自分で窮余の一策としておやりになったことをそのまま議会に対しても押しつける、われわれはその政府措置をそのまま承認せざるを得ないというようなことは、これはまことにだらしがなさ過ぎることです。国会に対してもですね、自分のおやりになったことをそのまま押しつけるということは、これはけしからぬ話だと私は思うのであります。以上の点について一つ考えを聞きたいと思います。
  23. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) ありがたい御注意でありまして、大蔵大臣といたしましてはむろん御趣旨の通りであります。こういうふうな組織、いわんやその効力が遡及するというようなことを軽々にいたすべきことでないことは、これは言うまでもありません。私といたしましては、ただいまの御意見を常に服膺いたしまして決してそういうことがみだりにならないように、ほんとうに国策遂行のためにやむを得ない、こういうときに限るようにいたしたいと心得ています。
  24. 豊田雅孝

    委員長豊田雅孝君) 平林君、ちょっと申し上げますが、通産大臣は他の関係でだいぶ急いでおられるようでありますので、通産大臣に対する質疑をなるべくこの際まとめて各委員ともお願いをしたらと思います。
  25. 平林剛

    平林剛君 まあこれはいずれ各議院で相談をして、改めることはできないわけはないわけでありますから、最後にもう一つだけ大蔵大臣にお尋ねをいたしまして、私の質問を終ります。  法律提案の形式なんであります。私はこの法律案内容を見ますというと、租税特別措置法等の一部を改正する法律案では、二つの内容が盛られておる。一つ輸出振興措置であり、一つ国民貯蓄組会法の一部改正である。この二つの法律内容一つ法律にまとめたということは非常に矛盾があると思うのであります。今度の議会で法律案提出をしたときは一つにまとめてありますが、先回の国会では、租税特別措置法と、それからやはり国民貯蓄組合法の一部改正の法律案議論をせられまして、提案をするときは二つの法律案提出をせられました。きのうも少し意地悪な質問をしたのであります。今度一つにまとめた理由と、この間二つにした理由と説明をして下さいと言ったら、なかなか苦しい答弁をなさっておる。そうしてこれは大蔵大臣が、いや政府が財政経済方針という大綱で大体同じ線であるからまとめて提案をしたのだと、こういうことを言われましたけれども、そう言えば大蔵大臣の財政——施政方針演説の中には二つの法律案説明があったから、財政演説の中には一つになっているけれども法律案には一つにする必要はない。やはりこれは二つの法律案として議会に提出をするのがほんとうではないだろうか。こういう提出の仕方については私どもはしばしば疑問を持っておるわけです。たとえば今日は原則的に承認しようと思っているから無難でありますけれども、もしかりに議員の中に国民貯蓄組合法の方は賛成であって、輸出振興措置の方は反対であるということになったときにはどういうふうにするのか。大体議員ができるだけ正しい意見の反映をできるような法律案提出の仕方をすべきであるにもかかわらず、判断のしにくいような形でこう提案をされる。これは私は今日提案をされた租税特別措置法の中に弱味があるのじゃないだろうか、弱味があるからどうも反対できないような形式で提案をしておけば、まあ何とかここのところは切り離すことができないとすれば賛成してもらえるだろうなんという、その政治的なかけ引きのために一つにしたような印象を受けるわけです。で、しばしば御注意を申し上げておるわけであります。やはりこういう内容をもったものであるとするすならば二つに分けて提出をして下さいと言ったら、今後そういうふうにしますという言明がありながら、またこういうふうにする。この点はまことに私どもは遺憾であります。大蔵大臣はこの二つの内容をもった法律一つにしろというふうに御指示なさったのですか。それとも別な法律技術からおやりになったのですか。一つ提案の最高責任者として、あなたの御指示でこういうことをやられたのか。もしそうだとすればはなはだけしからぬから、あなたの考え一つ聞いておきたいのです。
  26. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) このことはただいま何か特別なるこう作意をしてやったのじゃないかというようなことですが、これは実は私、今お話を聞いて初めて気がついたくらいで、そんなことは毛頭考えておりません。ただ事柄が同じ方向にありましてともに租税優遇措置でありましたから、それで私このことについては事務当局の一番いい方法でやれということを言うておりましたが、そういうふうに同じ方向で同じ優遇措置だからまあよかろうということで——私むろん出しました責任はこれは私がむろん持っております。
  27. 平林剛

    平林剛君 まことに事務当局というのはけしからぬと思います。私は大蔵大臣の命令があったからやむを得ずこういう提案の仕方をしたのかと思って善意に解釈しておったのでありますけれども事務当局は大蔵委員会で要望されたことを何と心得ている。今度からこういうことをしないようにしてもらいたいということを要望しておきます。
  28. 栗山良夫

    栗山良夫君 同僚議員からだいぶ貿易のことにつきまして熱心な御質問がありましたが、私もおそらく政府も御異存はなかろうと思いますが、もうこの辺で日本輸出入をあわせて貿易政策というものの基本をもう少し具体的に明確にして、政府国会も、あるいはこれに関係する業者も生産者も一体になって、貿易の促進、国際収支のバランスをとりながら日本の経済の一意拡張に進んでいく、そういう態勢を私は作るべきときが来ているのではないかと、こう考えます。そこで国際収支のバランスがくずれて、政府としてはだいぶあわてふためかれた傾向がありますが、とにもかくにも熱心に外貨の赤字解消のために、この春以来努力をしておられるわけですから、わが党の要請いたしました臨時国会には相当具体的な施策というものがお聞かせ願えると、こういう工合に私ども期待しておりました。ところが、現実にお聞きをいたしてみまするというと、私どもが傾聴しなければならぬような内容というものがほとんどありません。今の税の若干の措置その他一、二ありまするが、突っ込んだものはありません。私どもがほんとうにこうした方がよかろうと考えておりまするような意味の施策というものがないわけであります。そこで、幸いに、大蔵大臣及び当面の責任者であられる通商産業大臣がお見えになっておりますから、御両所から、政府はほんとうにお考えになっていないのか、あるいは考えておいでになって、われわれにまだお聞かせ願っていないのか、その点をひとつ少し明らかにしておきたい、こう考えるわけであります。  その具体的な問題に入りまする前に、貿易に対する腹がまえと申しますか、そういうものについて、ちょっと二、三お聞きしたいと思います。まず第一に、先ほど大蔵大臣は、平林君の質問に答えられた中で、政府としてはいろいろ考えている向きもあるんだが、しかし事、商業に関することであるので、その意欲を減退させるようなことが起きては、結果において貿易を阻害することになるので、一定の限度がある、こういう意味のことをおっしゃいました。私もごもっともなことだとは思いまするが、しかしこれは非常に重要なことであって、政府も、われわれも、また業者も、日本が生きていきますためには、何としても貿易をやる以外には道がないという、この結論を達成しようとしていこうと思うならば、少くとも貿易に関係する仕事にタッチする者は、官でありましょうとも民でありましょうとも、すべてがやはり公益に奉仕するという精神を貫いていかなければ、私はその目的を達しないと思うのであります。そういう公益に奉仕するというふうな意味の精神というものを、もう少し涵養していく、そういう努力を私は全力をあげてしなけりゃならぬと思います。具体的にそういう努力は非常に欠けておるように私は思うんです。また、事実そういう精神が業界にもないようであります。これをする必要があるかどうか、この点について、両大臣から一つ考えをまず伺いたい。
  29. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 私は、貿易については、国のためといいますか、公けの点と、それから、業者業者としてやはり利益をあげなくてはならない、いわゆるもうけということも当然考える、これが仕事を大いに振興させる原因にもなるのでありますが、これが両立していく、言いかえれば、業者が大いに輸出取扱いをふやしていくということは、業者に利益をもたらし、それはまた国に利益をもたらす、これは私は良好と思います。かように考えております。その点については、業者もそのつもりでやっておる、私はさように考えております。
  30. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 輸出につきましては、国民全体が輸出優先主義という気持を持っていかなければならぬと思います。それにつきましては、やはり国内消費をできるだけしんぼうして貯蓄をして、一品でも外国に輸出するという国民運動を起さなけりゃならねと思います。その点につきましては、商工会議所も非常に共鳴いたしておりまして、今後国民運動の展開をやろうというふうに、来年度の予算等につきましても考えております。さらに、今度業者の問題でありますが、通産省におきましては、輸出会議というのを産業別にもうしょっちゅうやっております。そして、輸出目標をきめましてそしてその責任体制を見ていこう。また、その最高方針としましては、最高輸出会議というのがあるのであります。従来の最高輸出会議には、日銀の総裁が入っておりますが、ほとんど閣僚だけの会議であります。今回、私その構想を全然やめまして、各産業別の輸出会議におきましても、民間の人に会長になってもらって、そうしてその会長が集まりまして、また閣僚全体で、最高輸出会議を、実は十五日にその最高輸出会議の日取りをきめておったのであります。そうして民間の人に責任体制をもってもらって、輸出に対するいろいろな隘路とか、意見交換もやり、また今後の指導という面につきましても種々決定するというような意味合で、従来の構想を変えまして責任を民間の人に十分もってもらうという体制に変えて、輸出会議をやるというようにいたしておるわけであります。
  31. 栗山良夫

    栗山良夫君 私が御質問申しあげました趣旨は、今通商産業大臣お答えいただいたような、そういう輸出入の貿易の事務的処理の問題ではないのであります。大蔵大臣にややお答えいただきましたが、私は極端に申しますならば、少くとも輸出あるいは公益的な輸入というような仕事に従事する者については、ほんとうに公益の精神に徹して行われ、もちろん私は利潤を上げてはいけないということは申しておりません。これは大蔵大臣がおっしゃる通りでありまして、当然公正なる報酬というものが要求せられるのは当然でありましょう。その中で、公益に奉仕するという精神が徹底して貫いていかれるならば、私は輸出入については、カットから物言いがつかない範囲内において、最大限の保護助成政策をとっていいと思う。私はそうすべきだと思うのでありますけれども、遺憾ながらそういう状態にないものですから、今のようなことをお尋ねをいたしたわけであります。そういう禅問答のようなことをいたしておりましてもよくわかりませんので、もう少し突っ込んでお聞きをいたします。  まず第一に、輸入関係のことでありまするが、今輸出は、大体当初の予想通りに進んでいるということでありますので、これをさらに飛躍させるためには、相当の努力が要るでありましよう。従来の態度ではいかないことはわかりますから、これはあとでお尋ねをいたすといたしまして、輸入の面について二、三お尋ねしたい。輸入の場合に、これもちょっと禅問答めいてくるかもしれませんが、輸入の場合に一番注意をしなければならぬことは、最小の外貨で最大の経済価値を輸入するということが、私は大原則でなければならぬと思うのです。ところが、そういう大きな輸入業務に携わる関係において、少し放慢政策というか、浪費政策というか、そういうものがありはしないか、この点を政府は十分チェックしてなさっておるかどうか、これをまず伺いたい。と申しますることは、なぜ私はそういう疑問をもっているかと申しますというと、最近巷間伝えられるところによりますというと、貿易業者は、輸出に懸命なる努力を払うより、輸入に狂奔した方が、利益がよけいあるのだ、こういうことが言われていることを聞いております。また事実私どものところへ、最近外部からいろいろなパンフレットが参りますが、そのパンフレットによりますというと、輸入の場合に外貨を使うのは、あまりにも営利本位、あまりにも金もうけ本位で狂奔いたしましたために、それほどまでに外貨を使わなくても取得でき得るような物資を、不当な価格で輸入をしておる、そういうような実績があるので、日本貿易政策のために警告を発するというような、そういう。パンフレットも参っております。きょう私持っておりますがおそらく大蔵省へも通産省へもそういうものは行っていると思いますから、百も御承知だと思います。そういうことについて、輸入貿易というものについてチェックをせられたことがあるか、これに対してどういう対策をおとりになろうとしておるか、この点についてお伺いしたい。そういうことは全然懸念がないとお考えになりますか、懸念がある、あるならばどうする、その点をお伺いしたい。
  32. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 輸入につきましては、御承知のように外貨の割当等をやっておりまして、不要不急のものにはやらぬというような態度でやっておりますことは御承知の通りであります。外貨予算につきましても、物価の値上りを来たさない範囲内におきまして極力押えてやることは御承知の通りであります。ただ各国との協定等におきまして輸入をしないと輸出ができないというような場合があります、バナナ等におきましては、台湾のバナナを入れなければ輸出ができないというようなこと、あるいはまた優先外貨、特別外貨の使用につきましては、ある程度もうかるといいますか、われわれとして不要不急と考えられても使用させるというような面も出て参るのでありますけれども、そういうものにつきましても、われわれとしては極力押えていくという方針をとって参りましたし、とるつもりでおります。先ほどのお話の通り輸出は非常に努力をしなければならぬ、輸入国内におりまして、楽にもうかるといいますが、輸出のような努力が必要でない。従って輸出振興につきましては、ただいま御審議を願っておるような輸出所得控除とか、税法上の特典、あるいはまた市場開拓その他につきまして、今後われわれとしては極力国が予算を取り、輸銀その他を通じまして今後力を入れていかなければならない。従来も入れては参りましたが、さらに特段の努力をして進めていかなければならぬ、かように考えておるわけであります。
  33. 栗山良夫

    栗山良夫君 どうも私のお尋ねしておるところの真意をおわかり願えないように思います。今の通産大臣の御答弁で、不要不急のものは入れないというようなことをおっしゃいましたが、これは当り前のことであります。それからバナナ等の場合のように優先外貨の問題もあれば、貿易上若干不必要なものも入れなければならぬ、こんなことは私は百も承知しております。そういうことではない。私の伺っておるのは、同じ必要なものを入れる場合においても貿易の精神というものが貫かれていないために、金もうけ本位に流れ過ぎて、そうして最小の外貨で最大の経済価値を日本に持ってこられるものが、そういう工合になっていないのじゃないか、そこをお気づきになっていないかということをお尋ねしておるわけです。
  34. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 私はどうも御質問の趣旨がはっきりしないのですが、現在外貨を割当てておりますのは、極力緊要度の高いものからいたしまして、それ以外にただもうかるというだけで入れるなり、また入れさせておるということはないのであります。
  35. 栗山良夫

    栗山良夫君 そういうことを言っているのではない。急に必要があって、急に入れなければならないものでも、それをほんとうに自分の家庭のために最大に値切って、そうしてぎりぎり決着の値段で輸入するというような、われわれが家庭の品物を商店で買ってくるような、そういう態度で輸入ができてないのじゃないか、個人々々のポケットのことを考えて、外貨の浪費というものは行われていないか、そういう事実はないかとお尋ねしておるわけです。
  36. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) われわれとしては外貨の相場なりその他を考えまして、ぎりぎり決着の最小限度の外貨を割当てる、これは従来から変らぬ方針であります。甘い査定で外貨を割当てるというようなことは考えておりません。
  37. 栗山良夫

    栗山良夫君 そうしますと、あなたそうおっしゃいますが、現にそういうことが繊維局の行政の中にあって、繊維局が手を打たれたことは御存じでありますか、そういうでたらめな答弁では困るのですよ、こちらは真剣に聞いているのですから。
  38. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 繊維局でそういうことがあったことを私は問いておりません。
  39. 栗山良夫

    栗山良夫君 この問題は保留します。私はとにかく貿易の問題を真剣に聞いているのですよ。この法案を通すために聞いておるのでもあるけれども、もう少し真剣な立場で私は聞いているのです。通産大臣、そういう態度で御答弁なろうとは……、私も幾らか勉強してきているのですよ。あなたのお答えになったくらいのことなら私も答弁します。そういう意味ではないのです。それから第二に伺います。私は日本の将来の輸入の問題を考えて非常に頭が痛く思っておりますることは、食糧の輸入であるとか繊維品の輸入であるとか、日本人の生活必需品の問題につきましては、幸いに豊年が続いたり、あるいは合成繊維の発達等によりまして、消費人口がふえているにもかかわらず、一応頭打ちをしている。この点は私は大へんけっこうなことだと思っております。しかし一番問題なのは、やはり何と申しましても、エネルギー資源の輸入は大へんなものであります。経済報告書を見ましても、今までは繊維が輸入品のトップを占めておりましたのが、今度は逆転しまして石油がトップになっている。輸入額の最高は石油です。これに石炭を入れればもっとになりましょう。こういうことでありましてこの経済企画庁の報告によりましても、昭和五十年になればエネルギーの輸入は二十二億ドルぐらいになるだろう、こう言われております。そういう膨大なエネルギーを輸入しなければならないという時代になれば、これはよほどな輸出をやったところで、私は日本経済は追っつかないと思う。そこでそういうエネルギーの自給自足態勢というものについてある意味のこれは輸入抑制になりますが、通産省としてどういうお考えを持っているか。まず電力の問題につきましては、これも私はよく承知いたしております。最近は原子力発電会社もいよいよ発足をいたしまして、そういう意味でも電力エネルギーの問題においては考えられております。しかし石油と石炭の問題は別でありますが、一つの例としてお尋ねをいたしますが、石炭の場合は、昭和五十年度には七千二百万トンの出炭計画というものを通産省はお持ちになって、このために縦坑の開発ということを鋭意おやりになろうとしております。しかし私は石炭の鉱山地帯を若干知っておりますが、一番問題になるのは温存鉱区がたくさんございまして、全然手をつけていない鉱区というものがある。これは北海道に特にありますが、ある。九州の方は群小鉱区が入り乱れておって、せっかく縦坑を膨大な投下資本をもって開発いたしましても、百パーセントの効率をあげるということができない状態である。従って当然ここに石炭鉱区の調整、縦坑を中心にしての調整ということをやらなければ昭和五十年七千二百万トンという出炭計画、さらにエネルギーの輸入抑制のためにも私は役立たなくなるのじゃないかという工合に考えて、これも真剣に考えておりますが、これについて通商産業大臣はどういうお考えをお持ちになっているか、これを伺いたい。
  40. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 電力その他のエネルギー資源……(栗山良夫君「電力はいいです」と述ぶ)電力につきましては省略いたします。石炭の問題だけに限って……。ただいまお話のように七千二百万トンを目標にしております。それにつきましては、現有の炭鉱につきまして極力合理化を促進していくということも必要であります。しかし仰せの通り新炭田の開発ということも考えていかなければなりません。幸いにフランスから調査団も参りまして、その報告も間もなくくると思います。そういうような機会でありますので、実際問題としまして、民間の業者の方も新炭田の開発ということについて非常に気運が盛り上ってきております。この機会を私はぜひつかまえて今後の開発をやっていかなければならぬ。それにつきましては長期の財政資金というような問題につきましても、十分心配をしていかなければなりません。またただいまお話のように鉱区の調整というようなことにつきましても特段の措置をとっていかなければならぬというふうに考えているのであります。ただいまのいろいろ鉱業権に関する措置だけでも相当やり得る余地はありますが、さらに検討し、新炭田の開発のしやすいようにということをただいま鋭意検討いたしております。
  41. 栗山良夫

    栗山良夫君 そこで、大体考えておるというお話でありますから、鉱区調整、これは縦坑の百パーセント能率稼働の場合は、金を融資するとかしないとかいう問題じゃない。融資しなければ縦坑はできませんから、融資をして、縦坑ができたときに、その縦坑に百パーセントの稼働をさせるためには、鉱区に手をつけない限りはできないわけです。その鉱区に手をつける用意ありやいなやというお尋ねをいたしましたところ、考えておるというお話でありますが、どの程度にお考えになっておるか、強権発動によって鉱区の調整をやるという御意思をお持ちになっておるか、あるいは業者の自主的な調整に待つというお考えであるか、その辺の構想がどの程度具体的しておるか、あるいは石炭の合理化法がありますが、こういうものもいずれは改訂をしなければならぬ時期に私はきておると思いますが、そういうものとの関連において、どの程度真剣にお考えになっておるか、これを伺いたいと思います。
  42. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) ただいまの現行法におきましても、鉱区の交換あるいは譲渡につきましては、通産局長が勧告をすることができるというふうになっておるのであります。それから隣接しました鉱区につきまして、いわゆる鉱区の増減につきましては勧告をすることもできますし、また業者同士が協議を求めるというようなこともできるわけでありまして、協議が整わぬときあるいは協議ができないとき、これはまあ政府が決定することができるわけでありますが、これらの活用もさることでありますが、さらに足りない点がありはしないかというようなことを検討いたしておるものであります。
  43. 栗山良夫

    栗山良夫君 私がお尋ねしておるのは、やらなければならぬということはわかりましたから、そこでそれを政府が石炭合理化法の改正等をもって法律的に乗り出されるか、あるいは新しい立法措置を講じて鉱区の調整をおやりになる意思があるか、その辺まで要するにこれは法制化しなければできないと思いますが、そこまでのお考えをお持ちになっておるかどうかということなんです。
  44. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 要すれば法律も改正し、また資金の問題もありますので、あらゆる面で検討いたしております。
  45. 栗山良夫

    栗山良夫君 これはいつごろまでに用意せられるわけですか。次の通常国会に間に合いますか。
  46. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) できれば通常国会に間に合せたいというつもりでおります。
  47. 栗山良夫

    栗山良夫君 それから次に、第二としまして輸入の問題で私は大きな意味考えておりますことは、日本の技術の自主性と申しますか、これは大蔵大臣にぜひお聞きを願っておきたいと思いますが、技術の革新ということをどういう工合にお考えになっておるか。最近の海外の技術は日本は戦争のためにギャップができまして、十年間というものは百一本の産業界が世界の技術水準に追いつくために血みどろの努力をせられましたことにつきましては、私は敬意を表します。そうして私どもも外国をずっと一回り回りまして、機会の許す限り各産業界の設備を見て参りましたが、日本の産業界そのものはそんなに私は劣っていないという自信を深めて参りました。しかしながらその間にどういうことがあるかと申しますと、ただいま日本は、これは一種の輸入でありますが、外国技術のための使用料を年に一億ドルくらい払っておる。それから技術導入のための機械の輸入が大体年に一億ドルくらいあります。合計三億ドルくらいあるわけであります。しかもこういうことが現在ストップの傾向を持っておりません。ますます外国の技術に飛びつき、外国の技術をそのまま金銭を対象として、なまで輸入をしようという傾向が強まっております。これは日本の産業界のために私は非常に大きな問題だと思います。そこで何とかして日本の技術というものが世界的なレベルに日本人の力で維持していけるような工合にしなきゃならない。これは政府の大きな私は責任だと思います。そういうことを真剣にこのごろ考えておる。それでたとえて申しますと、なぜ外国がそういうような新しい技術を次々と育てていくことができるかと申しますと、アメリカ等におきましては、大体売り上げの三%から五%くらいの研究費というものを出しておる。自分の工場の研究室にそれだけの金を投入して、何らか社会に貢献し得る新しい発明はないものかということで狂奔して下るわけです。その成果が次々この技術の革新となり、その技術革新のジュースを日本がどんどん金を出して輸入しておるというのが今日の現状であります。そこでちょっと試算をしてみますと、ただいま日本では一番大きな会社である日立製作所——総合重工業といわれております日立製作所の売り上げは年に大体六百億円であります。そうすると三%として十八億円、五%とすれば三十億円です。それだけの金をアメリカは自分の工場でどんどん研究に使っておる。日立がそれだけ使っておるかといいますれば、おそらく私は実際調べておりませんが、使っていないと思います。十八億とか三十億という金は使っていない。日立すら使っていなければ、他の日本の産業会社というのは小さいのでありますから、そういう小さな会社が自力で世界的なレベルに達するような技術の研究をするというような余地はないと思う。そこで何ととてもこれをやるためには基礎研究から、応用研究から、実用化まで一貫して世界的な新しい技術、また国民生活の増進に非常に重要な技術、あるいは輸出のためにはどうしてもやらなければならぬ技術、そういうものについては相当な金をかけて、そうして国家が世界各国におくれをとらぬような研究部門というものを私は開く必要がある、こういう工合に考えるわけです。これはなまやさしい金ではできないと思います。聞くところによりますというと、今度新技術開発機関法とかいうのを作って十億円金を出して毎年七千万円ずつ補助金を出して、それでこの目的を果そうということでありますが、そんな小さな規模で、あれだけ膨大な金を使って研究しておる海外の技術を追い越すなんということはとうてい夢にも考えられない。これは将来長い間にわたって、日本輸入を抑制し、将来日本の産業界にたくさんな労働市場を作っていく前提にもなるわけでありますが、そういうことを、これは金の方の責任者である大蔵大臣なり、あるいは産業界の責任者である通商産業大臣はお考えになっておるかどうか、これを一つ伺いたい。
  48. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 通産省としましては、ただいまお話の通りにいろいろ外国技術の導入に金を出すことは、必ずしもこれはいいことではありません。国内の技術を発展させるという意味で鋭意考えておるわけでありまするし、予算も極力ふやしてもらうというふうにやっておるのでありまして従来から言いますと、これまでにそういう研究の補助金を出しましたのは三十五億程度であります。それによって民間資金が二百数十億程度導入されたわけでありますが、そういうようなことではまだまだ不十分だというふうに考えております。今後の大蔵省との折衝におきましても善処して参りたい、かように考えます。
  49. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 私全く同じような考えでございます。奥は私はこのことについてはずっと、もう数年前になりますが、日本の経団連に、経団連というものは、その大きな科学研究所を持たなければいかぬ、それで一つそういう面の参謀本部みたいにそういうのを作ったらどうかということを私すすめたのですけれども、思うようにいきませんでした。それで、それの考えを私受けまして、科研、大河内さんのやっておった、その科研等で困っておりましたので、それを財界からも金を出させまして、ある程度体裁を整えてきたのですが、今度、まあいろいろと従来もそういう趣旨で考えてきたのですが、やはり日本の財政が少いためにゆとりがないので思うようにいきませんでした。しかし今回は、別に私は大きなことを言うのでは決してありません。総合的に考え、なければなりませんが、しかし、この科学技術の振興ということだけは一つ、あなたのおっしゃったようなことでなくしてなるほどと思われるようなことは考えていきたい、かように考えておる次第でございます。
  50. 栗山良夫

    栗山良夫君 おっしゃったようなことでなくてというのは、どういうことですか。
  51. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 今よく聞き取れなかったかもしれませんから、間違っておったらお許し願いたいのですが、何だか三億とかどうとかという、こんなちっぽけなものでどうなるかというようなおしかりでございましたが、そのことを私は申し上げたのであります。
  52. 栗山良夫

    栗山良夫君 それでは、もう一ぺん繰り返して申し上げますが、それは三億ドルなんですよ。外国技術の使用料と技術導入のために使っている機械の輸入、そういうものは三億ドルも毎年払っている。これは日本で完全に技術の独立をすれば要らなくなる。それだけいろいろ節約になり、そのためにはアメリカは三%から五%の研究費をかけて会社が自分でやっている。例をとれば、日立では六百億の売り上げがあるのだから、十八億から三十億ぐらいの研究費を投入してしかるべきなんだが、これはやっていない。それだけのことは、おそらく日立ですらできないことだから、それより以下の零細な日本の産業界の個々に求めることは無理だから、国としてそういう新技術の開拓に対する雄大な研究機関というものをこしらえて、そして外国の技術に頼らなくても、日本がどんどんと推進していかれるような、そういう方途を講ずるのは政府の責任ではないか。政府はおやりになる意思がないか、こういうことをお尋ねしたのです。
  53. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) いや、それは三億ドルのその点に対しましては、ただ先ほどちょっと、何か政府の盆の出し方が非常にしみったれのようなお話がありましたように聞えましたから、そういうことじゃなければ、それはけっこうでございます。何も私、この予算で何だか困らせるようなそんなことはみじんも考えておりません。考えておりませんが、しかし今日、科学技術の振興ということは、日本としてどうしても私は考えなければならぬ、考えるべきだと、かように考えておりますから、その点は頭に入れて予算を組むということだけは申し上げておきます。
  54. 栗山良夫

    栗山良夫君 そこで、科学技術庁で新技術開拓機関法というようなものを用意されて、次の通常国会には提出したい、政府が十億円投資をして、毎年補助金を七千万円ぐらいずつ出して、新技術の開拓をやりたいという御構想があることを私ちょっと聞いておるのですが、そういう事実があるかどうか。それから、私は、そんなちっぽけな子供だましのようなもので絶対に外国の技術を追い越すようなことはできないと思います。やるなら一ぺんに百億か二百億を出して本式なことをやらなければだめだと思いますが、むだな金を使うようなことはないか、その辺の構想を聞きたい……。思います。
  55. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 今おっしゃられるような構想は、私は前から存じております。で、これは私は、一つ今度は各方面の有力な権威ある意見も徴しまして、ほんとうに一つ自分で考えて参りたい。これはむろん客観情勢にもよりますが、これは今後の日本の、大きくいえば動向、運命に関するようなことかもしれませんから、一つ考えていきたい。しかし同時に、一挙にどうするということは、やはりこれは国の力に限界がありますので、今すぐアメリカのするようなことを、ロシアのするようなことをやれといっても、それはさか立ちしてもできない。そういう常識はずれなことはできませんが、常識的に考えてもなるほどというようなことは考えていきたいと思います。
  56. 栗山良夫

    栗山良夫君 それではその問題は通、常国会の宿題にいたします。  それから、その次に輸出の問題について二、三点お伺いしたいのでございますが、輸出の問題は、政府の答弁は、輸入を押えて輸出をふやすのだと、こういうことで、しごく簡単におっしゃっておるが、私は、輸入を抑制するよりも、輸出を促進するということがより困難だと思います。現在予定通り行っている、大体計画通り進んでおるとおっしゃったが、それをさらに上回って、あるいは三〇%であるか、四〇%であるか知りませんが、伸ばすということは、これは容易ならぬことであると思う。そこで、そういう容易ならない事態にあるにかかわらず、政府輸出に関する政策というものは、きわめて根がないように私どもは感ぜられていたし方がないものですから、これの二、三の点について伺っておきたいと思います。  それでまず最初にこの法案にも直接関係があるわけでございますが、ただいまの政府輸出促進政策というものは、ある意味においてこれは輸出の助成政策をとっている。助成政策で事足れりというような考え方があるような気が私はいたします。そんなことではとても輸出は伸びるものではない。まず項目別に一つずつお伺いいたしますが、その一つは、安売りの防止ということを政府はほんとうにおやりになる意思があるかどうか。先ほども日本の商品を国際物価水準に合わせなければならないということをおっしゃいましたが、実際に日本の商品はプラント物から雑貨物まで、全部外国と比較して高い。私はそうは考えない。高い物もあるでしょうけれども、実際使用価値から考えてみて外国と同じ性能、同じ効果を持っておって、外国よりはるかに安い物品が日本にはたくさんある。そういうものまで一律に、日本の物価が国際水準より高い高いということで押し流されておりますが、そういう分析の仕方ではよくないので、高い品物と安い品物を明確にまずすべきである。そしてその中で国際水準よりはるかに安い品物が出た場合に、外国から日本へ殺到しておるバイヤーにめちゃくちゃにたたかれて、そして日本国内で過当競争をやる、海外でも過当競争をやる。こういうことによって、日本人が汗みどろになって作った商品の相当部分の利益を全部外国バイヤーにポケットされるような、そういう今の輸出のやり方は厳に改めなければならないと思います。そういう点についてどういうふうに考えておりますか。
  57. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) お話の通りに機械類のプラント等におきましては、日本の物価が非常に高い。しかし雑貨、繊維等につきましては、これはアメリカ等に比べて決して高いとは思っておりません。むしろ安売りをやる、あるいはまた過度に集中し過ぎるという弊害が出ておりますことは御承知の通りであります。それに対しましては、御存じの通り輸出入取引法によりまして価格の規制なり出荷規制をやっておりまするほかに、輸出貿易管理令でございますか、そういうものによりましていろいろ承認をいたしまして、その承認によって、安売りをやってはいけないというような規制措置をいたしております。また、輸出するメーカーの段階につきましては、従来中小企業安定法というようなものによりまして規制をやっておるのでありますが、これは御承知の通り、今回審議を願っております中小企業団体組織に関する法律で商工組合等に移行することに相なるために、それらの施行の万全を期しまして極力安売り、あるいは過当の競争をやめていくように指導して参りたいと思います。
  58. 栗山良夫

    栗山良夫君 私は、今まで中小企業安定法があったり、今度の団体法で商工組合ができると、そういう一応の法的措置で今のことが防げる、こういうことをおっしゃられるのですが、これが防げない。防いでいないからこういう御質問を申し上げるのです。防いでいないからどうするのです。たとえば一例をあげますと、過日も業界で問題になっておるミシンの輸出はどうですか。日本輸出ミシン調整組合連合会、これが輸出協定価格実施状況についてずっと調査をしたところが、数字は間違っておるかもしれませんが、十一万六百五十二台の中で協定違反をやったのが三万五千百九十九台、三二%が協定違反である。それで、いよいよこれではいけないというので調整組合連合会が、何かその連合会の規約によって罰則の適用をやって、そういう違反行為をやったものを若干は取り締まるのかと思いましたところが、話し合いによって不問に付してしまった。不問に付したということは、結局そういう協定違反をやってダンピングのような乱売をしても、一向にとがめられないという、これは一つの事実なんです。これは通産大臣御承知かどうか知りませんが、そういうことがありました。もう一つの例は、双眼鏡でありますが、日本輸出双眼鏡調整組合というのがあります。これが乱売をやった。乱売をやったから、いよいよ中小企業安定法の二十九条を発動してこれを取り締ろうとしたところが、組合が分裂してしまった、そうしてやはり安売りした方が勝ちということになった。こういう私は事実を知っているから、あなたが国会で淡々と御答弁をなさるが、その御答弁をなさることだけでは、ほんとうの日本輸出促進にはなりませんよということを申し上げているのです。
  59. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) お話の通り、調整組合におきましては、ほとんどまあ罰則を適用したことがないのです。また実効が上らぬというところが、今度の団体法に切りかえようというところでありまして、団体法によりますと、従来の職員が監視をするというばかりでなしに、組合の監視によるということでありまして、それで実効が上るというのがこの団体法のねらいであります。またわれわれとしましては、罰則の適用につきましては、いろいろ検察庁には申し出ておるのでありますが、なかなかその実態がつかみにくいのでありまして、ほとんど発表されておりません。それをまあ十分発動しようというのが今度の団体法のねらいであります。私はまあ今後この運営によって強力に過半競争を押えていきたい、かように考えておるのであります。
  60. 栗山良夫

    栗山良夫君 私は大蔵大臣にお尋ねいたしますが、これは最初に戻るわけなんですよ。幾ら法律を作っても、ほんとうに生産者なり貿易業者が、輸出というものは国家の経済的な運命をかけているのだ、そういう精神的な訓練がなければ、そうして、日本の労賃なり、あるいは生産設備を酷使してせっかく作り上げた品物を、みずからこわして、過当競争をして外国へ売り渡す、そういうようなことをやれば日本のためには不利益だということがほんとうに認識されなければ、輸出の真価は出てこないのですよ。そういう意味で、私は一つの大きな政府の、これは非常にむずかしいことではあるけれども、ただ、おれのところは法律を作っているのだからこれでうまくいきますよと、そういう答弁だけでなくして、もう一歩突っ込んだ政策というものが必要じゃありませんかということを私は申し上げておるのです。この点、私は今の通商産業大臣の御答弁ではいささかも満足できませんが、大蔵大臣はどうですか。そういうことはお考えになりませんか。
  61. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) まことにごもっともな何ですが、そのために政府も、特にこの通産省におきましては、輸出最高会議というものを、業者を入れて、各業種別の委員長も入れて、国家目的をよく理解させ、協力させる、こういう体制をとっておるわけでありまして、業者におきましても、決して私は、国のこういうような使命というものに関心が薄いということはないと思います。同時に、しかしまた、そういうふうに業者を向けるためには、私は日本のこの経済から見まして、やはり西ドイツなんかがやるように、国内における消費というものを妥当にして、そして輸入して、輸出を大いにふやす——なぜ輸入輸出よりもうけが多いかというと、国内に持ってくれば高く売れるから、国内消費されるという点にあると思います。特に国内消費というものを、何も抑制するわけではありませんが、妥当のところに帰一するようにして輸出に自然に商品が流れていくという態勢をとらなければなりません。それには今後の金融政策というものが重大になってくるので、今後資金というものについても計画性を——資金の中に計画性を与えるにはいかにすればいいのか、私は金融の性格からして、輸出すればいいと思いますが、一体どうすれば、お前たち輸出々々というが、業者としてはどういう具体案を持っているか、また、できるとしても限界はどこにあるのか、それをはっきりさせるということで今、金融機関のすべてに、これは資金審議会、それから日本銀行、それから全国銀行協会と、すべてに問題を提起しまして、至急にそれについて答申をするようにということを求めております。その結果を見まして無理のないようにする、そういうような方法もやはりとらなければならぬ、そういうふうにすれば私は大体いいんじゃないかと思う。私一つ考えてもらわなければならぬのは、特に輸出振興が今後日本の経済を左右する、あるいは国民生活もそれによって左右されるわけですから、ドイツあたりを見ると今日外貨を五十億以上持っている。手持ちしている。日本でしたら、おそらく五十億も外貨を持っていたら、なぜ使わないのか、大蔵大臣はそんなばかなことをするな、そう言われるかもしれない。たった十億近く持っていても、持っていて何にするのか、けちんぼうというようなことを言うのですけれども、そんなわけにいかない。外貨を持っているが、しかしドイツは輸出振興する。それではよその国が困ります。国際協調という点からいえばどうかと思いますが、ドイツあたりは今日外貨を五十億持って放さないのですよ、なかなか。そうして輸出超過によって外為に外貨をあっためておいて、その資金でもってさらに輸出増大のために金を使っていく、そうして民間資金は使わぬようにしておく、こういうふうな政策をやっている。これは私は今後大いに日本として学ぶべきではないかと思っております。そういうふうにやるつもりです。どうぞよろしくお願いいたします。
  62. 栗山良夫

    栗山良夫君 大蔵大臣は、消費の抑制、貯蓄の増進を一生懸命おっしゃるけれども、私はそれは異議ないが、しかし何ですよ、私はいつもあなたが信用されませんから、政府の書類を出しておるのですが、三十二年度を見ましても、控えぎみだった消費水準の上昇と書きまして、神武景気だったけれども消費は非常に少かった、しかも貯蓄が大へん伸びましたということを書いているのですよ。あなたのお説の通りになっているわけです。だから決して神武景気に比例して日本人が消費生活をうんと上げて貯蓄を少くしたということはないのです。ちゃんとこれに書いてある。活字に数字をあげて書いてある。従って、そういうことはもう国民が良識でよくわきまえて実行しているのだから、ちっとも心配は要らない。それよりも、もっと輸出を上げたり、中小企業の近代化の方に熱を入れられるべきだと私は思います。  それではだいぶ時間がたちましたから……。
  63. 豊田雅孝

    委員長豊田雅孝君) 申し上げますが、両大臣とも一時にどうしても行かなければならぬところがありますから、その点どうぞ……。
  64. 栗山良夫

    栗山良夫君 まだこういうことで、ずいぶん具体的な貿易のことをだいぶ用意しておったのでお聞きしたいのですが、大体私の考えている片りんをおわかり願ったと思うのです。まだたくさんありますから、時間が許せばお聞きしたいのですが、はなはだもって失礼だが、通産大臣は御就任早々ではあるけれども貿易政策に対してきわめて不熱心であるのか、まだ勉強しておられないのか、あるいはこれから勉強をされるのか知りませんが、ありきたりの、その辺で演説されるような御答弁では、輸出の増進、輸入の抑制はできないということを私は痛感いたしますので、いずれまた通常国会のときにいろいろとお尋ねをいたしますから、一つよろしくお願いいたします。
  65. 豊田雅孝

    委員長豊田雅孝君) 他に御質疑ございませんか。
  66. 平林剛

    平林剛君 先ほど留保した質問について通産大臣お答えを聞きたいと思います。  ただいま議題になっておりますのは、御承知のように輸出奨励のための臨時特別措置であります。これは昭和二十八年に創設をされてから今日まで、昭和三十一年前の部分が約七十八億円で、今回の法律案で二十四億円の減収を来たすことに相なるわけであります。結局国民としては租税負担の公平という原則を、輸出振興という政策のためにがまんをする法律になるわけでございまして、それだけにこの輸出振興のための税の特別措置が、正しく輸出振興に使われない限りは、なかなか国民納得するものではないことは理解をいただけると思うのであります。そこで、先般来からいろいろ議論をしておったのでありますけれども、今日まで百億円に近いところの輸出所得特別控除制度の結果、一体その効果はどういうふうに具体的に現われているのだろうか。われわれは、租税原則政策によって破って百億円に近い金が減収になっておる。しかしその効果がどうなっておるかということがなかなか的確につかむことがむずかしいのであります。しかし、むずかしいからといってこれがつかめないということになりますと、ただ輸出振興という名目だけで何か一部の特定の業界に対して恩典を与えるという結果になりまして、まことに好ましくないことになる。今日まで説明を聞いたところでは、どうも的確に確認をすることが困難であるという結論しかございませんが、通産大臣は、今日までこの効果について具体的に調査を進められたことがございますか。もし調査がしてあるなら、何か具体的に私ども納得できるような資料をお持ちして説明していただけないものかどうか、この点を一つ第一に御質問いたします。
  67. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) ただいまお話のような調査は今までやったことはありません。ただ効果という問題になりますと、先ほど来いろいろお話が出ましたように、輸出は非常にむずかしいが輸入は割合楽にやれる。輸出になりますと、海外に人を送り、あらゆる努力をしなければ輸出ができない。そうではありますが、御承知のように昭和二十九年以後は、大体四億ドルずつくらい輸出がふえて参ってきておるのであります。そういう面から見ますと、この措置が非常に輸出促進に役立ってきたということは事実だと思います。しかし、今度さらに輸出所得控除恩典拡充いたすにつきまして、もとよりこの金が、あるいは用途を制限するとか、あるいは留保させるとか、そういうような、そこまでやりますと、かえって輸出の面において、そんなことを言うならあまりありがたくないというような声が出て参ります。従ってこれは行政指導で、これを輸出振興策に使ってもらいたいということを今後強く打ち出して、そうして行政指導でやって参りたい、かように私は考えておるのであります。場合によりましては、お話のように、従来どういうふうに使われておるかという調査もいたしたいと思っております。
  68. 平林剛

    平林剛君 私は政府にしてもだれにしても、かなりの程度恩典を与えておいてその行方がどうなっているかという調査をなさらないということは適当ではないと思う。特に百億円に近い金額でごさいますから、それだけの恩典を与えてあるならば、当然国民に対しても、輸出振興のためにこれこれのことをしたということを報告する義務がむしろあると思う。政府としてもそれについて的確に調査をし、それが正しく輸出振興のために使われるという行政指導がなくてはならぬ、こう思いますので、今後においては一つ調査を進めてもらいたい。そして、それが当然の義務ではなかろうか、こういうことを指摘をしておるわけであります。今のお答えの末尾に、今後調査をすると言ったのであるか、ちょっと聞き取りがたかったので、重ねてその点についてお尋ねをいたします。  同時に今の御答弁で、さような調査をしたり、あるいは企業内で留保をせよというようなことをすると、業者の方は、そんなことをするならありがたくないということになって輸出意欲がそこなわれるというお話がありましたが、もしそれがほんとうであるとするならば、こういう制度をおやめになった方がいい。調査をされたり、企業内に留保するというような行政指導をやたらやかましくやられるとありがたくないというなら、大してこれは輸出振興のために役立ってないということにも相なるわけです。私はそういう程度のものであるならば、何も租税原則を破ってまで租税特別措置を認める必要はないのじゃないか。今の言葉でどうも聞き取りがたい点がございました。そんな程度ならば、一つこれはすぐやめてもらった方が話が早いと思う。私どもはそういう意味で、今後の政府の行政指導が正しく行われて、そして輸出振興のために少しでも役立つならば、いろいろ議論はあるけれども、まげて承認しようかどうかというところに今あるわけなのであります。この二つの点についてもう一度御見解をお聞かせ願いたい。
  69. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 輸出所得控除制度そのものは、たとえば市場開拓準備金とか何とか、そういうものとはちょっと違う。従ってこれを留保するなり、あるいは用途を指定するという制度であるかどうかについて疑問を持っております。ただ先ほど私が申し上げたのは、業者が、われわれがそこまで干渉しようということになりますと、そういうことを言っておる向きもありますので、従って、これはやっぱり業者輸出をしてもらわなければならぬのでありますから、その輸出意欲を阻害しないという範囲におきまして調査をするなり、あるいは行政指導をしていかなければなりません。これを検査して、そしてぴしぴしやっていくというわけには参らないのであります。要するに善導していくという意味におきまして調査もし、また指導もしてしかもこういうふうに使ってもらいたいというふうに思っております。
  70. 平林剛

    平林剛君 そうなると、先ほど大蔵大臣や、昨日までの政府説明と大きな食い違いが出てきておるわけです。きょうの通産大臣は、この租税特別措置によって免除を受けた百億円に近い金額が、輸出振興のために役立っておる、あるいは役立たせるように行政措置をとるというお話でございました。ところが、当の通産大臣が、これに対して疑問を感じているということであっては、政府部内の意見は、不統一であります。大蔵大臣は、これについては企業内に留保するような行政措置をとるというお話がありましたので、私は一応納得をしておったのでありますが、当の責任者である通産大臣がこれに対して疑問を持っているということであっては、岸内閣の閣内、不統一である。答弁が食い違っているわけであります。
  71. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 私は別に食い違っていないと思います。この制度そのものが、たとえば市場開拓準備金というように、はっきり出ているようなものでありましたら、これは別であります。ところが、そういうふうな用途を指定しているものではないのであります。従って、制度としてそういうふうにやるわけにはいかぬ。そこで行政指導としてどういうふうに、効果が上るような方向に使うように——これはおそらくその商社あるいは業者の業態によって違うと思うのです。従って業態の実情に合うような方向に使う指導をしていきたいというわけでありまして、ただいまのお聞きした大蔵大臣の答弁と私は何も食い違っておらぬと思います。
  72. 平林剛

    平林剛君 そういうのは少し強弁に過ぎると思うのですよ。明らかに大蔵大臣は、輸出振興のためにこの措置を議会に対してお願いをしている。そのためには、この租税特別措置によっていろいろ恩典を受けたことに対しては、やはり政府としては責任を持って、輸出振興のために役立たせるように善導をする。そうしてたとえば、企業内留保のためにするような行政措置をとる、こういう御説明があったのであります。あなたは疑問を持っているということを言われたので、主管大臣が疑問を持っておられるようなことではとうていそれらの行政措置がとられないという疑問を発したのであります。どういう点で食い違っていないと、こう言うのですか。
  73. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) お聞きしたところ、大蔵大臣の言っておられたことと私は一つも違わぬと思うのです。そういうようにわれわれは行政指導をしていきたい、ただ、制度としてそういうはっきりしたものを作るというわけではないのであります。要するに、これは行政指導をやっていくということでありまして、ただいろいろ法律上それをはっきりしてそうしてこれこれに使えという制度とは違う。しかしそれを輸出振興のために使うのだ、そのように行政指導をしていくということを申し上げておるので、私は大蔵大臣の話と何も違わないように思うのです。
  74. 平林剛

    平林剛君 じゃどういう行政指導をなさいますか。その点を一つ明らかにしてもらいたい。
  75. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) これは輸出所得を受けておる人に、一々あるいは輸出会議なりにおきまして、こういうふうに使ってもらいたいということで指導していくのであります。
  76. 平林剛

    平林剛君 どうもきわめて抽象的なお話でありまして、われわれは、何のために百億円に近い税の恩典輸出業者に与えておるのかわからない。結局、どうも政府は何か輸出業者をこわいものに触れるような形でもって——それは輸出は大へんむずかしいかもしれませんけれども国策としてこれを行う以上は、輸出業者がせっかくこの恩典を受け入れ、それを輸出振興のために使わないとすれば、これは国会に対しては詐欺行為なんです。もしこのお金を単なる利潤のために使うということならば、われわれを欺くことになるわけです。やはりこの点は厳格に輸出振興のために行われなければならぬはずじゃありませんか。それに対してそんな抽象的な行政指導だけで、どうして輸出振興の達成ができるのですか。
  77. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) まあ優先外貨や何かにしても、これはいろいろ恩典であります。輸出所得控除というのはやはり恩典でありますから、これはこれに絶対に使って——まあ使わなければ詐欺行為だというようなところまでいっておる制度じゃないのであります。しかし、これはその趣旨を、本来の趣旨に従って使ってもらいたいということは、これは当然行政指導としてやっていっていいことだと思います。従ってわれわれとして、この輸出会議を通じ、あるいは業者を通じて、その控除恩典輸出振興のために使われるように仕向けていくということを申し上げておるのであります。それはまあ当然だと私は思います
  78. 平林剛

    平林剛君 もし輸出振興のために使われなかったら、政府の責任はどうなるのですか。
  79. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) これは奨励案でありまして、まあ従来におきましてやっておりますが、そのために——これだけのことではありませんが、年々四億ドルの輸出がふえて参った。これは一つのやはりこの恩典があることが非常に役立っておるわけであります。現実問題として、その使用方法まで縛らなくても輸出振興策にはなるのでありまして、さらにその金が今後の輸出振興に使われるように、ことにこの機会において、われわれは行政指導をやっていきたい、こういうことを申し上げているのです。
  80. 豊田雅孝

    委員長豊田雅孝君) 他に御質疑はございませんか。
  81. 平林剛

    平林剛君 どうも通産大臣の答弁は、今までこの法律案審議して参りました質疑応答と違った精神で理解をしておるようであります。私ども、先ほどから強調しておりましたような点を、もう少し政府の部内においても統一をされて、法律案の建前のように実行することが必要だ。衆議院でも、だからこれは法律案を改正して、この法律案の中に、業者がその分は輸出振興のために使わなければならないとか、あるいは企業内の留保にどの程度はしなければならないという義務づけをしようかという議論もあったのであります。そうでないとわれわれは、みすみす業者を甘やかせてしまうということだけになる。まあ非常に問題点が含まれておるものでありますので、時間もございませんから、ちょっと私はこの辺で質問を中止しておきまして、休憩をして相談をさせてもらいたいと思います。
  82. 豊田雅孝

    委員長豊田雅孝君) 速記をとめて。   〔速記中止
  83. 豊田雅孝

    委員長豊田雅孝君) 速記開始。  暫時休憩いたします。午後二時半より再開いたします。    午後一時二十六分休憩   〔休憩後開会に至らなかった〕      —————・—————