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参考人(
本田弘敏君)
本田でございます。去る三月の五日に当
委員会にお呼び出しを受けまして、
ガス中毒防止に関しまして、皆様からいろいろと御指示、御注意をいただきまして、自来私
どもその線に沿うて、中毒防止にできるだけ努力をしてきたつもりでありますが、遺憾ながら、その後も中毒事故はあとを断ちません。ことに最近の事故は、需要者の不注意、あるいは手落ちに基くものよりも、むしろそれ以外のものが頻発しているという実情でありまして、まことに申しわけないと存じております。ことに先月十一日の芝の西久保広町に起きましたあの惨事は、私
ども幾らおわびを申し上げても申し上げ尽せない、ほんとうに心から哀悼の意といいますか、を感じておるわけでありまして、そういう意味からいたしまして、何とか中毒事故の少くなるように、そうしてああいう尊い
犠牲者の人たちの死を空しくしないように、いわば禍を転じて福となすというふうに私
ども努力していきたいと存じます。
ただいま御質問のありました最近のおもな事故につきまして、これから御説明を申し上げます。まず第一にただいま申し上げました西久保広町の事故についてであります。これはすでに発表になりましたように、終戦直後から残っておりました
ガスの不使用引込管のために起きました事故でございまして、これにつきましては、私
ども全く不使用管の整理ということを戦後専念いたしまして、それに最大の努力をしたにかかわらず、ああいう惨事が起きましたということについては、まことに意外とも何とも言いようがない、ぼう然自失するくらいのことでございました。と申しますのは、終戦直後から不使用管の整理ということは、会社にとりまして大きな問題でございまして、終戦直後戦争が済んでから翌年の二十一年二月までに、会社としましては、約二十九万本の不使用管を整理いたしております。それから二十二年の三月末から七月末まで百三十日間の間にこれは総動員をいたしまして、当時
ガスの漏洩率が五四%という高率でございまして、当時
石炭が少くて黒ダイヤとまで称された時代に、そういう漏洩率があるということは、これは国家に対しても申しわけないことでありますし、会社としても、もちろん経営上大へん大きな問題であります。たまたま労働組合から待遇改善の
要求がありまして、組合の幹部と私
ども会社の幹部が、どこに財源があるかというようなことを検討しました結果、まず第一にこの漏洩防止をやるべきであるということでありました。当時
石炭が少いために、朝五時半から七時までくらいしか
ガスが出ておりませんでしたけれ
ども、われわれは本社といわず、営業所といわず、工場といわず、総動員で決起いたしましてその間に焼け野原をかぎ回わって、そうして
ガスの漏れ個所を発見して、昼間それを直す、原始的なやり方でありましたが、当時いわゆる栄養失調時代の、はなはだしく困難な時代にそれを行いました。結局人の一心といいますか、みんなの協力によりまして、百三十日間に漏洩率を二五%まで引き下げることができました。引き続き、それだけでは足りないというわけで、昭和二十二年の八月一日に営業部に漏洩
対策本部というものをこしらえまして、根本的に焼け跡の本管、支管、メーン・パイプ、ブランチ・パイプの布掘りと申しまして、洗いざらい調べまして、それから出ている不使用管の整理をやったのでございます。これは、その当時としまして二億円以上の費用をかけ、二年以上の日子を費してやったことでありまして、幹部の中にも、それほどまでにやらなくてもというような説も出ないわけではありませんでしたけれ
ども、私
ども大正大震災のあとで、不使用管の未整理のために非常に苦い経験を持っておりますので、どうしてもこれは禍根を一掃しなくちゃならぬということで、あえてその本管の布掘りを断行いたしたのであります。その
記録を見ますというと、実施延長が百四十一万八千八百
メーターになっておりまして、供給管の入れかえをいたしましたのが一万五千十本、ジョイントの締め直しが三十八万二千九百七カ所、供管給を整理しましたものが十三万二千二百本、支管入れかえをしましたのが四千九百
メーター、支管を整理しましたのが一万三千二百カ所、掘さく面積が八十二万九千四百
メーター、プラグの締め直しが七万カ所、延べ人員十六万七千七百人となっております。そういう工合で、これは、不使用管はもう一本も残っていないということをわれわれは心から期待し、またその後引き続き出ます漏洩防止の運動をさらに強化推進して参りましたので、この冬こそ漏洩防止の効果が現われてこの正月、二月にありましたような、ああいう中毒の惨事を起さないで済むと心からそれに希望をつなぎ、期待を持っていたにかかわらず、突如としてあの不使用管が現われました。しかも数多くの尊い人命を犠牲にしたということにつきましては、まことに私は先ほ
ども申しました
通りぼう然自失、ほんとうに神様に見放されたか、神も仏もないのかというような
気持になったのであります。実は私生まれつきに非常に信心強いと申しますか、戦争中は明治神宮に朝参りを六年間続け、ただいまでも一日、十五日は必ずお参りをしている者でありますが、二月のあの中毒事故を見まして、私は毎朝神棚にきょうは
ガスの事故がないようにと、中毒事故がないようにということを祈らぬ日とてないのであります。それにもかかわらず、そういう惨事を起しましたということは、ほんとうに先ほ
ども申し上げましたように、私の祈りの
気持が通じないのか、あるいはわれわれの努力のどこかに至らない点があるのか、これはほんとうに私自身としては打ちのめされたような、失望落胆の
気持になったのであります。しかし厳然たる事実がある以上、これは何としてでも早くこれを直して、そうして皆さん方を御安心させるということはわれわれの当然の責務であります。
それから、この間の事故がありました翌日からさっそくその
対策に取りかかりまして、
新聞でも報道されました
通り三十五台のパイプ・ロケーターを使っていわゆる不使用管の防止に当っているのであります。先ほど申し上げましたように不使用管というのは、われわれ現在一本も残っていないという確信をもってやっているだけにパイプ・ロケーターを使って現在まで調べました結果、不使用管はまだ一本も出ておりません。来年の三月までこの不使用管のある個所を一巡するつもりでありますが、よしんば多少出ることがあるかもしれませんが、われわれもやっただけのことは必ず効果がある、そんなにたくさん私はないということをあえて確信しているものであります。
次に起りました事故は豊島区西巣鴨の事故でございます。これは三インチの本管が地盤の沈下のために折れたものでありまして、たまたまそこに重い重量のトラックか何かが
通りましたと見えまして、そのために折損したものでありますが、これは今まででもときどきあったような事故でございます。ただわれわれとしましてそのときの処置をいかに機敏にするかということが問題でございまして、この際の処置は私
ども別にそれほどの手ぬかりがあったとは存じません。
次に発生いたしましたのが千代田区の神田豊島町の事故の発生でございました。これは東電で変電所を新設しますにつきまして、マンホール設置のために関東
電気工事会社で
電気工事を施工いたしておりますそのために地盤の沈下がありまして、そうして
ガス管を折損しまして、
ガスの漏洩のために中毒事故を起したのであります。この際も日曜のことでございましたが、通知を受けまして派出所からさっそくかけつけ、また営業所に急遽応援を求めまして、約一時間後には二十名の人員がかけつけまして、そうして応急の措置をとったのであります。その際に事故と申しますか、中毒が出ました。これは多少
新聞の記事と異なりますが、かけつけました二名の者がさっそく近所のお客様に対して、窓を開き
ガスをあけて下の方におりるようにふれ回ったのであります。たまたまマージャンをやっていて二階にいた人がなかなかおりてこなかった。この人たちのあとの症状が一番重かったわけであります。こういう際の会社のこういう処置に対しまして御協力を願うことを、私はぜひ
一つお願いいたしたいと思います。これにつきましては、関東
電気工事の
責任であるということがはっきりいたしまして、その翌日、さっそく関東
電気工事の役員がおわびに見え、さらに一日おいて、東京電力の高井社長がわざわざそのためにわびに見えられている現状であります。
次に深川の
高橋五丁目の事故の
原因は、二十六インチ管の溶接部の上部に長さ約三十センチの亀裂を生じたのであります。そのために漏洩が発生いたしました
場所から十五メートル離れた深川消防署の入口にある下水管に沿うて漏洩
ガスが侵入しまして当直者でありました緑川与志夫さん、四十才が午前十時中毒を起して安江病院に入院されたのであります。ただその際に、相当多数の人が中毒症状を起されたようにある方面では報道されておりますが、入院された緑川さんは前々からかぜぎみでありましたし、ほかの方々は当日の業務に何らの支障はなかったのであります。これにつきましても、昨日工事の施工者であります日本鋼管の河田社長、中村副社長以下が会社に見えまして、そしてお互いにこの事故の共同
調査をし、さらに進んで、アメリカ、ヨーロッパにおける
電気溶接の見学
調査についてお互いに共同歩調をとってやるように昨日相談が一決いたしております。
以上のようでございまして、最近の事故は大体におきまして、需要者側の落度、あるいは不注意に基くものよりも、
会社側と申しますか、そういう方面の事故が主要なものであるということにつきましては、私ははなはだ遺憾に思い、また申しわけなく思っております。いずれにしましても、こういう事故が頻発いたしまして需要家の皆さん方に多大の不安を与え、
ガスに対しての危険を感じられているということは、ほんとうに申しわけないことでございます。私は先ほど申しました
通り、これから万全の努力をいたしましてこの漏洩の絶無を期しまして皆さん方に安んじて
ガスを使っていただけるように努力して参りたいと思います。まだ申し足りない点があると思いますが、次の御質問に応じて御返答申し上げたいと思います。