○中野
文門君 上林忠次君、
光村甚助君及び私の三名は、十二月三日から八日まで六日間、福岡県及び長崎県における図書館事情、特に国立
国会図書館と関連を持つ点に重点を置いて視察調査したのであります。次にその概要を図書館の館種に従い、ここに
報告いたします。
第一に、地方議会図書室の運営上の問題について見たところを申し上げます。議会図書室の地方議会に対する
関係は、
国会図書館の
国会に対するがごとき
関係にあるのでありますが、ここに私
どもは二つの問題点を見出したのであります。一は図書
資料購入
予算の僅少ということであり、一は
資料の貧弱さということ、これであります。この両者は密接な関連を持った問題でありますが、まず前者について申し上げます。
福岡県議会図書室の図書購入
予算は十八万円、長崎県議会図書室は二十万円に過ぎません。この僅少、零細な
予算をもってしては、地方議
会議員の調査活動に資することは著しく困難であることは申すまでもありません。ここにおいて地方議会図書室は、零細な
予算を十二分に発揮するためには、県内各調査研究機関や新聞社、さらには県立図書館や大学図書館と十分の連絡を保ち、県政に必要な
資料の送付を受けるとともに、あらかじめ県内所在各機関の所蔵
資料目録を調査整備して、必要に応じて借り出しを受ける等の処置により解決をはかるということが大切だと思いますが、この点の考慮はほとんど払われていないのであります。
議会図書室は、議会に対する参考調査図書館であり、地方自治行政の専門図書館でなければなりません。こうした使命と性格を把握すれば、そのあり方は、議会の使命遂行のための議員の調査研究に完全な図書館奉仕を提供することに集約されるのであります。このために図書室
関係者は平素から、議会の必要とする図書
資料は何か、議会が便と
考える
資料は何かを勘考して議会の要求により、またはその要求を予測して、万全の図書館奉仕を提供するにはいかなる
準備が必要かという点に払われている考慮が肝要と思いますが、こういう考慮がまことに少いと思うのであります。ここにおいて、県下諸団体機関との連係協力ということは、ほとんど顧みられることなく、大学学術機関や市町村議会、商工
会議所、大会社等の企業体、産業組合、言論報道機関、文化団体等の
資料や調査に関連ある部門との結びつきがないために、県下諸機関団体の出版物は十分に収集されず、それら機関団体の蔵書を利用することもできずに、いたずらに図書購入
予算の零細を歎じているきらいなしとしないのであります。
地方議会図書室は、議員の参考調査図書館として、中央
政府各機関で刊行するいわゆる官庁
資料の収集に努めていますが、官庁
資料は地方自治法第百条の
規定にもかかわらず、
政府はこれが送付を必ずしも実行していません。わずかに国立
国会図書館を通じて送付される官庁
資料のみが、
資料入手のための組織的な道となっているのであり、また近時、中央行政機関の行政費削減は印刷製本費にしわ寄せとなり、従って官庁
資料の印刷部数の減少となり、あるいは外郭団体機関での出版の増加を見、地方議会
関係への送付部数は次第に減少する傾向をたどり、地方議会図書室の乏しい購入費では、いかんとも手が出ないということになり、ひいては議員の調査活動に甚大な
支障を来たしているのが実情であります。
これが対策については、第一に
政府に対し、地方自治法の
規定の履行を強く要望せねばならぬことはもちろんでありますが、官庁外郭団体または民間団体機関刊行の
政府資料については、県立図書館とも十分連係の上解決される点もありましょうし、県の執行部側に送付された
政府資料を、努めて議会図書室に回収するという
努力を議会図書室が払うということにより解決されるところも少くないと思います。こういう方面について、異口同音に、国立
国会図書館の今後一そうの指導援助を期待しておりました。
次に、県立図書館について視察の要点を申します。それは第一に施設の充実ということであります。福岡、長崎両県立図書館はいずれも木造で、長崎のごときは原爆による被害のため、書庫は火災に対し安全を期し得ず、福岡は仮建築のため、国立
国会図書館より送付のPBリポートを、火災に安全な遠隔の耐震耐火建造物たる九州大学工学部内に保管、閲覧に供するという不便さを日常体験しなければならぬありさまでありました。両図書館とも県内
資料の収集に努め、国立
国会図書館との連係協力は見るべきものがありましたが、わけて福岡県立図書館から国立
国会図書館に対して援助協力を要請されましたのは、PBリポート、原子力
関係資料の複写版の大量の配付並びに年々の新版の配付の増加ということでありました。特に米国航空工学
関係資料は、国立
国会図書館の
資料が世界で最も充実しておるので、これが貸与を待望していました。利用者はいずれも大学
関係者がその多数を占めるのでありますが、これは大学
関係者の学術研究ということはもちろんでありますが、同時に、民間企業体
関係者の依頼により、大学
関係者がこれが解読に当っておるのでありまして、民間企業体
関係者の利用をより一そう容易にするためには、国立
国会図書館において科学技術
関係資料、すなわち原子力リポート、PBリポート、世界の科学技術雑誌並びに特許明細書の完全な記事索引目録の整備や抄録等について早急な実現を要望しておりました。これ、わが国の科学技術水準を高めるための最も早い道の
一つであるからであります。
最後に、民間調査研究機関の図書館活動について
報告申しまする私
どもの視察したのは、八幡製鉄所の技術図書館と九州
経済調査協会でありますが、いずれも調査研究は最新の基礎データや
資料を追及する
関係から、雑誌は内外にわたり
関係部門のものを数百種収集整備し、雑誌記事索引や論文の抄録に努め、特に八幡ではパンチカードを使用しているのに
関心が引かれました。
資料の収集も整備も、機関内の調査員、研究員が担当していますことは、どこの調査研究機関にも共通に見られるところでありますが、機関の管理者としては、
資料部門担当者が、ともすれば調査研究の第一線に復帰することを熱望しているという悩みを訴えていました。調査研究機関の
資料部門担当者が、その
資料活動において調査研究活動を予測して活動すべきこと、あるいは調査研究活動の不足面を補う上で、不可欠の部門であるという啓蒙と認識の緊要性を痛感いたしました。この方面の活動もあわせて国立
国会図書館の上に期待したいと思います。
さらに、私
どもの興味を引いたのは、九州
経済調査協会に設置されている専門図書館協議会九州地区協議会の活動でありました。専門図書館協議会は、
国会図書館がその中央事務局を担当しており、九州地区協議会は九州方面の民間企業体が中核となり、その調査研究活動に最も必要な官庁
資料約四千点を、国立
国会図書館の援助を受けて収集整備し、国立
国会図書館からの新着
資料を会員に速報するとともに、貸し出しや閲覧利用に供する一方、
資料センターの
資料を九州
経済調査会の調査部門が活用して、会員であるところの九州所在各企業体団体共通の
関心する問題を解説速報し、あわせて各企業体の調査研究活動を援助し、代行しているのであります。研究業績は、活字印刷二千ページをこゆるものから謄写タイプ印刷のものまで含めて、年々数十点刊行され、これらがすべて協議会会員機関団体の活動に資しているのでありまして、私
どもは、ここに新しい図書館活動の生き生きとした姿を見たのであります。
私
どもは、ここに図書館ないしは企業体間、連係協力の力強い姿を見たのではありますが、ここにもやはり悩みがございます。それは調査研究活動の生命ともいうべき官庁
資料が、国立
国会図書館の
努力により、月々多数送付されていますが、いまだ官庁
資料の全体をおおうに至っていないということ、このことでありまして、官庁
資料は、最低の部数で最大にその利用の効果を上げているところの、こういう連係の組織体にこそ十分に収集送付し、ともすれば、底が浅いと言われるわが国の
経済の発達に資すべきではなかろうかと痛感した次第でありまして国立
国会図書館においても、
政府各機関とよく連絡を保ち、官庁
資料の収集に一そうの研究と
努力を期待するとともに、これに対する
政府各機関の協力をさらに切望するものであります。
以上をもって
報告を終ります。