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1957-11-08 第27回国会 衆議院 農林水産委員会酪農及び澱粉に関する小委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    本小委員昭和三十二年十一月五日(火曜日)委 員長指名で次の通り選任された。       五十嵐吉藏君    石坂  繁君       大野 市郎君    吉川 久衛君       笹山茂太郎君    鈴木 善幸君       永山 忠則君    松浦 東介君       松野 頼三君    石田 宥全君       久保田 豊君    芳賀  貢君       日野 吉夫君    細田 綱吉君 同日  石坂繁君が委員長指名で小委員長に選任され  た。     ————————————— 会議 昭和三十二年十一月八日(金曜日)     午後三時八分開議  出席小委員    小委員長 石坂  繁君       吉川 久衛君    鈴木 善幸君       永山 忠則君    松浦 東介君       石田 宥全君    久保田 豊君       芳賀  貢君    細田 綱吉君  小委員外出席者         農林水産委員長 小枝 一雄君         農林事務官         (畜産局長)  谷垣 專一君         農林事務官         (畜産局飼料課         長)      森   博君         農林事務官         (食糧庁業務第         二部長)    松岡  亮君         専  門  員 岩隈  博君     ————————————— 本日の会議に付した案件  酪農振興方策及び澱粉政府買入れに関する件     —————————————
  2. 石坂繁

    石坂委員長 これより酪農及び澱粉に関する小委員会を開会いたします。  乳価安定対策等酪農一般の問題及び澱粉買い上げ等の問題について調査を進めます。  なお小委員外農林水産委員の発言につきましては、適宜これを許可いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 石坂繁

    石坂委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたしました。  それでは谷垣畜産局長より一般説明を伺います。
  4. 谷垣專一

    谷垣説明員 それでは、最近の酪農牛乳乳製品の問題を中心にして御報告いたしたいと思います。  大体この前の委員会のときに資料をお配りしたと思いますが、最近における大体の酪農、牛の状況は、昭和二十五年が大体戦前の状態に戻った年でございますが、昭和二十五年以後におきましては、昭和三十二年現在において、牛の頭数で二・七倍程度、それから乳の生産量で約三・七倍程度状況を示しております。現在は牛で五十八万頭、ミルクで大体生産が今年度七百三、四十万石、こういう程度に相なっております。それでこれに対する今年のいろいろな需給状況が、昭和二十九年の秋、昭和三十年の前半というような状況に来ておるということをいわれておるのでありますが、それはことしの今までのミルク生産量が対前年比約二〇%増、昨年六百十五万石の生産量が、今年推測いたしまして七百三、四十万石になる。こういうことでございますが、対前年比二割増くらいになっております。昭和二十九年の場合は対前年比三割増くらいになっておったかと思いますが、大体そういう状況であります。  そこでミルク性格上、需給は大体一年を通じますと、とんとんになるわけでありますが、今年度の状況は、今までの状況から考えますと、ミルク市乳といたしましての生産量が前年比一一二・三%の増の程度にとどまっております。従いまして、残りのものは乳製品という格好になるわけでありますが、その状況が普通におきまする生産よりも伸びておりますために、その乳製品在庫が問題をはらみまして、逆に乳価その他の問題が起っておる、こういう大体の状況でございます。ミルク消費生産状況は、およそ申しますと、一割程度農家の自家用、これは主としまして子牛生産のために使われるわけでありますが、あと九割が大体平常の場合は市乳と、原料の方に向けられて乳製品に使われますのが半々、こういう状況に相なっております。そこでたまたま三十年の六月に、乳製品のうちの大カンものの乳製品、大カン練乳を主としたものでありますが、それがそれまで免税措置が行われておったものが、そのときに撤廃になることに相なったのでありますが、当時今申しましたような、やはり非常に乳価の問題が深刻でありました等の事情がございまして、それをもう二年延ばして、従って今年の六月一ぱいまで、大カン乳製品に関しまする砂糖消費税免税措置をそのまま続けることになっておったわけであります。たまたまことしそういうようなミルク需給状況というものに、若干のアンバランスが生じまして、そうしてそれが六月末にやはり砂糖消費税をとるようにする、こういう事情があったのでありますが、その後六月当時、当委員会におきましても、いろいろと御意見をちょうだいいたしまして、それを延期いたしました。九月一ぱいまで免税措置を続けて行うようにしよう、こういうことでございました。そしてその間において、将来に対する対策等を講ずるようにしろ、こういうようなお話であったわけであります。それらの決議がございまして、農林省の方といたしましても、大蔵省、その他と相談をいたしまして、これに対する対策といたしまして、数回の酪農審議会等を開きまして、その答申を得たわけであります。その大体の骨子と申しますのは、具体的な案件といたしましては、幕本的にミルク生産いたします人間と、それを使います乳業会社あるいは市乳のプラントというようなものの間に適正な生乳取引契約を結ばせるということ、これが一つの眼目に相なっております。この実情はいろいろと、現在酪農振興法におきましても文書契約等をやっているわけでありますけれども、実情はなかなかそれが進んでおりません。従いまして今後の方針といたしましては、やはり適正な生乳取引ができますように価格あるいは数量等やり方を、現在一カ月ごとぐらいで取引乳価が変っておりますこと、その他のものを、ほぼ一年ぐらいの見当長期にさして、安定した契約文書契約でやらせる。そうして現在のところ酪農振興法におきまして紛争が起きましたときに、あっぜん委員を知事が任命いたしましてそれが紛争のあっぜんに従事するという仕組みになっておりますが、これは仮称でございますが、酪農委員会のごときものを常設的に設けまして、そうしてこういう問題に対する勧告でありますとか、あるいは調停でありますとか、あっせんでありますとかいうようなことをやらせるような方向で必要な法律改正を考えたらどうか、こういう考え方一つであります。  それから第二点は、需要を増大する方法といたしまして、学童に対する生ミルクの給与を実行する、こういうことでございます。  第三点は先ほどの適正な生乳取引と関連をいたしまして、乳業者あるいは乳業施設を持っております協同組合とこれらの人たちの必要といたします資金を貸し出していきます場合に、それの債務保証機関といたしまして、酪農振興基金を作って参る。これは政府が半額を出資いたしまして、あと民間関係者出資をいたす、合計十億くらいの基金を作って、そういうことをやらしていったらいかがか、さようにいたしまして、先ほどの適正取引による乳価の決定、あるいは数量取引というようなものが、乳代の遅払いとかいうような問題が起きませんような運用をいたしていく補強工作をいたさしたらどうか、こういう考え方、これが大体骨子でございまして、そのほかに現在生産費等調査がある程度進んでおりますが、まだ十分ではありませんが、特に消費流通の部門におきまして、ことに末端の小売商等段階におきます調査において、まだ十分なものがございません。これらの調査を強化いたしまして、要すれば法律等の基礎を持つような形にいたしてやっていく必要があるのではないか。これらのところが一つの重点に相なっております。暫定的な体制といたしましては、これらの金融逼迫等状況もございまして、乳価等に悪影響を及ぼしている状況でもございますので、それであっせんして融資をつける、あるいはこの基金が発足いたしますまでに、これは法律その他予算措置が必要でありますので、そのために現在あります余分の在庫量というものを政府の指定いたします倉庫に収納いたさせまして、一定期間たな上げをさせる、こういう措置を大体の方向としてきめたわけであります。その中で特に今後の方針として重要であると思われ、かつは今後における予算等措置に響きまするような点につきましては、九月の二十七日に閣議の了承を得まして、必要なものは実行に移して参る、こういうことで現在いたしておりますのは、保管をいたしまする問題については先月の二十五日から実施に移したような次第でございます。  学校給食に関しましては来年の一月——今年度の一月でございますが、来年の一月からこれを実施して、来年の一月以降来年度一ぱいにおきましてほぼ三十万石の生乳学校給食に回したい。学童数にいたしまして約二百万程度給食を予定いたしたわけであります。これは着々準備をいたしておりまして、きのう、きょうと全国の担当課長を集めまして、実情その他相談をいたしておるような状態になっております。  基金の方につきましては、これは来年度の予算ということに相なると思いますが、これらも民間出資五億につきましてはほぼ民間の諸君の出資の約束を済ましておるような状況でございます。  大体そういう状況で現在まで進んでおる、そのようなことでございます。
  5. 石坂繁

    石坂委員長 澱粉買い上げ等に関して御説明がありましたら、この際簡単にお願いいたします。
  6. 松岡亮

    松岡説明員 特に御説明申し上げる点も今のところないのでございますが、まず農林省といたしましては一応澱粉総合対策というものを立案いたしまして、最近澱粉が若干だぶつきぎみでございますので、それのために特に新規用途を開拓する、あるいは澱粉生産合理化をはかり、コストを引下げるというような点について対策を講ずる、また原料でありますイモ品種改良裁培の改善といった点につきましてさらに研究措置を進める、また原料イモ取引等につきましては共販体制を強化する、あるいは先ほど畜産局長から牛乳につきましてお話のありましたような団体協約を推進するというような対策を進めることにいたしまして、近く澱粉調査会というものを設置し、民間の有識者の特に専門的な御意見を承わりまして、具体的な措置をきめて参りたい、こう考えておるのでございます。  さしあたって本年産澱粉需給につきましては、最近十月一日現在のイモ予想収穫高が発表になっておりまして、まだ澱粉がそれからどのくらい作られ、どのくらい消費されるかという的確な見通しを立てられる時期ではないのでございますが、大ざっぱに申し上げますと、カンショ澱粉関係は、本年産カンショが昨年あたりに比べましてかなり減産を示しておりますので、カンショ澱粉はどちらかといえば需給が窮屈ではないか、かように予想されるのでございます。またバレイショ澱粉の方につきましては、これとは逆に、本年は、これは北海道だけでございますけれども、昨年に比べましてイモ生産が比較的良好でございます。従いまして、それに伴ってバレイショ澱粉生産も前年あるいは前々年を上回る相当な量に達するのではないか、従ってバレイショ澱粉だけを取り上げますと、需給はややゆるんで、どちらかといえばだぶつきぎみになる可能性あり、かように見通しておるのであります。しかしいずれにしましてもまだ的確な数字をはっきり申し上げられる段階ではないのでございます。  一応大ざっぱに申し上げますと、さような状況でございます。
  7. 石坂繁

    石坂委員長 これより質疑に入ります。久保田豊君。
  8. 久保田豊

    久保田委員 畜産局長にまず第一にお尋ねしたいのですが、今大体当面とられておりまするいろいろの対策についての御説明があったのです。特に乳価に連関する問題だと思います。これももちろん非常に大事な問題で、当面何とかしなければならぬことは明らかです。しかし今度の新農政といいますか、政策要綱を見ても、せんだっての大臣施政方針といいますか、これを見ても、酪農については非常に大きなウエートを置かれておるわけです。要するに今度は酪農中心にして日本農業の再編をしょう、こういう非常に積極的な意図を持たれておる。このことにもいろいろ問題はあろうと思いますが、それだけの大きなあれであります。そういうことになると、今御説明のあったような、この程度乳価対策でどうなるものでもないと私は思うのです。さしあたっての問題がこれでうまくいくかというと、これまた問題で、すでに第二次の乳価引下げといううわさも強力に各地に飛んでおって、酪農家が戦々きょうきょうとしておる。こういう実態です。  そこで私は当面のいろいろな問題にも触れてあとなお突っ込んでお聞きしたいと思うのですが、それよりことしから出発するというのですから、今政府で考えておられる今度の新しい酪農中心とする日本農業の再編成ということなんです。これについての基本的な計画なりあるいは何なりがあるはずだ。この問題に触れなければ、今ここでこんな程度のこうやくばりの対策がいいか悪いか。これも農家にとってはもちろん大事です。しかしながらこれだけ突っついても、すぐあとからくずれてくると思うのです。そこでそういう基本的な計画なり政策なり、まとめたものがあればこれを御説明いただきたいし、あるいは文書になっておればそれをいただきたい、こう思うのです。もちろん予算のまだきまらない今日ですから、なかなか的確な計画も立てにくいだろうと思うのです。なお国民経済の五カ年計画にも織り込むというような大臣の御説明もあったのです。そういうものを説明をしてもらわないと、実はこの段階での酪農政策、これだけやっても、おそらくこの冬になってくればまた乳価の第二次引下げは当然出てくる。これを多少補強してみたところが、なかなかうまくいくまいと考えられる。そういう意味で、そういう基本的な政策なり計画なりがあったら、その大要なり、文書でいただければ資料としてここでいただきたい。その上で質問を展開したい、こう思うのです。
  9. 谷垣專一

    谷垣説明員 今後の畜産計画につきましては、これは単に畜産だけでは計画が不十分といいますか、総合計画でなければならぬと思います。これは農林省の方で全体といたしましての計画をまとめ、これを経済企画庁の方と連絡をとりまして、長期計画と申しますか、そういう計画を現在策定中でございます。そこでそういう点につきまして若干の訂正があるかと思いますけれども、畜産の、当面ことに酪農に関しまする問題につきまして、私たちの現在数字的に考えておるようなことを申し上げたいと思います。これは今後全体の調整の問題もございますので、そういう点のいろいろな修正は御承知を願っておきたいと思うのです。  乳用牛酪農の中の牛について申し上げて参りますと、基準を三十一年にとりますと、これが約五十八万頭ということになっておりますが、五年後の昭和三十七年におきましては、それの約倍の百二十五万頭程度に上げたい、かように考えております。乳量も、これは一頭当りの搾乳量も少しずつふやせるような飼料も考え、飼育法も考えて参りたいと思います。三十一年の基準が六百十五万石でございますが、三十七年にはそれを千三百七十万石程度に上げて参りたい、こういう考え方で進めております。  なお、これをもう少し長い目で考えてみますと、これはかなり推測というようなものがありますが、全体の考え方といたしまして必要かと思って試算をいたしてみておるのでございますが、昭和五十年には乳用牛が約四百万頭、現在の七倍程度に達するであろう、乳量は五千四十万石程度、そういうめどを一応立てておるわけであります。しかし昭和五十年ごろになりますとかなりいろいろな変更要素も入りますし、これは私たちの方としての客観的な考え方であります。五年後の状況は今申しましたように、ある程度方々からの積み重ねその他の検討を加えた数字というふうに御了承を願いたいと思います。  大体乳用牛、乳に関しましてはそういうものの考え方をいたしております。これらのものは大体年率対前年比一五%増くらいの数字で考えております。乳量等も無理はない数字だと考えております。従いまして過去の実績等も十分勘案いたしましてこの程度数字を出しておりますので、牛の生産そのものから申しますと無理のない数字であろうと考えております。  それから問題は、これらのものの需要でございますが、これは従来の国民食生活変化あるいは国民所得の伸びとこれらのものの需要関係、いわゆる所得弾性率その他の状況あるいは国民食生活、都市あるいは農村におきます食生活変化、あるいは諸外国の例等を考え合せまして、この程度需要はあるであろう、こういう前提に立って考えております。  次にはえさの問題であろうかと思います。飼料の問題は、現在自給飼料購入飼料の割合が、私ちょっと数字をはっきり覚えていないのでありますが、大体自給飼料が四割五分くらい、購入飼料が五割五分くらい、乳牛に関しましてはこれらのところが大体の見当と考えていただいていいかと思います。五年後におきましてはこの比率を少くとも逆にいたしたい、こういう考え方を持っております。ただし乳牛をふやし得ます地域的な問題を考えまして、交通の発展と同時に草資源等の余地のあります地帯乳牛がふえることと考えますので、そういうようないわゆる重点的にやりたいと思っておりますところは、自給飼料率を八割程度にまで持っていくような指導が必要であろうと思います。これは相当に強い指導を必要とするかと思いますが、そういうふうに考えております。これに対応いたしまして、あるいはそのほかの家畜の問題にも対応いたしまして、現在の畑作地あるいは水田裏作等もございますし、あるいは現在の牧野といわれておるようなところの草地のところにおける開発が進まなければならぬと思いますが、大体現在飼料作物の植わっております面積を延べにいたしますと十八万町歩程度ではないかと思います。この畑作と申しますか既耕地におきまする作付を三十七年には五十五万町歩程度にまで伸ばして参りたい、かように考えております。それから、牧野の中でも特に部落に近いところ、あるいは河川敷あるいは畦畔というようなところの草地を改良して牧草を植えるなりあるいはまた野草のままでもこれを改良いたしまして生産量を上げる、こういうことが必要に相なると思います。これもそれぞれ数字的に計画を立てましてやって参りたい。大体計画数字の点から申しますとそのような計画で進みたい、かように考えております。
  10. 久保田豊

    久保田(豊)小委員 私は長期計画の方から先に少し御質問をしたいと思うのです。こういうふうに、今までの日本酪農といいますか、農業ということから比べるとまさに画期的な計画なんですね。それだけに政府側としてもよほど万般についてがっちりした政策を立て、用意を十分にしてやりませんと、従来は牛を飼え飼えというので牛を飼わせて、そして借金をして牛を買った、まだ乳代も入らない、あるいは子の代金も入らない、現金の入らないうちに乳価が暴落してもうどうにもこうにもやれないというようなことで、むしろ牛を政府の勧めによって飼ったために非常に困っておる状態が従来相当見られるわけです。今までほとんど日本では見られなかった大規模なもの、しかもこれによって日本農業構造というか性格まで変えていこう、こういうわけですから、それだけに万般についてのしっかりした政策なりこれを裏づける具体的な方策を強力に実行しないと大へんなことになると思うのです。私ども牛をふやすことそのものについては決して不賛成じゃないが、それだけに今までのようにただ牛を飼え牛を飼えといって政府音頭をとると町村長音頭をとる、そうすると農家の方はまあよかろうというのであっちこっちで借金をして買ってやったところがすぐにだめになってしまうということでは困るわけですね。それだけにその点を十分にこれから固めていただきたいと思うのです。そこで私はこれに関連するいろいろな問題について基本的な点を二、三順序立ててお伺いしてみたいと思うのです。  第一は、大体五十年の問題はちょっと私にもわかりません。しかしながら三十七年までに百二十五万頭にするということは、今の消費構造なり何なりから見て決して無理なことではない。できることではあるが、これには非常にいろいろな条件があると思うのです。一番大きな問題は、まず導入資金をどうするかという問題です。特に農家にとってはそうです。これだけの増産計画をやるということになれば牛の値段は上ってくるのが当然です。そこで今考えられておる導入資金というのは、御承知のように有畜農家創設資金による貸付金、これがある。さらに昨年から始まっておる積雪寒冷地帯の例の国有牛貸付制度がある。大臣説明の中では、ことし新しく協同組合による委託制度というものが出ております。これは乳牛を考えておるのかどうかその内容はよくわからないのですが、これらについてどういう具体的な計画を持っておられるか。私は導入資金なりそのほかのいろいろな資金は相当要ると思うのです。大体十万円ぐらいの牛を買わなければ酪農は問題にならない。ジャージーその他は安いです、もっと安い牛もありますが、乳牛ということになれば少くとも十万円ぐらいの牛を買わないとそろばんに合いません。子牛なら別ですけれども、少し高等なものだと今日でも十万から二十万、中には二十五、六万するものがあるわけです。それに畜舎だとかあるいはその他いろいろの連関したものを買い、そしてさらに牧野その他の問題をやるということになると相当の資金が要る。これに対するはっきりした計画見通しを持っておるのかどうか、こういう点が一点です。  それに連関して問題になるのは、例の有畜農家創設資金です。これは御承知通り一年据え置き三年返還ですが、ところが一年の据え置きにならぬですね。実際は牛が入る時期がおそくなる、ところが農協を通じ信連を通じて入ってくるものは比較的金が早い、牛が入って乳が出ないうちにもう利子だけは先にとられてしまう、こういう点があるわけですね。これはどうしてもこういう点の不合理を直していかないといかぬ。それに御承知通り家畜保険というものがどこで死ぬのかわからぬけれども、純農村から見るとべらぼうに高い。御承知通り五万円で四千円、十万円で八千円でしょう、これだけとられるということになると、農家えさを買わなければならぬ、支出はよけいになった上に持ってきて資金の方の利子でいじめられる、そうして今度は保険でいじめられるということになるわけです。こういう点の改正はもちろんお考えになっておると思う。だからこの資金の貸し出しの方法なりワクなりこういう点についてどういうふうに考えておられるか、これを第一にお伺いしたい。
  11. 谷垣專一

    谷垣説明員 資金の問題は単に酪農だけでなくていろいろ全体の資金の問題を今検討いたしておるところでございますが、酪農に関して申し上げますと、ざっと大ざっぱに見まして、乳牛だけではございませんが有畜農家等関係は、酪農が大部分になりますが大体三十億くらいの金が一年に動いておるのであります。その中で有畜農家の方で動いておりますものが半分程度かと思っております。これらは系統資金あるいは自己資金等で動いておるわけでありますが、今後の問題といたしましていろいろこれに対する資金、ことに牛自身だけでなくいろいろな施設が必要になります、これらのものは十分に考えていかなければならぬと思います。現在農林漁業金融公庫によりますサイロでありますとかそういうものの資金系統と、それから農業改良資金によりますやり方と、それから牛そのものは今市しました有畜農家創設の方によります、大体こんなふうな分れ方で動いておるわけであります。これらはそれぞれその資金量をこの計画に応じましてふやしていかなければならぬと思いますが、これを別個に何か新しい金融制度に持っていくかどうかという問題につきましては、今のところ実は成案を得ておりません。従いまして現在までのやり方の量をふやしていく、かようなことに相なろうかと思うのでありますが、先ほど御指摘の有畜農家創設の問題につきましての据置期間一年、四年返還ですか、この問題も確かに御指摘のように満一年ということでなくて、貸し出しその他がおくれたがために実際は期間が短かくなっておる、こういうことがあるようであります。いろいろとそういう意見がございましたので、今年度貸し出しを満一年長くするような意味における通牒を出しまして方々にそれの督励をいたしておりますけれども、確かに御指摘のような面がございました。あるいはこれを二年に延長したらどうかという議論もございます。しかし意見といたしましてはまだ少数意見のごとき感じがいたしております。将来そういうことを検討すべきか、あるいはもう少し利率の問題を考えるべきか、あるいは償還期限をもう一年延ばした方がいいものか、これはいろいろ検討を要すべき問題だと思います。ただこの問題でそれよりも問題になろうと思いますのは、今申しました増産率そのものはここ数年実は経験いたしておる数字でございますし、それと人口授精その他の問題が今年から始めました牛乳生産量の予察の数字から推定いたしますと、この生産がかなりいい状況にいっております。しばらく前から理想的なものとして推進しております四年に三腹、四年に子供三つという考え方に大体近い数字にきております。従いましてこの程度の増産ということは私は可能だと思っております。問題はただ利息の問題その他の問題でありますが、こういうふうに酪農々々というふうにいわれますと、従来の増産率をある程度のところでいけるわけでございますが、いろいろな一種の人気で牛の値段が上ることが考えられます。従来の牛を持っておるところは逆にそれでいいわけでありますが、新しく購入する方の問題としては問題があろうと思いますので、今できるだけ各県に牛の調節のようなことをやらせております。しかしこれは法律でやるわけでございませんので、たとえば有畜農家創設の金であるとかあるいは国で貸付の牛を飼いますような場合に、それぞれ買い出しをします県、それを持っています需要県というようなものを全国的に割り当てをして、たとえば静岡なら静岡に全国で殺到してそこの値段をつり上げるというようなことのないような形で行政的な調節をはかっておるという段階でございます。結局これは現在毎年二千五百頭ずつ海外からジャージーをを入れておるわけでございますが、一つはそういう方策のほかに供給そのものをふやす以外に方法はないと思うのであります。しかし現在豪州から入れている二千五百頭の年々の牛そのもので大体豪州あたりではもう大体満員じゃないかと思われますので、あとそれではニュージーランドから持ってくるかアメリカから持ってくるかという問題がありますが、これも相当私は実現のむずかしい問題ではなかろうかと思っております。そういたしますと、終戦後牛が非常に払底しておりましたときにやったような、いわゆる二百四、五十万頭あります日本の和牛を土台にして、それにホルスタインなりジャージーなりを人口授精して、いわゆる混血的なもの、新乳牛と申しますか、混血的なものを作っていくことはどうだ、こういうことに考え方はなろうかと思います。おそらく和牛を土台にいたしましてそれに交配して二度ないし三度くらいかければ、まあ二十石程度のものあるいは十七、八石程度のものができることは十分考えられることでありますが、その間にいろいろと生まれた子供の能力の、バラエティ、幅がかなりございます。そういうような問題がここにあるわけであります。それで私たちそういう意味のブレンドを作るという問題については慎重に検討をいたしておりますが、残念ながら今の現在におきましては、そういうふうな供給増の方法をとるという確信をまだ私たち持っておりません。でありますから終戦後にやりましたようなこの方策、その若干実施いたしました結果のもののトレースをしております。この問題は要するに日本のような零細農業乳牛を入れていく。これは能率の高いものがおそらく必要になるでありましょう。役もやれる、乳も少しはとれる、えさもずっと効率的であるというようなものを必要とする日本地帯、あるいはその階層農家の経営、そういうものがどの程度幅があるかということによってこの問題は決定されると思うのでありますが、まだ先ほど申しましたように私たちはそちらの面においても実は確信は持っていないわけであります。必ずしもホルスタインの純系あるいはジャージーの純系——ジャージーの純系というのは語弊がありますが、そういうものに特に拘泥しているわけではございませんが、今のところの私たち政策としては、そこまで踏み切るまで十分なる確信がございません。ただそういう問題があるということにおいて検討をしておる、さようにこの点は御了承願いたい、かように考えるわけです。
  12. 久保田豊

    久保田(豊)小委員 今の資金の点について、利息の問題も、今の利息は少し高過ぎると思う。この点を少し考えていただくことと、それから今の二年間の据置ということが必要だ。あとは返すのは三年で大体いいと思う。特に一戸当りで五頭、十頭飼うという方式が今後そう盛んになるものではなかろうし、またこれについていろいろの点として、日本全体として農業全体を健全にしていくということからいうと問題があると思うので、おそらく従来のように一家一頭ということではなくて大体大きな農家では二頭ないし三頭、一人で大体二頭半というのが労力的にも調整のつくところのようですから、そういう基準で私はやるべきものだと考えるから、そういう点からいけば、償還期間は大体今の三年でよいと思うが、据置期間だけはある程度延ばさないと、今のような矛盾が多くなるということが一つ。  もう一つの点は、資金は農協を通じていくわけですね。これはこれでよいと思う。しかし実際の末端にいくと、牛を飼いたいような人は、そんなに農協の経営のよくないところです。農協ががっちりしておるようなところは農家も比較的裕福で、こういう資金にあまりたよらなくてもよい、やれるわけです。ところが実際はそういう牛を入れたい、飼いたいような地帯の農協は財力がない。従って有畜農家創設資金等がほとんど入らない。要するに、ほかの面から見て農家も裕福であり、農協もよいところでないと資金が入らないわけです。しかも最後は農協の理事者の個人保証をしなければ出ない。こういうためにどういうことになるかというと、牛を入れたい諸君はほかから借りるか、要するに個人借りをするか、しからずんば小さな乳業者、大きな乳業者から金を借りておる。これが乳業の一元集荷なりあるいは乳価を落す場合の一番根本になる。こういう点をもう少し何とかしなければ、いろいろな点でもって酪農組合ではうまくいかないとか、いろいろな意見はありますよ。そうして末端でも農協を中心とした一元集荷をやっていかなければならぬとか、これを中心として酪農を興していかなければならぬとかいうことになる。今の農協は米麦の上にあぐらをかいておって、そこまで積極的にやろうという腹がない。一つはその点があります。同時に今の酪農資金がほとんどそういうものとくっついてない。要らないところへ金をうんと流しておる。ところがほんとうに要るところへは、こういうところから金が出ない。従って、そういうところはますます農協もだめになる。農家の方はどうかというと、乳業資本に頭を押えられて、どうにもこうにも動きがつかぬ。そうして酪農家法律で何を作ったって足並みがそろわぬ。こういうことになるから今のようなおかしい形が出てくると思う。そこで、私は農協を中心にしてやることはよいと思う。もちろん酪農組合はそれでもって否定するものではありません。酪農組合には酪農組合独自の役割を強くしていかなければならぬと思うが、少くともこういうような経済的な実務面については農協を中心にして——農協自体もうまくいかないし、同時に酪農家もほんとうに安定した立場にいかない。それにはこの金の貸し方を変えなければだめだ。これについて今何らかの考えを持って研究されておるかどうか。この点はぜひ変えてもらいたい。  それから乳種を今後どうするかという問題は、これはむずかしい問題で、今のようにジャージーと片方においてはホルの純系なり雑系、果してこれだけの大きな規模を持って日本酪農はやっていけるのか、これが適当であるかどうかということは相当疑問だと思う。これについては私ども実ははっきりした結論がない。だから、今までのようにジャージーを一応入れた、あとはホル系でずっといくという行き方については少くとも再検討すべき段階に来ているのじゃないか。今お話の和牛等もあるいはその他の牛との混血といいますか、そういうことも一つでしょうし、あるいはもう少し違った日本のほんとうの国土に合ったような、農業に合ったような牛の種類を世界的に見つけて、そういうものを少し持ってくるということも私は一つ方法じゃないかと思うのです。その点はあとにして、今の金の貸し方、流し方についてどんなふうにお考えになっておるかということと、それから今年はさらに多分そういうことになろうと思いますが、例の国有牛の貸付三千頭ですか、ああいう程度じゃ大した効果は——これは開拓地等については相当効果があると思うのです。しかしあれを一気に全国的にやることが必要じゃないか。単に積雪寒冷地帯とかあるいは開拓地とかいうところにやるのみならず、それを貧農層の——貧農層というと語弊がありますが、小さな人たちが牛を飼うというのは、あの制度は運用よろしきを得れば私は食いつきやすいのじゃないかと思うのです。これを全般的に確保する考えがあるかないかということですね。それと大臣説明の中にあった農協を通ずる委託制度というのがあったのですが、あれをどういうふうに政府としてやるのか。農協がやるというが、おそらく今の段階では農協であれまで自力で委託制度を踏み切ってやれるという農協はわずかだろうと思う。そんな態勢が農協にはないですから、これは政府が何らかのこれに対する援助なり補助なりしなければおそらくやれないと思う。そういう点でその内容がわかったら少し説明してもらいたい。
  13. 谷垣專一

    谷垣説明員 確かに御指摘のように現在の有畜農家創設やり方というものは組合の資金を相当利用しておるわけでございますので、たとえば山岳地帯あるいは畑作の限界生産地帯と申しますか、そういういわば今酪農振興のための集落地域を指定いたしておりますような地帯のかなりの部分は、農協が必ずしもよくない地帯でございます。御指摘のように農協が貧弱であるということは非常な障害をなしておる問題でございます。これは何とかその地帯におきまする組合自体のやり方を変える、それを強くするという以外に方法はないのではないかと私は思っております。もし違う方法をとるといたしますると、御指摘のありましたようなこの三十二年度からいたしておりますような寒冷地の国有貸付の制度、あるいはジャージー地区でやっておりましたような国有貸付の制度、あるいはこれは県でやれば県でもけっこうだと思いますが、県でも一部の県では県有貸付の制度をとつております。こういう制度を実は拡大するという方向へ行くのが一つ考え方だと思います。しかし来年度の私たち予算要求等におきまする考え方は、寒冷地の対策というものは昨年と同じ程度のものを要求した、こういう程度に実は考えておるわけでございます。これはかなり作付転換等の一種の強制、というと語弊がありまするけれども、思い切って作付転換をやり、機械を入れていくという形の一種の危険を持った経営——危険というと語弊がございますが、新しい試みをやらせようという集団的な行き方でございますので、もう少しその結果を見ながらというつもりでやっておりますので、実はそれほど拡大をいたし得なかったわけでございます。ただそういうやり方のほかに全国主要な地帯におきまして、その地帯々々におきまする進んだ農家がやっておりまする経営の方法、従ってこれは畜産だけではございませんが、果樹の地帯で果樹のやり方、あるいは麦作地帯におきまする特殊な麦のやり方というようなものが進んだ農家においてはやっておる者がかなりございます。これを全国の普及事務所ごとに五百数十カ所あるようでありますが、もう少しあったと思いますが、そういうところで一つのモデル的な経営というようなものに対しまして、その中で家畜を必要といたしまするもの、そういうものには今の貸付制度のごときものをやっていったらどうか、こういう予算の構想で進んでいっております。従いましてこれは先ほどの寒冷地対策のように主として家畜から見まして思い切った輪作形態をとらせるというような形のものとは違った、もう少しバラエティの多い格好のものになって参りますけれども、従って入れます家畜も種豚というような豚のところまで考えたような格好でありますが、そういうふうな考え方一つとっておる、こういうようなことでございます。  それからなお大臣の方でお答えをいたしたと言います組合の委託貸付というのは、私も実はよく存じませんけれども、おそらく三十二年度の予算でやっております一種の中小農の対策といたして考えておりました和牛及び豚、綿羊、これらのものを組合がそのまま中農以下の農家に貸付をいたしまして、これはまあ組合貸付であります。そしてそれを共同出荷をさしてやっていこう、こういう考え方やり方を今年度からやっております。幸いこれが方々でこういう考え方なりやり方をもう少し推進しろという意見が強いものでございますので、これは今年度和牛三千頭、豚一万頭、綿羊六千頭程度計画でやっておりますが。来年度はこれを和牛八千頭、豚四万頭、綿羊六千頭、この程度の規模に拡大いたしまして、おおよそ組合に対する若干の補助金が一億近いものになるかと思いますが、こういうことでこれは進めて参りたい。おそらくそれのことを言うお話ではないかと思いますが、そういう考え方であります。
  14. 久保田豊

    久保田(豊)小委員 まだその点についてもいろいろお聞きしたいのですが、その次の問題として、やはり基本の問題は、牛なりなんなりを入れる場合の土地の問題ですね。これは何といっても基本問題だと思う。政府のさっきの御説明だと畑作で現在十八方町歩のものを大体五十五万町歩程度のものに畑作を——これは水田裏作だろうと思うのですか、水田裏作の問題あるいはイモ作の飼料化というような点、いろいろの点を考えられておることだと思う。これも必要です。特に平場畑作地帯等にはこういう点を十分に検討してやっていかなければいかぬということは明らかです。ただ私は日本酪農、特に牛を中心とした酪農経営をやる場合に、やはり何といっても一番根本の問題になるのは、現在すでに畠になっておるもの、あるいは水田裏作をなんでもかんでも平場作にするという考え方、これはやはり実際には検討を要すると思う。むろん御承知通り今非常に危機にぶつかっている政府の方としては、ざっくばらんに言えばおそらく今年選挙でもなければ値段の引き下げをやるんじゃないかと思う。けれども選挙を前にしたんじゃ、やって麦作農家というものをほっぽらかしちゃしょうがないというんでやらないだろうと思う。事実食管会計の赤字というようなものだけを中心にして見れば、そこまで追い詰められていることは事実です。しかしながら反面において農家からいえば百八十万町歩程度のものがとにかく三麦で裏作となっているわけです。しかも農家農業所得の内容からいっても、麦作というものはどうしても日本として維持というか、むしろ発展していかなければならぬ問題だと思うし、国民経済全体から見ても、今のような状態ばかりがいつまでも続くものとは考えられない。ある時期には、戦争ということはないとしても、国際収支の変動の問題とか、その他いろいろ今後経済上の大変動がくるものと思わなければならない。そういう場合に、非常に不利な条件でもって外国に食糧を依存するというようなことは、できるだけ避けていかなければならぬということは当然だと思います。そういう段階からいえば、私は麦作の放棄あるいはそれに近いような政策は、絶対にこの段階ではとるべきではない。そう考えてくると、水田裏作にしても、飼料化するといっても、ある程度限界がある。畑作の転換にしても問題がある。そうかといって、それでは今やっているような集団酪農地帯その他において、大規模の牧畜化をしたりすることも、私は無意味じゃないと思います。あるいは放牧場を作ることも無意味じゃない。しかし何といっても私がつくづく感ずるのは、日本では里山の牧草の畑ではないが、里山そのものを牧畜化するということを本気にやらないと、日本酪農はほんとうの農業経営と結びついていかない。特に今度大臣の言われるようなああいうアイデアには、結果としてはなっていかないというふうに私は思うのです。そういう場合にやはり問題になるのは、放牧地の問題にしてもあるいは粗飼料の採草地の問題にしても、もっと栄養度の高い牧草地を作っていく問題にしても、用地はいくらもあると思うのです。日本では何百万町歩というふうに調べてみればあると私は思うのです。ところが日本では御承知通り家があってその近くは大体田畑だ。その近くの山は大体において薪炭林か竹林、それでなければ黒木が少し植わっているという程度です。それから中腹の山では大体薪炭林か黒木になっている。非常に奥の方が大体採草地になっておるという状態です。ところが今までやったように、里から相当離れたところへ炭カリをまいて採草地をやってみてもものにならない。大体道路がないし、毎日々々刈ってこなければならない草を、そこまで行って刈るということはできませんし、管理もできない。私ども村長時代にそういうものを補助金をもらってやってみたけれども、全然だめです。来年行ってみれば申しわけ程度に牧草が少し生えている程度で、実際通い切れない。これに牧道をつけるということは大へんな金がかかる。大へんな金をかけてみたところが効果はないと思う。それに比べれば里山は、多少の傾斜はあっても、牛の場合でも牛の種類によっては大体二十五度ぐらいまではやれるのではないか。人の手でやる場合には四十度程度は牧草地ができる。手も足りないし、しかもそうすれば非常に生産力を上げて日本の農用地を大きくやることなんです。これに対して一番障害になっているのは何かというと土地の所有関係です。ほんとうに牛を飼いたい人は山を持っていない。牛を飼いたくない者がむしろ里山を持っていて、やりたくてもどうにもならぬ、こういうことなんです。これに対して何らかの法制的な——私はここでもって里山の山林解放をやれとは言いません。今の情勢ですからそこまではちょっと言いかねると思う。これに対して一定の基準を与えて、そういう問題を平和的に、しかも比較的容易にやれるような——これは私は法制的な基礎なりあるいは単なる行政指導ではうまくいかない、やはりこれを確立することが一番大事な問題ではないか。この問題を回避しながら牧草地を作れといっても、ところによってはできましょうけれども、一般的な日本農家では、手が届かないのじゃないかと思う。この点をどう考えておるかということと、それからそれに対して高度の栄養価を持った牧草山にする具体的な——従来程度のああいういいかげんな補助ではだめです。これは技術的にもいろいろ解決すべき問題がありますけれども、これに対してどういうふうな補助なり援助の対策を持っておられるか、これを一つお聞きしたい。
  15. 谷垣專一

    谷垣説明員 農民がまずえさの問題を考えます場合に、一番初めに取り上げます問題は、これは自分の自由になります畑なり、あるいは水田の裏作なりにどれだけの飼料作物を入れるかというのがまず最初の出発のように思われます。また事実そういう格好でかなり牧草等が急速に入ってきておる状況でございます。それでこれは私どもの指導の立場から申しますと、たとえば水田の裏作にいたしましても、あるいは表作をつぶしまして、それに輪作的に牧草を入れるという問題にいたしましても、これは米を単に牧草にかえるという意味だけで指導をいたしてはまずいと考えております。要は、御存じのように水田そのものの老朽化というものがかなりびまんしておるわけでございまして、昔のように草を刈って堆肥にして入れるというような習慣が非常に衰えております。従いまして、たとえば秋落ちの現象を示すとか、あるいはまたいろいろな反収の減という格好になって出るとかという問題がかなり顕著に出ておることは、もう御指摘の通りでございます。これを救います方法の非常に重要な部分といたしまして、そこで牧草を植える。牧草の根とかそういうものによる一種の物理的な単粒構造を増すというような効果がもちろんございますし、さらにそれに家畜を入れて堆厩肥という形においてその土地に返す。すなわち土地の地方そのものの若返りというところに進んで、農家が米をあえてつぶしまして、牧草を植えていくというところにほんとうの意味があるように感じております。私たちも水田におきまする問題を指導いたしますのに、問題の非常に重要な観点をむしろそういうところにおいて指導をしてきておるつもりであります。もちろん水田酪農に関しましては、歴史はかなりありますが、かなりいろいろと失敗の歴史を経てきております。単なる裏作だけで酪農をやるということは、私たちはむしろ危険である。水田の表作の一部分を常時えさがとれる、飼料がとれる形にしておくことが必要である。しかしそれは始終えさ畑だけにするということではない。数年たったらまた水田に返して、地方が強くなったものをやっていきたいというふうな考え方でおりますので、水田に関しまして、酪農を入れますことについて、非常に注意深く考えてはおりますけれども、水田の表作を一部分つぶしまして、牧草地にするということ自体は私はいいことだと思って指導しております。ただこれはいろいろな方面からの指導がなければできないと思います。単に畜産だけの諸君がやるということは、慎重を欠く。指導をするにいたしましても、農事試験場その他とも十分連絡をとった広い立場からこれをやるように、こういう形で指導を進めておる、こういうように御了承願いたいと思います。同様の理由から麦畑をえさ畑にいたす、あるいは麦の青刈というようなことが行われておると思いますが、これも同様の見地から私たち指導すべき理由が非常に多いと思っております。そういうことで既存の畑あるいは水田を飼料畑にいたしたり、輪作いたしたりいたしますことは、単に麦作の生産費を償わないからそれでやるというような簡単な考えだけではなくて、もちろんそれもあるかと思いますけれども、もう少し地方の維持あるいは地方の復活という形において酪農の輪作形態というものとの結びつきを持っていきたい、かように考えております。  それから御指摘の里山近くの問題につきましては、これは、これは非常に大問題でありまして、数年来土地慣行、諸権利関係というものの解明をそれぞれの大学に依頼いたしまして研究いたしている状況でございますが、これはいろいろ問題があるようでございます。と申しますのは、まずその地帯草地にいたします技術そのものに問題がございますが、これはむしろある程度解明されてきていると見ていいのではないか、問題はその草地農家の経営の中にどういうふうに結びつき得るか、逆に申しますと、草地に改良しました——たとえばトラクターを入れて、あるいはまたササを焼きましてやって参る、その当初のことがまずいったといたしましても、あとの管理がどういう形になるか、こういう問題につきましては実は非常にむずかしい問題がございます。これをどういうふうにやりますか、これが実は私たち今一番の、研究してなかなか解明のできない問題でございます。  先ほど御指摘になりましたような問題につきましては、たとえば薪炭林等の下草、これを思い切って草地改良をやってみたらいいじゃないか、あるいは遠い所の牧野と近い所の林地というものの交換をやったらいいじゃないか。これは来年度の予算要求の際に若干のものを試験的にやらしてみるつもりで要求をいたしております。もちろんこれには御指摘のように法制的なものまで行く必要があるかと思いまするけれども、今の段階におきましては、実情と、そういうことをやりました場合、あとにおける管理の問題というものが実はまだなかなかできていない、というよりも確実な見通しがない、こういうことが真実ではないかと思います。  それから、奥山におきまするたとえば牧野の改良にいたしましても、放牧という形でこれを改良していく、今むしろ過放牧になっておると思いますが、これを来年度やってみようと思っておりますが、これもやはり管理の問題でございます。遠い山におきましては、ある程度強い管理制度というものが必要でなかろうかというので、県が一種の牧野管理をするような形においてコントロールしていく方式を、全国で四カ所程度大規模なものをやってみたらどうか。里山のやつは、これは組合なりあるいは町村営のような牧野をやっておりますけれども、その後の管理の方式におきましてもう少し何か考え方があるのではないかというふうに実は考えております。来年あたりはそれの初歩的なものをやってみて、制度的な問題の研究を依然続けていく、このような段階ではなかろうか、かように考えて実行いたしたいと思います。
  16. 久保田豊

    久保田(豊)小委員 今お話のあったように、これはあらゆる面から見て非常にむずかしい問題です。むずかしい問題だけれども、これを何とか解決しなければならぬ。特にそういうところばかりじゃありませんけれども、大体において山村地帯というのは非常に貧困ですよ。そしてまた耕地面積も非常に少い。そういうことで、今まではかなり牛が入っているのですね。そこでもってちょっと乳価飼料関係が狂ってくれば、すぐに連中は参ってしまう、こういうことなんですね。そういうところへ行ってみると、もう家の裏からすぐ薪炭林になっている。八年から十二年くらいたって、まず原木でとるとして、よくて大体八十俵でしょう。ことしあたり非常にいいといっても、一番いいところで大体において二百円というところでしょう。そうすると、正直いって年に一反歩当り千五百円とるというのがせいぜいですよ。こういう経営の中におるから、山村というのは非常にあれで、耕地としては拡張できない。そういうものを、土地関係や何かを調整をし、そういうところを——これは畑という観念ではなくて、私は畑とほんとうの原野との中間みたいな管理でいいだろうと思う。それでなければ労力の配分もうまくいかない。その程度のものでいけるのじゃないかと思うのです。そういうところは全国農村を歩けば至るところたくさんあるのです。大規模のものは少くとも、小規模のものは幾らもある。農民諸君とよく話してみると、それはやりたいということを言っておるのです。言っておるけれども、とにかく相手側に地主があるので、地主が承知しなければどうにも手が出ない。そうかといって地主対そういうやりたい連中がまともにぶっつかれば、やっぱり農地改革のなごりその他があって、地主側の方で警戒して、損得抜きにしてこれを承知しないというふうな場合が非常に多い。従ってすぐ来年からこれを法制化しろというのは今の段階では無理ではないか。だから一、二年の間にしても何らかの法制的な基準を与えて、そういう山を持っておる山地主にもある程度の満足を与えながら、しかもそういうことを部落なり村でも計画的にやっていけるような態勢、従ってそういう土地問題のごときも、農業委員会なりあるいは村なりが中間に立ってやるような方式というものを——交換の場合もあるでしょうし、あるいは払い下げ、売り渡しの場合もあるでしょうし、同時にあるいは長期の安い小作料ということもあり得るでしょう。こういういろいろの点を考えながら早急にこの問題にもっと農林省としても積極的に乗り出してもらいたい。そういうかけ声がかかれば、町村あたりでもある程度やろうという空気はないのじゃないと思うのです。ところが県の段階でもどこでも、そういうところはなかなか手が出せない、地主にぶつつかってやるということは。もう一つ国有林なり県有林を直接牧草地にするなりあるいは放牧地にするという問題もありますが、それとやっぱりこういう点のかえ地なり何なりとの連関を持たせないと、問題の解決はうまくいかないのではないか、こう思われるのです。こういう点について、今度は土地調整室とかいうものが農林省の中にもできて、そういう点の調査をされるそうですが、大体において、ともすると大規模のところばかり目をつけるのです。日本でもそう大規模のところは——役人としてはその方が仕事としてはおもしろいかと思う。しかしながらやっぱり日本の農民の立場から見れば、小規模で、二町、三町というところでもこれをやられるように早急にこの点については実際の実験も進められると同時に、法律的その他のいろいろの問題についての研究を早急に進めてもらいたい。そうしていろいろ農林省の中で研究するだけでなく——おそらくいろいろの失敗もあるでしょう。しかしながら本気にやるということになれば、町村なり何なりの段階で、中央並びに府県町村が一体になってやる気になれば、ある程度解決のできる問題であるというふうに思うわけです。この点を一つ真剣に考えて、具体的に進めてもらいたい、こう思うのです。  その次は何といっても濃厚飼料の問題ですが、この濃厚飼料の問題については、今お話のあったように、いろいろ自給飼料をだんだん増していくということにより、あれだと思いますが、何といっても今のように濃厚飼料が高くては、しかも全体の傾向としては、年々高くなる。肥料の方はわずかながらだが年々少しずつ安くなる。ところが濃厚飼料は年々高くなり、乳価の方はどうかというと、大勢としては年々安くなるし、しかもこういうふうによけいに牛を飼ってやるということになれば、ますます安くしなければ、何といったって売れませんよ。そういうことになると、濃厚飼料の処理の問題というものは非常に大きな問題になると思うが、今やっておる程度のあの方式でうまくいくかどうかということです。これは大体麦粉なり、あるいは麦の処理というものを根本からしてこないとだめじゃないかと思うのですが、これについてはどういうふうに考えて手を打たれるか、お伺いしたい。
  17. 谷垣專一

    谷垣説明員 濃厚飼料の問題は、畜産局といたしましては、実は反鶴動物はまだ割にやりいいのであります。海外から輸入いたしますえさに対する依存度の非常に高いのは鶏でございます。むしろ反例動物は割合に処置のしやすい部類に入っておるのですが、それにいたしましても必要なふすま等の問題があろうかと思います。でありますから、この問題はやはり自給飼料の部門を強化する、これが本則だと思います。がしかし、それに対してふすまを主眼といたしましたいわゆる糟粕類が必要であると思います。それが日本畜産の現在のごとき段階におきましては一番重要な問題だと考えておりますけれども、たとえば、日本の主食はやはり米でございますので、小麦を粉食いたします場合に出て参ります糟粕類というものは非常な差がございます。これは米ぬかは少いのでありますが、ほかの糟粕類はかなり多い、そういう問題もございますし、やはり主食とそれから出て参ります糟粕類との関係が海外の状況とはすっかり違うわけでございます。そこにどうしても一つの問題があります。大勢はやはり生産費の安い型でいける、しかも自給飼料草資源等が開発できるところということにならざるを得ないだろうと考えるのでありますが、しかしそうばかりも言っていられないわけなのでありまして、この麦の価格が安くなればえさは安くなる、そこにむずかしい問題があろうかと思います。麦そのものが安くなれば粉食は進みましょうから、従ってそれだけふすまがふえるわけでありますが、麦価をそう下げるわけにいかない。といたしますならば大きな目から見てどうしてもそこに限界が生ずる、かように考えるわけであります。従ってそういう限度においてものを考えて参りますと、先ほどの自給飼料面は別にいたしまして、やはりふすまを代替する方法はないか、こういう問題にならざるを得ないだろうと思います。一つは、ふすまの代替をいたしますような反例動物において必要でありますたとえば尿素をどの程度まぜるか。尿素をまぜればふすまのある程度の節約になることがわかっておるわけであります。ただ増量しますれば危険度があるという点において心配があるわけでありますが、これらの配合飼料その他を普及させる方法一つあろうかと思います。これはすでに実施に入っております。  それから、これもすでに試験工場の段階から進んで参っておりますが、アルコール廃液を酵母化いたしまして蛋白を作ってふすまの代用にする、さらに東洋紡その他で大きく始めましたが、パルプ廃液を利用いたしましてやって参る、これは汚水の防止にもなるわけであります。そういうような研究をこの数年続け、あるいはそれに対して補助も与え、試験工場的なものから現在大きく進もうといたしておりますが、そういうようないわゆる新飼料源というようなものの発見——幸いに微生物の方面の科学的な発展が進んで参っておりますので、それを利用いたしまして微生物による、廃棄物あるいは今まで顧みられなかったものの蛋白化ということを実施していく、こういうことが一つ対策でなかろうかと考えております。  ふすまそのものとして考えまする考え方といたしましては、これは御存じのようにふすまを直接海外から入れるということは、運賃その他の関係でなかなか割高になる点がございますが、これはやむを得ず入れるべきものはうんと入れなければならぬということで計画を立てておるわけであります。そのほかに低質小麦をかなり入れまして、そしてこれが横流れ等をしない状況のもとにおきまして、それからふすまの国内増産をさせるというような形をやっていく必要があるのではなかろうか。そのためにはほかへの横流れ等を防ぐような意味から専管的な工場を指定して、そして低質小麦のふすまを——つまり小麦の歩どまりではなくて、ふすまの歩どまりをうんと高くした格好、あるいはことによれば全部それを粉砕してふすま代用にさせるというようなことも考えて実施する必要があるのじゃなかろうか。そういうようなことで、これは食糧庁の方とも御相談をいたしまして、現在実施に移す予定のもとに、工場立地、その他、工場の指定をどういうふうにするか、こういうことで進めている状況であります。
  18. 久保田豊

    久保田(豊)小委員 いろいろ新しい飼料の造成とか今の低質小麦の問題とかありますが、この問題の一番根本は、結局今のように大体麦の方が一貫目百四、五十円でしょう、それで最近のふすまは、製粉工場がよくなっているから、飼料としてはほとんど悪くなっている。そういうものが百五十円もするというような格好で、ここに問題があると思うのですよ。だから、今のように麦粉で損したやつをふすまにかけるというやり方を根本に改める、これは食糧価格の基本の問題に触れてくるわけですね。これを改めない限りふすまは安くなりっこないと思うのです。今のように原料麦を製粉屋へうんとおっつけて、結局持ち切れないからどんどん出す、競争でもって原料価格は一ぱいになっていて競争で下の方はくずれてきてある程度食い込む、食い込んだやつはふすまの方へみなぶっかける、こういう行き方を是正する方針をはっきり立っていただくことが私はやはり根本かと思うのです。今のように政府がわずかなものを手持ちをして、それでもって調整用なんといっても価格調整の役割はほとんど実際はしないのです。大体、どう考えてもふすまがあんなに高いはずがないと思うのですよ。とにかく原料の麦を粉とふすまに分けた場合に原価計算をしてみればあんなにふすまが高いはずはどう考えたってない。おそらくこれは製粉屋なり、あるいは政府もそれに便乗しているのじゃないかと思うのだが、結局粉の方で損したやつをふすまで穴埋めしろという方針をとっておられるからそういうことになると私は思う。この点を一つ根本的に改めていただきたい。これはむずかしい問題です。今の食糧価格政策といいますか、それを前提として考えられると非常にむずかしい問題だと思います。簡単にはいかないのですが、しかし少くとも農林省としてはこの点に着目をして何らかの基本的な解決策を講ずるように、いずれそういうことの具体的なことについては来国会あたりでいろいろ御相談もし、あるいは議論もしたいと思いますが、問題はやはりそこにあると思いますから、この点を十分一つお考えいただきたい。  芳賀さんが見えられましたから私ぼつぼつやめますけれども、一番問題はやはり当初に話されたような乳価をどの程度にするかということですね。あなた方は、この計画によって、年々こういう計画が軌道に乗ってくれば、要するに飼料の自給化なり何なりができていけば、乳価も基本の原価をある程度下げるというお考えでしょう。それにしてもさっきお話のありましたような、たとえば政府乳製品のストックを一応たな上げをしてこれの利子補給なり倉庫料を全部持ってやって、いわゆる乳業資本の肩を軽くしてやるとかあるいはそれと基本的には同じ構想でしょう。酪農振興基金というものもできておるし、それとほとんど似たような機能しかしないので、こういうことでは私は乳価の安定というものはなかなかできないと思う。この大資本の、現在でもそうです。ところによって違うでしょうが、私の方あたりは明治、森永は四十七円という線を大体において出しておる。ところが同じように不二家はどうかというと、五十八円で買っておる。同じ砂糖を使って乳製品を作るところでも、片一方は五十八円で買って引き合う。片一方は四十七円でも引き合わない。この次の段階においてはまた値下げをすると言っておる。市乳原料乳との間に相当開きがあることはわかります。わかるが、その原料乳自体でもこういうふうなことをやられると、これはストックや何かもいろいろあるでしょうけれども、全く何が値下げの原因かということはほんとにわからない。同じような乳製品を作っておるところが、一方は五十八円で引き合う。一方は四十七円でも引き合わぬから、また近く引き下げるのだというのでは話にならぬですよ。全国的に見ればそういう問題がある。問題は、それに何といっても乳業資本のいわゆる買いたたき——買いたたきの基礎が作ってある。さっき言ったように、あっちこっち要所々々に導入資金を貸して、そしてその導入資金の貸付係は何かというと、酪農組合の幹部ですよ。この連中はみなそれによってうまい汁を吸う。そういうことをやっておるわけですから、これに対するはっきした防止政策というものを考えずに、今のような酪農振興基金にしても、今のたな上げ政策にしましても、私は結局この程度のことでは、今言ったように五年後には百二十万頭牛が出て、千二百万石以上の乳が出てくるという場合に、これはますますひどくなるに違いない。これに対してどういう政策をとるかということが、今後やはり基本的にお互いに研究しなければならぬ問題だと思う。これは実際には非常にむずかしい問題です。しかし何とかしてそこをはっきり農林省としても、もう少し徹底した考え方を私は持っていただきたいと思います。  もう一つ問題は、言うまでもなく、これは今のように農家が五円くらいで出した市乳が町に来ると十五円だ。こういうことではとうてい消費も伸びっこありませんよ。実際には都会でも相当牛乳を飲みたい人が多いのです。ところが家族五人でパン食を一回やるというところでも、その一回のパン食のときにはみなが牛乳一本飲みたいのです。ところが今買うのを見ていますと、大体二本で間に合わしておこうとか、あるいは一本は家族に買って一本は乳児用に買うということをやっておる。どこに問題があるかというと、十五円というところに問題がある。この中間の経費を市乳関係ではどうするかということですね。しかもこれにはやはりよほど徹底をした、農家の方も自覚を持たして自覚してやれるようにしなければいかぬと思いますが、これに対して政府法律的にも、あるいは資金の面でも、施設の面でも、相当私は積極的な援助策を講じないというと、この問題は解決しない。少くとも今の段階では、五円で出したものが、都会の消費者の口に十円以上で入るというくらいにしなければ、なかなか消費は伸びないのじゃないかというふうに思うのですが、今さしあたりの対策を聞きましたけれども、この二点について、これだけの大きな計画がある以上は、これに対してはっきりした計画を持たずにやれるわけがないと思うから、この点についてどういうふうに考えておられるか。  それからもう一つはことしは学校給食生乳を回したということは、私ども年来主張していることで、私は非常にいいことだと思います。伝え聞くところによりますと、政府の方から大体において一合について四円程度補助を出してやるということです。これも私はいいと思うのです。そこで問題はこれを業者にやらせるのか、生産者の組合なり何なりにやらせるのか、どっちでやらせるのか。一本にはいかないにしても、この点相当の困難があっても、けじめをつけてやらないと、学校給食をやったことが結局業者のもうけの土台になってしまう。この点でできるだけ生産者と消費者の関係を——これも技術的に非常にむずかしい問題があります。特に一番むずかしい問題は何かというと、日曜とかあるいは休みの場合の乳が余る。その場合に、これを生産者の団体にやらせれば、市乳業者と明治、森永、ああいうところは必ずじゃまをする。じゃまをして、そういうときに余った乳の処分を処置なしということにさせると、結局困るということがあとで出てくる。今までの経験からいえば必ずします。しかしそういういろんなじゃまは出てくるでしょうけれども、これは大都会の場合と地方都市の場合あるいは農村における学校給食の場合と態様は相当違ってくると思います。しかしこの点は、生産者の団体もしくはそういうものを中心とした学校給食態勢というものをぜひこの際作る必要があるのじゃないか。この点をはずすと、おそらく今言った五円のものが十五円だという態勢、それから乳業資本が牛乳がよけいになればなるほど買いたたくという態勢、結局これをくずさない限り、今言ったような計画というものはなかなかなり立たぬじゃないか、こう思うんですが、これらの点についてどう考えているか一つ
  19. 谷垣專一

    谷垣説明員 いろいろむずかしい問題があるわけでありまして、先ほど申し上げましたこれらの増産計画、あるいはこれに対します需要、こういう大筋を立てまして、今申したような諸点につきましても、今後種々検討を必要とすると考えるのでありますが、まず一番問題は、いわゆる生産者団体と申しますか、その力がだんだん強くなっていくこととは思いますけれども、現在の段階では、残念なことにまだ生乳の適正な取引と申しますか、せっかく酪農振興法その他で規定をいたしておりますけれども、基本的な生産者団体の強化あるいは団体協約という形自体が実はまだできていない状況でございます。今の段階では、そういう生産者の団体というものが非常に強く乳業会社等に依存いたしておりました格好が、逐次農民自体の立場において発言をするし活動もする、こういうような態勢がやはり遠道のようでありますが進められるのが、一番正しいし近い道ではないか、かように考えるわけであります。その基盤が実は残念ながらまだ十分にできておりません。それがいろいろな対策の基本的な問題ではないかと考えておりますので、そういう線をできるだけ今後推進していく必要があるのじゃないか、かように考えておるわけであります。  あとミルクの問題につきましては、毎日出るものがどこかに集められていかなければならないのでありますから、非常な競争が行われているところは別にいたしまして、やはりしょっちゅうそこへ安定した形で集まるということが問題になって参ります。それで片方の力が非常に強くて、片方がそれほどでないという場合には、力の強い方の言い分がかなり無理な意見でも通るこういうことがあろうかと思います。しかしそれらの点も考えてみますと、生産なり消費なり流通なりの面を、それではすべて法律で規制いたしましてやっていくか、こういうことにまで話が進んでいくと思いますけれども、それは現在のところでは、言うべくしてなかなか行われない状況でございますので、やはり今申しました生産者団体等の自主的と申しますか、そういう形のものを強化していく以外に適切な方法というものは、なかなか現在の立場においては見つからない、こういうことでないかと思うのであります。  それから学校給食の問題は、御指摘の通り生産者団体等がこれをやっていくということは私たちも大賛成であります。ただ、二十九年等の例から見ますと、そういうことをやらせることが結果的にいいか悪いかということはいろいろ問題があるようであります。果して生産者団体がそこまでいき得るかどうか。私たち指導の方としましては、生産者団体は直接学校と話し合いができる場合はそれをやりなさい、必要な施設があれば金融公庫なりその他のあっせんを受けてやりなさい、かように言っておるのでありますが、そこらのところは、学校当局あるいは現実にミルクを出します者、あるいはそこへ毎日集めにきます業者があるならばその業者との関係等現実の問題として考えてやっていくことがいいのじゃないか、かように思っておるわけでありまして、業者を排撃して組合がやりなさいと言うことは、現実の状況から見て、両者ともに必ずしもいい結果にならないと考えておるわけであります。しかし、それは決して業者が優先しろとか何とかいう意味を申し上げているわけではないのでありまして、実状に即してそれぞれの話し合いを進めなさい、こういうことを、生産者団体の方にも、また県当局の指導いたします諸君にも話をいたしておる状況でございます。  それからお話がございました酪農振興基金とかあるいは現在、タブついている在庫品に関してのたな上げの問題でございますけれども、在庫品たな上げ等の問題については、大きな業者はそれを十分に持ちこたえる力があるかもしれません。ただ問題は、中小企業の諸君であるとかあるいは協同組合で乳業をやっておる諸君とかいうところがなかなかむずかしいのでありまして、私たちは乳を預かる場合にはそういうところを優先的にやりたいと考えておるわけであります。また幸い二十九年ほどの状況ではございませんけれども、どこか一角がくずれるとどうしても非常に状況が悪くなりまして、そのことがすぐに農家乳価に非常に悪い影響を及ぼしますので、それを防ぐ意味において政府の指定したところに共同出荷をするという政策をとったわけでございます。酪農基金の問題についてもいろいろ議論があろうかと思います。しかし問題の見方を変えて、生乳取引というものは、乳業者の方にも責任があれば生産者団体なり農家の方にも責任がある、両方ともに責任と義務があってそれをやっていくんだ——それも一カ月ごとのような変動の激しい乳価協定をやるのではなしに、長期間のものをやって参りますための裏づけをやってやらなければいかぬのだと思います。どちらが利益を得るかということは軽々に言えないことだろうと考えるわけであります。問題は、その運営と生産農家の団体なり農家というものがどれだけ結集されて発言してくるか、こういうところではないかと思っております。ただ制度が早過ぎるという議論があるいはあるかもしれません。しかし現実に乳代の遅払いとかそういう状況が起きました場合に何かそういう補強策がなければやっていけないので、こういう基金を作ってそれを適正な取引を遂行していく上の補強策にしたらどうか、こういうことで検討を進めていきたいという考え方であります。
  20. 久保田豊

    久保田(豊)小委員 大へん現実的な現状のどこともあまりぶつからぬような対策で、農林省としては楽だと思うのです、あっちからもこっちからも文句が来ない行き方で……。それが現実に合っているかもしれぬが。しかしそういう態勢では、五年後に百二十五万頭の牛を飼って千三百万石程度の乳が出るというときに、生産者の価格の面からの保護ということはほとんどできません。私は時間がありませんから今ここでいろいろ具体的な問題について検討しろとは申しません。しかし、学校給食というような問題については生産者と消費者の直取引ということを基本の考え方にして、そうして安心してやらせるような方向政府がこれを保護し援助することが何としても根本だと思うのです。それでないと、やれるところはおやりなさい、そのとき必要な資金は援助してあげましょう、そうでないところは業者がやってもいいということになれば、今どうなっているかといえば、森永が十石くらいになるまでは市乳業者にやらせておいて、十石になると取ってしまう。そうして乳がうんとできるとどんどんたたく、これは日常至るところでわれわれ見ておるのです。学校給食は技術的にもなかなかむずかしい問題があると思いますが、ここで政府は相当大きな犠牲を払って、今年の過剰乳の対策でなく、当分の間これを全国的に及ぼすという立場においてこの問題と取り組まれることが必要である。そういう点から、順序はありましょう。一気に全部生産者と消費者と直取引ということにはならぬかもしれません。しかしながら、基本の考え方はあくまで生産者と消費者の直取引を少くとも学校給食の面から実行していく線に立って、それに必要な援助なり補助を政府がしっかりやっていく。そうしてそこから出たいろいろな経験なり問題を整理して、なお将来においては——私は今の市乳販売業者を全部排撃しようとは思わない。けれども今のように、とにかく五円なり幾らで出したのが最末端の消費者の口へ入るときは十五円なんというこんなばかなやり方をそのままにしておいては、いつまでたっても日本酪農は育たない。さっきお話になったように、だんだん消費性向も変ってくるし所得もふえてくるが、全体の所得はどうか知らぬが、必ずしも牛乳を飲みたい諸君の所得はそんなにふえておりません。そういう点から見て、大きな資本の買いたたきの問題、横暴の問題と流通過程の合理化、その合理化というのは生産者と消費者を直結させる、こういう基本線で具体策を考えていただくことがぜひ必要だと思う。今の御説明は非幸に円満な、どこからもあまり文句をいわれぬ穏和なお話ですが、それではどうにもならぬ。もう少しつっ込んだ強い政策を、ある程度障害があってもぜひやってもらいたいと思う。  それから最後にもう一つ酪農組合、生産者団体を強くするという問題、酪農組合と農協との関係、これについてはいろいろ考え方があると思います。しかし今酪農組合は全く大資本の下請機関みたいになっているのが大部分です。これではどうにもならぬ。いろいろな不平が下からも出ております。しかしながら、今の段階ではなかなかほかの気ままなやつをはねのけるだけの統制力が、幹部にないのが実情であります。下からいろいろ問題があります。それについては計画面で自主性を持たして長期の安定計画をやらせる、これも一つ方法でありましょう。しかしこれだけで私はいくものではないと思う。やはりこれには一つの大きな裏づけが必要です。そこで私はこれについてはぜひ今の農協関係の——農協関係というのは、所によっては少しやっておるところもありますが、大体中央においても県においても末端の農協においても、実際この酪農問題については全く消極的です。もうからないからというのではなく、危険があるから、あるいは経験も十分ないというようなことでしょう。けれどもこれについては当然農協側の行政指導だということになりましょうが、要するに酪農団体と農協との関係をどう調整するかという問題、農協にもう少し積極的にあらゆる面でやらせるように政府指導すると同時に、農協がやりいいようにやる必要があるのではないか。今どこでもちょっと進んだところでは、末端で農協による一元集荷、多元販売ということを盛んにいっております。ところがほんとうに手をつけたところがあるかというとほとんど手をつけない。これはつけられないのです。今そんなことをやったらとにかく中央会の監査なり県の監査にひっかかって実際えらい目にあいますよ。そういう面から農協の運営といいますか、指導の根幹という新しい問題を——これは酪農だけではありません、ほかの問題でもそうですが、こういう新しく農業が切りかわっていこうというときに、実際には農協がこれに即応してやれるような態勢になっておらぬし、またそれをしようとしておりませんよ。たとえば私の近くでも、あるサツマイモ地帯のところで、サツマイモで今まで澱粉を作っておったけれども、ことしは澱粉はどうもまずいからというので澱粉を作らない、そうすると原料イモが余ってしまう。ところがここでは相当前から豚を飼っていて、この原料イモ消費のために豚を急速にふやしたいというので、基礎があるから借款を申し入れた。ところが上からおこられたといって貸してくれない、こういうような問題でごたごたしております。ことにこの酪農の問題については全く消極的です。これは私は政府指導の仕方が悪いと思う。同時に、そういう点でやりいいように仕向けていただくことと、この面について、今のように米麦の上にあぐらをかいたような農協をそういう方向へ切りがえるように特別な方策、この問題はことしからすぐというわけにはいかないと思うのですが、少くともこれだけ大きな計画を五年間で実行していこうというからには、これに対するはっゆりした基本的な政策を立てて、順序をとって実行することがぜひ必要なことになってくると思うのです。この点についてはどういうふうに考えていますか。
  21. 谷垣專一

    谷垣説明員 問題は二点あると思うのでありますが、一つは農民の生産段階から消費者に渡ります段階までの経費の節減と申しますか、あるいは生産者から直接に消費者へという方向にいったらいいじゃないかという問題であります。こういう問題はすでにある程度協同組合生産者団体の陣営では議論されているところであります。その適例を申しますと、全販連がかつて乳製品の工場等を持ちましてその仕事をやって参ったのでありますが、どういうわけかそれを放棄いたしております。おそらく経営がうまくいかぬのが理由だろうと思います。あるいは協同組合の組織でやっておりましたものが、どういうわけか会社組織に編成がえをする、こういうような状況も出ております。また中には協同組合の組織でかなり最新式の機械を入れた設備を持ってやっておる地方的な例もございますが、しかし大きくなりますと、いつの間にか会社組織になる、あるいは協同組合組織を放棄してしまう。これは私は役所が指導したとかしないとかいう問題ではなく、協同組合内部の諸君がいろいろと検討した結果そういうようになっておる、ここに問題があると思うのであります。それはどういう理由かということをやはり私はとくと吟味しなければいけないと思います。とにかくそういうことの問題は非常にむずかしい問題があろうかと思いますが、生産から流通それから消費と、この段階におきまするそれぞれの経費を節約して、そしてできるだけ豊富で安くやることが、生産者にしもて消費にしても、両方ともの利益になることだと存じます。その一つといたしまして、酪農地域のような集団飼養、あるいは工場の経費を節減いたしますための大規模工場を設立する、それには集団飼養の地域をきめる、こういう格好に生産と加工の部面は一応考えを整理しておるわけでありますが、ことに市乳の問題の場合におきまして、生産者、その加工段階——消毒の問題でありますが、集乳して消毒して、そしてそれを消費者に渡します段階、いわゆる小売商と申しますか、牛乳を扱っております専売者、要するに配給組織のところに一つの問題があろうかと思います。これは非常にむずかしい問題で、ほかの商品にいたしましても、消費をいたしております各戸の家に毎日毎日朝早く配達してやっていくような商品、これは非常にコストがかかるものであります。よく似たものに新聞もあろうかと思いますが、とにかくそういうやり方をやっております間は、いろいろやってもなかなか問題は解決できない問題が多かろうと思います。何か別個の方法、たとえば集団的な需要というものを開拓していく、それができるだけ直結して近いルートで動いていく、あるいは各戸に配達いたしますような形式ではなくて置き売りをするような形式でやるとか、あるいは消費者の方から組織を作っていただいてそしてその経費を少くする生活協同組合運動と申しますか、そういうような形における態勢が整えられるというようなことがやはり問題になるのではないかと思います。配給者のマージンでありますとか、そういうようなことを犠牲にするというようなことは、ちょっと今考えられない状況でございますから、どうしてもやはりそういう違った形においてこれをどうやるかということをせざるを得ないのではないか。これは私たちもそういう方向にできるだけの道を開きたいと考えておりますが、これは御存じの通りなかなかむずかしい問題が多数あります。しかしそれはその問題を解決しなければやはり問題は解決しないのでありまして、いわば今まで生産者の諸君はどちらかといえば乳業者ミルクを渡してしまえばそれで仕事が済んだように思っておりますけれども、こういうふうに需給のアンバランスが生じますと、それは実にすぐ生産者自体の問題に返るわけであります。生産者も末端需要の拡大に対しまして、もっと関心の持てる形における何らかの消費拡大をやっていく必要がある、かように考えております。具体案ということになりますと、今言いましたような工場でありますとかあるいは職場の配給であるとか集団飲料、それから配達しない、いわゆる置き場のついた販売あるいはまた生活協同組合運動というようなものの発展を期待する何らかの方法が必要だ、こういうルートをどうやっていくかということだろうと思います。それから学校に対しまする給与の問題は、これは私たち生産者団体が学校と直接話してやっていかれることはもちろん賛成であります。ただ来年の一月からすぐに二百万の学童にやっていくという態勢をやらなければならぬ段階におきまして、そのことのみを言うていてはとても事態に対処できない、そういうことで申し上げておるわけであります。できるだけその中間の経費を節減して豊富なものを安く渡すということについては、もちろん何の異議のないところでございます。
  22. 石坂繁

    石坂委員長 芳賀貢君。
  23. 芳賀貢

    芳賀委員 酪農問題と澱粉問題をお尋ねしたいのですが、もう時間の都合で酪農問題については次回の小委員会でお尋ねしたいと思いますが、ただ資料要求の意味において、最近北海道におけるジャージー種のブルセラ病が非常に蔓延して憂慮すべき事態になっておるので、この病源の日本に入ってきた経緯とか——これは特に今年の四月に導入されたのに多いわけです。そうなるとおそらく機械開発公団がこれを買い付けて、そうして現地に渡したというようなそれになるわけです。こういう経緯等については畜産局において十分調査なすっておられると思いますし、またこれに対する緊急対策あるいは今後の蔓延の防止対策等についても遺憾のないような措置が講ぜられることと思いますが、こういう点に対して次会の小委員会までに詳しい資料をいただき、並びに当局の対策等に対してはその機会にお尋ねしたいと思います。  次に澱粉の問題でありますが、これは特にバレイショの澱粉を主体にして申し上げますが、食糧庁の事務当局としての見解をこの際明らかにしてもらいたいと思うわけなのです。今年度のバレイショ澱粉の決定の経緯は言うまでもありませんが、結局原料イモの場合においても昨年に比べまして一貫目一円安、それから未粉澱粉につきましては十二貫一袋について百四十円昨年よりも引き下げを行なったわけなのです。その理由のいかんはここで論ずる必要もありませんが、結局そういうような大幅な価格引き下げをやった今日において、さらに澱粉等の価格が政府が支持された価格よりも相当下回ったような場合においては、年内においても政府が買い入れる措置を行うというようなことについては、これは十月二日の農林委員会の農産物価格に関する小委員会において、本名政務次官から明確な意思表示があったわけなのです。現実の問題といたしましては、北海道の現在のバレイショ澱粉の価格は政府の支持価格より相当下回りまして、産地におきましては大よそ十二貫一袋で千八百五十円程度ということになっておるわけです。そうなりますと一袋について約百五十円から百七十円くらい価格が下回っておるということになっておりますので、この事態をそのまま放置しておくということは許されないと思うわけなのです。このような事態に対しまして食糧庁当局としてはどのような具体策を持っておられるか、その点をお尋ねします。
  24. 松岡亮

    松岡説明員 ただいま北海道のバレイショ澱粉の価格の問題について御質問でありますが、確かに北海道の小樽の取引所における澱粉の価格は、先月二十五日の相場では十二貫について千八百七十円程度に下っておるのであります。その後やや持ち直しまして、三十日には千九百七十円、今月五日には二千円と、少しずつ持ち直しておるやに見受けられるのであります。今後の価格の推移は実を申しますと、今のところ的確に予測いたしかねるのでございます。一般需給につきましても、まだ本年度産のバレイショ澱粉についてどのくらいの生産があり、どれくらいの消費があるということにつきましては、ちょっと今的確に申し上げることはむずかしいのでございますが、ごく大ざっぱな見方といたしましては、カンショ澱粉につきましては昨年よりずっと窮屈になると考えられますが、バレイショ澱粉につきましては、北海道のイモ生産が昨年よりかなり上回っておりますし、澱粉生産が、昨年と同じ程度澱粉のための消費とみなしますとやや昨年よりバレイショ澱粉の供給が増加するというようなことで、需給一般に弱保合ではないかというふうに考えられます。従いましてカンショ澱粉の方はともかくといたしまして、バレイショ澱粉につきましては、今後政府が買い入れなければならないという事態が起るかというふうに考えておるのでございますが、何分にももう少し事態の推移を見ました上でないと、いつ買い入れを始め、いつからどういう措置をとるということにつきましては、今具体的にちょっと申し上げかねる状況ではないかと思います。いずれにしましても生産者団体の自主的な調整をまずやっていただく、その上で政府が買い入れる。例年は大体二月から六月までの間に買い入れることにしておるのでありますが、事態によってはできるだけ早くそういう措置をとるということでいくことになると思います。
  25. 芳賀貢

    芳賀委員 今松岡さんの言われた、最近の小樽の相場は市況が好転しつつあるという点は、これはおそらく本名政務次官が先般北海道に参りまして、年内に三十万袋、三百六十万貫、必ず買い上げを行いますということを言明しておるのですね。これは非常にいい言明だと思うのですよ。そういうことがやはり一つの原因となって、年内に必ず政府の買い上げが行われる、そういう明るい見通しのもとに小樽市況等も好転しておるというふうに、好意的に見ておるわけです。その点の政務次官あるいは農林大臣のそういう政治的な意思表示、それを裏づける事務当局が、それと同じような考えのもとに作業を進めておるかどうかという点は、若干疑わしい点があるわけです。それで私は特にこの際事務当局としての見解というものを明らかにしてもらうことが非常に大事だと思うのです。従来の例を見ますと、今言われた通り年が変って二月ごろから買い入れを行うことになっておるので、これが政府の示した期間、年内に買い上げをするということになると、十一月なら十一月から開始するという期間を明示しなければならないわけですから、そういう用意が果して今あるかということも、大前提として非常に大事な点であると思うので、その点はいかがですか。
  26. 松岡亮

    松岡説明員 本名政務次官が北海道でどういうふうに申されたか具体的には伺っておりませんが、北海道におきましてバレイショ澱粉の値段がやや弱いというようなことから、多少でもそれを支えるような意味でお話があったのだろうと思います。その点につきましては生産者団体の自主的な調整の段階政府の買い入れの段階と、段階が二つあるわけでございまして、生産者団体の自主的な調整によってもかなり目的を達成し得るということも考えられますので、政務次官はそう厳密にお考えでなく、そういうふうにおっしゃったかと思いますが、私どもとしては、生産者団体の自主調整からまず始めたい。それは最近の状態からいたしまして、今後の推移も十分勘案いたしまして、すみやかに検討を始むべきではないか、かように考えております。
  27. 芳賀貢

    芳賀委員 その生産者団体の自主調整の問題ですが、これはすでに全販連がカンショあるいはバレイショ澱粉の調整計画を提出してあると思うのですが、それはどうですか。
  28. 松岡亮

    松岡説明員 目下のところまだ全販連から調整計画の提出はございません。
  29. 芳賀貢

    芳賀委員 全販連から提出がないという点ですが、これはどうですか、松岡さんの見解として、カンショバレイショ澱粉の調整を行う生産者団体の規定ですが、必ず全販連でなければならぬか、あるいはまたバレイショ澱粉のごときは北海道地域においてのみ生産されるものですから、その場合には、北海道のいわゆる北連を調整団体と認めても差しつかえがないのではないかとも思われるわけです。こういう見解は政府としてどうお考えですか。あくまでも全販連一本でなければだめなものであるか。あるいは安定法に示す農作物によっては、地方の北連なら北連という協同組合の連合会が調整保管を行う生産者団体としての立場を持っても差しつかえないのではないかという点も考えられるのですが。
  30. 松岡亮

    松岡説明員 規定から申しますと、必ずしも全国団体であることを要しないわけでございます。ただわれわれといたしましては、できれば一本であってほしい。これは望ましいというのは、むろん需給調整から申しまして、県連とか、さらに下っては単協段階に至ってまで、個々にやられたのでは、なかなか需給調整がむずかしいのではないか。こちらといたしましても買い入れをするにしても、技術的にいろいろ困難が出て参りますし、できれば全国一本で需給調整が行われることは非常に望ましいと考えるのでございます。またカンショ澱粉と、バレイショ澱粉は一応別な地帯生産されて、必ずしも同じ用途に向かない場合が多うございます。その間の関連性がある程度薄いという点もございますが、やはり同じ澱粉といたしまして、相当な関係もございますので、できれば一本であってほしいという感じを持つのでございますが、むしろこの問題は系統組織の内部の問題ともなりますので、その辺は全国団体と県連ないしは北連との間の話し合いが相当あってその方が都合がいいかどうかということの検討が進められることが望ましいと考えます。
  31. 芳賀貢

    芳賀委員 政府が買い上げ措置を講ずる前に、生産者団体の自主調整を行わなければならぬということは、当然前提になっておるにもかかわらず、まだ全販連からそういう調整計画が出ておらぬということになってくると、そういう当然事前に行わなければならぬような自主調整の措置を全く講じないでおいて、政府に早く買い上げしろ、買い上げしろというのは、これはどうも当を得ないと思うのです。しかし北海道の現地においては、自主調整に対する計画もできておって、そういうものは出してある。それで政府が年内において買い上げを発動してもらいたいという声が非常に切実に強いわけです。それをやってないということになると、これは結局一本が望ましいとしても、全販連の熱意が非常に欠けているのではないかと思われる点もあるわけですが、いかがですか。
  32. 松岡亮

    松岡説明員 まだ全販連からも、また北連の方からも具体的な話を聞いておりませんので、それに対して食糧庁の考え方はどうだということを、ちょっと申し上げかねる点もございますが、北海道の方では、全体の自主調整計画の一環として、いずれにしましても、計画は立てられるものと存じますので、北連の方の自主調整計画がどういう性質のものであるか、ちょっと今のところ判断いたしかねるのでございます。
  33. 芳賀貢

    芳賀委員 それで結局現実の問題としては、政府の支指価格より相当北海道の澱粉は価格が下回っているということは、これは松岡さんも認められた点です。しかもそれは昨年よりも十二貫一袋で百四十円下げた。なおまたそれを下回っているわけですから、これは生産者の側を見ると、実に容易ならぬ事態なんですよ。それを特に当委員会におきましても、十二月二日の政府が価格を発表された直後に小委員会を開いて、そうして決議を行なっていることは御承知通りであります。その中にも、やはり年内においてでも、政府の示す価格を下回った場合には早急に買い上げ措置を講じなければならぬという点が決議の第二項にうたってございますし、これに対しまして、政府側においても価格の推移を見て、そうして支指価格より下回った場合においては、年内においても即刻買い上げを実行するという言明も政府が行なっているわけです。そういうことは、これはもう関係農民とか生産者団体はわきまえているわけです。結局政府の行政措置に対して相当信頼感を持っているわけですから、そういう言明とか意思表示をしておきながら、まだ対策もきまらぬし、それから買い入れを行う時期の開始もいつからということも示す用意がないということになると、これは非常に政府としても怠慢のそしりをまぬかれないと思う。この点はやはり事務当局として、繰り返すようですが、もう少し積極的な態度というものをこの際明らかにしてもらいたいと思うのですが、その点はいかがですか。
  34. 松岡亮

    松岡説明員 昨年の推移を見ましても、今の出盛り期におきましては、やや値段が低目になりまして、政府の買い入れ価格を下回るというような状態も見られたのでございます。しかしその後また持ち直しているというような事情もありますし、本年産のものにつきましては、やはりある程度需給見通しが立ちませんと、具体的にいつから買い入れるということを的確に申し上げることはなかなかむずかしいようでございます。それともう一つは、やはり調整団体からの申し入れによって買い入れますので、申し入れるような事態になるかならないかということは、一つのポイントであろうと思う。それが今のところまだその段階は来ておりません。しかしながら先ほど御指摘がありましたように、本年産澱粉の買い入れ価格は、前年に比べまして、やや引き下げられております。そういうことから特に、バレイショ澱粉につきましては、その推移については、食糧庁といたし策しても十分関心をもって検討いたしております。今後の推移は十分注意いたしたいと思っております。
  35. 芳賀貢

    芳賀委員 だいぶ含みのあるような御答弁でもあるのですが、結局生産者団体の今後の自主調整の経絡とか、そういう諸般の情勢が整えられて、政府としても価格の推移等を見て、これは必要であるという場合においては、年内においてでも買い上げを行うということは、これはあり得るわけですね。
  36. 松岡亮

    松岡説明員 そういうことはないとは申し上げておらぬのでございますが、政務次官からもお話があったようにわれわれも考えております。
  37. 芳賀貢

    芳賀委員 私は別に大臣とか政務次官の言明を信用しないというわけでないのですが、最も信用できるのはあなた方の事務当局の態度なんです。それで特に信をおいて質問しているので、大体今の御答弁で御意思のほどはわかったような気がしますので、事態が買い上げしなければならぬというところまで成熟した場合においては、これは明年ということではなくて、年内においても現地の期待に沿うような、あるいはまた農産物価格安定法の精神に沿い得るような措置をぜひやってもらいたい。その点を申し上げて、残余の問題については次回の小委員会が月曜にありますから、それまでに食糧庁においてももう少し具体的な検討をしておいてもらいたいと思います。あわせて、これは従来の例でありますが、政府が買い上げ等をする場合の調整分に対しての金利、倉敷等の支払いというものは行われておるわけですが、聞くところによると実費の金額は出しておらないというふうに聞いておるわけです。実際の経費の二分の一程度しか具体的には支払いが行われておらないというふうにも聞いておるのですが、こういう点がその通りであるとすれば、これはやはり問題があると思うのですが、実態はどうなっておるのですか。
  38. 松岡亮

    松岡説明員 私も新米でありますので、必ずしも御満足のいくような御説明ができかねておるのでありますが、金利、倉敷の支払いにつきましては、ある一定の基準を置きまして、その計算で支払うということにいたしております。従って基準と違うような運送方法がとられたというような場合には、若干の差額が出るということはあるのでございますが、大体通常行われる方法でもって基準といたしまして支払われる、さようにお考え願ってよろしいかと思います。
  39. 芳賀貢

    芳賀委員 その基準なるものは、これは現実に適用できる程度のものなんですか。全くこれは現実離れをした基準ですか、その基準通りにやればやれるという基準ですか、どうですか。
  40. 松岡亮

    松岡説明員 大体通常の場合、これでやれるだろうというところをとっておるわけでございます。
  41. 芳賀貢

    芳賀委員 ではその基準の根拠をこの次の小委員会資料としてお示し願いたいと思います。  それから次にやはり安定法の取扱いに関連するわけですが、政府が指定する指定地の決定等に当っては、従来北海道の場合には小樽、旭川、釧路が指定地になっておりまして、その他というのがあって、昨年の場合には北見、帯広等がその他の指定地ということになっておったのですが、これはまあそのつど指定するということになっておるので、本年度、さらに相当積極的な調整が行われ、買い上げ等が行われるという場合においては、この指定地の決定等の問題に対しては、やはり早期に選択して決定される必要があると思うのです。去年の場合には三月以降に決定されたから十分の効果を発揮することができなかったようにも聞いておりますので、本年度の場合には、これはやはり早期に食糧庁において選定をされて、そうして遅滞なく発表をされた方がいいのじゃないかというふうに思いますが、そういう点に対しては、どのような検討を行われているかお尋ねします。
  42. 松岡亮

    松岡説明員 御趣旨に沿うように極力すみやかにきめるようにいたしたいと思います。
  43. 芳賀貢

    芳賀委員 最後に、先ほど松岡さんからお話がありましたが、北海道の食糧事務所が第一回の出回り予想を発表しておるわけでありますが、これによると二百三十万袋で二千七百六十万貫というのが出回り予想ということになっておるのですが、これはやはり相当公式の根拠の置ける発表と見て差しつかえありませんか。
  44. 松岡亮

    松岡説明員 公式、非公式という点は、どう申し上げたらよいか、まあ何でございますが、その数字自体につきましては、目下のところ私ども本庁の方で非常に大ざっぱな推計でございますが、やっておるところと大差のない数字でございます。
  45. 芳賀貢

    芳賀委員 この点はさらに第二回の発表等もあると思うのですが、結局生産者団体が調整計画を立てるような場合において根拠になるのは、やはり食糧庁当局とか当該事務所の発表の数字等が一番基礎的な根拠になるというふうに私は考えておるので、これらの数字が基礎をなして、今後の調整計画あるいは政府の買い入れ措置というものが進行されることの方が望ましいのではないかというふうに思いますが、その点はいかがですか。
  46. 松岡亮

    松岡説明員 私どもといたしましては、できるだけ需給の実態を的確に把握した上でやりたいと存じております。今われわれとしまして出しております数字に必ずしも満足はしておりません。しかしながらこれは今後さらに検討いたしまして、やや動くかもしれませんが、そう狂わないのではないかというふうな感じは持っておるのであります。
  47. 芳賀貢

    芳賀委員 委員長に申し上げますが、本日はこの程度にしておきまして、次会の小委員会において酪農問題並びに澱粉問題に対して残余の質問を行いたいと思います。
  48. 石坂繁

    石坂委員長 承知いたしました。本日はこの程度にとどめ、次会は十一月十一日月曜日午前十時から開会いたします。これをもって散会いたします。     午後五時三十七分散会