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1957-11-08 第27回国会 衆議院 商工委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年十一月八日(金曜日)     午前十時四十五分開議  出席委員    委員長 福田 篤泰君    理事 小平 久雄君 理事 笹本 一雄君    理事 島村 一郎君 理事 西村 直己君    理事 長谷川四郎君 理事 加藤 清二君    理事 松平 忠久君       阿左美廣治君    内田 常雄君       大倉 三郎君    川野 芳滿君       佐々木秀世君    齋藤 憲三君       椎名悦三郎君    首藤 新八君       松岡 松平君    南  好雄君       伊藤卯四郎君    片島  港君       佐々木良作君    佐竹 新市君       田中 武夫君    多賀谷真稔君       帆足  計君    八木  昇君  出席国務大臣         通商産業大臣  前尾繁三郎君  出席政府委員         通商産業政務次         官       白浜 仁吉君         通商産業事務官         (大臣官房長) 齋藤 正年君         通商産業事務官         (通商局長事務         代理)     杉村正一郎君  委員外出席者         通商産業事務官         (重工業局長) 岩武 照彦君         通商産業事務官         (鉱山局長)  福井 政男君         通商産業技官         (地質調査所所         長)      兼子  勝君         専  門  員 越田 清七君     ————————————— 十一月七日  県営発電電力県内売電制度確立に関する請願  (原茂紹介)(第二二四号)  政府系中小企業専門金融機関強化に関する請願  (原茂紹介)(第二二五号)  余市地方産りんごを日ソ通商協定による輸出品  目に指定の請願椎熊三郎紹介)(第二二六  号)  鉱業法改正等に関する請願伊藤卯四郎君外八  名紹介)(第二二七号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  小委員会設置に関する件  通商産業基本施策に関する件     —————————————
  2. 福田篤泰

    福田委員長 これより会議を開きます。  この際、小委員会設置の件についてお諮りいたします。理事会の協議に基きまして、日本経済総合的基本施策に関する調査をなすため、小委員十二名よりなる日本経済総合的基本施策に関する小委員会を、中小企業に関する調査をなすため、小委員二十一名よりなる中小企業に関する小委員会を、私的独占禁止並びに公正取引に関する調査をなすため、小委員十二名よりなる私的独占禁止並びに公正取引に関する小委員会を、木材利用合理化に関する調査をなすため、小委員十二名よりなる木材利用合理化に関する小委員会を、総合燃料対策及び地下資源開発に関する調査をなすため、小委員十二名よりなる総合燃料対策及び地下資源開発に関する小委員会を、貿易振興に関する調査をなすため、小委員二十一名よりなる貿易振興に関する小委員会を、重化学工業に関する調査をなすため、小委員十八名よりなる重化学工業に関する小委員会を、それぞれ設置することにいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 福田篤泰

    福田委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたします。  なお、ただいま議決せられました七小委員会の小委員及び小委員長の選任につきましては、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 福田篤泰

    福田委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたします。  小委員及び小委員長は追って指名いたします。     —————————————
  5. 福田篤泰

    福田委員長 次に、通商産業基本施策に関し調査を進めます。  質疑を継続いたします。齋藤憲三君。
  6. 齋藤憲三

    齋藤委員 昨日、通産大臣から、今後の通商産業政策についての御説明があったのでありますが、一応構想としては、異議を差しはさむものではなく、むしろこれに対して賛成の意を表するものであります。ただ、この構想実現して参りますのに、いかなる腹がまえと具体策を持っておられるかという点にかかっておると思うのでありますが、それにつきまして、二、三簡単に御質問申し上げてみたいと思うのであります。  通商産業政策の第一の重点は、輸出振興ということにかけられておると思うのでありますが、この輸出振興ということが、常に唱えられておって、日本安定性がないということは、結局輸出品目にかかる質の問題が、大きく取り上げられてきたのではないかと思う。国際市場の間隙を縫うて、日本商品進出をしていく。しかし、結局他の優秀品がその市場に来ると、日本品は敗退せざるを得ない運命に到達する。その質が、結局世界市場において覇を争うような情勢になってきた今日、通産当局といたしましては、この輸出品目の質の向上及びその安定を確保するという点に対して、いかなる構想具体的施策をこれから行わんとしておられるのか、これを一つ伺ってみたいと思うのであります。
  7. 杉村正一郎

    杉村政府委員 ただいまお話のありましたごとく、日本中小企業は、輸出で大いに振興しなければならないわけでございますが、中小企業は、何分にも規模も小さく、技術程度も低く、製品の質については、とかく問題が起りがちでございます。このために、輸出振興対策としましては、同時に中小企業対策意味も含めまして、中小企業者の作ります輸出品の質の向上については、特に力を入れなければならないものと思います。  このために、現在までとられている施策としましては、まず製品で悪い製品が出て、海外日本輸出品の声価を失墜することがあってはいけないという意味で、輸出品取締法がございまして、ここで輸出検査をして、悪いものは出さないようなふうにする。これはこの前の国会で、さらに一段と強力に実施するために、輸出検査法というふうに改めまして、強制検査の形で、一段と輸出品品質も、悪いものを出さないようにする措置強化したわけでございます。これが一つ。  それから中小企業の作ります輸出品を、いろいろ工夫することを奨励する意味で、輸出品試作奨励、あるいは輸出品製造技術改善につきまして、補助金を交付いたしまして、中小企業者輸出品を作る技術あるいは品質向上を、もう少しやりやすくする意味補助金制度によりまして、そういう目的を達しようとしておるのであります。  それからなお、品質は、結局工場の持つ設備なり、技術なりの優劣によるわけでありまして、この意味においては、中小企業設備近代化につきまして、補助金制度がございますが、これにつきましても、輸出品工業を優先的に取り上げまして、この方面設備近代化補助金を交付することにいたしております。そのほか試験研究機関等を通じまして、地方工業試験所とかいうような中小企業に対する技術指導をする機関に対し、来年度はさらにその設備その他を強化いたしまして、今まで以上に、中小企業者技術向上指導に当れるように施策するつもりでおります。  そのほか、なお、中小企業者が製造する品物で、日本独特のものがございます。こういうものは品質から申しましても、かえって外国に評判のいいようなものもございますので、こういうものをできるだけ発掘したいという意味で、中小企業者の作ります特産品の発掘、それの海外への輸出ということにつきまして、海外からそういう発掘する人を呼びましたり、あるいはそういう人に日本製品を見せて、改善の意見を求めましたりして、優秀なものを見つけ出して、これを海外に伸ばすというふうな工夫をしておる次第でございます。
  8. 齋藤憲三

    齋藤委員 私の御質問申し上げましたのは、中小企業もさることながら輸出貿易振興というものは、やはり重工業重化学工業、そういう大量の商品を、高レベルにおいて海外市場進出するというところに安定性があるのだ、私はそう考えて御質問申し上げたのであります。たとえて申し上げますと、日本自動車工業というようなものを例にとってみますれば、将来日本の狭隘な国土において、自動車工業を殷盛ならしめると、どうしてもその住産物というものは、海外市場に出ていかなければならない。しかるに、日本自動車工業は、一応その形態、外観というものは、国際水準並みになってきた。しかしその実質世界と比較してみますと、まだ非常に質が落ちている。そういう質の落ちておる状態でもって、輸出産業振興しようと思っても、なかなかこれはむずかしい。だから、そういう質向上に対して、いかなる構想をもって具体的にこれを上げていくかという問題を、御質問申し上げているのです。新聞の報道でございまするから、私も的確にはその実質をまだ見きわめておりませんが、過日オーストラリア周辺一周自動車競走の問題が起きた。その結果を見ますると、一着から六着まではドイツのフォルクスワーゲンで、一着の減点は六点と発表されている。これに参加いたしました日本自動車は千五百点の減点をされたという。私は過日パリに参りましたときに、自動車ショーがあって、一台の日本自動車がそこに陳列されていた。しかし、世界の人はこれに見向きもしない。その一台の自動車を、一体パリ大使館で引き受けるか、ロンドンの大使館で引き受けるかといって、大騒ぎをいたしておったのでありますが、輸出振興の大きな施策を行いまするときに、その根本となりますものは、結局輸出振興安定性を確保していくということになりますと、世界商品に伍して劣らざる質を持つ商品進出をはからなければならない。そういう点に対して、通産当局は、今後どれだけの重点性を与えて、その質の向上をはかられんとしておるのか、こういう点に対して、通産大臣は、思い切った施策を行われる御意図があるかどうか、こういうことを御質問申し上げているのであります。
  9. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 自動車工業お話、前にお話を伺っておりませんのであれですが、自動車に限定いたして考えましても、常に申し上げておりますように、今後の東南アジア方面への輸出というようなことを考えましても、自動車などは最も適当な輸出品だと思います。それにつきましては、現在におきまして、確かに諸外国におくれておることは事実であります。これを早く取り戻し、さらに外国製品よりもいいものにするということについては、もちろんわれわれとして重大なる関心を持ち、努力していかなければならぬことであります。御趣旨のように外国品に負けないように、極力あらゆる産業面振興していくということには、特段の努力を払いたい、かように考えております。
  10. 齋藤憲三

    齋藤委員 日本には、あらゆる商品に対してのJISという規格がある。しかし、JIS規格というものは、まだ世界レベルから見ると、非常に低い。たとえて申しますと、三Sという規格には遠く及ばないのだというようなことをよく聞くのでありますが、輸出品目に関するところの素材の品質レベルを引き上げるということについて、海外に向って参ります将来性のある産業に関しましては、十分今後検討を加えられまして、国際市場において劣等の地位を占めないように、一つ御配慮を願いたいと思うのであります。そういたしませんと、いかに輸出産業振興と申しましても、商品そのものが劣等である限り、かけ声ばかりに終って、常に不安定な外国貿易状況を示すということになると思いますから、この点を一つ御留意願いたいと思うのであります。  時間の関係上、質問を端折って参りますが、最近東南アジア開発の問題が大きく取り上げられまして、将来の日本経済発展の方向を、大きくこの方面に向けておるのでございますが、東南アジア開発前提として、最近東南アジア技術センター設置というものが新聞紙上に見えるのであります。この東南アジア開発前提として、技術センターを設けて、技術的に日本指導できる立場に立って、東南アジア開発をやっていくという構想は、私は非常にいいと考えておるのでございますが、これが実現に対して、通産大臣はいかなるお考えを持っておられますか、お伺いいたします。
  11. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 経済協力を進め、また日本商品あるいは技術紹介ということによって、また技術紹介ということは、結局において日本機械類その他がそれに付随して、将来の輸出に非常に役立つという考えからいたしまして、技術センターを設けるという構想は、来年度の予算措置も講じて、極力早く実現いたしたい、かように考えております。
  12. 齋藤憲三

    齋藤委員 次に、昨日御説明を願いました中に、第三の産業基盤強化というところに、エネルギー問題が取り上げられておるのであります。日本実情から申しまして、あらゆる産業構造発展及び向上のためには、豊富な質のいい低廉なエネルギーを多量に供給するということは、当然なことでございます。しかも、その中で天然ガスが取り上げられておるのでございますが、通産大臣も御承知の通り、過去の日本における天然ガス開発は、何ら政策としては確立しておらない。この天然ガス実情調査は、昭和三十一年度の予算において、わずか三百五十万円の経済企画庁の予算を使いまして、東北地区における天然ガス調査だけは完成しておる。三十二年度の予算で、通産省は四億に近い天然ガス基本調査費要求をいたしたのでありますが、これはゼロに削られておる。本年は四億二、三千万円の天然ガス助成費及び天然ガス基本調査費要求せられておるようでありますが、この予算は、日本現状として非常に重要な予算だと私は考えるのであります。日本が急速に自力をもってエネルギー資源開発を行わんとするならば、石油開発よりはむしろ天然ガス開発の方が、重点施策として取り上げられてもいいのではないか、そういうふうに感ぜられるのであります。通産大臣は、この予算獲得に対して、昨年のようにゼロに削られて黙っておるというような状態でなく、全力を傾注して、この天然ガス開発実現をはかられる御意図をもって予算要求をされたかどうか、念のためにお聞きしておきます。
  13. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 天然ガスの昨年度の予算については、その経緯を、私の聞いておるところによりますと、基礎調査ができておらぬというので、基礎調査ができたらという意味で、昨年お話のようなことで、宮城県その他について基礎調査をやったというふうに考えております。従って、一応の調査があるわけでありますから、それに従って、本格的に調査なりあるいは天然ガス開発の必要な経費を、来年度においては必ず実現したいというふうに考えております。
  14. 齋藤憲三

    齋藤委員 これは申し上げるまでもないことでございますが、最近イタリアが非常に大きく重工業的な立場から国力を回復し、イタリア移民とともに、イタリア商品世界市場進出してきたという原動力は、北部イタリア天然ガスが、着々功を奏したということ。一九五六年度においては年間四十億立米の天然ガスが利用された。カロリーが九千カロリー、石炭に換算いたしますと六百万トン、これが四千キロのパイプ、ラインによって各工場に送られておる。それをエネルギー源として、重工業が非常に有利な地位に立ったために、イタリア工業進出してきた。しかし、その天然ガス開発状態を、よく考えてみますと、世論に圧倒されて、天然ガス調査を打ち切ろうとする最後の一本が功を奏して、それからボー河畔天然ガス開発された。しかるに、日本においては至る所に天然ガスがある。従来は、天然ガス利用政策というものは、確立されておらないために、石油会社が、石油井戸を掘って、天然ガスが出てくると、それを全部埋めて、天然ガスを世の中に出さない、そういう実情にあったのでありますが、この天然ガス利用政策が今日まで等閑視されておったということは、国家のために非常に悲しむべきことだと私は思うのであります。この点につきまして、特に通産大臣にお尋ねを申し上げたいのは、天然ガス開発政策を樹立するとともに、天然ガス開発立法措置を講じなければならぬ。と申しまするのは、天然ガス石油というものは、鉱業法においては、同種鉱物として取り扱われておる。でありますから、石油鉱区を所有する者が天然ガス開発権利を持っておる。従って、石油開発する目的をもって掘っても、そこへ天然ガスが出てきて石油が出ないと、石油会社は、全部天然ガスを伏せてまかり通るという実情であります。それでありますから、こういうものを国家の重要なエネルギー源として開発いたしますには、この天然ガス開発するという目的を持った立法措置を講じなければならぬ。あるいはそうでなかったならば、石油天然ガス異種鉱物として取り扱って、本来の権利者に付与する措置を講じなければ、天然ガス開発というものはできないと思う、今日まで、石油会社石油井戸を掘って、天然ガスが出てくる、その天然ガスを吹き上げて利用しようとすると、石油採掘支障を来たすという。しかし、実情を調べてみると、天然ガスだけが賦存して、石油賦存ははなはだ望みなき土地がたくさんある。そういうことも、石油会社石油採掘ということに籍口して、天然ガス開発に応じないという状態がたくさんある。これを打破して、天然ガスを大きく開発して、日本エネルギー源に大きな寄与をするということになりますと、特別の法的措置を講ずる必要があると考えておるのでありますが、通産大臣はいかにお考えでありますか。
  15. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 天然ガスにつきましては、お話通り、現在まで私の聞いておるところでは、新潟県で多少利用され始めたというような現状であります。今後仰せの通り、各地においてこれを利用していかなければならぬ、またこれが重要な施策であるということにつきましては、私先ほど来申し上げておりますように、大いに努力しなければならぬと思います。またただいまのお話鉱業権の問題に関しましては、今後検討いたしまして、これが円滑に利用できますように考えていきたい、かように考えております。  それから、立法措置につきましては、十分検討いたしたいと思います。
  16. 齋藤憲三

    齋藤委員 ただいま通産大臣から、天然ガスの問題につきまして、立法措置も考慮する、また鉱業権の問題も考慮するというお話がございましたが、これは通産省要求いたしておりまする四億数千万円の天然ガス基本調査費と並行して行われなければならない問題だと私は考えるのでございますから、早急に一つ御考慮を願いたいと思うのであります。特に最近新潟地区における天然ガス開発状況に伴って、地盤沈下問題が出てきておる。果して天然ガスを採取するための地盤沈下であるかどうか、これは疑問でありますけれども、とにかくそういう問題が出てきた。秋田県の八橋地区におきましては、石油を長年の間くみ上げ、天然ガスも利用しておりますけれども、これは地盤沈下がない。そういうような点から考えますと、この天然ガス採取というものには、万全の措置を講じて、地質調査からすべて並行して行われなければならないと私は考えるのであります。どうか一つその点を十分御考慮下さいまして、早急措置を講ぜられんことをお願いいたしたいと思うのであります。  なお、この天然ガスの問題に付属いたしまして、昭和二十九年ごろから私が当局にたびたび警告を発しておった、いわゆる炭層天然ガス問題でありますが、これは最近ようやく諮問機関に対する措置が講ぜられて、可燃性天然ガス鉱業制度調査会というものの答申が出て参りました。これによりますると、この炭層ガスがようやく行政の問題になって、これに対する措置が講ぜられんといたしておるようでございますが、この答申を見ますると、炭層から百メートル離れた距離にあるところの炭層ガスは、一応石炭と同じ権利者が保有するということになって、その他は依然として、炭層天然ガスというものは異種鉱物に取り扱われておる。しかし、原則論からいうと、炭層にあるところの可燃性天然ガスというものも、石油層にある可燃性天然ガスも、私は同種鉱物として取り扱われるのが本来の筋合いではないかと考えますが、こういうふうに炭層から百メートル離れた程度までにおけるところの石炭ガスというものを特別な取扱いをするということで、将来鉱業法支障を来たさないかどうか、そういうことを非常に懸念するのでございますが、これは大臣でなしに担当局長の御答弁を一つお願いいたしたい。
  17. 福井政男

    福井説明員 ただいまの齋藤先生の御質問にお答え申し上げます。石炭層可燃性天然ガスの問題につきましては、長い間ただいまお話しのようにいろいろ問題がございまして、東大におられました兼子先生、それから青山先生地質調査所兼子所長の三人の先生方からできております調査会で長い間御審議を願って、先般答申が出て参ったわけであります。その答申によりますと、本年の考え方といたしましては、石炭採掘いたします場合に出ますガスは、従来鉱業法制定当時から考えておりました可燃性天然ガスというものには——当時石炭採掘いたします場合に出ますガスというものは、有害であるというふうに考えられておりました関係上、鉱業法では予定していなかったのではないかという考え方から出て参っておりますが、そういうことで、石炭採掘に伴って出ますガスは、当然石炭鉱業権範囲内に入っておるという解釈をとるのが立法当時の考え方、あるいはまた社会通念から見て適当ではないかという考え方で、答申が出てきておるわけであります。従いまして、その場合に出ます石炭ガス範囲をそれではどういうような範囲にするかということになるわけでございますが、それが答申には、加工価値のある炭層から、ガス抜きのための坑道なり、あるいはボーリング孔設置される可能性のある地点までにおいて採取できるガスを、石炭鉱業権範囲内としている、こういう考え方で出ておりまして、お説のように、このガスというものは、物理的な性質においては同種のものであるということもいえようかと思いますが、答申ではそういう考え方をとっております。従いまして、現在通産局の力へ出願がたくさん参っておりますが、それをさばきます上に、この答申趣旨で処置をして参りたい、かような考え方で現在研究をいたしております。
  18. 齋藤憲三

    齋藤委員 これは答申案でございますから、将来の問題として、いろいろ御検討願いたいと思うのでありますが、大体炭層というものは、一層、二暦、三層、どれだけあるかわからない。それが一つ炭層から百メートル離れた、上下二百メートル、そうすると、その下にも炭層がある、その下にも炭層がある。結局可燃性天然ガス石炭というものは、同種鉱物として取り扱うのが原則論としていいのではないか。炭層から百メートル離れたところだけの天然ガス石炭ガスとして取り扱うが、その他は異種鉱物として、また重複鉱業権の設定ができるというようなことをしておくと、炭層におけるところの、いわゆる炭田地区における天然ガスというものの鉱業法的な紛淆というものは、将来も残るのではないか、そういうふうに考えられるので、私は先ほど通産大臣にお願いいたしました天然ガス開発臨時措置法、名前はよくわかりませんが、そういう特殊立法的な措置を講じて、この天然ガスに対する徹底的な法的措置を講ずる方が賢明じゃないか。こういうようにあいまいに、今掘っているところの炭層の百メートル上下に対する天然ガス石炭に付随する、しかしその炭層というものは、一体地下何千メートルまで存続しているかわからない。そうすると、そこにまた掘り込んでいったとき石炭層があると、天然ガスというものは石炭ガスになる。そういうことになりますと、結論から言えば、炭田地区における天然ガスというものは、単独に開発ができないのだという結論になってくるのではないかと思うのであります。それよりは、天然ガス開発法によって、炭田における天然ガスに対しましても、法的にこれに開発を命ずることができるという措置を講じておいた方が、鉱業法的に紛淆を来たさないし、また天然ガス開発という見地からいくと、それの方が有利ではないかと考えられるので、御質問を申し上げたのであります。もちろん、これは御決定に至っておらない、単なる答申書ですが、天然ガス開発という重点施策を行う意味において、炭田天然ガスを重視すると、この答申には私は疑問が出て参るのではないか、さように考えるのでございますから、ぜひ御一考をお願いしたいと思うのでございます。  もう一つは、昨日の御説明には入っておりませんが、いわゆる産業基盤の育成という建前からの大きな原動力として、砂鉄の問題が落ちている。砂鉄開発に対して、通産大臣はいかなる御考慮をお持ちになっておりますか、一つお伺いいたします。
  19. 福井政男

    福井説明員 砂鉄につきましては、御承知のように未利用資源の利用の問題で、砂鉄の埋蔵量調査ということを五カ年計画でやっておりまして、本年度は四年目でありますが、調査をやりまして、その結果に基いて大いに開発しようということで、基礎的な調査をやっております。それから、同時に、探鉱奨励金によりまして、砂鉄もその中に含めまして、開発を促進する、こういう態勢で現在進んでおります。
  20. 齋藤憲三

    齋藤委員 私の御質問を申し上げておるのは、そういうことではないのであります。砂鉄開発利用という問題は、もう十数年来の問題です。大体砂鉄の埋蔵量というものも、見当がついておる。それをまだ基礎的な調査をやっているのだとか、未利用資源の中に入れているのだとか、そういうことでなくして、もう砂鉄の利用というものは、すでに技術的にも、これは見通しがついている。そうすると日本一つ産業基盤の育成といたしまして、砂鉄を原料とした製鉄、しかもその製鉄というものが、世界の水準に達し得られるところの製鉄、そういうものに対しての具体的な一体施策というものを、通商省としてはお持ちになっておるのかどうか。これをいつから実行に移されるという意図をお持ちになっておるか、こういうことを御質問申し上げておるのであります。
  21. 齋藤正年

    齋藤(正)政府委員 御承知のように、砂鉄の利用方法につきましては、高炉に原料として使うものと、それから電気銑の原料として使うものがありまして、現在のところは大部分が電気銑の原料として使われておりますが、電気銑につきましては、御存じのように、高炉銑に比べまして、コストが高いというところが従来の欠点であります。それはある程度操業方法の改善と、それから大部分は炉の大型化によりまして解決できる考えでありますので、現在通産省といたしましては、開発銀行資金をつけまして、砂鉄を用いる電気銑製造業の合理化を促進しておる次第であります。
  22. 齋藤憲三

    齋藤委員 私はそういうことも存じておるのであります。高炉に砂鉄を持っていけば、焼結するためにどれだけのコスト高になるか。また磁鉄鉱、酸化鉄でありますところの砂鉄をそのまま電気炉に入れて、電気銑を作る場合に、どれだけよけいな電力を食うか。そのために砂鉄の開発はおくれておるのです。一体こなごなになったところの砂鉄を焼結して高炉へ持っていく、それも一〇%しか入らない。それから電気銑に食い込むと、べらぼうに電力が要る。電気銑はべらぼうに高い。そのために砂鉄の開発というものはおくれておる。そういうような従来の低レベル考え方でもって、砂鉄の開発をやろうといっても、これはできないということはわかっておる。だから、そういうものを打開して、さらに進歩した技術によって砂鉄の開発をやるということが、日本に課せられたところの使命である。そういうものに対して、いかなる研究と、それから将来行わんとする意図を持っておられるかということを御質問申し上げております。そういう意味でお答えを願いたいのであります。
  23. 齋藤正年

    齋藤(正)政府委員 砂鉄の問題については、齋藤委員の方が、私よりよく御承知だろうと思うのですが、現在のところは、御承知のように現在の高炉における使用とか、あるいは電気炉における使用ということにつきましては、先ほど申し上げましたように、コストが高いということであります。新しい使用方法といたしましては、従来からロータリーキルンによる製練方法その他が研究されておりますけれども、現在の段階では、まだ企業化する段階まで至っておりません。またこういう方面技術につきましては、資源技術試験所で若干研究しておりますけれども、これならば従来の高炉あるいは電気炉に比べて決定的に有利だという新しい技術については、まだ見きわめがついておらないと承知しておりますので、特別に助成を講じているというようなものはございません。
  24. 齋藤憲三

    齋藤委員 ただいま質疑応答でお聞き取りのように、日本の砂鉄開発に対しましては、通産省重点的な施策を講じておらぬのが私は実情だと思う。こういうふうに、何十年も砂鉄開発ということが唱えられておって、そうして砂鉄の方が有利なレベルに乗らないということは、一つ日本技術陣営の恥辱でと考える。こういう点に対して、通産大臣は、砂鉄利用開発というものを一つ重点通産施策として取り上げて、これが解決に乗り出される意図があるかどうか、一つ構想を承わりたいのであります。
  25. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 実は構想といわれますと、困惑するのでありますが、未利用資源で開発の余地があるというものにつきましては、資源の乏しい日本におきましては、極力開発に努力していかなければなりません。まだ試験研究の域の問題のようであります。極力今後研究にさらに一段の努力をさせるようにいたします。
  26. 齋藤憲三

    齋藤委員 資源研究、未利用資源の開発利用と申しましても、私はたくさんあると思う。とにかくものにならない未利用資源もあるだろうし、ものになる未利用資源もあるだろう。しかし砂鉄というものは、考えようによっては、これは粉鉱になっているというところに利用価値がある。あれだけの鉄分の豊富なものを砂鉄のように砕けといったら、これは非常に大きな問題だ。あの粉末になっているところに、砂鉄の利用価値というものは非常に高いのではないかと思う。しかし、通産省といたしましては、これに対しまして思い切った研究対策をやらない、これの利用開発を助成するような方途を講じない、そこに私は砂鉄の利用ということが長い間唱えられておっても、本格的な未利用資源として価値を見出し得ない原因があると考えている。どうか一つ今回は砂鉄の利用というものに対して、十分な措置を講ぜられたい。それは、申すまでもなく、日本刀の品質というところから考えてみましても、砂鉄の中に含有せられているところの希有金属、すなわちヴァナジウムとか、あるいはそういういろいろなもの、あるいはそれと共存しておりますところのチタン分の問題、幾らでもこれは政策として重点性を与えるならば、私は世の中に出ていくと思う。これに対して冷淡であれば、決して利用されない。かように考えておるのでありますから、この点を一つ十分御考慮願いたいと思うのであります。  それからもう一つは、この鉱工業技術振興というところに、電子技術とオートメーション技術、分析技術、生産加工技術等の基本的かつ新規の研究推進ということを、昨日大臣が仰せになったのでありますが、これに対しましては、私は全面的な賛意を表するものであります。ただ、昨日先輩、同僚諸君が、電気試験所をごらんになったと思うのでありますが、通産行政における電子技術の部面というものは、とうていお話にならない。あの電気試験所の電子部というものは、私の記憶によりますと、昭和二十九年改進党の予算修正の中に、わずかに二千万円のゲルマニウム抽出精練のひもつき予算があった。その中から八百万円でありましたか、電気試験所に金が回りまして、ようやくあの電子部というものが独立したのです。それで、今の部長が主になってダイオードその他の研究をやり始めた。それでございますから、通産行政の中に占める電子技術部門というものは——電気試験所に行きますと、最近てっぺんの方に大きな電子計算機があり、また電子部があって、トランジスターとか、ダイオードの研究をやっている。これでもってやや体制は整ったのでありますけれども、これを世界的な電子技術レベルに比較しますと、まるで九牛の一毛、まだそれよりも下かと私は思うのであります。これに対していかなる考えをお持ちになっておられるかは、後刻お伺いいたしたいと思うのでありますが、とにかく人工衛星が二発飛び上った。その人工衛星を作っておるところの外部は、特殊金属でありましょう。しかしその内部構造は、ほとんど全部がエレクトロニクス、電子技術である。結局今日の最高の技術というものは、電子技術でもって代表されておる。それに原子力の平和利用が並行せられまして、今日の世界の科学技術の最高の水準を保っておる。その電子技術が、通産行政の一省の中でもってまかなえるという考え方は、私はだめだと思う。なぜかというと、これは運輸省においても、あるいは建設省においても、厚生省においても、その他全般の行政の技術部面というものは、今日エレクトロニクスというものによって代表されなければ、一つとして仕事が行われないという状態になってきた。そういうような場面におきまして、通産行政は、その持てる電子技術の部門を育成するということは、これは最も大切なことでありますから、ぜひおやり願いたいと思うのでありますが、それとかけ離れて、官民合同の力を集結して、日本の電子技術向上、拡充をはからなければ、世界の大勢におくれるということは、これはもう申すまでもないと私は思う。それでありますから、この際通産大臣は、みずから持てるところの行政機構の中の電子技術部門を思い切って育成強化すると同時に、官民合同の電子技術研究所というような構想をもって、広く官民の電子技術の総合統一をはかり、そうしてこれを強力に推し進めていって、日本の科学技術の水準を、世界の水準に追いつけるというふうにお考えになるのが、私は通産大臣として最も大切なお考えじゃないか、そう思うのでありますが、こういう考え方に対しては、通産大臣いかにお考えになりますか、お漏らしを願いたいと思います。
  27. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 電子技術が占めております現在の重要性につきましては、われわれも十分認識をいたしております。従って、電気試験所なりあるいは電子部門の面におきまして飛躍的に拡充して行かなければならぬ、またそれにつきましは官民協力して行かなけばならぬ、これはもう御意見の通りであります。ただ、機構を別個の機構にいたしますかどうかにつきまして、とにかく現実にあるものを最も利用して、それを飛躍的に拡大するという考え方で行くべきであります。ただ単に、別個にそういうものを作ったらどうこうというふうには私は考えておりません。現在の段階におきまして、また日本の財政とにらみ合せて、最も重点を置いて、現在のものを拡充強化するということでやって行きたいと思っております。
  28. 齋藤憲三

    齋藤委員 昨日の新聞を見ますと、革命記念日におけるソ連ののフルシチョフの演説が載っておる。きょうの新聞を見ますと、アイゼンハワー大統領が声明すべきところの声明内容が載っておる。これを読んでみますと、全部が科学技術に対する言葉であります。特にフルシチョフの内容を検討してみますと、人工衛星を中心とした科学技術の問題及び将来ソ連の繁栄を取り戻すための鉄、石油その他に対する地下資源開発の問題、こういうふうにその国家の将来の繁栄というものに対する指向性というものは局限されてきた。それに対して、日本は一体いかなる措置を講じて、世界の大勢におくれざるようにするかということが、私は通産行政の根本でなければならぬと思う。しかるに、現状を見ますと、日本のエレクトロニクスの状態というものは、官民ばらばらなんです。どこに一つの統合統一性があるかというと、ない。たとえて申しますれば、日本で今世界的に非常な注目を浴びているところの電子計算機、パラメトロンの発明、これはわずか二十六才の青年が発明をした。しかしこの発明が世の中に出てから、一体何年になるか。本日専門家に聞きますと、その構想はすでにアメリカに出てきた、こういう。一体二十六才の青年が、世界的なパラメトロンの発明をして、それが世の中に出てくるのに三年も四年もかかってしまったのでは、日本の優秀な頭脳というものが世界的に出ていくのに非常な時間がかかりますから、それがほかの国に先を越されてしまうということになる。これは一省の一部門に対して、セクショナリズム的な考えをもって局限せられる問題じゃない。国家全体の問題として取り扱わなければならぬ。そういうところに予算重点を置かなければ、予算の編成上、いわゆる近代的な感覚は盛り上げられないと考えるわけです。そういう点から、今通産省においては、とにかく小さいながらも電子技術部門というものを持って、通産行政の一環としてこれが行われておる。しかし通産省だけの機構において、今世界的に伸展せんとしておるこの電子技術をさらに世界的のレベルに上げろといったって、とうていできないと私は思う。それは通産省の全力を傾注してもできないと思う。そこで、広く各官庁及び民間の力を総合統一して、ここにあらゆる創意と工夫を集めて、それによって世界レベルに追いつく以外に方法はないと私は考える。そういう点に対して通産大臣はもう一歩踏み込んだお考えを御表明願いたいと思うのでありますが、いかがでありますか。
  29. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 官民総合の力を合せる、あるいは各省の力を合せる、これはもう全くその通りであります。ただ単にセクショナリズムで通産省が所管しておればできないのだというようなことを、私は考えたくない。要するに、総合的な力を全部吸収するということについて、今までの態勢がそうなっておらぬといたしますなら、それは改めなければならぬ。とにかく現在までとかくセクショナリズムが現在の行政に非常に災いしておることは、私もよく承知しております。従って、もっと広い視野に立って、通産省自体が、官民あるいはまた行政官庁の総合的な力を吸収する、また総合して協力態勢でいくということについて、私は十分今後考えていかなければならぬ、かように考えております。
  30. 齋藤憲三

    齋藤委員 某高等学校の先生が、最近の感想を書けという一時間を与えたところが、学生の九割六分までは、人工衛星に関する感想を書いたというのであります。人工衛星の中に生息しておる犬の呼吸が、二十メガ、四十メガの電波によって正確に地上でキャッチできる。こういうことに対して、世界の動向というものは、実に科学技術の進展によってその国の力を測定せんとするようになって参ったのであります。それでございますから、各官庁の持てる電子技術その他の技術を、私は放棄しろと言うのじゃない、これは各官庁においてますます強化したらよろしい。しかし、それだけで一体できるものかということになりますと、セクショナリズムという言葉を使うと語弊がございますが、とにかく各官庁のからに立ちこもった中のそういう部門に対する力によっては、とうてい世界の水準に追いつけない。だから、そのからを一歩出て、官民合同の大組織を持ってこのエレクトロニクスの推進をやるというところに、初めて日本の新体制が確立されるのだと思う。どうか一つそういう意図において十分御考慮を払われて、世界の大勢におくれざる生産体制の確立のために、御尽力あらんことをお願いいたしたいと思うのであります。  それと関連いたしておるのでございますが、まさに来年の四月から開催せられんといたしておりますブラッセルにおける万国博覧会であります。これは三億の予算日本日本館を建てて商品の陳列をやるのでございます。私は幸いにその建築場を見て参ったのでございますが、世界レベルに比べますと、まことに恥かしい小さいものでございます。しかし、日本の国力からして、三億円の予算以上に予算がとれなかったということもございましょうが、せめてそこに陳列する内容を、通産大臣は十分一つ御検討願いたいと思う。うちは粗末でも、中に陳列してあるものが世界の水準を抜くような優秀なものであったならば、日本の価値というものは、私は認められるだろうと思う。しかし、うちは小さくて、粗末で、その中に飾られておるところのものが、世界の人々のひんしゅくを買うがごときものであったならば、これは恥をさらすために三億円を使ったということになるのでありますから、この内容に対しましては、われわれも非常な興味を持っておる。でありますから、その内容、陳列品の一覧表を一つちょうだいいたしたいとともに、通産当局におきましても、これに対して十分考慮を払われて、世界の笑いを招かざるように御考慮をお願いいたしたいと思うのであります。  あとがつかえておるようでありますから、だんだん簡単に端折って、もう一点だけお伺いいたしたいと思うのでありますが、本日の日刊工業を見ますと、中型輸送機の強化拡充生産の体制を、通産省では考えられておるということであります。しかし、世の中広しといえども、日本ほど飛行機が落ちるところはない。特にその原因を追究してみますと、ある方面からは、アメリカの古を買ってくるから落ちるんだ。私もそうかと思っていろいろ検討してみますと、日本には何ら飛行機の部品に対する検査所がない。アメリカの実情を調べてみますと、政府のライセンスを持っておるところの部品検査会社が十三ある。しかも、その内容について、私は見聞をしてみたのでございますが、非常な設備がある。たとえて申しますならば、ある部品に対しては、五百時間のギャランティを要求されて、いかなる大会社がいかなる部品を作って飛行機にこれを使おうとしても、政府はライセンスを与えておる部品検査会社にこれを命じて、そのテストを経なければ、飛行機に部品として使うことができないようになっておる。だから、安全性を保ったところの飛行機ができる。日本実情を見ると、そういうものがない。だから、中型輸送機を作らんとするならば、まず中型輸送機に使うところの部品の検査所を最初から作って、十分安全性を保てるいろいろな部品を総合した飛行機を作る以外に、その安全性の確保はできないということになる。そういう点に対して、通産大臣はいかなるお考えをもって中型輸送機を作らんとしておられるのか、これを一つ承わりたい。
  31. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 ブラッセルの博覧会につきましては、全く仰せの通りであります。私も十分注意して善処いたしたいと思います。  また中型輸送機につきましては、来年度試作程度のことでありまして、部品の検査というような機構までただいま考えておらぬと思いますが、ただいまお話しの点は、われわれも全く同感でありまして、今後十分考えながら推進していきたいと思います。
  32. 齋藤憲三

    齋藤委員 中型輸送機の国産化に必要な経費四億八千六百万円を今度は要求されておるようでございますが、私の聞いておるところによりますと、安定を保つための部品検査の設備というものは、最小限度三百万ドル必要だということであります。試験的におやりになるということでございますれば、あるいはこの経費でもできるかもしれませんが、中型輸送機その他また大型輸送機、あるいは将来はジェット機を作るというような点にまで思いをいたされますならば、根本的な問題から検討を加えられるような施設をお考えになっておやりになるのがいいのじゃないか、私はそういうふうに考えておるのでありますから、この点も一つ十分御検討を願いたいと思います。  もう一点だけ付加さしていただきますが、鉱山開発のために八億七千八百十五万二千円というものが今度要求されておる。それは新鉱床の探鉱、鉱山道路の整備及び未開発地域地下資源調査費、これの内容を一つ承わりたいと思います。
  33. 福井政男

    福井説明員 最初に天然ガスの埋蔵地域の基礎調査につきまして簡単に御説明申し上げますと、もうわが国で天然ガスの埋蔵、存在が確認されるような地層があるわけでございまして、ただこれをそのままにしておきますと、なかなか企業的に調査をするということが行われませんので、これを国の予算で層序試錐を行いますとか、あるいは地層の状態を明らかにしよう、こういう考え方でとっておりますが、全国の二十地域を選びまして大体三カ年計画でやっていこう、こういう考え方のもとに、三十三年度におきましては九地域をとってやっていく、こういう予算を現在大蔵省と折衝いたしております。  それから、未開発地域につきましては、東北でありますとか、九州でありますとか、こういった今までに全然資源調査の行われておりません地域を取り上げまして、これもやはりただいま申し上げました天然ガスと同じような考え方で地域を取り上げまして、調査していきたい、かような考え方予算を組んでおります。
  34. 福田篤泰

  35. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 まず最初にお尋ねいたしたいのは、日本の鉄鋼業生産は、非常に過剰になりまして、在庫品が多いので、業界はそれに非常に苦しんでおるという現状です。しかるに、外国からの鉄鋼輸入を相当積極的に政府はやっております。本年度は、鉄鋼の輸入に輸入関税を免除して、輸入促進をはかってきております。そこで、輸入鉄鋼品の品種別とその数量、日本鉄鋼との価格の差、これを一つお示し願いたい。それから、輸入鉄鋼に、何ゆえに免税措置という特別な待遇を与えているのか、その理由がわかりません。そういう点を一つ明らかにしてもらいたい。
  36. 岩武照彦

    ○岩武説明員 鋼材の輸入の御質問でございますが、これは御案内のように、昨年の今ごろから鉄の需要が非常にふえまして、生産がこれに伴わないで、非常な需給のアンバランスを来たしたことは御承知の通りであります。当時、その結果、かなり市価も上りましたので、何とか鋼材の市況を安定し、適正な価格で入手ができるようにという要望が各方面からありました。ことに公共団体方面から割合強かったわけです。そこで、結局これは海外から輸入するより方法がない。これは当時の状況としては、当然でございましたので、年末以来輸入の手配をいたしまして、それがだんだんと船積みされて参ったのが、ことしの四月から九月末までに大体八十数万トンになっております。もちろん当時の輸入契約いたしましたものを、全部輸入いたしたわけではございませんで、その後に参りますものは、契約はもちろんキャンセルしております。  それから関税の問題は、従価関税が一割かかっておりますが、これも当時そういうふうな状況でありますれば、何とか安く、かつ輸入を容易にするということは、これまた当然の措置かと思って、そういうふうに半年間を限りまして関税免除の措置をとりました。これはちょうど期限がこの九月末日で来ましたので、もとの従価一割に復活しております。値段の問題でありますが、これはものによって違いますが、現在の棒鋼あるいは型鋼等の……。
  37. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 説明中ですが、時間の都合もありますから、先ほど私が要求しました外国からの鉄鋼輸入の品目、種別とその数量、その日本品との価格の差は、明日までに資料で一つ出して下さい。  今、局長が答弁されていましたように、確かに九月から輸入鉄鋼に対する免税措置は打ち切っているようです。これらは、まさに役所がよくやる朝令暮改というのですか、ネコの目の変るように勝手なことをやっておりますが、こういうことが日本の鉄鋼界を混乱に陥れておるのじゃないか。日本では、鉄鋼界が、事業を縮小しなければならぬ、生産過剰で在庫品をもてあまし、にっちもさっちも行かないという状態にあるのに、しかも日本鉄鋼品という相当優秀なものが、今日世界的なものがあることは、あなた方御存じのはずだ。そういうのに、何ゆえに一体こういう多くの外国鉄鋼品を輸入して、そして日本品を余らして、日本の鉄鋼界を波乱に陥れなければならぬか。朝は免税措置をして、夜はこれを廃止した。そういう一貫性のないやり方ということが、今日の状態を招いておるのじゃないか。通産大臣は、鉄鋼の将来に対する一つの対策ということについて、どういうことをお考えになっておるか、それを一つお示し願いたい。
  38. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 鉄鋼の緊急輸入につきましては、ただいま局長が説明しました通り、その当時としましては、非常な需要があり、また価格が暴騰いたしておったのであります。ただ緊急対策の結果、現在としましてはその必要もなくなって、その間あるいは大きな激動をいたしましたことについては、今後もそういうことのないように、漸進的に日本の鉄鋼の生産をふやしていく、また需要と供給というものを十分にらみ合せながら、今後の生産増強ということに留意していかなければならぬと思います。これは安定と成長——成長率も十分考えていかなければなりません。さりとて安定をしないような行き方ではならぬというふうに考えておりますので、今後漸進的に需要の増大を十分にらみ合せながらやっていきたい、かように考えております。
  39. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 それを論議しておると時間がかかりますからやめますが、これは岸内閣が経済計画とかなんとか言っておるけれども、まさに鉄鋼の一部門においても、無計画な無統一な醜態を暴露しておる一つだと、私は遺憾にたえません。そのことは省きますが、この九月の初めから鉄鋼労働者が賃金値上げの要求書を出して、経営者側と交渉を続けてきておりました。ところが、経営者側は、これに対してゼロ回答を今なおやっておるので、鉄鋼労働者は、十月の初めからストライキに入っております。そこで、このストライキによる銑鉄、鋼材あるいは鋼塊などの減産は、十月一ぱいでどのくらい減産になっておるか。これのこまかい数字は資料でもよろしゅうございますが、大ざっぱな点を一つお示し願いたい。それから、十一月に入ってから、一日当りどのくらい減産になりつつあるか、あるいは十一月一ぱいストが継続されるということになれば、減産の総額はどのくらいになるか、この点を一つお示し願いたい。
  40. 岩武照彦

    ○岩武説明員 十月中におきまするストによる減産は、銑鉄にいたしまして大体七万トン減、鋼材にいたしまして十五万トン前後かと存じます。今月のことは、今後ずっとスト戦術がとられますかわかりませんので、ちょっとわかりかねますが十月のこの減産が、八日間のストかと思っておりますので、その辺から大体の御推算をお願いしたいと思います。
  41. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 これは、こまかい議論になりますから省きますが、十月の減産の率より十一月に入っての減産は、漸次一日当りの減産の率が多くなってくるというのは常識だろうと思うのです。まあその点は議論としておきますが、九月の末、ストに入る前であります。鉄鋼全体として、たとえば銑鉄とか鋼塊とか鋼材、そういうものの在庫品はメーカー、問屋合せて大体どのくらいの品物があったか、これを一つお示し願いたいと思います。
  42. 岩武照彦

    ○岩武説明員 ちょっとその辺の資料を今持ち合せておりませんので、御入用でありますれば、明日お届けいたします。
  43. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 では、これも明日までに資料をそろえて御提出願います。  それから十月、十一月、十二月、月割りの需要量、その国内需要と輸出向け、品種別、その量は大体どのくらいを見積られていたか、これも一つ一応の答弁をされて、こまかい点は明日までに資料を出してもらいたいと思います。
  44. 岩武照彦

    ○岩武説明員 お尋ねのように、こまかい資料はちょっとできてない数字もございますので、月別には申し上げられませんが、大体第三・四半期の普通鋼の鋼塊の生産予定量は、二百八十万トン程度でございます。従いまして、鋼材はこれに圧延を加えますれば、大体その八五%ちょっと上回る見当だと思っております。
  45. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 はなはだどうも大ざっぱで要領を得ませんけれども、これも今求めることは無理かと思いますので、資料にまとめて出して下さい。当然この需要と供給との問題が、このストが長引くに伴って出てきます。私は、もしこの十一月一ぱいストが続くということになると、容易ならぬことになると思うのです。そこで、ストによる減産に伴って、需要と供給の関係というものが、非常に大きな問題になってくると思うが、そういう点に対する対策というものを十分にお立てになっておるか、これを一つ大臣からお聞かせ願いたい。
  46. 岩武照彦

    ○岩武説明員 十一月におけるストがどういう状況で行われるのか、私たちも予測がつきかねますので、的確なお答えはできませんけれども、十月の減産の結果を見ますと、需給関係には、そう影響はなかったように見ております。と申しますのは、先ほど具体的なお答えができませんでしたが、在庫の問題もございますし、また輸出の引き合い等も当時の船積みはそう多くありませんで、市況はむしろ弱含み、値段もかなり弱いというふうな状況でございましたので、十一月中に何日間どういうふうなことになっているのか、ちょっと見当がつかないので申し上げられませんが、そう特別な措置を講じなくても済むのではないだろうかと思っております。もちろん、特別の品種あるいは用途等について緊急なものにつきましては、これは生産されておりますうちから、緊急にそちらの契約を希望するようになると思いますが、全般的にはそう大きな影響を与えないじゃなかろうかということで、現在のところ、特別な対策を構ずるということはしておりません。
  47. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 十一月一ぱいストが続いても、需要供給には事を欠かぬということを、ここではっきりおっしゃることが出来ますか。
  48. 岩武照彦

    ○岩武説明員 先ほど申し上げましたように、十一月中にどういうふうな形のストが行われるかわかりませんので、まさか今後毎日行われるということはおそらくないでろうと思います。従って、今までありまするように、波状的なものがどの段階まで行われるかということになるわけでございます。そこで、これはどうも見当がつきませんが、全体としてはそう大きな減産になることはないんじゃないか。これは非常に雑駁な議論でございますが、組合側の戦法もわかりませんので、ほかに申し上げる方法はないかと思います。
  49. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 そこまでおっしゃっておられればよろしゅうございます。そのときに至って青くならぬようにしておいていただかなければならぬ。そのことは、そのときまでお預けとしておいて、さて鉄鋼が、十一月の初めに相当大幅な値下げを約束されてあったはずです。ところが、この値下げは、今なお発表されません。これらの値下げの額は、大体どのくらいすることになっていたのか。これもおよそ品種別にお示し願いたいが、その数字を今ここでお出しになることができないとすれば、それも資料としてその数字をお示し願ってもよろしゅうございますが、この鉄鋼価格の値下げが、今申し上げたようにいつになって値下げの発表をするのか。これが、今のところではわからなくなてきた。とすれば、当然ストによる減産、在庫品が漸次少くなってくる。そういう思惑的な点から、この値下げが行われないのじゃないかということを考えざるを得ません。そうなってくれば、これは非常に大きな問題であるが、これらに対して、どういうお考えを持っておられるのか。いや、十一月初めの値下げは近日中に約束通り実行さすのだ、こういう方針は変っていないというお考えであるかどうかを、はっきりここでお示し願いたい。
  50. 岩武照彦

    ○岩武説明員 鉄鋼の価格は、御承知のように、八幡、冨士、日本鋼管、この三社の建値という線、その他の各社は、建値等はなく、おのおのの価格という二つの方法でやっておるわけであります。今お話しの点は、多分三社の建値の問題のお話かと思いますが、十一月から建値を下げるという約束は、全然いたしておりません。実は、先生から聞くのが初耳でございます。それで、これはたとえば、御承知のように、笹月二カ月の先物について、月の半ばごろ発表しておる。今月はどういうことになりますか、まだ報告を受けておりません、いろいろ検討中であろうと思います。その他の各社のものについては、これはそれぞれ需給関係その他からする自由価格でやっておりますので、先ほど申しましたように、需給関係が逼迫いたしてきますれば、また昨年のように価格が上ることもあるだろうと思いますが、目下のところは、そういうふうな気配はなく、むしろ市中の一番安い唱え値と言われるものは、品種によりましては、三社建値よりかなり安いものがあるというのが実情でございます。
  51. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 この鉄鋼価格の大手三社を中心にする建値の問題について、十一月初めに大幅な値下げがそれぞれ需要家との間に話し合いが進行していたことは、これは、あなた御存じないことはありません。そこで、この問題は、需用家に相当期待をされていたのであります。ところが今の状態では、先ほど申し上げるように、一体いつ鉄鋼のそういう建値値下げをするのかの見通しはなくなってきたのであります。いや、ストにより減産になってくる。在庫品が少くなってくれば、この値下げは行われずして、逆に値上げが起ってくることも、これは考えられるのであります。そうなってくると、これは岸内閣の低物価政策とは、全然反対の状態が出てくると私は思う刀もちろん、政府が低物価政策をとっていても、低物価にはなっていません、あらゆるものがことごとく値上げになっておるのだけれども、一応表向きは、政府は低物価政策をとってやっていくということになっておる。ところが、鉄鋼が逆に値上りになってくると、この鉄鋼の値上りというものはあらゆるものに影響してきますから、そうすると、政府の方針と逆な状態が全体に起ってきます。そうなってくれば、これは通産大臣としても黙っておれないことになるが、そういう点についての大体の対策、見通しというものを、大臣はお考えになっていますか。
  52. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 鉄鋼の価格が上るというようなことは、これは重大なことに違いありません。しかし、全体の需給の状態から考えまして、鉄鋼の価格が上るということは、私ただいま予想しておらぬのであります。またその原因がストにありましたら、私はストに対しましては、非常に重大な関心は持っておりますが、一々の企業の争議に対して、政府が介入するという考えはありません。私は、価格につきましては重大な関心は持っておりますが、ただいまのところ、価格の引き上げられるような状況にあるとは考えておりません。
  53. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 今通産大臣がおっしゃったように、責任大臣として、重大な関心をお持ちになるのは、私は当然だと思うのであります。そこで、先ほど申し上げたように、鉄鋼の問題がそういう重大な段階に立ち至れば、これは日本産業界、日本の経済界全体に対して、非常に重大な問題を引き起してくるわけでありますから、これらについては、私は大臣としては相当深刻に考えをお持ちになっておられなければいけないと思います。そこで、鉄鋼労働者が、今度要求書を出してストが続けられておりますが、この鉄鋼労働者側から出しておる賃上げの要求額というものが、鉄鋼価格の関係そういうもろもろの点を総合してみて、高いというようにお考えになっておるか。いや、あの程度なら、これは鉄鋼経済界の現状から見ても、これはそう大した無理な額でもない、まあ当然じゃないかというようなお考えをお持ちになっておるか、その辺の点もあわせて、何らかのお考えを持っておられることと思います。それをお示し願います。
  54. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 私はただいまの要求額に対して、それが多いか少いかということについては、考えも全然持っておりませんし、また言うべきでないと思います。自主的にきめられるべきである、かように考えております。
  55. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 最近までの鉄鋼生産というものは、かなりに設備の改良というか、そういうことが行われてきましたので、生産数量が非常に向上しております。鉄鋼界は各社とも、われわれの想像もできないような収益をこここ一、二年の間は上げてきております。しかし、各鉄鋼会社の収益の上り高によって、労働者の賃金なり給与なり諸手当というものがプラスされておるとは、われわれは思っておりません。労働者側の生産性に対する待遇というものは、まことにそれにプラスされておらないということを考えておるので、従って、通産大臣としても、この辺の点をお考えになって、何らかの解決についての御処置を漸次進められるということでなければ、私は、最悪の最終段階がくることもやむを得ない、こう思うのです。従って、賃金要求が多いとか少いとかいうことは言えないとおっしゃっておりますけれども、各鉄鋼会社の収益の率と要求額とを見れば、当然われわれはそれは無理からぬ点をここに見出すことができるのです。こういう点についても、何らかのお考えを持っておられるだろうと思うのですが、この会社側の収益率と労働者の待遇の問題については、どうお考えになっておりますか。
  56. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 先ほど申し上げましたように、私は一々の企業の争議に政府が介入すべきではない、かように考えておりますので、その収益あるいは要求額、あるいは賃金との関係その他につきまして、私から批判的なお話をいろいろ申し上げるわけにはいかないと思います。
  57. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 あなたから申し上げられないとすれば、これは、当然あなたの方では百も御承知のことでありますけれども私の方から御参考に申し上げますと、経営者側は、鉄鋼労働者賃金というものは、高いところが月額三万円くらいになっておる、その次が二万五千円くらいになっておる。従って、他産業と比較すれば、あるいは三割ぐらい高い、こういうことを言っておるようです。ところが、鉄鋼労働者側から出しておる、それからまたその他の関係から出しておる資料を総合してみますと、この三万円なり二万五千円なりという月額収入の中には、早出であるとか、残業であるとか、休日出勤であるとか、その他のいろいろな労働加重のものが五千円以上含まれておる。こういう数字が出ておるのです。そうすると、他と比較をして高いことはございません。そこで鉄鋼業は、御承知のように非常な高熱作業というか、あるいは重筋労働というか、とにかく日本産業中一番体力がなければ、これは働くことができない。従って採用条件としても、日本産業界において一番きびしい体格検査をして入れております。従って、婦人やら子供やらからだの弱い者は、他と比較して、ほとんどないといってもいいくらい丈夫な者ばかり入れておるわけです。こういう点を総合してみますと、むしろわれわれの目から見れば、やはり鉄鋼労働者の賃金は低い、こう考えております。欧州各国の鉄鋼労働者の賃金などと比較をしてみると、三分の一から四分の一くらいにしか当っておりません。こういう点から見ても、今度の鉄鋼労働者側が要求しておる賃金というものは、これは当然じゃないか、また各会社が上げておる収益率から見ても当然じゃないか、このようにわれわれは思っておるのです。ここ一、二年間に、日本の鉄鋼業界が上げた利益というものは、名実ともに神武景気を満喫しておると申し上げても差しつかえありません。これをある者は五百億と言い、ある者は七百億と言っております。その辺の正確な数字をわれわれ知ることはできませんが、通産省重工業局の方では、多分こういう点においても、相当その収益の率を明らかにされておるだろうと思いますが、そういう点から見ても、今度の給与額は私どもは決して高いと思っておらぬ。それから、この鉄鋼業界が上げた利益は、労働者一人につき会社は月額三万円以上の純益を上げておるということを組合側は発表しておるようです。そういう点から見ますと、今度の要求は、三千円から五千円くらいを要求しておるわけでありますが、自分らが働いて、月収を取っているのと同額くらいを、会社が月額労働者一人当り二万五千円、三万円の純益を上げておるのであるから、その一割強くらいを要求しておるというのでありますから、私どもはこれは当然な要求額である、こう考えておる。ところが、会社は、これにゼロ回答をして、これに応じようとしておりません。そこで、この問題を平行線で行くということになれば、これは十一月一ぱい、あるいはもっとこれが深刻になってくるかもしれません。こういう点からいっても、私はやはり労使の問題は、労使当事者双方の話し合いによるものだ、だから話し合いがつかなければいつまででもこれは放任しておかざるを得ないということが一体許されるものかどうか。しかも、日本産業経済、特に産業界の行政上の最高責任を持っておられる通産大臣として、労使の問題は労使双方で解決するまでは、産業界の事態がどういうふうになろうとやむを得ないじゃないかということで、一体放任できるものかどうか。この点については、私は明日の鉄鋼界の重大性を深刻に考えれば、なかなか大臣もそうはいかないだろうと思うが、大臣、どうお考えになりますか。
  58. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 通産省といたしましては、鉄鋼の価格あるいは需給については、重大なる関心を持っておりますことは、ただいま申し上げた通りでありますが、一々の企業に対しまして、自主的に話し合いをきめるべき争議にわれわれが介入するということは、やるべきでない、かように考えております。
  59. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 大臣、重大な関心ということは、具体的に言うと、どういうことでございましょうか。どうも私はなかなか大臣の腹がわからないのです。まあ頭の悪いせいか、なかなかわかりませんが、重大な関心とは、具体的に大臣が行動されるということになると、どういうことになるわけでしょうか、ちょっとお聞かせ願いたい。
  60. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 価格が上るようでありましたら、その価格に対しまては、上げないような勧告をする、あるいは需給につきましては、増産すべきでありましたら、増産を勧奨するというようなことはいたしておるのでありますが、一々の争議について中に立ち入るということはしない、こう申し上げているのであります。
  61. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 品物がなくなってくると、価格が高くなるのでありますが、さて価格を高くさせないようにしようとすれば、やはり生産を増さなければなりません。ところが、生産が行われないということになりますと、価格の高くなるのはやむを得ないのですが、そうなりますと、労使の双方の問題というものを、何らかの形で、やはり大臣がもう一歩踏み出してお考えになるということが、私は大臣が重大な関心を具体的に解決する一つの方策だと、こう思うのであります。その点について、そういうところまで事前に自分が足を踏み込まなければならぬということをお考えになるかどうか。たとえば、経営者側ではこういうことを言っております。鉄鋼連盟というものは、経済行為なり、あるいは労働者側の要求、争議というものを解決する、そういう行為を行う団体ではない、率直にいえば、鉄鋼経営者のクラブみたいなものだということだったのです。ところが、現在、日本のあらゆる産業界の業者の団体というものは、みな鉄鋼連盟と同じような組織です。たとえば、船主協会にしましても、あるいは石炭鉱業の経営者の団体、あるいは繊維工業界の経営者の組織にしましても、みな日本の今日においては、カルテル式なものは許されませんから、統一ある経済行為というものはやれないようになっているわけです。しかしながら、一たび労働争議か、または何か起りますと、やはり話し合いをして、労働者側に回答を与えて、そうして円満に解決するということをほとんどやっております。たとえば、先般、船主協会と海員組合が、ああいう話し合いで円満解決をした。また炭鉱の問題においてもしかり。例をあげれば、私はたくさんあると思うのです。何も鉄鋼連盟のみが経済行為、スト解決の行為をやれないというのではないのです。誠意があれば、これはいずれもやっていることでありますから、当然やれることです。こういうことについても、私はやはり通産大臣が鉄鋼連盟に対しても、他と同じような関心を持って、今ストをやっている鉄鋼争議の円満解決に努力するようにということなどを言われても、これは何も内容に立ち入るわけでないのでありますから、そういうことについては、私は生産責任大臣としてお考えになって努力されることは理の当然だと思いますが、大臣はどうお考えになりますか。
  62. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 争議が早期に解決されることを希望することは、これは当然のことであります。ただ、その内容に立ち入って、われわれが介入するということは、これはほかの場合においてもやっておりませんし、この問題に関しましても、介入すべきでないということを申し上げておるのであります。
  63. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 その円満解決についての、何かそういう指示をするというくらいなことは、内容に立ち入ることではありませんから、解決にあっせんされることは当然だと思うのでありますがこのストがいつまで続いても、大臣の態度は今までのお考えでやられるのでありますか、どうですか、この点をさらに重ねて十分一つ伺っておきたいと思うのです。経営者側は、労働組合の要求に対して、ゼロ回答をどこまで続けていくのかどうか、私どもにはそれはわかりませんけれども、このままの形でいくならば、私はほんとうに容易ならぬことだということを、非常に憂慮している一人であります。二、三日前に参議院の社会労働委員会で、経営者側の鉄鋼連盟の代表の者と鉄鋼労働組合連合会の代表の者とを参考人として呼んで、意見聴取をやっておりました。私もそこに傍聴をいたしておりましたが、この経営者側の鉄鋼連盟の代表の意見を聞いておりますと、経済的に余裕がないからいれられないということでなくて、先ほど申し上げたように、鉄鋼連盟自体が、この経済行為、スト解決行為をやるような資格がないから、話し合いが軌道に乗せられないのだ、こういうような意味のことを言っていたようでございます。そうすると、経営者の経済的内容の問題でなくて、一つの組織上の点、そういう点に何かわれわれは割り切ることのできないようなものを感じました。たとえば、鉄鋼連盟対統一した鉄鋼労働組合連合会ということでは話し合いをやりたくない、しかし何か個々とならやれるんじゃないかというような意味にとれるようなことを言っておりました。そうすると、経済的内容によって話ができないのじゃなくて、統一交渉ということにこだわって、経営者がゼロ回答をしておる。こういうことで、ストが十一月一ぱいも続き、鉄鋼界に容易ならぬ混乱状態が起るというようなことであるならば、先ほど申し上げたように、経営者連盟に対して、通産大臣などから形式上の問題にこだわらないで、鉄鋼界の安定をはかるために、問題の解決に誠意をもってやるように、注意をしてやっていただきたい。ストを円満に解決するために、他の産業すべてが形式的なことにこだわらずに解決をしておるじゃないかということを勧告されることは、私は何も労使の間に割り込んだやり方じゃないと思うのです。およそ今日まで多くの争議がやられておりますけれども、ゼロ回答で片づいたという例はありません。必ずや何らかのお互いの話し合いをして、譲歩をし合って片がついておるものであります。もしゼロ回答でこれを収拾しようとするなら、これは解決できません。そうなったら容易ならぬことになることは申し上げるまでもないのであります。もし、そういうことであるなら、日本の鉄鋼界をつぶすことになるが、これはつぶすわけにいきません。つぶすわけにはいかぬとなれば、どこかで解決しなければならぬ。そうすれば、やはり通産大臣などが当然何らかの形で、これらを深刻なところまで追い込まないように、漸次事前の手を打たれるということは、生産大臣としての当然な責務じゃないかと私は思う。そういうことについての積極的なお考えをお持ちになるかどうかを、いま一ぺん重ねて所信を伺っておきたいと思います。
  64. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 ただいままで申し上げておりますように、われわれとしましては、早く争議が解決することは希望いたしております。しかし、具体的に個々の問題についてわれわれが介入する意思はない、かように考えております。
  65. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 それでは、どういう事態になろうとも放任をしておく、やむを得ない、もう鉄鋼界の状態がどういうような深刻な社会問題になろうとも、通産大臣は断じてその解決に対しては、くちばしをいれるものでない、またいれるべきでないということは、もう自分の決定的な方針というか、信念である、こういうお考えでございますか。
  66. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 仮定の問題につきまして、申し上げるわけには参りませんけれども、ただいまの状態は純粋な賃金の争議でございますから、そういう場合に、私どもとしては介入すべきではない。ただ、先ほど来申しておりますように、価格の問題あるいは生産の問題その他に重大な影響のあります場合には、もちろんその面をいろいろと指導していきたいと思いますが、その原因である争議に対して、われわれが指示すべきものではない、かように考えております。
  67. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 どうもこれは禅問答をあなたとしておるようなことになりますが、しかし、従来からのやり方を見ますと、自民党政府は生産品の不足している産業についての、ストライキを解決するためには、あらゆる手段をとって争議に割り込んで干渉されておられるという前例はたくさんございます。それから従来から歴代の通産大臣は、重大ストが起れば、中へ入っていろいろ解決への指示というか、協力、努力をされた例をわれわれは知っております。経営者側が困るというようなものについては割り込み、干渉しておられる。ところが、品物が余っておる、生産が過剰しておる、在庫品があるというようなものについては、これを放任しておく。このやり方は、あまりにも一方的な経営者を保護される立場に立っておるんじゃないか。たとえば、今申し上げるように、品物が非常に不足しているというのに対して、これ以上ストライキをやられておっては困るからというので、スト解決に割り込み干渉してやる、品物が余っておるからこれはあくまで放任しておく。そうなってきますと、結論としては、これは労働者の生活を非常に窮乏に追い込んでいって、そうして、いやおうなしに労働者側を泣き寝入りさして、解決に追い込んでいこうということは、一方的な片手落ちなやり方でないかと私は思うのです。そこで、そういうやり方というものは、帰するところ、労働組合というものの組織を分断さすというか、弱体化さすというか、あるいは経営者側の労働対策の計画というものを露骨に助ける、一つの経営者の保護政策の政治以外の何ものでもないのじゃないか、こう言われても、私は弁解される余地がなくなってくるんじゃないかと思うが、こういう点に対する大臣考えはどうですか。
  68. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 私どもは、通産省といたしまして、片手落ちとか、そういうようなことでなしに、全く中立で、経営の面におきましても、経営自体にわれわれ干渉するという考えはないのであります。先ほど来繰り返して申し上げておるのが、最も中立的な態度だ、かように考えております。
  69. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 あなたとこういう問題について論議をしていたところで、まるでのれんに腕押しみたいなことで、全く何の意味もないような気が私はするのです。しかし、大臣といえども、今の鉄鋼の争議というものが、このままの形で進行すれば、およそどうなるかということについては、当然お考えがあると私は思う。そうすれば、できるだけその重大な事態に立ち入らない事前に努力をするというのが、政府の責任であり、責任所管大臣の政治の使命じゃないかと私は思うのです。それならば労使双方の問題に立ち入りたくないと言われておるかというと、たとえば石田労働大臣などは、この間、炭鉱労働者の争議がありました。ところが、まだ争議という問題にも何にもなっておらぬのに、大いに中に割り込んだ発表などをやっております。聞くところによると、そういうことが、閣議などでも何か問題になったこともひそかに聞いております。ところが、これほどの鉄鋼界の重大な問題で——十月は御存じのようにああいう日程でストをずっとやってきた、今度やりますと延べ十五日になります。十一月一ぱいやりますと、二十日以上やるかもしれません。あるいは今の状態でいけば、十二月、ことし一ぱいやるかもしれません。それでも、やはり大臣は立ち入るべきでないということですか。これでは一体生産省として、産業界をつかさどられる大臣として、あまりにも無責任なやり方ではないか、あまりにも政治性のないやり方でないかと私は断ぜざるを得ない。見通しが深刻であるならば、当然その事前に内容を、あるいは五千円では多いから三千円にしろ、三千円では多いから二千円にしろとか、そういうことを言われるべきではもちろんないと思いますが、しかしながら労使双方が対立のままで平行線を行くということでは、はなはだ憂慮にたえないから、労使双方が何らかの形で話し合いをして、互譲の気持で誠意をもって話し合い、解決するようにして、鉄鋼界を救わなければならない、こういうことについての所信をお持ちになることは当然だと思うのですが、それでも、大臣は、やるべきでないとお考えですか、どうですか。
  70. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 争議につきましては、それぞれの機関があり、その道をとってやるべきだと考えておりますので、通産省としてそういう問題の中に入ることは、行き過ぎだ。ただ先ほど来申しておりますように、円満に一日も早く解決されることにつきましては、われわれももちろん希望いたしておるところであります。その点は、われわれとしまして行き過ぎのないように、またそれぞれの道によって解決されるようにというふうに考えておるわけであります。
  71. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 もちろん、労使の争いの問題は、労働大臣などを中心にして解決についてのいろいろ方針を立て努力されることはわかります。しかしながら、問題が重大な場合においては、当然経済閣僚懇談会を開くとか、あるいは関係閣僚の話し合いをして、重大事態に陥れないようにするとかいうことは、従来からしばしば各内閣がやってきたことでございます。戦後の争議のうちにおきましても、炭鉱などで、なるほど長期にわたる深刻なものもありました。こういう場合においては、しばしば経済閣僚懇談会なり、関係閣僚が話し合いをされて、ずいぶん深刻に夜を徹してやられたことも、われわれよく見聞きをしております。ところが、鉄鋼のこのたびの場合においては、いまだ経済閣僚懇談会も、関係大臣の話し合いをやられたことも聞きません。これらは、従来の関係大臣の動きなどと比較をしてみまして、どうもこれは立ち入らないでおく方が経営者のためにあるいは何らか経営者側からのそういうような相談がされてあることをひそかに聞くのであります。どうか通産大臣も労働大臣も、これはもう少しほうっておいてもらいたいということの相談があってそういう点から、各大臣が、この争議を解決しようということについての動きをとってらおられるのじゃなかろうかという風説も起っております。そういうことがありますなら、私ははなはだ容易ならぬことだと思うのであります。政府は一経営者の言辞によって動かさるべきものじゃないと思う。あくまでも日本国家国民全体の立場に立って行動されることが、私は当然だと思う。そうすれば、従来のやり方からいたしましても、当然関係閣僚が一この鉄鋼争議に対して対策を立てて努力されることが慣例だと申し上げてもいいのじゃないかと思う。これは、もう十一月もすでに十日にならんとします労働組合側は、十一月一ぱのストライキの日程を作っておるようであります。経営者側がゼロ回答を続ける限りにおいては、この十一月一ぱいのストライキの日程は行われると思います。なお、回答をするならば勢いのおもむくところ、これは十二月一ぱいやるということになります。これはもう当然のことであります。そうすれば、当然そういう見通しの上に立つならば、岸内閣としても放任できないはずだ。関係大臣としての対策、方針をお考えになるはずだと思う。それでも、前尾通産大臣は、全然わしは考えておらぬ、やろうとも思っておらぬ、そういうお考えでございますか、どうですか。
  72. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 経営者側から頼まれたのじゃないかというお話がありましたが、そういう事実は絶対にございません。またこの問題に関しましては、いろいろ話し合ったこともございませんが、通産省といたしまして、いかなる場合におきましても、こういう個々の問題の争議に入り込むということはしない、今までの慣例はそうだと聞いております。また事実そうあるべきだと思っております。従来の通り考え方で払いっておるわけです。
  73. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 あなたのそういう考えでありますならば、おそらく日本の鉄鋼界は、収拾することのできない状態に陥ることを、私はここで断言をしておきます。その場合においても、通産大臣は、これはおれの所管でないから、それは仕方がないのだというお考えであるか。今、大臣は、通産省はそういうことをやったことのないように言われるが、そんなことはありません。戦後においても、通産大臣と、多くの争議について私もしばしば話し合いをしたことがございます。そうして陰に陽に努力をされておることを、私多く知っております。それは、もしあなたがこの解決に努力されぬなら、それは、日本産業経済界に重大な事態が起っても、それに立ち入るべきでないとされるなら、それは前尾通産大臣のみです。他の大臣で、産業界、経済界が深刻になってきて、黙っていて拱手傍観をしておった大臣は、一人もありません。今後さらに、そこまで追い込んでも、なお黙っておるとするなら、それは政治上の問題として、われわれこれを許すわけに参りません。事前に努力をされることこそ、私は通産大臣の重大な責めを誠意をもって果されることだと思うのです。だから、これらの点について、大臣も、少くとも経済閣僚との話し合い、あるいは労働大臣などとの話し合いをして、何とかして鉄鋼争議をとことんまで追い込まないうちに、鉄鋼界を救済したいということについての深い反省というか、そういうお考えを持たれる必要があると思いますが、今この一言だけを伺っておきます。どんなことが起っても、解決に努力はされぬとするのか。いや、重大な事態に至る前に、できることなら何とかそういう話し合いもして努力したいというお考えであるのか、この一点だけを伺っておきたい。
  74. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 問題は、産業界全体が、あるいはまたその産業全体が滅びるかどうか、そのときに傍観をしておるかどうかということになりますと、また話は別であります。しかし、個々の争議行為に一々介入するということになりますと、これはとうていなし得ないのであります。現在の建前から申しまして、通産省としましては、通産行政という面から常に考えていかなければならぬ問題でありまして、個々のストライキに介入するということになりますと、これは通産行政としては、行き過ぎだというふうに考えておるのであります。その点あるいは御所感と非常に違うかもわかりません。しかし、従来から通産省としましては、そういう態度でやってきたというふうに聞いております。また私としましても、この際において、そういう行き方であるべきだ、かように考えておりますので、その点は御了承願いたいと思います。
  75. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 本会議の採決等もあるようでございますので、私は私の質問に対する大臣の答弁に納得できない点がたくさんございますが、しかしこれはいずれまた他日にこれらの問題について、さらに一つ大臣と論議をし合うことにしまして、本日はこの程度にいたしておきます。
  76. 福田篤泰

    福田委員長 本日はこの程度にとどめます。次会は明九日午前十時より開会することとし、これにて散会いたします。     午後零時五十三分散会